(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】指触乾燥性過酸化物組成物の形成方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20250115BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20250115BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20250115BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250115BHJP
A61K 33/40 20060101ALI20250115BHJP
A61K 31/327 20060101ALI20250115BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/38 20060101ALI20250115BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250115BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250115BHJP
C11D 7/54 20060101ALI20250115BHJP
C11D 7/20 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61K8/02
A61P31/04
A61P31/02
A61P17/00 101
A61K33/40
A61K31/327
A61Q17/00
A61K8/25
A61K8/22
A61K8/38
A61K9/14
A61K47/04
C11D7/54
C11D7/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538288
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 US2022049649
(87)【国際公開番号】W WO2023121786
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ジー・ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・エフ・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・リチャードソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
4H003
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC32
4C076DD29
4C076DD29A
4C076FF01
4C076GG02
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC461
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD17
4C083DD21
4C083EE07
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA08
4C086HA22
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA39
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA63
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA89
4C206ZB35
4H003EA25
4H003EE04
4H003FA34
(57)【要約】
液体過酸化物溶液と結晶性又は非晶質の固体材料をブレンドして、指触乾燥性過酸化物含有固体材料を得る方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体過酸化物溶液を乾燥シリカ固体担体上にスプレーすることを含む、液体過酸化物と乾燥固体担体との組合せを製造する方法であって、
疎水性又は親水性シリカ粉末を、混合装置及び1つ以上のスプレーノズルを備えるブレンドユニット内で混合して粉末を形成することを含み、前記スプレーノズルが、ブレンドユニット又は混合装置の表面へのスプレーの衝撃を最小にするように配向され、シリカ固体担体の粒度に対する液体過酸化物スプレー液滴サイズの比が約0.5~10,000であり、前記ブレンドユニットを1以下のフルード数で操作する、前記方法。
【請求項2】
