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特表2025-501905イオン化脂質、脂質ナノ粒子、及びこれらの使用
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  • 特表-イオン化脂質、脂質ナノ粒子、及びこれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】イオン化脂質、脂質ナノ粒子、及びこれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20250117BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20250117BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20250117BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20250117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20250117BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250117BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 9/127 20250101ALI20250117BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250117BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/88 Z ZNA
C12N15/55
C12N15/11 Z
C12N5/10
A61K47/69
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/24
A61K9/127
A61K47/34
A61K31/7105
A61K48/00
A61K38/46
A61P43/00 105
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537981
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 US2023061089
(87)【国際公開番号】W WO2023141624
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/267,084
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516035068
【氏名又は名称】ヴェリリー ライフ サイエンシズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ペック,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】サノワール,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ドワラカナス,マナリ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA05
4B065CA27
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA94
4C076DD50
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF31
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA44
4C084DC22
4C084MA24
4C084MA38
4C084NA14
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086NA14
4C086ZB21
(57)【要約】
イオン化脂質、及びイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子が、本願で提供される。また、ポリペプチド、mRNA(例えば、Cas9ヌクレアーゼをコードするmRNA)、及び骨格修飾、糖修飾、又は塩基修飾を含むガイドRNA等の1種又は複数種のペイロード剤(payload agents)を細胞に送達するために、この脂質ナノ粒子を製造する方法及び使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

のイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子(LNP)であって、
式中、R及びRは、独立して、
【化2】

からなる群から選択され、
及びXは、加水分解性リンカーであり、(a)は、2~9であり、(b)は、2~9である、
LNP。
【請求項2】
前記加水分解性リンカーは、エステルである、請求項1に記載のLNP。
【請求項3】
前記イオン化は、式II
【化3】

の脂質である、請求項1又は2に記載のLNP。
【請求項4】
コレステロール、ヘルパーリン脂質、及びポリエチレングリコール(PEG)-脂質をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項5】
前記LNPの総脂質含有量の約20%~約80%は、式Iのイオン化脂質である、請求項1~4のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項6】
前記LNPは、
(a)20%~80%の式Iのイオン化脂質、
(b)5%~20%のヘルパー脂質、
(c)10%~60%のコレステロール、
及び
(d)0.5%~5%のPEG
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項7】
ポリペプチド、核酸、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項8】
前記LNP中に、異種ポリペプチドをコードする核酸が封入されている、請求項7に記載のLNP。
【請求項9】
前記核酸は、mRNAである、請求項8に記載のLNP。
【請求項10】
前記mRNAは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする、請求項9に記載のLNP。
【請求項11】
前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである、請求項10に記載のLNP。
【請求項12】
前記LNPは、ガイドRNAをさらに含む、請求項9~11のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項13】
前記ガイドRNAは、修飾ガイドRNAである、請求項12に記載のLNP。
【請求項14】
前記ガイドRNAは、骨格修飾、糖修飾、塩基修飾、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の修飾を含む、請求項13に記載のLNP。
【請求項15】
前記糖修飾は、前記2’リボース基の2’OMe修飾又は2’F修飾である、請求項14に記載のLMP。
【請求項16】
前記骨格修飾は、チオエステル修飾である、請求項14又は15に記載のLNP。
【請求項17】
前記ガイドRNAは100個のヌクレオチドの核酸配列を含み、前記100個のヌクレオチドのうちの69個は修飾されている、請求項13~16のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項18】
