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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】サンルーフガラス及び車両
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20250117BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20250117BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20250117BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20250117BHJP
   B60J 3/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C03C17/36
C03C27/12 L
C03C27/12 N
B32B17/06
B60J1/00 W
B60J3/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538356
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2023071636
(87)【国際公開番号】W WO2023143064
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210109009.0
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524237238
【氏名又は名称】フーチエン ワンダ オートモビル グラス インダストリー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ル,ユエミン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジーシン
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA12D
4F100AA12E
4F100AA13D
4F100AA13E
4F100AA14D
4F100AA14E
4F100AA17D
4F100AA18D
4F100AA19D
4F100AA20D
4F100AA21D
4F100AA22D
4F100AA24D
4F100AA25D
4F100AA27D
4F100AA28D
4F100AA33D
4F100AB01B
4F100AB02B
4F100AB11B
4F100AB12B
4F100AB13B
4F100AB16B
4F100AB19B
4F100AB20B
4F100AD04D
4F100AD04E
4F100AD05D
4F100AD05E
4F100AD06D
4F100AD06E
4F100AG00A
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100GB32
4F100JN06C
4F100JN18C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4G059AA01
4G059AC04
4G059DA06
4G059DA07
4G059DA08
4G059DA09
4G059DB02
4G059EA01
4G059EA02
4G059EA03
4G059EA04
4G059EA05
4G059EA12
4G059EB04
4G061AA20
4G061AA31
4G061AA33
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
本出願はサンルーフガラス及び車両を提供する。サンルーフガラスは、ガラス基板と、金属吸収層と、反射防止層とを備える。ガラス基板は外表面と内表面とを有する。ガラス基板から離れる方向に沿って、内表面に金属吸収層と反射防止層とが順に積層配置されている。本出願に係るサンルーフガラスによって、車内側に向かうサンルーフガラスの表面の可視光反射率を低減することができ、車内から車外を見るときの乗客の視覚体験を向上させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンルーフガラスであって、前記サンルーフガラスは、ガラス基板と、金属吸収層と、反射防止層とを備え、前記ガラス基板は、外表面と内表面とを有し、前記ガラス基板から離れる方向に沿って、前記内表面に前記金属吸収層と前記反射防止層とが順に積層配置されている、
ことを特徴とするサンルーフガラス。
【請求項2】
前記サンルーフガラスは第1保護層をさらに備え、前記第1保護層は、前記内表面に設けられており、且つ前記内表面と前記金属吸収層との間に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項3】
前記サンルーフガラスは第2保護層をさらに備え、前記第2保護層は、前記金属吸収層から離れた前記反射防止層の表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサンルーフガラス。
【請求項4】
前記反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とからなる積層体を少なくとも1つ含み、前記高屈折率層の屈折率は1.7以上であり、前記低屈折率層の屈折率は1.7より小さい、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のサンルーフガラス。
【請求項5】
前記サンルーフガラスは低放射層をさらに備え、前記低放射層は、前記第1保護層と前記金属吸収層との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載のサンルーフガラス。
【請求項6】
前記低放射層は、酸化インジウムスズ(ITO)層、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)層、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)層、のうちの1つ又は複数を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載のサンルーフガラス。
【請求項7】
前記サンルーフガラスはバリア層をさらに備え、前記バリア層は、前記低放射層と前記金属吸収層との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項6に記載のサンルーフガラス。
【請求項8】
前記ガラス基板は合わせガラスであり、前記合わせガラスは、内側ガラスと、外側ガラスと、前記外側ガラスと前記内側ガラスとの間に接続された中間層とを含み、前記内側ガラスは、第1表面と前記第1表面に対向して設けられた第2表面とを有し、前記第1表面は前記内表面であり、前記外側ガラスは、第3表面と前記第3表面に対向して設けられた第4表面とを有し、前記第4表面は前記外表面である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のサンルーフガラス。
【請求項9】
前記ガラス基板は赤外線反射層をさらに含み、前記赤外線反射層は、前記第2表面及び/又は前記第3表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項8に記載のサンルーフガラス。
【請求項10】
前記サンルーフガラスの可視光透過率は1%~20%の範囲にあり、前記内表面側から測定した前記サンルーフガラスの可視光反射率が4%以下であり、Lab色空間において、前記内表面側から測定した前記サンルーフガラスの反射色はa値が-6~2の範囲にあり、b値が-12~0の範囲にある、
ことを特徴とする請求項8に記載のサンルーフガラス。
【請求項11】
前記外側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、前記内側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、前記中間層の可視光透過率は1%~30%の範囲にある、
ことを特徴とする請求項10に記載のサンルーフガラス。
【請求項12】
前記外側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、前記内側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、前記中間層の可視光透過率は70%以上である、
ことを特徴とする請求項10に記載のサンルーフガラス。
【請求項13】
前記第2表面と前記第3表面との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、高分子分散型液晶(PDLC)調光フィルム、高分子ネットワーク型液晶(PNLC)調光フィルム、懸濁粒子装置(SPD)調光フィルム、又は、エレクトロクロミック(EC)調光フィルム、のうちの1つ又は複数を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載のサンルーフガラス。
【請求項14】
前記ガラス基板は単板強化ガラスであり、前記単板強化ガラスの厚さは5mm以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項15】
前記単板強化ガラスは着色されたガラスであり、前記着色されたガラスの、Feで表した全鉄含有量が0.5%~2.0%の範囲にある、
ことを特徴とする請求項14に記載のサンルーフガラス。
【請求項16】
車両であって、
前記車両は、車体と、請求項1~15のいずれか一項に記載のサンルーフガラスとを備え、前記サンルーフガラスは前記車体に接続されている、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、発明の名称が「サンルーフガラス及び車両」である、2022年1月28日に出願された中国特許出願第202210109009.0号の優先権を主張し、そのすべての内容が引用として本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、交通手段の技術分野に関し、特にサンルーフガラス及び車両に関する。
【背景技術】
【0003】
車両産業の継続的な発展に伴い、サンルーフガラスの構造を改良することで車両の採光と外観を向上させる車両が多くなっている。しかし、サンルーフガラスの面積が大きくなるにつれて、車内に入る光が過剰になり、それは、乗客の視覚体験に影響を与えるだけではなく、車内の温度を上昇させて、車内の熱的快適性にも影響を与える。先行技術では、例えば、着色されたガラス、着色されたポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)を利用したり、調光素子を追加的に設けたりして、サンルーフガラスの可視光透過率を低下させることで上記問題を改善する。しかし、サンルーフガラスの可視光透過率が低減されたが、車内側で測定したサンルーフガラスの可視光反射率が依然として高い。その結果、サンルーフガラスに明らかなミラーエフェクト(mirror effect)が生じ、車内のセンターコンソールのディスプレイ又は他の電子機器のディスプレイがサンルーフガラスに鮮明に映り込み、後席の乗客の邪魔になる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、サンルーフガラス及び車両を提供する。それによって、車内側に向かうサンルーフガラスの表面の可視光反射率を低減することができ、車内から車外を見るときの乗客の視覚体験を向上させることができる。
【0005】
第一態様において、本出願はサンルーフガラスを提供する。サンルーフガラスは、ガラス基板と、金属吸収層と、反射防止層とを備える。ガラス基板は外表面と内表面とを有する。ガラス基板から離れる方向に沿って、内表面に金属吸収層と反射防止層とが順に積層配置されている。
【0006】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスは第1保護層をさらに備える。第1保護層は、内表面に設けられており、且つ内表面と金属吸収層との間に位置する。
【0007】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスは第2保護層をさらに備える。第2保護層は、金属吸収層から離れた反射防止層の表面に設けられている。
【0008】
1つの可能な実施形態において、反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とからなる積層体を少なくとも1つ含む。高屈折率層の屈折率は1.7以上であり、低屈折率層の屈折率は1.7より小さい。
【0009】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスは低放射層をさらに備える。低放射層は、第1保護層と金属吸収層との間に設けられている。
【0010】
1つの可能な実施形態において、低放射層は、酸化インジウムスズ(ITO)層、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)層、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)層、のうちの1つ又は複数を含む。
【0011】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスはバリア層をさらに備える。バリア層は、低放射層と金属吸収層との間に設けられている。
【0012】
1つの可能な実施形態において、ガラス基板は合わせガラスであり、合わせガラスは、内側ガラスと、外側ガラスと、外側ガラスと内側ガラスとの間に接続された中間層とを含む。内側ガラスは、第1表面と第1表面に対向して設けられた第2表面とを有し、第1表面は上記内表面である。外側ガラスは、第3表面と第3表面に対向して設けられた第4表面とを有し、第4表面は上記外表面である。
【0013】
1つの可能な実施形態において、ガラス基板は赤外線反射層をさらに含む。赤外線反射層は、第2表面及び/又は第3表面に設けられている。
【0014】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスの可視光透過率は1%~20%の範囲にある。内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率が4%以下である。Lab色空間において、内表面側から測定したサンルーフガラスの反射色はa値が-6~2の範囲にあり、b値が-12~0の範囲にある。
【0015】
1つの可能な実施形態において、外側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、内側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、中間層の可視光透過率は1%~30%の範囲にある。
【0016】