前記液体過酸化物溶液の流量が水溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体過酸化物溶液が、過酸化水素水、過酢酸、有機過酸化物、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体過酸化物溶液の濃度が約0.5%~70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体過酸化物溶液の濃度が35%~70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体過酸化物溶液の濃度が50~70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥シリカ固体担体が、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥シリカ固体担体が粉末又は顆粒の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合装置が、約0.5m/s~約10.0m/sの間のブレード先端速度で操作されるブレンダーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
シリカ固体担体の粒度に対する液体過酸化物スプレー液滴サイズの比が約0.5~10000の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
シリカ固体担体の粒度に対する液体過酸化物スプレー液滴サイズの比が約0.75~3000の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上のノズルの各1つを通る液体過酸化物成分の流量が、40psig(276kPa)で約0.5gpm(1.89リットル/分)~約2gpm(7.57リットル/分)の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のスプレーノズルが、フラットスプレーノズル、コーンスプレーノズル、中空コーンスプレーノズル、ミスト/フォグノズル、及びそれらの組合せよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ブレンダーを、1未満かつ0.05超のフルード数で操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ブレンダーを、0.7未満かつ0.075超のフルード数で操作する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ブレンダーを、0.5未満かつ0.1超のフルード数で操作する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ブレンダーを、5~45分の間の混合時間で操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ブレンダーを、10~35分、より好ましくは15~30分の混合時間で操作する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ブレンダーを、15~30分の混合時間で操作する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化物溶液と結晶性又は非晶質の固体材料とをブレンドして、指触乾燥性過酸化物含有粉末材料を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の過酸化物及び過酸化化合物の溶液は、酸化剤及びフリーラジカルの工業的供給源から化粧品及び家庭用除菌剤に至るまで、多くの用途に有用であるが、一般に液体で不安定で反応性が高いため、便利な貯蔵及び供給が長い間課題であった。
【0003】
長期安定性を有する、乾燥粉末、ペレット、錠剤、ビーズ、又はレンガの形態をとることのある過酸化物化合物の固体形態は広範な用途を有する。例を挙げると、パーソナルケア、化粧品、農業、及びヘルスケア用途の配合物がある。米国特許出願公開第2020/0299621号(参照により本明細書で援用される)には、過酸化物化合物に対して不活性であり、指触乾燥性を維持しつつかなりの量の液体を吸着することができる無機固体担体を使用する、1種の過酸化物化合物用のデリバリーシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0299621号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で提示される新規な技術思想は、過酸化水素などの過酸化化合物を固体担体に組み込んで、乾燥した手触り(指触乾燥性)の過酸化物含有粉末を提供する方法に関する。この混合物は完全に乾燥した手触りであり、液体がしみ出したり、そうでなければ長期間保存した後でも最終的な粉末が湿った感じや濡れた感じになることはない。本発明の液体過酸化物成分は、過酸化水素、過酢酸、有機過酸化物、又は様々な過酸化物若しくは他の水系過酸化物製品の組合せを含むことができる。また、液体過酸化物成分は、安定剤などの添加剤を含むことができる。また、液体過酸化物成分は、過酸化物材料を配合した指触乾燥粉末を形成するように固体担体に取り込まれる。固体担体は、ヒュームドシリカ又は焼成シリカ、沈殿シリカ、又は所望の担体特性を達成するために疎水性若しくは親水性の両方のタイプのシリカを異なる比率で組合せたものをベースとすることができる。また、製品の色など最終製品に望ましい側面を提供するために、配合剤、着色剤、結合剤などの他の固形物をシリカベースに配合することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
