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特表2025-501674ミトコンドリア遺伝子型スコア:化学療法感受性癌の予後マーカー
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  • 特表-ミトコンドリア遺伝子型スコア:化学療法感受性癌の予後マーカー 図8B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ミトコンドリア遺伝子型スコア:化学療法感受性癌の予後マーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20250116BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20250116BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250116BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20250116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20250116BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20250116BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20250116BHJP
   A61K 31/63 20060101ALN20250116BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
G01N33/50 P
C12N15/12
C12Q1/6869 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K31/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527537
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 FR2022052098
(87)【国際公開番号】W WO2023089268
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2112107
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516247100
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・グルノーブル・アルプ
【氏名又は名称原語表記】Universite Grenoble Alpes
(71)【出願人】
【識別番号】523025045
【氏名又は名称】ソントル オスピタリエ レジオナル ドゥ グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】508071375
【氏名又は名称】ソントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モンデ ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】モスューズ パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ラック バティスト
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA25
2G045AA35
2G045CB02
2G045DA12
2G045DA13
4B063QA12
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS31
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA20
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C086AA01
4C086DA19
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
化学療法感受性癌、特に、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)の予後リスクスコアに関し、ミトコンドリアゲノムの特定遺伝子に影響する体細胞遺伝子異常に基づく。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法感受性癌を患う患者における生存予後を確立するためのインビトロの方法であって、以下の各ステップ、
・前記患者の生体試料において、ミトコンドリアゲノムにおける以下の9つの遺伝子の1つにおける少なくとも1つの変異の存在及び/又は不在を検出するステップ:ND1、ND2、ND3、ND4、ND5、CYTB、ATP8、ATP6、COX1 、COX2、COX3及び12S、
・検出結果を、参照生体試料、参照シーケンス又は参照ハプロプグループ/ハプロタイプと比較する、
・前記患者の生存予後を確立する、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
・ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であることは、良好な生存予後の指標であり、
・OX1、COX2、COX3、12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であること(ミトナイーブA患者)、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在することは、中間の生存予後の指標である、
方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、次のND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であることは、良好な生存予後の指標であり、
・ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子に変異が不在であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であること(ミトナイーブB患者)、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在することは、中間の生存予後の指標である、
方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法において、
ミトナイーブA又はミトナイーブBの患者のサブグループにおいて、ELN予後スコアを決定することを更に備える、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「良好」の分類であることは、良好な生存予後の指標であり、
・COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「不良」の分類であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「中間」の分類であることは、中間な生存予後の指標である、
方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、次のND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること、又は、ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、且つ、ELNスコアによる「良好」の分類であることは、良好な生存予後の指標であり、
・ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、次のND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること、又は、ND2、ND5、ATP6、CYTB、ND4、ND1、COX3、12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「不良」の分類であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND5、ATP6、CYTB、ND4、ND1、COX3、12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「中間」の分類であることは、中間の生存予後の指標である、
方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、ND3/ATP8遺伝子の1つには少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2遺伝子には変異が不在であることは、良好な生存予後の指標であり、
・ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、次のND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、COX1/COX2遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND3/ATP8遺伝子には変異が不在であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、COX1/COX2遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、ND3/ATP8遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S/COX1/COX2/ND3/ATP8遺伝子には変異が不在であること(ミトナイーブB/A患者)は、中間の生存予後の指標である、
