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特表2025-501821耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用
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  • 特表-耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20250117BHJP
   C03C 8/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C8/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578803
(86)(22)【出願日】2023-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2023098949
(87)【国際公開番号】W WO2024130975
(87)【国際公開日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】202211665025.4
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521475495
【氏名又は名称】重慶▲シン▼景特種玻璃有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 昊
(72)【発明者】
【氏名】譚 友洪
(72)【発明者】
【氏名】周 靖鵬
(72)【発明者】
【氏名】陳 穎
(72)【発明者】
【氏名】向 文浩
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
4G062AA10
4G062CC10
4G062DA05
4G062DA06
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4G062DB04
4G062DC01
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4G062DE01
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4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM17
4G062NN34
(57)【要約】
本出願は、イオンふるいの技術分野に属し、特に、ガラス化学強化用塩浴の不純物除去の技術分野に属し、具体的に、耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用に関する。イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、SiO 46~60モル%、Al 3~16モル%、Y 0~3モル%およびRO 33~45モル%を含み、ROがアルカリ金属酸化物であり、前記イオンふるいは、
【化1】
が1以上であることを満たす。本出願に係るイオンふるいは、耐高温性および高温安定性が優れ、高温塩浴に比較的長時間置かれても、顕著な結晶相転移がほとんど発生せず、構成が安定であり、塩浴を汚染する不純物物質を大量放出することがなく、強化後のガラス完成品の表面に顕著な欠陥が発生しない。本出願に係るイオンふるいは、480℃の塩浴において24時間継続的かつ安定的に不純物イオンを吸着することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐高温性および高温安定性を有するイオンふるいであって、
イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、SiO 46~60モル%、Al 3~16モル%、Y 0~3モル%およびRO 33~45モル%を含み、ROがアルカリ金属酸化物であり、
前記イオンふるいは、
【化1】
が1以上であることを満たし、
【化2】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を1つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークであり、
【化3】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を2つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークである
ことを特徴とする耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい。
【請求項2】
前記イオンふるいを480℃の塩浴に24時間置いたあと、前記イオンふるいにおける結晶の含有量が10重量%未満である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオンふるい。
【請求項3】
【化4】

【化5】
を満たす
ことを特徴とする請求項1または2に記載のイオンふるい。
【請求項4】
前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、52.0≧0.85×SiO+0.15×Al+1.65×Y≧45.3を満たす
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のイオンふるい。
【請求項5】
前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、20.0≧0.50×RO≧16.0をさらに満たし、ROがNaOおよび/またはKOであり、好適には、ROは、NaOである
ことを特徴とする請求項4に記載のイオンふるい。
【請求項6】
前記イオンふるいにおいて、
SiOのモル百分率が49~60モル%であり、および/または
Alのモル百分率が3~15モル%であり、および/または
のモル百分率が1~3モル%であり、および/または
Oのモル百分率が33~40モル%である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のイオンふるい。
【請求項7】
イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、ZnO 0~3モル%、CaO 0~3モル%、MgO 0~3モル%、P 0~3モル%、およびB 0~3モル%をさらに含み、ZnO+CaO+MgO+P+Bのモル百分率の合計が5モル%以下である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のイオンふるい。
【請求項8】
前記イオンふるいにおいてPおよび/またはBがほとんど含まれない
ことを特徴とする請求項7に記載のイオンふるい。
【請求項9】
塩浴の質量を基準とし、質量百分率が1重量%である前記イオンふるいを、105±10ppmの不純物リチウムイオンを含有する480℃の塩浴に入れるとき、
塩浴におけるリチウムイオン濃度yの時間xの経過に従う変化の変化曲線は、y=A×exp(-x/b)+A×exp(-x/b)+Cの関数を満たし、expが指数関数であり、Aが100>A>30、Aが0<A<31、bが0<b<5、bが0<b<25、Cが0<C<50を満たし、xの単位が時間である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のイオンふるい。
【請求項10】
前記イオンふるいは、顆粒状、シート状または多孔質のものであり、好適には顆粒状のものであり、好適には顆粒状のイオンふるいの粒度は、1~10mmである
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のイオンふるい。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のイオンふるいの調製方法であって、