前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNA及び前記ガイドRNAは別々に封入されており、次いで組み合わされて、前記ガイド誘導型エンドヌクレアーゼ及び前記ガイドRNAを含む1つ又は複数のLNPを形成する、請求項10~17のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項19】
前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNA及び前記ガイドRNAは、1つ又は複数のLNP中に共封入されている、請求項18に記載のLNP。
【請求項20】
前記LNP中における前記mRNA及び/又はgRNA中のリン酸基に対する前記イオン化脂質中の窒素基の比は、約4~約6である、請求項19に記載のLNP。
【請求項21】
前記LNPは、少なくとも1つのテンプレート配列をさらに含む、請求項10~20のいずれか一項に記載のLNP。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のLNPを含む、医薬組成物。
【請求項23】
細胞に異種ポリペプチドを送達する方法であって、細胞と、請求項8に記載のLNP、又は請求項8に記載のLNPを含む医薬組成物とを接触させることを含む、方法。
【請求項24】
細胞のゲノムを編集する方法であって、細胞と、請求項10~21のいずれか一項に記載のLNP、又は請求項10~21のいずれか一項に記載のLNPを含む医薬組成物とを接触させることを含む、方法。
【請求項25】
前記細胞は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで存在している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は、ヒト細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項24~26のいずれか一項に記載の方法により製造された、遺伝子改変細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行の関連出願
本出願は、2022年1月24日に出願された米国仮出願第63/267,084号の利益及び当該米国仮出願に対する優先権を主張するものであり、当該米国仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
遺伝子治療及びワクチン接種は、インビボでの治療薬(therapeutic agents)の効果的な、特異的な、及び許容される送達に依存している。インビボ送達用の脂質ナノ粒子(LNP)は、多くの治療用途(therapeutic applications)に有望な送達ビヒクルとして浮上している。しかしながら、遺伝子編集等の用途(applications)のための、治療効果が改善しており毒性が最小限に抑えられているLNPが、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本明細書では、薬剤(agent)のインビトロ、エクスビボ、又はインビボでの送達のためのイオン化脂質、及びイオン化脂質を含むLNPが提供される。例えば、本明細書で説明されているのは、式I
【化1】

のイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子(LNP)であって、
式中、R及びRは、独立して、
【化2】

からなる群から選択され、
及びXは、加水分解性リンカーであり、(a)は、2~9(即ち、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の炭素)であり、(b)は、2~9(即ち、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の炭素)である、LNPである。いくつかの実施形態では、LNP中の加水分解性リンカーは、エステルである。いくつかの実施形態では、LNPは、式II
【化3】

のイオン化脂質を含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、LNPは、コレステロール、ヘルパーリン脂質、及びポリエチレングリコール(PEG)-脂質をさらに含む。いくつかの実施形態では、LNPの総脂質含有量の約20%~約80%は、式I又は式IIのイオン化脂質である。
【0005】
いくつかの実施形態では、LNPは、(a)20%~80%の式Iのイオン化脂質;(b)5%~20%のヘルパー脂質;(c)10%~60%のコレステロール;及び(d)0.5%~5%のポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、LNPは、ポリペプチド、核酸、又はこれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、LNP中には、異種ポリペプチドをコードする核酸が封入されている。いくつかの実施形態では、核酸は、mRNAである。いくつかの実施形態では、mRNAは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする。いくつかの実施形態では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNAを含むLNPは、ガイドRNA(gRNA)をさらに含む。ガイドRNAは、修飾ガイドRNAであり得る。任意選択的に、ガイドRNAは、骨格修飾、糖修飾、及び塩基修飾からなる群から選択される1つ又は複数の修飾を含む。例として、糖修飾は、2’OMe修飾又は2’F修飾であり得る。いくつかの実施形態では、骨格修飾は、チオエステル修飾である。任意選択的に、gRNAは、100個のヌクレオチドの核酸配列を含み、100個のヌクレオチドのうちの69個は、修飾されている。
【0007】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNA、及びガイドRNAは、別々に封入されており、次いで組み合わされてLNPを形成する。いくつかの実施形態では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNA、及びガイドRNAは、LNP中に共封入されている。任意選択的に、LNP中におけるmRNA及び/又はgRNA中のリン酸基に対するイオン化脂質由来の窒素基の比は、約4~約6である。いくつかの実施形態では、LNPは、少なくとも1つの核酸テンプレートをさらに含む。
【0008】
また、本明細書で説明されているLNPのうちのいずれかの複数も提供される。さらに、本明細書で説明されているLNPのうちの1つ又は複数を含む医薬組成物が提供される。
【0009】
さらに、細胞に異種ポリペプチドを送達する方法であって、細胞と、異種ポリペプチドを含む1つ若しくは複数のLNPとを接触させることを含むか、又は細胞と、本明細書で説明されている異種ポリペプチドをコードする核酸を含む1つのLNP若しくはLNP(複数可)とを接触させることを含む方法である。また、細胞に異種ポリペプチドを送達する方法であって、細胞と、異種ポリペプチドを含む1つ若しくは複数のLNPを含む医薬組成物とを接触させることを含むか、又は細胞と、本明細書で説明されている異種ポリペプチドをコードする核酸を含む1つ若しくは複数のLNPを含む医薬組成物とを接触させることを含む方法が提供される。
【0010】
また、細胞のゲノムを編集する方法であって、細胞と、核酸を含む1つ若しくは複数のLNPとを接触させることであり、核酸は、本明細書で説明されているRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAをコードする、接触させることを含むか、又は細胞と、リボヌクレオタンパク質複合体(RNP)を含む1つ若しくは複数のLNPとを接触させることであり、RNAは、本明細書で説明されているRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、接触させることを含む方法が提供される。さらに、細胞のゲノムを編集する方法であって、細胞と、医薬組成物であり、本明細書で説明されているRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸と、ガイドRNAとを含む1つ若しくは複数のLNPを含む医薬組成物とを接触させることによるか、又は細胞と、リボヌクレオタンパク質複合体(RNP)を含む1つ若しくは複数のLNPを含む医薬組成物であり、RNPは、本明細書で説明されているRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、医薬組成物とを接触させることによる方法が提供される。細胞は、任意選択的に、インビトロで、エクスビボで、又はインビボで編集される。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞である。
