(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】血管新生阻害剤結合抗C3b抗体又は抗C5抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20250117BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20250117BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250117BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250117BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250117BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/22
C07K16/18
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/17
A61K39/395 N
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538390
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 KR2022021371
(87)【国際公開番号】W WO2023132547
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0001647
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523005531
【氏名又は名称】カナプ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KANAPH THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チュン, ウ ドゥム
(72)【発明者】
【氏名】リュ, スミン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ドンゴン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジフン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ビョン チュル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZB052
4C084ZB072
4C084ZB112
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗C3b抗体又は抗C5抗体及び血管新生阻害剤を含む融合タンパク質、並びにそれを使用して眼疾患、特に黄斑変性を治療するための組成物に関する。本タンパク質は補体関連経路を阻害することができるだけでなく、血管新生を効果的に調節することもできる。したがって、融合タンパク質二量体は、補体関連疾患、特に黄斑変性などの眼疾患の治療及び予防に効果的に使用することができ、したがって、産業上の利用可能性が高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C3b(補体成分3b)又はC5(補体成分5)に特異的に結合する抗体断片、及びVEGF(血管内皮増殖因子)に特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質。
【請求項2】
C3b又はC5に特異的に結合する前記抗体断片、及びVEGFに特異的に結合する前記タンパク質が、リンカーによって連結されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記リンカーが、ペプチドリンカー、免疫グロブリン断片又はこれらの組み合わせである、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記免疫グロブリン断片がDANG変異を含む、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記免疫グロブリン断片が配列番号62~68のアミノ酸配列のいずれか1つを含む、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
VEGFに特異的に結合する前記タンパク質が、VEGFに特異的に結合する抗体若しくはその断片、又はVEGF受容体の細胞外ドメインを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記VEGF受容体がVEGF受容体1又はVEGF受容体2である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記VEGF受容体の細胞外ドメインが配列番号52のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
以下の構造式(I)又は(II):
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン又はそのバリアント-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン又はそのバリアント-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
からなり、
構造式(I)及び(II)において、
N’は前記融合タンパク質のN末端であり、
C’は前記融合タンパク質のC末端であり、
XはC3b又はC5に特異的に結合する前記抗体断片であり、
YはVEGFに特異的に結合する前記タンパク質であり、
前記リンカー(1)及び(2)はペプチドリンカーであり、
n及びmはそれぞれ独立的に0又は1である、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記リンカー(1)が配列番号53~57のアミノ酸配列のいずれか1つを含む、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記リンカー(2)が配列番号58~61のアミノ酸配列のいずれか1つを含む、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
XがC3b又はC5に特異的に結合するFab又はscFvである、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
C3bに特異的に結合する前記Fab又はscFvが、
i)配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2及び配列番号22のHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3を含む軽鎖可変領域、
ii)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2及び配列番号30のHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号31のLCDR1、配列番号32のLCDR2及び配列番号33のLCDR3を含む軽鎖可変領域、又は
iii)配列番号36のHCDR1、配列番号37のHCDR2及び配列番号38のHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
C3bに特異的に結合する前記Fab又はscFvが、
i)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
ii)配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号35のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
iii)配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
C5に特異的に結合する前記Fab又はscFvが、
配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2及び配列番号46のHCDR3を含む重鎖可変領域、又は
配列番号47のLCDR1、配列番号48のLCDR2及び配列番号49のLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
C5に特異的に結合する前記Fab又はscFvが、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
配列番号2のポリペプチド及び配列番号9のポリペプチド;配列番号4のポリペプチド及び配列番号10のポリペプチド;配列番号6のポリペプチド及び配列番号11のポリペプチド;配列番号8のポリペプチド及び配列番号12のポリペプチド;配列番号13のポリペプチド;配列番号14のポリペプチド;配列番号15のポリペプチド;又は配列番号16のポリペプチドを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の2つの融合タンパク質が互いに結合した、融合タンパク質二量体。
【請求項19】
ホモ二量体である、請求項18に記載の融合タンパク質二量体。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項20に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項23】
請求項1に記載の融合タンパク質又は請求項19に記載の融合タンパク質二量体を有効成分として含む、眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項24】
前記眼疾患が、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(GA)、脈絡膜血管新生(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病網膜症及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼ヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生並びに網膜血管新生からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項23に記載の眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項25】
医薬的に許容可能な担体をさらに含む、請求項23に記載の眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗C3b抗体又は抗C5抗体及び血管新生阻害剤を含む融合タンパク質、並びにそれを使用して眼疾患、特に黄斑変性を治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
黄斑変性(加齢性黄斑変性症、AMD)は、50歳以上の人の失明の主な原因であり、黄斑の損傷により中心視力が低下する眼科疾患である。黄斑変性はおおまかに湿潤型又は乾燥型黄斑変性に分けられる。初期の段階では、乾燥型黄斑変性が起こり、黄斑の下に異常な細胞外沈着物であるドルーゼンが現れ、網膜色素上皮(RPE)に色素変化が起こる。湿潤型黄斑変性は、脈絡膜新生血管、色素上皮剥離、黄斑浮腫、網膜出血、及び網膜滲出を引き起こし、網膜神経細胞の死滅によって失明に至る。
【0003】
一方、補体系は、微生物感染に対する先天免疫の重要な要素であり、通常は血清中に不活性状況で存在するタンパク質群を含む。このタンパク質は、古典的経路、レクチン経路及び代替経路を通じて活性化される。微生物の表面上の分子は、この経路を活性化して、C3転換酵素として公知であるプロテアーゼ複合体の形成をもたらす。
【0004】
補体経路の活性化は、白血球の走化性における炎症反応、マクロファージ、好中球、血小板、肥満細胞、及び内皮細胞の活性化、増大した血管透過性、細胞溶解、並びに組織損傷を媒介する補体タンパク質の生物学的に活性な断片、例えばC3a及びC5a及びC5b-9細胞膜侵襲複合体(MAC)などのアナフィラトキシンを生成する。
【0005】
