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特表2025-501668骨治癒の強化に向けたスキャフォールド設計の最適化を実行するための方法及びコンピュータプログラム、並びにスキャフォールドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】骨治癒の強化に向けたスキャフォールド設計の最適化を実行するための方法及びコンピュータプログラム、並びにスキャフォールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20250115BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20250115BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20250115BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 100
G06F111:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542262
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2023050769
(87)【国際公開番号】W WO2023135267
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】22151596.8
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524265529
【氏名又は名称】ペリエ-メッツ,カミーユ
(71)【出願人】
【識別番号】524265530
【氏名又は名称】ドゥダ,ゲオルク
(71)【出願人】
【識別番号】524265541
【氏名又は名称】チェカ,サラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ペリエ-メッツ,カミーユ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥダ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】チェカ,サラ
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC04
5B146DC05
(57)【要約】
本発明は、骨治癒の強化に向けたスキャフォールド設計の最適化(h)を実行するための方法、特にコンピュータに実装される方法に関し、前記方法は、以下の工程:a)スキャフォールド(3)の形状及び材料に関する情報を含むパラメータのセットを計算モデルに入力する工程であり、計算モデルは、有限要素モデル及びメカノバイオロジー計算モデルを含み、有限要素モデルは、パラメータのセットに対する力学的情報データのセットを決定し、かつそれをメカノバイオロジー計算モデルに提供し、メカノバイオロジー計算モデルは、力学的情報データのセットから再生骨体積を決定する、前記工程;b)再生骨体積を対応するパラメータのセットと関連付けるスキャフォールド骨データを生成するように、工程a)によって複数のパラメータのセットに対して複数の再生骨体積を決定する工程;c)再生骨体積をスキャフォールド骨データからのパラメータのセットと関連付けるように構成される解析式からなる計算サロゲートモデルを決定する工程;及びd)計算サロゲートモデルから、計算サロゲートモデルが最大再生骨体積を出力する最適なパラメータのセットを決定する工程、を含む。本発明はまた、スキャフォールド(3)を製造するためのコンピュータプログラム及び方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨治癒の強化に向けたスキャフォールド設計の最適化(h)を実行するための方法、特にコンピュータに実装される方法であって、以下の工程:
a)スキャフォールド(3)の形状及び材料に関する情報を含むパラメータのセットを計算モデルに入力する工程であり、計算モデルは、有限要素モデル及びメカノバイオロジー計算モデルを含み、有限要素モデルは、パラメータのセットについての力学的情報データのセットを決定し、かつそれをメカノバイオロジー計算モデルに提供し、メカノバイオロジー計算モデルは、再生骨体積を力学的情報データのセットから決定する、前記工程;
b)再生骨体積を対応するパラメータのセットと関連付けるスキャフォールド骨データを生成するように、工程a)によって複数のパラメータのセットについて複数の再生骨体積を決定する工程;
c)再生骨体積をスキャフォールド骨データからのパラメータのセットと関連付けるように構成されるパラメトリックモデルを含む計算サロゲートモデルを決定する工程;及び
d)計算サロゲートモデルが最大再生骨体積を出力する最適なパラメータのセットを計算サロゲートモデルから決定する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
各パラメータのセットは、患者固有データに関する情報をさらに含み、患者固有データは、患者の医用画像から取得される骨形状(2)及び骨形状の荷重境界条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法の工程a)は、骨形状(2)をスキャフォールド(3)の形状と複合化すること、及びスキャフォールド(3)の形状と複合化される骨形状(2)を有限要素モデルの計算格子に離散化することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
計算モデルは時間の関数として再生骨体積を計算し、計算モデルは骨再生の治癒の経過にわたる細胞活性及び力学的環境の変化をシミュレートする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
パラメータのセットは、経時的なスキャフォールド材料の分解に関する情報を含み、計算モデルは、スキャフォールド材料の分解に依存して再生骨体積を決定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程d)の後、工程a)は、最適な再生骨体積が計算モデルから計算されるように、計算サロゲートモデルによって決定される最適なパラメータのセットを入力して実行され、ここで最適な再生骨体積と工程d)の計算サロゲートモデルから得られる最大再生骨体積との間の差異が、最適なパラメータのセットを用いて計算モデルにより決定される最適な再生骨体積の5%未満である場合、工程d)で計算される最適なパラメータのセットが、骨治癒の強化を促進するスキャフォールド設計のパラメータのセットとして選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
比較により得られる差異が最適なパラメータのセットを用いて計算モデルにより決定される最適な再生骨体積の5%超過である場合、改善された計算サロゲートモデルを得るように、工程a)からd)が、より多くのパラメータのセットを用いて実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
スキャフォールド(3)の形状に関する情報は、スキャフォールド(3)の孔径(x1、x2、x3)、及び/又は孔径分布、及び/又は曲率に関する情報を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
スキャフォールドの材料に関する情報は、スキャフォールドの材料のヤング率、及び/又はポアソン比、及び/又は多孔性、及び/又は剛性、及び/又は密度に関する情報を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数のパラメータのセットは、均一サンプリング方式又はラテン超方格サンプリング方式を使用して選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
計算サロゲートモデルは、多変量適応回帰スプラインモデル、又はクリギングモデルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程d)において最大再生骨体積をもたらす最適なパラメータのセットを決定するために、計算最適化モデルが使用され、計算最適化モデルは、直接探索アルゴリズム又は遺伝的アルゴリズム又は粒子群最適化法の群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プログラムがコンピュータによって実行される場合にコンピュータに請求項1~12のいずれか一項に記載の方法の工程を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法の工程を用いて設計されるスキャフォールドを製造するための方法であって、スキャフォールド(3)を製造する方法は、3Dプリント法又は射出成形法である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨治癒の強化に向けたスキャフォールド(足場)(scaffold)設計の最適化を実行するための方法及びコンピュータプログラム、並びにスキャフォールド設計を実行するための方法の工程を用いて設計されるスキャフォールドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体材料スキャフォールドは、骨の大きな切片が欠損している部位の骨再生を促進するためのガイド構造として使用することができる。骨再生を成功させるためには、必要とされる細胞外マトリックスを産生するために、スキャフォールド孔の中で細胞に適切な力学的環境を与える必要がある。Cipitriaら(2012)及びPoblothら(2018)が開示するとおり、スキャフォールド孔内の細胞挙動は力学的及び生物学的条件の両方によって影響を受け、骨再生プロセスの過程で変化する。
【0003】
スキャフォールド設計は、これまで主に試行錯誤的なアプローチに頼ってきたが、近年、Guest及びPrevost(2006)、Almeida及びda Silva Bartolo(2010)、Chenら(2011)、Xiaoら(2012)、Diasら(2014)、Wangら(2016)、Langelaar(2016)、Uthら(2017)、及びMetzら(2020)によって開示されるとおり、複数の研究グループは、特定の特性、例えば最大剛性;良好な栄養分の流れのための最大浸透性などを最大化又は最小化するように数値的又は計算的な最適化方法を使用する、より体系的なアプローチを採用してきた。しかし、Poblothら(2018)及びReznikovら(2019)によって開示されるとおり、剛性の高すぎるコンストラクトは骨再生を低下させることが示されているため、スキャフォールドの力学的特性を最大化しても、より優れた骨再生が保証されるとは限らない。それにもかかわらず、Petersenら(2018)により開示されるとおり、欠損組織を模倣したスキャフォールドの構築は、内因性骨再生及びインプラントのオッセオインテグレーション(osseointegration)を最良にサポートすると保証することはできない。
