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特表2025-501804薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテル及びその使用
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  • 特表-薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテル及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテル及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20250117BHJP
   A61M 29/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61M25/10 550
A61M29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541521
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2023071402
(87)【国際公開番号】W WO2024130799
(87)【国際公開日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】202211631220.5
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523255930
【氏名又は名称】上海百心安生物技▲術▼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI BIO-HEART BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 302, Floor 3, Building 4, No. 590, Ruiqing Road, Zhangjiang High Tech Park, Shanghai, 200120, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】汪立
(72)【発明者】
【氏名】蔡涛
(72)【発明者】
【氏名】王君毅
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲漢▼▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼晨朝
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB26
4C267BB28
4C267CC09
4C267EE08
4C267GG16
4C267HH08
(57)【要約】
本願は、バルーン(1)と、カテーテル(2)と、薬剤コーディング(3)とを含む、薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテルを提供し、前記バルーン(1)の表面には、薬剤コーティング(3)が塗布され、前記薬剤コーティング(3)は、第1薬剤コーティング(31)、第2薬剤コーティング(32)及び第3薬剤コーティング(33)に分けられ、前記第1薬剤コーティング(31)、第2薬剤コーティング(32)及び第3薬剤コーティング(33)における薬剤の放出速度は異なり、薬剤放出周期を制御することにより、血管の下流側で引き起こされる毒性反応の問題を解決し、同時に薬剤放出周期を延ばし、過度の拡張によって引き起こされる血管裂傷を効果的に治療し、薬剤治療の長期的な効果を改善する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンと、カテーテルと、薬剤コーディングとを含む、薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテルであって、前記バルーンの表面には、薬剤コーティング(3)が塗布され、前記薬剤コーティング(3)は、第1薬剤コーティング(31)、第2薬剤コーティング(32)及び第3薬剤コーティング(33)に分けられ、前記第1薬剤コーティング(31)、第2薬剤コーティング(32)及び第3薬剤コーティング(33)における薬剤の放出速度は異なることを特徴とする、薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記薬剤コーティング(3)の原料は、活性薬剤、接着剤、徐放剤、及びポリオール系物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項3】
前記薬剤コーティング(3)の原料は、重量部で、活性薬剤20~100部、接着剤10~80部、徐放剤5~65部、及びポリオール系物質5~70部を含むことを特徴とする、請求項2に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項4】
前記薬剤コーティング(3)では、活性薬剤の担持量は、1~10μg/mmであることを特徴とする、請求項3に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項5】
前記薬剤コーティング(3)では、前記接着剤は、エステル系物質、アミド系物質、及びリポソームのうちの少なくとも1種から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項6】
