(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】負極材料及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20250117BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250117BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/48
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505629
(86)(22)【出願日】2023-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 CN2023115540
(87)【国際公開番号】W WO2024124966
(87)【国際公開日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】202211611648.3
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】521520935
【氏名又は名称】惠州市鼎元新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肖称茂
(72)【発明者】
【氏名】何鵬
(72)【発明者】
【氏名】郭鍔明
(72)【発明者】
【氏名】任建国
(72)【発明者】
【氏名】賀雪琴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050FA12
5H050FA18
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA09
(57)【要約】
【課題】本出願は、負極材料及びリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】前記負極材料は、複合物を含み、前記複合物は、炭素マトリックスと、炭素マトリックス内に存在する活物質とを含み、前記活物質は、一次粒子及び/又はアグロメレートと、凝集体とを含み、前記一次粒子、前記アグロメレート及び前記凝集体の総個数に占める前記凝集体の割合は、30%以下である。本出願が提供する負極材料及びリチウムイオン電池は、負極材料の体積膨張を低減し、負極材料のレート性能及びサイクル安定性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合物を含む負極材料であって、
前記複合物は、炭素マトリックス及び前記炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、
前記活物質は、一次粒子及び/又はアグロメレートと、凝集体とを含み、
前記一次粒子、前記アグロメレート及び前記凝集体の総個数に占める前記凝集体の割合は、30%以下である、ことを特徴とする負極材料。
【請求項2】
前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO
x(0<x≦2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P、Cu及びシリコン合金のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記活物質は、シリコン系活性材料を含み、前記シリコン系活性材料は、結晶シリコン、アモルファスシリコン及びシリコン合金のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記アグロメレートは、第1連結方式で連結された複数の一次粒子からなるものであり、前記第1連結方式は、角-角連結及び辺-角連結のうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記アグロメレート及び前記一次粒子の総個数の、前記一次粒子、前記アグロメレート及び前記凝集体の総個数に占める割合は、70%以上である。
【請求項5】
前記凝集体は、第2連結方式で連結された複数の一次粒子を含み、前記第2連結方式は、辺-辺連結及び埋め込み型連結の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
前記複合物の少なくとも一部の表面に存在する被覆層をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項7】
前記被覆層は、以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを有する、ことを特徴とする請求項6に記載の負極材料。
(1)前記被覆層は、炭素層、グラフェン層、窒化シリコン層、窒化チタン層及び炭化シリコン層のうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記被覆層は、厚さが5nm~500nmである。
【請求項8】
前記一次粒子は、メディアン径が1nm~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項9】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを有する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、メディアン径が0.5μm~30μmである;
(2)前記負極材料は、比表面積が10m
2/g以下である;
(3)前記負極材料は、空孔率が10%以下である;
(4)前記負極材料は、真球度が0.7~1.0である。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の負極材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年12月14日付で中国専利局に提出した、出願番号が2022116116483、出願の名称が「負極材料及びリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本出願に援用する。
本出願は、負極材料の技術分野に関し、具体的には、負極材料及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電動化された新エネルギー自動車は自動車市場の将来の発展方向であり、そのコア部品はリチウムイオン電池である。市場の発展に伴い、高容量密度の電池に対する需要がますます高まっており、新規な高比容正負極材料を採用することは、電池のエネルギー密度を高める重要な方法の1つである。
【0003】
