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特表2025-501810フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株およびその用途
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  • 特表-フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株およびその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20250117BHJP
   B09C 1/10 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 F
B09C1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565131
(86)(22)【出願日】2023-03-20
(85)【翻訳文提出日】2023-10-22
(86)【国際出願番号】 CN2023082500
(87)【国際公開番号】W WO2024130870
(87)【国際公開日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】202211669461.9
(32)【優先日】2022-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507255592
【氏名又は名称】南京▲農業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】高彦征
(72)【発明者】
【氏名】王建
(72)【発明者】
【氏名】陸▲うぇん▼逸
(72)【発明者】
【氏名】張帥
【テーマコード(参考)】
4B065
4D004
【Fターム(参考)】
4B065AA15X
4B065AC14
4B065BD30
4B065CA54
4D004AA41
4D004AB05
4D004CA18
4D004CC07
(57)【要約】
本発明は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株およびその用途を提供し
、環境汚染物質の生物学的処理の技術分野に属する。グルタミン酸バチルスA4株は中国
典型培養物保蔵中心(CCTCC)に保蔵され、その保蔵番号はCCTCC M2022
1850である。グルタミン酸バチルスA4株は、フタル酸エステル分解用の製剤の調製
に使用され、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジブチルテレフタレー
ト、ブチルベンジルフタレートを効率的に分解する能力を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)に保蔵され、その保蔵番号はCCTCC M20
221850である、ことを特徴とするフタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA
4株。
【請求項2】
フタル酸エステルは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジブチルテレ
フタレート、ブチルベンジルフタレートである、ことを特徴とする請求項1に記載のフタ
ル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株。
【請求項3】
請求項1に記載のフタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株の用途であって、
フタル酸エステル分解用の製剤の調製に使用される、ことを特徴とする用途。
【請求項4】
フタル酸エステルは、ジメチルテレフタレートおよび/またはジエチルテレフタレートお
よび/またはジブチルテレフタレートおよび/またはブチルベンジルフタレートである、
ことを特徴とする請求項3に記載の用途。
【請求項5】
前記製剤の調製プロセスは、以下のとおりであり:
SB1、500μLのグルタミン酸バチルスA4株を100mlのLB培地に移し、30
℃、150rpm環境下で24h培養した後8000rcfで5min遠心分離して培養
菌液を得て、
SB2、前記菌液をMSMで2回洗浄した後細菌のOD600値を1.0に調整して製剤
を得て、4℃環境温度下で一時保存する、ことを特徴とする請求項4に記載の用途。
【請求項6】
前記製剤の施用方法は、製剤をフタル酸エステルによって汚染された媒体に投入すること
である、ことを特徴とする請求項5に記載の用途。
【請求項7】
前記媒体は、水、土壌である、ことを特徴とする請求項5に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境汚染物質生物学的処理の技術分野に関し、具体的に、フタル酸分解能を有