さらに、最近の研究では、補体成分C3及びC5がAMD患者のドルーゼンの主要成分であることが証明されている(Mulling,R.F.ら、FASEB J.、14、835-46、2000)。また、日本特許第4897690号では、眼疾患の中には補体が関係しているものがあることが報告されている。しかし、現在に至るまで、眼疾患、特に黄斑変性を効果的に治療する薬物の必要性は高まっており、黄斑変性の治療剤の研究は続けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明者らは、眼疾患、特に黄斑変性を効果的に治療及び予防するための研究を行った。その結果、本発明者らは、補体関連経路及び新生血管経路を遮断する融合タンパク質を黄斑変性の治療剤として使用できることを見出し、それによって、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、C3b(補体成分3b)又はC5(補体成分5)に特異的に結合する抗体断片、及びVEGF(血管内皮増殖因子)に特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
【0008】
本発明の別の態様では、2つの融合タンパク質が互いに結合した融合タンパク質二量体が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0010】
本発明のさらになお別の態様では、該ポリヌクレオチドを含有するベクターが提供される。
【0011】
本発明のさらになお別の態様では、該ベクターが導入された形質転換宿主細胞が提供される。
【0012】
本発明のさらになお別の態様では、融合タンパク質又は融合タンパク質二量体を有効成分として含む、眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるC3b又はC5に特異的に結合する抗体断片、及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質は、補体関連機構を効率的に阻害するだけでなく、血管新生を効果的に阻害することができる。したがって、補体系によって引き起こされる眼疾患及び血管新生によって引き起こされる眼疾患を効果的に治療又は予防することができる。したがって、黄斑変性、特に、乾燥型黄斑変性と湿潤型黄斑変性症の両方を効果的に治療するために、融合タンパク質を有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】調製したMOR09611、MOR09675、S77、エクリズマブ、PRO236、及びPRO237をSDS-PAGEで同定して得られた結果を示す図である。
【
図1b】調製したPRO238、PRO239、PRO240、PRO241、PRO242、及びPRO243をSDS-PAGEで同定して得られた結果を示す図である。
【
図1c】調製したPRO017、KNP-301、及びアフリベルセプトをSDS-PAGEで同定して得られた結果を示す図である。
【
図2】本発明の二重特異性抗体の一例を示す模式図である。
【
図3a】
図3a及び3bは、ELISAによるヒトC3bへのKNP-301、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の結合親和性を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図3b】
図3a及び3bは、ELISAによるヒトC3bへのKNP-301、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の結合親和性を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図4】ELISAによるヒトC5へのPRO239、エクリズマブ、及びPRO017の結合親和性を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図5a】
図5a及び5bは、ELISAによるヒトVEGF165へのアフリベルセプト、PRO236、PRO237、PRO238、PRO017、PRO239、PRO241、及びPRO242の結合親和性を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図5b】
図5a及び5bは、ELISAによるヒトVEGF165へのアフリベルセプト、PRO236、PRO237、PRO238、PRO017、PRO239、PRO241、及びPRO242の結合親和性を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図6a】
図6a~6cは、溶血アッセイ(AH50)による、KNP-301、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の代替補体経路阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図6b】
図6a~6cは、溶血アッセイ(AH50)による、KNP-301、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の代替補体経路阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図6c】
図6a~6cは、溶血アッセイ(AH50)による、KNP-301、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の代替補体経路阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図7a】
図7a~7cは、溶血アッセイ(CH50)による、KNP-301、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の古典的補体経路阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図7b】
図7a~7c溶血アッセイ(CH50)による、KNP-301、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の古典的補体経路阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図7c】
図7a~7c溶血アッセイ(CH50)による、KNP-301、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、エクリズマブ、MOR09611、及びMOR09675の古典的補体経路阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図8a】レポーター細胞を使用した、アフリベルセプト、PRO236及び、PRO237のVEGFシグナリング阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図8b】レポーター細胞を使用した、PRO238、PRO239、及びPRO241のVEGFシグナリング阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【
図8c】レポーター細胞を使用した、PRO242及びPRO017のVEGFシグナリング阻害効果を測定して得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片を含む融合タンパク質
本発明の一態様では、C3b(補体成分3b)又はC5(補体成分5)に特異的に結合する抗体断片、及びVEGF(血管内皮増殖因子)に特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「C3b(補体成分3b)」は、C3転換酵素によって補体成分C3を切断することによって形成されるC3の断片を指し、「補体C3bタンパク質」と互換的に使用することができる。特にC3bは補体系の中心的役割を果たし、細胞表面に結合してマーカーとして働く。さらに、C3b受容体を持つ食細胞に認識させ、細胞毒性を引き起こすオプソニン化作用もある。さらに、C5を活性化し、膜侵襲複合体(MAC)を形成する(kubi immunology、W.H.Freeman and Company、New York)。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「補体成分」、「補体タンパク質」又は「補体成分タンパク質」は、補体系の活性化に関与する分子を指す。古典的な経路成分には、例えばC1q、C1r、C1s、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、及びC5b-9複合体が含まれる。代替経路の構成要素には、例えば、B因子、D因子、プロペルジン、H因子、及びI因子が含まれる。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「C3bに特異的に結合する抗体断片」は、「抗C3b抗体」と互換的に使用することができ、補体C3bタンパク質又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗体を指す。
【0019】
C3bに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、補体成分C3bに特異的に結合し、補体経路の活性化を遮断する。したがって、補体経路の活性化に関連する疾患、例えば、黄斑変性関連疾患(例えば、AMD、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、ソースビー眼底ジストロフィー、シュタルガルト病、模様ジストロフィー、ベスト病、優性ドルーゼン及びMalattia Leventinese(放射状ドルーゼン)、黄斑変性及び/又は機能不全の前後に起こる黄斑外変化、網膜剥離、脈絡膜変性、網膜変性、視細胞変性、RPE変性、ムコ多糖症、桿体-錐体ジストロフィー、錐体-桿体ジストロフィー、錐体変性などを含む)の治療に使用することができる。
【0020】
「C3bに特異的に結合する抗体」は、少なくとも2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、ジスルフィド結合で連結されている。重鎖は重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域からなり、軽鎖は軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域からなる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在している。
【0021】
「C3bに特異的に結合する抗体の抗原結合断片」は、所定の抗原、すなわちC3bに特異的に結合する能力を保持するインタクトな抗体の1つ又は複数の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例としては、Fab、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ、トリアボディ、sdAb、及びVHHが挙げられる。
【0022】
一実施形態では、C3b又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗体は、配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2及び配列番号22のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、抗体は、配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2及び配列番号30のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号31のLCDR1、配列番号32のLCDR2及び配列番号33のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、抗体は、配列番号36のHCDR1、配列番号37のHCDR2及び配列番号38のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0023】
別の実施形態では、C3b又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、抗体は、配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号35のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0024】
