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特表2025-502090流動床反応装置でアンモニア分解反応を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】流動床反応装置でアンモニア分解反応を行う方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20250117BHJP
   C01B 3/44 20060101ALI20250117BHJP
   B01J 8/42 20060101ALI20250117BHJP
   B01J 8/32 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/44
B01J8/42
B01J8/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541001
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2023050458
(87)【国際公開番号】W WO2023138953
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22315015.2
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダエル,スティジン
(72)【発明者】
【氏名】ベルメイレン ワルター
(72)【発明者】
【氏名】ベリヤソフ,グレブ
【テーマコード(参考)】
4G070
4G140
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB10
4G070BA08
4G070BB32
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB13
4G070CB17
4G070CB18
4G070CC03
4G070DA30
4G140EA03
4G140EA05
4G140EB25
4G140EB42
(57)【要約】
(a)アンモニア含有原料と少なくとも2つの電極および粒子を含むベッドを含む少なくとも1つの流動床反応装置とを用意する工程と、(b)ベッドの粒子を流動状態にして流動床を形成する工程と、(c)流動床を250℃~1000℃の温度に加熱する工程とを含む、水素の生成を伴うアンモニア分解反応を行う方法において、ベッドの粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、粒子の少なくとも10重量%が導電性粒子であり、800℃で0.001オーム・cm~500オーム・cmの抵抗率を有し、触媒組成物が1種または複数の金属化合物を含み、流動床を加熱する工程c)が流動床に電流を流すことによって行われる点を特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)アンモニア含有原料と、少なくとも2つの電極(13)と粒子を含むベッドを含む少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)を用意する工程と、
b)上記ベッドの粒子を流動状態にして流動床(25)を得る工程と、
c)上記流動床(25)を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱して、アンモニア含有原料のアンモニア分解反応を実行する工程と、
d)必要に応じて、反応生成物を回収する工程と、
を含む水素を生成するアンモニア分解反応を実行する方法であって、
流動床(25)を加熱する工程c)が、流動床(25)に電流を流すことによって実行され、流動床(25)の粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、流動床(25)の粒子の総重量に対して上記粒子の少なくとも10重量%が導電性粒子で且つ800℃で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、上記触媒組成物は1種または複数の金属化合物と触媒担体とを含み、上記触媒担体は導電性粒子であることを特徴とする方法。
【請求項2】
流動床(25)の導電性粒子が1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、1種または複数の炭素含有粒子、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物および/またはこれらの任意の混合物から選択される1種または複数を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流動床(25)の導電性粒子が流動床の導電性粒子の総重量に対して10重量%~100重量%の含有量のグラファイトである1種または複数の炭素含有粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
流動床の導電性粒子がグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含まないことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
流動床(25)の導電性粒子がシリコンカーバイド、モリブデンジシリサイドまたはこれらの混合物から選択される1種または複数の非金属抵抗体を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
流動床(25)の導電性粒子が、リコンカーバイドである非金属抵抗体とシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子との混合物を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
流動床の導電性粒子が流動床(25)の導電性粒子の総重量に対して10重量%~100重量%のシリコンカーバイドを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
シリコンカーバイドとは異なる上記導電性粒子が1種または複数の炭素含有粒子および/または1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物および/または1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物であることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
流動床(25)の導電性粒子が1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
混合酸化物が下記の中から選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法:
- 1種または複数の低価陽イオン、好ましくはSm、Gd、Y、Sc、Yb、Mg、Ca、La、Dy、Er、Euから選択され低価陽イオンで少なくとも部分的に置換された立方晶蛍石構造を有する1種または複数の酸化物、および/または、
- A位置が1種または複数の低価陽イオン、好ましくはCa、Sr、またはMgから選択される低価陽イオンで少なくとも部分的に置換され、B位置がNi、Ga、Co、Cr、Mn、Sc、Feおよび/またはこれらの混合物の少なくとも1つを含む、3価陽イオンAおよびBを有する1種または複数のABO3-ペロブスカイト、および/または
- B位置が1種または複数の低価カチオン、好ましくはMg、Sc、Y、NdまたはYbから選択される低価カチオン少なくとも部分的に置換されるか、B位置が異なるB元素の混合物で少なくとも部分的に置換された二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABO3ペロブスカイト、および/または、
- A位置が1種または複数の低価カチオン、好ましくはCaまたはMgから選択される低価カチオンで少なくとも部分的に置換され、B位置にSn、ZrおよびTiの少なくとも1つを含む、三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のAaBaO7-パイロクロア。
【請求項11】
流動床(25)の導電性粒子が1種または複数の金属合金および/または1種または複数の超イオン伝導体を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか 1つによる方法。
【請求項12】
流動床(25)の導電性粒子がLiAlSiO4、Li10GeP212、Li3.6Si0.60.44、ナトリウム超イオン伝導体またはナトリウムベータアルミナの中から選択される1種または複数の超イオン伝導体を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)で、ガス流をベッドに上向きに通過させることによって流動床(25)の粒子を流動化状態にし、ガス流がアンモニア含有原料であるか、または、アンモニア含有原料を含み、および/または、流動床反応装置(18、19、37、39)内でアンモニア分解反応を行う前に、流動床反応装置(18、19、37、39)をガス流で予熱する工程を含むことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記ガス流が不活性ガス流であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記ガス流の温度が250℃~800℃の間であることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
触媒組成物が下記の1種または複数を含むことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の方法:
- Ni、Fe、Co、Mo、Cuおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の非貴金属;および/または、
- Ru、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の貴金属;および/または、
- 非貴金属がNi、Fe、Co、MoおよびCuから選択され、貴金属がRu、Rh、Pd、IrおよびPtから選択される非貴金属と貴金属とを含む1種または複数の二金属化合物。
【請求項17】
工程a)で提供される少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)が加熱ゾーン(27)と反応ゾーン(29)を含み、流動床(25)を加熱する工程c)が以下のサブ工程を含むことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の方法:
- 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)の加熱ゾーン(27)に電流を流すことによって流動床(25)を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱し、
- 加熱された粒子を加熱ゾーン(27)から反応ゾーン(29)へ輸送し、
- 反応ゾーン(29)で、アンモニア含有原料を含む流体流を反応ゾーン(29)の流動床(25)を通して上向きに通過させることによって加熱された粒子を流動状態にして流動床(25)を作り、アンモニア含有原料に対してアンモニア分解反応を行い、
- 任意工程として、反応ゾーン(29)から粒子を回収して加熱ゾーン(27)へリサイクルする。
【請求項18】
工程a)で提供される少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)が加熱ゾーン(27)と反応ゾーン(29)を含み、流動床(25)を加熱する工程c)が以下のサブ工程を含むことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載の方法:
- 250℃~800℃のガス流である流動流を流動床(25)の粒子(25)中を上向きに通過させて流動床(25)を予熱して流動床(25)の温度を250℃~800℃の温度にし、
- 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)の加熱ゾーン(27)に電流を流すことによって流動床(25)を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱し、
- 加熱された粒子を加熱ゾーン(27)から反応ゾーン(29)へ輸送し、
- 反応ゾーン(29)で、アンモニア含有原料を含む流体流を反応ゾーン(29)の流動床(25)を通して上向きに通過させることによって加熱された粒子を流動化状態にして流動床(25)を形成し、アンモニア含有原料に対してアンモニア分解反応を行い、
- 任意工程として、粒子を反応ゾーン(29)から回収して加熱ゾーン(27)へリサイクルする。
【請求項19】
工程(a)が1種以上の炭化水素および蒸気を提供する工程をさらに含み、工程(c)で、水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に、炭化水素の吸熱蒸気改質または炭化水素の乾式改質を行って合成ガスを生成することを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)で提供されるアンモニア含有原料が、少なくとも蒸気と1種以上の炭化水素の混合物である希釈ガスを含み、工程(c)で、水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に、炭化水素の吸熱蒸気改質または炭化水素の乾式改質を行って合成ガスを生成し、好ましくは炭化水素がメタンであることを特徴とする請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応が流動床反応装置内で外部加熱装置を必要とせずに行われる流動床反応装置でアンモニア分解反応を行う方法に関するものである。
本発明の目的は、化石炭素系燃料の加熱装置の使用の置き換えに貢献することにある。本発明は化学産業の電化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学的生産およびリサイクルプロセスにおける化石炭素系燃料をより環境に優しい脱炭素エネルギー源に置き換えることは気候変動および進行中のエネルギー源移行の観点から必須となっている。
【0003】
アンモニア分解(クラッキング)はアンモニア生成の逆であり(〔式1〕参照)、吸熱反応である。
NH3(g)―> 1/2 N2(g)+3/2 H2(g)―> △H=+46kJ/mol 〔式1〕
【0004】
効率的なクラッキングに必要な温度は触媒によって異なる。多種多様な効果的材料があるが、その中には魅力的なレベルの変換率を得るのに700℃を超える温度が必要なもの(例えば、Ni担持触媒)もある。他の触媒(例えば、Ru担持触媒)は450~550℃の温度範囲で高い変換効率を示す。
【0005】
上記反応で得られるガス混合物は水素と窒素で(すなわち、フォーミングガスで)、その比率は3:1(H2 75vol%、N2 25vol%)で、未解離のアンモニアが少量(20~100ppm)残る。未解離のアンモニアが残留するのは反応の熱力学的制限の結果である。この残留痕跡物はその後の用途によっては毒物として作用する可能性があるため除去する必要がある。フォーミングガスはさらに精製することができ、例えば、圧力スイング吸着装置またはスクラバー内の分子ふるいを用いて未分解アンモニアを1~3ppmに減少させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化学産業などの産業への適用に適した、従来技術で遭遇する1つまたは複数の問題に対する大規模な解決策を提供する提供することにある。
本発明の他の目的は、流動床反応装置における化石炭素ベースの燃料加熱装置の使用の置き換えに貢献することにある。
本発明は、電力のみを使用してアンモニアをフォーミングガスに熱分解するための解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点から、本発明は以下の工程a)~d):
a) アンモニア含有原料と、少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドとを含む少なくとも1つの流動床反応装置とを用意し、
b) ベッドの粒子を流動状態にして流動床を作り、
c) 流動床を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱して、アンモニア含有原料に対してアンモニア分解反応を行い、
d) 必要に応じて、反応生成物を回収する、
を含む、水素の生成を伴うアンモニア分解反応を実行する方法において、
流動床を加熱する工程c)が、流動床に電流を流すことによって行われる点と、流動床の粒子が導電性粒子を含み、流動床の粒子の総重量に基づいた粒子の少なくとも10重量%が導電性粒子で、800℃で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、この触媒組成物が1種または複数の金属化合物と触媒担体とを含み、この触媒担体が導電性粒子である点に特徴のある方法を提供する。
【0008】
上記触媒組成物は以下の中から選択される1種または複数の金属化合物を含むのが好ましい:
1)Ni、Fe、Co、Mo、Cuおよびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数の非貴金属;および/または、
2)Ru、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数の貴金属;および/または、
3)非貴金属がNi、Fe、Co、MoおよびCuから選択され、貴金属がRu、Rh、Pd、IrおよびPtから選択される非貴金属と貴金属とを含む1種または複数の二金属(bimetallic)化合物。
【0009】
驚くことに、1つまたは複数の流動床反応装置において通電された導電性粒子を使用すると、外部加熱装置を必要とせずに、250℃~1000℃の範囲の温度反応などの高温条件を必要とするアンモニア分解反応を実行するのに十分な温度を維持できるということが分かった。ベッドの粒子内に少なくとも10重量%の導電性粒子を使用することで電圧が印加されたときの熱損失を最小限に抑えることができる。ジュール効果のおかげで、電気エネルギーの全てではないにしても大部分が、反応装置媒体の加熱に使用される熱に変換される。導電性粒子の少なくとも一部は触媒の支持体として使用されるので、導電性粒子は二重の機能を果たすことができる。
【0010】
導電性粒子
例えば、導電性粒子は1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物(metallic phosphides)、1種または複数の炭素含有粒子、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質(phosphate electrolytes)、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物、およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数であるか、これらを含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0011】
好ましい実施形態では、導電性粒子は1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、グラファイト、カーボンブラック、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物、およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数のであるか、または、これらを含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%の含有量であり、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0012】
好ましくは、ベッドの導電性粒子は1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物、およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数であるか、これらを含み、その含有量はベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%。さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%であるのが好ましい。
