(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】最適化されたCYP4V2遺伝子およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20250115BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250115BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20250115BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20250115BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250115BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250115BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250115BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20250115BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20250115BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20250115BHJP
A61K 35/765 20150101ALI20250115BHJP
A61K 35/766 20150101ALI20250115BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20250115BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20250115BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/86 Z
C12N7/01
A61K48/00
A61P43/00 111
A61P27/02
A61K31/7088
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/765
A61K35/766
A61K47/69
C12N15/864 100Z
C12N15/09 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538654
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022140586
(87)【国際公開番号】W WO2023116745
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111580873.0
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524237951
【氏名又は名称】蘇州諾潔貝生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曹青
(72)【発明者】
【氏名】張海
(72)【発明者】
【氏名】文聖梅
(72)【発明者】
【氏名】蒋立新
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
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4B065AC14
4B065BA01
4B065CA44
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4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、SEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7、SEQ ID NO 8またはSEQ ID NO 9に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、CYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する最適化されたCYP4V2遺伝子およびその使用を提供する。本開示は、また、眼の網膜色素上皮層において効率的、持続的かつ安定的な発現を実現でき、BCDを治療するための遺伝子治療薬物の用量および起こり得る副作用を効果的に低減し、治療効果を改善し得る、前記遺伝子を含む発現ベクターに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7、SEQ ID NO 8またはSEQ ID NO 9に示されるヌクレオチド配列に対して、90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、CYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、
好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7、SEQ ID NO 8またはSEQ ID NO 9に示されるものであり、
より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 5に示されるものである、CYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリヌクレオチドと、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターとを含む発現カセット。
【請求項3】
請求項1に記載のポリヌクレオチドまたは請求項2に記載の発現カセットを含む発現ベクター。
【請求項4】
発現制御エレメントをさらに含み、前記CYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、前記発現制御エレメントに作動可能に連結されており、
好ましくは、前記発現制御エレメントは、転写/翻訳制御シグナル、複製起点、プロモーター、エンハンサー、イントロン、poly Aシグナル、ITR、インシュレーター、RNAプロセシングシグナル、mRNAおよび/またはタンパク質の安定性を増強するエレメントから選択された1種または複数種であり、
好ましくは、前記発現ベクターは複製起点を含み、好ましくは、前記複製起点の配列は、f1ファージori、RK2oriV、pUC ori、およびpSC101oriから選択され、
好ましくは、前記発現ベクターは、5’ITRをさらに含み、好ましくは、前記5’ITRは、SEQ ID NO 1に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 1に示されるものであり、
好ましくは、前記発現ベクターは、3’ITRをさらに含み、好ましくは、前記3’ITRは、SEQ ID NO 11に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 11に示されるものであり、
好ましくは、前記発現ベクターは、エンハンサーをさらに含み、好ましくは、前記エンハンサーは、CMVエンハンサーであり、より好ましくは、前記エンハンサーは、SEQ ID NO 2に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の同一性を有するヌクレオチド列を含み、より好ましくは、98%以上または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 2に示されるものであり、
好ましくは、前記発現ベクターは、プロモーターをさらに含み、好ましくは、前記プロモーターは、特異的または非特異的プロモーターであり、好ましくは、前記プロモーターは、CBAプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、hPGKプロモーターおよびTRE3GSプロモーターから選択され、より好ましくは、前記プロモーターは、CBAプロモーターであり、好ましくは、前記CBAプロモーターは、SEQ ID NO 3に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 3に示されるものであり、好ましくは、前記プロモーターは誘導可能プロモーターであり、好ましくは、前記誘導可能系は、テトラサイクリン調節プロモーター、アルコール調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、病原性調節プロモーター、温度/熱誘導型プロモーター、および光調節プロモーター、IPTG誘導型系のうちの1種または複数種を含み、好ましくは、前記テトラサイクリン調節プロモーターは、Tet onプロモーター、Tet offプロモーター、およびTet Activatorプロモーターから選択され、好ましくは、前記アルコール調節プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランスアクチベータータンパク質(AlcR)に応答するプロモーターから選択され;好ましくは、前記ステロイド調節プロモーターは、ラットグルココルチコイド受容体プロモーター、ヒトエストロゲン受容体プロモーター、蛾エクジステロイド受容体プロモーター、レチノイドプロモーター、および甲状腺受容体スーパーファミリープロモーターから選択され、好ましくは、前記金属調節プロモーターは、酵母、マウスおよびヒトのメタロチオネインプロモーターから選択され、好ましくは、前記病原性調節プロモーターは、サリチル酸調節プロモーター、エチレン調節プロモーターおよびベンゾチアジアゾール調節(BTH)プロモーターから選択され、好ましくは、前記温度/熱誘導型プロモーターは、HSP-70プロモーター、HSP-90プロモーターおよび大豆熱ショックプロモーターから選択され、好ましくは、前記光調節プロモーターは、植物細胞の光応答型プロモーターであり、
好ましくは、前記発現ベクターは、エクソンおよびイントロンをさらに含み、好ましくは、前記エクソンおよびイントロンは、ニワトリβ-アクチン遺伝子の第1エクソンおよび第1イントロンであり、好ましくは、前記エクソンおよびイントロンは、SEQ ID NO 4に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 4に示されるものであり、
好ましくは、前記発現ベクターは、polyAシグナルをさらに含み、好ましくは、前記polyAシグナルは、ウシ成長ホルモンpoly A(BGH poly A)、ショートpoly A、SV40 poly A、および/またはヒトβ-ビーズタンパク質poly Aであり;好ましくは、前記polyAシグナルは、SEQ ID NO 10に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 10に示されるものであり、
好ましくは、前記発現ベクターは、SEQ ID NO 12、SEQ ID NO 13、SEQ ID NO 14、SEQ ID NO 15またはSEQ ID NO 16に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 12、SEQ ID NO 13、SEQ ID NO 14、SEQ ID NO 15またはSEQ ID NO 16に示される通りであり、
好ましくは、前記ベクターは、転写後調節エレメントを含み、好ましくは、前記転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)であり、
好ましくは、前記ベクターは、マーカーをコードする遺伝子をさらに含み、好ましくは、前記マーカーは、抗生物質耐性タンパク質、毒素耐性タンパク質、着色または蛍光または発光タンパク質、および強化された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質から選択される1種または複数種であり、
好ましくは、前記抗生物質は、アンピシリン、ネオマイシン、G418、ピューロマイシンおよびブラストサイジンから選択され、
好ましくは、前記毒素は、炭疽毒素およびジフテリア毒素から選択され、
好ましくは、前記着色タンパク質または蛍光タンパク質または発光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質およびフルオレセイナーゼから選択され、好ましくは、前記の増強された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である、
請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記発現ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、RNAベクター、または、線状もしくは円形のDNAもしくはRNA分子から選択され、
好ましくは、前記プラスミドは、pCI、puc57、pcDNA3、pSG5、pJ603およびpCMVから選択され、
好ましくは、前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、ネガティブストランドRNAウイルス、例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルスおよびセンダイウイルス)、ポジティブストランドRNAウイルス、例えば、小分子RNAウイルスおよびアルファウイルス、および二本鎖DNAウイルスから選択され、前記二本鎖DNAウイルスは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)およびポックスウイルス(例えば、牛痘ウイルス、鶏痘ウイルス、およびカナリアポックスウイルス)、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、バキュロウイルス、および肝炎ウイルスを含み、
好ましくは、前記レトロウイルスは、鳥類白血球産生組織過形成肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV集合、レンチウイルスおよびフォーミーウイルスから選択され、
