(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-23
(54)【発明の名称】超薄型データキャリアおよび読出し方法
(51)【国際特許分類】
G11B 7/24035 20130101AFI20250116BHJP
G11B 7/24047 20130101ALI20250116BHJP
G11B 7/2534 20130101ALI20250116BHJP
G11B 7/257 20130101ALI20250116BHJP
G11B 7/24012 20130101ALI20250116BHJP
G11B 7/0033 20060101ALI20250116BHJP
G11B 7/0045 20060101ALI20250116BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
G11B7/24035
G11B7/24047
G11B7/2534
G11B7/257
G11B7/24012
G11B7/0033
G11B7/0045 Z
G06K19/06 037
G06K19/06 159
G06K19/06 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531241
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2022085082
(87)【国際公開番号】W WO2023110647
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522055832
【氏名又は名称】セラミック・データ・ソリューションズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CERAMIC DATA SOLUTIONS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フラウム, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クンツェ, マルティン
【テーマコード(参考)】
5D090
【Fターム(参考)】
5D090AA03
5D090CC01
5D090CC04
5D090KK02
5D090KK06
(57)【要約】
本発明は、長期データ保存のための超薄型プラスチックデータキャリアおよびそのようなデータキャリアの読み出し方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の表面を有しており最大500μmの厚さを有するプラスチック基板を備え、
前記基板の前記第1の表面が第1のコーティングで被覆されており、
前記第1のコーティングの材料が前記基板の材料とは異なり、
前記第1のコーティングが、情報を符号化する複数のレーザアブレーション加工された凹部を含む、
データキャリア。
【請求項2】
前記基板の厚さが最大200μm、好ましくは最大150μmである、
請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項3】
前記基板の前記第2の表面が第2のコーティングで被覆されており、
前記第2のコーティングの材料が前記基板の材料とは異なり、
前記第2のコーティングが、情報を符号化する複数のレーザアブレーション加工された凹部を含む、
請求項1または2に記載のデータキャリア。
【請求項4】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの厚さが、最大10μm、好ましくは最大1μm、より好ましくは最大100nm、さらにより好ましくは最大50nmである、
請求項1~3のいずれか一項に記載のデータキャリア。
【請求項5】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部が、最大10μm、好ましくは最大1μm、より好ましくは最大100nm、さらにより好ましくは最大50nmの深さを有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデータキャリア。
【請求項6】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部が、それぞれの前記コーティングの厚さよりも小さい深さを有する、または、前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部が、それぞれの前記コーティングの厚さに実質的に等しい深さを有する、または、前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部が、それぞれの前記コーティングの厚さよりも大きい深さを有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のデータキャリア。
【請求項7】
各凹部が、最大1μm、好ましくは最大100nm、より好ましくは最大50nmの深さで前記基板内に延在する、
請求項6に記載のデータキャリア。
【請求項8】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングが、以下の材料、すなわち、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、V等の金属、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si
3N
4、ThN、HfN、BN等の金属窒化物、TiC、CrC、Al
