(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】グラム陽性細菌細胞におけるタンパク質産生を強化するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20250117BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20250117BHJP
C12N 9/54 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N9/00 ZNA
C12N9/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541680
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 US2023060360
(87)【国際公開番号】W WO2023137264
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509240479
【氏名又は名称】ダニスコ・ユーエス・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ボンジョルニ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】チェイス、シャノン デル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA15X
4B065AA15Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA33
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA49
4B065CA57
(57)【要約】
本開示は、広義には、タンパク質の生産能が強化された表現型を含むグラム陽性細菌株に関する。したがって、特定の態様は、目的のタンパク質の産生を強化するための組み換え型(改変)グラム陽性細菌株を構築するための組成物及び方法に関連する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
yvyD遺伝子を過剰発現する組み換え型グラム陽性細胞。
【請求項2】
yvyD遺伝子を過剰発現し、且つ目的のタンパク質(POI)をコードする遺伝子を発現する、組み換え型グラム陽性細胞。
【請求項3】
POIをコードする遺伝子の複数のコピーを発現する、請求項2に記載の組み換え型細胞。
【請求項4】
前記過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号23のyvyD遺伝子に対して少なくとも50%の同一性を含む、請求項1に記載の組み換え型細胞。
【請求項5】
前記過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号18のyvyD遺伝子コード配列(CDS)に対して少なくとも50%の同一性を含む、請求項1に記載の組み換え型細胞。
【請求項6】
前記過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号26のYvyDタンパク質に対して少なくとも50%の同一性を含むタンパク質をコードする、請求項1に記載の組み換え型細胞。
【請求項7】
組み換え型細胞が、同じPOIを発現する対照細胞と比較して増加した量の前記POIを産生し、前記対照細胞がyvyD遺伝子を過剰発現しない、請求項2に記載の組み換え型細胞。
【請求項8】
前記yvyD遺伝子を過剰発現することが、天然のyvyD遺伝子プロモーター領域を、下流(3’)の天然のyvyD遺伝子CDSと作動可能に連結した異種プロモーター領域と取り換えることを含み、前記異種プロモーター領域は、前記天然のyvyD遺伝子CDSの発現を、前記天然のyvyD遺伝子プロモーターと比較して増加させる、請求項1に記載の組み換え型細胞。
【請求項9】
前記yvyD遺伝子を過剰発現することが、天然のyvyD遺伝子プロモーター領域を、下流(3’)の天然のyvyD遺伝子CDSと作動可能に連結した異種プロモーター領域と取り換えることを含み、前記異種プロモーター領域は、前記天然のyvyD遺伝子CDSの発現を、前記天然のyvyD遺伝子プロモーターと比較して増加させる、請求項2に記載の組み換え型細胞。
【請求項10】
前記POIは酵素である、請求項2に記載の組み換え型細胞。
【請求項11】
前記グラム陽性細菌細胞は、バチルス属(Bacillus sp.)細胞である、請求項1に記載の組み換え型細胞。
【請求項12】
前記グラム陽性細菌細胞は、バチルス属(Bacillus sp.)細胞である、請求項2に記載の組み換え型細胞。
【請求項13】
グラム陽性細菌細胞中で増加した量の目的のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、配列番号23のyvyD遺伝子に対して少なくとも50%の同一性を有するyvyD遺伝子を含む親細胞を得ることと、前記細胞を、前記yvyD遺伝子を過剰発現させるように遺伝子改変することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記親細胞又は改変(組み換え型)細胞は、前記POIをコードする導入された発現カセットを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
同じ条件下で培養したとき、前記yvyD遺伝子を過剰発現する前記改変細胞は、前記親細胞と比較して増加した量の前記POIを産生する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記yvyD遺伝子を過剰発現する前記改変細胞が、下流(3’)のyvyD遺伝子CDSと作動可能に連結した異種プロモーター領域を含み、前記異種プロモーター領域は、前記yvyD遺伝子CDSの発現を、天然のyvyD遺伝子プロモーターと比較して増加させる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記POIは酵素である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記グラム陽性細菌細胞は、バチルス属(Bacillus sp.)細胞である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月13日に出願された米国仮特許出願第63/299,159号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、細菌学、微生物学、遺伝学、分子生物学、酵素学、工業用タンパク質産生などの分野に関する。本開示の特定の実施形態は、タンパク質の生産能が強化された表現型を含む組み換え型グラム陽性細菌細胞、組み換え型グラム陽性細菌細胞を構築するための組成物及び方法などに関する。
【0003】
配列表の参照
「NB41845-WO-PCT_SequenceListing.xml」との名称が付けられた配列表のテキストファイルの電子的提出の内容は、2023年1月6日に作成され、サイズは35KBであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)などのグラム陽性細菌は、それらの優れた発酵特性及び高い収率(例えば、培養物1リットル当たり最大25グラム;Van Dijl and Hecker,2013)のために、工業用関連タンパク質を産生するための微生物工場として頻繁に使用されている。例えば、バチルス属(Bacillus sp.)の宿主細胞は、それらが食品、織物、洗濯用途、医療機器洗浄、医薬品産業などに必要とされる酵素(例えば、アミラーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチン酸リサーゼ(lysases)、プロテアーゼ、プルラナーゼなど)を産生することで良く知られている。これらの非病原性グラム陽性細菌は、有害な副生成物(例えば、内毒素としても知られるリポ多糖類(LPS))を全く含まないタンパク質を産生するので、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority)(EFSA)の「安全性適格推定(Qualified Presumption of Safety)」(QPS)の評価を得ており、それらの産生物の多くは、アメリカ食品医薬品局(US Food and Drug Administration)から「安全食品認定(Generally Recognized As Safe)」(GRAS)の評価を獲得した(Olempska-Beer et al.,2006;Earl et al.,2008;Caspers et al.,2010)。
【0005】
したがって、微生物宿主細胞を介したタンパク質(例えば、酵素、抗体、受容体など)の産生は、バイオテクノロジー分野において特に関心が高い。同様に、1つ以上の目的のタンパク質を産生及び分泌させるためのバチルス属(Bacillus)宿主細胞の最適化は、特に工業バイオテクノロジーの状況で高い関連性があり、タンパク質が工業的に大量生産される場合は、タンパク質収量の小さな改善が極めて重要な意味を有する。例えば、多くの異種タンパク質の発現は、収率などに関して依然として困難且つ予測不能であり得る。本明細書の以下で説明されるように、本開示は、強化されたタンパク質産生能力を有するグラム陽性細胞(例えば、タンパク質産生宿主)を得て構築するための非常に望ましく、未だ満たされていない必要性に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で概説されるように、出願人は、驚くべきことに、yvyD遺伝子の過剰発現が、グラム陽性細菌細胞中の目的のタンパク質の産生の強化に特に関連していることを観測した。したがって、本開示の特定の態様は、目的のタンパク質を産生するための組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示の特定の実施形態は、とりわけ、yvyD遺伝子を過剰発現する組み換え型(改変)グラム陽性細菌細胞(株)、1つ以上の目的のタンパク質を発現/産生する組み換え型グラム陽性細菌細胞、目的のタンパク質を発現し、且つyvyD遺伝子を過剰発現する組み換え型グラム陽性細菌細胞、細菌株に導入するのに好適なポリヌクレオチド構築物(例えば、プラスミド、ベクター、発現カセットなど)などを提供する。したがって、特定の態様は、yvyD遺伝子を過剰発現する組み換え型グラム陽性細菌細胞に関連し、ここで組み換え型細胞は、増加した量の目的のタンパク質を産生して、好適な条件下で培養したときに産生されるタンパク質の比生産性(Qp)の強化を示し、好適な条件下で培養したときに産生されるタンパク質の炭素利用率の強化を示すことなどをする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】組み込みカセットの概略的マップを示し、
図1Aは、組み込みカセット「yvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-PspoVG-yvyD」(配列番号19)を示し、
図1Bは、組み込みカセット「yvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-Phbs-yvyD」(配列番号20)を示す。例えば、
図1Aに示すように、組み込みカセット「yvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-PspoVG-yvyD」(配列番号19)は、上流(5’)の「fliS」配列、続いて「fliT」配列、続いて「yvzG」遺伝子配列を含み、これらは、lox-SpecR-lox配列、続いて「PspoVG-yvyD」配列、続いて下流(3’)の「secA」配列の上流にある。示されるように、
図1Bの組み込みカセット「yvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-Phbs-yvyD」(配列番号20)は、上流(5’)の「fliS」配列、続いて「fliT」配列、続いて「yvzG」遺伝子配列を含み、これらは、lox-SpecR-lox配列、続いて「Phbs-spoVGSD-yvyD」配列、続いて下流(3’)の「secA」配列の上流にある。
【0008】
【
図2】指定の時点で採取された試料アリコートのプロテアーゼ活性(任意単位)を示す(実施例3)。同じ条件下で発酵させた対照株(2xプロテアーゼ-1)及び改変株(2xプロテアーゼ-1+PspoVG-yvyD)のプロテアーゼ生産能(プロテアーゼ-1)を比較した(
図2)。
【0009】
【
図3】指定の時点で採取された試料アリコートのプロテアーゼ活性(任意単位)を示す(実施例3)。同じ条件下で発酵させた対照株(2xプロテアーゼ-2)及び改変株(2xプロテアーゼ-2+PspoVG-yvyD)のプロテアーゼ生産能(プロテアーゼ-2)を比較した(
図3)。
【0010】
【
図4】指定の時点で採取された試料アリコートのプロテアーゼ活性(任意単位)を示す(実施例3)。同じ条件下で発酵させた対照株(2xプロテアーゼ-2)及び改変株(2xプロテアーゼ-2+Phbs-yvyD)のプロテアーゼ生産能(プロテアーゼ-2)を比較した(
図4)。
【0011】
【
図5】指定の時点で採取された試料アリコートのプロテアーゼ活性(任意単位)を示す(実施例3)。同じ条件下で発酵させた対照株(2xプロテアーゼ-3)及び改変株(2xプロテアーゼ-3+Phbs-yvyD)のプロテアーゼ生産能(プロテアーゼ-3)を比較した(
図5)。
【0012】
【
図6】天然のB.サブチリス(B.subtilis)YvyDタンパク質(配列番号26)のアミノ酸配列を示す。
図6に示すように、YvyDタンパク質(配列番号26)は、アミノ酸残基に下線を付けて示されるN末端保存RaiAスーパファミリードメイン(配列番号27)、及びアミノ酸残基が太字で示されるC末端保存リボソームS30AE_Cスーパファミリードメイン(配列番号28)を含む。
【0013】
【
図7】配列番号29に記載されたPhbsプロモーター領域の核酸配列を示す。具体的には、Phbsプロモーター領域(配列番号29;
図1A)は、下流(3’)のspoVGシャイン・ダルガルノ(SD)配列(配列番号25;
図7C)と作動可能に連結した上流(5’)のhbsプロモーター配列(配列番号22;
図7B)を含む。
図1Aに示すように、hbsプロモーター配列(Phbs;配列番号22)のヌクレオチドには下線が引かれており、シャイン・ダルガルノ配列(SD;配列番号25)のヌクレオチドは太字となっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
生物学的配列の簡単な説明
配列番号1は、名称「343」のプライマーの合成DNA配列である。
【0015】
配列番号2は、名称「402」のプライマーの合成DNA配列である。
【0016】
配列番号3は、名称「400」のプライマーの合成DNA配列である。
【0017】
配列番号4は、名称「370」のプライマーの合成DNA配列である。
【0018】
配列番号5は、名称「539」のプライマーの合成DNA配列である。
【0019】
配列番号6は、名称「246」のプライマーの合成DNA配列である。
【0020】
配列番号7は、名称「540」のプライマーの合成DNA配列である。
【0021】
配列番号8は、名称「754」のプライマーの合成DNA配列である。
【0022】
配列番号9は、spoVGプロモーター領域の合成DNA配列(36bp)のプライマーである。
【0023】
配列番号10は、名称「675」のプライマーの合成DNA配列である。
【0024】
配列番号11は、名称「307」のプライマーの合成DNA配列である。
【0025】
配列番号12は、名称「674」のプライマーの合成DNA配列である。
【0026】
配列番号13は、名称「345」のプライマーの合成DNA配列である。
【0027】
配列番号14は、名称「348」のプライマーの合成DNA配列である。
【0028】
配列番号15は、名称「346」のプライマーの合成DNA配列である。
【0029】
配列番号16は、名称「300」のプライマーの合成DNA配列である。
【0030】
配列番号17は、名称「573」のプライマーの合成DNA配列である。
【0031】
配列番号18は、yvyD遺伝子CDSのオープンリーディングフレーム(DNA)配列である。
【0032】
配列番号19は、名称「yvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-PspoVG-yvyD」のポリヌクレオチド(組み込み)カセットである。
【0033】
配列番号20は、名称「yvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-Phbs-yvyD」のポリヌクレオチド(組み込み)カセットである。
【0034】
配列番号21は、下流(3’)のspoVGシャイン・ダルガルノ(SD)配列と作動可能に連結した上流(5’)のspoVGプロモーターを含むspoVGプロモーター領域(PspoVG)である。
【0035】
配列番号22は、hbsプロモーター(Phbs)配列である。
【0036】
配列番号23は、yvyDプロモーター領域及びyvyD遺伝子コード配列(CDS、すなわち配列番号18)を含む、B.サブチリス(B.subtilis)のyvyD遺伝子(DNA)配列である。
【0037】
配列番号24は、配列番号23に記載されたyvyD遺伝子の上流(5’)yvyDプロモーター領域のDNA配列である。
【0038】
配列番号25は、天然のspoVGシャイン・ダルガルノ(SD)配列を含むDNA配列である。
【0039】
配列番号26は、B.サブチリス(B.subtilis)の天然のYvyDタンパク質のアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号27は、天然YvyDタンパク質(配列番号26)のN末端保存RaiAスーパファミリードメインのアミノ酸配列である。
【0041】
配列番号28は、天然YvyDタンパク質(配列番号26)のC末端保存リボソームS30AE_Cスーパファミリードメインのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号29は、SD配列(配列番号25)と作動可能に連結したhbsプロモーター(Phbs)配列(配列番号22)を含む、hbsプロモーター領域配列である。
【0043】
詳細な説明
本明細書に記載されるように、本開示の特定の実施形態は、グラム陽性細菌(宿主)細胞/株におけるタンパク質産生を強化するための組成物及び方法に関する。より具体的には、本明細書で後述され、また以下の実施例でより詳細に説明されるように、本開示の組み換え型(遺伝子改変)グラム陽性細菌細胞は、目的のタンパク質の産生を強化するのに特に有用である。本開示の特定の実施形態は、とりわけ、グラム陽性細菌細胞中でyvyD遺伝子発現を増加させる組み換え型ポリヌクレオチド、yvyD遺伝子コード配列(CDS、例えばyvyD ORF;配列番号18)を過剰発現する組み換え型グラム陽性細胞、yvyD遺伝子CDSを過剰発現し、目的のタンパク質をコードする遺伝子の1つ以上(複数)のコピーを発現する組み換え型グラム陽性細胞などに関連する。
【0044】
I.定義
本開示の組み換え型(改変)細胞、及び本明細書に記載されるこれらの方法を考慮して、以下の用語及び語句を定義する。本明細書で定義されていない用語には、当該技術分野で通常使用されている意味が与えられるべきである。
【0045】