ますます多くの金属、酸化物、金属合金などの新しい材料は、電池のエネルギー密度を高める様々な方式を探索するために、活性材料として負極材料に応用されている。シリコン系負極材料を例に挙げると、シリコン系負極材料は上記活性材料の一つであり、一般的に次世代の負極材料として注目されており、超高理論比容量(4200mAh/g)と低脱リチウム電位(<0.5V)を有し、しかも、シリコンの電圧プラットフォームが黒鉛よりもわずかに高く、充電時にリチウムの表面析出が起こりにくく、安全性に優れているなどの利点により好まれている。しかし、シリコン負極材料は、サイクル過程において急激な体積膨張効果が存在するため、材料の粉化・破砕を招き、電池のサイクル減衰が速い。この問題に対して、現在、シリコンに対して構造設計を行い、ナノ化、多孔質化などの技術手段を採用し、複合被覆を行うなどの方式で改善することを含む多重解決手段がある。ただし、様々な新規なケイ素-炭素複合構造を設計することは、現在の改善の主な方向の1つである。
【0004】
したがって、負極材料の体積膨張を抑制し、サイクル安定性を向上することは、至急に解決する課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、負極材料の体積膨張を低減し、負極材料のレート性能及びサイクル安定性を向上させることができる負極材料及びリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様において、本出願は、負極材料を提供し、上記負極材料は、複合物を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び上記炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は、一次粒子及び/又はアグロメレート及び凝集体を含み、上記一次粒子、上記アグロメレート及び上記凝集体の総個数に占める上記凝集体の割合は、30%以下である。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x≦2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P、Cu及びシリコン合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記活物質は、シリコン系活性材料を含み、上記シリコン系活性材料は、結晶シリコン、アモルファスシリコン及びシリコン合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記アグロメレートは、第1連結方式で連結された複数の一次粒子からなるものであり、上記第1連結方式は、角-角連結及び辺-角連結のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記アグロメレート及び上記一次粒子の総個数が、上記一次粒子、上記アグロメレート及び上記凝集体の総個数に占める割合は、70%以上である。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記凝集体は、第2連結方式で連結された複数の一次粒子を含み、上記第2連結方式は、辺-辺連結及び埋め込み型連結のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記負極材料は、上記複合物の少なくとも一部の表面に存在する被覆層をさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記被覆層は、炭素層、グラフェン層、窒化シリコン層、窒化チタン層及び炭化シリコン層のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記被覆層は、厚さが5nm~500nmである。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記一次粒子は、メディアン径が1nm~500nmである。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記負極材料は、メディアン径が0.5μm~30μmである。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記負極材料は、比表面積が10m2/g以下である。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記負極材料は、空孔率が10%以下である。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記負極材料は、真球度が0.7~1.0である。
【0020】
第2態様において、本出願は、第1態様に記載の負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本出願の技術案は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
本出願が提供する負極材料は、負極材料における活物質が炭素マトリックス内に分散され、活物質が炭素マトリックスと結合し、炭素マトリックス内での均一な分布を実現することができ、且つ活物質が一次粒子及び/又はアグロメレートと、凝集体とを含み、炭素マトリックス内に存在する凝集体の数の比率を30%以下に制御することにより、凝集した一次粒子の数を効果的に減少させ、一次粒子の分散度を向上させることができ、それにより凝集した一次粒子間のキャリアの輸送が円滑ではない問題を解決するとともに、活物質の体積膨張を抑制し、負極材料のサイクル安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本出願を更に説明する。
【
図1】本出願が提供する負極材料における一次粒子、アグロメレート、凝集体、第1連結方式、第2連結方式の模式図である。
【
図2】本出願の実施例1で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡SEMチャートである。
【
図3】本出願の実施例1で製造された負極材料のXRDチャートである。
【
図4】本出願の実施例1で製造された負極材料からなる電池の初回充放電曲線図である。
【
図5】本出願の実施例1で製造された負極材料からなる電池のサイクル特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下は本出願の実施例の好ましい実施形態であり、当業者にとって、本出願の実施例の原理から逸脱することない前提で、いくつかの変形及び改善を行うことができ、これらはいずれも本出願の実施例の保護範囲に属すると指摘すべきである。
【0024】
具体的には、本出願は、負極材料を提供し、負極材料は、複合物を含み、複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、活物質は、一次粒子及び/又はアグロメレート及び凝集体を含み、上記一次粒子、上記アグロメレート及び上記凝集体の総個数に占める凝集体の割合は、30%以下である。
【0025】
本出願が提供する負極材料は、負極材料における活物質が炭素マトリックス内に分散され、活物質が炭素マトリックスと結合し、炭素マトリックス内での均一な分布を実現することができ、且つ活物質が一次粒子及び/又はアグロメレートと凝集体とを含み、炭素マトリックス内に存在する凝集体の数の比率を30%以下に制御することにより、凝集した一次粒子の数を効果的に減少させ、一次粒子の分散度を向上させることができ、それにより凝集した一次粒子間のキャリアの輸送が円滑ではない問題を解決するとともに、活物質の体積膨張を抑制し、負極材料のサイクル安定性を向上させることができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、活物質とは、リチウムと反応し、リチウムを放出・吸蔵可能な物質である。
