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  • 特表-乳由来製品を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-23
(54)【発明の名称】乳由来製品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 7/04 20060101AFI20250116BHJP
   A23C 9/12 20060101ALI20250116BHJP
   A23C 23/00 20060101ALI20250116BHJP
   C12N 9/38 20060101ALN20250116BHJP
【FI】
A23C7/04
A23C9/12
A23C23/00
C12N9/38 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537121
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022087482
(87)【国際公開番号】W WO2023118436
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216998.1
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TRITON
3.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】500586299
【氏名又は名称】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】イェッペ ウェグナー タムス
(72)【発明者】
【氏名】アリ オスマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ スポッツベルグ
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー サロモン
(72)【発明者】
【氏名】ユリー ビリー ラナース
(72)【発明者】
【氏名】ヤン キョエルヘーデ ベスター
(72)【発明者】
【氏名】フランク ウィンター ラスムッセン
(72)【発明者】
【氏名】アネット ヘレ ヨハンセン
(72)【発明者】
【氏名】ローランド アレクサンダー パケ
(57)【要約】
本発明は、ラクターゼによる乳由来基質の処理、及び加熱処理の実施を含む、ラクトースが低減された加熱処理乳由来製品を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトースが低減された加熱処理乳由来製品を製造する方法であって、
a)少なくとも2%(w/w)のラクトースを含む乳由来基質に、ラクターゼ活性を有する酵素を添加すること、
b)前記酵素の添加後、少なくとも1秒間の保持時間にわたり少なくとも120℃の保持温度で前記乳由来基質を保持することにより、前記乳由来基質の加熱処理を実施し、その後に冷却して加熱処理乳由来製品を製造すること、
及び
c)最高40℃の温度で少なくとも4日にわたり前記加熱処理乳由来製品を保存すること
を含み、
工程b)の後であるが工程c)の前に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、少なくとも0.5%(w/w)であり、好ましくは少なくとも1%(w/w)であり、工程c)の後に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)である、
方法。
【請求項2】
工程b)を、工程a)の後であり且つ工程b)の前に専用のインキュベーション工程を行なうことなく、工程a)の直後に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳由来基質が、プロセスパイプ等のプロセス装置を通って流れている間に、前記乳由来基質に前記酵素を添加するために、ポンプ装置が設置されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵素の添加から工程b)の保持温度に達するまでの時間は、最高5分であり、好ましくは最高2分であり、より好ましくは最高1分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素の添加から、前記加熱処理乳由来製品が最高40℃の温度まで冷却されており、好ましくは最高35℃の温度まで冷却されており、より好ましくは最高30℃の温度まで冷却されているまでの時間は、最高3.5分であり、好ましくは最高3分であり、より好ましくは最高2.5分であり、例えば最高2分であるか、又は最高1分である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記乳由来基質は、2~30%(w/w)のラクトースを含み、好ましく2~17%(w/w)のラクトースを含み、、より好ましくは4~5.5%(w/w)のラクトースを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記乳由来基質は、4~5.5%(w/w)のラクトースを含む乳である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱処理は、ESL処理、超低温殺菌、又はUHL処理であり、好ましくはUHL処理である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱処理は、25~35秒にわたり128~132℃の温度で実施するか、2~5秒にわたり138~140℃の温度で実施するか、又は1~2秒にわたり144~146℃の温度で実施するUHT処理である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程b)の保持時間の後、前記乳由来基質を、好ましくは5分以内に、より好ましくは3分以内に、さらにより好ましくは2分以内、例えば1分以内に、最高40℃まで冷却し、好ましくは最高35℃まで冷却し、より好ましくは最高30℃まで冷却する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の後であるが工程c)の前に、前記乳由来製品を無菌的に包装する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)の後に、前記酵素は、前記酵素の初期活性の少なくとも0.1%を保持しており、好ましくは少なくとも0.5%を保持しており、より好ましくは少なくとも1%を保持しており、より好ましくは少なくとも2%を保持しており、より好ましくは少なくとも10%を保持しており、より好ましくは少なくとも50%を保持しており、さらにより好ましくは少なくとも80%を保持しており、最も好ましくは少なくとも90%を保持している、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ラクターゼ活性を有する酵素は、前記酵素のアミノ酸配列中に、モチーフWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A]を含み、好ましくは、さらに、モチーフSR[W/Y/F]YSGSGX[Y/G]R及び/又は[L/V/I]X[L/V/I]PHDの少なくとも一方を含み、より好ましくは両方を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ラクターゼ活性を有する酵素は、最適温度が30~60℃であり、好ましくは35~55℃である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ラクターゼ活性を有する酵素は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃での、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中におけるインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の72時間にわたる23℃でのインキュベーションの後に、残存活性が、少なくとも0.5%であり、好ましくは少なくとも1%、少なくとも2%、又は少なくとも3%であり、より好ましくは少なくとも5%であり、さらにより好ましくは少なくとも10%であり、前記残存活性は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃でのインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の72時間にわたる23℃でのインキュベーションを行なわない脱脂乳中における同一の酵素の活性に対して相対的である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願には、コンピュータ可読形式の配列表が含まれる。このコンピュータ可読形式は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ラクトースが低減された加熱処理乳由来製品を製造する方法であって、ラクターゼによる乳由来基質の処理、及び加熱処理の実施を含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ラクトースが低減されいてるか又はラクトースフリーの乳由来製品のほとんどは、バッチプロセスで製造されており、即ち、乳にラクターゼを添加し、次いで、ラクトース含有量を0.01%未満又は0.1%未満(ほとんどの国で、例えば、乳にラクトースフリーというラベルを付すことが可能となる)まで低減させるのに十分な時間にわたり、この乳を低温(通常は10℃未満)でインキュベートし、続いて、低温殺菌、UHT処理、又はESL(最高35日間の長期保存可能期間)処理等の加熱処理を行なう。ラクターゼのバッチ適用に関連する欠点の一部として、下記が挙げられる:
(1)インキュベーション時間は、最高24時間であり得、場合によってはさらに長く、これにより、ラクトースフリーの乳製品の需要増加に対応するための新たなインキュベーションタンクの容量及び設備投資に関する懸念が生じる。
(2)長時間のインキュベーション時間により、向精神微生物(psychotropic microbe)が増殖して酵素(特にプロテアーゼ)を分泌する機会が与えられるが、この酵素の内の一部は、熱に安定であり、保存期間中に最終製品の品質を劣化させる場合がある。
(3)ラクトース加水分解、続いてUHT適用等での厳しい加熱処理により、メイラード反応が加速的に進行する。ラクトースがグルコース及びガラクトースへと加水分解されると、還元末端を有する糖の濃度が2倍となり、特に、ガラクトースは、ラクトースと比べて反応性がはるかに高い。
【0004】
最近、特に、ラクトースフリーのESL乳飲料及びUHT乳飲料の場合には、無菌投与装置の形態での高度なプロセスエンジニアリング技術に大きな関心が集まっており、バッチプロセスに関連する懸念の多くが克服される可能性が出てきた。そのような無菌投与装置により、ESL/UHT処理後にラクターゼを添加することが可能となる。そのような無菌投与装置の例は、Tetra Pak Aldoseシステム、Tetra Pak Flexdose System、及びGEA Varidoseシステムである。これらのシステムの利点は、下記である:
(1)加熱処理工程後に、乳の流れに、高精度で少量の無菌ラクターゼを投与し、これにより、保存の最初の数日中にラクトース加水分解が生じることが可能となる。
(2)特に、適切に制御された保存条件が適用される場合には、ラクトースフリー乳飲料におけるメイラード反応、褐色化、及び糖化最終産物(AGE)の形成の程度が減少する。
(3)バッチプロセスと比較してプレインキュベーションを省略し、それにより容量の問題が解決され、向精神微生物の活性のリスクが低減される。
【0005】
無菌投与システムの上記利点にもかかわらず、その使用に関連しては、下記のようないくつかの欠点がある:
(1)ラクターゼは、加熱処理工程後に添加されることから、この製剤は、可能な限り最高純度でなければならない。これは、特にUHT製品の場合に、製剤中の任意の有害な副作用が長い保存可能期間中に最終製品に大きな悪影響を及ぼす場合があるからである。
(2)Tetra Pak Flexdose及びGEA Varidoseシステムの場合には、ラクターゼ酵素は、無菌のバケツ及び袋に無菌的に充填すべきである。
(3)上記(1)及び(2)での要件は、これらの無菌ラクターゼは、バッチプロセスで使用されるラクターゼと比較して、活性の単位当たりのコストが高いことを意味する。
(4)この無菌投与システムの平均資本コストは、相当なものである。
(5)Tetra Pak Flexdose及びGEA Varidoseシステムを使用する場合には、消耗品に関連した追加のランニングコストが発生する。例えば、無菌バケツを交換するたびにホース及び針を交換することである。
(6)Tetra Pak Aldose システムでは、酵素製剤は、最初は無菌ではない。これを、水で希釈し、次いで少なくとも2つのフィルタを使用してインライン(搾乳場)でろ過して、酵素の流れの無菌性を確保した後に、乳の流れと混合する。従って、インラインで導入されたフィルタに、濾過性が低い酵素製剤が詰まる場合があり、操作に多くの支障をきたす場合がることから、問題が生じる可能性がある。酵素製剤の濾過性が期待通りに機能する場合であっても、依然として、フィルタを定期的に(通常は毎日)交換する必要がある。
【0006】
バッチ投与プロセス及び無菌投与プロセスの両方における上記の制限全てを克服する、ラクトースフリーのUHT製品及びESL製品でラクターゼを適用することの迅速でスムーズであり、実装が容易であり、トラブルフリーであり、コスト効率がよい解決策は、まだ存在していない。
【0007】
国際公開第2009/071539号パンフレット(Novozymes)は、ラクターゼ活性を有する酵素を使用して乳製品を製造する方法に関する。開示されているのは、高温(即ち、少なくとも60℃、少なくとも62℃、少なくとも63℃、少なくとも64℃、少なくとも65℃、少なくとも67℃、少なくとも70℃、又は少なくとも75℃)にて、ラクトースで乳由来基質を処理することにより、低ラクトース乳製品を製造する方法である。
【0008】
国際公開第2018/189238号パンフレット(Chr.Hansen)では、広範囲の温度及びpH値にて比較的高い活性で安定していると言われているベータ-ガラクトシダーゼが開示されている。開示されているのは、乳ベースの基質をベータ-ガラクトシダーゼで処理することにより乳製品を製造する方法であって、この処理、又はこの処理の一部を、高温で行ない得る、方法である。ベータ-ガラクトシダーゼの添加後3~30分で、ラクトース濃度が0.2%未満のラクトースになり得る。
【0009】
国際公開第2020/176734号パンフレット(DuPont)は、高温で乳由来基質とラクターゼ(例えば、耐熱性ラクターゼ)とを接触させることにより、この基質中のラクトースの量を低減する方法に関する。開示されているのは、中性ラクターゼ活性を有する酵素により乳由来基質からラクトースフリー乳製品を製造する方法であって、15秒にわたる72℃での低温殺菌後に、この乳由来基質中に20%超のラクターゼ活性が残存している、方法である。そのような低温殺菌はまた、高温短時間(HTST)低温殺菌とも称されることがある。
【0010】
米国特許出願公開第2010/0215828号明細書は、保存性に優れる低ラクトースの、ラクトースフリーの、又は炭水化物フリーの乳製品を調製する方法であって、糖及びタンパク質を別々の画分に分離し、少なくともタンパク質画分を加熱処理して、天然プラスミン酵素系、及び他の有害酵素を不活性化し、タンパク質画分及び糖画分を、(メイラード反応を回避するために)別々に加熱処理し、1つ又は複数の画分を組み合わせて、所望の組成及び甘味を有する乳製品を得る、方法に関する。加熱処理を、低温殺菌により実施し得るか、高温低温殺菌により実施し得るか、ESL処理を使用して実施し得るか、又はUHT処理を使用して実施し得る。必要に応じて、糖画分中のラクトースを、加水分解し得る。ラクターゼを使用する加水分解に続いて、37℃で4時間にわたりインキュベートした後に、加熱処理する。
【0011】
米国特許出願公開第2013/0142904号明細書(Arla)は、包装された、ラクトースが低減された乳関連製品を製造する方法であって、ラクトースが低減された乳関連飼料を高温処理に供して包装する、方法に関する。
【0012】
Deeth(2017)“Optimum Thermal Processing for Extended Shelf-Life(ESL)Milk”,Foods 6(11):102では、長期保存可能期間(ESL)乳の最適な加熱処理が概説されている。Deethは、ESL乳又は超低温殺菌乳が、従来の高温短時間(HTST)低温殺菌で使用されるものと、超高温(UHT)殺菌に使用されるものとの間の条件を使用する加熱処理により製造されることを説明している。ESL乳は、30日超の冷蔵保存可能期間を有すべきである。このことを達成するために、加熱処理は、かなり強力でなければならない。ほとんどの国では少なくとも15秒にわたる少なくとも72℃と指定されている低温殺菌の温度-時間条件とは異なり、ESL処理に関しては、一般に、そのような条件は指定されていない。Deeth(2017)によれば、報告されているESL乳の商業的な処理条件は、ほとんどが、1~5秒にわたる123~127℃の範囲である。米国の規制では、「超低温殺菌」のプロセスは、少なくとも2秒わたる少なくとも138℃での乳の加熱と定義されている。
【0013】
UHT処理は、例えば、130℃で30秒にわたる加熱処理であり得るか、140℃で3~4秒にわたる加熱処理であり得るか、又は145℃で1秒にわたる加熱処理であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、乳由来基質と、ラクターゼ活性を有する酵素との広範囲なプレインキュベーションを実施する必要がなく、且つ加熱処理後に酵素を添加するための無菌投与システムを使用する必要がなく、この酵素を使用して、ラクターゼが低減された加熱処理乳由来製品(例えば、乳)を製造する方法を提供する。
【0015】
本発明は、ラクトースが低減された加熱処理乳由来製品を製造する方法であって、
a)少なくとも2%(w/w)のラクトースを含む乳由来基質に、ラクターゼ活性を有する酵素を添加すること、
b)前記酵素の添加後、少なくとも1秒間の保持時間にわたり少なくとも120℃の保持温度で前記乳由来基質を保持することにより、乳由来基質の加熱処理を実施し、その後に冷却して加熱処理乳由来製品を製造すること、
及び
c)最高40℃の温度で、少なくとも24時間にわたり、好ましくは少なくとも2日にわたり、例えば少なくとも3日にわたり、より好ましくは少なくとも4日にわたり、加熱処理乳由来製品を保存すること
を含み、
工程c)の後に、乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)である、
方法を提供する。
【0016】
好ましくは、工程b)の後であるが工程c)の前に、乳由来製品のラクトース含有量は、少なくとも0.5%(w/w)である。
【0017】
好ましくは、ラクターゼ活性を有する酵素を、加熱処置(例えば、UHT処理)の直前に投与する。加熱処理(例えば、UHT処理)後、この酵素は、低温又は周囲温度での保存中に、所望の低ラクトースレベルまでラクトースを確実に分解する、ある程度の残存活性を有する。好ましくは、この酵素は、最適温度が30~60℃であり、より好ましくは35~55℃である。理論に拘束されることを望まないが、最適温度がより高く、おそらく加熱処理中であっても活性である酵素は、やや硬い構造を有し、且つ低温又は周囲温度での保存中に十分な活性を有していないだろう。再度理論に拘束されることを望まないが、本発明の方法で使用される、最適温度が30~60℃であり、より好ましくは35~55℃である酵素は、加熱処理中に折り畳まれず不活性であり得るが、その後に再び折り畳まれて再活性化される能力を有しており、従って、乳由来製品の保存中にラクトースを確実に分解する測定可能な又は実質的な残存活性を有する。UHT処理等の加熱処理後の本発明のラクターゼ酵素のかなり高い残存活性は、温度が下がると再び折り畳んで再活性化される能力に起因し得ると考えられる。
【0018】
好ましくは、酵素は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃での、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中におけるインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の72時間にわたる23℃でのインキュベーションの後に、残存活性が、少なくとも0.5%であり、好ましくは少なくとも1%、少なくとも2%、又は少なくとも3%であり、より好ましくは少なくとも5%であり、さらにより好ましくは少なくとも10%であり、この残存活性は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃でのインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の72時間にわたる23℃でのインキュベーションを行なわない脱脂乳中における同一の酵素の活性に対して相対的である。
【0019】
好ましくは、乳由来基質を、ラクターゼの添加から乳由来基質が加熱処理の保持温度に達するまでの時間(プロセス装置による)を除いて、加熱処理前に、ラクターゼと共にインキュベートしない。好ましくは、工程b)を、専用のインキュベーション工程を行なうことなく、工程a)の直後に実施する。
【0020】
本方法に従って、下記の少なくとも3つの主要なプロセスオプションを適用し得る。
【0021】
第1のオプションでは、乳由来基質をラクターゼと混合し、次いで、この乳由来基質をラクターゼと共にインキュベートする必要なく、UHT条件又はESL条件下で直接処理し得る。
【0022】
第2のオプションでは、乳由来基質を、UHT条件又はESL条件下直接処理し得、この場合、乳由来基質が、加熱処理工程直前にプロセスパイプを通って流れている間に、任意選択的に、乳由来基質の温度が、加熱処理工程の温度に向かって上昇している間に、この乳由来基質にラクターゼを添加する。ラクターゼを、UHT/ESL処理の直前に、乳由来基質の温度が1~95℃であり、好ましくは70~90℃である任意の時点で添加し得る。ラクターゼの添加を、主要な乳流チューブに接続されているチューブを介して、単純な投与ポンプにより行ない得る。乳由来基質の流れに添加すると、温度は、ESL又はUHT処理条件まで(さらに)上昇する。乳由来基質には直接接触せず、装置の接触面により分離されている加熱媒体(例えば、プレート熱交換器又はチューブ熱交換器)を使用し得る。このことは、間接加熱処理(好ましくは、間接UHT処理)と称され得る。
【0023】
第3のオプションでは、加熱処理を、高圧蒸気を使用するスチームインジェクション又はスチームインフュージョン(好ましくは、スチームインジェクション)により実施して、乳由来基質を加熱し、酵素を、蒸気と共に添加し得る。このことは、直接加熱処理(好ましくは、直接UHT処理)と称され得る。工程b)の保持時間の後に、蒸気を含む乳由来基質を真空中でフラッシュ冷却して、使用した凝縮蒸気の量に相当する水を除去し得る。スチームインジェクション又はスチームインフュージョンによる乳由来基質の加熱に加えて、例えば、プレート熱交換器又はチューブ熱交換器を使用して、間接加熱も適用し得る。
