(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ネクチン細胞接着分子4に特異的な抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20250117BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250117BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250117BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250117BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20250117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250117BHJP
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A61K 31/519 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20250117BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
C07D 239/553 20060101ALN20250117BHJP
C07D 475/08 20060101ALN20250117BHJP
C07D 473/38 20060101ALN20250117BHJP
C07D 233/90 20060101ALN20250117BHJP
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C07H 15/252 20060101ALN20250117BHJP
C07D 519/04 20060101ALN20250117BHJP
C07D 305/14 20060101ALN20250117BHJP
C07D 491/22 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C07K16/18
C12N5/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61K39/395 D
A61K39/395 N
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A61K39/395 L
A61K39/395 M
A61K39/395 Y
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A61P35/02
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A61K31/704
A61K31/475
A61K31/337
A61K31/4745
A61P43/00 121
C07D239/553 A
C07D475/08
C07D473/38
C07D233/90
C07D487/04 144
C07H15/252
C07D519/04
C07D305/14
C07D491/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541783
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2023060588
(87)【国際公開番号】W WO2023137398
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521485999
【氏名又は名称】ナビ バイオ-セラピューティクス,インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サイ,ボー-ユ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,シン-ツン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ウェイ-ティン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C057
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
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4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ネクチン細胞接着分子4(ネクチン-4)に特異的な、改変された抗体又はその抗原結合断片に関する。本開示はまた、対象が腫瘍を有するかどうか又は腫瘍を発症するリスクがあるかどうかを検出又は診断する方法、又は腫瘍の予後を評価する方法、及び腫瘍に罹患している対象における腫瘍の処置、予防的処置及び/又は予防に使用するための医薬組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネクチン細胞接着分子4(ネクチン-4)又はその断片上のエピトープに特異的な抗体又はその抗原結合断片であって;重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)及び軽鎖可変領域のCDRを含み、重鎖可変領域のCDRが、CDRH1、CDRH2及びCDRH3領域を含み、軽鎖可変領域のCDRが、CDRL1、CDRL2及びCDRL3領域を含み、且つ
CDRH1領域が、配列番号2~6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRH2領域が、配列番号8~12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;且つCDRH3領域が、配列番号14~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;且つ
CDRL1領域が、配列番号20~24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRL2領域が、配列番号26~30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;且つCDRL3領域が、配列番号32~36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
ネクチン-4がヒトネクチン-4である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
ネクチン-4又はその断片の細胞外ドメイン上のエピトープに特異的である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
ネクチン-4-Q96NY8(PVRL4_ヒト)のアミノ酸94~435、94~732又は94~957に特異的である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
CDRH1領域が配列番号2を含み、CDRH2領域が配列番号8を含み、CDRH3領域が配列番号14を含み、CDRL1領域が配列番号20を含み、CDRL2領域が配列番号26を含み、且つCDRL3領域が配列番号32を含むか;
CDRH1領域が配列番号3を含み、CDRH2領域が配列番号9を含み、CDRH3領域が配列番号15を含み、CDRL1領域が配列番号21を含み、CDRL2領域が配列番号27を含み、且つCDRL3領域が配列番号33を含むか;
CDRH1領域が配列番号4を含み、CDRH2領域が配列番号10を含み、CDRH3領域が配列番号16を含み、CDRL1領域が配列番号22を含み、CDRL2領域が配列番号28を含み、且つCDRL3領域が配列番号34を含むか;
