(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】多孔質層を有する固体酸化物電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20250115BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20250115BHJP
H01M 8/126 20160101ALI20250115BHJP
H01M 8/1253 20160101ALI20250115BHJP
H01M 8/1246 20160101ALI20250115BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20250115BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H01M4/86 U
H01M8/12 101
H01M8/126
H01M8/1253
H01M8/1246
H01M4/88 T
H01M4/90 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538320
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2022053810
(87)【国際公開番号】W WO2023122274
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワックスマン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,イアン
(72)【発明者】
【氏名】ホリック,サム
(72)【発明者】
【氏名】フアン,イーリン
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018BB01
5H018BB03
5H018BB08
5H018BB12
5H018EE12
5H018HH03
5H018HH05
5H018HH06
5H018HH08
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5H126GG12
5H126HH01
5H126JJ03
5H126JJ05
5H126JJ06
5H126JJ08
(57)【要約】
固体酸化物電池は、非多孔質酸化物層と、1つ以上の第1の多孔質層と、1つ以上の第2の多孔質層とを含むことができる。非多孔質酸化物層は、酸素イオンを伝導することができ、固体電解質として動作することができる。第1および第2の多孔質層は、非多孔質酸化物層の反対側に配置することができる。非多孔質酸化物層は、第1および第2の多孔質層のそれぞれの密度よりも大きい密度を有することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つに、1つ以上の電極触媒酸化物を浸透させることができる。あるいは、いくつかの実施形態では、多孔質機能層は、非多孔質酸化物層と1つ以上の第1の多孔質層との間に配置することができる。多孔質機能層は、固体酸化物電池の開回路電圧を増加させるのに有効であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオンを伝導し、固体電解質として動作するように構成された非多孔質酸化物層と、
非多孔質酸化物層の第1の側面の上に配置された1つ以上の第1の多孔質層と、
前記第1の側と反対側の前記非多孔質酸化物層の第2の側の上に配置された1つ以上の第2の多孔質層と、を備え、
前記非多孔質酸化物層は、前記第1および第2の多孔質層の各々よりも大きい密度を有し、
前記非多孔質酸化物層の電子伝導率は、前記非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり、
前記第1の多孔質層および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率は、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%よりも大きく、
前記1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
前記1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される、固体酸化物電池。
【請求項2】
酸素イオンを伝導し、固体電解質として動作するように構成された非多孔質酸化物層と、
非多孔質酸化物層の第1の面上に配置された多孔質機能層と、
多孔質機能層の非多孔質酸化物層と対向する側の上に配置された1つ以上の第1の多孔質層と、
前記非多孔質酸化物層の前記第1の側と対向する第2の側の上に配置された1つ以上の第2の多孔質層と、を備え、
前記非多孔質酸化物層は、前記多孔質機能層の密度よりも大きい密度を有し、
前記非多孔質酸化物層の電子伝導率は、前記非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり、
前記多孔質機能層は、550℃以下の温度で、前記非多孔質酸化物層および前記多孔質機能層のイオン移動数を少なくとも0.9に増加させるのに効果的であり、
前記1つ以上の第1の多孔質層の少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
前記1つ以上の第2の多孔質層の少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される、固体酸化物電池。
【請求項3】
前記1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、または混合イオン性電子伝導性酸化物を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項4】
前記1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、ガレートのニッケルサーメット、モリブデン酸塩、モリブデン酸塩のニッケルサーメット、クロム酸塩、クロム酸塩のニッケルサーメット、バナジン酸塩、またはバナジン酸塩のニッケルサーメットから形成される、請求項3に記載の固体酸化物電池。
【請求項5】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、セリアまたは酸化ビスマスを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項6】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、ドープされたセリア、立方晶系酸化ビスマス、菱面体晶系酸化ビスマス、またはドープされた菱面体晶系酸化ビスマスを含む、請求項5に記載の固体酸化物。
【請求項7】
前記1つ以上の第1の多孔質層は、1つ以上のランタニドが添加されたドープセリアを含む、請求項6に記載の固体酸化物電池。
【請求項8】
前記添加される1つ以上のランタニドが、プラセオジム、サマリウム、またはプラセオジムとサマリウムの両方である、請求項7に記載の固体酸化物電池。
【請求項9】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、1つ以上の電極触媒酸化物で浸透されている、請求項5に記載の固体酸化物電池。
【請求項10】
前記1つ以上の電極触媒酸化物は、少なくともAおよびBにより形成される1つ以上の多相電極触媒を含み、前記1つ以上の多相電気触媒中のAとBとのモル比は、約1:1である、請求項9に記載の固体酸化物電池。
【請求項11】
Aが、第2族元素、第3族元素、またはランタニドであり、Bが、第4周期元素である、請求項10に記載の固体酸化物電池。
【請求項12】
Aは、プラセオジム(Pr)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、およびエルビウム(Er)からなる群から選択され、
Bは、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および亜鉛(Zn)からなる群から選択される、請求項11に記載の固体酸化物電池。
【請求項13】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、セリア、酸化ビスマス、または(i)セリアまたは酸化ビスマスと、(ii)1つ以上の電子伝導性および電気触媒酸化物とから形成される複合材料を含む、請求項1に記載の固体酸化物電池。
【請求項14】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、サマリアネオジムドープセリア(SNDC)、エルビア安定化酸化ビスマス(ESB)、ジスプロシウムタングステン安定化酸化ビスマス(DWSB)、イットリア安定化酸化ビスマス(YSB)、菱面体酸化ビスマス、ストロンチウムおよびマグネシウムドープランタンガレート(LSGM)、ストロンチウムサマリウムコバルト酸化物、およびニッケル酸Ln
2NiO
4+δ(Lnはランタニド)からなる群から選ばれ材料を含む、請求項1に記載の固体酸化物電池。
【請求項15】
前記第1の多孔質層のうちの1つと前記非多孔質酸化物層との間に配置され、それらと直接接触する多孔質機能層をさらに含む、請求項1に記載の固体酸化物電池。
【請求項16】
前記多孔質機能層が、セリアまたは酸化ビスマスから本質的になる、請求項2および15のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項17】
前記多孔質機能層が、前記固体酸化物電池の開回路電圧を増加させるように構成される、請求項2および15のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項18】
前記開回路電圧は、500~550℃で0.9V以上である、請求項17に記載の固体酸化物電池。
【請求項19】
第1の電極から第2の電極までの第1の方向に沿った多孔質機能層の厚さは、約20μm以下であり、および/または
第1の方向に沿った非多孔質酸化物層の厚さは、約20μm以下である、請求項2および15のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項20】
1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、陽極として動作するように構成され、1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、電気化学的酸化が第2の側で起こるときに陰極として動作するように構成され、および/または
1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、陰極として動作するように構成され、1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、還元が第2の側で起こるときに陽極として動作するように構成される、請求項1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項21】
1つ以上の第1の多孔質層は、両端値を含む20~100%(モル分率)の範囲の酸素濃度を含む入力流を受け取るように構成され、
1つ以上の第2の多孔質層は、燃料を受容するように構成され、固体酸化物電池は、燃料を電気化学的に酸化して電気を生成することによって固体酸化物燃料電池(SOFC)として動作するように構成される、請求項1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項22】
1つ以上の第2の多孔質層は、H
2Oおよび/またはCO
2を含む投入流を受け取るように構成され、
固体酸化物電池は、第2の側でH
2OまたはCO
2を電気化学的に還元し、第1の側でO
2を発生させることによって、固体酸化物電解電池(SOEC)として動作するように構成される、請求項1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項23】
固体酸化物電池は、分極を逆転させて固体酸化物燃料電池(SOFC)としての動作と固体酸化物電解電池(SOEC)としての動作とを切り替えるように構成され、
固体酸化物電池は、第1の動作モード中に、第1および第2の電極のうちの1つに提供されるH
2Oおよび/またはCO
2を電解して燃料を生成するように構成され、固体酸化物電池は、第2の動作モード中に、燃料を酸化して電気を生成するように構成される、請求項1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項24】
前記非多孔質酸化物層が、セリア、ジルコニア、酸化ビスマス、またはガレートランタンを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池。
【請求項25】
固体酸化物電池を製造する方法であって、以下を含む方法:
(a)1つ以上の第2の多孔質層を形成するための1つ以上の第1の前駆体を提供すること、
(b)1つ以上の第1の前駆体上に非多孔質酸化物層を形成するための1つ以上の第2の前駆体を提供すること、
(c)第1の閾値以上の温度で第1および第2の前駆体を焼結して、非多孔質酸化物層の第2の側の上に1つ以上の第2の多孔質層を形成すること、
(d)1つ以上の第1の多孔質層を形成するための1つ以上の第3の前駆体を、第2の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第1の側の上に提供すること、
(e)第1の閾値よりも低い温度で1つ以上の第3の前駆体を焼結して、非多孔質酸化物層の第1の側面上に1つ以上の第1の多孔質層を形成すること、
非多孔質酸化物層は、第1の多孔質層および第2の多孔質層の密度より大きい密度を有し、
非多孔質酸化物層は、第1の多孔質層および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率が、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%よりも大きく、
1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される。
【請求項26】
固体酸化物電池を製造する方法であって、以下を含む方法:
(a)1つ以上の第2の多孔質層を形成するための1つ以上の第1の前駆体を提供すること、
(b)1つ以上の第1の前駆体上に非多孔質酸化物層を形成するための1つ以上の第2の前駆体を提供すること、
(c)第1の閾値以上の温度で第1および第2の前駆体を焼結して、非多孔質酸化物層の第2の側の上に1つ以上の第2の多孔質層を形成すること、
(d)第2の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第1の側の上に多孔質機能層を形成するための1つ以上の第3の前駆体を提供すること、
(e)1つ以上の第3の前駆体の上に1つ以上の第1の多孔質層を形成するための1つ以上の第4の前駆体を提供すること、
(f)第1の閾値よりも低い温度で第3および第4の前駆体を焼結し、非多孔質酸化物層の第1の側上に前記非多孔質酸化物層を形成し、前記非多孔質酸化物層の対向する前記第1の多孔質層の側上に前記第1の多孔質層を形成すること、
非多孔質酸化物層は、第1の多孔質層および第2の多孔質層の密度より大きい密度を有し、
前記非多孔質酸化物層は、前記第1および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率が、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%よりも大きく、
前記多孔質層は、550℃以下の温度で前記非多孔質酸化物層および前記多孔質機能層のイオン移動数を少なくとも0.9に増加させる効果があり、
前記1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
前記1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される。
【請求項27】
前記第1の閾値は、約1000℃である、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
1つ以上の第3の前駆体の焼結または第3および第4の前駆体の焼結は、約950℃の温度で行われ、
第1および第2の前駆体の焼結は、約1450℃の温度で行われ、または
上記の両方で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、または混合イオン性電子伝導性酸化物を含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、ガレートのニッケルサーメット、モリブデン酸塩、モリブデン酸塩のニッケルサーメット、クロム酸塩、クロム酸塩のニッケルサーメット、バナジン酸塩、またはバナジン酸塩のニッケルサーメットから形成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、セリアまたは酸化ビスマスを含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、ドープされたセリア、立方晶系酸化ビスマス、菱面体晶系酸化ビスマス、またはドープされた菱面体晶系酸化ビスマスを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上の第1の多孔質層は、1つ以上のランタニド添加されたドープセリアを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記添加される1つ以上のランタニドが、プラセオジム、サマリウム、またはプラセオジムとサマリウムの両方である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の第1の多孔質層を形成した後、前記1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つに、1つ以上の電極触媒酸化物を浸透させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
浸透が、以下を含む、請求項35に記載の方法:
(f1)1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つに溶液中の1つ以上の電極触媒の用量を提供する工程;
(f2)前記用量を有する1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つを、真空に曝露すること、
(f3)溶液中の1つ以上の電極触媒の別の用量で(f1)および(f2)を繰り返すこと、および
(f4)(f3)の後、1つ以上の第1の多孔質層を約450℃の温度に曝して、前記溶液を蒸発または燃焼させること。
【請求項37】
前記1つ以上の電極触媒酸化物は、少なくともAおよびBによって形成される1つ以上の多相電極触媒を含み、前記1つ以上の多相電極触媒中のA:Bのモル比は、約1:1である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
