(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】伸長可能連結管
(51)【国際特許分類】
H01J 49/04 20060101AFI20250117BHJP
H01J 49/10 20060101ALI20250117BHJP
H01J 49/26 20060101ALI20250117BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20250117BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
H01J49/04 180
H01J49/10 500
H01J49/04 630
H01J49/26
H01J49/00 310
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540991
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 US2023010394
(87)【国際公開番号】W WO2023133311
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522211553
【氏名又は名称】スタンダード バイオツールズ カナダ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ロボダ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カルー,アダム
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA14
2G041FA10
2G041GA01
(57)【要約】
伸長可能エラストマー材料で作られる連結管。「伸長性」連結管部は、連結性能の改善した信頼性/再現性を可能にする。例えば、提供する伸長性は、イメージャ及び読み取り機器の位置間の許容誤差を吸収する可能性がある。一例では、伸長性は、IMCユニット内の管部の剛性部分と、イオン化源への注入器と、の間の接合部の位置間の許容誤差を吸収することができる。連結管はまた、標準的な連結構成要素と比較して、縮小した内径(ID)を備えてもよい。内径(ID)のテーパは、流れが伸長可能連結管に入る前に出現する。有刺端部が、連結管を定位置に固定するために設けられてもよい。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザアブレーション源と、
前記レーザアブレーション源を誘導結合プラズマチャンバに動作可能に連結するように構成される注入器と、
複数のアブレーションプルームを前記レーザアブレーション源から前記注入器に移送するために、前記レーザアブレーション源を前記注入器に動作可能に連結するように構成される、連結管であって、
前記連結管が、伸長可能エラストマー材料を含み、
前記連結管が、0.3mm~6.0mmの範囲内の第1の内径によって特徴付けられる、連結管と
を備える、システム。
【請求項2】
前記伸長可能エラストマー材料が、フルオロエラストマーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記連結管の少なくとも一方の端部と協働するように構成される有刺継手を備える接合部アセンブリを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記有刺継手が、前記連結管に通じる直径を縮小するテーパを備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記連結管に動作可能に連結するように構成される剛性管部を更に備え、
前記剛性管部が、前記レーザアブレーション源に動作可能に連結される第1の端部を備え、
前記剛性管部が、前記連結管に動作可能に連結される第2の端部を備え、
前記剛性管部が、前記連結管の前記第1の内径よりも大きい、前記第1の端部における第2の内径によって特徴付けられ、
前記剛性管部が、前記第2の端部における第3の内径によって特徴付けられ、
前記第2の内径が、前記第3の内径より大きい、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の内径が、1.5mm~2.0mmの範囲内である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記剛性管部が、0.5mm~1.0mmの範囲内で、前記連結管に通じる前記第2の端部における前記第3の内径を狭めるように構成される10度テーパを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記連結管と前記注入器との間に接合部アセンブリを更に備え、前記注入器につながる直径を縮小するテーパが前記接合部アセンブリにおいて出現する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記誘導結合プラズマチャンバを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記誘導結合プラズマチャンバ内のプラズマ生成物を分析するように構成される質量分析計を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記レーザアブレーション源が、
試料保持器と、
レーザ源と、
レーザを前記レーザ源から前記試料保持器に導くための光学系の構成と
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記レーザアブレーション源に動作可能に連結されるガス供給源、を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
誘導結合プラズマチャンバと、
前記誘導結合プラズマチャンバをレーザアブレーション源に動作可能に連結するように構成される注入器と、
複数のアブレーションプルームを前記レーザアブレーション源から前記注入器に移送するために、前記レーザアブレーション源を前記注入器に動作可能に連結するように構成される、連結管であって、
前記連結管が、伸長可能エラストマー材料を含み、
前記連結管が、0.3mm~6.0mmの範囲内の第1の内径によって特徴付けられる、連結管と
を備える、装置。
【請求項14】
前記連結管に動作可能に連結される剛性管部を更に備え、
前記剛性管部が、前記レーザアブレーション源に動作可能に連結される第1の端部を備え、
前記剛性管部が、前記連結管に動作可能に連結される第2の端部を備え、
前記剛性管部が、前記連結管の前記第1の内径よりも大きい、前記第1の端部における第2の内径によって特徴付けられ、
前記剛性管部が、前記第2の端部における第3の内径によって特徴付けられ、
前記第2の内径が、前記第3の内径より大きい、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記レーザアブレーション源が、試料採取傾斜部を備え、
前記試料採取傾斜部が、前記剛性管部の前記第1の端部に動作可能に連結され、