CDRH1領域が配列番号5を含み、CDRH2領域が配列番号11を含み、CDRH3領域が配列番号17を含み、CDRL1領域が配列番号23を含み、CDRL2領域が配列番号29を含み、且つCDRL3領域が配列番号35を含むか;又は
CDRH1領域が配列番号6を含み、CDRH2領域が配列番号12を含み、CDRH3領域が配列番号18を含み、CDRL1領域が配列番号24を含み、CDRL2領域が配列番号30を含み、且つCDRL3領域が配列番号36を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
重鎖可変領域が、配列番号37のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域が、配列番号38のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むか;
重鎖可変領域が、配列番号39のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域が、配列番号40のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むか;
重鎖可変領域が、配列番号41のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域が、配列番号42のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むか;
重鎖可変領域が、配列番号43のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域が、配列番号44のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むか;又は
重鎖可変領域が、配列番号45のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域が、配列番号46のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体若しくはscFv抗体又はその断片である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
治療剤とコンジュゲートしている、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
治療剤が、代謝拮抗物質、アルキル化剤、アルキル化様作用剤、DNA副溝アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、カリケアマイシン、抗有糸分裂剤、トポイソメラーゼ阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及び放射性同位体からなる群から選択される、請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
細胞の表面上に発現している、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
細胞が免疫細胞又は幹細胞である、請求項10に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、ベクター。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片を発現する、遺伝子操作された細胞。
【請求項14】
有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項13に記載の遺伝子操作された細胞を含む、医薬組成物。
【請求項15】
対象に由来する試料を、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含む、対象が腫瘍を有するかどうか又は腫瘍を発症するリスクがあるかどうかを検出又は診断する方法、又は腫瘍の予後を評価する方法。
【請求項16】
試料を、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含む、試料中のネクチン-4を検出する方法。
【請求項17】
試料中のネクチン-4を検出するためのキットであって、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項18】
有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項13に記載の遺伝子操作された細胞を含む、腫瘍に罹患している対象における腫瘍の処置、予防的処置及び/又は予防に使用するための医薬組成物。
【請求項19】
腫瘍が、扁平上皮がん、肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃のがん又は胃がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん又は腎がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、頭頸部がん、B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、及び慢性骨髄芽球性白血病からなる群から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
腫瘍が、トリプルネガティブ乳がん、膀胱がん、肺がん、膵臓がん、卵巣がん、頭/頸部がん又は食道がんである、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権情報
本出願は、2022年1月12日に出願された米国仮特許出願第63/266,711号の優先権及び利益を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、.xml形式で電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2023年1月12日に作成された.xmlコピーは、「G4590-15400PCT_SeqListing_20230112.xml」と命名され、45キロバイトのサイズである。
【0003】
本開示の分野
本開示は、腫瘍を検出及び/又は処置するためのネクチン細胞接着分子4(ネクチン-4)に特異的な抗体又はその抗原結合断片に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは、世界中の主な死因の1つである。がんの死亡率は、症例が早期に検出及び処置されれば低下し得るため、一般集団のための実行可能なスクリーニング選択肢を有することが求められている。
【0005】
免疫療法は、がん処置における最も有望な進歩の1つである。がん免疫療法は、例えば、腫瘍細胞上の抗原に特異的な抗体による処置によって、腫瘍細胞との抗原提示細胞の融合を用いて、又は抗腫瘍T細胞の活性化によって、抗腫瘍免疫応答を生成及び増大するために利用される。患者における腫瘍細胞に対する免疫細胞(例えばT細胞)を動員する能力は、最近まで不治だと考えられていたがんの種類及び転移と戦う治療モダリティーを提供する。
【0006】
がん腫が早期に診断され、疾患が発生臓器に限定される場合、生存率は劇的に改善される。実際、子宮頸がんにおけるパップスメア及び乳がんにおけるマンモグラフィーのようなスクリーニングのための身体的方法は、死亡率を劇的に低下させた。したがって、血清、尿又は唾液などの入手可能な体液を用いた新しい早期検出バイオマーカーを開発する研究が奨励されている。いくつかの周知のバイオマーカーは、疾患の進行した段階では確実に検出されるが、早期がん診断に対して十分な感度及びとりわけ特異度を欠き、したがって、主に予後、病期分類、モニタリング及び療法の選択に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、がんの処置及び検出に対する新規アプローチを開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、がんの処置及び検出のための抗原又はその断片上のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
