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特表2025-502011プラスチック含有原料に基づいて炭化水素油を熱分解により製造するための方法及び装置
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  • 特表-プラスチック含有原料に基づいて炭化水素油を熱分解により製造するための方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】プラスチック含有原料に基づいて炭化水素油を熱分解により製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20250117BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024540623
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 NO2022050325
(87)【国際公開番号】W WO2023128769
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】20211602
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524249747
【氏名又は名称】インリゴ アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シヴァナハリ ケンペゴウダ、ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】カルティコ、ウラジーミル
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401BA02
4F401BB09
4F401CA70
4F401EA11
4F401EA12
4F401EA22
4F401EA48
4F401EA77
4F401FA01Z
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA04
4H129BA07
4H129BB04
4H129BC18
4H129KA02
4H129KB02
4H129KC02X
4H129KC03X
4H129KC13X
(57)【要約】
第1のプラスチック原料から炭化水素油を熱分解により製造するための方法及び反応器アセンブリであって、任意選択で、プラスチック原料を、組み合わされた原料の15重量%を超える量を構成する、クラムゴム及び木材の塊から選択された炭化水素含有原料からなる群から選択される第2の原料と組み合わせることと、組み合わされた原料に触媒を添加して反応組成物を形成することと、反応組成物を、エアロック弁(7)を介して、450~550℃の範囲の温度に加熱された少なくとも2つのオーガ反応器(1a、1b)を備えるオーガ熱分解反応器に供給することと、オーガ反応器(1a、1b)からの油蒸気及び非凝縮性蒸気を凝縮装置へ分配することと、2段階で蒸気から重質油留分と軽質油留分とを凝縮することと、を含む方法及び反応器アセンブリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプラスチック原料から炭化水素油を熱分解により製造する方法であって、
任意選択で、前記プラスチック原料を、組み合わされた原料の15重量%を超える量を構成する、クラムゴム及び木材の塊から選択された炭化水素含有原料からなる群から選択される第2の原料と組み合わせることと、
前記組み合わされた原料に触媒を添加して反応組成物を形成することと、
前記反応組成物を、エアロック弁(7)を介して、450~550℃の範囲の温度に加熱された少なくとも2つのオーガ反応器(1a、1b)を備えるオーガ熱分解反応器に供給すること、
前記オーガ反応器(1a、1b)からの油蒸気及び非凝縮性蒸気を凝縮装置へ分配することと、
好ましくは2段階(11、12)で前記油蒸気及び前記非凝縮性蒸気から重質油留分と軽質油留分とを凝縮することと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の原料が前記第1の原料と組み合わされない場合、前記触媒は、AI、CaCO、MgCO、フライアッシュの中から選択され、単独で、又は組み合わせて使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の原料が前記第1の原料と組み合わされる場合、前記触媒は、ゼオライト系触媒の中から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オーガ反応ステップからの残渣として生じるチャーを、500~550℃の範囲の温度で処理し、それにより一酸化炭素及び水素を生成する追加のステップをさらに含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
チャーを処理する前記追加のステップが、パドル攪拌手段を備えた管状反応器内で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
500~550℃で実施される前記追加のステップ中にコークス形成触媒を再生するステップをさらに含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オーガ反応器内で生じた前記非凝縮性ガスを供給されたバーナによって生成された熱により、前記反応器を少なくとも部分的に加熱することを含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記重質油留分が、約100℃の温度の沸騰水を用いて凝縮される、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記軽質油留分が、60~75℃の範囲の温度の温水を用いて凝縮される、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