【0027】
活物質は、金属単体、非金属単体、金属酸化物及び金属合金のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x≦2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
別のいくつかの実施形態において、活物質はシリコン合金、例えばシリコンリチウム合金、シリコンマグネシウム合金等であってもよい。
【0029】
別のいくつかの実施例において、活物質は酸化物、例えば一酸化ケイ素であってもよい。なお、活物質は、金属単体、非金属単体、金属合金及び金属酸化物のうちの少なくとも2つを含む場合がある。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記活物質は、シリコン系活性材料を含み、上記シリコン系活性材料は、結晶シリコン、アモルファスシリコン及びシリコン合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、活物質は顆粒であり、活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、上記活物質における上記凝集体の質量割合は、30%以下である。
【0032】
いくつかの実施形態において、電子顕微鏡下において、一次粒子は単分散の粒子を指す。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記一次粒子は、メディアン径が1nm~500nmである。具体的に、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm又は500nm等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。ナノオーダー一次粒子は、表面エネルギーが高く、充放電中に凝集しやすく、顆粒の構造性が高く、活性粒子の体積膨張を抑制することができる。しかし、ナノオーダーの活性粒子は、大きな表面エネルギーを有し、充放電中に凝集してアグロメレート又は凝集体を形成しやすいため、一次粒子が炭素マトリックス中に分散して存在し、凝集効果を減少させることができる。活物質は、粒子径が小さすぎ、製造コストが高い。一次粒子のメディアン径は、1nm~200nmであることが好ましく、1nm~100nmであることがより好ましい。
【0034】
いくつかの実施形態において、
図1に示すように、上記アグロメレートは、第1連結方式で連結された複数の一次粒子からなるものであり、上記第1連結方式は、角-角連結及び辺-角連結のうちの少なくとも1つを含む。理解されるように、アグロメレートにおいて、一次粒子同士は、相対的に緩い連結方式で連結した粒子塊である。
【0035】
いくつかの実施形態において、アグロメレート及び一次粒子の総個数の、一次粒子、アグロメレート及び凝集体の総個数に占める割合は、70%以上である。アグロメレートと凝集体は、相対的に分散し、体積膨張の緩和に有利である。
【0036】
いくつかの実施形態において、
図1に示すように、上記凝集体は、第2連結方式で連結された複数の一次粒子を含み、上記第2連結方式は、辺-辺連結及び埋め込み型連結のうちの少なくとも1つを含む。凝集体において、活物質顆粒同士が比較的緊密になるように連結している。
【0037】
なお、アグロメレートにおける一次粒子同士は、全て第1連結方式により連結され、凝集体における一次粒子同士は、少なくとも2つの一次粒子が第2連結方式により連結され、つまり、一次粒子同士に第1連結方式と第2連結方式が同時に存在する場合、凝集体として統計する。上記負極材料における一次粒子、アグロメレート及び凝集体の含有量は、SEM切断面から観察した場合をいう。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記一次粒子、上記アグロメレート、凝集体は、いずれも炭素マトリックス内部に埋め込まれる。炭素マトリックスの被覆、遮断作用下で、異なる形態の活物質が充放電中で凝集効果を発生することを抑制することができ、炭素マトリックスの緩衝作用力を効果的に利用して活物質の体積膨張を抑制することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、負極材料は、比表面積が10m2/g以下であり、負極材料の比表面積が、具体的には、10m2/g、9m2/g、8m2/g、7m2/g、6m2/g、5m2/g及び3m2/gなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記負極材料は、空隙率が10%以下であり、具体的には、0.5%、0.7%、0.9%、1.5%、2.0%、3.5%、5.0%、6.5%、7.5%、8.0%または10%であってもよく、これらに限定されない。負極材料の空孔率を上記範囲内に制御することは、電解液が材料の内部に浸透しにくく、負極材料の安定性の向上に寄与することを示す。負極材料の空隙率は5%以下であることが好ましく、負極材料の空隙率は2.5%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
いくつかの実施形態において、負極材料のメディアン径は、0.5μm~30μmであり、好ましくは、負極材料のメディアン径は、具体的には、0.5μm、1μm、5μm、10μm、11μm、12μm、13μm、15μm、17μm、18μm、19μm、20μm、25μmまたは30μmなどであってもよく、これらに限定されない。この粒径範囲において、比表面積が小さく、タップ密度が高い製品を得ることに有利であり、リチウムイオンの損失を低減し、充放電中に不可逆容量損失を低減し、負極材料の電気化学的性能を向上させることができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記負極材料は、上記複合物の少なくとも一部の表面に存在する被覆層をさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、被覆層は、炭素層、グラフェン層、窒化シリコン層、窒化チタン層及び炭化シリコン層のうちの少なくとも1つを含む。具体的には、被覆層は、炭素層であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、被覆層は、厚さが5nm~500nmであり、具体的には、被覆層の厚さが、5nm、10nm、30nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、及び500nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態において、負極材料は、球状または略球状である。球状顆粒の形態により、負極材料がより良いタップ密度、高い等方性と低い比表面積、低い表面欠陥を有するため、負極材料がより高いプレス密度、より良い充放電性能を有し、負極材料の可逆容量と初回効率がより高い。