1つの可能な実施形態において、外側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、内側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、中間層の可視光透過率は70%以上である。
【0017】
1つの可能な実施形態において、第2表面と第3表面との間に調光素子がさらに設けられている。調光素子は、高分子分散型液晶(PDLC)調光フィルム、高分子ネットワーク型液晶(PNLC)調光フィルム、懸濁粒子装置(SPD)調光フィルム、又は、エレクトロクロミック(EC)調光フィルム、のうちの1つ又は複数を含む。
【0018】
1つの可能な実施形態において、ガラス基板は単板強化ガラスであり、単板強化ガラスの厚さは5mm以上である。
【0019】
1つの可能な実施形態において、単板強化ガラスは着色されたガラスである。着色されたガラスの、Feで表した全鉄含有量が0.5%~2.0%の範囲にある。
【0020】
第二態様において、本出願は車両を提供する。当該車両は、車体と、上述したサンルーフガラスとを備え、サンルーフガラスは車体に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本出願の技術案をより明確に説明するために、以下、実施形態に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明される図面は本出願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な努力なしに、これらの図面によって他の図面を得ることができる。
図1図1は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスを用いた車両の構造を示す概略図である。
図2図2は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの1種目の構造を示す概略図である。
図3図3は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの2種目の構造を示す概略図である。
図4図4は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの3種目の構造を示す概略図である。
図5図5は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの4種目の構造を示す概略図である。
図6図6は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの5種目の構造を示す概略図である。
図7図7は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの6種目の構造を示す概略図である。
図8図8は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの7種目の構造を示す概略図である。
図9図9は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの8種目の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本出願の具体的な実施形態をより詳細に説明する。図面に本出願の例示的な実施形態が示されているが、本明細書に説明される方式とは異なる他の方式で本出願が実施されることもできる。従って、本出願は、以下の実施形態によって限定されない。
【0023】
図1図9を併せて参照すると、本出願の実施形態は、サンルーフガラス10及び車両100を提供する。それによって、車内側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率を低減することができ、結果として、車内から見るときのサンルーフガラスのミラーエフェクトをなくし、車内から車外を見るときの乗客の視覚体験を向上させることができる。
【0024】
図1を参照すると、車両100は、サンルーフガラス10と車体20とを備え、サンルーフガラス10は、車体20に接続されている。例示的に、サンルーフガラス10は、パノラマサンルーフガラス(panoramic sunroof glass)であってもよい。サンルーフガラス10の可視光透過率は、30%以下であってもよく、好ましくは20%以下であり、具体的な例として、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%が挙げられる。車内側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は、4%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下である。
【0025】
図2を参照すると、サンルーフガラス10は、ガラス基板11と、金属吸収層(metal absorption layer)12と、反射防止層13とを備える。金属吸収層12及び反射防止層13は、ガラス基板11に順に積層配置されている。
【0026】
なお、図2は、ガラス基板11、金属吸収層12及び反射防止層13の接続関係を例示的に示したに過ぎず、各デバイスの接続位置、具体的な構造及び数を具体的に限定するものではない。また、本出願の実施形態の例示的な構造は、サンルーフガラス10を具体的に限定するものではない。本出願の他の実施形態において、サンルーフガラス10は、図面より多い又は少ないコンポーネントを含んでもよく、特定のコンポーネントを組み合わせてもよく、特定のコンポーネントを分割してもよく、異なるコンポーネントの配置を有してもよい。図示されたコンポーネントは、ハードウェア、ソフトウェア、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせとして実装されることができる。
【0027】
図2を引き続き参照すると、ガラス基板11は、内表面11aと、内表面11aに対向して設けられた外表面11bとを有する。内表面11aは、車内側に向かうサンルーフガラス10の表面であり、外表面11bは、車外側に向かうサンルーフガラス10の表面である。ガラス基板11から離れる方向に沿って、内表面11aに金属吸収層12と反射防止層13とが順に積層配置されている。
【0028】
ガラス基板11は透明なものであってもよく、着色されたものであってもよい。ガラス基板11の材料は、ソーダ石灰シリカガラス(soda-lime-silica glass)、ホウケイ酸ガラス(borosilicate glass)、アルミノケイ酸塩ガラス(aluminosilicate glass)又は有機ガラスであってもよい。有機ガラスは、例えば、ポリメタクリル酸メチル(poly methyl methacrylate、PMMA)又はポリカーボネート(polycarbonate、PC)であってもよい。
【0029】
なお、サンルーフガラス10として用いられるガラス基板11は通常、湾曲した形状を有する。ガラス基板11の形状は、前述に記載された形状に限定されず、サンルーフガラス10の利用要件を満たせば、どのような形状であってもよい。例えば、ガラス基板11は、平板状であってもよい。本出願の実施形態では、ガラス基板11の形状に対して厳しい要求がない。
【0030】
ガラス基板11は単板強化ガラスであってもよい。単板強化ガラスの厚さは5mm以上であり、例として、5.1mm、5.5mm、5.8mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mmなどであってもよい。単板強化ガラスは、着色されたガラスであってもよく、着色されたガラスの、Feで表した全鉄含有量が0.5%~2.0%の範囲にあり、例えば、グリーンガラス、ブルーガラス、グレーガラスなどが挙げられる。
【0031】
図2を引き続き参照すると、ガラス基板11は合わせガラスであってもよい。合わせガラスは、内側ガラス111と、外側ガラス112と、外側ガラス112と内側ガラス111との間に接続された中間層113とを含む。内側ガラス111は、第1表面1111と第1表面1111に対向して設けられた第2表面1112とを有し、第1表面1111はガラス基板11の内表面11aである。外側ガラス112は、第3表面1121と第3表面1121に対向して設けられた第4表面1122とを有し、第4表面1122はガラス基板11の外表面11bである。
【0032】
理解できるように、中間層113は、外側ガラス112と内側ガラス111とを接続するために用いられ、サンルーフガラス10の全体が積層構造を呈するようにする。それによって、ガラス本体の強度を向上させ、ガラス本体が破損しにくくなり、単層ガラス(single-layer glass)より耐衝撃性が向上する。耐衝撃性の向上により、車両の安全性能を向上させることができ、ガラス本体が破損しにくくなり、メンテナンスコストを低減させることができる。
【0033】
サンルーフガラス10は、調光要素(図示せず)をさらに備える。調光素子は第2表面と第3表面との間に設けられている。調光素子は、高分子分散型液晶(polymer dispersed liquid crystal、PDLC)調光フィルム、高分子ネットワーク型液晶(polymer network liquid crystal、PNLC)調光フィルム、懸濁粒子装置(suspended particle device、SPD)調光フィルム、又は、エレクトロクロミック(electrochromic、EC)調光フィルム、のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0034】
図3を参照すると、1つの可能な実施形態において、ガラス基板11は赤外線反射層14をさらに含むことができる。赤外線反射層14は、内側ガラス111の第2表面1112及び/又は外側ガラス112の第3表面1121に設けられている。
【0035】
理解できるように、外側ガラス112と中間層113との間に、及び/又は、内側ガラス111と中間層113との間に赤外線反射層14が設けられている。赤外線反射層14は、少なくとも1つの金属機能層(metallic functional layer)と複数の誘電体層とを含む。金属機能層は、例として、金層、銀層、銅層、銀銅合金層、銀インジウム合金層、銀金合金層などであってもよい。より具体的に、赤外線反射層14は、単一銀コーティング(1つの銀層を含む)、二重銀コーティング(2つの銀層を含む)、三重銀コーティング(3つの銀層を含む)、四重銀コーティング(4つの銀層を含む)などであってもよい。赤外線反射層14は、780nm~2500nmの波長範囲内の赤外線の大部分を反射することができるため、サンルーフガラス10は、日射遮蔽性及び断熱性を有する。その結果、車内の熱的快適性を向上させることができ、サンルーフガラス10は、パノラマガラスの発展傾向に適応することができる。
【0036】
1つの可能な実施形態では、外側ガラス112は内側ガラス111と平行に配置されている。この配置では、中間層113は均一な厚さを有する。
【0037】
別の可能な実施形態では、外側ガラス112の延在方向は、内側ガラス111の延在方向と交差する。この配置では、中間層113は厚さが均一ではなく、厚さが徐々に変化する構造に配置されることができる。例えば、中間層113はくさび形であってもよい。
【0038】
以上の説明から理解できるように、中間層113の厚さは、サンルーフガラス10の実際の適用シナリオに応じて柔軟に調整されることができる。それは、サンルーフガラス10のマルチシナリオでの適用需要に適応することに有利である。
【0039】
例示的に、内側ガラス111及び外側ガラス112はいずれも、厚さ2.1mmの透明ガラス(通常のクリアガラス(clear glass))であってもよい。具体的に、内側ガラス111の厚さ及び外側ガラス112の厚さがいずれも0.7mm~4.0mm(0.7mm及び4.0mmを含む)の範囲内にあれば、要件が満たされる。軽量化の要求を満たすために、外側ガラス112の厚さが1.6mm~4.0mmであり、内側ガラス111の厚さが0.7mm~2.1mmであり、且つ外側ガラス112の厚さが内側ガラス111の厚さ以上であることが好ましい。外側ガラス112の可視光透過率が70%以上であり、好ましくは80%以上であり、さらには90%以上である。内側ガラス111の可視光透過率が70%以上であり、好ましくは80%以上であり、さらには90%以上である。内側ガラス111と外側ガラス112として、通常のクリアガラスを利用することにより、製品のコストを大幅に削減し、製品の市場競争力を向上させることができる。
【0040】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラス10の可視光透過率は、異なる可視光透過率を有する中間層113を選択することによって調整される。好ましくは、中間層113の可視光透過率は、1%~30%であり、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%などが挙げられる。中間層113の材料は、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)、エチレン酢酸ビニール(ethylene vinyl acetate、EVA)、イオン性ポリマー膜(SentryGlas(R) Plus(SGP))などであることができる。
【0041】
別の可能な実施形態では、外側ガラス112の可視光透過率は50%以下であり、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらには20%以下である。内側ガラス111の可視光透過率は50%以下であり、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらには20%以下である。中間層113の可視光透過率は70%以上であり、具体的な例として、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上であることができる。標準的な透明PVBなどの通常の透明中間層を利用することにより、製品コストを大幅に低減し、製品の市場競争力を向上させることができる。
【0042】
図2を参照すると、金属吸収層12は、内側ガラス111の第1表面1111に接続されている。理解できるように、ガラス基板11に金属吸収層12を設けることにより、以下のことが実現されることができる。一方では、金属吸収層12によって光への吸収を調整して、サンルーフガラス10の放射性能及び外観色を改善することができる。他方では、金属吸収層12は、可視光をある程度吸収することができ、車内側に向かうサンルーフガラス10の内表面11aの可視光反射率を低下させ、利用者がサンルーフを通して外側をよりよく見ることができるようにし、サンルーフガラス10の内表面11aによって反射される光による車内の利用者への影響を低減し、利用者の利用体験を向上させることができる。
【0043】
