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特表2025-501928仮想歯列咬合を半自動的に決定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】仮想歯列咬合を半自動的に決定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/05 20060101AFI20250117BHJP
   A61C 11/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61C19/05
A61C11/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539273
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 US2022046533
(87)【国際公開番号】W WO2022266559
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/266,079
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510102122
【氏名又は名称】マテリアライズ・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MATERIALISE NV
【住所又は居所原語表記】Technologielaan 15,B-3001 Leuven,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バーテルズ,ウォード
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダイク,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052LL07
4C159CC17
4C159CC20
(57)【要約】
本開示のある態様は、仮想咬合を決定する方法を提供する。本方法は、患者の第1顎部分および第2顎部分の3次元表現を取得することを含み得る。本方法は、3次元表現を用いて、第2顎部分に対する第1顎部分の初期位置をGUIにおいて表現することをさらに含み、前記初期位置は、第1顎部分に対して固定された座標系に対する予め決められた6自由度によって定義される。本方法は、自由度少なくとも1つに対する変更のユーザ入力を受け取ることと、その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整して原点に対する制御点の垂直距離を最小化し、それによって、仮想咬合を決定することとをさらに含むことができる。本方法は、GUIにおいて、第1顎部分および第2顎部分を決定された仮想咬合に表現することをさらに含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想咬合を決定するコンピュータ実行方法であって、
患者の第1顎部分、および、前記第1顎部分と対向し、前記第1顎部分に対して移動可能な前記患者の第2顎部分、の3次元表現を取得すること;
前記3次元表現を用いて、前記第1顎部分に対する前記第2顎部分の初期位置を設定し、グラフィックユーザインターフェース(GUI)において表現することであって、前記初期位置は前記第2顎部分上の制御点によって定義され、前記第2顎部分は、前記第1顎部分に対して固定された原点を有する座標系に対して、予め決められた6自由度を有する、こと;
前記自由度の少なくとも1つに対する変更のユーザ入力を受け取ること;
前記第1顎部分および前記第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束しながら、その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整して前記原点に対する前記制御点の垂直距離を最小化し、それによって、前記第1顎部分および前記第2顎部分の間の咬合を決定すること;および、
前記決定された咬合における前記第1顎部分および前記第2顎部分を前記GUIにおいて表現することを含む、コンピュータ実行方法。
【請求項2】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向における第2の顎の位置、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置のうちの少なくとも1つに対する変更を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転のうち少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の前記上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置の少なくとも1つの変更を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、または前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の顎に対する前記制御点の前記位置の変更の前記ユーザ入力は、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の前記方向における前記制御点の前記位置の変更を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の中遠心方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の頬舌方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、前記患者の中遠心方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置の少なくとも1つの変更を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、または前記患者の頬舌方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1顎部分は前記患者の上顎の少なくとも一部を含み、前記第2顎部分は前記患者の下顎の少なくとも一部を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1顎部分は前記患者の下顎の少なくとも一部を含み、前記第2顎部分は前記患者の上顎の少なくとも一部を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記GUIは、前記第1顎部分および前記第2顎部分のそれぞれの3次元モデルを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との間の距離を、前記3次元モデル上にカラーマップとして表示することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点を前記3次元モデル上に表示することをさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との近似接触点を前記3次元モデル上に表示することをさらに含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点および/または近似接触点の周囲の凸包を前記3次元モデル上に表示することをさらに含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記GUIは、前記第1顎部分と前記第2顎部分との少なくとも一方の咬合画像をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点を前記咬合画像上に表示することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との近似接触点を前記咬合画像上に表示することをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と第2顎部分との接触点および/又は近似接触点の周囲の凸包を前記咬合画像上に表示することをさらに含む、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記GUIは、前記ユーザによって制御される前記自由度に対応する対話型ユーザ制御の表示をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対話型ユーザ制御が、前記第1顎部分および前記第2顎部分のそれぞれの3次元モデルに重ね合わされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記GUIは、自動的に調整される前記自由度に対応する値の表示をさらに備える、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記GUIにおいて前記第2顎部分の回転中心を選択することをさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記自由度の少なくとも1つに対する変更および前記他の自由度の少なくとも1つの対応する自動調整の追加のユーザ入力に応答して、前記決定された咬合の前記GUIにおける前記第1および第2顎部分の前記表現を更新することをさらに含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1および第2顎部分の少なくとも一方の領域を示すユーザ入力を受け取り、前記領域に最大バーリング深さを割り当てること;および、
前記示された領域および前記最大バーリング深さに基づいて、前記第1および第2顎部分の少なくとも一方を表す少なくとも1つの修正3次元モデルを生成すること、をさらに含み、
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記少なくとも1つの修正3次元モデルに基づいて、前記第1および第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束することを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記GUIは、前記少なくとも1つの修正3次元モデルに基づいて、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
決定された仮想咬合に基づいて手術ガイドを形成するコンピュータ実行方法であって、
患者の第1顎部分と前記患者の第2顎部分との3次元表現を取得することであって、前記第2顎部分は前記第1顎部分に対向し、前記第1顎部分に対して移動可能であること;
前記3次元表現で、前記第1顎部分に対する前記第2顎部分の初期位置を設定することであって、前記初期位置は前記第2顎部分上の制御点によって定義され、前記第2顎部分は、前記第1顎部分に対して固定された原点を有する座標系に対して予め定められた6自由度を有する、こと;
前記自由度の少なくとも1つに対する変更のユーザ入力を受け取ること;
前記第1顎部分および前記第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束しながら、前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整して前記原点に対する前記制御点の垂直距離を最小化し、それによって、前記第1顎部分および前記第2顎部分の間の咬合を決定すること;および、
顎矯正手術中に、前記患者の歯を前記決定された咬合に誘導するための手術ガイドを形成することを含む、方法。
【請求項28】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置のうちの少なくとも1つの変更を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置の少なくとも1つの変更を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、または前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の顎に対する前記制御点の位置の変更のユーザ入力は、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向における前記制御点の位置の変更を含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の中遠心方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の頬舌方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、前記患者の中遠方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置の少なくとも1つの変更を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、または前記患者の頬舌方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1顎部分は前記患者の上顎の少なくとも一部を含み、前記第2顎部分は前記患者の下顎の少なくとも一部を含む、請求項27~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1顎部分は前記患者の下顎の少なくとも一部を含み、前記第2顎部分は前記患者の上顎の少なくとも一部を含む、請求項27~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1および第2顎部分をグラフィックユーザインターフェース(GUI)において表現することをさらに含む、請求項27~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記GUIは、前記第1顎部分および前記第2顎部分のそれぞれの3次元モデルを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との間の距離を前記3次元モデル上にカラーマップとして表示することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点を前記3次元モデル上に表示することをさらに含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との近似接触点を前記3次元モデル上に表示することをさらに含む、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との間の接触点および/又は近似接触点の周囲の凸包を、前記3次元モデル上に表示することをさらに含む、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記GUIは、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像をさらに含む、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点を前記咬合画像上に表示することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との近似接触点を前記咬合画像上に表示することをさらに含む、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点および/又は近似接触点の周囲の凸包を前記咬合画像上に表示することを更に含む、請求項43~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記GUIは、前記ユーザによって制御される前記自由度に対応する対話型ユーザ制御の表示をさらに含む、請求項37~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対話型ユーザ制御が、前記第1顎部分および前記第2顎部分のそれぞれの3次元モデルに重ね合わされる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記GUIは、自動的に調整される前記自由度に対応する値の表示をさらに含む、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記GUIにおいて前記第2顎部分の回転中心を選択することをさらに含む、請求項37~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記自由度の少なくとも1つの変更と、それに対応する前記その他の自由度の少なくとも1つの自動調整の追加のユーザ入力に応答して、前記決定された咬合において、前記GUIにおける前記第1顎部分および前記第2顎部分の表現を更新することを更に含む、請求項37~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記第1顎部分および第2顎部分の少なくとも一方の領域を示すユーザ入力を受け取り、前記領域に最大バーリング深さを割り当てることと、
前記示された領域および前記最大バーリング深さに基づいて、前記第1顎部分および第2顎部分の少なくとも一方を表す少なくとも1つの修正3次元モデルを生成することと、を更に含み、
前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整することは、前記少なくとも1つの修正3次元モデルに基づいて、前記第1顎部分および第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束することを含む、請求項37~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記GUIは、前記少なくとも1つの修正3次元モデルに基づく、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記手術ガイドを形成することは、付加製造技術によって前記手術ガイドを製造することを含む、請求項27~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記手術ガイドはガイド本体を備え、前記ガイド本体は、上面と、前記上面に対向する下面と、縁部とを備え、前記上面および前記下面は、前記決定された咬合における前記患者の第1顎部分および第2顎部分の表面部分と相補的な形状のくぼみを備える、請求項27~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