するグルタミン酸バチルスA4株およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フタル酸エステル(Phthalic Acid Esters、PAEs)は、最も広
く使用されている可塑剤の1つであり、内分泌撹乱作用を有する環境汚染物質として最も
広く研究されているものの一つであり、フタル酸エステルはプラスチック、塗料、化粧品
などの産業で広く使用されている。2018年、プラスチック製品の世界生産量は約3億
5900万トン増加し、そのうち30%は中国からのものである。大量のプラスチック廃
棄物のうち、リサイクルされるのはわずか9%で、79%が埋め立て地や環境に直接投棄
され、プラスチック破片の急速な蓄積につながっている。マイクロプラスチック(MPs
)には、可塑剤のような有害な添加物が大量に含まれている。その大きな比表面積と強い
疎水性により、重金属、抗生物質、農薬、その他の残留性有機汚染物質がマイクロプラス
チックの表面に吸着し、土壌を危険にさらし、人間の健康に悪影響を及ぼす。マイクロプ
ラスチックの増加に伴い、これらの汚染物質は土壌微生物の活動や栄養循環といった生態
系機能に影響を与える。PAEsはプラスチック製品の柔軟性を向上させる添加剤であり
、一般的に使用される可塑剤である。しかし、PAEsには発がん性、催奇形性、変異原
性の危険性がある。環境中に放出された場合、PAEsは土壌中の微生物の活動を阻害し
、例えば細菌群集を妨害し、ウレアーゼ活性を低下させ、濃縮によって食物連鎖に入り込
み、さらに人間の健康を脅かす。そのため、PAEsは多くの国で規制有機汚染物質に分
類されている。PAEsが生態系や人間の健康に及ぼす影響は注目されており、環境科学
や環境生態学のホットトピックとなっている。
自然環境におけるPAEsの分解過程は主に加水分解、光分解、微生物分解であるが、自
然環境では加水分解と光分解は弱く、分解速度も遅い。現在、DMP、DEHP、DBP
などのフタル酸系汚染物質を環境中で分解できる菌株が分離されている。
しかし、報告されている分解菌のほとんどは、1種類のフタル酸エステルに対してのみ効
率的な分解能力を有しており、短鎖PAEs(例えばDMP、DEPなど)と長鎖PAE
s(例えばDBP、BBPなど)の両方を効率的に分解できる分解菌の生殖資源はほとん
ど見つかっていない。
【発明の概要】
【0003】
本発明が解決しようとする技術的課題は、報告されている分解菌のほとんどは、1種類の
フタル酸エステルに対してのみ効率的な分解能力を有しており、短鎖PAEsと長鎖PA
Esの両方を効率的に分解できる分解菌の生殖資源はほとんど見つかっていない。
上記問題を解決するために、本発明の技術的解決策は以下のとおりであり:
本発明は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibacte
r sp. A4を提供し、中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)に保蔵され、その保
蔵番号はCCTCC M20221850である。
さらに、フタル酸エステルは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジブ
チルテレフタレート、ブチルベンジルフタレートである。
説明:グルタミン酸バチルスGlutamicibacter sp. A4は、短鎖フ
タル酸エステル(ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート)と長鎖フタル酸エ
ステル(ジブチルテレフタレート、ブチルベンジルフタレート)を効果的に分解すること
ができる。
本発明は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株の用途をさらに提供し、
すなわち、フタル酸エステル分解用の製剤の調製に使用される。
好ましくは、フタル酸エステルは、ジメチルテレフタレートおよび/またはジエチルテレ
フタレートおよび/またはジブチルテレフタレートおよび/またはブチルベンジルフタレ
ートである。
説明:フタル酸エステル分解用の製剤は、短鎖フタル酸エステル(ジメチルテレフタレー
ト、ジエチルテレフタレート)と長鎖フタル酸エステル(ジブチルテレフタレート、ブチ
ルベンジルフタレート)を効果的に分解することができる。
好ましくは、製剤の調製プロセスは、以下のとおりであり:
SB1、500μLのグルタミン酸バチルスA4株を100mlのLB培地に移し、30
℃、150rpm環境下で24h培養した後8000rcfで5min遠心分離して培養
菌液を得、
SB2、菌液をMSMで2回洗浄した後細菌のOD600値を1.0に調整して菌懸濁液
とし、4℃環境温度下で一時保存する。
上記プロセスにおいて、OD600値とは、ある溶液の600nm波長における吸光度を
意味する。
