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▶ ポリドーロ ソチエタ ペル アツィオニの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】プレミックスバーナー
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/02 20060101AFI20250117BHJP
   F23D 14/14 20060101ALI20250117BHJP
   F23D 14/70 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F23D14/02 B
F23D14/14 B
F23D14/70 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541598
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 IB2022059530
(87)【国際公開番号】W WO2023057937
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021000025667
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132139
【氏名又は名称】ポリドーロ ソチエタ ペル アツィオニ
【氏名又は名称原語表記】POLIDORO S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Lago Di Misurina 76,36015 Schio,(VI)Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】シロー,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】フェッラーリ,フランチェスコ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ペセリコ,ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】ダッラ ヴェッキア,ラウラ
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AA02
3K017AA05
3K017AB06
3K017AD10
3K017AE03
3K017BA02
3K017BA05
3K017BB05
3K017BF03
3K017DD03
(57)【要約】
境界壁(2)に開口部(22)が設けられた中空本体(1)を備えたプレミックスバーナー(100)。開口部(22)は、空気と水素の混合ガスが流出し且つ境界壁(2)の外面(24)上でフラッシュバックなしに永久的に燃焼することができる複数のチャネルを画定する。バーナー(100)の特定の多孔率および負荷値は、バーナー(100)の安定した動作を確保するように選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは空気および少なくとも水素を含む混合ガスを燃焼させるためのプレミックスバーナー(100)であって、
-中空本体(1)であって、ヌルでない厚さを有し且つ当該中空本体(1)の内部に面する内面(23)と前記内面(23)の反対側の外面(24)とを持つ境界壁(2)を備える中空本体(1)と、
-前記中空本体(1)の内側に前記混合ガスを導入するための入口と、
-前記中空本体(1)の内側から前記混合ガスが流出することを可能にするように適合された個々のチャネルを画定するように、前記内面(23)と前記外面(23)との間で前記境界壁に形成された開口部(22)と、を備え、
当該バーナーは所定の公称出力(P)を生成できるサイズであり、
当該バーナーの特定の負荷は、前記公称出力(P)の、前記境界壁(2)の開口面積に対する比率として定義され、25W/mmから70W/mmの間に含まれ、
前記境界壁(2)の前記開口面積は、全ての前記開口部(22)の面積の合計として定義され、
前記境界壁の多孔率は、前記境界壁(2)の前記開口面積と前記外面(24)の全面積とのパーセンテージ比率として定義され、10%から45%の間、好ましくは21%から35%の間に含まれる、プレミックスバーナー(100)。
【請求項25】
前記分配器の前記開口部は、前記バーナー(100)の前記境界壁(2)に形成された前記開口部(22)に対してオフセットされている、請求項21から23のいずれか一項に記載のバーナー(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガス、好ましくは空気および少なくとも水素をベースとする混合ガスを燃焼させるためのプレミックスバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのバーナーは、家庭暖房用のボイラーで頻繁に使用され、開口部が設けられた中空本体を持ち、その表面で混合ガスの燃焼により炎が発生する。従来、混合ガスは空気およびメタンなどの1つまたは複数の化石ガスで構成される。
【0003】
しかしながら、化石ガスを含む混合ガスの燃焼には、環境を汚染し、健康を害し、気候温暖化の問題の一因となる、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの物質の排出のような、環境面でのいくつかの欠点がある。
【0004】
化石ガスの燃焼の欠点を克服するために、主要工業国は、水素を含む混合ガスを燃焼できるバーナーの研究開発を支援するために、ここ数年間投資を増やしてきた。
【0005】
空気の存在下で水素を燃焼させることにより、一酸化物および二酸化炭素の排出問題を解消することが可能となる。なぜなら、水素と空気中の酸素が反応しても、未燃残渣として炭素化合物が発生しないからである。
