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特表2025-501832廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/455 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
C01B25/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506246
(86)(22)【出願日】2023-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2023138502
(87)【国際公開番号】W WO2024125561
(87)【国際公開日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】202211602946.6
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522485888
【氏名又は名称】湖北万潤新能源科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUBEI WANRUN NEW ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 勤
(72)【発明者】
【氏名】楊 嬌嬌
(72)【発明者】
【氏名】黄 珊珊
(57)【要約】

本発明は、ナトリウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法、及びその使用に関する。前記廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法は、廃リン酸鉄リチウム材料をアルカリ液と混合して反応させ、その後、固液分離し、アルミニウム含有濾液及びリン酸鉄リチウム濾残を得るステップと、前記リン酸鉄リチウム濾残、塩化アルミニウム、及び塩化ナトリウムを均一に混合した後、真空焙焼を行い、焙焼材料を得るステップと、前記焙焼材料をナトリウム源、鉄源、及びリン源のうちの少なくとも1種と均一に混合し、混合材料を得た後、それにフッ素源、炭素源、及び溶媒を加え、均一に混合した後、乾燥及びか焼を順次行い、炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムを得るステップと、を含む。該方法は、コストが低く、付加価値が高く、プロセスが短く、回収率が高く、製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの電気化学的特性に優れているという利点がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法であって、
廃リン酸鉄リチウム材料をアルカリ液と混合して反応させ、その後、固液分離し、アルミニウム含有濾液及びリン酸鉄リチウム濾残を得るステップ(a)と、
前記リン酸鉄リチウム濾残、塩化アルミニウム、及び塩化ナトリウムを均一に混合した後、真空焙焼を行い、焙焼材料を得るステップ(b)と、
前記焙焼材料をナトリウム源、鉄源、及びリン源のうちの少なくとも1種と均一に混合し、混合材料を得た後、それにフッ素源、炭素源、及び溶媒を加え、均一に混合した後、乾燥及びか焼を順次行い、炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムを得るステップ(c)と、を含む、製造方法。
【請求項2】
ステップ(a)では、前記廃リン酸鉄リチウム材料と前記アルカリ液との質量比が、1:5~15であり、
好ましくは、前記アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液を含み、
好ましくは、前記アルカリ液のモル濃度が、3~5mol/Lである、ことを特徴とする請求項1に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法。
【請求項3】
ステップ(a)では、前記アルミニウム含有濾液は、その中の水酸化物イオンのモル濃度が0.2mol/L未満となるまで繰り返して利用され、アルミニウム含有廃液が得られ、
好ましくは、ステップ(a)では、前記アルミニウム含有廃液を回収して処理し、塩化アルミニウム及び炭酸ナトリウムを得るステップをさらに含み、
好ましくは、前記回収処理方法は、前記アルミニウム含有廃液に二酸化炭素を導入して、そのpHを9~11に下げ、その後、固液分離し、水酸化アルミニウム沈殿及び炭酸ナトリウム濾液を得ることと、前記水酸化アルミニウム沈殿と塩酸を混合して反応させ、その後、濃縮して結晶化させ、塩化アルミニウムを得ることと、前記炭酸ナトリウム濾液を濃縮して結晶化させ、炭酸ナトリウムを得ることと、を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法。
【請求項4】
ステップ(b)では、前記リン酸鉄リチウム濾残中のリチウム元素、前記塩化アルミニウム、及び前記塩化ナトリウムのモル比が、1:1.2~1.5:1.02~1.05であり、
好ましくは、ステップ(b)では、前記真空焙焼の温度は400~600℃であり、前記真空焙焼の時間は4~6hであり、
前記真空焙焼の真空度は-0.04~-0.08MPaである、ことを特徴とする請求項1に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法。
【請求項5】
ステップ(b)では、前記真空焙焼による排ガスを収集して、アンモニア水と混合し、アルミニウム沈殿反応を行い、その後、固液分離し、次に、前記固液分離して得た固体材料を焼結し、アルミナを得て、前記固液分離により得られた液体材料と炭酸ナトリウムを混合してリチウム沈殿反応を行い、固液分離して、炭酸リチウムを得て、
