(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】回折光導波路表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20250117BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20250117BHJP
H10H 20/00 20250101ALI20250117BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
H01L33/00 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540578
(86)(22)【出願日】2022-10-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 CN2022126856
(87)【国際公開番号】W WO2023130806
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210000607.4
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523329323
【氏名又は名称】南昌虚擬現実研究院股▲フェン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】倪 名立
(72)【発明者】
【氏名】譚 志先
(72)【発明者】
【氏名】李 建軍
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
5F142
【Fターム(参考)】
2H199CA12
2H199CA30
2H199CA53
2H199CA54
2H199CA67
2H249AA02
2H249AA12
2H249AA43
2H249AA60
2H249AA62
5F142DB35
5F142DB38
5F142DB40
5F142DB42
(57)【要約】
本発明は、AR光導波路表示分野に関し、具体的に回折光導波路表示装置に関し、それは、回折格子を含み、前記回折格子の一方側に導波路シートが設置され、前記回折格子の他方側に画像ソースが設置され、画像ソースにより射出された光ビームは、前記回折格子を通過して導波路シート内に入り、前記回折格子は、周期的に分布する液晶マイクロカプセルを含み、前記液晶マイクロカプセルは、中空球形であり、内径は、10~60 nmであり、表面の厚さは、5~30 nmであり、前記液晶マイクロカプセルは、s偏光とp偏光に対する回折効率を向上させ、s偏光とp偏光をいずれも導波路シート内で全反射させることを可能にすることで、導波路シートにより出力された画像の解像度を向上させる作用を果たすために用いられる。本発明による技術は、画像ソースの解像度を直観的、具体的、数値的に向上させることができ、最大輝度、分解能、環境光コントラスト、エネルギー消費、耐用年数、応答速度と熱安定性などの態様においても優位性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子を含み、前記回折格子の一方側に導波路シートが設置され、前記回折格子の他方側に画像ソースが設置され、画像ソースにより射出された光ビームは、前記回折格子を通過して導波路シート内に入る回折光導波路表示装置であって、前記回折格子は、周期的に分布する液晶マイクロカプセルを含み、前記液晶マイクロカプセルは、中空球形であり、内径は、10~60 nmであり、表面の厚さは、5~30 nmであり、前記液晶マイクロカプセルは、s偏光とp偏光に対する回折効率を向上させ、s偏光とp偏光をいずれも導波路シート内で全反射させることを可能にすることで、導波路シートにより出力された画像の解像度を向上させる作用を果たすために用いられる、ことを特徴とする回折光導波路表示装置。
【請求項2】
前記液晶マイクロカプセルにおける液晶分子は、いずれも前記液晶マイクロカプセルの表面に垂直であり、且つ前記液晶マイクロカプセルの周方向に分布する、ことを特徴とする請求項1に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項3】
複数の前記液晶マイクロカプセルの方向は、無秩序に分布し、単一の前記液晶マイクロカプセルにおける液晶分子方向は、互いに平行して分布する、ことを特徴とする請求項1に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項4】
前記回折格子内に複数の液晶マイクロカプセル群が設置され、複数の前記液晶マイクロカプセル群は、前記回折格子の長手方向に沿って並列して設置され、単一の前記液晶マイクロカプセル群に並列して設置された複数の前記液晶マイクロカプセルが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項5】