【0024】
いずれの場合でも、加熱処理後のラクターゼの残存活性により、保存の初期段階(例えば、最高2週間、例えば、最初の2又は3日間)中に、ラクトースレベルが、ラクトースが低減されたレベルまで確実に低下し、好ましくはラクトースフリーレベル(例えば、0.1%未満、又は0.01%未満)まで確実に低下する。
【0025】
本発明の方法には、ESL乳又はUHT乳等のESL処理乳由来製品及びUHT処理乳由来製品の製造に今日使用されているプロセスと比べて、多くの利点がある。
【0026】
今日適用されているバッチプロセスと比較して、本発明のプロセスにより、メイラード反応の低減に起因して、ラクトースが低減されているか又はラクトースフリーの乳由来製品の色及び品質が改善される。プレインキュベーションを行なうことなく、加熱処理を生き残る可能性がある、プロテアーゼ等の酵素を分泌する向精神菌(psychotropic bacteria)の増殖が低減され、従って、乳由来製品は、保存可能期間がより長くなり得る。さらに、プレインキュベーションを行なわないことから、容量コスト及びプロセス時間が削減される。本発明の方法はまた、ラクトースレベルが0.1%又は0.01%を下回るまでタンクをモニタリングする必要がないことから、操作も容易である。
【0027】
今日適用されている無菌投与プロセスと比較して、本発明のプロセスでは、無菌投与装置に投資する必要がなく、且つ例えば、無菌バケツを定期的に交換する必要がない。さらに、現在の無菌ラクターゼは、保存可能期間が約1年であるが、本発明の方法で使用される酵素は、保存可能期間が2年以上であり得る。本発明の方法は、無菌投与システムのいずれかのモニタリング又はトラブルシューティングを行なう必要がないことから、操作が容易であり、手間がかからない。乳由来基質の最終品質は、色及びメイラード反応に関して同じである。
【0028】
本発明の方法は、工業レベルでの適用が容易であり、且つこの実施には障害がない。
【0029】
本発明者らは、驚くべきことに、CAZyデータベースGH2ファミリクレードDYLGE由来のラクターゼ酵素が、本発明の方法で使用するのに特に適していることを発見している。従って、好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、クレードDYLGE由来のGH2ラクターゼであり、好ましくは、クレードDYLGE由来の細菌性GH2ラクターゼである。
【0030】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、そのアミノ酸配列中に、モチーフWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A]を含む。
【0031】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、そのアミノ酸配列中に、モチーフSR[W/Y/F]YSGSGX[Y/G]R及び/又は[L/V/I]X[L/V/I]PHDを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(配列番号1)の用量反応曲線を示す。B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼを、下記の投与量で脱脂乳に添加し:脱脂乳1リットル当たり酵素タンパク質(ep)2.03、1.63、1.30、1.04、0.832、0.666、0.532、0.426、0.341、0.273、0.218、0.174、0.140、0.112、0.0893、0.0715mg、(UHT処理を行なうことなく)23℃で3日にわたりインキュベートした。各サンプルの残存ラクトースを、%(脱脂乳 100ml当たりのラクトース g)で決定し、用量/反応曲線を作成した。この曲線を使用して、非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの活性に対する%でのUHT処理ラクターゼの相対活性を決定し得る。試験するラクターゼを、脱脂乳1リットル当たりラクターゼep xmgの投与量で脱脂乳に添加し、UHT処理を実施し、続いて23℃で3日にわたりインキュベートし、残存ラクトースを%(脱脂乳 100ml当たりのラクトース g)で決定する。用量/反応曲線を使用して、23℃での3日にわたる脱脂乳中でのインキュベーション後に同一の残存ラクトースが得られるであろう非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの「対応する投与量」y(脱脂乳 1リットル当たりのラクターゼep mg)を決定する。非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの活性に対する%でのUHT処理ラクターゼの相対活性を、y/x*100%として算出する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
この詳細な説明に従って、下記の定義が適用される。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、別途文脈が明確に示さない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。
【0034】
別途定義されない限り、又は文脈によって明確に指示されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0035】
GH2ラクターゼ:本発明に関連する「GH2ラクターゼ」、「GH2酵素」、又は「GH2ポリペプチド」という用語は、Carbohydrate-Active EnZymes(CAZymes)のデータベース(http://www.cazy.org/)においてグリコシドヒドロラーゼファミリ2のメンバーとして分類されているラクターゼ酵素を意味する。
【0036】
単離された:「単離された」という用語は、ポリペプチド、核酸、細胞、又は他の特定の物質若しくは構成成分であって、他のタンパク質、核酸、細胞等が挙げられるがこれらに限定されない少なくとも1種の他の物質又は構成成分から分離されてるものを意味する。そのため、単離されたポリペプチド、核酸、細胞、又は他の物質は、天然には存在していない形態である。単離されたポリペプチドとして、宿主細胞中で発現されて分泌されたポリペプチドを含有する培養ブロスが挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
ラクターゼ:「ラクターゼ」という用語は、二糖であるラクトースを構成成分であるガラクトース単量体及びグルコース単量体に加水分解する能力を有するグリコシドヒドロラーゼを意味する。ラクターゼのグループは、サブクラスEC3.2.1.23及びEC3.2.1.108に割り当てられる酵素を含むが、これらに限定されない。例えばEC3.2.1.21等の他のサブクラスに割り当てられる酵素も、本発明に関連するクターゼであり得る。本発明に関連するラクターゼは、例えばトランスガラクトシル化活性等のラクトース加水分解活性以外の活性を有し得る。本発明に関連して、ラクターゼのラクトース加水分解活性は、そのラクターゼ活性、そのベータガラクトシダーゼ活性、又はその加水分解活性と称され得る。
【0038】
ラクターゼ活性:ラクターゼ活性を、例えばLAU(B)アッセイを使用して決定し得る。特定のラクターゼのLAU(B)中の活性を、pH6.5及び30℃での、0.05M MES、1mM MgSO4 7H2O、450mg/L Brij 35中に1.46mg/ml 基質を含む緩衝液中におけるo-ニトロフェニル β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)から放出されるo-ニトロフェニル(ONP)の直接測定により決定し得る。600秒間のインキュベーション後、この反応を、0.2M Na2CO3を添加することにより停止させ、126秒間のインキュベーションの後に、放出されたONPを405nmで測定する。活性を、活性が既知のラクターゼで実行された標準曲線と比較することにより得られ、これから、未知のサンプルの活性を算出する。活性が既知のラクターゼは、例えば、Novozymes A/S,Denmarkから得られるSaphera(登録商標)であり得る。ラクターゼ活性を、乳中のラクトース加水分解の量を測定することにより決定し得、例えば、ラクトースピークが既知の濃度のラクトース標準に関連付けられているHPAEC-PADを使用する「残存ラクトース含有量の分析」段落で実施例4において説明されている方法により決定し得る。次いで、ラクトース加水分解を、添加したラクターゼの量(例えば、酵素タンパク質1mg当たりの量、又は酵素1モル当たりの量)に関連付け得る。ラクターゼ活性を測定する他の方法も既知であり、当技術分野で日常的に使用されている。
【0039】
成熟ポリペプチド:「成熟型ポリペプチド」という用語は、N末端プロセシング及び/又はC末端プロセシング(例えば、シグナルペプチドの除去)の後の成熟した形態のポリペプチドを意味する。
【0040】
乳:「乳」という意味は、あらゆる哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、水牛、又はラクダ)の搾乳により得られる乳分泌物を意味する。
【0041】
乳由来製品:「乳由来製品」という用語は、乳をベースとする乳製品及び他の製品を指す。本文脈では、この用語は、特に加熱処理乳由来製品を含むことが明らかであり、この加熱処理乳由来製品として、低温殺菌乳だけでなく、低温殺菌で典型的に使用されるものと比べて高温に供される乳(例えば、超低温殺菌乳、UHT(超高温)乳、及びESL(長期保存可能期間)乳)も挙げられる。
【0042】
精製された:「精製された」という用語は、当技術分野で公知の分析技術により決定された場合に、他の構成成分を実質的に含まない核酸、ポリペプチド、又は細胞を意味する(例えば、精製されたポリペプチド又は核酸は、電気泳動ゲル、クロマトグラフィー溶出液、及び/又は密度勾配遠心分離に供された媒体中で、分離したバンドを形成し得る)。精製された核酸又はポリペプチドは、少なくとも約50%純粋であり、通常は、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、又はより純粋(例えば、重量又はモル濃度基準のパーセント)である。関連する意味において、組成物は、精製又は濃縮技術の適用後に分子の濃度の実質的な増加がある場合には、この分子に関して濃縮されている。「濃縮された」という用語は、出発組成物と比べて高い相対濃度又は絶対濃度で組成物中に存在している化合物、ポリペプチド、細胞、核酸、アミノ酸、又は他の指定の物質若しくは構成成分を指す。
【0043】
一態様では、「精製された」という用語は、本明細書で使用される場合、産生生物由来の構成成分(特に、不溶性構成成分)を本質的に含まないポリペプチド又は細胞を指す。他の態様では、「精製された」という用語は、ポリペプチドであって、このポリペプチドが得られる天然生物由来の不溶性構成成分(特に不溶性構成成分)を本質的に含まないポリペプチドを指す。一態様では、ポリペプチドは、このポリペプチドが回収される生物及び培養培地の可能性構成成分の一部から分離されている。ポリペプチドを、単位操作であるろ過、沈殿、又はクロマトグラフィー内の1つ又は複数により精製し得る(即ち、分離し得る)。
【0044】
従って、ポリペプチドを、存在する他のタンパク質(具体的には、他のポリペプチド)がほんのわずかな量であるように精製し得る。「精製された」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドの起源の細胞中に存在している他の構成成分(具体的には、他のタンパク質、最も具体的には、他の酵素)の除去を指し得る。ポリペプチドは、「実質的に純粋」であり得、即ち、このポリペプチドを産生する生物(例えば、組換えにより産生されたポリペプチドの場合には宿主生物)由来の他の構成成分を含み得ない。一態様では、ポリペプチドは、調製物中に存在する全ポリペプチド物質の重量で少なくとも40%純粋である。一態様では、ポリペプチドは、調製物中に存在する全ポリペプチド物質の重量で少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%純粋である。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋なポリペプチド」は、このポリペプチドが天然に又は組換えにより会合している他のポリペプチド物質を重量で最高10%含み、好ましくは最高8%含み、より好ましくは最高6%含み、より好ましくは最高5%含み、より好ましくは最高4%含み、より好ましくは最高3%含み、さらにより好ましくは最高2%含み、最も好ましくは最高1%含み、さらに最も好ましくは最高5%を含むポリペプチド調製物を指し得る。
【0045】
従って、実質的に純粋なポリペプチドは、調製物中に存在する全ポリペプチド物質の重量で少なくとも92%純粋であり、好ましくは少なくとも94%純粋であり、より好ましくは少なくとも95%純粋であり、より好ましくは少なくとも96%純粋であり、より好ましくは少なくとも97%純粋であり、より好ましくは少なくとも98%純粋であり、さらにより好ましくは少なくとも99%純粋であり、最も好ましくは少なくとも99.5%純粋であることが好ましい。本発明のポリペプチドは、好ましくは、実質的に純粋な形態である(即ち、調製物は、天然に又は組換えにより会合している他のポリペプチド物質を本質的に含まない)。このことは、例えば、公知の組換え方法又は古典的な精製方法によりポリペプチドを調製することによって達成され得る。
【0046】
配列同一性:2つのアミノ酸配列間又は2つのヌクレオチド配列間の関連性は、「配列同一性」というパラメータにより説明される。
【0047】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、好ましくはバージョン6.6.0以降の、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48;443-453)を使用して、「最長の同一性」の出力として決定される。使用されるパラメータは、ギャップオープンペナルティが10であり、ギャップエクステンションペナルティが0.5であり、そしてEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needleプログラムが最長の同一性を報告するために、nobriefオプションをコマンドラインで指定しなければならない。「最長の同一性」と標識されるNeedleの出力は、下記のように算出される:
(同一残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの合計数)。
【0048】
バリアント:「バリアント」という用語は、ラクターゼ活性を有するポリペプチドであって、1箇所又は複数箇所の位置で人為的変異(即ち、置換、挿入(伸長を含む)、及び/又は欠失(例えばトランケーション))を含むポリペプチドを意味する。置換は、ある位置を占めるアミノ酸の異なるアミノ酸による置き換えを意味しており;欠失は、ある位置を占めるアミノ酸の除去を意味しており;挿入は、ある位置を占めるアミノ酸に隣接しており且つその直後に続く1~5個のアミノ酸(例えば、1~3個のアミノ酸、具体的には1個のアミノ酸)の付加を意味する。
【0049】
野生型:アミノ酸配列又は核酸配列に関する「野生型」という用語は、アミノ酸配列又は核酸配列が天然の配列又は天然に存在する配列であることを意味する。本明細書で使用される場合、「天然に存在する」という用語は、自然界で見出されるもの(例えば、タンパク質、アミノ酸、又は核酸配列)を指す。逆に、「天然には存在しない」という用語は、自然界では見出されないもの(例えば、研究室で生成された組換え核酸及びタンパク質配列、又は野生型配列の改変)を指す。
【0050】
バリアントの命名のための規約:
本発明の目的のために、選択された野生型配列を有するポリペプチドを使用して、別のラクターゼの対応するアミノ酸位置を決定し得る。別のラクターゼのアミノ酸配列を、選択された野生型配列を有するポリペプチドとアラインさせ、このアラインメントに基づいて、選択された野生型配列を有するポリペプチド内の任意のアミノ酸残基に対応するアミノ酸位置番号を、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS;The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16;276-277)のNeedleプログラムに実装されているような、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48;443-453)を使用して決定する。使用されるパラメータは、ギャップオープンペナルティが10であり、ギャップエクステンションペナルティが0.5であり、そしてEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。
【0051】
本発明のバリアントの説明では、参照を容易にするために、下記で説明する命名法が適応される。承認されたIUPACの一文字又は三文字のアミノ酸略号が採用される。本明細書で開示されているバリアントのアミノ酸ナンバリングは、いずれの場合においても、関連する野生型配列のナンバリングに基づく。
【0052】
アミノ酸置換に関して、下記の命名法が使用される:元のアミノ酸、位置、置換されたアミノ酸。従って、226位でのスレオニンのアラニンへの置換は、「Thr226Ala」又は「T226A」と命名される。複数の変異は、追加の印(「+」)又は単にスペースで区切られており、例えば、205位及び411位でのグリシン(G)のアルギニン(R)への置換及びセリン(S)のフェニルアラニン(F)への置換は、「Gly205Arg+Ser411Phe」、「G205R+S411F」、「Gly205Arg Ser411Phe」、又は「G205R S411F」と表され得る。
【0053】
本発明の詳細な説明
本発明は、ラクトースが低減された加熱処理乳由来製品を製造する方法であって、
a)少なくとも2%(w/w)のラクトースを含む乳由来基質に、ラクターゼ活性を有する酵素を添加すること、
b)この酵素の添加後、少なくとも1秒間の保持時間にわたり少なくとも120℃の保持温度で乳由来基質を保持することにより、乳由来基質の加熱処理を実施し、その後に冷却して加熱処理乳由来製品を製造すること、
及び
c)最高40℃の温度で、少なくとも24時間にわたり、好ましくは少なくとも2日にわたり、例えば少なくとも3日にわたり、より好ましくは少なくとも4日にわたり、加熱処理乳由来製品を保存すること
を含み、
工程のc)の後に、乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)である、
方法を提供する。
【0054】
好ましくは、工程b)の後であるが工程c)の前に、乳由来製品のラクトース含有量は、少なくとも0.5%(w/w)である。
【0055】
乳由来基質は、好ましくは、2~30%のラクトースを含み、好ましくは2~17%(w/w)のラクトースを含み、より好ましくは4~5.5%(w/w)のラクトースを含む。
【0056】
乳由来基質は、任意の生乳及び/又は加工乳原料であり得る。有用な乳由来基質として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ラクトースを含む任意の乳又は乳様製品の溶液/懸濁液、例えば、全乳又は低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、フレーバーミルク、例えばチョコレートミルク、還元乳粉末、練乳、ドライミルクの溶液、脱脂粉乳を含む乳、ミルクパーミエート、ホエー、ホエーパーミエート、酸ホエー、又はクリーム。
【0057】
乳由来基質は、乳であり得、例えば、生乳(例えば、工程a)の前に低温殺菌されていない生乳)であり得る。
【0058】
好ましい実施形態では、乳由来基質は、乳、練乳、又は脱脂粉乳を含む乳である。
【0059】
より好ましい実施形態では、乳由来基質は、4.5~5%(好ましくは4.5~5%)(w/w)のラクトースを含む乳である。
【0060】
一実施形態では、乳由来基質は、生乳であり、好ましくは、工程aの前に低温殺菌されていない生乳である。
【0061】
一実施形態では、工程a)の後であるが工程b)の前に、乳由来基質を、最高4時間にわたりインキュベートし、好ましくは最高60分にわたりインキュベートし、より好ましくは最高10分にわたりインキュベートし、さらにより好ましくは最高5分にわたりインキュベートする。そのようなインキュベーションを、最高10℃の温度で実施し得、好ましくは最高7℃の温度で実施し得る。
【0062】
しかしながら、好ましくは、工程b)を、専用のインキュベーション工程を行なうことなく、工程a)の直後に実施する。
【0063】
好ましくは、酵素の添加から工程b)の保持温度に達するまでの時間は、最高5分であり、より好ましくは最高2分であり、さらにより好ましくは最高1分である。
【0064】
好ましい実施形態では、加熱処理を、間接加熱処理として実施し、好ましくは間接UHT処理として実施する。乳由来基質が、プロセスパイプ等のプロセス装置を通って流れている間に、前記乳由来基質に酵素を添加するために、ポンプ装置が設置されている場合がある。乳由来基質には直接接触せず、装置の接触面により分離されている加熱媒体(例えば、プレート熱交換器又はチューブ熱交換器)を使用し得る。好ましくは、任意選択的に乳由来基質の温度が工程b)の保持温度に向かって上昇している間に、加熱処理工程の直前(例えば、保持温度に到達する直前)に、酵素を乳由来基質に添加する。
【0065】
別の好ましい実施形態では、加熱処理を、直接加熱処理として実施し、好ましくは直接UHT処理として実施する。この加熱処理を、高圧蒸気を使用するスチームインジェクション又はスチームインフュージョンにより実施し、好ましくはスチームインジェクションにより実施して、乳由来基質を加熱し得る。好ましい実施形態では、酵素を、蒸気と共に添加する。好ましくは、b)の保持時間の後に、蒸気を含む乳由来基質を真空中でフラッシュ冷却して、使用した凝縮蒸気の量に相当する水を除去する。
【0066】
直接間接処理と間接加熱処理との組み合わせも、使用し得る。
【0067】
加熱処理は、ESL処理、超低温殺菌、又はUHL処理であり得る。
【0068】
加熱処理を、120~150℃の温度で実施し得る。
【0069】
一実施形態では、加熱処理を、少なくとも123℃の温度で実施し、好ましくは123~145℃の温度で実施する。
【0070】
一実施形態では、加熱処理を、少なくとも130℃の温度で実施し、好ましくは130~145℃の温度で実施する。
【0071】
一実施形態では、加熱処理を、少なくとも138℃の温度で実施し、好ましくは138~145℃の温度で実施し、より好ましくは138~142℃の温度で実施する。
【0072】
工程b)の保持時間は、1~30秒であり得、好ましくは1~10秒であり得、より好ましくは1~5秒であり得る。
【0073】
一実施形態では、加熱処理は、UHT処理であり、好ましくは、1~30秒の時間にわたり130~145℃の温度で実施され、より好ましくは、1~10秒の時間にわたり138~145℃の温度で実施され、さらにより好ましくは、1~5秒の時間にわたり138~144℃の温度で実施されるUHT処理である。
【0074】
