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特表2025-502152窒化アルミニウム系高出力デバイスおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】窒化アルミニウム系高出力デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 8/60 20250101AFI20250117BHJP
   H10H 20/816 20250101ALI20250117BHJP
   H10H 20/825 20250101ALI20250117BHJP
   H10H 20/831 20250101ALI20250117BHJP
   H10H 20/814 20250101ALI20250117BHJP
   H10H 20/82 20250101ALI20250117BHJP
   H10D 8/01 20250101ALI20250117BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20250117BHJP
   H10D 8/50 20250101ALI20250117BHJP
   H10D 8/25 20250101ALI20250117BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L33/14
H01L33/32
H01L33/38
H01L33/10
H01L33/22
H01L29/86 301P
H01L29/86 301D
H01L29/86 301M
H01L21/31 C
H01L29/91 F
H01L29/90 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541616
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(85)【翻訳文提出日】2024-09-09
(86)【国際出願番号】 US2023060469
(87)【国際公開番号】W WO2023168139
(87)【国際公開日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】63/298,387
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/298,424
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーリトル,ウィリアム アラン
(72)【発明者】
【氏名】アハマド,ハビブ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,ザカリー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ,クリストファー エム.
(72)【発明者】
【氏名】モトキ,ケイスケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイデンバッハ,アレックス エス.
【テーマコード(参考)】
5F045
5F241
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045AB09
5F045AB14
5F045AB17
5F045AB19
5F045AC15
5F045AC19
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AF02
5F045AF04
5F045AF05
5F045AF07
5F045CA05
5F045CA10
5F045CA12
5F045CA19
5F045EH18
5F241AA21
5F241CA02
5F241CA03
5F241CA40
5F241CA49
5F241CA57
5F241CA58
5F241CA64
5F241CA66
5F241CA67
5F241CA91
5F241CB15
5F241FF16
(57)【要約】
本開示の例示としての実施形態は、デバイス、基板、およびドープ材料を提供する。ドープ材料は、III族金属窒化物と、p型ドーパントまたはn型ドーパントの一方とを含有する。ドープ材料は、1000℃未満の温度で基板上に配置され、増加したドーパント濃度を有する。さらに、ドープIII族金属窒化物生成物を製造する方法を開示する。本方法は、窒素含有プラズマを遠隔プラズマチャンバーから成長チャンバーに流入させる工程と、III族金属と、p型ドーパントまたはn型ドーパントのうちの少なくとも一方とを成長チャンバーに導入する工程と、増加した電気キャリア濃度を有する導電性III族金属窒化物生成物を、約1000℃未満の温度で基板上に配置する工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
III族金属窒化物と、p型ドーパントまたはn型ドーパントの一方とを含有するドープ材料と、を具備するデバイスであって、
前記ドープ材料は、1000℃未満の温度で前記基板上に配置され、増加したドーパント濃度を有する、デバイス。
【請求項2】
前記ドープ材料は、前記p型ドーパントまたは前記n型ドーパントの一方を約1×1011cm-3~約3×1020cm-3の範囲の濃度で含有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ドープ材料は、正孔キャリア濃度が約1×1011~約1×1019cm-3の範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ドープ材料は、電子キャリア濃度が約6×1015cm-3~約3×1020cm-3である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ドープ材料は、1000℃より高い温度で成長させた第2のIII族金属窒化物と比較して、電子キャリア濃度が少なくとも10万増加するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ドープ材料は、バンドギャップエネルギーが4.5電子ボルト(eV)より大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ドープ材料は、バンドギャップエネルギーがおよそ6.1eVである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ドープ材料は、波長が約200nm~約350nmである1つ以上の光子を放出するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記III族金属窒化物は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)、窒化インジウムガリウムアルミニウムスカンジウム(InGaAlScN)、またはそれらの組み合わせから選択される物質を含有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記p型ドーパントは、ベリリウムを含有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記n型ドーパントは、シリコンを含有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ドープ材料上に配置された半導体をさらに具備する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記半導体上に配置された前記ドープ材料は、ホモ接合を形成する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記半導体上に配置された前記ドープ材料は、ヘテロ接合を形成する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
ウイルスおよび細菌の複製を破壊するように構成されている、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
ポリマーの硬化を促進するように構成されている、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記基板は、サファイア、結晶シリコン、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、酸化亜鉛、ガリウム酸リチウム、アルミン酸リチウム、単結晶ダイヤモンド、ヘテロエピタキシャル単結晶ダイヤモンド、炭化ケイ素、またはそれらの組み合わせを含有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
導電性III族金属窒化物生成物を成長させる方法であって、
窒素含有プラズマを遠隔プラズマチャンバーから成長チャンバーに流入させる工程と、
III族金属と、p型ドーパントまたはn型ドーパントのうちの少なくとも一方とを前記成長チャンバーに導入する工程と、
増加した電気キャリア濃度を有する導電性III族金属窒化物生成物を、約1000℃未満の温度で基板上に配置する工程と、を含む方法。
【請求項19】
前記導電性III族金属窒化物生成物は、正孔キャリア濃度が少なくとも1×1011cm-3である、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項20】
前記導電性III族金属窒化物生成物は、電子キャリア濃度が少なくとも6×1015cm-3である、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導電性III族金属窒化物生成物は、1000℃より高い温度で成長させた第2のIII族金属窒化物生成物と比較して、電気キャリア濃度が少なくとも10万倍増加している、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記導電性III族金属窒化物生成物は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)、窒化インジウムガリウムアルミニウムスカンジウム(InGaAlScN)、またはそれらの組み合わせから選択される物質を含有する、請求項18から請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記p型ドーパントまたは前記n型ドーパントを前記成長チャンバーに導入する工程は、前記各ドーパントの1つ以上のフラックスをパルス化する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記p型ドーパントまたは前記n型ドーパントを前記成長チャンバーに導入する工程は、一定の窒素供給を行いながらIII族金属の1つ以上のフラックスをパルス化する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記各ドーパントをパルス化する工程は、約0.1秒~約30秒の範囲の送達期間にわたって送達する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記各ドーパントをパルス化する工程は、約1秒~約30秒の範囲の休止期間にわたって休止する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記各ドーパントをパルス化する工程は、
約1秒~約25秒の範囲の送達期間にわたって送達する工程と、
約2秒~約15秒の範囲の休止期間にわたって休止する工程と、をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記温度が約600℃~約900℃の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
III族金属窒化物生成物を成長させる方法であって、III/Vフラックス比が約1より大きい、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記III/V比が約1.1~1.5の範囲である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記p型ドーパントを前記成長チャンバーに導入する際、前記温度が約500℃~約850℃の範囲である、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記温度が約600℃~約700℃の範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
III族金属窒化物生成物を成長させる方法では、III/V比が約1.5以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記III/V比が約1.6~2.0の範囲である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記n型ドーパントを前記成長チャンバーに導入する際、前記温度が約500℃~約1000℃の範囲である、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記温度が約600℃~約800℃の範囲である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記導電性III族金属窒化物生成物を含有するダイオードを構築する工程をさらに含む、請求項18から請求項36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記導電性III族金属窒化物生成物を含有するトランジスタを構築する工程をさらに含む、請求項18から請求項36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
