(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】皮膚の増殖性疾患及び他の皮膚症状を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20250117BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/145 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20250117BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K38/06
A61K31/198
A61K31/145
A61P43/00 121
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540600
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 US2023010202
(87)【国際公開番号】W WO2023133199
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514259808
【氏名又は名称】アシンメトリック セラピューティクス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フォード,ジョン,ピー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
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4C206GA18
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4C206MA83
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
増殖性皮膚疾患を治療する方法は、アロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む医薬外用製剤を用いて、治療を必要とする患者を治療することを含み、対応する製剤が提供される。幾つかの実施形態において、医薬外用製剤は、皮膚細胞の増殖性疾患に関わる細胞の増殖を遅らせる。皮膚症状を治療する方法は、アロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む医薬外用製剤を用いて、治療を必要とする患者を治療することを含む。外用製剤は、アロプリノール又はその薬学的に許容される塩と、グルタチオン又はその薬学的に許容される塩と、を含んでいてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬外用製剤。
【請求項2】
アロプリノール又はその薬学的に許容される塩と、補助剤又はその薬学的に許容される塩と、を含む医薬外用製剤。
【請求項3】
前記補助剤が、チオールである、請求項2に記載された外用製剤。
【請求項4】
前記チオールが、グルタチオン、N-アセチルシステイン、システイン、テアニン、シスチン、β-メルカプトエタノール及びジチオスレイトールからなる群より選択される、請求項3に記載された外用製剤。
【請求項5】
前記チオールが、グルタチオンである、請求項4に記載された外用製剤。
【請求項6】
担体をさらに含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された外用製剤。
【請求項7】
前記アロプリノール又はその薬学的に許容される塩の量が、約1重量%から約10重量%である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された医薬外用製剤。
【請求項8】
前記チオールが、グルタチオン又はその薬学的に許容される塩であり、約1重量%から約10重量%の量で存在する、請求項7に記載された医薬外用製剤。
【請求項9】
前記製剤が、無水、水性又は乳剤である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載された医薬外用製剤。
【請求項10】
有効成分が、アロプリノール及びグルタチオン又はそれらの薬学的に許容される塩のみである、請求項5から請求項9のいずれか一項に記載された外用製剤。
【請求項11】
一種以上の追加の有効成分をさらに含む、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載された外用製剤。
【請求項12】
アロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む医薬外用製剤を用いて、治療を必要とする患者を治療することを含む、皮膚疾患の治療方法。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載された外用製剤を用いて、治療を必要とする患者を治療することを含む、皮膚疾患の治療方法。
【請求項14】
前記皮膚疾患が、増殖性皮膚疾患である、請求項12又は請求項13に記載された方法。
【請求項15】
前記増殖性皮膚疾患が、乾癬である、請求項14に記載された方法。
【請求項16】
前記増殖性皮膚疾患が、皮膚の乾癬、ケラトアカントーマ、酒さ、ケロイド、手足症候群及びがんからなる群より選択される、請求項14に記載された方法。
【請求項17】
前記皮膚疾患が、デュピュイトラン拘縮である、請求項13に記載された方法。
【請求項18】
前記皮膚疾患が、アレルギー反応である、請求項13に記載された方法。
【請求項19】
前記アレルギー反応が、皮膚のアレルギー反応である、請求項18に記載された方法。
【請求項20】
前記増殖性皮膚疾患が、皮膚細胞の増殖性疾患である、請求項14に記載された方法。
【請求項21】
前記医薬外用製剤が、前記皮膚細胞の増殖性疾患に関わる細胞の増殖を遅らせる、請求項20に記載された方法。
【請求項22】
医薬外用製剤が、前記皮膚細胞の増殖性疾患の少なくとも一つの症状を緩和する、請求項21に記載された方法。
【請求項23】
前記治療は、1日あたりに少なくとも一回行われる、請求項12から請求項22のいずれか一項に記載された方法。
【請求項24】
前記治療が、30日以上行われる、請求項23に記載された方法。
【請求項25】
アロプリノール及びグルタチオンを含む医薬組成物。
【請求項26】
一種以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項25に記載された医薬組成物。
【請求項27】
アロプリノール及びグルタチオンを、治療を必要とする患者へと投与することを含む、疾患の治療方法。
【請求項28】
請求項25又は請求項26に記載された医薬組成物を、治療を必要とする患者へと投与することを含む、疾患の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への言及]
本出願は、2022年1月5日に出願された米国仮特許出願第63/266,433号と2022年11月2日に出願された米国仮特許出願第63/382,008号との優先権及びその利益を主張するものであり、これらの出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本実施形態は、皮膚症状の治療の分野に向けられている。より詳細には、本実施形態は、例えば、乾癬及びケラトアカントーマ等の細胞増殖の増加が現れる疾患を、局所治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な原因を有する多くの皮膚疾患は、皮膚の特定の細胞の増殖速度の増加を伴って現れる。このような皮膚疾患には、乾癬、ケラトアカントーマ、酒さ及びケロイドが含まれる。尋常性乾癬としても知られる皮膚の乾癬は、米国だけでも毎年300万人以上の患者が罹患している一般的な病気である。皮膚の乾癬は、慢性の炎症性疾患であり、発疹、乾き、亀裂、かさつき(flakiness)、皮膚剥脱、小さなこぶ、厚み、および/または発赤として皮膚に現れることがある。滴状乾癬は、尋常性乾癬よりも一般的ではないが、より急性の乾癬の別の型であり、典型的には涙滴型の小さな赤い斑点として現れる。
【0004】
皮膚の乾癬に対して従来の局所治療には、コルチコステロイド、ビタミンD類似体、0.05%~0.1%のタザロテン、3%~10%のサリチル酸、メトトレキサート、及び20%の炭酸蒸留酒(liquor carbonic distillate:LCD)溶液が含まれる。軽度から中等度の乾癬に対して、外用のビタミンDとステロイドとが併用される場合が多い。ビタミンDの投与は、おそらく細胞のカルシウム取り込みを増加させることにより、細胞複製を阻害する可能性があるが、ビタミンDは酒さの発症を増加させる可能性もあり、頭皮の乾癬又はより侵攻性の乾癬症例に対して有効でない。乾癬の最も一般的な型は、尋常性乾癬であり、角質層又はケラチン痂皮が著しく肥厚したプラークにより現れる。このプラークは、薬物の浸透に対する障壁となる。メトトレキサートは、残念ながら治療濃度域が狭く、過剰投与で毒性を示す。現在のところ、皮膚の乾癬に対して満足のいく治療法は無い。
【0005】
免疫の阻害を活用することにより、これらの病状を治療しようとする多くの努力が、なされてきた。インターロイキン17(interleukin-17:IL-17)若しくはそのリガンド(IL-17A)、インターロイキン23(interleukin-23:IL-23)、腫瘍壊死因子アルファ(tumor necrosisfactor alpha:TNF-α)を標的とする抗サイトカイン生物製剤、又は、リウマチ性の滑膜細胞によるTNF-αの産生を阻害する酵素であるホスホジエステラーゼ4(phosphodiesterase 4:PDE4)の選択的阻害剤である小分子薬アプレミラスト(カリフォルニア州サウザンドオークスのAmgen社によりOtezla(R)の商標名で販売)等が、乾癬の治療にますます多く使用されている。当初は有効であったが、これらの薬剤は、低頻度で、がんや活性化した結核を含む重篤な毒性のリスクを伴う。さらに、これらの治療法の多くは、非常に複雑で冗長な複製刺激ネットワークの一つのステップを中断させることを試みているにすぎない。