Aが、第2族元素、第3族元素、またはランタニドであり、Bが、第4周期元素である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
Aは、プラセオジム(Pr)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、およびエルビウム(Er)からなる群から選択され、および/または
Bは、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および亜鉛(Zn)からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(d)の1つ以上の第3の前駆体を提供することが、
(d1)1種以上のランタニド酸化物を含むかまたは含まないセリアをインク中に混合すること、
(d2)孔形成剤をインク中に混合すること、
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記孔形成剤は、ポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、セリア、酸化ビスマス、または(i)1つ以上の電子伝導性および電気触媒酸化物を有する(i)セリアまたは酸化ビスマスから形成される複合材料を含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上の第1の多孔質層が、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、サマリアネオジムドープセリア(SNDC)、エルビア安定化酸化ビスマス(ESB)、ジスプロシウム安定化酸化ビスマス(DWSB)、イットリア安定化酸化ビスマス(YSB)、菱面体酸化ビスマス、ストロンチウムおよびマグネシウムドープランタンガレート(LSGM)、ストロンチウムサマリウムコバルト酸化物(SSC)、およびニッケル酸Ln
2NiO
4+δ(Lnはランタニド)からなる群から選択される材料を含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
(d)の前に、非多孔質酸化物層の第1の面上に多孔質機能層を形成するための1つ以上の第4の前駆体を提供することを含み、
(d)を提供することは、1つ以上の第4の前駆体上に1つ以上の第3の前駆体を提供することを含み、
(e)の焼結は、第1の多孔質層と非多孔質酸化物層との間にそれらのうちの1つと直接接触して配置された多孔質機能層として、1つ以上の第4の前駆体を形成する、請求項25記載の方法。
【請求項45】
前記多孔質機能層が、セリアまたは酸化ビスマスから本質的になる、請求項26および44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記多孔質機能層が、前記固体酸化物電池の開回路電圧を増加させるように構成される、請求項26および44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
第1の電極から第2の電極までの第1の方向に沿った多孔質機能層の厚さは、約20μm以下であり、および/または
第1の方向に沿った非多孔質酸化物層の厚さは、約20μm以下である、請求項26および44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記非多孔質酸化物層が、セリア、ジルコニア、酸化ビスマス、またはガレートランタンを含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
(a)を提供すること、(b)を提供すること、(d)を提供すること、および/または(e)を提供することが、テープキャスティング、ブレードコーティング、積層、スクリーン印刷、または前述のものの任意の組合せを含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
(a)が、以下を含む、請求項25から26のいずれか一項に記載の方法:
(a1)約60重量%の酸化ニッケル(NiO)および約40重量%のガドリニウムドープセリア(GDC)を第1のスラリーに混合すること、
(a2)第1のスラリーに孔形成剤を混合し、第1のスラリーは、第2の電極の多孔質支持層に対応する孔形成剤を有すること、
(a3)約48重量%のNiOおよび約52重量%のGDCを第2のスラリーに混合し、第2のスラリーは、第2の電極の多孔質機能層に対応すること。
【請求項51】
前記孔形成剤は、ポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項50に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年12月22日に出願された「低温固体酸化物燃料電池のための足場浸透陰極」と題された米国仮出願第63/265,920号、および2021年12月22日に出願された「固体酸化物電池のための多孔質セリア系機能層」と題された米国仮出願第63/265,921号の利益を主張するものであり、これらの出願の各々は、全体として本出願に組み込まれている。
【0002】
(連邦支援研究に関する表明)
本発明は、米国エネルギー省化石エネルギー局によって与えられたDEFED0031662、および米国エネルギー省先進研究プロジェクト局-エネルギー(DOE ARPA-E)によって与えられたDEAR0001345の下での米国政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般に、固体酸化物電気化学電池に関し、より詳細には、その低温性能を向上させるための多孔質層を有する固体酸化物電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0004】
固体酸化物電気化学電池(SOC)は、気候変動の影響を緩和するためのクリーンエネルギー研究の最前線にある。SOCは、燃料電池モード(例えば、固体酸化物燃料電池またはSOFC)で動作して、化学燃料から電気を生成するか、または電気分解モード(例えば、固体酸化物電解電池またはSOEC)で動作して、電気を使用して化学燃料を生成し、将来の使用のために貯蔵することができる。従来のSOCでは、高温(例えば、>800℃)は、酸素イオントランスポートプロセスおよび電極リアクションプロセスを熱的に活性化するために必要とされる。しかしながら、このような高温は、また、劣化の問題をもたらす。したがって、SOCの運転温度を下げることは、採用および商業化を進めるのに役立つ可能性がある。動作温度を低下させるための課題の1つは、温度の低下に伴って電解質のオーム損失が増加し、それによってSOC性能が低下することである。加えて、陰極での酸素還元反応(ORR)の緩慢な動力学は、低温(例えば、<650℃)での性能を制限し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の固体酸化物電解質の中で、ドープされたセリア(例えば、Ce1-xGdxO2-δおよびCe1-xSmxO2-δ)は、それらのより高い酸素イオン伝導性のために、低温用途にとって魅力的な選択肢であり得る。しかし、セリウムは、還元条件下でCe4+/Ce3+酸化還元対を受けるので、セリア系電解質は、イオン伝導体と電子伝導体が混合されている。これにより、SOCの開回路電圧(OCV)が理論値よりも低くなり、デバイスの効率が低下する可能性がある。加えて、電気が化学物質に変換されるSOECの場合、電解質中の電子伝導は、酸素イオン移動数を低下させることができ、それによって、セリア系電解質を、より低いファラデー効率のために、電解モードで機能させることを非実用的にする。
【0006】
開示される主題の実施形態は、とりわけ、上述の問題および欠点のうちの1つ以上に対処し得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示される主題の実施形態は、非多孔質酸化物層(本明細書では、緻密電解質層、またはDELとも呼ばれる)の酸素側に1つ以上の多孔質層を適切に構成することによって、高性能固体酸化物電池を提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の多孔質層が例えば、1つ以上の電極触媒による浸透によって、電極(例えば、SOFCモードの陰極)として機能することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の多孔質層の焼結およびその後の電気触媒浸透は、第1の閾値(例えば、1000℃)未満の温度で実施され、最小限の、または少なくとも低減された面積比抵抗(ASR)を達成する。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、電極触媒浸透および/またはSOCのその後の動作は、第2の閾値(例えば、650℃)未満の温度で実施されて、電極触媒のナノスケールサイズ(例えば、平均粒径≦200nm)を維持し、それによって、電気化学反応を促進する電子的接続ネットワークを提供しながら、高速酸素輸送を可能にする。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つ以上の多孔質層は、非多孔質酸化物層と空気側電極との間に配置された多孔質機能層(PFL)である。いくつかの実施形態では、PFLは、非多孔質酸化物層のより高い酸素分圧(pO2)への曝露を増加させることができ、それによって、非多孔質酸化物層の電子伝導性を制限し、その中の任意の漏れ電流を軽減する。PFLを設けることにより、有効イオン移動数to2-を増加させることができ、非多孔質酸化物層の効率をさらに改善し、および/またはより薄い非多孔質酸化物層を使用することができる。いくつかの実施形態では、PFLを有するSOCは、より高い開回路電圧(例えば、500~550℃の範囲の温度で少なくとも0.90V)および/またはより低いASRを示すことができる。
【0009】
1つ以上の実施形態では、固体酸化物電池は、非多孔質酸化物層、1つ以上の第1の多孔質層、および1つ以上の第2の多孔質層を含むことができる。非多孔質酸化物層は、酸素イオンを伝導し、固体電解質として動作するように構成することができる。1つ以上の第1の多孔質層は、非多孔質酸化物層の第1の面上に配置され得る。1つ以上の第2の多孔質層は、第1の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第2の側の上に配置することができる。非多孔質酸化物層は、第1および第2の多孔質層のそれぞれの密度よりも大きい密度を有することができる。非多孔質酸化物層の電子伝導率は、非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり得る。第1および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率は、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%より大きくてもよい。1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され得、1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成され得る。
【0010】
1つ以上の実施形態では、固体酸化物電池は、非多孔質酸化物層、多孔質機能層、1つ以上の第1の多孔質層、および1つ以上の第2の多孔質層を含むことができる。非多孔質酸化物層は、酸素イオンを伝導し、固体電解質として動作するように構成することができる。多孔質機能層は、非多孔質酸化物層の第1の面の上に配置することができる。1つ以上の第1の多孔質層は、多孔質機能層の非多孔質酸化物層とは反対側の面の上に配置することができる。1つ以上の第2の多孔質層は、第1の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第2の側の上に配置することができる。非多孔質酸化物層は、多孔質機能層の密度よりも大きい密度を有することができる。非多孔質酸化物層の電子伝導率は、非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり得る。多孔質機能層は、非多孔質酸化物層および多孔質機能層のイオン移動回数を550℃以下で0.9以上にするのに効果的である。1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され得、1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成され得る。
【0011】
1つ以上の実施形態では、固体酸化物電池を製造する方法は、1つ以上の第2の多孔質層を形成するための1つ以上の第1の前駆体を提供することを含むことができる。本方法は、1つ以上の第1の前駆体上に非多孔質酸化物層を形成するための1つ以上の第2の前駆体を提供することをさらに含むことができる。本方法は、また、第1および第2の前駆体を第1の閾値以上の温度で焼結して、1つ以上の第2の多孔質層を非多孔質酸化物層の第2の面上に形成することを含むことができる。この方法は、第2の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第1の側の上に1つ以上の第1の多孔質層を形成するための1つ以上の第3の前駆体を提供することをさらに含むことができる。本方法は、また、1つ以上の第3の前駆体を第1の閾値未満の温度で焼結して、1つ以上の第1の多孔質層を非多孔質酸化物層の第1の側の上に形成することを含むことができる。非多孔質酸化物層は、第1および第2の多孔質層の密度よりも大きい密度を有することができる。第1および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率は、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%より大きくてもよい。1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され得、1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成され得る。
【0012】
1つ以上の実施形態では、固体酸化物電池を製造する方法は、1つ以上の第2の多孔質層を形成するための1つ以上の第1の前駆体を提供することを含むことができる。本方法は、1つ以上の第1の前駆体上に非多孔質酸化物層を形成するための1つ以上の第2の前駆体を提供することをさらに含むことができる。本方法は、また、第1および第2の前駆体を第1の閾値以上の温度で焼結して、1つ以上の第2の多孔質層を非多孔質酸化物層の第2の面上に形成することを含むことができる。この方法は、第2の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第1の側の上に多孔質機能層を形成するための1つ以上の第3の前駆体を提供することをさらに含むことができる。本方法は、また、1つ以上の第3の前駆体の上に1つ以上の第1の多孔質層を形成するための1つ以上の第4の前駆体を提供することを含むことができる。本方法は、第1の閾値未満の温度で第3および第4の前駆体を焼結することをさらに含むことができ、それにより、多孔質機能層を非多孔質酸化物層の第1の側の上に形成し、多孔質機能層の非多孔質酸化物層とは反対側の側の上に1つ以上の第1の多孔質層を形成する。非多孔質酸化物層は、第1および第2の多孔質層の密度よりも大きい密度を有することができる。第1および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率は、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%より大きくてもよい。多孔質機能層は、非多孔質酸化物層および多孔質機能層のイオン移動数を550℃以下で0.9以上にするのに効果的である。1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され得、1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成され得る。
【0013】
本開示の様々な革新のいずれも、組合せて、または別々に使用することができる。この概要は、以下の詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡略化された形態で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図するものでもない。開示された技術の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下、実施形態について、必ずしも一定の縮尺で描かれていない添付の図面を参照して説明する。適用可能な場合、いくつかの要素は、基礎となる特徴の例示および説明を助けるために、簡略化されるか、またはそうでなければ図示されない場合がある。図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【
図1A】
図1Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、多孔質層の浸透によって形成された電極を有する固体酸化物電気化学電池(SOC)のための層アセンブリの簡略化された断面を示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、浸透多孔質層を有するSOCの例示的な構成を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、従来のSOCにおける酸素含有ガス複合電極の潜在的酸素輸送機構を示す。
【
図1D】
図1Dは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、浸透多孔質層によって形成される電極のための潜在的酸素輸送機構を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、多孔質機能層を有する固体酸化物電気化学電池(SOC)のための層アセンブリの簡略化された断面を示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、多孔質機能層を有するSOCの例示的な構成、ならびに作製された多孔質機能層微細構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図示する。
【
図2C】
図2Cは、多孔質機能層を有するSOCおよび有さないSOCについての、理論的な電子電荷キャリア密度対断面位置を示す。
【
図2D】
図2Dは、合計導電率(t
O2-)に対するイオン導電率の理論的比(多孔質機能層を有するSOCおよび有さないSOCの断面位置に対する)を示す。
【
図3A-3B】
図3A~
図3Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、それぞれ燃料電池モードおよび電解槽モードで動作する多孔質層を有するSOCの簡略化された概略図である。
