(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】グラフェン光検出器
(51)【国際特許分類】
H10F 30/28 20250101AFI20250115BHJP
H10D 30/67 20250101ALI20250115BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H01L31/10 E
H01L29/78 618B
G01J1/02 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539508
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2022086960
(87)【国際公開番号】W WO2023126250
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】102021000032822
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524092534
【氏名又は名称】キャムグラフィック エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】CAMGRAPHIC SRL
【住所又は居所原語表記】Via Suor Maria Pelletier, 4, Monza, 20090 Monza Brianza, ITALY
(71)【出願人】
【識別番号】524092545
【氏名又は名称】コンソルツィオ ナチオナーレ インターユニヴァーシタリオ ペル レ テレコムニカツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】CONSORZIO NAZIONALE INTERUNIVERSITARIO PER LE TELECOMUNICAZIONI
【住所又は居所原語表記】Viale G. P. Usberti, 181/A, 43124 Parma, ITALY
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロマニョーリ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ソリアネッロ,ヴィト
(72)【発明者】
【氏名】マルコーニ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ピラストゥ,アレッシオ
【テーマコード(参考)】
2G065
5F110
5F149
【Fターム(参考)】
2G065BA02
2G065BA40
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(57)【要約】
グラフェン光検出器は、第1および第2の金属電極(3、4)に接続された第1のグラフェン吸収層(2)であって、第1および第2の金属電極が第1のグラフェン層(2)上にプラズモニック導波路として動作するチャネル(5)を画定する、第1のグラフェン吸収層(2)と、第1のグラフェン層(2)と第2のグラフェン層(7)との間に挟まれたゲート誘電体層(6)であって、第2のグラフェン層が電気ゲーティングに使用され、それぞれ第1の金属電極(3)および第2の金属電極(4)に近接した第1および第2のゲート電極(8、9)を備える、ゲート誘電体層(6)と、ゲート誘電体層(6)の下に配設された平坦化されたクラッド(11)を有するフォトニック誘電体導波路(10)であって、第1および第2のゲート電極(8、9)が、ゲート誘電体層(6)とクラッド(11)との間に介在したままである、フォトニック誘電体導波路(10)とを備え、間隔はチャネル断面の幅を画定し、第1の金属電極(3)と第2の金属電極(4)との間の距離は100nm~600nmの範囲であり、第1のゲート電極(8)と第2のゲート電極(9)との間の距離は、第1の金属電極(3)と第2の金属電極(4)との間の距離の少なくとも60%である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン光検出器であって、
第1のグラフェン吸収層(2)であって、前記第1のグラフェン吸収層(2)の第1の端部(2a)で第1の金属電極(3)に接続され、前記第1の端部(2a)とは反対側の前記第1のグラフェン吸収層の第2の端部(2b)で第2の金属電極(4)に接続され、
・ 前記第1の金属電極(3)および前記第2の金属電極(4)は、それぞれソースおよびドレインであり、
・ 前記第1の金属電極(3)および前記第2の金属電極(4)が、前記第1のグラフェン吸収層(2)上にプラズモニック導波路として動作するチャネル(5)を画定する、
