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特表2025-501890冷媒圧送式アクティブ/パッシブ冷却システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】冷媒圧送式アクティブ/パッシブ冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/00 20060101AFI20250117BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F25B39/00 Z
G06F1/20 A
G06F1/20 B
G06F1/20 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536185
(86)(22)【出願日】2023-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 US2023060192
(87)【国際公開番号】W WO2023133478
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/297,000
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512033006
【氏名又は名称】マンターズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】MUNTERS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ニューウォルド,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】バウチャー,マイケル
(57)【要約】
蒸発器と、パッシブ凝縮器と、熱交換器と、ポンプとを備える冷却システム。パッシブ凝縮器は、一次冷却媒体の流体流に対して熱交換器と並列に配置される。熱交換器に二次冷却媒体が供給される場合には、何らかの弁を動作させなくとも、パッシブ凝縮器が受け取っていた気相の一次冷却媒体の少なくとも一部を、熱交換器が受け取るようになって、熱交換器は、液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給する。一方、熱交換器に二次冷却媒体が供給されない場合には、熱交換器は、液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給しない。ポンプは、蒸発器をパッシブ凝縮器と熱交換器とに流体接続する液ラインに配置されて、液相の一次冷却媒体を蒸発器に圧送するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次冷却媒体を収容するとともに、プロセス流体を受け取るように構成された蒸発器であって、前記プロセス流体を受け取ると前記プロセス流体から熱を抽出して、前記プロセス流体を冷却して前記一次冷却媒体を液相から気相に相変化させるように構成された蒸発器と、
外表面を備えるとともに、前記蒸発器に流体結合され、前記外表面に気流が導かれるように構成されたパッシブ凝縮器であって、該気流が該パッシブ凝縮器の前記外表面に導かれると(i)前記蒸発器から気相の前記一次冷却媒体を受け取り、(ii)前記一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)前記一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給する、ように構成されたパッシブ凝縮器と、
前記蒸発器に流体結合されるとともに、二次冷却媒体が選択的に供給されるように構成された熱交換器であって、
(a)前記熱交換器に前記二次冷却媒体が供給される場合に、前記蒸発器と前記パッシブ凝縮器との間および前記蒸発器と前記熱交換器との間に何らかの弁を配置してこれを動作させなくとも、前記パッシブ凝縮器が受け取っていた気相の前記一次冷却媒体の少なくとも一部を、前記熱交換器が受け取るようになって、前記熱交換器が、(i)前記蒸発器から気相の前記一次冷却媒体を受け取り、(ii)前記一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)前記一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給し、
(b)前記熱交換器に前記二次冷却媒体が供給されない場合には、前記熱交換器は液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給しない、ように構成された熱交換器と、
前記蒸発器を前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器のそれぞれに流体接続して、前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器のうちの少なくとも一方から前記蒸発器へと液相の前記一次冷却媒体を供給する液ラインと、
前記液ラインに配置されて、液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に圧送するように構成されたポンプと、
を備える冷却システムであって、
前記パッシブ凝縮器が、前記一次冷却媒体の流体流に対して前記熱交換器と並列に配置される、冷却システム。
【請求項2】
前記プロセス流体が空気である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記プロセス流体が液体である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
誘電体によって冷却される少なくとも1つの電子コンポーネントと、
前記誘電体を冷却する、請求項1に記載の冷却システムと、
を備える電子機器システム。
【請求項5】
前記プロセス流体が前記誘電体である、請求項4に記載の電子機器システム。
【請求項6】
前記二次冷却媒体が、圧縮機と膨張弁とを備える直接膨張式冷却システムの冷媒である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記二次冷却媒体が、冷水または冷却した水-グリコール混合液である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記熱交換器に前記二次冷却媒体が供給される場合に、前記一次冷却媒体の一部を、前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器の双方が受け取って、(i)前記一次冷却媒体から熱を移動し、(ii)前記一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iii)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給する、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項9】
余分な一次冷却媒体を溜めるように構成された冷媒レシーバをさらに備え、
前記冷媒レシーバは、前記液ラインにおいて、前記ポンプより上流側かつ前記熱交換器より下流側の位置に配置される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項10】
前記冷媒レシーバが、前記熱交換器の底部よりも鉛直下方の高さに配置される、請求項9に記載の冷却システム。
【請求項11】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記パッシブ凝縮器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記パッシブ凝縮器の前記出口に流体接続され、
前記蒸発器の前記入口が、前記パッシブ凝縮器の前記出口から前記蒸発器の前記入口まで前記一次冷却媒体を移動させるだけの十分な重力と自然循環を得ることができない高さに配置される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項12】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記熱交換器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記熱交換器の前記出口に流体接続され、
前記蒸発器の前記入口が、前記熱交換器の前記出口から前記蒸発器の前記入口まで前記一次冷却媒体を移動させるだけの十分な重力と自然循環を得ることができない高さに配置される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項13】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記パッシブ凝縮器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記パッシブ凝縮器の前記出口に流体接続され、
前記蒸発器の前記入口が、前記パッシブ凝縮器の前記出口よりも高い位置に配置される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項14】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記熱交換器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記熱交換器の前記出口に流体接続され、
