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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】混合および注入システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/28 20060101AFI20250117BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61M5/28 532
A61M5/00 518
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540567
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 US2023010991
(87)【国際公開番号】W WO2023141120
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/300,394
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264424
【氏名又は名称】クリーデンス メドシステムズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Credence MedSystems,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,スティーヴン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ティラック,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】シュルザス,アラン イー.
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066GG06
4C066GG18
(57)【要約】
注入システムは注入システム本体を含み、この注入システム本体が、その近位端に近位開口部を規定し、その遠位端に遠位針インターフェースを規定する。このシステムは、注入システム本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材も含み、近位ストッパ部材と遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、遠位ストッパ部材と注入システム本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する。このシステムは、注入システム本体に対して近位ストッパ部材を挿入するために手動で操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、このシステムは、遠位針インターフェースと遠位薬剤チャンバの少なくとも一部分との間に開放可能なバリアを形成するバルブを含む。バルブは、遠位薬剤チャンバ内の圧力が上昇すると、遠位薬剤チャンバの一部分から遠位針インターフェースへの流れを許容するように構成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入システムであって、
注入システム本体であって、その近位端に近位開口部を、その遠位端に遠位針インターフェースを規定する注入システム本体と、
前記注入システム本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材であって、前記近位ストッパ部材と前記遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、前記遠位ストッパ部材と前記注入システム本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する、近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材と、
前記注入システム本体に対して前記近位ストッパ部材を挿入するために手動で操作されるように構成されたプランジャ部材と、
前記遠位針インターフェースと前記遠位薬剤チャンバの少なくとも一部分との間に開放可能なバリアを形成するバルブとを備え、
前記バルブは、前記遠位薬剤チャンバ内の圧力の上昇により、前記遠位薬剤チャンバの一部分から前記遠位針インターフェースへの流れを許容するように構成されていることを特徴とする注入システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
細長い流体移送部材をさらに含み、
前記バルブが、前記遠位薬剤チャンバ内で前記細長い流体移送部材を安定させるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記バルブが、中央開口部を規定するとともに、中央シールを含み、
前記流体移送部材が、前記中央開口部を通過するように構成され、
前記中央シールが、前記流体移送部材の長手方向の外面に対して流体密シールを形成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記バルブが、当該注入システムの組立中に前記中央シールを介して前記流体移送部材の近位端を案内するように構成された遠位方向を向く漏斗を規定することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記バルブが、前記バルブと前記注入システム本体の遠位端との間に空間を提供するように構成された遠位方向を向く周壁を規定することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記バルブが、前記遠位薬剤チャンバ内で前記注入システム本体の内面と流体密シールを形成するように構成された周方向ガスケットを備えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記周方向ガスケットが、弾性材料で作られていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記弾性材料が、ゴム、熱可塑性エラストマー、ブチルゴムまたはポリイソプレンエラストマーであることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記周方向ガスケットが、前記バルブを前記注入システム本体の内面に結合するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記バルブが、前記遠位薬剤チャンバ内の圧力の上昇により開放されるように構成されたポートを含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記バルブが、剛性部分および弾性部分を含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記剛性部分が、環状オレフィンコポリマーから作られていることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記弾性部分が、ゴム、熱可塑性エラストマー、ブチルゴムまたはポリイソプレンエラストマーから作られていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記弾性部分が、
前記剛性部分の遠位面に隣接して配置されるように構成された環状フラップと、
前記環状フラップの外周から延びる周方向ガスケットとを含み、
前記周方向ガスケットが、前記遠位薬剤チャンバ内で前記注入システム本体の内面と流体密シールを形成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記剛性部分が、環状部分を含み、
前記環状部分が、それを貫通して延びるポートを規定し、
前記ポートが、前記弾性部分の環状フラップにより密封され、それが除去可能であるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、
前記弾性部分の環状フラップが、前記ポートを、除去可能に密封するようにバイアスされるとともに、
前記遠位薬剤チャンバ内の圧力の上昇により、前記剛性部分の環状部分によって規定されたポートから前記環状フラップが離れ、それにより前記ポートの密封が解除されるように、前記環状フラップが構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のシステムにおいて、
前記環状部分が、前記ポートを取り囲む隆起した環状壁を規定し、この環状壁が、前記環状部分の遠位面から遠位方向に延びることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項15に記載のシステムにおいて、
前記環状部分が、遠位方向に延びるドームを規定することを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記剛性部分が、環状部分に結合された遠位方向に延びる部分を含むことを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、
