(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-23
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20250116BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20250116BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/25
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542141
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(85)【翻訳文提出日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2023050544
(87)【国際公開番号】W WO2023135170
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スカンドレラ,アマディン
(72)【発明者】
【氏名】ド トレネレ,モルガーヌ
(72)【発明者】
【氏名】レノー,ロマン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA121
4C083AA161
4C083AB032
4C083AB052
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC352
4C083AC422
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD331
4C083AD332
4C083BB11
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE06
(57)【要約】
活性スメクタイト粘土中へ吸収された10~1000KDaの分子量を有するヒアルロン酸を含み、ヒアルロン酸-粘土の組み合わせが3~10M2/gの非細孔比表面積および250~500nmの粒子サイズ(VSSA)を有する、皮膚処置用調製物。かかる処置の皮膚への適用は、ヒアルロン酸単独、または単純なヒアルロン酸-粘土配合物のいずれより、著しく深い皮膚中への浸透を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性スメクタイト粘土中へ吸収された10~1000KDaの分子量を有するヒアルロン酸を含み、ヒアルロン酸-粘土配合物が、3~10M
2/gの非細孔比表面積および250~500nmの粒子サイズ(VSSA)を有する、皮膚処置用調製物。
【請求項2】
比表面積が4~9M
2/gであり、粒子サイズ(VSSA)が、280~45nm、具体的には300~430nmである、請求項1に記載の皮膚処置用調製物。
【請求項3】
比表面積が4~9M
2/gであり、粒子サイズ(VSSA)が、280~45nm、具体的には300~430nmである、請求項1に記載の皮膚処置用調製物。
【請求項4】
ヒアルロン酸の分子量が、20~1500KDa、具体的には50~1400KDa、より具体的には100~1100KDa、さらにより具体的には300~1000KDaである、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚処置用調製物。
【請求項5】
活性化スメクタイト粘土が、モンモリロナイト、より具体的にはベントナイトである、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚処置用調製物。
【請求項6】
活性化スメクタイト粘土が、未修飾の形態において使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚処置用調製物。
【請求項7】
活性化スメクタイト粘土が、脂肪性物質で修飾される、請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚処置用調製物。
【請求項8】
脂肪性物質が、動物、植物または鉱物由来の油脂およびワックス、シリコーン油、ならびにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の皮膚処置用調製物。
【請求項9】
皮膚にヒアルロン酸を提供する方法であって、ヒアルロン酸が、請求項1に記載のヒアルロン酸-粘土の組み合わせの一部を含む、前記方法。
【請求項10】
ヒアルロン酸がその中に配合された活性化スメクタイト粘土であって、ヒアルロン酸-粘土配合物が、3~10M
2/gの非細孔比表面積および250~500nmの粒子サイズ(VSSA)を有する、前記活性スメクタイト粘土。
【請求項11】
請求項10に記載のスメクタイト粘土-ヒアルロン酸配合物を調製する方法であって、高剪断力の条件下におけるヒアルロン酸の粘土中への配合を含む、前記方法。
【請求項12】
幸福感および積極性の感覚を増強する方法であって、請求項1に記載の皮膚処置用調製物の適用を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚処置の方法およびかかる処置をもたらすための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、身体の結合組織全体を通して見出される、天然に存在するグリコサミノグリカンである。それは、皮膚の構造を生じる主要な構成要素であり、ふっくらとして潤いのある外観を提供する要因である。結果として、近年、相当数のヒアルロン酸ベースの皮膚処置調製物が出現している。