一実施形態では、加熱処理は、25~35秒にわたり128~132℃の温度で実施するか、2~5秒にわたり138~140℃の温度で実施するか、又は0.5~2秒にわたり144~146℃の温度で実施するUHT処理である。
【0075】
一実施形態では、加熱処理は、ESL処理又は超低温殺菌であり、好ましくは、1~5秒の時間にわたり120~140℃の温度で実施するESL処理又は超低温殺菌であり、より好ましくは、1~5秒にわたり120~130℃の温度で実施するか又は2~4秒にわたり138~140℃の温度で実施するESL処理又は超低温殺菌である。
【0076】
好ましくは、工程b)の後に、例えば、工程b)の保持時間の後に、乳由来製品に、ラクターゼ活性を有する酵素を添加しない。より好ましくは、工程b)の後に、例えば、工程b)の保持時間の後に、乳由来製品に酵素を添加しない。さらにより好ましくは、工程b)の後に、例えば、工程b)の保持時間の後に、乳由来製品に何も添加しない。この理由は、加熱処理後に、乳由来製品は無菌であり、たとえ無菌であると見なされるものであっても何かを添加することは、この製品が汚染されるリスクとなるからである。
【0077】
工程b)の保持時間の後に、乳由来製品を、好ましくは5分以内に、より好ましくは3分以内に、さらにより好ましくは2分以内に、例えば1分以内に、最高40℃まで冷却し、好ましくは最高35℃まで冷却し、より好ましくは最高30℃まで冷却する。
【0078】
好ましくは、酵素の添加から、加熱処理乳由来製品が最高40℃の温度まで冷却されており、好ましくは最高35℃の温度まで冷却されており、より好ましくは最高30℃の温度まで冷却されているまでの時間は、最高3.5分であり、好ましくは最高3分であり、より好ましくは最高2.5分であり、例えば最高2分であるか、又は最高1分である。
【0079】
工程b)の後であるが工程c)の前に、乳由来製品を均質化し得る。
【0080】
或いは、均質化を、工程b)の保持温度に達する前に実施し得る。間接UHT処理(例えば、チューブ交換又はプレート交換)では、均質化を、好ましくは上流で実施する。直接UHT処理(例えば、スチームインジェクション又はスチームインフュージョン)では、均質化を、好ましくは下流で実施する。
【0081】
好ましくは、工程b)の後であるが工程c)の前に、乳由来製品を無菌的に包装する。
【0082】
好ましい実施形態では、乳由来製品は、UHT乳である。本発明に関連するUHT乳とは、細菌胞子を含む全ての微生物を死滅させることが意図されている滅菌手順に供されている乳のことである。
【0083】
好ましくは、工程b)が完了した場合に、ラクトースの80%未満が加水分解されており、1週間後に、ラクトースの90%超が加水分解されている。より好ましくは、工程b)が完了した場合に、ラクトースの60%未満が加水分解されており、1週間後に、ラクトースの95%超が加水分解されている。
【0084】
好ましくは、工程b)の後に、酵素は、この酵素の初期活性の少なくとも0.01%を保持しており、より好ましくは少なくとも0.1%を保持しており、より好ましくは少なくとも1%を保持しており、より好ましくは少なくとも2%を保持しており、より好ましくは少なくとも10%を保持しており、より好ましくは少なくとも50%を保持しており、さらにより好ましくは少なくとも80%を保持しており、最も好ましくは少なくとも90%を保持している。酵素を添加した場合の酵素活性に対する百分率での、工程b)の後に保持されている酵素活性を、例えば、本実施例の「残存活性アッセイ」を使用して決定し得る。
【0085】
好ましくは、工程c)を、2~40℃の温度で実施し、好ましくは15~40℃の温度で実施し、より好ましくは18~40℃の温度で実施し、最も好ましくは18~30℃の温度で実施する。好ましい実施形態では、工程c)を、保存期間中に変動し得る室温で実施する。
【0086】
好ましい実施形態では、工程b)の後であるが工程c)の前に、乳由来製品のラクトース含有量は、少なくとも1%(w/w)であり、例えば、少なくとも2%(w/w)、少なくとも3%(w/w)、又は少なくとも4%(w/w)である。
【0087】
別の好ましい実施形態では、工程b)の後であるが工程c)の前に、乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、最高80%低減されており、好ましくは最高50%低減されており、より好ましくは最高20%低減されている。
【0088】
工程c)では、加熱処理乳由来製品を、少なくとも24時間にわたり保存し、好ましくは少なくとも2日(例えば、少なくとも3日)にわたり保存し、より好ましくは少なくとも4日(例えば、少なくとも7日)にわたり保存し、さらにより好ましくは少なくとも14日(例えば、少なくとも21日)にわたり保存する。ラクターゼの残存活性によりラクトースレベルが所望のレベルまで低下するのは、主にこの保存期間中である。
【0089】
好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、21日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である。
【0090】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、14日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である。
【0091】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、7日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である。
【0092】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、4日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である。
【0093】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、3日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である。
【0094】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、2日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である。
【0095】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、24時間にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である。
【0096】
好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、21日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%低減されている。
【0097】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、14日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%低減されている。
【0098】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、7日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%低減されている。
【0099】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、4日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%低減されている。
【0100】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、3日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%低減されている。
【0101】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、2日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%低減されている。
【0102】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、24時間にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%低減されている。
【0103】
好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、21日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである。
【0104】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、14日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである。
【0105】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、7日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである。
【0106】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、4日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである。
【0107】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、3日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである。
【0108】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、2日にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである。
【0109】
別の好ましい実施形態では、2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、24時間にわたり加熱処理乳由来製品を保存した後に、この乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである。
【0110】
工程c)の後、ラクトースが低減された加熱処理乳製品を、必要に応じて凍結乾燥させ得る。
【0111】
ラクターゼ活性を有する酵素を、乳由来基質 1リットル当たり100~50,000LAU(B)の濃度で添加し得、好ましくは500~40,000LAU(B)の濃度で添加し得る。
【0112】
ラクターゼ活性を有する酵素を、乳由来基質 1リットル当たり酵素タンパク質 1~150mgの濃度で添加し得、好ましくは、乳由来基質 1リットル当たり酵素タンパク質 1~100mgの濃度で添加し得、より好ましくは、乳由来基質 1リットル当たり酵素タンパク質 2~50又は5~50mgの濃度で添加し得る。
【0113】
工程b)の前に、乳由来基質に還元剤を添加し得、好ましくは、食品用に認可されている還元剤を添加し得、より好ましくは、L-システイン、亜硫酸塩、及びグルタチオンから選択される還元剤を添加し得る。還元剤を、酵素と共に添加し得、例えば、還元剤は、酵素製剤の一部であり得る。還元剤を添加して、例えば、ジスルフィド架橋の一部を形成していないラクターゼ酵素中のシステイン(「遊離システイン」と称されることもある)の酸化を低下させ得るか、又は防止し得る。そのような遊離システインの酸化により、UHT処理等の加熱処理後に、酵素が再び折り畳む能力が低下する場合がる。
【0114】
配列番号1のラクターゼ酵素は、C372位で遊離システイン残基を有しており、この酸化により、この酵素が再び折り畳む能力が低下することが分かっており、対応するシステイン残基を、クレードDYLGEの多くの他のGH2ラクターゼ酵素において、これらのアミノ酸配列と配列番号1とをアラインすることにより同定し得る。好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1のC372に対応するシステインのアミノ酸置換を有しており、好ましくは、セリン、アラニン、又はグリシンへのアミノ酸置換を有する。
【0115】
好ましくは、ラクターゼ活性を有する酵素は、ラクターゼである。好ましくは、この酵素は、酵素クラス3.2.1.21、3.2.1.23、又は3.2.1.108に属しており、より好ましくは3.2.1.23又は3.2.1.108に属している。
【0116】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、中性ラクターゼである。
【0117】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、精製されている。
【0118】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、単離されている。
【0119】
好ましくは、ラクターゼ活性を有する酵素は、細菌性ラクターゼである。
【0120】
好ましくは、ラクターゼ活性を有する酵素は、GH2ラクターゼであり、より好ましくは、クレードDYLGEのGH2ラクターゼである。1998年からオンライン化されているCarbohydrate-Active enZYmes Database(CAZy)(http://www.cazy.org/)は、炭水化物活性酵素(CAZyme)をファミリに分類する専門データベースである(Lombard V,Golaconda Ramulu H,Drula E,Coutinho PM,Henrissat B(2014)The Carbohydrate-active enzymes database (CAZy),2013,Nucleic Acids Res 42:D490-D495;Elodie Drula,Marie-Line Garron,Suzan Dogan,Vincent Lombard,Bernard Henrissat,Nicolas Terrapon,The carbohydrate-active enzyme database:functions and literature,Nucleic Acids Research,Volume 50,Issue D1,7 January 2022,Pages D571-D577)。
【0121】
グリコシドヒドロラーゼ(GH)ファミリは、グリコシド結合の加水分解及び/又は転位を触媒する酵素からなり、これらは、GH2等の(サブ)ファミリにさらに分類され、これらも先と同様に、配列モチーフに基づいてクレードへと細分化され得る。クレードDYLGEのGH2に分類されるラクターゼは、加熱処理後に活性を保持することに特に優れており、従って、本発明の方法に特に適していることが、本発明者らにより発見されている。
【0122】
DYLGEクレードのGH2ラクターゼは、モチーフWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A]を含む。このモチーフ中のグルタミン酸Eは、ガラクトースの結合に関与している。DYLGEクレードのラクターゼはまた、追加の短いペプチドモチーフSR[W/Y/F]YSGSGX[Y/G]R及び/又は[L/V/I]X[L/V/I]PHDも含み得、これらは両方とも、GH2 N末端ガラクトース結合ドメインに位置しており、基質結合に重要である。
【0123】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、そのアミノ酸配列中に、モチーフWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A]を含む。
【0124】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、そのアミノ酸配列中に、モチーフSR[W/Y/F]YSGSGX[Y/G]R及び/又は[L/V/I]X[L/V/I]PHDを含む。
【0125】
好ましくは、ラクターゼ活性を有する酵素は、最適温度が30~60℃であり、好ましくは35~55℃である。この最適温度を、実施例2の方法2を使用して決定し得る。
【0126】
好ましくは、ラクターゼ活性を有する酵素は、pH6での熱シフトにより決定される融点Tmが50~70℃である。別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、pH7での熱シフトにより決定される融点Tmが50~70℃である。この融点Tmを、実施例5の熱シフトアッセイを使用して決定し得る。
【0127】
好ましくは、ラクターゼ活性を有する酵素は、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中における、30秒にわたる70℃及び5秒にわたる140℃でのインキュベーション後に、残存活性が少なくとも1%であり、好ましくは少なくとも2%であり、より好ましくは少なくとも5%であり、さらにより好ましくは少なくとも10%である。この残存活性を、実施例3と同様に決定し得る。
【0128】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15の内のいずれか、又はこれらの内のいずれかの成熟ポリペプチドと少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0129】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0130】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号4と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0131】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号5と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0132】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号6と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0133】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号11と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0134】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所若しくは複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/若しくは挿入を有しており、例えば、1、若しくは2、若しくは3、若しくは4、若しくは5、若しくは6、若しくは7、若しくは8、若しくは9、若しくは10、若しくは11、若しくは12、若しくは13、若しくは14、若しくは15、若しくは16、若しくは17、若しくは18、若しくは19、若しくは20、若しくは21、若しくは22、若しくは23、若しくは24、若しくは25、若しくは26、若しくは27、若しくは28、若しくは29、若しくは30個の改変しており、特に置換を有する、配列番号1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15の内のいずれかに由来するポリペプチド、又はこれらの内のいずれかの成熟ポリペプチドに由来するポリペプチドである。
【0135】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所又は複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/又は挿入を有しており、例えば、1、又は2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25、又は26、又は27、又は28、又は29、又は30個の改変を有しており、特に置換を有する、配列番号1に由来するポリペプチドである。
【0136】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所又は複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/又は挿入を有しており、例えば、1、又は2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25、又は26、又は27、又は28、又は29、又は30個の改変を有しており、特に置換を有する、配列番号4に由来するポリペプチドである。
【0137】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所又は複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/又は挿入を有しており、例えば、1、又は2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25、又は26、又は27、又は28、又は29、又は30個の改変を有しており、特に置換を有する、配列番号5に由来するポリペプチドである。
【0138】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所又は複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/又は挿入を有しており、例えば、1、又は2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25、又は26、又は27、又は28、又は29、又は30個の改変を有しており、特に置換を有する、配列番号6に由来するポリペプチドである。
【0139】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所又は複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/又は挿入を有しており、例えば、1、又は2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25、又は26、又は27、又は28、又は29、又は30個の改変を有しており、特に置換を有する、配列番号11に由来するポリペプチドである。
【0140】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1つ又はいくつかのアミノ酸の置換、欠失、又は付加により、配列番号1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の内のいずれかに由来する。
【0141】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、1つ又はいくつかのアミノ酸の置換、欠失、又は付加により、配列番号1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の内のいずれかの成熟ポリペプチドに由来する。
