(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ポンプ動作におけるリサイクル流の最小化
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20250117BHJP
F17C 7/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C7/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541223
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 US2023010432
(87)【国際公開番号】W WO2023133328
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524258358
【氏名又は名称】インテグレイテッド クライオジェニック ソリューションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マッキー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ワル ファビエン
(72)【発明者】
【氏名】ダナ ショーン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB11
3E172AB12
3E172AB15
3E172AB20
3E172BA04
3E172BA06
3E172BB13
3E172BB17
3E172BC05
3E172BC07
3E172BC08
3E172DA04
3E172EA03
3E172EB03
3E172EB20
3E172HA02
3E172HA04
3E172JA08
(57)【要約】
ポンプ動作中のリサイクル流を最小化するための極低温流体ポンプシステムを使用及び構築するための装置及び方法が開示される。ブーストポンプ、ピストンポンプ、及び温度計が、エネルギー効率の良い方法でシステム全体に極低温流体をポンプ輸送するために使用される。相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)も、極低温液体の気体への損失を防止し、可能な場合、システム内で極低温液体を再循環させるために利用される。一実施形態では、極低温液体は、液体水素であり、極低温液体が加熱されたことにより生じる極低温気体がガス状水素である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温液体を効率的に取り扱うためのシステムであって、
内側部分及び外側部分を有する貯蔵容器であって、前記内側部分が前記極低温液体を貯蔵するためである、貯蔵容器と、
パイプを介して前記貯蔵容器に取り付けられたブーストポンプであって、前記ブーストポンプが第一の温度計と通信しており、前記温度計が、前記貯蔵容器内の前記極低温液体が極低温液体の沸点未満であることを検証して、前記極低温液体を液体形態に保つように構成されている、ブーストポンプと、
前記極低温液体が液体温度であるときに、開き、前記極低温液体を前記ブーストポンプからピストンポンプに導き、前記ピストンポンプがプライミングされて作動すると閉じるように構成されている冷却バルブと、
前記ピストンポンプが、前記極低温液体を液体形態に保つために十分に冷却されたときを検出するように構成されている第二の温度計であって、前記第二の温度計がコントローラに接続され、前記コントローラが前記ピストンポンプと通信している、第二の温度計と、
前記ピストンポンプ及び前記第二の温度計と通信するコントローラであって、前記コントローラが、前記ピストンポンプが前記第二の温度計を参照することによって前記極低温液体を液体形態に保つために十分に冷却されたときに前記ピストンポンプを作動させ、前記冷却バルブを閉じるように構成されており、
前記ピストンポンプが、相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)及び前記ブーストポンプの両方から極低温液体を受け取るのを促進するための吸引ストロークを有し、
前記ピストンポンプが、少なくとも一部の極低温液体を気体に変換し、前記ピストンポンプの少なくともピストンリングを通して前記気体を排出するようにさらに構成されている、コントローラと、
少なくとも一部の気体及び/又は液体の極低温液体を排出するための極低温液体ディスチャージステーションと、
前記ブーストポンプ及び/又は前記PSPDAに接続され、加熱された気体及び/又は加熱された極低温液体を前記ブーストポンプ又はPSPDAに引き戻して、装置内でリサイクルするように構成された極低温液体ポンプアンローダーバルブと
を備える、システム。
【請求項2】
前記極低温液体が液体水素であり、前記極低温液体が加熱されたことにより生じる極低温気体がガス状水素である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ブーストポンプが、真空断熱サンプに貯蔵されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記PSPDAが、過剰な液体又はガス状の極低温液体を排出するバープバルブに接続されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記極低温液体の少なくとも一部が、極低温液体タンクに循環して戻らない、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記冷却バルブが、複数のピストンポンプに接続するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ピストンポンプが、複数のピストンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
極低温目的のために液体水素を効率的に貯蔵、ポンプ輸送、及び使用するためのシステムであって、
温度トランスミッタに取り付けられた液体水素貯蔵容器であって、前記温度トランスミッタが、真空断熱サンプ内の液体水素ブーストポンプに取り付けられ、前記温度トランスミッタが、液体水素が前記ブーストポンプを通してポンプ輸送されるのに十分に冷却されているかどうかを検証するようにさらに構成されている、液体水素貯蔵容器と、
コントローラに接続された第二の温度トランスミッタであって、前記コントローラが、液体水素が真空断熱相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)を作動させるのに十分に冷却されているかどうかを検出する、第二の温度トランスミッタと、
前記PSPDAに接続されたピストンポンプ、冷却バルブ、及びバープバルブと、
水素が前記ピストンポンプを通過する際に、少なくとも一部の液体水素又はガス状水素を放出するように構成されたピストンポンプシールと、
少なくとも一部のガス状水素及び液体水素を前記PSPDAに戻して、再び前記PSPDAを通って流れるように液体水素に冷却して戻すように構成されたピストンポンプシール・ブローバイ・リターンステーションと
を備える、システム。
【請求項9】
ピストンポンプディスチャージチェックバルブが、前記ピストンポンプに取り付けられている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
ピストンポンプ吸込チェックバルブが、前記ピストンポンプに取り付けられている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
ピストンポンプ・アンローダバルブが、前記ピストンポンプに取り付けられている、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記ピストンポンプが、単一ピストンポンプである、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記ピストンポンプが、二重又は三重ピストンポンプである、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
互いに直列又は並列に取り付けられた複数のピストンポンプがある、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
極低温液体を効率的にポンプ輸送する方法であって、
内側部分及び外側部分を有する貯蔵容器を設けるステップであって、前記内側部分が、極低温液体を安全に貯蔵するように構成されている、ステップと、
前記貯蔵容器に取り付けられたブーストポンプを使用して、前記貯蔵容器から冷却バルブまで極低温液体をポンプ輸送するステップと、
前記冷却バルブ及び相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)を通して、前記極低温液体を少なくとも1つのピストンポンプにポンプ輸送するステップと、
前記極低温液体の少なくとも一部を極低温気体に変換し、前記極低温気体の少なくとも一部を前記ピストンポンプのピストンリングを介して排出するステップと、
少なくとも一部の極低温液体及び極低温気体を、システムから前記極低温液体又は極低温気体の少なくとも一部を排出する極低温ディスチャージステーションに送るステップと、
少なくとも一部の極低温液体及び極低温気体を、前記相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)に送って、前記システムに戻してリサイクルするステップと
を含む、方法。
【請求項16】