【発明の概要】
【0003】
最良の結果のために、ヒアルロン酸が皮膚中へ深く浸透することが所望される。従来の皮膚クリームによっては、このことは、常に可能というわけではなかった。今や、驚くべきことに、特定の送達手段が、著しく深い皮膚浸透を提供することができ、これは、同時の皮膚の状態の改善を伴うことが見出された。したがって、活性スメクタイト粘土中へ吸収された10~1000KDaの分子量を有するヒアルロン酸を含み、ヒアルロン酸-粘土の組み合わせが3~10M2/gの非細孔比表面積および250~500nmの粒子サイズ(VSSA)を有する、皮膚処置用調製物が提供される。
【0004】
加えて、ヒアルロン酸を皮膚に提供する方法が提供されており、ヒアルロン酸は、本明細書に記載のとおりのヒアルロン酸-粘土の組み合わせの一部を含む。
【0005】
加えて、ヒアルロン酸がその中に配合された活性スメクタイト粘土が提供され、ヒアルロン酸-粘土配合物は、3~10M2/gの非細孔比表面積および250~500nmの粒子サイズ(VSSA)を有する。
体積比表面積(Volume Specific Surface-Area:VSSA)は、粒子サイズの間接的な表現を提供する積分測定方法である。
【0006】
スメクタイト粘土は、2:1層の板状のフィロケイ酸塩材料の、式単位あたり約-0.2~-0.6の層電荷のグループである。それらは、大きな比表面積を有し、水中で高度な膨潤を呈する。スメクタイト粘土の具体的な例は、モンモリロナイト、より具体的にはベントナイトである。
【0007】
ヒアルロン酸(「HA」)と粘土との組み合わせは、スキンケアトリートメントの一部として知られており、市販されている。しかしながら、驚くべきことに、本明細書において上で定義されるとおりの組み合わせは、HAと粘土との単純な混合物がなし得るより、はるかにより深く皮膚中へ浸透し得ることを見出した。
【0008】
本開示のHA-粘土配合物のパラメータは、単純な混合によっては達成し得ない。本開示のHA-粘土配合物の調製は、押出機リアクターにおいて生じる剪断力と同様の、極めて高い剪断力を、ローター/ステータミキサーにおいて適用することによって行われる。任意のかかるミキサー、例えば、ボールミル、リボンブレンダー、パドルブレンダー、スクリューブレンダー、およびダブルコーンブレンダーを用いてもよい。
【0009】
配合に先立ち、スメクタイト粘土が活性化される。これは、当該技術分野に公知の任意の種類の活性化であってよく、典型的な例は、例えば、Maged et alにより、Environmental Science and Pollution Research, 27, pp.32980-32997 (2020)、において記載されたとおりの酸活性化(acid activation)である。乾燥およびふるい分けの後、活性化されたスメクタイト粘土は、高剪断力にかけられる。剪断時間は、使用する特定の材料および剪断方法に依存するであろうが、当業者は、簡単な実験により、各場合において好適な期間を容易に確認することができる。典型的な、非制限的な剪断時間は、15分~2時間、特に30分~1時間であろう。
【0010】
本開示を決して制限することなく、圧力および剪断力は、粘土とHAとの間の相互作用を増大させる能力を有すると考えられる。その上、圧力(>1バール)と剪断力とのかかる組み合わせ下において、粘土の層状構造が開き、粘土の板状晶(platelet)の端のヒドロキシル基をより利用可能にすると考えられる。繰り返しになるが、本開示を決して制限することなく、相互作用の機構は、HA中の親水性部分(カルボン酸またはヒドロキシル基など)と粘土上のヒドロキシル基との間の水素結合を通したものであると考えられる。
【0011】
繰り返しになるが、本開示を決して制限することなく、HAと粘土との間の相互作用は、HAに、HA単独の特性とは顕著に異なる、ゼータ電位で測定された場合により低い電位を有する強力なアニオン性の特質を与えると考えられる。この電気的挙動は、生体表皮層との皮膚親和性をより良好なものとし、HAの皮膚浸透をもたらすと考えられるが、一方、HAは、単独ではまったく浸透することができない。皮膚においては天然のpHの勾配が存在し、これが、表面においてより多くの正電荷の存在をもたらすことが知られている。結果として、単独で適用されるヒアルロン酸は、皮膚の表面またはその近くに留まる傾向がある。
【0012】
具体的な態様において、比表面積は、4~9、より具体的には5~8M2/gである。他の具体的な態様において、粒子サイズ(VSSA)は、280~450から、より具体的には300~430nmからである。
これらの数値は、本開示のHA-粘土配合物の製造の方法に起因して、(比表面積について)より低く、かつ(粒子サイズについて)より高い。
【0013】
活性スメクタイト粘土は、未修飾で用いてもよいが、具体的な態様において、それは、皮膚中への吸収を増強するために、脂肪性の物質で修飾されてもよい。代表的な物質として、動物、植物または鉱物由来の油脂および炭化水素系ワックス、シリコーン油またはこれらの混合物が挙げられる。炭化水素ベースの修飾剤の具体例として、植物性および動物性の油脂、より詳細にはトリグリセリド;合成エーテル;鉱物または合成由来の、直鎖状または分岐状の炭化水素、例えばワセリン;ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸脂肪アルコールなどの合成エステル;アルコールまたは多価アルコールの、ヘプタノアート、オクタノアート、デカノアート、またはリシノレアート(ricinoleate);乳酸イソステアリルなどのヒドロキシル化エステル、ポリオールのエステル;オクチルドデカノールなどの脂肪アルコール;リノレン酸などの高級脂肪酸;ポリメチルシロキサン型のシリコーン油、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
