(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】複合基板の調製方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20250117BHJP
C30B 33/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B33/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518792
(86)(22)【出願日】2023-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 CN2023133943
(87)【国際公開番号】W WO2024125264
(87)【国際公開日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】202211587497.2
(32)【優先日】2022-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524083945
【氏名又は名称】青禾晶元(天津)半導体材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】TJ INNOVATIVE SEMICONDUCTOR SUBSTRATE TECHNOLOGY CO. ,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】母 鳳文
(72)【発明者】
【氏名】郭 超
(72)【発明者】
【氏名】譚 向虎
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077BE08
4G077CF10
4G077DA01
4G077DA18
4G077DA19
4G077DB01
4G077ED06
4G077FH08
4G077FJ03
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】本願は、複合基板の調製方法を提供する。
【手段】前記調製方法は、単結晶基板を種結晶とし、その一方の表面に結晶層を成長させ、単結晶基板と結晶層で構成される複合結晶層構造を取得するステップ(1)と、前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板を改質面に沿って断ち、複合基板を取得するステップ(2)とを含む。本願に係る調製方法は、高品質の単結晶基板に低品質の結晶層を成長させた後、レーザー冷間割れ切断処理を採用することにより、複合基板の調製効率が高く、品質が良く、適用範囲が広い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板を種結晶とし、その一方の表面に結晶層を成長させ、単結晶基板と結晶層で構成される複合結晶層構造を取得するステップ(1)と、
前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板を改質面に沿って断ち、複合基板を取得するステップ(2)と、を含む、
複合基板の調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の単結晶基板は炭化珪素基板であり、
前記単結晶基板の厚さは150~1000μmであり、
前記単結晶基板の結晶型は4Hまたは6Hを含み、
前記単結晶基板の結晶層を成長させる面はSi面またはC面を含む、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ(1)に記載の単結晶基板の{0001}結晶面と単結晶基板の表面との間の挟角は0°~8°である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ(1)に記載の結晶層は単結晶または多結晶を含み、
前記複合結晶層構造における結晶層の厚さは100~1000μmである、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(1)に記載の結晶層の成長方法は、物理気相輸送法、溶液法または高温化学気相成長法のうちのいずれか1種を含み、
前記結晶層の成長速度は300~5000μm/hである、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(2)に記載のレーザー照射の前に、複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨する、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ(2)に記載のレーザーはパルスレーザーであり、
前記パルスレーザーは、固体レーザーまたはファイバレーザーを含み、
前記パルスレーザーのパルス幅は100~300fsである、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)に記載のレーザー照射の走査経路は、平行直線、同心円、折曲線または曲線のうちのいずれか1種を含み、
前記レーザー照射の走査経路は、互いに平行な走査経路を先頭から末尾までN個ずつ1グループに分け、Mグループに分けると仮定し、第1グループ~第Mグループの1つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの2つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの3つ目の走査経路…を順次に、全ての経路が走査されるまで類推して走査するものである、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップ(2)に記載の複合基板は研削研磨された後、その中の単結晶基板の厚さが1~50μmであり、
前記単結晶基板を改質面に沿って断った後の残りの部分は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
単結晶基板を種結晶とし、その一方の表面に厚さ100~1000μmの結晶層を成長させ、単結晶基板と結晶層で構成される複合結晶層構造を取得するステップ(1)であって、
