(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】液体ターゲットシステム
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G21G4/08 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522119
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022088084
(87)【国際公開番号】W WO2023151859
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518251653
【氏名又は名称】エスシーケー.シーイーエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジャケ,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】マーテンス,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】レイセン,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ハイニッツ,ステファン
(57)【要約】
放射性同位体の生産のための液体ターゲットシステム(1)であって、液体ターゲットシステム(1)が、放射性同位体が照射を使用して生産されることができる、水又は5重水である液体と、水に対して正のエンタルピーを有する塩である塩基性化学物質と、を収容するための沸騰室(2)を備え、沸騰室(2)が、液体及び塩基性化学物質が照射されることを可能にし、液体を蒸気に蒸発させるための照射窓を備え、液体ターゲットシステムが、液体ターゲット(8)の過熱が蒸発プロセスの10熱力学によって制御されるように構成されている、液体ターゲットシステム。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体の生産のための液体ターゲットシステム(1)であって、前記液体ターゲットシステム(1)が、
-前記放射性同位体が照射を使用して生産されることができる、液体及び塩基性化学物質を収容するための沸騰室(2)であって、前記沸騰室(2)が、前記液体及び塩基性化学物質が照射されることを可能にし、前記液体を蒸気に蒸発させるための照射窓を備える、前記沸騰室(2)を、備え、
前記液体ターゲットシステムが、前記液体ターゲット(8)の過熱が蒸発プロセスの熱力学によって制御されるように構成されており、
前記液体が、水又は重水であり、前記塩基性化学物質が、水に対して正のエンタルピーを有する塩であることを特徴とする、液体ターゲットシステム(1)。
【請求項2】
蒸発した水が、スチームとして、又は液体として貯蔵される、請求項1に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項3】
前記液体ターゲットシステム(1)が、
-前記沸騰室(2)の上方に配置された凝縮領域(3)であって、前記凝縮領域(3)が、前記蒸気を液体凝縮物に凝縮させるための壁を有する、凝縮領域(3)を更に備え、
前記液体凝縮物が、系統的に戻され得るか、又は前記沸騰室(2)に提供され得る、先行請求項のいずれか一項に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項4】
前記液体ターゲットシステム(1)が、
-前記液体凝縮物を収集するための少なくとも1つの凝縮物収集領域(4)であって、前記少なくとも1つの凝縮物収集領域(4)が、前記沸騰室(2)の外側に配置されている、少なくとも1つの凝縮物収集領域を更に備える、請求項3に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの凝縮物収集領域(4)及び前記沸騰室(2)が、連通容器として機能するように相互接続されている、請求項4に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの凝縮物収集領域(4)が、前記蒸気を凝縮するための前記壁に配置されており、前記凝縮物を前記沸騰室に系統的に戻すための滴下機構を備えている、請求項4に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項7】
前記沸騰室(2)、前記凝縮領域(3)及び前記少なくとも1つの凝縮物収集領域(4)が、円筒形の設計を有するシステムを形成し、かつ/又は
前記液体ターゲットシステム(1)が、前記凝縮領域(3)の温度を断熱若しくは制御するための、調整流体浴及び/若しくは調整流体循環二次システム(32)を更に備える、請求項3~6のいずれか一項に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項8】
前記沸騰室(2)、前記凝縮領域(3)及び前記少なくとも1つの凝縮物収集領域(4)の外壁が、冷却剤流体浴及び/又は冷却剤流体循環二次システム(32)によって少なくとも部分的に囲まれている、請求項7に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項9】
前記システムが、前記液体及び塩基性化学物質を照射するように構成された、照射ビーム発生器(25)を更に備え、かつ/又は
前記システムが、前記液体の気泡サイズ及び沸騰温度を制御するために前記沸騰室を加圧するための加圧ユニットを更に備える、先行請求項のいずれか一項に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項10】
前記システム(1)が、前記沸騰室(2)内の圧力を測定するための圧力センサを更に備える、請求項9に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項11】
前記塩基性化学物質が、Ra(NO
3)
2、RaCl
2、及びRaBr
2のいずれか又は組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項12】
前記液体ターゲットシステム(1)が、Sc-47、Cu-67、Cs-131、Tb-155、又はAc-225、好ましくは、Ac-225を生産するように適合している、先行請求項のいずれか一項に記載の液体ターゲットシステム(1)。
【請求項13】
放射性同位体を生産するための方法であって、
前記放射性同位体が照射を使用して生産されることができる、液体及び塩基性化学物質を含む液体ターゲット(8)を照射し、前記液体を蒸気に蒸発させることを含み、
蒸発プロセスの熱力学が、前記液体ターゲット(8)の過熱を制御するように使用され、
前記液体が、水又は重水であり、前記塩基性化学物質が、水に対して正のエンタルピーを有する塩であることを特徴とする、方法。
【請求項14】