波長が約200nm~約350nmである1つ以上の光子を放出させる工程をさらに含む、請求項18から請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ウイルスまたは細菌から表面を消毒する工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
基板と、
前記基板上に配置された第1のドープIII族金属窒化物と、
前記第1のドープIII族金属窒化物の少なくとも一部上に配置された第2のドープIII族金属窒化物と、を具備し、
前記第1のドープIII族金属窒化物は、前記第2のドープIII族金属窒化物よりも電気キャリア濃度が高く、
前記第1のドープIII族金属窒化物および第2のドープIII族金属窒化物は、1000℃未満の温度で成長させたものである、ダイオード。
【請求項42】
前記第2のドープIII族窒化物の少なくとも一部上に配置されたショットキーバリア電極をさらに具備する、請求項41に記載のダイオード。
【請求項43】
前記第1のドープIII族窒化物の少なくとも一部上に配置されたオーミック電極をさらに具備する、請求項41または請求項42に記載のダイオード。
【請求項44】
前記第1のドープIII族金属窒化物は、第1の電子キャリア濃度が約5×1017cm-3~約3×1020cm-3の範囲である、請求項41に記載のダイオード。
【請求項45】
前記第2のpドープIII族金属窒化物は、第2の電子キャリア濃度が約1×1015cm-3~約5×1019cm-3の範囲である、請求項41に記載のダイオード。
【請求項46】
基板と、
800℃以下の温度で前記基板上に配置された第1のnドープIII族金属窒化物と、
700℃以下の温度で前記nドープIII族金属窒化物上に配置されたpドープIII族金属窒化物と、を具備し、
ターンオン電圧がおよそ6ボルト(V)となるように構成されている、ダイオード。
【請求項47】
前記第1のnドープIII族金属窒化物は、電子キャリア濃度が約1×1017cm-3~約3×1020cm-3である、請求項46に記載のダイオード。
【請求項48】
前記pドープIII族金属窒化物は、正孔キャリア濃度が約1×1017cm-3~約3×1020cm-3である、請求項46または請求項47に記載のダイオード。
【請求項49】
前記第1のnドープIII族金属窒化物と前記pドープIII族金属窒化物との間で成長した第2のnドープIII族金属窒化物をさらに具備する、請求項46から請求項48のいずれか一項に記載のダイオード。
【請求項50】
前記第2のnドープIII族金属窒化物は、前記第1のnドープIII族金属窒化物よりも電子キャリア濃度が低い、請求項49に記載のダイオード。
【請求項51】
前記第2のnドープIII族金属窒化物は、非意図的にドープされた層として機能するように構成されている、請求項50に記載のダイオード。
【請求項52】
前記第2のnドープIII族金属窒化物は、そのエネルギーバンドギャップが前記第1のnドープ層または前記pドープ層のエネルギーバンドギャップよりも小さくなるように構成されている、請求項46に記載のダイオード。
【請求項53】
前記第2のnドープIII族金属窒化物は、交互ウェルを含み、当該ウェルのエネルギーバンドギャップは、前記第1のnドープ層または前記pドープ層のエネルギーバンドギャップよりも小さい、請求項52に記載のダイオード。
【請求項54】
前記第2のnドープIII族金属窒化物は、交互バリアをさらに含み、当該バリアは、前記ウェルの間に介在し、当該バリアのエネルギーバンドギャップは、前記ウェルのエネルギーバンドギャップよりも大きい、請求項53に記載のダイオード。
【請求項55】
前記バリアは、そのエネルギーバンドギャップが前記第1のnドープ層または前記pドープ層のエネルギーバンドギャップ以下である、請求項54に記載のダイオード。
【請求項56】
波長が約200nm~約350nmである1つ以上の光子を放出するように構成されている、請求項46から請求項55のいずれか一項に記載のダイオード。
【請求項57】
1つ以上の光子を内部反射するように構成されている光学反射面をさらに具備する、請求項46から請求項56のいずれか一項に記載のダイオード。
【請求項58】
内部反射を低減するように構成されている粗面をさらに具備する、請求項46から請求項57のいずれか一項に記載のダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年1月11日付で出願された米国仮出願第63/298,387号および2022年1月11日付で出願された米国仮出願第63/298,424号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が以下に完全に記載されているものとして本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府の資金援助を受けた研究としての申告)
本発明は、米海軍研究局から授与された助成金/賞番号第N00014-18-1-2429号および米空軍科学研究局から授与された第FA9550-21-1-0318号による政府支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本開示の種々の実施形態は、概して、III族金属窒化物をドープする方法、ならびに導電性のp型および/またはn型ドープIII族金属窒化物を有するシステムに関し、より詳細には、III族金属とp型またはn型ドーパントとの両方の周期的パルス化を用いて、ドーパントを用いて低温で窒化アルミニウムを成長させる方法、ならびにp型ドーピングの領域およびn型ドーピングの領域と任意の内部領域との組み合わせから構築されるダイオードに関する。
【背景技術】
【0004】
III族金属および窒素から製造される窒化物系半導体材料は幅広いエネルギーバンドギャップを有するため、ダイオード、発光ダイオード(LED)、太陽電池、光検出器、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、およびレーザーダイオード等に幅広く応用されている。エネルギーバンドギャップは、III族金属によって約0.65eV~約6.1eVの範囲にあり、これは約2μm(赤外)~約200nm(紫外)までの光子吸収範囲に及ぶ。半導体材料は、III族元素の合計が窒素の合計に等しくなるように(例えば、AlInGa1-x-yNであり、式中、x≦1、y≦、かつx+y≦1であり、ここで、Nは記載されていない添え字1を有する)、エネルギーバンドギャップ、ひいては発光エネルギーおよび波長、ならびに材料が分解して電気を通す電圧のような重要な電気的特性を調節するように、III族元素の相対的な組成を変更することができる。半導体材料に微量の電子供与性ドーパント原子(n型)または電子受容性ドーパント原子(p型)をドープすることで、得られるデバイスの電気的、光学的、構造的特性を向上させることができる。
【0005】
種々のドーパントが理論化されているにもかかわらず、AlNを含む極端に大きなバンドギャップを有する半導体では、実質的な導電性、すなわち過度の抵抗損失を伴わない電子および光電子デバイスに有用な導電性を実現するのに有用なドーパントは実験的に実現されていない。
【0006】
シリコンやゲルマニウムは、ワイドバンドギャップ材料に適したn型ドーパントであると理論化されている。バンドギャップが一般的に約4.5eV以上の超ワイドバンドギャップ(UWBG)半導体の場合、ドーピングは極めて困難となり、高抵抗または絶縁体的な挙動を示すことさえある。AlNやAlN系の半導体やAlNに近いバンドギャップを有する合金等の超ワイドギャップ半導体はよく知られた絶縁体であり、このような材料をドープ半導体に変換させることは、典型的なドーピング方法の限界のために困難であった。
【0007】
ベリリウム(Be)は、ワイドバンドギャップ窒化物系半導体材料(例えば、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウム、およびAlInGa1-x-yN等の合金、式中、x≦1、y≦、かつx+y≦1であり、二元窒化物置換によって構成される)に対する最良のp型ドーパントの1つであると理論化されたドーパントの1つである。しかしながら、受容性ドーパントとしてBeを用いることを支持するいくつかの理論的研究にもかかわらず、Beを用いた実質的なp型伝導はどの窒化物半導体でも実現されていない。
【0008】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)は、単結晶または多結晶の薄膜を成膜するために用いられる方法で、合金を形成するには高温と中程度の圧力が必要である。分子線エピタキシー(MBE)は、物理的な気化または昇華によって結晶を成長させるが、単結晶薄膜の成長には高真空かつ高温環境が必要である。MBEとMOCVDとの両方が、III族金属窒化物のようなワイドバンドギャップ半導体の脱離温度をはるかに超える高温の基板温度で作動する。この過剰な熱負荷は、エピタキシーチャンバーの不純物アウトガスの増加につながり、ドーピングを補償することができる成長結晶内空孔の濃度が指数関数的に高くなる。バルク窒化アルミニウム(AlN)および極端に大きなバンドギャップを有するAlN系半導体へのp型またはn型ドーパントの実質的ドーピングは、MBEおよびMOCVD法の高温のために成功していない。これらの方法における高温は、ドーパントが結晶構造内に欠陥を形成し、ドーパントとして振る舞う代わりに導電を妨げる過剰な空孔をもたらす。
【0009】
したがって、AlNやAlN系バンドギャップ半導体のようなIII族金属窒化物を十分にドープし、深紫外発光や光検出用途、あるいは高温かつ高電圧の高出力エレクトロニクスへの可能性を開くことができる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、III族金属窒化物をドープする方法、ならびに導電性のp型および/またはn型ドープIII族金属窒化物を有するシステムに関する。本開示の例示としての実施形態は、基板とドープ材料とを具備するデバイスを提供する。上記ドープ材料は、III族金属窒化物と、p型ドーパントまたはn型ドーパントの一方とを含有し得る。上記ドープ材料は、1000℃未満の温度で上記基板上に配置され得、増加したドーパント濃度を有し得る。
【0011】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、上記p型ドーパントまたは上記n型ドーパントの一方を約1×1011cm-3~約3×1020cm-3の範囲の濃度で含有し得る。
【0012】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、正孔キャリア濃度が約1×1011~1×1019cm-3の範囲であり得る。
【0013】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、電子キャリア濃度が少なくとも6×1015cm-3(例えば、約6×1015cm-3~約3×1020cm-3)であり得る。
【0014】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、1000℃より高い温度で成長させた第2のIII族金属窒化物と比較して、ドーパント濃度が少なくとも10万増加するように構成され得る。
【0015】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、バンドギャップエネルギーが4.5電子ボルト(eV)より大きいものであり得る。
【0016】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、バンドギャップエネルギーがおよそ6.1eVであり得る。
【0017】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、波長が約200nm~約350nmである1つ以上の光子を放出するように構成され得る。
【0018】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記III族金属窒化物は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)、窒化インジウムガリウムアルミニウムスカンジウム(InGaAlScN)、またはそれらの組み合わせから選択される物質を含有する。
【0019】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記p型ドーパントは、ベリリウムを含有し得る。
【0020】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記n型ドーパントは、シリコンを含有し得る。
【0021】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記デバイスは、上記ドープ材料上に配置された半導体をさらに具備し得る。
【0022】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、半導体上に配置されてホモ接合を形成し得る。
【0023】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ドープ材料は、半導体上に配置されてヘテロ接合を形成し得る。
【0024】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記デバイスは、ウイルスおよび細菌の複製を破壊するように構成され得る。
【0025】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記デバイスは、ポリマーの硬化を促進するように構成され得る。