前記薬剤コーティング(3)では、前記徐放剤は、mPEG-PLGA共重合体、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸共重合体、アルギン酸ナトリウムハイドロゲル、キトサン、セルロース、ペクチン、及びアルキルグリコシドのうちの任意の1種又は数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項7】
前記徐放剤は、mPEG-PLGA共重合体であることを特徴とする、請求項6に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項8】
前記mPEG-PLGA共重合体では、mPEGの数平均分子量は、5000~80000であり、PLGAの数平均分子量は、1000~3000、3000~5000、5000~10000、50000~70000、及び100000~120000のうちの任意の1種又は数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項7に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項9】
第1薬剤コーティング(31)、第2薬剤コーティング(32)及び第3薬剤コーティング(33)について、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量はいずれも異なることを特徴とする、請求項8に記載の薬剤バルーンカテーテル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の薬剤バルーンカテーテルの、血管拡張における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、例えば、A61F2/958であり、特に、薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテル及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、心血管疾患は、人間の健康を脅かす最も致命的な病気となっている。心血管疾患は、主に血管狭窄として現れ、一部の臓器への不十分な血液供給、本来の機能の喪失、更に、血管の閉塞を引き起こし、生命を脅かす。現在、心血管疾患に対して最も広く使用される治療法は経皮経管血管形成術であり、現在は、主に薬剤溶出ステントと薬剤バルーンが使用され、ここで、薬剤バルーンは、バルーンカテーテルを用いて低侵襲で血管病変部に抗増殖薬を送達し、バルーンの拡張によってバルーンの薬剤を血管内壁に移行させ、バルーン拡張と抗増殖薬の二重効果下で、血管狭窄を治療する作用を果たし、平滑筋細胞の過度増殖を効果的に抑制し、再狭窄発症率を低減し、ステント留置を必要とせず、出血のリスクを軽減する。
【0003】
人体の血管の形状と寸法は治療前後の重要なデータであるため、臨床画像データ分析によると、人間の血管は円錐形であるため、病変領域で血管の近位端と遠位端の直径は一貫せず、血管の寸法が大きい一端に合わせてバルーンの直径を拡張すると、拡張しすぎて血管の小さい一端が裂け、血管が損傷し、しかし、従来の薬剤バルーンの薬剤コーティングの放出速度は単一であり、一定の周期で、血管の下流側に薬剤が更に蓄積し、血管毒性を引き起こす可能性があり、放出速度が速いと、この毒性反応が悪化し、放出速度が遅すぎると、病変領域の活性薬剤の濃度が低くなり、狭窄抑制効果が弱くなり、なお、薬剤バルーンが所在する、血液が流れる環境では、表面の薬剤コーティング層が容易に洗い流され、従って、病変に対するバルーンの治療効果を低下させ、コーティング層には、多くの粒子があり、寸法が大きい場合、血管閉塞の潜在的なリスクも引き起こす可能性がある。
【0004】
中国特許出願のCN108378964 Aは、薬剤バルーンを開示し、バルーンの表面には、異なる薬剤担持密度の薬剤コーティングをスプレーすることにより、薬剤毒性を減らし、中国特許出願のCN107670163Aは、薬剤バルーン拡張カテーテル及びその製造方法、用途を開示し、技術では、バルーンの近位端と遠位端に異なる薬剤の量を担持するコーティング層をスプレーすることにより、短時間で血管内の薬剤濃度が不均一になるという問題を軽減するが、この技術は、薬剤コーティングのスプレープロセスを厳密に制御する必要があり、薬剤の固定化効果が小さく、血中の持続時間が短く、治療効果が長続きしない。以上の2つの特許出願では、バルーンにおける薬剤投与量が異なるが、薬剤放出周期が一貫し、ある期間に、血管の下流側にある薬剤の量が急激に増加し、依然として血管毒性を引き起こし、一定期間が経過すると、血管裂傷部位での薬剤の量が低下し、治療効果も低下する。
【発明の概要】
【0005】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、最初に、薬剤放出を制御できる新型薬剤バルーンカテーテルを提供し、薬剤放出周期を制御することにより、血管の下流側で引き起こされる毒性反応の問題を解決し、同時に薬剤放出周期を延ばし、過度の拡張によって引き起こされる血管裂傷を効果的に治療し、薬剤治療の長期的な効果を改善する。
【0006】
更に、前記薬剤バルーンカテーテルは、バルーン1と、カテーテル2と、薬剤コーディング3とを含み、前記バルーン1の表面には、薬剤コーティング3が塗布され、前記薬剤コーティング3は、第1薬剤コーティング31、第2薬剤コーティング32及び第3薬剤コーティング33に分けられる。
【0007】
更に、前記カテーテル2は、バルーン1の両側に設けられ、カテーテル2は、バルーン1の2つの頂端に接続される。