少なくとも2つの温度トランスミッタを使用して、前記極低温液体が、前記ブーストポンプ、前記PSPDA、及び前記ピストンポンプを通して送られるのに十分低温であることを検証する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記PSPDAが、過剰な極低温液体及び/又は極低温気体を排出するために使用されるバープバルブを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記PSPDAが、前記極低温液体から極低温蒸気を分離し、それにより、蒸気が前記ピストンポンプに吸い込まれない、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
複数のピストンが、前記ピストンポンプによって利用される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ピストンポンプが、二重又は三重ピストンポンプをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体水素及び他の極低温液体を含む工業用ガスの貯蔵、使用、及び処理に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温液体は、非常に低い温度、典型的には、-150℃(-238°F)未満で液体である物質である。極低温液体には、液体窒素、液体ヘリウム、及び液体水素が含まれる。これらの物質は、冷凍、医療、及び研究を含む、様々な用途に使用されている。極低温液体はまた、科学実験及び工業プロセスにおいて使用するために極低温に材料を冷却するためにも使用される。極低温液体は、室温での沸騰又は蒸発を防ぐために特別に設計されたコンテナ(container)に貯蔵され、輸送される。極低温液体の特別な特性は、極低温液体の輸送、貯蔵、ポンプ輸送(pumping)、及び使用において困難を伴う。多くの場合、過剰なエネルギーを使用するポンプは、時間とともに腐食し、過剰に失われた量の極低温液体が利用される。これらのポンプ及びシステムは高価で、維持するのが困難である。また、システム内の極低温液体の損失は、多すぎることも、あるいは不十分なこともある。損失が多すぎるとは、システム内の元の極低温液体の10%以上とみなされ得る。損失が多すぎるとは、また、貯蔵タンク又は容器(vessel)に最初に貯蔵されていた極低温液体の10%以上の損失を意味することがある。
【0003】
極低温液体の使用、貯蔵、及びポンプ輸送のためのシステムを開発することは困難である。極低温液体の冷凍に関連するいくつかのエネルギー課題がある。第一に、効率が課題となっており、極低温冷凍システムは、高温で作動するシステムよりも効率が悪い傾向がある。これは、中程度の温度(例えば、海水面における華氏32度、即ち、摂氏0度から華氏212度、即ち摂氏100度の間の温度)に物質を冷却するよりも非常に低い温度に物質を冷却するのに多くのエネルギーを必要とするためである。極低温液体は低い熱伝導率に起因する不十分な熱伝達化学物質であるため、熱伝達も極低温ポンプシステムにとって問題となる。極低温液体に又は極低温液体から熱を効率的に伝達することは困難であり、冷凍システムの効率に影響を与える。
【0004】
温度制御も極低温システムにとって大きな課題である。冷凍のために極低温液体を使用する場合、一定の温度を維持することは重要である。温度の大きな変動は、冷凍システムの性能に影響を与え、極低温液体を沸騰又は蒸発させることさえあり得る。液体極低温システム用の温度コンプレッサは、設計、維持、及び操作することが困難である。極低温冷凍システムは、多くの場合、極低温液体を循環させ、システムから熱を除去するためにコンプレッサを使用する。これらのコンプレッサは、操作及び維持するのに費用がかかり、冷凍システムの全体的なコストに影響を与える。さらに、多くのコンプレッサは、システムに熱を加えるため、液体極低温システムの目的を損なう。
【0005】
最後に、極低温液体は、多くの場合、高圧下で貯蔵及び輸送されるため、極低温液体を扱う際に、安全性が重大な懸念となる。このため、コンテナが適切に設計又は維持されないと、安全上のリスクが生じる。また、冷凍システムが故障した場合、極低温液体が沸騰又は蒸発するリスクもある。これは、極低温液体が可燃性である場合に危険である。液体水素又は酸素の沸騰から生じるガス状の水素及び酸素は、両方とも極めて可燃性である。
【発明の概要】
【0006】
現在、極低温ガスをわずかに逃がすことを可能にしながら、安全でエネルギー効率の良い方法で極低温液体を安全にポンプ輸送する極低温流体ポンプシステムに対する必要性が存在する。本開示はこの問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】電子プロトン及び原子間の相互作用に焦点を当てた水素ガスのモデルである。
【
図4】極低温液体をポンプ輸送するためのピストンポンプの異なる段階を示すグラフの集合である。
【
図5】極低温液体及び各液体に関連するデータの表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(装置の説明)
ポンプ動作中のリサイクル流(recycle flow)を最小化するための極低温流体ポンプシステムが、本明細書において説明される。複数の極低温液体が一緒に混合されて、開示されたポンプシステムに使用され得る。
【0009】
液体水素は、様々な異なる工業において多くの重要な用途を有する多用途で貴重な物質である。
図1及び
図2に示す水素ガスの分子構造は、極低温液体としての水素の特有の特性に寄与している。水素ガス又は二原子水素は、共有結合により一緒に結合した2つの水素原子から構成される。水素ガスの分子式はH
2である。水素ガスの分子構造は単純であり、単に一緒に結合した2つの水素原子からなる。水素ガスの重要な物理的特性の1つはその低密度である。水素ガスは全ての気体の中で最も軽く、標準的な温度及び圧力での密度はわずか0.08988g/L(0.07g/mLに丸められることもある)である。この低密度は、水素原子の小さなサイズ、及び水素の少ない原子量による。水素ガスの別の重要な物理的特性は、その可燃性である。水素ガスは非常に可燃性であり、発火源の存在下で発火する。この可燃性は、水素の化学反応性に起因し、分子内の水素原子間の結合の高いエネルギー含有量の結果である。
【0010】
水素ガスは非常に低い沸点を有し、標準圧力でわずか-252.87℃の沸点である。この低い沸点は、水素分子間の弱い分子間力に起因し、水素分子が液相から気相に容易に抜け出すことを可能にする。また、低い沸点により、他の化学物質を固体にする低温で水素は液体のままであり得るため、水素は優れた極低温液体となり得る。液体水素はロケットの燃料として使用され得る。それは極めて軽量であり、高いエネルギー含有量を有するので、宇宙旅行に使用するための理想的な選択肢となる。ロケット燃料の他、液体水素は特定の燃料電池にも使用されている。燃料電池は化学反応によって発電する装置であり、クリーンで効率的なエネルギー源となる可能性がある。液体水素は、特定の種類の燃料電池、特にプロトン交換膜(PEM)技術を使用する燃料電池の燃料として使用される。
【0011】
液体水素は半導体の製造にも使用される。一部の半導体は、基板上に材料の薄層が蒸着される蒸着(deposition)と呼ばれるプロセスを通じて製造される。液体水素は一部の蒸着プロセスにおいて冷却剤として使用され、高品質の半導体の製造に必要な低温を維持するのに役立つ。液体水素の最も一般的な工業用途のうちの1つは、冷却剤及び冷媒の研究及び開発である。LH2(液体水素、化学記号へのLの付与は、化学物質が液体形態であることを示し得る)は非常に低い沸点を有するため、機器及び材料を極低温に冷却するのに有効な選択肢となる。これは、非常に低い温度での材料の研究及び使用を伴う、極低温学などの分野において特に有用である。
【0012】
液体窒素(LN2)は、無色、無臭、及び無味の極低温液体であり、大気中の窒素ガスを冷却及び圧縮することによって製造される。これは、その特有の特性及び汎用性により、様々な用途で一般的に使用される。液体窒素の主な用途の1つは冷媒としての用途である。LN2の-196℃の極めて低い沸点は、それを冷媒及び極低温貯蔵に効果的な選択肢とする。これは、生物学的試料、食品、及び工業用化学物質などの材料を極低温で貯蔵するために一般的に使用されている。
【0013】
医療では、液体窒素は、いぼ、ほくろ、及びスキンタグなどの特定の皮膚状態の処置に使用される。これは患部に塗布されると、組織を凍結させ、最終的に組織は剥がれ落ちる。これはまた、異常組織を破壊するために極低温の使用を伴う手術の一種である凍結外科手術に使用され得る。液体窒素はまた、アイスクリーム及び冷凍食品などの特定の種類の食品の製造にも使用され得る。これはまた、混合物を急速に凍結させ、より滑らかでクリーミーな食感をもたらすためにも使用され得る。さらに、これはまた、貯蔵及び輸送中に正確な温度に保たれることを確実にするためにワクチンなどの特定の医薬品の製造及び流通にも使用され得る。
【0014】
液体窒素の他の工業的用途には、特定の種類の鋼鉄の製造、ならびにゴム及び他のポリマーの製造における冷却剤としての用途が含まれる。LN2は、電子部品を損傷することなく効果的に汚染物質を除去することができるため、電子部品の洗浄及び処理に使用される。
【0015】