前記蒸発器の前記入口が、前記熱交換器の前記出口よりも高い位置に配置される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項15】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記パッシブ凝縮器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記パッシブ凝縮器の前記出口に流体接続され、
前記パッシブ凝縮器の前記出口が、前記蒸発器の前記入口よりも6フィート(1.8m)以下の距離だけ高い位置に配置される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項16】
前記蒸発器を前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器のそれぞれに流体接続して、前記蒸発器から前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器のうちの少なくとも一方へと気相の前記一次冷却媒体を供給する蒸気ラインをさらに備え、
前記蒸発器と、前記パッシブ凝縮器と、前記熱交換器と、前記液ラインと、前記蒸気ラインとで、225フィート(69m)以上の等価直線配管長を有している、請求項15に記載の冷却システム。
【請求項17】
前記蒸発器と、前記パッシブ凝縮器と、前記熱交換器と、前記液ラインと、前記蒸気ラインとで、150フィート(46m)以上の等価直線配管長を有している、請求項16に記載の冷却システム。
【請求項18】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記熱交換器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記熱交換器の前記出口に流体接続され、
前記熱交換器の前記出口が、前記蒸発器の前記入口よりも6フィート(1.8m)以下の距離だけ高い位置に配置される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項19】
前記蒸発器を前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器のそれぞれに流体接続して、前記蒸発器から前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器のうちの少なくとも一方へと気相の前記一次冷却媒体を供給する蒸気ラインをさらに備え、
前記蒸発器と、前記パッシブ凝縮器と、前記熱交換器と、前記液ラインと、前記蒸気ラインとで、225フィート(69m)以上の等価直線配管長を有している、請求項18に記載の冷却システム。
【請求項20】
前記蒸発器と、前記パッシブ凝縮器と、前記熱交換器と、前記液ラインと、前記蒸気ラインとで、150フィート(46m)以上の等価直線配管長を有している、請求項19に記載の冷却システム。
【請求項21】
前記蒸発器が、前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器のうちの少なくとも一方よりも高い位置に配置されている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項22】
前記ポンプが可変速ポンプである、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項23】
前記ポンプの速度を制御するように、前記ポンプに動作可能に結合された制御装置をさらに備える、請求項22に記載の冷却システム。
【請求項24】
前記冷却システムが、温度センサをさらに備え、
前記制御装置が、温度情報を受信するように前記温度センサと通信可能に結合され、
前記制御装置が、前記温度情報に基づいて前記ポンプの速度を制御するように構成される、請求項23に記載の冷却システム。
【請求項25】
前記蒸発器と、前記パッシブ凝縮器と、前記熱交換器と、前記ポンプとが、単一のユニットに統合されている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項26】
前記単一のユニットの全体の高さが14フィート(4.27m)以下となるように、前記蒸発器と前記パッシブ凝縮器が互いに相対的に配置されている、請求項25に記載の冷却システム。
【請求項27】
前記蒸発器に流体接続されたプロセス流体入口と、前記蒸発器に流体接続されたプロセス流体出口とをさらに備える、請求項25に記載の冷却システム。
【請求項28】
前記プロセス流体入口が、還気ダクトに接続可能な還気口であり、プロセス流体出口が、給気ダクトに接続可能な給気口である、請求項25に記載の冷却システム。
【請求項29】
第1のフロアと、該第1のフロアより高い第2のフロアと、を含む複数のフロアと、
前記第2のフロアに配置された電子コンポーネントを保持する複数のラックと、
請求項28に記載の冷却システムと、
を備える多層階データセンターであって、
前記還気口が、前記還気ダクトに接続されて、前記第2のフロアに配置された前記複数のラックから空気を受け取り、
前記給気口が、前記給気ダクトに接続されて、前記第2のフロアに配置された前記複数のラックに空気を供給する、多層階データセンター。
【請求項30】
第1のフロアと、該第1のフロアより高い第2のフロアと、を含む複数のフロアと、
前記第2のフロアに配置された電子コンポーネントを保持する複数のラックと、
請求項1に記載の冷却システムと、
を備える多層階データセンターであって、
前記蒸発器が前記第2のフロアに配置され、
前記パッシブ凝縮器と前記熱交換器が前記第2のフロアより低い位置に配置される、多層階データセンター。
【請求項31】
一次冷却媒体を収容するとともに、プロセス流体を受け取るように構成された蒸発器であって、前記プロセス流体を受け取ると前記プロセス流体から熱を抽出して、前記プロセス流体を冷却して前記一次冷却媒体を液相から気相に相変化させるように構成された蒸発器と、
それぞれが外表面を備えるとともに、前記蒸発器に流体結合され、前記外表面に気流が導かれるようにそれぞれ構成された複数のパッシブ凝縮器であって、該気流が該パッシブ凝縮器の前記外表面に導かれると(i)前記蒸発器から気相の前記一次冷却媒体を受け取り、(ii)前記一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)前記一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給する、ように構成されたパッシブ凝縮器と、
前記蒸発器に流体結合されるとともに、二次冷却媒体が選択的に供給されるように構成された少なくとも1台の熱交換器であって、
(a)前記少なくとも1台の熱交換器に前記二次冷却媒体が供給される場合に、前記蒸発器と前記パッシブ凝縮器との間および前記蒸発器と前記熱交換器との間に何らかの弁を配置してこれを動作させなくとも、前記パッシブ凝縮器が受け取っていた気相の前記一次冷却媒体の少なくとも一部を、前記少なくとも1台の熱交換器が受け取るようになって、前記少なくとも1台の熱交換器が、(i)前記蒸発器から気相の前記一次冷却媒体を受け取り、(ii)前記一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)前記一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給し、
(b)前記少なくとも1台の熱交換器に前記二次冷却媒体が供給されない場合には、前記熱交換器は液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給しない、ように構成された熱交換器と、
前記蒸発器を前記複数のパッシブ凝縮器のうちの各パッシブ凝縮器と前記少なくとも1台の熱交換器に流体接続して、前記複数のパッシブ凝縮器と前記少なくとも1台の熱交換器のうちの少なくとも1台から前記蒸発器へと液相の前記一次冷却媒体を供給する液ラインと、
前記液ラインに配置されて、液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に圧送するように構成されたポンプと、
を備える冷却システムであって、
前記複数のパッシブ凝縮器のうちの少なくとも1台のパッシブ凝縮器が、前記一次冷却媒体の流体流に対して前記少なくとも1台の熱交換器と並列に配置される、冷却システム。
【請求項32】
前記複数のパッシブ凝縮器が、前記一次冷却媒体の流体流に対して互いに並列に配置される、請求項31に記載の冷却システム。
【請求項33】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記複数のパッシブ凝縮器のうちの各パッシブ凝縮器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記複数のパッシブ凝縮器のうちの各パッシブ凝縮器の前記出口に流体接続され、
前記蒸発器の前記入口が、前記複数のパッシブ凝縮器のうちの各パッシブ凝縮器の前記出口よりも高い位置に配置される、請求項31に記載の冷却システム。
【請求項34】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記少なくとも1台の熱交換器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記少なくとも1台の熱交換器の前記出口に流体接続され、