【
図3C】
図3Cは、開示される技術が実装され得るコンピューティング環境の一般化された例を描写する。
【
図4】
図4は、開示される主題の1つ以上の実施形態による、多孔質層を有するSOCを製造するための簡略化された方法を示すプロセスフロー図である。
【
図3A】
図5Aは、多孔質層を焼結するための種々の温度のためのPr-Sr-Co(PSC)浸透多孔質層を有する、製作された対称電池の550℃での開路電圧でのナイキストプロットである。
【
図5B】
図5Bは、多孔質層の焼結のための温度(X軸)の関数としての、異なる動作温度で浸透多孔質層によって形成された陰極の面積比抵抗(ASR)のグラフである。
【
図5C】
図5Cは、従来のコンポジット陰極(SSC-GDC)および浸透多孔質層陰極(PSC-浸透GDC)の550℃での緩和時間(DRT)解析の分布を示す。
【
図6A-6B】
図6A~6Bは、550℃における97%H
2/3%H
2O中の空気中および陽極中の浸透多孔質層陰極を有するSOCの多孔質層および電気触媒装填物の種々の成分についての電流-電圧特性および電気化学インピーダンススペクトロスコピー(EIS)スペクトルをそれぞれ示す。
【
図6C】
図6Cは、多孔質層陰極を有するSOCのオーム抵抗対ランタニド負荷のグラフである。
【
図6D】
図6Dは、PSC負荷に基づいて浸透した多孔質5重量%Pr-GDC層陰極を有するSOCのASRおよびピーク出力密度(PPD)のグラフである。
【
図7A-7B】
図7A~7Bは、PSC浸透Pr-Sm-GDC多孔質層、Ni-GDC陽極、および500℃および550℃でのH
2における様々なGDC電解質厚さによって形成された陰極を有するSOCについて、それぞれ電流-電圧特性およびE-ISスペクトルを示す。
【
図7C-7D】
図7C~7Dは、550℃で500時間エージングした後の、PSC浸透Pr-Sm-GDC多孔質層、Ni-GDC陽極、および厚さ20μmのGDC電解質を有するSOCの、それぞれ、全断面および陰極の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図7E】
図7Eは、PSC浸透Pr-Sm-GDC多孔質層、Ni-GDC陽極、および550℃の厚さ20μmのGDC電解質を有するSOCの長期定電流(0.2A/cm
2)安定性および誘導PPDを示す。
【
図7F】
図7Fは、550℃での500時間のエージング後の、PSC浸透Pr-Sm-GDC多孔質層、Ni-GDC陽極、および厚さ20μmのGDC電解質を有するSOCの経時的な全オームおよびデコンボリューションされた電極ASRを示す。
【
図8A】
図8Aは、10重量%PMMAを有するPSC浸透5Pr-5Sm-90GDC、Ni-GDC陽極、および陰極側にpO
2=1atmを有する10μm厚のGDC電解質を有するSOCについての、様々な動作温度についてのOCVでのEISスペクトルを示す。
【
図8B】
図8Bは、10重量%PMMA、Ni-GDC陽極、および10μm厚のGDC電解質を有するPSC浸透5Pr-5Sm-90GDCを有するSOCについて、それぞれ、100標準立方センチメートル/分(sccm)のO
2および100sccmのH
2は、陰極および陽極に流れる、様々な温度にわたる開回路電圧(OCV)でのデコンボリューションされたインピーダンス値を示す。
【
図8C】
図8Cは、異なる動作温度で、10重量%PMMA、Ni-GDC陽極、および10μm厚のGDC電解質を有するPSC浸透5Pr-5Sm-90GDCを有するSOCの電流-電圧特性を示す。
【
図8D】
図8Dは、0.75Vでの定電位エージングおよび600℃での10重量%PMMA、Ni-GDC陽極、および10μm厚のGDC電解質を有するPSC浸透5Pr-5Sm-90GDCを用いた開路電圧(OCV)の周期的計測におけるSOCの電流反応を示す。
【
図9A】
図9Aは、対称電池における10重量%のPMMAを有する5Pr-5Sm-90GDC多孔質層のPr-Sr-Co浸透(Pr-X-Co)におけるSrの置換のための非オームASRのアレニウスプロット、ならびに参照のための対称電池におけるLSCF-GDC複合陰極である。
【
図9B】
図9Bは、対称電池内に10重量%のPMMAを有する5Pr-5Sm-90GDC多孔質層のPr-Sr-Co浸透(Pr-Sr-X)におけるCoの置換のための非オームASRのアレニウスプロット、ならびに参照のためのLSCF-GDC複合陰極である。
【
図9C】
図9Cは、対称電池中の10重量%PMMAを有する5Pr-5Sm-90GDC多孔質層のPr-Sr-Co浸透(Pr-X-Co)におけるSrの置換のためのASRエージングを示す。
【
図9D】
図9Dは、対称電池中の10重量%PMMAを有する5Pr-5Sm-90GDC多孔質層のPr-Sr-Co浸透(Pr-Sr-X)におけるCoの置換のためのASRエージングを示す。
【
図10A-10B】
図10A~10Bは、5Pr-5Sm-90GDC多孔質膜の陰極、Ni-GDC陽極、および20μm厚のGDC電解質を有するSOCの550℃および500℃における電流-電圧特性を示す図である。
【
図10C-10D】
図10C~10Dは、様々な多孔度を有する5Pr-5Sm-90GDC多孔質層の陰極、Ni-GDC陽極、および20μm厚のGDC電解質を有するSOCについて、それぞれ550℃および500℃でのEISスペクトルを示す。
【
図10E】
図10Eは、5Pr-5Sm-90GDC多孔質層の陰極、Ni-GDC陽極、および厚さ20μmのGDC電解質を有するSOCについて計算された空隙率の関数としてのPPDを示す。
【
図10F-10G】
図10F~10Gは、5Pr-5Sm-90GDC多孔質層の陰極、Ni-GDC陽極、および20μm厚のGDC電解質を有するSOCについて計算された空隙率に応じて、500℃および550℃でのデコンボリューションされたASRをそれぞれ示す。
【
図11A】
図11Aは、製造されたSOCにおける多孔質機能層の断面のSEM画像である。
【
図11B】
図11Bは、500℃および550℃での多孔質機能層を有するSOCおよび有さないSOCの電流-電圧特徴を示す。
【
図11D】
図11Dは、500℃での多孔質官能基を有するSOCおよび有さないSOCのE-ISスペクトルを示す。
【
図12A】
図12Aは、10μmの多孔質機能層を有する、および有さない200μmのGDC層についての、動作温度に対するイオン移動数を示す。
【
図12B】
図12Bは、20μmのGDC層および異なる厚さの多孔質機能層(PFL)を有するSOCについて、20または200μmの高密度GDC層を有し、PFLを有さないSOCと比較した、動作温度に対する開回路電圧(OCV)を示し、様々な電解質イオン移動数についてのOCVへのアプローチを示す。
【
図12C】
図12Cは、10μmの多孔質機能層(0.5重量%のPrO
2-xを有する)と対になった様々な厚さのGDC電解質層について、500℃および600℃でのオーム耐性およびOCVを示す。
【
図12D】
図12Dは、10μmの高密度電解質層上の10μmの多孔質機能層における異なるPrドーピングレベルについてのOCV対温度、および様々な電解質イオン移動数についてそれぞれがどのようにOCVに近づくかを示す。
【
図13A】
図13Aは、500℃で変化するPrドープレベルを有する多孔質機能層を有するSSC-GDC陰極対称電池のナイキストプロットである。
【
図13B】
図13Bは、多孔質機能層のみを有する対称電池のアレニウス挙動を示す。
【
図13C】
図13Cは、多孔質機能層を有さないSSC-GDC対称電池および有さないSSC-GDC対称電池のアレニウス挙動を示す。
【
図13D】
図13Dは、500℃で変化するPrドープレベルを有する多孔質機能層を有するSSC-GDC陰極対称電池のDRT解析を示す。
【
図13E】
図13Eは、SSC-GDC陰極層を500℃で多孔質機能層の有無に関わらず比較する酸素分圧(pO
2)依存挙動を示す。
【
図13F】
図13Fは、多孔質機能層を有さないおよび有するSSC-GDC陰極層のDRT分析を示す。
【
図14A-14B】
図14A~14Bは、500℃における、Pr表面改質(SM)SSC-GDC陰極、多孔質機能層、GDC電解質層、およびNi-GDC陽極のSOFC、ならびにSSC-GDC陰極、多孔質機能層、GDC電解質層、およびNi-GDC陽極のSOFCの電流-電圧特性およびEISスペクトルをそれぞれ示す。
【
図14C】
図14Cは、500℃でのPr表面改質(SM)SSC-GDC陰極、多孔質機能層、GDC電解質層、およびNi-GDC陽極のSOFC、ならびに550℃でのSSC-GDC陰極、多孔質機能層、GDC電解質層、およびNi-GDC陽極のSOFCについての定電流およびPPDのエージング結果を示す。
【
図14D】
図14Dは、500℃でのPr表面改質(SM)SSC-GDC陰極、多孔質機能層、GDC電解質層、およびNi-GDC陽極のSOFCについての経時的なASR変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般的な考慮事項
本明細書の目的のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規な特徴が本明細書に記載される。開示された方法およびシステムは、決して限定的であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、ならびに互いの様々な組合せおよび下位組合せで、開示される様々な実施形態のすべての新規かつ非自明な特徴および態様を対象とする。方法およびシステムは、任意の特定の態様、特徴、またはそれらの組合せに限定されず、開示される実施形態は、任意の1つ以上の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。任意の実施形態または実施例からの技術は、他の実施形態または実施例のうちの任意の1つ以上において説明される技術と組み合わせることができる。開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は、例示的なものにすぎず、開示された技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識されたい。
【0016】
開示される方法のうちのいくつかの動作は、便利な提示のために特定の順番で説明されるが、特定の順序付けが、以下で説明される特定の言語によって必要とされない限り、この説明の方式は、並べ替えを包含することを理解されたい。例えば、連続して説明される動作は、場合によっては、並べ替えられるか、または同時に実行され得る。さらに、簡略化のために、添付の図面は、開示された方法が他の方法と併せて使用され得る様々な方法を示していない場合がある。さらに、説明は、開示された方法を説明するために、「提供する」または「達成する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の操作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて異なり得、当業者によって容易に認識可能である。
【0017】
数値範囲の開示は、特に断りのない限り、端点を含む範囲内の各離散点を指すものと理解されるべきである。別段の指示がない限り、本明細書または特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量、百分率、温度、時間などを表す全ての数は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、別段の暗示的または明示的な指示がない限り、または文脈がより明確な構成を有すると当業者によって適切に理解されない限り、記載される数値パラメータは、当業者に知られているように、求められる所望の特性および/または標準試験条件/方法下での検出の限界に依存し得る近似値である。議論された先行技術から実施形態を直接的かつ明示的に区別する場合、実施形態番号は、「約」という単語が列挙されない限り、近似ではない。「実質的に」、「およそ」、「約」、または同様の言語が特定の値とみあて明示的に使用される場合は常に、明示的に別段の定めがない限り、その値の10%までの変動が意図される。
【0018】
方向および他の相対参照は、本明細書における図面および原理の説明を容易にするために使用され得るが、限定することを意図されない。例えば、「内側」、「外側」、「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「内部」、「外部」、「左」、「右」、「前」、「後」、「後方」などの特定の用語が使用され得る。このような用語は、適用可能な場合、特に例示された実施形態に関して、相対的な関係を扱うときの説明のいくつかの明瞭さを提供するために使用される。しかしながら、このような用語は、絶対的な関係、位置、および/または向きを暗示することを意図するものではない。例えば、物体に関して、「上」部分は、単に物体を裏返すことによって「下」部分になり得る。それにもかかわらず、それは、依然として同じ部分であり、物体は、同じままである。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味し、また、単数形「a」または「an」または「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。用語「または」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、言及された代替要素の単一の要素または2つ以上の要素の組合せを指す。
【0020】
本明細書に記載される様々な構成要素、パラメータ、動作条件などの代替があるが、それらの代替が必ずしも同等であり、および/または等しく良好に機能することを意味しない。また、特に明記しない限り、選択肢が好ましい順序で列挙されていることも意味しない。特に明記しない限り、以下に定義する基のいずれも、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0021】
別段の説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本開示の主題の特徴は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0022】
導入部
本明細書では、向上した性能のSOCおよびその製造方法が開示される。いくつかの実施形態では、多相電気触媒が固体電解質の空気側(例えば、酸素側)の多孔質層に浸透させて、空気側電極として機能させることができる。製造プロセスの適切な制御によって、性能が向上したSOCを達成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、空気側多孔質層(SOFCの陰極などの空気側電極として構成される)は、第1の閾値温度(例えば、1000℃)未満および/または第2の閾値温度(例えば、900℃)より高い温度で焼結されて、最低限のASRを達成する。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、空気側多孔質層は、1つ以上の電極触媒を浸透させることができ、それらの焼成および動作温度は、650℃未満に維持され、それによって、高活性および耐久性を維持するナノスケールサイズを維持する。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、空気側多孔質層の製造中に1つ以上の添加剤(例えば、10重量%以下の合計装填量でのランタニド)を導入して(例えば、焼結前に前駆体と混合して)、電子伝導性を増加させ、オーム損失を減少させ、および/またはPPDを増加させることができる。
【0023】
例えば、
図1A~
図1Bは、少なくとも1つの第1の多孔質層112(例えば、空気側電極として機能する)、非多孔質酸化物層102(本明細書では、緻密電解質層またはDELとも呼ばれる)、および1つ以上の第2の多孔質層104(例えば、燃料側電極として機能する)を有するSOC110を示す。第1の多孔質層112は、焼結層アセンブリ100の多孔質足場106に1つ以上の電極触媒酸化物108(例えば、多相電極触媒)を浸透させることによって、電極として機能するように形成することができる。いくつかの実施形態では、第1の多孔質層112は、20μm以下、例えば、10~20μmの範囲内の厚さを有することができる。
図1Aの図示の例では、一対の第2の多孔質層、すなわち支持層104b(例えば、陽極支持層)および機能層104a(例えば、陽極機能層)が図示されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の第2の多孔質層104a、104bの合計厚は、少なくとも300μmであり得る。
図1Aには、4つの層が示されているが、1つ以上の考えられる実施形態によれば、より少ない層または追加の層も可能である。
【0024】
非多孔質酸化物層102は、酸素イオンを通すが、そこを通る電子の実質的な伝導を伴わないことによって、固体電解質として動作することができる。例えば、非多孔質酸化物層の電子伝導率は、非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり得る。いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層は、第1および第2の多孔質層の各々の密度よりも大きい密度を有することができる。代替的にまたは追加的に、第1および第2の多孔質層の各々は、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%を超える電子伝導率を有することができる。例えば、第1および第2の多孔質層のそれぞれは、高いイオン伝導性および高い電子伝導性の両方を有することができる。
【0025】
図1C~
図1Dは、複合電極および電極触媒浸透電極のための2段階酸素輸送機構をそれぞれ示す。
図1Cの複合電極構成120では、酸素126の解離吸着128が第1の構成要素122(例えば、SSC)の表面上で生じるが、第2の構成要素124上の活性部位130(例えば、GDC)までの長い輸送距離を必要とする。長い輸送距離は、活性部位の数を制限することができる。対照的に、
図1Dの浸透多孔質層構成140では、ナノスケール電気触媒142(例えば、PSC)は、酸素表面交換のためのより多数の活性部位144、ならびにナノスケール電気触媒142と近くの足場124との間のより短い拡散長を提供し、関連するエネルギー損失の低減をもたらす。
