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特表2025-501885抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬との併用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬との併用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20250117BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20250117BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20250117BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K31/4745
A61K33/243
A61K31/282
C07K16/30 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535563
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2023071796
(87)【国際公開番号】W WO2023134706
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210036236.5
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517273308
【氏名又は名称】シチュアン ケルン-バイオテック バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジン, シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】ディアオ, イナ
(72)【発明者】
【氏名】グオ, チー
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ゲシャ
(72)【発明者】
【氏名】ル, リアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, ユジュン
(72)【発明者】
【氏名】イン, ウェングオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, スーシア
(72)【発明者】
【氏名】パン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グー, ジュンユー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA11
4C085AA14
4C085AA22
4C085AA26
4C085BB31
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB14
4C206JB16
4C206JB17
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体、または他の化学療法剤(カルボプラチンまたはシスプラチンなど)との組み合わせ、ならびに、上記組み合わせの、腫瘍性疾患の予防および/または治療のための薬剤の製造における使用に関し、抗TROP-2抗体は、サシツズマブであってよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のがんを治療するための薬剤の製造における抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬の使用であって、
前記他の治療薬は抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤からなる群から選択される1つ以上であり、
前記抗TROP-2抗体薬物複合体は、カンプトテシン類と、抗TROP-2抗体またはその抗原結合フラグメントとを含み、前記抗TROP-2抗体またはその抗原結合フラグメントが重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域は、配列番号1で示される配列を有するHCDR1またはその変異体、配列番号2で示される配列を有するHCDR2またはその変異体、および配列番号3で示される配列を有するHCDR3またはその変異体であり、並びに
前記軽鎖可変領域は、配列番号4で示される配列を有するLCDR1またはその変異体、配列番号5で示される配列を有するLCDR2またはその変異体、および配列番号6で示される配列を有するLCDR3またはその変異体であり、
前記変異体は、それが由来する配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または付加(例えば、1、2、または3のアミノ酸の置換、欠失、または付加)を有する、使用。
【請求項2】
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントが重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号7で示される配列を有するHCDR1またはその変異体、配列番号8で示される配列を有するHCDR2またはその変異体、および配列番号9で示される配列を有するHCDR3またはその変異体を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号10で示される配列を有するLCDR1またはその変異体、配列番号11で示される配列を有するLCDR2またはその変異体、および配列番号12で示される配列を有するLCDR3またはその変異体を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記置換が保存的な置換である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記抗体または前記抗原結合フラグメントが、ヒトまたはマウス免疫グロブリン由来のフレームワーク領域をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記化学療法剤が、プラチナ製剤から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記プラチナ製剤が、シスプラチン、カルボプラチン、スルファトジアミノシクロヘキサンプラチナ、ネダプラチン、オキサリプラチン、ロバプラチン、サトラプラチン、ミボプラチン、エンロプラチン、イプロプラチンまたはジシクロプラチンからなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記抗体薬物複合体が以下の化学構造を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【化1】

(式中、γとは抗体薬物複合体における抗体分子あたりに結合した薬物-リンカー単位の平均数を表し、平均数は6~10の範囲にある。)
【請求項8】
γの平均数が6~9である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
γの平均数が6~8である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
γの平均数が、約6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記がんが、固形腫瘍または非固形腫瘍である、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記がんが、食道がん、脳腫瘍、肺がん、扁平上皮がん、膀胱がん、胃がん、卵巣がん、腹膜がん、膵臓がん、乳がん、頭頸部がん、子宮頸部がん、子宮内膜がん、大腸がん、肝がん、腎がん、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記がんが肺がん、乳がん、卵巣上皮がんからなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、および卵巣上皮がんからなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がん、HR+/HER2-乳がん、HR-/HER2+乳がん、HR+/HER2+乳がん、BRCA+乳がんからなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記非小細胞肺がんが、EGFR野生型またはEGFR変異非小細胞肺がんから選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記非小細胞肺がんが進行性/転移性の非小細胞肺である、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記非小細胞肺がんが、ALK再構成陰性の非小細胞肺がんである、請求項14に記載の使用。
【請求項19】
前記EGFR変異非小細胞肺がんが進行性/転移性であり、EGFR変異が、単一変異または複合変異である、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、およびカルボプラチンまたはシスプラチンの投与サイクルは14~42日、例えば21~42日である、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記投与サイクルが、21日、28日または42日である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記抗体薬物複合体は、1回あたり1~10mg/kgの用量で投与される、請求項1から21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記抗体薬物複合体は、1回あたり1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kgからなる群から選択される用量で投与される、請求項1から22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900~1500mgの用量で投与される、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mgからなる群から選択される用量で投与される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
カルボプラチンは、曲線下面積(AUC)として算出する場合、1回当たり1~10mg/ml/minの用量で投与され、または、シスプラチンは、1回当たりの50~150mg/mの用量で投与される、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
カルボプラチンは、曲線下面積(AUC)として算出する場合、1回あたり1mg/ml/min、2mg/ml/min、2.5mg/ml/min、3mg/ml/min、3.75mg/ml/min、4mg/ml/min、5mg/ml/min、6mg/ml/min、7mg/ml/min、および8mg/ml/minからなる群から選択されるの用量で投与され、または、シスプラチンは、1回あたり50mg/m、75mg/m、100mg/m、120mg/m、および150mg/mから選択される用量で投与される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
被験体のがんを治療する方法であって、抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬との組み合わせの治療上有効量を被験者に投与する工程を含み、前記他の化学療法剤は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび化学療法剤からなる群から選択される1つ以上であり、
前記抗TROP-2抗体薬物複合体は、カンプトテシン類と、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗TROP-2抗体またはその抗原結合フラグメントとを含み、前記重鎖可変領域は、配列番号1で示される配列を有するHCDR1またはその変異体、配列番号2で示される配列を有するHCDR2またはその変異体、および配列番号3で示される配列を有するHCDR3またはその変異体であり、前記軽鎖可変領域は、配列番号4で示される配列を有するLCDR1またはその変異体、配列番号5で示される配列を有するLCDR2またはその変異体、および配列番号6で示される配列を有するLCDR3またはその変異体であり、 前記変異体は、それが由来する配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、または3つのアミノ酸の置換、欠失、または付加)を有する、方法。
【請求項29】
