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特表2025-501983薬物送達ビヒクル、薬物送達ビヒクルを製造する方法、及び薬物送達ビヒクルを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】薬物送達ビヒクル、薬物送達ビヒクルを製造する方法、及び薬物送達ビヒクルを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20250117BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 9/56 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/26
A61K9/56
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539897
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 US2023060352
(87)【国際公開番号】W WO2023137263
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】63/266,752
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516035068
【氏名又は名称】ヴェリリー ライフ サイエンシズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】リー,カイ
(72)【発明者】
【氏名】アフマッド,ハビーブッラー
(72)【発明者】
【氏名】ル,ボー
(72)【発明者】
【氏名】パオリ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】カム,キンバリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA58
4C076AA60
4C076AA95
4C076BB05
4C076DD28J
4C076EE03
4C076EE06
4C076EE11J
4C076EE16
4C076EE30A
4C076EE32
4C076FF25
4C076FF36
4C076FF41
4C076FF68
4C076GG11
4C076GG31
4C084AA03
4C084MA05
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA03
4C084NA10
4C084NA13
(57)【要約】
本開示は、カプセルを製造する方法に関する。本方法は、金型を用意することと、金型の上にパリレンを堆積させてパリレン層を形成することと、パリレン層に切れ目を入れることと、パリレン層をポリマーでコーティングしてカプセルを製造することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルを製造する方法であって、
金型を用意することと、
前記金型の上にパリレンを堆積させてパリレン層を形成することと、
前記パリレン層に切れ目を入れることと、
前記パリレン層をポリマーでコーティングしてカプセルを製造することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記カプセルの離型を容易にするために前記金型の表面を研磨することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パリレン層を堆積させる前に前記金型の上に離型剤を施すことをさらに含み、前記離型剤がMicro90である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パリレン層に切れ目を入れることが、前記カプセルの両側にパターンを形成するように前記パリレン層を切り込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーでコーティングする前に、前記パリレン層の外面を酸素プラズマで処理することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パリレン層の厚さが0.5μm~30μmの範囲であり、前記ポリマー層の厚さが100μm~250μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パリレン層を堆積させることが、前記金型の上へのパリレンの化学気相成長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パリレン層を堆積させることが、
第1堆積ステップで、前記金型の上にパリレンを堆積させてプライマー層を生成することと、
前記プライマー層を離型剤で処理することと、
第2堆積プロセスで、前記プライマー層の上にパリレンを堆積させて前記パリレン層を生成することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーがポリビニルアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー層の上に腸溶性コーティングを施すことをさらに含み、前記腸溶性コーティングが、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含み、タルク対アニオン性メタクリル酸共重合体の重量比が0.5:1~10:1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カプセル内に針送達システムを封入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
パリレンを含む第1層と、
前記第1層に隣接する第2層であって、ポリマーを含む第2層と、
前記第2層に隣接する第3層であって、腸溶性コーティングを含む第3層と、
を備えるカプセル。
【請求項13】
前記第1層が、前記カプセルの両側に二つ折りパターンを形成するように切れ目が入れられている、請求項12に記載のカプセル。
【請求項14】
前記パリレン層の厚さが0.5μm~30μmの範囲である、請求項12に記載のカプセル。
【請求項15】
前記第2層が複数の層を含み、前記複数の層のうちの少なくとも1つがポリビニルアルコールを含み、前記第2層が100μm~250μmの厚さを有する、請求項12に記載のカプセル。
【請求項16】
前記ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンのうちの1つ又は複数を含む、請求項12に記載のカプセル。
【請求項17】
前記腸溶性コーティングが、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含み、タルクが、前記腸溶性コーティングの総重量に基づいて、前記腸溶性コーティングの40重量%~80重量%を構成し、前記アニオン性メタクリル酸共重合体が、前記腸溶性コーティングの総重量に基づいて、前記腸溶性コーティングの20重量%~60重量%を構成する、請求項12に記載のカプセル。
【請求項18】
前記カプセルが、プルランもヒドロキシプロピルメチルセルロースも含まない、請求項12に記載のカプセル。
【請求項19】
アニオン性メタクリル酸共重合体及び可塑剤を含む第4層をさらに含む、請求項12に記載のカプセル。
【請求項20】
前記第2層の前記ポリマーが、ポリビニルアルコールを含み、
前記腸溶性コーティングが、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含み、
第4層が、アニオン性メタクリル酸共重合体及び可塑剤を含む、
請求項12に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本開示は、概して、薬物送達ビヒクル、薬物送達ビヒクルを製造する方法、及び対象者の体内に薬物又は他のペイロードを送達するために薬物送達ビヒクルを使用する方法に関する。より具体的には、本開示は、対象者に(例えば、対象者の消化管の内壁に)ペイロードを送達するための、摂取可能な薬物送達ビヒクル(例えば、カプセル)に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 薬物送達ビヒクル(例えば、カプセル)は、ペイロード(例えば、医薬品有効成分(API)又は機械的アクチュエータ)を身体の所望の領域に送達するように設計されている。送達中、有効性及び患者の安全性を確保するために、ペイロードは安定した状態を維持する必要がある。ペイロードの劣化は、熱劣化、酸化、紫外線、微生物又は加水分解によって起こる可能性がある。例えば、医薬固形製剤の物理的及び化学的特性は水分の影響を受ける場合がある。
【0003】
[0003] 水分は医薬品有効成分のガラス転移温度に影響を与えるため、安定性に影響を及ぼす可能性がある。多くのAPI及び賦形剤は、本来吸湿性であり、水分から保護する必要がある。具体的には、水分は、最終製剤の広範囲の化学的、物理的及び微生物特性に著しい影響を及ぼす可能性があり、それによりAPIが劣化し、それに伴って有効性が低下することになる。したがって、こうした成分を含む薬物送達ビヒクルは、水分が一部の薬剤の性能に影響を及ぼすため、劣化を防止するように設計する必要がある。
【0004】
[0004] 従来のヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルでは含水率が低いにもかかわらず、依然として、吸湿性が高く、水分の影響を受けやすいAPIがある。こうした吸湿性で水分の影響を受けやすい化合物は、調剤製造者にとって困難である可能性があり、APIを保護するために異なる手段、すなわち、ペレット又はカプセルインカプセル技術等のガレノス製剤、充填後の最終的な追加乾燥プロセス、又は防湿包装材料の使用を適用する必要があるため、余分な投資を伴う可能性がある。可能な限り含水量を減少させるために充填されたカプセルを乾燥させる可能性があることにより、充填物全体が過酷な乾燥条件にさらされることになる。さらに、充填後のプロセスに追加のステップを追加することにより、(専用の設備、部屋、人的資源及び条件による)能力及びタイミングに関して余分な資源が必要となり、プロセスが延長され、したがって、全体的な歩留まりが低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] したがって、水分及び蒸気の侵入を防止する、改良された薬物送達ビヒクルが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
[0006] 本開示は、カプセル、カプセル用の腸溶性コーティング、カプセルを製造する方法、及びカプセルをコーティングする方法に関する。本明細書に記載するカプセルは、ペイロードの送達中にカプセル内への水分及び蒸気の侵入を防止する。例えば、カプセルは、消化管内で送達されるまで水分がカプセルの内部容積に入るのを防止する水分バリア層を含むことができる。本明細書に記載するカプセルは、溶解するときにほとんど又はまったく残留物を残さない腸溶性コーティングを含む。カプセルの腸溶性コーティングの破砕性により、有利に、機械的アクチュエータがカプセルの内部容積から効果的に展開することができる。
【0007】
