(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】Vデルタ1+T細胞を産生する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20250117BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20250117BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20250117BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20250117BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20250117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250117BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250117BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/0789
C12N1/00 B
C12Q1/02
C12Q1/6888 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541611
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2023050665
(87)【国際公開番号】W WO2023135225
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504339734
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス
(71)【出願人】
【識別番号】522357334
【氏名又は名称】ワンチェーン イミュノセラピューティクス エセ.エレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア レオン マリア ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】フエンテス ビジャレホ パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】アルカイン サンチェス フアン
(72)【発明者】
【氏名】トリビオ ガルシア マリア ルイサ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ペレス ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス コルテス ビクトル マヌエル
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QQ02
4B063QR16
4B063QR72
4B063QS40
4B063QX02
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4B065CA44
4C087AA01
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4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB33
(57)【要約】
本発明は、癌に対する養子免疫療法への臨床的適用に最適なγδT細胞、好ましくはヒトVδ1+γδT細胞の大規模な選択的生成のための新規かつ効率的な方法に関する。この要点に関しては、臨床で幹細胞の供給源として現在選択されているヒト臍帯血HPC及びヒト初期胸腺前駆細胞のどちらも、Notchシグナル伝達に応答して、最も効率的にはNotchリガンドJag2に応答して、de novoヒトγδT細胞を効率的に生成し得ることを考慮して、この方法は、臍帯血CD34+造血前駆細胞(HPC)及び/又はヒトCD34+初期胸腺前駆細胞の分化を、これらの前駆細胞をJag2 Notchリガンドを用いて活性化することによって誘導することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はヒトETPを含む細胞集団から、de novoのNotchにより誘導され分化したCD1a-Vδ1+γδT細胞の拡大集団を生成するin vitro方法であって、前記方法が、
γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物を生じさせる第1の工程であって、該第1の工程が、
a.前記HPC及び/又はETPを含む前記細胞集団を、Jag2 Notchリガンド又はそのアゴニストを含む適切な培養培地中で生育することと、
b.前記細胞を、前記γδT細胞が生じるのに十分な持続時間にわたって培養物中で維持することと、
なお、持続時間が約2週間から約15週間の間であることが好ましく、前記Jag2 Notchリガンド又はアゴニストが、培養時に、かつ培養期間全体を通して、前記細胞培養物中に十分な量で存在する又は添加されるべきである;
を含み、
前記第1の工程によってもたらされる前記細胞組成物が、CD1a-Vδ1+γδT細胞を含むことを特徴とする、第1の工程を含み、前記方法が、
前記CD1a-Vδ1+γδT細胞を活性化するとともに、その増殖を誘導する第2の工程であって、該第2の工程が、
前記第1の工程後に得られた前記細胞を、適切な培養培地中、γδTCRアゴニストの存在下、及び少なくともIL21及びIL15の存在下で生育して、総γδT細胞の少なくとも40%が拡大及び活性化されたCD1a-Vδ1+γδT細胞であることを特徴とする細胞集団を得ることを含み、前記CD1a-Vδ1+γδT細胞の集団が、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現することと、
を特徴とし、
前記マーカーの発現レベルが、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい、第2の工程を更に含む、方法。
【請求項2】
前記第2の工程が、
前記第1の工程後に得られた前記細胞を、適切な培養培地中、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト及び少なくともIL21の存在下で5日間生育することと、
5日目、好ましくは7日目に、IL15を前記培養培地に添加し、前記細胞を、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト、IL21及びIL15の存在下で少なくとも7日間培養することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のγδTCRアゴニストを0.5μg/mlから4μg/mlの間の濃度で添加し、IL21を7ng/mlから15ng/mlの間の濃度で添加し、IL15を70ng/mlから150ng/mlの間の濃度で添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトHPCが、CD34+臍帯血HPCに由来するものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の工程後に得られた活性化されたCD1a-Vδ1+γδT細胞が、CD25及び/又はCD69活性化マーカーを発現するが、LAG3及び/又はCTLA4疲弊マーカーは発現しないことを更に特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の工程後に得られた活性化されたCD1a-Vδ1+γδT細胞が、CD8マーカーを発現し、Tエフェクター表現型を有することを特徴とし、前記Tエフェクター表現型が、CD45RAマーカーの発現及びCD62Lマーカーの発現の欠如を特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法の前記第2の工程後に得られた又は得ることができるde novoのNotchにより誘導され分化したCD1a-Vδ1+γδを含む細胞組成物。
【請求項8】
de novoのNotchにより誘導され分化したCD1a-Vδ1+γδTを含む細胞組成物であって、活性化されたVδ1+γδT細胞が、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現することと、
を特徴とし、
前記マーカーの発現レベルが、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい、
細胞組成物。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法の前記第1の工程後に得られた又は得ることができる、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物。
【請求項10】
前記第1の工程後に生成されたVδ1+γδT細胞の集団がここでは、
a.未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現することを特徴とする第1の細胞集団(CD1a+Vδ1+γδT細胞)と、
b.未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現しないことを特徴とする第2の細胞集団(CD1a-Vδ1+γδT細胞)と、
を含むことを特徴とする、請求項9に記載の細胞組成物。
【請求項11】
前記第1の細胞集団が、細胞が表面細胞マーカーであるCD25、CD27、NKp44、NKp30、及びNKG2Dを発現しないことを特徴とする、請求項10に記載の細胞組成物。
【請求項12】
前記第2の細胞集団が、細胞が表面マーカーであるCD27、CD73、CD69、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを発現することを特徴とする、請求項9又は10に記載の細胞組成物。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項に記載の細胞組成物を使用して得られた又は得ることができるCAR T細胞。
【請求項14】
請求項7から12のいずれか一項に記載の細胞組成物、又は請求項13に記載のCAR T細胞を含み、薬学的に許容可能な作用物質又は担体を更に含む医薬組成物。
【請求項15】
療法に使用するための、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療における使用のための、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学分野に関し、特に、本発明は、癌に対する養子免疫療法への臨床的適用に最適なヒトVδ1+γδT細胞の大規模な選択的生成のための新規かつ効率的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
養子T細胞療法の使用はMHC(主要組織適合遺伝子複合体)不一致によって生じる障壁により制限されることも多い。したがって、キメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞(CAR-T)等のT細胞製品の現行の臨床的適用は、個別的な自己T細胞産生に依拠している。しかし、患者T細胞は多くの場合、侵襲的な薬物療法の連続的な投与に起因して機能的に損傷を受けている。また、個別化されたオーダーメードの自己T細胞産生プロセスでは、T細胞の広範な適用がT細胞腫瘍等の特定の腫瘍型に狭められる。したがって、大規模な臨床的適用のための「既製」のすぐに使える治療剤としての機能を果たし得るT細胞製品を調製するためには、ユニバーサルな同種T細胞が必要である。
【0003】
最近、γδT細胞が、腫瘍関連ペプチドのMHCによる提示の制約を受けず、また、限定された同種反応潜在性を示すことから、細胞免疫療法のためにαβT細胞の代替として浮上した。それにもかかわらず、γδT細胞は、ウイルス感染及び腫瘍増悪の間に重要な役割を果たし、頑健で長続きする抗腫瘍応答をもたらす(非特許文献1、非特許文献2)。特に、Vδ1+γδT細胞は、通常、腫瘍浸潤に関して優勢であり(Vδ2+に対して)、活性化により誘導される細胞死を受けにくく、また、腫瘍反応性リンパ球として長期間持続し得るので、癌の養子細胞療法のための非常に魅力的な候補である(非特許文献3)。しかし、出生時に広く行き渡っているγδT細胞のVδ1+T細胞亜型であるVδ1+γδT細胞は(非特許文献4)、末梢血では乏しく、また、好適な拡大/分化方法がないことにより、それらの治療への使用が妨げられている。この要点に関しては、末梢血から単離された細胞傷害性Vδ1T細胞を選択的に拡大させるために、TCRアゴニスト及びサイトカインを使用する臨床グレードの方法がBruno Silva-Santosのグループによって最近開発された(非特許文献5、非特許文献6)。この細胞製品はDelta One T(DOT)細胞と名付けられ、慢性リンパ球性白血病(CLL)の前臨床モデルにおいて治療上の潜在性を示し、癌に対する養子免疫療法へのそれらの臨床的適用の原理証明がもたらされた。
【0004】
それでもやはり、末梢血から単離することができるVδ1+T細胞の数が限定されていることから、細胞傷害性Vδ1+抗腫瘍性T細胞の頑健な生成/拡大のための補完的なプロトコルを開発する必要に迫られている。より重要なことに、新生児Vδ1+T細胞の焦点が絞られていない多様なT細胞受容体(TCR)レパートリーは、CMV等による末梢免疫攻撃に応答したクローン性拡大(非特許文献7)に起因して、成人期までに数種の優勢のクローン型に強く制限され、焦点が絞られる(非特許文献8)。Vδ1+細胞のクローン性拡大により、ナイーブVδ1T細胞から、CD27の下方調節を特徴とするVδ1T細胞エフェクター/メモリー表現型への分化が導かれる(非特許文献9)。ヒトナイーブ由来エフェクターT細胞はより長いテロメアを保持するので、in vitroにおける拡大及びT細胞受容体導入遺伝子の発現が最も可能であり、また、臨床試験におけるより高い有効性に関連付けられており、ナイーブ細胞が最終分化又は「疲弊」に抵抗し、高い複製潜在性を維持し、したがって、養子免疫療法に使用するための優れたサブセットになり得ることが仮定されている(非特許文献10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Vantourout and Hayday, Nat Rev Immunol., 2013
【非特許文献2】Silva-Santos et al., Nat. Rev. Immunol., 2015
【非特許文献3】Siegers et al., Mol. Ther. 2014
【非特許文献4】Morita et al., J. Immunol. 1994
【非特許文献5】Correia et al., Blood 2011
【非特許文献6】Almeida et al. Clin. Cancer Res. 2016
【非特許文献7】Ravens et al., Nature Immunol. 2017
【非特許文献8】Davey et al., Nature Commun. 2016
【非特許文献9】Davey et al., Trends Immunol. 2018
【非特許文献10】Hinrichs et al., Blood 2011
【発明の概要】
【0006】
上記の課題を解決するために定めた本発明の目的は、癌に対する養子免疫療法への臨床的適用に最適なヒトVδ1+γδT細胞、好ましくは同種ヒトVδ1+γδT細胞の大規模な選択的生成のための新規かつ効率的な方法に関するものである。この要点に関しては、臨床で造血幹細胞の供給源として現在選択されているヒト臍帯血(umbilical cord blood)CD34+造血幹/前駆細胞(HPC)及びヒトCD34+初期胸腺前駆細胞(ETP)のどちらも、Notchシグナル伝達に応答してde novoヒトVδ1+γδT細胞を効率的に生成し得るという本発明の知見を考慮して、本発明の方法は、ヒトHPC、好ましくは臍帯血(cord blood)CD34+HPC、及び/又はヒトCD34+ETPの分化を、これらの細胞をJag2 Notchリガンドを用いて活性化することによって誘導することを含み、ここで、上記リガンドを骨髄由来間質細胞株の表面上に高発現させる。この方法は、ヒトHPC、好ましくは臍帯血CD34+HPC、又はヒトCD34+ETPを、Jag2を高発現する間質細胞上で、好ましくはFlt3+SCF+IL-7を補充して、最長9週間にわたって共培養することを含むことが好ましい。次いで、上記の通りNotch依存性TCR非依存性様式で生じさせたVδ1+γδT細胞(STEP1)を、当該技術分野で既知の任意の方法に従って、例えば、抗CD3 mAb並びにIL-4、IFN-γ及びIL-15を含めたサイトカインを使用することによって活性化及び拡大して、TCR活性化に際したVδ1+γδT細胞の増殖を誘導する(非特許文献6)(STEP2)。
【0007】
本発明は、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はヒトETPを含む細胞集団から、de novoのNotchにより誘導され分化したCD1a-Vδ1+γδT細胞の拡大集団を生成するin vitro方法であって、上記方法が、
γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物を生じさせる第1の工程であって、該第1の工程が、
a.HPC及び/又はETPを含む細胞集団を、Jag2 Notchリガンド又はそのアゴニストを含む適切な培養培地中で生育することと、
b.細胞を、γδT細胞が生じるのに十分な持続時間にわたって培養物中で維持することと、
なお、持続時間が約2週間から約15週間の間であることが好ましく、Jag2 Notchリガンド又はアゴニストが、培養時に、かつ培養期間全体を通して、上記細胞培養物中に十分な量で存在する又は添加されるべきである;
を含み、
第1の工程によってもたらされる細胞組成物が、CD1a-Vδ1+γδT細胞を含むことを特徴とする、第1の工程を含み、上記方法が、
上記CD1a-Vδ1+γδT細胞を活性化するとともに、その増殖を誘導する第2の工程であって、該第2の工程が、
第1の工程後に得られた細胞を、適切な培養培地中、γδTCRアゴニストの存在下、及び少なくともIL21及びIL15の存在下で生育して、総γδT細胞の少なくとも40%が拡大及び活性化されたCD1a-Vδ1+γδT細胞であることを特徴とする細胞集団を得ることを含み、上記CD1a-Vδ1+γδT細胞の集団が、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現することと、
を特徴とし、
上記のマーカーの発現レベルが、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい、