前記抗PD-L1抗体または抗原結合フラグメントが重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号7で示される配列を有するHCDR1またはその変異体、配列番号8で示される配列を有するHCDR2またはその変異体、および配列番号9で示される配列を有するHCDR3またはその変異体を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号10で示される配列を有するLCDR1またはその変異体、配列番号11で示される配列を有するLCDR2またはその変異体、配列番号12で示される配列を有するLCDR3またはその変異体を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記置換が保存的な置換である、請求項28から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体または前記抗原結合フラグメントは、ヒトまたはマウス免疫グロブリン由来のフレームワーク領域をさらに含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記化学療法剤は、プラチナ製剤から選択される、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記プラチナ製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、スルファトジアミノシクロヘキサンプラチナ、ネダプラチン、オキサリプラチン、ロバプラチン、サトラプラチン、ミボプラチン、エンロプラチン、イプロプラチンまたはジシクロプラチンからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体薬物複合体は、以下の化学構造を有する、請求項28から33のいずれか一項に記載の方法。
【化2】

(式中、γとは抗体薬物複合体における抗体分子あたりに結合した薬物-リンカー単位の平均数を表し、平均数は6~10の範囲にある。)
【請求項35】
γの平均数は6~9である、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
γの平均数が6~8である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
γの平均数は、約6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記がんが固形腫瘍または非固形腫瘍である、請求項28から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記がんは、食道がん、脳腫瘍、肺がん、扁平上細がん、膀胱がん、胃がん、卵巣がん、腹膜がん、膵臓がん、乳がん、頭頸部がん、子宮頸部がん、子宮内膜がん、大腸がん、肝がん、腎がん、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される、請求項28から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記がんは、肺がん、乳がん、卵巣がんからなる群から選択される、請求項28から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記非小細胞肺がん(NSCLC)またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)または卵巣上皮がんからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記乳がんは、トリプルネガティブ乳がん、HR+/HER2-乳がん、HR-/HER2+乳がん、HR+/HER2+乳がん、BRCA+乳がんからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記非小細胞肺がんは、EGFR野生型またはEGFR変異非小細胞肺がんから選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記非小細胞肺がんは、進行/転移性の非小細胞肺がんから非小細胞肺がんを選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記非小細胞肺がんは、ALK再構成陰性の非小細胞肺がんである、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記EGFR変異非小細胞肺がんは、進行性/転移性であり、EGFR変異は単一変異または複合変異である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、およびカルボプラチンまたはシスプラチンの投与サイクルは14~42日、例えば21~42日である、請求項28から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記投与サイクルは、21日、28日または42日である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体薬物複合体は1回あたり1~10mg/kgからなる群から選択される用量で投与される、請求項28から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体薬物複合体は、1回あたり1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kgからなる群から選択される用量で投与される、請求項28から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900~1500mgからなる群からから選択される用量で投与される、請求項28から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mgからなる群からから選択される用量で投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
カルボプラチンは、曲線下面積(AUC)として算出する場合、1回あたり1~10mg/ml/minの用量で投与され、または、シスプラチンは、1回あたり50~150mg/mの用量で投与される、請求項28から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
カルボプラチンは、線下面積(AUC)として算出する場合、1回あたり1mg/ml/min、2mg/ml/min、2.5mg/ml/min、3mg/ml/min、3.75mg/ml/min、4mg/ml/min、5mg/ml/min、6mg/ml/min、7mg/ml/min、8mg/ml/minの用量で投与され、または、前記シスプラチンは、1回あたり50mg/m2、75mg/m2、100mg/m2、120mg/m2、150mg/m2の用量で投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
被験者は、過去にチェックポイント阻害薬治療を受けておらず、かつ、第一選択の全身化学療法レジメンを受けてらずもしくは最大でも第一選択の全身化学療法レジメンしか受けていない非小細胞肺がんの患者であるか、または
被験者は、アジュバント、ネオアジュバント、または根治的化学放射線療法を以前に受けており、治療終了中または治療終了後6カ月以内にがんが進行した非小細胞肺がん患者であるか、または
被験者は、EGFRキナーゼ阻害薬による治療歴があり、治療に失敗した非小細胞肺がんの患者であるか、または
被験者は、局所進行性または転移性性の非小細胞肺がんに対する全身性抗腫瘍療法による治療歴がなく、免疫チェックポイント阻害薬治療による治療も受けていない非小細胞肺がんの患者であるか、または
被験者は、切除不能な局所進行性、再発性、または転移性のトリプルネガティブ乳がんで、以前に全身療法を受けていない患者である、請求項28から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
腫瘍の大きさを少なくとも約10%減少させる、請求項28から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬とを含むキットであって、前記他の治療薬は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび化学療法剤からなる群から選択される1つ以上であり、前記抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤は、請求項1~56のいずれか一項に定義される、キット。
【請求項58】
抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬を含有する医薬組成物であって、前記他の治療薬は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび化学療法剤からなる群から選択される1つ以上であり、前記抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤は、請求項1~56のいずれか一項に定義される、医薬組成物。
【請求項59】
さらに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む、請求項58に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月13日付の中国出願番号202210036236.5に基づき、その優先権を主張している。該中国出願において開示された内容は全体として本出願に取り込む。
本発明は、腫瘍治療および分子免疫学の分野に属し、腫瘍性疾患の予防および/または治療のための薬剤の製造における、抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬との併用、例えば、PD-L1阻害剤と化学療法剤との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
中国では、悪性腫瘍は一般的で頻度の高い疾患となっており、人の生命と健康を深刻に脅かしている。国際がん研究機関(IARC)の研究によると、中国は世界の悪性腫瘍の新規症例と死亡例のそれぞれ約21.8%と27%を占めている。進行した悪性腫瘍に対する主な治療法は依然として化学療法であるが、化学療法剤は腫瘍細胞を死滅させるだけでなく、正常なヒト細胞を無差別に攻撃することができ、重篤な副作用を引き起こす。
【0003】
近年、免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)の適用に伴い、医学は大規模の免疫療法薬の時代に突入し、ICIsは腫瘍治療の臨床現場を変えてきた。現在、ICIsは、ほとんどの腫瘍型では最初に第二選択療法に使用されていたことから、一部の腫瘍型で第一選択療法に使用されるようになり、さらに、少数の腫瘍型に対する術後補助療法にまで使用されるように発展し、かつ、単剤療法から併用療法へと移行している。臨床的には、ICIsはしばしば化学療法と併用されて有効性を増強し、ICIsがより広範な患者集団で効果的な抗腫瘍反応を誘導することを促進し、その相乗効果が臨床試験で実証されている。
【0004】
カンプトテシンは免疫系を活性化し、ICIsと相乗的に作用する可能性があることが報告されている。カンプトテシン(CPT)、カンプトテシンナトリウム(CPT-Na)、塩酸イリノテカン(CPT-11)、塩酸トポテカン(TPT)は、核因子-κB(NF-κB)関連経路を介して樹状細胞を効果的に活性化し、主要組織適合性複合体クラスII(MHC-II)、CD40、CD80の表面発現をアップレギュレートすることができる(水本ら、2005)。マウス乳がんモデルでは、CPT-11と抗PD-L1の併用は、リンパ節や腫瘍の排出において浸潤増殖性CD8+T細胞(Ki67+CD8+T細胞)の増加を効果的に促進することがさらに観察され、抗腫瘍効果は単剤療法に比べ有意に優れていた(岩井ら2018)。別の研究では、CPT-11リポソームは、ヒト黒色腫細胞を刺激し、TP53経路に関与する遺伝子の発現を調節することで腫瘍を殺すT細胞介在性免疫応答を効果的に活性化し、抗PD-1または抗PD-L1抗体を併用すると、大腸がん担癌マウスの生存期間を効果的に延長することができた(McKenzieら2018)。また、CPT-11と活性代謝物SN38は、さらに免疫原性細胞死(ICD)を誘導する能力を有することが示され、マウス膵臓がんおよびメラノーマモデルにおいて、抗PD-1および抗PD-L1モノクローナル抗体との併用で相乗的な抗腫瘍効果がそれぞれ認められた(Liuら2021、Gongら2020)。
【0005】
腫瘍細胞を選択的に死滅させ、正常細胞へのダメージを最小限に抑えるがん治療のトレンドは古くからあった。近年、治療用抗体が生理活性分子と結合して抗体薬物複合体(ADC)を形成できることがわかってきた。ADC薬は、個々の抗体がリンカーを介して低分子細胞傷害性薬剤に結合して形成される複合体である。ADC薬が血液中に入ると、抗体成分は腫瘍細胞表面抗原に特異的に結合し、エンドサイトーシスを介して細胞内に侵入し、細胞傷害性薬剤を放出して腫瘍細胞を殺傷する。ADC薬は腫瘍細胞を直接標的とし、他の正常細胞に対する化学療法剤の毒性や副作用を大幅に軽減し、全身性有害事象の発生を減少させる。ICIsと免疫系を活性化する化学療法剤の併用は相乗的に抗腫瘍免疫応答を増強し、腫瘍を死滅させることができるため、免疫調節作用を有するADCとICIの併用は、相乗効果の目標を達成するだけでなく、ICIや化学療法剤の限界をさらに克服できる可能性がある。例えば、ICIを化学療法と併用する場合、毒素分子によって産生される骨髄抑制、毒素分子による免疫系の活性化に起因する末梢免疫寛容や自己免疫合併症を回避することができる(Bauzonら2019)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗体薬物複合体と他の治療薬の組み合わせなどの治療薬の組み合わせによる癌の治療のための方法、医薬組成物、使用、およびキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、対象の癌を治療するための薬剤の製造における抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬の使用を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、他の治療薬は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤からなる群から選択される1つ以上である。
