(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】相同組換え及びインテグラーゼ媒介性組換えによりヒト人工多能性幹細胞を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20250115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250115BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250115BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250115BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250115BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20250115BHJP
C12N 5/0786 20100101ALN20250115BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N15/11 Z
C12N5/0786
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538330
(86)(22)【出願日】2022-12-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022141732
(87)【国際公開番号】W WO2023116929
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/141336
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524236600
【氏名又は名称】ヘマセル バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュ ファンファン
(72)【発明者】
【氏名】ジ イビン
(72)【発明者】
【氏名】ウー チェン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA15Y
4B065AA50Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA98Y
4B065BA02
4B065BC01
4B065CA44
(57)【要約】
相同組換えの工程及びインテグラーゼ媒介性反応の工程を含む、ヒト体細胞からヒト人工多能性幹細胞を製造する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’に向かって、
i.ヒトゲノム内の遺伝子座の第1の領域と相同な5’相同性アームと、
ii.インテグラーゼIの第1の付着部位と、
iii.リプログラミング因子のセットのコーディング配列を含むリプログラミングカセットと、
iv.インテグラーゼIIの第1の付着部位と、
v.前記遺伝子座の第2の領域と相同な3’相同性アームと、
を含み、ここで、前記遺伝子座はヒトゲノム内のセーフハーバー遺伝子座である、核酸コンストラクト。
【請求項2】
前記インテグラーゼI及び前記インテグラーゼIIは、ヒト細胞において活性なインテグラーゼである、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項3】
前記インテグラーゼI及び前記インテグラーゼIIは、同じインテグラーゼ又は2種の異なるインテグラーゼである、請求項1又は2に記載の核酸コンストラクト。
【請求項4】
前記インテグラーゼI及び前記インテグラーゼIIは、phiC31インテグラーゼ及びBxb1インテグラーゼから選択される、請求項2又は3に記載の核酸コンストラクト。
【請求項5】
前記第1の付着部位は、attP又はattB、好ましくはattPである、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項6】
前記セーフハーバー遺伝子座は、H11遺伝子座である、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項7】
前記5’相同性アーム及び前記3’相同性アームは、約10bp~約10kbの長さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項8】
前記リプログラミングカセットは、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項9】
前記リプログラミングカセットは、OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc-MYCのコーディング配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項10】
前記リプログラミングカセットは、5’から3’に向かって、OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc-MYCのコーディング配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項11】
前記リプログラミング因子のコーディング配列は、自己切断ペプチドをコードするDNA配列によって連結されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項12】
前記自己切断ペプチドは、2Aペプチドである、請求項11に記載の核酸コンストラクト。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトを含むベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む組成物。
【請求項15】
請求項13に記載のベクターを含むキット。
【請求項16】
インテグラーゼIの第2の付着部位及びインテグラーゼIIの第2の付着部位を含む第2のベクターを更に含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記第2のベクターは、前記インテグラーゼIの第2の付着部位と前記インテグラーゼIIの第2の付着部位との間に位置する対象遺伝子(GOI)カセットを含み、かつ前記GOIカセットは、前記対象遺伝子のコーディング配列を含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記GOIは、治療遺伝子、選択マーカー、及びレポーター遺伝子からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記GOIカセットは、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子を更に含む、請求項17又は18に記載のキット。
【請求項20】
前記第1の付着部位がattPである場合に、前記第2の付着部位は、attB部位であり、かつ前記第1の付着部位がattBである場合に、前記第2の付着部位は、attP部位であり、好ましくは前記第2の付着部位は、attBである、請求項16~19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
前記インテグラーゼIのコーディング配列及び前記インテグラーゼIIのコーディング配列を含むインテグラーゼ発現ベクターを更に含む、請求項15~20のいずれか一項に記載のキット。
【請求項22】
ヒト体細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)を製造する方法であって、
a)請求項13に記載のベクターを前記ヒト体細胞に導入する工程と、
b)前記5’相同性アームと前記第1の領域との間及び前記3’相同性アームと前記第2の領域との間の組換えを促進する条件下で前記ヒト体細胞を培養し、その結果、前記遺伝子座に前記リプログラミングカセットが挿入され、マスター体細胞が作製される工程と、
c)工程b)により作製された前記マスターヒト体細胞を、リプログラミングを促進する条件下で培養して、マスターiPSCの作製を可能にする工程と、
を含む、方法。
【請求項23】
d)工程c)により作製された前記マスターiPSCに第2のベクター及びインテグラーゼ発現ベクターを導入する工程と、
ここで、前記第2のベクターは、インテグラーゼIの第2の付着部位及びインテグラーゼIIの第2の付着部位を含み、かつ前記インテグラーゼ発現ベクターは、前記インテグラーゼIのコーディング配列及び前記インテグラーゼIIのコーディング配列を含む;
e)工程d)により作製された前記iPSCを、前記インテグラーゼIの第1の付着部位と第2の付着部位との間及び前記インテグラーゼIIの第1の付着部位と第2の付着部位との間でのインテグラーゼ媒介性組換えを促進する条件下で培養し、その結果、前記iPSCのゲノムからリプログラミングカセットが切り出される工程と、
を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のベクターは、前記インテグラーゼIの第2の付着部位と前記インテグラーゼIIの第2の付着部位との間に位置する対象遺伝子(GOI)カセットを含み、かつ前記GOIカセットは、前記対象遺伝子のコーディング配列を含み、ここで、工程e)における前記インテグラーゼ媒介性組換えにより、前記リプログラミングカセットと前記対象遺伝子との置き換えがもたらされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記GOIは、治療遺伝子、選択マーカー、及びレポーター遺伝子からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記GOIカセットは、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子を更に含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の付着部位がattPである場合に、前記第2の付着部位は、attB部位であり、かつ前記第1の付着部位がattBである場合に、前記第2の付着部位は、attP部位であり、好ましくは前記第2の付着部位は、attBである、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト体細胞は、血液細胞である、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記血液細胞は、末梢血単核細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法から得ることができるiPSCの集団。