例示的に、金属吸収層12は金属コーティングであってもよい。金属吸収層12の材料はNi、Cr、Fe、Ti、Mo、Zr、Si、Nbなどのうちの1つ又は複数の組み合わせであってもよい。金属吸収層12の厚さは1nm~15nmであってもよく、好ましくは3nm~12nmであり、より好ましくは5~10nmである。適切な厚さを有する金属吸収層12は、可視光を吸収する役割を果たすだけではなく、反射防止層13と協力して、ガラス基板11の可視光反射率をさらに低減することができる。
【0044】
図2を引き続き参照すると、反射防止層13は、内側ガラス111から離れた金属吸収層12の片側に設けられている。例えば、反射防止層13は、マグネトロンスパッタリング(magnetron sputtering)工程でコーティングされることができる。理解できるように、反射防止層13により、ガラス基板11の可視光反射率を低減し得る。反射防止層13と金属吸収層12との協力により、ガラス基板11の内表面11aの可視光反射率をさらに低減することができ、それによって、サンルーフガラス10はパノラマガラスの適用傾向に適応することができる。
【0045】
また、反射防止層13と金属吸収層12との協力により、ガラス基板11の内表面11aの可視光反射率を大幅に低減させることができ、結果として、車内から見るときのサンルーフガラス10のミラーエフェクトをなくし、利用者の利用体験を向上させることができる。
【0046】
本出願の実施形態では、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を少なくとも1つ含む。高屈折率層131は金属吸収層12に接続されており、低屈折率層132は高屈折率層131に接続されており、且つ金属吸収層12から離れている。高屈折率層131の屈折率は1.7以上であり、低屈折率層132の屈折率は1.7より小さい。
【0047】
高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体は、高屈折率層131、低屈折率層132が順に積層されて形成されるものを意味する。例えば、高屈折率層131及び低屈折率層132からなる1つの積層体は、順に、高屈折率層131、低屈折率層132を含む。高屈折率層131及び低屈折率層132からなる2つの積層体は、順に、高屈折率層131、低屈折率層132、高屈折率層131、低屈折率層132を含む。高屈折率層131及び低屈折率層132からなる3つの積層体は、順に、高屈折率層131、低屈折率層132、高屈折率層131、低屈折率層132、高屈折率層131、低屈折率層132を含む。高屈折率層131の厚さは、1nm~70nm(1nm及び70nmを含む)の範囲にあることができる。特定の適用シナリオでは、高屈折率層131は、少なくとも2つの高屈折率サブ層をさらに含むことができる。例えば、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体は具体的に、順に、第1高屈折率サブ層、第2高屈折率サブ層、及び低屈折率層132を含むことができる。第1高屈折率サブ層の屈折率は、第2高屈折率サブ層の屈折率より小さい。低屈折率層132の厚さは、20nm~150nm(20nm及び150nmを含む)の範囲にあることができる。
【0048】
例示的に、高屈折率層131の屈折率は、1.7~2.5(1.7及び2.5を含む)の範囲にあることができる。低屈折率層132の屈折率は、1.4~1.69(1.4及び1.69を含む)の範囲にあることができる。高屈折率層131の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taの酸化物もしくは合金酸化物(alloy oxide)、例えば、亜鉛スズ酸化物(ZnSnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(NbO)などを含む。又は、高屈折率層131の材料は、Si、Zr、Alの窒化物又は合金窒化物(alloy nitride)、例えば、窒化ケイ素(SiN)、ケイ素系窒化アルミニウム(silicon-based aluminum nitride、SiAlN)、ケイ素系窒化ジルコニウム(silicon-based zirconium nitride、SiZrN)などを含むことができる。また、低屈折率層132の材料は、Si、Zr、Alの酸化物又は合金酸化物、例えば、酸化シリコン(SiO)、ケイ素系酸化アルミニウム(silicon-based aluminum oxide、SiAlO)、ケイ素系酸化ジルコニウム(silicon-based zirconium oxide、SiZrO)などを含むことができる。xの値は、マグネトロンスパッタリング工程における化学量論(stoichiometry)、亜化学量論(substoichiometry)又はスーパー化学量論(super-stoichiometry)の方法に基づいて確定される。
【0049】
図2図9を併せて参照すると、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つ含んでもよく、又は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を少なくとも2つ含んでもよい。具体的に、反射防止層13は、積層体を2つ含んでもよく、積層体を3つ含んでもよく、積層体を4つ又はより多く含んでもよい。工程製造及びコストにおける明らかな利点などに基づいて考慮して、好ましくは、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つのみ含む。本出願の実施形態では、金属吸収層12と反射防止層13との協力によって、積層体を1つのみ含む反射防止層13は、積層体を2つ含む、積層体を3つ含む、又はさらに、積層体を4つ含む従来の反射防止層と同じレベルの反射防止効果を達成することができる。
【0050】
具体的な適用シナリオでは、図2図3図6図7図8、及び図9に示されるように、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つのみ含み、ガラス基板11の内表面11aから車内に向かう方向において、積層体は高屈折率層131-低屈折率層132の構造で設けられている。具体的に、内表面11aから離れる方向に沿って、反射防止層13は、内側ガラス111から離れる金属吸収層12の片側に順に積層配置された高屈折率層131及び低屈折率層132を含む。
【0051】
別の具体的な適用シナリオでは、反射防止層13における高屈折率層131は、2つの高屈折率サブ層を含み、反射防止層13は、内側ガラス111の内表面11aから離れる方向において、第1高屈折率サブ層1311-第2高屈折率サブ層1312-低屈折率層132の構造で設けられている。具体的に、図4に示されたように、内側ガラス111の内表面11aから離れる方向に沿って、積層構造は、内側ガラス111から離れる金属吸収層12の片側に順に積層配置された第1高屈折率サブ層1311、第2高屈折率サブ層1312、及び低屈折率層132を含む。第1高屈折率サブ層1311の屈折率は、第2高屈折率サブ層1312の屈折率より小さい。
【0052】
さらに別の具体的な適用シナリオでは、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を2つ含み、2つの積層体は、内側ガラス111の内表面11aから離れる方向に沿って、高屈折率層131-低屈折率層132が周期的に交互に配置される構造であり、最外層(即ち、内側ガラス111の第1表面1111から最も離れた層)は低屈折率層132である。具体的に、図5に示されたように、反射防止層13は、内側ガラス111に順に積層配置された第1高屈折率層131a、第1低屈折率層132a、第2高屈折率層131b、第2低屈折率層132bを含む。第1高屈折率層131aの材料と第2高屈折率層131bの材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1高屈折率層131aの厚さと第2高屈折率層131bの厚さとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1低屈折率層132aの材料と、第2低屈折率層132bの材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1低屈折率層132aの厚さと、第2低屈折率層132bの厚さとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
本出願の実施形態では、適切なガラス基板11を選択し、且つ、金属吸収層12の材料及び厚さと反射防止層13の材料及び厚さとを調整することによって、Lab色空間において、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の反射色はa値が-6~2(-6及び2を含む)の範囲にあり、b値が-12~0(-12及び0を含む)の範囲にある。それによって、車内側から見たときのサンルーフガラス10の色は、好ましい中間色であり、車内の乗客に対してより良好な視覚効果を提供する。
【0054】
1つの可能な実施形態において、図6に示されたように、サンルーフガラス10は第1保護層15をさらに備えることができる。第1保護層15は、内側ガラス111の第1表面1111に直接に設けられており、即ち、第1保護層15は、ガラス基板11の内表面11aと金属吸収層12との間に設けられている。内側ガラス111に対する少なくとも500℃の高温でのベンディング成形工程中に、第1保護層15は、内側ガラス111の表面を介するアルカリ金属イオン及び酸素の拡散による金属吸収層12の損傷及び酸化を遮断することができる。
【0055】
例示的に、第1保護層15の厚さは、5nm以上であってもよい。第1保護層15の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taなどの酸化物又は合金酸化物を含み、又は、Si、Al、Zr、B、Tiなどの窒化物又は合金酸窒化物(alloy oxynitride)を含むことができる。合金酸化物とは、少なくとも2種の元素の酸化物のことである。合金酸窒化物は、少なくとも2種の元素の酸窒化物のことである。
【0056】
別の可能な実施形態では、図7に示されたように、サンルーフガラス10は第2保護層16をさらに備えることができる。第2保護層16は、金属吸収層12から離れた反射防止層13の片側に設けられており、即ち、第2保護層16は、サンルーフガラス10のコーティング構造の最外層に設けられている。第2保護層16は、コーティングの全体的な機械的安定性及び熱的安定性をさらに向上させることに寄与する。
【0057】
例示的に、第2保護層16の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niなどの窒化物又は合金酸窒化物、例えば、SiN、SiAlN、SiZrNなどを含むことができる。第2保護層16の厚さは3nm以上である。第2保護層16による反射防止層13への影響を考慮すると、第2保護層16の厚さは30nm以下であることが好ましい。より好ましくは、第2保護層16の厚さは5nm~20nmである。
【0058】
さらに別の可能な実施形態では、図8に示されたように、サンルーフガラス10はさらに、第1保護層15及び第2保護層16を備えることができる。第1保護層15は、金属吸収層12と内側ガラス111との間に設けられており、第2保護層16は、金属吸収層12から離れた反射防止層13の表面に設けられている。
【0059】
なお、サンルーフガラス10の色は、金属吸収層123の材料及び厚さと反射防止層13の材料及び厚さとを調整することによって調整されることができるだけではなく、第1保護層15の材料及び厚さと第2保護層16の材料及び厚さとを調整することによって調整されることもできる。本出願の実施形態では、それについては厳しく限定されない。
【0060】
図9を参照すると、本出願の実施形態において、サンルーフガラス10は低放射層17をさらに備えることができる。低放射層17は、第1保護層15と金属吸収層12との間に設けられている。低放射層17は、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の放射率を低下させるために用いられる。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の放射率は、0.01~0.25(0.01及び0.25を含む)の範囲にある。それによって、車内外の熱移動がより良好に遮断されることができる。低放射層17は、酸化インジウムスズ(indium tin oxide、ITO)層、フッ素ドープ酸化スズ(fluorine-doped tin oxide、FTO)層、アンチモンドープ酸化スズ(antimony tin oxide、ATO)層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(aluminum-doped zinc oxide、AZO)層、のうちの1つ又は複数を含む。低放射層17と金属吸収層12との間にバリア層18がされに設けられている。第1表面1111に、第1保護層15、低放射層17、バリア層18、金属吸収層12、高屈折率層131、低屈折率層132、及び第2保護層16が順に設けられることができる。
【0061】
具体的に、第1保護層15は、第1表面1111に直接に設けられることができる。低放射層17は、内側ガラス111から離れた第1保護層15の片側に設けられている。バリア層18は、第1保護層15から離れた低放射層17の片側に設けられている。理解できるように、内側ガラス111の表面に第1保護層15を設けることにより、内側ガラス111におけるアルカリ金属イオンなどがコーティング構造内に入ることを遮断することができ、第1保護層15と第2保護層16との間の光学層を保護することができる。ガラス基板11から離れた第1保護層15の片側に低放射層17を設けることにより、サンルーフガラス10が優れた低放射効果を有することができる。また、第1保護層15から離れた低放射層17の片側にバリア層18が設けられている。バリア層18が金属吸収層12と低放射層17との間に位置するため、金属吸収層12と低放射層17との相互影響による金属吸収層12又は低放射層17の性能低下、さらに無効を防止することができる。
【0062】
本出願は、サンルーフガラス10の製造方法をさらに提供する。サンルーフガラス10の具体的な構造については、図1図9及び上記説明を参照することができる。そして、以下の方法で説明されるサンルーフガラス10の改良は、矛盾がない場合、上記サンルーフガラス10の説明に適用されることができる。その方法は以下の内容を含む。
【0063】
S100:内側ガラス111を提供する。内側ガラス111は、第1表面1111と、第1表面1111に対向する第2表面1112とを含む。
【0064】
S200:内側ガラス111の第1表面1111に、金属吸収層12及び反射防止層13を順に積層配置する。
【0065】
S300:ガラス基板11を製造する。ガラス基板11は、内側ガラス111と、外側ガラス112と、内側ガラス111と外側ガラス112との間に接続された中間層113と、を含む。ガラス基板11の内表面11aは、内側ガラス111の第1表面1111である。
【0066】
以下、S200とS300の具体的なステップを説明する。
【0067】
S200:内側ガラス111の第1表面1111に、金属吸収層12及び反射防止層13を順に積層配置する。