前記試料採取傾斜部が、前記剛性管部の前記第1の端部の遠位と比較して、前記剛性管部の前記第1の端部の近位で小さい直径を有するようにテーパである、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の内径が、1.5mm~2.0mmの範囲内である、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記剛性管部が、0.5mm~1.0mmの範囲内で、前記連結管に通じる前記第2の端部における前記第3の内径を狭めるように構成される10度テーパを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記剛性管部と前記連結管との間に接合部アセンブリを更に備え、前記連結管器につながる直径を縮小するテーパが前記接合部アセンブリにおいて出現する、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記接合部アセンブリが、前記連結管の第3の端部と協働するように構成される有刺継手を備え、前記有刺継手が、前記連結管に通じる前記直径を縮小する前記テーパを備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記連結管と前記注入器との間に接合部アセンブリを更に備え、前記注入器につながる直径を縮小するテーパが前記接合部アセンブリにおいて出現する、請求項13に記載の装置。
【請求項21】
前記レーザアブレーション源を更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項22】
前記誘導結合プラズマチャンバ内のプラズマ生成物を分析するように構成される質量分析計を更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項23】
前記レーザアブレーション源が、
試料保持器と、
レーザ源と、
レーザを前記レーザ源から前記試料保持器に導くための光学系の構成と
を備える、請求項13に記載の装置。
【請求項24】
前記レーザアブレーション源に動作可能に連結されるガス供給源を更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項25】
アブレーションプルームを形成するためにレーザによって試料をアブレーションするステップと、
前記アブレーションプルームを、前記試料から連結管を通して注入器に層状に流すステップであって、
前記連結管が、伸長可能エラストマー材料を含み、
前記連結管が、0.3mm~6.0mmの範囲内の第1の内径によって特徴付けられる、ステップと、
前記注入器に連結された誘導結合プラズマ質量分析計を使用して前記アブレーションプルームを分析するステップと
を含む、方法。
【請求項26】
前記伸長可能エラストマー材料が、フルオロエラストマーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記連結管を通して前記アブレーションプルームを流すステップの前または後に、接合部アセンブリの有刺継手を通して前記アブレーションプルームを流すステップ、を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記連結管を通して前記アブレーションプルームを流すステップの前に、剛性管を通して前記アブレーションプルームを流すステップ、を更に含み、
前記剛性管部が、前記レーザを含むレーザアブレーション源に動作可能に連結される第1の端部を備え、
前記剛性管部が、前記連結管に動作可能に連結される第2の端部を備え、
前記剛性管部が、前記連結管の前記第1の内径よりも大きい、前記第1の端部における第2の内径によって特徴付けられ、
前記剛性管部が、前記第2の端部における第3の内径によって特徴付けられ、
前記第2の内径が、前記第3の内径より大きい、
請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の内径が、1.5mm~2.0mmの範囲内である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記剛性管部が、0.5mm~1.0mmの範囲内で、前記連結管に通じる前記第2の端部における前記第3の内径を狭めるように構成される10度テーパを備える、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月7日に出願された米国仮特許出願第63/266,550及び2023年1月6日に出願された米国仮特許出願第63/437,430号の優先権及び利益を主張し、これらの両方の全内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、質量サイトメトリー機器に関連して使用される連結管に関する。連結管は、層流を維持し、乱流の可能性を低減し、最適な結果を提供しつつ、機器を互いに固定するように設計されている。特定の例では、開示し、改善した連結管は、レーザアブレーション源と質量サイトメーターとの間でアブレーションされたプルームを移送し、例えば、イメージング質量サイトメトリー(商標)ユニット(IMC(商標))ユニットと、CyTOF XT(商標)を含むCyTOF(登録商標)ユニットとの間で連結する。
【背景技術】
【0003】
[0003]誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)又は他のイオン化源と組み合わせたレーザアブレーションは、元素タグで標識化された生体試料(細胞、組織等)のイメージングに使用することができる。各レーザパルスは、質量分析器による更なる分析のためにイオン化されるために移送され得る試料からアブレーションされた材料のプルームを生成する。次いで、試料上の各位置でレーザパルスから取得された情報を、その分析された内容に基づいて試料をイメージングするために使用することができる。
【0004】
[0004]システムは、(i)レーザアブレーション源と、(ii)レーザアブレーション源をICP(誘導結合プラズマ)源又は他のイオン化源と連結するように適合された注入器と、(iii)質量分析器と、を有するレーザアブレーション質量サイトメーターを含んでもよい。
図1A及び
図1Bに示すように、一例では、レーザビームのパルスは、試料のアブレーションされたプルームを生成するために試料に向けられる。次いで、試料のプルームは、アブレーションゾーンから、レーザアブレーション源を質量サイトメーター又は他のイオン化源のICP(誘導結合プラズマ)と連結する注入器に移送される。移送は、一般に、剛性管部を含む「導管」、注入器を通り、次いで注入器と共に他の機器にプルームを継続的に移送するための「連結管」を通して行われてもよい(それらはすべて、本明細書では「導管」又は「流路」と総称することがある)。
【0005】
[0005]ここで特に
図1Cを参照すると、画素/試料材料は、レーザアブレーションによって開始し、次いで導管内に移動し、導管の最初の部分は剛性管部である。「剛性管部」という用語は、本明細書では、レーザアブレーションと注入器入口との間の移送導管の一部分を指すために使用される。その管部は、実質的に可撓でない、又は伸長しないという点で、一般に剛性である。剛性管部は、レーザアブレーション源内に配置された入口を有し、入口は、生成されるときに各別個のアブレーションされたプルームを捕捉する。この剛性管部は、IMC(イメージング質量サイトメトリー)ユニット又は他のイオン化源内に位置する導管の剛性部分であってもよい。
【0006】