【0006】
乾癬のような病状が炎症を起こす性質もまた、数十年にわたり熱心な研究の対象であった。2005年に、Namazi(“Cannabinoids, loratadine and allopurinol as novel additions to theantisporiatic ammunition”, Journal of the European Academy of Dermatology andVenerology, Vol. 19, pp. 319-322, (2005)、参照により本明細書に組み込まれる)は、カンナビノイド、ロラタジン及びアロプリノールを、これら病状の治療に有用な薬剤として示唆した。
【0007】
アロプリノールは、Namaziにより、フリーラジカル消去活性を有するキサンチンオキシダーゼの阻害剤であると言及され、乾癬に伴う炎症を緩和する能力を有すると推測された。もし、アロプリノールが、キサンチンオキシダーゼを介するフリーラジカル消去活性を妨害することにより乾癬を効果的に治療するのであれば、キサンチンオキシダーゼ阻害を担うアロプリノールの唯一の活性代謝物であるオキシプリノールは、キサンチンオキシダーゼ阻害のメカニズムを通じて作用することにより、乾癬の治療にさらに効果的であろうと予想される。アロプリノールは、細胞間接着分子1(intercellular adhesion molecule-1:ICAM-1)、P2X及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の産生を阻害する。
【0008】
アロプリノールは、Rodemerにより、「手足」症候群と名付けられた化学療法剤の皮膚毒性の予防に、局所的に使用されてきた(例えば、米国特許第8,623,878号を参照)。しかし、Rodemerによるアロプリノールを用いたその後の臨床試験は、症例登録(accrual)は完了したものの、臨床的有効性のエンドポイントが達成されなかった。
【0009】
Salimは、多数の疾患に対して、アロプリノール又はオキシプリノールと、スルホニルメタンスルホン酸塩との併用による局所使用を提案したが(例えば、WO94/05291及びWO94/05293を参照)、Salimの関連出版物は、不正であるとして出版社により実質的に撤回された(Hammerschmidt et al., “Allegations of Impropriety in Manuscripts byAws S. Salim: Examination and Withdrawal of Journal aegis”, J. Lab. Clin. Med.,Vol. 123, pp. 795-799 (1994)を参照)。Salimは、いずれかの薬剤により治療される病状のリスト中において、乾癬を示唆しなかった。経口使用に関して、アロプリノールは、痛風及びある種の腎結石に対する経口治療として、長期にわたり臨床的利用されている。
【0010】
乾癬の治療に関するアロプリノールの経口使用については、不可解で矛盾した報告がある。Vigliogliaら("Allopurinol in Psoriasis", Dermatologica, Vol. 141, pp.203-207 (1970)を参照)は、アロプリノールを用いた乾癬の治療において、50%の症例で優れた結果が得られ、34%の症例で良好な結果が得られ、16%の症例で中程度の結果が得られたと報告した。
【0011】
しかし、その後の交差二重盲検試験において、アロプリノールの経口投与は、乾癬の治療においてプラセボに対する改善を示さなかった(Feuerman et al., "Allopurinol in psoriasis-a double blindstudy", British Journal of Dermatology, Vol. 89, pp. 83-86 (1973)を参照)。
【0012】
上述のように、アロプリノールによるキサンチンオキシダーゼ阻害における活性種は、オキシプリノールである。オキシプリノールは、キサンチンオキシダーゼ阻害を担うアロプリノールの唯一の既知の代謝物である。キサンチンオキシダーゼ阻害というNamaziの提案が正しければ、オキシプリノールは、アロプリノールと比べて乾癬の治療に優れており、アロプリノールは治療薬として使用されないと予想される。
【0013】
アロプリノールよりもむしろオキシプリノールを研究するもう一つの理由は、アロプリノールがオキシプリノールとは異なり、重要なエネルギーを媒介するホスホリボシルピロリン酸(phosphoribosyl pyrophosphate:PRPP)の有害な消耗を人々において引き起こすことが、長い間知られていることである(例えば、Fox et al., “Depletion of Erythrocyte Phosphoribosylpyrophosphate inMan: A Newly Observed Effect of Allopurinol”, The New England Journal ofMedicine, Vol. 283, pp. 1177-1182 (1970)を参照し、参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、もし本当であれば、アロプリノールよりもむしろオキシプリノールの方が、アロプリノールよりも活性が高く且つ安全な薬物であろう。多大な時間と資源を費やした後、全く予期せぬことに、本研究は、アロプリノールがオキシプリノールよりもはるかに活性が高く且つ毒性が低いことを示した。
【0014】
実際、オキシプリノール及びアロプリノールに関する公開文献の上述の慎重な検討は、外用剤としてのアロプリノールに対するオキシプリノールの優位性に関して非常に説得力のある事例を作ったので、アロプリノールに対するオキシプリノールの使用に関しての2020年2月13日に公開された米国特許出願公開第2020/0046703号を準備し、提出し、弁護するために、多大な時間及び金銭的資源が費やされた。この特許出願は、アロプリノールに対するオキシプリノールの優越性を確認する臨床試験が決定的に失敗した後に、放棄された。
【0015】
細胞増殖の増加を特徴とする乾癬及び他の皮膚疾患に対して、安全かつ効果的な治療法が、切実に求められている。細胞増殖を広く阻害することは、重大な副作用のリスクを伴う。一例として、組織傷害後の全ての増殖を阻害することは、自然治癒プロセスが妨げられ、あらゆる細胞の増殖阻害戦略に関する懸念事項である。
【0016】
理想的な治療法は、細胞複製に不可欠な冗長でない経路を阻害することにより細胞複製を減少させ、同時に、生存能力を維持するために重要な細胞のベースラインとサルベージ機能とを阻害しないものであろう。
【0017】
本研究は、キサンチンオキシダーゼを阻害するアロプリノールの必須の代謝物であるオキシプリノールを使用することにより、キサンチンオキシダーゼ阻害による乾癬治療の開発の可能性を探索することを、最初に試みた。
【発明の概要】
【0018】
本開示の幾つかの態様において、アロプリノール又はその薬学的に許容される塩と、補助剤(co-agent)又はその薬学的に許容される塩と、を含む医薬外用製剤(topicalpharmaceutical formulation)が提供される。
【0019】
本開示の他の態様において、アロプリノール又はその薬学的に許容される塩と、補助剤又はその薬学的に許容される塩と、を含む外用製剤(topical formulation)を、治療を必要とする患者に適用することを含む、皮膚疾患に対する治療方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、M5乾癬カクテル中において、ある量のアロプリノール、オキシプリノール及びメトトレキサートの存在下での、生細胞の初期数に対する全HaCaT細胞の数を示す。
【0021】
【
図2】
図2は、M5乾癬カクテル中において、ある量のアロプリノール、オキシプリノール及びメトトレキサートの存在下での、生細胞の初期数に対して死んだHaCaT細胞の数を示す。
【0022】
【
図3】
図3は、3mMのアロプリノール処理培地に5日間晒された後のMatTekヒト乾癬組織培養系(MatTek社、マサチューセッツ州アッシュランド)の画像を示す。
【0023】
【
図4】
図4は、3mMのアロプリノール及び3mMのグルタチオン処理培地に5日間晒された後のMatTekヒト乾癬組織培養系の画像を示す。
【0024】
【
図5A】
図5Aは、100nMのビタミンD処理培地に5日間晒された後のMatTekヒト乾癬組織培養系の最初の画像を示す。
【0025】
【
図5B】
図5Bは、100nMのビタミンD処理培地に5日間晒された後のMatTekヒト乾癬組織培養系の第2の画像を示す。
【0026】
【
図6】
図6は、アロプリノールを用いて処理した、及びアロプリノールとグルタチオンとの組合せを用いて処理した、MatTekヒト乾癬性組織培養系における真皮の厚さを、対照と対比して示す。
【0027】
【
図7】
図7は、6日目のMatTekヒト乾癬組織培養系における、Ki-67の相対レベルの棒グラフである。
【0028】
【
図8】
図8は、MatTekヒト乾癬組織培養物が、アロプリノール、グルタチオン、アロプリノールとグルタチオンとの組合せ、及び対照に晒された後の、Ki-67、p21、IL-17A、IL-23A、TNF-α及びTGF-βのバイオマーカーの相対レベルを示す。
【0029】
【
図9】