【0068】
まず、マグネトロンスパッタリング工程により、金属吸収層12及び反射防止層13を第1表面1111に堆積する。
【0069】
例示的に、第1保護層15、低放射層17、バリア層18、金属吸収層12、高屈折率層131、低屈折率層132、及び第2保護層16をそれぞれ、マグネトロンスパッタリング工程により、内側ガラス111の第1表面1111に順に積層堆積する。
【0070】
S300:ガラス基板11を製造する。
【0071】
ガラス基板11は、内側ガラス111と、外側ガラス112と、内側ガラス111と外側ガラス112との間に接続された中間層113と、を含む。ガラス基板11の内表面11aは、内側ガラス111の第1表面1111である。マグネトロンスパッタリング工程により、金属吸収層12及び反射防止層13を内側ガラス111に堆積した後、第1保護層15、低放射層17、バリア層18、第2保護層16などをさらに堆積してもよく、且つ外側ガラス112の第3表面1121に赤外線反射層14をさらに堆積し、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行うことができる。高温でのベンディング成形処理は、550℃~700℃(550℃及び700℃を含む)の範囲で行われることができる。その後、中間層113によって外側ガラス112と内側ガラス11とを接続する。中間層113の可視光透過率は、1%~30%の範囲にあることができる。車両用ガラスの製造工程により、外側ガラス112、内側ガラス111、及び中間層113で、合わせガラス構造を形成する。
【0072】
また、本出願は、サンルーフガラス10の性能を分析且つ検討するために、5つの実施例と4つの比較例を提供する。
<実施例1>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)及び低屈折率層(厚さ36nmのSiO層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ36nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのグレーPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<実施例2>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ32nmのSiO層)及び第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ32nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<実施例3>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ34nmのSiO層)、第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層、及び厚さ34nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<実施例4>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのZnSnO層)、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ34nmのSiO層)、第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ34nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<実施例5>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSi層)、低放射層17(厚さ138nmのITO層)、バリア層18(厚さ10nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ8.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ34nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ63nmのSiO層)、第2保護層16(厚さ10nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ34nmのTiO層及び厚さ63nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<実施例6>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、透過率が約40%~50%である、厚さ2.1mmのグレーガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSiN層)、金属吸収層12(厚さ7.2nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ36nmのSiO層)、及び第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ36nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約90%である厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<比較例1>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。コーティングを堆積しない。外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<比較例2>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、高屈折率層(厚さ5nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ130nmのSiO層)を順に積層堆積し、金属吸収層12を堆積していない。厚さ5nmのTiO層及び厚さ130nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<比較例3>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、高屈折率層(厚さ10nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ48nmのSiO層)、高屈折率層(厚さ106nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ96nmのSiO層)を順に積層堆積し、金属吸収層12を堆積していない。厚さ10nmのTiO層、厚さ48nmのSiO層、厚さ106nmのTiO層、及び厚さ96nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
<比較例4>
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ16nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ7.5nmのNiCr層)、第2保護層16(厚さ58nmのSi層)を順に積層堆積し、反射防止層13を堆積していない。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0073】
比較例1~4及び実施例3の合わせガラスの可視光反射率及び反射色を測定し、測定結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
第1表面側から測定した内側ガラスの可視光反射率(高温熱処理後)は、コーティングを堆積した内側ガラスに対して高温でのベンディング成形処理を行った後、合わせガラス構造を形成する前に、第1表面側から直接に測定した単板の内側ガラスの可視光反射率である。内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率は、車両用ガラスの製造工程により、高温でのベンディング成形処理を経った外側ガラスと、コーティングが堆積された内側ガラスと、中間層とで、合わせガラス構造を形成した後、内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率である。
【0075】
表1から分かるように、比較例1では、金属吸収層12及び反射防止層13を堆積しなかった内側ガラス111の可視光反射率は8%以上である。その後、金属吸収層12及び反射防止層13が堆積されなかった内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、サンルーフガラス10として合わせガラスを形成しても、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は、依然として4%以上であり、比較的明らかなミラーエフェクトが存在する。
【0076】
比較例2では、反射防止層13、即ち、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つ配置することにより、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率を5%~6%に低減する。反射防止層13と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラスを形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は3%より小さい。しかし、Lab色空間におけるカラーテストにより、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が赤紫色であり、この反射色が中間色から明らかにずれていることが分かった。乗客に受け入れられにくい。
【0077】
比較例3では、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を2つ配置することにより、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率を4%~5%に低減する。高屈折率層131と低屈折率層132とからなる2つの積層と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラスを形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は2%より小さい。車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が中間色であるが、コーティングの合計厚さが260nmであるため、製造工程に不利であり、製造コストが比較的高い。
【0078】
比較例4では、金属吸収層12としてニッケル-クロム合金(nickel-chromium alloy、NiCr)を用い、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率が4%以下である。金属吸収層12と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラスを形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は3%より小さい。しかし、Lab色空間におけるカラーテストにより、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が中間色から明らかにずれていることが分かった。この反射色は乗客に受け入れられにくい。
【0079】
比較から分かるように、実施例3のコーティング構造で、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率が4%より小さい。コーティング構造と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラスを形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は2%より小さい。また、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が中間色の要件を満たす。比較例3と比べて、実施例3におけるコーティングの合計厚さは比較例3におけるコーティングの合計厚さの約1/3であり、工程製造及びコストの面で明らかな利点がある。
【0080】
実施例1~6の合わせガラスの可視光反射率及び反射色を測定し、測定結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
第1表面側から測定した内側ガラスの可視光反射率(高温熱処理前)は、内側ガラスにコーティングを積層した後、高温でのベンディング成形処理の前に、第1表面側から直接に測定した単板の内側ガラスの可視光反射率である。第1表面側から測定した内側ガラスの可視光反射率(高温熱処理後)は、コーティングが積層された内側ガラスに対して高温でのベンディング成形処理を行った後、合わせガラス構造を形成する前に、第1表面側から直接に測定した単板の内側ガラスの可視光反射率である。内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率は、車両用ガラスの製造工程により、高温でのベンディング成形処理を経った外側ガラスと、コーティングが堆積された内側ガラスと、中間層とで、合わせガラス構造を形成した後、内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率である。
【0082】
表2から分かるように、実施例1~6では、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は、いずれも4%より小さく、又は3%より小さく、さらに2%より小さい。また、Lab色空間において、内表面11a側から測定した実施例1~6のサンルーフガラス10の反射色はa値が-6~2(-6及び2を含む)の範囲にあり、b値が-12~0(-12及び0を含む)の範囲にある。即ち、実施例1~6では、サンルーフガラス10は、車内のミラーエフェクトをなくすことができると同時に、車内から見られるとき、優れた中間色を有する。実施例6では、外側ガラス及び内側ガラスとしてグレーガラスを用いているが、本発明の技術案によって、2%より少ない可視光反射率を依然として得ることができ、中間色の要件を満たすこともできる。
【0083】
実施例1~4及び実施例6では、第1保護層15、金属吸収層12、反射防止層13及び第2保護層16の合計厚さは200nm以下であり、好ましくは150nm以下であり、さらには100nm以下であり、工程製造及びコストの面で明らかなメリットがある。
【0084】