【0013】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子は、グラファイトである1種または複数の炭素含有粒子を含み、その含有量はベッドの導電性粒子の総重量に対して10重量%~100重量%または10重量%~90重量%または10重量%~80重量%、好ましくは15重量%~70重量%、より好ましくは20重量%~60重量%、さらに好ましくは30重量%~50重量%であるのが好ましい。例えば、ベッドの導電性粒子はグラファイトと触媒組成物の粒子との混合物である。
【0014】
例えば、ベッドの導電性粒子は石油コークス、カーボンブラック、コークス、またはこれらの混合物から選択される1種または複数の炭素含有粒子を含まない。
【0015】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子にはグラファイト、石油コークス、カーボンブラック、コークス、またはこれらの混合物から選択される1種または複数の炭素含有粒子が含まれない。例えば、ベッドの導電性粒子にはグラファイトおよび/またはカーボンブラックが含まれない。例えば、ベッドの導電性粒子には石油コークスおよび/またはコークスが含まれない。
【0016】
あるいは、ベッドの導電性粒子はグラファイトと、1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数とであるか、これらを含み、その含有量はベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%であるのが好ましい。
【0017】
あるいは、ベッドの導電性粒子は1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体(ただし、非金属抵抗体はシリコンカーバイドではない)、1種または複数の金属カーバイド、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、グラファイト、カーボンブラック、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物および/または1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数の粒子であり、その含有量はベッドの導電性粒子の全重量に対して50重量%~100重量%であるのが好ましく、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%であるのが好ましい。
【0018】
例えば、ベッドの導電性粒子は、1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、グラファイト、カーボンブラック、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物、およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数であり、好ましくはベッドの導電性粒子の全重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは80重量%~100重量%であり、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0019】
例えば、ベッドの導電性粒子はグラファイトと、1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの混合物から選択される1種または複数とであるか、これらを含み、その含有量はベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%であるのが好ましい。
【0020】
例えば、ベッドの導電性粒子は1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数であるか、または、これらを含み、その含有量はベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%であるのが好ましい。
【0021】
例えば、ベッドの導電性粒子は1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数であるか、または、これらを含み、その含有量はベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%であるのが好ましい。
【0022】
有利には、反応生成物を回収する工程d)を実行する。この生成物はH2とN2の混合物であるガス状生成物からなる。工程d)は工程c)の後に実行される。
【0023】
好ましい実施形態では、体積熱発生率(volumetric heat generation rate)が流動床の0.1MW/m3を超え、より好ましくは1MW/m3を超え、特に3MW/m3を超える。
【0024】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの流動床反応装置には加熱手段がない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は容器(vessel)を含み、この容器の周囲または内部に配置された加熱手段はない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレート、またはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。
【0025】
流動床反応装置で使用される固体粒子状物質(すなわち、粒子)は、熱を発生できる導電性を有する固体粒子とNH3分解反応を触媒する触媒粒子状物質とを含む。触媒粒子状物質は導電性でもあり、従って、吸熱性アンモニア分解反応の熱発生に寄与する。
【0026】
例えば、導電性粒子の含有量はベッドの粒子の総重量に対して10重量%~100重量%の範囲であり、好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%である。ベッドの粒子の総重量に対して導電性粒子の含有量が100重量%の場合、この導電性粒子は触媒粒子でもある。
【0027】
例えば、ベッドの総重量に対して導電性粒子の含有量は、ベッドの粒子の総重量に対して少なくとも12重量%であり、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%または少なくとも40重量%または少なくとも50重量%または少なくとも60重量%である。
【0028】
例えば、導電性粒子の800℃での抵抗率は0.005~400オーム・cmの範囲であり、好ましくは800℃で0.01~300オーム・cmの範囲、より好ましくは800℃で0.05~150オーム・cmの範囲、最も好ましくは800℃で0.1~100オーム・cmの範囲である。
【0029】
例えば、導電性粒子は800℃で少なくとも0.005オーム・cmの抵抗率を有し、好ましくは800℃で少なくとも0.01オーム・cm、より好ましくは800℃で少なくとも0.05オーム・cm、さらに好ましくは800℃で少なくとも0.1オーム・cm、最も好ましくは800℃で少なくとも0.5オーム・cmの抵抗率を有する。
【0030】
例えば、導電性粒子は800℃で最大で400オーム・cmの抵抗率を有し、好ましくは800℃で最大で300オーム・cm、より好ましくは800℃で最大で200オーム・cm、より好ましくは800℃で150オーム・cm、最も好ましくは800℃で100オーム・cmの抵抗率を有する。ベッドの粒子の総重量にたいする導電性粒子の含有量および所定抵抗率の導電性粒子の選択は流動床が到達する温度に影響する。従って、目標温度に達しない場合、当業者は粒子ベッドの密度、ベッドの粒子の総重量に対す導電性粒子の含有量を増加させ、および/または、より低い抵抗率の導電性粒子を選択して流動床が到達する温度を上昇させることができる。
【0031】
例えば、粒子層の密度は空隙率(void fraction)として表される。この空隙率またはベッド多孔度(bed porosity)は粒子間の空隙の容積をベッドの総容積で割ったものである。流動化開始速度では空隙率は通常、0.4~0.5である。高速流動層では空隙率は最大0.98まで増加し、底部では約0.5と低く、ベッドの上部では0.9より高くなる。空隙率は流動化ガスの線速度によって制御でき、上部で回収されて流動層の底部に戻される固体粒子をリサイクルすることで減少させることができる。これによってベッド外への固体粒子の随伴を補うことができる。
【0032】
空隙率(void fraction)VFは粒子ベッド内の空隙の体積率として定義され、次の式に従って決定される:
ここで、Vtはベッドの総容積であり、次式によって決定される:
ここで、Aは流動床の断面積、Hは流動床の高さであり、Vpは流動床内の粒子の総容積である。
【0033】
例えば、ベッドの空隙率は0.5~0.8の範囲であり、好ましくは0.5~0.7の範囲であり、さらに好ましくは0.5~0.6の範囲である。粒子ベッドの密度を高めるには空隙率を低下させる必要がある。
【0034】
例えば、ベッドの粒子は、ASTM D4513-11に従ったふるい分けによって測定した平均粒子サイズが5~300μmの範囲、好ましくは10~200μmの範囲、より好ましくは20~200μmまたは30~150μmの範囲である。
【0035】
ASTM D4513-11に従ったふるい分けによって測定することが好ましい。粒子の平均サイズが20μm未満の場合、平均サイズの測定はASTM D4464-15に従ってレーザー光散乱によって行うこともできる。
【0036】
例えば、ベッドの導電性粒子はASTM D4513-11に従ったふるい分けによって測定された平均粒子サイズが5~300μmの範囲、好ましくは10~200μmの範囲、より好ましくは30~150μmの範囲である。
【0037】
例えば、上記の1種または複数の金属合金はNi-Cr、Fe-Ni-Cr、Fe-Ni-Alまたはこれらの混合物から選択される。好ましくは、金属合金が少なくともクロムを含む場合、クロム含有量は少なくともクロムを含む金属合金の全モル含有量の少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも20モル%、さらに好ましくは少なくとも25モル%、最も好ましくは少なくとも30モル%である。さらに有利には、金属合金中の鉄含有量は、金属合金の全モル含有量に対して最大で2.0モル%、好ましくは最大で1.5モル%、より好ましくは最大で1.0モル%、さらに好ましくは最大で0.5モル%である。
【0038】
例えば、非金属抵抗体は炭化ケイ素(SiC)、二ケイ化モリブデン(MoSi2)、ニッケルケイ化物(NiSi)、ケイ化ナトリウム(Na2Si)、ケイ化マグネシウム(Mg2Si)、ケイ化白金(PtSi)、ケイ化チタン(TiSi2)、ケイ化タングステン(WSi2)、またはこれらの混合物であり、好ましくは炭化ケイ素である。
【0039】
例えば、上記の1種または複数の金属炭化物は炭化鉄(Fe3C)および/または炭化モリブデン(MoCとM02Cの混合物など)から選択される。
【0040】
例えば、上記の1種または複数の金属窒化物は、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タングステン(W2N、WN、およびWN2の混合物など)、窒化バナジウム(VN)、窒化タンタル(TaN)、および/または窒化ニオブ(NbN)から選択される。
【0041】
例えば、上記の1種または複数の金属リン化物は、銅リン化物(Cu3P)、インジウムリン化物(InP)、ガリウムリン化物(GaP)、ナトリウムリン化物(Na3P)、アルミニウムリン化物(AlP)、亜鉛リン化物(Zn32)および/またはカルシウムリン化物(Ca32)から選択される。
【0042】
例えば、上記の1種または複数の超イオン伝導体は、LiAlSiO4、LiGeP2Si2、Li3.6SiO.60.44、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、例えば、Na3Zr2PSi212、またはナトリウムベータアルミナ、例えば、NaAl1117、Na1.6Al1117.3、および/または、Na1.76Li0.38Al10.62l7から選択される。
【0043】
例えば、上記の1種または複数のリン酸電解質は、UPO4またはLaPO4から選択される。
【0044】
例えば、上記の1種または複数の混合酸化物は、1種または複数の低原子価カチオンがドープされたイオン性または混合導体である。有利には、この混合酸化物は、1種または複数の低原子価カチオンがドープされ、立方晶蛍石構造(pyrochlore)、ペロブスカイト(perovskite,)、パイロクロア(pyrochlore)を有する酸化物から選択される。
【0045】
例えば、上記の1種または複数の混合硫化物は、1種以上の低原子価カチオンがドープされたイオン性または混合導体である。
【0046】
例えば、ベッドの導電性粒子は、シリコンカーバイドである非金属抵抗体であるか、またはそれを含む。
【0047】
例えば、ベッドの導電性粒子は、シリコンカーバイドである非金属抵抗体とシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはそれを含む。ベッド内にシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子が存在することは任意である。シリコンカーバイドの室温での抵抗率はベッドの加熱を開始するには高すぎることが分かったので、ベッドを加熱するための出発材料として存在することができる。あるいは、シリコンカーバイドとは異なる導電性粒子を存在させることで、反応を開始するために反応装置に規定の時間熱を与えることが可能である。
【0048】
例えば、シリコンカーバイドは、焼結シリコンカーバイド、窒化物結合シリコンカーバイド、再結晶シリコンカーバイド、反応結合シリコンカーバイドおよびこれらの任意の混合物から選択される。
【0049】
例えば、ベッドの導電性粒子は、シリコンカーバイドである非金属抵抗体とシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子との混合物であるか、または、混合物を含む。ベッドのこの導電性粒子はベッドの導電性粒子の総重量に対して10重量%~99重量%のシリコンカーバイドを含み、好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%のシリコンカーバイドを含む。
【0050】
例えば、ベッドの導電性粒子は、シリコンカーバイドである非金属抵抗体と、シリコンカーバイドとは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはそれを含み、このシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子はグラファイトおよび/または1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物および/または1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物である。
【0051】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイドとモリブデンジシリサイドであるか、またはこれられを含み、ベッドの導電性粒子の全重量に対してシリコンカーバイドは10重量%~90重量%、モリブデンジシリサイドは90重量%~10重量%である。
【0052】
例えば、ベッドの導電性粒子は、イオン伝導体、すなわち1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物であるか、またはそれを含む。この混合酸化物は以下から選択するのが好ましい:
- 1種以上の低価カチオン(好ましくはSm、Gd、Y、Sc、Yb、Mg、Ca、La、Dy、Er、Euから選択される)で少なくとも部分的に置換された立方晶蛍石構造を有する1種または複数の酸化物、および/または、
- A位置が1種以上の低価カチオン(好ましくはCa、Sr、またはMgから選択される)で少なくとも部分的に置換され、B位置にNi、Ga、Co、Cr、Mn、Sc、Feおよび/またはこれらの混合物の少なくとも1つを含む、三価カチオンAおよびBを含む1種または複数のABO3ペロブスカイト、および/または、
-B位置がマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)またはイッテルビウム(Yb)から好ましく選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換されるか、またはB位置が異なるB元素の混合物で少なくとも部分的に置換された、二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABO3-ペロブスカイト、および/または、
- A位置がカルシウムまたはマグネシウムから好ましく選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換され、B位置に少なくともSn、ZrおよびTiの1つを含む、三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227-パイロクロア。
【0053】
例えば、ベッドの導電性粒子は、イオン伝導体すなわち1種または複数の低価カチオンがドープされた1種または複数の混合硫化物であるか、またはそれを含む。この混合硫化物は以下から選択されるのが好ましい:
- 1種または複数の低価カチオン、好ましくはSm、Gd、Y、Sc、Yb、Mg、Ca、La、Dy、Er、Euから選択される低価カチオンで少なくとも部分的に置換された立方晶蛍石構造を有する1種または複数の硫化物、および/または、
- A位置で好ましくはCa、Sr、またはMgから選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換され、B位置にNi、Ga、Co、Cr、Mn、Sc、Feおよび/またはこれらの混合物の少なくとも1つを含む、三価カチオンAおよびBを含む1種または複数のABS3構造、および/または、
-B位置が好ましくはMg、Sc、Y、NdまたはYbから選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換されるか、B位置が異なるB元素の混合物で少なくとも部分的に置換された、二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABS3構造、および/または、
- A位置が好ましくはCaまたはMgから選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換され、B位置にSn、ZrおよびTiの少なくとも1つを含む三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227構造。
【0054】
好ましくは、1種以上の低原子価カチオンがドープされた立方晶蛍石構造を有する1種または複数の混合酸化物における置換度は、立方晶蛍石構造を有する1種または複数の酸化物中に存在する原子の総数に対して1~15原子%、好ましくは3~12原子%、より好ましくは5~10原子%である。
【0055】
好ましくは、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物における置換度は、三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABO3ペロブスカイト、二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABO3ペロブスカイト、または三価カチオンAと四価カチオンBを有する1種または複数のA227パイロクロアのそれぞれにおいて存在する原子の総数に対して1~50原子%、好ましくは3~20原子%、より好ましくは5~15原子%である。
【0056】
好ましくは、1種以上の低原子価カチオンがドープされた立方晶蛍石構造を有する1種または複数の混合硫化物における置換度は、立方晶蛍石構造を有する1種または複数の酸化物中に存在する原子の総数に対して1~15原子%、好ましくは3~12原子%、より好ましくは5~10原子%である。
【0057】
好ましくは、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物における置換度は、三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABS3構造、二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABS3構造、または三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227構造に存在する原子の総数に対してそれぞれ1~50原子%、好ましくは3~20原子%、より好ましくは5~15原子%である。
【0058】
例えば、ベッドの導電性粒子は1種または複数の金属合金であるか、または1種または複数の金属合金を含む。好ましくは、1種または複数の金属合金はNi-Cr、Fe-Ni-Cr、Fe-Ni-Alまたはこれらの混合物から選択される。
