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特表2025-501819プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法
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  • 特表-プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/154 20060101AFI20250117BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A23B7/154
C12Q1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577885
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2022141535
(87)【国際公開番号】W WO2024130722
(87)【国際公開日】2024-06-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】謝雲飛
(72)【発明者】
【氏名】張静
(72)【発明者】
【氏名】陳丹瑩
(72)【発明者】
【氏名】孫雅▲てぃん▼
(72)【発明者】
【氏名】杭瑜
(72)【発明者】
【氏名】欧陽宇成
(72)【発明者】
【氏名】張▲ゆう▼尭
【テーマコード(参考)】
4B063
4B169
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ61
4B063QR41
4B063QR75
4B063QS28
4B063QX01
4B169HA11
4B169KA01
4B169KB03
4B169KC16
4B169KC34
4B169KC40
(57)【要約】
本発明は、プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法を開示し、果菜鮮度保持の技術分野に属する。本発明のプラズマ活性化水と酒石酸を併用して黄色ブドウ球菌を阻害する方法において、酒石酸とプラズマ活性化水を併用して黄色ブドウ球菌に作用させることにより、黄色ブドウ球菌の成長を効果的に阻害することができ、カット果菜に作用させる場合、カット果物が腐りやすいという問題を効果的に解決し、カット果物のシェルフライフを延ばす。酒石酸浸漬、プラズマ活性化水浸漬処理を単独で採用するよりも、酒石酸とプラズマ活性化水の併用処理は、カット果菜の表面の微生物を効率的かつ低エネルギー消費で死滅させることができ、呼吸減衰に関連する酵素の活性を効果的に阻害し、カット果菜の生鮮食品の官能品質を維持し、その生鮮賞味期限を大幅に延長することができ、また、滅菌処理により化学的な残留物を発生させることがなく、生鮮果菜品の安全性を著しく向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ活性化水と酒石酸を併用して黄色ブドウ球菌を阻害する方法であって、
酒石酸をプラズマ活性化水に溶解して、酒石酸活性化液を得るステップ(1)と、
黄色ブドウ球菌をトリプシン大豆ブロス培地に接種して、一晩培養して菌液を得た後、菌液を遠心分離し収集し、滅菌塩化ナトリウム水溶液に懸濁させ、懸濁液を得るステップ(2)と、
ステップ(1)で調製された酒石酸活性化液及びステップ(2)で調製された黄色ブドウ球菌懸濁液を滅菌水中で混合し、均一にした後、静置することで滅菌処理を行い、その後、混合液をシャーレに入れて、平板計数培地15~20mLを入れ、均一に混合して、培養し、計数するステップ(3)と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)の前記プラズマ活性化水は、電力400Wの条件で30~60分調製することにより得られたプラズマ活性化水であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)の前記酒石酸活性化液の濃度が0.25~1.0質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(3)の前記滅菌処理の時間が2~10分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)の前記酒石酸活性化液と黄色ブドウ球菌懸濁液との体積比が1:1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(3)の前記培養は37℃で24~36時間行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法であって、
