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  • 特表-プラスチック熱分解加熱/反応方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】プラスチック熱分解加熱/反応方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20250117BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20250117BHJP
   C10B 53/07 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C10G1/10 ZAB
C08J11/12
C10B53/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541185
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 US2023010603
(87)【国際公開番号】W WO2023137068
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】63/266,809
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522005594
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボルティ,スディプト
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リャン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,テチュン
(72)【発明者】
【氏名】ソム,マノジ
(72)【発明者】
【氏名】ギモン,デビッド,リー
(72)【発明者】
【氏名】フェルナルド,ダニエル,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ジブ,リチャード,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルバネク,ロン
【テーマコード(参考)】
4F401
4H012
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401BA06
4F401CA70
4F401FA01Y
4F401FA06Z
4H012HB00
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC06
4H129BC12
4H129NA22
(57)【要約】
1つ以上の加熱段階において、廃プラスチックを初期温度からピーク熱分解温度に加熱することと、最終熱分解段階において、廃プラスチックの温度をピーク熱分解温度未満の熱分解反応温度で維持するのに十分な熱入力を提供し、廃プラスチックを熱分解反応温度で一定期間にわたって維持して、廃プラスチックの一部分を熱分解生成物及びピッチに変換することと、を含む、廃プラスチックを熱分解するためのシステム及びプロセス。プロセスは、熱分解生成物を回収することと、ピッチを回収することと、を更に含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを熱分解するためのプロセスであって、前記プロセスが、
1つ以上の加熱段階において、廃プラスチックを初期温度からピーク熱分解温度に加熱することと、
最終的な熱分解段階において、前記廃プラスチックの温度を前記ピーク熱分解温度未満の熱分解反応温度で維持するのに十分な熱入力を提供し、前記廃プラスチックを前記熱分解反応温度で一定期間にわたって維持して、前記廃プラスチックの一部分を熱分解生成物及びピッチに変換することと、
前記熱分解生成物を回収することと、
前記ピッチを回収することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記廃プラスチックの熱分解生成物への全体的な変換が、約90重量%~97重量%の範囲内にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記廃プラスチックのピッチへの変換が、約3重量%~10重量%の範囲内にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記廃プラスチックの1重量%未満が、コークス又はチャーに変換される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
廃プラスチックを熱分解するためのプロセスであって、前記プロセスが、
廃プラスチックを初期温度から第1の温度に加熱し、前記廃プラスチックを前記第1の温度で第1の期間にわたって維持して、第1の加熱プラスチックを生成することと、
前記第1の加熱プラスチックを第2の温度に加熱し、前記第1の加熱プラスチックを前記第2の温度で第2の期間にわたって維持して、第2の加熱プラスチックを生成することと、
前記第2の加熱プラスチックを第3の温度に加熱し、前記第2の加熱プラスチックを前記第3の温度で第3の期間にわたって維持して、第3の加熱プラスチックを生成することと、
前記第3の加熱プラスチックを第4のピーク温度に加熱し、第4の加熱プラスチックを生成することと、
前記第4の加熱プラスチックの温度を第5の温度に維持するために十分な熱入力を提供し、前記第4の加熱プラスチックを前記第5の温度で第4の期間にわたって維持することと、を含み、
