(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】特に自動車の排ガスターボチャージャのためのタービン、及び内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
F02B39/00 F
F02B39/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541624
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2023050712
(87)【国際公開番号】W WO2023135241
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】102022000150.0
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・ブリンケルト
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA16
3G005FA05
3G005FA43
3G005FA52
3G005GA02
3G005GB86
3G005GC07
(57)【要約】
本発明は、排ガスターボチャージャのためのタービン(10)に関し、このタービン(10)は、少なくとも部分領域で互いに流体的に分離され且つ内燃機関の排ガスが貫流可能な少なくとも2つのチャネル(14、16)を有するタービンハウジング(12)と、タービンハウジング(12)に収容され且つ排ガスにより駆動可能なタービンホイール(24)と、タービンホイール(24)が排ガスの少なくとも一部によって迂回される少なくとも1つの迂回通路(32)と、チャネル(14、16)を互いに流体的に接続可能である少なくとも1つの貫流開口部(34)と、迂回通路(32)及び貫流開口部(34)を閉止する閉止位置と迂回通路(32)及び前記貫流開口部(34)をそれぞれ少なくとも部分領域で解放する少なくとも1つの開放位置との間で位置調節可能である少なくとも1つのバルブ部材(36)とを有し、バルブ部材(36)は、バルブ部材(36)を貫通し且つ排ガスが貫流可能な少なくとも1つの流動通路(44)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスターボチャージャのためのタービン(10)であって、少なくとも2つのチャネル(14、16)を有するタービンハウジング(12)を有し、前記チャネル(14、16)は少なくとも部分領域で互いに流体的に分離され且つ内燃機関の排ガスが貫流可能とされるものであり、前記タービンハウジング(12)に収容され且つ前記排ガスにより駆動可能なタービンホイール(24)を有し、前記排ガスの少なくとも一部によって前記タービンホイール(24)が迂回され得る少なくとも1つの迂回通路(32)を有し、前記チャネル(14、16)を互いに流体的に接続可能である少なくとも1つの貫流開口部(34)を有し、及び、少なくとも1つのバルブ部材(36)を有し、前記バルブ部材(36)は前記迂回通路(32)及び前記貫流開口部(34)を閉止する閉止位置と前記迂回通路(32)及び前記貫流開口部(34)をそれぞれ少なくとも部分領域で解放する少なくとも1つの開放位置との間で位置調節可能とされるものであり、前記バルブ部材(36)は、前記バルブ部材(36)を貫通し且つ前記排ガスが貫流可能な少なくとも1つの流動通路(44)を有する、前記タービン(10)において、
-前記流動通路(44)は、アーチ状に延びる少なくとも1つの長さ領域を有し、及び/又は、
-前記流動通路(44)は、互いに斜めに、又は垂直に延びる少なくとも2つの長さ領域を有し、及び/又は、
-前記流動通路(44)は、少なくとも部分領域でS字型又はZ字型に延びることを特徴とする、前記タービン(10)。
【請求項2】
前記チャネル(14、16)は、前記バルブ部材(36)が前記開放位置にあるとき前記流動通路(44)を介して互いに流体的に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のタービン(10)。
【請求項3】
前記閉止位置では、前記流動通路(44)によって生じる前記チャネル(14、16)の間の流体接続が阻止されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタービン(10)。
【請求項4】
前記流動通路(44)は、前記閉止位置では前記タービンハウジング(12)の壁領域によって流体的に遮断されることを特徴とする、請求項3に記載のタービン(10)。
【請求項5】
前記閉止位置では、前記貫流開口部(34)が前記バルブ部材(36)によって完全に閉止されることを特徴とする、請求項1から4のうちいずれか一項に記載のタービン(10)。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載のタービン(10)を有する少なくとも1つの排ガスターボチャージャを有する、自動車のための内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、特に自動車の排ガスターボチャージャのためのタービンに関する。更に、本発明は自動車のための内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車の排ガスターボチャージャのためのこのようなタービンは、たとえば特許文献1から、すでに公知であることを読み取ることができる。このタービンは、少なくとも部分領域で互いに流体的に分離された、内燃機関の排ガスにより貫流可能な少なくとも2つのチャネルを有するタービンハウジングを有している。更に、特許文献2は、排ガスターボチャージャのためのタービンを開示している。更に、特許文献3より排ガスターボチャージャが公知である。更に、特許文献4は、ターボチャージャのためのタービンを開示している。
【特許文献1】DE102013002894B4
【特許文献2】DE102016208163A1
【特許文献3】DE112015005540B4