好ましくは、前記アンモニア水のモル濃度が0.01~0.1mol/Lであり、
好ましくは、前記アルミニウム沈殿反応において、混合材料の温度は40~80℃であり、前記アルミニウム沈殿反応の時間は1~3hであり、
好ましくは、前記リチウム沈殿反応において、混合材料の温度は60~90℃であり、前記リチウム沈殿反応の時間は1~3hである、ことを特徴とする請求項1に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法。
【請求項6】
ステップ(c)では、前記焙焼材料をナトリウム源、鉄源、及びリン源のうちの少なくとも1種と混合する前に、前記焙焼材料中のNa元素、Fe元素、及びP元素の含有量を検出し、前記混合材料中のNa元素、Fe元素、及びP元素のモル比が0.95~0.98:1:1.02~1.05となるように配合を行い、
好ましくは、前記ナトリウム源は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含み、前記鉄源は、ベンガラ、シュウ酸鉄(II)、及び酢酸鉄のうちの少なくとも1種を含み、前記リン源は、リン酸、リン酸一水素アンモニウム、及びリン酸二水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法。
【請求項7】
ステップ(c)では、前記フッ素源はフッ化ナトリウムを含み、
好ましくは、前記フッ素源と前記混合材料中のFe元素とのモル比が、0.95~0.98:1であり、
好ましくは、ステップ(c)では、前記炭素源は、グルコース、スクロース、ポリエチレングリコール、及びスターチのうちの少なくとも1種を含み、
好ましくは、前記炭素源と前記焙焼材料との質量比が、0.2~0.3:1であり、
好ましくは、ステップ(c)では、前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法。
【請求項8】
ステップ(c)では、前記フッ素源、炭素源、及び溶媒を加えた後、破砕して均一に混合し、好ましくは、前記混合スラリー中の固体粒子の粒子径が200~400nmとなるまで破砕し、
好ましくは、ステップ(c)では、前記乾燥は噴霧乾燥を含み、より好ましくは、前記噴霧乾燥により得られた乾燥材の粒子径が、10~30μmであり、
好ましくは、ステップ(c)では、前記か焼の温度は550~650℃であり、前記か焼の保温時間は4~6hであり、
好ましくは、ステップ(c)では、前記か焼後、粉砕、篩分け、及び除鉄を順次行うステップを含み、
好ましくは、前記粉砕及び前記篩分けを受けた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムのD50粒子径が、0.5~2μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法。
【請求項9】
主に請求項1~8のいずれか1項に記載の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法によって製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムで製造される、正極極片。
【請求項10】
請求項9に記載の正極極片を含むナトリウムイオン電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年12月13日に提出された、出願番号がCN2022116029466、発明の名称が「廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法、及びその使用」である中国特許出願の優先権を主張している。
【0002】
本発明は、ナトリウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ナトリウム資源の豊富な埋蔵量とリチウムイオン電池と同様の動作原理のため、ナトリウムイオン電池の研究は、近年、エネルギー貯蔵技術の低コストでの利用や持続可能な発展を促進することが期待される新しいエネルギー貯蔵技術の1つとして注目され続けている。ポリアニオン型化合物は、広く研究されている、性能や安全性の高い正極材料であり、その構造中の強い共有結合は構造フレームの安定化に有利であり、充放電過程における電極の安全性を効果的に高めた。
【0004】
リン酸鉄ナトリウムは、一般に電気化学活性が劣ると考えられているが、フッ素を導入してフッ化リン酸鉄ナトリウムを形成することで、電気化学活性を高めるとともに、電圧プラットフォームを向上させることができるため、この変性は、ナトリウム電池正極材料にとって好ましい変性である。
【0005】
リン酸鉄リチウムスクラップは、主に電池の製造過程で発生する廃極板、すなわち電池を廃棄した後に電池を解体して発生する極板で、統計によると、2021年の年間が48万トンだったリン酸鉄リチウムの発生量は、2022年には100万トンに達すると予想されている。これらの資源をどのように資源化して利用するかが、研究の焦点となっている。
【0006】
特にリチウムの価格が徐々に上昇しているため、ナトリウム電池は将来の開発トレンドとしてますます重要になっている。したがって、廃棄されたリチウム電池資源を利用してナトリウム電池材料を製造することは非常に重要である。
これを考慮して、本発明を提案する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1目的は、コストが低く、付加価値が高く、プロセスが短く、回収率が高く、製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの電気化学的特性が優れるなどの特徴を有する、廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の第2目的は、正極極片を提供することである。
【0009】
本発明の第3目的は、ナトリウムイオン電池を提供することである。
【0010】