【0059】
好ましくは、上記金属合金が少なくともクロムを含む場合、そのクロム含有量は少なくともクロムを含むこの金属合金の全モル含有量の少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも20モル%、さらに好ましくは少なくとも25モル%、最も好ましくは少なくとも30モル%である。さらに有利には、金属合金中の鉄含有量はこの金属合金の全モル含有量に対して最大2.0モル%、好ましくは最大1.5モル%、より好ましくは最大1.0モル%、さらに好ましくは最大0.5モル%である。
【0060】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイドである非金属抵抗体とシリコンカーバイドとは異なる粒子との混合物であるか、またはそれを含み、このシリコンカーバイドとは異なる粒子はグラファイトであるか、またはそれを含む。好ましくは、上記グラファイトはASTM D4513-11に従ってふるい分けして測定された平均粒子サイズが5~300μmの範囲、より好ましくは10~200μmの範囲、最も好ましくは30~150μmの範囲であるグラファイト粒子である。
【0061】
触媒組成物の粒子
例えば、触媒組成物の粒子の含有量はベッドの粒子の総重量に対して30重量%~100重量%の範囲、好ましくは32重量%~95重量%の範囲、より好ましくは35重量%~90重量%の範囲、さらにより好ましくは37重量%~85重量%の範囲、最も好ましくは40重量%~80重量%の範囲、さらに最も好ましくは45重量%~75重量%の範囲または50重量%~70重量%の範囲である。触媒組成物の粒子の含有量がベッドの粒子の総重量に対して100重量%である場合、その触媒組成物の粒子は導電性粒子でもある。
【0062】
例えば、触媒組成物の粒子は、ASTM D4513-11に従ってふるい分けによって測定された平均粒子サイズが5~300μmの範囲、好ましくは10~200μmの範囲であり、より好ましくは20~200μmまたは30~150μmの範囲である。
【0063】
ASTM D4513-11に従ってふるい分けによって測定するのが好ましいが、粒子の平均サイズが20μm未満の場合には、平均サイズの測定をASTM D4464-15に従ったレーザー光散乱によって行うこともできる。
【0064】
触媒組成物は1種または複数の金属化合物を含む。触媒組成物は以下から選択される1種または複数の金属化合物を含むのが好ましい:
― Ni、Fe、Co、Mo、Cuおよびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数の非貴金属、および/または、
― Ru、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の貴金属、および/または、
― 非貴金属と貴金属を含む1種または複数の二金属化合物(bimetallic compounds)(ここで、非貴金属はNi、Fe、Co、MoおよびCuから選択され、貴金属はRu、Rh、Pd、IrおよびPtから選択される)。
【0065】
例えば、上記のNi、Fe、Co、Mo、Cuおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の非貴金属は触媒組成物の全重量に対して0.05重量%~20.00重量%、好ましくは0.10重量%~15.00重量%、より好ましくは0.50重量%~10.00重量%、さらに好ましくは1.00重量%~5.00重量%の範囲の量で存在する。
【0066】
例えば、1種または複数の非貴金属はNiであるか、またはNiを含む。
【0067】
例えば、上記のRu、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の貴金属は触媒組成物の全重量に対して0.05重量%~10.00重量%、好ましくは0.10重量%~5.00重量%、より好ましくは1.00重量%~3.00重量%、さらに好ましくは1.50重量%~2.50重量%の量で存在する。
【0068】
例えば、1種または複数の貴金属はRuであるか、またはRuを含む。
【0069】
例えば、1種または複数の二金属化合物中の貴金属は、10ppm~500ppm、好ましくは50ppm~400ppm、より好ましくは100ppm~250ppmの量で存在する。
【0070】
有利には、触媒組成物はアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類元素から選択される1種または複数の元素をさらに含む。例えば、この1種または複数のアルカリ金属はLi、Na、K、Csおよびこれらの混合物から選択される1種以上である。例えば、1種または複数のアルカリ土類金属はMgおよび/またはCaから選択される1種以上である。例えば、1種または複数の希土類元素はCe、La、Sc、Yおよびこれらの混合物から選択される1種以上である。
【0071】
本発明では、触媒組成物は導電性粒子である触媒担体をさらに含む。好ましくは、導電性粒子は炭化ケイ素および/またはグラファイトおよび/またはカーボンナノチューブであるか、あるいは、炭化ケイ素とは異なる導電性粒子である。これにより、触媒活性物質と導電性物質とが密に接触できる。
【0072】
好ましくは、触媒組成物はN2吸着測定により測定される比表面積が10m2/g~1000m2/gの範囲、より好ましくは50m2/g~900m2/g、さらに好ましくは100m2/g~800m2/g、最も好ましくは200m2/g~700m2/gの範囲である。
【0073】
アンモニア分解反応
例えば、アンモニア分解反応は300℃~950℃、好ましくは350℃~900℃、より好ましくは400℃~850℃、最も好ましくは450℃~800℃または480℃~950℃の温度で行われる。
【0074】
本発明はさらに、アンモニアの部分分解すなわちアンモニアからフォーミングガスへの変換率が50%未満、好ましくは20%~50%または20%~30%の範囲であるアンモニアの部分分解方法を提供する。本発明方法は以下の場合に生成された水素の円滑な燃焼を行うのに有利である:
- 触媒組成物が1種または複数の非貴金属(例えば、Niまたは担持Ni)を含み、工程(c)で提供される温度が250℃~800℃、好ましくは300℃~750℃、より好ましくは350℃~700℃、さらに好ましくは400℃~650℃の範囲である場合、または、
- 触媒組成物が1種または複数の貴金属(例えば、Ruまたは担持Ru)を含み、工程(c)で提供される温度が250℃~450℃、好ましくは275℃~425℃、より好ましくは300℃~400℃である場合。
【0075】
変換率は、アンモニア含有原料のNH3の量と、工程(d)で回収された生成物のNH3の量との差をアンモニア含有原料のNH3の量で割った比率を計算して求め、この比率に100を掛けてパーセンテージで表した。
【0076】
例えば、アンモニア分解反応は0.01MPa~10.0MPaの範囲、好ましくは0.1MPa~5.0MPaの範囲の圧力で行われる。
【0077】
一つの実施形態では、上記プロセスが、流動床反応装置内でアンモニア分解反応を行う前に、流動床反応装置をガス流で予熱する工程をさらに含む。好ましくは、このガス流は不活性ガス流であり、および/または、250℃~800℃の温度を有する。この実施形態は、グラファイトおよび/または電気抵抗材料などのベッドの粒子が室温での抵抗率が高すぎてベッドの電気加熱を開始できない場合に重要である。
【0078】
例えば、アンモニア分解反応は希釈流の存在下で行われ、反応流の重量空間速度が0.1h-1~100h-1の間、好ましくは1.0h-1~50h-1の間にある状態で行われる。重量空間速度は反応流の質量流量と流動床内の固体粒子材料の質量との比として定義される。
【0079】
本発明プロセスのアンモニア含有原料はハーバー・ボッシュ法、任意のアンモニア生成用生物学的プロセス、任意のアンモニア生成用電気化学的プロセスまたはこれらの任意の組み合わせによって提供されるアンモニアを含む原料から選択される。
【0080】
任意選択事項であるが、アンモニア含有原料は1種または複数の希釈ガスで希釈できる。1種以上の希釈ガスが存在する場合、それは蒸気、水素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、窒素およびメタンなどの1種以上の炭化水素から選択される1種以上にすることができる。1種以上の希釈ガスは例えば、1種以上の流動化ガスとして使用される。好ましくは、1種以上の希釈ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、窒素およびメタンなどの1種以上の炭化水素から選択される1種以上にすることができる。一つの実施形態では、希釈ガスが少なくとも蒸気とメタンなどの1種以上の炭化水素の混合物である。この場合、炭化水素の吸熱蒸気改質による合成ガスの生が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。別の実施形態では、希釈ガスが少なくとも二酸化炭素とメタンなどの1種以上の炭化水素の混合物である。この場合には炭化水素の吸熱乾式改質による合成ガスの生成が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。
【0081】
例えば、工程(b)ではガス流をベッドに上向きに通過させることによってベッドの粒子を流動状態にする。好ましくは、ガス流はアンモニア含有原料であるか、またはアンモニア含有原料を含む。
【0082】
特に、本発明プロセスで得られる生成物には水素および/または窒素が含まれる。
【0083】
好ましい実施形態では、反応装置の出口温度は300~1100℃、好ましくは350~1050℃、より好ましくは400~1000℃、より好ましくは450~950℃の範囲である。
【0084】
好ましい実施形態では、温度が450~900℃である反応装置の流動床セクションにおけるアンモニア含有原料の滞留時間は0.005~5.00秒、好ましくは0.10~1.20秒の範囲である。
【0085】
例えば、流動床を加熱する工程は電流を流動床に流すことによって行われる。その電圧は最大で300V、好ましくは最大で200V、より好ましくは最大で150V、さらに好ましくは最大で120V、最も好ましくは最大で100V、さらに最も好ましくは最大で90Vである。
【0086】
例えば、工程a)で使用される少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーンと反応ゾーンとを含み、流動床を加熱する工程c)は以下のサブ工程を含む:
― 少なくとも1つの流動床反応装置の加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱する、
― 加熱された粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンへ輸送する、
― 反応ゾーンにおいて、アンモニア含有原料と任意の再希釈ガスを含む流体流とを反応ゾーンのベッドに上向きに流すことによって加熱された粒子を流動状態にして流動床を形成し、アンモニア含有原料に対するアンモニア分解反応を実施する、
― 任意選択事項として、反応ゾーンから粒子を回収し、加熱ゾーンにリサイクルする。
【0087】
例えば、工程a)で使用される少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーンと反応ゾーンとを備え、流動床を加熱する工程c)は以下のサブ工程を含む:
― 250℃~800℃の温度を有するガス流である流動化流を流動床の粒子中を上向きに通過させて、流動床を250℃~800℃の温度に予熱し、
― 少なくとも1つの流動床反応装置の加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱し、
― 加熱ゾーンから反応ゾーンに加熱された粒子を輸送し、
― 反応ゾーンにおいて、アンモニア含有原料と任意の希釈ガスを含む流体流を反応ゾーンのベッドに上向きに通過させることによって加熱された粒子を流動化状態にして流動床を形成し、アンモニア含有原料に対してアンモニア分解反応を実施し、
― 任意選択事項として、反応ゾーンから粒子を回収して加熱ゾーンにリサイクルする。
【0088】
従って、好ましくは、粒子が予熱され、および/または、工程c)の前に予熱ゾーンおよび/または加熱ゾーンで加熱され、その結果、
― 工程a)で使用される少なくとも1つの流動床反応装置が予熱ゾーンを備え、この予熱の工程はガス流をベッド通して上向きに通過させることによって行われ、ガス流は予熱ゾーンに供給され、使用されるガス流の温度は250℃~800℃の範囲であり、および/または、
― 工程a)で使用される少なくとも1つの流動床反応装置が加熱ゾーンおよび反応ゾーンを備え、ベッドを通して250℃~800℃の範囲の温度を有するガス流を上向きに通過させてベッドの粒子を流すことによって加熱ゾーンを流動化状態にし、加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱される。
【0089】
流動化流は1種または複数の希釈剤、例えば、1種または複数の不活性ガスを含むガス流にすることができる。
【0090】
例えば、工程b)で、ガス流をベッドに上向きに通過させることでベッドの粒子を流動化状態とし、加熱ゾーンと反応ゾーンが混合されている(すなわち、同じゾーンの)場合、ガス流(すなわち流動化流)はアンモニア含有原料であるか、またはアンモニア含有原料を含むことができる。
【0091】
例えば、工程b)で、ガス流をベッドに上向きに通過させることによりベッドの粒子を流動化状態とし、加熱ゾーンと反応ゾーンが別々のゾーンである場合、加熱ゾーンに供給されるガス流(すなわち、流動化流)はアンモニア含有原料が含まれなくてもよい。例えば、工程b)で、ガス流を上記ベッドに上向きに通過させることによってベッドの粒子は流動化状態に置き、このプロセスでは加熱ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置と反応ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置とを使用し、工程b)で加熱ゾーンに提供されるガス流にはアンモニア含有原料が含まれず、反応ゾーンに提供されるガス流がアンモニア含有原料であるか、または、アンモニア含有原料を含む。
【0092】
アンモニア含有原料は反応ゾーンに提供されるということ、また、加熱ゾーンと反応ゾーンとが分離されている場合には加熱ゾーンにはアンモニア含有原料が提供されないということことは理解できよう。
【0093】
水素生成を伴うアンモニア分解反応と合成ガスを生成するための水蒸気メタン改質反応との同時プロセス
以下の1つまたは複数を選択して、工程(c)で水素生成を伴うアンモニア分解反応と同時に、合成ガスを生成するための炭化水素の吸熱的水蒸気改質を実行するのが有利である:
- 工程(a)が1種または複数の炭化水素および水蒸気を提供する工程をさらに含む、または、
- 工程(a)で提供されるアンモニア含有原料が少なくとも水蒸気と1種または複数の炭化水素(例えば、メタン)との混合物である希釈ガスを含む。
【0094】
あるいは、以下の1つまたは複数を選択して、工程(c)で水素生成を伴う上記アンモニア分解反応と同時に、合成ガスを生成するための炭化水素の吸熱的乾式改質を実行する:
- 工程(a)が1種または複数の炭化水素および二酸化炭素を提供する工程をさらに含み、または、
- 工程(a)で提供されるアンモニア含有原料が少なくとも二酸化炭素と1種または複数の炭化水素(メタンなど)の混合物である希釈ガスを含む。
【0095】
例えば、1種または複数の炭化水素が炭化水素含有原料の一部であり、および/または、1種または複数の炭化水素がメタンまたは1~5個の炭素原子を含む軽質炭化水素の混合物などの1つまたは複数の炭素原子を有する。炭化水素含有原料には二酸化炭素も含まれているのが有利である。炭化水素含有原料は、天然ガス、バイオガス、または製油所ガスであることが好ましく、それぞれにさまざまな量の二酸化炭素が含まれる可能性がある。
【0096】
好ましくは、炭化水素含有原料中の水蒸気と炭素のモル比は、炭化水素原料中の炭素1モルあたり水蒸気2.0~5.0モルの範囲、好ましくは2.2~4.0、より好ましくは2.5~3.0の範囲である。
【0097】
有利には、工程(d)を実行する場合、生成物は少なくとも生成ガス(例えば、H2とN2の混合物)と未反応のアンモニアを含む。工程(c)を実行してアンモニア分解反応と同時に炭化水素の水蒸気改質を行う場合、工程(d)を実行すると、生成物はさらに一酸化炭素、二酸化炭素、未反応の炭化水素および未反応の水蒸気を含む。
【0098】
一つの実施形態では、工程(c)が水素生成を伴うアンモニア分解反応のみを行うために実施される。この場合、このプロセスは、工程(d)で回収された生成物すなわち少なくとも形成ガスと未反応のアンモニアを含む生成物に対して燃焼反応を行う工程(j)をさらに含む。好ましくは、この工程(j)は工程(d)の直後に実施される。好ましくは、燃焼反応は1000℃~3000℃の範囲の温度で実施される。この実施形態は、アンモニア分解反応の転化が部分的である場合に実施されることが好ましい。
【0099】
別の実施形態では、本発明プロセスは工程(d)で回収された生成物から未反応のアンモニアを除去する工程(e)をさらに含む。分解時に形成される形成ガス中には約20ppm~100ppmの量の未反応のアンモニアが生じるので、この実施形態をアンモニア分解反応の転化が完了した場合に実施するのが好ましい。工程(e)は、以下から選択される1種または複数の工程であるのが好ましい:
- 形成ガスを酸性またはアルカリ性溶液で洗浄する1つの工程、
- ゼオライト4A、ゼオライト5Aまたはゼオライト13Xから選択される1つまたは複数のゼオライトである吸着剤に未反応のアンモニアを吸着させる1つの工程、
-0.1MPa~15MPa、好ましくは1MPa~10MPaの圧力と―20℃~20℃、好ましくは―15℃~15℃の温度で行われる1つの凝縮工程。
【0100】
工程(c)が、水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に、炭化水素の吸熱蒸気改質による合成ガスの生成、または、炭化水素の吸熱乾式改質による合成ガスの生成を実行するために実施される場合、本発明プロセスは、工程(d)で回収された生成物から未反応のアンモニアを除去する工程(e)の後に実行される以下の工程をさらに含むのが有利である:
f) 工程(d)で得られた一酸化炭素に対して水ガスシフト(WGS)反応
(CO+H2O <=> CO2+H2 △Hー298= ― 41.09 kJ/モル)
を蒸気を用いて実行し、二酸化炭素、水素、未反応の一酸化炭素および未反応の炭化水素を含む流れを生成し、
g) 上記の流れから二酸化炭素、水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含むCO2―濃縮流を分離して、水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含むCO2―希薄流を作り、上記CO2―希薄流から精製水素流と、未回収水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含むパージ流とを分離し、
i) 任意選択事項として、工程(a)で、上記O2―濃縮流、精製水素流を回収し、および/または未回収水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含む上記パージ流を提供する。
【0101】
例えば、上記工程(f)は水性ガスシフト触媒の存在下で実施され、好ましくは、上記水性ガスシフト触媒は銅または鉄系触媒から選択される。
【0102】
本発明の第2態様から、本発明は以下を含む第1態様に従った少なくともアンモニア分解反応を実施し、水素を生成するための設備を提供する:
i)以下を含む少なくとも1つの流動床反応装置を有する通電流動床ユニット:
― 好ましくは、1つの電極が浸漬中心電極であるか、2つの電極が浸漬電極である少なくとも2つの電極、
― 反応容器、
― 少なくとも1つの流動床反応装置内に、アンモニア含有原料と、任意選択材料の1種または複数の希釈ガスとを導入するための1つまたは複数の流体ノズル、および
― 粒子を収容したベッド
ii) 上記通電流動床ユニットの下流にあり、分離ユニットと燃焼ユニットの両方が存在する場合には、分離ユニットが通電流動床ユニットの下流且つ燃焼ユニットの上流にある、分離ユニットおよび/または燃焼ユニット、
iii) 任意事項の通電流動床ユニットまたは存在する場合には分離ユニットの下流の水性ガスシフトユニット。
本発明設備の特徴は、ベッドの粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対してベッドの粒子の少なくとも10重量%が導電性で、800℃の温度で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物が1種または複数の金属化合物を含む点にある。
【0103】
好ましくは、少なくとも2つの電極はタンタルを含むか、または、タンタルで作られる。
【0104】