好ましくは、前記レンチウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVおよびヒツジ脱髄性白質脳炎レンチウイルスから選択される、
請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項6】
アデノ随伴ウイルスであり、
好ましくは、前記アデノ随伴ウイルスは、AAV1型、AAV2型、AAV3型、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、鳥AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、およびヒツジAAVから選択され、
好ましくは、前記発現ベクターは、短縮されたキメライントロンおよびKozak開始配列をさらに含み、
好ましくは、前記短縮されたキメライントロンは、SEQ ID NO 4に示され、
好ましくは、前記Kozak開始配列は、SEQ ID NO 17に示される、
請求項3~5のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項7】
請求項1に記載のポリヌクレオチド、請求項2に記載の発現カセットおよび/または請求項3~6のいずれか1項に記載の発現ベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項8】
請求項1に記載のポリヌクレオチド、請求項2に記載の発現カセット、請求項3~6のいずれか1項に記載の発現ベクターおよび/または請求項7に記載のウイルス粒子、および薬学的に許容される担体を含む、BCDの治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が野生型またはコドンが最適化されたCYP4V2タンパク質を発現する、
医薬組成物。
【請求項9】
Bietti結晶性ジストロフィー(BCD)を治療するものの調製における、請求項1に記載のポリヌクレオチド、請求項2に記載の発現カセット、請求項3~6のいずれか1項に記載の発現ベクター、請求項7に記載のウイルス粒子、および/または、請求項8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
CYP4V2遺伝子を標的とするsgRNAを設計するステップ(1)、
ステップ(1)で得られた前記sgRNAをCas9-sgRNAベクターに構築し、Cas9-sgRNAプラスミドを得るステップ(2)、おようび、
ステップ(2)で得られた前記Cas9-sgRNAプラスミドを細胞に導入し、CYP4V2遺伝子変異を有する細胞を得るステップ(3)、
を含むCYP4V2変異を有するBCD細胞モデルを構築する方法であって、
好ましくは、前記方法は、CYP4V2遺伝子変異を有する細胞をスクリーニングするステップ(4)をさらに含み、
好ましくは、前記方法は、前記CYP4V2遺伝子変異細胞を同定するステップ(5)をさらに含み、
好ましくは、前記sgRNAは、SEQ ID NO 18~21のうちの1種または複数種から選択され、
好ましくは、前記同定は、細胞増殖の同定、オートファジー変化の同定、および脂肪粒子沈着の同定から選択される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遺伝子治療の分野に属し、具体的に、ビエッティ結晶性ジストロフィー(BCD)を標的とする遺伝子治療に用いられるCYP4V2遺伝子発現の最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti crystalline dystrophy,BCD、ヒトメンデル遺伝病OMIM210370)は、CYP4V2遺伝子の両対立遺伝子変異によって引き起こされる稀な遺伝的常染色体劣性疾患である。本疾患は、1937年にイタリアの医師G.B.ビエッティによって初めて報告された。この疾患は、網膜の後極に多数の小さな光沢のある黄白色の結晶体様沈着物が存在すること、網膜色素上皮(retinal pigment epithelium,RPE)の萎縮、色素凝固および脈絡膜硬化によって特徴づけられる。この疾患の進行は、最終的に視力低下、夜盲症、視野欠損、色覚障害を引き起こす。この疾患の発症は思春期から30歳までに起こるが、30歳以降に起こることもある。病気の進行に伴い、周辺視力、中枢視力、またはその両方が低下し、最終的にはほとんどの患者は、法的な失明に至る(Garcia-Garcia,Martinez-Rubio et al.“Current Perspectives in Bietti crystalline dystrophy.”Clin Ophthalmol 13: 1379-1399.)。
【0003】
BCDは、CYP4V2遺伝子の変異により引き起こされるものである。この遺伝子は、ヒト第4染色体の長腕に位置し、シトクロムP450(ファミリー4、サブファミリーIV、ポリペプチド2)の重要なメンバーで、脂肪酸代謝に関与する525アミノ酸を有するタンパク質をコードする(Li,Jiao et al.(2004).“Bietti crystalline corneoretinal dystrophy is caused by mutations in the novel gene CYP4V2.”Am J Hum Genet 74(5):817-826)。CYP4V2タンパク質は、網膜と角膜の上皮細胞に存在し、該酵素は、小胞体に局在している。この酵素は、中鎖飽和脂肪酸に対する典型的なCYP4のω-ヒドロキシラーゼ活性を持つ。CYP4V2は、網膜細胞に有意なレベルで存在する唯一のCYP4であり、網膜細胞における多価不飽和脂肪酸代謝に重要な役割を果たしている可能性がある。CYP4V2の触媒機能欠損につながる変異は、眼脂質の分解を阻害し、その結果、BCD患者の眼に蓄積物が形成される(Hata,Ikeda et al.(2018).“Reduction of lipid accumulation rescues Bietti’s crystalline dystrophy phenotypes.”Proc Natl Acad Sci U S A 115(15): 3936-3941;Zhang,Yan et al.(2020).“PSCs Reveal PUFA-Provoked Mitochondrial Stress as a Central Node Potentiating RPE Degeneration in Bietti’s Crystalline Dystrophy.”Mol Ther 28(12):2642-2661)。一部の患者では、全身性の脂質封入体も見られる(Lai,Chu et al.(2010).“Alterations in serum fatty acid concentrations and desaturase activities in Bietti crystalline dystrophy unaffected by CYP4V2 genotypes.”Invest Ophthalmol Vis Sci 51(2):1092-1097)。
【0004】
BCDは、67,000人につき1人が発症すると推定されている。これは、東アジア系、特に中国や日本系の人々によく見られる。中国には21,000人、米国には約5,000人の患者がいると推定されている。BCDの症状は、網膜を徐々に損傷する他の眼疾患の症状と類似しているため、過小診断されている可能性がある。現在、BCDに用いられる有効な治療法はない(Ng,Lai et al.(2016).“Genetics of Bietti Crystalline Dystrophy.”Asia Pac J Ophthalmol (Phila) 5(4):245-252;Wang,Chen et al.(2021).“New compound heterozygous CYP4V2 mutations in bietti crystalline corneoretinal dystrophy.”Gene 790:145698.)。
【0005】
BCDに対する遺伝子治療戦略は、現在開発中である。高脂肪食(HFD)誘発BCDマウスモデルにおいて、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターによって運ばれたヒトCYP4V2遺伝子は、網膜下注射によってRPE層で発現され、いくつかの生理的および機能的欠損が効果的に回復され、BCD疾患に対する遺伝子治療の有効性が概念的に実証された(Qu, Wu et al.(2020).“Treating Bietti crystalline dystrophy in a high-fat diet-exacerbated murine model using gene therapy.”Gene Ther 27(7-8):370-382)。
【0006】
AAV媒介CYP4V2遺伝子治療は、現在、いくつかの製薬会社で研究開発の初期段階にある。現在までのところ、有効な治療効果を達するよう生体内でCYP4V2を十分かつ持続的に発現させることが可能であることを証明した報告はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、先行技術の問題点を解決するために、眼の網膜のRPE層においてヒトCYP4V2を効率的、持続的かつ安定的に発現させ、かつBCDの治療に用いるための、遺伝子発現を最適化したウイルスベクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本開示は、SEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7、SEQ ID NO 8またはSEQ ID NO 9に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有し、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは98%または99%またはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、CYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7、SEQ ID NO 8、またはSEQ ID NO 9に示されるものである。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 5に示されるものである。
【0011】
もう一つの態様において、本開示は、前記ポリヌクレオチドおよび前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットを提供する。
【0012】
もう一つの態様において、本開示は、前記ポリヌクレオチドまたは前記発現カセットを含む前記態様のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態において、前記のCYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、前記発現制御エレメントに作動可能に連結される。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現制御エレメントは、転写/翻訳制御シグナル、複製起点、プロモーター、エンハンサー、イントロン、poly Aシグナル、ITR、絶縁体、RNAプロセシングシグナル、mRNAおよび/またはタンパク質の安定性を増強するエレメントから選択される1種または複数である。
【0015】
もう一つの態様において、本開示は、前記発現ベクターを含む細胞を提供する。
【0016】
もう一つの態様において、本開示は、前記発現ベクターを含むウイルス粒子を提供する。
【0017】
もう一つの態様において、本開示は、前記ポリヌクレオチド、前記発現カセット、前記発現ベクターおよび/または前記ウイルス粒子、および薬学的に許容される担体を含む、BCDの治療のための、野生型またはコドン最適化されたCYP4V2タンパク質を発現する医薬組成物を提供する。
【0018】
もう一つの態様において、本開示は、ビエッティ結晶性ジストロフィー(BCD)を治療するものの調製における、前記ポリヌクレオチド、前記発現カセット、前記発現ベクター、前記ウイルス粒子、および/または前記医薬組成物の使用を提供する。
【0019】
もう一つの態様において、本開示は、有効量の前記ポリヌクレオチド、前記発現カセット、前記発現ベクター、前記ウイルス粒子、および/または前記医薬組成物を被験者に投与することを含むビエッティ結晶性ジストロフィー(BCD)を治療する方法を提供する。
【0020】
もう一つの態様において、本開示は、
CYP4V2遺伝子を標的とするsgRNAを設計するステップ(1)、
ステップ(1)で得られた前記sgRNAをCas9-sgRNAベクターに構築し、Cas9-sgRNAプラスミドを得るステップ(2)、及び、
ステップ(2)で得られたCas9-sgRNAプラスミドを細胞に導入し、CYP4V2遺伝子変異を有する細胞を得るステップ(3)、
を含む、CYP4V2変異を有するBCD細胞モデルを構築する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の組換えAAV(rAAV)ベクターCYP4V2発現カセットの構造模式図である。
【
図2】プラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるコドン最適化CYP4V2 opt遺伝子のin vitro発現を示す。ここで、(A)は、CYP4V2タンパク質のウェスタンブロットの代表的な画像であり、(B)は、HEK293細胞におけるCYP4V2およびGFP(プラスミドトランスフェクション対照)の発現レベルを検出するためのCYP4V2タンパク質のウェスタンブロットによる定量である。ここで、WTまたはopt遺伝子およびGFPは、CAG-CYP4V2-WT/optおよびCMV-EGFP二重プラスミドを用いて発現させた。プラスミドを等量トランスフェクションしてから2日後に細胞溶解液を採取した。等量の総タンパク質をSDS-PAGEで分離した後、免疫ブロットを行った。CYP4V2の発現レベルをGFPで標準化し、WT発現レベルに対する比を算出した。
【
