(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】プロゲリニンを含む顆粒剤及びそれを用いたサシェ剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/37 20060101AFI20250117BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250117BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20250117BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20250117BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20250117BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20250117BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
A61K31/37
A61K47/38
A61K47/10
A61K9/16
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/20
A61K47/44
A61K47/06
A61K9/48
A61P43/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541172
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 KR2023000926
(87)【国際公開番号】W WO2023146211
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0010690
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519379835
【氏名又は名称】ピーアールジー エスアンドテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PRG S&TECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】パク ホンギュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC50
4C076DD25B
4C076DD28C
4C076DD29B
4C076DD29C
4C076DD34C
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41C
4C076DD43
4C076DD43B
4C076DD57B
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
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4C076EE53C
4C076FF05
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4C076GG03
4C086BA17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZC52
(57)【要約】
本発明は、プロゲリニンを含む顆粒剤、それを用いたカプセル剤またはサシェ剤及びこれらの製造方法に関するものであって、より詳細には、早老症の治療効果を有する難溶性薬物であるプロゲリニンの患者適用時に、有利な剤形を開発するために特定の水溶性高分子、溶解増加剤及び賦形剤を最適の組成比率で含むプロゲリニン顆粒剤を開発し、顆粒剤を用いてカプセル剤またはサシェ剤のような経口用固形製剤を開発することにより、プロゲリニンの分散安定性及び生体利用率を改善するだけではなく、貯蔵、運送及び患者の服用順応度を改善することができた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記化学式1で表されるプロゲリニン20~40重量%と、
(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)5~15重量%と、
(c)D-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)1~10重量と、
(d)残量の添加剤と、を含むが、
前記プロゲリニンは、湿式ボールミリングして平均粒径(D50)が100~300nmに形成された薬物粒子であることを特徴とする、プロゲリニンを含む顆粒剤。
【化1】
【請求項2】
前記プロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~200nmであることを特徴とする、請求項1に記載の顆粒剤。
【請求項3】
前記添加剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の顆粒剤。
【請求項4】
前記賦形剤は、マンニトール、澱粉、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、乳糖、ブドウ糖、果糖、アルギン酸ナトリウム、及びヒドロキシプロピルスターチからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の顆粒剤。
【請求項5】
前記結合剤は、ゼラチン、アラビアゴム、ブドウ糖、エタノール、精製水、デキストリン、グリセリン、微結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカルボキシメチルセルロースカルシウムからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の顆粒剤。
【請求項6】
前記崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、澱粉、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、炭酸塩、及びデキストランからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の顆粒剤。
【請求項7】
前記滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、水素化植物油、タルク、カオリン、流動パラフィン、及び酸化マグネシウムからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の顆粒剤。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち何れか一項に記載の顆粒剤を含む、カプセル剤。