【0008】
更に、前記第1薬剤コーティング31、第2薬剤コーティング32及び第3薬剤コーティング33は、バルーン1の表面に沿って水平に平行に並べられるため、バルーン1の表面を三段構造に分ける。
【0009】
好ましくは、前記第1薬剤コーティング31、第2薬剤コーティング32及び第3薬剤コーティング33における薬剤の放出速度は異なる。
【0010】
更に、前記薬剤コーティング3の原料は、活性薬剤、接着剤、徐放剤、及びポリオール系物質を含む。
【0011】
更に、前記薬剤コーディングの原料は、重量部で、活性薬剤20~100部、接着剤10~80部、徐放剤5~65部、及びポリオール系物質5~70部を含む。
【0012】
好ましくは、前記薬剤コーティング3の原料は、活性薬剤20~80部、接着剤10~70部、徐放剤5~60部、及びポリオール系物質5~60部を含む。
【0013】
更に、前記活性薬剤は、平滑筋細胞の増殖を阻害し、内膜過形成を軽減し、再狭窄の発症率及び炎症反応を低減するために使用され、ラパマイシン、タキソール、ゾタロリムス、ヘパリン、ヒルジン、アスピリン、デキサメタゾン及びそれらの誘導体のうちの任意の1種又は数種の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0014】
好ましくは、前記活性薬剤は、ラパマイシン、タキソール、ヘパリン、ヒルジン及びそれらの誘導体のうちの1種又は数種の組み合わせから選択される。
【0015】
更に、前記薬剤コーティング層では、活性薬剤の担持量は、1~10μg/mmである。
【0016】
更に、前記接着剤は、血管に対する薬剤の接着作用を高め、血液の洗い流しによる活性薬剤の損失を抑制し、血管に対する薬剤の治療効果と持続性を向上させるために使用される。
【0017】
更に、前記接着剤は、エステル系物質、アミド系物質、リポソーム、カルボン酸系物質、及びポリヒドロキシ系物質のうちの少なくとも1種から選択される。
【0018】
更に、前記エステル系物質は、PEG-ヒアルロン酸共重合体、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、PEG-PLGAブロック共重合体、ポリラクチド、ポリソルベート80、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ乳酸、ポリ酢酸ビニル、ポリヒドロキシ酪酸吉草酸共重合体、及びセバシン酸共重合体のうちの任意の1種又は数種の組み合わせから選択される。
【0019】
更に、前記アミド系物質は、イオプロミド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、キトサン改質ポリアミド、アミノ酸、N-[3-(2-ジブチルアミノエチル)-1H-インドール-5-イル]ナフタレン-1-スルホンアミド、N-[3-(2-ジエチルアミノエチル)-1H-インドール-5-イル]-トランス-β-スチレンスルホンアミドのうちの任意の1種又は数種の組み合わせから選択され、好ましくは、イオプロミドである。
【0020】
更に、前記カルボン酸系物質は、タンニン酸、セラック、ヒアルロン酸及びそれらの塩のうちの任意の1種又は数種の組み合わせから選択される。
【0021】
更に、前記ポリヒドロキシ系物質は、PEG、キトサン、及びサイクロデキストリンのうちの任意の1種又は数種の組み合わせである。
【0022】
更に、前記リポソームは、大豆レシチン、レシチン、コレステロール、セファリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン及びそれらの改質物のうちの任意の1種又は数種の組み合わせから選択される。
【0023】
好ましい実施形態では、前記リポソームは、大豆レシチン又はコレステロールである。
【0024】
更に、前記薬剤コーティングでは、徐放剤は、mPEG-PLGA共重合体、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸共重合体、アルギン酸ナトリウムハイドロゲル、キトサン、セルロース、ペクチン、及びアルキルグリコシドのうちの任意の1種又は数種の組み合わせである。
【0025】
好ましくは、前記徐放剤は、mPEG-PLGA共重合体、ヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸共重合体、及びアルギン酸ナトリウムハイドロゲルのうちの任意の1種又は数種の組み合わせである。
【0026】
好ましい実施形態では、前記徐放剤は、mPEG-PLGA共重合体である。
【0027】
更に、前記mPEG-PLGA共重合体では、mPEGの数平均分子量は4000~90000、PLGAの数平均分子量は1000~150000である。
【0028】
更に、前記mPEG-PLGA共重合体では、mPEGの数平均分子量は、5000~80000であり、PLGAの数平均分子量は、1000~3000、3000~5000、5000~10000、50000~70000、及び100000~120000のうちの任意の1種又は数種の組み合わせである。
【0029】
好ましくは、前記mPEG-PLGA共重合体では、mPEGの数平均分子量は、5000~60000であり、PLGAの数平均分子量は、5000~10000、50000~70000、及び100000~120000のうちの任意の1種又は数種の組み合わせである。
【0030】
更に、第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングについて、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量はいずれも異なる。