クラムゴムのみで構成される場合、前記第2の炭化水素原料が、30重量%以上の量で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
プラスチック原料を含む第1の原料から炭化水素油を熱分解により製造するための反応器アセンブリであって、
a.プラスチック原料と、ゴム及び木材の中から選択された少なくとも1つの追加の炭化水素含有原料のための供給装置と、
b.少なくとも主要な二重オーガ(1a、1b)、可変速モータを備えたヘリカル反応器と、
c.反応器の供給口及び出口の両方にあるエアロック弁(7,8)と、
d.前記主要な少なくとも二重オーガ反応器(1a、1b)の下流に配置された管状反応器(1c)と、
e.少なくとも前記二重オーガ反応器(1a、1b)及び前記管状反応器(1c)を囲むように配置されたヒートボックス(2)と、
f.少なくとも2段に配設された油凝縮器と、
g.前記反応器アセンブリを加熱するためのバーナ(4)であって、非凝縮性の可燃ガスが供給されるように構成されている、バーナ(4)と、
h.熱分解ガス、好ましくは油凝縮器(11、12)内の軽質油留分及び重質油留分を凝縮するために配置された温水及び蒸気を生成するためのボイラー(21)と、
を含むことを特徴とする、反応器アセンブリ。
【請求項12】
前記少なくとも二重オーガ、ヘリカル反応器(1a、1b)がシャフトレスであり、出口での回転速度が入口での回転速度と異なることを可能にする、請求項11に記載の反応器アセンブリ。
【請求項13】
前記油凝縮器(11、12)が、シェルアンドチューブ型である、請求項11又は請求項12に記載の反応器アセンブリ。
【請求項14】
熱酸化を利用して触媒を再生するよう構成されたシャフト付きパドルを備えた管状反応器(1c)をさらに含む、請求項11から請求項13までのいずれか1項に記載の反応器アセンブリ。
【請求項15】
前記管状反応器(1c)が、前記主要な少なくとも二重オーガ反応器(1a、1b)から気密分離されている、請求項14に記載の反応器アセンブリ。
【請求項16】
酸化空気及び冷却蒸気の供給口(20)が、前記第3の管状反応器(1c)の入口に配置されている、請求項14又は請求項15に記載の反応器アセンブリ。
【請求項17】
前記第3の管状反応器(1c)の出口から前記バーナに排出ガスを搬送する手段を示す、請求項14又は請求項15に記載の反応器アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に示される、炭化水素油の熱分解による製造方法に関する。別の態様によれば、本発明は、請求項11の前文に示される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料油の形態の高エネルギー生成物(energy rich products)に転換するためのプラスチック原料の利用は、プラスチック原料のリサイクル及び利用というより広い観点において主要な焦点となっている。
【0003】
プラスチック原料はそのまま焼却することも可能だが、一般には、焼却処理中に有毒なダイオキシンが発生する。
【0004】
熱分解は、プラスチック廃棄物をエネルギーに変換する環境に優しい利用法として、より有望な候補である。熱分解では、原料は無酸素下で加熱され、プラスチック原料のままよりも燃料に適した、エネルギー含有量が高い液体油生成物に転換される。
【0005】
当該技術分野には膨大な数の特許公報(特許及び特許出願)が存在し、米国特許第5,608,136号明細書、同第5,811,606号明細書、同第6,866,830号明細書、同第13,126,811号明細書、同第5,856,599号明細書、同第5,129,995号明細書、同第8,344,195号明細書、同第9,212,318号明細書、同第9,725,655号明細書、同第10,093,860号明細書など、米国特許出願公開第2009/0062581号明細書、同第2009/0321317号明細書、同第2011/0259726号明細書、同第2015/0001061号明細書、同第2017/0073584号明細書など、国際公開第2005/071043号、同第2007/069449号、同第2008/022790号、同第2010/049824号、同第2014/167141号、同第2018/000050号などであり、これらは、バッチ式及びロータリバッチ式、固定床式及び流動床式、キルン及びロータリキルン、ならびにシングル、ダブル及びマルチオーガ反応器などの多くの異なる方法及びタイプの熱分解装置に関する。
【0006】
国際公開第2008/022790号及び米国特許出願公開第2009/0321317号明細書は、原油、食用油、油脂などをベースとするプラスチック含有流体及び有機流体を、マルチオーガ熱分解処理するための方法及び装置に関する。反応混合物が反応器に投入され、反応器の溶融ゾーンで溶融され、溶融物から阻害物質が排出される。溶融物中に残存する長鎖ポリマーは、反応器の分解(crack)ゾーンで気体状態(gaseous state)になるまで分解される。これらの特許は、シャフトレス(ヘリカル)スクリューと同様に、プラスチック分が溶融する際に、このような廃棄物の粘性物質を処理するオーガ及びマルチオーガ熱分解処理することが可能なタイプを開示している。プラスチック溶融フラッディング(plastic melt flooding)が反応器内部で発生し、非溶融部分に対して過剰となるため、反応器の長さに沿った安定したオーガ処理を行うと共に、このような状態を制限する解決策は存在しない。このため、オーガ及びマルチオーガ熱分解システムでは、溶融及びフラッディングが原因で、これまでプラスチック原料を効率的に処理することができなかった。
【0007】
この点に関して、米国特許第5,811,606号明細書、同第6,866,830号明細書、同第13,126,811号明細書、国際公開第2010/049824号、同第2018/000050号などのプラスチック熱分解の分野における、多くの特許された解決法は、専らバッチ式熱分解反応器などの撹拌を伴う溶融及びバッチ式処理に基づいている。これらの方法の一般的な問題点は、反応器の底部にコークスが堆積して、熱伝達の低下を生じることと、反応器の頻繁な洗浄が必要となり、製造の不要な中断を伴うことである。