第1のグラフェン吸収層(2)と、
前記第1のグラフェン吸収層(2)と第2のグラフェン層(7)との間に介在するゲート誘電体層(6)であって、
・ 前記ゲート誘電体層(6)が前記第1のグラフェン吸収層(2)に対して前記チャネル(5)の反対側に配置され、
・ 前記第2のグラフェン層(7)が電気ゲーティングに使用され、前記第1の金属電極(3)および前記第2の金属電極(4)にそれぞれ近接した第1のゲート電極(8)および第2のゲート電極(9)を備え、
・ 前記第1のゲート電極(8)および前記第2のゲート電極(9)が前記チャネル(5)を中心とする、
ゲート誘電体層(6)と、
前記ゲート誘電体層(6)の下に配設された平坦化されたクラッド(11)を有するフォトニック誘電体導波路(10)であって、前記第1のゲート電極(8)および前記第2のゲート電極(9)が前記ゲート誘電体層(6)と前記クラッド(11)との間に介在したままである、フォトニック誘電体導波路(10)と、
を備え、
チャネル断面の幅を画定する前記第1の金属電極(3)と前記第2の金属電極(4)との間の距離が、100nm~600nmの範囲であり、
前記第1のゲート電極(8)と前記第2のゲート電極(9)との間の距離が、前記第1の金属電極(3)と前記第2の金属電極(4)との間の距離の少なくとも60%である、
グラフェン光検出器。
【請求項2】
前記チャネル(5)の幅が、さらに好ましくは250nm~450nmの範囲である、請求項1に記載のグラフェン光検出器。
【請求項3】
前記チャネル断面の高さを画定する前記第1の金属電極(3)および前記第2の金属電極(4)の厚さが、70nm~200nmの範囲である、請求項1または2に記載のグラフェン光検出器。
【請求項4】
前記第1の金属電極(3)および前記第2の金属電極(4)の厚さが、好ましくは100nmである、請求項3に記載のグラフェン光検出器。
【請求項5】
前記ゲート誘電体層(6)の厚さが、10nm~40nmの範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載のグラフェン光検出器。
【請求項6】
前記ゲート誘電体層(6)の厚さが、好ましくは20nmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のグラフェン光検出器。
【請求項7】
前記第1の金属電極(3)および/または前記第2の金属電極(4)が、金、銀、アルミニウム、窒化チタン(TiN)、またはそれらの合金のうちの1種または複数種の金属から作製される、請求項1~6のいずれか1項に記載のグラフェン光検出器。
【請求項8】
前記チャネル断面の幅を画定する前記第1の金属電極(3)と前記第2の金属電極(4)との間の距離(d
1)が、前記チャネル(5)の長手方向延伸(Y)において一定である、請求項1~7のいずれか1項に記載のグラフェン光検出器。
【請求項9】
前記チャネル断面の一定の幅が、250nm~450nmの範囲である、請求項8に記載のグラフェン光検出器。
【請求項10】
前記チャネル(5)の幅が、前記チャネルの前記長手方向延伸(Y)において周期的に変化し、最小幅(d
1’)を有するセクションが最大幅(d
1’’)を有するセクションと交互になっており、前記幅が、前記長手方向に沿って、前記最小幅の値と前記最大幅の値との間で徐々に変化し、その逆も同様である、請求項1~7のいずれか1項に記載のグラフェン光検出器。
【請求項11】
前記最小幅(d
1’)が100nm~250nmの範囲であり、前記最大幅(d
1’’)が450nm~600nmの範囲である、請求項10に記載のグラフェン光検出器。
【請求項12】
前記最小幅(d
1’)を有する前記チャネルのセクションの数が、2つ~5つの範囲である、請求項10または11に記載のグラフェン光検出器。
【請求項13】
前記チャネル内に、前記最小幅(d
1’)を有する3つのセクションが設けられる、請求項12に記載のグラフェン光検出器。
【請求項14】
前記最小幅(d
1’)および前記最大幅(d
1’’)を有する互いに隣接する2つのセクションの間で、前記チャネル(5)の対向する両面が、前記チャネル(5)の長手方向延伸の方向に対して4°~23°の角度(α)を成す、請求項10に記載のグラフェン光検出器。
【請求項15】
前記フォトニック誘電体導波路の光学モードが、準横電気(quasi-TE)モードである、請求項1~14のいずれか1項に記載のグラフェン光検出器。
【請求項16】