放射性同位体を生産するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体ターゲットシステム(1)の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位体の分野に関する。より具体的には、本発明は、放射性同位体の生産のための液体ターゲットシステム、並びにその使用及び対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体の生産のために、一般に、固体ターゲットは、最先端のシステムにおけるそれぞれの高収率のために使用されており、固体ターゲットについては、放射性同位体の元である、親核種の大きな密度が容易に達成され得る。実際には、液体ターゲットを使用することの欠点は、室温での(典型的には、液体溶媒として使用される)ほとんどの親核種化合物の水中で限定された溶解度である。例えば、放射性同位体Ac-225に崩壊し得る放射性同位体Ra-225を生産するための親核種を提供するための塩基性化学物質として使用され得るRa-226の塩は、水中で限定された溶解度を有する。例示として、硝酸ラジウム塩Ra(NO3)2は、20℃でH2O 100g当たり13.9gの溶解度を有する。
【0003】
しかしながら、固体ターゲットではなく液体ターゲットを使用する1つの利点は、放射性同位体をターゲットから分離するための化学プロセスにおいて、必要となる液体から固体への変換及び固体から液体への変換がより少ない(又は全くない)ことである。このような化学プロセスのステップは、典型的には、放射性同位体及び放射性廃棄物の生成の(制御されていない)損失に大きなリスクを有する。そのような変換は、液体ターゲットには必要なく、そのようなターゲットの大きな利点である。
【0004】
更に、液体ターゲット中の低い親核種濃度の潜在的な欠点を、正しく捉える必要がある。一例として、光核反応を介したRa-226からのRa-225の生産について考察する。時間の関数でのRa-225の生産は、電子ビーム電流(mA)、電子エネルギー(MeV)、コンバータ設計及びターゲット設計に依存し得る。ここで、コンバータは、高エネルギー電子を阻止し、光核反応に必要な高エネルギー制動放射光子を生産するように設計されている。生産される高エネルギー光子が多く、かつ光子ビームの真正面のRa-226が多いほど、形成されるRa-225も多くなる。しかしながら、約50%の電子から制動放射光子への変換を仮定すると、電子のエネルギーの約半分が、依然としてコンバータ内に堆積され得る。エネルギー堆積に関連付けられた小さいコンバータ体積内の非常に高いエネルギー堆積は、生産能力を容易に制限することができ、したがって、高エネルギー制動放射光子の収率を低下させる。
【0005】
これに対処する1つの方法は、冷却手段によって分離されたコンバータ材料の複数の切片を有することであり、加えて、コンバータのより大きな表面積にわたって電子ビームをラスタ化することである。しかしながら、表面積が大きいほど、生産速度に悪影響を及ぼすことは避けられない。より大きなコンバータ表面積の結果は、Raは、高エネルギーガンマが存在する全表面積にわたって分割されるべきであるが、最高の収率は、Raをできるだけコンバータの近くに配置することによって得られるということである。このことは、コンバータの電流密度が制限因子(例えば、0.125~0.25mA/cm2)であり、表面積対体積率を増加させる必要がある場合、達成できる高密度(例えば、3~5g/cc)を最適に活用することができないため、任意の種類の固体ターゲットの欠点とみなすことができる。
【0006】
US2014/0362964A1は、放射性同位体を生成し、原料液の一部分を蒸気に変換するための粒子ビームを原料液に照射するように構成された、同位体生産システムを記載する。
【0007】
したがって、固体ターゲットに関連付けられたいくつかの欠点がある。それにもかかわらず、液体ターゲットの効率及び収率は、一般に、非常に低いため、最新技術においては、固体ターゲットに焦点を当てたままである。したがって、液体ターゲットシステムの効率及び収率を改善し得るデバイス及び方法が、依然として当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、良好な液体ターゲットシステムを提供することである。本発明の更なる目的は、放射性同位体を生産するための良好な方法を提供することである。
【0009】
上記の目的は、本発明に従う方法及び装置によって達成される。
【0010】
本発明の実施形態の利点は、放射性同位体の収率及び生産が、固体ターゲットの収率及び生産に匹敵し得ることである。本発明の実施形態の更なる利点は、一定量の放射性同位体を得るために必要な親核種材料の量が限定されることである。本発明の実施形態のまた更なる利点は、放射性廃棄物の生成の少ない放射性同位体の生産を可能にする、液体ターゲットが提供されることが、である。
【0011】
本発明の実施形態の利点は、液体ターゲットシステムが連続的かつ効率的に冷却され得、それによって、液体ターゲットの過熱を防止することである。本発明の実施形態の更なる利点は、液体ターゲットシステムが、定常状態において、連続的かつ信頼性の高いやり方で熱を排出することを可能にすることである。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、液体ターゲットが大きな総体積を有し得るため、例えば、水素形成又は非凝縮水による損失から予想される悪影響が限定され得ることである。本発明の実施形態の更なる利点は、液体ターゲットシステムが安全に作動し得ることである。本発明の実施形態のまた更なる利点は、液体ターゲットの作動が、例えば、固体ターゲットにとって困難なことが多い、温度及び/又は圧力を正確に追跡することによって、監視され得ることである。
【0013】
第1の態様では、本発明は、放射性同位体の生産のための液体ターゲットシステムに関する。液体ターゲットシステムは、放射性同位体が照射を使用して生産されることができる、液体及び塩基性化学物質を収容するための沸騰室を備える。沸騰室は、液体及び塩基性化学物質が照射されることを可能にし、液体を蒸気に蒸発させるための照射窓を備える。液体ターゲットシステムが、液体ターゲットの過熱が蒸発プロセスの熱力学によって制御されるように構成されている。
【0014】
本発明の実施形態において照射窓に言及する場合、放射性同位体を生産することができる塩基性化学物質を照射するために必要な放射線が沸騰室に入ることを可能にする、沸騰室の壁の領域に言及する。使用される照射窓のタイプは、照射のタイプに依存し得る。例えば、ガンマ線を使用する場合、壁は、例えば、どのような放射線も透過し得る。
【0015】
実施形態では、液体ターゲットの過熱が蒸発プロセスの熱力学によって制御されるように構成されている液体ターゲットシステムは、液体ターゲットシステムが、該過熱を防止するために、好ましくは、液体ターゲットの温度を制御するために、液体の蒸発を使用するように構成されることを含み得る。液体ターゲットの過熱は、液体ターゲット内の実質的に全ての液体の蒸発をもたらす可能性があり、その結果、塩基性化学物質を沸騰させて乾燥させる。
【0016】
本発明の実施形態の利点は、液体ターゲットの過熱が防止され得るため、液体ターゲットシステムは、化学物質材料からの非凝縮性気体の放出を回避することができ、化学物質材料の焼結を回避することを可能にし、かつ/又は不溶性化学物質材料の形成を回避することを可能にすることである。該過熱は、液体ターゲットに堆積された大量の照射エネルギーの結果として生じ得る。特に、いわゆる対生成反応は、液体ターゲットの加熱に寄与する。対生成反応では、高Z核(例えば、親核種Ra-226)の存在下での高エネルギー光子は、残りの運動エネルギーを有する電子及び陽電子に変換される。荷電粒子、すなわち、電子及び陽電子は、減速する(かつ、陽電子の場合、アニールする)につれて、液体ターゲット内にそれぞれの運動エネルギーを放出し、それは熱に変換される。
【0017】