前記液晶マイクロカプセル群における複数の前記液晶マイクロカプセルの並べ方向と前記画像ソースの射出方向とは、相対的に傾斜して設置される、ことを特徴とする請求項4に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項6】
前記回折格子は、透明基材をさらに含み、前記液晶マイクロカプセルは、二つの前記透明基材の間に設置され、二つの前記透明基材の間にポリマーが設置され、前記画像ソースは、一方側の前記透明基材から入射し、他方側の前記透明基材から射出し、且つ前記導波路シート内に入る、ことを特徴とする請求項4に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項7】
前記回折格子は、二つ設置され、前記導波路シートの入射端と出射端にそれぞれ設置され、前記画像ソースの射出光ビームの方向は、前記導波路シートの入射端に正対する、ことを特徴とする請求項1に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項8】
前記画像ソースは、ミクロン発光ダイオードである、ことを特徴とする請求項1に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項9】
前記液晶マイクロカプセルの向上した解像度は、環境光コントラスト値である、ことを特徴とする請求項1に記載の回折光導波路表示装置。
【請求項10】
前記液晶マイクロカプセルは、シェル層材料を含み、前記液晶分子は、前記シェル層材料内に設置され、前記シェル層材料は、アクリレート系モノマーにより重合されて形成される、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の回折光導波路表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2022年01月04日に中国特許局で提案され、出願番号が202210000607.4であり、発明の名称が「回折光導波路表示装置」である中国特許出願の優先権を主張しており、その内容のすべては、援用により本出願に取り込まれる。
【0002】
本発明は、AR光導波路表示分野に属し、具体的に回折光導波路表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
光導波路表示技術は、AR分野の重要な発展方向である。ホログラム格子は、通常、コヒーレントレーザーによって感光材料に対してホログラフィー露光を行うことによって製造され、回折効率が高く、コストが低く、大量生産しやすいなどの利点を備えるため、ホログラム格子に基づく光導波路AR表示への応用が期待されている。ポリマー分散液晶ホログラム格子は、ポリマー/液晶複合材料に基づくホログラム格子であり、光学性能に優れているだけでなく、さらに電気光学応答性を備え、業界で広く注目され、光導波路AR表示において実用化の可能性が高い。一方で、ミクロン発光ダイオード(Micro-LED)は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Light-Emitting Diode、OLED)と比べ、最大輝度、分解能、環境光コントラスト、エネルギー消費、耐用年数、応答速度と熱安定性などの態様において優位性を有し、すでにAR表示の主流画像ソースになった。将来、ポリマー分散液晶ホログラム格子、即ちPDLC-VHGと、ミクロン発光ダイオードとの組み合わせは、AR光導波路表示の主流技術案になることが期待されている。
【0004】
回折光導波路表示装置の環境光コントラスト(Ambient Light Contrast、ACR)は、表示効果に関する主要性能パラメータである。従来の研究から明らかになり、ACR>3である場合に、表示された画像は、比較的鮮明であり、ACR>5である場合に、画像表示効果は、人を満足させ、ACR>10であれば比較的目立つ表示効果を取得することができ(具体的にLight-Sci.Appl.2021、10、216を参照できる)、ACRの計算方式は、
であり、
ここで、L
inとL
AMは、それぞれ入力結合光強度と環境光強度でありであり、η
inとη
outは、それぞれ入力結合格子と出力結合格子の回折効率であり、Tは、導波路レンズの光線透過率である。式(1)から分かるように、入力結合格子と出力結合格子の回折効率が高いほど、ACRは、高くなり、表示効果は、良くなる。
【0005】