前記蒸発器の前記入口が、前記少なくとも1台の熱交換器の前記出口よりも高い位置に配置される、請求項31に記載の冷却システム。
【請求項35】
前記二次冷却媒体が、圧縮機と膨張弁とを備える直接膨張式冷却システムの冷媒である、請求項31に記載の冷却システム。
【請求項36】
前記少なくとも1台の熱交換器に前記二次冷却媒体が供給される場合に、前記一次冷却媒体の一部を、前記複数のパッシブ凝縮器のうちの各パッシブ凝縮器と前記少なくとも1台の熱交換器が受け取って、(i)前記一次冷却媒体から熱を移動し、(ii)前記一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iii)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給する、請求項31に記載の冷却システム。
【請求項37】
前期冷却システムが、複数の熱交換器をさらに備え、
前記複数の熱交換器のうちの各熱交換器が、前記一次冷却媒体の流体流に対して前記複数のパッシブ凝縮器のうちの各パッシブ凝縮器と並列に配置される、請求項31に記載の冷却システム。
【請求項38】
前記蒸発器が、液相の前記一次冷却媒体を受け取るように構成された入口を備え、
前記複数の熱交換器のうちの各熱交換器が、液相の前記一次冷却媒体を供給するように構成された出口を備え、
前記蒸発器の前記入口は、前記液ラインによって前記複数の熱交換器のうちの各熱交換器の前記出口に流体接続され、
前記蒸発器の前記入口が、前記複数の熱交換器のうちの各熱交換器の前記出口よりも高い位置に配置される、請求項37に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システム、ならびに冷却システムを制御するためのシステムおよび方法に関する。また、特定的には、本発明は、アクティブモードとパッシブモードの両モードを有する冷却システムに関する。特に適した用途としては、例えば、データセンターの冷却システムが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
データセンターの稼働には、大量のエネルギーが必要となることが多い。データセンターのサーバから大量の熱が発生するため、これを冷却する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、データセンターのエネルギー使用量を削減するため、より効率的な冷却システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本発明は、蒸発器と、パッシブ凝縮器と、熱交換器と、液ラインと、ポンプとを備える冷却システムに関する。蒸発器は、一次冷却媒体を収容するとともに、プロセス流体を受け取るように構成される。また、蒸発器は、プロセス流体を受け取るとプロセス流体から熱を抽出して、プロセス流体を冷却して一次冷却媒体を液相から気相に相変化させるように構成される。パッシブ凝縮器は、外表面を備えるとともに、蒸発器に流体結合され、外表面に気流が導かれるように構成される。また、パッシブ凝縮器は、気流がパッシブ凝縮器の外表面に導かれると(i)蒸発器から気相の一次冷却媒体を受け取り、(ii)一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給する、ように構成される。熱交換器は、蒸発器に流体結合されるとともに、二次冷却媒体が選択的に供給されるように構成される。熱交換器に二次冷却媒体が供給される場合に、蒸発器とパッシブ凝縮器との間および蒸発器と熱交換器との間に何らかの弁を配置してこれを動作させなくとも、パッシブ凝縮器が受け取っていた気相の一次冷却媒体の少なくとも一部を、熱交換器が受け取るようになって、熱交換器が、(i)蒸発器から気相の一次冷却媒体を受け取り、(ii)一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給する、ように構成される。一方、熱交換器に二次冷却媒体が供給されない場合には、熱交換器は、液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給しない。液ラインは、蒸発器をパッシブ凝縮器と熱交換器のそれぞれに流体接続して、パッシブ凝縮器と熱交換器のうちの少なくとも一方から蒸発器へと液相の一次冷却媒体を供給する。ポンプは、液ラインに配置されて、液相の一次冷却媒体を蒸発器に圧送するように構成される。パッシブ凝縮器は、一次冷却媒体の流体流に対して熱交換器と並列に配置される。
【0005】
他の態様では、本発明は、蒸発器と、複数のパッシブ凝縮器と、少なくとも1台の熱交換器と、液ラインと、ポンプとを備える冷却システムに関する。蒸発器は、一次冷却媒体を収容するとともに、プロセス流体を受け取るように構成される。また、蒸発器は、プロセス流体を受け取るとプロセス流体から熱を抽出して、プロセス流体を冷却して一次冷却媒体を液相から気相に相変化させるように構成される。各パッシブ凝縮器は、外表面を備えるとともに、蒸発器に流体結合され、外表面に気流が導かれるように構成される。また、各パッシブ凝縮器は、気流がパッシブ凝縮器の外表面に導かれると(i)蒸発器から気相の一次冷却媒体を受け取り、(ii)一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給する、ように構成される。少なくとも1台の熱交換器は、蒸発器に流体結合されるとともに、二次冷却媒体が選択的に供給されるように構成される。少なくとも1台の熱交換器に二次冷却媒体が供給される場合に、蒸発器とパッシブ凝縮器との間および蒸発器と熱交換器との間に何らかの弁を配置してこれを動作させなくとも、パッシブ凝縮器が受け取っていた気相の一次冷却媒体の少なくとも一部を、少なくとも1台の熱交換器が受け取るようになって、少なくとも1台の熱交換器が、(i)蒸発器から気相の一次冷却媒体を受け取り、(ii)一次冷却媒体から熱を移動し、(iii)一次冷却媒体を気相から液相に相変化させ、(iv)液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給する、ように構成される。一方、少なくとも1台の熱交換器に二次冷却媒体が供給されない場合には、熱交換器は、液相の一次冷却媒体を蒸発器に供給しない。液ラインは、蒸発器を複数のパッシブ凝縮器のうちの各パッシブ凝縮器と少なくとも1台の熱交換器に流体接続して、複数のパッシブ凝縮器と少なくとも1台の熱交換器のうちの少なくとも1台から蒸発器へと液相の一次冷却媒体を供給する。ポンプは、液ラインに配置されて、液相の一次冷却媒体を蒸発器に圧送するように構成される。複数のパッシブ凝縮器のうちの少なくとも1台のパッシブ凝縮器は、一次冷却媒体の流体流に対して少なくとも1台の熱交換器と並列に配置される。
【0006】
本発明の上記および上記以外の態様については、以下の開示から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の好適な実施形態に係る冷却システムを用いたデータセンターを示す立面図
図2】本発明の好適な実施形態に係る冷却システムがパッシブモードで動作する様子を示す模式図
図3図2に示す冷却システムがアクティブモードで動作する様子を示す模式図
図4】本発明の好適な実施形態に係る冷却システムのエアハンドラユニットを示す模式図
図5図4に示すエアハンドラユニットと一緒に使用される凝縮ユニットを示す模式図
図6】本発明の好適な実施形態に係る冷却システムを示す立面図
図7A図1に示す冷却システムと組み合わせて使用される単相式浸漬冷却システムで冷却するサーバラックの例を示す図
図7B図1に示す冷却システムと組み合わせて使用される二相式浸漬冷却システムで冷却するサーバラックの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る、少なくとも1つの冷却システム200を有するデータセンター100を示している。なお、冷却システム200の図示、説明を、データセンター100と関連させながら行っているが、冷却システム200はこの用途に限定されるものではなく、他の熱源によって暖められた空気の気流を冷却する用途などの他の適切な冷却用途でも使用することができる。ラック112には、サーバなどの電子コンポーネントを載置することができる。これらのラック112は、ラック列間にアイルを形成するように何列にも並べて配置することができる。この配置では、一方のアイルがコールドアイルとされ、他方のアイルをホットアイルとされる。冷却システムからの冷たい給気122は、コールドアイル内に導かれる。その後、コールドアイル内の給気122は、ラックを通り抜けてホットアイル内に入る。空気は、ラック112を通り抜ける際に、電子コンポーネントから熱を奪ってこれを冷却する。これによりこの空気が熱気となり、この暖気がホットアイル内に入る。そして、この暖気が、暖かい還気124として冷却システム200に還流される。給気ファン126(図4参照)は、データセンター100から還気124を吸い込んで、冷却システム200(ここで、還気124を冷却する)を通過させ、これにより冷却された還気124を給気122としてデータセンター100に還流するために使用される。
【0009】