一態様では、本開示は、ネクチン細胞接着分子4又はその断片上のエピトープに特異的な抗体又はその抗原結合断片であって;重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)及び軽鎖可変領域のCDRを含み、重鎖可変領域のCDRが、CDRH1、CDRH2及びCDRH3領域を含み、軽鎖可変領域のCDRが、CDRL1、CDRL2及びCDRL3領域を含み、且つ
CDRH1領域が、配列番号2~6からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRH2領域が、配列番号8~12からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRH3領域が、配列番号14~18からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ
CDRL1領域が、配列番号20~24からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRL2領域が、配列番号26~30からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRL3領域が、配列番号32~36からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
本開示の一実施形態では、ネクチン-4はヒトネクチン-4である。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ネクチン-4又はその断片の細胞外ドメイン上のエピトープに特異的である;ネクチン-4断片の例としては、以下に限定されないが、ネクチン-4-Q96NY8(PVRL4_ヒト)のアミノ酸94~435、94~732又は94~957が挙げられる。
【0012】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-L1又はその抗原結合断片は、配列番号2又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号8又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号14又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号20又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号26又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号32又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号37のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号38のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0013】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S2又はその抗原結合断片は、配列番号3又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号9又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号15又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号21又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号27又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号33又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号39のアミノ酸配列又はその実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号40のアミノ酸配列又はその実質的に類似した配列を含む。
【0014】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S6又はその抗原結合断片は、配列番号4又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号10又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号16又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号22又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号28又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号34又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号41のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号42のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0015】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S8又はその抗原結合断片は、配列番号5又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号11又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号17又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号23又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号29又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号35又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号43のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号44のアミノ酸配列又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0016】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S21又はその抗原結合断片は、配列番号6又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号12又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号18又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号24又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号30又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号36又は少なくとも90%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45のアミノ酸配列又はその実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号46のアミノ酸配列又はその実質的に類似した配列を含む。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体若しくはscFv抗体又はその断片である。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、治療剤とコンジュゲートしている。治療剤の例としては、以下に限定されないが、代謝拮抗物質、アルキル化剤、アルキル化様作用剤(alkylating-like agent)、DNA副溝アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、カリケアマイシン、抗有糸分裂剤、トポイソメラーゼ阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及び放射性同位体が挙げられる。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、細胞の表面上に発現している。細胞は、免疫細胞、がん幹細胞又は幹細胞であり得る。本開示の一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。