【0026】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記基板は、サファイア、結晶シリコン、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、酸化亜鉛、ガリウム酸リチウム、アルミン酸リチウム、単結晶ダイヤモンド、ヘテロエピタキシャル単結晶ダイヤモンド、炭化ケイ素、またはそれらの組み合わせを含有し得る。
【0027】
本開示の例示としての実施形態は、導電性III族金属窒化物生成物を成長させる方法を提供する。当該方法は、窒素含有プラズマを遠隔プラズマチャンバーから成長チャンバーに流入させる工程と、III族金属と、p型ドーパントまたはn型ドーパントのうちの少なくとも一方とを上記成長チャンバーに導入する工程と、増加した電気キャリア濃度を有する導電性III族金属窒化物生成物を、約1000℃未満の温度で基板上に配置する工程と、を具備し得る。
【0028】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記方法において、上記導電性III族金属窒化物生成物は、正孔キャリア濃度が少なくとも1×1011cm-3(例えば、約1×1011cm-3~約1×1019cm-3)であり得る。
【0029】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記方法において、上記導電性III族金属窒化物生成物は、電子キャリア濃度が少なくとも6×1015cm-3(例えば、約6×1015cm-3~約3×1020cm-3)であり得る。
【0030】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記方法において、上記導電性III族金属窒化物生成物は、1000℃より高い温度で成長させた第2のIII族金属窒化物生成物と比較して、電気キャリア濃度が少なくとも10万倍増加している。
【0031】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記導電性III族金属窒化物生成物は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)、窒化インジウムガリウムアルミニウムスカンジウム(InGaAlScN)、またはそれらの組み合わせから選択される物質を含有し得る。
【0032】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記p型ドーパントまたは上記n型ドーパントを上記成長チャンバーに導入する工程は、上記各ドーパントの1つ以上のフラックスをパルス化する工程をさらに具備し得る。
【0033】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記p型ドーパントまたは上記n型ドーパントを上記成長チャンバーに導入する工程は、一定の窒素供給を行いながらIII族金属の1つ以上のフラックスをパルス化する工程をさらに具備し得る。
【0034】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記各ドーパントをパルス化する工程は、約0.1秒~約30秒の範囲の送達期間にわたって送達する工程をさらに具備し得る。
【0035】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記各ドーパントをパルス化する工程は、約1秒~約30秒の範囲の休止期間にわたって休止する工程をさらに具備し得る。
【0036】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記各ドーパントをパルス化する工程は、約1秒~約25秒の範囲の送達期間にわたって送達する工程と、約2秒~約15秒の範囲の休止期間にわたって休止する工程と、をさらに具備し得る。
【0037】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記温度が約600℃~約900℃の範囲であり得る。
【0038】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、III族金属窒化物生成物を成長させる上記方法において、III/Vフラックス比が約1以上であり得る。
【0039】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記III/V比が約1.1~1.5の範囲であり得る。
【0040】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記p型ドーパントを上記成長チャンバーに導入する際、上記温度が約500℃~約850℃の範囲であり得る。
【0041】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記温度が約600℃~約700℃の範囲であり得る。
【0042】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、III族金属窒化物生成物を成長させる上記方法において、III/V比が約1.5以上であり得る。
【0043】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記III/V比が約1.6~2.0の範囲であり得る。
【0044】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記n型ドーパントを上記成長チャンバーに導入する際、上記温度が約500℃~約1000℃の範囲であり得る。
【0045】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記温度が約600℃~約800℃の範囲であり得る。
【0046】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記方法は、上記導電性III族金属窒化物生成物を含有するダイオードを構築する工程をさらに具備し得る。
【0047】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記方法は、上記導電性III族金属窒化物生成物を含有するトランジスタを構築する工程をさらに具備し得る。
【0048】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記方法は、波長が約200nm~約350nmである1つ以上の光子を放出させる工程をさらに具備し得る。
【0049】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記方法は、ウイルスまたは細菌から表面を消毒する工程をさらに具備し得る。
【0050】
本開示の例示としての実施形態は、基板と、上記基板上に配置された第1のドープIII族金属窒化物と、上記第1のドープIII族金属窒化物の少なくとも一部上に配置された第2のドープIII族金属窒化物と、を具備するダイオードを提供する。上記第1のドープIII族金属窒化物は、上記第2のドープIII族金属窒化物よりも電気キャリア濃度が高いものであり得る。上記第1のドープIII族金属窒化物および第2のドープIII族金属窒化物は、1000℃未満の温度で成長させたものであり得る。
【0051】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第2のドープIII族窒化物の少なくとも一部上に配置されたショットキーバリア電極をさらに具備し得る。
【0052】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ダイオードは、上記第1のドープIII族窒化物の少なくとも一部上に配置されたオーミック電極をさらに具備し得る。
【0053】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第1のドープIII族金属窒化物は、第1の電子キャリア濃度が約5×1017cm-3~約3×1020cm-3の範囲であり得る。
【0054】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ダイオードにおいて、上記第2のpドープIII族金属窒化物は、第2の電子キャリア濃度が約1×1015cm-3~3.1×1018cm-3の範囲である。
【0055】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ダイオードにおいて、上記第2のpドープIII族金属窒化物は、第2の電子キャリア濃度が約1×1015cm-3~5×1019cm-3の範囲である。
【0056】
本開示の例示としての実施形態は、基板と、800℃以下の温度で上記基板上に配置された第1のnドープIII族金属窒化物と、700℃以下の温度で上記nドープIII族金属窒化物上に配置されたpドープIII族金属窒化物と、を具備するダイオードを提供する。当該ダイオードは、ターンオン電圧がおよそ6ボルト(V)となるように構成され得る。
【0057】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第1のnドープIII族金属窒化物は、電子キャリア濃度が少なくとも1×1017cm-3(例えば、約1×1017cm-3~約3×1020cm-3)であり得る。
【0058】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記pドープIII族金属窒化物は、正孔キャリア濃度が少なくとも1×1017cm-3(例えば、約1×1017cm-3~約3×1020cm-3)であり得る。
【0059】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ダイオードは、上記第1のnドープIII族金属窒化物と上記pドープIII族金属窒化物との間で成長した第2のnドープIII族金属窒化物をさらに具備し得る。
【0060】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第2のnドープIII族金属窒化物は、上記第1のnドープIII族金属窒化物よりも電子キャリア濃度が低いものであり得る。
【0061】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第2のnドープIII族金属窒化物は、非意図的にドープされた層として機能するように構成され得る。
【0062】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第2のnドープIII族金属窒化物は、そのエネルギーバンドギャップが上記第1のnドープ層または上記pドープ層のエネルギーバンドギャップよりも小さくなるように構成され得る。
【0063】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第2のnドープIII族金属窒化物は、交互ウェルを含み得る。当該ウェルのエネルギーバンドギャップは、上記第1のnドープ層または上記pドープ層のエネルギーバンドギャップよりも小さいものであり得る。
【0064】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記第2のnドープIII族金属窒化物は、交互バリアをさらに含み得る。当該バリアは、上記ウェルの間に介在し得る。当該バリアのエネルギーバンドギャップは、上記ウェルのエネルギーバンドギャップよりも大きいものであり得る。
【0065】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記バリアは、そのエネルギーバンドギャップが上記第1のnドープ層または上記pドープ層のエネルギーバンドギャップ以下であり得る。
【0066】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ダイオードは、波長が約200nm~約350nmである1つ以上の光子を放出するように構成され得る。
【0067】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ダイオードは、1つ以上の光子を内部反射するように構成されている光学反射面をさらに具備し得る。
【0068】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、上記ダイオードは、内部反射を低減するように構成されている粗面をさらに具備し得る。
【0069】
本開示の特定の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。本開示を説明する目的で、特定の実施形態が図面に示されている。しかしながら、本開示は、図面に示された実施形態の正確な構成および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、本発明の例示としての実施形態に係る、1000℃未満の温度における成長および電荷キャリア濃度の増加を促進するために結晶表面に追加の金属層を有する材料またはデバイスの予想模式図である。
【0071】
図2A図2Aは、本発明の例示としての実施形態に係る縦型III族金属窒化物ショットキーダイオードの予想模式図である。
【0072】
図2B図2Bは、本発明の例示としての実施形態に係る準縦型III族金属窒化物ショットキーダイオードの予想模式図である。
【0073】
図2C図2Cは、本発明の例示としての実施形態に係るp型III族金属窒化物の予想模式図である。
【0074】
図3A図3Aは、本発明の例示としての実施形態に係る、Al(原子半径~118pm)を置換するp型置換不純物としてのBe(原子半径~112pm)の取り込みを示すIII族金属窒化物の結晶構造体の模式図である。
【0075】
図3B図3Bは、本発明の例示としての実施形態に係る、Al(原子半径~118pm)を置換するn型置換不純物としてのSi(原子半径~111pm)の取り込みを示すIII族金属窒化物の結晶構造体の模式図である。