本発明の実施形態の利点は、ポンプによって制御された、液体ターゲットシステム用の冷却回路であって、液体及び塩基性化学物質が冷却回路内でポンピングされる、冷却回路が、必要とされない場合があることである。本発明の実施形態の更なる利点は、液体ターゲットとの大きな接触面積を必要とする大型の熱交換器を回避することができ、その結果、必要とされる液体ターゲットの量が限定され得ることである。
【0018】
本発明の実施形態の利点は、システムが、作動中の上昇濃縮(up-concentrating)を可能にすることである。より具体的には、開始温度において液体中の放射性同位体を生産するために使用された塩基性化学物質の初期濃度は、溶媒(例えば、水)中の溶解度のために限定され得、この開始温度におけるより高濃度により、沈殿をもたらすであろうが、本発明の実施形態の利点は、溶媒(例えば、水)中の塩基性化学物質の溶解度の増加に従って、液体ターゲットの加熱中に濃度を増加させることができることである。後者は溶媒の蒸発によって確立されるが、塩基性化学物質は、照射された領域に保持される。
【0019】
実施形態では、蒸発した水は、スチームとして、又は液体としてシステムに貯蔵され得る。
【0020】
実施形態では、液体ターゲットシステムは、沸騰室の上方に配置された凝縮領域であって、凝縮領域が、蒸気を液体凝縮物に凝縮させるための壁を有する、凝縮領域を更に備え、液体凝縮物は、系統的に戻され得るか、又は沸騰室に提供され得る。そのような壁はまた、冷却面とも呼ばれ得る。実施形態では、液体ターゲットシステムは、例えば、凝縮領域と沸騰室との間の直接流体接続によって、又は液体凝縮液を凝縮領域から(例えば、重力による)系統的に沸騰室内に滴下することによって、液体凝縮物を系統的に沸騰室内に戻すように構成されている。
【0021】
実施形態では、したがって、少なくとも1つの凝縮物収集領域は、蒸気を凝縮するための壁に配置され得、凝縮物を沸騰室に系統的に戻すための滴下機構を備え得る。
【0022】
好ましい実施形態では、液体ターゲットシステムは、液体凝縮物を収集するための少なくとも1つの凝縮物収集領域であって、少なくとも1つの凝縮物収集領域が、沸騰室の外側に配置されている(すなわち、少なくとも1つの凝縮物収集領域及び沸騰室は互いに分離されている)、少なくとも1つの凝縮物収集領域を更に備え、少なくとも1つの凝縮物収集領域及び沸騰室は、連通容器として機能するように相互接続されている。実施形態では、少なくとも1つの凝縮物収集領域及び沸騰室は、少なくとも1つの凝縮物収集領域に存在する液体凝縮物(すなわち、液体)の体積と、沸騰室に存在する液体の体積との比率が、少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは、少なくとも2であるように構成されている。実施形態では、少なくとも1つの凝縮物収集領域の水平断面の面積と、沸騰室の水平断面の面積との比率は、少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは、少なくとも2である。システムの寸法は、係数2に対する上昇濃度を得るように選択され得る。これらの実施形態の利点は、塩基性化学物質が沸騰室内で濃縮され得、少なくとも1つの凝縮物収集領域に存在しない可能性があるため、液体ターゲットシステムの機能中に、沸騰室内の塩基性化学物質の上昇濃度が、少なくとも1つの凝縮物収集領域内に存在する任意の液体を含む、全ての液体に存在するときの塩基性化学物質の初期濃度よりも、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも100%、好ましくは、少なくとも200%高いことが可能であることである。
【0023】
実施形態では、沸騰室の体積は、5mL~500mLである。実施形態では、少なくとも1つの凝縮物収集領域の総体積は、5mL~500mLである。
【0024】
実施形態では、沸騰室と少なくとも1つの凝縮物収集領域との間の該相互接続は、ギャップ又は配管を含む。実施形態では、液体を沸騰室内に入れるための相互接続の入口は、沸騰室の底部の近く、例えば、壁又は底部に位置する。好ましくは、該入口は、沸騰室内において、沸騰室の高さの25%未満、好ましくは、沸騰室の高さの10%未満の高さに、より好ましくは、実質的に沸騰室の底部に位置する。実施形態では、該相互接続内の公称流れ方向に垂直な、該相互接続の断面積は、沸騰室の垂直断面積又は水平断面積の少なくとも1つ(例えば、両方)の最大で10%、好ましくは、最大で5%、より好ましくは、最大で2%である。
【0025】
例示として、実施形態はそれに限定されず、例を以下に説明する。例えば、液体をスチームに変換するために効率的に使用されるエネルギーの50%を有する1200Wを受け取るターゲット、及び(円形開口部の半径約2.5mmに対応する)0.2cm2の単一の開口部の場合、液体は、速度1.33cm/sで移動するであろう。開口部が小さいほど、速度は大きくなる。相互接続に小断面を使用することにより、照射室から凝縮物室に向かう逆流が回避される。十分に小さい断面を選択することにより、液体は、十分に高い速度で一方向に均一に流れている。相互接続の長さ及び/又は直径は、液位差を作り出す圧力降下を作り出すように設計することができる。いくつかの実施形態では、設計は、照射室の照射レベルを上回る凝縮物を貯蔵するように行われる。これにより、照射及び沸騰が完了するとき、凝縮物の大部分が照射室に戻ることが保証される。このようにして化学物質が希釈され、溶液が冷めたとき、沈殿が回避される。
【0026】
代替の例では、入口は、システムの上部に配置され得、滴下を介して作動し得る。
【0027】
これらの実施形態の利点は、液体ターゲットシステムにおける放熱(したがって、過熱の防止)が、液体の沸騰及び凝縮プロセスによって保証されていることである。凝縮領域は、放射性材料を含有しない冷却流体を含有する二次システムによって冷却され得る。実施形態では、液体ターゲットシステムは、凝縮領域を冷却するための冷却剤流体浴及び/又は冷却剤流体循環二次システムを更に備える。好ましい実施形態では、凝縮領域及び少なくとも1つの凝縮物収集領域は、冷却剤流体循環二次システムによって少なくとも部分的に囲まれている。
【0028】
本発明の実施形態の利点は、液体ターゲットシステムが、自動的に濃縮器として機能し得ることであり、その結果、照射によって引き起こされる、加熱プロセス及びその後の液体蒸発中の照射体積において、塩基性化学物質の濃度が増加する。更に、液体中の塩基性化学物質の溶解度は、典型的には、温度とともに増加するため、液体ターゲットは、沈殿することなく、高濃度の塩基性化学物質を含有し得、放射性同位体の効率的な生産を可能にする。実際には、放射性同位体が生成される塩基性化学物質材料の溶解度は、室温では相対的に低いので、より高い温度における液体中の塩基性化学物質材料のより高い溶解度を利用して、照射によって引き起こされる加熱プロセス中に、濃度が増加し得ることが利点である。
【0029】
実施形態では、システムは、液体及び塩基性化学物質を照射するように構成された、照射ビーム発生器を更に備える。ここで、照射ビーム発生器は、典型的には、沸騰室の外側に位置し、照射窓を通して液体及び塩基性化学物質を照射するように構成されている。実施形態では、照射ビーム発生器は、電子ビーム銃、ガンマビーム銃、陽子ビーム銃、及び中性子ビーム銃から選択される。電子ビーム銃又は陽子ビーム銃を備える実施形態では、照射ビーム発生器は、荷電粒子ビーム(すなわち、電子ビーム又は陽子ビーム)を、照射ビームを形成する高エネルギーの制動放射光子に変換するための、変換器を更に備え得る。
【0030】