【0142】
一実施形態では、配列番号1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の内のいずれかのポリペプチドに導入されるアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入の数は、最大15個であり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個である。
【0143】
アミノ酸変化は、軽微な性質のものであり得、これは、タンパク質の折り畳み及び/若しくは活性に有意な影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換若しくは挿入;典型的には1~30個のアミノ酸の小規模な欠失;アミノ末端メチオニン残基等の小型のアミノ末端延長若しくはカルボキシル末端延長;最大20~25個の残基の小型のリンカーペプチド;又は正味電荷、又はポリヒスチジントラクト、抗原性エピトープ、若しくは結合モジュール等の別の機能を変化させることにより精製を容易にする小規模な延長である。
【0144】
ポリペプチドにおいて必須のアミノ酸を、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発等の当技術分野で既知の手順に従って同定し得る(Cunningham and Wells,1989,Science 244:1081-1085)。後者の技術では、分子の活性に極めて重要なアミノ酸残基を同定するために、分子内のあらゆる残基に単一のアラニン変異を導入して、結果として生じる分子をラクターゼ活性に関して試験する。Hilton et al.,1996,J.Biol.Chem.271:4699-4708も参照されたい。酵素の活性部位、又は他の生物学的相互作用をまた、推定される接触部位アミノ酸の変異との組み合わせにより、核磁気共嗚、結晶構造解析、電子回折、又は光親和性標識等の技術によって決定される構造の物理的分析によっても判定し得る。例えば、de Vos et al.,1992,Science 255;306-312;Smith et al.,1992,J.Mol.Biol.224;899-904;Wlodaver et al.,1992,FEBS Lett.309:59-64を参照されたい。必須アミノ酸の同定をまた、関連するポリペプチドとのアラインメントからも推定し得、並びに/又は関連するポリペプチドとの配列相同性、及び保存された触媒機構からも推定し得、又は典型的には、類似の三次元構造、機能、及び有意な配列類似性を有する、共通の祖先から派生するポリペプチド/タンパク質を有するポリペプチドファミリ若しくはタンパク質ファミリ内でも推定し得る。加えて、又は或いは、必須アミノ酸及び/又はポリペプチドの活性部位を同定するためのタンパク質構造モデリングに、タンパク質構造予測ツールを使用し得る。例えば、Jumper et al.,2021,“Highly accurate protein structure prediction with AlphaFold”,Nature 596:583-589を参照されたい。
【0145】
単一又は複数のアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入を、既知の変異誘発、組換え、及び/又はシャッフリングの方法、続いてReidhaar-Olson and Sauer,1988,Science 241:53-57;Bowie and Sauer,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86;2152-2156;国際公開第95/17413号パンフレット;又は国際公開第95/22625号パンフレットに開示されているもの等の関連するスクリーニング手順を使用して行ない得、且つ試験し得る。使用され得る他の方法として、エラープローンPCR、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,1991,Biochemistry 30;10832-10837;米国特許第5,223,409号明細書;国際公開第92/06204号パンフレット)及び領域特異的変異誘発(Derbyshire et al.,1986,Gene 46;145;Ner et al.,1988,DNA 7;127)が挙げられる。
【0146】
変異誘発/シャッフリング法を、ハイスループットな自動化されたスクリーニング方法と組み合わせて、宿主細胞により発現された、クローニングされ、変異誘発されたポリペプチドの活性を検出し得る(Ness et al.,1999,Nature Biotechnology 17;893-896)。活性ポリペプチドをコードする変異誘発されたDNA分子を、宿主細胞から回収し、当技術分野の標準法を使用して迅速に配列決定し得る。これらの方法により、ポリペプチド内の個々のアミノ酸残基の重要性を迅速に決定することが可能となる。
【0147】
アミノ酸改変はまた、酵素に1つ又は複数の所望の特性を付与する非保存的改変(例えば、非保存的な置換、欠失、及び/又は挿入、典型的には、置換)でもあり得る。そのような所望の特性の非限定的な例として、高温に曝露された後の残存活性の改善、変性後に再び折り畳む能力、及び比活性が挙げられる。
【0148】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、この酵素が、この酵素が由来する酵素と比較してUHT処理後に残存活性が高くなるように、1~30個(好ましくは1~20個)のアミノ酸が置換されることにより、配列番号1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の内のいずれかに由来しており、好ましくは、配列番号1、4、5、6、又は11の内のいずれかに由来する。
【0149】
ラクターゼ活性を有する酵素を、任意の属の微生物から得ることができる。本発明の目的のために、「から得られる」という用語は、所与の供給源に関連して本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドが、供給源により生成されるか、又は本発明のポリヌクレオチドが挿入されている株により生成されることを意味するものとする。一態様では、所与の供給源から得られたポリペプチドは、細胞外に分泌される。
【0150】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)、ビフィドバクテリウム・エアロフィラム(Bifidobacterium aerophilum)、若しくはビフィドバクテリウム・モンゴリエンセ(Bifidobacterium mongoliense)から得られるか、又はバチルス属(Bacillus)から得られ、好ましくは、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、若しくはバチルス属種(Bacillus sp.)S3から得られるか、バリバクラム属種(Varibaculum sp.)から得られるか、ウルミテラ属(Urmitella)から得られ、好ましくは、ウルミテラ・チモネンシス(Urmitella timonensis)から得られるか、ストレプトコッカス属(Streptococcus)から得られ、好ましくは、ストレプトコッカス・エンテリクス(Streptococcus entericus)DSM 14446から得られるか、ストレプトマイセス属(Streptomyces)から得られ、好ましくは、ストレプトマイセス・シラツス(Streptomyces cirratus)から得られるか、クロストリジウム属(Clostridium)から得られ、好ましくは、クロストリジウム・ネクサイル(Clostridium nexile)CAG:348から得られるか、又はネオバチルス属(Neobacillus)から得られ、好ましくは、ネオバチルス・バタビエンシス(Neobacillus bataviensis)、ネオバチルス・メソナエ(Neobacillus mesonae)、若しくはネオバチルス・ニアシニ(Neobacillus niacini)から得られるか、又はこれらの属若しくは種の内のいずれかから得られる酵素のバリアントである。
【0151】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)若しくはビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)から得られるか、又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)若しくはビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)から得られる、ラクターゼ活性を有する酵素のバリアントである。
【0152】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ウルミテラ属(Urmitella)から得られ、好ましくは、ウルミテラ・チモネンシス(Urmitella timonensis)から得られるか、又はウルミテラ属(Urmitella)から得られ、好ましくは、ウルミテラ・チモネンシス(Urmitella timonensis)から得られる、ラクターゼ活性を有する酵素のバリアントである。
【0153】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ストレプトコッカス属(Streptococcus)から得られ、好ましくは、ストレプトコッカス・エンテリクス(Streptococcus entericus)から得られるか、又はストレプトコッカス属(Streptococcus)から得られ、好ましくは、ストレプトコッカス・エンテリクス(Streptococcus entericus)から得られる、ラクターゼ活性を有する酵素のバリアントである。
【0154】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、バリバクラム属種(Varibaculum sp.)から得られるか、又はバリバクラム属種(Varibaculum sp.)から得られる、ラクターゼ活性を有する酵素のバリアントである。
【0155】
前述の種に関して、本発明は、完全な状態及び不完全な状態の両方、並びにそれらが知られている種の名称にかかわらず、他の分類学上の均等物(例えばアナモルフ)を包含することが理解されるであろう。当業者であれば、適切な均等物の同一性を容易に認識するであろう。
【0156】
酵素を、上記のプローブを用いて、自然界(例えば、土壌、堆肥、水等)から単離される微生物又は天然の物質(例えば、土壌、堆肥、水等)から直接得られるDNAサンプルを含む他の供給源から同定し且つ得ることができる。微生物及びDNAを自然生息地から直接単離する技術は、当技術分野で公知である。次に、酵素をコードするポリヌクレオチドを、別の微生物のゲノムDNA若しくはcDNAライブラリ、又は混合DNAサンプルを同様にスクリーニングすることによって得ることができる。プローブを用いて、酵素をコードするポリヌクレオチドを検出してから、当業者に既知の技術を利用することにより、ポリヌクレオチドを単離し得るか、又はクローン化し得る(例えば、Davis et al.,2012,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevierを参照されたい)。
【0157】
ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15の内のいずれかに由来するポリペプチドであり得るか、又はこれらの内のいずれかの成熟ポリペプチドに由来するポリペプチドであり得、ここで、N末端及び/若しくはC末端が、1つ若しくは複数のアミノ酸の付加により伸長されているか、又は1つ若しくは複数のアミノ酸が、N末端及び/若しくはC末端から欠失している。
【0158】
ラクターゼ活性を有する酵素は、この酵素が得られる野生型酵素と比較して、C末端がトランケートされている場合がある。
【0159】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、長さが最高約1500個のアミノ酸であり、例えば最高約1400個のアミノ酸又は最高約1350個のアミノ酸であり、例えば850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは850~1400個のアミノ酸であり、例えば850~1350又は1100~1400個のアミノ酸である。
【0160】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、C末端がトランケートされていて、長さが最高約1500個のアミノ酸であり、例えば最高約1400個のアミノ酸又は最高約1350個のアミノ酸であり、例えば850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは850~1400個のアミノ酸であり、例えば850~1350又は1100~1400個のアミノ酸である。
【0161】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるか、又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは850~1350個のアミノ酸であり、より好ましくは880~1350、880~1320、又は885~1310個のアミノ酸である。
【0162】
別の実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるか、又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1500個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1290~1350個のアミノ酸であり、さらにより好ましくは1300~1305個のアミノ酸であり、例えば1302又は1304個のアミノ酸である。
【0163】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)から得られるか、又はビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1280~1320個のアミノ酸であり、例えば1290~1310個のアミノ酸である。
【0164】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ストレプトコッカス・エンテリクス(Streptococcus entericus)DSM 14446から得られるか、又はストレプトコッカス・エンテリクス(Streptococcus entericus)DSM 14446から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1270~1310個のアミノ酸であり、例えば1280~1300個のアミノ酸である。
【0165】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、バリバクラム属種(Varibaculum sp.)から得られるか、又はバリバクラム属種(Varibaculum sp.)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1290~1330個のアミノ酸であり、例えば1300~1320個のアミノ酸である。
【0166】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ウルミテラ・チモネンシス(Urmitella timonensis)から得られるか、又はウルミテラ・チモネンシス(Urmitella timonensis)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1290~1330個のアミノ酸であり、例えば1300~1320個のアミノ酸である。
【0167】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、バチルス属種(Bacillus sp.)S3から得られるか、又はバチルス属種(Bacillus sp.)S3から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1290~1330個のアミノ酸であり、例えば1300~1320個のアミノ酸である。
【0168】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム・エアロフィラム(Bifidobacterium aerophilum)から得られるか、又はビフィドバクテリウム・エアロフィラム(Bifidobacterium aerophilum)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1280~1320個のアミノ酸であり、例えば1290~1310個のアミノ酸である。
【0169】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム・モンゴリエンセ(Bifidobacterium mongoliense)から得られるか、又はビフィドバクテリウム・モンゴリエンセ(Bifidobacterium mongoliense)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1280~1320個のアミノ酸であり、例えば1290~1310個のアミノ酸である。
【0170】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、クロストリジウム・ネクサイル(Clostridium nexile)CAG:348から得られるか、又はクロストリジウム・ネクサイル(Clostridium nexile)CAG:348から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1270~1310個のアミノ酸であり、例えば1280~1300個のアミノ酸である。
【0171】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ネオバチルス・バタビエンシス(Neobacillus bataviensis)から得られるか、又はネオバチルス・バタビエンシス(Neobacillus bataviensis)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが800~1400個のアミノ酸であり、好ましくは1000~1200個のアミノ酸であり、より好ましくは1100~1200又は1110~1150個のアミノ酸であり、例えば1120~1140個のアミノ酸である。
【0172】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ネオバチルス・メソナエ(Neobacillus mesonae)から得られるか、又はネオバチルス・メソナエ(Neobacillus mesonae)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1290~1330個のアミノ酸であり、例えば1300~1320個のアミノ酸である。
【0173】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ネオバチルス・ニアシニ(Neobacillus niacini)から得られるか、又はネオバチルス・ニアシニ(Neobacillus niacini)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1400個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1290~1330個のアミノ酸であり、例えば1300~1320個のアミノ酸である。
【0174】
一実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、ストレプトマイセス・シラツス(Streptomyces cirratus)から得られるか、又はストレプトマイセス・シラツス(Streptomyces cirratus)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントであり、且つC末端がトランケートされていて、長さが1200~1900個のアミノ酸であり、好ましくは1600~1800個のアミノ酸であり、より好ましくは1650~1750又は1660~1700個のアミノ酸であり、例えば1670~1690個のアミノ酸である。
【0175】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトース代謝回転が少なくとも10個/秒/酵素分子である。この初期ラクトース代謝回転を、例えば、ラクトースの0~10%が加水分解されている場合に決定し得る。1つの酵素分子当たりの初期ラクトース代謝回転を決定する方法は、当業者に既知であるだろう。例えば、この方法は、HPLCを使用するラクトースの直接測定、又はグルコース検出法を使用する間接測定であり得る。
【0176】
5℃での乳中における1つの酵素分子当たりの初期ラクトース代謝回転は、Lactozym(登録商標)Pureの場合には36秒-1であり、Saphera(登録商標)の場合には89秒-1である。
【0177】
より好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトース代謝回転が少なくとも20個/秒/酵素分子であり、好ましくは少なくとも50個/秒/酵素分子であり、より好ましくは少なくとも80個/秒/酵素分子である。
【0178】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトースからの平均ラクトース代謝回転(好ましくは、約4.7%のラクトースから0.1%の残存ラクトースへ)が少なくとも10個/秒/酵素分子である。
【0179】
4.7%の初期ラクトースから0.1%の残存ラクトースへの平均ラクトース代謝回転は、Lactozym(登録商標)Pureの場合には約9秒-1であり、Saphera(登録商標)の場合には約23秒-1である。初期速度(4.7%から4.23%へ)と比較して4.7%から0.1%への平均ラクトース代謝回転が低いことは、いくつかの要因(例えば、より高い生成物阻害、及び0.1%近いより低い基質濃度)の組み合わせが理由である。
【0180】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトースからの平均ラクトース代謝回転(好ましくは、約4.7%から0.01%への残存ラクトースへ)が少なくとも5個/秒/酵素分子である。
【0181】
4.7%から0.01%の残存ラクトースへの初期ラクトースからの平均ラクトース代謝回転は、Lactozym(登録商標)Pureの場合には約5秒-1であり、Saphera(登録商標)の場合には約18秒-1である。
【0182】
好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃でのミカエリス定数Kが最高40mMであり、好ましくは最高30mMであり、より好ましくは最高20mMである。
【0183】