液体ヘリウムは、ヘリウムガスを冷却及び圧縮することによって製造される極低温液体である。これは、-269℃の沸点を有する地球上で最も低温の天然に存在する物質であり、多くの特有の特性及び用途を有する。液体ヘリウムの最も有名な用途の1つは冷却剤としての用途である。液体ヘリウムの極めて低い沸点は、材料及び機器を非常に低い温度まで冷却するための有効な選択肢となる。これは、研究及び開発、特に極低温学及び超伝導の分野において一般的に使用されている。さらに、液体ヘリウムは、適切に機能するように極低温の使用を必要とするMRI装置などの、特定の種類の電子機器の製造に使用され得る。液体ヘリウム及び他の極低温液体を効果的にポンプ輸送することは、高エネルギーの必要性及び大部分の極低温ポンプシステムの故障のために困難である。
【0016】
液体ヘリウムはまた、光ファイバーケーブルなどの特定の種類のファイバーの製造にも使用される。光ファイバーケーブルは、液体ヘリウムによって冷却されるプリフォームと呼ばれる小さな穴を通してガラス又はプラスチックを引き抜くことによって製造され得る。低温は、製造プロセス中にファイバーが変形又は損傷するのを防ぐのに役立つ。液体ヘリウムは、その工業的な用途に加えて、一部の科学研究にも使用されている。これは、非常に低い温度での物質の挙動を研究するために使用され、また、宇宙空間に存在する条件をシミュレートするためにも使用されている。
【0017】
液体酸素は、酸素ガスを冷却及び圧縮することによって製造され得る極低温液体である。これは、液体形態である場合、及び開示されたシステムにおいてポンプ輸送されている場合、淡い青色で透明である。液体酸素の主な用途の1つは、呼吸ガスとしての用途である。液体酸素は、吸入されると、特定の呼吸状態を有する患者が、より呼吸しやすくなることに役立ち得る。これは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び喘息などの状態を処置するために一般的に使用されている。さらに、これは、心停止した人のための蘇生補助剤としても使用されている。
【0018】
液体酸素はロケット燃料にも使用されている。液体酸素は液体水素とともに使用されることがある。なぜなら、この組み合わせは燃焼すると高エネルギー量を生成するからである。これにより、宇宙船及び高高度航空機での使用のための理想的な選択肢となる。工業分野では、液体酸素は様々な用途に使用されている。液体酸素は、鋼鉄の製造、及び特定の化学物質の製造において酸化剤として使用され得る。液体酸素は、表面から汚染物質を効果的に除去することができるため、洗浄剤としても使用され得る。
【0019】
液体アルゴンは、アルゴンガスを冷却及び圧縮することによって製造される極低温液体である。液体形態の場合、アルゴンは、無色、無臭、及び無味である。液体アルゴンの1つの用途は、冷媒としての用途である。アルゴンの-186℃の極めて低い沸点により、アルゴンは冷凍及び極低温貯蔵に効果的な選択肢となる。これは、生物学的試料及び工業用化学物質などの材料を極低温で貯蔵するために一般的に使用される。
【0020】
医療分野では、液体アルゴンは、いぼ及びほくろなどの特定の皮膚状態の処置に使用される。これは患部に塗布されると、組織を凍結させ、最終的に組織は剥がれ落ちる。これはまた、異常組織を破壊するために極低温の使用を伴う手術の一種である凍結外科手術に使用される。工業分野では、液体アルゴンは様々な用途に使用され得る。液体アルゴンは、特定の種類の鋼鉄の製造、ならびにゴム及び他のポリマーの製造において冷却剤として使用され得る。液体アルゴンは電子部品を損傷することなく汚染物質を効果的に除去することができるため、液体アルゴンは電子部品の洗浄及び処理に使用され得る。液体アルゴンはまた、科学研究において、非常に低い温度での物質の挙動を研究し、宇宙空間に存在する条件をシミュレートするためにも使用される。
【0021】
液体ネオンは、ネオンガスを冷却及び圧縮することによって製造される極低温液体である。これは、多くの特有の特性及び用途を有する明赤色で透明な液体である。液体ネオンの主な用途の1つは冷媒としての用途である。液体ネオンの-246℃の極めて低い沸点により、液体ネオンは冷凍及び極低温貯蔵のための効果的な選択肢となる。これは、生物学的試料及び工業用化学物質などの材料を極低温で貯蔵するために一般的に使用される。
【0022】
工業分野では、液体ネオンは様々な用途に使用される。これは、特定の種類の鋼鉄の製造、ならびにゴム及び他のポリマーの製造において冷却剤として使用される。これは電子部品を損傷することなく汚染物質を効果的に除去することができるため、電子部品の洗浄及び処理にも使用される。液体ネオンはまた、一部の科学研究にも使用される。これは、非常に低い温度での物質の挙動を研究し、宇宙空間に存在する条件をシミュレートするためにも使用される。液体ネオンは、その工業的及び科学的用途に加えて、特定の種類の照明の製造にも使用される。液体ネオンはネオンライトに使用され得、このネオンライトは、明るく、輝いた光を発生させるためにネオンガスを使用するガス放電ランプの一種である。
【0023】
液体メタンは、メタンガスを冷却及び圧縮することによって製造される極低温液体である。これは、多くの特有の特性及び用途を有する無色、無臭、及び無味の液体である。液体メタンの主な用途の1つは燃料としての用途である。これは、燃焼すると比較的低いレベルの二酸化炭素を発生するクリーンな燃焼の燃料であり、化石燃料の魅力的な代替手段となっている。これは、乗り物用の燃料として、及び化学物質を製造するための原料として一般的に使用される。
【0024】
工業分野では、液体メタンは様々な用途に使用される。これは、特定の種類の鋼鉄の製造、ならびにゴム及び他のポリマーの製造において冷媒として使用される。これは電子部品を損傷することなく汚染物質を効果的に除去することができるため、電子部品の洗浄及び処理にも使用される。液体メタンはまた、一部の科学研究にも使用される。これは、非常に低い温度での物質の挙動を研究し、宇宙空間に存在する条件をシミュレートするためにも使用される。その工業的及び科学的用途に加えて、液体メタンはまた、特定の種類の肥料の製造にも使用される。液体メタンは、多くの肥料において重要な成分であるアンモニアに変換され得る。
【0025】
ここで
図3を参照すると、極低温ポンプシステムが示される。貯蔵容器110は液体極低温ガスを貯蔵する。液体水素が貯蔵容器110に貯蔵され得るが、液体窒素(LN
2)、液体ヘリウム(LHe)、液体水素(LH
2)、液体酸素(LO
2)、液体アルゴン(LAr)、液体ネオン(LNe)、及び液体メタン(LCH
4)などの他の極低温気体(ガス。gas)も貯蔵容器110に貯蔵され得る。極低温液体は従来の貯蔵容器及びタンクを腐食及び劣化させ得るため、従来又は通常の貯蔵容器は適切でない場合がある。通常の液体用の貯蔵タンクと、本明細書に記載されるシステム用の貯蔵タンクとの間には、いくつかの重要な相違がある。貯蔵容器110の構造には、特定の材料を使用しなければならない。「貯蔵タンク」及び「貯蔵容器」という用語は、本明細書では互換的に使用される。通常の(すなわち、非極低温)液体用の貯蔵タンクは、多くの場合、鋼鉄又はプラスチックなどの材料から作製されるが、極低温液体用の貯蔵タンクは、典型的には、ステンレス鋼又は極低温に耐えることができる特殊合金などの材料から作製される。アルミニウム及びチタンも容器110に使用される適切な金属である。容器110を構成する金属は、従来又は通常の容器よりも厚い。
【0026】
別の相違は容器110に使用される断熱材である。極低温液体は極低温で貯蔵しなければならないので、タンク110は周囲環境からの熱伝達を防ぐために断熱されている。通常の液体用の貯蔵タンクは、特定の用途に応じて、断熱されていてもよいか、又は断熱されていなくてもよい。また、容器110内の圧力は通常のタンクよりもはるかに大きい。極低温液体はこのような低い温度で貯蔵され、気体形態ではなく、液体で化学物質を維持するために原子を圧縮して保たなければならないという事実に起因して、極低温液体は通常の液体よりもはるかに高い圧力で貯蔵される。その結果として、容器110は高圧に耐えるように設計されているが、通常の液体用のタンクはそれほど頑丈である必要はない。最後に、液体の取り扱い及び移送にも相違がある。極低温液体は、皮膚に触れると重度の低温火傷を引き起こす可能性があるため、取り扱いは非常に危険である。その結果として、極低温液体を移送する際、又は容器110と接触する際には、特別な安全予防措置を講じなければならない。容器110に極低温液体を入れる際、及び容器110と接触する際には、保護具を使用すべきである。
【0027】
容器110を構成し得る合金にはいくつかの種類がある。1つの適切な合金には、ステンレス鋼が含まれる。ステンレス鋼は、液体水素の貯蔵に関連する低温及び高圧に耐えることができる強力で耐食性の材料である。これはまた、比較的安価で、広く入手可能である。別の適切な金属には、アルミニウム又は大部分がアルミニウムである合金が含まれる。アルミニウムは軽量で、液体水素の低温に耐えることができる耐食性の材料である。これはまた、比較的安価であるが、他の合金又は金属ほど強力ではない。アルミニウムが構造に使用される場合、容器110のへこみが見られることが多くなり得るが、アルミニウム合金ではへこみが少ない。チタンもまた、容器110を構成するために使用するのに適した金属である。チタンは強力で耐食性があり、液体水素貯蔵の低温及び高圧に耐えることができる。これはまた、比較的軽量であるため、重量が懸念される用途での使用のための魅力的な選択肢となる。しかしながら、これは一部の他の合金よりも高価である。
【0028】
上記の金属及び合金に加えて、液体水素の貯蔵に使用され得る容器110のいくつかの改良も存在する。これらには、容器110を高圧タンク、極低温タンク、及び断熱タンクにすることが含まれる。高圧タンクは、液体水素の貯蔵に関連する高圧に耐えるように設計され、一方、極低温タンクは、材料を極低温で貯蔵するために特別に設計される。断熱タンクは、周囲環境からの熱伝達を防ぎ、貯蔵された液体水素の低温を維持するために使用される。容器110は、高圧を維持し、低温の液体を維持し、熱が侵入するのを防止又は制限するように構成されるべきである。