【0009】
いくつかの実施形態では、この使用は、抗TROP-2抗体薬物複合体、および抗PD-L1抗体、またはその抗原結合フラグメントを被験者に投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗TROP-2抗体薬物複合体は、カンプトテシン類と、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗TROP-2抗体またはその抗原結合フラグメントとを含み、重鎖可変領域は、配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、および配列番号3で示されるHCDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号4で示されるLCDR1、配列番号5で示されるLCDR2、配列番号6で示されるLCDR3を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、エンバフォリマブからなる群から選択される1つ以上である。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号7で示されるHCDR1、配列番号8で示されるHCDR2、および配列番号9で示されるHCDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号10で示されるLCDR1、配列番号11で示されるLCDL2、配列番号12で示されるLCDL3を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、この使用はさらに、被験者に化学療法剤を投与することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、化学療法剤はプラチナ製剤から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、プラチナ製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、スルファトジアミノシクロヘキサンプラチナ、ネダプラチン、オキサリプラチン、ロバプラチン、サトラプラチン、ミボプラチン、エンロプラチン、イプロプラチン、またはジシクロプラチンからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、抗TROP-2抗体は、配列番号13に示される重鎖と、配列番号14に示される軽鎖とを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号15で示される重鎖可変領域と、配列番号16で示される軽鎖可変領域とを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のアミノ酸配列における変異を含む。変異体のアミノ酸配列は、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有する点を除いて、参照配列と同一である。
【0019】
いくつかの実施形態では、CDRに対して置換、欠失、および/または付加が行われる。いくつかの実施形態では、置換、欠失、および/または付加がフレームワーク領域で行われる。
【0020】
いくつかの実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換が保存された置換である。
【0021】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0022】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0024】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有するVLドメインと、本発明の抗PD-L1抗体のVHドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または付加を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0026】
一般に、本発明に開示される抗PD-L1モノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントの変異体は、参照抗体または抗原結合フラグメントのアミノ酸配列(例えば、重鎖、軽鎖、V、Vまたはヒト化配列)と比べ、少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、98%または99%を有する。本発明における、「同一性」または「相同性」という用語は、必要に応じて配列を揃え、最大の配列同一性を達成するために空孔を導入した後、配列同一性の一部として保存的な置換を考慮することなく、参照配列と同一の候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義されている。いかなるN末端、C末端、または抗体配列の内部伸長、欠失、挿入は配列の同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈すべきではない。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は以下の化学構造を有する。
【化1】

γとは、抗体薬物複合体における抗体分子あたりに結合した薬物-リンカー単位の平均数を表し、平均数は6~10の範囲にある。いくつかの実施形態では、γの平均数は6~9である。いくつかの実施形態では、γの平均数は6~8であり、例えば、約6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7.8、または7.9である。
【0029】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍または非固形腫瘍であり、例えば、食道がん(食道腺がんおよび食道扁平上皮がんなど)、脳腫瘍、肺がん(例:小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん)、扁平上皮がん、膀胱がん、胃がん、卵巣がん、腹膜がん、膵臓がん、乳がん、頭頸部がん、子宮頸部がん、子宮内膜がん、大腸がん、肝がん、腎がん、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍(多形膠芽腫、神経膠腫または肉腫など)、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、がんは肺がん、乳がん、および卵巣上皮がんからなる群から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、がんは非小細胞肺がん(NSCLC)またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。
【0032】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんはEGFR野生型または変異非小細胞肺がんから選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは進行性/転移性の非小細胞肺がんである。
【0034】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは、全身療法されていない、または最大でも第一選択の化学療法しか受けていない、進行性非小細胞肺がんである。
【0035】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは、ALK再構成陰性の非小細胞肺がんである。
【0036】
いくつかの実施形態では、EGFR変異は単一変異または複合変異である。
【0037】
いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がん、HR+/HER2-乳がん、HR-/HER2+乳がん、HR+/HER2+乳がん、BRCA+乳がんからなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がんである。
【0039】
いくつかの実施形態では、卵巣がんは卵巣上皮がんである。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬が単位製剤中に存在する。
【0041】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬が同じ製剤単位で存在する。
【0042】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬は、異なる製剤単位で存在する。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬が併用投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬がそれぞれ投与される。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬が順次投与される。
【0046】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体が最初に投与され、次いで他の治療薬が投与される。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは14~42日である。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは、14日、21日、28日、または42日である。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは14日である。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは21日である。
【0048】
いくつかの実施形態では、他の治療薬の投与サイクルは14~42日、例えば、14日、21日、28日、または42日である。
【0049】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは14~42日である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは、14日、21日、28日、または42日である。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは14日である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは21日である。
【0051】
いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは21~42日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは、21日、28日、または42日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは21日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは28日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは42日である。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は1回あたり1~10mg/kg、好ましくは1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kgからなる群から選択される用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は1回あたり4mg/kgまたは5mg/kgの用量で投与される。
【0053】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900~1500mg、好ましくは900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mgからなる群から選択される用量で投与される。
【0054】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0055】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは、全身療法を受けていない、または最大でも第一選択の化学療法しか受けていない進行性非小細胞肺がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントが1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0056】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は1回あたり4mg/kgまたは5mg/kgの用量で投与され、非小細胞肺がんは、全身療法を受けていない、または最大でも第一選択の化学療法しか受けていない進行性非小細胞肺がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0057】
いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0058】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は1回あたり4mg/kgまたは5mg/kgの用量で投与され、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0059】
いくつかの実施形態において、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントと、非小細胞肺がん、トリプルネガティブ乳がん、および卵巣がんの薬剤の製造において、カルボプラチンまたはシスプラチンからなる群から選択される1つ以上の化学療法剤とを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、カルボプラチンは、曲線下面積(AUC)として算出する場合、1回あたり1~10mg/ml/min、好ましくは1mg/ml/min、2mg/ml/min、2.5mg/ml/min、3mg/ml/min、3.75mg/ml/min、4mg/ml/min、5mg/ml/min、6mg/ml/min、7mg/ml/min、および8mg/ml/minの用量で投与される。いくつかの実施形態では、カルボプラチンは1回あたり5mg/ml/minまたは3.75mg/ml/minまたは2.5mg/ml/minの用量で投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、シスプラチンは1回あたり50~150mg/m、好ましくは50mg/m、75mg/m、100mg/m、120mg/m、150mg/mの用量で投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体、および抗PD-L1抗体またはそのの抗原結合フラグメントは、前述のように1回の投与量で投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、被験者は、過去にチェックポイント阻害薬治療を受けておらず、かつ、第一選択の全身化学療法レジメンを受けておらず、もしくは最大でも第一選択の全身化学療法レジメンしか受けていない非小細胞肺がんの患者である。
【0064】
いくつかの実施形態では、被験者は、アジュバント、ネオアジュバント、または根治的化学放射線療法を以前に受けており、治療中または治療終了後6カ月以内にがんが進行した非小細胞肺がんの患者である。
【0065】
いくつかの実施形態では、被験者はEGFRキナーゼ阻害薬による治療を受け、治療に失敗した非小細胞肺がんの患者である。
【0066】
いくつかの実施形態では、被験者は以前に第1または第2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療に失敗しており、EGFRのエクソン20におけるT790M変異が陰性である。
【0067】
いくつかの実施形態では、被験者は以前に第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療に失敗している。
【0068】
いくつかの実施形態では、被験者は、局所進行性または転移性の非小細胞肺がんに対する全身性抗腫瘍療法による治療歴がなく、免疫チェックポイント阻害薬による治療も受けていない。
【0069】
いくつかの実施形態では、被験者は切除不能な局所進行性、再発性、または転移性のトリプルネガティブ乳がんで、全身療法の前治療を受けていない患者である。
【0070】
本発明の別の態様はまた、被験者の癌を治療する方法であって、前述のように、治療上有効量の抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬を被験者に投与する工程を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、他の治療薬は、前述のように、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤からなる群から選択される1つ以上である。
【0072】
いくつかの実施形態において、抗TROP-2抗体薬物複合体は、カンプトテシン類と、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗TROP-2抗体またはその抗原結合フラグメントとを含み、重鎖可変領域は、配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、および配列番号3で示されるHCDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号4で示されるLCDR1、配列番号5で示されるLCDR2、配列番号6で示されるに示すLCDR3を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、エンバフォリマブからなる群から選択される1つ以上である。
【0074】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号7で示されるHCDR1、配列番号8で示されるHCDR2、および配列番号9で示されるHCDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号10で示されるLCDR1、配列番号11で示されるLCDR2、配列番号12で示されるLCDR3を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、化学療法剤はプラチナ製剤から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態において、プラチナ製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、スルファトジアミノシクロヘキサンプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ロバプラチン、サトラプラチン、ミボプラチン、エンロプラチン、イプロプラチン、またはジシクロプラチンからなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態において、抗TROP-2抗体は、配列番号13に示される重鎖と、配列番号14に示される軽鎖とを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号15で示される重鎖可変領域と、配列番号16で示される軽鎖可変領域とを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のアミノ酸配列における変異を含む。変異体のアミノ酸配列は、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有する点を除いて、参照配列と同一である。
【0080】
いくつかの実施形態では、CDRに対して置換、欠失、および/または付加が行われる。いくつかの実施形態では、置換、欠失、および/または付加がフレームワーク領域で行われる。
【0081】
いくつかの実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換が保存された置換である。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0083】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明に記載の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0085】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有するVドメインを有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0086】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗PD-L1抗体のVドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有するVドメインと、本発明の抗PD-L1抗体のVHドメインの1つと比べ、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有し、PD-L1に特異的な結合を示す。
【0087】
一般に、本発明に開示される抗PD-L1モノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントの変異体は、参照抗体または抗原結合フラグメントのアミノ酸配列(例えば、重鎖、軽鎖、VH、VLまたはヒト化配列)と比べ、少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、98%または99%を有する。本発明における、「同一性」または「相同性」という用語は、必要に応じて配列を揃え、最大の配列同一性を達成するために空孔を導入した後、配列同一性の一部として保存的な置換を考慮することなく、参照配列と同一の候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義されている。いかなるN末端、C末端、または抗体配列の内部伸長、欠失、挿入は配列の同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈すべきではない。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は以下の化学構造を有する。
【化2】

γとは、抗体薬物複合体における抗体分子あたりに結合した薬物-リンカー単位の平均数を表し、平均数は6~10の範囲にある。いくつかの実施形態では、γの平均数は6~9である。いくつかの実施形態では、γの平均数は6~8であり、例えば、約6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7.8、または7.9である。
【0090】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍または非固形腫瘍であり、例えば、食道がん(食道腺がんおよび食道扁平上皮がんなど)、脳腫瘍、肺がん(例:小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん)、扁平上皮がん、膀胱がん、胃がん、卵巣がん、腹膜がん、膵臓がん、乳がん、頭頸部がん、子宮頸部がん、子宮内膜がん、大腸がん、肝がん、腎がん、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍(多形膠芽腫、神経膠腫または肉腫など)、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、がんは肺がん、乳がん、および卵巣上皮がんからなる群から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、がんは非小細胞肺がん(NSCLC)またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。
【0093】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんはEGFR野生型または変異非小細胞肺がんから選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは進行性/転移性の非小細胞肺がんである。
【0095】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは、全身療法を受けていない、または最大でも第一選択の化学療法しかを受けていない進行性非小細胞肺がんである。
【0096】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは、ALK再構成陰性の非小細胞肺がんである。
【0097】
いくつかの実施形態では、EGFR変異は単一変異または複合変異である。
【0098】
いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がん、HR+/HER2-乳がん、HR-/HER2+乳がん、HR+/HER2+乳がん、BRCA+乳がんからなる群から選択される。
【0099】
いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がんである。
【0100】
いくつかの実施形態では、卵巣がんは卵巣上皮がんである。
【0101】
いくつかの実施形態では、がんは前述の非小細胞肺がんである。
【0102】
いくつかの実施形態では、前述の非小細胞肺がんの治療のための抗TROP-2抗体薬物複合体を、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび/または化学療法剤と組み合わせて、2週ごとまたは3週ごとの1回の頻度で投与する。
【0103】
いくつかの実施形態では、がんは、前述の乳がん、好ましくはトリプルネガティブ乳がんである。
【0104】
いくつかの実施形態では、前述の乳がんの治療のための抗TROP-2抗体薬物複合体を、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および/または化学療法剤と組み合わせて、2週ごとまたは3週ごとの1回の頻度で投与する。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは14~42日である。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは、14日、21日、28日、または42日である。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは14日である。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の投与サイクルは21日である。