新鮮な果菜を洗って、薄切りにする、新鮮な果物を前処理するステップ(1)と、
溶質として酒石酸、溶液としてプラズマ活性化水を用いて、酒石酸活性化液を調製する、酒石酸活性化液を調製するステップ(2)と、
ステップ(1)で前処理されたカット果菜薄切りをステップ(2)で調製された酒石酸活性化液中に浸漬し、浸漬終了後、水を切る、果菜を浸漬処理するステップ(3)と、
ステップ(3)で処理された果菜を十分に乾燥させ、シールして保存する、果菜を保存するステップ(4)と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
ステップ(2)の前記酒石酸活性化液の濃度が0.75~1.0質量%であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(3)の前記カット果菜の酒石酸活性化液での浸漬時間が10分であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
果菜鮮度保持処理における請求項7~9のいずれか1項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法に関し、果菜鮮度保持の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
パイナップルは、別名ホウリ(鳳梨)と呼ばれ、パイナップル科パイナップル属の多年生草本果樹植物で、フルクトース、グルコース、ビタミンやミネラル元素を豊富に含み、栄養価が高く、多くの消費者に喜ばれている。しかし、パイナップルは、体積が大きく、皮をむくのが難しく食べにくいという特徴が販売を制限していた。そのため、果菜を選別、洗浄、切り分けなどの処理を行ったものを新鮮な状態に維持しつつ、すぐに食べるものとして消費者に供給するためのカット技術の応用には、市場の将来性が期待できる。
【0003】
しかし、パイナップルは、一連のカット処理を経ると、様々な好ましくない生理・生化学反応が起こり、それによって果実の組織構造を損ない、組織内の酵素と基質が直接接触して果実組織の汁が外部に漏出し、また、皮むきや切り分けなどの処理は果実の真皮層による保護作用を失わせて、微生物の汚染と繁殖、特に黄色ブドウ球菌の繁殖をもたらしやすい。そして、一部の栄養物質を流失させ、製品の品質に影響を与える。これらの原因により、パイナップルの品質の劣化、保存時間が短いという問題が生じて、カットパイナップルの産業の発展を深刻に制限した。
【0004】
現在、カット果物のシェルフライフを延ばすために、中国国内外では、低温コールドチェーン法、放射線保存法、超高圧保存法、改変雰囲気包装保存法、活性包装法、可食コーティング法、防腐抗菌処理など、多くの技術方法が開発されている。前3種の伝統的な鮮度保持方法には、操作が複雑で、設備コストが高く、鮮度保持効果が不十分でないなどの問題がある。新型包装及び鮮度保持コーデイングなどの鮮度保持方法の適用面は広いが、抗菌効果が不安定で、制菌効果が明らかでないなどの欠点がある。
【0005】
そのため、高効率で無毒な保存剤の開発はカット果物業界の解決すべき課題の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によるカット果物鮮度保持方法には、操作が複雑で、コストが高く、制菌効果が悪く、鮮度保持効果が不十分であるなどの問題が存在する。
【0007】
上記の技術的課題及び欠陥に対して、本発明は、細菌の増殖数を顕著に減少させ、製品の官能品質及び栄養価を効果的に維持するだけではなく、カット果菜製品の変色反応を効果的に抑制し、生鮮品のシェルフライフを延ばすことができる、プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の技術的解決手段によって達成され得る。
【0009】
本発明の第1目的は、
酒石酸をプラズマ活性化水に溶解して、酒石酸活性化液を得るステップ(1)と、
黄色ブドウ球菌をトリプシン大豆ブロス培地に接種して、一晩培養して菌液を得た後、菌液を遠心分離し収集し、滅菌塩化ナトリウム水溶液に懸濁させ、懸濁液を得るステップ(2)と、