[0007] 本開示の実施形態は、カプセルを製造する方法を含む。本方法は、金型を用意することと、金型の上にパリレンを堆積させてパリレン層を形成することと、パリレン層に切れ目を入れることと、パリレン層をポリマーでコーティングしてカプセルを製造することとを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、カプセルの離型を容易にするために金型の表面を研磨することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、パリレン層を堆積させる前に金型の上に離型剤を施すことを含む。いくつかの実施形態では、離型剤はMicro90である。いくつかの実施形態では、パリレン層に切れ目を入れることは、カプセルの両側にパターンを形成するようにパリレン層を切り込むことを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ポリマーでコーティングする前に、パリレン層の外面を酸素プラズマで処理することを含む。いくつかの実施形態では、パリレン層の厚さは0.5μm~30μmの範囲である。いくつかの実施形態では、パリレン層の厚さは5μm~10μmの範囲である。いくつかの実施形態では、パリレン層を堆積させることは、金型の上へのパリレンの化学気相成長を含む。いくつかの実施形態では、パリレン層を堆積させることは、第1堆積ステップで、金型の上にパリレンを堆積させてプライマー層を生成することと、プライマー層を離型剤で処理することと、第2堆積プロセスで、プライマー層の上にパリレンを堆積させてパリレン層を生成することとを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリビニルアルコールである。いくつかの実施形態では、パリレン層をポリマーでコーティングすることは、複数のコーティングプロセスを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー層の厚さは、100μm~250μmの範囲である。いくつかの実施形態では、本方法は、ポリマー層の上に腸溶性コーティングを施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、カプセル内に針送達システムを封入することをさらに含む。
【0008】
[0008] 本開示の実施形態は、カプセルを含む。カプセルは、パリレンを含む第1層を含む。カプセルは、第1層に隣接する第2層を含む。第2層は、ポリマーを含む。コーティングは、第2層に隣接する第3層を含む。第3層は腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態では、第1層は切れ目が入れられている。いくつかの実施形態では、第1層は、カプセルの両側に二つ折りパターンを形成するように切れ目が入れられている。いくつかの実施形態では、パリレン層の厚さは0.5μm~30μmの範囲である。いくつかの実施形態では、第2層は複数の層を含み、複数の層のうちの少なくとも1つはポリビニルアルコールを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、第2層は100μm~250μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含む。いくつかの実施形態では、タルクは、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、腸溶性コーティングの40重量%~80重量%を含む。いくつかの実施形態では、アニオン性メタクリル酸共重合体は、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、腸溶性コーティングの20重量%~60重量%を含む。いくつかの実施形態では、第1層は酸素プラズマで表面処理されている。いくつかの実施形態では、カプセルは、プルランもヒドロキシプロピルメチルセルロースも含まない。いくつかの実施形態では、カプセルは、アニオン性メタクリル酸共重合体及び可塑剤を含む第4層を含む。いくつかの実施形態では、第2層のポリマーはポリビニルアルコールを含み、腸溶性コーティングは、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含み、第4層が、アニオン性メタクリル酸共重合体と可塑剤を含む。
【0009】
[0009] 本開示の実施形態は、腸溶性コーティング組成物を含む。腸溶性コーティング組成物は、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティング組成物は、組成物の総重量に基づいて、20重量%~60重量%のアニオン性メタクリル酸共重合体を含む。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティング組成物は、組成物の総重量に基づいて、40重量%~80重量%のタルクを含む。いくつかの実施形態では、タルク対アニオン性メタクリル酸共重合体の重量比は、0.5:1~10:1の範囲である。いくつかの実施形態では、タルク対アニオン性メタクリル酸共重合体の重量比は、1:1~3:1の範囲である。いくつかの実施形態では、可塑剤は、アニオン性メタクリル酸共重合体の総重量に基づいて、5重量%~25重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、可塑剤は疎水性である。いくつかの実施形態では、可塑剤は、セバシン酸ジブチルを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する腸溶性コーティング組成物を含むカプセル。
【0010】
[0010] 本開示の実施形態は、コーティング組成物を製造する方法を含む。本方法は、可塑剤を含む溶媒を用意することと、溶媒にアニオン性メタクリル酸共重合体を添加することと、溶媒にタルクを添加することと、アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクを溶媒中で混合してコーティング組成物を製造することとを含む。いくつかの実施形態では、可塑剤は疎水性である。いくつかの実施形態では、可塑剤は、セバシン酸ジブチルを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトン、イソプロピルアルコール及び水のうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、可塑剤は、アニオン性メタクリル酸共重合体の重量に基づいて、5重量%~25重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、タルク対アニオン性メタクリル酸共重合体の重量比は、0.5:1~10:1の範囲である。いくつかの実施形態では、タルク対アニオン性メタクリル酸共重合体の重量比は、1:1~3:1の範囲である。いくつかの実施形態では、溶媒を用意することは、腸溶性組成物を添加する前に、溶媒中で可塑剤を混合することを含む。
【0011】
[0011] 本開示の実施形態は、カプセルをコーティングする方法を含む。本方法は、溶媒、可塑剤、アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクを含む腸溶性溶液を用意することと、カプセルを腸溶性溶液でコーティングすることと、カプセルの上で腸溶性溶液を乾燥させて腸溶性コーティングをもたらすこととを含む。いくつかの実施形態では、カプセルをコーティングすることは、カプセルを腸溶性溶液でディップコーティングすることを含む。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、20重量%~60重量%のアニオン性メタクリル酸共重合体を含む。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、40重量%~80重量%のタルクを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アニオン性メタクリル酸共重合体及び可塑剤を含む第2腸溶性溶液でカプセルをオーバーコーティングすることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、カプセルの上に1種又は複数種の追加のポリマー層をコーティングすることを含む。いくつかの実施形態では、カプセルの上で腸溶性溶液を乾燥させることは、ロティサリー内でカプセルを周囲条件で回転させることを含む第1乾燥プロセスと、強制空気を用いてロティサリー内でカプセルを周囲条件で回転させることを含む第2乾燥プロセスと、オーブン内で腸溶性溶液を乾燥させることを含む第3乾燥プロセスとを含む。
【0012】
[0012] さらなる態様、目的、及び利点は、詳細な説明を考慮することで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な説明
図1】[0013]本開示のいくつかの実施形態による、カプセルを製造する方法のフロー図を提供する。
図2A】[0014]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルを示す。
図2B】[0015]本開示のいくつかの実施形態による針送達システムを含むカプセルを示す。
図3A】[0016]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルの切れ目の入ったパリレン層の一実施形態を示す。
図3B】[0016]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルの切れ目の入ったパリレン層の一実施形態を示す。
図4】[0017]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルのパリレン層の上の切れ目パターンを示す。
図5】[0018]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルのポリマー厚さのグラフを提供する。
図6A】[0019]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルからのマイクロニードルシステムの展開を示す。
図6B】[0019]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルからのマイクロニードルシステムの展開を示す。
図6C】[0019]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルからのマイクロニードルシステムの展開を示す。
図7】[0020]本開示のいくつかの実施形態による、カプセルを腸溶性溶液でコーティングする方法のフロー図を提供する。
図8A】[0021]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルを製造する製造プロセスを示す。
図8B】[0021]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルを製造する製造プロセスを示す。
図8C】[0021]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルを製造する製造プロセスを示す。
図8D】[0021]本開示のいくつかの実施形態によるカプセルを製造する製造プロセスを示す。
図9】[0022]さまざまなHPMCカプセルの溶解速度と胃保護の定性的グラフを提供する。
図10A】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図10B】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図10C】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図10D】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図10E】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図10F】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図10G】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図10H】[0023]本開示のいくつかの実施形態による溶解後のカプセルの残留物を示す画像を提供する。
図11A】[0024]本開示のいくつかの実施形態による、人工胃液中のカプセルへの水分侵入を示す視認性試験を提供する。
図11B】[0024]本開示のいくつかの実施形態による、人工胃液中のカプセルへの水分侵入を示す視認性試験を提供する。