前記単結晶基板は炭化珪素基板であり、厚さが150~1000μmであり、結晶型が4Hまたは6Hを含み、前記単結晶基板の結晶層を成長させる面はSi面またはC面を含み、前記単結晶基板の{0001}結晶面と単結晶基板の表面との間の挟角は0°~8°であり、
前記結晶層は単結晶または多結晶を含み、前記結晶層の成長方法は、物理気相輸送法、溶液法または高温化学気相成長法のうちのいずれか1種を含み、前記結晶層の成長速度は300~5000μm/hであるステップ(1)と、
複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板を改質面に沿って断ち、複合基板を取得するステップ(2)であって、
前記レーザーはパルスレーザーであり、前記パルスレーザーは、固体レーザーまたはファイバレーザーを含み、前記パルスレーザーのパルス幅は100~300fsであり、
前記レーザー照射の走査経路は、平行直線、同心円、折曲線または曲線のうちのいずれか1種を含み、前記レーザー照射の走査経路は、互いに平行な走査経路を先頭から末尾までN個ずつ1グループに分け、Mグループに分けると仮定し、第1グループ~第Mグループの1つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの2つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの3つ目の走査経路…を順次に、全ての経路が走査されるまで類推して走査するものであり、
前記複合基板は研削研磨された後、その中の単結晶基板の厚さが1~50μmであり、前記単結晶基板を改質面に沿って断った後の残りの部分は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用するステップ(2)と、を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体の技術分野に関し、例えば、複合基板の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素単結晶基板で作製されたデバイスは、耐高温、耐高圧、高周波、大電力、耐放射線、高効率等の利点を有し、RF、新エネルギー自動車等の分野で重要な応用価値を持つ。
【0003】
炭化珪素単結晶基板の通常の製造方法は、物理気相輸送法で炭化珪素単結晶を成長させ、炭化珪素単結晶のインゴットを取得する工程と、インゴットの外周を加工し、必要な直径および表面品質を取得してから、インゴットをスライスに切り、スライスを必要な厚さおよび平坦度に研削、研磨し、最終的な炭化珪素単結晶基板を取得する工程とを含む。物理気相輸送法で炭化珪素単結晶を成長させる効率が低いため、単一の炭化珪素単結晶基板のコストは高い。
【0004】
炭化珪素基板のコストを低減する態様の1つは、価格の低い支持基板に1つの単結晶炭化珪素薄層を結合する複合基板構造を採用することである。該形態は、表面品質が結合の要求を満たすようにそれぞれ低品質の基板および高品質の基板の表面を加工してから結合する必要がある。高品質の表面の加工に一定の複雑度および難しさがある。また、この態様は結合界面層が形成し、結合界面層は、基板の垂直導電に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
CN114746980Aは、複合基板の製造方法を開示し、イオン注入で高品質の単結晶基板に予め埋め込まれた弱化層を形成し、CVD方法で単結晶基板の表面に低品質の結晶層または多結晶層を堆積させ、弱化層に沿って分離して複合基板を取得する。該方法には、CVDプロセスの温度が高く、予め埋め込まれた弱化層がCVDのプロセス中に早期に割れる可能性があり、CVD過程を中断せざるを得ないという問題が存在する。
【0006】
CN112701033Aは、複合基板の調製方法、複合基板および複合薄膜を開示し、なお、複合基板の調製方法は、単結晶シリコン基板を洗浄し、清浄な表面を有する単結晶シリコン基板層を取得することと、単結晶シリコン基板層の清浄な表面に多結晶シリコンを成長させ、平坦化プロセスを実行し、第1多結晶シリコン層を形成することと、レーザーを第1多結晶シリコン層の単結晶シリコン基板層に近い側面に合焦し、単結晶シリコン融合層が形成されると、レーザーの合焦を停止し、複合基板を取得することとを含み、ここで、複合基板は、下から上へ単結晶シリコン基板層、単結晶シリコン融合層および第2多結晶シリコン層を順次含む。前述した態様を採用し、レーザーの電力、焦点距離および位置を調整し、単結晶シリコン融合領域の位置、分布および大きさを正確に制御することにより、単結晶シリコン基板層および多結晶シリコン層の実際の状況に応じて目標界面における目標領域の結合力を改善し、多結晶シリコンのシリコン基板に堆積する粘着性を向上させることができる。しかし、上記調製方法の調製効率は低い。
【0007】
従って、新たな複合基板の調製方法を開発して複合基板の製造効率および品質を向上させることは、重要な意義を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下は、本稿について詳細に説明する主題に対する概要である。本概要は、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0009】
従来技術における問題に鑑み、本願は、複合基板の調製方法を提供し、高品質の単結晶基板に低品質の結晶層を成長させることにより、複合基板の製造効率を向上させることができ、更に、レーザー冷間割れ切断処理を採用し、薄くて高品質の単結晶基板を有する複合基板を取得し、前記複合基板は、品質が高く、適用範囲が広い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、
単結晶基板を種結晶とし、その一方の表面に結晶層を成長させ、単結晶基板と結晶層で構成される複合結晶層構造を取得するステップ(1)と、
前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板を改質面に沿って断ち、複合基板を取得するステップ(2)と、を含む、
複合基板の調製方法を提供する。
【0011】