【0046】
いくつかの実施形態において、負極材料は、真球度が0.7~1.0であり、具体的には、0.7、0.8、0.85、0.89、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98又は1.0などであってもよく、これらに限定されない。本出願において、真球度とは、顆粒の最短径と最長径の比を指す。
【0047】
本出願は、以下のステップS100~S300を含む負極材料の製造方法をさらに提供する。
S100:活物質一次粒子を含む油溶液と、炭素源前駆体及び界面活性剤を含む第2溶液とを混合処理し、エマルジョンを得て、ここで、第2溶液中の溶媒が、油溶液とは非相溶であること、
S200:上記エマルジョンを乾燥、造粒して前駆体を得ること、
S300:前駆体と第2炭素源とを混合して被覆し、さらに炭化処理を行い、負極材料を得ること。
【0048】
本出願が提供する負極材料の製造方法は、以下の通りである。
活物質一次粒子をまず油溶液に分散させ、その後、油溶液と炭素源前駆体及び界面活性剤を含む第2溶液とを混合し、水中油又は油中油の乳化体を形成し、第2溶液には界面活性剤が含まれているため、油/溶媒が相溶しないメカニズムで、単一の小液滴がより小さく分散され、活物質一次粒子の分散程度を高めることができ、それによって負極材料における凝集体の数を制御することができ、凝集する一次粒子の数を効果的に減らすことができ、凝集する一次粒子間のキャリア輸送がスムーズではないという問題を解決するとともに、活物質の体積膨張を抑制し、負極材料のサイクル安定性を高めることができる。
【0049】
以下、本態様を具体的に説明する。
ステップS100の前に、上記方法は以下をさらに含む。
活物質一次粒子を含む油溶液と、炭素源前駆体及び界面活性剤を含む第2溶液とを調製すること。
【0050】
理解されるように、油溶液において油相溶媒を溶媒として採用し、油相溶媒と第2溶液中の溶媒とは互いに相溶しない。
【0051】
いくつかの実施形態において、油相溶媒は、芳香族炭化水素系化合物、脂肪族炭化水素系化合物、ハロゲン化炭化水素系化合物、アルコール系化合物、エーテル系化合物、エステル系化合物、ケトン系化合物、グリコール誘導体系化合物、アセトニトリル、ピリジン、フェノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記芳香族炭化水素系化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニル、スチレンのうちの少なくとも1つを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記脂肪族炭化水素系化合物は、ペンタン、ヘキサン、およびオクタンのうちの少なくとも1つを含む。
【0054】
なお、脂肪族炭化水素系化合物は、直鎖脂肪族炭化水素、分岐鎖脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素であってもよい。脂環式炭化水素系化合物として、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサノン、トルエンシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、ハロゲン化炭化水素系化合物は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン及びクロロホルムのうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、アルコール系化合物は、n-ブタノール、n-ペンタノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、エステル系化合物は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、ケトン系化合物は、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンのうちの少なくとも1つを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、グリコール誘導体系化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、活物質とは、リチウムと反応し、リチウムを放出・吸蔵可能な物質である。活物質は、金属単体、非金属単体、金属酸化物及び金属合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x≦2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
別のいくつかの実施形態において、活物質はシリコン合金、例えばシリコンリチウム合金、シリコンマグネシウム合金等であってもよい。別のいくつかの実施例において、活物質は酸化物、例えば一酸化ケイ素であってもよい。なお、活物質は、金属単体、金属合金及び金属酸化物のうちの少なくとも2つを含む場合がある。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記活物質は、シリコン系活性材料を含み、上記シリコン系活性材料は、結晶シリコン、アモルファスシリコン及びシリコン合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、活物質一次粒子は、メディアン径が1nm~500nmであり、具体的には、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm又は500nmなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。ナノオーダーの活物質一次粒子は、表面エネルギーが高く、充放電中に凝集しやすく、顆粒の構造性が高く、活物質一次粒子の体積膨張を抑制することができる。しかし、ナノオーダーの活物質一次粒子は、大きな表面エネルギーを有し、充放電中に凝集してアグロメレート又は凝集体を形成しやすいため、活物質一次粒子が炭素マトリックス中に分散して存在し、活物質一次粒子の凝集効果を低減させることができる。活物質一次粒子の粒径が小さすぎ、生産プロセスのコストが高くなる。活物質一次粒子のメディアン径は、1nm~200nmであることが好ましく、1nm~100nmであることがより好ましい。