ステップ(1)で調製された酒石酸活性化液及びステップ(2)で調製された黄色ブドウ球菌懸濁液を滅菌水中で混合し、均一にした後、静置することで滅菌処理を行い、その後、混合液をシャーレに入れて、平板計数培地15~20mLを入れ、均一に混合して、培養し、計数するステップ(3)と、を含む、プラズマ活性化水と酒石酸を併用して黄色ブドウ球菌を阻害する方法を提供することである。
【0010】
一実施形態では、ステップ(1)の前記プラズマ活性化水は、電力400Wの条件で30~60分、好ましくは50分調製することにより得られたプラズマ活性化水である。
【0011】
一実施形態では、ステップ(1)の前記酒石酸活性化液の濃度が0.25~1.0質量%、好ましくは0.75%である。
【0012】
一実施形態では、ステップ(2)の前記トリプシン大豆ブロス培地は、蒸留水1Lにトリプトン17.0、塩化ナトリウム5.0g、大豆パパイン加水分解物3.0g、リン酸二カリウム2.5g、グルコース2.5gを溶解することにより調製される。
【0013】
一実施形態では、ステップ(2)の前記一晩培養の条件は、回転数150rpm、37℃で一晩培養することである。
【0014】
一実施形態では、ステップ(2)の前記懸濁液は、菌液1mLを8000rで5分遠心分離し、収集して滅菌塩化ナトリウム水溶液9mLに懸濁させ、懸濁液を得るものであり、前記懸濁液中の菌液濃度は10~10CFU/mLである。
【0015】
一実施形態では、ステップ(3)の前記酒石酸活性化液と黄色ブドウ球菌懸濁液との体積比が1:1である。
【0016】
一実施形態では、ステップ(3)の前記滅菌処理時間が2~10分、好ましくは10分である。
【0017】
一実施形態では、ステップ(3)の前記平板計数培地は、蒸留水1Lにトリプトン5.0g、酵母エキス粉末2.5g、グルコース1.0g、寒天15.0gを溶解することにより調製される。
【0018】
一実施形態では、ステップ(3)の前記培養は37℃で24~36時間行われる。
【0019】
本発明の第2目的は、
新鮮な果菜を洗って、薄切りにする、新鮮な果物を前処理するステップ(1)と、
溶質として酒石酸、溶液としてプラズマ活性化水を用いて、酒石酸活性化液を調製する、酒石酸活性化液を調製するステップ(2)と、
ステップ(1)で前処理されたカット果菜薄切りをステップ(2)で調製された酒石酸活性化液中に浸漬し、浸漬終了後、水を切る、果菜を浸漬処理するステップ(3)と、
ステップ(3)で処理された果菜を十分に乾燥させ、シールして保存する、果菜を保存するステップ(4)と、を含む、プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法を提供することである。
【0020】
一実施形態では、ステップ(1)の前記新鮮な果菜は、パイナップル、リンゴ、梨、キュウリのうちの1種又は複数種である。
【0021】
一実施形態では、ステップ(2)の前記プラズマ活性化水は、電力400Wの条件で50分調製することにより得られたプラズマ活性化水である。
【0022】
一実施形態では、ステップ(2)の前記酒石酸活性化液の濃度が0.75~1.0質量%である。
【0023】
一実施形態では、ステップ(3)の前記カット果菜の酒石酸活性化液での浸漬時間が10分である。
【0024】
一実施形態では、ステップ(1)前記薄切りは、新鮮な果物を0.3~0.5cmの厚さで縦に切った果菜薄切りである。
【0025】
一実施形態では、前記カット果菜は、酒石酸活性化液で処理される場合、鮮度保持時間が4~8日間である。
【0026】
本発明の別の目的は、果菜鮮度保持処理における前記プラズマ活性化水と酒石酸を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法の使用を提供することである。
【0027】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0028】
(1)本発明に係る酒石酸とプラズマ活性化水を併用してカット果菜を処理する鮮度保持方法は、カット果物が腐りやすいという問題を効果的に解決し、カット果物のシェルフライフを延ばす。酒石酸浸漬、プラズマ活性化水浸漬処理を単独で採用するよりも、酒石酸とプラズマ活性化水との併用処理は、まず、浸漬滅菌を行い、次に加工して包装するという技術方法を採用するものであり、滅菌過程で熱が生じることはなく、カット果菜の表面の微生物を効率的かつ低エネルギー消費で死滅させることができ、呼吸減衰に関連する酵素の活性を効果的に阻害し、カット果菜の生鮮食品の官能品質を維持し、その生鮮賞味期限を大幅に延長することができ、また、滅菌処理により化学的な残留物を発生させることがなく、生鮮果菜品の安全性を著しく向上させる。併用処理によるカット果菜は、冷蔵では鮮度保持時間が4~8日間と長い。