【0031】
本願では、mPEG-PLGA共重合体の長い分子鎖を使用して活性薬剤を包み込み、また、そのうちの-NH-、-O-、-OH、C=Oなどの極性基によって活性薬剤の極性基又はリング構造に対して分子間水素結合又は共役を生成し、活性薬剤をmPEG-PLGA共重合体で形成された架橋構造内に固定化し、mPEG-PLGA共重合体分子におけるmPEG及びPLGAの分子量を調整することにより、その構造の架橋度を調整し、更に、薬剤の放出速度を制御し、PLGAの分子量が大きすぎる場合、mPEG-PLGA共重合体の分解には、より多くのエネルギーが必要であり、血管壁での活性薬剤の滞留時間も延ばし、しかし、分子量が大きすぎる場合、短期間で薬剤放出濃度は低く、血管裂傷に対する治療効果は良好ではなく、分子量が小さすぎる場合、mPEG-PLGA共重合体の架橋分子鎖は活性薬剤を包み込むのに十分ではなく、活性薬剤が血液とともに流れやすく、血管壁での滞留時間が短く、短時間で薬剤放出量が多く、作用持続時間は長続きせず、それに基づいて、本願では、薬剤バルーンにおける第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングで使用されたmPEG-PLGA共重合体の分子量が異なることを定め、更に、第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングにおける薬剤放出速度及び放出周期への制御を実現し、薬剤の徐放効果を高め、有効な治療時間を延ばし、血管の毒性反応を回避する。
【0032】
更に、本願では、第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングにおけるmPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量を厳密に定めるものではなく、3つのコーティング層におけるmPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量が一致しないことを維持するだけで済み、従って、薬剤バルーンにおけるコーティング層は、24種類の組み合わせ方法を有し、血管の石灰化や裂傷の状況に応じて配置することができる。
【0033】
一実施形態において、バルーンカテーテルの第1薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、5000~10000であり、第2薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、50000~70000であり、第3薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、100000~120000であり、前記第3コーティング(即ち、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量が最も大きい一端)を血管裂傷が深刻な一端に置くだけで済む。
【0034】
別の実施形態において、バルーンカテーテルの第1薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、50000~70000であり、第2薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、5000~10000であり、第3薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、100000~120000であり、前記第3コーティング(即ち、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量が最も大きい一端)を血管裂傷が深刻な一端に置くだけで済む。
【0035】
別の実施形態において、バルーンカテーテルの第1薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、100000~120000であり、第2薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、5000~10000であり、第3薬剤コーティングでは、mPEG-PLGA共重合体のPLGAの数平均分子量は、50000~70000であり、前記第1コーティング層を血管裂傷が深刻な一端に置くだけで済み、ニーズに応じて配置することもできる。
【0036】
更に、前記ポリオール系物質は、ポリビニルアルコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、レスベラトロール、及びペンタエリトリトールのうちの任意の1種又は数種の組み合わせから選択される。
【0037】
好ましくは、前記ポリオール系物質は、ポリビニルアルコールであり、その数平均分子量は、5000~60000、より好ましくは、8000~30000である。
【0038】
更に、前記第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングの調製方法は、コーティング層の原料を有機溶媒内に溶解し、均一に混合し、超音波でミクロスフェアの形態に調製し、次に、それをバルーンの表面にスプレーするだけで済むことである。
【0039】
更に、前記有機溶媒は、エチルアルコール、グリセリン、イソプロパノール、エチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、及びギ酸エチルのうちの少なくとも1種を含むが、それらに限定されない。