冷却システム200は、室内エアハンドラ202と室外凝縮ユニット204という2つの部分に分けることができる。本明細書では、冷却システム200のうち、還気124が流れる部分であって、還気124を冷却して給気122として還流させる部分を、室内エアハンドラ202と呼ぶ。図1に示すデータセンター100は、複数のフロアを有する多層階のデータセンター100である。本実施形態では、データセンター100は、第1のフロア102と、第2のフロア104と、第3のフロア106という3つのフロアを有している。第2のフロア104は第1のフロア102に比べて高く、第3のフロア106は、第1のフロア102と第2のフロア104のいずれに比べても高い。本実施形態において、第1のフロア102は1階である。本実施形態の第1のフロア102、第2のフロア104、第3のフロア106の各フロアに、電子コンポーネントを収容する複数のラック112が備えられている。各フロア102、104、106には、少なくとも1台の室内エアハンドラ202が配置され、対応するフロアのラック112に配置された電子コンポーネントの冷却を行う。
【0010】
本実施形態の冷却システム200は、パッシブモードとアクティブモードという2つのモードを有している。パッシブモードは、節約モードと呼ぶこともできる。図2は、パッシブモード時の冷却システム200を示す模式図であり、図3は、アクティブモード時の冷却システム200を示す模式図である。冷却システム200には、外気を活用したフリークーリングシンクを利用する能力(パッシブモードまたは節約モード)と、外気を活用したフリークーリングシンクでは、熱を十分に除去できるほどの温度低下が得られない場合に、アクティブ冷却を行う能力(アクティブモード)とが組み込まれている。そして、並列に動作する2台の別体の凝縮器210、220を備えることによって、これを実現している。本明細書では、一方の凝縮器を、パッシブ凝縮器210と呼び、パッシブモード(節約モード)で使用する。また、もう一方の凝縮器を、アクティブ凝縮器220と呼び、アクティブモードで使用する。
【0011】
冷却システム200は、ラック内の電子コンポーネント(例えば、サーバ)から抽出した熱を含んでいるプロセス流体を冷却するために使用される。一次冷却材ループ240は、プロセス流体に熱結合された蒸発器230を備えている。本実施形態では、プロセス流体は、空気、より具体的には、還気124であり、蒸発器230は、コイル、好ましくは、ワンパス式満液コイルである。ただし、例えば、米国特許出願公開第2018/0038660号、同第2021/0368647号の各明細書に記載のフィン付き管コイルやマイクロチャネルコイルなどの任意の適切なコイルを使用することができ、これらの明細書のすべての開示内容は、参照により本明細書に援用するものとする。パッシブモードとアクティブモードのいずれのモードでも、還気124は、給気ファン126によって蒸発器230の外表面上に導かれる。蒸発器230内には、一次冷却媒体が収容されている。一次冷却媒体は、液相から気相へと相変化する任意の適切な冷媒とすることができる。かかる冷媒としては、例えば、R-134aが挙げられ、水などの自然冷媒でもよい。なお、本明細書では、一次冷却媒体を冷媒(refrigerant)と呼ぶ場合もある。暖かい還気124が蒸発器230の外表面上を通過すると、これにより蒸発器230内の一次冷却媒体が気化する。一次冷却媒体が液相から気相(蒸気相)へと相変化することにより、還気124が冷却され、この還気124を冷たい給気122としてデータセンター100に還流することが可能となる。
【0012】
なお、上記の説明や後述の詳しい説明でも述べているように、プロセス流体は、他の適切な流体とすることもできる。かかる他の適切な流体としては、例えば、水、水-グリコール混合液などの液体、非導電性流体(誘電体)を挙げることができる。また、これらの実施形態において、蒸発器230も、他の適切な熱交換器とすることができる。かかる適切な熱交換器としては、例えば、プレート式熱交換器、同軸熱交換器、シェル&チューブ式熱交換器を挙げることができる。
【0013】
一次冷却媒体は、蒸発器230を備えた一次冷却材ループ240を循環する。一次冷却材ループ240は、一次冷却材ループ240の各種構成要素(その一部を図4および図5に図示している)を流体接続するための管、配管、導管などを備えている。蒸発器230で暖められて気相となった一次冷却媒体は、蒸気配管250を通って2台の凝縮器210、220のうちの一方へと流れる。
【0014】
図2に示すパッシブモードでは、この蒸気はパッシブ凝縮器210へと進む。蒸発器230と同様、本実施形態のパッシブ凝縮器210もコイルであり、好ましくはワンパス式コイルであるが、任意の適切なコイルを使用することができる。かかる適切なコイルとしては、例えば、管コイル(フィン付き管コイルとフィンなし管コイルのいずれでもよい)、または米国特許出願公開第2018/0038660号に記載のマイクロチャネルコイルなどのマイクロチャネルコイルを挙げることができる。スカベンジャファン208(図1参照)の吸引により、パッシブ凝縮器210の外表面にはスカベンジャ空気206が流れている。本実施形態において、スカベンジャ空気206は、冷却システム200(より具体的には、凝縮ユニット204)を取り囲む屋外環境から取り込んだ外気である。スカベンジャ空気206がパッシブ凝縮器210の上を通過する際に、パッシブ凝縮器210に収容されている一次冷却媒体の熱がスカベンジャ空気206へと放出され、一次冷却媒体が凝縮する。これにより、一次冷却媒体が気相から液相へと相変化する。その後、一次冷却媒体は、液冷媒ライン260を通って蒸発器230に供給される。スカベンジャ空気206は、スカベンジャファン208によって外部に排出される。
【0015】
還気124を給気122として望ましい条件(例えば、望ましい温度)まで冷却するのに十分な外気条件ではない場合には、冷却システム200は、図3に示すアクティブモードで動作することができる。アクティブモードでは、蒸気相の一次冷却媒体は、蒸気配管250を通ってアクティブ凝縮器220に流れ、アクティブ凝縮器で凝縮される。アクティブ凝縮器220は、二次冷却媒体が選択的に供給されるように構成されている。アクティブ凝縮器220では、一次冷却媒体の熱を二次冷却システム270の二次冷却媒体へと移動させる。二次冷却媒体は、任意の適切な冷媒媒体とすることができる。かかる適切な冷媒媒体としては、例えば、冷却した水(冷水)、または直接膨張式冷却システムで用いられる蒸気相変化冷媒が挙げられる。いくつかの実施形態では、水を単独で使用するのではなく水-グリコール混合液を使用することもでき、つまり、冷却した水-グリコール混合液を二次冷却媒体として使用することもできる。また、アクティブ凝縮器220は、任意の適切な熱交換器とすることができる。かかる適切な熱交換器としては、例えば、プレート式熱交換器、同軸熱交換器、シェル&チューブ式熱交換器を挙げることができる。したがって、本明細書では、アクティブ凝縮器220を熱交換器(heat exchanger:HX)と呼ぶ場合もある。一次冷却媒体の熱が二次冷却媒体へと放出(二次冷却媒体によって吸収)されると、一次冷却媒体が凝縮して蒸気から液体になる。その後は、パッシブ凝縮器210の場合と同様、一次冷却媒体は、液冷媒ライン260を通って蒸発器230に供給される。
【0016】
本実施形態において、二次冷却システム270は、一般的な冷却(refrigeration)サイクルを利用する直接膨張(DX)式冷却システムであり、二次冷却媒体は、かかるシステムで用いられる任意の適切な冷媒である。二次冷却システム270は圧縮機272を備えており、二次冷却媒体は、圧縮機272で圧力と温度を上昇させてから、凝縮器274で冷却される。本実施形態において、二次冷却システム270の凝縮器274も、スカベンジャ空気206で冷却することができ、また、二次冷却システム270の凝縮器274も、パッシブ凝縮器210に関する上記の説明で述べた凝縮器などの任意の適切な凝縮器とすることができる。その後、二次冷却媒体は、膨張弁276を通過し、そこで圧力と温度を下げてから、アクティブ凝縮器220内に流入する。
【0017】
冷却システム200は、好ましくは、モード切り替えのための弁を使用せずに動作する。この実施形態では、パッシブ凝縮器210とアクティブ凝縮器220が、一次冷却媒体の流れに対して互いに並列に配置される。そして、蒸発器230を出た気相の一次冷却媒体が、パッシブ凝縮器210とアクティブ凝縮器220のうちの一方に流れるように、蒸気配管250が分岐している。気相の一次冷却媒体は、自然の力で2台の凝縮器210、220のうち温度の低い方へと進み、そこで凝縮される。パッシブモード時には、気相の一次冷却媒体はパッシブ凝縮器210へと進み、アクティブモード時には、気相の一次冷却媒体の大部分がアクティブ凝縮器220へと進む。したがって、二次冷却システム270を作動させてアクティブ凝縮器220を冷却することにより、冷却システム200は自動的にパッシブモードからアクティブモードへと切り替わり、二次冷却システム270の動作を停止すると、冷却システム200は再びパッシブモードに切り替わる。外気温が十分に低くなく、外気温では熱を十分に除去することができない場合に、二次冷却システム270が作動される。すると、蒸発器とパッシブ凝縮器の間や蒸発器と熱交換器の間に何らかの弁を配置してこれを動作させなくとも、パッシブ凝縮器210が受け取っていた気相の一次冷却媒体の少なくとも一部を、アクティブ凝縮器220が受け取るようになる。パッシブモードでは、二次冷却システム270は作動せず、アクティブ凝縮器220への二次冷却媒体の供給は行われない。また、パッシブモードでは、アクティブ凝縮器220から蒸発器230に液相の一次冷却媒体が供給されることもない。一方、アクティブモードでは、パッシブ凝縮器210においても一次冷却媒体の一部の凝縮が行われる場合がある。
【0018】