医用画像データを取得すること;
医用画像データを前記患者の第1顎部分および第2顎部分の3次元表現に変換すること;および、
前記患者の第1顎部分および第2顎部分の前記3次元表現である、光学スキャンまたは口腔内スキャンを取得すること、の内1つ以上のことを更に含む、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
仮想咬合を決定するシステムであって、
グラフィックユーザインターフェース(GUI)と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
患者の第1顎部分および患者の第2顎部分の3次元表現を取得することであって、前記第2顎部分は前記第1顎部分に対向し、前記第1顎部分に対して移動可能であること;
前記3次元表現で、前記第1顎部分に対する前記第2顎部分の初期位置を設定し前記GUIにおいて表現することであって、前記初期位置は前記第2顎部分上の制御点によって定義され、前記第2顎部分は、前記第1顎部分に対して固定された原点を有する座標系に対して予め定められた6自由度を有する、こと;
前記自由度の少なくとも1つに対する変更のユーザ入力を受け取ること;
前記第1顎部分および前記第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束しながら、前記その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整して前記原点に対する前記制御点の垂直距離を最小化し、それによって、前記第1顎部分および前記第2顎部分の間の咬合を決定すること;および、
前記決定された咬合における前記第1顎部分および第2顎部分を、前記GUIにおいて表現すること、を含む方法を実行するように構成される、システム。
【請求項58】
前記ユーザによる変更の入力は、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の前記位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置のうちの少なくとも1つに対する変更を含む、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記その他の自由度の少なくとも1つを調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2顎の位置、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2顎の回転、または前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2顎の回転の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の左右方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、前記患者の左右方向に対応する座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置の少なくとも1つに対する変更を含む、請求項57に記載のシステム。
【請求項61】
前記その他の自由度の少なくとも1つを調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、または前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記第2の顎に対する前記制御点の位置の前記変更のユーザ入力は、前記患者の前後方向に対応する前記座標系内の前記方向における前記制御点の前記位置に対する変更を含む、請求項58~61のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項63】
前記変更のユーザ入力は、前記患者の中遠心方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の頬舌方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、前記患者の中遠心方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転、または前記第2の顎に対する前記制御点の位置のうち、少なくとも1つに対する変更を含む、請求項57に記載のシステム。
【請求項64】
前記その他の自由度の少なくとも1つを調整することは、前記患者の上下方向に対応する前記座標系内の方向における前記第2の顎の位置、または前記患者の頬舌方向に対応する前記座標系内の方向を中心とする前記第2の顎の回転の少なくとも1つを自動的に調整することを含む、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記第1顎部分は前記患者の上顎の少なくとも一部を含み、前記第2顎部分は前記患者の下顎の少なくとも一部を含む、請求項57~64のいずれか1項に記載のシステムで。
【請求項66】
前記第1顎部分は前記患者の下顎の少なくとも一部を含み、前記第2顎部分は前記患者の上顎の少なくとも一部を含む、請求項57~54のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項67】
前記GUIは、前記第1顎部分および前記第2顎部分のそれぞれの3次元モデルを含む、請求項57~65のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項68】
前記プロセッサは、前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との間の距離を、前記3次元モデル上にカラーマップとして表示するようにさらに構成される、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記プロセッサは、前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点を前記3次元モデル上に表示するように更に構成される、請求項67又は68記載のシステム。
【請求項70】
前記プロセッサは、前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との近似接触点を前記3次元モデル上に表示するようにさらに構成される、請求項67~69のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項71】
前記プロセッサは、前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点および/又は近似接触点の周りの凸包を前記3次元モデル上に表示するようにさらに構成される、請求項67~70のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項72】
前記GUIが、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像をさらに含む、請求項57~71のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項73】
前記プロセッサは、決前記定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点を前記咬合画像上に表示するようにさらに構成される、請求項72記載のシステム。
【請求項74】
前記プロセッサは、前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との間の近似接触点を決前咬合画像上に表示するように更に構成される、請求項72又は73記載のシステム。
【請求項75】
前記プロセッサは、前記決定された咬合における前記第1顎部分と前記第2顎部分との接触点および/又は近似接触点の周囲の凸包を前記咬合画像上に表示するようにさらに構成される、請求項72~74のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項76】
前記GUIは、前記ユーザによって制御される前記自由度に対応する対話型ユーザ制御の表示をさらに含む、請求項57~75のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項77】
前記対話型ユーザ制御が、前記第1顎部分および前記第2顎部分のそれぞれの3次元モデルに重ね合わされる、請求項76に記載のシステム。
【請求項78】
前記GUIは、自動的に調整される前記自由度に対応する値の表示をさらに含む、請求項76または77に記載のシステム。
【請求項79】
前記プロセッサは、前記第2顎部分の回転中心を示すユーザ入力を受け取るようにさらに構成される、請求項57~78のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項80】
前記プロセッサは、前記自由度の少なくとも1つの変更および前記その他の自由度の少なくとも1つの対応する自動的な調整の追加のユーザ入力に応答して、前記決定された咬合の前記GUIにおける前記第1顎部分および前記第2顎部分の前記表現を更新するようにさらに構成される、請求項57~79のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項81】
前記プロセッサは、さらに、
前記GUIを介して、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の領域を示すユーザ入力を受け取り、前記領域に最大バーリング深さを割り当て、
前記示された領域および前記最大バーリング深さに基づいて、前記第1顎部分および前記第2顎部分の前記少なくとも一方を表す少なくとも1つの修正3次元モデルを生成するように構成され、
前記その他の自由度のうちの少なくとも1つを調整することは、前記少なくとも1つの修正3次元モデルに基づいて、前記第1顎部分および前記第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束する、請求項57~80のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項82】
前記GUIは、前記少なくとも1つの修正3次元モデルに基づいて、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像を含む、請求項81に記載のシステム。
【請求項83】
前記プロセッサは、
医用画像データの取得すること、
医用画像データを前記患者の前記第1顎部分および前記第2顎部分の前記3次元表現に変換すること、および
前記患者の前記第1顎部分および前記第2顎部分の前記3次元表現である、光学スキャンまたは口腔内スキャンを取得すること、の内1つ以上のことを実行するようにさらに構成される、請求項57~82のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項84】
前記プロセッサは、第1プロセッサであり、
前記システムは、さらに第2プロセッサを含み、前記第2プロセッサは、
医用画像データの取得すること、
医用画像データを前記患者の前記第1顎部分および前記第2顎部分の前記3次元表現に変換すること、および
前記患者の前記第1顎部分および前記第2顎部分の前記3次元表現である、光学スキャンまたは口腔内スキャンを取得すること、の内1つ以上のことを実行するように構成される、請求項57~82のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項85】
モバイルデバイス;および
第2のコンピューティングデバイスを更に含み、前記第2のコンピューティングデバイスは、デスクトップコンピュータ、ワークステーション、および画像取得機能またはスキャン機能を備えたコンピューティングデバイスのうちの1つであり、
前記第1のプロセッサは、前記モバイルデバイスのプロセッサであり、前記第2のプロセッサは、前記第2のコンピューティングデバイスのプロセッサである、請求項84に記載のシステム。
【請求項86】
コンピューティングデバイスによって実行されるとき、前記コンピューティングデバイスに、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を格納する、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項87】
プログラムがコンピューティングデバイスによって実行されるとき、前記コンピューティングデバイスに、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2022年10月13日に出願された国際出願第PCT/US2022/046533号の優先権を主張するものであり、同出願は、2021年12月28日に出願された米国仮特許出願第63/266,079号の利益および優先権を主張するものであり、両出願は、以下に完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれ、すべての適用目的のために援用される。
【0002】
〔技術分野〕
本開示の態様は、咬合の決定に関する。いくつかの態様において、本開示は、特に、顎矯正手術計画のための仮想咬合を決定するための装置、システム、および方法に関する。
【0003】
〔関連技術〕
顎矯正手術では、外科医は、歯科矯正だけでは治療できない重度の顎のずれによって引き起こされる臨床的および審美的な問題を緩和することを目的として、一方又は両方の顎の歯を再配置するために骨切りを行う。コンピュータ支援プランニングシステム(Materialise’s(登録商標),ProPlan CMF,SurgiCase(登録商標),Mimics(登録商標)など)は、外科医が処置の機能的および審美的な結果を予測するのを支援する。このような計画システムは、計画された位置に向けて歯を誘導するために、手術中に使用する3次元印刷されたデンタルスプリントを提供することができる。このようなソフトウェアシステムのユーザは、患者が咬むために両顎を接触させたときの両顎(すなわち、下顎に対する上顎、またはその逆)の歯、またはその一部の相対的な位置および向きを指定しなければならない。患者が咬むために両顎を接触させたときの両顎の歯の相対的な位置および向きは、患者の咬合と呼ばれる。
【0004】
顎矯正症例によっては、外科医は上顎骨および/または下顎骨を複数の部分に分割するために追加の骨切りを行う必要がある場合がある。その際、各部分は少しずつ異なる方法で再配置される。これを下顎骨分割または上顎骨分割と呼ぶ。例えば、上顎または下顎が小さすぎて適切な咬合を維持できない場合や、患者にとって許容できる機能的または審美的な結果を得るために必要な場合がある。一般的に、片方の顎の部分が手術前よりもわずかに離れるように再配置される。このような場合、咬合は、もう一方の顎に対するすべての顎の部分の相対的な位置と向きを含む。計画された介入が上顎と下顎との両方の分割を伴う場合、咬合は、両顎の一方において任意に選択された1つの部分に対するすべての顎の部分の相対的な位置と向きを含む。
【0005】
顎矯正の症例によっては、外科医は、顎矯正手術中または顎矯正手術後に、1つまたは複数の歯の咬合面から研削またはバーリングによって材料を除去することを決定する場合がある。例えば、1本または複数の歯の一部が同じ顎の他の歯から突出しており、それによって適切な咬合が妨げられているような場合である。このような場合、それらの歯の突出部分をバーリングで削ることで、両顎の歯が異なる点で接触するようになり、患者の術後の咬合が改善される可能性がある。
【0006】
咬合は、外科医が物理的に咬合に配置した歯科鋳造模型の光学スキャンによって決定される。図1は、コンピュータ支援による顎矯正手術計画のために咬合を特定する従来のワークフローを示す。図1のステップ2では、患者の上顎と下顎の印象型を作成する。ステップ4では、印象型から石膏模型を作成する。ステップ6で、2つの石膏模型を咬合器にセットし、所望する咬合を決定し、表現する。ステップ8で、石膏模型を所望の咬合で固定する。ステップ10で、固定した石膏模型を光学的にスキャンし、コンピュータ支援プランニングシステムで使用する。
【0007】
上顎の分割または下顎の分割の場合、図1のステップ4ではさらに、対応する顎を分割するために行われる追加の骨切りをシミュレートするために、一方または両方の石膏模型を物理的に切断する。その後、各ギプスの出来上がった部分を、分割された顎の所望の新しい形状を表すように、異なる相対的な位置および向きで一緒に固定する。
【0008】
しかし、多くの場合、このような「咬合スキャン」は容易に入手できない場合がある。例えば、外科医は、ギプスの代わりに歯の口腔内スキャンを使用する完全デジタルワークフローを好む場合がある。別の例として、(所望の咬合を表す)模型の相対的な位置関係は、輸送中など、光学スキャン前に乱れることがある。
【0009】
そのような場合、外科医は、計画ソフトウェアに統合されたユーザインターフェースを使用して、所望の咬合が得られるまで、顎および/または顎の部分の3次元モデルを互いに相対的に手動で回転および平行移動させるなど、他の手段によって咬合を指定する必要がある。図2は、顎矯正手術のコンピュータ支援プランニングのための咬合を指定するための全バーチャルワークフローの例を示している。ステップ22Aで、石膏模型(図1のステップ2および4に関連して上述したように作成)を光学的にスキャンする。あるいは、ステップ22Bで、両顎を口腔内で光学スキャンする。ステップ24で、光学スキャンが計画ソフトウェアに提供され、計画ソフトウェアのユーザ(例えば外科医)がユーザインターフェースを操作して所望の咬合を決定する。ステップ26で、計画ソフトウェアは、手術計画のために顎を所望の咬合に描写する。本明細書では、計画ソフトウェアによる所望の咬合の描写を仮想咬合と呼ぶ。