【0004】
Changら(2017)、Grbic及びComaniciu(2018)、Hollisterら(2003、2002)、及びSturmら(2010)によって開示されるとおり、宿主組織と同じ力学的特性に達するように、又はPasiniら(2014)によって開示されるとおり、特定の疲労要件に耐えるように、スキャフォールドを設計することができる。しかしながら、これはスキャフォールド孔内で適切な力学的環境に達することが保証されない。Boccaccioら(2019、2018)及びPercocoら(2020)によって開示されるとおり、別の設計戦略は移植直後のスキャフォールド孔内で適切な力学的特性を確保することである。
【0005】
骨再生は非常に動力学的なプロセスであり、再生期間中、特定の場所でさまざまな種類の組織の形成、リモデリング、及び吸収が行われ、時間の経過とともに変化する力学的環境が作り出される。この力学的環境の変化は順次、組織形成にさらなる影響を及ぼす。脊椎固定装置(spine fusion device)に関する研究では、Bashkuevら(2015)の開示のとおり、手術直後の状況に最適化される設計では、その後の骨形成は最適にならないことが示唆されている。Wuら(2021)によって開示されるとおり、手術直後の状況に最適化されるスキャフォールドと、2次元空間において同じ結論に達するように同じ治癒過程を考慮したスキャフォールドとの骨再生アウトカムの間でin silico比較が実施され、Viateauら(2007)及びPoblothら(2018)によって開示されるとおり、骨欠損の再生をサポートする3Dスキャフォールドの主要な設計特徴を特定することは、生体材料スキャフォールドは通常単独で使用されるのではなく成功率を高めるために骨移植術又はBMP-2と組み合わせて使用されるために困難である。骨移植片に由来し得る細胞(前骨芽細胞及び/又は骨形成細胞)が治癒に寄与すると考えられている。さらに、Finkemeier(2002)に開示されるとおり、骨移植片は骨伝導特性(新生の骨内部成長を誘導すること)及び骨誘導特性(骨沈着を増大すること)を有する。しかしながら、これらの異なる生物学的刺激特性が、単独で、あるいは組み合わせて、どのように治癒プロセス全体をサポートするように寄与しているのかは、まだ十分に解明されていない。
【0006】
上記に開示された数値的方法は、計算コストが高く、最適化プロセスに時間がかかり、煩雑になることが多い。最適化には数日から数週間かかることもあり、商業的な環境では極めて長い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Almeida H de A, da Silva Bartolo PJ (2010) Virtual topological optimisation of scaffolds for rapid prototyping. Medical Engineering & Physics 32:775-782. https://doi.org/10.1016/j.medengphy.2010.05.001
【非特許文献2】Bashkuev, M., Checa, S., Postigo, S., Duda, G., Schmidt, H., 2015. Computational analyses of different intervertebral cages for lumbar spinal fusion. J Biomech 48, 3274-3282. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2015.06.024
【非特許文献3】Boccaccio, A., Fiorentino, M., Gattullo, M., Manghisi, V.M., Monno, G., Uva, A.E., 2019. Geometry Modelling of Regular Scaffolds for Bone Tissue Engineering: A Computational Mechanobiological Approach, in: Cavas-Martinez, F., Eynard, B., Fernandez Canavate, F.J., Fernandez-Pacheco, D.G., Morer, P., Nigrelli, V. (Eds.), Advances on Mechanics, Design Engineering and Manufacturing II, Lecture Notes in Mechanical Engineering. Springer International Publishing, pp. 517-526.
【非特許文献4】Boccaccio, A., Uva, A.E., Fiorentino, M., Bevilacqua, V., Pappalettere, C., Monno, G., 2018. A Computational Approach to the Design of Scaffolds for Bone Tissue Engineering, in: Piotto, S., Rossi, F., Concilio, S., Reverchon, E., Cattaneo, G. (Eds.), Advances in Bionanomaterials, Bionam 2016. Springer-Verlag Berlin, Berlin, pp. 111-117.
【非特許文献5】Chang, C.-C., Chen, Y., Zhou, S., Mai, Y.-W., Li, Q., 2017. Computational Design for Scaffold Tissue Engineering, in: Li, Q., Mai, Y.W. (Eds.), Biomaterials for Implants and Scaffolds. Springer-Verlag Berlin, Berlin, pp. 349-369.
【非特許文献6】Chen Y, Zhou S, Li Q (2011) Microstructure design of biodegradable scaffold and its effect on tissue regeneration. Biomaterials 32:5003-5014. https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2011.03.064
【非特許文献7】Cipitria, A., Lange, C., Schell, H., Wagermaier, W., Reichert, J.C., Hutmacher, D.W., Fratzl, P., Duda, G.N., 2012. Porous scaffold architecture guides tissue formation. Journal of Bone and Mineral Research 27, 1275-1288. https://doi.org/10.1002/jbmr.1589
【非特許文献8】Dias MR, Guedes JM, Flanagan CL, et al., 2014. Optimization of scaffold design for bone tissue engineering: A computational and experimental study. Medical Engineering & Physics 36:448-457. https://doi.org/10.1016/j.medengphy.2014.02.010
【非特許文献9】Finkemeier, C. G. (2002). Bone-grafting and bone-graft substitutes. J. Bone Joint Surg. 84, 454-464.
【非特許文献10】Guest JK, Prevost JH., 2006. Topology optimization of creeping fluid flows using a Darcy-Stokes finite element. International Journal for Numerical Methods in Engineering 66:461-484. https://doi.org/10.1002/nme.1560
【非特許文献11】Grbic, S., Comaniciu, D., 2018. Data driven framework for optimizing artificial organ printing and scaffold selection for regenerative medicine. US20180053346A1.
【非特許文献12】Hollister, S., Chu, G., Taboas, J., 2003. Design methodology for tissue engineering scaffolds and biomaterial implants. US20030069718A1.
【非特許文献13】Hollister, S.J., Maddox, R.D., Taboas, J.M., 2002. Optimal design and fabrication of scaffolds to mimic tissue properties and satisfy biological constraints. Biomaterials 23, 4095-4103. https://doi.org/10.1016/S0142-9612(02)00148-5
【非特許文献14】Langelaar M., 2016. Topology optimization of 3D self-supporting structures for additive manufacturing. Additive Manufacturing 12:60-70. https://doi.org/10.1016/j.addma.2016.06.010
【非特許文献15】Metz, C., Duda, G.N., Checa, S., 2020. Towards multi-dynamic mechano-biological optimization of 3D-printed scaffolds to foster bone regeneration. Acta Biomaterialia 101, 117-127. https://doi.org/10.1016/j.actbio.2019.10.029
【非特許文献16】Pasini, D., Khanoki, S.A., Tanzer, M., 2014. Bone replacement implants with mechanically biocompatible cellular material. US20140363481A1.