第2の工程を更に含む、方法に関する。
【0008】
好ましくは、第2の工程は、
第1の工程後に得られた細胞を、適切な培養培地中、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト及び少なくともIL21の存在下で5日間生育することと、
5日目、好ましくは7日目に、IL15を培養培地に添加し、細胞を、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト、IL21及びIL15の存在下で少なくとも7日間培養することと、
を含む。
【0009】
好ましくは、少なくとも1種のγδTCRアゴニストを0.5μg/mlから4μg/mlの間の濃度で添加し、IL21を7ng/mlから15ng/mlの間の濃度で添加し、IL15を70ng/mlから150ng/mlの間の濃度で添加する。
【0010】
好ましくは、ヒトHPCは、CD34+臍帯血HPCである。
【0011】
好ましくは、第2の工程後に得られた活性化されたCD1a-Vδ1+γδT細胞は、CD25及び/又はCD69活性化マーカーを発現するが、LAG3及び/又はCTLA4疲弊マーカーは発現しないことを更に特徴とする。
【0012】
好ましくは、第2の工程後に得られた活性化されたCD1a-Vδ1+γδT細胞は、CD8マーカーを発現し、Tエフェクター表現型を有することを特徴とし、Tエフェクター表現型は、CD45RAマーカーの発現及びCD62Lマーカーの発現の欠如を特徴とする。
【0013】
本発明は、上で定義された方法の第2の工程後に得られた又は得ることができるde novoのNotchにより誘導され分化したCD1a-Vδ1+γδを含む細胞組成物を更に提供する。好ましくは、活性化されたVδ1+γδT細胞は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現することと、
を特徴とし、
上記のマーカーの発現レベルが、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい。
【0014】
本発明は、上で定義された方法の第1の工程後に得られた又は得ることができる、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物を更に提供する。好ましくは、細胞組成物は、第1の工程後に生成されたVδ1+γδTの集団がここでは、
a.未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現することを特徴とする第1の細胞集団(CD1a+Vδ1+γδT細胞)と、
b.未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現しないことを特徴とする第2の細胞集団(CD1a-Vδ1+γδT細胞)と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、第1の細胞集団は、細胞が表面細胞マーカーであるCD25、CD27、NKp44、NKp30、及びNKG2Dを発現しないことを特徴とする。好ましくは、第2の細胞集団は、細胞が表面マーカーであるCD27、CD73、CD69、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを発現することを特徴とする。
【0016】
本発明は、上で定義された細胞組成物を使用して得られた又は得ることができるCAR T細胞を更に提供する。
【0017】
本発明は、上で定義された細胞組成物、又はCAR T細胞を含み、薬学的に許容可能な作用物質又は担体を更に含む、医薬組成物を更に提供する。
【0018】
本発明は、療法に使用するための上で定義された医薬組成物を更に提供する。好ましくは、使用は細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療におけるものである。
【0019】
以下の図面は、説明を例示するための好ましい実施形態を提示するものであり、発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】CD34+ヒト初期胸腺前駆細胞(ETP)からの、Notchにより誘導されたγδ(及びαβ)T細胞生成を示すグラフである。Jag2がγδT細胞生成のための最も効率的なリガンドである。Jag2により、培養30日目までにCD34+ヒトETPから250倍~300倍のγδT細胞生成収率が誘導される。
【
図2】Jag2-Notchシグナル伝達によりETPからのVδ1+γδT細胞生成が支持されることを示すグラフである。培養30日目までにヒトCD34+ETPから生成された、Jag2により誘導されたVδ1+γδT細胞(100倍の収率)は、IFNγを産生するが、IL-17は産生しない。
【
図3】ヒトCD34+ETPからのJag2媒介性in vitro Vδ1+γδT細胞産生の効率を示す図である。
【
図4】ヒトCD34+臍帯血造血幹/前駆細胞(HPC)からの、Jag2-Notchにより誘導されたVδ1+γδT細胞生成を示すグラフである。ヒトCD34+臍帯血HPCからJag2によって誘導された総細胞拡大及びγδT細胞生成のカイネティクスが示されている。ドットプロットは、50日目までにde novo生成されたγδT細胞におけるVδ1の発現を示す。
【
図5】9週間の培養での、Jag2-Notchシグナル伝達に際してヒトCD34+臍帯血HPCから総γδT細胞及びVδ1+γδT細胞が生じる効率(STEP1)を示す図である。
【
図6】ヒトJag2シグナル伝達を受けたヒトCD34+CB HPC(CB-Jag2)、又は臍帯血からex vivoで単離されたヒトCD34+CB HPC(CB ex vivo)若しくは末梢血からex vivoで単離されたヒトCD34+CB HPC(PB ex vivo)のいずれかから生成された、CD3+T細胞内の総γδT細胞の割合(左)及びVδ1+γδT細胞の割合(中央)、並びにVδ1+γδT細胞内のCD1a+細胞の割合(右)を示すグラフである。各ドットは、1つの独立した実験又は生体試料を表す(n=4)。
【
図7】CD34+ヒト初期胸腺前駆細胞(ETP)からの、Notchにより誘導されたγδ(及びαβ)T細胞生成を示すグラフである。ヒトNotchリガンドを欠く間質細胞(OP9-GFP)はETP細胞拡大/分化を支持することができない。
【
図8】ヒトJag2シグナル伝達を受けたヒトCD34+CB HPCから生成されたVδ1+γδT細胞の表現型を示すグラフである。(A)Vδ1+γδT細胞は、CD4+表現型、又はCD4+CD8+ダブルポジティブ(DP)表現型、又はCD4-CD8-ダブルネガティブ(DN)表現型のいずれかを示すCD1a+未成熟γδTサブセット、及びDN又はCD8+細胞のCD1a-成熟γδT細胞サブセットを含む。(B)成熟CD1a-Vδ1+γδT細胞は、γδT細胞分化マーカーであるCD73並びに別個のレベルのNKp44、NKp30及びNKG2D細胞傷害性NK受容体を発現するナイーブCD27+である。
【
図9】ヒトJag2シグナル伝達を受けたヒトCD34+CB HPCから生成された成熟CD1a-Vδ1+γδナイーブT細胞が、PB中に存在するVδ1+細胞(CD1a-)とは、CD73及び細胞傷害性NK受容体の発現に関して異なることを示すグラフである。各ドットは、1つの独立した実験又は生体試料を表す。
【
図10】形質導入されたOP9細胞におけるJag2 Notchリガンドの発現の増大(高発現)を示すグラフである。数字は、形質導入されていないOP9間質細胞(左側の突出)又はJag2が形質導入されたOP9間質細胞(右側の突出)のいずれかの細胞表面上に発現されたJag2の平均蛍光強度を示す。細胞を、PEとカップリングしたヒトJag2に対するmAbで標識し、フローサイトメトリーによって分析した。
【
図11】ヒト胸腺に存在する又はin vitroにおいてETPから発生させたγδT細胞のVδサブセットの不均一性を示すグラフである。(A)棒グラフは、ヒト胸腺においてin vivoで存在する総γδT細胞(左)に対する示されているVδ亜集団の頻度の平均値+/-SEMを表す;右:ヒト胸腺におけるin vivoでのVδ1及びVδ2γδT細胞サブセット内のCD1a+、CD1a低発現のCD1a
int及びCD1a-の頻度の平均値+/-SEM。(B)示されているNotchリガンドOP9細胞株と共培養したヒトETP胸腺細胞において発現されるVδ1及びVδ2のフローサイトメトリーカイネティクス分析。四分の一区分内の数字は、示されている細胞サブセットの頻度の平均値+/-SEMを示す。(C)Bと同様に31日間培養したETPから生成されたVδ1+、Vδ2+及びVδ1-Vδ2-γδT細胞の絶対数のカイネティクス。データは、3つの独立した実験による細胞数の平均値+/-SEMを示す。
【
図12】CB HPCからのヒトVδ1+γδT細胞の生成(STEP1)及び拡大(STEP2)のための二段階プロトコルを示す図である。ヒトCB試料から単離されたCD34+HPCをJag2発現OP9細胞上で、Flt3リガンド、SCF及びIL-7を伴って最大8週間共培養した(STEP1)。STEP1で得られた細胞(CB-Jag2)及びヒトCB又はヒト末梢血(PB)のいずれかからex vivoで単離し、TCRαβ+細胞を枯渇させた細胞浮遊液を、抗TCRアゴニスト及びサイトカインを補充した浮遊培養物中、in vitroで拡大させた(STEP2)。
【
図13】大多数のCB-Jag2-STEP2 Vδ1+γδT細胞がCD8+CD1a-成熟エフェクター細胞であることを示すグラフである。DOTプロトコル(上のパネル)又はCSIC STEP2プロトコル(下のパネル)のいずれかを使用して拡大させた、示されているCB-Jag2-STEP2集団、CB-STEP2集団及びPB-STEP2集団に含まれるVδ1+γδT細胞サブセットにおけるCD8、CD1a、CD27、CD45RA及びCD62Lの発現を分析した。CD62L及びCD45RAの発現を使用して、以下のT細胞の表現型を決定した(Tエフェクターメモリー(T
EM):CD62L-CD45RA-;Tセントラルメモリー(T
CM):CD62L+CD45RA-);Tナイーブ(T
N):CD62L+CD45RA+;及びTエフェクター(T
eff):CD62L-CD45RA+)。棒は平均値+/-SEMを表す。ドットは、独立した実験又は生体試料を表す:CB-Jag2-STEP2、n=3;CB-STEP2、n=4;PB-STEP2、n=6。一元配置ANOVA、クラスカルワリス検定(
*p<0.05)を実施して、統計的有意性を評価した。
【
図14】CB-Jag2-STEP2 Vδ1+γδT細胞が低疲弊細胞プロファイルを有する活性化T細胞であることを示すグラフである。STEP2 DOTプロトコル(上のパネル)又はSTEP2 CSICプロトコル(下のパネル)を使用して拡大させたCB-Jag2-STEP2集団、CB-STEP2集団及びPB-STEP2集団に含まれるVδ1+でゲーティングしたγδT細胞における活性化(CD25及びCD69)マーカー及び疲弊関連表面マーカー(LAG3及びCTLA4)の発現。各ドットは、1つの独立した実験又は生体試料を表す:CB-Jag2-STEP2、n=2~3;CB-STEP2、n=3~4;PB-STEP2、n=6。一元配置ANOVA、クラスカルワリス検定(
*p<0.05)を実施して、統計的有意性を評価した。
【
図15】大多数のCB-Jag2-STEP2 Vδ1+細胞が細胞傷害性関連活性化受容体を示すことを示すグラフである。STEP2 DOTプロトコル(上のパネル)又はSTEP2 CSICプロトコル(下のパネル)を使用して拡大させた、示されているCB-Jag2-STEP2集団、CB-STEP2集団及びPB-STEP2集団に含まれるVδ1+γδT細胞サブセットにおける細胞傷害性関連表面マーカーの発現。各ドットは、1つの独立した実験又は生体試料を表す:CB-Jag2-STEP2、n=2~3;CB-STEP2、n=3~4;PB-STEP2、n=6。一元配置ANOVA、クラスカルワリス検定(
*p<0.05)を実施して、統計的有意性を評価した。
【
図16】CB-Jag2-STEP2細胞が白血病細胞株に対して高いin vitro細胞傷害潜在性を示すことを示すグラフである。STEP2 DOTプロトコル(上のパネル)又はSTEP2 CSICプロトコル(下のパネル)に従って拡大させたCB-Jag2-STEP2集団、CB-STEP2集団及びPB-STEP2集団を、Jurkat及びMolm13白血病細胞に対する細胞傷害性について、示されているE:T比で48hアッセイにおいてアッセイした。(n=3)、平均値+/-SDデータが示されている。ホルムシダック多重比較t検定を使用して統計解析を実施した。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図17】STEP1後(CB-Jag2)及びSTEP1+STEP2(DOT又はCSICプロトコル)培養後の、CB細胞からのヒトVδ1+CD1a-γδT細胞の生成の効率を示すグラフである。Jag2発現OP9間質上で8週間培養した際(STEP1)及びDOT又はCSICプロトコルに従って更に拡大した際の(STEP2)、総CB細胞(10
6個)から単離されたCD34+HPCから生成されたVδ1+CD1a-γδT細胞の数(n=4)(左側のパネル)。STEP2 DOT及びCSICプロトコル後に回収されたT細胞内のγδTCR+細胞のパーセンテージが中央のパネルに示されており、γδTCR+細胞内のVδ1+細胞のパーセンテージが右側のパネルに示されている(n=3)。
【
図18】STEP2 DOT及びCSIC拡大プロトコルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
他に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、出願時に本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。しかしながら、何らかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書に提示される定義が他のいかなる定義よりも優先される。さらに、文脈上他に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、同様に複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0022】
本開示において、「含む」("comprises," "comprising,")、「含有する(containing)」及び「有する(having)」等は、欧州及び米国の特許法においてそれらに付与された意味を有し、「含む」("includes," "including,")等を意味する場合がある。「から本質的になる」("consisting essentially of" or "consists essentially")は、同様に欧州及び米国の特許法において付与された意味を有し、この用語はオープンエンドであり、列挙されるものの基本的な又は新規の特性が列挙されるもの以外のものの存在によって変化しない限りにおいて、列挙されるもの以外のものの存在を許容するが、従来技術の実施形態は除外される。
【0023】
本発明は、主にCD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団から分化させたNotchにより誘導されたVδ1+γδT細胞のde novo生成に関する。「de novo」は、「新規の」又は「初めから」のラテン語表現である、すなわち、本明細書で使用される場合、de novoは、以前から存在していたVδ1+γδT細胞に基づくものではなく、新規のNotchにより誘導され分化したVδ1+γδT細胞の創出と理解されるものとする。
【0024】
本発明の文脈において、「Notchリガンド」は、造血前駆細胞の活性化及び分化を含めた細胞の運命決定を媒介する細胞シグナルをもたらす表面Notch受容体に結合することができるタンパク質と理解される(Artavanis-Tsakonas et al., Science 1999)。したがって、この用語は、本明細書で使用される場合、Delta及びSerrate/Jaggedファミリーリガンド等の天然に存在するタンパク質リガンド、並びに、天然リガンドに対応する生物学的効果を有する、Notch受容体に対する抗体、ペプチド模倣体及び小分子を含めた工学的に作製されたNotchリガンド及びNotchアゴニストを包含する。いくつかの実施形態では、NotchリガンドはJag2 Notchリガンドである。好ましいNotchリガンドは、DLL1、DLL4、Jag1又はJag2からなる群から選択される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「DLL1」は、Drosophila Notch Deltaリガンドの天然に存在するヒトホモログ(Delta様1)と理解される。この用語は、天然Delta様1リガンドの生物学的効果を有する工学的に作製されたNotchリガンド及びNotch受容体アゴニストを包含し得ることが更に好ましい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「DLL4」は、Drosophila Notch Deltaリガンドの天然に存在するヒトホモログ(Delta様4)と理解される。この用語は、天然Delta様4リガンドの生物学的効果を有する工学的に作製されたNotchリガンド及びNotch受容体アゴニストを包含し得ることが更に好ましい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「Jag1」は、Drosophila Notch Serrate/Jaggedリガンドの天然に存在するヒトホモログ(Jagged1)と理解される。この用語は、天然Jagged1リガンドの生物学的効果を有する工学的に作製されたNotchリガンド及びNotch受容体アゴニストを包含し得ることが更に好ましい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「Jag2」は、Drosophila Notch Serrate/Jaggedリガンドの天然に存在するヒトホモログ(Jagged2)と理解される。この用語は、天然Jagged2リガンドの生物学的効果を有する工学的に作製されたNotchリガンド及びNotch受容体アゴニストを包含し得ることが更に好ましい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「Vδ1+γδT細胞」は、γ鎖と、Vδ1可変領域を発現するδ鎖、及びCD3成分とが結合して構成されたTCRを発現するT細胞と理解される。Vδ1+γδT細胞は、特異的な抗Vδ1抗体を使用した表現型解析によって、又はVδ領域の配列決定によって同定することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「γδTCRアゴニスト」は、TCRγδヘテロ二量体、又はTCRγδのVδ1ドメイン、又はTCRと会合したCD3成分、主にCD3ε成分のいずれかに特異的に結合し、細胞活性化及び増殖を誘導する抗体、ペプチド模倣体、及び小分子と理解される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ヒト造血幹/前駆細胞(HPC)」は、抗CD34抗体を用いた表現型解析によって同定され、ex vivoにおいてヒト臍帯血、胎盤血、末梢血、骨髄若しくは胎児肝臓から得られる、又はin vitroにおいてiPSC(人工多能性幹細胞)等の多能性幹細胞から導き出される、ヒトCD34+細胞と理解される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「CD34+初期胸腺前駆細胞(ETP)」は、抗CD34抗体を用いた表現型解析によって同定され、ex vivoにおいてヒト胎児、新生児又は出生後胸腺から得られるヒトCD34+細胞と理解される。