【特許文献4】DE102016208160A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、排ガスターボチャージャのためのタービン、及び少なくとも1つのそのようなタービンを有する内燃機関を提供することであり、それによって特別に有利なチャネル接続を具体化できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴を有するタービン、並びに請求項6の特徴を有する内燃機関によって解決される。本発明の好適な発展形態を含む有利な実施形態は、その他の請求項に記載されている。
【0005】
本発明の第1の態様は、特に自動車の排ガスターボチャージャのためのタービンに関する。このことは、好ましくは動力車として、特に乗用車として、構成される単に車両とも呼ぶ自動車が、完全に製造された状態にあるときに、タービンを有する排ガスターボチャージャを有することを意味する。特に自動車は、完全に製造された状態にあるとき内燃機関を有し、それはたとえば往復動機関で構成され、エンジン又は内燃エンジンとも呼ばれ、これによって自動車を駆動可能である。内燃機関の燃焼動作中、内燃機関では燃焼プロセスが進行する。そのつどの燃焼プロセスの際に、単に混合気とも呼ぶそのつどの燃料・空気混合気が燃焼され、そこから内燃機関の排ガスが生じる。以下においてまた詳しく説明するとおり、タービンは排ガスによって駆動可能である。このとき混合気は、空気と、特に液体状の燃料とを少なくとも含む。特に燃料はガソリンであり、すなわちガソリン燃料である。このように、内燃機関はガソリンエンジンとして構成されるのが好ましい。タービンは、少なくとも部分領域で流体的に互いに分離された少なくとも2つ又はちょうど2つのチャネルを有するタービンハウジングを有する。それぞれのチャネルは排ガスによって貫流可能である。更に、タービンは、タービンハウジングで特に回転可能に収容されるタービンホイールを有する。タービンホイールは排ガスによって駆動可能であり、そのようにして、たとえばタービンハウジングに対して相対的に回転軸を中心として回転可能である。特にそれぞれのチャネルは、たとえばタービンホイールの円周方向でその円周にわたって少なくとも実質的に螺旋状に延びる、それぞれの螺旋通路として構成されていてよい。特にタービンホイールは、収容領域とも呼ぶ、タービンハウジングの収容スペースに収容される。このとき、たとえばそれぞれのチャネルは収容領域に連通し、それにより、それぞれのチャネルを貫流する排ガスをそれぞれのチャネルから収容領域の中へ、及びそれに伴ってタービンホイールへ案内可能である。このように、それぞれのチャネルを貫流する排ガスは、それぞれのチャネルから流出して収容領域に流入し、その後にタービンホイールに流れ当たり、それによってタービンホイールを駆動する。
【0006】
タービン、特にタービンハウジングは、少なくとも1つ又はちょうど1つの迂回通路を有し、これを介して少なくとも排ガスの一部はタービンホイールを迂回することができる。特に、迂回通路は少なくとも部分的にタービンハウジングの内部に延びており、及び/又は迂回通路は少なくとも部分的にタービンハウジングによって直接画成される。排ガスの少なくとも一部が迂回通路を介してタービンホイールを迂回できるという構成要件は、迂回通路を貫流する排ガスがタービンホイールを迂回し、すなわち、タービンホイールを駆動しないことであると理解される。迂回通路は、ウェイストゲート、ウェイストゲート通路、バイパス、又はバイパス通路とも呼ばれる。
【0007】
タービン、特にタービンハウジングは、少なくとも1つ又はちょうど1つの貫流開口部を更に有し、これを介してチャネルを互いに流体的に接続可能である。特に、貫流開口部はタービンハウジングによって、特に直接的に画成されていてよい。特に貫流開口部は、迂回通路とは異なる、迂回通路とは別個の、ないしは迂回通路に追加して設けられる貫流開口部であり、これを介してチャネルを互いに流体的に接続することができる。迂回通路は、通常、排ガスターボチャージャにより提供されるチャージ圧力を調整するために、特に制御するために利用される。
【0008】
タービンは、閉止位置と少なくとも1つの開放位置との間で、特にタービンハウジングに対して相対的に位置調節可能である、すなわち移動可能である少なくとも1つのバルブ部材を更に有する。閉止位置では、弁体とも呼ぶバルブ部材によって、迂回通路と貫流開口部が特にそれぞれ完全に閉止され、すなわち流体的に遮断される。このように、閉止位置では排ガスが迂回通路を通って流れないのが好ましく、かつ、閉止位置では排ガスが貫流開口部を通って流れないのが好ましく、それにより、たとえば閉止位置では、貫流開口部によって生じるチャネルの間の流体接続が阻止され、すなわち閉止されている。きわめて特別に、閉止位置ではチャネルが、特に完全に、互いに流体的に分離されることが意図される。開放位置では、バルブ部材が迂回通路と貫流開口部を両方ともそれぞれ少なくとも部分領域で、特に同時に解放し、それにより、開放位置では排ガスが迂回通路に流入して、迂回通路を貫流することができる。更に、開放位置では排ガスは貫流開口部を貫流することができ、そのようにして、たとえばチャネルのうちの一方から貫流開口部を介してそれぞれ他方のチャネルへ流れる、すなわち移行することができる。
【0009】
閉止位置で貫流開口部がバルブ部材により流体的に閉止されることによって、すなわち流体的に遮断されることによって、チャネルが互いに流体的に分離されているとき、内燃機関の過給のために、すなわち圧縮された空気を内燃機関へ供給するために、いわゆる動圧過給を行うことができる。貫流開口部が解放されることで、すなわちチャネルが貫流開口部を介して互いに接続されることで、内燃機関の過給のために、いわゆる静圧過給を具体化することができる。
【0010】
バルブ部材は一体的に構成されるのが好ましく、すなわち一体的な躯体である。換言すると、好ましくは、バルブ部材は互いに別個に構成されて互いに結合される複数のコンポーネントが組み合わされるのではなく、好ましくは、バルブ部材は統一的な、すなわち一体的な、それに伴って統一的ないし一体的に製作されるモノブロックとして構成される躯体である。きわめて好ましくは、バルブ部材は閉止位置から開放位置へと位置調節されたとき、迂回通路と貫流開口部を両方とも同時にそれぞれ少なくとも部分領域で解放することが意図される。
【0011】