【請求項31】
前記集団の50%を超えるiPSCは、前記リプログラミングカセットを1コピーしか有しない、前記iPSCの集団。
【請求項32】
請求項24~29のいずれか一項に記載の方法から得ることができるiPSCの集団。
【請求項33】
前記集団の50%を超えるiPSCは、前記GOIカセットを1コピーしか有しない、前記iPSCの集団。
【請求項34】
請求項13に記載のベクター又は請求項1~12のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトを含む宿主細胞。
【請求項35】
iPSCの製造における請求項13に記載のベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、相同組換えとインテグラーゼ媒介性反応との組合せによりヒト体細胞からヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)を製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
体細胞からヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)を製造する現在の方法は、大部分が一連の転写因子、例えば山中因子(OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc-MYC、「OSKM」)(非特許文献1)又はトムソン因子(OCT3/4、SOX2、NANOG、及びLIN28)(非特許文献2)をコードする導入遺伝子のレトロウイルス媒介性送達又はレンチウイルス媒介性送達によるものである。
【0003】
転写因子のレンチウイルス媒介性送達又はレトロウイルス媒介性送達の問題点は、導入されたウイルスベクター及び導入遺伝子がランダムかつ安定的にヒトゲノムに組み込まれ、多数のウイルスコピーがヒトゲノムに挿入されるリスクがあることである。これらのウイルス性の挿入により大幅なゲノム改変が起こり、これは宿主遺伝子の不所望な活性化又は不活性化を引き起こす可能性があることから、正常な細胞機能を害したり、又は腫瘍形成能のリスクを高めたりする可能性がある。導入遺伝子はiPSC作製過程の間にde novo DNAメチル化によってサイレンシングされるが、これらは細胞培養及び分化中に自発的に再活性化される可能性がある。さらに、様々な転写因子が異なる細胞内で又は同じ細胞内でも異なる発現レベルを示すことになるため、iPSC作製の効率が低くなる。レンチウイルス媒介性及びレトロウイルス媒介性のランダム組み込みのこれらの欠点は、基礎研究及び臨床応用の両方に深刻な問題を提起する。
【0004】
Karowらは、マウスゲノムにおける「疑似付着(att)部位」でのphiC31インテグラーゼ媒介性組換えによって線維芽細胞及び脂肪幹細胞にリプログラミングカセットを挿入することによりマウスにおける部位特異的リプログラミングを行った(非特許文献3)。得られたiPSCにおけるリプログラミング遺伝子は、腫瘍形成能を低下させるのにCreリコンビナーゼを介した切り出しによって除去された。著者らはこの論文の中で、この方法がヒト細胞において実現可能であることを証明していない。この方法には幾つかの欠点があり、ヒト細胞への適用には適さない可能性がある。具体的には、「疑似att部位」は、レシピエントのゲノム内に天然に存在し、かつphiC31インテグラーゼの真性のatt部位と或る特定の配列同一性を共有する配列であるため、この部位はインテグラーゼによって認識されて、レシピエントのゲノム内に付着部位を事前に組み込む追加の工程なくしてインテグラーゼ媒介性組換えを実現することができる。しかしながら、ヒトゲノムは大きく、疑似att部位として機能し得る配列がゲノム内に複数存在する可能性があり、その一部は遺伝子内部位に位置する可能性がある。遺伝子内部位での組み込みは遺伝子機能の喪失につながる。ゲノム内に多数の組み込み部位があると、真のatt部位を介した組み込みと比べて精度が下がる。また、疑似att部位での組み込みにより、組み込み部位付近で欠失が生じたり、又は染色体の再配列が生じたりする可能性もある。
上述の不利点に対処しながらヒト体細胞からiPSCを製造する方法を開発することが依然として求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Takahashi and Yamanaka, 2006
【非特許文献2】Yu and Thomson, 2007
【非特許文献3】M. Karow et al., Stem Cells. 2011 November; 29(11): 1696-1704
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、ヒト体細胞からiPSCを製造する方法論であって、ドナープラスミドと体細胞ゲノム内のセーフハーバー部位との間の相同組換えを可能にして、セーフハーバー部位にリプログラミング遺伝子のセットとともにインテグラーゼattP部位を導入する工程と、iPSCの作製後にインテグラーゼ媒介性反応によってリプログラミング遺伝子をプラスミド配列とともにiPSCから除去するか、又はこれらを対象遺伝子(複数の場合もある)と置き換える工程とを含む、方法論を開発し、こうして本発明を完成した。本発明の方法は、相同組換え、リプログラミング、及びインテグラーゼ媒介性組換えに必要とされるエレメントを1つの核酸コンストラクトによって1工程で導入する。
【0007】
したがって、第1の態様において、本開示は、5’から3’に向かって、
i.遺伝子座の第1の領域と相同な5’相同性アームと、
ii.インテグラーゼIの第1の付着部位と、
iii.リプログラミング因子のセットのコーディング配列を含むリプログラミングカセットと、
iv.インテグラーゼIIの第1の付着部位と、
v.遺伝子座の第2の領域と相同な3’相同性アームと、
を含み、ここで、遺伝子座はヒトゲノム内のセーフハーバー遺伝子座である、核酸コンストラクトを提供する。
【0008】
第2の態様において、本開示は、第1の態様の核酸コンストラクトを含むベクター、例えばプラスミドベクター又は組成物を提供する。第2の態様のベクター(相同組換えのドナーベクター)を使用して、インテグラーゼの第1の付着部位によって挟まれたリプログラミングカセットをヒト体細胞のゲノムのセーフハーバー遺伝子座に導入することができる。
【0009】
第3の態様において、本開示は、インテグラーゼIの第2の付着部位及びインテグラーゼIIの第2の付着部位、並びに任意に2つの付着部位の間に対象遺伝子カセットを含む第2のベクターを提供する。第2のベクター(インテグラーゼ媒介性組換えのドナーベクター)を使用して、対応するインテグラーゼの存在下でインテグラーゼ媒介性反応を介して、挿入されたリプログラミングカセットを除去することができ、又は挿入されたリプログラミングカセットを対象遺伝子に置き換えることができる。
【0010】
第4の態様において、本開示は、第2の態様のベクターと、第3の態様の第2のベクターと、インテグラーゼのコーディング配列を含む1種又は2種のインテグラーゼ発現ベクターとを含むキットを提供する。
【0011】
第5の態様において、本開示は、ヒト体細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)を製造する方法であって、
a)第1の態様のベクターをヒト体細胞に導入する工程と、
b)5’相同性アームと第1の領域との間及び3’相同性アームと第2の領域との間の組換えを促進する条件下でヒト体細胞を培養する工程であって、その結果、遺伝子座にリプログラミングカセットが挿入され、マスター体細胞が作製される、工程と、
c)工程b)により作製されたマスター体細胞を、リプログラミングを促進する条件下で培養してマスターiPSCの作製を可能にする工程と、
d)任意に、工程c)により作製されたマスターiPSCに第2のベクター及びインテグラーゼ発現ベクターを導入する工程と、
ここで、第2のベクターは、インテグラーゼIの第2の付着部位及びインテグラーゼIIの第2の付着部位、並びに任意に2つの付着部位の間に対象遺伝子カセットを含み、かつインテグラーゼ発現ベクターは、インテグラーゼIのコーディング配列及びインテグラーゼIIのコーディング配列を含む;
e)任意に、工程d)により作製されたiPSCを、インテグラーゼIの第1の付着部位と第2の付着部位との間及びインテグラーゼIIの第1の付着部位と第2の付着部位との間でのインテグラーゼ媒介性組換えを促進する条件下で培養する工程であって、その結果、iPSCのゲノムからリプログラミングカセットが切り出され、リプログラミングカセットを含まず、任意に対象遺伝子を含むiPSCが作製される、工程と、
を含む、方法を提供する。
【0012】
第6の態様において、本開示は、第5の態様の方法によって作製されたiPSCの集団を提供する。
【0013】
第7の態様において、本開示は、iPSCの調製におけるベクターのいずれかの使用を提供する。
【0014】
本発明は、現在入手可能なリプログラミングシステムに比べて幾つかの利点を有し、これは具体的には以下の通りである:
【0015】
相同組換えがセーフハーバー部位で起こることから、リプログラミング遺伝子のランダム組み込みにより生ずる遺伝子破壊のリスクが大幅に軽減される。