前記調製方法は、調合指図書に従って各原材料を秤取して均一に混合したあと、1300~1650℃の温度で融解させて液体材料を得、そして顆粒状、シート状または多孔質のものとして調製するステップを含む
ことを特徴とするイオンふるいの調製方法。
【請求項12】
水焼入れにより顆粒状イオンふるいを形成し、水焼入れの温度は10~80℃である
ことを特徴とする請求項11に記載のイオンふるいの調製方法。
【請求項13】
外力による圧延または引抜によりシート状のイオンふるいを形成する
ことを特徴とする請求項11に記載のイオンふるいの調製方法。
【請求項14】
発泡剤を導入することにより多孔質のイオンふるいを形成する
ことを特徴とする請求項11に記載のイオンふるいの調製方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載のイオンふるいを350~550℃の不純物除去待ち塩浴に導入して不純物イオンの吸着反応を行うステップを含む
ことを特徴とするガラス化学強化用塩浴の不純物除去方法。
【請求項16】
前記イオンふるいの使用量は、前記不純物除去待ち塩浴の0.5~5.0重量%であり、および/または、前記吸着反応の時間は、0.1~48.0時間である
ことを特徴とする請求項15に記載の不純物除去方法。
【請求項17】
前記不純物除去待ち塩浴における不純物イオンの含有量は、1~1000ppmである
ことを特徴とする請求項16に記載の不純物除去方法。
【請求項18】
強化待ちガラスと、請求項1~10のいずれか1項に記載のイオンふるいとを、不純物イオンのないガラス化学強化用塩浴に導入し、強化待ちガラスに対して化学強化を行うステップを含む
ことを特徴とする化学強化ガラスの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年12月23日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202211665025.4であり、名称が「耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【0002】
本出願は、イオンふるいの技術分野に属し、特に、ガラス化学強化用塩浴の不純物除去の技術分野に属し、具体的に、耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスの化学強化プロセスにおいて、ガラスにおけるイオン半径の小さいアルカリ金属イオン(例えばNa、Li)が塩浴におけるイオン半径の大きいアルカリ金属イオン(例えばK、Na)で置換され、ある程度の深さの範囲内で「詰まり現象」が発生し、特定の応力分布が形成され、ガラスにおけるマイクロクラックの伸展が阻止され、したがって、ガラス強度を上げる目的を達することができ、そして、イオン半径の小さいアルカリ金属イオンがガラスからどんどん塩浴に進入して、塩浴におけるイオン半径の小さいアルカリ金属イオンの量の増加を招くが、増加したイオン半径の小さいアルカリ金属イオンが塩浴における不純物イオンとなる。塩浴におけるイオン半径の小さいアルカリ金属イオン(例えばLi)の量が一定以上に高くなると、正常な化学強化の進行がひどく阻害されて、強化後のガラスの応力レベルが下がり、機械的強度が大幅に低下し、最終製品の性能が使用要求を満たすことができなくなってしまう。そして、塩浴におけるLiの量が増加すると、リチウムアルミノシリケートガラスに対して化学強化を行うときのリチウム-ナトリウム交換の程度が著しく低下して、強化後のガラスの寸法増加量が急速に減少し、携帯電話カバーへの応用におけるガラスの寸法偏差範囲に対する要求を満たすことができず、化学強化ガラスの寸法不良率の上昇を招く。
【0004】
上記に鑑みて、業界では塩浴に不純物イオン除去材料を導入する案が提案された。ここで、不純物イオン除去材料とは、塩浴における過剰のイオン半径の小さいアルカリ金属イオン(例えばLi)を除去し、塩浴におけるイオン半径の小さいアルカリ金属イオン(例えばLi)の量を規定範囲内に抑える材料のことで、これによって、塩浴の正常な使用を保証し、塩浴におけるイオン半径の小さいアルカリ金属イオン(例えばLi)の量が多すぎることに起因する、ガラスの性能および品質の低下を防止することができる。
【0005】
ガラス工場でよく使われる不純物イオン除去材料として、リン酸塩、イオンふるいなどがある。リン酸塩により不純物イオンを除去する原理は、リン酸イオンと不純物イオンとの反応により沈殿を生成することである。例えば、塩浴に粉末状のリン酸ナトリウムを入れると、リン酸イオンとリチウムイオンとによりリン酸リチウム沈殿物が生成され、したがって、不純物Liの量が低減する。しかしながら、リン酸リチウムにより塩浴が濁ってしまうので、長時間後に清く澄んでから使用しなければならず、また、一部のリン酸リチウム顆粒が強化ガラスの表面に付着しやすくて、ガラスに欠陥が発生する。つまり、リン酸塩を不純物イオン除去材料として使用する場合、塩浴に対する改善の効果に限界があり、強化ガラスの性能および品質を保証するため、短時間内に塩浴を頻繁に交換しなければならず、量産の効率の向上に不利であり、強化コストの上昇も招く。そして、塩浴の底部に沈殿したリン酸リチウムが多すぎると、塩浴の有効機能エリアが減少し、強化浴の洗浄が難しくなる。
【0006】
ガラス工場で、量産効率を確保するため、塩浴に強化待ちガラスを絶えず入れ続けて、強化により要求を満たす化学強化ガラスを得ることがより望ましく、そして、塩浴の温度を上げることによりガラス強化時間を短縮することもより望ましい。この目的を実現するため、塩浴における不純物イオンの量を効果的にコントロールできる方策が必要である。不純物イオン除去材料を長期間使用できず頻繁に交換すると、強化工程が中断されて、量産効率が損なわれるとともに、不純物イオン除去材料の使用量も増加し、そして、不純物イオン除去材料を取り出す過程において、大量の溶融塩も取り出されてしまい、この2つの原因で、強化コストの上昇を招く。このため、溶融塩の使用量を減少させ、生産効率を向上させ、生産コストを削減するため、高温塩浴において長時間で安定に使用可能な不純物イオン除去材料が必要である。
【0007】
不純物イオン除去材料としてリン酸塩を使用することの欠点を見出したあと、本出願の出願人は、塩浴における不純物イオンを吸着することが可能なイオンふるい材料を開発した。本出願人の先行特許出願のCN112645610Aには、ホウ素およびリンを含有しない安定性の高いイオンふるいならびにその使用が開示され、この発明は、化学強化ガラスカバーの生産過程における、高温塩浴においてリチウムイオンに対する吸着能力が不足で、吸着率がよくないという問題、特に中毒したリチウムイオンに対する吸着率がよくないという問題を解決する。本出願人が開発したイオンふるいを入れたあと、塩浴における不純物イオンの含有量がよく抑えられ、リン酸塩を使用する場合の一連の問題を避けることができるが、耐高温性および高温安定性の更なる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願第112645610A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、従来技術に存在する、不純物イオン除去材料が耐高温性および高温安定性の更なる向上が望まれているという欠点を克服することができる、耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用を提供することを目的とする。このイオンふるいは、耐高温性が優れ、高温塩浴において長時間で安定に使用可能であり、高温安定性が優れ、例えば、480℃の塩浴において不純物リチウムイオンを24時間継続的に吸着することを実現することができ、塩浴を頻繁に交換する必要がなく、化学強化ガラスの生産効率を向上させ、化学強化ガラスの生産コストを削減することができ、広く応用することが可能である。
【0010】