図11C】[0024]本開示のいくつかの実施形態による、人工胃液中のカプセルへの水分侵入を示す視認性試験を提供する。
図11D】[0024]本開示のいくつかの実施形態による、人工胃液中のカプセルへの水分侵入を示す視認性試験を提供する。
図11E】[0024]本開示のいくつかの実施形態による、人工胃液中のカプセルへの水分侵入を示す視認性試験を提供する。
図11F】[0024]本開示のいくつかの実施形態による、人工胃液中のカプセルへの水分侵入を示す視認性試験を提供する。
図12A】[0025]本開示のいくつかの実施形態による、ポリマーを溶融及びリフローさせることによってカプセルを製造するプロセスを示す。
図12B】[0025]本開示のいくつかの実施形態による、ポリマーの溶融及びリフローさせることによってカプセルを製造するプロセスを示す。
図12C】[0025]本開示のいくつかの実施形態による、ポリマーの溶融及びリフローさせることによってカプセルを製造するプロセスを示す。
図12D】[0025]本開示のいくつかの実施形態による、ポリマーの溶融及びリフローさせることによってカプセルを製造するプロセスを示す。
図12E】[0025]本開示のいくつかの実施形態による、ポリマーの溶融及びリフローさせることによってカプセルを製造するプロセスを示す。
図12F】[0025]本開示のいくつかの実施形態による、ポリマーの溶融及びリフローさせることによってカプセルを製造するプロセスを示す。
図13】[0026]本開示のいくつかの実施形態による、Kollicoat(登録商標)IR及びポリビニルアルコール(PVA)から製造されたカプセルのコーティング厚さのグラフを提供する。
図14A】[0027]本開示のいくつかの実施形態による、パリレン層上に堆積したKollicoat(登録商標)IRから製造されたカプセルの画像を示す。
図14B】[0027]本開示のいくつかの実施形態による、パリレン層なしのKollicoat(登録商標)IRから製造されたカプセルの画像を示す。
図15A】[0028]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験前のKollicoat(登録商標)IR層及びパリレン層を含むカプセルの画像を示す。
図15B】[0028]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験後のKollicoat(登録商標)IR層及びパリレン層を含むカプセルの画像を示す。
図15C】[0028]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験前のKollicoat(登録商標)IR層及びパリレン層を含むカプセルの画像を示す。
図15D】[0028]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験後のKollicoat(登録商標)IR層及びパリレン層を含むカプセルの画像を示す。
図16A】[0029]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験前のプルラン層を含むカプセルの画像を示す。
図16B】[0029]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験後のプルラン層を含むカプセルの画像を示す。
図16C】[0029]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験前のプルラン層を含むカプセルの画像を示す。
図16D】[0029]本開示のいくつかの実施形態による、インビボ溶解試験後のプルラン層を含むカプセルの画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的な実施形態の詳細な説明
[0030] 本明細書では、錠剤又はカプセルとしての薬物送達ビヒクルに関連して、例について説明する。当業者であれば、以下の説明は、単に例示であり、決して限定的であるように意図されていないことを理解するであろう。ここで、添付の図面に例示するような例の実施態様を詳細に参照する。図面及び以下の説明を通して、同じ参照標識は、同じか又は同様の項目を指すために使用する。
【0015】
[0031] 明確にするために、本明細書に記載する例の慣例的な特徴のすべてを示し、説明しているわけではない。当然ながら、任意のこうした実際の実施態様の開発では、アプリケーション及びビジネスに関連する制約のコンプライアンス等、開発者の具体的な目標を達成するために、多数の実施態様に固有の決定を行わなければならず、これらの具体的な目標は、実施態様ごとに、又は開発者ごとに異なることが理解されよう。
【0016】
I.導入
[0032] 本開示は、カプセル、カプセルのためのコーティング、カプセルを製造する方法、及びカプセルをコーティングする方法に関連する多数の実施形態について説明する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象者の消化管の内壁のいずれかの部分にペイロードを送達するための摂取可能なカプセルに関する。本明細書に記載するカプセルは、ペイロードの送達中にカプセル内への水分及び蒸気の侵入を防止する。例えば、カプセルは、消化管内でペイロードが送達されるまで、水分及び蒸気がカプセルの内部容積に入るのを防止する水分バリア層(例えば、パリレン層)を含むことができる。本明細書に記載するカプセルは、溶解するときにほとんど又はまったく残留物を残さない腸溶性コーティングも含むことができる。カプセルの腸溶性コーティングの破砕性により、有利に、機械的アクチュエータがカプセルの内部容積から効果的に展開することができる。
【0017】
[0033] いくつかの実施形態では、本明細書に記載するカプセルは、マイクロニードルを備える針送達システムを封入している。マイクロニードルは、マイクロメートル寸法の非常に小さい突出物であり、薬物、ワクチン及び他の生体分子を皮膚に送達する能力を有する。例えば、マイクロニードルは、医薬品有効成分(API)を含む溶解性マイクロニードルであってもよい。この経皮送達プラットフォームは、針及び注射器による従来の皮下注射及び筋肉内注射と比較して多くの利点を有する。第1に、痛み、交差感染及び針刺し損傷がないか、又は最小限である。第2に、マイクロニードルは、皮膚の所定の層を標的として設計することができる。第3に、自己投与の可能性がある。最後であるが重要なことには、薬物を時期尚早に代謝させる可能性がある、著しい肝臓の初回通過効果がある場合に使用することができる。マイクロニードルアレイは通常、シリコン、金属及びポリマーから作製されている。なかでも、ポリマーマイクロニードルアレイは、シリコン又は金属アレイよりも大量生産のコストがかからず、適用中の安全性が高いことが期待されているため、ますます魅力的なものとなっている。溶解性ポリマーを使用する場合、薬物及び生体分子をマイクロニードル自体の内部に組み込むことができる。適用中、ポリマー構造は皮膚内で急速に溶解し、それにより、薬物及び生体分子が放出されるため、鋭利廃棄物がない。
【0018】
[0034] カプセルは、対象者のある領域にペイロードを送達するように設計されている。例えば、消化管に送達される間、有効性と患者の安全性とを確保するために、ペイロードは安定性を維持する必要がある。ペイロードは、ペイロードの物理的及び化学的特性に悪影響を及ぼす可能性がある水分の影響を受ける可能性がある。例えば、APIを含む溶解性マイクロニードルは、消化管内で展開するために胃通過中に水分から保護されなければならない。
【0019】
[0035] ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びプルラン等の材料から作製された市販のカプセルは、十分な防湿効果を提供しない。これらの市販のカプセルは、ある程度の防湿効果を提供する可能性はあるが、蒸気の侵入を防止するには有効ではない。さらに、市販のカプセルは、徐々に膨潤及び崩壊する可能性があり、それにより、カプセルからのペイロード(例えば、機械的アクチュエータ)の展開に支障をきたす場合がある。したがって、送達ビヒクル(例えば、カプセル)の機械的特性を改善することは、薬効及び設計の柔軟性に関して有益であり得る。さらに、市販の腸溶性コーティングは、幾分かの防湿効果を提供するが、非常に水分の影響を受けやすいペイロードには不十分である。また、市販の腸溶性コーティングは、徐々に膨潤及び崩壊するため、カプセル内のペイロードの展開に支障をきたす。実際、これらのコーティングは残留物を残し、これがペイロードの送達に影響を及ぼす可能性がある。例えば、針送達システムを含むカプセルは、針送達システムを展開するためにカプセルを破裂させ、カプセルを貫通する必要がある場合があるが、これは腸溶性コーティングの残留物の影響を受ける可能性がある。
【0020】
[0036] 本開示のさまざまな例は、水分の侵入を防止し、残留物をほとんど又はまったく残さずに迅速に溶解するカプセルに関する。本明細書に記載するカプセルは、ペイロードの送達中にカプセル内への水分及び蒸気の侵入を防止する。例えば、カプセルは、ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)でコーティングされたパリレン層を含むことができ、これは、消化管内で送達されるまで、水分がカプセルの内部容積に侵入するのを防止する。本明細書に記載するカプセルは、溶解するときにほとんど又はまったく残留物を残さない腸溶性コーティングも含むことができる。カプセルの腸溶性コーティングの破砕性により、有利に、ペイロード(例えば、機械的アクチュエータ)がカプセルの内部容積から有効に展開することができる。いくつかの実施形態では、カプセルは、針を消化管又は他の身体管腔の内壁と係合させるために、例えば、対象者の体内のそうした係合を通して治療剤又は他のペイロードの送達を容易にするために、外向きに膨張する機械的作動を利用する、小型の針送達システムを含む。
【0021】
II.カプセルを製造する方法
[0037] 図1は、いくつかの実施形態によるカプセルを製造する方法のフロー図を提供する。方法100は、金型を用意すること(110)を含むことができる。金型の形状により、カプセルのサイズ及び形状が決まる。金型のサイズ及び形状は、カプセルに対する所望の形状及び容積を提供するように選択することができる。例えば、金型は、半球状の端部を有する円筒体を含むことができる。この実施形態では、半球状の端部を有する2つの円筒体が製造され、カプセルを形成するように接着される。いくつかの実施形態では、金型は、カプセルの寸法を画定する指状の金型である。いくつかの実施形態では、金型は、金属金型(例えば、ステンレス鋼金型)又は3D印刷金型を含む。金型は、離型剤でコーティングすることができる。離型剤は、金型へのカプセルの付着を防止する。
【0022】
[0038] いくつかの実施形態では、金型は、3D印刷金型とすることができる。3D印刷金型は、金属金型(例えば、ステンレス鋼)よりも高い表面粗さを有し、これにより、金型からのカプセルの離型の問題がもたらされる可能性がある。3D印刷金型の表面特性に起因して、均一なコーティングのために金型表面を研磨する必要がある場合がある。いくつかの実施形態では、本方法は、3D印刷金型を平滑化して粗さを低減させることを含むことができる。例えば、金型からのカプセルの離型を改善するために、金型表面を研磨及び洗浄することができる。いくつかの実施形態では、金型を研磨し、離型剤でコーティングすることができる。
【0023】
[0039] 方法100は、金型上にパリレン層を堆積させること(120)を含む。パリレン層は金型の上にコーティングするか又は堆積させることができる。例えば、パリレン層は、化学気相成長を用いて金型の上に堆積させることができる。パリレン層は、カプセルへの水分侵入を防止する、カプセルの内層を形成することができる。いくつかの実施形態では、パリレン層を堆積させる前に、金型を離型剤で処理する。離型剤は、金型上でカプセルが製造された後の脱型を促進する。いくつかの実施形態では、離型剤はMicro90とすることができる。パリレン層の厚さを調整するために、金型の上にパリレン層を1回又は複数回堆積させることができる。