説明:上記用途は、グルタミン酸バチルスGlutamicibacter sp. A
4を10~16h活性化させ、対数期まで振盪培養し、細菌を収集し、実際の必要に応じ
て細菌含有量を調整して菌懸濁液を調製し、調製された菌懸濁液をフタル酸エステルによ
って汚染された水または土壌に投入する。
好ましくは、製剤の適用プロセスは、菌懸濁液をフタル酸エステルによって汚染された媒
体に投入する。
説明:製剤の適用方法は比較的簡単であり、反応の環境要件が低い。
好ましくは、上記媒体は水、土壌である。
説明:製剤は汚染された水および汚染された土壌の両方に適用可能である。
より好ましくは、製剤の施用量は、媒体質量の5%~20%である。
説明:媒体質量の5%~20%の製剤を投入してから72時間以内に、4種のフタル酸エ
ステルはほぼ完全に分解され、短鎖フタル酸エステルの分解率はいずれも98%を超え、
長鎖フタル酸エステルの分解率も75%以上に達し、これは、製剤が4種のPAEsを効
率的に分解する能力を有することを示している。
【発明の効果】
【0004】
本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明は、グルタミン酸バチルスGlutamicibacter sp. A4および
フタル酸エステルの分解における用途を提供し、グルタミン酸バチルスGlutamic
ibacter sp. A4は、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、
ジブチルテレフタレートおよびブチルベンジルフタレートを唯一の炭素源およびエネルギ
ー源として増殖することができ、純粋な培養条件下でこの細菌は無機塩培地中の20mg
/Lの混合フタル酸エステル(それぞれ20mg/Lのジメチルテレフタレート、ジエチ
ルテレフタレート、ジブチルテレフタレートおよびブチルベンジルフタレートを含有)を
48hでほぼ完全に分解でき、分解率が75%を超え、本発明に記載の用途は、環境汚染
物質の生物学的処理に幅広い見通しが期待されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】実施例2のGlutamicibacter sp. A4をLB培地で5日間培養したときの増殖形態を示す。
図2】実施例2のGlutamicibacter sp. A4の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図3】実施例2のGlutamicibacter sp. A4の16S rDNAの系統樹を示す概略図である。
図4】実施例5のGlutamicibacter sp. A4のフタル酸エステルに対する分解効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の目的、技術的解決策および利点をより明確にするために、以下、添付図面を参照
しながら本発明をより詳細に説明するが、明らかに、説明される実施例は本発明の一部の
実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者は創造的
な労働をすることなく得られた他の実施例は、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
本発明の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明する目的でのみ使用され、本発
明を限定するものではない。本発明の実施例および特許請求の範囲に使用される「1種」
、「前記」および「該」などの単数形は、文脈上でそうでないことを明示しない限り、複
数形を含み、「複数」は一般に少なくとも2つを含む。
実施例1
本実施例は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibact
er sp. A4を提供し、中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)に保蔵され、その
保蔵番号はCCTCC M20221850であり、保蔵場所:湖北省武漢市武昌区八一
路珞珈山である。
上記グルタミン酸バチルスGlutamicibacter sp. A4は、南京市南
京の農業大学牌楼汚染土壌から分離し、濃縮培養して得られたものである。
上記グルタミン酸バチルスGlutamicibacter sp. A4の遺伝子配列
はSEQ ID NO.1に示され、
GGAGTGGCGGGGTGCTTACACATGCAGTCGAACGATGAAG
CCCAGCTTGCTGGGTGGATTAGTGGCGAACGGGTGAGTAA
CACGTGAGTAACCTGCCCCCGACTCTGGGATAAGCCCGGG
AAACTGGGTCTAATACCGGATATGACCTCGCACCGCATGG
TGCGGGGTGGAAAGATTTATCGGTGGGGGATGGACTCGCG