【0026】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の多孔質層112(例えば、多孔質足場106)は、セリアまたは酸化ビスマスで形成することができる。例えば、第1多孔質層112は、ドープされたセリア、立方晶系酸化ビスマス、菱面体晶系酸化ビスマス、またはドープされた菱面体晶系酸化ビスマスから形成することができる。いくつかの実施形態では、第1の多孔質層112の材料組成は、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、サマリアネオジムドープセリア(SNDC)、エルビア安定化酸化ビスマス(ESB)、ジスプロシウムタングステン安定化酸化ビスマス(DWSB)、またはイットリア安定化酸化ビスマス(YSB)のうちの1つである。あるいは、いくつかの実施形態では、第1の多孔質層112は、「安定な高伝導性酸化物電解質」と題され、2020年1月30日に公開された米国特許出願公開第2020/0036028号明細書に開示された菱面体晶系酸化ビスマス材料の1つを含み、これらの材料は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、菱面体酸化ビスマスは、LaY-Bi2O3、LaSm-Bi2O3、SrY-Bi2O3、Nd-Bi2O3、LaEr-Bi2O3、NdDy-Bi2O3、Nd-Bi2O3、Sm-Bi2O3、NdSm-Bi2O3、NdGd-Bi2O3、およびCaGd-Bi2O3からなる群から選択することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の多孔質層112(例えば、多孔質足場106)は、1つ以上のランタニドが添加されたドープセリアから形成され得る。例えば、添加される1つ以上のランタニドは、プラセオジム、サマリウム、またはプラセオジムとサマリウムの両方であり得る。いくつかの実施形態において、ランタニド添加物の総量は、約0重量%~約20重量%、例えば、約0.5重量%~約10重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、各ランタニド付加は、約5重量%であり得る。いくつかの実施形態では、ランタニド添加量が全金属含有量の約10重量%以下であり得、その場合、セリアの全量は、少なくとも90重量%であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の多孔質層112(例えば、多孔質足場106)は、(i)1つ以上の電子伝導性および電気触媒酸化物を有する、(i)セリアまたは酸化ビスマスから形成される複合材料であり得る。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の多孔質層112(例えば、多孔質足場106)は、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンシア安定化ジルコニア(SSZ)、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、サマリアネオジムドープセリア(SNDC)、エルビア安定化酸化ビスマス(ESB)、ジスプロシウムタングステン安定化酸化ビスマス(DWSB)、イットリア安定化酸化ビスマス(YSB)、菱面体酸化ビスマス、ストロンチウムおよびマグネシウムドープランタンガレート(LSGM)、ストロンチウムサマリウムコバルト鉄酸化物(SSC)、バリウムストロンチウムコバルト鉄酸化物(BSCF)、サマリウムストロンチウムコバルト鉄酸化物(SSCF)、ランタンストロンチウムマンガン酸塩(LSM)、およびLn2NiO4+δニッケル酸(式中、Lnは、ランタニド)からなる群から選ばれた1つ以上の材料である。
【0029】
いくつかの実施形態では、多孔質足場106の浸透のための電極触媒108が1つ以上の電極触媒酸化物を含むことができる。例えば、1つ以上の電極触媒酸化物は、1つ以上のMOxを含むことができ、ここで、Mは、Pr、Ca、Sr、Y、La、Nd、Sm、Dy、Er、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnなどのカチオンであるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、電極触媒108の多孔質足場106への浸透が活性領域の約60μmol/cm以下、例えば、約9μmol/cm2~約58μmol/cmの2の充填量を提供することができる。代替的にまたは追加的に、電解触媒の溶液ベースの装填は、60μL/cm2以下、例えば、約19μL/cm~約58μL/cmであり得る。装填は、電極触媒の組成ならびに多孔質足場の厚さに依存することができ、したがって、いくつかの実施形態では、他の装填範囲が適用可能であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、電極触媒は、少なくともAおよびBを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極触媒中のA:Bのモル比は、約1:1であることができる。いくつかの実施形態において、Aは、第2族元素、第3族元素、またはランタニドであり得る。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態において、Aは、Pr、Ca、Sr、Y、La、Nd、Sm、Dy、およびErからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、Bは、期間4の要素であり得る。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、Bは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnからなる群から選択され得る。
【0031】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、電極触媒は、少なくともPr、A、およびBを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極触媒中のPr:A:Bのモル比は、約1:1:2であることができる。いくつかの実施形態では、Aは、第2族元素、第3族元素、またはPr以外のランタニドであり得る。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、Aは、Ca、Sr、Y、La、Nd、Sm、Dy、およびErからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、Bは、期間4の要素であり得る。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、Bは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnからなる群から選択され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層102は、セリア、ジルコニア、酸化ビスマス、またはガレートランタンから形成することができる。いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層102は、1つ以上のドーパントおよび/または1つ以上の安定剤を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層102に使用することができる材料は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、サマリアネオジムドープセリア(SNDC)、エルビア安定化酸化ビスマス(ESB)、イットリア安定化酸化ビスマス(YSB)、菱面体酸化ビスマス、ストロンチウムおよびマグネシウムドープランタンガレート(LSGM)、ならびにそれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層102が多孔質足場106と同じ材料、例えば、GDCで形成される。
【0033】
いくつかの実施形態では、1つ以上の第2の多孔質層104(例えば、支持層104bおよび/または機能層104a)は、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、またはセリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、ガレートのニッケルサーメット、モリブデート、モリブデートのニッケルサーメット、クロメート、クロメートのニッケルサーメット、バナデート、またはバナデートのニッケルサーメットなどであるが、これらに限定されない、混合イオン性電子伝導性酸化物(MIEC)から形成することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第2の多孔質層104は、「固体酸化物燃料電池のためのクロメート系セラミック陽極材料」と題され、2022年1月18日に公開された米国特許第11,228,039号明細書に開示されたクロメート系酸化物材料のうちの1つを含むことができ、これらの材料は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、クロメート系酸化物は、Y0.7Ca0.3Cr0.8Cu0.2O3?δ、Nd0.7Ca0.3Cr0.8Cu0.2O3?δ、(Y0.5Nd0.5)0.7Ca0.3Cr0.8Cu0.2O3?δ、Pr0.7Ca0.3Cr0.8Cu0.2O3?δ、およびLa0.6Sr0.4Cr0.9Mo0.1O3?δからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第2の多孔質層104が「固体酸化物燃料電池のための代替陽極材料」と題され、2021年3月2日に公開された米国特許第10,938,052号明細書に開示されたストロンチウム鉄コバルトモリブデン酸化物(SFCM)材料のうちの1つを含むことができ、その材料は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、SFCM物質は、SrM1
xM2
((1?x)/2)Mo((1?x)/2)O3±δの公式を有することができ、ここで、M1およびM2は、様々な異なる遷移金属であり、Moではなく、xは、約0.1~0.5であり、δは、約0~1.5である。例えば、いくつかの実施形態において、M1は、Feであり、M2は、Coである。
【0034】
いくつかの実施形態では、空気側電極と固体電解質との間に多孔質機能層(PFL)を設けることによって、性能の向上したSOCを得ることができる。いくつかの実施形態では、PFLが非多孔質酸化物層のより高い酸素分圧(pO2)への曝露を増加させることができ、それによって、非多孔質酸化物層の電子伝導性を制限し、その中の任意の漏れ電流を軽減し、および/または有効イオン移動数tO2-を増加させることができる。
【0035】
例えば、
図2A~
図2Bは、少なくとも1つの第1の多孔質層204(例えば、空気側電極として機能する)、PFL206、非多孔質酸化物層202(DELとも呼ばれる)、および1つ以上の第2の多孔質層104(例えば、燃料側電極として機能する)を有するSOC200を示す。いくつかの実施形態では、PFL206が非多孔質酸化物層202と第1の多孔質層204との間に配置され、それらと直接接触する。いくつかの実施形態では、PFL206が20μm以下、例えば、10~20μmの範囲内の厚さを有することができる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層202は、20μm以下、例えば、10~20μmの範囲内の厚さを有することができる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、PFL206と非多孔質酸化物層202とを合わせた厚さは、40μm以下であり得る。
図2Aの図示の例では、一対の第2の多孔質層、すなわち支持層104b(例えば、陽極支持層)および機能層104a(例えば、陽極機能層)が図示されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の第2の多孔質層104a、104bの総厚は、少なくとも300μmであり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の第2の多孔質層104のための材料組成が
図1A~
図1CのSOC110に関して上述したものと同様であり得る。
図2Aには、5つの層が示されているが、1つ以上の考えられる実施形態によれば、より少ない層または追加の層も可能である。
【0036】
図1Aの非多孔質酸化物層102と同様に、SOC200の非多孔質酸化物層202は、それを通して酸素イオンを伝導するが、それを通して電子を実質的に伝導することなく、固体電解質として動作することができる。例えば、非多孔質酸化物層202の電子伝導率は、非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の多孔質層および第2の多孔質層のそれぞれは、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%を超える電子伝導率を有することができる。例えば、第1多孔質層204および第2多孔質層104は、高いイオン伝導性および高い電子伝導性を有することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層202がPFL206の密度よりも大きい密度を有することができる。いくつかの実施形態では、PFL206が非多孔質酸化物層202およびPFL206のイオン移動数を、例えば、550℃以下の温度で少なくとも0.9まで増大させるのに効果的であり得る。いくつかの実施形態では、PFL206がSOC200の開回路電圧(OCV)を増加させ、および/またはSOC200のインピーダンスを減少させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、PFL206を組み込んだSOC200が500~550℃で少なくとも0.90VのOCVを有することができる。
【0038】
Ce(Gd)O2-xでは、ドープされたセリアのような物質の場合、支配的な欠点は、酸素濃度xによって制御される。これらの欠陥は、電子伝導性およびイオン伝導性を決定する主な電荷担体である。還元条件下では、Ce4+のCe3+への還元が電子伝導性を著しく増大させる。固体化学の観点から、pO2が減少することにつれて、電子電荷キャリア濃度nは、xとともに増加し、正に帯電した酸素空孔の形成に適応する。対照的に、高いpO2レジームでは、高い酸素化学ポテンシャルが低いレベルのxを維持し、したがって、ドープされたセリアの電子伝導性を制限する。
【0039】
図2C~2Dは、PFL206を有するSOC200およびPFLを有さないSOC210についての距離に対する理論的な電子電荷キャリア密度およびt
O2-のそれぞれを示し、それぞれの曲線下の面積は、電解質中の相対的な電子電荷キャリア濃度および平均移動数をそれぞれ表す。SOC200の場合、酸素分子は、細孔を通って自由に拡散することができ、PFLの均一なpO
2(したがって化学量論)を達成することができる。したがって、PFL全体は、同じ環境(例えば、pO
2=0.21atm)に曝露されるにつれて、一定の欠陥濃度を有する。言い換えると、PFLの多孔質設計は、PFL-DEL界面における酸素化学ポテンシャルをピン止めして、酸素ガス分圧と平衡させ、それによって還元(例えば、Ce還元)を制限する。
【0040】
対照的に、非多孔質酸化物層102(DEL)のみを有する場合、酸素ガス環境は、陰極/電解質界面にのみ広がる。PFL206を有するSOC200の場合、陰極ガス環境の酸素化学ポテンシャル境界条件は、PFLの多孔性の性質のために、陰極/電解質界面からDEL/PFL界面に拡張することができる。この変化は、
図2Cに示されるように、電子電荷キャリア密度が著しく低い拡張電解領域を提供する。その結果、
図2(d)に示すように、実効値t
O2-が大きくなる。イオン/電子伝導率比のこの向上は、非多孔質酸化物層(例えば、セリア系電解質)の効率を著しく改善することができる。さらに、PFLは、その構造全体にわたって陰極pO
2を拡張するので、高密度電解質の低pO
2側にPrを有するというイオン伝導性に対する負の影響無しに、この構造において高濃度t
O2-のPrドープセリアを利用する機会を提供することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層202がセリアまたは酸化ビスマスで形成することができる。いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層202が1つ以上のドーパントおよび/または1つ以上の安定剤を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層202に使用することができる材料がGDC、サマリアドープセリアSDC、サマリアネオジムドープセリアSNDC、エルビア安定化酸化ビスマスESB、イットリア安定化酸化ビスマスYSB、菱面体系酸化ビスマス、およびこれらの組合せを含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非多孔質酸化物層202がPFL206と同じ材料、例えばGDCで形成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の多孔質層204は、(i)セリアまたは酸化ビスマスと、(ii)1つ以上の電子伝導性および電気触媒酸化物とから形成される複合材料であり得る。いくつかの実施形態では、第1の多孔質層204のための材料は、(1)LSCF、BSCF、SSCF、SSC、およびLSMからなる第1の群から選択される材料と、(2)YSZ、SSZ、GDC、SDC、SNCD、ESB、DWSB、YSB、菱面体晶酸化ビスマス、およびLSGMからなる第2の群から選択される材料とを有する複合体であり得る。例えば、第1の多孔質層204は、SSC-GDCの複合体であってもよい。あるいはまたはさらに、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の多孔質層204は、LSC、LSCF、YSZ、SSZ、GDC、SDC、SNDC、ESB、DWSB、YSB、菱面体酸化ビスマス、LSGM、SSC、BSCF、SSCF、LSM、およびLnがランタニドであるニッケル酸Ln2NiO4+δからなる群から選択される1つ以上の物質から形成することができる。
【0043】
いくつかの実施態様において、少なくとも1つの第1の多孔質層204は、1つ以上の電極触媒酸化物によって浸透および/または表面改質され得る。例えば、表面改質は、Huang et al、“Nanointegrated、High-Performing Cobalt-Free Bismuth-Based Composite Cathode for Low-Temperature Solid Oxide Fuel Cells.” ACS Appl. Mater.Interfaces、2018、10(34): pp.28635-43を参照されたい。例えば、1つ以上の電極触媒酸化物は、1つ以上のMOxを含むことができ、ここで、Mは、Pr、Ca、Sr、Y、La、Nd、Sm、Dy、Er、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnなどのカチオンであるが、これらに限定されない。
【0044】