本出願の発明者は鋭意研究した結果、従来の不純物イオン除去材料の耐高温性および高温安定性のさらなる向上が困難である原因を究明した。つまり、一般的なシリコン系イオンふるいは、高温塩浴において長期使用されると顕著な結晶相転移が発生し、結晶相転移が発生したイオンふるい材料は、そのリチウムイオン吸着効果が損なわれ、ひいては塩浴にリチウムイオンを放出することがある。そして、結晶相転移が発生したイオンふるい材料は、塩浴を汚染する不純物物質を塩浴に大量放出して、強化後のガラスの品質を損ない、強化後のガラス完成品の表面に顆粒が付着するなどの顕著な欠陥がある。これに鑑みて、本発明者は、さらに研究により本出願発明を完成した。本出願発明は、化学強化処理プロセスにおけるシリコン系イオンふるいの結晶相転移に起因して、リチウムイオンを長時間安定に吸着することができず、大量の不純物物質を放出し、塩浴の寿命および高温安定性を損なうという問題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を実現するため、第1側面において、本出願は、耐高温性および高温安定性を有するイオンふるいを提供する。
本出願では、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、SiO 46~60モル%、Al 3~16モル%、Y 0~3モル%およびRO 33~45モル%を含み、ROがアルカリ金属酸化物であり、前記イオンふるいは、
【化1】
が1以上であることを満たし、
【化2】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を1つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークであり、
【化3】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を2つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークである。
【0012】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいを480℃の塩浴に24時間置いたあと、前記イオンふるいにおける結晶の含有量が10重量%未満である。
【0013】
いくつかの選択可能な実施形態において、
【化4】

【化5】
を満たす。
【0014】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、52.0≧0.85×SiO+0.15×Al+1.65×Y≧45.3を満たす。
好ましくは、前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、20.0≧0.50×RO≧16.0をさらに満たし、ROがNaOおよび/またはKOであり、より好ましくは、ROは、NaOである。
【0015】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいにおいて、SiOのモル百分率が49~60モル%であり、および/またはAlのモル百分率が3~15モル%であり、および/またはYのモル百分率が1~3モル%であり、および/またはROのモル百分率が33~40モル%である。
【0016】
いくつかの選択可能な実施形態において、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、ZnO 0~3モル%、CaO 0~3モル%、MgO 0~3モル%、P 0~3モル%およびB 0~3モル%をさらに含み、ZnO+CaO+MgO+P+Bのモル百分率の合計が5モル%以下である。
【0017】
好ましくは、前記イオンふるいにおいてPおよび/またはBがほとんど含まれない。
好ましくは、前記イオンふるいにおいてLiOがほとんど含まれない。
【0018】
いくつかの選択可能な実施形態において、塩浴の質量を基準とし、質量百分率が1重量%である前記イオンふるいを、105±10ppmの不純物リチウムイオンを含有する480℃の塩浴に入れるとき、塩浴におけるリチウムイオン濃度yの時間xの経過に従う変化の変化曲線は、y=A×exp(-x/b)+A×exp(-x/b)+Cの関数を満たし、expが指数関数であり、Aが100>A>30を、Aが0<A<31を、bが0<b<5を、bが0<b<25を、そしてCが0<C<50を満たし、xの単位が時間である。
【0019】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいは、顆粒状、シート状または多孔質のものであり、好適には顆粒状のものであり、好適には顆粒状のイオンふるいの粒度は、1~10mmである。
【0020】
第2側面において、本出願は、第1側面によるイオンふるいの調製方法を提供する。この調製方法は、調合指図書に従って各原材料を秤取して均一に混合したあと、1300~1650℃の温度で融解させて液体材料を得、そして顆粒状、シート状または多孔質のものとして調製するステップを含む。
【0021】
いくつかの選択可能な実施形態において、水焼入れにより顆粒状イオンふるいを形成し、水焼入れの温度は10~80℃である。
【0022】
いくつかの選択可能な実施形態において、外力による圧延または引抜によりシート状のイオンふるいを形成する。
【0023】
いくつかの選択可能な実施形態において、発泡剤を導入することにより多孔質のイオンふるいを形成する。
【0024】
第3側面において、本出願は、ガラス化学強化用塩浴の不純物除去方法を提供する。この不純物除去方法は、第1側面によるイオンふるいを350~550℃の不純物除去待ち塩浴に導入して不純物イオンの吸着反応を行うステップを含む。
【0025】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいの使用量は、前記不純物除去待ち塩浴の0.5~5.0重量%である。
【0026】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記吸着反応の時間は、0.1~48.0時間である。
【0027】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記不純物除去待ち塩浴における不純物イオンの含有量は、1~1000ppmである。
【0028】
第4側面において、本出願は、化学強化ガラスの調製方法を提供する。この調製方法は、強化待ちガラスと第1側面によるイオンふるいとを、不純物イオンのないガラス化学強化用塩浴に導入し、強化待ちガラスに対して化学強化を行い、化学強化ガラスを調製するステップを含む。
【0029】
この調製方法は、イオンふるいのオンライン不純物除去を実現する方法であり、イオンふるいの不純物除去プロセスがガラスの強化プロセスと同時に行われることを実現し、強化プロセスを一時停止する必要がなく、塩浴を頻繁に交換する必要がなく、化学強化ガラスの生産効率を向上させ、化学強化ガラスの生産コストを削減することができる。
【0030】
(有益な効果)
イオンふるいに対して詳細に研究した結果、特定の組成を有しかつ特定の構造要求を満たすイオンふるいは、耐高温性および高温安定性が優れ、このイオンふるいが高温塩浴に比較的長時間置かれても、顕著な結晶相転移がほとんど発生せず、構成が安定であり、塩浴を汚染する不純物物質を大量放出することなく、強化後のガラス完成品の表面に顆粒状などの顕著な欠陥が発生しない。本出願発明に係るイオンふるいは、480℃の塩浴において24時間継続的かつ安定的に不純物イオンを吸着することができ、例えば、ガラス強化に悪影響を有するリチウムイオンを安定的に吸着し、強化後のガラス完成品の表面の品質が要求を満たすことを保証することができる。イオンふるいは、その構造が本出願に係る特定の構造要求を満たさない場合、高温塩浴に比較的長時間置かれたあと、顕著な結晶相転移が発生し、イオンふるいの、不純物イオンに対する吸着能力および吸着効果が顕著に低下し、ひいては高温塩浴に比較的長時間置かれたあと、イオンふるいから塩浴へ不純物イオンおよび他の不純物物質が逆に放出され、塩浴を汚染し、強化後のガラス完成品の表面に顆粒状の欠陥などの顕著な欠陥が発生する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本出願発明の実施例の技術思想をより明瞭に説明するため、以下、実施例に使用される図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願発明のいくつかの実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面に基づいて他の関連図面を得ることが可能である。