図9は、MatTekヒト乾癬組織培養系における、p21のKi-67に対するmRNA量の比率を示す。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【
図12A】
図12Aは、治療前のふくらはぎ(calves)における長年のアレルギー反応を示す。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【
図14A】
図14Aは、治療前の向こうずね(shin)におけるアレルギー反応を示す。
【0044】
【発明を実施するための形態】
【0045】
[詳細な説明]
驚くべきことに、組織培養において、乾癬に誘発された異常細胞の増殖を減少させることにおいてオキシプリノールよりもアロプリノールがより効果的であるだけでなく、オキシプリノールよりもアロプリノールが細胞死を効果的に減少させることが、見出された。
【0046】
角化細胞は、成長が遅いが、成長しないわけではない(例えば、Squier et al., ed., Human Oral Mucosa: Development, Structure, andFunction, Wiley-Blackwell, p. 29 (2011)を参照)。したがって、組織の完全性を維持することは、極めて重要である。再び驚くべきことに、組織培養モデルにおいて、アロプリノールは、オキシプリノールよりも引き起こす細胞死が少ないことが見出された。試験されたヒトの服用量の最高濃度において、外用のアロプリノールは、有効であり且つ忍容性も良好であった。
【0047】
代表的な実施形態において、補助剤(co-agent)は、アロプリノールと共に投与される。多くの実施形態において、補助剤は、抗酸化剤である。幾つかの実施形態において、補助剤は、皮膚透過促進剤である。幾つかの実施形態において、補助剤は、硫黄を含有している抗酸化剤である。多くの実施形態において、補助剤は、チオール又はプロチオールを含む。適切なチオールは、グルタチオン、N-アセチルシステイン、システイン、テアニン、シスチン、β-メルカプトエタノール及び/又はジチオスレイトールを含んでもよいが、これらに限定されない。特定の実施形態において、補助剤は、グルタチオンである。
【0048】
本開示の製剤は、乾癬に対して有効であることが示されている。乾癬のプラークは、局所的な薬物浸透の障壁となっている。グルタチオンのような薬剤がアロプリノールの送達を改善するために有用であろうと予想されたが、グルタチオンの共投与は、単に薬物送達を改善することが可能なだけでなく、驚くべきことに、アロプリノール単独投与では観察されなかった乾癬の腫脹を減少させることが見出された。実施例2は、プラークのない乾癬の組織培養モデルにおいて、アロプリノール又はグルタチオンを個別に用いて治療した場合と比べて、外用のアロプリノールとグルタチオンとの共投与が相乗効果を有することを示している。グルタチオンは、乾癬を制御するのに役立つ重要な真皮層の厚さを、有意に減少させることができる。
【0049】
乾癬の治療におけるアロプリノールの経口投与において矛盾し且つ混乱した先行技術の報告を鑑みて、アロプリノールと、アロプリノールの代謝物であり且つキサンチンオキシダーゼの直接阻害剤であるオキシプリノールとが、局所適用について試験された。アロプリノールと比べてオキシプリノールのGI取り込みが減少する問題は、経口使用のような局所適用のための要因ではない。
【0050】
1970年に臨床的に指摘されたように、オキシプリノールではなくてアロプリノールにより引き起こされるホスホリボシル二リン酸(PRPP)の欠乏は、Foxら(“Depletion of Erythrocyte Phosphoribosylpyrophosphate in Man: ANewly Observed Effect of Allopurinol”, The New England Journal of Medicine,Vol. 283, pp. 1177-1182 (1970))により暗に示されたように、細胞毒性を引き起こすであろうと予想され、オキシプリノールと比べたアロプリノールの有効性に悪影響を及ぼすであろう。
【0051】
驚くべきことに、ヒト乾癬のin vitroモデルにおいて、アロプリノール対照は、細胞死を増加させることなく細胞増殖を減少させることにおいて、オキシプリノールよりも劇的に、より効果的であった。理論に束縛されることなく、このことは、アロプリノールにより引き起こされたPRPPの欠乏にもかかわらずというよりも、むしろ、その欠乏の結果であるかもしれない。
【0052】
メトトレキサートは、細胞複製を阻害する治療組成物のモデルとして取り上げられ、細胞複製の阻害は、乾癬の治療におけるメトトレキサートに対する反応と互いに関係がある。残念なことに、メトトレキサートは、有する治療濃度域が狭く、過剰の適用により毒性を示すという問題がある。
【0053】
本明細書において提供されるものは、皮膚疾患(アレルギー性皮膚反応または皮膚細胞の増殖性疾患または病状等、例えば、増殖性皮膚疾患または状態等、例えば、皮膚の乾癬、ケラトアカントーマ、酒さ、ケロイド、手足症候群及びがん等)を治療するための方法及び組成物である。さらに、デュピュイトラン拘縮及びアレルギー等の疾患は、本開示の組成物により効果的に治療され得る。
【0054】
本開示の実施形態は、本明細書に開示された特徴の一つ以上を含み損なった概念と比較して、皮膚細胞の増殖性疾患に関連する細胞の増殖速度を低下させ、より低い増殖速度を有する細胞型の他の細胞を含む治療部位においてより高い増殖速度を有する細胞型の細胞の増殖速度を優先的に低下させ、皮膚細胞の増殖性疾患に関連する一つ以上の症状を軽減若しくは予防し、皮膚細胞の増殖性疾患に関連する一つ以上の症状の可能性若しくは重症度を低下させ、皮膚細胞の増殖性疾患に関連する一つ以上の症状が再発する頻度を低下させ、又はそれらを組み合わせる。
【0055】
代表的な実施形態において、保護製剤は、標的とする皮膚細胞の細胞死を増加させることなく、細胞増殖を制限する。メトトレキサートは、ある種の皮膚疾患の治療に使用されてきたが、メトトレキサートは、皮膚細胞の細胞死を増加させることにより生細胞の数を制限することによって細胞増殖を制限する。しかし、本明細書で開示されるように、乾癬を誘発する環境において、アロプリノールは、メトトレキサートよりも遥かに効果的に細胞死の増加を最小限にして皮膚細胞の増殖を制限することが、invitroで観察された。
【0056】
代表的な実施形態において、保護製剤は、治療量のアロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む。代表的な実施形態において、保護製剤は、皮膚症状の部位において局所的に適用される(topically applied)。幾つかの実施形態において、皮膚症状は、皮膚細胞の増殖性疾患(cutaneous cellular proliferative disorder)である。代表的な実施形態において、治療量のアロプリノールは、皮膚細胞の増殖性疾患に関連する細胞の増殖を遅らせる。幾つかの実施形態において、保護製剤は、皮膚細胞の増殖性疾患に関連する少なくとも一つの症状を治療する。幾つかの実施形態において、皮膚症状は、アレルギー性の皮膚反応である。幾つかの実施形態において、保護製剤は、外用製剤(topical formulation)である。
【0057】
幾つかの実施形態において、保護製剤はまた、治療量の補助剤を含む。幾つかの実施形態において、補助剤は、抗酸化剤である。幾つかの実施形態において、補助剤は、皮膚透過促進剤である。幾つかの実施形態において、補助剤は、硫黄を含有している抗酸化剤である。多くの実施形態において、補助剤は、チオール又はプロチオールを含む。適切なチオールは、グルタチオン、N-アセチルシステイン、システイン、テアニン、シスチン、β-メルカプトエタノール、及び/又はジチオスレイトールを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、補助剤は、アロプリノールとの組み合わせにおいて、所定量等の量で使用される場合に、相乗効果を提供する。幾つかの実施形態において、補助剤は、治療部位へのアロプリノールの送達を促進する。幾つかの実施形態において、補助剤は、皮膚プラーク中において、ケラチンのジスルフィド架橋を破壊する。
【0058】
幾つかの実施形態において、補助剤は、グルタチオン又はその薬学的に許容される塩である。幾つかの実施形態において、グルタチオンは、皮膚を柔らかくし、角質層の酸化ストレスを改善し、ケラチン多量体を溶解させ、腫脹を減少させ、及び/又は外用製剤の皮膚内への浸透を促進する。幾つかの実施形態において、グルタチオンは、乾癬プラーク内への保護製剤の浸透を増加させる。
【0059】
幾つかの実施形態において、保護製剤は、グルタチオンの安定化、及び/または保存を促進する一種以上の剤をさらに含む。
【0060】
幾つかの実施形態において、保護製剤は、治療量のグルタチオン又はその薬学的に許容される塩を含み、任意で第二の有効成分を含む。
【0061】
本開示の実施形態は、アロプリノール及びグルタチオンを含み、任意で一種以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、医薬組成物をさらに含んでいる。このような医薬組成物は、経口投与されてもよく、または、例えば、即時放出、緩徐放出及び持続放出の経口製剤、非経口投与、局所投与、鼻腔投与、眼科投与、光学的投与、舌下投与、直腸投与、並びに膣投与等を含む、任意の有効な従来の剤形として送達されるように構成されてもよい。本開示は、例えば、アロプリノール、グルタチオン及び一種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物のようなアロプリノール及びグルタチオンを、治療を必要とする患者に投与することを含む、疾患を治療する方法をさらに含む。
【0062】