【0006】
しかしながら、プレミックスバーナーで水素をガスとして使用することは、水素の火炎温度値、反応性、速い火炎速度のため、実用上いくつかの困難を伴う。
【0007】
特に、水素または水素を含む混合ガスが燃焼する速度は速いので、安定した火炎を発生させることは困難であり、いわゆるフラッシュバック現象を引き起こす可能性がある。
【0008】
バーナー内の混合ガスの燃焼によって発生する火炎は、火炎速度、すなわち混合ガスがバーナー表面で燃焼する速度が、バーナー入口から燃焼面へ向かう混合ガス自体の伝播速度に等しいときに安定する。これら2つの速度がほぼ等しいとき、燃焼面に流れ、単位時間内に火炎に供給できる新鮮な混合ガスの量と、単位時間内に燃焼する混合ガスの量との間に平衡状態が達成される。
【0009】
水素または水素を含む混合ガスの場合、適切な設計措置を講じないと、混合ガスが伝播する速度(いわゆる出力速度)が火炎速度よりも著しく低くなり、火炎が表面ではなくバーナー内部で形成されることがある。当該現象はフラッシュバックとして知られており、それは、バーナーの爆発またはバーナーが通常設置されているボイラーの他の部品の爆発を誘発するおそれがあり、ユーザを重大なリスクにさらすという点で特に危険である。
【0010】
逆に、混合ガスの出力速度が火炎の出力速度よりもはるかに大きい場合、火炎はバーナーの表面から剥離する傾向がある。火炎リフトオフと呼ばれるこのような状態では、火炎が消える可能性がある。
【0011】
フラッシュバック状態と火炎リフトオフ状態の両方が火炎を不安定にすることは明らかである。
【0012】
これらの簡単な導入的考察から、混合ガスの伝播速度と火炎速度の比率が、火炎安定性の観点からいかに決定的であるかが理解できる。
【0013】
一般的に、この比率は、燃焼混合ガスに存在する可燃性ガスのタイプ、空気と当該空気と混合されたガスとの質量比率、バーナー内の圧力分布、バーナーと火炎の間で行われる熱交換など、さまざまな物理-化学的パラメータによって変化する。
【0014】
水素の高い火炎温度およびこの気体の強い反応性は、フラッシュバック現象の一因となり、また、窒素酸化物の汚染排出を増加させ得る。
【0015】
したがって、水素を含む混合ガスの燃焼にバーナーを使用するためには、混合ガスの伝播速度と火炎速度の比率およびバーナーの温度の両方を制御できることが不可欠である。特に後者は、フラッシュバックの可能性を低減するために、バーナーに要求される出力値に適合するように低く保たれなければならない。
【0016】
水素などの反応性混合ガスの燃焼用に設計された従来技術のバーナーが、WO 95/23315A1で公開された国際出願に記載されている。このバーナーは、0.5%から4%の間に含まれる低い多孔率と、300mmを超えない開口面積値とによって特徴付けられる。
【0017】
一般に、所与のバーナーおよび所与の混合ガスには作業領域が存在し、その内部で、上記の物理-化学的パラメータが変化しても、バーナーが安定して作動でき且つフラッシュバックの可能性が実質的に無視できると考えることができる。
【0018】
作業領域の拡大に関する実用的な指標としてしばしば用いられる設計パラメータは、公称出力とバーナーのいわゆる開口面積の比率として定義される、バーナーの特定の熱負荷である。バーナーは従来、例えば円筒形または平行六面体の形状の多孔デッキを備え、その表面には、空気とガスの混合物が燃焼するときに火炎が形成される開口部が(例えばパンチングマシンによって)形成されている。開口面積はデッキのすべての開口部の総面積として定義され、代わりに全体面積はデッキの総面積として定義される。
【0019】
バーナーが設計通りに生成すると想定される所与の公称出力と、空気とガスの所与の混合物とに関して、公称出力と開口面積の比率として定義される特定の負荷は、バーナーが安定して作動するときに、限られた非常に正確な範囲内の値をとる。
【0020】
例えば、空気とメタンの混合物を燃焼させるように設計され、10から150kWの間に含まれる公称出力を供給するように設計されたバーナーの場合、バーナーが安定した状態で作動するとき、特定の負荷はおよそ10から30W/mmの間で変化する。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、従来技術の前述の欠点を克服するプレミックスバーナーを提供することである。
【0022】
特に、本発明の目的は、混合ガス、好ましくは空気と可燃性ガスとして少なくとも水素とを含む混合ガスを燃焼させるためのプレミックスバーナーであって、境界壁上に安定した火炎を生成することができ、フラッシュバックすることなく広い動作範囲で熱出力を供給することができるプレミックスバーナーを提供することである。
【0023】
より具体的には、本発明の目的は、混合ガス、好ましくは空気と可燃性ガスとして少なくとも水素とを含む混合ガスを燃焼させるためのプレミックスバーナーであって、出力と火炎速度の比率および境界壁の温度を、バーナーがフラッシュバックすることなく作動する値に維持することができるプレミックスバーナーを提供することである。
【0024】
さらに具体的には、本発明の目的は、混合ガス、好ましくは空気と可燃性ガスとして少なくとも水素とを含む混合ガスを燃焼させるプレミックスバーナーであって、壁の開口部によって制御される火炎であって、所定の距離で境界壁上に安定した火炎を生成できるプレミックスバーナーを提供することである。
【0025】
前記目的は、請求項1に記載のバーナーによって完全に達成される。
【0026】
特に、この請求項のバーナー対象物は、中空本体であって、ヌルでない厚さの境界壁を有し且つ当該中空本体の内部に面する内面と内面の反対側の外面との間に形成された開口部が設けられた中空本体を備え、開口部は、燃焼される混合ガスを逃がすことを可能にする複数のチャネルを前記面の間に画定するように構成される。バーナーは、所定の公称出力を供給できるようなサイズである。
【0027】