前記チャネル(5)が、2つ以上のグラフェン層、好ましくは2つのグラフェン層を使用することによって実現することができる、請求項1~15のいずれか1項に記載のグラフェン光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン光検出器に関し、特に、光熱電効果および光起電力効果に基づく光変換機構を利用するグラフェン光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン光検出器は、グラフェン特性のために様々な用途において、特に、高速データおよび電気通信用途にいくつかの利点を提供する。
【0003】
グラフェンは、sp2混成を有する二次元六方晶構造を有する1原子厚の炭素層である。この材料の価数と伝導帯とは逆格子空間で、ディラックポイントと呼ばれる6点で交わる。
【0004】
グラフェンは、電子状態のエネルギーと共に線形的に変化し、ディラックポイントで消失する低い状態密度を有する。そのような特徴は、電界効果によって、化学ポテンシャルの容易な調整可能性(シリコンのような他の材料と比較した場合、化学ポテンシャルをシフトさせるために必要なゲート電圧が低い)およびそれに関連するすべての材料特性(例えば、導電率、ゼーベック係数、光吸収など)を可能にする。この特徴は静電ドーピングと呼ばれる。
【0005】
グラフェンの光吸収スペクトルはUVから遠IRに及び、グラフェン中の電荷キャリアの移動度は、材料が適切にカプセル化されている場合(例えば、hBN内に)、室温でさえ100.000cm2/Vsを超える可能性がある。
【0006】
(ピコ秒程度の)短い緩和時間および小さい電子熱キャパシタンスによる光励起時の光励起キャリアの高速キャリア動力学は、100GHzより大きい光電子帯域幅を有する光検出器の実現を可能にする。
【0007】
さらに、グラフェンは、化学蒸着(CVD)によって適切な基板(例えば、銅製)上に成長させ、実質的にあらゆるフォトニック基板上に転写することができる。
【0008】
光熱電効果に基づくグラフェン光検出器の使用は、主に、直接光パワー-電圧変換、ゼロ暗電流、および超高速動作を可能にする。
【0009】
光熱効果(PTE)は、光パワーの吸収に続く電子システムの温度の上昇に基づく。PTEベースのグラフェン光検出器では、起電力は、空間的に不均一なゼーベック係数の存在下で、グラフェン内の電子温度の空間勾配によって引き起こされるゼーベック効果によって生成される。
【0010】
この概念をよりよく理解するために、レーザビームが、空間的に均質な化学ポテンシャル、ひいてはチャネルに沿って一定のゼーベック係数(化学ポテンシャルに依存する特性)を有する活性グラフェン層を励起すると仮定すると、レーザスポット領域(すなわち、照射後に格子に対してより高い温度で見出される電子および正孔)内で光学的に励起された高温キャリアは、励起領域の中心から側方に半径方向に拡散する。この状態では、高温電子(またはゼーベック係数の符号に応じて正孔)は反対方向に拡散し、正味の光電流は0になる。反対に、励起領域の中心で化学ポテンシャル(および結果としてゼーベック係数)のステップ変化が誘発される場合、高温電子または正孔は同じ方向に拡散し、正味の光電流を生じる。光応答は、他の効果(例えば、光導電効果および光ボロメータ効果)とは異なり、熱電効果によって直接生成されるため、光熱電効果は、活性グラフェン層に印加されるバイアスを必要とせず、ひいては暗電流がない状態で動作する。
【0011】
光起電力効果および光熱電効果の両方は、異なる理由で、不均一な化学ポテンシャル、すなわちpn接合を必要とする。グラフェンpnホモ接合(接合がグラフェンのみで作られる)と従来の半導体ベースのダイオードとの間には顕著な違いがある。
【0012】
第1の違いは、従来の半導体はpn接合を実現するために物理的ドーピングを必要とすることである。これとは異なり、電界効果によるグラフェン化学ポテンシャルの容易な調整可能性は、適切なゲート構造を使用することによって静電的に誘導されたpnホモ接合の実現を可能にする。トップゲート構成(ゲート電極が活性グラフェン層の上に配置される)およびボトムゲート構成(ゲート電極が活性グラフェン層の下に配置される)を組み合わせたいくつかのゲート構成が文献に報告されている。単なる一例として、トップスプリットゲートおよびボトムスプリットゲート構成が以下で参照される。
【0013】
スプリットゲート構成では、小さなギャップ(通常は300nm未満)によって分離された2つのゲート電極を使用して、接合の両側に反対の符号を有する空間ドーピングプロファイルを活性層に誘導する。導波路集積型グラフェン光検出器に関連するトップおよびボトムスプリットゲート構成の2つの例を
図1a~
図1dに示す。
【0014】
図1a(ボトムゲート構成、ゼロバイアス検出器動作)および