[0006]連結管が、剛性管部を注入器に固定するために使用されてもよい。連結管は、「イメージャ」機器及び「読み取り」機器を接続する役割を果たす。注入器は、ガス流中に分散されたプルームの粒子をイオン化源トーチ内に注入する。イオン化源は、質量サイトメトリーのためのイオンを生成するために、明確に捕捉され、移送され、アブレーションされたプルームの各々をイオン化する。そのようなシステムの一例は、同時係属中の米国特許出願公開第2019/0271630号明細書、現在は米国特許第10,705,006号明細書によって示され、説明されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、レーザアブレーション源と質量サイトメーターとの間でアブレーションされたプルームを移送する移送チャネルの一部として改善した連結管を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0271630号明細書
【特許文献2】米国特許第10,705,006号明細書
【発明の概要】
【0008】
[0007]本開示は、伸長可能エラストマー材料で作られた連結管に関する。「伸長性」連結管部は、連結性能の改善した信頼性/再現性を可能にする。例えば、提供する伸長性は、イメージャ及び読み取り機器の位置間の許容誤差を吸収する可能性がある。一例では、伸長性は、IMCユニット内の管部の剛性部分と、イオン化源への注入器と、の間の接合部の位置間の許容誤差を吸収することができる。別の例では、層流の改善、乱流の可能性の低下、及び/又は最適な結果を得ることができる。連結管はまた、質量分析及び関連分野における標準的な連結構成要素と比較して、縮小した内径(ID)を備えてもよい。流れが伸長可能連結管に入る前に、内径(ID)内でテーパが出現し、テーパはまた、伸長可能連結管の後で出現することもできる。有刺端部が、連結管を定位置に固定するために設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】アブレーション試料採取システムの従来技術の概略図である。
【
図1B】
図1Aの試料採取傾斜部のない従来技術の概略的な直接注入器入口を示す図である。
【
図2】タグ化されたプルーム及びクロストークの可能性の一例を示す図である。
【
図3A】本発明の実施形態による、試料採取傾斜部内にテーパを有するアブレーション試料採取の概略図である。
【
図3B】本発明の実施形態による、剛性管部内にテーパを有するアブレーション試料採取の概略図である。
【
図3C】本発明の実施形態による、剛性管部と伸長可能連結管との間の接合部にテーパを有するアブレーション試料採取の概略図である。
【
図3D】本発明の実施形態による、伸長可能連結管と注入器との間の接合部内にテーパを有するアブレーション試料採取の概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による、伸長可能連結管に接続するアブレーションチャンバ注入器の剛性管部の側断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による、アブレーションプルーム移送チャネル/導管の注入器側を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態による、接続端部接合部を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による、様々な管部部分を互いに接続するように機能する2つの接合部を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態による、固定連結管の中へ下方に駆動される直線ステージ上の光学ポストを使用する例示的な試験設定を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態による、連結管の沈下を試験するための試験設定の概略図である。
【
図10】本発明の実施形態による、連結管に加えられた、適用された沈下に対して800Hzのプルームクロストークをプロットしたグラフ図である。
【
図11】本発明の実施形態による、アブレーション試料採取のために連結管を使用するプロセスの一例のフローチャート図である。
【
図12】本発明の実施形態による、アブレーション試料採取のために連結管を使用するシステムの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0025]本開示を理解するための更なる背景として、イメージング質量サイトメトリー(商標)(IMC(商標))は、検出したプルーム系列からイオン画像を構築するために、プラズマ中のアブレーションプルームの到達の良好な時間忠実度を必要とする。これに関連して、「時間忠実度」は、プラズマへのプルームの到達時間が、対応するレーザショットの時間とどの程度良好に相関しているか、並びにプルームを構成する個々の粒子の到達時間がどの程度狭く分布しているか、を指す。これらの2つの効果を、個々のプルーム間の「到着時間ジッタ」、及び通過中の個々のプルームの「時間的広がり」として説明することもある。十分な時間忠実度がないと、連続したレーザアブレーション事象からのプルームが共にぼやけ、(イオン信号から再構築される)最終的な組織画像の「不鮮明」、又は他の深刻なイメージングアーチファクトをもたらす可能性があり、これは望ましくない。
【0011】
[0026]
図2に示すように、各プルームは「タグ」入力に関連付けられる。これは、レーザパルスの到着を識別し、システムがそのショットに対応するTOF(飛行時間)プッシュの範囲を識別することを可能にする、取得システム内のチャネルである。例えば、他のウィンドウの内側にある1つのショットからの信号の部分は、そのプルームの「クロストーク」(CT)である。通常、クロストーク測定を実施するために使用される、クリーンで、代表的な「蓄積された」過渡現象を生成するために、いくつかのプルームが合計される。
【0012】
[0027]低クロストークを確実にするために、プルームは、ガスの層流によってアブレーション部位からプラズマに移送されなければならない。層流は、予測可能で、一貫した材料の移動を確実にする。流れの乱流は、プルームの広がり及び時間的コヒーレンスの損失をもたらすことがある。乱流はまた、プルーム内のエアロゾル粒子が導管の壁に接触してそこに付着することにつながり得る。これは、導管の感度損失及び汚染をもたらす。したがって、乱流状態は回避されるべきである。
【0013】
[0028]プルームの非ゼロ幅(過渡現象幅)が存在することになるので、画素取得速度が増加するにつれて、低クロストーク及び層流状態を確実にする要件も満たすことが困難になる可能性がある。しかしながら、画素取得速度は、現在、IMC機器の総スループットを決定する主要な制限パラメータの1つであるため、確実に画素速度が可能な限り高いことが重要である。
【0014】
[0029]導管内の過渡現象の広がりを制限する1つの方法は、プルームがガス流中に存在する時間を短縮することである。これにより、広がりをもたらし得る現象の1つである、プルームのエアロゾルが(流れの中心線上の)最も速い流線から拡散することについて、実施可能な時間を短縮する。全体の移動時間を短縮する別の利点は、異なる速度(例えば、最高速度の100%及び最高速度の90%)の流線に位置する2つの粒子の到着が、全体の移動時間に比例して互いに近づくことである。しかしながら、チャンバガス流が、アブレーション試料採取傾斜部の形状によって決定され、移送チャネル/導管を通る全体的なガス流が、イオン化トーチ内のプラズマの特性によって決定されるので、通過時間を短縮するために、単純に流れを増加させることは不可能である。
【0015】