植物性ワックスの例として、カルナバ、キャンデリラ、ホホバワックス、または、エチレングリコールと2つの脂肪酸とのエステル、もしくは脂肪酸と長鎖アルコールとのモノエステルからなる任意の他の植物性化合物;ミツロウなどの動物性ワックスが挙げられる。他の脂肪性物質および親油性添加物として、精油;天然の芳香族化合物および親油性合成物;天然または合成の脂溶性ビタミン、例えばトコフェロールまたはアルファトコフェリルアセテートが挙げられる。
【0015】
粘土中の脂肪性物質の割合は、典型的には0.05~14.5重量%で変化する。
本開示のヒアルロン酸は、10~1000KDa、具体的には20~1500KDa、より具体的には50~1400KDa、より具体的には100~1100KDa、さらにより具体的には300~1000KDaの分子量を有する。それは、酸として、またはクエン酸などの好適な酸によるアルカリ金属塩(典型的にはナトリウム)として、酸の生成のために添加されてもよい。
【0016】
修飾された粘土は、任意の公知の手段により皮膚処置用調製物に加工されてもよい。調製物は、かかる調製物のすべての通常の成分を、当該分野において認識される割合において含んでもよい。非限定的な例としては、ビタミン、酸化防止剤、増粘剤、微量元素、軟化剤、金属イオン封鎖剤(sequestering agent)、香料、塩基性化剤(basifying agent)または酸性化剤、防腐剤、UVフィルター、親水性または親油性の有効成分、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
ヒアルロン酸は、かかる調製物において、5~15%、具体的には8~12%、より具体的には9~11%の重量割合において存在する。
【0018】
スメクタイト粘土とヒアルロン酸とのこの特別な組み合わせの驚くべき効果は、それが皮膚中へ特に深く浸透することである。本開示を決して制限することなく、粘土は、ヒアルロン酸のゼータ電位を修飾し、組み合わせをより負に帯電させると考えられる。皮膚においては天然のpHの勾配が存在し、これが、表面においてより多くの正電荷の存在をもたらすことが知られている。結果として、ヒアルロン酸は、皮膚の表面またはその近くに留まる傾向がある。しかしながら、粘土によって付与される負の電荷は、皮膚中へのより深い浸透を可能にし、結果として有益な効果をもたらす。
【0019】
追加の予想外かつ驚くべき利点は、本開示による調製物が皮膚に適用された人々の間での幸福感(well-being)の増強である。この利点は、例においてさらに記載される試験手順により、科学的に検証されている。
【0020】
本開示は、以下の非限定的な図および例を参照して、さらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、単独で塗布した場合、および市販されているような粘土との単純な配合物中で塗布した場合の、ヒアルロン酸の皮膚中への浸透の深さのグラフ表示である。
【
図2】
図2は、
図1の繰り返しであるが、単純な粘土-ヒアルロン酸配合物が、本開示において記載されるヒアルロン酸-粘土配合物により置き換えられている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例1
皮膚クリームにおける試験
(a)ヒアルロン酸-粘土の配合物の調製
ヒアルロン酸-粘土の配合物は、市販のベントナイト粘土を取得し、それを、Magedらによる、Environmental Science and Pollution Research, 27, pp. 32980-32997 (2020)における方法により活性化し、それを、乾燥し、100μmのフィルターを用いてふるいにかけて、それに、ヒアルロン酸ナトリウムを添加し、次いで、この混合物を、高剪断力リボンブレンダーにおいて1時間にわたり剪断することにより調製した。
【0023】
(b)試験皮膚クリームの調製
以下の成分を配合することにより、2つの試験皮膚クリームを調製した。
【表A】
【0024】
(c)クリームの試験
試験対象は、35~55歳の年齢の範囲における女性20人であり、その全員が、乾燥肌を有し、浅いしわおよび目じりのしわ(crow’s feet)を有した。彼らを、グループAおよびグループBと名付けられた2つのグループに分けた。グループAは、クリーム1を適用し、グループBは、クリーム2を適用した。
【0025】
すべての対象は、クリームを1日2回、朝および夕方に、顔に適用した。皮膚を、1回目の適用の直前に検査し、次いで、1時間、6時間、7日間、および28日間において検査した。検査は、Visia(商標)CR2.3ビジュアルスキャナー(Canfield Scientific製)により行い、これにより目じりのしわの面積を測定した。結果を以下の表において示す:
【0026】
【0027】
したがって、クリーム1により提供された改善は、1時間後では17.4%、6時間後では16.5%、28日後では22.7%である。
【0028】
例2
本開示に従って調製された配合において使用された場合のヒアルロン酸の皮膚浸透性の実証.