【0020】
本開示はまた、抗体又はその抗原結合断片をコードする、ベクターを提供する。
【0021】
本開示はまた、抗体又はその抗原結合断片を発現する、又はベクターを含有する、遺伝子操作された細胞を提供する。
【0022】
本開示はさらにまた、有効量の抗体若しくはその抗原結合断片又は遺伝子操作された細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
別の態様では、本開示は、対象に由来する試料を抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含む、対象が腫瘍を有するかどうか又は腫瘍を発症するリスクがあるかどうかを検出又は診断する方法、又は腫瘍の予後を評価する方法を提供する。
【0024】
本開示は、試料を抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含む、試料中のネクチン-4を検出する方法を提供する。
【0025】
本開示はまた、試料中のネクチン-4を検出するためのキットであって、抗体又はその抗原結合断片を含む、キットを提供する。
【0026】
別の態様では、本開示は、医薬組成物を対象に投与するステップを含む、腫瘍に罹患している対象における腫瘍を処置する、予防的に処置する及び/又は予防する方法を提供する。あるいは、本開示は、有効量の、本明細書に開示される抗体若しくはその抗原結合断片又は遺伝子操作された細胞を含む、腫瘍に罹患している対象における腫瘍の処置、予防的処置及び/又は予防に使用するための医薬組成物を提供する。腫瘍の例としては、以下に限定されないが、扁平上皮がん、肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃のがん又は胃がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん又は腎がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、頭頸部がん、B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、及び慢性骨髄芽球性白血病が挙げられる。特に、腫瘍は、トリプルネガティブ乳がん、膀胱がん、肺がん、膵臓がん、卵巣がん、頭/頸部がん又は食道がんである。
【0027】
本開示は、以下のセクションで詳細に説明される。本開示の他の特徴、目的及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施例1におけるPVRL4断片の発現を示す。レーン1:Ni
+セファロース結合後の上清;レーン2:収集した洗浄緩衝液;レーン3:収集した溶離緩衝液(イミダゾール);レーン4:溶離後のNi
+セファロース。予測サイズ:r342p:15kDa;r639p:48kDa;r864p:34kDa。
【
図2A】
図2Aは、ニワトリ免疫グロブリンの軽鎖可変領域のscFv配列アライメントを示す。
図2Bは、ニワトリ免疫グロブリンの重鎖可変領域のscFv配列アライメントを示す。
【
図2B】
図2Bは、ニワトリ免疫グロブリンの重鎖可変領域のscFv配列アライメントを示す。
【
図3】
図3Aは、BML01細胞上で発現している又はそうではないネクチン-4を使用した抗ネクチン-4 M13ファージの親和性アッセイを示す。
図3Bは、抗ネクチン-4 M13ファージについての親和性の倍率(BML01-ネクチン-4 OD
450/BML01 OD
450)を示す。
【
図4-1】
図4は、抗HA抗体を使用して候補ファージクローンの結合活性を検出した結果を示す。
【
図4-2】
図4は、抗HA抗体を使用して候補ファージクローンの結合活性を検出した結果を示す。
【
図4-3】
図4は、抗HA抗体を使用して候補ファージクローンの結合活性を検出した結果を示す。
【
図6】
図6は、ウエスタンブロッティングによるPVRL4 864に対する抗PVRL4 scFvの結合能を示す。
【
図7】
図7は、競合ELISA又はELISAによるr864pに対するL1/S6/S21/L4の結合アッセイの結果を示す。
【
図8】
図8は、ウエスタンブロット分析におけるMCF-7細胞上のモノクローナル抗PVRL4 scFvの結合能を示す。
【
図9A】
図9A及び9Bは、免疫蛍光法による乳がん細胞株に対する抗PVRL4 scFvの結合アッセイの結果を示す。
図9A:MCF7;
図9B:MCF10A。
【
図9B】
図9A及び9Bは、免疫蛍光法による乳がん細胞株に対する抗PVRL4 scFvの結合アッセイの結果を示す。
図9A:MCF7;
図9B:MCF10A。
【
図10】
図10は、共焦点顕微鏡法における乳がん細胞株MCF7に対するS21の免疫蛍光染色の結果を示す。
【
図11】
図11は、染色アッセイにおけるモノクローナル抗PVRL4 scFv(S21)の特徴付けの結果を示す。
【
図12】
図12は、ELISAを使用したMCF-7細胞上のモノクローナル抗PVRL4 scFvの結合能を示す(データは平均±SDとして示される、N=2)。
【
図13】
図13は、抗PVRL4 scFv S21による処理後のMCF7の細胞増殖の結果を示す。
【
図14】
図14は、抗PVRL4 scFv S21のエピトープマッピングの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明において、特許請求の範囲に記載された主題の理解を容易にするために、いくつかの用語が使用され、以下の定義が提供される。本明細書で明示的に定義されていない用語は、その明らかな且つ通常の意味に従って使用される。
【0030】
別段指定のない限り、「a」又は「an」は、「1つ以上」を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。
【0032】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、特定の抗原(例えば、ネクチン-4)と特異的に結合又は相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子又は分子複合体を意味する。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖である2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、並びにその多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が差し挟まれた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。本開示の異なる実施形態では、抗ネクチン-4抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、又は天然に若しくは人工的に改変されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「特異的である」とは、抗体が他のエピトープと著しい程度まで交差反応しないことを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「相補性決定領域」(CDR)は、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される不連続な抗原結合部位を指す。CDRは、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of proteins of immunological interest" (1991); Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);及びMacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)によって記載されており、定義は、相互に比較した場合のアミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。