タービンのチャネルを特別に有利に流体的に接続し、そのようにして特別に有利なチャネル接続を具体化できるようにするために、本発明によると、バルブ部材は、バルブ部材を特に完全に貫通し、そのようにして特にバルブ部材の内部に延び、排ガスによって貫流可能な少なくとも1つ又はちょうど1つの流動通路を有することが意図され、そのようにしてこの流動通路は、たとえばその円周方向に沿って完全に周回するように、特に貫流通路を貫流する排ガスの流動方向に延びる延在範囲全体にわたって、バルブ部材(弁体)によって完全に画成されている。流動通路は、たとえば開放位置において貫流開口部の一部だけを解放するのに加え、チャネルを流体的に接続するためなどに利用することができる。すなわち、特に、たとえば開放位置においてバルブ部材自体は貫流開口部の第1の部分領域を解放し、第1の部分領域に特に隣接する貫流開口部の第2の部分領域の中にまだ突出しており、すなわち第2の部分領域に配置されている場合は、チャネルを流体的に互いに接続するために流動通路を利用することができる。その場合、たとえば流動通路は第2の部分領域の一部に位置し、又は排ガスは、解放された第1の部分領域及び流動通路を貫流し、それに伴って第2の部分領域の一部を貫流することができ、それにより、たとえば排ガスの大きな容積流及び/又は質量流は、チャネルのうちの一方からそれぞれ他方のチャネルへと移行することができる。
【0012】
たとえば流動通路は少なくとも1つ又はちょうど1つのボアによって形成され、それによって流動通路を特別に低コストで具体化できる。たとえばタービンは少なくとも2チャネル型の、又はちょうど2チャネル型のセグメントタービンであり、それによって特別に有利な、ないしは効率的な動作を具体化できる。このとき本発明は、従来技術からすでに知られているチャネル接続を前提としており、このチャネル接続は、特に、バルブ部材の閉止位置への運動により貫流開口部を特に完全に流体的に遮断し、それにより閉止できることによって可変であり、このとき貫流開口部は、開放位置へのバルブ部材の運動によって少なくとも部分領域で解放することができる。特に、バルブ部材は、閉止位置に、及び少なくとも1つの上述した開放位置に、並びに少なくとも1つ又は複数の別の開放位置に位置調節可能である、すなわち移動可能であることが考えられ、このとき、それぞれ別の開放位置では貫流開口部がそれぞれ少なくとも部分領域で解放されている。特に、それぞれの開放位置において、排ガスの各容積流及び/又は質量流は、貫流開口部を通過して流れることができ、このとき容積流及び/又は質量流はこれらの開放位置において互いに異なっている。それにより、特別に必要に即した、すなわち可変の、チャネル接続とも呼ぶチャネルの接続を具体化することができる。このときバルブ部材には二重機能が与えられる。一方で、バルブ部材は貫流を選択的に閉止又は開放するために、チャネル接続弁として利用される。他方で、バルブ部材は迂回通路を選択的に解放又は閉止するために、ウェイストゲートバルブ又はバイパス弁として利用される。このときバルブ部材は、特にそれぞれの開放位置において、タービンホイールバイパスの第1の有効面と、チャネル接続の第2の有効面とを同時に定義する。排ガスは第1の有効面を貫流し、これを介して迂回通路に流入することができる。また排ガスは第2の有効面を貫流し、それにより一方のチャネルから他方のチャネルへと移行することができる。タービンホイールバイパスとは、排ガスの少なくとも一部がタービンホイールを迂回することであると理解される。換言すると、たとえば特に開放位置では、第1の有効面と第2の有効面とがそれぞれ少なくとも部分的にバルブ部材によって、特にバルブ部材の外側円周側の外套面によって直接的に画成されており、このとき第1の有効面を貫流する排ガスがタービンホイールを迂回し、第2の有効面を貫流する排ガスは一方のチャネルから他方のチャネルへと移行する。それにより一方では、たとえば負荷飛躍が生じたときや、内燃機関の過渡的挙動に関する高い要件があるときに、動圧過給を具体化することができる。他方では定格出力のときにも、比較的良好な効率でタービンを作動させることができる。バルブ部材の1つの特徴は、その面積比率又は1つの面積比率であり得る。すなわちこれは、第2の有効面に対する第1の有効面の、又はこの逆の比率である。このとき、バルブ部材の特に外側円周側の輪郭は、上記の各面を、及びそれに伴って面積比率を、及びその結果として生じる排ガスの質量流比率をそれぞれの開放位置に依存して、及びそれに伴って特にバルブ部材の開放角に依存して定義することができる。質量流比率とは、排ガスの第2の質量流に対する第1の質量流の比率であると理解され、たとえば第1の質量流は第1の面を貫流するか、タービンホイールを迂回し、第2の質量流は貫流開口部を貫流するか、一方のチャネルから他方のチャネルへと移行する。
【0013】
しかし従来の方式では、エンジンの視点から望ましい任意のあらゆるチャネル接続特性を幾何学的に生起することはできない。従来の解決法と比べて、本発明は、特にそれぞれの開放位置における質量流比率の改善された、特に必要に即した適合化又は調整を可能にする。特に本発明は、特にそれぞれの開放位置における質量流比率の適合化という観点から可能性を拡張し、幾何学的な間隙面だけが変更されるのではなく、有効流動面が変更される。そのために、本発明によると、貫流通路とも呼ぶ流動通路がバルブ部材の中に形成されている。流動通路は、たとえばバルブ部材の開放角が小さいときでも、すなわち、バルブ部材がごく僅かしか開いておらず、その際、バルブ部材は迂回通路と貫流通路の両方を特に同時に解放するが、貫流開口部はごく僅かしか解放されない場合でも、これを可能にする。たとえばこのことは、上に挙げた第1の部分領域は解放されるのに対して、バルブ部材自体がたとえばまだ第2の部分領域に配置されていて、たとえば解放された第1の部分領域と流動通路の両方を排ガスが貫流できるような形で可能である。それにより、僅少な開放角にもかかわらず、又はバルブ部材の僅少な開放にもかかわらず、強力な、ないしは広範なチャネル接続を具体化することができる。換言すると、特に僅少な開放角にもかかわらず、あるいはバルブ部材の僅少な開放角のときでも、チャネルのうちの一方からそれぞれ他方のチャネルへと移行できる大きな容積流及び/又は質量流を具体化することができる。このようにバルブ部材のキネマティクスに基づき、僅少な開放角のときでも比較的少ないチャネル接続質量流を生じさせることができ、より大きい開放角のもとではこの質量流が明らかに増加する。それぞれのチャネル接続質量流とは、チャネルのうちの一方からそれぞれ他方のチャネルへと移行する排ガスの、それぞれの質量流であると理解される。
【0014】