図1a】実施例1~4によるイオンふるいの初期XRDパターンである。
図1b】比較例1~4によるイオンふるいの初期XRDパターンである。
図2a】実施例1~4によるイオンふるいの、480℃のテスト用塩浴においてリチウムイオンを24時間吸着したあとの、XRDパターンである。
図2b】比較例1~4によるイオンふるいの、480℃のテスト用塩浴においてリチウムイオンを24時間吸着したあとの、XRDパターンである。
図3a】実施例1~4によるイオンふるいが480℃のテスト用塩浴に使用されたときの、リチウムイオンの濃度の経時変化傾向を示すグラフである。
図3b】比較例1~4によるイオンふるいが480℃のテスト用塩浴に使用されたときの、リチウムイオンの濃度の経時変化傾向を示すグラフである。
図4】実施例1によるリチウムイオンの濃度の経時変化傾向のフィッティング結果を示すグラフである。
図5】実施例2によるリチウムイオンの濃度の経時変化傾向のフィッティング結果を示すグラフである。
図6】実施例3によるリチウムイオンの濃度の経時変化傾向のフィッティング結果を示すグラフである。
図7】実施例4によるリチウムイオンの濃度の経時変化傾向のフィッティング結果を示すグラフである。
図8】実施例1によるイオンふるいを化学強化プロセスに直接使用して得られた強化ガラス完成品の表面を示す図面である。
図9】比較例1によるイオンふるいを化学強化プロセスに直接使用して得られた強化ガラス完成品の表面を示す図面である。
図10】比較例2によるイオンふるいを化学強化プロセスに直接使用して得られた強化ガラス完成品の表面を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に開示される範囲の端点および任意の値は、その具体的な範囲または値に限定されず、これらの範囲または値は、これらの範囲または値に近い値を含むと理解すべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点の組み合わせ、各範囲の端点と個々の具体的な値との組み合わせ、および個々の具体的な値の組み合わせにより1つまたは複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲も、本明細書で具体的に開示されていると見なすべきである。用語の「選択可能」、「任意で」とは、含んでも含まなくてもよい(あってもなくてもよい)を意味する。
【0033】
本出願に係る測定方法は、下記のとおりである。
1.イオンふるいのラマンスペクトル測定
粒径が75μm未満になるまでイオンふるいを微粉化し、レーザラマン分光装置を利用して測定し、ラマンスペクトルを得る。
測定条件として:波数範囲が100~1500cm-1であり、スペクトル分解能が1~2cm-1である。
本出願で使用されるレーザラマン分光装置は、イギリスRENISHAW社製のものであり、型番がINVIAである。
【0034】
2.イオンふるいのXRDパターン測定
(1)初期イオンふるいのXRDパターン測定
塩浴不純物除去に使用していない初期イオンふるいを、粒径が75μm未満になるまで微粉化し、X線回折装置を利用して測定し、XRD回折ピークプロファイル、すなわちXRDパターン、を得る。
測定条件:入射角度範囲2θ=10°~80°であり、スキャン速度が6°/分であり、動作電圧が40kVであり、動作電流が30mAである。
(2)塩浴不純物除去に使用したあとのイオンふるいのXRDパターン測定
初期イオンふるいを、1000ppm以下の不純物リチウムイオンを含有する480℃のテスト用塩浴に入れ、24時間の不純物除去を行ったあと取り出す。取り出されたイオンふるいを、粒径が75μm未満になるまで微粉化し、そしてX線回折装置を利用して測定し、XRD回折ピークプロファイル、すなわちXRDパターン、を得る。本出願で使用されるテスト用塩浴は、105±10ppmの不純物リチウムイオンを含有する硝酸ナトリウム塩浴である。
測定条件:入射角度範囲2θ=10°~80°であり、スキャン速度が6°/分であり、動作電圧が40kVであり、動作電流が30mAである。
本出願で使用されるX線回折装置は、島津製XRD_6100である。
【0035】
3.イオンふるいにおける結晶の含有量の測定
イオンふるいにおける結晶の含有量は、塩浴不純物除去に使用したあとのイオンふるいのXRDパターンにおける結晶ピーク面積の割合で表される。すなわち、XRDパターンに基づいてフィッティングした結晶ピーク面積と、フィッティングしたすべてのピーク面積との比が結晶の含有量である。
本出願では、X線回折装置を利用して塩浴不純物除去に使用したあとのイオンふるいに対して測定を行い、X線回折装置による測定結果ファイル(RAW形式)をX線回折データRietveld精密化ソフトウェア(例えば、Jade、Gsas、Fullprof、Maud)に取り込み、フィッティング、演算を行う。本出願では、X線回折装置による測定結果ファイル(RAW形式)をJadeに取り込み、フィッティング、演算を行い、イオンふるいにおける結晶の含有量を得る。
【0036】
4.塩浴におけるリチウムイオンの濃度(または、含有量と呼ばれる)の測定
イオンふるいを不純物除去待ち塩浴に入れ、時間を変数とし、原子吸光分光光度計を利用して異なる時間の塩浴におけるリチウムイオンの濃度を測定する。
【0037】
第1側面において、本出願は、耐高温性および高温安定性を有するイオンふるいを提供する。イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、SiO 46~60モル%、Al 3~16モル%、Y 0~3モル%、およびRO 33~45モル%を含む。ROがアルカリ金属酸化物である。前記イオンふるいは、
【化6】
が1以上であることを満たし、
【化7】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を1つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークであり、
【化8】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を2つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークである。
面積
【化9】
と面積
【化10】
の単位が同じである。
【0038】
各成分の酸化物の作用原理は、下記のとおりである。
SiOは、共有結合を形成し、イオンふるい網目構造の骨格を構成するためのものであり、その構成および含有量の選択が、イオンふるい網目構造の吸着性およびイオンふるいの高温環境での熱安定性に直接影響を与える。SiOの含有量が低すぎるとイオンふるいの成形性が劣り、また、SiOが多すぎると組成物の粘度が比較的高くなり、溶融が困難になってしまう。したがって、本出願発明では、SiOのモル百分率が46~60モル%である。いくつかの実施形態において、SiOの含有量は、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%、50モル%、51モル%、52モル%、53モル%、54モル%、55モル%、56モル%、57モル%、58モル%、59モル%、60モル%などであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。
【0039】
Alは、網目構造の構成部分であり、イオンふるいの不純物イオンに対する吸着過程における、不純物イオンに対する吸着速率の向上、高温環境でのイオンふるいの耐分解能力の向上に有利である。ただし、酸化アルミニウムが多すぎるとイオンふるいの成形が困難になってしまう。したがって、本出願発明では、Alのモル百分率が3~16モル%である。いくつかの実施形態において、Alの含有量は、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%などであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。