【0076】
図4A図4Aは、本発明の例示としての実施形態に係る、ドーパントを有する例示的なIII族金属窒化物デバイスにおけるPt(10nm)/Pd(10nm)/Au(100nm)コンタクトの電流-電圧特性の様相を示す。
【0077】
図4B図4Bは、本発明の例示としての実施形態に係る、ドーパントを有さない例示的なIII族金属窒化物デバイスにおけるPt(10nm)/Pd(10nm)/Au(100nm)コンタクトの電流-電圧特性の様相を示す。
【0078】
図5図5は、本発明の例示としての実施形態に係る、ドーパントを有する例示的なIII族金属窒化物デバイスにおけるpコンタクト伝送線路測定(PTLM)の様相を示す。
【0079】
図6A図6Aは、本発明の例示としての実施形態に係る、ドーパントを有する例示的なIII族金属窒化物デバイスにおけるnコンタクト伝送線路測定(NTLM)の様相を示す。
【0080】
図6B図6Bは、本発明の例示としての実施形態に係る、ドーパントを有する例示的なIII族金属窒化物デバイスにおけるpコンタクト伝送線路測定(PTLM)の様相を示す。
【0081】
図7A図7Aは、本発明の例示としての実施形態に係る、ドーパントを有する例示的なIII族金属窒化物デバイスの電流密度-電圧JV特性の様相を示す。
【0082】
図7B図7Bは、本発明の例示としての実施形態に係る、ドーパントを有する例示的なIII族金属窒化物デバイスのセミログ電流密度-電圧JV特性の様相を示す。
【0083】
図8A図8Aは、本発明の例示としての実施形態に係る、温度を変化させて成長させた例示的なIII族金属窒化物デバイスにおけるドーパントSIMS濃度の様相を示す。
【0084】
図8B図8Bは、本発明の例示としての実施形態に係る、例示的なIII族金属窒化物デバイス内のドーピングのドーパント噴出セル温度に対する指数関数的な依存性を示す、ドーパントSIMS濃度のアレニウスプロットを示す。
【0085】
図9図9は、本発明の例示としての実施形態に係る、成長中の膜のシャッターシーケンスの開閉「O/C」時間、および膜の比較的滑らかな表面形態を示す対応するRHEEDパターンを示す、例示的なIII族金属窒化物デバイスの模式図である。
【0086】
図10図10は、本発明の例示としての実施形態に係る、基板温度600℃の例示的なIII族金属窒化物デバイスにおいて、SIMS濃度に対してプロットされた平均ドーパント活性化効率5%の正孔濃度の様相を示す。
【0087】
図11図11は、本発明の例示としての実施形態に係る、例示的なIII族金属窒化物デバイスにおけるドーパントの活性化エネルギーの様相を示す。
【0088】
図12A図12Aは、本発明の例示としての実施形態に係る、Alフラッシング前後の例示的なIII族金属窒化物デバイスの透過型電子顕微鏡(TEM)断面画像を示す。
図12B図12Bは、本発明の例示としての実施形態に係る、Alフラッシング前後の例示的なIII族金属窒化物デバイスの透過型電子顕微鏡(TEM)断面画像を示す。
図12C図12Cは、本発明の例示としての実施形態に係る、Alフラッシング前後の例示的なIII族金属窒化物デバイスの透過型電子顕微鏡(TEM)断面画像を示す。
図12D図12Dは、本発明の例示としての実施形態に係る、Alフラッシング前後の例示的なIII族金属窒化物デバイスの透過型電子顕微鏡(TEM)断面画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本開示の原理および特徴の理解を容易にするために、種々の例示としての実施形態を以下に説明する。本明細書に開示される実施形態の種々の要素を構成するものとして以下に説明される構成要素、工程、および物質は、例示としてのものであり、制限的なものではないことが意図される。本明細書に記載される構成要素、工程、および物質と同一または同様の機能を果たすことになる多くの適切な構成要素、工程、および物質は、本開示の範囲内に包含されることが意図される。本明細書に記載されていないそのような他の構成要素、工程、および物質としては、本明細書に開示される実施形態の開発後に開発された同様の構成要素または工程が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書で用いられる場合、任意の数値または範囲に対する「約」または「およそ」という用語は、構成要素の一部または集合体が本明細書に記載される意図された目的のために機能することを可能にする適切な寸法公差を示す。より具体的には、「約」または「およそ」は、言及された値の±20%の値の範囲を指す場合があり、例えば、「約90%」は、71%~110%の値の範囲を指す場合がある。
【0091】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数への言及をも含むことに留意されたい。
【0092】
本明細書において、範囲は、「約」または「およそ」1つの特定の値から、かつ/または「約」または「およそ」別の特定の値までとして表すことができる。範囲がこのように表わされる場合、別の実施形態には、1つの特定の値から、かつ/または他の特定の値までが含まれる。
【0093】
「具備する」、「含有する」、または「含む」とは、少なくとも指定された化合物、元素、粒子、または方法工程が、組成物、物品、または方法中に存在することを意味するが、仮に他の化合物、物質、粒子、方法工程が指定されたものと同じ機能を有する場合、そのような他の化合物、物質、粒子、方法工程の存在を排除するものではない。
【0094】
また、1つ以上の方法工程の記載は、追加の方法工程または明示的に特定された工程間に介在する方法工程の存在を排除するものではないことも理解されたい。同様に、デバイスまたはシステム中の1つ以上の構成要素についての言及は、追加の構成要素または明示的に特定された構成要素間に介在する構成要素の存在を排除するものではないことも理解されたい。
【0095】
前述のように、MOCVDとMBEとの両方が、マグネシウム(Mg)ドーパントを用いて、中程度にドープされたp-GaNを得ることに成功している。しかしながら、Beのバルクドーピングにより、高出力デバイスに適した半絶縁性GaNが得られたが、GaN中のBeの高い実験的活性化エネルギー(約700meV)のため、高p型GaNは得られていない。GaN中のBeの高い活性化エネルギーは、Be(約112pm)とGa(約136pm)との原子半径の大幅な不一致に起因する歪みによるもので、その結果、結晶格子中にGa置換サイトではなく、望ましくない格子間Beサイトが生じる。
【0096】
GaNと比較すると、AlNはドーピング、特にp型ドーピングが非常に困難である。これは、AlNではMgの活性化エネルギー(約510meV)が高いためであり、これはおそらくAlの原子半径(約118pm)と比較してMgの原子半径(約145pm)が大きいためと考えられる。Beの原子半径(約112pm)はAlの原子半径(約118pm)と近いため、BeはAlNのp型ドーピングに適している可能性があると考えられる。また、AlN:Beは、AlN:Mgに比べてはるかに低い活性化エネルギー(330meV)を理論的に示す。残念ながら、Beは安全上の重大な懸念があるため、MOCVDには一般に用いられていない。それに比べ、MBEにおいてBeを用いることは、一般的に安全で通常の方法である。
【0097】
図1は、基板102と、基板102上に配置されたドープ材料104とを有する例示としてのデバイス100を示す。ドープ材料104は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)、窒化インジウムガリウムアルミニウムスカンジウム(InGaAlScN)等のIII族金属窒化物の層を少なくとも含む。III族金属窒化物は、III族金属を豊富に含有する表面105を含み、MOCVDで一般的に用いられるNを豊富に含有する表面と比較して表面拡散のエネルギーバリアを下げ、より低温でも実質的に高い表面拡散を可能にする。この周期的に蓄積された後に枯渇する金属を豊富に含有する表面105吸着層は、一定供給される窒素107に比べて周期的に調整された過剰な金属を半導体表面に供給することによって生成される。金属源が半導体表面上に配置されるサイクルの部分の間、蓄積された過剰金属密度(まだ窒素原子に結合していない金属)が増加する。金属被覆率は、金属源が半導体表面上に配置されていないサイクルの部分の間、最終的かつ短期的にゼロ被覆率まで減少する。蓄積された金属過剰により、金属源が半導体表面に配置されていないときでも、III族金属が表面に存在しない短時間を除いて、結晶合成は常に継続する。MOCVDやMBEとは異なり、適用される基板温度は金属の脱離温度よりも低いため、表面に塗布された金属はすべて脱離することなく消費される。このようにして、不純物濃度は結晶成長速度に反比例するため、非常に高い成長速度が得られ、したがって非常に低いバックグラウンド不純物濃度が得られる。同様に、蓄積された過剰なIII族表面金属の存在により、窒素107の原子ホッピングは弱い金属結合を切断するだけでよく、強い半導体結合を切断する必要はないため、窒素107の横方向の表面拡散が促進される。窒素107はまた、新しいエピタキシャル単層が形成される半導体-金属界面まで垂直方向に拡散し、結晶を上方(基板から離れる方向)に延ばすことができる。金属を豊富に含有する表面105を用いて得られるこの強化された横方向拡散では、他の方法よりも低温でも結晶品質が向上し、熱負荷が少なく、したがって成長システムの汚染が少なくなる。最初にIII族金属が表面に配置され、次に金属が表面に配置されないというこの繰り返しのサイクルは、一定の窒素107供給で繰り返され、その結果、この蓄積された金属の一部がIII族金属窒化物半導体に変換される。III族金属窒化物は、p型ドーパント106aまたはn型ドーパント106bのうちの少なくとも一方でドープされる。ドープ材料104は、p型ドーパント106aまたはn型ドーパント106bが、III族金属窒化物の金属を豊富に含有する表面105を通って拡散し、最初に金属-半導体界面に取り込まれてその後に成長する半導体吸着層により最終的に埋められる膜の内部でドーパント濃度を増加させることができるように、AlNの場合は1000℃以下、AlNのIII族合金の場合はさらに低い温度で成長させる。ドーパント濃度が増加したドープ材料104は、金属変調エピタキシー(MME)によって成長させることができる。MMEによるIII族金属窒化物成長のシステムおよび方法の例は、米国特許第10,526,723号および同第11,319,644号に開示されており、参照によりその全体が以下に完全に記載されているものとして本明細書に組み込まれる。
【0098】
図示されていないが、III族金属窒化物の結晶にドーパント(Be、Si等の元素)を添加することは任意の温度で行うことができるが、そうすることによって、活性な電荷キャリアではなく絶縁体として作用するドーパントが生じる。本明細書に記載のシステムおよび方法は、ドープ材料104全体に電気的に活性なドーパントをもたらす。言い換えれば、1000℃以下の温度で成長させたドープ材料104は、(i)自由電子を提供する電子供与、または(ii)自由正孔を提供する電子捕獲のいずれかを行うことができる活性ドーパント106をもたらす。
【0099】
従来の分子線エピタキシー(MBE)とは異なり、本明細書に記載の方法である金属変調エピタキシー(MME)は、基板温度、III/V比、およびシャッターサイクルあたりの過剰金属量という3つの成長パラメータを有し、より多くの成長制御が可能である。
【0100】
基板温度は、約1000℃未満の温度(例えば、約950℃未満、約900℃未満、約850℃未満、約800℃未満、約750℃未満、約700℃未満、約650℃未満、約600℃未満、約550℃未満、約500℃未満、およびその間の任意の値、例えば、約834℃未満)に設定される。基板温度が低いことは、気体アウトガスによる汚染を減少させ、III族金属窒化物材料内の活性ドーパントの適切な取り込みを促進するために、界面化学および反応機構を制御するのに役立つ。いくつかの実施形態において、活性電荷キャリア濃度が増加したp型半導体の成長では、基板温度は約500℃~約900℃、好ましくは約600℃~約700℃の温度範囲に設定される。活性電荷キャリア濃度が増加したn型半導体の成長では、基板温度は約500℃~約1000℃の間、好ましくは約600℃~約800℃の間の温度範囲に設定される。
【0101】
基板102は、例えば、サファイア、結晶シリコン、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、酸化亜鉛、ガリウム酸リチウム、アルミン酸リチウム、単結晶ダイヤモンド、ヘテロエピタキシャル単結晶ダイヤモンド、炭化ケイ素、またはそれらの組み合わせを含む、任意の適切な半導体基板材料を含有し得る。
【0102】
III/V比とは、窒素等のV族元素に対するIII族金属の濃度比を意味し、III/V比は好ましくは1より大きく2より小さい。p型AlN含有半導体では、1に近いIII/V比(例えば、約1.5、約1.4、約1.3、約1.2、約1.1、または約1.01)が理想的であり、n型AlN含有半導体では、2に近いIII/V比(例えば、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2.0)が好ましい。
【0103】