有利には、少なくとも1つの流動床反応装置には加熱手段がない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置には反応容器の周囲または内部に配置された加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置には加熱手段がない。少なくとも1つの流動床反応装置に「加熱手段」がないといった場合、それはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートなどの「古典的な」加熱手段を指す。流動床反応装置自体の少なくとも2つの電極以外には加熱手段がない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。
【0105】
好ましい実施形態では、少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドを有する少なくとも1つの流動床反応装置にはハニカムモノリス(honeycomb monoliths)または交差プレートなどの構造化パッキングがない。
【0106】
例えば、上記の1種または複数の希釈ガスは1種または複数の流動化ガスとして使用される。好ましくは、上記の1種または複数の希釈ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、窒素およびメタンなどの1種以上の炭化水素から選択される1種以上である。より好ましくは、上記の1種または複数の希釈ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、窒素およびメタンなどの1種以上の炭化水素から選択される1種以上である。一つの実施形態では、希釈ガスが少なくとも蒸気とメタンなどの1種以上の炭化水素の混合物である場合、炭化水素の吸熱蒸気改質による合成ガスの生成が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。別の実施形態では、希釈ガスが少なくとも二酸化炭素とメタンなどの1種以上の炭化水素の混合物である場合、炭化水素の吸熱乾式改質による合成ガスの生成が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。
【0107】
例えば、少なくとも1つの反応容器の内径は少なくとも100cm、好ましくは少なくとも200cm、より好ましくは少なくとも300cmである。
【0108】
好ましくは、反応容器は耐腐食性材料で作られた反応容器壁を備え、有利には、反応容器壁材料はニッケル(Ni)、SiAIONセラミック、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、正方晶多結晶ジルコニア(TZP)および/または正方晶多結晶ジルコニア(TPZ)を含む。
【0109】
好ましくは、電極の1つは反応容器またはガス分配器であり、および/または、少なくとも2つの電極はステンレス鋼材料またはニッケルクロム合金またはニッケルクロム鉄合金で作られる。
【0110】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーンと、反応ゾーンと、反応ゾーンにアンモニア含有原料を供給する1つまたは複数の流体ノズルと、反応ゾーンから加熱ゾーンに粒子を輸送する手段(任意構成)とを含む。
【0111】
例えば、本発明設備は、互いに接続された少なくとも2つの流動床反応装置を含み、少なくとも2つの流動床反応装置のうちの少なくとも1つの反応装置は加熱ゾーンであり、少なくとも2つの流動床反応装置のうちの少なくとも別の反応装置は反応ゾーンである。好ましくは、本発明設備は、反応ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置にアンモニア含有原料を注入するように配置された1つまたは複数の流体ノズルと、必要に応じて加熱ゾーンから反応ゾーンに粒子を輸送する手段と、反応ゾーンから加熱ゾーンへ粒子を輸送する手段(オプション)とを含む。この構成は、一つの粒子ベッドが少なくとも2つの流動床反応装置に共通であるという点で注目に値する。
【0112】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は単一の流動床反応装置であり、加熱ゾーンが流動床反応装置の底部にあり、反応ゾーンが流動床反応装置の上部にある。好ましくは、本発明設備は2つのゾーンの間にアンモニア含有原料を注入するための1つまたは複数の流体ノズルを備える。加熱ゾーンと反応ゾーンの直径は、底部ゾーンでの加熱に最適な条件と上部ゾーンでのメタン変換に最適な条件とを達成するために異なっていてもよい。粒子は随伴(エントレインメント)によって加熱ゾーンから反応ゾーンへ移動し、その逆に、重力によって反応ゾーンから加熱ゾーンへ戻ることができる。オプションとして、粒子を上部加熱ゾーンから収集し、別の移送ラインによって底部加熱ゾーンに戻るように移送しててもよい。
【0113】
例えば、少なくとも1つの流動床が外側ゾーンと内側ゾーンの少なくとも2つの横方向ゾーンを備え、外側ゾーンは内側ゾーンを取り囲み、外側ゾーンは加熱ゾーンであり、内側ゾーンは反応ゾーンである。あまり好ましくないが、外側のゾーンが反応ゾーンで、内側のゾーンが加熱ゾーンである構成にすることもできる。好ましくは、本発明設備は反応ゾーンにアンモニア含有原料を注入するための1つまたは複数の流体ノズルを備える。
【0114】
有利には、本発明設備は、さらに、通電流動床ユニットを分離ユニットおよび/または燃焼ユニットに流体接続するラインを備え、本発明設備は、さらに、ライン上に熱交換器を備える。
【0115】
好ましくは、分離ユニットは圧力スイング吸着(PSA)装置および/またはスクラバーおよび/または凝縮器であるか、または、これらを含む。
【0116】
好ましくは、燃焼ユニットはオーブンおよび/または炉および/またはバーナーであるか、または、これらを含む。
【0117】
通電流動床ユニットまたは分離ユニットの下流に水性ガスシフト(WGS)ユニットが存在する場合、そのWGSユニットは、吸熱蒸気改質または炭化水素の乾式改質反応が、水素生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われるときに、合成ガスの一部である一酸化炭素に対して水性ガスシフト反応を行うための少なくとも1つの水性ガスシフト反応装置を備える。追加の分離ユニットはWGSユニットの下流に存在でき、例えば、WGSユニットから排出される流出物からCO2に富む流を分離する第1の追加分離ユニット、および/または、好ましくは第1の追加分離ユニットの下流に存在し、精製された水素流を分離する第2の追加分離ユニットがあり、第2の追加分離ユニットは、好ましくは圧力スイング吸着(PSA)デバイスを含む。第2の追加分離ユニットは、未回収の水素、未反応の一酸化炭素および未反応の炭化水素を含むパージ流を除去することもでき、本発明設備は工程(a)でそのようなパージ流を提供するラインを含むのが有利である。
【0118】
本発明の第3の態様から、本発明は、少なくとも1つの流動床反応装置において第1の態様に従って少なくとも1つのアンモニア分解反応と水素生成を行うための粒子を含むベッドの使用を提供する。この使用は、ベッドの粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対してベッドの粒子の少なくとも10重量%が導電性で、800℃の温度で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物が1種または複数の金属化合物を含むという点で注目に値する。
【0119】
例えば、本発明の使用は、第1の反応装置において粒子を含むベッドを250℃~1000℃の範囲の温度に加熱し、加熱された粒子ベッドを第1の反応装置から第2の反応装置に輸送し、アンモニア含有原料を第2の反応装置に供給することを含む。好ましくは、少なくとも第2の反応装置は流動床反応装置であり、および/または、少なくとも第2の反応装置は加熱手段を有していない。より好ましくは、第1反応装置および第2反応装置が流動床反応装置であり、および/または、第1反応装置および第2反応装置は加熱手段を有していない。例えば、第2反応装置は電極を有していない。
【0120】
本発明の第4の態様から、本発明は、少なくとも1つの流動床反応装置を含む設備の使用を提供する。この場合、本発明設備が第2の態様によるものであるという点で注目に値する。好ましくは、第1の態様によるプロセスで水素を製造する少なくとも1つのアンモニア分解反応を実施する少なくとも1つの流動床反応装置を含む設備の使用を提供する。
【0121】
1つまたは複数の実施形態における本発明の特定の特徴、構造、特性または実施形態は上記開示から当業者が任意の適切な方法で組み合わせることができるということは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】従来技術の設備を示す図。
図2】加熱ゾーンと反応ゾーンが同じである1つの反応装置を備えた本発明の設備を示す図。
図3】加熱ゾーンと反応ゾーンが上下に配置された1つの反応装置を備えた本発明による設備を示す図。
図4】加熱ゾーンと反応ゾーンが左右に配置された1つの反応装置を備えた本発明による設備を示す図。
図5】2つの反応装置を備えた本発明による設備を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0123】
本発明では、以下の定義が与えられる:
本明細書で使用される「含む」、「有する」および「構成される」という用語は「含む(includes)」、「含む(containing)」または「含む(contains)」と同義であり、包括的または制限がなく、記載されていない追加の構成、要素または方法、工程を除外するものではない。これらの「含む」および「構成される」という用語には「から構成される(comprises、comprised of)」と「のみで構成される(consisting of)」という意味も含まれる。
【0124】
エンドポイントによる数値範囲の記載では、全ての整数と、適切な場合にはその範囲内に含まれる分数が含まれる(例えば、1~5には、例えば、要素の数を指す場合は1、2、3、4、5が含まれ、例えば、測定値を指す場合は1.5、2、2.75、3.80も含まれる)。エンドポイント記載では、記載したエンドポイント値自体も含まれる(例えば、1.0~5.0には1.0と5.0の両方が含まれる)。記載した数値範囲はそこに含まれる全てのサブ範囲も含む。
【0125】
「遷移金属」という用語は、原子が部分的に満たされたdサブシェルを有する元素または不完全なdサブシェルを有する陽イオンを生成できる元素を指す(IIIPACの定義)。この定義による遷移金属はSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ac、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cnである。
【0126】
Ga、In、Sn、TI、Pb、Biは「遷移後」金属と見なす。
【0127】
Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptは優れた耐酸化性を示し、「貴」金属と見なされる。その他の金属は「非貴金属」とみなすことができる。
【0128】
「アルカリ金属」という用語は元素周期表のグループ1(またはグループIA)の元素として分類される元素で、水素は除く。この定義によるアルカリ金属はLi、Na、K、Rb、Cs、Frである。
【0129】
「アルカリ土類金属」という用語は元素周期表のグループ2(またはグループIIA)の元素として分類される元素である。この定義によるアルカリ土類金属はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Raである。
【0130】
「希土類元素」という用語は、15種類のランタノイドおよびスカンジウムとイットリウムを指す。17種類の希土類元素はセリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびイットリウム(Y)である。
【0131】
本発明は、以下の工程:
a) アンモニア含有原料と、少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドとを含む少なくとも1つの流動床反応装置とを用意する工程;
b) 例えば、上記ベッドに流体流を上向きに通すことによってベッドの粒子を流動状態にして流動床を形成する工程;
c) 流動床を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱して、アンモニア含有原料に対してアンモニア分解反応を行う工程;
d) 任意工程としての反応生成物を回収する工程、
を含む水素の生成を伴うアンモニア分解反応を実行するプロセス(方法)であって、
流動床を加熱する工程c)が、流動床に電流を流すことによって行われる点と、ベッドの粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対して粒子の少なくとも10重量%が導電性で、800℃で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物が1種または複数の金属化合物および触媒支持体を含み、この触媒支持体が導電性粒子である点において注目に値するプロセスを提供する。
【0132】
好ましくは、触媒組成物は以下から選択される1種または複数の金属化合物を含む:
― Ni、Fe、Co、Mo、Cuおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の非貴金属;および/または、
― Ru、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の貴金属;および/または、非貴金属および貴金属を含む1種または複数の二金属化合物(ここで、非貴金属はNi、Fe、Co、MoおよびCuから選択され、貴金属はRu、Rh、Pd、IrおよびPtから選択される)。
【0133】
例えば、本発明方法のアンモニア含有原料はハーバー・ボッシュ法、アンモニアを生成する任意の生物学的プロセス、アンモニアを生成する任意の電気化学プロセスまたはこれらの任意の組み合わせによって提供されるアンモニアを含む原料から選択される。
【0134】
例えば、ベッドの導電性粒子は1種または複数の炭素含有粒子、1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数のであるか、またはこれらを含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の全重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0135】
例えば、ベッドの導電性粒子はグラファイト、カーボンブラック、1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数のであるか、またはこれらを含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の全重量に対して50重量%~100重量%の含有量、好ましくは60重量%~100重量%、さらに好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0136】
例えば、流動床を加熱する工程は、流動床に300V以下、好ましくは200V以下、より好ましくは150V以下、さらに好ましくは120V以下、最も好ましくは100V以下、さらに最も好ましくは90V以下の電圧の電流を流すことによって行われる。
【0137】
流動床反応装置内の固体粒子物質は、通常、ディストリビュータ(distributor、分散板)と呼ばれる多孔板、穿孔板、ノズルまたは煙突を備えた板によって支持される。、流体はこのディストリビュータを通って押し上げられ、固体粒子状物質間の空隙を通過する。流体速度が低い場合、流体が物質の空隙を通過する間、固体は沈殿状態を維持する。これは充填ベッド反応装置(packed bed reactor)といわれる。流体速度が増加すると、粒子状固体は、固体に対する流体の力が固体粒子状物質の重量を相殺するのに十分である段階に到達する。この段階は初期流動化と呼ばれ、この最小流動化速度(minimum fluidization velocity)で発生する。この最小速度を超えると、反応装置ベッドの内容物が膨張を始め、流動化する。このような反応装置では運転条件と固相の特性に応じてさまざまな流動様式が観察される。ベッドの拡張に必要な最小流動化速度は粒子のサイズ、形状、多孔度、密度および上昇する流体の密度と粘度に依存する。
【0138】
〔非特許文献1〕(P.R. Gunjal、V.V. Ranade 著「Industrial Catalytic Processes for Fine and Specialty Chemicals」、2016年)ではGeldartによって平均粒子に対して4つの異なる流動化カテゴリが区別され、流動化レジームが決定されている:
タイプA、エアレーション可能な流動化(流動化しやすい中サイズ、中密度の粒子。通常30~100μmの粒子、密度約1500kg/m3
タイプB、砂のような流動化(流動化が難しい重い粒子。通常100~800μmの粒子、密度1500~4000kg/m3
タイプC、凝集流動化(典型的な粉末状の固体粒子の流動化、粒子内力または凝集力が優勢な微細粒子(約20μm))、および
タイプD、噴出可能な流動化(密度が高く、粒子が約1~4mmと大きく、密度が高く、噴出可能)。
【0139】
【非特許文献1】P.R. Gunjal、V.V. Ranade 著「Industrial Catalytic Processes for Fine and Specialty Chemicals」(2016年)
【0140】
流動化は、均質流動化と不均質流動化の2つの領域に大まかに分類できる(〔非特許文献2〕Fluid Bed Technology in Materials Processing、1999、CRC Press)。均質流動化または粒子流動化では、粒子は明確な空隙なしに均一に流動化される。不均質流動化または泡立ち流動化では、固体のない気泡が明確に観察できる。この空隙はガス液体流の泡のように動作し、媒体内で上昇しながらサイズと形状を変えながら周囲の均質媒体とガス交換する。粒子流動化では、粒子が大きく移動してベッドがスムーズに膨張し、ベッド表面が明確に定義される。粒子の流動化は、Geldart-Aタイプの粒子でのみ観察される。均一な流動化よりもはるかに高速で、気泡流動化状態が観察される。この状態では、識別可能なガス泡がディストリビューターから成長し、他の泡と合体して、最終的にベッドの表面で破裂する。これらの泡は固体とガスの混合を強化し、流動化速度の上昇とともに泡のサイズがさらに大きくなる傾向がある。泡の直径がリアクターの直径まで増加するとスラグ状態が観察される。乱流状態では、泡は成長し、ベッドの膨張とともに分解し始める。これらの条件下では、ベッドの上部表面は識別できなくなる。高速流動化または空気流動化では、粒子はベッドから輸送され、リアクターに戻してリサイクルする必要がある。明確なベッド表面は観察されない。
【非特許文献2】Fluid Bed Technology in Materials Processing、1999、CRC Press
【0141】
流動床反応装置には、以下の利点がある。
均一な粒子混合
流動床では、固体粒子状物質が本質的に流体のように挙動するので、充填ベッドのように混合が不十分になることはない。半径方向および軸方向の濃度勾配がなくなるため、反応効率と品質に不可欠な流体と固体との接触が改善される。
均一な温度勾配
多くの化学反応では熱の追加または除去が必要であるが、流動化状態では、反応ベッド内の局所的な高温または低温スポットが回避される。
反応装置を連続的に操作する機能
反応装置の流動床の特性によって、生成物を連続的に取り出し、新しい反応物を反応容器に導入することができる。化学反応の連続操作に加えて、流動床では、流動可能な固体粒子状物質であるため、連続的または特定の頻度で固体物質を取り出したり、連続的または特定の頻度で新しい新鮮な固体物質を追加することができる。
【0142】
熱は、電気を熱に変換するのに十分な高い抵抗率を持つ伝導性材料(抵抗体)に電流を流すことで生成される。電気抵抗率(比電気抵抗(specific electrical resistance)または体積抵抗率とも呼ばれ、形状やサイズに依存しない固有の特性)とその逆数である導電率は電流に対する抵抗力または伝導力を定量化する材料の基本的な特性である(電気抵抗率のSI単位はオームメートル(Q・m)、導電率はシーメンス毎メートル(S/m)である)。
【0143】