図4において、現在では、従来のPDLC-VHGは、一般的にはp偏光のみに対して比較的高い回折効率を有し、s偏光に対して回折効率が比較的低く、これは、液晶分子が一般的には格子ベクトル方向に平行して並ぶためであり(Mater. Chem.Front. 2017, 1, 294; Composites Part B 2020, 199, 108290を参照)、これは、PDLC-VHGをミクロン発光ダイオードのような非偏光を発射する画像ソースと組み合わせる時に、p偏光のみが結合されて光導波路シートに入った後にさらに結合されて出射して人の目に入ることを引き起こし、大部分のs偏光は、直接に透過して浪費され(
図3)、ACRが比較的低いことを引き起こす。そのため、s光の偏光方向に対して敏感ではない光導波路表示装置を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、画像ソースにより発されたs偏光とp偏光に対していずれも比較的高い回折効率を有することができるため、比較的高い環境光コントラストを有し、それによって導波路シートの出射端の解像度を向上させる回折光導波路表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記発明目的を実現するために、本発明が採用した技術案は、以下のとおりである。
【0008】
回折光導波路表示装置は、回折格子を含み、前記回折格子の一方側に導波路シートが設置され、前記回折格子の他方側に画像ソースが設置され、画像ソースにより射出された光ビームは、前記回折格子を通過して導波路シート内に入り、前記回折格子は、周期的に分布する液晶マイクロカプセルを含み、前記液晶マイクロカプセルは、中空球形であり、内径は、10~60 nmであり、表面の厚さは、5~30 nmであり、前記液晶マイクロカプセルは、s偏光とp偏光に対する回折効率を向上させ、s偏光とp偏光をいずれも導波路シート内で全反射させることを可能にすることで、導波路シートにより出力された画像の解像度を向上させる作用を果たすために用いられる。
【0009】
さらに、前記液晶マイクロカプセルにおける液晶分子は、いずれも前記液晶マイクロカプセルの表面に垂直であり、且つ前記液晶マイクロカプセルの周方向に分布する。
【0010】
さらに、複数の前記液晶マイクロカプセルの方向は、無秩序に分布し、単一の前記液晶マイクロカプセルにおける液晶分子方向は、互いに平行して分布する。
【0011】
さらに、前記回折格子内に複数の液晶マイクロカプセル群が設置され、前記液晶マイクロカプセル群内に並列して設置された複数の前記液晶マイクロカプセルが設置され、複数の前記液晶マイクロカプセル群は、前記回折格子の長手方向に沿って並列して設置される。
【0012】
さらに、前記液晶マイクロカプセル群における複数の前記液晶マイクロカプセルの並べ方向と前記画像ソースの射出方向とは、相対的に傾斜して設置される。
【0013】
さらに、前記回折格子は、透明基材をさらに含み、前記液晶マイクロカプセルは、二つの前記透明基材の間に設置され、二つの前記透明基材の間にポリマーが設置され、前記画像ソースは、一方側の前記透明基材から入射し、他方側の前記透明基材から射出し、且つ前記導波路シート内に入る。
【0014】
さらに、前記回折格子は、二つ設置され、前記導波路シートの入射端と出射端にそれぞれ設置され、前記画像ソースの射出光ビームの方向は、前記導波路シートの入射端に正対する。
【0015】
さらに、前記画像ソースは、ミクロン発光ダイオードである。
【0016】
さらに、前記液晶マイクロカプセルの向上した解像度は、環境光コントラスト値である。
【0017】
さらに、前記液晶マイクロカプセルは、シェル層材料を含み、前記液晶分子は、前記シェル層材料内に設置され、前記シェル層材料は、アクリレート系モノマーにより重合されて形成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0019】
1、従来の技術で採用した通常のホログラフィー光重合誘起相分離法方法によって製造されたPDLC-VHGを回折格子とする場合に、その光導波路AR表示装置がp偏光のみに対して比較的高い回折効率を有し、環境光コントラストが比較的低いため、その解像度が低いことを引き起こすことと比べ、本発明により採用された回折格子は、画像ソースにより発されたs偏光とp偏光に対していずれも比較的高い回折効率を有するため、比較的高い環境光コントラストを有し、導波路シートの出射端の解像度を向上させる。
【0020】
2、本発明の回折格子によって液晶マイクロカプセルの表面に垂直となるように液晶分子を設置し、且つ周方向に分布する形式、又は複数の液晶マイクロカプセルの方向が無秩序に分布し、単一の液晶マイクロカプセルにおける液晶分子方向が互いに平行する形式を採用し、いずれの方式を採用しても複数の液晶分子と画像ソースの入射方向との間は、いつも不確定、無秩序、ランダムな角度を呈するため、本発明における回折格子、即ちPDLCC-VHGは、光の偏光方向に対して敏感ではない。
【0021】