また、実施例2から分かるように、第1保護層15を設けない場合、コーティングが積層された内側ガラス111の高温でのベンディング成形処理中に、金属吸収層12が部分的に酸化する可能性があり、最終的に、高温でのベンディング成形処理後、第1表面側から測定した内側ガラス111の可視光反射率が大幅に上昇する。第1保護層15が設けられていない内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで合わせガラスを形成してサンルーフガラス10とした後、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は4%より小さく、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色も中間色の要件を満たすが、実施例2の、Lab空間における反射色の値は他の実施例ほど優れていない。
【0085】
実施例4では、第1保護層15の材料としてZnSnOを用い、実施例3では、第1保護層15の材料としてSiを用いている。内側ガラス111の可視光反射率は第1表面側から測定される。実施例3と比べて、実施例4における高温でのベンディング成形処理前後の可視光反射率の変化が実施例3における可視光反射率の変化より大きい。好ましくは、第1保護層15の材料がSiの窒化物を含む。それによって、コーティングの熱安定性を向上させ、金属吸収層12の酸化の程度を抑えることができる。
【0086】
実施例5から分かるように、サンルーフガラス10は、低放射層17が追加的に設けられたことで、低放射機能を有するようになっているが、比較的低い可視光反射率と優れた中間色を依然として維持できる。
【0087】
上記は、本出願の例示的な実施形態である。当業者にとっては、本出願の原理から逸脱しない限り、若干の改善と潤色を行うことができ、これらの改善と潤色も本出願の保護範囲に属すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンルーフガラスであって、前記サンルーフガラスは、ガラス基板と、金属吸収層と、反射防止層とを備え、前記ガラス基板は、外表面と内表面とを有し、前記ガラス基板から離れる方向に沿って、前記内表面に前記金属吸収層と前記反射防止層とが順に積層配置されており、
前記反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とからなる積層体を少なくとも1つ含み、前記高屈折率層の屈折率は1.7以上であり、前記低屈折率層の屈折率は1.7より小さく、前記高屈折率層の厚さは1nm~70nmの範囲にあり、前記低屈折率層の厚さは20nm~150nmの範囲にある、
ことを特徴とするサンルーフガラス。
【請求項2】
前記サンルーフガラスは第1保護層をさらに備え、前記第1保護層は、前記内表面に設けられており、且つ前記内表面と前記金属吸収層との間に位置し、前記第1保護層の厚さは5nm以上であり、前記第1保護層の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、もしくはTaの酸化物又は合金酸化物を含み、又は、Si、Al、Zr、B、もしくはTiの窒化物又は合金酸窒化物を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項3】
前記サンルーフガラスは第2保護層をさらに備え、前記第2保護層は、前記金属吸収層から離れた前記反射防止層の表面に設けられており、前記第2保護層の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、もしくはNiの窒化物又は合金酸窒化物を含み、前記第2保護層の厚さは3nm以上且つ30nm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項4】
前記サンルーフガラスは低放射層をさらに備え、前記低放射層は、前記第1保護層と前記金属吸収層との間に設けられており、前記低放射層は、酸化インジウムスズ(ITO)層、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)層、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)層、のうちの1つ又は複数を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のサンルーフガラス。
【請求項5】
前記ガラス基板は合わせガラスであり、前記合わせガラスは、内側ガラスと、外側ガラスと、前記外側ガラスと前記内側ガラスとの間に接続された中間層とを含み、前記内側ガラスは、第1表面と前記第1表面に対向して設けられた第2表面とを有し、前記第1表面は前記内表面であり、前記外側ガラスは、第3表面と前記第3表面に対向して設けられた第4表面とを有し、前記第4表面は前記外表面である、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項6】
前記ガラス基板は赤外線反射層をさらに含み、前記赤外線反射層は、前記第2表面及び/又は前記第3表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載のサンルーフガラス。
【請求項7】
前記サンルーフガラスの可視光透過率は1%~20%の範囲にあり、前記内表面側から測定した前記サンルーフガラスの可視光反射率が4%以下であり、Lab色空間において、前記内表面側から測定した前記サンルーフガラスの反射色はa値が-6~2の範囲にあり、b値が-12~0の範囲にある、
ことを特徴とする請求項5に記載のサンルーフガラス。
【請求項8】
前記外側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、前記内側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、前記中間層の可視光透過率は1%~30%の範囲にある、
ことを特徴とする請求項7に記載のサンルーフガラス。
【請求項9】
前記外側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、前記内側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、前記中間層の可視光透過率は70%以上である、
ことを特徴とする請求項7に記載のサンルーフガラス。
【請求項10】
前記第2表面と前記第3表面との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、高分子分散型液晶(PDLC)調光フィルム、高分子ネットワーク型液晶(PNLC)調光フィルム、懸濁粒子装置(SPD)調光フィルム、又は、エレクトロクロミック(EC)調光フィルム、のうちの1つ又は複数を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載のサンルーフガラス。
【請求項11】
前記ガラス基板は単板強化ガラスであり、前記単板強化ガラスの厚さは5mm以上であり、前記単板強化ガラスは着色されたガラスであり、前記着色されたガラスの、Feで表した全鉄含有量が0.5%~2.0%の範囲にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項12】
前記金属吸収層の材料はNi、Cr、Fe、Ti、Mo、Zr、Si、Nbのうちの1つ又は複数の組み合わせであり、
前記金属吸収層の厚さは1nm~15nmであり、又は前記金属吸収層の厚さは3nm~12nmであり、又は前記金属吸収層の厚さは5~10nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項13】
前記サンルーフガラスは低放射層を備えず、前記金属吸収層と前記反射防止層の合計厚さは100nm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフガラス。
【請求項14】
前記サンルーフガラスは第1保護層と第2保護層をさらに備え、前記第1保護層、前記金属吸収層、前記反射防止層、前記第2保護層の合計厚さは100nm以下である、
ことを特徴とする請求項13に記載のサンルーフガラス。
【請求項15】
車両であって、
前記車両は、車体と、請求項1~14のいずれか一項に記載のサンルーフガラスとを備え、前記サンルーフガラスは前記車体に接続されている、
ことを特徴とする車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、発明の名称が「サンルーフガラス及び車両」である、2022年1月28日に出願された中国特許出願第202210109009.0号の優先権を主張し、そのすべての内容が引用として本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、交通手段の技術分野に関し、特にサンルーフガラス及び車両に関する。
【背景技術】
【0003】
車両産業の継続的な発展に伴い、サンルーフガラスの構造を改良することで車両の採光と外観を向上させる車両が多くなっている。しかし、サンルーフガラスの面積が大きくなるにつれて、車内に入る光が過剰になり、それは、乗客の視覚体験に影響を与えるだけではなく、車内の温度を上昇させて、車内の熱的快適性にも影響を与える。先行技術では、例えば、着色されたガラス、着色されたポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)を利用したり、調光素子を追加的に設けたりして、サンルーフガラスの可視光透過率を低下させることで上記問題を改善する。しかし、サンルーフガラスの可視光透過率が低減されたが、車内側で測定したサンルーフガラスの可視光反射率が依然として高い。その結果、サンルーフガラスに明らかなミラーエフェクト(mirror effect)が生じ、車内のセンターコンソールのディスプレイ又は他の電子機器のディスプレイがサンルーフガラスに鮮明に映り込み、後席の乗客の邪魔になる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、サンルーフガラス及び車両を提供する。それによって、車内側に向かうサンルーフガラスの表面の可視光反射率を低減することができ、車内から車外を見るときの乗客の視覚体験を向上させることができる。
【0005】
第一態様において、本出願はサンルーフガラスを提供する。サンルーフガラスは、ガラス基板と、金属吸収層と、反射防止層とを備える。ガラス基板は外表面と内表面とを有する。ガラス基板から離れる方向に沿って、内表面に金属吸収層と反射防止層とが順に積層配置されている。
【0006】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスは第1保護層をさらに備える。第1保護層は、内表面に設けられており、且つ内表面と金属吸収層との間に位置する。
【0007】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスは第2保護層をさらに備える。第2保護層は、金属吸収層から離れた反射防止層の表面に設けられている。
【0008】
1つの可能な実施形態において、反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とからなる積層体を少なくとも1つ含む。高屈折率層の屈折率は1.7以上であり、低屈折率層の屈折率は1.7より小さい。
【0009】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスは低放射層をさらに備える。低放射層は、第1保護層と金属吸収層との間に設けられている。
【0010】
1つの可能な実施形態において、低放射層は、酸化インジウムスズ(ITO)層、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)層、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)層、のうちの1つ又は複数を含む。
【0011】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスはバリア層をさらに備える。バリア層は、低放射層と金属吸収層との間に設けられている。
【0012】
1つの可能な実施形態において、ガラス基板は合わせガラスであり、合わせガラスは、内側ガラスと、外側ガラスと、外側ガラスと内側ガラスとの間に接続された中間層とを含む。内側ガラスは、第1表面と第1表面に対向して設けられた第2表面とを有し、第1表面は上記内表面である。外側ガラスは、第3表面と第3表面に対向して設けられた第4表面とを有し、第4表面は上記外表面である。
【0013】
1つの可能な実施形態において、ガラス基板は赤外線反射層をさらに含む。赤外線反射層は、第2表面及び/又は第3表面に設けられている。
【0014】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラスの可視光透過率は1%~20%の範囲にある。内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率が4%以下である。Lab色空間において、内表面側から測定したサンルーフガラスの反射色はa値が-6~2の範囲にあり、b値が-12~0の範囲にある。
【0015】
1つの可能な実施形態において、外側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、内側ガラスの可視光透過率は70%以上であり、中間層の可視光透過率は1%~30%の範囲にある。
【0016】
1つの可能な実施形態において、外側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、内側ガラスの可視光透過率は50%以下であり、中間層の可視光透過率は70%以上である。
【0017】
1つの可能な実施形態において、第2表面と第3表面との間に調光素子がさらに設けられている。調光素子は、高分子分散型液晶(PDLC)調光フィルム、高分子ネットワーク型液晶(PNLC)調光フィルム、懸濁粒子装置(SPD)調光フィルム、又は、エレクトロクロミック(EC)調光フィルム、のうちの1つ又は複数を含む。
【0018】
1つの可能な実施形態において、ガラス基板は単板強化ガラスであり、単板強化ガラスの厚さは5mm以上である。
【0019】
1つの可能な実施形態において、単板強化ガラスは着色されたガラスである。着色されたガラスの、Feで表した全鉄含有量が0.5%~2.0%の範囲にある。
【0020】
第二態様において、本出願は車両を提供する。当該車両は、車体と、上述したサンルーフガラスとを備え、サンルーフガラスは車体に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本出願の技術案をより明確に説明するために、以下、実施形態に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明される図面は本出願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な努力なしに、これらの図面によって他の図面を得ることができる。
図1図1は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスを用いた車両の構造を示す概略図である。