抗C3b抗体は、限定されることなく、当業者に公知の任意の抗体を指すことができる。別の例として、抗体は、米国特許出願公開第2010-0291106号又は米国特許第8,377,437号に開示された抗C3b抗体又はその断片であってもよい。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「C5(補体成分5)」は、「補体C5タンパク質」と互換的に使用することができ、C5転換酵素によってC5a及びC5b断片に切断されて放出されるタンパク質である。C5aは好中球及び炎症を媒介するサイトカインを放出するアナフィラトキシンであり、C5bはC6、C7、C8、及びC9と結合して膜侵襲複合体を形成し、それによって細胞膜を破壊する。体内のC5a濃度が高く維持されると、IL-17及びIL-22の発現が増加し、IL-17及びIL-22の発現増加は炎症因子として作用し、VEGFと血管新生を誘導することが知られている(Liu B.ら、J.Transl.Med.、2011;9:1-12)。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「C5に特異的に結合する抗体断片」は、「抗C5抗体」と互換的に使用することができ、補体C5タンパク質又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗体を指す。
【0027】
C5に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、補体成分C5に特異的に結合し、補体経路の活性化を遮断する。したがって、黄斑変性関連疾患などの補体経路の活性化に関連する疾患の治療に使用することができる。
【0028】
「C5に特異的に結合する抗体」は、少なくとも2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、ジスルフィド結合で連結されている。重鎖及び軽鎖は前述の通りである。
【0029】
「C5に特異的に結合する抗体の抗原結合断片」は、所定の抗原、すなわちC5に特異的に結合する能力を保持するインタクトな抗体の1つ又は複数の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例としては、Fab、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ、トリアボディ、sdAb、及びVHHが挙げられる。
【0030】
一実施形態では、C5又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗体は、配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2及び配列番号46のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号47のLCDR1、配列番号48のLCDR2及び配列番号49のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0031】
別の実施形態では、C5又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0032】
抗C5抗体は、限定されることなく、当業者に公知の任意の抗体を指すことができる。別の例として、抗体は、米国特許第6,355,245号又は米国特許出願公開第2019-0177436号に開示された抗C5抗体又はその断片であってもよい。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「VEGF(血管内皮増殖因子)」は、血管内皮増殖因子と呼ばれ、その受容体であるVEGFR(VEGF受容体)に結合することによって血管新生を引き起こす。VEGFは様々なシグナル伝達カスケードを活性化することにより、内皮細胞の増殖、移動、及び分化を誘導する役割を担っている。病態下では、VEGFは異常な血管新生を誘導し、腫瘍細胞及び網膜細胞の増殖及び血管漏出を促進し、それによって腫瘍の増殖及び転移、糖尿病網膜症、並びに加齢性黄斑変性症などを引き起こす。
【0034】
さらに、本明細書では、VEGF又はVEGFファミリータンパク質を総称して「VEGF」と表現する。VEGFファミリータンパク質は、VEGFと同等又は類似の活性を有してもよい。この時、「活性」とは、例えば、VEGF受容体への特異的結合を意味し得、この特異的結合は、当業者に既知の方法によって測定することができる。
【0035】
VEGFファミリータンパク質は、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、PlGF(胎盤増殖因子)及び組換えVEGFからなる群から選択される1つ又は複数であってもよい。好ましくは、VEGFは血管新生に優先的に必要なVEGF-A、VEGF-B、又はPlGFであってもよい。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「PlGF(胎盤増殖因子)」は、染色体2p21-p16にコードされる膜貫通タンパク質を指す。PlGFはVEGFR-1に対する選択的リガンドとして作用し、且つ血管新生を促進することができる。PlGFは、VEGFのアミノ酸組成と少なくとも40%同一である。一実施形態では、PlGFはPlGF-1又はPlGF-2であってもよい。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「組換えVEGF」は、選択的エクソンスプライシングによって組み換えられたVEGFを指す。組換えVEGFは、アミノ酸の番号に従って、例えば、VEGF111、VEGF121、VEGF145、VEGF148、VEFG165、VEGF183、VEGF189又はVEGF206であってもよいが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「VEGFに特異的に結合するタンパク質」は、VEGF又はVEGF受容体の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「VEGF受容体」は、VEGFに結合する受容体を指し、VEGFの生物学的機能は、VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(KDR/Flk-1)、及びVEGFR-3(Flt-4)を介して媒介される。VEGFRは、7つの細胞外免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、膜貫通(TM)ドメイン、制御膜近傍ドメイン、細胞内チロシンキナーゼドメイン、及びその他いくつかのチロシン残基からなる。具体的には、VEGFR-1及びVEGFR-2の細胞外免疫グロブリン(Ig)様ドメインは、VEGFと結合するドメインとして知られている。
【0040】
本発明では、VEGF受容体はVEGF受容体1(VEGFR-1)又はVEGF受容体2(VEGFR-2)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「VEGF受容体の細胞外ドメイン」は、VEGFに結合する、VEGF受容体のドメインを指す。具体的には、VEGF受容体の膜貫通領域及び細胞質領域を除いた、VEGFのリガンドを含む細胞外ドメイン部分を指す。
【0042】
具体的には、VEGF受容体の細胞外ドメインは、VEGFに結合する、VEGF受容体の断片であってもよい。さらに、VEGF受容体の細胞外ドメインは、VEGF-A、VEGF-B又はPlGFに結合することによって血管新生を阻害することができる。この時、VEGF受容体の細胞外ドメインの一実施形態は、配列番号52のアミノ酸配列を含み得る。さらに、VEGF受容体の細胞外ドメインは、配列番号52を含むVEGF受容体の細胞外ドメインの一部が切断されているか又は変化している形態であってもよい。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「VEGFに特異的に結合する抗体」は、VEGFに特異的に結合して抗原抗体反応を引き起こす抗体又はその断片を指し、抗VEGF抗体とも呼ばれる。
【0044】
抗体は、VEGFに特異的な抗原抗体結合できる分子の総称である。さらに、抗体は、抗体がVEGFに特異的に結合することができる抗原結合ドメインを含む限り、任意の形態で使用することができる。抗体又はその断片は、Fab(抗原結合断片)、F(ab)2、scFv(単鎖可変断片)、di-scFv、sdAb(単一ドメイン抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又はこれらのバリアントであってもよい。
【0045】
抗VEGF抗体は、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ラムシルマブ、ブロルシズマブ、ファリシマブ、KSI-301、バヌシズマブ、BI-836880、HuMab G6-31、B20-4.1、BAT-5906、ナビシキシズマブ、ジルパキマブ、hPV-19及びAT-001からなる群から選択されるいずれか1つの可変部位を含み得る。好ましくは、抗VEGF抗体は、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ブロルシズマブ、KSI-301、バヌシズマブ、BI-836880又はBAT-5906の可変領域を含み得る。
【0046】
この時、アフリベルセプトは、血管においてVEGF-A及びPlGFを阻害する組換えヒト化融合タンパク質を指す。アフリベルセプトを眼に直接注射することができる。ベバシズマブは、血管内でVEGF-Aを阻害することによって血管の増殖を阻害する血管新生阻害剤である抗体である。黄斑変性の治療には、ベバシズマブを眼に直接注射することができる。ラニビズマブは、血管新生を阻害することによって湿潤型黄斑変性の治療に有効なFabである。ラムシルマブは、血管新生を媒介する物質又はVEGF受容体2を阻害する抗体である。ブロルシズマブは、VEGF-Aに結合し、血管新生を阻害し、湿潤型黄斑変性症を治療するscFvである。ファリシマブは、VEGF-A及びアンジオポエチン-2を阻害する二重特異性抗体である。
【0047】
さらに、KSI-301は湿潤型黄斑変性の治療に有効な抗体である。バヌシズマブは、VEGF-A及びアンジオポエチン-2を阻害する二重特異性ヒト化モノクローナル抗体である。BI-836880は、VEGF及びアンジオポエチン-2を阻害するヒト化二重特異性ナノボディである。HuMab G6-31は、ヒトVEGFを阻害するFab断片である。B20-4.1は、ヒトVEGFを阻害するscFv断片である。
【0048】
さらに、BAT-5906は湿潤型黄斑変性の治療に有効な抗体である。ナビシキシズマブは抗DLL4/VEGF二重特異性抗体である。ジルパキマブは抗DLL4/VEGF二重特異性抗体であり、ABT-165とも称される。hPV-19は、抗血管新生及び抗腫瘍活性を有する抗VEGF抗体である。AT-001はヒトVEGF受容体3を阻害することにより血管新生を阻害する抗体である。
【0049】
一実施形態では、抗VEGF抗体はBI-836880の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は配列番号88のCDR1、配列番号89のCDR2及び配列番号90のCDR3を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0050】
一実施形態では、抗VEGF抗体はベバシズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号91のHCDR1、配列番号92のHCDR2及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号94のLCDR1、配列番号95のLCDR2及び配列番号96のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0051】
一実施形態では、抗VEGF抗体はラニビズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号97のHCDR1、配列番号98のHCDR2及び配列番号99のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号100のLCDR1、配列番号101のLCDR2及び配列番号102のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0052】
一実施形態では、抗VEGF抗体はラムシルマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号103のHCDR1、配列番号104のHCDR2及び配列番号105のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号106のLCDR1、配列番号107のLCDR2及び配列番号108のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0053】
一実施形態では、抗VEGF抗体はファリシマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号109のHCDR1、配列番号110のHCDR2及び配列番号111のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号112のLCDR1、配列番号113のLCDR2及び配列番号114のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0054】