3、本発明は、Micro-LEDを画像ソースとして採用することによって、LCD、OLEDと比べ、最大輝度、分解能、環境光コントラスト、エネルギー消費、耐用年数、応答速度と熱安定性などの態様において優位性を有する。
【0022】
4、本発明は、環境光コントラスト値を向上させることによって画像ソースの解像度を向上させ、画像ソースの解像度を直観的、具体的、数値的に向上させることができ、実際に生産と実施する時に、環境光コントラスト値を具体的に計算することができ、それによって表示製品の解像度の高さを予め見積もり、さらに環境光コントラスト値に基づいて表示製品に対して事前に分類及び生産レイアウトを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】従来の技術における光導波路表示装置概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下は、本発明の実施例における図面1~4を結び付けながら、本発明の実施例における技術案を明瞭且つ完全に記述し、明らかに、記述された実施例は、ただ本発明の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。特に明示されていない限り、実施例では用いられた技術手段は、当業者にとって周知の通常の手段である。
【0025】
本発明の記述において、理解すべきこととして、用語である「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などにより指示される方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本発明の記述を容易にするためのものに過ぎず、言及された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成して操作しなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本発明に対する制限として理解されてはならない。
【0026】
図1に示すように、回折光導波路表示装置は、回折格子を含み、回折格子の一方側に導波路シートが設置され、前記回折格子の他方側に画像ソースが設置され、画像ソースにより射出された光ビームは、回折格子を通過して導波路シート内に入り、回折格子は、周期的に分布する液晶マイクロカプセルを含み、液晶マイクロカプセルは、s偏光とp偏光に対する回折効率を向上させ、s偏光とp偏光をいずれも導波路シート内で全反射させることを可能にすることで、導波路シートにより出力された画像の解像度を向上させる作用を果たすために用いられる。
【0027】
ここで、導波路シートは、従来の技術であり、画像ソースを伝導するために用いられ、画像ソースにより射出された光ビームは、先ず回折格子を通過して導波路シート内に入り、回折格子は、PDLCC-VHGであり、PDLCC-VHGは、本発明では回折格子を改良した後の具体的な命名であり、光ビームが入射した後に、隣接する周期的に分布する液晶マイクロカプセルの間から回折し、画像ソース光ビームにおけるs偏光とp偏光に対して有効回折を発生させる作用を果たし、さらに画像ソース光ビームを傾斜する角度で導波路シートの入射端に入射させ、すると、画像ソース光ビームは、導波路シート内で全反射し、且つ導波路シートの出射端から射出し、プロセス全体において、回折格子は、画像ソースにおけるs偏光とp偏光をいずれも有効回折させるため、s偏光が導波路シートを直接に透過、直射することによって導波路シートから射出した画像ソース光ビームが損失することを回避する。
【0028】
従来の技術で採用した通常のホログラフィー光重合誘起相分離法方法によって製造されたPDLC-VHGを回折格子とする場合に、その光導波路AR表示装置がp偏光のみに対して比較的高い回折効率を有し、環境光コントラストが比較的低いため、最終的に結像の解像度が低いことを引き起こすことと比べ、本発明により採用された回折格子は、画像ソースにより発されたs偏光とp偏光に対していずれも比較的高い回折効率を有するため、比較的高い環境光コントラストを有し、導波路シートの出射端の解像度を向上させる。
【0029】
図4に示すように、従来の技術におけるPDLC-VHGが通常ホログラフィー光重合誘起相分離法によって製造されるため、相分離が完了した後に、液晶分子は、一般的には格子ベクトル方向に沿って配向し、即ち格子の長さに平行する方向に沿って配向し、液晶分子が格子ベクトル方向に沿って配向することを引き起こす原因は、比較的複雑であり(Annu. Rev. Mater. Sci. 2000, 30, 83を参照)、その具体的な発生原因は、以下のとおりである。
【0030】
1、液晶分子は、異方性の液晶ドロップレットに押圧され、
2、液晶分子は、ポリマーと液晶との間の界面に垂直にアンカーされ、