[0030]層流が維持されることを確実にすること以外に、管部接合部での分散によって引き起こされるものなど、流路壁の内面における、あらゆる急激な不連続性も回避することが望ましい。チャネルの内面のそのような欠陥は、通常は層状系で形成される局所的な乱流をもたらす可能性があり、それは流れを乱し、それらが通過するときにプルームを乱す可能性がある。いくつかの形状が、他の形状よりも乱流を発生させる可能性が高いので、導管の内径の変更は、慎重に行う必要があることが分かっている。特に、導管IDを拡張するときよりも縮小するときの方が層流を維持することが容易であり得る。したがって、プルーム移動のタイミングを改善するための別の試みは、連結管の長さの内径(ID)を縮小することであった。しかしながら、内径を縮小するにつれて、ディーン渦の影響、及びいくつかの機械的許容誤差の影響が、不整合であるなどの他の問題が発生した。
【0016】
[0031]最後に、流路の任意の湾曲が、特定の臨界流量値を超える湾曲した管の径方向渦を引き起こすディーン渦の発生をもたらし得るので、機器間の流路は、最良の性能のために可能な限り真直に維持されることが望ましい。したがって、完全な層流であっても、流路(連結管)の潜在的に可撓性の(非伸長可能)部分が著しく湾曲している場合、過渡現象性能に悪影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、剛性の真直な管の使用は、位置合わせ許容誤差の問題を発生する可能性がある。時間分解アブレーションプルームをアブレーションチャンバからICP質量分析器に運ぶための真直で小さいIDの剛性管の使用の一例は、米国特許第10,285,255号明細書に記載されている。そのような真直剛性管は、アブレーションユニットとICP-MS(又は他のイオン化源)との間の厳密な位置合わせ公差を必要とする。完全に真直な連結管の使用は、単純な位置合わせツールを使用して達成することが困難であり、固定されたCyTOF XTに関するアブレーションチャンバのいかなる動き(そのばね懸架部上での自由な動き)も、アセンブリの端部の接着された継ぎ目を破壊する可能性があるので、管部アセンブリを損傷させるリスクがある。真直管部は、CyTOFからの振動のための導管となる。そのような振動は、等しい距離にアブレーションショットを配置するIMC光学系の能力に影響を及ぼし、結果として画像アーチファクトをもたらす。
【0017】
[0032]他の分析技術は、「可撓性」及び弾性移送管を使用するが、これらは実質的に異なる流れ状態で動作する。一例は、米国特許出願公開第2020/0121229号明細書に記載されている質量分析器ユニットにイオン化試料を移動するために使用される。この公文書では、ガス試料は、管内で部分的にイオン化される。2020/0121229「可撓性」及び弾性管の目的は、アブレーションプルームの広がりを抑制することではなく、質量分析計の入口から遠く離れて位置する試料採取領域を接続する方法としてである。また、可撓性/伸長可能管(例えば、蠕動ポンプを介して)の使用による液体移送は、液体流に関して対処する必要がある特性がガス流に関して対処する必要がある特性と実質的に異なるという点で、本開示とは異なる。
【0018】
[0033]したがって、振動エネルギーをCYTOFからIMC光学系に大幅に伝達するのではなく、IMCユニットの移動範囲に耐えるために十分に堅牢であり、並びにクロストークスペクトル上に良好なマージンを与えるための改善された性能を提供する、連結管を設計することが望ましい。単純な位置合わせツールを使用して適切な位置合わせを可能にする連結管を提供することも望ましいものであった。半可撓性プラスチック管を、機械加工した硬質プラスチック端部部品に接着することを伴うのではなく、その端部で強力な接続を可能にする連結管を提供することも望ましいものであった。接着された継ぎ目は、注入器から滑り落ちる可能性があり、又は注入器は、注入器保持器から引き出される可能性がある。乱流を防止するために、IDが可能な限り接合部にわたって整合することを確実にすることが更に望ましいものであった。
【0019】
[0034]したがって、本開示は、これらの問題の多くに対処する連結管に関する。新規の連結管は、機械加工した有刺継手で各端部が終端された、任意の長さの伸長可能エラストマー管部を備える。連結管の内径(ID)は、アブレーション試料採取傾斜部の近傍で現在使用されている管部のIDと比較して縮小している。いくつかの実施形態では、例えば、毎秒400~1000画素以上の範囲内で、一貫して高速にデータを取得することが可能である。IDの連続性を維持するために、剛性管部の端部と連結管との間に挿入されたテーパセクションを設けることが可能である。開示した特徴及びテーパセクションは、プルームの移送中に、アブレーション試料採取形状の変更の回避に役立つことができる。
【0020】
[0035]伸長可能材料
【0021】
[0036]第1の態様では、開示した連結管は、伸長可能エラストマー材料で作られる。連結管の伸長可能材料は、連結性能の改善した信頼性/再現性を可能にする。伸長は、機器間の位置の許容誤差を短くする/吸収する。本明細書で使用する場合、「伸長可能」という用語は、数ミリメートル以上伸長し、一旦解放されるとその元の長さに戻り、少なくともいくつかのタイプの弾性反発を有し得る、材料を意味するように使用する。一例では、伸長可能とは、約0.5mm~約10mm伸長し得る材料を意味する。一例では、伸長可能管部は、最大20%の延長率、及び最大約20Nの印加力に対してのみ弾性変形を受ける。(対照的に、従来技術の半可撓性管部は、この延長時に著しい塑性変形を受け、実質的に高い力を要求する。)HTI連結で使用されている現在使用されている半可撓性FEP(フッ素化エチレンプロピレン)管部を、伸長可能弾性管部材料と交換することによって、連結アセンブリの完全性に危険を与えることなく、管部をピンと張った状態を維持することができる。これはまた、連結が最小距離で最小伸長を維持するように、機器間の距離の変動に適応することができる。連結管は、機械間の距離よりもわずかに短くすることができ、これにより、距離は伸長するが、比較的ピンと張った状態を維持する。連結管が最大距離に対応する伸長に耐え得ることを確実にする管部材料及び取付け技術を選択することも可能である。伸長可能管を設けることにより、ほぼ真直的な接続が可能になる。
【0022】
[0037]開示した伸長可能管部の更なる利点は、CyTOF XTユニットに対して正しい位置に重水素ユニットを配置するための位置合わせ治具の設計を単純化することである。位置合わせ治具が、2つの機器間の最小距離を確立するために使用されてもよい。その場合、管部の長さが2つの機械間の最小距離未満であることを確実にすることで十分であり、これにより、最小間隙では、連結管は依然として公称張力下にある。管部を張力下に保つことによって、管は、2つの接続点間で本質的に真直を維持する。(重力は連結管をわずかに沈下させ得るが、その効果は、この用途では無視できる。)更に、垂直寸法又は水平寸法における不完全な位置決めはまた、「非真直」管部をもたらす可能性があるが、研究により、これは、ある程度許容されることが示されている。連結位置合わせ治具はまた、2つの機械を横方向に位置合わせするように機能することができ、これにより、連結管のいかなる曲がりも更に最小限に抑えることができる。
【0023】