前記第1の温度が、前記第2の温度未満であり、前記第2の温度が、前記第3の温度未満であり、前記第3の温度が、前記第4のピーク温度未満であり、前記第5の温度が、前記第4のピーク温度未満である、プロセス。
【請求項6】
前記第2の温度から前記第3の温度までの℃/分での加熱速度が、前記第3の温度から前記第4のピーク温度までの加熱速度未満である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記初期温度から前記第1の温度までの℃/分での加熱速度が、前記第1の温度から前記第2の温度までの加熱速度に等しい、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1の温度から前記第2の温度までの℃/分での加熱速度が、前記第2の温度から前記第3の温度までの加熱速度に等しい、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の期間、第2の期間、及び第4の期間が、各々、前記第3の期間よりも持続時間が長い、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第3の期間対前記第2の期間の比が、1:10~1:30の範囲内にある、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第4の期間対前記第3の期間の比が、3:1~12:1の範囲内にある、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
前記初期温度が、0℃~35℃の範囲内にあり、
前記第1の温度が、90℃~150℃の範囲内にあり、
前記第2の温度が、250℃~350℃の範囲内にあり、
前記第3の温度が、約300℃~450℃の範囲内にあり、
前記第4のピーク温度が、450℃~550℃の範囲内にあり、
前記第5の温度が、400℃~500℃の範囲内にある、請求項5に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第3の加熱プラスチックを、第4のピーク温度に加熱することが、
前記第3の加熱プラスチックを、50℃/分超の加熱速度で中間温度に加熱することと、
前記第3の加熱プラスチックを前記中間温度から前記第4のピーク温度に、15℃/分~30℃/分の範囲内の加熱速度で加熱することと、を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第3の加熱プラスチックを、50℃/分を超える加熱速度で中間温度に加熱することは、前記第3の加熱プラスチックを、100℃/分~200℃/分の範囲の速度で加熱することを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
廃プラスチックを熱分解するためのプロセスであって、前記プロセスが、
融解タンク内で廃プラスチック材料を加熱及び融解して、融解されたプラスチックを生成することと、
前記融解されたプラスチックを前記融解タンクから熱分解反応器に移送することと、
前記熱分解反応器において、前記融解されたプラスチックをピーク温度に加熱し、その後、前記融解されたプラスチックの温度を、前記ピーク温度未満の反応温度で一定時間維持することと、
熱分解油生成物を回収することと、
ピッチを回収することと、を含む、プロセス。
【請求項16】
廃プラスチックを熱分解するためのシステムであって、前記システムが、
廃プラスチックを初期温度から第1の温度に加熱し、前記廃プラスチックを前記第1の温度で第1の期間にわたって維持し、第1の加熱プラスチックを生成するために構成された第1の加熱ゾーンと、
前記第1の加熱プラスチックを第2の温度に加熱し、前記第1の加熱プラスチックを前記第2の温度で第2の期間にわたって維持し、第2の加熱プラスチックを生成するために構成された第2の加熱ゾーンと、
前記第2の加熱プラスチックを第3の温度に加熱し、前記第2の加熱プラスチックを前記第3の温度で第3の期間にわたって維持し、第3の加熱プラスチックを生成するために構成された第3の加熱ゾーンと、
前記第3の加熱プラスチックを第4のピーク温度に加熱し、第4の加熱プラスチックを生成するために構成された第4の加熱ゾーンと、
前記第4の加熱プラスチックの温度を前記第4のピーク温度未満の第5の温度で維持するのに十分な熱入力を提供し、前記第4の加熱プラスチックを前記第5の温度で第4の期間にわたって維持するために構成された第5の加熱ゾーンと、を備える、システム。
【請求項17】
各加熱ゾーンへの熱入力を制御するように構成された制御システムを更に備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第4の加熱ゾーンが、前記第3の加熱プラスチックを50℃/分~200℃/分の速度で加熱するのに十分な熱を提供するように構成された第1の加熱セクションと、前記第3の加熱プラスチックを15℃/分~30℃/分の速度で加熱するのに十分な熱を提供するように構成された第2の加熱セクションと、を含む、2つの加熱セクションを備える、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、廃プラスチック材料の熱分解に関する。より具体的には、本明細書における実施形態は、所望の生成物混合物及び全体的な変換を達成するための一連の反応工程を通じて廃プラスチック供給材料を漸進的に進めるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの熱分解は、多くの場合、バッチプロセスで実施され、バッチは、バッチの反応が完了するまで、単一の設定点温度まで上がるか、又は一定の熱入力速度で提供される。他のプロセスは、定義された設定温度及びゾーン当たりの滞留時間を伴い、一連の加熱ゾーンを通して供給物を進める。
