(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】MRIを用いた認知障害の分析
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534063
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022087851
(87)【国際公開番号】W WO2023131565
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】クラミング ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ハルト デ レイテル ベッケル エフェレイン マヒテルト
(72)【発明者】
【氏名】ファン エー レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】メナ ベニート マリア エストレラ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドーレン マーリケ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AC01
4C096AD14
4C096DC22
4C096DC32
4C096DC33
4C096DD18
4C096DE08
(57)【要約】
以前の患者の集団についてのfMRIデータ結果及び認知タスク結果の規範的データベースの使用に基づく、患者の精神医学的又は神経学的健康の診断分析の一部として使用するための方法及び装置が提供される。実施形態は患者が認知タスクを実行している間に、患者の脳の一つ又はそれより多くの領域の特定のセットのfMRIデータを取得し、同時に、認知タスクにおける患者の性能の結果を記録することを提案する。脳領域についての認知タスク結果及びfMRIデータの両方組み合わせを使用して、患者の認知健康状態に関するインジケーションを提供する。患者の集団についてのfMRIデータ結果及び認知タスク結果の規範的データベースが基準として使用される。これは、正常及び異常参照を提供するために、健康な患者及び病理学的患者の両方についての結果を記憶し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置であって、
脳の一つ又はそれより多くの領域に対応する患者についての機能的MRI(fMRI)データを取得するステップであって、前記fMRIデータは、前記患者が所定の認知タスクを実行している間に取得される、ステップと、
前記fMRIデータを取得する間に施された前記認知タスクに対応する、前記患者に対する認知タスク結果データを取得するステップと、
前記取得されたfMRIデータから神経活動データを導出するステップと、
人々の集団について、関心神経又は精神障害に関連し、前記所定の認知タスクに関連する基準神経学的活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する、事前に取得されたデータベースをデータストアから検索するステップと、
前記患者の活動データ及びタスク結果データを前記基準活動データ及び基準タスク結果データと比較するステップと、
前記比較に基づいて出力をユーザインターフェースに提供するステップと
を実行するように適合される一つ又はそれより多くのプロセッサを有する、処理装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記比較に基づいて、前記関心神経又は精神障害の診断インジケータを導出し、前記診断インジケータを前記出力として前記ユーザインターフェースに提供するようにさらに適合される、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記ユーザインターフェースへの出力は、前記比較の結果を示す、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記神経学的活動データは、血液酸素レベル依存(BOLD)コントラストデータである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記データストアは複数の異なるデータベースを記憶し、それぞれは、関心神経障害及び施される認知タスクの異なる特定の組み合わせに関連する基準活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記処理装置は、
前記患者に関する複数のfMRIデータセットを取得するステップであって、それぞれは、異なる認知タスクが前記患者に施されている間に取得される、ステップと、
それぞれの施された認知タスクに対して前記患者に関する認知タスク結果を取得するステップと、
それぞれ異なる認知タスクに関連し、さらに関心神経又は精神障害に関連するデータベースを前記データストアから検索するステップと、
各認知タスクについて、前記対応するfMRIデータセットから導出された活動データを、前記対応する検索されたデータベース内の基準活動データと比較し、前記認知タスク結果を、前記対応するデータベース内の基準認知タスク結果と比較するステップと
を実行するように適合される、請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記データベースは、前記関心神経又は精神障害に罹患していない人々の第1の集団に関連するデータを含む少なくとも第1のデータベース部分と、前記神経又は精神障害に罹患している人々の第2の集団に関連するデータを含む第2のデータベース部分とを含む、請求項1乃至6の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記基準活動データ及び基準タスク結果データは、人々の集団についての活動データ及びタスク結果データから事前に計算された統計データを有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項9】
前記処理装置は、前記患者についての取得された活動データと、前記患者についてのタスク結果データとに基づいて、前記データベースを更新するように適合される、請求項1乃至8の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記データベース内のデータは、前記データが関係する人々の集団の一つ又はそれより多くの人口統計学的分類に基づいて層別化される、請求項1乃至9の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項11】
前記処理装置は、前記患者についての一つ又はそれより多くの人口統計学的分類のインジケーションを取得するようにさらに適合され、
前記処理装置は、前記比較を実行する前に、前記患者の人口統計学的分類に従って前記データベースをフィルタリングするように適合される、
請求項10に記載の処理装置。
【請求項12】
前記処理装置はさらに、
選択アルゴリズムを適用して、前記取得された認知タスク結果に依存して、及び/又は前記取得された神経学的活動データに依存して、前記患者に施されるべき新しい認知試験を決定するステップと、
前記選択された認知タスクに関連する基準活動データ及び基準認知タスク結果データを含むデータベースを前記データストアから検索するステップと、
前記選択された認知タスクを管理するように患者インターフェース制御モジュールを制御し、前記選択された認知タスクが施されている間に前記患者の第2のfMRIデータを取得するようにMRI撮像装置を制御するための制御信号を生成するステップと
を実行するようにさらに適合される、請求項1乃至11の何れか一項記載の処理装置。
【請求項13】
前記fMRIデータを取得するステップは、前記処理装置が、前記fMRIデータを取得するようにMRI撮像装置を制御するための制御信号を生成するステップを有する、請求項1乃至12の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の処理装置と、
前記患者のfMRIデータを取得するための前記処理装置と動作可能に結合されたMRI撮像装置と
を有する、システム。
【請求項15】
MRI撮像装置及びユーザインターフェースに動作可能に結合されたプロセッサが実行されるとき、前記プロセッサに、
脳の一つ又はそれより多くの領域に対応する患者に関する機能的MRI(fMRI)データを取得するステップであって、前記fMRIデータは、前記患者が所定の認知タスクを実行している間に取得される、ステップと、
前記fMRIデータを取得している間に施された前記認知タスクに対応する、前記患者に対する認知タスク結果データを取得するステップと、
前記取得されたfMRIデータから神経学的活動データを導出するステップと、
人々の集団について、関心神経又は精神障害及び所定の認知タスクに関連する基準神経学的活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する事前に取得されたデータベースをデータストアから検索するステップと、
前記患者の活動データ及び認知タスク結果データを前記基準活動データ及び基準認知タスク結果データと比較するステップと、
前記比較に基づいて出力をユーザインターフェースに提供するステップと
を有する方法を実行させるように構成されるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRIデータを用いて神経障害の診断を支援する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)スキャナは患者の身体に画像を生成するためのプロシージャの一部として、原子の核スピンを整列させるために、大きな静磁場(Bo)に依存する。これらの画像は、被検体の様々な量又は特性を反映することができる。例えば、脳活性化の血行動態応答は、活性化された脳領域における磁気的及び電気的変化を引き起こす。