一実施形態では、抗VEGF抗体はKSI-301の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号115のHCDR1、配列番号116のHCDR2及び配列番号117のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号118のLCDR1、配列番号119のLCDR2及び配列番号120のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0055】
一実施形態では、抗VEGF抗体はバヌシズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号121のHCDR1、配列番号122のHCDR2及び配列番号123のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号124のLCDR1、配列番号125のLCDR2及び配列番号126のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0056】
一実施形態では、抗VEGF抗体はBAT-5906の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号127のHCDR1、配列番号128のHCDR2及び配列番号129のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号130のLCDR1、配列番号131のLCDR2及び配列番号132のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0057】
一実施形態では、抗VEGF抗体はナビシキシズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号133のHCDR1、配列番号134のHCDR2及び配列番号135のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号136のLCDR1、配列番号137のLCDR2及び配列番号138のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0058】
一実施形態では、抗VEGF抗体はジルパキマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号139のHCDR1、配列番号140のHCDR2及び配列番号141のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号142のLCDR1、配列番号143のLCDR2及び配列番号144のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0059】
一実施形態では、抗VEGF抗体はhPV-19の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号145のHCDR1、配列番号146のHCDR2及び配列番号147のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号148のLCDR1、配列番号149のLCDR2及び配列番号150のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0060】
一実施形態では、抗VEGF抗体はAT-001の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号151のHCDR1、配列番号152のHCDR2及び配列番号153のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号154のLCDR1、配列番号155のLCDR2及び配列番号156のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0061】
一実施形態では、抗VEGF抗体は、配列番号157の重鎖及び配列番号158の軽鎖;配列番号159の重鎖可変領域及び配列番号160の軽鎖;配列番号161の重鎖及び配列番号162の軽鎖;配列番号163の重鎖及び配列番号164の軽鎖;配列番号165の重鎖及び配列番号166の軽鎖;配列番号167の重鎖及び配列番号168の軽鎖;配列番号169の重鎖及び配列番号170の軽鎖;配列番号171の重鎖及び配列番号172の軽鎖;配列番号173の重鎖及び配列番号174の軽鎖;配列番号175の重鎖可変領域及び配列番号176の軽鎖可変領域;又は配列番号177の重鎖可変領域及び配列番号178の軽鎖可変領域を含み得る。
【0062】
抗VEGF抗体の断片はscFv(単鎖可変断片)であってもよい。この時、scFvは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結した形態を指す。具体的には、scFvは、配列番号179のCDR1、配列番号180のCDR2、配列番号181のCDR3、配列番号182のCDR4、配列番号183のCDR5及び配列番号184のCDR6を含む可変領域を含み得る。さらに、scFvは配列番号185のアミノ酸配列を含み得る。この時、scFvの一実施形態はブロルシズマブであってもよい。
【0063】
抗VEGF抗体はHuMab G6-31又はB20-4.1の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号186のHCDR1、配列番号187のHCDR2及び配列番号188のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号189のLCDR1、配列番号190のLCDR2及び配列番号191のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、該抗体は、配列番号192のHCDR1、配列番号193のHCDR2及び配列番号194のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号195のLCDR1、配列番号196のLCDR2及び配列番号197のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0064】
VEGFに特異的に結合する抗体は、限定されることなく、当業者に公知の任意の抗体を指すことができる。別の例として、抗体は、米国特許第9,527,925号、米国特許第8,268,314号又は米国特許出願公開第2019-0167790号に開示された抗VEGF抗体又はその断片であってもよい。
【0065】
リンカー及びFcバリアント
C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片、及びVEGFに特異的に結合するタンパク質は、リンカーによって連結されていてもよい。この時、リンカーはペプチドリンカー、免疫グロブリン断片、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
リンカーは2つのタンパク質を連結する。リンカーの一実施形態は、1~50個のアミノ酸、アルブミン又はその断片、免疫グロブリンのFcドメインなどを含み得る。この時、免疫グロブリンのFcドメインは、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含み、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域並びに軽鎖定常領域1(CH1)を含まないタンパク質を指す。免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgE、IgD又はIgMであってもよく、好ましくはIgG1であってもよい。この時、野生型免疫グロブリンG1のFcドメインは、配列番号68のアミノ酸配列を有し得る。本明細書で使用する場合、Fcドメインは、ヒンジ領域を除いて、CH2及びCH3ドメインを含む領域を指し得る。
【0067】
さらに、免疫グロブリンのFcドメインは、野生型Fcドメインだけでなく、Fcドメインバリアントであってもよい。さらに、本明細書で使用する場合、用語「Fcドメインバリアント」は、グリコシル化パターンの点で野生型Fcドメインとは異なる形態、野生型Fcドメインと比較して高いグリコシル化を有する形態、又は野生型Fcドメインと比較して低いグリコシル化を有する形態、又は脱グリコシル化形態を指し得る。さらに、グリコシル化されていないFcドメインが本明細書に含まれる。Fcドメイン又はこれらのバリアントは、宿主の培養条件又は遺伝子操作を通じて、調整された数のシアル酸、フコシル化又はグリコシル化を有するように調整され得る。
【0068】
さらに、免疫グロブリンのFcドメインのグリコシル化を従来の方法、例えば、化学的方法、酵素的方法及び微生物を使用する遺伝子工学的方法によって修飾することができる。さらに、Fcドメインバリアントは、免疫グロブリンIgG、IgA、IgE、IgD又はIgMのそれぞれのFc領域が混合された形態であってもよい。さらに、Fcドメインバリアントは、Fcドメインのいくつかのアミノ酸が他のアミノ酸で置換された形態であってもよい。
【0069】
本明細書で使用する場合、用語「Fcドメインバリアント」は、野生型Fcドメインのグリコシル化が変化し、Fcドメイン間の配列が混合され、又は野生型Fcドメインのいくつかのアミノ酸が欠失、変更、置換、及び/若しくは付加されたFcドメインを指す。野生型Fcドメインのいくつかのアミノ酸の欠失、変化、置換及び/又は付加は、当業者に既知の方法によって行うことができる。一実施形態では、Fcドメインバリアントは、野生型Fcドメインのいくつかのアミノ酸配列が置換及び/又は付加されたものであってもよい。
【0070】
置換及び/又は付加によって導入される「アミノ酸」は、リジン(K)、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びバリン(V)からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0071】
Fcドメイン変異は、抗体の活性又は機能を調節するためであり得る。一実施形態では、Fcドメイン変異は、抗体のエフェクター機能又は抗体細胞毒性活性を調節するためであり得る。
【0072】
一実施形態では、FcドメインバリアントはDANG変異を含み得る。この時、「DANG変異」は、ヒトIgG1又はマウスIgG2aのエフェクター機能を除去するD265A/N297G変異を指す。
【0073】
IgG分子のFc領域によって媒介されるエフェクター機能には、C1q結合、補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、貪食、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーションなどが含まれる。一般に、これらのエフェクター機能は、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)との結合を必要とする。
【0074】
エフェクター機能は、変異していないFc領域のアミノ酸配列の置換によって変化させることができ、エフェクター機能が変化するFc領域は、例えば、C1q結合及び/又はFcR結合を改変することによって設計することができ、それによってCDC活性及び/又はADCC活性を変化させることができる。すなわち、「DANG変異」とは、Fc領域によって媒介されるエフェクター機能がIgG分子から除去され、抗体産生時に望ましくないエフェクター機能低下が起こらないようにすることを意味する。
【0075】
Fcドメインバリアントの一実施形態は、配列番号68のアミノ酸配列におけるD27A、N59G、D118E、L120M、D27A/N59G、又はD27A/N59G/D118E/L120Mの置換であり得る。さらに、配列番号68のアミノ酸配列の209位にリジン(K)を付加してもよい。具体的には、Fcドメインバリアントの一実施形態は、配列番号62~67のアミノ酸配列のいずれか1つを有し得る。
【0076】
融合タンパク質は、Fcドメインをリンカーとして使用して、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質が連結された構造、或いはVEGFに特異的に結合するタンパク質及びC3b又はC5に特異的に結合する抗体断片が、それぞれそのN末端及びC末端に連結された構造を有し得る。FcドメインのN末端又はC末端と、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片、或いはVEGFに特異的に結合するタンパク質との間の連結は、場合によりリンカーペプチドによって達成することができる。