3、光重合体積は、液晶ドロップレットを収縮して押圧する。
【0031】
本発明により採用されたPDLCC-VHGは、上記要素によって液晶分子配向がPDLC-VHGにおける配向と同じであることを引き起こすことを回避するために、本発明は、PDLCC-VHGを製造する時に、先ずシェル層材料で液晶分子を被覆し、被覆された後の液晶分子配向は、外界要素の影響を受けず、それによってホログラフィー露光した後に格子ベクトル方向に沿って配向することを回避する。
【0032】
本発明により採用された液晶マイクロカプセルについて、液晶分子配向方式は、以下の方式を含むが、それらに限らない。
【0033】
第一の配向方式は、
図2に示すように、液晶マイクロカプセルにおける液晶分子は、いずれも液晶マイクロカプセルの表面に垂直であり、且つ液晶マイクロカプセルの周方向に分布し、即ち液晶分子は、液晶マイクロカプセルの径方向に設置され、液晶分子は、カプセル壁の配向に垂直であり、その欠陥は、液晶マイクロカプセルの中心に位置し、このような液晶マイクロカプセルは、各方向から入射した光に対して屈折率が同じであり、s偏光とp偏光に対して比較的高い回折効率を有する。
【0034】
第二の配向方式は、以下のとおりである。複数の液晶マイクロカプセルの方向は、互いに無秩序、ランダムに分布し、単一の液晶マイクロカプセルにおける液晶分子方向は、互いに平行して分布し、単一の液晶マイクロカプセルにおいて、液晶分子は、ある方向に完全に平行して配向するが、各液晶マイクロカプセルの配向は、また無秩序、ランダムであるため、巨視的には、すべての液晶マイクロカプセルは、依然として等方性であり、依然としてs偏光とp偏光に対して比較的高い回折効率を有する。
【0035】
なお、さらに複数の液晶マイクロカプセルとその内部の液晶分子がいずれも完全に無秩序に分布する方式を採用してもよく、即ち単一の液晶マイクロカプセルにおける液晶分子は、無秩序、ランダムに分布し、すべての液晶マイクロカプセルの方向も互いに無秩序、ランダムに分布し、この方式は、巨視的には、上記第二の方式の原理と同じであり、依然として等方性を有し、s偏光とp偏光に対して依然として比較的高い回折効率を有する。
【0036】
本発明は、上記方式におけるいずれか一つを採用しても、複数の液晶分子と画像ソースの入射方向との間は、いつも不確定、無秩序、ランダムな角度を呈するため、本発明における回折格子、即ちPDLCC-VHGは、光の偏光方向に対して敏感ではなく、従来の技術により採用されたPDLC-VHGと比べ、本発明は、p偏光とs偏光に対する回折効率を極めて向上させる。
【0037】
本発明におけるPDLCC-VHGは、具体的に製造される時に、液晶マイクロカプセルを光重合モノマー、光開始剤と混合した後に、ホログラフィー露光の方法によって、ポリマー分散液晶マイクロカプセルホログラム格子、即ちPDLCC-VHGを製造することができる。
【0038】
具体的には、液晶マイクロカプセルは、シェル層材料を含み、液晶分子は、シェル層材料内に設置され、シェル層材料は、アクリレート系モノマーにより重合されて形成され、液晶マイクロカプセルは、エマルジョン重合法によって製造することができ、具体的には、熱開始剤、単官能性のアクリレート系モノマーと多官能性のアクリレート系モノマー組成物をシェル層材料前駆体として、液晶を加えた後に、ブロック共重合体を界面活性剤として、相転移温度乳化法を利用して水中油マイクロエマルジョンを形成し、さらに加熱してアクリレート系モノマーをシェル層に重合して形成し、ナノサイズの液晶マイクロカプセルを製造して得ることができる。
【0039】
液晶マイクロカプセルにおける液晶分子の配列は、界面活性剤の濃度を変えることによってコントロールすることができ、その原理は、界面活性剤が主にポリマーシェル層内に分布し、液晶分子をシェル層の表面に垂直にアンカーするように促すことができることである。本発明の液晶マイクロカプセルについて、界面活性剤の濃度が2wt%よりも低い場合に、液晶分子は、互いに平行して分布し、界面活性剤の濃度が2wt%以上である場合に、液晶分子は、周方向に分布し、即ち本発明における液晶分子の分布を形成する。
【0040】
具体的には、液晶マイクロカプセルは、中空球形構造を採用し、各方向上で、画像ソースにおけるp偏光とs偏光に対していずれも有効回折を発生させることができ、具体的に実施する時に導波路シート及び画像ソースを容易に配置し、画像ソースの射出光ビームの角度と精度の需要を低減させ、その内径は、10~60 nmであり、表面の厚さは、5~30 nmであり、シェル層材質は、架橋ポリマー材料又は無機材料である。
【0041】
なお、液晶マイクロカプセルにおける液晶は、ネマティック液晶であり、商品化マークは、E7、THT-2、HH-02-1、HH-03-1、XEP-02-2、HH-04-4、HH-05-02、P36-9、P38-8、P36-204、P80-01、P42-1、P92-1のうちの一つである。