【0003】
例えば、US7883605は、炭化水素材料を熱分解するためのプロセスを記載し、それによって、加熱速度は、0.25~27kW/kgの範囲内で、反応器電荷に基づいて、定義される。
【0004】
US10421911(Alterra)は、(更なる)不安定化及び脱ハロゲン化のためのゾーン、並びに熱分解された炭化水素材料の熱分解及び脱揮のためのゾーンを含む押出機セクション(少なくとも3つのゾーンを有する)及びマルチゾーン窯反応器(少なくとも2つのゾーンを有する)を記載する。窯及び押出機は、流体連通している。各ゾーンは、以下のように温度及び滞留時間を有する:
3つのゾーン(押出機1~3)、4つのゾーン(リボンミキサ+ねじコンベア4~7)。
ゾーン1-供給/押出機/粘性放散による加熱(電気エネルギーの入力)。
ゾーン2-圧縮-押出機-空気及び蒸気を排出、220°F及び0.1気圧で3分。
ゾーン3-融解-押出機、15~45分間、220~572°F。
ゾーン4-混合及び脱ハロゲン化、30~120分間、572~690°F、任意選択で、パラフィンワックス(30~70炭素数)の除去、開いたセグメントを有するリボンミキサ、任意選択的に、らせん状ねじなし、リボンミキサのみ。全凝縮性生成物のうち、2~22%は、ゾーン4からであり得る。
ゾーン5-熱分解、30~90分間、690~740°F(下)及び850~910°F(上)。
ゾーン6-脱揮、5psig(好ましくは0.8psig)未満で15~60分間、1100~1200°F(593~649℃)。
ゾーン7-チャー、15~30分間、最大1800°F。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一定の熱入力又は温度の上昇を有するこのようなプロセスは、多くのチャー又はコークスを生成し得、大量の望ましくない生成物をもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本明細書における実施形態は、より高い容量で高い液体収率を実現することを可能にし得る。更に、コークス又はチャーを生成する代わりに、望ましい液体生成物に加えて、本明細書における実施形態は、チャーの形成を可能にする代わりに、ピッチ生成物を生成し得る。
【0007】
一態様では、本明細書において開示される実施形態は、廃プラスチックを熱分解するためのプロセスに関する。プロセスは、1つ以上の加熱段階において、廃プラスチックを初期温度からピーク熱分解温度に加熱することと、最終熱分解段階において、廃プラスチックの温度をピーク熱分解温度未満の熱分解反応温度で維持するのに十分な熱入力を提供し、廃プラスチックを熱分解反応温度で一定期間にわたって維持して、廃プラスチックの一部分を熱分解生成物及びピッチに変換することと、を含む。プロセスは、熱分解生成物を回収することと、ピッチを回収することと、を更に含む。
【0008】
別の態様では、本明細書において開示される実施形態は、廃プラスチックを熱分解するためのプロセスに関する。プロセスは、廃プラスチックを初期温度から第1の温度に加熱することと、廃プラスチックを第1の温度で第1の期間にわたって維持し、第1の加熱プラスチックを生成することと、を含む。プロセスはまた、第1の加熱プラスチックを第2の温度に加熱することと、第1の加熱プラスチックを第2の温度で第2の期間にわたって維持し、第2の加熱プラスチックを生成することと、を含む。加熱して第2の加熱プラスチックを形成した後、プロセスは、第2の加熱プラスチックを第3の温度に加熱し、第2の加熱プラスチックを第3の温度で第3の期間にわたって維持し、第3の加熱プラスチックを生成すること、並びに第3の加熱プラスチックを第4のピーク温度に加熱し、第4の加熱プラスチックを生成することを含む。熱入力は、第4の加熱プラスチックの温度を第5の温度で維持し、第4の加熱プラスチックを第5の温度で第4の期間にわたって維持するために提供される。第1の温度は、第2の温度未満であり、第2の温度は、第3の温度未満であり、第3の温度は、第4の温度未満であり、第5の温度は、第4の温度未満である。
【0009】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、廃プラスチックを熱分解するためのプロセスに関する。プロセスは、融解タンク内で廃プラスチック材料を加熱及び融解して、融解されたプラスチックを生成することを含み得る。プロセスは、融解されたプラスチックを融解タンクから熱分解反応器に輸送することと、熱分解反応器において、融解されたプラスチックをピーク温度に加熱し、その後、融解されたプラスチックの温度をピーク温度未満の反応温度で一定時間にわたって維持することと、を更に含む。熱分解油生成物及びピッチは、各々、反応器から回収される。
【0010】
更に別の態様では、本明細書において開示される実施形態は、廃プラスチックを熱分解するためのシステムに関する。システムは、第1の加熱ゾーン、第2の加熱ゾーン、第3の加熱ゾーン、第4の加熱ゾーン、及び第5の加熱ゾーンの各々を含む。第1の加熱ゾーンは、廃プラスチックを初期温度から第1の温度に加熱し、廃プラスチックを第1の温度で第1の期間にわたって維持し、第1の加熱プラスチックを生成するために構成される。第2の加熱ゾーンは、第1の加熱プラスチックを第2の温度に加熱し、第1の加熱プラスチックを第2の温度で第2の期間にわたって維持し、第2の加熱プラスチックを生成するために構成される。第3の加熱ゾーンは、第2の加熱プラスチックを第3の温度に加熱し、第2の加熱プラスチックを第3の温度で第3の期間にわたって維持し、第3の加熱プラスチックを生成するために構成される。第4の加熱ゾーンは、第3の加熱プラスチックを第4のピーク温度に加熱し、第4の加熱プラスチックを生成するために構成される。第5の加熱ゾーンは、第4の加熱プラスチックの温度を第4の温度未満の第5の温度で維持するのに十分な熱入力を提供し、第4の加熱プラスチックを第5の温度で第4の期間にわたって維持するために構成される。