流動通路が構成されることで、たとえば第1の部分領域を貫流する排ガスの主接続流を利用して、流動通路を貫流する排ガスの追加の接続質量流をアクティブにすることができる。このように本発明は、所望の、又は要求されるチャネル接続特性を実現することを可能にし、たとえばそれと同時に有利な、特に有利に小型のバルブ部材サイズを具体化する、又は維持することができる。それにより、たとえば弁体の運動ないし位置調節のために意図されるキネマティクスで追加の力を生成することなく、出力利得を実現することができる。特に開放位置と閉止位置の間でのバルブ部材の位置調節ないし運動のために意図されるキネマティクスは、たとえばE調節部材とも呼ぶ電気式の調節部材を含む。電気式の調節部材とは、電気式に作動可能なアクチュエータであり、これを用いて、たとえば電気エネルギーを利用したうえでバルブ部材が閉止位置から開放位置に、及び/又は開放位置から閉止位置に移動可能である。
【0015】
特別に必要に即して、かつ好ましく、排ガスが流動通路を通過できるようにするため、流動通路は、特に少なくとも1つ又はちょうど1つの仮想平面において、アーチ状に延びる少なくとも1つの長さ領域を有することが意図される。
【0016】
その代替又は追加として、流動通路は、特に少なくとも1つ又はちょうど1つの仮想平面において互いに斜め又は垂直に延びる少なくとも2つの長さ領域を有することが意図され、それにより、排ガスは、特別に有利に流動通路を通って、したがってバルブ部材を通って案内されることができる。
【0017】
その代替又は追加として、流動通路は、少なくとも部分領域で、特に少なくとも1つ又はちょうど1つの仮想平面において、S字型又はZ字型の形状に延びることが意図される。それにより、排ガスが流動通路に流入して流動通路から流出するそれぞれの個所を特別に有利に配置することができ、それにより、特別に有利な排ガスの案内を具体化することができる。
【0018】
このように、バルブ部材の開放位置においてチャネルが流動通路を介して互いに流体的に接続される場合は、特別に有利であることが示された。換言すると、好ましいことに、流動通路は、開放位置においてチャネルが流動通路を介して互いに流体的に接続されるように配置され、又はそのように構成されるように意図されている。更に別の言葉で表現すると、開放位置において排ガスはチャネルのうちの一方から流動通路へ流入し、その後に流動通路を貫流し、流動通路を介して他方のチャネルへ流れ込み、それにより流動通路は、特に、開放位置において排ガスをチャネルのうちの一方からそれぞれ他方のチャネルへと案内するために構成されている。それにより、特別に好ましい動作を具体化することができる。なぜなら、開放角が僅かであっても、すなわちバルブ部材の開口が僅少であっても、チャネルを有利に強力に互いに流体的に接続することができるからである。
【0019】
閉止位置において、流動通路によって生じるチャネルの間の流体接続が阻止される場合は、更に特別に有利であることが示された。換言すると、好ましくは、閉止位置では、貫流開口部がバルブ部材によって特に完全に閉止されており、また閉止位置では、流動通路を介してもチャネルが互いに流体的に接続されないように意図されている。このように、閉止位置ではチャネルの厳格な分離を具体化することができ、それにより、特別に必要に即してチャネルの流体的な接続と、チャネルの流体的な分離との間で切換えを行うことができる。
【0020】
別の実施形態は、閉止位置のとき流動通路がタービンハウジングの壁領域によって流体的に遮断されることを特徴とする。それにより、閉止位置においては排ガスがチャネルのうちの一方からそれぞれ他方のチャネルへと移行できないことを特別に簡易な方式で保証することができ、それにより、特別に必要に即して、かつ選択的にチャネルを互いに流体的に分離又は互いに接続することができる。
【0021】
本発明の特別に有利な実施形態では、閉止位置では貫流開口部がバルブ部材によって完全に閉止されることが意図される。それにより、チャネル接続、すなわちチャネルの流体的な相互の接続と、チャネル分離、すなわちチャネルが特に完全に互いに流体的に分離された状態との間で、定義されたとおりに特別に正確に切換えを行うことができる。それにより、特別に有利な動作を具体化することができる。
【0022】
本発明の第2の態様は、単に内燃機関又はエンジンとも呼ぶ、たとえば往復動機関で構成される、自動車のための内燃機関に関する。内燃機関は、本発明の第1の態様に基づくタービンを有する、少なくとも1つの排ガスターボチャージャを有する。本発明の第1の様態の利点及び有利な構成は、本発明の第2の様態の利点及び有利な構成と見なすことができ、またそれとは逆に、本発明の第2の様態の利点及び有利な構成は、本発明の第1の様態の利点及び有利な構成と見なすことができる。
【0023】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細は、好適な実施例並びに図面に基づく以下の説明より明らかになる。上記の説明において挙げた特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下の各図に関する説明において挙げられる特徴及び特徴の組み合わせ、並びに/又は各図においてのみ示される特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ提示した組み合わせにおいてのみ使用されるのではなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組み合わせで使用することもできるし、単独で使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】内燃機関の排ガスターボチャージャのためのタービンの模式的な斜視図を部分的に示す。
【
図2】タービンの別の模式的な斜視図を部分的に示す。
【
図3】タービンの別の模式的な斜視図を部分的に示す。
【
図4】タービンのバルブ部材の第1の実施形態の模式的な斜視図を示す。
【
図5】バルブ部材の第2の実施形態の模式的な斜視図を示す
【発明を実施するための形態】
【0025】
各図において、同一の又は機能が同一の要素には同じ参照符号を付している。
【0026】