図3】AAV2をトランスフェクトしたARPE-19細胞におけるコドン最適化CYP4V2のin vitro発現を示す。ここで、(A)は、CYP4V2タンパク質のウェスタンブロットの代表的な画像であり、(B)は、ARPE-19細胞におけるCYP4V2およびGAPDH(内部コントロール)の発現レベルを検出するためのCYP4V2タンパク質のウェスタンブロットによる定量であり、ここで、WTまたはopt遺伝子またはEGFPコントロールは、等量のAAV2ウイルス粒子(MOI=20,000)によって媒介された。ウイルス粒子感染の2日後に細胞溶解液を採取した。等量の全タンパク質をSDS-PAGEで分離した後、免疫ブロットを行った。CYP4V2の発現レベルをGAPDHで標準化し、WT発現レベルとの比を算出した(WT発現レベルとの比較:*,p<0.05;**,p<0.01;n=3,student test)。
【
図4】BCD細胞モデルにおけるAAV2-CYP4V2のin vitro薬効を示す。HEK293 CYP4V2変異細胞モデルの構築と表現型の同定を示す。CYP4V2変異HEK293細胞は欠陥のある細胞表現型を表す。ここで、(A)は、CRIPSR/Cas9法を用いて作製したCYP4V2エクソン5変異の模式図である。(B)は、HEK293エクソン5変異細胞クローン14(5-C14)におけるCYP4V2遺伝子標的部位のSangerシークエンシング結果である。(C)は、HEK293 WTおよび変異5-C14細胞の6日間培養の細胞増殖率を評価した(WTとの比較:**,p<0.01;***,p<0.005;student test;n=4)。(D-E)は、バフィロマイシンA1(bafilomycin-A1)(Baf、100nM、2時間)の添加または無添加で処理したHEK293 WT細胞および変異細胞におけるオートファジーマーカーLC3B-I/IIの評価である。(D)は、タンパク質ブロットの代表的な画像である。(E)は、LC3B-IIタンパク質レベルの定量化である。GAPDHで標準化し、Baf(NT)を添加しないWT細胞の場合との比として計算した(*、p<0.05;ns:有意差なし;student test;n=3)。
【
図5】BCD細胞モデルにおけるAAV2-CYP4V2のin vitro薬効を示す。CYP4V2変異ARPE-19細胞モデルの構築、表現型の同定、およびARPE-19変異細胞モデルの表現型に対するAAV2-CYP4V2 WTおよび最適化遺伝子opt18の影響を示す。CYP4V2エクソン5変異はCRISPR/Cas9法を用いて作製した。ここで、(A)は、ARPE-19細胞におけるCYP4V2遺伝子標的部位のSangerシークエンシングである。(B)は、WTおよび変異5-C13細胞の6日間の培養期間の細胞増殖率を評価した。***,P<0.01;student test;n =6。(C)は、細胞脂質の沈着である。WT、変異5-C13細胞、AAV2-CYP4V2 WTまたはopt18を5-C13細胞にMOI 20000で感染させた。アラキドン酸(AA)処理後、細胞を脂質とDAPIで染色した。レーザー共焦点顕微鏡の代表画像である。スケールバー:25μm。(D)は、細胞内脂肪粒子沈着の定量化である。変異細胞にAAV2-CYP4V WTおよびopt18を感染した後、脂肪粒子沈着は有意に減少した。opt18は、脂肪粒子沈着減少効果がWTよりも優れていた(***,p<0.005;****,p<0.001;n=50,student test)。(E)WTおよび変異細胞5-C13の電子顕微鏡写真であり、オートファジー液胞(黒矢印)と空胞(白矢印)を示す。スケールバー:500nm。
【
図6】BCD細胞モデルにおけるAAV2-CYP4V2のin vitro薬効を示す。HEK293 CYP4V2 変異細胞モデルの表現型に対するAAV2-CYP4V2 WTおよび最適化遺伝子の影響を示す。(A)AAV2-CYP4V2 WTまたはopt18またはEGFPコントロールMOI 20000で細胞を感染させた2日後に、CYP4V2タンパク質発現レベルをウェスタンブロットで検出した。(B)感染した後、細胞増殖率を6日間の時間経過で評価した。(C)6日目にAAV2-CYP4V2 opt18またはEGFPコントロールをMOI 5000または20000で感染されたHEK293変異細胞における細胞増殖である。(D)6日目に、野生型HEK293細胞と、AAV2-CYP4V2 opt18およびEGFPコントロールをMOI 20000で感染したHEK293変異細胞における細胞増殖の比較(*,p<0.05;****,p<0.001;n=6,student test)。(E-F)AAV2-CYP4V2 WT opt18およびEGFPコントロールをMOI 20000で感染したHEK293変異細胞において、Bafの添加または無添加で処理した条件でのオートファジーマーカーLC3B-I/IIを評価した。(E)タンパク質ブロットの代表的な画像である。(F)LC3B-IIタンパク質レベルの定量化である。GAPDHで標準化し、EGFP NTケースの比率として計算した(*,p<0.05;**,p<0.01;ns:有意差なし;student test;n=3)。
【
図7】コドン最適化AAV-CYP4V2の、網膜下注射によるマウスの眼におけるin vivo発現を示す。(A)マウス眼におけるAAV2-CYP4V2野生型および最適化遺伝子の発現である。野生型マウスの眼球に、5×10
12vg/mlのAAV2-CYP4V2 WTまたはopt組換えウイルス粒子1μLを網膜下腔から注入した。4週間後、眼球組織を摘出し、網膜を分離し、ホモジナイズして溶解した。等量の総タンパク質をSDS-PAGEで分離し、免疫ブロットを行った。(A):CYP4V2タンパク質のウェスタンブロットの代表的な画像である。(B):CYP4V2およびGAPDH(内部コントロール)の発現量を検出するためのウェスタンブロットによるCYP4V2タンパク質の定量であり、CYP4V2の発現レベルをGAPDHで標準化し、WT発現レベルとの比を算出した(WT発現レベルとの比較:*,p<0.05;student test;n=6~9)。Std:精製された組換えヒトCYP4V2タンパク質標準サンプル。NC:未注射マウス眼陰性コントロール。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示において、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、特に断りのない限り、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用されるタンパク質および核酸化学、分子生物学、細胞および組織培養、微生物学、免疫学に関連する用語および実験手順は、それぞれの分野で広く使用されている用語および通常の手順である。また、本開示をよりよく理解するために、関連用語の定義および説明を以下提供する。
【0023】
本明細書で使用される、「約」ある値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体の実施形態を含む(説明する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0024】
本明細書で使用される、特に断りのない限り、単数形の冠詞「一種」、「一個」および「前記」は、複数の指示対象を含む。
【0025】
本明細書で使用される「ベクター」とは、宿主細胞(in vitroまたはin vivo)に導入される核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0026】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである、ポリマー形態の任意の長さのヌクレオチドを指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、多本鎖のDNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいは、プリン塩基およびピリミジン塩基、または他の天然、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然もしくは誘導体のヌクレオチド塩基からなるポリマーが含まれるが、これらに限定されない。核酸の骨格は、糖およびリン酸基(通常RNAまたはDNAに見出される)、または修飾もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含んでいてもよい。代替的に、核酸の骨格は、アミノリン酸のポリマーなどの合成サブユニットを含んでいてもよく、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドアミノホスフェート(P-NH2)または混合したアミノホスフェート-ホスホジエステルオリゴマーであってもよい。さらに、二本鎖核酸は、化学的に合成された(適切な条件下で相補鎖を合成し、その鎖をアニーリングすることによって、またはDNAポリメラーゼと適切なプライマーを用いて相補鎖を一から合成することによって)一本鎖ポリヌクレオチド産物から得ることができる。
【0027】
「組換えウイルスベクター」とは、1種または複数種の異種配列(すなわち、ウイルス起源ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを意味する。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸には少なくとも1つ、好ましくは2つの逆末端反復配列(ITR)が隣接されている。
【0028】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」とは、一つ以上の異種配列(すなわち、非AAV起源の核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターであって、それに少なくとも一つ、好ましくは二つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が隣接されているものを指す。適切なヘルパーウイルスに感染し(または適切なヘルパー機能を発現し)、AAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現する宿主細胞内に存在する場合、当該rAAVベクターは複製され、感染ウイルス粒子にパッケージ化され得る。rAAVベクターがより大きなポリヌクレオチド(例えば、染色体中、またはクローニングやトランスフェクションのためのプラスミドなどの別のベクター中)に組み込まれる場合、rAAVベクターは「プロベクター(pro-vector)」と呼ばれ、AAVパッケージング機能および適切なヘルパー機能の存在下で複製およびカプシド化によって「レスキュー」することができる。rAAVベクターは様々な形態のいずれであってもよく、これにはプラスミド、線状人工染色体が含まれるが、これらに限定されない;それらはリポソームと複合体化されていてもよく、リポソーム内に封入されていてもよく、実施形態においては、ウイルス粒子、特にAAV粒子内に封入されていてもよい。rAAVベクターは、AAVウイルスカプシドにパッケージングして、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生成することができる。AAVヘルパー機能(すなわち、AAVが宿主細胞によって複製およびパッケージングされることを可能にする機能)は、AAVの複製およびパッケージングを補助するヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子を含むがこれらに限定されない、様々な形態のいずれかで提供され得る。他のAAVヘルパー機能は当該技術分野で知られている。
【0029】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質とカプシド化されたrAAVベクターゲノムからなるウイルス粒子を意味する。
【0030】
「異種」とは、それが比較されるか、またはそれが導入もしくは組み込まれる実体の残りの部分とは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学的手法によって異なる細胞型に導入された核酸は、異種核酸である(そして、発現される場合、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルスベクターに組み込まれた細胞配列(例えば、遺伝子またはその一部)は、ベクターに対して異種ヌクレオチド配列である。
【0031】
ウイルスタイターに関して使用される場合、「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価物」または「ゲノムコピー」という用語は、感染性または機能性にかかわらず、組換えAAV DNAゲノムを含むウイルス粒子の数を指す。特定のベクター調製中のゲノム粒子の数は、本明細書または例えばClarkら(1999) Hum.Gene Ther.,10:1031-1039;Veldwijkら(2002)Mol.Ther.,6:272-278に記載されている方法によって測定することができる。
【0032】
ウイルスタイターに関して使用される場合、「感染単位(iu)」、「感染粒子」または「複製単位」という用語は、例えばMcLaughlinら(1988)J.Virol.,62:1963-1973に記載されているように、感染中心アッセイ(複製中心アッセイとも呼ばれる)によって測定される、感染および複製する能力を有する組換えAAVベクターの粒子の数を指す。
【0033】
ウイルスタイターに関して使用される場合、「トランスダクション単位(tu)」という用語は、本明細書の実施形態または例えばXiaoら(1997)Exp.Neurobiol.,144:113-124;またはFisherら(1996)J.Virol.,70:520-532(LFUアッセイ)に記載されているように、機能的アッセイにおいて測定されるように、機能的導入遺伝子産物の産生をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0034】
「逆方向末端反復」配列または「ITR」配列は、当技術分野で周知の用語であり、ウイルスゲノムの末端に見られる反対方向の比較的短い配列を指す。
【0035】