方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること、又は、COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であるがATP6/ND5遺伝子の1つには少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子には変異が不在であることは、良好な生存予後の指標であり、
・COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること、又は、COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であるがND1には少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ATP6/ND5遺伝子には変異が不在であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、ND5/ATP6遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/COX1/COX2/COX3/12S/ND5/ATP6/ND1遺伝子には変異が不在であること(ミトナイーブA/B患者)は、中間の生存予後の指標である、
方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法において、
ミトナイーブB/A又はミトナイーブA/Bの患者のサブグループにおいて、ELN予後スコアを決定することを更に備える、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、ND3/ATP8遺伝子の1つには少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2遺伝子には変異が不在であること、又は、ELN分類において良好に分類されるミトナイーブB/A患者であることは、良好な生存予後の指標であり、
・ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、COX1/COX2遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND3/ATP8遺伝子には変異が不在であること、又は、ELN分類において不良に分類されるミトナイーブB/A患者であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、且つ、COX1/COX2遺伝子の1つには少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND3/ATP8遺伝子の1つには少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ELN分類において中間に分類されるミトナイーブB/A患者であることは、中間の生存予後の指標である、
方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること、又は、COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であるがATP6/ND5遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子には変異が不在であること、又は、ELN分類において良好に分類されるミトナイーブA/B患者であることは、良好な生存予後の指標であり、
・COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること、又は、COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であるがND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ATP6/ND5遺伝子には変異が不在であること、又は、ELN分類において不良に分類されるミトナイーブA/B患者であることは、不良な生存予後の指標であり、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には変異が不在であり、ND5/ATP6遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ELN分類において中間に分類されるミトナイーブA/B患者であることは、中間な生存予後の指標である、
方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、
前記検出のステップは、ミトコンドリアゲノムの高スループットシーケンス解析によって行われる、方法。
【請求項13】
化学療法感受性癌を患う患者における、当該癌の治療の有効性及び/又は利益を予測又は評価するためのインビトロの方法であって、以下のステップ、
・治療前の患者由来の生体試料から、請求項1~12のいずれか1つによって定められる方法により、生存予後を決定する、
・治療後の患者由来の生体試料から、請求項1~12のいずれか1つによって定められる方法により、生存予後を決定する、
・治療の前後の生存予後を比較する、
・治療後の前記患者の生存予後が治療前の前記患者の生存予後と同じであるか又は悪い場合である治療に対する抵抗性、又は、治療後の前記患者の生存予後が治療前の前記患者の生存予後よりも良好な場合である治療に対する感受性、のいずれであるかを判定する、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記化学療法感受性癌の治療は、ベネトクラクスを用いた治療である、方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法において、
前記化学療法感受性癌は、急性骨髄性白血病(AML)、肉腫、精巣癌、絨毛癌、血液疾患、婦人科癌、肺癌、神経芽腫、悪性脳腫瘍、消化器癌、膵臓癌、膀胱癌、前立腺癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌を含む群から選ばれる、方法。
【請求項16】
プログラムであって、
前記プログラムがコンピュータによって実行されたとき、請求項1~15のいずれか一項の方法を実施する指示を含む、プログラム。
【請求項17】
コンピュータによって読み取り可能なデータ媒体であって、
コンピュータによって実行されたとき、請求項1~15のいずれか一項の方法を実施する指示を含む、データ媒体。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項の方法の、コンパニオン検査としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学療法感受性癌、特に、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)の予後リスクスコアに関し、ミトコンドリアゲノムの特定遺伝子に影響する体細胞遺伝子異常に基づいている。
【背景技術】
【0002】
以下の説明において、[ ]の括弧内の参照文献は、本文書の最後に示した文献リストを参照する。
【0003】
急性骨髄性白血病(AML)は白血病細胞と呼ばれる未成熟な骨髄前駆細胞が分化の初期段階で留まり、骨髄に、最終的には他の臓器に蓄積されるという制御不能な悪性の増殖である。治療方法の進歩にもかかわらず、予後は非常に悪く、治癒するのは60歳未満の成人患者の35~40%、60歳以上の成人患者の5~15%である。現在、実際に用いられている予後因子は、年齢、白血球循環のレベル、European LeukemiaNetによる予後分類(ELN) 2017 (Dohner et al.,2017) [1] に基づく。ELN2017分類は、細胞遺伝学的及び/又は分子的変化に基づくものであり、良好、中間、不良の3つのステータスを定義している。しかし、この予後分類には改善の余地がある。例えば、良好グループにおいて、60歳未満の患者の5年生存率は64%(60歳以上の患者では35%)に過ぎない[2]。European LeukemiaNet予後分類には、最近の更新the ELN 2022(Dohner et al.,2017)[3] がある。
【0004】
ミトコンドリアは、全ての真核細胞(赤血球を除く)に存在する細菌由来の細胞小器官である。これらは、細胞代謝の調節、エネルギー供給(クレブス回路、脂肪酸のβ酸化等)、更にはカルシウム恒常性、活性酸素種(ROS)の生成、及び、アポトーシス現象の起動において重要な役割を果たす。核ゲノム上に存在するミトコンドリア酵素であるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH1、IDH2)の体細胞変異は、白血病発生の原因となる新代謝物である2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を伴うクレブス回路の調節解除を起こす。
【0005】
AMLにおいて、酸化的リン酸化の活性(oxidative phosphorylation 、OXPHOS)レベルは、白血病細胞の耐性と直接相関する(Farge et al、2017)[4]。更に、間質細胞と白血病細胞との間におけるミトコンドリアの移動は、白血病細胞が化学療法に対して耐性を有する原因であると説明されている。前向き研究(DRCI LAM38RC13-209)によると、白血病細胞のミトコンドリアによる活性酸素種(ROS)生産の脱調節が、予後不良(全生存期間の低下)と関係しており、これは通常のAML予後因子(年齢、WBC/l、ELN2017、移植)とは独立していることが示された(Mondet et al,2019)[5]。従って、AMLの化学療法に対する耐性におけるミトコンドリアの役割については、幾つかの手段が1つにまとまる。
【0006】
幾つかの刊行物では、化学療法に対し、耐性の獲得を抑制して感受性を高めるために、AML又は他の癌においてミトコンドリアを標的とする薬剤の使用さえ示唆している(Bosc et al., 2021; Neuzil et al., 2013) [6, 7]。しかし、現時点では、特定の患者にだけ効果をもたらす新しいこれらの治療戦略のための、特定のコンパニオン検査は無い。コンパニオン検査とは、この検査により同定された予測マーカーの状態に基づいて、特定の病気と診断された患者のうち、治療が有益である可能性が高い患者のみを選択できる診断検査である。
