(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車両用の自己通風式のけん引モータのための空気出口フード
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20250117BHJP
B61C 3/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H02K9/06 C
B61C3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541074
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2023051656
(87)【国際公開番号】W WO2023144129
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522034789
【氏名又は名称】アルストム・ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】ベン ディーデリヒス
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR03
5H609RR33
5H609RR39
5H609RR42
(57)【要約】
本発明は、自己通風式のけん引モータ(6、7)のケーシングに機械的に取り付けられ、このけん引モータ(6、7)の回転可能なモータシャフトを実質的に取り囲む、自己通風式のけん引モータ(6、7)用の気流フードに関し、この気流フード(9)は、前記ケーシング上に取り付けられる本体と、一端部に気流入口を呈し、他端部に下方に向けられた気流出口(15)を呈する空気ダクトとを備える。気流フード(9)は、アクスル(3、4)を駆動するための前記回転可能なモータシャフトを延長するシャフトとは反対側のけん引モータ(6、7)の近位端部に配置され、気流出口(15)は、前記けん引モータ(6、7)の一方側に前記けん引モータ(6、7)の長手軸に対して非対称に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己通風式のけん引モータ(6、7)のケーシング(12)に機械的に取り付けることが可能であり、
・前記ケーシング(12)上に取り付け可能であり、前記けん引モータ(6、7)の長手軸(17)を実質的に取り囲む本体(13)と、
・一端部に気流入口(14)を呈し、他端部に気流出口(15)を呈する空気ダクト(16)と
を備えている、自己通風式のけん引モータ(6、7)用の気流フード(9)であって、
前記気流出口(15)は、下方に向けられ、前記気流フード(9)が前記ケーシング(12)上に取り付けられたとき、前記気流フード(9)は、ファン(19)が位置し、かつ回転可能なモータシャフト(18)がアクスル(3、4)を駆動すべく軸方向に突出している前記ケーシング(12)の遠位軸端部(10)とは反対側の前記ケーシング(12)の近位軸端部(11)に位置する、ことを特徴とする自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項2】
前記気流出口(15)は、前記けん引モータ(6、7)の前記長手軸(17)を含む垂直軸平面に対して非対称に配置される、請求項1に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項3】
・前記ケーシング(12)から出る冷却気流が、前記本体(13)に進入し、前記けん引モータ(6、7)に同軸な円筒に対して実質的に接戦方向に前記気流出口(15)によって前記気流フード(9)を出、かつ/または
・前記気流出口(15)は、下方を向いて実質的に水平に配置される、
請求項1または2に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項4】
前記気流出口(15)は、前記けん引モータ(6、7)の前記けん引モータ(6、7)によって駆動される前記アクスル(3、4)とは反対の側に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項5】
・前記空気ダクト(16)の断面が、前記気流出口(15)に向かって漸進的に増大し、かつ/または
・前記気流出口(15)は、前記気流フード(9)の前記本体(13)の下面の実質的にすべてに広がる、
請求項4に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項6】
前記空気ダクト(16)は、前記本体(13)の前記アクスル(3、4)とは反対の側に実質的に沿って延びる、請求項4または5に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項7】