「AAV逆方向末端反復(ITR)」配列は、天然の一本鎖AAVゲノムの両末端に存在する約145ヌクレオチドの配列で、当技術分野で周知の用語である。ITRの最外部の125ヌクレオチドは、二つの交換可能な方向のいずれかで存在することができ、その結果、異なるAAVゲノム間および単一AAVゲノムの両端の間の異種性が生じる。最外部の125ヌクレオチドは、自己相補的ないくつかの短いドメイン(A、A’、B、B’、C、C’、Dドメインと呼ばれる)をさらに含み、このITR部分内で鎖間塩基対合が起こることが可能である。
【0036】
AAVに対する「ヘルパーウイルス」とは、AAV(欠陥のあるマイクロウイルスである)が宿主細胞によって複製され、パッケージングされることを可能にするウイルスを指す。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、および牛痘ウイルスなどのポックスウイルスを含む、様々なヘルパーウイルスが同定されている。アデノウイルスには複数の異なるサブクラスを包含するが、サブクラスCのアデノウイルス5型(Ad5)が最も一般的に使用されている。ヒト、非ヒト哺乳類、鳥類由来の様々なアデノウイルスが知られており、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ATCCなどの寄託機関から入手可能なヘルペスウイルスのファミリーとしては、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viruses,HSV)、EBウイルス(Epstein-Barr viruses,EBV)、サイトメガロウイルス(cytomegaloviruses,CMV)、仮性狂犬病ウイルス(pseudorabies viruses,PRV)などを含む。
【0037】
参照されるペプチドまたは核酸配列に対する「配列同一性パーセンテージ(%)」とは、配列のアラインメントおよびギャップ導入(必要な場合、最大の配列同一性パーセントを達成するために、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない)後の、参照ペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である、候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列または核酸配列の同一性のパーセンテージを決定するためのアラインメントは、当技術分野において様々な方法で達成することができ、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1987),Supp.30,セクション7.7.18,表7.7.1に記載されているBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを含む、通常入手可能なコンピューターソフトウェアプログラムを使用することにより達成することができる。好ましいアラインメントソフトウェアは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)である。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。本明細書において、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する、%アミノ酸配列同一性(これは、代替的に、所与のアミノ酸配列Bと、または所与のアミノ酸配列Bに対して、ある一定の%アミノ酸配列同一性を有する、または含む、アミノ酸配列Aと称され得る)は、以下のように計算される:100に分数X/Yを乗じたものであり、ここで、Xは、AとBのプログラムアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムによって一致とスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはBのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない、A対Bの%アミノ酸配列同一性は、B対Aの%アミノ酸配列同一性とは等しくないことを理解される。本明細書において、所与の核酸配列Cの、所与の核酸配列Dとの、または所与の核酸配列Dに対する、%核酸配列同一性(これは、代替的に、所与の核酸配列Dと、または所与の核酸配列Dに対して、ある一定の%核酸配列同一性を有する、または含む、所与の核酸配列Cと称され得る)は、以下のように計算される:100に分数W/Zを乗じたものであり、ここで、Wは、CとDのプログラムアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムによって一致とスコアされたヌクレオチドの数であり、ZはD中のヌクレオチドの総数である。ここで、核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと等しくない、C対Dの%核酸配列同一性は、D対Cの%核酸配列同一性とは等しくないことを理解される。
【0038】
「有効量」とは、臨床結果(例えば、症状の改善、臨床エンドポイントの達成など)を含む有益な結果または所望の結果に影響を及ぼすのに十分な量である。有効量は、1回または複数回に分けて投与することができる。疾患状態に関して、有効量は、疾患の進行を改善、安定化または遅延させるのに十分な量である。例えば、有効量のrAAV粒子は、治療用ペプチドまたは治療用核酸などの異種核酸の予想量を発現する。
【0039】
「個体」または「被験者」は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜化動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、個体または被験者はヒトである。
【0040】
本明細書で使用される場合、「治療」とは、有益または所望の臨床結果を得るために使用される方式である。本開示の目的のために、有益なまたは期待される臨床結果には、症状の改善、疾患の程度の減少、疾患の安定化(例えば、悪化しない)、疾患の広がり(例えば、転移)の防止、疾患の進行の遅延または減速、疾患の状態の改善または緩和、および寛解(部分的であるか全体的であるかを問わない)(検出可能であるか検出不可能であるかを問わない)が含まれるが、これらに限定されない。また、「治療」とは、治療を行わない場合に予想される生存率と比較して生存率が延長することを意味する場合もある。
【0041】
一態様において、本開示は、SEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7、SEQ ID NO 8またはSEQ ID NO 9に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むCYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、
好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むCYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7、SEQ ID NO 8、またはSEQ ID NO 9に示されるものである。
【0043】
別の態様において、本開示は、前記ポリヌクレオチドおよび前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットを提供する。
【0044】
別の態様において、本開示は、前記ポリヌクレオチドまたは前記発現カセットを含む発現ベクターを提供する。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態において、前記のCYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、前記発現制御エレメントに作動可能に連結される。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現制御エレメントは、転写/翻訳制御シグナル、複製起点、プロモーター、エンハンサー、イントロン、poly Aシグナル、ITR、絶縁体、RNAプロセシングシグナル、およびmRNAおよび/またはタンパク質の安定性を増強するエレメントから選択される1種または複数種である。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、複製起点を含み;好ましくは、前記複製起点配列は、f1ファージori、RK2oriV、pUC ori、およびpSC101oriから選択される。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、5’ITRをさらに含み;好ましくは、前記5’ITRは、SEQ ID NO 1に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 1に示されるものである。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、3’ITRをさらに含み、好ましくは、前記3’ITRは、SEQ ID NO 11に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 11に示されるものである。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、エンハンサーをさらに含み、好ましくは、前記エンハンサーは、CMVエンハンサーであり、より好ましくは、前記エンハンサーは、SEQ ID NO 2に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、前記ポリヌクレオチドはSEQ ID NO 2に示されるものである。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、プロモーターをさらに含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記プロモーターは、特異的または非特異的プロモーターである。本開示のいくつかの実施形態において、前記プロモーターは、CBAプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、hPGKプロモーター、およびTRE3GSプロモーターから選択される。本開示のいくつかの実施形態において、前記プロモーターは、CBAプロモーターであり、好ましくは、前記CBAプロモーターは、SEQ ID NO 3に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 3に示されるものである。本開示のいくつかの実施形態において、前記プロモーターは、誘導可能プロモーターであり、好ましくは、前記誘導可能システムは、テトラサイクリン調節プロモーター、アルコール調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、病原性調節プロモーター、温度/熱誘導型プロモーター、光調節プロモーター、IPTG誘導型システムのうちの1種以上を含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記テトラサイクリン調節プロモーターは、Tet onプロモーター、Tet offプロモーター、およびTet Activatorプロモーターから選択される。本開示のいくつかの実施形態において、前記アルコール調節プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランスアクチベータータンパク質(AlcR)に応答するプロモーターから選択される。本開示のいくつかの実施形態において、前記ステロイド調節プロモーターは、ラットグルココルチコイド受容体プロモーター、ヒトエストロゲン受容体プロモーター、蛾エクジステロイド受容体プロモーター、レチノイドプロモーター、および甲状腺受容体スーパーファミリープロモーターから選択される。本開示のいくつかの実施形態において、前記金属調節プロモーターは、酵母、マウスおよびヒトのメタロチオネインプロモーターから選択される。本開示のいくつかの実施形態において、前記病原性調節プロモーターは、サリチル酸調節プロモーター、エチレン調節プロモーター、およびベンゾチアジアゾール制御(BTH)プロモーターから選択される。本開示のいくつかの実施形態において、前記温度/熱誘導型プロモーターは、HSP-70プロモーター、HSP-90プロモーター、および大豆熱ショックプロモーターから選択される。本開示のいくつかの実施形態において、前記光調節プロモーターは、植物細胞の光応答型プロモーターである。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、エクソンおよびイントロンをさらに含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記エクソンおよびイントロンは、ニワトリβ-アクチン遺伝子の第1のエクソンおよび第1のイントロンである。本開示のいくつかの実施形態において、前記エクソンおよびイントロンは、SEQ ID NO 4に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド列を含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 4に示されるものである。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、poly Aシグナルをさらに含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記poly Aシグナルは、ウシ成長ホルモンpoly A(BGH poly A)、ショートpoly A、SV40 poly A、および/またはヒトβビーズタンパク質poly Aである。本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリAシグナルは、SEQ ID NO 10に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド列を含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 10に示されるものである。