シャッターサイクルあたりの過剰金属量とは、シャッターの開閉サイクル時間に基づいて、より長い時間基板表面に蓄積することが許される(窒素に比べて)より高濃度の金属を意味する。いくつかの実施形態において、金属変調エピタキシーは、窒素フラックスを成長中一定に保ちながら、金属フラックスを変化させる。成長は、金属シャッターの開サイクル(AlN系合金のように複数の金属が用いられる場合、両方の金属シャッターを同時に開くことができる)の間と、蓄積された金属が消費されるサイクルの一部でシャッターが閉じられた後とに発生する。しかしながら、その後、次のサイクルの開始前に成長は一時的に停止する。本明細書に記載の方法では、III族金属とドーパントとの両方を、約0.1秒~約30秒(例えば、約0.5秒~約28秒、約1.0秒~26秒、約1.5秒~約24秒、約2.0秒~22秒、約2.5秒~約20秒、約3.0秒~18秒、約3.5秒~約16秒、約4.0秒~15秒、約4.5秒~約14秒、約5.0秒~12秒、およびその間の任意の時間間隔、例えば、約8.24秒~約29.98秒)の送達期間にわたって導入し得る。さらに、シャッターを閉じて、約1秒~約30秒の範囲(例えば、約1.5秒~約28秒、約2.0秒~26秒、約2.5秒~約24秒、約3.0秒~22秒、約3.5秒~約20秒、約4.0秒~18秒、約4.5秒~約16秒、約5.0秒~15秒、約5.5秒~約14秒、約6.0秒~12秒、およびその間の任意の時間間隔、例えば、約4.17秒~約27.34秒)の休止期間にわたってIII族金属およびドーパントの導入を休止し得る。
【0104】
当業者であれば理解できるように、電荷キャリアを補償してAlNやAlN系の半導体合金における実質的な導電性を従来妨げてきた欠陥の相互作用により、AlNドープ材料のMMEに関する3つのパラメータのいずれか1つを調整することにより、AlN半導体を生成する電荷キャリア濃度の量を調整することができる。同様に、表面へのドーパントのフラックスを増減させることで、電荷キャリア濃度を上下させることができる。このような種々の例については、本明細書の「実施例」のセクションに関してより詳細に説明する。
【0105】
図2Aは、例示としての縦型III族金属窒化物ショットキーダイオードの予想模式図である。図に示すように、第1の半導体202は、ワイド、超ワイド、または極端に大きなエネルギーバンドギャップを有し、p型ドーパントまたはn型ドーパントの一方を含有する。第1の半導体200は、ドーパント濃度が約1×1015~5×1020cm-3または約5×1017~7×1019cm-3の範囲である。第1の半導体202は、以下でより詳細に説明する方法およびプロセスによって成長させることができる。図には示していないが、デバイス200Aは、導電性のワイド、超ワイド、または極端に大きなエネルギーバンドギャップを有する材料をもたらすn型またはp型ドープの第1の半導体202の1つ以上の層で構成され得る。
【0106】
それに代えてまたはそれに加えて、デバイス200A,200Bは、第2の半導体204を有する構造体に階層化することができる。第2の半導体204は、第1の半導体202と同じ半導体材料であり得る。例えば、第1の半導体が窒化アルミニウム(AlN)を含有する場合、第2の半導体は、同一または類似のAlNとすることができる。このような場合、第1および第2の半導体202,204が類似の半導体材料であると、層間の界面にホモ接合を形成することができる。特に、ホモ接合は、等しいバンドギャップを有し得るが、ドーピングレベルが異なることがある。本明細書に記載されて図2Aおよび図2Bに示されるように、第1の半導体202は、より高濃度のp型ドーパント(図2Aおよび図2Bでは「p+」であり、図3Aにさらに詳細に示される)を有することができ、一方、第2の半導体204は、より低濃度のp型ドーパント(図2Aおよび図2Bでは「p-」)を有することができる。軽くp型ドープされた半導体を重くp型ドープされた半導体の上で成長させて、改善された電気絶縁破壊性能を有するより良好なカソード(またはn型のためのアノード)コンタクトを提供することができる。ドーパント濃度を下げるか、または層204の厚さを増加させることにより、ショットキーダイオードのブレークダウン電圧を増加させることができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、デバイス200Aは、第1の半導体202に接触するアノード金属または合金212Aおよび第2の半導体204に接触するカソード金属または合金214を有する完全縦型ショットキーダイオードに階層化することができ、アノード212Aおよびカソード214のコンタクトは、デバイス210Aの反対側または対向する側にある。いくつかの実施形態において、図2Bに示されるように、デバイス200Bは、アノード214Bおよびカソード214のコンタクトがデバイス200Bの同じ側にある準縦型AlNショットキーダイオードに階層化することができる。
【0108】
デバイス200A,200Bのアノード金属または合金212A,212Bは、例えば、Ni、Pt、Pd、Ti、Al、Sc、Y、Nb、Au、またはそれらの組み合わせで構成されるような、p型実施形態用の高仕事関数の金属、合金、または多金属スタック、あるいはn型実施形態用の低仕事関数の金属または多金属スタックであり得る。アノード212A,212Bは、オーミック接触をより良好に形成するために、第1の半導体202にアニールすることができる。
【0109】
デバイス200A,200B,200Cのカソード金属または合金214は、第2の半導体204に対して高いバリア高さを有するように選択され得る。カソード214は、例えば、Al、Mg、Ti、アルカリ金属、またはそれらの組み合わせ等の、低仕事関数またはより低い仕事関数の金属、合金、または多金属スタックであり得る。
【0110】
図2Aおよび図2Bはp型ダイオードの1つの構成を示しているが、いくつかの実施形態において、p型材料の代わりにn型材料を用いることができると理解される。これらの実施形態では、仕事関数の高低に基づく金属の選択と同様に、アノード電極とカソード電極とが逆になる。
【0111】
さらに、半導体材料を別の半導体材料と積層することで、組み合わされた材料の特定の特性を高めることができ、そうすることで、第1の半導体材料が第2の半導体材料に接する接合部を形成することができる。典型的なダイオードデバイスは、p-n接合、n-p接合、p-i-n接合等、隣接する半導体材料による接合に依存している。接合を有するダイオードの利点のひとつは、一方向への電荷の流れを容易にする一方で、反対方向への電流の流れを阻止することであり、直流電流の生成に有用である。一般に、電子は接合を通ってn層からp層へ流れやすく、正孔は接合を通ってp層からn層へ流れやすい。バンドギャップが広いほど、所定の厚さに対して高い電気的ブレークダウン電圧、すなわち高い絶縁破壊電界が得られるため、より大きな阻止電圧を有する整流器を製造することができる。科学的理論に束縛されることなく、AlNはこれまでに実質的にドープされた半導体の中で最も高いバンドギャップを持ち、ここに記載された方法が開発されるまで実質的にドープされていなかったため、これは本発明における実質的な改善である。さらに、種々の介在層でp-i-n接合のi層を置換して当技術分野でよく知られた光学および電子デバイスを形成することができる。例えば、i層を、電子や正孔を捕捉するのに適した低エネルギーバンドギャップ材料の1つ以上の領域で置換することができ、その結果、発光や効率を高めることができる。複数の光生成層が挿入される場合、それらは各々が種々のレベルのドーピングを有し得る、より広いバンドギャップ層によって分離され得る。同様に、1つ以上の光生成層から光を放出するだけでなく、光を導くのに適した光学的屈折率を有し、刺激発光、すなわちレージングを可能にする1つ以上の層を導入することもできる。さらにもう一つの選択肢は、トランジスタのように電界が半導体領域のキャリア濃度を調整するp-n接合を提供することである。当業者には、このようなp型とn型の伝導を可能にすることで、多種多様な機能デバイスが実現できることが認識されている。
【0112】
いくつかの実施形態において、BeドープAlNからMME成長したp型伝導を含むデバイスを用いて、高温高電圧トランジスタやDUV光検出器および光源を製造することができる。ウイルスやバクテリアのDNA破壊に対するUVの有効性は270nmおよび200nm付近でピークを示し、タンパク質の吸収は270nmで低く、200nmに向かって増加する。AlNは約6.1eVのバンドギャップエネルギーを有するため、ドープAlNを有するデバイスは203nm付近で発光する可能性がある。
【0113】
図示されていないが、III族金属窒化物全体に分散された活性ドーパント濃度が増加したドープ材料104は、一般的な半導体ダイオードデバイス(例えば、PINダイオード、ショットキーダイオード、過渡電圧抑制ダイオード、トンネルダイオード、ツェナーダイオード、ガンダイオード、レーザーダイオード、LED、光電池、フォトトランジスタ、太陽電池、IMPATTダイオード等)、およびトランジスタデバイス(例えば、電界効果トランジスタ、金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(MISFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)等)を形成するために用いることができる。例えば、活性電荷キャリアを増加させたIII族金属窒化物層は、本明細書に記載のMME法により層を成長させた、絶縁体として機能する層または非意図的にドープされた層とのホモ接合を有するPINダイオードを形成することができる。本明細書において、非意図的にドープされた層とは、成長した層がドープされていないかのように振る舞うことを意味する。いくつかの例では、非意図的にドープされたGaN層は、電子濃度が1015~1017cm-3の残留欠陥により、本質的にn型である。支配的なドナーは明確には特定されていないが、残留酸素と窒素空孔のような自然欠陥が一般的にn型伝導性の原因と考えられている。
【0114】
いくつかの実施形態において、デバイスは、第2の半導体とは異なる半導体材料の第1の半導体を有する構造に階層化することができる。例えば、第1の半導体が窒化アルミニウム(AlN)を含有する場合、第2の半導体はGaNとすることができる。このような場合、第1の半導体と第2の半導体とが異なる半導体材料であると、層間の界面にヘテロ接合を形成することができる。特に、ヘテロ接合は、等しくないバンドギャップを有し得るが、ドーピングタイプおよび濃度が異なることも同等となることもある。当業者には理解されるように、半導体材料、ドーピングタイプ、III族組成、およびドーパント濃度を変化させることにより、半導体材料の特性を変化させ、深紫外発光および光検出用途、または高温かつ高電圧かつ高出力のエレクトロニクス用のデバイスを生成することができる。例えば、典型的なLEDはp-AlN/Iまたはn-AlGaN/n-AlNであるか、あるいはp型AlN領域とn型AlN領域との間に交互に配置されたバンドギャップのAlGaNの多層膜を用いることができる。n型領域に隣接するp型領域を任意の介在層と組み合わせることにより、整流ダイオードを形成することができる。図2Cの示す例示としてのデバイス200Cは、Geでドープして本明細書に記載のMME法により成長させたn型GaNと、「i」層を提供する第1の層上に成長させたBeでドープしたp型GaNの層とを備える。さらに、図2Cは、n型領域に隣接するp型を組み合わせた追加層の例(例えば、Geでドープしたn型GaN、続いてBeでドープしたp型GaN、続いてBeでドープしたp型AlN)を提供する。
【0115】
半導体のドーピングを変化させることができるため、ショットキーダイオード、PNダイオード、またはPINダイオードの順方向伝導および逆方向ブレークダウン電圧を制御することができ、種々の高出力ダイオードの用途に用いることができる。さらに、アノード金属およびカソード金属を選択することで、ダイオードの順方向伝導および逆方向ブレークダウン電圧をさらに制御することができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、n型および/またはp型ドープ窒化物系半導体を有するデバイスは、N原子を含有するガスまたはプラズマ励起ガスを結晶基板の表面に堆積した金属合金の融液に導入する工程と、約1000℃未満の温度範囲で種結晶基板上に窒化物系結晶をエピタキシャル成長させる工程と、パルス周期的に金属およびドーパントの1つ以上のフラックスを導入する工程と、ドーパントを窒化物系結晶に組み込む工程と、を具備する方法によって製造し得る。
【0117】
窒素を金属合金融液と反応させるために、窒素原子を含有するガスまたはプラズマ励起ガスを成長チャンバーに流入させることができる。金属合金融液は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、またはそれらの組み合わせを含む、周期表におけるPブロック元素の第1列に位置するIII族元素を含むことができる。その他の金属合金としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)等が考えられる。
【0118】
窒化物系結晶のエピタキシャル成長は、半導体を薄い原子層で継続的またはほぼ継続的に成長させることを含み得る。金属およびドーパントは一緒に循環させることも、独立して循環させることもできる。金属およびドーパントは、金属およびドーパントの1つ以上のフラックスが成長中の結晶または半導体に取り込まれるのを可能にするためにシャッターが開くと、チャンバー内にパルス状に注入される。金属およびドーパントのシャッターが開いていると、過剰な金属およびドーパントが成長を続ける結晶や半導体の表面に蓄積する可能性がある。金属を豊富に含有する表面は、1000℃未満の温度でエピタキシャル成長中に形成される。金属およびドーパントのシャッターが閉じられると、過剰な金属およびドーパントが結晶または半導体層に消費または吸着され、結晶または半導体層の成長が継続する。いくつかの実施形態において、金属およびドーパントのシャッターを閉じた後、半導体を窒素プラズマ下でアニールできるように、短時間の休止成長を行うことができる。
【0119】