【0010】
下顎骨または上顎骨が分割された症例では、咬合を完全に指定するには、片方の顎の一部分に対する全ての顎の部分の相対的な位置と向きを決定する必要がある。したがって、計画ソフトウェアのユーザは、1つの顎を除くすべての顎の部分の3次元モデルを手動で回転および平行移動させる必要がある。これは、分割されていない顎の咬合を指定するために使用されるプロセスと同じで、複数回繰り返される可能性がある。
【0011】
理解されるように、咬合は、固定顎に対して原点が固定された座標系に対する移動顎の位置および回転によって定義される。図3を参照し、本明細書で説明するように、移動顎部分100の座標系は、直交するX’、Y’、およびZ’軸を有する局所座標系(LCS)102と呼ばれる。固定顎部分104の座標系は、直交するX軸、Y軸、およびZ軸を有する世界座標系(WCS)106と呼ばれる。咬合108は、WCS106で定義されるように、移動顎部分100に取り付けられたLCS102の原点の位置および軸の方向によって数学的に定義することができる。
【0012】
このようにして、移動顎部分100の位置は、WCS106内のX、YおよびZ座標で特定することができる。さらに、移動顎部分100の向きは、WCS106におけるX軸、Y軸、およびZ軸の回りの回転度で特定することができる。したがって、咬合108は、WCS106に対して6自由度(3つの位置自由度と3つの回転自由度)で定義される移動顎部分100の位置および向きである。
【0013】
座標系の定義は任意である。すなわち、本明細書で議論され、図3に示されているように、下顎は、LCS102が取り付けられている移動顎部分100として定義され、上顎は、WCS106が取り付けられている固定顎部分104として定義され得る。あるいは、下顎をWCS106が取り付けられている固定顎部分104とし、上顎をLCS102が取り付けられている移動顎部分100とすることもできる。
【0014】
下顎が分割された場合または上顎が分割された場合、図9に示されているように、分割されていない顎104は、WCS1061、1062、1063が取り付けられている固定顎部分とみなすことができ、分割された顎の各部分1001、1002、1003は、独自のLCS1021、1022、1023を有する別個の移動顎部分とみなすことができる。片方の顎だけが分割されている場合、その顎のすべての部分のLCSを定義することによって、咬合を完全に指定することができる。上顎と下顎の両方が分割されている場合、咬合は繰り返し定義できる。例えば、まず下顎の部分を1つのオブジェクトに統合し、これを固定顎部分とみなす一方、上顎の部分はそれぞれ、個別に移動および回転できる独自のLCSを持つ個別の移動顎部分とみなすことができる。その後、上顎の部分を合体させ、固定顎部分とみなすことができる。上顎の部分の相対的な位置および向きを固定する効果があり、下顎の部分は、個別に操作できる個別の移動顎部分とみなすことができる。このプロセスは、場合によってはプランニングソフトウェアのユーザの制御のもとで繰り返すことができる。あるいは、この反復プロセスは、下顎の個々の部分を移動させる間に、上顎の部分を1つの固定顎部分に統合することから始めることもでき、下顎の部分および上顎の部分を操作する順序を逆にすることもできる。
【0015】
WCS106およびLCS102の原点および向きは任意に定義することができるが、WCS106のX-Y平面を固定顎部分104の歯面の接線方向平面として定義することも好都合である。同様に、WCS106のZ軸を、固定顎部分104の歯正中線を通るX-Y平面に直交するように定義するのが好都合である場合がある。同様に、LCS102のX’-Y’平面を、移動顎部分100の歯の表面に対する接平面として定義すると好都合である場合がある。同様に、LCS102のZ’軸を、移動顎部分100の歯正中線を通るX’-Y’平面に直交するものとして定義すると好都合である場合がある。
【0016】
下顎の分割または上顎の分割の場合、分割された顎の1つまたは複数の部分は、ほぼ直線状の列を形成するいくつかの隣接する歯から構成されることがあり、その結果、その部分は非常に細長い形状を有する。このような場合、対応するLCSのX’-Y’平面を、分割顎の歯面の接平面として定義すると好都合である場合がある。さらに、LCSのX’軸またはY’軸のいずれかを、その部分が表す歯列の方向と平行になるように揃えるのが好都合である場合がある。これは、X’軸またはY’軸をそれぞれ、歯列円弧の接線方向に揃えることに相当する。その結果、Y’軸またはX’軸はそれぞれ、歯列円弧および歯列の方向に対して垂直になる。同様に、LCSのZ’軸を、X’-Y’平面に直交し、顎部の中央(例えば、重心として定義される)を通過するものとして定義すると好都合である場合がある。また、反対側の固定顎部分についても、X軸またはY軸が歯列円弧に接し、それぞれY軸またはX軸が歯列円弧に直交し、X-Y平面が固定顎の歯面に接し、Z軸が移動顎部分によって表される分割部分の中央(初期位置)を通るように、WCSを一致させて定義すると好都合である場合がある。このようにほぼ一致する座標系を固定顎(部分)と移動顎(部分)とを比較することで、ユーザが平行移動および回転の値を解釈しやすくなる。図9は、下顎104の歯が1つの顎部分を表し、上顎の歯が3つの部分1001、1002および1003に分割された、分割上顎の場合の例を示す。この例では、下顎は固定顎部分であり、各上顎部分は別々の移動顎部分である。ドットで示される原点と、3つの軸X’,Y’,Z’;X’,Y’,Z’;X’,Y’,Z’とを含む別個のLCS1021,1022,1023が、各上顎部分に対して定義される。軸X’,X’,X’は歯列円弧の接線(破線)である。軸Y’、Y’、Y’は、歯列円弧に垂直であり、歯面に接する水平面に平行である。軸Z’、Z’、およびZ’は、前記水平面に対して垂直である。特定の上顎部分の咬合を決定するために、下顎104に取り付けられた対応するWCSが定義される。各上顎部分について異なるWCS1061、1062、1063が示されている。WCSの軸は、右の部分についてはX、Y、Z、中央の部分についてはX、Y、Z、左の部分についてはX、Y、Zとラベル付けされている。WCSの定義はLCSの定義と同様であり、軸X、X、Xは歯列円弧(破線)に接し、軸Y、Y、Yは歯列円弧に垂直で歯面に接する水平面に平行であり、軸Z、Z、Zは前記水平面に垂直である。
【0017】
1つの可能な顎矯正手術計画ツール、例えば手術計画ソフトウェアは、顎部分100および104の内1つの位置および向きに対する完全な制御をユーザに与えることができる。すなわち、ユーザは、3つの空間次元すべてにおける移動顎部分100の位置を制御するとともに、3つの主軸すべてに関する移動顎部分100の回転を制御する。これによりユーザは完全に制御できるが、咬合108を決定する際に考慮しなければならない要件が多いため、使用が面倒になる可能性がある。
【0018】
具体的には、臨床的に安定した咬合108を得るためには、両顎部分100、104の歯が少なくとも3点で接触する必要があり、ここで接触とは、両組の歯を表す3次元モデルの小さな重なり(交差点)として定義することができ、例えば、重なり距離は約0.3mmである(正確な値は、外科医または症例によって異なる場合がある)。接触点は、安定した咬合108を得るために十分な間隔が必要である。これは、歯の3次元モデルを通して断面を検査することによって確認することができる。全ての歯の表面全体をカバーするためには、これらの断面を多数チェックする必要があり、膨大な時間および/または処理リソースを必要とする退屈なプロセスとなる。
【0019】
さらに、ユーザは、臨床上の追加的な要求およびトレードオフを考慮する必要がある。例えば、両顎部分100、104の歯列正中線は、審美的な理由から整列されなければならない。さらに、両顎部分100および104の前後配列は、外科医の期待に従って設定する必要がある。ユーザがユーザインタフェースにおいて顎部の相対的な位置および向きに対して行う変更は、これらのしばしば矛盾する要件の多くに同時に影響を与える傾向がある。したがって、各変更後、ユーザは、そのような要件が許容範囲内で満たされているかどうかを検証する必要がある。
【0020】
下顎骨が分割された症例や上顎骨が分割された症例では、手術計画ソフトウェアが、顎が分割されていない場合に使用される方法と同様の方法を使用して、分割された顎の各部分に個別に適用される、分割された顎のすべての部分の位置と向きに対する完全な制御をユーザに与えることができる。しかし、この場合、各部分ごとに位置や向きの操作を行わなければならないため、ユーザの労力が倍増することになる。
【0021】
このような潜在的な解決策の限界、およびPongracz,F.,&Bardosi, Z.(2006),“Dentition planning with image-based occlusion analysis,”International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery,1(3),149-156;Nadjmi,N.、Mollemans,W.,Daelemans,A.,Van Hemelen,G.,Schutyser, F.,and Berge,S.(2010),“Virtual occlusion in planning orthognathic surgical procedures” International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 39,457-462;and Deng,H.、Yuan、P.、Wong、S.、Gateno、J.、Garrett、F.A.、Ellis、R.K.、English、J.D.、Jacob、H.B.、Kim、D.、Barber、J.C、et al. (2020),“An automatic approach to establish clinically desired final dental occlusion for one-piece maxillary orthognathic surgery,” International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery 15(11):1763-1773,に記載されているような以前の解決策の限界のため、このようなソリューションを用いた仮想咬合108の決定は、外科医自身ではなく、専門の臨床技師によってのみ行われる可能性がある。さらに、多くの訓練が必要とされる場合がある。さらに、所望の仮想咬合108を決定することは、経験豊富な技師にとっても時間のかかるプロセスである。例えば、困難な症例では、ユーザの経験レベルに応じて15分から1時間を要することがある。例えば、難しい症例では、ユーザの経験レベルによっては15分から1時間を要することもある。このため、外科医が変更を要求したときに、ユーザが直ちに計画された咬合108に変更を加えることができない場合があり、計画プロセスがさらに複雑になる。
【0022】
一方、他の可能なプランニング・プラットフォームは、仮想咬合108がアルゴリズムによって提案され設定される、完全に自動化されたアプローチを提供することができる。この場合、ユーザは咬合108を微調整する自由がほとんどない。この場合、例えば、外科的アプローチ、術前および術後の軟組織特性、審美的要件、または結果への期待など、潜在的に外科医のみが考慮できる要因を考慮しない、最適とは言えない結果をもたらす可能性がある。
【0023】
本明細書の「背景」のセクションに含まれる情報は、単に、本明細書における特定の実施形態の考察のための参照を提供することを意図していることに留意されたい。
説明本背景に含まれるいかなる情報も、先行技術を認めるものとみなされるべきではない。
〔開示の実施形態の概要〕
【0024】
特定の実施形態では、本明細書で説明する新規かつ発明的な技術に基づき、システムは、半自動アルゴリズムを使用して、両顎又はその一部(顎部分)の歯間の接触をシミュレートする。グラフィカルユーザインターフェース(GUI)により、ユーザは、臨床的に関連する空間パラメータおよび回転パラメータの限定されたセットを使用して、顎またはその一部(顎部分)の相対的な位置および向きを部分的に指定することができる。ユーザがこれらのパラメータに加えた変更は、アルゴリズムによって受け取られる。その後、アルゴリズムは、特定の最適化制約を満たすように、空間および回転パラメータの異なる限定セットを調整し、GUIでユーザに提示される咬合108を導く。
【0025】
図4(および図3の定義された座標系)を参照すると、本開示の態様は、特に、WCS106に対する3つの位置変数に関して、移動顎部分100のユーザ操作を可能にする。例えば、ユーザは、X方向およびY方向、すなわち水平(X-Y)平面における移動顎部分100の平行移動を制御する。また、ユーザは、垂直(Z)軸周りの移動顎部分100の回転も制御する。ユーザは、制御点110の位置を設定することもできる。制御点110は、移動顎部分100の圧力印加点を表す。
【0026】
下顎の分割または上顎の分割の場合、移動顎部分は、その顎を複数の部分に分割した結果の顎の一部分、または顎の一部分または全部分を単一のオブジェクトに統合した顎の一部分のいずれかを表すことができる。ユーザは、顎の個々の部分、顎の部分のグループ、または顎全体の位置と向きを交互に操作するために、両方の表現を切り替えることができる。
【0027】
X-Y平面における移動顎部分100の平行移動および回転運動を制御し、制御点を設定するユーザ入力に基づいて、アルゴリズムは、特定の最適化パラメータ(以下に詳述する)を適用し、垂直方向、すなわち垂直(Z)方向の平行移動を計算する。アルゴリズムはまた、ユーザによって設定されたパラメータを修正することなく、歯を最適化された接触状態にするために、2つの水平(XおよびY)軸周りの回転を計算する。本開示の態様は、作業分担を提供する。すなわち、アルゴリズムが、歯が正確に接触することを確実にする面倒な作業を自動的に実行する一方で、ユーザは、より限定され、しかし、臨床的に関連するパラメータのセットを操作する。これにより時間が節約され、計画プロセスの間、咬合108の臨床的側面により集中することができる。さらに、ユーザによって制御されるパラメータは、オーバージェットや正中線偏位などの咬合108を記述するために使用される周知の臨床測定値と等価であるように定義されるため、計画ソフトウェアを使用する外科医と臨床工学技士との間の協力が簡素化される。
【0028】
数学的には(そして上述したように)、咬合108は、固定顎部分104のWCS106に対する移動顎部分100の6自由度(DOF)として表すことができる。したがって、6つの別々の値が一緒になって、顎部分100と104との互いに対する位置および向きを一意に決定する。
【0029】
上述したように、上顎または下顎のいずれかを移動顎部分100として定義することができ、他方の顎は固定されたままであり、固定顎部分104と呼ぶことにする。図3に示すように、移動顎部分100は、原点として機能する3次元空間の点、およびLCSのX’、Y’、およびZ’軸の方向を表す3つの正規直交3次元ベクトルを含む局所座標系(LCS)102において表される。原点に対する3つの空間座標は平行移動自由度である。LCSの軸は、3つのオイラー(カルダン)角の系によって完全に決定され、回転自由度である。
【0030】
下顎骨の分割または上顎骨の分割の場合、ユーザが分割された顎の個々の部分の位置および向きを操作できるようにするために、上顎骨または下顎骨のいずれかの分割の結果として生じる部分を移動顎部分として定義することができ、他方の顎のすべての部分は固定されたままであり、固定顎部分と呼ばれる。
【0031】
曖昧さを解消するために、回転の順序を指定することができる。特定の実施形態では、回転のZ-X-Yの順序が適用される。しかし、回転の別の順序が代わりに適用されてもよい。同様に、曖昧さを解消するために、回転が固有回転(軸が回転する物体に結びついている)か、外在回転(軸は静止したままであり、物体が回転する)かを指定してもよい。特定の実施形態では、固有回転が適用される。しかし、代わりに外在的回転を適用してもよい。
【0032】
LCS102は、固定顎部分104上の世界座標系(WCS)106に対して定義され、この座標系は変化しない。本明細書で説明する例では、それぞれの顎100、104のLCS102およびWCS106について、X軸は左を指し、Y軸は後方を指し、Z軸は上方を指し、原点は2つの中切歯の間に位置する。WCS軸およびLCS軸の方向、ならびにオイラー角系における回転の順序は任意の選択であり、ここで使用される選択は、本明細書で議論される実施形態の機能にとって本質的なものではない。しかし、WCSとLCSを、固定顎部分と移動顎部分とが、例えば、術前医用画像診断で観察されるような、計画された手術前の相対的な位置と向きにおいて、中立とみなすことができる相対的な位置と向きにあるとき、互いに実質的に平行であるものと定義すると便利である。典型的な使用例では、回転角度の値は低いため、オイラー角度のシーケンス(X-Y-Z、Y-X-Zなど)の選択、および固有回転と外在回転の間の選択は、ユーザにとって目立たない可能性がある。以下では、回転をX軸、Y軸、Z軸の周りに表現するが、回転を同様にX’軸、Y’軸、Z’軸の周りにそれぞれ定義してもよいことを、当業者は容易に理解するであろう。座標系軸の命名規則および定義は、本明細書に開示される方法およびシステムを限定するものではない。例えば、X軸が左向き、Y軸が後向き、Z軸が上向きと定義された軸を有する本明細書に記載の方法またはシステムは、X軸が右向き、Y軸が前向き、Z軸が上向きと定義された軸を有する方法またはシステム、またはX軸が前向き、Y軸が上向き、Z軸が右向きと定義された軸を有する方法またはシステムと完全に同等である。それにもかかわらず、曖昧さのない、好ましくは臨床的に適切な定義を選択することができる。
【0033】