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記油溶液における活物質一次粒子の質量割合は、8%~38%であり、具体的には、8%、10%、12%、15%、18%、20%、25%、30%、35%又は38%などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記炭素源前駆体は、スクロース、フルクトース、グルコース、ピッチ、フェノール樹脂、ポリイミド、クエン酸、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル酸、ポリアクリル酸、シュウ酸、クエン酸、脂肪酸、n-エイコサン酸、ポリエチレングリコール、シアノアクリレート、アセチル化ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸酪酸セルロースなどのうちの少なくとも1つを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTABと略記する)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LASと略記する)、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム(AESと略記する)、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル硫酸アンモニウム(AESAと略記する)、ラウリル硫酸ナトリウム(SDSと略記する)、ラウロイルグルタミン酸、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(TX-10と略記する)、ステアリン酸モノグリセリド、リグニンスルホン酸塩、重アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩(石油スルホン酸塩)、メチレンジナフタレンスルホン酸ナトリウム(NNOと略記する)、メチレンビスメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(MFと略記する)、アルキルポリエーテル(PO-EO共重合体)及び脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル(AEO-3と略記する)のうちの少なくとも1つを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、第2溶液中の溶媒は、極性非プロトン性有機相、極性プロトン性有機相、非極性有機相、及び水のうちの少なくとも1つを含む。上記溶媒において、極性非プロトン性有機相、極性プロトン性有機相及び非極性の有機相は、油溶液と油中油の乳化体を形成することができ、水は油溶液と水中油の乳化体を形成することができ、油/溶媒が相溶しないメカニズムにおいて、単一の小液滴がより小さく分散され、活物質一次粒子の分散程度を向上させることができ、それによって負極材料における凝集体の数含有量を制御することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、極性非プロトン性有機相は、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)を含み、極性プロトン性有機相は、メタノールを含み、非極性有機相は、オクタン、パーフルオロオクタン及びパーフルオロヘキサンのうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記油溶液と上記第2溶液との質量比は、(50~100):(40~70)であり、具体的には、油溶液と第2溶液との質量比は、具体的には、100:48、70:40、80:40、50:70又は50:50などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態において、活物質一次粒子を含む油溶液と、炭素源前駆体及び界面活性剤を含む第2溶液とを混合処理するステップの前に、上記方法は、活物質一次粒子を油相溶媒に加えて分散処理することをさらに含む。一次粒子を分散処理することで、油溶液における活物質一次粒子を分散させ、活物質一次粒子が凝集することを低減することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、活物質一次粒子を含む油溶液と、炭素源前駆体及び界面活性剤を含む第2溶液とを混合処理するステップの前に、上記方法は、炭素源前駆体及び界面活性剤を水に加えて分散処理することをさらに含む。分散処理により、均一に混合された溶液を形成することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、分散処理は、磁気撹拌、機械攪拌、研磨分散及び超音波分散のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、活物質一次粒子を分散させ、活物質一次粒子が凝集することを低減することができ、かつ活物質を比較的な小さなナノ顆粒に分散させることができるように、研磨分散を採用する。好ましくは、湿式ボールミルを採用することにより、湿式ボールミル分散時間を0.5h~10hに制御することができ、具体的には、0.5h、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10hなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。理解されるように、十分に研磨することにより、活物質一次粒子の粒径が1nm~500nmになるように、画分をより均一に混合することができる。
【0074】
ステップS100において、活物質一次粒子を含む油溶液と、炭素源前駆体及び界面活性剤を含む第2溶液とを混合処理し、エマルジョンを得て、ここで、第2溶液中の溶媒は、油溶液とは相溶しなく、
いくつかの実施形態において、上記油溶液と上記第2溶液との混合処理方式は、真空混合、撹拌混合のうちの少なくとも1つを含む。混合処理によって、分散した活物質一次粒子を炭素源前駆体に付着させ、活物質一次粒子同士の凝集効果を低減することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、上記混合処理は均質化処理機において行われ、混合処理の時間は1h~10hであり、具体的には、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10hなどであってもよく、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0076】
ステップS200において、上記エマルジョンを乾燥し、造粒して、前駆体を得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、乾燥の温度は30℃~400℃であり、具体的に、30℃、40℃、50℃、80℃、100℃、120℃、150℃、180℃、200℃、250℃、280℃、300℃又は400℃等であってもよく、乾燥処理の時間は1h~15hであり、具体的に、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h又は15h等であってもよく、乾燥処理方式は、例えば、炉内乾燥、凍結乾燥、撹拌蒸発乾固、回転蒸発乾固、噴霧乾燥等であってもよく、本実施例において、乾燥処理により、できる限りエマルション中の溶媒を除去することができる。
【0078】