【0029】
貯蔵容器110は、直接又は一連のパイプ112aを介してブーストポンプ115に接続されている。パイプ112は、セグメント(例えば、112a、112b、112cなど)から構成されてもよいか、又は1つの連続したパイプであってもよいことに留意されたい。ブーストポンプ115は、水素などの流体又は気体の圧力を上昇させるために使用される。ブーストポンプ115は、乗り物及び航空機用の燃料システム、水システム、及び工業プロセスにおいて使用されるブーストポンプと同様である。ブーストポンプ115に使用できるブーストポンプにはいくつかの種類があり、各々はその独自のセットのわずかに異なる特性及び特徴がある。
【0030】
ブーストポンプ115は遠心ポンプであってもよい。遠心ポンプは、回転するインペラを使用して流れを生成し、ポンプを通過する流体又は気体の圧力を上昇させる。ブーストポンプ115は、高効率であるべきであり、広範囲の流量及び圧力に対処すべきである。水システム、燃料システム、及び工業プロセスにおいて使用される遠心ポンプは、ブーストポンプ115に使用するのに適切であり得る。ブーストポンプ115はまた、システムの他の部分に極低温液体を引き込む複数のパイプと連通していてもよい。例えば、パイプ112bは極低温液体をシステムの他の部分に引き込む。
【0031】
ダイヤフラムポンプもまた、ブーストポンプ115に使用するのに適したブーストポンプであり得る。可撓性ダイヤフラムを使用して流体又は気体を移動させ、圧力を上昇させるダイヤフラムポンプが適切であり得る。ダイヤフラムポンプは、システムが粘性又は研磨性である流体を含む、広範囲の流体に対処する場合に好適である。燃料システム、水システム、及び化学処理に使用されるダイヤフラムポンプは、ブーストポンプ115に使用するのに適切であり得る。
【0032】
ギアポンプは、ブーストポンプ115に使用することができる別の種類のブーストポンプである。ブーストポンプ115は、連動ギアを使用して液体水素又は気体を移動させ、水素原子を液体形態に維持するために圧力を上昇させることができる。ギアはまた、蒸気水素を液体水素に戻すためにも使用することができる。
【0033】
特定の構成では、ブーストポンプ115は真空断熱サンプ120内に配置され得る。サンプ(sump)は、液体を収集し、貯蔵するために使用される低地領域又はピット(pit)であり得る。サンプ120は、一次サンプ、二次サンプ、及び三次サンプを含む、いくつかの異なる形態であってもよいか、又はそれらから構成されてもよい。一次サンプは、極低温液体の第一の収集ポイントであり、極低温液体が蓄積し得る領域(例えば、ブーストポンプの直前のパイプ又はポンプの直後のパイプ)に配置され得る。二次サンプは、一次サンプから極低温液体を収集するために使用されてもよく、三次サンプは、一次サンプ及び二次サンプの両方から収集してもよい。
図3のサンプ120は、一次サンプ、二次サンプ、三次サンプ、又は一次サンプ、二次サンプ、及び三次サンプの組み合わせを表していることに留意されたい。
【0034】
サンプ120は、極低温液体を収集し、除去するのに役立ち、極低温液体をシステムの次の部分に移動させるためのポンプ又は他の機械システムを備えてもよい。サンプ120はまた、液体から汚染物質又は不純物を除去するためのフィルタ又は他の処理システムを備えてもよい。サンプ120は、別の場所にポンプ輸送される極低温液体を貯蔵及び輸送するために使用されてもよい。サンプ120は、極低温液体のためのリザーバとみなすことができ、ポンプは、液体をサンプから、パイプ又はシステムの次の部分などの所望の場所に移動させるために使用される。
【0035】
ブーストポンプとともに、又はブーストポンプに加えてサンプ120と使用できるいくつかの種類のポンプがある。それらのポンプには、水中ポンプ及び台座(pedestal)ポンプが含まれる。水中ポンプは、サンプ120に直接配置されるように設計され、より小型のサンプシステムで使用することができる。台座ポンプは、サンプ120の上の台座に取り付けられてもよく、より大型のサンプシステムで使用することができる。本開示の目的のために、台座ポンプ及び水中ポンプはブーストポンプとみなされる。ポンプに加えて、サンプシステムはまた、バルブ、パイプ、及び制御システムなどの他のコンポーネント(component)を備えてもよい。これらのコンポーネントは、極低温液体がサンプ120からシステムの次の部分に効率的かつ効果的にポンプ輸送されることを確保するように協働する。システムの次の部分は、パイプ112bからパイプ112c、パイプ112cからパイプ112dであってもよい。他の実施形態では、3つの個別のパイプの代わりに単一のパイプを使用してもよい。
【0036】
サンプ120はまた、真空断熱サンプであってもよい。真空断熱サンプ120は、真空断熱層を使用することにより極低温を維持するように設計される。極低温の維持は極低温液体を液体形態に保つために重要である。真空断熱サンプ120は、極低温液体の貯蔵に関連する低温及び高圧に耐えることができるステンレス鋼又は特殊合金から構築され得る。真空断熱層は真空に囲まれた断熱層から構成され得る。真空は周囲環境からの熱伝達を防ぐのに役立ち、サンプが極低温を維持することを可能にする。
【0037】
ブーストポンプ115は、液体水素を含む極低温液体を、一連の複数のパイプ(112b、112c、112d)を通して冷却(chill down)バルブ140にポンプ輸送することができる。冷却バルブ140は、システム内の極低温液体を急速に冷却するために使用される。冷却バルブ140は、液体窒素、液体ヘリウム又は液体水素などの冷却剤が、バルブを通って冷却が必要なシステム又はプロセスに流れることを可能にするように動作する。冷却剤はバルブを通ってシステム又はプロセスに流れ込み、そうすることでシステム又はプロセスから熱を吸収し、温度を低下させる。冷却バルブ140は、冷却剤がバルブを通ってシステム又はプロセスにできるだけ速く流れ込むことを可能にするように高流量で設計される。冷却バルブ140はまた、冷却バルブの冷却効率を向上させるのに役立つように、断熱材又は熱交換器などの特別な機能を備えてもよい。
【0038】
いくつかの種類の冷却バルブが、冷却バルブ140に適切であり得る。冷却バルブ140はボールバルブであってもよい。この実施形態の場合、バルブは、極低温流体の経路内でボール状のプラグを回転させることによって開閉する。液体及び流体という用語は、本明細書では互換的に使用される。しかしながら、極低温液体は液体形態の化学物質を指す場合がある。例えば、液体水素は液体形態の水素を指す場合があり、一方、流体水素又は流体としての水素はガス状水素又は液体水素を指す場合がある。別の実施形態では、ゲートバルブが冷却バルブ140に使用される。この実施形態の場合、バルブは、ゲートを極低温液体の経路内にスライドさせるか、又は極低温液体の経路外にスライドさせることによって開閉する。この実施形態は、高流量を有し、高圧に対処する能力を有する。別の実施形態では、冷却バルブ140にバタフライバルブが使用される。この実施形態では、冷却バルブ140は、水素などの極低温液体の経路内で円盤状のプラグを回転させることによって開閉する。冷却バルブ140はまた、グローブバルブの形態をとることもできる。この実施形態では、バルブは、極低温液体の経路内でプラグを上下に動かすことによって開閉する。冷却バルブ140はまた、ダイヤフラムバルブの形態をとることもできる。この実施形態では、冷却バルブ140は、極低温液体の流れを封止する(seal)ために可撓性ダイヤフラムを使用して開閉する。
【0039】
他の実施形態では、プラグバルブ、チェックバルブ、リリーフバルブ、及び安全バルブを含む他の適切なバルブを冷却バルブ140に使用することができる。プラグバルブは、プラグを使用して極低温液体の流れを封止することによって開閉する。チェックバルブは、極低温液体が一方向にのみ流れることを可能にする。
【0040】
いくつかの場合、バープ(burp)バルブ150は、システム全体を通して極低温流体を引き込む1つ以上のパイプと流体連通して配置される。例えば、
図3では冷却バルブの後のパイプ112e上にバープバルブ150が示されているが、バーブ(burb)バルブは、システムからの応力を緩和し、圧力の過剰な蓄積を軽減することができる任意の位置に配置され得る。これは、以下に記載される相分離器脈動減衰器蓄積器(phase separator pulsation dampener accumulator)(PSPDA)、ピストンポンプ、ブーストポンプ、又は1つ以上のパイプにバープバルブを配置することを含む。
【0041】
バープバルブは、圧力がシステム全体に害を及ぼすレベルを超えたときに、自動的に圧力を解放するように設計される。バープバルブ150は、圧力を制御された安全な方法で解放することを可能にする。バープバルブは圧力解放バルブと呼ばれることもある。システム内の圧力が最大許容レベルを超えると、バープバルブは自動的に開き、過剰な圧力を解放する。圧力が解放されると、バープバルブは閉じ、システム又はプロセス内の圧力が最大レベルを超えるまで、さらなる圧力解放を防ぐ。バープバルブは、操作にコントローラ、又は人の従業員などの専門作業者を必要としないため有益である。
【0042】
バープバルブ150は、過圧を防止することに加えて、氷又は霜の形成も防止する。極低温液体は、システム内のパイプ及び他のコンポーネントの表面上に氷又は霜の形成を引き起こす場合があり、これは流量の減少及び機器の故障などの問題につながる可能性がある。バープバルブを通じて圧力を解放することにより、システム内の氷又は霜の形成を防ぐことが可能になる。