[0038]1つの具体例では、連結管は、フルオロポリマーエラストマーで作られてもよい。使用され得る1つの具体的な例示的なフルオロエラストマーは、Viton(商標)である。Viton(商標)フルオロエラストマーを用いて作られた製品は、一般に、化学物質及び高温に曝露されたときにそれらの可撓性、形状及び封止を維持する。使用され得る他の材料には、ラテックス、シリコーン、可撓性及び伸長可能PVC管部(例えば、Tygon)、EPDM、AFLAS、ニトリル、ネオプレン、フルオロシリコーン、Chemraz(FFKM)、又は列挙した可能な材料のいずれかのそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0024】
[0039]内径
【0025】
[0040]別の態様では、連結管の内径(ID)は、この目的のために使用される従来の又は標準的な連結管と比較して縮小している。この縮小したIDは、過渡現象品質(以下に概説するように、流れが乱流遷移に入るような小さい範囲に直径が達するまで)にプラスの影響があると予想される。連結管の内径は、0.1mm~10.0mmの範囲内であってもよい。例示的な内径は、0.3mm~6.0mmの範囲内であってもよい。流れの内径は、約0.5mm~約1.0mmのIDであってもよい。具体例では、連結管のIDは、約0.8mmであってもよい。IDの範囲は、伸長しても、しなくてもよい連結管IDを指す。すなわち、IDは、伸長した状態であっても、伸長していない状態であっても、0.3mm~6.0mmであってもよい。連結管のIDの縮小は、通常約1.5~約2.0mmである標準的な連結IDを超える最小CT(クロストーク)の減少を提供する。連結管IDを縮小すると、通過時間を短縮することが分かっている。同様に、この短縮した通過時間は、長い移動距離によって、並びにプルームからプルームへの通過時間のタイミングジッタによって、誇張される過渡現象の広がり効果を低減することができる。しかしながら、小さい直径(例えば、0.5mmの範囲未満)は、良好な過渡現象の形成を禁止すると予想される層流から遷移流への流れの遷移によって課される限界に突当り得ることが予想されるが、小さい直径を試験することは可能であり、それらは本開示の範囲内であると考えられる。
【0026】
[0041]連結管のIDは、所与のシステム寸法に対して場合によって決定する必要があり得る重要な変数である。アブレーションチャンバガス流は、試料採取傾斜部の形状、その近傍領域、及び総注入器流によって設定される。最適な総注入器流量は、イオン化源トーチの特性によって決定される。どちらか一方への変更は、管部の最適IDへの変更を必要とし得る。
【0027】
[0042]テーパ
【0028】
[0043]連結管及びその関連構成要素に関して、システム内の様々な部分にテーパを設けてもよい。一例では、レーザアブレーション源14のアブレーションチャンバ出力で試料採取傾斜部26に設けられたテーパ10があってもよい。これを
図3Aに示す。試料採取傾斜部26は、剛性管部12の一方の端部に連結されている。アブレーション試料採取傾斜部管(傾斜部の出力側)に、又はその内部に、テーパ10を設けることにより、アブレーション部位の近傍のガス流を実質的に変化させることなく、アブレーション事象後できるだけ早くテーパ10が出現することができる。この手法は、テーパ位置を検査/清掃することを困難にするという欠点を有する場合がある。
【0029】
[0044]ガスを、レーザアブレーション源14に連結されたガス供給源から供給することができる。レーザアブレーション源14は、試料保持器23と、レーザ源と、レーザ源から試料保持器23にレーザを導く光学系と、を含むことができる。システムは、誘導結合プラズマチャンバ内のプラズマ生成物を分析するための質量分析計を更に含んでもよい。
【0030】
[0045]別の例では、流れが連結管20に入る前に、剛性管部12の内径に設けられたテーパ10があってもよい。これを
図3Bに示す。
【0031】
[0046]更なる例では、剛性管部12と連結管20との間に接合部アセンブリ28に設けられたテーパ10があってもよい。これを
図3C及び
図4に示す。
図4に示すように、連結管20を定位置に固定するために使用される有刺継手18を組み込むことも可能である。(有刺継手の選択肢については、以下で更に詳細に説明する。)この選択肢では、テーパ10を、連結管20上の有刺継手18(以下で更に詳細に説明する)の要素内に配置することが可能である。接合部アセンブリの内側のテーパ10に有刺継手18を設けることにより、テーパの容易な検査/清掃が可能になる。この手法は、連結管アセンブリの2つの端部を異種にする(例えば、連結管の出力端部が同様のテーパを組み込んでいない場合)という欠点を有する場合がある。
【0032】
[0047]別の例では、注入器32に接続する接合部アセンブリ30において、連結管20の端部に設けられたテーパ10があってもよい。これを
図3Dに示す。注入器32は、レーザアブレーション源を誘導結合プラズマチャンバに連結することができる。
【0033】
[0048]これらの構成は、移送速度の増加、及び短い移送時間にすることができ、これは、プルーム過渡現象における時間的広がりを低減するために有益である。乱流の抑制に役立ち得る低い漸進的なテーパを提供することが一般に望ましい。一例では、テーパは、約10°の最大角度テーパを有してもよい。しかしながら、テーパ角度は、全角度に対して約0.1度~約180度間のどこであってもよいことを理解されたい。5~10度が特に有用なテーパ角度範囲であり得ることが予想される。大きい内径領域と小さい内径領域との間のテーパは、乱流の発生を回避するように十分に遅くすることができる。特に、テーパは、10度の全角度又は5度の全角度とすることができる。いくつかの構成では、テーパは、30度又は60度ですらあり得る。テーパとシステムの各セクションへの入口との間の遷移には、乱流の発生を抑制するために滑らかな縁部を設けてもよい。遷移は、区分的に線形であり、区分的要素上の接合部における曲率又はスプラインによって平滑化することができる。
【0034】
[0049]特定の一例では、テーパは、内径約1.6mmのチャネルから内径約1.0mmの連結管に移行してもよい。テーパ距離は、約0mm~50mmであってもよい。この距離は、テーパの入力と出力との間のIDの角度及び変化に関連する。一例として、180度の角度は、大きいIDと小さいIDとの間のテーパの遷移が0mmの距離となる。他の範囲も当然可能であり、本開示の範囲内であると考えられる。拡張望遠鏡の内部断面、又はホーン(例えば、懸垂ホーン、ベジェホーン)の傾斜部の滑らかな非線形遷移に幾分似ている、様々なダウンステップ角度でステップ状遷移を提供することも可能である。
【0035】
[0050]示した例では、テーパの前の大きい径セクションの部分は、比較的大きい(例えば、最大約2mm)のままであり、これは、アブレーション試料採取領域の機械加工を単純化することができ、管部の主要部分を通常の狭い口径管部で作ることを可能にする。狭い口径セクションの直径(テーパ後の管部の内径)は、乱流の発生に対応する直径によって制限される。
【0036】
[0051]レイノルズ数は、円形管及び既知の流れについて計算することができる。一般に、4000を超えるレイノルズ数は、円形管の乱流を示すため、回避されるべきである。所与の質量流量のガスの場合、レイノルズ数は導管の直径に反比例する。したがって、導管の直径は、レイノルズ数、及び流れの乱流の発生によって小さいサイズに制限される。通常の機器構成では、導管の狭い部分のIDは、約0.5mm~約1.0mm程度とすることができる。
【0037】
[0052]ここで