【0003】
脳イメージングにおいて、MRIは脳の構造を撮像するために、又は脳の機能的活動を撮像するために使用することができる。後者は、機能的MRI(fMRI)として知られている。機能的MRIは、血流に関連する局所領域の変動を磁気的に検出することによって脳活動を測定する。脳血流とニューロン活性化とが結合され、したがって、局所領域における変化する血流は、その領域における脳活動を示す。言い換えれば、脳の領域が使用されているとき、その領域への血流も増加する。
【0004】
fMRIデータから導出することができる神経活性化の異なる特定のメトリックがある。fMRIの主要な形態は、血液酸素レベル依存性(BOLD)コントラストイメージングを使用する。他のアプローチには、動脈血スピン標識及び拡散MRIが含まれる。後者の手順はBOLD fMRIと同様であるが、脳内の水分子の拡散の大きさに基づいてコントラストを提供する。
【0005】
BOLDコントラストイメージングに関して、これは、動脈(酸素リッチ)血液と静脈(酸素不足)血液との間の磁気特性の差を検出することに基づく。所与の脳領域内のニューロンがアクティブになると、その領域内の局所的な血流が増加し、約2秒の特定の遅延の後、酸素に富む(酸素化された)血液が、酸素が枯渇した(脱酸素化された)血液を置き換え始める。血流は4乃至6秒間にわたって増加し続け、ピークまで上昇し、続いて、元のレベルで、又はそれをわずかに下回って、より低いレベルまで低下する。脱酸素化ヘモグロビン(dHb)は酸素化ヘモグロビン(Hb)よりも磁性(常磁性)であり、後者は磁性(反磁性)に対して効果的に抵抗性である。この差は、酸素化領域内の反磁性血液が磁気MR信号と干渉することが少ないので、酸素化脳領域からのMR信号の改善につながる。この改善は、脳内の位置の関数として、及び時間の関数としてマッピングされて、どのニューロンが任意の所与の時間に活性であるかをマッピングすることができる。
【0006】
機能的MRIは、神経疾患及び精神障害、ならびに関連する脳損傷の分野における調査ツールとして使用することができる。これは、特定のパターンで健康な被検体における脳の特定エリアを活性化することが知られている一つ又はそれより多くの認知タスク又は認知試験を患者に施すことを含むことができる。
【0007】
神経疾患及び精神疾患の分野において、精神障害を鑑別診断する際の診断ツールとして認知試験又はタスクを使用することが知られている。
【0008】
しかしながら、所定タスクにおける能力障害は、複数の異なる精神障害に関連性能か、又は物理的脳損傷に関連性能。後者に関して、所与の認知試験又は課題における能力障害は脳の様々な異なる位置における潜在的な障害及び/又は様々なタイプの後天性又は神経変性脳損傷、例えば、外傷性脳損傷(TBI)、脳血管障害(CVA)、軽度認知障害(MCI)又はアルツハイマー病(AD)によって引き起こされ得る。精神障害はまた、物理的脳損傷がない場合であっても、特定の認知課題における能力障害に関連し得る。
【0009】
さらに、異なる脳位置における脳病変は、認知試験において同様の結果を示し得ることが知られている。同様に、同じ場所の脳病変が、認知試験において異なる結果の提示を引き起こし得ることが知られている。この点に関して、例えば、Darby, R.R., Joutsa, J., & Fox, M.D.(2019) による論文「不均一な神経画像所見のネットワークローカライゼーション」(Brain, 142(1), 70乃至79)が参照される。
【0010】
加えて、認知試験は典型的には様々な認知機能を伴う、すなわち、認知試験を実行することは、異なる認知機能の動員を必要とする。実際、脳損傷の結果として特定の認知機能が損なわれた場合、個体は、その欠損を補償することができるので、依然として標準的に認知試験を行うことができる。結果として、認知試験の結果は、非常に異なる基礎的な欠損及びこれらの欠損の異なる原因を有する2人の人々について、単にタスクを解決するために異なる基礎的な認知機能及びネットワークを利用したという理由で、同じであり得る。これは、軽度のTBI(全てのTBIの85%を占める)及び認知症の前駆症状と考えられる軽度の認知障害(MCI)などの軽度の脳疾患の症例に特に関連する。結果として、認知試験(バッテリー)の結果は、認知障害を引き起こす基礎となる脳損傷を特異的に反映しない。これは、認知障害の誤診及び過小診断につながる可能性がある。
【0011】
精神障害及び/又は脳損傷を示差的に診断する際のさらなる診断ツールとしてMRI画像使用することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
典型的には、構造的MRIイメージングが脳損傷を検出又は除外するために使用される。しかしながら、これは、微妙な構造的特徴を有する損傷を検出することができない場合がある。また、関連する構造的提示を有さない損傷によって引き起こされる神経障害を検出することもできない。
【0013】
脳損傷及び精神疾患を調査する際のさらなる診断ツールとして、局所レベルで患者の神経活動を評価するために機能的MRIイメージングを使用することが知られている。しかしながら、脳領域のパターン全体が典型的には、タスクの性能中に活性化する可能性があり、症状の提示を引き起こす可能性があるものを、これのみから差別的に決定することが困難であるため、結果を解釈することは困難であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、請求項によって規定される。
【0015】
本発明の態様による例によれば、
処理装置であって、
脳の一つ又はそれより多くの領域に対応する患者についての機能的MRI(fMRI)データを取得するステップであって、前記fMRIデータは、前記患者が所定の認知タスクを実行している間に取得される、ステップと、
前記fMRIデータを取得する間に施された前記認知タスクに対応する、前記患者に対する認知タスク結果データを取得するステップと、
前記取得されたfMRIデータから神経活動データを導出するステップと、
人々(例えば、以前の患者)の集団について、関心神経又は精神障害に関連し、前記所定の認知タスクに関連する基準神経学的活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する、事前に取得されたデータベースをデータストアから検索するステップと、
前記患者の活動データ及びタスク結果データを前記基準活動データ及び基準タスク結果データと比較するステップと、
前記比較に基づいて出力をユーザインターフェースに提供するステップと
を実行するように適合される一つ又はそれより多くのプロセッサを有する、処理装置が提供される。
【0016】
本発明の実施形態は、患者の認知タスク結果と、局所的fMRI由来神経活動データとの組合せを使用して、神経又は精神障害の診断を補助する出力を提供することを提案する。
【0017】
このアプローチは、臨床実践において現在実行されていない新規なデータ分析ステップを含む。このステップは、認知タスクの実行中の患者のfMRI由来の神経学的活動データ及び/又は脳画像データと、同じタスクを実行している以前の患者の電子規範的データベースとの比較を含む。
【0018】
さらに、fMRIデータと認知タスク結果データとの組み合わせを使用して、患者の状態のより具体的な分析を提供することは、現在知られていない。これは、神経又は精神障害、ならびに広範なタイプの後天性及び神経変性脳損傷及び関連する認知障害の診断の精度を改善することによって、臨床的必要性を解決する。その結果、診断の向上が期待できる。これは、より個別化された治療、ならびに認知障害(及び関連する危険因子)の時間進行の個別化された予測を容易にするために、実際に使用することができる。
【0019】
いくつかの実施形態ではfMRIデータが一つ又はそれより多くの所定の脳領域について得られてもよく、脳領域は所定の関心の神経又は精神障害に関連する。導出された神経学的活動データは、一つ又はそれより多くの脳領域の各々に関連付けられた活動データであってもよい。
【0020】
上記で言及した所定の脳領域は、関心神経又は精神障害に関連する脳内の所定のニューラルネットワークに対応し得る。
【0021】
認知タスク結果データは、認知タスクを施している間の患者応答に基づいて、fMRIデータの取得と同時に取得される。
【0022】
いくつかの実施形態では、処理装置が比較に基づいて神経又は精神障害の診断インジケータを導出し、診断インジケータを出力としてユーザインターフェースに提供するようにさらに適合される。これは、インジケータを導出するためにアルゴリズムを適用することに基づき得る。それは、機械学習アルゴリズムを適用することに基づくことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースへの出力が比較の結果を示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、神経学的活動データが血液酸素レベル依存性(BOLD)コントラストデータである。
【0025】
実施形態の少なくとも1つのセットによる目的は、任意の認知障害及び/又は関連する脳損傷(もしあれば)のタイプ、位置、及び重症度を決定することである。これは、異なる神経又は精神障害及び潜在的に異なる認知タスクのための複数の異なるデータベースをデータベースストア内に提供し、取得されたデータをこれらのデータベースの各々における基準データと比較することによって達成することができる。