・前記気流出口(15)は、前記アクスル(3、4)の前記けん引モータ(6、7)とは反対の側に位置し、かつ/または
・前記気流出口(15)は、実質的に水平に配置される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項8】
・前記空気ダクト(16)は、前記アクスル(3、4)の他方側へと通過するように前記本体(13)を過ぎて延び、かつ/または
・前記空気ダクト(16)の断面が、前記気流出口(15)に向かって漸進的に減少する、
請求項7に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項9】
・前記気流フード(9)は、実質的にU字形であり、前記本体(13)は、前記U字形の気流フード(9)の第1の脚部を形成し、前記空気ダクト(16)は、前記U字形の気流フード(9)の第2の脚部を形成し、かつ
・前記けん引モータ(6、7)によって駆動される前記アクスル(3、4)は、前記U字形の気流フード(9)の前記第1および第2の脚部の間に配置される、請求項8に記載の自己通風式のけん引モータ用の気流フード。
【請求項10】
駆動力をギアボックス(8)に伝達する回転可能なモータシャフト(18)を取り囲むケーシング(12)と、前記ギアボックス(8)の側で前記回転可能なモータシャフト(18)に取り付けられ、自己通風式のけん引モータ(6、7)を通って長手方向に循環する冷却気流(20)を発生させるファン(19)と、を備える自己通風式のけん引モータアセンブリであって、
冷却気流の排気(21)を案内するための請求項1~9のいずれか一項に記載の気流フード(9)をさらに備える、ことを特徴とする自己通風式のけん引モータアセンブリ。
【請求項11】
フレーム(2)と、前記フレーム(2)に回転可能に取り付けられた少なくとも1つのアクスル(3、4)と、前記少なくとも1つのアクスル(3、4)に機械的に接続された少なくとも1つのギアボックス(8)と、を備える鉄道用台車であって、
前記少なくとも1つのギアボックス(8)を駆動するための請求項10に記載の少なくとも1つの自己通風式のけん引モータアセンブリをさらに備え、前記けん引モータは、前記対応するアクスル(3、4)と平行に、前記対応するアクスル(3、4)から離して配置され、前記ケーシング(12)は、前記フレーム(2)に機械的に取り付けられる、鉄道用台車。
【請求項12】
2つのギアボックス(8)、2つのアクスル(3、4)、ならびに各々がそれぞれのアクスル(3、4)を駆動するために対応するギアボックス(8)に接続された上流側の自己通風式のけん引モータ(6)および下流側の自己通風式のけん引モータ(7)、をさらに備える、請求項11に記載の鉄道用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、1つ以上の電気けん引モータによって駆動される電気車両の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、駆動軸領域の高温を緩和するための車両用けん引モータの冷却に関する。
【背景技術】
【0003】
以下では、長手方向および横方向を、該当の車両の通常の移動方向に平行および垂直な軸線と理解すべきである。同じことが、鉄道車両の通常の位置に対応する前部および後部ならびに上部および下部についても当てはまる。
【0004】
通常は、鉄道車両は、少なくとも2つの台車に機械的に接続された車体を備える。台車は、少なくとも1対の車軸(以下では、アクスルと呼ぶ)が取り付けられたフレームであり、ブレーキ装置と、アクスルをフレームに結合させる懸架アセンブリとを備える。けん引または自走鉄道車両の場合、台車の少なくとも1つのアクスルが、電気けん引モータによって駆動される。
【0005】
動作時に、けん引モータは空冷される。ファンがけん引モータの回転可能なモータシャフトの自由端に取り付けられ、回転可能なモータシャフトの他端が、例えばギアボックスによって駆動アクスルに接続されている自己通風式のけん引モータが周知である。けん引モータの回転可能なモータシャフトがアクスルを駆動するとき、ファンも回転し、ケーシングおよび回転可能なモータシャフトに沿って移動する軸方向の気流を発生させることにより、けん引モータの内部で発生した熱を外部に排出する。一般に、そのようなけん引モータは、気流の排気を下方に案内するために、ファンとは反対側のけん引モータの端部に気流フードを備える。
【0006】
台車のうちの気流フードが配置される領域は、気流フードの設置に利用することができる空間を著しく制限する上述のようないくつかの重要な機械的複合体を含む。さらに、けん引モータを冷却するために外部に排出される熱によって、高温領域が生じる可能性がある。