【0011】
他の態様及び利点は、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書において開示される1つ以上の実施形態による廃プラスチックを熱分解するためのシステムを例解する。
図2】本明細書において開示される1つ以上の実施形態による、廃プラスチックを熱分解するための反応温度-滞留時間プロファイルを例解する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書における実施形態は、廃プラスチックを有用な石油化学物質及び他の中間体又は最終生成物に変換するための熱化学プロセスを対象とする。より具体的には、本明細書における実施形態は、廃プラスチック変換プロセス中にコークスの形成を制限するか、最小限に抑えるか、又は無効化しながら、廃プラスチックを有用な石油化学製品に選択的に変換するように構成されたプロセス及びシステムを対象とする。
【0014】
例えば、プラスチック、エラストマー、及び他のポリマー材料などの廃棄材料は、本明細書における実施形態による熱分解を経て、ポリマー材料を分解し、熱分解油を形成し得る。次いで、そのような廃棄物由来の熱分解油は、触媒又は熱分解などの下流反応器において処理されて、オレフィン及び石油化学中間体を形成し得る。そのようなオレフィン及び石油化学中間体は、次いで、熱可塑性物質及びエラストマーポリマーを含むポリマー材料を再び形成するために使用され得、いくつかの実施形態では、真に環状のポリマーを提供する。
【0015】
廃棄物由来の炭化水素流は、本明細書における実施形態により、熱可塑性物質、タイヤ、又は他のポリマー材料などのポリマー材料を含む廃棄物流を熱分解し、廃プラスチック熱分解油を生成することによって誘導され得る。廃プラスチック熱分解油を形成するために熱分解され得るポリマーとしては、熱可塑性物質、熱硬化性物質、及びエラストマーが挙げられ得る。例えば、廃プラスチック熱分解油を形成するために熱分解を経る廃棄物としては、他の多くの熱可塑性物質の中でもポリスチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、ポリ乳酸、ナイロン、及びポリメチルメタクリル酸(PMMA)などのアクリルポリマーが挙げられ得る。本明細書において有用な廃プラスチック熱分解油はまた、ポリブタジエン、イソプレン、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル、及び多くの他のものなど、当該技術分野で既知の様々な不飽和又は飽和エラストマー及びゴムから形成され得る。本明細書における実施形態は、上記で列挙されるもの、並びに当該技術分野で既知の他のものを含む、ある量のヘテロ原子含有ポリマーを処理するのに十分に堅牢であり得る、しかしながら、結果として生じる廃プラスチック熱分解油のヘテロ原子含有量は、典型的には、2重量%未満、例えば、1重量%未満、又は0.5重量%未満であろう。
【0016】
本明細書における実施形態によるプラスチック原料の熱分解は、プラスチック原料を、約350℃~約600℃などの、300℃~850℃の範囲内にある温度などの高温に加熱することによって行われ得る。プラスチックの熱分解は、軽質気体炭化水素生成物及び液体炭化水素生成物を含む、様々な炭化水素を生成し得る。
【0017】
プロセスの熱メカニズムは、本質的に非触媒であり、熱破壊によってプラスチック原料中のポリマー結合を破壊する。熱分解の程度は、融解タンク及び反応器の温度に関する。概して、温度が高いほど、原料プラスチックの熱分解量が大きくなり、生成物の分子量が低くなる(すなわち、ポリマー鎖は、より少ない炭素原子でより小さいセグメントに分解される)。したがって、使用されるプロセス温度は、高すぎる状態(より高い気体製造及びより軽い低粘度の液体生成物をもたらす)と、低すぎる状態(より低い気体収率及びより重い高粘度の液体生成物をもたらす)との間のバランスをとる作用である。
【0018】
原料プラスチックの組成物における変化は、廃プラスチック材料を融解及び熱分解するための好ましい温度に影響を与えることになる。特に、原料中のPVC並びに高密度PP及びPEの量の増加は、温度の上昇を必要とすることになる。同様に、原料中のPVCの量の低減とともに、低密度PP及びPEの量の増加は、より低いプロセス温度の使用を可能にすることになる。
【0019】
融解及び熱分解後、本明細書における実施形態は、次いで、分画を使用して、気体及び液体を所望の生成物流に分離し得る。本明細書における実施形態は、以下の生成物スレート:(i)可燃性熱分解気体、(ii)未処理ナフサ又はガソリンと同様の物理的及び化学的特性を有するより軽い液体生成物、(iii)未処理ディーゼル及び重油と同様の物理的及び化学的特性を有するより重い液体生成物、並びに(iv)他の精製プロセスからのアスファルテンとブレンドすることができる重質液体ピッチ生成物を提供し得る。
【0020】
本明細書における実施形態の1つの利点は、プラスチック原料組成物及び容量における変形を処理するためのその単純さ及び柔軟性である。更に、本明細書におけるプロセスの実施形態は、いかなる触媒又は添加剤の添加を必要としないため、プロセスは、生成物の収率及び特性を制御するために、非常に簡単な一次プロセス制御(すなわち、温度)を必要とする。特に、本明細書における実施形態は、融解及び熱分解段階全体の温度を制御して、熱分解液体を選択的に生成し、一方でチャー又はコークスの形成がほとんど又はまったくないことを対象とする。