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、SEQ ID NO 12、SEQ ID NO 13、SEQ ID NO 14、SEQ ID NO 15、またはSEQ ID NO 16、に示されるヌクレオチド配列に対して90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列含み、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、より好ましくは、98%または99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 12、SEQ ID NO 13、SEQ ID NO 14、SEQ ID NO 15、またはSEQ ID NO 16に示されるものである。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ベクターは、転写後調節エレメントを含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ベクターは、マーカーをコードする遺伝子をさらに含む。本開示のいくつかの実施形態において、前記マーカーは、抗生物質耐性タンパク質、毒素耐性タンパク質、着色または蛍光または発光タンパク質、および強化された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質から選択される1種または複数種である。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態において、前記抗生物質は、アンピシリン、ネオマイシン、G418、ピューロマイシン、およびプラスチジンから選択される。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態において、前記毒素は、炭疽毒素およびジフテリア毒素から選択される。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態において、前記着色タンパク質または蛍光タンパク質または発光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、およびルシフェラーゼからなる群より選択される。本開示のいくつかの実施形態において、増強された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介する前記タンパク質は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、RNAベクター、または線状もしくは円形のDNAもしくはRNA分子から選択される。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態において、前記プラスミドは、pCI、puc57、pcDNA3、pSG5、pJ603、およびpCMVから選択される。
【0062】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、ネガティブストランドRNAウイルス、例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルスおよびセンダイウイルス)、ポジティブストランドRNAウイルス、例えば、小分子RNAウイルスおよびアルファウイルス、および二本鎖DNAウイルスから選択され、前記二本鎖DNAウイルスは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)およびポックスウイルス(例えば、牛痘ウイルス、鶏痘ウイルス、およびカナリアポックスウイルス)、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、バキュロウイルス、および肝炎ウイルスを含む。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態において、前記レトロウイルスは、鳥類白血球産生組織過形成肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV集合、レンチウイルス、およびフォーミーウイルスから選択される。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態において、前記レンチウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEV、およびヒツジ脱髄性白質脳炎レンチウイルスから選択される。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、アデノ関連ウイルスである。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態において、前記アデノ関連ウイルスは、AAV1型、AAV2型、AAV3型、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、鳥AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、およびヒツジAAVから選択される。
【0067】
本開示のいくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、短縮されたキメライントロンおよびKozak開始配列をさらに含む。
【0068】
本開示のいくつかの実施形態において、前記短縮されたキメライントロンは、SEQ ID NO 4に示される。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態において、前記Kozak開始配列は、SEQ ID NO 17に示される。
【0070】
別の態様において、本開示は、前記発現ベクターを含むウイルス粒子を提供する。
【0071】
別の態様において、本開示は、前記ポリヌクレオチド、前記発現カセット、前記発現ベクターおよび/または前記ウイルス粒子のいずれか、および薬学的に許容される担体を含む、BCDの治療のための、野生型またはコドン最適化CYP4V2タンパク質を発現する医薬組成物を提供する。
【0072】
別の態様において、本開示は、Bietti結晶性ジストロフィー(BCD)を治療するためのものの調製における、前記ポリヌクレオチド、前記発現カセット、前記発現ベクター、前記ウイルス粒子、および/または前記医薬組成物の使用を提供する。
【0073】
別の態様において、本開示は、有効量の前記ポリヌクレオチド、前記発現カセット、前記発現ベクター、前記ウイルス粒子、および/または前記医薬組成物を被験者に投与することを含むBietti結晶性ジストロフィー(BCD)を治療する方法を提供する。
【0074】
別の態様において、本開示は、
CYP4V2遺伝子を標的とするsgRNAを設計するステップ(1)、
ステップ(1)で得られた前記sgRNAをCas9-sgRNAベクターに構築し、Cas9-sgRNAプラスミドを得るステップ(2)、及び
前記ステップ(2)で得られたCas9-sgRNAプラスミドを細胞に導入し、CYP4V2遺伝子変異を有する細胞を得るステップ(3)、
を含む、CYP4V2変異を有するBCD細胞モデルを構築する方法を提供する。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態において、前記方法は、CYP4V2遺伝子変異を有する細胞をスクリーニングするステップ(4)をさらに含む。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態において、前記方法は、前記CYP4V2遺伝子変異細胞を同定するステップ(5)をさらに含む。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態において、前記同定は、細胞増殖の同定、オートファジー変化の同定、および脂肪粒子沈着の同定から選択される。
【0078】
本開示のいくつかの実施形態において、前記sgRNAは、SEQ ID NO 18-21から選択される1種または複数種である。
【0079】
本開示は、眼の網膜色素上皮において効率的で持続的かつ安定的な発現を実現するための、コドンが最適化されたCYP4V2遺伝子を発現するアデノ関連ウイルスベクターを提供する。本開示は、BCDを治療するために使用される遺伝子治療薬の用量および起こり得る副作用を効果的に低減し、治療効果を高めることができる。
【0080】
明確かつ簡潔な説明のために、本明細書では、特徴を、同一または別個のいくつかの実施形態の一部として記載するが、本開示の範囲は、記載された特徴の全てまたは一部の組み合わせを有するいくつかの実施形態を包含し得ることが理解されるであろう。
【0081】
以下、特定の実施例を参照して本開示をより詳細に説明するが、実施例は説明のためのものであり、本開示に関して限定するものではない。
【0082】
実験材料と方法
CYP4V2発現カセットおよびAAVベクター
本研究で使用されたDNA配列は、すべてGenScript社で合成した。コドンの最適化は、GenSmart codon optimization toolを用いて改善された。AAVベクター媒介CYP4V2発現カセットは、
図1に示されている。この発現カセット配列をシャトルプラスミドベクターにクローニングし、AAVベクターにより媒介されるCYP4V2標的遺伝子の発現を含むシャトルプラスミドを得た。
【0083】
AAVベクターの生産および精製方法
AAVベクターは、3プラスミドシステムを採用して生産され、すなわち、CYP4V2標的遺伝子を含むシャトルプラスミド、AAVベクターのrepcap遺伝子を含むpRepCapプラスミド、および補助プラスミドpHelperを用い、トランスフェクション試薬としてPEIを用いてHEK293細胞にコトランスフェクトし、組換えによりAAVウイルスベクターをパッケージングした。トランスフェクション後48~72時間で収穫し、収穫液を精製してある純度の組換えAAVウイルスベクターを得た。精製方法は以下の通りである。
【0084】
まず、収穫液を予備処理する。HEK293細胞を完全に溶解して細胞内のAAVウイルスベクターを遊離させ、ヌクレアーゼを加えて遊離核酸を消化する。消化が終了した後、深層ろ過を行って大分子不純物や細胞破片を除去し、深層ろ過後の濾液を二次ろ過してアフィニティークロマトグラフィーサンプリング用の清澄液を得る。
【0085】
アフィニティークロマトグラフィーは、リガンドとタンパク質の特異的吸着を利用して、収穫液におけるAAVウイルスベクターを捕捉し、プロセス関連の不純物の大部分を除去して濃縮と不純物の除去効果を達成する。収集された溶出液を均一に混合し、中和バッファーで中和した後、陰イオンクロマトグラフィー用サンプルとして無菌リザーバーボトルに保存する。
【0086】
陰イオンクロマトグラフィーは、異なる成分の等電点の違いを利用して中実AAVウイルスと空殻AAVウイルスを分離し、同時に引き続き残留不純物を除去しながら、溶出液を新しい滅菌リザーバーボトルに回収し、さらに限外濾過で緩衝液を製剤的に安定な緩衝液に置き換えながら、ウイルス力価を約5×1012vg/mLまで濃縮し、最後に滅菌濾過し、分注して置く。
【0087】
AAVベクターリザーバーの力価の定量化
AAVウイルスの精製が完了した後、ウイルス含量を測定する必要があり、ゲノム力価はAAVの物理的力価を特徴付ける最も古典的な基準となっている。rAAVのゲノム配列を標的としたプライマープローブを設計し、次いでQ-PCRを行う方法は、ゲノム力価を測定するための最も一般的な方法である。
【0088】
本開示におけるORFコードフレームのコドン最適化には複数のベクター構造のスクリーニングが含まれることを考慮して、異なるベクター構造間の定量の安定性と精度を確保するために、ベクターに共通する配列を選択してプライマープローブを設計する。CMVエンハンサー配列はCAGプロモーターの一部であり、コドン最適化の過程では、この部分は、異なるベクター構造の共通部分となるため、この配列に対してプライマープローブを設計する。
【0089】
ゲノムの力価を検出する過程では、まず標準曲線を確立する必要があり、陽性標準プラスミドをサンプル希釈液で2×107、2×106、2×105、2×104、2×103、2×102コピー/μLに希釈し、標準曲線のテンプレートとし、標準曲線は、直線性と増幅効率をコントロールする必要があり、一般的にR2>0.99と増幅効率が90%~110%の間であることが要求される。その後、予備処理されたrAAVサンプルを希釈した後、QPCR検出を行い、サンプルの検出Ct値が標準曲線の範囲内にあることを確保し、サンプルのCt値を標準曲線に代入してrAAVサンプルのゲノム力価を計算し、製品の含有量を標識した。
【0090】
In vitro細胞プラスミドトランスフェクション実験
HEK293細胞を1日前に消化処理し、6ウェルプレートに7.0×105cells/wellで接種した。一晩培養した後、プラスミドトランスフェクションを行った。プラスミドおよびトランスフェクション試薬を以下の量で混合した:1.5mL遠心チューブにopti-MEM培地(Gibco,31985-070)125μL、CYP4V2-opt/WT発現プラスミド2μg、CMV-EGFPプラスミド200ng、およびP3000 5μLを加え、均一に混合してプラスミドチューブを得、別の1.5mL遠心チューブにopti-MEM培地125μLとLipo 3000(Thermo,L3000015)5μLを加え、均一に混合した後、プラスミドチューブに加え、室温で15分間静置インキュベートした。この混合液を6ウェルプレートのHEK293細胞にゆっくりと滴下し、引き続きCO2恒温インキュベーターに入れて48時間培養した。
【0091】
In vitro細胞ウイルス感染実験
ARPE-19細胞を1日前に消化処理し、6ウェルプレートに3.0×105cells/wellで接種した。24時間培養した後、AAV2ウイルス感染実験を行った。1ウェルの細胞を消化し、計数し、20000MOIの感染パラメータに従って必要なウイルスVg数を算出し、必要量のウイルスをOpti-MEM培地で1mLに希釈した。次いで、一晩接種した6ウェルプレートの細胞培養液を完全に吸引し、希釈したウイルス液を1 mL加え、引き続きCO2恒温インキュベーターで培養した。4時間後、DMEM完全培地(DMEM+10%FBS+1%二重抗生物質培地(Hyclone,SV30010))を1mL添加し、CO2恒温インキュベーターに入れて48時間培養した。
【0092】
CYP4V2変異を導入したBCD細胞モデルの構築