本願に係る複合基板の調製方法における単結晶基板は、高品質の単結晶基板であり、その中にマイクロパイプ、転位、相転移、多結晶介在等の欠陥が少なく、該高品質の単結晶基板は、低品質の結晶層の成長の基礎として、そのSi面またはC面に1層の低品質の結晶層を成長させ、該低品質の結晶層にマイクロパイプ、転位、相転移、多結晶介在等の欠陥が多く含まれることが許容され、更に、単結晶または多結晶であってもよい。その後、単結晶基板と結晶層で構成される複合結晶層構造をレーザー照射し、レーザーは、単結晶基板の他方の表面から照射してもよいし、複合結晶層構造の低品質の結晶層の表面から照射してもよく、レーザーの合焦深度を良く制御すれば、前記複合結晶層構造の単結晶基板の内部に改質面を形成することができ、その後、改質面に沿って単結晶基板を断ち、薄くて高品質の単結晶基板および特定の厚さの低品質の結晶層を有する複合基板を取得する。本願に係る調製方法は、複合基板の製造効率および品質を向上させることができる。
【0012】
本願に係る調製方法は、高品質の単結晶基板に1層の低品質の結晶層を成長させ、結合界面層が形成しないため、高品質の単結晶基板の垂直導電に悪影響を及ぼすことがない。
【0013】
一実施形態において、ステップ(1)に記載の単結晶基板は炭化珪素基板である。
【0014】
一実施形態において、前記単結晶基板の厚さは150~1000μmであり、例えば、150μm、200μm、400μm、700μm、900μmまたは1000μm等であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0015】
一実施形態において、前記単結晶基板の結晶型は4Hまたは6Hを含む。
【0016】
一実施形態において、前記単結晶基板の結晶層を成長させる面はSi面またはC面を含む。
【0017】
一実施形態において、前記単結晶基板の直径は2~8インチであり、例えば、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチまたは8インチ等であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0018】
一実施形態において、ステップ(1)に記載の単結晶基板の{0001}結晶面と単結晶基板の表面との間の挟角は0°~8°であり、例えば、0°、1°、1.5°、2°、3°、5°または8°等であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0019】
本願で好ましいステップ(1)に記載の単結晶基板の{0001}結晶面と単結晶基板の表面との間の挟角が0°~8°であるのは、結晶をレーザーで照射する時、その中にクラックが発生するためである。結晶の{1100}、{1120}結晶面の破壊靱性は約{0001}面の1.5倍であり、従って、クラックは、{0001}結晶面へ広がる傾向にある。つまり、上記改質面は、{0001}結晶面とほぼ平行である。
【0020】
高品質の単結晶基板1の{0001}結晶面と基板表面との挟角がθ(即ち、軸からθ離れる)であると仮定し、改質面を研削研磨する時、研削研磨する基準平面と改質面との挟角をθに調整することにより、研削研磨した後の基板が依然として軸からθ0°~8°離れることができる。
【0021】
一実施形態において、ステップ(1)に記載の結晶層は単結晶または多結晶を含む。
【0022】
一実施形態において、前記複合結晶層構造における結晶層の厚さは100~1000μmであり、例えば、100μm、300μm、500μm、700μm、900μmまたは1000μm等であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0023】
一実施形態において、ステップ(1)に記載の結晶層の成長方法は、物理気相輸送法、溶液法または高温化学気相成長法のうちのいずれか1種を含む。
【0024】
一実施形態において、前記結晶層の成長速度は300~5000μm/hであり、例えば、300μm/h、400μm/h、500μm/h、600μm/h、700μm/h、800μm/h、900μm/h、1000μm/h、2000μm/h、3000μm/h、4000μm/h、4500μm/hまたは5000μm/h等であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0025】
一般的には、成長結晶層の品質は、成長速度の上昇に伴って低下する。従って、低品質の結晶層の成長は、高い成長速度を採用することができ、結晶にマイクロパイプ、転位、相転移、多結晶介在等の欠陥が多く含まれることが許容され、更に、単結晶から多結晶に遷移してもよい。本願で好ましい前記結晶層の成長速度は300~5000μm/hであり、成長速度が低いと、前記複合基板の調製時間は長くなり、調製効率は低くなり、成長速度が高いと、結晶層に不純物や空洞等が現れ、得られた複合基板の品質が悪い。
【0026】
一実施形態において、ステップ(2)に記載のレーザー照射の前に、複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨し、レーザーができるだけ多くのエネルギーを該表面に透過させ、改質面に合焦することを確保する。
【0027】
一実施形態において、ステップ(2)に記載のレーザーはパルスレーザーである。
【0028】
一実施形態において、前記パルスレーザーは、固体レーザーまたはファイバレーザーを含む。
【0029】
一実施形態において、前記パルスレーザーのパルス幅は100~300fsであり、例えば、100fs、120fs、150fs、200fs、240fsまたは300fs等であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0030】
本願の好ましい前記パルスレーザーのパルス幅は100~300fsであり、パルス幅が小さすぎると、単結晶基板を改質面に沿って良く切断することができず、パルス幅が大きすぎると、改質面にクラックが発生し、複合基板の品質に大きな影響を及ぼす。
【0031】
一実施形態において、前記レーザー照射の走査経路は、平行直線、同心円、折曲線または曲線のうちのいずれか1種を含む。
【0032】