【0026】
いくつかの実施形態ではデータストアが複数の異なるデータベースを記憶することができ、それぞれが、関心神経又は精神障害と、施された認知タスクとの異なる特定の組み合わせに関連する基準活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する。
【0027】
処理装置は、関心神経又は精神障害と、新たに取得された結果データが対応する認知タスクとに従って、データストアに問い合わせることができる。
【0028】
プロセスは、
所定のセットの異なる障害から関心の神経又は精神障害を選択する(例えば、オペレータが選択する)ステップと、
選択された障害について、選択された障害に関連する一つ又はそれより多くの認知試験/タスクのセットのうちの1つをさらに選択するステップと、
障害に関連する一つ又はそれより多くの脳関心領域のセットを識別する (例えば、ルックアップテーブル又は他の基準を使用する) ステップと、
選択された試験/タスクを患者に施す間に、それらの脳領域に関連するfMRIデータを取得するステップと、
fMRIデータの取得と同時に、タスク中の被検体の指標/応答に基づいて認知タスクの結果を取得するステップと、
データストアから、選択された障害及び選択された認知タスクに関する基準神経学的活動データ及び認知タスク結果データを記憶するデータベースを取得するステップと
を含む。
【0029】
実施形態の1つの特定のセットでは、処理装置が同じ単一の認知障害をプロービングするために複数の異なる認知タスクを適用するように適合され得る。例えば、処理装置は、
【0030】
前記患者に関する複数のfMRIデータセットを取得するステップであって、それぞれは、異なる認知タスクが前記患者に施されている間に取得される、ステップと、
それぞれの施された認知タスクに対して前記患者に関する認知タスク結果を取得するステップと、
それぞれ異なる認知タスクに関連し、さらに関心神経又は精神障害に関連するデータベースを前記データストアから検索するステップと、
各認知タスクについて、前記対応するfMRIデータセットから導出された活動データを、前記対応する検索されたデータベース内の基準活動データと比較し、前記認知タスク結果を、前記対応するデータベース内の基準認知タスク結果と比較するステップと
の組み合わせを実行するように適合されてもよい。
【0031】
言い換えれば、患者が関心神経又は精神障害を患っているかどうかをより確実に判定するために、複数の認知タスクが施され、結果が基準データと比較される。
【0032】
本方法は、上記プロセスに基づいて、鑑別診断インジケータを提供することをさらに含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、データベースが関心神経又は精神障害に罹患していない第1の集団の人々(例えば、以前の患者)に関連するデータを含む少なくとも第1のデータベース部分と、神経又は精神障害に罹患している第2の集団の人々に関連するデータを含む第2のデータベース部分とを含むことができる。処理装置は、導出された神経学的活動データ及び得られたタスク結果データを、第1及び第2のデータベース部分の両方におけるデータと比較するように適合され得る。
【0034】
本開示で言及される基準神経学的活動データは、基準データが対応する人々の集団についての脳の一つ又はそれより多くの領域についての脳活動マップを含むことができる。基準神経学的活動データは追加的に又は代替的に、人々の集団の神経学的活動データから導出される統計的要約データを含んでもよい。基準神経学的活動データに加えて、データベースは母集団の脳画像データをさらに含むことができ、及び/又は母集団の脳画像データ、例えば母集団の一つ又はそれより多くの平均脳画像から導出された統計的要約データを含むことができる。
【0035】
基準神経学的活動データ及び基準タスク結果データは、以前の患者の集団についての活動データ及びタスク結果データから事前に計算された統計データを含み得る。統計データは、平均、中央値、四分位範囲、又は任意の他の統計メトリックなどの一つ又はそれより多くの統計メトリックを備え得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、処理装置が患者についての取得された神経学的活動データと、患者についてのタスク結果データとに基づいてデータベースを更新するように適合され得る。
【0037】
これは得られた神経学的活動データ及び認知タスク結果データをデータベースに単に付加することを含んでもよく、又は平均又は他の統計メトリックを更新するなど、データベースによって記憶された統計データを再計算することをさらに含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、データベース内のデータが例えば、性別、年齢、及び/又は他の所定の特性に基づいて、データが関係する人々の集団の一つ又はそれより多くの人口統計学的分類に基づいて層別化され得る。
【0039】
処理装置は検査中の患者についての一つ又はそれより多くの人口統計学的分類のインジケーションを取得し、比較を実行する前に、患者の人口統計学的分類に従って検索されたデータベースをフィルタリングするようにさらに適合され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、処理装置が一連の認知タスクの実行を制御し、各タスクに関連付けられたfMRIを取得するように適合され得る。決定木構造に従うことができ、ここで、各認知タスクの結果はもしあれば、例えば患者診断の絞り込みを容易にする目的で、さらなるタスクをどのように施すべきかを決定する。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態では、処理装置が取得された認知タスク結果に依存して、及び/又は取得された神経学的活動データに依存して、患者に施されるべき新しい認知試験を決定するための選択アルゴリズムを適用するようにさらに適合され得る。
【0042】
処理装置は、基準活動データと、選択された認知タスクに関連付けられた基準認知タスク結果データとを含む規範的データベースをデータストアから検索するようにさらに適合され得る。
【0043】
処理装置は選択された認知タスクを管理するために患者インタフェース制御モジュールを制御し、選択された認知タスクが施されている間に患者の第2のfMRIデータを取得するためにMRI撮像装置を制御するための制御信号を生成するようにさらに適合されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、fMRIデータを取得することは、fMRIデータを取得するようにMRI撮像装置を制御するための制御信号を生成する処理装置を含んでもよい。他の実施形態では、処理装置がfMRIデータを、その取得を制御することなく、単に受動的に受信することができる。
【0045】
本発明のさらなる態様は、本開示で説明される任意の実施形態による処理装置と、患者のfMRIデータを取得するための処理装置と動作可能に結合されたMRI撮像装置とを備えるシステムを提供する。
【0046】
本発明の別の態様は、
脳の一つ又はそれより多くの領域に対応する患者に関する機能的MRI(fMRI)データを取得するステップであって、前記fMRIデータは、前記患者が所定の認知タスクを実行している間に取得される、ステップと、
前記fMRIデータを取得している間に施された前記認知タスクに対応する、前記患者に対する認知タスク結果データを取得するステップと、
前記取得されたfMRIデータから神経学的活動データを導出するステップと、
以前の患者の集団について、関心神経又は精神障害及び所定の認知タスクに関連する基準神経学的活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する事前に取得された規範的データベースをデータストアから検索するステップと、
患者の神経学的活動データ及びタスク結果データを基準神経学的活動データ及び基準タスク結果データと比較するステップと、
前記比較に基づいて出力をユーザインターフェースに提供するステップと
を含むコンピュータ実施方法を提供する。
【0047】
本発明の別の態様はMRI撮像装置及びユーザインターフェースに動作可能に結合されたプロセッサが実行されるとき、上記で概説した方法をプロセッサに実行させるように、又は本開示で説明する任意の実施形態に従って構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0048】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【0049】
本発明をより良く理解し、どのように実施することができるかをより明確に示すために、ここで、単なる例として、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の一つ又はそれより多くの実施形態による処理装置及びシステムを示す。
【
図2】一つ又はそれより多くの実施形態による例示的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0052】
詳細な説明及び特定の例は装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるのであろう。図は単に概略的なものであり、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。また、同じ又は同様の部分を示すために、図面全体を通して同じ参照番号が使用されることを理解されたい。