【0007】
ベネトクラクス(venetoclax)は、ミトコンドリア膜に局在する蛋白質である抗アポトーシス蛋白質BCL-2の阻害剤である。ベネトクラクスは、BIM等のBH3モチーフを含むアポトーシス促進蛋白質を置換することにより、BCL-2のBH3ドメインにおける結合溝に直接結合し、ミトコンドリアの外膜透過化(mitochondrial outer membrane permeabilization 、MOMP)、カスパーゼ活性化及びアポトーシスを開始する。この治療法は、現在、慢性リンパ性白血病、リンパ腫、及び、最近では「不適合」な、つまり、標準的化学療法に耐えられない急性骨髄性白血病患者のために用いることが認可されている。ベネトクラクスによる治療に対する反応は、ミトコンドリアの状態に関連する。しかし、ミトコンドリアゲノムの変異(mutation)との関連性については、現時点では報告されていない。
【0008】
実際に、ミトコンドリアゲノムに関して、AMLの予後マーカーとしてミトコンドリアゲノムの変異の影響を分析した研究はほとんど無い。複合体IのサブユニットをコードするND4の変異は、AMLにおけるターゲットシーケンス解析法(高スループットシーケンス解析技術とは異なる)を介して452人の患者において分析され、単変量解析における全生存期間の増加と関連付けられている(Damm et al., 2012)[8]。しかし、多変量解析では、この結果の有意な裏付けは得られていない(p=0.089)。この記事は、この結果は他の研究によっても確認されるべきであると結論してさえいる。他の研究では、121人のAML患者において、ND4変異の予後に対する影響が調査された(Chun et al., 2014) [9]。しかし、この研究では、全生存期間又は無再発生存期間についての差異は示されていない。従って、ND4の予後への影響は、当業者にとって確実なデータではない。
【0009】
COX1及びCOX2遺伝子に影響する変異は、高スループットシーケンス解析(Silkjaer et al., 2013)[13]、及び、急性骨髄性白血病におけるサンガーシーケンス解析(Silkjaer et al., 2013)[14]によって分析された。高スループットシーケンス研究では、単変量解析において、COX1及びCOX2変異は、全生存期間の減少と関連付けられた。しかし、多変量解析は、この結果を有意に裏付けるものではない[13]。その後のサンガーシーケンス研究では、治癒的化学療法によって治療された罹患患者165人のグループ全体において、COX1又はCOX2に変異が存在することの予後への影響は無かった[14]。従って、COX1及びCOX2変異の予後への影響は、当業者にとって確実なデータではない。更に、サンガー型シーケンス解析において用いられる技術の感度閾値は20%であり(文献[14]の資料及び方法を参照)、患者コホートにおける多様体(variant)の検出を過小評価している(COX1及びCOX2遺伝子において16%の多様体であり、これに対してヘテロプラスミー閾値≧2%を考慮した高スループットシーケンス解析では30~35%程度である)。最後に、高スループットシーケンス研究では、多様体の選択においてハプログループが考慮されていなかった。
【0010】
それにも関わらず、ミトコンドリアゲノムは16kBであって、その37個の遺伝子は呼吸鎖に関与する13個の蛋白質と、22個のtRNA及び2個のrRNAとをコードしている。cbioportalサイト(https://www.cbioportal.org/)から取得した公開されている体細胞遺伝データに基づく別の研究では、急性骨髄性白血病に対する変異の影響が分析された(Wu et al., 2018)[10]。それにも関わらず、この研究には幾つかのバイアスがある。その1つは、ミトコンドリアDNAに限定されるものではなく、ゲノムDNAに特化したバイオインフォマティクス分析を用いることに関連する。この研究では、AML患者のうち8%だけが遺伝子(ND1、ND2、ND3、ND4、ND4L、ND5、ND6、CYB、COX1、COX2、COX3、ATP6、ATP8)に変異を有している。遺伝データの分析における誤差は、多様体の数の過小評価につながり、最終結果を歪ませることになる。比較として、ND4遺伝子のみを対象とした研究(Damm et al.、2012)[8]では、変異の頻度は6.4%(29/452)であった。ミトコンドリアDNAは独自の遺伝コードを有するので、核ゲノム変異とミトコンドリア変異との間で共通のバイオインフォマティクス分析を用いると、得られた多様体の解釈に誤りを生じさせる(Caudron-Herger and Diederichs, 2018)[11]。同じ分析バイアスは、他の病理にも存在する(例えば2021 年 8 月 10 日付けの cbioportal サイト、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の研究、Duke 2017、ND1、ND2、ND3、ND4、ND4L遺伝子に変異が存在するのは0%であるのに対し、Zeng et al.、2018 による研究では35%である)。
【0011】
ND4遺伝子のみを分析するDammら及びChunらによる研究、COX1及びCOX2遺伝子を分析するSilkjaerらによる研究[13-14]、及び、不適切なバイオインフォマティクス分析を使用したWUらの研究の他には、AML患者の階層化においてミトゲノム変異の寄与を示した研究は無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、AML患者を全生存期間の観点からより適切に分類し、生存予後に応じて治療管理を適応させるための、ミトコンドリアゲノムの研究及び実現しうる新しい予後マーカーの同定は、依然として課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、急性骨髄性白血病(AML)の予後マーカーとして、ミトコンドリアゲノムの特定の遺伝子における変異の存在及び不在の組み合わせに基づくスコアを全く初めて実証した。
【0014】
従って、本願発明者らは、化学療法による治療に対する反応及びAMLを患う患者の生存を予測するためのスコア(以下ではミトスコア(Mitoscore)と呼ぶ)を開発した。ミトスコアは、ミトコンドリアゲノムのシーケンス解析技術(例えば、NGS技術等)に基づく。特に遺伝子ND1、ND2、ND3、ND4、ND5、CYTB、ATP6、ATP8、COX1、COX2、COX3、12S(別名として順にMT-ND1、MT-ND2、MT-ND3、MT-ND4、MT-ND5、MT-CYB、MT-ATP6、MT-ATP8、MT-CO1、MT-CO2、MT-CO3、MT-RNR1。下記の表1に、本発明の予後スコアに用いたミトコンドリア遺伝子の公式命名法を示す)の分子異常に基づくミトスコアは、AMLを患う患者を診断時に3つのそれぞれの予後グループ:良好、中間、不良に層別化する。これは、上記の遺伝子の多様体の組み合わせに基づいた全生存期間の観点による。
【0015】
【表1】
【0016】
ミトスコアによって、AMLを患う患者に現在用いられる予後スコアEuropean LeukemiaNet 2017(ELN2017)に比べて、反応の良い人を反応の悪い人から区別して治療管理を適応させるための予後の階層化を改善できる。ミトスコアは、最近発表された予後スコアEuropean LeukemiaNet 2022(ELN 2022)と比べても、予後の階層化を改善できる。ミトスコアは、通常の予後因子(年齢、白血球数、ELN、移植)とは独立して有効であり、予後スコアEuropean LeukemiaNet 2017(ELN2017)又はEuropean LeukemiaNet 2022(ELN 2022)、総称してELN予後スコアと呼ばれる、と組み合わせることができ、以下ではスコア形式としてミトスコア+と呼ぶ。
【0017】
ミトスコアは、診断時にAML患者の予後の階層化を改善する。更に、核型を得るための白血病細胞を培養と、例えばNGS技術(約100kbのパネル、センターにより異なる)による分子異常のシーケンス解析との療法を必要とするELNの分類に比べると、ミトコンドリアゲノム(16kb)のシーケンス解析により実行されるミトスコアは、簡単であることが証明されている。更に、核型にはかなりの数の白血病細胞が必要であるが、貧弱な骨髄からは必ずしも得られない。従って、ミトスコアは時間を短縮し、コストを削減し、再現性を容易にし(培養無し、解釈の困難無し)、より少ない生体物質しか要求されない。
【0018】
従って、本発明の主題は、化学療法感受性癌の患者において生存予後ミトスコアを確立するインビトロ(in vitro)の方法であり、以下のステップを含む。
・前記患者の生体試料において、ミトコンドリアゲノムの下記の9個の遺伝子に少なくとも1つの変異の存在及び/又は不在を検出する:ND1、ND2、ND3、ND4、ND5、CYTB、ATP8、ATP6、COX1、COX2、COX3、及び、12S
・検出の結果を、参照生体試料、参照シーケンス又は参照ハプログループ/ハプロタイプと比較する。
・前記患者の生存予後を確立する。
【0019】
本発明における意味では、「化学療法感受性癌」の用語は、化学療法によって(例えばアントラサイクリン、代謝拮抗剤、アルカロイド又はトポイソメラーゼ阻害剤を単独で、又は、他の治療と組み合わせて)治療可能であり、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、肉腫、精巣癌(胚細胞癌全般)、絨毛癌、血液疾患、卵巣癌などの婦人科癌、乳癌、肺癌、神経芽腫、悪性脳腫瘍、消化器癌、膵臓癌、膀胱癌、前立腺癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌を含む群から選ばれる病態を意味する。好ましくは、急性骨髄性白血病(ALM)である。
【0020】
本発明における意味では、「参照生体試料」の用語は、健康な対象からの生体試料、例えば骨髄、血液又は組織からのDNA資料を意味する。
【0021】