【0077】
融合タンパク質の構造
具体的には、融合タンパク質は、以下の構造式(I)又は(II):
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン又はそのバリアント-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン又はそのバリアント-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
からなってもよく、
構造式(I)及び(II)において、
N’は融合タンパク質のN末端であり、
C’は融合タンパク質のC末端であり、
XはC3b又はC5に特異的に結合する抗体断片であり、
YはVEGFに特異的に結合するタンパク質であり、
リンカー(1)及び(2)はペプチドリンカーであり、
n及びmはそれぞれ独立的に0又は1である。
【0078】
C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片、VEGFに特異的に結合するタンパク質、及びFcドメインは、それぞれ上述の通りである。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「融合タンパク質」は、タンパク質内で特定の機能を担う2つ以上のタンパク質又はドメインが、各タンパク質又はドメインがそれ自身の機能を果たすように連結された組換えタンパク質を指す。2つ以上のタンパク質又はドメインの間には、一般的に柔軟な構造を有するリンカーペプチドを挿入することができる。
【0080】
この時、ペプチドリンカー(1)は、5~80個の連続したアミノ酸、7~70個の連続したアミノ酸、又は10~60個の連続したアミノ酸又は12~50個のアミノ酸からなり得る。一実施形態では、ペプチドリンカー(1)は30個のアミノ酸からなり得る。さらに、ペプチドリンカー(1)は、少なくとも1つのシステインを含み得る。具体的には、1、2、又は3個のシステインを含み得る。さらに、ペプチドリンカー(1)は、免疫グロブリンのヒンジに由来するものであってもよく、(G4S)n(ここで、nは1~10の整数である)をさらに含んでいてもよい。一実施形態では、ペプチドリンカー(1)は、配列番号53~57のアミノ酸配列のいずれか1つからなるペプチドリンカーであってもよい。
【0081】
ペプチドリンカー(2)は、1~50個の連続したアミノ酸、又は3~30個の連続したアミノ酸又は5~20個のアミノ酸からなり得る。一実施形態では、ペプチドリンカー(2)は、(G4S)n(ここで、nは1~10の整数である)であり得る。この時、(G4S)nのnは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってもよい。一実施形態では、ペプチドリンカー(2)は、配列番号58~61のアミノ酸配列のいずれか1つからなるペプチドリンカーであってもよい。
【0082】
一実施形態では、抗体断片は、C3bに特異的に結合するFab又はscFvであってもよい。
【0083】
具体的には、C3bに特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2及び配列番号22のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0084】
さらに、C3bに特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2及び配列番号30のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号31のLCDR1、配列番号32のLCDR2及び配列番号33のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0085】
さらに、C3bに特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号36のHCDR1、配列番号37のHCDR2及び配列番号38のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0086】
一実施形態では、C3bに特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、C3bに特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号35のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、C3bに特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0087】
一実施形態では、抗体断片は、C5に特異的に結合するFab又はscFvであってもよい。
【0088】
具体的には、C5に特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2及び配列番号46のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号47のLCDR1、配列番号48のLCDR2及び配列番号49のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0089】
一実施形態では、C5に特異的に結合するFab又はscFvは、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0090】
本発明の融合タンパク質は、抗C3b抗体の軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域、並びに抗C3b抗体の重鎖可変領域及び重鎖定常領域(CH1)、Fcドメイン、並びにVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質を含み得る。この時、VEGFに特異的に結合する少なくとも1つのタンパク質が抗C3b抗体に含まれていてもよい。さらに、VEGFに特異的に結合するタンパク質は、抗C3b抗体のC末端に結合していてもよい。
【0091】
さらに、本発明の融合タンパク質は、抗C5抗体の軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域、並びに抗C5抗体の重鎖可変領域及び重鎖定常領域(CH1)、Fcドメイン、並びにVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質を含み得る。この時、VEGFに特異的に結合する少なくとも1つのタンパク質が抗C5抗体に含まれていてもよい。さらに、VEGFに特異的に結合するタンパク質は、抗C5抗体のC末端に結合していてもよい。
【0092】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2のポリペプチド及び配列番号9のポリペプチド;配列番号4のポリペプチド及び配列番号10のポリペプチド;配列番号6のポリペプチド及び配列番号11のポリペプチド;配列番号8のポリペプチド及び配列番号12のポリペプチド;配列番号13のポリペプチド;配列番号14のポリペプチド;配列番号15のポリペプチド;又は配列番号16のポリペプチドを含み得る。
【0093】
具体的には、配列番号2、4、及び6は、それぞれ抗C3b抗体の軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含む融合タンパク質のアミノ酸配列である。さらに、配列番号9、10、及び11は、それぞれi)抗C3b抗体の重鎖可変領域及び重鎖定常領域(CH1)、ii)Fcドメイン、並びにiii)VEGFに特異的に結合するタンパク質を含むアミノ酸配列である。
【0094】
さらに、配列番号8は抗C5抗体の軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含む融合タンパク質のアミノ酸配列であり、配列番号12はi)抗C5抗体の重鎖可変領域及び重鎖定常領域(CH1)、ii)Fcドメイン、並びにiii)VEGFに特異的に結合するタンパク質を含むアミノ酸配列である。
【0095】
この時、配列番号2と9との組み合わせ、配列番号4と10との組み合わせ、配列番号6と11との組み合わせ、及び配列番号8と12との組み合わせは、それぞれジスルフィド(-S-S-)結合によって連結され、非共有結合的相互作用によって一緒に維持される。
【0096】
具体的には、配列番号13、14、及び15はそれぞれ、i)VEGFに特異的に結合するタンパク質、ii)Fcドメイン、iii)抗C3b抗体の重鎖可変領域、及びiv)抗C3b抗体の軽鎖可変領域を含むscFvを含むアミノ酸配列である。
【0097】
さらに、配列番号16は、i)VEGFに特異的に結合するタンパク質、ii)Fcドメイン、iii)抗C5抗体の重鎖可変領域、及びiv)抗C5抗体の軽鎖可変領域を含むscFvを含むアミノ酸配列である。
【0098】
別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2のポリペプチド及び配列番号9のポリペプチド;配列番号4のポリペプチド及び配列番号10のポリペプチド;配列番号6のポリペプチド及び配列番号11のポリペプチド;配列番号8のポリペプチド及び配列番号12のポリペプチド;配列番号13のポリペプチド;配列番号14のポリペプチド;配列番号15のポリペプチド;又は配列番号16のポリペプチドと85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。この時、同一性は、例えば、パーセント相同性であり、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBlastNソフトウェアなどの相同性比較ソフトウェアによって決定することができる。
【0099】
融合タンパク質二量体
本発明の別の態様では、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む2つの融合タンパク質が互いに結合した融合タンパク質二量体が提供される。
【0100】
この時、二量体を構成する融合タンパク質間の結合は、これに限定されないがリンカーに存在するシステインによって形成されるジスルフィド結合によって達成され得る。二量体を構成する融合タンパク質は同じであっても互いに異なっていてもよい。好ましくは、二量体はホモ二量体であってもよい。
【0101】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明の別の態様では、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。具体的には、ポリヌクレオチドは、配列番号77のポリヌクレオチド及び配列番号70のポリヌクレオチド;配列番号78のポリヌクレオチド及び配列番号72のポリヌクレオチド;配列番号79のポリヌクレオチド及び配列番号74のポリヌクレオチド;配列番号80のポリヌクレオチド及び配列番号76のポリヌクレオチド;配列番号81のポリヌクレオチド;配列番号82のポリヌクレオチド;配列番号83のポリヌクレオチド;又は配列番号84のポリヌクレオチドを含み得る。ポリヌクレオチドでは、1つ又は複数のヌクレオチドが置換、欠失、挿入、又はそれらの組み合わせによって変異していてもよい。ヌクレオチド配列が化学合成によって調製される場合、当技術分野で公知の合成法、例えば、Engels and Uhlmann(Angew Chem IntEd Engl.、37:73-127, 1988)に記載された合成法を使用することができる。このような方法としては、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホルアミダイト法及びH-ホスフェート法、PCR法及び他のオートプライマー法、固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成法などを挙げることができる。
【0102】
一実施形態によると、ポリヌクレオチドは、配列番号77のポリヌクレオチド及び配列番号70のポリヌクレオチド;配列番号78のポリヌクレオチド及び配列番号72のポリヌクレオチド;配列番号79のポリヌクレオチド及び配列番号74のポリヌクレオチド;配列番号80のポリヌクレオチド及び配列番号76のポリヌクレオチド;配列番号81のポリヌクレオチド;配列番号82のポリヌクレオチド;配列番号83のポリヌクレオチド;又は配列番号84のポリヌクレオチドと少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約100%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0103】