少なくとも1つの凝縮物収集領域を含む実施形態では、照射ビーム発生器は、照射ビームが、少なくとも1つの凝縮物収集領域を通過することなく、沸騰室の外側に位置する照射ビーム発生器から、照射窓を通って、沸騰室に伝播するように構成されてもよい。本発明の実施形態の利点は、少なくとも1つの凝縮物収集領域内の任意の液体は沸騰せず、それによって、少なくとも1つの凝縮物収集領域内の液体を蒸気に変換することである。このことは、少なくとも1つの凝縮物収集領域に存在する塩基性化学物質の上昇濃度をもたらし得、これは、沸騰室内の塩基性化学物質の濃度の低下をもたらし得る。これらの実施形態の更なる利点は、照射ビームが、少なくとも1つの凝縮物収集領域内の液体凝縮物による吸収によって減衰されるおそれがないことである。
【0031】
実施形態では、液体ターゲットシステムは、液体の気泡サイズ及び沸騰温度を制御するためにシステムを加圧するための加圧ユニットを備える。これらの実施形態では、システムは、沸騰室又はシステムの圧力を測定するための圧力センサを更に備え得る。
【0032】
実施形態では、沸騰室、凝縮領域及び少なくとも1つの凝縮物収集領域は、円筒形の設計を有するシステムを形成する。本発明の実施形態の利点は、円筒形の設計の溶接部の数が、典型的には、限定されており、これにより、システムを耐圧にし得ることである。
【0033】
実施形態では、沸騰室は、沸騰室を通して、不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素、好ましくはヘリウム)の流れを生成するための入口及び出口を含む。不活性ガスと同じ流量で液体ターゲットシステムから出る非凝縮水(湿度)の損失は、不活性ガスを、ターゲットシステムに加える前に、水(湿度)に曝露することによって、補償することができる。このように、水の質量バランスを一定に保つことができる(システムから出る水素ガスを除く)。
【0034】
これらの実施形態の利点は、良好な圧力制御が達成され得ることである。不活性ガス流を使用して、沸騰室内に形成された任意の気体状材料を沸騰室から除去し、該気体状材料(例えば、親核種がRa-226を含む場合は、Rn)を収集することができることが、更なる利点である。実施形態では、沸騰室は、液体ターゲット、すなわち、液体及び塩基性化学物質を導入する、及び/又はそれらを沸騰室から除去するための入口を含む。
【0035】
実施形態では、塩基性化学物質は、照射に曝露したときに放射性同位体を形成するための放射性核種を含む塩を含むか、又はそれからなる。該放射性核種は、典型的には、カチオンであり、塩は、アニオンを更に含む。実施形態では、液体は、水又は重水であり、塩基性化学物質は、水に対して正のエンタルピーを有する塩である。実施形態では、塩基性化学物質は、Ra(NO3)2、RaCl2、及びBa(NO3)2のいずれか又は組み合わせである。本発明の実施形態では、Ac-225の生産に言及することが多いが、実施形態はそれに限定されず、他の同位体の生産のための液体ターゲットシステムもまた想定されることに留意されたい。本発明の実施形態の利点は、これらの塩が、水中で十分な溶解度を有することである。実施形態では、塩は、Sc-47の生産に使用され得るCa塩、Cu-67の生産に使用され得るZn塩、Cs-131の生産に使用され得るBa塩、及びTb-155の生産に使用され得るDy塩のうちの1つを含む。実施形態では、液体ターゲットシステムは、Sc-47、Cu-67、Cs-131、Tb-155、Ra-225、又はAc-225、好ましくはAc-225を生産するように適合している。
【0036】
第1の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、本発明の他の態様のいずれかの任意の実施形態について相応に説明されるように、単独であり得る。
【0037】
第2の態様では、本発明は、放射性同位体を生産するための方法に関する。本方法は、放射性同位体が照射を使用して生産されることができる、液体及び塩基性化学物質を含む液体ターゲットを照射し、液体を蒸気に蒸発させることを含む。ここで、該蒸発プロセスの熱力学が、液体ターゲットの過熱を制御するように使用される。
【0038】
実施形態では、本方法は、本発明の第1の態様の実施形態に従って、液体ターゲットシステムを使用して実行され得る。
【0039】
実施形態では、本方法は、該照射後、液体ターゲットから放射性同位体を収集するステップを含む。
【0040】
実施形態では、該照射は、例えば1.5kW、例えば0.5kW~10kW(例えば0.5kW~5kW、例えば0.5kW~3kW)の液体ターゲットへ入射する電力を使用して実行される。実施形態では、照射のステップは、真空~60バールの圧力、例えば、0.5バール~10バールで実行される。また、原則として、より高い圧力を使用することもできることに留意されたい。
【0041】
好ましい実施形態では、液体ターゲットは、例えば、照射の場所で、該照射の少なくとも一部の間に、25℃の温度及び1気圧における、液体中の塩基性化学物質の溶解度(すなわち、沈殿が生じる前の最大濃度)よりも、好ましくは少なくとも20%高い、より好ましくは少なくとも50%高い、更により好ましくは少なくとも100%高い、更により好ましくは少なくとも200%高い、塩基性化学物質の濃度を有する。典型的には、任意の更なる塩基性化学物質が液体中に溶解せず、例えば、液体から沈殿するため、達成され得る最大濃度は、塩基性化学物質の溶解度に等しい。
【0042】
第2の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、本発明の他の態様のいずれかの任意の実施形態について相応に説明されるように、単独であり得る。
【0043】
第3の態様では、本発明は、放射性同位体を生成するための、第1の態様の実施形態による液体ターゲットシステムの使用に関する。
【0044】
第3の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、本発明の他の態様のいずれかの任意の実施形態について相応に説明されるように、単独であり得る。
【0045】
本発明の特定の好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属特許請求からの特徴は、単に特許請求の範囲に明示的に記載されているようにではなく、必要に応じて、独立請求項の特徴、及び他の従属特請求項の特徴と組み合わされ得る。
【0046】
この分野では、デバイスの絶え間ない改善、変化及び進化があったが、本概念は、従来の慣行からの逸脱を含む、実質的な新規かつ斬新な改善を表し、この性質のより効率的で、安定した、かつ信頼性の高いデバイスの提供をもたらすと考えられる。
【0047】
本発明の上記及び他の特性、特徴、及び利点は、例として、本発明の原理を例示する添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。この説明は、本発明の範囲を限定することなく、例示のためにのみ与えられる。以下に引用する参考図は、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1A】本発明の実施形態による、液体ターゲットシステムの少なくとも一部の概略分解図である。
【
図1B】本発明の実施形態による、
図1Aの液体ターゲットシステムの少なくとも一部の概略垂直断面図である。
【
図2】Ba(NO
3)
2及びRa(NO
3)
2に対する、温度(摂氏度)に依存する、溶解度(100mLのH
2O当たりの塩のグラム数)のプロットである。