一実施形態において、ステップ(2)に記載のレーザー照射の走査経路は、互いに平行な走査経路を先頭から末尾までN個ずつ1グループに分け、Mグループに分けると仮定し、第1グループ~第Mグループの1つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの2つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの3つ目の走査経路…を順次に、全ての経路が走査されるまで類推して走査するものである。連続した2つの経路の走査方向は同じであってもよいし、逆であってもよい。
【0033】
本願でレーザー走査経路を最適化する目的は、結晶内のレーザー照射による内部応力をできるだけ均一に分布させ、応力が集中しすぎることによる改質面の断った後の基板の反り、変形を防止または減少することである。
【0034】
一実施形態において、必要な表面品質になるように、ステップ(2)で得られた複合基板の改質面を研削研磨する。
【0035】
一実施形態において、前記単結晶基板を改質面に沿って断った後の残りの部分は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する。
【0036】
一実施形態において、ステップ(2)に記載の複合基板は研削研磨された後、その中の単結晶基板の厚さが1~50μmであり、例えば、1μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μmまたは50μm等であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0037】
本願の好ましい技術案として、前記調製方法は、
単結晶基板を種結晶とし、その一方の表面に厚さ100~1000μmの結晶層を成長させ、単結晶基板と結晶層で構成される複合結晶層構造を取得するステップ(1)であって、
前記単結晶基板は炭化珪素基板であり、厚さが150~1000μmであり、結晶型が4Hまたは6Hを含み、前記単結晶基板の結晶層を成長させる面はSi面またはC面を含み、前記単結晶基板の{0001}結晶面と単結晶基板の表面との間の挟角は0°~8°であり、
前記結晶層は単結晶または多結晶を含み、前記結晶層の成長方法は、物理気相輸送法、溶液法または高温化学気相成長法のうちのいずれか1種を含み、前記結晶層の成長速度は300~5000μm/hであるステップ(1)と、
複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板を改質面に沿って断ち、表面を研削研磨した後、単結晶基板の厚さが1~50μmの複合基板を取得するステップ(2)であって、
前記レーザーはパルスレーザーであり、前記パルスレーザーは、固体レーザーまたはファイバレーザーを含み、前記パルスレーザーのパルス幅は100~300fsであり、
前記レーザー照射の走査経路は、平行直線、同心円、折曲線または曲線のうちのいずれか1種を含み、前記レーザー照射の走査経路は、互いに平行な走査経路を先頭から末尾までN個ずつ1グループに分け、Mグループに分けると仮定し、第1グループ~第Mグループの1つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの2つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの3つ目の走査経路…を順次に、全ての経路が走査されるまで類推して走査するものであり、
前記複合基板は研削研磨された後、その中の単結晶基板の厚さが1~50μmであり、前記単結晶基板を改質面に沿って断った後の残りの部分は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用するステップ(2)と、を含む。
【発明の効果】
【0038】
関連技術と比べ、本願は、少なくとも以下の有益な効果を備える。
【0039】
(1)本願に係る複合基板の調製方法は、操作が簡単であり、高品質の単結晶基板に1層の低品質の結晶層を成長させ、結合界面層が形成せず、高品質の単結晶基板の垂直導電に悪影響を及ぼすことがない。
【0040】
(2)本願に係る複合基板の調製方法は、レーザー切断により高品質の単結晶基板を除去し、薄くて高品質の単結晶基板を有する複合基板を調製することができ、調製効率が高く、複合基板の品質が高い。
【0041】
図面および詳細な説明を閲読して理解してから、他の態様も理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図面は、本稿の技術案に対する更なる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本願の実施例と共に本稿の技術案を解釈するために用いられ、本稿の技術案を限定するものではない。
【0043】
【
図1】実施例1に係る複合基板の調製方法の模式図である。
【
図3】実施例1におけるレーザー照射の走査経路の模式図である。
【
図4】実施例1における誘導加熱物理気相輸送法で結晶を成長させる装置の模式図である。
【
図5】実施例2に係る複合基板の調製方法の模式図である。
【
図6】実施例2におけるレーザー照射の走査経路の模式図である。
【
図7】実施例2における抵抗加熱物理気相輸送法で結晶を成長させる装置の模式図である。
【
図8】実施例3におけるレーザー照射の走査経路の模式図である。
【
図9】実施例3における誘導加熱溶液法で結晶を成長させる装置の模式図である。
【
図10】実施例4における抵抗加熱溶液法で結晶を成長させる装置の模式図である。
【
図11】実施例5における誘導加熱高温化学気相成長法で結晶を成長させる装置の模式図である。
【
図12】実施例6における抵抗加熱高温化学気相成長法で結晶を成長させる装置の模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1…単結晶基板;101…複合基板に残った単結晶基板;102…改質面に沿って断った後の残りの部分;2…結晶層;20…炭化珪素粉材;21…ルツボ蓋;3…黒鉛受け台;4…種結晶ロッド;40…レーザー;5…黒鉛ルツボ;6…ルツボ受け台;7…断熱箱;8…誘導加熱コイル;9…チャンバ;10…反応室;11…抵抗ヒーター。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面および具体的な実施形態を参照しながら本願の技術案について更に説明する。
【0046】