4C
3、VC、ZrC、HfC、ThC、B
4C、SiC等の金属炭化物、Al
2O
3、TiO
2、SiO
2、ZrO
2、ThO
2、MgO、Cr
2O
3、Zr
2O
3、V
2O
3等の金属酸化物、TiB
2、ZrB
2、CrB
2、VB
2、SiB
6、ThB
2、HfB
2、WB
2、WB
4等の金属ホウ化物、またはTiSi
2、ZrSi
2、MoSi
2、MoSi、WSi
2、PtSi、Mg
2Si等の金属ケイ化物、のうちの一つまたは組み合わせを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載のデータキャリア。
【請求項9】
前記基板が、以下の材料、すなわち、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、フルオロエチレンプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンのうちの一つまたは組み合わせを含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載のデータキャリア。
【請求項10】
前記データキャリアがロール状に巻かれている、
請求項1~9のいずれか一項に記載のデータキャリア。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のデータキャリアを製造する方法であって、
プラスチック基板を提供するステップと、
第1のコーティングおよび/または第2のコーティングで前記基板のいずれかまたは両方の表面を被覆するステップと、
レーザアブレーションによって前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングに複数の凹部を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記基板が、レーザアブレーションに使用されるレーザ光の波長に対して透明であり、
前記レーザアブレーションが、前記基板を透過したレーザ光を用いて行われる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のデータキャリアの読出し方法であって、
第1の波長の光で前記データキャリアを照射するステップと、
前記データキャリアを透過した光および/または前記データキャリアによって反射された光を検出するステップと、
前記データキャリアの複数の前記凹部に符号化された情報を復号するために、前記検出された光を分析するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記データキャリアが、プラスチック基板と、前記基板の一方の表面にあり、レーザアブレーション加工された複数の凹部を有するコーティングと、を備え、
前記基板が前記第1の波長に対して透明であり、
前記基板を透過した光が検出される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記データキャリアが前記コーティングとは反対側から照射される、および/または前記データキャリアによって反射された光が、前記コーティングの反対側で検出される、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超薄型データキャリアおよびそのような超薄型データキャリアを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、平均して1日当たり約250京バイトを生成すると推定される。前記データの大部分は短期使用のためだけに生成されるかも知れないが、長期データ保存に対する需要は日々高まっている。明らかに、フラッシュ、ハードディスクドライブ(HDD)、および磁気テープなどの最先端のデータキャリアは、長期保存の観点から理想的ではない。したがって、マイクロソフト社などの企業は、現在、代替保存技術のための代替技術を模索している(例えば、いわゆる「Project Silica」および米国特許第10,719,239号明細書を参照されたい)。
【0003】
国際公開第2021/028035号には、情報の長期保存のための異なる技術が記載されている。前記技術は、異なる材料の層で被覆されたセラミック基板の使用と、前記被覆された基板の局所領域を処理するために、例えばレーザを使用することによって、前記被覆された基板に情報を符号化すること、とに基づく。この技術は、湿気、電磁場、酸性物質および腐食性物質などに対して耐久性が極めて高い情報保存を可能にすることが証明されており、そのため、符号化された書き込み可能なセラミックプレートは、他の一般的に使用される情報記憶媒体からは得られない耐久性を提供する。しかしながら、前記技術の一つの潜在的な欠点は、約1mmの厚さを有するかなり大きなセラミックプレートを使用することである。したがって、単位体積当たりのデータ記録密度は、現在使用されているデータキャリアのデータ記録密度に届かない可能性がある。
【0004】
したがって、長期間の使用および保存に適したデータキャリアのさらなる改善が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
ここで、本発明の発明者らは、驚くべきことに、国際公開第2021/028035号に記載されている技術が、特定のプラスチック材料で作られた薄い基板に同じ様に使用できることを見出した。