本発明における意味では、「参照シーケンス」の用語は、参照ミトコンドリアDNAシーケンス、例えばrCRSシーケンス(revised Cambridge Reference Sequence NC_012920.1)、又は、Mitomap/MitomasterデータベースであるgnomADに存在するシーケンスを意味する。
【0022】
本発明における「参照ハプログループ/ハプロタイプ」の用語は、1998年のRichards及びMacaulayの分類に基づいてハプログループ又はハプロタイプを同定する参照シーケンス(CRS又はrCRS)に対する組成の多様性を意味し、幾つかのツール(MitoTool, HaploFind, PhyloTree mt, Mitomap、……)を用いて決定できる。
【0023】
本発明による、化学療法感受性癌を患う患者におけるミトスコア生存予後を確立するためのインビトロの方法の特定の実施形態によると、
・ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子に変異が不在であることは、良好な生存予後の指標である。
・COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4 遺伝子に変異が不在であることは、不良な生存予後の指標である。そして、
・ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在である(「ミトナイーブA」と呼ばれる患者、AML患者の約30%)、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在することは、中間の生存予後の指標である。
【0024】
本発明による、化学療法感受性癌を患う患者におけるミトスコア生存予後を確立するためのインビトロの方法の特定の実施形態によると、
・ND2、ND3、ATP8、CYTB 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子に変異が不在であることは、良好な生存予後の指標である。
・COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であることは、不良な生存予後の指標である。そして、
・ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在である(「ミトナイーブA」と呼ばれる患者、AML患者の約30%)、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX、12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在することは、中間の生存予後の指標である。
【0025】
本発明による、化学療法感受性癌を患う患者における生存予後ミトスコアBを確立するためのインビトロの方法の特定の実施形態によると、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、次の遺伝子 ND1/COX3/12Sに変異が不在であることは、良好な生存予後の指標である。
・ND1/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、次の遺伝子ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4に変異が不在であることは、不良な生存予後の指標である。そして、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子に変異が不在である(「ミトナイーブB」呼ばれる患者、AML患者の約40%)こと、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること(「変異有り中間」と呼ばれる患者)は、中間の生存予後の指標である。
【0026】
本発明における意味では、生存予後の「良好」、「中間」、「不良」の用語は、ミトコンドリア多様体に基づく病理の進展について成された仮説における段階(生存の可能性、合併症及び/又は死のリスクの観点による)を意味する。
【0027】
本発明はまた、「ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S」又は「ND2、ND5、ATP6、CYTB、ND4、ND1、COX3、12S」遺伝子に変異を全く有していない化学療法感受性癌の患者(つまり、順にミトナイーブA及びミトナイーブBと呼ばれるサブグループの患者)における生存予後ミトスコア+を確立するインビトロの方法に関する。前記方法は、前記患者において、前記に定義したように生存予後ミトスコアを確立する方法と、ELN生存予後スコアを決定する方法とを含む。「中間」のミトスコアを有するミトナイーブA又はミトナイーブBと呼ばれる患者のサブグループでは、ELN階層化を適用してミトスコア+を決定し、これらのAML患者を全生存期間の点から3つの予後グループに再分類することができる。
【0028】
本発明による、化学療法感受性癌を患う患者における生存予後ミトスコア+を確立するためのインビトロの方法の特定の実施形態によると、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S 遺伝子に変異が不在であること、又は、ND2、ND3、 ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異か不在であり、且つ、ELNスコアによる「良好」の分類であることは、良好な生存予後の指標である。
・COX1/COX2/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4 遺伝子に変異が不在であること、又は、ND2、ND3、 ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「不良」の分類であることは、不良な生存予後の指標である。
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「中間」の分類であることは、中間の生存予後の指標である。
【0029】
本発明による、化学療法感受性癌を患う患者における生存予後ミトスコア+を確立するためのインビトロの方法の特定の実施形態によると、
・ND2/ND3/ATP8/CYTB遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S 遺伝子に変異が不在であること、又は、ND2、ND3、ATP8、 CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「良好」の分類であることは、良好な生存予後の指標である。
・COX1/COX2/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4 遺伝子に変異が不在であること、又は、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「不良」の分類であることは、不良な生存予後の指標である。
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S 遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「中間」の分類であることは、中間の生存予後の指標である。
【0030】
本発明による、化学療法感受性癌を患う患者における生存予後ミトスコアB+を確立するためのインビトロの方法の特定の実施形態によると、
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下の遺伝子ND1/COX3/12Sに変異が不在であること、又は、ND2、ND5、ATP6、CYTB、ND4、ND1、COX3、12S 遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「良好」の分類であることは、良好な生存予後の指標である。
・ND1/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも変異が存在し、且つ、以下の遺伝子ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4に変異が不在であること、又は、ND2、ND5、ATP6、CYTB、ND4、ND1、COX3、12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「不良」の分類であることは、不良な生存予後の指標である。
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND5、 ATP6、CYTB、ND4、ND1、COX3、12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、ELNスコアによる「中間」の分類であることは、中間の生存予後の指標である。
【0031】
本発明はまた、本発明による、化学療法感受性癌、特に急性骨髄性白血病(AML)を患う患者における生存予後ミトスコアB/Aを確立するためのインビトロの方法にも関し、ここで、
・良好な生存予後の指標は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下の遺伝子ND1/COX3/12Sに変異が不在であること、又は、「ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、「ND3、ATP8」遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、及び、「COX1、COX2」遺伝子に変異が不在であること」、に対応する。
・不良な生存予後の指標は、ND1/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下の遺伝子 ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4に変異が不在であること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S 遺伝子に変異が不在であり、且つ、「COX1、COX2」の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、「ND3、ATP8」遺伝子の1つに変異が不在であること、に対応する。