【0024】
[0040] いくつかの実施形態では、金型の上に複数のパリレン層を堆積させることができる。例えば、堆積ステップは、金型の上に第1パリレン層を堆積させることを含む第1ステップと、第1パリレン層の上に第2パリレン層を堆積させることを含む第2ステップとを含むことができる。第1パリレン層(例えば、プライマー層)の外面は、第2パリレン層を堆積させる前に離型剤でコーティングすることができる。この実施形態では、第1パリレン層は、金型からの離型層としての役割を果たす。パリレンの2段階堆積は、粗い表面を有する可能性がある3D印刷金型に特に有益である。3D印刷金型の粗い表面は、第1パリレン層の付着を促進する。いくつかの実施形態では、第1パリレンは離型層としての役割を果たし、第2パリレン層は水分バリア層としての役割を果たす。いくつかの実施形態では、金属金型は、2段階堆積ステップを利用しない場合がある。
【0025】
[0041] 方法100は、任意選択的にパリレン層に切れ目を入れること(130)を含む。金型の上にパリレン層を堆積させた後、パリレン層を所望のパターンで予め切れ目を入れることができる。切れ目の入ったパリレン層により、ペイロード(例えば、針送達システム)を放出するために、パリレン層をより効率的に破断することができる。いくつかの実施形態では、パリレン層は、カミソリで切れ目を入れることができ、又は切れ目パターンにレーザー切断することができる。例えば、パリレン層は、カプセルの両側に切れ目を入れることができる。機械的アクチュエータが消化管に送達されたときにパリレン層を破断するためには、パリレン層の切れ目線が有益である。パリレン層は機械的に強度が高いため、切れ目線がなければ、作動力によってパリレン層が破断しない可能性がある。
【0026】
[0042] 方法100は、パリレン層の外面を処理すること(140)を含む。例えば、パリレン層を、エッチング溶液で処理することができる。いくつかの実施形態では、パリレン層の表面は、プラズマ活性化のために酸素で処理される。パリレン層の表面を酸素プラズマで処理することにより、プラスチック材料(例えば、パリレン)の極性が反転し、表面張力を増大させ、処理された材料の表面に非常に小さい接触角を形成することによって、ポリマーが新たな表面機能性を受容することができる。これにより、パリレン層の上の任意のコーティングとの付着が促進され、良好な防湿特性が得られる。酸素プラズマ活性化は、ポリマーコーティング(例えば、ポリビニルアルコール)との良好な付着を促進するために、パリレン層の表面で行うことができる。パリレン層とポリマー層との間の付着は、カプセルの水分バリア特性に影響を与える。
【0027】
[0043] 方法100は、パリレン層をポリマーでコーティングすること(150)を含む。例えば、パリレン表面をプラズマでエッチングすることができ、パリレン層のエッチングされた表面にポリマーをコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、パリレン層は、ポリマー溶液でディップコーティングされる。例えば、パリレン層を、ポリビニルアルコールを含む溶液でディップコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、パリレン層の上でポリマーコーティングを乾燥させるように、金型が焼成される。パリレン層をポリマー溶液で複数回コーティングして、ポリマー層のコーティング厚さを調整することができる。いくつかの実施形態では、金型は、乾燥を促進するために高温でディップコーティングされる。ポリマー溶液へのディップの速度、粘性及び回数によって、ポリマー層の厚さを調整することができる。
【0028】
[0044] いくつかの実施形態では、本方法は、第1ポリマー層の所望の厚さのために、第1ポリマー溶液(例えば、ポリビニルアルコール溶液)でパリレン層を1回又は複数回コーティングすることを含むことができる。パリレン層の上に第1ポリマー層を形成するために、第1ポリマー溶液の各コーティングの後に、金型を焼成することができる。本方法は、第2ポリマー層の所望の厚さのために、第2ポリマー溶液(例えば、ポリビニルピロリドン溶液)で第1ポリマー層を1回又は複数回コーティングすることを含むことができる。第1ポリマー層の上に第2ポリマー層を形成するために、第2ポリマー溶液の各コーティング後に、金型を焼成することができる。いくつかの実施形態では、カプセルは、パリレン層と、パリレン層の上に配置されたポリビニルアルコール層とを含むことができる。いくつかの実施形態では、カプセルは、パリレン層と、パリレン層の上に配置されたポリビニルアルコール層と、ポリビニルアルコール層の上に配置されたポリビニルピロリドン層とを含むことができる。
【0029】
[0045] いくつかの実施形態では、ポリマー溶液は、生分解性ポリマー及び生体吸収性ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマー溶液は、アルギニン、キトサン、デキストリン、多糖類、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)及びヒアルロン酸等の天然ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー溶液は、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、樹枝状ポリマー、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドン等の合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー溶液は、Kollicoat IR(登録商標)等のポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとの共重合体を含む。
【0030】
[0046] カプセルが、複数のコーティング及び焼成プロセスから過乾燥し脆化するのを防止するために、本方法は、再水和ステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマー層を形成するための複数のコーティング及び焼成ステップの後に、金型を再水和させることができる。再水和ステップは、カプセルが乾燥し脆化するのを防止する。再水和ステップは、高湿度環境下でカプセルを水和させることを含む場合がある。いくつかの実施形態では、カプセルは、50%~95%の範囲の相対湿度で、10℃~40℃の温度で再水和させる。いくつかの実施形態では、カプセルは、約80%の相対湿度で、約25℃の温度で再水和させる。高湿度でのカプセルの再水和により、脱型の改善のためにカプセルが軟化することにもなる。カプセルは、再水和ステップから過度に湿潤した場合、剛性を失い、張りがなくなる。したがって、本方法は、カプセルを焼成してその構造的完全性を回復することを含むことができる。例えば、焼成ステップにより、カプセルはその機械的構造を回復することができる。最終的な焼成ステップの後、カプセルを金型から取り出すことができる。例えば、ポリマー層がパリレン層の上にコーティングされた後、カプセルの成形部分が金型から取り出される。いくつかの実施形態では、カプセルは、脱型する前に追加のポリマーでコーティングされる。例えば、カプセルは、1種又は複数種の腸溶性コーティングでコーティングすることができる。
【0031】
[0047] いくつかの実施形態では、カプセルを製造する方法が提供される。この方法は、金型を用意することを含む。本方法は、金型の上にパリレンを堆積させてパリレン層を生成することを含む。本方法は、パリレン層に切れ目を入れることを含む。本方法は、パリレン層の表面を酸素プラズマで活性化することを含む。本方法は、金型をポリマー溶液でディップコーティングし、ディップコーティングされたカプセルを焼成してポリマー層を生成することを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー溶液はポリビニルアルコールを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、パリレン層を複数のポリマーコーティングでコーティングすることを含む。本方法は、1種又は複数種の腸溶性コーティングでカプセルをコーティングすることを含み得る。
【0032】
[0048] 図1に示す具体的なステップは、いくつかの実施形態によるカプセルを製造する特定の方法を提供することが理解されるべきである。代替実施形態によって、ステップの他のシーケンスを実施することもできる。例えば、本発明の代替実施形態は、上記で概説したステップを異なる順序で実施することができる。さらに、図1に示す個々のステップは、その個々のステップに適切なようにさまざまな順序で実施することができる複数のサブステップを含むことができる。さらに、特定の用途に応じて、さらなるステップを追加又は削除してもよい。当業者であれば、多くの変形形態、変更形態、及び代替形態を認識するであろう。
【0033】
[0049] いくつかの実施形態では、カプセルを製造する方法は、ポリマーを溶融及びリフローさせてカプセルの1つ又は複数の層を生成することを含むことができる。溶融及びリフロープロセスは、ディップコーティングと組み合わせて使用することができ、又は、ディップコーティングの代わりに使用することができる。例えば、ポリマー溶液へのディップコーティングによって、カプセルの第1層を生成することができ、(例えば、ディップコーティングされた層の上に)ポリマーを溶融及びリフローさせることによって、カプセルの第2層を生成することができる。本方法は、1種又は複数種のポリマーを溶融及びリフローさせてカプセルの1つ又は複数の層を生成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーを溶融及びリフローさせてカプセルの層を生成することは、ディップコート用途のために水又は溶媒に溶解することが困難な熱可塑性カプセル材料を生成するのに特に好適である。さらに、溶融及びリフローを含む方法は、時間のかかる乾燥プロセスを回避することができるため、ディップコートカプセルと比較して、カプセルの高スループット生産のための、より高速でよりスケーラブルなプロセスである。いくつかの実施形態では、カプセルを製造するための材料は、任意の熱可塑性ポリマー、熱可塑性ポリマーのブレンド、又は熱可塑性ポリマーのカプセルに好適な熱硬化性材料とのブレンドを含むことができる。
【0034】
[0050] いくつかの実施形態では、カプセルを製造する方法は、マンドレル又は金型にポリマーを巻き付けてアセンブリを生成することと、アセンブリの一部を熱収縮チューブに挿入することと、アセンブリの端部を固定具で塞いでポリマー層の外側の一部を画定することと、アセンブリに熱を加えて、ポリマーがカプセル及び固定具の形状に適合するように溶融及びリフローするようにすることと、成形されたカプセルの各端部からマンドレル及び固定具を引き抜くことと、熱収縮ラップを除去することと、任意選択的にカプセルの長さを切り落とすこととを含む。いくつかの実施形態では、マンドレル又は金型にポリマーを巻き付ける前に、マンドレル又は金型をパリレン層でコーティングする。
【0035】
[0051] 図12A図12Fは、本開示のいくつかの実施形態による、ポリマーを溶融及びリフローさせて1つ又は複数の層を生成することを含む、カプセルを製造する例示的なプロセスを示す。図12Aは、マンドレル1220の上に配置されたポリマーフィルム1210を示す。マンドレル1220は、パリレン層1205を含むことができる。いくつかの実施形態では、マンドレル1220は、例えば、化学気相成長によって、パリレンでコーティングされてパリレン層1205を形成する。パリレン層1205及びマンドレル1220の周囲にポリマーフィルム1210を巻き付けて、アセンブリを生成することができる。マンドレル1220の寸法は、結果として得られるカプセルの内部容積に対応する。マンドレル1220の形状により、カプセルのサイズ及び形状が決まる。マンドレル1220のサイズ及び形状は、カプセルに所望の形状及び容積を提供するように選択することができる。例えば、マンドレル1220は、半球状の端部を有する円筒体を含むことができる。この実施形態では、半球状の端部を有する2つの円筒体が生成され、接着されてカプセルを形成する。