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、対向する第1および第2の表面を有しており最大500μm、好ましくは最大200μm、より好ましくは最大150μmの厚さを有するプラスチック基板を備えるデータキャリアに関し、基板の第1の表面は第1のコーティングで被覆されており、第1のコーティングの材料は基板の材料とは異なり、第1のコーティングは、情報を符号化する、複数の、好ましくはレーザアブレーション加工された凹部を含む。
【0008】
複数の凹部によって符号化された情報は、アナログおよび/またはデジタル情報であってもよい。例えば、複数の凹部は、連携して、アナログ画像、テキスト、数字などを形成してもよい。あるいは、複数の凹部は、例えば、CD、DVD ブルーレイディスクまたはデータマトリクスコードに符号化されたデジタル情報と同様のデジタル情報を符号化してもよい。いずれの場合でも、符号化された情報は、好ましくは、肉眼によって視覚的に、または顕微鏡などの適切な光学系の助けを借りて、または光学デコーダによって、光学的に復号できる。
【0009】
これらの凹部は、国際公開第2022/002418号に詳述されているように、レーザ光によって生成され、様々な形状および/または深さを有してもよいが、この文献は、特に、凹部の深さによって情報を符号化する方法を詳細に説明するその文献中の任意の開示に関して、参照することにより本明細書に完全に組み込まれる。この第1の態様の最も単純な形態では、各凹部はほぼ同じ深さを有し、光学デコーダは、凹部のない基板領域と凹部との間の差を、例えば、位相差を測定することによって、または(例えば、基板表面が研磨され、凹部の底部が湾曲または粗面化されている場合)、反射率の変化を検出することによって、検出する。薄いコーティング材料の歪を最小限にするために、凹部は、可能な限り小さい深さ、例えば、最大100nm、好ましくは最大50nm、さらにより好ましくは最大30nmの深さを有することが好ましい。また、各凹部の深さは、基板の厚さの1%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.05%未満であることが好ましい。
【0010】
容易に検出し得る明確な凹部を形成するために、凹部は、ピコ秒またはフェムト秒パルスレーザを利用するレーザアブレーションによって生成することが好ましい。実際、そのようなパルスレーザを使用すると、各凹部の周縁頂部に溶融した材料のエッジがない円筒状の凹部が生じる。
【0011】
第1のコーティングの材料は、基板の光学特性と比較して異なる光学特性を有してもよい。例えば、基板の材料が明るい色または白色を呈する一方で、第1のコーティングの材料が暗い色または黒色を呈する場合、基板に向かってまたは基板内にも延在する凹部を形成するように第1のコーティングの材料をアブレーション加工すると、一方では第1のコーティングの表面全体と、他方では各凹部と、の間に強い光学的コントラストが生じる。このコントラストは、(例えば、肉眼で)視認可能で、画像、テキストなどの印象を生成したり、または、光学デコーダによって容易かつ確実に復号されるデジタル符号化(凹部対凹部以外)を提供したりできる。
【0012】
しかしながら、本発明のデータキャリアの想定される長期使用を考慮すると、好ましくは基板が曲げられたりロール上に巻き取られたりしても、第1のコーティングが基板に確実に付着したままであることを確認しなければならない。したがって、最大10μm、好ましくは最大1μm、より好ましくは最大200nm、さらにより好ましくは最大150nm、さらにより好ましくは最大100nm、さらにより好ましくは最大50nm、さらにより好ましくは最大30nm、最も好ましくは最大20nmの厚さを有するかなり薄いコーティング層を塗布することが好ましい。例えば光学的コントラストによって実現される光学効果に関しては、実質的な吸収、多重散乱、反射などを可能にする厚さを備えると十分である。
【0013】
コーティングプロセス、特に復号/読み取りプロセスの容易さの観点から、基板表面およびコーティング表面の両方の平均粗さRaは、10nm未満、好ましくは5nm未満、より好ましくは3nm未満であることが好ましい。Raは、評価長さに沿った中心線に対する偏差から求めたフィルタ処理された粗さプロファイルの算術平均値である。
【0014】
基板上の第1のコーティングはデータキャリアに歪みを生じさせることがあるため、対称的な歪みを実現するために基板の両面をコーティングすると有益な場合がある。したがって、基板の第2の表面は第2のコーティングで被覆され、第2のコーティングの材料は基板の材料とは異なる(また、好ましくは第1のコーティングの材料と同一である)ことが好ましい。もちろん、第2のコーティングを設ける場合、前記第2のコーティングを使用して追加情報を符号化し、これによって、データキャリアに記録されるデータの量を2倍にできる。したがって、第2のコーティングも、情報を符号化する複数の、好ましくはレーザアブレーション加工された凹部を含むことが好ましい。
【0015】