以下、本願について更に詳細に説明する。下記実施例は本願の簡単な例に過ぎず、本願の特許請求の範囲を代表又は制限するものではなく、本願の保護範囲は特許請求の範囲を基準とする。
【実施例1】
【0047】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法の模式図は
図1に示すように、以下のステップを含んだ。
【0048】
(1)単結晶基板1を種結晶とし、その一方の表面に厚さ350μmの結晶層2を成長させ、単結晶基板1と結晶層2で構成される複合結晶層構造を取得した。
【0049】
前記単結晶基板1は炭化珪素基板であり、厚さが500μmであり、結晶型が4Hであり、前記単結晶基板1の結晶層2を成長させる面はSi面であり、前記単結晶基板1の{0001}結晶面と単結晶基板1の表面との間の挟角は4°であり、即ち、軸から4°離れた。
【0050】
前記結晶層2は単結晶であり、前記結晶層2の成長方法は物理気相輸送法であり、前記結晶層2の成長速度は3000μm/hであった。
【0051】
(2)複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造における単結晶基板1の他方の表面にレーザー40を照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板1の内部に改質面を形成し、改質面の模式図は
図2に示すとおりであり、外力を加え、単結晶基板1を改質面に沿って断ち、改質面を研削研磨した後、複合基板に残った単結晶基板101の厚さが2μmの複合基板を取得し、改質面を研削研磨する時、研削研磨する基準平面と改質面との挟角を4°に調整することにより、研削研磨した後の基板が依然として軸から4°離れる。
【0052】
前記レーザー40はパルスレーザーであり、前記パルスレーザーは固体レーザーであり、前記パルスレーザーのパルス幅は200fsであり、前記レーザーの照射の走査経路は、互いに平行な走査経路を先頭から末尾までN個ずつ1グループに分け、Mグループに分けると仮定し、第1グループ~第Mグループの1つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの2つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの3つ目の走査経路…を順次に、全ての経路が走査されるまで類推して走査するものであり、具体的には、その走査順序は、1-1、2-1、3-1、4-1、1-2、2-2、3-2、4-2、1-3、2-3、3-3、…であり、連続した2つの走査経路の走査方向は逆であり、模式図は
図3に示すとおりであった。
【0053】
前記単結晶基板1を改質面に沿って断った後の残りの部分102は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する。
【0054】
本実施例は、誘導加熱物理気相輸送法で結晶を成長させる装置内で行い、前記装置の構造模式図は
図4に示すように、黒鉛ルツボ5、単結晶基板1、ルツボ蓋21、ルツボ受け台6、断熱箱7、誘導加熱コイル8およびチャンバ9を備え、前記チャンバ9は、少なくとも1つの抽気口および少なくとも1つの給気口を有する。前記黒鉛ルツボ5内に炭化珪素粉材20を入れた。
【0055】
ルツボ蓋21は単結晶基板1に接続され、単結晶基板1の一方の表面は炭化珪素粉材20に対向した。ルツボ受け台6は、黒鉛ルツボ5を受け止めており、黒鉛ルツボ5の回転または垂直方向に移動を駆動した。黒鉛ルツボ5の外側が断熱箱7に囲まれ、断熱箱7がチャンバ9内にあり、チャンバ9の外周に誘導加熱コイル8が設けられた。誘導加熱コイル8は螺旋状で、電流周波数が8kHzであり、コイルは中空で、通水冷却が可能であった。通電された誘導加熱コイル8は、ルツボ内の炭化珪素粉材20を加熱することで、炭化珪素粉材20を昇華させた。ルツボ受け台6はチャンバ9の壁を貫通した。
【実施例2】
【0056】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法の模式図は、
図5に示すように、以下のステップを含んだ。
【0057】
(1)単結晶基板1を種結晶とし、その一方の表面に厚さ200μmの結晶層2を成長させ、単結晶基板1と結晶層2で構成される複合結晶層構造を取得した。
【0058】
前記単結晶基板1は炭化珪素基板であり、厚さが200μmであり、結晶型が6Hであり、前記単結晶基板1の結晶層2を成長させる面はC面であり、前記単結晶基板1の{0001}結晶面と単結晶基板1の表面との間の挟角は8°であり、即ち、軸から8°離れた。
【0059】
前記結晶層2は多結晶であり、前記結晶層2の成長方法は物理気相輸送法であり、前記結晶層2の成長速度は300μm/hであった。
【0060】
(2)複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造における結晶層2の表面にレーザー40を照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板1の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板1を改質面に沿って断ち、改質面を研削研磨した後、複合基板に残った単結晶基板101の厚さが10μmの複合基板を取得し、改質面を研削研磨する時、研削研磨する基準平面と改質面との挟角を8°に調整することにより、研削研磨した後の基板が依然として軸から8°離れる。
【0061】
前記レーザー40はパルスレーザーであり、前記パルスレーザーはファイバレーザーであり、前記パルスレーザーのパルス幅は100fsであり、前記レーザーの照射の走査経路は、一連の互いに平行な直線であり、隣り合う経路間のピッチは一定であり、各経路の走査方向は逆であり、その走査経路は、上から下へ各経路を順次走査し、模式図は
図6に示すとおりであった。
【0062】
前記単結晶基板1を改質面に沿って断った後の残りの部分102は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する。
【0063】
本実施例は、抵抗加熱物理気相輸送法で結晶を成長させる装置内で行い、前記装置の構造模式図は