ドープ結晶または半導体の成長温度は、従来の結晶または半導体の成長方法よりも実質的に低い。いくつかの実施形態において、種結晶基板上の窒化物系結晶または半導体のエピタキシャル成長は、約1000℃未満の成長温度で行うことができる。本明細書に記載の方法は、約600℃~約1000℃の範囲(例えば、約650℃~約950℃、約700℃~約900℃、約750℃~約850℃、またはその間の任意の範囲、例えば、約738℃~約860℃)の温度で成長させることで、導電性ドープ窒化物系半導体を生成することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、窒化物系半導体は、III族元素および窒素のみを含有していてもよい(例えば、AlN、GaN、InN、ScN、AlGaN、InAlN、ScInGaAlN等)。いくつかの実施形態において、III族以外の金属窒化物合金を、例えば、窒化アンチモン(III)、窒化バリウム、窒化ビスマス、窒化カドミウム、窒化セシウム、窒化カルシウム、窒化セリウム、窒化クロム、窒化コバルト(III)、窒化銅(I)、窒化金(III)三水和物、窒化鉛、窒化リチウム、窒化マグネシウム、窒化水銀、窒化プルトニウム、窒化カリウム、四フッ化窒化レニウム、窒化ルビジウム、窒化銀、窒化ナトリウム、窒化タリウム(I)、窒化ウラン(III)、窒化ジルコニウム、またはそれらの組み合わせ等の導電性半導体合金の作製に用いてもよい。
【0121】
金属とドーパントとの比率は、金属約99.9999%とドーパント約0.0001%(例えば、金属約99%とドーパント約1%、金属約99.9%とドーパント約0.1%、金属約99.99%とドーパント約0.01%、およびその間の任意の組成、例えば金属約99.63%とドーパント約0.37%)から変化し得る。
【0122】
本明細書で開示するように、先行技術{Taniyasu, Y., Kasu, M. & Makimoto, T. An aluminum nitride light-emitting diode with wavelength of 210 nanometers. Nature 441, 325-328 (2006). https://doi.org/10.1038/nature04760}と比較して、室温で約6000倍高いバルクAlN電子濃度および約300,000,000倍高いAlN正孔濃度が得られる。n型AlN:Si膜とp型AlN:Be膜との両方の実験に成功したことで、実質的にドープされたAlNホモ接合PINダイオードが初めて実証された。6.1eVのAlN半導体の適切なターンオン電圧約6V(先行技術では20Vよりも大きい)で6桁の整流が実証されたことで、示された先駆的なドーピング結果が事実であるという究極の確信が得られた。AlNはもはや単なる絶縁体ではなく、新しい半導体AlNの時代が到来したといえる。内部層(層は多くのサブ層を有することができる)、すなわちn型領域とp型領域との間の層または複数の層を変更するだけで、この実施形態は、極端な放射線および熱環境で動作可能なAlN系の深紫外(DUV)光エミッタおよび検出器、高出力/電圧/温度かつ高周波のスイッチングデバイスのための近未来の刺激的な有望性を示している。
【0123】
以下の実施例は、本開示の態様をさらに説明するものである。しかしながら、これらは、本明細書に記載される本開示の教示または開示をいかようにも限定するものではない。
【実施例
【0124】
実施例1-AlNのp型およびn型伝導性
【0125】
AlN系電子デバイスを実現する上での大きな制約のひとつは、ドーピングができないことであり、パワースイッチとしての理論的な可能性を無意味なものとし、その結果、GaN、β-Ga、およびSiCが代わりにパワーデバイスに用いられてきた。AlNのp型伝導性は、炭素ドーピングによる表面導電性の報告{K. Kishimoto, M. Funato, Y. Kawakami, Applied Physics Express 2020, 13, 015512}が示された主要な課題であったが、先行技術では実質的なバルク導電性は実験的に実証されていなかった。最も優れていたのは、高温MOCVD法で成長させたMgドープAlNを用いて、技術的には無関係な約1010cm-3の室温正孔濃度を達成したTaniyasuらである。Be-N結合エネルギーおよびBeの原子半径は、表1に示されて図3Aに模式図で示されるようにAlのものと密接に一致するため、BeはAlNにおけるp型候補として最適である。n型AlNについては、図3Bおよび表1に示すようにSiの原子半径がAlのものと密接に一致するため、Siが理論的に最良のドーパントであるが、欠陥補償により室温での電子濃度が1~3×1015cm-3の範囲に制限されることが先行研究で示されている{とりわけ、Taniyasu et al; M. L. Nakarmi, et al, Applied Physics Letters 2004, 85, 3769; T. Ive, et al, Applied Physics Letters 2005, 86, 024106}。
【表1】
【0126】
本明細書に開示される方法を用いて、金属変調エピタキシー(MME)の改善された成長反応機構により、従来にない低い基板温度で高品質の膜を実証する最大3.1×1018cm-3の正孔濃度でp型BeドープAlN膜を達成した。MMEは、成長中の低い基板温度を利用することで、通常は気体アウトガスに起因する汚染を低減し、複数のパラメータを用いて界面化学および反応機構を制御することで、ドーパントのカチオンサイトへの適切な取り込みを促進する。MMEはまた、Mgをドーパントとして用いたp型GaNにおいて、既知の中で最高の正孔濃度を実証した。MMEによるAlN:Beのp型膜は、p-AlN/i-AlN/n-AlNダイオード、p-AlN/i-GaN/n-GaNヘテロ接合ショットキー、接合バリアショットキー(JBS)、およびピンダイオードへの応用に成功した。ここに記述したように、超高真空純度が鍵であることが判明した。成長中のバックグラウンド圧力が低いため、正孔濃度が高くなり、補償が低減した。
【0127】
SiはAlN中の置換不純物であり、最も近いN-結合の6%の理論的緩和をもたらす。イオン注入によるAlNの表面近傍領域(非バルク成長)へのn型ドーピングについては、先行技術において有望な結果が示されているが、バルクAlN膜のn型ドーピングでは、1015cm-3を超えるバルク電子濃度は示されていない。このように、ある手法ではドーピングが可能で、別の手法では不可能であるという結果の相違は、Siそのものが問題なのではなく、他の欠陥/不純物関連の種が障害となっており、他のドーピング手法がより適切である可能性を示唆している。Siは、活性化エネルギーが約17meVであるGaN中では浅いドナーであるが、AlGaN中の活性化エネルギーはAl含有量とともに増加し、Al0.85Ga0.15Nにおける24meVからAl0.96Ga0.04Nにおける211meVとなる。SiのAlNへのドーピングの問題は、Siが結晶格子に位置する原子位置を考慮することで理解できる。ドーパントの溶解限界は、ドーパントの形成エネルギーに依存する。形成エネルギーはさらに、原子半径の一致、ホスト原子とドーパント原子との結合強度、およびドーパントの好ましい幾何学的格子内配置に依存する。従来から測定されているAlN中のSiの活性化エネルギーは200meVより大きいが、これはAl空孔の形成、高貫通転位による電子のトラップ、およびDX中心の形成によるものである。DX中心は、図3Bに示すように、3つのバジル位置にあるSi-N結合の2%の収縮およびc軸のSi-N結合の切断を含む幾何学的再配列により、Siが二次電子を捕獲する際に形成され、浅い状態から深い状態への遷移を引き起こす。図3Bに示すDX配置では、Si原子は置換Alサイトの近くに留まるが、最も近いN-結合の収縮の結果、c軸結合が切断されると下方にシフトする。問題を複雑にしているのは、Al空孔がSiと複合体を形成し、その結果、Siドーピングレベルが高い場合にはドーピングが自己補償されることである。同様に、酸素は低濃度ではAlN中のドナーであり、その結果、最近接N-結合が理論上4%伸長する。しかしながら、図3Aおよび図3Bに示すように、ドーピング濃度が高くなると、酸素もDX中心を形成し、0.19nmのバジルAlN結合が0.182nm、0.182nm、0.175nmの非対称長にシフトし、その結果、Oが結晶内のオープンスペースに向かって斜めに変位する。このDX中心の再構成は、より高いO濃度でn型AlNを補償する深い状態を形成する。さらに、この自己補償は、貫通転位の増加とともにその大きさが増加することが分かった。したがって、AlN膜を高結晶条件下(低減された貫通転位密度)で成長させることにより、AlN中のSiドーピングの補償を低減することができる。空孔、特にAl空孔は、そうでなければ緻密な結晶構造中のより大きな空隙による再構成を容易にし、また深い中心としても機能するSi空孔とO空孔との複合体を形成することによって、DX中心形成の可能性を高める。
【0128】
実施例2-金属変調エピタキシー
【0129】
本明細書に記載の方法である金属変調エピタキシー(MME)は、超高真空、超高純度、低不純物アウトガス環境で動作するサイクリック分子線エピタキシー(MBE)から派生したものであり、バックグラウンドの炭素および酸素の値を通常1015~1017cm-3の低い範囲に制限する。III族窒化物のMBEまたは有機金属化学気相成長法(MOCVD)は、脱離温度をはるかに超えて動作するため、エピタキシーチャンバーからの不純物アウトガスが増加し、以下の空孔生成式に支配されるように、指数関数的により高濃度の空孔NVacanciesが自然に生成される。
【数1】
【0130】
式中、NAtomicは欠損元素の原子濃度であり、Cは空孔の等価配置数であり、Eformationは原子結合の切断および再構成に必要な正味エネルギーを含む、空孔形成に必要なエネルギーである。これとは対照的に、MMEは脱離温度より十分に低く、金属を豊富に含有する表面条件で動作し、空孔生成、特にAl空孔の生成を最小限に抑える。MMEは、有害なAl空孔をほぼ除去し、表面結合の切断を容易にし、その結果、長い表面吸着原子拡散長を可能にする、金属を非常に豊富に含有する界面化学によって、より低い成長温度を補償する。例えば、以下の表面拡散式について考察する。
【0131】
【数2】
【0132】
式中、aはホッピング距離、φはホッピングのエネルギーバリア、ωは振動数である。ホッピングの金属-Nバリアが、金属-金属表面のホッピングバリアの15倍も大きいことを考えると、このバリアの高さの不一致により、金属を豊富に含有する表面の拡散長は、アンモニア系のMBEやMOCVDのような半導体結合を豊富に有する表面よりも50~60長くなる。MOCVDとMMEとの間の温度差が500度であっても、ホッピングバリアの高さが0.1~0.2eVとはるかに低いため、MMEの表面拡散はNを豊富に含有するMOCVDよりも長くなる。それは、Nを豊富に含有するバリアは約10倍から15倍高いからである。この表面拡散長の差は、MME(およびほとんどのMBE)の表面形態とMOCVDの表面形態との比較で明らかである。MMEおよび金属を豊富に含有するMBEでは、転位に見られる表面空隙によってステップフロー成長が中断されるため、転位の周囲にスパイラルヒロックが形成される表面を示す傾向がある。逆に、MOCVDの形態は吸着原子の拡散ではなく気相拡散に支配され、表面上の原子のステップフロー成長を妨害する転位が存在しても、転位の領域をコンフォーマルに覆って平坦な表面を形成する。長い表面拡散長によって得られるより高い結晶品質のために吸着原子拡散長を増加させるMMEの金属を豊富に含有する表面と組み合わせることで、MMEは、シリコンや酸素と組み合わされて深い中心を形成してDX中心形成を介してAlNから電子を奪うことが知られているAl空孔濃度を低減することができる。
【0133】
さらに、DX中心形成にはドーパントの幾何学的再配列が必要である。格子が非常に高い温度(本明細書で開示する600~700℃と比較して、多くの成長法では1100~2200℃)で膨張するため、5.27×10-6の熱膨張係数から、c軸の伸びの差分が約2~6%増加すると予測され、DX中心形成の要件であるc軸結合の切断に特に起因する原子再配列の可能性が高まる。要するに、AlNやAlN系半導体の低温成長は、ほとんどの窒化物半導体成長にとって直感に反するものであるが、ドーパントの配置および活性化を制御するメカニズムを深く分析すると、MMEは、長い添加原子拡散長を有するAl空孔のない高純度かつ低アウトガス環境を提供し、結晶再配列の起こりにくい高密度結晶を提供することが分かる。
【0134】
AlN中のSiの原子半径とAlの原子半径との一致および最適なMME成長反応機構は、n型SiドープAlN膜を研究する強力な事例を形成する。n型AlNは、これまでに得られたp型AlN:BeのMME膜と組み合わせることで、AlNダイオードや、これらのp型およびn型の基本構成要素から構築される多種多様な電気的および光学的デバイスを実証するための不可欠な構成要素を完成させる。
【0135】
実施例3-AlN:Si膜およびAlN:Be膜の製造方法
【0136】
AlN:Si膜およびAlNホモ接合ダイオードを、HVPE処理済みのサファイア上AlNテンプレート(MSE Supplies社製)の上で、Riber32プラズマ支援分子線エピタキシー(PAMBE)システムを用いて、MMEにより成長させた。直径2インチのサファイア上AlNウェハ(MSES社製)を、まずピラニア溶液(HSO:Hの体積比3:1)を用いて150℃で1分間洗浄し、続いて脱イオン水とフッ化水素酸との混合物(DI HO:HFの体積比5:1)で30秒間洗浄した。洗浄したウェハを、成長中の均一な加熱のためにタンタルで2μmの裏面メタライズを行った。その後、裏面メタライズしたウェハを、1cm×1cmのテンプレートにダイスカットした。その後、メタライズおよびダイスカットしたAlNテンプレートを溶媒洗浄(45℃で20分間のアセトン洗浄、3分間のメタノール洗浄、DI水リンス、窒素ブロー乾燥)し、続いて150℃で10分間のピラニア溶液を用いた洗浄(HSO:Hの体積比3:1)を行い、有機溶媒を除去した。その後、テンプレートを体積比10:1のDI HO:HFで25秒間ex situで化学洗浄し、表面酸化物を部分的に除去した後、DI水でリンスし、窒素で乾燥させた。