上述したように、パッシブ凝縮器210とアクティブ凝縮器220のうちのいずれかで凝縮された液相の一次冷却媒体は、液冷媒ライン260を通って蒸発器230に供給される。パッシブ凝縮器210とアクティブ凝縮器220はいずれも、共通液冷媒ライン260(液ラインと呼ぶ場合もある)に流体結合されている。液冷媒ライン260にはポンプ280が配置され、ポンプ280は、液相の一次冷却媒体を蒸発器に圧送するように構成されている。ポンプ280を使用することより、自然循環と重力を利用できるようにはなっていない構成(例えば、凝縮器を十分な高さに設置することができず、一次冷却材ループ240内の一次冷却媒体の流れを支えられるほどの圧力水頭が得られない条件など)においても、冷却システム200を利用することが可能となる。かかる構成としては、例えば、図1に示す多層階データセンター100が挙げられる。データセンター100の屋根は、データセンター100のラック112を十分に冷却するために必要なすべての凝縮ユニット204を支持するのに十分なスペースや強度を有していない場合がある。したがって、パッシブ凝縮器210とアクティブ凝縮器220とを備える凝縮ユニット204が、地上の、データセンター100の外周沿いなどの位置に設置される場合があり、その場合に、ポンプ280によって、パッシブ凝縮器210およびアクティブ凝縮器220よりも高い位置にあるフロア(例えば、第2のフロア104または第3のフロア106)に配置された蒸発器230に、液相の一次冷却媒体を供給することが可能となる。
【0019】
図2および図3に示す実施形態では、冷却システム200は、パッシブ凝縮器210と、アクティブ凝縮器220と、蒸発器230とをそれぞれ1台ずつ備えている。しかし、いくつかの実施形態では、図4および図5に示す冷却システム200のように、これらの構成要素をそれぞれ複数ずつ使用することもできる。図4および図5は、複数のパッシブ凝縮器210と、複数のアクティブ凝縮器220と、複数の蒸発器230とを有する冷却システム200の模式図である。図4は、本実施形態の冷却システム200の室内エアハンドラ202を示しており、図5は、凝縮ユニット204を示している。
【0020】
冷却システム200は、複数の一次冷却材ループ240を備えることができる。この実施形態では、冷却システム200は、第1の一次冷却材ループ242と、第2の一次冷却材ループ244という2つの一次冷却材ループ240を備えている。図4に示しているように、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244のそれぞれが、少なくとも1台の蒸発器230を備えている。この実施形態では、第1の一次冷却材ループ242が2台の第1の蒸発器232を備え、第2の一次冷却材ループ244が2台の第2の蒸発器234を備えている。第1の蒸発器232は、還気124に対して並列に配置され、第1の共通蒸気配管252と第1の共通液冷媒ライン262とに接続されている。同様に、第2の蒸発器234は、還気124に対して並列に配置され、第2の共通蒸気配管254と第2の共通液冷媒ライン264とに接続されている。各第1の蒸発器232は、第2の蒸発器234のうちの一方と、還気124に対して直列に配置される。還気124は、第2の蒸発器234を通過した後に第1の蒸発器232を通過するように導かれる。
【0021】
図5に示す凝縮ユニット204は、第1の回路(CIRCUIT 1)と、第2の回路(CIRCUIT 2)と、第3の回路(CIRCUIT 3)と、第4の回路(CIRCUIT 4)という4つの回路を備えている。なお、本明細書では、凝縮ユニット204が4つの回路を有するものとして説明するが、任意の適切な数の回路を使用することができる。さらに、これら4つの回路のうちの各回路内の構成要素についても、具体的な構成要素(例えば、パッシブ凝縮器210とアクティブ凝縮器220)を用いて説明を行うが、本発明の範囲には、これら構成要素を様々な配置と数量で使用することも含まれることが企図されている。
【0022】
図5に示しているように、第1の一次冷却材ループ242は、複数の第1のパッシブ凝縮器212を備えている。この実施形態では、第1の一次冷却材ループ242は、6台の第1のパッシブ凝縮器212を備えている。第1のパッシブ凝縮器212は互いに並列に接続されており、第1の共通蒸気配管252と第1の共通液冷媒ライン262により、これらの第1のパッシブ凝縮器212に対して第1の蒸発器232が流体接続されている。第1の回路と第2の回路と第3の回路に、それぞれ2台の第1のパッシブ凝縮器212が配置される。
【0023】
また、第1の一次冷却材ループ242は、3台の第1のアクティブ凝縮器222をさらに備えている。これら3台の第1のアクティブ凝縮器222は、第1の回路と第2の回路と第3の回路にそれぞれ1台ずつ配置される。この実施形態では、各二次冷却システム270が、互いに並列に接続された2台の凝縮器274を備えている。これらの凝縮器274が、対応する第1のアクティブ凝縮器222と同じ回路に配置される。なお、図5において、圧縮機272には符号を付しているが、分かりやすくするため、膨張弁276には符号を付していないことに注意されたい。第1のアクティブ凝縮器222は互いに並列に接続されるとともに、第1のパッシブ凝縮器212に並列に接続されている。また、第1の蒸発器232は、第1の共通蒸気配管252と第1の共通液冷媒ライン262によって、各第1のアクティブ凝縮器222にも流体接続している。
【0024】
第2の一次冷却材ループ244も、複数の第2のパッシブ凝縮器214を備えている。この実施形態では、第2の一次冷却材ループ244は、6台の第2のパッシブ凝縮器214を備えている。第2のパッシブ凝縮器214は互いに並列に接続されており、第2の共通蒸気配管254と第2の共通液冷媒ライン264により、これらの第2のパッシブ凝縮器214に対して第2の蒸発器234が流体接続されている。第1の回路と第2の回路と第3の回路に、それぞれ2台の第2のパッシブ凝縮器214が配置される。
【0025】
この実施形態では、第2の一次冷却材ループ244は、1台の第2のアクティブ凝縮器224を備えており、この第2のアクティブ凝縮器224が、6台の第2のパッシブ凝縮器214と並列に配置されている。また、第2のアクティブ凝縮器224は、第2の共通蒸気配管254と第2の共通液冷媒ライン264によって、第2の蒸発器234にも流体接続されている。第2の一次冷却材ループ244の第2のアクティブ凝縮器224は、第4の回路に配置される。第4の回路は、第2のアクティブ凝縮器224とこれに対応する二次冷却システム270を備えるが、第2のパッシブ凝縮器214は備えていない。つまり、4つの回路それぞれが、二次冷却システム270を備えている。
【0026】
第1の回路と第2の回路と第3の回路は、互いに同様の回路配置とされる。したがって、以下の第1の回路に関する説明は、第2の回路と第3の回路にも同様に当てはまる。第1の回路の凝縮器212、214、274は、第1の組の凝縮器と第2の組の凝縮器という2組に分けて配置されている。そして、スカベンジャファン208によって送られるスカベンジャ空気206が、各組の凝縮器の外表面上を通過するように進むことができる。第1の組の凝縮器と第2の組の凝縮器は、スカベンジャ空気206の気流に対して互いに並列に配置されている。第1の組の凝縮器と第2の組の凝縮器のそれぞれが、第1の一次冷却材ループ242の第1のパッシブ凝縮器212と、第2の一次冷却材ループ244の第2のパッシブ凝縮器214と、二次冷却システム270の凝縮器274とを1つずつ備えている。
【0027】
これらの凝縮器212、214、274は、スカベンジャ空気206の気流に対して直列に配置される。第1の回路のスカベンジャファン208の吸引により、スカベンジャ空気206は、これらの凝縮器を通って以下のように進む。凝縮ユニット204を取り囲む屋外環境から取り込んだ外気であるスカベンジャ空気206は、まず、第1の一次冷却材ループ242の第1のパッシブ凝縮器212を通過する。次に、スカベンジャ空気206は、第2の一次冷却材ループ244の第2のパッシブ凝縮器214を通過する。そして、スカベンジャ空気206は、二次冷却システム270の凝縮器274を通過し、その後、スカベンジャファン208によって外部に排出される。各スカベンジャファン208は、それぞれ独立に可変とすることができるほか、少なくとも回路ごとに可変とすることができる。第1の回路の凝縮器212、214、274をこのように配置することにより、向流設計を実装することができる。第1の一次冷却材ループ242の一次冷却媒体は、第2の一次冷却材ループ244の一次冷却媒体よりも冷たい。したがって、最も冷えた状態のスカベンジャ空気206が、最も冷たい凝縮器(第1のパッシブ凝縮器212)を最初に通過し、第1のパッシブ凝縮器212で暖められたスカベンジャ空気206が、より暖かい第2のパッシブ凝縮器214を通過することになる。
【0028】
図2および図3を参照しながら説明した上述の冷却システム200と同様、図4および図5に示す冷却システム200も、好ましくは、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244に弁を使用することなく、アクティブモードとパッシブモードの間のモード切り替えを行う。弁を使用するのではなく、二次冷却システム270を作動させて第1のアクティブ凝縮器222および/または第2のアクティブ凝縮器224を冷却することにより、気相の一次冷却媒体が、自然の力で温度の低い方の凝縮器であるアクティブ凝縮器(第1のアクティブ凝縮器222および/または第2のアクティブ凝縮器224)へと進み、そこで凝縮される。つまり、熱力学的な力によって、冷却システム200は、パッシブモードからアクティブモードに移行する。
【0029】