別の好ましい実施形態では、ラクターゼ活性を有する酵素は、37℃でのミカエリス定数Kが最高40mMであり、好ましくは最高30mMであり、より好ましくは最高20mMである。
【0184】
ミカエリス定数Kは、反応速度が最大半値となる基質濃度(この場合はラクトース濃度)であり、酵素に対する基質の親和性の尺度である。小さいKは、高親和性を示し、このことは、速度が、Kがより大きい場合と比べて、基質濃度がより低い場合に最大に近づくことを意味する。
【0185】
ミカエリス定数Kを、国際公開第09071539A1号パンフレットの実施例5の方法に従って決定し得る。この実施例では、5℃でのKは、実験的なビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)ラクターゼの場合には8mMと決定されており、Lactozym(K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼ)の場合には30mMと決定されており、37℃でのKは、実験的なビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)ラクターゼの場合には13mMと決定されており、Lactozymの場合には30mMと決定されている。
【0186】
好ましい実施形態
1.ラクトースが低減された加熱処理乳由来製品を製造する方法であって、
a)少なくとも2%(w/w)のラクトースを含む乳由来基質に、ラクターゼ活性を有する酵素を添加すること、
b)前記酵素の添加後、少なくとも1秒の保持時間にわたり少なくとも120℃の保持温度で前記乳由来基質を保持することにより、前記乳由来基質の加熱処理を実施し、その後に冷却して加熱処理乳由来製品を製造すること、
及び
c)最高40℃の温度で、少なくとも24時間にわたり、好ましくは少なくとも2日にわたり、例えば少なくとも3日にわたり、より好ましくは少なくとも4日にわたり、前記加熱処理乳由来製品を保存すること、
を含み、
工程c)の後に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)である、
方法。
【0187】
2.工程b)の後であるが工程c)の前に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、少なくとも0.5%(w/w)である、実施形態1に記載の方法。
【0188】
3.工程a)の後であるが工程b)の前に、前記乳由来基質を、最高4時間にわたりインキュベートし、好ましくは最高60分にわたりインキュベートし、より好ましくは最高10分にわたりインキュベートし、さらにより好ましくは最高5分にわたりインキュベートする、実施形態1又は2に記載の方法。
【0189】
4.工程a)の後であるが工程b)の前に、前記乳由来基質を、最高10℃の温度でインキュベートし、好ましくは最高7℃の温度でインキュベートする、実施形態3に記載の方法。
【0190】
5.工程b)を、専用のインキュベーション工程を行なうことなく、工程a)の直後に実施する、実施形態1又は2に記載の方法。
【0191】
6.工程b)を、工程a)の後であり且つ工程b)の前に専用のインキュベーション工程を行なうことなく、工程a)の直後に実施する、実施形態1又は2に記載の方法。
【0192】
7.前記乳由来基質が、プロセスパイプ等のプロセス装置を通って流れている間に、前記乳由来基質に前記酵素を添加するために、ポンプ装置が設置されている、実施形態1若しくは2、又は5若しくは6に記載の方法。
【0193】
8.前記酵素の添加から工程b)の保持温度に達するまでの時間は、最高5分であり、好ましくは最高2分であり、より好ましくは最高1分である、実施形態1若しくは2、又は5~7のいずれか一つに記載の方法。
【0194】
9.前記酵素の添加から、前記加熱処理乳由来製品が最高40℃の温度まで冷却されており、好ましくは最高35℃の温度まで冷却されており、より好ましくは最高30℃の温度まで冷却されているまでの時間は、最高3.5分であり、好ましくは最高3分であり、より好ましくは最高2.5分であり、例えば最高2分であるか、又は最高1分である、実施形態1若しくは2、又は5~8のいずれか一つに記載の方法。
【0195】
10.任意選択的に前記乳由来基質の温度が工程b)の保持温度に向かって上昇している間に、前記加熱処理工程の直前に、前記乳由来基質が、プロセスパイプ等のプロセス装置を通っている流れている間に、前記酵素を前記乳由来基質に添加する、実施形態5~9のいずれか一つに記載の方法。
【0196】
11.前記乳由来基質には直接接触せず、装置の接触面により分離されている加熱媒体を使用し、好ましくは、前記加熱媒体は、プレート熱交換器又はチューブ熱交換器である、実施形態1~10のいずれか一つに記載の方法。
【0197】
12.前記加熱処理を、間接加熱処理として実施し、好ましくは間接UHT処理として実施する、実施形態1~11のいずれか一つに記載の方法。
【0198】
13.前記加熱処理を、高圧蒸気を使用するスチームインジェクション又はスチームインフュージョンにより実施し、好ましくはスチームインジェクションにより実施して、前記乳由来基質を加熱する、実施形態1~9のいずれか一つに記載の方法。
【0199】
14.工程b)を、専用のインキュベーション工程を行なうことなく、工程a)の直後に実施し、前記酵素を、前記蒸気と共に添加する、実施形態13に記載の方法。
【0200】
15.工程b)の前記保持時間の後に、前記蒸気を含む前記乳由来基質を真空中でフラッシュ冷却して、使用した凝縮蒸気の量に相当する水を除去する、実施形態13又は14に記載の方法。
【0201】
16.前記加熱処理を、直接加熱処理として実施し、好ましくは直接UHT処理として実施する、実施形態13~15のいずれか一つに記載の方法。
【0202】
17.プレート熱交換器又はチューブ熱交換器を使用する間接加熱も適用する、実施形態13~16のいずれか一つに記載の方法。
【0203】
18.前記乳由来基質は、2~30%(w/w)のラクトースを含み、好ましくは2~17%(w/w)のラクトースを含み、より好ましくは4~5.5%(w/w)のラクトースを含む、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法。
【0204】
19.前記乳由来基質は、4~5.5%(w/w)のラクトースを含む乳である、実施形態1~18のいずれか一つに記載の方法。
【0205】
20.前記乳由来基質は、生乳であり、好ましくは、工程a)の前に低温殺菌されていない生乳である、実施形態1~19のいずれか一つに記載の方法。
【0206】
21.前記加熱処理は、ESL処理、超低温殺菌、又はUHL処理である、実施形態1~20のいずれか一つに記載の方法。
【0207】
22.前記加熱処理を、120~150℃の温度で実施する、実施形態1~21のいずれか一つに記載の方法。
【0208】
23.前記加熱処理を、少なくとも123℃の温度で実施し、好ましくは123~145℃の温度で実施する、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法。
【0209】
24.前記加熱処理を、少なくとも130℃の温度で実施し、好ましくは130~145℃の温度で実施する、実施形態1~23のいずれか一つに記載の方法。
【0210】
25.前記加熱処理を、少なくとも138℃の温度で実施し、好ましくは138~145℃の温度で実施し、より好ましくは138~142℃の温度で実施する、実施形態1~24のいずれか一つに記載の方法。
【0211】
26.工程b)の前記保持時間は、1~30秒であり、好ましくは1~10秒であり、より好ましくは1~5秒である、実施形態1~25のいずれか一つに記載の方法。
【0212】
27.前記加熱処理は、UHT処理であり、好ましくは、1~30秒の時間にわたり130~145℃の温度で実施され、より好ましくは、1~10秒の時間にわたり138~145℃の温度で実施され、さらにより好ましくは、1~5秒の時間にわたり138~144℃の温度で実施されるUHT処理である、実施形態1~26のいずれか一つに記載の方法。
【0213】
28.前記加熱処理は、25~35秒にわたり128~132℃の温度で実施するか、2~5秒にわたり138~140℃の温度で実施するか、又は1~2秒にわたり144~146℃の温度で実施するUHT処理である、実施形態1~27のいずれか一つに記載の方法。
【0214】
29.前記加熱処理は、ESL処理又は超低温殺菌であり、好ましくは、1~5秒の時間にわたり120~140℃の温度で実施するESL処理又は超低温殺菌であり、より好ましくは、1~5秒にわたり120~130℃の温度で実施するか又は2~4秒にわたり138~140℃の温度で実施するESL処理又は超低温殺菌である、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法。
【0215】
30.工程b)の後に、好ましくは、工程b)の前記保持時間の後に、前記乳由来製品に、ラクターゼ活性を有する酵素を添加しない、実施形態1~29のいずれか一つに記載の方法。
【0216】
31.工程b)の後に、好ましくは、工程b)の前記保持時間の後に、前記乳由来製品に酵素を添加しない、実施形態1~30のいずれか一つに記載の方法。
【0217】
32.工程b)の後に、好ましくは、工程b)の前記保持時間の後に、前記乳由来製品に何も添加しない、実施形態1~31のいずれか一つに記載の方法。
【0218】
33.工程b)の前記保持時間の後に、前記乳由来製品を、好ましくは5分以内に、より好ましくは3分以内に、さらにより好ましくは2分以内に、例えば1分以内に、最高40℃まで冷却し、好ましくは最高35℃まで冷却し、より好ましくは最高30℃まで冷却する、実施形態1~32のいずれか一つに記載の方法。
【0219】
34.工程b)の後であるが工程c)の前に、前記乳由来製品を無菌的に包装する、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
【0220】
35.工程b)の後であるが工程c)の前に、前記乳由来製品を均質化する、実施形態1~34のいずれか一つに記載の方法。
【0221】
36.前記乳由来製品は、UHT乳である、実施形態1~35のいずれか一つに記載の方法。
【0222】
37.工程b)の後に、前記酵素は、前記酵素の初期活性の少なくとも0.1%を保持しており、好ましくは少なくとも1%を保持しており、より好ましくは少なくとも2%を保持しており、より好ましくは少なくとも10%を保持しており、より好ましくは少なくとも50%を保持しており、さらにより好ましくは少なくとも80%を保持しており、最も好ましくは少なくとも90%を保持している、実施形態1~36のいずれか一つに記載の方法。
【0223】
38.前記初期活性は、工程b)の前の活性である、実施形態1~37のいずれか一つに記載の方法。
【0224】
39.工程c)を、2~40℃の温度で実施し、好ましくは15~40℃の温度で実施し、より好ましくは18~40℃の温度で実施し、最も好ましくは18~30℃の温度で実施する、実施形態1~38のいずれか一つに記載の方法。
【0225】
40.工程c)を、保存期間中に変動し得る室温で実施する、実施形態1~39のいずれか一つに記載の方法。
【0226】
41.工程b)の後であるが工程c)の前に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、少なくとも1%(w/w)であり、例えば、少なくとも2%(w/w)、少なくとも3%(w/w)、又は少なくとも4%(w/w)である、実施形態1~40のいずれか一つに記載の方法。
【0227】
42.工程b)の後であるが工程c)の前に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、最高80%低減されており、好ましくは最高50%低減されており、より好ましくは最高20%低減されている、実施形態1~41のいずれか一つに記載の方法。
【0228】
43.工程c)において、前記加熱処理乳由来製品を、少なくとも7日にわたり保存し、好ましくは少なくとも14日にわたり保存し、より好ましくは少なくとも21日にわたり保存する、実施形態1~42のいずれか一つに記載の方法。
【0229】
44.2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、21日にわたり、好ましくは14日にわたり、より好ましくは7日にわたり、さらにより好ましくは4日にわたり、最も好ましくは3日にわたり、前記加熱処理乳由来製品を保存した後に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、最高0.2%(w/w)であり、好ましくは最高0.1%であり、より好ましくは最高0.01%である、実施形態1~43のいずれか一つに記載の方法。
【0230】
45.2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、21日にわたり、好ましくは14日にわたり、より好ましくは7日にわたり、さらにより好ましくは4日にわたり、最も好ましくは3日にわたり、前記加熱処理乳由来製品を保存した後に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、工程a)の前のラクトース含有量と比較して、少なくとも80%又は少なくとも85%低減されており、好ましくは、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、又は97%低減されており、より好ましくは少なくとも98%低減されており、さらにより好ましくは少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減されており、最も好ましくは少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%%低減されている、実施形態1~44のいずれか一つに記載の方法。
【0231】
46.2~40℃の温度で、好ましくは15~40℃の温度で、より好ましくは18~40℃の温度で、最も好ましくは18~30℃の温度で、21日にわたり、好ましくは14日にわたり、より好ましくは7日にわたり、さらにより好ましくは4日にわたり、最も好ましくは3日にわたり、前記加熱処理乳由来製品を保存した後に、前記乳由来製品のラクトース含有量は、最高1000ppmであり、好ましくは最高100ppmである、実施形態1~45のいずれか一つに記載の方法。
【0232】
47.工程c)の後に、前記ラクトースが低減された加熱処理乳製品を凍結乾燥させる、実施形態1~46のいずれか一つに記載の方法。
【0233】
48.工程b)の前に、前記乳由来製品に、還元剤を添加し、好ましくは、食品用に認可されている還元剤を添加し、より好ましくは、L-システイン、亜硫酸塩、及びグルタチオンから選択される還元剤を添加する、実施形態1~47のいずれか一つに記載の方法。
【0234】
49.前記ラクターゼ活性を有する酵素を、乳由来基質 1リットル当たり100~50,000LAU(B)の濃度で添加し、好ましくは500~40,000LAU(B)の濃度で添加する、実施形態1~48のいずれか一つに記載の方法。
【0235】
50.前記ラクターゼ活性を有する酵素を、乳由来基質 1リットル当たり1~150mgの酵素タンパク質の濃度で添加し、乳由来基質 1リットル当たり好ましくは1~100mgの酵素タンパク質の濃度で添加し、より好ましくは2~50又は5~50mgの酵素タンパク質の濃度で添加する、実施形態1~49のいずれか一つに記載の方法。
【0236】
51.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、ラクターゼである、実施形態1~50のいずれか一つに記載の方法。
【0237】
52.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、酵素クラス3.2.1.21、3.2.1.23、又は3.2.1.108に属しており、好ましくは3.2.1.23又は3.2.1.108に属している、実施形態1~51のいずれか一つに記載の方法。
【0238】
53.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、中性ラクターゼである、実施形態1~52のいずれか一つに記載の方法。
【0239】
54.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、精製されている、実施形態1~53のいずれか一つに記載の方法。
【0240】
55.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、単離されている、実施形態1~54のいずれか一つに記載の方法。
【0241】
56.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、細菌性ラクターゼである、実施形態1~55のいずれか一つに記載の方法。
【0242】
57.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、GH2ラクターゼであり、好ましくは、クレードDYLGEのGH2ラクターゼである、実施形態1~56のいずれか一つに記載の方法。
【0243】
58.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、前記酵素のアミノ酸配列中に、モチーフWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A]を含む、実施形態1~57のいずれか一つに記載の方法。
【0244】
59.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、前記酵素のアミノ酸配列中に、モチーフSR[W/Y/F]YSGSGX[Y/G]R及び/又は[L/V/I]X[L/V/I]PHDを含む、実施形態1~58のいずれか一つに記載の方法。
【0245】
60.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、CBM32又はCBM71を有しており、好ましくはCBM32を有する、実施形態1~59のいずれか一つに記載の方法。
【0246】
61.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、最適温度が30~60℃であり、好ましくは35~55℃である、実施形態1~60のいずれか一つに記載の方法。
【0247】
62.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、pH6での熱シフトにより決定される融点Tmが50~70℃である、実施形態1~61のいずれか一つに記載の方法。
【0248】
63.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、pH7での熱シフトにより決定される融点Tmが50~70℃である、実施形態1~62のいずれか一つに記載の方法。
【0249】
64.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中における、30秒にわたる70℃及び5秒にわたる140℃でのインキュベーション後に、残存活性が少なくとも1%であり、好ましくは少なくとも2%であり、より好ましくは少なくとも5%であり、さらにより好ましくは少なくとも10%である、実施形態1~63のいずれか一つに記載の方法。
【0250】
65.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃での、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中におけるインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の0.5時間にわたる23℃でのインキュベーションの後に、残存活性が、少なくとも0.1%であり、好ましくは少なくとも0.5%、少なくとも1%、又は少なくとも2%であり、より好ましくは少なくとも5%であり、さらにより好ましくは少なくとも10%であり、前記残存活性は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃でのインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の0.5時間にわたる23℃でのインキュベーションを行なわない脱脂乳中における同一の酵素の活性に対して相対的である、実施形態1~64のいずれか一つに記載の方法。
【0251】
66.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃での、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中におけるインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の72時間にわたる23℃でのインキュベーションの後に、残存活性が、少なくとも0.5%であり、好ましくは少なくとも1%、少なくとも2%、又は少なくとも3%であり、より好ましくは少なくとも5%であり、さらにより好ましくは少なくとも10%であり、前記残存活性は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃でのインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の72時間にわたる23℃でのインキュベーションを行なわない脱脂乳中における同一の酵素の活性に対して相対的である、実施形態1~65のいずれか一つに記載の方法。
【0252】
67.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃での、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中におけるインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の72時間にわたる23℃でのインキュベーションの後に、30秒にわたる90℃での、5秒にわたる140℃での、及び30秒にわたる70℃での、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳中におけるインキュベーション、その後の0~10℃までの冷却、その後の0.5時間にわたる23℃でのインキュベーションの後の活性と比べて少なくとも20%高い活性を有する、実施形態1~66のいずれか一つに記載の方法。
【0253】
68.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、若しくは配列番号15の内のいずれか、又はこれらの内のいずれかの成熟ポリペプチドと少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する、実施形態1~67のいずれか一つに記載の方法。
【0254】
69.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、若しくは配列番号11の内のいずれか、又はこれらの内のいずれかの成熟ポリペプチドと少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する、実施形態1~68のいずれか一つに記載の方法。
【0255】
70.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、