十分な抵抗率を持つ導電性粒子状固体の固定ベッドに電気を流すと、ベッドは電流の流れに対して抵抗を示す。この抵抗は固体の種類、ベッド内の粒子間の結合の性質、ベッドの空隙率、ベッドの高さ、電極の形状などの多くのパラメータに依存する。同じ固定ベッドにガスを流して流動化させた場合、ベッドの抵抗は増加する。導電性粒子によって与えられる抵抗によってベッド内に熱が発生し、ベッドを等温状態に維持できる(電熱流動床(electrothermal fluidized bed)または電気流体リアクター(electrofluid reactor)と呼ばれる)。多くの高温反応の場合、電気流体リアクターは反応中にその場で(in situ)熱を与えるので吸熱反応の運転で特に有用であり、外部加熱や熱伝達が不要なためエネルギーを節約できる。固体粒子材料の少なくとも一部が導電性であることが前提条件であるが、非導電性の固体粒子を混合しても十分な熱が発生する。このような非導電性または非常に高い抵抗率を有する固体は化学変換において触媒の役割を果たすことができる。電荷抵抗型の発熱であり、粒子の固有抵抗がベッド抵抗に影響するので、ベッド材の特性が電熱流動床炉の抵抗を決める。粒子のサイズ、形状、組成および寸法分布もベッド抵抗の大きさに影響する。また、ベッドが流動化されると、粒子間に空隙が生じ、ベッド抵抗が増加する。ベッドの総抵抗は電極接触抵抗(すなわち、電極とベッドの間の抵抗)とベッド抵抗の2つの要素の合計である。接触抵抗が大きいと、電極付近で局所的な熱が広範囲に発生し、ベッドの残りの部分はむしろ冷たいままである。この接触抵抗は電流密度、流動化速度、ベッド材の種類、電極のサイズおよび電極に使用される材料の種類などの要因によって決まる。電極組成物は鉄、鋳鉄、その他の鋼合金、銅、銅系合金、ニッケル、ニッケル系合金等の金属、耐火性金属、金属間化合物、またはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wの合金、セラミックのような炭化物、窒化物またはグラファイトのような炭素系であるのが有利である。流動床材料と電極との接触面積は電極の浸漬度(submergence)および流動床内の粒子状材料の量に応じて調整できる。従って、これらの変数を調整することによって電気抵抗と電力レベルを操作できるのが有利である。流動床と比較して電極が過熱するのを防ぐために、電極の抵抗率は流動床の粒子状材料よりも低くする(従って、ジュール熱も低くする)必要がある。好ましい実施形態では、より冷たい流体を電極の内側または外側に通すことによって電極を冷却することができる。このような流体は加熱ガス流で蒸発する液体であれば何でもよく、流動床に入る前に最初に電極を冷却する低温の原料の一部でもよい。
【0144】
ベッド抵抗はオームの法則で予測できる
流動床における電流伝達メカニズムは低い動作電圧で導電性粒子の連続した鎖に沿って電流が流れることによって起こると考えられている。高電圧では、導電性粒子の鎖と電極とベッドの間のアーク放電と、ガスをイオン化してベッド抵抗を下げる可能性のある粒子間のアーク放電との組み合わせによって電流伝達が起こる。ベッド内部でのアーク放電は電気効率と熱効率を低下させるため、原則として望ましくない。ガス速度はベッド抵抗に強く影響し、ガス流量が増加すると、沈降したベッドから抵抗が急激に増加し、初期流動化速度の近くで最大値になり、その後、速度が上昇すると抵抗が減少する。スラグ化(slugging)を開始するのに十分なガス流量で抵抗は再び増加する。平均粒子サイズと形状が抵抗に影響し、粒子間の接触点に影響するため重要である。一般に、ベッド抵抗は、沈降したベッド(例えば、グラファイトの場合は20オーム・cm)から初期流動化(グラファイトの場合には60オーム・cm)まで2~5倍に増加し、沈降したベッドから10~40倍増加する。初期流動化速度の2倍(グラファイトの場合は300オーム・cm)。導電性粒子には非導電性または導電性の低い粒子を追加できる。導電性固体分率が少ない場合、電極間の導電性固体の連鎖の結合が切断されるため、ベッドの抵抗率が高くなる。非導電性固体成分の寸法がより細かいなると、より大きな導電性固体の隙間または空隙を埋めることになり、ベッドの抵抗率が高くなる。
【0145】
一般に、必要な高加熱電力を得るには低電圧で高電流にするにするのが望ましい。電源はACまたはDCのいずれかにすることができる。十分な加熱電力に達するために電熱流動床に適用される電圧は通常100V未満である。電熱流動床は、次の3つの方法で制御できる:
1.ガス流量の調整:
流動床の導電性は流動床内の空隙または気泡の程度に依存するため、ガス流量が変化すると電力レベルが変わる。従って、流動化ガス流量を調整することで温度を制御できる。最適なパフォーマンスに必要な流量は最小流動化速度と同等か、それよりわずかに大きい速度に対応する。
2.電極浸潜度の調整:
流動床の導電性は、導電性粒子と電極の接触面積に依存するため、流動床内の電極浸潜レベルを変えることで電力レベルを制御することもできる。電流が流れる電極の表面積は電極の浸潜度とともに増加し、全体的な抵抗が減少する。
3.印加電圧の調整:
印加電圧を上げるよりも、上記の2つの方法を使用して電力レベルを変更するのが手頃で経済的であることが多いが、電熱流動床では、生成される加熱電力を制御するために3つの変数を使用できる。
【0146】
反応装置の壁は通常、グラファイト、セラミック(SiCなど)、高融点金属または合金で作られ、汎用性があり、産業上の重要な多くの高温反応と互換性がある。反応の雰囲気は中性または還元性に制限されることがよくある。酸化雰囲気では炭素材料が燃焼したり、金属または合金の上に非伝導性の金属酸化物層ができたりする可能性がある。壁および/または分配板自体が反応装置の電極として機能する。流動化固体はグラファイトまたはその他の高融点の導電性粒子である。電極は通常、ベッド中に浸潜され、グラファイトまたは高融点金属、金属間化合物または合金でる。
【0147】
アンモニア含有原料がほとんどまたは実質的に存在せず、希釈ガス(流動化ガスなど)のみが存在する場合には、導電性粒子および/または触媒粒子を反応装置の別のゾーンで加熱して、必要な反応熱を生成することが有利なこともある。その場合の利点は、導電性粒子のベッドに電流を流すことによって熱を生成するための適切な流動化条件を最適化でき、また、炭化水素変換中の最適な反応条件を反応装置の他のゾーン用に選択できることにある。最適な空隙率と線速度の条件は加熱目的と化学変換目的とで異なる可能性がある。
【0148】
本発明の一つの実施形態では、本発明設備が直列に配置された2つのゾーンすなわち第1のゾーンが加熱ゾーンで、第2のゾーンが反応ゾーンで、導電性粒子および触媒粒子は第1のゾーンから第2のゾーンへ、またはその逆に連続的に移動または輸送される。第1および第2のゾーンは一つの流動床の異なる部分であってもよく、または互いに接続した別々の流動床反応装置内に配置してもよい。
【0149】
上記実施形態では、水素の生成を伴うアンモニア分解反応を実行するプロセスは以下の工程を含む。
a) アンモニア含有原料および少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドを含む少なくとも1つの流動床反応装置を用意し、
b) 例えば、流体流を上記ベッドに上向きに通過させることによって粒子を流動状態にして流動床を形成し、
c) 流動床を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱してアンモニア含有原料のアンモニア分解反応を行い、
d) 任意事項として、反応生成物を回収し、
上記の流動床を加熱する工程c)は流動床に電流を流すことによって行い、流動床の粒子は導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、流動床の粒子の総重量に対して粒子の少なくとも10重量%は導電性粒子で、800℃で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物は1種または複数の金属化合物を含み、
工程a)で用意した少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーンと反応ゾーンとを含み、流動床を加熱する工程c)は以下のサブ工程を含む:
― 少なくとも1つの流動床反応装置の加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床を250℃~1000℃の範囲の温度に加熱し、
― 加熱された粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンに輸送し、
― 反応ゾーンでアンモニア含有原料および任意の1種または複数の希釈ガスを含む流体流を反応ゾーンのベッドに上向きに通過させることによって加熱された粒子を流動状態にして流動床を形成して、アンモニア含有原料に対して吸熱アンモニア分解反応を行い、
―任意工程として、粒子を反応ゾーンから回収し、加熱ゾーンにリサイクルする。
【0150】
例えば、1種または複数の希釈ガスは蒸気(スチーム)、水素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、窒素およびメタンなどの1種以上の炭化水素から選択される1種または複数にすることができる。この1種または複数の希釈ガスは例えば1種または複数の流動化ガスとして使用される。好ましくは、1種または複数の希釈ガスが、例えば1種または複数の流動化ガスとして使用される。希釈ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、窒素およびメタンなどの1種以上の炭化水素から選択される1種以上である。一つの実施形態では、希釈ガスが少なくとも蒸気とメタンなどの1種以上の炭化水素との混合物である。この場合、炭化水素の吸熱蒸気改質による合成ガスの生成が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。別の実施形態では、希釈ガスが少なくとも二酸化炭素とメタンなどの1種以上の炭化水素との混合物である。この場合には炭化水素の吸熱乾式改質による合成ガスの生成が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。
【0151】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置が少なくとも2つの流動床反応装置が接続され、少なくとも1つの流動床反応装置が加熱ゾーンであり、少なくとも他の流動床反応装置が反応ゾーンである。好ましくは、加熱ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置が粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンに輸送するための重力または空気輸送手段を備え、および/または、本発明設備が反応ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置にアンモニア含有原料を注入するように構成された手段を備える。本発明設備では、加熱ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置にアンモニア含有原料を注入する手段がない。
【0152】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は単一の流動床反応装置であり、加熱ゾーンはこの流動床反応装置の底部であり、反応ゾーンは流動床反応装置の上部である。好ましくは、本発明設備は2つのゾーンの間にアンモニア含有原料および任意の1種または複数の希釈ガスを注入する手段を備える。加熱ゾーンと反応ゾーンの直径は、下部ゾーンでの加熱に最適な条件と上部ゾーンでの炭化水素変換に最適な条件を達成するために異なっていてもよい。粒子は随伴によって加熱ゾーンから反応ゾーンへ移動する場合があり、その逆の場合、重力によって反応ゾーンから加熱ゾーンへ戻ることができる。オプションとしては、粒子は上部加熱ゾーンから収集し、別の移送ラインによって下部加熱ゾーンへ移送することができる。
【0153】
工程c)では、アンモニア分解反応がアンモニア含有原料に対して実行される。これは、アンモニア含有原料が提供されることを意味する。アンモニア含有原料が反応ゾーンに提供され、加熱ゾーンが反応ゾーンから分離される場合には、好ましくは、少なくとも2つの炭素を含むアンモニア含有原料は加熱ゾーンに提供されないことは理解されよう。加熱ゾーンと反応ゾーンが混合されている場合(すなわち、同じゾーンの場合)には、工程b)で提供される流体流はアンモニア含有原料を含む。
【0154】
粒子を含むベッド
アンモニア分解反応を実行するために必要な温度を達成するには、ベッドの粒子の総重量に対して少なくとも10重量%の粒子が導電性で、800℃で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を持つ必要がある。
【0155】
例えば、ベッドの導電性粒子は1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、1種または複数の炭素含有粒子、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数のであるか、またはこれらを含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の全重量に対して50重量%~100重量%の含有量、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは、80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0156】
例えば、ベッドの導電性粒子は1種または複数の金属合金、1種または複数の非金属抵抗体、1種または複数の金属炭化物、1種または複数の金属窒化物、1種または複数の金属リン化物、グラファイト、カーボンブラック、1種または複数の超イオン伝導体、1種または複数のリン酸電解質、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物、1種または複数の低原子価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物およびこれらの任意の混合物から選択される1種または複数のであり、好ましくはベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%の含有量、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0157】
本発明の一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子はグラファイトである1種または複数の炭素含有粒子を含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の総重量に対して10重量%~100重量%の含有量、または10重量%~90重量%、または10重量%~80重量%、好ましくは15重量%~70重量%、より好ましくは20重量%~60重量%、さらに好ましくは30重量%~50重量%の含有量である。例えば、ベッドの導電性粒子はグラファイトと触媒組成物の粒子の混合物である。
【0158】
本発明の一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子の総重量に対してベッドの導電性粒子の50重量%~100重量%はグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含まず、好ましくは60重量%~95重量%、より好ましくは70重量%~90重量%、さらに好ましくは75重量%~85重量%はグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含まない。
【0159】
例えば、導電性粒子の含有量はベッドの粒子の総重量に対して10重量%~100重量%の範囲、好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~5重量%の範囲である。
【0160】
例えば、ベッドの総重量に対する導電性粒子の含有量は、ベッドの粒子の総重量に対して少なくとも12重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%である。
【0161】
例えば、導電性粒子は800℃で0.005~400オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、好ましくは800℃で0.01~300オーム・cmの範囲、より好ましくは800℃で0.05~150オーム・cm・の範囲、最も好ましくは800℃で0.1~100オーム・cmの範囲である。
【0162】
例えば、導電性粒子は、800℃で少なくとも0.005オーム・cmの抵抗率を有し、好ましくは800℃で少なくとも0.01オーム・cm、より好ましくは800℃で少なくとも0.05オーム・cm、さらに好ましくは800℃で少なくとも0.1オーム・cm、最も好ましくは800℃で少なくとも0.5オーム・cmの抵抗率を有する。
【0163】
例えば、導電性粒子は、800℃で最大400オーム・cmの抵抗率を有し、好ましくは800℃で最大300オーム・cm、より好ましくは800℃で最大200オーム・cm、さらに好ましくは800℃で最大150オーム・cm、最も好ましくは800℃で最大100オーム・cmの抵抗率を有する。
【0164】
例えば、ベッドの粒子はASTM D4513-11に従ってふるい分けによって測定される平均粒子サイズが5~300μmの範囲であり、好ましくは10~200μmの範囲、より好ましくは30~150μmの範囲である。
【0165】
例えば、ベッドの導電性粒子は、ASTM D4513-11に従ってふるい分けによって測定される平均粒子サイズが5~300μmの範囲であり、好ましくは10~200μmの範囲、より好ましくは30~150μmの範囲である。
【0166】
電気抵抗は、オーム計を使用した4プローブDC法によって測定される。高密度化された粉末サンプルは円筒形のペレットに成形され、プローブ電極間に配置される。抵抗率は、測定された抵抗値Rから既知の式ρ=RxA/Lを適用して決定される。ここで、Lは通常数ミリメートルであるプローブ電極間の距離であり、Aは電極面積である。
【0167】
ベッドの導電性粒子は電子伝導性、イオン伝導性または電子イオン混合伝導性を示すことができる。多くの難溶性化合物のイオン結合によりイオン拡散が可能になり、それに応じて電界と適切な温度条件の影響下でイオン伝導が起こる。
【0168】
電気伝導率σすなわち電流密度jと電界Eとの間の比例定数は次式で与えられる:
σ=j/E=Σ ci x Ziq x μi
(ここで、ciはキャリア密度(数/cm3)、μiは移動度(cm2/Vs)、Ziqはi番目の電荷キャリアの電荷(q=1.6x10-19 C)である)
【0169】
金属、半導体、絶縁体間のσの桁違いの差は、通常、μではなくcの差に起因する。一方、電子伝導体の伝導率がイオン伝導体よりも高いのは、通常、電子種の移動度がイオン種よりもずっと高いためである。
【0170】
抵抗加熱に使用できる最も一般的な材料は以下の9つのグループに分けられる:
(1)1200~1400℃までの温度に対応する金属合金、
(2)1600~1900℃までの炭化ケイ素(SiC)、モリブデン二ケイ化物(MoSi2)、ニッケルケイ化物(NiSi)、ケイ化ナトリウム(Na2Si)、ケイ化マグネシウム(Mg2Si)、ケイ化白金(PtSi)、ケイ化チタン(TiSi2)、ケイ化タングステン(WSi2)などの非金属抵抗体、
(3)1種または複数の低原子価陽イオンでドープされた複数の混合酸化物および/または混合硫化物(最適温度は変化する)、
(4)2000℃までのグラファイト、
(5)金属炭化物、
(6)金属窒化物、
(7)金属リン化物、
(8)超イオン伝導体、
(9)リン酸電解質。
【0171】
1150~1250℃までの温度で使用できる金属合金の第1グループはFe含有量の低い(0.5~2.0%)Ni-Cr合金、好ましくはNi-Cr合金(Ni80%、Cr20%)および(Ni70%、Cr30%)で構成できる。Cr含有量を増やすと高温での材料の酸化耐性が向上する。3つの成分からなる金属合金の第2グループはFe-Ni-Cr合金またはFe-Cr-AIで、前者は酸化雰囲気での最大動作温度は1050~1150℃であるが、還元雰囲気でも使用でき、後者(化学組成15~30%Cr、2~6%Al、残りはFe)はCrとAlの酸化物の表面層によって腐食を防ぎ、酸化雰囲気で1300~1400℃まで使用できる。非金属抵抗体としてのシリコンカーバイドは広範囲の抵抗率を示すことができ、合成法や、アルミニウム、鉄、酸化物、窒素、余分な炭素やシリコンなどの不純物の存在によって制御ができ、非化学量論的シリコンカーバイドになる。一般に、シリコンカーバイドは低温での抵抗率が高いが、500~1200℃の範囲で良好な抵抗率を示す。別の実施形態では、非金属抵抗体はシリコンカーバイドを含まず、および/または、モリブデンジシリサイド(MoSi2)、ニッケルシリサイド(NiSi)、ナトリウムシリサイド(Na2Si)、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)、プラチナシリサイド(PtSi)、チタンシリサイド(TiSi2)、タングステンシリサイド(WSi2)またはこれらの混合物を含むことができる。