【請求項9】
請求項1から請求項7のうち何れか一項に記載の顆粒剤、甘味料及び香味料を含む、サシェ剤。
【請求項10】
(1)精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合してビヒクル溶液を製造した後、下記化学式1で表されるプロゲリニンを入れ、混合して懸濁液を製造する段階と、
(2)前記懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階と、
(3)前記ナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する段階と、を含むが、
前記(2)段階のナノ懸濁液内のプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmである粒子の形態であることを特徴とする、プロゲリニンを含む顆粒剤の製造方法。
【化2】
【請求項11】
前記(1)段階の精製水が50~70℃の温度であることを特徴とする、請求項10に記載のプロゲリニンを含む顆粒剤の製造方法。
【請求項12】
前記(2)段階で湿式ボールミリング時に、(1)段階の懸濁液とジルコニアビーズとを1:1~1:5の体積比で混合してミリングしてナノ懸濁液を製造することを特徴とする、請求項10に記載のプロゲリニンを含む顆粒剤の製造方法。
【請求項13】
(1)精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合してビヒクル溶液を製造した後、下記化学式1で表されるプロゲリニンを入れ、混合して懸濁液を製造する段階と、
(2)前記懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階と、
(3)前記ナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する段階と、
(4)前記顆粒化された顆粒をカプセルに充填する段階と、を含むが、
前記(2)段階のナノ懸濁液内のプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmである粒子の形態であることを特徴とする、プロゲリニンを含むカプセル剤の製造方法。
【化3】
【請求項14】
(1)精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合してビヒクル溶液を製造した後、下記化学式1で表されるプロゲリニンを入れ、混合して懸濁液を製造する段階と、
(2)前記懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階と、
(3)前記ナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する段階と、
(4)前記顆粒化された顆粒に甘味料及び香味料を添加してサシェに満たす段階と、を含むが、
前記(2)段階のナノ懸濁液内のプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmである粒子の形態であることを特徴とする、プロゲリニンを含むサシェ剤の製造方法。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性薬物であるプロゲリニン(Progerinin)を含む顆粒剤、それを用いたカプセル剤またはサシェ剤及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの有用な薬物は、水性媒質で低溶解度を有する疎水性であって、水性ビヒクルで懸濁液に剤形化することが難しい。特に、このような特性によって、水性媒質で疎水性薬物粒子の懸濁を促進させるために湿潤剤が度々必要である。表面活性湿潤剤(すなわち、界面活性剤)、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムが薬物粒子と懸濁液ビヒクルとの間の界面張力を減少させて、懸濁液ビヒクルが薬物凝集物及び/または薬物粒子気孔への浸透を可能にして、少なくとも部分的に水性媒質での疎水性薬物の懸濁性を増加させると知られている。しかし、薬物-懸濁の有利な効果以外に、懸濁液での界面活性剤の使用は、また可溶/溶解された遊離薬物の望ましくない結果を招く。
【0003】
可溶/溶解された薬物は、化学的分解及び/または他の成分との相互作用に脆弱であるために、遊離薬物を含有する懸濁液は、化学的に不安定である。低溶解性薬物の懸濁を促進するために、相対的に高い界面活性剤の量を使用するさらに他の望ましくない結果は、界面活性剤が気泡を安定化させるために、このような懸濁液の均質化または振盪の間に伴される空気が捕獲された状態で残る傾向がある。このような捕獲された空気は、撹拌力、撹拌期間及び撹拌経過時間によって変わるために、懸濁液の体積が変化して経時的な均一な投与量で投与しにくくするか、不可能にする。
【0004】
もし、低水溶解性の薬物が懸濁液として投与されれば、懸濁液は、適した投与量の均一性を提供するために緩やかな沈降を示すことが望ましい。逆に、迅速な沈降が発生すれば、ビヒクルの場合でのように、懸濁液は投与量の均一性を果たすために、毎投与前に振盪させなければならない。その他の因子(例えば、薬物粒子サイズ、均一性及び密度)が同等であれば、特定の懸濁液ビヒクルの粘度が増加するにつれて、薬物粒子の沈降速度が減少する。したがって、懸濁液は、適当に粘性であって、薬物粒子の沈降を抑制するか、緩慢化させることが望ましい。しかし、このような増加した粘度は、物理的安定性を促進させる一方、これは、また懸濁液を注ぐか、または投与することを難しくする。
【0005】
一方、下記化学式1の構造を有するプロゲリニンは、優れたプロゲリン発現抑制効果及びプロゲリンとラミンAとの結合抑制効果を示し、早老症が誘導された動物モデルの生存期間を延長させる効果を有する薬物であって、早老症の予防または治療用薬学組成物として用いられる。
【0006】
【0007】
前記プロゲリニンの化合物名は、(7S)-(+)-8,8-ジメチル-7-(3-フェニル-アリルオキシ)-7,8-ジヒドロ-6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン((7S)-(+)-8,8-Dimethyl-7-(3-phenylallyloxy)-7,8-dihydro-6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one)(これは、「SLC-D011」と名付けられる)である。
【0008】