【0021】
本明細書における実施形態による廃プラスチックを融解及び熱分解するためのプロセスは、バッチ、半バッチ、又は連続操作で実行され得る。複数のタイプの反応器設計は、本明細書において開示されるプロセスに対応するために使用され得る。更に、本明細書におけるプロセスは、全ての融解及び反応段階のための単一の容器などの1つ以上の容器若しくは反応器、又は廃プラスチックを融解するための第1の容器及びポリマー融解物を熱分解するための第2の容器などの複数の容器内で実施され得る。
【0022】
特に、本明細書における実施形態によるプロセスは、目標温度及び変換を達成するために、別個の持続時間にわたって定義された加熱速度のシーケンスを通してプラスチック供給材料を漸進的に進めることができる。1つ以上の加熱段階では、廃プラスチック材料は、初期温度からピーク熱分解温度に加熱され得る。ピーク熱分解温度に達した後、最終熱分解段階では、熱入力が提供され得、これは、ピーク熱分解温度未満の熱分解反応温度で廃プラスチックの温度を維持するのに十分であり得る。熱分解反応温度における廃プラスチックは、一定期間にわたって維持されて、廃プラスチックを熱分解生成物及びピッチに変換することができる。
【0023】
上述したように、ポリマーを熱分解のために単一の設定点温度に達するようにするか、又は著しい量のチャーを形成する温度まで加熱し続けることは、現在一般的な慣行である。これらのプロセスとは対照的に、目標温度又は安定した熱入力を達成しようとするのではなく、供給物の加熱速度を制御することによって、全体的な反応速度及び収率のより大きい制御が達成されることが見出されている。可能な場合は迅速に、必要な場合はゆっくりと熱を追加することによって、プロセスの全体的な期間が最適化され得る。これにより、大容量の連続プラントのためのより経済的な反応器設計がもたらされ得る。更に、30重量%未満、又は40重量%未満、又は50重量%未満、又は60重量%未満の変換が達成される場合など、変換プロセスにおける早い段階でピーク温度に達することによって、ピーク熱分解温度よりも低い温度で熱分解反応が進行するために著しく多くの水素が利用可能であり、非常に低量のコークス又はチャーの形成をもたらす。
【0024】
本明細書における実施形態は、熱分解反応が発生しそうにない、又は非常に遅い速度で発生する温度までの融解された供給物の急速な加熱を目的とし得る。これは、加熱表面の需要を低減しながら、高気体発生の可能性を無効化するか、又は低減する場合がある。これに、高温に低減された加熱速度が続く。この工程は、プラスチック供給物全体に均一な方式で感知可能な熱伝達を可能にする。高温は、変換プロセスの初期段階で反応速度を最大化するのに役立つ。この工程における短い滞留時間が、所望の変換を達成する。プラスチックが反応を促進するために必要なより感度の高い熱を有する最高温度でピークに達した後、1つの工程の余分な熱が、次の工程に搬送されて、エネルギーを提供する。このエネルギーキャリーオーバーは、反応温度が最も高く、最も熱が必要とされる瞬間に、熱伝達境界を通過するために必要な外部エネルギー需要を低減させる。このため、次の工程は、より低い温度で動作して、チャー又は固体コークスの代わりに最大の液体及びピッチを生成する。追加的に、より低い温度は、コークス製造に寄与するポリ芳香族形成反応を抑制する。いくつかの実施形態では、2重量%未満の供給物廃プラスチックがコークスに変換され得、他の実施形態では1重量%未満、更に他の実施形態では0.5重量%未満、更に他の実施形態では0.1重量%未満である。最終反応温度保持時間に応じて、供給プラスチックの重量に基づいて、90重量%超の変換、例えば、94重量%超、95重量%超、又は96重量%超などが達成され得る一方、ピッチは、3重量%~10重量%の範囲内で生成され得る。様々な実施形態では、本明細書における実施形態によって生成された生成混合物は、廃プラスチックの熱分解液体(65重量%~75重量%)、熱分解気体(20重量%~30重量%)、及びピッチ(2~8重量%)への変換を提供し得る。廃プラスチックからコークスへの変換は、ほとんど又はまったく発生しない。
【0025】
本明細書における1つ以上の実施形態は、プラスチック原料の融解流が以下のように一連の別個の工程、段階、又はゾーンにおいて熱分解反応を通る連続的又はバッチプロセスを対象とする。プロセスのタイプ又は工程、段階、若しくはゾーンの数にかかわらず、ピーク温度を達成し、次いでピーク温度未満で熱分解を継続するプロセス法は、上で説明されたような好ましい生成物混合物を提供することが見出されている。
【0026】
工程1では、連続的な融解された供給物又はバッチ搭載を、250℃~415℃、又は275℃~410℃、例えば、300℃~400℃の温度でプロセスに導入する。再凝縮しない生成された気体及び蒸気は、システムを離れ、残りの供給物/バッチが、次の工程に進む。
【0027】
工程2では、熱エネルギーを、30℃/分~200℃/分の速度、例えば、50℃/分~175℃/分の速度で供給物/バッチに追加する。この工程の目標温度は、380℃~450℃、例えば、400℃~430℃である。生成され、再凝縮しない蒸気がシステムを出て、残りの供給物/バッチが次の工程に進む。この工程では、最大加熱速度が目標とされる。
【0028】
工程3では、熱の形態の熱エネルギーを、15℃/分~30℃/分、例えば、約20℃/分~25℃/分の速度で供給物/バッチに追加する。この工程の目標温度は、450℃~550℃、例えば、470℃~500℃の温度である。生成され、再凝縮しない蒸気はシステムを出て、残りの供給物/バッチが次の工程に進む。反応のこの工程において、最大反応速度が達成され、かつ目標とされる。