組み込みの位置を予め決めることができるだけでなく、作製されたiPSCはゲノム内に組み込まれた各遺伝子のコピーを1つしか有しないことにもなるため、リプログラミング遺伝子の組み込みが正確である。したがって、リプログラミング因子は全てのiPSCにおいて同様のレベルで発現されることになる。
【0016】
リプログラミング遺伝子及びプラスミド材料を、リプログラミング後にインテグラーゼの一過性発現によって容易に除去することができる。
除去されるリプログラミング遺伝子を、インテグラーゼ媒介性反応中に対象遺伝子(複数の場合もある)と置き換えることができることから、多くの潜在的な用途がもたらされる。
【0017】
この方法を使用して、PBMC等の血液細胞を含む幅広い種類の細胞をリプログラミングすることができる。血液細胞のリプログラミングは、血液細胞集団の不均一性及び困難な細胞増殖のおかげで大変な作業であることが知られている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】インテグラーゼ媒介性組換えを介してリプログラミング因子を導入することにより、体細胞からiPSCを作製することを示す概略図である。
【
図2】プラスミドのトランスフェクションの成功を示すGFP発現を示す図である。
【
図4】iPSCコロニーの多能性マーカーの免疫細胞化学染色を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本書の他の箇所で具体的な定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により通常理解される意味を有する。
【0020】
添付の特許請求の範囲を含め本明細書において使用される場合、数量を特定しない単数形の単語(the singular forms of words such as "a", "an", and "the")は、文脈上特段の明確な指示がない限り、それらの対応する複数の言及を含む。
【0021】
本開示の文脈において、特段の指示がない限り、「含む(comprise)」という言い回し、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等のその別形は、指定された要素、例えばアミノ酸配列、ヌクレオチド配列、特性、工程、又はそれらの群を包含することを意味するが、他の要素、例えばアミノ酸配列、ヌクレオチド配列、特性、及び工程を一切除外するものではないと解釈される。本明細書において使用される場合、「含む(comprise)」という用語又はあらゆるその別形は、「含有する(contain)」、「含む(include)」、若しくは時には「有する(have)」という用語又はそれらの同等の別形に置き換えることができる。或る特定の実施形態において、「含む(comprise)」という言い回しには、「からなる(consisting of)」という筋書きも含まれる。
【0022】
本明細書において使用される「iPSC」は、体細胞のリプログラミングによって作製された多能性幹細胞(PSC)を指す。iPSC及びESC(胚性幹細胞)を含むPSCはそれらの自己複製能力及びあらゆる種類の細胞への分化能力を特徴とする。
【0023】
「体細胞」は、生殖細胞以外の生命体の細胞を指す。
【0024】
本明細書において使用される「マスター体細胞」又は「マスターiPSC」は、それぞれリプログラミングカセットが組み込まれた体細胞又はiPSCを指す。
【0025】
「PMBC」は末梢血単核細胞の略称である。
【0026】
本明細書に記載される「カセット」又は「発現カセット」は、ベクター(例えば、プラスミドベクター)に含まれ、ベクターによってトランスフェクションされた宿主細胞において発現される1つ以上の遺伝子(例えば、リプログラミング因子の遺伝子)と制御配列(複数の場合もある)とからなるDNA構成要素を指す。
【0027】
本明細書に記載される「リプログラミング」は、体細胞を人工多能性幹細胞に戻す過程を指す。
【0028】
本明細書に記載される「リプログラミングカセット」は、1つ以上のリプログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを指す。リプログラミング因子の遺伝子は「リプログラミング遺伝子」と呼ばれる。「リンカー配列」は、任意の2つの連続するリプログラミング遺伝子の間に存在する。リプログラミングカセットは、レポーター遺伝子、選択マーカー等を更に含み得る。
【0029】
「ドナープラスミド」又は「ドナー」は、組換えを介してゲノムに導入される配列を運ぶプラスミドを指す。本方法の相同組換え工程において、ドナープラスミドはリプログラミングカセットを含む核酸を含む。インテグラーゼによって媒介される組換えにおいて、ドナープラスミドは対象遺伝子(複数の場合もある)を含む核酸を含む。場合によっては、本出願の文脈におけるドナープラスミドは、具体的には、リプログラミングカセットをヒトゲノムに導入する相同組換え用のドナープラスミドを指すのに対し、インテグラーゼ媒介性組換えについてのドナープラスミドは、「対象遺伝子(GOI)プラスミド」と呼ばれる。
【0030】
「標的ゲノム」は、特に相同組換え又はインテグラーゼ媒介性組換えを介して外来配列を導入することによって改変することが意図されるゲノムを指す。
【0031】
本明細書において使用される「セーフハーバー部位」すなわち「SHS」は、標的ゲノムにおいて転写活性である遺伝子間遺伝子座又は遺伝子内遺伝子座を指す。「セーフ」とは、そのような部位での改変、特に挿入が正常な遺伝子機能の破壊又は宿主の表現型の変化を引き起こす可能性が低いことを意味する。
【0032】
「相同組換え」は、配列相同性に基づいて2つのDNA分子間で鎖を交換することを指す。相同組換えは細胞内で天然に起こり、DNA二重鎖切断の修復に重要な役割を果たす。
【0033】
「インテグラーゼ」は、細菌ゲノム及びファージゲノムにおける付着(att)部位間の組換えを行うファージインテグラーゼを指す。細菌ゲノムにおけるatt部位はattBとして知られており、ファージゲノムにおけるatt部位はattPとして知られている。組み込みには通常、細菌宿主因子と連携するファージインテグラーゼが必要とされる。phiC31及びBxb1等の或る特定のインテグラーゼは宿主因子とは独立して機能する。したがって、これらはその本来の細菌環境とは異なる細胞環境において機能することができ、細菌から哺乳動物に至る細胞内で部位特異的組換えを行う強力なツールとなっている。
【0034】
「att部位」は、対象のインテグラーゼについての付着部位を指す。本出願においてインテグラーゼについて言及される場合、att部位は「認識部位」又は時には「組換え部位」という用語と区別なく使用される。
【0035】
「対象遺伝子」すなわち「GOI」は、検討対象の遺伝子を指す。本発明の方法の文脈において、GOIは具体的には、インテグラーゼ媒介性反応を介してiPSCのゲノムに導入される遺伝子を指す。
【0036】
「部位特異的組み込み」は、外来核酸が宿主ゲノム内のランダムな部位ではなく予め決められた位置に組み込まれることを意味する。本出願の文脈において、相同組換え及びインテグラーゼ媒介性組換えは両方とも、取り込まれる遺伝子の部位特異的な組み込みをもたらす。
【0037】
相同組換え
図1に示されるように、本出願の方法は必須の組換え反応の2つの工程を含む。第1の組換え反応は、体細胞のゲノム配列における領域とリプログラミング遺伝子を運ぶドナーベクターとの間の相同組換えであり、これにより正常な遺伝子機能を破壊せずに、リプログラミング遺伝子がゲノム内に導入され、結果的に、本出願のマスター体細胞の作製がもたらされる。組換えの第1工程の後、マスター体細胞はリプログラミングされてマスターiPSCとなり得る。次いで、マスターiPSCと「空の」コンストラクト又は対象遺伝子(GOI)を運ぶドナーベクターとの間でインテグラーゼに媒介される組換えの第2工程が行われて、リプログラミング遺伝子が除去されるか、又はリプログラミング遺伝子がGOIに置き換えられ、その結果、外来プログラミング遺伝子を一切含まず、1つ以上の対象遺伝子を更に含み得るiPSCが得られる。
【0038】
本出願の文脈において、相同組換えは、上述の結果、すなわちゲノム内の所望の位置、例えばセーフハーバー部位でのリプログラミング遺伝子の導入が達成され得る限り、当該技術分野において知られる又は将来開発されるあらゆる方法によって達成され得る。
【0039】
一実施形態において、相同組換えは自発的な相同組換えであり得る。「自発的な相同組換え」とは、人工的に導入された外来酵素の助けを一切借りずに細胞内で組換えが自発的に起こることを意味する。相同組換えが自発的な相同組換えである場合、ドナープラスミドに含まれる相同性アームは、挿入位置を含む領域の配列に基づいて設計される。
【0040】
研究により、DNA二本鎖切断(DSB)が相同組換えの効率を高め得ることが明らかになっている。したがって、例えばヌクレアーゼによって標的化部位にDSBを起こすことが望ましいと考えられる。
【0041】
したがって、幾つかの実施形態において、本出願の相同組換えはTALEN、ZFN、又はCas9等のヌクレアーゼによって媒介され得る。
【0042】
例えば、相同組換えはTALEN支援による組換えであり得る。「TALEN」は転写活性化因子様(TAL)エフェクターヌクレアーゼを指し、これを使用して二本鎖切断を起こすことにより遺伝子編集を行うことができる。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインとDNA切断ドメインとを含む。DNA結合ドメインは33個~35個のアミノ酸を含み、所望のように特定のDNA配列を標的として結合し、このDNA配列がTALENのDNA切断ドメインによって切断されるように操作され得る。
【0043】
相同組換えがTALEN支援による組換えである場合、相同組換えのドナープラスミドに含まれる相同性アームは、セーフハーバー部位でDSBが起こる領域の配列に基づいて設計される。また、本方法の相同組換えを完了するには、リプログラミング遺伝子を含むドナープラスミドに加えて、TALENエレメントをコードする追加のプラスミドも必要とされる。TALENエレメントは、特定のヌクレオチドを認識して結合するTALタンパク質と、DSBを生ずるFokIヌクレアーゼとを含む。