【0043】
システム内の圧力が高すぎると、様々な点でシステムに害を及ぼす可能性がある。極低温システムは極端な温度及び圧力にさらされ、それらのシステム内の圧力を安全限度内に保つことを確保することが重要である。極低温システム内の圧力が高すぎることに関連するリスクの一つは、機器の故障のリスクである。本明細書で提示されるシステムは、極端な温度及び圧力に耐えることができる材料を記載しているが、これらの材料、金属、及び合金には限界がある。システム内の圧力がこれらの限界を超える場合、圧力によって機器が故障する可能性があり、これは、漏れ、流出、及び他の事故につながる可能性がある。
【0044】
極低温システム内の圧力が高すぎると、漏れ及び流出のリスクが高くなる。システム内の圧力が最大許容レベルを超えると、システムが不安定になり、漏れ及び流出が発生しやすくなり得る。これはシステムを損傷し、その領域で作業する人々に深刻な安全上のリスクをもたらし得る。一部の極低温コンテナでは、圧力が高すぎるとは、350psig(重量ポンド毎平方インチゲージ)又はそれ以上とみなされ得る。また、システム内の圧力が高すぎるとは、システムのパイプ又は他の部分での350psig以上の圧力を意味する。
【0045】
本明細書、特に
図3に記載されるシステム100は、どの部分を分析するかに応じて、開放系又は閉鎖系とみなすことができる。開放系は、物質及びエネルギーが自由にシステム内又は外に流れることができる系である。開放系は、物質及びエネルギーをその周囲と交換することができ、その環境から隔離されていない。閉鎖系は、物質及びエネルギーが自由にシステム内又は外に流れることができない系である。閉鎖系はその環境から隔離され、物質又はエネルギーをその周囲と交換しない。ほとんどの極低温ポンプシステムは閉鎖系であるとみなされる。実際に、貯蔵容器110は閉鎖系であるとみなされ得る。しかしながら、以下にさらに記載されるように、現在のシステム100は、時間の経過とともに一部の極低温液体が失われるように設計される。本発明者らの経験では、これは、システム全体のより長い寿命、極低温液体の経時的な漏れの低減、及びエネルギー効率の向上につながる。
【0046】
本明細書に記載されるシステム100は、開放系及び閉鎖系の組み合わせとみなすことができる。システムは、部分的に開放系又は部分的に閉鎖系であるとみなすことができる。部分的に開放系は、一部の物質及びエネルギーがシステム内及び外に流れることを可能にし、一方、部分的に閉鎖系は、限られた量の物質及びエネルギーのみがシステム内及び外に流れることを可能にする。本開示では、ポンプ輸送された一部の極低温液体がシステム内でリサイクル(recycle)される一方で、少量が様々なコンポーネントを介してシステムから出ていく。
【0047】
本明細書に記載されるシステム100は、限られた物質及びエネルギーがシステム内及び外に自由に流れることを可能にする。システム100及びその実施形態は、物質及びエネルギーをそれらの周囲と交換することができ、それらは環境から隔離されていない。開放極低温ポンプシステムは、典型的には、ポンプが、貯蔵タンクからプロセスへ、又はタンクローリーから貯蔵タンクへなど、ある場所から別の場所へ極低温液体を移送することが要求される用途に使用される。
【0048】
冷却バルブ140を通過した後、極低温液体は相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)160に送られる。PSPDAは、相分離器(phase separator)、脈動減衰器(pulsation dampener)、及び蓄積器(accumulator)の両方を含む。相分離器は、液体及び気体などの流体の異なる相を分離するために使用される装置である。相分離器は、流体の異なる相の間の密度及び他の物理的特性の相違を利用することにより動作する。流体が相分離器に導入されると、軽い相(気体など)はセパレータの上部に上昇し、一方、重い相(液体など)は下部に沈む。これにより、流体の異なる相を分離し、セパレータの異なる部分に集めることができる。
【0049】
PDPDAは、極低温液体として液体水素を使用する場合に特に有用である。液体水素の密度は、水素ガスの密度よりもはるかに高い。標準的な温度及び圧力(STP)では、水素ガスの密度は0.08988g/Lであり得るが、液体水素の密度は70.85g/Lであり得る。これは、液体の分子が気体よりもはるかに密に詰まっているため、より高い密度になるからである。
【0050】
PSPDA160は、重力分離器、遠心分離器、及び合体分離器の使用を含む、様々な異なる構成で実装され得る。重力分離器は、流体の異なる相の間の密度の差を使用してそれらを分離する。PSPDA160で使用される重力分離器は、システム100にほとんどエネルギーを与えない場合に好ましいが、気体と液体形態との間で密度が類似している極低温液体には使用してはならない。PSPDA160に含まれる場合、遠心分離器は、流体の異なる相を分離するために遠心力を使用する。PSPDA160に含まれる場合、合体分離器は、流体の異なる相を分離するために重力及び合体の組み合わせを使用する。合体は、流体の小さな液滴が結合してより大きな液滴を形成するプロセスであり、気体の流れから流体の小さな液滴を除去するために一般的に使用される。
【0051】
脈動減衰器もPSPDA160に含まれる。脈動減衰器は、流体処理システムの脈動(pulsation)を低減又は除去する装置である。脈動は、システム内で発生し得る圧力又は流量の周期的な変動であり、機器の損傷及びシステム効率の低下などの問題を引き起こす場合がある。PSPDA160に含まれる場合、脈動減衰器は、脈動が減衰器を通過する際に、脈動のエネルギーを吸収又は消散することによって動作する。いくつかの種類の脈動減衰器がPSPDA160に含まれ得る。
【0052】
一実施形態では、PSPDA160はブラダ(bladder)減衰器を含む。ブラダ減衰器は、脈動が減衰器を通過する際に膨張及び収縮する可撓性ブラダを使用するので好適であり得る。脈動のエネルギーはブラダの膨張及び収縮によって吸収され、脈動を低減又は除去するのに役立つ。別の実施形態では、PSPDAはダイヤフラム減衰器を含む。この減衰器は、脈動に応答して動く可撓性ダイヤフラムを含むように構成され得る。脈動のエネルギーはダイヤフラムの動きによって吸収され、脈動を低減又は除去するのに役立つ。
【0053】
PSPDA160は、蓄積器を含むことができる。蓄積器はシステム内の一部の極低温流体を貯蔵する。蓄積器は、一定の流量又は圧力を維持する流体のリザーブとみなすことができる。この実施形態では、PSPDA160に含まれる蓄積器は、流体をコンテナ又は容器に貯蔵することによって動作し、極低温流体及び/又は液体が必要に応じて蓄積器内及び外に流れることを可能にする。システム内の流量又は圧力が減少すると、蓄積器は流体を放出して一貫した流量又は圧力を維持することができる。システム内の流量又は圧力が上昇すると、蓄積器は流体を取り込み、流量又は圧力が最大許容レベルを超えることを防ぐ。PSPDAの動作を、バープバルブ150、排気ディスチャージ(exhaust discharge)132、アンローダバルブ167、及び再循環パイプ165と対比させる。これらコンポーネントの4つ全てはシステム100の圧力に影響を与えるが、160における蓄積器は極低温液体をほとんど失うことなくこれを行う。これらコンポーネントの5つ全ての組み合わせは特有である。なぜなら、5つ全てがシステム内の圧力が高すぎるという同じ問題に対処しているにもかかわらず、5つ全ての組み合わせが相乗効果をもたらし、システムの動作中に失われる極低温液体が少ないという予想外の結果をもたらすからである。
【0054】
アンローダバルブ167は、再循環パイプ165内の流体又は気体の流れを制御する機械的装置であり得る。アンローダバルブ167は、必要に応じて、再循環パイプ165内の極低温気体の流れを停止又は方向転換することができる。例えば、システム100を安全上の懸念のために停止する必要がある場合、又は(貯蔵容器又はポンプが損傷したために)圧力の壊滅的な損失がある場合、アンローダバルブ167は、システム100からの極低温気体の過剰な損失を防ぐために冷却バルブ140がロックしている間に極低温気体(したがって圧力)をPSPDAに戻すことができる。アンローダバルブ167のためのアンローダバルブのいくつかの設計が適切であり得る。アンローダバルブ167は、パイロット操作式アンローダバルブ、ポペットアンローダバルブ、及び/又はソレノイドアンローダバルブであってもよい。
【0055】
パイロット操作式アンローダバルブは、輸送される流体又は気体の圧力に基づいて開閉することができる。パイロット操作式アンローダは、正確な流量制御が必要な場合に使用することができ、圧力センサ又は他の制御装置と組み合わせて使用することができる。ポペットアンローダバルブは、可動式バリア又は「ポペット(poppet)」を使用して、極低温液体の流れを遮断又は可能にする。ポペットバルブは高い耐久性及び信頼性を有するため、高圧システムで使用することができる。ソレノイドアンローダバルブは、電磁石を使用してバルブを作動させ、流体又は気体の流れを制御する。
【0056】
蓄積器を含むPSPDA160を使用することは、システム100の安全性、信頼性、及び効率を確保するのに重要な役割を果たす。PSPDA160で使用される蓄積器は、一貫した流量又は圧力を維持するために使用される流体のリザーブを提供することによってシステムを安定化させ、過圧及び低圧からシステムを保護するのに役立つ。特定の場合、PSPDA160で使用される蓄積器は、極低温液体のための入口及び出口を備えたコンテナ又は容器から構成され得る。入口及び出口はパイプ又は管によってシステムに接続され得、蓄積器は保守点検のために容易にアクセスできる場所に設置され得る。