・中間の生存予後の指標は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S 遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、「COX1、COX2」遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、「ND3、ATP8」遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S/COX1/COX2/ND3/ATP8遺伝子に変異が不在であること(ミトナイーブB/Aと呼ばれる患者であり、AML患者の約25%である)、に対応する。
【0032】
本発明はまた、本発明による、化学療法感受性癌、特に急性骨髄性白血病(AML)を患う患者における生存予後ミトスコアB/A+を確立するためのインビトロの方法にも関し、ここで、
・良好な生存予後の指標は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下の遺伝子ND1/COX3/12Sに変異が不在であること、又は、「ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、「ND3、ATP8」遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、「COX1、COX2」遺伝子に変異が不在であること」、又は、ELN分類で良好と分類されたミトナイーブB/A患者であること、のいずれかに対応する。
・不良な生存予後の指標は、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下の遺伝子ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4に変異が不在であること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、「COX1、COX2」遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、「ND3、ATP8」遺伝子に変異が不在であること、又は、ELN分類で不良と分類されたミトナイーブB/A患者であること、のいずれかに対応する。
・中間の生存予後の指標は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、「COX1、COX2」遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、「ND3、ATP8」遺伝子に変異が存在すること、又は、ELN分類で中間と分類されたミトナイーブB/A患者であること、のいずれかに対応する。
【0033】
本発明はまた、本発明による、化学療法感受性癌、特に急性骨髄性白血病(AML)を患う患者における生存予後ミトスコアA/Bを確立するためのインビトロの方法にも関し、ここで、
・良好な生存予後の指標は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であること、又は、COX1、COX2、COX3、12S、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であるが、ATP6、ND5遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子に変異が不在であること、のいずれかに対応する。
・不良な生存予後の指標は、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であること、又は、COX1、COX2、COX3、12S、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であるが、ND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ATP6、ND5遺伝子の1つには変異が不在であること、のいずれかに対応する。
・中間の生存予後の指標は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、ND5/ATP6遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND5/ATP6遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S、ND5、ATP6、ND1遺伝子に変異が不在であること(ミトナイーブA/Bと呼ばれる患者であり、AML患者の約25%である)、のいずれかに対応する。
【0034】
本発明はまた、本発明による、化学療法感受性癌、特に急性骨髄性白血病(AML)を患う患者における生存予後ミトスコアA/B+を確立するためのインビトロの方法にも関し、ここで、
・良好な生存予後の指標は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であること、又は、COX1、COX2、COX3、12S、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であるが、ATP6、ND5遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子に変異が不在であること、又は、ELN分類で良好と分類されたミトナイーブA/B患者であること、のいずれかに対応する。
・不良な生存予後の指標は、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であること、又は、COX1、COX2、COX3、12S、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子に変異が不在であるが、ND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ATP6、ND5遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ELN分類で不良と分類されたミトナイーブA/B患者であること、のいずれかに対応する。
・中間の生存予後の指標は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ND2、ND3、ATP8、CYTB、ND4、COX1、COX2、COX3、12S遺伝子に変異が不在であり、且つ、ND5/ATP6遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること、又は、ELN分類で中間と分類されたミトナイーブA/B患者であること、のいずれかに対応する。
【0035】
本発明における意味では、「良好」、「中間」又は「不良」な生存予後は、ミトコンドリア多様体に基づく病理の進展について成された仮説における段階(生存の可能性、合併症及び/又は死のリスクの観点による)を意味する。
【0036】
本発明における特定の実施形態によると、検出ステップは、ミトコンドリアゲノムの高スループットシーケンス解析(NGS)によって実行される。
【0037】
本発明はまた、化学療法感受性癌、特に急性骨髄性白血病(AML)を患う患者における、当該癌の治療の有効性及び/又は利益を予測又は評価するためのインビトロの手法に関し、以下のステップを含む。
・治療前の患者由来の生体試料から、本発明の方法により、生存予後ミトスコア、ミトスコア+、ミトスコアB、ミトスコアB+、ミトスコアA/B、ミトスコアA/B+、ミトスコアB/A又はミトスコアB/A+を決定する
・治療後の患者由来の生体試料から、本発明の方法により、生存予後ミトスコア、ミトスコア+、ミトスコアB、ミトスコアB+、ミトスコアA/B、ミトスコアA/B+、ミトスコアB/A又はミトスコアB/A+を決定する
・治療の前後の生存予後ミトスコア、ミトスコア+、ミトスコアB、ミトスコアB+、ミトスコアA/B、ミトスコアA/B+、ミトスコアB/A又はミトスコアB/A+を比較する
・治療後の前記患者の生存予後が治療前の患者の生存予後と同じであるか又は悪い場合である治療に対する抵抗性、又は、治療後の前記患者の生存予後が治療前の患者の生存予後よりも良好な場合である治療に対する感受性のいずれであるかを判定する。
【0038】
本発明における意味では、「化学療法感受性癌」の用語は、化学療法によって(例えばアントラサイクリン、代謝拮抗剤、アルカロイド又はトポイソメラーゼ阻害剤を単独で、又は、他の治療と組み合わせて)治療可能であり、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、肉腫、精巣癌(胚細胞癌全般)、絨毛癌、血液疾患、卵巣癌などの婦人科癌、乳癌、肺癌、神経芽腫、悪性脳腫瘍、消化器癌、膵臓癌、膀胱癌、前立腺癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌を含む群から選ばれる病態を意味する。好ましくは、急性骨髄性白血病(ALM)である。
【0039】
本発明における意味では、「治療の前後で生存予後が同じである」とは、治療前の良好、中間又は不良の生存予後が、治療後にもそれぞれ良好、中間又は不良の生存予後として維持されることを意味する。
【0040】
本発明における意味では、「治療前よりも治療後の生存予後が悪い」とは、例えば、利用前の良好又は中間の生存予後が、治療後にはそれぞれ中間又は不良の生存予後となることを意味する。
【0041】
本発明の方法の特定の実施形態では、化学療法感受性癌、特に急性骨髄性白血病の治療は、場合によっては他の分子(例えばアザシチジン)と組み合わせたベネトクラクスの投与を含む。
【0042】
上記の方法を実行するためにコンピュータプログラムが作成された。これは、使用されたシーケンサーのソースデータ、品質基準に基づくフィルター及びコーディング領域内における多様体の位置、ヘテロプラスミー率及びサイレント変異から、多様体を分析する。プログラムはその後、本発明のミトスコア(ミトスコア/ミトスコア+/ミトスコアB/ミトスコアB+、ミトスコアB/A、ミトスコアB/A+、ミトスコアA/B、ミトスコアA/B+)を適用する。