【0029】
工程4では、液体生成物を最大化するのに役立つ反応速度を遅くするために、この工程を使用して、供給物の吸熱反応を使用することによって、残りの供給物を425℃~485℃、例えば、435℃~475℃の温度に冷却する。いくつかの実施形態では、この工程を使用して、残りの供給物を435℃~465℃又は445℃~465℃の温度に冷却する。十分な量の熱が供給物/バッチに追加されて、追加された正味の熱、及び吸熱反応によって消費された熱がバランスをとり、所望の温度に達し、かつ所望の温度を維持する。これにより、全体的な加熱速度は-20℃/分~-200℃/分になる(負の符号は冷却を示す)。生成され、再凝縮しない気体及び蒸気は、システムを出て、残りの供給物/バッチが次の工程に進む。組み合わされた工程1~4は、いくつかの実施形態では、合計で2~60分、例えば、2~20分の持続時間であり得る。
【0030】
工程5では、熱エネルギーを加えて、425℃~475℃、例えば、435℃~465℃の範囲内のより低い反応温度を維持する。この工程におけるより低い反応温度は、コークス化を最小限に抑え、液体収率を更に高め、重質液体中の芳香族を最小限に抑えるために使用される。この工程では、最大90重量%、最大95重量%、又は最大97重量%の供給物の全体的な変換が達成され、液体形態の残りのピッチ材料が結果として生じる。この工程における滞留時間は、15分~60分、又は所望の変換を達成するために必要な滞留時間が維持される。ピッチは、反応システムから液体として取り出される。熱分解生成物は、蒸気として取り出される。
【0031】
上記の工程は、例えば、既に融解されたプラスチックを用いて、本明細書における実施形態によるバッチ又は連続熱分解反応器において実施され得るプロセスを概説する。本明細書における実施形態は、記載された工程又は同様の工程を有する上述の反応段階前の融解段階を含む、単一の容器において実施され得る。本明細書における他の実施形態は、融解されたポリマーを提供するための融解ゾーン/融解段階と、融解されたプラスチックを熱分解油に変換するための熱分解ゾーン/反応段階と、を含む複数の容器内で実施され得る。
【0032】
融解ゾーンは、プラスチック廃棄物を、ポリマーが融解されるために十分に高い温度であるが、熱分解反応が発生しにくいような十分に低い温度に加熱するために使用される(融解温度での滞留時間1時間当たり2重量%未満の変換、例えば、1時間当たり1重量%未満の変換)。次いで、融解されたプラスチックは、熱分解ゾーンに移動され得、ここで、融解物は、最初にピーク温度に加熱され得、続いて、ピーク温度未満の熱分解温度における継続的な反応が続く。
【0033】
本明細書における実施形態による熱化学プロセスの簡略化されたプロセスフロー図が、図1に例解される。プラスチック廃棄物供給物10は、プラスチックを熱分解油に変換するために熱分解反応領域20に供給され得、熱分解油は、軽質(C1~C4)炭化水素、ナフサ範囲の炭化水素、ディーゼル範囲の炭化水素、及び場合によりピッチまでのより重い炭化水素などの様々な炭化水素を含み得る。ピッチは、副産物流12として回収され得、残りの変換生成物(熱分解油及び熱分解気体)は、1つ以上のフローライン14を介して回収され得る。次いで、フローライン14内の熱分解油/気体は、熱分解油を、前述の軽質炭化水素15、ナフサ16、ディーゼル18、及び重質油画分19などの様々な炭化水素画分に分離するために蒸留分離領域22に供給され得る。様々な実施形態では、熱分解プロセスにおいて生成された気体は、例えば、軽質炭化水素15の一部分を熱分解反応領域20内の炉若しくは加熱デバイスに再循環させることによって、プロセス自体のためのエネルギー源として利用され得るか、又は捕捉され、分離されて、生成物として販売され得る。
【0034】
ポリマー供給物を融解及び熱分解するために使用される1つ以上の容器への熱入力は、容器の外部ジャケット内のバーナー及び燃焼排気チャネルを介したものであり得る。代替的に、電気加熱要素が使用され得るか、又は加熱流体を使用して、1つ以上の外部ジャケット若しくは内部コイルに熱を供給してもよい。全体として、本明細書の実施形態は、任意の1つの加熱方法に限定されないが、いくつかの方法は、他の方法よりも加熱速度のより大きい制御を提供し得る。制御システムが提供され得、制御システムは、以下で更に説明されるように、バルブ及び他のシステム構成要素を操作して、各加熱ゾーンへの熱入力を制御して、加熱速度及び温度を提供するように構成され得る。
【0035】
別個の融解及び反応セクションを使用する本明細書における実施形態では、反応は、典型的なプラスチック熱分解プロセスと比較して、はるかに小さい滞留時間(合計15~90分、例えば、17.5~75分)を伴い、相対的に低い熱分解温度で実行され得る。例えば、455℃~475℃の最高温度で最長の滞留時間ゾーンを動作させ、チャーを形成させる代わりにピッチ生成物を除去することによって、コークス化を最小限に抑える。
【0036】