バーナーは、バーナーの特定の負荷が25W/mmから70W/mmの間に含まれ、境界壁、すなわち炎が形成されるデッキの多孔率が10%から45%の間に含まれることを特徴とする。多孔率は、デッキの開口面積とデッキの総面積のパーセンテージ比率として定義され、デッキの開口面積は、デッキに形成されたすべての開口部の面積の合計によって与えられる。
【0028】
一般に、25W/mmから70W/mmの間に含まれる特定の負荷値は、特に10kWから150kWの間に含まれる公称出力に関して、フラッシュバックの実質的なリスクなしに水素などの反応性の高いガスを含む混合ガスを燃焼させることを可能にする。これらの負荷値により、混合ガスの出力速度を、それが混合ガス自体の火炎速度に近似するように、調整することが可能となる。以下に詳しく説明されるように、バーナー内の火炎前部は、2つの速度が同等になるときに安定した状態になる。この状態では、フラッシュバック現象の可能性が著しく低下する。所与の公称出力に対して、バーナーの特定の負荷値は前記出力と前述の開口面積の比率によって与えられることを想起すると、本発明によるバーナーの特定の負荷は、デッキの開口面積の適切な値を選択することによって実際に調整可能である。
【0029】
本発明によるバーナーのデッキに採用される多孔率値は、フラッシュバックに対する耐性を高めるように、バーナーの熱交換および熱-流体力学的挙動を制御することを可能にする。特に、前述の多孔率値は、開口部外での燃焼ガスの再循環の程度、すなわち、開口部近傍で生じる渦によりバーナーのデッキに戻る火炎熱量を低減することを可能にする。多孔率の増加は旋回領域の容積を減少させ、再循環速度を低下させ、一般的に旋回度を弱める。結果として生じる再循環の減少は、デッキの温度の低下につながり、フラッシュバックの危険性が大幅に減少する。デッキの温度が上昇すると、フラッシュバックの可能性が高まる。
【0030】
上述のように、フラッシュバックの可能性は、また、燃焼される混合ガスの出力速度値と火炎速度の比率に依存する。一般に、バーナーのデッキ表面に生成される火炎は、この表面の各点について、混合ガスの出力速度が火炎速度と等しい場合に安定する。このような条件下では、火炎前部は時間と共に変化しないからである。
【0031】
混合ガスの出力速度は、存在するガスのタイプ、燃料(carburant)(一般に空気)の量と別の可燃性ガスの量の比率、バーナー内で確立される熱交換など、さまざまな要因に依存する。一般に、出力速度は空間的な分布を持つ。水素などの反応性の高いガスは、速い火炎速度を特徴とする。適切な設計配置がない場合、反応性の高いガスの火炎速度は一般に、デッキの表面に形成された開口部からの混合ガスの出力速度よりも速くなる。
【0032】
本発明によるバーナーでは、デッキの開口面積の値に作用することによって、混合ガスの出力速度を、それが意図された動作範囲において火炎の出力速度に近似するように調整することが可能である。上述のように、バーナーの特定の負荷、開口面積、公称出力の間の関連性により、特定の負荷の付与は、ある公称出力を供給するような大きさのバーナーに対して、開口面積、その結果として出力速度が固定されることを等価的に意味する。
【0033】
結論として、本発明によるバーナーに関して、デッキの(すなわち、特定の負荷の)開口面積値を選択することによる混合ガスの出力速度の制御と、多孔率値を選択することによる再循環の程度の制御とによって、フラッシュバックのリスクを大幅に低減することが可能となる。
【0034】
同一の開口面積であれば、高多孔率のバーナーは、低多孔率のバーナーよりもフラッシュバックのリスクにさらされないことを強調しておくことは重要である。より多孔質なバーナーは明らかに、より小さな「閉じた」表面、すなわち、開口部のない表面を持つ、したがって、より小さな表面であって、それに非常に高温の燃焼ガスが接触して、バーナーの温度上昇を引き起こすより小さな表面を持つ。その結果、より多孔質なバーナーは、同一の開口面積を持つあまり多孔質でないバーナーよりも低いデッキ温度を持つ。したがって、本発明のバーナーには、フラッシュバックのリスクを低減するという点で、デッキの多孔率と開口面積によって生じる複合的な技術的効果がある。
【0035】
デッキで達成可能な最大多孔率の上限は、開口部がパンチングによって形成される場合、パンチの寸法など、デッキの穿孔に使用される機械の技術的特性と、境界壁の製造に使用される材料の応力に対する耐性の限界とによって、決定される。反対に、下限はフラッシュバック現象の発生によって決定される。所与の公称出力および所与の混合ガスに対して多孔率値があり、それ未満で、開口部付近の燃焼ガスの再循環の程度、したがってバーナーに戻る火炎熱は、バーナーがフラッシュバックの実質的なリスクにさらされるレベルを超える。
【0036】
多孔率は、デッキ(または境界壁)の開口部の総面積と後者の総面積の比率を表すので、相対的な量である。したがって、異なる開口面積値で同一の多孔率を持つバーナーを作ることは原則として可能である。
【0037】
本発明によるバーナーは、開口面積が、特定の負荷が25W/mmから70W/mmの間に維持される所定の値の範囲内で、多孔率と組み合わせて選択されることを特徴とする。
【0038】
所与の公称出力に対して開口面積値を選択することは、混合ガスの出力速度の調整を可能にする。開口面積が減少するにつれて出力速度は大きくなるが、必要な出力を供給するのに必要な混合ガスの総流量は同一である。水素などの反応性が高く、したがって、火炎速度が速いことを特徴とするガスの場合、フラッシュバックのリスクを低減するために、開口面積を制御することにより、出力と火炎速度の比率を適切に変更、調整することが可能となる。
【0039】
特定の負荷の最小値(25W/mm)および最大値(70W/mm)であって、その間で本発明によるバーナーの開口面積値が選択される最小値および最大値は、動作限界であって、その範囲内で、好ましくは10kWから150kWの間に含まれる公称出力を生成するようにサイズ決めされたプレミックスバーナーが、水素を含む混合ガスの燃焼によって得られる火炎をその外面で安定して、すなわち、フラッシュバックまたは火炎自体の剥離(リフトオフ)の実質的なリスクなしに支持することができる、動作限界を画定する。