【0043】
従って、本発明は、コンピュータによって実行されたとき上記の方法を実行するように誘導する命令を含むプログラムにも関する。
【0044】
従って、ミトスコアの実装は、ミトコンドリアゲノムの配列を分析するために開発されたコンピュータプログラムの恩恵で実行される。
【0045】
本発明はまた、コンピュータによって実行されたとき上記の方法を実行するように誘導する命令を含む、コンピュータによって読み取り可能なデータキャリアにも関する。一実施形態では、前記データキャリアは非一時的である。
【0046】
本発明はまた、この検査によって同定された予測マーカーの状態に基づいて、特定の病気と診断された患者のうち、治療が有益である可能性が高い患者のみを選択可能とし、それにより化学療法感受性癌、特に急性骨髄性白血病におけるミトコンドリアを標的とする分子/薬剤の追加を予想する方法にも関する。例えば、12S遺伝子に変異が存在するミトスコアの不良又は中間のグループの患者は、標準治療に対する感受性を改善するためにMOTS-cペプチドによって治療できる。COX1、COX2又はCOX3遺伝子に変異が存在するミトスコアの不良又は中間のグルーブの患者は、標準治療に対する感受性を改善するために、ケルセチン、又は、複合体IVに作用する薬剤によって治療することができる。中間又は不良のミトスコアグープの患者は、標準治療に加えて、呼吸鎖の複合体I又はIIIを標的とする治療(例えば、オラパリブ、ムビリチニブ、トリメタジジン二塩酸塩)によって恩恵を受ける可能性がある。
【0047】
従って、本発明は、コンパニオン検査、特に、ミトコンドリアを標的とする分子を添加することに対するコンパニオン検査として、化学療法感受性癌を患う患者においてミトスコアを確立するための本発明による方法の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、ミトスコア及びミトスコア+を適用するために実行される技術的なワークフローを表し、特に、多様体の選択に使用される基準を定義する。
図2A図2Aは、ミトスコアによる、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
図2B図2Bは、ミトスコア+による、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
図3図3は、単変量(UV)又は多変量(MV)解析によるCoxモデルに従って計算されたミトスコア及びミトスコア+に基づく死亡リスクのハザード比(HR)(95%CI)を表す。MV分析にて使用される共変量は、診断時の年齢、G/lによる白血球(white blood cells 、WBC)数、ELN2017分類、及び/又は骨髄移植である。
図4A図4Aは、ND2/ND5/CYTB /ND4/ATP6/ ND1/CO3/12S遺伝子を含むミトスコアBによる、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
図4B図4Bは、ND2/ND5/CYTB /ND4/ATP6/ND1/CO3/12S遺伝子を含むミトスコアB+と、先に引用した遺伝子に関するミトナイーブ患者におけるELN2017との組み合わせよる、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
図5図5は、単変量(UV)又は多変量(MV)解析によるCoxモデルに従って計算されたミトスコアB及びミトスコアB+に基づく死亡リスクのハザード比(HR)(95%CI)を表す。MV分析にて使用される共変量は、診断時の年齢、G/lによる白血球(WBC)数、ELN2017分類、及び/又は骨髄移植である。
図6図6は、本発明による予後確率方法を実施するためのコンピュータを表すブロック図である。
図7A図7Aは、ミトスコアB/Aと、ミトナイーブB/A患者におけるELN2017との組み合わせによる、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
図7B図7Bは、ミトスコアB/A+と、ミトナイーブB/A患者におけるELN2017との組み合わせによる、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
図8A図8Aは、ミトスコアA/Bと、ミトナイーブA/B患者におけるELN2017との組み合わせによる、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
図8B図8Bは、ミトスコアA/B+と、ミトナイーブA/B患者におけるELN2017との組み合わせによる、AML患者の時間の関数として全生存期間を表すカプラン-マイヤー生存曲線(ログランク検定p<0.05)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
<例1:急性骨髄性白血病(AML)の予後を考慮したミトコンドリア遺伝子型スコアの開発>
要約:発明者らは、高スループットミトコンドリアシーケンス解析(NGS)技術を用いて、AMLを患う患者からミトコンドリアゲノム全体をシーケンス解析した。このシーケンス解析から、ミトスコアと呼ばれるスコアを定義し、これにより患者の生存を予測可能となった。ミトスコアの利点は、AMLの通常の予後因子(つまり、年齢、循環白血球(circulating white blood cells、WBC)数、細胞遺伝学的及び分子的な異常、移植)とは独立した多変量解析によって確認された。更に、ミトスコアは、ミトコンドリア複合体の阻害剤(アンチマイシンA(antimycin A)、ロテノン(Rotenone))を用いた場合及び用いない場合のROS発光データとの比較によって機能的に特徴付けられた。
【0050】
(保持される多様体の定義)
ミトコンドリアゲノムのシーケンス解析は、ミトコンドリアゲノム(8kDaの2つの断片)をPCR増幅した後に、装置S5(Ion Torrent)を用いて行った。ミトコンドリアゲノムは、ライブラリ合成のための他の技術、例えば、2つ以上の断片を含むミトコンドリアゲノムのPCR増幅、又は、キャプチャーによるシーケンス解析生成物の回収、を使用して作成することができる。加えて、イルミナテクノロジー(Illumina technology)型のシーケンサーによるシーケンス解析も実行できる。多様体分析は、ミトマスター(Mitomaster)によって実行された。非コーディング領域(Dループ等)に影響を与える多様体、ヘテロプラスミー率は厳密に2%未満であり、サイレント変異は排除された。ミトマスターのウェブサイトは、ミトコンドリアハプログループを定義している。ハプログループにおいて0.5%以下の頻度を示す多様体、又は、癌において記述されている多様体は保持された。シーケンスエラーはいずれもIGVにより確認されるか、又は、バイオインフォマティクスプログラムによって自動的にフィルタリングされた。数が100未満のハプログループについては、gnomAD v3におって多様体の頻度が確認され、0.5%未満の場合、又は、癌において記載されている場合は保持された(図1)。
【0051】
(ミトスコアの開発)
導入化学療法を受けた研究中の64人の患者におけるミトコンドリアゲノムの遺伝子により個別に実行された生存曲線に基づき、特定の遺伝子は「予後良好」である(ND2/ND3/ND4/ATP8/CYTB/ND5/ATP6)、又は、「予後不良」である(COX1/COX2/COX3/12S/ND1)と決定された。
【0052】
生存曲線は良好に分離されているにも関わらず、個別に取得したこれらの遺伝子の単変量解析においては、有意差は観察されなかった。
【0053】
従って、「ミトスコア」が作成され、患者を予後良好、予後中間、予後不良の3つのグループに階層化した(図2A図4A)。
【0054】
「ミトスコア」に基づくこの予後分類は、AMLの通常の予後因子(年齢、WBC/l、ELN 2017、骨髄移植)とは独立している。
【0055】
しかしながら、ミトスコアの全ての遺伝子に変異が無い患者のうち30%、つまり、ミトナイーブAと呼ばれるサブグループの患者は、再分類が必要である。従って、ELN 2017の予後分類をミトナイーブ患者のミトスコアと組み合わせることで、ミトスコア+が作成された(図2B)。これにより、ELN 2017の予後分類の使用を70%の範囲で削減できる。ミトスコアBの全ての遺伝子に変異が無い患者のうち40%、つまり、ミトナイーブBと呼ばれるサブグループの患者は、再分類が必要である。従って、ミトスコアB+が、ELN 2017の予後分類を、ミトナイーブ患者のミトスコアと組み合わせることで作成された(図4B)。これにより、ELN 2017の予後分類の使用を60%の範囲で削減できる。
【0056】
ミトスコア及びミトスコア+の利点は、通常のAMLの予後因子とは独立して単変量解析(UV)及び多変量解析(MV)におけるCoxモデルによって確認された(図3)。MV分析において用いられた共変数は、年齢、G/lによる循環白血球(WBC)の数、ELN 2017分類、及び/又は骨髄移植である。同様に、ミトスコアB/B+は、多変量解析において重要である(図5)。
【0057】
更に、ミトスコアは、ROS発光データとの比較により機能的に特徴付けられた。興味深いことに、「不良」ミトスコアサブグループの患者の白血病細胞は、アンチマイシン/ロテノン刺激条件(ミトコンドリアROSを標的とする)下において、COX1/COX2/COX3/12S及びND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4変異を有する「良好」及び「中間」ミトスコアの白血病細胞に比べて大幅に少なくROSを放出する。
【0058】
ミトコンドリア内では、呼吸鎖の複合体I及びIIIが活性酸素種の主な発生源である。「良好」ミトスコアに関係する遺伝子は、複合体I (ND2/ND3/ND4/ND5)及びIII (CYTB)のサブユニット、並びに、ATPシンターゼ(ATP8/ATP6)に影響する。従って、特に化学療法によって誘発される刺激条件下において、変異がROSの放出に影響を与える場合、「良好」ミトスコア機能の仮説はROSデータに支持される。つまり、ROSの強い放出は、アポトーシスの閾値を引き起こし、白血病細胞の細胞死をもたらす。
【0059】