【0172】
グラファイトの抵抗値は比較的低く、約600℃までの温度係数は負で、それを超えると抵抗率は増加し始める。
【0173】
1種または複数の低原子価カチオンがドープされた多くの混合酸化物および/または混合硫化物は一般に低温では抵抗率が高すぎるが、高温ではイオン伝導体または混合伝導体になる。以下の状況では、酸化物または硫化物は加熱目的に十分な伝導体となる可能性がある。固体中のイオン伝導は、原子欠陥、特に空孔および格子間原子の生成と移動によって説明され、その生成と移動性は温度に非常に正に依存する。このような混合酸化物または硫化物はイオン伝導体または混合伝導体であり、すなわち、1種または複数の低原子価カチオンがドープされている。酸化物におけるイオン欠陥の形成メカニズムとしては以下の3つが知られている。(1)熱誘発性の固有のイオン無秩序(intrinsic ionic disorder)(ショットキーおよびフレンケル欠陥対などで、非化学量論性になる)、(2)酸化還元誘発性欠陥(Redox-induced defects)および(3)不純物誘発性欠陥。最初の2つのカテゴリの欠陥は統計熱力学から予測され、後者は電気的中性を満たすために形成される。後者の場合、ホスト陽イオンを低原子価陽イオンに置き換えることで高い電荷キャリア密度を誘発できる。蛍石、パイロクロアまたはペロブスカイトの構造を持つ混合酸化物および/または混合硫化物は1種または複数の低原子価陽イオンによる置換に非常に適している。
【0174】
いくつかの格子不規則酸化物または硫化物は温度上昇時に高いイオン輸送能力を持つ。これはLiAlSiO4、Li10GeP212、Li3.6Si0.60.44、NaSICON(ナトリウム(Na)超イオン伝導体)などの超イオン伝導体であり、一般式はNai+xZr23-xSixOi2で、0<x<3、例えば、Na3Zr2PSi212(x=2)、またはナトリウムベータアルミナ(NaAl1117、Na1.6Al1117.3、および/または、Na1.76Li0.38Al10.6217などである。
【0175】
本質的に絶縁性の固体にイオンキャリアの高濃度が誘発され、欠陥の多い固体が生成できる。すなわち、ベッドの導電性粒子は、イオン性または混合伝導体であるか、1種または複数の低価カチオンがドープされた1種または複数の混合酸化物、および/または、イオン性または混合伝導体であるか、1種または複数の低価カチオンがドープされた1種または複数の混合酸化物、および/または、イオン性または混合伝導体、すなわち、1種または複数の低価カチオンがドープされた1種または複数の混合硫化物であるか、またはこれらを含む。、好ましくは、混合酸化物はSm、Gd、Y、Sc、Yb、Mg、Ca、La、Dy、Er、Euから選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換された立方晶蛍石構造を有する1種または複数の酸化物、および/または、A位置がCa、Sr、またはMgから選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換され、B位置がNi、Ga、Co、Cr、Mn、Sc、Feおよび/またはこれらの混合物の少なくとも1つを含む三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABOsペロブスカイト、および/または、B位置でMg、Sc、Y、NdまたはYbから好ましく選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換されているか、またはB位置でB元素と異なる混合物も部分的に置換されている二価カチオンAと四価カチオンBを有する1種または複数のABO3-ペロブスカイト、および/または、A位置でCaまたはMgから好ましく選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換され、B位置でSn、ZrおよびTiの少なくとも1つを含む三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227-パイロクロアから選択される。
【0176】
好ましくは、1種以上の混合硫化物はSm、Gd、Y、Sc、Yb、Mg、Ca、La、Dy、Er、Euから選択される1種以上の低価カチオンで少なくとも部分的に置換された立方晶蛍石構造を有する1種以上の硫化物、および/または、A位置がCa、Sr、またはMgから選択される1種以上の低価カチオンで少なくとも部分的に置換され、B位置がNi、Ga、Co、Cr、Mn、Sc、Feおよび/またはこれらの混合物の少なくとも1つを含む三価カチオンAとBを有する1種以上のABS3構造、および/または、B位置がMg、Sc、Y、NdまたはYbから好ましく選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換されるか、またはB位置がB元素と異なる混合物で少なくとも部分的に置換されている二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABS3構造、および/または、A位置がCaまたはMgから好ましく選択される1種または複数の低価カチオンで少なくとも部分的に置換されて、B位置にSn、ZrおよびTiの少なくとも1つを含む三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227構造から選択される。
【0177】
好ましくは、上記の1種以上の低価カチオンがドープされた立方晶蛍石構造を有する1種または複数の混合酸化物における置換度は、上記の立方晶蛍石構造を有する1種または複数の酸化物または硫化物、三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABO3ペロブスカイト、二価カチオAと四価カチオンBとを有する1種以上のABO3ペロブスカイトまたは三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227パイロクロア中に存在する原子の総数に対してそれぞれ1~15原子%、好ましくは3~12原子%、より好ましくは5~10原子%である。
【0178】
好ましくは、上記の1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合酸化物における置換度は、三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABO3ペロブスカイト、二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABO3ペロブスカイトまたは三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227パイロクロア中に存在する原子の総数に対してそれぞれ1~50原子%、好ましくは3~20原子%、より好ましくは5~15原子%である。
【0179】
好ましくは、上記の1種または複数の低価カチオンがドープされた立方晶蛍石構造を有する1種または複数の混合硫化物における置換度は、三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABS3構造、二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABS3構造または三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227構造中に存在する原子の総数に対してそれぞれ1~15原子%、好ましくは3~12原子%、より好ましくは5~10原子%である。
【0180】
好ましくは、1種または複数の低価カチオンでドープされた1種または複数の混合硫化物における置換度は、三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABS3構造、二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABS3構造または三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227構造中に存在する原子の総数に対してそれぞれ1~50原子%、好ましくは3~20原子%、より好ましくは5~15原子%である。
【0181】
上記の1種または複数の酸化物は立方晶蛍石構造、上記の三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABC3-ペロブスカイト、上記の二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABO3―ペロブスカイト、上記の少なくとも部分的に低価カチオンで置換された三価カチオンAと四価カチオンBの1種または複数のA227―パイロクロア、上記の立方晶蛍石構造を有する1種または複数のA227―パイロクロア、上記の三価カチオンAおよびBを有する1種または複数のABS3構造は、上記の二価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のABS3構造、上記の少なくとも部分的に低価カチオンで置換された三価カチオンAと四価カチオンBとを有する1種または複数のA227構造は、高価カチオンである同じ元素の低価当量物(lower-valent equivalent)に下げる(reduced)ことができるということ、例えば、Ti(IV)はTi(III)に、および/または、Co(III)はCo(II)に、および/または、Fe(III)はFe(II)に、および/または、Cu(II)はCu(I)に下げることができるということも意味している。
【0182】
リン酸電解質、例えば、LiPO4またはLaPO4を導電性粒子として使用することもできる。
【0183】
金属炭化物、金属窒化物および金属リン化物を導電性粒子として選択することもできる。例えば、金属炭化物は炭化鉄(FesC)、炭化モリブデン(MoCとMO2Cの混合物など)から選択できる。例えば、上記の1種または複数の金属窒化物は窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タングステン(W2N、WN、およびWN2の混合物など)、窒化バナジウム(VN)、窒化タンタル(TaN)、および/または窒化ニオブ(NbN)から選択できる。例えば、上記の1種または複数の金属リン化物は銅リン化物(Cu3P)、インジウムリン化物(InP)、ガリウムリン化物(GaP)、ナトリウムリン化物(Na3P)、アルミニウムリン化物(AlP)、亜鉛リン化物(Zn32)および/またはカルシウムリン化物(Ca32)から選択できる。
【0184】
高温で十分に低い抵抗率しか示さない導電性粒子を、電気による抵抗加熱が追いつく十分に高い温度に達する前に、外部手段によって加熱するか、または、低温で十分に低い抵抗率の固体と混合し、その結果生じる混合物の抵抗率によって流動床を所望の反応温度まで加熱することも本発明の好ましい実施形態である。
【0185】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイドであるか、シリコンカーバイドを含む。例えば、ベッドの導電性粒子の総重量に対して、導電性粒子の少なくとも10重量%はシリコンカーバイド粒子で、800℃で.001 オーム・cm~500ーム・cm の範囲の抵抗率を有する。
【0186】
ベッドの導電性粒子がシリコンカーバイドであるか、シリコンカーバイドを含む実施形態では、流動床反応装置内で吸熱反応を行う前に流動床反応装置をガス流で予熱する工程を実施できるという利点を当業者は有する。有利には、このガス流は不活性ガスすなわち窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン、二酸化炭素、水素または蒸気の流れである。ガス流の温度は少なくとも250℃または少なくとも300℃または少なくとも350℃または少なくとも400℃または少なくとも450℃または少なくとも500℃または少なくとも550℃または少なくとも600℃または少なくとも650℃または少なくとも700℃または少なくとも750℃または少なくとも800℃にすることができる。有利には、ガス流の温度は250℃~800℃の間、例えば、300℃~750℃の間または350℃~700℃の間にすることができる。不活性ガスの上記ガス流は、流動化ガスとしても使用することができる。不活性ガスのガス流の予熱は電気エネルギーの使用を含む従来手段によって行われる。ベッドの予熱に使用されるガス流の温度は反応温度に達する必要はない。
【0187】
周囲温度での炭化ケイ素の抵抗率は高いので、反応の開始を容易にするために流動床を外部手段で加熱するのは有用であるが、好ましくは、流動床反応装置には加熱手段を有しない。ベッドが所望の温度に加熱されれば高温のガス流の使用は不要になる。
【0188】
しかし、一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはこれらを含む。
【0189】
にシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子がベッド存在する場合にも、予熱工程を使用することができる。例えば、ベッドの導電性粒子中のシリコンカーバイドの含有量はベッドの粒子の総重量に対して80重量%以上、例えば、85重量%以上、例えば、90重量%以上、例えば、95重量%以上、例えば、98重量%以上、例えば、99重量%以上である場合に、予熱工程を使用することができる。しかし、ベッド内のシリコンカーバイド粒子の含有量が何であっても予熱工程を使用することはできる。
【0190】
ベッドの導電性粒子がシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはこれらを含む実施形態では、ベッドの導電性粒子は、ベッドの導電性粒子の総重量に対して、10重量%~99重量%のシリコンカーバイド粒子を含むことができる。好ましくは、15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%である。
【0191】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、これらを含み、ベッドの導電性粒子はベッドの導電性粒子の総重量に対して少なくとも40重量%のシリコンカーバイド粒子を含み、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%を含む。
【0192】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子はベッドの導電性粒子の総重量に対してシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子を10重量%~90重量%含むことができ、好ましくは、15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%含むことができる。
【0193】
しかし、混合物中のシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子の含有量を極めて低く保つこと重要であろう。従って、一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはこれらを含み、ベッドの導電性粒子はベッドの導電性粒子の総重量に対してシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子を1重量%~20重量%含み、好ましくは、2重量%~15重量%、より好ましくは、3重量%~10重量%、さらに好ましくは4重量%~8重量%含む。
【0194】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる粒子との混合物であるか、またはこれらを含み、シリコンカーバイド粒子とは異なる粒子はグラファイト粒子であるか、またはこれを含む。
【0195】
従って、一つの実施形態では、導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とグラファイト粒子との組み合わせである。この導電性粒子は流動床反応装置に通電すると加熱され、流動化により反応装置内の温度の上昇および/または維持に寄与する。グラファイトのジュール熱によって反応物および/または流動床反応装置内に存在する他の粒子の加熱を加速することができる。
【0196】
例えば、グラファイトは薄片(フレーク)状グラファイトにすることができる。このグラファイトの平均粒子サイズはASTM D4513-11に従ったふるい分けで測定して1~400μmの範囲であることが好ましく、5~300μmの範囲であることが好ましく、10~200μmの範囲であることがより好ましく、30~150μmの範囲であるのが最も好ましい。
【0197】
グラファイト粒子がベッド内に存在することで予熱工程の有無にかかわらず、好ましくは予熱工程なしで、本発明プロセスを適用することができる。実際、グラファイト粒子は流動床反応装置に通電すると加熱され、流動化により反応装置内の所望の温度の上昇および/または維持に寄与する。
【0198】
炭化ケイ素粒子
例えば、炭化ケイ素は焼結炭化ケイ素、窒化物結合炭化ケイ素、再結晶炭化ケイ素、反応結合炭化ケイ素およびこれらの混合物から選択される。
【0199】
焼結SiC(SSiC)は重量比1%未満の焼結助剤(通常はホウ素)を含む自己結合材料である。
【0200】
再結晶炭化ケイ素(RSiC)は添加物なしで蒸発凝縮プロセスによって焼結された高純度SiC材料である。
【0201】
窒化物結合炭化ケイ素(NBSC)は、炭化ケイ素粒子とともに微細なシリコン粉末を加えるか、最終的には鉱物添加物の存在下で窒素炉で焼結することによって作られる。炭化ケイ素は、窒化中に形成される窒化ケイ素相(Si34)によって結合される。
【0202】
反応結合シリコンカーバイド(RBSC)は、シリコン化シリコンカーバイドまたはSiSiCとも呼ばれ、多孔質炭素またはグラファイトと溶融シリコンとの化学反応によって製造されるシリコンカーバイドの一種である。シリコンは炭素と反応してシリコンカーバイドを形成し、シリコンカーバイド粒子を結合する。余分なシリコンはボディ内の残りの細孔を埋め、高密度のSiC-Si複合材料を生成する。シリコンの痕跡が残っているため、反応結合シリコンカーバイドはシリコン化シリコンカーバイドと呼ばれることがよくある。このプロセスは反応結合(reaction bonding,)、反応焼結(reaction sintering)、自己結合(self-bonding)または溶融浸透(melt infiltration)などさまざまな名前で知られている。
【0203】
一般に、高純度iC 粒子の抵抗率は1000オーム・cmを超えるが、焼結、反応結合、窒化結合はSiC相の不純物に応じて約100~1000の抵抗率を示すことがある。バルク多結晶SiCセラミックスの電気抵抗率は焼結添加剤と熱処理条件に応じて広範囲の抵抗率を示す(〔非特許文献3〕(Journal of the European Ceramic Society、第 35 巻、第 15 号、2015年12月、4137ページ)、〔非特許文献4〕(Ceramics International、第46 巻、第 4号、2020年 3月、5454 ページ))。高純度SiCポリタイプはバンドギャップエネルギーが大きいため、高い電気抵抗率(>106Q.cm)を有する。しかし、SiCの電気抵抗率はドーピング不純物の影響を受ける。NとPはn型ドーパントとして機能し、SiCの抵抗率を低下させるが、Al、B、Ga、Scはp型ドーパントとして機能する。Be、O、VでドープされたSiCは絶縁性が非常に高くなる。NはSiCの電気伝導性を向上させる最も効率的なドーパントと考えられている。SiCのNドーピング(抵抗率を下げるため)では、Y23およびY23-REMO3(REMは希土類金属=Sm、Gd、Lu)が焼結添加剤として使用され、Nドナーを含む導電性SiC粒子を効率的に成長させる。SiC粒子のNドーピングは窒化物(AIN、BN、Si34、TiN、ZrN)または窒化物とRe23との組み合わせ(AIN-REM23(REM=Sc、Nd、Eu、Gd、Ho、Er)またはTiN-Y23)の添加によって促進される。
【非特許文献3】Journal of the European Ceramic Society、第 35 巻、第 15 号、2015年12月、4137ページ、
【非特許文献4】Ceramics International、第46 巻、第 4号、2020年 3月、5454 ページ
【0204】
触媒組成物
例えば、触媒組成物の粒子の含有量はベッドの粒子の総重量に対して30重量%~100重量%の範囲、好ましくは32重量%~95重量%、より好ましくは35重量%~90重量%、さらにより好ましくは37重量%~85重量%、最も好ましくは40重量%~80重量%、さらに最も好ましくは45重量%~75重量%または50重量%~70重量%の範囲である。ベッドの粒子の総重量に対して触媒組成物の粒子の含有量が100重量%である場合、触媒組成物の粒子は導電性粒子でもある。
【0205】