本発明の上記の目的を達成させるために、特に、以下の技術的解決手段を用いる。
【0011】
第1態様では、本発明は廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法を提供し、以下のステップを含む。
【0012】
ステップ(a)、廃リン酸鉄リチウム材料をアルカリ液と混合して反応させ、その後、固液分離し、アルミニウム含有濾液及びリン酸鉄リチウム濾残を得る。
【0013】
ここで、前記廃リン酸鉄リチウム材料は電池を廃棄した後に電池を解体して生成した極板を含み、その主成分はリン酸鉄リチウムとアルミニウムを含む。
【0014】
ステップ(a)で廃リン酸鉄リチウム材料はアルカリ液と反応し、目的は前記廃リン酸鉄リチウム材料おけるアルミニウムを反応させ、アルミニウムを溶解させることである。
【0015】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、ステップ(a)における反応は常温で行わればよく、加熱する必要がなく、アルミニウムは水酸化ナトリウムと反応して大量の熱を生成するためである。
【0016】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、ステップ(a)では、気泡が消える、すなわち気泡が出ないまで前記反応を行う。好ましくは、ステップ(a)では、前記反応の時間は1~10hであり、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9hのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0017】
前記アルミニウム含有濾液の主成分はメタアルミン酸イオンである。
【0018】
前記リン酸鉄リチウム濾残の主成分はリン酸鉄リチウムである。
【0019】
(b)、前記リン酸鉄リチウム濾残、塩化アルミニウム、及び塩化ナトリウムを均一に混合した後、真空焙焼を行い、焙焼材料を得る。
【0020】
本発明は、塩化アルミニウム及び塩化ナトリウムを用いて焙焼の添加剤とし、塩化焙焼を実現することができるだけでなく、塩化アルミニウムをリチウム元素と反応させてテトラクロロアルミン酸リチウムを形成することができ、テトラクロロアルミン酸リチウムの沸点が比較的低い原理を利用し、リチウム元素を蒸発させ、同時にナトリウム元素を残し、他の元素、例えばリン、鉄などもほとんど残される。
【0021】
すなわち、前記焙焼材料の主成分はリン酸鉄ナトリウムである。
【0022】
真空焙焼の過程において、テトラクロロアルミン酸リチウムは排気ガスにより逃げる。
【0023】
前記真空焙焼は真空雰囲気で焙焼を行うことであり、真空焙焼を用いてテトラクロロアルミン酸リチウムの沸点を低下させ、焙焼温度を低下させ、テトラクロロアルミン酸リチウムを十分に分離すると同時に、エネルギー消費を低下させることができる。
【0024】
(c)、前記焙焼材料をナトリウム源、鉄源、及びリン源のうちの少なくとも1種と均一に混合し、混合材料を得た後、それにフッ素源、炭素源、及び溶媒を加え、均一に混合した後、乾燥及びか焼を順次行い、炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムを得る。
【0025】
それらのうち、前記ナトリウム源、鉄源及びリン源はそれぞれナトリウム補充、鉄補充及びリン補充に用いられる。
【0026】
前記炭素源は還元剤とし、価鉄を三価鉄に還元する一方、被覆剤として、フッ化リン酸鉄ナトリウムの表面に被覆され、導電性を補強する。
【0027】
すなわち、本発明のステップ(c)で得られる炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムは、フッ化リン酸鉄ナトリウムと、前記フッ化リン酸鉄ナトリウムの表面の少なくとも一部を被覆する炭素被覆層とを含む。
【0028】
本発明による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法は、プロセスが短く、低コスト、環境にやさしく、鉄、リンの回収率が高く、高性能のナトリウム電池正極材料-炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムを製造することができる。
【0029】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムにおける炭素の占める質量百分率は1%~5%であり、2%、3%、4%のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0030】
好ましくは、ステップ(a)では、前記廃リン酸鉄リチウム材料と前記アルカリ液の質量比は1:5~15であり、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0031】
好ましくは、前記アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液を含む。水酸化ナトリウム溶液を用いて後の回収を容易にして炭酸ナトリウムを製造する。
【0032】
好ましくは、前記アルカリ液のモル濃度が、3~5mol/Lであり、3.5mol/L、4mol/L、4.5mol/Lのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0033】
好ましくは、ステップ(a)では、前記アルミニウム含有濾液は、その中の水酸化物イオンのモル濃度が0.2mol/L(0.15mol/L、0.1mol/L、0.05mol/L、0.01mol/Lのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない)未満となるまで繰り返して利用され、アルミニウム含有廃液が得られる。
【0034】
好ましくは、ステップ(a)では、前記アルミニウム含有廃液を回収して処理し、塩化アルミニウム及び炭酸ナトリウムを得るステップをさらに含む。