【0036】
[0052] 図12Bは、ポリマーフィルム1210の周囲に配置された熱収縮チューブ1230を示す。熱収縮チューブ1230は、ポリマーフィルム1210の外面の周囲に配置することができる。アセンブリの一方の端部に固定具1240を挿入することができる。固定具1240は、カプセル(例えば、カプセルの半球状の頭部)の外部寸法を画定することができる。固定具1240は、アセンブリの端部を塞いで、カプセルの外形の一部を画定する。例えば、図12Bは、凹状端部を有する固定具1240を示す。凹状端部は、カプセルのドーム状端部に対応することができる。その後、アセンブリに熱を加えて、ポリマーフィルム1210を溶融及びリフローさせることができる。ポリマーフィルム1210は、溶融し、マンドレル1220と固定具1240との間の空間を充填する。図12Cに示すように、ポリマーフィルム1210は、マンドレル1220及び固定具1240の寸法に適合して、カプセルの形状をもたらす。例えば、ポリマーフィルム1210に熱を加えて、マンドレル1220と固定具1240との間の空間に流れるポリマーを溶融させることができる。このように、ポリマーは、マンドレル1220及び固定具1240のサイズ及び形状に適合する。
【0037】
[0053] 図12Dに示すように、ポリマーフィルム1210が乾燥した後にアセンブリの各端部からマンドレル1220及び固定具1240を取り除いて、熱収縮チューブ1230とともに成形されたカプセル1250をもたらすことができる。図12Eは、ポリマー層から熱収縮チューブ1230取り除かれて、ポリマー層1210及びパリレン層1205を含む最終カプセル1250がもたらされることを示す。いくつかの実施形態では、図12Fに示すように最終的な長さを提供するためにカプセル1250の長さを切り落とすことができる。
【0038】
III.カプセル設計
[0054] 図2A及び図2Bは、本開示のいくつかの実施形態によるカプセルを示す。いくつかの実施形態では、カプセル200は、本明細書に記載する方法によって製造することができる。カプセル200は、第1層210、第2層220及び第3層230を含むことができる。カプセル200は、内部容積240にペイロードを収容するような形状とすることができる。例えば、カプセル200は、図2Aに示すように、半球状の両端部を有する円筒形であり得る。カプセル200は、球形、矩形、円筒形、球円筒形、楕円形、又はそれらの任意の組合せであってもよい。
【0039】
[0055] 第1層210は、カプセル200の最内層であり得る。第1層210は、内部容積240内の内容物を水分及び蒸気の侵入から保護する水分バリア層としての役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、水分バリア層は、ポリマーを含むことができる。例えば、第1層210は、パリレン層を含むことができる。第1層210は、ペイロードの送達中に破断するのに十分な薄さでありながら、適切な防湿効果を提供する厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、第1層210の厚さは、0.5ミクロン~30ミクロン、例えば、1ミクロン~25ミクロン、2ミクロン~20ミクロン、3ミクロン~15ミクロン、4ミクロン~12ミクロン、5ミクロン~10ミクロン、又は6ミクロン~8ミクロンの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、第1層210の厚さは、5ミクロン~10ミクロンの範囲であり得る。30ミクロンを超える厚さを有するパリレン層は、破断するには厚すぎ、0.5ミクロン未満の厚さを有するパリレン層は、十分な防湿効果を提供しないことが分かった。
【0040】
[0056] いくつかの実施形態では、第1層210は、破断線を形成するように切れ目が入れられるか又は予め切り込まれる。例えば、第1層210は、剃刀又はレーザーカットで切り込むことができる。第1層210は、カプセル200内のペイロードによる破断を促進するパターンに予め切り込むことができる。図3A及び図3Bに示すように、カプセルのパリレン層は、破断線を形成するように切れ目が入れられる。図3Aは、カプセル300Aのパリレン層310A上の第1切れ目線320A及び第2切れ目線330Aを含む切れ目パターンを示す。この実施形態では、第1切れ目線320A及び第2切れ目線330Aは、カプセル300Aのパリレン層310Aの先端部(例えば、カプセルの半球状端部)で交差する。図3Bは、カプセル300Bのパリレン層310Bの代替的な切れ目パターンを示す。パリレン層310Bは、カプセル300Bの長手方向軸に沿った第1切れ目線320Bと、第1切れ目線320Bと交差する複数の第2切れ目線330Bとを含むことができる。図4は、格子パターン420に切れ目が入れられたカプセル400のパリレン層410を示す。パリレン層410は、パリレン層410の複数の部分に切れ目が入れられた格子パターンを含むことができる。例えば、パリレン層410は、カプセル400の両側に格子パターン420を含むことができる。パリレン層の上の切れ目線は、ペイロードのサイズ、機能及び特性に基づいて破断を促進するように選択することができる。
【0041】
[0057] いくつかの実施形態では、第1層210の上に第2層220が配置される。例えば、第2層220は、第1層210の上に堆積させるか又はコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、第1層210を含むカプセル200をポリマー溶液でディップコーティングして、第2層220を形成することができる。いくつかの実施形態では、第2層220は、ポリマー、コラーゲン、脂肪酸、デンプン、ゼラチン、プルラン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、生分解性及び生体吸収性ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、アルギニン、キトサン、デキストリン、多糖類、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)及びヒアルロン酸等の天然ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、樹枝状ポリマー、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドン等の合成ポリマーを含む。
【0042】
[0058] いくつかの実施形態では、第2層220はポリビニルアルコールを含む。第2層220に接触するパリレン層の表面は、ポリビニルアルコールでコーティングする前に処理される。例えば、パリレン層の表面を酸素プラズマで処理してパリレン層の表面を粗化し、ポリビニルアルコールとの接着を促進することができる。
【0043】
[0059] 第1層210がパリレンを含む実施形態では、ポリビニルアルコールを含む第2層220が、パリレンと相乗作用的に結合して水分バリアを形成することが分かった。さらに、パリレンを含む第1層とポリビニルアルコールを含む第2層とを含むカプセルは、脱型特性が改善されたことが分かった。特に、ポリビニルアルコールでコーティングされたパリレンの機械的靭性及び延性は、カプセルをいかなる破損もなしに金型から取り出すのに優れていた。
【0044】
[0060] 図5は、いくつかの実施形態による第2層220の厚さのグラフを示す。このグラフは、ポリビニルアルコール層の厚さ範囲を示す。第2層220の厚さは、100ミクロン~250ミクロン、例えば、220ミクロン~240ミクロン、240ミクロン~230ミクロン、125ミクロン~220ミクロン、130ミクロン~210ミクロン、140ミクロン~200ミクロン、150ミクロン~190ミクロン、又は160ミクロン~180ミクロンの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、第2層220の厚さは、150ミクロン~190ミクロンの範囲であり得る。
【0045】
[0061] いくつかの実施形態では、カプセル200は第3層230を含むことができる。第3層は、腸溶性コーティングを含むことができる。腸溶性コーティングは、胃内(例えば、胃環境内)での溶解又は崩壊を防止するポリマーを含むことができる。腸溶性コーティングは、カプセル200の内部容積240内のペイロードを胃内の酸から保護することができる。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)及び可塑剤を含むことができる。可塑剤は、クエン酸アルキル、グリセリンエステル、フタル酸アルキル、セバシン酸アルキル、蔗糖エステル、ソルビタンエステル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、セバシン酸ジエチル又はセバシン酸ジブチルのうちの1つ又は複数とすることができる。いくつかの実施形態では、可塑剤はセバシン酸ジブチルであり得る。
【0046】
[0062] いくつかの実施形態では、第3層230は、第1下位層及び第2下位層を含むことができる。例えば、第3層は、ポリマー、タルク及び可塑剤を含む第1下位層と、ポリマー及び可塑剤を含む第2下位層とを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1下位層は、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)、タルク及び可塑剤(例えば、セバシン酸ジブチル)を含む。いくつかの実施形態では、第2下位層は、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)及び可塑剤(例えば、セバシン酸ジブチル)を含む。第2下位層は、第1下位層の上にコーティングすることができる。
【0047】
[0063] カプセル200は、ペイロードを受け入れる内部容積240を含むことができる。いくつかの実施形態では、ペイロードは、API、機械的アクチュエータ、生物医学的デバイス(例えば、植込み型パルス発生器)又はそれらの組合せを含むことができる。例えば、図2Bは、ペイロードとして機械的アクチュエータ250を含むカプセル200を示す。機械的アクチュエータ250は、本開示のいくつかの実施形態による針送達システムを含ことができる。例示的な例では、対象者が、注射器による注射、静脈内注入の使用、及びそれに伴う潜在的な不快感又は他の懸念なしに、API又は他の化合物の用量を服用することを望む場合がある。この目的で、その人は、1回分の投与量のAPI又はAPIを含む針システムを供給するために、本開示によるカプセルを服用することができる。例えば、薬物送達ビヒクルは、対象者が飲み込むことができる錠剤又はカプセルの形態とすることができる。いくつかの実施形態では、薬物送達ビヒクルは、内部注射を効果的に提供するために体内で展開することができる構成要素を含むことができ、外部からの注射又は注入と比較して、これによって引き起こされる組織障害ははるかに小さく、全身への影響は小さい。薬物送達ビヒクルが消化管の標的部分(十二指腸等)に到達する際、錠剤又はカプセルの特殊なコーティングが十分に溶解又は分解してばらばらになり、錠剤内の機械的アクチュエータが外側に拡張することができる。
【0048】
[0064] 使用時、カプセル200は、消化管の標的部分(十二指腸等)まで移動することができ、カプセルのコーティングが十分に溶解又は分解してばらばらになり、カプセル内の機械的アクチュエータが外側に拡張することができる。外側に拡張する機械的アクチュエータには、垂直に又は半径方向に拡張するステント状のチューブ、巻き戻しコイル、展開する湾曲アームのセット、中心ハブに対して広がり、その後、ハブに接続された部分に対して再び広がる二重蝶番式アームのセット、又は、圧縮状態から拡張状態に垂直に持ち上がる中央蝶番式の側方柱を有し、柱の一部が互いに対して蝶番式に固定されている、シザーリフトのような配置等、さまざまな選択肢を採用することができる。
