(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-23
(54)【発明の名称】高沸点溶媒を含む非線形光学材料およびその効率的なポーリング方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250116BHJP
G02F 1/361 20060101ALI20250116BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C08L101/00
G02F1/361
C08L69/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533131
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 US2022051432
(87)【国際公開番号】W WO2023102066
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522501007
【氏名又は名称】ライトウェーブ ロジック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリー ペチノフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ギネル エー.ラマン
(72)【発明者】
【氏名】バオクアン チェン
(72)【発明者】
【氏名】バリー ジョンソン
【テーマコード(参考)】
2K102
4J002
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BA05
2K102BA08
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA29
2K102DD01
4J002AA001
4J002BC031
4J002BG061
4J002CG001
4J002CG011
4J002CK021
4J002CM041
4J002EL066
4J002FD096
4J002GP00
4J002GQ00
4J002HA05
(57)【要約】
一般的に、本発明は、電気光学材料および高沸点溶媒を含み、改善され、より効率的なポーリングを可能にする組成物、ならびに当該材料をポーリングする方法を指向する。したがって、本発明の種々の実施形態は、電気光学デバイスに使用するために効率的にポーリングすることができる、優れた電気光学特性を有する材料を提供する。本発明の種々の実施形態において、材料は薄膜として適用され、通常印加される電圧により低温で効率的にポーリングされ、同時に優れた巨視的非線形光学特性および熱安定性を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形光学発色団を含む電気光学材料であって、約100℃以上のガラス転移温度(Tg
m)を有する電気光学材料と、
約100℃以上の沸点を有する溶媒と、
を含む組成物であって、前記溶媒は、組成物全体のガラス転移温度(Tg
c)がTg
mよりも低くなるような量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項2】
電気光学材料は、非線形光学発色団が分散されたホストポリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
電気光学材料は、約150℃以上のガラス転移温度(Tg
m)を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
電気光学材料は、約180℃以上のガラス転移温度(Tg
m)を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
溶媒は、約150℃以上の沸点を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
溶媒は、約250℃以上の沸点を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
組成物全体のガラス転移温度(Tg
c)は、Tg
mより少なくとも10℃低いことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
組成物全体のガラス転移温度(Tg
c)は、Tg
mより少なくとも25℃低いことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
組成物全体のガラス転移温度(Tg
c)は、Tg
mより少なくとも50℃低いことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ホストポリマーは、非晶質ポリカーボネートを含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
溶媒は、ジエチレングリコールジブチルエーテルを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ホストポリマーは非晶質ポリカーボネートを含み、溶媒はジエチレングリコールジブチルエーテルを含み、Tg
mは150℃以上であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
非線形光学発色団を含む電気光学材料と、100℃以上の沸点を有する溶媒とを含む組成物を提供する工程であって、前記電気光学材料は約100℃以上のガラス転移温度(Tg
m)を有し、該組成物は、Tg
mよりも小さいガラス転移温度(Tg
c)を有する工程と;
基板上に組成物の薄膜を調製する工程と;
薄膜中の非線形光学発色団をポーリングする工程と;
非線形光学発色団がポーリングされた状態にある間に組成物から溶媒を除去して、配向した熱的に安定な電気光学薄膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