【0106】
いくつかの実施形態では、他の治療薬の投与サイクルは14~42日、例えば、14日、21日、28日、または42日である。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは14~42日である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは、14日、21日、28日、または42日である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは14日である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの投与サイクルは21日である。
【0108】
いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは21~42日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは、21日、28日、または42日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは21日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは28日である。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)の投与サイクルは42日である。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬が併用投与される。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬がそれぞれ投与される。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬が順次投与される。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗TROP-2抗体薬物複合体が最初に投与され、次いで他の治療薬が投与される。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は、1回あたり1~10mg/kg、好ましくは1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は1回あたり4mg/kgまたは5mg/kgの用量で投与される。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900~1500mg、好ましくは900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mgからなる群から選択される用量で投与される。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんは、全身療法をうけておらず、または最大でも第一選択の化学療法しか受けていない進行性非小細胞肺がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントが1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は1回あたり4mg/kgまたは5mg/kgの用量で投与され、非小細胞肺がんは、全身療法を受けておらず、または最大でも第一選択の化学療法しか受けていない進行性非小細胞肺がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0118】
いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は1回あたり4mg/kgまたは5mg/kgの用量で投与され、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mgまたは1200mgの用量で投与される。
【0120】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、非小細胞肺がん、トリプルネガティブ乳がん、および卵巣がんの治療のための方法であって、治療上有効量の抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬を被験者に投与する工程を含み、前記他の治療薬は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤を含み、化学療法剤は、カルボプラチンまたはシスプラチンからなる群から選択される1つ以上である。
【0121】
いくつかの実施形態では、曲線下面積(AUC)として算出されるカルボプラチンは、1回あたり1~10mg/ml/min、好ましくは1mg/ml/min、2mg/ml/min、2.5mg/ml/min、3mg/ml/min、3.75mg/ml/min、4mg/ml/min、5mg/ml/min、6mg/ml/min、7mg/ml/min、8mg/ml/minの用量で投与される。いくつかの実施形態では、カルボプラチンは1回あたり5mg/ml/minまたは3.75mg/ml/minまたは2.5mg/ml/minの用量で投与される。
【0122】
いくつかの実施形態では、シスプラチンは、1回あたり50~150mg/m2、好ましくは50mg/m2、75mg/m2、100mg/m2、120mg/m2、150mg/m2の用量で投与される。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体、および抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、前述のように1回の投与量で投与される。
【0124】
いくつかの実施形態では、被験者は、過去にチェックポイント阻害薬治療を受けておらず、かつ、全身化学療法レジメンを受けておらず、もしくは最大でも第一選択の全身化学療法レジメンしか受けていない非小細胞肺がんの患者である。
【0125】
いくつかの実施形態では、被験者は、アジュバント、ネオアジュバント、または根治的化学放射線療法を以前に受けており、治療終了中または治療終了後6カ月以内にがんが進行した非小細胞肺がんの患者である。
【0126】
いくつかの実施形態では、被験者はEGFRキナーゼ阻害薬による治療を受け、治療に失敗した非小細胞肺がんの患者である。
【0127】
いくつかの実施形態では、被験者は以前に第1または第2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療に失敗しており、EGFRのエクソン20におけるT790M変異が陰性である。
【0128】
いくつかの実施形態では、被験者は以前に第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療に失敗している。
【0129】
いくつかの実施形態では、被験者は、局所進行性または転移性の非小細胞肺がんに対する全身性抗腫瘍療法による治療歴がなく、免疫チェックポイント阻害薬により治療も受けていない。
【0130】
いくつかの実施形態では、被験者は切除不能な局所進行性、再発性、または転移性のトリプルネガティブ乳がんで、全身療法の前治療を受けていない患者である。
【0131】
本発明の別の態様はまた、被験者の癌を治療するために前述した抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬を提供し、他の治療薬は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤からなる群から選択される1つ以上を含む。
【0132】
本発明の別の態様はまた、前述の抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬の組み合わせを含む1つ以上のキットを提供する。
【0133】
いくつかの実施形態では、このキットは治療前および/または治療中の検査に使用される。
【0134】
いくつかの実施形態では、キットは、1つの区画に前述の抗TROP-2抗体薬物複合体、別の区画に前述の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、およびまた別の区画にカルボプラチンを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、キットは、1つの区画に前述の抗TROP-2抗体薬物複合体、別の区画に前述の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、およびまた別の区画にあるシスプラチンを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、キットはさらに、抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、カルボプラチンまたはシスプラチンを投与するための指示を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、このキットは前述のようにがんを治療するために使用される。
【0138】
また、本発明の別の態様は、前述の抗TROP-2抗体薬物複合体を含有し、前述の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤の1つ以上を含有する医薬組成物を提供する。
【0139】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はさらに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む。
【0140】
また、本発明の別の態様は、腫瘍を治療するための薬剤の製造において、前述のTROP-2抗体薬物複合体、および前述の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤の1つ以上の使用を提供する。
【0141】
また、本発明の別の態様は、腫瘍を治療するための薬剤の製造において、抗TROP-2抗体薬物複合体と、前述の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントとの組み合わせの使用を提供する。
【0142】
また、本発明の別の態様は、腫瘍を治療するための薬剤の製造において、前述の抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体、またはその抗原結合フラグメント、およびカルボプラチン/シスプラチンの組み合わせの使用を提供する。
【発明の効果】
【0143】
本発明は、前述の抗TROP-2抗体薬物複合体と他の治療薬(例えば、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび化学療法剤)との組み合わせを用いて、前述の癌を治療する方法を提供する。
【0144】
本発明は、上記に記載されたような癌の治療のための治療的組み合わせの使用を提供し、この治療の組み合わせは、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬(例えば、PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび化学療法剤)を含む。
【0145】
本発明はまた、治療を必要とする被験者に投与することを含み、上記に記載されたような癌の治療のための治療的組み合わせを提供する:
(a)前述の抗TROP-2抗体薬物複合体;
(b)前述の他の治療薬(抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、化学療法剤等)。
【0146】
いくつかの実施形態では、この方法は腫瘍の大きさを少なくとも約10%、例えば、約10%、20%、30%以上減少させる。
【0147】
いくつかの実施形態では、この方法は腫瘍の大きさを約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少させる。
【0148】
いくつかの実施形態では、この方法は腫瘍の増殖能力を低下させ、疾患を安定化させる。
【発明を実施するための形態】
【0149】
用語の定義
特定の技術用語および科学用語は以下に具体的に定義されている。ここで使用される他のすべての技術的および科学的用語は、本明細書中の別の場所で特別に定義されていない限り、本開示が関連する技術における通常の技術の意味によって一般的に理解されている。
【0150】
「抗体」とは、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位によって、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物化合物、ポリヌクレオチド、脂質、またはこれらの組み合わせなどの、標的を認識し、特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書でいう「抗体」とは、抗体が所望の生物学的活性を示す限り、インタクトポリクローナル抗体、インタクトモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体含有融合タンパク質およびその他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ、μと呼ばれる重鎖定数ドメインの特性に基づいて、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5つの主要なクラスまたはそのサブクラス(アイソタイプ)(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のいずれかにに属することできる。異なるクラスの免疫グロブリンは、よく知られたサブユニット構造と3次元構造を持っています。抗体は、裸の抗体であってもよいし、毒素や放射性同位元素などの他の分子に結合したものであってもよい。