実施例の段落において詳しく議論されたように、アロプリノールは、ヒト乾癬系のモデルにおいて、細胞増殖と細胞死との両方を減少させることがinvitroで観察された。アロプリノール及びグルタチオンの局所治療は、ヒトの乾癬性プラーク、ヒトの滴状乾癬、デュピュイトラン拘縮及びアレルギー性皮膚反応を治療するための実施例において観察された。ヒトの乾癬プラークに関しては、治療は治癒的であった。他の全ての症例において、改善が観察された。
【0063】
Ki-67は、細胞に関する複製マーカーであり、値が低いほど複製率が低い。p21は、細胞増殖の阻害に関するマーカーとなるタンパク質である。したがって、p21/Ki-67の比率の増加は、細胞複製の減少を示唆する。
図9は、実施例2において記載されたように、幾つかの状態の下で、この比率を図示した。
【0064】
局所適用におけるアロプリノールの濃度を0.5mMから3.0mMへと増加させることによるアロプリノール曝露の増加は、p21/Ki-67の比率を増加させず、その効果は統計学的な有意性を達成しなかった。しかし、アロプリノールとグルタチオンとを一緒に適用すると、p21/Ki-67の比率が増加し、統計的な有意差も認められた。したがって、グルタチオンとアロプリノールとの併用投与の効果は、相乗的に細胞複製を制限した。
【0065】
アロプリノールとグルタチオンとの併用療法はまた、乾癬皮膚モデルの真皮層組織の厚さを、治療2日目での真皮層の厚さと比べて、治療6日目に減少させた。真皮層の厚さの減少は、ヒト乾癬患者における治療反応の成功を立証するために、これまでに用いられてきた(例えば、Phillips et al., “Dermal Reflectivity Determined by OpticalCoherence Tomography is an Indicator of Epidermal Hyperplasia and Dermal Edemawithin Inflamed Skin”, Journal of Biomedical Optics, Vol. 16, Art. 040503(2011)を参照)。3mM濃度のアロプリノールの処理のみにより、この期間にわたって真皮層の増加が引き起こされた(実施例2を参照)。
【0066】
アロプリノールは、標準治療のメトトレキサートと比べられた場合に、実施例1、
図1及び
図2において見られたように、乾癬のHaCaTヒト細胞単層モデルにおいて細胞複製をより良好に阻害し、且つ、細胞の生存をより良好に維持した。
【0067】
グルタチオンのみの適用は、Ki-67を阻害することが示された。
【0068】
これに基づき、アロプリノールは、単独でもグルタチオンとの組み合わせでも、手足に毒性を引き起こすが、比較的まだ成長の遅い非掌側(non-palmar)及び非足底側(non-plantar)のヒトの皮膚には毒性を引き起こさない全ての薬剤に対する局所保護治療、並びに、疾患又は病状の発症部位における細胞増殖の減少により治療の対象となるあらゆる増殖性疾患又は病状に対する局所保護治療において、有益であると期待された。
【0069】
要約すると、アロプリノールの適用は、in vitroでの乾癬のHaCaTヒト細胞のin vitroでの単層モデルにおいて、細胞の生存を維持しつつ予想外にも細胞複製の阻害を示し、つまり、乾癬の治療において標準的な薬剤であるメトトレキサートと比べて有意に改善された。理論により縛られることを望まないが、成長の阻害は、Nelsonら(“Formation of nucleotides of (6-14C)allopurinol and (6-14C)oxipurinolin rat tissues and effects on uridine nucleotide pools”, Biochem. Pharmacol.,Vol. 22, pp. 2003-2022, (1973))により最初に記載されたように、ヒポキサンチン・キサンチン・ホスホリビオシルトランスフェラーゼによるPRPPの消費を反映している可能性がある。乾癬のMatTek組織モデルでは予想外であったが、グルタチオン単独の適用は、アロプリノールと比べて、細胞複製マーカーであるKi-67の発現を最も強く阻害する結果をもたらし、また、標準的な乾癬治療であるが不十分なビタミンDへの曝露に匹敵する結果をもたらした。グルタチオンはまた、炎症マーカーであるIL-17A、IL-23、TNF-α及びTNF-βの発現を阻害するだけでなく、複製の抑制因子であるp21の発現を誘導した。
【0070】
アロプリノールとグルタチオンとの併用療法は、治療2日目での真皮の厚さと比べて、治療6日目でのPSE真皮層の組織の厚さ減少を引き起こした。3.0mMのアロプリノール単独での適用は、逆説的に、この期間にわたって真皮層の増加を引き起こした。この結果は、アロプリノールにグルタチオンを加えることで組織の恒常性を改善する相乗効果と一致した。真皮層の厚さ減少は、これまでに、ヒト乾癬患者において成功した治療反応をモニターするために用いられてきた。グルタチオンとアロプリノールとの併用治療では、アロプリノール単独又はグルタチオン単独の治療と比べて、より高いp21/Ki-67の比率が観察された。また、アロプリノール曝露量を0.5mMから3.0mMへと増加させても、真皮の厚さに関する結果と同様に、アロプリノール曝露量の増加に対する反応の有益性の証拠を得られず、この結果もまた、グルタチオンとアロプリノールとの相乗作用と一致した。
【0071】
アロプリノールとグルタチオンとの両者は、個々に、別々に、ヒトにおいて局所的に安全に使用されてきた。アロプリノールは、50年以上にわたって、痛風の治療のためにヒトにおいて広く安全に経口投与されてきた。グルタチオンは、抗酸化物質であり、細胞内に1~10mMの範囲内の濃度で存在する正常な細胞成分である。アロプリノールとグルタチオンとを3%で1日に二回、7週間局所的に使用したところ、2年間存在した乾癬プラークの領域3cmが消失した。
【0072】
幾つかの実施形態において、アロプリノールは、アロプリノール単独よりも一つ以上の有利な特性を提供してもよい薬学的に許容可能な塩の形態である。
【0073】
幾つかの実施形態において、グルタチオンは、グルタチオン単独よりも一つ以上の有利な特性を提供してもよい薬学的に受容可能な塩の形態である。
【0074】
オキシプリノールに対するアロプリノールの局所的な効能及び優越性は、驚くべきものであり、予想外のものである。出願人は、オキシプリノールに対してアロプリノールに関する局所的な効能の優越性を示唆する参照文献又は理論的根拠を知らない。
【0075】
アロプリノールは、乾癬の局所治療に関してこれまでに試験されていないが、アロプリノールを局所的に適用した場合に、もたらす発疹の発生率が約2%から3%にすぎないことが、他の治療において一般的に観察されている。文献において、無傷の非粘膜皮膚に適用された任意の薬剤が重篤な皮膚反応を起こすことは、ほぼ前代未聞であり(例えば、Sachs et al., “Anaphylaxis and toxic epidermal necrolysis orStevens-Johnson syndrome after nonmucosal topical drug application: fact orfiction?”, Allergy, Vol. 62, pp. 877-883 (2007)を参照)、外用組成物が重篤な全身合併症のリスクをほとんど持たないことを示唆している。
【0076】
幾つかの実施形態において、組成物及び方法は、保護製剤中に有効成分としてアロプリノールを含む。幾つかの実施形態において、組成物及び方法は、保護製剤中に、補助剤のグルタチオンと組み合わせて、有効成分としてアロプリノールを含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、保護製剤は、皮膚への局所適用のために製剤化され、保護製剤は、外用製剤として有用に製剤化され得る。適切な外用製剤としては、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、エアゾールスプレー、回転塗布式(roll-on)の液体、スティック若しくはパッド、又はエアゾールフォーム(ムース)組成物を含んでいてもよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、組成物及び方法は、局所投与のための組成物及び方法を開示しており「皮膚病を治療及び予防するための組成物並びに方法(Compositions and methods for treating and preventing dermatoses)」と題された2015年7月21日にFordへ発行された米国特許第9,084,788号において記載されたように、有効成分としてアロプリノールを含んでいる保護製剤の局所送達を含む。
【0078】
幾つかの実施形態において、治療は、少なくとも1日に一回、例えば1日に二回等、皮膚に保護製剤を局所適用することを含む。幾つかの実施形態において、治療は、少なくとも2日間、例えば3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、又は3ヵ月よりも長い期間等、局所適用を継続することを含む。
【0079】
保護製剤の好ましい臨床組成物は、保護が望まれる組織に依存してもよい。医薬製剤は、治療薬を製剤化しなければならず且つそのような製剤化において無数の変数が関与することが知られている点において、確立された技術である(例えば、Allen ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nded., Pharmaceutical Press (2012)と、Allen, Ansel’sPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 11th ed., Wolters Kluwer(2017)と、Rowe et al., ed., Handbook of PharmaceuticalExcipients, 6th ed., Pharmaceutical Press (2009)とを参照)。したがって、臨床製剤及び商業製剤、並びに特定の機能性を有する製剤を調製するためには、多くの場合に課題が残る。