回転は、WCS原点を中心に定義してもよいし、LCS原点を中心に定義してもよい。しかし、回転の中心としてLCS原点を選択することで、より直感的なユーザエクスペリエンスが得られる場合がある。前者の場合(回転はWCS原点を中心に定義される)、3つの与えられた回転角度と3つの与えられた平行移動距離からLCSを決定するために、まず、LCSがWCSと一致する(WCSと同じ原点と軸を持つ)と定義され、続いて、LCSが3つの平行移動距離から構成されるベクトルによって平行移動され、最後に、LCSの原点と軸が、回転角度と選択されたオイラー角のシーケンスを使用して、WCS原点を中心にWCS内で回転される。後者の場合(LCSの原点を中心に回転が定義される)、3つの与えられた回転角度と3つの与えられた平行移動距離からLCSを決定するために、まず、LCSはWCSと一致する(WCSと同じ原点と軸を持つ)と定義され、続いて、LCSの軸は、回転角度と選択されたオイラー角のシーケンスを使用してWCSの原点を中心に回転され、最後に、LCSの原点は、3つの平行移動距離から構成されるベクトルによってWCS内で平行移動される。
【0034】
図3に示すように、WCS106およびLCS102の両方について、原点は、咬合平面上の歯正中線の投影、すなわち、歯の咬頭をほぼ通過する平面として定義される。本開示の態様は、異なるWCSおよびLCSの原点が定義され得ることを企図している。しかしながら、この定義により、X、YおよびZの平行移動は、臨床で使用される測定値、それぞれ正中線偏位、オーバージェットおよびオーバーバイトに対応するようになる。
例えば、X軸の平行移動が0mmであれば、正中線のずれが0であることを意味し、言い換えれば、下顎と上顎の正中線が一直線上にあることを意味する。同様に、X軸、Y軸、Z軸周りの回転は、それぞれピッチ、ロール、ヨーの値に対応する。これらは、外科医とのコミュニケーション時に、移動顎の回転を表現するために使用することができる。
【0035】
以下の表1は、本発明の特定の実施形態で定義されるように、咬合108を定義する6つのDOFの定義と、それらのユーザ制御下の3つおよびアルゴリズム制御下の3つへの配分を示している。他の実施形態では、6自由度の異なる定義を使用することができる。しかし、表1に示すような定義は、非常に直感的であり、使いやすさが向上することが証明されている。
【表1】
【0036】
ユーザの制御下のDOFは、半自動アルゴリズムについて固定値とみなされ、残りのDOFのみを操作して、両顎の接触をシミュレートする。咬合を完全に定義するために、このアルゴリズムは、これらの残りの自由度を拘束する固定顎部分と移動顎部分との接触形状を見つける。一般に、Tasora,A.,&Righettini,P.(2003),“Sliding Contact between Freeform Surfaces”,Multibody System Dynamics 10,239-262で説明されているように、幾何学的な縮退を無視すると、2つの滑らかな形状の表面(固定顎部と移動顎部の歯面のような)間の摩擦のない(スライディング)点接触は、力学系から1自由度を除去(または同等に拘束)する。
したがって、咬合を完全に定義するために、アルゴリズムは、アルゴリズムの制御下にあるDOFの数に等しい数の接触点を含む接触構成を見つけることができる。たとえば、上記の表1の定義を使用すると、アルゴリズムは3つのDOFの値のみを操作することになるため、アルゴリズムが3つの接触点を見つけるだけで十分である。
【0037】
下顎の分割または上顎の分割の場合、分割された部分に歯正中線が含まれる場合は、顎全体の代わりにその部分を移動顎部分とみなすことを除いて、上述した方法を変更せずに適用することが妥当な場合がある。しかし、分割された顎の1つ以上の部分が歯正中線を含まない場合もある。例えば、上顎が3つの部分に分割されている場合、側方の部分の1つには2つの小臼歯と2つの臼歯しか含まれていない可能性がある。このような場合、上述したように、歯列正中線ではない点に部分のLCSの原点を配置する方が便利であり、使い勝手が向上する可能性がある。替わりに、部分の中央の点を使用できる。さらに、X’軸が、部分が含む歯列の方向に平行であり、歯列円弧に接するように、LCSを定義することがより便利な場合がある。Y’軸はX’軸に垂直に定義され、Z’軸はX’軸とY’軸の両方に垂直で、実質的に垂直に定義される。X’-Y’平面は咬合平面に実質的に平行になる。開示された方法が機能する方法は、この定義の変更によって実質的に変更されることはないが、以下の表2に示されるように、臨床測定値としてのLCS位置決めパラメータの解釈は変更される:
【表2】
【0038】
場合によっては、追加の第4の自由度をユーザの制御下に置き、アルゴリズムによって制御される自由度の数を2つに減らすことが有利なことがある。このような場合、アルゴリズムは、移動顎部分と固定顎部分とをより少ない、例えば2つの接触点で接触させることによって、これらの2つの自由度を制約することができる。例えば、X回転は、アルゴリズムによって制御させる代わりに、ユーザの直接制御下に置くことができ、ユーザは、追加の変数を操作しなければならないという欠点を伴う追加の制御を行うことができる。例えば、ユーザが全顎の位置を変更する場合、両顎の歯が前側の切歯および/又は犬歯の2点のみで接触し、臼歯の歯と歯の間に隙間があるようにすることが必要な場合がある。計画された顎矯正手術の後、さらに矯正治療や噛み合わせの改善を行うことで、この隙間を閉じることができる。このような場合、WCSのX軸(矢状面における回転を表す)を中心に回転を制御することで、前歯側での接触を確実にすることができる。その他の場合、例えば、下顎の分割および上顎の分割の場合、分割された顎の一部が、ほぼ直線状の列を形成するいくつかの隣接する歯から構成され、その結果、その部分が非常に細長い形状を有する場合、その部分(移動顎部分として扱われる)と固定顎部分との間の接触面も細長い形状を有し、面積接触よりも線接触のような挙動を示す。このような場合、安定した3点接触を得ることができない可能性があり、アルゴリズムによって決定されるX回転(WCSのX軸(接触線にほぼ平行である)の周りの回転を表す)は、不安定な挙動を示すことになる。アルゴリズムの代わりにこの回転をユーザに制御させることで、より安定した解を得ることができ、その結果、分割顎部分が3点ではなく2点で固定顎部分と接触する咬合が得られる。分割された顎は複数の部分から構成されるため、1つの部分につき2つの接触点があっても、完全な顎の接触点は4つ以上になるため、顎全体の咬合は依然として十分に安定している。
【0039】
X回転がユーザの制御下にある場合、X-Y平面における移動顎部分100の平行移動、X回転、Z回転、および制御点の位置を制御するユーザ入力に基づいて、アルゴリズムは特定の最適化パラメータ(以下で詳細に説明する)を適用し、垂直平行移動、すなわち垂直(Z)方向の平行移動を計算する。このアルゴリズムはまた、ユーザによって設定されたパラメータを変更することなく、歯を最適化された接触状態にするために、ほぼ水平な(Y)軸の周りに作用するY回転を計算する。
【0040】
上述のように、いくつかの実施例では、LCS原点を咬合平面上の歯正中線の投影に固定する代わりに、移動顎部分のLCS原点として機能する点をユーザが選択できるようにすることができる。これは、例えば、ユーザが移動顎部分を表す3次元モデル上の点を選択できるようにするグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供することによって実現することができる。DOF値と上述の臨床測定値との間の関係は失われるが、LCSの原点は、異なる軸周りの回転を表すDOFが変更されたときに移動顎部分が回転するように見える点であるため、これにより、ユーザは移動顎部分の回転中心を決定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、仮想咬合を決定する方法が提供される。本方法は、患者の第1顎部分および患者の第2顎部分の3次元表現を取得することを含み、第2顎部分は第1顎部分と対向しており、第1顎部分に対して移動可能である。本方法はさらに、3次元表現を用いて、グラフィックユーザインターフェース(GUI)において、第2顎部分に対する第1顎部分の初期位置を設定し、表現することを含むことができ、初期位置は、第1顎部分に対して固定された原点を有する座標系に対して予め定められた6自由度を有する第2顎部分上の制御点によって定義される。本方法は、自由度の少なくとも1つに対する変更のユーザ入力を受信すること、および、第1顎部分と第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束しながら、原点に対する制御点の垂直距離などの距離を最小にするように他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整すること、それにより、第1顎部分と第2顎部分の間の咬合を決定することをさらに含むことができる。本方法は、GUIにおいて、決定された咬合における第1および第2顎部分を表すことをさらに含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、変更のユーザ入力は、患者の左方向に対応する座標系におけるX方向の第2顎部分の位置、患者の後方向に対応する座標系におけるY方向の第2顎部分の位置、および第2顎部分に対する制御点の位置のうちの少なくとも1つに対する、正または負の変化などの変化を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、変更のユーザ入力は、患者の左方向に対応する座標系におけるX方向の第2顎部分の位置、患者の後方向に対応する座標系におけるY方向の第2顎部分の位置、患者の上方向に対応する座標系におけるZ方向を中心とする第2顎部分の向き、第2顎部分に対する制御点の位置、のうちの少なくとも1つに対する、正または負の変化などの変化を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、第2顎部分に対する制御点の位置に対する変更のユーザ入力は、第2顎部分の局所座標系におけるY’方向における制御点の位置に対する変更を含む。いくつかの実施形態において、第2顎部分に対する制御点の位置に対する変更のユーザ入力は、第2顎部分の局所座標系におけるX’、Y’およびZ’方向のうちの1つまたは複数における制御点の位置に対する変更を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、変更のユーザ入力は、患者の左方向に対応する座標系におけるX方向の第2顎部分の位置、同じX方向の周りの第2顎部分の回転、患者の後方向に対応する座標系におけるY方向の第2顎部分の位置、患者の上下方向に対応する座標系におけるZ方向の周りの第2顎部分の回転、および第2顎部分に対する制御点の位置のうちの少なくとも一つに対する、正または負の変化などの変更を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、変更のユーザ入力は、歯列弧に平行な中遠心方向に対応する座標系におけるX方向における第2顎部分の位置、同じX方向を中心とする第2顎部分の回転、歯列弧に垂直な頬舌方向に対応する座標系におけるY方向における第2顎部分の位置、患者の上下方向に対応する座標系におけるZ方向を中心とする第2顎部分の回転、および第2顎部分に対する制御点の位置のうちの少なくとも1つに対する正または負の変化のような、少なくとも1つの変化を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、第2顎部分に対する制御点の位置の変更のユーザ入力は、第2顎部分の局所座標系におけるX’方向の制御点の位置の変更を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1顎部分は患者の上顎を含み、第2顎部分は患者の下顎を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1顎部分は患者の下顎を含み、第2顎部分は患者の上顎を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1顎部分は患者の上顎を含み、第2顎部分は下顎の分割骨切り術の結果生じた患者の下顎の一部を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1顎部分は患者の下顎を含み、第2顎部分は上顎分割骨切り術から生じた患者の上顎の一部を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1顎部分は、上顎分割骨切り術の結果生じた患者の上顎の一部を含み、第2顎部分は、下顎分割骨切り術の結果生じた患者の下顎の一部を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1顎部分は、下顎骨分割骨切り術の結果生じた患者の下顎骨の一部を含み、第2顎部分は、上顎骨分割骨切り術の結果生じた患者の上顎骨の一部を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、GUIは、第1顎部分および第2顎部分のそれぞれの3次元モデルの視覚化などの表現を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、GUIは、第1顎部分および第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像をさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、GUIは、アルゴリズムによって決定された2つまたは3つの接触点の表示をさらに含み、例えば、第1および第2顎部分の3次元モデル上および/または咬合画像上に重畳された接触点の位置にドットを示す。
【0057】
いくつかの実施形態では、GUIはさらに、追加の近似接触点の表示を含み、近似接触点は、両方の顎が咬合している間に、固定顎部分の対応する点までの距離が予め決められた閾値(例えば、0mmと1mmの間の閾値、より具体的には、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、または0.5mmの閾値)を下回る移動顎部分の点として定義される。これらのポイントを表示することで、ほぼ接触している歯の領域、および顎に柔軟性がある場合に物理的に接触する可能性のある領域を示すことができる。近似接触点は、例えば、アルゴリズムによって決定された2つまたは3つの接触点に使用される色とは異なる色で、第1および第2顎部分の3次元モデル上、および/または咬合画像上に重ね合わせて、その位置に点を表示することによって表示することができる。オプションとして、選択した(近似)接触点のみを表示することもできる。例えば、すべての近似接触点をLCS X’-Y’平面に投影し、投影点の二次元凸包を決定し、対応する投影点が二次元凸包の境界上に存在する近似接触点のみを選択することによって、最も関連性の高い近似接触点を選択することができる。視覚的な乱雑さを軽減するために、選択された近似接触点のみを表示してもよい。これは、形状の範囲を示す外側の境界を保ちながら、投影された点によって形成される二次元形状の内部での多数の点を削除する効果がある。
【0058】
いくつかの実施形態では、GUIは、ユーザによって制御される自由度に対応する対話型ユーザ制御の表示をさらに備える。いくつかの実施形態では、これらの対話型ユーザ制御は、3次元モデルの視覚化の一部を形成する。他の実施形態では、これらの対話型ユーザ制御は、GUIの別個のウィンドウ領域の一部を形成する。
【0059】
いくつかの実施形態では、GUIは、自動的に調整される自由度に対応する値の表示をさらに含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、GUIは、上顎又は下顎のいずれかの分割の結果として生じる単一の部分の操作と、これらの部分の相対的な位置および向きが固定されたままの全体としての顎全体の全ての部分の操作との間でユーザが切り替えることを可能にする制御の表示をさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、上顎または下顎のいずれかの分割から生じる単一の部分を操作する一方、GUIは、操作されていない同じ顎の部分の視覚化を有効または無効にする制御の表示をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、GUIは、WCS X軸の周りの回転がユーザによって決定されるかアルゴリズムによって決定されるかを決定する制御の表示をさらに含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、GUIは、ユーザがLCS原点として使用される移動顎部上の3次元点を選択することを可能にする対話型ユーザ制御の表示をさらに備える。
【0064】
いくつかの実施形態では、咬合を決定する前に、ユーザは、一方または両方の顎の3次元モデルの咬合面上のバーリングの最大許容深さ指示することができる。これは、例えば、ユーザにバーリングの最大深さを選択させ、ユーザに絵筆のようなツールを適用させて、この最大深さが適用される領域に対応する歯の表面のセクションにマークすることによって達成することができる。バーリングの最大許容深さを有する領域を対話的に示す他の多くの方法が可能である。例えば、ユーザは、投げ縄ツールまたは多角形投げ縄ツールを使用することができる。あるいは、ユーザは、LCSまたはWCSのX-Y平面内の線を指定することもできる。この線を通る垂直面(Z軸に平行)に対して前方または後方の歯の表面の領域が、前述の領域として使用され得る。このバーリング領域が選択されると、選択された領域を表す3次元モデルの部分、例えば、3次元モデルの表面が構成される点や三角形が、モデルの内側に向かう方向に平行移動し、それによって修正3次元モデルが生成されるように、患顎を表す3次元モデルを変更することによって、バーリングの最大深さが適用され得る。この方向は、領域内のすべての点および三角形について同じにすることができ、たとえば、下顎については下方に平行移動し、上顎については上方に平行移動する垂直(Z)方向にすることができる。あるいは、選択された領域を表す3次元モデルの部分に、負の距離値を持つ表面オフセットを適用することもできる。このようにして1つまたは複数の修正3次元モデルを生成した後、それらを対応する元の3次元モデルの代わりに半自動仮想咬合アルゴリズムに使用することができる。