【0008】
従来の熱分解処理におけるプラスチック廃棄物処理では、要求される熱分解温度が450~500℃の範囲であるところ、プラスチックの特性によって150~200℃の温度範囲でプラスチックの溶融が始まるために、いくつかの問題があった。
【0009】
廃プラスチックの熱分解には、温度を下げる目的で、油燃料をワックス含有量の少ないものに改良する目的で、様々な触媒が使用されており、米国特許第8,344,195号明細書ではドロマイト触媒、同第9,212,318号明細書ではZSM-ゼオライト及びFCC触媒が使用されている。しかし、熱分解コークスが触媒内部の微細多孔質表面領域に混入するため、触媒が劣化するという典型的な問題があり、触媒を更新もしくは再生するか、又は少なくとも部分的に除去して新しい触媒と混合する必要がある。米国特許第8,344,195号明細書で議論されているドロマイト触媒は、頻繁に除去し、天然ドロマイト物質の安価な化石を900~1000℃の温度で酸化及び焼成することにより調製された新鮮な触媒と交換することが提案されているだけである。そのため、当該技術分野では、熱分解処理と並行して触媒を連続的に再生するための効果的な解決法は存在しないものと認識され得る。
【0010】
熱分解処理には触媒が使用されてきたが、触媒の使用に関しても問題がある。オーガベースの反応器では、このような溶融状態を作り出すことによる問題がある。さらに、バッチ式熱分解反応器及び連続式熱分解反応器では、液体溶融プラスチックの加熱及び熱分解中に炭素質コークス層の形成がなされる。この状態は、熱分解処理で使用される触媒を失活させ、熱伝達率を低下させる。結果として、オーガを含む反応器が使用される場合、通常、反応器表面内部とオーガシャフト上にコークス層が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、上記の欠点が低減又は除去された、プラスチック原料の改良された熱分解のための方法及び装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的は、本願請求項1によって定義される方法により達せられ、当該方法は本発明の第1の態様を構成する。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、請求項11によって定義される装置に関する。
【0014】
好ましい諸実施形態は、従属請求項によって開示される。
【0015】
本発明によれば、ヘリカルマルチオーガ反応器は、プラスチック含有原料の熱分解処理において有用であることが見い出された。プラスチック原料は、反応組成物の粘度を高くする役割を果たす特性を有する別の原料と組み合わされ、この反応組成物が、反応器内の反応条件下で低粘度の流体の塊を形成しないようにする。同時に、反応組成物(配合原料)の組み合わせは、反応器を詰まらせたり、反応器の壁やオーガ部分に炭素質コークス層を形成したりしない。このようなコークス層の堆積は、熱伝達を低下させ、反応器の壁と反応器内部の原料との間の熱伝達を制限するので、極めて望ましくない。
【0016】
本発明の方法によれば、プラスチックの形態の第1の原料成分が、第2の成分と組み合わされて処理に供される。第2の成分は、特に選択された(第1の)触媒、並びにゴム及び木材から選択された第2の原料成分のいずれか一方であってもよい。
【0017】
反応器材料であるSS304-321の安全規格は、文献で要求される650℃でのAI触媒の使用及び再生が十分に可能な800℃前後の温度分類に最大限対応しており、500~550℃で再生される典型的な触媒ZSM-5についても同様である。
【0018】
第1の触媒が存在しない実施形態において、第2の原料成分は、それがゴムのみから構成される場合、30重量%未満であってはならない。第2の原料成分が木材粒子のみから構成される場合、それは15重量%以上の量で存在すべきである。このような原料の組み合わせにより、オーガと反応器の壁面との間を密閉し、反応器の壁面へのチャーや他の堆積物の蓄積を防止しながら、反応器を通じて搬送される際に、塊の粘度が一定レベルに維持されることが保証される。
【0019】
プラスチック原料に粘度制御特性を示す触媒を有効量配合することによっても、同様の効果を得ることができる。このような触媒は、例えばアルミナなどの金属酸化物の1種又は2種以上である。プラスチック原料は、使用されるプラスチックの種類に依存して様々な物理的性質を持つ可能性があるため、含有させる触媒の量は、特定の原料に適合させることができる。
【0020】
さらに、本方法及び装置によれば、触媒再生はプロセスに内在することから、その動作の中断を要しない。触媒の再生温度は、熱分解処理の反応ゾーンの温度よりも約150~200℃高い約650℃である。このプロセスに最も適した触媒は、ゼオライト触媒、AI及び/又はドロマイト系触媒である。
【0021】
本発明のさらなる固有の特徴は、加熱が、プロセスで発生するガスの燃焼によって少なくとも部分的に行われることである。この意味で、本発明の装置及び方法は、外部加熱を必要としないか、あるいは、商業的に外部加熱が有利な場合にのみ、電気又は他の加熱と組み合わせることができる。
【0022】
反応温度では、生成した油は気化するので、その蒸気を冷却して液体油にする必要がある。生成した蒸気は、重質油留分と軽質油留分という異なる油留分を生成するために、好ましくは2段階で冷却される。
【0023】
以下、本発明を、図面を参照しながら非限定的な実施形態の形でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の装置及び方法の基本的要素を示す概略的な簡略化されたフロースキームである。
図2】本発明の基本要素を組み込んだプラント全体の概略的な配置図である。
図3】本発明による装置のいくつかのコア要素の側断面図である。
図4図3の構成部品と同様の分解側断面図である。
図5】本発明による装置の他の要素の側断面図である。
図6A】本発明による装置の凝縮器要素の詳細図である。
図6B】本発明による装置の凝縮器要素の別の詳細図である。