【0007】
先行技術において、気流フードは、下方に向けられ、けん引モータの長手軸の両側に対称に配置された気流出口を呈する。気流出口が下向きであることで、気流フードから吐き出される高温の空気は、道床へと導かれる。この気流フードの設計は、主に、台車のこの領域における空間的制約から生じ、鉄道車両の下部フレームの加熱を回避することを目的とする。しかしながら、この高温の気流が、この高温の気流によってけん引モータに隣接する機械的複合体を加熱することが妨げない。
【0008】
中国実用新案第208337341号明細書が、自己通風式のけん引モータのための気流フードであって、このけん引モータのケーシングに機械的に取り付け可能な気流フードを開示している。この気流フードは、前記ケーシング上に取り付け可能であり、前記けん引モータの長手軸を実質的に取り囲む本体を備える。さらに、この気流フードは、一端に気流入口を呈し、他端に気流出口を呈する空気ダクトを備える。
【0009】
したがって、台車のこの領域において機械的複合体が高密度であるにもかかわらず、例えばブレーキ装置またはギアボックスなどのけん引モータの周囲の機械的複合体の加熱の一因となることがないけん引モータの効率的な冷却が、必要とされている。
【0010】
さらに、自己通風式のけん引モータは、高い局所的な周囲温度に敏感である。例えば、2つのけん引モータが1つの台車に配置される場合、走行時に鉄道車両の下方に生じる気流に対して下流側のけん引モータの前方に位置する上流側のけん引モータが、いわゆる再循環作用を発生させる可能性がある。これは、上流側のけん引モータからの高温の空気が、下流側のけん引モータに取り込まれることを意味する。この再循環作用は、下流側のけん引モータの空気取入口が上流側のけん引モータの空気出口に或る程度整列するけん引モータの気流フードの共通の配置によって強調される。これにより、けん引モータが過熱し、寿命が短くなる可能性がある。
【0011】
通常は、空気の取入口および出口は、けん引モータの両端にあり、冷却気流は、回転可能なモータシャフトに取り付けられた内部ファンによって駆動される。けん引モータのデューティサイクル(行程)における時間平均損失は、10kW程度になる可能性があり、冷却空気を著しく加熱するで。冷却性能を最大化し、上記のようなけん引モータの下流に位置する台車の重要な機械的複合体の領域において実質的な温度超過を生じることなく、冷却気流が発生させる騒音を低減する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】中国実用新案第208337341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上流のけん引モータからの高温の空気が、例えば同じ台車または下流の台車に取り付けられた下流のけん引モータに達して取り込まれることを防止または軽減するなど、上述の技術的問題の全部または少なくとも一部を改善することである。さらに、車両の下部フレームまたは台車に取り付けられた他の複合体への高温空気の影響を防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため、本発明の第1の態様によれば、自己通風式のけん引モータのケーシングに機械的に取り付けることが可能な自己通風式のけん引モータのための気流フードが提案され、この気流フードは、前記ケーシング上に取り付け可能であり、前記けん引モータの長手軸を実質的に取り囲む本体と、一端部に気流入口を呈し、他端部に下方に向けられた気流出口を呈する空気ダクトとを備え、前記気流フードが前記ケーシング上に取り付けられたとき、前記気流フードは、ファンが取り付けられ、かつ回転可能なモータシャフトがアクスルを駆動すべく軸方向に突出している前記ケーシングの遠位軸端部とは反対側のケーシングの近位軸端部に位置する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記気流出口は、前記けん引モータの前記長手軸を含む垂直軸平面に対して非対称に配置される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、気流は、本体に実質的に軸方向に進入し、前記けん引モータと同軸な円筒に対して実質的に接線方向に気流出口によって出、かつ/または気流出口は、下方に面して実質的に水平に配置される。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、気流出口は、前記けん引モータの前記けん引モータによって駆動されるアクスルとは反対の側に配置される。