図1及び2は、内燃機関の排ガスターボチャージャのためのタービン10を、模式的な斜視図としてそれぞれ部分的に示している。内燃機関はたとえば往復動機関として構成され、複数の燃焼室を有する。例示として、この内燃機関は少なくとも4つ又はちょうど4つの燃焼室を有している。それぞれの燃焼室は、それぞれのシリンダによって部分的に区切られる。それぞれのシリンダの中で、それぞれのピストンが並進運動可能に収容されており、それぞれの燃焼室は部分的にそれぞれのシリンダによって、及び部分的にそれぞれのシリンダの中で並進運動可能に収容されたピストンによって画成されている。内燃機関の燃焼動作中、燃焼室の中で燃焼プロセスが行われる。それぞれの燃焼プロセスでは、単に混合気とも呼ぶ燃料・空気混合気が燃焼される。それぞれの混合気は、空気及び特に液体燃料を少なくとも含んでいる。内燃機関はガソリンエンジンであるのが好ましい。それぞれの燃焼プロセスの結果として、内燃機関の排ガスが生じる。排ガスはそれぞれの燃焼室から流出し、内燃機関の排ガス設備に流入して、排ガス設備を貫流することができる。ここでは排ガスターボチャージャのタービン10は、排気管とも呼ぶ排ガス設備に配置されている。
【0027】
排ガスターボチャージャは、内燃機関の、吸入管とも呼ぶ吸気管に配置された圧縮機を有している。このとき上で述べた空気が吸気管を貫流することができ、吸気管によって燃焼室に向けて、及びその中へ案内される。圧縮機によって、吸気管を貫流する空気を圧縮することができる。
【0028】
図1及び2から明らかなとおり、タービン10は、ちょうど2つのチャネル14及び16を有するタービンハウジング12を有しており、チャネル14及び16は互いに流体的に分離されており、排ガスによって貫流可能である。
図1及び2に示す実施例では、タービン10は2チャネル型のセグメントタービンとして構成されている。このことは、それぞれのチャネル14、16がそれぞれの流出開口部18、20を有し、それぞれの流出開口部18、20を介してタービンハウジング12の収容領域22に連通することであると理解され、流出開口部18及び20はタービン10の円周方向で連続するように、すなわち相前後して配置されている。更にタービン10は、収容領域22内、及びそれに伴ってタービンハウジング12内に収容されている、そこで回転軸を中心としてタービンハウジング12に対して相対的に回転可能であるタービンホイール24を有している。上に述べたタービン10の円周方向は上記の回転軸を中心として延びており、それにより流出開口部18及び20は、タービンホイール24の円周方向にその円周にわたって見て連続するように配置される。ここではそれぞれのチャネル14、16は、螺旋通路として構成されている。チャネル14及び16は、タービンハウジング12の分離壁26によって互いに流体的に分離されている。
図1では、矢印28により、本例ではチャネル14を通過する排ガスの第1の流動が明示されている。矢印30により、タービンハウジング12を通過する排ガスの第2の流動が明示されており、第2の流動については以下でまた詳しく説明する。
【0029】
タービン10、特にタービンハウジング12は、矢印32によって明示されている迂回通路を有しており、これを介して排ガスの少なくとも一部はタービンホイール24を迂回可能である。矢印32によって明らかなとおり、迂回通路を貫流する排ガスはタービンホイール24を迂回し、したがってタービンホイール24を駆動しない。それぞれのチャネル14、16を通過して流れ、それぞれのチャネル14、16によって収容領域22へと案内される排ガスがタービンホイール24に当たり、それによってタービンホイール24を駆動することにより、タービンホイール24はその回転軸を中心としてタービンハウジング12に対して相対的に回転する。このとき圧縮機は吸気管に配置された圧縮機ホイールを有し、この圧縮機ホイールは、特にシャフトを介してタービンホイール24により駆動可能である。圧縮機ホイールが駆動されることで、圧縮機ホイールにより、吸気管を貫流する空気を圧縮することができる。
【0030】
タービン10、特にタービンハウジング12は、本例では、分離壁26に形成されたちょうど1つの貫流開口部34を有している。以下においてまた詳しく説明するように、チャネル14及び16は貫流開口部34によって、特にちょうど1つの個所で、互いに流体的に接続可能である。
【0031】
タービン10は、弁体とも呼ぶ、
図1に部分的に見ることができるバルブ部材36を有している。バルブ部材36は、タービンハウジング12に対して相対的に、迂回通路及び貫流開口部34を特にそれぞれ完全に閉止する閉止位置と、迂回通路及び貫流開口部34をそれぞれ少なくとも部分領域で解放する、
図1及び2に明示されている少なくとも1つの開放位置との間で位置調節可能である。矢印28と32を参照し、さらに矢印38を参照すると、排ガスは、たとえばまずチャネル14を通って流れることが明らかとなる。バルブ部材36が開放位置にある場合、たとえばまずチャネル14を貫流する排ガスの第1の部分がチャネル14から流出し、貫流開口部34を通過し、貫流開口部34を介してチャネル16に入り、その後に第1の部分はチャネル16を貫流し、チャネル16により収容領域22の中へ、及びそれに伴ってタービンホイール24へと案内される。まずチャネル14を貫流する排ガスの第2の部分はチャネル14の中にとどまり、チャネル14により収容領域22に向かってその中に入り、それに伴ってタービンホイール24へと案内される。排ガスの第1の部分が矢印38によって明示されており、矢印28は第2の部分を明示している。たとえばまずチャネル14を貫流する排ガスの第3の部分は、バルブ部材36が開放位置にあることによって、チャネル14から特に貫流開口部34を介して迂回通路の中に流れ、その後に迂回通路を貫流し、それに伴ってタービンホイール24を迂回することが矢印32によって明示されている。閉止位置では、バルブ部材36によって貫流開口部34が特に完全に閉止され、それに伴って完全に流体的に遮断され、好ましくは、閉止位置ではバルブ部材36によって迂回通路が完全に閉止され、すなわち完全に流体的に遮断されることが意図される。開放位置では、バルブ部材36は貫流開口部34と迂回通路を両方ともそれぞれ少なくとも部分領域で解放する。
【0032】
このときタービン10は、
図1に別個に模式的に示す、調節部材とも呼ぶアクチュエータ40を有しており、これによって、たとえば閉止位置にあるバルブ部材36を開放位置に、及び/又は開放位置から閉止位置に、タービンハウジング12に対して相対的に移動可能である。たとえばアクチュエータ40は電気式のアクチュエータであり、すなわち電気式に作動可能なアクチュエータであり、そのためアクチュエータ40をE調節部材とも呼ぶ。きわめて好ましくは、バルブ部材36は閉止位置から開放位置に位置調節されたとき、迂回通路と貫流開口部34の両方を同時に、それぞれ少なくとも部分的に解放するように意図される。