【0065】
最大バーリング深さを適用するために顎を表す修正3次元モデルが生成された後、咬合画像は2つの異なる方法で計算することができる。どちらのバージョンをユーザに表示してもよいし、両方のバージョンを同時に表示してもよい。特定の態様では、3次元モデルが操作されていない場合と同じ方法で両方のバージョンが計算されるが、基礎となる距離計算の入力として使用される3次元モデルは異なる。咬合画像の最初のバージョンでは、修正3次元モデルが利用可能な顎の部分については修正3次元モデルを使用し、残りのすべての顎の部分については元の3次元モデルを使用する。接触をシミュレートする半自動アルゴリズムでは同じ3次元モデルが使用されているため、咬合画像に表示される両3次元モデル間の距離はすべてゼロまたはゼロより大きくなる。これらの距離は、ユーザが指示した領域全体にわたって、指示された最大バーリング深さまで歯がバーリングされたときに、両顎の歯の間にどれだけのスペースがあるかを定量化する。咬合画像の第2バージョンは、すべての顎の部分について、最大バーリング深さを適用するための操作が行われる前のオリジナルの3次元モデルを使用するが、修正3次元モデルに接触をシミュレートする半自動アルゴリズムを適用することによって決定された相対的な位置および向きを使用する。その結果、咬合画像に表示される両3次元モデル間の距離は、歯の咬合面のある部分ではゼロより小さくなることがあり、その部分では両顎の3次元モデル間に相互浸透があることを示す。これらの負の距離の絶対値は、接触シミュレーションアルゴリズムによって計算された咬合を得るために必要な実際のバーリング深さを示す。
【0066】
図10A~Dは、局所的なバーリングが望ましい場合を示す。図10Aは、上顎104および下顎100を表す3次元モデルの側面図を示し、咬合面は実線で示されている。上顎と下顎の3次元モデルは、点で示された2点142で接触する望ましい咬合で示されている。しかし、この望ましい咬合では、両顎の咬合面が2箇所148で干渉している。ユーザは、バーリングによって片方または両方の顎の歯の一部を除去することにより、この干渉を除去することを望むことができる。3次元モデルを修正することなく、本明細書に開示される方法は、図10Bに示されるように、咬合を決定することができる。図10Bでは、菱形で示される望ましくない位置143での接触が含まれる。このような状況を避けるために、ユーザは最大バーリング深さを持つ領域を指示することができる。図10Cに描かれるように、修正3次元モデル150は、例えば、上顎104の元の3次元モデルに基づいて、破線で示される指示された領域に最大バーリング深さdを超える内向きのオフセットを適用することによって、生成され得る。その結果、実線で示される修正3次元モデル150が、咬合を決定するために使用され得る。図10Dは、結果として得られた咬合を示している。この結果は、所望の咬合と一致する。下顎3次元モデル100は、2つの所望の接触点142において修正上顎3次元モデル150と接触し、他の位置では干渉しない。元の上顎3次元モデル104(破線)は、同じ咬合ポーズで、下顎100と干渉する。両模型間の負の距離d’は、この咬合を得るために必要な実際のバーリングの深さを示す。
【0067】
いくつかの実施形態において、本方法は、自由度のうちの少なくとも1つに対する変更の追加的なユーザ入力と、他の自由度のうちの少なくとも1つの対応する自動調整とに応答して、決定された咬合のGUIにおける第1および第2顎部分の表現を更新することをさらに含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、決定された仮想咬合に基づいて手術ガイドを形成する方法が提供される。本方法は、患者の第1顎部分と患者の第2顎部分の3次元表現を取得することを含み、第2顎部分は第1顎部分に対向し、第1顎部分に対して移動可能である。本方法はさらに、3次元表現を用いて、第2顎部分に対する第1顎部分の初期位置を設定することを含むことができ、初期位置は、第1顎部分に対して固定された原点を有する座標系に対して予め定められた6自由度を有する第2顎部分上の制御点によって定義される。本方法は、自由度の少なくとも1つに対する変更のユーザ入力を受け取ることをさらに含み得る。本方法はさらに、第1顎部分および第2顎部分の対向面間の距離が正となるように拘束しながら、原点に対する制御点の垂直距離を最小にするように他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整し、それによって第1顎部分および第2顎部分の間の咬合を決定することを含むことができる。本方法は、顎矯正手術中に患者の歯を決定された咬合に誘導するためにカスタマイズされた手術ガイドを形成することをさらに含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、本方法は、グラフィックユーザインターフェース(GUI)において、決定された咬合における第1および第2顎部分を表すことをさらに含む。
【0070】
本明細書には、本明細書に開示される方法のいずれかを実施するためのシステムも開示される。
本明細書で開示されるのは、その中に格納された命令を有する、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体でもあり、このコンピューティングデバイスによって実行されると、コンピューティングデバイスに、本明細書で開示される方法のいずれかを実行させる。
【0071】
本明細書には、コンピューティングデバイスによって実行されると、コンピューティングデバイスに本明細書に開示された方法のいずれかを実行させる命令を含むコンピュータプログラムも開示される。
【0072】
以下の説明および関連する図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の例示的な特徴を詳細に示す。
[図面の簡単な説明]
【0073】
添付の図は、1つまたは複数の実施形態の特定の態様を示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定するものとはみなされない。
図1図1は、顎矯正手術計画のために所望の咬合を決定する従来のワークフローの例を示す;
図2図2は、顎矯正手術計画のために所望の咬合を決定する別の従来のワークフローの例を示す;
図3図3は、移動顎および固定顎の定義された座標系の例を示す;
図4図4は、咬合を最適化するために使用される様々な点を有する移動顎および固定顎の例を示す;
図5図5は、仮想咬合を決定して表示するためのグラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)の例を示す;
図6図6は、図5のGUIの詳細の一例を示す;
図7A図7Aは、仮想咬合を決定する半自動方法の一般化された図の例を示す;
図7B図7Bは、仮想咬合を決定するためのシステムの概略の概要を示すブロック図の一例を示す;
図7C図7Cは、仮想咬合を決定するためのシステムの概略の概要を示すブロック図の一例を示す;
図8図8は、仮想咬合を決定するための一連のステップの例を示す図である。
図9図9は、唾液上顎の例で咬合を最適化するために使用される様々な点を有する移動顎および固定顎の例を示す図である;
図10A~D]図10A~Dは、所望の閉塞を得るための局所的バーリングの例を示す;
図11Aおよび11B]図11Aおよび11Bは、上顎の咬合画像のクローズアップである。
図12図12は、決定された咬合に基づく手術ガイドの例示的な3次元形状を示す。
【0074】
理解を容易にするために、図面に共通する同一の要素を指定するために、可能な限り同一の参照数字が使用されている。1つの実施形態の要素および特徴が、これ以上説明することなく他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが企図される。
[詳細説明]
【0075】
本開示の態様は、顎矯正手術計画のための仮想咬合を決定するための装置、方法、処理システム、およびコンピュータ可読媒体を提供する。本明細書で説明する実施形態は、従来のシステムおよび方法のいくつかの問題を解決する。
【0076】
本明細書で開示する実施形態は、一般に、移動顎部が中切歯を含む使用例については表1の座標系定義に従い、移動顎部が中切歯を含まない使用例については表2の座標系定義に従う。ただし、本明細書で開示するシステムおよび方法の適切な機能は、世界座標系または局所座標系の特定の定義または命名規則に依存しないことに留意すべきである。特定の態様では、座標系の軸を臨床的に関連する方向に揃えたり、座標系の原点を臨床的に関連する位置に配置したりすることで、本明細書に開示するシステムおよび方法の操作がより直感的、便利、またはユーザフレンドリーになる可能性がある。しかしながら、このような利点から利益を得るためには、特にどの軸がそのような臨床的に関連した方向と一致しているかが重要ではない。特定の軸に焦点を当てた記述は、軸よりも臨床的に関連する方向を反映することを意味する。例えば、本明細書に開示される実施形態は、X軸を患者の左/右方向、Y軸を患者の後/前方向、Z軸を患者の上/下方向と一致させる座標系定義に基づいて説明される場合がある。この例では、「Y軸に沿って動きが制限される」といった文言は、「後/前方向に沿って動きが制限される」と理解されることを意味する。軸の命名規則が異なっていても、臨床的に関連する位置や方向に注意を払えば、同じような効果が得られる。
【0077】
本開示の実施形態は、6自由度を、GUIまたは他の適切なインターフェースを介するなどしてユーザの制御下にある3つの自由度と、半自動アルゴリズムによって操作される3つの自由度とに分割することによって、咬合108の半自動制御を可能にする。具体的には、水平面内の平行移動(X軸とY軸に沿って)と垂直軸(Z軸)周りの回転をユーザが制御することができる。アルゴリズムはこれらを変更せず、歯を3点接触させるために、(Z軸に沿った)垂直方向の平行移動と2つの水平軸(X軸とY軸)回りの回転を計算する。さらに、ユーザは、アルゴリズムに間接的に影響を与える移動顎部分100上の制御点110の位置を制御する。制御点110は、移動顎部分100上の圧力印加点を表す。
【0078】
この6自由度のユーザ制御パラメータおよび半自動制御パラメータへの分割は、平らでない、ほぼ水平表面上の物体の物理的な配置と比較することができる:水平面内(XとY)の平行移動と垂直軸(Z)回りの回転により、物体が表面上のどこに置かれ、どの方向を向いているかがユーザによって制御される。他の3自由度(垂直方向の平行移動とXおよびYの周りの回転)は、物体が3つの接触点に静止するまで重力下でどのように動くかによって決定される。この比較では、制御点110は重心、つまり物体を押し下げる点を表している。制御点110を十分に遠くに動かすと、物体は3つの接触点の異なるセット上に静止するまで転倒する。ユーザは制御点110の位置を制御することができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、表1の座標系定義を使用して、Y方向、例えば前後方向に制御点110の位置を制御するのみである。いくつかの実施形態では、ユーザは、表2の座標系定義を使用して、制御点110の位置をX’方向、例えば、内側/遠位方向にのみ制御する。しかしながら、代替的な実施形態は、全ての方向における制御点110の位置のユーザ制御を提供してもよい。
【0079】
特定の実施形態によれば、歯間の接触をシミュレートする半自動アルゴリズムは、反復最適化アルゴリズムである。最適化アルゴリズムは、顎100、104を一緒に閉じるために、移動顎部分100上の制御点110の垂直変位(WCS106におけるZ方向)を最大化するように、3つの変数(ユーザ制御下にない3つの自由度)を操作する。例えば、移動顎部分100として下顎がセットされている場合、Z位置を最大にすることで、顎100、104を一緒に押すことができる。移動顎部分100としてセットされた上顎の場合、Z位置を最小にすると、顎100、104が一緒に押される。さらに、最適化アルゴリズムは、移動顎部分と固定顎部分との間の衝突によって制約を受ける。これは、移動顎部分100の表面の一部または全部が固定顎部分104の表面の一部または全部を通過することを禁止することによって達成される。例えば、両方の顎部分が三角形メッシュによって表される実施形態では、最適化アルゴリズムは、移動顎部分100の表面上に定義された衝突頂点112が、固定顎部分104の表面上に定義された衝突三角形114を通過することができないように制約され得る。あるいは、衝突頂点112を固定顎部分104の表面上に定義し、衝突三角形114を移動顎部分100の表面上に定義してもよい。最適化アルゴリズムがちょうど3つのDOF変数を制御し、一般的に(退化したケースを無視して)各点-三角形のペアが単一のDOFを制約し、したがってちょうど3つの点-三角形のペアが解を制約するので、結果は一意であり、ユーザ制御下のパラメータ(3つのDOFおよび制御点110の位置)によって完全に決定される。縮退解、例えば、解を拘束する衝突三角形114が見つからないほど顎100、104が離れて配置されることを回避するために、いくつかの実施形態では、縮退解になるように移動顎部分100が移動しすぎることを防止することができる。三角形メッシュの使用は必須ではないことに留意すべきである。移動顎部分および固定顎部分の3次元形状データの他の表現が、特定の態様において利用されてもよい。例えば、自由曲面要素のような他のタイプの表面要素を用いて両顎部分を表現してもよい。最適化アルゴリズムは、次に3つの表面要素ペアを決定する。
【0080】
議論されたように、ある態様では、ユーザ制御下にある3つのDOFと、半自動アルゴリズムによって操作される3つのDOFとが説明されているが、いくつかの態様では、同様に、議論されたように、4つのDOFがユーザ制御下にあり、2つのDOFが半自動アルゴリズムによって操作されてもよいことに留意されたい。例えば、本開示の他の実施形態は、6つのDOFを、GUIまたは他の適切なインターフェースを介するなどして、ユーザ制御下にある4つのDOFと半自動アルゴリズムによって操作される2つのDOFに分割することによって、咬合の代替的な半自動制御を可能にする。具体的には、ユーザは水平面(X軸とY軸に沿って)内の平行移動と、垂直軸(Z軸)と水平軸(X軸)周りの回転を制御することができる。アルゴリズムはこれらを変更せず、歯を2点接触させるために、垂直方向の平行移動(Z軸に沿って)と、もう一方の水平軸(Y軸)周りの回転を計算する。さらに、ユーザは、アルゴリズムに間接的に影響を与える移動顎部分の制御点の位置を制御する。制御点は、移動顎部分上の圧力印加点を表す。
【0081】
この代替的な半自動制御方法では、制御点の効果は、先に説明した3点接触アルゴリズムにおける効果と同様であるが、移動顎部分が静止顎部分と3点ではなく2点の接触点で接触し、制御点がどの点の組(3点ではなく)で接触が起こるかを決定する点が異なる。X軸周りの回転(表1の座標系定義に従えば左右、表2の座標系定義に従えば歯列円弧の接線方向)はユーザによって固定されるため、制御点の位置はそれに影響を及ぼさない。その結果、Y方向(前-後または歯列円弧に垂直)の制御点の位置はアルゴリズムに影響を与えず、X方向(それぞれ左-右または中-遠位)の制御点の位置のみをユーザに制御させれば十分である。
【0082】
このような実施形態によれば、上述した実施形態と同様に、歯間の接触をシミュレートする半自動アルゴリズムは、反復最適化アルゴリズムである。最適化アルゴリズムは、顎を一緒に閉じるために、移動顎部分上の制御点の垂直変位(WCSにおけるZ方向)を最大化するように、2つの変数(ユーザ制御下にない2つの自由度)を操作する。例えば、下顎を移動顎部分として設定した場合、Z位置を最大にすることで顎一緒に押される。移動顎部分として上顎が設定されている場合、Z位置を最小にすると顎が一緒に押される。さらに、最適化アルゴリズムは、移動顎部分と固定顎部分との衝突によって制約を受ける。これは、移動顎部分100の表面の一部または全部が固定顎部分104の表面の一部または全部を通過することを禁止することによって達成される。例えば、両方の顎部分が三角形メッシュによって表される実施形態では、最適化アルゴリズムは、移動顎部分の表面上に定義された衝突点が、固定顎部分の表面上に定義された衝突三角形を通過することができないように制約されてもよい。あるいは、衝突頂点112を固定顎部分104の表面上に定義し、衝突三角形114を移動顎部分100の表面上に定義してもよい。最適化アルゴリズムはちょうど2つのDOF変数を制御し、一般的に(退化したケースを無視して)各点-三角形のペアは単一のDOFを制約し、したがってちょうど2つの点-三角形のペアが解を制約するので、結果は一意であり、ユーザ制御下のパラメータ(4つのDOFおよび制御点の位置)によって完全に決定される。縮退解、例えば、解を拘束する衝突三角形が見つからないほど顎が離れて配置されることを回避するために、いくつかの実施形態では、縮退解になるように移動顎部分が移動しすぎることを防止してもよい。他の実施形態と同様に、三角形メッシュの使用は必須ではないことに留意すべきである。移動顎部分および固定顎部分の3次元形状データの他の表現が、特定の態様において利用されてもよい。例えば、自由曲面要素のような他のタイプの曲面要素を用いて両顎部を表現してもよい。最適化アルゴリズムは、次に2つの曲面要素対を決定する。
【0083】
勾配降下法、Nelder-Mead法(Gao and Han 2012)、Powell法(Powell 1964)、あるいは総当たり探索など、多くのよく知られた最適化技術を使用して、本明細書で説明する実施形態を実施することができる。最適化アルゴリズムが本明細書で説明する制約の範囲内で正しい結果をもたらす限り、最適化アルゴリズムの選択は、アルゴリズムの実行時間と、結果としてGUIの応答性のみに影響する。
【0084】
選択された最適化手法にかかわらず、接触シミュレーションは最適化問題として指定される。図4(および図7A、7B)に見られるように、アルゴリズムは最適化問題を以下のように解決する。
【0085】
まず、最適化変数は、アルゴリズムの制御下にある3つの自由度(WCS106では、X回転、Y回転、Z平行移動)である。
【0086】