【0018】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記空気ダクトの断面が、気流出口に向かって漸進的に増大し、かつ/または気流出口は、前記気流フードの前記本体の下面の実質的にすべてに広がる。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、空気ダクトは、前記本体の前記アクスルとは反対の側に実質的に沿って延びる。
【0020】
あるいは、前記気流出口は、アクスルのけん引モータとは反対の側に配置され、かつ/または前記気流出口は、実質的に水平に配置される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、空気ダクトは、アクスルの他方側へと通過するように前記本体を過ぎて延び、かつ/または前記空気ダクトの断面が、気流出口に向かって漸進的に減少する。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、気流フードは、実質的にU字形であり、本体は、U字形の気流フードの第1の脚部を形成し、空気ダクトは、U字形の気流フードの第2の脚部を形成し、かつ前記けん引モータによって駆動されるアクスルは、U字形の気流フードの前記第1および第2の脚部の間に配置される。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、自己通風式のけん引モータが提案され、この自己通風式のけん引モータは、駆動力を伝達するためのシャフトによって延長された回転可能なモータシャフトを取り囲むケーシングと、自己通風式のけん引モータを通って長手方向に循環する冷却気流を生成するためにシャフト側において回転可能なモータシャフトに取り付けられたファンとを備える。自己通風式のけん引モータは、冷却気流排気を案内するための上述の気流フードをさらに備える。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、フレームと、前記フレームに回転可能に取り付けられた少なくとも1つのアクスルと、前記少なくとも1つのアクスルに機械的に接続された少なくとも1つのギアボックスとを備える鉄道台車が提案される。鉄道台車は、前記少なくとも1つのギアボックスを駆動するための上記で定義したような少なくとも1つの自己通風式のけん引モータをさらに備える。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、鉄道台車は、2つのギアボックス、2つのアクスル、ならびに各々がそれぞれのアクスルを駆動するために対応するギアボックスに接続された上流側の自己通風式のけん引モータおよび下流側の自己通風式のけん引モータを備える。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の種々の態様を達成するための非限定的な例として提供される本発明の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
説明は、本発明の種々の実施形態をやはり例として示す添付の図を参照する。
【0028】
【
図1】鉄道台車の右下方からの斜視図を示している。
【
図3】本発明の第1の実施形態による自己通風式のけん引モータの下方からの斜視図を示している。
【
図4】上下逆向きの気流フードの側面図を示している。
【
図5】本発明の第2の実施形態による気流フードを備える自己通風式のけん引モータの下方からの斜視図を示している。
【
図6】上下逆向きの
図5の気流フードの側面図を示している。
【0029】
同一または類似の特徴は、読者の便宜のために、すべての図において同じ参照符号で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1が、車両用の台車1を示しており、台車1は、2つのアクスル、すなわち台車1の前部の上流側アクスル3および台車1の後部の下流側アクスル4が回転可能に取り付けられたフレーム2を呈する。上流側および下流側は、方向5に走行しているときに車両の下方を移動する車両に対する気流に関して理解されるべきである。上流側けん引モータ6および下流側けん引モータ7が、それぞれギアボックス8を介して上流側アクスル3および下流側アクスル4を駆動して回転させる。上流側および下流側けん引モータ6および7は、自己通風式電気モータである。
【0031】
図2に示されるように、これらのけん引モータ6および7は、けん引モータの末端の冷却に関して閉鎖型よりも効果的ないわゆる半開放型のモータである。便宜上、以下では、上流側および下流側のけん引モータ6および7の代わりに、けん引モータ6のみを参照する。