【0080】
適切な外用製剤としては、例えば、無水、水性、または、油中水型若しくは水中油型の乳剤であってもよい。適切な外用製剤は、一種以上の薬学的に許容される担体と、種々の皮膚活性剤とを、さらに含んでいてもよい。担体の量は、約1重量%から約99重量%の範囲でもよく、好ましくは約5重量%から約70重量%の範囲であり、最適には約10重量%から約40重量%の範囲である。有用な担体の中には、エモリエント剤、水、無機粉末、発泡剤、乳化剤、脂肪アルコール、脂肪酸又はそれらの組み合わせがある。
【0081】
エモリエント剤は、ポリオール、エステル及び炭化水素から選択されてもよい。適切な外用製剤に適したポリオールとしては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、エトキシル化したグリセリン、プロポキシル化したグリセリン、キシリトール又はそれらの混合物が含まれてもよい。
【0082】
エモリエント剤として有用なエステルとしては、10個から20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルキルエステルが含まれる。脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル及びブチルエステルが、おそらく有用である。例としては、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、アジピン酸ジヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル及び乳酸セチルが含まれる。特に好ましいのは、C12~C15アルコール安息香酸エステルである。
【0083】
エモリエント剤として有用なエステルとしては、10個から20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル、例えば、ミリスチン酸オレイル、ステアリン酸オレイル及びオレイン酸オレイル等も含んでいてもよい。エモリエント剤として有用なエステルは、エトキシル化した脂肪アルコールの脂肪酸エステル等の、エーテルエステルも含んでいてもよい。
【0084】
エモリエント剤として有用なエステルは、多価アルコールエステル、例えば、エチレングリコールのモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ジエチレングリコールのモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200~6,000)のモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ポリグリセロールのポリ脂肪酸エステル、エトキシル化したグリセリルモノステアレート、1,3-ブチレングリコールモノステアレート、1,3-ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および/または、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を含んでいてもよい。
【0085】
エモリエント剤として有用なエステルは、ワックスエステル(例えば、みつろう、鯨蝋、ミリスチン酸ミリスチル、および/または、ステアリン酸ステアリル等)と、ステロールエステル(例えば、コレステロール脂肪酸エステル等)とを、更に加えて含んでいてもよい。
【0086】
適切な炭化水素担体としては、鉱油、ポリアルファオレフィン、ペトロラタム、イソパラフィン、ポリブテン、および/またはそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0087】
無機粉末もまた、外用製剤における担体として有用であってもよい。例としては、クレー(例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト及びベントナイト等)、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、ゼオライト、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸カルシウム、および/またはそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0088】
適切な外用製剤は、担体として、又は担体に加えて、エアロゾル噴霧剤を含んでいてもよい。噴霧剤は、プロパン、ブタン、イソブテン、ペンタン、イソプロパン及びそれらの混合物等の揮発性炭化水素をベースとしていてもよい。PhillipsPetroleum社(オクラホマ州バートルズビル)は、A3、A32、A51、及び/又はA70を含んでいる商標の下で、このような噴霧剤の供給源となってもよい。フッ化炭素を含むハロゲン化炭素は、噴霧剤として更に広く採用されてもよい。
【0089】
皮膚に投与するための適切な外用製剤は、担体として、又は担体に加えて、乳化剤を含んでいてもよい。
【0090】
適切な乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、および/または両性の乳化剤から選択されてもよい。適切な乳化剤は、約0.1重量%から約20重量%の範囲の量であってもよい。
【0091】
適切な非イオン性乳化剤は、C10~C22脂肪アルコール及び酸をベースとするアルコキシル化した化合物と、ソルビタンとを含んでいてもよい。適切な原料は、例えば、Neodolの商標(ShellOil社、テキサス州ヒューストン)の下で、Pluronicの商標(BASF社、ドイツ、ルートウィヒスハーフェン)の下で販売されたポリオキシプロピレンポリオキシエチレンのコポリマーとして、および/または、Henkel社(ドイツ、デュッセルドルフ)から入手可能なアルキルポリグリコシドとして、入手可能であってもよい。
【0092】
適切なアニオン型乳化剤としては、脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノ-及びジ-アルキル酸性リン酸塩、サルコシネート、タウレート、および/または脂肪アシルイセチオン酸ナトリウムを含んでいてもよい。
【0093】
適切な両性乳化剤としては、ジアルキルアミンオキシドと、例えばコカミドプロピルベタイン等の様々なタイプのベタインと、を含んでいてもよい。
【0094】
適切な外用製剤は、微生物汚染を防止するために有用な防腐剤、例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン等も含んでいてもよい。
【0095】
幾つかの実施形態において、組成物及び方法は、経口投与のための組成物及び方法を開示しており「がん化学療法剤の投与に関連する副作用の治療のための組成物及び方法(Compositions and methods for treatment of the side-effectsassociated with administration of cancer chemotherapeutic agents)」と題された2015年9月1日にFordへ発行された米国特許第9,119,855号において記載されているように、有効成分としてオキシプリノールを含む保護製剤の経口送達を含む。
【0096】
幾つかの実施形態において、各有効成分は、保護製剤中に、少なくとも0.01%、0.05%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、さらには50%以上の重量パーセントで存在してもよく、中間値も許容されるが、典型的には約50%、45%、40%、30%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、45%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、さらに時には、約0.05%以下、さらには0.01%以下の重量/重量パーセントで存在してもよく、中間値も許容される。
【0097】
幾つかの実施形態において、アロプリノールは、組成物中において重量で、約1%から約5%の範囲、あるいは約2%から約4%の範囲、あるいは約3%の範囲、または、それらの間の任意の値、範囲若しくはサブ範囲の量で存在する。
【0098】
幾つかの実施形態において、グルタチオンは、組成物中において重量で、約0.1%から約5%の範囲、あるいは約1%から約5%の範囲、あるいは約2%から約4%の範囲、代替的に約3%の範囲、または、それらの間の任意の値、範囲若しくはサブ範囲の量で存在する。
【0099】
幾つかの実施形態において、保護製剤は、少なくとも0.03mM、あるいは0.03mMから30mM、あるいは0.03mMから3mM、あるいは0.03mMから0.1mM、あるいは少なくとも0.1mM、あるいは0.1mMから0. 3mM、あるいは少なくとも0.3mM、あるいは0.3mMから1mM、あるいは少なくとも1mM、あるいは1mMから30mM、あるいは1mMから10mM、あるいは1mMから3mM、あるいは少なくとも3mM、あるいは3mM以下、あるいは1mM以下、あるいは0.3mM以下、あるいは0.1mM以下、または、その間の任意の値、範囲若しくはサブ範囲の有効成分の持続的な濃度を提供するために、保護部位へと適用又は送達される。
【0100】
