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特表2025-502170清澄化セットアップを操作するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】清澄化セットアップを操作するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/10 20060101AFI20250117BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12M1/10
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541668
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 US2023010593
(87)【国際公開番号】W WO2023137061
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】22151043.1
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521140984
【氏名又は名称】ザルトリウス・ステディム・ノース・アメリカ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sartorius Stedim North America Inc.
【住所又は居所原語表記】565 Johnson Avenue, Bohemia, New York 11716, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ゼルトナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス アウスターヨスト
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ザバルス
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA27
4B029BB01
4B029DG08
(57)【要約】
本発明は、バイオプロセス設備(2)の清澄化セットアップ(1)を操作するための方法であって、清澄化セットアップ(1)は、遠心分離による細胞ブロスの清澄化のための流動床遠心分離機(3)を含み、流動床遠心分離機(3)は、少なくとも2つの遠心分離機チャンバ(9~12)を含み、流動床遠心分離機(3)は、粒子ローディングサイクルおよび/または粒子洗浄サイクルのための順方向操作と、粒子排出サイクルのための逆方向操作と、で操作されており、粒子ローディングサイクル中、遠心分離機チャンバ(9~12)にローディングされた細胞ブロスが、遠心分離機チャンバ(9~12)において、成長する粒子集積を形成するように進行し、清澄化セットアップ(1)は、電子プロセス制御装置(14)に送信される監視センサデータを生成するための少なくとも1つの、好ましくは光学的なセンサ(18)を備えた監視センサ装置(17)を含む、方法を対象とする。監視ルーチンにおいて、遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部について、監視センサデータ(19)が、監視センサ装置(17)によって個別に生成されており、ローディングサイクル中、調整ルーチンにおいて、清澄化セットアップ(1)の少なくとも1つのパラメータが、予め定義された調整ストラテジーに従って、遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部について個別に細胞ブロスのローディングを制御するように、監視センサデータ(19)に基づいて調整されていることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプロセス設備(2)の清澄化セットアップ(1)を操作するための方法であって、前記清澄化セットアップ(1)は、遠心分離による細胞ブロスの清澄化のための流動床遠心分離機(3)と、前記流動床遠心分離機(3)に割り当てられた少なくとも2つのポンプ(5~8)を備えたポンピング装置(4)と、を含み、前記流動床遠心分離機(3)は、単一の幾何学的な遠心分離機軸線(13)を中心として回転させられている少なくとも2つの遠心分離機チャンバ(9~12)を含み、前記バイオプロセス設備(2)は、少なくとも前記流動床遠心分離機(3)および前記ポンピング装置(4)を制御するための電子プロセス制御装置(14)を含み、前記流動床遠心分離機(3)は、粒子ローディングサイクルおよび/または粒子洗浄サイクルのための順方向操作と、粒子排出サイクルのための逆方向操作と、で操作されており、前記粒子ローディングサイクル中、前記遠心分離機チャンバ(9~12)にローディングされた細胞ブロスは、前記遠心分離機チャンバ(9~12)において、成長する粒子集積を形成するように進行し、前記清澄化セットアップ(1)は、前記電子プロセス制御装置(14)に送信される監視センサデータを生成するための少なくとも1つの、好ましくは光学的なセンサ(18)を備えた監視センサ装置(17)を含む方法において、
監視ルーチンにおいて、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部について、監視センサデータ(19)は、前記監視センサ装置(17)によって個別に生成されており、前記ローディングサイクル中、調整ルーチンにおいて、前記清澄化セットアップ(1)の少なくとも1つのパラメータは、予め定義された調整ストラテジーに従って、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部について個別に前記細胞ブロスのローディングを制御するように、前記監視センサデータ(19)に基づいて前記電子プロセス制御装置(14)によって調整されていることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記監視ルーチンにおいて、遠心分離機チャンバ内容物(23~26)の光学画像(22)を表す画像関連データ(21)は、前記監視センサ装置(17)によって前記監視センサデータ(19)として生成されていることを特徴とする、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記監視センサデータ(19)は、それぞれの前記遠心分離機チャンバ(9~12)の粒子充填レベル(20)を表し、かつ/または、前記粒子充填レベル(20)は、計算モデルに基づいて、前記監視センサデータ(19)から前記電子プロセス制御装置(14)によって計算されていることを特徴とする、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記清澄化セットアップ(1)の、調整された前記少なくとも1つのパラメータは、前記ポンピング装置(4)の前記ポンプ(5~8)の少なくとも一部のポンプ性能、好ましくは体積流量であり、各々は、前記遠心分離機チャンバ(9~12)のうちの1つに割り当てられていることを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ローディングサイクル中、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部の粒子充填レベルは、前記調整ストラテジーに従って制御されていることを特徴とする、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記調整ストラテジーに従って、前記ローディングサイクル中、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部の粒子充填レベルは、目標、好ましくは目標粒子充填レベルまたは充填レベルの目標時間経過に到達するように制御されていることを特徴とする、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
目標は、粒子充填レベルが制御される各遠心分離機チャンバ(9~12)の個々の目標であるか、または、目標は、前記粒子充填レベルが制御されるすべての遠心分離機チャンバ(9~12)の共有の目標であることを特徴とする、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記調整ストラテジーに従って、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部の粒子充填レベルは、互いに相対的に制御されていることを特徴とする、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記調整ストラテジーに従って、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部の粒子充填レベルは、前記監視センサデータ(19)、好ましくは画像関連データ(21)に基づいて収束するように制御されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記調整ストラテジーに従って、少なくとも2つの遠心分離機チャンバ(9~12)の粒子充填レベルは、前記監視センサデータ(19)、好ましくは画像関連データ(21)に基づいて、予め定義された閾値未満だけ互いに、または平均粒子充填レベルから逸脱するように制御されていることを特徴とする、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記調整ストラテジーに従って、遠心分離機チャンバ(9~12)に割り当てられた少なくとも2つのポンプ(5~8)の体積流量は、バランシングモデルに基づいて、前記監視センサデータ(19)、好ましくは画像関連データ(21)に基づいて、前記流動床遠心分離機(3)を機械的にバランスさせるために制御され、好ましくは、前記バランシングモデルは、少なくとも2つの遠心分離機チャンバ(9~12)の粒子充填レベル間の差と、前記流動床遠心分離機(3)のアンバランスと、の間の相互関係を表す、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記清澄化セットアップ(1)は、前記流動床遠心分離機(3)内の振動の存在および/または振幅を検出するための振動センサを含み、前記調整ストラテジーに従って、前記遠心分離機チャンバ(9~12)に割り当てられた前記ポンプ(5~8)の少なくとも一部の体積流量は、前記振動センサによって検出された前記流動床遠心分離機(3)内の振動の前記振幅を最小化するように制御されることを特徴とする、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実施するためのバイオプロセス設備(2)の清澄化セットアップ(1)であって、前記清澄化セットアップ(1)は、遠心分離による細胞ブロスの清澄化のための流動床遠心分離機(3)と、前記流動床遠心分離機(3)に割り当てられた少なくとも1つのポンプ(5~8)を備えたポンピング装置(4)と、を含み、前記流動床遠心分離機(3)は、少なくとも2つの遠心分離機チャンバ(9~12)を含み、その各々は、単一の幾何学的な遠心分離機軸線(13)を中心として回転させられており、前記バイオプロセス設備(2)は、少なくとも前記流動床遠心分離機(3)および前記ポンピング装置(4)を制御するための電子プロセス制御装置(14)を含み、前記流動床遠心分離機(3)は、粒子ローディングサイクルおよび/または粒子洗浄サイクルのための順方向操作と、粒子排出サイクルのための逆方向操作と、で操作されており、前記粒子ローディングサイクル中、前記遠心分離機チャンバ(9~12)にローディングされた細胞ブロスは、前記遠心分離機チャンバ(9~12)において、成長する粒子集積を形成するように進行し、前記清澄化セットアップ(1)は、前記電子プロセス制御装置(14)に送信される監視センサデータを生成するための少なくとも1つの、好ましくは光学的なセンサ(18)を備えた監視センサ装置(17)を含む清澄化セットアップ(1)において、
監視ルーチンにおいて、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部について、監視センサデータ(19)は、前記監視センサ装置(17)によって個別に生成されており、前記ローディングサイクル中、調整ルーチンにおいて、前記清澄化セットアップ(1)の少なくとも1つのパラメータは、予め定義された調整ストラテジーに従って、前記遠心分離機チャンバ(9~12)の少なくとも一部について個別に前記細胞ブロスのローディングを制御するように、前記監視センサデータ(19)に基づいて前記電子プロセス制御装置(14)によって調整されていることを特徴とする、
清澄化セットアップ(1)。
【請求項14】
請求項13記載の清澄化セットアップの電子プロセス制御装置において、
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実施するように設計されていることを特徴とする、