【0032】
けん引モータ6によってもたらされる動力は、ファン19によって生成される冷却気流20によって達成されるけん引モータの冷却の性能に依存する。ファン19は、けん引モータ6の回転可能なモータシャフト18によって駆動される。ファン19は、ギアボックス8に接続された回転可能なモータシャフト18の端部に機械的に取り付けられる。けん引モータ6が回転するとき、ファン19が新鮮な空気を取り込み、とくには回転可能なモータシャフト18の周りのケーシング12に取り付けられたコイル巻線22およびコイル巻線22に対向して回転可能なモータシャフト18に取り付けられた磁石23を冷却するために、けん引モータ6の内部を通って軸方向に押し流す。けん引モータ6の熱を排出した後に、冷却気流20は、ギアボックス8とは反対側の端部によってけん引モータ6を出て、そこで気流フード9によって集められる。
【0033】
自己通風式のけん引モータ6は、鉄道車両に使用されるアセンブリの一部であり、ケーシング12と、自己通風式のけん引モータ6の水平長手軸17を中心にして回転できるモータシャフト18とを備える。ファン19は、冷却空気をケーシング12内へと吹き込むために回転可能なモータシャフト18によって駆動される。ファン19は、ケーシング12の遠位軸端部10に配置され、気流フード9は、前記冷却気流20をケーシング12から集めるために、ケーシング12の近位端部11において長手軸17を取り囲む。気流フード9は、集められた冷却気流20を外部へと下向きに導くための下向きの出口15を呈する空気ダクト16を備える。回転可能なモータシャフト18は、鉄道車両の1つ以上のアクスル3または4を駆動するためにケーシング12の遠位端部10から突出し、気流出口15は、長手軸17を含む垂直軸平面に対して非対称である。
【0034】
ファン19をけん引モータ6の遠位端部10に配置し、気流フード9を近位端部11に配置することにより、回転可能なモータシャフト18が気流フード9を通過する必要がないため、回転可能なモータシャフト18に沿った高温空気の漏れの問題が大幅に抑えられる。したがって、本発明によるこの配置は、高温の気流がけん引モータ領域内に位置する複合体間を循環することを回避するのに寄与する。これは、空気ダクト16および気流出口15が、高温の気流の排気をけん引モータ6から遠ざかるように下方に効果的に導き、そこで高温の気流の排気が台車1の下方の低温の空気の流れによって和らげられることで補強される。
【0035】
けん引モータ6に取り付けられた気流フード9は、けん引モータ6から逃げる高温空気を、車両の下方を移動する空気の流れが最も強い台車のフレーム2の下方の地面に向ける。これにより、気流フード9によって下向きに放出された高温空気が空気流とより効果的に混合され、空気温度の大幅な低下を引き起こす。これにより、けん引モータ6の冷却性能が向上する。とくには、上流側けん引モータ6の気流フード9によって放出され、下流側けん引モータ7のファンによって吸い込まれる空気がより低温になり、いわゆる空気再循環が下流側モータ7の冷却にあまり影響しない。
【0036】
けん引モータ6に取り付けられた気流フード9の詳細が、
図2および
図3に示されている。ギアボックス8の側のけん引モータ6の遠位端10において、回転可能なモータシャフトは、対応するギアボックス8(図示せず)に接続され、ギアボックス8の反対側の近位端11において、気流フード9が、好ましくは取り外し可能なやり方で、けん引モータ6のケーシング12に機械的に取り付けられる。加圧された冷却気流20が、けん引モータ6を効率的かつ均一に冷却するために、ケーシング12の全体にわたってケーシング12の内部を長手方向に循環する。次いで、加熱された冷却気流20は、けん引モータ6の近位端11から軸方向にケーシング12を出てケーシング12を離れ、回転可能なモータシャフトを取り囲み、気流フード9のうちの回転可能なモータシャフトを取り囲み、かつケーシング12に隣接する部分を通って、本体13に集められる。次いで、高温の気流は、本体13と空気ダクト16との間の接続部分に配置された気流入口14を通って空気ダクト16に移される。本体13は、加圧された高温の空気を気流フード9に通すように、けん引モータ6の近位端11を包む。次いで、本体13内に集められた高温の空気は、気流出口15によって気流フード9から出る。気流出口15は、気流入口14の反対側の空気ダクト16の第1の端部に位置する。気流出口15は、気流フード9の本体13から空気ダクト16内に移された後の加圧された高温空気が、空気ダクト16の気流出口15によって道床に向かって下向きに気流フード9から吹き出されるように、実質的に水平に配置されて下方に面する。
【0037】