次に、最小化される目標関数は、移動顎部分100上に定義される制御点110のZ座標である。下顎が移動顎部分100である場合、負のZ座標が使用されるので、目標関数の値を最小化することは、制御点の初期位置から顎を閉じる方向への垂直変位を最大化する。最適化関数は、最小化器または最大化器のいずれであってもよい。特定の実施形態によれば、最小化最適化関数が使用される。同じ最適化関数は、-1を乗じることによって、代替的に最大値をもたらすこともできる。下顎が移動顎部分100である場合、制御点110のZ位置は最大化される可能性があり、そのような場合、-Zを最小化することはZを最大化することに対応するため、Z位置の負を最適化メトリックとすることができる。
【0087】
3つ目に、各衝突点について不等式d≧0のセットに最適化を施す。ここで、diは、iによってインデックス付けされた衝突頂点112(移動顎部分100上)から(固定顎部分104上の)衝突三角形114のいずれかの最も近い点までの符号付き距離116であり、衝突点が固定顎部分の外側にある場合、符号は正である。上述したように、代替的に、衝突頂点112を固定顎部分104上に定義し、衝突三角形114を移動顎部分100上に定義することもできる。
【0088】
同様に、図7Cに示されるように、ユーザがX軸周りの回転を含む4自由度を操作できる実施形態では、接触シミュレーションは最適化問題として指定される。
【0089】
まず、最適化変数は、アルゴリズムの制御下にある2自由度(WCS106では、Y回転とZ平行移動)である。
【0090】
次に、最小化される目標関数は、移動顎部分100上に定義される制御点110のZ座標である。下顎が移動顎部分100である場合、負のZ座標が使用されるので、目標関数の値を最小化することは、制御点の初期位置からの顎を閉じる方向への垂直変位を最大化する。最適化関数は、最小化器または最大化器のいずれであってもよい。特定の実施形態によれば、最小化最適化関数が使用される。同じ最適化関数は、-1を乗じることによって、代替的に最大値をもたらすこともできる。下顎が移動顎部分100である場合、制御点110のZ位置は最大化される可能性があり、そのような場合、-Zを最小化することはZを最大化することに対応するため、Z位置の負を最適化メトリックとすることができる。
【0091】
3つ目に、各衝突点について不等式d≧0に最適化を施す。ここで、diは、iによってインデックス付けされた衝突頂点112(移動顎部分100上)から(固定顎部分104上の)衝突三角形114のいずれかの最も近い点までの符号付き距離116であり、衝突点が固定顎部分の外側にある場合、符号は正である。上述したように、代替的に、衝突頂点112を固定顎部分104上に定義し、衝突三角形114を移動顎部分100上に定義してもよい。
【0092】
本開示の態様によるGUIのスクリーンショットの例を図5に示す。GUIは、例えば、2つの機能を実行する:1)ユーザが3つまたは4つのユーザ制御DOFおよび制御点を修正できるようにすること、および2)半自動アルゴリズムによって計算された咬合をユーザに表示することである。
【0093】
図5に示す例では、GUIは、各DOFの値をある量だけ増加または減少させる単純なボタン126のセットを提供する(それ自体は、スピンボックスGUI要素を使用して指定される)。一実施形態によれば、制御点110はそのY座標によって指定され、これは他の3自由度と同じ方法で制御されるが、X座標とZ座標はゼロのままである。
【0094】
アルゴリズムによって計算された結果の咬合は、GUIを介して、両顎100、104の3次元モデル134、および2つの咬合画像136、138としてユーザに表示される。咬合画像136は、上顎(図示および説明の例では、固定顎部分104)のボトムアップ図を示す。咬合画像138は、下顎(図示し説明した例では、移動顎部分100)のトップダウン図を示す。図5には示されていないが、咬合画像136および/または138は、それぞれの顎部分100、104の図に重畳されたカラープロットとして歯間の垂直距離を示すことができる。代替的または追加的に、距離は、3次元モデルに重畳されたカラーマップとして表示されてもよい。GUIは、3次元モデル内の個々の顎部分を選択的に表示または非表示にする可能性を提供すると便利である。GUIはまた、咬合画像および/または3次元モデル上で接触点142および/または近似接触点144を、例えばドットまたは菱形によって視覚化することができる。GUIはさらに、接触点142および/または近似接触点144の周囲の凸包146を視覚化してもよい。2点接触の場合、接触点142の周りの凸包146は、2つの接触点を結ぶ線分になる。3点接触の場合、凸包146は3つの接触点142を結ぶ三角形となる。近似接触点144の周りの凸包は、上述のように計算されてもよく、また、例えば、多角形として視覚化されてもよい。GUIは、どの凸包146を可視化するかをユーザに選択させることができる。凸包146を視覚化することは、咬合の一般的な安定性についての追加的な洞察をユーザに提供する可能性がある。GUIはさらに、上述したように、最大バーリング深さを有する領域を示す可能性をユーザに提供することができる。次いで、GUIはさらに、上述のように、最大バーリング深さを適用した修正3次元モデルに基づく咬合画像か、元の3次元モデルに基づく咬合画像かを選択する可能性をユーザに提供することができる。あるいは、GUIは、両方のタイプの咬合画像を同時に表示してもよい。GUIはさらに、後述するように、接触点が存在すべき領域、または接触点が存在すべきでない領域を示す可能性をユーザに提供することができる。これらの機能の具体的な実装は、本明細書で説明する実施形態にとって必須ではなく、3つまたは4つのDOF値および制御点の位置がユーザによって一義的に指定され、その結果得られる咬合108がユーザに提示されることだけが重要である。
【0095】
図11Aおよび11Bは、上顎104の咬合画像136のクローズアップである。濃い色は、上顎の咬合面から下顎の咬合面までの距離が近いことを示す。図11Aでは、半自動接触シミュレーションアルゴリズムによって決定された、上顎と下顎の間の距離がゼロである、点で示された3つの接触点142が表示されている。この距離が閾値以下である、菱形で示された追加の近似接触点144も、すべての近似接触点の破線で示された凸包146とともに示されている。図11Bは、同じ咬合画像136を示しているが、凸包上にある接触点142(この例では1つのみ)および近似接触点144のみを示しているため、視覚的な乱雑さが軽減されている。
【0096】
図6は、図5に示したGUIの一例のボタン126の詳細である。この例のGUIを使用して、ユーザは、ボタン128を用いて、正中線偏位、すなわち、X方向の平行移動を調整することができる。同様に、ユーザは、オーバージェット、すなわち、Y方向の平行移動をボタン130で調整することができる。同様に、ユーザはボタン132で軸平面内の回転、つまりZ軸回りの回転を調整することができる。さらに、ユーザは、ボタン140を用いて、Y方向における圧力点110の位置を調整することができる。GUIには、自動的に計算されるパラメータも表示され、ユーザおよび/または外科医に詳細な位置情報がリアルタイムで提示される。自動計算されたオーバーバイト、すなわちZ方向の平行移動はウィンドウ118に表示される。自動的に計算された冠状面の回転、すなわちY軸回りの回転またはロールはウィンドウ120に表示される。自動的に計算された矢状面の回転、すなわちX軸回りの回転またはピッチはウィンドウ122に表示される。臨床的に関連するキャプションを使用してGUIでDOF値を提示することで、GUIをより直感的で、便利で、使いやすいものにすることができる。図6に見られるように、しかし、自動計算された3つのDOF値のためのボタン118、120、122は無効化されている。ユーザが付加的な第4の自由度値、例えば矢状回転を制御できる実施形態では、対応するボタンは無効化されない。
【0097】
ボタン126のセットに加えて、またはそれに代わるものとして、GUIは、平行移動のための直線矢印および回転のための曲線矢印など、3次元モデル134に重畳された3つまたは4つのユーザ制御DOF値のための対話型制御を提供することができる。
【0098】
図7Aのブロック図は、本明細書に記載の実施形態による半自動方法の一般化された図である。図7Bのブロック図は、例示的な実施形態による仮想咬合108を決定するためのシステムの概略を提供する。GUIを介して、ユーザは、3つのユーザ制御DOF-X平行移動128、Y平行移動130、およびZ回転132-と、移動顎のLCS102に定義された制御点110のY位置との値を決定する。他の3つの自由度-Z平行移動118、X回転122、およびY回転120-は、ユーザが制御する自由度と本明細書で説明する制約条件による最適化を条件として、アルゴリズムによって自動的に計算される。当業者であれば、図7Aおよび図7Bのブロック図が、ユーザが3自由度の異なるセットを制御できる実施形態、または図7Cに示されているように、ユーザが4自由度を制御できる実施形態にも準用されることを容易に理解するであろう。
【0099】
回転自由度は、オイラー角回転のセットを定義するために使用され、平行移動自由度と共に、LCS102からWCS106への数学的変換を定義する。この変換は、対応するWCS座標を得るために、衝突頂点112と制御点110(両方とも移動物体上に定義)との両方に適用される。
【0100】
衝突頂点112と衝突三角形116との間の距離116(di)が計算され、最適化アルゴリズムにおける制約として機能し、制御点110のWCS Z座標が最適化目標関数となる。これらに基づいて、最適化アルゴリズムは、収束に達するまで前のステップを繰り返しながら、制御するDOFの新しい推定値を定義する。最後に、得られたDOFを使用して咬合を定義する。咬合はGUIでユーザに提示され、ユーザは結果を評価し、それに応じてユーザ制御パラメータを修正することができる。
【0101】
図8は、特定の実施形態による一連のステップを示す例示的なフローチャートである。ステップ200において、患者の移動顎部分100および固定顎部分104の3次元表現が得られる。特定の実施形態によれば、3次元表現は、例えば、石膏模型の光学的表面スキャンまたは口腔内スキャンであってもよい。あるいは、3次元表現は、CT、MRIまたはCBCT画像などの医用画像から得られてもよい。移動顎部分100は患者の下顎であってもよく、固定顎部分104は患者の上顎であってもよい。あるいは、移動顎部分100を患者の上顎とし、固定顎部分104を患者の下顎としてもよい。固定顎部分および移動顎部分の1つ以上が分割顎部であってもよい。
【0102】
ステップ202において、3次元表現は、固定顎部分104に対する移動顎部分100の初期位置をGUIで表すために使用される。初期位置は、固定顎部分104に対して固定された原点と、WCS106に対して予め決められた6自由度を有する移動顎部分100上の制御点110によって定義される。WCS106は、固定顎部分104の中切歯の正中線に原点を有することができる。WCS106は、患者の左方向に正の値を有するX軸を有してもよい。WCS106は、患者の後方向に正の値を有するY軸を有してもよい。WCS106は、垂直、上方向に正の値を有するZ軸を有してもよい。制御点110は、Y軸上に配置されてもよい。あるいは、例えば、移動顎部分が中切歯を含まない場合、X軸は、正の値を有する歯列円弧の接線方向であってもよい。
遠位方向では、Y軸はX軸に垂直で、舌側方向に正の値をとり、Z軸は垂直で、上方向に正の値をとる。当業者は、上述のように、他の定義が選択されてもよいことを容易に理解するであろう。特定の実施形態では、ステップ202は、最大バーリング深さを有する領域を示すことと、示された領域に最大バーリング深さに等しい距離にわたって内側オフセットを適用することによって少なくとも1つの顎部分の少なくとも1つの修正3次元表現150を生成することとをさらに含み得る。
【0103】
ステップ204において、自由度の少なくとも1つに対する変更のユーザ入力が受信される。ユーザ入力は、GUIを介して受け取ることができる。ユーザによる入力は、X方向における固定顎部分104に対する移動顎部分100の平行移動、Y方向における固定顎部分104に対する移動顎部分100の相対的な平行移動、Z軸を中心とする固定顎部分104に対する移動顎部分100の回転、および例えばY軸に沿った制御点110の位置のうちの少なくとも1つに対する変更であってよい。
【0104】
ステップ206では、ユーザ入力に応答して、他の自由度の少なくとも1つが、固定顎部分104と移動顎部分100との間の垂直距離を最小化するように、場合によっては最大バーリング深さを反映するように修正された形態で、仮想咬合108を決定するために自動的に調整される。垂直距離は、制御点110からWCSの原点までのZ方向の距離であってもよい。自動調整は、移動顎部分100と固定顎部分104の対向面間の距離が正となるように制約されてもよい。自動調整される自由度は、固定顎部分104に対する移動顎部分100のZ方向への平行移動、固定顎部分104に対する移動顎部分100のX軸回り対回転、および固定顎部分104に対する移動顎部分100のY軸回りの回転のうちの少なくとも1つであってよい。
【0105】
別の実施形態では、ステップ204において、自由度の少なくとも1つに対する変更のユーザ入力が受信される。ユーザ入力は、GUIを介して受け取ることができる。ユーザによる入力は、X方向における固定顎部分104に対する移動顎部分100の平行移動、Y方向における固定顎部分104に対する移動顎部分100の平行移動、X軸を中心とする固定顎部分104に対する移動顎部分100の回転、Z軸を中心とする固定顎部分104に対する移動顎部分100の回転、および例えばX軸に沿った制御点110の位置のうちの少なくとも1つに対する変更であってよい。
【0106】
そのような異なる実施形態では、ステップ206において、ユーザ入力に応答して、他の自由度のうちの少なくとも1つが、固定顎部分104と移動顎部分100との間の垂直距離を最小化し、仮想咬合108を決定するように、場合によっては、最大バーリング深さを反映するように修正された形態で、自動的に調整される。垂直距離は、制御点110から原点までのZ方向の距離であってもよい。自動調整は、移動顎部分100と固定顎部分104との対向面間の距離が正となるように制約されてもよい。自動調整される自由度は、Z方向における固定顎部分104に対する移動顎部分100の平行移動、およびY軸を中心とする固定顎部分104に対する移動顎部分100の回転のうちの少なくとも1つであってよい。
【0107】
ステップ208では、移動顎部分100と固定顎部分104とが、決定された咬合108に表現される。これは、例えば、決定された咬合108において顎部分の元の3次元表現および/または修正された3次元表現を表示すること、および/または1つまたは複数の咬合画像を表示することを含む。1つまたは複数の咬合画像は、元の3次元表現、修正された3次元表現、またはその両方の組み合わせの間の距離測定値に基づいてもよい。上記のステップは、ユーザによる各変更入力に応答して新しい決定された咬合108を表すように反復的に実行してもよい。
【0108】
特定の実施形態によれば、決定された咬合に基づいて手術ガイドを形成してもよい。例えば、手術ガイドを3次元プリントしてもよい。手術ガイドは、顎矯正手術中に患者の歯を決定された咬合に対応する位置に誘導するように構成されてもよい。例えば、手術ガイドは、スプリントの形態をとることができる。例えば、図12に示されるように、ガイドのために3次元形状1200が決定されてもよい。3次元形状1200は、まず、上面1204、上面に対向する下面1206、および外縁1208を有する、実質的に円盤状またはくさび状の本体1202を作成することによって形成されてもよい。外縁は、例えば、上から見て、2つの顎の大きい方の歯列の輪郭の外側のオフセットをほぼ模倣してもよい。本体は、例えば、1mmから5mmの間の厚さを有することができる。次に、決定された咬合における顎部分の3次元形状の一部と相補的なくぼみ1210を上面および下面に形成してもよい。例えば、本体を咬合平面の中心に配置し、顎部分の3次元モデルを本体から減算するブール減算を行ってもよい。手術ガイドは、この3次元形状に基づいて、例えば、ステレオリソグラフィ、選択的レーザー焼結または選択的レーザー溶融などの任意の適切な付加製造技術を用いて、生体適合性ポリマーまたは金属などの任意の適切な材料で製造することができる。
【0109】
特定の実施形態によれば、構成要素が相互作用する独特の方法によって、仮想咬合108の判定が改善される。具体的には、「ユーザとアルゴリズム間の「作業の分布」は、6自由度のうち、3つまたは4つをユーザの制御下に、3つまたは2つをアルゴリズムの制御下に分けることで実現され、ユニークなものとなっている。アルゴリズムが制御する自由度は、歯が接触するか否かに強く影響する変数であり、小さな変更が衝突点を垂直に動かす。一方、ユーザが制御する自由度を変更すると、衝突点が水平方向に移動する傾向があり、歯が異なる点で接触することになる。
【0110】
このように6自由度を分割することで、システムは、2つの歯型を物理的に押し合う行為に近い「触覚的」なユーザ体験を提供する。アルゴリズムが歯を3点接触に「押す」一方、ユーザは位置決めの一部だけを行えばよい。アルゴリズムにおける制御点110の役割も、このユーザ体験の向上に寄与している。アルゴリズムの動作が顎を押し合うと解釈される場合、制御点110は力が加えられている点である。
【0111】
3点接触を得るための3自由度ではなく、2点接触を得るための4自由度をユーザが操作できる実施形態では、ユーザが制御しなければならないパラメータの数(したがって、ユーザにかかる負担)と、結果として得られる咬合に対してユーザが有する制御の度合いとの間に異なるトレードオフがあり、制御の度合いが大きい方にバランスがシフトする。この機能は、患者の顎の形状や臨床条件により、より高度な制御が必要な場合に主に使用されるため、任意でユーザに提供される場合がある。
【0112】