【0040】
したがって、本発明によるバーナーの境界壁、すなわちデッキに存在する開口部の寸法および空間密度は、水素などの反応性の高いガスを含む混合ガスから出発して広い動作範囲にわたって安定した火炎を発生させることを可能にするという特定の技術的効果を有する。
【0041】
開口面積の減少は圧力損失の増加につながるので、所与の出力に対して、開口面積が圧力損失の最大許容値と両立できる最小値には制限があり、これは、バーナーが燃焼できなければならない公称出力値の範囲とともに、設計仕様として割り当てられる。反対に、開口面積がとり得る最大値には上限があり、これは本質的にフラッシュバック現象の発生によって決定される。すなわち、所与の混合ガスおよび所定の公称出力に対して、開口面積の最大値があり、それを超えると、混合ガスの出力速度が火炎速度に対して小さくなりすぎ、バーナーがフラッシュバックの重大なリスクにさらされる。
【0042】
本発明によるバーナーは、好ましくは10kWから150kWの間に含まれる公称出力を供給するように設計される。必要とされる最大公称出力は、バーナーの物理的寸法を決定し、その寸法は、必要とされる出力が大きいほど大きくなる。
【0043】
一例として、直径70mmの円筒形バーナーであって、一般的に業務用機器に使用され、開口部が固定フランジに近い第1のブラインドゾーンとバーナーを上部で閉じるカバーに近い第2のブラインドゾーンとの間に配置されたデッキの中央領域に分布した円筒形バーナーは通常、25kWの公称出力を供給するように設計された場合、約42mmの高さを有し、バーナーが150kWの出力を供給するようにサイズ決めされている場合、同一の直径で高さは約74mmに達する。平らなバーナー、例えば平行六面体形状の平らなバーナーの場合、25kWの出力を発生させるようにサイズ決めされたデバイスは、例えば約50mmの幅および約90mmの長さを有する。150kWを供給するように設計されたデバイスの場合、幅および長さはそれぞれ100mmおよび176mmに達する。
【0044】
本発明によるバーナーのデッキの開口面積は、10kWから150kWの間に含まれる公称出力に対して、好ましくは400mmから3000mmの間、より好ましくは450mmから1800mmの間に含まれる。これらの開口面積値に対して、本発明のバーナーは、示された動作範囲(10-150kW)において、特に水素を含む混合ガスを燃焼させるために使用される場合、例えば国際出願WO95/23315A1を参照して上述した従来技術のバーナーよりも低いデッキ温度を有する。
【0045】
温度の低下は、既知のバーナーに比べて、バーナーが水素ベースの混合ガスを燃焼させ、フラッシュバックを受けることなく必要な公称出力を供給できる動作範囲を拡大することにつながる。この効果は、21%から35%の間に含まれる多孔率値との組み合わせにおいて特に顕著である。これらの値は、400mmから3000mmの間、好ましくは450mmから1800mmの間に含まれる前述の開口面積値との組み合わせにおいて、従来技術と比較してデッキの温度の低下を得るために使用することができる。
【0046】
開口面積および多孔率値に関して上述した技術的効果は、開口部の形状に関係なく、本発明によるバーナーによって達成される。したがって、上述した多孔率値および開口面積値と組み合わせて、局所的な火炎分布または圧力損失を制御するために、例えば円形または(スロットとも呼ばれる)細長いスリットを有する、任意の既知の形状の開口部を使用することが可能である。異なる形状の開口部を組み合わせることで、すでに説明した多孔率値と開口面積値によって特徴付けられる開口部の分布を作ることもできる。異なる形状の開口部を組み合わせることで、デッキの表面上の火炎の分布を制御することも可能である。
【0047】
開口面積値および多孔率値に関して上述した技術的効果は、例えば周期的な開口部の均一分布を使用する、または不均一分布を利用する本発明によるバーナーによっても達成することができる。
【0048】
本発明によるバーナーの境界壁、すなわちデッキは、好ましくは、壁の厚さと各開口部の特性寸法との間の比率であって、少なくとも1に等しい比率を有する。特性寸法とは、円形の開口部の場合には直径を意味し、または細長い形状の開口部、例えばスリットの場合には幅を意味する。したがって、デッキの厚さは、好ましくは、各開口部の特性寸法に少なくとも等しい、またはそれよりも大きく、より好ましくは、比率は少なくとも3に等しい。
【0049】
相当な厚さを有し且つ少なくとも各開口部の特性寸法に等しい境界壁の使用は、バーナーの動作領域におけるデッキの温度を著しく低下させるという技術的効果を有する。境界壁が厚くなることで、内面と外面の間に、各開口部に、壁の厚さに等しい長さのチャネルが形成される。こうして形成されたチャネルの長さのおかげで、混合ガスはバーナーから熱を奪い、チャネルを通って外部に流出する間にそれを冷却する。この効果は、フラッシュバック現象のリスクをさらに低減することに寄与するために、反応性の高いガスを燃焼させるプレミックスバーナーの場合に特に重要である。冷却効果は、壁の厚さと各開口部の特性寸法の比率が少なくとも3に等しい場合に特に顕著となる。
【0050】
従来の厚さ、例えば0.6mmの穿孔デッキを2枚以上重ね合わせ、デッキ同士を密着させることにより、非常に高い特性厚さ/寸法比、例えば少なくとも3に等しい特性厚さ/寸法比を特徴とする境界壁を実現することが可能である。このようにして、穿孔に使用される機械の現在の技術的限界を克服することが可能となる。例えば、パンチングマシンは通常、厚さ/直径比の値が1より大きいデッキに正確な形状および直径の穴を形成することはできない。
【0051】