外気温が十分に低いときには、全回路をパッシブモード(節約モード)で動作させて、スカベンジャファン208の速度を調整して、給気122の温度を所望の設定温度に制御するのに役立つ速度とすることができる。そして、スカベンジャ空気206の流量を最大にしても、給気122の温度が設定温度を上回ってしまう場合には、少なくとも1つの二次冷却システム270を作動させて、第1のアクティブ凝縮器222と第2のアクティブ凝縮器224のうちの少なくとも1台に二次冷却媒体を供給することができる。図4および図5に示す冷却システム200では、各回路の二次冷却システム270を、必要に応じて段階的に作動して、給気122の温度を設定温度に保つことができる。各回路の二次冷却システム270をどの順序で段階作動するかについては、様々な順序が考えられるが、1つのやり方として、必要に応じて逐次的に、まず第1の回路、その次に第2の回路、その次に第3の回路、その次に第4の回路という順序で、二次冷却システム270を段階的に作動させる、という方法がある。したがって、この実施形態では、第1の一次冷却材ループ242の二次冷却システム270の後に、第2の一次冷却材ループ244の二次冷却システム270という順序で段階作動させることができる。そして、給気122の温度が設定温度を下回ると、例えば、回路を段階作動した順序とは逆の順序で、二次冷却システム270の動作を停止させていくことができる。
【0030】
そして、すべての二次冷却システム270(アクティブ冷却モード)を停止して、スカベンジャファン208のファン速度を最小にしても、給気122の温度が設定温度を下回ってしまう場合には、スカベンジャファン208を、必要に応じて段階的に停止して、給気122の温度を設定温度に保つことができる。そして、1台を残してすべてのスカベンジャファン208を停止している場合に、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244のうちの一方のみを動作させることができる。後述するように、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244のそれぞれが、ポンプ280を備えており、すなわち、第1の一次冷却材ループ242が、第1の蒸発器232に液相の一次冷却媒体を供給するための第1のポンプ282を備え、第2の一次冷却材ループ244が、第2の蒸発器234に液相の一次冷却媒体を供給するための第2のポンプ284を備えている。よって、第1のポンプ282と第2のポンプ284のうちの一方のみを動作させることにより、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244のうちの一方のみを動作させることができる。ポンプ282、284が動作していないときには、対応するループ242、244の動作が停止する。
【0031】
また、第1のポンプ282と第2のポンプ284を、冷却システム200の調節に役立てることもできる。第1のポンプ282は、第1の蒸発器232の液位(液相の一次冷却媒体の量)を精密に制御して、蒸発器232を出る蒸気の温度を所望の温度に維持するように構成することができ、第2のポンプ284は、第2の蒸発器234の液位を精密に制御して、蒸発器234を出る蒸気の温度を所望の温度に維持するように構成することができる。例えば、第1のポンプ282と第2のポンプ284をいずれも可変速ポンプとし、ポンプ282、284の速度を制御することにより、第1の蒸発器232と第2の蒸発器234に供給される一次冷却媒体の量を制御することができる。第1のポンプ282と第2のポンプ284をこのやり方で使用することにより、幅広い熱負荷や外気条件に対して効率的に、一次冷却媒体を第1の一次冷却材ループ242内および第2の一次冷却材ループ244内に循環させることが可能となる。ポンプ282、284の速度調整を利用して、液体の一次冷却媒体の蒸発器232、234への流入量が過剰となる(例えば、蒸発器232、234から液体の一次冷却媒体が溢れる)という、蒸発器232、234から蒸気流が出るのを阻害しかねない事態を防ぐことができる。さらに、ポンプ282、284の速度調整を利用して、液体の一次冷却媒体の蒸発器232、234への流入量が過少となる(例えば、蒸発器232、234が欠乏状態に陥る)という、凝縮器212、214、222、224での効果的かつ効率的に凝縮を行うのを阻害しかねない事態を防ぐことができる。このような検討事項やポンプ282、284の速度制御は、室内エアハンドラ202と凝縮ユニット204が離れている場合に特に重要となると考えられる。これは、室内エアハンドラ202と凝縮ユニット204の距離が離れれば離れるほど、一次冷却媒体の使用量が増えることから、上述した液溢れなどの問題が深刻化するためである。
【0032】
ポンプ282、284の速度の設定、ひいては蒸発器232、234への液体流入量の設定は、様々なアプローチで行うことができる。例えば、ポンプ282、284の速度は、蒸発器232、234での熱吸収、還気124/給気122の熱除去、凝縮器212、214、222、224での熱除去、スカベンジャ空気206による熱吸収、または蒸気の過熱に基づく速度とすることができる。これらのポンプ282、284の速度制御因子の測定は、米国特許出願公開第2021/0368647号に記載しているように行うことができ、本明細書のすべての開示内容は、参照により本明細書に援用するものとする。
【0033】
冷却システム200は、制御装置290を使用して動作させることができる。本実施形態では、制御装置290はマイクロプロセッサベースの制御装置であり、本明細書で説明する各種機能を実行するためのプロセッサ292と、各種データを格納するためのメモリ294とを備えている。なお、制御装置290をCPUと呼ぶ場合もある。いくつかの実施形態では、メモリ294に格納され、プロセッサ292によって実行される一連の命令により、冷却システム200の制御を実行することができる。
【0034】
制御装置290は、種々の環境の温度を監視する各種温度センサ(temperature sensor:「TS」)296と通信可能に結合することができる。制御装置290は、温度センサ296から温度情報(例えば、温度)を受信するように構成される。図4に示しているように、例えば、温度センサ296を使用して給気122の温度を監視し、これにより、給気122の温度などを温度センサ296から送信(そして、これを制御装置290が受信)できるようにする。また、温度センサ296を使用して、還気124の温度を監視することもできる。さらに、他の温度センサ296を使用して、他の条件を監視することもでき、例えば、図5に示すように、外気温(スカベンジャ空気206の温度)の監視を行うように温度センサ296を配置することもできる。また、他の温度センサ296や他のセンサを使用して、冷却システム200の各種パラメータや、第1の一次冷却材ループ242、第2の一次冷却材ループ244、二次冷却システム270それぞれの各種パラメータを測定することができる。例えば、ループセンサは、温度センサと圧力センサを使用して各ループの一次冷却媒体の温度と圧力を測定することができる。
【0035】
また、制御装置290を、冷却システム200の他の構成要素に通信可能かつ動作可能に結合して、制御装置290を使用してこれらの構成要素を制御することもできる。例えば、給気ファン126およびスカベンジャファン208を、制御装置290に通信可能かつ動作可能に結合することができ、その場合、制御装置290を使用して、上述したように給気ファン126およびスカベンジャファン208を動作させることができる。また、制御装置290を、各ループの二次冷却システム270にも通信可能かつ動作可能に結合することができ、制御装置290を使用して、上述したように二次冷却システム270のオンとオフを切り替える(作動と動作停止を行う)こともできる。さらに、制御装置290は、第1のポンプ282および第2のポンプ284にも通信可能かつ動作可能に結合して、本明細書で説明したように第1のポンプ282および第2のポンプ284それぞれの動作を制御することもできる。
【0036】
上述したように、第1のパッシブ凝縮器212と第1のアクティブ凝縮器222の双方から、第1の共通液冷媒ライン262に液相の一次冷却媒体を供給することができる。同様に、第2のパッシブ凝縮器214と第2のアクティブ凝縮器224の双方から、第2の共通液冷媒ライン264に液相の一次冷却媒体を供給することができる。図5に示しているように、第1の共通液冷媒ライン262は、第1のポンプ282を備え、第2の共通液冷媒ライン264は、第2のポンプ284を備えている。第1のポンプ282は、第1のパッシブ凝縮器212と第1のアクティブ凝縮器222より下流側に配置され、第2のポンプ284は、第2のパッシブ凝縮器214と第2のアクティブ凝縮器224より下流側に配置される。また、第1のポンプ282は、第1の蒸発器232より上流側に配置され、第2のポンプ284は、第2の蒸発器234より上流側に配置される。第1のポンプ282は、液相の一次冷却媒体を第1の蒸発器232に圧送するように構成され、第2のポンプ284は、液相の一次冷却媒体を第2の蒸発器234に圧送するように構成されている。
【0037】