他に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明の組成物及び方法が属する分野の当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のものに類似又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の組成物及び方法を実施又は試験するためにも使用できるが、以下では例示的な方法及び材料について記載する。本明細書で引用した刊行物及び特許は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
特許請求の範囲が任意選択的な要素を排除するように記載され得ることにも更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求項の構成要素の列挙に関連して「唯一(solely)」、「ただ~のみ(only)」、「~を除いて(excluding)」、「~を含まない(not including)」などの排他的な用語の使用、又はその「否定的な」限定若しくは条件の使用のための先行文として機能することを意図している。例えば、特定の態様では、グラム陽性細菌の「対照細胞/株」は、目的のタンパク質を産生するが、過剰発現したyvyD遺伝子を「含まない」。
【0047】
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載及び例示する個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載する本組成物及び方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の一部の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離又は組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載した方法はいずれも、記載した事象の順序で、又は論理的に可能な他の任意の順序で実施することができる。
【0048】
本明細書で使用するとき、語句「グラム陽性細菌」、「グラム陽性細胞」、「グラム陽性細菌株」、及び/又は「グラム陽性細菌細胞」は、当該技術分野で用いられる同じ意味を有する。例えば、グラム陽性細菌細胞は、アクチノバクテリア(Actinobacteria)及びファーミキューテス(Firmicutes)の全ての株を含む。特定の実施形態では、こうしたグラム陽性細菌は、バチルス(Bacilli)、クロストリジウム(Clostridia)、及びモリクト(Mollicutes)綱のものである。本明細書で使用するとき、用語「組み換え型」又は「非天然」は、少なくとも1つの操作された遺伝子変化を有するか、又は異種核酸分子の導入によって改変されている生物、微生物、細胞、核酸分子、又はベクターを指すか、或いは異種又は内因性核酸分子又は遺伝子の発現が制御され得るように変更されている細胞(例えば、微生物細胞)を指す。組み換え型はまた、1つ以上のそのような改変を有する非天然細胞に由来するか、又は非天然細胞の子孫である細胞を指す。遺伝子変化としては、例えば、タンパク質をコードする発現可能な核酸分子を導入する改変、核酸分子の付加、欠失、置換、又は細胞の遺伝物質の他の機能的変化が挙げられる。例えば、組み換え型細胞は、天然の(野生型)細胞内で同一又は相同の形態では見出されない遺伝子又は他の核酸分子を発現し得るか(例えば、融合又はキメラタンパク質)、或いは、過剰発現される、過小発現される、最小限で発現される、又は全く発現されないなどの内因性遺伝子の変更された発現パターンを提供し得る。「組み換え」、「組み換える(こと)」又は「組み換え」核酸を生成することは、一般に、2つ以上の核酸断片の集合体であり、この集合体は、キメラ遺伝子を発生させる。
【0049】
本明細書で使用するとき、用語「yvyD」又は「yvyD遺伝子」は、「YvyD」タンパク質(又はYvyDタンパク質ホモログ)をコードする遺伝子(又はyvyD遺伝子ホモログ)を指す。下記のセクションIIで概説するように、YvyDタンパク質は、「一般ストレス因子」又は「リボソーム冬眠促進因子」として機能すると考えられている。yvyD遺伝子という用語は、「hpf」遺伝子及び/又は「yviI」遺伝子などの同義名を含む。
【0050】
本明細書で使用するとき、「yvyDの過剰発現」又は「yvyD発現の増加」という語句は、yvyD遺伝子コード配列(CDS)の発現増加を意味する。特定の態様では、yvyD遺伝子CDSは、yvyDオープンリーディングフレーム(ORF;配列番号18)に対して少なくとも80%の配列同一性を含む。例えば、特定の態様では、yvyDの発現増加は、天然の上流(5’)「yvyDプロモーター領域」を、好適な異種(代替)プロモーター領域で置換(取り換え)することによって実施することができ、下流yvyD遺伝子CDSの発現は、異種(代替)プロモーターによって制御される。特定の態様では、yvyD遺伝子CDSは、配列番号18のyvyD ORFに対して少なくとも約50%~100%の同一性を含む。特定の実施形態では、yvyD遺伝子CDSは、配列番号18のyvyD ORFに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。
【0051】
本明細書で使用するとき、天然の「yvyDプロモーター領域」(略して「PyvyD」)とは、配列番号24の天然のB.サブチリス(B.subtilis)のyvyD遺伝子プロモーター領域配列に対して少なくとも約60%~100%の配列同一性を含む「yvyD遺伝子プロモーター」を意味する。特定の実施形態では、yvyD遺伝子プロモーター領域(PyvyD)は、配列番号24のPyvyDに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。
【0052】
本明細書で使用するとき、「hbsプロモーター配列」(略して「Phbs」)という用語は、配列番号22に対して少なくとも約60%~100%の同一性を含む核酸を指す。特定の実施形態では、hbsプロモーター(Phbs)配列は、配列番号22に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。
【0053】
本明細書で使用するとき、「spoVGシャイン・ダルガルノ(SD)配列」という用語は、配列番号25に対して少なくとも約60%~100%の同一性を含む核酸を指す。特定の態様では、spoVG SD配列は、配列番号25に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。
【0054】
本明細書で使用するとき、「hbsプロモーター領域配列」(略して「Phbs領域配列」)という用語は、配列番号29に対して少なくとも約60%~100%の同一性を含む核酸を指す。例えば、
図7Aに示すように、Phbsプロモーター領域(配列番号29)配列は、SD配列(配列番号25)の上流で、且つこれとの作動可能な組み合わせで配置されるPhbsプロモーター(配列番号22)を含む。したがって、特定の実施形態では、Phbsプロモーター領域は、配列番号29に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。
【0055】
本明細書で使用するとき、「spoVGプロモーター領域」(略して「PspoVG」)という用語は、配列番号21に対して少なくとも約60%~100%の同一性を含む核酸を指す。特定の実施形態では、spoVGプロモーター領域(PspoVG)は、配列番号21のPspoVGに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。
【0056】
本明細書で使用するとき、例示的な「yvyD遺伝子過剰発現(組み込み)カセット」は、
図1で概略的に示されており、ここでは、名称「yvzG yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-PspoVG-yvyD」(
図1A;配列番号19)及び「yvzG yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-Phbs-yvyD」(
図1B;配列番号20)の組み込みカセットが示される。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「プロモータースワップ」は、「「プロモータースワップ」組み込みによってyvyD遺伝子の発現を増加させた」などの語句で使用される場合、天然のyvyD遺伝子コード配列(CDS)の上流(5’)のyvyD遺伝子プロモーター領域配列を、「異種(代替)プロモーター」配列と取り換え(置換)することを意味し、ここでプロモータースワップされたyvyD遺伝子CDSは、異種(代替)プロモーターの制御下で発現(過剰発現)する。
【0058】
本明細書で使用するとき、例示的なレポータープロテアーゼをコードする遺伝子は、「プロテアーゼ-1」遺伝子、「プロテアーゼ-2」遺伝子、「プロテアーゼ-3」遺伝子などとして列挙されてもよく、コードされたプロテアーゼは、それぞれ「プロテアーゼ-1」、「プロテアーゼ-2」、「プロテアーゼ-3」などとして列挙される。
【0059】
本明細書で使用するとき、語句、例えば「2コピーのプロテアーゼ-1」及び「2コピーのプロテアーゼ-1をコードすること」は、それぞれ「2xプロテアーゼ-1(2x protease-1)」及び「2xプロテアーゼ-1(2x Protease-1)」と略してもよく、「2コピーのプロテアーゼ-2」及び「2コピーのプロテアーゼ-2をコードすること」は、それぞれ「2xプロテアーゼ-2(2x protease-2)」及び「2xプロテアーゼ-2(2x Protease-2)」と略してもよく、「2コピーのプロテアーゼ-3」及び「2コピーのプロテアーゼ-3をコードすること」は、それぞれ「2xプロテアーゼ-1(2x protease-1)」及び「2xプロテアーゼ-1(2x Protease-1)」と略してもよい、などである。
【0060】
本明細書で使用するとき、名称「プロテアーゼ-1」のレポータープロテアーゼは、PCT国際公開第2012/151534号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるバリアントバチルスレンタス(Bacillus lentus)サブチリシン(プロテアーゼ)を指す。
【0061】
本明細書で使用するとき、名称「プロテアーゼ-2」のレポータープロテアーゼは、PCT国際公開第2020/243738号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるバリアントバチルスギブソニイ(Bacillus gibsonii)プロテアーゼを指す。
【0062】
本明細書で使用するとき、名称「プロテアーゼ-3」のレポータープロテアーゼは、PCT国際公開第2011/72099A号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるバリアントバチルスアミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)BPN’プロテアーゼを指す。
【0063】
このため、特定の態様では、本開示のグラム陽性細胞は、天然のYvyDタンパク質をコードする内因性yvyD遺伝子を含み、yvyD遺伝子は、配列番号23のyvyD遺伝子に対して約50%~100%の同一性を含む。その他の実施形態では、yvyD遺伝子は、配列番号23に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含む。
【0064】
配列番号26は、B.サブチリス(B.subtilis)の天然YvyDタンパク質のアミノ酸配列であり、配列番号27は、天然YvyDタンパク質(配列番号26)のN末端保存RaiAスーパファミリードメインのアミノ酸配列であり、配列番号28は、天然YvyDタンパク質(配列番号26)のC末端保存リボソームS30AE_Cスーパファミリードメインのアミノ酸配列である。
【0065】
本明細書で使用するとき、「宿主細胞」は、新たに導入されるDNA配列のための宿主又は発現ビヒクルとして作用する能力を有する細胞を指す。したがって、本開示の特定の実施形態では、宿主細胞は、グラム陽性(例えば、バチルス(Bacilli)及び/又はグラム陰性(例えば大腸菌(E.coli))細胞である。
【0066】
本明細書で使用するとき、「改変グラム陽性細胞」及び/又は「グラム陽性(娘)細胞」という語句は、そこから改変グラム陽性細胞が誘導される親(対照)グラム陽性細胞中には存在しない少なくとも1つの遺伝子改変を含む、組み換え型グラム陽性細胞を指す。例えば、グラム陽性「対照」細胞中の目的のタンパク質(POI)の発現/産生を、「改変」(組み換え型)細胞中の同じPOIの発現/産生と比較する場合、「対照」及び「改変」細胞は、同一条件(例えば、培地、温度、pHなどの同一条件)下で増殖/培養/発酵させられることが理解されよう。
【0067】
本明細書で使用するとき、タンパク質産生を「増加させる」又は「増加した」タンパク質産生は、増加した量の産生されたタンパク質(例えば、目的のタンパク質)を意味する。タンパク質は、宿主細胞の内部で産生されても、培養培地中へ分泌(又は、輸送)されてもよい。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、培養培地中へ産生(分泌)される。タンパク質産生の増加は、例えば、親細胞と比較して、より高い最大レベルのタンパク質若しくは酵素活性(例えば、プロテアーゼ活性、アミラーゼ活性、プルラナーゼ活性、セルラーゼ活性など)として、又は産生される総細胞外タンパク質として検出され得る。
【0068】
本明細書で使用するとき、用語「改変」及び「遺伝子改変」は互換的に使用され、以下を含む:(a)遺伝子(若しくはそのORF)における1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、又は遺伝子若しくはそのORFの転写若しくは翻訳に必要な調節エレメントにおける1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション、(f)特異的変異誘発、及び/又は(g)本明細書に開示される任意の1つ以上の遺伝子のランダム変異誘発。
【0069】
本明細書で使用するとき、用語「発現」は、本開示の核酸分子に由来するセンス(mRNA)若しくはアンチセンスRNAの転写及び安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指し得る。したがって、用語「発現」には、以下に限定されないが、転写、転写後改変、翻訳、翻訳後改変、分泌などのポリペプチドの産生に関与する任意の工程が含まれる。
【0070】
本明細書で使用するとき、「核酸」は、ヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド配列、及びそれらの断片若しくは部分、並びにセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれを表しているかに関わらず、二本鎖であっても一本鎖であってもよい、ゲノム又は合成起源のDNA、cDNA及びRNAを指す。遺伝子コードの縮重の結果として、多数のヌクレオチド配列が所与のタンパク質をコードし得ることは理解されよう。
【0071】
本明細書に記載したポリヌクレオチド(若しくは核酸分子)には、「遺伝子」、「ベクター」及び「プラスミド」が含まれることは理解されている。
【0072】
したがって、用語「遺伝子」は、タンパク質のコード配列の全部又は一部を含む、アミノ酸の特定配列をコードするポリヌクレオチドを指し、例えば、遺伝子が発現する条件を決定する、プロモーター配列などの調節(非転写)DNA配列を含み得る。遺伝子の転写領域は、イントロン、5’-非翻訳領域(UTR)及び3’-UTRを含む非翻訳領域(UTR)、並びにコード配列を含み得る。
【0073】
本明細書で使用するとき、用語「コード配列」は、その(コードされた)タンパク質産物のアミノ酸配列を直接的に指定するヌクレオチド配列を指す。コード配列の境界は、一般にオープンリーディングフレーム(以下「ORF」)によって決定され、それは、通常、ATG開始コドンで開始する。コード配列には、通常、DNA、cDNA、及び組み換え型ヌクレオチド配列が含まれる。
【0074】
本明細書で使用する用語「プロモーター」は、コード配列又は機能的RNAの発現を制御できる核酸配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’(下流)に位置する。プロモーターは、それらの全体が天然遺伝子に由来してもよい、又は天然に存在する種々のプロモーターに由来する種々のエレメントから構成されていてもよい、又は合成核酸セグメントを含んでいてさえよい。種々のプロモーターが、種々の細胞型で、又は種々の生育段階で、又は種々の環境若しくは生理的条件に応答して、遺伝子の発現を指示し得ることは、当業者には理解されている。殆どの細胞型で遺伝子の発現を最も多く引き起こすプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれている。更に、殆どの場合に調節配列の正確な境界は完全には明らかになっていないため、種々の長さのDNA断片が同じプロモーター活性を有し得ることは確認されている。
【0075】
本明細書で使用する用語「作動可能に連結した」は、一方の機能が他方により影響されるような、単一核酸断片上での核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、それがそのコード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合(即ち、そのコード配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、コード配列(例えば、ORF)に作動可能に連結している。コード配列は、センス又はアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結され得る。
【0076】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、「作動可能に連結」している。例えば、分泌リーダー(即ち、シグナルペプチド)をコードするDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現している場合は、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結している;プロモーター若しくはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、そのコード配列に作動可能に連結している;又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結している。一般に、「作動可能に連結した」は、連結されるDNA配列が隣接している、及び分泌リーダーの場合には、隣接してリーディング期にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、便宜的な制限部位でのライゲーションによって行われる。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0077】
本明細書で使用するとき、「目的の遺伝子のタンパク質コード配列に連結した目的の遺伝子の発現を制御する機能的プロモーター配列(又はそれらのオープンリーディングフレーム)」は、バチルス属(Bacillus)におけるコード配列の転写及び翻訳を制御するプロモーター配列を指す。例えば、ある特定の実施形態では、本開示は、5’プロモーター(又は、5’プロモーター領域若しくはタンデム5’プロモーターなど)を含むポリヌクレオチドであって、そのプロモーター領域が、タンパク質をコードする核酸配列(例えば、ORF)に作動可能に連結している、ポリヌクレオチドを対象としている。