幾つかの実施形態において、有効成分は、アロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態において、アロプリノールは、保護製剤中における主要な有効成分である。幾つかの実施形態において、アロプリノールは、保護製剤中における唯一の有効成分である。幾つかの実施形態において、保護製剤は、他の有効成分を含まない又は実質的に含まない。本明細書において使用される、実質的に含まないとは、組成物中の化合物の量が0.001mM未満であることを指す。
【0101】
これら及び他の実施形態において、保護製剤はまた、有効成分として補助剤を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、補助剤は、アロプリノールと組み合わせて相乗効果を提供する。そのような補助剤の例は、グルタチオンである。
【0102】
局部的な治療用量のアロプリノールの毒性を無視できることは、治療量のアロプリノールを含む保護製剤を、皮膚細胞の増殖性疾患に罹患しやすい患者の関連組織へと、局所的且つ局部的に投与することの著しい利点を示唆した。治療用量は、皮膚細胞の増殖性疾患を発症してからの関連組織の細胞の増殖を遅らせるために十分な治療量のアロプリノールを含む。
【0103】
幾つかの実施形態において、治療量のアロプリノールを含んでいる保護製剤は、皮膚細胞の増殖性疾患の症状を軽減し且つ治療するために、患者の関連組織へと局所的且つ局部的に投与される。治療用量は、関連組織の細胞の増殖を遅らせ且つ皮膚細胞の増殖性疾患を治療するために十分な治療量のアロプリノールを含む。
【0104】
幾つかの実施形態において、患者において皮膚細胞の複製速度を部位特異的に減少させる方法は、減少した皮膚細胞の複製を所望される患者の皮膚の部位へと、有効量のアロプリノールを局所的に適用すること又は局部的に送達することを含む。
【0105】
本開示の代表的な限定されない実施形態は、列挙された項において表明されている。
【0106】
第1項. アロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬外用製剤(topical pharmaceutical formulation)。
【0107】
第2項. アロプリノール又はその薬学的に許容される塩と、補助剤(co-agent)又はその薬学的に許容される塩と、を含む医薬外用製剤。
【0108】
第3項. 前記補助剤が、チオールである、第2項に記載された外用製剤(topical formulation)。
【0109】
第4項. 前記チオールが、グルタチオン、N-アセチルシステイン、システイン、テアニン、シスチン、β-メルカプトエタノール及びジチオスレイトールからなる群より選択される、第3項に記載された外用製剤。
【0110】
第5項. 前記チオールが、グルタチオンである、第4項に記載された外用製剤。
【0111】
第6項. 担体をさらに含む、第1項から第5項のいずれか一項に記載された外用製剤。
【0112】
第7項. 前記アロプリノール又はその薬学的に許容される塩の量が、約1重量%から約10重量%である、第1項から第5項のいずれか一項に記載された医薬外用製剤。
【0113】
第8項. 前記チオールが、グルタチオン又はその薬学的に許容される塩であり、約1重量%から約10重量%の量で存在する、第7項に記載された外用製剤。
【0114】
第9項. 前記製剤が無水、水性又は乳剤である、第1項から第8項のいずれか一項に記載された医薬外用製剤。
【0115】
第10項. 有効成分が、アロプリノール及びグルタチオン又はそれらの薬学的に許容される塩のみである、第5項から第9項のいずれか一項に記載された外用製剤。
【0116】
第11項. 一種以上の追加の有効成分をさらに含む、第1項から第9項のいずれか一項に記載された外用製剤。
【0117】
第12項. アロプリノール又はその薬学的に許容される塩を含む医薬外用製剤を用いて、治療を必要とする患者を治療することを含む、皮膚疾患の治療方法。
【0118】
第13項. 第1項から第11項のいずれか一項に記載された外用製剤を用いて、治療を必要とする患者を治療することを含む、皮膚疾患の治療方法。
【0119】
第14項. 前記皮膚疾患が、増殖性皮膚疾患である、第12項又は第13項に記載された方法。
【0120】
第15項. 前記増殖性皮膚疾患が、乾癬である、第14項に記載された方法。
【0121】
第16項. 前記増殖性皮膚疾患が、皮膚の乾癬、ケラトアカントーマ、酒さ、ケロイド、手足症候群及びがんからなる群より選択される、第14項に記載された方法。
【0122】
第17項. 前記皮膚疾患が、デュピュイトラン拘縮である、第13項に記載された方法。
【0123】
第18項. 前記皮膚疾患が、アレルギー反応である、第13項に記載された方法。
【0124】
第19項. 前記アレルギー反応が、皮膚のアレルギー反応である、第18項に記載された方法。
【0125】
第20項. 前記増殖性皮膚疾患が、皮膚細胞の増殖性疾患である、第14項に記載された方法。
【0126】
第21項. 前記医薬外用製剤が、前記皮膚細胞の増殖性疾患に関わる細胞の増殖を遅らせる、第20項に記載された方法。
【0127】
第22項. 医薬外用製剤が、前記皮膚細胞の増殖性疾患の少なくとも一つの症状を緩和する、第21項に記載された方法。
【0128】
第23項. 前記治療は、1日あたりに少なくとも一回行われる、第12項から第22項のいずれか一項に記載された方法。
【0129】
第24項. 前記治療は、30日以上行われる、第23項に記載された方法。
【0130】
第25項. アロプリノール及びグルタチオンを含む医薬組成物。
【0131】
第26項. 一種以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、第25項に記載された医薬組成物。
【0132】
第27項. アロプリノール及びグルタチオンを、治療を必要とする患者へと投与することを含む、疾患の治療方法。
【0133】
第28項. 第25項又は第26項に記載された医薬組成物を、治療を必要とする患者へと投与することを含む、疾患の治療方法。
【実施例】
【0134】
本発明を、限定のためではなくて解説のために提示された以下の実施例の文脈において、さらに説明する。
【0135】
[実施例1]
AddexBio(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入したヒトの不死化した角化細胞(HaCaT細胞)は、10%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)と抗生物質(100U/mLのペニシリン及び100mg/mLのストレプトマイシン)とを補充されたダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modifiedEagle’s medium:DMEM)中においてin vitroで維持され、37℃で5%のCO2を用いてインキュベーター内において培養された。
【0136】
乾癬様の角化細胞モデルは、M5カクテルのサイトカイン(乾癬の表現型の形成に関わることが知られている(それぞれ最終濃度2.5ng/mLの、IL-17A、IL-22、オンコスタチンM、IL-1α及びTNF-α))をHaCaT角化細胞の培地中へと加えることにより確立した。この混合物は、乾癬の表現型の多くの特徴を誘発することが示されている。この混合物は、対照として、72時間インキュベートされた。
【0137】
HaCaT細胞は、約50%の密度(1×104細胞/ウェル)で播種され、16時間後に培地は、様々な濃度のアロプリノール(0mM、0.5mM若しくは3mM)又はメトトレキサート(1μM)を含む50μLの前処理培地を用いて交換され、インキュベーター内へと戻された。処理培地は、溶媒対照(PBS)又はM5カクテルを含んでいる標準培地を使用して調製された。
【0138】
他のHaCaT細胞は、1.0μMのメトトレキサート、0.5mMのアロプリノール、3.0mMのアロプリノール、0.5mMのオキシプリノール又は3.0mMのオキシプリノールも含まれたM5組成物の存在下において、in vitroで72時間インキュベートされた。アロプリノール、オキシプリノール及びメトトレキサートは全て、Sigma社(ミズーリ州セントルイス)から入手された。それぞれは、1NのNaOH溶液中に取り込まれた後に、細胞培養培地中において適切な濃度へと希釈された。
【0139】
生細胞及び死細胞の数は、製造業者のプロトコルに従って、MultiTox-Glo多発性細胞毒性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)により定量された。細胞の希釈系列が、各ウェルにおける細胞数を計算する検量線を作成するために使用された。総細胞数は、生細胞と死細胞との合計である。
【0140】
表1は、0時間におけるHaCaT細胞の生細胞数及び死細胞数と、48時間及び72時間における総細胞数及び死細胞数とを、同様に記載された標準偏差と共に示している。総細胞数は、生細胞数と死細胞数との合計である。メトトレキサートは、標準的な1μM用量での乾癬の局所療法に対する、対照薬の療法であった。細胞培養の理想的な結果は、総細胞数が経時的に増加も減少もしないことである。総細胞数の増加は、乾癬の表現型が抑制されていないことを示唆する。総細胞数の減少は、治療に由来する細胞毒性を示唆する。
【0141】
死細胞に関しては、理想的な結果は、死細胞が可能な限りゼロに近いことであろう。死細胞数の増加は、細胞毒性を示唆する。観察された総細胞数が最も少なかったのは、3.0mMのアロプリノールに対してであったことに注意されたい。72時間で、3.0mMのアロプリノールは、総細胞数と死細胞数との両方が最も少ないことに注意されたい。
【表1】
【0142】