GCCTATCAGCTTGTTGGTGAGGTAATGGCTCACCAAGGCG
ACGACGGGTAGCCGGCCTGAGAGGGTGACCGGCCACACTG
GGACTGAGACACGGCCCAGACTCCTACGGGAGGCAGCAGT
GGGGAATATTGCACAATGGGCGAAAGCCTGATGCAGCGAC
GCCGCGTGAGGGATGACGGCCTTCGGGTTGTAAACCTCTT
TCAGTAGGGAAGAAGCGAAAGTGACGGTACCTGCAGAAGA
AGCGCCGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATACGT
AGGGCGCAAGCGTTATCCGGATTTATTGGGCGTAAAGAGC
TCGTAGGCGGTTTGTCGCGTCTGCCGTGAAAGTCCGAGGC
TCAACCTCGGATCTGCGGTGGGTACGGGCAGACTAGAGTG
ATGTAGGGGAGACTGGAATTCCTGGTGTAGCGGTGAAATG
CGCAGATATCAGGAGGAACACCGATGGCGAAGGCAGGTCT
CTGGGCATTTACTGACGCTGAGGAGCGAAAGCATGGGGAG
CGAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCATGCCGTAAACG
TTGGGCACTAGGTGTGGGGGACATTCCACGTTTTCCGCGC
CGTAGCTAACGCATTAAGTGCCCCGCCTGGGGAGTACGGC
CGCAAGGCTAAAACTCAAAGGAATTGACGGGGGCCCGCAC
AAGCGGCGGAGCATGCGGATTAATTCGATGCAACGCGAAG
AACCTTACCAAGGCTTGACATGTGCCAGACCGCTTCAGAG
ATGGGGTTTCCCTTCGGGGCTGGTTCACAGGTGGTGCATG
GTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGATGTTGGGTTAAGTCC
CGCAACGAGCGCAACCCTCGTTCCATGTTGCCAGCACGTA
GTGGTGGGGACTCATGGGAGACTGCCGGGGTCAACTCGGA
GGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGT
CTTGGGCTTCACGCATGCTACAATGGCCGGTACAATGGGT
TGCGATACTGTGAGGTGGAGCTAATCCCTAAAAGCCGGTC
TCAGTTCGGATTGGGGTCTGCAACTCGACCCCATGAAGTC
GGAGTCGCTAGTAATCGCAGATCAGCAACGCTGCGGTGAA
TACGTTCCCGGGCCTTGTACACACCGCCCGTCAAGTCACG
AAAGTTGGTAACACCCGAAGCCGATGGCCTAACCACCTTG
TGTGGGGGGAGTCGTCGAAGTGACGCCGTT。
【0007】
実施例2
本実施例は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibact
er sp. A4の調製方法を提供し、実施例1のグルタミン酸バチルスGlutam
icibacter sp. A4に基づいて、以下のステップを含み:
S1、菌株を分離および培養し、以下のステップを含み:
S1-1、約5g試験土壌を250mLコニカルフラスコに加え、100mL超純水を加
え、30℃、150rpmシェーカーに入れ、遮光して8h振盪培養した後取り出し、2
時間静置し、得られた上清を濃縮した初期土着微生物とし、
S1-2、5mL上清を95mLのフタル酸エステル含有の無機塩液体培地に移し、前記
無機塩液体培地中のフタル酸エステル含有量は5mg/Lであり、30℃、150rpm
条件下でシェーカーで5日間振盪培養した後、5mL上清の投入量で、無機塩液体培地を
連続的に濃縮培養し、無機塩液体培地中のフタル酸エステルの含有量を調整し、上記プロ
セスを1回投入とし、合計5回投入し、1回目の投入後、無機塩液体培地中のフタル酸エ
ステルの含有量は5mg/L、2回目の投入後、無機塩液体培地中のフタル酸エステルの
含有量は10mg/L、3回目の投入後、無機塩液体培地中のフタル酸エステルの含有量
は20mg/L、4回目の投入後、無機塩液体培地中のフタル酸エステルの含有量は40
mg/L、5回目の投入後、無機塩液体培地中のフタル酸エステルの含有量は80mg/
Lであり、
S1-3、5回投入した後の無機塩液体培地中の培養液を10倍に希釈し、希釈後の培
養液をフタル酸エステル含有量20mg/Lの無機塩固体培地に塗布し、30℃の環境温
度下で1日間転倒培養し、
S1-4、無機塩固体培地上で単一コロニーが生育した後、単一コロニーを数回スクラッ