【0057】
次いでピストンポンプ130は、PSPDA160から、排気ディスチャージステーション132、ディスチャージステーション151、アンローダバルブ167、及び再循環パイプ165を含む、いくつかのコンポーネントのうちの1つ以上に極低温液体を引き込む。排気ディスチャージステーション132は、システムからデブリ及び過剰な極低温気体を排出する(expel)ように設計される。ディスチャージステーション132は極低温気体のみを排出する。ステーション151及び132は、バルブ、レギュレータ、流量計、及び安全インターロックなどの複数のコンポーネントから構成され得る。これらのコンポーネントは、極低温気体の流れを制御し、移送プロセス中に極低温ガスが安全に取り扱われることを確保するために使用され得る。ステーションはまた、気体への偶発的な曝露を防止するための保護バリア又はエンクロージャも含むことができる。
【0058】
ピストンポンプ130は、ピストン又はプランジャを使用してシステムを通して流体を移動させる単一又は複数の容積式ポンプから構築され得る。ピストンは、モータ又は他の動力源によって駆動されるロッド又はシャフトに取り付けられ得る。ピストンがシリンダ又は他のチャンバ内で前後に動くと、システムを通して流体を移動させるポンプ作用が生じる。130での使用に適切なポンプには、往復ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、及び油圧ポンプが含まれる。往復ピストンポンプの実装では、シリンダ内でピストンを前後に動かすために直線運動が使用される。ダイヤフラムポンプの実装では、可撓性ダイヤフラムは、システムを通して流体を移動させるために使用される。油圧ポンプの実装では、加圧された流体が、ピストンを動かし、ポンプ作用を生み出すために使用される。冷却バルブ140は、極低温液体が液体温度にあるときに、ブーストポンプ115からピストンポンプ130まで開放して極低温液体を導くように構成され得る。冷却バルブ140は、ピストンポンプがプライミングされ(primed)、作動されると閉鎖するように構成され得る。
【0059】
ピストンポンプは、システム100の流量又は圧力を上昇させるために直列又は並列に配置され得る。直列接続では、ピストンポンプは、あるポンプの出口を別のポンプの入口に接続することによって取り付けられる。これにより、ポンプが順番に作動するシステム100が形成され、各ポンプがシステムの流量又は圧力を増加させる。
【0060】
並列構成では、ピストンポンプは、あるポンプの出口を別のポンプの入口に接続し、両方のポンプの入口を共通の供給ライン(例えば、冷却バルブ140又はパイプ112)に接続することによって取り付けられる。これにより、ポンプが同時に作動するシステムが形成され、各ポンプがシステム全体の流量又は圧力に寄与する。
【0061】
ピストンポンプを直列又は並列に一緒に配置することは、システムの流量又は圧力を上昇させるが、いくつかの欠点も有し得る。1つの欠点は、複数のポンプを備えたシステムの設計及び動作がより複雑になる可能性があり、保守及び修理に費用がかかる可能性があることである。さらに、1つのポンプが故障すると、システム全体の性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0062】
極低温流体と共に使用される場合、ピストンポンプ130に与えられなければならない、いくつかの特別な考慮事項がある。ポンプ130を構築するために使用される材料は、極低温液体に耐えるのに十分安定でなければならない。極低温流体は、材料を脆くし、破損しやすくする可能性があるため、極低温流体での使用に適した材料を使用することが重要である。極低温ピストンポンプに使用される一般的な材料には、ステンレス鋼、アルミニウム、及び真鍮が含まれる。
【0063】
別の重要な考慮事項は、システムの様々なポンプ内で漏れを防ぐために使用されるシール及びパッキンである。極低温流体は、シール及びパッキンを脆くし、破損しやすくする可能性があるため、極低温流体での使用に適した材料を使用することが重要である。ピストンリング136などのシール及びパッキンは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びFKM(フルオロラバー(fluoro-rubber)としてもつづられ、そのように呼ばれるフッ素ゴム(fluorine rubber))などのフルオロポリマー、ならびに他の金属及び金属合金を含む材料から構成され得る。
【0064】
ポンプ130の潤滑を考慮することも重要である。極低温流体は、ポンプ130内の潤滑油の粘度が高くなりすぎるか、又は固体になる可能性があり、機器の損傷及び性能の低下につながる可能性がある。粘性が高すぎるとは、パイプ内の極低温液体の自由な流れを妨げる粘性を意味する。これらの問題を防ぐために、極低温流体での使用に適した潤滑油を使用し、ポンプが適切に機能することを確保するように潤滑を注意深く監視することが重要である。
【0065】
ピストンリング136は、ピストンを通過する流体の漏れを防ぐためにピストンポンプ130で使用される機械的シールである。実際には、ピストンリング136からいくらかの漏れが生じるが、これは設計及び不可避的なものである。ピストンリング136は金属から構築され得、溝又はチャネル内でピストンポンプ130のピストンの外周に設置され得る。ピストンリング136は、ピストンと、ピストンポンプ130のシリンダ又はピストンリングが設置される他のハウジングとの間に密閉シールを形成することによって動作する。ピストンポンプ130のピストンがシリンダ内で前後に動くと、ピストンリングがシールを形成し、ピストンを越えて過剰量の流体が漏れるのを防ぐ。ピストンリングはピストンポンプ130の重要なコンポーネントであり、ポンプの効率及び信頼性を確保する際に重要な役割を果たす。ピストンリング136が損傷しすぎるか、又は摩耗しすぎると、極低温液体の漏れが多くなりすぎる可能性があり、性能の低下及び機器の損傷につながる可能性がある。漏れが多くなりすぎるとは、極低温液体の10%以上がシステムから出ていく漏れ、又はシステムが機能停止を引き起こすほどの極低温液体の損失を意味する。アルミニウムは、極端な温度及び圧力に耐えることができる軽量で耐食性の材料であり、そのため、ピストンリングは好ましくはアルミニウム製であり得る。
【0066】
ピストンリングによって設けられたシールが液体を封じ込めるのに十分でない場合、極低温液体は気体に変わり、ピストンリングから漏れることがある。これは、ピストンリングが損傷、摩耗、又は不適切に設置された場合、あるいはシステム内の圧力又は温度がピストンリングの限界を超えた場合に起こり得る。さらに、極低温液体を構成する原子は小さいため、エネルギーが液体に加えられ、極低温液体の一部が気体に変わると、いくら安全であっても、一部の極低温液体がピストンリング136を通して失われる。過剰量の極低温液体が気体に変わって、ピストンリングから漏れると、ポンプの性能及び効率の低下、機器の損傷、ならびに安全上の危険を含む、様々な問題を引き起こす可能性がある。
【0067】
極低温液体がガスに変わり、ピストンリングから漏れるのを防ぐために、ピストンリングが良好な状態で適切に設置されていることを確保し、システム内の圧力及び温度を注意深く監視して、それらが安全な制限内に保たれていることを確保することが重要である。また、極低温流体での使用に適し、極低温システムで遭遇する極端な温度及び圧力に耐えることができる材料を使用することも重要である。ピストンリングは、特定の状況では、極低温気体が液体形態からわずかに漏れてもシステムにとって良いように設計され得る。これは、典型的には、システムが過剰な圧力を排出する(vent)ことを可能にするために行われるか、又は過圧を防ぐためにガスを放出することを可能にするために行われる。
【0068】
リサイクル流とは、システム内でリサイクルされる極低温液体を指す。これは、貯蔵容器110からシステムを通り、次いでパイプ112f及び112gを介してブーストポンプ115に戻る極低温液体を意味する。本開示の目標は、ポンプが作動している間、システムを通るリサイクル流の量を減らすことである。
【0069】
極低温システム100では、システムが安全かつ効率的に動作することを確保するために圧力及び温度を注意深く制御することが重要である。システム内の圧力又は温度が特定の限度を超えると、機器の損傷及び安全上の危険などの問題が発生する可能性がある。これらの問題を防ぐために、一実施形態では、システムは液体形態からの極低温気体のわずかな漏れを許容する。これは、少量の漏れを許容するようにピストンリング136を設計することにより、あるいはシステム100に別個のベント又はブリードバルブを設置することにより達成される。他の実施形態では、アンローダバルブ167、バープバルブ150、及び排気ディスチャージ132などのシステムの他のコンポーネントが、システム全体を安全に保つ少量で制御された量の極低温液体の漏出に寄与するように構成され得る。
【0070】
液体形態の極低温気体のわずかな漏れを許容することは、過圧を防止し、システムを安全な動作限界内に維持するのに役立ち得るため、特定の状況ではシステムにとって有益であり得る。しかしながら、システム100は、システム100が安全限界内で動作することを確実にし、システム100の効率又は信頼性を損なう可能性のある過度の漏れを防止するために、漏れを注意深く制御し、監視することを提供する。
【0071】