「不良」ミトスコアサブグループでは、放出されるROSが少なくなる。実際、COX1/COX2/COX3遺伝子によってコードされる呼吸鎖の複合体IVは、スーパーオキシドイオンを放出する部位ではない。更に、12S遺伝子によってコードされるミトコンドリア由来ペプチドMOTS-cは、ストレスに対する代謝の適応において役割を果たす。
【0060】
ミトスコア+も、ミトスコア同様に機能的に特徴付けられた。ミトナイーブと呼ばれる患者のサブグループ、アンチマイシン/ロテノン及びDPI(diphenyleneiodonium、ジフェニレンヨードニウム)の存在下で白血病細胞がより多くのROSを生産できる患者は、白血病細胞が生産するROSの少ない患者に比べて、全生存期間が顕著に良好である。
【0061】
(ミトスコア及びミトスコアBの定義)
ミトスコアにより、以下の多様体の組み合わせに基づき、全生存期間の観点から64人のAML患者を3つの予後グループに階層化することができる。
【0062】
「良好」ミトスコアは、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異、又は、ND2/ND3/ATP8/CYTB遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下のCOX1/COX2/COX3/12S遺伝子には変異が不在であることに対応する。
【0063】
「不良」ミトスコアは、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、以下のND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であることに対応する。
【0064】
「中間」ミトスコアは、以下のいずれかに対応する。
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在する。これは、「変異有り中間」と呼ばれる患者のサブグループである。
・または、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/COX1/COX2/COX3/12S遺伝子に変異が不在である。これは、「ミトナイーブA」と呼ばれる患者のサブグループであり、AML患者の約30%に相当する。
【0065】
【表2】
【0066】
ミトスコアBによっても、以下の多様体の組み合わせに基づいて、64人のAML患者を全生存期間の点から3つの予後グループに階層化することが可能となる。
【0067】
「良好」ミトスコアは、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下のCOX1/COX2/COX3/12S遺伝子に変異が不在であること、にも対応する。
【0068】
「不良」ミトスコアは、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下のND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子に変異が不在であること、にも対応する。
【0069】
「中間」ミトスコアは、次のいずれかにも対応する。
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること。患者のこのサブグループは「変異有り中間」と呼ばれる。
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ND1/COX3/12S遺伝子に変異が不在であること。これは、「ミトナイーブB」と呼ばれる患者のサブグループである。
【0070】
【表3】
【0071】
(ミトスコア+及びミトスコアB+の定義)
「中間」ミトスコアのミトナイーブAと呼ばれる患者のサブグループにおいて、ELNによる階層化を適用してミトスコア+を決定し、これによって、以下の多様体の組み合わせに基づいて、これら30%のAML患者を全生存期間の点から3つの予後グループに再分類することが可能となる。
【0072】
「良好」ミトスコア+は、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異、又は、ND2/ND3/ATP8/CYTB遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること。
・ELNにより「良好」を分類されたミトナイーブAの患者であること。
【0073】
「不良」ミトスコア+は、次のいずれかに対応する。
・COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下のND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること。
・ELNにより「不良」に分類されたミトナイーブAの患者であること。
【0074】
「中間」ミトスコア+は、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること。
・ELNにより「中間」に分類されたミトナイーブAの患者であること。
【0075】
【表4】
【0076】
「中間」ミトスコアのミトナイーブBと呼ばれる患者のサブグループにおいても、ELNによる階層化を適用してミトスコアB+を決定し、これによって、以下の多様体の組み合わせに基づいて、これら40%のAML患者を全生存期間の点から3つの予後グループに再分類することが可能となる。
【0077】
「良好」ミトスコアB+は、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下のND1/COX3/12S遺伝子には変異が不在であること。
・ELNにより「良好」に分類されたミトナイーブBの患者であること。
【0078】
「不良」ミトスコアB+は、次のいずれかに対応する。
・ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、以下のND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には変異が不在であること。
・ELNにより「不良」に分類されたミトナイーブBの患者であること。
【0079】
「中間」ミトスコアB+は、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在すること。
・ELNにより「中間」に分類されたミトナイーブBの患者であること。
【0080】
【表5】
【0081】
(ミトスコアB/Aの定義)
ミトスコアB/Aによっても、以下の多様体の組み合わせに基づき、全生存期間の観点から64人のAML患者を3つの予後グループに階層化することができる。
【0082】
「良好」ミトスコアB/Aは、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子の1つに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子には多様体が不在であること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/COX1/COX2遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ATP8/ND3遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること。
【0083】
「不良」ミトスコアB/Aは、次のいずれかに対応する。
・ND1/COX3/12S遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在である。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ATP8/ND3遺伝子には多様体が不在であり、且つ、COX1/COX2遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること。
【0084】
「中間」ミトスコアB/Aは、次のいずれかに対応する
・ND1/COX3/12S遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在であり、且つ、COX1又はCOX2遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ATP8及びND3遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/COX1/COX2/ATP8/ND3遺伝子に多様体が不在である。
【0085】
【表6】
【0086】
(ミトスコアA/Bの定義)
ミトスコアA/Bにより、以下の多様体の組み合わせに基づき、全生存期間の観点から64人のAML患者を3つの予後グループに階層化することができる。
【0087】
「良好」ミトスコアA/Bは、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には多様体が不在であること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ND1遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ATP6/ND5遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること。
【0088】
「不良」ミトスコアA/Bは、次のいずれかに対応する。
・COX1/COX2/COX3/12Sに少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在であること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ATP6/ND5遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ND1遺伝子には少なくとも1つの変異が存在すること。
【0089】
「中間」ミトスコアA/Bは、次のいずれかに対応する。