a)配列番号1と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であり、且つP65A、N275S、C372A、M386Q、R389A、G482A、T523N、P615T、T756K、A936S、T972C、I1035C、T1076C、Y1122C、A1129C、F1132C、K1168C、S1195C、及びC1199Sからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、例えば、前記アミノ酸置換の内の2つ以上を含むアミノ酸配列を有する酵素であって、ナンバリングは、配列番号1に基づく、酵素、
b)配列番号4と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であり、且つP65A、C372A、P615T、A1073C、H1122C、及びC1195Gからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、例えば、前記アミノ酸置換の内の2つ以上を含むアミノ酸配列を有する酵素であって、ナンバリングは、配列番号4に基づく、酵素、
c)配列番号11と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であり、且つP52A、G607T、L1064C、及びY1110Cからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、例えば、前記アミノ酸置換の内の2つ以上を含むアミノ酸配列を有する酵素であって、ナンバリングは、配列番号11に基づく、酵素、
並びに
d)配列番号5と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であり、且つ置換G386Q及び/又はP620Tを含むアミノ酸配列を有する酵素であって、ナンバリングは、配列番号5に基づく、酵素
からなる群から選択される、実施形態1~69のいずれか一つに記載の方法。
【0256】
71.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1のC372に対応するシステインのアミノ酸置換を有しており、好ましくは、セリン、アラニン、又はグリシンへのアミノ酸置換を有している、実施形態1~70のいずれか一つに記載の方法。
【0257】
72.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)、ビフィドバクテリウム・エアロフィラム(Bifidobacterium aerophilum)、若しくはビフィドバクテリウム・モンゴリエンセ(Bifidobacterium mongoliense)から得られるか、又はバチルス属(Bacillus)から得られ、好ましくは、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、若しくはバチルス属種(Bacillus sp.)S3から得られるか、バリバクラム属種(Varibaculum sp.)から得られるか、ウルミテラ属(Urmitella)から得られ、好ましくは、ウルミテラ・チモネンシス(Urmitella timonensis)から得られるか、ストレプトコッカス属(Streptococcus)から得られ、好ましくは、ストレプトコッカス・エンテリクス(Streptococcus entericus)DSM 14446から得られるか、ストレプトマイセス属(Streptomyces)から得られ、好ましくは、ストレプトマイセス・シラツス(Streptomyces cirratus)から得られるか、クロストリジウム属(Clostridium)から得られ、好ましくは、クロストリジウム・ネクサイル(Clostridium nexile)CAG:348から得られるか、又はネオバチルス属(Neobacillus)から得られ、好ましくは、ネオバチルス・バタビエンシス(Neobacillus bataviensis)、ネオバチルス・メソナエ(Neobacillus mesonae)、若しくはネオバチルス・ニアシニ(Neobacillus niacini)から得られるか、又はこれらの属若しくは種の内のいずれかから得られる酵素のバリアントである、実施形態1~71のいずれか一つに記載の方法。
【0258】
73.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、長さが最大約1500個のアミノ酸であり、例えば、最大約1400個のアミノ酸、又は最大約1350個のアミノ酸であり、例えば、850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは850~1400個のアミノ酸であり、例えば、850~1350又は1100~1400個のアミノ酸である、実施形態1~72のいずれか一つに記載の方法。
【0259】
74.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1若しくは2の内のいずれか又は配列番号1若しくは2の内のいずれの成熟ポリペプチドと少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する、実施形態1~73のいずれか一つに記載の方法。
【0260】
75.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1と少なくとも50%同一であり、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する、実施形態1~74のいずれか一つに記載の方法。
【0261】
76.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所若しくは複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/若しくは挿入を有しており、例えば、1、若しくは2、若しくは3、若しくは4、若しくは5、若しくは6、若しくは7、若しくは8、若しくは9、若しくは10、若しくは11、若しくは12、若しくは13、若しくは14、若しくは15、若しくは16、若しくは17、若しくは18、若しくは19、若しくは20、若しくは21、若しくは22、若しくは23、若しくは24、若しくは25、若しくは26、若しくは27、若しくは28、若しくは29、若しくは30個の改変しており、特に置換を有する、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15の内のいずれかに由来するポリペプチド、又はこれらの内のいずれかの成熟ポリペプチドに由来するポリペプチドである、実施形態1~75のいずれか一つに記載の方法。
【0262】
77.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、1箇所又は複数箇所の位置で、1~30個の改変を有しており、例えば、置換、欠失、及び/又は挿入を有しており、例えば、1、又は2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25、又は26、又は27、又は28、又は29、又は30個の改変を有しており、特に置換を有する、配列番号1に由来するポリペプチドである、実施形態1~76のいずれか一つに記載の方法。
【0263】
78.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15の内のいずれかに由来するポリペプチドであるか、又はこれらの内のいずれかの成熟ポリペプチドであって、N末端及び/若しくはC末端が、1つ若しくは複数のアミノ酸の付加により伸長されているか、又は1つ若しくは複数のアミノ酸が、N末端及び/若しくはC末端から欠失されている、成熟ポリペプチドに由来するポリペプチドである、実施形態1~77のいずれか一つに記載の方法。
【0264】
79.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、前記酵素が得られる野生型酵素と比較して、C末端がトランケートされている、実施形態1~78のいずれか一つに記載の方法。
【0265】
80.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるか、又はバチルス属(Bacillus)から得られ、好ましくは、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)から得られるか、又はバリアントであって、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるか、又はバチルス属(Bacillus)から得られ、好ましくは、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントである、実施形態1~79のいずれか一つに記載の方法。
【0266】
81.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるか、又はバリアントであって、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)から得られ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)から得られるラクターゼ活性を有する酵素のバリアントである、実施形態1~80のいずれか一つに記載の方法。
【0267】
82.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは850~1350個のアミノ酸であり、より好ましくは880~1350、880~1320、又は885~1310個のアミノ酸である、実施形態1~81のいずれか一つに記載の方法。
【0268】
83.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、長さが850~1500個のアミノ酸であり、好ましくは1250~1500個のアミノ酸であり、より好ましくは1250~1350又は1290~1350個のアミノ酸であり、さらにより好ましくは1300~1305個のアミノ酸であり、例えば1302又は1304個のアミノ酸である、実施形態1~82のいずれか一つに記載の方法。
【0269】
84.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトース代謝回転が少なくとも10個/秒/酵素分子である、実施形態1~83のいずれか一つに記載の方法。
【0270】
85.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトース代謝回転が少なくとも20個/秒/酵素分子であり、好ましくは少なくとも50個/秒/酵素分子であり、より好ましくは少なくとも80個/秒/酵素分子である、実施形態1~84のいずれか一つに記載の方法。
【0271】
86.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトースからの平均ラクトース代謝回転(好ましくは、約4.7%のラクトースから0.1%の残存ラクトースへ)が少なくとも10個/秒/酵素分子である、実施形態1~85のいずれか一つに記載の方法。
【0272】
87.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃での乳中において、初期ラクトースからの平均ラクトース代謝回転(好ましくは、約4.7%から0.01%の残存ラクトースへ)が少なくとも5個/秒/酵素分子である、実施形態1~86のいずれか一つに記載の方法。
【0273】
88.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、5℃でのミカエリス定数Kが最高40mMであり、好ましくは最高30mMであり、より好ましくは最高20mMである、実施形態1~87のいずれか一つに記載の方法。
【0274】
89.前記ラクターゼ活性を有する酵素は、37℃でのミカエリス定数Kが最高40mMであり、好ましくは最高30mMであり、より好ましくは最高20mMである、実施形態1~88のいずれか一つに記載の方法。
【実施例
【0275】
方法1:
LAU(B)アッセイ
特定のラクターゼのLAU-B/gでの活性を、pH6.5及び30℃で、0.05M MES、1mM MgSO4 7H2O、450mg/L Brij 35中に、1.46mg/ml 基質を含む緩衝液中のo-ニトロフェニル β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)から放出されたo-ニトロフェニル(ONP)を直接測定することにより決定し得る。600秒間のインキュベーション後、0.2M Na2CO3を添加して反応を停止させ、126秒間のインキュベーション後に、放出されたONPを405nmで測定する。この活性は、活性が既知のラクターゼで実行された標準曲線と比較することにより得られ、これから、未知のサンプルの活性を算出する。活性が既知のラクターゼは、例えば、Novozymes A/S,Denmarkから得られるSaphera(登録商標)であり得る。
【0276】
方法2:
最適温度を決定するためのアッセイ
温度プロファイル35℃~75℃を決定するためのアッセイ
最適温度を決定するための温度プロファイルを、希釈した酵素サンプル(50mM コハク酸、50mM HEPES、50mM CHES、150mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2+0.01% triton X-100、pH6.5で希釈) 10μlをPCRチューブ入れることにより調製する。次いで、基質(167mM ラクトース、50mM コハク酸、50mM HEPES、50mM CHES、150mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、pH6.5)90μlを添加し、このPCRチューブを、(TProfessionalサーモサイクラー、Biometraを使用して)温度勾配35~75℃の予熱PCRブロックに入れ、35~75℃(勾配)で30分にわたりインキュベートし、次いで氷上に置く。0.25M NaOH 100μlを添加することにより、反応を停止させる。20μlを、96ウェルマイクロタイタープレートに移し、GOD-Perid(100mM リン酸カリウム緩衝液、pH7、0.6g/l グルコースオキシダーゼ、0.02g/l 西洋ワサビペルオキシダーゼ、1.0g/l ABTS)溶液 230μLを添加する。室温での暗所における30分後、吸光度を420nmで測定する。酵素の初期希釈を、最適温度での最終420nm読取り値がAbs0.5~2.5であるように調整すべきである。420nmでのデルタAbsが最高の温度(「酵素ありのAbs 420nm」-「酵素なしのAbs 420nm」、即ち、バックグラウンド)を100%とし、次いで、読み取るデルタAbs 420nmを、最高値でのデルタAbs 420nmに関連付ける。
【0277】
実施例1
使用するラクターゼは、Novozymes A/SのSaphera 2600L(ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、配列番号1)であり、活性が2600LAU(B)/gであると公表されている。
【0278】
試験1
脱脂乳 248.5リットルをインキュベーションタンクにポンプで注入し、次いで5℃まで冷却した。
【0279】
この乳に、Saphera 1.5kg(乳1リットル当たり15,600LAU(B)に相当する0.6%の投与量)を添加し、次いで、乳を、18時間にわたり約50rpmで撹拌した。
【0280】
インキュベーションの終了時に、この乳を、スチームインジェクションを使用して、下記のUHTで処理した:UHT条件(140℃/4秒)、及び下流の2段階均質化(70℃ 200/50bar)。
【0281】
この乳の温度を瞬時に(約1秒で)90度まで低下させるフラッシュ冷却法で、この乳を、140度から約90度まで冷却した。この後、約30秒かけて温度を約60度まで低下させ(下流の均質化を含む)、次いで、再び約30秒かけて温度を室温(約20℃)まで低下させた後に、充填した。
【0282】
UHT後にサンプルを回収し、2つのサンプルを、分析するまで凍結させ、残りのサンプルを、最高3週間にわたり室温で保存し、残存ラクトースに関して分析した。
【0283】
試験2
脱脂乳 248.875リットルを、Saphera 1.125kg(0.45%投与量)と低温(5℃)で十分に混合した。この酵素及び乳を、45分にわたり混合し、次いで、スチームインジェクションを使用して、下記のUHT条件で処理した:UHT条件(140℃/4秒)、及び下流の2段階均質化(70℃ 200/50bar)。
【0284】
フラッシュ冷却を使用して、この乳を、約1秒で140度から約90度まで冷却した。この後、約30秒かけて温度を約60度まで低下させ(下流の均質化を含む)、次いで、再び約30秒かけて温度を室温(約20℃)まで低下させた後に、充填した。
【0285】
UHT後にサンプルを回収し、2つのサンプルを、分析するまで凍結させ、残りのサンプルを、最高3週間にわたり室温で保存し、残存ラクトースに関して分析した。
【0286】
試験3
脱脂乳 248.5リットルを、UHTユニットにポンプで注入した。乳の温度が70℃に達すると、乳の流れがUHT処理に向かう途中で、この高温の乳の流れ(70℃)にSaphera 1.5kg(0.6%投与量)をポンプで注入した。UHT条件は、下記のスチームインジェクションであった:UHT条件(140℃/4秒)、及び下流の2段階均質化(70℃ 200/50bar)。
【0287】
酵素の添加後、乳を瞬時に高温蒸気に触れさせて、この乳の温度を瞬時に(約1秒で)140度に上昇させ、続いて、140度で4秒間保持し、1秒間(フラッシュ冷却)で温度を約90度まで低下させ、30秒かけて温度をさらに約60度まで低下させ(この段階中に、下流の均質化を実施した)、30秒かけて温度を室温(約20℃)まで低下させた後に、充填した。
【0288】
UHT後にサンプルを回収し、2つのサンプルを、分析するまで凍結させ、残りのサンプルを、最高3週間にわたり室温で保存し、残存ラクトースに関して分析した。
【0289】
試験4
脱脂乳 248.5リットルを、Saphera 1.5kg(0.6%投与量)と低温(5℃)で十分に混合した。この酵素及び乳を、10分にわたり混合し、次いで、スチームインジェクションを使用して、下記のUHT条件で処理した:UHT条件(140℃/4秒)、及び下流2段階均質化(70℃ 200/50bar)。
【0290】
フラッシュ冷却を使用して、この乳を、約1秒で140度から約90度まで冷却した。この後、約30秒かけて温度を約60度まで低下させ(下流の均質化を含む)、次いで、再び約30秒かけて温度を室温(約20℃)まで低下させた後に、充填した。
【0291】
UHT後にサンプルを回収し、2つのサンプルを、分析するまで凍結させ、残りのサンプルを、最高3週間にわたり室温で保存し、残存ラクトースに関して分析した。
【0292】
試験5
脱脂乳 247リットルを、Saphera 3kg(1.2%投与量)と低温(5℃)で十分に混合した。乳を、スチームインジェクションを使用して、下記のUHT条件で瞬時に処理した:UHT条件(140℃/4秒)、及び下流2段階均質化(70℃ 200/50bar)。
【0293】
フラッシュ冷却を使用して、この乳を、約1秒で140度から約90度まで冷却した。この後、約30秒かけて温度を約60度まで低下させ(下流の均質化を含む)、次いで、再び約30秒かけて温度を室温(約20℃)まで低下させた後に、充填した。
【0294】
UHT後にサンプルを回収し、2つのサンプルを、分析するまで凍結させ、残りのサンプルを、最高3週間にわたり室温で保存し、残存ラクトースに関して分析した。
【0295】
試験6
脱脂乳 249.25リットルを、Saphera 0.75kg(0.3%投与量)と低温(5℃)で十分に混合した。乳を、スチームインジェクションを使用して、下記のUHT条件で瞬時に処理した:UHT条件(140℃/4秒)、及び下流2段階均質化(70℃ 200/50bar)。
【0296】
フラッシュ冷却を使用して、この乳を、約1秒で140度から約90度まで冷却した。この後、約30秒かけて温度を約60度まで低下させ(下流の均質化を含む)、次いで、再び約30秒かけて温度を室温(約20℃)まで低下させた後に、充填した。
【0297】
UHT後にサンプルを回収し、2つのサンプルを、分析するまで凍結させ、残りのサンプルを、最高3週間にわたり室温で保存し、残存ラクトースに関して分析した。
【0298】
試験7
脱脂乳 247リットルを、UHTユニットにポンプで注入した。乳の温度が90℃に達すると、この乳を、保持チューブ中で約90℃にて2分にわたりインキュベートした。次いで、乳の流れがUHT処理に向かう途中で、この高温の乳の流れ(90℃)にSaphera 3kg(1.2%投与量)をポンプで注入した。UHT条件は、下記のチューブ交換加熱であった:UHT条件(140℃/4秒)。ここで、2段階均質化を上流で行なった(70℃ 200/50bar)。
【0299】
酵素の添加後、約30秒かけて140度まで加熱し、140度で4秒間保持し、約40秒かけて温度を約45度まで低下させ、次いでさらに30秒かけて温度を室温(約20℃)まで低下させた後に、充填した。
【0300】
UHT後にサンプルを回収し、2つのサンプルを、分析するまで凍結させ、残りのサンプルを、最高3週間にわたり室温で保存し、残存ラクトースに関して分析した。
【0301】
残存ラクトース含有量の分析
残存ラクトースの分析を、パルスアンペロメトリー検出器を備えた高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)で実施した。
【0302】
HPAEC-PADのためのサンプル調製:
サンプル 50ulを、MQ水 500ulが入った5mlのエッペンドルフチューブに移した。Carrez I溶液 10ulを添加して混合し、次いでCarrez II溶液 10ulを添加して混合した。次いで、MQ水 4.43ml(総量5ml)を、添加して混合した。遠心分離を、5分にわたり14200rpmで実行した。上清を5倍に希釈し、その後、一部のサンプルに関しては20倍に希釈した。これらのサンプルを、HPAEC-PADで分析した。
【0303】
分析方法:
装置:Dionex IC-5000
ポンプ:ICS-5000シングルポンプモデルSP-5,S/N 11113787
オートサンプラ:Thermo Scientific AS-AP,P/N 074925,S/N 12101147
オーブン ICS-5000検出器/クロマトグラフィーモジュールモデルDC-5,S/N:11102695
検出器:Dionex IC-5000 ECD,P/N 072043,S/N 11113974,ECDセル P/N 072044,S/N 10198 非使い捨て金電極 P/N 063494,S/N 50435を備えている。
カラム:CarboPac PA20 Guardカラム,3×30mm(Dionex P/N 060144)と連結されたCarboPac PA20カラム,3×150mm(Dionex P/N 060142)
溶離液:
A:MQ水
B:200mM NaOH
C:200mM NaOH中の100mM 酢酸ナトリウム
D:200mM NaOH中の1mM 酢酸ナトリウム
【0304】
【表1】
【0305】
【表2】
【0306】
【表3】