【0049】
[0065] 図2Bは、機械的アクチュエータの周囲に配置されたマイクロニードルの複数のアレイを示す。マイクロニードルの複数のアレイは、周囲の組織(例えば、十二指腸の粘膜内層の組織)と係合するように外向きに拡張することによって駆動することができる。薬物用量は、係合したマイクロニードルを通して、マイクロニードルが中空である場合はマイクロニードル内を流れることにより、又は薬物がマイクロニードルの溶解性組成物中に埋め込まれている場合は直接吸収による(図6C)等して、組織に送達することができる。投与量の送達後、デバイスの構成部材は生分解し、デバイスの残骸を体外に排出しようとすることによる合併症の可能性を回避することができる。したがって、対象者は、本デバイスを使用して、最終的に、外部注射器又は静脈内注入を使用する別の選択肢よりも、侵襲が少なく、困難でなく、及び/又は対象者にとって厄介でない可能性のある、内部注射を投与することができる。
【0050】
IV.カプセルを消化管に送達する方法
[0066] 図6A図6Cは、本開示のいくつかの実施形態による、カプセルを使用して対象者の標的領域にペイロードを送達する方法を示す。この実施形態では、機械的アクチュエータがカプセルから展開されるが、カプセルは、本明細書に記載する任意のペイロードを送達するのに有効である。図6Aは、消化管650の一部を通って移動するカプセル610を示す。カプセル610は、複数の層を含むことができる。いくつかの実施形態では、カプセルは、パリレンを含む最内層と、最内層の上に配置されたポリマー層と、ポリマー層の上に配置された腸溶性コーティングとを含む。ポリマー層は、ポリビニルアルコールを含む場合があり、腸溶性コーティングは、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)、タルク及び可塑剤を含む場合がある。いくつかの実施形態では、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)及び可塑剤を含む腸溶性コーティング層にオーバーコートを施してもよい。ポリマー層及び腸溶性コーティングは、消化管の所定領域で展開するために所定の厚さに調整することができる。
【0051】
[0067] いくつかの実施形態では、カプセル610は、パリレン層、1つ又は複数のポリマー層、及び任意選択的に1つ又は複数の腸溶性コーティングを含むことができる。例えば、カプセルは、パリレンを含む内層、ポリビニルアルコールを含む第2層、ポリビニルピロリドンを含む第3層、及び腸溶性コーティングを含むことができる。ポリビニルアルコールは水溶性であるが、ポリビニルピロリドンはポリビニルアルコールよりも速く溶解する。しかしながら、パリレン層をポリビニルアルコール層と組み合わせることにより、金型からの最良の離型が得られる。これは、ポリビニルアルコールが機械的に強靭であるとともに可撓性があり、そのため、金型から持ち上げるときに破断しないためである。パリレン層は他の材料では非常に脆いため、ベースカプセル材料の選択が、金型からの良好な離型に重要である。上述したように、本明細書に記載するカプセルは、パリレンを含む内層とポリマーを含む外層とを含む筐体を含む。パリレン内層は水分バリアを提供し、それにより、薬物送達ビヒクルの内容物を保護する。
【0052】
[0068] 図6Bは、カプセル610から展開されたペイロード620を示す。カプセル610は、強酸性環境下の胃内でペイロードを放出することなく、腸に移送された後にペイロード620を放出する。カプセル610は、胃酸又は胃酵素からペイロードを保護するか、又はカプセルが胃から小腸に移送される期間の使用によりペイロード620を放出させる。いくつかの実施形態では、ペイロード620は、カプセル610の内部容積内に機械的アクチュエータ625を含むことができる。機械的アクチュエータ625は、複数のマイクロニードル630を含む針送達システムを含むことができる。マイクロニードル630は、医薬品有効成分を含むことができる。
【0053】
[0069] 図6Cに示すように、機械的アクチュエータ625は、マイクロニードル630を胃腸内壁に展開することができる。マイクロニードル630は、胃腸内壁640を貫通して、消化管内に医薬品有効成分を送達する。いくつかの実施形態では、マイクロニードル630は、生物学的製剤を含む溶解性マイクロニードルである。マイクロニードル630は、図6Cに示すように、消化管を貫通した後に溶解して生物学的製剤を放出することができる。
【0054】
V.腸溶性コーティング
[0070] 本開示は、ポリマー、タルク及び可塑剤を含む腸溶性コーティング組成物を提供する。例えば、腸溶性コーティングは、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55(ポリマー)、タルク及びセバシン酸ジブチル(可塑剤)を含むことができる。本明細書に記載する腸溶性コーティングは、胃内では無傷のままであり、消化管(例えば、腸)内で溶解するように設計されている。腸溶性コーティングは、顆粒、ペレット、カプセル又は錠剤等の固形剤形に適用することができる。腸溶性コーティングは、胃内の胃酸からカプセル内のペイロードを保護し、酸又は胃酵素に不安定な薬物の分解を防止することにより、薬物のバイオアベイラビリティを向上させる。本明細書に記載する腸溶性コーティングは、胃内での崩壊又は溶解に抵抗し、小腸で迅速に溶解又は崩壊し、保存中、物理的及び化学的に安定したままであり、コーティングとして容易に適用される。
【0055】
[0071] さらに、本明細書に記載する腸溶性コーティングは、薬物送達ビヒクル(例えば、カプセル)への水分及び蒸気の侵入を有益に防止する。腸溶性コーティング中のタルクは、破砕しやすい腸溶性コーティング層をもたらす。腸溶性コーティングの破砕性により、腸溶性コーティングは迅速に溶解し、意外なことに溶解後に残留物を残さない。これは機械的アクチュエータを含むペイロードに特に有利であり、それは、腸溶性コーティングが機械的アクチュエータの展開を妨げないためである。
【0056】
[0072] いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは共重合体を含む。共重合体は、重量で40~60重量%のメタクリル酸と60~40重量%のメタクリル酸メチル又は60~40重量%のアクリル酸エチルとから重合されたアニオン性メタクリル酸共重合体とすることができる。例えば、共重合体は、50重量%のアクリル酸エチルと50重量%のメタクリル酸とから重合することができる。本明細書に記載する腸溶性コーティング組成物に使用することができる市販のアニオン性メタクリル酸共重合体としては、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55又はEUDRAGIT(登録商標)L(Evonik Industries,Essen,Germanyから入手可能)を挙げることができる。
【0057】
[0073] いくつかの実施形態では、アニオン性メタクリル酸共重合体は、腸溶性コーティング中に、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、20重量%~60重量%の範囲の量で存在することができる。例えば、アニオン性メタクリル酸共重合体は、腸溶性コーティング中に、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、30重量%~40重量%、35重量%~55重量%、35重量%~50重量%、35重量%~45重量%、又は40重量%~50重量%の範囲の量で存在することができる。
【0058】
[0074] いくつかの実施形態では、タルクは、腸溶性コーティング中に、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、40重量%~80重量%の範囲の量で存在することができる。例えば、タルクは、腸溶性コーティング中に、腸溶性コーティングの総重量に基づいて、45重量%~80重量%、45重量%~75重量%、50重量%~75重量%、50重量%~70重量%、55重量%~65重量%、又は60重量%~70重量%の範囲の量で存在することができる。タルクを添加することにより、腸溶性コーティングの破砕性が改善されることが分かった。しかしながら、タルクは水に不溶性であり、腸溶性コーティングをより脆くする。タルクが腸溶性組成物中に80重量%を超える量で含まれる場合、腸溶性コーティングは非常に脆くなる。タルクが腸溶性コーティング中に40重量%未満の量で含まれる場合、腸溶性コーティングは十分な破砕性を達成しない。腸溶性コーティングの総重量に基づいて、40重量%~80重量%の範囲の量のタルクを含む腸溶性コーティングが、腸溶性コーティングの破砕性と延性とのバランスを提供する。
【0059】
[0075] 腸溶性コーティング中のタルク対アニオン性メタクリル酸共重合体の比は、0.5:1~10:1、例えば、1:1~8:1、1.25:1~6:1、1.5:1~4:1、1:1~3:1、1:1~2:1、又は1.25:1~1.75:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、タルク対アニオン性メタクリル酸共重合体の比は1.5:1である。タルクをアニオン性メタクリル酸共重合体と組み合わせることにより、破砕しやすい層がもたらされる。有利には、アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクを含む腸溶性コーティングは、迅速に溶解し、残留物をほとんど又はまったく残さない。溶解特性及び最小量の残留物は、有益に、カプセル内のペイロードの展開を妨げない。
【0060】
[0076] いくつかの実施形態では、可塑剤は、腸溶性コーティング中に、ポリマー(例えば、アニオン性メタクリル酸共重合体)の総重量に基づいて、5重量%~25重量%の範囲の量で存在することができる。例えば、可塑剤は、腸溶性コーティング中に、ポリマーの総重量に基づいて、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、5重量%~10重量%、10重量%~20重量%、又は10重量%~15重量%の範囲の量で存在することができる。可塑剤は疎水性であり得る。いくつかの実施形態では、可塑剤はセバシン酸ジブチルを含む。
【0061】
[0077] 腸溶性コーティング組成物(例えば、ポリマー、タルク及び可塑剤)を溶媒混合物中に提供して、腸溶性コーティング溶液を生成することができる。薬物送達ビヒクルを腸溶性コーティング溶液でコーティングし、乾燥させて、腸溶性コーティング層を生成することができる。溶媒は、アセトン、イソプロピルアルコール及び水のうちの1つ又は複数を含むことができる。溶媒混合物は、20重量%~50重量%、例えば、20重量%~45重量%、20重量%~40重量%、25重量%~40重量%、30重量%~40重量%、又は30重量%~35重量%の固形物(例えば、ポリマー)含量を含むことができる。例えば、溶媒混合物中の固形物は、ポリマー、タルク及び可塑剤を含むことができる。
【0062】
[0078] いくつかの実施形態では、本開示は、腸溶性コーティング組成物を製造する方法を提供する。コーティング組成物を製造する方法は、溶媒を用意することを含むことができる。溶媒は、水、アセトン及びイソプロピルアルコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は可塑剤を含むことができる。可塑剤は溶媒に添加することができる。例えば、可塑剤を溶媒混合物中に混合することができる。本方法は、アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクを溶媒に添加してコーティング組成物を生成することを含む。いくつかの例では、アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクは、溶媒にこれらの成分を添加する前にともに混合することができる。例えば、アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクを溶媒(例えば、水、アセトン及び/又はイソプロピルアルコール)中で混合し、次いで可塑剤を含む溶媒に添加することができる。本明細書に記載する腸溶性コーティング組成物を、薬物送達ビヒクル(例えば、カプセル)にコーティングすることができる。