特定の材料および構成が上記および本明細書の他の箇所で論じられたが、開示される主題の実施形態は、それらに限定されない。むしろ、1つ以上の企図される実施形態によれば、開示されるSOCの1つ以上の層に他の機能的に同様の材料を使用して、同じまたは同様の効果を達成することができる。
【0045】
固体酸化物電池システム
いくつかの実施形態では、
図1A~1BのSOC110または
図2A~2BのSOC200は、固体酸化物燃料電池(SOFC)として動作することができ、その基本的な動作は、「固体酸化物燃料電池のためのセラミック陽極材料」と題され、2016年12月20日に公開され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,525,179号明細書に記載されている。例えば、
図3Aは、固体酸化物電解質302(例えば、非多孔質酸化物層102または202)、燃料側電極304(陽極、例えば、第2の多孔質層104)、および空気側電極306(陰極、例えば、第1の多孔質層112または204)を有するSOC層アセンブリ308を使用するSOFCシステム300を示す。SOFCシステム300は、例えば、システム300の動作を制御するために、外部回路322(例えば、負荷)およびコントローラ324を有することができる。いくつかの実施形態では、SOFCシステム300は、燃料貯蔵部326を含むことができ、そこから燃料を分配して電気を生成することができる。
【0046】
空気または酸素含有ガスの入力流は、空気側マニホールド316の第1のポート318を介して空気側電極306に流れることができる。いくつかの実施形態では第1のポート318に供給される入力流は、20~100%(モル分率)の範囲の酸素濃度を有することができる。空気が電極306を通過するとき、入力流中の酸素原子は、電極306内で還元されて、電解質302の第2の側302bに向かって流れる酸素イオンを生成することができる。酸素イオンは、電解質302を通って、電解質302の第1の側302aの電極304内に移動する。任意の未使用ガスは、第2のポート320を介してマニホールド316から出ることができる。
【0047】
燃料は、燃料側マニホールド310の第1のポート312を介して燃料側電極304に流れることができる。いくつかの実施形態では、第1のポート312に供給される燃料は、H2、CO、NH3、メタンから誘導される炭化水素ガス、高級炭化水素(ガソリン、ディーゼル、バイオガスなどであるが、これらに限定されない)、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。酸素イオンは、電極304で燃料と反応して燃料を酸化し、燃料側電極304から電子回路322に流れ、空気側電極306に戻る電子を生成することができる。酸化生成物(例えば、水、二酸化炭素など)および/または未使用燃料は、第2のポート314を介してマニホールド310から出ることができる。
【0048】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、
図2A~
図2BのSOC200は、固体酸化物電解電池(SOEC)として動作させることができる。例えば、
図3Bは、固体酸化物電解質302(例えば、非多孔質酸化物層202)と、燃料側電極304(陰極、例えば、第2の多孔質層104)と、空気側電極306(陽極、例えば、第1の多孔質層204)とを有するSOC層アセンブリ308を使用するSOECシステム330を示す。SOECシステム300は、例えば、システム330の動作を制御するために、外部回路322(例えば、電源)およびコントローラ324を有することができる。いくつかの実施形態では、SOFCシステム330は、生成された燃料を貯蔵することができる燃料貯蔵部326を含むことができる。
【0049】
反応物(例えば、H2Oおよび/またはCO2)は、燃料側マニホールド310の第2のポート314を介して燃料側極304に流れることができる。外部回路322からの電子を使用して、電極304内の反応物を還元し、それによって、電解質302の第1の側面302aに向かって流れる酸素イオンならびに燃料(例えば、H2、COなど)を生成することができる。反応生成物および任意の使用される反応物は、後の使用のために、マニホールド310の第1のポート312を介して燃料貯蔵部326に導くことができる。一方、酸素イオンは、電解質302を通って第2の側302bの電極306に移動することができ、そこで酸素分子に変換され、そこで、第1のポート318を通って流れる空気を介してマニホールド316から排出されることができる。
【0050】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、SOCは、可逆的に動作することができ、例えば、(例えば、燃料から電気を生成するために)第1の動作モードでSOFC300として動作し、(例えば、回路322の)極性を逆転させて、(例えば、燃料にエネルギーを貯蔵するために)第2の動作モードでSOEC330として動作する。
【0051】
個体酸化物電池の作製
図4は、SOC、例えば、
図1A~
図1BのSOC110または
図2A~
図2BのSOC200を製造するための例示的な方法400を示す。方法400は、処理工程402で開始することができ、1つ以上の第1の前駆体は、1つ以上の第2の多孔質層(例えば、
図1Aまたは
図2Aの層104aおよび/または104bなどの燃料側多孔質層)を形成するために提供される。いくつかの実施形態では、処理工程402の提供は、テープキャスティング、ブレードコーティング、ラミネート、スクリーン印刷、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。1つ以上の第1の前駆体は、処理工程406における焼結時に第2の多孔質層のための上述の材料のいずれかを形成することができる前駆体を含むことができる。例えば、処理工程402の提供は、第1のスラリー中で酸化ニッケルとGDCとを混合し、次いでテープキャスティングして第1の前駆体層を形成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第1の前駆体は、孔形成剤、例えば、0~15重量%(両端値を含む)の負荷でPMMA粒子(例えば、~1.5μmの直径を有する)を含むことができる。例えば、処理工程402の提供は、テープキャスティングの前に孔形成剤を第1のスラリーに混合することを含むことができる。
【0052】
方法400は、処理工程404に進むことができ、ここで、非多孔質酸化物層(例えば、
図1Aの層102または
図2Aの層202)を形成するために、1つ以上の第2の前駆体が提供される。いくつかの実施形態では、処理工程404の提供は、テープキャスティング、ブレードコーティング、ラミネート、スクリーン印刷、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。1つ以上の第2の前駆体は、処理工程406における焼結時に非多孔質酸化物層のための上述の材料のいずれかを形成することができる前駆体を含むことができる。例えば、処理工程404の提供は、GDCを第2のスラリーに混合し、次いでテープキャスティングして第2の前駆体層を形成することを含むことができる。非多孔質酸化物層は、緻密層を形成するため、第2スラリー中に孔形成剤は、提供されない。1つ以上の第2の前駆体は、例えば、ホットロール積層によって、先に形成された第1の前駆体層上またはその上に直接提供することができる。
【0053】
方法400は、処理工程406に進むことができ、ここで、第1および第2の前駆体は、高温(例えば、閾値T1を超える)で焼結されて、1つ以上の第2の多孔質層および非多孔質酸化物層をそれぞれ形成する。いくつかの実施形態において、閾値T1は、約1000℃である。例えば、工程406の焼結は、約1450℃で実施することができる。いくつかの実施形態では、処理工程406の焼結は、少なくとも1時間、例えば、約4時間であり得る。
【0054】
方法400は、決定工程408に進むことができ、ここで、SOCがPFLを含むべきかどうかが決定される。PFLが望まれない場合、方法400は、処理工程410に進むことができ、1つ以上の第1の多孔質層(例えば、
図1Aの層106)を形成するために、1つ以上の第3の前駆体は、提供される。いくつかの実施形態では、処理工程410の提供がテープキャスティング、ブレードコーティング、ラミネート、スクリーン印刷、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。1つ以上の第3の前駆体は、処理工程412における焼結時に第1の多孔質層のための上述の材料のいずれかを形成することができる前駆体を含むことができる。例えば、処理工程410の提供は、ランタニド添加剤(例えば、0.5~5重量%の酸化プラセオジムおよび/または0.5~5重量%の酸化サマリウム)を含むかまたは含まないセリア(例えば、GDC)をインクに混合し、次いでテープキャスティングまたはブレードコーティングを行って第3の前駆体層を形成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の前駆体は、孔形成剤、例えば、0~15重量%(例えば、~5重量%のPMMA)の負荷でPMMA粒子(例えば、~1.5μmの直径を有する)を含むことができる。例えば、処理工程410の提供は、テープキャスティングの前に、孔形成剤をインク中に混合することを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の前駆体は、先に形成された非多孔質酸化物層上またはその上に直接提供することができる。
【0055】
方法400は、処理工程412に進むことができ、1つ以上の第3の前駆体は、1つ以上の第1の多孔質層を形成するために、低温(例えば、閾値T1未満)で焼結することができる。いくつかの実施形態において、閾値T1は、約1000℃である。例えば、工程412の焼結は、約950℃で実施することができる。いくつかの実施形態では、処理工程412の焼結は、少なくとも1時間、例えば、約2時間であり得る。いくつかの実施形態では、処理工程412の焼結は、低温中間バーンアウト(例えば、30分間400℃)を含むことができ、これにより、PMMAおよび結合剤をバーンアウトする。
【0056】
方法400は、処理工程414に進むことができ、ここで、1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、1つ以上の電極触媒(例えば、
図1Aの電極触媒108)で浸透され、次いで、さらに低い温度(例えば、閾値T1未満である閾値T2未満)で焼結され得る。1つ以上の電極触媒は、電極触媒のための上述の材料のいずれかを含んでもよい。いくつかの実施形態では、浸透は、真空浸透の1つ以上のサイクルを含むことができる。例えば、溶液(例えば、硝酸塩溶液)中の電極触媒は、第1の多孔質層の露出した表面上に配置され、層の細孔への溶液の浸透を促進するために真空に供され得る。これは、溶媒を蒸発および/または燃焼させるために焼成する前に、追加の溶液を用いて1回または複数回繰り返すことができる。例えば、焼成は、650℃未満、例えば~450℃で30分間行うことができる。いくつかの実施形態では、浸透サイクルは、少なくとも2回の溶液適用および真空反復、その後の加熱を含むことができる。いくつかの実施形態では、浸透サイクルは、所望の電極触媒負荷を達成するために1回以上実施することができる。
【0057】
PFLがSOCに含まれるべきであると決定された場合、方法400は、決定工程408から処理工程416に進むことができ、ここで、PFL(例えば、
図2Aの層206)を形成するために、1つ以上の第3の前駆体が提供される。いくつかの実施形態では、処理工程416の提供は、テープキャスティング、ブレードコーティング、ラミネート、スクリーン印刷、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。1つ以上の第3の前駆体は、処理工程420における焼結時にPFLのための上述の材料のいずれかを形成することができる前駆体を含むことができる。例えば、処理工程416の提供は、ランタニド添加剤(例えば、0.5~5重量%の酸化プラセオジムおよび/または0.5~5重量%の酸化サマリウム)を含むかまたは含まないセリア(例えば、GDC)をインクに混合し、次いでテープキャスティングまたはブレードコーティングを行って第3の前駆体層を形成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の前駆体は、孔形成剤、例えば、0~15重量%(例えば、~5重量%のPMMA)の負荷でPMMA粒子(例えば、~1.5μmの直径を有する)を含むことができる。例えば、処理工程416の提供は、テープキャスティングの前に、孔形成剤をインク中に混合することを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の前駆体は、先に形成された非多孔質酸化物層上またはその上に直接提供することができる。
【0058】
方法400は、処理工程418に進むことができ、1つ以上の第1の多孔質層(例えば、
図2Aの層204などの空気側多孔質層)を形成するために、1つ以上の第4の前駆体が提供される。いくつかの実施形態では、処理工程418の提供は、テープキャスティング、ブレードコーティング、ラミネート、スクリーン印刷、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。1つ以上の第4の前駆体は、処理工程420における焼結時に第1の多孔質層のための上述の材料のいずれかを形成することができる前駆体を含むことができる。例えば、第1の多孔質層は、複合電極であってもよく、処理工程418の提供は、2つの異なるセリア(例えば、SSCおよびGDC)をインクに混合し、次いで、第4の前駆体層として、先に形成された第3の前駆体層上またはその上に直接スクリーン印刷することを含むことができる。あるいはいくつかの実施形態では、第1の多孔質層は、浸透電極であってもよく、その場合、電気触媒浸透(例えば、処理工程414と同様)は、処理工程420の焼結後に実施することができる。
【0059】
方法400は、処理工程420に進むことができ、ここで、第3および第4の前駆体は、PFLおよび1つ以上の第1の多孔質層をそれぞれ形成するために、低温(例えば、閾値T1未満)で焼結される。いくつかの実施形態において、閾値T1は、約1000℃である。例えば、工程420の焼結は、約950℃で実施することができる。いくつかの実施形態では、処理工程420の焼結は、少なくとも1時間、例えば、約2時間であり得る。
【0060】
方法400の工程402~420は、1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法400の工程402~420が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程は、一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。さらに、
図4は、工程402~420の特定の順序を示すが、開示される主題の実施形態は、それに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程が図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に生じてもよい。いくつかの実施形態では、方法400は、
図4の工程402~420のうちのいくつかのみを備え得る。
【0061】
コンピュータの実装
図3Cは、例えば、SOCコントローラ324または製造方法400の態様など、説明されるイノベーションが実装され得る、適切なコンピューティング環境331の一般化された例を示すものであるが、これらに限定されるものではない。コンピューティング環境331は、様々な汎用または専用コンピューティングシステムにおいて革新が実装され得るので、使用または機能性の範囲に関していかなる限定も示唆することを意図していない。例えば、コンピューティング環境331は、様々なコンピューティングデバイス(例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、サーバコンピュータ、タブレットコンピュータなど)のいずれかであり得る。
【0062】
図3Cを参照すると、コンピューティング環境331は、1つ以上の処理ユニット335、337と、メモリ339、341とを含む。
図3Cでは、この基本構成351が破線内に含まれる。処理ユニット335、337は、コンピュータ実行可能命令を実行する。処理ユニットは、中央処理ユニット(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)内のプロセッサ、または任意の他のタイプのプロセッサ(例えば、ハードウェアプロセッサ、グラフィックス処理ユニット(GPU)、仮想プロセッサなど)であり得る。マルチ処理システムでは、複数の処理ユニットは、コンピュータ実行可能命令を実行して、処理能力を増大させる。例えば、
図3Cは、中央処理ユニット335と、グラフィック処理ユニットまたはコプロセッシングユニット337とを示す。有形メモリ339、341は、揮発性メモリ(例えば、レジスタ、キャッシュ、RAM)、不揮発性メモリ(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリなど)、または処理ユニットによってアクセス可能な2つの何らかの組合せであり得る。メモリ339、341は、処理ユニット(複数可)による実行に適したコンピュータ実行可能命令の形態で、本明細書で説明する1つ以上のイノベーションを実装するソフトウェア333を記憶する。
【0063】
コンピューティングシステムは、追加の特徴を有することができる。例えば、コンピューティング環境331は、記憶装置361、1つ以上の入力デバイス371、1つ以上の出力デバイス381、および1つ以上の通信接続391を含む。バス、コントローラ、またはネットワークなどの相互接続機構(図示せず)が、コンピューティング環境331の構成要素を相互接続する。典型的には、オペレーティングシステムソフトウェア(図示せず)がコンピューティング環境331において実行する他のソフトウェアのためのオペレーティング環境を提供し、コンピューティング環境331の構成要素のアクティビティを調整する。
【0064】
有形記憶装置361は、取り外し可能または取り外し不可能であってもよく、磁気ディスク、磁気テープまたはカセット、CD-ROM、DVD、または非一時的な方法で情報を記憶するために使用することができ、コンピューティング環境331内でアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。記憶装置361は、本明細書で説明する1つ以上のイノベーションを実装するソフトウェア333のための命令を記憶することができる。
【0065】
(1つ以上の)入力デバイス371は、キーボード、マウス、ペン、またはトラックボールなどのタッチ入力デバイス、音声入力デバイス、走査デバイス、またはコンピューティング環境331に入力を与える別のデバイスであり得る。出力デバイス371は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、CDライタ、またはコンピューティング環境331からの出力を提供する別のデバイスとすることができる。