【0035】
好ましくは、前記回収処理方法は、前記アルミニウム含有廃液に二酸化炭素を導入して、そのpHを9~11(9.3、9.5、10、10.5、10.8のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない)に下げる。前記水酸化アルミニウム沈殿と塩酸を混合して反応させ、その後、濃縮して結晶化させ、塩化アルミニウムを得ることと、前記炭酸ナトリウム濾液を濃縮して結晶化させ、炭酸ナトリウムを得ることと、を含む。
【0036】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記二酸化炭素を導入する過程において、混合材料の温度は40~60℃であり、42℃、45℃、50℃、55℃、58℃のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0037】
上記で得られた塩化アルミニウムはステップ(b)に用いることができる。
【0038】
上記で得られた炭酸ナトリウムはステップ(c)でナトリウム源として用いることができる。
【0039】
本発明は廃リン酸鉄リチウム材料における全ての成分を十分に利用し、アルミニウム(アルミニウム箔)を含み、塩化アルミニウム、水酸化ナトリウム溶液(アルカリ液)を調製して炭酸ナトリウムを調製するために用いられ、廃棄物の発生を低減させ、コストを節約する。
【0040】
好ましくは、ステップ(b)では、前記リン酸鉄リチウム濾残中のリチウム元素と前記塩化アルミニウムと前記塩化ナトリウムとのモル比が1:1.2~1.5:1.02~1.05であり、例えば、1:1.2:1.02、1:1.2:1.03、1:1.2:1.04、1:1.2:1.05、1:1.3:1.02、1:1.3:1.03、1:1.3:1.04、1:1.3:1.05、1:1.4:1.02、1:1.4:1.03、1:1.4:1.04、1:1.4:1.05、1:1.5:1.02、1:1.5:1.03、1:1.5:1.04又は1:1.5:1.05である。
【0041】
好ましくは、ステップ(b)では、前記真空焙焼の温度は400~600℃であり、420℃、450℃、500℃、550℃、580℃のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されず、前記真空焙焼の時間は4~6hであり、4.5h、5h、5.5hのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0042】
前記真空焙焼の真空度は-0.04~-0.08MPaであり、-0.05MPa、-0.06MPa、-0.07MPa、のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0043】
好ましくは、ステップ(b)では、前記真空焙焼による排ガスを収集して、アンモニア水と混合し、アルミニウム沈殿反応(すなわち水酸化アルミニウム沈殿反応)を行い、その後、固液分離し、次に、前記固液分離して得た固体材料を焼結し、アルミナを得て、前記固液分離により得られた液体材料と炭酸ナトリウムを混合してリチウム沈殿反応(すなわち炭酸ナトリウム沈殿反応)を行い、固液分離して、炭酸リチウムを得る。
【0044】
それらのうち、真空焙焼による排ガスの主成分はテトラクロロアルミン酸リチウムである。それをアンモニア水と混合し、アルミニウムイオンはアンモニア水と反応して水酸化アルミニウム沈殿を生成し、固液分離後に得られた固体材料は水酸化アルミニウム沈殿である。これを焼成してアルミナを得ることができる。
【0045】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、上記調製されたアルミナは塩酸と反応して塩化アルミニウムを調製することができ、後のステップ(b)に用いられる。
【0046】
同時に、上記固液分離後に得られた液体材料にリチウムイオンが含まれ、それを炭酸ナトリウムと混合して反応させ、炭酸リチウムを得ることができる。
【0047】
好ましくは、前記アンモニア水のモル濃度が0.01~0.1mol/Lであり、0.02mol/L、0.03mol/L、0.04mol/L、0.05mol/L、0.06mol/L、0.07mol/L、0.08mol/L、0.09mol/Lのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0048】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記アンモニア水中の窒素元素と前記排ガス中のアルミニウム元素とのモル比は3.1~6:1であり、3.2:1、3.3:1、3.4:1、3.5:1、3.7:1、3.9:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0049】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記真空焙焼中に誘引送風機を用いて焙焼による排ガスを吸引し、コンデンサで凝縮して温度を150℃以下にした後集塵バッグを通した後、水スプレーにより吸收し、前記排ガスを得る。
【0050】
現在炭酸リチウムの価格は約50万元/トンであり、フッ化リン酸鉄ナトリウムの価格は約8.5万元/トンである。
【0051】
このように、本発明は各成分(各元素、リン、鉄、リチウムを含む)の完全な回収を実現することができ、リチウムを回収することができ、炭酸リチウムを得るだけでなく、鉄、リン等の元素を利用してフッ化リン酸鉄ナトリウムを製造することができ、製品の付加価値が高い。
【0052】
好ましくは、前記アルミニウム沈殿反応において、混合材料の温度は40~80℃であり、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。前記アルミニウム沈殿反応の時間は1~3hであり、1.5h、2h、2.5hのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0053】