電子プロセス制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年1月11日付けPCT国際特許出願として、すべての国を指定する出願人である米国国内法人Sartorius Stedim North America Inc.社、ならびにすべての国を指定する発明者および出願人であるドイツ国民のRobert Soeldner、ドイツ国民のJonas Austerjostおよびドイツ国民のMartin Saballusの名義で出願されている。本出願は、2022年1月11日に出願されたEP出願第22151043.1号の優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、請求項1の概要部分に記載の、バイオプロセス設備の清澄化セットアップを操作するための方法、請求項13に記載の清澄化セットアップおよび請求項14に記載の電子プロセス制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
「バイオプロセス」という用語は、現在のところ、あらゆる種類のバイオテクノロジープロセス、特にバイオ医薬品プロセスを表す。そのようなバイオプロセスの例は、所与の条件下で微生物または哺乳動物細胞を培養するためのバイオリアクターの使用であり、細胞ブロスがバイオリアクターから下流プロセスに移送される。この文脈における「バイオリアクター」という用語は、少なくとも1つのパラメータの監視および制御を可能にすることで生物学的環境をサポートする任意の製造されたデバイスまたはシステムを意味する。「バイオ生産物」という用語は、現在のところ、そのようなバイオプロセスで生産されたあらゆる種類の化合物を表す。そのようなバイオ生産物の例は、タンパク質、特に抗体、成長因子またはホルモン、代謝産物またはその他の任意の分子、ならびに細胞または細胞成分、例えばオルガネラである。
【0004】
清澄化セットアップを操作するための当該方法は、バイオテクノロジーの様々な分野に適用することができる。この分野での高効率は、バイオ調合薬などのバイオ製品の需要の増加によって推進されてきた。この意味での効率は、使用される成分の費用対効果だけでなく、それに関連するプロセスの制御性にも関わる。当該方法は、バイオプロセスの制御性だけでなく時間効率も最適化するために、遠心分離機チャンバの最適な充填に依存している。
【0005】
清澄化セットアップを操作するための公知の方法(欧州特許第2310486号明細書)は、チャンバ入口とチャンバ出口とがそれぞれ割り当てられている多数の遠心分離機チャンバを備えた流動床遠心分離機を含む。清澄化セットアップはまた、流動床遠心分離機に割り当てられたポンピング装置と、清澄化される細胞ブロスである液体を輸送するための液体ネットワークと、を含む。最後に、清澄化セットアップは、少なくとも流動床遠心分離機とポンピング装置とを制御するための電子プロセス制御装置を含む。
【0006】
1つ以上の遠心分離機チャンバを備えた公知の清澄化セットアップでは、各遠心分離機チャンバの遠心分離プロセスが並行して実施されるため、一般に高い出力性能が可能になる。しかしながら、最大効率を意図する場合、それらの様々な遠心分離プロセスを並行して実施することは複雑である。というのも、各遠心分離機チャンバの遠心分離プロセスは、それぞれ固有のダイナミクス(dynamic)を有する別々のプロセスとみなす必要があるからである。
【0007】
本発明の出発点である別の既知の方法(「Operation and Maintenance Manual kSep400」, Sartorius Stedim Biotech社)は、カメラセンサからの監視センサデータの生成に依存しており、この監視センサデータはユーザによって手動で分析される。このユーザの経験に基づいて、それらの監視センサデータは、清澄化セットアップを操作するために利用されている。カメラセンサの使用は、ユーザによる分析をし易くするが、上述の理由に起因して、清澄化セットアップの効率を最大化することは依然として課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、可能な限り少ない労力でバイオプロセス効率が改善されるように、清澄化セットアップを操作するための公知の方法を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題は、請求項1の概要部分に記載の、清澄化セットアップを操作するための方法において、請求項1の特徴部分の特徴によって解決される。
【0010】
本発明の根底にある基本的な思想は、例えば、それぞれの遠心分離機チャンバの個々の粒子充填レベルを表すことができる監視センサデータに基づいて、遠心分離機チャンバの少なくとも一部の細胞ブロスのローディングを個別に制御することである。
【0011】
「粒子」という用語は広義に理解されるべきであり、特に細胞、細胞破片、タンパク質、(磁性)マイクロビーズなど、生物学的または非生物学的起源のものであり得る任意の粒子状固体化合物を意味する。
【0012】
「粒子充填レベル」という用語は広義に理解されるべきである。粒子充填レベルは、遠心分離機チャンバの充填の指標であり、遠心分離機チャンバの粒子充填率、特定の粒子質量、体積、濃度などによって反映されることができる。さらに、粒子充填レベルは、所与の時間における特定の粒子充填レベルによって、または粒子充填レベルの経時的変化として表すことができ、それによって粒子充填速度にも反映される。
【0013】
ここで「個々の」という用語は、一般に、それぞれのタスク、ここではローディングの制御が、各遠心分離機チャンバに対して個別に実施されることを意味する。特に、遠心分離機チャンバのローディングの同期化は、予め定義された調整ストラテジーに従って様々な方法で実施されることができる。
【0014】
調整ストラテジーに応じて、例えば、各遠心分離機チャンバの均一な充填を可能にすることができる。これにより、すべての遠心分離機チャンバの同時排出が可能になり、したがって、少ない労力で遠心分離機チャンバ容量をより効率的に使用することができる。
【0015】
遠心分離機チャンバの同期化されたローディングは、不要な待ち時間を減らし、バイオリアクター容積を処理するのに必要な遠心分離サイクルの回数を最小限にし、貴重な細胞の粒子破過を防ぐことができる。「粒子破過」という用語は、流動床遠心分離プロセス中に、少なくとも1つの遠心分離機チャンバが、粒子、好ましくは細胞で容量一杯になり、遠心分離機チャンバのローディングを継続すると前述の遠心分離機チャンバの過充填につながる時点に関する。
【0016】