図7に示すように、黒鉛ルツボ5、単結晶基板1、ルツボ蓋21、ルツボ受け台6、断熱箱7、抵抗ヒーター11およびチャンバ9を備え、前記チャンバ9は、少なくとも1つの抽気口および少なくとも1つの給気口を有する。前記黒鉛ルツボ5内に炭化珪素粉材20を入れた。
【0064】
ルツボ蓋21は単結晶基板1に接続され、単結晶基板1の一方の表面は炭化珪素粉材20に対向した。ルツボ受け台6は、黒鉛ルツボ5を受け止めており、黒鉛ルツボ5の回転または垂直方向に移動を駆動した。黒鉛ルツボ5の外側が抵抗ヒーター11に囲まれ、断熱箱7によって囲まれた。抵抗ヒーター11は黒鉛ヒーターであり、通電された黒鉛ヒーターは、黒鉛ルツボ5内の炭化珪素粉材20を加熱することで、炭化珪素粉材20を昇華させた。ルツボ受け台6はチャンバ9の壁を貫通した。
【実施例3】
【0065】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含んだ。
【0066】
(1)単結晶基板1を種結晶とし、その一方の表面に厚さ100μmの結晶層2を成長させ、単結晶基板1と結晶層2で構成される複合結晶層構造を取得した。
【0067】
前記単結晶基板1は炭化珪素基板であり、厚さが1000μmであり、結晶型が4Hであり、前記単結晶基板1の結晶層2を成長させる面はC面であり、前記単結晶基板1の{0001}結晶面と単結晶基板1の表面との間の挟角は0°であり、即ち、軸から0°離れた。
【0068】
前記結晶層2は多結晶であり、前記結晶層2の成長方法は溶液法であり、前記結晶層2の成長速度は5000μm/hであった。
【0069】
(2)複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板1の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板1を改質面に沿って断ち、改質面を研削研磨した後、複合基板に残った単結晶基板101の厚さが46μmの複合基板を取得し、改質面を研削研磨する時、研削研磨する基準平面と改質面との挟角を0°に調整することにより、研削研磨した後の基板が依然として軸から0°離れる。
【0070】
前記レーザーはパルスレーザーであり、前記パルスレーザーは固体レーザーであり、前記パルスレーザーのパルス幅は300fsであり、前記レーザー照射の走査経路は、一連の互いに平行な直線であり、隣り合う経路間のピッチは一定であり、各経路の走査方向は同じであり、その走査経路は、上から下へ各経路を順次走査し、模式図は
図8に示すとおりであった。
【0071】
前記単結晶基板1を改質面に沿って断った後の残りの部分102は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する。
【0072】
本実施例は、誘導加熱溶液法で結晶を成長させる装置内で行い、前記装置の構造模式図は
図9に示すように、黒鉛ルツボ5、種結晶ロッド4、黒鉛受け台3、単結晶基板1、ルツボ受け台6、断熱箱7、誘導加熱コイル8、チャンバ9を備えた。チャンバ9は、少なくとも1つの抽気口および少なくとも1つの給気口を有する。黒鉛ルツボ5内に助溶剤溶液が収容された。
【0073】
種結晶ロッド4は黒鉛受け台3に接続され、黒鉛受け台3の底部は複合種結晶に接続可能であり、種結晶ロッド4は回転可能かつ鉛直方向に移動可能であった。ルツボ受け台6は、黒鉛ルツボ5を受け止めており、黒鉛ルツボ5の回転および垂直方向に移動を駆動できる。黒鉛ルツボ5の外側が断熱箱7に囲まれ、断熱箱7の外周に誘導加熱コイル8が設けられた。誘導加熱コイル8は螺旋状で、電流周波数が3kHzであり、コイルは中空で、通水冷却が可能であった。通電された誘導加熱コイル8は、黒鉛ルツボ5内の助溶剤を加熱して溶融させた。チャンバ9は結晶成長に雰囲気環境を提供した。種結晶ロッド4、ルツボ受け台6はチャンバ9の壁を貫通した。
【実施例4】
【0074】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含んだ。
【0075】
(1)単結晶基板1を種結晶とし、その一方の表面に厚さ100μmの結晶層2を成長させ、単結晶基板1と結晶層2で構成される複合結晶層構造を取得した。
【0076】
前記単結晶基板1は炭化珪素基板であり、厚さが150μmであり、結晶型が4Hであり、前記単結晶基板1の結晶層2を成長させる面はSi面であり、前記単結晶基板1の{0001}結晶面と単結晶基板1の表面との間の挟角は3°であり、即ち、軸から3°離れた。
【0077】
前記結晶層2は単結晶であり、前記結晶層2の成長方法は溶液法であり、前記結晶層2の成長速度は2400μm/hであった。
【0078】
(2)複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板1の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板1を改質面に沿って断ち、改質面を研削研磨した後、複合基板に残った単結晶基板101の厚さが1μmの複合基板を取得し、改質面を研削研磨する時、研削研磨する基準平面と改質面との挟角を3°に調整することにより、研削研磨した後の基板が依然として軸から3°離れる。
【0079】
前記レーザーはパルスレーザーであり、前記パルスレーザーはファイバレーザーであり、前記パルスレーザーのパルス幅は160fsであり、前記レーザー照射の走査経路は、一連の互いに平行な直線であり、隣り合う経路間のピッチは一定であり、各経路の走査方向は同じであり、その走査経路は、上から下へ各経路を順次走査した。
【0080】
前記単結晶基板1を改質面に沿って断った後の残りの部分102は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する。
【0081】
本実施例は、抵抗加熱溶液法で結晶を成長させる装置内で行い、前記装置の構造模式図は
図10に示すように、黒鉛ルツボ5、種結晶ロッド4、黒鉛受け台3、単結晶基板1、ルツボ受け台6、断熱箱7、抵抗ヒーター11、チャンバ9を備えた。チャンバ9は、少なくとも1つの抽気口および少なくとも1つの給気口を有する。黒鉛ルツボ5内に助溶剤溶液が収容された。
【0082】