図4を参照すると、アブレーション源14からの剛性管部12のIDを1.58mmから1.0mmまで縮小するテーパ10を示している。テーパ10を、アブレーションチャンバ出力プラグ16の内側に配置して示している。しかしながら、テーパ10をIDが1.58mmの管部自体(試料採取傾斜部からの注入器管部の現在の寸法)の内側に配置することも可能であることを理解されたい。
【0038】
[0053]システム内のテーパの位置を、任意の適切な位置に変更することができる。一般的な目標は、アブレーションが行われる領域と、プラズマへの注入器の先端との間に位置するアブレーションプルーム導管のどこかに、テーパを設けることである。
【0039】
[0054]更に、テーパ寸法(角度、ID及び長さ)は変化してもよく、テーパの任意の位置に適用されてもよい。流路の長さに沿って2つ以上のテーパを配置することも可能である。例えば、導管の長さに沿って2つのテーパ又は3つのテーパを設けてもよい。これは、本明細書に記載のテーパ位置のいずれかを組み込んでもよい。例えば、第1のテーパは、1.6mm~1.0mmのIDとすることができ、剛性管部12内に位置することができる。第2のテーパは、1.0mm~0.6mmのIDとすることができ、連結管20と注入器32との間の接合部アセンブリ30に位置することができる。
【0040】
[0055]連結のための有刺端部
【0041】
[0056]更なる態様では、接合部アセンブリ28及び/又は接合部アセンブリ30上に、1つ又は複数の機械加工した有刺継手18、31を設けてもよい。例えば、有刺継手18を接合部アセンブリ28上に設けてもよく、有刺継手31を接合部アセンブリ30上に設けてもよい。複数の有刺継手が接合部アセンブリ28に連結される、又は複数の有刺継手が接合部アセンブリ30に連結される、ことも可能である。1つ又は複数の機械加工した有刺継手18、31は、連結管20に嵌合するように構成されてもよく、その例を
図4~
図7に示す。有刺継手18、31を有する接合部アセンブリ28、30は、その端部で接合部アセンブリ(28,30)への連結管20のしっかりとした取付けを確実に助けることができる。接合部アセンブリ28上の機械加工した有刺継手18、及び/又は接合部アセンブリ30上の機械加工した有刺継手31は、以前の連結設計を超える顕著な改善をもたらす。第1に、それらは、デルリンプラスチックではなく、ステンレス鋼又は他の金属材料から作られてもよい。これは、完成部品の寸法の許容誤差を大きくすることができ、その結果、剛性管部12の端部と連結管20の始端部との間の接合部における中心化の整合を良好にすることを意味する。連結管20によって受け取られる有刺継手18の機械加工した端部のIDは、金属(例えば、ステンレス鋼)に対して機械加工することができるので、完全な円形に近い状態にすることができる。次に、有刺継手18を使用すると、アセンブリに接着剤を使用する必要がなくなり、アセンブリのばらつきの別の潜在的な原因を取り除く。システムの性能は、有刺の端部が引き起こすID表面の円形の不連続性によって強く影響されない。有刺は比較的小さく、連結管20の内面に沿った完全に円形の摂動であり得るので、過渡現象の広がりの大きな原因を生成しない。有刺を使用すると、システムのアセンブリが簡単になり、古い設計で行われていたような、重大な製造上の課題を提示した接着の必要性を排除する。伸長可能管部の材料はまた、(元の連結管に使用される硬質の屈曲可能プラスチック材料とは異なり)多くの接続/切断サイクルに耐える封止された有刺付き接続の形成にも好適である。元の連結管は、屈曲可能であるが伸長可能ではないFEP材料を使用する。これが有刺上に挿入された場合、十分な強度で有刺にクランプされず、導管に潜在的な空気及びアルゴン漏れをもたらす。したがって、屈曲可能な管部材料が接合部アセンブリに接着される。伸長可能管部材料を、上述の利点を提供する有刺接続と共に使用することができる。
【0042】
[0057]設置
【0043】
[0058]連結管20は、任意の長さに切断され、連結ナットを通って張り渡され、両端部で有刺継手18に押し付けられる。連結位置合わせ治具は、予想される範囲の許容誤差の積み重ね(例えば、+/-5mm RMS)のために、機器間の分離を調整することによって連結管を確実にピンと張った状態にし得るように設計される。機器間の移動時に連結管端部が容易に引き抜かれないことを確実にするために、連結管引張試験を行ってもよい。1.0mm PVC連結引張試験の例示的な引張試験の一例では、約2kgの引張力が加えられるまで、連結端部を引き抜かなかった。連結管は、破損前に約46mm(約20%)の伸長を示した。これらの結果に基づいて、機械間の軸方向距離の変動を吸収するために、連結管の伸長に完全に依存することが可能であり得る。
【0044】
[0059]実施例
【0045】
[0060]寿命試験実験中に、連結管が過渡現象に影響を及ぼし始める前に、連結管がどれだけ沈下し得るかを決定する試験を行った。
図8は、固定連結管20内に下方に駆動される直線ステージ上の2インチ光学ポストを使用する試験設定を示している。イメージング機器は、真直の連結管20を確実にするために、連結位置合わせ治具を使用してセットアップされた。沈下する連結管の効果をシミュレートするために、連結管20の上部を下方に押す装置をシステムに追加した。装置の概略図を
図9に示す。装置は、連結管20に接触する直径2インチの円筒形の押圧要素36を有する垂直位置決めステージを含む。押圧要素36を0.5mm刻みで連結管20内に前進させ、過渡現象品質を各位置について記録した。開始位置は、押圧要素36が連結管20にちょうど接触したところである。試験は、システムがもはやCT400<12%を達成しなくなった時点で終了した。すべてのガス流について、連結管20がCT400を達成しなくなるには、6.5mmの総沈下が必要であった(
図9に両矢印で示す)。連結管20の中心のわずか1mmの撓みが、過渡現象品質に測定可能な差をもたらすことが決定された。
【0046】
[0061]
図10は、連結管に加えられた、適用された沈下に対して800Hzのプルームクロストークをプロットしたグラフ図を示している。ガス流を再調整することなく連結管に沈下を適用すると、過渡現象の質が急に低下することを示している(青色/上部データ点)。改善は、連結管が屈曲した後にガス流を再調整することによって達成することができるが(オレンジ/下部データ点)、連結管は、真直連結管で得られた低いクロストーク値に戻ることはない。これらの結果は、材料の弾性のために通常の使用において実質的に真直を維持する伸長可能連結管の利点を実証する。
【0047】
[0062]例示的な方法
【0048】
[0063]
図11は、アブレーション試料採取のために連結管を使用するプロセスの一例のフローチャート図である。いくつかの実装形態では、
図11の1つ又は複数のプロセスブロックは、
図12のシステム1200の1つ又は複数の構成要素によって実施されてもよい。
【0049】
[0064]ブロック1102において、試料が、アブレーションプルームを形成するためにアブレーションされる。レーザアブレーション源1202の光学系の構成は、レーザをレーザ源から、試料を保持する試料保持器に導くことができる。試料は、元素タグで標識化された細胞、組織などの生体試料であってもよい。レーザパルスは、質量分析器による更なる分析のためにイオン化されるように移送させ得るアブレーションプルームを生成する。
【0050】