プロゲリニンは、早老症に効果があるということを明らかにした薬物であって、BCS(Biopharmaceutical Classification System)の基準による水溶性媒質(aqueous media)で高い見掛け透過性(high apparent permeability)及び低い溶解度を示すBCSクラスII分子である。
【0009】
プロゲリニン薬物の低い水溶解性の特性によって治療的応用は非常に制限的である。このような限界を克服するために、重合体ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、自己-エマルジョン化薬物伝達システム、ナノエマルジョン、リポソーム、ナノ懸濁液及びナノ繊維などの使用のような多数の方法が研究されてきた。そのうち、ナノ懸濁液は、高分子、界面活性剤、またはこの両方ともがいずれもある条件下での安定化された薬物粒子のコロイド性の分散液を言う。ナノ懸濁液は、低い水溶解性と脂質溶解性とを示す薬物物質の伝達に使われる。ナノ懸濁液の小さな粒子は、非常に大きな薬物表面積を提供して不溶性薬物の溶解比率を増加させる。結果として、BCSクラスII及びIV化合物は、向上した生体利用率、速い活性及び他の望ましい生物薬剤学上の効果を示す。
【0010】
このような背景下で、本発明者らは、オイル基盤の溶液であるモノオレイン(monoolein)及びトリカプリン(tricaprin)混合物を用いて動物実験の進行が可能であったが、疾患の特性上、高容量及び長期服用が必要に応じてオイルに溶かされた剤形の使用が不可能であるということが分かり、長期服用が可能な新たな剤形の開発が必要な状態であるということを認知した。特に、前述したプロゲリニンは、水に対する溶解度が0に近いほどに難溶性であり、既存の摂取可能な溶媒に対しても、溶解度が非常に低くて新たな技術導入を通じて長期服用と人体吸収とが可能な剤形の開発が必要な状況である。
【0011】
また、本発明者は、大韓民国特許出願第10-2020-0113071号(2020年9月4日に出願)で生体吸収効率に優れたプロゲリニン薬物の粒径を最適化し、ナノ懸濁液の製造のための水溶性高分子、賦形剤などを選別して、優れた分散性または均一性及び向上した生体利用率を有する安定性が向上したプロゲリニンを含有する経口用ナノ懸濁液製剤を提供したことがあるが、貯蔵、運送及び患者服用の側面で不便さがあった。
【0012】
これにより、経口用ナノ懸濁液製剤を貯蔵、運送及び患者服用の側面で有利になるように改善された剤形の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、優れた生体利用率を有するプロゲリニンを含む顆粒剤及びその製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、優れた生体利用率と貯蔵、運送及び患者服用の側面で有利になるように改善された剤形を提供するために、プロゲリニンを含む顆粒剤を利用したカプセル剤またはサシェ剤及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を果たすために、本発明は、(a)下記化学式1で表されるプロゲリニン20~40重量%;(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)5~15重量%;(c)D-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(Tocopherol polyethyleneglycol succinate、TPGS)1~10重量%;及び(d)残量の添加剤と、を含むが、前記プロゲリニンは、湿式ボールミリング(wet type ball milling)して平均粒径(D50)が100~300nmに形成された薬物粒子であることを特徴とするプロゲリニンを含む顆粒剤を提供する。
【0016】
また、本発明は、顆粒剤を含むカプセル剤またはサシェ剤を提供する。
【0017】
また、本発明は、(1)精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合してビヒクル溶液を製造した後、化学式1で表されるプロゲリニンを入れ、混合して懸濁液を製造する段階;(2)前記懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階;及び(3)前記ナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する段階と、を含むが、前記(2)段階のナノ懸濁液内のプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmである粒子の形態であることを特徴とするプロゲリニンを含む顆粒剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、早老症の治療効果を有する難溶性薬物であるプロゲリニンの患者適用時に、有利な剤形を開発するために、特定の水溶性高分子、溶解増加剤及び賦形剤を最適の組成比率で含むプロゲリニン顆粒剤を開発し、前記顆粒剤を用いてカプセル剤またはサシェ剤のような経口用固形製剤を開発することにより、プロゲリニンの分散安定性及び生体利用率を改善するだけではなく、貯蔵、運送及び患者の服用順応度を改善することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】プロゲリニン懸濁液の薬物動態学(pharmacokinetic)の分析結果である。
【
図2】熱溶融押出法(HMT)を用いて製造した固体分散体の溶解度の測定結果である。
【
図3】高分子を多様な比率(1:1)で使用して熱溶融押出(Hot Melt Extusion)工程を用いて製造した固体分散体の溶解度の測定結果である。
【
図4】熱溶融押出工程を用いて製造した固体分散体に対する薬物動態学の分析結果である。
【
図5】噴霧乾燥(Spray drying)工程を利用した無定形固体分散体に対する溶解度の測定結果である(A:pH1.2、B:pH6.8)。
【
図6】噴霧乾燥工程を用いて製造した固体分散体に対する薬物動態学の分析結果である。
【
図7】ビーズを利用した湿式ボールミリングを用いて製造したナノ懸濁液の形状(上段)とプロゲリニン薬物の平均粒径を測定した結果(下段)である。
【
図8】本発明によるプロゲリニンの顆粒剤、カプセル剤及びサシェ剤の剤形の製造過程を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
本発明者は、難溶性薬物であるプロゲリニンの生体利用率を改善するために、プロゲリニンのナノ懸濁液を製造したことがあるが、実際、医薬品として開発される場合、貯蔵及び運送の問題と患者の服用順応度の側面も考慮しなければならないので、本発明では、前記ナノ懸濁液を利用したカプセル剤またはサシェ剤のような経口用固形剤形を開発することにより、本発明を完成したものである。