【0078】
本明細書で使用するとき、「好適な調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、配列内又はその下流(3’非コード配列)に位置し、関連コード配列の転写、RNAプロセシング若しくは安定性又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列には、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステムループ構造が含まれ得る。
【0079】
本明細書で使用するとき、用語「導入すること(introducing)」は、遺伝子、ポリヌクレオチド、ベクター、カセットなどをグラム陽性細菌細胞に導入するなどの語句で用いられるとき、ポリヌクレオチドを細胞に導入するための当該技術分野で既知の方法を含み、これとしては、限定するものではないが、プロトプラスト融合、天然又は人工形質転換(例えば、塩化カルシウム、エレクトロポレーション)、形質導入、トランスフェクション、接合などが挙げられる。
【0080】
本明細書で使用するとき、「形質転換された」又は「形質転換」は、細胞が組み換え型DNA技術の使用によって形質転換されていることを指す。形質転換は、一般的には、1つ以上のヌクレオチド配列(例えば、ポリヌクレオチド、ORF又は遺伝子)を細胞に挿入することによって発生する。挿入されたヌクレオチド配列は、異種ヌクレオチド配列(すなわち、形質転換対象の細胞には天然に存在しない配列)であってもよい。したがって、形質転換は、一般的に、DNAが、染色体組み込み体又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、外来性DNAを宿主細胞に導入することを指す。
【0081】
本明細書で使用するとき、「形質転換DNA」、「形質転換配列」、及び「DNA構築物」は、配列を宿主細胞又は生物に導入するために使用されるDNAを指す。形質転換DNAは、配列を宿主細胞又は生物に導入するために使用されるDNAである。このDNAは、インビトロでPCR又は任意の他の好適な技術によって生成され得る。いくつかの実施形態では、形質転換DNAは、入来配列を含むが、他の実施形態では、形質転換DNAは、ホモロジーボックスに隣接された入来配列を更に含む。更に別の実施形態では、形質転換DNAは、末端に付加された、他の非相同配列(即ち、スタッファー配列又は隣接配列)を含む。末端は、例えば、ベクターへの挿入などのように、形質転換DNAが閉環を形成するように閉じることができる。
【0082】
本明細書で使用するとき、「遺伝子の破壊」又は「遺伝子破壊」は互換的に使用され、宿主細胞が機能的遺伝子産物(例えば、タンパク質)を産生することを実質的に妨げる任意の遺伝子改変を広く指す。したがって、本明細書で使用するとき、遺伝子破壊としては、フレームシフト突然変異、未成熟終止コドン(すなわち、機能的タンパク質が作製されないように)、タンパク質内部欠失の活性を排除又は低減させる置換(機能的タンパク質が作製されないように)、コード配列を破壊する挿入、転写に必要な天然プロモーターとオープンリーディングフレームとの間の作動可能な連結を除去する突然変異などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用する「入来配列」は、グラム陽性細菌細胞の染色体内に導入されるDNA配列を指す。いくつかの実施形態では、入来配列は、DNA構築物の一部である。他の実施形態では、入来配列は、1つ以上の目的のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、入来配列は、形質転換対象の細胞のゲノム内に既に存在していても存在していなくてもよい(即ち、相同配列であっても異種配列であってもよい)配列を含む。いくつかの実施形態では、入来配列は、1つ以上の目的のタンパク質、遺伝子及び/又は突然変異若しくは改変遺伝子をコードする。代替の実施形態では、入来配列は、機能的な野生型遺伝子若しくはオペロン、機能的な変異遺伝子若しくはオペロン又は非機能的な遺伝子若しくはオペロンをコードする。いくつかの実施形態では、非機能的配列は、遺伝子の機能を崩壊させるために遺伝子に挿入され得る。別の実施形態では、入来配列は、選択マーカーを含む。更に別の実施形態では、入来配列は、2つのホモロジーボックスを含む。
【0084】
本明細書で使用するとき、「ホモロジーボックス」は、グラム陽性細菌細胞染色体内の配列と相同である核酸配列を指す。より詳細には、ホモロジーボックスは、本発明に従って、欠失する、破壊される、不活化される、ダウンレギュレートされる等の遺伝子又は遺伝子の一部の直接隣接するコーディング領域と約80~100%の配列同一性、約90~100%の配列同一性又は約95~100%の配列同一性を有する上流又は下流領域である。これらの配列は、グラム陽性細菌細胞染色体内でDNA構築物が組み込まれる場所を指示し、染色体のどの部分を入来配列で取り替えるかを指示する。本開示を限定することを意図するものではないが、ホモロジーボックスには、約1塩基対(bp)~200キロ塩基(kb)が含まれ得る。好ましくは、ホモロジーボックスは、約1bp~10.0kb;1bp~5.0kb;1bp~2.5kb;1bp~1.0kb、及び0.25kb~2.5kbを含む。ホモロジーボックスはまた、約10.0kb、5.0kb、2.5kb、2.0kb、1.5kb、1.0kb、0.5kb、0.25kb及び0.1kbを含み得る。いくつかの実施形態では、選択マーカーの5’及び3’末端は、ホモロジーボックスに隣接されるが、ここでホモロジーボックスは、遺伝子のコーディング領域に直接隣接する核酸配列を含む。
【0085】
本明細書で使用するとき、用語「選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列」は、宿主細胞内で発現することができ、選択可能マーカーの発現が、発現した遺伝子を含有する細胞に、対応する選択的作用物質の存在下又は必須栄養素の欠如下で増殖する能力を付与する、ヌクレオチド配列を指す。
【0086】
本明細書で使用するとき、用語「選択可能マーカー」及び「選択マーカー」は、ベクターを含有するそれらの宿主の選択を容易にさせる、宿主細胞内で発現することができる核酸(例えば、遺伝子)を指す。そのような選択可能マーカーの例としては、抗微生物剤が挙げられるが、それらに限定されない。したがって、用語「選択可能マーカー」は、宿主細胞が目的の入来DNAを取り込めたか、又は何らかの他の反応が発生したことの兆候を提供する遺伝子を指す。一般的には、選択可能マーカーは、形質転換中に外来性配列を受け入れていない細胞から外来DNAを含有する細胞を区別することを可能にする抗微生物剤耐性又は代謝有利性を宿主細胞に付与する遺伝子である。
【0087】
「存在する選択可能マーカー」は、形質転換対象の微生物の染色体上に所在するマーカーである。存在する選択可能マーカーは、形質転換DNA構築物上の選択可能マーカーとは異なる遺伝子をコードする。選択マーカーは、当業者にはよく知られている。上記のように、マーカーは抗微生物剤耐性マーカー(例えば、ampR、phleoR、specR、kanR、eryR、tetR、cmpR及びneoR)であり得る。いくつかの実施形態では、本発明は、クロラムフェニコール耐性遺伝子(例えば、pC194上に存在する遺伝子)を提供する。この耐性遺伝子は、染色体組み込みカセット及び組み込みプラスミドの染色体増幅を含む実施形態において、特に有用である。本発明により有用な他のマーカーとしては、セリン、リシン、トリプトファンなどの栄養要求性マーカー、及びβ-ガラクトシダーゼなどの検出マーカーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書で定義するように、宿主細胞「ゲノム」、及び/又はグラム陽性細菌細胞「ゲノム」は、染色体遺伝子及び染色体外遺伝子を含む。
【0089】
本明細書で使用するとき、用語「プラスミド」、「ベクター」及び「カセット」は、多くの場合で細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を運び、及び通常は環状の二本鎖DNA分子の形態にある染色体外エレメントを指す。そのような要素は、多数のヌクレオチド配列が、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片及びDNA配列を適切な3’未翻訳配列と共に細胞内に導入できる固有の構造に接合又は再結合されている任意の起源に由来する、線状若しくは環状の、一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNAの自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列であってよい。
【0090】
本明細書で使用するとき、用語「プラスミド」は、クローニングベクターとして使用され、且つ多くの細菌及び一部の真核生物において染色体外の自己複製遺伝要素を形成する、環状の二本鎖(ds)DNA構築物を指す。いくつかの実施形態では、プラスミドは宿主細胞のゲノム中に組み込まれるようになり、いくつかの実施形態では、プラスミドは親細胞中に存在し、娘細胞内で失われる。
【0091】
本明細書で使用するとき、「形質転換カセット」は、遺伝子(又はそのORF)を含み、外来遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を促進する要素を有する特異的ベクターを指す。
【0092】
本明細書で使用するとき、用語「ベクター」は、細胞内で複製(増殖)することができ、新たな遺伝子又はDNAセグメントを細胞中に運ぶことができる任意の核酸を指す。したがって、この用語は、様々な宿主細胞間を輸送するために設計された核酸構築物を指す。ベクターとしては、「エピソーム」(すなわち、自律的に複製するか、又は宿主生物の染色体に組み込むことができる)である、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、プラスミド、ファージミド、トランスポゾン、並びにYAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、PLAC(植物人工染色体)などの人工染色体が挙げられる。
【0093】
「発現ベクター」は、細胞内に異種DNAを組み込んで発現させる能力を有するベクターを指す。多数の原核生物及び真核生物の発現ベクターが市販されており、当業者には知られている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0094】
本明細書で使用するとき、用語「発現カセット」及び「発現ベクター」は、標的細胞中の特定の核酸の転写を許容する一連の特定の核酸要素を用いて、組み換え又は合成的に生成される核酸構築物(すなわち、これらは、上述したベクター又はベクターエレメントである)を指す。組み換え型発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス又は核酸断片内に組み込むことができる。通常、発現ベクターの組み換え型発現カセット部分には、配列の中でも、転写対象の核酸配列及びプロモーターが含まれる。いくつかの実施形態では、DNA構築物には、標的細胞内の特定の核酸の転写を許容する一連の特定の核酸要素も含まれる。ある特定の実施形態では、本開示のDNA構築物は、本明細書で定義する選択マーカー及び不活化染色体セグメント又は遺伝子セグメント又はDNAセグメントを含む。
【0095】
本明細書で使用するとき、「ターゲティングベクター」は、その中にターゲティングベクターが形質転換される宿主細胞の染色体内の領域に相同なポリヌクレオチド配列を含み、その領域で相同組み換えを駆動できるベクターである。例えば、ターゲティングベクターは、相同組み換えによって宿主細胞の染色体に突然変異を導入する際に使用される。いくつかの実施形態では、ターゲティングベクターは、例えば末端に付加された他の非相同配列(すなわち、スタッファー配列又は隣接配列)を含む。末端は、例えば、ベクターへの挿入などのように、ターゲティングベクターが閉環を形成するように閉じることができる。例えば、特定の実施形態では、親グラム陽性(宿主)細胞は、それらの中に1つ以上の「ターゲティングベクター」を導入することによって改変される(例えば、形質転換される)。
【0096】
本明細書で使用するとき、用語「目的のタンパク質」又は「POI」は、グラム陽性細菌細胞において発現することが所望される目的のポリペプチドを指す。したがって、本明細書で使用するとき、POIは、酵素、基質結合タンパク質、表面活性タンパク質、構造タンパク質、受容体タンパク質、タンパク質生物製剤(protein biologic)などであり得る。特定の実施形態では、本開示の改変グラム陽性細胞は、親と比較して増加した量の異種POI又は内因性POIを産生する。特定の実施形態では、改変細胞によって産生されたPOIの増加した量は、親と比較して、少なくとも0.5%の増加、少なくとも1.0%の増加、少なくとも5.0%の増加、又は5.0%超の増加である。
【0097】
同様に、本明細書で定義する場合、「目的の遺伝子」又は「GOI」は、POIをコードする核酸配列(例えば、ポリヌクレオチド、遺伝子、ORF)を指す。「POI」をコードする「GOI」は、天然に存在する遺伝子、変異遺伝子、又は合成遺伝子であってよい。
【0098】
本明細書で使用するとき、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、互換的に使用され、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を含む任意の長さのポリマーを指す。本明細書では、アミノ酸残基に対し、従来の1文字コード又は3文字コードを使用する。ポリペプチドは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、改変アミノ酸を含んでもよく、また、非アミノ酸によって分断されていてもよい。ポリペプチドという用語はまた、自然に、或いは介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識化成分との結合などの任意の他の操作若しくは改変によって、改変されているアミノ酸ポリマーを包含する。また、この定義の範囲には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、及び当該技術分野において知られる他の改変も含まれる。
【0099】
特定の実施形態では、本開示の遺伝子は、酵素(例えば、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリサーゼ(glucan lysase)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びこれらの組み合わせ)などの商業的に関連する工業用の目的のタンパク質をコードする。
【0100】
本明細書で使用するとき、「バリアント」ポリペプチドは、一般的には組み換え型DNA技術による、1個以上のアミノ酸の置換、付加又は欠失による親(又は参照)ポリペプチドに由来するポリペプチドを指す。バリアントポリペプチドは、少数のアミノ酸残基によって親ポリペプチドと異なる可能性があり、親(参照)ポリペプチドとの一次アミノ酸配列の相同性/同一性のレベルによって定義され得る。
【0101】
好ましくは、バリアントポリペプチドは、親(参照)ポリペプチド配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。本明細書で使用するとき、「バリアント」ポリヌクレオチドは、バリアントポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指し、この「バリアントポリヌクレオチド」は、親ポリヌクレオチドと特定の程度の配列相同性/同一性を有するか、又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で親ポリヌクレオチド(又は、その相補体)とハイブリダイズする。好ましくは、バリアントヌクレオチドは、親(参照)ポリヌクレオチド配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は更には少なくとも99%のヌクレオチド配列同一性を有する。
【0102】
本明細書で使用するとき、用語「突然変異」は、核酸配列内の任意の変化又は変更を指す。点突然変異、欠失突然変異、サイレント突然変異、フレームシフト突然変異、スプライシング突然変異などを含む数種のタイプの突然変異が存在する。突然変異は、特異的に(例えば、部位特異的変異誘発によって)又はランダムに(例えば、化学薬品、修復マイナス細菌株を通しての継代によって)行われ得る。
【0103】
本明細書で使用するとき、ポリペプチド若しくはその配列に関連して、用語「置換」は、1つのアミノ酸とまた別のアミノ酸との取り換え(すなわち、置換)を意味する。
【0104】
本明細書で定義する場合、「内因性遺伝子」は、生物のゲノム中の天然の位置に存在する遺伝子を指す。
【0105】
本明細書で定義する場合、「異種」遺伝子、「非内因性」遺伝子又は「外来」遺伝子は、通常は宿主生物中では見出されないが、遺伝子導入によって宿主生物に導入された遺伝子(若しくはORF)を指す。本明細書で使用するとき、用語「外来」遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子(若しくはORF)及び/又は天然若しくは非天然生物中に挿入されたキメラ遺伝子を含む。
【0106】
本明細書で定義する場合、「異種制御配列」は、天然では目的の遺伝子の発現を調節(制御)するために機能しない遺伝子発現制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサー)を指す。一般に、異種核酸配列は、その中にそれらが存在する細胞又はゲノムの一部に対して内因性(天然)ではなく、感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に加えられている。「異種」核酸構築物は、天然宿主細胞内で見出される制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同一又は異なる制御配列/DNAコーディング(ORF)配列の組み合わせを含有し得る。
【0107】
本明細書で使用するとき、用語「シグナル配列」及び「シグナルペプチド」は、成熟タンパク質又はタンパク質の前駆体形の分泌又は直接輸送に関与する可能性があるアミノ酸残基の配列を指す。シグナル配列は、一般的には、前駆体又は成熟タンパク質配列のN末端に位置する。シグナル配列は、内因性であっても外因性であってもよい。シグナル配列は、通常、成熟タンパク質には存在しない。シグナル配列は、一般的には、タンパク質が輸送された後にシグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。
【0108】
用語「由来する」には、用語「~から生じた」、「~から得られた」、「~から入手可能な」及び「から作成された」が含まれ、一般には、1つの特定の材料若しくは組成物が別の材料若しくは組成物にその起源が見出されるか、又は他の特定の材料若しくは組成物を参照して記載できる特徴を有することを示す。
【0109】