[0065]ブロック1104において、アブレーションプルームは、試料から連結管1208を通って注入器1212に層状に流される。連結管1208を、フルオロエラストマーなどの伸長可能エラストマー材料で作ることができる。更に、連結管1208は、0.3mm~6.0mmの範囲内の内径を有することができる。連結管1208を通って流れる前に、アブレーションプルームは、レーザアブレーション源1202に連結された剛性管部1204を通って、次いで剛性管部1204を連結管1208に連結する接合部アセンブリ1206aの有刺継手を通って、流れることができる。アブレーションプルームは、連結管1208から、連結管1208を注入器1212に連結する別の接合部アセンブリ1206bの別の有刺継手を通って、流れることができる。
【0051】
[0066]いくつかの例では、1つ又は複数の構成要素は、移送速度を増加させ、アブレーションプルームの移送時間を短縮するためのテーパを含んでもよい。移送速度の増加及び移送時間の短縮は、プルーム過渡現象における時間的広がりを低減するために有益である。テーパは、レーザアブレーション源1202、剛性管部1204、接合部アセンブリ1206a~bのうちの1つ又は複数、連結管1208、又はそれらの組合せにあってもよい。
【0052】
[0067]ブロック1106において、アブレーションプルームは、誘導結合プラズマ質量分析計、任意の他のイオン化源、及び本明細書に記載の任意の質量分析器を使用して分析される。誘導結合プラズマ質量分析計は、誘導結合プラズマチャンバ1216と、質量分析計1218と、を含むことができる。注入器1212は、連結管1208を誘導結合プラズマ質量分析計に連結することができ、質量分析計1218は、誘導結合プラズマチャンバ1216内のプラズマ生成物を分析することができる。試料上のレーザパルスから取得された情報は、その分析された内容に基づいて試料をイメージングするために使用されてもよい。
【0053】
[0068]プロセス1100は、以下に記載する、及び/又は本明細書の他の箇所に記載する、1つ又は複数の他のプロセスに関連する、任意の単一の実装形態、又は実装形態の任意の組合せなど、追加の実装形態を含んでもよい。
【0054】
[0069]
図11は、プロセス1100の例示的なブロックを示しているが、いくつかの実装形態では、プロセス1100は、
図11に示したものよりも追加のブロック、少ないブロック、異なるブロック、又は異なる配置のブロックを含んでもよい。追加的又は代替的に、プロセス1100のブロックのうちの2つ以上が、並列に実施されてもよい。
【0055】
[0070]例示的なシステム
【0056】
[0071]
図12は、アブレーション試料採取のために連結管を使用するシステム1200の一例の概略図を示している。システム1200は、レーザアブレーション源1202と、剛性管部1204と、連結管1208と、注入器1212と、誘導結合プラズマチャンバ1216と、質量分析計1218と、を含む。注入器1212は、レーザアブレーション源1202を誘導結合プラズマチャンバ1216に動作可能に連結することができ、連結管1208は、アブレーションプルームをレーザアブレーション源1202から注入器1212に移送するために、レーザアブレーション源1202を注入器1212に動作可能に連結することができる。動作可能に連結されるとは、構成要素が互いに直接的に連結される(例えば、直接接触している)こと、又は互いに間接的に連結される(例えば、連結された構成要素間に1つ又は複数の中間構成要素を有する)こと、を意味してもよい。
【0057】
[0072]レーザアブレーション源1202は、試料保持器1203と、レーザ源1205と、レーザをレーザ源1205から試料保持器1203に導くための光学系1207の構成と、を含むことができる。レーザアブレーション源1202は、レーザアブレーション源1202に連結されたガス供給源1201からガス流を受け取ることができる。レーザアブレーション源1202はまた、剛性管部1204に動作可能に連結される試料採取傾斜部1209を含むことができる。試料採取傾斜部1209は、剛性管部1204の遠位と比較して、剛性管部1204の近位で小さい直径を有するようにテーパにすることができる(例えば、
図3Aの試料採取傾斜部アセンブリ26)。
【0058】
[0073]連結管1208は、フルオロエラストマーなど、伸長可能エラストマー材料を含むことができ、0.3mm~0.5mm,0.5mm~1.0mm,1.0mm~2.0mm,2.0mm~3.0mm,3.0mm~4.0mm,4.0mm~5.0mm、又は5.0mm~6.0mmを含む0.3mm~6.0mmの範囲内の第1の内径によって特徴付けられてもよい。連結管1208は、連結管20又は本明細書に記載の任意の伸長可能管部であってもよく、レーザアブレーション源1202は、レーザアブレーション源24又は本明細書に記載の任意のレーザアブレーション源であってもよく、剛性管部1204は、剛性管部12又は本明細書に記載の任意の剛性管部であってもよく、注入器1212は、注入器32又は本明細書に記載の任意の注入器であってもよい。
【0059】
[0074]剛性管部1204を、連結管1208に動作可能に連結することができる。剛性管部1204の第1の端部は、レーザアブレーション源1202に動作可能に連結することができ、剛性管部の第2の端部は、連結管1208に動作可能に連結することができる。剛性管部1204を、連結管1208の第1の内径よりも大きい、第1の端部における第2の内径によって特徴付けることができる。第2の直径は、最大2.0mmであってもよい(例えば、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、又はこれらの数字のいずれか2つの間、及びこれらの数字のいずれかを含む直径である)。更に、剛性管部1208を、第2の端部の第3の内径によって特徴付けることができ、第2の内径は、第3の内径よりも大きくすることができる。剛性管部1204は、0.5mm~1.0mmの範囲内、0.5mm~0.6mmの範囲内、0.6mm~0.7mmの範囲内、0.7mm~0.8mmの範囲内、0.8mm~0.9mmの範囲内、又は0.9mm~1.0mmの範囲内で、連結管1208に通じる第2の端部における第3の内径を狭めるテーパ(例えば、最大10度のテーパ)を含むことができる。特定の一例では、テーパは、0mm~50mm間のテーパ距離で、約1.6mmの内径から約1.0mmの内径に移行してもよい。
【0060】
[0075]システム1200はまた、連結管1208の少なくとも一方の端部と協働し得る1つ又は複数の接合部アセンブリ(例えば、接合部アセンブリ1206a及び接合部アセンブリ1206b)を含むことができる。例えば、接合部アセンブリ1206aは、剛性管部1204を連結管1208に連結することができ、接合部アセンブリ1206bは、連結管1208を注入器1212に連結することができる。接合部アセンブリ1206a~bはそれぞれ、連結管1208と協働する有刺継手(例えば、有刺継手18)を含むことができる。有刺継手は、連結管1208又は注入器1212に通じる直径を縮小するテーパを含むことができる。接合部アセンブリ1206a~bは、接合部アセンブリ28、又は本明細書に記載の任意の接合部アセンブリであってもよい。
【0061】