【非特許文献17】Percoco, G., Uva, A.E., Fiorentino, M., Gattullo, M., Manghisi, V.M., Boccaccio, A., 2020. Mechanobiological Approach to Design and Optimize Bone Tissue Scaffolds 3D Printed with Fused Deposition Modeling: A Feasibility Study. Materials 13, 648. https://doi.org/10.3390/ma13030648https://doi.org/10.3389/fbioe.2020.585799
【非特許文献18】Petersen A, Princ A, Korus G, et al., 2018. A biomaterial with a channel-like pore architecture induces endochondral healing of bone defects. Nature Communications 9:4430. https://doi.org/10.1038/s41467-018-06504-7
【非特許文献19】Pobloth, A.-M., Checa, S., Razi, H., Petersen, A., Weaver, J.C., Schmidt-Bleek, K., Windolf, M., Tatai, A.A., Roth, C.P., Schaser, K.-D., Duda, G.N., Schwabe, P., 2018. Mechanobiologically optimized 3D titanium-mesh scaffolds enhance bone regeneration in critical segmental defects in sheep. Science Translational Medicine 10, eaam8828. https://doi.org/10.1126/scitranslmed.aam8828
【非特許文献20】Reznikov N, Boughton OR, Ghouse S, et al., 2019. Individual response variations in scaffold-guided bone regeneration are determined by independent strain- and injury-induced mechanisms. Biomaterials 194:183-194. https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2018.11.026
【非特許文献21】Sturm, S., Zhou, S., Mai, Y.-W., Li, Q., 2010. On stiffness of scaffolds for bone tissue engineering - a numerical study. J Biomech 43, 1738-1744. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2010.02.020
【非特許文献22】Uth N, Mueller J, Smucker B, Yousefi A-M., 2017. Validation of scaffold design optimization in bone tissue engineering: finite element modeling versus designed experiments. Biofabrication 9:015023. https://doi.org/10.1088/1758-5090/9/1/015023
【非特許文献23】Viateau, V., Guillemin, G., Bousson, V., Oudina, K., Hannouche, D., Sedel, L., et al., 2007. Long-bone critical-size defects treated with tissue-engineered grafts: a study on sheep. J. Orthop. Res. 25, 741-749. doi: 10.1002/jor.20352
【非特許文献24】Wu C, Fang J, Entezari A, et al., 2021. A time-dependent mechanobiology-based topology optimization to enhance bone growth in tissue scaffolds. Journal of Biomechanics 110233. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2021.110233
【非特許文献25】Wang Y, Luo Z, Zhang N, Qin Q., 2016. Topological shape optimization of multifunctional tissue engineering scaffolds with level set method. Struct Multidisc Optim 54:333-347. https://doi.org/10.1007/s00158-016-1409-2
【非特許文献26】Xiao D, Yang Y, Su X, et al., 2012. Topology optimization of microstructure and selective laser melting fabrication for metallic biomaterial scaffolds. Transactions of Nonferrous Metals Society of China 22:2554-2561. https://doi.org/10.1016/S1003-6326(11)61500-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、骨治癒を強化する様式でスキャフォールドを製造する方法と併せて、骨治癒を強化することを目標とするスキャフォールド設計の最適化を正確かつそれにもかかわらず迅速に行うことができる方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の骨治癒の強化に向けたスキャフォールド設計の最適化を実行するための方法、請求項13に記載のコンピュータプログラム、及び請求項14に記載のスキャフォールドを製造する方法により解決される。骨治癒の強化に向けてスキャフォールド設計の最適化を実行するための方法の有利な実施形態は、従属請求項2~12に示される。
【0010】
本発明の第1の態様は、例えば骨折の場合、特に骨折した骨の一片が欠損している場合に、骨治癒の強化に向けてスキャフォールド設計の最適化を実行するための方法、特にコンピュータに実装される方法に関する。この方法は、スキャフォールドの形状(geometry)に関する情報と材料に関する情報とを含むパラメータのセットを計算モデルに入力する第1の工程を含む。パラメータのセットの入力は、データベース、又はクラウドサービス/システムなどの別の外部ソース、又は複数の外部ソースからパラメータのセットを選択することによって実施することができる。さらにパラメータのセットは、データ入力装置の手段によって手動で入力することもできる。パラメータのセットを選択し、次いで計算モデルに提供することができる。
【0011】
計算モデルは、コンピュータの非一過性の記憶媒体に記憶することができ、コンピュータの少なくとも1つのプロセッサによって実行することができる。
