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特表2025-501837負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池
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  • 特表-負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20250117BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250117BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/485
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515337
(86)(22)【出願日】2023-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2023122628
(87)【国際公開番号】W WO2024139493
(87)【国際公開日】2024-07-04
(31)【優先権主張番号】202211698602.X
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】521520935
【氏名又は名称】惠州市鼎元新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 松涛
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 志強
(72)【発明者】
【氏名】謝 維
(72)【発明者】
【氏名】李 芳儒
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 春雷
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050CB01
5H050CB02
5H050EA11
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA16
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本発明は負極材料、その製造方法及び用途を開示する。
【解決手段】負極材料はコア及びコアの少なくとも一部の表面に位置する被覆層を含み、コアはシリコン酸素材料を含み、前記負極材料にリチウム元素を含み、前記負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をaにし、また、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により負極材料を測定する場合に、前記光電子分光装置が負極材料の表面から負極材料の内部中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をbにした際に、aとbとの関係が0.4>a>bを満たす。本出願は負極材料表層のリチウム元素と酸素元素との比を材料全体のリチウム元素と酸素元素との比より小さくなるように制御し、リチウム元素を材料の内部の中心領域により多く存在させ、表面のリチウム元素の含有量を低減することにより、シリコン酸素材料の内部中心領域Si結晶粒に対する水溶媒の浸食作用を低減し、スラリーの加工安定性を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの表面の少なくとも一部に位置する被覆層とを含む負極材料であって、
前記コアはシリコン酸素材料を含み、前記負極材料はリチウム元素を含み、
前記負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をaにし、また、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により前記負極材料を測定する場合に前記光電子分光装置が前記負極材料の表面から前記負極材料の内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をbにした際に、aとbとの関係が0.4>a>bを満たすことを特徴とする負極材料。
【請求項2】
以下の特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比(a)は、0.35>a>0.15を満たす;
(2)bは、0.30>b>0.01を満たす;
(3)X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により前記負極材料を測定する場合に前記光電子分光装置が前記負極材料の表面から前記負極材料の内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域の厚さは1nm~10nmである;
(4)前記シリコン酸素材料は、ケイ素酸化物SiO(0<x≦2)を含む;
(5)前記シリコン酸素材料は、LiSiO、LiSiおよびLiSiOのうちの少なくとも1つを含むリチウム含有化合物を含む;
(6)前記負極材料の質量を100%とすると、前記負極材料における前記リチウム元素の質量割合は1wt%~15wt%である;
(7)前記負極材料におけるSi元素とO元素とのモル比は(0.8~1.2):1である。
【請求項3】
前記被覆層は、第1被覆層及び第2被覆層を含み、前記第2被覆層は、前記コアと前記第1被覆層との間及び/又は前記コアの表面における第1被覆層に被覆されていない領域に位置することを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
以下の特徴(1)~(6)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項3に記載の負極材料。
(1)前記第2被覆層は、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記第1被覆層の材質は炭素材料を含む;
(3)前記負極材料における前記第1被覆層の質量割合は0.1%~5%である;
(4)前記負極材料における前記第2被覆層の質量割合は0.1%~8%である;
(5)前記第1被覆層の厚さは1nm~1000nmである;
(6)前記第2被覆層の厚さは1nm~1000nmである。
【請求項5】
以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記被覆層は、炭素層である;
(2)前記被覆層の厚さは1nm~1000nmである。
【請求項6】
以下の特徴(1)~(5)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記負極材料の細孔容積は、0.01cm/g未満である;
(2)前記負極材料の比表面積は、4m/g未満である;
(3)Washburn法によりアセトンに対する前記負極材料の接触角θを測定すると、θ>20°である;
(4)前記負極材料のpHは、7<pH<11.5を満たす;
(5)前記負極材料のメディアン径は3.0μm~10.0μmである。
【請求項7】
シリコン酸素原料をプレリチウム化して、リチウム元素とシリコン酸素原料とを質量比(0.02~0.16):1で含むプレリチウム化材料を得る工程と、
前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む混合物に対して第1熱処理を行って前記混合物を硬化させ、前駆体を得る工程と、
前記前駆体に対して第2熱処理を行って前記前駆体を炭化させ、負極材料を得る工程とを含む、ことを特徴とする負極材料の製造方法。
【請求項8】
以下の特徴(1)~(13)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
(1)前記第1熱処理の温度は、150℃~250℃である;
(2)前記第1熱処理の時間は、5h~12hである;
(3)前記第1熱処理は、空気雰囲気中で行う;
(4)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行う前に、前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む前記混合物を乾燥処理する工程をさらに含む;
(5)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行う前に、前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む前記混合物を乾燥処理する工程をさらに含み、前記乾燥処理の温度が45℃~90℃である;
(6)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、その後、前駆体を得る;
(7)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記洗浄に用いられる溶媒は、水及びエタノールのうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記洗浄時の固液質量比は(1~4):1である;
(9)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記洗浄の時間は1h~5hである;
(10)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記乾燥の温度は80℃~120℃である;
(11)前記第2熱処理の温度は、500℃~800℃である;