【0033】
チャネル接続とも呼ぶ、チャネルの14及び16の特別に有利な流体接続を具体化できるようにするために、バルブ部材36は、
図4及び5を合わせて見ると非常によく分かるように、バルブ部材36を特に完全に貫通し、それに伴ってバルブ部材36の内部に延び、
図4に矢印42で明示するように排ガスが貫流可能な少なくとも1つの、又は
図4及び5で意図されているようにちょうど1つの流動通路44を有しており、この流動通路は、特にバルブ部材36の内部に延びる延在範囲全体にわたって、流動通路44の円周方向に完全に周回するようにバルブ部材36により特に完全に画成されている。
図4に示す矢印42は、流動通路44を通過する排ガスの流動を明示している。このときタービン10は、バルブ部材36が開放位置にあるときにチャネル14及び16が流動通路44を介して互いに流体的に接続されるように構成される。
【0034】
たとえばバルブ部材36は開放位置と閉止位置の間で、特に旋回軸を中心として旋回可能である。このようにバルブ部材36は、たとえば旋回位置とも呼ぶそれぞれ異なる角度位置又は角度姿勢へと旋回することができる。これらの角度位置のうち1つ、特にちょうど1つが閉止位置である。それ以外の、又はそれ以外のすべての旋回位置は開放角とも呼ばれ、バルブ部材36が迂回通路と貫流開口部34の両方を特に同時に解放する開放位置である。特に開放角が僅かな場合、たとえばバルブ部材36は貫流開口部34の第1の部分領域を解放するが、バルブ部材36は、第1の部分領域に特に隣接する貫流開口部34の第2の部分領域の中にまだ突出しているので、バルブ部材36は、開放角が僅かな場合は、まだ第2の部分領域に配置されている。仮に、排ガスにより貫流可能な流動通路44などの流動通路がバルブ部材36になければ、排ガスは、貫流通路34の解放された第1の部分領域を貫流できるだけになり、チャネル14及び16のうちの一方からそれぞれ他方のチャネル16ないし14へと移行するために、第2の部分領域を利用できないことになる。しかし、バルブ部材36は、たとえば流動通路44の第1の端部E1から第2の端部E2まで延びる流動通路44を有している。ここでは例示として、特に開放角が僅かな場合、端部E1は貫流開口部34の第2の部分領域に配置され、それにより排ガスは端部E1及びE2のうちの一方で流動通路44に流入し、端部E1、E2のうちの一方から他方の端部E2、E1へと流れ、そのようにして流動通路44を貫流することができ、その後に流動通路44によってチャネル14及び16のうちの一方からそれぞれ他方のチャネル16ないし14へと案内される。このように排ガスは、解放された第1の部分領域を介してチャネル14及び16のうちの一方からそれぞれ他方のチャネル16ないし14へと流れることができるだけでなく、排ガスは流動通路44を貫流することもでき、そのようにして流動通路44を介して、チャネル14及び16のうちの一方からそれぞれ他方のチャネル16ないし14へと流れることができる。このように流動通路44は、いわば解放された第1の部分領域に追加して設けられる、チャネル14及び16の間の流体接続部であり、それにより、特にバルブ部材36が迂回通路を非常に僅かしか解放していない間、たとえば多くの排ガス質量流がチャネル14と16の間を移行することができる。
【0035】
図4は、バルブ部材36の第1の実施形態を示している。第1の実施形態では、端部E2はバルブ部材36の軸方向の端面46に配置される。
【0036】
通常は、及び排ガスにより流動可能な流動通路44のような流動通路がバルブ部材36にない場合は特に、弁体とも呼ぶバルブ部材36の、特にただ1つの特に外側円周の輪郭が、開放位置で迂回通路を貫流する排ガスの第1の質量流と、開放位置で貫流開口部34を貫流する排ガスの第2の質量流との質量流比率とも呼ぶ比率を定義する。このとき質量流比率は、バルブ部材36のそれぞれの開放角に依存して決まる。しかし従来の方式では、エンジンの視点から望ましい任意のあらゆるチャネル接続特性を幾何学的に、すなわちバルブ部材36の輪郭によって生起することはできない。排ガスターボチャージャのサイズ、アクチュエータ40の仕様、及び触媒装置への流入量に基づき、タービン10及び特にバルブ部材36の多くのパラメータが、特に迂回通路並びにチャネル接続の解放と遮断を考慮して規定される。特にバルブ部材36を位置調節するための開放キネマティクス、外側円周側の形状、及びこれに伴ってバルブ部材36の外側円周側の輪郭の事後的な変化は、必要な保全範囲に直接的に影響を及ぼす。したがってバルブ部材36には、チャネル接続及び特にその特性の定義にあたって、特別な意義が与えられる。
【0037】
エンジンの目標を、エンジンプロセスシミュレーションにおいて、チャネル接続特性の目標曲線へとつなげることができる。単に曲線とも呼ぶこのような目標曲線は、しばしばバルブ部材36の幅広い位置調節範囲を示し、この範囲では、特にチャネル接続面とも呼ぶ貫流開口部34の接続面が増大する。それに対してウェイストゲート面とも呼ぶ第2の面は、排ガスがこの面を介して迂回通路へ流入することができ、バルブ部材36の開放角が大きくなったとき初めて大幅に増加する。たとえばバルブ部材36を調整するための手段が使い尽くされ、バルブ部材36の大型化が全体として無理になった場合、現在の水準では、チャネル接続面をさらに増大させることはもはや実現できない。そのため、それ以外の方式で、かつその際にたとえば追加の構成要件によって、チャネル接続特性を目標曲線に更に近似させることを目標にすることができる。その場合、バルブ部材36が閉止されたとき、すなわち閉止位置にあるとき、追加の構成要件がチャネル接続特性に影響を及ぼすことは排除されるべきである。シミュレーションが示すところでは、バルブ部材36の特に外側円周側の手間のかかる複雑な形状、すなわち輪郭にもかかわらず、流動通路44がなくてもかなり強力な、ないし広範なチャネル接続を具体化することはできるが、場合によっては、それぞれの開放位置においてバルブ部材36により解放される貫流開口部34の部分領域全体をチャネル14及び16の流体接続のために利用することはできないかもしれない。このことは、特に排ガスターボチャージャの設計サイズが小さい場合に、バルブ部材36へと向かう流動案内が最適ではないことに起因する可能性がある。