提案された、それぞれの遠心分離機チャンバのローディングの個々の制御は、遠心分離機チャンバを支持する流動床遠心分離機のロータの機械的にバランスのとれた操作を目的とする観点からも有利であり得る。遠心分離機軸線に対するロータの慣性軸線が遠心分離機軸線に対してオフセットされている場合にアンバランスが発生する。これは、例えば、ローディングサイクル中に細胞などの粒子が遠心分離機チャンバに不均一にローディングされることにより引き起こされる可能性がある。特定の同期化されたローディングと、それに伴う遠心分離機チャンバにわたる粒子の重量の予め定義された分布と、によって、バランスのとれた操作が達成され得るか、または少なくともサポートされ得る。
【0017】
詳細には、監視ルーチンにおいて、遠心分離機チャンバの少なくとも一部について、監視センサデータが、監視センサ装置によって個別に生成されており、ローディングサイクル中、調整ルーチンにおいて、清澄化セットアップの少なくとも1つのパラメータが、予め定義された調整ストラテジーに従って、遠心分離機チャンバの少なくとも一部について個別に細胞ブロスのローディングを制御するように、監視センサデータに基づいて電子プロセス制御装置によって調整されていることが提案される。ここでも、「個々の」という用語は、それぞれの遠心分離機チャンバが、ここでは監視センサデータの生成の点でも、細胞ブロスのローディングの点でも、各々個別に扱われることを意味する。
【0018】
好ましい実施形態によれば、遠心分離機チャンバ内での粒子の浮遊状態に起因して、粒子集積が規則正しく再現可能な方法で進行することが見出された。広い範囲において、この効果は、処理される媒体とは無関係に起こっている。特に、これは目に見える相境界をもたらし、この相境界は進行中の粒子集積とともに遠心分離機チャンバを横切って移動し、相境界の位置は遠心分離機チャンバの目標充填レベルを表していることが見出された。公知の非流動床遠心分離機とは対照的に、提案された発明は、遠心分離された細胞をそのような高い加速力にさらすことなく、目に見える相境界をもたらすことが実現されたのは特に興味深い。そのような高い加速力は、その他の点では細胞損傷、さらには細胞死につながる可能性がある。したがって、細胞はより穏やかな条件下でここでは分離され、より高い生存率につながり、このことは、細胞をその後のバイオプロセスで再利用する場合に極めて重要である。さらに、提案された発明により、遠心分離機チャンバ内の細胞数をより正確に推定することができる。これは、非流動床条件下での粒子集積が、細胞に作用する加速力がはるかに大きいため根本的に異なるという事実に起因している。このため、提案された解決手段では、粒子集積の細胞は、非流動床条件下の場合ほど密に充填されない。それによって、粒子充填レベルをより正確に計算することができる。また、このことは、後に続く可能性のあるバイオプロセスに接種するために必要な所要細胞数をより正確に計算するために特に有利である。さらに、上述した体系的な粒子集積により、計算モデルに基づいて充填レベルを体系的に計算することが可能になり、これは、リアルタイムで実施できることも見出された。
【0019】
したがって、請求項2によれば、詳細には、監視ルーチンにおいて、遠心分離機チャンバ内容物の光学画像を表す画像関連データが、監視センサ装置によって生成されていることが提案される。これは、さらに好ましくは、請求項3によれば、それぞれの遠心分離機チャンバの粒子充填レベルの計算の基礎となる。
【0020】
画像処理による自動充填レベル判定を使用することにより、各チャンバの正確な信号を取得することができる。画像に関連したアプローチとして、判定された充填レベルは、細胞生存率、細胞タイプおよび細胞直径などのブロス組成から独立しており、不純物または死細胞の存在さえも反映することができる。
【0021】
遠心分離機チャンバの少なくとも一部のローディングの個々の制御は、好ましくは、請求項4によるポンピング装置のポンプの少なくとも一部を個別に制御することにより実現される。好ましくは、次いで、それらのポンプの各々のポンプ速度が調整ストラテジーに従って制御される。細胞ブロスのローディングを制御するこのアプローチは、工学的見地から実現することが容易である。
【0022】
請求項5~10は、それぞれの遠心分離機チャンバの個々の粒子充填レベルの特定の制御に基づく、好ましい調整ストラテジーを対象としている。それぞれの遠心分離機チャンバの個々の粒子充填レベルのこの直接的な制御は、請求項6~10で提案されているように、有効性を高める簡単な方法につながる。請求項6および請求項7が、各遠心分離機チャンバについて個別に、目標、例えば目標粒子充填レベルに到達することを提案しているのに対して、請求項8~10は、遠心分離機チャンバの少なくとも一部の粒子充填レベルを互いに相対的に制御することに焦点を当てている。
【0023】
上述した、遠心分離機のロータの機械的なバランシングを達成するための好ましい手段は、少なくとも2つの遠心分離機チャンバの粒子充填レベル間の差と、ロータのアンバランスと、の間の相互関係を表すバランシングモデルを考慮した請求項11の主題である。これにより、ロータのアンバランス状態を最初から防止することができる。
【0024】
代替案として、請求項12は、遠心分離機のロータのアンバランスな操作によって引き起こされる、それらの振動の振幅を最小化するために、振動センサのセンサ信号を考慮することを提案する。これは、検出された振動を考慮して、遠心分離機チャンバに割り当てられたポンプの少なくとも一部の体積流量を制御するための方法によって行われる。
【0025】
請求項13による第2の独立請求項の教示によれば、提案された方法を実施するための清澄化セットアップがそのように請求される。提案された方法について与えられたすべての説明は、提案された清澄化セットアップに完全に適用可能である。
【0026】
請求項14による第3の独立請求項の教示は、電子プロセス制御装置を対象としている。この電子プロセス制御装置は、先の請求項のいずれか1項による提案された方法を実施するように設計されている。ここでも、前で与えられたすべての説明は、この提案された第3の教示に完全に適用される。電子プロセス制御装置は、好ましくは、提案された方法を実現するためのデータ処理システムを含む。
【0027】
第4の教示は、同様に独立請求項として記載されてよいが、提案された電子プロセス制御装置のためのコンピュータプログラム製品を対象としている。このコンピュータプログラム製品は、提案された方法を実現するように、特に、上述のルーチンを実現するように構成されている。ここでも、提案された方法について与えられたすべての説明は、提案されたコンピュータプログラム製品にも完全に適用可能である。
【0028】