【0033】
本発明の文脈において、「機能的な天然細胞傷害性受容体」(NCR)は、ナチュラルキラー(NK)細胞によって発現され、またヒトγδT細胞によっても、ほぼ排他的にVδ1+γδT細胞サブセットによって、IL-2又はIL-15の存在下での強力なTCRアゴニスト又はマイトジェンによる刺激後に発現される、表面受容体と理解されるものとする(非特許文献5)。NCR誘発は、細胞活性化において中心的な役割を果たし、初代白血病細胞及び腫瘍細胞株に対する細胞傷害性を調節し、また、IFN-γの発現を増強する。
【0034】
「高発現」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞におけるNotchリガンドの発現の、参照細胞における上記Notchリガンドの基礎発現レベルと比較して統計的に有意な増大を指す。細胞は、哺乳動物細胞であることが好ましく、間質細胞であることがより好ましい。基礎レベルを上回る発現には、上記Notchリガンドの薬理学的な及び人工的な上方調節及び高発現が含まれる。細胞におけるNotchリガンド又はそのアゴニストの高発現は、異なる手段によって、例えば、細胞に、該細胞におけるNotchリガンドの発現に適したプロモーターと作動可能に連結したNotchリガンドの遺伝子をコードするプラスミドをトランスフェクトすることによって、又は、上記Notchリガンドをコードする遺伝子を細胞のゲノムにCrispr、組込み型ウイルスベクター、若しくは相同組換え法等の遺伝子操作手法を使用することにより導入することによって、実現することができる。「参照の細胞」又は「参照細胞」という用語は、無処置の対照細胞、すなわち、上記Notchリガンドの発現を細胞が有し得る天然の発現(すなわち、基礎発現)を超えて誘導する遺伝子改変も人工的操作もされていない細胞を指す。参照細胞は、参照間質細胞であることが好ましい。したがって、参照間質細胞は、Notchリガンドを発現しない、又はNotchリガンドを基礎レベルで発現する。細胞において高発現される、又は細胞の基礎発現レベルと比較して統計的に有意な発現の増大を有するNotchリガンド遺伝子は、RNA発現技法(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、蛍光in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット法等)又はタンパク質発現技法(ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー等)によって検出することができる。
【0035】
「統計的に有意なNotchリガンドの発現の増大」は、本明細書では、発現レベルの増大が偶然だけでは説明できないという分析者による決定を指す。当業者がこの決定を行うための方法が統計学的仮説検定である。この検定では、結果が真に偶然のみに帰するものと仮定して、データにおける結果と同様の極端な結果が観察される確率である、p値がもたらされる。本明細書では、0.1以下(好ましくは0.05、0.01、0.001又はそれよりも小さい)p値が統計的に有意であるとみなされる。例えば、細胞、好ましくは間質細胞におけるNotchリガンドの発現の増大は、統計的検定を行って、細胞、好ましくは間質細胞におけるNotchリガンドの発現を上で定義された参照細胞、好ましくは参照間質細胞の基礎発現レベルと比較し、上記統計的検定から得られたp値が0.1以下、好ましくは0.05、0.01、0.001又はそれよりも小さければ、統計的に有意である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「適切な培地」という用語は、任意の好適な哺乳動物細胞培養培地と理解されるものとする。任意の培養培地、好ましくは、本発明の方法のSTEP1のための、20%ウシ胎仔血清及び好ましくはL-グルタミン(すなわち、約2mmol/lの濃度で)及び動物由来成分不使用組換えヒト(rh)サイトカイン、例えばIL-7(200IU/ml)、Flt3L(100IU/ml)及びSCF(100IU/ml)を補充した無血清培養培地(α-MEM);又は、本発明の方法のSTEP2のための、自己血漿(すなわち、5%自己血漿)又はヒトAB血清及び好ましくはL-グルタミン及び動物由来成分不使用組換えヒト(rh)サイトカイン、例えばrhIL-4(約100ng/mlの濃度が好ましい)、IFN-γ(約70ng/mlの濃度が好ましい)、IL-21(約7ng/mlの濃度が好ましい)、及びIL-1β(約15ng/mlの濃度が好ましい)を任意選択で補充した無血清培養培地(OpTimizer-CTS)が好ましい。なお、γδT細胞の増殖に使用するために適した多数の基本培養培地、特に、AIM-V、イスコフ培地及びRPMI-1640(Life Technologies)等の完全培地が利用可能である。培地は、他の培地因子、例えば、血清、血清タンパク質、及び、抗生物質等の選択用作用物質を補充したものであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、2mMのグルタミン、10%FBS、10mMのHEPES、pH7.2、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Life Technologies)、非必須アミノ酸(例えば、100μΜのGly、Ala、Asn、Asp、Glu、Pro及びSer;1×MEM非必須アミノ酸、Life Technologies)を含有するRPMI-1640培地。基本培地は、IL-2及び/又はIL-15を、当業者が常套的な実験によって容易に決定することができる標準的な濃度で補充したものであってもよい。
【0037】
「治療すること(treating)」、「治療すること(to treat)」又は「治療(treatment)」とは、これだけに限定することなく、疾患の成長を制止、限定、低減、安定化、又は緩徐化することを意味する。
【0038】
「医薬」又は「医薬品」とは、広く認められているように、ヒトを含む動物における疾患を治癒、治療又は予防するために使用される任意の医薬組成物又は動物用組成物(薬剤、投薬又は単に薬物とも称される)を意味する。
【0039】
「医薬組成物」とは、予防及び/又は治療用途の最終医薬品を調製することを意図した活性物質又は活性物質の組合せを意味する。
【0040】
「薬学的に許容可能な」とは、生物学的に又は他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はかかる組成物の成分のいずれかと有害に相互作用することなく、本発明の組成物とともに材料を被験体に投与することができる。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能なビヒクル」という用語は、同義であり、有害作用なしに被験体及び/又は環境に投与することができる医薬組成物の活性物質を含めるためのビヒクルを指す。好適な薬学的に許容可能な担体としては、滅菌水、精製水、生理食塩水、グルコース、デキストロース又は緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されない。担体は、希釈剤、安定化剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、pH緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)、粘度添加剤等を含むが、これらに限定されない助剤を含んでいてもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「自己」は、ドナー及びレシピエントが同じ個体である細胞調製物を指すものとして理解される。本明細書で使用される場合、「同種」は、ドナー及びレシピエントが同じ個体でない細胞調製物を指すものとして理解される。
【0042】
「単離された」という用語は、それが指す細胞又は細胞集団が、その自然環境にないことを示す。この細胞又は細胞集団は、周囲組織から実質的に分離されている。
【0043】
本発明において言及される細胞組成物製品のマーカープロファイルは、付加的なマーカーの存在及び/又は非存在、又は存在及び非存在マーカーの組合せの特定のプロファイルによって更に規定することができる。いずれの場合にも、マーカーの特定の組合せが、細胞集団内の特定のプロファイル及び/又は集団内の個々の細胞上のマーカーの特定のプロファイルとして存在する可能性がある。
【0044】
本明細書で使用される「マーカー」という用語は、その存在、濃度、活性又はリン酸化状態を検出し、細胞の表現型を同定するために用いることができる任意の生体分子を包含する。
【0045】
この場合、本発明の細胞は、或る特定の表現型マーカーについて陽性であり、他のマーカーについて陰性である。「陽性」とは、マーカーが細胞内で発現されることを意味する。発現されているとみなされるためには、マーカーは検出可能なレベルで存在する必要がある。
【0046】
「発現された」という用語は、細胞の表面上又は細胞内のマーカーの存在を表すために用いられる。発現されているとみなされるためには、マーカーは検出可能なレベルで存在する必要がある。「検出可能なレベル」とは、PCR、ブロッティング、免疫蛍光、ELISA又はFACS分析等の標準的な実験室的方法論の1つを用いてマーカーを検出することができることを意味する。「発現された」は、検出可能なタンパク質の存在、タンパク質のリン酸化状態又はタンパク質をコードするmRNAを指す場合があるが、これらに限定されない。遺伝子は、発現を25回のPCRサイクル後、好ましくは30回のPCRサイクル後に十分に検出することができる場合に(細胞1個当たり少なくとも約75コピー~100コピーの細胞中の発現レベルに相当する)、本発明の細胞又は本発明の集団の細胞によって発現されるとみなされる。「発現する」及び「発現」という用語は、対応する意味を有する。この閾値未満の発現レベルでは、マーカーは発現されているとはみなされない。
【0047】
本明細書において定義されている細胞集団は、細胞集団の細胞の少なくとも約60%、好ましくは約80%がマーカーの検出可能な発現を示す場合、そのマーカーを発現するとみなされる。集団の細胞の少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%又は少なくとも約97%又は少なくとも約98%又はそれよりも多くがマーカーの検出可能な発現を示すことが好ましい。或る特定の態様では、集団の細胞の少なくとも約99%又は100%がマーカーの検出可能な発現を示す。発現は、RT-PCR、免疫ブロッティング、免疫蛍光法、ELISA等の任意の好適な手段を使用することによって、又は蛍光活性化細胞選別(FACS)若しくはフローサイトメトリーによって検出することができる。この列挙は単に例として提示するものであり、限定的なものではないことが理解されるべきである。本明細書において定義されている細胞集団は、
図13に示されている通り、本発明の細胞におけるマーカーの発現レベルが、対照細胞、例えば、ex vivoで単離された細胞又はde novo生成されたものではない細胞、例えば、ex vivo PB又はCBにおける発現レベルよりも高い場合、そのマーカーを発現するとみなされる。この文脈において「よりも高い」とは、本発明の細胞集団におけるマーカー発現レベルが対照細胞におけるレベルの少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍であることを意味する。
【0048】
本明細書において定義されている細胞の集団を特徴付ける別のやり方は、特定のマーカー又は組合せ又は複数のマーカーの検出可能なレベルでの発現の欠如によるものである。本明細書で定義されている通り、これらのマーカーは、陰性マーカーであると言える。いくつかの実施形態では、本明細書において定義されている細胞集団は、細胞集団の細胞の少なくとも約60%、好ましくは約80%がマーカーの検出可能な発現を示さない場合に、そのマーカーを発現しないとみなされる。他の実施形態では、細胞集団の細胞の少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%又は少なくとも約97%又は少なくとも約98%又は少なくとも約99%又は100%がマーカーのいかなる検出可能な発現も示さない。同様に、検出可能な発現の欠如は、RT-PCR、免疫ブロッティング、免疫蛍光法、ELISAを使用し、又はFACS若しくはフローサイトメトリーを使用して証明することができる。
【0049】
本明細書に記載のマーカーは、細胞における発現レベルが細胞当たり約100コピー未満であることに対応する、30サイクルのPCRのレベルで発現を合理的に検出することができない、及び/又は、免疫蛍光法、免疫ブロッティング、ELISA若しくはFACSによって容易に検出することができない場合、細胞によって発現されないとみなされる。
【0050】
本明細書において定義されている細胞集団のマーカープロファイルを、マーカーの存在及び/又は非存在によって、又は存在及び非存在マーカーの組合せの特定のプロファイルによって更に定義することができる。それぞれの場合において、マーカーの特定の組合せが、細胞の集団内の特定のプロファイルとして及び/又は集団内の個々の細胞に関するマーカーの特定のプロファイルとして存在し得る。
【0051】
「細胞集団」という用語は、細胞の群を指す。細胞集団は、異なる細胞の群を含む場合、不均一であり、各群は他の群と1つ以上の識別的特徴の存在、例えば、特定のマーカーの発現の有無、又は異なる機能の存在によって弁別される。
【0052】
「間質細胞」という用語は、骨髄由来間質細胞株を指す。
【0053】
説明
以下に、本発明の有益な実施形態を添付の図面を参照して具体的に記載する。
【0054】
胸腺は、HPCからの主要なαβT細胞サブセット及びより少ないγδT細胞サブセットの両方のde novo生成のための主要器官である。Vδ1+γδT細胞は、出生後胸腺では優勢なγδT細胞サブセットであるが、末梢血ではより少ないγδT細胞サブセットである。胸腺におけるαβT細胞及びγδT細胞のどちらの生成も、in vivoにおけるT細胞コミットメント及び発生のためにDll4が不可欠であるNotchシグナル伝達に依存する(Koch et al., J. Exp. Med. 2008;Hozumi et al., J. Exp. Med. 2008)。本発明では、ヒトNotchリガンドJag2の高発現によって特異的にもたらされる強力かつ維持されるNotchシグナル伝達がαβT細胞生成よりもγδT細胞生成に好都合であり、一方、他のNotchリガンド(Jag1、Dll4及びDll1)のいずれかを使用したNotchシグナル伝達の高発現はγδT細胞生成よりもαβT細胞生成に好都合であることが示される(
図1参照)。これらの根拠に基づいて、またCD34+ETP等のヒト胸腺前駆細胞からヒトT細胞をde novoに産生するin vitro方法に関する本発明者らの知見に基づいて、任意の生体試料から、例えば胸腺前駆細胞から及び臍帯血造血前駆細胞から得たCD34+造血前駆細胞からのヒトγδT細胞(とりわけVδ1+γδT細胞)の優先的生成を支持する培養法を開発した。この方法は、上記CD34+細胞をヒトJag2を形質導入したマウスOP9間質細胞株上で共培養することを含む。最初に、4種のリガンド(すなわち、Dll1、Dll4、Jag1、Jag2)からの、ヒト胸腺において発現されたOP9細胞におけるそれらの高発現によってもたらされる強力なNotchシグナルを受け取るETP(Garcia-Leon et al. Development 2018)はαβT細胞及びγδT細胞のどちらにも分化し得るが、一方、形質導入されていないOP9細胞上で培養したETPはin vitroにおいて生存すること及び/又は分化することができず、培養物から消失することを見いだした(
図7参照)。しかし、ヒトJag2シグナル伝達が、他のNotchリガンドの存在下で観察されたものとは別個の、非常に乏しいαβT細胞が生じ、γδT細胞に優先的に分化すること(30日目までに300倍に至るまで富化された)を伴うETPの分化パターンを選択的に誘導する唯一のNotchリガンドであることも見いだした(
図1参照)。出生後ヒト胸腺においてin vivoで見いだされた通り(
図11)、ETPから、in vitroで、OP9細胞において高発現したヒトJag2シグナル伝達に応答して分化したγδT細胞では、優勢なVδ1の発現が示され、Vδ1+細胞が培養中にJag2に応答して優勢に拡大した(
図11)。γδT細胞の約35%がVδ1+であったことから(
図2)、OP9細胞におけるJag2の高発現により、4週間の培養後に100倍のVδ1+T細胞収率がもたらされることが示される(
図3)。
【0055】
さらに、驚くべきことに、
図4に示されている通り、ヒトJag2-Notchシグナル伝達により、in vitroにおけるヒト臍帯血CD34+HPCからのγδT細胞生成も支持され、ETPからのγδT細胞生成と効率が同様であることが本明細書において実証される。実際、臍帯血HPCから生じた総γδT細胞は、OP9-Jag2培養物では9週間後に210倍~250倍の富化になり、Vδ1+γδT細胞は40%までになった(
図4)。したがって、その後に養子細胞療法のために拡大させることができるヒトVδ1+T細胞を多数(約100倍の収率に至るまで)生成するためのCD34+前駆細胞の最適な供給源として臍帯血を使用することを更に提唱する(
図5)。細胞の表現型解析により、得られたVδ1+T細胞集団が、出生後ヒト胸腺においてin vivoで見いだされる通り(
図11)、CD4+、ダブルポジティブ(DP)CD4+CD8+又はCD4-CD8-ダブルネガティブ(DN)表現型のいずれかを示す未成熟CD1a+細胞である主要なサブセットを含む活性化されていないCD25ナイーブγδT細胞(