好ましくは、前記リチウム沈殿反応において、混合材料の温度は60~90℃であり、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。前記リチウム沈殿反応の時間は1~3hであり、1.5h、2h、2.5hのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0054】
好ましくは、ステップ(c)では、前記焙焼材料をナトリウム源、鉄源、及びリン源のうちの少なくとも1種と混合する前に、前記焙焼材料中のNa元素、Fe元素、及びP元素の含有量を検出し、前記混合材料中のNa元素、Fe元素、及びP元素のモル比が0.95~0.98:1:1.02~1.05となるように配合を行い。それらのうち、上モル比は例えば0.95:1:1.02、0.96:1:1.02、0.97:1:1.02、0.98:1:1.02、0.95:1:1.03、0.96:1:1.03、0.97:1:1.03、0.98:1:1.03、0.95:1:1.04、0.96:1:1.04、0.97:1:1.04、0.98:1:1.04、0.95:1:1.05、0.96:1:1.05、0.97:1:1.05又は0.98:1:1.05である。
【0055】
すなわち、焙焼材料をサンプリングし、検出し、それらのうちのNa元素、Fe元素、及びP元素の含有量を検出し、焙焼材料中のNa:Fe:Pのモル比を算出し、焙焼材料中のNa:Fe:Pのモル比が0.95~0.98:1:1.02~1.05であるようにナトリウム源、鉄源、及びリン源のうちの少なくとも1種の原料(計算結果に基づいて、そのうちの1種、2種又は3種を加えることができる)を加える。
【0056】
好ましくは、前記ナトリウム源は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含み、前記鉄源は、ベンガラ、シュウ酸鉄(II)、及び酢酸鉄のうちの少なくとも1種を含み、前記リン源は、リン酸、リン酸一水素アンモニウム、及びリン酸二水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0057】
好ましくは、ステップ(c)では、前記フッ素源はフッ化ナトリウムを含む。
【0058】
好ましくは、前記フッ素源と前記混合材料中のFe元素とのモル比が、0.95~0.98:1であり、0.95:1、0.96:1、0.97:1、0.98:1のいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0059】
好ましくは、ステップ(c)では、前記炭素源は、グルコース、スクロース、ポリエチレングリコール、及びスターチのうちの少なくとも1種を含む。
【0060】
好ましくは、前記炭素源と前記焙焼材料との質量比が、0.2~0.3:1であり、0.21:1、0.22:1、0.23:1、0.24:1、0.25:1、0.26:1、0.27:1、0.28:1、0.29:1のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0061】
好ましくは、ステップ(c)では、前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒を含む。より好ましくは水である。
【0062】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、前記有機溶媒は任意の従来の揮発しやすい溶媒を用いることができ、例えばエタノール、プロパノール、エチレングリコールであり、これらに限定されない。
【0063】
好ましくは、ステップ(c)では、前記フッ素源、炭素源、及び溶媒を加えた後、破砕して均一に混合する。
【0064】
より好ましくは、前記混合スラリー中の固体粒子の粒子径が200~400nmとなるまで破砕し、粒子径が220nm、250nm、300nm、350nm、380nmのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0065】
好ましくは、ステップ(c)では、前記乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0066】
より好ましくは、前記噴霧乾燥により得られた乾燥材の粒子径が、10~30μmであり、12μm、15μm、20μm、25μm、28μmのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0067】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、前記噴霧乾燥により得られた乾燥材中の水分含有量が0.5wt%未満であり、0.4wt%、0.3wt%、0.2wt%、0.1wt%のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0068】
好ましくは、ステップ(c)では、前記か焼の温度は550~650℃であり、560℃、570℃、580℃、590℃、600℃、610℃、620℃、630℃、640℃のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。前記か焼の保温時間は4~6hであり、4.5h、5h、5.5hのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0069】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、ステップ(c)では、前記か焼における昇温速度は100~150℃/hであり、110℃/h、120℃/h、130℃/h、140℃/hのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0070】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、ステップ(c)では、前記か焼完了後、材料温度100℃以下まで降温した後に排出する。