第5の教示は、同様に独立請求項として記載されてよいが、コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体を対象としている。ここでも、提案された方法について与えられたすべての説明は、提案された可読記憶媒体に完全に適用可能である。
【0029】
以下では、本発明の一実施形態を図面に関して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】提案された方法が実施可能な、提案されたバイオプロセス設備の好ましい実施形態の概略図である。
図2図1に従って提案された方法の動作原理の透視図である。
図3】a)提案された調整ルーチンを適用しない場合、b)提案された調整ルーチンを適用した場合の、ローディングサイクル中の図1に示された遠心分離機の遠心分離機チャンバの個々の充填レベルを示す図である。
図4図1に従った遠心分離機とポンピング装置とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
バイオプロセス設備2の清澄化セットアップ1を操作するための提案された方法は、好ましくは、液体、特に、細胞培養および/またはバイオ生産のための細胞ブロスを処理するバイオプロセスの上流および下流プロセスに割り当てられる。
【0032】
「液体」という用語は、広義に理解されるべきである。純粋な液体だけでなく、エマルジョンおよび懸濁液、例えば、少なくとも2つの異なる液体の不均質な混合物または固体粒子と液体との不均質な混合物も含まれる。
【0033】
「細胞ブロス」という用語は、溶媒中の粒子の懸濁液、特に、培地中の細胞および/または細胞破片を指す。それは特に、培養培地全体および培養培地中で培養されたそれぞれの生物を説明する。
【0034】
「上流プロセス」という用語は、細胞バンク、接種材料(シードトレイン)開発、培地開発、成長速度の最適化および培養プロセスそのもの、ならびに対応するプロセス内制御に関連するすべてのステップを含む。細胞の採取は、上流処理の一部と下流処理の一部との両方としてみなすことができる。「下流プロセス」という用語は、動物もしくは植物組織または細胞ブロスなどの天然源から、バイオ生産物、特にバイオ医薬品の回収および精製に関連するすべてのステップを含み、これには、回収可能な成分のリサイクルならびに廃棄物の適切な処理および処分が含まれる。
【0035】
一般に、細胞の培養は現在、バイオ医薬品、特に、タンパク質、例えばヒトインスリン、成長因子、ホルモン、ワクチン、または抗体、抗体誘導体などの製造に使用されている。バイオ生産物は、非生物医薬品、例えば、食品加工用酵素、洗濯洗剤用酵素、生分解性プラスチックまたはバイオ燃料である場合もある。本発明の焦点は、細胞から上清に分泌されるバイオ医薬製品、例えば抗体またはエクソソームである。追加的または代替的に、生産物は、細胞そのもの、特に幹細胞を含む哺乳動物細胞または癌治療用のCAR-T細胞などの免疫細胞とすることもできる。
【0036】
図1図4に示すように、すべての実施形態によれば、バイオプロセス設備2の清澄化セットアップ1を操作するための提案された方法は、遠心分離による細胞ブロスの清澄化のための少なくとも1つの流動床遠心分離機3と、流動床遠心分離機3に割り当てられたポンピング装置4と、を採用する。ポンピング装置4は、少なくとも2つのポンプ5~8、ここでは好ましくは4つのポンプ5~8を含む。流動床遠心分離機3は、少なくとも1つの遠心分離機チャンバ9~12、好ましくは偶数の遠心分離機チャンバ9~12、さらに好ましくはちょうど4つの遠心分離機チャンバ9~12を含み、これらは幾何学的な遠心分離機軸線13を中心として回転させられ、通常の操作中に流動床を生じさせる。図4に示すように、好ましくは、各遠心分離機チャンバ9~12は、チャンバ9~12に液体を出し入れするための、少なくとも1つの割り当てられたポンプ5~8、ここでは好ましくは1つの単一のポンプ5~8を含む。バイオプロセス設備2は、少なくとも流動床遠心分離機3およびポンピング装置4を制御するための電子プロセス制御装置14をさらに含む。
【0037】
「遠心分離」とは、遠心力によって人工的に作り出された重力場中での粒子の沈降に関する用語であり、大きな加速力によって分離時間の大幅な短縮が達成される。
【0038】
ここで、遠心分離機は、連続的な遠心分離プロセスを実施するための流動床遠心分離機3として設計されている。流動床遠心分離機3の好ましいセットアップは、欧州特許出願公開第2485846号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
流動床遠心分離機3は、遠心分離機ハウジング16内に遠心分離機チャンバ9~12が取り付けられたロータ15を含む。ロータ15は、好ましくは電動モータによって単一の幾何学的な遠心分離機軸線13を中心として回転することができる。「単一」という表現は、ロータ15によって支持されるすべてのチャンバ9~12が、1つの同じ幾何学的な遠心分離機軸線13を中心として回転することを意味する。遠心分離機の回転速度およびポンプ速度は、流動床遠心分離機3において細胞または細胞破片などの粒子の流動床を確立することを目的として、電子プロセス制御装置14によって調整可能である。流動床は、粒子にかかる遠心力が対向する流体流の力に等しく、粒子にかかる正味の力がゼロになるときに達成される。
【0040】
図1によれば、細胞ブロスは、流動床遠心分離機3に導かれている。流動床遠心分離機3は、ローディングサイクルおよび/または洗浄サイクルでは順方向操作で操作され、粒子排出サイクルでは逆方向操作で操作されている。
【0041】
「順方向操作」とは、流動床遠心分離機において可能な2つの流体流れ方向のうちの1つを意味し、培地および細胞などの液体と固体粒子との分離につながる操作を説明する。この「順方向操作」により、一方では、分離した細胞を緩衝液または培地、好ましくは培養培地、さらに好ましくは濃縮培地で洗浄すること、および/または他方では、細胞ブロスの清澄化が可能になる。ここでの目標は、細胞、細胞破片などの固体粒子から液体上清を清澄化することであり、これらの固体粒子はバイオマスとみなされる。この順方向操作で得られる生産物は、目的のバイオ生産物、例えば組換えタンパク質、特に抗体を含有する細胞ブロスの上清である。
【0042】
「濃縮培地」という用語は、より高濃度のビタミン、成長因子、微量栄養素、ならびに炭素源、窒素源および/またはアミノ酸濃度などを含み、好ましくは、最適化された栄養素濃度に起因して、それぞれの生物がその最大成長速度で成長することを可能にする培地を説明する。成長因子および微量栄養素は、必要なビタミンのすべてを自ら生産することができない生物用の培地に含まれる。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデンおよびコバルトなどの微量元素を含む無機栄養素は、典型的には、未精製の炭素源および窒素源に含まれているが、精製された炭素源および窒素源が使用される場合は追加しなければならない場合がある。