図1c(ボトムゲート構成、非バイアス動作)において、ドープされたシリコンスロット導波路の2つの部分は、活性グラフェンチャネルの下のゲート電極として使用される。この解決策は、活性層の上への誘電体の堆積を回避し、その電気的特性の劣化を防止する。しかしながら、ボトムゲートは、ゲート電極の実現のためのドープシリコンの使用に設計を制約する。SiNのような他のフォトニックプラットフォームは使用することができない。化学ドーピングの使用は、ドーピングを必要としないというグラフェンの利点を取り去ってしまう。導波路と活性グラフェン層との間に介在する導電層は、活性チャネルに対してより大量の光パワーを吸収するため、導波路集積型光検出器の他の可能なボトムゲート構成は実現不可能である。ゲートが吸収する光パワーは光電流に寄与しないため、応答性が低下する。
【0015】
図1b(トップゲート構成、ゼロバイアス動作)および
図1d(トップゲート構成、非バイアス動作)のトップスプリットゲート構成では、2つのグラフェンゲート電極は、活性チャネルの上部に堆積された厚いゲート誘電体(100nmを超える厚さ)上に配置される。グラフェンゲートは導波路から大きく離れて配置されているため、ゲート層に吸収される光パワーは全吸収の約10%を占める。しかしながら、電荷キャリアの移動度は、Giambraらによる記事(Optics express 27(15),20145-20155)に概説されているように堆積プロセスの影響を受ける。
【0016】
グラフェンpnホモ接合と従来の半導体pn接合との第2の顕著な違いは、グラフェンの半金属的性質のために、グラフェンpnホモ接合が整流挙動を有しないことである。グラフェンpn接合にバイアスを印加した場合、p-またはn-側に対するバイアスの極性に関係なく、大電流(さらには、試料抵抗や印加バイアスに依存してmAの電流)が流れる、すなわち、ダイオード暗電流が抑制される逆バイアス条件が存在しない。したがって、低またはゼロの暗電流で動作する光検出器を実現する唯一の可能性は、光起電力効果または光熱電効果を使用することであり、なぜなら、これらの効果がバイアスを必要としないためである。
【0017】
図1a、
図1bおよび
図1c、
図1dは、2つの光検出器動作:ゼロバイアス動作と非バイアス動作との違いを示す。
図1a、
図1bでは、集積型光検出器はゼロバイアス状態で動作する、すなわち、ドレイン電極(右金属電極)はインダクタを介して接地されている。
図1c、
図1dでは、光検出器は、外部バイアスを印加することなく、データ読み出しのための電子機器(図の増幅器)に直接接続されている。どちらの場合も、光電流のみが存在する(ゼロ暗電流動作)。非バイアス動作では、光電圧対入射光パワーの比に対応する電圧応答性(V/W)によって応答性を表すことが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の主な目的は、既知の解決策を参照して強調された限界を克服するグラフェン光検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的および以下でより明らかになる他の目的は、添付の特許請求の範囲に従って作製されるグラフェン光検出器によって達成される。
【0020】
開示される主題の一態様によれば、本発明は、
第1のグラフェン吸収層であって、第1のグラフェン層の第1の端部で第1の金属電極に接続され、かつ第1の端部とは反対側の第1のグラフェン層の第2の端部で第2の電極に接続され、第1および第2の金属電極がそれぞれソースおよびドレインと呼ばれ、
第1および第2の金属電極が、第1のグラフェン層上にチャネルおよびプラズモニック導波路を画定する、第1のグラフェン吸収層と、
第1のグラフェン層と第2のグラフェン層との間に介在するゲート誘電体層であって、
第1のグラフェン層に対してチャネルの反対側に配置され、
第2のグラフェン層が電気ゲーティングに使用され、第1の金属電極および第2の金属電極にそれぞれ近接した第1および第2のゲート電極を備え、
第1および第2のゲート電極がチャネルを中心とする、ゲート誘電体層と、
ゲート誘電体層の下に配設された平坦化されたクラッドを有するフォトニック誘電体導波路であって、第1および第2のゲート電極がゲート誘電体層とクラッドとの間に介在したままである、フォトニック誘電体導波路と
を備え、チャネル断面の幅を画定する第1の金属電極と第2の金属電極との間の距離が100nm~600nmの範囲であり、
第1のゲート電極と第2のゲート電極との間の距離が、第1の金属電極と第2の金属電極との間の距離の少なくとも60%である、グラフェン光検出器に関する。
【0021】