【0035】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な類似性」又は「実質的に類似した」は、2つのペプチド配列が、例えばデフォルトのギャップウェイトを使用したプログラムGAP又はBESTFITによって、最適にアラインされた場合に、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換される置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なる場合、配列同一性パーセント又は類似性の程度は、置換の保存的性質について補正するために上方調整される可能性がある。この調整を行うための手段は当業者に周知である。類似した化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、及び(7)硫黄含有側鎖であるシステイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的な置き換えは、参照により本明細書に組み込まれる、Gonnet et al. (1992) Science 256: 1443-1445に開示されるPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有するあらゆる変化である。「中等度に保存的な」置き換えは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて非負の値を有するあらゆる変化である。
【0036】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術を通じて産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の又は利用可能な任意の手段によって、任意の真核生物、原核生物、又はファージのクローンを含む、単一クローンから得られる。
【0037】
用語「キメラ」抗体は、本明細書で使用される場合、非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列及びヒト免疫グロブリン定常領域(典型的にはヒト免疫グロブリン鋳型から選択される)を有する抗体を指す。
【0038】
非ヒト抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラ免疫グロブリンである。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、この可変ドメイン中で、CDR領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。
【0039】
抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、あらゆる天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、又は遺伝子操作されたポリペプチド又は糖タンパク質を含む。
【0040】
本開示で使用される場合、用語「治療剤」は、哺乳動物、例えばヒトへの投与に好適な、治療効果又は薬理学的効果を有する任意の化合物、物質、薬物、プロドラッグ又は活性成分を意味する。
【0041】
抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、あらゆる天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、又は遺伝子操作されたポリペプチド又は糖タンパク質を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、それが連結している別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すことが意図される。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの別の種類は、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律的複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれる可能性があり、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクターは、作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することが可能である。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるため、本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用され得る。しかし、本発明は、同等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの他の形態の発現ベクターを含むことが意図される。
【0043】
「遺伝子操作された」細胞又は細胞の「遺伝子操作」という用語は、細胞における遺伝子コピー及び/又は遺伝子発現レベルの変化のために遺伝物質を使用して遺伝子を操作することを意味する。遺伝物質は、DNA又はRNAの形態であり得る。遺伝物質は、ウイルス形質導入及び非ウイルストランスフェクションを含む様々な手段によって細胞に導入することができる。遺伝子操作された後、細胞におけるある特定の遺伝子の発現レベルは、永続的又は一時的に変更可能である。
【0044】
本開示で使用される場合、用語「医薬組成物」は、哺乳動物が罹患する特定の疾患又は病理学的状態を予防、処置、又は除去するために、哺乳動物、例えばヒトに投与される治療剤を含有する混合物を意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」又は「有効量」は、疾患を処置するために哺乳動物又は他の対象に投与された場合に、疾患についての当該処置をもたらすのに十分な抗体の量を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置すること」などは、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる処置を包含し、以下を含む:(a)疾患の素因を有し得るが、疾患を有するとまだ診断されていない対象において疾患が発症するのを防止すること;(b)疾患を阻害する、すなわち、その発症を阻止すること;及び(c)疾患を軽減する、すなわち、疾患の退行を引き起こすこと。
【0047】
用語「予防すること」又は「予防」は、当技術分野で認識されており、状態に関して使用される場合、それは、薬剤を受けない対象と比較して、対象において医学的状態の症状の頻度若しくは重症度を低減する又はその発症を遅延させる薬剤を、状態の発症前に投与することを含む。
【0048】