【0011】
また、本明細書で説明されている1つ又は複数のLNPを含む細胞、並びに本明細書で説明されている方法のうちのいずれかにより製造された遺伝子改変細胞が提供される。
【0012】
図面の説明
本出願は、下記の図面を含む。図面は、本組成物及び本方法のある特定の実施形態及び/又は特徴を説明すること、並びに本組成物及び本方法の説明を補足することが意図されている。図面は、本明細書の説明でそのように明示的に示されていない限り、本組成物及び本方法の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】製剤1(F1)(イオン化脂質PCTA-1(式II)を含む製剤)、比較製剤1(CF1)、及び比較製剤2(CF2)の比較を示す。全ての製剤は、Cas9 mRNAと、TTR又はPCSK9のいずれかを標的とするsgRNAとをパッケージ化した。TTRを標的とする場合には(左から最初の3つの柱)、F1(PCTA-1を含む製剤)は、最高の編集を達成しており、CF2と比べて編集の改善を示しており、CF1と比べて大きい(約5倍高い)改善を示した。PCSK9を標的とする場合には(右から最初の3つの柱)、F1は、同一のsgRNAを使用する場合に、CF2及びCF1の両方と比べて有意に高い編集(2~3倍高い)を達成した。
図2】選択された化学修飾を有するTTR sgRNA配列(ガイド1(配列番号1))、ガイド2(配列番号1)、ガイド3(配列番号2)、及びガイド4(配列番号3)を示す。大文字の塩基は、リボヌクレオチドである。小文字の塩基は、2’-OMeリボヌクレオチドである。ガイド2は、配列番号1(
【化4】

)において下線が引かれている2’-デオキシ-2’-フルオロ-リボヌクレオチドを含む。
図3A図2に記載されている全てのガイドRNAに関して同様の編集を示す、インビトロ初代マウス肝細胞スクリーニングの結果を示す。
図3B図2に記載されている全てのガイドRNAに関して細胞上清タンパク質レベルの低下を示す、インビトロ初代マウス肝細胞スクリーニングの結果を示す。
図4A】文献のナノ粒子製剤に関するインビボの結果を示す。
図4B】文献の製剤と、PCTA-1(式II)を含むナノ粒子製剤との比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本明細書では、イオン化脂質と、1つ又は複数の細胞への薬剤の送達(例えば、細胞への核酸、ポリペプチド、又はこれらの組み合わせの送達)に使用され得るイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子(LNP)とが提供される。本明細書で使用される場合、イオン化脂質とは、生理的pHでは中性であるが、低pHではプロトン化されて正に荷電する脂質分子のことである。本明細書で説明されているイオン化脂質は、pKa調整されたエタノールアミン頭部基を有する分枝したアルキルテイル及びリノレイルテイルの組み合わせを用いて、薬剤の効率的な充填、送達、及びLNPからの放出を可能にしている。イオン化脂質はまた、加水分解性リンカーも含み、LNP破壊後(例えば、細胞へのLNPの送達後)の迅速な脂質クリアランスを可能にすることにより、毒性が制限されている。
【0015】
本明細書では、式I
【化5】

を有するイオン化脂質であって、式中、R及びRは、独立して、
【化6】

からなる群から選択され、
及びXは、加水分解性リンカーであり、(a)は、2~9であり、(b)は、2~9である、イオン化脂質が提供される。いくつかの実施形態では、加水分解性リンカーはエステルである。いくつかの実施形態では、イオン化は、式II(PCTA-1)
【化7】

の脂質である。
【0016】
また、本明細書で説明されているイオン化脂質のうちのいずれかを含むLNPが提供される。例えば、本明細書で提供されるのは、式I又は式IIのイオン化脂質を含むLNPである。式I又は式IIのイオン化脂質は、ペイロード(例えば、核酸、ポリペプチド、小分子等)の送達を成功させる化学的特徴の独特の組み合わせを有する。エタノールアミン頭部基は、pKaが6.2~6.8の範囲であり、その結果、アミンは、生理的pHでは荷電していないが、酸性pHでは正に荷電している。さらに、エステル結合は、加水分解性であり、そのため、ペイロードの送達後に脂質の迅速なクリアランスが可能になる。リノレイルテイル中の不飽和により、秩序立てられた膜充填が妨げられ、LNPがペイロードを放出して、より容易にエンドソームから脱出することが可能になる。分枝アルキルテイルも、同様の機能を果たす。これら2つのテイルと、エタノールアミノ頭部基の調整されたpKaとの組み合わせにより、効率的なペイロードの充填、送達、及び放出が可能になるが、加水分解性リンカーは、LNP破壊後の迅速な脂質クリアランスを可能にすることにより、毒性を制限する。
【0017】
本明細書で使用される場合、脂質ナノ粒子(LNP)は、ナノメートル範囲の球状小胞である。一般に、脂質ナノ粒子は、エンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、低pHでの脂質のイオン化性により、エンドソームからの脱出が可能となり、これにより、細胞質へのカーゴの放出が可能になる。加えて、脂質ナノ粒子は、細胞結合を促進するヘルパー脂質、脂質間の隙間を埋めるコレステロール、及び/又は血清タンパク質によるオプソニン化及び細網内皮クリアランスを低減するポリエチレングリコール(PEG)を任意選択的に含む。イオン化脂質を含むLNPは、核酸、ポリペプチド、薬物(drugs)、又は他の物質を担持可能であり、これらは、脂質層により封入されるか、又は脂質層内に含まれる。LNPは、サイズ(即ち、直径)が様々であり得る。例えば、LNPは、サイズが約1000ナノメートル(nm)以下であり得る。例えば、LNPは、サイズが約50nm~約1000nm、約50nm~約900nm、約50nm~約800nm、約50nm~約700nm、約50nm~約600nm、約50nm~約500nm、約50nm~約400nm、約50nm~約300nm、約50nm~約200nm、又は約50nm~約100nmであり得る。本明細書で説明されているLNPとして、イオン化脂質と、1種又は複数種のペイロード剤、例えば、数例を挙げると、核酸(例えば、mRNA、gRNA、siRNA、アンチセンス分子、若しくはアプタマー)、ポリペプチド、リボヌクレオタンパク質複合体(例えば、gRNAと複合体化したRNA誘導型エンドヌクレアーゼ)、薬物、又は小分子等とを含むLNPが挙げられる。これらの薬剤の組み合わせ、例えば、mRNA及びガイドRNA、もまた、本明細書で説明されているLNPのうちのいずれか内に存在し得る。全体を通して使用される場合、封入された薬剤とは、LNPの内部の水性又は非水性の空間中に完全に又は部分的に位置する薬剤のことである。例えば、本明細書で説明されているLNP中では、薬剤の少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、又は99%が、LNPの内部空間中に取り込まれている。
【0018】