いくつかの実施形態では、チャネルの幅は、さらに好ましくは250nm~450nmの範囲であってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、チャネル断面の高さを画定する第1および第2金属電極の厚さは、70nm~200nmの範囲である。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1および第2の金属電極の厚さは、好ましくは100nmである。
【0024】
いくつかの実施形態では、ゲート誘電体層の厚さは、10nm~40nmの範囲である。
【0025】
いくつかの実施形態では、誘電体層の厚さは、好ましくは20nmである。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1および/または第2の金属電極は、金、銀、アルミニウム、窒化チタン(TiN)、またはそれらの合金のうちの1種または複数種から作製される。
【0027】
いくつかの実施形態では、チャネル断面の幅を画定する第1の金属電極と第2の金属電極との間の距離は、チャネルの長手方向延伸において一定である。
【0028】
いくつかの実施形態では、チャネル断面の一定の幅は、250nm~450nmの範囲である。
【0029】
いくつかの実施形態では、チャネルの幅は、チャネルの長手方向延伸において周期的に変化し、最小幅を有するセクションが最大幅を有するセクションと交互になっており、幅は、長手方向に沿って最小値と最大値との間で徐々に変化し、逆もまた同様である。
【0030】
いくつかの実施形態では、最小幅は100nm~250nmの範囲であり、最大幅は450nm~600nmの範囲である。
【0031】
いくつかの実施形態では、最小幅を有するチャネルセクションの数は、2つ~5つの範囲である。
【0032】
いくつかの実施形態では、チャネルには、最小幅を有する3つのセクションが設けられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、互いに隣接する最小幅および最大幅の2つのセクション間で、チャネルの対向する両面は、チャネルの長手方向延伸の方向に対して4°~23°の角度を成す。
【0034】
いくつかの実施形態では、誘電体導波路の光学モードは、準横電気(quasi-TE)モードである必要がある。
【0035】
いくつかの実施形態では、チャネルは、2つ以上のグラフェン層、好ましくは2つのグラフェン層を使用することによって実現することができる。好ましくは、2層のグラフェンは互いに重ね合わされている。
【0036】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として示されるその好ましい実施形態のいくつかの以下の詳細な説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1a】従来技術によるそれぞれのグラフェン光検出器の実施形態の断面を示す概略図である。
【
図1b】従来技術によるそれぞれのグラフェン光検出器の実施形態の断面を示す概略図である。
【
図1c】従来技術によるそれぞれのグラフェン光検出器の実施形態の断面を示す概略図である。
【
図1d】従来技術によるそれぞれのグラフェン光検出器の実施形態の断面を示す概略図である。
【
図2】本発明に従って実現されるグラフェン光検出器の概略断面図である。
【
図3】本発明に従って実現される光検出器のそれぞれの実施形態の概略上面図である。
【
図4】本発明に従って実現される光検出器のそれぞれの実施形態の概略上面図である。
【
図5】
図4に示す特定部を拡大した概略上面図である。
【
図6】本発明の光検出器における、ゲート誘電体の厚さに対して示された、活性グラフェン層によって吸収されたパワーとグラフェンゲート電極によって吸収されたパワーとの比を示すグラフである。
【
図7】本発明の光検出器の活性グラフェンチャネルに設けられた金属電極間のギャップの領域を拡大して示す概略上面図である。
【
図8】本発明の光検出器における、選択されたギャップ幅に対する金/グラフェン界面において吸収された光パワー密度を示すグラフである。
【
図9】ギャップ幅の関数としての本発明の光検出器における電圧応答性を示すグラフである。
【
図10】それぞれの金属電極の厚さの関数として、金属接点において吸収されたパワーおよび光検出器の活性グラフェンチャネルにおいて吸収されたパワーを示すグラフである。
【
図11】誘電体層と誘電体導波路との間の距離に対する、光検出器の活性グラフェンチャネルにおける光吸収を示すグラフである。
【
図12】誘電体層の厚さに対する、光検出器の活性グラフェンチャネルにおける光吸収を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
最初に
図2を参照すると、本発明の一実施形態によって実現されるグラフェン光検出器は、全体的に1で示されている。