本明細書で使用するとき、用語「相同性」は、相同ポリヌクレオチド又は相同ポリペプチドに関する。2つ以上のポリヌクレオチド又は2つ以上のポリペプチドが相同である場合、これは、それらの相同のポリヌクレオチド又はポリペプチドが、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より一層好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも98%の「同一性度」を有することを意味している。2つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列が、本明細書で定義するように相同であるほどの十分に高い同一性度を有するか否かは、当該技術分野で知られるコンピュータープログラム、例えば、GCGプログラムパッケージで提供される「GAP」(Program Manual for the Wisconsin Package、Version 8,August 1994、Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wisconsin,USA 53711)を使用して2つの配列をアラインさせることにより好適に調べることができる(Needleman and Wunsch,(1970)。DNA配列比較のために以下の設定でGAPを使用:GAP作成ペナルティ(creation penalty)5.0及びGAP伸長ペナルティ(extension penalty)0.3。
【0110】
本明細書で使用するとき、用語「同一性パーセント(%)」は、配列アライメントプログラムを使用してアラインさせたときの、ポリペプチドをコードする核酸配列間又はポリペプチドのアミノ酸配列間の核酸又はアミノ酸配列の同一性のレベルを指す。
【0111】
本明細書で使用するとき、用語「比生産性」は、所定の期間にわたって、細胞1個当たり、単位時間当たりに産生するタンパク質の総量を指す。
【0112】
本明細書で定義する場合、用語「精製された」、「単離された」又は「濃縮された」は、生体分子(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド)が、それが本来結合している、天然型の一部若しくは全部の構成要素から分離することによって、その天然状態から改変されることを指す。そのような単離又は精製は、最終組成物中の望ましくない全細胞、細胞残屑、不純物、外来タンパク質又は酵素を除去するための、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性分離、透析、プロテアーゼ処理、硫酸アンモニウム沈澱若しくは他のタンパク質塩析、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、濾過、精密濾過、ゲル電気泳動、又は勾配による分離などの当該技術分野で知られる分離技術によって実施することができる。精製又は単離した生体分子組成物には、その後更に、追加の便益を付与する構成要素、例えば、活性化剤、抗阻害剤、望ましいイオン、pH調節化合物又は他の酵素若しくは化学物質を添加することができる。
【0113】
本明細書で使用するとき、「隣接配列」は、考察対象の配列の上流又は下流のいずれかにある任意の配列を指す(例えば、遺伝子A-B-Cでは、遺伝子BがA及びCの遺伝子配列に隣接されている)。特定の実施形態では、入来配列は、各側でホモロジーボックスに隣接されている。別の実施形態では、入来配列及びホモロジーボックスは、各側でスタッファー配列によって隣接されている単位を含む。いくつかの実施形態では、隣接配列は、一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、好ましい実施形態では、隣接されている配列の各側に存在する。各ホモロジーボックスの配列は、グラム陽性細菌細胞染色体中の配列と相同である。これらの配列は、染色体のどこに新規な構築物が組み込まれ、染色体のどの部分が入来配列により置換されるかを指示する。他の実施形態では、選択マーカーの5’側及び3’側末端は、不活化染色体セグメントの一部を含むポリヌクレオチド配列によって隣接されている。いくつかの実施形態では、隣接配列は、一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、他の実施形態では、隣接されている配列の各側に存在する。
【0114】
II.グラム陽性細菌細胞中のyvyDの過剰発現はタンパク質産生を強化する
上記で簡単に説明したように、B.サブチリス(B.subtilis)のyvyD遺伝子は、「一般ストレス因子」又は「リボソーム冬眠促進因子」として機能すると考えられているタンパク質をコードする。例えば、Drzewiecki et al.(1998)で概説されるように、非定型誘導プロファイルを示すσB依存性一般ストレスタンパク質の二次元タンパク質ゲルの解析により、B.サブチリス(B.subtilis)のyvyD遺伝子の産物として、タンパク質YvyD(旧名「Hst23」)が同定された。この公開文献で説明されるように、非定型σB依存性の、ストレス誘導性且つ飢餓誘導性のパターンに加えて、yvyDは、σH依存性のプロモーター活性化を介したアミノ酸欠乏にも応答して誘導された。B.サブチリス(B.subtilis)の小(p)ppGpp合成酵素であるYjbM及びYwaCの生物学的機能を解明するための研究で、Tagami et al.(2012)は、B.サブチリス(B.subtilis)変異株(例えば三重変異体;ΔrelA ΔyjbM ΔywaC)の構造を説明しており、ここではYvyDタンパク質が70Sリボソームの二量体化に不可欠であることが示唆されている。より最近では、B.サブチリス(B.subtilis)100S (Bs100S)粒子のクライオEM構造により、YvyDと命名されたB.サブチリス(B.subtilis)冬眠促進因子(BsHPF)の結合部位が明らかになった(Beckert et al.,2017)。特開2009-225711号公報は、B.サブチリス(B.subtilis)のyvyD遺伝子を欠失させることを説明しており、yvyD遺伝子が目的のタンパク質の産生に直接関与しておらず、また、YvyDタンパク質は通常の工業的生産培地中で微生物を増殖させるために必要ではないと記載している。このため、野生型B.サブチリス(B.subtilis)の細胞中で、YvyDがストレス条件中に不活性なリボソームと結合して、通常はリボソームを保護するのではないかと仮定されている。
【0115】
本明細書で概説され、且つ下記の実施例に記載されるように、出願人は、驚くべきことに、yvyD遺伝子の過剰発現が、グラム陽性細菌細胞中の目的のタンパク質の産生の強化に特に関連していることを観測した。より具体的には、実施例1に記載されるように、出願人は、例示的なグラム陽性(バチルス(Bacillus))宿主細胞に導入するためのyvyD(遺伝子)過剰発現(組み込み)カセットを設計して構築した(例えば、
図1を参照)。例えば、組み込みカセットの断片は、yvzG-yvyD遺伝子間領域(intergene region)で組み込まれて、天然のyvyD遺伝子プロモーターを異種プロモーター(代替)と取り替える(置換する)ように設計された。
図1に示すように、yvzG-yvyD組み込みカセットは、spoVGのプロモーター領域(PspoVG;
図1A、「PspoVG-yvyD」)又はhbs(Phbs;
図1B、「Phbs-yvyD」)を含む。具体的には、
図7A~7Cに示すように、Phbsプロモーター領域配列(配列番号29)は、下流spoVG SD配列(配列番号25)と作動可能に連結した上流hbsプロモーター(Phbs)配列(配列番号22)を含む。
【0116】
実施例2は、yvyDを過剰発現するグラム陽性細菌細胞の構造について更に説明している。より具体的には、実施例1で説明したプロモータースワップ組み込みカセットを、例示的なレポータータンパク質をコードする遺伝子の2つのコピー(例えばプロテアーゼ-1、プロテアーゼ-2、又はプロテアーゼ-3をコードする遺伝子の2つのコピー)を含む組み換え型バチルス(bacillus)細胞に導入した。実施例3に示すように、本出願人は、実施例2で説明したバチルス(bacillus)株中でのレポータープロテアーゼ-1の産生を介したyvyD発現の増加に関してPspoVG-yvyDカセットを評価した。より具体的には、12、20、36、45、61、68、73、及び84時間の時点で、2×プロテアーゼ-1(対照)株及び2×プロテアーゼ-1(yvyD過剰発現;PspoVG-yvyD)株から試料アリコートを採取し、プロテアーゼ活性アッセイを実施して、プロテアーゼ-1の産生に対するspoVGプロモーター(PspoVG)由来のyvyD過剰発現の効果を判定した。プロテアーゼアッセイの結果(
図2)は、発酵の最後にプロテアーゼ-1産生が増加する傾向があり、また、yvyDの過剰発現のために68時間~約73時間で産生が著しく強化されることを示す。
【0117】
同様に、実施例3は、実施例2で説明したB.サブチリス(B.subtilis)株中でのレポータープロテアーゼ-2の産生を介したyvyD発現の増加に関してPspoVG-yvyDカセットを評価した。より具体的には、16、22、39、46、64、及び89時間の時点で、2×プロテアーゼ-2(対照)株及び2×プロテアーゼ-2(yvyD過剰発現;PspoVG-yvyD)株から試料アリコートを採取し、プロテアーゼ活性アッセイを実施して、プロテアーゼ-2の産生に対するspoVGプロモーター(PspoVG)由来のyvyD過剰発現の効果を判定した。プロテアーゼアッセイの結果(
図3)は、プロテアーゼ-2産生の増加が約39時間から開始して発酵の最後まで続く傾向があり、39時間及び46時間でyvyDの過剰発現のためにプロテアーゼ-2の産生が著しく強化されることを示す。
【0118】
実施例3で更に説明するように、本出願人は、実施例2で説明したB.サブチリス(B.subtilis)株中でのレポータープロテアーゼ-2の産生を介したyvyD発現の増加に関してPhbs-yvyDカセットを評価した。より具体的には、11、23、37、50、及び65時間の時点で、2×プロテアーゼ-2(対照)株及び2×プロテアーゼ-2(yvyD過剰発現;Phbs-yvyD)株から試料アリコートを採取し、プロテアーゼ活性アッセイを実施して、プロテアーゼ-2の産生に対するPhbsプロモーター(Phbs)由来のyvyD過剰発現の効果を判定した。プロテアーゼアッセイの結果(
図4)は、プロテアーゼ-2産生の増加が約37時間から開始して発酵の最後まで続く傾向があり、37時間でyvyDの過剰発現のためにプロテアーゼ-2の産生が著しく強化されることを示す。
【0119】
実施例3で更に示すように、本出願人は、実施例2で説明したB.サブチリス(B.subtilis)株中でのレポータープロテアーゼ-3の産生を介したyvyD発現の増加に関してPhbs-yvyDカセットを評価した。より具体的には、14、22、37、46、及び65のプロテアーゼ-3の産生に対するPhbsプロモーター(Phbs)由来の発現の時点で、2×プロテアーゼ-3(対照)株及び2×プロテアーゼ-3(yvyD過剰発現;Phbs-yvyD)株から試料アリコートを採取した。プロテアーゼアッセイの結果(
図5)は、プロテアーゼ-3産生の増加が約22時間から開始して発酵の最後まで続く傾向があり、22時間及び37時間でyvyDの過剰発現のためにプロテアーゼ-3の産生が著しく強化されることを示す。
【0120】
したがって、本明細書で説明するように、本開示の特定の実施形態は、yvyD遺伝子CDSの過剰発現によって、グラム陽性細菌細胞中の目的のタンパク質の産生が強化されるという、意外且つ予期せぬ観測結果と関連する。したがって、本開示の特定の態様は、天然のyvyDプロモーターよりも高い定常状態レベルのmRNAを産生するプロモーターからyvyD遺伝子CDSを発現する組み換え型グラム陽性細菌細胞/株に関連する。例えば、Zhu and Stuelke(2017)で概説されているように、その天然のプロモーターから発現したspoVGの定常状態のmRNAのレベルは、定常状態のyvyD mRNAのレベルよりも高い。
【0121】
具体的には、4つの異なる増殖条件下で実施されたZhu and Stulkeの研究(2017)の結果を下記の表1で再現しており、条件である、指数増殖+グルコース(「LBGexp」と標識)、発酵(「Ferm」と標識)、グルコース枯渇までの時間(「T」と標識)、及び指数増殖(「LBexp」と標識)を第1の縦列(表1)に示し、指定条件下でのyvyD、spoVG、及びhbsの定常状態mRNAレベルをそれぞれ第2~4の縦列(表1)に示す。より具体的には、53種の実験条件からのトランスクリプトームデータ点の80%超で、spoVG mRNAの定常状態レベルは、yvyD(hpf)mRNAレベルよりも高い(Zhu and Stulke,2017)。重要なことに、グラム陽性菌株の工業発酵に最も適した増殖条件は、spoVGの定常状態のmRNAレベルがyvyDよりも高いことを示す(表1)。
【表1】
【0122】
表1に示すように、hbsの定常状態のmRNAレベルではyvyD(hpf)に対して似た傾向が観測され、53種の実験条件からのhbs mRNAトランスクリプトームデータ点の85%超が、yvyDの定常状態のmRNAレベルよりも高い(Zhu and Stulke,2017)。したがって、表1で再現したデータでまとめられているように、LBGexp、Ferm、グルコース枯渇までの時間(T)、及びLBexpの増殖条件下では、hbs mRNAの定常状態のレベルはyvyDのレベルよりも高い。
【0123】
より具体的には、以下の実施例で説明するとおり、本出願人は、組み換え型グラム陽性細菌細胞におけるyvyDの過剰発現が、産生された3つの異なるレポータータンパク質の量を増加させることを実験によって実証した(例えば
図2~
図5を参照)。例えば、タンパク質産生に対する定常状態のyvyD mRNAの増加の影響を、定常状態mRNAの相対量を増加させるプロモータースワップ変異を用いた2つの異なるyvyD過剰発現カセット(PspoVG-yvyD;Phbs-yvyD)に関して実証した(表1)。同様に、本明細書で説明及び検討されるように、本出願人は、yvyDの定常状態のmRNAレベルを増加させるその他の手段が、目的のタンパク質の産生に対して同様の有益な影響を有することになると期待している。
【0124】
例えば、yvyD mRNAレベルを増加させる他の可能な手段としては、yvyDの定常状態のmRNAレベルを天然のyvyDの定常状態のmRNAレベルよりも増加させるために他の遺伝子由来のプロモーターを用いるyvyD過剰発現カセット、yvyDの定常状態のmRNAレベルを天然のyvyDの定常状態のmRNAレベルよりも増加させるために非バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)異種プロモーターを用いるyvyD過剰発現カセット、その天然プロモーター由来のyvyDのプラスミド系発現カセット(PyvyD-yvyD)、ゲノムへのPyvyD-yvyDの複数のコピーの組み込み、yvyD発現を増加させるゲノム領域へのyvyD遺伝子座の移動、yvyD mRNAの定常状態レベルを増加させる宿主の改変(例えば、mRNA分解経路)、mRNAの安定性に影響を与える転写yvyD内の変異、などが挙げられるが、これらに限定されない。更に、mRNA翻訳に影響を与える転写yvyD内の変異(例えば、より効率的なリボソーム結合部位)は、細胞内のYvyDレベルを増加させ、目的のタンパク質の産生を増加させると期待されている。
【0125】
したがって、いかなる理論、機構、又は作用機序にも束縛されることを望むものではないが、本出願人は、本明細書で、YvyDタンパク質レベルの増加が、標的である目的のタンパク質の産生を強化すると考察している。より具体的には、実施例で示されるとおり、増加したレベルのYvyDを発現する組み換え型グラム陽性細胞は、(対照の細胞と比較して)増加した量のレポータータンパク質を産生し、これは好適な条件下で培養したときに産生されるレポータータンパク質の比生産性(Qp)の増加及び炭素利用率の増加を実証するものである。特定の1つ以上の態様又は実施形態では、実施例に記載された目的のタンパク質の産生の強化(
図2~
図5)は、yvyD発現の増加に起因する少なくとも2つの考えられる機構によって説明することが可能である。第1に考えられる機構では、YvyDが、YvyDリボソーム二量体化機能を介してリボソーム関連タンパク質の安定性を促進する(Feaga et al.,2020)。第2に考えられる機構では、遊離リボソームのプールが、(YvyD)リボソーム二量体化によって減少する(例えば、高度に発現した目的の遺伝子(GOI)mRNA及び/又は効率的なリボソーム結合部位を備えるGOI mRNAの翻訳を促進する、通常の(天然の)YvyDレベルよりも高いYvyDレベルを介して。
【0126】
特定の他の1つ以上の態様又は実施形態では、グラム陽性細菌yvyD遺伝子が、配列番号23のB.サブチリス(B.subtilis)yvyD遺伝子に対する配列相同性を含む。特定の他の実施形態では、過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号23のB.サブチリス(B.subtilis)yvyD遺伝子に対する配列相同性を含み(例えば、配列番号23と少なくとも約50%の配列同一性を含む)、機能性YvyDタンパク質をコードする。他の実施形態では、過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号26の天然のB.サブチリス(B.subtilis)YvyDタンパク質に対する配列相同性を含むYvyDタンパク質をコードする。特定の実施形態では、過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号26と少なくとも約50%の配列同一性を含む機能性YvyDタンパク質をコードする。
【0127】
関連する態様では、グラム陽性細菌yvyD遺伝子(又はyvyD遺伝子ホモログ)は、配列番号26のYvyDタンパク質(又はそのYvyDホモログ)に対する配列相同性を含む機能的「一般ストレス因子タンパク質」(又は「リボソーム冬眠促進因子」)をコードする。例えば上記で概説したように、特定の細菌において休眠細菌中のリボソーム維持のための機構が特性決定されており(Franklin et al.,2020)、これはリボソーム調節因子(RMF)、冬眠促進因子(HPF)、及びHPFパラログ(YfiA)などの「リボソーム付属タンパク質」を含んでおり、いくつかの異なる細菌種に関してその活性部位にHPF及び/又はRMFを含むリボソームの構造が解明している。
【0128】
特定の実施形態では、グラム陽性細菌yvyD遺伝子(ホモログ)は、配列アラインメントによって同定され得る。例えば、天然のB.サブチリス(B.subtilis)YvyDタンパク質(アミノ酸)の配列が
図6に示されており(配列番号26)、ここで完全長のタンパク質配列は保存されたN末端ドメイン(下線の残基;RaiAスーパファミリードメイン)及び保存されたC末端ドメイン(太字の残基;リボソームS30AE_Cスーパファミリードメイン)を含む。具体的には、B.サブチリス(B.subtilis)YvyDタンパク質(配列番号26)中に存在する保存されたN末端ドメインのRaiAスーパファミリードメインが配列番号27に記載されており、B.サブチリス(B.subtilis)YvyDタンパク質(配列番号26)中に存在する保存されたC末端ドメインのリボソームS30AE_Cスーパファミリードメインが配列番号28に記載されている。
【0129】
例えば、「リボソーム関連阻害剤A」(RaiA)タンパク質は、リボソームサブユニット界面に結合し、リボソームA部位に対するアミノアシルtRNAの結合を妨げることによって翻訳を停止するストレス応答タンパク質として知られており、RaiAのフォールドは、二本鎖RNA結合ドメイン(dsRBD)と構造が似ている。同様に、リボソームS30AE_Cスーパファミリードメインは、リボソームストレス応答タンパク質のC末端で生じることが多い(例えば、Sigma 54調節/S30EAリボソームタンパク質)。
【0130】