過酸化物成分は、適切なブレンドを達成するために、様々な方法によって固体担体成分に取り入れることができる。このようなブレンド方法としては、リボン又はパドルブレンダー、スクリューブレンダー、回転プラウブレンダー、プラウブレンダー、ダブルパドルブレンダー、タンブリングブレンダー、Vコーンブレンダー、ダブルコーンブレンダー、スタティックブレンダー、ドラムブレンダー、プラネタリーブレンダー、バーチカルブレンダー、ホモジナイザー、又は粉末成分と液体過酸化物成分との徹底的な混合を可能にする同様の装置を使用して、1つ以上のノズル、霧吹き装置、スプレーボール、又は滴下法により液体を導入する単純な混合タンクが挙げられる。液体過酸化物溶液を流動床にスプレーすることも可能である。スプレーノズルはフラットスプレーノズル、コーンスプレーノズル、中空コーンスプレーノズル、ミスト/フォグノズルであってもよい。振動アシスト混合装置、音波又は超音波混合、各種シェーカーなど、他の混合技術も採用できる。多くの種類の固体/液体混合装置が存在する。本発明の目的のために、ミキサー/混合及びブレンダー/ブレンドという用語は、過酸化物成分の固体担体への取り込みを説明する際に区別なく使用できる。
【0007】
固体過酸化物材料を製造する際には、均一な製品を形成するために、適切な量の剪断を粉末固体担体に加えることが重要である。例えば、単に液体を固体に混合するだけでは、一般的に十分な剪断が得られず、シリカ担体粒子がくっついて凝集する傾向がある。均一な製品を提供するために十分な剪断を与えつつ、ブレンド操作で固体支持体を過度に剪断しないことも重要である。
【0008】
固体過酸化物製品を形成するために使用されるブレンド操作は、担体(典型的にはシリカ)の微細構造の完全性を維持するように制御されなければならない。過度の剪断は、シリカの物理的構造を素早くかつ不可逆的に破壊する。製品に過度の剪断を加えると、シリカ担体の構造が部分的に、あるいは完全に破壊され、使用不可能な湿ったドロドロした製品になる。
【0009】
典型的に、液体を固体粒子にスプレーする場合、その操作はフルード数(Fr)が1よりも大きい状態で行われなければならない。Frが1より小さいと、重力が遠心力より強くなり、固体粒子がブレンダー内に沈降したままとなり、移動はするもの曇り状態にはならない。Frが1より大きい場合、遠心力は重力よりも強くなる傾向があり、固体粒子はブレンダー内で持ち上げられ浮遊する傾向がある。しかし、非常に低い嵩密度を持つ固体粒子を用いて操作すると、固体粒子は空中に浮遊するようになり、その一部はフィルターや空気により失われる。
【0010】
固体過酸化物製品の完全性を確保するために、ブレンダーは低剪断条件下で操作しなければならない。そのためには、低フルード数の条件下でブレンダーを操作する必要がある。しかし、固体への液体注入を行う場合、1よりも大きいフルード数を採用することが典型的である。本発明において、高い混合速度を使用することで、シリカの微細構造が失われる可能性がある。本発明者は、驚くべきことに、フルード数が1未満の条件下でブレンダーを操作すると、液体の適切な分配のための時間を確保するために、液体の注入速度を低下させなければならないことを見出した。
【0011】
混合時間(tm)を、5~45分の間、好ましくは10~35分、より好ましくは15~30分のtmで操作する液体供給流量に対する固体粉末の体積の比であると定義することで、低いフルード数での操作が固体粒子上の剪断を低減させることができ、それでもなお液体による固体粒子の完全かつ均一な取り込みを可能にする。
【0012】
液体過酸化物溶液を固体粒子であるシリカ担体に取り入れるために使用する剪断が小さすぎると、固体粒子の一部が凝集して、濡れた雪玉のように湿った触感のみならず、高濃度の過酸化物溶液を含むボールとなる。本発明は、凝集体の形成を低減又は排除し、乾燥した手触りで、かつ、固体担体全体に均一な過酸化水素分布を有する均一な粉末を製造する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特定の実施形態の詳細な説明