図2には、光検出器1の断面の概略図が示されている。
【0039】
光検出器1は第1のグラフェン吸収層2(破線で描写される平面構成を有する)を備え、第1のグラフェン吸収層2は、第1のグラフェン層2の第1の端部2aで第1の金属電極3に接続され、第1の端部2aとは反対側の第1のグラフェン層2の第2の端部2bで第2の金属電極4に接続される。第1および第2の金属電極3、4をそれぞれソースおよびドレインと呼ぶ。
【0040】
グラフェン層2と金属電極3、4の各々との接触は、光検出器で生成された光電流を伝導および検出するための適切な電気的接続を確実にする。
【0041】
第1の金属電極3および/または第2の金属電極4は、好ましくは、金、銀、アルミニウム、窒化チタン(TiN)、またはそれらの合金のうちの1種または複数種から作製される。
【0042】
第1の金属電極3および第2の金属電極4は、以下に明確に開示されるように、プラズモニック導波路として動作するチャネル5を第1のグラフェン層2上にさらに画定する。
【0043】
第1の金属電極3および第2の金属電極4は離間しており、d1で示される第1の金属電極と第2の金属電極との間の距離は、チャネル断面の幅を画定する。
【0044】
tmで示される第1の金属電極および第2の金属電極の厚さは、チャネル断面の高さを画定し、好ましくは70nm~200nmの範囲であり、より好ましくは100nmである。
【0045】
好ましくは、第1の金属電極3と第2の金属電極4との間の距離d1は、100nm~600nmの範囲であり、より好ましくは250nm~450nmの範囲である。
【0046】
光検出器1は、第1のグラフェン層2と第2のグラフェン層7(同じく破線で描写されている)との間に介在するゲート誘電体層6をさらに備え、このような構成はコンデンサを実現し、誘電体層6は第1のグラフェン層2に対してチャネル5の反対側に配置される。好ましくは、誘電体層6は、SiNまたはAl2O3から作製される。
【0047】
第1のグラフェン層2および第2のグラフェン層7は、好ましくは平面で互いに平行であり、それらの間の距離は、誘電体層6の厚さによって画定され、tdielで示される。
【0048】
第2のグラフェン層7は、電気ゲーティングに使用され、そして、第1のグラフェン層2と少なくとも部分的に重なり合って、第1の金属電極3および第2の金属電極4にそれぞれ近接して位置する、8、9で示される第1および第2のゲート電極を備える。
【0049】
好ましくは、第1のゲート電極8および第2のゲート電極9は、
図2に明確に示されているように、距離d
2だけ離間しており、チャネル5に対して中心構成を有する。中心構成とは、ゲート電極8、9が、Zで示される軸を用いて
図2において特定されるチャネル5の断面の対称の仮想正中面に対して鏡面対称に配置されることを意味する。
【0050】
好ましくは、ゲート電極8、9間の距離d2は、第1の金属電極3と第2の金属電極4との間の距離の少なくとも60%であり、より好ましくは、距離d2は100nm~300nmの範囲である。この範囲では、より好ましくは、d2の値は150nmである。
【0051】
以下にさらに開示されるように、活性チャネル5を画定する第1のグラフェン層2の上の金属電極3、4は、光電流を収集すること、および金属-グラフェン界面に光を閉じ込めることのいずれかのために設けられる。グラフェン化学ポテンシャルを変化させる(ゲート電極に外部電圧を印加する)ことによる、活性チャネルにおける静電ドーピングの制御は、第2のグラフェン層4のゲート電極8、9によって得られる、いわゆるボトムスプリットゲート形状を使用することによって達成される。
【0052】
光検出器1は、平坦化されたクラッド11が誘電体層6の下に配設され、第1および第2のゲート電極8、9が誘電体層6とクラッド11との間に介在したままであるフォトニック誘電体導波路10をさらに備える。導波路10は、クラッド11、好ましくはSiO2クラッドに埋め込まれたコア12、好ましくはシリコンコアを含む。
【0053】
好ましくは矩形断面で構成される導波路10は、活性グラフェンチャネル5に対して中央に位置する。導波路10とグラフェンゲート電極との間の誘電体スペーサの厚さをtcladで示す。好ましくは、導波路10は、220nm×480nmの矩形断面を有することができる。
【0054】
図3の上面図を参照すると、活性チャネル5および導波路10は、図のY軸によって識別される優勢な長手方向に沿って延在している。Xは、Y軸に垂直であり、第1のグラフェン層2に平行な方向を示す。活性グラフェンチャネル5内の金属電極3、4間のギャップを画定する距離d
1は、横方向Xに沿って測定される。
【0055】
図3の上面図に示す本発明の一実施形態によれば、活性グラフェンチャネル5の幅を画定する第1の金属電極3と第2の金属電極4との間の距離d