このため、特定の態様では、グラム陽性細菌yvyD遺伝子は、配列番号27のB.サブチリス(B.subtilis)N末端RaiAスーパファミリードメインに対して少なくとも約50%~100%の同一性を含むYvyDタンパク質をコードする。他の実施形態では、グラム陽性細菌yvyD遺伝子は、配列番号28のB.サブチリス(B.subtilis)C末端リボソームS30AE_Cスーパファミリードメインに対して少なくとも約50%~100%の同一性を含むYvyDタンパク質をコードする。特定の他の実施形態では、グラム陽性細菌yvyD遺伝子は、配列番号27に対して少なくとも約50%~100%の同一性及び配列番号28に対して少なくとも約50%~100%の同一性を含むYvyDタンパク質をコードする。
【0131】
III.微生物宿主細胞
上記で概説したように、特定の実施形態は、目的のタンパク質などをコードする遺伝子を発現する組み換え型微生物(宿主)細胞に関連する。特定の態様では、グラム陽性細菌細胞(株)としては、バチルス綱(Bacilli)、クロストリジウム綱(Clostridia)、及びモリクト綱(Mollicutes)(例えば、アエロコックス科(Aerococcaceae)、カルノバクテリウム科(Carnobacteriaceae)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、ラクトバチルス科(Lactobacillaceae)、ロイコノストック科(Leuconostocaceae)、オシロスピラ科(Oscillospiraceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)を含むラクトバチルス目(Lactobacillales)、及びアリシクロバチルス科(Alicyclobacellaceae)、バチルス科(Bacillaceae)、カリオファノン科(Caryophanaceae)、リステリア科(Listeriaceae)、パニバチルス科(Paenibacillaceae)、プラノコッカス科(Planococcaceae)、スポロラクトバチルス科(Sporolactobacillaceae)、スタフィロコッカス科(Staphylococcaceae)、サーモアクチノミセス科(Thermoactinomycetaceae)、ツリシバクター科(Turicibacteraceae)を含むバチルス目(Bacillales)を含む)が挙げられる。特定の態様では、グラム陽性細菌細胞(株)としては、ストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。
【0132】
バチルス科の種としては、アルカリバチルス属(Alkalibacillus)、アンフィバチルス属(Amphibacillus)、アノキシバチルス属(Anoxybacillus)、バチルス属(Bacillus)、カルダルカリバチルス属(Caldalkalibacillus)、セラシルバチルス属(Cerasilbacillus)、エグジゴバクテリウム属(Exiguobacterium)、フィロバチルス属(Filobacillus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、グラチリバチルス属(Gracilibacillus)、ハロバチルス(Halobacillus)、ハロラクチバチルス(Halolactibacillus)、ジョーガリバチルス属(Jeotgalibacillus)、レンチバチルス属(Lentibacillus)、マリニバチルス属(Marinibacillus)、オーシャノバチルス属(Oceanobacillus)、オルニチニバチルス属(Ornithinibacillus)、パラリオバチルス属(Paraliobacillus)、パウシサリバチルス属(Paucisalibacillus)、ポンチバチルス属(Pontibacillus)、ポンチバチルス属(Pontibacillus)、サッカロコッカス属(Saccharococcus)、サリバチルス属(Salibacillus)、サリニバチルス属(Salinibacillus)、テニューイバチルス属(Tenuibacillus)、タラソバチルス属(Thalassobacillus)、ウレイバチルス属(Ureibacillus)、ヴァージバチルス属(Virgibacillus)が挙げられる。
【0133】
本明細書で使用するとき、「バチルス(Bacillus)属」としては、当業者には公知である「バチルス(Bacillus)」属内の全ての種が含まれ、例えば、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシィ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)、及びB.チューリンゲンシス(B.thuringiensis)が挙げられるが、これらに限定されない。バチルス(Bacillus)属が分類学的再編成を受け続けていることは認識されている。したがって、この属は、再分類されている種、例えば、以下に限定されないが、現在、「ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)」と称されている「B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)」などの生物を含むことが意図されている。
【0134】
特定の態様では、バチルス属(Bacillus sp.)の細胞としては、B.アシディセラー(B.acidiceler)、B.アシディコーラ(B.acidicola)、B.アシドカルダリウス(B.acidocaldarius)、B.アシドテレストリス(B.acidoterrestris)、B.アエオリウス(B.aeolius)、B.アエロフィルス(B.aerophilus)、B.アガラドハエレンス(B.agaradhaerens)、B.アグリ(B.agri)、B.アイディンゲンシス(B.aidingensis)、B.アキバイ(B.akibai)、B.アルカロフィルス(B.alcalophilus)、B.アルギコーラ(B.algicola)、B.アルギノリチクス(B.alginolyticus)、B.アルカリジアゾ-トロフィカス(B.alkalidiazo-trophicus)、B.アルカリニトリリクス(B.alkalinitrilicus)、B.アルカリテルリス(B.alkalitelluris)、B.アルチツジニス(B.altitudinis)、B.アルベアユエンシス(B.alveayuensis)、B.アルベイ(B.alvei)、B.アミロリチカス(B.amylolyticus)、B.アネウリニリティカス(B.aneurinilyticus)、B.アネウリノリニクス(B.aneurinolyticus)、B.アントラシア(B.anthracia)、B.アクイマリス(B.aquimaris)、B.アレノシ(B.arenosi)、B.アルセニシセレナティス(B.arseniciselenatis)、B.アルセニコセレナティス(B.arsenicoselenatis)、B.アルセニカス(B.arsenicus)、B.アーヴィ(B.arvi)、B.アサヒイ(B.asahii)、B.アトロファエウス(B.atrophaeus)、B.アウランティアカス(B.aurantiacus)、B.アキサルクィエンシス(B.axarquiensis)、B.アゾトフィキサンス(B.azotofixans)、B.アゾトフォルマンス(B.azotoformans)、B.バディウス(B.badius)、B.バーバリカス(B.barbaricus)、B.バタビエンシス(B.bataviensis)、B.ベイジンゲンシス(B.beijingensis)、B.ベンゾボランス(B.benzoevorans)、B.ボゴリエンシス(B.bogoriensis)、B.ボロニフィルス(B.boroniphilus)、B.ボルステレニス(B.borstelenis)、B.ブタノリボランス(B.butanolivorans)、B.カーボニフィルス(B.carboniphilus)、B.セセンベンシス(B.cecembensis)、B.セルロシリティカス(B.cellulosilyticus)、B.セントロスポラス(B.centrosporus)、B.チャガノレンシス(B.chagannorensis)、B.チティノリティカス(B.chitinolyticus)、B.コンドロイティナス(B.chondroitinus)、B.チョウシネンシス(B.choshinensis)、B.キビ(B.cibi)、B.サーキュランス(B.circulans)、B.クラルキィ(B.clarkii)、B.クラウシィ(B.clausii)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.コアウイレンシス(B.coahuilensis)、B.コーニー(B.cohnii)、B.カーディアノリティカス(B.curdianolyticus)、B.シクロヘプタニカス(B.cycloheptanicus)、B.デシシフロンディス(B.decisifrondis)、B.デコロラチオニス(B.decolorationis)、B.ジプロサウリ(B.dipsosauri)、B.ドレンテンシス(B.drentensis)、B.エダフィカス(B.edaphicus)、B.エヒメンシス(B.ehimensis)、B.エンドフィティカス(B.endophyticus)、B.ファラギニス(B.farraginis)、B.ファスティディオサス(B.fastidiosus)、B.ファルマス(B.firmus)、B.プレクサス(B.plexus)、B.ホラミニス(B.foraminis)、B.フォルディ(B.fordii)、B.フォルモサス(B.formosus)、B.フォルティス(B.fortis)、B.フマリオリ(B.fumarioli)、B.フニクルス(B.funiculus)、B.フシフォルミス(B.fusiformis)、B.ガラクトフィラス(B.galactophilus)、B.ガラクトシジリティカス(B.galactosidilyticus)、B.ゲラチニ(B.gelatini)、B.ギブソニ(B.gibsonii)、B.ギンセンギ(B.ginsengi)、ギンセンギフミ、B.グロビスポラス(B.globisporus)、B.グロビスポラス亜種グロビスポラス(B.globisporus subsp.globisporus)、B.グロビスポラス亜種マリナス(B.globisporus subsp.marinus)、B.グルカノライチカス(B.glucanolyticus)、B.ゴルドナエ(B.gordonae)、B.ハルマパラス(B.halmapalus)、B.ハロアルカリフィラス(B.haloalkaliphilus)、B.ハロデニトリフィカンス(B.halodenitrificans)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.ハロフィラス(B.halophilus)、B.ヘミセルロシリティカス(B.hemicellulosilyticus)、B.ヘルベルステイネンシス(B.herbersteinensis)、B.ホリコシ(B.horikoshii)、B.ホルチ(B.horti)、B.ヘミ(B.hemi)、B.ハワジンポエンシス(B.hwajinpoensis)、B.イドリエンシス(B.idriensis)、B.インディカス(B.indicus)、B.インファンティス(B.infantis)、B.インフェルナス(B.infernus)、B.インソリタス(B.insolitus)、B.イサベリアエ(B.isabeliae)、B.ジェオトガリ(B.jeotgali)、B.カウストフィラス(B.kaustophilus)、B.コベンシス(B.kobensis)、B.コレエンシス(B.koreensis)、B.クリベンシス(B.kribbensis)、B.クルルウィシアエ(B.krulwichiae)、B.ラエボラクティカス(B.laevolacticus)、B.ラルバエ(B.larvae)、B.ラテロスポルス(B.laterosporus)、B.ラウタス(B.lautus)、B.レヘンシス(B.lehensis)、B.レンチモルバス(B.lentimorbus)、B.レンタス(B.lentus)、B.リトラリス(B.litoralis)、B.ルシフェレンシス(B.luciferensis)、B.マカウエンシス(B.macauensis)、B.マセランス(B.macerans)、B.マクアリエンシス(B.macquariensis)、B.マシアエ(B.macyae)、B.マラシテンシス(B.malacitensis)、B.マンナニライティカス(B.mannanilyticus)、B.マリナス(B.marinus)、B.マリスフラビ(B.marisflavi)、B.マリスモルツイ(B.marismortui)、B.マシリエンシス(B.massiliensis)、B.メタノリカス(B.methanolicus)、B.ミグラナス(B.migulanus)、B.モジャベンシス(B.mojavensis)、B.ムシラギノサス(B.mucilaginosus)、B.ムラリス(B.muralis)、B.ムリマルティニ(B.murimartini)、B.ムコイデス(B.mycoides)、B.ナガノエンシス(B.naganoensis)、B.ネアルソニ(B.nealsonii)、B.ネイデイ(B.neidei)、B.ニアベンシス(B.niabensis)、B.ニアシーニ(B.niacini)、B.ノバリス(B.novalis)、B.オデッセイ(B.odysseyi)、B.オクヘンシス(B.okhensis)、B.オクヒデンシス(B.okuhidensis)、B.オレロニウス(B.oleronius)、B.オシメンシス(B.oshimensis)、B.パブリ(B.pabuli)、B.パリダス(B.pallidus)、B.パリダス(非合法名(illeg.))、B.パナシテラエ(B.panaciterrae)、B.パントテンティカス(B.pantothenticus)、B.パラブレビス(B.parabrevis)、B.パステウリ(B.pasteurii)、B.パタゴニエンシス(B.patagoniensis)、B.ペオリアエ(B.peoriae)、B.プラコルティディス(B.plakortidis)、B.ポチェオネンシス(B.pocheonensis)、B.ポリゴニ(B.polygoni)、B.ポリミキサ(B.polymyxa)、B.ポピリアエ(B.popilliae)、B.シューダルカリフィラス(B.pseudalcaliphilus)、B.シュードフィルマス(B.pseudofirmus)、B.シュードミコイデス(B.pseudomycoides)、B.サイクロデュランス(B.psychrodurans)、B.サイクロフィラス(B.psychrophilus)、B.サイクロサッカロライティカス(B.psychrosaccarolyticus)、B.サイクロトレランス(B.psychrotolerans)、B.プルビファシエンス(B.pulvifaciens)、B.パイクナス(B.pycnus)、B.キングダオネンシス(B.qingdaonensis)、B.レウスゼリ(B.reuszeri)、B.ランス(B.runs)、B.サフェンシス(B.safensis)、B.サラリウス(B.salarius)、B.サレキシゲンス(B.salexigens)、B.サリフィラス(B.saliphilus)、B.シュレゲリ(B.schlegelii)、B.セレナタルセナティス(B.selenatarsenatis)、B.セレニトリレデュセンス(B.selenitrireducens)、B.セオハエアネンシス(B.seohaeanensis)、B.シャクレトニ(B.shackletonii)、B.シルベストリス(B.silvestris)、B.シンプレックス(B.simplex)、B.シラリス(B.siralis)、B.スミチ(B.smithii)、B.ソリ(B.soli)、B.ソノレンシス(B.sonorensis)、B.スファエリカス(B.sphaericus)、B.スポロサーモデュランス(B.sporothermodurans)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.ストラトスフェリカス(B.stratosphericus)、B.サブテラネウス(B.subterraneus)、B.サブチリス亜種スピジゼニ(B.s.subsp.spizizenii)、B.サブチリス亜種サブチリス(B.s.subsp.subtilis)、B.タエアネンシス(B.taeanensis)、B.テクイレンシス(B.tequilensis)、B.サーマンタルクチカス(B.thermantarcticus)、B.サーモアエロフィラス(B.thermoaerophilus)、B.サーモアミロボルランス(B.thermoamylovorans)、B.サーモアンタルクティカス(B.thermoantarcticus)、B.サーモカテヌラタス(B.thermocate
nulatus)、B.サーモクロアカエ(B.thermocloacae)、B.サーモデニトリフィカンス(B.thermodenitrificans)、B.サーモグルコシダシウス(B.thermoglucosidasius)、B.サーモレオボランス(B.thermoleovorans)、B.サーモルバー(B.thermoruber)、B.サーモスファエリカス(B.thermosphaericus)、B.チアミノライティカス(B.thiaminolyticus)、B.チオパランス(B.thioparans)、B.チューリンゲンシス(B.thuringiensis)、B.トゥシアエ(B.tusciae)、B.バリダス(B.validus)、B.バリスモルティス(B.vallismortis)、B.ベデリ(B.vedderi)、B.ベレゼンシス(B.velezensis)、B.ビエトナメンシス(B.vietnamensis)、B.ビレティ(B.vireti)、B.ブルカニ(B.vulcani)、B.ワコエンシス(B.wakoensis)、及びB.ヴェイヘンステファネンシス(B.weihenstephanensis)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
IV.組み換え型ポリヌクレオチド及び分子生物学
yvyD過剰発現ポリヌクレオチドカセットを構築するのに好適な核酸(DNA)制御配列、調節配列などとしては、プロモーター配列及びその機能的部分(すなわち、核酸配列の発現に対して影響を及ぼすのに十分な部分)が挙げられる。改変のための他の制御配列としては、リーダー配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター、転写活性化因子などが挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、プロモーター領域配列は、一般に、グラム陽性細菌細胞中で機能的であり、その野生型yvyDプロモーター領域(配列番号24)由来のyvyD遺伝子CDSの発現と比較してyvyD遺伝子CDSを過剰発現するように選択される。
【0136】
例えば、バチルス(Bacillus)細胞中で遺伝子発現を駆動するのに有用なプロモーターとしては、B.サブチリス(B.subtilis)アルカリプロテアーゼ(aprE)プロモーター、B.サブチリス(B.subtilis)のα-アミラーゼプロモーター(amyE)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)のα-アミラーゼプロモーター(amyL)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)のα-アミラーゼプロモーター、B.サブチリス(B.subtilis)由来の天然プロテアーゼ(nprE)プロモーター、変異体aprEプロモーター、又はB.リケニフォルミス(B.licheniformis)若しくはその他の関連するバチルス属(Bacilli)由来の任意の他のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。バチルス属(Bacillus)細胞において様々な活性(プロモーター強度)を有するプロモーターライブラリーをスクリーニング及び作製する方法は、国際公開第2002/14490号パンフレットに記載されている。