【0053】
本発明は、患者の精神医学的又は神経学的健康の診断分析の一部として使用するための方法及び装置を提供する。実施形態は患者が認知タスクを実行している間に、患者の脳の一つ又はそれより多くの領域の特定のセットのfMRIデータを取得し、同時に、認知タスクにおける患者の性能の結果を記録することを提案する。脳領域についての認知タスク結果及びfMRIデータの両方組み合わせを使用して、患者の認知健康状態に関するインジケーションを提供する。より具体的には、患者の集団についてのfMRIデータ結果及び認知タスク結果の規範的データベースが基準として使用される。これは、正常な基準及び異常な基準を提供するために、健康な患者及び非健康な患者の両方についての結果を記憶し得る。
【0054】
背景として、不十分な認知課題の結果は、神経学的又は精神医学的疾患と関連し得ることが見出された。例えば、論文Russman Block, S., King, A.P., Sripada, R.K., Weissman, D.H., Welsh, R., & Liberzon, I.(2017)による「心的外傷後ストレス障害における方向付け注意の乱れの行動及び神経相関」(Cognitive, Affective, & Behavioral Neuroscience, 17(2), 422乃至436)が参照される。
【0055】
本稿では、fMRI画像と注意ネットワークタスク(注意とエグゼクティブコントロールを検討するため)を用いた研究について述べた。これは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に罹患している患者のfMRIデータが注意ネットワークタスクの性能中に注意ネットワークにおいてより大きな静止状態機能的接続性を示すことを見出した。この情報は、PTSDに関する患者の鑑別診断を知らせるために使用することができる。特に、患者の注意が損なわれている場合、これは、注意ネットワークタスクにおける平均未満の性能として、ならびにこのタスクの性能の間の正常な脳活性化パターンからの逸脱の両方として提示される。患者の仕事に対する能力が低下するが、仕事の性能中に正常な脳活性化を示す場合、彼らは能力の低下を引き起こす別の基礎的な欠損を有する可能性が高い。その場合、注意ネットワークタスク上の性能の低下はタスクを実行するためにも必要とされる注意以外の認知機能又はネットワーク、例えば、実行機能の障害に起因する可能性がある。これは、概念を説明するための例として簡単に提示される。
【0056】
より一般的には、本発明の実施形態が機能的神経撮像及び認知試験に基づいて、認知障害及び/又は関連する脳損傷(もしあれば)の改善された検出のための方法及びシステムを提案する。このアプローチは、特定の認知試験又はタスクの性能中にアクティブである特定の脳領域及びネットワークを撮像することに基づく。神経画像診断及び治療における臨床決定支援のために使用され得る方法及びシステムが提案される。特定の脳損傷及び関連する認知障害の検出は、関連する脳領域における認知タスク性能及び脳活動の両方を規範的fMRIデータベースと比較することによって最適化される。機能的神経画像データ及び認知試験からのデータを統合する方法及びシステムは、臨床実践においてまだ使用されておらず、広範囲の後天性及び神経変性脳損傷及び関連する認知障害の経時的な診断及び進行の予測の精度の改善を補助することによって臨床的必要性を解決するのであろう。
【0057】
また、わずかな認知障害及び関連する脳損傷の検出に近づいてきた現在のアプローチは、患者特有ではなく、一般的であることにも留意されたい。言い換えれば、現在のアプローチは、個人特定情報を考慮していない。したがって、少なくとも1組の実施形態によるさらなる目的はより個別化された診断インジケーションを可能にし、また、時間認知障害(及び関連する危険因子)の進行の予測も可能にする方法を提供することである。
【0058】
図1は、本発明の少なくとも1組の実施形態による例示的なシステム10を概略的に示す。
【0059】
システム10は、処理装置20を備える。処理装置は、入力/出力22と、一つ又はそれより多くのプロセッサ24のセットとを含む。
【0060】
一つ又はそれより多くのプロセッサ24は、少なくとも1つの動作モードに従って、以下のステップを備える方法を実装するように適合される。
【0061】
この方法は、患者の一つ又はそれより多くの所定の脳領域に対応する患者の機能的MRI(fMRI)データ28を取得することを含む。一つ又はそれより多くの脳領域は関心の特定の神経又は精神障害に関連するように選択されてもよく、あるいは一つ又はそれより多くの脳領域の標準セットが選択されてもよい。fMRIデータは、患者が所定の認知タスクを実行している間に取得されるデータである。fMRIデータは
図1に示されるように、処理装置の入出力22に動作可能に結合されたMRI撮像装置30から取得され得る。言い換えれば、データは、処理装置によって、その取得に伴ってリアルタイム又はほぼリアルタイムで受信される。処理装置は、この目的のために入力/出力22と動作可能に結合されて示されている。あるいはデータがデータストアから受信されてもよく、データはより早い時間で取得された。
【0062】
特定の一つ又はそれより多くの脳位置に関するデータの取得に関して、これは、MRI画像装置のオペレータによって設定されてもよく、又はMRI画像装置30の制御モジュールによって自動的に設定されてもよい。
【0063】
MRI画像装置の制御は、最も典型的にはMRI画像装置に属する別個のローカル制御モジュールによって実行される。しかしながら、MRI撮像装置の制御が処理装置20によって実行されることも選択肢である。例えば、処理装置はMRI装置30の動作制御を実行し、本開示で概説されている主な発明概念の一部であるデータ処理ステップを実行する統合制御モジュールであってもよい。
【0064】
認知タスク又は認知試験の実行に関して、これは、典型的にはMRI装置のボアトンネル内に取り付けられたディスプレイを有する感覚出力装置、及び通常は被検体が装着するためのヘッドホンを含む患者インジケータサブシステム32を用いて実行することができる。患者へのタスク又はテストプロンプトの提示は処理装置20によって制御される(
図1に概略的に示されるように)代わりに、別個の制御モジュールによって制御されてもよい。場合によっては、MRI撮像装置の制御モジュールによって制御されてもよい。認知タスク又は認知検査は、fMRIデータの取得と同時に患者に施される。
【0065】
処理装置はさらに、fMRIデータを取得する間に施される認知タスクに対応する、患者の認知タスク結果データを取得するように適合される。認知タスクの管理は、一つ又はそれより多くの感覚プロンプトのシーケンスをユーザに提示することを含む。それは、典型的にはユーザからの一つ又はそれより多くの応答を検出することをさらに含む。これらの応答は例えば、一つ又はそれより多くのボタンを有するハンドヘルド制御装置などのユーザ制御装置を介して、ユーザによって直接示され得る。他の場合には、応答がユーザによって口頭で発行され、コンピュータコンソール又は他の入力デバイスを使用してMRIオペレータによって手動で入力され得る。タスク結果への参照はユーザからの生の応答データを含むことができ、及び/又は、テスト又はタスクにおける成功のインジケーション、例えば、いくつかの正解、又は応答から導出された任意の他のパフォーマンスメトリックを意味するパフォーマンスデータを含むことができる。
【0066】
処理装置は取得されたfMRIデータから、一つ又はそれより多くの脳領域の各々に関連付けられた神経学的活動データを導出するようにさらに適合される。これは、たとえば、一つ又はそれより多くの領域の各々のためのBOLDデータを備え得る。活動データはエリアごとに、局所的な空間アクティビティマッピングを含むことができ、又は単に、エリアごとに単一のアクティビティメトリック値を含むことができる。活動データは、時間の関数として各領域における脳活動のインジケーションを含むことができる。
【0067】
処理装置はさらに、データストア34から、患者の集団について、関心神経又は精神障害に関連し、かつ所定の認知タスクに関連する、基準神経学的活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する、事前に取得された規範的データベース36を検索するように適合される。これは、患者の集団についての活動データ及びタスク結果データから事前に計算された統計的要約データを含むことができる。統計データは、平均、中央値、四分位範囲、又は任意の他の統計メトリックなどの一つ又はそれより多くの統計メトリックを備え得る。
【0068】
処理装置はさらに、患者の活動データ及びタスク結果データを、基準活動データ及び基準タスク結果データと比較するように適合される。
【0069】
処理装置は、比較に基づいてユーザインターフェース26に出力23を提供するようにさらに適合される。以下にさらに詳細に概説されるように、提供される出力には様々なオプションがある。出力は単に、比較の結果の表示を含んでもよい。これだけで、特にデータベースが健康な患者に関するデータベース部分と異常な患者に関する第2のデータベース部分とを含み、処理装置が取得されたデータを両方のデータベース部分と比較する場合、有益な診断支援が提供される。他の例では、診断インジケータが比較に基づいて、例えば、決定木アルゴリズムなどのアルゴリズムに基づいて、又は比較結果に関連する一つ又はそれより多くの閾値に基づいて、又は機械学習アルゴリズムに基づいて、さらなる処理によって生成され得る。