薄膜は、スピンコーティングおよびインクジェット印刷からなる群から選択される技術によって調製されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電気光学材料はホストポリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ホストポリマーは非晶質ポリカーボネートを含み、溶媒はジエチレングリコールジブチルエーテルを含み、Tg
mは150℃以上であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
薄膜は、スピンコーティングおよびインクジェット印刷からなる群から選択される技術によって調製されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法によって調製されることを特徴とする薄膜。
【請求項19】
請求項13に記載の方法によって調製された薄膜を含むことを特徴とする電気光学デバイス。
【請求項20】
デバイスがコプレーナー設計を有することを特徴とする、請求項19に記載の電気光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、改善されたより効率的なポーリングを可能にする電気光学材料および高沸点溶媒を含む組成物、ならびにそのような材料をポーリングする方法を指向する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全内容は本明細書の一部をなすものとする、2021年12月3日に出願された米国特許仮出願第63/264,880号の利益を主張する。
【0003】
非線形光学(NLO)発色団は、ポーリングされた電気光学ポリマーデバイスにおいて電気光学(EO)活性を提供する。長年にわたって、電気光学ポリマーは、電気光学デバイス中のニオブ酸リチウムのような無機材料の代替物として研究されてきた。電気光学デバイスは、たとえば、電気通信用の外部変調器、RFフォトニクス、光インターコネクタなどを含む。ポリマー電気光学材料は、フェーズドアレイレーダー、衛星およびファイバー電気通信、ケーブルテレビ(CATV)、航空誘導およびミサイル誘導の用途のための光ジャイロスコープ、対電子戦(ECM)システム、高速計算用バックプレーン相互接続、超高速アナログデジタル変換、地雷探知、無線周波数フォトニクス、空間光変調、全光型(光-スイッチング-光)信号処理など、広範な次世代システムおよびデバイスにおける中核的な応用に大きな可能性を示している。
【0004】
高い分子電気光学特性を示す多数のNLO分子(発色団)が合成されてきている。材料加工における双極子の関与するため、多くの場合に、分子電気光学性能の尺度として分子双極子モーメント(μ)および超分極率(β)の積が用いられる。国際特許出願公開第00/09613号(Daltonら、「New Class of High Hyperpolarizability Organic Chromophores and Process for Synthesizing the Same」)を参照のこと。
【0005】
それにもかかわらず、微視的な分子の超分極率(β)を巨視的な材料の超分極率(χ2)に変換するにあたって、非常な困難に遭遇した。分子サブコンポーネント(発色団)は、(i)高度の巨視的非線形性と、(ii)十分な時間的、熱的、化学的、光化学的安定性とを示すNLO材料に組み込まなければならない。高い電気光学活性と、「時間的安定性」とも呼ばれる電気光学活性の安定性は、商業的に実現可能なデバイスにとって重要である。ホストポリマー中の非線形光学発色団の濃度を増加させること、および発色団の電気光学特性を増加させることによって、電気光学ポリマーにおける電気光学活性を増加させることができる。しかしながら、発色団濃度を高めるいくつかの技術は、ポーリング効率および時間的安定性を低下させる恐れがある。これらの二重の問題点を同時に解決することが、多くのデバイスおよびシステムにおけるEOポリマーの広範な実用化での最終的な障害と考えられている。
【0006】
高い材料超分極率(χ2)の生成は、NLO発色団の社会性(social character)の低さによって制限されている。商業的に利用可能な材料は、必要な分子モーメントが単一の材料軸に沿って統計的に配向させた状態かつ大きな分子密度で、発色団を組み込まなければならない。このような組織を実現するために、NLO発色団の電荷移動(双極子)特性を利用するのが一般的である。ここでは、材料加工時に、非中心対称秩序に有利な局所的低エネルギー条件をもたらす外部電場を印加する。残念なことには、中程度のクロモフォア密度であっても、分子は多分子双極子結合凝集体(中心対称性)を形成し、現実的な電界エネルギーでは当該凝集体を分解できない。この困難を克服するために、一般的には、近接分子間の関係を制限する物理的障壁(たとえば、抗充填(anti-packing)立体基)を構築することによって、協調的な物質構造中への反社会的(anti-social)な双極性発色団の組み込みが実現されている。
【0007】
したがって、当該技術分野において、多くの場合に、高いガラス転移温度(Tg)を示す非線形光学発色団含有材料を製造することが有利であると考えられてきた。高いガラス転移温度を有する材料は、より低いガラス転移温度を有する材料よりも改善された熱安定性を示し、巨視的電気光学特性をより高度に維持する。しかし、このような高いガラス転移温度を有する材料は、適切なアライメントを達成するために、ポーリングプロセス中に著しく高い温度を必要とする。そのような高温を使用する必要性は、高コストであり、より多くの時間を必要として、ポーリングの非効率と呼ばれる結果をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一般的に、改良されたより効率的なポーリングを可能にする電気光学材料および高沸点溶媒を含む組成物、ならびに当該材料をポーリングする方法を指向する。したがって、本発明の種々の実施形態は、電気光学デバイスに使用するために効率的にポーリングすることができる、優れた電気光学特性を有する材料を提供する。本発明の種々の実施形態において、材料は薄膜として適用され、通常印加される電圧かつ低温において効率的にポーリングされ、同時に優れた巨視的非線形光学特性および熱安定性を示すことができる。