【0012】
パラメータのセットは、磁気共鳴イメージング、陽電子放射断層撮影、X線イメージング、例えばCTを実行するように構成される医用イメージング装置で取得された画像データに含まれ、それから導出され、又はそれに関連付けられ得る。
【0013】
計算モデルは、有限要素モデル(finite elemen model)及びメカノバイオロジー(mechano-biological)計算モデルを含む。計算モデルは、有限要素モデル及びメカノバイオロジー計算モデルを含む方法である。有限要素モデルは、スキャフォールドの形状及び荷重条件に基づいて構築することができる。有限要素モデルは、入力されたパラメータのセットに対応する力学的情報データのセットを、計算又は有限要素解析によって決定し、かつメカノバイオロジー計算モデルに提供する。ここでメカノバイオロジー計算モデルは、力学的情報データのセットから再生骨体積(regenerated bone volume)を決定する。有限要素モデルは、入力されたパラメータのセットに対応する力学的情報データのセットを、計算又は有限要素解析によって決定し、かつメカノバイオロジー計算モデルに提供する方法である。ここでメカノバイオロジー計算モデルは、力学的情報データのセットから再生骨体積を決定する方法である。
【0014】
メカノバイオロジー計算モデルは、例えばPierier-Metzら(2020)によって開示されるとおりエージェントベースモデル(agent-based model)とすることができる。さらに、偏微分方程式に基づくモデル又は手法のいずれかを、メカノバイオロジー計算モデルとして使用することもできる。以下では、エージェントベースモデルについて簡単に説明する。
【0015】
エージェントベースモデルは、確率的プロセス及び力学的情報データ、特に有限要素モデルによって実行される計算から得られる出力から計算されるメカノバイオロジー的刺激(mechano-biological stimulus)、に基づいて、個々の細胞挙動を記述する方法を含む。エージェントベースモデルは、例えば100μm間隔の3D規則マトリックス又は3Dグリッドに基づき、ここでこのグリッド上の各ポイントには1つのエージェントを記述及び表現することができ、このポイントには以下のいずれかの表現型の最大1つの細胞が占有することができる:間葉系間質細胞(mesenchymal stromal cell)「MSC」、骨芽細胞(osteoblast)「骨細胞(bone cell)」、軟骨細胞(chondrocyte)「軟骨細胞(cartilage cell)」、線維芽細胞(fibroblast)「線維組織細胞(fibrous tissue cell)」。したがって、各エージェントは、1つの表現型の単一細胞と、その表現型に関連する対応する組織とを表すことができ、ここで対応する組織はそれぞれ肉芽組織、骨、軟骨又は線維組織とすることができる。
【0016】
さらに、例えばグリッド上のエージェント間の距離が期待される細胞の大きさよりも大きい場合、単一エージェントは、複数の細胞並びにそれぞれの細胞に関連する対応する組織も同様に含むことができる。したがって、細胞及び組織の両方がエージェントベースモデルで表現することができる。
【0017】
スキャフォールドが移植され、治癒プロセスが始まったことを表す初期時点では、エージェントベースモデルでは、MSCを表すエージェントのみがシミュレーションに考慮される。
【0018】
MSCを表すエージェントは、グリッド上を30μm/hなどの所定の速度で移動することができる。この移動プロセスは、反復ランダムウォークプロセスとして実装され、つまり、反復工程中にエージェントが採用するそれぞれの新しい位置は、エージェントの現在の位置の隣接した空き位置の中からランダムに選択され、これは対応する細胞の現在の位置を表す。エージェントベースモデルには、移動の表面誘導などの追加制約を実装することができる。その場合、新しい位置は、その位置が以前に蓄積した組織、又は無傷の組織、あるいはスキャフォールド表面に隣接している場合のみ、エージェントによってアクセス可能となる。
【0019】
計算モデルの各反復工程は、1日の治癒日に相当し、予め定義された割合、例えば30%のMSC分化に相当する。分化するこのMSCの割合が含まれるエージェントは、メカノバイオロジー的刺激に応じて異なる表現型に変化する。異なる表現型は、骨、軟骨、線維組織、及び吸収に有利な刺激について、それぞれ骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、又は無し、の群から選択することができる。エージェントは細胞の種類と対応する組織とを含み得るため、分化段階は同じ位置における組織の蓄積に直接つながる。組織蓄積プロセスの表面誘導などのさらなる制約を実装することもできる。その場合、以前に蓄積した組織又は無傷の組織、あるいはスキャフォールド表面に隣接している場合のみ、MSCを表すエージェントは分化可能である。
【0020】
最後に、各細胞表現型を表すエージェントは、所定の割合で増殖又はアポトーシスを起こすことができ、局所的刺激に依存する。局所的刺激が有利なエージェントは増殖することができ、つまり、隣接する位置に同じ表現型の新しい娘細胞を表す新しいエージェントが作成され、一方で、他のエージェントはアポトーシスを起こすことができ、すなわち、対応する細胞を表す対応するエージェントがこのエージェントの位置から除去される。
【0021】
スキャフォールド材料、成長因子などの追加療法である、エージェントベースモデルを含むメカノバイオロジー計算モデル及び有限要素モデルを含む計算モデルの正確な設定に応じて、細胞活動レベル、すなわち増殖、分化、及びアポトーシスの割合及び移動速度は、有益な材料又は追加療法に起因し得る大きな骨欠損に対応するバイオロジー的刺激の欠如又は骨欠損の改善を反映するように変化する。
【0022】
例えばエージェントベースモデルであるメカノバイオロジー計算モデルの出力は、所定の関心領域、例えばスキャフォールド孔、における時間間隔後の再生骨体積とすることができ、これは、期待される治癒の時間、又は少なくとも欠損状況の進展がこれ以上少なくともないことに対応する。この値は、メカノバイオロジー計算モデルのシミュレーション又は計算の最後に、骨芽細胞「骨」を含むすべてのエージェントを加算し、それらに予め定義されたサイズの1つのエージェントのサイズを乗じることによって計算される。この体積を、例えばスキャフォールドを除いた、関心領域内の自由な体積の合計で割ることで、骨の体積の割合を求めることができる。
【0023】
さらに、メカノバイオロジー計算モデルの別の出力としては、骨治癒を達成するのに必要な時間の計算としてもよい。ここで、骨治癒は、例えば、対応する欠損を有する特定の骨に対応する骨体積を含む医療データのデータベースから得ることができる予め定義された骨体積、又は欠損における再生骨の連続性の観点から定義されなければならない。
【0024】
メカノバイオロジーモデルの出力は、コンピュータのプロセッサから非一過性の記憶媒体に提供され得、さらに、出力をグラフィカルに視覚化するためにディスプレイに表示され得る。
【0025】
本発明の方法の第2の工程では、特に計算モデルが再生骨体積を計算した対応するパラメータのセットに再生骨体積を関連付けるスキャフォールド骨データを生成するように、第1の工程による複数のパラメータのセットについて複数の再生骨体積が決定される。この第2の工程は、並列又は直列で実施又は計算することができる。第2の工程の並列計算の場合、複数のパラメータのセットのうちの対応するパラメータのセットの各々に対するそれぞれの再生骨体積が、第1の工程によって一度に決定される。しかし、直列計算の場合、パラメータのセットの1つに対する1つの再生骨体積が一度に第1の工程によって決定される。すなわち、複数のパラメータのセットの対応するパラメータのセットのうちのそれぞれに対する対応する再生骨体積の各々が、順次的様式で次々に決定される。