【0022】
本発明は、(a)下記化学式1で表されるプロゲリニン20~40重量%;(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)5~15重量%;(c)D-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)1~10重量%;及び(d)残量の添加剤と、を含むが、前記プロゲリニンは、湿式ボールミリングして平均粒径(D50)が100~300nmに形成された薬物粒子であることを特徴とするプロゲリニンを含む顆粒剤を提供する。
【0023】
【0024】
前記プロゲリニンは、デクルシン誘導体であって、(7S)-(+)-8,8-ジメチル-7-(3-フェニル-アリルオキシ)-7,8-ジヒドロ-6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オンである。本発明では、プロゲリニンを「SLC-D011」とも名付けることができる。
【0025】
プロゲリニンは、優れたプロゲリン発現抑制効果及びプロゲリン及びラミンAの結合抑制効果を示し、早老症が誘導された動物モデルの生存期間を延長させる効果を有する薬物であって、老化関連疾患である早老症の予防または治療用薬学組成物として用いられる。プロゲリニンは、水に対する溶解度が0に近いほどに難溶性であるが、本発明では、溶解度を向上させ、長期服用と人体吸収とが可能であり、貯蔵及び運送の問題と患者の服用順応の側面とを考慮した経口用固形剤形を提供する。
【0026】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、高分子懸濁化剤であって、溶液内のプロゲリニン及びその他の成分の分散を助ける成分であり、前記含量範囲未満に高分子懸濁化剤を含む場合、懸濁液の沈降率が不良となり、前記範囲超過の高分子懸濁化剤を含む場合、撹拌が難しくて製造が難しくなる。特に、高分子懸濁化剤が前記範囲超過に含まれる場合、撹拌が均一になされず、懸濁液の分散性が低くなり、これにより、製品の生産時に、含量未達の不良製品の量が増加する問題がある。
【0027】
前記D-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)は、溶解増強剤(Solubility enhancer)であって、難溶性薬物の溶解度を向上させる成分であり、前記範囲未満に溶解増強剤を含む場合、溶解度が低くなり、前記範囲超過の溶解増強剤を含む場合、毒性許容限界を超過することができて、前記範囲内で使用することが望ましい。
【0028】
前記懸濁液内の難溶性薬物であるプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmであることが望ましい。さらに望ましくは、平均粒径が100~200nmである。前記範囲内の平均粒径を有する場合、最も可溶性に優れ、ナノ粒子はさらに大きな表面積を有してさらに容易に溶解されるので、生体利用率または生体吸収効率を極大化することができる。また、前記平均粒径を有するナノ懸濁液の製造のためには、湿式粉砕装置であるアジテータービーズミルまたはダイノ-ミルなどを用いて湿式ボールミリングを通じて製造することができる。
【0029】
また、本発明のナノ懸濁液のpHは、5.5~8.5であり、望ましくは、6.0~7.0であり、前記ナノ懸濁液は、粘度が2~8.5mPa・sであり、望ましくは、7~8.5mPa・sでもある。
【0030】
また、本発明のナノ懸濁液に保存剤、pH調節剤または着色剤などを追加的にさらに含みうる。
【0031】
前記保存剤は、微生物の増殖または所望しない化学的変化による分解を防ぐ薬剤学的に許容可能な物質を意味する。前記保存剤としては、ソルビン酸カリウム(Potassium sorbate)などを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記pH調節剤は、所望の値に懸濁液のpHを調整するために使われる物質を意味し、クエン酸、クエン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸であるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記着色剤は、ナノ懸濁液の色を異ならせるために含まれるものであって、剤形に含んで所望の色を帯びるナノ懸濁液を製造するために使用することができる。本発明の技術分野で通常使われるものであれば、限定されず、本発明に含まれる。
【0034】
前記添加剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤である。
【0035】
前記賦形剤は、薬剤に適当な固さや形状を与えるために、または主成分の量が少ない場合に、一定の容量、重量を与えて扱いやすいサイズにする目的として添加される物質を意味する。前記賦形剤としては、マンニトール、澱粉、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、乳糖、ブドウ糖、果糖、アルギン酸ナトリウム、及びヒドロキシプロピルスターチからなる群から選択された1つ以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記結合剤は、成分の粒子を結合させて一定のサイズにする目的として添加される物質を意味する。前記結合剤としては、ゼラチン、アラビアゴム、ブドウ糖、エタノール、精製水、デキストリン、グリセリン、微結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカルボキシメチルセルロースカルシウムからなる群から選択された1つ以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
前記崩壊剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤などが消化液中で崩壊することを促進する目的として添加する物質を意味する。前記崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、澱粉、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、炭酸塩、及びデキストランからなる群から選択された1つ以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記滑沢剤は、粉粒体の流動性を良くして充填性を増加させる物質を意味する。前記滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、カオリン、流動パラフィン、及び酸化マグネシウムからなる群から選択された1つ以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、本発明は、前記顆粒剤をカプセル内に含むカプセル剤を提供する。