さらに、いくつかの実施形態によれば、最適化アルゴリズムが使用される特定の方法は、独自の利点を提供する。特定の実施形態では、アルゴリズムの探索空間は、2つまたは3つの変数のみで構成され、問題の次元性が制限され、数値的に解くことが容易になる。制御点の垂直変位を目標関数として使用することで、最適化変数の単純な関数として表現できるため、後者の評価が高速になる。これにより、アルゴリズムの実行時間が短縮され、システムの応答性が向上する。こうして、仮想咬合を定義するプロセスが加速され、例えば、本明細書に開示されたシステムを操作する技工士と外科医など、手術計画プロセスに関与する人々の間でスムーズな相互作用が可能になる。
【0113】
本明細書で説明する技術の実施形態では、ユーザが歯を接触させるために時間を費やす必要がないため、仮想咬合を定義するプロセスをはるかに高速化することができる。さらに、ユーザが操作する必要があるのは、限られたパラメーターセット(ユーザ制御下にある3つまたは4つの自由度、および制御点)であり、プロセスが簡略化され、トレーニングの必要性が減り、再現性が向上する。利用可能な3つまたは4つのパラメータは、臨床的解釈に関連する可能性があり、その操作が簡単になる。さらに、例えば、顎矯正手術のオンラインプランニングセッションにおいて、技工士と外科医など、手術プランニングプロセスに関与する人々の間で、より自然なディスカッションが可能になる可能性がある。さらに、スピードと使いやすさが向上することで、同じ症例についてより多くの代替咬合を比較できるようになり、治療計画の質が向上する可能性がある。
【0114】
特定の実施形態に関して説明した座標系およびオイラー角の特定の定義は一例に過ぎず、例えば、座標軸の名前を変更したり、座標軸を反転させたり、あるいは回転させたりすることによって定義を変更しても、本明細書で説明する実施形態で使用できることを理解されたい。さらに、LCSとWCSとの間の3次元回転を表現するために、回転ベクトルなど、本明細書で論じる実施形態に対して異なる形式論を使用することもできる。異なる実施形態の各々は、移動顎部の姿勢が6自由度(回転用3つおよび平行移動用3つ)によって表され、これらのうちの3つ(回転用2つおよび平行移動用1つ)又はこれらのうちの2つ(回転用1つおよび平行移動用1つ)が、歯を接触させるためにアルゴリズムによって操作され、残りの自由度はユーザが直接制御することを提供することができる。
【0115】
本明細書で議論される特定の実施形態において歯間の接触を表すために使用される衝突点および衝突三角形は、いくつかの方法で変更され得る。例えば、衝突点は、移動顎部ではなく固定顎部に、あるいは両方に定義することもできる。同様に、特定の実施形態では、衝突三角形は、移動顎部上ではなく固定顎部上に、あるいは両方上に定義され得る。特定の実施形態では、点および三角形を使用しないなど、両顎間の距離を表現するために異なる方法が使用され得る。例えば、特定の実施形態では、顎部間の距離は、陰的な表面上で定義された符号付き距離フィールドを使用して表現され得る。異なる実施形態の各々は、一方(または両方)の顎の歯の表面上に分散された、両顎部分間の一連の距離が計算されることを提供することができる。これらの距離は、歯が接触していないときには正となり、歯が接触したときにはゼロとなり、歯の表面が交差する(3次元オブジェクトが重なる)ときには負となる可能性がある。また,符号を逆にすることもできる(重なっている場合は正,接触していない場合は負)。
【0116】
特定の実施形態では、最適化アルゴリズムは、すべての距離値が正(0より大きい)であることを制約する。あるいは、特定の実施形態では、最適化アルゴリズムは、距離が(小さな)負の数、例えば-1mmと0mmの間の数、より詳細には-0.1mm、-0.2mm、-0.3mm、-0.4mmまたは-0.5mmより大きくなるように制約することができる。さらに特定の実施形態では、この数は歯の表面上で変化し得る。これは、わずかなオーバーラップ、わずかな精度誤差にもかかわらず歯が接触していることを確認したり、例えばバーリングによって歯の一部が除去されたことをシミュレートしたりするのに有用である。
【0117】
別の選択肢として、いくつかの実施形態では、最適化制約を、目標関数に追加される1つ以上のペナルティ項で置き換えることができる。これらのペナルティ項の値は、接触がない場合はゼロまたは非常に低いが、両表面の相互貫入が増加するにつれて急激に上昇する可能性がある。このために、一方の顎部の点と他方の顎部の表面との間の符号付き距離が使用され得る。特定の実施形態では、ペナルティ項は、正の符号付き距離(表面の外側の点)ではゼロとなり、負の符号付き距離(表面の内側の点、すなわち接触)の絶対値または二乗に等しくなる。
【0118】
特定の実施形態では、最適化目標関数は、両組の歯の「近さ」を単一の数値で表すものに置き換えることができる。例えば、いずれかの顎部分に定義された点間の距離または二乗距離の合計が考えられる。さらに、特定の実施形態では、両方の顎部分が接触する場所をユーザに制御させるために使用される制御点の代替が可能である。特定の実施形態では、ユーザは、1つ以上の接触点が配置されなければならない、または接触点が配置されてはならない、歯の表面上の1つ以上の領域を定義することができる。これは、臨床的な理由から(例えば)切歯での接触が望まれない場合、又は一部の歯での接触が避けられるべき場合に有用であり得る。1つ又は複数の接触点が配置されなければならない歯の表面上の領域、又は接触点が配置されてはならない歯の表面上の領域は、ユーザが絵筆のようなツールを使用して歯の表面の一部に印を付けることによって示すことができる。領域をインタラクティブに示す他の多くの方法が可能である。例えば、ユーザは投げ縄ツールや多角形投げ縄ツールを使用することができる。あるいは、LCSまたはWCSのX-Y平面上の線を指定することもできる。この線を通る垂直面(Z軸に平行)に対して前方または後方にある歯の表面の部分を、前述の領域として使用することができる。
【0119】
特定の実施形態では、システムに使用されるGUIまたはインターフェースは、システムの機能に影響を与えることなく、本明細書で説明する例示的なGUIとは異なるものとすることができる。例えば、他のインターフェースは、(1)ユーザがユーザ制御下のパラメータ、例えば3つまたは4つのDOFおよび制御点を選択できるようにすること、および(2)結果として生じる咬合をユーザに提示すること、の少なくとも2つの機能を提供することができる。両方の機能を実行するインターフェースであれば、本明細書で説明する技術と組み合わせて使用することができる。例えば、例として提供されたボタンは、例えばスライダと置き換えることができ、咬合グラグラムは、歯間の距離を視覚化する他の方法、例えば、一連の断面を表示したり、3次元モデルにカラーマップを重ねたりすることによって、置き換えるかまたは補うことができる。便宜上、本明細書に開示される任意の実施形態のGUIは、3次元モデル内の1つまたは複数の顎部分を選択的に非表示または表示する可能性を提供することができる。GUI上のボタンに代わる他の代替入力方法には、コンピュータにユーザ入力を提供するために従来使用されている1つまたは複数の入力装置、例えば、コンピュータのマウス、ジョイスティック、トラックパッド、タッチスクリーン、トラックボール、モーションコントローラ、ハンドトラッキング装置またはアイトラッキング装置、あるいは3次元connexion SpaceMouse(3次元connexion GmbH、Munchen、ドイツ)のような6自由度入力装置の使用が含まれる。このような入力デバイスを1つ以上使用する場合、開示された方法においてユーザの制御下にある1つ以上の自由度の入力値は、入力デバイスによって提供される対応する軸または自由度から直接導出することができる。例えば、XおよびYの平行移動は、コンピュータマウスの左/右および前/後の動きによって直接制御することができるため、ユーザがマウスを左または右に動かすと、移動顎部はX方向に移動し、ユーザがマウスを前または後ろに動かすと、移動顎部はY方向に移動する。この設定により、X-Y平面における移動顎部の平行移動は、ユーザのマウスの動きを模倣することになる。同時に、Z軸周りの回転は、例えばスクロールホイール、あるいは別の入力装置によって制御することができる。
【0120】
特定の実施形態では、システムは、インターフェースを提供するなどの表示および/またはユーザ対話のために、拡張現実(AR)または仮想現実(VR)システム、デバイス、またはそれらの一部を利用することができる。例えば、ボタンまたはスライダを使用する代わりに、ユーザは、ARまたはVRシステムによって提供される入力方法を使用して、ユーザ制御下のパラメータを操作できるようになる。特定の実施形態では、この入力方法は、AR/VRシステムによって実行される何らかの形態のモーションキャプチャ、例えば、ハンドジェスチャまたはモーションコントローラを含む。特定の実施形態では、音声コマンドが使用されてもよい。特定の実施形態では、AR/VRベースのユーザインターフェースと、移動顎部のユーザ操作を3自由度または4自由度に制限する本明細書で論じる実施形態との組み合わせが有利になり得る。例えば、手動で咬合を設定するために6自由度を同時に制御することは、モーション制御を使用しても困難であるが、3自由度のみを使用することで、例えばパラメータの数を4つ(3自由度と制御点)に減らすことができる。特定の実施形態では、結果として得られる咬合は、再配置された3次元モデルとしてユーザに提示され、咬合グラグラムが重ね合わされる可能性がある。さらに、咬合画像は患者に重ね合わせることもできる。これは、通常のコンピュータ画面に表示される情報と同様であるが、AR/VRインターフェースにより、3次元モデルをさまざまな角度から見ることが容易になる。特定の実施形態では、AR/VRシステムがユーザ入力にハンドトラッキングを使用する場合、インターフェースは、3次元モデル(物理的および/または仮想的)をユーザの手に追従するように位置決めすることによって、歯科ギプスを物理的に咬合に位置決めする従来の方法を密接に模倣することができる。さらに、特定の実施形態では、ARシステムが患者の上顎または下顎の部分を追跡できる場合、3次元モデルをリアルタイムで患者の顔に重ねて表示することができる。これにより、ユーザは、患者の顔の形状に関連して、移動顎の再配置を容易に判断できるようになる。
【0121】
実施形態によれば、GUIは顎矯正外科処置を表すことができる。例えば、GUIでは、仮想咬合108を決定する前に、表された上顎部分を切断して初期位置に再配置することができる。あるいは、GUIは、分割された上顎片の位置が、ユーザの制御下にある3つまたは4つの自由度のうちの1つまたは複数の各ユーザ入力後に決定される仮想咬合108に基づいて再配置される反復プロセスを表すことができる。
【0122】
特定の実施形態では、GUIは、分割された上顎および/または分割された下顎の個々の部分が再配置される顎矯正外科手順を表すことができる。GUIは、全体としてすべての上顎またはすべての下顎の部分を再配置すること、または単一の下顎または上顎の部分を再配置することを可能にすることができ、ユーザは、両方の顎のいずれを再配置するか、および顎全体(すべての部分を含む)を再配置するか、または選択された顎の単一の部分を再配置するかを選択する。ユーザの選択に基づいて、顎の単一の部分が移動顎の部分として扱われるか、選択された顎のすべての部分が1つのオブジェクトに統合され、その結果が移動顎の部分として扱われる。これは反復プロセスとすることができ、ユーザは、選択された顎の個々の部分を再配置することと、顎全体を全体として再配置することを交互に行うことができる。個々の部分の再配置から顎全体の再配置に移行するとき、個々の部分の再配置の結果として生じる相対的な位置および向きが維持されるように、選択された顎の部分を結合することができる。これは、すべての部分が顎全体のLCSで定義されるように、3次元ジオメトリ、たとえば3次元モデル(衝突点と衝突三角形を含む)に変換を適用することで実現できる。顎全体の再配置から個々の部分の再配置に移行する場合、WCSにおける部分の位置と向きが顎全体を表す単一の部分に統合されたときと同じままであるように、LCSの原点の位置とLCS軸の向きを設定しながら、すべての部分を個々の局所座標系で表現することによって、この操作を逆にすることができる。さらに、GUIは、ユーザが分割された下顎または分割された上顎の異なる部分を交互に操作できるようにすることもできる。ユーザが1つの部分を操作している間、好みに基づいて、ユーザによって選択された場合、GUIは、ユーザが操作していない他の顎の部分を視覚化してもしなくてもよい。
【0123】
特定の実施形態が顎矯正に関して記載されているが、本明細書で議論される技術は、口腔内スキャン(石膏模型を含む)又は他の適切な処置、例えば頭蓋顎顔面処置(例えば外傷、再建手術など)、ガイド又はインプラントが配置される外科処置、又は1つ以上の物体の2つの部分が安定した位置のために互いに対して位置合わせされる必要がある非医療用途などに基づいて歯列矯正治療を計画するためにも同様に適用可能である。
【0124】
例えば、本明細書に記載の技術は、手術ガイド(例えば、3次元プリントされたドリルガイド)の設計に使用することができる。特に、ガイドが手術計画の意図とは異なる位置で骨と安定的に接触し得る代替ポーズの特定に役立てることができる。
【0125】
本明細書で論じる特定の実施形態は、コンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムとして実施することができる。特定の態様において、プログラムへの入力データは、両顎部分100、104の(少なくとも)歯の3次元モデルを含む。
【0126】
プログラムを実施するために、特定の実施形態では、咬合をユーザに提示し、ユーザがユーザ制御下にあるパラメータの値を決定できるようにするために、GUIフレームワークが使用される。さらに、コンピュータプログラムは、これらのパラメータからLCS102を決定し、LCS102からWCS106への変換を実行するための命令を含むことができる。コンピュータプログラムは、各衝突頂点112について、衝突三角形114上の最も近い点までの距離を計算するための命令を含むことができる。最後に、最適化アルゴリズムが使用されてもよい。
【0127】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、例えば、デスクトップコンピュータ、ポータブルコンピュータ、ポータブル電子デバイス、タブレットコンピュータ、スマートフォン、および他のコンピュータ化されたデバイスなどのコンピューティングデバイスによって操作および実行することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載される方法は、ネイティブソフトウェアアプリケーションによって実行され得るが、他の実施態様では、サーバクライアント実施態様で実行され得る。例えば、いくつかの実装では、本明細書に記載の方法を実行するように構成されたソフトウェアは、リモートサーバまたはクラウドベースのシステムによってホストされてもよい。場合によっては、本明細書に記載のシステムおよび方法の様々な態様は、異なるコンピューティングデバイスに分散されてもよい。例えば、GUIを提示すること、ユーザ入力を受信すること、および仮想咬合を決定することに関連する本明細書に記載の方法ステップは、大きな計算能力を必要とせず、したがって、ポータブルコンピュータ、ポータブル電子デバイス、タブレットなどのモバイルデバイスによって実行されるのに適している。一方、他のステップ、例えば、医用画像データの取得、医用画像データの固定顎部および移動顎部の3次元表現への変換、または固定顎部および移動顎部の3次元スキャンの取得に関するステップは、デスクトップコンピュータやワークステーションなどのより強力なコンピューティング装置、または画像取得機能もしくはスキャン機能を備えた専用装置によって実行することができる。
【0128】
さらに、本明細書に記載のシステムおよび方法は、例えば、外科医、医師、看護師などの医療専門家、または臨床技術者、設計技師、インプラント製造者、または(例えば、実際の手術の前に、その手術の説明を受けた)患者などの非医療専門家によって操作および実行され得る。
【0129】
前述の説明は、当業者であれば誰でも、本明細書に記載された様々な実施形態を実施できるようにするために提供される。本明細書で議論される例は、特許請求の範囲に規定される範囲、適用可能性、または実施形態を限定するものではない。これらの実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、他の実施形態に適用することができる。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、論じた要素の機能および配置に変更を加えてもよい。様々な実施例は、様々な手順または構成要素を適宜省略、置換、または追加することができる。例えば、説明された方法は、説明された順序とは異なる順序で実行されてもよく、様々な手順が追加、省略、または組み合わされてもよい。また、いくつかの実施例に関して説明した特徴を、他のいくつかの実施例において組み合わせてもよい。例えば、本明細書に記載された態様の任意の数を用いて、装置を実施してもよいし、方法を実施してもよい。加えて、本開示の範囲は、本明細書に規定される本開示の様々な態様に加えて、または本明細書に規定される本開示の様々な態様以外の他の構造、機能性、または構造および機能性を用いて実施されるそのような装置または方法をカバーすることが意図される。本明細書に開示される本開示の任意の態様は、請求項の1つ以上の要素によって具体化され得ることが理解されるべきである。
【0130】
本明細書で使用される場合、「例示的」という語は、「例、実例、または説明として役立つ」という意味である。本明細書において「例示的」として記載される態様は、必ずしも他の態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるものではない。
【0131】
本明細書で使用される場合、「固定」および「静止」という語は互換的に使用され得る。
【0132】
本明細書で使用される場合、項目のリストの「少なくとも1つ」に言及する語句は、単一の部材を含む、それらの項目の任意の組み合わせを指す。一例として、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、およびa-b-c、ならびに同じ要素の倍数との任意の組み合わせ(例えば、a-a、a-a-a、a-a-b、a-a-c、a-b-b、a-c-c、b-b、b-b-b、b-b-c、c-c、およびc-c-c、またはa、b、およびcの任意の他の順序)をカバーすることを意図している。