【0026】
本発明の方法の第3の工程は、再生骨体積を、スキャフォールド骨データからのパラメータのセットと関連付けるように構成されるパラメトリックモデルを含む計算サロゲートモデル(computational surrogate model)を決定することである。計算サロゲートモデルは、パラメトリックモデルを含む方法である。パラメトリックモデルは、多項式関数の形式とすることができ、これは、スキャフォールド骨データからのパラメータのセットの関数として再生骨体積を関連付ける補間法又はカーブフィッティング法によって得ることができる。パラメトリックモデルはまたガウス関数の形式でもよい。これは、有限要素モデルとメカノバイオロジー計算モデルとを含む前述の計算モデルを使用してパラメータのセットについて再生骨体積を計算する場合と比較して、このようなパラメトリックモデルは計算コストが低く、かつ計算が高速であるために有利である。
【0027】
本発明の方法の第4の工程は、計算サロゲートモデルから、計算サロゲートモデルが最大再生骨体積を出力する最適なパラメータのセットを決定することを含む。この利点は、骨治癒を強化するための最適なパラメータのセットによりスキャフォールド設計を決定できることである。例えば、本発明の方法の第4の工程は、計算最適化モデルを用いて実行することができ、ここで計算最適化モデルは、入出力関数を大域的に最適化する方法であり、入出力関数は、第3の工程で得られる数式である。
【0028】
本発明の方法によって、骨再生の強化に向けたスキャフォールド、例えば3Dプリントされたスキャフォールドの最適化が可能になる。この方法は、初期の力学的刺激又は初期の力学的特性だけでなく、スキャフォールド設計を最適化するための骨再生アウトカムを含む。さらに、計算サロゲートモデルを使用することで、標準的な計算機で合理的な時間量で実行できるセットアップが可能になる。このように、コンピュータ実行可能な方法の工程は、コンピュータの少なくとも1つのプロセッサで実行することができる。さらにプロセッサが処理及び計算すべきデータの複雑さ及び膨大な量のために方法の工程を実行するために必要な計算を実行する並列プロセッサの配列の使用が有利になる場合がある。
【0029】
当業者には明らかであり得る追加の中間工程を、本発明の方法の連続する2つの工程のいずれかの間に実施することも可能であることを理解されたい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、各パラメータのセットは、患者固有データに関する情報をさらに含むことができ、患者固有データは、患者の医用画像から取得された骨形状、及び骨形状に対する荷重境界条件を含む。骨形状は、例えば骨の一部が欠損しているような、骨折した骨形状を含むことができる。骨形状の荷重境界条件は、患者固有の医療データから得ることができる。荷重境界条件は、通常、患者の体重に関する歩行条件下での典型的な荷重の推定に基づいて適用することができる。さらに荷重境界条件は、骨折した骨の位置、つまり骨の破損が起こった身体の部位に依存し得る。これに基づいて、圧縮荷重力、曲げ荷重力、ねじり荷重力、又はそれらの組み合わせなどの力の種類を対応する荷重境界条件として適用することができる。
【0031】
特に、前記患者固有データは、医用イメージング装置で取得される画像データを含み得、又はそこから導出され得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、方法の第1の工程は、骨形状をスキャフォールドの形状と複合化すること、及びスキャフォールドの形状と複合化される骨形状を有限要素モデルの計算格子に離散化することをさらに含むことができる。
【0033】
有限要素モデルは、スキャフォールドで治療されるべき欠損骨の形状に基づくことができる。この複合化形状は、特に、含まれる無傷の骨の先端に関して単純化することができ、例えば、円形又は楕円形の円柱として単純化することができ、又は、例えば、X線画像又はコンピュータ断層撮影「CTスキャン」を使用して画像データから直接インポートすることができる。さらに有限要素モデルのための複合化形状は、好ましくは、欠損部の少なくとも2倍の長さの無傷の骨の先端、欠損領域、すなわち手術計画に従って固定プレート(複数可)及びネジを含むスキャフォールドが移植される領域、及びスキャフォールド形状を含み得る。
【0034】
この前述の複合化形状は、有限要素ソフトウェアで計算格子(computational mesh)として離散化される。計算格子は、適切な精度の四面体及び/又は六面体及び/又は多面体の有限要素を含むことができる。
【0035】
以下の荷重境界条件を実装することができる:
- 遠位である骨の先端は、回転及び並進の自由度がない状態で固定できる。
- 他方の先端には、通常、被験患者の体重に関する歩行条件下での典型的な荷重の推定に基づいて荷重を適用することができる。
【0036】
すべての組織及び材料が線形弾性挙動を示すか、又は生体組織が多孔質弾性挙動、及びプレート、ネジ、及びスキャフォールドが線形弾性挙動を示すかのいずれかと仮定して、機械的特性を、骨折を伴う部位に対応する体の各部位に帰属させることができる。
【0037】
身体のさまざまな部位は、融合させることも、又は互いに結びつけることもできる。
【0038】
メカノバイオロジー計算モデル、例えばエージェントベースモデルは、2つの方法で有限要素モデルとカップリングすることができる。第1には、有限要素解析から要素ごとに導き出すことができる力学的刺激を用いて細胞挙動に影響を与えることができ、及び/又は第2には、組織の分布に応じて、反復ごとに有限要素モデルで組織の材料特性を更新することができる。より正確には、有限要素モデルの各要素は、それが含むエージェントにマッピングすることができ、その材料特性は、これらのエージェントで予測される組織の加重平均として定義することができ、材料特性は、Lacroix及びPrendergast(2002)によって開示されるとおり、組織の蓄積及び成熟を考慮するために、最後の10回の反復にわたってさらに平均化することができる。有限要素解析及びエージェントベースのシミュレーションを反復的に実行して、再生プロセス全体を予測することができ、ここで1回の反復が1日の治癒プロセスを表すことができる。
【0039】
言い換えれば、有限要素モデルは、治療すべき欠陥の形状、及び荷重条件に対応する患者の体重に基づいて構築することができる。その後、反復して、有限要素モデルのシミュレーション又は計算、すなわち有限要素解析を行うことができる。有限要素モデルのシミュレーション又は計算から、骨の破壊が起こった患者の体の領域に対応する各有限要素内の局所的な力学を決定することができる。これらの力学値は、八面体せん断ひずみ及び流体相対速度の線形結合、又は静水圧応力及び最小主ひずみに対する閾値などの、メカノバイオロジー的刺激を計算するために使用することができる。この刺激に基づき、メカノバイオロジー計算モデル、つまりエージェントベースモデルに実装される細胞は、分化、アポトーシス又は細胞死、増殖、及び移動などの特定の挙動をとることができる。再生領域の細胞分布は、各細胞が異なる材料特性を持つ特定の組織の種類を蓄積するため、各有限要素における材料特性を更新するために使用されるであろう。その後、有限要素解析を再度実行し、プロセス全体を反復的に実行することができる。ここで1回の反復は1日の治癒日に対応し得る。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、計算モデル、特にメカノバイオロジー計算モデルは、再生骨の体積を時間の関数として計算し、ここで計算モデルは、骨再生の治癒過程にわたる細胞活動及び力学的環境の変化、例えば荷重力、をシミュレートし、特に反復的にシミュレートする。この実施形態では、時間の関数としての骨再生について、治癒の過程にわたる骨再生への動的変化の影響を考慮することができる。本発明の方法の第3の工程で計算サロゲートモデルに使用され得る再生骨体積は、治癒プロセスの終了の時点に対応する。