図7図6に示した凝縮器要素の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、直列に接続された第1のオーガ反応器(1a)及び第2のオーガ反応器(1b)と、第2のオーガ反応器(1b)に直列に接続された第3の管状反応器(1c)とを囲む、ヒートボックス2又はレトルト(retort)を示す。第1のオーガ反応器の入口にはエアロック弁7が図示され、第2のオーガ反応器1bの出口には別のエアロック弁8が図示されている。ヒートボックス2の下部領域には、様々な反応器を所望の温度に加熱するための、通常はバーナ4を含むガス炎炉形式の加熱装置3が配置されている。断熱材がヒートボックス内に存在してもよく、及び/又は、ヒートボックスが固有の断熱特性を有していてもよい。加熱装置3は、好適には、プロセスで発生した非凝縮性ガスを燃料として利用するバーナ4を含むことができる。
【0026】
高温の油蒸気の形態の材料の流れ(III)が示され、第1及び第2のオーガ反応器1aの出口の位置から、高温の油蒸気を油凝縮器11の形態の第1の冷却ユニットに導き、そこで高温の蒸気の重質分(重油沸点範囲)が重質油留分に変換される。これは約100℃の温度で行われる。残りの蒸気は第2の凝縮器12に送られ、そこでさらに温度が下げられ、凝縮可能な蒸気が軽質油留分Vに変換される。第1の凝縮器11は、好ましくは高温水、あるいは沸騰水を使って冷却される。第2の凝縮器12は、通常、60~75℃の範囲の温度の温水で冷却される。
【0027】
図1に示すフロー(流れ)は、I:プラスチック原料の大部分を含む原料、II:触媒のリサイクルフロー、III:オーガ反応器からの油蒸気、IV:加熱に用いる非凝縮性ガス(水素含有)、V:本発明の主生成物としての熱分解油、VI:真水(fresh water)、VII:高温蒸気を冷却/凝縮するための沸騰水、VIII:高温油蒸気を冷却する際に発生し、通常、チャー処理(char treatment)/触媒再生でさらに使用される蒸気、IX:より軽質な蒸気留分を冷却及び凝縮するための冷却水、X:灰残り及び廃水、XI:排出煙道ガスである。
【0028】
好ましくは、第1及び第2のオーガ反応器はシャフトレス型である。これは、出口端のオーガが、反応器(複数可)の入口端付近のオーガとは異なる速度で回転し得ることを意味し、滞留時間を最適化することで、オーガの長さ全体にわたって進行する熱分解処理により生じる体積変動に依存して、入口から出口までオーガ反応器のより安定した充填を保証する機能を果たす。
【0029】
運転中、原料及び触媒は、エアロック弁7を介して、450~500℃の範囲の温度に加熱される第1のオーガ反応器1aに装填される。熱分解処理を開始するために、熱分解温度を達成するための起動燃料として起動燃料油(start-up fuel oil)が使用される。その後、このプロセスでは、自己発生した熱分解オフガス(pyrolysis off-gases)をプロセスの連続的な加熱に使用して、上記のプロセス温度を達成する。オーガは、所望の熱分解が行われるのに適した滞留時間を達成するために選択された速度で、原料を第1の反応器を通して搬送するよう操作される。
【0030】
第2の原料がプラスチック原料と組み合わされる場合、触媒は、典型的には、ドロマイト、ゼオライト、より低い熱分解温度で動作しても熱分解油生成物を精製(refine)し、最大化することができる不均一系触媒物質である、天然又は工業的に造粒された触媒物質からなる群から選択される。
【0031】
プラスチック原料が唯一の原料として使用される場合、選択される触媒は、典型的にはAIであるが、CaCO、MgCO、フライアッシュなどを単独で又は組み合わせて使用することもできる。
【0032】
第2の原料が第1の原料と組み合わされる場合、触媒は、好ましくはゼオライト系触媒の中から選択される。
【0033】
触媒熱分解では、触媒内部の微細多孔質(micro-porous)表面領域に堆積した炭素質コークスの不純物による触媒失活が起こりやすい。通常、触媒は交換又は熱再生される必要がある。[5~7]の研究及び発表で知られているように、特にゼオライト触媒ZSM-5、HZSM-5、HUSYなどの触媒再生は、不純物であるコークスを燃焼除去することによって行うことができる。触媒の再生は、触媒の酸性度の不可逆的な低下といわゆる触媒焼成温度とを避けるために、550℃未満の温度での空気による低速酸化によって行われる。焼成は、定期的な攪拌と冷却蒸気剤の供給により回避され得る。
【0034】
管状反応器1a、1b、1cは、図1に示すように、高温ガスのクロスフロー間接移動においてヒートボックス内を流れ、様々な温度領域で上向きに流れる高温ガスに基づいて、熱効率が最大になるように配置されている。
【0035】
第1のオーガにおいて、プラスチック原料が加熱され、180~250℃の範囲で溶融を開始するが、供給原料の第2の成分として使用される砕けやすいゴム(crumby rubber)は、通常350℃より高い温度で分解する。このことは、ゴム原料が充填材として機能し、安定したスクリュー回転を助け、供給物を全体として一定粘度に維持することを助けることを意味する。
【0036】
粘性流体混合物は、触媒と共に、処理長さにわたって反応器の断面の流れが安定して満杯に近い状態になるように、回転速度を下げて第2のオーガ反応器1bに流れる。第2のオーガ反応器では、反応器の滞留時間が大幅に延長される一方で、熱分解物質の塊は破壊されて蒸発する。未転換の熱分解炭素は、回転式ロック弁から、以下に述べるような特性を持つ第3の管状反応器に取り出される。
【0037】
第3の管状反応器1cは、典型的にはシャフトベースのペダル攪拌機を収容した一種の再生型管状反応器であり、この反応器では、攪拌と空気及び蒸気の供給による熱酸化とによって触媒を連続再生することを目的として、残りの原料がオーガ反応器内よりも高温に加熱される。第3の管状反応器は、パドルシャフト設計で配置され、他の部分から気密分離されている(hermetically separated)。これにより、熱分解触媒と自己再生触媒の両方が、典型的には500~550℃の範囲である共通の加熱温度に維持される。触媒焼成を回避するために、典型的には、冷却蒸気剤が添加される。この工程で一酸化炭素及び水素が発生する。