・COX1/COX2/COX3/12S遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ATP6/ND5遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し、且つ、ND1遺伝子に少なくとも1つの変異が存在すること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ATP6/ND5/ND1遺伝子には多様体が不在であること。
【0090】
【表7】
【0091】
(ミトスコアB/A+の定義)
ミトスコアB/A+によっても、以下の多様体の組み合わせに基づいて、64人のAML患者を全生存期間の点から3つの予後グループに階層化することが可能となる。
【0092】
「良好」ミトスコアB/A+は、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、ND1/COX3/12S遺伝子には多様体が不在であること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/COX1/COX2遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ATP8/ND3遺伝子に少なくとも1つの多様体の存在すること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/COX1/COX2/ATP8/ND3遺伝子に多様体が不在であり、且つ、ELNが良好であること。
【0093】
「不良」ミトスコアB/A+は、次のいずれかに対応する。
・ND1/COX3/12S遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在であること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/ATP8/ND3遺伝子には多様体が不在であり、且つ、COX1/COX2遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在すること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/COX1/COX2/ATP8/ND3遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ELNが不良であること。
【0094】
「中間」ミトスコアB/A+は、次のいずれかに対応する。
・ND1/COX3/12S遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在すること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在であり、且つ、COX1/COX2遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、ATP8/ND3遺伝子に少なくとも1つの多様体の存在すること。
・ND1/COX3/12S/ND2/ND5/ATP6/CYTB/ND4/COX1/COX2/ATP8/ND3遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ELNが中間であること。
【0095】
【表8】
【0096】
(ミトスコアA/B+の定義)
ミトスコアA/B+によって、以下の多様体の組み合わせに基づいて、64人のAML患者を全生存期間の点から3つの予後グループに階層化することが可能となる。
【0097】
「良好」ミトスコアA/B+は、次のいずれかに対応する。
・ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、COX1/COX2/COX3/12S遺伝子には多様体が不在であること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ND1遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ATP6/ND5遺伝子には少なくとも1つの多様体が存在すること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ATP6/ND5/ND1遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ELNが良好であること。
【0098】
「不良」ミトスコアA/B+は、次のいずれかに対応する。
・COX1/COX2/COX3/12S遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在であること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ATP6/ND5遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ND1遺伝子には少なくとも1つの多様体が存在すること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ATP6/ND5/ND1遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ELNが不良であること。
【0099】
「中間」のミトスコアA/B+は、次のいずれかに対応する。
・COX1/COX2/COX3/12S遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在すること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ATP6/ND5遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在し、且つ、ND1遺伝子に少なくとも1つの多様体が存在すること。
・COX1/COX2/COX3/12S/ND2/ND3/ATP8/CYTB/ND4/ATP6/ND5/ND1遺伝子には多様体が不在であり、且つ、ELNが中間であること。
【0100】
【表9】
【0101】
本発明による異なるミトスコアは、化学療法感受性癌の治療、例えばベネトクラクスの使用、に対する反応を予測するために効果を示し得る。従って、急性骨髄性白血病適応症及び当該治療を用いる他の適応症において、これらによって治療(例えばベネトクラクス)に対する感受性を定義することができる。
【0102】
(コンパニオン検査としてのミトスコアの定義)
中間及び不良のミトスコアを有する患者では、本発明のミトスコアによって、以下のことが可能な薬を用いる化学療法と組み合わせた治療を修正し得る。
・12S遺伝子に変異を有する中間又は不良の患者において、MOTS-cペプチドを投与することによって、ミトコンドリアと白血病細胞核との間のコミュニケーションを標的とする。
・COX1、COX2、COX3遺伝子の1つに変異を有する中間又は不良の患者において、例えばケルセチン(quercetin)又は他の薬によりミトコンドリアの複合体IVを標的とする。
・中間又は不良の患者において、ミトコンドリアを標的とする薬、例えばオラパリブ(olaparib)、ムブリチニブ(mubritinib)、トリメタジジン二塩酸塩(trimetazidine dihydrochloride)、ミキソチアゾール(myxothiazol)によって、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体I又はIIIを標的とする。
【0103】
このように、本発明のミトスコアは、患者の治療を改善し、あり得る適応症を定義してミトコンドリアを標的とする相補的な治療/製品を追加するためのコンパニオン検査として機能する可能性がある。
【0104】
(ミトコンドリア遺伝子型スコアを実施するためのコンピュータプログラム)
化学療法感受性癌、特にAMLに対する治療処置、例えばベネトクラクスの有効性を評価可能にするために、上記のスコアを実施するためのコンピュータプログラムが作成された。前記プログラムは、用いたシーケンサーのソースデータから多様体を分析し、品質基準及びコーディング領域における多様体の位置、ヘテロプラスミー率及びサイレント変異に従って、それらをフィルタリングする。次に、プログラムは、ミトスコア(ミトスコア/ミトスコア+、ミトスコアB/ミトスコアB+、ミトスコアB/A、ミトスコアB/A+、ミトスコアA/B、ミトスコアA/B+)を適用する。
【0105】
図6は、上記のように化学療法感受性癌を患う患者における生存予後を確立する手段のステップを実施するための装置600のブロック図である。装置は、プロセッサ601と、揮発性メモリ602と、不揮発性メモリ603とを備る。不揮発性メモリは指示604を含み、これがプロセッサ601により実行されると、装置600は化学療法感受性癌を患う患者における生存予後を前記のように確立するステップを実施する。異なる構成要素は、通信バス605によって接続されている。装置は、実施の形、特にユーザーインターフェースに従って、他の構成要素、又は、他の構成要素に対するインターフェース606を含んでもよい。プロセッサ601は、適切であればどのような形態であっても良く、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のマイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせであっても良い。揮発性メモリ602は、一時的なデータの保存に用いられる。不揮発性メモリ603は、ハードドライブ、スタティックメモリ又は他の長期保存装置を備えても良い。不揮発性メモリは実施の指示内容を保存し、又、オペレーションシステム及び/又はアプリケーションを保存していても良い。装置600は、例えば、指示604が含まれるプログラムが搭載又はダウンロードされたコンピュータであっても良い。
【0106】
本発明による異なるミトスコアは、ベネトクラクスを用いた治療に対する反応を予測するために有用性を示し得る。例えば、急性骨髄性白血病適応及び当該治療を用いる他の適応症において、ベネトクラクスに対する感受性を定義することが可能となる。
【0107】
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図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
【国際調査報告】