【0066】
通信接続391は、通信媒体を介して別のコンピューティングエンティティへの通信を可能にする。通信媒体は、コンピュータ実行可能命令、オーディオもしくはビデオ入力もしくは出力、または変調データ信号内の他のデータなどの情報を伝達する。変調データ信号は、信号内の情報を符号化するように、その特性のうちの1つ以上が設定または変更された信号である。限定ではなく例として、通信媒体は、電気、光、無線周波数(RF)、または別のキャリアを使用することができる。
【0067】
開示された方法のいずれも、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体(例えば、1つ以上の光媒体ディスク、揮発性メモリ構成要素(DRAMまたはSRAMなど)、または不揮発性メモリ構成要素(フラッシュメモリまたはハードドライブなど))上に記憶され、コンピュータ(例えば、コンピューティングハードウェアを含むスマートフォンまたは他のモバイルデバイスを含む任意の市販のコンピュータ)上で実行されるコンピュータ実行可能命令として実装され得る。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、信号および搬送波などの通信接続を含まない。開示された技術を実施するための任意のコンピュータ実行可能命令、ならびに開示された実施形態の実施中に作成され、使用される任意のデータは、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。コンピュータ実行可能命令は、例えば、ウェブブラウザまたは他のソフトウェアアプリケーション(リモートコンピューティングアプリケーションなど)を介してアクセスまたはダウンロードされる専用ソフトウェアアプリケーションまたはソフトウェアアプリケーションの一部であり得る。そのようなソフトウェアは例えば、単一のローカルコンピュータ(例えば、任意の適切な市販のコンピュータ)上で、または1つ以上のネットワークコンピュータを使用してネットワーク環境(例えば、インターネット、ワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、クライアントサーバネットワーク(クラウドコンピューティングネットワークなど)、または任意の他のそのようなネットワークを介して)で実行され得る。
【0068】
明確にするために、ソフトウェアベースの実装形態のいくつかの選択された態様のみが説明される。当技術分野で周知の他の詳細は省略する。例えば、開示される技術は、任意の特定のコンピュータ言語またはプログラムに限定されないことを理解されたい。例えば、開示されたテクノロジーの態様は、C++、JavaTM、Python(登録商標)、および/または任意の他の好適なコンピュータ言語で書かれたソフトウェアによって実装することができる。同様に、開示される技術は、任意の特定のコンピュータまたはハードウェアのタイプに限定されない。適切なコンピュータおよびハードウェアの特定の詳細は、周知であり、本開示で詳細に説明する必要はない。
【0069】
本明細書で説明される任意の機能は、ソフトウェアの代わりに、少なくとも部分的に、1つ以上のハードウェア論理構成要素によって実行され得ることもまた、十分に理解されるべきである。例えば、限定ではなく、使用することができる例示的なタイプのハードウェア論理構成要素は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム固有集積回路(ASIC)、プログラム固有標準製品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)などを含む。
【0070】
さらに、ソフトウェアベースの実施形態のいずれか(例えば、コンピュータに開示された方法のいずれかを実行させるためのコンピュータ実行可能命令を含む)は、適切な通信手段を介してアップロード、ダウンロード、または遠隔アクセスすることができる。そのような好適な通信手段は、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネット、ソフトウェアアプリケーション、ケーブル(光ファイバーケーブルを含む)、磁気通信、電磁気通信(高周波、マイクロ波、および赤外線通信を含む)、電子通信、または他のそのような通信手段を含む。上記の例および実施形態のいずれにおいても、システム、構成要素、デバイスなどの間の要求(例えば、データ要求)、指示(例えば、データ信号)、命令(例えば、制御信号)、または任意の他の通信の提供は、有線接続またはワイヤレス接続による適切な電気信号の生成および送信によるものであり得る。
【0071】
作製例と実験結果
空気側電極としての電極触媒浸透多孔質層
GDC粉末を1.5mmの厚さにプレスする一軸プレスを用いて、対称電池固体酸化物燃料電池(SOFC)を作製した。ボタン電池SOFCは、テープキャスティングされた陽極支持体、陽極機能性材料、および電解質材料をホットロール積層によって積層し、その後打ち抜きおよび焼結することによって製造された。陽極支持層(ASL)は、60重量%NiOおよび40重量%GDCを、多孔性のために混合する前にスラリーに添加された3重量%ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)と混合することによって製造された。陽極機能層(AFL)は、48重量%のNiOを52重量%のGDCと混合することによって作製した。電解質緻密テープは、同様の方法を用いて作製した。単一の高温(例えば、>1000℃)処理を用いて、ロールロール加工によって製造されたハーフ電池、例えば、Ni-GDC上に担持された高密度GDCを焼結した。
【0072】
次いで、Pr/Sm-ランタニド変性GDC足場を(例えば、テープキャスティングおよびブレードコーティングを介して)製造し、1000℃未満で焼結した。特に、足場インキは、Pr6O11、Sm2O3、およびGDC粉末を、前駆物質粉末のそれぞれの重量%で混合することによって作製された(例えば、5Pr-GDCは、5重量%のPr6O11-95重量%のGDCなど)。次いで、混合組成物をエタノール中で一晩ボールミル粉砕した。続いて、組成物をESL441インクビヒクル(ElectroScience社によって販売されているテキサノールベースの組成物)と混合し、インクビヒクル対電力の比が1:1(重量で)に達するまで、遊星遠心ミキサー中で混合物と混合し、全てのエタノールを蒸発させた。PMMAを有するインクについては、Chemisnow(登録商標)MX-150PMMA(Soken Chemical & Engineering社によって販売されている)を、ボールミル粉砕の前に混合物に重量%で添加した。インクは、PMMAおよびバインダーを焼き切るために、中間の焼き切れ工程(例えば、400℃で30分間)を用いて、950℃で2時間、対称電池または全電池のいずれかで焼結された。
【0073】
次いで、電極触媒を足場内に堆積させ、650℃未満で処理して、完全な電池を得た。例えば、PSC多相電気触媒は、Pr-Sr-Co硝酸塩を金属カチオンによって(1-1-2)モル比で溶解することによって合成された。Pr
0.5Sr
0.5CoO
3-δが標的相であった。PrCoO
3、Pr
0.5Sm
0.5CoO
3-δ、およびSr
0.5Sm
0.5CoO
3-δの浸透物も同様の方法で製造した。浸透液混合物のpHは、硝酸塩溶液に水酸化アンモニウムを加えて最終pHを約7にすることによってバランスをとった。加えて、3重量%の非イオン性界面活性剤(例えば、Sigma Aldrich社によって販売されているTriton X100)をNO
3と組み合わせ、その組合せを界面活性剤として添加して、細孔濡れ性を増大させた。
図5A~5Cに示される結果は、pHバランスがとれておらず、Triton X100を含まない溶液を使用して得られたことに留意されたい。細胞を2μL/0.31cm
2で浸潤させ、その後、約15分間減圧乾燥して孔の濡れ性を高めた。この浸潤を、足場あたり全部で6μL/0.31cmの浸潤物
2について1周期あたり2回繰り返した。次いで、細胞を低温(例えば、450℃で30分間)で焼成して硝酸塩を蒸発させ、所望の負荷を満たすように浸透を繰り返した。なお、1回の浸透サイクルは、炉内での1回の低温焼成に相当する。
【0074】
GDC足場上でのPSC混合物の対称細胞試験の結果を
図5A~5Cに示す。浸透したPSC粒子のその場高温相解析は、少なくとも650℃まで安定なPrO
2-δ、Co
3O
4とSrCoO
3-δを含む多相陰極の生成を示唆する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、高度なナノ構造化形態に関連するこれらの複数の相の共存は、高い電気化学的性能および低いASRに寄与すると考えられる。
図5Aの550℃におけるナイキストプロットに示されるように、陰極としてのGDC足場の足場焼成温度950℃は、0.25Ωcm
2のASRを生じ、これは、より高い温度で焼成された足場よりも50~75%の低下を表す。足場焼結温度効果を
図5Bにまとめ、これは、950℃で最も低いASRを有する逆火山挙動を示す。950℃以下では、低焼結は、より高いASRをもたらし、950℃以上では、足場の緻密化は、三相境界長を減少させることができた。しかしながら、他の足場構成は、950℃以外の焼結温度で最低限のASRを達成することができる。
図5Cは、緩和時間(DRT)解析の配分を示し、主要なピークは、P
1-P
3と標識されている。P
1およびP
2(τ≒10
-3s)は、典型的には、界面電荷移動に起因し、わずかに増大する。対照的に、表面交換反応に起因するP
3は、従来のSSC-GDC陰極と比較して、98%のエネルギー損失低減を示した。
【0075】
図5A~5Cの例は、単純なGDC足場のためのものであるが、
図6A~6Dは、足場へのさらなるランタニド付加(例えば、Prおよび/またはSm)の効果を実証する。異なるPSC負荷(例えば、浸潤サイクルの数)を有する異なるセリア系足場を、完全な細胞に組み込んだ。これらの全電池の550℃における電流-電圧(iV)およびEISを、それぞれ
図6A~6Bに示す。純粋なGDC足場では、分極抵抗は、わずか0.25Ωcm
2であったが、陰極の低電子伝導率は、1.25Ωcm
2の高抵抗をもたらし、それによってピークパワー密度(PPD)をわずか175mW/cmに制限した。20μmの高密度GDC電解質は、典型的には、550℃で約~0.2Ωcm
2に寄与するので、足場からの見かけのオーム損は、実質的に約~1Ωcmである。
【0076】
しかしながら、
図6Cに示されるように、Prおよび/またはSmを添加してGDC足場を改変することによって、オーム損失を劇的に減少させることができ、全電池のPPDを改善することができる。特に、Pr/Sm負荷が増加することにつれて、全電池(20μmのGDC電解質を有する)のオームASRは、減少し、足場の電子伝導性が増加することを示唆する。0.5重量%Pr
6O
11を足場(0.5Pr-GDC)に加えると、オームASRは、1.25Ωcm
2から1.1Ωcm
2に低下した。5重量%Pr
6O
11(5Pr-GDC)を加えると、オームASRは、さらに0.5Ωcm
2に低下した。3サイクル浸潤PSC電池を比較すると、5重量%Pr
6O
11(5Pr-5Sm-90GDC)に加えて5重量%Sm
2O
3を添加すると、オームASRは、550℃で0.3から0.24Ωcm
2に低下した。5Pr-GDC電池は、この制御実験で5Pr-5Sm-90GDC電池と比較してわずかに高いピーク電力密度を有するが、5Pr-5Sm-90GDCは、電池性能に最も低いオーム損失に寄与した。これらの結果は、GDC足場へのランタニド添加が導電性を改善し、より低いオームASRおよびより高い性能につながることを示唆する。
【0077】
電極触媒負荷の効果を
図6Dにまとめ、1サイクルは、約1~2mgの浸透酸化物である。PSC負荷が増加することにつれて、電極ASRは、活性サイトの数の増加に起因して減少する。さらに、浸透負荷の増加(1サイクル対3サイクル)に伴い、オームASRは、0.5Ωcm
2から0.25Ωcm
2に低下した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、増加した負荷に応答したオームASRの減少は、(1)導電性電気触媒の増加した接続性、および/または(2)合成および/または試験中の足場への浸透物のドーピングによるものであり得る。オームASRの低下は、1回の浸透サイクル負荷での0.22W/cm
2から、3回の浸透サイクル負荷での550℃での0.5W/cm
2へのPPDの上昇を助ける。3回を超える浸透サイクルでは、PSCは、凝集し始めることができる。
【0078】
PSC浸潤5Pr-5Sm-90GDC足場は、
図10A~10Fに示されるように、電極微細構造を調整することによってさらに改善され、最適化された電池の高性能結果は、
図7A~7Fに示される。特に、足場の多孔性は、表面積を増加させて、より高い電極触媒負荷を可能にし、物質移動の制限を解決することができる。その結果、
図7Aに示すように、20μm電解質電池は、550℃で0.85W/cm
2のPPDを示し、10μm電解質電池は、550℃で1W/cm
2、500℃で0.6W/cm
2のPPDを達成した。
図7Bは、分極インピーダンスがわずか~0.07Ωcm
2であったことを示す。オーム部分は、両方の電池、例えば、それぞれ20μmおよび10μm構成で0.15Ωcm
2および0.09Ωcm
2の主要なロスであると考えられた。
【0079】
老化した20μm電解質電池の微細構造を
図7Cに見ることができる。
図7Dによって示唆されるように、PSC電極触媒は、高い活性および耐久性を示し、それらのナノスケール状態は、550℃で500時間後に保存される。これは、浸透物焼成温度に起因し得る。具体的には、PSCナノ粒子が650℃以下の耐熱性を有するのみであった。浸透の従来の試みは、はるかに高い温度(例えば、800℃を超える)を利用してきた。例えば、800~1300℃の高温で合成されたLSCF-SDC足場上のPr
0.4Sr
0.6CoO
3-δは、750℃で0.15Ωcm
2の陰極ASRを生成した。対照的に、本実施例の多相PrO
x、CoO
xおよびSrCoO
3-δは、550℃で0.25Ωcm
2の低ASRを高耐久性で達成する。-
-
図7E~7Fにおける20μm電解質電池のエージング結果は、PPD低下の大部分が最初の50時間で起こることを示す。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、PPDの低下は、PSCナノ粒子のわずかな粗大化に起因すると考えられる。
図7C~7Dに示すように、PSC粒子のサイズは、500時間後に、最初は、~20nmから~100~200nmに成長した。これは、
図7Eによってさらに支持され、合計電極ASR0.07Ωcm
2(t=0時間)から0.11Ωcm
2(t=50時間)に増加し、その後、試験期間(t=500時間)安定化した。オームASRは、同様の傾向を示したが、これは、粒子の凝集による電子的接続の損失に起因する可能性がある。1つの一次電子伝導経路は、表面上に接続されたPSC浸潤粒子を通ることに留意されたい。それにもかかわらず、長期定電流試験は、とりわけ最初の50時間後に、500時間の長時間試験にわたって200mA/cm
2で非常にわずかな劣化しか示さない。
【0080】
提案された電極設計の全電位を理解するために、加圧動作をシミュレートするために、純酸素に曝露された陰極(pO
2=1atm)を用いて全電池を試験し、その結果を
図8A~8Dに示す。高導電性GDC電解質と組み合わせて、MIEC足場上に分散された極めて活性なナノ触媒は、燃料電池のための非常に高い性能をもたらす。
図8AのEIS掃引は、全電池が650℃でわずか0.031Ωcmの
2の全インピーダンスを有することを示す。エネルギー損失の大部分(例えば、91.3%)は、オーム抵抗に起因する可能性があり、これは、酸素還元反応(ORR)過電圧が電池の性能を制限しないことを意味する。さらに、非オームインピーダンスは、
図8Bに示されるように、500℃を超えるオーム抵抗よりも著しく低いASRをもたらす。電解質の厚さを減少させることによって、システム性能をさらに改善することができる。それにもかかわらず、極端に低い全ASRは、
図8Cに示されるように、電池が、650℃で4.01W/cm
2、550℃で1.87W/cm
2、および450℃で0.48W/cm
2のPPDを示すことを可能にする。さらに、
図8Dの定電位(0.75V)エージングは、100時間後に~0.86W/cm
2の定電力への安定化と同様に、一定の開路電圧(OCV)を示す。
【0081】
上記の実施例は、陰極のためにPr-Sr-Co浸透物を使用するが、SrおよびCoの存在は、それぞれ、安定性およびサプライチェーンの問題に悩まされ得る。しかしながら、他の材料を、同様の効果のために、電極触媒浸透物として使用することができる。例えば、Srは、他の大きな半径2/3+要素で置換され(
図9A~9B)、Coは、他の小さな遷移金属で置換された(
図9C~9D)。最新のLSCF-GDC陰極と比較して、
図9A~9Bは、13種の組成物すべてが~5倍低いASRを示し、大部分が全温度範囲にわたって少なくとも10倍の改善を提供することを示す。したがって、組成にかかわらず、この新規な低温陰極調製アプローチから生成されるナノ構造化は、このような低ASRを達成することができる。
【0082】
対称電池のASRを600℃で~200時間プロービングすることにより、Sr置換浸潤物の陰極安定性を評価した。
図9Cに示されるように、全ての組成物のASRは、経時的に増加したが、Pr-La-Coの分解速度の抑制は、~50時間の老化後にPSCとほぼ同一のASRをもたらした。対称電池のASRを600℃で~200時間プロービングすることにより、Co置換浸潤物の陰極安定性も評価した。
図9Dに示されるように、Cu、Fe、Ni、およびZnを含有する浸透物は、200時間にわたって無視できるほどのまたは負の劣化を示した。さらなる分析は、この傾向が1800時間を超えて継続したことを示す。Coと比較して、3つの代替物(Fe、Ni、またはZn)は、競争的に低いASRを提供し、より豊富であり、地政学的懸念がより少ない。
【0083】
空気側多孔質機能層
ドープされたセリア電解質は、それらの高いイオン伝導性および良好な材料適合性のために、最先端の低温固体酸化物電解質である。電解質全体のCe4+/3+酸化還元状態の程度が異なっているため(電気化学的電位勾配のため)、電解質中の全電子伝導率は、厚さ、両側の気体環境、および気温によって直接的に影響を受ける。セリウムの還元は、陽極近傍領域に限定されるので、より厚いドープされたセリア層は、イオン移動数tO2-を増加させることができる。しかし、厚さの増加は、より高いオーム損失にも寄与し、低温での性能を阻害する。Vtに対する測定OCVがtO2-(tO2-=OCV/Vt)に直接的に関係するので、典型的な20μm厚のGDC電解質は、500℃で80%のVt(理論電位)しか有さない。
【0084】