ステップS300において、前駆体と第2炭素源とを混合して被覆し、さらに炭化処理を行って、負極材料を得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、混合被覆装置は、機械融合機、融合撹拌機及び対流融合機のうちの少なくとも1つを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、炭化処理の温度は、600℃~1200℃であり、具体的には、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃等であってもよい。好ましくは、炭化処理の温度は、600℃~1000℃である。
【0082】
いくつかの実施形態において、炭化処理の時間は、1h~10hであり、具体的には、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10h等であってもよく、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態において、炭化処理中に保護ガスが通気され、保護ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1つを含む。
【0084】
さらに、上記方法は、炭化処理後の材料に対して篩分け及び消磁処理を行って、負極材料を得ることをさらに含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、篩分け方式は、固定篩、ドラムスクリーン、共振篩、ローラーふるい、振動篩及びチェーンふるい(chaingrizzly)のうちのいずれか1つであり、篩分けのメッシュ数は100~500メッシュであり、具体的に、篩分けのメッシュ数は100メッシュ、200メッシュ、250メッシュ、325メッシュ、400メッシュ、500メッシュ等であってもよく、好ましくは、篩分けのメッシュ数は、250メッシュであり、負極材料の粒子径を上記範囲内に制御することは、負極材料の加工特性の向上に有利である。
【0086】
いくつかの実施形態において、消磁装置は、永久磁石式ドラム型磁選機、電磁分離機及び脈動高勾配磁気分離機から選択されるいずれか1つであり、消磁することは、磁性物質のリチウムイオン電池の放電効果及び使用中における電池の安全性への影響を減少するように、最終的に負極材料の磁性物質含有量を制御するためである。
【0087】
本出願の実施例は、本出願の上記実施例に係る負極材料又は本出願の上記実施例に係る負極材料の製造方法により製造された負極材料を用いるリチウムイオン電池をさらに提供する。本出願の実施例に係るリチウムイオン電池は、高容量、高初回効率、長サイクル寿命、優れたレート性能及び低膨張のメリットがある。
【0088】
試験方法は、以下の通りである。
1)負極材料の粒径の測定方法:
顆粒粒度試験方法は、GB/T 19077-2016を参照する。レーザ粒度分析装置を用いて便宜的に測定することができ、例えば、英国Malvern株式会社のMastersizer 3000型レーザ粒度分析装置である。
2)負極材料の比表面積の試験方法:
恒温低温において、異なる相対圧力におけるガスの固体表面への吸着量を測定した後、ブルナウアー-エメット-テラーの吸着等温理論およびその式(BET式)に基づいて試料単分子層吸着量を求め、材料の比表面積を算出する。
3)SEM測定:
走査型電子顕微鏡による特徴づけを、透過型電子顕微鏡で200kVの動作電圧で行い、負極材料の構造を観察した。
4)被覆層の厚さの測定方法:
FIB-SEM装置によって材料を切断面処理し、SEMにおいて測定して被覆層の平均厚さを得る。
5)材料顆粒における凝集体の体積割合の測定方法:
作製したSEM切断面用負極材料をランダムに20個取得し、個々の負極材料顆粒のSEM切断面を取得し、切断面における一次粒子の個数nAを統計し、切断面における第1連結方式で連結された複数の一次粒子により形成されたアグロメレートの個数nBを統計し、全てが第2連結方式で連結され、及び第1連結方式と第2連結方式で連結された複数の一次粒子により形成された凝集体の個数nCを統計し、P=nC/nA+nB+nC%であり、負極材料顆粒20個のP値の算術平均値を、凝集体の個数の割合とする。
6)負極材料の空孔率の測定方法:
水銀圧入法で負極材料の顆粒を測定する。
7)負極材料におけるアモルファスカーボンの質量含有量の測定方法:
熱質量測定法でアモルファスカーボンの質量含有量を測定する。
8)ボタン型電池試験
以下の方法で電気化学サイクル性能を測定する。製造された負極材料、導電剤及び接着剤を質量百分率94:1:5で水に溶解して混合し、固形分を50%に制御し、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥して負極シートを製造し、その後、三元ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM523)正極シート、1mol/LのLiPF6/エチレンカーボネート+ジメチルカーボネート+メチルエチルカーボネート(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400セパレータ、ハウジングを用いて組み立ててリチウムイオン電池を得る。マイクロメータを利用して、リチウムイオン電池の極片の初期厚さH0を測定し、リチウムイオン電池の充放電試験は、武漢金諾電子有限公司製のLAND電池用測定システムにおいて、常温条件で、0.2Cで定電流充放電を行い、充放電電圧を2.75~4.2Vに制限し、初回可逆容量、初回サイクル充電容量及び初回サイクル放電容量を得る。初回クーロン効率=初回サイクル放電容量/初回サイクル充電容量。
【0089】
50回サイクル後、マイクロメータを用いてリチウムイオン電池のこのときの極片の厚さを測定してH1とし、50回サイクル後の膨張率=(H1-H0)/H0×100%とした。
【0090】
100回サイクル後、放電容量をリチウムイオン電池の残留容量として記録し、容量維持率=残留容量/初期容量×100%とした。
【0091】
以下、複数の実施例を分けて本出願の実施例を更に説明する。なお、本出願実施例は、以下の具体的な実施例に限定されない。特許請求の範囲を逸脱しない範囲内に適宜変更して実施することができる。
【0092】
実施例1
負極材料の製造方法は、以下のステップ(1)~(4)を含む。
(1)ナノシリコンをボールミルに入れ、n-ブタノール溶媒を加え、ボールミルで5h分散し、油溶液を得て、油溶液におけるナノシリコンの質量割合が、33%であり、ナノシリコンのメディアン径が、103nmであり、グルコースとヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)とを含む水溶液を調製し、グルコース:CTAB:水=44:2:100であり、攪拌分散後に第2溶液を得る。その後、油溶液と第2溶液とを質量比100:48でホモジナイザーに入れて均質化処理を行い、均質化処理時間は3hであり、混合したエマルジョンを得ること、
(2)エマルジョンを撹拌して乾燥し、200℃の条件下で5h回転蒸発乾固し、造粒して前駆体を得ること、
(3)前駆体とフェノール樹脂とを質量比50:45によって混合し、その後混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、920℃の条件で炭化処理し、4h炭化処理して保温すること、
(4)炭化処理生成物を粉砕、篩分け、そして分級し、負極材料を得ること。
【0093】