【0042】
さらに、回折格子内に複数の液晶マイクロカプセル群が設置され、液晶マイクロカプセル群内に並列して設置された複数の液晶マイクロカプセルが設置され、複数の液晶マイクロカプセル群は、回折格子の長手方向に沿って並列して設置される。
【0043】
図2に示すように、図における水平方向上に、即ち回折格子の長手方向上に、複数の液晶マイクロカプセル群が並列し、周期的に設置され、隣接する二つの液晶マイクロカプセル群の間に隙間があり、各単独の液晶マイクロカプセル群に
図2において上下方向上に並列し、周期的に設置された複数の液晶マイクロカプセルがいずれも含まれる。
【0044】
さらに、液晶マイクロカプセル群における複数の液晶マイクロカプセルの並べ方向と画像ソースの射出方向とは、相対的に傾斜して設置される。
【0045】
具体的には、画像ソース光ビームは、傾斜して回折格子に入射し、単一の液晶マイクロカプセル群における液晶マイクロカプセルの並べ方向を画像ソースの光ビーム方向と相対的に傾斜する構造に設置することができる。
【0046】
さらに、回折格子は、透明基材をさらに含み、液晶マイクロカプセルは、二つの透明基材の間に設置され、二つの透明基材の間にポリマーが設置され、画像ソースは、一方側の透明基材から入射し、他方側の透明基材から射出し、且つ導波路シート内に入る。
【0047】
具体的には、透明基材とポリマーは、いずれも従来の技術であり、画像ソースにより射出された光ビームは、透明基材とポリマーを通過でき、回折格子全体の厚さは、2~50μm、格子の周期は、500 nm~10μmであり、ポリマー基体の屈折率は、1.40~1.60であり、回折格子のp偏光とs偏光に対する回折効率の比は、1.1:1.0~1.0:1.1である。
【0048】
さらに、回折格子は、二つ設置され、導波路シートの入射端と出射端にそれぞれ設置され、画像ソースの射出光ビームの方向は、導波路シートの入射端に正対する。
【0049】
具体的には、画像ソースの射出光ビームの導波路シート内に入った端は、導波路シートの入射端であり、導波路シート上の入射端から離れる端は、出射端である。
【0050】
図1に示すように、本発明の構造全体上の具体的な配置は、以下のとおりである。
【0051】
導波路シートの入射端と出射端に二つの回折格子、即ちPDLCC-VHGがそれぞれ配置され、導波路シートと回折格子は、平行して設置され、二つの回折格子は、並列して設置され、且つ導波路シートの同一方側に設置され、回折格子における複数の液晶マイクロカプセル群は、導波路シートに平行する方向に沿って分布し、単一の液晶マイクロカプセル群における液晶マイクロカプセルは、画像ソースの光ビーム方向と相対的に傾斜して並び、画像ソースの光ビーム射出方向は、導波路シートに垂直である。
【0052】
なお、二つの回折格子における液晶マイクロカプセルは、対称に設置され、導波路シートの出射端で画像ソースの光ビームを効果的に出力することができる。
【0053】
さらに、画像ソースは、Micro-LEDであり、Micro-LED表示は、LCD、OLEDと比べ、最大輝度、分解能、環境光コントラスト、エネルギー消費、耐用年数、応答速度と熱安定性などの態様において優位性を有し、すでにAR表示の主流画像ソースになり、本発明は、上記いずれか一つの画像ソース、又は言及されていない画像ソースを採用するかにかかわらず、いずれもその最終的に出力された画像の解像度を向上させることができる。
【0054】
さらに、液晶マイクロカプセルの向上した解像度は、環境光コントラスト値である。
【0055】
環境光コントラスト値、即ちACR値、それは、画像表示効果と緊密な関係があるとともに、ACR値は、また入力結合格子と出力結合格子の回折効率と直接関係があるため、ACR値によって画像ソースの結像の解像度を判断することで、結像効果を直観的に、具体的に、データ化して判断することができ、実際に生産と実施する時に、ACR値を具体的に計算することができ、それによって表示製品の解像度の高さを予め見積もり、さらにACR値に基づいて表示製品に対して事前に分類及び生産レイアウトを行うことができる。
【0056】
以下で、二つの実験データの具体的な比較プロセスによって本発明における回折格子、即ちPDLCC-VHGを具体的に説明し、従来の技術におけるPDLC-VHGと比べて得られた具体的な顕著な進歩は、以下のとおりである。
【0057】
実験例:
本実験例は、本発明における回折格子、即ちPDLCC-VHGを採用した。
【0058】
回折光導波路装置は、Micro-LED画像ソース、PDLCC-VHG入力結合格子、PDLCC-VHG出力結合格子と導波路シートを含んだ。
【0059】