CYP4V2変異を導入したBCD細胞モデルは、CRISPR-Cas9法により以下のように構築した:1日前にHEK293細胞またはARPE-19細胞を消化処理し、細胞を6ウェルプレートに7.0×105cells/wellで接種し、24時間後プラスミドトランスフェクション実験をに行い、プラスミドサンプルの希釈準備として、1.5mL遠心チューブにopti-MEM培地125μL、Cas9-sgRNAプラスミド(addgene、#58766)2μg、P3000(CYP4V2-ssDNA 3μgを補充したExon7-sgRNA1-HDR修復構築物)5μLを加え、均一に混合し、Lipo 3000(Thermo,L3000015)の希釈準備として、1.5mL遠心チューブにopti-MEM培地125μLとLipo 3000 5μLを加え、均一に混合した後、プラスミドサンプル希釈チューブに加え、均一に混合し、室温で15分間インキュベートした。混合液を6ウェルプレート内のトランスフェクションする細胞にゆっくりと滴下し、軽く振ってよく混ぜた後、CO2恒温インキュベーターに入れて培養した。トランスフェクション48時間後、蛍光写真を撮影してトランスフェクション効率を確認した後、6ウェルプレート内の細胞を消化し、5μg/mLピューロマイシン(Puromycin)を含むDMEM完全培地を加え、加圧培養し、その間、培地として5μg/mLピューロマイシンを含むDMEM-Full培地を毎日交換し、72時間培養した後、6ウェルプレート内の細胞培養液を廃棄し、ピューロマイシンを含まないDMEM培地を加えて培養した。48時間培養した後、細胞を消化して計数し、96ウェルプレート(200μL DMEM+20%FBS+1%二重抗生物質培地を含む)に細胞を1細胞/ウェルで選別し、培養した。2~3週間培養後、クローン形成スポットの成長を観察し、96ウェルプレート→24ウェルプレート→6ウェルプレートと徐々にクローン形成スポットを拡大した。6ウェルプレート内に細胞がいっぱいになった後、一部の細胞を採取して細胞ゲノムDNA(Tiangen,DP304-03)を抽出し、PCRで増幅した後、ゲルを切って回収してSangerシークエンシングで検証し、SeqManソフトウェアを用いてモノクローナル細胞の遺伝子型を分析した。残りの細胞は、実験上の必要性に応じて増殖させ、凍結保存した。
【0093】
ウェスタンブロット分析
細胞を接種培養した6ウェルプレートの各ウェルに、プロテアーゼ阻害剤を含むRIPA溶解液(Beyotime Biotech.Inc.,P0013B)200μLを加え、細胞を氷上で5分間完全に溶解した。1.5mL遠心チューブに細胞溶解液を集め、氷上に30分間置いた後、4℃、15000gで20分間遠心し、上清を採取した。タンパク質サンプルをPBSで10倍に希釈し、十分に混合した。タンパク質の定量は、BCAタンパク質定量キット(PierceTM BCA Protein Detection Kit(Thermo Fisher,23225))を用いて行った。5×SDSロード緩衝液をタンパク質サンプルに加え、十分に混合した。SDS-PAGE電気泳動を行い、タンパク質サンプル 30μgを分離し、PVDF膜に転写した。5%スキムミルク(PBS調製)で1時間室温ブロッキングした後、抗体をインキュベートし、ECLで検出した。Bio-Rad ChemiDocTM Touch Imaging Systemによりイメージング分析を実行した。
【0094】
細胞増殖分析
CYP4V2変異細胞と野生型細胞を消化し、カウントした。細胞密度を調整した細胞懸濁液を十分に混合し、96ウェルプレートに接種し、1細胞あたり4レプリケートウェルを設けた。in vitro効果アッセイでは、プレート播種から24時間後にウイルス感染を行った。プレート播種後48時間からCCK-8アッセイを行い、アッセイ実施日を、それぞれDay2、Day3、Day4、Day5、Day6とした。アッセイ当日、分析するウェルの総数を数え、CCK-8試薬を含む適量のDMEM培地を調製した。CCK-8試薬(同仁化学所、CK04)とDMEM培地を1:10の割合で調製し、CCK-8試薬を含むDMEM培地100μLを各ウェルに加え、37℃の細胞培養インキュベーターで1.5時間培養した後、マルチモードリーダー(BioTek、SYNERGY/LX)を用いて450nmで読み取った。データはGraphpad Prismソフトウェアを用いて統計的に分析した。
【0095】
オートファゴソーム機能アッセイ
野生型細胞、変異型細胞、ウイルス感染細胞を、それぞれ100nMのBafilomycin-A1(Baf)を含む培地、または薬物を含まない培地で2時間処理し、細胞内タンパク質を抽出し、WBアッセイでLC3B-II/GAPDH比を分析することにより、細胞内オートファジーのフラックスが阻害されていないかどうかを判定した。
【0096】
脂質沈着染色
細胞を160μMのアラキドン酸(AA)で4日間連続処理し、4%パラホルムアルデヒドを用いて20分間室温で固定した。3μMのBODIPY 493/503で細胞を20分間37℃で染色した。5μg/mLのDAPIで10分間対比染色した。レーザー共焦点顕微鏡で写真を撮った。各実験群について50個の細胞を選択し、細胞内脂質沈着粒子の面積および細胞単位面積あたりの脂質沈着粒子数をImage pro plusソフトウェアで分析した。
【0097】
マウス網膜下腔注射
マウスを全身麻酔した後、十分に散瞳し、眼科専用の手術用顕微鏡の直視下で、虹彩と水晶体を傷つけないように角膜強膜縁の外側に30 1/2ゲージのディスポーザブル鋭針で強膜を穿刺し、33ゲージの平針を備えたマイクロインジェクタを用いて穿刺口に沿って強膜に針を刺し、水晶体を迂回して硝子体に到達させた後、網膜神経層と網膜色素上皮(RPE)層の間の潜在的な網膜腔に針を徐々に挿入し、ゆっくりと押し込みながら注入し、注入量は1μLとした。0.1%フルオレセインナトリウム色素(安全濃度)を注入キャリア懸濁液に加え、注入の成功と網膜剥離の程度を観察しやすくした。いつでも眼底を観察できるように、注射中は2.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースを点眼した。手術用顕微鏡で丸い網膜の膨らみがはっきり見え、網膜の膨らみの下に緑色が見えたら、注入が成功したことが証明される。一定時間後、バブルは消失し、局所的な網膜の膨らみは平らになる。網膜の膨らみやその下に緑色が確認できない場合、あるいは手術中に網膜出血などの合併症が確認された場合は、別のマウスを選んで再び注入を行った。手術後、炎症反応の軽減と感染予防のため、1%アトロピン眼軟膏とテトラサイクリンコルチゾン眼軟膏を塗布し、1日おきに計3回繰り返した。
【0098】
マウス眼球網膜サンプル抽出
マウス眼組織を採取し、角膜と水晶体を除去した後、ATL溶液(QIAGEN,19076)100μLを加え、2分間ホモジナイズした。DNAサンプル抽出として、ホモジネート液を10μL吸引し、ATL溶液10μLとプロテイナーゼK(QIAGEN,19133)2μLを加えてよく混合し、AL溶液(QIAGEN,19075)20μLを加えてよく混合した後、56℃で10分間インキュベートし、DNA検出用サンプルを得、タンパク質抽出として、残りのホモジネート50μLを吸引し、5μLの10×RIPA lysate(CST)とプロテアーゼ阻害剤(Biyun Tian)を加えてよく混合し、氷上で30分間溶解し、4℃、15,000gで30分間遠心し、上清を回収し、タンパク質を定量してWBアッセイを行った。
【0099】
ベクターゲノムコピー数解析
DNAアッセイサンプル5μLを取り、サンプル希釈液45μL(Pluronic F68(Gibco,24040032)5μLとtRNA(Ambion,AM7119)2μLをRNAaseフリー水1mLに溶解したもの)を加え、混合した後、希釈液を5μL吸引し、サンプル希釈液45μLを加えて混合し、被検DNAサンプルの100倍希釈液を得た。直線化され、絶対定量されたプラスミド(pAAV-CMV-EGFP)を標準として用いて標準曲線をプロットした。以下の反応系に従ってqPCR反応液を調製する:Taqman PCR Mix、上流プライマー(10μM)、下流プライマー(10μM)、プローブ(10μM)、DNAテンプレート。qPCR反応は、以下の反応条件に従って行った:50℃、2分間;95℃、10分間;95℃、15秒間;60℃、30秒間、40サイクル;37℃、2秒間。反応終了後、標準物質のCt値から標準曲線を作成し、直線回帰により各被検サンプルのVg数を算出した。
【0100】
マウスOCT検査
光干渉断層撮影(OCT)検査:麻酔をかけた動物を昇降台に乗せ、複合トロピカミド点眼液で常法散瞳し、塩酸プロパラカイン点眼液で表面麻酔を行い、眼の位置を揃え、瞳が大きな状態になった後、医療用カルボマー点眼ジェルを被検角膜に塗布し、眼科用超顕微鏡イメージングシステムの光源を調節してピントを合わせ、レンズの焦点位置を網膜に合わせ、光干渉断層撮影(OCT)検査を行った。各実験動物の両眼を撮影した。実験終了後、両目を生理食塩水で洗浄し、感染予防のためにレボフロキサシン点眼液で点眼した。
【0101】
マウスERGアッセイ
被検マウスを3日間暗室で飼育し、実験時点に達したマウスを暗室内で網膜電図(ERG)波形収集を行った。マウスに麻酔をかけて瞳を大きくさせた後、角膜を保護するために0.25%ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液を両眼に点眼し、マウスをヒーティングパッド付きの手術台に乗せ、赤線電極をマウスの眉間中央の皮膚表皮下に、黒色接地電極をマウスの尾部表皮下に挿入し、全網膜眼電
図Ganzfeld ERGシステム(Micron IV,Phoenix Research Laboratories,Inc.)を使用してERG画像収集を行い、該システムのソフトウェアによる自動解析により、各刺激強度に対するa波とb波の平均振幅を求め、統計分析を行った。網膜電図の波形は、網膜ニューロンの伝導機能を反映することができ、測定された波形は主に負のa波と正のb波からなり、a波は網膜一次ニューロン、すなわち光受容細胞の機能を反映し、b波は網膜二次ニューロン、すなわち双極細胞の機能を反映していた。
【0102】
実施例
実施例1:アデノウイルスベクターの構築と単離精製
1.1 アデノウイルスベクターの構築
CYP4V2 発現カセットの構造を
図1に示す。前記CYP4V2発現カセットは、5’末端から3’末端の順に、5’ITR、CMVエンハンサー、CBAプロモーター、CBAエクソン1&イントロン1、Kozak配列、標的遺伝子:野生型ヒトCYP4V2遺伝子hCYP4V2 WTまたは最適化CYP4V2遺伝子(hCYP4V2 opt、BGH polyA)および3’ITRを含む。ここで、
5’ITRのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 1に示され、
CMVエンハンサーは、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントであり、そのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO 2に示され、
CBAプロモーターは、ニワトリβ-アクチン遺伝子プロモーターであり、そのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO 3に示され、
CBAエクソン1&イントロン1は、ニワトリβ-アクチン遺伝子の第1エクソンおよび第1イントロンであり、それらのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO 4に示される;
hCYP4V2WT遺伝子は野生型ヒトCYP4V2遺伝子(GeneID:285440)に由来し、その遺伝子配列はSEQ ID NO 9に示され、それがコードする野生型hCYP4V2WTタンパク質のNCBI登録番号はNP_997235.3である。
【0103】
最適化CYP4V2遺伝子hCYP4V2 optは、野生型hCYP4V2WTタンパク質をコードするコドン最適化遺伝子opt18、opt7、opt8およびopt6であり、そのヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO 5、SEQ ID NO 6、SEQ ID NO 7およびSEQ ID NO 8である。
【0104】
BGH poly Aはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルであり、そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 10に示される。
【0105】
3’ITRのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 11に示される。
【0106】
Kozak配列は、CYP4V2 cDNA配列の前に挿入され、その配列はSEQ ID NO 17(GCCACC)に示され。
【0107】
野生型ヒトCYP4V2遺伝子hCYP4V2WTを含む発現カセットをプラスミドpAAV2-CYP4V2 WTとして構築した。
【0108】
最適化CYP4V2遺伝子を含む発現カセットは、プラスミドpAAV2-CYP4V2 optとして構築された。ここで、SEQ ID NO 12は、コドン最適化遺伝子opt6を含む発現カセットのヌクレオチド配列を示し、SEQ ID NO 13は、コドン最適化遺伝子opt7を含む発現カセットのヌクレオチド配列を示し、SEQ ID NO 14は、コドン最適化遺伝子opt8を含む発現カセットのヌクレオチド配列を示す。SEQ ID NO 15はコドン最適化遺伝子opt18を含む発現カセットのヌクレオチド配列を示し、SEQ ID NO 16は、CYP4V2 WTを含む発現カセットのヌクレオチド配列を示す。
【0109】
CYP4V2発現カセットは、rAAVにおける任意のAAV血清型またはそのハイブリッドもしくは変異体からのカプシドを有するベクターにパッケージされることができる。
【0110】
ウイルスベクターはプラスミドコトランスフェクション法によって取得した。HEK293T細胞に、AAV2カプシドタンパク質遺伝子およびAAVの複製を補助できる遺伝子を含むヘルパープラスミド、およびCYP4V2標的遺伝子発現カセットを含むシャトルプラスミドpAAV2-CYP4V2 WT、またはプラスミドpAAV2-CYP4V2 optをコトランスフェクションすることにより、予めに組換えアデノ随伴ウイルスベクターを形成した。