本明細書で説明されているLNPのうちの2種以上の複数形(pluralities)又は集団(populations)も提供される。例えば、LNPの複数形は、約2~約1×1014個(100兆個)のLNPを含み得る。例えば、複数形は、少なくとも100、250、500、750、1000、5000、10,000、25,000、50,000、100,000、500,000、100万、又はより多いLNPを有し得る。複数形のLNPは、任意選択的に、ペイロード、イオン化脂質の種類、及び/又はサイズが異なる。LNPを、当業者に既知の任意の好適な方法により製造し得るか、又は当業者により後に発見される任意の好適な方法により製造し得る。
【0019】
LNPの例示的な調製方法は、Parhi及びSuresh(“Preparation and characterization of solid lipid nanoparticles-a review,”Curr.Drug Discov.Technol.9(1):2-16(2012))、並びにCorrias及びLai(“New methods for lipid nanoparticles preparation,”Recent.Pat.Drug.Deliv.Formul.5(3):201-213(2011))で説明されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているLNPのうちのいずれかの総脂質含有量の約20%~約80%は、イオン化脂質であり、例えば、式Iのイオン化脂質、又は式IIのイオン化脂質である。任意選択的に、LNPの総脂質含有量の約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又はこれらの割合間の任意の割合は、式Iのイオン化脂質、又は式IIのイオン化脂質であり得る。式I又は式IIのイオン化脂質を含むLNPのうちのいずれかは、1種又は複数種の追加の脂質をさらに含み得る。一般に、様々な脂質構成成分を使用し得る。これらとしては、生理的pHでは荷電していないか又は中性の双性イオン形態のいずれかで存在する中性脂質が挙げられる。そのような脂質として、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。本明細書で説明されている脂質のうちのいずれかの合成誘導体も、脂質ナノ粒子の製造に使用し得る。脂質ナノ粒子はまた、ステロールも含み得、例えば、コレステロールも含み得る。脂質ナノ粒子はまた、生理的pH付近で正味の正電荷を帯びるカチオン性脂質も含み得る。そのようなカチオン性脂質として下記が挙げられるが、これらに限定されない:N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N-N-トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DOTAP.Cl);3.ベータ.-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチル-アンモニウムトリフルオロアセテート(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)。アニオン性脂質もまた、本明細書で説明されている脂質ナノ粒子での使用に適している。これとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、及び中性脂質に結合した他のアニオン性修飾基。
【0021】
いくつかの例では、LNPは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジリノレオイルホスファチジルコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)コンジュゲートポリエチレングリコール(DSPE-PEG)、スフィンゴミエリン、コレステロール、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PEGは、PEG分子量(MW500)~PEG-MW20000であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、本LNPは、式I又は式IIを有するイオン化脂質、コレステロール、ヘルパーリン脂質、及びポリエチレングリコール脂質(例えば、ペグ化ミリストイルジグリセリド(DMG-PEG2000))を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、式I又は式IIを有するイオン化脂質、コレステロール、DSPC、及びDMG-PEG2000を含む。任意選択的に、LNPは、約45%~55%の、式I又は式IIを有するイオン化脂質、約35%~約45%のコレステロール、約5%~約10%のDSPC、及び約1%~約5%のDMG-PEG2000を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約50%の、式I又は式IIを有するイオン化脂質、約38%のコレステロール、約10%のDSPC、及び約2%のDMG-PEG2000を含む。
【0023】
任意選択的に、本LNPは、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又はこれらの割合間の任意の割合の、式I又は式IIのイオン化脂質;約5%、10%、15%、20%、又はこれらの割合間の任意の割合のヘルパー脂質;約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又はこれらの割合間の任意の割合のコレステロール;及び約0.5%、1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、又はこれらの割合間の任意の割合のPEGを含む。
【0024】
LNPは、任意選択的に、LMPの脂質層に付着しているか又は脂質層内に組み込まれている標的化分子又は標的化部分を含む。標的化分子又は標的化部分を使用して、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで、LNPの標的を特定の細胞又は組織に定めて、LNPに封入されたペイロード剤を細胞に送達し得る。全体を通して使用される場合、標的化分子とは、細胞上の抗原に対する結合親和性(任意選択的に、特異的結合親和性)を有する分子のことであり、抗体、ポリペプチド、ペプチド、アプタマー、又は小分子を含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、細胞上の抗原は、タンパク質、脂質、又は炭水化物であり得るが、これらに限定されない。
【0025】
薬剤を含むLNP
本明細書で説明されているLNPとして、イオン化脂質と、ペイロード剤とを含むLNPが挙げられる。薬剤は、例えば、核酸(例えば、mRNA、gRNA、siRNA、アンチセンス分子)、ポリペプチド、リボヌクレオタンパク質複合体(例えば、ガイドRNAと複合化したRNA誘導型エンドヌクレアーゼ)、薬物、又はLNP中に(部分的若しくは完全に)封入されている小分子であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、ポリペプチドである。全体を通して使用される場合、ポリペプチド、タンパク質、及びペプチドは、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用される。本明細書で使用される場合、用語は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合により連結されている任意の長さのアミノ酸鎖(例えば、完全長タンパク質)を包含する。
【0026】