ポリヌクレオチドは、シグナル配列又はリーダー配列をコードする核酸をさらに含み得る。本明細書で使用する場合、用語「シグナル配列」は、標的タンパク質の分泌を誘導するシグナルペプチドを指す。シグナルペプチドは翻訳され、次いで、宿主細胞内で切断される。具体的には、シグナル配列は、小胞体(ER)膜を横断したタンパク質の移動を起こすアミノ酸配列である。
【0104】
シグナル配列は、その特性について当技術分野でよく知られている。このようなシグナル配列は、典型的には16~30のアミノ酸残基を含み、このようなアミノ酸残基よりも多い又は少ないアミノ酸残基を含み得る。典型的なシグナルペプチドは、3領域、すなわち、N末端領域;中央疎水性領域;及びより極性のC末端領域から構成される。中央疎水性領域は、未熟なポリペプチドが膜脂質二重層を移動する際にシグナル配列を固定化する4~12の疎水性残基を含む。
【0105】
開始後、シグナル配列は、シグナルペプチダーゼとして一般に公知である細胞酵素によってERの内腔で切断される。この時、シグナル配列は、tPa(組織プラスミノーゲン活性化因子)、HSV gDs(単純ヘルペスウイルスの糖タンパク質Dのシグナル配列)、又は成長ホルモンの分泌シグナル配列であってもよい。好ましくは、哺乳動物などを含めた高等真核細胞で使用される分泌シグナル配列を使用することができる。
【0106】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを搭載したベクター
本発明の別の態様では、該ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0107】
ベクターは、宿主細胞に導入され、宿主細胞のゲノム中に組み換えられ、挿入され得る。或いは、ベクターは、エピソームとして自発的に複製可能なポリヌクレオチド配列を含む核酸手段と理解される。ベクターとしては、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター及びこれらの類似体が挙げられる。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
具体的には、ベクターとしては、プラスミドDNA、ファージDNAなどを挙げることができ、商業的に開発されたプラスミド(pUC18、pBAD、pIDTSAMRT-AMPなど)、大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118、pUC119など)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(pUB110、pTP5など)、酵母由来のプラスミド(YEp13、YEp24、YCp50など)、ファージDNA(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAPなど)、動物ウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスなど)、昆虫ウイルスベクター(バキュロウイルスなど)を挙げることができる。ベクターは宿主細胞に応じて異なるタンパク質の発現レベル及び修飾を示すので、目的に最も適した宿主細胞を選択及び使用することが好ましい。
【0109】
本明細書で使用する場合、標的タンパク質の「遺伝子発現」又は「発現」という用語は、DNA配列の転写、mRNA転写物の翻訳、及び融合タンパク質生成物又はその断片の分泌を意味すると理解される。有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen、Carlsbad)又はそのバリアントであり得る。発現ベクターは、哺乳動物細胞で標的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及び転写後にRNAの定常レベルを増加させるためのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列を含み得る。
【0110】
融合タンパク質を発現する形質転換細胞
本発明の別の態様では、該ベクターが導入された形質転換宿主細胞が提供される。
【0111】
形質転換細胞の宿主細胞としては、原核細胞、真核細胞、及び哺乳動物、植物、昆虫、真菌、又は細胞起源の細胞を挙げることができるが、これらに限定されない。原核細胞の例として、大腸菌を使用することができる。さらに、真核細胞の例として、酵母を使用することができる。さらに、哺乳動物細胞として、CHO細胞、F2N細胞、CSO細胞、BHK細胞、Bowes黒色腫細胞、HeLa細胞、911細胞、AT1080細胞、A549細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞などを使用することができる。しかし、哺乳動物細胞はこれに限定されるものではなく、哺乳動物宿主細胞として使用可能であることが当業者に公知の細胞であれば、どのような細胞でも使用することができる。
【0112】
さらに、発現ベクターを宿主細胞に導入する場合、CaCl2沈殿法、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの還元物剤をCaCl2沈殿法で使用することによって効率が高められるHanahan法、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、プロトプラスト融合法、炭化ケイ素繊維を使用する撹拌法、アグロバクテリウム媒介性形質転換法、PEG、デキストラン硫酸、リポフェクタミンを使用する形質転換法、及び乾燥/阻害媒介性形質転換法などを使用することができる。
【0113】
上記のように、治療剤としての融合タンパク質の特性を最適化するため、又は他の目的のために、当業者に公知の方法を介して宿主細胞が有するグリコシル化関連遺伝子を操作することによって、融合タンパク質のグリコシル化パターン(例えば、シアル酸、フコシル化、グリコシル化)を調整することができる。
【0114】
融合タンパク質を生成するための方法
本発明の別の態様では、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質を生成する方法が提供され、該方法は、形質転換細胞を培養する工程を含む。具体的には、生成方法は、i)形質転換細胞を培養して培養産物を得る工程;及びii)培養産物から融合タンパク質を回収する工程を含み得る。
【0115】
形質転換細胞を培養するための方法は、当技術分野で広く既知である方法を使用して行うことができる。具体的には、培養は、バッチプロセスで行うことができ、又はフェドバッチ若しくは反復フェドバッチプロセスで連続的に行うことができる。
【0116】
融合タンパク質又はその二量体の使用
本発明の別の態様では、眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物であって、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質、又は2つの融合タンパク質が互いに結合した融合タンパク質二量体を有効成分として含む、医薬組成物を提供する。
【0117】
融合タンパク質及び融合タンパク質二量体は上記の通りである。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「眼疾患」は、眼に起こる疾患の総称であり得る。眼疾患は、補体活性若しくは血管新生によって誘発されるか若しくは悪化する眼疾患又は主な状態として過剰な血管新生を含む眼疾患を指し得る。眼疾患は、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(GA)、脈絡膜血管新生(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病網膜症及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼ヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生並びに網膜血管新生からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0119】
医薬組成物の好ましい投薬量は、患者の状態及び体重、疾患の重症度、薬物の形態、投与の経路及び継続期間に応じて変動し、当業者が適切に選択することができる。本発明の眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物において、有効成分は、有効成分が眼疾患を治療する活性を示すか、又は特に、黄斑変性に対して治療効果を示すことができる限り、使用、剤形、調合目的などに従って任意の量(有効量)で含めることができる。従来の有効量は、組成物の総重量に基づいて、0.001wt%~20.0wt%の範囲内で決定されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、眼疾患の状況を改善又は治療する効果、特に、黄斑変性の状況を改善又は治療する効果を誘導することができる有効成分の量を指す。そのような有効量は、当業者の常識の範囲内で実験的に決定することができる。
【0120】
本明細書で使用する場合、用語「治療」は、療法的治療と予防的治療の両方を含むという意味で使用することができる。この時、予防は、対象の病態又は疾患を緩和する又は低減させることを意味するように使用することができる。一実施形態では、用語「治療」は、ヒトを含めた哺乳動物で疾患を治療するための適用又は投与の任意の形態の両方を含む。さらに、本用語は、疾患又は疾患の進行を阻害又は緩徐化することを含み、且つ部分的若しくは完全に疾患を緩和するために、損なわれたか若しくは失われた機能を回復させるか若しくは修復する;非効率的なプロセスを刺激する;又は重大な疾患を緩和する意味を含む。
【0121】
バイオアベイラビリティなどの薬物動態パラメーター及びクリアランス速度などの根底にあるパラメーターも有効性に影響を及ぼす可能性がある。したがって、「増強された有効性」(例えば、有効性の向上)は、向上した薬物動態パラメーター及び向上した有効性による可能性があり、実験動物又はヒト対象においてクリアランス速度及び眼疾患の治療又は改善などのパラメーターを比較することによって、測定することができる。
【0122】
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」又は「医薬的有効量」は、目的の疾患を予防又は治療するのに有効な化合物又は組成物の量を指し、医学的治療に適用可能な合理的な利益/危険比で疾患を治療するのに十分であり、且つ副作用を引き起こさない。有効量のレベルは、患者の健康状態、疾患の種類及び重症度、薬物の活性、薬物に対する患者の感受性、投与様式、投与時間、投与経路及び排出速度、治療期間、組み合わせ又は同時に使用される薬物、並びに医療分野で周知の他の因子を含めた因子に従って、決定することができる。一実施形態では、治療有効量は、眼疾患を治療するのに有効な薬物の量を意味する。
【0123】
この時、医薬組成物は医薬的に許容可能な担体をさらに含み得る。医薬的に許容可能な担体は、担体が患者への送達に適した非有害物質である限り、いかなる担体であってもよい。蒸留水、アルコール、脂肪、ワックス及び不活性な固体を担体として含有することができる。医薬的に許容可能な補助剤(バッファー、分散剤)も医薬組成物中に含有することができる。
【0124】
具体的には、有効成分に加えて医薬的に許容可能な担体を含むことにより、医薬組成物は、当技術分野で公知の従来の方法を使用して、投与経路に従って非経口剤形で調製することができる。この時、用語「医薬的に許容可能な」は、有効成分の活性を阻害せず、且つ適用(処方)される対象が適合可能なものを越えた毒性を担体が持たないことを意味する。
【0125】
医薬組成物が非経口製剤で調製される場合、適切な担体と共に、当技術分野で公知の方法に従って、注射剤、経皮パッチ剤、鼻吸入剤、及び坐剤の形態で製剤化することができる。注射として製剤化される場合、滅菌水、エタノール、ポリオール、例えば、グリセロール若しくはプロピレングリコール又はこれらの混合物を適切な担体として使用することができ、等張液、例えば、リンゲル溶液、トリエタノールアミン含有リン酸緩衝食塩水(PBS)、注射用無菌水又は5%デキストロースなどを好ましく使用することができる。医薬組成物の製剤は当技術分野で既知であり、具体的には、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)などを参照することができる。本文献は、本明細書の一部と考えられる。
【0126】
医薬組成物の好ましい投薬量は、患者の状態、体重、性別、年齢、患者の重症度、及び投与経路に従って、1日あたり0.01μg/kg~10g/kgの範囲又は0.01mg/kg~1g/kgの範囲であってもよい。投与は1日1回でも、1日数回に分けてもよい。そのような投薬量は、いかなる態様においても本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0127】