【0137】
そのような調節配列又は制御配列の例は、プロモーター配列又はその機能的部分(すなわち、核酸配列の発現に十分に影響を及ぼす部分)であり得る。改変のための他の制御配列としては、リーダー配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター、転写活性化因子などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0138】
バチルス属(Bacillus)宿主細胞。したがって、特定の態様は、目的のタンパク質をコードする下流(3’)核酸配列(poi)と作動可能に連結した改変(タンパク質)シグナル配列をコードする下流核酸配列(ss)と作動可能に連結した上流(5’)プロモーター(pro)配列を含むポリヌクレオチド(例えば発現カセット)に関連する。
【0139】
本開示の特定の実施形態は、単離核酸(ポリヌクレオチド)を対象とする。したがって、特定の態様は、本開示のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、プラスミド、ベクター、発現カセットなどに関連する。同様に、他の実施形態は、1つ以上の異種タンパク質を発現する組み換え型微生物細胞(株)を対象とする。より具体的には、特定の実施形態では、本開示の遺伝子、ポリヌクレオチド、オープンリーディングフレームなどが遺伝子改変される。特定の態様では、遺伝子改変としては、(a)遺伝子、遺伝子コード配列(CDS)、オープンリーディングフレーム(ORF)内の1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、又は遺伝子(又は遺伝子CDS)の転写若しくは翻訳に必要な調節エレメント内の1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子の下方制御(例えば干渉RNA)、及び/又は(g)本明細書に開示される任意の1つ以上の遺伝子若しくはポリヌクレオチドのランダム突然変異誘発が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
当業者であれば、細菌細胞(例えば大腸菌(E.coli)、バチルス属(Bacillus sp.)など)、糸状菌細胞(例えば、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)など)、酵母細胞(例えばサッカロマイセス属)、及び同類のもの(すなわち、微生物細胞)にポリヌクレオチド配列を導入するための好適な方法をよく承知している。
【0141】
上記で概ね特定したように、本開示の特定の実施形態は、微生物宿主細胞に対して異種である1つ以上の目的のタンパク質を発現、産生、及び/又は分泌させることを対象とする。したがって、本開示は一般に、組み換え遺伝学の分野におけるルーチンの手法に頼っている。本開示における一般的な使用方法を開示する基本的なテキストとしては、Sambrook et al.,(1989;2011;2012);Kriegler(1990)及びAusubel et al.,(1987;1994)が挙げられる。
【0142】
特定の実施形態では、本開示は、YvyDタンパク質をコードする遺伝子CDSを含む組み換え型(改変)核酸に関する。例えば、特定の態様では、組み換え型核酸は、YvyDタンパク質の発現に好適なポリヌクレオチド発現カセットである。
【0143】
特定の他の実施形態では、組み換え型核酸(ポリヌクレオチド)は、1つ以上の選択可能マーカーを含む。グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、糸状菌、及び酵母で使用するための選択可能マーカーは、当該技術分野で一般的に知られている。したがって、特定の実施形態では、YvyDタンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物、及び/又は目的のタンパク質(POI)をコードするポリヌクレオチド構築物は、それに作動可能に連結された、選択可能マーカーをコードする核酸配列を含む。
【0144】
他の実施形態では、YvyDタンパク質をコードする遺伝子又は遺伝子CDSを含む核酸は、作動可能に連結された調節又は制御配列を更に含む。調節配列又は制御配列の例は、プロモーター配列又はその機能的部分(すなわち、核酸配列の発現に十分に影響を及ぼす部分)であり得る。他の制御配列としては、リーダー配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター、転写活性化因子などが挙げられるがこれらに限定されない。このため、特定の実施形態では、組み換え型(改変)ポリヌクレオチドは、YvyDタンパク質、又は本開示のPOIをコードする遺伝子コード配列(CDS)の発現を駆動する上流(5’)プロモーター(pro)配列を含む。より具体的には、特定の実施形態では、プロモーターは、微生物宿主細胞中で活性(機能的)である構成的プロモーター又は誘導プロモーターである。例えば、当業者(one of sill in the art)は、微生物発現宿主細胞中で目的の遺伝子の発現を駆動することが可能な任意の好適なプロモーターを使用することができる。このため、特定の態様では、本開示の組み換え型核酸は、5’(上流)であり、YvyDタンパク質をコードする核酸配列(遺伝子CDS)と作動可能に連結したプロモーター(pro)配列(例えば、5’-[pro]-[遺伝子CDS]-3’)を含む。
【0145】
特定の他の態様では、組み換え型核酸(例えば、発現カセット)は、YvyDタンパク質をコードする(又はPOIをコードする)下流(3’)の核酸配列(遺伝子CDS)と作動可能に連結した上流(5’)プロモーター(pro)配列を含み、下流でこれと作動可能に連結したターミネーター(term)配列を更に含む。例えば、特定の態様では、本開示の組み換え型核酸は、5’(上流)であり、下流のターミネーター(term)配列と作動可能に連結した、YvyDタンパク質(又はPOI)をコードする核酸配列(遺伝子CDS)と作動可能に連結したプロモーター(pro)配列(例えば、5’-[pro]-[遺伝子CDS]-[term]-3’)を含む。
【0146】
本開示の微生物宿主細胞中で目的の遺伝子の発現を駆動するための好適なプロモーターは、当該技術分野で一般的に知られている。例えば、例示的なバチルス属(Bacillus sp.)プロモーターとしては、tacプロモーター配列、β-ラクタマーゼプロモーター配列、aprEプロモーター配列、groESプロモーター配列、ftsHプロモーター配列、tufAプロモーター配列、secDFプロモーター配列、minCプロモーター配列、spoVGプロモーター配列、vegプロモーター配列、hbsプロモーター配列、アミラーゼプロモーター配列、P43プロモーター配列などが挙げられるが、これらに限定されず、例示的な糸状菌プロモーターとしては、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)プロモーター(例えば、セロビオヒドラーゼプロモーター、エンドグルカナーゼプロモーター、β-グルコシダーゼプロモーター、キシラナーゼプロモーター、グルコアミラーゼプロモーター)、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)プロモーター(例えば、trpCゼプロモーター、グルコアミラーゼプロモーター)などが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、当業者に既知の任意の好適なプロモーターが本発明での用途を見出されているため、本開示がいかなる特定のプロモーターにも限定されることは意図していない。
【0147】
このため、特定の他の実施形態は、POIを発現する微生物宿主細胞を培養すること(発酵させること)であって、発現したPOIは培養(発酵)ブロス中に分泌される、ことに関連する。例えば、特定の他の実施形態では、組み換え型核酸は、目的のタンパク質をコードする下流(3’)核酸配列(GOI)と作動可能に連結したタンパク質シグナル配列をコードする下流(3’)核酸配列(ss)と作動可能に連結した上流(5’)異種プロモーター(pro)配列を含む(例えば、5’-[pro]-[ss]-[GOI]-3’)。
【0148】
最適な微生物細胞中で機能的である任意の好適な(タンパク質)シグナル配列(シグナルペプチド)を、目的の成熟タンパク質の分泌(輸送)に使用することができる。シグナル配列は、一般的には、前駆体又は成熟タンパク質配列のN末端に位置する。例えば、使用に好適なシグナル配列としては、分泌したプロテアーゼ、ペプチダーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、アラビナーゼ、グルカナーゼ、キトサナーゼ、リアーゼ、キシラナーゼ、ヌクレアーゼ、ホスファターゼ、輸送・結合タンパク質などに由来するシグナル配列が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、シグナル配列は、aprEシグナル配列、nprEシグナル配列、vprシグナル配列、bglCシグナル配列、bglSシグナル配列、sacBシグナル配列、アミラーゼシグナル配列、異種シグナル配列、及び/又は合成シグナル配列から選択される。
【0149】
したがって、特定の実施形態では、本開示の微生物宿主細胞を形質転換するために、微生物細胞の形質転換のための標準的な手法(当業者に周知されている)が使用される。したがって、宿主細胞へのDNA構築物又はベクターの導入法には、形質転換、エレクトロポレーション、核マイクロインジェクション、形質導入、トランスフェクション(例えば、リポフェクション媒介及びDEAE-デキストリン媒介トランスフェクション)、リン酸カルシウムDNA沈澱物とのインキュベーション、DNA被覆微粒子銃を用いる高速銃、遺伝子銃又はバイオリスティック形質転換、プロトプラスト融合などの手法が含まれる。一般的な形質転換技術は、当技術分野において公知である。
【0150】
特定の実施形態では、異種遺伝子、ポリヌクレオチド、又はORFは、複製及び/又は発現のために微生物(宿主)細胞に形質転換される前に、中間ベクターにクローニングされる。これらの中間ベクターは、例えば、プラスミド又はシャトルベクターなどの原核生物ベクターであり得る。このため、発現ベクター/構築物は、通常、異種配列の発現に必要な全ての追加のエレメントを含む転写ユニット又は発現カセットを含有する。例えば、典型的な発現カセットは、目的のタンパク質をコードする異種核酸配列に作動可能に連結した5’プロモーターを含有し、転写物、リボソーム結合部位、及び翻訳終結の効率的なポリアデニル化に必要な配列シグナルを更に含み得る。カセットの追加のエレメントには、エンハンサーと、ゲノムDNAが構造遺伝子として使用される場合には、機能性スプライスドナー部位及びアクセプター部位を有するイントロンが含まれ得る。
【0151】
遺伝子情報を細胞に輸送するために使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではない。真核細胞又は原核細胞における発現に使用される、従来のベクターのいずれも使用し得る。標準的な細菌発現ベクターには、バクテリオファージλ及びM13、並びにpBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、MBP、GST、及びLacZなどの融合発現系が含まれる。便宜的な単離方法を提供するために、組み換え型タンパク質にエピトープタグ、例えば、c-mycを添加することもできる。発現ベクター中に含むことができるエレメントには、また、レプリコン、組み換え型プラスミドを保有する細菌の選択を可能にする抗生物質耐性をコードする遺伝子、又は異種配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域における固有の制限部位があり得る。
【0152】
本発明の形質転換方法は、形質転換ベクターの全部又は一部の、微生物細胞ゲノムへの安定な組み込みをもたらし得る。しかしながら、自己複製する染色体外形質転換ベクターの維持をもたらす形質転換も考えられる。外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入する既知の手順はいずれも使用し得る。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション法、ポリブレン法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、バイオリスティックス法、リポソーム法、マイクロインジェクション法、血漿ベクター法、ウイルスベクター法、及び宿主細胞にクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNA又は他の外来遺伝子物質を導入するための任意の他の方法の使用が含まれる(例えば、上記のSambrook et al.を参照されたい)。アグロバクテリウム媒介トランスフェクション法も有用である。使用する特定の遺伝子工学の手順が、異種遺伝子を発現し得る宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子を首尾よく導入し得ることのみが必要である。
【0153】
発現ベクターが細胞に導入された後、トランスフェクトされた細胞は、目的の遺伝子の発現に有利な条件下で培養される。形質転換細胞の大きなバッチは、本明細書に記載されるとおりに培養可能である。最後に、標準の技法を用いてブロス及び/又は生成物を培養物から回収する。したがって、本明細書の開示は、所望のタンパク質の発現及び分泌を提供する。
【0154】
本開示の微生物細胞は、本明細書に記載される1つ以上の内因性遺伝子及び/又は1つ以上の導入(異種)遺伝子の遺伝子改変を含み得る。例えば、微生物細胞は、例えば挿入、破壊、置換、又は欠失などの当該技術分野で周知される方法を用いて内因性遺伝子の発現を低減又は排除する(例えば、プロテアーゼをコードする遺伝子を低減又は排除するように構築され得る。改変又は不活化対象の遺伝子部分は、例えば、コード領域、又はコード領域を発現させるために必要とされる調節エレメントであってよい。
【0155】
特定の実施形態では、本開示の改変細胞は、その転写又は翻訳に必要とされる遺伝子又は調節エレメント内の1つ以上のヌクレオチドを導入するか、置換するか、又は除去することによって構築される。例えば、停止コドンの導入、開始コドンの除去、又はオープンリーディングフレームのフレームシフトを生じさせるように、ヌクレオチドを挿入又は除去し得る。このような改変は、当該技術分野で知られた方法に従って、部位特異的変異誘発又はPCR生成変異誘発によって達成され得る。
【0156】
別の実施形態では、改変細胞は、遺伝子変換プロセスによって構築される。例えば、遺伝子変換法では、遺伝子に対応する核酸配列をインビトロで変異させて欠陥のある核酸配列を生成し、次にこの核酸配列を親細胞に形質転換して欠陥のある遺伝子を生成する。相同組み換えによって、欠陥のある核酸配列が内因性遺伝子に取って代わる。欠陥のある遺伝子又は遺伝子断片が、欠陥のある遺伝子を含有する形質転換体の選択に使用され得るマーカーもコードすることが望ましい場合がある。例えば、欠陥のある遺伝子は、選択可能マーカーと会合している非複製プラスミド又は感温性プラスミド上に導入され得る。プラスミドを組み込むための選択は、プラスミド複製を許容しない条件下でそのマーカーを選択することによって実施される。遺伝子置換をもたらす第2の組み換え事象の選択は、選択可能マーカーの消失及び変異遺伝子の獲得に関してコロニーを調査することによって実施される。或いは、欠陥のある核酸配列は、以下に記載するように、遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換又は欠失を含有し得る。
【0157】
他の実施形態では、改変細胞は、遺伝子の核酸配列と相補的であるヌクレオチド配列を使用する確立されたアンチセンス技術によって構築される。より具体的には、細胞による遺伝子の発現は、この遺伝子の核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を導入することにより低減(下方制御)又は排除することができ、これは細胞内で転写され得、細胞内で産生されるmRNAにハイブリダイズすることができる。したがって、相補的アンチセンスヌクレオチド配列がmRNAにハイブリダイズできる条件下では、翻訳されるタンパク質量は低減又は排除される。そのようなアンチセンス法としては、以下に限定されないが、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられ、これらの全てが当業者に周知である。
【0158】
他の実施形態では、改変細胞は、CRISPR-Cas9編集によって産生/構築される。例えば、目的の遺伝子は、DNA上の標的配列にエンドヌクレアーゼを動員するガイドRNA(例えば、Cas9)及びCpf1又はガイドDNA(例えば、NgAgo)に結合することによってそれらの標的DNAを見出す核酸誘導型エンドヌクレアーゼによって破壊(又は欠失若しくはダウンレギュレート)されてもよく、ここで、エンドヌクレアーゼは、DNA中で一本鎖又は二本鎖切断を生成することができる。この標的化DNA切断は、DNA修復のための基質となり、遺伝子を破壊又は欠失させるために提供された編集鋳型と再結合し得る。例えば、核酸誘導型エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子(この目的のためには、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9)、又はCas9ヌクレアーゼをコードするコドン最適化遺伝子は、微生物細胞内で活性なプロモーター及び微生物細胞内で活性なターミネーターに作動可能に連結され、これにより微生物細胞Cas9発現カセットを生成する。同様に、目的の遺伝子に固有の1つ以上の標的部位は、当業者により容易に同定される。例えば、目的の遺伝子内の標的部位に向けられたgRNAをコードするDNA構築物を構築するためには、可変ターゲティングドメイン(VT)は、そのヌクレオチドが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9(CER)に対するCas9エンドヌクレアーゼ認識ドメインをコードするDNAに融合している、(PAM)プロトスペーサー隣接モチーフ(TGG)の5’側である標的部位のヌクレオチドを含むであろう。VTドメインをコードするDNAとCERドメインをコードするDNAとの組み合わせは、それによりgRNAをコードするDNAを生成する。したがって、gRNAのための微生物細胞発現カセットは、gRNAをコードするDNAを、微生物細胞中で活性なプロモーター及び微生物細胞中で活性なターミネーターと作動可能に連結することによって生成される。Cas9発現カセット、gRNA発現カセット及び編集鋳型は、多数の様々な方法(例えば、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、生来のコンピテンス又は誘導されたコンピテンス)を使用して細胞に同時に送達され得る。形質転換細胞は、遺伝子座をフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて増幅させることにより、標的遺伝子座をPCR増幅させることによってスクリーニングされる。これらのプライマーは、野生型遺伝子座又はRGENによって編集されている改変遺伝子座を増幅させることができる。