いくつかの実施形態では、封入されている薬剤は、核酸である。全体を通して使用される場合、核酸という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、及び一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態のこれらのポリマーを指す。いくつかの実施形態では、核酸は、エクソン配列、イントロン配列、調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、若しくはサイレンサー)、転写制御配列、翻訳制御配列、スプライシング部位、又は非コード配列を含む。任意選択的に、核酸は、ポリペプチドをコードする核酸であり、例えば、ポリペプチドをコードするDNA分子、又はポリペプチドをコードするRNA分子(例えば、mRNA)である。任意選択的に、ポリペプチドをコードする核酸は、イントロン配列、調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、若しくはサイレンサー)、転写制御配列、翻訳制御配列、スプライシング部位、又は非コード配列のうちの1つ又は複数に作動可能に連結され得る。本明細書で使用される場合、核酸は、別の核酸配列との機能的関係に置かれている場合には、作動可能に連結されている。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合には、コード配列に作動可能に連結されており、リボソーム結合部位は、コード配列の翻訳を促進するように配置されている場合には、コード配列に作動可能に連結されている。
【0027】
任意選択的に、mRNAは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする。Casエンドヌクレアーゼを用いるRNA誘導型ヌクレアーゼシステムであるCRISPR/Casシステムを使用して、宿主細胞又は宿主生物のゲノムを編集し得る。CRISPR/Casシステムは、外来核酸に対する防御のための細菌システムの広範なクラスを指す。CRISPR/Casシステムは、広範な真正細菌生物及び古細菌生物で見出される。CRISPR/Casシステムとして、I型、II型、及びIII型のサブタイプが挙げられる。野生型のII型CRISPR/Casシステムは、ガイドRNA及び活性化RNAとの複合体でRNA媒介型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)を利用して、外来核酸を認識して開裂する。ガイドRNA及び活性化RNAの両方の活性を有するガイドRNAも、当技術分野で既知である。場合により、そのような二重活性ガイドRNAは、単一ガイドRNA(sgRNA)と称される。
【0028】
本明細書で使用される場合、Cas9又はCas9ヌクレアーゼという用語は、RNA媒介型ヌクレアーゼ(例えば、細菌若しくは古細菌起源のRNA媒介型ヌクレアーゼ、又は細菌ヌクレアーゼ若しくは古細菌ヌクレアーゼに由来するRNA媒介型ヌクレアーゼ)を指す。例示的なRNA媒介型ヌクレアーゼとして、前述のCas9タンパク質、及びその相同体が挙げられる。他のRNA媒介型ヌクレアーゼとして、Cpf1(例えば、Zetsche et al. (2015)Cell163(3):759-771を参照されたい)、Cas13ベースのRNAエディタ、及びこれらの相同体が挙げられる。
【0029】
Cas9相同体は、多種多様な真正細菌で見出されており、真正細菌として、下記の分類群の細菌が挙げられるが、これらに限定されない:アクチノバクテリア門(Actinobacteria)、アクウィフェクス門(Aquificae)、バクテロイデス門-緑色硫黄細菌門(Bacteroidetes-Chlorobi)、クラミジア門-ベルコミクロビウム門(Chlamydiae-Verrucomicrobia)、緑色非硫黄細菌門(Chloroflexi)、シアノバクテリア門(Cyanobacteria)、ファーミキューテス門(Firmicutes)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、スピロヘータ門(Spirochaetes)、及びテルモトガ門(Thermotogae)。例示的なCas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質である。更なるCas9タンパク質及び相同体は、例えば、Chylinksi et al.(2013)RNA Biol.10(5):726-737;Makarova et al.(2011)Nat.Rev.Microbiol.9(6):467-477;Hou et al.(2013)Proc Natl Acad Sci USA 110(39):15644-49;Sampson et al.(2013)Nature 497(7448):254-7;及びJinek et al.(2012)Science 337(6096):816-21で説明されている。本明細書で提供されるCas9ヌクレアーゼのうちのいずれかのバリアントを、宿主細胞中での効率的な活性又は安定性の増強のために最適化し得る。そのため、操作されたCas9ヌクレアーゼもまた、企図される。例えば、Slaymaker et al.(2016)Rationally engineered Cas9 nucleases with improved specificity,Science 351(6268):84-88を参照されたい。
【0030】
Cas9エンドヌクレアーゼは、任意選択的に、標的核酸に結合して、二本鎖切断を生じる。しかしながら、Cas9タンパク質は、ニッカーゼであり得、そのため、ガイドRNAとの複合体の一部として標的核酸に結合した場合には、一本鎖切断又なニックが標的核酸に導入される。構造が異なるガイドRNAにそれぞれ結合している一対のCa9ニッカーゼを、標的ゲノム領域の2つの近位部位に標的化し得、そのため、標的ゲノム領域中に一対の近位一本鎖切断を導入し得る。ニッカーゼ対は、特異性を増強し得、なぜならば、オフターゲット効果により単一のニックが生じる可能性が高く、単一のニックは、一般に、塩基除去修復メカニズムにより、損傷することなく修復されるからである。例示的なCas9ニッカーゼとして、D10A変異又はH840A変異を有するCas9ヌクレアーゼが挙げられる。例えば、Ran et al.(2013),Double nicking by RNA-guided CRISPR Cas9 for enhanced genome editing specificity,Cell 154(6):1380-1389を参照されたい。
【0031】
また、本明細書では、1種若しくは複数種のガイドRNAを含むか、又は1種若しくは複数種の、ガイドRNAをコードする核酸を含むLNPが提供される。全体を通して使用される場合、ガイドRNA(gRNA)配列とは、RNA誘導型ヌクレアーゼと相互作用し、並びに細胞のゲノム内の標的核酸と特異的に結合するか又はハイブリダイズし、そのため、gRNA及び標的化ヌクレアーゼは、細胞のゲノム中の標的核酸に共局在化する、配列のことである。ガイドRNAとゲノム配列との間の相補性の程度は、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。
【0032】
場合によっては、ガイドRNAは、少なくとも1つの転写制御配列又は調節制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。各gRNAは、ゲノム中の標的DNA配列に特異的に結合するか又はハイブリダイズする、約10~50個のヌクレオチドの長さのDNA標的化配列又はプロトスペーサー配列を含む。例えば、DNA標的化配列は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、gRNAは、crRNA配列、及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)配列を含む。任意選択的に、gRNAは、tracrRNA配列を含まない。
【0033】