【0151】
「抗体フラグメント」とは、インタクト抗体の一部を指す。「抗原結合フラグメント」とは、抗原に結合するインタクト抗体の一部を指す。抗原結合フラグメントには、インタクト抗体の抗原決定可変領域が含まれている可能性がある。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab´、F(ab´)およびFvフラグメント、線形抗体、および単鎖抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
「抗TROP-2抗体」または「TROP-2を標的とする抗体」とは、TROP-2を標的とする診断薬および/または治療薬(例えばRS7抗体)として使用できるような十分な親和性でTROP-2と結合することができる抗体をいう。
【0153】
「抗PD-L1抗体」または「PD-L1を標的とする抗体」とは、PD-L1を特異的に結合させることができる抗体であり、PD-L1を標的とする治療薬として用いることができるような十分な親和性を有する抗体をいう。例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるように、抗PD-L1抗体は、PD-1に結合する程度の約10%未満で、血縁関係のない非PD-L1タンパク質に結合する。ある実施形態において、PD-L1に結合する抗体の解離定数(Kd)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下である。ある実施形態において、PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号7、配列番号8および配列番号9で示される3つの重鎖CDR-1配列、CDR-2配列、およびCDR-3配列、ならびにそれぞれ、配列番号10、配列番号11および配列番号12で示される3つの軽鎖CDR-1配列、CDR-2配列、およびCDR-3配列を含む。ある実施形態では、PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、さらに、配列番号18で示される重鎖可変領域配列および配列番号19で示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0154】
「特定の選択治療」または「特定の選択療法」とは、手術、放射線療法、化学療法、分化療法、生物療法、免疫療法、または1種類以上の抗がん剤(例えば、細胞傷害性薬剤、抗増殖性化合物、および/または血管新生阻害剤)の投与を含むが、これらに限定されない治療レジメンを指す。
【0155】
「第一選択治療(first-line treatment)」、「第一選択療法(first line therapy)」および「フロントライン療法(front linetherapy)」という用語は、特定の病態(例えば、特定の種類および期間のがん)に対する好ましい標準的な初期療法を指し、第一選択療法が正しく機能しない場合に試みられる「第二選択」療法とは異なる。「第三選択」療法は、第一選択療法と第二選択療法が正しく機能しない場合に試みられる。
【0156】
例えば、本明細書で提供される抗TROP-2抗体薬物複合体と、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントとの組み合わせは、第一選択治療、第二選択治療、または第三選択治療として投与することができる。
【0157】
本明細書で提供される抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントとの組み合わせは、第0、1、2、3、4、5、6選択以上の治療を以前に受けた患者に対して、第一選択治療として投与することができ、ただし、本明細書で提供される抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントとの組み合わせによる治療は行われていない。
【0158】
本明細書で提供される抗TROP-2抗体薬物複合体と、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントとの組み合わせは、少なくとも第一選択、少なくとも第二選択、または少なくとも第三選択の治療を受けた患者に対して、第一選択治療として投与することができ、ただし、本明細書で提供される抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの組み合わせによる治療歴はない。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントとの組み合わせは、第一選択以下、第二選択以下、第三選択以下、第四選択以下、第五選択以下、または第六選択ライン以下の治療を受けた患者に第一選択療法として投与することができる。
【0160】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントとの組み合わせは、補助療法、ネオアジュバント療法、または維持療法として投与することができる。
【0161】
「補助療法」とは、術後に投与される全身療法を指す。広義には、補助療法とは、放射線や臨床検査で転移が検出されなかった場合でも、転移した可能性のあるがん細胞を死滅させるために、一次治療に加えて行われる治療法である。
【0162】
「ネオアジュバント療法」とは、手術前に投与された全身療法を指す。
【0163】
「維持療法」とは、初期治療でがんが消失した後にがんが再発するのを防ぐのに役立つ治療法を指す。
【0164】
「RS7抗体」という用語は、TROP-2を標的とする市販の抗体サシツズマブを指し、それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3で示される3つの重鎖CDR-1配列、CDR-2配列、およびCDR-3配列およびそれぞれ配列番号4、配列番号5、および配列番号6で示される3つの軽鎖CDR-1配列、CDR-2配列、およびCDR-3配列を含む抗TROP-2抗体である(米国特許7、517、964参照)。本開示で用いることができる抗TROP-2抗体RS7は、中国特許出願公開第103476941号明細書に開示されている抗体を表示するためのベクターの設計および構築、抗体ライブラリーの構築の方法によるまたは、ソルレント・セラピューティクス社のG-MAB(登録商標)ライブラリーによるスクリーニングおよび取得することができる。
【0165】
「リンカー」とは、化合物(典型的にはカンプトテシンおよびその誘導体などの薬物)を細胞の結合剤(例えば、抗TROP-2抗体またはそのフラグメント)に安定に共有結合的に結合させることができるあらゆる化学的部分である。リンカーは、例えば、化合物または抗体が活性を維持する条件下でジスルフィド結合の開裂に対して、しばしばまたは実質的に抵抗性がある。
【0166】
「癌」および「癌性」とは、哺乳類の細胞集団が無秩序な細胞増殖を特徴とする病態を指すか、またはそれを表す。癌の例としては、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌などがある。癌のもう1つの例は子宮内膜癌である。がんは、TROP-2を発現するがん(「TROP-2発現がん」)である可能性がある。
【0167】
「がん細胞」、「腫瘍細胞」および文法上の同等物とは、腫瘍または前がん病変に由来する細胞の総集団を指し、腫瘍細胞の大部分を含む非腫瘍形成性細胞、および腫瘍形成性幹細胞(がん幹細胞)を含む。本明細書の「腫瘍細胞」という用語は、再生・分化能力を欠く腫瘍細胞を示す場合にのみ、腫瘍細胞とがん幹細胞を区別するために、「非腫瘍形成」という用語で修飾される。
【0168】
「進行性」のがんは、局所浸潤や転移によって初期部位や臓器を超えて拡がるがんである。進行性のがんという用語には、局所進行性疾患と転移性疾患の両方が含まれる。
【0169】
「転移性」のがんとは、身体の一部から別の部位に転移するがんを指す。
【0170】
「難治性」のがんとは、がん患者に抗腫瘍療法(例えば化学療法)を行っても進行するがんを指す。
【0171】
「再発性」のがんとは、初期治療に反応した後、初期部位または遠隔部位で再増殖するがんである。
【0172】
「被験者」とは、特定の治療を受けている動物(例えば哺乳類)を指し、ヒト以外の霊長類、げっ歯類等を含む(ただし、これらに限定されない)。一般的に、「被験者」と「患者」という用語は、人間の個人を指す場合に、ここでは互換性をもって使用される。哺乳動物は、ヒト科、ウシ科(例えば、ウシ)、ブタ科(例えばブタ)、ヒツジ科(例えば、ヒツジ)、ヤギ科(例えばヤギ)、ウマ科(例えば、馬)、イヌ科(例えばイヌ)、ネコ科(例えば、イエネコ)、ウサギ科(例えばウサギ)、齧歯類(例えば、ラット、マウス)等からなる群から選択される1種以上であってもよい。具体的な実施形態では、被験者はヒトである。
【0173】
「再発」患者は、寛解後にがんの徴候または症状を発現する患者である。任意に、患者は補助療法またはネオアジュバント療法後に再発する。
【0174】
「1つ以上の他の治療薬との組み合わせた」投与には、同時(並行)または任意の順序で連続投与が含まれる。
【0175】
併用療法では「相乗効果」が得られ、有効成分を併用した場合の効果が、個々の化合物による効果の合計を上回る「相乗効果」を確認することができる。相乗効果は、(1)各有効成分を同時に製剤化し、組み合わせた単回用量製剤として同時に投与または送達する場合に得られる;(2)それぞれの有効成分を独立した製剤で連続的、交互、または並行的に送達される場合に得られる;または(3)他のレジメンにより各有効成分を投与する場合に得られる。代替療法として送達する場合、化合物を異なるシリンジで別々の注射などで順次投与または送達すれば、相乗効果が得られる。この相乗的な組み合わせは、組み合わせの個々の成分の相加効果を上回る効果を生み出す。
【0176】
本開示で提供される治療薬および組成物は、任意の適切な経腸経路または非経口投与経路で投与することができる。「経腸経路」投与とは、消化管のあらゆる部位を介した投与を指す。経腸経路の例としては、経口、粘膜、口腔、直腸、または胃内などがある。「非経口」投与とは、非経口以外の経路を介した投与をいう。非経口投与の例としては、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、膀胱内投与、動脈内投与、髄腔内投与、関節内投与、眼窩投与、心臓内投与、気管内投与、関節内投与、関節内投与、くも膜下投与、くも膜下投与、硬膜外投与、硬膜外投与、胸骨内投与、皮下投与、局所投与などがある。本開示の治療薬および組成物は、注射、注入、植込み型注入ポンプ、浸透圧ポンプなど、あらゆる適切な方法を用いて投与することができる。適切な投与経路および投与方法は、使用する特定の治療薬、望ましい吸収率、使用する特定の製剤または剤形、治療する疾患の種類または重症度、特定の作用部位、患者の状態等、多くの要因により異なる場合があり、当業者が容易に選択することができる。
【0177】
本明細書に開示されている抗体、抗体薬物複合体、その他の治療薬の「有効量」は、具体的に記載された目的を達成するのに十分な量を指す。「有効量」は、記載された目的のために経験的かつ従来の方法で決定することができる。
【0178】
「治療上有効量」とは、個体または哺乳動物の疾病または病態を「治療」するのに有効な抗体、免疫複合体その他の薬剤の量をいう。癌の場合、治療上有効量の薬剤は、癌細胞の数を減少させる可能性があり;腫瘍の大きさまたは負担の軽減させる可能性があり;周囲臓器への癌細胞浸潤を抑制させる可能性があり(すなわち、ある程度減速し、一実施形態においては停止する);腫瘍転移を抑制させる可能性があり(すなわち、ある程度減速し、一実施形態においては停止する);腫瘍の増殖をある程度まで抑制させる可能性があり;1つ以上の癌関連症状をある程度緩和させる可能性があり;および/または無増悪生存期間(PFS)の延長、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、または場合によっては病勢安定(SD)、病勢進行(PD)の遅延、無増悪期間(TTP)の延長、またはこれらの組み合わせなど、良好な奏効が得られる。本明細書における「治療」の定義を参照されたい。薬剤は、がん細胞の増殖を阻止し、および/または既存のがん細胞を殺傷するという観点から、細胞増殖抑制薬および/または細胞傷害性薬剤である可能性がある。
【0179】
PFS、DFS、OSは、国立がん研究所と米国食品医薬品局が新薬承認のために設定した基準に従って測定することができる。JohnsonらJ.Clin.Oncol.21(7):1404-1411(2003)を参照されたい。
【0180】
「無増悪生存期間」(PFS)は、登録から病勢進行または死亡までの期間を指す。PFSは一般的に、カプラン・マイヤー法および固形がんの治療効果判定(RECIST)1.1基準を用いて測定される。一般に、無増悪生存期間とは、患者が生存し、がんが悪化していない状態と定義される。
【0181】
「無増悪期間」(TTP)は、登録から病勢進行までの時間と定義される。TTPは一般にRECIST1.1基準を用いて測定される。
【0182】