【0070】
例えば、処理装置は、データベースに記録された平均神経学的活動レベルからの患者の神経学的活動の偏差の程度、及び/又はデータベースに記録された一つ又はそれより多くの平均値からの患者の認知タスク結果の偏差の程度を計算することができる。一つ又はそれより多くの所定の閾値を、導出された偏差の程度の一方又は両方に適用して、それによって、患者が関心の神経又は精神障害を有するかどうかを決定することができる。以下でより詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では複数の規範的データベースを使用することができ、各々は異なる関心神経又は精神障害に関連する。各データベース内の基準データを用いて、患者の活動及び認知タスク結果データの偏差の程度を決定することによって、もしあれば、患者が罹患している関連する神経又は精神障害のうちのどれが罹患しているかについての決定を行うことができる。
【0071】
本発明の一態様は、処理装置のみを提供する。
【0072】
本発明の別の態様は、処理装置によって実行されるものとして説明された上述のステップを含むコンピュータ実装方法を提供する。
【0073】
本発明のさらなる態様は、処理装置20と、患者のfMRIデータを取得するための処理装置と動作可能に結合されたMRI撮像装置30とを備えるシステムを提供する。システムは、ユーザインターフェース26をさらに備えることができる。システムは、
図1に示される、又は本開示の他の場所で説明される構成要素のうちの任意の他の構成要素をさらに備えてもよい。
【0074】
システムは患者に施すための複数の異なる認知タスク又は試験を記憶するデータベースをさらに含むことができ、そこからシステムが選択することができる。これは、基準データのデータベース36を記憶するために使用されるのと同じデータストア34に、又は別個のデータストアに記憶され得る。
【0075】
fMRIデータの取得をさらに説明するために、
図2は、MRI撮像装置30がより詳細に示される、一つ又はそれより多くの実施形態による例示的なシステム10を示す。
図2は、処理装置20と動作可能に結合されたMRI撮像装置30を示す。システム10の他の任意のコンポーネントは、説明を簡単にするために示されていない。
【0076】
MRI撮像装置30は、磁石304を備える。磁石304は、それを通じてタイプボア306を有する超伝導円筒形磁石である。異なるタイプの磁石の使用も可能であり、例えば、分割円筒形磁石といわゆる開放磁石の両方を使用することも可能である。分割円筒形磁石はクライオスタットが磁石の等平面へのアクセスを可能にするために2つのセクションに分割されていることを除いて、規格円筒形磁石に類似しており、そのような磁石は例えば、荷電粒子ビーム治療と併せて使用され得る。開放磁石は2つの磁石セクションを有し、一方が他方の上に、被検体を受け入れるのに十分な大きさの間の空間、すなわちヘルムホルツコイルの領域と同様の2つのセクション領域の配置を有する。開放磁石は、被検体の閉じ込めがより少ないため、人気がある。円筒形磁石のクライオスタットの内部には、超伝導コイルの集合体がある。円筒形磁石304のボア306内には、磁場が強く、磁気共鳴CTを実行するのに十分に均一である撮像ゾーン308がある。関心領域309が撮像ゾーン308内に示されている。典型的に取得される磁気共鳴データは、関心領域について取得される。被検体318は被検体318の少なくとも一部が撮像ゾーン308及び関心領域309内にあるように、被検体サポート320によって支持されているように示されている。
【0077】
磁石のボア306内には、磁石304の撮像ゾーン308内の磁気スピンを空間的に符号化するための予備的な磁気共鳴データの取得のために使用される一組の磁場勾配コイル310もある。傾斜磁場コイル310は、傾斜磁場コイル電源312に接続される。磁場勾配コイル310は、概略的にのみ示されている。典型的には、磁場勾配コイル310が3つの直交する空間方向に空間的に符号化するための3つの別個のコイルセットを含む。傾斜磁場電源は、傾斜磁場コイルに電流を供給する。磁場勾配コイル310に供給される電流は、時間の関数として制御され、ランプ又はパルス化され得る。
【0078】
撮像ゾーン308に隣接して、撮像ゾーン308内の磁気スピンの向きを操作し、また撮像ゾーン308内のスピンからの無線送信を受信するための無線周波数コイル314がある。この例では、高周波コイル314はヘッドコイルであり、関心領域309は被検体318の脳を撮像する。
【0079】
無線周波数アンテナは、複数のコイル要素を含むことができる。無線周波数アンテナは、チャネル又はアンテナと呼ばれることもある。高周波コイル314は、無線周波数トランシーバ316に接続される。無線周波数コイル314及び無線周波数トランシーバ316は、別個の送信コイル及び受信コイル、ならびに別個の送信器及び受信器によって置き換えられ得る。無線周波数コイル314及び無線周波数トランシーバ316は、単に概略的に示されていることを理解されたい。無線周波数コイル314はまた、専用送信アンテナ及び専用受信アンテナを表すことを意図している。同様に、トランシーバ316は、別個の送信器及び受信器を表すこともできる。無線周波数コイル314はまた、複数の受信/送信素子を有することができ、無線周波数トランシーバ316は、複数の受信/送信チャネルを有することができる。例えば、検知などの並列イメージング技術が実行される場合、高周波コイル314は、複数のコイル要素を有することになる。
【0080】
磁石304のボア306内には、患者インジケータ32がある。被検体インジケータは例えば、被検体318に音声及び/又は視覚刺激を提供することができる。患者インジケータ32は、ユーザに刺激又はプロンプトを提供することができる。患者インジケータ32は例えば、被検体318に見える光を有することができ、ディスプレイとすることができ、又はオーディオ信号を提供することができる。トランシーバ316、勾配コントローラ312、及び患者インジケータ32は、コンピュータシステム102のハードウェアインターフェース106に接続されているものとして示されている。
【0081】
患者インジケータ32は、認知タスクを被検体に施す際に使用される。
【0082】
患者インジケータ32は認知タスクの一部としての応答を患者が示すことを可能にする入力装置、例えば、ハンドヘルドボタン又は制御をさらに含むことができる。
【0083】
医用撮像装置は、プロセッサ104を備えるコンピュータ102を備えるものとしてさらに示されている。プロセッサは、オプションのハードウェアインターフェース106及びオプションのユーザインターフェース108に接続されているものとして示されている。ユーザインターフェース108は、画像をレンダリングするためのディスプレイであるか、又はそれを含み得る。ハードウェアインターフェース106は例えば、ネットワークインターフェースであってもよく、又は医用イメージングシステムの他の構成要素とデータ又はコマンドを交換するために使用されてもよい。
【0084】
プロセッサ104は、メモリ110に接続されているものとしてさらに示されている。メモリ110は、プロセッサ104にアクセス可能なメモリの任意の組み合わせであってもよい。これは、メインメモリ、キャッシュメモリ、及びフラッシュRAM、ハードドライブ、又は他の記憶装置などの不揮発性メモリなどを含むことができる。いくつかの例では、メモリ104が非一時的コンピュータ可読媒体であると見なされ得る。
【0085】
メモリ110は、機械実行可能命令120を含むものとして示されている。機械実行可能命令120はプロセッサ104が様々なデータ処理タスクを実行することを可能にし、また、いくつかの例では、医用イメージングシステム100の他の構成要素を制御することを可能にする。機械実行可能命令120は、プロセッサ104が本方法の少なくとも一部を実行することを可能にする。
【0086】
メモリ110は、パルスシーケンスコマンド330を含むものとしてさらに示されている。パルスシーケンスコマンドは、プロセッサ104が磁気共鳴撮像システム302を制御することを可能にするそのようなコマンドに変換され得るコマンド又はデータの何れかである。メモリ110はさらに、パルスシーケンスコマンド330を用いて磁気共鳴撮像システム302を制御することによって取得された磁気共鳴撮像データ332を含むものとして示されている。
【0087】
次に、好ましい実施形態のセットによるシステムの実施について説明する。
【0088】
単純な場合を表す第1のセットの実施形態によれば、単一の認知タスクがMRI装置30内にある間に患者に施され、fMRIデータがタスクの性能中に患者について取得される。神経学的活動データは、スキャンされる一つ又はそれより多くの所定の脳領域の各々についてのfMRIデータから導出される。基準活動及び認知タスク結果データの適切なデータベースはデータストア34から検索され、これは施された認知タスクと、調査中の神経又は精神障害との特定の組み合わせに対応する。上述のように、データストア内の基準データは比較器として使用され、比較の結果のインジケーションであってもよく、又は比較に基づいて、たとえば診断アルゴリズム又はモデルの使用に基づいて取得された診断インジケーションであってもよい出力が生成される。
【0089】
好ましくは、fMRIデータに加えて、MRI撮像装置30を用いて患者をスキャンするとき、構造的MRIデータも、一つ又はそれより多くの関心脳領域のセットについて取得される。好ましくは、基準データベース36が新しい患者について得られた構造的MRIデータの比較器として使用することができる患者の集団についての基準構造的データをさらに記憶する。
【0090】