【0038】
少なくとも1つ又はちょうど1つの流動通路44をバルブ部材36に設けることで、チャネル接続の少なくともほぼ正確な最適化を実現することができる。流動通路44をバルブ部材36に設けることで、チャネル接続のために利用可能な新たな断面が排ガスないしその流動に提供される。というのも、排ガスは、貫流開口部34の解放された第1の部分領域を介してだけでなく、開放位置で解放される流動通路44を介しても、チャネル14及び16のうちの一方からそれぞれ他方のチャネル16ないし14へと移行することができるからである。
【0039】
図4に示す第1の実施形態では、たとえば端部E2は通路の出口であり、この通路からの排出は、たとえば第1の実施形態では分離ウェブの高さで行われる。それにより、バルブ部材36が閉止位置にあるときにチャネル14と16の間の流体接続を排除することができ、このことは特に、閉止位置では端部E2及びこれに伴って流動通路44が閉止されていること、すなわち流体的に遮断されていることによるものであり、特に、たとえば軸方向の端面46及びこれに伴って端部E2が、閉止位置においてタービンハウジング12の対応する壁領域に特に直接当接することによるものである。このようにして、たとえば特に出口全体(端部E2)が壁領域によって閉止される。更に、分離ウェブでの局所的に高い速度又はそれによる低い静圧を利用して、できる限り大きい質量流をアクティブなチャネル14、16からパッシブなチャネル16、14へと案内できることが見いだされた。アクティブなチャネル及びパッシブなチャネルとは、特に次のように理解される。すなわち、少なくとも1つの第1の燃焼室、特に少なくとも2つ又はちょうど2つの第1の燃焼室はチャネル14に割り当てられ、特にチャネル14と流体的に接続され、少なくとも1つの第2の燃焼室、特に少なくとも2つ又はちょうど2つの第2の燃焼室はチャネル16に割り当てられ、特にチャネル16と流体的に接続される。第1の燃焼室からの排ガスは、特にチャネル14及び16に関して、まずチャネル14へのみ流入するが、チャネル16へは流入しない。第2の燃焼室からの排ガスは、特にチャネル14及び16に関して、まずチャネル16へのみ流入するが、チャネル14へは流入しない。
図1ではチャネル14がアクティブなチャネルになり、チャネル16はパッシブなチャネルになる。というのも、たとえば第1の燃焼室及び第2の燃焼室に関して、第1の燃焼室の排ガスだけが提供されるからである。このように第1の燃焼室からの排ガスはまずチャネル14へ流入し、バルブ部材36が開放位置にある場合に、少なくとも部分的にチャネル14からチャネル16へ流入する。
図2では、チャネル16がアクティブなチャネルであり、それに対してチャネル14はパッシブなチャネルになる。というのも
図2では、第1の燃焼室及び第2の燃焼室に関して、第2の燃焼室だけが排ガスを提供するが、第1の燃焼室は提供しないので、第2の燃焼室からの排ガスはまずチャネル16へ流入し、次に、バルブ部材36が開放位置にある場合に、個所Sで少なくとも部分的にチャネル16から流出してチャネル14へ流入するからである。
図1と同じく
図2でも、矢印28は、まずアクティブなチャネルへ流入してアクティブなチャネルの中にとどまり、アクティブなチャネルによって収容領域22に向かってその中へ入り、それに伴ってタービンホイール24へと案内される排ガスを明示している。
図1と同じく
図2でも、矢印38は、まずアクティブなチャネルに流入するが、アクティブなチャネルの中にとどまるのでなく、個所Sで少なくとも部分的に解放された貫流開口部34を通過して流れ、そのようにしてアクティブなチャネルからパッシブなチャネルへと移行する排ガスを明示している。更に、
図1と同じく
図2でも、矢印32は迂回通路を貫流する排ガスを明示している。
【0040】
そして、特にアクティブなチャネルからの排ガスにとって、アクティブなチャネルからパッシブなチャネルへ移行するために、それぞれ開放位置で解放される第1の部分領域だけでなく流動通路44も利用することができるので、開放角が僅かな場合でも、アクティブなチャネルからパッシブなチャネルへと移行する排ガスの大きな質量流を具体化することができる。流動通路44のないバルブ部材36と比較したとき、チャネル接続量、すなわちアクティブなチャネルからパッシブなチャネルへと移行する排ガスの質量流の明らかな増大を確認することができている。特に流動通路44を設けることで、バルブ部材36の位置は同じのままでタービン出力を高めることができる。
【0041】
たとえばバルブ部材36自体は中実に構成されており、本例では流動通路44を備えている。たとえば流動通路44は少なくとも1つのボアによって、又はちょうど1つのボアによって、又は少なくとも若しくはちょうど2つのボアによって形成される。流動通路44はバルブ部材36の内部の流動通路であり、これにより、特別に有利なチャネル接続を具体化することができる。閉止位置では、流動通路44はチャネル14と16の間の流体接続を生起しない。しかし開放位置では流動通路44は、解放された第1の部分領域に追加して設けられる、チャネル14と16の間の流体接続を生起し、それに伴ってアクティブなチャネルからパッシブなチャネルへと移行する排ガスのチャネル接続質量流とも呼ぶ追加の質量流を生起し、この追加のチャネル接続質量流は、解放された第1の部分領域を貫流する排ガスの質量流に追加して行われる。追加の流動通路44は、単一のボアによって、又は互いに交わることによって流体的に相互接続される複数のボアによって形成されていてよい。当然ながらバルブ部材36は、バルブ部材36の中で互いに流体的に分離された流動通路44のような複数の流動通路を有することが考えられる。流動通路44は、特にその半径若しくは直径に関して、及び/又はその1つ若しくは複数の面取りに関して流動に好都合なように構成されていてよい。
【0042】
たとえば端部E1に設けられる、又は端部E1によって形成される流動通路44の入口は、排ガスがこの入口を介してそれぞれアクティブなチャネルから流動通路44に流入することができ、それぞれアクティブなチャネルにおいて、したがってチャネルに排ガスが流れている場合、またたとえばバルブ部材36が有意に解放されている場合、また開放角がたとえば最大開放角の30パーセントよりも大きい場合、当該の入口は、移行している排ガスないしその流動の中に直接あり、それによって、流動通路44への排ガスの直接的な流入を可能にする。たとえば端部E2に設けられ、かつ端部E2によって形成される、流動通路44の出口は、たとえばバルブ部材36のそのような個所にあり、この個所は、バルブ部材36が閉止されている場合、すなわち閉止位置のときに遮断されている。