【0009】
本発明の種々の実施形態は、(i)非線形光学発色団を含む電気光学材料と、(ii)約100℃以上の沸点を有する溶媒とを含む組成物を含み、電気光学材料は、約100℃以上のガラス転移温度(「Tgm」または「材料ガラス転移温度」)を有し、溶媒は、組成物全体としてのガラス転移温度(「Tgc」または「組成物ガラス転移温度」)をTgm未満とするような量で存在する。
【0010】
本発明の他の種々の実施形態は、(i)非線形光学発色団を含む電気光学材料と、100℃以上の沸点を有する溶媒とを含む組成物を提供する工程と;(ii)基板またはデバイス表面上に組成物の薄膜を作製する工程と;(iii)薄膜中の非線形光学発色団をポーリングする工程と;(iv)非線形光学発色団がポーリングされた状態にある間に組成物から溶媒を除去し、配向した熱的に安定な電気光学薄膜を形成する工程とを含む方法であって、該電気光学材料は、約100℃以上のガラス転移温度(Tgm)を有し、該組成物は、Tgm未満のガラス転移温度(Tgc)を有する方法を含む。
【0011】
本発明の種々の追加の実施形態は、電気光学材料が、非線形光学発色団を分散し得るホストポリマーをさらに含む、前述の組成物を含むことができる。本発明の種々の追加の実施形態は、電気光学材料が複数種の非線形光学発色団および/または複数種のホストポリマーを含む、前述の組成物を含むことができるか、または同様に含むことができる。本発明の種々の追加の実施形態は、125℃以上、または150℃以上、またはより高温の材料ガラス転移温度を有する電気光学材料を含むことができるか、または同様に含むことができる。あるいはまた、本発明の種々の追加の実施形態は、125℃を超える沸点、150℃を超える沸点、175℃以上、200℃以上、250℃以上、またはより高温の沸点を有する溶媒を含むことができ、または同様に含むことができる。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、前述の実施形態による組成物または方法を用いて調製された薄膜、およびそのような薄膜を含む電気光学デバイスを含む。
【0013】
その他の態様、特徴および利点は、詳細な説明、好ましい実施形態および添付の特許請求の範囲を含む以下の開示から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用される際に、記載および/または文脈が特段の相違を明確に示さない限り、単数形の用語「a」および「the」は、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」と同義であり、互換的に使用される。したがって、たとえば、本明細書または添付の特許請求の範囲における「ポリマー(a polymer)」または「ポリマー(the polymer)」なる言及は、単一種のポリマーまたは複数種のポリマーを指示することができる。さらなる例として、本明細書または添付の特許請求の範囲における「溶媒(a solvent)」または「溶媒(the solvent)」への言及は、単一種の溶媒または複数種の溶媒の混合物を指示することができる。さらに、特に断りのない限り、すべての数値は、「約」という語によって修飾されていると理解される。
【0015】
本明細書において、「非線形光学発色団」(NLOC)という用語は、光を照射した際に非線形光学効果を発生させる、分子または分子の一部を指す。発色団は、光との相互作用によって非線形光学効果を生じる任意の分子単位である。所望の効果は、共鳴波長でも非共鳴波長でも起こりうる。非線形光学材料における特定の発色団の活性は、発色団の分子双極子モーメントに直接関連する超分極率として示される。本発明のNLO発色団の種々の実施形態は、NLO効果の生成に有用な構造である。
【0016】
一次の超分極率(β)は、最も一般的かつ有用なNLO特性の1つである。より高次の超分極率は、全光型(光-スイッチング-光)アプリケーションのような他の用途で有用である。化合物またはポリマーのような材料が、1次の超分極特性および十分な値の電気光学係数(r33、βの関数である)を有する非線形光学発色団を含むかどうかを判断するには、以下のような試験を行うことができる。最初に、薄膜状の材料を電界中に配置し、双極子を整列させる。これは、たとえばインジウム・スズ酸化物(ITO)基板、金薄膜、銀薄膜などの電極間に材料の薄膜を挟持することによって行うことができる。
【0017】
次に、ポーリング電界を発生させるため、材料をガラス転移温度(Tg)付近まで加熱しながら、電極に電位を印加する。適切な時間経過後、ポーリング電界を維持しながら温度を徐々に低下させる。あるいはまた、材料フィルムから適切な距離にある帯電した針がポーリング電界を提供するコロナポーリング法によって、材料をポーリングすることもできる。いずれの場合も、材料中の双極子は電界と整列する傾向がある。
【0018】
次いで、ポーリングされた材料の非線形光学特性は、以下のように検査される。偏光(多くの場合、レーザーからの偏光)を、ポーリングされた材料および引き続く偏光フィルターを通過させ、光強度検出器に送る。電極に印加される電位を変化させた際に検出器で受光される光の強度が変化する場合、その材料には電気光学的に変化する屈折率を有する非線形光学発色団が組み込まれている。非線形光学発色団が組み込まれたポーリングされたフィルムの電気光学定数を測定する技術についてのより詳細な議論は、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、Chia-Chi Teng, Measuring Electro-Optic Constants of a Poled Film, in Nonlinear Optics of Organic Molecules and Polymers, Chp. 7, 447-49 (Hari Singh Nalwa & Seizo Miyata eds., 1997)に記載されている。ただし、本出願と矛盾する開示または定義が存在する場合は、本明細書における開示または定義が優先するものとする。
【0019】