【0038】
図2は、図1に示した原理に基づく反応器配置の概要であり、NOxスクラバー及びSOスクラバー、ならびに水フィルターなど、実際の実施形態に通常存在するさらなる要素を含んでいる。プロセスの主要概念は図1と同様である。ローマ数字で示されたフローは、図1を参照して上述した通りである。
【0039】
図3は、熱分解が行われる2つのオーガ反応器と、触媒が再生される第3の管状反応器とを収容するヒートボックス2の側断面図である。2つのオーガ反応器に見られるように、オーガは入口側半分と出口側半分とに分かれており、出口側の回転速度が入口側の回転速度と異なることを可能とする。
【0040】
廃プラスチックに通常適用される粉砕、造粒、及び供給ユニットの典型的な配置は、本システムへの発明の一部として、配合された混合物(blended mixtures)の共熱分解処理のために予備的に準備される。これは、最大5~6mmサイズのゴム混合物からなる配合された混合物バルク原料の細断及び供給のために好ましくは提案される回転式エアロック弁をも含む。同時に、木質バイオマス/チップの場合、典型的には、20mm~25mmの木質バイオマス/チップの充填にはダブルフラップエアロック弁が使用される。これは主に、回転式エアロック弁では詰まりやすい木材の硬さとチップサイズの特性によるものである。
【0041】
本システムの詳細の実施形態として、二重オーガ(double auger)シャフトレス熱分解反応器のシェルチューブ本体は、典型的にはボイラー鋼1020又は1040(直径に依存する厚さ6~10mm)で製作されることが提案されており、無酸素下で処理が行われることから、内部のシャフトレスのヘリカルスクリューも同一の鋼と厚みで作ることができる。
【0042】
これに対し、触媒レトルトのシェルチューブ本体は、内部のマルチパドルスクリューを含めて、ステンレス鋼SS304又はSS321で特別に製作する必要がある。これは、内部での触媒再生のための空気供給による熱酸化条件が、550℃~550℃前後、場合によっては最大で650℃となるためである。
【0043】
スクリュー式の熱分解反応器と触媒レトルトのオーガの回転には、典型的には、歯車サイクロイド型とフランジ保持型のACモータが使用される。どちらも、異なる回転速度を実現するための周波数インバータ(HZドライバ)が特別に装備される。回転速度は、最低1.0rpmから最大7.5rpmの範囲である。対応する運転出力容量は、(オーガ径に応じて)1.5kWから5.5kWの範囲である。オーガの速度(Auger speed)は、手動制御と、供給原料に固有の製品制御を行う自動プロセスのためのPLC制御の両方で行うことができる。反応器の始動は、熱分解反応器を450℃の熱分解温度に予熱するための自動バーナである工業用デュアル燃料バーナ4によって行われる。これは1.5時間以内に行われる。
【0044】
燃料バーナ4の火炎制御の自動調整は、炉3内の火炎温度が、反応器の運転温度を達成するために、その自動中間-最大運転モードによって提供される550~850℃の予熱範囲となるよう調整される。それに対応して、蒸気ボイラー21内の蒸気過圧(steam over-pressure)は、ボイラーに典型的かつ自動的に水が供給されるのと同時に、約0.5バール以上になるように調整される。
【0045】
触媒レトルト2内への蒸気供給用モータ制御弁20が自動又は手動で閉じられた際に、外部への蒸気排出は、典型的には図1図3に示すように行われる。このような予熱に伴い、既にボイラー21が稼動しているため、油凝縮器11にはあらかじめ沸騰水が十分に満たされている。送風ファンが最初に作動され、炉内の負圧(under-pressure)は、典型的には-0.05kPa以上となる。このような熱的条件及びその他の条件の下で、本システムは以下に考察するように装填(loading)及び運転が可能な状態にある。
【0046】
モータ制御弁20を介して添加される蒸気は、触媒再生が行われる管状反応器1c内の温度を制御する機能を有する。
【0047】
このシステムは自動制御システムを備えているが、手動で操作することも可能である。図5図6は、炉3内の燃焼空気A1が送風機6によって供給されるガス火炎温度制御のための典型的なPLC制御構成を示す。触媒レトルトの出口温度制御は、モータ制御弁20より供給される蒸気冷却剤によって行われ、油凝縮器11~12の油凝縮温度出口制御はいずれも、沸騰水及び冷却水スクリューポンプ16によって提供される。また、本システムのラボスケール又はパイロットプラントにおいて好まれるように、手動制御手順によって簡略化され実施され得る。同時に、蒸気ボイラー21の制御レベル性能と両方の油配管ポンプの制御レベル性能とは、このようなユニットの標準的な規制によって要求されるように自動的に提供される。
【0048】
上記に関連して、工業用オイルバーナ及びその始動時予熱のための本システムも、典型的には自動制御モードである。特に、本システムで検討されているような弱火、中火、強火のような3段階運転モードについては後述する。
【0049】
バーナの熱容量は、典型的には、熱分解油凝縮後の混合プラスチック熱量の15~20重量%の量の残留ガス燃焼率の熱容量を下回らず、これに対応する熱容量の80~85%が達成される。バーナは、本システムの説明のために詳細に検討されるように、弱火、中火、強火のような3段階モードで運転及び制御される。熱容量に関して、概ね以下の比率が対応する。
本システム0.25トン/時の予熱に0.35MW、
本システム0.5トン/時の予熱に0.5MW、
本システム1.0トン/時の予熱に0.75MW
【0050】