【0111】
1.2 アデノウイルスベクターの単離と精製
AAVベクターは、3プラスミドシステムを用いて生産され、すなわち、CYP4V2標的遺伝子を含むシャトルプラスミド、AAVベクターのrepcap遺伝子を含むpRepCapプラスミド及びヘルパープラスミドであるpHelperを採用し、トランスフェクション試薬としてPEIを用いてHEK293細胞にコトランスフェクションし、組換えによりAAVウイルスベクターをパッケージングした。収穫はトランスフェクション後48~72時間経ってから行い、収穫した液をアフィニティークロマトグラフィーで精製し、陰イオンクロマトグラフィーでさらに精製し、限外濾過で濃縮し、緩衝液で置換した。精製された組換えAAVウイルスベクターのゲノム力価を測定し、滅菌濾過し、分注して使用に供した。
【0112】
実施例2:コドン最適化CYP4V2 optのin vitro発現アッセイ
本実施例では、コドン最適化CYP4V2 optのin vitro発現レベルを、HEK293とARPE-19の2種の細胞株で評価した。ここで、HEK293細胞株においてはプラスミドトランスフェクションを行い、ARPE-19細胞株においてはAAV ウイルスの感染を行い、標的遺伝子を細胞内に導入した。
【0113】
HEK293では、CYP4V2 WTを発現するプラスミドAAV2-CYP4V2 WTまたはCYP4V2 optを発現するプラスミドAAV2-CYP4V2 optを一過性にトランスフェクションし、細胞溶解物中のタンパク質発現をウェスタンブロット分析により評価した(
図2)。コドンが最適化されたCYP4V2遺伝子opt6、opt7、opt8、opt18(SEQ ID NO 8,6,7,5)のHEK293細胞における発現レベルはすべて野生型ヒト由来CYP4V2遺伝子(WT)よりも有意に高かった。
【0114】
ARPE-19では、プラスミドAAV2-CYP4V2 WTまたはプラスミドAAV2-CYP4V2 optによる感染後、細胞溶解液中のタンパク質発現をウェスタンブロット分析により評価した(
図3)。
【0115】
図2および
図3からわかるように、コドンが最適化されたCYP4V2 optの遺伝子、特にopt18は、野生型ヒトCYP4V2 WT遺伝子と比較して有意に高い発現レベルを示した。
【0116】
実施例3:BCD細胞モデルの構築と同定
BCD遺伝子治療におけるAAV2-CYP4V2 WTおよびopt遺伝子の有効性を評価するため、本実施例ではCRISPR-Cas9法を用いて、HEK293およびARPE-19の2種の細胞株にCYP4V2変異を導入した細胞モデルを構築した(
図4および
図5)。
【0117】
細胞モデルの構築方策を
図4Aに示す。Exon5-sgRNA1(そのヌクレオチド配列を表1に示す)をエクソン5付近に設計し、Exon7-sgRNA1、Exon7-sgRNA2、およびExon7-sgRNA3(それらのヌクレオチド配列をそれぞれ表1に示す)をエクソン7付近に設計し、4種類のsgRNAをすべてCas9-sgRNAベクター(Addgene,#58766)に構築し、Cas9-sgRNAプラスミドを得た。前記Cas9-sgRNAプラスミドをHEK293とARPE-19の2種類の細胞にそれぞれ一過性にトランスフェクションし、トランスフェクションから48時間後、ピューロマイシンを添加してトランスフェクションに失敗した細胞を除去した後、限界希釈法により96ウェル培養プレートに細胞を接種し、培養し、2~3週間後、PCRを行い、96ウェルプレート中のモノクローナル細胞の遺伝子型を同定した。使用したプライマー配列の詳細を表1に示した。
【表1】
【0118】
モノクローナル細胞をスクリーニングして増幅した後、遺伝子配列決定によって正しい変異を持つ細胞クローンを検証し、その結果を
図4Bと5Aに示した。細胞クローンの遺伝子型、タンパク質産物の説明を表2に示す。野生型CYP4V2タンパク質の全長配列をSEQ ID NO 27に、そのヌクレオチド配列をSEQ ID NO 28に示す。CYP4V2のエクソン5の変異細胞は、全長配列の223-224aaで、エクソン7の変異細胞は、268-271aaでフレームシフト変異を有し、野生型よりもトランケートされたタンパク質を発現する。
【表2-1】
【表2-2】
【0119】
CYP4V2変異を有するHEK293細胞の表現型を、細胞増殖およびオートファゴソーム機能の検査により同定した。BCD患者のiPSC細胞から分化したRPE細胞には細胞増殖率の低下とオートファゴソーム機能の欠損があることが文献に報告されている(Hata,M.,et al.「Reduction of lipid accumulation rescues Bietti’s crystalline dystrophy phenotypes.」Proc Natl Acad Sci U S A 115(15):3936-3941)。本発明者らは、HEK293変異細胞がHEK293 WT細胞と比較して細胞増殖率が有意に低下したことを見出した。本発明者らは、HEK293 WT細胞および変異細胞におけるオートファゴソームマーカーである微小管関連タンパク質1軽鎖3(LC3)のタンパク質レベルを評価した。LC3タンパク質のC末端プロセシングによりLC3-Iが生成される。オートファゴソームを形成する時に修飾が起こり、LC3-IをLC3-IIに変化させた。その結果、HEK293変異細胞におけるLC3-IIタンパク質の発現レベルは、HEK293 WT細胞における発現よりも高いことが示された。液胞H+-ATPase阻害剤であるBafilomycin-A1は、WT細胞におけるLC3-IIタンパク質レベルを増加させたが、変異細胞におけるLC3-IIタンパク質レベルを増加させなかった。このことから、変異細胞ではオートファゴソームが蓄積しているが、オートファジーのフラックスが損なわれていることが示された。これらの観察結果は、CYP4V2変異が細胞の正常な機能の喪失を引き起こし、HEK293細胞における細胞増殖の減少およびオートファゴソーム機能の欠損をもたらすことを示した(
図4C~E)。
図4は、代表として5~C14細胞の同定結果を示した。他の細胞クローンも類似の表現型結果を示した。
【0120】
RPE細胞により近い特徴を持つARPE-19細胞株においても、CYP4V2変異は細胞の表現型に変化を引き起こした。ARPE-19細胞はヒト網膜色素上皮細胞由来であり、細胞表面にはRPE細胞の表面マーカーであるCRALBPとRPE-65の発現が見られる。CRISPR-Cas9技術を用いてCYP4V2変異ARPE-19細胞(
図5A)を得、ARPE-19変異細胞の細胞増殖率は、ARPE-19 WT細胞と比較して有意に低下した(
図5B)。CYP4V2遺伝子は、眼RPE細胞層において、脂肪酸代謝に関与する水酸化酵素をコードし、網膜ポリ不飽和脂肪酸の恒常的なバランスを維持している。CYP4V2変異ARPE-19細胞株に対して、細胞を160μMアラキドン酸(AA)で4日間連続的に処理し、そして5μM BODIPY 493/503で脂質染色した後、脂肪粒子の沈着が野生型細胞よりも有意に高いことが見られた(
図5C-5D)。透過型電子顕微鏡で観察した結果、変異細胞においてより多くのオートファジー液胞が存在することが示された(
図5E)。これらの観察結果から、CYP4V2変異は細胞の正常な機能の欠損を引き起こし、ARPE-19細胞において細胞増殖の低下、脂質代謝異常、オートファゴソーム機能の欠損を引き起こすことが示唆された。
図5は、代表として5-C13細胞の同定結果を示した。
【0121】
実施例4:BCD細胞モデルにおけるコドン最適化AAV2-CYP4V2 optのin vitro薬効評価
CYP4V2変異を有する2種のBCD細胞モデル、HEK293およびARPE-19において、AAVウイルスを用いた感染により、コドン最適化したCYP4V2 optのin vitro薬効を評価した。
【0122】
HEK293 CYP4V2変異BCD細胞モデルにおけるAAV2媒介CYP4V2 WTおよびoptの発現を
図6Aに示した。同量のウイルス感染下で、感染されたCYP4V2 optは、発現量がWTより高かった。
【0123】
CYP4V2 WTおよびoptの発現は、HEK293 BCD細胞モデルにおける変異細胞の細胞増殖速度欠損を用量依存的に修復した(
図6B-C)。CYP4V2 optによる変異細胞の機能修復後の細胞増殖レベルは、依然として野生型HEK293細胞より低く、このことから、CYP4V2 optの発現が細胞を過剰活性化しなかったことが示唆された(
図6D)。
【0124】
細胞増殖低下の部分的修復と一致して、CYP4V2 WTおよびoptの発現は、変異細胞における欠損したオートファゴソーム機能の一部も修復した。変異細胞におけるAAV2-CYP4V2 WTまたはoptの発現は、EGFP対照(Baf処理なし場合:NT条件)と比較して、オートファゴソームの蓄積が有意に修復されなかった。しかし、AAV2-CYP4V2 WTまたはoptの発現を有する変異細胞では、Bafilomycin-A1(Baf)処理条件下で、オートファジーのフラックスが有意に増加し、オートファジー機能の一部が回復されたことが示された(
図6E~F)。
【0125】
同様に、AAV2媒介CYP4V2 WTおよびoptは、ARPE-19 CYP4V2変異BCD細胞モデルにおいても治療効果を示した。AAV2-WTおよびAAV2-opt18ウイルスが感染したARPE-19変異細胞5-C13は、
図5C~5Dに示すように、AAV2-WTおよびAAV2-opt18ウイルスが感染したARPE-19変異細胞5-C13内の脂質沈着粒子は、感染していない変異細胞と比べて、野生型ARPE-19細胞のレベルまで有意に減少した。最適化した遺伝子opt18の脂質沈着低減効果は、WTと比較してより良好であり、統計学的に有意差があった(
図5C~5D)。
【0126】
図5~6に代表としてCYP4V2 opt18の結果を示した。他のopt遺伝子の発現も類似する表現型結果が得られた。
【0127】
これらの結果から、HEK293およびARPE-19 BCD細胞モデルで観察された表現型の欠損は、CYP4V2遺伝子の機能喪失に起因することが示唆された。CYP4V2遺伝子の発現を補充することで、これらの細胞機能欠損の回復が実現され、BCDに対する治療効果がある。
【0128】
実施例5:コドン最適化CYP4V2 optのin vivo発現アッセイ
4週齢の野生型C57BL/6マウスの眼球に、網膜下注射により1μL 1.5×10
12vg/mLのAAV2-CYP4V2 WTおよびopt組換えウイルス粒子を注射し、注射後4週間ごとに眼球組織を採取し、マウス眼球組織をホモジナイズした後、RIPA溶解液を加えて組織を溶解し、ホモジナイズして溶解した。等量の総タンパク質をSDS-PAGEで分離し、次いで免疫ブロットを行い、タンパク質を定量した後、CYP4V2の発現レベルをウェスタンで検出した。遺伝子発現レベルはウェスタンブロットアッセイで分析した。コドン最適化後のCYP4V2 opt遺伝子のタンパク質発現レベルをWTと比較した。注射後4週間での結果は、AAV2-CYP4V2 opt遺伝子がマウス眼においてWTよりも高いレベルで発現していることを示した(
図7)。
【0129】
実施例6:高脂肪食CYP4V3 KO BCDマウスモデルの表現型同定
BCD患者と比較して、ヒトCYP4V2遺伝子のマウスにおけるオルソログCYP4V3ノックアウト(knockout、KO)モデルは、生理的及び機能的な変化が少なく、表現型が患者よりもはるかに遅く現れる。生後6ヵ月のマウス(ヒトの20~30歳に相当)では眼に散発的な脂質沈着がみられ、生後12ヵ月のマウス(ヒトの50歳に相当、眼失明を発症)では脂質沈着が顕著であるが、眼球ERG機能や視力の障害はみられない(Lockhart,C.M.,et al.Generation and characterization of a murine model of Bietti crystalline dystrophy.Invest Ophthalmol Vis Sci 55(9):5572-5581)。高脂肪食(high fat diet,HFD)投与後、CYP4V3 KOマウスモデルでは網膜症発症が促進され、凝集する(Qu,B.,et al.Treating Bietti crystalline dystrophy in a high-fat diet-exacerbated murine model using gene therapy.Gene Ther 27(7-8):370-382)。この実施例では、マウスが生後断乳してからHFD飼育を行い、生後4週以降に眼底画像観察、OCT、ERG機能検査を4週間ごとに行った。
【0130】
実施例7:BCDマウスモデルにおけるコドン最適化AAV2-CYP4V2 optのin vivo薬効評価
高脂肪食による眼底病理学的変化を起こしたCYP4V3 KO BCDマウスの眼球に、5e12vg/mLのAAV2-GFPまたはCYP4V2 optウイルス粒子1μLを網膜下腔注射により注入した。注入後4週間ごとにOCTおよびERG機能検査を行い、AAV2-GFPおよびCYP4V2 optウイルス粒子の治療効果を比較分析した。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO
5に示されるヌクレオチド
配列を有する、CYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリヌクレオチドと、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターとを含む発現カセット。
【請求項3】
請求項1に記載のポリヌクレオチドまたは請求項2に記載の発現カセットを含む発現ベクター。
【請求項4】
発現制御エレメントをさらに含み、前記CYP4V2タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、前記発現制御エレメントに作動可能に連結されて
いる、請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記発現制御エレメントは、複製起点、プロモーター、エンハンサー、イントロン、polyAシグナル、ITR、インシュレータから選択される1種または複数である、請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項6】