【0041】
さらにパラメータのセットは、経時的なスキャフォールド材料の分解に関する情報を含むことができ、ここで計算モデルは、特に反復的に、スキャフォールド材料の分解に依存して再生骨体積を決定することができる。これにより、スキャフォールド材料の分解を含めることによって、スキャフォールドと骨再生との間の動的相互作用を組み込むことが可能になるであろう。スキャフォールドの分解は通常、骨折の治癒段階が数週間程度であるのに比べ、数ヶ月後又は数年後などの長い時間スケールで起こりうる。
【0042】
本発明の別の実施形態によれば、第4の工程の後に、計算モデルから最適な再生骨体積が計算されるように、計算サロゲートモデルによって決定される最適なパラメータのセットを入力して第1工程を再度実行し、ここで最適な再生骨体積と、第4の工程の計算サロゲートモデルから以前に得られた最大再生骨体積との差異が、最適なパラメータのセットを使用した計算モデルによって決定される最適な再生骨体積の5%未満である場合、第4の工程で計算された最適なパラメータのセットが、骨治癒の強化を促進するスキャフォールド設計のパラメータのセットとして選択される。
【0043】
言い換えれば、計算サロゲートモデルが最大再生骨体積を出力する最適なパラメータのセットを決定した後、決定した最適なパラメータのセットを再度計算モデルに入力する。ここで計算モデルは再生骨体積を決定する。計算モデルの有限要素モデル及びメカノバイオロジー計算モデルによるシミュレーションを再度行い、前述の最適なパラメータのセットを用いて対応する再生骨体積を求める。メカノバイオロジー計算モデルによる計算で得られたこの再生骨体積は、最適な再生骨体積に相当し、計算サロゲートモデルによる結果よりも正確であると考えられる。計算モデル、特にメカノバイオロジー計算モデル、及び計算サロゲートモデルによって決定される最適な再生骨体積との偏差の程度を決定するために、メカノバイオロジー計算モデルによって決定される最適な再生骨体積を計算サロゲートモデルによって決定される最大再生骨体積と比較する。比較の結果、その差異が、最適なパラメータのセットを用いた計算モデルによって決定される最適な再生骨体積の5%未満であれば、第4の工程で計算される最適なパラメータのセット、すなわち計算サロゲートモデルを用いたパラメータのセットが、骨治癒の強化を促進するスキャフォールド設計のパラメータのセットとして選択される。
【0044】
これは、計算サロゲートモデルを使用することで、再生骨体積が最大となる最適なパラメータのセットを迅速かつ計算コストをかけずに決定できるという利点がある。さらに、有限要素法及びメカノバイオロジー計算モデルをさらに用いて、決定された最適なパラメータのセットを用いてシミュレーションを行えば、計算サロゲートモデルを用いて得られた結果の信頼性が高まるであろう。したがって、これにより、本発明の方法は、全体として計算効率が高く、正確なものとなる。
【0045】
さらに、比較によって得られた差異が、最適なパラメータのセットを用いて計算モデルによって決定される最適な再生骨体積の5%超過である場合、改善された計算サロゲートモデルを得るようにするために、本発明の方法の4つの工程のすべてを、より多くのパラメータのセットを用いて実行する。これは、パラメータのセットに関連した再生骨体積の高度なサンプリングを得ること、すなわち、パラメータ空間のより高度なサンプリングを得ること、かつひいては再生骨体積の高度にサンプリングされた空間を得ることによって行われる。これにより、計算サロゲートモデルの精度を高めることができ、その結果、本発明の方法全体の精度を高めることができる。
【0046】
スキャフォールドの形状に関する情報は、スキャフォールド孔径、及び/又は孔径分布、及び/又は曲率に関する情報を含み得る。さらに、スキャフォールドの材料に関する情報は、スキャフォールドの材料のヤング率、及び/又はポアソン比、及び/又は多孔性、剛性、及び/又は密度に関する情報を含み得る。さらに、例えば、ヤング率、及び/又はポアソン比、及び/又は多孔性、及び/又は剛性、及び/又は密度がスキャフォールド形状内の異なる領域で可変であるような、スキャフォールドの材料分布に関する情報が提供されることも可能である。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、パラメータの複数のセットは、均一サンプリング(uniform sampling)方式又はラテン超方格サンプリング(Latin hypercube sampling)方式を用いて選択される。
【0048】
ラテン超方格サンプリング方式は、多次元空間のパラメータ値のセットを生成するように構成される方法である。サイズNの場合(Nは多次元空間内の各パラメータの値の数に対応)、多次元空間は、パラメータ空間の各辺をNで割ったサブ空間に分割される。次に、各行と各列とに正確に1つのポイントが存在するように、さらなる次元を拡張できるさまざまなサブ空間にポイントがランダムに配置される。これにより、設計空間のばらつきを表すサンプリングが可能になり、完全な設計空間の正確なスパース表現(sparse representation)がさらに得られる。
【0049】
本発明の別の実施形態によれば、計算サロゲートモデルは、多変量適応回帰スプライン(Multivariate Adaptive Regression Splines:MARS)モデル又はクリギング(Kriging)モデルである。
【0050】
MARSモデルはノンパラメトリック回帰法であり、区分線形関数などのヒンジ関数の積として表すことができるため、結果として得られる計算サロゲートモデルを簡単に解釈できるようになる。さらに、MARSモデルを計算サロゲートモデルとして実装するために、区分的3次関数(piece-wise cubic function)を採用することができる。MARSモデルは、特定の許容レベルに達するまで平均二乗誤差を最大限に減らすために項を付加し、その後、過剰適合を避けるためにモデル内で最も値の付加(value-adding)の低い項を削除することによって構築される。MARSモデルは高精度の結果を提供することができる。
【0051】
クリギングモデルは、目的のポイントの周囲の既知のポイントの加重平均を計算するガウス過程回帰法の一種である。これらの重みの定義は、共分散に対してなされる仮定に基づくことができる。クリギングモデルを適用する際には、当業者には知られている異なる種類の自己相関を定義することができ、指数的な自己相関を仮定することで、精度の高い結果を得ることができる。
【0052】
さらに、計算サロゲートモデルは、ニューラルネットワークモデル、又は放射基底関数モデル、又はサポートベクターマシンモデル、又はガウス過程回帰モデルなどのサロゲートモデルを含むことができる。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の方法の第4の工程において最大再生骨体積をもたらす最適なパラメータのセットを決定するために、計算最適化モデルが使用され、ここで計算最適化モデルは、直接探索アルゴリズム、又は遺伝的アルゴリズム、又は粒子群最適化法の群から選択される計算最適化方法である。
【0054】