図3に断片的に示すように、本システムでは、反応器の予熱と共に、熱分解反応器1a、1b、1cの全てのオーガ及びヒートボックス2、並びに回転式又はダブルフラップ式のエアロック弁8~9及び排出オーガ10は、運転モードに切り換えられるように構成されている。回転式エアロック弁8に原料を供給する最後の供給ユニットから始まり最初の供給ユニットへ至る手順シーケンスの順序は、典型的なコンベヤ式又はホッパ式投入システムのいずれかを作動させる前に、最後の手順で作動させるようにスイッチを入れる必要がある。最後に、後者が反応炉を装填するために始動される際のシーケンス、同時にガスファン5のスイッチを入れるシーケンス、プロセスから排出される熱分解油蒸気が配管を経由して反応器から油凝縮器11~12へ送られるシーケンス、及び非凝縮性残留ガスをリサイクルするための凝縮器からガス炉3へ戻り配管シーケンスは、典型的には同時シーケンス技術として構成される。これは、単一のファン構成で通常要求される-50Pa前後の熱分解反応器内の低圧状態の要求をも解決する。
【0051】
図5に示すように、可燃性の残留合成ガスが、マルチオリフィスノズルから注入され、前述のように炉3内へ配管で送るために利用可能となるのは、本システムへの装填から約0.5時間後と推定される。再生ガスは、800℃~850℃の予熱温度で運転中の予熱オイルフレームバーナ4で点火される。再生合成ガスが炉に注入された結果、温度は5~10分で1000℃前後に上昇する。バーナの火炎温度を調整するために、弱火モード設定で自動的にその最小動作になるようにする。このことは3段階モードによって達成される。一方、送風機6は自動的に作動し、1000℃を超えないガス火炎温度を安定させるのに必要な、燃焼空気A1でガスを希釈する動作を開始する。緊急時には手動制御が望ましいという要請に対しては、送風機を手動制御して同じ動作を同時に行うことも可能である。1100℃前後までの温度の上昇が許容されている。
【0052】
熱分解炉の運転温度は500℃前後であり、熱分解処理に必要な熱は、炉周辺の700~750℃の高温排ガスの間接的なスイープ(sweeping)によって供給されるため、後者は、もう1つの希釈空気の注入ポイントA2によって調整することが提案されているように、スイープ温度によって達成される。これは、図1及び図3に示すように、フリップフラップダンパアレンジメント19を備えた開孔から手動で容易に行うことができる。
【0053】
このような熱条件において、炉3と反応器1の両方が、下記で説明する新規で革新的な構成性能で、混合プラスチックの触媒熱分解を行うための安定した連続動作を提案される。図4は、加熱、溶融及び熱分解による混合プラスチックの嵩容積(bulk volume)の変化と、熱分解反応器内での安定的なスクリュー回転とを示している。反応器内で溶融に供されるバルクプラスチックは、クラムゴム(crumb rubber)や木材チップにより、嵩容積が2倍~2.5倍減少する。プラスチックフレーク処理の場合、6倍~7.5倍(混合物1kgあたり)の減少が見込まれると推定され、プラスチック溶融物がすべてこれらのバルク物質媒体(触媒を除く)の多孔質体積に含まれることを示唆している。
【0054】
プラスチックフレークの嵩密度(bulk density)=100kg/m
プラスチック顆粒の嵩密度=500kg/m
クラムゴムの嵩密度=350kg/m
クラムゴムの気孔率(bulk porosity)=68%
木材チップの嵩密度=150kg/m
木材チップの気孔率=80%
【0055】
バージョン1:プラスチック顆粒とクラムゴムの混合物(65/35重量%):
混合物供給量=0.65/500+0.35/350=2.3リットル
混合物溶融量=クラムゴムのバルク媒体=0.35/350=1リットル
【0056】
バージョン2:プラスチック顆粒と木材チップの混合物(80/20重量%):
混合物供給量=0.8/500+0.2/150=2.95リットル
混合物溶融量=木材チップのバルク媒体=0.2/150=1.35リットル
【0057】
バージョン3:プラスチックフレークとクラムゴムの混合物(65/35重量%):
混合物供給量=0.65/100+0.35/350=7.5リットル
混合物溶融量=クラムゴムのバルク媒体=0.35/350=1リットル
【0058】
バージョン4:プラスチックフレークと木材チップの混合物(80/20重量%):
混合物供給量=0.8/100+0.2/150=9.35リットル
混合物溶融量=木材チップのバルク媒体=0.2/150=1.35リットル
【0059】
これに関して、図4は、サンプル計算で説明したような混合物での運転のための構成として提案された可変回転速度を示している。提案されたクラムゴムと混合されたプラスチック顆粒の場合、その溶融状態は、通常、好ましくは、図4に示すように、二重オーガ熱分解反応器の上部において、特に、本システムの二重オーガ熱分解反応器の第2ハーフスクリュー部において生じる。オーガの回転速度の設定は重要であり、この理由により、後半のオーガは、最初のオーガより2倍~2.5倍低い回転速度で合理的に作動されて、反応器断面の流れを概ね安定化させ、より長い滞留時間という、より効果的な熱分解処理条件を提供する。
【0060】
類推するに、混合供給物の質量及び嵩も、その脱揮(devolatilization)(蒸発)により大幅に減少する。このため、反応器の第3及び第4のハーフスクリュー部は、図4に具体的かつ好適に示されるように、より効果的に回転速度を下げて作動されることが提案されている。その結果、本発明の二重オーガ反応器における全滞留時間は、クラムゴムを含むプラスチック顆粒について、以下のように例示的かつ比例的に見積もられるように、45%前後向上する(精度0.5分)。
【0061】
プラスチック-ゴム共熱分解のための典型的な二重オーガ反応器(上部及び下部オーガともホールスクリュー設計)の場合
上部オーガ(例えば5rpm)での滞留時間=15分
下部オーガ(2.5rpm)での滞留時間=30分
処理にかかる総滞留時間=45分
【0062】
本システムにおける革新的な二重オーガ反応器(上部及び下部オーガともハーフスクリュー設計)の場合
上部オーガ(例えば5.0rpm)の第1ハーフスクリュー部の滞留時間=7.5分
上部オーガ(2.5rpm)の第2ハーフスクリュー部の滞留時間=15分
下部オーガ(2.0rpm)の第3ハーフスクリュー部の滞留時間=18.5分
下部オーガ(1.5rpm)の第4ハーフスクリュー部の滞留時間=24.5分
処理のための総滞留時間=65.5分
【0063】