排気ディスチャージ132は、ピストンリング136から漏れる過剰な極低温気体を除去(排出)するために使用される。排気ディスチャージ132は、極低温システムにおいて、システムの動作中に発生する廃棄ガス又は他の副生成物を除去するために使用され得る。極低温システム100は、極低温液体の冷却及び貯蔵プロセスの副生成物としてガスを発生し、システム100の設計及び構成に従って、これらのガスは、蓄積を防止し、安全かつ効率的な動作を維持するためにシステム100から安全かつ効果的に除去される。
【0072】
排気ディスチャージ132は、いくつかの異なるタイプの排気ディスチャージシステムを使用して実装され得る。排気ディスチャージ132は、排気パイプ、マフラ、及び触媒コンバータのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。排気パイプは、極低温システムから排気ガスを運び出すために使用され得る。それらは、典型的には、排気マニホールドに接続され、システムの外部まで延びる一連の管又はパイプから構成される。排気ガスは気体に変わった極低温液体であり、システム内で液体に戻ることはない。システムによって発生する騒音を低減するためにマフラも使用され得る。マフラは、排気ガスによって発生する音波を減衰させるために、チャンバ、バッフル、及び他のコンポーネントを含むように構成され得る。音波には極低温液体を加熱して気体に変え得るエネルギーが含まれているため、音波の低減は重要である。
【0073】
システム100は、第一の温度計125及び第二の温度計135である2つの別個の温度計を含むことができる。一部の場合、温度計自体がシステムの他の部分に影響を与えるコントローラでもあり得る。他の場合、コントローラ137などの別個のコントローラが、温度計と通信し、それらの動作に影響を与え得る。温度計125は、貯蔵容器110、パイプ112又はブーストポンプ115と通信し得る。温度計125の目的は、貯蔵容器110からの極低温液体が、ブーストポンプ115を介してシステムに輸送されるのに十分に低温であることを検証すること(verify)である。極低温液体がシステム内に輸送されるためには、その沸点(
図5に概要が示される)未満でなければならない。
【0074】
様々な種類の温度計125及び135がシステム100で使用され得る。温度計は、液体、気体、又はシステムのコンポーネントの温度を測定するために、バイメタルストリップ又は熱電対などの感温素子を含むダイヤル式温度計であってもよい。感温素子は、温度の変化に応答して膨張又は収縮し得る。この収縮及び/又は膨張は、温度計のダイヤル上のポインタを回転させるために使用される。ダイヤル上のポインタの位置は、液体、気体、流体、又はシステムのコンポーネントの温度を示す。このポインタは、システムに変化をもたらすためのアクションを起こすためにコントローラに送信され得る信号を生成するデジタルシステムと結合され得る。
【0075】
温度計125及び135は、デジタル温度計であってもよい。デジタル温度計は、物質又はシステムの温度を測定するために、熱電対又はサーミスタなどの感温素子を含むように構成され得る。感温素子は、温度の変化に応答して、信号である小さい電流又は電圧を生成し、その信号は、液体、気体、流体、又はコンポーネント、あるいはシステムのコンポーネントの温度を測定するために使用される。
【0076】
コントローラ137は、極低温液体の温度を特定の範囲内に維持するために使用され得る。コントローラ137は、極低温流体の温度を測定するために、熱電対又はサーミスタなどの温度センサを含み、この情報を使用して、ヒータ又はコンプレッサなどの加熱素子又は冷却素子を制御して、極低温流体の温度を特定の範囲内に維持することができる。
【0077】
システム100に含まれる温度計は、適切に較正され、正確に機能しなければならない。サーモメータ又は温度計の感温素子は、温度の正確な測定値を与えることができるシステムの一部(パイプ、ポンプ、又はバルブを含む)に配置され、適用される。これは、バイメタルストリップ、熱電対、サーミスタ、又はいくつかの他のタイプの感温素子であってもよい。感温素子は、測定される極低温液体に接触させなければならない。この素子は、可能であれば液体に完全に浸すべきである。他の場合、温度計は、システム内の液体温度で極低温液体に接触しているコンポーネントの合金又は金属の温度を計算するために結合され、使用され得る。サーモメータ又は温度計は、正確な読み取り値を与える前に安定させなければならない。これは、使用される特定のサーモメータ又は温度計に応じて、数分かかる場合もある。温度計及びサーモメータという用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0078】
コントローラ137は、システム100の他のデバイス又は素子の動作を制御するために使用されるデバイス又は電子システムであり得る。コントローラ137は、計器及びバルブを含む、システム100内の様々な異なるデバイス及びコンポーネントを制御するために使用され得る。コントローラは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、マイクロコントローラ、及びコンピュータベースのコントローラの各々のうちの1つ以上を含むことができる。
【0079】
プログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、工業用システムを制御するために使用される専用コンピュータである。PLCは、専用のプログラミング言語を使用してプログラミングすることができ、計器及びバルブを含む、様々な異なるデバイス及びシステムを制御するために使用され得る。マイクロコントローラは、様々な異なるデバイス及びシステムを制御するために使用される小型のシングルボードコンピュータである。それらは、より小型で、よりコンパクトなシステムであってもよく、様々な異なるプログラミング言語を使用してプログラミングすることができる。コンピュータベースのコントローラは、コンピュータ又は他のコンピューティングデバイスに基づき、計器及びバルブを含む、様々な異なるデバイス及びシステムを制御するために使用され得る。コンピュータベースのコントローラは、様々な異なるプログラミング言語を使用してプログラミングすることができ、広範囲の異なるデバイス及びシステムを制御するために使用され得る。
【0080】
計器及びバルブを制御するためにコントローラを使用するために、コントローラは、所望の制御機能を実行するようにプログラムされる。これは、コントローラが実行すべき特定の制御機能を指定するコードを書くか、又は制御プログラムを作成することを伴い得る。コントローラがプログラムされると、それは、システム100の機能を達成するために所望のように、計器及びバルブの動作を制御するために使用され得る。バルブ又はデバイスがシステム100内のポンプに取り付けられている場合、実際のデバイス又はバルブは、ポンプに接続されているパイプに取り付けられ得る。例えば、ブーストポンプ115は、パイプ112b、パイプ112c、パイプ112d、及び冷却バルブ140を介してPSPDAに接続される。しかしながら、ブーストポンプ115はまた、冷却バルブ140に直接接続されてもよいか、又は1つのパイプのみを介して接続されてもよい。システム100は、システムの1つの可能な実施形態に過ぎず、パイプ112aなどの多い又は少ないパイプを使用して他のコンポーネントを一緒に接続することができる。
【0081】
図4を参照すると、ブーストポンプモデリングに関するデータがグラフで示されている。ピストンポンプ130は、システム100内で極低温液体を移動させるために往復ピストンを使用することができる。ピストンがシリンダ内で前後に動くと、システム100内のある場所から別の場所に極低温液体を移動させるポンプ作用が生じる。グラフはいくつかの重要なデータポイントを示す。フィート、又はヘッドのフィート(feet of head)とは、流体又は気体がポンプ輸送される垂直距離を指す。これはフィートの単位で測定されても、あるいはメートルの単位で測定されてもよい。流量とは、流体、気体、又は液体がポンプ輸送される速度を指す。これはガロン/分(gpm)の単位で測定されても、あるいはリットル/分(lpm)の単位で測定されてもよい。ヘッド、又は圧力ヘッドとは、流体又は気体を、ポンプを通して移動させるために流体又は気体に加えられる圧力を指す。これは、典型的には、重量ポンド毎平方インチ(psi)又はキロパスカル(kPa)の単位で測定される。PSI(重量ポンド毎平方インチ)は、圧力の単位である。
【0082】
ピストンポンプがどのように動作するかをグラフにより説明するために、時間の関数としての流体又は気体の流量のグラフとともに、シリンダ及びピストンを示す図が、人のオペレータに表示され得るか、又はシステムの状態にアクセスするためにアクセスされ得るデータベースに送信されるグラフからのデータが表示され得る。ポンプ輸送プロセス中にこれらの変数がどのように変化するかを示すための、時間の関数としてのヘッドのフィート又は圧力ヘッドのグラフも有用である。具体的には、このデータは、システムのコントローラをプログラミングする際に有用である。極低温液体が極低温気体に変換される際、気体が多すぎるとピストンのポンプ輸送に悪影響を及ぼし得る。
図4のグラフからの乖離は、システムにエラーがあり、動作を停止すべきであるか、又は液体を放出すべき兆候(sign)である。
【0083】