本明細書において互換的に使用される場合、用語「個体」、「対象」、「宿主」「患者」は、ネズミ科動物(ラット、マウス)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「処置を必要とする」は、介護者(例えば、ヒトの場合には医師、看護師、臨床看護師、又は個人;非ヒト哺乳動物を含む動物の場合には獣医師)によって下された、対象が処置を必要とし、又はそれから恩恵を受けるという判断を指す。この判断は、介護者の専門知識の領域である様々な要因に基づいて下されるが、それは、本開示の化合物によって処置可能な状態の結果として、対象が病気であり又は病気になるであろうという知識を含む。
【0050】
「がん」、「腫瘍」及び同様の用語は、前がん性、新生物性、形質転換した、及びがん性の細胞を含み、固形腫瘍又は非固形がんを指し得る(例えば、Edge et al. AJCC Cancer Staging Manual (7th ed. 2009); Cibas and Ducatman Cytology: Diagnostic principles and clinical correlates (3rd ed. 2009)を参照されたい)。がんは、良性新生物及び悪性新生物(異常な増殖)の両方を含む。「形質転換」は、自発的な又は誘導された表現型変化、例えば、細胞の不死化、形態学的変化、異常な細胞増殖、低下した接触阻害及び定着、及び/又は悪性腫瘍を指す(Freshney, Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique (3rd ed. 1994)を参照されたい)。形質転換は、形質転換ウイルスによる感染及び新しいゲノムDNAの組み込み、又は外因性DNAの取り込みから生じ得るが、それはまた、自発的に又は発がん物質への曝露後にも生じ得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「試料」は、診断又はモニタリングアッセイで使用することができる、個体、対象又は患者から得られる様々な試料の種類を包含する。この定義は、血液、及び生物学的起源の他の液体試料、固体組織試料、例えば、生検標本又は組織培養物又はそれに由来する細胞及びその子孫を包含する。
【0052】
本開示は、ネクチン-4又はその断片上のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0053】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片(抗ネクチン-4)は、重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)及び軽鎖可変領域の相補性決定領域を含み、重鎖可変領域の相補性決定領域は、CDRH1、CDRH2及びCDRH3領域を含み、軽鎖可変領域の相補性決定領域は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3領域を含み、且つ
CDRH1領域は、配列番号2~6からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRH2領域は、配列番号8~12からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRH3領域は、配列番号14~18からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ
CDRL1領域は、配列番号20~24からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRL2領域は、配列番号26~30からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;CDRL3領域は、配列番号32~36からなる群から選択されるアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0054】
ポリオウイルス受容体関連4(PVRL4)としても知られている、ネクチン細胞接着分子4(ネクチン-4)は、I型膜貫通タンパク質であり、関連する免疫グロブリン様接着分子のネクチンファミリーのメンバーである。ネクチン-4は、細胞表面上に位置し、他の細胞又は細胞外マトリックス(ECM)と結合することができることが知られている。ヒトでは、ネクチン-4は、気管、肺及び皮膚における上皮接着ジャンクションで発生中に主に発現する(JBC 2001, 276(46):43205-43215)。成体組織で他のネクチンの発現が継続すると、成体では発現が低下する。しかし、ネクチン-4は、乳がんを含む様々ながん腫において、発がん促進特性を有する腫瘍関連抗原として再発現する。腫瘍では、ネクチン-4、及びADAM17/TACEメタロプロテアーゼの活性型が過剰発現され、切断されたネクチン-4(可溶型)が細胞質で観察される(JBC 2005, 280(20):19543-50; BMC Cancer 2007, 7:73)。具体的には、本明細書に開示されるネクチン-4はヒトネクチン-4である。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ネクチン-4又はその断片の細胞外ドメイン上のエピトープに特異的である;ネクチン-4断片の例としては、以下に限定されないが、ネクチン-4-Q96NY8(PVRL4_ヒト、NCBI参照配列:NM_030916.3、UniProtKB/Swiss-Prot(Q96NY8.1))のアミノ酸94~435、94~732又は94~957が挙げられる。
【0056】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-L1又はその抗原結合断片は、配列番号2又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号8又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号14又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号20又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号26又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号32又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号37のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号38のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0057】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S2又はその抗原結合断片は、配列番号3又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号9又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号15又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号21又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号27又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号33又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号39のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号40のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0058