図2図2は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの1種目の構造を示す概略図である。
図3図3は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの2種目の構造を示す概略図である。
図4図4は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの3種目の構造を示す概略図である。
図5図5は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの4種目の構造を示す概略図である。
図6図6は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの5種目の構造を示す概略図である。
図7図7は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの6種目の構造を示す概略図である。
図8図8は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの7種目の構造を示す概略図である。
図9図9は、本出願の実施形態に係るサンルーフガラスの8種目の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本出願の具体的な実施形態をより詳細に説明する。図面に本出願の例示的な実施形態が示されているが、本明細書に説明される方式とは異なる他の方式で本出願が実施されることもできる。従って、本出願は、以下の実施形態によって限定されない。
【0023】
図1図9を併せて参照すると、本出願の実施形態は、サンルーフガラス10及び車両100を提供する。それによって、車内側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率を低減することができ、結果として、車内から見るときのサンルーフガラスのミラーエフェクトをなくし、車内から車外を見るときの乗客の視覚体験を向上させることができる。
【0024】
図1を参照すると、車両100は、サンルーフガラス10と車体20とを備え、サンルーフガラス10は、車体20に接続されている。例示的に、サンルーフガラス10は、パノラマサンルーフガラス(panoramic sunroof glass)であってもよい。サンルーフガラス10の可視光透過率は、30%以下であってもよく、好ましくは20%以下であり、具体的な例として、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%が挙げられる。車内側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は、4%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下である。
【0025】
図2を参照すると、サンルーフガラス10は、ガラス基板11と、金属吸収層(metal absorption layer)12と、反射防止層13とを備える。金属吸収層12及び反射防止層13は、ガラス基板11に順に積層配置されている。
【0026】
なお、図2は、ガラス基板11、金属吸収層12及び反射防止層13の接続関係を例示的に示したに過ぎず、各デバイスの接続位置、具体的な構造及び数を具体的に限定するものではない。また、本出願の実施形態の例示的な構造は、サンルーフガラス10を具体的に限定するものではない。本出願の他の実施形態において、サンルーフガラス10は、図面より多い又は少ないコンポーネントを含んでもよく、特定のコンポーネントを組み合わせてもよく、特定のコンポーネントを分割してもよく、異なるコンポーネントの配置を有してもよい。図示されたコンポーネントは、ハードウェア、ソフトウェア、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせとして実装されることができる。
【0027】
図2を引き続き参照すると、ガラス基板11は、内表面11aと、内表面11aに対向して設けられた外表面11bとを有する。内表面11aは、車内側に向かうガラス基板11の表面であり、外表面11bは、車外側に向かうガラス基板11の表面である。ガラス基板11から離れる方向に沿って、内表面11aに金属吸収層12と反射防止層13とが順に積層配置されている。
【0028】
ガラス基板11は透明なものであってもよく、着色されたものであってもよい。ガラス基板11の材料は、ソーダ石灰シリカガラス(soda-lime-silica glass)、ホウケイ酸ガラス(borosilicate glass)、アルミノケイ酸塩ガラス(aluminosilicate glass)又は有機ガラスであってもよい。有機ガラスは、例えば、ポリメタクリル酸メチル(poly methyl methacrylate、PMMA)又はポリカーボネート(polycarbonate、PC)であってもよい。
【0029】
なお、サンルーフガラス10として用いられるガラス基板11は通常、湾曲した形状を有する。ガラス基板11の形状は、前述に記載された形状に限定されず、サンルーフガラス10の利用要件を満たせば、どのような形状であってもよい。例えば、ガラス基板11は、平板状であってもよい。本出願の実施形態では、ガラス基板11の形状に対して厳しい要求がない。
【0030】
ガラス基板11は単板強化ガラスであってもよい。単板強化ガラスの厚さは5mm以上であり、例として、5.1mm、5.5mm、5.8mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mmなどであってもよい。単板強化ガラスは、着色されたガラスであってもよく、着色されたガラスの、Feで表した全鉄含有量が0.5%~2.0%の範囲にあり、例えば、グリーンガラス、ブルーガラス、グレーガラスなどが挙げられる。
【0031】
図2を引き続き参照すると、ガラス基板11は合わせガラスであってもよい。合わせガラスは、内側ガラス111と、外側ガラス112と、外側ガラス112と内側ガラス111との間に接続された中間層113とを含む。内側ガラス111は、第1表面1111と第1表面1111に対向して設けられた第2表面1112とを有し、第1表面1111はガラス基板11の内表面11aである。外側ガラス112は、第3表面1121と第3表面1121に対向して設けられた第4表面1122とを有し、第4表面1122はガラス基板11の外表面11bである。
【0032】
理解できるように、中間層113は、外側ガラス112と内側ガラス111とを接続するために用いられ、サンルーフガラス10の全体が積層構造を呈するようにする。それによって、ガラス本体の強度を向上させ、ガラス本体が破損しにくくなり、単層ガラス(single-layer glass)より耐衝撃性が向上する。耐衝撃性の向上により、車両の安全性能を向上させることができ、ガラス本体が破損しにくくなり、メンテナンスコストを低減させることができる。
【0033】
サンルーフガラス10は、調光要素(図示せず)をさらに備える。調光素子は第2表面と第3表面との間に設けられている。調光素子は、高分子分散型液晶(polymer dispersed liquid crystal、PDLC)調光フィルム、高分子ネットワーク型液晶(polymer network liquid crystal、PNLC)調光フィルム、懸濁粒子装置(suspended particle device、SPD)調光フィルム、又は、エレクトロクロミック(electrochromic、EC)調光フィルム、のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0034】
図3を参照すると、1つの可能な実施形態において、ガラス基板11は赤外線反射層14をさらに含むことができる。赤外線反射層14は、内側ガラス111の第2表面1112及び/又は外側ガラス112の第3表面1121に設けられている。
【0035】
理解できるように、外側ガラス112と中間層113との間に、及び/又は、内側ガラス111と中間層113との間に赤外線反射層14が設けられている。赤外線反射層14は、少なくとも1つの金属機能層(metallic functional layer)と複数の誘電体層とを含む。金属機能層は、例として、金層、銀層、銅層、銀銅合金層、銀インジウム合金層、銀金合金層などであってもよい。より具体的に、赤外線反射層14は、単一銀コーティング(1つの銀層を含む)、二重銀コーティング(2つの銀層を含む)、三重銀コーティング(3つの銀層を含む)、四重銀コーティング(4つの銀層を含む)などであってもよい。赤外線反射層14は、780nm~2500nmの波長範囲内の赤外線の大部分を反射することができるため、サンルーフガラス10は、日射遮蔽性及び断熱性を有する。その結果、車内の熱的快適性を向上させることができ、サンルーフガラス10は、パノラマガラスの発展傾向に適応することができる。
【0036】
1つの可能な実施形態では、外側ガラス112は内側ガラス111と平行に配置されている。この配置では、中間層113は均一な厚さを有する。
【0037】
別の可能な実施形態では、外側ガラス112の延在方向は、内側ガラス111の延在方向と交差する。この配置では、中間層113は厚さが均一ではなく、厚さが徐々に変化する構造に配置されることができる。例えば、中間層113はくさび形であってもよい。
【0038】
以上の説明から理解できるように、中間層113の厚さは、サンルーフガラス10の実際の適用シナリオに応じて柔軟に調整されることができる。それは、サンルーフガラス10のマルチシナリオでの適用需要に適応することに有利である。
【0039】
例示的に、内側ガラス111及び外側ガラス112はいずれも、厚さ2.1mmの透明ガラス(通常のクリアガラス(clear glass))であってもよい。具体的に、内側ガラス111の厚さ及び外側ガラス112の厚さがいずれも0.7mm~4.0mm(0.7mm及び4.0mmを含む)の範囲内にあれば、要件が満たされる。軽量化の要求を満たすために、外側ガラス112の厚さが1.6mm~4.0mmであり、内側ガラス111の厚さが0.7mm~2.1mmであり、且つ外側ガラス112の厚さが内側ガラス111の厚さ以上であることが好ましい。外側ガラス112の可視光透過率が70%以上であり、好ましくは80%以上であり、さらには90%以上である。内側ガラス111の可視光透過率が70%以上であり、好ましくは80%以上であり、さらには90%以上である。内側ガラス111と外側ガラス112として、通常のクリアガラスを利用することにより、製品のコストを大幅に削減し、製品の市場競争力を向上させることができる。
【0040】
1つの可能な実施形態において、サンルーフガラス10の可視光透過率は、異なる可視光透過率を有する中間層113を選択することによって調整される。好ましくは、中間層113の可視光透過率は、1%~30%であり、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%などが挙げられる。中間層113の材料は、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)、エチレン酢酸ビニール(ethylene vinyl acetate、EVA)、イオン性ポリマー膜(SentryGlas(R) Plus(SGP))などであることができる。
【0041】
別の可能な実施形態では、外側ガラス112の可視光透過率は50%以下であり、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらには20%以下である。内側ガラス111の可視光透過率は50%以下であり、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらには20%以下である。中間層113の可視光透過率は70%以上であり、具体的な例として、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上であることができる。標準的な透明PVBなどの通常の透明中間層を利用することにより、製品コストを大幅に低減し、製品の市場競争力を向上させることができる。
【0042】
図2を参照すると、金属吸収層12は、内側ガラス111の第1表面1111に接続されている。理解できるように、ガラス基板11に金属吸収層12を設けることにより、以下のことが実現されることができる。一方では、金属吸収層12によって光への吸収を調整して、サンルーフガラス10の放射性能及び外観色を改善することができる。他方では、金属吸収層12は、可視光をある程度吸収することができ、車内側に向かうガラス基板11の内表面11aの可視光反射率を低下させ、利用者がサンルーフを通して外側をよりよく見ることができるようにし、ガラス基板11の内表面11aによって反射される光による車内の利用者への影響を低減し、利用者の利用体験を向上させることができる。
【0043】
例示的に、金属吸収層12は金属コーティングであってもよい。金属吸収層12の材料はNi、Cr、Fe、Ti、Mo、Zr、Si、Nbなどのうちの1つ又は複数の組み合わせであってもよい。金属吸収層12の厚さは1nm~15nmであってもよく、好ましくは3nm~12nmであり、より好ましくは5~10nmである。適切な厚さを有する金属吸収層12は、可視光を吸収する役割を果たすだけではなく、反射防止層13と協力して、ガラス基板11の可視光反射率をさらに低減することができる。
【0044】
図2を引き続き参照すると、反射防止層13は、内側ガラス111から離れた金属吸収層12の片側に設けられている。例えば、反射防止層13は、マグネトロンスパッタリング(magnetron sputtering)工程でコーティングされることができる。理解できるように、反射防止層13により、ガラス基板11の可視光反射率を低減し得る。反射防止層13と金属吸収層12との協力により、ガラス基板11の内表面11aの可視光反射率をさらに低減することができ、それによって、サンルーフガラス10はパノラマガラスの適用傾向に適応することができる。
【0045】
また、反射防止層13と金属吸収層12との協力により、ガラス基板11の内表面11aの可視光反射率を大幅に低減させることができ、結果として、車内から見るときのサンルーフガラス10のミラーエフェクトをなくし、利用者の利用体験を向上させることができる。
【0046】
本出願の実施形態では、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を少なくとも1つ含む。高屈折率層131は金属吸収層12に接続されており、低屈折率層132は高屈折率層131に接続されており、且つ金属吸収層12から離れている。高屈折率層131の屈折率は1.7以上であり、低屈折率層132の屈折率は1.7より小さい。
【0047】