本発明者は、液体過酸化物の溶液をシリカ粉末担体にブレンドする際に、最終製品中の不要な凝集物の数を低減させるために、シリカを適切に配合することを確保するよう特に注意を払わなければならないことを見出した。典型的には、いくつかの凝集物はシリカ成分中に既に存在している。これらの凝集物は包装及び輸送中に形成されることがある。他の凝集物は、シリカ粒子が液体過酸化物溶液の添加により湿潤され、粒子-粒子間の不均一な接着を引き起こすときに出現することがある。本発明は、シリカ全体の過酸化物の分布が比較的均一になるように、シリカ担体を過酸化物溶液で湿潤させるプロセスを提供する。得られた湿潤シリカは、ブレンドプロセスが完了した後に、凝集物を有さないか、又は少数の凝集物しか有さない。固体の過酸化物製品は、本発明のプロセスにより形成され、それによって、シリケート中の凝集物が最小限に抑えられ、シリカの適切な湿潤により塊状化が避けられ、湿潤プロセスの均一性が得られる。本発明のプロセスにより形成される固体過酸化物製品は、指触乾燥性粉末である。
【0014】
液体過酸化物成分と固体、すなわちシリカ担体成分とをブレンドする好ましい方法は、ダブルブレードリボンブレンダー、パドルブレンダー又はプラウブレンダーを使用することである。好ましい方法は、リボンブレンダー、ダブルリボンブレンダー又はパドルブレンダーを、好ましくは約0.5~約10.0m/sの間、好ましくは約1.0m/s~約5.0m/s、より好ましくは約0.5~約2.5m/sのブレード先端速度で操作しながら、過酸化物溶液をスプレーノズルでシリカ担体成分に供給することである。別のタイプのブレンダーを異なる先端速度で操作して所望の混合を達成してもよい。所望の量の過酸化物溶液がシリカ担体に添加されたときに、インペラを、好ましくは同じブレード先端速度で操作し続けて塊の量を減少させ、最終的に、実質的に指触乾燥性粉末である固体シリカ製品(液体過酸化物を含む)を製造する。本発明の特徴は、シリカ担体粉末の良好な分配のために十分な剪断を加えるが、ただし、シリカ構造に悪影響を与えるほどの剪断を加えないことである。「指触乾燥性」とは、ジョージア・パシフィック社製の1プライのAccuWipe(登録商標)ブランド#29712が、25℃で24時間にわたって過酸化物含有粉末製品に浸漬された後、15重量%未満の水分を吸収することを意味するものとする。
【0015】
インペラ先端速度と共に、フルード数も本発明に関して考慮するために重要なパラメータである。フルード数は、重力に対する遠心力の比として定義される:
Fr=Rω2/g
ここで、Rはブレンダーの半径であり、ωは角速度であり、gは重力である。Frが1よりも大きい場合、遠心力が支配的となり、すなわち粉末はブレンダー内で投げ飛ばされ、粉末はブレンダー内で浮き上がり空気中に浮遊する傾向を有する。液体を固体にスプレーする典型的な操作は、1よりも大きいFrで行われる。しかし、非常に軽く、ふわふわした固体シリカ担体を使用する場合、空気中に粉末が充満し、フィルター(又は大気)への余分な損失及び液体ノズルへの粉末の混入の原因となる。本発明では、/ブレンダーは1以下かつ0.05超、好ましくは0.7未満かつ0.075超、より好ましくは0.5未満かつ0.1超のFrで操作される。
【0016】
本発明者は、驚くべきことに、低いFrで良好な製品を製造できることを見出した。適切な形状とノズルからの流量を用いることで、凝集体形成が最小限又は全くない指触乾燥性粉末が製造される。ブレンド時間tmは、液体の流量に対するブレンド容器内の製品の体積の比であると定義される。
tm=ブレンダー内の粉末体積/Q
ここで、
Qは体積流量である。
【0017】
本発明に従って、ブレンダーは、5分超~45分の間、好ましくは10~35分、より好ましくは15分~30分のtmで操作される。これにより、低いフルード数での操作が可能となり、粉末上での剪断を減少させることができ、さらに固体シリカ担体粉末をペルオキシ液体で完全かつ均一に被覆することができる。
【0018】
1個以上のスプレーノズルの位置とノズルのスプレー形状とは、ブレンドプロセス中にノズルからのスプレーがブレンドユニットの壁やブレンドユニット内にある他の備品に当たらないように整列されている。スプレーがブレンドユニット内の壁や任意の固体備品に当たると、不要な凝集物の形成に至る湿潤スポットが発生することがある。ブレンドユニットの壁や内部機器に当たるスプレーパターンや、重なり合うスプレーパターンを避けるマルチノズルの構成や形状を採用することができる。スプレーパターンの重なりは、望ましくない凝集物に至る局所的な空間湿潤スポットを生じる。液体過酸化物成分のスプレーは、ノズルの種類に応じた操作圧力条件下で、ノズルの整列により、湿潤スポットを最小限に抑えつつブレンドユニット内で液滴の均一な分布を生成するように設計される。小さな液滴のスプレーが好ましいが、霧タイプやミストタイプのスプレーにつながる微細又は超微細な液滴を生成するノズルを使用することも条件によっては可能である。
【0019】