本発明によるバーナーは、任意付加的に、外面に、各開口部において、当該開口部の境界を部分的または完全に画定し且つ当該開口部から所定の高さまで壁に対して実質的に垂直な方向に延びる突出壁を有することができる。こうして各突出壁は、境界壁の内面と外面の間の各開口部において、既存のチャネルの延長部を形成する。この延長部は、開口部が形成された境界壁の面から延びている。このようにして、混合ガスの燃焼は、前記外面からの各延長部の遠位端の距離に少なくとも等しい、外面からの距離で火炎を発生させる。
【0052】
突出壁の技術的効果は、デッキの外面から所定の距離で火炎を形成することを可能にすることであり、その結果、デッキの温度を低く保つことを可能にする。さらに、各突出壁が画定するチャネルの延長部により、境界壁の厚さとの関連で上述した壁の冷却効果をさらに強化することが可能になる。
【0053】
突出壁は、デッキの外面の一体部分であり、例えば、パンチング、深絞り、レーザー切断によるデッキの一部の除去および/または変形によって、あるいは三次元印刷などの付加製造技術によって得ることができる。突出壁をデッキの外面の一体部分として実現することは、突出壁を個別に製造する高価なステップ、および各開口部に個別の壁を取り付けるという同様に高価で手間のかかるフェーズを必要としないので、コストの観点から有利である。さらに、突出壁を外面の一体部分として形成することは、原則として単一の要素で構成される最終構造が機械的により堅牢になり、熱応力にも耐えやすくなるという利点を有する。
【0054】
各突出壁は、個々の開口部を当該開口部の境界全体に沿って境界を画すことができ、当該開口部の周囲に突出フレームを画定する。突出壁の使用によるデッキの冷却効果は、突出フレームが使用される場合に特に顕著となる。
【0055】
代替的に、個々の開口部に、当該開口部の境界の少なくとも1つの側面に沿って接続され且つ矩形ブレーブの形をした突出壁を使用することが可能である。突出したブレード状の壁は、関連する開口部を形成する際に製造することができる。デッキは、その矩形状の部分を持ち上げるように切断されるが、それは少なくとも開口部の一辺に沿ってデッキに取り付けられたままである。こうして持ち上げられたデッキの部分は、開口部の上方で徐々に上昇して延びる傾斜ブレードを形成する。個々の開口部に傾斜した突出したブレード状の壁を使用することは、バーナーから出る混合ガスの流れを優先方向に搬送することを可能にし、冷却およびデッキの固体部分によって搬送される熱量の減少をもたらす。
【0056】
任意付加的に、バーナーの内面で追加的に個々の開口部に部分的または全体的に境界を画すように、外面に形成された突出壁とは反対側に、デッキの内面に、さらなる突出壁を形成することもできる。また、さらなる突出壁は内面と一体的に形成される。バーナーの内部に突出壁を使用することは、デッキの冷却効果を高めることを可能にし、したがって、フラッシュバック現象の低減にさらに寄与する。
【0057】
好ましくは、突出壁は、0.10mmから2.50mmの間、より好ましくは0.20mmから1.50mmの間、さらにより好ましくは0.25mmから0.50mmの間に含まれる高さを有する。これらの値、特に0.25mmから0.50mmの間に含まれる高さを有する突出壁の場合、本発明によるバーナーのほとんどの動作範囲(すなわち10kWから150kWの間)において、デッキの温度を500℃未満に維持することが可能である。
【0058】
特に有利なのは、デッキの外面に周期的なパターンに従って配置された開口部を有する突出壁を使用することである。パターンのピッチは、有利なことに、デッキによる熱放出率、デッキの温度および開口部周辺のガスの局所分布を調整するために利用され得る。ピッチの減少は、特に、デッキの固体部分を伝導して外部に伝わる熱量を減少させることを可能にし、その結果、デッキの温度が下がり、フラッシュバックの発生率が減少する。
【0059】
突出壁は、各開口部のチャネルの延長部が、デッキの外面に直交する平面内で、断面において直線または先細りのプロファイルを有するように形成され得る。第1のケースでは、チャネルの各延長部の幅は、延長部のベースから、すなわち開口部から、延長部の遠位端の方向、すなわち開口部から離れる方向に進みながら一定のままである。第2のケースでは、チャネルの各延長部の幅は開口部から離れながら徐々に狭くなる。
【0060】
特に有利なのは、湾曲した先細りのプロファイルである。この場合、デッキ自体のベースから離れた位置、すなわち、個々の開口部から離れた位置での火炎の形成によるデッキの冷却が非常に顕著になる。
【0061】
本発明によるバーナーは、有利なことに、バーナー自体の内側に、デッキの内面から0.20mmから4mmの間、好ましくは0.60mmから2.50mmの間に含まれる距離で配置された穿孔分配器と組み合わせて使用され得る。0.60mmから0.80mmの間に含まれる距離の値の場合、フラッシュバックの観点からバーナーの挙動は特に優れている。
【0062】
分配器の内部開口部は、バーナーの開口部と同一の形状および寸法であってもよく、バーナーの開口部と整列していても、バーナーの開口部からオフセットしていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
上記の特徴は、添付図面に単に非限定的な例として示される、好ましい実施形態の以下の説明からより良く理解されるであろう。
図1】本発明の第1の実施形態によるバーナーの斜視図を示す。
図2図1のバーナーの内部の図を示す。
図3】第2の実施形態によるバーナーの斜視図を示す。
図4A】第3の実施形態によるバーナーの斜視図を示す。
図4B図4Aのバーナーの正面図を示す。
図4C図4Aのバーナーの外面の詳細を示す。
図4D】関連するフランジおよび混合ガスの導入用の入口を備えた図4Aのバーナーの底面図を示す。
図5】本発明によるバーナーの実施形態の変形例によるバーナーの開口部の詳細を示す。
図6】突出フレームのない平らなスロット形態の開口部を備えたバーナーの開口面積が変化するときにフラッシュバックが発生する領域からフラッシュバックのない動作領域を分ける限界曲線λ(P)を示す。