表1の生データは、表2の細胞比率の相対データへと変換された。表2の細胞比率は、表1中の総細胞数及び死細胞数を、ゼロ時間での生細胞数である9177で割ることにより得られた。総細胞比率に関する理想的な結果は、総細胞比率がほぼ1であり、経時的に増加も減少もしないことである。死細胞比率に関する理想的な結果は、死細胞比率が可能な限りゼロに近く、経時的に増加しないことである。
【0143】
表2の総細胞比率の値は、
図1中にプロットされた。対照のM5処理された細胞10については、総細胞比率が1.89であり、すなわち、72時間の培養期間中に最初の生細胞数を超えて89%増加した。0.5mMのオキシプリノール20については、72時間後の総細胞比率が同様に最初の生細胞数の1.86であった。メトトレキサート40については、72時間後の総細胞比率が最初の生細胞数の1.26であった。3.0mMのオキシプリノール25については、72時間後の総細胞数が最初の生細胞数の1.55であった。0.5mMのアロプリノール30については、72時間後の総細胞数が最初の生細胞数の1.46であった。3.0mMのアロプリノール35については、72時間後の総細胞数が最初の生細胞数のわずか1.02であり、すなわち、ごくわずかな増加であった。
【表2】
【0144】
表2の死細胞比率の値は、
図2中にプロットされた。72時間後の死細胞比率に関する対照の値50は0.56、すなわち、生細胞の投入数の56%である。メトトレキサート80は、0.69という高い比率となり、すなわち、投入された生細胞の69%が死んだ。驚いたことに、死細胞の割合は、対照、オキシプリノール及びメトトレキサートよりもアロプリノールが低かった。この割合は、アロプリノールの濃度を0.5mMから3.0mMへと増加させた場合に、さらに低くなった。0.5mMのアロプリノール70については、死細胞比率が0.44であり、3mMのアロプリノール75については、死細胞比率がわずか0.22である。また、全く予想外なことに活性種オキシプリノールの利点が減少し、0.5mMのオキシプリノール60に関する死細胞比率は0.52であり、3.0mMのオキシプリノール65に関する死細胞比率は0.40であった。重要なことに、メトトレキサートとは対照的に、3.0mMのアロプリノールは、細胞死を増加させることなく細胞増殖を減少させた。
【0145】
要約すると、この広く使用されている乾癬モデルに関する
図1及び
図2における結果は、アロプリノールが、その代謝物であるオキシプリノールと、臨床的利用における標準的な薬剤であるメトトレキサートとの両者よりも、遥かに効果的に細胞増殖を制御可能なことを示している。したがって、アロプリノールは、乾癬のプロセスを停止させることができる治療の選択肢となる。
【0146】
[実施例2]
ビタミンDを対照として含めて、アロプリノールおよび/またはグルタチオンの増殖効果は、角質層(stratum corneum layer)、細胞性表皮層(epidermis layer)及び真皮層(dermis layer)を含むMatTekヒトPSE培養系(SOR-300-FT)において試験された。乾癬組織の増殖条件は、製造業者であるMatTekの独占条件に従った。システムには、正常な表皮細胞層により覆われた乾癬由来の真皮層が含まれた。角質層は、細胞で構成されていない表面のケラチン層である。細胞性表皮は、角質層の下に横たわり且つ深部の真皮層を覆った。このシステムにおける真皮層のみが、乾癬由来であった。乾癬は、三層すべての厚さの増加により特徴づけられた。
【0147】
六つのMatTekヒトPSE培養系は、様々な四種の治療組成物に5日間晒された。第一の治療組成物は、陰性対照であった。第二の治療組成物は、0.5mMのアロプリノールを含んでいた。第三の処理組成物は、3.0mMのアロプリノールを含んでいた。第四の治療組成物は、3.0mMのグルタチオンを含んでいた。第五の治療組成物は、3.0mMのアロプリノールと3.0mMのグルタチオンとの組み合わせを含んでいた。第六の治療組成物は、対照として100nMのビタミンDを含んでいた。アロプリノール、グルタチオン及びビタミンDは全て、Sigma(ミズーリ州セントルイス)から入手された。それぞれが、1NのNaOH溶液中に取り込まれた後、細胞培養培地中において適切な濃度へと希釈された。
【0148】
図3は、第三の治療組成物に5日間晒された後のMatTekヒトPSE培養系を示す。
図4は、第五の治療組成物に5日間晒された後のMatTekヒトPSE培養系を示す。
図5A及び
図5Bは、第六の治療組成物に5日間晒された後のMatTekヒトPSE培養系を示す。
図3、
図4、
図5A及び
図5Bの画像は、同じ倍率である。真皮層は、色が薄い層であり、表皮層は、色が濃い層である。写真は、アロプリノール単独(
図3)と比べて、グルタチオンとアロプリノールとの両方の存在する場合(
図4)に真皮層の厚さが減少することを示している。
図5A及び
図5Bは、ビタミンD処理の結果生じる真皮層と表皮層との分離を示し、ビタミンD処理の既知の毒性を反映しているのであろう。
【0149】
皮膚の三つの組織層のそれぞれの厚さは、処理培地に2日晒された後及び6日晒された後に、委員会に認定され且つ全国的に尊敬された病理医により盲検の方法で、モニターされ且つ測定された。得られた測定値は、表3及び
図6に示された。
【0150】
真皮の厚さの増加は、乾癬の特徴であり(例えば、Phillipset al., “Dermal Reflectivity Determined by Optical Coherence Tomography is anIndicator of Epidermal Hyperplasia and Dermal Edema within Inflamed Skin”,Journal of Biomedical Optics, Vol. 16, Art. 040503 (2011)を参照)、表3中におけるグルタチオン処理の予期せぬ結果である。表3は、アロプリノールとグルタチオンとの組み合わせを用いた処理が、2日目から6日目に、真皮の厚さを実際に減少させたことを示す。アロプリノール及びグルタチオンの効果が、乾癬の真皮層の厚さの特異的な逆転に関わっていることは、興味深い。また、アロプリノールとグルタチオンとの両方を用いる処理では、組織の完全性が保たれた。活性剤であるビタミンDを用いる処理は、薄くなった真皮層と表皮層との分離をもたらし、ビタミンD療法の既知の副作用である毒性の証拠となる可能性がある。
【表3】
【0151】
図6は、3.0mMのアロプリノール単独100が、処理2日目から処理6日目へのこの時間間隔の間に、真皮層の厚さにおいて1.4倍の増加を引き起こしたことを示す。対照的に、3.0mMのアロプリノールと3.0mMのグルタチオンとの組み合わせ110を用いる処理は、同じ時間間隔の間に、真皮の厚さを0.83倍へと減少させた。対照90は、真皮層の肥厚を示さなかった。
図6中において見られるように、0.5mMのアロプリノール105から3mMのアロプリノール110へと増加させると、6日目の真皮の肥厚が有意に増加した。したがって、3.0mMのアロプリノール単独処理で見られた乾癬の真皮層の肥厚を逆転させる、アロプリノールとグルタチオンとの組み合わせの特異的な効果がある。
【0152】
さらに、アロプリノールとグルタチオンとの両方を用いる処理による組織の完全性は、維持された。3mMのアロプリノールとグルタチオンとを用いる併用処理は、アロプリノール単独の処理と比べて、6日後に、角化細胞に毒性(角化異常症)がなく、且つ、ケラチン層中における細胞の存在(不全角化症)が減少した。
【0153】
MatTek組織培養系中におけるKi-67の量も、測定された。Ki-67は、核内タンパク質であり且つ複製マーカーである。Ki-67のレベルは、標準的なプロトコルを用いたポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)分析により測定された。6日目に測定されたKi-67の相対レベルが、表4及び
図7に示された。相対レベルは、1.0に調整された0日目での対照のKi-67測定レベルに対して正規化されている。
【0154】
Ki-67レベルは、細胞の複製速度の指標であり、値が低いほど複製速度が低いことを示唆している。表4は、3mMのアロプリノールを用いる処理と、3mMのアロプリノール及び3mMのグルタチオンの組み合わせを用いる処理とが、対照に対してKi-67レベルを低下させることを示し、この組み合わせが、3mMのアロプリノール単独よりもわずかに良好に行われ且つ100nMのビタミンDよりも遥かに良好に行われることを示している。
【表4】
【0155】
細胞増殖の他のマーカー、すなわち(タンパク質p21)も測定され、2日間の処理後のMatTekPSE培養系における炎症性シグナル伝達の四つのマーカー(IL-17A、IL-23A、TNF-α及び形質転換増殖因子ベータ(transforminggrowth factor beta:TGF-β))もまた測定された。Ki-67は、核内タンパク質であり且つ複製マーカーである。マーカーのレベルは、PromegaSV96 トータルRNA単離真空システム(Promega、ウィスコンシン州マディソン)により、製造業者の指示に従ってトータルRNAを単離することにより測定された。トータルRNAは、ABI High CapacitycDNA逆転写キット(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて逆転写された。定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Quantitative real-time polymerase chain reaction:qPCR)は、SYBR GreenPCRマスターミックス(Applied Biosystems)を用いて、製造業者のプロトコルに従って行われ、StepOnePlusリアルタイムPCRシステムで増幅された。
【0156】
2日間の処理後に測定されたマーカーの相対レベルは、表5中及び
図8中に示された。
【表5】
【0157】
予期せぬことに、表5中及び