【0040】
更に、前記有機溶媒は、有機溶媒とコーディングの原料との総量の30~80%を占める。
【0041】
更に、前記ミクロスフェアの平均直径は、10μm、好ましくは、0.05~8μmである。
【0042】
更に、本願では、薬剤バルーンの構造は特に限定されず、市販の通常のバルーンである。
【0043】
更に、本願では、薬剤バルーンカテーテルの形態は、特に限定せず、OTW又はRXのうちの任意の1種を含むが、それらに限定されない。
【0044】
更に、本願に記載のバルーンカテーテルは、血管拡張に適用する。
【0045】
有益な効果
【0046】
1、本願によって提供されたバルーンカテーテルは、薬剤投与量が変わらない場合、薬剤放出周期への制御を実現でき、血管の下流側で引き起こされる毒性反応の問題を解決し、更に、血管裂傷部位の薬剤放出周期を効果的に延ばし、過度の血管拡張による裂傷を解決し、また、血管の平滑筋細胞の増殖を効果的に阻害し、再狭窄の発症率を低下させ、炎症反応を低減することができる。
【0047】
2、本願による薬剤バルーンには、3つのコーディングが設計され、各コーディングでは、薬剤の放出速度は異なり、更に、薬剤コーディングの徐放剤のmPEG-PLGA共重合体の分子量を制御し、各コーディングにおける薬剤放出程度への制御を実現し、血管壁での薬剤の付着及び滞留時間を延ばし、血管裂傷部位を持続的に治療することができる。
【0048】
3、本願のコーディングでは、徐放剤は、活性薬剤を効果的に包み込み、放出速度を制御することができ、接着剤は、分子間で活性薬剤と相互作用し、その官能基によって血管壁への接着力を高めることができ、ポリオール系物質は、親水性に優れ、コーディングを活性化し、その内部の薬剤を放出し、コーティングの原料における各成分の相互作用を利用し、薬剤の放出量や血管壁への接着力を効果的に制御し、血液の洗い流しによる活性薬剤の損失を低減することができ、バルーンは、血管裂傷部位の治療に優れた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の薬剤バルーンカテーテルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(実施例1)
本実施例は、バルーン1と、カテーテル2と、薬剤コーディング3とを含む前記薬剤バルーンカテーテルを提供し、前記バルーン1の表面には、薬剤コーティング3が塗布され、前記薬剤コーティング3は、第1薬剤コーティング31、第2薬剤コーティング32及び第3薬剤コーティング33に分けられ、
【0051】
前記第1薬剤コーティング31の原料は、重量部で、ラパマイシン50部、大豆レシチン40部、mPEG-PLGA共重合体30部、及びPEG 30部であり、前記PEGの数平均分子量は、20000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、32000であり、PLGAの数平均分子量は、8000であり、前記第1薬剤コーティングの薬剤の担持量は、4μg/mmであり、
【0052】
前記第2薬剤コーティング32の原料は、重量部で、ラパマイシン60部、大豆レシチン50部、mPEG-PLGA共重合体20部、及びPEG 20部であり、前記PEGの数平均分子量は、20000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、32000であり、PLGAの数平均分子量は、60000であり、前記第2薬剤コーティングの薬剤の担持量は、5μg/mmであり、
【0053】
前記第3薬剤コーティング33の原料は、重量部で、ラパマイシン50部、大豆レシチン40部、mPEG-PLGA共重合体20部、及びPEG 30部であり、前記PEGの数平均分子量は、20000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、32000であり、PLGAの数平均分子量は、110000であり、前記第3薬剤コーティングの薬剤の担持量は、4μg/mmであり、
【0054】
前記第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングの調製方法は、以下のとおりである。各コーティング自身の原料をそれぞれ混合した後、酢酸エチル内に溶解し、原料の質量が50%を占め、酢酸エチル溶液の質量が50%を占めるように、均一に混合した後、超音波でミクロスフェアの形態に調製し、ミクロスフェアの平均直径が3μmであり、次に、それをバルーンの表面における所定の位置にスプレーするだけで済む。
【0055】
以上の重量部の測定基準は一律である。
(実施例2)
【0056】
本実施例は、バルーン1と、カテーテル2と、薬剤コーディング3とを含む前記薬剤バルーンカテーテルを提供し、前記バルーン1の表面には、薬剤コーティング3が塗布され、前記薬剤コーティング3は、第1薬剤コーティング31、第2薬剤コーティング32及び第3薬剤コーティング33に分けられ、
【0057】
前記第1薬剤コーティング31の原料は、重量部で、ラパマイシン20部、大豆レシチン10部、mPEG-PLGA共重合体5部、及びPEG 5部であり、前記PEGの数平均分子量は、30000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、5000であり、PLGAの数平均分子量は、50000であり、前記第1薬剤コーティングの薬剤の担持量は、2μg/mmであり、
【0058】