【0133】
本明細書で使用する場合、「決定する」という用語は、多種多様な動作を包含する。例えば、「決定する」には、計算すること(calculating)、計算すること(computing)、処理すること、導出すること、調査すること、調べること(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造で調べること)、確認することなどが含まれる。また、「決定」には、受信(例えば、情報の受信)、アクセス(例えば、メモリ内のデータへのアクセス)などが含まれる場合がある。また、「決定する」には、解決する、選択する(selecting)、選択する(choosing)、確立する等が含まれる場合がある。
【0134】
本明細書で開示される方法は、方法を達成するための1つ以上のステップまたは動作を含む。方法のステップおよび/又は動作は、特許請求の範囲から逸脱することなく互いに入れ替えてもよい。言い換えれば、ステップまたは動作の特定の順序が指定されない限り、特定のステップおよび/または動作の順序および/または使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく変更することができる。さらに、上述した方法の様々な動作は、対応する機能を実行することができる任意の適切な手段によって実行することができる。手段は、回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプロセッサを含む、様々なハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素(複数可)および/またはモジュール(複数可)を含むことができるが、これらに限定されない。一般に、図に示されている動作がある場合、それらの動作は、同様の番号付けをした対応する手段プラス機能構成要素を有してもよい。
【0135】
本開示に関連して説明される様々な例示的論理ブロック、モジュール、および回路は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブルロジックデバイス(PLD)、ディスクリートゲートまたはトランジスタロジック、ディスクリートハードウェアコンポーネント、または本明細書に記載される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせで実装または実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、市販のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つまたは複数のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装されてもよい。
【0136】
処理システムは、バスアーキテクチャで実装することができる。バスは、処理システムの特定の用途および全体的な設計制約に応じて、任意の数の相互接続バスおよびブリッジを含むことができる。バスは、プロセッサ、機械可読媒体、および入出力デバイスなどを含む様々な回路を連結することができる。ユーザインターフェース(例えば、キーパッド、ディスプレイ、マウス、ジョイスティックなど)もバスに接続されてよい。バスはまた、タイミング・ソース、周辺機器、電圧レギュレータ、電源管理回路、など、さまざまな他の回路を連結することもできる。当該技術分野で周知の他の回路要素については、これ以上説明しない。プロセッサは、1つまたは複数の汎用プロセッサおよび/または特殊用途プロセッサで実装することができる。例としては、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、DSPプロセッサ、およびソフトウェアを実行できる他の回路が挙げられる。当業者であれば、特定のアプリケーションおよびシステム全体に課される全体的な設計制約に応じて、処理システムに対して説明した機能をどのように実装するのが最適であるかを認識するであろう。
【0137】
ソフトウェアで実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上に1つまたは複数の命令またはコードとして記憶または送信することができる。ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語などと呼ばれるかどうかにかかわらず、命令、データ、またはそれらの任意の組み合わせを意味するように広く解釈されるものとする。コンピュータ可読媒体には、コンピュータ記憶媒体と、ある場所から別の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にする媒体などの通信媒体の両方が含まれる。プロセッサは、バスを管理し、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されたソフトウェアモジュールの実行を含む一般的な処理を担当することができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合することができる。別の方法として、記憶媒体はプロセッサと一体であってもよい。一例として、コンピュータ可読媒体は、伝送線路、データによって変調された搬送波、および/または無線ノードとは別にその上に格納された命令を有するコンピュータ可読記憶媒体を含むことができ、これらの全ては、バスインターフェースを介してプロセッサによってアクセスされることができる。代替的に、またはそれに加えて、コンピュータ可読媒体、またはその任意の部分は、キャッシュおよび/または一般レジスタファイルのように、プロセッサに統合されてもよい。機械可読記憶媒体の例としては、一例として、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、PROM(Programmable Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory、登録商標)、レジスタ、磁気ディスク、光ディスク、ハードドライブ、または任意の他の適切な記憶媒体、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。機械可読媒体は、コンピュータプログラム製品に具現化されてもよい。
【0138】
ソフトウェアモジュールは、単一の命令、または多数の命令を含んでもよく、複数の異なるコードセグメント、異なるプログラム間、および複数の記憶媒体にわたって分散されてもよい。コンピュータ読み取り可能媒体は、多数のソフトウェアモジュールを含んでもよい。ソフトウェアモジュールは、プロセッサなどの装置によって実行されると、処理システムに様々な機能を実行させる命令を含む。ソフトウェアモジュールは、送信モジュールおよび受信モジュールを含んでもよい。各ソフトウェアモジュールは単一のストレージデバイス、または複数のストレージデバイスに分散される。一例として、トリガーイベントが発生すると、ソフトウェアモジュールがハードドライブからRAMにロードされることがある。ソフトウェア・モジュールの実行中、プロセッサは命令の一部をキャッシュにロードしてアクセス速度を上げることができる。その後、1つまたは複数のキャッシュ・ラインが、プロセッサによる実行のために一般レジスタ・ファイルにロードされることがある。ソフトウェア・モジュールの機能に言及する場合、そのような機能は、そのソフトウェア・モジュールからの命令を実行するときにプロセッサによって実装されることが理解されるであろう。
【0139】
以下の特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定することを意図したものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲が与えられるものとする。特許請求の範囲内において、単数形の要素への言及は、具体的にそう記載されていない限り、「1つだけ」を意味することを意図していない、むしろ、「1つ以上」を意味することを意図している。特に断りのない限り、“some”という用語は一つ以上を指す。クレーム要素は35USC,112条(f)に基づいて解釈されない。ただし、要素が“means for”という語句を用いて明示的に記載されている場合、または方法クレームの場合、要素が“step for”という語句を用いて記載されている場合を除く。当業者に公知であるか、または後に公知となる、本開示全体を通じて記載される様々な態様の要素に対する全ての構造的および機能的等価物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否かにかかわらず、一般に専用されることを意図するものではない。
【0140】
完全性を期すため、本発明の様々な態様を以下の番号付けされた節に記載する。
1.仮想咬合を決定する方法であって、前記方法は、
患者の第1顎部分および前記患者の第2顎部分の3次元表現を取得することであって、前記第2顎部分は前記第1顎部分に対向し、前記第1顎部分に対して移動可能であること;
前記3次元表現を用いて、グラフィックユーザインターフェース(GUI)において、前記第2顎部分に対する前記第1顎部分の初期位置を設定し、表現することであって、前記初期位置は、前記第1顎部分に対して固定された原点を有する座標系に対して予め決定された6自由度を有する前記第2顎部分上の制御点によって定義される、こと;
少なくとも1つの前記自由度に対する変更のユーザ入力を受け取ること;
その他の自由度のうちの少なくとも1つを自動的に調整して、前記第1顎部分および前記第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束しながら、前記原点に対する前記制御点の垂直距離を最小化し、それによって、前記第1顎部分および前記第2顎部分の間の咬合を決定すること;および、
前記決定された咬合における前記第1顎部分および第2顎部分を前記GUIにおいて表現する、こと;を含む。
2.第1の態様に記載の方法であって、前記変更のユーザ入力が、前記患者の左方向に対応する前記座標系におけるX方向の前記第2の顎の位置、前記患者の後方向に対応する前記座標系におけるY方向の前記第2の顎の位置、および前記第2の顎に対する前記制御点の位置のうちの少なくとも1つに対する変更を含む。
3.第2の態様に記載の方法であって、前記第2の顎に対する前記制御点の前記位置の変更のユーザ入力は、前記座標系における前記Y方向の前記制御点の位置の変更を含む。
4.第1の態様に記載の方法であって、第1顎部分は患者の上顎を含み、前記第2顎部分は患者の下顎を含む。
5.第1の態様に記載の方法であって、第1顎部分は患者の下顎を含み、前記第2顎部分は患者の上顎を含む。
6.第1の態様に記載の方法であって、前記GUIは、前記第1顎部分および前記第2顎部分のそれぞれの3次元モデルを含む。
7.第6の態様に記載の方法であって、前記GUIが、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像をさらに含む。
8.第7の態様に記載の方法であって、前記GUIは、前記ユーザによって制御される前記自由度に対応する対話型ユーザ制御の表示をさらに含む。
9.第8の態様に記載の方法であって、前記GUIは、自動的に調整される前記自由度に対応する値の表示をさらに含む。
10.第9の態様に記載の方法であって、前記自由度のうちの少なくとも1つに対する変更の追加的なユーザ入力と、その他の自由度のうちの少なくとも1つの対応する自動調整とに応答して、前記決定された咬合の前記GUIにおける前記第1顎部分および前記第2顎部分の表現を更新することをさらに含む。
11.決定された仮想咬合に基づいて手術ガイドを形成する方法であって、
患者の第1顎部分および前記患者の第2顎部分の3次元表現を取得することであって、前記第2顎部分は前記第1顎部分に対向し、前記第1顎部分に対して移動可能であること;
前記3次元表現において、前記第2顎部分に対する前記第1顎部分の初期位置を設定することであって、前記初期位置は、前記第1顎部分に対して固定された原点を有する座標系に対して、予め定められた6自由度を有する制御点を有する前記第2顎部分上の、制御点によって定義される、こと;
少なくとも1つの前記自由度に対する変更のユーザ入力を受け取ること;
前記第1顎部分および前記第2顎部分の対向する表面間の距離が正となるように拘束しながら、その他の自由度の少なくとも1つを自動的に調整して、前記制御点の前記原点に対する垂直距離を最小化し、それによって、前記第1顎部分および第2顎部分の間の咬合を決定すること;および、
顎矯正手術中に、前記患者の歯を前記決定された咬合に誘導するために、カスタマイズされた手術ガイドを形成すること:を含む。
12.第11の態様に記載の方法であって、前記変更のユーザ入力が、前記患者の左方向に対応する前記座標系におけるX方向の第2の顎の位置、前記患者の後方向に対応する前記座標系におけるY方向の前記第2の顎の位置、および前記第2の顎に対する前記制御点の位置のうちの少なくとも1つに対する変更を含む。
13.第12の態様に記載の方法であって、前記第2の顎に対する前記制御点の位置の変更のユーザ入力は、前記座標系における前記Y方向の前記制御点の位置の変更を含む。
14.第11の態様に記載の方法であって、前記第1顎部分は患者の上顎を含み、前記第2顎部分は前記患者の下顎を含む。
15.第11の態様に記載の方法であって、前記第1顎部分は前記患者の下顎を含み、前記第1顎部分は前記患者の上顎を含む。
16.第11の態様に記載の方法であって、グラフィックユーザインターフェース(GUI)において、前記決定された咬合における前記第1顎部分および第2顎部分を表現することを更に含む。
17.第16の態様に記載の方法であって、前記GUIは、前記第1顎部分および前記第2顎部分の少なくとも一方の咬合画像をさらに含む。
18.第17の態様に記載の方法であって、前記GUIは、前記ユーザによって制御される前記自由度に対応する対話型ユーザ制御の表示をさらに含む。
19.第18の態様に記載の方法であって、前記GUIは、自動的に調整される前記自由度に対応する値の表示をさらに含む。
20.第19の態様に記載の方法であって、前記自由度の少なくとも1つに対する変更の追加的なユーザ入力と、その他の自由度の少なくとも1つの対応する自動調整とに応答して、前記決定された咬合の前記GUIにおける前記第1顎部分および第2顎部分の前記表現を更新することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0141】
添付の図は、1つまたは複数の実施形態の特定の態様を示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定するものとはみなされない。
図1図1は、顎矯正手術計画のために所望の咬合を決定する従来のワークフローの例を示す;
図2図2は、顎矯正手術計画のために所望の咬合を決定する別の従来のワークフローの例を示す;
図3図3は、移動顎および固定顎の定義された座標系の例を示す;
図4図4は、咬合を最適化するために使用される様々な点を有する移動顎および固定顎の例を示す;
図5図5は、仮想咬合を決定して表示するためのグラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)の例を示す;
図6図6は、図5のGUIの詳細の一例を示す;
図7A図7Aは、仮想咬合を決定する半自動方法の一般化された図の例を示す;
図7B図7Bは、仮想咬合を決定するためのシステムの概略の概要を示すブロック図の一例を示す;
図7C図7Cは、仮想咬合を決定するためのシステムの概略の概要を示すブロック図の一例を示す;
図8図8は、仮想咬合を決定するための一連のステップの例を示す図である。
図9図9は、唾液上顎の例で咬合を最適化するために使用される様々な点を有する移動顎および固定顎の例を示す図である;
図10A図10Aは、所望の閉塞を得るための局所的バーリングの例を示す;
図10B図10Bは、所望の閉塞を得るための局所的バーリングの例を示す;
図10C図10Cは、所望の閉塞を得るための局所的バーリングの例を示す;
図10D図10Dは、所望の閉塞を得るための局所的バーリングの例を示す;
図11A図11Aは、上顎の咬合画像の拡大図である。
図11B図11Bは、上顎の咬合画像の拡大図である。
図12図12は、決定された咬合に基づく手術ガイドの例示的な3次元形状を示す。
【符号の説明】
【0142】
2 歯の印象型を作成
4 印象型から石膏模型を作成
6 咬合器の中で石膏模型を位置決めし、希望する咬合を決定・表現
8 希望する咬合において石膏模型を固定
10 計画用の固定石膏模型をスキャン
22A 石膏模型を別々にスキャン
22B 両顎の口腔内スキャン
24 希望する咬合を仮想的に決定し、顎の互いの相対的な位置および向きを指定
26 計画用に、希望する咬合における顎を描写
100 移動顎
1001、1002、1003 可動分割顎部分
102,1021,1022,1023 局所(移動)座標系
104 固定(または静止)顎
106,1061,1062,1063 世界(固定)座標系
108 咬合(WCSにおけるLCSの位置(6自由度)として数学的に定義される) 110 制御点
112 移動顎の衝突頂点
114 固定顎の衝突三角形(2D)
116 正に拘束された、112と114との間の距離di
118 垂直(Z、オーバーバイト)移動変数
120 冠状面(Y、ロール)回転変数
122 矢状面(X、ピッチ)回転変数
124 拘束条件116に従って最小化されたZ座標制御点110
126 ユーザ制御
128 正中線(X)平行移動変数
130 オーバージェット(Y)平行移動変数
132 軸平面(Z、ヨー)回転変数
134 顎の3次元モデル
136 固定顎の咬合画像
138 移動顎の咬合画像
140 圧力距離(制御点Y)変数
142,143 接触点
144 近似接触点
146 凸包
148 干渉
150 修正3次元モデル
1200 手術ガイド
1202 ガイドボディ
1204 上面
1206 底面
1208 エッジ
1210 くぼみ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】