【0044】
例えば、相同組換えはZFN支援による組換えであり得る。「ZFN」とは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインとDNA切断ドメインとを含むジンクフィンガーヌクレアーゼを指す。TALENと同様に、ZFNは所望のように特定のDNA配列を標的とするように設計され得る。
【0045】
例えば、相同組換えをCRISPR/Casシステム、例えばCRISPR/Cas9システムによって実施することができる。最もよく知られている遺伝子編集ツールの1つとして、CRISPR/Cas9は、編集可能なシングルガイドRNA(sgRNA)配列と、エンドヌクレアーゼCas9(CRISPR関連タンパク質9)とを含む。部位特異的編集はsgRNAの操作により実現される。本出願はまた、Cas12a、Cas13a等のような近年発見された他のCRISPR関連エンドヌクレアーゼの使用も企図している。
【0046】
本出願の相同組換えは、in vitroで、好ましくは相同組換えが起こるのを促進する条件下で起こる。
【0047】
相同組換え-ドナープラスミド
相同組換えに関与するドナープラスミドはリプログラミング遺伝子のカセットを含む。
【0048】
リプログラミングカセットは、リプログラミングを実現するのに必要とされる転写因子の組合せをコードするヌクレオチド配列を含む。転写因子の組合せは、当該技術分野において知られる又は将来的に有効であることが証明されるいずれかのものであり得る。
【0049】
リプログラミング因子の非限定的な例としては、POU5F1(OCT3/4)、NANOG、SOX2、LIN28A、KLF4、MYCL、MYCN、MYC、p53ノックダウン、MIR302/367クラスター、ESRRB、REX1、GBX2、DLX4、ZSCAN10、ZSCAN4、TBX3、GLIS1、NR5A1/2、RARG、BMI1、KDM2B、TET1SV40L、TGBX2、NANOGP8、SP8、PEG3、及びZIC1が挙げられる。本出願のリプログラミングカセットは、上述のリプログラミング因子の1つ以上をコードする1つ以上の遺伝子を含み得る。好ましい実施形態において、ドナープラスミド又はリプログラミングカセットは少なくともOCT3/4をコードする遺伝子を含む。別の好ましい実施形態において、ドナープラスミド又はリプログラミングカセットは少なくともOCT3/4及びSOX2をコードする遺伝子を含む。
【0050】
特定の実施形態において、転写因子の組合せは、(1)山中因子、OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc-MYC(OSKM)、(2)OCT3/4、SOX2、及びKLF4(OSK)、(3)トムソン因子、OCT3/4、SOX2、NANOG、及びLIN28からなる群から選択され得る。リプログラミング因子の遺伝子は、カセット内であらゆる順序で配置され得る。或る特定の順序が他の順序よりも好ましい場合がある。例えば、OSKM因子については、OCT3/4遺伝子から始まり、c-MYC遺伝子で終わることが好ましい。しかしながら、本発明の真価は、リプログラミング因子の選択及び配置ではなく反応スキームの設計にあることは、当業者によれば理解されるはずである。
【0051】
リプログラミング因子をコードするヌクレオチド配列は、リンカーをコードするヌクレオチド配列によって間隔が空けられている場合がある。一実施形態において、リンカーは、ミニIRES、EMCV IRES(脳心筋炎ウイルス由来のIRES)又は突然変異体等のIRES(内部リボソーム進入部位)であり得る。別の実施形態において、リンカーは、限定されるものではないが、T2A、F2A、E2A、P2A等を含む2Aペプチド等の自己切断ペプチドであり得る。IRESの利点は、ペプチド断片を一切生じないことである。しかしながら、IRESによって連結されたシストロンは、同等のレベルで発現されない場合がある。IRESの上流に位置する遺伝子は、IRESの下流に位置する遺伝子よりも大幅に高いレベルで発現されることが報告されている。むしろ、ウイルス2Aペプチドは、2つ以上の遺伝子を接続するリンカーとして使用される場合、ほぼ等モル濃度のレベルのタンパク質産物を産生することができる。したがって、好ましい実施形態において、2Aペプチドのヌクレオチド配列は、リプログラミング遺伝子を隔離するリンカー配列として使用される。
【0052】
リプログラミング因子の遺伝子は、単一のプロモーターの制御下でポリシストロン的に転写され得る。例示的なプロモーターとしては、EF1α、CMV、ACTB、PGK、UbC、又はCAGを挙げることができる。しかしながら、当業者であれば、慣例的なプロモーターのいずれもリプログラミングカセットに使用することができる。
【0053】
さらに、リプログラミングカセットは、次のエレメント、すなわち複製起点、選択マーカー、及び3’非翻訳配列の1つ以上を含み得る。例えば、複製起点はF1 oriであり得る。選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子等の或る特定の抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子であり得る。3’非翻訳配列は、ポリアデニル化配列(ポリ(A))、例えばTKポリA又はSV40ポリAであり得る。
【0054】
リプログラミングカセットは、リプログラミングカセットの挿入の成功を示すレポーター遺伝子を更に含み得る。レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、又は生物発光、例えばルシフェラーゼ等をコードする遺伝子であり得る。
【0055】
リプログラミングカセットは、att部位がインテグラーゼの認識部位であるため、組換えを促進するのに2つのatt部位、例えば2つのattP部位又は2つのattB部位によって挟まれている。組換えの間に、各att部位は中央で切断され、ドナー由来のatt断片と標的ゲノム由来のatt断片とによって2つの組換えatt配列、すなわちattL及びattRがそれぞれ形成される。att部位は、元々ファージに由来する天然に存在するatt部位、又はインテグラーゼによって認識され、組換え反応を媒介することができるその機能的変異体若しくは機能的断片であり得る。好ましい実施形態において、att部位は、ゲノム内の任意のランダムな配列と合致して部位の特異性が低下するのを避けるために16bpを超える長さである。例えば、att部位は17bpから60bpまでの範囲(この範囲内のあらゆる整数)のあらゆる長さであり得る。
【0056】
相同組換えのドナープラスミドは、attP-リプログラミング遺伝子(複数の場合もある)-attPコンストラクト又はattB-リプログラミング遺伝子(複数の場合もある)-attBコンストラクトを両側で挟む2つの相同性アームを更に含む。本出願の相同性アームのそれぞれは、相同組換えが引き起こされるようにゲノムの領域と相同である。
【0057】
2つの相同性アームは、セーフハーバー部位の2つの重複しない断片、例えばそれぞれH11遺伝子座の2つの重複しない断片と相同であり得る。挿入遺伝子座が非必須遺伝子の遺伝子内位置である場合、2つの相同性アームは非必須遺伝子の2つの重複しない断片と相同であり得る。
【0058】
相同性アームの長さは、約10bp~10kb又は更に長い、例えば約50bp~500bp、約100bp~400bp、例えば約10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、又は1000bpの広い範囲に及び得る。2つの相同性アームは同様の長さ又は異なる長さを有してよい。
【0059】
ドナープラスミドにおける相同性アームは、相同組換えが起こり得るにはゲノム内のその対応する領域と100%同一でなくてもよい。幾つかの実施形態において、相同性アームは、対応するゲノム領域、例えばセーフハーバー部位又は非必須遺伝子の断片に対して少なくとも50%の配列同一性、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性を有する。好ましい実施形態において、相同性アームのそれぞれは、対応するゲノム領域、例えばセーフハーバー部位又は非必須遺伝子の断片に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%の配列同一性を有する。
【0060】
組換えのメカニズム、例えば自発的な組換え又はヌクレアーゼ媒介性組換えに応じて、或る特定のセーフハーバー部位又は非必須遺伝子からの相同性アームの対応するゲノム領域の選択だけでなく相同性アームの特定の配列の設計も様々な規則に依存し得る。
【0061】
例えば、ヌクレアーゼ媒介性組換えが使用される場合、相同性アームは、ヌクレアーゼ媒介性組換えシステムの使用に適した配列であり得る。
【0062】
2つの相同性アームに対応するゲノム内の2つの領域は、それぞれ連続した断片である場合もあれば、又は1つ以上のヌクレオチドによって間隔が空けられている場合もある。
【0063】
相同組換え-挿入遺伝子座
本方法において、リプログラミングカセットをゲノムに挿入しても、細胞の正常な機能には影響が及ぼされない。これは、「セーフハーバー」として知られるゲノム内の遺伝子座に外来配列を挿入することによって実現され得る。
【0064】
幾つかの実施形態において、挿入遺伝子座は遺伝子間セーフハーバー部位である。ヒトゲノム内のセーフハーバー部位は、当該技術分野において知られるもの、例えばStefan Pellenzら著の(「狙い通りの導入遺伝子挿入のための「セーフハーバー」潜在性を備えた新たなヒト染色体部位(New Human Chromosomal Sites with 'Safe Harbor' Potential for Targeted Transgene Insertion)」, HUMAN GENE THERAPY, 第30巻第7号, 2019年)に記載されるセーフハーバー部位であり得る。
【0065】