(12)前記第2熱処理の時間は、5h~12hである;
(13)前記第2熱処理は、保護ガス雰囲気で行われる。
【請求項9】
前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物の製造方法は、前記多価カルボン酸を溶媒中に加入して多価カルボン酸を含む炭素源溶液を得、前記プレリチウム化材料と前記多価カルボン酸を含む炭素源溶液とを混合して前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む混合物を得ることを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。。
【請求項10】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
(1)炭素源溶液の濃度は、3mg/mL~7mg/mLである;
(2)前記多価カルボン酸は、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、トリメシン酸、テレフタル酸、リンゴ酸及びエチレンジアミン四酢酸のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記溶媒は、アセトン、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、トルエン及びテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記プレリチウム化材料と前記多価カルボン酸との質量比は(20~200):1である。
【請求項11】
前記シリコン酸素原料は、被覆層を有するシリコン酸素材料であり、前記被覆層を有するシリコン酸素材料の製造方法は、シリコン酸素材料を提供し、前記シリコン酸素材料と被覆材料とを混合した後に第3熱処理を行い、被覆層を有するシリコン酸素材料を得ることを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。。
【請求項12】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
(1)前記シリコン酸素材料と前記被覆材料との質量比は1:(0.005~0.05)である;
(2)前記被覆材料は、炭素材料、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記第3熱処理の温度は、500℃~1000℃である;
(4)前記第3熱処理の時間は、1h~6hである。
【請求項13】
前記シリコン酸素原料をプレリチウム化する工程は、前記シリコン酸素原料とリチウム源を混合した後に第4熱処理を行い、プレリチウム化材料を得ることを含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項14】
以下の特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
(1)前記シリコン酸素原料は、SiO(0<y≦2)を含む;
(2)前記リチウム源は、金属リチウム、水素化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、水素化ホウ素リチウム及び水素化アルミニウムリチウムのうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記シリコン酸素原料と前記リチウム源との質量比は100:(2~16)である;
(4)前記第4熱処理の温度は、100℃~900℃である;
(5)前記第4熱処理の時間は、1h~24hである;
(6)前記シリコン酸素原料は、被覆層を有するシリコン酸素材料である;
(7)前記シリコン酸素原料は、被覆層を有するシリコン酸素材料であり、前記被覆層の材質は炭素材料、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか1項に記載の負極材料又は請求項7~14のいずれか1項に記載の負極材料の製造方法で製造された負極材料を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年12月28日まで中国特許庁に提出された出願番号が202211698602.X、発明の名称が「ケイ素系負極材料、その製造方法及び用途」の中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、負極材料の技術分野に関し、具体的には、負極材料、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコン酸素材料はリチウムイオン電池の負極材料として、比容量が高く、構造安定性が良いという特徴を有することである。プレリチウム化技術によりシリコン酸素材料内部のSiO骨格をリチウム化したSiO、例えばLiSiO、LiSiなどに変換し、シリコン酸素材料に初回クーロン効率が低いという問題を効果的に解決することができる。
【0004】
しかしながら、シリコン酸素材料に対してそのままプレリチウム化処理を行うと、シリコン酸素材料が孔路を開放して内部Si結晶粒を露出させ、材料表面に、例えばLiSiO、LiOH、LiCOなどの豊富なリチウム含有化合物を有し、極めて強い親水性を示す。水系スラリーの製造過程において、水溶媒は、プレリチウム化されたシリコン酸素を容易に浸潤して材料内部に侵入し、Si結晶粒に接触し、アルカリ性条件でSi結晶粒との反応を加速して大量のHを生成し、スラリーの安定性を破壊し、スラリーの加工性能を著しく劣化させる。
【0005】
また、材料表面に豊富なリチウム含有化合物は高いアルカリ性を有するため、水溶媒によるシリコン酸素材料内部のSi結晶粒への浸食作用が促進される一方、スラリー製造装置も腐食される。
【0006】
そのため、現在は優れた電気化学特性を有するとともに、良好な加工性能を有するリチウム化シリコン酸素原料を負極材料とすることが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、負極材料が材料の電気化学特性を保証できる前提で、水系スラリー加工の安定性を顕著に向上させる負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様において、本発明は負極材料を提供し、前記負極材料は、コアと前記コアの表面の少なくとも一部に位置する被覆層とを含み、前記コアはシリコン酸素材料を含み、前記負極材料にはリチウム元素を含む;
前記負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をaにし、また、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により前記負極材料を測定する場合に、前記光電子分光装置が前記負極材料の表面から前記負極材料の内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をbにした際に、aとbとの関係が0.4>a>bを満たす。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、以下の(1)~(7)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)前記負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比aは、0.35>a>0.15を満たす;
(2)前記bは、0.30>b>0.01を満たす;
(3)X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により前記負極材料を測定する場合に、前記光電子分光装置が前記負極材料の表面から前記負極材料の内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域の厚さは1nm~10nmである;
(4)前記シリコン酸素材料は、SiOを含み、0<x≦2である;
(5)前記シリコン酸素材料は、LiSiO、LiSiおよびLiSiOのうちの少なくとも1つを含むリチウム含有化合物を含む;
(6)前記負極材料の質量を100%とすると、前記負極材料における前記リチウム元素の質量割合は1wt%~15wt%である;
(7)前記負極材料におけるSi元素とO元素とのモル比は(0.8~1.2):1である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記被覆層は、第1被覆層及び第2被覆層を含み、前記第2被覆層は、前記コアと前記第1被覆層との間及び/又は前記コアの表面における第1被覆層に被覆されていない領域に位置する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、以下(1)~(6)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)前記第2被覆層は、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記第1被覆層の材質は炭素材料を含む;
(3)前記負極材料における前記第1被覆層の質量割合は0.1%~5%である;
(4)前記負極材料における前記第2被覆層の質量割合は0.1%~8%である;
(5)前記第1被覆層の厚さは1nm~1000nmである;
(6)前記第2被覆層の厚さは1nm~1000nmである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、以下(1)~(2)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)前記被覆層は、炭素層である;