【0159】
更に他の実施形態では、改変細胞は、化学的変異誘発及び転位を含むがそれらに限定されない当該技術分野で周知の方法を使用したランダム変異誘発又は特異的変異誘発によって構築される。遺伝子の改変は、親細胞に突然変異誘発を受けさせること、及びその中で遺伝子の発現が低減又は排除されている変異細胞についてスクリーニングすることによって実施され得る。変異誘発は、特異的であってもランダムであってもよいが、例えば、好適な物理的若しくは化学的変異誘発剤の使用によって、好適なオリゴヌクレオチドの使用によって、又はDNA配列をPCR生成変異誘発に供することによって実施され得る。更に、変異誘発は、これらの変異誘発法の任意の組み合わせを使用することにより実施され得る。本発明の目的に好適な物理的又は化学的な変異誘発剤の例としては、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、N-メチル-N’-ニトロソグアニジン(NTG)、O-メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸及びヌクレオチドアナログが挙げられる。このような薬剤を使用する場合、変異誘発は、一般的には、好適な条件下で最適な変異誘発剤の存在下で変異誘発対象の親細胞をインキュベートするステップ、及び遺伝子の減少した発現を示す、又は発現を示さない変異細胞を選択するステップによって実施される。
【0160】
V.目的のタンパク質を産生するためのグラム陽性細胞の発酵
特定の実施形態では、本開示は、目的のタンパク質を産生することが可能な組み換え型微生物細胞を提供する。より具体的には、特定の実施形態は、目的のタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを発現する関連する遺伝子改変微生物細胞、目的の異種タンパク質及びYvyDタンパク質を共発現する遺伝子微生物細胞(genetically microbial cell)などである)。したがって、特定の実施形態は、目的のタンパク質を産生するために微生物細胞を培養すること(発酵すること)に関する。
【0161】
一般に、当該技術分野でよく知られた発酵方法が、微生物細胞を発酵させるために使用される。いくつかの実施形態では、細胞を、バッチ発酵条件下で増殖させるか、又は連続発酵条件下で増殖させる。古典的なバッチ発酵は、培地の組成が発酵の開始時に設定され、発酵中には変更されない閉鎖系である。発酵の開始時に、培地に所望の生物を接種する。この方法では、系にいかなる成分も添加することなく発酵を行うことができる。一般に、バッチ発酵は、炭素源の添加に関して「バッチ」であると見なされ、pH及び酸素濃度などの因子を制御することが頻繁に行われる。バッチ系の代謝物及びバイオマス組成物は、発酵が停止される時点まで絶えず変化する。バッチ培養内で、細胞は静的誘導期を経て高増殖対数期に進み、最終的に増殖速度が低下又は停止する静止期に進む。処理しない場合、静止期にある細胞は最終的には死滅する。一般に、対数期の細胞は、生成物の大部分の産生を担っている。
【0162】
標準的バッチ系の好適な変形は、「フェドバッチ発酵」系である。一般的なバッチ系のこの変形形態では、発酵の進行に伴い基質が徐々に加えられる。フェドバッチ系は、カタボライト抑制が細胞の代謝を阻害する可能性が高い場合、及び培地中の基質量が限られた量であることが望ましい場合に有用である。フェドバッチ系内で実際の基質濃度を測定することは困難であるので、このためpH、溶存酸素及びCO2などの排気ガスの分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ発酵及びフェドバッチ発酵は、当該技術分野において一般的であり、よく知られている。
【0163】
連続発酵は規定の発酵培地をバイオリアクターに連続的に添加し、処理のために等量の馴化培地を同時に除去するオープンシステムである。連続発酵は、一般に、培養物を一定の高密度に維持し、細胞は主として対数増殖期にある。連続発酵は、細胞の増殖及び/又は産生物の濃度に影響する1つ以上の因子の調節を可能にする。例えば、一実施形態では、炭素源又は窒素源などの制限栄養素は一定比率で維持され、他の全てのパラメータは調節することができる。他の系では、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響を及ぼす多数の因子は連続的に変化させることができる。連続系は、定常状態の増殖条件を維持しようとする。したがって、培地を取り出すことによる細胞損失は、発酵中の細胞増殖速度に対して平衡が保たれなければならない。連続発酵プロセスで栄養素及び増殖因子を調節する方法、並びに産生物形成速度を最大化するための手法は、工業微生物学の技術分野では周知されている。
【0164】
培養/発酵は一般に、水性無機塩培地、有機増殖因子、炭素及びエネルギー源物質、分子状酸素、及び、当然に、使用される微生物宿主の出発接種材料を含む増殖培地中で行われる。
【0165】
適切な微生物増殖を確実にし、微生物変換プロセスで細胞による炭素及びエネルギー源の吸収を最大にし、発酵培地において最大細胞密度で最大細胞収率を達成するには、炭素及びエネルギー源、酸素、吸収可能な窒素、並びに微生物接種材料に加えて、好適な量の無機栄養素を適切な割合で供給する必要がある。
【0166】
水性無機培地の組成は、当該技術分野で知られているように、使用する微生物及び基質に部分的に依存して、広範囲にわたって変えることができる。無機培地には、窒素に加えて、好適な量のリン、マグネシウム、カルシウム、カリウム、硫黄、及びナトリウムが、好適な可溶性の吸収可能なイオン性の複合形態で含まれ、また、好ましくは、銅、マンガン、モリブデン、亜鉛、鉄、ホウ素、及びヨウ素などのいくつかの微量元素も、これもまた好適な可溶性の吸収可能な形態で含まれるが、これらは全て当該技術分野で知られている。
【0167】
発酵反応は、微生物種が盛んに増殖するのを助けるのに有効な好適な酸素分圧で、発酵槽の内容物を維持するために提供される、空気、酸素富化空気、又は更には実質的に純粋な分子状酸素などの分子状酸素含有ガスによって必要な分子状酸素が供給される好気的プロセスである。
【0168】
発酵温度はいくらか変化することができるが、大部分の微生物細胞に対して、温度は、一般的に、約20℃~40℃の範囲内であろう。
【0169】
微生物はまた、吸収可能な窒素源を必要とする。吸収可能な窒素源は、任意の窒素含有化合物、又は微生物による代謝利用に好適な形態で窒素を放出することができる任意の化合物であり得る。タンパク質加水分解物などの様々な有機窒素源化合物を使用することができるが、通常は、アンモニア、水酸化アンモニウム、尿素、並びにリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は他の様々なアンモニウム化合物などの各種アンモニウム塩などの安価な窒素含有化合物を利用することができる。アンモニアガス自体は、大規模な操作に便利であり、好適な量で水性発酵物(発酵培地)を通してバブリングすることにより使用できる。同時に、そのようなアンモニアは、pH制御を助けるために用いることもできる。
【0170】
水性微生物発酵物(発酵混合物)のpH範囲は、約2.0~8.0の例示的な範囲であるべきである。微生物の好ましいpH範囲は、使用する培地及び特定の微生物にある程度まで依存し、したがって、当業者ならば容易に決定できることであるが、培地の変化と共にいくらか変化する。
【0171】
制限因子として炭素含有基質を制御することができるようなやり方で発酵を行うことが好ましく、それによって炭素含有基質の細胞への良好な転換が提供され、相当量の未転換基質による細胞の汚染が回避される。後者は、水溶性基質では、微量の残存物は容易に洗い流せるので、問題にならない。しかしながら、非水溶性基質の場合には問題となる可能性があり、好適な洗浄工程などの追加の生成物処理工程が必要になる。
【0172】
上記のように、このレベルに到達する時間は重要ではなく、特定の微生物及び実施する発酵プロセスによって変化し得る。しかしながら、発酵培地中の炭素源濃度の決定方法、及び所望の炭素源レベルが達成されているか否かの決定方法は、当該技術分野ではよく知られている。
【0173】
必要ならば、水性無機培地を発酵槽に供給する前に、炭素及びエネルギー源物質の一部又は全部及び/又はアンモニアなどの吸収可能な窒素源の一部を水性無機培地に加えることができる。
【0174】
反応器に導入される流れの各々は、所定の速度に制御するか、炭素及びエネルギー基質の濃度、pH、溶存酸素、発酵槽排ガス中の酸素又は二酸化炭素、乾燥細胞重量により測定可能な細胞密度、透光度などの、モニタリングによって決定可能な必要性に応じて制御することが好ましい。炭素及びエネルギー源の効率的な利用と一致して、可能な限り迅速な細胞増殖速度を得、基質の供給に対して可能な限り高い微生物細胞の収率を得るために、各種材料の供給速度は変化させることができる。
【0175】
バッチ又は好ましいフェドバッチ操作においては、全ての装置、反応器、又は発酵手段、槽又は容器、配管、付随する循環又は冷却装置などは、最初に、通常、蒸気を使用して、例えば、約121℃で少なくとも約15分間、滅菌する。次いで、酸素を含む必要な栄養素の全て、及び炭素含有基質を存在下で、滅菌した反応器に選択された微生物の培養物を接種する。使用する発酵槽の種類は重要ではない。
【0176】
VI.目的のタンパク質
本開示の目的のタンパク質(POI)は、任意の内因性又は異種タンパク質であってよく、そのようなPOIのバリアントであってもよい。タンパク質は、1つ以上のジスルフィド架橋を含有し得るか、又はその機能的形態が単量体若しくは多量体であるタンパク質である。即ち、このタンパク質は四次構造を有し、複数の同一(相同)若しくは非同一(異種)サブユニットから構成され、ここで、POI又はそのバリアントPOIは、好ましくは目的の特性を備えるタンパク質である。したがって、特定の実施形態では、本開示の改変細胞は、内因性POI、異種POI、又はそのようなPOIの1つ以上の組み合わせを発現する。
【0177】
特定の実施形態では、改変細胞は親(対照)細胞と比較して増加した量のPOI(例えばDNアーゼ活性を有するタンパク質)を産生することができ、そのPOIの増加量は、少なくとも約0.01%の増加、少なくとも約0.10%の増加、少なくとも約0.50%の増加、少なくとも約1.0%の増加、少なくとも約2.0%の増加、少なくとも約3.0%の増加、少なくとも約4.0%の増加、少なくとも約5.0%の増加、又は5.0%を超える増加である。特定の実施形態では、POIの増加量は、酵素活性を試験することによって、及び/又はその比生産性(Qp)を試験/定量することによって決定される。同様に、当業者であれば、1種類以上の目的のタンパク質の発現、産生、又は分泌を検出、試験、測定などするために、当該技術分野で知られる他の定型の方法及び技術を利用することができる。
【0178】
特定の実施形態では、POI又はそのバリアントPOIは、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アリールエステラーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリサーゼ(glucan lysases)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リゾチーム、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、ホスホジエステラーゼ、フィターゼ、ポリエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0179】
したがって、特定の実施形態では、POI又はそのバリアントPOIは、酵素番号(EC)のEC1、EC2、EC3、EC4、EC5又はEC6から選択される酵素である。
【0180】
例えば、特定の実施形態では、POIは、オキシドレダクターゼ(EC1)、トランスフェラーゼ(EC2)、ヒドロラーゼ(EC3)、リアーゼ(EC4)、及びイソメラーゼ(EC5)から選択される酵素である。
【0181】
したがって、特定の実施形態では、工業用プロテアーゼを産生するグラム陽性宿主細胞は、特に有用な発現宿主を提供する。同様に、特定の他の実施形態では、工業用アミラーゼを産生するグラム陽性宿主細胞は、特に有用な発現宿主を提供する。例えば、典型的にはバチルス属(Bacillus sp.)によって分泌されるプロテアーゼには、2つの一般型、すなわち、中性(又は「金属プロテアーゼ」)及びアルカリ性(又は「セリン」)プロテアーゼがある。例えば、バチルス属(Bacillus)サブチリシンタンパク質(酵素)は、本開示において使用するため典型的なセリンプロテアーゼである。多種多様なバチルス属(Bacillus)サブチリシン、例えば、サブチリシン168、サブチリシンBPN’、サブチリシンカールスバーグ、サブチリシンDY、サブチリシン147及びサブチリシン309が同定及び配列決定されている。いくつかの実施形態では、改変グラム陽性細胞は、変異体(すなわちバリアント)プロテアーゼを産生する。このため、特定の実施形態では、改変(組み換え型)グラム陽性細胞は、天然及び/又はバリアントのプロテアーゼをコードする発現構築物を含む。
【0182】
特定の他の実施形態では、改変グラム陽性細胞は、アミラーゼをコードする発現構築物を含む。多種多様なアミラーゼ酵素及びそのバリアントが、当業者に知られている。このため、特定の実施形態では、改変(組み換え型)グラム陽性細胞は、天然及び/又はバリアントのプロテアーゼをコードする発現構築物を含む。
【0183】
他の実施形態では、本開示の改変細胞内で発現及び産生されるPOI又はバリアントPOIは、ペプチド、ペプチドホルモン、増殖因子、凝固因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、抗体、受容体、接着分子、微生物抗原(例えば、HBV表面抗原、HPV E7など)、及びそれらの変異体、それらの断片などである。他のタイプの目的のタンパク質(又はそのバリアント)は、食品又は作物に栄養価を提供することのできるタンパク質であり得る。非限定的な例としては、抗栄養因子の形成を阻害できる植物タンパク質、及びより望ましいアミノ酸組成(例えば、非トランスジェニック植物より高いリシン含量)を有する植物タンパク質が挙げられる。
【0184】
細胞内及び細胞外で発現したタンパク質の活性を検出及び測定するための、当業者に公知の様々なアッセイが存在する。特に、プロテアーゼの場合、280nmでの吸光度として測定される、又はフォリン法を使用して比色定量により測定されるカゼイン又はヘモグロビンからの酸可溶性ペプチドの放出に基づくアッセイが存在する。他の典型的なアッセイとしては、スクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-パラ-ニトロアニリドアッセイ(SAAPFpNA)及び2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩アッセイ(TNBSアッセイ)が挙げられる。
【0185】
国際公開第2014/164777号パンフレットは、本明細書に記載されるアミラーゼ活性のために有用なCeralpha α-アミラーゼ活性アッセイを開示している。
【0186】
宿主細胞中の目的のタンパク質の分泌レベルを決定し、発現されたタンパク質を検出するための手段には、タンパク質に特異的なポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれかを用いるイムノアッセイの使用が挙げられる。その例としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)が挙げられる。
【0187】
VII.例示的な実施形態
本明細書に開示する組成物及び方法の非限定的な実施形態は、以下のとおりである。
【0188】
1.yvyD遺伝子を過剰発現する組み換え型グラム陽性細胞。
【0189】
2.yvyD遺伝子を過剰発現し、且つ目的のタンパク質(POI)をコードする遺伝子を発現する、組み換え型グラム陽性細胞。
【0190】
3.POIをコードする遺伝子の複数のコピーを発現する、実施形態2に記載の組み換え型細胞。
【0191】
4.過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号23のyvyD遺伝子に対して少なくとも50%の同一性を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組み換え型細胞。
【0192】
5.過剰発現したyvyD遺伝子が、配列番号18のyvyD遺伝子コード配列(CDS)に対して少なくとも50%の同一性を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組み換え型細胞。
【0193】
6.yvyD遺伝子が、配列番号26のYvyDタンパク質に対して少なくとも50%の同一性を含むタンパク質をコードする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組み換え型細胞。
【0194】
7.yvyD遺伝子が、配列番号27のRaiAスーパファミリードメインに対して少なくとも50%の同一性を含むタンパク質をコードする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組み換え型細胞。
【0195】
8.yvyD遺伝子が、配列番号28のリボソームS30AE_Cスーパファミリードメインに対して少なくとも50%の同一性を含むタンパク質をコードする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組み換え型細胞。
【0196】
9.組み換え型細胞が、対照細胞と比較して増加した量のPOIを産生し、組み換え型細胞と対照細胞とを同じ条件下で増殖させた場合、対照細胞は同じPOIを発現するが、yvyD遺伝子を過剰発現しない、実施形態2に記載の組み換え型細胞。
【0197】
10.対照細胞が、その天然のyvyD遺伝子プロモーターの制御下で内因性yvyD遺伝子CDSを発現する、実施形態9に記載の組み換え型細胞。
【0198】
11.yvyD遺伝子を過剰発現することが、天然のyvyD遺伝子プロモーター領域を、下流(3’)のyvyD遺伝子CDSと作動可能に連結した異種プロモーター領域と取り換えることを含み、異種プロモーター領域は、yvyD遺伝子CDSの発現を、天然のyvyD遺伝子プロモーターと比較して増加させる、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組み換え型細胞。
【0199】
12.異種プロモーター領域は、配列番号21と少なくとも90%の同一性を含むspoVG遺伝子プロモーター(PspoVG)領域、及び配列番号29と少なくとも90%の同一性を含むhbs遺伝子プロモーター(Phbs)領域から選択される、実施形態11に記載の組み換え型細胞。
【0200】
13.POIが酵素である、実施形態2又は実施形態3に記載の組み換え型細胞。
【0201】
14.酵素が、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アリールエステラーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリサーゼ(glucan lysases)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リゾチーム、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、ホスホジエステラーゼ、フィターゼ、ポリエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態13に記載の組み換え型細胞。