例えば、触媒組成物の粒子はASTM D4513―11に従ったふるい分けによって測定して5~300μmの範囲の平均粒子サイズを有し、好ましくは10~200μmの範囲、より好ましくは20~200μmまたは30~150μmの範囲の範囲の平均粒子サイズを有する。
【0206】
ASTM D4513-11に従ったふるい分けによる測定が推奨される。粒子の平均サイズが20μm未満の場合はASTM D4464-15に従ったレーザー光散乱によって平均サイズを測定することもできる。
【0207】
触媒組成物は、1種以上の金属化合物を含む。好ましくは、触媒組成物は以下から選択される1種以上の金属化合物を含む:
― Ni、Fe、Co、Mo、Cuおよびこれらの混合物から選択される1種以上の非貴金属;および/または、
― Ru、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの混合物から選択される1種以上の貴金属;および/または、
― 非貴金属と貴金属を含む1種以上の二金属化合物(ここで、非貴金属はNi、Fe、Co、MoおよびCuから選択され、貴金属はRu、Rh、Pd、IrおよびPtから選択される)。
【0208】
例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cuおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の非貴金属は触媒組成物の全重量に対して0.05重量%~20.00重量%、好ましくは0.10重量%~15.00重量%、より好ましくは0.50重量%~10.00重量%、さらに好ましくは1.00重量%~5.00重量%の範囲の量で存在する。
【0209】
例えば、1種または複数の非貴金属はNiであるか、またはNiを含む。
【0210】
例えば、Ru、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の貴金属は触媒組成物の全重量に対して0.05重量%~10.00重量%、好ましくは0.10重量%~5.00重量%、より好ましくは1.00重量%~3.00重量%、さらに好ましくは1.50重量%~2.50重量%の範囲の量で存在する。
【0211】
例えば、1種以上の貴金属は好ましくは触媒組成物の総重量に対して0.05重量%~10.00重量%の範囲の量でRuであるか、またはRuを含む。
【0212】
アンモニア分解反応を行うために使用できる市販の触媒はのACTA Hypermec 10010 Ru触媒、高温分解用のKATALCO(登録商標)27-2シリーズ(Johnson Matthey)、高温分解用のKATALCO(登録商標)27-612シリーズ(Johnson Matthey、R-87 HEAT X(登録商標)(Haldor Topsoe)である。
【0213】
触媒組成物はアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類元素から選択される1種または複数の中から選択される1種以上の元素をさらに含むのが有利である。例えば、1種または複数のアルカリ金属は、Li、Na、K、Csおよびこれらの任意の混合物から選択される1種以上である。例えば、1種または複数のアルカリ土類金属はMgおよび/またはCaから選択される1種以上である。例えば、1種または複数の希土類元素はCe、La、Sc、Yおよびこれらの混合物から選択される1種以上である。
【0214】
好ましくは、触媒組成物はさらに触媒担体を含む。有利には、触媒担体は導電性粒子であり、好ましくは、この導電性粒子は炭化ケイ素および/またはグラファイトおよび/またはカーボンナノチューブであるか、またはその代替として、炭化ケイ素とは異なる導電性粒子である。これによって触媒活性物質と導電性物質との密接な接触が可能になる。
【0215】
好ましくは、触媒組成物はさらに、N2吸着測定によって測定された10m2/g~1000m2/gの範囲の比表面積を有し、より好ましくは50m2/g~900m2/g、さらに好ましくは100m2/g~800m2/g、最も好ましくは200m2/g~700m2/gの比表面積を有する。
【0216】
設備
「底部」および「上部」という用語は、設備または流動床反応装置の一般的な方向で理解されるものである。すなわち、「底部」は、垂直軸に沿って「上部」よりも地面に近いことを意味する。異なる図において同じ参照符号は同一または類似の要素を示す。
【0217】
図1〕は従来の流動床反応装置1を示し、これは反応容器3、流動化ガスおよび原料を導入するための底部流体ノズル5、材料投入用の任意の入口7、材料排出用の任意の出口9、ガス出口11およびベッド15を含む。〔図1〕の流動床反応装置1では、例えば流動化ガスおよびアンモニア含有原料を反応装置に供給するラインのレベルに配置された加熱手段17を使用して、化石燃料の燃焼によって原料を予熱することによって熱が供給される。
【0218】
以下、本発明の設備を〔図2〕~〔図5〕を参照して説明する。図を簡単にするために、当業者に公知の流動床反応装置で使用される内部デバイス、例えばバブルブレーカー、デフレクター、粒子終結装置、サイクロン、セラミック壁コーティング、熱電対など図示していない。
【0219】
図2〕は、加熱ゾーンと反応ゾーンが同じである流動床反応装置19を備えた第1の設備を示し、この流動床反応装置19は、反応容器3、流動化ガスおよびアンモニア含有原料および任意の1種または複数の希釈ガスを導入するための底部流体ノズル21、材料投入用の任意の入口7、材料排出用の任意の出口9およびガス出口11を有する。〔図2〕の流動床反応装置19にはベッド25中に沈められた2つの電極13が示されている。
【0220】
図3〕は、少なくとも1つの流動床反応装置19が加熱ゾーン27と反応ゾーン29を備え、加熱ゾーン27が底部ゾーン、反応ゾーン29が加熱ゾーン27の上部にある実施形態を示している。1つまたは複数の流体ノズル23は、ディストリビュータ33から反応ゾーンにアンモニア含有原料とオプションの1つまたは複数の希釈ガスを供給する。〔図3〕から分かるように、1つまたは複数の流体ノズル23はディストリビュータ33に接続され、ベッド25内にアンモニア含有原料を分配することができる。
【0221】
図4〕は、少なくとも1つの流動床反応装置18が横(半径)方向に少なくとも2つのゾーンを備え、外側ゾーンが加熱ゾーン27で内側ゾーンが反応ゾーン29である設備を示している。ベッド25の加熱された粒子は1つまたは複数の開口部41によって外側ゾーンから内側ゾーンに送られ、アンモニア含有原料と混合される。粒子は反応ゾーンの終わりの所で反応生成物から分離され、加熱ゾーンに移される。
【0222】
図5〕は、少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)が互いに接続されていれる設備を示し、ここでは、少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーン27で、少なくとも1つの流動床反応装置は反応ゾーン29である。
【0223】
本発明は、水素の生成を伴うアンモニア分解反応を実行するプロセスで使用される設備を提供する。本発明設備は以下のi)~iii)を含む:
i) 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)を備えた通電流動床ユニット、このユニットは以下を含む:
― 少なくとも2つの電極13、
― 反応容器3、
― 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)内にアンモニア含有原料および任意成分の1種または複数の希釈ガスを導入するための1つまたは複数の流体ノズル(21、23)、および
― 粒子を含むベッド25、
ii) 分離ユニットおよび/または燃焼ユニット、この分離ユニットまたは燃焼ユニットは上記の通電流動床ユニットの下流にあり、分離ユニットと燃焼ユニットの両方が存在する場合には、分離ユニットは通電流動床ユニットの下流にあり、燃焼ユニットの上流にあり、
iii) 任意選択要件としての、上記の通電流動床ユニットまたは上記の分離ユニットの下流に存在す水性ガスシフトユニット、
上記ベッドの粒子は導電性粒子と触媒組成物の粒子を含み、ベッドの粒子の総重量に対してベッドの粒子の少なくとも10重量%は導電性で、800℃で0.001オーム・cm~500オーム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物は1種または複数の金属化合物を含む。
【0224】
好ましくは、少なくとも2つの電極はタンタルを含むか、または、タンタルで作られる。
【0225】
加熱が必要な任意の化学および/または物理プロセスの場合、水素の燃焼によって必要な熱が得られる可能性がある。しかし、水素の炎速(flame speed)(これは燃焼反応における炎面(flame front)の測定速度である)は一般に速い。炎が可燃性混合物中を移動し、その後にシステム全体に炎を分散させる速度をもとめる決定するには、炎速を考慮することが重要である。炎の速度を低下させたい場合には、燃焼させる水素を1種または複数の可燃性成分で希釈して、炎の速度が低い方が有利な混合物を形成するのよい。
【0226】
アンモニアの部分分解の場合、すなわちアンモニアからフォーミングガスへの変換率が50%未満、好ましくは20%~50%または20%~30%の範囲である場合には、通電流動床ユニットの下流にある燃焼ユニット(好ましくはオーブン、炉、バーナーまたはこれらの組み合わせを含む)でフォーミングガス(すなわち、N2+H2)とアンモニアとからなる混合物を燃焼させる。この混合物の炎の速度は、水素の炎の速度よりも遅いが、アンモニアの炎の速度よりも速い。部分分解を行うことによって、純粋なアンモニアよりも炎の速度が高く、純粋な水素よりも遅いアンモニア/水素混合物を生成することができる。これによってより安定した制御可能な燃焼ができる。
【0227】
アンモニアの完全なクラッキングの場合には、通電流動床ユニットの下流に、好ましくは圧力スイング吸着(PSA)装置および/またはスクラバーおよび/または凝縮器を含む分離ユニットを設置して、精製された水素流を回収するのがよい。実際に、クラッキング時に形成される形成ガス中に約20ppm~100ppm存在する未反応のアンモニアを分離ユニットで除去することができる。分離ユニットで窒素を含むパージ流を除去することも可能なので精製された水素流が回収できる。
【0228】
アンモニアをクラッキングで、さらなる使用のために水素を回収する場合には、未反応のアンモニアを可能な限り除去する必要がある。未反応のアンモニアがまだ存在すると、水素使用時に化学プロセスを妨げる可能性がある。例えば、PSA装置はゼオライト4A、ゼオライト5Aまたはゼオライト13Xから選択される1種または複数のゼオライトである1種または複数の吸着剤を含む。例えば、スクラバーは未反応のアンモニアを除去するために酸性および/またはアルカリ性溶液を使用する。分離ユニットを通過した後の生成物流中の未変換のアンモニアの量は1ppm~3ppmの範囲に低下する。素を除去するには、所望用途に応じて、メンブレン(膜)または温度スイング吸着(TSA)装置を使用して混合物をさらにクリーンアップする必要がある。この流はその後さらに使用するために1つまたは複数の貯蔵タンクに搬送することができる。
【0229】
例えば、1つの電極は浸漬された中央電極であるか、または、2つの電極13を少なくとも1つの反応装置(18、19、37)の反応容器3内に浸漬する。
【0230】
例えば、1種または複数の希釈ガスは蒸気(steam)、水素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、窒素およびメタンなどの1種または複数の炭化水素から選択される1種または複数の流動化ガスである。好ましくは、1種または複数の希釈ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、窒素およびメタンなどの1種または複数の炭化水素から選択される1種または複数のである。一つの実施形態では、希釈ガスが少なくとも蒸気とメタンなどの1種または複数の炭化水素との混合物である場合に、水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に、炭化水素の吸熱蒸気改質による合成ガスの生成が行われる。別の実施形態では、希釈ガスが少なくとも二酸化炭素とメタンなどの1種または複数の炭化水素との混合物である場合に、炭化水素の吸熱乾式改質による合成ガスの生成が、水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。
【0231】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)には加熱手段がない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段が存在しない。好ましい実施形態では、少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドを含む少なくとも1つの流動床反応装置にはハニカムモノリスや交差プレートなどの構造化パッキングが存在しない。
【0232】
例えば、反応容器3の内径は少なくとも100cmまたは少なくとも200cmまたは少なくとも400cmである。このような大きな直径にすることで業規模で化学反応を実行することができる。例えば、反応流の重量空間速度(weight hourly space velocity)は0.1h-1~100h-1の間、好ましくは1.0h-1~50h-1の間である。この重量空間速度は反応流の質量流量と流動床内の固体粒子状物質の質量の比として定義される。
【0233】
少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37)は少なくとも2つの電極13を含む。例えば、1つの電極を流動床反応装置の外壁と電気的に接続し、もう1つの追加の電極は流動床25内に沈めるか、または、両方の電極13を流動床25内に沈める。少なくとも2つの電極13は電気的に接続され、電源(図示せず)に接続できる。少なくとも2つの電極13はグラファイトで作るのが有利である。当業者は、電極13が粒子ベッド25よりも導電性が高いという利点を有する。
【0234】
例えば、少なくとも1つの電極13はグラファイトで作られるか、または、グラファイトを含む。好ましくは、全てのまたは2つの電極13がグラファイトで作られる。例えば、電極の1つが反応容器で、反応容器が2つの電極を備え、その1つは浸漬中心電極で、もう1つは反応容器3である。
【0235】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は、少なくとも1つの電極を冷却するように配置された少なくとも1つの冷却装置を備える。
【0236】
流動床反応装置の使用時には、最大300V、好ましくは最大250V、より好ましくは最大200V、さらに好ましくは最大150V、最も好ましくは最大100V、さらに最も好ましくは最大90Vまたは最大80Vの電位が印加される。
【0237】
電流のパワーが調整可能であるので反応容器内の温度を調整するのは容易である。
【0238】
反応容器3はグラファイトで作ることができる。一つの実施形態では、反応容器3をシリコンカーバイドまたはシリコンカーバイドとグラファイトの混合物である電気抵抗材料で作ることができる。
【0239】
好ましくは、反応容器3は、耐腐食性材料で作られた反応容器壁を備え、有利には、反応容器壁材料はニッケル(Ni)、SiAIONセラミック、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、正方晶多結晶ジルコニ (TZP)および/または正方晶多結晶ジルコニア(TPZ)を含む。SiAIONセラミックはシリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)および窒素(N)の元素をベースにしたセラミックである。これは窒化シリコン(Si-N結合がAl-NおよびAl-O結合に部分的に置き換えられたSi34)の固溶体である。
【0240】
例えば、反応容器3はシリコンカーバイドとグラファイトの混合物である電気抵抗材料から作られる。この反応容器3の電気抵抗材料は、電気抵抗材料の全重量に対して10重量%~99重量%、好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%のシリコンカーバイドを含む。
【0241】
例えば、反応容器3はシリコンカーバイドとグラファイトの混合物である電気抵抗材料から作られる。
【0242】
例えば、反応容器3は導電性ではない。例えば、反応容器3はセラミック~作られる。
【0243】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)は加熱ゾーン27および反応ゾーン29、ディストリビュータ31から少なくとも加熱ゾーンに流動化ガスを供給するための1つまたは複数の流体ノズル21、ディストリビュータ33から反応ゾーンにアンモニア含有原料および任意の1種または複数の希釈ガスを供給するための1つまたは複数の流体ノズル23および必要に応じてもちいられる加熱ゾーン27から反応ゾーン29に粒子を輸送する手段41および反応ゾーン29から加熱ゾーン27に粒子を輸送する任意の手段35を含む。
【0244】
例えば、〔図3〕に示すように、少なくとも1つの流動床反応装置は、単一の流動床反応装置19であり、加熱ゾーン27は流動床反応装置19の下部であり、反応ゾーン29は流動床反応装置19の上部である。好ましくは、この設備は2つのゾーン(27、29)の間または反応ゾーン29にアンモニア含有原料を注入するための1つまたは複数の流体ノズル23を備える。流動床反応装置19はさらに、任意選択事項としての材料投入用の入口7、任意選択事項としての材料排出用の出口9およびガス出口11を備える。好ましくは、流動床反応装置19は、加熱手段を備えていない。例えば、電極13は流動床反応装置19の底部すなわち加熱ゾーン27に配置される。例えば、流動床反応装置19の上部すなわち反応ゾーン29には電極がない。流動床反応装置19は任意選択事項としての粒子を反応ゾーン29から加熱ゾーン27に戻すための手段35を備える。例えば、流動床反応装置19の上部と下部の間に配置されたラインを使用する。
【0245】
例えば、〔図4〕に示すように、本発明設備は、互いに接続された少なくとも2つの横方向流動床ゾーン(27、29)を備え、少なくとも1つの流動床ゾーン27は加熱ゾーンで、少なくとも1つの流動床ゾーン29は反応ゾーンである。例えば、加熱ゾーン27は反応ゾーン29を取り囲んでいる。好ましくは、この設備には、分配器33を使用してアンモニア含有原料および任意選択で1種または複数の希釈ガスを少なくとも1つの反応ゾーン29に注入するように配置された1つまたは複数の流体ノズル23が備えられる。流動床ゾーン(27、29)は、任意選択事項としての材料投入用入口7およびガス出口11をさらに備える。好ましくは、加熱ゾーン27である少なくとも1つの流動床ゾーンおよび/または反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床ゾーンには加熱手段がない。例えば、反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床ゾーンには、材料排出用の出口9がオプションで備わっている。1つまたは複数の流体ノズル21は、ディストリビュータ31から少なくとも加熱ゾーンに流動化ガスを供給する。加熱された粒子は1つまたは複数の入口装置41によって加熱ゾーン27から反応ゾーン29へ輸送され、分離された粒子はダウンカマーを含む1つまたは複数の手段35によって反応ゾーン29から加熱ゾーン27へ戻される。加熱ゾーン27の流動化ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、メタン、アルゴン、ヘリウム、窒素から選択される1種または複数の不活性希釈剤にすることができる。この構成では、加熱ゾーンの流動化ガス中に粒子に堆積したコークスを燃焼させるための空気または酸素を含ませることもできる。
【0246】