(2)前記被覆層の厚さは1nm~1000nmである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、以下の(1)~(5)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)前記負極材料の孔容積は、0.01cm/g未満である;
(2)前記負極材料の比表面積は、4m/g未満である;
(3)Washburn法によりアセトンに対する前記負極材料の接触角θを測定すると、θ>20°である;
(4)前記負極材料のpHは、7<pH<11.5を満たす;
(5)前記負極材料のメディアン径は3.0μm~10.0μmである。
【0014】
第2態様において、本出願の実施例は、負極材料の製造方法であって、
シリコン酸素原料をプレリチウム化して、リチウム元素とシリコン酸素原料とを質量比(0.02~0.16):1で含むプレリチウム化材料を得る工程と、
前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む混合物に対して第1熱処理を行って、前記混合物を硬化させ、前駆体を得る工程と、
前記前駆体に対して第2熱処理を行って前記前駆体を炭化させ、負極材料を得る工程とを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、以下の(1)~(13)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)前記第1熱処理の温度は、150℃~250℃である;
(2)前記第1熱処理の時間は、5h~12hである;
(3)前記第1熱処理は、空気雰囲気中で行う;
(4)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行う前に、前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む前記混合物を乾燥処理する工程をさらに含む;
(5)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行う前に、前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む前記混合物を乾燥処理する工程をさらに含み、前記乾燥処理の温度が45℃~90℃である;
(6)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、その後、前駆体を得る;
(7)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記洗浄に用いられる溶媒は、水及びエタノールのうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記洗浄時の固液質量比は(1~4):1である;
(9)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記洗浄の時間は1h~5hである;
(10)前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物に対して第1熱処理を行った後、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を含み、前記乾燥の温度は80℃~120℃である;
(11)前記第2熱処理の温度は、500℃~800℃である;
(12)前記第2熱処理の時間は、5h~12hである;
(13)前記第2熱処理は、保護ガス雰囲気で行われる。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する前記混合物の製造方法は、前記多価カルボン酸を溶媒中に加入して多価カルボン酸を含む炭素源溶液を得て、前記プレリチウム化材料と前記多価カルボン酸を含む炭素源溶液とを混合して前記プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む混合物を得ることを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)炭素源溶液の濃度は、3mg/mL~7mg/mLである;
(2)前記多価カルボン酸は、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、トリメシン酸、テレフタル酸、リンゴ酸及びエチレンジアミン四酢酸のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記溶媒は、アセトン、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、トルエン及びテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記プレリチウム化材料と前記多価カルボン酸との質量比は(20~200):1である。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記シリコン酸素原料は、被覆層を有するシリコン酸素材料であり、前記被覆層を有するシリコン酸素材料の製造方法は、シリコン酸素材料を提供し、前記シリコン酸素材料と被覆材料とを混合した後に第3熱処理を行い、被覆層を有するシリコン酸素材料を得ることでを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)前記シリコン酸素材料と前記被覆材料との質量比は1:(0.005~0.05)である;
(2)前記被覆材料は、炭素材料、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記第3熱処理の温度は、500℃~1000℃である;
(4)前記第3熱処理の時間は、1h~6hである。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記シリコン酸素材料をプレリチウム化することは、前記シリコン酸素原料とリチウム源を混合した後に第4熱処理を行い、プレリチウム化材料を得る工程を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、以下の(1)~(7)のうちの少なくとも1つの特徴を有し、
(1)前記シリコン酸素原料は、SiO(0<y≦2)を含む;
(2)前記リチウム源は、金属リチウム、水素化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、水素化ホウ素リチウム及び水素化アルミニウムリチウムのうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記シリコン酸素原料と前記リチウム源との質量比は100:(2~16)である;
(4)前記第4熱処理の温度は、100℃~900℃である;
(5)前記第4熱処理の時間は、1h~24hである;
(6)前記シリコン酸素原料は、被覆層を有するシリコン酸素材料である;
(7)前記シリコン酸素原料は被覆層を有するシリコン酸素材料であり、前記被覆層の材質は炭素材料、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
第3態様において、本発明は、第1態様に記載の負極材料又は第2態様に記載の負極材料の製造方法で製造された負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、下記のような有益な効果を奏する。本出願は、負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をaに限定し、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により負極材料を測定する場合に、該光電子分光装置が負極材料の表面から負極材料内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域におけるリチウム元素と酸素元素との質量比がbである。負極材料は、コアとコアの少なくとも一部の表面に位置する被覆層とを含み、コアが主にX線光電子分光装置により負極材料粒子の内部に対して検出できない領域に位置し、負極材料における酸素元素の質量がX線光電子分光装置により負極材料の表面から負極材料内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域における酸素元素の質量より遥かに大きいことである。そのため、a>bである場合、本出願の負極材料の表層におけるリチウム元素の相対含有量が少なく、即ち、リチウム元素が主に負極材料の内部中心に近い領域に存在することを示す。このように、負極材料の加工・スラリー調製過程において、リチウム元素が主に負極材料内部の中心領域に位置するため、水溶媒分子が負極材料の内部に入ることを効果的に減少し、負極材料のシリコン結晶粒が侵食されることを低減し、負極材料のスラリー加工過程における安定性を向上させる。ここで、aの値は、主にコアにおけるリチウム元素の含有量に関連し、aの数値が高いほど、材料の初回効率が高くなるため、aは高いほど好ましい。材料bの値が低いほど、材料の疎水性の向上に有利であり、それにより、水溶媒が材料内部に浸潤、浸透しにくくなり、材料内部のSi結晶粒と水溶媒との接触を効果的に遮断し、スラリーの加工安定性の向上に有利であるため、bが低いほど好ましい。本出願において、aとbにはいずれも上限があり、0.4>a>bを満たす場合、負極材料が高い初回効率を有するとともに、良好なスラリー加工性を有することを保証することができる。生成物の表面に露出するリチウム含有化合物の含有量が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の図面は本発明のいくつかの実施例を示すだけであるため、範囲を限定するものと見なされるべきではなく、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の関連する図面を取得することができる。