上述したように、第1の態様によるデータキャリアは、乱されていないコーティングの領域と、凹部を有する領域と、の間に光学的コントラストまたは光学特性の別の差異を提供することができる。この目的のために、第1および/または第2のコーティングの各凹部は、それぞれのコーティングの厚さ以上の深さを有することが好ましい。換言すれば、コーティング材料は、基板の材料を(例えば、肉眼、顕微鏡、カメラ、またはより洗練された光学デコーダもしくは読取装置によって)光復号に利用可能にするために、各凹部において実質的に完全にアブレーション加工される(または蒸発させる、または別の方法で除去される)ことが好ましい。これに関連して、基板に影響を与えることなく、凹部位置ですべてのコーティング材料を正確に除去することが理想的であろう。しかし、このことは、確実かつ再現可能に制御することが困難な場合がある。したがって、例えば、第1および/または第2のコーティングの各凹部がそれぞれのコーティングの厚さよりもわずかに大きい深さを有するように、アブレーションに使用されるレーザシステムを制御することが好ましいことがある。例えば、各凹部の深さとそれぞれのコーティングの厚さとの比は、1.01から1.2の間、好ましくは1.01から1.1の間、より好ましくは1.02から1.05の間の範囲であってもよい。好ましくは、各凹部は、最大1μm、好ましくは最大100nm、より好ましくは最大50nm、さらにより好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大20nm、最も好ましくは最大10nmの深さで基板内に延在する。
【0016】
第1および/または第2のコーティングの各凹部は、それぞれのコーティングの厚さよりも小さい深さを有することが好ましいこともある。例えば、各凹部の深さは、凹部が基板に決して接触しないように、また同時に、上述した光学的コントラストを実現するために、それぞれのコーティングの凹部の下の底部材料が、特定の波長のレーザ光がそれでも少なくとも部分的に前記コーティング材料を透過して基板の材料に到達するのに十分なほど薄くなるように、最適化されてもよい。この目的のために、各凹部の深さとそれぞれのコーティングの厚さとの比は、0.9から0.99の間、好ましくは0.95から0.99の間、より好ましくは0.97から0.99の間の範囲であることが好ましい。あるいは、第1および/または第2のコーティングの各凹部は、それぞれのコーティングの厚さよりもかなり小さい深さを有してもよい。この場合、基板は単にキャリア基板として機能し、符号化および復号は、完全にコーティング材料に関してのみ行われる。
【0017】
好ましくは、第1および/または第2のコーティングは、以下の材料、すなわち、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、V、金属窒化物、例えば、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si3N4、ThN、HfN、BN等、金属炭化物、例えば、TiC、CrC、Al4C3、VC、ZrC、HfC、ThC、B4C、SiC等、金属酸化物、例えば、Al2O3、TiO2、SiO2、ZrO2、ThO2、MgO、Cr2O3、Zr2O3、V2O3等、金属ホウ化物、例えば、TiB2、ZrB2、CrB2、VB2、SiB6、ThB2、HfB2、WB2、WB4等、または金属ケイ化物、例えば、TiSi2、ZrSi2、MoSi2、MoSi、WSi2、PtSi、Mg2Si等、のうちの一つまたは組み合わせを含む。
【0018】
好ましくは、基板が、以下の材料、すなわち、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、フルオロエチレンプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンのうちの一つまたは組み合わせを含むか、または、それらからなる。
【0019】
好ましくは、基板は、可視スペクトル内の少なくとも一つの波長範囲、好ましくは可視スペクトル全体にわたって、すなわち400nmから700nmの間、および/または、UVスペクトル内の少なくとも一つの波長範囲、好ましくはUVスペクトル全体にわたって、すなわち100nmから400nmの間、に対して透明である。好ましくは、基板は、可視スペクトル内の少なくとも一つの波長範囲、好ましくは可視スペクトル全体にわたって、すなわち400nmから700nmの間、および/または、UVスペクトル内の少なくとも一つの波長範囲、好ましくはUVスペクトル全体にわたって、すなわち100nmから400nmの間、に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の透過率を示す。
【0020】
本発明のデータキャリアは、薄いシートで提供されてもよく、それらは互いに積み重ねられてよい。例えば、各データキャリアは、円形、ディスク状、長方形、または方形シート、例えば10cm×10cmのシートであってもよい。そのようなシートは、符号化および復号中に容易に取り扱うことができ、例えば、50枚またはさらには500枚のシートを用いて互いに積み重ねて一つのスタックを形成することができる。
【0021】
あるいは、データキャリアは、細長いフィルムであってもよく、それはロール状に巻かれてよい。この目的のために、基板(および好ましくはデータキャリア全体)が最大80GPa、好ましくは最大75GPaのヤング率を有すると特に有利である。データキャリアは、100mm、好ましくは50mm、より好ましくは25mm、より好ましくは10mm、より好ましくは5mm、より好ましくは2.5mmの曲率半径で破損しないことがさらに好ましい。これらの機械的特性を実現するために、データキャリアを可能な限り薄くすることが好ましい。好ましくは、データキャリアの厚さは、最大130μm、より好ましくは最大110μm、さらにより好ましくは最大100μm、さらにより好ましくは最大90μm、最も好ましくは最大80μmである。
【0022】