図8)と、大部分がDN又はCD8+細胞で構成される成熟CD1a-γδT細胞の軽微な集団とを含む不均一な細胞集団であることが示された。特に、成熟CD1a-Vδ1+γδT細胞は、ナイーブCD27+表現型を示し、γδT細胞分化マーカーであるCD73及び別個のレベルのいくつかの細胞傷害性NK受容体を主に発現し(
図8参照)、したがって、成体末梢血Vδ1+T細胞よりも臍帯血中に存在するナイーブVδ1+胎児細胞に類似したものである(
図9参照)。単一CB単位から単離され、ヒトJag2シグナル伝達を受け取ったCD34+HPCからde novo生成されたナイーブVδ1+γδT細胞の割合及び数は、単一CB若しくは末梢血単位から、又は同数の出発CB若しくはPB総細胞から、ex vivoで得られたものよりも有意に高い(表2)。
【0056】
したがって、本発明の目的は、癌に対する養子免疫療法への臨床的適用に最適な、ヒトγδT細胞、より好ましくは同種ヒトVδ1+γδT細胞の大規模な選択的生成のための新規かつ効率的な方法に関する。この要点に関しては、臨床で好ましい幹細胞の供給源として現在選択されているヒト臍帯血HPC及びヒトETPのどちらも、Notchシグナル伝達に応答してde novoヒトγδT細胞を効率的に生成し得ることを考慮すると、この方法は、臍帯血CD34+HPC及び/又はヒト胸腺ETP等の造血幹/前駆細胞を含む任意の生物学的供給源の分化を、Notchリガンド、好ましくはDLL1、DLL4、Jag1又はJag2 Notchリガンド、より好ましくはJag2によって媒介されるNotch活性化によって誘導することを含む。特に、この方法は、HPC、好ましくはヒトCD34+HPC細胞又はヒトETPを、Notchリガンドを高発現する細胞、好ましくはヒトJag2を高発現する間質細胞上で、好ましくはFlt3、SCF及びIL-7を補充して、好ましくは最長15週間にわたって、好ましくは最長10週間、最長9週間、最長8週間、最長7週間、最長6週間、最長5週間又は最長4週間にわたって、共培養することを含む。次いで、上記の通りTCR非依存性Notch依存性様式で(本明細書ではSTEP1と称される)得られた、Vδ1+γδT細胞の集団を含む生成されたγδT細胞を、例えば、抗CD3 mAb並びにIL-4、IFNγ及びIL-15を含むサイトカインを使用することにより、当該技術分野で既知の任意の方法に従って拡大させて、上記Vδ1+γδT細胞を活性化する及びその増殖を誘導する(本明細書ではSTEP2と称される)(非特許文献6)。
【0057】
したがって、本発明の第1の態様(STEP1とも称される)は、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はヒトETPを含む細胞集団から、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含むde novo細胞組成物を生成するための、Notchリガンド、好ましくはJag2 Notchリガンドのin vitro使用に関する。Notchリガンド、好ましくはJag2を細胞、好ましくは間質細胞において発現させることが好ましく、ここで、上記細胞は、参照細胞、好ましくは参照間質細胞における上記リガンドの基礎発現レベルと比較して上記Notchリガンドの発現の統計的に有意な増大を示している。したがって、細胞において、好ましくはその表面上に、基礎レベルを超えて発現させ、CD34+臍帯血HPC等のHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団からγδT細胞をαβT細胞よりも多量に含むde novo細胞組成物を生成するために使用されるNotchリガンド、好ましくはJag2が本明細書に提示される。Notchリガンドを高発現させる細胞は、間質細胞株であることが好ましく、OP9細胞であることが最も好ましい。「参照細胞」及び「統計的に有意な発現の増大」という用語は、上で定義されており、特許の記載全体を通して適用される。
【0058】
細胞、好ましくは間質細胞におけるNotchリガンド、好ましくはJag2の高発現の程度は、参照細胞、好ましくは参照間質細胞におけるNotchリガンドの基礎発現レベルと比較して約100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、10000倍、100000倍の発現の増大であり得る。
図10は、参照(形質導入されていない)間質細胞と比較した、Jag2が形質導入された間質細胞における500倍の高発現を示す。Notchリガンド、好ましくはJag2の、基礎レベルを超える発現(すなわち、高発現)は、当業者に既知の任意の方法によって実現することができる。例として、ネイティブなゲノムNotchリガンドの調節をモジュレートすることにより、基礎レベルを上回る発現を誘導することができる。基礎レベルを上回る発現の誘導は、Notchリガンドの転写及び/又は翻訳を増大させることによって、及び/又は異種調節配列をNotchリガンドのネイティブな調節領域内に若しくはそれに隣接させて導入することによって、及び/又は、Notchリガンドのネイティブな調節領域を例えば相同組換えによってそのような異種調節配列で置き換えることによって、及び/又は、上記Notchリガンドの転写、翻訳若しくは機能を負に調節する、遮断する若しくは下方調節する分子を妨害若しくは下方調節することによって、行ってもよい。
【0059】
基礎レベルを超えるNotchリガンドの転写は、細胞、好ましくは間質細胞に、例えば、細胞にそのような活性化因子を接触させることにより、又は、活性化因子をコードする核酸を用いて細胞を形質転換することにより、転写活性化因子のレベルの上昇をもたらすことによって増大させることができる。あるいは、Notchリガンドの転写阻害因子に対するアンチセンス核酸を用いて細胞を形質転換することによって転写を増大させてもよい。
【0060】
内在性Notchリガンドの転写及び/又は翻訳を増大させる代わりに又はそれに加えて、Notchリガンドの1つ以上の追加のコピーを細胞、好ましくは間質細胞に、例えば、Notchリガンドをコードする核酸を細胞にトランスフェクト又は形質導入することによって導入することにより、基礎レベルを超えるNotchリガンドの発現を引き起こしてもよい。形質転換用Notchリガンドは、ゲノム外ベクター上に含有させてもよく、ゲノム内に、好ましくは安定に、組み入れてもよい。形質転換用Notchリガンドは、細胞における基礎レベルを上回るその発現を駆動するプロモーターに作動可能に連結していてもよい。「作動可能に連結」とは、同じ核酸分子の一部として接合しており、プロモーターからの転写が開始されるように好適に配置され、向き付けられていることを意味する。
【0061】
遺伝子を細胞に導入する方法は、当業者には既知である。Notchリガンドを細胞に導入するためにベクターを使用することができ、Notchリガンドがベクター上に残るか又はゲノム内に組み入れられるかは問わない。プロモーター配列、ターミネーター断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列を含めた適当な調節配列を含有する好適なベクターを選択又は構築することができる。ベクターは、必要に応じてマーカー遺伝子及び他の配列を含有してもよい。調節配列は、細胞内でのNotchリガンドの発現を駆動するものであってよい。例えば、ベクターはゲノム外発現ベクターであってもよく、又は調節配列をNotchリガンドとともにゲノム内に組み入れてもよい。ベクターはプラスミド又はウイルスベクターであってもよい。
【0062】
Notchリガンドのコード配列を含む核酸を細胞、好ましくは間質細胞のゲノムに組み込むことができる。標準的な技法に従って、ゲノムの組換えを促進する配列を形質導入又はトランスフェクト用核酸に含めることにより、組込みを促進することができる。組み込まれる核酸は、基礎レベルを超えるNotchリガンドの発現を駆動することができる調節配列を含んでもよい。核酸は、その組込みを、ゲノム内の、Notchリガンドコード配列が細胞内でのその発現を駆動する及び/又は制御することができる調節エレメントの制御下にある部位に方向付ける配列を含んでもよい。組み込まれる核酸は、Notchリガンド核酸を細胞に形質導入又はトランスフェクトするために使用されるベクターから引き出されてもよい。
【0063】
Notchリガンドを含む核酸の導入は、核酸が直鎖状であるか分枝状であるか環状であるかにかかわらず、一般に、これだけに限定することなく、「トランスフェクション」又は「形質導入」と称される。任意の利用可能な技法を使用することができる。好適な技法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、微量注射等の機械的技法、直接DNA取り込み、受容体媒介性DNA移入、レトロウイルス又は別のウイルスを使用する形質導入、及びリポソーム媒介性トランスフェクションを挙げることができる。選択された遺伝子構築物を細胞に導入する際には、当業者に既知の或る特定の事項を考慮しなければならない。
【0064】
上記Notchリガンドを高発現する細胞、好ましくは間質細胞をもたらすための、細胞、好ましくは間質細胞へのNotchリガンドのin vivoトランスフェクション又は形質導入のための好適なベクター及び技法は当業者には既知である。好適なベクターとしては、アデノウイルス、パポーバウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス及びレトロウイルスが挙げられる。無効化ウイルスベクターを、感染性ウイルス粒子の産生のために必要な遺伝子が発現されるヘルパー細胞株において産生させることができる。好適なヘルパー細胞株は、当業者には既知である。
【0065】
好ましい実施形態では、細胞、好ましくは間質細胞におけるNotchリガンドの高発現、すなわちNotchリガンドの発現レベルの統計的に有意な増大は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、伸長因子(EF)-1プロモーター等の強力な発現プロモーターに作動可能に連結した、上記Notchリガンド、好ましくはヒトJag2 Notchリガンドをコードする遺伝子を含む核酸を、上記細胞に形質導入又はトランスフェクトすることによって実現される。したがって、本発明の第1の態様の或る実施形態では、CD34+臍帯血HPC等のHPC及び/又はCD34+ETPを、細胞株、好ましくは間質細胞株、好ましくはOP9細胞において高発現させたNotchリガンド、好ましくはヒトJag2を含む培地で培養し、ここで、上記細胞株は、細胞における上記Notchリガンドの高発現を駆動する上記Notchリガンドの遺伝子を含む核酸を形質導入又はトランスフェクトしたものである。
【0066】
本発明において有用なCD34+HPCを含む有用な供給源は、骨髄及び/又は、HPC、好ましくは骨髄から動員されたHPCを含む末梢血である。HPCを含む他の供給源として、胎盤血及び胎児肝臓並びにiPSC(人工多能性幹細胞)等の多能性幹細胞由来のCD34+細胞が挙げられ、これらも同様に本発明の実施に適し得る。HPCを含む他の供給源として、胎盤血、胎児肝臓又はiPSC(人工多能性幹細胞)等の多能性幹細胞由来のCD34+細胞が挙げられ、これらも同様に本発明の実施に適し得る。Notchにより誘導され分化したγδT細胞、好ましくはVδ1+γδT細胞が引き出される、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団は、実質的に純粋又は均一な集団であることが好ましい。本発明の文脈において、実質的に純粋な集団とは、CD34+臍帯血HPC等のHPC及び/又はCD34+ETPが実質的に単離された細胞であり得る集団である。一実施形態では、CD34+臍帯血HPC等のHPCは、組成物中の細胞の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%に相当する。別の実施形態では、ヒトCD34+ETPは、組成物中の細胞の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%に相当する。
【0067】
本発明の第1の態様の他の実施形態では、CD34+臍帯血HPC等のHPC及び/又はCD34+ETPを、工学的に作製されたNotchリガンド、好ましくはJag2、若しくは、天然リガンドの生物学的効果を有する、Notch受容体に対する抗体、ペプチド模倣体、及び小分子を含めたNotchアゴニストを高発現する細胞、好ましくは間質細胞の集団を含む培地で培養する、又は、基材上(すなわち、プラスチック表面上又はマイクロビーズ上)に固定化したそのような化合物とともに培養する。CD34+臍帯血HPC等のHPC及び/又はCD34+ETPを、細胞株に固定化した、Notchリガンド、好ましくはJag2、又は、天然リガンドの生物学的効果を有する、Notch受容体に対する抗体、ペプチド模倣体、及び小分子を含めたNotchアゴニストを含む培地で更に培養してもよいことが好ましい。Notchリガンドは、ヒトNotchリガンド、好ましくはヒトJag2であることが好ましい。本発明のいくつかの態様では、Notchリガンド又はNotchアゴニストを、培地中に浮遊させた固体基材に固定化することができ、それにより、CD34+臍帯血HPC等のHPC及び/又はCD34+ETPとNotchリガンド又はNotchアゴニストとの相互作用が容易になる。この方法は、細胞を培養物中、Vδ1+γδT細胞が生じるのに十分な持続時間にわたって維持することを更に含む。いくつかの実施形態では、持続時間は、約2週間から約15週間の間、好ましくは約2週間から約9週間の間である。
【0068】
いくつかの実施形態では、Notchリガンド、好ましくはJag2、又はNotchアゴニストを固定化するために、無細胞系を使用する。上記無細胞系には、臨床的適用のために容易に拡張可能であるという利点がある。無細胞系は、3D足場を含むことが好ましい。本明細書で使用される場合、「3D足場」とは、その上に細胞が埋め込まれる又は播種され、3次元細胞増殖及び分化を支持することができる、人工的な生体適合性の可鍛性構造を指す。さらに、足場を、生化学的因子、例えば、分化誘導リガンド、増殖因子、細胞栄養分を体内に送達するため、器官又は組織の新規の細胞の成長を支持し、方向付けるために使用することができる。足場は、天然材料のものであっても合成材料のものであってよく、また、恒久性であっても生分解性であっても生体吸収性であってもよい。天然足場材料の例としては、アガロース、コラーゲン、一部の直鎖状脂肪族ポリエステル、キトサン及びヒアルロン酸等のグリコサミノグリカンが挙げられる。一般に使用される合成生分解性足場材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA);ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PGLA)及びポリカプロラクトン(PCL)が挙げられる。足場は、一般に、構造全体を通した細胞の播種及び拡散が容易になるように、高多孔度を有する。或る実施形態では、3D足場は、Notchリガンド、好ましくはJag2、又はそのアゴニストを含む又はそれとコンジュゲートしており、したがって、培養される細胞は上記Notchリガンドによって刺激される。
【0069】
別の実施形態では、無細胞系は、浮遊支持体を含む。「浮遊支持体」という用語は、本明細書で使用される場合、Notchリガンド、好ましくはJag2、又はアゴニストとコンジュゲートした場合、Notchリガンド(又はそのアゴニスト)が培養培地中に浮遊することを可能にする任意の材料を指す。浮遊支持体は、多種多様な材料製であってよく、また、様々な形式であってよい。浮遊支持体として使用することができる支持体の例としては、これだけに限定されないが、粒子、ビーズ(マイクロビーズを含む)、タンパク質、脂質、核酸分子、フィルター、繊維、スクリーン、メッシュ、チューブ、中空繊維、生体組織及びこれらの任意の組合せが挙げられる。一実施形態では、浮遊支持体は粒子である。粒子は、これだけに限定されないが、球体、卵形、棒状、又は四角形を含めた任意の形状であってよい。粒子は、これだけに限定されないが、天然又は合成ポリマー、天然又は合成ワックス、セラミックス、金属、生物材料又はこれらの組合せを含めた種々の材料のものであってよい。一実施形態では、浮遊支持体は、マイクロビーズを含む。「マイクロビーズ」という用語は、本明細書で使用される場合、直径が0.01pm(10nm)~500pm、任意選択で1pmから200pmまでである球状又は実質的に球状のビーズを指す。別の実施形態では、マイクロビーズの直径は、6.5pm~100pm、任意選択で20pm~30pm、24pm~26pm又は25pmである。
【0070】
種々の型のマイクロビーズが本明細書において意図されている。一実施形態では、マイクロビーズは、ポリマー、シリカ又は磁性、超常磁性、常磁性又は強磁性マイクロビーズである。他の実施形態では、マイクロビーズは、ポリスチレンマイクロビーズ又は金ナノ粒子である。別の実施形態では、マイクロビーズは、ポリスチレンと架橋結合したもの又は酸化鉄コーティングされたものである。別の実施形態では、マイクロビーズは、乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)でコーティングされたものである。
【0071】
Notchリガンド、好ましくはJag2、又はそのアゴニストを3D足場又は浮遊支持体にコンジュゲートすることが好ましい。タンパク質を支持体にコンジュゲートする種々の手段が当該技術分野で既知である。「コンジュゲーション」は、本明細書では、2つの化合物、例えばマイクロビーズとJag2 Notchリガンドが連結している状態を指す。タンパク質は、浮遊支持体又は3D足場、例えばマイクロビーズに直接的にコンジュゲートしていてもよく、間接的にコンジュゲートしていてもよい。一実施形態では、Notchリガンドを浮遊支持体又は3D足場にビオチン/ストレプトアビジン系を使用してコンジュゲートする。その場合、Notchリガンドをビオチン化し、次いで、ストレプトアビジンでコーティングした浮遊支持体又は3D足場(例えば、ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロビーズ)にコンジュゲートする。別の実施形態では、Notchリガンドを浮遊支持体又は3D足場にプロテインG又はプロテインAを介してコンジュゲートする。浮遊培養では、培養培地中を自由に漂わせて細胞を成長させる。対照的に、3D足場培養では、細胞を人工的基材上で単層として成長させる。
【0072】
ヒトHPCを含む細胞集団を本明細書に記載の好適な条件下で培養して、γδT細胞を含む集団を生成する。ヒトHPCを含む細胞集団を1種のNotchリガンド又はアゴニストの存在下で、好ましくはJag2の存在下で培養することが好ましく、ここで、Notchリガンド又はアゴニストを浮遊支持体又は3D足場にコンジュゲートし、上記細胞を、上記Notchリガンドと接触させて、γδT細胞系列の細胞が形成されるのに十分な時間にわたって培養する。Notchリガンド、好ましくはJag2を浮遊支持体とコンジュゲート、好ましくは浮遊支持体に含まれるマイクロビーズにコンジュゲートし、したがって、ヒトHPCを含む細胞集団を、浮遊液中でNotchリガンド、好ましくはJag2と接触させて培養することが好ましい。別の実施形態では、Notchリガンド、好ましくはJag2を3D足場とコンジュゲート、好ましくは上記3D足場に含まれるマイクロビーズとコンジュゲートし、したがって、ヒトHPCを含む細胞集団を、足場の人工基材上で、Notchリガンド、好ましくはJag2と接触させて培養する。