いくつかの実施形態では、LNPは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNAと、ガイドRNAとを含む。RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNA、及びガイドRNAを、別個のLNPに封入し得、次いで、これらのLNPを組み合わせて、異なるLNP中にRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNA又はガイドRNAのいずれかを含む、LNPの混合集団が形成される。いくつかの実施形態では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするmRNAと、ガイドRNAとが、同一のLNPに共封入されている。任意選択的に、LNP中におけるmRNA及び/又はgRNA中のリン酸基に対するLNPのイオン化脂質の窒素基の比は、約4~約6である。
【0034】
ガイドRNAは、任意選択的に、修飾ガイドRNAである。ガイドRNAに対する1つ又は複数の修飾は、骨格修飾、糖修飾、及び塩基修飾からなる群から選択され得る。任意選択的に、ガイドRNAは、1つ若しくは複数の糖修飾、1つ若しくは複数の塩基修飾、及び/又は1つ若しくは複数の骨格修飾を有する。
【0035】
いくつかのガイドRNAでは、糖修飾は、リボース基の2’位の修飾である。いくつかのガイドRNAでは、2’位の修飾は、2’ヒドロキシル基をメチル基に置き換える2’-O-メチル(2’-OMe)、及び2’ヒドロキシル基をフッ素に置き換える2’-フルオロ(2’-F)から選択される。
【0036】
いくつかのガイドRNAでは、リン酸骨格修飾は、チオエステル修飾(例えば、ホスホロチオエート結合)である。場合によっては、ガイドRNA中のヌクレオチドの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はより多くは、修飾ヌクレオチドである。ある特定の場合では、ガイドRNA配列中のヌクレオチドの少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、又は80個が、修飾されている。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、100個のヌクレオチドの核酸配列を含み、100個のヌクレオチドのうちの69個は、下記に示す修飾パターンを使用して修飾されている。
【0037】
任意選択的に、LNPは、リボヌクレオチドタンパク質複合体(RNP)を含み、RNPは、RNA誘導体ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)と、ガイドRNAとを含む。他の実施形態では、LNPは、RNPを含み、RNPは、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)と、ガイドRNAと、細胞のゲノムでの修復又は組換えのための1種又は複数種のテンプレート核酸とを含む。テンプレートを使用して、RNA誘導型エンドヌクレアーゼの標的部位又はその近傍での核酸配列を変更し得るか、又は標的又はその近傍に核酸配列を挿入し得る。いくつかの実施形態では、テンプレートは、ポリペプチド、エクソン配列、イントロン配列、調節配列、転写制御配列、翻訳制御配列、スプライシング部位、又は非コード配列等をコードする異種核酸配列である。任意選択的に、テンプレートは、一本鎖、二本鎖、又は部分的に二本鎖のテンプレートである。いくつかの実施形態では、テンプレートを使用して、相同指向性修復又は非相同末端結合によりゲノム配列を修復し得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、異種という用語は、自然界では通常見出されないものを指す。異種核酸配列という用語は、自然界では所与の細胞中に通常見出されない核酸配列を指す。従って、異種核酸配列は、(a)その宿主細胞に対して外来性であり得るか(即ち、細胞に対して外因性であるか)、(b)宿主細胞中に天然に見出され得るが(即ち、内因性であるが)、細胞中に不自然な量(即ち、宿主細胞中で天然に見出されるものと比べて多いか若しくは少ない量)で存在し得るか、又は(c)宿主細胞中で天然に見出され得るが、その天然の遺伝子座の外側に位置し得る。
【0039】
本明細書で説明されているLNPでは、テンプレートは、10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000個、又はより多くのヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、テンプレートは、相同性アーム(即ち、細胞のゲノム中のRNA誘導型エンドヌクレアーゼ開裂部位の上流及び下流に位置する配列に相補的な核酸配列)に挟まれ得る。本明細書で使用される場合、相補的又は相補性という用語は、ヌクレオチド間又は核酸間での特定の塩基対形成を指す。相補的ヌクレオチドは、一般に、A及びT(又はA及びU)、並びにG及びCである。いくつかの実施形態では、核酸配列(例えば、ガイドRNA又は相同性アーム)と、ゲノム配列との間の相補性の程度は、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。
【0040】
また、本明細書では、本明細書で説明されているLNPのうちのいずれか又はLNPの複数形を含む、1つ又は複数の細胞が提供される。さらに、本明細書で説明されているLNPのうちの1つ又は複数を含む、組成物が提供される。医薬組成物は、例えば、本明細書で説明されているLNPのうちのいずれかの治療上有効な量と、医薬担体とを含む。担体という用語は、化合物又は組成物との組み合わせで、意図された用途又は目的のために、化合物又は組成物の調製、保存、投与、送達、有効性、選択性、又は任意の他の特徴を補助するか又は促進する化合物、組成物、物質、又は構造を意味する。例えば、活性成分の劣化を最小限に抑え、対象中での有害な副作用を最小限に抑えるように、担体を選択し得る。そのような薬学的に許容される担体として、無菌の生体適合性の医薬担体が挙げられ、医薬担体として、生理食塩水、緩衝生理食塩水、人工脳脊髄液、デキストロース、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
任意選択的に、1つ又は複数のLNPを含む組成物はキットで存在しており、キットは、例えば、組成物又はその構成成分のための容器、組成物を投与するためのデバイス、及び/又は組成物を製造するためのミキサー若しくは混合デバイスを含む。
【0042】
本明細書で説明されているLNPのうちのいずれかを含む医薬組成物を、標準的な技法に従って調製し得、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。一般に、薬学的に許容される担体として、生理食塩水が用いられる。他の好適な担体として、例えば、水、緩衝水又は生理食塩水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、デキストロース、及び同類のものが挙げられ、例えば、アルブミン、リポタンパク質、及びグロブリン等の安定性を高めるための糖タンパク質が挙げられる。これらの組成物は、通常は無菌である。医薬組成物はまた、薬学的に許容される賦形剤も含み得る。そのような賦形剤として、それ自体組成物を投与する個体に有害な免疫反応を誘導せず、過度の毒性を伴うことなく投与され得る任意の医薬品(pharmaceutical agent)が挙げられる。これらとして医薬的に許容される塩が挙げられ得、例えば、下記が挙げられ得る:鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、及び同類のもの;並びに有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、及び同類のもの。加えて、そのようなビヒクル中には、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質、及び同類のもの等の補助物質が存在し得る。これらの物質を含む薬学的に許容される担体、賦形剤、及び製剤の調製は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd edition,Loyd V.Allen et al,editors,Pharmaceutical Press(2012)で説明されている。