種結晶ロッド4は黒鉛受け台3に接続され、黒鉛受け台3の底部は複合種結晶に接続可能であり、種結晶ロッド4は回転可能かつ鉛直方向に移動可能であった。ルツボ受け台6は、黒鉛ルツボ5を受け止めており、黒鉛ルツボ5の回転および垂直方向に移動を駆動できる。黒鉛ルツボ5の外側が抵抗ヒーター11に囲まれ、断熱箱7によって囲まれた。抵抗ヒーター11は黒鉛ヒーターであり、通電された黒鉛ヒーターは、黒鉛ルツボ5内の助溶剤を加熱して溶融させた。チャンバ9は結晶成長に雰囲気環境を提供した。種結晶ロッド4、ルツボ受け台6はチャンバ9の壁を貫通した。
【実施例5】
【0083】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含んだ。
【0084】
(1)単結晶基板1を種結晶とし、その一方の表面に厚さ750μmの結晶層2を成長させ、単結晶基板1と結晶層2で構成される複合結晶層構造を取得した。
【0085】
前記単結晶基板1は炭化珪素基板であり、厚さが630μmであり、結晶型が6Hであり、前記単結晶基板1の結晶層2を成長させる面はSi面であり、前記単結晶基板1の{0001}結晶面と単結晶基板1の表面との間の挟角は5°であり、即ち、軸から5°離れた。
【0086】
前記結晶層2は多結晶であり、前記結晶層2の成長方法は高温化学気相成長法であり、前記結晶層2の成長速度は500μm/hであった。
【0087】
(2)複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板1の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板1を改質面に沿って断ち、改質面を研削研磨した後、複合基板に残った単結晶基板101の厚さが24μmの複合基板を取得し、改質面を研削研磨する時、研削研磨する基準平面と改質面との挟角を5°に調整することにより、研削研磨した後の基板が依然として軸から5°離れる。
【0088】
前記レーザーはパルスレーザーであり、前記パルスレーザーは固体レーザーであり、前記パルスレーザーのパルス幅は160fsであり、前記レーザー照射の走査経路は、一連の互いに平行な直線であり、隣り合う経路間のピッチは一定であり、各経路の走査方向は逆であり、その走査経路は、上から下へ各経路を順次走査した。
【0089】
前記単結晶基板1を改質面に沿って断った後の残りの部分102は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する。
【0090】
本実施例は、誘導加熱高温化学気相成長法で結晶を成長させる装置内で行い、前記装置の構造模式図は
図11に示すように、種結晶ロッド4、黒鉛受け台3、単結晶基板1、反応室10、断熱箱7、誘導加熱コイル8、チャンバ9を備えた。チャンバ9は、少なくとも1つの抽気口および少なくとも1つの給気口を有する。
【0091】
種結晶ロッド4は黒鉛受け台3に接続され、黒鉛受け台3の底部は複合種結晶に接続可能であり、種結晶ロッド4は回転可能かつ鉛直方向に移動可能であった。反応室10は材料が黒鉛であり、外側が断熱箱7に囲まれ、断熱箱7がチャンバ9内にあり、チャンバ9の外周に誘導加熱コイル8が設けられた。誘導加熱コイル8は螺旋状で、電流周波数が20kHzであり、コイルは中空で、通水冷却が可能であった。種結晶ロッド4はチャンバ9の壁を貫通した。通電された誘導加熱コイル8は、反応室10を結晶成長の温度に加熱した。
【0092】
チャンバ9の給気口から反応ガスを充填し、反応ガスは、ケイ素源ガスおよび炭素源ガスを含み、ケイ素源ガスはシランであり、炭素源ガスはプロパンであった。
【実施例6】
【0093】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含んだ。
【0094】
(1)単結晶基板1を種結晶とし、その一方の表面に厚さ330μmの結晶層2を成長させ、単結晶基板1と結晶層2で構成される複合結晶層構造を取得した。
【0095】
前記単結晶基板1は炭化珪素基板であり、厚さが670μmであり、結晶型が4Hであり、前記単結晶基板1の結晶層2を成長させる面はSi面であり、前記単結晶基板1の{0001}結晶面と単結晶基板1の表面との間の挟角は7°であり、即ち、軸から7°離れた。
【0096】
前記結晶層2は単結晶であり、前記結晶層2の成長方法は高温化学気相成長法であり、前記結晶層2の成長速度は800μm/hであった。
【0097】
(2)複合結晶層構造中のレーザー照射しようとする表面を研削研磨した後、前記複合結晶層構造をレーザー照射し、前記複合結晶層構造の単結晶基板1の内部に改質面を形成し、外力を加え、単結晶基板1を改質面に沿って断ち、改質面を研削研磨した後、複合基板に残った単結晶基板101の厚さが41μmの複合基板を取得し、改質面を研削研磨する時、研削研磨する基準平面と改質面との挟角を7°に調整することにより、研削研磨した後の基板が依然として軸から7°離れる。
【0098】
前記レーザーはパルスレーザーであり、前記パルスレーザーは固体レーザーであり、前記パルスレーザーのパルス幅は140fsであり、前記レーザー照射の走査経路は、互いに平行な走査経路を先頭から末尾までN個ずつ1グループに分け、Mグループに分けると仮定し、第1グループ~第Mグループの1つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの2つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの3つ目の走査経路…を順次に、全ての経路が走査されるまで類推して走査するものであり、具体的には、その走査順序は、1-1、2-1、3-1、4-1、1-2、2-2、3-2、4-2、1-3、2-3、3-3、…であり、連続した2つの走査経路の走査方向は逆であった。
【0099】
前記単結晶基板1を改質面に沿って断った後の残りの部分102は、表面を研削研磨した後、種結晶として再利用する。
【0100】
本実施例は、抵抗加熱高温化学気相成長法で結晶を成長させる装置内で行い、前記装置の構造模式図は
図12に示すように、種結晶ロッド4、黒鉛受け台3、単結晶基板1、反応室10、断熱箱7、抵抗ヒーター11、チャンバ9を備えた。チャンバ9は、少なくとも1つの抽気口および少なくとも1つの給気口を有する。
【0101】