【0073】
別の実施形態では、ヒトHPCを含む細胞集団を、任意選択で閉鎖系のGas Permeable Rapid Expansion(G-Rex)システムバイオリアクターであってよいバイオリアクター中、又は閉鎖系の自動化バイオリアクター中で、浮遊支持体又は3D足場にコンジュゲートしたNotchリガンドとともに培養する。一実施形態では、浮遊支持体又は3D足場は、マイクロビーズにコンジュゲートしたNotchリガンド、好ましくはJag2を含み、ここで、マイクロビーズの直径はバイオリアクターと適合させる。種々のバイオリアクターが当該技術分野で既知であり、それらとして、バッチ、流加バッチ又は連続バイオリアクターを挙げることができる。連続バイオリアクターの例は、連続撹拌槽型反応器モデルである。
【0074】
浮遊支持体又は3D足場に対するNotchリガンドの位置付けを方向付けることにより、Notchシグナル伝達を増強することができる。したがって、一実施形態では、NotchリガンドのC末端を浮遊支持体又は3D足場にコンジュゲートする。これは、例えば、NotchリガンドのC末端に、ビオチン分子と酵素的にコンジュゲートすることができる配列を付加することにより、工学的に作製することができる。別の実施形態では、融合タンパク質Notchリガンド-FcのC末端領域に存在するFcセグメントを、浮遊支持体又は3D足場とコンジュゲートしたプロテインA又はプロテインGに直接結合させてもよい。それぞれが浮遊支持体又は3D足場とコンジュゲートした1つ以上の追加的な分子を培養物に添加してもよい。一実施形態では、追加的な分子は、T細胞共刺激分子とも称される、T細胞発生を促進する(例えば、T細胞系列の細胞のコミットメント及び分化を促進する)分子である。
【0075】
培養条件には、ヒトCD34+HPCを含む細胞集団を、γδT細胞がαβT細胞よりも多量に生成されるように、Notchリガンド、好ましくはJag2と接触させて十分な期間にわたって培養することが伴う。細胞を、本明細書に記載の所望の細胞組成物を実現するために必要な好適な期間にわたって維持することができることが理解されよう。培養時間は、30日以上、好ましくは35日以上、好ましくは30日~50日であることが好ましい。
【0076】
細胞とマイクロビーズの比(マイクロビーズと細胞の比とも称される)は、培養条件並びに細胞の増殖及び分化のためにもたらされる刺激に応じて変動させることができる。一実施形態では、Notchリガンド、好ましくはJag2、又はそのアゴニストをマイクロビーズにコンジュゲートし、ここで、マイクロビーズにコンジュゲートしたNotchリガンドとヒトHPCの比は、1:1から27:1の間、任意選択で5:1~15:1、8:1~10:1又は9:1である。当業者は、培養条件に応じて最良のマイクロビーズと細胞の比の確立の仕方を承知している。
【0077】
あるいは、本発明の第1の態様は、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC、及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団から、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物を生成するin vitro方法にも関する。本方法に有用なHPCを含む別の供給源は、骨髄又は末梢血、好ましくは骨髄から動員されたHPCを含む末梢血である。HPCを含む他の供給源として、胎盤血、胎児肝臓又はiPSC等の多能性幹細胞由来のCD34+細胞が挙げられ、これらも同様に本方法の実施に適し得る。この方法は、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団を、適切な培養培地、好ましくは、基材上に固定化した又は細胞株において高発現させたNotchリガンド(好ましくはDLL1、DLL4、Jag1又はJag2 Notchリガンド、より好ましくはJag2)又はNotch受容体アゴニストを含む培地で生育することを含むことが好ましい。本発明のいくつかの態様では、Notchリガンド又はNotchアゴニストを培地中に浮遊させた固体基材上に固定化することができ、それにより、CD34+臍帯血HPC等のHPC及び/又はCD34+ETPとNotchリガンド又はNotchアゴニストとの相互作用が容易になる。いくつかの他の実施形態では、Notchリガンド、好ましくはJag2を間質細胞株において高発現させる。この方法は、細胞を培養物中で、γδT細胞、好ましくはVδ1+γδT細胞が富化された組成物が生じるのに十分な持続時間にわたって維持することを更に含む。いくつかの実施形態では、持続時間は、約2週間から約15週間の間、好ましくは約2週間から9週間の間である。上記Notchリガンド又はNotchアゴニストを、培養時に、かつ培養期間全体を通して、上記細胞培養物中に存在させる又は添加することができる。好ましい実施形態では、Notchリガンド、好ましくはJag2、最も好ましくはヒトJag2を細胞株、好ましくは間質細胞において、好ましくはそれらの表面上に高発現させ、上記細胞を、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団と共培養して相互作用させる。「高発現」という用語は上で説明されており、ここでも適用される。
【0078】
上記を考慮して、本発明の第1の態様は、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含み、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC、及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団から得られる細胞組成物を生成するための、高発現させたNotchリガンド、好ましくはJag2の使用、及び方法を提供する。実施例、特に実施例1において及び
図1~
図3において示されている通り、ヒトJag2 Notchリガンドは、間質細胞株において高発現されると、γδT細胞がαβT細胞よりも高い割合で生じる分化パターンを選択的に誘導する、唯一のリガンドである。したがって、上で定義された使用及び方法のどちらにも適用することができる第1の態様の或る実施形態では、高発現させたJag2 Notchリガンドを本発明において使用して、CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団からのγδT細胞の生成をαβT細胞の生成よりも有利にする。γδT細胞が富化された細胞組成物は、γδT細胞とαβT細胞の両方を含むT細胞の集団であり、第1の態様の使用及び方法に従った少なくとも30日間の培養後、好ましくは60日間の培養後、γδT細胞が総T細胞の少なくとも80%~95%、好ましくは90%~95%に相当することが好ましい。或る実施形態では、第1の態様の使用及び方法に従った少なくとも30日間の培養後、好ましくは60日間の培養後に、αβT細胞は、総T細胞の15%未満、好ましくは5%~10%に相当する。γδT細胞の少なくとも30%、好ましくは30%~40%がVδ1+γδT細胞であることが好ましい。Vδ1+γδT細胞は、同種のNotchにより誘導され分化したVδ1+γδT細胞であることが好ましい。第1の態様の使用及び方法に従って得られた又は得ることができるγδT細胞のより詳細な説明を本発明の第2の態様において提示する。
【0079】
本発明の第2の態様は、第1の態様の使用及び方法により得られた又は得ることができる、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物に関する。第1の態様の使用及び方法に従った少なくとも30日間の培養後、好ましくは60日間の培養後に、細胞組成物のT細胞の総数の少なくとも80%~95%、好ましくは90%~95%がγδT細胞であることが好ましい。或る実施形態では、第1の態様の使用及び方法に従った少なくとも30日間の培養後、好ましくは60日間の培養後に細胞組成物に含まれるT細胞の総数の15%未満、好ましくは5%~10%がαβT細胞である。
【0080】
第2の態様の或る実施形態では、細胞組成物に含まれるγδT細胞がここでは不均一な細胞集団であり、
i)γδT細胞の総数の少なくとも30%、好ましくは30%~40%がVδ1+γδT細胞であり、
ii)γδT細胞の総数の少なくとも4%、好ましくは4%~7%がVδ2+γδT細胞であり、
iii)γδT細胞の総数の約50%がVδ2+細胞でもVδ1+細胞でもない。
【0081】
さらに、好ましい実施形態では、Vδ1+γδT細胞、好ましくはi)のVδ1+γδT細胞もまた、ここでは以下の細胞集団:
a)未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現することを特徴とする第1の細胞集団(以降CD1a+Vδ1+γδT細胞と称する)と、
b)未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現しないことを特徴とする第2の細胞集団(以降CD1a-Vδ1+γδT細胞と称する)と、
を含む不均一な細胞集団である。
【0082】
a)及びb)を含む不均一なVδ1+γδT細胞集団は実施例、特に
図8及び
図9に示されている。
【0083】
或る実施形態では、第1のT細胞の集団(CD1a+Vδ1+γδT細胞)は、不均一なVδ1+γδT細胞集団に含まれるVδ1+γδT細胞の大部分に相当する。Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%、好ましくは85%~95%がCD1a+Vδ1+γδT細胞(第1の集団)であることが好ましい。したがって、Vδ1+γδT細胞の集団は、CD1a+Vδ1+γδT細胞が富化されたものである。Vδ1+γδT細胞の総数の8%~12%がCD1a-Vδ1+γδT細胞(第2の集団)であることが好ましい。Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%又は70%超がCD1a-Vδ1+γδT細胞(第1の集団)であることが好ましい。
【0084】
好ましい実施形態では、第1の態様の方法及び使用から得ることができる又は得られた細胞組成物は、少なくとも30日間の培養後、好ましくは60日間の培養後に、T細胞の総数の少なくとも80%~95%、好ましくは90%~95%がγδT細胞であるので、γδT細胞が富化された不均一な細胞集団であり、
i)γδT細胞の総数の少なくとも30%、好ましくは30%~40%がVδ1+γδT細胞であり、
ii)γδT細胞の総数の少なくとも4%、好ましくは4%~7%がVδ2+γδTであり、
iii)γδT細胞の総数の約50%がVδ2+細胞でもVδ1+細胞でもなく、
i)の集団は、総Vδ1+γδT細胞の85%~95%がCD1a+Vδ1+γδT細胞であり、総Vδ1+γδT細胞の8%~12%がCD1a-Vδ1+γδT細胞であるので、CD1a+Vδ1+γδT細胞が富化されたものである。
【0085】
Vδ1+γδT細胞は、IFNγを産生するが、IL-17は産生しないことが好ましい。
図2参照。
【0086】
上記の細胞集団それぞれ及びそれらの割合を測定する方法は当該技術分野で既知であり、本発明の説明において確立されている。特に、T細胞の型それぞれの測定方法は、自動化細胞計数器を用いた総細胞計数及び分画細胞計数を使用して行われる。細胞のパーセンテージ及びCD1a発現細胞のパーセンテージは、フローサイトメーターを使用して決定することができる。
【0087】
第2の態様の或る実施形態では、細胞の第1の集団(CD1a+Vδ1+γδT細胞)は、以下の表面マーカー、CD25、CD27、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを発現しないことを更に特徴とする。或る実施形態では、第1の集団の細胞は、CD4、CD8、又は両方を発現するもの又は発現しないものであり得る、すなわち、CD4+CD8-、CD4-CD8+、CD4+CD8+又はCD4-CD8-であり得る。
図8及び
図9参照。
【0088】
第2の態様の或る実施形態では、細胞の第2の集団(CD1a-Vδ1+γδT細胞)は、以下の表面マーカー、CD27、CD73、CD69、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを発現することを更に特徴とする。
図8及び
図9参照。
【0089】
第2の態様による細胞組成物は、本発明の第1の態様に従って得られた又は得ることができるヒト同種細胞傷害性Vδ1+γδ細胞を含むことが好ましい。
【0090】
本発明の第3の態様は、第2の態様において定義されたVδ1+γδT細胞の第1の集団を含む細胞組成物に関する。したがって、第3の態様による細胞組成物は、少なくともCD1a表面マーカーを発現し、好ましくは、以下の表面マーカー、CD25、CD27、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを発現しないことを特徴とするVδ1+γδT細胞を含む。本発明の第4の態様は、第2の態様において定義されたVδ1+γδT細胞の第2の集団を含む細胞組成物に関する。したがって、第4の態様による細胞組成物は、CD1a表面マーカーを発現せず、好ましくは、以下の表面マーカー、CD27、CD73、CD69、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを発現することを特徴とするVδ1+γδT細胞を含む。
【0091】
好ましい実施形態では、第3の態様及び第4の態様の細胞集団は、実質的に純粋又は均一な集団である。本発明の文脈において、実質的に純粋な集団は、細胞が、実質的に単離された細胞であり得る集団である。一実施形態では、細胞又は細胞集団は、組成物中の細胞の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%に相当する。「実質的に純粋」という用語は、「完全に純粋」を包含し、この用語と区別なく使用され得る。
【0092】
本発明の第5の態様は、自己又は同種Vδ1+γδT細胞の不均一な細胞集団に関するものであり、ここで、上記不均一な細胞集団は、Vδ1+γδT細胞の第1の亜集団及び第2の亜集団を含み、第1の亜集団は、未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現する細胞(CD1a+Vδ1+γδT細胞)を含み、第2の亜集団は、未成熟表面細胞マーカーCD1aを発現しない細胞(CD1a-Vδ1+γδT細胞)を含む。或る実施形態では、第1の細胞の亜集団(CD1a+Vδ1+γδT細胞)は、不均一な細胞集団に含まれる細胞の大部分に相当する。第1の細胞の亜集団は、不均一な細胞組成物に含まれる総Vδ1+γδT細胞の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%に相当することが好ましい。上記の細胞亜集団それぞれ及びそれらの割合の測定方法は、当該技術分野で既知であり、本発明の説明において確立されている。特に、Vδ1+γδT細胞それぞれの測定方法は、自動化細胞計数器を用いた総細胞計数及び分画細胞計数を使用して行われる。細胞のパーセンテージ及びCD1a発現細胞のパーセンテージは、フローサイトメーターを使用して決定することができる。
【0093】
第5の態様の或る実施形態では、第1の亜集団の細胞(CD1a+Vδ1+γδT細胞)は、以下の表面マーカー、CD25、CD27、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを発現しないことを更に特徴とする。或る実施形態では、第1の亜集団の細胞は、CD4、CD8、又は両方を発現するもの又は発現しないものであり得る、すなわち、CD4+CD8-、CD4-CD8+、CD4+CD8+又はCD4-CD8-であり得る。
図8参照。
【0094】
第5の態様の或る実施形態では、第2の亜集団の細胞(CD1a-Vδ1+γδT細胞)は、以下の表面マーカー、CD27、CD73、CD69、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを発現することを更に特徴とする。
図8参照。
【0095】
本発明の第6の態様は、第5の態様において定義された第1の細胞の亜集団を含む細胞組成物に関する。したがって、第6の態様による細胞組成物は、少なくともCD1a表面マーカーを発現し、好ましくは、以下の表面マーカー:CD25、CD27、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを発現しないことを特徴とするVδ1+γδT細胞を含む。本発明の第7の態様は、第5の態様において定義された第2の細胞の亜集団を含む細胞組成物に関する。したがって、第5の態様による細胞組成物は、少なくともCD1a表面マーカーを発現せず、好ましくは、以下の表面マーカー、CD27、CD73、CD69、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを発現することを特徴とするVδ1+γδT細胞を含む。
【0096】
好ましい実施形態では、第6の態様及び第7の態様の細胞の集団は、実質的に純粋又は均一な集団である。本発明の文脈において、実質的に純粋な集団は、細胞が、実質的に単離された細胞であり得る集団である。一実施形態では、細胞又は細胞集団は、組成物中の細胞の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%に相当する。
【0097】
したがって、第1の態様(STEP1)の方法を使用して、CD34+細胞から、好ましくは臍帯血CD34+細胞から、Vδ1+γδT細胞の集団を生成することができる。上記Vδ1+γδT細胞の集団は、本明細書において第2の態様~第7の態様で定義されている、CD1a+Vδ1+γδT細胞(第1の集団)とCD1a-Vδ1+γδT細胞(第2の集団)とを含む不均一な集団である。CD34+前駆細胞が臍帯血由来のものである場合、第1の態様の方法又は使用で得られる細胞は、本明細書ではCB-Jag2細胞と称される。
【0098】
第1の態様(STEP1)に従ってde novo生成されたVδ1+γδT細胞、特に、CD1a-Vδ1+γδT細胞を含む第2の集団を、それらを活性化させる、及びそれらの増殖を誘導する目的で、第2の工程(STEP2)において更に拡大させることができる。完全な二段階プロトコルが