チすることにより精製し、細菌株を単離し、A4株と番号付け、その後、A4株をLB固
体培地に移し、30℃の環境温度下で5日間転倒培養し、A4株のコロニー形態を観察す
る。
上記ステップS1-2において、1回目投入後、無機塩液体培地中のフタル酸エステルの
含有量は5mg/Lであるとは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジ
ブチルテレフタレート、ブチルベンジルフタレートの含有量はいずれも5mg/Lである
ことを意味する。
上記ステップS1-2において、2回目の投入後、無機塩液体培地中のフタル酸エステル
の含有量は10mg/Lであるとは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート
、ジブチルテレフタレート、ブチルベンジルフタレートの含有量はいずれも10mg/L
であることを意味する。
上記ステップS1-2において、3回目の投入後無機塩液体培地中のフタル酸エステルの
含有量は20mg/Lであるとは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、
ジブチルテレフタレート、ブチルベンジルフタレートの含有量はいずれも20mg/Lで
あることを意味する。
上記ステップS1-2において、4回目の投入後無機塩液体培地中のフタル酸エステルの
含有量は40mg/Lであるとは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、
ジブチルテレフタレート、ブチルベンジルフタレートの含有量はいずれも40mg/Lで
あることを意味する。
上記ステップS1-2において、5回目の投入後無機塩液体培地中のフタル酸エステルの
含有量は80mg/Lであるとは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、
ジブチルテレフタレート、ブチルベンジルフタレートの含有量はいずれも80mg/Lで
あることを意味する。
本実施例では、A4株をLB固体培地上で5日間スクラッチ培養し、コロニーが淡黄色、
円形、粘液状の不透明で、縁が整頓されておらず、表面が盛り上がり、湿潤で平滑であり
、その具体的な形態は図1に示される。
S2、走査型電子顕微鏡観察により菌株を同定し、以下のステップを含み:
S2-1、LB固体培地上で精製したA4株をLB液体培地に接種し、10~16h活性
化させ、
S2-2、LB液体培地から1mL菌液を吸引し、8000rpmで3min遠心分離し
、上清を除去し、減菌MSM培地を加えて3回細菌を洗浄し、得られた細菌沈殿に1mL
の2.5%(v/v)のグルタルアルデヒドを加えて均一に混合し、4℃環境温度下で1
0h静置し、
S2-3、一晩静置した溶液を遠心分離した後上清を流し、0.1M、pH7.0のPB
S緩衝液で3回細菌を洗浄し、各洗浄時間は15minであり、最後に1%のオスミウム
酸溶液でサンプルを1h固定し、
S2-4、オスミウム酸廃液を流し、0.1M、pH7.0のPBS緩衝液でサンプルを
3回洗浄し、各洗浄時間は15minであり、勾配濃度のエタノール溶液でサンプルを脱
水処理し、前記勾配濃度は30%、50%、70%、80%、90%および95%の5種
の濃度であり、各濃度のエタノール溶液の処理時間はいずれも15minであり、最後に
100%のエタノールでサンプルを20min脱水処理し、
S2-5、純アセトンでサンプルを浸透処理し、処理時間は20minであり、体積比1
:1のsuperエポキシ樹脂とアセトン混合液でサンプルを1h浸透させ、体積比3:
1のsuperエポキシ樹脂とアセトン混合液でサンプルを3h浸透させ、その後純su
perエポキシ樹脂でサンプルを12h浸透させ、浸透処理したサンプルをカプセル化し
、カプセル化サンプルを得、
S2-6、カプセル化後のサンプルを超薄スライサーでスライスし、厚さ70~90nm
のスライスを得、スライスを鉛濃度1%のクエン酸鉛溶液と酢酸ジオキシラニル50%エ
タノール飽和溶液で各5min染色し、染色後のスライスを風乾した後、透過型電子顕微
鏡でスライスを観察する。
本実施例では、走査型電子顕微鏡観察による形態特徴は楕円形であり、その具体的な形態
特徴は図2に示される。
上記ステップS1およびステップS2において:
無機塩液体培地は無機塩培養液であり、無機塩培養液成分は、濃度1.5g/Lの(NH
SO、濃度0.5g/LのKHPO、濃度1.91g/LのKHPO
3HO、濃度0.5g/LのNaCl、濃度0.2g/LのMgSO4・7H2Oを含
み、無機塩培養液のpH値は7.0である。
無機塩固体培地は、無機塩液体培地に1.5%(W/V)寒天粉末を加えて得られる。
LB液体培地およびLB固体培地の調製プロセスは、以下のとおりであり:
SA1、5.0g酵母エキス、10.0gトリプトン、10.0g塩化ナトリウムに超純
水を加えて1Lとし、pHを7.0に調整し、121℃温度環境下で20分間減菌してL
B液体培地を得、