【0071】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、ステップ(c)では、前記か焼は不活性雰囲気下で行われ、例えば窒素雰囲気及び/又はアルゴン雰囲気であるが、これらに限定されない。好ましくは、前記不活性雰囲気中の酸素含有量は5ppm未満であり、4ppm、3ppm、2ppm、1ppmのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。好ましくは、前記不活性雰囲気の湿度は3%未満であり、2%、1%、0.5%のうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0072】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、ステップ(c)では、前記か焼の昇温領域に誘引送風機を連通させて排気し、昇温領域内の排ガスを排出した。
【0073】
好ましくは、ステップ(c)では、前記か焼後、粉砕、篩分け、及び除鉄を順次行うステップをさらに含む。
【0074】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、前記粉砕は、任意の従来の粉砕方式を用いることができ、例えば気流粉砕を用いるが、これに限定されない。
【0075】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、前記篩分けは、任意の従来の篩分け方式を用いることができ、例えば超音波振動スクリーンをを用いて篩分けをするが、これに限定されない。
【0076】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、前記除鉄は任意の従来の除鉄方式を用いることができ、例えば電磁除鉄器で除鉄するが、これに限定されない。好ましくは、除鉄し、材料中の前記磁性物質が1ppm未満になると除鉄を停止し、0.8ppm、0.5ppm、0.3ppm、0.1ppmのうちのいずれかの値又はいずれか両者間の範囲にある値を含むがそれらに限定されない。
【0077】
本発明のいくつかの具体的な実施例において、前記鉄除去後、さらに恒温恒湿室内で真空包装するステップを含む。
【0078】
好ましくは、前記粉砕及び前記篩分けを受けた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムのD50粒子径が、0.5~2μmである。
【0079】
第2態様では、本発明は、主に上記の廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法によって製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムで製造される、正極極片を提供する。
【0080】
第3態様では、本発明は、上記の正極極片を含むナトリウムイオン電池を提供する。
【0081】
該ナトリウムイオン電池はコストが低く、且つ電気化学特性に優れている。
【発明の効果】
【0082】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0083】
(1)本発明による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法は、プロセスが短く、コストが低く、鉄やリンの回収率が高く、製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウム中の不純物含有量が少なく、電気化学的特性に優れている。
【0084】
(2)本発明による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法は、リン、鉄、リチウムの各元素を完全に回収することができ、リチウムを回収して炭酸リチウムを得ることができ、鉄やリン等の元素を利用してフッ化リン酸鉄ナトリウムを製造することができるので、製品の付加価値が高い。
【0085】
(3)本発明による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法は、回収工程で発生する排ガスや廃液を十分に利用することができ、廃棄物の発生を低減し、コストを低減し、資源の浪費を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態又は従来技術の記述のために使用した図面を簡単に説明するが、明らかに、以下に記述した図面は本発明のいくつかの実施形態であり、当業者にとって、創造的な労力をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本発明による実施例1で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの0.1C充放電曲線図である。
図2】本発明による実施例1で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムのSEM像である。
図3】本発明による実施例1で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムのXRD像である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら本発明の技術的解決手段を明瞭で、完全に説明するが、当業者は、以下に説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではなく、本発明を説明するだけであり、本発明の範囲を制限するものではないと考えられるべきである。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労働を必要とせずに得られた全ての他の実施例は、本発明の特許範囲に属する。実施例において具体的な条件を明記していないものは、通常の条件又はメーカーが推奨する条件に従って行う。使用する試薬又は機器は生産メーカーを明記しないものは、いずれも市販によって購入された一般的な製品である。