パラメトリックモデル又はパラメトリックモデルに基づく目的関数は、いくつかの局所最適条件を含むことができるため、計算最適化モデルには、当業者に知られ得る勾配に基づく最適化アプローチではなく、大域的で勾配のない最適化アプローチを採用することができる。したがって、計算最適化モデルは、直接探索アルゴリズム、又は遺伝的アルゴリズム、又は粒子群最適化法などの勾配のない最適化アプローチ群から選択することができる。これらの勾配のない最適化アプローチ又はアルゴリズムは、計算サロゲートモデルに適用した場合、メカノバイオロジー計算モデルに直接適用した場合と比較して、最大再生骨体積の評価がより迅速になる。
【0055】
本発明の第2の態様は、コンピュータによってプログラムが実行される場合、骨治癒の強化に向けたスキャフォールド設計の最適化を実行するための本発明の方法の工程をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム及び/又はコンピュータプログラム製品である。
【0056】
特にパラメータのセットは、本発明の第1の態様の文脈で詳しく説明したとおり、コンピュータの非一過性の記憶媒体からコンピュータプログラムによって提供され得る。さらに、非一過性の記憶媒体は、画像データ及び/又は患者固有データを含み得る。画像データ及び/又は患者固有データは、画像データ及び/又は患者固有データを記録し、及び前記データをデジタルデータに変換し、及び患者固有データを表す前記デジタルデータ(及び「そのようなデータ」とも称する)を非一時的記憶媒体を備えるコンピュータに記憶又は送信するように構成される医用イメージング装置によって取得する、又は取得していることが可能である。これは、例えば、医用イメージング装置とコンピュータとが接続されている任意のネットワーク接続によって達成することができる。
【0057】
さらに、コンピュータプログラムを実行するコンピュータは、コンピュータプログラムの任意の出力を表示するように構成されるディスプレイに接続され得る。本発明の第3の態様は、骨治癒の強化に向けてスキャフォールド設計の最適化を実行するための本発明の方法又はコンピュータプログラムの工程を用いて設計されるスキャフォールドを製造するための方法であり、ここでスキャフォールドを製造するための方法は、3Dプリント法又は射出成形法である。特に、製造の方法は、付加製造装置又はシステムが本発明による方法によって計算されるとおりスキャフォールドを製造し得るように、付加製造装置用又はシステム用の命令を含むように構成及び適合されるデジタルファイルを生成する工程を含む。
【0058】
「3Dプリント(プリンティング)」という用語は、付加製造法(additive manufacturing method)と同義に使われ得る。
【0059】
特に、第1の態様による方法は、スキャフォールドを製造する方法の工程を含むように拡張することができる。本方法がコンピュータプログラムに組み込まれている場合、コンピュータプログラムを実行するコンピュータ又はコンピュータシステムは、例えば、付加製造装置又はシステムによって実行されるのに適合したファイルフォーマットに結果を変換することによって、本方法の実行から得られるスキャフォールド設計を付加印刷装置又はシステムに送信するように接続又は構成することができる。
【0060】
用語「コンピュータ化された装置」、「コンピュータ化されたシステム」又は類似の用語は、1つ又は複数のプログラムに従って動作可能又は動作する1つ又は複数のプロセッサを含む装置を示す。
【0061】
「コンピュータ」又はそのシステムという用語は、本明細書では、-汎用プロセッサ又はマイクロプロセッサ、RISCプロセッサ、又はDSPなどの当該技術分野の通常の文脈として使用され得、メモリ又は通信ポートなどの追加の要素を含む可能性がある。任意に又はさらに、「コンピュータ」又はその派生装置(derivative)という用語は、提供された又は組み込まれたプログラムを実行することができ、及び/又はデータ記憶装置及び/又は入力ポート及び出力ポートなどの他の装置などの他の装置を制御及び/又はアクセスすることができる装置を示す。また、「コンピュータ」という用語は、接続される、及び/又はリンクされる、及び/又はその他としては通信する、場合によっては非一過性の記憶媒体のメモリインフォームなどの1つ又は複数の他のリソースを共有する、複数のプロセッサ又はコンピュータを示す。
【0062】
本明細書で使用されるとおり、「サーバ」又は「クライアント」又は「バックエンド」という用語は、1つ又は複数の他のコンピュータ化された装置又はコンピュータにデータ及び/又は動作サービス又はサービスを提供するコンピュータ又はコンピュータ化された装置を示す。
【0063】
「ソフトウェア」、「コンピュータプログラム」、「ソフトウェア手順」又は「手順」、又は「ソフトウェアコード」又は「コード」、又は「アプリケーション」又は「アプリ(app)」という用語は、その文脈に応じて互換的に使用することができ、一般にアルゴリズム及び/又は他のプロセス又は方法を表す一連の動作を実行するための1つ又は複数の命令又は指令又は回路を含む製品又は方法を示す。プログラムは、RAM、ROM、又はディスクなどの媒体に記憶されていてもよいし、又はプロセッサ又は他の回路などのアクセス可能かつ実行可能な回路に組み込まれていてもよい。
【0064】
プロセッサ及びプログラムは、プログラムされた一連の動作を実行するように設計されたFPGA又はASICなどの電子ゲートのアレイなど、少なくとも部分的に同じ装置から構成され得、任意にプロセッサ又は他の回路を含む、又はそれに連結されている。
【0065】
本明細書で使用されるとおり、限定するものではないが、プロセスとは、ある特定の目的又は結果を達成するための動作の集まりを表す。
【0066】
同様に、モデルは、ある特定の目的又は結果を達成するための動作の集まりを表すことも可能である。
【0067】
目的のために「構成する」及び/又は「適合させる」という用語、又はその変形形態は、目的を達成するように設計及び/又は実装及び/又は動作可能又は動作的な、少なくともソフトウェア及び/又は電子回路及び/又は補助装置を使用することを包含する。
【0068】
コンピュータプログラム及び/又はデータを記憶し、及び/又はそれを備える非一過性の記憶媒体などの装置は、特に製品を構成する。特に指定がない限り、プログラム及び/又はデータは、非一過性の媒体内又は媒体上に記憶されている。
【0069】
本開示の実施形態の文脈において、例として、限定するものではないが、「動作する」又は「実行する」などの用語は、それぞれ、「動作可能」又は「実行可能」などの能力も包含する。
【0070】
以下、添付図面に示す実施形態例を用いて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】骨治癒の強化に向けてスキャフォールド設計の最適化を実行するための本発明の方法の一実施形態のフローチャートを示す。
図2】スキャフォールドの形状と複合化される骨の形状からなる有限要素モデル形状の概略図を示す。
図3図2に示したスキャフォールドの形状の概略的縦断面図を示す。
図4図3に示したスキャフォールドの形状の半分の形状の概略的縦断面図を示す。
図5図3及び図4に示したスキャフォールドの形状の上面図を示す。
図6図2に示したスキャフォールドの形状の孔径の情報を含む入力パラメータのセットに対する再生骨体積の割合を示す三次元プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、骨治癒の強化に向けてスキャフォールド設計の最適化を実行するための本発明の方法の一実施形態を示すフローチャートである。この方法はコンピュータに実装される方法である。この方法は、スキャフォールドの形状及び材料に関する情報を含むパラメータのセットを初期サンプリングし、そのパラメータのセットを計算モデルに入力する第1の工程a)を含む。パラメータのサンプリングは、ラテン超方格サンプリング技法「LHS(Latin Hypercube Sampling technique)」によって得られる。LHS技法はSimpsonら(2002)によって開示される。計算モデルは、有限要素モデル及びメカノバイオロジー計算モデルを含む。計算モデルは、入力されたパラメータのセットを用いて再生骨体積を計算する。