【0029】
以下の材料を試験した。
- 未処理の粘土(「未処理」)
- ヒアルロン酸(HA)
- HA+粘土(「単純な混合物」)
- 本説明によるHA-粘土配合物(「HA粘土」)
【0030】
HAは、蒸留水中1重量%で使用し、単純な混合物およびHA粘土は、蒸留水中10%で使用し、いずれも、1重量%のヒアルロン酸を含有した。
【0031】
47歳のドナーからのヒト皮膚外植片を調製し、生存培地(MIL215001、Biopredic)中で37℃および5%CO2で24時間にわたり保持した。翌日、HA粘土およびHAを局所的に適用し、8時間にわたり37℃および5%CO2でインキュベートし、その後、皮膚浸透分析を行った。未処置の試料を、対照として用いた。インキュベーションの終了後、任意の過剰な生成物を除去するために、皮膚表面を洗浄した。次いで、皮膚外植片を、-80℃で凍結しクライオトームを用いて、20μmの厚みで長軸方向に薄切した。各々の外植片について、3つの組織切片を選択し、条件ごとに合計9枚のラマン画像のためのラマンイメージング分析のために、CaF2支持体上に置いた。7μmの厚みの3枚の他の隣接する切片を、ヘマトキシリン・エオシン染色のために調製した。
【0032】
ラマン画像は、Y:10μm/X:100μmのサイズを有し、Xは5μm、Yは5μmのステップであった。各々のラマン画像は、3Yスペクトルおよび21Xスペクトル(画像1枚あたり63スペクトル)を有する。
・レーザー波長:600nm
・対物:100×、長焦点距離、開口数0.75
・取得時間:25秒
・アキュムレーション:1X
・スペクトル範囲:400~4000cm-1
・グレーティング:950T
・共焦点ホール:300μm
・スリット幅:150μm(スペクトル分解能6.5cm-1)
・Xにおけるステップ:5μm、Yにおけるステップ:5μm
【0033】
測定の再現性を確保するために、毎回使用する前に、ラマン分光計を、520.7cm-1でラマンピークを生じるケイ素により較正した。試料レベルでのレーザー出力の連続的な制御が達成された。
【0034】
ラマン画像の前処理は、異常なスペクトル(蛍光、燃焼、飽和)を除去し、ベースラインを修正し、スペクトルの平滑化および脱スパイク(despike)ならびにスペクトルの正規化を適用することによって行われた。
【0035】
補正データマップの処理は、Matlabソフトウェアにより動作する最小二乗フィッティング法に基づくソフトウェアを用いて実施した。この方法は、スペクトル画像全体における参照スペクトルの数学的モデリングにより、画像内のこれらのスペクトルの寄与および分布を決定することを含む。本研究においては、ヒアルロン酸および粘土の平均スペクトルを、参照スペクトルとして用いた。
【0036】
図1および2から、HA粘土の皮膚中への浸透は、HA単独または単純な混合物より、相当に深いことを観察することができる。粘土は、単独では、皮膚中への浸透性がほとんどなく、このことは、結論的に、本開示に従って製造されたHA粘土の組み合わせが、はるかにより深い皮膚浸透性を生じることを示している。
【0037】
例3
本明細書において上で記載されるとおりの組成物のレシピエントにより経験される増強された幸福感の感覚の実証.