【0029】
(2)カット果菜を酒石酸溶液に浸漬すると、酒石酸溶液の低pH値がポリフェノールオキシダーゼ活性を効果的に阻害するだけでなく、果菜の表面の微生物の成長を阻害することができる。そして、酒石酸は、無毒で異臭のない天然抗酸化物質で、人体や環境に危害がなく、プラズマ活性化水と組み合わせることで、腐敗微生物を効果的に死滅させることができ、材料の形状を問わず、均一に作用させることができる。さらに、新しい非加熱滅菌技術として、プラズマ活性化水処理は食品の色、組織、栄養の損失・破壊が少なく、食品の品質を効果的に向上させることができ、食品中の生物活性化合物に対する熱効果の悪影響を回避し、食品のシェルフライフを延ばすと同時に、カット果菜の品質と栄養成分を維持することができる。
【0030】
(3)本発明による鮮度保持手段は、環境に優しく、安全で、行われやすく、消費者に受け入れられやすく、各種果物店や飲料店などに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例1及び比較例1~5の菌液中の黄色ブドウ球菌の減少対数のデータ図である。
図2】本発明の実施例2の不同菌液中の黄色ブドウ球菌の減少対数のデータ図である。
図3】本発明の実施例3の不同菌液中の黄色ブドウ球菌の減少対数のデータ図である。
図4】本発明の実施例4の不同菌液中の黄色ブドウ球菌の減少対数のデータ図である。
図5】本発明の実施例5及び比較例6~8の保存期限内のカットパイナップルの表面の色の変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明をより明確に理解するために、以下、カットパイナップルの実施例及び図面を参照して本発明をさらに説明する。実施例は、説明のためにのみ使用され、いずれも本発明を限定するものではない。実施例では、各試薬材料は市販品として入手することができ、具体的な条件が明記されていない実験方法は、その分野でよく知られた通常の方法と通常の条件、又は機器メーカーが提案する条件に従ったものである。
【0033】
トリプシン大豆ブロス(TSB)培地:トリプシン17.0g、塩化ナトリウム5.0g、大豆パパイン加水分解物3.0g、リン酸水素二カリウム2.5g、グルコース2.5gを蒸留水1Lに溶解する。
【0034】
平板計数培地:トリプトン5.0g、酵母エキス粉末2.5g、グルコース1.0g、寒天15.0gを蒸留水1Lに加える。
【0035】
黄色ブドウ球菌ATCC 6538は北納生物技術研究院から購入した。
【0036】
実施例1
プラズマ活性化水と酒石酸を併用して黄色ブドウ球菌を阻害する方法であって、以下のステップを含む。
【0037】
(1)プラズマ活性化水の調製:脱イオン水を手持ち式プラズマ発生装置(BSH社製プラズマ活性化水調製装置)に注入し、電力を400Wに調整して50min処理し、プラズマ活性化水(PAW)を発生させる。
【0038】
(2)トリプシン大豆ブロス(TSB)培地の調製:トリプシン大豆ブロス培地3gを計量し、脱イオン水100mLに加え、溶解後121℃で15分滅菌し、温度を下げた後、バイオクリーンベンチに置いておく。
【0039】
(3)平板計数培地の調製:平板計数培地4.7gを計量し、脱イオン水100mLに加え、溶解後121℃で15分滅菌し、温度を下げた後、バイオクリーンベンチに置いておく。
【0040】
(4)黄色ブドウ球菌の活性化:-80℃冷蔵庫に保存した黄色ブドウ球菌ATCC 6538を取り、37℃で、解凍した培養物をステップ(2)で調製されたTSB培地15mLに接種して10時間培養する。
【0041】
(5)黄色ブドウ球菌懸濁液の調製:ステップ(4)で活性化された黄色ブドウ球菌1mLをステップ(2)で調製されたトリプシン大豆ブロス(TSB)10mLに接種し、37℃で一晩放置し、回転数を150rpmとし、次に、菌液1mLを8000rで5分遠心分離し収集し、滅菌塩化ナトリウム水溶液溶液9mLに懸濁させ、懸濁液を得る。
【0042】
(6)酒石酸活性化液の調製:酒石酸0.75gをプラズマ活性化水100mlに加え、完全に溶解する。
【0043】
(7)滅菌処理:ステップ(6)で調製された酒石酸活性化液100μL、ステップ(5)で調製された黄色ブドウ球菌懸濁液(菌液濃度は10CFU/mL)100μL、滅菌水800μLを均一に混合した後、10分静置して滅菌した後、シャーレに置き、ステップ(3)で調製された平板計数培地を15mL注ぎ、均一に混合し、37℃で24時間培養し、計数する。