図7】円形の穴状の開口部を備えたバーナーの開口面積が変化するときの限界曲線λ(P)を示す。
図8】円形の穴状の開口部を備えたバーナーの多孔率が変化するときの限界曲線λ(P)を示す。
図9】平らなスロット形態の開口部を備えたバーナーの多孔率が変化するときの限界曲線λ(P)を示す。
図10】円形の穴状の開口部を備えたバーナーの厚さが変化するときの限界曲線λ(P)を示す。
図11】円形の穴状の開口部を備えたバーナーの厚さが変化するときの限界曲線λ(P)を示す。
図12】それぞれスロット状および円形の穴状の開口部を備えた、等しい多孔率および同等の開口面積の2つのバーナーの限界曲線λ(P)を示す。
図13A-13B】2つの異なる公称出力に関して、直線のプロファイルの開口部を備えたバーナーおよび湾曲した先細りのプロファイルの開口部を備えたバーナーにおける温度分布および熱放出率分布のシミュレーション結果を示す。
図14A-14C】第4の実施形態による突出フレームを備えたスロット状の開口部を備えたバーナーにおける温度分布および熱放出率分布のシミュレーション結果を示す。
図15】本発明の第4の実施形態によるバーナーの正面図を示す。
図16図15のバーナーの上面図を示す。
図16a図15の領域Aの拡大図を示す。
図17図15のバーナーのB-B断面を示す。
図18図15のバーナーの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1および図2は、例示のみの目的で、本発明の第1の実施形態によるプレミックスバーナー(100)を示す。バーナーは、ヌルでない厚さを有する境界壁またはデッキ(2)を備えた円筒形の中空本体(1)を備え、中空本体(1)にはデッキの内面(23)と外面(24)との間に延びる開口部(22)が形成される。開口部は、図示の例では、0.60mmに等しい直径を持つ円形の穴の形状を有し、境界壁(2)は、494mmに等しい開口面積を有し、デッキの多孔率は28.1%に等しく、バーナーは30kWの公称出力に対して60.7W/mmの特定の負荷を確保するように設計されている。
【0065】
実験データを参照して以下に説明されるように、図1および図2に示され且つ上述の多孔率および特定の負荷値によって特徴付けられるバーナーは、空気および水素の混合ガスを燃焼させることができ、フラッシュバックの実質的なリスクなしに、設計された公称出力の範囲において、デッキ(2)の表面上に安定した火炎を発生させることができる。
【0066】
図3は、本発明の第2の実施形態によるプレミックスバーナー(100)を示す。図3のバーナーは、開口部(22)が2.50mmに等しい長さおよび0.50mmに等しい幅を持つスロットまたはスリットの形状をしている点で、図1および図2のバーナーと異なり、各スロットの開口面は約1.20mmである。図3のバーナーの境界壁(2)は416個の開口部を備え、したがって、約498mmに等しい開口面積を持ち、デッキの多孔率は17%に等しく、バーナーは、25kWの公称出力に対して50.2W/mmの特定の負荷を確保するように設計される。
【0067】
図3の実施形態では、各開口部(22)は、デッキの外面(24)において、開口部(22)の境界全体に沿って延びて突出フレームを形成する突出壁(33)によって境界を画されている。外面(24)上の各開口部(22)の境界を画するように突出壁を追加することにより、火炎は、外面(24)から離れた位置に、実質的に少なくとも突出壁の高さに等しい距離だけ離れた位置に形成され、その結果、燃焼中のデッキの温度を下げることが可能になる。デッキの温度を下げることは、フラッシュバックのリスクをさらに下げることに寄与する。
【0068】
図15、16、16a、17、18は、スロット状の開口部(22)の使用にも基づいた、本発明のさらなる実施形態によるプレミックスバーナー(100)を示す。この実施形態は、各開口部(22)が当該開口部(22)の境界全体に沿って延びて突出フレーム(35)を形成する突出壁(34)によって内面(23)上でも境界を画されている点で、図3の実施形態と異なる。図16aは図15の領域Aの拡大図であり、突出フレームの一部を示す。境界壁(2)の内面(23)にも突出壁(34)を追加することにより、デッキの温度がさらに低下する。
【0069】
スリット状の開口部(22)は、図15、16、16a、17、18の実施形態では、6mmに等しい長さおよび0.50mmに等しい幅を有し、各スロットの開口面は2.95mmである。前述の図に示された実施形態では、境界壁(2)は216個の開口部を備え、したがって637mmに等しい開口面積を有する。デッキの多孔率は14%に等しく、バーナーは30kWの公称出力に対して47.1W/mmの特定の負荷を確保するように設計される。
【0070】
図17は、図15のB?B断面に沿った図であり、突出壁がどのようにデッキ(2)の外面(23)と内面(24)の両方から突出し且つ各開口部(22)で中空本体(1)の内部から外部に向かって混合ガスの通過を可能にするチャネルを画定するかを理解することを可能にする。チャネルの幅は、図示の例では、中空本体(1)の内側の0.47mmの値から、外側の0.53mmの最大値まで変化する。外面(24)に垂直な方向における突出壁のプロファイルは実質的に直線である。内側から外側へのチャネルの幅の変化は、図示の例では、突出壁が円筒面に対して垂直に延びるという事実による。
【0071】
図4Aおよび図4Bは、本発明の第3の実施形態によるバーナーを示し、このバーナーでは、開口部がスロットまたはスリットの形状を有するが、図15図18に示される実施形態とは異なり、開口部(22)は突出フレームを有しない。図4Cは、図4Aおよび図4Bによるバーナーのプロトタイプのデッキの拡大された詳細を示す。各スロットは約2.20mmの長さおよび約0.45mmの幅である。図4Aおよび4Bのデッキの開口面積は610mmに等しい。多孔率は26.5%に等しい。バーナーは25kWの公称出力に対して41W/mmの特定の負荷を確保するように設計される。