図1】本発明が提供する負極材料の構成を示す模式図1である。
図2】本発明が提供する負極材料の構成を示す模式図2である。
図3】本発明が提供する負極材料の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下は本発明の実施例における技術的解決手段を明確で、完全に説明する。実施例において、具体的な条件を明記されないものは、一般的な条件又は製造元により提示される条件に従って行う。使用された試薬又は機器において、製造業者を明記されないものは、いずれも市販の購入により得られた従来の製品である。
【0026】
従来技術において、炭素被覆シリコン酸素材料がプレリチウム化処理された後、炭素層に空隙が発生し、材料内部のLiSi、LiSiO等が露出され、且つ空気中のHO、CO等を吸収してLiCO、LiOH等のリチウム含有化合物を形成し、これらのリチウム含有化合物の存在により、材料が十分に親水性になり、材料からのスラリー調製過程において水溶媒分子が材料内部のSi結晶粒に容易に浸潤して入り、侵食する。したがって、材料のリチウム含有化合物の露出を低減することがスラリー加工性を改善する鍵となります。
【0027】
これに鑑みて、本発明の実施例は負極材料を提供し、図1に示すように、該負極材料は、コア100とコア100の少なくとも一部の表面に形成された被覆層300とを含み、コア100はシリコン酸素材料を含み、負極材料はリチウム元素200を含む。
負極材料におけるリチウム元素200と酸素元素との質量比をaにし、また、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により負極材料を測定する場合に、該光電子分光装置が負極材料の表面から負極材料の内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域におけるリチウム元素200と酸素元素との質量比をbにした際に、aとbとの関係が0.4>a>bを満たす。
【0028】
上記技術案において、本出願は、負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をaに限定し、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により負極材料を測定する場合に、該光電子分光装置が負極材料の表面から負極材料内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域におけるリチウム元素と酸素元素との質量比がbである。負極材料はコアとコアの少なくとも一部の表面に位置する被覆層とを含み、コアが主にX線光電子分光装置により負極材料粒子の内部に対して検出できない領域に位置し、負極材料における酸素元素の質量がX線光電子分光装置により負極材料の表面から負極材料内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域における酸素元素の質量より遥かに大きいことである。そのため、a>bである場合、本出願の負極材料の表層におけるリチウム元素の相対含有量が少なく、即ち、リチウム元素が主に負極材料の内部中心に近い領域に存在することを示す。このように、負極材料の加工・スラリー調製過程において、リチウム元素が主に負極材料内部の中心領域に位置するため、水溶媒分子が負極材料の内部に入ることを効果的に減少し、負極材料のシリコン結晶粒が侵食されることを低減し、負極材料のスラリー加工過程における安定性を向上させる。ここで、aの値は、主にコアにおけるリチウム元素の含有量に関連し、aの数値が高いほど、材料の初回効率が高くなるため、aは高いほど好ましい。材料bの値が低いほど、材料の疎水性の向上に有利であり、それにより、水溶媒が材料内部に浸潤、浸透しにくくなり、材料内部のSi結晶粒と水溶媒との接触を効果的に遮断し、スラリーの加工安定性の向上に有利であるため、bが低いほど好ましい。本出願において、aとbにはいずれも上限があり、0.4>a>bを満たす場合、負極材料が高い初回効率を有するとともに、良好なスラリー加工性を有することを保証することができる。生成物の表面に露出するリチウム含有化合物の含有量が低減される。
【0029】
本出願において、aとbとの関係がa>bを満たす場合、負極材料におけるリチウム元素の含有量が第2領域におけるリチウム元素の含有量よりもはるかに大きいことを示す。aが0.4より大きい場合、即ちコアにおけるリチウム元素のドーピング度合が非常に大きいため、材料内部のシリコン結晶粒が異常に成長し、負極材料のサイクル性能の向上に不利である。
【0030】
図2に示すように、本出願の負極材料粒子は2つの領域に分けられてもよく、即ち、本出願の負極材料粒子は第1領域1と第2領域2とを有する。第2領域2は、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)によって負極材料を測定する場合に、該光電子分光装置が負極材料の表面から負極材料の内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域である。第1領域1は、X線光電子分光装置が負極材料粒子の内部に対して検出できない領域である。いくつかの実施例において、第1領域1はコア100と部分被覆層300(図2に示す)を含み、第2領域2は負極材料における第1領域1以外の他の領域である。他のいくつかの実施例において、第1領域1は完全なコア100又は部分コア100を含み、第2領域2は負極材料における第1領域1以外の他の領域である。本出願は、第1領域と第2領域との具体的な境界を具体的に限定せず、理解できるように、第1領域と第2領域とが接触する領域は、被覆層のエッジのように明らかな界面が存在する場合であってもよく、明らかな界面がなく平滑に遷移する場合であってもよい。
【0031】
なお、本出願では、aおよびbの試験方法が以下に示す。
(1)負極材料全体のLi元素の質量含有量は、全溶解ICPを採用して測定し、具体的には、負極材料0.500gを清浄な白金坩堝に置き、その後、空気雰囲気のマッフル炉で750℃で2h焼成して炭素元素を完全に除去する;冷却後の焼成残留物をHNO4mLとHF 6mLとの混合酸と十分に反応させ、その後、該溶液を入れた白金坩堝を溶媒が完全に蒸発するまで350℃電気ホットプレートに置きます;坩堝が冷却された後、さらにHCl 6mLを加え、残留物が完全に溶解するまで加熱し、100mLプラスチックメスフラスコに定容する;最後にICP分光計(Agilent 5800VDV ICP-OES)で材料全体のLi元素含有量を測定した。
【0032】
(2)負極材料全体のO元素の質量含有量は、ONH元素分析装置(ONH-2000)を用いて測定し、具体的には、負極材料10mg~13mgを秤量してニッケル箔に包んだ後、ONH元素分析装置における黒鉛坩堝に送って測定し、上記データによりaを算出した。
【0033】
(3)第2領域のLi元素及びO元素の質量含有量は、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)を用いて測定し、作業工程は以下の通りである。本出願の負極材料を両面炭素導電性接着剤又は普通の両面テープを用いて試料台に貼り付け、負極材料を有する試料台をX線光電子分光装置内に入れ、X線光電子分光装置に用いられる励起源はAlKα線であり、ビームスポットは400μmであり、フルスペクトルスキャンのパスエネルギーは100eVであり、ステップは1eVであり、フルスペクトルスキャンデータを取得した後、Avantageソフトウェアを用いてフルスペクトルスキャンデータを読み取ってLi元素とO元素の含有量を取得し、さらにLi元素とO元素の質量比bを計算して取得する。
【0034】
いくつかの実施形態において、aは、0.35>a>0.15を満たす。具体的には、a>bを満たすことを前提として、aの値は、0.16、0.18、0.2、0.22、0.24、0.26、0.28、0.30、0.32、または0.34などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0035】
いくつかの実施形態において、bは、0.30>b>0.01を満たす。具体的には、bの値は、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20、0.22、0.24、0.26、または0.28などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0036】
a及びbの値の範囲を上記の範囲内に制御することにより、負極材料のスラリー加工の安定性をさらに向上させることができ、即ち、製造されたスラリーに気泡が発生せず、スラリーを塗布過程において集電体に均一且つ平坦に塗布することができ、負極がより優れた電気化学特性を発揮することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素材料は、ケイ素酸化物SiOを含み、0<x≦2である。ケイ素酸化物は、酸素原子とケイ素原子とを含み、酸素原子とケイ素原子とのモル比が0~2であり、0を含まないシリコン酸素複合体である。これは、Si、SiO0.2、SiO0.5、SiO0.8、SiO、SiO1.2、SiO1.5、SiO1.8又はSiO等のうちの2種又は2種以上を複合してなるものであってもよく、又は化学式がSiOである化合物であってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0038】