前記遠位方向に延びる部分が、前記遠位針インターフェースと係合して、前記バルブと前記注入システム本体の遠位端との間に空間を提供するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムにおいて、
前記遠位方向に延びる部分が、前記遠位針インターフェースと係合して、前記バルブを前記注入システム本体に結合し、前記バルブの周方向ガスケットの遠位面が前記注入システム本体の遠位端と接触するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記周方向ガスケットが、前記注入システム本体の遠位端の内面と流体密シールを形成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記周方向ガスケットが、前記注入システム本体の内周よりも小さい外周を有することを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記遠位方向に延びる部分が、前記遠位針インターフェースと係合して、前記バルブと前記注入システム本体の遠位端との間に空間を提供するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項25】
注入システムであって、
注入システム本体であって、その近位端に近位開口部を、その遠位端に遠位針インターフェースを規定する注入システム本体と、
前記注入システム本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材であって、前記近位ストッパ部材と前記遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、前記遠位ストッパ部材と前記注入システム本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する、近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材と、
前記注入システム本体に対して前記近位ストッパ部材を挿入するために手動で操作されるように構成されたプランジャ部材と、
前記近位ストッパ部材を少なくとも部分的に貫通して、前記遠位薬剤チャンバから前記近位薬剤チャンバへの流路を形成するように構成された細長い流体移送部材であって、周方向肩部を規定する細長い流体移送部材と、
前記近位ストッパ部材に配置されるように構成されたインサートとを備え、
前記インサートが、遠位方向を向く漏斗および一対のフィンガを含み、前記遠位薬剤チャンバから前記近位薬剤チャンバへの流路が開いている間に、前記細長い流体移送部材の周方向肩部と係合して、前記細長い流体移送部材に対する前記近位ストッパ部材の遠位方向の動きを一時的に阻止するように構成されていることを特徴とする注入システム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、
前記漏斗が、環状オレフィンコポリマーから作られていることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項25に記載のシステムにおいて、
前記一対のフィンガが、焼きなまし処理されたステンレス鋼などの金属から作られていることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項25に記載のシステムにおいて、
前記近位薬剤チャンバが完全に潰れた後に前記プランジャ部材に加えられる遠位方向を向く力の増加により、前記一対のフィンガと前記周方向肩部との間の係合に打ち勝って、前記細長い流体移送部材に対する前記近位ストッパ部材の遠位方向の動きが可能になるように、前記一対のフィンガおよび前記周方向肩部が構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項25に記載のシステムにおいて、
前記周方向肩部が、前記細長い流体移送部材の他の部分よりも大きな直径を有することを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、流体注入に対する様々なレベルの制御を容易にするための注入システム、デバイスおよびプロセスに関し、より詳細には、医療環境における、安全機能を有する、または安全機能を有しない、複数チャンバ注入システムに関連するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1A(2)に示すような数百万ものシリンジが、医療環境で毎日消費されている。典型的なシリンジ(2)は、管状本体(4)、プランジャ(6)および注入針(8)を含む。図1Bに示すように、そのようなシリンジ(2)は、患者に流体を注入するだけでなく、薬瓶、バイアル、バッグまたは他の薬剤封入システム(10)などの容器から流体を引き出すか、またはそれら容器内に流体を排出するために利用することもできる。実際、米国などの一部の国では、無菌状態の維持に関する懸念と、規制上の制約により、特定の患者の環境に示すように、シリンジ(2)と一緒に薬瓶(10)を使用した場合、そのような薬瓶は、一人の患者に対してのみ使用され、その後、処分しなければならず、それにより薬瓶や残りの薬剤の廃棄物から多くの医療廃棄物がもたらされ、特定の重要な薬剤の周期的な不足の原因にもなっている。図2Aを参照すると、3本のルアー型シリンジ(12)が示されており、それぞれが、遠位側に配置されたルアー継手形状(14)を有し、それらが、図2Bに示すルアーマニホールドアセンブリ(16)などの同様の継手形状を有する他のデバイスと結合されるようになっている。図2Bのルアーマニホールドアセンブリは、静脈内注入バッグの使用の有無にかかわらず、患者に液体薬剤を静脈内投与するために使用することができる。図2Aのシリンジのルアー継手(14)は、「雄」ルアー継手と呼ばれ、図2Bのルアー継手(18)は、「雌」ルアー継手と呼ばれることもあり、ルアーインターフェースの一方は、ネジ山が形成されて(この場合、その構成を「ルアーロック」構成と称することもある)、両者が相対的な回転により結合され、それが圧縮荷重と組み合わされる場合もある。言い換えれば、ルアーロックの一実施形態では、回転が、場合によっては圧縮とともに、雄継手(14)のネジ山を係合させるために利用され、このネジ山は、雌継手(18)上のフランジと係合して、デバイスを流体封入された結合状態とするように構成されている。別の実施形態では、ネジ山または回転を用いることなく、圧縮を使用してルアー係合を提供するために、テーパ状のインターフェース形状が利用されることもある(そのような構成は、「スリップオン」または「円錐」ルアー構成と称することもある)。そのようなルアー結合は、オペレータにとって比較的安全であると認識されているが、ルアー結合の組立中に薬剤がこぼれたり、漏れたり、部品が破損したりする危険性がある。一方、針注入構成を使用すると、鋭い針が人や望ましくない構造物に接触したり、刺したりする危険性がある。このような理由から、いわゆる「安全シリンジ」が開発されている。
【0003】
安全シリンジ(20)の一実施形態が、図3に示されており、この実施形態では、管状のシールド部材(22)が、シリンジ本体(4)に対してロック位置から解放されたときに、針(8)を覆うようにバネ付勢されている。安全シリンジ(24)の別の実施形態が、図4Aおよび図4Bに示されている。この構成では、シリンジ本体(4)に対してプランジャ(6)が完全に挿入された後、図4Bに示すように、引き込み可能な針(26)が、管状本体(4)内の安全位置に引き込まれる(28、26)ように構成されている。それ自体に納めるように構成されたそのような形態は、血液の飛び散り/エアロゾル化の問題や、誤作動して作動が早過ぎる可能性のある予め載荷されたエネルギーの安全な貯蔵、バネ圧縮体積内の残留デッドスペースに起因する全用量注入を与える際の精度の喪失、および/または痛みや患者の不安に関連し得る引き込み速度制御の喪失に関連する可能性がある。
【0004】
図5Aおよび図5Bに示すようなプレフィルドシリンジアセンブリに対する需要の増加により、シリンジ市場がさらに複雑化しており、それらは一般に、シリンジ本体または「薬剤封じ込め送達システム」(34)と、プランジャ先端、プラグまたはストッパ(36)と、ルアー型インターフェースに取り付けられた遠位シールまたはキャップ(35)とを備える(図5Aは定位置にあるキャップ35を示しているが、図5Bはルアー型インターフェース14を例示するために、キャップを取り外してある)。液体薬剤は、遠位シールとプランジャ先端(36)の遠位端(37)との間の容積または薬剤リザーバ(40)内にある。プランジャ先端(36)は、標準的なブチルゴム材料を含むことができ、関連するシリンジ本体構造および材料に対する好ましいシールおよび相対運動特性を容易にするために、生体適合性潤滑性コーティング(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などでコーティングされている。図5Bのシリンジ本体(34)の近位端は、シリンジ本体(34)の材料と一体的に形成された従来の一体型シリンジフランジ(38)を備える。フランジ(38)は、シリンジ本体(34)から半径方向に延びるように構成されており、シリンジ本体(34)の周囲の全周または円周の一部となるように構成されている。部分的なフランジは、「クリップドフランジ」として知られており、他方のフランジは「フルフランジ」として知られている。フランジは、指でシリンジを把持するために使用され、プランジャを押して注入を行うための支持を提供する。シリンジ本体(34)は、好ましくは、ガラスまたはポリマーのような半透明の材料を含む。チャンバまたはリザーバ(40)内に封じ込められた容積を形成し、針を介した関連流体の排出を補助するために、プランジャ先端(36)をシリンジ本体(34)内に配置することができる。シリンジ本体(34)は、ほぼ円筒形を(すなわち、円形の断面形状を有するプランジャ先端36がシリンジ本体(34)に対してシールを確立するように)規定することができ、または楕円形などの他の断面形状を有するように構成することもできる。