低温(例えば、≦650℃)で薄いGDC電解質(例えば、20μm以下)のためのtO2-を増加させるために、電解質の空気側に多孔質機能層(PFL)を設け、このセリア層の酸素分圧(pO2)への曝露を増加させた。加えて、PFL中の真性電子電荷キャリア密度は、空気中のPFLの気体-固体平衡のために著しく低い。さらに、PFLを活性ドーパント(例えば、Pr)で操作することによって、PFL中の酸素輸送を促進することができ、細胞性能を著しく向上させる相乗効果をもたらす。結果として、そのような構造を組み込んだSOCは、はるかに高いOCV、より低い面積比抵抗(ASR)、より高い性能、および耐久性の増加を示すことができ、例えば、性能損失無しに2000時間を超える電池動作を達成する。
【0085】
固体酸化物燃料電池(SOFC)ボタン電池をテープキャスティングを用いて作製した。陽極支持層(ASL)は、テープキャスティング法を用いて作製した。特に、60重量%のNiOと40重量%のGDCを組み合わせ、続いて3重量%のPMMAをスラリーに加えて所望の多孔度にした。陽極機能層(AFL)は、また、48重量%NiOおよび52重量%GDCを用いてテープキャスティングによって作製した。20μm、15μm、および10μmの厚さを有するGDC電解質をテープキャスティングによって作製した。次いで、ASL(厚さ~500μm)、AFL(厚さ~15μm)、および電解質(厚さ20μm、15μm、または10μm)を、ロールラミネーターを使用して一緒に積層し、続いて1450℃で4時間焼結して、ハーフ電池を形成した。SSC-GDC陰極インクは、SSC、GDC、およびESL441インクビヒクル(ElectroScience社によって販売されているテキサノール系組成物)を使用して作製した。PFL層は、陰極インキと同じ方法で、しかしPr6O11粉末およびGDCを用いて作製した。次いで、スクリーン印刷法を用いて、PFLまたはSSC-GDC陰極インクを、0.31cmの2活性領域陰極中のNi-GDC/GDC半電池上に堆積させた。その後、陰極とPFLを950℃で2時間同時焼成した。
【0086】
電解質支持電池をイオン移動数測定研究に使用し、テープキャストGDC支持体(200~300μm)を1450℃で4時間焼結した。陰極インクと同様の方法で作製したNi-GDC(48%NiO-52%GDC)インクを電池に塗布し、1200℃で2時間焼結した。SSC-GDC/PFLを電解質の反対側に適用し、950℃で2時間焼結した。対称電池を作るために、GDC粉末をプレスして約1.5mm厚のペレットを作った。SSC-GDC複合陰極ペーストとPFL(形状に依存)を対称電池の両側に塗布し、950℃で2時間焼結した。SSC-GDC複合陰極の浸透のために、硝酸プラセオジムを最初に脱イオン水に溶解して1M硝酸プラセオジム溶液を作製し、次いで、1M硝酸プラセオジム溶液6μLを使用して陰極を浸透させた。次に、浸透した陰極を10分間真空下に置いた。細胞を真空下に置いた後、450℃の炉内で30分間焼成し、硝酸塩前駆体を乾燥させた。
【0087】
Sr
0.5Sm
0.5CoO
3-δ-Ce
0.9Gd
0.1O
2-δのコンポジット陰極(SSC-GDC)および挿入されたPFL(例えば、SSC-GDC/PFL/GDC/Ni-GDC)を有する、
図2Bの層構成を有するSOFCを作製した。
図11Aに示されるように、作製された構造は、陰極、PFL、緻密電解質層(DEL)、および陽極のための別個の層を示す。PFLの多孔質微細構造は、
図2BのSEM挿入図にも反映される。2つの電池を同じ合計GDC厚で試験した。一方は、10μmDEL+10μmPFLで構成され、他方は、20μmDELで構成された。
図11Bの結果は、多孔質工学的微細構造の影響を強調する。特に、PFLは、電池に2つの性能向上、(1)開回路電圧(OCV)の増加、および(2)インピーダンスの減少を提供する。例えば、PFL層を設けることによって、OCVは、500℃で0.91Vから0.98Vに、550℃で0.88Vから0.95Vに増加し、DELのみの構成と比較して8%改善した。さらに、
図11C~11DのEISに示されるように、10μmのDELをPFLに置き換えることによって、オームASRは、550℃で0.25Ωcm
2から0.17Ωcm
2まで、および500℃で0.46Ωcm
2から0.34Ωcm
2まで低下する。
【0088】
作製された実施例の両方において、合計GDC厚さは、同じである(例えば、20μm)。しかしながら、DELと陰極との間にPFLを使用する場合、その厚さの半分は、多孔質である。これは、多孔質構造におけるイオン輸送の狭窄に起因して、オームASRを増加させることが期待される。しかし、PFLの提供は、ASRの低下につながる。さらに、PFL(550℃で0.14Ωcm2および500℃で0.47Ωcm2)による非オーム分極は、DEL単独(550℃で0.55Ωcm2および500℃で1.37Ωcm2)よりも著しく小さい。PFLを加えると、最大出力密度(PPD)が大きく上昇し(550℃で257%にも達する)、500℃で0.36W/cm2、550℃で0.76W/cmまで上昇する。
【0089】
図12A~12Dに示すように、異なるDEL厚さおよびPFL濃度(例えば、0、0.5、および5.0重量%Pr)を有するSOFCを試験して、PFLのOCV増強機構を理解した。図全体を通して参照される基準PFL濃度は、(0.5重量%Pr
6O
11+GDC)PFLであり、他のすべての重量%構成は、(X重量%のPr+GDC)と示される。OCV増強に対するPFLの効果を、200μmGDC支持体上に異なるPr濃度を有する10μmPFLを堆積させることによって試験した。
図12Aに示されるように、低いGDC厚さでのOCVの低減は、PFLを使用することによって、最小限にすることができ、または少なくとも低減することができる。GDCにおけるMIECのために、200μmGDCの見かけのイオン移動数t
O2-は、500℃でわずか0.91に達する。温度が上昇することにつれて、酸素の非化学量論、x、および電子欠陥の両方が熱的に活性化され、t
O2-は、650℃で0.85にさらに減少する。PFLでは、PFLが全電解質厚さのわずか5%であるにもかかわらず、t
O2-は、著しく改善され、この強化は、低温でより効果的である。
【0090】
図12Bは、10μm~20μmの範囲のPFL厚さを有する、薄い陽極支持20μmGDC電解質についてのOCVに対するPFLの効果を示す。200μmおよび20μmのDEL厚さのGDCベースラインも、実線を有する白抜き記号として
図12Bに示されている。理論電圧のみならず、t
O2-のレベルも示した。GDCの厚さが200μmから20μmに減少すると、薄い電解質を横切る電気化学的勾配(空気/H
2@3%H
2O)が高くなるため(それぞれ200から20μm厚のGDCで58mV/μmに対して5.8)、Ce4+/3+酸化還元対の減少を強制し、電子伝導性を増大させるため、OCVは、10%以上低下する。20μmのGDCベースラインと比較して、PFLの存在は、全ての温度でOCVを増加させる。DELの厚さを200μmに増すと、OCVは、500℃と550℃でそれぞれ理論値の93%と90%に達する。しかし、厚さ20μmのGDC DELへの15μmのPFLまたは20μmのPFLの追加は、そのOCVを、厚さ200μmのGDC DELのOCVに一致するように増加させることができる。実際、そのようなPFL-DELの組合せは、温度が600℃未満に低下することにつれて、200μm厚のGDC DELを超えた。この外部構造設計は、20μm厚のDEL+15μm厚のPFL(総厚35μm)のOCVが著しく低いASRを有する200μm厚のGDCのOCVよりも高いので、単純にGDC厚を増加させるより効果的にOCVを強化する。
【0091】
外因性構造設計は、GDCにおける電子伝導を最小限にすることができるので、OCVを犠牲にすることなく、酸素輸送のためのオーム損失を低減するために、DELの厚さを最小限にすることができ、または少なくとも低減することができる。
図12Cは、様々な厚さを有する10μmPFL(0.5重量%PrO
2-x-GDC)の厚さの影響を示す。オームASRは、変化する電解質厚さに直線的に依存し、10μmDEL試料について達成された最低値であった。さらに、500℃で~0.3Ωcm
2のオームASRで1Vを越えることができた。15μmDEL+10μmPFLのOCVは、高いOCV(20μmDEL+10μmPFL構成のOCVに匹敵する)を維持したが、20μm厚の電解質のオーム損失は、なかった。これは、15μmを超えるDELがOCV増加に最小の効果を有するが、オーム損失に寄与することを示唆する。
【0092】
図12Dは、10μmDEL+10μmPFLに対するOCV増強に対するPFL中のPrドーピングレベルの効果を示す。PFL中に均質なドーパントとしてPrを添加すると、OCV増強がいくらか減少する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、PFLの外部多孔質構造は、GDC層における電子伝導の減少の主な要因であると考えられる。それにもかかわらず、Prの添加は、電気化学的性能に有意な利点を有することができる。電気化学的性能向上に対するPFLの効果を、対称電池構成を用いて決定した。
図13Aは、PFLの存在の有無にかかわらず、SSC-GDC陰極のナイキストプロットを示す。PFLの添加により分極インピーダンスが減少し、PFL中のPr濃度が全体的な陰極性能において役割を果たすことができる。純粋な多孔質GDC層は、陰極三相境界における活性領域の増加に起因して、陰極ASRを減少させ、多価Prの添加は、電気化学的性能をさらに向上させた。例えば、0.5重量%のPrO
2-xを含むPFLは、PFLを含まない3.2Ωcm
2と比較して、0.7Ωcmの最も低い陰極ASRを有した。しかしながら、Prのより高いドーピングレベル(5重量%)は、微細構造が活性表面積の減少をもたらす高密度化組成を有するように見えるので、焼結助剤として作用し得る。
【0093】
PFL/GDC対称電池(SSC-GDC陰極無し)をさらに試験して、PFLの電気化学的活性を別々に決定した。
図13B~
図13Cにおける陰極ASRのアレニウスプロットは、電極分極がPFL構成の上の陰極より2~3桁高いので、PFLは、Prドーピングレベルにかかわらず、それ自体で十分な陰極活性を欠くことを示す。陰極無しで作用するPFLは、従来のSSC-GDC陰極(
図13Cに示されるように)よりも桁違いに大きいASRを有したので、Prの影響が
図13Bにさらに示され、PFLがそれ自体で十分な陰極活性を有しないことが確認される。PFLが陰極として機能するのに十分な電気化学的活性を有さないというさらなる証拠がある。特に、Prは、PFLにおける陰極活性を増加させる役割を果たす。このように、PFLでは、Prが無い場合の500℃での~10
4Ωcm
2のオーダーから、PFLでは、Prが無い場合とSSC-GDC陰極では、500℃での10
2Ωcm
2のオーダーまで低下した。これは、PrがPFL中の電気化学活性を増強することを示唆する。
【0094】
図13Dの緩和時間(DRT)分析の分布は、PFLが陰極性能をどのように向上させたかをさらに明らかにする。SSC-GDC(PFL無し)(曲線Y)は、典型的には、表層反応に起因する時定数(τ)=10
-3~10
0(秒)で最も高い総合反応ロスを有する。PFLの添加により、このピーク強度は、減少し、PFLが表面反応ステップを促進することを示唆した。参照により本明細書に組み込まれる、下にある米国仮出願第63/265,921号の
図S7における500℃および600℃でのさらなるエージングの結果に基づいて、PFLを有するSSC-GDCは、500℃および600℃で1200時間を超えて単独で安定であり、それぞれ~0.8Ωcm
2および0.25Ωcm
2の電極ASRを維持することが分かる。600℃での老化の結果は、SSC-GDC+PFLの安定性がベースラインSSC-GDCと比較して有意に増強されることを示唆した。
【0095】
陰極性能に対するPFLの効果を説明するのに役立つように、等温酸素分圧(pO
2)依存性研究および対応するDRT分析を実施し、その結果を
図13E~13Fに示す。
図13Eにおける陰極ASR対log(pO
2)の二重対数プロットは、PFLを加えることによって、インピーダンスが全てのpO
2で低下し、1/4から1/6への勾配変化が表面反応における律速段階の変化を示すことを示す。
図13FのDRT結果は、インピーダンス結果を逆畳み込みして、PFLが表面反応域における反応ロスを減少させたことを示す(τ=10
-3-10
0(s))。
【0096】
表面改質(SM)を、PFLベースの電池に対して実施して、耐久性および性能をさらに向上させた。特に、表面改質は、Huang et al、“Nanointegrated、High-Performing Cobalt-Free Bismuth-Based Composite Cathode for Low-Temperature Solid Oxide Fuel Cells.”ACS Appl. Mater.Interfaces、2018、10(34): pp.28635-43を参照されたい。結果を
図14A~14Dに示す。
図14Aに示されるように、PFLベースのSSC-GDC SOFCは、H
2中500℃で0.35W/cm
2のPPDを有した。Pr表面改質陰極(Pr-SM SSC-GDC)では、0.55W/cm
2のPPDに達した。
図14Bに示すように、Pr-SM SSC-GDC/PFL電池は、500℃で0.3Ωcm
2の合計ASRを有し、SSC-GDC/PFLは、500℃で0.75Ωcm
2の合計ASRを有する。したがって、陰極表面改質は、電池ASRを著しく低下させた。
【0097】
0.2A/cmの
2で加湿H
2を用いて500℃および550℃で細胞をエージングし、端子電圧および対応する細胞ASRをそれぞれ
図14C~14Dに示す。
図14Cに示されるように、SSC-GDC/PFL電池(NN曲線)は、550℃で800時間を超えて高い耐久性を示し、PFLの多孔質設計は、長期老化後でさえその機能性を維持することができることを実証する。しかし、Pr-SM電池(OO曲線)は、性能をさらに高め、50℃で動作しながら同じ電力密度を持つことを可能にした。Pr-SM電池は、500℃で0.5W/cm
2のPPDを示し、2000時間以上の運転に対して優れた安定性を示した。Pr-SM SSC-GDC/GDC/Ni-GDCの電池ASRを
図14Dに示し、オームおよび非オームの寄与を解決する。2000時間の運転中、大きな劣化は、現れなかった。
【0098】
開示された技術のさらなる例
開示された主題の上述の実装を考慮して、本出願は、以下に列挙される付記における追加の例を開示する。単独での付記の1つの特徴、または組み合わせて取られた付記の2つ以上の特徴、および任意選択で、1つ以上のさらなる付記の1つ以上の特徴と組み合わせたさらなる例も、本出願の開示の範囲内に含まれることに留意されたい。
【0099】
付記1.
酸素イオンを伝導し、固体電解質として動作するように構成された非多孔質酸化物層と、
非多孔質酸化物層の第1の側面の上に配置された1つ以上の第1の多孔質層と、
前記第1の側と反対側の前記非多孔質酸化物層の第2の側の上に配置された1つ以上の第2の多孔質層と、を備え、
前記非多孔質酸化物層は、前記第1および第2の多孔質層の各々よりも大きい密度を有し、
前記非多孔質酸化物層の電子伝導率は、前記非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり、
前記第1の多孔質層および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率は、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%よりも大きく、
前記1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
前記1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される、固体酸化物電池。
【0100】
付記2.
酸素イオンを伝導し、固体電解質として動作するように構成された非多孔質酸化物層と、
非多孔質酸化物層の第1の面上に配置された多孔質機能層と、
多孔質機能層の非多孔質酸化物層と対向する側の上に配置された1つ以上の第1の多孔質層と、
前記非多孔質酸化物層の前記第1の側と対向する第2の側の上に配置された1つ以上の第2の多孔質層と、を備え、
前記非多孔質酸化物層は、前記多孔質機能層の密度よりも大きい密度を有し、
前記非多孔質酸化物層の電子伝導率は、前記非多孔質酸化物層のイオン伝導率の25%未満であり、
前記多孔質機能層は、550℃以下の温度で、前記非多孔質酸化物層および前記多孔質機能層のイオン移動数を少なくとも0.9に増加させるのに効果的であり、
前記1つ以上の第1の多孔質層の少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
前記1つ以上の第2の多孔質層の少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される、固体酸化物電池。
【0101】
付記3.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~2のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
前記1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、または混合イオン性電子伝導性酸化物を含む、固体酸化物電池。
【0102】
付記4.
本明細書のいずれかの項または例の固体酸化物電池、特に、付記1~3のいずれか一項に記載固体酸化物電池であって、
前記1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、ガレートのニッケルサーメット、モリブデン酸塩、モリブデン酸塩のニッケルサーメット、クロム酸塩、クロム酸塩のニッケルサーメット、バナジン酸塩、またはバナジン酸塩のニッケルサーメットから形成される、固体酸化物電池。
【0103】
付記5.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~4のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、セリアまたは酸化ビスマスを含む、固体酸化物電池。
【0104】
付記6.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~5のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、ドープされたセリア、立方晶酸化ビスマス、菱面体晶酸化ビスマス、またはドープされた菱面体晶酸化ビスマスを含む、固体酸化物電池。
【0105】
付記7.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~6のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、1つ以上のランタニドが添加されたドープセリアを含む、固体酸化物電池。
【0106】
付記8.