上述の説明や図1にも示しているように、凝縮ユニット204は、室内エアハンドラ202よりも低い位置に配置される。したがって、第1のパッシブ凝縮器212と、第2のパッシブ凝縮器214と、第1のアクティブ凝縮器222と、第2のアクティブ凝縮器224とは、第1の蒸発器232と第2の蒸発器234よりも低い位置に配置される。より詳細には、凝縮器212、214、222、224はそれぞれ、出口266(図5参照)を備えており、各出口266は、第1の共通液冷媒ライン262または第2の共通液冷媒ライン264に流体接続されて、液相の一次冷却媒体を供給するように構成されている。また、第1の蒸発器232と第2の蒸発器234はそれぞれ、入口268(図4)を備えており、各入口268は、第1の共通液冷媒ライン262または第2の共通液冷媒ライン264に流体接続されている。各入口268は、第1の共通液冷媒ライン262または第2の共通液冷媒ライン264によって対応する出口266に流体接続され、液相の一次冷却媒体を受け取るように構成されている。図1に示しているように、入口268は出口266よりも高い位置に配置される。この構成では、凝縮器212、214、222、224から液相の一次冷却媒体を供給するのに必要な圧力を、自然循環と重力で十分に生成することができない。第1の蒸発器232と第2の蒸発器234の入口268は、凝縮器212、214、222、224の出口266から入口268まで一次冷却媒体を移動させるだけの十分な重力と自然循環を得ることができない高さに配置される。よって、これに代えて、第1のポンプ282と第2のポンプ284を利用して、液相の一次冷却媒体を送るための圧力を供給している。したがって、第1のポンプ282と第2のポンプ284を使用することにより、自然循環と重力のみに頼る場合には利用できなかった構成を冷却システム200に採用することが可能となる。
【0038】
第1の蒸発器232と第2の蒸発器234の入口268が、凝縮器212、214、222、224の出口266から入口268まで一次冷却媒体を移動させるだけの十分な重力と自然循環を得ることができない高さに配置されるような構成は、他にも考えられる。ポンプ(例えば、第1のポンプ282と第2のポンプ284)を使用せずに動作する構成では、液相の一次冷却媒体を蒸発器232、234へと送るために利用することができる最大の流体力(hydraulic force)は、蒸発器232、234に対する凝縮器212、214、222、224の相対的な高さ、より具体的には、出口266と入口268の間の高低差によって得られる。自然循環と重力によって一次冷却材ループ240に一次冷却媒体を循環させるためには、この流体力が、一次冷却材ループ240(例えば、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244のそれぞれ)内を流れる一次冷却媒体の流れに対する流動抵抗(圧力損失)に打ち勝てるほど十分なものである必要がある。高低差によって得ることが可能な圧力(流体力)が、システム(一次冷却材ループ240)の圧力損失より小さい場合には、自然循環と重力でシステムが動作することはないため、このような状況で選択できる手段として、配管のサイズを上げる、またはシステムの質量流量を下げるという選択肢が考えられる。しかし、配管のサイズを上げれば、設置コストが高くなる上、必要とされる冷媒充填量も多くなってしまう。また、質量流量を下げれば、システムの熱除去性能が低下してしまう。したがって、このような状況では、本明細書に記載のポンプ280を利用した実施形態が好ましいと考えられる。
【0039】
以下の表に、本明細書に記載の実施形態が好適と考えられる高低差を示す第2の一次冷却材ループ244の例を示す。表1は、400kWの熱除去性能が得られる質量流量と300kWの熱除去性能が得られる質量流量という2つの異なる質量流量に対するシステムの圧力損失を、等価直線配管長(単位:フィート、括弧内の単位:メートル)で示している。まっすぐな配管は、直線配管長さ当たりの圧力損失値を有しており、また、エルボ、T管(t-section)、凝縮器コイル、蒸発器コイルなどの他のシステム内構成要素も、それぞれが相当する直線配管の長さ(等価直線配管長)(単位:フィート(m))に換算することができる(例えば、米国銅開発協会(Copper Development Association Inc.)の設計ハンドブック、表14.7を参照されたい)。これらを合計することにより、表1に示す第2の一次冷却材ループ244の総等価直線配管長(単位:フィート(m))が得られる。以下の例では、一次冷却媒体にR134aを使用している。第2の共通蒸気配管254の直径は4インチ(10cm)であり、第2の共通液冷媒ライン264の直径は2インチ(5cm)である。表2は、様々な高低差で得ることが可能な流体力(最大流体力)を示している。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
最大流体力(表2)と圧力損失(表1)を比較することで分かるように、鉛直離間距離が8フィート(2.4m)または10フィート(3.0m)あれば、300フィート(91m)の等価直線配管長を有するシステムであっても、システム(第2の一次冷却材ループ244)を動作させるのに必要な圧力を、自然循環と重力で十分得ることができる。同様に、鉛直離間距離が6フィート(1.8m)あれば、300フィート(91m)もの等価直線配管長と、熱除去性能300kWの質量流量を有するシステム(第2の一次冷却材ループ244)を動作させるのに必要な圧力を、自然循環と重力で十分得ることができる。一方、最大流体力が十分でない場合には、本明細書に記載の実施形態を適用することができる。上記の表1および表2から分かるように、300kWの熱除去システムでは、鉛直離間距離が4フィート(1.2m)で、一次冷却材ループ240が、等価直線配管長にして150フィート(46m)以上の圧力損失を有している場合に、本明細書に記載の実施形態を適用することができる。同様に、400kWの熱除去システムでは、鉛直離間距離が6フィート(1.8m)で、一次冷却材ループ240が、等価直線配管長にして225フィート(69m)以上の圧力損失を有している場合に、より好ましくは0.5PSI(3.4kPa)の安全率を適用して、等価直線配管長にして150フィート(46m)以上の圧力損失を有している場合に、本明細書に記載の実施形態を適用することができる。場合によっては、特に0.5PSI(3.4kPa)の安全率が適用される場合には、鉛直離間距離が4フィート(1.2m)以下であれば、等価直線配管長に関係なく本明細書に記載の実施形態を適用することもできる。
【0043】
さらに、自然循環と重力に頼る場合には、凝縮器212、214、222、224と蒸発器232、234を適切に配置しながら第1の共通液冷媒ライン262と第2の共通液冷媒ライン264における圧力損失を抑えるためには、システムが使用する第1の共通液冷媒ライン262と第2の共通液冷媒ライン264の配管サイズが比較的大きくなることが考えられ、その結果、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244の一次冷却媒体の量が比較的多くなると考えられる。しかし、ポンプ280を備えない場合の配管サイズが、約2 1/8インチ(5.40cm)であったとすると、ポンプ280を備えることで、これを約1 3/8インチ(3.49cm)まで抑えることができる。これに相当するサイズダウンを、第1の共通液冷媒ライン262と第2の共通液冷媒ライン264で行えば、相互接続ラインの長さによっては、一次冷却媒体の冷媒充填量を最大40%削減することができる。相互接続ラインとは、蒸気配管252、254と液冷媒ライン262、264のうち、室内エアハンドラ202と凝縮ユニット204との間の部分である。
【0044】
また、ポンプ280のようなポンプを使用するもう1つの利点として、ポンプ式システムとすることにより、室内エアハンドラ202と凝縮ユニット204を、道路輸送に適したサイズとすることが可能な単一のユニットに統合しやすくなることも挙げられる。図6は、道路輸送に適したサイズの単一ユニットにまとめた冷却システム300を示している。冷却システム300は、上述した冷却システム200と同様の構成と動作とすることができる。なお、図6において、上述した冷却システム200と同様の参照番号は、冷却システム200と同一または同様の構成要素を示しているため、ここではこれらの構成要素の詳細な説明を行わない。さらに、この例では、説明を簡潔にするため、二次冷却システム270などの一部の構成要素を省略しているが、冷却システム300でも上述のいずれの各構成要素も備えることができる。ポンプ280を使用することにより、自然循環と重力によって一次冷却材ループ240に一次冷却媒体を流す場合には必要であったパッシブ凝縮器210と蒸発器230の間の高低差が不要となるため、パッシブ凝縮器210を蒸発器230と同様の高さに配置することが可能となる。したがって、全体の高さを、道路輸送で許容される高さ(例えば、152インチ(386cm))まで下げることができる。よって、単一ユニット全体の高さが、14フィート(4.27m)以下、例えば、13.5フィート(4.11m)以下、または13フィート(3.96m)以下となるように、蒸発器230とパッシブ凝縮器210を互いに相対的に配置することができる。また、これらの実施形態では、全体の高さを道路輸送で許容される高さとすることができるように、アクティブ凝縮器220も、蒸発器230およびパッシブ凝縮器210に対して相対的に配置することができる。
【0045】