【0072】
図5は、以下に詳細に説明される理由によって本発明の特に有利な変形例を示し、この変形例では、開口部が外側に先細りした湾曲したプロファイルを持つ突出壁を有する。
【0073】
本発明による全てのバーナーには、バーナーの中空本体内に混合ガスを導入するための入口が設けられる。図4Dは、例えば、図4Aおよび4Bの実施形態によるバーナーの入口を示す。入口はフランジ(50)によって囲まれる。
【0074】
図1、3、4A、15を参照して上で説明されたバーナーでは、開口部は周期的なパターンに従って均等に分布している。例えば、図4Cでは、スロットは中空本体(1)の円筒面の接線方向に約1.57mmに等しい規則的なピッチで境界壁に分布している。図示のバーナーでは、開口部は接線方向に延び、バーナーの軸方向に一連の開口部の列を形成する。隣接する列の開口部は接線方向に沿ってオフセットしている。
【0075】
上で示された例では、バーナーは円筒形を有する。本発明の目的はまた、例えば平坦で平行な面を有する平行六面体などの異なる形状のバーナーで達成可能である。開口部は、例えば、0.35mmから0.80mmの間、またはより好ましくは0.45mmから0.65mmの間に含まれる直径を持つ円形の穴、または2mmから6mmの間、またはより好ましくは2.24mmから2.90mmの間に含まれる長さ、および0.10mmから0.60mmの間、またはより好ましくは0.20mmから0.53mmの間に含まれる幅を持つスリット(スロットとも呼ばれる)など、様々な形状をとることができる。本発明の目的はまた、今述べたそれぞれの範囲のいずれかに含まれる寸法を持つスロット状の開口部と穴状の開口部とを組み合わせることによって達成可能である。
【0076】
上述の図に示された中空本体(1)は、図示の開口部(22)の空間分布を達成するように、パンチングマシンによって穿孔された平らなデッキから製造される。穿孔はまた、マルチパンチプレスまたはレーザープレスによって行われ得る。円筒状の外部本体の場合、平らなデッキは、穿孔された後、円筒形の本体(1)を形成するために折り曲げられる。図5のデッキの開口部および突出壁は、代わりに、各開口部で局部的にデッキを穿孔して持ち上げる特殊な工具を使った深絞りによって作られた。中空本体(1)を製造するために使用される平らなデッキは、好ましくは金属板、例えば鋼板である。図3、15に示される突出壁は、三次元印刷などの付加製造技術によって製造され得る。この場合、計算機の誘導の下で、平らなデッキに予め形成された開口部の周囲に粉末金属材料の層を堆積させ、その場で溶融されて、デッキと一体部品を形成する所望の高さの壁が作られる。
【0077】
外側に先細りした湾曲したプロファイルを持つ突出壁を有する図5の実施形態の変形例は、中空本体自体の固体部分の温度を低下させるために、火炎をバーナーの中空本体の外面から離れた位置に形成することを可能にするので、フラッシュバックの低減の目的のために特に有利である。
【0078】
図13A、13Bはそれぞれ、(例えば、図4Aのバーナーのような)直線のプロファイルの開口部を有するバーナーおよび図5に示されるタイプの湾曲した先細りのプロファイルの開口部を有するバーナーにおける温度分布と熱放出率分布のシミュレーション結果を示す。シミュレーションは、2つの異なる公称出力(6.8kWと15.5kW)に関する。図から、湾曲した先細りのプロファイルの開口部を持つバーナー(6.8kWで570℃、15.5kWで466℃)は、直線のプロファイルの開口部を持つバーナー(6.8kWで748℃、15.5kWで601℃)よりも著しく低い中空本体の温度を有することがわかる。図13Bに見られる、湾曲した先細りのプロファイルの開口部を持つバーナーの場合の熱放出分布は、火炎が各開口部の遠位端に形成され、バーナーのデッキの固体部分から遠くに分布する傾向があることを明確に示唆しており、動作中のバーナー温度を下げるという点で明確な利点を有する。
【0079】
図14A-14Cは、図15に示されるタイプの、突出フレームを備えたスロット状の開口部を持つバーナーにおける温度分布および熱放出率分布のシミュレーション結果をそれぞれ示す。この場合でも、湾曲した先細りのプロファイルの開口部を持つバーナーの図13A-13Bに見られる利点が観察される。バーナーのデッキの温度は、突出壁のない直線のプロファイルの開口部を持つバーナーと比較して低下し、熱放出分布は、火炎がバーナー本体から離れた位置に形成されることを示す。
【0080】
図6-9は、本発明によるバーナーにおけるフラッシュバックに対する耐性に関する開口面積および多孔率値の選択の効果を示す。
【0081】
図は、バーナーによって供給される出力Pに対する空気の量と可燃性ガス(水素を含む)の量との比率λの傾向を示す。曲線λ(P)の各々は、フラッシュバックのないバーナーの動作領域(曲線の上のゾーン)とフラッシュバックが発生する領域(曲線の下のゾーン)との間の限界を表す。
【0082】
図6は、それぞれA、B、Cの略号で示された、図4A、4Bに示されたタイプの3つのバーナーの挙動を示す。3つのバーナーは、寸法0.50mm×2.50mm、それぞれ1152mm(A)、896mm(B)、768mm(C)に等しい開口面積を持つスロット状の開口部を有し、3つのバーナーの多孔率は同一であり、17.9%に等しい。開口面積が小さくなるにつれて、混合ガスの出力速度が上がり、その結果、局所出力と火炎速度の比率が1に近づき、フラッシュバックを防ぐことが可能になる。関連する曲線λ(P)が、他の2つのバーナーの曲線に比べて、値λ=1(空気とガスが同量存在する場合の燃焼反応)に向かって著しく減少していることからもわかるように、開口面積が小さいことを特徴とするバーナーCは、前述の理由により、フラッシュバックに対する耐性の点で、より優れた挙動を示す。したがって、バーナーCがフラッシュバックなしに動作できる作業領域(約5kWから20kWの間)は、他の2つのバーナーA、Bのそれよりもかなり広い。