図12に示されており、該プロトコルでは、ヒト臍帯血から単離したCD34+HPCをJag2 Notchリガンドの存在下で最長8週間培養し(STEP1又は第1の態様の方法)、その結果、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様、及び第7の態様において定義されている細胞組成物に対応する細胞であるCB-Jag2細胞がもたらされる。次いで、上記CB-Jag2細胞を、CB-Jag2-STEP2細胞と称される、拡大した、高度に細胞傷害性のVδ1+γδT細胞の集団をもたらす目的で、拡大及び活性化させる(STEP2)。なお、CB ex vivo及びPB ex vivoは、CB及びPB中に既に存在しているVδ1+γδT細胞であり、したがって、CD34+造血前駆細胞からde novo生成されたものではないので、ex vivo CB又はPBから得られたVδ1+γδT細胞(
図12においてCB ex vivo及びPB ex vivoと称される)は、態様1~態様7において定義されているVδ1+γδT細胞ではない。
【0099】
二段階方法で得られた結果から、CB-Jag2-STEP2細胞(すなわち、第1の態様~第7の態様において定義されている通り、de novoで得られ、その後、STEP2において拡大させた細胞)内のCD1a-Vδ1+γδT細胞は、PB及びCBから得られたex vivoで単離された細胞を、その後STEP2において拡大させたもの(CB-STEP2及びPB-STEP2)の集団内のCD1a-Vδ1+γδT細胞よりもCD8+エフェクター細胞を多く含むことが示された。
図13参照。CD1a-Vδ1+CB-Jag2-STEP2細胞はまた、CB-STEP2及びPB-STEP2内で生成されたCD1a-Vδ1+γδT細胞と比して、LAG3及びCTLA-4の低発現によって評価される通り、低疲弊細胞プロファイルを示した。
図14参照。CD1a-Vδ1+CB-Jag2-STEP2細胞はまた、
図15に示されている通り、CD1a-Vδ1+CB-STEP2及びPB-STEP2 γδT細胞よりも高レベルの細胞傷害性関連活性化受容体を示した。最後に、CB-Jag2-STEP2は、白血病細胞株に対して、それぞれCB及びPBから単離されたex vivo細胞のSTEP2拡大によって得られたCB-STEP2細胞及びPB-STEP2細胞よりも高いin vitro細胞溶解潜在性を示した。
【0100】
これらの結果から、
臍帯血由来であることが好ましい造血前駆細胞(CD34+細胞)の使用と、
STEP1(第1の態様の方法又は使用)を使用したCD1a-Vδ1+γδT細胞のde novo生成と、
STEP1で得られた上記de novo CD1a-Vδ1+γδT細胞のSTEP2を使用した拡大及び活性化と、
を組み合わせることにより、細胞傷害潜在性がより高く、疲弊プロファイルが低減されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団がもたらされると結論付けた。
【0101】
上記の結果を考慮して、本発明の第8の態様は、本発明の第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様及び第7の態様において定義されているVδ1+γδT細胞を活性化させる、及びその増殖を誘導する方法(STEP2とも称される)に関する。上で強調された通り、Vδ1+γδT細胞(STEP1(本発明の第1の態様)後に得られたもの)は、不均一なVδ1+γδT細胞の集団であり、それらの一部はCD1aマーカーを発現し(CD1a+)(第1の集団)、それらの一部はCD1a-である(第2の集団)。本発明のSTEP2(すなわち、第8の態様の方法)は、特にCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団を活性化及び拡大させること(すなわち、増殖させること)に関することが好ましい。
【0102】
したがって、STEP2の活性化及び増殖を特にCD1a-Vδ1+γδT細胞のサブセット(上で定義されている第2の集団)に対して実施することが好ましい。第8の態様の方法は、これだけに限定されないが抗CD3 mAbを含めたγδTCRアゴニスト等の活性化剤、並びにこれだけに限定されないがIL-4、IFNγ及びIL-15を含めたサイトカインの使用を含んでもよいことが好ましい。この目的のために、及び実施例1又は2に示されている通り、本発明の第1の態様に従って得られた又は得ることができるVδ1+γδT細胞を含む細胞組成物は、抗TCRαβ mAb及び磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用した磁気細胞選別等の任意の有用な技法によってαβT細胞を枯渇させることが好ましい。TCRαβを枯渇させた細胞浮遊液を、例えば、RPMI1640培地中、抗CD3 mAb OKT3等の活性化剤+サイトカイン、例えばIL-2、IL-4、IFN-γ、IL-21、IL-15及び/又はIL-1βの存在下で7日間培養する(細胞2.5×105個/ml)。次いで、細胞を任意選択で洗浄し、再度、活性化剤及び1種以上のサイトカインとともに1回又は複数回培養する。培養を、通常10日目~30日目、好ましくは10日目~25日目、より好ましくは15日目~25日目、より好ましくは15日目~16日目までに停止させるか、又は、細胞を、任意選択で希釈し、活性化剤及び1種以上のサイトカインの存在下で拡大の第2ラウンドに供してもよい。なお、本発明の第1の態様と第8の態様の組合せ(すなわち、STEP1とSTEP2の組合せ)により、CD1a-Vδ1+T細胞収率の向上(250×106個~950×106個のCB-Jag2-STEP2細胞/106個のCD34+CB HPC)を可能にすることが予想される二段階方法が構成される。
【0103】
なお、本発明の第8の態様から得られたVδ1+γδT細胞の最終的なサブセットは、リンパ性白血病細胞に対する細胞傷害性の増強を伴う天然の機能的な細胞傷害性受容体を安定に発現するはずである。上記サブセットは、細胞傷害性かつ拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞であることが好ましく、本発明の第9の態様において更に定義される。
【0104】
本発明の第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様及び第7の態様において定義されている、CD1a-Vδ1+γδT細胞(第2の集団)のものであることが好ましいVδ1+γδT細胞を活性化する及びその増殖を誘導する、単に例示的な別の潜在的に有用な方法は、これらの細胞を、適切な培養培地中、γδTCRアゴニストの存在下、好ましくは、可溶性又は固定化されたものであることが好ましい上記アゴニストを一定間隔ごとに添加する(より好ましくは連続的に添加する)ことにより、かつ、少なくとも1種のサイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IFN-γ、IL-21、IL-15及び/又はIL-1βからなる群から選択されるサイトカインの存在下で、好ましくは上記サイトカイン(単数又は複数)を一定間隔で添加する(より好ましくは連続的に添加する)ことにより、生育することによるものである。上記γδTCRアゴニスト及びサイトカインを上記細胞培養物に、培養時に、かつ培養期間全体を通して、好ましくは3日~6日ごとに添加し、したがって、上記培養物中のγδTCRアゴニスト及びサイトカインの濃度が一般にはゼロを常に超えるようにする。上記γδTCRアゴニスト及びサイトカインの添加を、細胞の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、95%が天然細胞傷害性受容体を発現するようになるまで行うことができる。より好ましい実施形態では、上記γδTCRアゴニスト及びサイトカインの添加を、天然細胞傷害性受容体、すなわちNKp30を含む又はそれのみからなる天然細胞傷害性受容体を発現する生存可能かつ機能的な細胞が5000万個を超える、1億個を超える、2憶個を超えることが実現されるまで行うことができる。上記γδTCRアゴニスト及びサイトカインの添加を、細胞の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、95%、100%がNKp30を発現するまで行うことができることが好ましい。開示される方法の好ましい実施形態では、上記サイトカインは、一般的なサイトカイン、好ましくはインターロイキン、すなわち、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-12、IL-15、IL-21、IFN-γ、IL-1β又はそれらの混合物、とりわけ、好ましくはIL-7又はIL15を意味する。使用されるインターロイキンは、ヒト起源又は動物起源のもの、好ましくはヒト起源のものであってよい。使用されるインターロイキンは、野生型タンパク質であっても、生物活性のある、つまり、本発明による方法の条件下でその受容体に結合し、γδT細胞の活性化を誘導することが可能である、任意の断片又はバリアントであってもよい。サイトカインは、可溶性の形態であってもよく、別の分子、例えばペプチド、ポリペプチド又は生物活性のあるタンパク質等と融合又は複合体形成していてもよいことがより好ましい。ヒト組換えサイトカインを使用することが好ましい。インターロイキン濃度の範囲を1U/mlから10000U/mlの間、なおより好ましくは100U/mlから1000U/mlの間で変動させてもよいことがより好ましい。開示される方法の他の好ましい実施形態では、上記γδTCRアゴニスト及びγc-サイトカインの一定間隔での添加を、2日間~60日間、より好ましくは9日間~25日間、なおより好ましくは15日間~25日間、すなわち、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間又は21日間、実施することができる。細胞を36℃~38℃、好ましくは37℃の温度で培養することが好ましい。
【0105】
第8の態様の方法は、Vδ1+γδT細胞を活性化させるとともに、その増殖を誘導する方法、好ましくは、本発明の第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様及び第7の態様において定義されているCD1a-Vδ1+γδT細胞(第2の集団)を活性化させるとともに、その増殖を誘導する方法であって、上記Vδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞を、適切な培養培地中、少なくとも1種のγδTCRアゴニストの存在下で、好ましくは、可溶性又は固定化されたものであることが好ましい上記アゴニストを一定間隔ごとに添加する(より好ましくは連続的に添加する)ことにより、かつ少なくともIL21及びIL15の存在下で、生育して、Vδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞を含む拡大及び活性化された細胞集団を得る工程を含む、方法であることが最も好ましい。Vδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞を、まず、少なくとも1種のγδTCRアゴニストの存在下かつ少なくともIL21の存在下で、少なくとも5日間、好ましくは少なくとも7日間生育し、培養5日目、好ましくは7日目に、IL-15を培養培地に添加する一方で、培養培地中に少なくとも1種のγδTCRアゴニスト、及び少なくともIL21が存在することを維持することが好ましい。IL15を添加した後、細胞を少なくとも7日間、好ましくは少なくとも9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、又は16日間超の期間にわたって培養して、Vδ1+γδT細胞を含む、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞を含む拡大及び活性化された細胞集団を得ることが好ましい。
【0106】
第8の態様の方法は、Vδ1+γδT細胞を活性化させるとともに、その増殖を誘導する方法、好ましくは本発明の第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様及び第7の態様において定義されているCD1a-Vδ1+γδT細胞(第2の集団)を活性化させるとともに、その増殖を誘導する方法であって、該方法が、
上記Vδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞を、適切な培養培地中、少なくとも1種のγδTCRアゴニストの存在下かつ少なくともIL21の存在下で少なくとも5日間生育することと、
上記培養が、可溶性又は固定化されたものであることが好ましい上記アゴニスト及びサイトカインを一定間隔で添加する(より好ましくは連続的に添加する)ことにより実施されることが好ましい;
培養5日目、好ましくは培養7日目に、IL-15を培養培地に添加する一方で、培養培地中に少なくとも1種のγδTCRアゴニスト及びIL21が存在することを維持することと、
を含み、
培養時間が、総γδT細胞の少なくとも40%がCD1a-Vδ1+γδT細胞になるまで実行される、及び/又は、培養時間が、少なくとも7日間、8日間、好ましくは9日間、10日間、11日間、12日間、好ましくは13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、又は20日間実行される、
方法であることが最も好ましい。
【0107】
或る実施形態では、第8の態様の方法は、
第1の態様の方法から得られた、又は態様1~態様7のいずれかにおいて定義されている細胞を、血漿、好ましくは自己血漿又はヒト血清を補充した無血清培養培地中、抗TCRγδmAb及びIL-21の存在下で少なくとも7日間培養する工程と、
培養7日目に、IL-15を培養培地に添加し、任意選択で、IL-21及び抗TCRγδmAbを新鮮な抗TCRγδmAb及びIL-21と交換する工程と、
細胞を更に少なくとも7日間(すなわち、培養14日目まで)、好ましくは培養15日目~16日目まで培養して、活性化された、細胞傷害性のCD1a-Vδ1+γδT細胞を得る工程と、
任意選択で、拡大の第2ラウンドを行う工程であって、細胞を、少なくとも抗TCRγδmAb、IL-15及びIFN-γの存在下で18日目~21日目まで培養する、工程と、
を含む。
【0108】
第8の態様の方法は、CD1a-Vδ1+γδT細胞を活性化させるとともに、その増殖を誘導する方法、好ましくは本発明の第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様及び第7の態様において定義されているCD1a-Vδ1+γδT細胞(第2の集団)を活性化させるとともに、その増殖を誘導する方法であって、該方法が、
上記Vδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞を、適切な培養培地中、少なくとも1種のγδTCRアゴニストの存在下かつ少なくともIL21、IL-4、IFN-γ、IL-21及びIL-1βの存在下で少なくとも5日間、好ましくは7日間、生育することと、
なお、上記培養が、可溶性又は固定化されたものであることが好ましい上記アゴニスト及びサイトカインを一定間隔で添加する(より好ましくは連続的に添加する)ことにより実施されることが好ましい;
培養5日目、好ましくは培養7日目に、IL-15を培養培地に添加する一方で、培養培地中に少なくとも1種のγδTCRアゴニスト及びIL21が存在することを維持することと、
を含み、
培養時間が、総γδT細胞の少なくとも40%がCD1a-Vδ1+γδT細胞になるまで実行される、及び/又は、培養時間が、少なくとも7日間、8日間、好ましくは9日間、10日間、11日間、12日間、好ましくは13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、又は20日間実行される、
方法であることが最も好ましい。
【0109】
別の実施形態では、第8の態様の方法は、本発明の第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様及び第7の態様において定義されているCD1a-Vδ1+γδT細胞を活性化させるとともに、その増殖を誘導する方法であって、該方法が、
上記Vδ1+γδT細胞を、適切な培養培地中、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト、好ましくはOKT3等の抗CD3 mAbの存在下かつ少なくともサイトカインIL-4、IFN-γ、IL-21及びIL-1βの存在下で生育することと、
培養5日目、好ましくは培養6日目又は7日目に、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト、好ましくはOKT3等の抗CD3を含み、かつIL21及びIL15を含む新しい(新鮮な)培養培地を添加することと、
培養10日目、好ましくは培養11日目又は12日目に、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト、好ましくはOKT3等の抗CD3を含み、かつIL15を含む新しい(新鮮な)培養培地を添加することと、
任意選択で、培養15日目、好ましくは培養16日目に、少なくとも1種のγδTCRアゴニスト、好ましくはOKT3等の抗CD3を含み、かつIL15及びIFN-γを含む新しい(新鮮な)培養培地を添加することと、
を含む、方法である。
【0110】
第8の態様の或る実施形態では、少なくとも1種のγδTCRアゴニストを、0.5μg/mlから4μg/mlの間、好ましくは2μg/mlの濃度で添加する。第8の態様の或る実施形態では、IL21を、7ng/mlから15ng/mlの間、好ましくは13ng/mlの濃度で添加する。第8の態様の或る実施形態では、IL15を、70ng/mlから150ng/mlの間、好ましくは100ng/mlの濃度で添加する。第8の態様の或る実施形態では、IFN-γを、30ng/mlから80ng/mlの間、好ましくは70ng/mlの濃度で添加する。第8の態様の或る実施形態では、IL-4を、50ng/mlから150ng/mlの間、好ましくは100ng/mlの濃度で添加する。第8の態様の或る実施形態では、IL-1βを、5ng/mlから20ng/mlの間、好ましくは15ng/mlの濃度で添加する。任意選択で、細胞を無血清培養培地で培養し、血漿若しくはヒト血清、及び/又はグルタミンを任意選択で補充してもよい。
【0111】
或る実施形態では、STEP1細胞の拡大によってSTEP2後(すなわち、本発明の第8の態様後)に得られた細胞の集団は、臍帯血又は末梢血等の単離された生体試料からSTEP2後に得られた細胞よりも細胞傷害性が高く、ここで、細胞傷害性は、