【実施例
【0088】
実施例1
本実施例による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)、廃リン酸鉄リチウム材料10kgをモル濃度が4mol/Lの水酸化ナトリウム溶液100kgと混合して反応させ、アルミニウムを溶解し、気泡が消えるまで反応させると、反応を終了し(反応時間は3.5h)、その後、濾過し、第1アルミニウム含有濾液及びリン酸鉄リチウム濾残を得る。
ここで、廃リン酸鉄リチウム材料中の不純物は、主にアルミニウム箔で、その比率が20.5質量%である。上記で製造された第1アルミニウム含有濾液(体積は80.05L)の各元素の含有量の検出結果を以下の表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
(2)、ステップ(1)で得られたアルミニウム含有濾液を再利用し、さらに廃リン酸鉄リチウム材料10kgと混合して反応させ、水酸化物イオンが0.18mol/L未満のモル濃度となるまで消費されると、濾過し、得た第2アルミニウム含有濾液(体積は76.46L)をサンプリングし、検出し、結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
第2アルミニウム含有濾液に二酸化炭素を温度50℃で導入し、その後、濾液のpHをオンラインで測定したところ、pHが10.1に下がると、二酸化炭素ガスの導入を停止し、さらに50min撹拌して反応させ、その後、濾過し、水酸化アルミニウム沈殿及び炭酸ナトリウム濾液を得る。
【0093】
上記の水酸化アルミニウム沈殿に塩酸溶解を加え、終点のpHを1.3に維持し、塩化アルミニウム溶液を得た後、濃縮して結晶化させ、測定された純度が99.4wt%の塩化アルミニウム晶体を得て、使用に備える(下記のステップ(3)に用いる)。
【0094】
上記で得られた炭酸ナトリウム濾液を濃縮して結晶化させ、炭酸ナトリウムを得て、ボーメ度が52となるまで濃縮させた後、12h冷却して結晶化させ、終点温度が25℃となると、遠心脱水して、ベークし、純度を測定した結果99.2wt%であるものを、ナトリウム源としておく(下記のステップ(4)に用いる)。
【0095】
(3)、リン酸鉄リチウム濾残中のリチウム元素と塩化アルミニウムと塩化ナトリウムとのモル比が1:1.35:1.045となるように、ステップ(1)で得られたリン酸鉄リチウム濾残に塩化アルミニウム及び塩化ナトリウムを加え、均一に混合した後、-0.065MPa真空度、500℃の温度で5h焙焼して反応させ、焙焼材料を得る。
【0096】
焙焼中に誘引送風機を用いて焙焼による排ガスを吸引し、コンデンサで凝縮して温度を135℃にした後、集塵バッグを通した後、水スプレーにより吸收し、排ガスを得る。
【0097】
その後、上記の排ガスに0.08mol/Lのアンモニア水溶液(アンモニア水中の窒素元素と排ガス中のアルミニウム元素とのモル比は3.5:1)を加え、撹拌後、温度60℃で1.5h反応させ、終点のpHを7.9に制御し、その後、濾過して洗浄し、得た沈殿を650℃の温度で焼結し、か焼時間を7hとして、アルミナを得る。アルミナの検出データを表3に示す。
【0098】
そして、上記の濾過により得られた濾液に炭酸ナトリウムを加え、終点のpHを10.5、反応温度を75℃、反応時間を1hに制御し、その後、濾過して洗浄し、工業グレードの炭酸リチウムを得る。その純度を検出した結果、99.35%である。工業グレードの炭酸リチウムの検出データを表4に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
(4)、ステップ(3)で得られた焙焼材料中の各元素の含有量を検出し、検出結果を以下の表5に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
計算の結果、上記の焙焼材料中のNa:Fe:Pのモル比が0.954:1:0.989であることが分かった。このため、ナトリウム源及びリン源を添加する必要がある。焙焼材料に炭酸ナトリウム及びリン酸二水素アンモニウムを加えて、NaとFeとPとのモル比を0.975:1:1.04に維持し、均一に混合した後、混合材料を得た。その後、この混合材料にフッ化ナトリウム、炭素源、及び純粋を加え、撹拌してスラリーにした。炭素源として、質量比が1:0.3のグルコース及びスクロースが使用され、炭素源の質量(グルコースとスクロースとの質量の合計)は上記の焙焼材料の質量の0.25倍である。フッ化ナトリウムと上記の混合材料中の鉄元素とのモル比が0.97:1である。
【0104】
その後、上記で撹拌してスラリーにしたスラリー材を、スラリー中の固体粒子の粒子径が285nmとなるまで破砕し、その後、噴霧乾燥し、粒子径が21.7μm、水分含有量が0.5wt%未満の噴霧乾燥材を得た。
【0105】
そして、上記の噴霧乾燥材をか焼して、か焼材を得た。ここで、昇温速度を120℃/hにした。その後、600℃の温度で5h保温し、材料の温度が100℃未満にあるまで降温すると排出した。か焼中に窒素ガスを導入し、か焼炉内の酸素ガスの含有量を5ppm未満、湿度を3%未満に維持した。昇温領域に誘引送風機を連通させて排気し、昇温領域内の排ガスを排出した。
【0106】
材料の粒子径が1.4μmとなるまで上記のか焼材をジェット粉砕した。その後、100メッシュの超音波振動スクリーンを用いて篩分けをいた。次に、電磁除鉄器で除鉄し、材料中の磁性物質が1ppm未満になると除鉄を停止し、その後、恒温恒湿室内で真空包装し、ナトリウム電池正極材料として利用可能な炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムを得た。