いくつかの実施形態において、負極材料中のリチウム元素はリチウム含有化合物の形態で存在し、リチウム含有化合物は、LiSiO、LiSiおよびLiSiOのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されるものではない。
【0039】
いくつかの実施形態において、負極材料の質量を100%として計算すると、負極材料におけるリチウム元素の質量比は、1wt%~15wt%である。例えば、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%又は15wt%などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0040】
いくつかの実施形態において、Si元素とO元素とのモル比は、(0.8~1.2):1である。例えば、0.8:1、0.9:1、1.0:1、1.1:1又は1.2:1などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。Si元素とO元素のモル比の測定方法は以下の通りである。
【0041】
ONH元素分析装置を用いて材料の全てのO元素の含有量を測定し、炭素硫黄分析装置を用いて材料の全てのC元素の含有量を測定し、全溶解ICPを用いて材料の全てのLi元素の含有量を測定し、全溶解ICPを用いて材料の全ての不純物元素の含有量、例えばFe、Mn、Ni、Cu、Mgなどの不純物を測定し、材料の残りの部分はデフォルトでSi元素の含有量である。Si/Oモル比は、O元素含有量とSi元素含有量を簡単に換算することによって得られる。
【0042】
いくつかの実施形態において、被覆層は、第1被覆層及び第2被覆層を含み、第2被覆層は、コアと第1被覆層との間及び/又は前記コアの表面における第1被覆層に被覆されていない領域に位置する。
【0043】
いくつかの実施形態において、図1に示すように、被覆層300は、コア100の少なくとも一部の表面に分布する第2被覆層302と、第2被覆層302の少なくとも一部の表面に分布する第1被覆層301とを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1被覆層301の材質は炭素材料を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、第2被覆層302は、炭素材料、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、負極材料における第1被覆層301の質量割合は、0.1%~5%である。具体的には、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%又は5%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0047】
いくつかの実施形態において、負極材料における第2被覆層302の質量割合は、0.1%~8%である。具体的には、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%又は8%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0048】
いくつかの実施形態において、第1被覆層301の厚さは、1nm~1000nmである。具体的には、1nm、10nm、100nm、300nm、500nm、800nm又は1000nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0049】
いくつかの実施形態において、第2被覆層302の厚さは、1nm~1000nmである。具体的には、1nm、10nm、100nm、300nm、500nm、800nm又は1000nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0050】
理解できるように、第1被覆層301と第2被覆層302の材質が同じである場合、被覆層は単層構造と見なすことができ、即ち、被覆層300は炭素層である。
【0051】
いくつかの実施形態において、被覆層300の厚さは、1nm~1000nmである。例えば、1nm、50nm、100nm、300nm、500nm、700nm又は1000nmなどであり、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0052】
いくつかの実施形態において、負極材料の孔容積は、0.01cm/g未満である。具体的には、0.001cm/g、0.003cm/g、0.005cm/g、又は0.008cm/g等であってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。本出願の負極材料の孔容積が小さく、水溶媒が材料内部に浸潤、浸透しにくく、材料内部のSi結晶粒と水溶媒との接触を効果的に遮断する。
【0053】
いくつかの実施形態において、負極材料の比表面積は、4m/g未満である。具体的には、0.5m/g、1m/g、2m/g又は3m/gなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0054】
負極材料の孔容積及び比表面積は、いずれも負極材料の外表面を反映するパラメータであり、本出願は孔容積及び比表面を上記範囲内に限定し、本出願の負極材料の最外表面は、主に緻密な被覆層であり、スラリーの製造過程において水溶媒の浸透侵食を阻止することに寄与することが分かる。
【0055】
なお、孔容積がVであり、比表面積Sは、従来の測定方法を採用することができ、例えば、ガス吸着BET法により測定することができ、ここで、ガス吸着BET法に用いられる吸着ガスは、例えば、Nであってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、Washburn法によりアセトンに対する負極材料の接触角θを測定すると、θ>20°を測定した。具体的には、θは、25°、30°、35°、40°、45°、または50°などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。上記限定範囲内において、本出願の負極材料が良好な疎水性を有することが示され、負極材料のb値が低いほど、材料の疎水性の向上に有利であり、それにより、水溶媒が材料内部に浸潤、浸透しにくくなり、材料内部のSi結晶粒と水溶媒との接触を効果的に遮断し、スラリーの加工安定性の向上に有利であることが理解できる。負極材料最外表面が緻密な被覆層で覆われているため、負極材は良好な疎水性を示す。
【0057】
なお、接触角θの測定方法は以下の通りである。負極材料を底部にフィルターを有するガラス管に充填し、試験液と接触させ、試験液の上昇終了後に管内に増加した質量と時間を記録し、Washburn等式により接触角を算出した。測定過程中、n-ヘキサンを試験液とし、n-ヘキサンの接触角を0度と仮定して、粉末充填後の毛細管定数を測定し、その後、同じ充填方法で粉末を再度充填し、アセトンで接触角を測定した。
【0058】
いくつかの実施形態において、負極材料のpH値は、7<pH<11.5を満たす。具体的には、pHは、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、又は11.3などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。上記の限定された範囲において、本出願の負極材料の表面にリチウム含有化合物の含有量が少ないことは、水溶媒と内部Si結晶粒との反応を緩和し、スラリーの安定性を促進することに有利であることを示す。また、低いpHでもスラリー作製装置の腐食を回避することができる。
【0059】
なお、負極材料のpH値の測定方法は以下の通りである。負極材料5gを水45gに超音波分散し、その後pHメーターで測定した。
【0060】
いくつかの実施形態において、負極材料のメディアン径は、3.0μm~10.0μmである。具体的には、3.0μm、4.0μm、5.0μm、6.0μm、7.0μm、8.0μm、9.0μm又は10.0μmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0061】
いくつかの実施形態において、図3に示すように、本出願は、以下の工程を含む負極材料の製造方法を提供する。
シリコン酸素原料をプレリチウム化してプレリチウム化材料を得て、プレリチウム化材料におけるリチウム元素とシリコン酸素原料との質量比は(0.02~0.16):1である;
プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む混合物に対して第1熱処理を行い、混合物を硬化させて前駆体を得る;
前駆体に対して第2熱処理を行い、前駆体を炭化させ、負極材料を得る。
【0062】