図2は実施例1で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡SEM図であり、
図3は実施例1で製造された負極材料のXRD図であり、
図2及び
図3に示すように、本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、49nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、20%である。
【0094】
実施例2
負極材料の製造方法は、以下のステップ(1)~(4)を含む。
(1)ナノシリコンをボールミルに入れ、クロロホルム溶媒を加え、ボールミルで3h分散し、油溶液を得て、油溶液におけるナノシリコンの質量割合が、23%であり、ナノシリコンのメディアン径が、82nmであり、スクロースとアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの水溶液を調製し、スクロース:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:水=54:1.2:100であり、攪拌分散後に第2溶液を得る。その後、油溶液と第2溶液とを質量比70:40でホモジナイザーに入れて均質化処理を行い、均質化処理時間は5hであり、混合したエマルジョンを得ること、
(2)エマルジョンを撹拌して乾燥し、400℃の条件下で3h回転蒸発乾固し、造粒して前駆体を得ること、
(3)前駆体とフェノール樹脂とを質量比56:45によって混合し、その後混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、820℃の条件で炭化処理し、4h炭化処理して保温すること、
(4)炭化処理生成物を粉砕、篩分け、そして分級し、負極材料を得ること。
【0095】
本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、53nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、14%である。
【0096】
実施例3
負極材料の製造方法は、以下のステップ(1)~(4)を含む。
(1)ナノシリコンをボールミルに入れ、キシレン溶媒を加え、ボールミルで6h分散し、油溶液を得て、油溶液におけるナノシリコンの質量割合が、13%であり、ナノシリコンのメディアン径が、140nmであり、スクロースとラウリル硫酸ナトリウムとの水溶液を調製し、スクロース:ラウリル硫酸ナトリウム:水=54:3.2:100であり、攪拌分散後に第2溶液を得る。その後、油溶液と第2溶液とを質量比80:40でホモジナイザーに入れて均質化処理を行い、均質化処理時間は5hであり、混合したエマルジョンを得ること、
(2)エマルジョンを噴霧乾燥し、造粒し、前駆体を得ること、
(3)前駆体とグルコースとを質量比56:65によって混合し、その後混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、780℃の条件で炭化処理し、4h炭化処理して保温すること、
(4)炭化処理生成物を粉砕、篩分け、そして分級し、負極材料を得ること。
【0097】
本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、58nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、26%である。
【0098】
実施例4
負極材料の製造方法は、以下のステップ(1)~(4)を含む。
(1)ナノシリコンをボールミルに入れ、n-ヘキサン溶媒を加え、ボールミルで12h分散し、油溶液を得て、油溶液におけるナノシリコンの質量割合が、38%であり、ナノシリコンのメディアン径が、55nmであり、ポリビニルアルコールとラウロイルグルタミン酸との水溶液を調製し、ポリビニルアルコール:ラウロイルグルタミン酸:水=54:2.9:100であり、攪拌分散後に第2溶液を得る。その後、油溶液と第2溶液とを質量比50:70でホモジナイザーに入れて均質化処理を行い、均質化処理時間は2hであり、混合したエマルジョンを得ること、
(2)エマルジョンを噴霧乾燥し、造粒し、前駆体を得ること、
(3)前駆体とアスファルトとを質量比68:40によって混合し、その後混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、1020℃の条件で炭化処理し、3h炭化処理して保温すること、
(4)炭化処理生成物を粉砕、篩分け、そして分級し、負極材料を得ること。
【0099】
本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、49nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、18%である。
【0100】
実施例5
負極材料の製造方法は、以下のステップ(1)~(4)を含む。
(1)ナノシリコンをボールミルに入れ、プロピレンオキシド溶媒を加え、ボールミルで6h分散し、油溶液を得て、油溶液におけるナノシリコンの質量割合が、8%であり、ナノシリコンのメディアン径が、38nmであり、クエン酸と脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテルとの水溶液を調製し、クエン酸:脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル:水=64:2.5:100であり、攪拌分散後に第2溶液を得る。その後、油溶液と第2溶液とを質量比50:50でホモジナイザーに入れて均質化処理を行い、均質化処理時間は4hであり、混合したエマルジョンを得ること、
(2)エマルジョンを噴霧乾燥し、造粒し、前駆体を得ること、
(3)前駆体とスクロースとを質量比48:60によって混合し、その後混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、980℃の条件で炭化処理し、3h炭化処理して保温すること、
(4)炭化処理生成物を粉砕、篩分け、そして分級し、負極材料を得ること。
【0101】
本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、52nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、8%である。
【0102】
実施例6
実施例1と異なるのは、ステップ(1)において、添加された活物質がナノシリコン及びシリコンマグネシウム合金であることである。
【0103】
本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子及びシリコンマグネシウム合金粒子であり、炭素層の厚さは、48nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、18%である。
【0104】
実施例7
実施例1と異なるのは、ステップ(1)において、添加された活物質がナノ一酸化ケイ素であることである。
【0105】