SA2、LB液体培地をベースに、1.5%(W/V)寒天粉末を加えてLB固体培地を
得る。
S3、菌株の16S rDNA分子を同定し、以下のステップを含み:
S3-1、スライス中の菌株の全DNAを抽出し、細菌16S rDNAユニバーサルプ
ライマーで菌株ゲノミクスをPCR増幅してPCR産物を得、
S3-2、PCR産物の配列を決定し、配列結果をGenBankで報告されている16
S rDNA配列と比較して相同性を調べ、関連する菌種を選択して進化樹分析と同定を
行い、菌株の種を決定する。
上記ステップにおいて、進化樹分析の結果は図3に示され、菌株A4の16S rDNA
配列はNCBIオフィシャルサイト(http://www.ncbi.nlm.nih
.gov/)のBLASTプログラムを通じて他の登録された細菌株16S rDNA配
列と比較され、その結果、該菌株はGlutamicibacter sp.と最も類似
しており、相同率は99%であった。
したがって、本実施例でスクリーニングして得られた菌株をグルタミン酸バチルス(Gl
utamicibacter)と同定し、Glutamicibacter sp. A
4と命名した。
【0008】
実施例3
本実施例は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibact
er sp. A4の調製方法であり、実施例1とは以下の点で異なり:
ステップS1-3において、5回投入後の無機塩液体培地中の培養液を10倍希釈した

ステップS1-3において、30℃環境温度下で2日間転倒培養した。
ステップS2-1において、LB固体培地上で精製したA4株をLB液体培地に接種して
13h活性化させた。
ステップS2-2において、8000rpmで4min遠心分離し、4℃環境温度下で1
3h静置した。
ステップS2-3において、最後に1%のオスミウム酸溶液でサンプルを1.5h固定し
た。
ステップS2-5において、純superエポキシ樹脂でサンプルを14h浸透した。
ステップS2-6において、スライスを鉛濃度1%のクエン酸鉛溶液と酢酸ジオキシラニ
ル50%エタノール飽和溶液でそれぞれ8min染色した。
【0009】
実施例4
本実施例は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibact
er sp. A4の調製方法を提供し、実施例1とは以下の点で異なり:
ステップS1-3において、30℃環境温度下で3日間転倒培養した。
ステップS2-3において、最後に1%のオスミウム酸溶液でサンプルを2h固定した。
ステップS2-1において、LB固体培地上で精製したA4株をLB液体培地に接種し、
16h活性化させた。
ステップS2-2において、8000rpmで5min遠心分離し、4℃環境温度下で1
6h静置した。
ステップS2-3において、最後に1%のオスミウム酸溶液でサンプルを2h固定した。
ステップS2-5において、純superエポキシ樹脂でサンプルを16h浸透した。
ステップS2-6において、スライスを鉛濃度1%のクエン酸鉛溶液と酢酸ジオキシラニ
ル50%エタノール飽和溶液でそれぞれ10min染色した。
【0010】
実施例5
本実施例は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibact
er sp. A4の用途を提供し、実施例1のグルタミン酸バチルスGlutamic
ibacter sp. A4に基づいて、グルタミン酸バチルスGlutamicib
acter sp. A4をフタル酸エステル分解用の製剤の調製に使用した。
製剤の調製プロセスは、以下のとおりであり:
SB1、500μLのグルタミン酸バチルスA4株を100mlのLB培地に移し、30
℃、150rpm環境下で24h培養した後8000rcfで5min遠心分離して培養
菌液を得、
SB2、菌液をMSMで2回洗浄した後細菌のOD600値を1.0に調整して菌懸濁液
とし、4℃環境温度下で一時保存する。
本実施例は、製剤の1つの調製方法のみを示したが、実際の応用では、グルタミン酸バチ
ルスGlutamicibacter sp. A4を10~16h活性化させ、対数期
まで振盪培養し、細菌を収集し、実際の必要に応じて細菌含有量を調整して菌懸濁液を調
製し、調製された細菌懸濁液をフタル酸エステルによって汚染された水または土壌に投入
する。
本実施例において、製剤の施用方法は、製剤をフタル酸エステルによって汚染された水に
施用し、製剤の施用量は水の質量の15%である。
Glutamicibacter sp. A4菌の分解性能測定:
20mg/L濃度のPAEs(すなわち20mg/L DMP、20mg/L DEP、
20mg/L DBPおよび20mg/L BBPを含有)を含む19mL MSM培養
液に上記菌懸濁液1mLを投入し、接種しない対照組を用意し、pHを7.0に調整し、
各組で3回重複した。30℃、150rpm恒温シェーカーで48h培養し、それぞれ1