上記技術案において、本出願は、多価カルボン酸を用いてリチウム元素を含有するシリコン酸素原料に対して第1熱処理被覆処理を行う。多価カルボン酸とリチウム含有化合物との結合力が強いため、多価カルボン酸はリチウム含有化合物と結合して誘導炭素を生成し、シリコン酸素原料の表面にランダムに分布するのではなく、リチウム含有化合物を定点遮蔽する傾向がある。生成された誘導炭素は主に材料の空隙に充填され、プレリチウム化後の材料に現れた空隙を補修する作用を果たすとともに、プレリチウム化材料におけるリチウム元素とシリコン酸素原料との質量比を(0.02~0.16):1に限定して、さらにプレリチウム化材料の表面に多価カルボン酸の炭素被覆を行うことにより、製造された負極材料の表層に含まれるリチウム元素が少なくなり、負極材料が0.4>a>bを示す。その後、洗浄操作により材料表面に残留したリチウム含有化合物が除去され、少量の空隙が残され、最後に第2熱処理の高温炭化処理により材料表面の空隙が徐々に縮小して閉じ、緻密な炭素被覆層が形成されている。それにより、負極材料の加工・スラリー調製過程において、水溶媒分子が負極材料の内部に入ることを効果的に減少させ、負極材料のシリコン結晶粒が侵食されることを低減し、負極材料のスラリー加工過程における安定性を向上させる。本出願の製造方法は、プレリチウム化操作によってリチウムを予め補充して材料の比容量、構造安定性及び初回効率を向上させ、多価カルボン酸を炭素源とすることによってリチウム含有化合物を効率的に定点遮蔽することができる。多価カルボン酸とリチウム含有化合物との結合能力が強いため、多価カルボン酸が材料表面をランダムに被覆するのではなく、リチウム含有化合物を配向して被覆する傾向にある。これにより、スラリーの加工安定性の問題を解決するとともに、炭素被覆層の過度な厚さによる材料の比容量の低下を回避し、炭素化後の負極材料が0.4>a>bを示し、負極材料が高い初回効率を有するだけでなく、良好なスラリー加工性を有することを保証する。
【0063】
以下は、本出願の実施例の製造方法の詳細な工程である。
S100、シリコン酸素原料をプレリチウム化し、プレリチウム化材料を得て、リチウム元素とシリコン酸素原料との質量比は(0.02~0.16):1である。
【0064】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素原料は、ケイ酸化物SiOを含み、0<y≦2である。SiOは、SiO0.2、SiO0.5、SiO0.8、SiO、SiO1.2、SiO1.5、SiO1.8又はSiOなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。本工程において、プレリチウム化により、シリコン酸素材料内部のSiO骨格をLiSiO、LiSiなどのリチウム含有化合物に変換することができ、材料の初回クーロン効率を向上させる。
【0065】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素原料は、被覆層を有するシリコン酸素材料であり、被覆層を有するシリコン酸素材料を用いてプレリチウム化を行うことにより、プレリチウム化反応の過程が穏やかになり、コアにおけるリチウム元素の分布の均一性に有利である。
【0066】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素原料が被覆層を有するシリコン酸素材料である場合、S100:シリコン酸素材料を提供し、シリコン酸素材料と被覆材料とを混合して第3熱処理を行い、SiO/被覆層を得て、即ち、被覆層を有するシリコン酸素材料であり、SiO/被覆層をプレリチウム化処理し、プレリチウム化材料を得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素材料と被覆材料との質量比は、1:(0.005~0.05)である。例えば、1:0.005、1:0.008、1:0.01、1:0.02、1:0.03、1:0.04又は1:0.05などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。上記の限定された範囲内において、シリコン酸素材料が効果的に被覆されることを保証できるだけでなく、被覆材料の存在による負極材料の比容量の低下も回避できる。
【0068】
いくつかの実施形態において、被覆材料は、炭素材料、ケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む。上記被覆材料は、材料内部のリチウム含有化合物、例えば、LiSiO、LiSi等と反応して材料表面にアンカーすることができ、材料表面のリチウム含有化合物の露出を遮蔽、低減する作用も果たすことができる。また、上記被覆材料は、良好な熱伝導性及びイオン伝導性を有し、プレリチウム化反応過程における熱分布を改善することができ、リチウムイオンがシリコン酸素材料の表面に均一的に挿入されることを促進し、プレリチウム化反応を均一に、温和に進行させることができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、第3熱処理の温度は500℃~1000℃である。例えば、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃又は1000℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0070】
いくつかの実施形態において、第3熱処理の時間は1h~6hである。例えば、1h、2h、3h、4h、5h又は6hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0071】
理解できるように、上記シリコン酸素原料を被覆する製造方法は省略でき、市販の被覆層を有するシリコン酸素材料を直接購入すればよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素材料をプレリチウム化することは、シリコン酸素原料とリチウム源を混合した後に第4熱処理を行い、プレリチウム化材料を得る工程を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、リチウム源は、金属リチウム、水素化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、水素化ホウ素リチウム及び水素化アルミニウムリチウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素原料とリチウム源との質量比は、100:(2~16)である。具体的には、100:2、100:3、100:5、100:8、100:10、100:12、100:14、又は100:16などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0075】
いくつかの実施形態において、第4熱処理の温度は、100℃~900℃である。例えば、反応温度は、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃又は900℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。
【0076】
いくつかの実施形態において、第4熱処理の時間は、1h~24hである。具体的には、1h、3h、5h、8h、10h、13h、15h、18h、20h又は24hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0077】
S200、プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む混合物に対して第1の熱処理を行い、混合物を硬化させ、前駆体を得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを混合して、プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含む混合物を得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、多価カルボン酸は、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、トリメシン酸、テレフタル酸、リンゴ酸及びエチレンジアミン四酢酸のうちの少なくとも1つを含む。上記多価カルボン酸は、強い錯体形成能を有し、多価カルボン酸は、シリコン酸素原料の表面に露出したリチウム含有化合物と緊密に結合することができ、「定点」を形成する多価カルボン酸誘導炭素被覆層は、シリコン酸素原料の表面被覆層の空隙に充填されている。その後、炭化過程において緻密な炭素層を形成し、リチウム元素を含有するシリコン酸素原料表面のリチウム含有化合物を良好に遮蔽する。多価カルボン酸誘導炭素の遮蔽作用により、負極材料の第2領域は、Li/O元素比が負極材料の内部のLi/O元素比よりも低く、0.4>a>bを示す。即ち、本出願の負極材料の表層におけるリチウム元素の相対含有量が少なく、即ち、リチウム元素が主に負極材料の第1領域内に存在し、負極材料のスラリー製造過程において、溶媒の水分子の侵入、浸透を効果的に阻止することができる。負極材料内部のシリコン結晶粒の侵食及びガスの発生を回避し、スラリーを集電体に均一、平坦に塗布することに有利であり、負極がより優れた電気化学特性を発揮することができる。
【0080】
多価カルボン酸とは、カルボン酸官能基を2つ以上含有する多価カルボン酸であり、多価カルボン酸は、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、トリメシン酸、テレフタル酸、リンゴ酸及びエチレンジアミン四酢酸のうちの少なくとも1つを含む。上記多価カルボン酸は強い錯体形成能を有し、Liと強く相互作用することができ、それによりプレリチウム化材料表面のリチウム含有化合物と緊密に結合することができ、炭化処理を経て多価カルボン酸誘導炭素を生成し、多価カルボン酸誘導炭素は空隙を充填し、材料表面のリチウム含有化合物を完全に被覆することができ、それにより材料の疎水性を向上させ、材料内部のSi結晶粒と水溶媒との接触を効果的に遮断し、スラリー加工安定性の問題を解決する。
【0081】