種結晶ロッド4は黒鉛受け台3に接続され、黒鉛受け台3の底部は複合種結晶に接続可能であり、種結晶ロッド4は回転可能かつ鉛直方向に移動可能であった。反応室10は材料が黒鉛であり、外側に抵抗ヒーター11が設けられ、抵抗ヒーター11が断熱箱7内にあり、断熱箱7がチャンバ9内にあった。種結晶ロッド4はチャンバ9の壁を貫通した。抵抗ヒーター11は黒鉛ヒーターであり、通電された黒鉛ヒーターは、反応室10を結晶成長の温度に加熱した。
【0102】
チャンバ9の給気口から反応ガスを充填し、反応ガスはケイ素源ガスおよび炭素源ガスを含み、ケイ素源ガスはシランであり、炭素源ガスはプロパンであった。
【実施例7】
【0103】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、結晶層の成長速度3000μm/hを150μm/hに置き換えたほか、残りはいずれも実施例1と同じであった。
【実施例8】
【0104】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、結晶層の成長速度3000μm/hを5500μm/hに置き換えたほか、残りはいずれも実施例1と同じであった。
【実施例9】
【0105】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、パルスレーザーのパルス幅200fsを50fsに置き換えたほか、残りはいずれも実施例1と同じであった。
【0106】
本実施例は、パルスレーザーのパルス幅が50fsのみであるため、単結晶基板を改質面に沿って断つことができず、従って、複合基板を取得することができなかった。
【実施例10】
【0107】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、パルスレーザーのパルス幅200fsを350fsに置き換えたほか、残りはいずれも実施例1と同じであった。
【実施例11】
【0108】
本実施例は、複合基板の調製方法を提供し、前記調製方法は、レーザー照射の走査経路が一連の互いに平行な直線で、隣り合う経路間のピッチが一定で、各経路の走査方向が同じであったほか、残りはいずれも実施例1と同じであった。
【比較例1】
【0109】
本比較例は、複合基板の調製方法を提供し、以下のステップを含んだ。
【0110】
物理気相輸送法を用いて単結晶基板および結晶層をそれぞれ製造し、結晶型はいずれも4Hであり、厚さはいずれも350μmであり、単結晶基板の{0001}結晶面と単結晶基板の表面との間の挟角は4°であった。
単結晶基板の1つの表面に対してイオン注入またはレーザー照射を行い、該表面から約2μmの深さに予め埋め込まれた弱化層を形成した。
上記単結晶基板のイオン注入またはレーザー照射を行った面と結晶層の1つの表面とを結合し、単結晶基板、結晶層、両者間の結合界面層を含む複合基板を取得した。
上記複合基板に対して熱処理を行うことで、単結晶基板を予め埋め込まれた弱化層に沿って断ち、得られた複合基板の単結晶基板の厚さは2μmであった。
【0111】
以上の実施例および比較例で得られた複合基板の抵抗値を測定し、測定方法は、以下のとおりである。複合炭化珪素基板の結晶層の表面に裏面電極を形成し、単結晶基板の表面に直径0.3mmの円形の表面電極を形成する。表面電極と裏面電極との間に電圧Vを印加し、対応する電流Iを記録し、V-I曲線を取得し、抵抗値を計算する。
【0112】
(1)実施例1と比較例1とをまとめて見られるように、実施例1の抵抗値は3.7Ωであり、比較例1は、結合界面層の存在により、複合基板の垂直導電に悪影響を及ぼし、抵抗値はより高く、4.0Ωに達した。本願に係る複合基板の調製方法で得られた複合基板は品質が高く、垂直導電性能がより良い。
【0113】
(2)実施例1と実施例7~8とをまとめて見られるように、実施例7は、結晶層の成長速度が150μm/hのみであったため、調製された複合基板は品質が高く、抵抗値が3.6Ωであったが、前記複合基板の調製時間が長く、調製効率が低く、実施例8は、結晶層の成長速度が高すぎるため、結晶層に不純物や空洞等が現れ、得られた複合基板は品質が悪く、抵抗値が3.9Ωであった。
【0114】
(3)実施例1と実施例9~10とをまとめて見られるように、実施例9は、パルスレーザーのパルス幅が50fsのみであったため、単結晶基板を改質面に沿って断つことができず、従って、複合基板を取得することができず、実施例10は、パルスレーザーのパルス幅が350fsであったため、改質面にクラックが発生し、複合基板の品質に大きな影響を及ぼす。
【0115】
(4)実施例1と実施例11とをまとめて見られるように、実施例1における前記レーザー照射の走査経路は、互いに平行な走査経路を先頭から末尾までN個ずつ1グループに分け、Mグループに分けると仮定し、第1グループ~第Mグループの1つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの2つ目の走査経路、第1グループ~第Mグループの3つ目の走査経路…を順次に、全ての経路が走査されるまで類推して走査するものであり、具体的には、その走査順序は、1-1、2-1、3-1、4-1、1-2、2-2、3-2、4-2、1-3、2-3、3-3、…であり、連続した2つの走査経路の走査方向は逆であり、切断後に複合結晶層構造の単結晶基板の内部に形成された改質面は反り変形が発生せず、または変形量が小さく、反り量WARPは16μmのみであり、一方、実施例11におけるレーザー照射の走査経路は、一連の互いに平行な直線であり、隣り合う経路間のピッチは一定であり、各経路の走査方向は同じであり、切断後に前記複合結晶層構造の単結晶基板の内部に形成された改質面に反り変形が発生し、反り量WARPは29μmであった。以上をまとめ、本願に係る複合基板の調製方法は、操作が簡単であり、高品質の単結晶基板に1層の低品質の結晶層を成長させ、結合界面層を形成せず、その後、レーザー切断により高品質の単結晶基板を除去し、薄くて高品質の単結晶基板を有する複合基板を調製することができ、調製効率が高く、複合基板の品質が高い。
【0116】
以上に記載されたものは、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者として分かるように、任意の当業者が本願に掲げられた技術的範囲内に容易に想到可能な変更または置換は、全て本願の保護範囲および開示範囲内に含まれることを出願人より声明する。
【国際調査報告】