【0040】
適量のYは、イオンふるいの硬度および化学的安定性を向上させることができるが、ただし、Yの含有量が比較的高いとイオンふるいの失透傾向が増加する。したがって、本出願発明では、Yのモル百分率が0~3モル%である。いくつかの実施形態において、Yの含有量は、0、0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%などであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。
【0041】
アルカリ金属酸化物ROは、一方で、イオン交換に使用するアルカリ金属イオンを提供することができ、不純物イオンに対するイオンふるいの吸着能力を保証することに寄与し、他方で、フリー酸素を提供し、イオンふるいの構造安定性に影響を与える。すなわち、ROの含有量が、イオンふるいの不純物イオンを吸着する能力およびイオンふるいの高温塩浴における安定性に直接影響を与える。したがって、本出願発明では、ROのモル百分率が33~45モル%である。いくつかの実施形態において、ROの含有量は、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%などであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。
【0042】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいを480℃の塩浴に24時間置いたあと、前記イオンふるいにおける結晶の含有量が10重量%未満である。結晶の含有量は、イオンふるいのXRDパターンにおける結晶ピーク面積の割合で表される。
【0043】
本出願発明では、前記ガウスデコンボリューションフィッティングとは、レーザラマン分光装置による測定結果ファイル(.txt形式)をOrigin(例えばOrigin2022バージョン)に取り込み、830~1230cm-1範囲内のバンドを選択し、Gauss関数(すなわち、ガウス関数)を利用してデコンボリューションフィッティング、演算を行うことにより、Q及びQのそれぞれの対応する面積を得ることができ、フィッティングしたQ面積とフィッティングしたQ面積との比が
【化11】
である。
【0044】
いくつかの選択可能な実施形態において、
【化12】

【化13】
を満たす。
【0045】
いくつかの実施形態において、
【化14】
の値は、1.00、1.05、1.30、1.50、2.00、2.30、2.50、2.80、3.00などであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。発明者の研究、検証によれば、特定の組成を有しかつ特定の構造要求を満たす本出願発明に係るイオンふるいは、耐高温性および高温安定性が優れ、該イオンふるいが高温塩浴に比較的長時間置かれても、顕著な結晶相転移がほとんど発生せず、構成が安定である。
【0046】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、52.0≧0.85×SiO+0.15×Al+1.65×Y≧45.3を満たす。この選択可能な実施形態を利用する場合、本出願の発明者の詳細な研究によれば、各主要成分酸化物の、高温安定性に対する影響の程度が異なり、そして、上記の条件を満たす場合、
【化15】
が1以上であることを満たす特定構造のイオンふるいを得ることができ、イオンふるいの構造安定性を著しく向上させることができるとともに、イオンふるいの融解、成形に有利である。
【0047】
いくつかの実施形態において、0.85×SiO+0.15×Al+1.65×Yの値は、45.3、46.0、47.0、48.0、49.0、50.0、51.0、51.5、52.0などであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。
【0048】
上記の選択可能な案において、Yを含有しても含有しなくてもよく、Yを含有する場合、イオンふるいの構造安定性に対するYの作用が、SiOおよびAlよりはるかに大きく、Yの含有量を上記の条件に制御すれば高温安定性の向上に、より有利である。
【0049】
本出願発明では、52.0≧0.85×SiO+0.15×Al+1.65×Y≧45.3を満たせば、イオンふるいには他の成分をさらに含んでもよい。
【0050】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、20.0≧0.50×RO≧16.0を満たし、ROがNaOおよび/またはKOである。アルカリ金属酸化物は、一方で、イオン交換に使用するアルカリ金属イオンを提供することができ、不純物イオンに対するイオンふるいの吸着能力を保証することに寄与し、他方で、フリー酸素を提供し、イオンふるいの構造安定性に影響を与えることができる。本出願発明では、0.50×ROを16.0~20.0に収めれば、イオンふるいは、吸着能力が優れるとともに、構造安定性が保証される。一般的なガラスに対して化学強化を行うとき、主にガラスに含有されるNaイオンやLiイオンと、塩浴におけるKイオンやNaイオンとの交換が発生する。塩浴に存在する不純物イオンは、主にガラスから塩浴へ放出されたLiイオンである。イオンふるいにおけるROがNaOおよび/またはKOであれば、塩浴における不純物イオンに対する吸着、塩浴の不純物除去をよりよく実現することができる。
【0051】
好ましくは、ROはNaOである。ガラスに対して化学強化を行うとき、Na-Li交換によれば、より深い圧縮応力層を得ることができ、ガラスの耐衝撃性の向上により有利である。これを実現するため、ガラス中のLiイオンが、塩浴におけるNaイオンで置換され、塩浴に進入して不純物イオンとなる。そして、発明者の研究によれば、塩浴中の不純物リチウムイオンの濃度が高すぎると、ガラスの強化に非常に不利である。イオンふるい中のROが全部NaOであれば、塩浴中の不純物イオンに対する吸着、塩浴の不純物除去をよりよく実現することができる。
【0052】
好ましくは、前記イオンふるいにおいて、SiOのモル百分率が49~60モル%である。
好ましくは、前記イオンふるいにおいて、Alのモル百分率が3~15モル%である。
好ましくは、前記イオンふるいにおいて、Yのモル百分率が1~3モル%である。
好ましくは、前記イオンふるいにおいて、ROのモル百分率が33~40モル%である。
【0053】
本出願発明に係るイオンふるいは、他の金属酸化物をさらに含んでもよい。好適には、前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、ZnO 0~3モル%、CaO 0~3モル%、MgO 0~3モル%、P 0~3モル%およびB 0~3モル%をさらに含む。
好ましくは、ZnO+CaO+MgO+P+Bのモル百分率合計が5モル%以下である。この選択可能な実施形態を利用すれば、イオンふるいの高温安定性に、より有利であり、結晶の析出量を減少させることができ、そして、イオンふるいの吸着効率の低下の防止に、より有利である。
【0054】
本出願発明では、P、Bがイオンふるいの成分に含まれてもよいが、これらの成分の含有量が多すぎると、イオンふるいは、化学的耐久性が損なわれ、高温塩浴において使用するとき、ガラス、微晶ガラスの表面に対するランダムな浸食現象を招きやすい。したがって、本出願発明に係るイオンふるいにおいて、好適には、Pおよび/またはBがほとんど含まれない。ここでの「ほとんど含まれない」とは、PおよびBの少なくとも一方をイオンふるいに添加せずまたは原料として導入しないが、汚染物または不純物として非常に少量存在する可能性があることをいう。
【0055】
本出願発明では、イオンふるいにはLiOがほとんど含まれない。イオンふるいにLiOが含まれる場合、イオンふるいによる不純物リチウムイオン吸着効果を損ないやすい。
【0056】