上述したように、凹部は、任意の形状を有してもよく、楕円形、円形、長方形、正方形などであってもよい。異なる形状の異なる凹部を利用して、情報を符号化してもよい。しかしながら、その最も単純で簡単な手法では、レーザビームによって、好ましくはピコ秒またはフェムト秒のレーザパルスを使用して、複数の本質的に同一で実質的に丸い凹部が生成される。これらの凹部は、デジタル情報を符号化するために、長方形、正方形、または六角形のパターンなどの規則的なパターンで配置されてもよい。好ましくは、前記凹部の直径は、可能な限り小さくても、適切な復号が可能なほど十分に大きい。好ましくは、各凹部は、最大1μm、好ましくは最大500nm、より好ましくは最大300nm、さらにより好ましくは最大200nm、最も好ましくは最大150nmの、各凹部の深さに垂直な最大延在部を有する。
【0023】
好ましくは、データキャリアは、cm2当たり(基板表面当たり)少なくとも10メガバイトの符号化情報、より好ましくはcm2当たり少なくとも100メガバイトの符号化情報、さらにより好ましくはcm2当たり少なくとも1ギガバイトの情報を含む。
【0024】
本発明はさらに、上述のようなデータキャリアを製造する方法に関する。第1の態様によるデータキャリアを製造するために、プラスチック基板を提供し、基板のいずれかまたは両方の表面を第1および/または第2のコーティングで被覆し、好ましくはレーザアブレーションによって、より好ましくはピコ秒またはフェムト秒レーザパルスを使用して、第1および/または第2のコーティングに複数の凹部を生成する。
【0025】
好ましくは円筒状の凹部を実現するために、ガウシアンまたはベッセル形状のレーザ光を用いることが好ましい。
【0026】
第1および/または第2のコーティングによる基板のいずれかまたは両方の表面のコーティングは、様々な既知の技術によって実施されてもよい。特に好ましい技術は、物理蒸着法または化学蒸着法である。
【0027】
基板は、以下の技術、すなわち、加熱、スパッタリング、HiPIMS(高出力インパルスマグネトロンスパッタリング)、窒素および/または水素などのフォーミングガスの適用、のうちの一つまたは複数で基板のいずれかまたは両方の表面を処理してもよい。これらの技術は、基板表面の品質を改善する、および/または基板とコーティングとの間の結合をより強くする、ことができる。
【0028】
基板は、好ましくは、レーザアブレーションに使用されるレーザ光の波長に対して透明であり、また、レーザアブレーションは、好ましくは、基板を透過したレーザ光で行われる。したがって、データキャリアがアブレーション加工された材料と光学系との間にバリアを形成することから、アブレーション中に発生したデブリは、アブレーションに使用される光学系に影響を及ぼすことができない。
【0029】
本発明はさらに、上述のようなデータキャリアの読出し方法に関する。本方法によれば、第1の態様のデータキャリアは、第1の波長の光で照射される。データキャリアの複数の凹部に符号化された情報を復号するために、データキャリアを透過した光および/またはデータキャリアによって反射された光が検出および分析される。例えば、複数の凹部を通過する光と、凹部が存在しない場所でデータキャリアによって(例えば、不透明基板または不透明コーティングによって)遮断される光と、が組み合わせられ、QRコードなどのパターン(明/暗)を生成し、そして、このパターンは公知の技術を使用して復号することができる。
【0030】
好ましくは、データキャリアは、基板と、基板の一方の表面にあり、レーザアブレーション加工された複数の凹部を有するコーティングと、を含み、基板は第1の波長に対して透明であり、基板を透過した光が検出される。このことは、透過モードと反射モードの両方で起こり得る。特に、データキャリアは、好ましくは、コーティングとは反対側から基板を通して照射されてもよい。さらに、凹部から生じる光は、コーティングとは反対側から基板を通して検出されてもよい。この技術では、凹部を有するコーティングの反対側が通常はよりきれいであり、および/または画像化を容易にするより滑らかな表面を有するため、信号対雑音比が改善される。凹部を含む側に粉塵粒子が存在する可能性がある場合、光ビームに対する粉塵粒子(または他の不純物)の影響を最小限に抑えるために、照射および/または検出焦点が凹部の底部に位置付けられた状態で反対側から照射し、反対側で検出することが特に有利である。
【0031】
次に、本発明の一例について、以下の図を示す図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、100倍の倍率での例示的なデータキャリアの明視野顕微鏡画像である。
【
図2】
図2は、100倍の倍率での例示的なデータキャリアの背面照射顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
例では、10mm×10mmのサイズおよび500μmの厚さを有するポリカーボネート基板を、物理蒸着法(PVD)によって100nmの厚さを有するCrNのコーティングで被覆した。約1μmの直径を有する円形凹部を、波長514nmの300フェムト秒レーザを用いてコーティングからアブレーション加工した。
【0034】
得られたデータキャリアを、それぞれ
図1および
図2に示すように、Sensofar Sneoxを用いて前面および背面から100倍の倍率で撮像した。
【0035】
これらの図から明らかなように、ポリカーボネート基板の材料(透明)とコーティング層の材料(光吸収性)との間の優れた光学的コントラストを実現するように、コーティングに凹部を確実かつ不可逆的に形成することが可能である。さらに、CrNコーティングはポリカーボネート基板に確実に接着し、機械的に動かすことはできなかった。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の表面を有しており最大500μmの厚さを有するプラスチック基板を備え、
前記基板の前記第1の表面が第1のコーティングで被覆されており、