図16に示されている通りJurkat及び/又はMOLM13標的細胞を使用して測定されることが好ましい。第8の態様の方法後に得られた細胞の集団の細胞傷害性は、第8の態様の方法に従って活性化及び拡大させた、単離された生体試料、好ましくは臍帯血又は末梢血から得られた細胞の細胞傷害性の少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、8倍、又は10倍であることが好ましく、ここで、細胞傷害性は、白血病細胞、好ましくはJurkat又はMolm13細胞株を使用し、エフェクター標的(E:T)比1:8又は1:4で、少なくとも24時間、好ましくは48時間の共培養後に測定されることが好ましい。
【0112】
さらに、de novoで得られた細胞の集団が、単離された生体試料からSTEP2後に得られた細胞よりも細胞傷害性が高いだけでなく、CD1a-Vδ1+γδT細胞(CD34+前駆細胞からde novoで生成され、得られた上記集団に含まれるもの)も、臍帯血又は末梢血から得られたex vivoで単離された細胞からSTEP2に従って拡大させた等価のCD1a-Vδ1+γδT細胞(CB-STEP2、PB-STEP2)よりも良好な細胞傷害性プロファイル(細胞傷害性マーカーの存在によって測定して)を有する。
図15参照。したがって、本発明の第9の態様は、本発明の第8の態様に従って得られた又は得ることができる、活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞の集団を含む、好ましくは活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団を含む組成物に関する。本発明は、本発明の第8の態様に従って得られた又は得ることができる、同種の活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞の集団、好ましくは同種の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団を含む組成物に関することが好ましい。
図17に示されている通り、第9の態様の細胞集団は、γδT細胞である総細胞の少なくとも30%~90%、好ましくは約40%~60%を構成し、そのうちの少なくとも40%、好ましくは約40%~60%、好ましくは50%超がCD1a-かつVδ1+である(すなわち、Vδ1+γδT細胞である)ことが好ましい。
【0113】
好ましい実施形態では、
図13に示されている通り、第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、CD8+Tエフェクター細胞を含む。好ましい実施形態では、第9の態様のCD1a-Vδ1+γδT細胞の少なくとも60%、70%、75%、80%、85%又は90%が、CD8マーカーを発現する。好ましい実施形態では、第9の態様のCD1a-Vδ1+γδT細胞の少なくとも50%、又は少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%がTエフェクター表現型を示し、ここで、Tエフェクター表現型は、CD45RAマーカーの発現及び/又はCD62Lマーカーの発現の欠如を特徴とする。好ましい実施形態では、第9の態様のVδ1+γδT細胞の60%未満、好ましくは50%未満、40%未満、30%未満又は20%未満がCD27マーカーを発現する。
【0114】
好ましい実施形態では、第9の態様の活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、疲弊表現型を有さないことを特徴とし、ここで、疲弊表現型は、
図14に示されている通り、LAG3及び/又はCTLA4等の疲弊関連表面マーカーの発現によって測定される。第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の少なくとも約80%、85%、90%、95%がLAG3及び/又はCTLA4疲弊マーカーを検出可能なレベルでは発現しないことが好ましい。第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満がLAG3マーカーを検出可能なレベルで発現することが好ましい。第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満がCTLA4マーカー+を検出可能なレベルで発現することが好ましい。
【0115】
第9の態様の活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、活性化された表現型を有することを更に特徴とし、ここで、活性化された表現型は、表面活性化マーカーであるCD25及び/又はCD69の発現によって測定される。
図14参照。第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の少なくとも40%、50%、55%、60%がCD25マーカーを検出可能なレベルで発現することが好ましい。第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の少なくとも80%、85%、90%、95%がCD69マーカーを検出可能なレベルで発現することが好ましい。
【0116】
好ましい実施形態では、第9の態様の活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、
図15に示されている通り、細胞傷害性関連活性化受容体を含むことを特徴とする。上記Vδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞は、細胞傷害性関連マーカーであるCD56、Nkp44、Nkp30、NkG2D及びDNAM-1のうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを含むことを更に特徴とする。一実施形態では、第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の少なくとも80%、85%、90%、95%が、NKp44、NKp30、及びNKG2Dマーカーのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを検出可能なレベルで発現する。特定の一実施形態では、第9の態様の活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、又は95%が、CD56、NKp44、NKp30、NKG2D及びDNAM-1マーカーのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを検出可能なレベルで発現する。
【0117】
或る実施形態では、第9の態様の活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56を発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現すること、
を特徴とし、
ここで、表面マーカーの発現レベルは、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい。
【0118】
第9の態様の拡大及び活性化されたCD1a-Vδ1+γδTの集団は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現することと、
を特徴とすることが好ましく、
ここで、上記のマーカーの発現レベルは、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい。
【0119】
本発明の第10の態様は、第9の態様において定義されているde novoのNotchにより誘導し分化させ、拡大させたVδ1+γδT細胞、好ましくはde novoのNotchにより誘導し分化させ、拡大させたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団を含む組成物に関する。したがって、第10の態様による細胞組成物は、疲弊マーカーの低発現を伴う、高度に細胞傷害性であり、かつ活性化されたVδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞を含む。第10の態様の活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、CD56、NKp44、NKp30、NKG2D及びDNAM-1マーカーのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを検出可能なレベルで発現することを特徴とすることが好ましい。
【0120】
第10の態様の活性化及び拡大されたVδ1+γδT細胞、好ましくはCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56を発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現すること、又は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現すること、
を特徴とすることが好ましく、
ここで、表面マーカーの発現レベルは、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい。
【0121】
第10の態様の拡大及び活性化されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団は、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%又は60%が、CD56マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp44マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%が、NKp30マーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも70%、好ましくは80%~100%が、NKG2Dマーカーを発現することと、
Vδ1+γδT細胞の総数の少なくとも80%、好ましくは90%~100%が、DNAM-1マーカーを発現することと、
を特徴とすることが好ましく、
ここで、上記のマーカーの発現レベルは、フローサイトメトリーによって測定されることが好ましい。
【0122】
本発明の好ましい実施形態では、第2の態様~第7の態様又は第9の態様又は第10の態様の組成物を使用して、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を生じさせる。
【0123】
本発明の第11の態様は、本発明の第2の態様~第7の態様又は第9の態様又は第10の態様の組成物のいずれかを用いて得られた又は得ることができるCAR T細胞を含む組成物に関する。
【0124】
本発明の好ましい実施形態では、第2の態様~第7の態様又は第9の態様又は第10の態様の組成物は、注射用である。好ましい実施形態では、注射用組成物は、80%超、すなわち、80%超、85%超、90%超、95%超が機能的な天然細胞傷害性受容体を発現する本発明の機能的Vδ1+γδ細胞で構成される細胞集団を含み、ここで、注射用組成物は、機能的な天然細胞傷害性受容体を発現する本発明のVδ1+γδ細胞を1億個よりも多く含むことが好ましい。組成物はまた、薬学的に許容可能な作用物質又は担体、より好ましくは安定化剤、具体的にはヒト血清アルブミンも含むことが好ましい。細胞は、自己、つまり、同じ生物学的調製物(又は同じドナー)に由来するものであってもよいが、細胞は、同種性であること、つまり、同じ生物学的調製物(又は同じドナー)に由来するものではないことがより好ましい。細胞は、開示される主題によって記載される方法等の方法によって得ることがより好ましい。開示される主題の別の態様は、本発明の第2の態様~第7の態様、第9の態様又は第10の態様の細胞を含む組成物の医薬における使用である。
【0125】
より好ましい実施形態では、第2の態様~第7の態様又は第9の態様又は第10の態様に開示される組成物を、自己若しくは同種養子細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療において、又は、とりわけ、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、T細胞リンパ腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、腎細胞癌、若しくは皮膚黒色腫の治療のために使用することができる。第2の態様~第7の態様、第9の態様又は第10の態様に開示される組成物を、自己若しくは同種養子細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療において、又は、とりわけ、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、腎細胞癌、若しくは皮膚黒色腫の治療のために使用することができることがより好ましい。
【0126】
より好ましい実施形態では、本発明に開示される組成物をウイルス感染症の治療のために使用することができる。
【0127】
本発明は、以下の項目を更に含む:
1.CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団から、de novoのNotchにより誘導され分化したVδ1+γδT細胞、好ましくは同種のNotchにより誘導され分化したVδ1+γδT細胞を生成するための、Notchリガンドのin vitro使用であって、Notchリガンドが、Jag2(Jagged2)である、使用。
2.CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はヒトETPを含む細胞集団から、de novoのNotchにより誘導され分化したVδ1+γδT細胞、好ましくは同種のNotchにより誘導され分化したVδ1+γδT細胞を生成するin vitro方法であって、該方法が、
a.HPC及び/又はETPを含む細胞集団を、基材又は細胞株上に固定化されていることが好ましいJag2 Notchリガンド又はNotch受容体アゴニストを含む適切な培養培地中で生育することと、
b.細胞を培養物中、Vδ1+γδT細胞が生じるのに十分な持続時間にわたって維持することと、
なお、持続時間が、約2週間から約15週間の間であることが好ましく、上記Notchリガンド又はアゴニストが、培養時に、かつ培養期間全体を通して、上記細胞培養物中に十分な量で存在する又は添加されるべきである;
を含む、方法。
3.ヒトHPCが、CD34+臍帯血HPC、CD34+骨髄HPC、CD34+末梢血HPCに由来するものである、又はiPSC等の多能性幹細胞由来のCD34+細胞に由来するものである、項目1又は2のいずれかによる方法。
4.ヒト造血前駆細胞が、ヒトCD34+ETPである、項目1又は3のいずれかによる方法。
5.項目1から4までのいずれかに従って得られた又は得ることができるヒト細胞傷害性Vδ1+γδ細胞を含む細胞組成物。
6.項目1から5までのいずれかの方法によって得られたVδ1+γδT細胞を活性化するとともにその増殖を誘導する方法であって、該方法が、
a.項目2から4までのいずれかの方法によって得られたVδ1+γδT細胞を含む細胞組成物を、適切な培養培地中、可溶性又は固定化されたものであることが好ましいγδTCRアゴニストの存在下、好ましくは上記アゴニストを一定間隔ごとに添加する(より好ましくは連続的に添加する)ことにより、かつ、少なくとも1種のサイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IFN-γ、IL-21、IL-15及び/又はIL-1βからなる群から選択されるサイトカインの存在下で生育することと、
b.上記γδTCRアゴニスト及びサイトカインを、細胞の少なくとも40%が天然細胞傷害性受容体を発現するようになるまで、より好ましくは細胞の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、95%が天然細胞傷害性受容体を発現するようになるまで、添加することと、
を含む、方法。
7.項目6に従って得られた又は得ることができるヒト細胞傷害性Vδ1+γδ細胞を含む細胞組成物。
8.80%超が機能的な天然細胞傷害性受容体を発現する機能的Vδ1+γδ細胞で構成される細胞集団を含み、機能的な天然細胞傷害性受容体を発現するVδ1+γδ細胞を1億個よりも多く含むことが好ましい、項目7の組成物。
9.薬学的に許容可能な作用物質又は担体、より好ましくは安定化剤、具体的にはヒト血清アルブミンも含む医薬組成物である、項目7又は8のいずれかの組成物。
10.同種養子細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療における使用のためのもの、又は急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、T細胞リンパ腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、腎細胞癌、若しくは皮膚黒色腫の治療のためのものである、項目7から9までのいずれかの組成物。
11.自己養子細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療における使用のためのもの、又は急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、腎細胞癌、若しくは皮膚黒色腫の治療のためのものである、項目7から9までのいずれかの組成物。
12.CAR T細胞の製造のための、項目7又は8のいずれかの組成物の使用。
13.項目12に従って得られた又は得ることができるヒト細胞傷害性Vδ1+γδ細胞を含むCAR T細胞組成物。
14.薬学的に許容可能な作用物質又は担体、より好ましくは安定化剤、具体的にはヒト血清アルブミンも含む医薬組成物である、項目13の組成物。
15.同種養子細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療における使用のためのもの、又は急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、T細胞リンパ腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、腎細胞癌、若しくは皮膚黒色腫の治療のためのものである、項目13又は14のいずれかの組成物。
16.自己養子細胞療法、腫瘍若しくは癌治療、腫瘍若しくは癌免疫療法、及び/又は白血病治療における使用のためのもの、又は急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、T細胞リンパ腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、腎細胞癌、若しくは皮膚黒色腫の治療のためのものである、項目13又は14のいずれかの組成物。
【0128】
本発明は、以下の項目を更に含む:
1.CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はCD34+ETPを含む細胞集団から、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物を生成するための、Jag2 Notchリガンドのin vitro使用であって、Jag2 Notchリガンドが、間質細胞株の表面上に発現され、上記間質細胞株が、参照間質細胞と比較して、Jag2 Notchリガンドの発現の統計的に有意な増大を示し、上記参照間質細胞が、基礎レベルの上記リガンドを発現する間質細胞である、in vitro使用。
2.間質細胞株が、OP9細胞株である、項目1による使用。
3.CD34+臍帯血HPC等のヒトHPC及び/又はヒトETPを含む細胞集団から、γδT細胞、好ましくは同種のNotchにより誘導され分化したγδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物を生成するin vitro方法であって、該方法が、
a.HPC及び/又はETPを含む細胞集団を、間質細胞株の細胞集団を含む適切な培養培地中で生育することと、
なお、上記間質細胞株が、参照間質細胞と比較して、Jag2 Notchリガンドの発現の統計的に有意な増大を示し、上記参照間質細胞が、基礎レベルの上記リガンドを発現する間質細胞である;
b.細胞を、γδT細胞が生じるのに十分な持続時間にわたって培養物中で維持することと、
なお、持続時間が、約2週間から約15週間の間であることが好ましく、上記Notchリガンド又はアゴニストが、培養時に、かつ培養期間全体を通して、上記細胞培養物中に十分な量で存在する又は添加されるべきである;
を含む、方法。
4.ヒトHPCが、CD34+臍帯血HPC、CD34+骨髄HPC、CD34+末梢血HPCに由来するものである、又はiPSC等の多能性幹細胞由来のCD34+細胞に由来するものである、項目3による方法。
5.ヒト造血前駆細胞が、ヒトCD34+ETPである、項目3又は4のいずれかによる方法。
6.γδT細胞の少なくとも30%がVδ1+γδT細胞である、項目3から5までのいずれかによる方法。
7.項目3から6のいずれかに従って得られた又は得ることができる、γδT細胞をαβT細胞よりも多量に含む細胞組成物。
8.γδT細胞の少なくとも30%がVδ1+γδT細胞であることを特徴とする、項目7による細胞組成物。
9.Vδ1+γδTの集団がここでは、
a.未成熟細胞表面マーカーであるCD1a(CD1a+Vδ1+γδT細胞)を発現することを特徴とする第1の細胞集団と、
b.未成熟細胞表面マーカーであるCD1a(CD1a-Vδ1+γδT細胞)を発現しないことを特徴とする第2の細胞集団と、
を含むことを特徴とする、項目8による細胞組成物。
10.第1の細胞集団が、細胞が細胞表面マーカーであるCD25、CD27、NKp44、NKp30、及びNKG2Dを発現しないことを特徴とする、項目8による細胞組成物。
11.第2の細胞集団が、細胞表面マーカーであるCD27、CD73、CD69、NKp44、NKp30、及びNKG2Dのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも、2つ以上の組合せ、好ましくは全てを発現することを特徴とする、項目9又は10による細胞組成物。
12.第1の細胞集団が、細胞組成物に含まれる総Vδ1+γδT細胞の少なくとも90%に相当する、項目7から11のいずれかによる細胞組成物。
13.項目3から6のいずれかの方法によって得られたVδ1+γδT細胞を活性化するとともにその増殖を誘導する方法であって、該方法が、
a.項目3から6のいずれかの方法によって得られたVδ1+γδT細胞を含む細胞組成物を、適切な培養培地中、可溶性又は固定化されたものであることが好ましいγδTCRアゴニストの存在下、好ましくは上記アゴニストを一定間隔ごとに添加する(より好ましくは連続的に添加する)ことにより、かつ、少なくとも1種のサイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IFN-γ、IL-21、IL-15及び/又はIL-1βからなる群から選択されるサイトカインの存在下で生育することと、
b.上記γδTCRアゴニスト及びサイトカインを、細胞の少なくとも40%が天然細胞傷害性受容体を発現するようになるまで、より好ましくは細胞の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、95%が天然細胞傷害性受容体を発現するようになるまで、添加することと、
を含む、方法。
【0129】
以下の実施例は、ただ単に本発明を例示する役割を果たすものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0130】
実施例1.ヒトCD34+初期胸腺前駆細胞(ETP)からのVδ1+ヒトT細胞の生成
Jag2を用いて活性化したヒトCD34+ETPからのVδ1+γδT細胞のde novo生成のためのin vitro培養条件(STEP1)
3日齢~4歳の患者から、ヘルシンキ宣言に従い、同意を得た後、矯正心臓手術中に取り出した胸腺組織を、機械的に破壊し、Ficoll-Hypaque(Lymphoprep(商標);ATOM)遠心分離を行うことにより、ヒト出生後胸腺細胞を単離した。Spanish Research Council(CSIC)の研究倫理委員会(Research Ethics Board)によって確立された、承認されたガイドラインに従って実験を実施した。CD34+ETPを、胸腺細胞の細胞浮遊液からCD34-磁気細胞選別(Dynal、CD34 Progenitor Cell selection System、Invitrogen)、並びに、さらに抗CD1a及び抗CD123マイクロビーズ(AutoMACS、Miltenyi Biotec)を使用したCD34+CD1a+前駆細胞及びCD34+CD123+前駆細胞の枯渇によって単離した。単離されたCD34+ETP(96%超のCD34+CD1a-CD123-)を、同様の表面レベルで発現することが示された、細胞トレーサーとしてのGFP及びDLL1、DLL4、Jag1若しくはJag2 Notchリガンドのいずれかを形質導入したか、又は対照としてGFPを単独で形質導入したOP9間質細胞を播種したp24ウェルプレートで培養した(細胞10
5個/ウェル)。GFP、DLL1、DLL4、Jag1又はJag2をコードするプラスミドを用いたOP9細胞への形質導入により、上記タンパク質の細胞における高発現、特に、Notchリガンドの場合では細胞表面上での高発現がもたらされる。特に、形質導入されたOP9細胞におけるJag2の発現の増大は、フローサイトメトリーによって測定して約500倍の発現の増大であった(
図10)。培養を、20%ウシ胎仔血清(FCS)、2mmol/lのL-グルタミン、200IU/mlの組換えヒト(rh)IL-7(NIBSC)及び100IU/mlのrhFlt3L(PeproTech)を補充したα-MEM培地(Gibco)で行った。最長30日間にわたり、3日~4日ごとに、培養物を再播種し、γδT細胞の生成についてフローサイトメトリーによって分析した。これらの分析から、Jag2が、γδT細胞の分化を促進する最も効率的なNotchリガンドであることが示され(
図1)、一方、OP9細胞にGFPのみを発現させた場合には細胞分化は誘導されなかった(
図7)。実際、Jag2媒介性シグナル伝達により、αβT細胞が生じるよりも優先的にγδT細胞が生じ、30日間での収率はそれぞれ20倍に対して300倍であった。驚くべきことに、抗Vδ1 mAb及び抗Vδ2 mAbを用いて実施したフローサイトメトリー分析では、ETPからヒトJag2シグナル伝達に応答して分化したγδT細胞は優先的にVδ1+細胞であり、IFNγを産生するが、IL-17は産生しないことが明らかになった(
図2)。したがって、Jag2を用いて活性化した単一のヒトETPから、100個に至るまでの、抗腫瘍末梢γδT細胞の特色を示すVδ1+γδT細胞を生成することができる(
図3)。
【0131】
実施例2.臍帯血CD34+造血前駆細胞(HPC)からのVδ1+ヒトT細胞の生成
Jag2を用いて活性化したヒト臍帯血CD34+HPCからのVδ1+γδT細胞のde novo生成のためのin vitro培養条件(STEP1)
臍帯血試料を、CSICの研究倫理委員会によって確立された承認されたガイドラインに従い、Centro de Transfusion de la Comunidad de Madridから入手した。HPCを、Ficoll Hypaqueにより単離された細胞試料から、CD34 Progenitor Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec)を使用して免疫磁気選別によって得た。選別された集団は98%超がCD34+であり、CD3、CD4、CD8、CD13、CD14、CD19、及びCD56系列マーカーについては陰性である(Lin-)ことが再分析により証明された。単離された臍帯血CD34+HPCを、ヒトJag2 Notchリガンドを発現するOP9間質細胞を播種したp24ウェルプレートにおいて、20%ウシ胎仔血清(FCS)、2mmol/lのL-グルタミン、及び200IU/mlの組換えヒト(rh)IL-7(NIBSC)、100IU/mlのrhFlt3L(PeproTech)及び100IU/mlのrhSCF(PeproTech)を補充したα-MEM培地(Gibco)で培養した(細胞10
5個/ウェル)。分化したγδナイーブT細胞の生成を最長9週間にわたって3日~4日ごとに分析し、それにより、4000倍の総細胞拡大及び210倍~250倍のγδT細胞収率が明らかになった(
図4)。これらのJag2により分化したγδナイーブT細胞の40%に至るまでがVδ1+であった(
図4)。したがって、Jag2を用いて活性化したヒト臍帯血HPC 100万個から、1億個に至るまでのVδ1+γδT細胞を生成することができる(
図5)。
【0132】
実施例3.成体末梢血中に存在するVδ1+γδT細胞とは別個の、臍帯血CD34+造血前駆細胞(HPC)からの活性化されていないナイーブVδ1+ヒトT細胞の生成
臍帯血から単離し、Jag2を高発現するOP9細胞とともに培養したCD34+HPCから生成されたVδ1+γδT細胞は、表現型的に未成熟であるCD1a+と成熟CD1a-Vδ1+細胞とを含む不均一な細胞集団に相当する。成熟CD1a-Vδ1+γδT細胞サブセットは、活性化されていないナイーブCD25-CD27+細胞で大部分が構成され(
図8)、対照的に、成体末梢血から単離されたVδ1+γδT細胞は、細胞傷害性NK受容体であるNKp30及びNKG2Dを発現する(
図9)。
【0133】
以下の表1及び
図6に、ヒトJag2シグナル伝達を受けたヒトCD34+CB HPCから生成されたVδ1+γδT細胞(CB-Jag2)、又はCBからex vivoで単離されたVδ1+γδT細胞(CB ex vivo)若しくは末梢血からex vivoで単離されたVδ1+γδT細胞(PB ex vivo)の比較的な細胞収率及び表現型を示す。単一CB単位由来のCB-Jag2細胞(n=4)から、又はそれぞれ単一CB若しくはPB単位から単離されたCB ex vivo細胞(n=4)、若しくはPB ex vivo細胞(n=3)から回収されたT細胞内のTCRγδ+細胞及びVδ1+細胞の平均±SDパーセンテージ。
【0134】
【0135】
さらに、以下の表2に、ヒトJag2シグナル伝達を受けたヒトCD34+CB HPCから生成されたVδ1+γδT細胞(CB-Jag2)、又は、血液1バッグ(単位)当たりのCBからex vivoで単離されたVδ1+γδT細胞(CB ex vivo)若しくは末梢血からex vivoで単離されたVδ1+γδT細胞(PB ex vivo)の比較的な、絶対数での細胞収率を示す。
【0136】
CD34+前駆細胞から生成したことに起因して、本発明の方法のSTEP1後にde novo生成されたVδ1+γδT細胞(CB-Jag2)の収率が、CB又はPBのいずれかからの同じ数の総出発細胞に対して、PBからex vivoで得られたVδ1+γδT細胞の収率よりも高いことを認めることができる(表2)。
【0137】
【0138】
CBの1バッグ又は単位ごとに、およそ100万個のCD34+前駆細胞が含まれ、そこから平均で7175万個のVδ1+γδT細胞が生じる。他方では、PBの1バッグ又は単位ごとに、平均で3憶個の総細胞が含まれ、そこから、平均で0.51%がVδ1+γδT細胞になり、これは、153万個のVδ1+γδT細胞に相当する。したがって、臍帯血(CB)、及びJag2を高発現するOP9からVδ1+γδT細胞を産生する方法は高度に効率的であり、臍帯血前駆細胞(precursors)から、末梢血(PB)細胞からよりも、平均46倍多くのVδ1+γδT細胞が生じる。
【0139】
重要なことに、PBから単離されたVδ1+γδT細胞は主にCD1a-であるが(表1及び
図6参照)、一方、PB ex vivoからCD1a+であると見いだされたのは細胞の0.4%のみであった。しかし、表1及び
図6に示されている通り、OP9-Jag2細胞と共培養したCBから生じた細胞の約9%~10%がCD1a-である。これは、1単位のCBから得られたVδ1+γδT細胞からのCD1a+及びCD1a-のパーセンテージを測定した以下の代表的な実験(合計で4回の実験から)でも認められた:
【0140】
上記を考慮して、1バッグのPBからは約153万個のCD1a-Vδ1+γδT細胞が得られるが、一方、1バッグのCBから本明細書で特許請求された方法に従うと、平均で700万個のCD1a-Vδ1+γδT細胞及び6300万個のCD1a+Vδ1+γδT細胞が得られると結論付けることができる。
【0141】
DOTについて報告された生成されたVδ1+γδナイーブT細胞のTCR依存性活性化及び拡大(STEP2)
上記の通り臍帯血HSCからTCR非依存性Jag2-Notch依存性様式(STEP1)でde novoで生成されたVδ1+ナイーブγδT細胞を、末梢血Vδ1+T細胞について示されている通り、本明細書でSTEP2と称されるプロトコルに従い、抗CD3 mAb及びサイトカインを使用してin vitroで活性化及び拡大させる(非特許文献6)。この目的のために、臍帯血CD34+HSCから分化させた細胞(STEP1)を、抗TCRαβ mAb及び磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用した磁気細胞選別によってαβT細胞を枯渇させる。TCRαβを枯渇させた細胞浮遊液を、自己血漿(すなわち、5%自己血漿)又はヒトAB血清及び2mmol/lのL-グルタミンを補充した無血清培養培地(OpTimizer-CTS)中、1μg/mlの抗CD3 mAb OKT3+100ng/mlのrhIL-4、70ng/mlのIFN-γ、7ng/mlのIL-21、及び15ng/mlのIL-1β(Peprotech)の存在下で7日間培養する(細胞2.5×105個/ml)。7日目に、2μg/mlのOKT3+13ng/mlのIL-21及び70ng/mlのIL-15を含有する培地を添加し、細胞を、2μg/mlのOKT3+13ng/mlのIL-21及び70ng/mlのIL-15とともに更に4日間培養する。11日目までに、細胞を1/6希釈し、2μg/mlのOKT3+100ng/mlのIL-15の存在下で更に4日間~5日間培養する。培養を15日目~16日目までに停止させるか、又は細胞を1/3希釈し、18日目~21日目まで、1μg/mlのOKT3+70ng/mlのIL-15及び30ng/mlのIFN-γの存在下で拡大の第2ラウンドに供する。上記のSTEP2の拡大及び活性化プロトコルを本明細書ではDOTプロトコルと称する。
【0142】
さらに、本明細書ではCSICプロトコルと称される追加的な拡大及び活性化プロトコルを試験した。このプロトコルでは、上記の通り臍帯血HSCからTCR非依存性Jag2-Notch依存性様式(STEP1)でde novoで生成されたVδ1+ナイーブγδT細胞を、
図18に示されている通り、抗TCRγδmAb及びサイトカインを使用してin vitroで活性化及び拡大する(STEP2)。この目的のために、臍帯血CD34+HSCから分化させた細胞(STEP1)を、抗TCRαβ mAb及び磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用した磁気細胞選別によってαβT細胞を枯渇させる。TCRαβを枯渇させた細胞浮遊液を、自己血漿(すなわち、5%自己血漿)又はヒトAB血清及び2mmol/lのL-グルタミンを補充した無血清培養培地(OpTimizer-CTS)中、2μg/mlの抗TCRγδmAb+7ng/mlのIL-21(PeproTech)の存在下で7日間培養する(細胞2.5×10
5個/ml)。7日目に、2μg/mlの抗TCRγδmAb+13ng/mlのIL-21及び70ng/mlのIL-15を含有する培地を添加し、細胞を更に7日間培養する。培養を15日目~16日目までに停止させるか、又は細胞を1/3希釈し、18日目~21日目まで、2μg/mlの抗TCRγδmAb+70ng/mlのIL-15及び30ng/mlのIFN-γの存在下で拡大の第2ラウンドに供する。
【0143】
CSIC及びDOT拡大及び活性化プロトコルの両方が
図18に示されている。
【0144】
したがって、STEP1後に得られたCD1a-Vδ1+T細胞を、STEP2に従って、特に、本明細書ではDOT及びCSICと称される活性化/拡大プロトコルに従って活性化及び拡大した。その結果得られた活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+T細胞を、CD34+前駆細胞とSTEP1及びSTEP2法の組合せにより、改善されたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団がもたらされるかどうかを解明するために、STEP2で拡大させたex vivoで単離されたPB及びCB細胞に由来するものと比較した。結果が
図13~
図15に示されており、本発明の方法後に得られたde novo活性化及び拡大されたCD1a-Vδ1+γδT細胞が以下を示すことを認めることができる:
CB/PB-STEP2の細胞よりもT細胞エフェクター表現型が多く、また多くのCD8を発現する。
図13参照。
CB/PB-STEP2の細胞よりも活性化された表現型が多く、また、低疲弊プロファイルである。
図14参照。
CB/PB-STEP2の細胞よりも細胞傷害性関連活性化受容体のレベルが高い。
図15参照。
【0145】
上記の結果から、本明細書に記載の方法が、ex vivo試料から得られるものよりも優れたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団をもたらすものであることが実証される。上記の結果から、STEP2のどちらもプロトコルも、すなわち、CSICプロトコルとDOTプロトコルのどちらも、優れたCD1a-Vδ1+γδT細胞の集団に達するために好適であることも実証される。
【国際調査報告】