fMRIデータを取得することは、処理装置20がfMRIデータを取得するようにMRI撮像装置30を制御するための制御信号を生成することを含んでもよい。あるいは、データの取得がMRI撮像装置の別個の制御モジュールによって制御されてもよい。
【0091】
スキャンされる特定の一つ又はそれより多くの脳領域はMRI撮像装置30のオペレータによって選択されてもよく、又は例えば、ルックアップテーブル又はアルゴリズムに基づいて、システムによって自動的に選択されてもよく、これは特定の関心神経又は精神障害及び/又は施されるべき認知タスクを示すオペレータからの入力に基づいてもよい。各障害は典型的には障害によって影響を受け得る特定の脳領域に関連し、また、各認知タスクはタスクを実行するときに機能する特定の脳領域に関連し得、より具体的にはタスクを実行するときに機能するそれらの領域内の特定のニューラルネットワークに関連し得る。
【0092】
施される認知タスク又は認知試験に関して、特定のニューラルネットワークの機能及び認知活動のタイプをテストすることに関連する、多種多様な認知タスク又は認知試験が当技術分野で知られている。本事例では注意及び実行機能を測定する一つ又はそれより多くの試験を施すことが特に興味深い場合があるが、それはこれらの認知機能が例えば、軽度の外傷性脳損傷、加齢、又は脳の小血管径に起因して、わずかな認知機能障害を有する患者においてしばしば損なわれるからである。
【0093】
より一般的には、施される認知試験が例えば、注意、実行機能、メモリ、知覚、運動機能、言語のうちの1つ又は複数を含む、様々な認知領域にわたって認知機能を評価するためのものを含み得る。
【0094】
上述のように、システム10は患者へ施すための複数の異なる認知タスク又はテストを保持し、一つ又はそれより多くの選択を行うことができるデータベース36を記憶するデータストア34を含むことができる。
【0095】
各記憶された認知タスク又はテストは、システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、所定のプロンプトのシーケンスを患者インジケータサブシステム32を介して患者に通信させるコンピュータプログラムコードのセットによって表されるコンピュータルーチン又はプログラムを効果的に含むことができる。これらは、視覚プロンプト、音響プロンプト、触覚プロンプト、又は任意の他の感覚プロンプトの任意の組合せを含むことができる。プロンプトは患者に、彼らの心の中で特定の認知機能を実行するように依頼することができる。追加又は代替として、それは、例えば、口頭で、又はユーザ入力装置の制御を通して与えられ得る、一つ又はそれより多くの応答を提供するように患者に求めてもよい。
【0096】
応答は、患者の認知タスクの結果の基礎を形成する。生の応答がタスクの結果として使用されるか、又は応答がベースライン又は参照(例えば、正解のセット)と比較され得、結果は、患者の応答とこのベースライン又は参照との比較によって提供される。結果は、操作者によって手動で、又は自動的に記録される。
【0097】
認知タスク又は認知試験は、好ましくは高い感度を有するように事前に選択される。認知試験は神経撮像中の使用に適合し、検証されるように選択することができる。試験の微調整は、特定の臨床的必要性及び研究から得られた洞察に基づいて、経時的に行うことができる。したがって、テストは編集可能である。
【0098】
いくつかの例では、患者に施される認知タスク又は認知試験が年齢及び教育レベルなど、患者の一つ又はそれより多くの人口統計学的分類に部分的に基づいて選択され得る。あるいは、人口統計学的分類に基づいて施される認知タスクを変化させるのではなく、所与の選択されたタスクの一つ又はそれより多くのパラメータを、年齢及び教育レベルなどの患者の一つ又はそれより多くの特性に応じて調整することができる。これは、認知能力の差異を反映し、及び/又は患者が有し得る認知欠損を反映することができる、個別化された試験の形成を提供する。したがって、言い換えれば、所与の試験の難易度のレベルは、患者の特性に基づいて調整され得る。
【0099】
好ましい例では、規範的データベース36が関心神経又は精神障害に罹患していない患者の第1の集団に関連する基準データを含む少なくとも第1のデータベース部分と、神経又は精神障害に罹患している患者の第2の集団に関連する基準データを含む第2のデータベース部分とを含む。データベース部分が参照されるが、健康な集団及び病理学的集団の基準データは実際には別々のデータベースに記憶され得る。言い換えれば、対象とする認知タスクと神経又は精神障害との各組み合わせについて、健常個体からの神経撮像及び認知試験性能データを含むデータベース又はデータベース部分、ならびに脳損傷を有する個体からの神経撮像及び認知試験性能データを含むデータベース又はデータベース部分が存在し得る。両方のデータベースは例えば、年齢、性別、教育レベル、及び/又は他の人口統計学的要因に基づいて、及び診断に基づいて、層別化され得る。
【0100】
処理装置は、導出された活動メトリックデータ及び得られたタスク結果データを、第1及び第2のデータベース部分の両方におけるデータと比較するように適合される。
【0101】
規範的データベース36に記憶されたデータに関しては、異なるオプションがある。患者の全集団についての複数の機能的(及び任意に構造的)神経画像データ記録が記憶されてもよい。あるいは、各データベースが患者の全集団、例えば、平均、又は四分位範囲などに関する一つ又はそれより多くの統計的メトリックを記憶し得る。規範的データベースに記憶されるデータのタイプは、画像データであってもよい。あるいはそれは例えば、一つ又はそれより多くの脳領域における活動レベルを示す数値データであってもよく、任意選択的に、これは患者の集団について、データに関連する一つ又はそれより多くの統計的測定基準、例えば、一つ又はそれより多くの脳領域についての平均活動レベルの形成である。神経学的活動データは例えば、血液酸素レベル依存性(BOLD)コントラストデータであってもよい。後者の場合、前に言及した比較は、各スキャン脳領域についての導出された活動レベルを、各脳領域についてデータベースに記憶された平均レベル又は範囲又は閾値と比較することを含み得る。例えば、患者のfMRIデータはその患者のBOLD活動がデータベース内の基準(すなわち、平均)から1標準偏差以内であるデータベース内の基準データと一致すると考えることができる。
【0102】
各データベースにおけるデータが対応する患者の集団は様々な異なる人口統計学的グループ(年齢、性別、及び教育レベル)からの患者を含むことができ、患者の臨床症状に関する情報も含むことができる。
【0103】
規範的データベース36は、患者の同じ参照集団について、データベースが対応する認知タスクの結果を示すデータをさらに含む。この場合も、これは、集団の各患者についての個々のデータ記録を含むことができ、又は集団全体、又は集団の人口統計的に層別化されたサブセグメントについてのタスク結果についての統計的メトリックを含むことができる。
【0104】
第2の好ましい実施形態のセットは上記のオプションとして簡単に論じたように、データストア34が複数の異なる規範的データベースを記憶し、それぞれが、関心神経又は精神障害、及びデータを取得するときに実施される認知タスク又は認知試験の異なる組合せに対応することを除いて、第1の実施形態と同じである。
【0105】
この一連の実施形態は、少なくとも2つの追加の有利な機能性を可能にする。第1に、オペレータ又はシステムは特定の神経又は精神障害を試験するために施される特定の認知タスクに関して効果的に選択を有し、また、試験するために多くの異なる神経又は精神障害からの選択を有する。したがって、このセットの実施形態におけるシステム及び方法は被検体を試験し、その認知的健康を分析するためのより広い範囲の選択肢を可能にする。第1の機能の後に続く第2の追加の機能は、システム又はオペレータが単一の所与の神経又は精神障害の試験の一部として、複数の異なる認知試験を実施すること(及び各々について対応するfMRIデータセットを取得すること)を選択することができ、及び/又は複数の異なる神経又は精神障害の試験を選択することができることである。後者のケースでは、システムが異なる神経又は精神障害の間の鑑別診断を支援する手段として、異なる神経又は精神障害に関連する試験を含む一連の試験(一連の試験として知られる)を実施することができる。
【0106】
したがって、このセットの実施形態ではデータストアが複数の異なる規範的データベースを記憶し、それぞれが、関心神経障害と、施される認知タスクとの異なる特定の組み合わせに関連する基準活動データ及び基準認知タスク結果データを記憶する。
【0107】
処理装置20は、新たに取得された結果データが対応する特定の神経障害及び認知タスクに従ってデータベースに問い合わせることができる。
【0108】
使用において、単一の認知タスクのみが施されるか、又は少なくとも一度に1つのみが施される実施形態のこの第2のセットによれば、実施されるプロセスは、要約すると、以下のように実行され得る。
【0109】
プロセスは、
所定のセットの異なる障害から関心障害を選択する(例えば、オペレータが選択する、又はコンピュータプログラムが選択する)ステップと、
選択された障害について、選択された障害に関連する一つ又はそれより多くの認知試験/タスクのセットのうちの1つをさらに選択するステップと、
障害に関連する一つ又はそれより多くの関心脳領域のセットを識別するステップと、
選択された試験/タスクを患者に施す間に、それらの脳領域に関連するfMRIデータを取得するステップと、
タスク中の対象インジケーションに基づいて認知タスクの結果を、前記fMRIデータの取得と同時に取得するステップと、