いくつかの選択可能な実施形態において、塩浴の質量を基準とし、質量百分率が1重量%である前記イオンふるいを、105±10ppmの不純物リチウムイオンを含有する480℃の塩浴に入れるとき、塩浴におけるリチウムイオン濃度yの時間xの経過に従う変化の変化曲線は、y=A×exp(-x/b)+A×exp(-x/b)+Cの関数を満たし、expが指数関数であり、Aが100>A>30、Aが0<A<31、bが0<b<5、bが0<b<25、Cが0<C<50を満たし、xの単位がh(時間)である。該選択可能な実施形態によれば、本出願に係るイオンふるいは、高温塩浴において長時間で継続的かつ安定に不純物リチウムイオンを吸着することを実現することができ、すなわち、本出願に係るイオンふるいは、高温安定性および不純物イオン吸着能力が優れる。
【0057】
上記の関数において、yとxの所定の離散データによりデータ関係(数理モデル)を確立し、一連の微小な直線セグメントを求めてこれらの補間点を接続して曲線を形成すれば、滑らかな曲線が形成され、この曲線がexp(指数関数)で表され、A、A、b、b、Cがいずれも係数でありかつ所定の離散データにより確定される。
【0058】
当業者は、実際のニーズに応じて前記イオンふるいの形状および粒度を選択することができる。
【0059】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいは、顆粒状、シート状または多孔質のものであり、好適には顆粒状のものであり、好適には顆粒状のイオンふるいの粒度は、1~10mmである。いくつかの実施形態において、顆粒状のイオンふるいの粒度は、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmなどであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。好ましくは、顆粒状のイオンふるいの粒度は2~5mmである。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。ここでの「イオンふるいの粒度」は、イオンふるい顆粒の最大の直径を意味する。
【0060】
第2側面において、本出願は、第1側面によるイオンふるいの調製方法を提供する。該調製方法は、調合指図書(第1局面によるイオンふるいの成分)に従って各原材料を秤取して均一に混合したあと、1300~1650℃の温度で融解させて液体材料を得、そして顆粒状、シート状または多孔質のものとして調製するステップを含む。
【0061】
いくつかの選択可能な実施形態において、融解の時間は1時間以上であり、これによって、各原材料が完全に融解し均一に混合されることを確保することができる。
【0062】
本出願では、水焼入れにより顆粒状イオンふるいを形成するようにしてもよい。好適には、前記水焼入れの温度は10~80℃である。いくつかの実施形態において、水焼入れの温度は、10℃、15℃、20℃、22℃、25℃、30℃、35℃、45℃、50℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃などであり、ならびに上記の任意の値により定義される範囲およびそのサブ範囲である。実施形態において、任意の上記の範囲と任意の他の範囲とを組み合わせることができる。温度を制御することによりイオンふるい顆粒のサイズを制御することができ、これによって、前記イオンふるい顆粒の粒度を1~10mmを満たすようにする。
【0063】
いくつかの選択可能な実施形態において、使用のニーズに応じて、シート状または多孔質のイオンふるいを調製してもよい。例示的に、外力による圧延または引抜によりシート状のイオンふるいを形成してもよい。好適には、シート状のイオンふるいは、不規則なシート状であり、シート状のイオンふるいの最短辺を0.3cm以上、最長辺を20cm未満、厚さを0.3~1.0mmにする。例えば、発泡剤を導入することにより多孔質のイオンふるいを形成してもよい。好適には、孔径が1~10mmであり、好適には、多孔質のイオンふるい塊は、最短辺が0.5cm以上であり、最長辺が10cm未満である。
【0064】
本出願発明に係るイオンふるいは、不純物イオンを含有する塩浴に対する不純物除去に使用されてもよく、化学強化処理に直接導入してもよく、化学強化処理の過程において塩浴におけるリチウムイオンを吸着/吸収することができ、広く使用することが可能である。
【0065】
第3側面において、本出願は、ガラス化学強化用塩浴の不純物除去方法を提供する。この方法は、第1側面によるイオンふるいを不純物除去待ち塩浴に導入して不純物イオンの吸着反応を行うステップを含む。前記不純物除去待ち塩浴の温度は、350~550℃であり、この温度範囲であれば、リチウムイオンに対するイオンふるいの吸着性能/吸収性能を十分に発揮することに、より有利である。前記イオンふるいにより吸着/吸収する不純物イオンは、主にリチウムイオンである。
【0066】
ここでの「不純物イオン」は、初期塩浴を調製するときに塩浴に意図的に導入するものではないイオンのことであり、例えばリチウムイオンである。ここでの「吸着反応」とは、イオンふるいにおけるイオン半径の大きいアルカリ金属イオン、例えばKやNa、が塩浴におけるイオン半径の小さい不純物アルカリ金属イオン、例えばLi、とイオン交換反応をし、これによって塩浴における不純物アルカリ金属イオンをイオンふるいに吸着させて塩浴に対する不純物除去を実現することである。
【0067】
本出願発明では、「塩浴の不純物除去」は、オンライン不純物除去であってもよく、ガラス強化が施されたあとの塩浴または過剰な不純物イオンを含有する塩浴に対する不純物除去であってもよい。オンライン不純物除去とは、不純物イオンのない初期塩浴に直接イオンふるいを導入することであり、例えば、イオンふるいをキャリア(例えば金属網など)に入れて塩浴に入れ、イオンふるいの不純物除去プロセス(塩浴における不純物イオンを吸着するプロセス)がガラスの強化プロセスと同時に行われる。ガラス強化が施されたあとの塩浴、または過剰な不純物イオンを含有する塩浴に対する不純物除去とは、強化プロセスの実行中または強化プロセスが停止したあと、不純物イオンを含有する塩浴にイオンふるいを導入して不純物イオンの吸着処理を施すことである。
【0068】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記イオンふるいの使用量は、前記不純物除去待ち塩浴の0.5~5.0重量%である。本出願では、比較的少量のイオンふるいを使用すれば塩浴に対して効果的に不純物除去をすることができ、そして、本出願に係るイオンふるいは、耐高温性および高温安定性が優れる。
【0069】
本出願に係る不純物除去待ち塩浴は、大量の不純物リチウムイオンを含有するカリウム塩浴、ナトリウム塩浴、またはナトリウムカリウムの混合塩浴(すなわち、リチウム(不純物イオン)と、ナトリウムと、カリウムとを含有する混合塩浴)であり得、上記の塩浴は、好適には、硝酸塩浴である。
【0070】
本出願に係る不純物除去待ち塩浴における不純物リチウムイオンの含有量の選択可能な範囲が大きく、いずれも本出願に係るイオンふるいを用いて不純物除去を行うことができる。例示的に、前記不純物除去待ち塩浴における不純物イオンの含有量は、1~1000ppmである。
【0071】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記反応の時間は、0.1~48.0時間である。本出願に係るイオンふるいは、不純物イオン吸着能力が優れ、比較的短時間で不純物イオンを含有する塩浴に対して効率よく不純物除去をすることができる。そして、本出願に係るイオンふるいは、高温安定性が優れ、高温塩浴においても安定な構造を保つことができ、顕著な結晶相転移が発生しにくいため、このイオンふるいは、480℃の塩浴において24時間継続的かつ安定的に不純物イオンを吸着し、オンライン不純物除去をよりよく実現し、塩浴またはイオンふるい材料を頻繁に交換する必要がなく、化学強化ガラスの量産効率の向上およびコスト削減により有利である。
【0072】
第4側面において、本出願は、化学強化ガラスの調製方法を提供する。この調製方法は、強化待ちガラスと第1側面によるイオンふるいとを、不純物イオンのないガラス化学強化用塩浴に導入し、強化待ちガラスに対して化学強化を行い、化学強化ガラスを調製するステップを含む。この調製方法は、イオンふるいのオンライン不純物除去を実現する方法であり、イオンふるいの不純物除去プロセスがガラスの強化プロセスと同時に行われることを実現し、強化プロセスを一時停止する必要がなく、塩浴を頻繁に交換する必要がなく、化学強化ガラスの生産効率を向上させ、化学強化ガラスの生産コストを削減することができる。