高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体は、高屈折率層131、低屈折率層132が順に積層されて形成されるものを意味する。例えば、高屈折率層131及び低屈折率層132からなる1つの積層体は、順に、高屈折率層131、低屈折率層132を含む。高屈折率層131及び低屈折率層132からなる2つの積層体は、順に、高屈折率層131、低屈折率層132、高屈折率層131、低屈折率層132を含む。高屈折率層131及び低屈折率層132からなる3つの積層体は、順に、高屈折率層131、低屈折率層132、高屈折率層131、低屈折率層132、高屈折率層131、低屈折率層132を含む。高屈折率層131の厚さは、1nm~70nm(1nm及び70nmを含む)の範囲にあることができる。特定の適用シナリオでは、高屈折率層131は、少なくとも2つの高屈折率サブ層をさらに含むことができる。例えば、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体は具体的に、順に、第1高屈折率サブ層、第2高屈折率サブ層、及び低屈折率層132を含むことができる。第1高屈折率サブ層の屈折率は、第2高屈折率サブ層の屈折率より小さい。低屈折率層132の厚さは、20nm~150nm(20nm及び150nmを含む)の範囲にあることができる。
【0048】
例示的に、高屈折率層131の屈折率は、1.7~2.5(1.7及び2.5を含む)の範囲にあることができる。低屈折率層132の屈折率は、1.4~1.69(1.4及び1.69を含む)の範囲にあることができる。高屈折率層131の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taの酸化物もしくは合金酸化物(alloy oxide)、例えば、亜鉛スズ酸化物(ZnSnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(NbO)などを含む。又は、高屈折率層131の材料は、Si、Zr、Alの窒化物又は合金窒化物(alloy nitride)、例えば、窒化ケイ素(SiN)、ケイ素系窒化アルミニウム(silicon-based aluminum nitride、SiAlN)、ケイ素系窒化ジルコニウム(silicon-based zirconium nitride、SiZrN)などを含むことができる。また、低屈折率層132の材料は、Si、Zr、Alの酸化物又は合金酸化物、例えば、酸化シリコン(SiO)、ケイ素系酸化アルミニウム(silicon-based aluminum oxide、SiAlO)、ケイ素系酸化ジルコニウム(silicon-based zirconium oxide、SiZrO)などを含むことができる。xの値は、マグネトロンスパッタリング工程における化学量論(stoichiometry)、亜化学量論(substoichiometry)又はスーパー化学量論(super-stoichiometry)の方法に基づいて確定される。
【0049】
図2図9を併せて参照すると、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つ含んでもよく、又は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を少なくとも2つ含んでもよい。具体的に、反射防止層13は、積層体を2つ含んでもよく、積層体を3つ含んでもよく、積層体を4つ又はより多く含んでもよい。工程製造及びコストにおける明らかな利点などに基づいて考慮して、好ましくは、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つのみ含む。本出願の実施形態では、金属吸収層12と反射防止層13との協力によって、積層体を1つのみ含む反射防止層13は、積層体を2つ含む、積層体を3つ含む、又はさらに、積層体を4つ含む従来の反射防止層と同じレベルの反射防止効果を達成することができる。
【0050】
具体的な適用シナリオでは、図2図3図6図7図8、及び図9に示されるように、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つのみ含み、ガラス基板11の内表面11aから車内に向かう方向において、積層体は高屈折率層131-低屈折率層132の構造で設けられている。具体的に、内表面11aから離れる方向に沿って、反射防止層13は、内側ガラス111から離れる金属吸収層12の片側に順に積層配置された高屈折率層131及び低屈折率層132を含む。
【0051】
別の具体的な適用シナリオでは、反射防止層13における高屈折率層131は、2つの高屈折率サブ層を含み、反射防止層13は、内側ガラス111の内表面11aから離れる方向において、第1高屈折率サブ層1311-第2高屈折率サブ層1312-低屈折率層132の構造で設けられている。具体的に、図4に示されたように、内側ガラス111の内表面11aから離れる方向に沿って、積層構造は、内側ガラス111から離れる金属吸収層12の片側に順に積層配置された第1高屈折率サブ層1311、第2高屈折率サブ層1312、及び低屈折率層132を含む。第1高屈折率サブ層1311の屈折率は、第2高屈折率サブ層1312の屈折率より小さい。
【0052】
さらに別の具体的な適用シナリオでは、反射防止層13は、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を2つ含み、2つの積層体は、内側ガラス111の内表面11aから離れる方向に沿って、高屈折率層131-低屈折率層132が周期的に交互に配置される構造であり、最外層(即ち、内側ガラス111の第1表面1111から最も離れた層)は低屈折率層132である。具体的に、図5に示されたように、反射防止層13は、内側ガラス111に順に積層配置された第1高屈折率層131a、第1低屈折率層132a、第2高屈折率層131b、第2低屈折率層132bを含む。第1高屈折率層131aの材料と第2高屈折率層131bの材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1高屈折率層131aの厚さと第2高屈折率層131bの厚さとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1低屈折率層132aの材料と、第2低屈折率層132bの材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1低屈折率層132aの厚さと、第2低屈折率層132bの厚さとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
本出願の実施形態では、適切なガラス基板11を選択し、且つ、金属吸収層12の材料及び厚さと反射防止層13の材料及び厚さとを調整することによって、Lab色空間において、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の反射色はa値が-6~2(-6及び2を含む)の範囲にあり、b値が-12~0(-12及び0を含む)の範囲にある。それによって、車内側から見たときのサンルーフガラス10の色は、好ましい中間色であり、車内の乗客に対してより良好な視覚効果を提供する。
【0054】
1つの可能な実施形態において、図6に示されたように、サンルーフガラス10は第1保護層15をさらに備えることができる。第1保護層15は、内側ガラス111の第1表面1111に直接に設けられており、即ち、第1保護層15は、ガラス基板11の内表面11aと金属吸収層12との間に設けられている。内側ガラス111に対する少なくとも500℃の高温でのベンディング成形工程中に、第1保護層15は、内側ガラス111の表面を介するアルカリ金属イオン及び酸素の拡散による金属吸収層12の損傷及び酸化を遮断することができる。
【0055】
例示的に、第1保護層15の厚さは、5nm以上であってもよい。第1保護層15の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taなどの酸化物又は合金酸化物を含み、又は、Si、Al、Zr、B、Tiなどの窒化物又は合金酸窒化物(alloy oxynitride)を含むことができる。合金酸化物とは、少なくとも2種の元素の酸化物のことである。合金酸窒化物は、少なくとも2種の元素の酸窒化物のことである。
【0056】
別の可能な実施形態では、図7に示されたように、サンルーフガラス10は第2保護層16をさらに備えることができる。第2保護層16は、金属吸収層12から離れた反射防止層13の片側に設けられており、即ち、第2保護層16は、サンルーフガラス10のコーティング構造の最外層に設けられている。第2保護層16は、コーティングの全体的な機械的安定性及び熱的安定性をさらに向上させることに寄与する。
【0057】
例示的に、第2保護層16の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niなどの窒化物又は合金酸窒化物、例えば、SiN、SiAlN、SiZrNなどを含むことができる。第2保護層16の厚さは3nm以上である。第2保護層16による反射防止層13への影響を考慮すると、第2保護層16の厚さは30nm以下であることが好ましい。より好ましくは、第2保護層16の厚さは5nm~20nmである。
【0058】
さらに別の可能な実施形態では、図8に示されたように、サンルーフガラス10はさらに、第1保護層15及び第2保護層16を備えることができる。第1保護層15は、金属吸収層12と内側ガラス111との間に設けられており、第2保護層16は、金属吸収層12から離れた反射防止層13の表面に設けられている。
【0059】
なお、サンルーフガラス10の色は、金属吸収層123の材料及び厚さと反射防止層13の材料及び厚さとを調整することによって調整されることができるだけではなく、第1保護層15の材料及び厚さと第2保護層16の材料及び厚さとを調整することによって調整されることもできる。本出願の実施形態では、それについては厳しく限定されない。
【0060】
図9を参照すると、本出願の実施形態において、サンルーフガラス10は低放射層17をさらに備えることができる。低放射層17は、第1保護層15と金属吸収層12との間に設けられている。低放射層17は、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の放射率を低下させるために用いられる。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の放射率は、0.01~0.25(0.01及び0.25を含む)の範囲にある。それによって、車内外の熱移動がより良好に遮断されることができる。低放射層17は、酸化インジウムスズ(indium tin oxide、ITO)層、フッ素ドープ酸化スズ(fluorine-doped tin oxide、FTO)層、アンチモンドープ酸化スズ(antimony tin oxide、ATO)層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(aluminum-doped zinc oxide、AZO)層、のうちの1つ又は複数を含む。低放射層17と金属吸収層12との間にバリア層18がされに設けられている。第1表面1111に、第1保護層15、低放射層17、バリア層18、金属吸収層12、高屈折率層131、低屈折率層132、及び第2保護層16が順に設けられることができる。
【0061】
具体的に、第1保護層15は、第1表面1111に直接に設けられることができる。低放射層17は、内側ガラス111から離れた第1保護層15の片側に設けられている。バリア層18は、第1保護層15から離れた低放射層17の片側に設けられている。理解できるように、内側ガラス111の表面に第1保護層15を設けることにより、内側ガラス111におけるアルカリ金属イオンなどがコーティング構造内に入ることを遮断することができ、第1保護層15と第2保護層16との間の光学層を保護することができる。ガラス基板11から離れた第1保護層15の片側に低放射層17を設けることにより、サンルーフガラス10が優れた低放射効果を有することができる。また、第1保護層15から離れた低放射層17の片側にバリア層18が設けられている。バリア層18が金属吸収層12と低放射層17との間に位置するため、金属吸収層12と低放射層17との相互影響による金属吸収層12又は低放射層17の性能低下、さらに無効を防止することができる。
【0062】
本出願は、サンルーフガラス10の製造方法をさらに提供する。サンルーフガラス10の具体的な構造については、図1図9及び上記説明を参照することができる。そして、以下の方法で説明されるサンルーフガラス10の改良は、矛盾がない場合、上記サンルーフガラス10の説明に適用されることができる。その方法は以下の内容を含む。
【0063】
S100:内側ガラス111を提供する。内側ガラス111は、第1表面1111と、第1表面1111に対向する第2表面1112とを含む。
【0064】
S200:内側ガラス111の第1表面1111に、金属吸収層12及び反射防止層13を順に積層配置する。
【0065】
S300:ガラス基板11を製造する。ガラス基板11は、内側ガラス111と、外側ガラス112と、内側ガラス111と外側ガラス112との間に接続された中間層113と、を含む。ガラス基板11の内表面11aは、内側ガラス111の第1表面1111である。
【0066】
以下、S200とS300の具体的なステップを説明する。
【0067】
S200:内側ガラス111の第1表面1111に、金属吸収層12及び反射防止層13を順に積層配置する。
【0068】
まず、マグネトロンスパッタリング工程により、金属吸収層12及び反射防止層13を第1表面1111に堆積する。
【0069】
例示的に、第1保護層15、低放射層17、バリア層18、金属吸収層12、高屈折率層131、低屈折率層132、及び第2保護層16をそれぞれ、マグネトロンスパッタリング工程により、内側ガラス111の第1表面1111に順に積層堆積する。
【0070】
S300:ガラス基板11を製造する。
【0071】
ガラス基板11は、内側ガラス111と、外側ガラス112と、内側ガラス111と外側ガラス112との間に接続された中間層113と、を含む。ガラス基板11の内表面11aは、内側ガラス111の第1表面1111である。マグネトロンスパッタリング工程により、金属吸収層12及び反射防止層13を内側ガラス111に堆積した後、第1保護層15、低放射層17、バリア層18、第2保護層16などをさらに堆積してもよく、且つ外側ガラス112の第3表面1121に赤外線反射層14をさらに堆積し、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行うことができる。高温でのベンディング成形処理は、550℃~700℃(550℃及び700℃を含む)の範囲で行われることができる。その後、中間層113によって外側ガラス112と内側ガラス11とを接続する。中間層113の可視光透過率は、1%~30%の範囲にあることができる。車両用ガラスの製造工程により、外側ガラス112、内側ガラス111、及び中間層113で、合わせガラス構造を形成する。
【0072】
また、本出願は、サンルーフガラス10の性能を分析且つ検討するために、6つの実施例と4つの比較例を提供する。
【0073】
<実施例1>