【0063】
VI.カプセルを腸溶性コーティングでコーティングする方法
[0079] いくつかの実施形態によれば、本開示は、カプセルを腸溶性コーティングでコーティングする方法を提供する。本方法は、カプセルを腸溶性溶液でコーティングして第1腸溶性コーティング層を生成することを含む。第1腸溶性コーティング層は、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)、タルク及び可塑剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、第1腸溶性コーティング層を第2腸溶性コーティング層でコーティングすることも含むことができる。例えば、第2腸溶性コーティング層は、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)及び可塑剤を含むことができる。第1腸溶性コーティング層の上に第2腸溶性コーティング層を配置して、第1腸溶性コーティングを無傷のまま保持することができる。特に、第1腸溶性コーティング層は、タルクが存在することで破砕しやすいため、第2腸溶性コーティング層は第1腸溶性コーティング層に剛性を与えることができる。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングされたカプセルは、ペイロード(例えば、治療薬を含む針送達システム)を含むことができる。
【0064】
[0080] 図7は、本開示のいくつかの実施形態による、カプセルを腸溶性コーティングでコーティングする方法のフロー図を提供する。方法700は、カプセルを用意すること(710)を含む。カプセルは、ペイロードを送達するための任意のカプセルとすることができる。例えば、カプセルは、ポリマー、コラーゲン、脂肪酸、デンプン、ゼラチン、プルラン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことができる。いくつかの実施形態では、カプセルは、パリレンを含む第1層と、本明細書に記載するようなポリマーを含む第2層とを含むことができる。例えば、カプセルは、パリレン層の上にコーティングされたポリビニルアルコール層を含むことができる。パリレン層は、ペイロードのための破断線を提供する切れ目パターンを含むことができる。例えば、ペイロードは機械的アクチュエータを含むことができる。機械的アクチュエータは、パリレン層の切れ目線を破断することによってカプセルから展開することができる。
【0065】
[0081] 方法700は、カプセルを腸溶性溶液でコーティングすること(720)を含むことができる。いくつかの実施形態では、カプセルを腸溶性溶液でコーティングすることは、カプセルを腸溶性溶液でディップコーティングすることを含むことができる。腸溶性溶液は、溶媒、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含む。いくつかの実施形態では、アニオン性メタクリル酸共重合体は、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55であり得る。腸溶性組成物は、タルク及びアニオン性メタクリル酸共重合体を0.5:1~10:1の比率で含むことができる。腸溶性組成物を溶媒内に提供して、腸溶性溶液を生成することができる。例えば、タルク及びアニオン性メタクリル酸共重合体を含む腸溶性組成物を、本明細書に記載する比率で混合し、次いで溶媒に添加して、腸溶性溶液を生成することができる。
【0066】
[0082] 方法700は、腸溶性溶液を乾燥させて第1腸溶性コーティングを生成すること(730)を含む。第1腸溶性コーティングの乾燥条件は、気泡のない均一な腸溶性コーティングを提供するように制御される。乾燥条件は、腸溶性コーティング層中の気泡を抑制して高品質の腸溶性コーティングを提供するために重要である。腸溶性溶液でコーティングされたカプセルを、ロティサリーで部分的に乾燥させた後、オーブンで乾燥させて腸溶性コーティングを形成することができる。ロティサリーは、カプセルを回転させて腸溶性溶液を均質化し、腸溶性コーティングに均一な厚さを与えるように構成されている。
【0067】
[0083] いくつかの実施形態では、腸溶性溶液を乾燥させて第1腸溶性コーティングを生成することは、複数のステップを含む。例えば、乾燥ステップは、強制空気を用いずにロティサリー内で腸溶性コーティングを周囲条件で乾燥させることを含む第1乾燥ステップと、強制空気を用いてロティサリー内で腸溶性コーティングを周囲条件で乾燥させることを含む第2乾燥ステップと、オーブン内で腸溶性コーティングを高温で乾燥させることを含む第3乾燥ステップとを含むことができる。第1乾燥ステップは、強制空気を使用しない(例えば、ファンなしの)腸溶性コーティングの常温乾燥であり得る。第2乾燥プロセスは、強制空気を使用する(例えば、ファンを用いる)腸溶性コーティングの常温乾燥であり得る。第1及び第2乾燥プロセスは、部分乾燥プロセスであり得る。加熱乾燥(例えば、加熱された強制空気)の前に部分乾燥が不十分であること、及び/又はオーブン内で高い乾燥温度に突然さらされることにより、腸溶性コーティングが気泡を有し品質が低下することが分かった。
【0068】
[0084] いくつかの実施形態では、乾燥ステップは、ロティサリー内でカプセルを周囲条件で所定時間(例えば、30秒間~5分間)回転させ、続いてロティサリー内でカプセルを周囲条件で強制空気を用いて所定時間(例えば、30秒間~5分間)回転させることを含むことができる。その後、カプセルをオーブンで加熱して、カプセルの上で腸溶性コーティングを完全に乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、強制空気は、ファンによって供給される加熱された空気又は周囲空気であってもよい。腸溶性コーティングプロセス及び乾燥プロセスを複数回繰り返して、腸溶性コーティングの厚さを調整することができる。例えば、カプセルを腸溶性溶液でコーティングし、ロティサリー内で加熱して腸溶性コーティングの複数のコートを施すことができる。
【0069】
[0085] 方法700は、腸溶性コーティングされたカプセルをポリマー溶液でコーティングすること(740)を含む。ポリマー溶液は、第2腸溶性溶液であり得る。例えば、第2腸溶性溶液は、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)及び可塑剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、可塑剤は、クエン酸アルキル、グリセリンエステル、フタル酸アルキル、セバシン酸アルキル、蔗糖エステル、ソルビタンエステル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、セバシン酸ジエチル及びセバシン酸ジブチルのうちの1又は複数とすることができる。可塑剤は、ポリマーの総重量に基づいて、10~60重量%(例えば、10~60重量%、20~60重量%、25~55重量%、30~50重量%、30~60重量%又は40~60重量%)の量範囲で存在することができる。例えば、可塑剤は、ポリマーの総重量に基づいて、約10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%又は60重量%の濃度で存在することができる。方法700は、ポリマー溶液を乾燥させて第2腸溶性コーティングを生成すること(750)を含む。
【0070】
[0086] 図8A図8Dは、いくつかの実施形態による腸溶性コーティングされたカプセルを製造する製造プロセスを示す。図8Aは、パリレン層の上にコーティングされたポリビニルアルコール層を含むカプセルを示す。パリレン層は、ペイロードのための破断線を提供する切れ目パターンを含む。例えば、カプセルはペイロードとして機械的アクチュエータを含むことができる。機械的アクチュエータは、パリレン層の切れ目線を破断することによってカプセルから展開することができる。
【0071】
[0087] 図8Bは、カプセルを腸溶性溶液でコーティングするプロセスを示す。腸溶性溶液は、溶媒、ポリマー、タルク、可塑剤及び水を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)を含む。アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクは、本明細書に記載する比率で混合し、その後、溶媒に添加することができる。いくつかの実施形態では、カプセルを腸溶性溶液でコーティングすることは、カプセルを腸溶性溶液でディップコーティングすることを含むことができる。
【0072】
[0088] 腸溶性溶液でコーティングされたカプセルは、図8に示すように、ロティサリー内で乾燥させることができる。ロティサリーは、カプセルを回転させて腸溶性溶液を均質化し、腸溶性コーティングに均一な厚さを与えるように構成されている。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングされたカプセルを形成することは、カプセルを腸溶性溶液でディップコーティングすることと、ロティサリー内で腸溶性溶液を周囲条件で所定時間(例えば、30秒間~5分間)部分乾燥させることと、強制空気を用いてロティサリー内で腸溶性溶液を周囲条件で所定時間(例えば、30秒間~5分間)部分乾燥させることと、オーブン内で腸溶性溶液を高温で最終乾燥させることとを含むことができる。いくつかの実施形態では、強制空気はファンによって供給することができる。腸溶性コーティングプロセス及び乾燥プロセスを複数回繰り返して、腸溶性コーティングの厚さを調整することができる。
【0073】
[0089] 乾燥プロセスは、腸溶性コーティング層における気泡形成を有利に防止する。従来のプロセスでは、腸溶性溶液中の溶媒の蒸発は水の蒸発よりも速く、それにより、腸溶性コーティング層中に気泡が捕捉されることになる。有益には、ロティサリーは、腸溶性コーティングを均質化し、いかなる気泡もない均一な厚さのコーティングを提供する。いくつかの実施形態では、ロティサリーにおける乾燥プロセスは、周囲条件でカプセルを回転させる第1ステップと、それに続く、強制空気を適用しながらカプセルを回転させる第2プロセスとを含む、腸溶性溶液を部分的に乾燥させることを含む。いくつかの実施形態では、このプロセスは、腸溶性コーティングを別のポリマーでオーバーコーティングすることを含むことができる。例えば、腸溶性コーティングは、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)及び可塑剤を含む別の腸溶性コーティングでコーティングしてもよい。
【0074】
[0090] 図8Cは、カプセルにベルトを適用するプロセスを示す。カプセルは、カプセルを形成する2つの異なる成形構成要素を含むことができる。カプセルを形成する2つの成形構成要素の適切な接合を確実にするために、カプセルの開放端にベルト部分を設けることができる。例えば、図8Cは、カプセルの開放端に取り付けられた(例えば、接着された)ポリビニルアルコールベルトを示す。このベルトは、突合せ継手及び結束を補助する。図8Dに示すように、突合せ継手は、アニオン性メタクリル酸共重合体及びタルクを含む腸溶性コーティングで封止することができる。いくつかの実施形態では、突合せ継手に腸溶性オーバーコートを適用することができる。オーバーコートは、アニオン性メタクリル酸共重合体及び可塑剤を含むことができる。最終カプセルは、切れ目の入ったパリレン層と、ポリビニルアルコール層と、アニオン性メタクリル酸共重合体、タルク及び可塑剤を含む第1腸溶性コーティングと、アニオン性メタクリル酸共重合体及び可塑剤を含む第2腸溶性コーティングとを含むことができる。いくつかの実施形態では、アニオン性メタクリル酸共重合体はEUDRAGIT(登録商標)L 100-55である。カプセルの2つの部分の間の継手は、前述した腸溶性コーティングの組合せのうちの任意のものを使用して接着することができる。