1は、チャネルの長手方向延伸Yに沿って一定である。この構成は、各金属電極3、4の対向する縁部を互いに平行にし、優勢な長手方向延伸に関してギャップ距離d
1だけ離間させることによって得られる。
【0056】
図4の上面図に示す本発明の別の実施形態によれば、チャネル5の幅を画定する距離d
1は、チャネルの長手方向延伸において周期的に変化してもよく、d
1’で示される最小幅を有するチャネルセクションが、d
1’’で示される最大幅を有するセクションと交互になり、幅は、長手方向Yに沿って最小値d
1’と最大値d
1’’との間で徐々に変化し、その逆も同様である。
【0057】
好ましくは、最小幅d1’は100nm~300nmの範囲であり、最大幅d1’’は450nm~600nmの範囲である。
【0058】
好ましくは、最小幅d1’を有するチャネルセクションの数は、2つ~5つの範囲であってもよく、より好ましくは、最小幅d1’を有する3つのチャネルセクションがチャネルの長手方向延伸に設けられてもよい。
【0059】
図5では、
図4のチャネルセクションのテーパ構成が拡大されて示されている。テーパ構成では、チャネルの対向する両面は、チャネルの長手方向延伸の方向に対して角度αを成す。
【0060】
誘電体導波路のモードを検出器構造のプラズモニックモードに効率的に変換するために、小さいテーパ角α(
図5を参照)が望ましい。しかしながら、テーパ角が小さすぎると、(伝搬方向yにおける)テーパセクションが長くなる。金属の損失が増加し、その結果応答性が低下するため、これは有害であろう。好ましい角度αは、4°~23°の範囲に画定される。
【0061】
ゲート電極と誘電体導波路(t
clad、
図2を参照)との間の距離は、誘電体導波路と検出器スタックとの間の良好な結合を確実にするのに十分に小さくなければならない。しかしながら、ゲート電極は電気的に絶縁されている。このため、t
clad≠0である。
【0062】
ゲート誘電体層の厚さtdielは、活性グラフェンチャネル内の光吸収を最大にするのに十分に小さいように選択される。しかしながら、厚さtdielは、好ましくは、活性チャネルとゲート電極との間の電流漏れを防止するために、少なくとも20nmになるように選択される。
【0063】
特許請求される主題のグラフェンベースの光検出器は、金属/グラフェン界面で生じる光変換機構(光起電力効果および光熱電効果)を利用するために提案される。金属/グラフェン界面における光起電力効果および光熱電機構を利用して、光電流を生成することができる。
図1a~
図1dを参照して説明される、グラフェンホモ接合が使用される従来技術のデバイスとは異なり、光起電力効果は、光熱電効果に加えて、関連する寄与を与えると予想される。特許請求される光検出器の背後にある基本的な考え方は、プラズモニック導波路を使用して、光電流を収集するために使用される金属電極(ソースおよびドレイン)の縁部に光場を閉じ込めることである。この光検出器構造は、平坦化されたクラッド11を有するフォトニック誘電体導波路10の上部に集積されるように設計され、誘電体層6によって分離された2つのグラフェン層2、7のスタックで構成される。第1のグラフェン層2(活性チャネル5)の上の金属電極3、4は、光電流を収集すること、および金属/グラフェン界面に光を閉じ込めることのいずれかのために使用される。活性チャネル5(第1のグラフェン層2)のドーピングの制御は、第2のグラフェン層7によって得られるボトムスプリットゲート形状を使用することによって達成される。
【0064】
光検出器の形状は
図2~
図4に示されており、デバイススタックはコア12および平坦化されたクラッド11を有するフォトニック導波路10の上部に集積されている。ソース電極3およびドレイン電極4は、光電流を収集するための電極として、および金属/グラフェン界面に光を閉じ込めるためのプラズモニック導波路としての両方の役割を果たす。
【0065】
プラズモニックモードを励起するために、誘電体導波路の光学モードは準横電気(quasi-TE)モードである必要がある。
【0066】
誘電体導波路10からの光は、活性グラフェンチャネル5上の金属-絶縁体-金属(MIM)導波路のプラズモニックモードに結合される。光パワーの大部分は、金属接点の縁部のグラフェン/金属界面で吸収される。
図3を参照すると、金属吸収がグラフェン吸収に広がる前のMIMの幅d
1は300nmである。
【0067】
金属間距離が周期的に変化する
図4では、MIMの幅が大きい(d
1が300nmより大きい)領域と、幅が小さい(d
1が300nmより小さい)領域とが交互になっている。
【0068】