【0074】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)及び低屈折率層(厚さ36nmのSiO層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ36nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのグレーPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0075】
<実施例2>
【0076】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ32nmのSiO層)及び第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ32nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0077】
<実施例3>
【0078】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ34nmのSiO層)、第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層、及び厚さ34nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0079】
<実施例4>
【0080】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのZnSnO層)、金属吸収層12(厚さ6.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ34nmのSiO層)、第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ34nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0081】
<実施例5>
【0082】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSi層)、低放射層17(厚さ138nmのITO層)、バリア層18(厚さ10nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ8.5nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ34nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ63nmのSiO層)、第2保護層16(厚さ10nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ34nmのTiO層及び厚さ63nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0083】
<実施例6>
【0084】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、透過率が約40%~50%である、厚さ2.1mmのグレーガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ10nmのSiN層)、金属吸収層12(厚さ7.2nmのNiCr層)、高屈折率層(厚さ26nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ36nmのSiO層)、及び第2保護層16(厚さ15nmのSi層)を順に積層堆積する。厚さ26nmのTiO層及び厚さ36nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約90%である厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0085】
<比較例1>
【0086】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。コーティングを堆積しない。外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0087】
<比較例2>
【0088】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、高屈折率層(厚さ5nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ130nmのSiO層)を順に積層堆積し、金属吸収層12を堆積していない。厚さ5nmのTiO層及び厚さ130nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0089】
<比較例3>
【0090】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、高屈折率層(厚さ10nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ48nmのSiO層)、高屈折率層(厚さ106nmのTiO層)、低屈折率層(厚さ96nmのSiO層)を順に積層堆積し、金属吸収層12を堆積していない。厚さ10nmのTiO層、厚さ48nmのSiO層、厚さ106nmのTiO層、及び厚さ96nmのSiO層は、反射防止層13を構成する。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0091】
<比較例4>
【0092】
外側ガラス112及び内側ガラス111はいずれも、厚さ2.1mmの通常のクリアガラスである。マグネトロンスパッタリングにより、内側ガラス111の第1表面1111に、第1保護層15(厚さ16nmのSi層)、金属吸収層12(厚さ7.5nmのNiCr層)、第2保護層16(厚さ58nmのSi層)を順に積層堆積し、反射防止層13を堆積していない。コーティングの堆積を完了した後、外側ガラス112及び内側ガラス111に対して高温でのベンディング成形処理を行う。次に、可視光透過率が約10%である、厚さ0.76mmのPVBを中間層113として用意する。車両用ガラスの製造工程により、合わせガラス構造を形成する。
【0093】
比較例1~4及び実施例3の合わせガラス構造の可視光反射率及び反射色を測定し、測定結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
第1表面側から測定した内側ガラスの可視光反射率(高温熱処理後)は、コーティングを堆積した内側ガラスに対して高温でのベンディング成形処理を行った後、合わせガラス構造を形成する前に、第1表面側から直接に測定した単板の内側ガラスの可視光反射率である。内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率は、車両用ガラスの製造工程により、高温でのベンディング成形処理を経った外側ガラスと、コーティングが堆積された内側ガラスと、中間層とで、合わせガラス構造を形成した後、内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率である。
【0096】
表1から分かるように、比較例1では、金属吸収層12及び反射防止層13を堆積しなかった内側ガラス111の可視光反射率は8%以上である。その後、金属吸収層12及び反射防止層13が堆積されなかった内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、サンルーフガラス10として合わせガラス構造を形成しても、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は、依然として4%以上であり、比較的明らかなミラーエフェクトが存在する。
【0097】
比較例2では、反射防止層13、即ち、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を1つ配置することにより、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率を5%~6%に低減する。反射防止層13と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラス構造を形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は3%より小さい。しかし、Lab色空間におけるカラーテストにより、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が赤紫色であり、この反射色が中間色から明らかにずれていることが分かった。乗客に受け入れられにくい。
【0098】
比較例3では、高屈折率層131と低屈折率層132とからなる積層体を2つ配置することにより、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率を4%~5%に低減する。高屈折率層131と低屈折率層132とからなる2つの積層と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラス構造を形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は2%より小さい。車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が中間色であるが、コーティングの合計厚さが260nmであるため、製造工程に不利であり、製造コストが比較的高い。
【0099】
比較例4では、金属吸収層12としてニッケル-クロム合金(nickel-chromium alloy、NiCr)を用い、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率が4%以下である。金属吸収層12と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラス構造を形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は3%より小さい。しかし、Lab色空間におけるカラーテストにより、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が中間色から明らかにずれていることが分かった。この反射色は乗客に受け入れられにくい。
【0100】
比較から分かるように、実施例3のコーティング構造で、内側ガラス111の第1表面1111の可視光反射率が4%より小さい。コーティング構造と、内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで、合わせガラス構造を形成してサンルーフガラス10とする。内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は2%より小さい。また、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色が中間色の要件を満たす。比較例3と比べて、実施例3におけるコーティングの合計厚さは比較例3におけるコーティングの合計厚さの約1/3であり、工程製造及びコストの面で明らかな利点がある。
【0101】
実施例1~6の合わせガラス構造の可視光反射率及び反射色を測定し、測定結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
第1表面側から測定した内側ガラスの可視光反射率(高温熱処理前)は、内側ガラスにコーティングを積層した後、高温でのベンディング成形処理の前に、第1表面側から直接に測定した単板の内側ガラスの可視光反射率である。第1表面側から測定した内側ガラスの可視光反射率(高温熱処理後)は、コーティングが積層された内側ガラスに対して高温でのベンディング成形処理を行った後、合わせガラス構造を形成する前に、第1表面側から直接に測定した単板の内側ガラスの可視光反射率である。内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率は、車両用ガラスの製造工程により、高温でのベンディング成形処理を経った外側ガラスと、コーティングが堆積された内側ガラスと、中間層とで、合わせガラス構造を形成した後、内表面側から測定したサンルーフガラスの可視光反射率である。
【0104】
表2から分かるように、実施例1~6では、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は、いずれも4%より小さく、又は3%より小さく、さらに2%より小さい。また、Lab色空間において、内表面11a側から測定した実施例1~6のサンルーフガラス10の反射色はa値が-6~2(-6及び2を含む)の範囲にあり、b値が-12~0(-12及び0を含む)の範囲にある。即ち、実施例1~6では、サンルーフガラス10は、車内のミラーエフェクトをなくすことができると同時に、車内から見られるとき、優れた中間色を有する。実施例6では、外側ガラス及び内側ガラスとしてグレーガラスを用いているが、本発明の技術案によって、2%より少ない可視光反射率を依然として得ることができ、中間色の要件を満たすこともできる。
【0105】
実施例1~4及び実施例6では、第1保護層15、金属吸収層12、反射防止層13及び第2保護層16の合計厚さは200nm以下であり、好ましくは150nm以下であり、さらには100nm以下であり、工程製造及びコストの面で明らかなメリットがある。
【0106】
また、実施例2から分かるように、第1保護層15を設けない場合、コーティングが積層された内側ガラス111の高温でのベンディング成形処理中に、金属吸収層12が部分的に酸化する可能性があり、最終的に、高温でのベンディング成形処理後、第1表面側から測定した内側ガラス111の可視光反射率が大幅に上昇する。第1保護層15が設けられていない内側ガラス111と、中間層113と、外側ガラス112とで合わせガラス構造を形成してサンルーフガラス10とした後、内表面11a側から測定したサンルーフガラス10の可視光反射率は4%より小さく、車内から見るときのサンルーフガラス10の反射色も中間色の要件を満たすが、実施例2の、Lab空間における反射色の値は他の実施例ほど優れていない。
【0107】
実施例4では、第1保護層15の材料としてZnSnOを用い、実施例3では、第1保護層15の材料としてSiを用いている。内側ガラス111の可視光反射率は第1表面側から測定される。実施例3と比べて、実施例4における高温でのベンディング成形処理前後の可視光反射率の変化が実施例3における可視光反射率の変化より大きい。好ましくは、第1保護層15の材料がSiの窒化物を含む。それによって、コーティングの熱安定性を向上させ、金属吸収層12の酸化の程度を抑えることができる。
【0108】
実施例5から分かるように、サンルーフガラス10は、低放射層17が追加的に設けられたことで、低放射機能を有するようになっているが、比較的低い可視光反射率と優れた中間色を依然として維持できる。
【0109】
上記は、本出願の例示的な実施形態である。当業者にとっては、本出願の原理から逸脱しない限り、若干の改善と潤色を行うことができ、これらの改善と潤色も本出願の保護範囲に属すべきである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正の内容】
図8
【国際調査報告】