【0005】
このようなアセンブリは、充填、包装および医薬品/薬剤インターフェーシング材料の選択とコンポーネントの使用に関する世界の絶え間なく変化する規制のすべてを満たす余裕のある世界で数少ない製造業者によって標準化され、正確に大量製造される可能性があるため、望ましい。しかしながら、そのような単純な構成では、一般的に、単回使用、安全性、自動無効化および針刺し防止に関する新しい世界基準を満たすことはできない。このため、特定のサプライヤは、1つのソリューションで規格のすべてまたはその少なくとも一部を満たそうとする、より「垂直」なソリューション、例えば、図5Cに示すようなもの(41)に移行してきており、多くの様々なシナリオでそれらの基準を満たそうとした結果、そのような製品には大きな制約があり(図3図4Bを参照して上述したような制約を含む)、在庫および使用費用が比較的高くなる可能性がある。
【0006】
場合によっては、多成分注入システムは、注入前に注入成分(例えば、液体および/または粉末)を混合することがある。あるシステムでは、単一の注入デバイスを利用して、1つの容器から液体成分を引き込み、その液体成分を別の容器に注入することにより、その中の乾燥成分を溶解する。その後、溶解した乾燥成分を、患者に注入するために注入デバイス内に引き込む。そのようなシステムでは、剥きだしの針を頻繁に取り扱う必要があり、覆いのない1または複数本の針にユーザが不必要に曝されることになる。また、ある容器から別の容器に液体成分を手作業で移すと、液体成分の移送が不完全になり、最終的な混合注入剤中の成分の比率に影響を与える可能性がある。さらに、複数の成分の容器にアクセスして操作すると、注入プロセスが複雑となり、ユーザエラーの危険性が増大する。このため、複数の容器から複数の成分を手作業でアクセスおよび混合することを簡素化する多成分注入システムに対する必要性が存在する。
【0007】
それらの制約は、複数の成分を混合して注入するように構成された複数チャンバ注入システムによって対処される。しかしながら、多成分注入剤の正確な取り扱い、混合および送達のために、複数チャンバ注入システムを正確に制御する必要性が残っている。
【0008】
さらに、多くの注入液体(例えば、薬剤)には、注入液体が金属(例えば、針のステンレス鋼)に曝される時間を最小限に抑えるという別の要件がある。
【0009】
また、注入システムに針刺し防止技術を組み込むことも望ましい。針の鋭利な端部を少なくとも部分的にシリンジの内部に引き込む機能は、注入を行う人および患者を不注意による針刺し損傷から保護する。
【0010】
現在利用可能な構成の欠点に対処する注入システムが必要とされている。特に、図5Aおよび図5Bを参照して説明したような、従来から供給されているプレフィルドシリンジアセンブリの既存の比較的よく管理されたサプライチェーンを利用することができる、正確な制御を伴う複数のチャンバを有する安全注入ソリューションが必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
実施形態は注入システムを対象とする。特に、実施形態は、多成分注入剤の取り扱い、混合および送達を正確に制御する複数のチャンバを有する安全な注入システムに関する。
【0012】
一実施形態では、注入システムが注入システム本体を含み、この注入システム本体が、その近位端に近位開口部を規定し、その遠位端に遠位針インターフェースを規定する。また、このシステムは、注入システム本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材も含み、近位ストッパ部材と遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、遠位ストッパ部材と注入システム本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する。このシステムは、注入システム本体に対して近位ストッパ部材を挿入するために手動で操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、このシステムは、遠位針インターフェースと遠位薬剤チャンバの少なくとも一部分との間に開放可能なバリアを形成するバルブを含む。バルブは、遠位薬剤チャンバ内の圧力が上昇すると、遠位薬剤チャンバの一部分から遠位針インターフェースへの流れを許容するように構成されている。
【0013】
1または複数の実施形態では、システムが、細長い流体移送部材も含み、バルブが、遠位薬剤チャンバ内で細長い流体移送部材を安定させるように構成される。バルブは、中央開口部を規定することができ、中央シールを含むことができる。流体移送部材は、中央開口部を通過するように構成することができ、中央シールは、流体移送部材の長手方向の外面に対して流体密シールを形成するように構成することができる。バルブは、注入システムの組立中に中央シールを通して流体移送部材の近位端を案内するように構成された遠位方向を向く漏斗を規定することができる。バルブは、バルブと注入システム本体の遠位端との間に空間を提供するように構成された遠位方向を向く周壁を規定することができる。
【0014】
1または複数の実施形態では、バルブが、遠位薬剤チャンバ内で注入システム本体の内面と流体密シールを形成するように構成された周方向ガスケットを含む。周方向ガスケットは弾性材料から作ることができる。弾性材料は、ゴム、熱可塑性エラストマー、ブチルゴムまたはポリイソプレンエラストマーの何れかであってもよい。周方向ガスケットは、バルブを注入システム本体の内面に結合するように構成することができる。バルブは、遠位薬剤チャンバ内の圧力の上昇によって開放されるように構成されたポートを含むことができる。
【0015】
1または複数の実施形態では、バルブが剛性部分および弾性部分を含む。剛性部分は、環状オレフィンコポリマーから作製することができる。弾性部分は、ゴム、熱可塑性エラストマー、ブチルゴムまたはポリイソプレンエラストマーから作製することができる。弾性部分は、剛性部分の遠位面に隣接して配置されるように構成された環状フラップと、環状フラップの外周から延びる周方向ガスケットとを含むことができる。周方向ガスケットは、遠位薬剤チャンバ内で注入システム本体の内面と流体密シールを形成するように構成することができる。
【0016】
1または複数の実施形態では、剛性部分が環状部分を含むことができる。環状部分は、それを貫通して延びるポートを規定することができ、ポートは、弾性部分の環状フラップによって取り外し可能に密封されるように構成することができる。弾性部分の環状フラップは、環状フラップがポートを取り外し可能に密封すべくバイアスされるように構成することができる。遠位薬剤チャンバ内の圧力の上昇により、剛性部分の環状部分によって規定されたポートから環状フラップが離れ、それによりポートの密封を解除することができる。環状部分は、ポートを取り囲む隆起した環状壁を規定することができ、この環状壁が、環状部分の遠位面から遠位方向に延びる。環状部分は、遠位方向に延びるドームを規定することができる。剛性部分は、環状部分に結合された遠位方向に延びる部分を含むことができる。遠位方向に延びる部分は、遠位針インターフェースと相互作用して、バルブと注入システム本体の遠位端との間に空間を提供するように構成することができる。
【0017】
1または複数の実施形態では、遠位方向に延びる部分が、遠位針インターフェースと相互作用して、バルブの周方向ガスケットの遠位面が注入システム本体の遠位端と接触するようにバルブを注入システム本体に結合するように構成される。周方向ガスケットは、注入システム本体の遠位端の内面と流体密シールを形成するように構成することができる。周方向ガスケットは、注入システム本体の内周よりも小さい外周を有することができる。遠位方向に延びる部分は、遠位針インターフェースと相互作用して、バルブと注入システム本体の遠位端との間に空間を提供するように構成することができる。
【0018】
別の実施形態では、注入システムが注入システム本体を含み、この注入システム本体が、その近位端に近位開口部を規定し、その遠位端に遠位針インターフェースを規定する。また、このシステムは、注入システム本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材も含み、近位ストッパ部材と遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、遠位ストッパ部材と注入システム本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する。このシステムは、注入システム本体に対して近位ストッパ部材を挿入するために手動で操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、このシステムは、近位ストッパ部材を少なくとも部分的に貫通して、遠位薬剤チャンバから近位薬剤チャンバへの流路を形成するように構成された細長い流体移送部材を含み、この細長い流体移送部材が、周方向肩部を規定する。さらに、このシステムは、近位ストッパ部材に配置されるように構成されたインサートを含む。インサートは、遠位方向を向く漏斗および一対のフィンガを含み、遠位薬剤チャンバから近位薬剤チャンバへの流路が開いている間に、細長い流体移送部材の周方向肩部と係合して、細長い流体移送部材に対する近位ストッパ部材の遠位方向の動きを一時的に阻止するように構成されている。