本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はSiOであり、炭素層の厚さは、52nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、22%である。
【0106】
実施例8
実施例1と異なるのは、ステップ(1)において、添加された活物質がGeであることである。
【0107】
本実施例で製造された負極材料は、複合物及び複合物の表面に存在する炭素層を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はゲルマニウム粒子であり、炭素層の厚さは、48nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、19.4%である。
【0108】
実施例9
負極材料の製造方法は、以下のステップ(1)~(4)を含む。
(1)ナノシリコンをボールミルに入れ、n-ブタノール溶媒を加え、ボールミルで5h分散し、油溶液を得て、油溶液におけるナノシリコンの質量割合が、25%であり、ナノシリコンのメディアン径が、98nmであり、グルコースとヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)とを含む水溶液を調製し、グルコース:CTAB:水=44:2:100であり、攪拌分散後に第2溶液を得る。その後、油溶液と第2溶液とを質量比100:48でホモジナイザーに入れて均質化処理を行い、均質化処理時間は3hであり、混合したエマルジョンを得ること、
(2)エマルジョンを撹拌して乾燥し、200℃の条件下で6h回転蒸発乾固し、造粒して前駆体を得ること、
(3)前駆体を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、920℃の条件で炭化処理し、4h炭化処理して保温すること、
(4)炭化処理生成物を粉砕、篩分け、そして分級し、負極材料を得ること。
【0109】
本実施例で製造された負極材料は、複合物を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、25nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、24%である。
【0110】
比較例1
実施例1と異なるのは、ステップ(1)において、第2溶液に界面活性剤を添加しなかったことである。
【0111】
本実施例で製造された負極材料は、複合物を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、44nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、39%である。
【0112】
比較例2
実施例1と異なるのは、ステップ(1)において分散過程を行わなかったことである。
【0113】
本実施例で製造された負極材料は、複合物を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、45nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、43%である。
【0114】
比較例3
実施例1と異なるのは、以下の通りである。(1)ナノシリコンをボールミルに入れ、水溶媒を加え、ボールミルで5h分散し、第1溶液を得て、第1溶液におけるナノシリコンの質量割合が、39%であり、ナノシリコンのメディアン径が、107nmであり、グルコースとヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)とを含む水溶液を調製し、グルコース:CTAB:水=44:2:100であり、攪拌分散後に第2溶液を得る。その後、第1溶液と第2溶液とを質量比100:48でホモジナイザーに入れて均質化処理を行い、均質化処理時間は3hであり、混合溶液を得る。
【0115】
本実施例で製造された負極材料は、複合物を含み、上記複合物は、炭素マトリックス及び炭素マトリックス内に存在する活物質を含み、上記活物質は一次粒子、アグロメレート及び凝集体を含み、一次粒子はシリコン粒子であり、炭素層の厚さは、45nmであり、上記活物質における上記凝集体の数量割合は、34%である。
【0116】
実施例及び比較例で製造された負極材料に対して性能試験を行い、上記性能試験の結果を表1に示す。
【0117】
【0118】
図4は、本出願の実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線であり、
図4に示すように、実施例1で製造された負極材料は、初回充放電容量が高く、初回効率も高い。これは、凝集した一次粒子が一次粒子間のキャリアの輸送に影響を与えるからである。本出願は、負極材料における凝集体の数の割合を予め設定された範囲領域内に制御することにより、複合物の顆粒内部でのキャリアの輸送を効果的に改善することができ、負極材料が優れた電気化学的性能を有するようになる。
【0119】
図5は、本出願の実施例1で製造された負極材料のサイクル性能曲線であり、
図5に示すように、当該負極材料は、優れたサイクル性能を有し、100回サイクルの容量維持率が93.5%である。これは、活物質が炭素マトリックス内に存在し、炭素マトリックス中に分散された活物質の体積膨張を効果的に緩衝し、活物質の膨張による応力変化を減少させ、材料のサイクル安定性を高め、膨張率を低下させることができるからである。
【0120】
表1に示すように、実施例1~9で製造された負極材料は、複合物を含み、上記複合物は、炭素マトリックスと、炭素マトリックス内に存在する活物質とを含み、上記活物質は、一次粒子と、アグロメレートと、凝集体とを含む。上記活物質における上記凝集体の数の割合が30%以下であることは、複合物の顆粒内部でのキャリアの輸送を効果的に改善し、材料の構造安定性を効果的に向上させ、活物質の膨張による応力変化を減少させ、それによって材料のサイクル安定性能を高め、膨張率を低下させることができる。
【0121】
比較例1の負極材料は、製造過程において、第2溶液に界面活性剤を添加しないため、ナノシリコンの分散が不均一になり、凝集体が形成されやすく、最終製品の凝集体の割合が高くなり、電気化学的性能が劣化し、電池膨張率が著しく増大する。
【0122】
比較例2の負極材料は、製造過程において、分散処理を行わず、ナノシリコン粒子が天然に凝集していたため、最終製品の凝集体の割合が高くなり、電気化学的性能が劣化し、電池膨張率が著しくに増大する。
【0123】
比較例3の負極材料は、製造過程において、ステップ(1)で活物質を水溶液に分散させ、水溶液と第2溶液とを均質化処理して混合液を得て、水相系で分散を行うと、ナノシリコンが酸化しやすく、初回効率が低下する一方、水溶液の分散効果が油水系に及ばず、最終製品の凝集体の割合が高くなり、電気化学的性能が油水系に及ばない。
【0124】
本出願は、以上の好ましい実施例により開示されているが、特許請求の範囲を制限するものではなく、いかなる当業者も、本出願の技術思想から逸脱せずに、若干の可能な変更や修正をすることができるため、本出願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定める範囲に準ずるべきである。
【国際調査報告】