【0137】
AlNテンプレートをベース圧力約10-9Torrの導入チャンバーに直ちに投入し、200℃で20分間熱アウトガス処理した。その後、テンプレートを分析チャンバー経由で成長チャンバーに移し、850℃で30分間アウトガス処理した。
【0138】
Al、Be、Siフラックスは標準的な噴出セルから供給した。Veeco社のUNI-Bulb高周波(RF)窒素プラズマ源を用いて、RFプラズマ出力350Wおよび流量2.5sccmで成長中の窒素プラズマの供給を行った。RFプラズマ出力および流量は、すべての成長を通じて一定に保った。MBE成長チャンバーのベース圧力は約5×10-11Torrで、窒素プラズマのビーム等価圧力(BEP)は約1.2×10-5Torrであった。成長速度は、AlN:Be膜で700nm/時間、AlN:Si膜で1.40μm/時間であった。しかしながら、MMEでは約10μm/時間という高い成長速度が得られる。AlN:BeおよびAlN:Si試料のMME開閉シャッターサイクルスキームを表2に示すが、各サイクルにはすべての金属が消費される期間があるため、これらの期間には成長が起こらない。
【表2】
【0139】
STAIB Instruments社製RH20S 20kV反射高エネルギー電子回折(RHEED)銃をk-Space Associates社製kSA400分析RHEEDシステムと組み合わせて用い、in situの表面形態をモニターし、膜のランタイム成長率を計算した。AlN:Be膜は、III/V比1.3、基板温度700℃で、低温での吸着原子移動度の損失を補償するため、過剰金属被覆率を正確に制御(シャッタータイミングによる)して成長させた。金属終端表面でホッピングするAl、N、Be原子は、化学量論的なAlN表面の強いAlN半導体結合よりも実質的に小さい弱い金属結合を切断するだけでよい。各サイクルで過剰な金属およびドーパントを消費し、成長中にドーパントが縦型方向に拡散しないように、成長しない時間、すなわちデッドタイムを8.5秒に保った。金属を豊富に含有する条件は、膜の滑らかな表面形態をもたらし、一方、低い基板温度は、成長方向へのBe拡散を制限するのに役立ち、デバイス内部の所望の場所にドーパントを正確に配置することを可能にし、その後に成長する膜が意図せずにBeでドープされるリアクターメモリー効果の原因となるBeの脱離を防ぐ。AlN:Si膜は、基板温度800℃、III/V比1.3の適切なp型ドーピングには適さない高結晶性MME成長条件(高いIII/V比および金属量-表2および前述の説明を参照)で成長させた。
【0140】
実施例4-AlN:Si膜およびAlN:Be膜の電荷キャリア濃度測定
【0141】
Pt/Pd/Au(10nm/10nm/100nm)コンタクトスタックを、ホール測定(ファン・デル・ポー構成)およびデバイス特性評価のために、n型AlN膜とp型AlN膜との両方についてDenton Explorer電子ビーム蒸着チャンバーで蒸着した。その後、コンタクトをMILA-3000高速熱アニール(RTA)炉内で純窒素下、p型AlN膜は800℃で1分間、n型AlN:Si膜は875℃で1分間アニールした。Evans Analytical Group社(EAG)にて、Siドープ較正試料の二次イオン質量分析(SIMS)を行った。Lake Shore Cryotronics社の最新ホール測定ツールM91FastHallコントローラを4点抵抗率およびホール効果測定に用いた。FastHallステーションの1T磁石抵抗測定範囲は1mΩ~1GΩであり、移動度測定範囲は10-2~10cm/Vsである。
【0142】
SiのAlNへの取り込みはSIMSで較正した。成長温度800℃、III/V比1.3、MMEのO/Cシャッターサイクル開時間21秒および閉時間11秒でMMEによる成長処理を行い、種々のSiドーピングを施した厚さ150nmのAlN:Si層を得た。SIMSの結果は、ホール分析用のより厚い膜をドーピングする際の指針として用いた。具体的には、HVPE処理済みのサファイア上AlNテンプレート(MSES社製)の上で、基板温度800℃、III/V比1.3、MMEのO/Cシャッターサイクル開時間21秒および閉時間11秒でMMEによる成長処理を行い、SIMSにより求められたSi濃度が表3にまとめたように5×1017~7×1019cm-3となる範囲の500nmのAlN:Si膜を得た。
【0143】
ホールおよび抵抗率測定用のAlN:Si膜のコンタクトとして、10nmPt/10nmPd/100nmAuの金属スタックを選択した。コンタクトは、非常に大きな1×1cm試料の角にリソグラフィーおよびリフトオフによって蒸着した。まず、試料をアセトン、イソプロパノール(IPA)、DI水で洗浄し、窒素で乾燥させた後、100℃で5分間脱水ベークした。その後、NR9-1500PYネガ型フォトレジスト(PR)を3000rpm、滞留時間40秒、加減速速度5秒でスピンコートし、その後、150℃で60秒間露光前ベークした。その後、PRスピンコートおよびベーク処理を施した試料を365nmの紫外線で350mJ/cmの線量で露光し、100℃で60秒間露光後ベークした。その後、PRスピンコートおよび露光処理を施した試料をRD6で10秒間現像し、1:1の割合のバッファード・オキサイド・エッチ液(BOE):DI水を用いた洗浄を30秒間行った。10nm/10nm/100nmのPt/Pd/Auコンタクトは、Denton Explorer電子ビーム蒸着装置内で、0.1nm/秒の蒸着速度、約1×10-6Torrのバックグラウンド圧力で蒸着し、その後アセトン中で20分間リフトオフした。試料は最後にIPAおよびDI水でリンスし、窒素で乾燥させた。リソグラフィーおよびリフトオフ処理の結果、接触電流-電圧直線性チェックおよびホール測定用のファン・デル・ポー構成が得られた。
【0144】
コンタクトの蒸着後、試料をMILA-3000高速熱アニール(RTA)炉でアニールした。アニール時間は1分で、窒素環境下875℃で、昇温時間および降温時間はそれぞれ60秒ずつとした。
【0145】
基板温度700℃、MME開閉サイクル5秒/10秒で成長させた7×1018cm-3のBeドーピングを施した別のp型試料N4492を、個々の膜とデバイスコンタクトとの接触抵抗を比較するための円形伝送線路測定(CTLM)に用いた。
【0146】
特定のn型AlN試料膜および/またはデバイスならびにいくつかの重要なパラメータを表3に示す。PINダイオードN4633の例では、まず、約4μmにHVPE処理済みのサファイア上AlNテンプレート(MSES社製)の上で、基板温度800℃、MME開閉サイクル21秒/11秒、III/V比約1.8で成長処理を行い、8×1018cm-3のSiドーピングを施した1μmのn型AlN:Si膜を得た。次に、同じ条件で成長処理を行い、表3に示すように測定不能なほど低いドーピングに相当する5×1017cm-3のSiドーピングを施した「i層」を有する200nmのAlN:Si膜を得た。続いて、基板温度700℃、MME開閉サイクル開時間5秒および閉時間10秒、III/V比約1.3で成長処理を行い、7×1018cm-3のBeドーピングを施した200nmのAlN:Beのp型膜を得た。
【表3】
【0147】
成長後、ICPプラズマエッチングを用いて直径100μmの準縦型デバイスを試料上に作製した。p型コンタクトおよびn型コンタクトには、窒素雰囲気下950℃で1分間アニールした以外は、上記の各層に用いたものと同じ金属スタックを用いた。より高いアニール温度は、より低い温度でのアニール、電流測定、その後のより高い温度でのアニールを、性能が低下するまで繰り返すことによって求めた。これらのデバイスの高速熱アニール温度が高いのは、コンタクト検討用マスクと比較してデバイスマスクの金属被覆率が異なることに関連しているようであり、光加熱アニール装置におけるAlNの透明性の結果である可能性が高い。
【0148】
サイズ(歪み)は、SiがAlN中のAl原子を置換する最適なドーパント原子であることを規定している。Siの原子半径(111pm)は、Alの原子半径(118pm)と密接に一致する。AlN中のSiの原子半径とAlの原子半径との一致と、成長反応機構(迅速合成による非平衡成長)の改善によってIII族窒化物材料中のドーパントの溶解度限界を超えるMMEの能力とを組み合わせて、SiドープAlN膜を調査するために利用した。まず、二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて、SiのAlNへの取り込みを較正した。MMEによる成長処理を行い、種々のSiドーピングを施した厚さ150nmの複数のAlN:Si層を得た。SIMSの結果は、ホール分析用のより厚い膜をドーピングする際の指針として用いた。具体的には、MMEによる成長処理を行い、SIMSにより求められたSi濃度が表3にまとめたように5×1017~7×1019cm-3となる範囲の500nmのAlN:Si膜を得た。
【0149】
Pt/Pd/Au金属スタックを、接触電流-電圧直線性チェックおよびホール測定用のファン・デル・ポー構成の非常に大きな1×1cmAlN:Si試料の角にリソグラフィーによって蒸着した。大きな試料を用いることで、測定された特性が単なる局所的な異常ではなく、大域的な特性であることが保証される。コンタクトの蒸着後、試料を高速熱アニール(RTA)炉でアニールした。このアニール処理が試料の電気的接触特性に及ぼす影響を、4点プローブ測定によるI-V特性の調査によって調べた。代表的なMME成長膜のPt/Pd/AuコンタクトのI-V特性を図4Aおよび図4Bに示す。図4Aのアニール済みAlN:Si膜であるN4595は、ゼロ電圧でゼロ電流を臨界的に横切り、熱電圧や圧電オフセットが存在しないことを示している。また、アニール後のAlN:Siコンタクトは非常に直線的である。図4Aに示すアニール後のAlN:Si膜(N4595)は、図4Bに示す対照のドープなしAlN膜(N4436)よりも約5桁高い電流を示し、これは導電率の増加がSiドーピングの結果であることを証明している。
【0150】
ホール測定によりAlN:Si試料の導電性を調べた。AlN:Si膜の接触抵抗はkΩの範囲であり、Lake Shore社のホール測定ツールの測定能力の範囲内であった。しかしながら、最もドーピングの低いAlN膜であるN4591のホール測定は、米国標準技術局(NIST)の「Fファクター」対称係数が各種接触抵抗の測定値で95%未満であったため、実施できなかった。5×1017~7×1019cm-3のSiドーピング範囲におけるAlN:Si膜のホール測定では、表3に示すように、9×1017~6×1018cm-3の範囲の電子濃度でF>99%という信頼性の高い結果を示している。AlN中の6×1018cm-3の電子バルク濃度は、これまでに報告された先行技術よりも約6000倍高い。
【0151】
コンタクトの抵抗が膜抵抗に比べてまだ高いことを考えると、ファン・デル・ポー測定におけるバルク抵抗率の電圧降下にコンタクト電圧降下が加わり、抵抗率(および対応する移動度)の測定値が不確かなものになる。したがって、電子移動度は推定値のみを提供する。ホール測定におけるキャリア濃度測定では、電流と電圧とは異なるコンタクトから測定されるため、このコンタクト電圧降下の影響によってキャリア濃度測定が劣化することはなく、報告されたすべてのキャリア濃度の不確かさは0.5%未満である。
【0152】
実施例5-AlN:Si膜およびAlN:Be膜の伝送線路測定
【0153】
伝送線路測定は、金属と半導体との間の接触抵抗を求めるために用いられる技術であるが、コンタクトの線形性(相対的なオーミック性対ショットキー整流性)を求めるためにも用いられる。この手法では、一連の金属-半導体コンタクトを種々の距離、すなわちギャップで分離する。一対のコンタクト間の抵抗は、コンタクトを横切るように電圧を印加し、その結果生じる電流を測定することによって測定される。電流は第1のプローブから金属コンタクトに流れ、金属と半導体との接合を横切り、半導体のシートを通り、再び金属と半導体との接合を横切り(ただし、今回の流れは反対方向となる)、第2のコンタクトに流れ、そこから第2のプローブに流れ、外部回路に流れて電流計で測定される。測定される抵抗は、第1のコンタクトの接触抵抗と、第2のコンタクトの接触抵抗と、コンタクト間の半導体のシート抵抗との線形結合(和)である。
【0154】
図5は、一定の外半径200μm、ギャップ25、35、45、55、65、75μmの平面p型膜であるN4492のpコンタクト伝送線路測定(PTLM)を示している。N4492では、ギャップはp型AlN:Be膜のホール測定に用いたもの(約1cm)よりもはるかに小さく、したがって、本方法およびデバイスの電流レベルは著しく高くなる。p型膜であるN4492のコンタクトは、約0.4mAの有意な電流を流す高い直線性を有する。
【0155】
特定のp型AlN試料膜および/またはデバイスならびにいくつかの重要なパラメータを表4に示す。AlN:Be膜のp型性とAlN:Si膜のn型性を検証するために、半導体のバンドギャップに匹敵するターンオン電圧を示すAlNホモ接合ダイオードが望まれる。この点に関して、AlNのPINダイオード(N4633)を成長させた。当業者であれば、n型層とp型層が本発明より以前の障害であったことを考えれば、i層を量子井戸で置換するか、あるいは他の種々の変更を加えて、トランジスタのような自発光または誘導光発光、光検出、電気整流およびキャリア調整に適したダイオードを実現できることが理解できるであろう。
【表4】
【0156】