【0043】
水溶液を、使用のために包装し得るか、又は無菌条件下で濾過して凍結乾燥させ得、凍結乾燥製剤を、投与前に滅菌水溶液と組み合わせる。組成物は、生理学的条件に近づけるのに必要な薬学的に許容される補助物質を含み得、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤、及び同類のもの(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化カルシウム)を含み得る。加えて、LNP懸濁液は、保存中に脂質をフリーラジカル及び脂質過酸化による損傷から保護する脂質保護剤を含み得る。アルファトコフェロール等の親油性フリーラジカル消光剤、及びフェリオキサミン等の水溶性鉄特異的キレート剤が適している。
【0044】
医薬製剤中のLNPの濃度は、幅広く変動し得る(即ち、重量で約0.05%未満から約2~5%、又は10~30%)。濃度を、選択された特定の投与様式に従って、主に、液量、粘度により選択し得る。LNPをまた、乾燥させ得るか又は凍結乾燥させ得、使用時に水又は緩衝液で所望の濃度まで再懸濁させ得る。
【0045】
方法
本明細書では、細胞にポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)を送達する方法が提供される。方法は、細胞と、本明細書で説明されている異種ポリペプチドを含むLNPのうちの1つ若しくは複数とを接触させるか、又は細胞と、本明細書で説明されている異種ポリペプチドをコードする核酸を含むLNPのうちの1つ若しくは複数とを接触させることを含む。任意選択的に、細胞をLNPを含む医薬組成物と接触させ得る。
【0046】
同様に、細胞のゲノムを編集する方法であって、細胞と、RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、及びガイドRNAを含むLNPとを接触させることを含み、ガイドRNAは、RNA誘導型ヌクレアーゼと相互作用し、そのため、RNA誘導型ヌクレアーゼは、ゲノム中の標的DNAに特異的に結合して開裂する、方法が提供される。全体を通して使用される場合、編集するという用語は、細胞のゲノムを編集するという文脈において、標的ゲノム領域でのゲノムの配列に構造変化を誘導することを指す。例えば、編集すること又は改変することは、細胞のゲノムにヌクレオチド配列(例えば、核酸テンプレート)を挿入する形態を取り得る。そのような編集を、例えば、標的ゲノム領域内で二本鎖切断を誘導することにより実施し得るか、又は反対側の鎖に及び標的ゲノム領域を挟んで、一対の一本鎖ニックを誘導することにより実施し得る。標的ゲノム領域又はその内部で一本鎖又は二本鎖の切断を誘導する方法として、本明細書で説明されているように、標的ゲノム領域を対象とするRNA誘導型エンドヌクレアーゼ又はその誘導体、及びガイドRNA又はガイドRNAの対の使用が挙げられる。本明細書で説明されている編集方法のうちのいずれかを使用して、細胞集団における少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%の編集効率を達成し得る。同様に、本明細書で説明されている方法のうちのいずれかにより製造された遺伝子改変細胞が提供される。
【0047】
本明細書で説明されている送達方法のうちのいずれかでは、LNPに封入された薬剤(複数可)は、細胞とLNPとを接触させた後に細胞に導入される。本明細書で使用される場合、核酸、ポリペプチド、又は核酸を含む複合体(例えば、RNP複合体)を導入するという文脈での導入は、核酸配列、ポリペプチド、又は複合体の細胞外から細胞内への移行を指す。場合により、導入は、核酸又は複合体の細胞外から細胞の核内への移行を指す。
【0048】
本明細書で説明されている方法のうちのいずれかを使用して、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで細胞に薬剤を送達し得る。例えば、インビボでの適用に関して、Skipper (2019),Toward In Vivo Gene Therapy Using CRISPR,Methods Mol.Biol.1961:293-306、及びGillmore et al.(2021)CRISPR-Cas9 In Vivo Gene Editing for Transthyretin Amyloidosis,N.Engl.J.Med.385:493-502を参照されたい。
【0049】
本明細書で提供される方法のうちのいずれかでは、細胞は原核細胞又は真核細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物細胞であり、例えば、ヒト細胞である。RNA誘導型エンドヌクレアーゼmRNA及びgRNAを含む1つ又は複数のLNPを、必要な対象に投与し得る。RNP複合体を含む1つ又は複数のLNPを対象に投与し得、RNPは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼと、gRNAと、任意選択的な核酸テンプレートとを含む。いくつかの実施形態では、LNPの標的は、対象の1種又は複数種の標的細胞又は標的組織に定められている。例えば、標的組織は、肝臓、眼、内皮組織、肺、血液、筋肉、若しくは腎臓、又は肝臓、眼、内皮組織、肺、血液、筋肉、若しくは腎臓内の特定の細胞型であり得るが、これらに限定されない。
【0050】
エクスビボ方法として下記が挙げられるが、これらに限定されない:疾患又は障害を有する対象から1つ又は複数の細胞を得ること、(1)RNA誘導型エンドヌクレアーゼmRNAとgRNAとを含むLNPを使用するか、又は(2)RNA誘導型エンドヌクレーゼ及びgRNAを(任意選択的に、核酸テンプレートと共に)含むRNP複合体を含むLNPを使用して、エクスビボで、1つ又は複数の細胞中の1つ又は複数の標的ヌクレオチド配列を編集すること、並びに、編集された標的ヌクレオチド配列を有する1つ又は複数の細胞を、疾患又は障害を有する対象に再導入すること。本明細書で説明されているエクスビボ方法のうちのいずれかでは、細胞を、編集前又は編集後に培養し得、及び/又は拡大させ得る。
【0051】
本明細書で開示されているLNP組成物を、局所処置が望まれているのか又は全身処置が望まれているかに応じて、及び処置される細胞/組織/領域に応じて、多くの方法で対象に投与し得る。組成物を、いくつかの投与経路(例えば、経口、鼻腔内、吸入による、ネブライザーによる、非経口、静脈内、腹腔内、頭蓋内、脊髄内、髄腔内、脳室内、筋肉内、皮下、腔内、又は経皮)のうちのいずれかにより投与する。また、医薬組成物を、例えば、局所適用又は局所注射により、処置が必要な領域に局所的に送達し得る。また、医薬組成物をポンプによっても送達し得るか、又は手術部位でも送達し得る。本明細書で説明されている投与方法のうちのいずれかに関する有効用量を、インビトロ試験システム又は動物モデル試験システムに由来する用量反応曲線から推定し得る。
【0052】
投与されるLNPの量、又はLNP中の活性薬剤(active agent)の量は、処置されるか又は予防される対象の疾患状態、及び臨床医の判断等の多くの要因に依存しているが、一般には、体重1キログラム当たり薬剤約0.01~約150mgであり、好ましくは、約0.1~約20mg/kg体重、約0.1~約10mg/kg体重、又は約0.1~約5mg/kg体重であり、量を、単回用量で投与し得るか、又は1日当たり1~4回等の個別用量の形態で投与し得る。投与を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日、又はより多くの日数にわたり実施し得る。当業者は、薬剤及び薬剤を投与される対象の特定の特性に基づいて、投与量を調整し得る。
【0053】