いくつかの実施形態において、多価カルボン酸に溶媒を含有させ、即ち、多価カルボン酸を溶媒に入れて、多価カルボン酸を含有する炭素源溶液を得て、プレリチウム化材料と上記炭素源溶液とを混合してプレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する混合物を得て、上記混合物を第1熱処理して硬化させ、さらに洗浄して前駆体を得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、炭素源溶液の濃度は、3mg/mL~7mg/mLである。具体的には、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL又は7mg/mLなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0083】
いくつかの実施形態において、プレリチウム化材料と多価カルボン酸とを含有する質量比は(20~200):1である。具体的には、プレリチウム化材料と多価カルボン酸との質量比は、20:1、50:1、80:1、100:1、120:1、150:1、180:1又は200:1などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0084】
本出願は、炭素源溶液の濃度及びプレリチウム化材料と多価カルボン酸との質量比を制御することにより、炭素被覆の効果を保証することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、溶媒は、アセトン、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、トルエン及びテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、混合材料に対して第1熱処理を行う前に、混合物を乾燥処理する工程をさらに含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、乾燥処理の温度は、45℃~90℃である。具体的には、45℃、55℃、65℃、70℃、80℃、85℃又は90℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。実際の操作過程において、プレリチウム化材料と炭素源溶液を混合し、加熱条件下で撹拌して蒸発乾固させ、溶媒などの成分を除去し、多価カルボン酸とプレリチウム化材料のみを保留することができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、第1熱処理の温度は、150℃~250℃である。具体的には、熱硬化処理の温度は、150℃、180℃、200℃、230℃又は250℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願は、ここで限定しない。上記温度限定範囲内において、プレリチウム化材料と多価カルボン酸との混合物を部分的に炭化させて多価カルボン酸硬化層を形成することができ、後続の洗浄によって材料表面に残った可溶性リチウム含有化合物を除去するように、予備定型の目的を果たす。理解できるように、洗浄により材料表面に残留した可溶性リチウム含有化合物を除去することで材料表面に一定の空隙を形成する。
【0089】
いくつかの実施形態において、第1熱処理の時間は5h~12hであり、具体的な処理時間は5h、8h、10h又は12hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0090】
いくつかの実施形態において、第1熱処理は、空気雰囲気で行うことができるが、これらに限定されない。
【0091】
本出願は、第1熱処理の温度及び時間を制御することにより、予備硬化層を形成し、後続の洗浄による炭素源の被覆への影響を回避する。
【0092】
いくつかの実施形態において、第1熱処理の後には、第1熱処理で得られた材料を洗浄、固液分離、乾燥する工程を行い、洗浄操作により材料中の水分を除去することも含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、洗浄された溶媒は、水及びエタノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、洗浄された液固質量比は、(1~4):1である。具体的な液固質量比は、1:1、2:1、3:1又は4:1などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0095】
いくつかの実施形態において、洗浄時間は1h~5hであり、水洗時間は1h、2h、3h、4h又は5hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0096】
本出願は、洗浄の液固質量比と洗浄時間を制御することにより、材料表面に残ったリチウム含有化合物を十分に除去する。
【0097】
いくつかの実施形態において、乾燥処理の温度は、80℃~120℃である。具体的には、80℃、90℃、100℃、110℃又は120℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0098】
工程S300、前駆体に対して第2熱処理を行い、前駆体を炭化させ、負極材料を得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、第2熱処理温度は、500℃~800℃である。具体的には、第2熱処理温度は、500℃、600℃、700℃又は800℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0100】
いくつかの実施形態において、第2熱処理時間は5h~12hである。具体的には、第2熱処理時間は5h、7h、9h、11h又は12hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、本出願はここで限定しない。
【0101】
本工程で、第2熱処理の高温炭化過程において、多価カルボン酸硬化層の表面の空隙が徐々に縮小して閉じ、最終的に空隙のない炭素被覆層が形成され、生成物の表面に露出したリチウム含有化合物の含有量が低減される。本発明は、熱処理の温度と時間を制御することにより、材料表面の空隙率を低下させ、実質的に空隙のない緻密な被覆層を形成する。
【0102】
いくつかの実施形態において、第2熱処理は保護ガス雰囲気で行われ、保護ガス雰囲気はアルゴンなどの不活性ガスであってもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、被覆層を有するシリコン酸素材料の被覆層の材質が炭素材料である場合、製造された負極材料における被覆層は炭素層であり、被覆層を有するシリコン酸素材料の被覆層の材質がケイ素のリン酸塩化合物、アルミニウムのリン酸塩化合物、アンモニウムのリン酸塩化合物及びアルミニウムリン複合酸化物のうちの少なくとも1つを含む場合、製造された負極材料は2層の複合被覆層を含む。
【0104】
以上のように、本出願の製造方法において、多価カルボン酸は強い錯体形成能を有し、リチウムイオンと強く相互作用することができ、多価カルボン酸とリチウム元素を含有するシリコン酸素原料とを溶液中で混合する場合、多価カルボン酸は材料表面に露出したリチウム含有化合物と緊密に結合する傾向があり、「定点」を形成する多価カルボン酸誘導炭素被覆層が材料表面の炭素層の空隙に充填され、第1熱処理により、多価カルボン酸被覆層が部分的に炭化して予備硬化層を形成する。該多価カルボン酸硬化層表面には、少量のリチウム含有化合物が埋め込まれている。その後の水洗工程により、多価カルボン酸硬化層の表面に残存するリチウム含有化合物が除去され、僅かな空隙が残る。高温炭化過程において、多価カルボン酸硬化層の表面の空隙が徐々に縮小して閉じ、最終的に空隙のない炭素被覆層が形成され、生成物の表面に露出したリチウム含有化合物の含有量が低減される。
【0105】
本発明の実施例は、上記の負極材料又は上記の製造方法で製造された負極材料を含むリチウムイオン電池をさらに提供する。
【0106】
以下、実施例を参照して本発明の特徴と性能をさらに詳しく説明する。
【0107】
実施例1
本実施例は負極材料の製造方法を提供し、以下の方法により製造される。
(1)炭素被覆シリコン酸素材料SiO/C 1kgを金属リチウム100gと反応させ、反応温度は500℃であり、反応時間は3hであり、プレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/Cを得て、リチウム含有量は10wt%である。
(2)Li-SiO/C 100gとクエン酸1gをアセトン200mLに分散させ、45℃で撹拌して蒸発乾固させた。
(3)蒸発乾固物を空気雰囲気中で熱硬化処理し、熱処理温度は200℃、熱処理時間は12時間であった。
(4)熱硬化物100gを水200mLに分散し、室温で3時間撹拌した後、吸引濾過し、100℃で乾燥した。
(5)乾燥後の生成物をArガスで炭化処理し、昇温速度を1℃/minに制御し、炭化温度を500℃に制御し、炭化時間を12時間に制御し、自然冷却した後、分散し、篩にかけ、最終生成物を得た。
【0108】
なお、本実施例で製造された負極材料は、図1に示すように、最裏層がプレリチウムSiOであり、破線の内側が原料炭素被覆シリコン酸素材料の原始炭素層であり、破線の外側の炭素被覆層が多価カルボン酸炭素源で形成された緻密な外層である。リチウム含有化合物は、主に原料炭素被覆シリコン酸素材料の原始炭素層の範囲内に存在し、緻密な外被覆層における含有量が少ない。
【0109】
実施例2
実施例1との相違点は以下の通りのみである。
工程(2)において、Li-SiO/C 200gとクエン酸1gをアセトン200mLに分散させ、45℃で撹拌して蒸発乾固させた。