前記第1のコーティングの材料が前記基板の材料とは異なり、
前記第1のコーティングが、情報を符号化する複数のレーザアブレーション加工された凹部を含む、
データキャリア。
【請求項2】
前記基板の厚さが最大200μ
mである、
請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項3】
前記基板の前記第2の表面が第2のコーティングで被覆されており、
前記第2のコーティングの材料が前記基板の材料とは異なり、
前記第2のコーティングが、情報を符号化する複数のレーザアブレーション加工された凹部を含む、
請求項
1に記載のデータキャリア。
【請求項4】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの厚さ
が最大1μ
mである、
請求項
1に記載のデータキャリア。
【請求項5】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部
が最大100n
mの深さを有する、
請求項
1に記載のデータキャリア。
【請求項6】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部が、それぞれの前記コーティングの厚さよりも小さい深さを有する
、
請求項
1に記載のデータキャリア。
【請求項7】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部が、それぞれの前記コーティングの厚さに実質的に等しい深さを有する、
請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項8】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングの各凹部が、それぞれの前記コーティングの厚さよりも大きい深さを有する、
請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項9】
各凹部
が最大100n
mの深さで前記基板内に延在する、
請求項
8に記載のデータキャリア。
【請求項10】
前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングが、以下の材料、すなわち、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、V等の金属、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si
3N
4、ThN、HfN、BN等の金属窒化物、TiC、CrC、Al
4C
3、VC、ZrC、HfC、ThC、B
4C、SiC等の金属炭化物、Al
2O
3、TiO
2、SiO
2、ZrO
2、ThO
2、MgO、Cr
2O
3、Zr
2O
3、V
2O
3等の金属酸化物、TiB
2、ZrB
2、CrB
2、VB
2、SiB
6、ThB
2、HfB
2、WB
2、WB
4等の金属ホウ化物、またはTiSi
2、ZrSi
2、MoSi
2、MoSi、WSi
2、PtSi、Mg
2Si等の金属ケイ化物、のうちの一つまたは組み合わせを含む、
請求項
1に記載のデータキャリア。
【請求項11】
前記基板が、以下の材料、すなわち、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、フルオロエチレンプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンのうちの一つまたは組み合わせを含む、
請求項
1に記載のデータキャリア。
【請求項12】
前記データキャリアがロール状に巻かれている、
請求項
1に記載のデータキャリア。
【請求項13】
請求項
1に記載のデータキャリアを製造する方法であって、
プラスチック基板を提供するステップと、
第1のコーティングおよび/または第2のコーティングで前記基板のいずれかまたは両方の表面を被覆するステップと、
レーザアブレーションによって前記第1のコーティングおよび/または前記第2のコーティングに複数の凹部を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記基板が、レーザアブレーションに使用されるレーザ光の波長に対して透明であり、
前記レーザアブレーションが、前記基板を透過したレーザ光を用いて行われる、
請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
請求項
1に記載のデータキャリアの読出し方法であって、
第1の波長の光で前記データキャリアを照射するステップと、
前記データキャリアを透過した光および/または前記データキャリアによって反射された光を検出するステップと、
前記データキャリアの複数の前記凹部に符号化された情報を復号するために、前記検出された光を分析するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記データキャリアが、プラスチック基板と、前記基板の一方の表面にあり、レーザアブレーション加工された複数の凹部を有するコーティングと、を備え、
前記基板が前記第1の波長に対して透明であり、
前記基板を透過した光が検出される、
請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記データキャリアが前記コーティングとは反対側から照射される、および/または前記データキャリアによって反射された光が、前記コーティングの反対側で検出される、
請求項
16に記載の方法。
【国際調査報告】