【0083】
図7は、図1に示されたタイプの3つのバーナーのフラッシュバックに対する耐性を示す。それぞれA、B、Cの略号で示される3つのバーナーは、0.6mmの直径を持つ円形の穴の形をした開口部を有し、それぞれ1146mm、896mm、746mmに等しい開口面積を有する。多孔率は17.9%である。スロットを持つバーナーであって、その性能が図6で説明されたスロットを持つバーナーの場合と同様に、図7のバーナーのフラッシュバックに対する耐性は、開口面積が小さくなるにつれて、改善される。開口面積の最小値(746mm)を特徴とするバーナーCは、他の2つのバーナーよりも広いフラッシュバックのない作業領域を有する。
【0084】
バーナーA、B、Cの特定の負荷値は、25kWの公称出力に対して、それぞれ21.8W/mm、27.9W/mm、33.5W/mmに等しい。
【0085】
図8、9は、フラッシュバックに対する多孔率の影響を示す。
【0086】
図8は、スロット(0.50mm×2.50mm)、716mmの開口面積、それぞれ17.9%と12.9%に等しい多孔率を持つ2つのバーナー(AとB)の挙動を示す。高い多孔率を持つバーナーAは、5kWから20kWの間に含まれる公称出力に対してフラッシュバックに対する優れた耐性を持つ。バーナーAとBの特定の負荷は、20kWの公称出力に対して27.9W/mmに等しい。図9は、0.55mmの直径を持つ円形の穴の形をした開口部を備えた、略号A、B、Cで示される3つのバーナーの挙動を示す。3つのバーナーの開口面積は884mmで、多孔率はそれぞれ19.5%(A)、15.8%(B)、10.3%(C)に等しい。図9のすべてのバーナーは、28.9W/mmの特定の負荷を有する。最も高い多孔率(19.5%)を持つバーナーの曲線λ(P)が他のバーナーの対応する曲線よりも低く、より大きな作業領域(曲線の上方)を境界に画することから容易に分かるように、多孔率が高くなるにつれて、フラッシュバックに対する耐性が向上する。
【0087】
図6-9は、開口部の具体的な形状に関係なく、バーナーの開口面積が減少して多孔率が増加すると、フラッシュバックに対する耐性が増加することを示す。本発明の技術的効果が、開口面積および多孔率値が主請求項で定義された範囲で選択される場合に、開口部の形状に関係なく達成されることのさらなる実験的な確認は、図12によって与えられ、図12は、実質的に同様の開口面積(約750mm)および同一の多孔率(17.9%)を有するが、異なる形状の開口部を持つ2つのバーナーの挙動を示す。バーナーAは0.50mm×2.50mmの寸法を持つスロットを有し、バーナーBは0.60mmの直径を持つ穴を有する。2つのバーナーの挙動は、それらが異なる形状の開口部を採用しているにもかかわらず、曲線の近さからわかるように、実質的に同等である。
【0088】
境界壁の、すなわちデッキの厚さが変化するときの本発明によるバーナーの挙動が図10および図11に示される。
【0089】
図10は、A、B、Cで示され且つ0.60mmの直径、840mmの開口面積、18.5%に等しい多孔率を持つ穴を特徴とする3つのバーナーに関する。3つのバーナーのデッキの厚さは、それぞれ0.40mm、0.60mm、0.80mmに等しく、したがって、穴の直径と厚さ(開口部の特性寸法)の比率は、それぞれ0.67、1、1.33に等しい。バーナーCの曲線λ(p)が(中間位置の)バーナーBとAの曲線の下に配置されるという事実から推測できるように、デッキの厚さが増加するにつれて(バーナーAで最小、バーナーCで最大)、バーナーのフラッシュバックに対する耐性が増加する。
【0090】
図11は、0.80mmの直径、889mmの開口面積、18%の多孔率およびそれぞれ0.40mm、0.60mm、0.80mmに等しい厚さを持つ穴を有する、それぞれA、B、Cで示される3つのバーナーに関する結果を示す。また、図10の場合よりも大きい直径且つ0.5、0.75、1に等しい厚さ/特性寸法比を持つ穴によって特徴付けられるこの場合においても、バーナーCの曲線λ(p)が他の2つの曲線の値λ=1に近いという事実から推測できるように、フラッシュバックに対する耐性の点で最良の結果は、より高い値の厚さ/直径比を有するバーナーCによって達成される。
【0091】
図10および図11は、本発明によるバーナーのフラッシュバックに対する耐性性に及ぼす、開口部の特性寸法に関連した、デッキの厚さの影響を明確に示す。本発明によるバーナーは、内部分配器と組み合わせて使用可能である。図2は、本発明によるバーナーの一例を示し、当該バーナーは、デッキ(2)の内側に、図では参照番号なしで付されているが、断面において明確に認識できる内部分配器を備える。
【0092】
分配器の主な機能は、バーナー(100)に供給された混合流体をバーナーの燃焼面に向かって通過させ、拡散させることを可能にすることである。混合ガスであって、通常、空気およびガスからなる混合ガスは、バーナー(100)のベースに位置し且つフランジによってベースに固定されたヘッドの表面に配置された1つまたは複数の開口部から導入される。内部分配器とバーナー(100)の中空本体は、ヘッド(1)に固定される。
【0093】
内部分配器は、バーナー(100)の中空本体(1)からヌルでない厚さの隙間によって分離されている。厚さは0.20mmから4mmの間に含まれる。隙間(300)は空であり、空気を含んでいる。
【0094】
実施された実験により、ヌルでない厚さ、好ましくは0.60mmから2.50mmの間に含まれる厚さを持つ隙間の存在は、開口部の形状に関係なく、本発明によるバーナーのフラッシュバックに対する耐性を改善することが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】WO 95/23315 A1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図16A
図17
図18
【国際調査報告】