【0044】
実施例2
実施例1のステップ(1)のプラズマ活性化水の調製時間をそれぞれ20分、30分、40分、60分に変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0045】
実施例3
実施例1のステップ(6)における酒石酸の添加量をそれぞれ0.25g、0.5g、1gに変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0046】
実施例4
実施例1のステップ(7)における滅菌時間をそれぞれ2分、4分、6分、8分に変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0047】
比較例1
実施例1のステップ(6)における酒石酸をアスコルビン酸0.75gに変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0048】
比較例2
実施例1のステップ(6)における酒石酸をクエン酸0.75gに変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0049】
比較例3
実施例1のステップ(6)における酒石酸を没食子酸0.75gに変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0050】
比較例4
ステップ(1)を省略し、実施例1のステップ(6)におけるプラズマ活性化水を脱イオン水に変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0051】
比較例5
酒石酸を省略し、実施例1のステップ(6)における酒石酸活性化液をプラズマ活性化水に変更した以外、残りの条件は実施例1と同様にした。
【0052】
結果測定
1.実施例1及び比較例1~5の菌液を計数して統計し、結果を表1に示す。
表1及び図1を合わせると、PAW(プラズマ活性化水)処理のみでは(比較例5)、黄色ブドウ球菌に対する制菌効果はあまり明らかではなく、コロニー数はわずかに減少し、1.28±0.04 log10 CFU/mLにとどまった。一方、酒石酸水溶液のみで処理した場合(比較例4)、黄色ブドウ球菌に対する制菌効果はあまり明らかではなく、コロニー数は1.08±0.18log10 CFU/mLしか減少しなかった。クエン酸、アスコルビン酸、没食子酸のそれぞれをプラズマ活性化水と併用して処理した場合も、黄色ブドウ球菌に対する制菌効果は実施例1の効果より明らかに低かった。このことから、TAとPAW処理を組み合わせると、黄色ブドウ球菌に対する阻害効果を大幅に高めることができ、良好な滅菌効果を実現できることが示された。
【0053】
2.調製時間の異なるプラズマ活性化水による黄色ブドウ球菌の制菌効果
実施例2の菌液を計数して統計した結果、図2に示すように、調製時間が長くなるにつれて、菌液中の黄色ブドウ球菌の数が絶えず減少し、減少の対数が増加している。調製時間が50分に達すると、菌液中の黄色ブドウ球菌の数はほぼ安定したレベルになるが、プラズマ活性化水の調製時間をさらに延長しても、菌液中の黄色ブドウ球菌に対する滅菌効果は、調製時間が50分と同等であった。
【0054】
3.各濃度の酒石酸活性化液による黄色ブドウ球菌の制菌効果
実施例3の菌液を計数して統計した結果、図3に示すように、酒石酸活性化液の質量濃度の増加に伴い、菌液中の黄色ブドウ球菌の数が大幅に減少し、減少の対数が増加している。酒石酸活性化液の濃度が0.75%と1%程度になると、菌液中の黄色ブドウ球菌の減少は穏やかになり、濃度1%では、菌液の減少対数が最も高くなり、制菌効果が最も高いことが示された。
【0055】
4.各滅菌時間による黄色ブドウ球菌の制菌効果
実施例4の菌液を計数して統計した結果、図4に示すように、滅菌時間が長くなるにつれて、菌液中の黄色ブドウ球菌の数が大幅に減少し、減少の対数が増加している。滅菌時間が10分に達すると、菌液中の黄色ブドウ球菌の減少対数は穏やかになり、最も高くなり、制菌効果が最も高いことが示された。
【0056】
実施例5
プラズマ活性化水と酒石酸処理を併用してカットパイナップルを処理する鮮度保持方法であって、以下のステップを含む。
【0057】
(1)洗浄:皮が傷ついておらず病気のない新鮮なパイナップルを選び、きれいな水で洗う。
【0058】
(2)皮むき、切り分け:パイナップルの皮をむいて、まず、十字に切ってパイナップルを4つの部分に分けて、さらに横に切って約0.5cm厚さの新鮮なパイナップルチップを得る。