【0038】
(a)スキンクリームの調製
2つのスキンクリームを調製し、一方は、実施例1に従って調製されたヒアルロン酸/粘土の配合物を含み、他方は、当該配合物を含まず、プラセボとして用いられた。処方は以下に示され、クリーム3は、ヒアルロン酸/粘土の配合物を含むクリームであり、クリーム4は、プラセボである。
【0039】
【0040】
1 Carbopol(商標)ETD 2050、Lubrizol製
2 Symdiol(商標)68、Symrise製
3 Dubcare(商標)GPE 810、Stearinerie Dubois製
4 Miglyol(商標)812N、IOI Oleo GmbH製
5 mPa.sにおける粘度(Brookfield DVIII Ultra、Spindle F、速度12@20℃)
【0041】
(b)スキンクリームの試験
試験は、女性42人および男性17人、平均年齢38歳の、59人の対象に対して実施し、全員が一般人であった。試験は、二重盲検試験であり、試験者もまた、クリーム3およびクリーム4のいずれが試験対象に提示されているのか知らなかった。
【0042】
試験は、対象により、連続した2日間、手に製品を適用することにより実施された。試験対象は、試験の前後に、次のページに示される質問事項を完成させるよう求められた。質問事項は、コンピューターのスクリーンに提示され、各質問には、「まったく感じない」(値=0)と「とても感じている」(値=10)との間の位置を示すために移動させることができるスライダーが付随した。スクリーンの表示を以下に示す。
【0043】
【0044】
本研究のために、試験対象の幸福感に対する試験クリームの効果を測定するために、幸福感の計量(well-being metric)が使用された。参照が行われ得る国際公開WO 2020/165463において詳細に記載される幸福感の計量は、幸福感を評価するために最も適切な特質(dimensions)を同定するために、実験心理学、および幸福感の言語属性の教師なしクラスタリング(unsupervised clustering)を適用することにより定義された。幸福感属性は、情緒的側面、ユーダイモニック(eudaimonic)な側面、社会的側面、および物質的側面などの、幸福感の様々な側面を考慮する。これらの側面は、情緒的(感情的)な構成要素および認知的(合理的)な構成要素の両方を含んでもよい。
【0045】
幸福感属性の重み付けは、以下のように決定された:
a)1人以上のヒト対象に、WB-18属性の各々について幸福感スコアwb
iを提供させることにより、試験クリームの不在下におけるその幸福感を評価させること;
b)各々の幸福感属性の全体的な幸福感に対する影響を決定してM幸福感因子F
jをもたらすために、因子分析、特に主成分分析を、ステップa)において得られた幸福感スコアに適用すること;
i)ここで、幸福感因子F
jの各々は、すべての幸福感因子の分散の合計のパーセンテージとして表される、分散v
iを有し;
ii)ここで、幸福感因子F
jの各々は、有限数n
jの幸福感属性を含み、これは、n
j個の負荷量の合計のパーセンテージとして表される負荷量l
iを有し;および
iii)ここで、幸福感属性のいずれも、1つより多くの幸福感因子においては現れない;ならびに
c)以下の式に従って、試験香料の不在下における幸福感スコアを計算すること
【数1】
【0046】
主成分分析から、以下のことが明らかとなった:
- 「不安ではない」、「悲しくない」、「落ち着かなくはない」、「欲求不満ではない」、「ストレスを受けていない」という幸福感属性は、分散v1を有する第1の幸福感因子F1と関連している;
- 「幸せである」、「楽天的である」、「興奮している」、「満足している」、「やる気がある」、「元気である」という幸福感属性は、分散v2を有する第2の幸福感因子F2と関連している;
- 「興味がある」および「退屈していない」という幸福感属性は、分散v3を有する第3の幸福感因子F3と関連している;
- 「疲労していない」と「精神的に機敏である」という幸福感属性は、分散v4を有する第4の幸福感因子F4と関連している;
- 幸福感属性の「穏やかである」、「リラックスしている」、「忍耐強い」は、分散v5を有する第5の幸福感因子F5と関連している;
- 分散v1は、すべての幸福感因子の分散の合計の48%であり;
- 分散v2は、すべての幸福感因子の分散の合計の24%であり;
- 分散v3は、すべての幸福感因子の分散の合計の12%であり;
- 分散v4は、すべての幸福感因子の分散の合計の9%であり;および
- 分散v5は、すべての幸福因子の分散の合計の7%である。
【0047】
さらに、表1において列記されるとおり、各々の属性は、各々の因子(F
1、F
2、F
3、F
4、F
5)内に負荷量を有することが見出された。
【表1】
【0048】
この方法論を用いて、試験からの数値結果を合計して、各々のクリームについての各々の属性についての平均値を提供し、次いで、これらの個々の属性スコアを合計して、各々のクリームについての全体的な幸福感スコアを提供した。
【0049】
全体的な幸福感の結果を、表2において示す。
【表2】
【0050】
適用前後の肯定的(positive)な幸福感属性(興奮している、幸せである、元気である、やる気がある、楽天的である、満足している)についての結果を、表3に示す。
【表3】
クリーム3は、塗布の前と後の両方において、すべての個々の肯定的属性について、より高い平均スコアを有する。
【0051】
表3の全体的なスコアを、表4においてまとめる。
【表4】
これは、クリーム3が、クリーム4よりも有意に高い幸福感の認識の変化を提供することを示す。
【0052】
全体的な結果として、59人の試験対象のうち、46人が、クリーム3により試験された場合に、増強された幸福感の感覚を経験したこと、すなわち、対象のうちの78%が、本明細書において上で記載されるとおりのヒアルロン酸を含有するクリームへの暴露の結果として、増強された幸福感の感覚を経験した。試験対象についての、クリーム3に関しての前後の全体的なスコアを、表5において示す。
【0053】
【国際調査報告】