全体的に、融解及び反応段階は、以下のように概説され得る。融解段階では、廃プラスチック材料は、初期温度から融解温度に加熱され得る。融解温度は、熱分解反応温度未満であり得る。いくつかの実施形態では、融解工程は、廃プラスチックを初期温度(T)から第1の温度(T)に加熱し、廃プラスチックを第1の温度で第1の期間にわたって維持し、第1の加熱プラスチックを生成する第1の工程、及び第1の加熱プラスチックを第2の温度(T)に加熱し、第1の加熱プラスチックを第2の温度で第2の期間にわたって維持し、第2の加熱プラスチックを生成する第2の工程などの複数の工程において実施され得る。第1の加熱工程は、例えば、廃プラスチック供給物とともに存在し得るあらゆる水分を除去するために提供され得、廃プラスチック供給物は、リサイクラーから、又ははつり若しくは細断システムなどの大量ポリマー廃棄物の上流処理から受容され得るような、細断されたプラスチック、ペレット、小繊維、チップ、又は塊の形態にあり得る。水分除去は、例えば、高温窒素を使用して発生し得、これは、ポリマー廃棄物を100℃超であるがポリマーの融解温度未満の温度まで加熱し得る。水分除去後、ポリマーは、使用される融解温度が、処理されているポリマー廃棄物混合物に依存し得ることに留意して、200℃~400℃の範囲内にある温度など、ポリマーを融解するのに十分な温度まで加熱され得る。融解物の温度は、上述したように、この工程において、熱分解反応を開始するのに必要とする温度よりも低い温度で維持される。次いで、ポリマー融解物は、この温度で、熱分解前の融解された状態、又は熱分解反応ゾーンへの移送のために維持され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、初期温度(T)は、大気温度であり得る。例えば、廃プラスチックは、約-10℃~40℃、例えば、0℃~35℃の範囲内にある温度で貯蔵され得る。第1の温度(T)は、約80℃~約200℃、例えば、約90℃~約150℃の範囲内にあり得る。第2の温度(T)は、約200℃~約400℃、例えば、約225℃~約375℃、又は約250℃~約350℃の範囲内にあり得る。
【0038】
反応段階では、熱分解は、融解されたポリマーを第2の温度からピーク熱分解温度に加熱することによって行われ得る。ピーク熱分解温度までの加熱はまた、複数の工程で行われ得る。例えば、第1の熱分解工程は、第2の加熱(融解された)プラスチックを第3の温度(T)に加熱し、第2の加熱プラスチックを第3の温度で第3の期間にわたって維持し、第3の加熱プラスチックを生成するために使用され得る。第2の熱分解工程は、第3の加熱プラスチックを第4のピーク温度(T)に加熱し、第4の加熱プラスチックを生成することを含み得る。次いで、第4の加熱プラスチックの温度を第5の温度で維持し、第4の加熱プラスチックを第5の温度で第4の期間にわたって維持するのに十分な熱入力を提供することによって、第4の温度よりも低い第5の温度(T)で熱分解を継続し、廃プラスチックの所望の変換が達成されるまで熱分解反応を進行させ得る。
【0039】
第3の温度(T)は、約275℃~約475℃、例えば、約285℃~約465℃、又は約300℃~約450℃の範囲内にあり得る。第4の温度(T)は、約400℃~約600℃、例えば、約425℃~約575℃、又は約450℃~約550℃の範囲内にあり得る。第5の温度(T)は、約400℃~約525℃、例えば、約400℃~約500℃、又は約425℃~約475℃の範囲内にあり得る。
【0040】
上で概説したように、複数の加熱工程が、融解及び熱分解のために使用される場合、T1はT2未満、T2はT3未満、T3はT4未満、及びT5はT4、ピーク熱分解温度未満である。各加熱工程は、次の加熱工程の前の温度安定化(保持)時間を含み得る。かかるプロセス法は、液体/気体生成物の比、生成された液体画分の品質、並びに残留コークスを最小限に抑えることなどの生成物目標を達成し得る。
【0041】
様々な実施形態では、第1の期間、第2の期間、及び第4の期間は、各々、第3の期間よりも持続時間が長い。第3の期間対第2の期間の比は、いくつかの実施形態では、1:5~1:50、他の実施形態では、1:10~1:30などの範囲内にある。第4の期間対第3の期間の比は、いくつかの実施形態では、2:1~15:1の範囲内にあり得、他の実施形態では、3:1~12:1などであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、加熱又は熱分解反応は、ダウンフロー反応器内で連続的なプロセスとして行われ得、低温ポリマー又はポリマー融解物を容器又は反応器の上部に導入し、ポリマー融解物又はピッチを容器又は反応器の底部で取り出す。そのようなダウンフローシステムでは、容器のセクション又はゾーンにおいて生成された蒸気の熱エネルギーを利用して、容器の上流セクション又はゾーンに熱を提供し得る。蒸気の一部は、熱交換後に凝縮し、反応システムに戻ることができ、有効滞留時間を増加させることによって二次反応を促進する。これらの二次反応は、より多くの液体生成物の生成を促進し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、初期温度から第1の温度までの℃/分での加熱速度は、約10℃/分~30℃/分の範囲内にある。初期加熱速度は、第1の温度から第2の温度までの加熱速度と同様であってもよいか、第1の温度から第2の温度までの加熱速度に等しくてもよいか、第1の温度から第2の温度までの加熱速度より大きくてもよいか、又は第1の温度から第2の温度までの加熱速度未満であってもよい。いくつかの実施形態では、初期加熱速度は、第1の温度から第2の温度までの加熱速度と同様であってもよいか、又は第1の温度から第2の温度までの加熱速度に等しくてもよい。例えば、第1の温度から第2の温度までの加熱速度は、5℃/分~40℃/分、10℃/分~30℃/分、又は20℃/分~25℃/分の範囲内にあり得る。同様に、第1の温度から第2の温度までの加熱速度は、第2の温度から第3の温度までの加熱速度と同様であってもよいか、第2の温度から第3の温度までの加熱速度に等しくてもよいか、第2の温度から第3の温度までの加熱速度より大きくてもよいか、又は第2の温度から第3の温度までの加熱速度未満であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の温度から第2の温度までの加熱速度は、第2の温度から第3の温度までの加熱速度と同様であってもよいか、又は第2の温度から第3の温度までの加熱速度に等しくてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、第2の温度から第3の温度までの℃/分での加熱速度は、第3の温度から第4の温度までの加熱速度未満である。