上記のように、従来技術の解決策を参照すると、誘電体導波路と活性グラフェン層との間に介在するグラフェン層は、光検出器の応答性を低下させる大量の光パワーを吸収するため、有害である。提案された発明では、この問題は大幅に軽減される。実際、プラズモニック導波路を使用すると、活性グラフェン層の電界が強化される。さらに、グラフェンの光吸収は、層の数に比例する。2つのグラフェン層を使用することにより、活性チャネルはゲートに対してより大きな吸収を有する。
【0069】
図6のグラフでは、活性グラフェン層によって吸収されたパワー(P
active channel)とグラフェンゲート電極によって吸収されたパワー(P
gate)との比が、ゲート誘電体の厚さ(t
diel)の関数として示されている。この場合、t
cladは常に20nmである。グラフェンゲート電極に対する、活性層によって吸収されたパワーの比は、厚さ20nmの層の場合の400%をわずかに超える値から、厚さ80nmのゲート誘電体の場合の200%をわずかに下回る値に及ぶ。グラフは単調減少傾向を有し、ゲート誘電体の厚さ(t
diel)が増加すると、グラフェンゲートが光パワーのかなり大きな部分を吸収することを示している。
【0070】
グラフェン活性チャネルに関して、金属電極間の小さなギャップの主な欠点は、金属中の大きな吸収、および2つの金属電極間のグラフェン化学ポテンシャルの非自明な制御である。
【0071】
小さなギャップでは、20nmのギャップで本出願人によって観察されたように、ギャップ内の化学ポテンシャルはほぼ一定であり、左接点から右接点まで変化しない。チャネルのギャップ領域は、光パワーの最大部分が吸収される領域であるため、ギャップ内の化学ポテンシャルを制御することができない場合、PTEおよびPV光応答を最大化することができない。その結果、電圧応答性が悪い。しかしながら、ギャップ内で得られる電界増強のために、テーパセクションを有する実施形態は、活性グラフェンチャネルに吸収される光パワーの量を増加させるという利点を有する。光検出器の2つの実施形態を比較することができる:1-300nmの一定幅を有する光検出器の実現、および2-例えば250nmに等しい最小幅d
1’および600nmに等しい最大幅d
1’’を有するテーパセクションを有する光検出器。実現において、一定幅の光検出器では、吸収された光パワーは、周期的にテーパが付された幅を有する光検出器の場合と比較して小さい。さらに、最小ギャップ幅(>100nm)のおかげで、周期的にテーパが付された実現では、光パワーはギャップ内にのみ閉じ込められるのではなく、吸収の関連部分は、より大きい幅を有するテーパセクションでも生じる。Y座標の関数として金属グラフェン界面で吸収された光パワーを示す
図8は、この概念を強調している。この座標系では、Y=0は、
図7に示す構造の中央に対応する。20nmの最小ギャップ幅を有するテーパの場合、光パワーはギャップ領域でほぼ完全に吸収される。250nmおよび70nmの最小ギャップ幅を有するデバイスの場合、パワーはYに沿ってより均一に吸収される。
【0072】
幅が100nmより大きい領域における光パワー吸収は、化学ポテンシャルをより正確に制御することを可能にする。これにより、PTEおよびPV効果のより良好な最適化が可能になり、したがって、検出器の応答性を最適化することができる。
【0073】
このような理由から、テーパセクションおよび比較的大きなギャップ(>100nm)を有する解決策は、最適な設計を表し、d
1’およびd
1’’(
図4)の最適な範囲が結果的に画定される。
【0074】
図9のグラフには、ギャップ幅の関数としてのシミュレートされた電圧応答性が示されている。
【0075】
図10は、金属電極の厚さt
mの関数として、金属接点において吸収されたパワーおよび活性チャネルにおいて吸収されたパワーを示すグラフであり、t
cladは20nmであり、t
dielも20nmである。金属の厚さが増加するにつれて、金属におけるパワー吸収が減少することが観察された。
【0076】
図11は、距離t
cladに対する、活性グラフェンチャネルにおける光吸収を示すグラフであり、t
dielは20nmであり、t
mは70nmである。距離t
cladは、活性グラフェンチャネルにおける光吸収を最大にするために、可能な限り薄く選択されなければならない。t
clad=50nmの場合、活性チャネルに吸収されたパワーは、t
clad=20nmに対して54%減少することが観察された。
【0077】
図12は、誘電体層の厚さt
dielに対する、活性チャネルにおける光吸収を示すグラフであり、t
cladは20nmであり、t
mは70nmである。t
diel=50nmの場合、活性チャネルに吸収されたパワーは、t
diel=20nmに対して60%減少することが観察された。
【国際調査報告】