【0040】
また、本発明は、前記顆粒剤、甘味料及び香味料を含むサシェ剤(sachet)を提供する。
【0041】
前記甘味剤は、甘みを出すが、一般的にさらに少ない食品熱量を有する食品添加剤を称するものであって、天然または合成されたものをいずれも含み、前記甘味剤としては、スクラロースなどを含んで、食品及び医薬分野で通常使われるものであれば、特に限定されずに使われる。
【0042】
前記香味剤(flavor、flavor)は、自然的または合成的由来であるかを問わず、食品産業で一般的に使われる香味剤成分または組成物を含み、前記香味剤としては、ブドウ香などを含んで、食品及び医薬分野で通常使われるものであれば、特に限定されずに使われる。
【0043】
また、本発明は、(1)精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合してビヒクル溶液を製造した後、化学式1で表されるプロゲリニンを入れ、混合して懸濁液を製造する段階;(2)前記懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階;及び(3)前記ナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する段階;を含むが、前記(2)段階のナノ懸濁液内のプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmである粒子の形態であることを特徴とするプロゲリニンを含む顆粒剤の製造方法を提供する。
【0044】
各構成成分の役割とその使用量は、前述したところと同一であるので、重複された内容で追加的な説明は省略する。
【0045】
図8は、本発明によるプロゲリニンの顆粒剤、カプセル剤及びサシェ剤の剤形の製造過程を示すフローチャートである。
【0046】
まず、本発明において、前記(1)段階は、微粒化されたプロゲリニンをビヒクル溶液に混合する過程であって、具体的に、精製水に高分子懸濁化剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合する段階である。この際、精製水は、50~70℃の温度を有するものを使用することができ、望ましくは、60℃の温度を有する。このように混合した懸濁液(coarse suspension)は、常温で冷やした後、ナノ懸濁液(nanosuspension)の製造のために、次の段階を行う。
【0047】
次いで、前記(2)段階は、(1)の懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階である。ここで、湿式ボールミリングは、湿式粉砕装置であるアジテータービーズミルまたはダイノ-ミルなどを用いて湿式ボールミリングを行うことができる。ボールミリング条件は、薬物粒子の平均粒径が100~300nmになるまで進行することが望ましい。さらに望ましくは、平均粒径が100~200nmである。前記範囲内の平均粒径を有する場合、最も可溶性に優れ、薬物の生体利用率または生体吸収効率を極大化することができる。
【0048】
前記ボールミリングは、ナノ懸濁液の製造のための湿式ボールミリングであって、プロゲリニンナノ懸濁液の製造で重要な段階であり、チャンバ内で適したビーズサイズ、粉砕媒体及びAPI比率の選択、粉砕機チャンバの温度制御などが重要な役割を行うことができる。
【0049】
具体的に、ナノ懸濁液の製造時に、湿式ボールミリングは、(1)段階の懸濁液と平均粒径が0.1~1mmであるジルコニアビーズとを使用することができ、望ましくは、0.02~0.04mmであるものを使用することができる。また、(1)段階の懸濁液とジルコニアビーズは、1:1~1:5の体積比で使用することができるが、薬物の平均粒径(D50)を200nm以下に製造が可能であれば、条件に合わせて適切に変更可能である。
【0050】
次いで、前記(3)段階は、(2)段階で製造したナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する顆粒剤を製造する段階である。
【0051】
また、本発明は、(1)精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合してビヒクル溶液を製造した後、化学式1で表されるプロゲリニンを入れ、混合して懸濁液を製造する段階;(2)前記懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階;(3)前記ナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する段階;及び(4)前記顆粒化された顆粒をカプセルに充填する段階;を含むが、前記(2)段階のナノ懸濁液内のプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmである粒子の形態であることを特徴とするプロゲリニンを含むカプセル剤の製造方法を提供する。
【0052】
また、本発明は、(1)精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)を混合してビヒクル溶液を製造した後、化学式1で表されるプロゲリニンを入れ、混合して懸濁液を製造する段階;(2)前記懸濁液を湿式ボールミリングしてナノ懸濁液を製造する段階;(3)前記ナノ懸濁液に賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤からなる群から選択された1つ以上の添加剤を混合した後、流動層顆粒機内で顆粒化する段階;及び(4)前記顆粒化された顆粒に甘味料及び香味料を添加してサシェに満たす段階;を含むが、前記(2)段階のナノ懸濁液内のプロゲリニンは、平均粒径(D50)が100~300nmである粒子の形態であることを特徴とするプロゲリニンを含むサシェ剤の製造方法を提供する。
【0053】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものであり、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>脂質基盤のプロゲリニン溶液の製造及び限界