図1に示すように、入射端でPDLCC-VHGによってMicro-LED画像ソースにより表示された画像を導波路シートに入力結合し、入力結合光の輝度は、1200 nitであり、導波路シート内で全反射を行った後に、出射端でさらにPDLCC-VHGによって導波路シートから出力結合した。
【0060】
採用されたPDLCC-VHGの厚さは、10μmであり、格子の周期は、800 nmであり、ポリマー基体の屈折率は、1.50であり、液晶マイクロカプセルの内径は、30 nmであり、シェル層の厚さは、10 nmであり、シェル層材料は、架橋のポリアクリレートであり、液晶は、THT-2であった。
【0061】
PDLCC-VHGのs偏光とp偏光に対する回折効率は、それぞれ88%と89%であった。
【0062】
格子が異なる偏光に対して異なる回折効率を有するため、ACRを計算する時に、式(1)を
に変更する必要があり、
ここで、L
insとL
inpは、それぞれsとp偏光の輝度であり、Micro-LED画像ソースに対して、L
ins=L
inpであり、η
insとη
outsは、それぞれ入力結合、出力結合格子のs偏光に対する回折効率であり、η
inpとη
outpは、入力結合、出力結合格子のp偏光に対する回折効率であった。
【0063】
式(2)に基づいて、環境光輝度が300 nitであり、光導波路シートの光線透過率が90%である場合に、本実施例のACRは、4.5であり、表示効果は、比較的鮮明であった。
【0064】
比較例:
本比較例は、従来の技術における回折格子、即ちPDLC-VHGを採用した。
【0065】
回折光導波路装置は、Micro-LED画像ソース、PDLC-VHG入力結合格子、PDLC-VHG出力結合格子と導波路シートを含んだ。
【0066】
入射端でPDLC-VHGによってMicro-LED画像ソースにより表示された画像を導波路シートに入力結合し、入力結合光の輝度は、1200 nitであり、導波路シート内で全反射を行った後に、出射端でさらにPDLC-VHGによって導波路シートから出力結合した。
【0067】
採用されたPDLC-VHGの厚さは、10 μmであり、格子の周期は、800 nmであり、ポリマー基体の屈折率は、1.50であり、液晶は、E7であった。
【0068】
PDLC-VHGのs偏光とp偏光に対する回折効率は、それぞれ25%と89%であった。式(2)に基づいて計算し、環境光輝度が300 nitであり、光導波路シートの光線透過率が90%である場合に、ACRは、2.9であり、表示効果は、解像度規格に達しなかった。
【0069】
上記実験例と比較例との比較から分かるように、本発明は、従来の技術と比べ、同じ画像ソース、格子の厚さ、格子の周期、ポリマー基体の屈折率、液晶の種類、環境光輝度、光導波路シートの光線透過率及び他の環境要素で、本発明の最終的に出力された画像ソースACR値は、従来の技術におけるACR値よりも遥かに大きく、従来の技術により出力された画像よりも遥かに鮮明であり、これで分かるように、本発明における回折格子は、画像ソースにより出力された解像度の高さを顕著に向上させた。
【0070】
本発明の具体的には完全な作動フローは、以下のとおりである。
【0071】
図1と
図2に示すように、Micro-LED画像ソースの射出光ビームについて、光ビームは、先ず回折格子、即ちPDLCC-VHG内に入り、光ビームにおけるs偏光とp偏光が回折格子を通過する時に、隣接する二つの液晶マイクロカプセル群の間の光ビームは、回折作用を発生させ、さらにs偏光とp偏光を傾斜する角度で導波路シートの入射端内に入射させるとともに、導波路シート内で全反射し、最終的に導波路シートの出射端の回折格子から出力し、プロセス全体においてs偏光とp偏光に対して有効回折を同時に発生させ、s偏光の損失を回避し、出力された画像の解像度を向上させる。
【0072】
以上に記載の実施例は、本発明の好ましい方式を記述するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではなく、本発明の設計精神から逸脱しない前提で、当業者が本発明の技術案に対して行った様々な変形、変更、修正、置き換えは、いずれも本発明の特許請求の範囲により決定された保護範囲に属すべきである。
【0073】
最後に説明すべきこととして、以上の各実施例は、本出願の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではない。前述した各実施例を参照しながら、本出願について詳細に説明したが、当業者にとって、理解すべきこととして、彼らは、依然として前述した各実施例に記載された技術案に対して修正を行い、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して同等の置き換えを行ってもよく、これらの修正又は置き換えは、該当する技術案の本質を本出願の各実施例の技術案の範囲から離れさせない。
【国際調査報告】