単一ユニットシステム(冷却システム300)を道路輸送する方法には、ユニットを単一ユニットとして工場で組み立てておくことができるため、冷却システム300の使用現場で必要な組み立て作業を減らすことができるという利点があると考えられる。つまり、設置工期の短縮と品質管理の向上を叶えるため、冷却システム300の充填と試験運転を行っておくことができる。そして、このシステムを、適切な流体導管(例えば、本実施形態では、ラック112を保持する部屋への空気ダクト(図示せず))によって、冷却対象のラック112に接続することができる。このため、冷却システム300は、プロセス流体入口とプロセス流体出口とを備えている。プロセス流体入口とプロセス流体出口は蒸発器230に流体接続され、ここから、蒸発器230へのプロセス流体の供給と、蒸発器230で冷却したプロセス流体の受け取りを行う。この実施形態では、冷却システム300は、給気口302と還気口304とを備えており、給気122を送るダクトに給気口302を接続し、還気124を送るダクトに還気口304を接続することができる。
【0046】
単一ユニットシステム(冷却システム300)には、例えば、一次冷却媒体(冷媒)の充填量を削減できるなどの他の利点もある。これは、単一ユニットシステムでは、(例えば、相互接続配管の省略などにより)配管量を削減することができるためである。また、単一ユニットシステム(冷却システム300)では、上述の蒸気配管250や液冷媒ライン260などの配管と比べて、様々なダクト構成でより根本的にデータセンター100のレイアウトや構成に適合することができるため、データセンター100をより柔軟に構成することが可能となる。さらに、室内エアハンドラ202をデータセンター100の外部の位置に移動させているため、各フロア102、104、106に追加のフロアスペースを確保することができ、このスペースを、ラック112の追加などの様々な目的に使用することが可能となる。
【0047】
いくつかの実施形態では、図1図6に示しているように、一次冷却材ループ240(例えば、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244のそれぞれ)が、冷媒レシーバ246を備えることもできる。冷媒レシーバ246は、凝縮器212、214、222、224の出口266より下流側かつ第1のポンプ282または第2のポンプ284より上流側の位置で、第1の共通液冷媒ライン262と第2の共通液冷媒ライン264のそれぞれに流体接続される。好ましくは、液相の一次冷却媒体が自然の力で冷媒レシーバ246に流れ込むように、冷媒レシーバ246は、アクティブ凝縮器222、224の底部よりも鉛直下方の高さに配置される。
【0048】
冷媒レシーバ246は、一次冷却材ループ240がアクティブモードで動作しているときに使用することができる。第1のパッシブ凝縮器212と第2のパッシブ凝縮器214は、第1のアクティブ凝縮器222や第2のアクティブ凝縮器224を大きく上回る容量を有する場合がある。したがって、アクティブモードでの動作中には、第1のアクティブ凝縮器222と第2のアクティブ凝縮器224の容積が小さいために余分になった一次冷却媒体が生じていると考えられる。そこで、冷媒レシーバ246でこの余分な一次冷却媒体を溜めて、第1のアクティブ凝縮器222や第2のアクティブ凝縮器224に一次冷却媒体が逆流してしまうのを防ぐことができる。このような逆流が生じるようなことがあれば、第1のアクティブ凝縮器222や第2のアクティブ凝縮器224の熱除去効率が低下してしまう可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの回路をアクティブモードとした状態で一次冷却材ループ240(例えば、第1の一次冷却材ループ242と第2の一次冷却材ループ244のそれぞれ)を動作しているときに、余分な一次冷却媒体を冷媒レシーバ246で回収することができる。冷媒レシーバ246は、蒸発器230が、第1のアクティブ凝縮器222と第2のアクティブ凝縮器224の少なくとも一方から液相の一次冷却媒体を受け取っているときに、余分な一次冷却媒体を受け取るように構成される。
【0049】
冷媒レシーバ246は、任意の適切な冷媒レシーバとすることができる。また、これに加えてまたは代えて、冷媒レシーバ246は、余分な一次冷却媒体を保持するのに適したサイズの特大配管(例えば、第1の共通液冷媒ライン262または第2の共通液冷媒ライン264の特大部分)とすることもできる。
【0050】
上述の例では、冷却システム200が冷却するプロセス流体は、空気(例えば、還気124)である。上記では、電子機器を収容したラック112に空気(プロセス流体)を案内し、そこで暖められた空気を次に蒸発器230(還気124)へと案内してそこで冷却するものとして説明している。しかし、本明細書に記載の冷却システム200は、空気の冷却に限定されるものではなく、任意の適切な流体の冷却に使用することができる。例えば、プロセス流体には、水、水-グリコール混合液などの液体、非導電性流体(誘電体)も含まれ得る。上述の、空気をプロセス流体とする実施形態では、マイクロチャネルコイルまたはフィン付き管コイルが、蒸発器230として適していた。一方、蒸気(気体)ではなく液体をプロセス流体とする場合には、例えば、マイクロチャネルコールドプレート、プレート式熱交換器、同軸熱交換器、シェル&チューブ式熱交換器などの他の適切な蒸発器230を使用することができる。
【0051】
液体をプロセス流体とする場合には、例えば、ポンプでプロセス流体ループ内にプロセス流体を循環させることができる。プロセス流体は、ラック112に収納された電子機器などの熱負荷から熱を受け取るように構成することができる。いくつかの実施形態では、プロセス流体ループは空気-液体熱交換器を備えることができ、暖められた空気(例えば、ラック112内の空気)をこの熱交換器に通して、プロセス流体の温度を上げるようにすることもできる。
【0052】
他の実施形態では、冷却システム200は、浸漬冷却システムと一緒に使用することもできる。図7A図7Bには、浸漬冷却システムで使用するラック112の例を示している。図7Aでは、サーバ114を誘電体132に浸漬している。サーバ114によって誘電体132が暖められても、誘電体132は液体(単相)のまま変化しない。こうして暖められた誘電体132は、プロセス流体134としてプロセス流体ループ130に循環させて冷却した後、ラック112に戻してサーバ114のさらなる冷却を行う。
【0053】
図7Bでも、サーバ114を誘電体132に浸漬している。ただしこの例では、誘電体132は、二相冷却によってサーバ114の冷却を行う。サーバ114によって誘電体132が暖められると、誘電体132は蒸気(気相)へと相変化する。そして、誘電体の蒸気が、ラック112の上部まで上昇する。ラック112の上部には、コイル136が備えられている。コイル136には適切なプロセス流体134が流れており、これにより誘電体132を凝縮させる。なお、他の実施形態では、誘電体132とは別の流体をプロセス流体134として使用するのではなく、蒸気相の誘電体132をプロセス流体134とし、これを蒸発器230で直接冷却することもできる。
【0054】
上述の実施形態では、サーバ114は蒸発器230から物理的に離間しており、プロセス流体ループ130を利用して、サーバ114などの他の情報技術(「IT」)設備から蒸発器230への熱輸送を行っている。しかし、本明細書に記載の発明はこれに限定されるものではなく、蒸発器230を任意の液冷冷媒式(liquid to refrigerant)熱交換器として、循環する液体(誘電流体や水などの他の流体)により、IT設備から二相サーモサイフォン式ループに封入された冷媒へと熱を輸送することもできる。かかる他の適切な蒸発器230としては、例えば、サーバ114またはITコンポーネントと一体化されて、コンポーネントやコンポーネント内部のチップから直接熱を吸収するコールドプレートや、浸漬冷却システムに直接組み込まれた複数の円筒面を挙げることができる。
【0055】
以上、特定の例示的な実施形態に関する説明を通して本発明を説明してきたが、当業者には、本開示に基づいて他にも多くの変更例や変形例が明らかとなるであろう。したがって、本発明は、本明細書において具体的に説明したものとは異なる態様で実施することができることを理解されたい。つまり、本発明の例示的な実施形態は、すべての意味において例示的なものに過ぎず、限定を意図するものではないとみなすべきものであり、本発明の範囲は、上述の説明ではなく、本明細書でサポートすることができる請求項およびその均等物により特定すべきものである。
【符号の説明】
【0056】
100 データセンター
102 第1のフロア
104 第2のフロア
106 第3のフロア
112 ラック
114 サーバ
122 給気
124 還気
126 給気ファン
130 プロセス流体ループ
132 誘電体
134 プロセス流体
136 コイル
200、300 冷却システム
202 室内エアハンドラ
204 室外凝縮ユニット
206 スカベンジャ空気
208 スカベンジャファン
210 パッシブ凝縮器
212 第1のパッシブ凝縮器
214 第2のパッシブ凝縮器
220 アクティブ凝縮器
222 第1のアクティブ凝縮器
224 第2のアクティブ凝縮器
230 蒸発器
232 第1の蒸発器
234 第2の蒸発器
240 一次冷却材ループ
242 第1の一次冷却材ループ
244 第2の一次冷却材ループ
246 冷媒レシーバ
250 蒸気配管
252 第1の共通蒸気配管
254 第2の共通蒸気配管
260 共通液冷媒ライン
262 第1の共通液冷媒ライン
264 第2の共通液冷媒ライン
266 凝縮器の出口
268 蒸発器の入口
270 二次冷却システム
272 圧縮機
274 二次冷却システムの凝縮器
276 膨張弁
280 ポンプ
282 第1のポンプ
284 第2のポンプ
290 制御装置
292 プロセッサ
294 メモリ
296 温度センサ
302 給気口
304 還気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】