印加電位の変化と材料の屈折率の変化との関係は、EO係数r33として表される。この効果は、一般的に電気光学効果(EO効果)と呼ばれる。印加電位の変化に応じて屈折率が変化する材料を含むデバイスは、電気光学(EO)デバイスと呼ばれる。
【0020】
2次の超分極率(γ)または3次の感受率(χ
(3))は、3次のNLO活性の通常の尺度である。これらの特性を測定する方法はいくつかあるが、縮退4光波混合(DFWM)法が非常に一般的である。参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、C. W. Thiel, "For-wave Mixing and Its Applications", http://www.physics.montana.edu.students.thiel.docs/FWMixing.pdfを参照されたい。参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許出願公開第2012/0267583号明細書を参照して、当技術分野で縮退4光波混合(DFWM)法として知られる薄膜の3次NLO特性を評価する方法を用いることができる。米国特許出願公開第2012/0267583号明細書の
図4において、ビーム1およびビーム2はピコ秒の可干渉性パルスであり、ガラス基板上に蒸着されたNLO膜に吸収される。ビーム3は、ビーム1およびビーム2と同じ波長を有し、より弱く、わずかに遅延したビームである。ビーム4は、膜のNLO材料におけるビーム1およびビーム2の干渉によって生成された、過渡ホログラフィックグレーティングで回折された光波混合の結果生成されたものである。ビーム3は、NLO材料に吸収されない周波数の「信号」ビームを生成する、電気通信波長の「制御」ビームとすることができる。
【0021】
本発明の種々の実施形態での使用に適した組成物は、電気光学材料と、100℃以上の沸点を有する溶媒とを含む。使用に適した電気光学材料は、少なくとも1種の非線形光学発色団を含み、ホストポリマーをさらに含んでもよい。
【0022】
本発明の種々の実施形態にしたがう使用に適した非線形光学発色団は、一般式(I)を有するものを含む:
D-Π-A (I)
(式中、Dは電子供与性有機基を表し;Aは、Dの電子親和力よりも大きい電子親和力を有する電子受容性有機基を表し;Πは、AとDとの間のΠ-ブリッジを表す)を有する発色団を含む。電子供与性基(ドナーまたは「D」)、Π-ブリッジ(架橋基または「Π」)、および電子受容性基(アクセプターまたは「A」)という用語、ならびにD-Π-A発色団を形成するための一般的な合成方法は、当該技術分野において公知であり、たとえば、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第5,670,000号明細書、米国特許第5,670,091号明細書、米国特許第5,679,763号明細書、米国特許第6,090,332号明細書、米国特許第6,716,995号明細書、米国特許第6,716,995号明細書、および2021年6月25日に出願された米国特許出願第17/358,960号明細書に記載されている。
【0023】
アクセプターは、低い還元電位を有する原子または原子団であり、その原子または原子団は、Πブリッジを通してドナーから電子を受容することができる。アクセプター(A)はドナー(D)よりも大きい電子親和力を持つため、少なくとも外部電場がない場合、発色団は一般的に基底状態で分極し、アクセプター(A)上に相対的に高い電子密度を有する。典型的には、アクセプター基は、π結合(二重結合または三重結合)の一部である少なくとも1つの電気陰性ヘテロ原子を含み、π結合の電子対をヘテロ原子に移動させ、同時にπ結合の多重度を減少させ(すなわち、二重結合が単結合に形式的に変換されるか、三重結合が二重結合に形式的に変換され)、ヘテロ原子が形式的に負の電荷を獲得する共鳴構造を描くことができる。ヘテロ原子は複素環の一部であってもよい。例示的なアクセプター基は、-NO2、-CN、-CHO、COR、CO2R、-PO(OR)3、-SOR、-SO2R、および-SO3R(式中、Rはアルキル、アリール、またはヘテロアリールである)を含むが、それらに限定されない。アクセプター基中のヘテロ原子および炭素の総数は約30であり、アクセプター基はアルキル、アリール、および/またはヘテロアリールでさらに置換されていてもよい。
【0024】
本発明の種々の実施形態にしたがって使用できる非線形光学発色団に適した電子受容性基「A」(文献では電子吸引性基とも呼ばれる)は、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許出願公開第2007/0260062号明細書、米国特許出願公開第2007/0260063号明細書、米国特許出願公開第2008/0009620号明細書、米国特許出願公開第2008/0139812号明細書、米国特許出願公開第2009/0005561号明細書、米国特許出願公開第2012/0267583号明細書(「先公開文献」と総称する)に記載されているものを含み、および、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6,584,266号明細書、米国特許第6,393,190号明細書、米国特許第6,448,416号明細書、米国特許第6,44,830号明細書、米国特許第6,514,434号明細書、米国特許第5,044,725号明細書、米国特許第4,795,664号明細書、米国特許第5,247,042号明細書、米国特許第5,196,509号明細書、米国特許第4,810,338号明細書、米国特許第4,936,645号明細書、米国特許第4,767,169号明細書、米国特許第5,326,661号明細書、米国特許第5,187,234号明細書、米国特許第5,170,461号明細書、米国特許第5,133,037号明細書、米国特許第5,106,211号明細書、米国特許第5,006,285号明細書に記載されているものを含む。
【0025】
本発明の種々の実施形態にしたがう使用に適した非線形光学発色団において、好適な電子受容性基は、一般式(Ia):
【0026】
【0027】