【
図3】本発明の実施形態による、液体ターゲットシステムの概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による、液体ターゲットシステムの概略垂直断面図である。
【
図5】該液体ターゲットの照射によって液体ターゲットを加熱した後の、
図4の液体ターゲットシステムの概略垂直断面図である。
【0049】
異なる図面では、同じ参照符号は、同じ又は類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して記載されているが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載される図面は、単に概略的であり、非限定的である。図面では、要素のいくつかのサイズは、説明の目的で、誇張されている場合があり、縮尺どおりに描かれていない場合がある。寸法及び相対寸法は、本発明の現実の実施化に対応するものではない。
【0051】
更に、説明及び特許請求の範囲における第1の、第2の、第3のなどの用語は、類似の要素を区別するために使用されており、必ずしも時間的、空間的、ランキングでの、又は任意の他の様式のいずれかで順序を説明するために使用されているわけではない。このように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示される以外の順序で作動可能であることを理解されたい。
【0052】
更に、説明及び特許請求の範囲における上部、底部、上、下などの用語は、説明目的のために使用されており、必ずしも相対的位置を説明するために使用されているわけではない。このように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示される以外の向きで作動可能であることを理解されたい。
【0053】
特許請求の範囲で使用される「備える(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されるものとして解釈されるべきではないことに注目されたい。これは、他の要素又はステップを除外しない。したがって、それは、言及されるような記載された特徴、整数、ステップ又は成分の存在を特定するものと解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴、要素、ステップ又は成分、若しくはそれらの集合の存在又は追加を排除するものではない。したがって、「備える(comprising)」という用語は、記載された特徴のみが存在する状況、及びこれらの特徴及び1つ以上の他の特徴が存在する状況を包含する。したがって、本発明による「備える(comprising)」という語は、一実施形態として、更なる構成要素が存在しないことも含む。したがって、「手段A及びBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなるデバイスに限定されると解釈されるべきではない。これは、本発明に関して、デバイスの唯一の関連する構成要素がA及びBであることを意味する。
【0054】
同様に、「結合された(coupled)」という用語は、直接接続のみに限定されるものとして解釈されるべきではないことに注目されたい。「結合された(coupled)」及び「接続された(connected)」という用語は、それらの派生語とともに使用され得る。これらの用語は、互いの同義語を意図するものではないことを理解されたい。したがって、「デバイスBに結合されたデバイスA」という表現の範囲は、デバイスAの出力が、デバイスBの入力に直接接続されている、デバイス又はシステムに限定されるべきではない。これは、Aの出力と、他のデバイス又は手段を含む経路であり得るBの入力との間に、経路が存在することを意味する。「結合された(coupled)」とは、2つ以上の要素が直接物理的若しくは電気的のいずれかで接触していること、又は2つ以上の要素が、互いに直接接触していないが、それでもなお互いに協働若しくは相互作用していることを意味し得る。
【0055】
本明細書を通して「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所における「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という句が現れると、それは、必ずしも全て同一の実施形態を指しているものではないが、指している場合もある。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態では、本開示から当業者には明らかであるように、任意の好適な様式で組み合わされ得る。
【0056】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本開示を簡素化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解を支援するために、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図面、又はそれらの説明にまとめられることもあることを理解されたい。しかしながら、開示のこの方法は、特許請求される発明が、各請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とする意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、開示された上記の単一の実施形態の全ての特徴よりも少ない。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0057】
更に、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかではあるが他ではない含まない特徴を含む一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求される実施形態のいずれかを、任意の組み合わせで使用することができる。
【0058】
更に、実施形態のいくつかは、コンピュータシステムのプロセッサによるか、又は機能を実施する他の手段によって実装され得る方法、又は方法の要素の組み合わせとして、本明細書に記載されている。したがって、そのような方法又は方法の要素を実施するために必要な命令を有するプロセッサは、方法又は方法の要素を実施するための手段を形成する。更に、装置の実施形態の本明細書に記載の要素は、本発明を実施する目的で、要素によって実行される機能を実施するための手段の一例である。
【0059】
本明細書に提供される説明では、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることが理解される。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないように、周知の方法、構造及び技術が詳細に示されていない。
【0060】
ここで、本発明を、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明によって説明する。本発明の他の実施形態は、本発明の技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成され得、本発明は、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ限定されることが明らかである。
【0061】