【0043】
図4に示す第1の実施形態では、流動通路44は、チャネル接続部の分離壁にある端部E2のところで直接終わっている。
【0044】
図5は第2の実施形態を示しており、ここでは端部E2がバルブ部材36の裏側に配置され、閉止位置のときにその裏側が、壁領域とも呼ぶ壁に直接当接しており、この壁は、たとえばバルブ部材36が中に配置されたハウジングによって形成されている。このハウジングはたとえばタービンハウジング12であり、あるいはタービンハウジング12とは別個に構成されてタービンハウジング12と結合される別のハウジングである。
【符号の説明】
【0045】
10 タービン
12 タービンハウジング
14 チャネル
16 チャネル
18 流出開口部
20 流出開口部
22 収容領域
24 タービンホイール
26 分離壁
28 矢印
30 矢印
32 矢印
34 貫流開口部
36 バルブ要素
38 矢印
40 アクチュエータ
42 矢印
44 流動通路
46 端面
E1 第1の端部
E2 第2の端部
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスターボチャージャのためのタービン(10)であって、少なくとも2つのチャネル(14、16)を有するタービンハウジング(12)を有し、前記チャネル(14、16)は少なくとも部分領域で互いに流体的に分離され且つ内燃機関の排ガスが貫流可能とされ
、前記タービンハウジング(12)の分離壁(26)によって互いに流体的に分離されるものであり、前記タービンハウジング(12)に収容され且つ前記排ガスにより駆動可能なタービンホイール(24)を有し、前記排ガスの少なくとも一部によって前記タービンホイール(24)が迂回され得る少なくとも1つの迂回通路(32)を有し、前記チャネル(14、16)を互いに流体的に接続可能である
、前記分離壁(26)に形成された少なくとも1つの貫流開口部(34)を有し、及び、少なくとも1つのバルブ部材(36)を有し、前記バルブ部材(36)は前記迂回通路(32)及び前記貫流開口部(34)を閉止する閉止位置と前記迂回通路(32)及び前記貫流開口部(34)をそれぞれ少なくとも部分領域で解放する少なくとも1つの開放位置との間で位置調節可能とされるものであり、前記バルブ部材(36)は、前記バルブ部材(36)を貫通し且つ前記排ガスが貫流可能な少なくとも1つの流動通路(44)を有する、前記タービン(10)において、
-
前記閉止位置では、前記貫流開口部(34)が前記バルブ部材(36)によって完全に閉止され、
-
前記閉止位置では、前記流動通路(44)によって生じる前記チャネル(14、16)の間の流体接続が阻止され、それにより前記閉止位置では、前記流動通路(44)を介しても前記チャネル(14、16)が互いに流体的に接続されないものであり、
-
前記開放位置では、前記バルブ部材(36)は、前記貫流開口部(34)の第1の部分領域を解放するが、前記第1の部分領域に隣接する前記貫流開口部(34)の第2の部分領域の中にまだ突出しており、それにより前記第2の部分領域に配置されるものであり、前記流動通路(44)は前記第2の部分領域の一部に位置するものであり、それによって前記流動通路(44)は解放された前記第1の部分領域に追加して設けられる前記チャネル(14、16)の間の流体接続部となり、前記排ガスは解放された前記第1の部分領域及び前記流動通路(44)、そして前記第2の部分領域の一部を貫流することができるものであり、
-前記流動通路(44)は、アーチ状に延びる少なくとも1つの長さ領域を有し、及び/又は、
-前記流動通路(44)は、互いに斜めに、又は垂直に延びる少なくとも2つの長さ領域を有し、及び/又は、
-前記流動通路(44)は、少なくとも部分領域でS字型又はZ字型に延びることを特徴とする、前記タービン(10)。
【請求項2】
前記チャネル(14、16)は、前記バルブ部材(36)が前記開放位置にあるとき前記流動通路(44)を介して互いに流体的に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のタービン(10)。
【請求項3】
前記流動通路(44)は、前記閉止位置では前記タービンハウジング(12)の壁領域によって流体的に遮断されることを特徴とする、請求項
1又は2に記載のタービン(10)。
【請求項4】
前記閉止位置では、前記貫流開口部(34)が前記バルブ部材(36)によって完全に閉止されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のタービン(10)。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載のタービン(10)を有する少なくとも1つの排ガスターボチャージャを有する、自動車のための内燃機関。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
特に自動車の排ガスターボチャージャのためのこのようなタービンは、たとえば特許文献1から、すでに公知であることを読み取ることができる。このタービンは、少なくとも部分領域で互いに流体的に分離された、内燃機関の排ガスにより貫流可能な少なくとも2つのチャネルを有するタービンハウジングを有している。更に、特許文献2は、排ガスターボチャージャのためのタービンを開示している。更に、特許文献3より排ガスターボチャージャが公知である。更に、特許文献4は、ターボチャージャのためのタービンを開示している。
特許文献5は、排ガスターボチャージャを有する内燃機関を開示している。特許文献6は、内燃機関のための排ガスターボチャージャを開示している。更に、特許文献7よりターボチャージャシステムが公知である。
【特許文献1】DE102013002894B4
【特許文献2】DE102016208163A1
【特許文献3】DE112015005540B4
【特許文献4】DE102016208160A1
【特許文献5】DE102006058102A1
【特許文献6】DE102011115206A1
【特許文献7】EP3401528A1
【国際調査報告】