(式中、R2およびR3は、それぞれ独立的に、H、置換または非置換のC1~C10アルキル、置換または非置換のC2~C10アルケニル、置換または非置換のC2~C10アルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換の炭素環式基、置換または非置換の複素環式基、置換または非置換のシクロヘキシル、および(CH2)n-O-(CH2)n(式中、nは1~10である))からなる群から選択される部分を表す。本明細書で使用される場合、以下の表記はより大きな分子構造の別の部分への結合点を表す。
【0028】
【0029】
種々の好ましい実施形態において、R2およびR3の一方または両方は、ハロゲン置換部分を表す。ハロゲン置換とは、モノ-、ジ-、トリ-およびそれ以上の置換度を指してもよい。種々の実施形態において、R2およびR3の一方はハロゲン置換アルキル部分を表し、他方は芳香族部分を表す。種々の実施形態において、R2およびR3の一方はハロゲン置換芳香族部分を表し、他方はアルキル部分を表す。種々の実施形態において、電子受容性基は、以下のものであることができる。
【0030】
【0031】
種々の実施形態において、電子受容性基は以下のものであることができる。
【0032】
【0033】
種々の実施形態において、電子受容性基は以下のものであることができる。
【0034】
【0035】
ドナーは、低い酸化電位を有する原子または原子団が含まれ、その原子または原子団は、Πブリッジを介してアクセプター「A」に電子を供与することができる。ドナー(D)はアクセプター(A)よりも小さい電子親和力を有するため、少なくとも外部電場がない場合、発色団は一般的に基底状態で分極し、ドナー(D)上に相対的に低い電子密度を有する。典型的には、ドナー基は、ヘテロ原子に直接結合した原子のp軌道と共役可能な非共有電子対を有する少なくとも1つのヘテロ原子を含み、ヘテロ原子に直接結合した原子のp軌道との結合に非共有電子対を移動させて、ヘテロ原子とヘテロ原子に直接結合した原子との間の結合の多重度を形式的に増加させ(すなわち、単結合が形式的に二重結合に変換されるか、あるいは二重結合が形式的に三重結合に変換される)ので、ヘテロ原子は形式的に正の電荷を得る共鳴構造を描くことができる。ヘテロ原子に直接結合している原子のp軌道は空軌道であってもよいし、当該ヘテロ原子以外の別の原子との多重結合の一部であってもよい。ヘテロ原子は、π結合を有する原子の置換基であってもよいし、複素環内にあってもよい。例示的なドナー基は、R2N-、およびRnX1-(式中、Rはアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、X1はO、S、P、SeまたはTeであり、nは1または2である)を含むが、それらに限定されない。ドナー基中のヘテロ原子および炭素の総数は約30であってもよく、ドナー基はアルキル、アリールまたはヘテロアリールでさらに置換されていてもよい。
【0036】
本発明の種々の実施形態にしたがって使用できる非線形光学発色団に適した電子供与性基「D」は、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許出願公開第2007/0260062号明細書、米国特許出願公開第2007/0260063号明細書、米国特許出願公開第2008/0009620号明細書、米国特許出願公開第2008/0139812号明細書、米国特許出願公開第2009/0005561号明細書、米国特許出願公開第2012/0267583号明細書(「先公開文献」と総称する)に記載されているものを含み、および、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6,584,266号明細書、米国特許第6,393,190号明細書、米国特許第6,448,416号明細書、米国特許第6,44,830号明細書、米国特許第6,514,434号明細書、米国特許第5,044,725号明細書、米国特許第4,795,664号明細書、米国特許第5,247,042号明細書、米国特許第5,196,509号明細書、米国特許第4,810,338号明細書、米国特許第4,936,645号明細書、米国特許第4,767,169号明細書、米国特許第5,326,661号明細書、米国特許第5,187,234号明細書、米国特許第5,170,461号明細書、米国特許第5,133,037号明細書、米国特許第5,106,211号明細書、米国特許第5,006,285号明細書に記載されているもの、ならびに、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、2021年6月25日に出願された米国特許出願第17/358,960号明細書に記載されているものを含む。
【0037】
種々の実施形態において、電子供与性基は、ヒドロおよびアルキル置換基、アリール置換基、およびそれらの組み合わせを含む、置換または非置換であってもよいキノリニル基を含むことができる。そのようなキノリニル基は、それに共有結合で結合した1つまたは複数のダイヤモンドイド基を有してもよい。たとえば、電子供与性基は、たとえば、以下のようなアルコキシフェニル置換キノロン類を含むことができる。
【0038】
【0039】
または、たとえば、電子供与性基は、以下のような芳香族窒素含有基を含むことができる。
【0040】
【0041】
「Π-ブリッジ」は、ブリッジ内の原子の軌道を介して、ブリッジを貫いて電子が電子供与体(上記で定義)から電子受容体(上記で定義)まで非局在化することができる、原子または原子団を含む。このような基は、当該技術分野において非常によく知られている。典型的には、軌道は、アルケン、アルキン、非荷電または荷電の芳香族環、非荷電または荷電の複素芳香族環系に見られるような、二重結合炭素原子(sp2)または三重結合炭素原子(sp)上のp軌道である。さらに、軌道は、ホウ素または窒素などの原子上のp軌道であってもよい。さらに、軌道はp、dまたはfの有機金属軌道または混成有機金属軌道であってもよい。本明細書において、電子が非局在化する軌道を含むブリッジの原子を、「臨界原子(critical atoms)」と呼称する。ブリッジの臨界原子の数は、1~約30である。臨界原子は、有機基または無機基で置換されていてもよい。この置換基は、ポリマーマトリックスへの発色団の溶解性の改善、発色団の安定性の改善または別の目的の観点において選択される。