【0107】
本実施例で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの各項の検出データを以下の表6に示す。
【0108】
【表6】
【0109】
ここで、圧縮密度は3T圧力で測定される。
【0110】
粉体抵抗率は、四探針法を用い、圧力が10MPaである。
【0111】
電気特定の測定には、0.3Ahのソフトパック電池が使用され、正極集電体は炭素コーティングアルミニウム箔であり、正極組成は質量比88:7:5の基材、SP、及びPVDFであり、極板は2.35g/mLに圧縮され、電解液は六フッ化リン酸ナトリウムであり、負極集電体はアルミニウム箔であり、負極には硬質炭素が使用され、硬質炭素はアスファルトを前処理した後、高温焼成して得られたものである。測定電圧範囲は2.0~4.0Vである。
【0112】
遊離ナトリウムは、材料10gに純粋100gを加え、25℃で30min撹拌後、濾過し、濾液についてICPを用いてナトリウムイオンを測定することにより測定された。
【0113】
フッ素は、フッ素イオン選択性電極を用いて測定された。
【0114】
鉄溶出の測定には、材料10gにモル濃度0.05mol/Lの塩酸100mLを加え、温度40℃で30min浸漬し、その後、濾過し、濾液について鉄含有量を測定することにより得られる。
【0115】
0.1C充放電曲線を図1に示す。図1から、本実施例で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムは明らかな放電プラットフォームと小さな分極を有することが分かった。
【0116】
上記で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムのSEM像を図2に示す。
【0117】
上記で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムのXRD像を図3に示す。
【0118】
実施例2
本実施例による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法では、ステップ(4)では、炭素源をポリエチレングリコールに変更し、ポリエチレングリコールの質量を上記の焙焼材料の質量の0.3倍にした以外、実施例1と同様であった。
【0119】
実施例3
本実施例による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法では、ステップ(4)では、炭素源をスターチに変更し、スターチの質量を上記の焙焼材料の質量の0.2倍にした以外、実施例1と同様であった。
【0120】
比較例1
本比較例による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆リン酸鉄ナトリウムの製造方法では、ステップ(4)では、フッ化ナトリウムを加えない以外、実施例1と同様であった。すなわち、この比較例で製造された製品は炭素被覆リン酸鉄ナトリウムである。
【0121】
比較例2
本比較例による廃リン酸鉄リチウムを用いたフッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法では、ステップ(4)では、炭素源を追加するわかりに、か焼時にN2+H2混合ガスを導入して還元した以外、実施例1と同様であった。すなわち、この比較例で製造された製品は、表面における炭素被覆層が少ないフッ化リン酸鉄ナトリウムである。
比較例1で製造された炭素被覆リン酸鉄ナトリウム及び比較例2で製造されたフッ化リン酸鉄ナトリウムのそれぞれについて、電気的特性を測定し(検出方法は実施例1と同様)、結果を表7に示す。
【0122】
【表7】
【0123】
実施例1及び比較例1~比較例2の電気的特性のテスト結果を比較した結果、実施例1では、容量、初回放電効率及びサイクル特性がより優れていたことが分かった。
【0124】
具体的には、比較例1と比較して、実施例1ではフッ素イオンを導入しているため、容量を増加させることができ、また、フッ素の導入により、効果的にドーピングを形成し、共融効果(eutectic effect)を形成し、イオン伝導性を向上させることができ、容量を増加させることができ、フッ化リン酸鉄ナトリウムはリン酸鉄ナトリウムに比べてナトリウム含有量が高く、理論容量も増加する。
【0125】
比較例2と比較して、ポリアニオン性ナトリウム電池材料自体の導電性が悪いので、実施例1の適切な炭素被覆は、材料の電子伝導性を向上させるのに有効であり、また、適切な炭素被覆は、粒子の成長を阻止し、粒子の一次粒子径をより均一にし、粒子の成長を効果的に回避し、容量およびサイクル特性を向上させることができる。
【0126】
以上より、本発明による廃リン酸鉄リチウムを用いた炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムの製造方法で製造された炭素被覆フッ化リン酸鉄ナトリウムは、電気化学的特性に優れ、ナトリウム電池正極材料として有用である。
【0127】
本発明は具体的な実施例により説明及び記述されてきたが、上記の各実施例は本発明の技術的手段を説明するためにのみ使用され、それに限定されるものではないことを認識すべきである。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、前述した各実施例に記載された技術的手段を修正したり、その一部又は全部の技術的特徴を均等に置き換えたりすることができ、これらの修正または置換は、対応する技術的手段の本質を本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱させるものではないと理解すべきであるため、これは添付の特許請求の範囲に本発明の範囲に属するすべてのこれらの置換および変更が含まれることを意味する。

図1
図2
図3
【国際調査報告】