「完全奏効」または「CR」は、治療に反応して腫瘍またはがんのすべての病変が消失することを示す。これは必ずしもがんが治癒したということではない。
【0183】
「部分奏効」または「PR」とは、治療に応じて、1つ以上の腫瘍または病変の大きさまたは体積、または生体内のがんの程度が減少することを意味する。
【0184】
「病勢安定」とは、進行または再発していない疾患をいう。病勢安定では、部分奏効に適格となるほどの腫瘍の縮小には至らず、病勢進行の適格となるほどの腫瘍の拡大も認められなかった。
【0185】
「病勢進行」とは、1つ以上の新規病変または腫瘍の出現および/または既存の非標的病変の明らかな進行を意味する。病勢進行は、治療開始時からの腫瘤増大または腫瘍の拡がりによる腫瘍の20%以上の増殖と定義されることもある。
【0186】
「無病生存期間」(DFS)は、患者が治療中および治療後に無病でいる期間の長さを指す。
【0187】
「全生存期間」(OS)は、患者登録から死亡日または最終的に判明した生存日の診察日までの時間を指す。OSには、、未治療の個人または患者と比較して平均余命の延長が含まれる。全生存期間とは、患者が診断または治療の時点から、例えば1年、5年などの一定期間生存している状態と定義される。患者集団では、全生存期間は全生存期間中央値(mOS)として測定される。
【0188】
「生存期間の延長」または「生存の可能性の増加」とは、治療を受けていない患者に対しまたは対照レジメン(例えば、がんの種類に対する標準治療で用いられるレジメン)と比べ、治療を受けた患者に対するPFSおよび/またはOSの増加を意味する。
【0189】
「治療」または「緩和」とは、診断された病態または病態の治癒、進行の遅延、症状の緩和、および/または進行の停止を行う治療手段を指す。したがって、治療を必要とする患者には、この疾患と診断された患者またはその疑いのある患者が含まれる。ある実施形態では、本発明に係る方法は、患者が以下の状況の1つ以上を示した場合、患者のがんが正常に「治療」される:がん細胞の数の減少または全く存在しないこと;腫瘍量の減少;軟部組織および骨への癌の進展など、、周囲臓器への癌細胞の浸潤の阻害または消失;腫瘍転移の抑制または消失;腫瘍の増殖の阻害または消失;特定の癌に関連する1つ以上の症状の緩和;罹患率および死亡率の低下;生活の質の改善;腫瘍形成、腫瘍の頻度、または腫瘍形成能の低下;腫瘍内の癌幹細胞の数または頻度の減少;腫瘍形成細胞の非腫瘍形成状態への分化;無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、病勢安定(SD)、病勢進行(PD)の遅延、無増悪期間(TTP)の延長、またはこれらの任意の組み合わせの増加。
【0190】
予防または予防措置とは、標的の病態または病態の発生を予防および/または遅らせるための措置をいう。そのため、予防または予防措置を必要とする者には、この疾患を有する傾向がある者と予防すべき者が含まれる。
【0191】
本明細書において、実施形態が「備える」という用語を用いて説明される場合には、「からなる」および/または「から本質的になる」という用語を用いて説明される同様の実施形態にも提供されることが理解される。
【0192】
本発明で言及されるすべての範囲は、明示的に別段の記載がない限り含まれる;つまり、範囲には範囲の上限と下限の値と、その間のすべての値が含まれる。例えば、本発明によって提供される数値または「約」は、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±10%、±15%、±20%の変化とそれらの数値的等価性を含むことができる。また、すべての範囲は含まれるすべてのサブレンジを含むことを意図していますが、必ずしも明示的に記載されているわけではない。例えば、14~21日の範囲は、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日を含むものである。また、本発明で用いられるように、「または」という用語は、適切な場合に組み合わせることができる代替手段を意味する;すなわち、「または」とは、個別に記載されている各オプションおよびその組合せを含む。
【0193】
ここで使用されるすべての技術用語および科学用語は、別段の定義がない限り、本開示が関係する技術における通常の技術の用語によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、本明細書での説明(定義を含む)が優先されるものとする。明細書および請求項を通じて、「備える(comprise)」(「備える(comprises)」または「備える(comprising)」等の変形体)は、整数または整数グループを含むことを意味するが、他の整数または整数グループを除外するものではないと理解される。文脈上別段の解釈が必要な場合を除き、単数形の用語は複数形を含み、複数形は単数形を含むものとする。例えば「例えば」または「など」の後の例は、網羅や制限を意味するものではない。
【0194】
具体的な方法および資料は本明細書に記載されているが、本開示の実施または試験においても、本明細書に記載されている方法および材料と類似または同等の方法および資料を使用することができる。資料、方法、および例は例示的であり、限定的なものではない。
【0195】
配列情報
本発明の配列情報は以下のように提供される:
【表1】
【実施例
【0196】
具体例
本明細書に記載されている実施例および実施形態は、例示目的のみであり、当業者がこれらの実施形態に応じた様々な修正または変更を提案すること、並びにこれらの変更が本願の趣旨および範囲に含まれていることは評価される。
【0197】
実施例1:EGFR野生型およびALK再構成陰性の局所進行性または転移性の非小細胞肺がん患者であって、免疫チェックポイント阻害薬による治療も受けておらず、かつ、全身化学療法レジメンを受けておらず、もしくは最大でも一次選択の全身化学療法レジメンしかも受けていない患者に対して、抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体との組み合わせを使用した治療
【0198】
1.試験薬の組み合わせ:
(1)抗TROP-2抗体薬物複合体:実施例で用いられた抗TROP-2抗体薬物複合体はBT001021であり、国際公開第2019114666号明細書の実施例32に記載された方法に従って調製された。
(2)抗PD-L1抗体:実施例で用いられたPD-L1抗体は5C10H2L2-IgG1mtであり、WO2017148424の実施例1~4および15に記載された方法に従って調製された。
【0199】
このうち、5C10H2L2-IgG1mtの重鎖可変領域配列は配列番号15に、軽鎖可変領域は配列番号16に、軽鎖定数領域はIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834、重鎖定数領域はIgガンマ-1鎖C領域、アミノ酸残基234、235、237(EU番号システム)のACCESSION:P01857は、次のように変異した:L234A、L235A、G237A。
【0200】
2.投与方法
抗TROP-2抗体薬物複合体:2週間または3週間毎の投与サイクルとして、TROP-2抗体薬物複合体を各サイクルの1日目に4mg/kgまたは5mg/kgの用量で点滴静注により投与した;
抗PD-L1抗体:2週間または3週間毎の投与サイクルとして、抗PD-L1抗体を各サイクルの1日目に900mgまたは1200mgの用量で点滴静注により投与した;
各サイクルの1日目には、上記の投与方法に従って、抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体を順次投与した。
【0201】
3.有効性評価
主要評価項目:有害事象(AE)の発現率と重症度、客観的奏効率(ORR)
副次評価項目:無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、薬物動態特性および免疫原性。
【0202】
4.結果
69歳男性は、EGFR野生型、ALK再構成陰性の非小細胞肺がんと診断され、肺癌は、縦隔、腹腔、後腹膜リンパ節、肝臓、骨などに多発転移を伴う。患者は以前に全身療法を受けていなかった。本発明の抗TROP-2抗体薬物複合体の5mg/kgと抗PD-L1抗体を1200mgの用量で3週間に1回組み合わせて投与する。疾患の部分奏効は6週間の治療後に認められ、奏効が持続された。複数の反応評価後、標的病変の総容積減少率は61.3%に達した。
【0203】
実施例2:EGFR野生型およびALK再構成陰性の局所進行性または転移性の非小細胞肺がん患者であって、免疫チェックポイント阻害薬による治療も受けておらず、かつ、全身化学療法レジメンを受けておらず、もしくは最大でも一次選択の全身化学療法レジメンしかも受けていない患者に対して、抗TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体およびシスプラチン/カルボプラチンとの組み合わせを使用した治療
【0204】
1.試験薬の組み合わせ:実施例で使用される抗TROP-2抗体薬物複合体および抗PD-L1抗体は、実施例1と同じであった。シスプラチンおよびカルボプラチンはいずれも市販薬であった。
【0205】
2.投与方法
抗TROP-2抗体薬物複合体:3週間毎の投与サイクルとして、抗TROP-2抗体薬物複合体を各サイクルの1日目に4mg/kgまたは5mg/kgの用量で点滴静注により投与した;
抗PD-L1抗体:3週間毎の投与サイクルとして、抗PD-L1抗体を各サイクルの1日目に1200mgの用量で点滴静注により投与した;
カルボプラチン:3週間毎の投与サイクルとして、カルボプラチンを各サイクルの1日目にAUC 5mg/ml/minの用量で点滴静注により投与した;
シスプラチン:3週間毎の投与サイクルとして、シスプラチンを各サイクルの1日目に75mg/mの用量で点滴静注により投与した。
【0206】
各サイクルの1日目には、上記の投与方法に従い、抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体、カルボプラチンを順次投与するか、または抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体、シスプラチンを順次投与する。
【0207】
3.有効性評価
主要評価項目:有害事象(AE)の発現率と重症度、客観的奏効率(ORR)
副次評価項目:無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、薬物動態特性および免疫原性。
【0208】
4.結果
34歳男性は、EGFR野生型、ALK再構成陰性の非小細胞肺がんと診断され、肺癌は、両側鎖骨上窩、縦隔、肝門部、後腹膜リンパ節、副腎、骨、脳などへの多発転移を伴った。患者は、以前に全身療法を受けていなかった。5mg/kgの用量の本発明の抗TROP-2抗体薬物複合体、1200mgの用量の抗PD-L1抗体、AUC 5mg/ml/minの用量のカルボプラチンを3週間ごとに組み合わせて投与した。投与から6週後に、安定した疾患が認められ、全標的病変体積が最大16.4%減少した。
【0209】
実施例3:過去にEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)で治療を受けたことがあるが効果を得られなかった、EGFR変異を有するALK再構成陰性の非小細胞肺がんの患者に対して、TROP-2抗体薬物複合体と抗PD-L1抗体およびシスプラチン/カルボプラチンとの組み合わせを使用した治療。
【0210】
1.試験薬の組み合わせ:実施例で使用される抗TROP-2抗体薬物複合体および抗PD-L1抗体は、実施例1と同じである。シスプラチンまたはカルボプラチンはいずれも市販薬である。
【0211】
2.投与方法
抗TROP-2抗体薬物複合体:3週間毎の投与サイクルとして、抗TROP-2抗体薬物複合体を各サイクルの1日目に4mg/kgまたは5mg/kgの用量で点滴静注により投与した;
抗PD-L1抗体:3週間毎の投与サイクルとして、抗PD-L1抗体を各サイクルの1日目に1200mgの用量で点滴静注により投与した;
カルボプラチン:3週間毎の投与サイクルとして、カルボプラチンを各サイクルの1日目にAUC 5mg/ml/minの用量で点滴静注により投与した;
シスプラチン:3週間毎の投与サイクルとして、シスプラチンを各サイクルの1日目に75mg/mの用量で点滴静注により投与した。
【0212】
各サイクルの1日目には、上記の投与方法に従い、抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体、カルボプラチンを順次投与するか、または抗TROP-2抗体複合体、抗PD-L1抗体、シスプラチンを順次投与した。
【0213】
3.有効性評価
主要有効性変数:有害事象(AE)の発現率と重症度、客観的奏効率(ORR)
副次的有効性変数:無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、薬物動態特性および免疫原性。
【0214】
4.結果
40歳女性は、EGFR変異を有する非小細胞肺がんと診断された。肺がんは、縦隔、門部、傍大動脈、横隔角リンパ節、胸膜、肝臓、脳などに多発転移を伴った。患者は、以前にゲフィチニブとアンロチニブ、JM101(EGFRモノクローナル抗体)とオシメルチニブの併用による治療を受けていたが、効果はなかった。5mg/kgの用量の本発明の抗TROP-2抗体薬物複合体、1200mgの用量の抗PD-L1抗体、AUC 5mg/ml/minの用量のカルボプラチンを3週間ごとに投与した。投与から6週後に、疾患が安定し、標的病変総量が最大21.7%減少したことが認められた。
【0215】
実施例4:過去に全身療法を受けていない、切除不能な局所進行乳癌、再発乳癌、または転移性トリプルネガティブ乳癌の患者に対して、抗PD-L1抗体との併用または非併用の抗TROP-2抗体薬物複合体を使用した治療