複製起点をさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記複製起点の配列は、f1ファージori、RK2oriV、pUC oriまたはpSC101oriから選択される、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
5’ITRをさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記5’ITRのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 1に示されるものである、請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
3’ITRをさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記3’ITRのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 11に示されるものである、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
エンハンサーをさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項13】
前記エンハンサーはCMVエンハンサーである、請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項14】
前記エンハンサーのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 2に示されるものである、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
プロモーターをさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項16】
前記プロモーターは特異的または非特異的プロモーターである、請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
前記プロモーターは、CBAプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、hPGKプロモーターまたはTRE3GSプロモーターから選択される、請求項16に記載の発現ベクター。
【請求項18】
前記プロモーターはCBAプロモーターである、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
前記CBAプロモーターのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 3に示されるものである、請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項20】
前記プロモーターは誘導可能プロモーターである、請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項21】
前記誘導可能プロモーターは、テトラサイクリン調節プロモーター、アルコール調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、病原性調節プロモーター、温度/熱誘導型プロモーター、光調節プロモーター、IPTG誘導型プロモーターから選択される1種または複数種である、請求項20に記載の発現ベクター。
【請求項22】
前記テトラサイクリン調節プロモーターは、Tet onプロモーター、Tet offプロモーター、またはTet Activatorプロモーターから選択される、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項23】
前記アルコール調節プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼI遺伝子プロモーター、アルコールトランスアクチベータータンパク質に応答するプロモーターから選択される、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項24】
前記ステロイド調節プロモーターは、ラットグルココルチコイド受容体プロモーター、ヒトエストロゲン受容体プロモーター、蛾エクジステロイド受容体プロモーター、レチノイドプロモーター、または甲状腺受容体スーパーファミリープロモーターから選択される、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項25】
前記金属調節プロモーターは、酵母、マウスまたはヒトのメタロチオネインプロモーターから選択される、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項26】
前記病原性調節プロモーターは、サリチル酸調節プロモーター、エチレン調節プロモーターまたはベンゾチアジアゾール調節プロモーターから選択される、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項27】
前記温度/熱誘導型プロモーターは、HSP-70プロモーター、HSP-90プロモーターまたは大豆熱ショックプロモーターから選択される、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項28】
前記光調節プロモーターは植物細胞の光応答型プロモーターである、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項29】
エクソンおよびイントロンをさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項30】
前記エクソンおよびイントロンは、ニワトリβ-アクチン遺伝子の第1エクソンおよび第1イントロンである、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項31】
前記エクソンおよびイントロンのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 4に示されるものである請求項30に記載の発現ベクター。
【請求項32】
polyAシグナルをさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項33】
前記polyAシグナルは、ウシ成長ホルモンpolyA、SV40 polyAまたはヒトβ-ビーズタンパク質polyAである、請求項32に記載の発現ベクター。
【請求項34】
前記polyAシグナルのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:10に示されるものである、請求項33に記載の発現ベクター。
【請求項35】
ヌクレオチド配列はSEQ ID NO 12、SEQ ID NO 13、SEQ ID NO 14、SEQ ID NO 15またはSEQ ID NO 16に示されるものである、請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項36】
転写後調節エレメントをさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項37】
前記転写後調節エレメントはウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメントである、請求項36に記載の発現ベクター。
【請求項38】
マーカーをコードする遺伝子をさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項39】
前記マーカーは、抗生物質耐性タンパク質、毒素耐性タンパク質、着色または蛍光タンパク質から選択される1種または複数種である、請求項38に記載の発現ベクター。
【請求項40】
前記抗生物質は、アンピシリン、ネオマイシン、G418、ピューロマイシンまたはブラストサイジンから選択される、請求項39に記載の発現ベクター。
【請求項41】
前記毒素は、炭疽毒素またはジフテリア毒素から選択される、請求項39に記載の発現ベクター。
【請求項42】
前記着色または蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質またはフルオレセイナーゼから選択される、請求項39に記載の発現ベクター。
【請求項43】
前記マーカーはジヒドロ葉酸還元酵素である、請求項38に記載の発現ベクター。
【請求項44】
前記発現ベクター
はプラスミド
である、請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項45】
前記発現ベクターはコスミドである、請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項46】
前記発現ベクターはウイルスベクターである、請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項47】
前記発現ベクターはRNAベクターである、請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項48】
前記発現ベクターは線状もしくは環状DNAもしくはRNA分子である、請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項49】
前記プラスミドは、pCI、puc57、pcDNA3、pSG5、pJ603またはpCMVから選択される、請求項44に記載の発現ベクター。
【請求項50】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、センダイウイルス、アルファウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス、牛痘ウイルス、鶏痘ウイルス、カナリアポックスウイルス、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、バキュロウイルスまたは肝炎ウイルスから選択される、請求項46に記載の発現ベクター。
【請求項51】
前記ウイルスベクターはRNAベクターである、請求項46に記載の発現ベクター。
【請求項52】
前記レトロウイルスは、哺乳動物C型、レンチウイルスまたはフォーミーウイルスから選択される、請求項50に記載の発現ベクター。
【請求項53】
前記レンチウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはヒツジ脱髄性白質脳炎レンチウイルスから選択される、請求項52に記載の発現ベクター。
【請求項54】
アデノ随伴ウイルスであ
る、請求項
50に記載の発現ベクター。
【請求項55】
前記アデノ随伴ウイルスは、AAV 1型、AAV 2型、AAV 3型、AAV 4型、AAV 5型、AAV 6型、AAV 7型、AAV 8型、AAV 9型、およびAAV 10型から選択される、請求項54に記載の発現ベクター。
【請求項56】
短縮されたキメライントロンおよびKozak開始配列をさらに含む請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項57】
前記短縮されたキメライントロンのヌクレオチド配列はSEQ ID NO 4に示されるものである、請求項56に記載の発現ベクター。
【請求項58】
前記Kozak開始配列のヌクレオチド配列はSEQ ID NO 17に示されるものである、請求項56に記載の発現ベクター。
【請求項59】
請求項1に記載のポリヌクレオチド
または請求項2に記載の発現カセッ
トを含む、ウイルス粒子。
【請求項60】
請求項3に記載の発現ベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項61】
請求項1に記載のポリヌクレオチド
または請求項2に記載の発現カセット
、および薬学的に許容される担体を含む、
Bietti結晶性ジストロフィーの治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物
がコドン最適化されたCYP4V2タンパク質を発現する、
医薬組成物。
【請求項62】
請求項3に記載の発現ベクター、および薬学的に許容される担体を含む、Bietti結晶性ジストロフィーの治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物がコドン最適化されたCYP4V2タンパク質を発現する、
医薬組成物。
【請求項63】
請求項59に記載のウイルス粒子、および薬学的に許容される担体を含む、Bietti結晶性ジストロフィーの治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物がコドン最適化されたCYP4V2タンパク質を発現する、
医薬組成物。
【請求項64】
請求項60に記載のウイルス粒子、および薬学的に許容される担体を含む、Bietti結晶性ジストロフィーの治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物がコドン最適化されたCYP4V2タンパク質を発現する、
医薬組成物。
【請求項65】
Bietti結晶性ジストロフィー(BCD)を治療するものの調製における、請求項1に記載のポリヌクレオチド
または請求項2に記載の発現カセッ
トの使用。
【請求項66】
Bietti結晶性ジストロフィーを治療する薬物の調製における、請求項3に記載の発現ベクターの使用。
【請求項67】
Bietti結晶性ジストロフィーを治療する薬物の調製における、請求項59に記載のウイルス粒子の使用。
【請求項68】
Bietti結晶性ジストロフィーを治療する薬物の調製における、請求項60に記載のウイルス粒子の使用。
【請求項69】
Bietti結晶性ジストロフィーを治療する薬物の調製における、請求項61に記載の医薬組成物の使用。
【請求項70】
Bietti結晶性ジストロフィーを治療する薬物の調製における、請求項62に記載の医薬組成物の使用。
【請求項71】
Bietti結晶性ジストロフィーを治療する薬物の調製における、請求項63に記載の医薬組成物の使用。
【請求項72】
Bietti結晶性ジストロフィーを治療する薬物の調製における、請求項64に記載の医薬組成物の使用。
【国際調査報告】