【0043】
ローディングサイクルとは、流動床遠心分離機3の順方向操作において、遠心分離される細胞ブロスをそれぞれの遠心分離機チャンバ9~12にローディングするサイクルのことを指す。したがって、粒子ローディングサイクル中、遠心分離機チャンバ9~12にローディングされた細胞ブロスは、遠心分離機チャンバ9~12において、成長する粒子集積を形成するように進行する。
【0044】
洗浄サイクルとは、流動床遠心分離機3の順方向操作において、それぞれの遠心分離機チャンバ9~12を培地または緩衝液で洗浄するサイクルのことを指す。この洗浄サイクルは、好ましくは細胞に新鮮な栄養素を供給する役割を果たす。
【0045】
代替的に、流動床遠心分離機3は逆方向操作で操作することもできる。「逆方向操作」とは、流動床遠心分離機3における2つの可能な流体流れ方向のうちの第2の方向を意味し、分離された固体粒子、好ましくは細胞の排出につながる操作を説明する。逆方向操作で得られる生産物は、細胞ブロス中の細胞である。
【0046】
したがって、排出サイクルとは、流動床遠心分離機3に割り当てられたサイクルを指し、逆方向操作では、遠心分離機チャンバ9~12から固体粒子、好ましくは細胞が排出される。この排出サイクルは、とりわけ、後続のバイオプロセスにおける細胞の再利用に役立つ。
【0047】
さらに、清澄化セットアップ1は、少なくとも1つの、ここでは好ましくは光学的なセンサ18を備えた監視センサ装置17を含み、監視センサデータが生成され、これは、電子プロセス制御装置14に送信される。光学的なセンサ18は、図1に示すように、それぞれの遠心分離機チャンバ9~12に向けられている。
【0048】
本発明にとって特に重要なことは、監視ルーチンにおいて、遠心分離機チャンバ9~12の少なくとも一部について、監視センサデータ19が、監視センサ装置17によって個別に生成されることである。これらの監視センサデータ19から、好ましくは、電子プロセス制御装置14は、後で説明するように、計算モデルに基づいて粒子充填レベル20を計算する。
【0049】
さらに、本発明にとって重要なことは、ローディングサイクル中、調整ルーチンにおいて、清澄化セットアップ1の少なくとも1つのパラメータが、遠心分離機チャンバ9~12の少なくとも一部、ここでは好ましくはすべての遠心分離機チャンバについて、予め定義された調整ストラテジーに従って個別に細胞ブロスのローディングを制御するように、監視センサデータ19に基づいて電子プロセス制御装置14によって調整されていることである。このことは、個々の遠心分離機チャンバ9~12について生成された監視センサデータが、それらの個々の遠心分離機チャンバ9~12の細胞ブロスのローディングを制御するための基礎となることを意味する。これにより、予め設定された調整ストラテジーに従って、各々かつ任意の遠心分離機チャンバ9~12のローディングの個別制御がほぼ無制限の柔軟性で可能になる。
【0050】
図2に示すように、監視ルーチンにおいて、監視センサ装置17により、それぞれの遠心分離機チャンバ内容物23~26の光学画像を表す画像関連データ21が監視センサデータ19として生成される。
【0051】
好ましくは、監視センサデータ19は、それぞれの遠心分離機チャンバ9~12の粒子充填レベル20を表す。この粒子充填レベル20は、監視センサデータ19から、好ましくは計算モデルに基づく計算によって導出することもできる。
【0052】
計算モデルは、画像関連データ21に基づいて充填レベル20を計算するためのルールシステムとして理解されるべきである。好ましい実施形態では、計算モデルは、2つの異なる操作インスタンス間で、または1つの同じ操作インスタンス内でさえ交換することができる。さらに、計算モデルは、異なるコントラスト、異なる明るさ、異なる密度などをもたらす可能性のある、使用される培養培地の選択に関するものなど、変更された光学特性をもたらす異なるバイオプロセス設定に高度に適応可能である。別の好ましい実施形態によれば、計算モデルは、異なる粒子サイズ、異なる形状、異なる濃度などを含む異なる細胞タイプに適応させることができる。この適応性により、提案された方法は非常に柔軟なものとなる。
【0053】
「画像関連データ」という用語は、広義に理解されるべきである。それは少なくとも1つの画像を表し、この意味では通常の写真表現であり得る。さらに、「画像関連データ」という用語は、液体の他の特性に関する監視センサ装置17の他のセンサの監視センサデータを含むことができる。そのような特性は、例えば、流動重量、流速、細胞タイプ、炭素源濃度、窒素源濃度、アミノ酸濃度、pH、温度、酸素濃度、二酸化炭素濃度、導電率、圧力、DNA濃度、タンパク質濃度またはバイオマス濃度であり得る。
【0054】
図2による実施形態では、ここでは好ましくは監視ルーチンにおいて、計算モデルに従って、粒子充填レベル20が、遠心分離機チャンバ内容物23~26の異なる光学特性に基づいて計算されている。これらの異なる光学特性は、特に、粒子集積内外の遠心分離機チャンバ内容物23~26の異なる半透明性、異なる色および/または異なる明るさである。これは、例えば、粒子集積内外の異なる濁度、色-明るさおよび/または密度差などの、ある特定の粒子タイプ、好ましくは細胞タイプに特異的な特性によって引き起こされる固体粒子、好ましくは細胞の異なる色であってもよい。「粒子集積」という用語は、ここでは遠心分離機チャンバ9~12内に集積した粒子の質量を意味する。
【0055】
好ましい実施形態では、監視ルーチンにおいて、計算モデルに従って、遠心分離機チャンバ内容物23~26の粒子集積と、粒子を含まない残りの部分と、の間の相境界27が、光学画像22において検出される。そのような相境界27は、密度の差、親和性の差、例えば親水性または疎水性の特性の差、色、半透明性および/または明るさの差などの、遠心分離機チャンバ内容物23~26の粒子集積と、粒子を含まない残りの部分と、の組成の差に起因して生じる可能性がある。その後、計算モデルに基づいて、相境界27の位置から粒子充填レベル20が計算される。相境界27は、画像処理、例えば線認識のアルゴリズムによって検出することができる。また、単に、遠心分離機チャンバ内容物23~26を表す光学画像22内のコントラスト、明るさなどの光学特性の異なる2つの領域を決定することによって検出することもできる。これらの異なる光学特性は、好ましくは、遠心分離機チャンバ内容物23~26の、一方では粒子集積(例えば、より低い明るさを含む)を表し、他方では粒子を含まない残りの部分(例えば、より高い明るさを含む)を表す。