(3)蒸発乾固物を空気雰囲気中で熱硬化処理し、熱処理温度は250℃、熱処理時間は5時間であった。
【0110】
実施例3
実施例1との相違点は以下の通りのみである。
(2)Li-SiO/C 50gとクエン酸1gをアセトン200mLに分散させ、45℃で撹拌して蒸発乾固させた。
(3)蒸発乾固物を空気雰囲気中で熱硬化処理し、熱処理温度は150℃、熱処理時間は12時間であった。
【0111】
実施例4
実施例1との相違点は、炭化条件が異なることのみである。工程(5)において、炭化温度は800℃であり、炭化時間は5時間である。
【0112】
実施例5
実施例1との相違点は主に、工程(2)におけるクエン酸を等量のエチレンジアミン四酢酸に置き換えることである。
【0113】
実施例6
実施例1との相違点は主に、工程(2)におけるクエン酸を等量の酒石酸に置き換えることである。
【0114】
実施例7
実施例1との相違点は主に、工程(1)製品のリチウム含有量が異なることである。具体的には、
(1)炭素被覆シリコン酸素材料SiO/C 1kgを金属リチウム50gと反応させ、反応温度は500℃であり、反応時間は3hであり、プレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/Cを得て、リチウム含有量は5wt%である。
【0115】
実施例8
実施例1との相違点は主に、工程(1)製品のリチウム含有量が異なることである。具体的には、
炭素被覆シリコン酸素材料SiO/C 1kgを金属リチウム120gと反応させ、反応温度は500℃であり、反応時間は3hであり、プレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/Cを得て、リチウム含有量は12wt%である。
【0116】
実施例9
実施例1との相違点は主に、工程(1)シリコン酸素材料前駆体が異なることである。具体的には、
(1)リン酸アルミニウム被覆シリコン酸素材料SiO/C-AlPO4 1kgを金属リチウム100gと反応させ、反応温度は500℃であり、反応時間は3hであり、プレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/C-AlPOを得て、リチウム含有量は10wt%である。
【0117】
実施例10
実施例1との相違点は主に、工程(1)シリコン酸素材料前駆体が異なることである。具体的には、
酸化リン/炭素複合被覆シリコン酸素材料SiO/C-P 1kgを金属リチウム100gと反応させ、反応温度は500℃であり、反応時間は3hであり、プレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/C-Pを得て、リチウム含有量は10wt%である。
【0118】
実施例11
実施例3との相違点は主に、工程(1)製品のリチウム含有量が異なることである。具体的には、
炭素被覆シリコン酸素材料SiO/C 1kgを金属リチウム50gと反応させ、反応温度は500℃であり、反応時間は3hであり、プレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/Cを得て、リチウム含有量は5wt%である。
【0119】
比較例1
(1)炭素被覆シリコン酸素材料SiO/C 1kgを金属リチウム100gと反応させ、反応温度は500℃であり、反応時間は3hであり、プレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/Cを得て、リチウム含有量は10wt%である。
なお、比較例1では、実施例1の工程(1)のみを行った。
【0120】
比較例2
比較例2は、従来の方法で製造されたプレリチウム化された炭素被覆シリコン酸素材料Li-SiO/Cであり、炭素被覆シリコン酸素材料SiO/Cを金属リチウムと反応させることにより、リチウム含有量が5wt%である。
なお、比較例2では、実施例7の工程(1)のみを行った。
【0121】
比較例3
実施例1との相違点は主に、クエン酸を等量のピッチに置き換えることである。該工程は具体的に以下の通りである。Li-SiO/C 100gとピッチ1gをトルエン200mLに分散させ、100℃で撹拌して蒸発乾固させた。
【0122】
比較例4
実施例1との相違点は、工程(3)及び(4)は行わないことのみである。
【0123】
試験例1
表1及び表2に示すように、実施例1-11及び比較例1-4で得られた負極活物質の特性パラメータ及び電気化学特性を測定した。
【0124】
試験方法:実施例1-11及び比較例1-4で得られたシリコン酸素複合負極材料を負極活物質として、活物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC):スチレンブタジエンゴム(SBR)=96.5:1.5:2の質量比で均一に混合した後、銅箔集電体上に塗布し、乾燥後に負極極片を得て後述のように使用した。まず、得られた極片に対してボタン電池測定を行い、電池をアルゴングローブボックスに組み付けて行い、金属リチウムシートを負極とし、電解液をLiPF1mol/L+エチレンカーボネート(EC)+メチルエチルカーボネート(EMC)とし、セパレータをポリエチレン/プロピレン複合微多孔膜とし、電気化学性能を電池測定機器で行い、電池容量を標準の480mAh/gに設定し、充放電電圧を0.01~1.5 Vとし、充放電速度を0.1 Cとした。
【0125】
スラリーのガス発生量測定:スラリーの作製が完了した後、スラリー20gを秤量してアルミプラスチックフィルム(aluminum plastic film)に密封し、その後室温で72時間貯蔵し、排水法によりアルミプラスチックフィルムの貯蔵前後の体積変化を測定してスラリーのガス発生量を得た。
【0126】
スラリーの安定性測定:スラリーの作製が完了した後、スラリー500gを秤量してビーカーに入れ、室温で72時間保管した後、スラリーの表面に漂う青色を示すか否かを観察した。漂う青色が観察されると、スチレンブタジエンゴムSBRがスラリー中に均一に分散できず、デラミネーションが発生し、スラリー安定性が悪くなることを示す。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
表1及び表2のデータから、本出願の負極材料はコアと被覆層を含み、コアはシリコン酸素材料を含み、負極材料にリチウム元素を含む。負極材料におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をaにし、また、X線光電子分光装置(Thermo Scientific K-Alpha)により負極材料を測定する場合に、該光電子分光装置が負極材料の表面から負極材料内部の中心領域に向かって検出する過程において検出できる情報に対応する領域におけるリチウム元素と酸素元素との質量比をbにした際に、0.4>a>bを満たす。本出願の負極材料の表層におけるリチウム元素の相対含有量が少ないことを示し、即ち、リチウム元素は主にX線光電子分光装置が負極材料粒子の内部に対して検出できない領域(即ち、第1領域)内に存在し、負極材料の加工・スラリー調製過程において、水溶媒分子が負極材料の内部に入ることを効果的に減少し、負極材料のシリコン結晶粒が侵食されることを低減し、負極材料のスラリー加工過程における安定性を向上させ、材料の総合電気化学特性を向上させる。また、表1から分かるように、実施例で製造された負極材料の最外表面は、実質的に空隙のない状態であり、ガス発生量がほとんどなく、最外層の緻密炭素層により、材料内部のシリコン結晶粒と水溶媒との接触を効果的に遮断でき、スラリーの加工安定性の問題を解決した。
【0130】
比較例1及び比較例2において、被覆層を有するシリコン酸素原料のみを用いてプレリチウム化して負極材料を調製し、その表面に含まれるリチウム元素が多く、a>bを満たさないため、負極材料の加工・スラリー調製過程において、水溶媒分子が負極材料の内部に入りやすく、シリコン結晶粒が侵食され、負極材料の安定性に影響を与え、負極材料の比容量、初回クーロン効率及びサイクル安定性能がいずれも悪い。
【0131】
比較例3において、ピッチを用いてプレリチウム化材料を被覆すると、ピッチが材料表面に露出したリチウム含有化合物と緊密に結合できないため、材料の空隙が多く、ガス発生量が大きく、且つ材料表面に含まれるリチウム元素が多く、a>bを満たさない。これにより、負極材料の加工・スラリー調製過程において、水溶媒分子が負極材料の内部に入りやすく、シリコン結晶粒が侵食され、負極材料の安定性に影響を与え、負極材料の比容量、初回クーロン効率及びサイクル安定性能がいずれも悪い。
【0132】
比較例4において、多価カルボン酸を採用して被覆した後、直接炭化し、多価カルボン酸の初期分解過程において生じた空隙がリチウム含有化合物の一部を再び露出させ、即ち、依然としてリチウム含有化合物の一部が完全に被覆されず、モザイク構造を形成する。該モザイク構造の後期の炭化過程において保留され、即ち、リチウム含有化合物の露出が依然としてあり、材料がa>bを満たさず、負極材料の安定性に影響を与え、負極材料の比容量、初回クーロン効率及びサイクル安定性能がいずれも悪い。
【0133】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な修正及び変更を行うことができる。本発明の主旨と原則を逸脱しない範囲内に行ったいかなる修正、同等置換、改善などは、本出願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0134】
図1において
100-コア
200-リチウム元素
300-被覆層
301-第1被覆層
302-第2被覆層
1-第1領域
2-第2領域
図1
図2
図3
【国際調査報告】