【0073】
この調製方法によれば、化学強化を施す過程において、本出願に係るイオンふるいは、塩浴でのイオン交換プロセスからの不純物イオンを継続的かつ安定的に吸着して、塩浴における不純物イオンの含有量が常に比較的低いレベルに安定的に抑えられ、強化後のガラスの品質を保証でき、そして、イオンふるいは、顕著な結晶相転移がほとんど発生せず、構成が安定であり、塩浴を汚染する不純物物質を大量放出することなく、強化後のガラス完成品の表面に顕著な顆粒状などの欠陥の発生を防止することができる。
【0074】
不純物イオンのない塩浴とは、不純物イオンがほとんど含まれない全く新しい塩浴のことであり、すなわち、ガラスの化学強化に使用されていない初期塩浴のことである。
【0075】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本出願をさらに詳細に説明する。
【実施例
【0076】
(実施例1)
イオンふるいは、
【化16】
の数値および酸化物の組成が下記の表1に示されており、
【化17】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を1つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークであり、
【化18】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を2つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークである。イオンふるいの初期XRDパターン、すなわち塩浴不純物除去に使用されていない初期イオンふるいのXRDパターンは、図1aに示されている。
【0077】
調製方法として、表1に示す調合指図書に従ってイオンふるいの原材料成分を秤取して均一に混合し、1500℃の温度で1時間以上融解させて液体のものとして形成し、水焼入れにより粒度が2~5mmである顆粒状のイオンふるいを形成した。水焼入れ温度は25℃であった。
【0078】
(実施例2~4)
それぞれ実施例1を参照して実行したが、実施例1とは、イオンふるいの調合指図書が異なった点においてのみ相違しており、イオンふるいにおける
【化19】
が異なり、具体的に、各酸化物の含有量および各酸化物の含有量の関係を制御することにより実現し、詳細は表1に示されている。イオンふるいの初期XRDパターン、すなわち塩浴不純物除去に使用されていない初期イオンふるいのXRDパターン、は、図1aに示されている。
【0079】
(比較例1~4)
それぞれ実施例1を参照して実行したが、実施例1とは、イオンふるいの調合指図書が異なった点においてのみ相違しており、イオンふるいにおける
【化20】
が異なり、具体的には、各酸化物の含有量および各酸化物の含有量の関係を制御することにより実現するもので、詳細は表1に示されている。イオンふるいの初期XRDパターン、すなわち塩浴不純物除去に使用されていない初期イオンふるいのXRDパターン、は、図1bに示されている。
【0080】
(応用例1)
上記の実施例および比較例のそれぞれにより得られたイオンふるいを、105±10ppmのリチウムイオンを含有する480℃のテスト用塩浴に置き、リチウムイオン吸着反応を行った。イオンふるいの使用量は、テスト用塩浴の重量の1重量%であった。
上記のテスト用塩浴において、リチウムイオン濃度yの時間xの経過に従う変化の状況は、下記の表2、図3aおよび図3bにより示されており、実施例1~4の変化曲線のフィッティング結果は、図4図5図6および図7に示されている。
イオンふるいがテスト用塩浴においてリチウムイオンを24時間吸着したあと、イオンふるいにおける結晶の含有量は、下記の表1に示されている。結晶の含有量は、24時間の塩浴不純物除去を行ったあとのイオンふるいのXRDパターンにおける結晶ピーク面積の割合で表された。
24時間の塩浴不純物除去を行ったあとのイオンふるいのXRDパターンは、それぞれ図2a及び図2bに示されている。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
表1~2から分かるように、比較例に対して、本出願発明の実施例に係るイオンふるいは、いずれも
【化21】
が1超である調合指図書を採用し、480℃のテスト用塩浴において24時間継続的かつ安定的にリチウムイオンを吸着することができ、そしてリチウムイオンを24時間吸着したあと、イオンふるいにおける結晶の含有量がいずれも10重量%未満であった。これから分かるように、本出願発明の実施例によるイオンふるいは、高温塩浴においてリチウムイオンに対する吸収能力が安定であり、高温塩浴において結晶相転移がほとんど発生しないかまたは少なく、長時間で安定な構造を保つことができ、イオンふるいの長時間の導入に起因して高温塩浴を汚染し、塩浴の寿命を短縮させることがない。
【0084】
図1a、図1b、図2aおよび図2bから分かるように、本出願発明の実施例に係るイオンふるいは、480℃のテスト用塩浴において24時間の不純物除去を継続的に行ったあと、結晶相転移がほとんど発生せず、安定な構造を保った。これに対して、比較例によるイオンふるいは、480℃のテスト用塩浴において24時間の不純物除去を継続的に行ったあと、顕著な結晶相転移が発生し、初期イオンふるいに含有されない結晶が多く生成した。これから分かるように、特定の組成および特定の構造を有する本出願発明に係るイオンふるいは、高温安定性が優れ、高温塩浴において不純物イオンの不純物除去を長時間行うことができる。
【0085】
図3a、図3bおよび図4~7から分かるように、実施例によるイオンふるいを480℃のテスト用塩浴に置いてリチウムイオン不純物除去を行ったあと、塩浴におけるリチウムイオン濃度yの時間xの経過に従う変化は、y=A×exp(-x/b)+A×exp(-x/b)+Cの関数を満たし、Aが100>A>30、Aが0<A<31、bが0<b<5、bが0<b<25、Cが0<C<50を満たし、expが指数関数であった。これから分かるように、本出願発明の実施例による特定の組成および特定の構造を有するイオンふるいは、高温塩浴において長時間で継続的かつ安定的にリチウムイオンを吸着することができる。
【0086】
これに対して、比較例によるイオンふるいは、480℃の塩浴においてリチウムイオン濃度の時間変化に関する上記の関数を満たさず、例えば、比較例2に対応するフィッティング関数は、y=29×exp(-x/1.52)-10.92×exp(x/22.00)+79.89であった。比較例1および比較例4によるイオンふるいは、不純物除去の進行が10時間も経過しないとき、イオンふるいから塩浴へリチウムイオンが逆に放出され、これによって塩浴におけるリチウムイオン濃度が高くなり、つまり、比較例は、本出願発明に係る特定の組成および特定の構造を有するイオンふるいの特徴を満たさず、高温塩浴において長時間で継続的かつ安定的にリチウムイオンを吸着することができず、後半において構造の変化に起因して塩浴へリチウムイオンを放出した。
【0087】
(応用例2)
実施例1、比較例1および比較例2を例として、イオンふるいと強化待ちリチウムアルミノシリケートガラスを同時に全く新しい460℃の硝酸ナトリウム塩浴に入れ、連続バッチ式で強化を行った。各バッチの強化時間は8時間であった。一バッチのガラス強化が完了したあと、強化後のガラスとイオンふるいとをともに塩浴から取り出し、さらに次のバッチの強化待ちガラスと新しいイオンふるいとを入れる。強化するたびに、強化待ちガラスとともに塩浴に入れるイオンふるいの使用量は、塩浴の重量の1%であった。第8バッチの強化になったとき、実施例1および比較例1~2のそれぞれにより得られたガラス完成品を示す図面は、図8図9および図10に示されている。
【0088】