【0307】
実施例2
UHT処理
1%(w/v)Saphera 2600L(ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、配列番号1)、0.25%(w/v)Biolacta N5(バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、配列番号2)、1%(w/v)Bonlacta(ラクトバシラス・デルブリュッキイ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp.Bulgaricus)、配列番号3)、及び1%(w/v)Lactozym Pure 6500L(クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis))をそれぞれ、ラクトース含有量が4.7%である脱脂乳に添加し、UHT工程があるにもかかわらず、取り扱い/チューブ等が完全に無菌ではないことから、微生物の増殖を避けるために、アジ化ナトリウム*を0.025%(w/v)の最終濃度まで添加した。この乳サンプルを、下記で説明するように、実験室規模のUHT装置に適用した。乳サンプル 10mlが入ったシリンジを、長いテフロンチューブに接続し、このチューブを、3つの槽に順次浸した。シリコーン製の最初の槽は、70℃であり、テフロンチューブ 3mを備えており、2番目に接続された槽もまた、シリコーン製であり、140℃であり、且つテフロンチューブ 50cmを備えており、最後の槽は、140℃処理後に乳を冷却するための1mの氷/水槽(0℃)であった。シリンジで3ml/分の流量を適用し、乳サンプルを、30秒にわたり70℃で確実にインキュベートし、5秒にわたり140℃で確実にインキュベートした後、氷/水槽中で10秒にわたり冷却して、この乳を0~10℃まで冷却した。最後に、乳を、氷/水槽後に10mlシリンジで回収し、サンプルを、残存活性に関してアッセイした。
【0308】
*アジ化ナトリウムは、無菌性が確保されている商業プロセスでは使用されないが、完全に無菌ではない可能性があり且つ乳が消費されないこの研究室設定では使用される。
【0309】
残存活性アッセイ
サンプルを、5℃で45分にわたり、予冷した遠心分離機で20,600gにて遠心分離し、上清を、20mM コハク酸ナトリウム及び0.01% triton x-100、pH6.5で希釈して、405nmで1.5未満の吸光度読取り値を測定可能にした。各サンプル 25μlを、ONPG基質(1.67mg/ml ONPG(o-ニトロフェニル β-D-ガラトピラノシド、約5.5mM)、0.05M MES、1mM MgSO4、150mM KCl、0.01% Triton X-100、pH6.5) 175μlと混合し、40℃で2.5時間にわたりインキュベートし、Na2CO3 50μl+5mM Na4EDTAを添加して停止させ、405nmで測定した。残存活性(%)を、式=((Abs405加熱処理サンプル-Abs405ブランク)*希釈係数)/((Abs405非処理サンプル-Abs405ブランク)*希釈係数)*100%を使用して算出した。
【0310】
加熱処理サンプルは、上記で説明したように、脱脂乳及びアジ化ナトリウムと混合し、UHT処理及びその後の冷却に供した酵素である。非処理サンプルは、脱脂乳及びアジ化ナトリウムと混合したがUHT処理を行なっていない同一の酵素である。これらのサンプルの両方を、405nmでの吸光度が0.5~1.0の範囲になるように希釈した。ブランクは、酵素を含まないサンプルであり、酵素を含むサンプルと同一の希釈係数を使用している。
【0311】
【表4】
【0312】
表3は、ラクターゼがUHT処理に対してさまざまな程度まで耐え得ることを示しており、最高の残留活性を、下記の順で見出し得る(最高の残存活性が最初):Biolacta N5、Saphera 2600L、Lactozym pure 6500L、及びBonlacta。
【0313】
Biolacta(登録商標)N5(配列番号2)及びSaphera(登録商標)2600L(配列番号1)は、クレードDYLGEのGH2ラクターゼであり、Lactozym(登録商標)Pure 6500L(クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来の酵母ラクターゼ)、及びBonlacta(登録商標)(配列番号3)は、クレードMGNのGH2ラクターゼである。
【0314】
実施例3:
UHT処理
表4に示すアミノ酸置換を有するSaphera(配列番号1)のPEバリアントのバッチを、0.025% アジ化ナトリウムを含む脱脂乳に、最終濃度5%(v/v)まで添加した。5%(v/v)は、ほぼ、Saphera 2600Lの1%(w/v)と同量の酵素に相当する。この乳サンプルを、下記で説明するように、実験室規模のUHT設定に適用した。乳サンプル 10mlが入ったシリンジを、長いテフロンチューブに接続し、このチューブを、3つの槽に順次浸した。シリコーン製の最初の槽は、70℃であり、テフロンチューブ 3mを備えており、2番目に接続された槽もまた、シリコーン製であり、140℃であり、且つテフロンチューブ 50cmを備えており、最後の槽は、140℃処理後に乳を冷却するための1mの氷/水槽(0℃)であった。シリンジで3ml/分の流量を適用し、乳サンプルを、30秒にわたり70℃で確実にインキュベートし、5秒にわたり140℃で確実にインキュベートした後、氷/水槽中で10秒にわたり冷却して、この乳を0~10℃まで冷却した。最後に、乳を、氷/水槽後に10mlシリンジで回収し、サンプルを、残存活性に関してアッセイした。
【0315】
残存活性アッセイ
サンプルを、5℃で45分にわたり、予冷した遠心分離機で20,600gにて遠心分離し、上清を、20mM コハク酸ナトリウム及び0.01% triton x-100、pH6.5で希釈して、405nmで1.5未満の吸光度読取り値を測定可能にした。各サンプル 25μlを、ONPG基質(1.67mg/ml ONPG(o-ニトロフェニル β-D-ガラトピラノシド、約5.5mM)、0.05M MES、1mM MgSO4、150mM KCl、0.01% Triton X-100、pH6.5(好ましくは、NaOHで調整した)) 175μlと混合し、40℃で2.5時間にわたりインキュベートし、Na2CO3 50μl+5mM Na4EDTAを添加して停止させ、405nmで測定した。残存活性(%)を、式=((Abs405加熱処理サンプル-Abs405ブランク)*希釈係数)/((Abs405非処理サンプル-Abs405ブランク)*希釈係数)*100%を使用して算出した。
【0316】
次いで、各バリアントの残存活性を、下記式=(バリアントの残存活性%)/(配列番号1のラクターゼの残存活性%)*100%を使用して、配列番号1のラクターゼの残留活性と関連付けており、この数値を、表4に示す。
【0317】
【表5】
【0318】
表4は、V1~V10の10種全てのバリアントが、配列番号1のラクターゼと比較して残存活性が改善されていることを示す。特に、V9は、配列番号1のラクターゼと比較して6倍を超えて高い残存活性を有した。
【0319】
実施例4:
UHT処理後に高い残存活性を有する新たに同定されたラクターゼ
この実施例では、多くの新たに同定されたラクターゼ及びこれらのバリアントは、本発明の方法で有用であることが実証されている。ラクターゼは、UHT処理の直前に乳に添加されており、室温で数日間保存する間に乳中のラクトースを効率的に加水分解するのに十分な、UHT処理後の残存活性を有することが示されている。
【0320】
一部のラクターゼは、分泌された酵素としての発現を容易にするためにC末端がトランケートされている新たに同定された野生型酵素であるが、他は、確立されているタンパク質操作(PE)技術を使用して1つ又は複数のアミノ酸が置換されている、これらの野生型酵素のバリアントである。この実施例で試験されている酵素を、下記の表5に列挙し、トランケートされた野生型酵素間の配列同一性のマトリックスを、表6に示す。
【0321】
一部の新たに同定された、C末端がトランケートされた野生型酵素は、2022年12月22日に出願された欧州特許出願第22215776号明細書の優先権を主張する同時係属出願でさらに説明されている。
【0322】
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)中での発現
細菌ドナー株のゲノム配列(表5)を、EMBL-EBI(www.ebi.ac.uk/)からダウンロードし、CAZYデータベースGH2ファミリ(Lombard V,Golaconda Ramulu H,Drula E,Coutinho PM,Henrissat B(2014)The Carbohydrate-active enzymes database(CAZy),2013,Nucleic Acids Res 42:D490-D495;Elodie Drula,Marie-Line Garron,Suzan Dogan,Vincent Lombard,Bernard Henrissat,Nicolas Terrapon,The carbohydrate-active enzyme database:functions and literature,Nucleic Acids Research,Volume 50,Issue D1,7 January 2022,Pages D571-D577;http://www.cazy.org/)からの推定ラクターゼに関して分析した。
【0323】
表5の酵素をコードする遺伝子を、当技術分野で既知の標準的な方法を使用して、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)中での発現に最適化した。或いは、コドン最適化遺伝子を、商業的に購入し得る。配列番号9のラクターゼ(ネオバチルス・バタビエンシス(Neobacillus bataviensis))及び配列番号12のラクターゼ(ストレプトマイセス・シラツス(Streptomyces cirratus))の場合には、(トランケートされた成熟ペプチドの)天然DNAを使用した。この遺伝子を、天然分泌シグナルを置き換えるバチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)分泌シグナルをコードする(下記のアミノ酸配列をコードする:MKKPLGKIVASTALLISVAFSSSIASA(配列番号16))DNAと融合させた。さらに、この発現構築物により、成熟ラクターゼに、アミノ酸配列HHHHHHPR(配列番号17)からなるアミノ末端ポリヒスチジンタグが付加されて、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによる精製が容易になる。得られる遺伝子を、Twist Bioscience(San Francisco,CA,USA)からの完全に合成により製造されるDNA断片として注文した。
【0324】
線形統合構築物は、強力なプロモータ及びクロラムフェニコール耐性マーカーと共に2つのB.スブチリス(B.subtilis)染色体領域間の目的の遺伝子の融合により形成されたSOE-PCR融合産物(Horton,R.M.,Hunt,H.D.,Ho,S.N.,Pullen,J.K.and Pease,L.R.(1989)Engineering hybrid genes without the use of restriction enzymes,gene splicing by overlap extension,Gene 77:61-68)であった。このSOE PCR法はまた、国際公開第2003095658号パンフレットでも説明されている。
【0325】
ラクターゼ遺伝子を、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)αアミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)α-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、及び安定化配列を含むバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)cryIIIAプロモータからのプロモータからなる三重プロモータ系(国際公開第99/43835号パンフレットで説明されている通り)の制御下で発現させた。
【0326】
ラクターゼ発現構築物のそれぞれに関して、SOE-PCR産物をバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)に形質転換させ、ペクチン酸リアーゼ遺伝子座への相同組換えにより染色体に組み込んだ。続いて、組み込まれた発現構築物を含有する組換えバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)クローンを、液体培地中で増殖させた。培養ブロスを遠心分離(20,000×g、20分)し、沈殿物から上清を注意深くデカントして酵素の精製に使用したか、或いは滅菌ろ過上清をアッセイに直接使用した。
【0327】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによる組換え酵素の精製
清澄化した上清のpHをpH8に調節し、0.2μMフィルタに通してろ過し、上清を、5mlのHisTrap(商標)エクセルカラムにアプライした。ロードする前に、このカラムを、5カラム体積(CV)の50mM Tris/HCl pH8で平衡化した。非結合物質を除去するために、このカラムを、8CVの50mM Tris/HCl pH8で洗浄し、50mM HEPES pH7+10mMイミダゾールを用いて、標的の溶出液を得た。溶出したタンパク質を、3CVの50mM HEPES pH7+100mM NaClを使用して平衡化したHiPrep(商標)26/10脱塩カラムで脱塩させた。この緩衝液をまた、標的の溶出にも使用し、流量は10ml/分であった。関連する画分を選択し、クロマトグラム及びSDS-PAGE分析に基づいてプールした。
【0328】
UHT処理
表5の酵素を脱脂乳に添加し、UHT処理を実施し、続いて0.5時間及び72時間にわたり23℃でインキュベートし、下記で説明するように、これら2つの間隔のそれぞれの後に、ラクターゼ活性及びラクトースの測定を実施した。
【0329】
脱脂乳1リットル当たり5.5~31.6mgの酵素タンパク質(ep)を、酵素に応じて使用した。ほとんどの酵素に関して、12.7mg ep/L 脱脂乳を使用した(表7、2列目を参照されたい)。取り扱い等に起因して、UHT工程にもかかわらずチューブは完全には無菌ではないことから、アジ化ナトリウムを、試験する全ての乳において0.025%(w/v)の最終濃度まで添加して、微生物の増殖を回避した。乳サンプルを、下記で説明する実験室規模のUHT設定に適用した。乳サンプル 10mlが入ったシリンジを、長いテフロンチューブ(内径0.8mm)に接続し、このチューブを、4つの槽に順次浸した。最初の槽は、90℃でシリコーンに覆われており、テフロンチューブ 3mを備えており、2番目に接続された槽は、140℃でシリコーンに覆われており、テフロンチューブ 50cmを備えており、3番目のシリコーン槽は、70℃であり、テフロンチューブ 3mを備えており、最後の槽は、乳を冷却するための、テフロンチューブ 1mを備える氷/水槽(0℃)であった。シリンジで3ml/分の流量を適用し、乳サンプルを、30秒にわたり90℃で確実にインキュベートし、5秒にわたり140℃及び30秒にわたり70℃で確実にインキュベートした後、氷/水槽中で10秒にわたり冷却して、この乳を0~10℃の範囲の温度まで冷却した。最後に、乳を、氷/水槽後にチューブに回収し、サンプルを、0.5時間及び72時間それぞれにわたり23℃でインキュベートし、次いで、パルスアンペロメトリー検出器を備えた高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)を使用して、残存活性及びラクトース量に関してアッセイした。
【0330】
残存活性アッセイ
サンプルを、5℃で45分にわたり、予冷した遠心分離機で20,600gにて遠心分離し、上清を、20mM コハク酸ナトリウム及び0.01% triton X-100、pH6.5で希釈して、405nmで1.5未満の吸光度読取り値を測定可能にした。各サンプル 25μlを、ONPG基質(1.67mg/ml ONPG(o-ニトロフェニル β-D-ガラトピラノシド、約5.5mM)、0.05M MES、1mM MgSO4、150mM KCl、0.01% Triton X-100、pH6.5) 175μlと混合し、40℃で2.5時間にわたりインキュベートし、Na2CO3 50μl+5mM Na4EDTAを添加して停止させ、405nmで測定した。残存活性(%)を、式=((Abs405加熱処理サンプル-Abs405ブランク)*希釈係数)/((Abs405非処理サンプル-Abs405ブランク)*希釈係数)*100%を使用して算出した。
【0331】
加熱処理サンプルは、上記で説明したように、脱脂乳及びアジ化ナトリウムと混合し、UHT処理及びその後の冷却に供し、続いて0.5時間及び72時間にわたり23℃でインキュベートした酵素である。非処理サンプルは、脱脂乳及びアジ化ナトリウムと混合したがUHT処理及びインキュベーションを行なっていない同一の酵素である。これらのサンプルの両方を、405nmでの吸光度が0.5~1.0の範囲になるように希釈した。ブランクは、酵素を含まないサンプルであり、酵素を含むサンプルと同一の希釈係数を使用している。結果を、下記の表8に示す。
【0332】
残存ラクトース含有量の分析
残存ラクトースの分析を、パルスアンペロメトリー検出器を備えた高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)により実施した。
【0333】
HPAEC-PADのためのサンプル調製:
酵素を、乳サンプル 1mlに氷酢酸 5ulを添加することにより不活性化し、5分にわたり90℃まで加熱し、10分にわたり20,000gで遠心分離した。サンプル 50ulを、M(Milli-Q)Q水 500ulが入った5mlのエッペンドルフチューブに移した。Carrez I溶液 10ulを添加して混合し、次いでCarrez II溶液 10ulを添加して混合した。次いで、MQ水 4.43ml(総量5ml)を、添加して混合した。遠心分離を、5分にわたり20,000gで実行した。上清を、Milli Q水で5倍希釈した。これらのサンプルを、HPAEC-PADで分析した。
【0334】
HPAEC-PADを使用するラクトースの決定
実施する分析は、Leeuwen S,Kuipers B,Dijkhuizen L,Kamerling J.Comparative structural characterization of 7 commercial galacto-oligosaccharide(GOS)products,Carbohydrate Research,425(2016)48-58で本質的に説明されており、若干変更されており、例えば、下記で規定するように、勾配がより短くなっている。Dionex ICS-6000ワークステーション(Dionex,Amsterdam,The Netherlands)を使用しており、これは、CarboPac PA1 4×50mm Guardカラム(Dionex,製品番号043096)、続いてCarboPac PA1 4×250mm(Dionex,製品番号035391)及びICS-6000 DC ECD検出器(Dionex)を装備しており、A:Milli-Q水、B:100mM NaOH中の600mM NaOAc、C:100mM NaOH、及びD:50mM NaOAcの複合勾配を使用した。分画を、85%A、0%B、10%C、及び5%D、10%A、0%B、40%C、及び50%Dへの25分間の線形勾配、その後の0%A、25%B、75%C、及び0%Dへの2分間の線形勾配、その直後の100%Bによる5分間洗浄、並びに85%A、0%B、10%C、及び5%Dによる15分にわたる再生で、1.0mL/分にて実施した。ラクトース標準を使用して、酵素処理サンプル中のラクトースの量を決定した。結果を、下記の表7、3及び4列目に示す。
【0335】
非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの用量反応曲線
UHT処理サンプル中の酵素の活性と、非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(酵素#31、配列番号1)の活性とを比較可能にするために、非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(酵素#31、配列番号1)の用量/反応曲線を作成した。
【0336】
脱脂乳(+0.025%アジ化ナトリウム)中のB.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(酵素#31)の下記の用量を二重に調製し:2.03、1.63、1.30、1.04、0.832、0.666、0.532、0.426、0.341、0.273、0.218、0.174、0.140、0.112、0.0893、0.0715mg ep/リットル 脱脂乳、この酵素を含む乳を、室温(23℃)で3日にわたりインキュベートした。各サンプル中の残存ラクトースを、HPAEC-PADを使用して、上記の段落「残存ラクトース含有量の分析」で説明したように決定した。B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(#31)の投与量に対して、測定されたラクトースレベルをプロットすることにより、用量/反応曲線を作成した。図1を参照されたい。
【0337】
この曲線を使用して、非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(#31)の活性に対する%での各UHT処理ラクターゼの相対活性を決定した。表7の2及び4列目のデータを使用した。各ラクターゼに関して、この曲線を使用して、4列目の値(72時間のインキュベーション後の残存ラクトース(%))を使用して、同一温度での72時間のインキュベーション後の同一の残存ラクトース(%)に達するのに必要な非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの「対応する量」(mg ep/L 乳)を決定した。非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの活性に対する%でのUHT処理ラクターゼの相対活性を、非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの「対応する量」(mg ep/L 乳)(即ち、72時間にわたる23℃でのインキュベーション後の同一の残存ラクトース含有量に達するのに必要な量)の逆数に対する百分率でのUHT処理ラクターゼの量(mg ep/L 乳)(表7の2列目)の逆数として算出し、前記値を、用量/反応曲線を使用して決定した。実際には、この算出を、非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの「対応する量」(mg ep/L 乳)を、表7の2列目で見出されるUHT処理ラクターゼの量(mg ep/L 乳)で除算し、結果を百分率で表すことにより簡略化し得る。各ラクターゼに関してそのように決定された相対活性を、表7の6列目に示す。
【0338】