【0073】
第2の工程b)では、再生骨体積を、計算モデルが再生骨体積を計算した対応するパラメータのセットと関連付けるスキャフォールド骨データを生成するように、第1の工程a)に従って複数のパラメータのセットに対して複数の再生骨体積を決定する。
【0074】
本方法の第3の工程c)では、再生骨体積を、スキャフォールド骨データからのパラメータのセットと関連付けるように構成されるパラメトリックモデルからなる計算サロゲートモデルを決定する。計算サロゲートモデルとしてクリギングモデルが使用され、これはLophavenら(2002)によって開示されるとおり、MatlabのクリギングツールボックスDACEを使用して実装される。
【0075】
本方法は、計算最適化モデルを用いて、計算サロゲートモデルが再生される骨の最大体積を出力する最適なパラメータのセットを決定する第4の工程d)を含む。コンピュータ最適化モデルは、例えば、The MathWorks,Inc.が2020年に開示したMatlab Global optimization toolboxを使用して実装することができる。
【0076】
本方法の例示的な実施形態は、本方法の第4の工程dで計算サロゲートモデルが決定した最適なパラメータのセットを用いて、計算モデルが最適な再生骨体積を計算する第5の工程e)を含む。
【0077】
例示的な方法の第6の工程f)において、第5の工程e)の計算モデルから得られた最適な再生骨体積と、第4の工程d)の計算サロゲートモデルから得られた最大再生骨体積との差異が計算される。この第6の工程f)では、その差異が、最適なパラメータのセットを用いて計算モデルによって決定される最適な再生骨体積の5%未満であるかどうかをチェックする。その差異が最適な再生骨体積の5%以上の場合、本方法はその後に最初の矢印N1で示すとおり第3の工程c)に戻る。工程c)からe)は、パラメータのセットに関連付けられた再生骨体積の高度なサンプリングを得ることにより、改善された計算サロゲートモデルを得るように、より多くのパラメータのセットで実行される。
【0078】
c)からe)の各工程の繰り返しの後、本方法の第6の工程f)が行われ、ここではその都度、この差異が最適なパラメータのセットを用いて計算モデルにより決定される最適な再生骨体積の5%未満であるかどうかが本方法によりチェックされる。工程c)から工程f)の繰り返しは、その差異が最適な再生骨体積の5%未満になるまで行われ、その場合、本方法は第2の矢印Y1で示されるとおり、第7の工程g)に進む。
【0079】
本方法の第7の工程g)において、最適な再生骨体積が、以前に記憶されたすべての値よりも良好である、例えば高いかどうかがチェックされる。チェックの結果、最適な再生骨体積が、以前に記憶されたすべての値よりも良好でない、例えば高くない場合には、第3の矢印N2で示すとおり、本方法はその後に第3の工程c)に戻る。c)からf)の工程を実行し、第6の工程f)の条件が満たされると、続いて第7の工程g)が実行される。この繰り返しは、最適な再生骨体積が、以前の記憶されたすべての値よりも良好である、例えば高いことが判明するまで行われる。この場合、第4の矢印Y2で示すとおり、本方法は、骨治癒の強化が達成される最終的に最適化されたスキャフォールド設計h)のパラメータのセットを最終的に決定した。
【0080】
図2は、有限要素モデルを用いるシミュレーション又は計算、すなわち有限要素解析、のための有限要素モデル形状1の断面図を示す。ここで有限要素モデル形状1は有限要素解析で使用される形状である。有限要素形状1は、皮質骨4及び骨髄5の形状を備えてなる骨形状2を備える。有限要素モデル形状1はさらに、スキャフォールド3の形状、プレート固定システムとも呼ばれる鋼製支持構造6、及びスキャフォールド3、骨形状2及び鋼製支持構造6の形状を取り囲む肉芽組織7を備える。対称線8は、有限要素モデル形状が対称線8に関して対称であることを示し、この場合、対称性に対応する境界条件を考慮することができるため、有限要素シミュレーションは、有限要素モデル形状1の半分のみを考慮して実施することができる。つまり、有限要素シミュレーションは、有限要素モデル形状1の半分のみを考慮して実施することができ、一方、シミュレーションされた半分の結果は、有限要素モデル形状1の他の半分についても同じであると仮定することができ、その結果は、対称線8を中心に反映されるようにマッピングされる。
【0081】
図3はスキャフォールド3の形状を示す概略縦断面図であり、スキャフォールド3は長手方向に沿った長さlと幅wとを有する円筒形状を有し、この場合の幅はスキャフォールド3の直径に相当する。
【0082】
図4は、図3のスキャフォールド3の半分形状の縦断面図であり、図2の対称線8で描かれた対称状態を仮定している。
【0083】
円筒状スキャフォールド3の末端にある孔は長さx2であるのに対し、長手方向に沿った中央の孔、すなわち対称線8上にある孔は長さx1である。長手方向の長さx1から長さx2まで、つまりスキャフォールド3の半分の長さl/2にわたる孔径の線形分布が考慮される。対称線8から所定の距離だけ放射状に分布する各孔の対応する長さは、その距離における孔径の長さに対応して均一であると仮定される。
【0084】
図5は、図3及び図4のスキャフォールド3の形状の上面図であり、各孔は円周方向に沿って長さx3を有する。
【0085】
図6は、z軸zに沿った再生骨体積のパーセンテージを示した三次元プロット9を示す。x軸xは入力パラメータの分布を示し、ここで図3及び図4に示したスキャフォールドのミリメートル単位の長さx1は変化する。y軸yは入力パラメータの分布を示し、ここで図3及び図4に示したスキャフォールド3のミリメートル単位の長さx2は変化する。
【0086】
本方法の第1の工程a)及び第2の工程b)により記載されるとおり、計算モデルが再生骨体積を計算した対応するパラメータのセットに再生骨体積を関連付ける複数のドット10で示されるスキャフォールド骨データを生成するように、第1の工程a)によって複数のパラメータのセットに対する複数の再生骨体積が決定される。複数のドット10は三次元プロットにプロットされ、それぞれが、長さx1及びx2に基づくスキャフォールド3の形状のパラメータのセットに対応して、対応する再生骨体積のパーセンテージを示す。
【0087】
本方法の第3の工程c)に記載されるとおり、計算サロゲートモデルは、再生骨体積を、スキャフォールド骨データからのパラメータのセットと関連付け、パラメトリックモデルを生成し、ここでは表面11によって示される。
【0088】
第4の工程d)では、計算最適化モデルを用いて計算サロゲートモデルが、表面11上のピーク12で示される最大再生骨体積を出力する最適なパラメータのセットを決定する。
【0089】
符号の一覧
有限要素モデル形状 1
骨形状 2
スキャフォールド(足場) 3
皮質骨 4
骨髄 5
鋼製支持構造 6
肉芽組織 7
対称線 8
三次元プロット 9
ドット 10
表面 11
ピーク 12
第1の工程 a
第2の工程 b
第3の工程 c
第4の工程 d
第5の工程 e
第6の工程 f
第7の工程 g
最適化されたスキャフォールド設計 h
スキャフォールド形状の長さ l
スキャフォールドの幅 w
X軸 x
Y軸 y
Z軸 z
最小孔の長さ x1
最大孔の長さ x2
孔の幅 x3
第1の矢印 N1
第2の矢印 Y1
第3の矢印 N2
第4の矢印 Y2
【0090】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】