本発明者らは、プロゲリニン薬物の劣悪な生体利用率を克服するために、前臨床研究で脂質基盤製剤(monoolein:tricaprylin=2:1)を使用してプロゲリニン溶液を製造した。しかし、脂質基盤製剤は、不適切な薬物ローディング及び提案された臨床容量と予想される多量の脂質摂取によって臨床環境で使用するのに不適であると判断された。非晶質固体分散液(ASD)を生産しようとする制限された試みは、水性媒質に分散される時、非晶質固体分散液(ASD)が迅速な結晶化によって難点を経験しているということを示した。また、このような脂質基盤製剤は、不適切な薬物ローディング及び提案された臨床容量と予想される多量の脂質摂取によって臨床環境で使用するのに不適であると見なされる。
【0055】
これにより、本発明者らは、難溶性薬物であるプロゲリニンをナノ懸濁液に製造し、薬物の安定性を向上させるビヒクル組成物を選択して臨床用として最適化されたナノ懸濁液を具現しようとする。
【0056】
したがって、本発明者らは、難溶性薬物ナノ懸濁液の製造において、高分子、界面活性化剤のような安定化剤の選択、懸濁液内の粒子サイズが重要な要素であると判断し、まず、薬物内の薬物粒子のサイズは、生体吸収効率を決定するに当って、重要な要素であるので、以下の実験のように生体吸収効率に優れたプロゲリニン(SLC-D011)の平均粒径サイズを選定し、ナノ懸濁液の製造のための高分子、界面活性剤、保存剤などを最適化した。
【0057】
<1-1>プロゲリニン薬物の平均粒径(D50)の決定
前述したように、薬物内の薬物粒子のサイズは、生体吸収効率を決定するに当って、重要な要素である。これにより、本発明者らは、プロゲリニン薬物の生体吸収が円滑である直径サイズを設計するために、マウスを用いて化合物薬物動態学(PK)分析した。具体的に、マイクロサイズのプロゲリニンを含むマイクロ懸濁液(D50=1.5mm)、ナノサイズのプロゲリニンを含むナノ懸濁液1(Nano suspenstion 1=200nm(D=50))、及びナノ懸濁液2(Nano suspenstion 2=350nm(D=50))を製造した。この際、マイクロ懸濁液は、Vivapur powerを用いて製造し、2個のナノ懸濁液は、ジルコニアビーズ(zirconia bead)を用いて製造した。このように製造した懸濁液をマウスに10mg/kg、30mg/kg、100mg/kgを経口投与し、生体内の懸濁液の薬物動態学(PK)分析して結果を確認した(
図1)。
【0058】
図1の結果、平均粒子サイズが200nm以下である場合、薬物の生体吸収が円滑であると判断することができた。これにより、本発明者らは、200nm以下の平均粒径を有する薬物ナノ粒子を含む懸濁液の剤形に開発することにした。
【0059】
このような剤形を満たすことができる製造方法を考案するために、本発明者らは、熱溶融押出工程、噴霧乾燥工程、超高圧均質化器(Ultra-high pressure homogenizer)を利用した工程、ビーズを利用した湿式ボールミリングを利用した工程を行い、これらのうち、最も適したプロゲリニンナノ懸濁液の製造方法を選択しようとした。
【0060】
<1-2>熱溶融押出(HME)工程を利用した無定形固体分散体の製造
まず、熱溶融押出法を用いて多様な高分子(HPMCAS、HPC、HPMC、PVP VA64、Eudragit EPO、AEA)に対する固体分散体を製造した。この際、薬物と高分子との比率を1:3にして混合物を製造した。pH1.2緩衝液300mL(Eudragit EPO、AEA)またはpH6.8緩衝液300mL(HPMCAS、HPC、HPMC、PVP VA64)を溶出液にしてプロゲリニンとして100mgに該当する固体分散体に対する溶解度の試験を実施した(
図2ないし
図4)。溶出条件は、次の通りである:パドル法、温度:37℃、回転速度:150rpm。
【0061】
図2の結果、高分子としてHPMCASを使用した時、溶解度が最も高く向上することを確認した。
【0062】
次いで、溶解度が最も向上したHPMCASを再選定して多様な比率(1:2、1:2.5、1:3、1:4)で固体分散体を製造した。pH6.8緩衝液300mLを溶出液にしてプロゲリニンとして100mgに該当する固体分散体に対する溶解度の試験を実施した(
図3)。溶出条件は、次の通りである:パドル法、温度:37℃、回転速度:150rpm。
【0063】
図3の結果、薬物とHPMCASとの比率が1:3である時、溶解度が最も高く表われるということを確認した。しかし、実際にHME方法を通じて明るい色の黄色粉(light yellow power)の形態が得られ、固体形態に無定形を保持することを確認することができた。また、
図4の結果、HME方式で得られたパウダーの場合、水と合って直ちに沈殿で沈み、マウスを利用した生体吸収を確認した時、経口投与時に、生体内に吸収がほとんど起こっていない。
【0064】
したがって、現在、薬物の主要成分であるプロゲリニンは、熱溶融圧出工程で剤形の開発が不可能であると判断することができた。
【0065】
<1-3>噴霧乾燥工程を利用した無定形固体分散体の製造
前記実施例<1-2>の高分子を利用するが、噴霧乾燥工程を利用した無定形固体分散体を製造した。噴霧乾燥工程を用いて多様な高分子(HPMCAS、HPC、HPMC、PVP VA64、Eudragit EPO、AEA)に対する固体分散体を製造した。この際、薬物と高分子との比率を1:3にして混合物を製造した。pH1.2緩衝液300mL(Eudragit EPO、AEA)及びpH6.8緩衝液300mL(HPMCAS、HPC、HPMC、PVP VA64)をそれぞれ溶出液にしてプロゲリニン100mgに該当する固体分散体に対する溶解度の試験を実施した(
図5)。溶出条件は、次の通りである:パドル法、温度:37℃、回転速度:150rpm。
【0066】
図5の結果、熱溶融押出工程で製造した固体分散体と同様に高分子としてHPMCASを使用した時、pH1.2及びpH6.8で高分子の溶解度が最も高く向上することを確認した。
【0067】
しかし、マウスを利用した生体吸収(PK分析)を確認した時、HMEと類似に経口投与時に、生体内に吸収がほとんど起こっていない(
図6)。また、以外の他の高分子に高温及び多湿な環境下で2週間の安定性を確認した結果、プロゲリニン粒子の再結晶化が観察されて満足できない結果を得た(表1)。
【0068】
【0069】
したがって、現在、薬物の主要成分であるプロゲリニンは、噴霧乾燥方式で剤形の開発が不可能であると判断することができた。
【0070】
<1-4>超高圧均質化器を利用したナノ懸濁液の製造
本発明者らは、ナノ懸濁液を製造することができる他の方法として超高圧均質化器を用いてナノ懸濁液を製造した。具体的に、蒸留水が入っている100mLビーカーに高分子(HPMC 3cp)、界面活性剤(TPGS)を溶かした後、薬物(SLC-D011)を秤量して入れた後、2時間撹拌して懸濁液を製造した。超高圧均質化器に懸濁液を投入してナノ懸濁液を製造した(圧力:40000psi、1時間)。