図8中に示されたように、2日間の処理後に、アロプリノール又はグルタチオンを個別に用いられたPSE細胞では、Ki-67、IL-17A、IL-23A及びTNF-αのmRNAレベルが有意に減少し、一方で細胞複製抑制の遺伝子であるp21の発現が増加した。細胞増殖への影響を強調するために、p21のKi-67に対するmRNAレベルの比率が計算され、その結果が
図9に示された。2日間の処理後、並行処理された、アロプリノール単独も、グルタチオン単独も、アロプリノールとグルタチオンとの相乗的な組み合わせも、並びにビタミンDも、p21/Ki-67の比率が顕著に増加したことが証明され、細胞複製の減少が示唆された。
【0158】
[実施例3]
左肩における乾癬プラークは、2年以上持続していた。
図10Aは、治療前のプラークを示す。
【0159】
約200μLの3%アロプリノール及び3%グルタチオンをペトロラタムベースの軟膏中に懸濁させた治療組成物が、乾癬プラークへと毎日に二回、1ヵ月間適用された。アロプリノールも、グルタチオンも、米国薬局方(United States Pharmacopeia:USP)グレードであった。アロプリノールは、細かく砕かれた錠剤の形をとって、ペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。グルタチオンは、粉末の形をとって、まず鉱油と控えめに混合され、次にペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。ペトロラタムベースの軟膏は、不活性成分(inactive ingredients)として、水、鉱油、セレシン、ラノリンアルコール、パンテノール、グリセリン及びビサボロールもまた含んでいた。
図10Bは、左肩が治療に完全に反応し、プラークがもはや見えなくなったことを示している。治療の副作用は、観察又は報告されなかった。
【0160】
[実施例4]
デュピュイトラン拘縮は、典型的には、指の付け根における手のひらの皮膚の異常な肥厚である。この肥厚は、指をねじ曲げるように、または、側方若しくは手のひらの方へ向けるように変形させる場合がある。
図11Aは、治療前の志願者の右の第五指のデュピュイトラン拘縮を示す。
図11Bは、デュピュイトラン拘縮に特徴的な、肥厚した覆っている皮膚122を有する小指の中節骨(middle phalanx)120と、第五中手骨(fifth metacarpal)124の遠位骨頭(distal head)の組織を覆っている肥厚した皮膚と、基節骨(proximalphalanx)126上の肥厚した皮膚と、を示す。
【0161】
約200μLの3%アロプリノールをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療組成物は、毎日に二回、肥厚した皮膚へと1ヵ月間適用された。アロプリノールは、USPグレードであった。アロプリノールは、細かく砕かれた錠剤の形をとって、ペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度で混合された。
図11Bは、指が幾らか改善された動きで反応したことを示している。
【0162】
その後、約200μLの3%アロプリノール及び3%グルタチオンをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療組成物は、さらに1ヵ月間、乾癬プラークへと毎日に二回適用された。グルタチオンは、USPグレードであった。グルタチオンは、粉末の形をとって、まず鉱油と控えめに混合され、次にペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。
図11Cは、2ヵ月目以降、右の第五指は腫脹が減少し、機能的にほぼ正常であったことを示している。右の第五指は、完全に動くようになったが、2ヵ月以上の治療後、左の第五指と比べて約1cm短縮したままであった。治療の副作用は、観察又は報告されなかった。
【0163】
デュピュイトラン拘縮の治療において、ペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた10%アロプリノール及び10%グルタチオンを毎日局所的にヒトに使用し続けた4ヵ月間の進行性の変化は、経時的に徐々であるが漸進的に減少する組織の厚さに現れている。
図11Dは、小指の中節骨120が、覆っている皮膚122の継続的な収縮を示していることを示す。第五中手骨124の遠位骨頭の組織を覆っている皮膚も、基節骨126上の皮膚と同様に、皮膚の収縮を示している。右の第五指の可動性は徐々に向上し、少なくとも左(利き手側)の第五指と同等の強さが得られた。副作用は、認められなかった。
【0164】
[実施例5]
図12Aは、約2ヵ月前にアレルギー反応として始まった、脚のふくらはぎの裏側における広範囲の発疹を示す。
【0165】
3%のアロプリノールをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療組成物は、毎日に二回、左のふくらはぎへと適用され、且つ、3%のアロプリノールと3%のグルタチオンとをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療組成物は、毎日に二回、右のふくらはぎへと適用された。アロプリノールも、グルタチオンも、USPグレードであった。アロプリノールは、細かく砕かれた錠剤の形をとって、ペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。グルタチオンは、粉末の形をとって、鉱油と控えめに混合され、次にペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度に混合された。
【0166】
図12Bは、5日間の治療後のふくらはぎを示す。3%のアロプリノールと3%のグルタチオンとの組み合わせを用いて治療された右のふくらはぎは、3%のアロプリノールのみを用いて治療された左のふくらはぎよりも、多くの改善を示している。
【0167】
再発した発疹は、3%のアロプリノールと3%のグルタチオンとを毎日に二回適用するさらなる治療に対して、急速に反応した。かゆみは、さらなる治療の適用後24時間以内に解消され、腫脹は、48時間以内に減少し始め、その後も反応は続いた。
【0168】
[実施例6]
図13Aは、治療前の、尋常性乾癬よりも急性型の乾癬である、滴状乾癬の三つの領域を示している。
【0169】
最も左の滴状乾癬の領域へは、治療を適用しなかった。3%のアロプリノールをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療組成物は、滴状乾癬の中央領域へと毎日に二回適用された。3%のアロプリノールと3%のグルタチオンとをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療組成物は、滴状乾癬の一番右の領域へと毎日に二回適用された。アロプリノールも、グルタチオンも、USPグレードであった。アロプリノールは、細かく砕かれた錠剤の形をとって、ペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。グルタチオンは、粉末の形をとって、鉱油と控えめに混合され、次にペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。
【0170】
【0171】
図13Cは、治療2日の後、アロプリノールとグルタチオンとの両方を用いて治療された中央領域の病変がかなり改善され、ほぼ平坦になったことを示している。
【0172】
[実施例7]
図14Aは、治療前に両脚から流動体をしたたらせたアレルギー反応を示す。
【0173】
7日間、3%のアロプリノールをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療用組成物を毎日に二回、この個人の左足へと適用し、且つ、3%のアロプリノールと3%のグルタチオンとをペトロラタムベースの軟膏中において懸濁させた治療用組成物を毎日に二回、この個人の右足へと適用した。アロプリノールも、グルタチオンも、USPグレードであった。アロプリノールは、細かく砕かれた錠剤の形をとって、ペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。グルタチオンは、粉末の形をとって、鉱油と控えめに混合され、次にペトロラタムベースの軟膏中において適切な濃度になるように混合された。
【0174】
図14Bは、治療7日の後、両脚における治療された皮膚が著しい改善を示したことを示す。定量的には測定されていないが、アロプリノールとグルタチオンとの両方を含んでいる治療組成物を受けた治療された右脚は、治療前と比べて、右の脛側の骨の明瞭さに劇的な改善を示した。
【0175】
本明細書において言及された全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
本発明は一つ以上の実施形態を参照して説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてもよく、その要素に等価物を代用してもよいことが、当業者には理解されるであろう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は原料を本発明の教示に適合させるために多くの変更が加えられてもよい。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図された最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に属する全ての実施形態を含むことが意図される。加えて、詳細な説明において特定された全ての数値は、正確な値とおおよその値との両方が明示的に特定されているかのように解釈されるものとする。
【国際調査報告】