本明細書のいずれかの項または例、特に付記7の固体酸化物電池であって、
添加される1種または複数のランタニドが、プラセオジム、サマリウム、またはプラセオジムおよびサマリウムの両方である、固体酸化物電池。
【0107】
付記9.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~8のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、1つ以上の電極触媒酸化物で浸透されている、固体酸化物電池。
【0108】
付記10.
本明細書のいずれかの項または例、特に付記9の固体酸化物電池であって、
1つ以上の電極触媒酸化物が、少なくともAおよびBによって形成される1つ以上の多相電極触媒を含み、1つ以上の多相電極触媒中のA:Bのモル比が約1:1である、固体酸化物電池。
【0109】
付記11.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記10に記載の固体酸化物電池であって、
Aが、第2族元素、第3族元素、またはランタニドであり、Bが、第4周期元素である、固体酸化物電池。
【0110】
付記12.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記10~11のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
Aは、プラセオジム(Pr)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、およびエルビウム(Er)からなる群から選択され、
Bは、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および亜鉛(Zn)からなる群から選択される、固体酸化物電池。
【0111】
付記13.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~4のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、セリアまたは酸化ビスマス、または(i)セリアまたは酸化ビスマスと、(ii)1つ以上の電子伝導性および電気触媒酸化物とから形成される複合材料を含む、固体酸化物電池。
【0112】
付記14.
本明細書のいずれかの項または例の、特に、付記1~4のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、サマリアネオジムドープセリア(SNDC)、エルビア安定化酸化ビスマス(ESB)、ジスプロシウムタングステン安定化酸化ビスマス(DWSB)、イットリア安定化酸化ビスマス(YSB)、菱面体酸化ビスマス、ストロンチウムおよびマグネシウムドープランタンガレート(LSGM)、ストロンチウムサマリウムコバルト酸化物(SSC)、およびニッケル酸Ln2NiO4+δ(Lnはランタニド)からなる群から選択される材料を含む、固体酸化物電池。
【0113】
付記15.
本明細書のいずれかの項または例、特に付記1に記載の固体酸化物電池であって、
第1の多孔質層および非多孔質酸化物層のうちの1つの間に配置され、それらと直接接触する多孔質機能層をさらに含む、固体酸化物電池。
【0114】
付記16.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記2~15のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
多孔質機能層が、セリアまたは酸化ビスマスから本質的になる、固体酸化物電池。
【0115】
付記17.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記2~16のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
多孔質機能層は、固体酸化物電池の開回路電圧を増加させるように構成される、固体酸化物電池。
【0116】
付記18.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記17に記載の固体酸化物電池であって、
前記開放電圧は、500~550℃の範囲(両端値を含む)の温度で少なくとも0.9Vである、固体酸化物電池。
【0117】
付記19.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記2~18のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
第1の電極から第2の電極までの第1の方向に沿った多孔質機能層の厚さは、約20μm以下であり、および/または
第1の方向に沿った非多孔質酸化物層の厚さは、約20μm以下である、固体酸化物電池。
【0118】
付記20.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~19のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、陽極として動作するように構成され、1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、電気化学的酸化が第2の側で起こるときに陰極として動作するように構成され、および/または
1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、陰極として動作するように構成され、1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、還元が第2の側で起こるときに陽極として動作するように構成される、固体酸化物電池。
【0119】
付記21.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~20のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第1の多孔質層は、20~100%(モル分率)の範囲(両端値を含む)の酸素濃度を含む入力流を受け取るように構成され、
1つ以上の第2の多孔質層は、燃料を受容するように構成され、固体酸化物電池は、燃料を電気化学的に酸化して電気を生成することによって固体酸化物燃料電池(SOFC)として動作するように構成される、固体酸化物電池。
【0120】
付記22.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~20のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
1つ以上の第2の多孔質層は、H2Oおよび/またはCO2を含む入力流を受け取るように構成され、
固体酸化物電池は、第2の側でH2OまたはCO2を電気化学的に還元し、第1の側でO2を発生させることによって、固体酸化物電解電池(SOEC)として動作するように構成される、固体酸化物電池。
【0121】
付記23.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~22のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
固体酸化物電池は、極性を逆転させて固体酸化物燃料電池(SOFC)としての動作と固体酸化物電解電池(SOEC)としての動作とを切り替えるように構成され、
固体酸化物電池は、第1の動作モード中に、第1および第2の電極のうちの1つに提供されるH2Oおよび/またはCO2を電解して燃料を生成するように構成され、
固体酸化物電池は、第2の動作モード中に、燃料を酸化して電気を生成するように構成される、固体酸化物電池。
【0122】
付記24.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~23のいずれか一項に記載の固体酸化物電池であって、
非多孔質酸化物層がセリア、ジルコニア、酸化ビスマス、またはガレートランタンを含む、固体酸化物電池。
【0123】
付記25.
固体酸化物電池を製造する方法であって、以下を含む方法:
(a)1つ以上の第2の多孔質層を形成するための1つ以上の第1の前駆体を提供すること、
(b)1つ以上の第1の前駆体上に非多孔質酸化物層を形成するための1つ以上の第2の前駆体を提供すること、
(c)第1の閾値以上の温度で第1および第2の前駆体を焼結して、非多孔質酸化物層の第2の側の上に1つ以上の第2の多孔質層を形成すること、
(d)1つ以上の第1の多孔質層を形成するための1つ以上の第3の前駆体を、第2の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第1の側の上に提供すること、
(e)第1の閾値未満の温度で1つ以上の第3の前駆体を焼結して、非多孔質酸化物層の第1の側の上に1つ以上の第1の多孔質層を形成すること、
非多孔質酸化物層は、第1および第2の多孔質層の密度よりも大きい密度を有し、
第1および第2の多孔質層の各々について、それぞれの多孔質層の電子伝導率は、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%よりも大きく、
1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される。
【0124】
付記26.
固体酸化物電池を製造する方法であって、以下を含む方法:
(a)1つ以上の第2の多孔質層を形成するための1つ以上の第1の前駆体を提供すること、
(b)1つ以上の第1の前駆体上に非多孔質酸化物層を形成するための1つ以上の第2の前駆体を提供すること、
(c)第1の閾値以上の温度で第1および第2の前駆体を焼結して、非多孔質酸化物層の第2の側の上に1つ以上の第2の多孔質層を形成すること、
(d)第2の側とは反対側の非多孔質酸化物層の第1の側の上に多孔質機能層を形成するための1つ以上の第3の前駆体を提供すること、
(e)1つ以上の第3の前駆体の上に1つ以上の第1の多孔質層を形成するための1つ以上の第4の前駆体を提供すること、
(f)第1の閾値よりも低い温度で第3および第4の前駆体を焼結し、非多孔質酸化物層の第1の側上に前記非多孔質酸化物層を形成し、前記非多孔質酸化物層の対向する前記第1の多孔質層の側上に前記第1の多孔質層を形成すること、
非多孔質酸化物層は、第1の多孔質層および第2の多孔質層の密度より大きい密度を有し、
前記非多孔質酸化物層は、前記第1および第2の多孔質層のそれぞれについて、それぞれの多孔質層の電子伝導率が、それぞれの多孔質層のイオン伝導率の25%よりも大きく、
前記多孔質層は、550℃以下の温度で前記非多孔質酸化物層および前記多孔質機能層のイオン移動数を少なくとも0.9に増加させる効果があり、
前記1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第1の電極として動作するように構成され、
前記1つ以上の第2の多孔質層のうちの少なくとも1つは、第2の電極として動作するように構成される。
【0125】
付記27.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~26のいずれか一項に記載の方法であって、
第1の閾値が約1000℃である、方法。
【0126】
付記28.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~27のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第3の前駆体の焼結または第3および第4の前駆体の焼結は、約950℃の温度で行われ、
第1および第2の前駆体の焼結は、約1450℃の温度で行われ、または
上記の両方で行われる、方法。
【0127】
付記29.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~28のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、または混合イオン性電子伝導性酸化物を含む、方法。
【0128】
付記30.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~29のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第2の多孔質層が、セリアのニッケルサーメット、ジルコニアのニッケルサーメット、ガレートのニッケルサーメット、モリブデート、モリブデートのニッケルサーメット、クロメート、クロメートのニッケルサーメット、バナデート、またはバナデートのニッケルサーメットから形成される、方法。
【0129】
付記31.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~30のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、セリアまたは酸化ビスマスを含む、方法。
【0130】
付記32.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~31のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、ドープされたセリア、立方晶酸化ビスマス、菱面体晶系酸化ビスマス、またはドープされた菱面体晶系酸化ビスマスを含む、方法。
【0131】
付記33.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~32のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第1の多孔質層が、1つ以上のランタニドが添加されたドープセリアを含む、方法。
【0132】
付記34.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記33に記載の方法であって、
添加される1種または複数のランタニドが、プラセオジム、サマリウム、またはプラセオジムおよびサマリウムの両方である、方法。
【0133】
付記35.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~34のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第1の多孔質層を形成した後、1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つに、1つ以上の電極触媒酸化物を浸透させることをさらに含む、方法。
【0134】
付記36.
浸透が、以下を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記35に記載の方法:
(f1)1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つに溶液中の1つ以上の電極触媒の用量を提供する工程;
(f2)前記用量を有する1つ以上の第1の多孔質層のうちの少なくとも1つを、真空に曝露すること、
(f3)溶液中の1つ以上の電極触媒の別の用量で(f1)および(f2)を繰り返すこと、および
(f4)(f3)の後、1つ以上の第1の多孔質層を約450℃の温度に曝して、前記溶液を蒸発または燃焼させること。
【0135】
付記37.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記35~36のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の電極触媒酸化物が少なくともAおよびBによって形成される多相電極触媒を含み、1つ以上の多相電極触媒中のA:Bのモル比が約1:1である、方法。
【0136】
付記38.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記37に記載の方法であって、
Aが、第2族元素、第3族元素、またはランタニドであり、Bが、第4周期元素である、方法。
【0137】
付記39.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記37~38のいずれか一項に記載の方法であって、
Aは、プラセオジム(Pr)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、およびエルビウム(Er)からなる群から選択され、および/または
Bは、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および亜鉛(Zn)からなる群から選択される、方法。
【0138】
付記40.
(d)の1つ以上の第3の前駆体を提供することが、以下を含む、本明細書の任意の項または例、特に、付記25~39のいずれか一項に記載の方法:
(d1)1つ以上のランタニド酸化物を含むかまたは含まないセリアをインク中に混合すること、
(d2)孔形成剤をインク中に混合すること。
【0139】
付記41.
本明細書のいずれかの項または例の方法、特に、付記40に記載の方法であって、
孔形成剤が、ポリ(メチルメタクリレート)を含む、方法。
【0140】
付記42.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~30のいずれか一項に記載の方法であって、1つ以上の第1の多孔質層が、セリア、酸化ビスマス、または(i)セリアまたは酸化ビスマスと、(ii)1つ以上の電子伝導性および電気触媒酸化物とから形成される複合材料を含む、方法。
【0141】
付記43.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~30のいずれか1項の方法であって、
前記1つ以上の第1の多孔質層が、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、サマリアネオジムドープセリア(SNDC)、エルビア安定化酸化ビスマス(ESB)、ジスプロシウム安定化酸化ビスマス(DWSB)、イットリア安定化酸化ビスマス(YSB)、菱面体酸化ビスマス、ストロンチウムおよびマグネシウムドープランタンガレート(LSGM)、ストロンチウムサマリウムコバルト酸化物(SSC)、およびニッケル酸Ln2NiO4+δ(Lnはランタニド)からなる群から選択される材料を含む、方法。
【0142】
付記44.
本明細書の任意の項または例、特に、付記25に記載の方法であって、
(d)の前に、非多孔質酸化物層の第1の面上に多孔質機能層を形成するための1つ以上の第4の前駆体を提供し、
(d)を提供することは、1つ以上の第4の前駆体上に1つ以上の第3の前駆体を提供することを含み、
(e)の焼結は、第1の多孔質層と非多孔質酸化物層の間にそれらのうちの1つと直接接触して配置された多孔質機能層として、1つ以上の第4の前駆体を形成する、方法。
【0143】
付記45.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記26~44のいずれか一項に記載の方法であって、
多孔質機能層が、セリアまたは酸化ビスマスから本質的になる、方法。
【0144】
付記46.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記26~45のいずれか一項に記載の方法であって、
多孔質機能層が、固体酸化物電池の開回路電圧を増加させるように構成される、方法。
【0145】
付記47.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記26~46のいずれか一項に記載の方法であって、
第1の電極から第2の電極までの第1の方向に沿った多孔質機能層の厚さは、約20μm以下であり、および/または
第1の方向に沿った非多孔質酸化物層の厚さは、約20μm以下である、方法。
【0146】
付記48.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~47のいずれか一項に記載の方法であって、
非多孔質酸化物層が、セリア、ジルコニア、酸化ビスマス、またはガレートランタンを含む、方法。
【0147】
付記49.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~48のいずれか一項に記載の方法であって、
(a)を提供すること、(b)を提供すること、(d)を提供すること、および/または(e)を提供することが、テープキャスティング、ブレードコーティング、積層、スクリーン印刷、または前述のものの任意の組合せを含む、方法。
【0148】
付記50.
(a)が、以下を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~49のいずれか一項に記載の方法:
(a1)約60重量%の酸化ニッケル(NiO)および約40重量%のガドリニウムドープセリア(GDC)を第1のスラリーに混合すること、
(a2)第1のスラリーに孔形成剤を混合し、第1のスラリーは、第2の電極の多孔質支持層に対応する孔形成剤を有すること、
(a3)約48重量%のNiOおよび約52重量%のGDCを第2のスラリーに混合し、第2のスラリーは、第2の電極の多孔質機能層に対応すること。
【0149】
付記51.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記50に記載の方法であって、
孔形成剤は、ポリ(メチルメタクリレート)を含む、方法。
【0150】
付記52.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記25~51のいずれか一項に記載の方法によって形成された固体酸化物電池。
【0151】
結論
例えば、
図1A~14Dおよび付記1~52に関して、本明細書に図示または説明される特徴のいずれかを、例えば、
図1A~14Dおよび付記1~52に関して、本明細書に図示または説明される任意の他の特徴と組み合わせて、本明細書に他に図示または具体的に説明されない材料、システム、デバイス、構造、方法、および/または実施形態を提供することができる。本明細書に記載される全ての特徴は、互いに独立しており、構造的に不可能な場合を除いて、本明細書に記載される任意の他の特徴と組み合わせて使用することができる。開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は、例にすぎず、開示された技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神の範囲内に入るすべてを主張するものである。
【国際調査報告】