【0071】
【0072】
前記表2は、薬物粒径を測定したものであって、3日後に粒子のサイズが増加したことを確認することができた。したがって、超高圧均質化器を利用したナノ懸濁液の製造は、経時的に粒子が大きくなる限界があった。これもまた、プロゲリニンナノ懸濁液の製造に適した方法であると見にくい。
【0073】
<1-5>ビーズを利用した湿式ボールミリングを利用したナノ懸濁液の製造
他の方法として、本発明者らは、ビーズを利用した湿式ボールミリングを利用したナノ懸濁液を製造した。具体的に、蒸留水が入っている100mLビーカーに高分子(HPMC 3cp)、界面活性剤(TPGS)を溶かした後、プロゲリニンを秤量して入れた後、2時間撹拌して懸濁液を製造した。ビーズ(Bead)と懸濁液とを入れたチューブをDeltaVita(登録商標)、Netzsch(Zentrimix 380R)装置に装着してナノ懸濁液を製造した(速度:1200rpm、温度:-10℃、6時間)。
図7は、前記製造方法で製造されたナノ懸濁液の形状(上段)と平均粒径を測定した結果(下段)である。
【0074】
図7の結果、平均粒径が170nmである薬物ナノ粒子が含まれたナノ懸濁液を製造することができた。ナノ懸濁液の安定性で薬物粒子の平均粒径が200nm以下である場合、最も可溶性に優れ、ナノ粒子はさらに大きな表面積を有してさらに容易に溶解されるので、生体利用率を極大化することができるということを確認することができた。
【0075】
これにより、本発明者らは、ビーズを利用した湿式ボールミリングを利用したナノ懸濁液を製造するが、薬物の平均粒径が200nm以下であるナノ懸濁液の製造に適したビヒクル組成物を選別する必要性があると判断し、最適化された高分子、界面活性化剤のような表面安定化剤及び保存剤を選別しようとした。
【0076】
<実施例2>最適化されたビヒクル溶液の選別
<2-1>プロゲリニンナノ懸濁液の製造
a)懸濁液製造(Suspension Preparation)((1)段階)
TPGS溶液は、TGPSを60℃のお湯に溶解させ、室温に冷却させて製造する。HPMC E3溶液は、HPMC E3を60℃のお湯に溶かし、室温に冷却させて準備する。その後、2つの溶液を撹拌して完全に混合する。懸濁液を準備するために、撹拌し続けながらAPI(Active Pharmaceutical Ingredient)としてプロゲリニンを徐々に混合された溶液に充填させた。
【0077】
b)ナノミリング(Nano Milling)((2)段階)
ミキシングと湿式粉砕装備であるアジテータービーズミル(Agitator Bead Mill)のパラメータは、湿式ボールミリングを始めるために適切に設定され、定圧ポンプは、懸濁液が循環されるように調節した。アジテータービーズミルから出た懸濁液は、既定の値35℃以下に保持しながら懸濁液容器に再び再循環された。薬物粒子がPSD(D50≦200nm)が達せられるまで湿式ボールミリングを進行し続けた。目標PSD(D50≦200nm)が達せられれば、ポンプがオフになり、ミリングサスペンションラインがサスペンション容器から分離された。
【0078】
c)安定性が向上したナノ懸濁液の製造((3)段階)
ナノミリングして得た懸濁液に保存剤としてソルビン酸カリウムを添加して完全に混合した。それを滅菌されたガラス瓶に入れて充填した。瓶充填作業は、100%肉眼点検及び充填重量点検で行われ、充填後に瓶はゴム仕上げ及びアルミニウムフリップ-オフシール(aluminum flip-off seal)で密封された。
【0079】
<2-2>最適化されたビヒクル溶液の選別
前記実施例<2-1>の方法で経口用プロゲリニンナノ懸濁液を製造した。具体的に、プロトタイプ1は、10.0重量%プロゲリニン、3.0重量% HPMC E3、1.0重量%界面活性剤TPGS及び0.2重量%ソルビン酸カリウムで構成されたものであって、TPGS及びHPMC溶液を混合し、プロゲリニンを入れて懸濁液を製造した。このように製造した混合物を0.3mm VHD ZrOビーズと1:1~5の体積比で混合してボールミリングを行った。容器の温度は、製造過程で綿密にモニタリングした。また、ミリングの間に、目標平均粒子サイズがD50≦200nmに到達するまで粒子サイズ分布をモニタリングした。プロトタイプ2ないしプロトタイプ5も、同じ方法で製造した。このように製造したナノ懸濁液を下記の方法で粒子直径、ゼータ電位、薬物の含量、分散性(Flowability)、粘度(Viscosity)を測定した。
【0080】
(1)粒子直径(D50)測定:約2μLのナノ懸濁液を1mLの水に分散させた後、サンプルチューブに入れて水性懸濁液に使われるゼータ電位(Zeta Potential)&パーティクルサイザー(Particle Sizer)(ZPPS)(Nicomp 380/ZLS、Nicomp)を用いて測定した。
【0081】
(2)ゼータ電位測定:粒子表面の電気的電荷を測定したものであって、コロイドシステムの物理学的安定性を示す。ゼータ電位は、レーザドップラー(Laser-Doppler)方法を使用して測定した。
【0082】
(3)薬物の含量測定:ナノ懸濁液総重量に対するプロゲリニンの含量を測定した。
【0083】
(4)分散性測定:分散性は、懸濁液の沈殿の有無によって肉眼で観察して評価した。
【0084】
(5)粘度測定:BROOKFIELD粘度計(TC-550MX-230)を用いてねじりモーメント(Torsional moment)32.9%、25℃の温度、200rpmのプローブ回転速度、13.03dyne/cm2せん断力、264.0 S-1せん断速度で1分間測定した。
【0085】
【0086】
前記表3を通じて、プロトタイプ1とプロトタイプ3との薬物粒子の平均粒径(D50)がそれぞれ165.8nm、146.3nmであって、いずれも平均粒径が200nm以下を満足し、不純物の検出なしに薬物含量は95%よりも高い値を示すということを確認することができた。
【0087】
したがって、プロトタイプ1とプロトタイプ3が、分散性、安定性、及び薬物の有効性の側面で最も適したビヒクル組成物であるということを確認することができた。一方、プロトタイプ4の場合、薬物の有効性の面で限界があって適したビヒクル組成物として選択することができなかった。プロトタイプ2の場合、経時的に粒子が増加する傾向があって候補群として不適切であった。プロトタイプ5の場合、ナノ懸濁液の形成自体が不可能であった。
【0088】
<実施例3>最適化賦形剤の選択