選択された障害及び選択された認知タスクについての神経活動及び認知タスク結果についての統計結果を記憶するデータベースをデータストアから検索するステップと、
一つ又はそれより多くの脳領域の各々に関連する取得されたfMRIデータ神経学的活動データから導出するステップと、
患者の活動データ及びタスク結果データを基準活動データ及び基準タスク結果データと比較するステップと
を含むことができる。
【0110】
上記のプロセスは、対象となる複数の異なる神経又は精神障害の各々について、複数回繰り返されてもよい。このことから、鑑別診断インジケーションは、関心対象の異なる神経又は精神障害の間で導き出すことができる。
【0111】
複数の異なる試験(すなわち、一連の試験)が実施される場合、要約すると、以下のプロセスは、以下の通りであり得る。処理装置は、この場合、
【0112】
異なる認知タスクが患者に施されている間にそれぞれ取得された、患者に関する複数のfMRIデータセットを取得し、施された認知タスクごとに患者に関する認知タスク結果を取得し、
データストアから、それぞれ異なる認知タスクに関連し、さらに神経又は精神障害に関連する規範的データベースを検索し、
各認知タスクについて、対応するfMRIデータセットから導出された活動データを、対応する検索されたデータベース内の基準活動データと比較し、認知タスク結果を、前記対応するデータベース内の基準認知タスク結果と比較する
ように適合され得る。
【0113】
複数の認知試験は全て、関心の同じ神経学的もしくは精神医学的障害又は関心の異なる障害に関連し得る。
【0114】
本方法は、上記プロセスに基づいて、鑑別診断インジケータを提供することをさらに含み得る。
【0115】
いくつかの実施形態では複数の認知試験が患者に施される場合、施される各新しい試験は前に施された認知試験及び関連する神経撮像結果に基づく性能に基づいて、処理装置20によって選択され得る。これは、認知試験性能及び脳活性化パターンに基づいて、評価後(又は可能であれば即座にリアルタイムで)行うことができる。例えば、患者が注意を評価する試験で正常な性能を示すが、異常な脳活性化パターンを示す場合、これは非障害認知機能を有する障害認知機能の補償を示唆する認知試験を実行するために異なる認知機能を使用することを示し得る。この場合、脳活性化パターンから明らかなように、注意試験を実施するために使用される認知機能を評価する追加の認知試験を実施することが推奨され得る。
【0116】
少なくともいくつかの例によれば、処理装置20は、取得された認知タスク結果に依存して、及び/又は取得された神経活動データに依存して、患者に施されるべき新しい認知試験を決定するために選択アルゴリズムを適用するように適合される。処理装置は、基準活動データと、選択された認知タスクに関連付けられた基準認知タスク結果データとを含む規範的データベースをデータストアから検索するようにさらに適合され得る。処理装置は選択された認知タスクを管理するために患者インターフェース制御モジュール(例えば、上述した患者インジケータサブシステム32の制御モジュール)を制御するための、及び選択された認知タスクが施されている間に患者の第2のfMRIデータを取得するためにMRI撮像装置を制御するための制御信号を生成するようにさらに適合され得る。
【0117】
選択アルゴリズムは例えば、所定の決定木アルゴリズムであってもよく、1つの認知タスク及び/又は関連する神経学的活動データの結果が、逐次的な階層的決定構造において施されるべき次のタスクを決定するためにアルゴリズムによって使用される。
【0118】
上述の実施形態の何れかによれば、規範的データベース36内のデータは、データが関係する患者の集団の一つ又はそれより多くの人口統計学的分類に基づいて層別化されることが好ましい。これらの人口統計学的分類は例えば、年齢、性別、職業、教育レベル、及び/又は他の人口統計学的要因を含むことができる。データは既往歴、又は生活習慣(例えば、飲酒、喫煙)に関する因子などのさらなる特性に基づいてさらに層別化され得る。
【0119】
この場合、処理装置はさらに、患者についての一つ又はそれより多くの人口統計学的分類のインジケーションを取得し、比較を実行する前に、患者の人口統計学的分類に従って規範的データベースをフィルタリングするように適合され得る。
【0120】
したがって、性別、年齢、及び他の所定の特徴を説明する患者の類似のグループ間で比較が行われる。
【0121】
上述のように、神経活動データ及び認知タスク結果データは、健常個体に対応するデータベース部分と、特定の障害を有する個体に対応するデータベース部分との両方と比較され得る。マルチモーダル情報は、規範的データベース内の各個人について記憶されてもよい。比較は、上記のように層化された試料を用いて行うことができる。
【0122】
上述の好ましい実施形態のセットの何れかによれば、方法は、一つ又はそれより多くのデータベース36の各々における基準データとの活動データ及び認知タスク結果データの比較に基づいて、ユーザインターフェースのための出力を生成することを含む。生成される出力には、さまざまなオプションがあり、これを導出する方法がある。
【0123】
いくつかの例では、ユーザインターフェース26への出力が単に比較の結果の表現を含む。例えば、結果はユーザインターフェース26上に提示され、規範的データベース36に表された規範的サンプルと比較された認知試験のパフォーマンスを示し、必要に応じて、関連する特性、例えば、年齢及び教育レベルについて補正され、また、データベース中に表された規範的サンプルと比較された異なる脳領域における神経活動も示す。
【0124】
さらなる例では、比較に基づいて一つ又はそれより多くの神経又は精神障害の診断インジケータを決定し、診断インジケータを出力としてユーザインターフェースに提供するために、追加の処理が実行され得る。
【0125】
いくつかの例では、比較の結果が患者の神経又は精神障害、脳における認知障害のタイプ及び位置、任意の脳損傷のタイプ及び位置のうちの1つ又は複数を決定するために、診断アルゴリズム又はモデルを用いて処理され得る。
【0126】
いくつかの例では、比較の結果をアルゴリズムで処理して、患者の認知機能及び脳損傷の評価を生成することができる。この評価には、どの認知領域、及びどの脳領域及びネットワークが障害されているかが含まれ、また、障害の重症度の評価も含まれる。評価はさらに、識別された任意の欠陥を回避するために患者が使用することができる一つ又はそれより多くの補償機構のインジケーションも含むことができる。
【0127】
生成された出力が通信される上述のユーザインターフェース26は、一つ又はそれより多くの感覚出力コンポーネントを備えることができる。これらは、表示装置、音響出力デバイス、触覚出力デバイスのうちの1つ又は複数を含み得る。ユーザインターフェースは、キーパッド及び/又はポインタデバイスなどの一つ又はそれより多くのユーザ入力コンポーネントをさらに含み得る。ユーザインターフェースは、いくつかの実施形態ではタッチスクリーンディスプレイを備え得る。
【0128】
ユーザインターフェース26に提供される出力は、患者のデータとデータベース36内の基準データとの間で実行された前述の比較の結果のインジケーションを含むことができる。
【0129】
好ましい実施形態では、患者について取得されたfMRI画像データがリアルタイムでユーザインターフェース26のディスプレイ上に提示される。好ましくは、導出された神経学的活動データの視覚的表現もまた、ディスプレイ上に提示され、例えば、fMRI画像データ上にオーバーレイされ、又はfMRI画像データの一部として提供される。
【0130】
好ましい実施形態では、一つ又はそれより多くのスキャンされた脳領域における患者の神経学的活動と、規範的データベース36に表される活動との間の比較の視覚的表現がディスプレイ上に提供され得る。例えば、2つの画像をスクリーン上に並べて提示することができ、1つは位置及び/又は時間の関数として患者の脳内の神経学的活動の視覚マップ又は描写を表し、1つはデータベース36に表される患者の集団の位置及び/又は時間の関数としての平均神経学的活動の視覚マップ又は描写を表す。平均画像は上述のように、患者の人口統計学的分類に従ってフィルタリングされた、母集団のサブ階層の平均とすることができる。ディスプレイはさらに、健康な集団と、関心神経又は精神障害と診断された集団との両方について、平均神経学的活動の画像を示してもよい。したがって、操作者は、患者の結果を健康な集団及び非健康な集団の結果と容易に比較することができる。
【0131】
神経学的活動の比較を提示するだけでなく、ユーザインターフェース26は例えば、健康な集団の平均からの、及び/又は非健康な集団の平均からの患者の活動レベルの偏差を示す、計算された比較結果も提示する。これは、視差の数値的インジケーション、例えば、各場合において平均から離れた多数の標準偏差の形成で提供され得る。
【0132】
神経学的活動結果の比較を提示するだけでなく、ユーザインターフェース26は、好ましくはデータベース36内の患者の集団についての同じタスクについての結果の平均と、患者の認知タスク結果の比較のインジケーションも提供する。再度、好ましくはこの比較が行われ、結果が健康な個体及び非健康な個体の両方の集団について、具体的には患者の人口統計学的分類に一致するデータベース36集団の基層について提示される。
【0133】
上記のように、複数の認知試験が(同じ及び/又は異なる神経又は精神障害について)施され、各患者について得られたデータの場合、上記の比較結果は、各患者について順番に提示され得る。GUIはユーザインターフェース26のディスプレイ上に提供されてもよく、これにより、オペレータは結果の異なるセットの間で切り替えることができ、各々を随意にレビューすることができる。また、操作者は他の関連する比較、例えば、患者とは異なる診断を有する患者群との比較を選択することができる。