【0019】
1または複数の実施形態では、漏斗が環状オレフィンコポリマーから作られる。一対のフィンガは、焼きなまし処理されたステンレス鋼などの金属から作ることができる。一対のフィンガおよび周方向肩部は、近位薬剤チャンバが完全に潰れた後にプランジャ部材に加えられる遠位方向を向く力の増加により、一対のフィンガと周方向肩部との間の係合に打ち勝って、細長い流体移送部材に対する近位ストッパ部材の遠位方向の動きが可能になるように、構成することができる。周方向肩部は、細長い流体移送部材の他の部分よりも大きな直径を有することができる。
【0020】
本発明の上述した実施形態および他の実施形態は、以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
この特許または出願ファイルには、少なくとも1のカラー図面が含まれている。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料の支払により、米国特許商標庁から提供される。
図1図1Aおよび図1Bは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図2図2Aおよび図2Bは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図3図3は、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図4図4Aおよび図4Bは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図5図5A図5Cは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図6図6Aおよび図6Bは、いくつかの実施形態に係る、使用後に遠位針端/先端を保護構成に引き込むことができるシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムの様々な態様を示す斜視図および縦断面図である。
図7図7A図7Pは、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムを使用して混合および注入する方法のステップ中の当該システムの様々な態様を示す側面図および縦断面図である。
図8図8は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す斜視図である。
図9図9は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な斜視図である。
図10図10は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な斜視図である。
図11図11は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図12図12は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図13図13は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するバルブの分解図である。
図14図14は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するバルブの斜視図である。
図15図15は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図16図16は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図17図17は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図18図18は、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図19図19は、いくつかの実施形態に係る、使用後に遠位針端/先端が保護構成に引き込まれるシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムの様々な態様を示す詳細な斜視図である。
図20図20は、いくつかの実施形態に係る、使用後に遠位針端/先端が保護構成に引き込まれるシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムの様々な態様を示す詳細な斜視図である。
図21図21は、いくつかの実施形態に係る、使用後に遠位針端/先端が保護構成に引き込まれるシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムの様々な態様を示す詳細な斜視図である。
図22図22は、いくつかの実施形態に係る、使用後に遠位針端/先端が保護構成に引き込まれるシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図23図23は、いくつかの実施形態に係る金属インサートを有するシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図24図24は、いくつかの実施形態に係る金属インサートを有するシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す詳細な縦断面図である。
図25図25は、いくつかの実施形態に係る金属インサートを有するシリンジベースのデュアルチャンバ注入システムの様々な態様を示す図面である。
【0022】
様々な実施形態の上記および他の利点および目的を得る方法をより良く理解するために、添付の図面を参照しながら、実施形態のより詳細な説明を提供する。なお、図面は一定の縮尺で描かれておらず、同様の構造または機能の要素が、全体を通して同様の符号で示されていることに留意されたい。それらの図面は、特定の例示的な実施形態のみを示しており、よって実施形態の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示的なプレフィルドデュアルチャンバ安全注入システム
例示的なデュアルチャンバ安全注入システム
図6Aおよび図6Bを参照すると、先行技術の市販のプレフィルドシリンジ本体(34)を有し、その中に先行技術の近位および遠位ストッパ部材(32、36)が配置された、デュアルチャンバ安全注入システムの斜視図および縦断面図が示されている。近位および遠位ストッパ部材(32、36)は、シリンジ本体(34)とともに、近位および遠位薬剤チャンバ(40、42)を規定している。近位および遠位ストッパ部材(36、37)は、近位薬剤チャンバ(40)の近位端および遠位端を閉塞する。遠位ストッパ部材(36)は、遠位薬剤チャンバ(42)の近位端を閉塞する。針カップリングアセンブリ(606)は、遠位薬剤チャンバ(42)の遠位端に配置され、保管のために針カバー部材(63)が取り付けられている。デュアルチャンバ安全注入システムは、ユーザがシリンジ本体(34)に対してプランジャ部材(44)を様々な程度に順次挿入することにより、近位薬剤チャンバ(40)から遠位薬剤チャンバ(42)への第1の薬剤成分の移送と、遠位薬剤チャンバ(42)から遠位方向への混合/複合薬剤の排出とを制御する。プランジャ部材(44)は、近位ストッパ部材(32)、プランジャハウジング部材(69)およびプランジャ操作インターフェース(128)を含む。近位薬剤チャンバ(40)内に位置する第1の薬剤成分(252)は、水性または油性の薬剤溶液などの液体、ゲルであってもよく、または第1の薬剤成分は、遠位薬剤チャンバ(42)内の第2の薬剤成分(254)と混合するための希釈剤であってもよい。遠位薬剤チャンバ(42)内の第2の薬剤成分(254)は、粉末、マイクロスフェア、エマルジョン、凍結乾燥薬剤または固形状の固体薬剤などの乾燥形態の薬剤であってもよい。
【0024】
デュアルチャンバ安全注入システムは、固定針構成を有し、この構成では、ユーザに提供する際に、針カップリングアセンブリ(606)、針遠位端/先端(48)、針結合部材および針近位端(50)を含む針アセンブリが、保管中に針遠位端(48)または遠位ハウジング部分(610)と相互作用するためにその内面にエラストマーシーリング材料を含む針カバー部材(63)を取り外した後に、注入の準備が整った状態とされる。代替的には、針カバー部材(63)は、シリンジ本体(34)内への汚染の侵入を防止しながら、薬剤成分の移送および混合に起因する圧力をシリンジ本体(34)の内部から逃がすためのベント(図示せず)を含むことができる。固定針は、定位置に取り付けられるものとして示されているが、固定針は、ルアー型インターフェース(図示せず)を使用してシリンジ本体(34)に取り外し可能に結合され、針部材の近位端(50)が、ルアー型インターフェースを介して遠位薬剤チャンバ(42)内に延びるものであってもよい。図6A図7Pに示す実施形態では、安全針引き込みハードウェアの大部分がプランジャハウジング(69)内に存在する。