第1の態様では、本発明は、放射性同位体の生産のための液体ターゲットシステムに関する。液体ターゲットシステムは、放射性同位体が照射を使用して生産されることができる、液体及び塩基性化学物質を収容するための沸騰室を備える。沸騰室は、液体及び塩基性化学物質が照射されることを可能にし、液体を蒸気に蒸発させるための照射窓を備える。液体ターゲットシステムは、液体ターゲットの過熱が蒸発/凝縮プロセスの熱力学によって制御されるように構成されている。
【0062】
第2の態様では、本発明は、放射性同位体を生産するための方法に関する。本方法は、放射性同位体が照射を使用して生産されることができる、液体及び塩基性化学物質を含む液体ターゲットを照射し、液体を蒸気に蒸発させることを含む。ここで、該蒸発プロセスの熱力学が、液体ターゲットの過熱を制御するように使用される。
【0063】
第3の態様では、本発明は、放射性同位体を生成するための、第1の態様の実施形態による液体ターゲットシステムの使用に関する。
【0064】
本発明の実施形態による、液体ターゲットシステム10の少なくとも一部の概略分解図である、
図1Aに言及する。同時に、液体ターゲットシステム10の該少なくとも一部の概略垂直断面図である、
図1Bに言及する。この例では、放射性同位体の生産用である液体ターゲットシステムは、照射を使用して放射性同位体を生産することができる液体及び塩基性化学物質からなる液体ターゲット8を収容するための、沸騰室2を備える。この例では沸騰室2の壁の一部分である照射窓23は、該照射が伝播し得、沸騰室2の壁に含まれる。この例では、沸騰室2内の液体ターゲット8に含まれる液体は、水であり、水に溶解された塩基性化学物質は、親核種Ra-226を含む塩(例えば、(Ra-226)(NO
3)
2)であるが、本発明はそれに限定されない。そのため、この例では、液体ターゲット8は、液体、及びRa-226を含む塩からなる。
【0065】
液体ターゲット8は、照射窓23を通って高エネルギー光子ビームによって連続的に照射される。結果として、液体ターゲット8は、該連続照射下で沸騰し、それによって、液体を蒸気、すなわち水蒸気(白い矢印)に変換する。水蒸気は、その後、沸騰室2の上方に位置する凝縮領域3に凝縮され、それによって、蒸気を液体凝縮物に変換する。少なくとも凝縮領域3、場合によっては凝縮物収集領域4、及び場合によっては沸騰室2もまた、水冷却剤流体浴及び/又は強制冷却剤流体水循環二次システム32によって冷却され得る。
【0066】
この例では、液体ターゲットシステムは、沸騰室2とは異なる、2つの凝縮物収集領域4を更に備え、この例では、分離壁21によって互いに分離されている。2つの凝縮物収集領域4は、沸騰室2の両側に位置し、毎回分離壁21によって分離されている。液体ターゲットシステムは、凝縮領域3内に形成された凝縮物が、凝縮物収集領域4に移動する、例えば、落下する(横縞の矢印)ように構成されている。これは、この例では、凝縮物収集領域4の壁が凝縮領域3の壁に接続されているため、凝縮領域3の壁に凝縮された液体が、例えば、該壁の上を通って下方へ、凝縮物収集領域4に移動し得るように達成される。更に、この例では、液体ターゲットシステムは、沸騰室から離れた任意の凝縮物を、凝縮物収集領域4(凝縮物収集室とも呼ばれ得る)に導く、凝縮物ステアリング要素5を備える。
【0067】
凝縮物収集領域4は、例えば、分離壁21の開口部24を介して、沸騰室2に流体的に結合されている。例えば、この例と同様に、分離壁21の少なくとも一部分は、ギャップ24によって、沸騰室2の底部から分離され得、ギャップ24を通して、液体は、凝縮物収集領域4と沸騰室2との間を移動し得る。代替的に、例えば、配管を使用して、該流体結合を実施し得る。それによって、凝縮物収集領域4に収集された液体凝縮物41は、沸騰室2(黒い矢印)に流入し得る。
【0068】
そのため、凝縮物収集領域4及び沸騰室2は、この例では、3つの連通容器として機能するとみなされ得、沸騰室2内の液体ターゲット8は、高エネルギー光子ビーム内に直接配置されて沸騰しているが、凝縮物は、凝縮物収集領域4に収集され、凝縮物収集領域4へのより低いエネルギー堆積のために沸騰していない。実際には、凝縮物収集領域4内の凝縮物、すなわち、液体は、凝縮領域3を介した蒸気の流れ(白い矢印)及び凝縮物の流れ(横縞の矢印)を補償する、凝縮物収集領域4からギャップを通って沸騰室2への連続的な有効な液体流(黒い矢印)のために、照射を吸収するための著しい量のRa-226を含まなくてもよい。定常状態では、これら3つの流れの各々の速度は、実質的に等しくてもよい。凝縮液41は、著しく低い照射レベルにある。更に、Raがないため、熱吸収がより低く、凝縮物を沸騰させない。言い換えると、凝縮物収集領域4及び沸騰室2は、本質的に連通容器であるため、該沸騰に起因する、沸騰室2内の水質量の連続的な損失は、凝縮物収集領域4から、ターゲットの底部の穴を通り、沸騰室2への連続した水流によって補償される。ギャップのサイズ(又は代替的に、配管の直径)は、凝縮物(すなわち、液体)の連続流が、沸騰室2に向かって存在するように最適化されることが好ましく、その結果、実質的にRa-226が、反対方向、すなわち、沸騰室2から、凝縮物収集領域4に向かってその中へ移動しない。したがって、開口部は狭すぎず、大きすぎないようにあるべきである。好ましくは、開口部を通る沸騰室への液体流量は、0.1cm/s~20cm/s、好ましくは、0.5cm/s~5cm/s、例えば1cm/sである。好ましくは、該液体流量は、ほぼ完全に、照射による沸騰に起因する沸騰室2内の液体の損失と、その後の凝縮物収集領域4の中の凝縮物の収集に起因する凝縮物収集領域4内の液体の利得と、から生じる。凝縮液(すなわち、液体)の沸騰室2内の液体ターゲットへの連続的な逆流により、液体ターゲットは、沸騰して乾燥され得ず、過熱が防止される。
【0069】
この例では、液体ターゲット8の照射は、光核反応Ra-226(γ,n)Ra-225(β-)Ac-225によって、Ac-225の生産をもたらす。形成された任意のAc-225は、液体ターゲット8から分離され得ることが好ましい。この例では、液体ターゲットシステムは、沸騰室2の底部に開口部22を含み、例えば、照射の前後に液体ターゲット8の入口及び/又は出口として機能するが、好ましくは、照射中に機能しない。それによって、液体ターゲット8は、照射後、開口部22を通って、例えば、Ac-225の化学的分離及び精製のためのホットセル施設に移動されてもよい。該分離後、液体ターゲットは、該開口部22を通って、沸騰室2に戻され得る。沸騰室2とホットセル施設とを相互接続する、任意の流路(例えば、配管)における結晶化及び損失を回避するために、好ましくは、液体ターゲット8を該流路を通して移送した直後に、一定のすすぎ体積の液体、例えば、希硝酸を使用する。これは、液体ターゲット8中の塩基性化学物質を更に希釈し得、したがって、つまり、すすぎ体積によって導入された過剰体積によって、収率を低下させる可能性がある。該過剰体積は、開口部22から開口部31までの不活性ガス(例えば、ヘリウム又はN2)の流れを確立しながら、沸騰室2内で液体ターゲット8を沸騰させることによって除去され得、それによって、任意の過剰蒸気を除去する。しかしながら、ターゲットの適切な設計(沸騰室2の体積と凝縮物室4の体積との比率)によって、この過剰体積は問題であり得ない。実際には、沸騰室2内の液体、すなわち、ビームによって照射された液体と、凝縮物収集室4内の液体との間の体積比が最適化され得、沸騰室内のRaの濃度が増加し得る。例えば、1/1の体積比の場合、ビーム内のRaの濃度は、作動中、すなわち、液体ターゲット8の照射中に、凝縮物収集室4を備えない設計と比較して、倍増され得る。結果として、生産収率もまた倍増する。このような上昇濃度の利点は、少量の親核種(例えば、Ra-226)が、Ra-225の高い同位体収率を得るために、ガンマ生産ルートに必要とされ得ることである。このように上昇した濃度は、照射中は、ラジウム溶解度の最大値に関しては問題であり得ない。それは、液体ターゲットは、溶解度が更に増加し得るように、例えば、標準圧力での水の沸騰温度である100℃までか、又は圧力が標準圧力を上回る場合には100℃を上回るまでも強く加熱され得るためである。