【0075】
[0091] いくつかの実施形態では、カプセルをコーティングする方法は、ベースカプセルを用意することと、ベースカプセルを腸溶性溶液でコーティングすることとを含む。いくつかの実施形態では、ベースカプセルは、腸溶性溶液でディップコーティングされる。本方法は、本明細書に記載するように、ベースカプセルの上で腸溶性溶液を乾燥させることを含む。いくつかの実施形態では、カプセルを、ロティサリー内で部分的に乾燥させ、続いてオーブン内で乾燥させる。例えば、腸溶性溶液でコーティングされたベースカプセルを、熱又は強制空気をカプセルに適用しながら回転させる。いくつかの実施形態では、乾燥を促進するためにロティサリーに強制空気が供給される。いくつかの実施形態では、本方法は、腸溶性コーティングの厚さを構築及び調整する、複数のコーティング及び乾燥ステップを含む。本方法は、カプセルの腸溶性コーティングを第2腸溶性コーティングでオーバーコーティングすることを含む。例えば、ベースカプセルは、アニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)及び可塑剤を含む第2腸溶性コーティングでコーティングすることができる。
【0076】
[0092] いくつかの実施形態では、腸溶性組成物は、タルクとアニオン性メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55)とを60:40の比率で含む。腸溶性組成物は、溶媒に添加されて腸溶性溶液をもたらす乾燥粉末とすることができる。腸溶性組成物にタルクを多く添加するほど破砕性が向上するが、タルクは水に不溶性であり、腸溶性コーティングをより脆くする。乾燥した腸溶性コーティングは、アニオン性メタクリル酸共重合体及び可塑剤に埋め込まれたタルクを含む。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングの上に、アニオン性メタクリル酸共重合体を含む追加の腸溶性層(例えば、オーバーコート)がコーティングされる。
【実施例
【0077】
VII.実施例
HPMCカプセルの溶解速度及び胃保護
[0093] HPMCカプセルの水分侵入及び溶解特性を決定するために、サンプルカプセルを試験した。具体的には、水分の侵入を理解するために人工胃液(SGF)での浸漬試験を行い(腸溶性コーティングが無傷のまま残るため、腸溶性層が酸性環境でベースカプセルを溶解から保護しなければならない)、腸溶性コーティングされたカプセルの溶解速度及び溶解したカプセルからの残留物を理解するために、人工腸液(SIF)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)での溶解試験を行った。表1は、比較例1~5のサンプルカプセル組成を提供する。サンプルカプセルの各々は、ベースカプセル材料としてHPMCを含んでいた。
【0078】
【表1】
【0079】
[0094] 図9は、防湿効果及び溶解速度に関するカプセル設計の定性的分析を提供する。例えば、図9は、防湿効果及び溶解速度に対する腸溶性コーティング層の厚さ、可塑剤及びパリレンの効果を示す。図9に示すように、比較例1~5は、過度の残留物のない迅速な溶解と胃保護との良好な組合せを達成しなかった。例えば、比較例1、2及び4は、迅速な溶解を達成せず、実質的な残留物を残した。実際、比較例4は、HPMCカプセル内の機械的アクチュエータが展開するのを妨げるのに十分な残留物を残した。比較例3及び5の変更されたカプセルは、良好な溶解速度を提供したが、十分な胃保護(例えば、水分侵入)を提供しなかった。したがって、ベースカプセル材料としてHPMCを含むカプセルは、消化管にペイロードを送達するための良好な特性を提供しなかった。
【0080】
カプセルの溶解速度及び残留物試験
[0095] 図10A図10Hは、一定時点における人工腸液中での異なるベースカプセル材料の溶解試験を提供する。具体的には、図10A図10Dはポリビニルアルコールカプセルの溶解速度を示し、図10E図10HはHPMCカプセルの溶解速度を示す。カプセルの溶解速度は、溶解前(図10A及び図10E)、3.67分(図10B及び図10F)、4.5分(図10C及び図10G)、及び8.0分(図10D及び図10H)のタイムスタンプで示されている。試験は、各ベースカプセルが溶解するのにどれくらいかかるか、及び残留物がどのくらい残っているかを示す。図10A図10Dに示すように、ポリビニルアルコールカプセルは約4分30秒で溶解し、機械式アクチュエータをカプセルから展開することができた。ポリビニルアルコールカプセルからの残留物は最小限であった。対照的に、図10E図10Hは、HPMCカプセルが溶解するのに約2倍の時間(すなわち、8分間)かかり、実質的な残留物を残したことを示す。HPMCカプセルは膨潤し、機械的アクチュエータ上に残るため、展開に影響を及ぼす。残留物は、HPMCカプセルからのペイロードの展開を阻止するか又は妨げる可能性がある。例えば、残留物は、腸内での針送達システムの展開を妨げる可能性がある。針がカプセル残留物に埋もれ、治療薬を送達するために腸組織の十分な深さまで突き刺す(例えば、粘膜下層まで突き刺す)ことができない可能性がある。
【0081】
カプセルの防湿特性
[0096] 異なる材料を含むカプセルの水分バリア特性を、カプセルに入る水分の量を決定する浸漬試験で試験した。図11A及び図11Bは、プルランから作製されたカプセルを提供し、図11C及び図11Dは、HPMCから作製されたカプセルを提供し、図11E及び図11Fは、パリレンを含む内層を有するHPMCから作製されたカプセルを提供する。試験例3の内層は、パリレンの1.3ミクロン膜を含んでいた。試験例1~3は各々、図11A図11Fに示すように、カプセル中に水分インジケータを含んでいた。図11A図11Fは、試験例1(プルラン、図11A)、試験例2(HPMC、図11C)、及び試験例3(パリレンを含む内層を有するHPMC、図11C)を含む、浸漬前のカプセルの画像を提供する。試験例3の内層は、パリレンの1.3ミクロン膜を含む。カプセルの各々は、Eudragitを含む外層を含む。各水分インジケータの正方形には、対応する相対湿度値(20、40、60、80%RH)がマークされている。マークされた相対湿度未満では、正方形は青色のままであり、マークされた相対湿度以上ではピンク色に退色する。
【0082】
[0097] カプセルを人工胃液に1時間浸漬させた。図11B図11D及び図11Fに可視性試験を示す。図11B図11D及び図11Fに示すように、パリレンを含む内層は、プルラン又はHPMCのみを含む市販のカプセルと比較して、水分及び蒸気の侵入を実質的に減少させた。図11E(浸漬前)及び図11F(浸漬後)では、1時間の胃浸漬後、カプセル内部の湿度は40~60%に達した(60%の正方形は青色のままである)。言い換えれば、カプセルが水分バリアとしてパリレンコーティングを有していた場合、1時間の胃浸漬後もカプセル内部の湿度は60%RH未満のままであった。
【0083】
Kollicoat(登録商標)IRを含むカプセル
[0098] カプセルの1つ又は複数の層を生成するためのKollicoat(登録商標)IRの特性を決定するために、サンプルカプセルを製造した。図13は、PVAカプセルと比較したKollicoat(登録商標)IRカプセルの厚さを示す。Kollicoat(登録商標)IRから製造されたカプセルは、PVAカプセルよりも均一なコーティング厚さを示した。具体的には、Kollicoat(登録商標)IRは、PVAから製造されたカプセルよりも狭い厚さ窓を有していた。Kollicoat(登録商標)IRは、PVAよりも低い粘度を有し、それにより、硬化プロセス中のオーバーフローが少ないため、より均一なコーティング厚さが可能になる。これにより、正確で制御されたコーティング厚さのカプセルがもたらされる。Kollicoat(登録商標)IRの層を含むカプセルの場合、PVAカプセルと同様の厚さに達するためには、追加のコーティングプロセス(例えば、ポリマー溶液への浸漬)が必要であった。図13に示すように、Kollicoat(登録商標)IRから製造されたカプセルの本体及びキャップの厚さは、同じコーティング回数でPVAから製造されたカプセルよりも小さかったが、改善された均一性を示した。
【0084】
[0099] 図14Aは、パリレン層上にコーティングされたKollicoat(登録商標)IRカプセルの画像を示し、図14Bは、パリレン層のないKollicoat(登録商標)IRカプセルの画像を示す。図14A及び図14Bに示すカプセルの各々は、ディップコーティングによりKollocoat層を生成するように製造され、0.14~0.17mmの厚さを有していた。カプセルの各々は、放出のために切れ目が入れられた。Kollicoat(登録商標)IRカプセルは、micro-90で処理したロッドの上で適切な濡れ性及び接着性を示した。パリレンを含まないKollicoat(登録商標)IRカプセル(図14B)は、切れ目線に沿った亀裂及びしわを示した。例えば、図14Bは、パリレン層なしで製造したKollicoat(登録商標)IRカプセルにしわが見られたことを示す。図14Aは、パリレン層の上にコーティングされたKollicoat(登録商標)IRにしわが見られなかったことを示す。Kollicoat(登録商標)IRポリマーは、パリレン層に対する良好な接着性を示し、良好な機械的堅牢性も有していた。
【0085】
[0100] Kollicoat(登録商標)IRカプセルの溶解特性を決定するために、サンプルカプセルを試験した。具体的には、従来のプルランカプセルと比較して、Kollicoat(登録商標)IR層を含むカプセルの溶解速度を調べるために、ブタの腸内でインビボ溶解試験を行った。表2は、実施例4及び5並びに比較例6及び7のカプセルサンプルカプセル組成を提供する。比較例6及び7の各々は、ベースカプセル材料としてプルランを含んでいた。
【0086】
[0101] 図15A図15D及び図16A図16Dは、本開示のいくつかの実施形態による、Kollicoat(登録商標)IR層を含むカプセル(図15A図15D)及びプルラン層を含むカプセル(図16A図16D)のインビボ溶解試験を受けたカプセルの画像を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
[0102] 表3は、比較例6及び7並びに実施例4及び5の溶解結果を提供する。図15A及び図15Cは、Tでの浸漬試験前の実施例4及び5のカプセルを示し、図16A及び図16Cは、Tでの浸漬試験前の比較例6及び7のカプセルを示す。47分間の浸漬試験後、実施例4及び5はわずかな腸溶性の除去があった。50分間の浸漬試験後、比較例6及び7はカプセルの変形を示した。T2において、実施例4及び5、並びに比較例6及び7は、著しい変形があった。意外なことに、実施例6及び7は、最小限の残留物でより速い溶解速度を示した。具体的には、実施例6及び7は、T3において比較例6及び7よりもはるかに多く溶解した(プルランは、実際に幾分かの伸張に抵抗することができる、むしろ機械的に無傷な膜として残った)。実施例6及び7のカプセルは、比較例6及び7よりも、消化管内でペイロードを放出するための改善された溶解特性(例えば、より速い特性)を有する。
【0089】
【表3】
【0090】
[0103] 前述の説明は、説明の目的で、記載した実施形態が完全に理解されるように具体的な命名法を使用した。しかしながら、記載した実施形態を実施するために具体的な詳細が必須でないことは、当業者には明らかとなろう。したがって、具体的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示している。これらは、網羅的であるようにも、記載した実施形態を開示した正確な形態に限定するようにも意図されていない。当業者であれば、上記の教示に鑑みて、多くの変更及び変形が可能であることが明らかとなろう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A-8D】
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
【国際調査報告】