【0025】
デュアルチャンバ安全注入システム(100)は、固定針構成を有し、この構成では、ユーザに提供する際に、針スパインアセンブリ(「針」)(76)および針カップリングアセンブリ(606)を含む針アセンブリが、保管中に針遠位端(78)および/または遠位ハウジング部分と相互作用するためにその内面にエラストマーシーリング材料を含む針カバー部材(63)を取り外した後に、注入の準備が整った状態とされる。代替的には、針カバー部材(63)は、シリンジ本体(34)内への汚染の侵入を防止しつつ、第1の薬剤成分/希釈剤(252)の移送により生じる圧力をシリンジ本体(34)の内部から逃がすことを可能にするベント(図示せず)を含むことができる。固定針は、定位置に取り付けられるものとして示されているが、固定針は、ルアースリップまたはルアーロックインターフェース(図示せず)を使用してシリンジ本体(34)に取り外し可能に結合され、針部材の近位端(50)が、ルアーインターフェースを介して遠位チャンバ(42)内に延びるものであってもよい。代替的には、針は、シリンジの代わりにカートリッジ本体のフランジに固定的または取り外し可能に取り付けられるものであってもよい。図6Aおよび図6Bに示す実施形態では、安全な針引き込みハードウェアの大部分がプランジャハウジング(69)内に存在する。
【0026】
図7A図7Pを参照すると、複数部分の薬剤の注入およびシリンジ本体内への針の後退を容易にするように設計された構成の様々な態様が示されており、2以上の薬剤成分が、患者の体内への送達の直前に混合されて注入混合物または溶液が形成されるようになっている。一態様では、液体の第1の薬剤成分/希釈剤(252)を、注入の直前に、凍結乾燥された薬剤成分のような薬物の粉末形態などの実質的に非液体の第2の薬剤成分(254)と組み合わることができる。図7A図7Pを参照して本明細書で説明する構成は、デュアルチャンバ構成に関するものであり、同じシリンジ本体(34)内の2以上のチャンバが、注入溶液を移送、混合および注入するために利用される。
【0027】
図7Aおよび図7Bを参照すると、近位および遠位薬剤チャンバ(40、42)は、シリンジ本体(34)の内部の2つの部分の間にある遠位ストッパ部材(36)によって形成され、遠位薬剤チャンバ(42)は、非液体薬剤(254)と同様に、空気またはガスギャップを含み、遠位ストッパ部材(36)の反対側にある近位薬剤チャンバ(40)は、液体希釈剤(252)を含み、それが近位ストッパ部材(32)によって近位側に収容されている。液体希釈剤(252)は、薬剤の第1の成分であり、非液体薬剤(254)は、薬剤の第2の成分である。
【0028】
図7Cおよび関連する図7Dの断面図を参照すると、針カップリングアセンブリの様々なコンポーネントが示されている(ここでは、いわゆる「固定」針カップリングアセンブリ(606)が示されているが、固定構成だけでなく、ルアー結合を含む後述するような他の針アセンブリを利用することができる)。ラグ特徴部(258)は、例えば図7Aに示すように、針カップリングアセンブリ(606)を針カバー部材(63)に結合するのを補助するように構成されている。小さなOリングは、針シャフトの周りのシール部材(260)として利用することができ、大きなOリングは、シリンジ本体(34)/針カップリングアセンブリ(606)のインターフェースのシール部材(262)として利用することができる。代替的には、小さなOリング(260)と大きなOリング(262)を組み合わせて、Oリングのシール機能の両方を果たす単一のシールとすることもできる。また、小さいOリング(260)は、針シャフトの周囲の密封とシリンジ本体(34)への密封の両方に使用することもできる。
【0029】
針は、より遠位側に位置する中間開口部/開口(266)から排出される液体希釈剤の進入を可能にするように構成された複数(例えば、4つ)の近位開口部/ポート(270)を含み、ルーメンプラグ(268)が、図6Nおよび図7Hを参照して上述したような状況下で、針のルーメンを閉塞して、近位開口部(270)から中間開口部(266)への流路を作成する。また、針は、中間開口部(266)からルーメンプラグ(268)の反対側に遠位開口部(264)も含む。遠位開口部(264)は、患者に液体を注入するために、針を介して針遠位端(48)に流体結合されている。
【0030】
図7Eを参照すると、近位ハープーンインターフェース(84)が、近位および遠位ストッパ部材(32、36)を連続的に貫通し、プランジャ部材(44)のカップリング特徴部(例えば、針保持特徴部のような要素(712)が、例えば、図7Nおよび図7Pに示されている)と結合するように構成されている。図7Fは、近位および遠位の両方のストッパ部材(32、36)を連続的に貫通し、患者に対して注入が行われた後に針部材を少なくとも部分的にプランジャ部材(44)内に引き込むためにプランジャ部材(44)のカップリング特徴部と結合するように構成されたスパイクスタイルのハープーンカップリングインターフェース(85)を示している。
【0031】
図7A図7B図7G図7Pは、上述したようなデュアルチャンバ安全注入システムを利用した注入手順の一連の動作を示している。図7Aおよび7Bを参照すると、注入アセンブリは、注入患者ケアのシナリオに出荷または持ち込むことができる安定した構成にあり、第1の薬剤成分/液体希釈剤(252)が第2の非液体の薬剤成分(254)から分離され、それぞれがシリンジ本体内で遠位ストッパ部材(36)の両側に位置している。
【0032】
図7Gおよび7Hは、シリンジ本体(34)に対して遠位(36)および近位(32)ストッパ部材を一緒に前進させる、プランジャ部材(44)の初期挿入動作を示している。図7Hに示すように、針アセンブリの近位端(50)が遠位ストッパ部材(36)を突き抜けるのに十分に前進すると、シリンジ本体(34)の2つの事前に隔離されたチャンバ(40、42)の間に流体経路が形成され、その結果、近位薬剤チャンバ(40)内の液体の第1の薬剤成分(252)が、移送パイプ(46)を通って、近位開口部(270)の少なくとも1つに流入し、そして、より遠位側の中間開口部(266)から出て、遠位薬剤チャンバ(42)内の非液体の第2の薬剤成分(254)に到達する。
【0033】
図7Iおよび図7Jは、ストッパ部材(36、32)が互いにすぐ隣接するまでさらに挿入されることにより、液体の第1の薬剤成分/希釈剤(252)が遠位薬剤チャンバ(42)内に移動して非液体の第2の薬剤成分(254)と合流する様子を示している。図7Kおよび図7Lは、時間の経過および/または手動の攪拌により、液体の第1の薬剤成分/希釈剤(252)と、以前は非液体であった第2の薬剤成分(254)とが混合されて混合薬剤溶液(272)が形成される様子を示している。
【0034】
いくつかの実施形態では、特に、凍結乾燥された非液体の第2の薬剤成分の場合、混合薬剤溶液(272)を、最小限の撹拌で、または撹拌なしで、または時間の経過により形成することができる。別の実施形態では、特に、懸濁液に保持されている薬剤または乳化薬剤の場合、混合を促進するために激しい振盪が必要な場合がある。激しく振盪する場合には、ユーザがプランジャ操作インターフェース(128)から親指を離すことができると便利である。近位薬剤チャンバ(40)から遠位薬剤チャンバ(42)への液体の第1の薬剤成分(252)の移送中に、遠位薬剤チャンバ(42)内に圧力が蓄積することがある。この圧力は、近位および遠位ストッパ部材(32、36)に作用して、ストッパの動きに抵抗する。また、ユーザが親指でプランジャ部材(44)を拘束していない場合に、圧力の上昇によって、ストッパ部材(32、36)およびプランジャ操作インターフェース(128)が近位方向に移動する可能性もある。プランジャ部材(44)の混合構成ラッチまたは「ミックスクリック」は、圧力蓄積によるプランジャ操作インターフェース(128)の動きに抵抗を与えるとともに、薬剤の振盪または混合のためにユーザがプランジャ操作インターフェース(128)から親指を離すことを可能にするために利用することができる。また、混合クリックは、液体の第1の薬剤成分(252)の移送が完了したことを聴覚および/または触覚で示すこともできる。遠位薬剤チャンバ(42)は、薬剤成分の混合を補助する撹拌デバイスを含むこともできる。
【0035】
混合溶液(272)を注入するアセンブリの準備が整ったら、図7Mおよび図7Nに示すように、針カバー部材(63)を取り外して、プランジャ部材(44)および関連するストッパ部材(36、32)を押し下げ/挿入することにより、露出した針遠位端(48)で患者に注入することができる。図7Oおよび図7Pに示すように、プランジャ部材(44)および関連するストッパ部材(32、36)の完全な押し込み/挿入により、鋭利な針遠位端/先端(48)は、遠位ストッパ部材および近位ストッパ部材(36、32)を少なくとも部分的に通って、シリンジ本体(34)、針カップリングアセンブリ(606)のいずれかの内部、または少なくとも部分的にプランジャ部材(44)内の安全な位置まで自動的に後退することができる。針の自動引き込みは、少なくとも部分的にプランジャ内で行われるものであってもよい。
【0036】
フィルタを有する例示的なデュアルチャンバ注入システム