気流出口15は、けん引モータ6の長手軸17を含む垂直軸平面に対して非対称に配置される。この配置により、気流フード9は、台車1のこの領域において利用可能な限られた空間を最適に使用することができ、その結果、気流フード9、とくには空気ダクト16の設計が、加熱された冷却気流20を、けん引モータ6を取り囲む熱に敏感な複合体から遠ざかるように道床へと効果的に導くことができる。さらに、加熱された冷却気流20は、台車の下方を移動する高速な空気流に向かって効果的に導かれ、そこで低温の空気と効果的に混合し、空気再循環の場合に下流側のけん引モータの過熱に寄与する可能性は低い。この非対称配置により、高温空気の1つの流れのみが気流フード9から吹き出し、これにより、気流フードから逃げる他の空気流によって発生する空気力学的乱流が回避される。
【0038】
流出する高温の気流は、けん引モータ6を実質的に軸方向に出て、本体13内で実質的に半径方向に向けられ、その後に空気ダクト16においてけん引モータ6と同軸な円筒に対する接線方向を取る。高温の気流が気流出口15によって気流フード9を出るときのこの接線方向の逃げ出し方向は、低温の空気の流れによる高温気流の効果的な緩和に寄与する。空気ダクト16の長さは、高温気流の方向を効果的に変え、高温気流の乱流を制限する役に立つ。空気ダクト16が長いほど、空気の排気は地面に近くなる。車両に対する気流は、地面に向かって徐々に増加し、したがって、高温空気のより低温の空気流への混合が、冷却の観点からより効果的になる。したがって、空気ダクト16は、上流側アクスル3(または、上流側けん引モータ6または下流側けん引モータ7のどちらを考慮するかに応じて、下流側アクスル4)の上方で本体13から遠ざかるように延びる。次いで、空気ダクト16は、上流側アクスル4の上流側けん引モータ6とは反対の側において、さらに下方に延びる。この配置により、空気ダクト16は、高温気流を効果的に導き、気流出口15における乱流を制限するための充分な長さを有することができる。
【0039】
この目的のために、気流フード9は、実質的にU字形である。ケーシング12に取り付けられた本体13は、U字形の気流フード9の第1の脚部を形成する。空気ダクト16は、アクスル3の側方に位置するU字形の気流フード9の第2の脚部を形成する。この配置により、アクスル3は、U字形の気流フード9の第1および第2の脚部の間に配置され、これにより、空気ダクト16は、その長さを最大にするために、利用可能な空間を効果的に使用することができる。
【0040】
空気ダクト16の高温気流を加速するために、空気ダクト16の断面は、本体13から気流出口15まで減少する。気流出口15から出る高温気流の速度も、台車1とレールとの間の低温空気流におけるその効果的な噴射に寄与する。
【0041】
図4および
図5が、本発明の第2の実施形態によるけん引モータ6に取り付けられた気流フード9を示している。気流フード9のこの実施形態において、気流出口15は、けん引モータ6によって駆動されるアクスル3とは反対側のけん引モータ6の長手軸17の側方に配置される。気流出口のこの配置は、気流フード9から出る高温空気がけん引モータ6の側方のアクスル3およびアクスル3の軸受(図示せず)を加熱することを回避する。
【0042】
気流出口15は、気流フード9の本体13の下側と同一平面上に水平に配置され、上述したように下方を向いている。空気ダクト16は、本体13の上側から本体13の下側の気流出口15まで、本体13の側方に沿って延びている。空気ダクト16のこの設計により、高温気流をレールまで下方に依然として充分に案内しつつ、よりコンパクトな設計の気流フード9を達成することができる。
【0043】
図4に示されるように、主に気流フード9のより安価な製造のために、空気ダクト16と本体13との間に分離壁は存在しない。あるいは、本体13と空気ダクト16との間に分離壁が配置されてもよい。空気ダクトの断面は、本体13および気流出口15との接続部から増加する。気流フード9のさらなる設計の選択肢によれば、気流出口15は、本体13の下側の実質的に全体において空気ダクト16を過ぎて延びる。これらの特徴は、高温の気流を地面に向かって下方にシームレスに逃がすために、空気ダクト全体の気流インピーダンスを低減するのに寄与する。
【0044】
上記の説明および図面は、本発明の特定の態様の種々の実施形態、とくには鉄道車両用の台車に実装された空気ダクトおよび気流出口の設計に関する。それらを、他のやり方で、例えば路面電車や地下鉄車両などのさまざまな文脈において、構成および実装することが可能である。例えば、説明において、台車はけん引モータによって駆動される2つのアクスルを備えている。あるいは、台車は、駆動されるただ1つのアクスルと、もう1つの非駆動アクスルとを備えてもよい。
【国際調査報告】