【0070】
この例では、液体ターゲットシステム10の少なくとも一部、すなわち、沸騰室2、凝縮領域3、及び凝縮物収集領域4は、溶接量を制限するように円筒形状を形成し、これは、高圧で作動し得る液体ターゲットシステムのこの部分の強度を高める。該より高い圧力は、水の沸点を上昇させるために使用され得、蒸発プロセスの熱力学に影響を与え得る。実際には、ビーム内でこの液体ターゲット8を操作するとき、任意の発熱は、定常作動が安全かつ確実なやり方で排出されるべきである。溶液、すなわち、液体ターゲット8から余分な熱を除去するための効率的かつ利便性の高いやり方であるため、沸騰液体ターゲット8が好ましい。液体ターゲット8のサイズが相対的に小さいため、沸騰液体ターゲット8内の気泡サイズを制御するために、加圧が非常に好ましい場合がある。圧力が高いほど、気泡が小さくなり、沸騰性能がより優れている場合がある。圧力及び定常状態の温度は、液体ターゲット8の熱水力性能を最適化するために制御され得る。
【0071】
(Ra-226)(NO
3)
2は、他のRa-226塩と比較して、水中で相対的に高い溶解度を有するため、本発明の実施形態での使用によく適している。化合物は、20℃及び標準圧力で水に対する溶解度は13.9g/100gである(Erbacher,O.Loslichkeits-Bestimmungen einiger Radiumsaltze;Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft,1930;Vol.63:141-156を参照のこと)。しかしながら、代わりに他の化合物、例えば、(Ra-226)Cl
2もまた使用され得る。(Ra-226)(NO
3)
2の溶解度は、より高い温度で著しく増加する。(Ra-226)(NO
3)
2の高温における溶解度を概算するために、硝酸バリウムの溶解度は、アルカリ土類金属Ra及びBa又は第2族の原子の酷似している挙動のため、正確な概算として考えることができる(ただし、Ba(NO
3)
2の溶解度は、Ra(NO
3)
2の溶解度よりもわずかに低い)。温度(摂氏度)に依存する、100mLのH
2O当たりの塩のグラム数の溶解度のプロットである、
図2に言及する。点線の曲線で接続された黒点である、0℃~100℃の温度範囲にわたるBa(NO
3)
2についてのデータ(http://periodic-table-of-elements.org/SOLUBILITY/barium_nitrateより)と、Ra(NO
3)
2についてのデータ(20℃におけるデータのみ)が示される。100℃では、Ba(NO
3)
2の溶解度は、20℃における溶解度と比較して、3倍に増加することが観察され得る。そのため、100℃における溶解度は、Ra(NO
3)
2についても約3倍高いと予想される。100℃を超えると、更により高い溶解度が予想される。実際には、水の沸点は、第一に、その中に溶解された塩の存在によって、第二に、圧力の増加によって、上昇し得る。
【0072】
Ra(NO3)2の圧力依存性はまた、Ba(NO3)2と比較することによって導出され得る。Ba(NO3)2の水溶性は、標準圧力から200MPaまで圧力を上げると、0.394から0.841±0.005mol/kg(13.79から29.435±0.175g/100g H2O)に増加する。(B.R.Churagulov,S.L.Lyubimov,A.N.Baranov,A.A.Burukhin.Influence of Pressures up to 300 MPa on the Water Solubilities of Poorly Soluble Salts.September 1999.Russian Journal of Inorganic Chemistry 44(9):1489-1493)。そのため、沸騰室内の高圧が、液体ターゲットの水中のRa(NO3)2の溶解度に悪影響(減少)を及ぼし得ることは予想されない。
【0073】
ここで、定量的な例について進める。
図1A及び
図1Bに戻って参照すると、一例として、体積25cm
3を有する液体ターゲット8を考慮してもよく、室温での水に対する溶解度(13.9g/100g)を超えることは好ましくない。実際には、液体ターゲット8は、典型的には、室温における、沸騰室2内から、すなわち、沸騰室2とホットセル施設との間でポンピングされるべきである。したがって、より高い濃度は、沸騰室2をホットセル施設と接続する流路における沈殿をもたらし得る。そのため、室温では、液体ターゲットは、約2グラムのRa-226のみを含有し得る。しかしながら、目標は、液体ターゲットシステムの効率及び収率を高めるために、沸騰室2内に6グラムの塩基性化学物質を有することである。そのため、代わりに、125mlに溶解された6グラムのRa-226のターゲットが想定されてもよく、沸騰室2内の液体と凝縮物収集室4との間の体積比は、1/4に等しい。そのため、最初に、液体ターゲットのうちの100mLは、凝縮物収集室4に存在し、25mLは、沸騰室2に存在する。照射の開始時に、Ra-226は、区画間で均一に分割される。沸騰室2が、上記の機構により、該照射の影響を受けて沸騰し始めると、凝縮物収集室4からのRa-226は、沸騰室2に向かって流れ、照射中はそこに留まる。そのため、時間の経過とともに、Ra-226は、凝縮物収集室2が液体、すなわち、凝縮物41のみを含むように、凝縮物収集室4で枯渇する。更に、25cm
3の液体ターゲットを含む沸騰室2は、残りの全てのRa-226(すなわち、Ra-225又はAc-225を形成するために反応したものを6グラムから差し引いたもの)を含む。つまり、沸騰室2だけが、効率的に液体ターゲット8を含む。水が、例えば、80℃又は100℃に加熱されるにつれて、液体ターゲット8中の塩基性化学物質の濃度は、Ra(NO
3)
2の溶解限度を依然として下回る。
【0074】
照射による加熱に加えて、定常状態が達成されるまで、沸騰室2の(照射に起因しない)強制加熱が実行され得る。定常状態であって、その状態で熱力学が連続的かつ予測可能である、定常状態が迅速に達成され得ることが利点である。更に、該照射後に液体ターゲット8を冷却すると、Ra(NO3)2のいかなる沈殿も回避するために、ゆっくりした冷却が好ましい場合がある。これを達成するやり方のうちの1つは、例えば、70~80℃で作動する水浴において、シリンダ又はターゲット容器、次いで、少なくとも沸騰室2及び凝縮物収集領域4を水没させることであり得る。代替的に、強制混合を引き起こすパージガスが、例えば、開口部22を通って導入され、沸騰室2の上方に位置する更なる開口部31を通って出ることができる。
【0075】
図1A及び
図1Bの液体ターゲットシステム10の少なくとも一部を含み得る、本発明の実施形態による、液体ターゲットシステム1の概略図である、