図6Aおよび図6Bは、PINダイオード構造のn型コンタクト層およびp型コンタクト層の円形伝送線路測定(CTLM)を示している。n型コンタクトおよびp型コンタクトは、ともに線形的な傾向を示している。しかしながら、N4633であるAlNダイオードのn型コンタクトおよびp型コンタクトの両方の電流レベルは、複数のデバイスを作製した場合、n型N4595およびp型N4492膜(非デバイス)よりも繰り返し低くなっており、これはおそらく、作製プロセス中のプラズマツールとアニールによる異常に起因すると考えられる。具体的には、PINダイオードをエッチングした際に、原因不明の暗い色合いがウェハに形成されたことから、BeおよびSiドープAlNのプラズマエッチングにはさらなる最適化が必要であることが示唆されている。この変色(コンタミネーションと推定される)は除去できず、ホモ接合AlNダイオードの接触抵抗を2つのコンタクトで合わせて3~4桁上昇させる可能性がある。N4633(エッチング済み)のn型層の電流は、同じコンタクトパターンにおいて、N4595(エッチングなし)のn型膜よりも2~3桁低かった。また、デバイスN4633(加工済み、エッチングなし)のp型層の電流は、p型膜であるN4492(未加工)と比較して約1桁未満小さい。デバイスN4633のp型コンタクトを通る電流のこの減少は、導電性の悪いn型コンタクトを最適化するために必要なp型コンタクト層の最適温度よりも高いアニール温度に起因する。今後の研究では、n型コンタクトの後にp型コンタクトの順で個別のアニールを行う予定であるが、マスク金属の被覆率に基づく最適温度が複雑であるため、今回の初期研究では追求しなかった(「方法」のセクションを参照)。
【0157】
それにもかかわらず、順方向ダイオードの応答は、製造されたデバイスの前述のコンタクト問題による高い直列抵抗を除けば、ほぼ理想的であった。図7Aおよび図7Bは、N4633であるAlNのPINダイオードの線形およびセミログ電流密度-電圧(JV)特性を示している。線形およびセミログプロットにおけるターンオン電圧は約6Vであり、これは6.1eVのAlN半導体の期待値と一致している。明らかに6桁の整流が示されている一方で、低いブレークダウン電圧および非常に高い直列抵抗も、セミログプロットの高い電流密度が尾を引いていることおよび線形プロットのターンオンがなだらかであることによって明らかである。この試料の電流密度は、デバイスの製造プロセスを最適化し、これまでに加工された膜と一致させることで、さらに3~4桁向上させることができる。それでもなお、小さな逆方向電流から大きな順方向電流への掃引は、この史上初のAlNホモ接合ダイオードにおいて6桁の整流を示しており、成長および製造条件を最適化することにより、さらに高性能な高出力かつ高エネルギーのデバイスを実現するためにさらに改善される可能性がある。
【0158】
実施例6-AlN:Be膜の深さとSIMS濃度との比較
【0159】
図8Aは、BeのSIMS濃度を試料深さに対してプロットしたものである。AlN膜では、不規則なBeプロファイルが観察された。Beは、エピタキシャル成長中に配置された場所から拡散することが知られている小さな原子であり、しばしばドーピングプロファイルを汚してしまう。しかしながら、本明細書で開示するように、本発明の低い基板温度は、Beドーパントの正確かつ恒久的な配置を可能にし、III族窒化物半導体のデバイスBeドーパントプロファイリングを初めて実用化した。図8Bは、セル温度に対するBeドーピングの指数関数的依存性を示す対数スケール上の直線Beドーピングプロファイルを示しており、これは、噴出セルが依然としてクヌーセン限界にあること、すなわち、蒸発したBeフラックスと取り込まれたBeドーパントとの間に直線関係があることを示している。
【0160】
実施例7-高ドープのAlN:Be層およびAlN:Si層を有するデバイスの例
【0161】
いくつかの例において、本明細書に開示した方法を用いて、ドーパントの異なるAlN膜を層状に成長させることができる。図9は、これらの膜の層概略図および対応する代表的なRHEEDパターンを示し、このような過度に低い成長温度でも結晶材料が確認される。HVPE処理済みのAlNテンプレート(MSES社製)の洗浄およびアウトガスの後、まず、HVPE処理済みのAlNテンプレートの上の上で、基板温度800℃で、Beの強力な補償欠陥である酸素等の表面汚染物質を埋め込むように成長処理を行い、ドープなし300nmのAlNバッファ層を得た。Alは酸素を取り込むことがよく知られており、再成長AlN膜には数百ナノメートルまでの酸素の拡散があると推定される。バッファ層は、そうでなければAlN:Be膜を補償しうる高濃度の酸素を制限することを意図したものである。通常はGaN用の最適化されたp型MME成長条件で成長処理を行い、上部100nmのAlN:Beを得た。低い基板と長いシャッター閉時間により、Beの成長方向への縦型表面拡散が制限される一方、金属を豊富に含有するIII/V比1.3により、わずかにファセット化された表面を示すわずかに斑点のあるRHEEDをターゲットとする滑らかな表面形態が可能になった。最上層にはBeをドープした。RHEED画像の経時変化と成長後の原子間力顕微鏡(AFM)から、MME成長AlNは、膜厚が厚くなるにつれて、すべての成長法によるすべてのp型III族窒化物に共通するわずかに粗い(約2~3nmの二乗平均平方根(RMS)粗さの膜に対し、テンプレートは約1.9nmのRMS粗さ)形態と、中間相領域でMBE成長した際に共通する表面ピッティングが発生することが示唆された。さらに、最も高ドープの膜では、濃度が溶解度限界よりも実質的に高いため、分離されたBeである可能性のある表面特徴が追加されている。興味深いことに、ピット密度がドープしていない膜の方が著しく高く、Be濃度が高くなるにつれて減少していることは、Beに何らかの有利な界面活性効果があるかもしれないということを示唆している。次に、これらの膜に電子ビーム蒸着法でコンタクトを蒸着した。当業者であれば、電気的および光学的特性を制御するのに有用な、種々の離散的および連続的な可変ドーピング濃度を含むデバイスが可能であることが理解されよう。
【0162】
AlN:Be試料のホール測定は、Lake Shore Cryotronics社のM91FastHallコントローラで行った。このシステムは1GΩまでの試料抵抗を測定することができる。AlN:Be膜の接触抵抗はメガオームの範囲にあり、Lake Shore社のホール測定ツールの測定能力の範囲内であった。しかしながら、ドープなしAlN膜であるN4436のホール測定は、接触抵抗が非常に高いため実施できなかった。基板温度600℃および700℃で成長させたAlN:Be膜のホール測定を表4に示す。これらの測定は、対称係数96~99.9%、ホール電圧のS/N比100~900と、すべての測定で信頼できる範囲にあった。導電タイプは、熱線プローブ測定によっても確認できた。非意図的にドープされた試料N4436の熱線プローブ測定は測定不能であった(電圧プローブが絶縁体上に浮いたときのように電圧がドリフトした)。表4に示す5×1016~7×1018cm-3のBeドーピング範囲において600℃で成長させたAlN:Be膜は、正孔濃度が2.3×1015~7.6×1017cm-3の範囲であり信頼性の高い結果を示した。これらの結果を図10にプロットした。この図から抽出されたBeの活性化効率は、600℃でMME成長させたAlN:Be膜において≒5%であった。
【0163】
実施例8-高ドープのAlN:BeデバイスおよびAlN:Siデバイスの活性化エネルギー測定
【0164】
N4472のAlN:Be試料の導電型および実験的活性化エネルギー測定の独立した確認をLake Shore Cryotronics社で行った。この試料を選択した理由は、より低ドープの試料のN4434と比較して、正孔濃度が低く、有意な補償が示唆されたためである。この試料の高温DCおよびFastHallホール測定を325~475Kの温度範囲で行い、図11に示した。すべての測定でp型伝導性が示され、p=1×1017-(0.037/kT)の曲線に適合する結果となった。この試料では、SIMS濃度が2×1018cm-3であることから、補償率は≒95%であると思われる。このことは、ほぼ同じドーピングで複数の異なる正孔濃度が測定された図10に示されるように、実行ごとのばらつきの原因と思われるものに対する洞察を与えてくれる。格子間サイト上に配置されたBeの自己補償だけでなく、適用した成長温度が低いことによる欠陥トラップや、酸素のような不純物による補償も、得られる正孔濃度に重要な役割を果たしている可能性がある。
【0165】
実施例9-AlN:Be膜の成長反応機構
【0166】
AlN:Be膜の成長反応機構は、表5に示すように、Beドーパント濃度0(試料番号=N4436)、2×1017(N4434)、7×1018(N4435)、および1×1020cm-3(N4433)の範囲で膜を成長させて測定した。膜は、HVPE処理済みのAlNテンプレート(MSES社製)上で成長させた。Pt/Pd/Au(10nm/10nm/100nm)のファン・デル・ポーのコンタクトは電子ビーム蒸着法で成膜した。アニール前の試料はすべて、市場の最新ホール効果測定(HEM)装置であるLake Shore社のM91FastHallシステムのノイズフロアにおいて+/-10ボルトの電流で非オーミック挙動を示した。次に、試料を、流速400sccmの窒素雰囲気下700℃で10分間アニールした。アニール後、N4433およびN4436は依然として非オーミック挙動および微弱電流を示した。しかしながら、N4434およびN4435は極めてオーミックな挙動を示し、電流はアニール前より40~50高くなった。
【表5】
【0167】
Keithley社の高インピーダンス電位計6517Aで試料の熱線プローブ測定を行ったところ、N4433およびN4436はn型、N4434およびN4435はp型の挙動を示した。N4433およびN4436の4点抵抗率およびホール測定は、コンタクト不良のため実施できなかった。N4434とN4435との両方の抵抗率およびホール測定は、結果の信頼性を高め、統計的に検証するために100回繰り返し測定した。コンタクトのRC時定数に対応するため、数時間という長めの測定時間を採用した。
【0168】
熱線プローブによるp型伝導の結果を検証するため、ホール測定では、正孔濃度がそれぞれ4.65×1016および1.4×1017cm-3であるN4434とN4435との両方で、100回の繰り返し測定すべてにおいてp型伝導を示した。ホール測定中の電流はホール電圧の測定とは異なるコンタクトに流れるため、また、コンタクトには整流がなくNIST標準に従って極性を反転させた反復試行で対称であったため、ホール測定結果はそれぞれ+/-2×1014および4×1014cm-3の精度であることに留意されたい。N4434およびN4435の4点抵抗率は、それぞれ12.2mΩ-cmおよび6.5mΩ-cmの抵抗値を示したが、N4434およびN4435はそれぞれ約15MΩおよび6MΩという線形的だが非常に高い接触抵抗を示したため、実際の値の過小評価である可能性がある。測定値のホール電圧レベルをLake Shore社のスタッフに確認したところ、測定値のホール電圧レベルはノイズレベルをはるかに超えており、S/Nレベルはそれぞれ203および316であったことが分かった。
【0169】
周辺領域(薄膜をバルク材料から区別するための分数ピーク高さでの全幅)の対称および非対称X線回折ロッキングカーブは、再成長膜が下地テンプレートの結晶品質に密接に一致することを示した。さらに、AlNの(002)対称性はBe濃度に依存してわずかに低下するが、(105)と(102)非対称性はBe濃度に依存してわずかに改善していることが分かっており、欠陥構造の緩やかな変化はまだ解明されていないことが示唆されている。
【0170】
実施例10-欠陥密度低減のための金属洗浄
【0171】
図12A図12Fは、基板が「Alフラッシング」と呼ばれる手順を経ない場合に形成される余分な(基板に既に存在する以上の)欠陥を示す透過型電子顕微鏡断面画像である。Alフラッシングは、表面をAl金属で溢れさせることで、頑固な表面酸化物を除去し、欠陥を追加することなく基板結晶を複製することを可能にする。ここで示されるように、Alフラッシングを用いると、積層欠陥および刃状転位が実質的に減少または除去される。また、螺旋転位の増加もない。図12Aおよび図12Cは、MME成長AlNのすべての欠陥(刃状、螺旋、および積層欠陥)を強調したものであり、一方、図12Bおよび図12Dは、欠陥密度を劇的に減少させる金属アルミニウム洗浄を示している。
【0172】
本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、その適用において、本明細書に記載され図面に示された構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。むしろ、本明細書および図面は、想定される実施形態の例を提供するものである。本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、さらに他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施および実施されることが可能である。また、本明細書で採用される表現および用語は、説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0173】
したがって、当業者であれば、本出願および特許請求の範囲の基礎となる着想は、本出願に提示された実施形態および特許請求の範囲のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、およびシステムの設計の基礎として容易に利用できることが理解できるであろう。したがって、特許請求の範囲は、このような同等の構成を含むものとみなされることが重要である。
【0174】
さらに、要約書の目的は、米国特許商標庁および特に特許や法律の用語や表現に精通していない当業者を含む一般公衆が、一読するだけで本出願の技術開示の内容および要旨を迅速に把握できるようにすることにある。要約書は、本出願の特許請求の範囲を定義するものではなく、また、特許請求の範囲をいかようにも限定するものでない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
【国際調査報告】