混合原料である固体混合物とその処理に使用される触媒、クラムゴム又は木材チップから充填され、プラスチックからも少量充填されるかもしれない炭素チャーの多速度熱分解処理に関する要求(claim)。これらはすべて反応器1a、1bから触媒再生レトルト1cへ供給され、入口フィーダとしての回転式エアロック弁7によって熱分解レトルトに供給され、出口フィーダとしての回転式エアロック弁8からも同様に熱分解レトルトに供給される。
【0064】
これらのエアロック弁は、レトルトへの空気と蒸気の供給を、外部の空気と熱分解反応器内部の空気の両方に対して、低酸化雰囲気圧力下で分離するために必要である。このような触媒の熱再生には、触媒コークス不純物が500~550℃前後の温度でゆっくりと燃焼してガス化するような低酸化条件が一般的である。これは、調整ダンパ弁20を介して供給される酸化空気A2によって行われ、また、図3に示すように、レトルト内の触媒移動床に対して向流方向(counter-flow direction)に動作させることにより、効果的な熱処理及び再生が可能になる。
【0065】
廃棄物ゼロ処理を目的として、代替オプションとして、レトルト内で触媒の熱再生と共に炭素チャーを同じ温度で燃焼させることも提案されており、後者は通常、上述のように調整された過剰な酸化空気A3による炭素チャーの熱放出とバランスを取りながら安定化され、上述のモータ制御弁20により蒸気ボイラー21から供給される冷却蒸気もさらに供給される。このプロセスは、チャーの精製下において自己再生触媒で行われる。
【0066】
チャー精製工程は、パドルオーガタイプの触媒レトルト2が提案されている図3に示すように、攪拌によって行われる。これは、具体的かつ好適には図3に示すように、5rpmの回転速度で動作する。上記低酸化温度と上記の手順で提案された冷却手順とのバランスがとれていないと、炭素チャーが局所的に自然発火する可能性がある。
【0067】
上記で説明したように、例示的かつ好ましくは5rpmとして提案される、最大回転速度での撹拌が提供される。パドルスクリューの容量は、下部オーガの第4のハーフスクリュー部分の容量に最低限対応するように提案される。提案されたパドルスクリューの回転速度は1.5rpmであり、これは14.5分間に相当する。ヒートボックス内の提案された滞留時間は、ホールスクリュー設計の場合、ハーフスクリューの2倍以上となり、具体的には29分以上である。上記のパドルスクリューの構成と同様に、触媒搬送スクリュー10の冷却及びアンロード/排出のための滞留時間も30分前後が提案され、対応する冷却された触媒の排出温度は50℃である。このアプローチにより、CW-オーガスクリュー10は、図1図3に示すように、例示的に同じ1.5rpmの低回転速度で対応するように運転される。
【0068】
本発明はまた、1000℃の高温領域で特別に運転されるガス炉3で発生する可能性のあるNO排出を最小限に抑えることを目的として、汚染物質の削減を提供する。そこで、その低値でのダイオキシンの生成を防ぐために、図1図3に示すように、レトルト2からの燃焼煙道ガスを同じ炉に再循環させることが提案されている。これは、類推するに、例えば図5に示すように、高温燃焼ゾーンでのNO低減のために知られ推奨されているEGR係数(排ガス再循環)を使用した、いわゆるMILD燃焼法によって行われる。前述したように、-50Pa付近の炉内負圧(furnace under-pressure)のために、それ自体で行うことも可能である。
【0069】
第1の凝縮器において重質油留分を選択的に凝縮することを目的とした、縦型及び横型シェルアンドチューブの直列型の油凝縮器11及び12を用いた熱分解油製造は、従来の熱分解処理に通常適用されている常温での冷却水供給により、革新的なものとなった。本発明は、図6(a)に示すように、蒸気ボイラー21からの100℃の沸騰水供給により、熱分解蒸気が凝縮器11の入口温度400℃から出口温度200℃まで冷却され、好ましくは65%の熱分解油が凝縮されることを主張する。
【0070】
水の沸騰温度に近いため、留分の一部は蒸発し、これらの非凝縮性ガスは蒸気配管を通ってボイラードラム内へ再循環する。この新しい凝縮器の凝縮温度は、PLC制御又は給水量による手動手順で制御される。給水量は通常、油蒸気の出口温度に依存する。また、この違いは、給水量が変動しても水温は100℃で安定していると結論付けられる。しかしながら、凝縮器内の水位は、図7に示すように、管束(tube bundles)間の唯一の変数であり、よって管の凝縮面も、新しい制御モードシーケンスに必要な変数として考慮される。
【0071】
縦型凝縮器11とは対照的に、横型凝縮器12の水位は図6(a)に示すように安定である。これは、油の引火点が55~60℃前後であるのに対し、提案された温度である約65~70℃で、軽質油留分を凝縮させるのに安定した温度が得られるためである。この主張は、図6(b)に示すように、凝縮器バルク水中に上部及び下部の両方の管束を備える、新規で革新的なものである。この構成では、油蒸気流は下部の管束で冷却及び凝縮され、上部の管束には、凝縮器12内のバルク水を、上述したように65~70℃の温度に急冷する(quenching)周囲冷却水が供給される。このような凝縮器では、比較的冷たいバルク水が上部領域から供給されるクローズループ型の自然(重力)水循環が存在するという利点がある。これは、上部の管束に供給され、下部の領域まで下向きに循環する周囲水による冷却である。図6(b)に矢印で示すように、凝縮された油が加熱される下部の管束領域では、水は油と共に再び上方へ循環し、前述と同じ温度範囲でそれを行う。
【0072】
これらの凝縮器の他の実施形態及び構成に関しては、両者とも、図6図7に示すように、凝縮器から流下する油を見ることが可能な、凝縮器からの油を配管で送るためのオープンカラムタイプの油ベースの油圧エアロック容器13を備えている。重質油凝縮器11からの油配管は、すべて矩形の設計で作られ、すべての配管構成にはパックシールピストンバーが装備されている。これは、タールやワックスが固化して詰まった場合に、配管を洗浄できるようにするためである。これにより、システムの緊急停止や長時間にわたる冷却を回避することができる。これらの凝縮器への油蒸気配管の配置と同様に、通常通りに高温配管(hot pipe)によるマルチレンズ工業タイプの熱伸張継手14が装備されている。スクリュー式の水ポンプ16は、前述のように、沸騰水及び冷却水の両方の供給のためにPLC制御手順で構成されることが好ましい。可変給水モード及び連続給水モードを同時に調整する柔軟性がある。