スプレーパターンに加えて、本発明の別の特徴はスプレー液滴サイズである。スプレーノズルを使用して液体を分散させ、高い表面積を持つ液滴を生成し、その液滴が固体表面に衝突する。本発明では、スプレー装置を使用して、液滴速度を制御しながら過酸化物液体成分を分散させる。本発明において、非常に高い液滴速度は、特に大きな液滴と組合せると、より大きな凝集物が形成され得るので望ましくない。本発明では、小径の液滴をスプレーし、低流量のノズルを備えることが好ましい。乾燥過酸化物組成物を形成する際に、生産性を向上させるために流量を直線的に増加させることは可能でないことが分かった。スケールアップのためには、スプレーノズルの数を増加させて過酸化物成分の流量を増加させ、ブレンドプロセス中にブレンドユニット内に配置された壁その他の備品に重なることが少ない又はスプレーが当たることが少ない均一な分布を維持する必要があることが分かった。本発明者は、シリカ担体粒度に対する液体過酸化物成分スプレー液滴サイズの比は、好ましくは0.5~10,000の間、より好ましくは0.75~3,000の間であることを見出した。例えば、シリカが0.2~0.3μmの場合、液体過酸化物成分スプレー液滴サイズは0.1~300μmの間となる。
【0020】
液体過酸化物成分用の好ましいスプレーノズルは、75リットルの小型ブレンドユニットについて、40psig(276kPa)で約1gpm(3.78リットル/分)未満、好ましくは0.5gpm(1.89リットル/分)未満の流量を有するであろう。参考のために提供される好ましい液滴サイズ分布(このプロセスに対する限定要因ではない)は、0.1~3,000μm、好ましくは1~1,000μm、より好ましくは5~800μmであろう。様々なスプレーパターン(フラットスプレー、コーン、中空コーンなど)を使用することができる。スプレーパターンの選択は、ブレンドユニットのサイズと形状に応じる。液体過酸化物成分の粘度も、本発明の特徴を提供するための流量及びスプレーパターンの選択に影響を及ぼす。
【0021】
本発明者は、凝集体の形成が制御された固体過酸化物製品を提供するためには、関連するブレンドユニットサイズ(及び関連する剪断)と過酸化物液体成分を添加する流量との間の比を制御しなければならないことを見出した。単一のノズルの比は、ブレンドユニット空間(作業容積)100L当たり、ノズル1個について1分間にスプレーされる液体過酸化物成分の好ましくは約0.01~約1.5リットル、より好ましくは約0.05~約0.5リットルの範囲である。したがって、例えば、1273Lのブレンドユニットは、液体過酸化物成分を粉末シリカ成分に正確な比率で適切に添加して凝集物の形成を制限するために、1分当たり約1.5Lで流れる2~6個のノズルを必要とすることになる。
【0022】
過酸化水素及び過酢酸などの液体過酸化物成分の取り扱いの安全性を高めるために、ブレンドユニットは、約4℃~35℃の範囲、好ましくは約10℃~30℃の範囲、より好ましくは約15℃~25℃の範囲の周囲温度で、通気状態で操作することが好ましい。過酸化物に接触する金属部分は、製品の安定性を確保するために不動態化すべきである。
【0023】
態様1:液体過酸化物溶液を乾燥シリカ固体担体上にスプレーすることを含む、液体過酸化物と乾燥固体担体との組合せを製造する方法であって、
疎水性又は親水性シリカ粉末を、混合装置及び1つ以上のスプレーノズルを備えるブレンドユニット内で混合して、比較的凝集のない粉末を形成することを含み、前記スプレーノズルが、ブレンドユニット又は混合装置の表面へのスプレーの衝撃を最小にするように配向され、シリカ固体担体の粒度に対する液体過酸化物スプレー液滴サイズの比が約0.5~10,000であり、前記ブレンドユニットを1以下のフルード数で操作する、前記方法。
【0024】
態様2:前記液体過酸化物溶液の流量が水溶液を含む、態様1に記載の方法。
【0025】
態様3:前記液体過酸化物溶液が、過酸化水素水、過酢酸、有機過酸化物、又はそれらの組合せを含む、態様1又は2に記載の方法。
【0026】
態様4:前記液体過酸化物溶液の濃度が約0.5%~90%、好ましくは35%~70%、より好ましくは50~70%である、態様1~3のいずれかに記載の方法。
【0027】
態様5:前記乾燥シリカ固体担体が、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、又はそれらの組合せを含む、態様1~4のいずれかに記載の方法。
【0028】
態様6:前記乾燥シリカ固体担体が粉末又は顆粒の形態である、態様1~5のいずれかに記載の方法。
【0029】
態様7:前記混合装置が、約0.5m/s~約10.0m/sの間のブレード先端速度で操作されるブレンダーを含む、態様1~6のいずれかに記載の方法。
【0030】
態様8:シリカ固体担体の粒度に対する液体過酸化物スプレー液滴サイズの比が、約0.5~10000の間、好ましくは約0.75~3000の間である、態様1~7のいずれかに記載の方法。
【0031】