図8に示すように、本出願発明の実施例1によるイオンふるいを使用して塩浴不純物除去を行ったとき、強化して得られたガラスは、表面が滑らかで、欠陥がなかった。これに対して、比較例1~2によるイオンふるいを使用して塩浴不純物除去を行ったとき、強化して得られたガラスの表面に、図9~10に示す点線円枠に示すように、顕著な顆粒状の欠陥が現れた。
【0089】
上記で、本出願発明の選択可能な実施形態を詳細に説明したが、本出願発明はこれに限定されない。本出願発明の技術的思想の範囲内において、本出願発明の技術的思想に対して多種の簡単な変更、例えば任意の他の適切な方式による各技術的特徴の組み合わせ、を行ってもよい。これらの簡単な変更および組み合わせも、本出願に開示された内容と見なされるべきであり、いずれも本出願発明の保護範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本出願は、イオンふるいの技術分野に属し、特に、ガラス化学強化用塩浴の不純物除去の技術分野に属し、具体的には、耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用に関する。イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、SiO 46~60モル%、Al 3~16モル%、Y 0~3モル%およびRO 33~45モル%を含む。ROはアルカリ金属酸化物である。前記イオンふるいは、
【化22】
が1以上であることを満たす。本出願発明に係るイオンふるいは、耐高温性および高温安定性が優れ、高温塩浴に比較的長時間置かれても、顕著な結晶相転移がほとんど発生せず、構成が安定であり、塩浴を汚染する不純物物質を大量放出することなく、強化後のガラス完成品の表面に顕著な欠陥が発生しない。本出願発明に係るイオンふるいは、480℃の塩浴において24時間継続的かつ安定的に不純物イオンを吸着することができる。
【0091】
なお、本出願に係る耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用は、実施可能なものであり、さまざまな産業用途に適用することができる。例えば、本出願に係る耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい、その調製方法および使用は、イオンふるいの技術分野に適用することができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐高温性および高温安定性を有するイオンふるいであって、
イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、SiO 46~60モル%、Al 3~16モル%、Y 0~3モル%およびRO 33~45モル%を含み、ROがアルカリ金属酸化物であり、
前記イオンふるいは、
【化1】
が1以上であることを満たし、
【化2】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を1つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークであり、
【化3】
が、イオンふるいラマンスペクトルにおける830~1230cm-1範囲内のバンドに対してガウスデコンボリューションフィッティングを行ったあとのQの対応する面積であり、Qが、非架橋酸素を2つだけ有するケイ素酸素四面体におけるSi-O伸縮振動ピークである
ことを特徴とする耐高温性および高温安定性を有するイオンふるい。
【請求項2】
前記イオンふるいを480℃の塩浴に24時間置いたあと、前記イオンふるいにおける結晶の含有量が10重量%未満である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオンふるい。
【請求項3】
【化4】

【化5】
を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載のイオンふるい。
【請求項4】
前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、52.0≧0.85×SiO+0.15×Al+1.65×Y≧45.3を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載のイオンふるい。
【請求項5】
前記イオンふるいの組成は、イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、20.0≧0.50×RO≧16.0をさらに満たし、ROがNaOおよび/またはKOであり、好適には、ROは、NaOである
ことを特徴とする請求項4に記載のイオンふるい。
【請求項6】
前記イオンふるいにおいて、
SiOのモル百分率が49~60モル%であり、および/または
Alのモル百分率が3~15モル%であり、および/または
のモル百分率が1~3モル%であり、および/または
Oのモル百分率が33~40モル%である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオンふるい。
【請求項7】
イオンふるいにおける各酸化物のモル百分率で、前記イオンふるいの組成は、ZnO 0~3モル%、CaO 0~3モル%、MgO 0~3モル%、P 0~3モル%、およびB 0~3モル%をさらに含み、ZnO+CaO+MgO+P+Bのモル百分率の合計が5モル%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオンふるい。
【請求項8】
前記イオンふるいにおいてPおよび/またはBがほとんど含まれない
ことを特徴とする請求項7に記載のイオンふるい。
【請求項9】
塩浴の質量を基準とし、質量百分率が1重量%である前記イオンふるいを、105±10ppmの不純物リチウムイオンを含有する480℃の塩浴に入れるとき、
塩浴におけるリチウムイオン濃度yの時間xの経過に従う変化の変化曲線は、y=A×exp(-x/b)+A×exp(-x/b)+Cの関数を満たし、expが指数関数であり、Aが100>A>30、Aが0<A<31、bが0<b<5、bが0<b<25、Cが0<C<50を満たし、xの単位が時間である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオンふるい。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のイオンふるいの調製方法であって、
前記調製方法は、調合指図書に従って各原材料を秤取して均一に混合したあと、1300~1650℃の温度で融解させて液体材料を得、そして顆粒状、シート状または多孔質のものとして調製するステップを含む
ことを特徴とするイオンふるいの調製方法。
【請求項11】
水焼入れにより顆粒状イオンふるいを形成し、水焼入れの温度は10~80℃である
ことを特徴とする請求項10に記載のイオンふるいの調製方法。
【請求項12】
外力による圧延または引抜によりシート状のイオンふるいを形成する
ことを特徴とする請求項10に記載のイオンふるいの調製方法。
【請求項13】
発泡剤を導入することにより多孔質のイオンふるいを形成する
ことを特徴とする請求項10に記載のイオンふるいの調製方法。
【請求項14】
請求項1~のいずれか1項に記載のイオンふるいを350~550℃の不純物除去待ち塩浴に導入して不純物イオンの吸着反応を行うステップを含む
ことを特徴とするガラス化学強化用塩浴の不純物除去方法。
【請求項15】
前記イオンふるいの使用量は、前記不純物除去待ち塩浴の0.5~5.0重量%であり、および/または、前記吸着反応の時間は、0.1~48.0時間である
ことを特徴とする請求項14に記載の不純物除去方法。
【請求項16】
前記不純物除去待ち塩浴における不純物イオンの含有量は、1~1000ppmである
ことを特徴とする請求項15に記載の不純物除去方法。
【請求項17】
強化待ちガラスと、請求項1~のいずれか1項に記載のイオンふるいとを、不純物イオンのないガラス化学強化用塩浴に導入し、強化待ちガラスに対して化学強化を行うステップを含む
ことを特徴とする化学強化ガラスの調製方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
【国際調査報告】