【0056】
好ましくは、図1および図2に見られるように、監視センサ装置17の少なくとも1つの光学的なセンサ18は、カメラユニット、好ましくは2Dまたは3Dカメラである。使用される例示的な2Dカメラは、ビデオカメラおよびデジタルカメラに使用される2次元CCDアレイセンサならびにスマートフォンおよびタブレットに使用されるCMOSセンサである。光学的なセンサ18は、好ましくは、流動床遠心分離機3の内部または外部、さらに好ましくは遠心分離機ロータチャンバの内部または外部に配置されている。
【0057】
光学的なセンサ18、ここでは好ましくはカメラユニットの視野方向は、好ましくは幾何学的な遠心分離機軸線13に基本的に平行である。しかしながら、それは傾斜していてもよく、これは、利用可能なスペースの最適化された使用の点で有利であり得る。「基本的に平行」という用語は、ここでは数学的な意味での理想的な平行線ではなく、口語的な意味で、カメラユニットが幾何学的な遠心分離機軸線13に対してより良好な部分において平行に配置されている(図2を参照されたい)ことを意味する。
【0058】
図2では、光装置28,29の2つの選択肢が表示されている。最初の選択肢では、光装置29の光は、遠心分離機チャンバ内容物23~26を透過して監視センサ装置17に照射される。これにより、その他の任意の周辺条件とは無関係に、光学的なセンサ18による測定の再現性が向上する。図2に含まれる代替実施形態では、光装置28の光が、遠心分離機チャンバ内容物23~26に照射され、監視センサ装置17に反射される。
【0059】
好ましくは、監視センサ装置17および/または光装置28,29は、少なくとも1つの遠心分離機チャンバ9~12の回転と同期化されている。「同期化」とは、システムを一体的に操作するための双方向の時間的なイベントの組み合わせを意味する。
【0060】
特に好ましい実施形態によれば、ストロボスコープLEDまたはLEDのアレイおよび/またはカメラユニットは、少なくとも1つの遠心分離機チャンバ9~12の回転と同期化されている。特に、監視センサ装置17の同期化された操作は、遠心分離機チャンバ9~12自体に関連しない任意の光学情報を確実にフェードアウトさせる。
【0061】
図2による好ましい実施形態では、粒子充填レベル20は、遠心分離機チャンバ9~12の粒子を含まない状態と、最大粒子集積の状態と、の間の範囲を表す。この最大粒子集積の状態は、粒子破過の境界線であり、ローディングサイクルを進めると、粒子破過が続く状態によって定義される。
【0062】
図2にも示すように、ここで好ましくは、流動床遠心分離機3は、監視パネルに監視開口部30を含み、この開口部30を通して遠心分離機チャンバ内容物23~26を監視することができる。監視開口部は光学的なセンサ18に割り当てられ、位置合わせされる。流動床遠心分離機3は、すべての遠心分離機チャンバ9~12の遠心分離機チャンバ内容物23~26を監視するために、監視パネルにちょうど1つの監視開口部30を含むことが好ましい。この場合、監視開口部30を備えた監視パネルは、好ましくは、遠心分離機チャンバ9~12が遠心分離機軸線13を中心として回転している間、固定される。代替的に、特に好ましい実施形態によれば、流動床遠心分離機3は、各遠心分離機チャンバ9~12用の監視パネルに1つの監視開口部30を含み、各監視開口部30は、割り当てられた遠心分離機チャンバ9~12に位置合わせされている。この好ましい実施形態では、各監視パネルの各監視開口部30は、それぞれの遠心分離機チャンバ9~12とともに遠心分離機軸線13を中心として移動している。
【0063】
完全を期すために、図1によれば、バイオプロセス設備2は、バイオ生産物を生産するための少なくとも1つの上流ユニット32を備えた培養セットアップ31、特にバイオリアクターを含むことに言及することができる。図1でも示されているように、バイオプロセス設備2は、少なくとも1つの下流ユニット34を備えた下流セットアップ33を含む。この下流セットアップ33は、好ましくは、濾過セットアップ、ウイルス不活性化セットアップ、クロマトグラフィーセットアップおよび/またはウイルス濾過セットアップの群のうちの少なくとも1つである。少なくとも1つの下流ユニット34は、好ましくは、精密濾過ユニット、限外濾過ユニット、捕捉クロマトグラフィーユニット、ウイルス不活性化ユニット、透析濾過ユニット、中間(精製)クロマトグラフィーユニット、ポリッシングクロマトグラフィーユニット、ウイルス濾過ユニットおよび/または滅菌濾過ユニットの群のうちの少なくとも1つである。
【0064】
提案された調整ルーチン中、清澄化セットアップ1の、調整された少なくとも1つのパラメータは、ポンピング装置4のポンプ5~8の少なくとも一部のポンプ性能、好ましくは体積流量であり、各ポンプは遠心分離機チャンバ9~12のうちの1つに割り当てられている。
【0065】
調整ストラテジーは、本発明の範囲を逸脱することなく、数多くの方法で実現することができる。調整ストラテジーは、一般に、遠心分離機チャンバ9~12の少なくとも一部のローディングを制御することを対象としている。以下では、本発明を簡潔に説明するために、調整ストラテジーに従って遠心分離機チャンバ9~12のすべてを制御する好ましい変形例を説明する。しかしながら、与えられたそれらの説明のすべては、調整ストラテジーに従って遠心分離機チャンバ9~12の一部のみを制御する変形例にも同様に適用可能である。
【0066】
調整ストラテジーに応じて、遠心分離機チャンバ9~12の粒子充填レベルが制御されている。本発明では、これは監視センサデータ19から、好ましくは画像関連データ21から導出された粒子充填レベルに基づいて行われている。
【0067】
調整ストラテジーは、目標、好ましくは目標粒子充填レベルまたは充填レベルの目標時間経過に到達するように、ローディングサイクル中の遠心分離機チャンバ9~12の少なくとも一部の粒子充填レベルを制御することを対象とし得る。
【0068】
特に好ましい実施形態では、これは、調整ストラテジーに従って、各遠心分離機チャンバ9~12が到達するように制御される最大充填レベルの形態の目標が定義されることを意味する。チャンバ9~12のうちの1つによって目標に到達した場合、ローディングはこの特定の遠心分離機チャンバ9~12に対してのみ終了され、他の遠心分離機チャンバ9~12はローディングされ続け、監視センサデータ19に基づいて制御される。調整ストラテジーは、すべての遠心分離機チャンバ9~12が、それぞれの目標がすべての遠心分離機チャンバ9~12によって同時に到達されているように、同期化された方法で粒子が充填されるように適切に変更することもできる。