前記第2薬剤コーティング32の原料は、重量部で、ラパマイシン60部、大豆レシチン50部、mPEG-PLGA共重合体30部、及びPEG 30部であり、前記PEGの数平均分子量は、5000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、5000であり、PLGAの数平均分子量は、10000であり、前記第2薬剤コーティングの薬剤の担持量は、6μg/mmであり、
【0059】
前記第3薬剤コーティング33の原料は、重量部で、ラパマイシン80部、大豆レシチン70部、mPEG-PLGA共重合体60部、及びPEG 60部であり、前記PEGの数平均分子量は、10000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、60000であり、PLGAの数平均分子量は、120000であり、前記第3薬剤コーティングの薬剤の担持量は、8μg/mmであり、
【0060】
前記第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングの調製方法は、以下のとおりである。各コーティング自身の原料をそれぞれ混合した後、酢酸エチル内に溶解し、原料の質量が70%を占め、酢酸エチル溶液の質量が30%を占めるように、均一に混合した後、超音波でミクロスフェアの形態に調製し、ミクロスフェアの平均直径が8μmであり、次に、それをバルーンの表面における所定の位置にスプレーするだけで済む。
【0061】
以上の重量部の測定基準は一律である。
(実施例3)
【0062】
本実施例は、バルーン1と、カテーテル2と、薬剤コーディング3とを含む前記薬剤バルーンカテーテルを提供し、前記バルーン1の表面には、薬剤コーティング3が塗布され、前記薬剤コーティング3は、第1薬剤コーティング31、第2薬剤コーティング32及び第3薬剤コーティング33に分けられ、
【0063】
前記第1薬剤コーティング31の原料は、重量部で、ラパマイシン30部、大豆レシチン10部、mPEG-PLGA共重合体15部、及びPEG 10部であり、前記PEGの数平均分子量は、10000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、10000であり、PLGAの数平均分子量は、100000であり、前記第1薬剤コーティングの薬剤の担持量は、3.5μg/mmであり、
【0064】
前記第2薬剤コーティング32の原料は、重量部で、ラパマイシン40部、大豆レシチン30部、mPEG-PLGA共重合体30部、及びPEG 5部であり、前記PEGの数平均分子量は、5000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、20000であり、PLGAの数平均分子量は、5000であり、前記第2薬剤コーティングの薬剤の担持量は、6μg/mmであり、
【0065】
前記第3薬剤コーティング33の原料は、重量部で、ラパマイシン70部、大豆レシチン50部、mPEG-PLGA共重合体50部、及びPEG 50部であり、前記PEGの数平均分子量は、8000であり、前記mPEG-PLGA共重合体のmPEGの数平均分子量は、40000であり、PLGAの数平均分子量は、50000であり、前記第3薬剤コーティング層の薬剤の担持量は、6μg/mmであり、
【0066】
前記第1薬剤コーティング、第2薬剤コーティング及び第3薬剤コーティングの調製方法は、以下のとおりである。各コーティング自身の原料をそれぞれ混合した後、酢酸エチル内に溶解し、原料の質量が20%を占め、酢酸エチル溶液の質量が80%を占めるように、均一に混合した後、超音波でミクロスフェアの形態に調製し、ミクロスフェアの平均直径が0.05μmであり、次に、それをバルーンの表面における所定の位置にスプレーするだけで済む。
【0067】
以上の重量部の測定基準は一律である。
【0068】
前記PEG及びmPEG-PLGA共重合体はいずれもエボニックから購入する。
【0069】
性能試験方法
【0070】
動物実験により、異なる分子量のmPEG-PLGAを担持した薬剤の徐放効果を検証する。ミニブタ動物モデルを用い、分子量の異なるmPEG-PLGAを担持した薬剤をブタ動物モデル内にそれぞれ使用し、0(即時)、30日、60日、及び90日のタイミングを設定する。ブタ血管モデルを取り出すことにより、血管に対して薬剤試験を行う。
【0071】
実験対象は、体重が25~45kgのミニブタ動物モデルであり、
実験品は、薬剤含有量が6μg/mmで、分子量の異なるmPEG-PLGAを担持した薬剤バルーンである。
【0072】
実験方法は、以下のとおりである。
【0073】
(1)4匹のブタ動物モデルを選択し、それぞれ0(即時)、30日、60日、及び90日のタイミングに対応させる。PLGAの数平均分子量が60000、8000、及び110000の実験品を、ブタ動物モデルの心血管RCA、LCX、及びLADにそれぞれ移植する。
【0074】
(2)0(即時)、30日、60日、及び90日のタイミングでは、対応するブタを殺し、血管を取り出して薬剤含有量を測定する。測定結果は、血管壁における薬剤の放出量と移植前のバルーンの表面の薬剤との比を特徴づけ、その結果は、表1に示される。
【0075】
【表1】
【0076】
以上の結果から分かるように、mPEG-PLGAのPLGAの数平均分子量が大きいほど、薬剤の徐放効果が高くなり、バルーンカテーテルの薬剤コーティングに適用すると、薬剤放出速度を効果的に低減することができ、また、バルーンカテーテルの薬剤放出速度は異なり、血管裂傷の初期段階でタイムリーな薬剤治療を実現し、後期段階で薬剤を徐放して持続的な治療効果を実現でき、薬剤コーティングは血管の毒性反応を引き起こさない。
図1
【国際調査報告】