例えば、〔図5〕に示すように、本発明設備は互いに接続された少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)を含み、その少なくとも1つの流動床反応装置37は加熱ゾーン27であり、その少なくとも1つの流動床反応装置39は反応ゾーン29である。好ましくは、この設備は、反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39にアンモニア含有原料およびオプションの1種または複数の希釈ガスを注入するように配置された1つまたは複数の流体ノズル23を含む。流動床反応装置(37、39)はオプションの材料投入用入口7およびガス出口11をさらに含む。好ましくは、加熱ゾーン27である少なくとも1つの流動床反応装置37および/または反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39には加熱手段がない。例えば、反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39は必要の応じて材料排出用の出口9を備えている。加熱された粒子は、入口装置41を介して、必要に応じて加熱ゾーン27から反応ゾーン29に輸送され、反応ゾーンの後で分離された粒子は、装置35によって、反応ゾーンから加熱ゾーンへ戻される。加熱ゾーンの流動化ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、窒素、メタンなどの1種または複数の炭化水素から選択される1種または複数の不活性希釈剤にすることができる。好ましくは、1種または複数の希釈剤/流動化ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、窒素およびメタンなどの1種または複数の炭化水素から選択される1種または複数の希釈剤/流動化ガスにすることができる。一つの実施形態では、希釈ガスは少なくとも水蒸気とメタンなどの炭化水素の1種類以上の混合物で、この場合には、炭化水素の吸熱蒸気改質による合成ガスの生成が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。この構成では、加熱ゾーンの流動化ガスに粒子に堆積したコークスを燃焼させるための空気または酸素を含ませることができる。別の実施形態では、希釈ガスが少なくとも二酸化炭素とメタンなどの炭化水素の1種類以上の混合物である。この場合には、炭化水素の吸熱乾式改質による合成ガスの生成が水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に行われる。
【0247】
例えば、加熱ゾーン27である少なくとも1つの流動床反応装置37は、少なくとも2つの電極13を含むが、反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39には電極がない。
【0248】
例えば、少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)は加熱ゾーン27から反応ゾーン29へ粒子を輸送するのに適した手段41、例えば1つまたは複数のラインによって互いに連結される。
【0249】
例えば、少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)は反応ゾーン29から加熱ゾーン27へ粒子を輸送するのに適した手段35、例えば、1つまたは複数のラインによって互いに連結される。
【0250】
有利には、本発明設備はさらに、通電流動床ユニットを分離ユニットおよび/または燃焼ユニットに流体接続するラインを備える。本発明設備はさらに、このライン上に熱交換器を備える。例えば、この熱交換器は成形ガスが分離ユニットに入る前に成形ガスを冷却したり、成形ガスが燃焼ユニットに入る前に成形ガスの温度を調整したりするのに使用される。
【0251】
アンモニア分解反応
例えば、上記アンモニア分解反応は300℃~950℃、好ましくは350℃~900℃、より好ましくは400℃~850℃、最も好ましくは450℃~800℃または480℃~950℃の温度で行われる。
【0252】
有利には、アンモニアの部分分解すなわちアンモニアからフォーミングガスへの変換率が50%未満、好ましくは20%~50%または20%~30%の範囲である場合、生成される水素を円滑に燃焼させるために、アンモニアの部分分解は以下のいずれかの場合に行うのがよい:
- 触媒組成物が1種または複数の非貴金属(例えば、Niまたは担持Ni)を含み、工程(c)で与える温度が250℃~800℃範囲、好ましくは 300℃~750℃の範囲、より好ましくは350℃~700℃の範囲、さらに好ましくは400℃~650℃の範囲である場合、または
― 触媒組成物が1種または複数の貴金属(例えば、Ruまたは担持Ru)を含み、工程(c)で与える温度が250℃~450℃の範囲、好ましくは275℃~425℃の範囲、より好ましくは300℃~400℃の範囲である場合。
【0253】
例えば、アンモニア分解反応は0.01MPa~10.0MPa、好ましくは0.1MPa~5.0MPaの範囲の圧力で行われる。
【0254】
例えば、アンモニア分解反応は、反応流の存在下で行われ、反応流の重量空間速度が0.1h-1~100h-1の間、好ましくは1.0h-1~50h-1の間である状態で行われる。
【0255】
反応装置の流動床ゾーン中のアンモニア含有原料の滞留時間は、温度が450~900℃の間の場合、有利には0.005~5.0秒、好ましくは0.001~1.2秒、より好ましくは0.01~1.0秒、さらに好ましくは0.1~0.6秒、または0.1~0.3秒の範囲である。
【0256】
水素生成を伴うアンモニア分解反応と合成ガスを生成する水蒸気メタン改質反応との同時プロセス
有利には、工程(c)で水素生成を伴うアンモニア分解反応と同時に合成ガスを生成するための炭化水素の吸熱的水蒸気改質とを実行するときには、以下の1つまたは複数を選択する:
- 工程(a)で1種または複数の炭化水素および水蒸気を提供する、または、
- 工程(a)で提供されるアンモニア含有原料が少なくとも水蒸気と1種または複数の炭化水素(例えば、メタン)との混合物である希釈ガスを含む。
【0257】
あるいは、工程(c)で水素生成を伴うアンモニア分解反応と同時に合成ガスを生成するための炭化水素の吸熱的乾式改質を実行するときに、以下の1つまたは複数を選択する:
- 工程(a)で1種または複数の炭化水素および二酸化炭素を提供する、または、
- 工程(a)で提供されるアンモニア含有原料が少なくとも二酸化炭素と1種または複数の炭化水素(メタンなど)の混合物である希釈ガスを含む。
【0258】
例えば、1種または複数の炭化水素は炭化水素含有原料の一部であり、および/または、1種または複数の炭化水素はメタンまたは1~5個の炭素原子を含む軽質炭化水素の混合物等の1種または複数の炭素原子を有する。炭化水素含有原料に二酸化炭素も含まれていることが有利である。炭化水素含有原料は天然ガス、バイオガスまたは製油所ガスであることが好ましく、これらはそれぞれさまざまな量の二酸化炭素を含むことができる。
【0259】
好ましくは、炭化水素含有原料中の水蒸気と炭素のモル比は炭化水素原料中の炭素1モル当たり水蒸気が2.0~5.0モル、好ましくは2.2~4.0、より好ましくは2.5~3.0の範囲である。
【0260】
有利には、工程(d)を実施する場合、生成物が少なくとも形成ガス(すなわち、H2とN2の混合物)と未反応のアンモニアとを含む。工程(c)で水素の生成を伴うアンモニア分解反応と同時に炭化水素の吸熱蒸気改質を行って合成ガスを生成する場合には、工程(d)を実施する時に、生成物が一酸化炭素、二酸化炭素、未反応の炭化水素および未反応の水蒸気をさらに含む。
【0261】
一つの実施形態では、工程(c)で水素生成を伴うアンモニア分解反応を行うる場合、本発明プロセスが工程(d)で回収された生成物すなわち少なくともフォーミングガスと未反応のアンモニアを含む生成物に対して燃焼反応を行う工程(j)をさらに含む。好ましくは、この工程(j)は工程(d)の直後に実施される。この実施形態はアンモニア分解反応の転化が部分的である場合に実施するのが好ましい。
【0262】
別の実施形態では、本発明プロセスが工程(d)で回収された生成物から未反応のアンモニアを除去する工程(e)をさらに含む。この実施形態は、アンモニア分解反応の転化が部分的である場合に実施するのが好ましい。好ましくは、上記工程(e)は以下から選択される1つまたは複数の工程である:
- 上記形成ガスを酸性またはアルカリ性溶液で洗浄する1つの工程:
- ゼオライト4A、ゼオライト5Aまたはゼオライト13Xから選択される1種または複数のゼオライトである吸着剤で未反応のアンモニアを吸着する1つの工程;
- 0.1MPa~15MPa、好ましくは1MPa~10MPaの圧力と―20℃~20℃、好ましくは―15℃~15℃の温度で行われる1つの凝縮工程。
【0263】
工程(c)が、水素の生成を伴う上記アンモニア分解反応と同時に、炭化水素の吸熱蒸気改質による合成ガスの生成、または炭化水素の吸熱乾式改質による合成ガスの生成を実行するために実施される場合、本発明プロセスは、工程(d)で回収された生成物から未反応のアンモニアを除去する工程(e)の後に実行される以下の工程をさらに含むのが有利である:
f)工程(d)で得られた一酸化炭素に対して水蒸気を用いて水性ガスシフト(WGS)反応(CO+H2O<=>CO2+H2 △H298=―41.09kJ/モル)を実行して、二酸化炭素、水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含む流を生成し、
g) 二酸化炭素、水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含む上記流からCO2濃縮流を分離して、水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含むCO2希薄流をつくり、
h) 圧力スイング吸着(PSA)プロセスで、上記のCO2希薄流から精製水素流と未回収水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含むパージ流とを分離し、
i) 任意選択工程として、上記CO2濃縮流、精製水素流を回収し、および/または、未回収水素、未反応一酸化炭素および未反応炭化水素を含む上記パージ流を工程(a)で提供する。
【0264】
水ガスシフト反応は下記〔非特許文献5〕、〔非特許文献6〕に詳細に記載のものを利用するのが有利である。
【非特許文献5】''The water-gas shift reaction: from conventional catalytic systems to Pd-based membrane reactors _ a review'' from Mendes D. et al. (Asia-Pacific J. Chem. Engineering, 2010, 5, 111-137)
【非特許文献6】''Performance of water-gas shift reaction catalysts: A review'' from Pal D.B. et al. (Renewable and Sustainable Energy Reviews, 2018, 93, 549-565)
【0265】
例えば、上記工程(f)は、水ガスシフト触媒の存在下で実施される。好ましくは、この水ガスシフト触媒は銅または鉄ベースの触媒から選択される。
【0266】
この反応は中程度の発熱反応で、その平衡定数は温度の上昇とともに減少する。この反応は、低温では熱力学的に、高温では運動学的に有利で、圧力変化の影響を受けない。WGSプロセスは高温で操作でき、製品に残っている望ましいCOの量に応じて高温(HTS)または低温(LTS)あるいはその両方の組み合わせで運転できる。
【0267】
HTS触媒は鉄とクロムの両方を含むフェロクロム触媒と呼ばれ、一般に310℃~450℃の温度範囲で動作する。入口温度は、リアクター内の過度の温度上昇を防ぐためにできるだけ低い約350℃に保たれ、最大出口温度は約550℃に保たれる。HTS触媒の一般的な組成は約70~75%のFe23、約5~15%のCr23およびいくつかのアルカリまたはアルカリ土類酸化物であると報告されている。Cr23は安定剤としても機能し、Fe23の焼結を防ぐ。従来のFe/Cr HTS WGS反応装置の出口濃度は450℃での平衡濃度である3%COまで低くすることができる。
【0268】
低温シフト(LTS)反応はCuO、ZnO、Cr23および Al23の混合物を含む触媒を使用して200~250℃で行う。この触媒の一般的な組成は20~75%のZnO、15~35%のCuO、5~15%のCr23、1~5%のMn、Alと残りの酸化マグネシウムである。この触媒の活性種は銅金属微結晶である。ZnOとCr2Oは触媒の構造サポートを提供し、Al23は分散のための表面積と触媒粒子の機械的強度を提供するキャリアである。WGS反応は従来は断熱温度上昇を小さくし、蒸気管理を改善するために2段階または3段階の触媒コンバーターで行われる。第1段階は高温で運転してCOの消費を速め、触媒ベッドの容積を最小限に抑えるという特徴がある。次の段階では反応を徐々に低温で行い、反応平衡によって制限されるより高い変換率にする。次のWGS反応をより低い温度で実行し、平衡変換へのアプローチを促進するために中間冷却システムが使用される。
【0269】
WGSの圧力は、HTSの場合は1~6MPa、LTSの場合は1~4MPaの範囲で変化する。
【0270】
二酸化炭素、水素、未反応の一酸化炭素および未反応の炭化水素を含む上記の流れからCO2に富む流を分離する上記の工程(g)は、工程(f)で得られた二酸化炭素、水素、未反応の一酸化炭素および未反応の炭化水素を含む流を吸着、吸収、膜、極低温/低温プロセスなどのCO2捕捉を伴う水素製造のための分離プロセスで処理することによって有利に実行される。〔非特許文献7〕を参照されたい。
【非特許文献7】''Hydrogen production with CO2 capture'' from Voldsund M. et al. (International Journal of Hydrogen Energy, 2016, 4969-4992)
【0271】
非常に純粋な水素を得るのに現在最もよく使用されている水素精製技術は圧力スイング吸着(PSA)である。〔非特許文献8〕を参照されたい。
【非特許文献8】Pressure swing adsorption technology for hydrogen production, K. Liu, C. Song, V. Subramani (Eds.), Hydrogen and syngas production and purification technologies (2010), p. 414
【0272】
PSAユニットでは、合成ガスが高圧で吸着剤カラムに送られ、不純物が吸着され、水素はほとんど吸着されずに通過する。吸着剤が飽和した時に圧力を下げてパージすることで再生がされる。一般的な吸着剤にはシリカゲル、アルミナ、活性炭、ゼオライトなどがあり、各成分に対して吸着の相対強度が異なる。PSAユニットは通常、常温(低温で吸着が促進される)および供給圧力2~6MPaで行われる。水素生成物は圧力降下により供給圧力よりわずかに低い圧力で生成され、PSAオフガスが低圧(通常0.1~0.3MPa)で供給される。CO2回収のない標準的なプラントでは、可燃性成分が含まれているため、CO2に富むオフガスが燃料として使用されることが多い。このようなCO2に富むオフガスはCO2の輸送および貯蔵には適していない。
【0273】
他のガスからCO2を補足、精製するためにCO2選択吸着剤を使用した吸着が使用できる。〔非特許文献9〕を参照されたい。このプロセスは2つの精製工程で構成され、まず、活性炭を使用した吸着剤ベッドで湿ったCO2を選択的に除去し、その後、ゼオライトを使用した吸着剤ベッドで水素からCH4、CO、N2および残りのCO2を除去する。オプションでは、最初の圧力スイング吸着を真空スイング吸着ユニット(VSA)にする。これは既にあるSMRユニットとPSAユニットとの間で湿ったCO2を捕捉するする。CO2の大部分(>90%)は合成ガスから97%を超える純度で捕捉される(圧縮および乾燥後)。
【非特許文献9】Sep Sci Technol, 35 (5) (2000), pp. 667; CO2 capture from SMRs: a demonstration project Hydrocarbon Process (September) (2012), pp. 63)
【0274】
吸収によるガス分離では、スクラバーカラムで酸性ガスが溶解された液体溶媒とガスとを接触させて行う。リッチな溶媒を再生/ストリッピングカラムに送り、そこで加熱および/または減圧して、脱着された成分を含むオーバーヘッド流と、リーン溶媒を含むオーバーヘッド流とを生成し、後者をスクラバーカラムに送り返す。液体溶媒は化学溶媒と物理溶媒に分けられる。化学溶剤はCO2と反応し(CO2は弱酸で塩基と反応する)、再生にかなりの熱を必要とするが、反応速度が速いため、プラントのサイズが小さくなる。一般的な化学溶剤はMEA、TEA、MDEAなどのアミン水溶液または熱い炭酸カリウムの水溶液である(例:ベンフィールドプロセス、Benfield process)。物理溶剤はCO2を溶解し、減圧および/または温度上昇で再生されるため、化学溶剤よりも熱を必要としない。物理溶剤を使用する一般的な技術はRectisol(登録商標)、Selexol(登録商標)およびPurisol(登録商標)の技術である。
【0275】
化学溶剤の吸収能力はCO2の分圧が低くなると高くなる。物理溶剤の吸収能力はCO2の分圧が低い場合の化学溶剤よりも低くなるが、ヘンリーの法則に従ってCO2の分圧とともに直線的に増加する。従って、CO2の分圧が低い場合は化学溶剤が適しており、CO2の分圧が高い場合は物理溶剤が適している。
【0276】
膜(Membranes)は特定の成分を他の成分よりも容易に通過させる選択的バリアである(膜を通過する供給成分は透過物、通過しない成分は保持物と呼ばれる)。膜を介した分子の輸送は膜上の分圧の差によって行われる。
【0277】
CO2回収による水素生成には水素選択膜とCO2選択膜の両方が使用できる。水素選択膜は、低圧では高純度の水素からなる透過物、高圧では不純なCO2からなる保持物を生成する。通常、CO2選択膜は低圧でCO2を多く含む透過物を生成し、高圧でCO2の少ない未透過物を生成する。100℃未満の低温で動作する水素選択膜はポリマー膜であり、低温プロセス流からの水素回収に使用されている。高温水素選択膜は金属膜(300~700℃)、微多孔性セラミック膜(200~600℃)、多孔質炭素膜(500~900℃)、高密度セラミック膜(600~900℃)に分類できる。高温で運転できるため蒸気改質/水性ガスシフトプロセスに適している。種々のCO2膜が存在しており、溶解拡散メカニズム(拡散よりも溶解効果が優勢である必要がある)または促進輸送メカニズムをベースにしたポリマーCO2選択膜、ポリマーマトリックスに均一に分散した無機粒子で構成される混合マトリックス膜、表面拡散または毛細管凝縮によってCO2を選択的に分離する多孔質無機膜などいくつかのタイプがある。
【0278】
極低温または低温分離ではガスが冷却され、沸点の差を利用して各種の化学成分を分離する。水素分離では、ガス混合物が極低温(<150℃)まで冷却される。汚染ガスは種々の温度レベルで凝縮されるが、水素は気相のままである。CO2分離ではガス混合物を所定の圧力でCO2の沸点未満(5.2barと-56.6℃のCO2の三重点以上)まで冷却し、CO2をより軽いガスから凝縮させる。低温分離の利点は、捕捉されたCO2が液体状態であり、を低いエネルギーコストでポンプ輸送用に加圧できる。
【0279】
上記の工程(h)は、圧力スイング吸着(PSA)プロセスでCO2リーン流から精製された水素流と未回収水素、未反応の一酸化炭素および未反応炭化水素を含むパージ流とを分離する工程である。このPSAユニットでは、ガスが高圧で吸着剤カラムに送られ、そこで不純物が吸着され、水素はほとんど吸着されずに通過する。吸着剤が飽和すると圧力を下げてパージすることにより再生が行われる。典型的な吸着剤にはシリカゲル、アルミナ、活性炭およびゼオライトが含まれ、これらは各成分に対する吸着相対強度が相違する。通常、PSAユニットは周囲温度(低温で吸着が促進される)および2~6MPaの供給圧力で運転される。水素製品は圧力降下により供給圧力よりわずかに低い圧力で生成され、通常、PSAオフガスは0.1~0.3MPaの低圧で供給される。
【0280】
このプロセスは、水素を含む生成物流をアップグレードユニット(upgrading unit)に供給する工程をさらに含むことができ、そこでアップグレードされた水素流とオフガス流とを分離する。アップグレードユニットはオフガス流がリサイクルされ、構造触媒を通過する前に供給ガスと混合されるように配置ができる。アップグレードユニットは圧力スイング吸着ユニット(PSA)、温度スイング吸着ユニット(TSA)または膜あるいはそれらの組み合わせを含むことができる。PSAまたはTSA構成は、アップグレードユニットから出る高圧流として水素を分離し、オフガスは低圧となるので、これは好ましい解決策である。好ましい実施形態では、アップグレードユニットは、実質的に純粋なH2のアップグレード流と実質的に純粋なN2のオフガスとを生成するように構成される。一つの態様では、このプロセスは、アップグレードユニットから下流の電力生産プラントにアップグレードされた水素流を供給する工程をさらに含む。一つの実施形態では、電力生産プラントは固体酸化物燃料電池またはガスエンジンのプラントにすることができる。これによって、アンモニアをエネルギーのベクターとして使用する時にその技術をエネルギー貯蔵で使用することができる。
【0281】
試験および測定方法
窒素吸着/脱着等温線はMicrometrics ASAP 2020容積吸着分析装置を使用したN2吸着分析を使用して測定した。乾燥したサンプルを測定前に真空下で523K(249.85℃)で一晩脱ガスした。この測定値から触媒組成物の比表面積を求めた。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】