【0216】
1.試験薬:実施例で使用された抗TROP-2抗体薬物複合体および抗PD-L1抗体は、実施例1と同様であった。
【0217】
2.投与方法
抗TROP-2抗体薬物複合体:2週間または3週間毎の投与サイクルとして、抗TROP-2抗体薬物複合体を各サイクルの1日目に4mg/kgまたは5mg/kgの用量で点滴静注により投与した;
抗PD-L1抗体:2週間または3週間毎の投与サイクルとして、PD-L1抗体を各サイクルの1日目に900mgまたは1200mgの用量で点滴静注により投与した。
【0218】
各サイクルの1日目には、上記の投与方法に従って、抗TROP-2抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体を順次投与した。
【0219】
3.有効性評価
主要有効性変数:有害事象(AE)の発現率と重症度、客観的奏効率(ORR)
副次的有効性変数:無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、薬物動態特性および免疫原性。
【0220】
4.結果
43歳女性は、肺転移を伴うトリプルネガティブ乳がんと診断された。患者は、以前にエピルビシンとシクロホスファミドを併用した補助化学療法を受けていたが、最終化学療法から12カ月以上経過しても進行が認められた。5mg/kgの用量の本発明の抗TROP-2抗体薬物複合体と900mgの用量の抗PD-L1抗体を2週間ごとに投与した。治療6週後に部分奏効が認められ、全標的病変体積が最大34.4%減少した。
【0221】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の精神および原理の範囲内で行われる変更、同等の代替、改良等は、本発明の保護の範囲に含まれるべきである。様々な実施形態間の更なる技術的解決策は、互いに統合されてもよいが、当業者の通常の技術の実施に基づいていなければならない。技術的解決策の組合せが矛盾しているかまたは達成不可能であると思われる場合には、そのような技術的解決策の組合せは存在せず、本発明が要求する保護の範囲内にないと考えるべきである。
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のがんを治療するためのキットであって、抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬を含み
前記抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬は併用投与され、
前記他の治療薬は抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤からなる群から選択される1つ以上であり、
前記抗TROP-2抗体薬物複合体は、カンプトテシン類と、抗TROP-2抗体またはその抗原結合フラグメントとを含み、前記抗TROP-2抗体またはその抗原結合フラグメントが重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域は、配列番号1で示される配列を有するHCDR1またはその変異体、配列番号2で示される配列を有するHCDR2またはその変異体、および配列番号3で示される配列を有するHCDR3またはその変異体であり、並びに
前記軽鎖可変領域は、配列番号4で示される配列を有するLCDR1またはその変異体、配列番号5で示される配列を有するLCDR2またはその変異体、および配列番号6で示される配列を有するLCDR3またはその変異体であり、
前記変異体は、それが由来する配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有する、キット
【請求項2】
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントが重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号7で示される配列を有するHCDR1またはその変異体、配列番号8で示される配列を有するHCDR2またはその変異体、および配列番号9で示される配列を有するHCDR3またはその変異体を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号10で示される配列を有するLCDR1またはその変異体、配列番号11で示される配列を有するLCDR2またはその変異体、および配列番号12で示される配列を有するLCDR3またはその変異体を含む、請求項1に記載のキット
【請求項3】
前記変異体は、1、2、または3のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有する、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記置換が保存的な置換である、請求項1または2に記載のキット
【請求項5】
前記抗体または前記抗原結合フラグメントが、ヒトまたはマウス免疫グロブリン由来のフレームワーク領域をさらに含む、請求項1または2に記載のキット
【請求項6】
前記化学療法剤が、プラチナ製剤から選択される、請求項1に記載のキット
【請求項7】
前記プラチナ製剤が、シスプラチン、カルボプラチン、スルファトジアミノシクロヘキサンプラチナ、ネダプラチン、オキサリプラチン、ロバプラチン、サトラプラチン、ミボプラチン、エンロプラチン、イプロプラチンまたはジシクロプラチンからなる群から選択される、請求項に記載のキット
【請求項8】
前記抗体薬物複合体が以下の化学構造を有する、請求項1、2または6に記載のキット
【化1】

(式中、γとは抗体薬物複合体における抗体分子あたりに結合した薬物-リンカー単位の平均数を表し、平均数は6~10の範囲にある。)
【請求項9】
γの平均数が6~9である、請求項に記載のキット
【請求項10】
γの平均数が6~8である、請求項に記載のキット
【請求項11】
γの平均数が、約6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9である、請求項10に記載のキット
【請求項12】
前記がんが、固形腫瘍または非固形腫瘍である、請求項1または2に記載のキット
【請求項13】
前記がんが、食道がん、脳腫瘍、肺がん、扁平上皮がん、膀胱がん、胃がん、卵巣がん、腹膜がん、膵臓がん、乳がん、頭頸部がん、子宮頸部がん、子宮内膜がん、大腸がん、肝がん、腎がん、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される、請求項1または2に記載のキット
【請求項14】
前記がんが肺がん、乳がん、卵巣上皮がんからなる群から選択される、請求項1または2に記載のキット
【請求項15】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、および卵巣上皮がんからなる群から選択される、請求項1に記載のキット
【請求項16】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がん、HR+/HER2-乳がん、HR-/HER2+乳がん、HR+/HER2+乳がん、BRCA+乳がんからなる群から選択される、請求項1に記載のキット
【請求項17】
前記非小細胞肺がんが、EGFR野生型またはEGFR変異非小細胞肺がんから選択される、請求項1に記載のキット
【請求項18】
前記非小細胞肺がんが進行性/転移性の非小細胞肺である、請求項1に記載のキット
【請求項19】
前記非小細胞肺がんが、ALK再構成陰性の非小細胞肺がんである、請求項1に記載のキット
【請求項20】
前記EGFR変異非小細胞肺がんが進行性/転移性であり、EGFR変異が、単一変異または複合変異である、請求項1に記載のキット
【請求項21】
前記抗体薬物複合体、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、および化学療法剤としてのカルボプラチンまたはシスプラチンの投与サイクルは14~42日である、請求項1に記載のキット
【請求項22】
前記投与サイクルが、21~42日である、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記投与サイクルが、21日、28日または42日である、請求項2に記載のキット
【請求項24】
前記抗体薬物複合体は、1回あたり1~10mg/kgの用量で投与される、請求項1に記載のキット
【請求項25】
前記抗体薬物複合体は、1回あたり1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kgからなる群から選択される用量で投与される、請求項1または2に記載のキット
【請求項26】
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900~1500mgの用量で投与される、請求項1に記載のキット
【請求項27】
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、1回あたり900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mgからなる群から選択される用量で投与される、請求項2に記載のキット
【請求項28】
化学療法剤としてのカルボプラチンは、曲線下面積(AUC)として算出する場合、1回当たり1~10mg/ml/minの用量で投与され、または、化学療法剤としてのシスプラチンは、1回当たりの50~150mg/mの用量で投与される、請求項1、21、24または26に記載のキット
【請求項29】
カルボプラチンは、曲線下面積(AUC)として算出する場合、1回あたり1mg/ml/min、2mg/ml/min、2.5mg/ml/min、3mg/ml/min、3.75mg/ml/min、4mg/ml/min、5mg/ml/min、6mg/ml/min、7mg/ml/min、および8mg/ml/minからなる群から選択されるの用量で投与され、または、シスプラチンは、1回あたり50mg/m、75mg/m、100mg/m、120mg/m、および150mg/mから選択される用量で投与される、請求項2に記載のキット
【請求項30】
被験者は、過去にチェックポイント阻害薬治療を受けておらず、かつ、第一選択の全身化学療法レジメンを受けてらずもしくは最大でも第一選択の全身化学療法レジメンしか受けていない非小細胞肺がんの患者であるか、または
被験者は、アジュバント、ネオアジュバント、または根治的化学放射線療法を以前に受けており、治療終了中または治療終了後6カ月以内にがんが進行した非小細胞肺がん患者であるか、または
被験者は、EGFRキナーゼ阻害薬による治療歴があり、治療に失敗した非小細胞肺がんの患者であるか、または
被験者は、局所進行性または転移性性の非小細胞肺がんに対する全身性抗腫瘍療法による治療歴がなく、免疫チェックポイント阻害薬治療による治療も受けていない非小細胞肺がんの患者であるか、または
被験者は、切除不能な局所進行性、再発性、または転移性のトリプルネガティブ乳がんで、以前に全身療法を受けていない患者である、請求項1または2に記載のキット
【請求項31】
他の治療薬と組み合わせた抗TROP-2抗体薬物複合体は、腫瘍の大きさを少なくとも約10%減少させる、請求項1または2に記載のキット
【請求項32】
抗TROP-2抗体薬物複合体および他の治療薬を含有する医薬組成物であって、前記他の治療薬は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび化学療法剤からなる群から選択される1つ以上であり、前記抗TROP-2抗体薬物複合体は請求項1に定義され前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは請求項1または2に定義され、および前記化学療法剤は、請求項1または6に定義される、医薬組成物。
【請求項33】
さらに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む、請求項32に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0153
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0153】
「抗PD-L1抗体」または「PD-L1を標的とする抗体」とは、PD-L1を特異的に結合させることができる抗体であり、PD-L1を標的とする治療薬として用いることができるような十分な親和性を有する抗体をいう。例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるように、抗PD-L1抗体は、PD-1に結合する程度の約10%未満で、血縁関係のない非PD-L1タンパク質に結合する。ある実施形態において、PD-L1に結合する抗体の解離定数(Kd)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下である。ある実施形態において、PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号7、配列番号8および配列番号9で示される3つの重鎖CDR-1配列、CDR-2配列、およびCDR-3配列、ならびにそれぞれ、配列番号10、配列番号11および配列番号12で示される3つの軽鎖CDR-1配列、CDR-2配列、およびCDR-3配列を含む。ある実施形態では、PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、さらに、配列番号1で示される重鎖可変領域配列および配列番号1で示される軽鎖可変領域配列を含む。
【国際調査報告】