そのため、この値は、UHT処理及び23℃での3日間インキュベーションの後での残存ラクトースに基づく「UHT処理後の酵素活性の残存」の尺度である。非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(配列番号1)(さらに23℃で3日にわたりインキュベートされている)の用量/反応曲線を使用して、非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼの「対応する量」を決定する。
【0339】
【表6】
【0340】
【表7】
【0341】
【表8】
【0342】
【表9】
【0343】
【表10】
【0344】
【表11】
【0345】
結果:
表7の3及び4行目は、UHT処理、その後の0.5時間及び72時間それぞれの23℃でのインキュベーションの後の残存ラクトースを示す。ラクトースの低減は、主に、0.5時間(初期ラクトースの96%に対応する平均4.5g ラクトース/100ml)から72時間に起こり、酵素#1、3、及び5は、多くの国でラクトースフリーを主張するのに必要な0.01%未満の残存ラクトースである。使用した酵素用量(mg eq/L 乳)を、2列目に、各酵素に関して示す。酵素用量が増加すると、72時間後の残存ラクトースは低減される。
【0346】
5列目は、(「0.5時間でのg/L ラクトース」-「72時間でのg/L ラクトース」)/「mg ep/L」として算出された、UHT処理後の擬似比活性(酵素タンパク質1mg当たりに変換されたラクトースのグラム)を示しており、即ち、2列目の値で除算された、3列目の値-4列目の値(但し、ラクトース%ではなくg/Lで表される)を示す。表7中の酵素#10に関するデータを使用する例:(45g/L ラクトース-12.7g/L ラクトース)/5.5mg ep/L=5.9g ラクトース/mg ep(71.5時間当たり)。この疑似比活性は、酵素用量に対して残存ラクトースが直線的ではないことから、用量依存的であるという点で偏りがある(図1を参照されたい)。結果として、比較的低い酵素用量により、より高い酵素用量と比較して高い疑似比活性値が得られる。
【0347】
酵素の効率をより良く比較するために、「ストレス無負荷B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(#31)の相対活性」を上記のように算出しており、6列目に示す。酵素#10の場合の算出例を、図1に示しており、表7に従って、酵素#10の5.5mg ep/リットル 乳の用量を使用して、72時間後に残存ラクトースが1.27%となる(図1の水平矢印を参照されたい)。ストレス無負荷(非UHT処理)B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(酵素#31)の「対応する量」は、0.39mg eqとなる(図1の垂直矢印)。これにより、表7の6列目の酵素#10に関して示され得るように、7.1%の相対活性(0.39/5.5*100%)が得られる。これは、UHT処理及び72時間にわたる23℃でのインキュベーションの後のある特定の残存ラクトース含有量を得るのに必要なep量の逆数(72時間にわたる23℃でのインキュベーション後の同一の残存ラクトース含有量を得るのに必要な非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼのepの「対応する量」の逆数に対する百分率)として決定された非UHT処理B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(#31)と比較して、UHT処理後の酵素の相対活性の非常に優れた尺度である。
【0348】
7、8、及び9列目は、72時間にわたる23℃での保存後に1.41%の残存ラクトース(胃に優しいレベルは、ラクトースの70%低減であり得る)、0.1%の残存ラクトース(多くの国で低ラクトースレベルと主張するため)、又は0.01%の残存ラクトース(多くの国でラクトースフリーレベルと主張するため)に達するのに必要な、算出された酵素用量を示す。これらの数値を、下記の通りに算出する:1.41%、0.1%、及び0.01%のラクトースレベルに達するためのB.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(酵素#31)のmg ep/Lは、それぞれ、0.361、0.934、及び1.56mg ep/L 乳である(図1の用量反応曲線から決定した)。「ストレス無負荷B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼに対する相対活性(%)」の数値(表7の6列目)を使用して、各酵素に関する対応する数値を予測し、例えば、酵素#10の場合には、「ストレス無負荷B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼに対する相対活性(%)」の数値は、7.1%(0.071)であり、従って、酵素#10に関する酵素タンパク質の対応する量は、0.361/0.071、0.934/0.071、及び1.56/0.071mg ep/L 乳であり、これらは、5.1、13.1、及び22.0mg ep/L 乳である。
【0349】
5~50mg ラクターゼ ep/L 乳(4.5~5.0%ラクトース)の酵素用量を、典型的には、4~10℃での8~24時間の範囲のタンクインキュベーションにより、工業用バッチラクトース低減用途で使用して、ラクトースレベルが0.01~0.1% ラクトースに達した(%=g ラクトース/100ml 乳)。そのため、表7中の上位候補は、ラクトースフリー用途(0.01% ラクトース)に非常に適しており、相対活性がより低い他の配列は、ラクトースフリーではなくて低ラクトース用途により適し得る。
【0350】
表8の2及び3列目は、UHT処理後0.5時間及び72時間それぞれでの酵素の残存活性を示す。残存活性の程度は様々であり、驚くべきことに、ほとんどの酵素は、0.5時間と比較して72時間後に残存活性が増加しており、列挙されている酵素の全てに関して平均3倍超である。
【0351】
実施例2では、配列番号1のラクターゼの残存活性を、冷却前の30秒にわたる70℃及び5秒にわたる140℃でのインキュベーションの後に、2.14%と決定した。この実施例では、配列番号1のラクターゼ(酵素#31)を含むラクターゼを、冷却前に30秒にわたり90℃で、5秒にわたり140℃で、及び30秒にわたり70℃でインキュベートしており、従って、配列番号1のラクターゼの残存活性は、より低かった。
【0352】
残存活性%(表8)と、表7中の測定された残存ラクトースレベルとの間の相関が比較的低い理由は、各酵素のラクトースに対する比活性が異なるためであると考えられる。UHT処理後にラクトースを加水分解する酵素の能力は、ラクトースを変換する酵素の効率(UHT処理前の比活性)とUHT処理後の酵素の活性能力(残存活性%)とによる影響を受ける。
【0353】
アミノ酸変更により、酵素の性能が改善されている。特に、例えば、酵素#1(ビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)、C372A)での遊離Cys(酵素#31のC372に相同)の置き換え、例えば、酵素#2及び4におけるジスルフィドの導入、並びに例えば、酵素#3、6、及び7におけるcis-プロリンの置き換え。
【0354】
この実施例は、表5中の酵素が全て、本明細書で特許請求されている方法での使用に適していることを示す。
【0355】
表5中の酵素は全て、クレードDYLGEの細菌性GH2ラクターゼである。これらは全て、モチーフWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A]、SR[W/Y/F]YSGSGX[Y/G]R、及び[L/V/I]X[L/V/I]PHDを含む。
【0356】
図1に関する注記:
下記の表9の最初の2つの列は、図1のデータ点を示す。
【0357】
【表12】
【0358】
曲線を手作業/目視で読み取る代わりに、下記方程式1、並びに表10中の「a」及び「b」の数値を、見出しで言及されているラクターゼ%と共に使用して、適合方程式を作成した。表9中のラクトース%を使用して算出したmg ep/Lを、表9の3列目に示す。
方程式1:mg ep/L 乳=a*Ln(ラクトース%)+b
【0359】
【表13】
【0360】
実施例5:
pH6及び7での熱シフトアッセイ
熱シフトアッセイ(TSA)により、50%が変性している温度であるタンパク質の融点(Tm)を測定する。タンパク質の変性を、標的タンパク質が展開するにつれて露出する疎水性残基に結合するSYPRO Orange色素の蛍光の増加によりモニタリングする。
【0361】
精製されたサンプルを、MilliQ水で0.24mg/mlまで希釈した。熱シフトアッセイミックスを、SyProOrange(Invitrogen/ThermoFisher #S6650)を、所望のpH緩衝液(100mM コハク酸、100mM HEPES、100mM グリシン、150mM KCl、1mM CaCl2、0.01% TritonX100、pH6及び7に調整済)で200倍希釈することにより調製した。希釈サンプル 10ulを、96ウェル(Light Cycler 480マルチウェルプレート、Roche#04729692001)中のTSA ミックス 20ulに添加した。光学テープ(Roche、#04729757001)で密封した後、プレートを、LightCycler 480 IIリアルタイムPCR装置(Roche)中で25℃から95℃まで加熱し(温度上昇:3.2℃/分)、蛍光を連続的に測定した(切除/発光波長:465/510nm)。Tmを、蛍光の一次導関数を温度の関数(dF/dT)としてプロットし、最大dF/dtを持つ温度を決定することにより特定する。
【0362】
【表14】
【0363】
実施例6:
温度プロファイル
温度プロファイル35℃~75℃を決定するためのアッセイ:
最適温度を決定するための温度プロファイルを、希釈した酵素サンプル(50mM コハク酸、50mM HEPES、50mM CHES、150mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2+0.01% triton X-100、pH6.5で希釈)10μlをPCRチューブ入れることにより調製する。次いで、基質(167mM ラクトース、50mM コハク酸、50mM HEPES、50mM CHES、150mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、pH6.5)90μlを添加し、このPCRチューブを、(TProfessionalサーモサイクラー、Biometraを使用して)温度勾配35~75℃の予熱PCRブロックに入れ、35~75℃(勾配)で30分にわたりインキュベートし、次いで氷上に置く。0.25M NaOH 100μlを添加することにより、反応を停止させる。20μlを、96ウェルマイクロタイタープレートに移し、GOD-Perid(100mM リン酸カリウム緩衝液、pH7、0.6g/l グルコースオキシダーゼ、0.02g/l 西洋ワサビペルオキシダーゼ、1.0g/l ABTS)溶液 230μLを添加する。室温での暗所における30分後、吸光度を420nmで測定する。酵素の初期希釈を、最適温度での最終420nm読取り値が Abs0.5~2.5であるように調整すべきである。420nmでのデルタAbsが最高の温度(「酵素ありのAbs 420nm」-「酵素なしのAbs 420nm」、即ち、バックグラウンド)を100%とし(最適温度)、最高値のデルタAbs 420nmに対するデルタAbs 420nmに基づく他の温度での相対活性を使用して、温度プロフィアルを決定する。
【0364】
下記の表12に示すラクターゼ酵素を使用して、アッセイを実施した。酵素番号(酵素#)は、表5に従う。
【0365】
【表15】
【0366】
35~75℃の温度プロファイルを、表12に見出し得、酵素#9、11、30、31、及び16それぞれに関して、43.0℃、47.5℃、38.9℃、43℃、及び35℃未満に近い最適温度が示されている。50%の活性が残る温度(最適温度以降)は、それぞれ約55℃、55℃、46℃、58℃、及び52℃である(表12からの評価、アスタリスク*が付された2つの数値の間)。酵素の展開が完全に可逆的である場合には、最適後の活性の低下は、展開した酵素の量と相関し、表11に示す「融点」(Tm、酵素の半分が展開されている)は、この表12から得られる50%残存活性に近いはずである。しかしながら、典型的には、展開は不可逆的であり、ラクトース加水分解速度には温度依存性もあり、どちらも活性の低下に影響を及ぼす。実施例5で決定されたTmは、酵素#9、11、30、31、及び16に関してそれぞれ約57℃、55℃、54℃、56℃、及び63℃であることから(表11を参照されたい)、酵素#9、11、及び31のTmと50%残存活性との間には密接な一致があり、このことから、これらの酵素がアッセイで顕著な量の再折り畳みを有することが示唆されている。
【0367】
高温(70℃超)での相対活性のわずかな量(2~5%)は、一定であるように見え、これはおそらく、室温から70℃超への昇温中のラクトース加水分解に起因している(昇温時間は、1分未満と予想される)。
【0368】
実施例7
遊離システインの酸化の除去剤としての還元剤
酵素#31には、潜在的に酸化される可能性がある2つの遊離システイン(即ち、ジスルフィド形態ではないシステイン)(C372及びC1199)が存在しており、そのため再折り畳みが妨げられている。この実験を行なって、還元剤ジチオスレイトール(DTT)が、乳中に存在する酸化化合物と反応することにより、このCys酸化の除去剤となり得るかどうかを確認した。UHT処理及び残存活性(RA)の測定を、実施例4で説明されているように行なった。下記の表13に示すように、0.1mM DTTの添加によるプラスの効果があり(最後の列を参照されたい(「DTTありのRA%」/「DTなしのRA%」により算出されている))、このことから、乳中に存在する酸化化合物の除去により、1つ又は複数の遊離システインを含むラクターゼ酵素の残存活性が増加することが示唆されている。0.1mM DTTの添加は、システインが異なるアミノ酸に置換されている(それぞれ、C372A及びC1199S)2種のバリアントに対しては、それほど顕著な効果がない。これらを野生型(酵素#31)と比較すると、DTT添加の効果は、より低い。このことから、酵素#31での「遊離システイン」の酸化が再折り畳みに影響を及ぼすことが明確に示されている。0.1mM DTTでの野生型(酵素#31)の残存活性は、PEバリアントC372Aとほぼ同一であり、このことから、C372が酸化に対して最も敏感であることが示唆されている。DTTは、食品摂取には適していないが、食品用に認可されている他の還元剤(例えば、L-システイン、亜硫酸塩、又はグルタチオン)を、乳又は酵素製剤に添加し得る。
【0369】
【表16】
【0370】
実施例8:
工業規模の設定で高タンパク質チョコレート乳にて試験した配列番号1のラクターゼ酵素
44mg ep「配列番号1」/Lを、4.5% ラクトース、8% 乳タンパク質、及び1% ココアパウダーを含む高タンパク質チョコレート乳 4000Lと共に、高剪断ミキサーに入れた。Elecster 10800 UHT装置を使用し(間接UHT処理)、流量は約10,000L/h(90%容量)であり、酵素を、UHT処理開始の30分前に添加した。UHT条件を、5秒にわたる140~142℃での高加熱工程の前の5分にわたる80℃でのタンパク質安定化と共に実施した(均質化を、70℃、150/50barで上流にて行なった)。UHT後にサンプルを回収して凍結させ、1つのサンプルを、1時間後に回収して凍結させ、残りのサンプルを、1~9日にわたり周囲温度で保存し、次いで凍結させた。全てのサンプルを、HPAEC-PADを使用して、実施例4で説明されているように、残存ラクトースに関して分析した。
【0371】
【表17】
【0372】
表14は、UHT処理後の残存ラクトースを示す(データは、2回の測定の平均であり、Avg.Dev.は、「この平均からのデータ点の絶対偏差の平均」である)。使用した用量により、周囲温度での9日間後に、低ラクトース(0.1%未満のラクトース)と主張し得る。より多くの酵素が添加されると、これに応じて、ラクトースがより早く低減されるだろう。
【0373】
実施例9:
配列番号4のさらなるPEバリアント
この実施例では、配列番号4のさらなるPEバリアントを、実施例4と同一の条件を使用して試験した。UHT処理後に24時間にわたり23℃でインキュベートし、次いで残存活性及びラクトース量に関してアッセイしたサンプルを含めた。
【0374】
【表18】
【0375】
【表19】
【0376】
【表20】
【0377】
【表21】
【0378】
実施例10:
クレード及び系統樹の構築
GH2系統樹
CAZYで定義されるように、GH2ドメインを含む本発明のポリペプチド配列の系統樹を構築した(Lombard,Henrissat et al,2014.The carbohydrate-active enzymes database(CAZy) in 2013.Nucleic Acids Res.42:D490-5,http://www.cazy.org/)。少なくとも1つのGH2ドメインを含む成熟ポリペプチド配列の多重アラインメントから、系統樹を構築した。これらの配列を、MUSCLEアルゴリズムバージョン3.8.31(Edgar,2004.Nucleic Acids Research 32(5):1792-1797)を使用してアラインさせ、この系統樹を、FastTreeバージョン2.1.8(Price et al.,2010,PloS one 5(3):e9490)を使用して構築し、iTOL(Letunic & Bork,2007.Bioinformatics 23(1):127-128)を使用して可視化した。
【0379】
GH2ドメインを含むポリペプチドのサブセットも、PfamドメインID PF02837で定義されているように、グリコシルヒドロラーゼファミリ2N末端ドメインも含む(The Pfam protein families database:towards a more sustainable future:R.D.Finn,P.Coggill,R.Y.Eberhardt,S.R.Eddy,J.Mistry,A.L.Mitchell,S.C.Potter,M.Punta,M.Qureshi,A.Sangrador-Vegas,G.A.Salazar,J.Tate,A.Bateman,Nucleic Acids Research(2016)Database Issue 44:D279-D285)。このドメインは、ガラクトースの結合に関与する。本発明の全てのポリペプチドは、このグリコシルヒドロラーゼファミリ2N末端ドメインに加えて、GH2ドメインも含む。このグリコシルヒドロラーゼファミリ2N末端ドメインを、GH2Nドメインとする。一例として、ビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)由来の配列番号4において、GH2Nドメインは、34~178位に位置している。
【0380】
クレードの生成
GH2ドメインの含有に加えて、本発明のポリペプチドはまた、ラクターゼ活性に重要ないくつかの固有の短いペプチドモチーフも含む。本発明者らのデータから、これらのモチーフはまた、UHT処理等の加熱処理後に酵素が再び折り畳む能力にも重要であることが示されている。
【0381】
一例は、ビフィドバクテリウム・サミリイ(Bifidobacterium samirii)(配列番号4)中の591~600位に対応する位置に位置するWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A](配列番号18)である。
【0382】
GH2ドメインを含むポリペプチドを、異なるサブクラスタに分け得る。これらのサブクラスタは、1つ又は複数の短い配列モチーフにより定義されており、さらにはGH2ドメインを含む。
【0383】
DYLGEクレードの生成
本発明者らは、短いペプチドモチーフWTXXDY[I/L/R]GE[P/S/A](配列番号18)を含むあるサブクラスタを、DYLGEクレードとした。配列番号4の599位に位置する、このモチーフ中のグルタミン酸Eは、ガラクトースの結合に関与する。GH2ドメイン及びこのモチーフを含む全てのポリペプチド配列を、DYLGEクレードに属するとする。DYLGEクレードはまた、追加の短いペプチドモチーフも含み得る。配列番号4の164~174位に位置するSR[W/Y/F]YSGSGX[Y/G]R(配列番号19)、及び配列番号4の62~67位に対応するモチーフ[L/V/I]X[L/V/I]PHD(配列番号20)。どちらのモチーフも、GH2Nガラクトース結合ドメイン中に位置しており、基質結合に重要である。
【0384】
MGNクレードの生成
本発明者らは、配列番号3の532~539位に位置するモチーフEYXH[A/S/D/T]MG[N/T/L](配列番号21)を含むGH2の別のサブクラスタを、MGNクレードとした。グルタミン酸残基Eは、クレード内で完全に保存されており、酵素の活性部位において求核触媒として作用する(https://www.uniprot.org/uniprotkb/B3GS90/entry)。
【0385】
GH2ドメイン及びこのモチーフを含む全てのポリペプチド配列を、MGNクレードに属するとする。
【0386】
MGNクレードはまた、1つ又は複数の追加のモチーフも含み得る。モチーフ[I/V]RX[A/C/S]HYP[N/P/D/Q/T/S][D/H/Q/V](配列番号22)は、配列番号3の382~390位に位置しており、同様に、モチーフYGG[D/N]X[G/D][E/D](配列番号23)は、配列番号3の577~583位に対応しており、GXXXW[D/E][W/F/Y]X[D/E/N][Q/E/H]](配列番号24)は、配列番号3の558~567位に対応している。これらのモチーフは、配列番号3の活性部位付近で見出されており、基質結合に関与している。
【0387】
実施例11(比較例):
クレードDYLGEのGH2ではないラクターゼ
例えば高い耐熱性及び/又は高い比活性を有する多くの先行技術のラクターゼは、クレードDYLGEのGH2ラクターゼではない。これらの内のいくつかを、表18に列挙する。
【0388】
【表22】
【0389】
クレードMGNの多くの細菌性GH2ファミリラクターゼ酵素を、実施例4でのGH2クレードDYLGEラクターゼと同じ方法でUHT処理した(表7~8)。データを、表19に示す。
【0390】
【表23】
【0391】
72時間後にはラクトースレベルにほとんど変化が見られず、従って、UHT処理後の酵素タンパク質1mg当たりに変換されたラクトースのグラムも非常に低くかった((「0.5時間でのg/L ラクトース」-「72時間でのg/L ラクトース」)/「mg ep/L」として算出、例えば、酵素#40の場合には、(43.75-42.27)/15=0.098g ラクトース/mg ep)。同様に、非常に低い残存活性も見られた。1つ(酵素#42)を除く全てに関して、残存活性は、検出レベル未満であった。
【0392】
これらのデータは、GH2クレードDYLGE及びGH2クレードMGNの両方がGH2ファミリに属するにもかかわらず、試験したGH2クレードMGNラクターゼ酵素の全てが、実施例4で試験したGH2クレードDYLGEラクターゼ酵素と比較して、UHT処理後の残存が低いことを示す。
図1
【配列表】
2025501737000001.xml
【国際調査報告】