組換えの効率はセーフハーバー部位の選択によって変わることが示唆されている。セーフハーバー部位の位置も、そこに挿入された導入遺伝子の連続的な発現に影響を与える可能性がある。或る特定のセーフハーバー部位は、導入遺伝子発現の維持において、他の部位と比較してより良好な性能を示す。本出願において、セーフハーバー部位は、リプログラミング因子が挿入される位置である。高い組換え効率及びリプログラミング因子のより安定的な発現の両方が本出願にとって望ましい。好ましい実施形態において、本出願のヒトゲノム内のセーフハーバー部位は、導入遺伝子の連続的な発現を維持することができる。好ましい実施形態において、セーフハーバー部位での相同組換えにより、高効率の組換えがもたらされ得る。
【0066】
本方法において特に有用なセーフハーバー部位としては、限定されるものではないが、H11(Hipp11)、AAVS1、hROSA26、及びCCR5が挙げられる。より好ましくは、ヒトゲノム内のセーフハーバー部位はH11部位である。
【0067】
幾つかの実施形態において、セーフハーバー部位は、非必須遺伝子の遺伝子内領域であり得る。「非必須遺伝子」とは、この遺伝子がその機能を失っても対象となる細胞の正常な機能が大幅に害されないことを意味する。例えば、挿入遺伝子座は、TRAC、TRBC1、TRBC2等のような遺伝子内に存在し得る。
【0068】
挿入遺伝子座を決定した後に、その遺伝子座の周囲の領域の配列に基づいて、相同組換えを媒介するのに使用される相同性アームを設計することができる。
【0069】
相同組換え-ドナープラスミドの導入
本出願の方法は、本出願のリプログラミングカセットを、相同組換えを介して体細胞のゲノムに挿入する工程を含む。
【0070】
ドナープラスミドの導入は、当該技術分野におけるあらゆる慣例的な手段によって行われ得る。例えば、リプログラミング遺伝子を含むドナープラスミドを、生物学的方法、化学的方法、及び物理的方法を含む様々な方法によって体細胞内にトランスフェクションさせることができる。例示的な生物学的トランスフェクションは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)等のようなウイルスによって媒介されるトランスフェクションである。化学的トランスフェクションの例は、リン酸カルシウムトランスフェクション、塩化カルシウムトランスフェクション、及びカチオン性ポリマー又はカチオン性脂質を使用したトランスフェクションである。物理的トランスフェクションの例としては、直接注入、バイオリスティック粒子砲撃、及びエレクトロポレーションが挙げられる。当業者であれば、トランスフェクションの方法を決定することができる。
【0071】
相同組換え-培養条件
相同組換えは、自発的な相同組換え、又はin vitroで培養された細胞において起こされるヌクレアーゼ支援による相同組換えであり得る。適切な細胞培養条件は当業者に知られている。
【0072】
本出願の相同組換えについて、培養条件が細胞の成長を支持し得る限り、細胞の培養条件には特に制限はない。通常は組換え効率が高いほど好ましいが、相同組換えの効率は方法論全体の中で重要ではないことが1つの理由である。より後の段階で、細胞は特定及び選択されることになる。リプログラミング因子の挿入に成功した細胞のみがリプログラミングされて多能性幹細胞となり得る。
【0073】
細胞の種類に基づいて適切な培養条件を決定することができる。本方法の出発点としてあらゆる体細胞を使用することができ、そこにリプログラミングプラスミドが導入される。例えば、体細胞はリプログラミングに一般的に使用される線維芽細胞であり得る。別の実施形態において、出発体細胞はリプログラミングに従来使用されていない血液細胞である。本方法に適した血液細胞、例えば末梢血単核細胞(PBMC)又はCD34+造血幹細胞及び造血前駆細胞を、骨髄、臍帯血、又は末梢血から分離することができる。
【0074】
血液細胞を培養する例示的な培地としては、限定されるものではないが、ウシ胎児血清(FBS)若しくはヒト血漿が補充されたイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、又はウシ胎児血清(FBS)若しくはヒト血漿が補充されたRPMI 1640培地、AIM V無血清培地(Gibco)、MarrowMAX(商標)骨髄培地(Gibco)、血液細胞成長培地(Sigma-Aldrich)、又はStemSpan(商標)無血清増殖培地(STEMCELL Technologies)が挙げられる。血液細胞の成長を支持する1種以上の成長因子及びサイトカインを培養培地に補充することができる。ヒトPBMCから分離されたCD34+細胞に関しては、分離された細胞を、1種以上のサイトカイン又は成長因子、好ましくはhSCF、hTPO、hIL-3、hIL-6、及びhFlt3Lの全てが補充された培地、例えばStemSpan(商標)無血清増殖培地II(STEMCELL Technologies)又はStemPro(商標)-34 SFM(Gibco)中で培養することができる。
【0075】
ドナープラスミドの導入後、細胞を体細胞に適した条件下で、例えば2日間~10日間、3日間~8日間、又は4日間~6日間の期間にわたって維持した後に、リプログラミングの誘導に適した条件に切り替えることができる。
【0076】
相同組換え-検証
ドナープラスミドが導入された細胞であるマスター体細胞を選択するのに、ドナープラスミドが選択マーカーを含む場合、細胞を選択ストレス下で培養することができる。
【0077】
組換えの成功を当該技術分野における慣例的な手段によって検証することができる。例えば、相同性アーム-attP-リプログラミング遺伝子(複数の場合もある)-attP-相同性アーム又は相同性アーム-attB-リプログラミング遺伝子(複数の場合もある)-attB-相同性アームのコンストラクトの体細胞への導入の成功を、PCR、シーケンシング、及び/又はサザンブロットによって確認することができる。別の実施形態において、レポーター遺伝子を含むドナープラスミド又はリプログラミングカセットの場合、レポーター遺伝子産物の存在に基づいて、コンストラクトの導入の成功を検証することができる。
【0078】
一方、ドナープラスミドの導入後、リプログラミング工程が完了するまでは検証は必要とされない。検証アッセイを、体細胞を適切な期間にわたってリプログラミング条件下で培養した後でより後の段階に延期することができる。
【0079】
リプログラミング
リプログラミングカセットの導入後、マスター体細胞を、リプログラミングを誘導する条件下で培養して、マスターiPSCを製造することができる。リプログラミング条件としては、細胞のリプログラミングを誘導するのに役立つ培養培地の使用を挙げることができる。このような培地は、リプログラミングを促進し、又はリプログラミングの効率を高める或る特定の化合物及び/又は栄養素を含み得る。このような化合物としては、限定されるものではないが、サイトカイン、成長因子、ミネラル等が挙げられる。上記栄養素としては、限定されるものではないが、必須アミノ酸及び非必須アミノ酸が挙げられる。
【0080】
リプログラミング過程に適した例示的な培地は、基礎培地としてDMEM/F12を含み、血清サプリメント、アミノ酸サプリメント、ミネラル等のサプリメントを更に含む。サプリメントは、市販のプレミックス、例えばN-2サプリメント、B-27(商標)サプリメント、GlutaMAXであるか、又は現場で調合され得る。培地の具体的な例は、10%のKnockOut血清代替物(KSR)、MEM非必須アミノ酸溶液、GlutaMAX、β-メルカプトエタノール、及び100ng/mLの塩基性FGFが補充されたDMEM/F12、又は1%のN-2サプリメント、2%のB-27(商標)サプリメント、MEM非必須アミノ酸溶液、GlutaMAX、β-メルカプトエタノール、及び100ng/mLの塩基性FGFが補充されたDMEM/F12、又はmTeSR(商標)Plus培地(Stemcell)であり得る。
【0081】
リプログラミングカセットの導入の成功の検証の有無にかかわらず、細胞をリプログラミング培養条件に切り替え、適切な期間、例えば少なくとも48時間にわたってリプログラミング条件下で培養することができる。幾つかの実施形態において、細胞をリプログラミング培地中で14日間~21日間培養する。
【0082】
細胞をドナープラスミドの導入後48時間以内に体細胞に適した条件で培養する。その後、体細胞に同量のリプログラミング培地(iPSC培養培地と同じ)を加えて、体細胞培養培地とリプログラミング培地との比率を1:1にする。その48時間後に、体細胞から完全培地が除去され、その後全てのその先の培養にはリプログラミング培地のみが使用される。
【0083】
リプログラミング-検証
iPSCクローンは、相同組換えの成功後にのみ作製され得る。iPSCクローンは、リプログラミングに使用したのと同じ培地又はiPSCに適した様々な培地において培養され得る。iPSC用の具体的な培地は、10%のKnockOut血清代替物(KSR)、MEM非必須アミノ酸溶液、GlutaMAX、β-メルカプトエタノール、及び100ng/mLの塩基性FGFが補充されたDMEM/F12、又は1%のN-2サプリメント、2%のB-27(商標)サプリメント、MEM非必須アミノ酸溶液、GlutaMAX、β-メルカプトエタノール、及び100ng/mLの塩基性FGFが補充されたDMEM/F12、又はEssential 8(商標)培地(Gibco)であり得る。リプログラミングカセットの導入に成功したiPSCクローンは「マスターiPSC」と呼ばれ、限定されるものではないが、PCR及びシーケンシングを含む当該技術分野における慣例的な手段又はサザンブロットによって検証され得る。
【0084】