、3、6、12、24、48、72hでサンプリングし、取り出したコニカルフラスコに
40mLクロマトグラフィー用純メタノールを加え、水浴で1h超音波振盪し、超音波処
理終了後、ボルテックスで振盪した後、上清を0.22μm有機相フィルタ膜で濾過し、
2mL褐色液相バイアルに移し、高速液体クロマトグラフィーで検出した。
クロマトグラフィー条件:LC-20AT高速液相クロマトグラフィー(SPD-2A紫外
線検出器付き)を使用した。検出時間は40minであり、注入システムの注入量は20
μLであり、分離システムはアセトニトリル-水を移動相とし、初期流速は1.0mL/
minであり、グラジエント溶出でPAEsを分離し、クロマトグラフィーカラムはΦ4
.6×250mm Inertsil ODS-P液体クロマトグラフィーカラムを使用
し、カラム温度は40℃であり、検出システムは紫外検出器を使用し、それぞれ205n
m、225nmの二波長検出モードで検出した。
Glutamicibacter sp. A4菌の4種の混合PAEsに対する分解効
果は図4に示され、この細菌を3日間振盪培養下で4種PAEsに対して顕著な分解効果
が認められた。特に、短鎖PAEs(例えばDMP、DEP)に対して、上記PAEsに
対するA4の1日目の分解率は95%を超え、2日目の分解率は98%を超えた。長鎖P
AEs(例えばDBP、BBP)の分解速度は素体的に遅く、DBPの分解率が1日目9
0%に達し、BBPの分解率が約70%であったが、2日目、BBPの分解率が約80%
に達した。72h培養した後、4種PAEsがほぼ完全に分解され、短鎖PAEs分解率
が98%を超え、長鎖PAEsの分解率も75%以上に達し、これは、Glutamic
ibacter sp. A4菌が4種PAEsを効率的に分解する能力を有することを
示している。
上記性能測定プロセスにおいて、DMPはフタル酸エステルの略称であり、DEPはジエ
チルテレフタレートの略称であり、DBPはジブチルテレフタレートの略称であり、BB
Pはブチルベンジルフタレートの略称である。
【0011】
実施例6
本実施例は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibact
er sp. A4の用途であり、実施例5とは以下の点で異なり:
製剤の施用方法は、製剤をフタル酸エステルによって汚染された土壌に投入し、製剤の施
用量は土壌質量の5%である。
実施例7
本実施例は、フタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスGlutamicibact
er sp. A4の用途を提供し、実施例5とは以下の点で異なり:
製剤の施用方法は、製剤をフタル酸エステルによって汚染された土壌に投入し、製剤の施
用量は土壌質量の20%である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2025501810000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2025-01-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)に保蔵され、その保蔵番号はCCTCC M20
221850である、ことを特徴とするフタル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA
4株。
【請求項2】
フタル酸エステルは、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジブチルテレ
フタレート又はブチルベンジルフタレートである、ことを特徴とする請求項1に記載のフ
タル酸分解能を有するグルタミン酸バチルスA4株。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグルタミン酸バチルスA4株に基づくフタル酸エステルを分解す
る製剤であって、
前記製剤の調製プロセスは、
SB1、500μLのグルタミン酸バチルスA4株を100mlのLB培地に移し、30
℃、150rpm環境下で24h培養した後8000rcfで5min遠心分離して培養
菌液を得るステップと、
SB2、前記菌液をMSMで2回洗浄した後細菌のOD 600 値を1.0に調整して製剤
を得て、4℃環境温度下で一時保存するステップと、
を含むことを特徴とするフタル酸エステルを分解する製剤。
【請求項4】
前記製剤の施用方法は、製剤をフタル酸エステルによって汚染された媒体に投入すること
である、ことを特徴とする請求項に記載のフタル酸エステルを分解する製剤
【請求項5】
前記媒体は、水、土壌である、ことを特徴とする請求項に記載のフタル酸エステルを分
解する製剤
【請求項6】
前記製剤の施用量は、媒体質量の5%~20%である、ことを特徴とする請求項に記載
フタル酸エステルを分解する製剤
【国際調査報告】