図8は、いくつかの実施形態に係る、バルブ(820)が内部に配置されたデュアルチャンバ注入システム(800)を示している。図6A図7Pに示すデュアルチャンバ注入システムと同様に、デュアルチャンバ注入システム(800)は、注入システム本体(34)、近位および遠位ストッパ部材(32、36)、プランジャ部材(44)および細長い流体移送部材(50)を含む。近位および遠位ストッパ部材(32、36)は、上述したように、注入システム本体(34)とともに、近位および遠位薬剤チャンバ(40、42)を形成する。近位および遠位の薬剤チャンバ(40、42)には、液体の第1の薬剤成分および非液体の第2の薬剤成分が予め充填されている(明瞭化のため図示せず;図6Aおよび図6Bの252、254を参照)。
【0037】
注入システム本体(34)は、その遠位端に遠位針インターフェース(810)を含む。いくつかの実施形態では、遠位針インターフェース(810)が、雌型ルアーコネクタであってもよい。遠位針インターフェース(810)には、多数の小さな空間を形成することができる。非液体の第2の薬剤成分が遠位針インターフェース(810)の小さな空間のいくつかに移動すると、非液体の第2の薬剤成分がそれらの小さな空間を塞いで、注入システム本体(34)から液体が出るのを妨げる可能性がある。それらの小さな空間内の非液体の第2の薬剤成分は、溶解しない可能性があり、それにより混合薬剤中の薬剤の最終濃度が変化する可能性がある。
【0038】
バルブ(820)は、以下に述べる4つの機能のうちの1つ、2つ、3つまたはすべてを実行することができる。第一に、バルブ(820)は、注入システム(800)の組立中および保管中に、遠位針インターフェース(810)内への非液体の第2の薬剤成分の移動を最小化および/または排除することができる。第二に、バルブ(820)は、細長い流体移送部材(50)を中心に配置して安定させることができ、それにより、細長い流体移送部材(50)による遠位ストッパ部材(36)の突き刺しを容易にすることができる。第三に、バルブ(820)は、通気型注入による振盪および混合中の薬剤損失を最小化および/または排除することができる。第四に、近位チャンバ(40)から遠位チャンバ(42)への液体移送中に空気を逃がすために遠位針インターフェース(810)が大気に開放されている通気型注入システム(800)において、バルブ(820)は、薬剤成分の振盪および混合中に遠位針インターフェース(810)の開口部からの混合薬剤の損失を防止することができる。この第4の機能は、薬剤の損失を防ぎ、有毒な薬剤から環境を保護する。これらのバルブ機能、特に第3および第4の機能は、混合薬剤が遠位針インターフェース(810)を通って注入システム本体(34)の外に(例えば、投薬バッグまたは針のいずれかに)遠位方向に排出される前に、近位および遠位チャンバ(40、42)内の薬剤成分が完全に混合されるようにする。
【0039】
図9に示すように、遠位チャンバ(42)を混合および加圧した後にバルブ(820)が開いている場合、バルブ(820)を介して流体流路(822)が利用可能になる。バルブ(820)は、近位薬剤チャンバ(40)が潰れて、液体の第1の薬剤成分(252)が遠位薬剤チャンバ(42)内に移送された後に開くように構成されるものであってもよい(図7Iおよび図7Jを参照)。その時点では、液体の第1の薬剤成分(252)と非液体の第2の薬剤成分(254)が混合されて、混合された薬剤が、患者に送達するために注入システム本体(34)から排出される準備が整った状態となっている。
【0040】
図10は、いくつかの実施形態に係る、バルブ(820)が内部に配置されたデュアルチャンバ注入システム(800)をより詳細に示している。バルブ(820)は、非液体の第2の薬剤成分が通過するのを最小化および/または防止するために閉鎖構成にバイアスされるように構成された一対のポート(832)を規定する。また、ポート(832)は、液体(例えば、混合薬剤)がそこを通過するのを可能にするために、遠位薬剤チャンバ(42)内の圧力が増加すると(例えば、大気圧より大きくなると)、開放構成に変化するようにも構成されている。
【0041】
また、バルブ(820)は、注入システム本体(34)の周方向内面(34.1)と流体密シールを形成するように構成された周方向ガスケット(842)を規定する。ガスケット(842)による流体密シールと、非液体の第2の薬剤成分がバルブ(820)を通過して遠位針インターフェース(810)内に移動するのを最小化および/または防止するように一対のポート(832)がバイアスされる閉鎖構成とが組み合わされている。
【0042】
図10に示す実施形態では、バルブ(820)が、注入システム本体(34)の遠位端との係合によって、注入システム本体(34)に対して遠位方向に動くことが抑制されている。また、バルブ(820)は、遠位方向に延びる部材(834)も規定し、この部材が、細長い流体移送部材(50)を中心に配置し、かつ/または安定化するように構成されている。
【0043】
図11は、いくつかの実施形態に係る、閉鎖構成のバルブ(820)が内部に配置されたデュアルチャンバ注入システム(800)を詳細な縦断面図で示している。バルブ(820)は、図13に示すように、剛性部材(830)と弾性部材(840)とを含む。剛性部材(830)は、環状オレフィンコポリマーから作製(例えば、成形)することができる。剛性部材(830)は、一対のポート(832)、遠位方向に延びる部材(834)、および環状部分(836)を規定する。
【0044】
弾性部材(840)は、ゴム、熱可塑性エラストマー、ブチルゴムまたはポリイソプレンエラストマーなどの様々な弾性材料から作製(例えば、成形)することができる。弾性部材(840)は、周方向ガスケット(842)および環状フラップ(844)を規定する。周方向ガスケット(842)は、弾性部材(840)が剛性部材(830)の環状部分(836)の周囲を覆うように環状フラップ(844)の外周から延びている。周方向ガスケット(842)は、注入システム本体(34)の周方向内面(34.1)と流体密シールを形成するように構成されている。弾性部材(840)の環状フラップ(844)は、剛性部材(830)の一対のポート(832)を密封/閉鎖するようにバイアスされている。
【0045】
また、ポート(832)は、遠位薬剤チャンバ(42)内の圧力が上昇すると(例えば、大気圧より大きくなると)、液体(例えば、混合薬剤)がそこを通過するのを可能にする開放構成に変化するようにも構成されている。
【0046】
また、周方向ガスケット(842)は、バルブ(820)を注入システム本体(34)に結合するために、注入システム本体(34)の周方向内面(34.1)に対して摩擦力を及ぼすようにも構成されている。このため、バルブ(820)を注入システム本体(34)に結合するために、剛性部材(830)の遠位方向に延びる部材(834)と遠位針インターフェース(810)との間の干渉はもはや必要ではない。バルブ(820)を注入システム本体(34)に結合する周方向ガスケット(842)により、遠位針インターフェース(810)および遠位方向に延びる部材(834)における許容誤差がより大きくなる。さらに、そのような実施形態では、バルブ(820)によって、遠位方向に延びる部材(834)を注入システム本体(34)のほぼ中央に整列させることができる。遠位方向に延び部材(834)は、バルブ(820)が注入システム本体(34)内で遠位方向に移動し過ぎるのを防止し、それにより、本明細書で説明するように、バルブ(820)が開くための空間(828)を提供することができる。
【0047】
図12は、いくつかの実施形態に係る、開放構成のバルブ(820)が内部に配置されたデュアルチャンバ注入システム(800)を詳細な縦断面図で示している。バルブ(820)は、遠位薬剤チャンバ(42)内の圧力の上昇(例えば、大気圧以上であること)により、開放構成にある。圧力の上昇により、環状フラップ(844)が剛性部材(830)の環状部分(836)の遠位面から押しやられる。これにより、バルブ(820)を通る流体流路(822)が開かれる。流体流路(822)は、遠位薬剤チャンバ(42)から始まり、一対のポート(832)のうちの少なくとも一方を通り、環状フラップ(844)と剛性部材(830)の環状部分(836)との間の空間(824)に沿って、弾性部材(840)の環状フラップ(844)によって規定された中央開口部(846)から遠位方向に出る。このため、遠位薬剤チャンバ(42)内の圧力が上昇すると、環状フラップ(844)と剛性部材(830)の環状部分(836)との間の空間(824)が開き、バルブ(820)を通る流体流路(822)が開く。
【0048】
バルブ(820)を開くのに必要な圧力の大きさは、ポート(832)のサイズ、ポート(832)上の環状フラップ(844)の接触力、およびポート(832)に対する環状フラップ(844)の接触応力に限定されるものではないが、それらを含むバルブ(820)の様々な特徴を変更することによって調節/調整することができる。図13に示すバルブ(820)の実施形態では、剛性部材(830)の環状部分(836)が、ポート(832)に対する環状フラップ(844)の接触力および接触応力を増大させるために、遠位方向を向くドームを形成する。
【0049】