【0042】
一般式(I)による非線形光学発色団に好適な架橋基(Π)は、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6,584,266号明細書、米国特許第6,393,190号明細書、米国特許第6,448,416号明細書、米国特許第6,44,830号明細書、米国特許第6,514,434号明細書に記載されているものを含む。
【0043】
種々の実施形態において、一般式(I)による非線形光学発色団の架橋基(Π)は、一般式(IIa):
【0044】
【0045】
(式中、Xは、置換または非置換の、分枝または非分枝のC2~C4ジイル部分を表し;aおよびbのそれぞれは、独立的に0~3の整数を表し;zは1~3の整数を表す)を有する基を含むことができる。一般式(IIa)中のaまたはbが1である種々の実施形態において、式中の炭素-炭素二重結合を、炭素-炭素三重結合で置換することができる。あるいはまた、種々の実施形態において、一般式(I)による非線形光学発色団のための架橋基(Π)は、一般式(IIb)のものを含むことができる:
【0046】
【0047】
(式中、Xは、置換または非置換の、分枝または非分枝のC2~C4ジイル部分を表す)を有する基を含むことができる。1つまたは複数のダイヤモンドイド基が一般式(IIa)または(IIb)にしたがう架橋基に共有結合している種々の実施形態において、1つまたは複数のダイヤモンドイド基は、たとえば、チオフェン基の硫黄原子もしくは酸素原子に結合していてもよく、あるいは、エーテルもしくはチオエーテル結合を介してX中の1つまたは複数の炭素原子に結合していてもよい。
【0048】
種々の実施形態において、一般式(I)による非線形光学発色団の架橋基(Π)は、一般式(IIc)のものを含むことができる:
【0049】
【0050】
(式中、それぞれのYは、独立的に:エーテルおよびチオエーテル結合を含むがこれらに限定されない、本明細書および以下に記載される種々の結合基のいずれかを介して架橋基と共有結合したダイヤモンドイド含有基を表すか;または、それぞれのYは、水素、アルキル基、アリール基、硫黄もしくは酸素で連結したアルキルもしくはアリール基、または分枝もしくは非分枝の、任意選択的にヘテロ原子を含有してもよいC1~C4置換基を表し;aおよびbのそれぞれは、独立的に0~3の整数を表し;zは1~3の整数を表し;円弧Aのそれぞれは、独立的に、Y置換基を担持する炭素およびその隣接する2つの炭素原子と一緒になって環式基を形成する、置換または非置換のC2~C4アルキル基を表す)を有する基を含むことができる。円弧Aを構成する置換または非置換のC2~C4アルキル基は、1~4個の水素置換基を含んでもよく、水素置換基のそれぞれは、置換または非置換のC1~C10アルキル、置換または非置換のC2~C10アルケニル、置換または非置換のC2~C10アルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換の炭素環式基、置換または非置換の複素環式基、置換または非置換のシクロヘキシル、および(CH2)n-O-(CH2)n(式中、nは1~10である))からなる群から選択される部分を含んでもよい。種々の実施形態において、zは1を表す。種々の実施形態において、電子供与性基または電子受容性基は、1つまたは複数の共有結合したダイヤモンドイド基を含むことができ、一般式IIcのYは、上記の置換基の任意のものを表してもよい。種々の実施形態において、発色団は、1つまたは複数の共有結合したダイヤモンドイド基、好ましくはアダマンチル基を含む電子供与性基を含むことができ、架橋基は、一般式IIc(式中、Yはアリールチオエーテル置換基を表す)にしたがうイソホロン基を含むことができる。
【0051】
種々の実施形態において、一般式(I)にしたがう非線形光学発色団の架橋基(Π)は、一般式(IId)のものを含むことができる:
【0052】
【0053】
(式中、それぞれのYは、独立的に:エーテルおよびチオエーテル結合を含むがこれらに限定されない、本明細書および以下に記載される種々の結合基のいずれかを介して架橋基と共有結合したダイヤモンドイド含有基を表すか;または、それぞれのYは、水素、アルキル基、アリール基、硫黄もしくは酸素で連結したアルキルもしくはアリール基、炭素-炭素結合で直接的に結合したアリール基(任意選択的に、ダイヤモンドイド基を担持してもよい)(たとえばアダマンチルアニソール(adamantly anisole))、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、または分枝もしくは非分枝の、任意選択的にヘテロ原子を含有してもよいC1~C4置換基を表し;aおよびbのそれぞれは、独立的に0~3の整数を表し;zは1~3の整数を表す)を有する基を含むことができる。種々の実施形態において、電子供与性基または電子受容性基は、1つまたは複数の共有結合したダイヤモンドイド基を含むことができ、一般式IIdのYは、上記の置換基の任意のものを表してもよい。種々の実施形態において、発色団は、1つまたは複数の共有結合したダイヤモンドイド基、好ましくはアダマンチルを含む電子供与性基を含むことができ、架橋基は、一般式IId(式中、Yはアリールチオエーテル置換基を表す)にしたがうイソホロン基を含むことができる。代替的に、種々の実施形態において、一般式IIdのイソホロン架橋基上のジェミナルメチル基のそれぞれは、独立的に、置換または非置換のC1~C10アルキル、置換または非置換のC2~C10アルケニル、置換または非置換のC2~C10アルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換の炭素環式基、置換または非置換の複素環式基、置換または非置換のシクロヘキシル、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基(たとえば、-CF3)、ハロゲン化アリール基およびヘテロアリール基(たとえば、ペンタフルオロチオフェノール)、ならびに(CH2)n-O-(CH2)n(式中、nは1~10である))からなる群から選択される部分を表してもよい。