図5は、いくつかの極低温液体の沸点及び密度を示す。密度は、所与のコンテナ(容器)を満たすのにどれくらいの液体を必要とするかに影響を及ぼすため、極低温液体の重要な特性である。密度が高い液体は、所与の体積に対する質量が大きく、所与のサイズのコンテナを満たすのに必要な液体の量が少なくて済むことを意味する。極低温液体は、典型的には、極低温に保つように設計された特殊なコンテナに貯蔵されるため、このことは極低温液体を扱う際に重要である。また、沸点は、液体が気化する温度を決定するため、極低温液体を扱う際に考慮すべき重要な特性である。沸点が低い極低温液体は気化しやすく、取り扱い及び貯蔵がより難しくなり得る。他方で、沸点が高い極低温液体は、より安定性があり、扱いやすい。極低温液体は、システムが動作するように沸点未満に保つべきである。沸点に達する極低温液体が多すぎると、システム内の圧力が上昇し、また、システム内のポンプにブローバックが発生する。これは避けるべきである。
【0084】
システムの目的のために、十分に冷却されたとは、極低温液体の沸点未満を意味する。極低温液体は、沸点未満の温度、
図5に概要を示した温度未満の温度、又は液体がまだ液体形態であり、固体でも気体でもない温度である場合、十分に冷却されている。大気温度の変化により、極低温液体が極低温気体又は固体に変化する温度が変わる場合があることに留意されたい。システムにかかる圧力が高ければ、液体を気体に変えるのに必要な温度も高くなる。
【0085】
システムのための可能な装置を含むことができる。極低温液体を効率的に取り扱うための装置は、内側部分及び外側部分を有する貯蔵容器であって、内側部分が極低温液体を貯蔵するためである、貯蔵容器と、パイプを介して貯蔵容器に取り付けられたブーストポンプであって、ブーストポンプが第一の温度計と通信しており、温度計が、貯蔵容器内の極低温液体が極低温液体を液体形態に保つのに十分に冷却されていることを検証するように構成されている、ブーストポンプと、極低温液体が液体温度であるときに、開き、極低温液体をブーストポンプからピストンポンプに導き、ピストンポンプがプライミングされ、作動すると閉じるように構成されている冷却バルブと、ピストンポンプが、極低温液体を液体形態に保つために十分に冷却されたときを検出するように構成されている第二の温度計であって、第二の温度計がコントローラに接続され、コントローラがピストンポンプと通信している、第二の温度計と、ピストンポンプ及び第二の温度計と通信するコントローラであって、コントローラが、ピストンポンプが第二の温度計を参照することによって極低温液体を液体形態に保つために十分に冷却されたときにピストンポンプを作動させ、冷却バルブを閉じるように構成されており、ピストンポンプが、相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)及びブーストポンプの両方から極低温液体を受け取るのを促進するための吸引ストロークを有し、ピストンポンプが、少なくとも一部の極低温液体を気体に変換し、ピストンポンプの少なくともピストンリングを通して気体を排出するようにさらに構成されている、コントローラと、少なくとも一部の気体及び/又は液体の極低温液体を排出するための極低温液体ディスチャージステーションと、ブーストポンプ及び/又はPSPDAに接続され、加熱された気体及び/又は加熱された極低温液体をブーストポンプ又はPSPDAに引き戻して、装置内でリサイクルするように構成された極低温液体ポンプアンローダーバルブとを備える。
【0086】
他の構成はわずかな変更であり得、例えば、極低温液体が液体水素であり、極低温液体が加熱されたことにより生じる極低温気体がガス状水素である。また、ブーストポンプは、真空断熱サンプに貯蔵され得る。また、PSPDAは、過剰な液体又はガス状の極低温液体を排出するバープバルブに接続され得る。さらに、極低温液体の一部は、極低温液体タンクに循環して戻ることができない。また、冷却バルブは、複数のピストンポンプに接続するように構成され得る。
【0087】
別の可能な構成が、極低温目的のために液体水素を効率的に貯蔵、ポンプ輸送、及び使用するための装置として表され得、この装置は、温度トランスミッタに取り付けられた液体水素貯蔵容器であって、温度トランスミッタが、真空断熱サンプ内の液体水素ブーストポンプに取り付けられ、温度トランスミッタが、液体水素がブーストポンプを通してポンプ輸送されるのに十分に冷却されているかどうかを検証するようにさらに構成されている、液体水素貯蔵容器と、コントローラに接続された第二の温度トランスミッタであって、コントローラが、液体水素が真空断熱相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)を作動させるのに十分に冷却されているかどうかを検出する、第二の温度トランスミッタと、PSPDAに接続されたピストンポンプ、冷却バルブ、及びバープバルブと、水素がピストンポンプを通過する際に、少なくとも一部の液体水素又はガス状水素を放出するように構成されたピストンポンプシールと、少なくとも一部のガス状水素及び液体水素をPSPDAに戻して、再びPSPDAを通って流れるように液体水素に冷却して戻すように構成されたピストンポンプシール・ブローバイ・リターンステーション(piston pump seal blowby return station)とを備える。温度トランスミッタは、温度計、コントローラ、又はその両方であり得ることに留意されたい。
【0088】
他の可能な構成は、ピストンポンプ・ディスチャージチェックバルブが、ピストンポンプに取り付けられており、ピストンポンプ吸込チェックバルブが、ピストンポンプに取り付けられており、ピストンポンプ・アンローダバルブが、ピストンポンプに取り付けられており、ピストンポンプが、単一ピストンポンプであり、ピストンポンプが、二重又は三重ピストンポンプであり、互いに直列又は並列に取り付けられた複数のピストンポンプがあることを含む。
【0089】
上記の装置を使用するための可能な方法は、極低温液体を効率的にポンプ輸送する方法であって、内側部分及び外側部分を有する貯蔵容器を設けるステップであって、内側部分が、極低温液体を安全に貯蔵するように構成されている、ステップと、貯蔵容器に取り付けられたブーストポンプを使用して、貯蔵容器から冷却バルブまで極低温液体をポンプ輸送するステップと、冷却バルブ及び相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)を通して、極低温液体を少なくとも1つのピストンポンプにポンプ輸送するステップと、極低温液体の少なくとも一部を極低温気体に変換し、極低温気体の少なくとも一部をピストンポンプのピストンリングを介して排出するステップと、少なくとも一部の極低温液体及び極低温気体を、システムから極低温液体又は極低温気体の少なくとも一部を排出する極低温ディスチャージステーションに送るステップと、少なくとも一部の極低温液体及び極低温気体を、相分離器脈動減衰器蓄積器(PSPDA)に送って、システムに戻してリサイクルするステップとを含む、方法を含む。
【0090】
方法の変更は、少なくとも2つの温度トランスミッタを使用して、極低温液体が、ブーストポンプ、PSPDA、及びピストンポンプを通して送られるのに十分低温であることを検証することを含む。PSPDAは、過剰な極低温液体及び/又は極低温気体を排出するために使用されるバープバルブを有し得る。また、PSPDAは、極低温液体から極低温蒸気を分離し、それにより、蒸気がピストンポンプに吸い込まれないように構成され得る。複数のピストンが、ピストンポンプによって利用され得る。ピストンポンプは、二重又は三重ピストンポンプを含むようにさらに構成され得る。
【0091】
(最後のコメント)
本説明を通じて、示された実施形態及び例は、開示又は特許請求された装置及び手順に対する限定ではなく、例示として考慮されるべきである。本明細書に提示された例の多くは、方法の行為又はシステムの要素の特定の組み合わせを含むが、それらの行為及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わされてもよいことが理解されるべきである。フローチャートに関しては、本明細書に記載される方法を達成するために、追加のステップ及びより少ないステップを行ってもよく、示されたステップを組み合わせるか、又はさらに改良してもよい。一実施形態に関連してのみ論じられる行為、要素、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0092】
本明細書で使用される場合、「複数」とは、2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、項目の「セット」は、そのような項目の1つ以上を含み得る。本明細書で使用される場合、本明細書の記載又は特許請求の範囲のいずれかにかかわらず、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」などの用語は、オープンエンド、すなわち、含むが、これらに限定されないことを意味すると理解される。「からなる」及び「から本質的になる」という移行句のみが、それぞれ、特許請求の範囲に関してクローズド又はセミクローズドの移行句である。特許請求の範囲において、請求項の要素を修飾するための「第一」、「第二」、「第三」などの序数項の使用は、それ自体、ある請求項の要素の別の請求項の要素に対する優先順位、先行順位、又は順序、あるいは方法の行為が実行される時間的順序を意味するものではなく、単に、請求項の要素を区別するために、特定の名称を有するある請求項の要素を、同じ名称を有する(ただし、序数項を使用する)別の請求項の要素と区別するための標識として使用される。本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、列挙された項目が選択肢であることを意味するが、選択肢には列挙された項目の任意の組み合わせも含まれる。
【国際調査報告】