例えば、第2の温度から第3の温度までの加熱速度は、5℃/分~40℃/分、10℃/分~30℃/分、又は20℃/分~25℃/分の範囲内にあり得る。例えば、第3の温度から第4の温度までの加熱速度は、15℃/分~250℃/分、例えば、20℃/分~200℃/分の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態では、第3の温度から第4の温度までの加熱速度は、2つの加熱セクションにおいて、第3の加熱プラスチックを50℃/分超の加熱速度で中間温度に加熱し、次いで、第3の加熱プラスチックを中間温度からピーク温度に、10℃/分~40℃/分、例えば、15℃/分~30℃/分の範囲内にある加熱速度で加熱することなどの複数の段階で実施され得る。第3の加熱プラスチックを、50℃/分超の加熱速度で中間温度まで加熱することは、75℃/分~225℃/分、例えば、100℃/分~200℃/分の範囲内の速度で第3の加熱プラスチックを加熱することを含み得る。
【0045】
実施例1
廃プラスチックを、図2に例解されるように、段階的に加熱した。一定の加熱速度を提供して、温度を初期温度(T)から第1の温度(T)に上げた。温度をTで一定期間にわたって保持し、水分の除去、及び廃プラスチックの温度の均質化を可能にした。水分除去後、一定の加熱速度を再び適用して、温度をTから第2の融解温度(T)に上げた。ポリマー融解物をTで保持し、その温度で安定化させ、相対的に均一な温度を有する融解物をもたらした。
【0046】
均一な融解温度を達成し、Tで一定期間にわたって保持した後、ポリマー融解物を一定の加熱速度を使用して第3の温度Tに加熱した。Tは、プラスチックの熱分解をもたらすことになる、又は非常に遅い反応速度(Tで短期間にわたって保持した後の5%未満の変換)で熱分解することになる温度をわずかに下回る温度として目標にされた。次いで、ポリマー融解物を急速に(>50℃/分)中間温度(T4、int)に加熱し、次いで加熱速度を低下させ(約20℃/分)、ポリマー融解物をピーク熱分解温度(T)に加熱した。ピーク温度に達した後、ポリマー融解物を低い熱分解温度(T)に冷却し、Tで一定期間にわたって保持して、廃プラスチックを熱分解した。ピーク温度Tは、50重量%未満の変換で達成され、Tでの反応の後、およそ95重量%の変換が達成された。結果として生じる生成物混合物は、70重量%の熱分解液体、25重量%の熱分解気体、及び約5重量%のピッチを含んだ。本質的にコークス又はチャーは形成されなかった。
【0047】
上で説明したように、本明細書における実施形態は、ポリマーをピーク熱分解温度まで加熱し、その後、ピークよりも低い温度で熱分解反応を維持し得る。反応器又は反応サイクルの終わりではなく、より低い変換で温度をピークにし、コークスの形成を最小限に抑えながらより多くの高品質の熱分解油を生成することに利点があることが見出されている。これは、ピーク温度での全体的な混合物中のより多くの水素の存在の結果である。更に、「ピーク後冷却」スキームは、吸熱反応を利用する。比較上、浸漬温度よりも高いピーク温度を使用することで、反応器の反応及び性能が改善されるため、ピーク後冷却はまた、単により低い反応温度を維持するよりも有益であることも見出されている。
【0048】
別途定義されない限り、使用される全ての技術用語及び科学用語は、これらのシステム、装置、方法、プロセス、及び組成物が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0049】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数参照を含む。
【0050】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprise)」、「有する(has)」、及び「含む(include)」という単語、並びにそれらの全ての文法的変形は、各々、追加の要素又は工程を除外しない開放的、非限定的な意味を有することが意図される。
【0051】
「任意選択的に」は、続いて説明される事象又は状況が発生する場合もあれば、発生しない場合もあることを意味する。本明細書は、その事象又は状況が発生する場合と発生しない場合とを含む。
【0052】
「およそ」又は「約」という単語が使用されるとき、この用語は、最大±10%、最大5%、最大2%、最大1%、最大0.5%、最大0.1%、又は最大0.01%の値の変動があり得ることを意味し得る。
【0053】
範囲は、約1つの特定の値から約別の特定の値(両端の値を含む)までとして表され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から他の特定の値までであり、この範囲内の全ての特定の値及びそれらの組み合わせとともにあることを理解されたい。
【0054】
本開示は、限られた数の実施形態を含むが、本開示の利益を有する当業者は、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることを理解するであろう。したがって、範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
新規かつ特許状によって保護されることが所望されるものとして請求されているものが、以下である。
図1
図2
【国際調査報告】