【0134】
上述の実施形態の何れかによれば、好ましい例では、fMRIデータ及び認知タスク結果のそれぞれの新たに取得されたデータセットを使用して、比較器として使用されている規範的データベースを更新することができる。例えば、これは、fMRIスキャンデータから導出された活動データを、認知タスク結果データと共に、規範的データベース36に単に追加することを含むことができる。他の場合には、それは新たなデータに基づいてデータベースに記憶された統計的メトリックを更新すること、例えば、新たに取得されたデータに基づいて各脳領域における活動レベルの平均値を更新することを含んでもよい。
【0135】
したがって、この一連の実施形態では、規範的データは時間更新される。この手段は、より多くの個人がスキャンされるにつれて、規範的データベースが経時的に増大することになる。これは、規範的データベースのより大きな代表性を保証する。
【0136】
上述の実施形態の何れかによれば、患者の状態の進行を予測するための機能を含むことが有利である。一例として、一つ又はそれより多くの実施形態によれば、認知障害の時間進行を予測するために、進行アルゴリズムの適用に基づいてマルチモーダル(又は多因子)評価を実施することができる。予測は、認知試験、神経画像所見、及び他の疾患特異的データに基づくことができる。
【0137】
例えば、外傷性脳損傷(TBI)の領域では、予測が損傷前の身体的及び精神的併存疾患、脳震盪後早期症状、早期の外傷後ストレス、EDでの頭痛、EDでの悪心/嘔吐、EDでの頸部痛、2週間での感情的苦痛、2週間での不適応対処、損傷時の中毒、損傷のタイプ、年齢、教育レベル、損傷の原因、及びグラスゴー昏睡尺度でのスコアのうちの1つ又は複数に基づき得る。
【0138】
神経変性疾患の領域では、集性能評価が認知検査、神経画像所見、年齢、性別及び教育レベルなどの患者特性、身体活動及び喫煙のレベルなどのライフスタイル因子、遺伝子検査、ならびに血液検査、脳脊髄液などのうちの1つ又は複数に基づくことができる。
【0139】
進行予測自体は例えば、事前訓練された機械学習アルゴリズムなどの統計的予測モデルを使用して実行され得る。機械学習アルゴリズムは、複数の患者に関するデータレコードを含む訓練データベースを使用して訓練され得る。
【0140】
上述の実施形態の何れかによれば、上述のデータ分析ステップは、好ましくはリアルタイムで行われ得る。特に、神経活動データを導出すること、活動データ及びタスク結果データを基準データと比較すること、及び比較に基づいて出力を導出することは、fMRIデータの取得とリアルタイムで行うことができる。これは、患者のスキャンと同時にユーザインターフェース26上のシステムのオペレータに結果を提示することを可能にする。このリアルタイム分析の利点は、検査のパラメータを結果に基づいて調整できることである。例えば、リアルタイム分析は患者による直接的な補償機構の使用を防止するために、認知試験を微調整するために、例えば、難易度を調整するために、及び/又は技術的パラメータを調整するために、オペレータによって使用され得る。
【0141】
本発明の概念をさらに説明するために、本発明の実施形態が有利に適用され得る3つの神経又は精神障害の例を以下に概説する。これらの実施例は純粋に例示的であり、非限定的である。
【0142】
第1の応用例は、うつ病ストレスの評価のためのものである。Yan ら(2019)による論文「再発性大うつ病患者におけるデフォルトモードネットワーク機能的連結性の低下」(PNAS, 116, 9078乃至9083)が参照される。大うつ病(MDD)患者848例と正常対照患者794例から得られたfMRIデータを用いた検討を概説した。MDDコホートでは、fMRIデータがデフォルトモードネットワークにおける機能的接続性の低下を示し、MDDにおけるデフォルトモードネットワークの重要な役割を確認した。デフォルトモードネットワークにおける機能的接続性の減少は、再発性MDDにおける症状重症度と正に関連していた。したがって、関心の精神障害が窪みである場合、施される認知タスクは、デフォルトモデル機能ネットワークを試験するものであり得る。
【0143】
第2の適用例は、閉所恐怖症の評価のためのものである。Feng, Zheng & Feng(2015)による論文「安静時機能的MRIを用いて恐怖条件付けを思い出させた後の自発的脳活動」(Scientific reports, 5, 16701)を参照されたい。恐怖(閉所恐怖症など)の記憶活性化後の自発的ニューロン活動を調べた研究について概説した。それは、恐怖記憶活性化に際して、扁桃体と腹内側前頭前野との間の有意に強化された機能的結合性を報告した。したがって、対象となる精神障害が閉所恐怖症である場合、患者に施される認知タスクは恐怖記憶を思い出すようにユーザに促すものであってもよく、スキャンされる脳領域は扁桃体と前頭前皮質の間の領域を含む。
【0144】
第3のアプリケーション例は、例えば軽度の外傷性脳損傷を含む、ある範囲の神経又は精神障害に関連し得る、タスク関連ストレスの評価である。認知疲労を伴う、要求の厳しい認知作業負荷の持続的な期間中、人間は典型的には時間―オン―タスク効果を表示し、その性能は、タスク関与の期間にわたって着実に悪化する。Limら(2010年)の論文「持続的な精神的ワークロードからの脳疲労の撮像」(時間―オン―タスク効果のASL潅流検討、Neuroimage, 49, 3426乃至3435)が参照される。本論文では、重度精神的仕事の期間後の前頭頭頂ネットワークにおける認知疲労の持続的影響を報告し、時間―オン―タスク効果の仲介におけるこの注意ネットワークの重要な役割を示した。
【0145】
上述の本発明の実施形態は、処理装置を用いる。処理装置は一般に、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを備えることができる。それは、単一の収容装置、構造、もしくはユニット内に配置されてもよく、又は複数の異なる装置、構造、もしくはユニット間に分散されてもよい。したがって、特定のステップ又はタスクを実行するように適合又は構成されている処理装置への言及は、複数の処理構成要素のうちの任意の1つ又は複数によって、単独で、又は組み合わせて、実行されているそのステップ又はタスクに対応し得る。当業者は、そのような分散処理装置をどのように実施することができるかを理解するのであろう。処理装置はデータを受信し、さらなる構成要素にデータを出力するための通信モジュール又は入力/出力を含む。
【0146】
処理装置の一つ又はそれより多くのプロセッサは必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の方法で実装され得る。プロセッサは典型的には必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされ得る一つ又はそれより多くのマイクロプロセッサを使用する。プロセッサは、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための一つ又はそれより多くのプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路との組合せとして実装され得る。
【0147】
本開示の様々な実施形態において使用され得る回路の例は従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むが、これらに限定されない。
【0148】
様々な実装形態では、プロセッサがRAM、PROM、EPROM、及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの一つ又はそれより多くの記憶媒体に関連付けられ得る。記憶媒体は、一つ又はそれより多くのプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を実行する一つ又はそれより多くのプログラムで符号化され得る。様々な記憶媒体はその上に記憶された一つ又はそれより多くのプログラムがプロセッサにロードされ得るように、プロセッサ又はコントローラ内に固定され得るか、又は可搬型であり得る。
【0149】
開示された実施形態に対する変形は図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。請求項において、単語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。
【0150】
単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に列挙されるいくつかのアイテムの機能を満たすことができる。
【0151】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0152】
コンピュータプログラムは他のハードウェアとともに、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線もしくはワイヤレス電気通信システムなどの他の形態で配布されてもよい。
【0153】
「に適合された」という用語が特許請求の範囲又は説明において使用される場合、「に適合された」という用語は、「に構成された」という用語と等価であることが意図されることに留意されたい。
【0154】
請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】