【0054】
たとえば、一般式(I)にしたがう非線形光学発色団の架橋基(Π)は、以下のものを含むことができる。
【0055】
【0056】
種々の実施形態にしたがって使用するのに適した発色団の例は、参照により本明細書の一部をなすものとする参考文献に開示されている全ての発色団に加えて、以下のものを含むことができる。
【0057】
【0058】
【0059】
本発明の種々の実施形態にしたがう組成物は、マトリックス材料とも呼ばれるホストポリマーをさらに含んでもよく、ホストポリマー中に1つまたは複数の非線形光学発色団を組み込んでもよい。適切なマトリックス材料は、たとえば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA);ポリイミド;ポリアミック酸;ポリスチレン;ポリ(ウレタン)(PU);非晶質ポリカーボネート(APC)のようなポリマーを含むことができる。種々の実施形態において、マトリックス材料は、たとえば、約120,000の分子量および約100~165℃のガラス転移温度Tgを有するポリ(メチルメタクリレート)、または約150~220℃のTgを有するAPCを含むことができる。
【0060】
一般的に、非線形光学発色団は、実質的に任意の量でマトリックス材料内に組み込むことができ、あるいは、マトリックス材料の無い状態(すなわち、「ニート」または100%発色団)で使用することもできる。たとえば、適切な電気光学材料は、非線形光学発色団とマトリックス材料を総合した全重量に基づいて、約1質量%から90質量%の量の非線形光学発色団を含むことができる。種々の実施形態において、好適な電気光学材料は、非線形光学発色団およびマトリックス材料を総合した全重量に基づいて、約2質量%~80質量%の量の非線形光学発色団を含むことができる。種々の実施形態において、好適な電気光学材料は、非線形光学発色団およびマトリックス材料を総合した全重量に基づいて、約3質量%~75質量%の量の非線形光学発色団を含むことができる。たとえば、70質量%の発色団/30質量%のマトリックス材料の割合において、1種または複数種の発色団を、非晶質ポリカーボネートまたはマトリックス材料の混合物と組み合わせることができる。種々の実施形態において、発色団はマトリックス材料または他のポリマーと架橋することができる。
【0061】
本発明の種々の実施形態で使用するのに適した溶媒は、高沸点溶媒を含む。本明細書で使用される際に、「高沸点溶媒」は、100℃以上の沸点(1気圧において)を有する溶媒を指す。種々の実施形態において、好適な溶媒は、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上、220℃以上、230℃以上、240℃以上、および250℃以上の沸点を有する。本発明の種々の実施形態における使用に好適な溶媒は、本発明の組成物を形成する材料に添加された際に、組成物ガラス転移温度(Tgc)を材料ガラス転移温度(Tgm)よりも低い値まで低下させることができる。種々の実施形態において、適切な溶媒は、本発明の組成物を形成する材料に添加された場合に、組成物ガラス転移温度(Tgc)を、材料ガラス転移温度(Tgm)よりも少なくとも10℃低い値まで低下させることができる。種々の実施形態において、適切な溶媒は、本発明の組成物を形成する材料に添加された場合に、組成物ガラス転移温度(Tgc)を、材料ガラス転移温度(Tgm)よりも少なくとも20℃低い値、材料ガラス転移温度(Tgm)よりも少なくとも30℃低い値、材料ガラス転移温度(Tgm)よりも少なくとも40℃低い値、および材料ガラス転移温度(Tgm)よりも少なくとも50℃低い値まで低下させることができる。
【0062】
種々の実施形態で使用するのに適した溶媒は、電気光学材料の均質な溶液を形成することができ、一般的に、高沸点で、比較的非極性であり、かつ非プロトン性の溶媒を含むことができる。適切な溶媒は、たとえば、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートのようなカーボネート、ジエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールエーテルを含む。DMSOのような「極性」とみなされる溶媒を使用することができ、極性および非極性溶質の両方を溶解することができる限り、それらは比較的非極性とみなされる。種々の実施形態において、適切な高沸点溶媒は、ジエチレングリコールジブチルエーテルを含むことができる。種々の実施形態において、高沸点溶媒は、高い沸点を持たない共溶媒との混合物として使用することができる。
【0063】
電気光学材料を実質的に任意の量で適切な溶媒中に分散させて、均一な溶液および薄膜形成に適した特性を提供することができる。たとえば、本明細書に記載の種々の実施形態における溶媒中の電気光学材料の固形分含量は、所望の膜厚およびスピンコーティング装置のスピン速度に応じて調整することができる。当該技術で知られているように、粘性の低い溶液は、一般的に、より薄いスピンコーティング膜をもたらす。種々の実施形態において、溶媒中の電気光学材料の固形分含量は、約1%~約25%であることができる。種々の実施形態において、溶媒中の電気光学材料の固形分含量は、約2%~約20%であることができる。種々の実施形態において、溶媒中の電気光学材料の固形分含量は、約5%~約15%であることができる。
【0064】
本発明の種々の実施形態にしたがう方法は、本明細書に記載の組成物を提供する工程と、組成物を含む薄膜を形成する工程と、薄膜をポーリングする工程と、および薄膜を乾燥する工程(すなわち、溶媒を除去する工程)とを含む。
【0065】
適切な薄膜は、たとえばスピンコーティングプロセスまたはインクジェット印刷を用いて基板上に形成することができる。適切な基板は、インジウム・スズ酸化物(ITO)でコーティングされた表面、導電性材料、シリコン、半導体などを含むことができる。薄膜はサブミクロンから数ミクロンまでの種々の厚さで形成することができる。ポーリング工程の前に、たとえば60℃で約1分間にわたって、薄膜をソフトベークすることができる。