PCR及びシーケンシング法による検証の場合に、iPSCクローンからgDNAが抽出され得る。例えば、多数のプライマーペアを、具体的には以下のように設計することができる:ペア1:フォワードプライマー:相同性アームの5’アームの300bp外側の20bpの配列、リバースプライマー:リプログラミングカセットのOCT3/4遺伝子内の配列、ペア2:フォワードプライマー:リプログラミングカセットのc-MYC遺伝子内の配列、リバースプライマー:相同性アームの3’アームの300bp外側の20bpの配列、ペア3:フォワードプライマー:相同性アームの5’アームの300bp外側の20bpの配列、リバースプライマー:相同性アームの3’アームの300bp外側の20bpの配列。PCR産物は電気泳動にかけられる。正しい単一アレル標的化クローンでは、プライマーペア3を用いたPCR反応において約600bpのバンドが生成され、プライマーペア1及びプライマーペア2を用いたPCR反応において約2kbのバンドが生成されることとなる。選択されたクローンにおいて不所望な突然変異が存在しないことを検証するのに、シーケンシングによって更なる確認を行うことができる。
【0085】
さらに、サザンブロットを実施して、iPSCクローンにおける挿入物の個性を確認することができる。
【0086】
作製されたiPSCの多能性を検証するのに、当該技術分野において知られるあらゆる慣例的な手段を使用することができる。例えば、iPSCの個性を、多能性マーカーについての免疫細胞化学染色及び/又は奇形腫アッセイによって検証することができる。
【0087】
インテグラーゼ媒介性反応-インテグラーゼ
図1に示されるように、本方法に含まれる第2の組換え反応は、インテグラーゼ付着部位、例えばattB部位を含むドナープラスミド(GOIプラスミド又は空プラスミド)と、2つの対応するインテグラーゼ付着部位、例えばattP部位によって挟まれたリプログラミング遺伝子が既に挿入されたゲノム領域との間で起こるインテグラーゼ媒介性反応である。この組換えはドナープラスミド及びゲノム領域における対応する付着部位の存在とインテグラーゼ(複数の場合もある)の存在とに依存する。組換えによって2つの付着部位間の配列が交換されるため、ドナープラスミド上又はゲノム領域内のどちらにも2つの付着部位が必要とされる。当業者であれば、インテグラーゼ媒介性反応のドナープラスミドにおける付着部位の種類と、リプログラミング遺伝子を両側で挟む付着部位の種類とは、一方がattBであり、もう一方がattPである限り、入れ替え可能であると理解するであろう。
【0088】
一実施形態において、2つの付着部位は、単一のインテグラーゼが認識する同じ付着部位であり得る。この場合、組換えの完了に1種のインテグラーゼしか必要とされない。しかしながら、1インテグラーゼ媒介性組換えの不利点は、ドナープラスミドからの配列がゲノムにどちらの方向にも挿入され得るため、正しい組換え産物が得られる可能性が理論上半減することである。
【0089】
したがって、好ましい実施形態において、インテグラーゼ媒介性組換えは2種のインテグラーゼを含み、交換される配列の両側を挟む付着部位は異なっている。結果として、挿入された配列の方向を制御することができる。
【0090】
本出願のインテグラーゼはヒト細胞において天然に発現されない。インテグラーゼをプラスミドによって送達して発現させることができ、本出願ではこれを「インテグラーゼプラスミド」と呼ぶ。2インテグラーゼシステムの場合、それぞれが一方のインテグラーゼをコードする2種のプラスミドがこの方法において使用され得る。好ましい実施形態において、インテグラーゼは宿主細胞、具体的にはマスターiPSCにおいて一過的に発現される。
【0091】
例示的なインテグラーゼは、限定されるものではないが、バクテリオファージphiC31に由来するphiC31インテグラーゼ、マイコバクテリオファージに由来するBxb1インテグラーゼ、ファージTP901-01に由来するTP901-01リコンビナーゼ、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のspoIVCAリコンビナーゼ、又はストレプトマイセス・パルブルス(Streptomyces parvulus)のファージR4に由来するR4インテグラーゼを含むセリンリコンビナーゼ(セリンインテグラーゼ)であり得る。
【0092】
特定の実施形態において、本出願のインテグラーゼは、Bxb1インテグラーゼ及びphiC31インテグラーゼから選択され得る。
【0093】
例えば、1インテグラーゼシステムの場合に、交換される配列は同じプラスミドにおいて同じ付着部位によって挟まれている。例えば、1インテグラーゼシステムにおいて、Bxb1インテグラーゼ又はphiC31インテグラーゼのいずれかが使用され得る。説明のために、Bxb1インテグラーゼを一例として挙げる。リプログラミングプラスミドにおいては、2つのBxb1 attp部位によりリプログラミング遺伝子が挟まれているのに対し、GOIプラスミドにおいては、2つのBxb1 attb部位により、ゲノムに挿入されてリプログラミングカセットを置き換えるGOI又は任意の配列が挟まれている。Bxb1インテグラーゼのコーディング配列を宿主細胞に送達するのに、1種のインテグラーゼプラスミドしか必要とされない。
【0094】
別の例は2インテグラーゼシステムであり、これは本出願においてより好ましい。2インテグラーゼシステムにおいて、Bxb1インテグラーゼ及びphiC31インテグラーゼの両方がインテグラーゼ媒介性組換えに関与する。リプログラミングプラスミドにおいて、Bxb1 attP部位がリプログラミング遺伝子の一方の側(例えば、5’上流)に位置し、phiC31 attP部位がリプログラミング遺伝子のもう一方の側(例えば、3’下流)に位置する。GOIプラスミドにおいて、Bxb1 attB部位が対象遺伝子(存在する場合)の一方の側(例えば、5’上流)に位置し、phiC31 attB部位が対象遺伝子(存在する場合)のもう一方の側(例えば、3’下流)に位置する。インテグラーゼ媒介性組換えでは、Bxb1及びphiC31の両方のコーディング配列が1種又は2種のいずれかのプラスミドによって細胞に送達される。
【0095】
インテグラーゼ媒介性反応-GOIプラスミド及びインテグラーゼプラスミド
インテグラーゼ媒介性反応には、付着部位、例えばattB部位を含むドナープラスミドと、インテグラーゼ(複数の場合もある)をコードする遺伝子を運ぶ1種又は2種のインテグラーゼプラスミドとを含む2種以上のプラスミドが含まれる。
【0096】
インテグラーゼ媒介性反応のドナープラスミドは、相同組換え反応のドナープラスミドに含まれる付着部位、例えばattP部位に対応する2つの付着部位、例えばattB部位を含む。
【0097】
iPSCのゲノムからリプログラミング遺伝子を単純に除去するには、2つの付着部位、例えばattB部位の間に配列が存在する必要はない。一実施形態において、この配列は、ゲノム内の2つの相同性アームに対応する2つの領域間に存在する元の配列であり得る。その後、インテグラーゼ媒介性反応により、挿入遺伝子座の元の配列が復元されることになる。
【0098】
リプログラミング遺伝子を対象遺伝子(GOI)に置き換えるには、この工程のドナープラスミドにおける2つの付着部位、例えばattB部位間の配列がGOIの配列である。本出願において、GOIはあらゆる対象遺伝子であり得る。例えば、GOIは疾患関連遺伝子、突然変異遺伝子、レポーター遺伝子、発生関連遺伝子等であり得る。
【0099】
インテグラーゼ媒介性反応-反応条件
マスターiPSCを解離させて単一細胞にした後に、更なる処理にかけることができる。解離を物理的方法又は化学的方法、例えばアキュターゼ等の酵素を使用することによって完了することができる。また、マスターiPSCを、単一細胞としてのiPSCの生存率を高める化学物質、例えばROCK阻害剤Y-27632、チアゾビビン等が補充された「リプログラミング」と題するセクションで上記した条件下で培養することもできる。
【0100】
GOI及びインテグラーゼを運ぶプラスミドを、上記のように当該技術分野における慣例的なトランスフェクション手段を介して導入することができる。
【0101】
インテグラーゼ媒介性反応-検証
インテグラーゼ媒介性反応は、iPSCのゲノムからリプログラミング遺伝子を除去することを目的としている。したがって、この工程の完了の検証をレポーター遺伝子の喪失の観察又は標的化領域のPCR反応によって行うことができる。
【0102】
iPSCの用途
本方法によって作製されたiPSCには、科学研究及び医薬品開発における多数の用途がある。
【0103】
例えば、インテグラーゼ媒介性組換えによりiPSCからリプログラミング遺伝子が除去される場合、外来遺伝子を一切含まない得られたiPSCをiPSCが必要とされるあらゆる場面で使用することができる。
【0104】
幾つかの実施形態において、インテグラーゼ媒介性組換えによりリプログラミング遺伝子が対象遺伝子と置き換えられ、これによりiPSCの応用が無限の可能性に拡大される。例えば、GOIが導入されたiPSCを使用して、遺伝子機能、遺伝子突然変異、及び分化における相互作用等を研究することができる。例えば、導入されたGOIは疾患関連遺伝子であり得るため、作製されたiPSCを、例えば遺伝子療法による疾患の治療に使用することができる。潜在的な応用としては、薬物スクリーニング、in vitro疾患モデリング、細胞療法等も挙げられる。
【実施例】
【0105】
以下の部分において、例示的な実験プロトコルを示す。
【0106】
例示的な一実施形態において、本出願を以下のように実施することができ、
図1を参照することができる。
【0107】
以下のコンストラクト、すなわち、
a)5’H11相同性アーム-phiC31 attP-リプログラミング因子の遺伝子-GFP遺伝子-Bxb1 attP-3’H11相同性アームを含むドナープラスミド、
b)phiC31 attB-対象遺伝子-Bxb1 attBを含むGOIプラスミド、
c)phiC31インテグラーゼのコーディング配列及びBxb1インテグラーゼのコーディング配列を含むインテグラーゼ発現プラスミド、
を分子クローニングによって調製した。
【0108】
ヒト体細胞を使用前に適切な培地中で培養した。
【0109】
ドナープラスミドをエレクトロポレーター又はヌクレオフェクターを用いてヒト体細胞内に送達し、これを1日目とした。トランスフェクションされた体細胞を、マウス胎児線維芽細胞(MEF)フィーダー細胞上又はマトリゲル/フィブロネクチンでコーティングされた細胞培養プレート上のいずれかにプレーティングし、適切な培地中で2日間培養した。3日目に、同容量のiPSC培養培地を2日間細胞に加えた。