医薬組成物を適用する(処方する)ことができる対象は哺乳動物及びヒトであり、ヒトが特に好ましい。有効成分に加えて、本発明の医薬組成物は、眼疾患、特に黄斑変性に対して治療効果を有することが公知である任意の化合物又は天然抽出物をさらに含み得る。
【0128】
本発明の別の態様では、眼疾患の治療又は予防のための医薬の製造のための、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質又はその二量体を含む融合タンパク質の使用を提供する。
【0129】
本発明の別の態様では、眼疾患を治療又は予防するための方法であって、C3b又はC5に特異的に結合する抗体断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質又は二量体を含む融合タンパク質を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0130】
融合タンパク質、2つの融合タンパク質が互いに結合した融合タンパク質二量体、及び眼疾患は上記の通りである。この場合、対象は、眼疾患を罹患する対象であってもよい。さらに、対象は哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトであってもよい。
【0131】
融合タンパク質又は融合タンパク質二量体の投与経路、投薬量及び投与頻度は、患者の状態及び副作用の有無に従って、様々な様式及び量で行うことができるので、融合タンパク質又は融合タンパク質二量体は、様々な方法及び量で対象に投与することができる。最適な投与方法、投薬量、及び投与頻度は、当業者が適切な範囲内で選択することができる。さらに、融合タンパク質又は融合タンパク質二量体は、治療される疾患に関して治療効果が公知である他の薬物若しくは生理活性物質と組み合わせて投与することができるか、又は他の薬物との配合製剤の形態で製剤化することができる。
【実施例】
【0132】
以下に、以下の実施例により本発明をより詳細に記載する。しかし、以下の実施例は本発明を説明するためだけであり、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0133】
調製実施例1.融合タンパク質の調製
【0134】
【0135】
[配列番号1]はヒト抗C3b抗体MOR09611の重鎖配列である。
【0136】
[配列番号2]はヒト抗C3b抗体MOR09611の軽鎖配列である。
【0137】
[配列番号3]はヒト抗C3b抗体MOR09675の重鎖配列である。
【0138】
[配列番号4]はヒト抗C3b抗体MOR09675の軽鎖配列である。
【0139】
[配列番号5]はヒト抗C3b抗体S77の重鎖可変領域配列、ヒトIgG1 CH1領域配列、及びDANG変異(D265A、N297G)によりエフェクター機能が除去されたヒトIgG1 Fcから構成される。
【0140】
[配列番号6]はヒト抗C3b抗体S77の軽鎖配列である。
【0141】
[配列番号7]はヒト抗C5(抗C5)抗体エクリズマブの重鎖可変領域配列、ヒトIgG1 CH1領域配列、及びヒトIgG1 Fc DANGから構成される。
【0142】
[配列番号8]はヒト抗C5抗体エクリズマブの軽鎖配列である。
【0143】
[配列番号9]はヒト抗C3b抗体MOR09611の重鎖可変領域配列、ヒトIgG1 CH1領域配列、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGS(配列番号59)、及びアフリベルセプトのVEGF結合部位から構成される。
【0144】
[配列番号10]は、ヒト抗C3b抗体MOR09675の重鎖可変領域配列、ヒトIgG1 CH1領域配列、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGS、及びアフリベルセプトのVEGF結合部位から構成される。
【0145】
[配列番号11]は、ヒト抗C3b抗体S77の重鎖可変領域配列、ヒトIgG1 CH1領域配列、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGS、及びアフリベルセプトのVEGF結合部位から構成される。
【0146】
[配列番号12]は、ヒト抗C5抗体エクリズマブの重鎖可変領域配列、ヒトIgG1 CH1領域配列、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGS、及びアフリベルセプトのVEGF結合部位から構成される。
【0147】
[配列番号13]は、アフリベルセプトのVEGF結合部位、リンカーGGGGS(配列番号58)、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号60)、ヒト抗C3b抗体MOR09611の重鎖可変領域配列、リンカーGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号61)、及びMOR09611の軽鎖可変領域配列から構成される。
【0148】
[配列番号14]は、アフリベルセプトのVEGF結合部位、リンカーGGGGS、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGSGGGGS、ヒト抗C3b抗体MOR09675の重鎖可変領域配列、リンカーGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS、及びMOR09675の軽鎖可変領域配列から構成される。
【0149】
[配列番号15]は、アフリベルセプトのVEGF結合部位、リンカーGGGGS、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGSGGGGS、ヒト抗C3b抗体S77の重鎖可変領域配列、リンカーGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS、及びS77の軽鎖可変領域配列から構成される。
【0150】
[配列番号16]は、アフリベルセプトのVEGF結合部位、リンカーGGGGS、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカーGGGGSGGGGSGGGGS、ヒト抗C5抗体エクリズマブの軽鎖可変領域配列、リンカーGGGGSGGGGSGGGGS、及びエクリズマブの重鎖可変領域配列から構成される。
【0151】
[配列番号17]は、ヒトIgG1 Fc DANGから構成される。
【0152】
[配列番号18]は、ヒトCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~283)、リンカーGGGGS、及びヒトIgG1 Fc DANGから構成される。
【0153】
[配列番号19]は、アフリベルセプトの配列から構成される。
【0154】
MOR09611(配列番号1及び2)は、ヒト抗C3b抗体である。
【0155】
MOR09675(配列番号3及び4)は、ヒト抗C3b抗体である。
【0156】
S77(配列番号5及び6)は、ヒト抗C3b抗体である。
【0157】
エクリズマブ(配列番号7及び8)は、ヒト抗C5抗体である。
【0158】
PRO236(配列番号2及び9)は、ヒト抗C3b抗体MOR09611及びアフリベルセプトのVEGF結合部位がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0159】
PRO237(配列番号4及び10)は、ヒト抗C3b抗体MOR09675及びアフリベルセプトのVEGF結合部位がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0160】
PRO238(配列番号6及び11)は、ヒト抗C3b抗体S77及びアフリベルセプトのVEGF結合部位がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0161】
PRO239(配列番号8及び12)は、ヒト抗C5抗体エクリズマブ及びアフリベルセプトのVEGF結合部位がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0162】
PRO240(配列番号13)は、アフリベルセプトのVEGF結合部位及びヒト抗C3b抗体MOR09611の単鎖可変領域断片(単鎖可変断片、scFv)配列がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0163】
PRO241(配列番号14)は、アフリベルセプトのVEGF結合部位及びヒト抗C3b抗体MOR09675配列の単鎖可変領域断片配列がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0164】
PRO242(配列番号15)は、アフリベルセプトのVEGF結合部位及びヒト抗C3b抗体S77の単鎖可変領域断片配列がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0165】
PRO243(配列番号16)は、アフリベルセプトのVEGF結合部位及びヒト抗C5抗体エクリズマブの単鎖可変領域断片配列がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去した二重特異性抗体である。
【0166】
KNP-301(配列番号18)は、ヒトCRIgの細胞外ドメイン領域及びアフリベルセプトのVEGF結合部位がそれぞれN末端及びC末端に位置する、エフェクター機能を除去したFc融合タンパク質二量体である。
【0167】
[配列番号1]抗C3b(MOR09611)HC
【化1】
【0168】
[配列番号2]抗C3b(MOR09611)LC
【化2】
【0169】
[配列番号3]抗C3b(MOR09675)HC
【化3】
【0170】
[配列番号4]抗C3b(MOR09675)LC
【化4】
【0171】
[配列番号5]抗C3b(S77)HC-hu IgG1 Fc DANG
【化5】
【0172】
【0173】
[配列番号7]抗C5(エクリズマブ)HC-hu IgG1 Fc DANG
【化7】
【0174】
[配列番号8]抗C5(エクリズマブ)LC
【化8】
【0175】
[配列番号9]抗C3b(MOR09611)HC-hu IgG1 Fc DANG-VEGFバインダー
【化9】
【0176】
[配列番号10]抗C3b(MOR09675)HC-hu IgG1 Fc DANG-VEGFバインダー
【化10】
【0177】
[配列番号11]抗C3b(S77)HC-hu IgG1 Fc DANG-VEGFバインダー
【化11】
【0178】
[配列番号12]抗C5(エクリズマブ)HC-hu IgG1 Fc DANG-VEGFバインダー
【化12】
【0179】
[配列番号13]VEGFバインダー-hu IgG1 Fc DANG-抗C3b(MOR09611)scFv
【化13】
【0180】
[配列番号14]VEGFバインダー-hu IgG1 Fc DANG-抗C3b(MOR09675)scFv
【化14】
【0181】
[配列番号15]VEGFバインダー-hu IgG1 Fc DANG-抗C3b(S77)scFv
【化15】
【0182】
[配列番号16]VEGFバインダー-hu IgG1 Fc DANG-抗C5(エクリズマブ)scFv
【化16】
【0183】
[配列番号17]hu IgG1 Fc DANG
【化17】
【0184】
[配列番号18]hu CRIg-hu IgG1 Fc DANG-VEGFバインダー
【化18】
【0185】
[配列番号19]VEGFバインダー-hu IgG1 Fc
【化19】
【0186】
調製実施例2.タンパク質の調製
【0187】
調製実施例2.1.ベクター組成及びプラスミドマキシプレップ
使用される試薬及び機器は、以下の表2及び3に記載されている。
【0188】
【0189】
【0190】
合成DNA断片をPCRによって増幅し、PCR産物をゲルによって精製した。pTT5ベクターを制限酵素EcoRI及びBamHIで切断し、次いで、ゲルを精製した。インフュージョンキットを使用して、各PCR産物及び直鎖状ベクターをライゲーションした。生成したベクターでECOS101 DH5αコンピテントセルを形質転換し、該細胞を100μg/mlのアンピシリンを含む2xYT寒天プレートで培養した。すべての操作プロセスは、標準的な形質転換プロトコールに従って行った。コロニーPCRによって陽性の組換え産物を同定し、組換えプラスミドに対して配列検証シークエンシングを行った。単一コロニーを選択し、100μg/mLのアンピシリンを含む5mLの2×YT培地に種培養物を播種した。37℃で8時間振盪培養した。
【0191】