【0066】
本明細書に開示された種々の方法の実施形態にしたがって作製された薄膜は、適切な温度で材料を横断する適切な電圧を印加することによってポーリングすることができる。電極は、薄膜の対向する側面、または種々のデバイスおよび構造における薄膜の上下に形成または配置することができ、そのような方法で、薄膜を横断する適切な電圧を印加することができる。電極は、たとえば金で形成することができる。適切な電圧は、約50V/μmから約150V/μmとすることができる。薄膜をポーリングするのに適した温度は、一般に組成物のガラス転移温度よりも低いが、材料内の非線形光学発色団の配列を可能にする程度には高い。したがって、たとえば組成物のガラス転移温度が125℃の場合、適切なポーリング温度は約100℃から約125℃の直前までの温度を含むことができる。
【0067】
薄膜をポーリングした後、印加電圧の電界を維持したまま、残存する溶媒を除去することによって、本明細書に記載の種々の実施形態による薄膜を乾燥または緻密化することができる。一般的に、溶媒は、薄膜のガラス転移温度がTgmに接近するまで除去される。乾燥または溶媒の除去は、たとえば、溶媒が除去されるまでポーリング電界を維持しながら温度をゆっくりとわずかに上昇させ、次いで冷却することによって実施することができる。乾燥または溶媒の除去は、たとえば、印加したポーリング電界を維持しながら低温まで冷却して、脱ポーリングが実質的な速度で起こらないようにし、次いで真空を適用して溶媒を除去することによって実施することができる。
【0068】
本明細書の種々の実施形態にしたがう薄膜を種々のデバイスに組み込むことができ、そのようなデバイスは、オープントップ設計またはコプレーナー設計を有する電気光学デバイス、およびポーリング後に溶媒を追い出すことができるような透過性層、開口部などを有するデバイスを含む。オープントップ型デバイスの例は、参照により全体が本明細書の一部をなすものとする以下の文献を含めて、当該技術において説明されている。
Qiu, F.ら、"A hybrid electro-optic polymer and TiO2 double-slot waveguide modulator", SCI. REP. 5, 8561 (2015);
Shi, S.and Prather, D., "Ultrabroadband Electro-Optic Modulator Based on Hybrid Silicon-Polymer Dual Vertical Slot Waveguide", ADVANCES IN OPTOELECTRONICS Volume 2011, Article ID 714895, 6ページ;
Qui, F.ら、"Plate-slot polymer waveguide modulator on silicon-on-insulator", OPT.EXPRESS 26, 11213-11221 (2018);
Enami, Y.ら、"Electro-optic polymer/TiO2 multilayer slot waveguide modulators", APPLIED PHYSICS LETTERS 101, 123509 (2012);および
Lee, E.ら、"Coplanar Electrode Polymer Modulator Incorporating Fluorinated Polyimide Backbone Electro-Optic Polymer", PHOTONICS 7, no.4: 100 (2020)。
【0069】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0070】
(組成物例1)
非晶質ポリカーボネート(APC180)に対して、70質量%の、以下に示す非線形光学発色団を添加して電気光学材料を形成した。
【0071】
【0072】
この電気光学材料を、溶媒としての、ジブロモメタン:ジエチレングリコールジブチルエーテルの80:20混合物と組み合わせた。この組成物をITO被覆ガラス上にスピンコーティングし、窒素下、60℃で、1分間にわたってベークした。
【0073】
(組成物例2)
非晶質ポリカーボネート(APC180)に対して、70質量%の、以下に示す非線形光学発色団を添加して電気光学材料を形成した。
【0074】
【0075】
この電気光学材料を、溶媒としての、ジブロモメタン:ジエチレングリコールジブチルエーテルの80:20混合物と組み合わせた。この組成物をITO被覆ガラス上にスピンコーティングし、窒素下、60℃で、1分間にわたってベークした。
【0076】
(比較組成物例1)
APC180に対して、同様に、70質量%の、組成物例1で用いた非線形光学発色団を添加して電気光学材料を作製した。この組成物をITO被覆ガラス上にスピンコーティングし、窒素下、150℃で、30分間にわたってベークした。
【0077】
(比較組成物例2)
APC180に対して、同様に、70質量%の、組成物例2で用いた非線形光学発色団を添加して電気光学材料を作製した。この組成物をITO被覆ガラス上にスピンコーティングし、窒素下、150℃で、30分間にわたってベークした。
【0078】
各実施例および比較例で調製した薄膜をポーリングし、1310nmにおけるr33値を測定した。結果を以下の第1表に示す。
【0079】
【0080】
第1表に示すように、組成物例1および組成物例2の両方で調製した薄膜のポーリング温度は、比較組成物例1および比較組成物例2で調製した薄膜のポーリング温度よりも著しく低かった。さらに、1310nmにおけるr33値は、本発明の実施例において著しく大きかった。
【0081】
当業者であれば、その広範な発明概念から逸脱することなく、上述した実施形態に変更を加え得ることが理解されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の真意および範囲内の変更をカバーすることが意図されることが理解される。
【国際調査報告】