図3に言及する。液体ターゲットシステム10の少なくとも一部に含まれる沸騰室は、照射ビーム発生器25から生じる照射ビーム26によって照射され得る。この例では、沸騰室の底部の開口部22は、バルブV3を介してバッファ容器6に結合され得る。該バッファ容器6は、バルブV8を介して、ホットセル施設61に結合されている。該バッファ容器6は、バルブV5を介して、脱塩水62を導入するための入口に更に接続されている。脱塩水62を導入するための該入口は、バルブV7を介して、更なる開口部31に更に接続されている。この例では、圧縮ガス、例えば、N
2又はHeは、圧縮ガス源63、例えば、圧縮ガスシリンダから、バルブV4、バッファ容器6、及びバルブV3を介し、開口部22を通るか、又はバルブV2を介し、更なる開口部31を通って導入され得る。更に、真空は、真空源64、例えば、ポンプから、バルブV6、バッファ容器6及びバルブV3を介し、開口部22を通るか、又は代替的に、バルブV6、V4、及びV2を通り、更なる開口部31を通って導入され得る。更なる開口部31は、活性炭71を含む体積、又は放射性非凝縮性気体を捕獲するための任意の他のシステムを介して、煙突7に結合され得る。
【0076】
初期状態では、全てのバルブV1~V8は閉じている。バッファ容器6は、その後、真空がホットセル施設61から液体ターゲットを引き出すように、バルブV6及びV8を開くことによって、液体ターゲットで満たされ得る。
【0077】
その後、液体ターゲットは、ガス流(例えば、He又はN2)を、バッファ容器6を通り沸騰室を介して、液体ターゲットシステム10の少なくとも一部に、次いで、活性炭71を通って煙突7に導入し、それによって、液体ターゲットをバッファ容器6から沸騰室に移動させるためのバルブV4、V3及びV1を開くことによって、沸騰室及び凝縮物収集領域に移動され得る。沸騰室をバッファ容器6と接続する流体接続部は、はじめにバルブV5を開くだけ、次いで、V5を閉じ、バルブV4を開き、そしてバルブV3を開くことにより、はじめにバッファ容器6に脱塩水を充填することによって、脱塩水62を導入するための入口から、脱塩水でフラッシングされ得る。代替的に、フラッシングは、バルブV7を開くことによって、実行され得る。このことは、沸騰室内に追加の液体をもたらし得るが、本発明では、これは、沸騰室内の塩基性化学物質の潜在的な上昇濃度に起因する問題であり得ない。更に、次のステップでは、沸騰室内の余分な液体は、圧縮ガス源63から沸騰室を通って煙突7へのガス流によって蒸発して沸騰室から除去され得、それによって、沸騰室内の液体の体積を減少させる。
【0078】
次のステップでは、バルブV1が開けられ、照射ビーム発生器25から生じる低出力照射ビーム26を使用することにより、沸騰室内の液体ターゲットを沸騰させる。照射の際、液体ターゲットシステム10の少なくとも一部に圧縮ガス(例えば、Ar、He又はN2)を導入し、液体ターゲットシステム10の少なくとも一部に好ましい、例えば、高い圧力を得るように、バルブを開かないか、又は代替的に、バルブV4及びV3のみを開いてもよく、V1をわずかに開いてもよい。流量は、流量コントローラ631及び圧力レギュレータ632を介して、制御され得る。沸騰室内の上昇した圧力は、沸騰室内の液体が、大気圧と比較して上昇した温度になることを可能にし得、これは、塩基性化学物質の溶解度を改善し得る。更に、例えば、塩基性化学物質がRa-226を含む場合、沸騰室内に形成された任意のガス、例えば、Rnを除去及び収集するように、少ないガス流量が保持され得る。本発明の実施形態の利点は、液体ターゲットシステムが、Rn収集と適合することである。
【0079】
沸騰室内の光核反応後、沸騰室内に形成された全ての放射性同位体が収集され得る。このために、ガス流によって、放射性同位体を含む液体ターゲットを沸騰室からバッファ容器6に移動させるために、全てのバルブが閉じられ得、次いで、バルブV2及びV3が開かれ得る。場合によっては、その後、沸騰室をバッファ容器6に接続する配管は、バルブV7を開くことによって、脱塩水でフラッシングされ得る。最後に、バッファ容器6の中身は、全てのバルブを閉じ、次いでバルブV8及びV4を開き、続いて、脱塩水でフラッシングするためにバルブV5を少しの間開くことによって、ホットセル施設61に出され得る。
【0080】
上記の説明における液体ターゲットシステム10の少なくとも一部は、
図1A及び
図1Bに関係する例の実施形態であると想定されているが、液体ターゲットシステム10の少なくとも一部は、代わりに、後続の例の実施形態であってもよく、又は両方の例の特徴を含んでもよい。
【0081】
本発明の実施形態による、液体ターゲットシステムの更なる例の概略図である、
図4に言及する。沸騰室2は、放射性同位体を生産することができる液体及び塩基性化学物質を含む、液体ターゲット8を含む。液体ターゲット8へ入射する照射26は、液体が蒸発して、沸騰室2の上方の体積9内に蒸気を形成するように、液体ターゲット8の加熱をもたらす。該体積内の蒸気の高温が達成され得るように、該体積の壁は、断熱材料91によって熱的に絶縁されている。それによって、体積内の高濃度の蒸気を達成し得、圧力が高まることを可能にする。言い換えると、体積9は、蒸気相、すなわち、蒸気中に大量の液体を含み得る。実施形態では、体積9内のガス蒸気の体積と、沸騰室9内の液体ターゲット8の体積との間の比は、少なくとも2、好ましくは、少なくとも5である。
【0082】
言い換えると、形成された蒸気を直接凝縮するのとは別に、代替的に、したがって、蒸発した溶媒を蒸気として貯蔵するために、沸騰室の上方の体積を使用することができる。
【0083】
図5に言及する。照射による蒸発、及び形成される大量の蒸気の結果として、液体ターゲット8の体積が減少する。それによって、その中の塩基性化学物質の濃度が増加し、放射性同位体を形成するため、塩基性化学物質の核反応、例えば、光核反応の効率及び収率を高めることができる。実施形態では、照射は、最大20バール、例えば、最大10バールの体積9内の圧力を生じさせるように適合している。圧力の上限は、典型的には、液体ターゲットシステムの壁が耐え得る圧力によって限定される。使用される高圧は、沸騰温度を上昇させるため、液体ターゲット8内の塩基性化学物質の溶解度を改善し得、次に、液体ターゲット8からの塩基性化学物質の沈殿をもたらすことなく、より多くの液体が蒸発することを可能にする。液体ターゲット8の照射中、液体中の塩基性化学物質の濃度は、好ましくは、例えば、照射のない、室温での液体中の塩基性化学物質の溶解度よりも高い。この例では、高照射は、したがって、該高照射と、液体ターゲット8内の塩基性化学物質の上昇濃度と、の両方により、高収率をもたらし得る。更に、液体ターゲット8からの液体の蒸発による照射出力と電力損失との間のバランスを見出すことによって、過熱を防止することができる。
【0084】
本発明の実施形態では、作動条件及び追加措置は、放射線分解を制限若しくは防止するか、又は酸素の水素との再結合によってそれを逆転させるように、選択され得ることに留意されたい。そのような措置は、当技術分野で周知である。技術的解決法の例について、https://link.springer.com/article/10.1007/BF02387473により付与される。
【0085】
好ましい実施形態、特定の構造及び構成、並びに材料が、本発明によるデバイスについて本明細書で論じられてきたが、形態及び詳細の様々な変更又は修正が、本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解されたい。ステップは、本発明の範囲内で説明される方法に追加又は削除され得る。
【国際調査報告】