【0059】
(3)保存剤への浸漬:ステップ(2)のカットパイナップルチップを実施例1で調製された酒石酸活性化液に10分浸漬し、取り出して水を切る。
【0060】
(4)包装、保存:水を切ったパイナップルチップを密封包装袋に入れ、4℃の恒温恒湿ケースで保存する。
【0061】
比較例6
実施例5のステップ(3)を10分の清水浸漬に変更した以外、残りは実施例1と同様にした。
【0062】
比較例7
実施例5のステップ(3)を10分のプラズマ活性化水浸漬に変更した以外、残りは実施例1と同様にした。
【0063】
比較例8
実施例5のステップ(3)における酒石酸活性化液を、脱イオン水を用いて調製された同質量濃度の酒石酸溶液とし、10分浸漬し、取り出して水を切る以外、残りは実施例1と同様にした。
【0064】
結果測定
実施例5及び比較例6~8で鮮度保持処理したパイナップルチップについて、異なる保存時間における変色、ポリフェノール含有量の変化、可溶性固形分含有量の変化及び重量減少率の変化を記録した。
【0065】
水分損失は、果物や野菜の品質に悪影響を与え、品質の変化や色の不良をもたらし、生鮮農産物の経済的損失につながる可能性がある。表2に示すように、すべてのサンプルは保存時間内に重量損失が生じたが、2~8日間の保存時間において、実施例5の処理後のパイナップルチップサンプルの重量損失は比較例6~8に比べてほとんど顕著な変化がなかった。酒石酸とプラズマ活性化水を併用してカットパイナップルチップを処理すると、水分損失を効果的に減少させ、パイナップルチップの鮮度を維持することができることを示した。
【0066】
色の統計データから分かるように、比較例6~8で処理されたパイナップルチップに対して、処理時間の増加に伴い、L*値は絶えず低下しており、その低下幅は顕著な差を示しており、一方、実施例5の処理後のパイナップルチップは、L*値がある程度低下したが、その低下幅は小さく、明らかな差がなかった。酒石酸とプラズマ活性化水を併用してカットパイナップルチップを処理すると、カットパイナップチップの色を効果的に維持し、パイナップルチップの鮮度を保持できることが示された。
【0067】
可溶性固形分含有量は果物の甘さと消費者の受け入れ能力の重要な指標である。統計データから分かるように、実施例5及び比較例6~8で処理されたパイナップルチップの可溶性固形分含有量は、処理時間の増加とともに減少しているが、実施例5では、比較例6~8と比較して、可溶性固形分含有量の減少幅が有意に低下している。酒石酸とプラズマ活性化水を併用してパイナップルチップを処理すると、パイナップルチップ中の可溶性固形分含有量の損失を効果的に低減できることが示された。
【0068】
パイナップルチップ中の総酸含有量から見ると、実施例5及び比較例6~8で処理されたパイナップルチップ中の総酸含有量は、いずれも保存時間の延長につれて低下しているが、実施例5では、比較例6~8に比べて、総酸含有量の低下幅が明らかに低下している。酒石酸とプラズマ活性化水を併用してパイナップルチップを処理すると、パイナップルチップ中の総酸含有量を効果的に低下できることが示された。
【0069】
同様に、カットカットパイナップルチップ中の総フェノール含有量に対して、酒石酸とプラズマ活性化水を併用してサンプルを処理すると、総フェノール含有量は84.34g/kgから90.14g/kgに増加した。処理時間の延長に従って、パイナップルチップ中の総フェノール含有量は絶えず低下しており、例えば、比較例6では、0日間と8日間の処理後、総フェノール含有量は84.34g/kgから48.54g/kgに減少し、含有量はほぼ半分に低下した。比較例7及び8でも、総フェノール含有量は同様に大幅に低下しており、それぞれ22.9%と39.5%低下した。一方、実施例5では、90.14g/kgから75.56g/kgへのわずか16.2%の減少であった。実施例5で処理されたカットパイナップルチップ中の総フェノール含有量の減少幅は比較例6~8より明らかに低いことがわかった。酒石酸とプラズマ活性化水を併用してカットパイナップルチップを処理すると、果物中の総フェノール含有量の損失を有効に低減させ、果物の鮮度を保持できることが示された。
【0070】
表2 実施例5及び比較例6~8の各保存時間におけるカットパイナップルチップの変色、ポリフェノール含有量、可溶性固形分物含有量及び重量減少率の変化
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】