賦形剤との相溶性を評価するために、プロゲリニンをHPMC E3、TPGS及びソルビン酸カリウムと1:10の比率で混合し、2週にわたって40℃/75% RH条件で薬物(API)成分が有効であるか否かを測定した結果、プロゲリニン薬物にHPMC E3、TPGS、ソルビン酸カリウムを追加しても、薬物に影響がないということを確認することができた。特に、保存剤の場合、ミリング(milling)前に添加する場合、含量が減少することにより、ミリング後、後添加して完成することが望ましく、このような予備賦形剤の相溶性の研究は、薬物が賦形剤と相溶性があるということを示唆した。
【0089】
<実施例4>安定性の確認
ビヒクル溶液の選択過程で優れた粒子安定性を示したプロトタイプ1及びプロトタイプ3に対してプロゲリニンナノ懸濁液の安定化の研究をさらに行った。具体的に、2~8℃の条件、40℃/RH 75%の条件、または1.2Mのルクス露出下で3週にわたって評価した。プロゲリニンナノ懸濁液の安定化の研究は、3週間常温(25±5℃、60% RH)で行われた。プロゲリニンナノ懸濁液の粒子サイズと薬物含量と関連して特徴化した。その結果を表4及び表5に示した。
【0090】
【0091】
【0092】
表4及び表5のように、低温または苛酷条件でも、平均粒子サイズが200nm以下であって、3週以上のナノ薬物粒子の安定性を有するということを確認することができた。
【0093】
<実施例5>最適化されたプロゲリニンナノ懸濁液の模擬腸液(SIF)及び模擬胃液(SGF)内の安定性の確認
実施例<2-1>と同じ方法で製造するが、下記表6の成分及び含量でプロトタイプ1のナノ懸濁液を製造した。このように製造したナノ懸濁液について模擬腸液(simulated intestinal fluids、SIF)及び模擬胃液(simulatedgastic fluids、SGF)内の分散安定性を確認した。具体的な実験方法は、下記の通りである。
【0094】
【0095】
a)模擬腸液(SIF)
1000mlのボリュームフラスコに一塩基性リン酸カリウム(monobasic potassium phosphate)(6.8gm)及び水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)(0.616gm)を250mlの蒸留水と共に添加した後、前記成分が溶解されるまで回転させた後、700mlの蒸留水をさらに添加してpHを測定した。0.2N 水酸化ナトリウムまたは0.2N 塩酸(hydrochloric acid)を添加してpHをpH6.8+/-0.1に調節した。
【0096】
b)模擬胃液(SGF)
1000mlのボリュームフラスコに塩化ナトリウム(sodium chloride)(2gm)、750mlの蒸留水、及び7.0mlの濃塩酸(concentrated hydrochloric acid)を添加した後、1000mlの蒸留水を添加し、成分を回転させて混合した。この溶液のpHが1.2になるようにした。
【0097】
c)分散液の製造
HDPE蓋を有した半透明HDPEバイアル(25ml)に適量でプロトタイプ1のナノ懸濁液を添加した。この際、模擬胃液または模擬腸液15mlに希釈させて最終プロゲニン濃度が0.5mg/mlになるようにした。次いで、分散剤(dispersant)を添加した後、前記製造された剤形が完全に分散されるまで振った。このバイアルを37℃のオイルバス(oil bath)に凝結(flocculation)が表われるまで置いた。前記沈殿された粒子のサイズをHoriba-LA-910粒子分析器を用いて測定した。大体前記物質を空腹のヒト胃液でほぼ3時間培養した。
【0098】
d)平均粒径測定(particle size measurement)
不溶解性の粒子を含むビーズコア(beadコア)でコーティングされたビーズを測定する場合、SIFまたはSGF実験でビーズコアの重量を計算し、SIFまたはSGFのような体積でビーズコアを分散させた。HoribaLA-910チャンバに蒸留水120gmを注いだ後、機器が空白になるように排水した。その後、蒸留水120gmを注ぎ、培養された剤形(15mlのSGFまたはSIFで)の全体量をHoribaLA-910チャンバに注いだ後、平均粒径を測定した。
【0099】
【0100】
表7のように、平均粒径(D50)200nm以下のプロゲニン薬物(プロトタイプ1)は、模擬腸液または模擬胃液内でも薬物の平均粒径(D50)が190~220nmに保持されたので、分散の安定性及び薬物の生体利用効率が保持されたということを確認することができた。
【0101】
<実施例6>カプセルまたはサシェの製造
<6-1>ナノ懸濁液(10%、w/w)の製造
プロゲリニンナノ懸濁液(10%、w/w)を次の表の組成で製造した。
【0102】
【0103】
まず、55~60℃で精製水を調剤し、撹拌しながらTPGSを溶液製造容器に添加し、TPGSが完全に溶解されるまで55~60℃に加熱された恒温水槽を保持した。HPMC E3を撹拌しながら溶液製造容器に添加した後、固体が完全に溶解され、HPMC E3溶液が透明になるまで撹拌しながら周辺温度(15~25℃)まで冷やした。プロゲリニン(バッチフォーミュラC19010954-C)を溶液製造容器に徐々に満たし、撹拌し続けた。
【0104】
ミキシングと湿式粉砕装備であるアジテータービーズミルのパラメータを次の表9のように設定した。アジテータービーズミルから出た懸濁液を再び溶液製造容器にリサイクルし、溶液製造容器を冷却器に入れ、PSD結果がD50≦200nmになるまでミリングを続けた。
【0105】
【0106】
<6-2>250mg及び350mgの顆粒の製造
次の表10の組成でプロゲリニンサシェの剤形を製造した。前記準備したナノ懸濁液がある容器にマンニトール100SD、マンニトール200SD及びクロスカルメロースナトリウムSD-711を添加した。少なくとも2時間混合し、再分散剤が完全に溶解されたか否かを確認した。機械及び材料を予熱した後、顆粒化溶液(ノズルサイズ:1.0mm)を噴射した。入口空気の流れ、入口空気の温度及びスプレーの速度のを調整して全体スプレープロセスで適切な流動化を保持した。顆粒化過程が終われば、顆粒を乾燥させた。適切な時点でLOD(105℃で測定)をモニタリングし、LODが2.00%以下になるまで乾燥を中止した。乾燥後、入口空気の温度を25.0℃(20.0~30.0℃)に設定し、製品温度が35.0℃未満になるまで冷却を始めた。
【0107】
<6-3>プロゲリニンサシェの包装
前記準備された顆粒に甘味料(スクラロース)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)及び香味料(ブドウ香)を添加してR&D用サシェは、手動で満たし、Human PKバッチ生産では、Sachet Filling Machineが使われた。
【0108】
【0109】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
【国際調査報告】