【0110】
5日目に培地をヒトiPSC培養培地に切り替えた。培地を毎日新しいヒトiPSC培養培地と交換し、ヒトiPSCコロニーの望ましい形態が観察され得るまで細胞培養を継続した。
【0111】
個々のヒトiPSCコロニーを採取した。それぞれの個々のコロニーを別々に培養し、増殖させた。採取したヒトiPSCを、多能性マーカーについての免疫細胞化学、OCT3/4プロモーターについてのDNAメチル化分析、三胚葉へのin vitroでの分化、奇形腫アッセイ、組み込みコピー数アッセイに対するサザンブロット、及びドナープラスミド由来のリプログラミング因子がH11遺伝子座に挿入されたことを確認するDNAシーケンシング等から選択される1つ以上の方法で特性評価し、幾つかの候補クローンを特定した。
【0112】
phiC31インテグラーゼ及びBxb1インテグラーゼ発現プラスミド並びに対象遺伝子プラスミドを候補ヒトiPSC内に送達して、phiC31インテグラーゼ及びBxb1インテグラーゼの助けを借りてH11遺伝子座におけるattP部位と対象遺伝子発現プラスミドにおけるattB部位との間のインテグラーゼ媒介性組換えを可能にしたところ、ドナープラスミドからのリプログラミング因子がH11遺伝子座から欠失すると同時に、対象遺伝子がH11遺伝子座に挿入されて後に使用されることとなる。
【0113】
上記と同様のアッセイを実施して、最終的なクローンを特定した。
【0114】
リプログラミングカセットの導入の成功の検証
相同組換えに成功したiPSCクローンを(1)PCR及びシーケンシング、並びに(2)サザンブロットによって検証した:
【0115】
1.PCR及びシーケンシング
【0116】
iPSCクローンからgDNAを抽出する。
【0117】
次の3つのプライマーペア、すなわちペア1:フォワードプライマー:相同性アームの5’アームの300bp外側の20bpの配列、リバースプライマー:リプログラミングカセットOCT3/4遺伝子内の配列、ペア2:フォワードプライマー:リプログラミングカセットc-MYC遺伝子内の配列、リバースプライマー:相同性アームの3’アームの300bp外側の20bpの配列、ペア3:フォワードプライマー:相同性アームの5’アームの300bp外側の20bpの配列、リバースプライマー:相同性アームの3’アームの300bp外側の20bpの配列を用いて、鋳型として抽出されたgDNAを使用してPCRを行う。
【0118】
PCR産物をアガロースゲルに流す。正しい単一アレル標的化クローンでは、プライマーペア3を用いたPCR反応において約600bpのバンドが生成され、プライマーペア1及びプライマーペア2を用いたPCR反応において約2kbのバンドが生成されることとなる。第4工程においてこれらのクローンをシーケンシング用に選択する。
【0119】
工程3において選択されたクローンからのプライマーペア1及びプライマーペア2を用いたPCR反応から2kbのバンドを精製し、シーケンシングを行って突然変異を有しないクローンを特定する。
【0120】
リプログラミングカセットが正しく導入されたクローンを使用してサザンブロット分析を行った。
【0121】
2.サザンブロット
【0122】
iPSCクローンからgDNAを抽出する。
【0123】
制限酵素を用いてDNAを消化して断片にし、DNA断片をアガロースゲル上で分離する。
【0124】
DNA断片をゲルからナイロンメンブレンへと転写し、サケ精子DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液でナイロンメンブレンを洗浄して、非特異的DNA相互作用をブロッキングし、バックグラウンドノイズを減らす。
【0125】
コンストラクト内のプロモーター領域を標的とするプローブを準備し、32Pα標識dCTPで標識する。
【0126】
ブロットを標識プローブとともにインキュベートし、フィルムに曝すことによりプローブ及び対象のDNA配列を検出する。
【0127】
サザンブロットにおいて1つのバンドを有するiPSCクローンのみが正しく標的化されたクローンであり、これを更なる特性評価に使用した。
【0128】
リプログラミング
リプログラミングを以下のプロトコルに従って実施した。
【0129】
ヒトPBMCからCD34+細胞を分離する。
【0130】
CD34+細胞を24ウェルプレートにプレーティングし、hSCF、hTPO、hIL-3、hIL-6、及びhFlt3Lが補充されたStemSpan(商標)無血清増殖培地II中で培養する。
【0131】
3日後に、Etta(商標)のX-Porator H1システム又はLonza(商標)の4D-Nucleofector(商標)を使用して、細胞にリプログラミングプラスミドをトランスフェクションさせる。トランスフェクションされた細胞をCorning(商標)のマトリックスがコーティングされた培養皿にプレーティングし、サイトカインを含むStemSpan(商標)培地中でこれらをインキュベートする。
【0132】
トランスフェクションの2日後に、トランスフェクションされた細胞に同容量のmTeSR(商標)Plus iPSC培養培地を加え、更に2日間培養する。
【0133】
トランスフェクションの4日後に、培地をmTeSR(商標)Plus培地に交換し、培養容器をiPSCコロニーの出現について監視する。消費された培地を1日おきに取り替える。
【0134】
プラスミドコンストラクトは、選択及びスクリーニング用のネオマイシン耐性遺伝子及びGFP遺伝子を保有していた。トランスフェクション後、GFP発現により、
図2に示されるように、遺伝子座からの遺伝子発現レベルの指標が与えられた。トランスフェクションの2週間~3週間後に、GFP
+未分化iPSCを採取し、新しいCorning(商標)のマトリックスでコーティングされた培養皿に移して増殖及び継代を行った。3回(ほぼ20日間)にわたる培養及び継代の後、これらのコロニーは
図3に示されるように典型的なhES細胞の形態を示した。
【0135】
多能性マーカーについての免疫細胞化学染色
以下のプロトコルに従って、細胞を免疫細胞化学により多能性マーカーについて試験した。これらの細胞は、OCT4、SOX2、及びNANOGに加えて、多能性細胞表面マーカーのTRA-1-60、TRA-1-81、及びSSEA-4を発現していた(
図4)。
【0136】
細胞をPBSで1回軽く洗浄し、PBS中4%のパラホルムアルデヒドで細胞を15分間固定する。
【0137】
細胞をPBSですすぎ、透過処理をし、PBST(PBS+0.1%のTritonX-100)中2.5%のロバ血清を使用して室温で60分間ブロッキングする。
【0138】
PBST中2.5%のロバ血清中で希釈された次の一次抗体とともに細胞を4℃で16時間~18時間インキュベートする:SSEA4、TRA-1-60、TRA-1-81、OCT4、SOX2、NANOG。
【0139】
細胞をPBSで3回洗浄した後、0.1%のウシ血清アルブミンを含むPBS中で希釈された次の二次抗体、すなわちローダミン標識ロバ抗マウスIgG、ローダミン標識ロバ抗ウサギIgG、及びローダミン標識ロバ抗ヤギIgGとともに細胞を室温で1時間インキュベートする。
【0140】
細胞を3回洗浄し、1μg/mlのDAPIで核を染色する。
【0141】
3回洗浄した後、蛍光顕微鏡下で染色結果を観察する。
【0142】
1mg/mlのReLeSR(商標)処理によりiPSCを回収し、遠心分離し、DMEM/F12培地中に細胞を再懸濁する。
【0143】
1枚の60mmの皿からの細胞を、非肥満糖尿病/重症複合免疫不全(NOD/SCID)マウスへと皮下注射する。
【0144】
奇形腫が6週間~8週間後に形成されることになる。
【0145】
更に2週間後、マウスを屠殺し、腫瘍を剖検する。
【0146】
4%のパラホルムアルデヒドを含むPBSで腫瘍を固定し、パラフィンで包埋する。
【0147】
スライスした後、切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色する。
【0148】
5×105個の細胞を10cmの細胞培養皿に播種して接着させる。細胞を37℃、5%のCO2で48時間インキュベートした。
【0149】
培養2日後、有糸分裂紡錘体を崩壊させ、有糸分裂の完了を防ぐことができるコルセミドを各皿に0.1ml加え、優しく混ぜる。37℃、5%のCO2で2時間インキュベートした。
【0150】
培地を細胞培養皿から遠心分離チューブに移す。PBSを使用して皿を洗浄し、PBSを除去する。次いで、1mlの0.1%のトリプシンを皿に加えて37℃、5%のCO2で2分間置く。また、混合物(トリプシン及び細胞)を遠心分離チューブに移し、遠心分離チューブに移した培地と混合した後、PBSを使用して皿を洗浄する。さらに、室温にて100rcfで10分間遠心分離する。
【0151】
上清を捨て、0.5mlの培地を残してペレットを優しく混ぜる。
【0152】
ペレットを5ml~7mlの37℃の低張液中に再懸濁し、入念に混ぜる。37℃の水浴中で10分間インキュベートする。
【0153】
室温にて100rcfで10分間遠心分離する。上清を捨て、0.5mlの溶液を残してペレットを優しく混ぜる。ペレットを5mlの冷固定液中に再懸濁する(一滴ずつ滴下し、滴下の合間にチューブを軽く弾いて細胞集塊を防ぐ)。
【0154】
遠心分離チューブを氷上に少なくとも20分間置く。室温にて100rcfで10分間遠心分離する。上清を捨て、3ml~5mlの冷固定液(メタノール及び氷酢酸(3:1)を使用前に新たに作り、冷やしておく)を加える。
【0155】
洗浄工程を3回繰り返すか、又は上清及びペレットが白くなるまで繰り返す。
【0156】
最後の遠心分離後に、細胞を数滴の冷固定液中に懸濁して、僅かに不透明な懸濁液を得る。湿ったきれいなスライドガラスに1滴~2滴を滴下する(その前に、スライドガラスを1滴~2滴の冷固定液ですすぐ必要がある)。
【0157】