[0076]質量分析計1218は、誘導結合プラズマチャンバ1216内のプラズマ生成物を分析することができる。システム1200は、誘導結合プラズマチャンバ1216内のプラズマを発生させるための電気回路及び他の構成要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、イオン化チャンバが、誘導結合プラズマチャンバ1216の代わりに使用されてもよい。実施形態では、システム1200はまた、イオン化チャンバ内の材料をイオン化するための電気回路及び他の構成要素を含んでもよい。
【0062】
[0077]本開示の特定の実施形態の主題は、法的要件を満たすために具体的に説明されているが、この説明は必ずしも特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特許請求する主題は、他の方法で具現化されてもよく、異なる要素又はステップを含んでもよく、他の既存の又は将来の技術と共に使用されてもよい。この説明は、個々のステップ又は要素の配置の順序が明示的に記載している場合を除いて、様々なステップ又は要素間の特定の順序又は配置を暗示するものとして解釈されるべきではない。
【0063】
[0078]図面に示した又は上述した構成要素、並びに図示又は説明していない構成要素及びステップの異なる配置が可能であることを理解されたい。同様に、いくつかの特徴及び部分的な組合せは、有用であり、他の特徴及び部分的な組合せを参照せずに採用されてもよい。本発明の実施形態は、例示を目的として説明しており、限定を目的とするものではなく、代替の実施形態が本特許の読者には明らかになるであろう。したがって、本発明は、上記の実施形態又は図面に示した実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態及び修正形態が可能である。
【0064】
[0079]本明細書に記載の方法のいずれも、ステップを実施するように構成され得る1つ又は複数のプロセッサを含むコンピュータシステムで全体的又は部分的に実施されてもよい。例えば、コンピュータシステムは、質量流量コントローラ、電源、及び他の制御システムと通信してもよい。したがって、実施形態は、潜在的に異なる構成要素がそれぞれのステップ又はそれぞれのステップ群を実施することによって、本明細書に記載の方法のいずれかのステップを実施するように構成されたコンピュータシステムを対象とすることができる。番号付けしたステップとして提示しているが、本明細書の方法のステップを、同時に、又は異なる時間に、又は論理的に可能な異なる順序で実施することができる。更に、これらのステップの一部は、他の方法からの他のステップの一部と共に使用されてもよい。また、ステップの全部又は一部は任意であってもよい。更に、方法のいずれかのステップのいずれかを、モジュール、ユニット、回路、又はこれらのステップを実施するためのシステムの他の手段を用いて実施することができる。
【0065】
[0080]本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載し、図示した個々の実施形態の各々は、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離又は組み合わせられ得る個別の構成要素及び特徴を有する。
【0066】
[0081]本開示の例示的な実施形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示しており、本開示の実施形態を作成し、使用する方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載している。網羅的であること、又は本開示を記載された正確な形態に限定することを意図しておらず、また、それらは、実験が実施された全部の又は唯一の実験であることを表すことも意図していない。本開示は、理解を明確にするために例示及び例としてある程度詳細に記載しているが、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかである。
【0067】
[0082]したがって、上記は単に本発明の原理を例示するものである。当業者は、本明細書に明示的に記載又は示していないが、本発明の原理を具体化し、その精神及び範囲内に含まれる様々な構成を考案し得ることが理解されよう。更に、本明細書に列挙したすべての例及び条件付き言語は、主に、そのような具体的に列挙した例及び条件に限定されない本開示の原理を理解する際に、読者を助けることを意図している。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその特定の例を列挙する本明細書のすべての記述は、その構造的及び機能的均等物の両方を包含することを意図している。更に、そのような等価物は、現在知られている等価物及び将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素を含むことを意図している。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示し、説明する例示的な実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲が具体化する。
【0068】
[0083]「a」、「an」、又は「the」の列挙は、特に反対のことを示さない限り、「1つ又は複数」を意味することを意図している。「又は」の使用は、特に反対のことを示さない限り、「包括的又は」を意味し、「排他的又は」を意味しないことを意図している。「第1の」構成要素への言及は、必ずしも第2の構成要素が設けられることを必要としない。更に、「第1の」又は「第2の」構成要素への言及は、明示的に述べない限り、言及した構成要素を特定の位置に限定しない。「に基づいて」という用語は、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図している。
【0069】
[0084]請求項は、任意選択であり得る任意の要素を除外するように起草することがある。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙、又は「否定的な」限定の使用に関連して、「単独で」、「唯一の」などの排他的な用語を使用するための先行詞としての役割を果たすことを意図している。
【0070】
[0085]値の範囲が与えられる場合、文脈上明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示していることが理解される。記載した範囲内の任意の記載した値又は介在する値と、その記載した範囲内の任意の他の記載した値又は介在する値と、の間の小さい各範囲は、本開示の実施形態内に包含される。これらの小さい範囲の上限及び下限は、独立して範囲に含まれても、又は除外されてもよく、その限界のいずれか、その限界のいずれでもなく、又はその限界の両方が、その小さい範囲に含まれる各範囲もまた、記載した範囲内の任意の具体的に除外した限界を条件として、本開示内に包含される。記載した範囲が、その限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方又は両方を除外した範囲も、本開示に含まれる。
【0071】
[0086]本明細書で言及するすべての特許、特許出願、刊行物、及び説明は、あたかも各個々の刊行物又は特許が参照により組み込まれることが具体的で個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用される関連する方法及び/又は材料を開示し、説明するために参照により本明細書に組み込まれる。先行技術であると認められるものはない。
【国際調査報告】