【符号の説明】
【0073】
1a 第1のオーガ反応器
1b 第2のオーガ反応器
1c 第3の管状反応器/触媒再生
2 ヒートボックス/レトルト
3 ガス燃焼炉
4 予熱開始用工業用オイルバーナ
5 炉内配管用ガスファン
6 プレスタート用燃焼送風機
7 エアロック弁
8 エアロック弁
9 エアロック弁
10 排出オーガ/CWオーガスクリュー
11 縦型油凝縮器/重質油凝縮器
12 軽質油留分用横型凝縮器
13 エアロック容器
14 熱伸張継手
15 ギア式熱分解油ポンプ
16 冷却水スクリューポンプ
17 パックシールピストンバー
18 制御弁
19 フリップフラップダンパアレンジメント(弁)
20 空気調整ダンパ弁
21 蒸気ボイラー
22 排気弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプラスチック原料から炭化水素油を熱分解により製造する方法であって、
任意選択で、前記プラスチック原料を、組み合わされた原料の15重量%を超える量を構成する、クラムゴム及び木材の塊から選択された炭化水素含有原料からなる群から選択される第2の原料と組み合わせることと、
前記組み合わされた原料に触媒を添加して反応組成物を形成することと、
前記反応組成物を、エアロック弁(7)を介して、450~550℃の範囲の温度に加熱された少なくとも2つのオーガ反応器(1a、1b)を備えるオーガ熱分解反応器に供給すること、
前記オーガ反応器(1a、1b)からの油蒸気及び非凝縮性蒸気を凝縮装置へ分配することと、
好ましくは2段階(11、12)で前記油蒸気及び前記非凝縮性蒸気から重質油留分と軽質油留分とを凝縮することと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の原料が前記第1の原料と組み合わされない場合、前記触媒は、AI、CaCO、MgCO、フライアッシュの中から選択され、単独で、又は組み合わせて使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の原料が前記第1の原料と組み合わされる場合、前記触媒は、ゼオライト系触媒の中から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オーガ反応ステップからの残渣として生じるチャーを、500~550℃の範囲の温度で処理し、それにより一酸化炭素及び水素を生成する追加のステップをさらに含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
チャーを処理する前記追加のステップが、パドル攪拌手段を備えた管状反応器内で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
500~550℃で実施される前記追加のステップ中にコークス形成触媒を再生するステップをさらに含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オーガ反応器内で生じた前記非凝縮性ガスを供給されたバーナによって生成された熱により、前記反応器を少なくとも部分的に加熱することを含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記重質油留分が、約100℃の温度の沸騰水を用いて凝縮される、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記軽質油留分が、60~75℃の範囲の温度の温水を用いて凝縮される、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
クラムゴムのみで構成される場合、前記第2の炭化水素原料が、30重量%以上の量で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
プラスチック原料を含む第1の原料から炭化水素油を熱分解により製造するための反応器アセンブリであって、
a.プラスチック原料と、ゴム及び木材の中から選択された少なくとも1つの追加の炭化水素含有原料のための供給装置と、
b.少なくとも主要なシャフトレスである二重オーガ(1a、1b)、出口での回転速度が入口での回転速度と異なることを可能とする可変速モータを備えたヘリカル反応器と、
c.反応器の供給口及び出口の両方にあるエアロック弁(7,8)と、
d.前記主要な少なくとも二重オーガ反応器(1a、1b)の下流に配置された第3の管状反応器(1c)と、
e.少なくとも前記二重オーガ反応器(1a、1b)及び前記管状反応器(1c)を囲むように配置されたヒートボックス(2)と、
f.少なくとも2段に配設された油凝縮器と、
g.前記反応器アセンブリを加熱するためのバーナ(4)であって、非凝縮性の可燃ガスが供給されるように構成されている、バーナ(4)と、
h.熱分解ガス、好ましくは油凝縮器(11、12)内の軽質油留分及び重質油留分を凝縮するために配置された温水及び蒸気を生成するためのボイラー(21)と、
を含むことを特徴とする、反応器アセンブリ。
【請求項12】
前記油凝縮器(11、12)が、シェルアンドチューブ型である、請求項11に記載の反応器アセンブリ。
【請求項13】
前記第3の管状反応器(1c)は、熱酸化を利用して触媒を再生するよう構成されたシャフト付きパドルを備える請求項11又は請求項12に記載の反応器アセンブリ。
【請求項14】
前記第3の管状反応器(1c)が、前記主要な少なくとも二重オーガ反応器(1a、1b)から気密分離されている、請求項13に記載の反応器アセンブリ。
【請求項15】
酸化空気及び冷却蒸気の供給口(20)が、前記第3の管状反応器(1c)の入口に配置されている、請求項13又は請求項14に記載の反応器アセンブリ。
【請求項16】
前記第3の管状反応器(1c)の出口から前記バーナに排出ガスを搬送する手段を示す、請求項14又は請求項15に記載の反応器アセンブリ。
【国際調査報告】