【0069】
上述の目標は、粒子充填レベルが制御されている各遠心分離機チャンバ9~12の個々の目標であってもよい。代替的に、目標は、粒子充填レベルが制御されているすべての遠心分離機チャンバ9~12の共有の目標であってもよい。ここで、本発明は、柔軟性の観点からその潜在能力を最大限に発揮する。
【0070】
上に示したように、調整ストラテジーは、監視センサデータ19、好ましくは画像関連データ21に基づいて、遠心分離機チャンバ9~12の少なくとも一部の粒子充填レベルが互いに相対的に制御されることを含む。これは、連続的であっても不連続的であってもよい粒子充填レベルの任意の同期化された制御を含むことができる。
【0071】
例えば、好ましい調整ストラテジーによれば、遠心分離機チャンバ9~12の粒子充填レベルは、監視センサデータ19、好ましくは画像関連データ21に基づいて収束するように制御されている。加えてまたは代替案として、調整ストラテジーによれば、ローディングサイクル中、遠心分離機チャンバ9~12の粒子充填レベルは、予め定義された閾値T未満だけ互いに、または平均粒子充填レベルから逸脱するように制御されている。これは、ローディングサイクル中、遠心分離機チャンバ9~12について粒子充填レベルLが表示されている図3bに示されている。このグラフでは、各遠心分離機チャンバ9~12に異なるラインパターンが割り当てられている。
【0072】
比較として、図3aは、提案された調整ストラテジーを適用せずにローディングサイクル中の遠心分離機チャンバ9~12の粒子充填レベルLを表示する。提案された調整ストラテジーがなければ、遠心分離機チャンバ9~12の充填レベルLが発散し、ローディングサイクルの終わりに粒子充填レベルのかなりランダムな分布が認められるようになり、効率だけでなく遠心分離結果の再現性も損なわれることが明らかになった。
【0073】
提案された解決手段は、遠心分離機3、特に遠心分離機チャンバ9~12を支持しているロータ15のバランスをとるという観点からも有利であり得る。というのも、遠心分離機チャンバ9~12への粒子の不均一な充填は、一般に、遠心分離機軸線13に対するアンバランスをもたらすからである。上述したように、アンバランスな状態では、遠心分離機軸線13に対するロータ15の慣性軸線35は、遠心分離機軸線13に対してオフセットされている。このアンバランスな状態は振動を引き起こし、極端な場合には機械的な摩耗または破損さえも引き起こす。いずれにしても、アンバランスな状態は、それらの振動が流体の流れに影響を与え、プロセスの制御性を低下させるため、遠心分離の効率を損なう。有利には、バランスのとれた操作は、提案された解決手段によって達成することができるかまたは少なくともサポートすることができる。
【0074】
詳細には、好ましい調整ストラテジーによれば、遠心分離機チャンバ9~12に割り当てられたポンプ5~8の体積流量は、バランシングモデルに基づいて、監視センサデータ19、好ましくは画像関連データ21に基づいて、流動床遠心分離機3を機械的にバランスさせるために制御される。バランシングモデルは、好ましくは、遠心分離機チャンバ9~12の粒子充填レベル間の差と、流動床遠心分離機3のアンバランスと、の間の相互関係を表す。
【0075】
特に好ましい実施形態によれば、バランシングモデルは、好ましくは電子プロセス制御装置14および/またはユーザによって、異なる特性を含む異なるバイオプロセスに適応させることができる。異なるバイオプロセスは、好ましくは、異なる培地および/または細胞タイプからなる異なる細胞ブロス組成を採用する。
【0076】
異なる培地は必ず、少なくとも炭素源、窒素源、水、塩および微量栄養素を含有するが、様々な培地が存在し、それらは液体密度、粘度などの液体特性に関して異なる場合がある。バイオプロセスに使用される好ましい細胞タイプは、前述のように、幹細胞または癌治療用のCAR-T細胞などの免疫細胞を含む細菌、植物または哺乳動物細胞である。バイオプロセスに使用される選択された細胞は、特別に設計された培地中で成長し、これはそれぞれの生物または細胞が必要とする栄養素を供給する。しかしながら、そのような異なる細胞タイプは、細胞密度の違い、細胞生存率の違い、細胞形態の違い、細胞直径の違いなども伴っており、これらはバランシングモデルによって考慮される。
【0077】
好ましくは、単に例として理解されるように、バランシングモデルは、より高い密度を含む細胞タイプを採用するバイオプロセスにおいて流動床遠心分離機3を機械的にバランスさせるのに適応可能である。密度の高い方の粒子は密度の低い方の粒子に比べて体積あたりの質量が大きいので、低密度の細胞タイプを採用するバイオプロセスと比較すると、体積あたりの質量がより大きいものが遠心分離機チャンバ9~12にローディングされる。したがって、同じ細胞濃度および体積流量において、遠心分離機チャンバ9~12は、より高い密度を含む細胞タイプをローディングした場合、所与の粒子充填レベルにおいてより高い質量を示すことになる。この場合、調整ストラテジーに従って、それぞれの遠心分離機チャンバ9~12に割り当てられた少なくとも1つのポンプ5~8の体積流量が適応され、好ましくは、適応されたバランシングモデルに基づいて、流動床遠心分離機3の機械的バランシングをとるために、少なくとも対向する遠心分離機チャンバ9~12に割り当てられたポンプが互いに相対的に適応される。このバランシングモデルの適応性により、細胞ブロス、特に異なる細胞ブロスの、異なる遠心分離機チャンバ9~12への供給が可能になり、これが本発明を特に柔軟なものにする。
【0078】
別の実施形態では、清澄化セットアップ1は、流動床遠心分離機3内の振動の存在および/または振幅を検出するための振動センサを含み、調整ストラテジーに従って、遠心分離機チャンバ9~12に割り当てられたポンプ5~8の少なくとも一部の体積流量は、振動センサによって検出された流動床遠心分離機3内の振動の振幅を最小化するように制御される。この調整ストラテジーは、バランシングモデルが利用可能でない場合にも適切に適用することができる。しかしながら、バランシングモデルに基づく制御に加えて適用することもできる。いずれにしても、振動の低減は、好ましくは反復的アプローチで達成され、ポンプ5~8のポンプ性能、好ましくは体積流量を次々に変更し、それに応じてポンプ性能を適応させる。これにより、遠心分離機チャンバ9~12に粒子を適宜充填するだけで、ロータ自体またはその機械的支持の不均衡を打ち消すことさえ可能となる。
図1
図2
図3a)】
図3b)】
図4
【国際調査報告】