図14は、いくつかの形態に係るバルブ(820)の剛性部材(830’)を示している。剛性部材(830’)は、各ポート(832)の周りから遠位方向に延びる隆起した環状壁(838)を規定している。隆起した環状壁(838)は、環状フラップ(844)とポート(832)近傍の尖った壁縁との間の接触応力を増加させ、それにより、バルブ(820)を開くために遠位薬剤チャンバ(42)内で必要とされる圧力を増加させる。
【0050】
図15および図17は、いくつかの実施形態に係る、閉鎖構成のバルブ(1520)が内部に配置されたデュアルチャンバ注入システム(1500)を詳細な縦断面図で示している。バルブ(1520)は、剛性部材(1530)と弾性部材(1540)とを含む。剛性部材(1530)は、一対のポート(1532)、遠位方向に延びる部材(1534)、および環状部分(1536)を規定する。図16は、注入システム本体(34)の遠位針インターフェース(1510)に完全に挿入される前のバルブ(1520)を示している。
【0051】
弾性部材(1540)は、周方向ガスケット(1542)および環状フラップ(1544)を規定する。周方向ガスケット(1542)は、弾性部材(1540)が剛性部材(1530)の環状部分(1536)の周りを包むように環状フラップ(1544)の外周から延びている。周方向ガスケット(1542)は、注入システム本体(34)の遠位内面(34.2)と流体密シールを形成するように構成されている。弾性部材(1540)の環状フラップ(1544)は、剛性部材(1530)の一対のポート(1532)を密封/閉鎖するようにバイアスされている。
【0052】
また、ポート(1532)は、液体(例えば、混合薬剤)がそこを通過することを可能にするために、遠位薬剤チャンバ(42)内の圧力が上昇すると(例えば、大気圧より大きくなると)、開放構成に変化するようにも構成されている。
【0053】
剛性部材(1530)の遠位方向に延びる部材(1534)は、遠位針インターフェース(1510)と締まり嵌めを形成して、バルブ(1520)を注入システム本体(34)に結合するように構成されている。バルブ(1520)を注入システム本体(34)に結合するために、遠位方向に延びる部材(1534)と遠位針インターフェース(1510)との間の締まり嵌めを使用することにより、単一のバルブ(1520)を、様々な直径を有する複数の注入システム本体とともに使用することが可能になる。遠位薬剤チャンバ(42)内の圧力が上昇すると(例えば、大気圧を超えると)、環状フラップ(1544)が剛性部材(1530)の環状部分(1536)の遠位面から押し退けられる。これにより、図12に示す関連実施形態に示すように、バルブ(1520)を通る流体流路(図示せず)が開かれる。
【0054】
図15図17に示す実施形態では、バルブ(1520)を注入システム本体(34)に結合するための遠位方向に延びる部材(1534)と遠位針インターフェース(1510)との間の締まり嵌めにより、注入システム本体(34)に対してバルブ(1520)が正確に位置決めされる。遠位方向に延びる部材(1534)は、バルブ(1520)が注入システム本体(34)内で遠位方向に移動しすぎるのを防止し、それにより、本明細書で説明するように、バルブ(1520)が開くための空間(1528、図17を参照)を提供する。図18は、注入システム本体(34)内で遠位方向に移動しすぎたバルブ(1520’)を示している。その結果、空間(1528’)は、バルブ(1520’)が開くには不十分となっている。
【0055】
図19図22は、いくつかの実施形態に係る、バルブ(1920)が内部に配置されたデュアルチャンバ注入システム(1900)を示している。図19図20および図22は、バイアスされた閉鎖構成にあるバルブ(1920)を示している。図21は、開放構成のバルブ(1920)を示している。バルブ(1920)は、剛性部材(1930)および弾性部材(1940)を含む。剛性部材(1930)は、一対のポート(1932)と環状部分(1936)とを規定している。弾性部材(1940)は、周方向ガスケット(1942)と環状フラップ(1944)とを規定している。周方向ガスケット(1942)は、弾性部材(1940)が剛性部材(1930)の環状部分(1936)の周囲を包むように、環状フラップ(1944)の外周から延びている。周方向ガスケット(1942)は、注入システム本体(34)の周方向内面(34.1)と流体密シールを形成するように構成されている。
【0056】
弾性部材(1940)の環状フラップ(1944)は、剛性部材(1930)の一対のポート(1932)を密封/閉鎖するようにバイアスされている。また、ポート(1932)は、遠位薬剤チャンバ(42)内の圧力が上昇すると(例えば、大気圧より大きくなると)開放構成に変化し、液体(例えば、混合薬剤)がバルブ(1920)を通過することを可能にする流路(1922;図21を参照)を開放するようにも構成されている。
【0057】
また、周方向ガスケット(1942)は、バルブ(1920)を注入システム本体(34)に結合するために、注入システム本体(34)の周方向内面(34.1)に対して摩擦力を及ぼすようにも構成されている。また、弾性部材(1940)は、バルブ(1920)が開くのに十分な空間(1928)を提供するように構成された遠位方向を向く環状バンプ(1948;図22を参照)も規定している。
【0058】
図19図22に示すバルブ(1920)は、図7Oおよび図7Pに示すように流体移送部材(50)に流体結合された針の鋭利な遠位端(図示せず)が注入システム本体(34)の内部に安全に配置されるように流体移送部材(50)が注入システム本体(34)内に引き込み可能である安全注入システムとともに、使用するように構成されている。このため、バルブ(1920)は、流体移送部材(50)の長手方向の外面に対して流体密シールを形成するように構成された中央シール(1950;図22を参照)を含む。中央シール(1950)と流体移送部材(50)との間の流体密シールは、引き込み中に流体移送部材(50)が中央シール(1950)を通って引き込まれるのを可能にする一方で、物質がそこを通過するのを最小化または防止する軽い締まり嵌めである。また、中央シール(1950)は、組立中に流体移送部材(50)の近位端を中央シール(1950)内に案内するように構成された遠位方向を向く漏斗(1952)も含む。
【0059】
デュアルチャンバ注入システムにおけるインサートを有する例示的なブッシュ
図23図25は、いくつかの実施形態に係るプレフィルドデュアルチャンバ安全注入システム(2300)を示している。このシステム(2300)は、インサート(2312)が内部に配置されたストッパブッシュ(2310)を含む(図23および図24を参照)。インサート(2312)は、流体移送部材(2350)上に形成された肩部(2352)と相互作用して、流体移送部材(2350)に対する遠位ストッパ部材(2336)の遠位方向の移動に対する抵抗を提供するように構成された一対のフィンガ(2314)を含む(図24を参照)。
【0060】
インサート(2312)のフィンガ(2314)と肩部(2352)との間の相互作用により、近位薬剤チャンバ(40)から遠位薬剤チャンバ(42)への液体の第1の薬剤成分の移送中に、遠位ストッパ部材(2336)が移送位置に維持される。この相互作用により、ユーザは、遠位ストッパ部材(36)の早すぎる移動の危険性を最小限に抑えながら、液体を移送するためにプランジャ部材により広範囲の力を加えることができる。
【0061】
図23は、インサート(2312)を有するストッパブッシュ(2310)を有し、アライメント漏斗(2316)を規定する遠位ストッパ部材(36)を示している。アライメント漏斗(2316)は、流体移送部材(2350)の近位端をインサート(2312)内に案内するように構成されている。図23は、システム(2300)の保管/移送構成を示している。この構成では、流体移送部材(2350)の尖った近位端(2354)が、インサート(2312)に隣接し、かつ部分的にインサート内に配置されている。近位端(2354)を押して遠位ストッパ部材(2336)を貫通させるのに必要な力を調節するために、近位端(2354)およびインサート(2312)の様々な特性(例えば、幾何学的形状、材料など)を変更することができる。いくつかの実施形態では、近位端(2354)を押して遠位ストッパ部材(2336)を貫通させるのに必要な力は、約2ポンド~約5ポンドである。これにより、システム(2300)を使用不能にし得る遠位ストッパ部材(2336)の早すぎる移動の危険性を最小限に抑えながら、プレフィルドデュアルチャンバシステム(2300)を保管することが可能になる。
【0062】
図24は、システム(2300)の移送構成を示している。この構成では、プランジャ部材にユーザが与える力によって、遠位ストッパ部材(2336)が、流体移送部材(2350)の尖った近位端(2354)を越えて遠位方向に押されている。流体移送部材(2350)の溝(2656)の近位端は、近位薬剤チャンバ(40)内に配置され、それにより、近位薬剤チャンバ(40)から遠位薬剤チャンバ(42)に液体が移動することが可能となっている。この構成では、流体移送部材(2350)の肩部(2352)が、インサート(2312)のフィンガ(2314)に隣接して配置されている。肩部(2352)およびインサート(2312)の様々な特性(例えば、幾何学的形状、材料など)は、インサート(2312)のフィンガ(2314)を越えて肩部(2352)を押すのに必要な力を調節するために、変更することができる。いくつかの実施形態では、肩部(2352)をインサート(2312)を越えて押すのに必要な力が、約2ポンド~約5ポンドである。肩部(2352)とインサート(2312)との間の相互作用によりシステム(2300)が図24に示す移送構成で保持されている間、プランジャ部材に加えられる圧力は、近位薬剤チャンバ(40)から遠位薬剤チャンバ(42)への液体の移送を助ける。肩部(2352)とインサート(2312)との間の干渉に打ち勝つのに必要な力により、ユーザがプランジャ部材を押して液体の移送を助けるための自由度が広がる。これにより、液体が完全に移送される可能性が高まる。