スライドガラスを室温で乾燥させる。顕微鏡(200倍の倍率を有するOlympusのDP71)を用いて染色体を観察する。約50個の細胞について染色体数を数える。CD34+PBMC由来iPSCの染色体Gバンド分析により、クローン異常の証拠はなく正常な核型が明らかとなった。
【0158】
インテグラーゼ媒介性組換え
インテグラーゼ媒介性組換えを以下のプロトコルに従って実施した。
【0159】
iPSCをアキュターゼで解離させて単一細胞にし、インテグラーゼ媒介性反応用に1×106個の細胞を収集する。
【0160】
Etta(商標)のX-Porator H1システムを使用して、phiC31インテグラーゼ、Bxb1インテグラーゼ、及びattBドナープラスミドをそれぞれ4μgずつ細胞にトランスフェクションさせる。
【0161】
トランスフェクションされた細胞をCorning(商標)のマトリックスがコーティングされた培養皿にプレーティングし、2μMのチアゾビビンが補充されたmTeSR(商標)Plus培地中で細胞を培養する。
【0162】
培地を毎日交換する。
【0163】
トランスフェクションの1週間後に、GFP-未分化iPSCを採取し、新しいCorning(商標)のマトリックスでコーティングされた培養皿に移して増殖させた。リプログラミング遺伝子が除去され、更に対象遺伝子が導入されたiPSCを作製することに成功した。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’に向かって、
i.ヒトゲノム内の遺伝子座の第1の領域と相同な5’相同性アームと、
ii.インテグラーゼIの第1の付着部位と、
iii.リプログラミング因子のセットのコーディング配列を含むリプログラミングカセットと、
iv.インテグラーゼIIの第1の付着部位と、
v.前記遺伝子座の第2の領域と相同な3’相同性アームと、
を含み、ここで、前記遺伝子座はヒトゲノム内のセーフハーバー遺伝子座である、核酸コンストラクト。
【請求項2】
前記インテグラーゼI及び前記インテグラーゼIIは、ヒト細胞において活性なインテグラーゼである、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項3】
前記インテグラーゼI及び前記インテグラーゼIIは、同じインテグラーゼ又は2種の異なるインテグラーゼである、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項4】
前記インテグラーゼI及び前記インテグラーゼIIは、phiC31インテグラーゼ及びBxb1インテグラーゼから選択される、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項5】
前記第1の付着部位は、attP又はattB、好ましくはattPである、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項6】
前記セーフハーバー遺伝子座は、H11遺伝子座である、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項7】
前記5’相同性アーム及び前記3’相同性アームは、約10bp~約10kbの長さを有する、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項8】
前記リプログラミングカセットは、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子を更に含む、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項9】
前記リプログラミングカセットは、OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc-MYCのコーディング配列を含む、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項10】
前記リプログラミングカセットは、5’から3’に向かって、OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc-MYCのコーディング配列を含む、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項11】
前記リプログラミング因子のコーディング配列は、自己切断ペプチドをコードするDNA配列によって連結されている、請求項
1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項12】
前記自己切断ペプチドは、2Aペプチドである、請求項11に記載の核酸コンストラクト。
【請求項13】
請求項
1に記載の核酸コンストラクトを含むベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む組成物。
【請求項15】
請求項13に記載のベクターを含むキット。
【請求項16】
インテグラーゼIの第2の付着部位及びインテグラーゼIIの第2の付着部位を含む第2のベクターを更に含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記第2のベクターは、前記インテグラーゼIの第2の付着部位と前記インテグラーゼIIの第2の付着部位との間に位置する対象遺伝子(GOI)カセットを含み、かつ前記GOIカセットは、前記対象遺伝子のコーディング配列を含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記GOIは、治療遺伝子、選択マーカー、及びレポーター遺伝子からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記GOIカセットは、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子を更に含む、請求項1
7に記載のキット。
【請求項20】
前記第1の付着部位がattPである場合に、前記第2の付着部位は、attB部位であり、かつ前記第1の付着部位がattBである場合に、前記第2の付着部位は、attP部位であり、好ましくは前記第2の付着部位は、attBである、請求項1
6に記載のキット。
【請求項21】
前記インテグラーゼIのコーディング配列及び前記インテグラーゼIIのコーディング配列を含むインテグラーゼ発現ベクターを更に含む、請求項1
5に記載のキット。
【請求項22】
ヒト体細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)を製造する方法であって、
a)請求項13に記載のベクターを前記ヒト体細胞に導入する工程と、
b)前記5’相同性アームと前記第1の領域との間及び前記3’相同性アームと前記第2の領域との間の組換えを促進する条件下で前記ヒト体細胞を培養し、その結果、前記遺伝子座に前記リプログラミングカセットが挿入され、マスター体細胞が作製される工程と、
c)工程b)により作製された前記マスターヒト体細胞を、リプログラミングを促進する条件下で培養して、マスターiPSCの作製を可能にする工程と、
を含む、方法。
【請求項23】
d)工程c)により作製された前記マスターiPSCに第2のベクター及びインテグラーゼ発現ベクターを導入する工程と、
ここで、前記第2のベクターは、インテグラーゼIの第2の付着部位及びインテグラーゼIIの第2の付着部位を含み、かつ前記インテグラーゼ発現ベクターは、前記インテグラーゼIのコーディング配列及び前記インテグラーゼIIのコーディング配列を含む;
e)工程d)により作製された前記iPSCを、前記インテグラーゼIの第1の付着部位と第2の付着部位との間及び前記インテグラーゼIIの第1の付着部位と第2の付着部位との間でのインテグラーゼ媒介性組換えを促進する条件下で培養し、その結果、前記iPSCのゲノムからリプログラミングカセットが切り出される工程と、
を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のベクターは、前記インテグラーゼIの第2の付着部位と前記インテグラーゼIIの第2の付着部位との間に位置する対象遺伝子(GOI)カセットを含み、かつ前記GOIカセットは、前記対象遺伝子のコーディング配列を含み、ここで、工程e)における前記インテグラーゼ媒介性組換えにより、前記リプログラミングカセットと前記対象遺伝子との置き換えがもたらされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記GOIは、治療遺伝子、選択マーカー、及びレポーター遺伝子からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記GOIカセットは、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子を更に含む、請求項2
4に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の付着部位がattPである場合に、前記第2の付着部位は、attB部位であり、かつ前記第1の付着部位がattBである場合に、前記第2の付着部位は、attP部位であり、好ましくは前記第2の付着部位は、attBである、請求項2
3に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト体細胞は、血液細胞である、請求項2
2に記載の方法。
【請求項29】
前記血液細胞は、末梢血単核細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法から得ることができるiPSCの集団。
【請求項31】
前記集団の50%を超えるiPSCは、前記リプログラミングカセットを1コピーしか有しない、
請求項30に記載のiPSCの集団。
【請求項32】
請求項2
4に記載の方法から得ることができるiPSCの集団。
【請求項33】
前記集団の50%を超えるiPSCは、前記GOIカセットを1コピーしか有しない、
請求項32に記載のiPSCの集団。
【請求項34】
請求項13に記載のベクタ
ーを含む宿主細胞。
【請求項35】
iPSCの製造における請求項13に記載のベクターの使用。
【国際調査報告】