【0202】
15.POIがプロテアーゼである、実施形態13に記載の組み換え型細胞。
【0203】
16.プロテアーゼがサブチリシンである、実施形態15に記載の組み換え型細胞。
【0204】
17.サブチリシンが、天然又はバリアントのバチルスレンタス(Bacillus lentus)サブチリシン、天然又はバリアントのバチルスギブソニイ(Bacillus gibsonii)サブチリシン、及び天然又はバリアントのバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)サブチリシンから選択される、実施形態16に記載の組み換え型細胞。
【0205】
18.概ね式Iに記載されるように、下流(3’)のyvyD隣接領域(FR)核酸配列と作動可能に連結した下流yvyD遺伝子コード配列(CDS)と作動可能に連結した下流異種プロモーター(het-pro)配列と作動可能に連結した上流(5’)のyvyD隣接領域(FR)核酸配列を含む、yvyD発現カセット。
式I:5’-[yvyD FR]-[het-pro]-[yvyD CDS]-[yvyD FR]-3’
【0206】
19.グラム陽性細菌細胞中で増加した量の目的のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、配列番号23のyvyD遺伝子に対して少なくとも50%の同一性を有するyvyD遺伝子を含む親細胞を得ることと、細胞を、yvyD遺伝子を過剰発現させるように遺伝子改変することと、を含む、方法。
【0207】
20.親細胞又は改変(組み換え型)細胞は、POIをコードする導入された発現カセットを含む、実施形態19に記載の方法。
【0208】
21.同じ条件下で培養したとき、yvyD遺伝子を過剰発現する改変細胞は、親細胞と比較して増加した量のPOIを産生する、実施形態19に記載の方法。
【0209】
22.親細胞のyvyD遺伝子が、配列番号18のyvyD遺伝子コード配列(CDS)に対して少なくとも50%の同一性を含む、実施形態19に記載の方法。
【0210】
23.親細胞のyvyD遺伝子が、配列番号26のYvyDタンパク質に対して少なくとも50%の同一性を含むYvyDタンパク質をコードする、実施形態19に記載の方法。
【0211】
24.YvyDタンパク質は、配列番号27のRaiAスーパファミリードメインに対して少なくとも50%の同一性を含む、実施形態23に記載の方法。
【0212】
25.YvyDタンパク質は、配列番号28のリボソームS30AE_Cスーパファミリードメインに対して少なくとも50%の同一性を含む、実施形態23に記載の方法。
【0213】
26.yvyD遺伝子を過剰発現する改変細胞が、下流(3’)のyvyD遺伝子CDSと作動可能に連結した異種プロモーター領域を含み、異種プロモーター領域は、yvyD遺伝子CDSの発現を、天然のyvyD遺伝子プロモーターと比較して増加させる、実施形態19に記載の方法。
【0214】
27.yvyD遺伝子を過剰発現する改変細胞は、配列番号18と少なくとも50%の同一性を含む下流(3’)yvyD遺伝子CDSと作動可能に連結した上流(5’)異種プロモーター領域配列を含む導入されたポリヌクレオチド構築物を含み、異種プロモーター領域は、天然のyvyD遺伝子CDSの発現を、天然のyvyD遺伝子プロモーターと比較して増加させる、実施形態19に記載の方法。
【0215】
28.異種プロモーター領域は、配列番号21と少なくとも90%の同一性を含むspoVG遺伝子プロモーター(PspoVG)領域、及び配列番号29と少なくとも90%の同一性を含むhbs遺伝子プロモーター(Phbs)領域から選択される、実施形態26又は実施形態27に記載の方法。
【0216】
29.POIが酵素である、実施形態19に記載の方法。
【0217】
30.酵素が、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アリールエステラーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリサーゼ(glucan lysases)、βエンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リゾチーム、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、ホスホジエステラーゼ、フィターゼ、ポリエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態29に記載の方法。
【0218】
31.POIがプロテアーゼである、実施形態29に記載の方法。
【0219】
32.プロテアーゼがサブチリシンである、実施形態31に記載の方法。
【0220】
33.グラム陽性細菌細胞は、バチルス属(Bacillus sp.)細胞である、実施形態19に記載の方法。
【0221】
34.バチルス属(Bacillus sp.)細胞が、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンタス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシィ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サーキュランス(B.circulans)、B.ラウタス(B.lautus)、及びB.チューリンゲンシス(B.thuringiensis)からなる群から選択される、実施形態33に記載の方法。
【0222】
35.グラム陽性細菌細胞がバチルス属(Bacillus sp.)細胞である、実施形態1又は実施形態2に記載の組み換え型グラム陽性細菌細胞。
【0223】
36.B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンタス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシィ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サーキュランス(B.circulans)、B.ラウタス(B.lautus)、及びB.チューリンゲンシス(B.thuringiensis)からなる群から選択される、実施形態35に記載の組み換え型バチルス属(Bacillus sp.)細胞。
【実施例】
【0224】
本発明の特定の態様は、以下の実施例の観点から更に理解することができるが、それらの実施例は限定するものと解釈すべきでない。材料及び方法の変更は、当業者には明白であろう。本明細書で使用される、標準の組み換え型DNA及び分子クローニング技術は、当該技術分野において周知である(Ausubel et al.,1987;Sambrook et al.,1989)。本明細書に記載されるように、全ての発現カセットは、国際公開第2019/040412号パンフレット(その全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法を使用して、宿主菌株中に形質転換された。
【0225】
実施例1
yvyD過剰発現組み込みカセットの構築
本実施例は、yvyD(遺伝子)過剰発現(組み込み)カセット(例えば、
図1を参照)の構築を説明する。より具体的には、本明細書に記載されるyvyD過剰発現カセットを、PCR増幅DNA断片の組み立てを介してNEBuilder(New England Biolabs)によって生成した。例えば、組み込みカセット断片を、yvzG-yvyD遺伝子間領域(以下、「yvzG-yvyD領域」)で組み込まれて、天然のyvyDプロモーターを異種プロモーターと置き換え(置換)するように設計し、ここでyvzG-yvyD領域に隣接する配列は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)(例えばB.サブチリス(B.subtilis)株168,ATCC 23857)ゲノムDNAから増幅させた。以下の表2に記載されるように、上流(5’)yvzG-yvyD隣接領域を、オリゴヌクレオチドプライマー343(配列番号1)及び402(配列番号2)で増幅し、下流(3’)yvzG-yvyD隣接領域を、オリゴヌクレオチドプライマー400(配列番号3)及び370(配列番号4)で増幅した。
【表2】
【0226】
loxP部位が隣接するスペクチノマイシン抗生物質耐性マーカー(SpecR)を含むDNA断片を、オリゴヌクレオチドプライマー539(表2;配列番号5)及び246(表2;配列番号6)を用いて増幅した。spoVGプロモーター(PspoVG)領域を、オリゴヌクレオチドプライマー540(表2;配列番号7)及び754(表2;配列番号8)を用いて増幅した。シャイン・ダルガルノ(SD)配列を包含したspoVGオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接するspoVGプロモーター領域の36個の塩基対(bp)(
図1Bを参照)を、Phbs-yvyDのプロモーター領域に隣接して含めた(表3;プライマー配列番号9を参照)。
【0227】
表2に示すように、hbsプロモーター領域を、675(配列番号10)及び307(配列番号11)オリゴヌクレオチドプライマー対を用いて増幅した。yvyD ORF(配列番号18)を、PspoVG-yvyDアセンブリの場合はオリゴヌクレオチドプライマー400(表2;配列番号3)及び370(表2;配列番号4)、Phbs-yvyDアセンブリの場合はオリゴヌクレオチドプライマー674(表3;配列番号12)及び370(表2;配列番号4)を用いて、B.サブチリス(B.subtilis)ゲノムDNAから増幅した。NEBuilderアセンブリを、重複するDNA断片を用いて製造者の指示通りに実施し、完全なyvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-PspoVG-yvyD(
図1A)及びyvzG-yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-Phbs-yvyD(
図1B)組み込みカセットを生成した。PspoVG-yvyDのアセンブリされた組み込みカセットの完全ヌクレオチド配列を配列番号19に示し、Phbs-yvyDのアセンブリされた組み込みカセットの完全ヌクレオチド配列を配列番号20に示す。
【表3】
【0228】
実施例2
YVYD発現を増加させるB.サブチリス(B.subtilis)株の構築及び生成
本実施例は、yvyD発現を増加させるB.サブチリス(B.subtilis)細胞(株)の構築を説明する。より具体的には、実施例1で説明され、3つの異なる例示的なプロテアーゼ(2×プロテアーゼ(Protease)-1;2×プロテアーゼ(Protease)-2;2×プロテアーゼ(Protease)-3)をコードする遺伝子の2つのコピー(2×プロテアーゼ(protease)-1;2×プロテアーゼ(protease)-2;2×プロテアーゼ(protease)-3)を含むyvzG-yvyD遺伝子間領域でのプロモータースワップ(交換)組み込みによって、内因性(天然)B.サブチリス(B.subtilis)yvyD遺伝子(配列番号23)の発現を増加させたカセットを導入することによって、組み換え型B.サブチリス(B.subtilis)細胞を構築した。天然yvyDプロモーターを保持し、3つの異なる例示的なプロテアーゼ(対照細胞;2×プロテアーゼ-1;2×プロテアーゼ-2;2×プロテアーゼ-3)をコードするアイソジェニック細胞を、比較を目的として構築した。例えば、約1~2μgのyvzG yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-PspoVG-yvyD組み込みカセット(配列番号19)及びyvzG yvyD遺伝子間::lox-SpecR-lox-Phbs-yvyD組み込みカセット(配列番号20)を、comKコンピテントなB.サブチリス(B.subtilis)親株へと個別に形質転換した。
【0229】
より具体的には、形質転換細胞を、LB(1%トリプトン、0.5%酵母抽出物、1.0%塩化ナトリウム、1.5%寒天)及び100μg/mlのスペクチノマイシン上にプレーティングし、LB上で、100mg/Lのスペクチノマイシンで再ストリークすることによって、スペクチノマイシン耐性コロニーを精製した。yvzG-yvyD遺伝子間における各カセットの組み込みを、組み込みイベントの外で結合した以下の表4に記載されるオリゴヌクレオチドプライマー345(配列番号12)及び348(配列番号13)と共に、Q5 High Fidelity PCRポリメラーゼ(NEB)及び鋳型として採取されたゲノムDNAを用いたPCR増幅によって確認した。同様に、各組み込みカセットの正確な配列を、オリゴヌクレオチド345(表4;配列番号12)、346(表4;配列番号14)、300(表4;配列番号15)、573(表4;配列番号16)、674(表3;配列番号11)、及び348(表4;配列番号13)を使用したサンガー配列決定法によって確認した。
【表4】
【0230】
更に、スペクチノマイシン抗生物質耐性マーカー(lox-SpecR-lox)を、Creリコンビナーゼを発現するプラスミドの形質転換によって除去した。プラスミド喪失後、スペクチノマイシン感受性コロニーを同定し、オリゴヌクレオチドプライマー346(表4;配列番号14)及び573(表4;配列番号16)で組み込みカセットを増幅した。オリゴヌクレオチド346(表4:配列番号14)を用いた配列解析によって、yvyD過剰発現株のそれぞれでlox部位の正確な組み換えを確認した。プロテアーゼ-1を発現する2つのカセット(2×プロテアーゼ-1)及びプロテアーゼ-2を発現する2つのカセット(2×プロテアーゼ-2)を、個別にPspoVG-yvyD過剰発現株へと導入した。同様に、プロテアーゼ-2を発現する2つのカセット(2×プロテアーゼ-2)、及びプロテアーゼ-3を発現する2つのカセット(2×プロテアーゼ-3)を、個別にPhbs-yvyD過剰発現株へと導入した。同時に、プロテアーゼ-1、プロテアーゼ-2、及びプロテアーゼ-3を発現する2つのカセットを、その天然(yvyD)プロモーターからyvyDを発現する親株へと個別に導入した。
【0231】
実施例3
yvyDの過剰発現は、目的のタンパク質の2つのコピーを発現するB.サブチリス(B.subtilis)株におけるタンパク質産生を増加させる
本実施例では、出願人は、実施例2に記載されるB.サブチリス(B.subtilis)株を産生する2つのコピープロテアーゼにおけるレポータープロテアーゼの産生に対するyvyDの過剰発現を評価した(すなわち、2×プロテアーゼ-1及び2×プロテアーゼ-1PspoVG-yvyD;2×プロテアーゼ-2及び2×プロテアーゼ-2PspoVG-yvyD;2×プロテアーゼ-2及び2×プロテアーゼ-2Phbs-yvyD;2×プロテアーゼ-3及び2×プロテアーゼ-3Phbs-yvyD)。本明細書で説明されるプロテアーゼ活性アッセイを、欧州特許第0283075号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるとおりに実施した。
【0232】
例えば、2xプロテアーゼ-1対照株及び2xプロテアーゼ-1PspoVG-yvyD株から、12、20、36、45、61、68、73、及び84時間の時点でアリコートを採取した。プロテアーゼ活性アッセイを実施して、プロテアーゼ-1の産生に対するspoVGプロモーター(PspoVG)由来のyvyD発現増加の効果を決定した。プロテアーゼアッセイの結果(
図2)は、発酵の最後にプロテアーゼ産生が増加する傾向があり、また、yvyDの発現増加のために68時間及び73時間でプロテアーゼの産生が著しく強化されることを示す。
【0233】
更に、2xプロテアーゼ-2対照株及び2xプロテアーゼ-2+PspoVG-yvyD株から、16、22、39、46、64、及び89時間の時点でアリコートを採取した。プロテアーゼ活性アッセイを実施して、プロテアーゼ-2の産生に対するspoVGプロモーター(PspoVG)由来のyvyDの過剰発現の効果を決定した。プロテアーゼアッセイの結果(
図3)は、プロテアーゼ産生の増加が約39時間から開始して発酵の最後まで続く傾向があり、39時間及び46時間でyvyDの過剰発現のためにプロテアーゼの産生が著しく強化されることを示す。
【0234】
同様に、2xプロテアーゼ-2対照株及び2xA プロテアーゼ-2Phbs-yvyD株から、11、23、37、50、及び65時間の時点でアリコートを採取した。プロテアーゼ活性アッセイを実施して、プロテアーゼ-2の産生に対するhbsプロモーター(Phbs)由来のyvyDの過剰発現の効果を決定した。プロテアーゼアッセイの結果(
図4)は、プロテアーゼ産生の増加が約37時間から開始して発酵の最後まで続く傾向があり、37時間でyvyDの過剰発現のためにプロテアーゼの産生が著しく強化されることを示す。
【0235】
更に、2xプロテアーゼ-3対照株及び2xプロテアーゼ-3Phbs-yvyD株から、14、22、37、46、65、及び90時間の時点でアリコートを採取した。プロテアーゼ活性アッセイを実施して、プロテアーゼ-3の産生に対するhbsプロモーター(Phbs)由来のyvyDの過剰発現の効果を決定した。プロテアーゼアッセイの結果(
図5)は、プロテアーゼ産生の増加が約22時間から開始して発酵の最後まで続く傾向があり、22及び37時間でyvyDの過剰発現のためにプロテアーゼの産生が著しく強化されることを示す。
【0236】
参考文献
欧州特許公開第0283075号明細書
国際公開第2014/164777号パンフレット
Beckert et al.,“Structure of the Bacillus subtilis hibernating 100S ribosome reveals the basis for 70S dimerization”,The EMBO Journal,36,pages 2061-2071,2017.
Drzewiecki et al.,“The yvyD Gene of Bacillus subtilis Is Under Dual Control of σB and σH”,J.Bacteriology,Vol.180,No.24,pages 6674-6680,1998.
Feaga et al.,“Ribosome dimerization protects the small subunit”Journal of Bacteriology,Vol.202,No.10,pages 9-20,2020.
Franklin et al.,“Functional Characterization of the Pseudomonas aeruginosa Ribosome Hibernation-Promoting Factor”,Journal of Bacteriology,Volume 202,Issue 19,2020.
Tagami et al.,“Expression of a small (p)ppGpp synthetase, YwaC, in the (p)ppGpp mutant of Bacillus subtilis triggers YvyD-dependent dimerization of ribosome”,Microbiology Open,1(2),pages115-134,2012.
Zhu and Stuelke,“SubtiWiki in 2018: from genes and proteins to functional network annotation of the model organism Bacillus subtilis”,Nucleic Acid Research,Volume 46, Issue D1,Pages D743-D748,2017.
【配列表】
【国際調査報告】