【0063】
肩部(2352)は、肩部(2352)の遠位側の流体移送部材(2350)の部分よりも大きな直径を有する。このため、インサート(2312)のフィンガ(2314)が肩部(2352)を越えて遠位方向に移動すると、フィンガ(2314)は流体移送部材(2350)に対して大きな摩擦を生じない。さらに、流体移送部材(2350)に対するフィンガ(2314)の金属どうしの相互作用は、より再現性が高く、粒子の発生も少ない。いくつかの実施形態では、肩部(2352)を通過した後の流体移送部材(2350)にかかる力を最小限にさらに抑えるために、インサート(2312)が、ある程度の弾性を有する材料(例えば、焼きなまし処理されたステンレス鋼)から形成される。
【0064】
システム機能要件とユーザに与える美的印象との組合せに対応するように、予め設定された大きさの力を調節することができる。作動力が低すぎると、作動はするものの、ユーザが十分に軽く力を加えるのが難しくなり、ユーザが度を超える可能性がある。一方、力が高すぎると、ユーザはシステムを作動させるのが「難しすぎる」と感じる可能性がある。幸いなことに、様々なコンポーネントの特性を変更することにより、予め設定された大きさの力の範囲を「調整」することができる。
【0065】
上述した実施形態にはデュアルチャンバ安全注入システムが含まれるが、特許請求の範囲には他のマルチチャンバ安全注入システムも含まれる。3以上のチャンバを有するマルチチャンバ安全注入システムの場合、3以上のストッパ部材を注入システム本体(例えば、シリンジ本体、カートリッジ本体など)に挿入することにより、対応する数のチャンバを規定することができる。
【0066】
本明細書に開示および記載のプレフィルドデュアルチャンバ安全注入システムは、固定針を有するシリンジを含むが、本明細書に記載の様々な構成/実施形態(例えば、連続注入、デテントデュアルチャンバ、ネジ付きプランジャ部材、シールドおよびベント付き針カバー)は、カートリッジ、自動注入器、およびルアーコネクタ、移送パイプを有する針なしの注入システムとともに使用することができる。
【0067】
本発明の様々な例示的な実施形態が本明細書に記載されている。これらの例は、非限定的な意味で参照される。これらは、本発明のより広範に適用可能な態様を例示するために提供されている。本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載の本発明に様々な変更を加えることができ、均等物に置き換えることができる。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス行為またはステップを、本発明の目的、趣旨または範囲に適合させるために、多くの変更を加えることができる。さらに、当業者によって理解されるように、本明細書に記載および例示された個々のバリエーションの各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態の何れかの特徴から容易に分離され、またはそれらの特徴と組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。そのような変更はすべて、本開示に関連する特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0068】
対象となる診断または介入手順を実行するために説明したデバイスの何れかが、そのような介入を実行する際に使用するためにパッケージ化された組合せで提供されるものであってもよい。それらの供給「キット」は、使用説明書をさらに含み、そのような目的のために一般的に採用されるような無菌トレイまたは容器にパッケージ化されるものであってもよい。
【0069】
本発明は、対象のデバイスを用いて実行され得る方法を含む。その方法は、そのような好適なデバイスを提供する行為を含むことができる。そのような提供は、エンドユーザによって実行されるものであってもよい。すなわち、「提供する」という行為は、エンドユーザが、対象となる方法において、必要なデバイスを提供するために、取得、アクセス、アプローチ、配置、セットアップ、起動、電源投入またはその他の行為を行うことを単に必要とするだけである。本明細書に記載の方法は、論理的に可能な任意の順序で、あるいは記載された事象の順序で、記載された事象を実行することができる。
【0070】
本発明の例示的な態様は、材料の選択および製造に関する詳細とともに、上述されている。本発明の他の詳細に関しては、それらは、先に引用した特許および刊行物に関連して理解され得るだけでなく、当技術分野の当業者には一般的に知られているか、または理解され得るものである。例えば、当技術分野の当業者であれば、1または複数の潤滑性コーティング(例えば、ポリビニルピロリドン系組成物などの親水性ポリマー、テトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマー、PTFE、ETFE、親水性ゲルまたはシリコーン)を、必要に応じて、移動可能に結合された部分の比較的大きな境界面など、デバイスの様々な部分に関連して使用することができ、それにより例えば、器具の他の部分または近くの組織構造物に対するそのような対象の低摩擦操作または前進を容易にすることができることを理解するであろう。一般的にまたは論理的に採用される追加の行為に関して、本発明の方法に基づく態様についても同様のことが当てはまるであろう。
【0071】
さらに、様々な特徴を任意に組み込んだいくつかの例を参照して実施形態を説明してきたが、本発明は、本発明の各バリエーションに関して企図されるように記載または開示されたものに限定されるものではない。本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載の本開示に様々な変更を加えることができ、(本明細書に記載されているか、または簡潔にするために含まれていないかにかかわらず)均等物に置き換えることができる。さらに、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のすべての介在値と、記載した範囲内の他の記載した値または介在値が、本発明の範囲内に包含されることを理解されたい。
【0072】
また、記載した本発明のバリエーションの任意の特徴は、独立して、または本明細書に記載された特徴のうちの任意の1または複数の特徴と組み合わせて記載および主張され得ることが企図される。単数の項目への言及は、同じ項目が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書およびこれに付随する特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「said」および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を含む。言い換えれば、冠詞の使用は、本開示に付随する特許請求の範囲と同様に、上記説明における主題項目の「少なくとも1つ」を可能にする。そのような請求項は、任意選択的な要素を除外するように起草される場合があることに留意されたい。このため、この記述は、請求項の要素の列挙に関連して、「単独」、「のみ」などの排他的な用語を使用する先の記載、または「否定的な」限定を使用するための先の記載として機能することを意図している。
【0073】
そのような排他的な用語を使用することなく、本開示に付随する請求項における「含む」という用語は、所与の数の要素がそのような請求項に列挙されているかどうか、または特徴の追加がそのような請求項に記載された要素の性質を変化させるとみなされるかどうかにかかわらず、任意の追加要素を含むことを可能にするものとする。本明細書で具体的に規定されている場合を除き、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、請求項の有効性を維持しつつ、可能な限り広く一般的に理解される意味を与えるものとする。
【0074】
本発明の幅は、提供された実施例および/または主題の明細書に限定されるものではなく、むしろ、本開示に付随する請求項の文言の範囲によってのみ限定されるものである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
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図7K
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図7M
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図7O
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】