その後、200mLの2×YT選択培地に1:1,000の比で種培養物を希釈した。37℃で16時間振盪培養した。4℃で4,700rpm、10分間の遠心分離によって細菌細胞を採取した。細菌ペレットを12mLのRES-EFバッファーに再懸濁した。その後、12mLのLYS-EFバッファーを加え、密閉したチューブを勢いよく反転させて十分に混合し、次いで、室温で5分間インキュベートした。12mLのNEU-EFバッファーを可溶化液に加え、勢いよく反転させて、十分且つ迅速に混合した。ヌクレオボンド(NucleoBond)(登録商標)エクストラ(Xtra)カラムフィルターに可溶化液を注入する前に、フィルターの目詰りを防止するために、可溶化液チューブを3回反転させることによって沈殿物の均一な懸濁液を調製した。
【0192】
その後、ヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムフィルター及びヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムを10mLのフィルター洗浄バッファーFIL-EFで洗浄した。カラムを引き抜くか又は反転させることによってヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムフィルターを除去した。ヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムを90mLの洗浄バッファーENDOで洗浄した。
【0193】
ヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムを45mLの洗浄バッファーWASH-EFで洗浄した。プラスミドDNAを15mLの溶出バッファーELUで溶出した。溶出液を50mLの遠心チューブに収集した。10.5mLの室温のイソプロパノールを加えて、溶出したプラスミドDNAを沈殿させた。ボルテックスした後、混合物を2分間放置した。
【0194】
その後、5mLの70%エタノールをペレットに加えた。ピペットチップを使用して、エタノールを慎重且つ完全にチューブから除去した。室温(20~25℃)でペレットを乾燥させた。その後、1,000μLの精製水でDNAペレットを溶解した。
【0195】
調製実施例2.2.細胞トランスフェクション及びタンパク質発現
使用される材料及び試薬は、以下の表4に記載されている。
【0196】
【0197】
完全培地を含有する293F種株を130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で維持した。0.3×106細胞/ml~0.4×106細胞/mLの密度で細胞を培養し、2~3日ごとに培地を交換した。トランスフェクションの24時間前に、新しく継代培養された293F細胞を2.6×106細胞/mLで調製した。調製した細胞を130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で培養した。
【0198】
トランスフェクションの当日に、新鮮な培地を使用して、細胞の密度を5.0×106細胞/mLに調整した。調整は、3Lシェーカーフラスコ中で1Lの全量で行った。0.4mgのHCプラスミド及び0.6mgのLCプラスミドを50mLのOPTI MEM Iで希釈しこれを0.22μmのフィルターで濾過した。その後、2mgのPEIを50mLのOPTI MEM Iで希釈して、トランスフェクション試薬を調製した。
【0199】
希釈したPEIをDNA混合物に加え、次いで、直ちに混合した。その後、室温で15分間培養した。2.6×106細胞/mLで調製した293F細胞にDNA-PEI混合物を加えた。その後、130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で24時間細胞を連続培養した。トランスフェクション後24時間目に、10%ペプトンを1/20の培養溶液に加え、その結果、終濃度が0.5%になった。その後、細胞を130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で培養した。トランスフェクションから2~5日後の期間に、細胞密度/生存率を毎日測定し、記録した。トランスフェクションから7日後に、又は細胞生存率が70%未満の時に、精製のために細胞を採取した。
【0200】
調製実施例2.3.タンパク質精製
タンパク質精製に使用される、試薬、各バッファーの組成及び機器は、以下の表5~7に記載されている。
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
マブセレクトシュア(MabSelect Sure)カラムを使用してタンパク質を精製した。具体的には、4℃、2,000×gで20分間の遠心分離によって、上清を収集した。その後、ザルトポア2フィルターで上清を濾過した。バッファーAで平衡化した5mLマブセレクトシュア(MabSelect Sure)カラムに浄化した上清をロードした。その後、A280吸光度がベースラインに達するまでバッファーAでカラムを洗浄した。さらに、カラムを10CVのバッファーBで洗浄した。さらに、カラムを10CVのバッファーAで洗浄した。結合したタンパク質を6CVのバッファーCで溶出し、1/6量のバッファーDを加えて溶出物質を中和した。その後、SDS-PAGE及びSEC-HPLC解析を行った。
【0205】
その後、SECカラムを使用してタンパク質を精製した。具体的には、上清を最終バッファーで平衡化したSECカラムにロードし、最終バッファーでタンパク質を溶出した。
【0206】
その結果、
図1a~1cに示すように、精製された融合タンパク質二量体MOR09611、MOR09675、S77、エクリズマブ、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO240、PRO241、PRO242、PRO243、PRO017、KNP-301、及びアフリベルセプトがSDS-PAGEによって同定された。
【0207】
実験実施例1.ELISAによる補体タンパク質及びVEGFへの融合タンパク質の結合親和性の同定
一実施形態の融合タンパク質二量体が補体経路を阻害するかどうかを決定するために、酵素免疫測定法によって、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブがC3bタンパク質に結合するかどうか、並びにPRO239、エクリズマブ、及びPRO017がC5に結合するかどうかを決定した。
【0208】
具体的には、ヒトC3bタンパク質をプレートに固定化し、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブを結合させた。次に、抗ヒト免疫グロブリンG抗体及び抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を順次結合させた。さらに、ヒトC5タンパク質をプレートに固定化し、PRO239、エクリズマブ、及びPRO017をヒトC5に結合させた。
【0209】
その結果、
図3a及び3bに示すように、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO238、PRO241、PRO242、及びS77は濃度依存的にヒトC3bに結合することが見出された。さらに、
図4に示すように、PRO239及びエクリズマブは濃度依存的にヒトC5に結合することが見出された。
【0210】
一実施形態による融合タンパク質が抗VEGF効果を有するかどうかを確認するために、融合タンパク質とヒトVEGF165タンパク質との結合を酵素免疫測定法により決定し、ヒトVEGF165へのPRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、PRO242、及びPRO017の結合親和性をELISAによって測定した。
【0211】
具体的には、ヒトVEGF165タンパク質をプレートに固定化し、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、PRO242、PRO017、及び対照群としてアフリベルセプトを結合させた。次に、抗ヒト免疫グロブリンG抗体及び抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を順次結合させた。
【0212】
その結果、
図5a及び5bに示すように、抗VEGFを有するアフリベルセプト、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、及びPRO242は濃度依存的にヒトVEGF165に結合することが見出された。
【0213】
実験実施例2.溶血解析による代替補体経路阻害効果の解析
一実施形態による融合タンパク質二量体が代替補体経路を阻害するかどうかを決定するために、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブを溶血アッセイ(AH50)に供した。具体的には、0.5mLのウサギ赤血球を、400×gで10分間、遠心分離機を用いてTBSで洗浄した。このプロセスを2回繰り返した後、400×gで10分間の遠心分離を使用してウサギ赤血球をGVB EGTAバッファーで再度洗浄した。その後、GVB EGTAバッファーを使用してウサギ赤血球の濃度を1×109細胞/mLに調整した。
【0214】
感作赤血球によってAH50を解析するために、12%のヒトC1q枯渇血清を96ウェルプレートに加えた(50μL/ウェル)。さらに、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブを様々な濃度で処理した。4℃で30分間インキュベーションした後、ウサギ赤血球を加えた(2×106細胞/ウェル、50μL/ウェル)。細胞を37℃で1.5時間培養し、600×gで10分間遠心分離した。110μLの上清を収集し、OD415値を測定した。
【0215】
KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブの代替補体経路阻害効果をAH50溶血アッセイによって同定した。
【0216】
その結果、
図6a~6cに示すように、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブは濃度依存的に代替補体経路による溶血を阻害することが見出された。
【0217】
実験実施例3.溶血解析による古典的補体経路阻害効果の解析
一実施形態による融合タンパク質二量体が代替補体経路を阻害しないかどうかを決定するために、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブを溶血アッセイ(CH50)に供した。
【0218】
具体的には、ヒツジのAb感作赤血球をTBS中で400×g、10分間遠心分離し、このプロセスを2回繰り返した後、ヒツジの赤血球をGVB++バッファーで400×g、10分間遠心分離して洗浄した。次に、ヒツジの感作赤血球を、GVB++バッファーを使用して1×109個/mLの濃度に調整した。
【0219】
感作赤血球によってCH50を解析するために、4.5%のヒトB因子枯渇血清を96ウェルプレートに加え(50μL/ウェル)、次いで、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO239、PRO241、PRO242、S77、及びエクリズマブを様々な濃度で処理した。4℃で30分間インキュベーションした後、ヒツジの感作赤血球を加えた(2.5×106細胞/ウェル、50μL/ウェル)。細胞を37℃で30分間培養した。110μLの上清を600×gで10分間遠心分離して収集し、OD415値を測定した。
【0220】
その結果、
図7a~7cに示すように、KNP-301、MOR09611、MOR09675、PRO236、PRO237、PRO241、PRO242、及びS77は古典的補体経路による溶血を阻害しないが、PRO239及びエクリズマブは溶血を阻害することが見出された。
【0221】
実験実施例4.VEGFレポーター細胞を使用した、融合タンパク質二量体の有効性の解析
一実施形態の融合タンパク質二量体がVEGFタンパク質を効果的に阻害するかどうかを決定するために、VEGFとVEGF受容体の間の結合を阻害するかどうかを決定した。
【0222】
レポーター細胞を使用して、アフリベルセプト、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、及びPRO242のVEGFシグナリング阻害効果を同定した。具体的には、VEGFが結合すると、受容体媒介性シグナリングによって発光性の光を生成するVEGFレポーター細胞(GA3001、Promega、USA)を使用して、アフリベルセプト、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、PRO242、及びPRO017がVEGFとVEGF受容体との結合を阻害するかどうかを発光の程度で確認した。
【0223】
その結果、
図8a~8cに示すように、アフリベルセプト、PRO236、PRO237、PRO238、PRO239、PRO241、及びPRO242は、濃度依存的にVEGFによる受容体媒介性シグナリングを阻害することが見出された。
【配列表】
【国際調査報告】