態様9:1つ以上のノズルの各1つを通る液体過酸化物成分の流量が、40psig(276kPa)で約0.3gpm(1.13リットル/分)~約2gpm(7.57リットル/分)の範囲である、態様1~8のいずれかに記載の方法。
【0032】
態様10:前記1つ以上のスプレーノズルが、フラットスプレーノズル、コーンスプレーノズル、中空コーンスプレーノズル、ミスト/フォグノズル、及びそれらの組合せよりなる群から選択される、態様1~9のいずれかに記載の方法。
【0033】
態様11:前記ブレンダーを、1未満かつ0.05超、好ましくは0.7未満かつ0.075超、より好ましくは0.5未満かつ0.1超のフルード数で運転する、態様1~10のいずれかに記載の方法。
【0034】
態様12:スプレー供給システムを、5~45分の間、好ましくは10~35分、より好ましくは15~30分の混合時間で運転する、態様1~11のいずれかに記載の方法。
【0035】
本明細書において、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で実施形態を記載してきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わされ、又は分離できることが意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載された好ましい特徴の全ては、本明細書に記載された本発明の全ての態様に適用可能であることが分かるであろう。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明は、組成物又は組成物を使用する方法の基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えない任意の構成要素又はプロセス工程を除外するものと解釈できる。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で規定されない任意の構成要素又はプロセス工程を除外するものと解釈できる。
【実施例】
【0037】
例1:
75Lのダブルリボンブレンダーを60rpmで操作した。Bete PJ24 90°スプレー角ノズルを高圧(100psig又は689kPa)で作動させ、50%液体過酸化水素溶液を0.16gpm(毎分0.60リットル)で2.5kgのCab-O-Sil(登録商標)M5シリカに供給して、8.6kgの製品を製造した。スプレーパターンはスプレーがブレンドユニットの壁に当たる結果となった。得られた製品には多数の凝集物が含まれ、手触りは湿っており、「スノーボール」のような質感であった。
【0038】
例2:
同じ75Lダブルリボンブレンドユニットにおいて、フラットスプレーパターンを与えるTeejet(登録商標)ノズルを使用し、40psig(276kPa)で0.2gpm(0.76リットル/分)の50%液体過酸化水素溶液成分流量を2.5kgのCab-O-Sil(登録商標)M5シリカに供給して8.6kgの製品を製造した。製品の品質は改善されたが、依然として若干の湿った凝集体の形成があった。
【0039】
例3:
同じ75Lダブルリボンブレンドユニットにおいて、フラットスプレーノズルを備えるTeejet(登録商標)ノズルを使用し、40psig(276kPa)以下の圧力で約0.067gpm(0.25リットル/分)の流量を2.5kgのCab-O-Sil(登録商標)M5シリカに供給したところ、合計8.6kgの良質な製品である指触乾燥性粉末が得られ、凝集物の形成が最小限に抑えられた。
【0040】
例4:
市販のサイズ1273Lのパドルブレンダーにおいて、139ポンド(63kg)のシリカ(Cabot Corp社製Cab-O-Sil(登録商標)M5)をブレンダーに装填した。これはブレンダー容積の約90%を占めた。スプレーノズルをシリカの外側に直接設置した。ブレンダーを20.5rpmの速度で操作し、5個のTeeJet(登録商標)フラットノズル0.4gpm(1.5リットル/分)の流量、30psig(207kPa)の圧力で使用し、スプレーパターンが重なったりブレンダーの側壁に当たったりしないように配置した。その結果、凝集物が形成されることなく、指触乾燥性粉末である良質の生成物が得られた。フルード数は0.21と算出されたところ、これは、文献に記載された、粉末と液体との混合に理想的な1よりもかなり小さい。パドルの先端速度は約1m/sであった。ブレンダーを、集塵機内の粉塵が目立たない状態で作動させた。50.1%の過酸化水素の添加を19分かけて行い、合計366ポンド(166kg)の過酸化水素を添加したが、9ポンド(4kg)が供給ラインに充填されたため、実際には357ポンド(162kg)がブレンダーに入ったと計算された。過酸化水素の添加後、ブレンダーをさらに5分間、チョッパーを1分ごとに5秒間作動させながらブレンドを行った。得られた製品は、流動性よい指触乾燥性の粉末であり、分析の結果、36%の過酸化水素がシリカに取り込まれていた。
【国際調査報告】