本開示の方法及び組成物に使用され得るか、これらと組み合わせて使用され得るか、これらの調製で使用され得るか、又はこれらの産物である材料、組成物、及び構成成分が開示される。これらの及び他の材料は、本明細書で開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示されている場合には、これらの化合物のそれぞれの様々な個々の及び集合的な組み合わせ及び順序への具体的な言及が明示的に開示されていない場合があるが、それぞれは、本明細書で具体的に企図されており説明されていることが理解される。例えば、方法が開示され、考察されており、方法を含む多くの分子に対して行われ得る多くの改変が考察されている場合には、方法のありとあらゆる組み合わせ及び順序、並びに可能な改変は、逆のことが具体的に示されていない限り、具体的に企図されている。同様に、これらの任意のサブセット又は組み合わせもまた、具体的に企図され、開示されている。この概念は、本開示の全ての態様(例えば、限定されないが、本開示の組成物を使用する方法における工程)に適用される。そのため、実施され得る様々な更なる工程が存在する場合には、これらの更なる工程のそれぞれを、本開示の方法の任意の具体的な方法工程又は方法工程の組み合わせで実施し得ること、及びそれぞれのそのような組み合わせ又は組み合わせのサブセットが具体的に企図されており、開示されていると見なされるべきであることが理解される。
【0054】
本明細書で引用されている刊行物、及びそれらが引用されている資料は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【実施例
【0055】
実施例
下記の実施例は、例示のみを目的として示されており、限定することを目的として示されていない。当業者は、本質的に同一の又は類似の結果を得るために変更可能か又は改変可能な様々な非必須パラメータを容易に認識するだろう。
【0056】
イオン化脂質製剤
PCTA-1(式II)を、50%のPCTA-1、10%のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、38%のコレステロール、及び2%のペグ化ミリストイルジグリセリド(DMG-PEG2000)を含む製剤で使用した。この製剤を、用途に応じて約20~%~約80%のPCTA-1を含むように調整し得、ヘルパー脂質の割合は、約5%~約20%であり、コレステロールの割合は、10%~60%であり、ポリエチレングリコール(PEG)は、約0.5%~約5%である。
【0057】
核酸送達に関する用途の場合には、核酸(例えば、遺伝子編集の場合には、mRNA、又はmRNAとgRNAとの組み合わせ)を、5.5のN:P(窒素対リン酸)比で組込み、そのため、イオン化可能なアミン(DSPCのアミンはイオン化不能であることから、PCTA-1由来)の数は、核酸中のリン酸基の5.5倍であった。LNPを、溶液を急速に混合するためにマイクロ流体ミキサーを使用して、エタノール中の脂質溶液と緩衝液中の核酸溶液とを組み合わせることにより生成した。この緩衝液は酸性pHでなければならないが、それ以外は異なり得、最も効果的な緩衝液は、pH4.5の25mMクエン酸緩衝液であることが観察された。エタノール中の脂質の濃度もまた、望ましい特性に応じて変動し得るが、一般的には、1~50mg/mL脂質の範囲である。核酸の濃度は、N:P比、緩衝液中の脂質濃度、及びエタノールと緩衝液との比により決定される。エタノールと緩衝液との比も可変であり、3:1の緩衝液:エタノール~1:1の比が効果的である。マイクロ流体混合を、様々な流量で行い得るが、1~10mL/分の流量が最も効果的である。多くの混合構造(例えば、交互に配置されたヘリンボーン混合構造)も利用可能である。この実施例では、PCTA-1用に、Dolomiteマイクロミキサーチップを使用した。
【0058】
PCTA-1をLNP製剤で使用して、インビボでの肝臓へのcas9 mRNA及びガイドRNAの効果的な送達を実証した。2種の異なる遺伝子に関して、高い編集効率が達成された。マウス(複数)に尾静脈から投与し、5日目に肝臓を摘出した。編集率を、ホモジナイズした全肝臓からgDNAを単離することにより決定し、次世代標的化アンプリコン配列決定を使用して、編集事象を定量した。
【0059】
図1に示すように、製剤1(F1)(PCTA-1(製剤II)を含む製剤)を、CF1に関しては式III(例えば、Finn et al.Cell Reports 22,2227-2235(2018)を参照されたい)を使用して生成され、CF2に関しては式IV(ヘプタデカン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(8-(ノニルオキシ)-8-オキソオクチル)アミノ)オクタノエート;例えば、Sabnis et al.Molecular Therapy 26(6):1509-1519(2018)を参照されたい)を使用して生成された比較製剤(CF1)及び比較製剤2(CF2)(両方とも、文献報告に従って製剤化した)と比較した。
【化8】
【0060】
全ての製剤は、Cas9 mRNAと、TTR(左から最初の3つの柱)又はPCSK9(左から4~6個の柱)のいずれかを標的とするsgRNAとをパッケージ化した。全ての製剤を、3匹のマウスの群において0.7mg/kgで投与し、5日後に臓器を摘出した。TTRを標的とする場合には、F1は、最高の編集を達成しており、CF2と比べて改善を示しており、CF1と比べて約5倍の改善を示した。肝臓PCSK9を標的とする場合には、F1は、同一のsgRNAにより、CF2及びCF1と比較して有意に高い編集(2~3倍)を達成した。
【0061】
修飾ガイドRNA
細胞及びインビボマウスモデルにおける遺伝子編集のために、多数の化学修飾パターンを設計して試験した。この設計では、sgRNA内で見出される100個のヌクレオチドのうちの69個が修飾されていた(図2)。2’Ome及び2’Fの糖修飾を、リン酸骨格へのチオエステル修飾と共に使用して、インビトロでのヌクレアーゼ耐性が増加し、活性sgRNAのインビボ送達が改善した。3種のsgRNAを設計し、既に公開されている修飾(ガイド1)と比較した。初代マウス肝細胞を使用するインビトロでのsgRNAの試験では、同様の編集率と、細胞上清での標的タンパク質レベルの低下とが示された。簡潔に説明すると、Cas9 mRNAとsgRNAとを、MessengerMaxトランスフェクション試薬を使用して複合体化し、播種したマウス肝細胞に添加し、次いで、48時間にわたりインキュベートした後、ゲノムDNAを単離して配列決定した。ゲノムDNAを、予想される遺伝子編集の周囲で目的の標的領域を増幅するための入力として使用し、固有のアダプター配列を使用してバーコード化して、次世代配列決定用にサンプルを組み合わせ得るようにした。図3Aは、目的の標的の編集率を示す。全てのガイドは、インビトロで同様の編集を示した。
【0062】
細胞培養上清中での標的タンパク質レベルを、製造業者の指示により市販のELISAキットを使用して測定した(図3B)。結果から、コントロールと比較して全てのsgRNAの同様の減少が示される。
【0063】
全てのsgRNAを、CD1マウスモデルを使用して、インビボで最初にスクリーニングした。簡潔に説明すると、マウス(複数)に尾静脈から注射し、5日目に、血漿、肝臓、及び脾臓を摘出した。編集率を、ホモジナイズした全肝臓又は全脾臓から単離したゲノムDNAから決定した。血漿を、ELISAによるタンパク質決定に使用した。結果から、追加で設計された化学修飾を有するガイド2は、文献で説明されているナノ粒子製剤(図4A)を使用して、編集率の2倍の増加を示すことが示された。本明細書で説明されているナノ粒子製剤を使用する後続のインビボ研究から、~60%の肝臓編集が達成されることが示された(図4B)。肝細胞は肝臓細胞の約70%を占めることから、これは、ほぼ飽和である可能性が高い。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【配列表】
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【国際調査報告】