】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S6又はその抗原結合断片は、配列番号4又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号10又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号16又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号22又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号28又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号34又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号41のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号42のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0059】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S8又はその抗原結合断片は、配列番号5又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号11又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号17又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号23又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号29又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号35又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号43のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号44のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0060】
本開示の一実施形態では、抗体ネクチン4-scFv-S21又はその抗原結合断片は、配列番号6又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH1領域、配列番号12又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH2領域、配列番号18又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRH3領域、配列番号24又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL1領域、配列番号30又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL2領域、及び配列番号36又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含むCDRL3領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含み;且つ軽鎖可変領域は、配列番号46のアミノ酸配列又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む。
【0061】
配列リストは表1に示される。
【0062】
【0063】
本開示による抗体は、全長(例えば、IgG1又はIgG4抗体)であってもよく、又は抗原結合部分のみを含んでもよく(例えば、Fab、F(ab')2又はscFv断片)、必要に応じて機能性に影響を与えるように改変してもよい。
【0064】
当業者に公知の様々な技術を、抗体がポリペプチド又はタンパク質内の「1つ以上のアミノ酸に特異的に結合する」かどうかを決定するために使用することができる。例示的な技術としては、例えば、日常的なクロス-ブロッキングアッセイ、例えば、Antibodies, Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., N.Y.)に記載されるもの、アラニンスキャニング変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke, 2004, Methods Mol Biol 248:443-463)、及びペプチド切断分析が挙げられる。さらに、エピトープ切除、エピトープ抽出、及び抗原の化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer, 2000, Protein Science 9:487-496)。抗体が特異的に結合するポリペプチド内のアミノ酸を特定するために使用することができる別の方法は、質量分析法によって検出される水素/重水素交換である。一般論として、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素標識し、続いて抗体を重水素標識タンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護された残基(重水素標識されたままである)を除くすべての残基において水素-重水素交換が起こるようにする。抗体の解離後、標的タンパク質は、プロテアーゼ切断及び質量分析を受け、それによって、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring (1999) Analytical Biochemistry 267(2):252-259; Engen and Smith (2001) Anal. Chem. 73:256A-265Aを参照されたい。
【0065】
抗体が参照抗ネクチン-4抗体と同じエピトープに特異的に結合するか、又はそれと結合について競合するかどうかは、当技術分野で公知の日常的な方法を使用することによって、容易に決定することができる。例えば、試験抗体が本開示の参照抗ネクチン-4抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体をネクチン-4タンパク質に結合させる。次に、試験抗体がネクチン-4分子に結合する能力を評価する。参照抗ネクチン-4抗体との飽和結合後に試験抗体がネクチン-4に結合することができる場合、試験抗体は、参照抗ネクチン-4抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。一方、参照抗ネクチン-4抗体との飽和結合後に試験抗体がネクチン-4分子に結合することができない場合、試験抗体は、本開示の参照抗ネクチン-4抗体によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合する可能性がある。次いで、追加の日常的実験(例えば、ペプチド変異及び結合分析)を実行して、試験抗体の観察された結合欠如(lack of binding)が実際に参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるかどうか、又は立体妨害(又は別の現象)が、観察された結合欠如の原因であるかどうかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、又は当技術分野で利用可能な任意の他の定量的若しくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。本開示のある特定の実施形態によれば、競合結合アッセイで測定した場合、例えば、1、5、10、20又は100倍過剰の一方の抗体が、もう一方の抗体の結合を少なくとも50%であるが、好ましくは75%、90%又はさらには99%阻害する場合、2つの抗体は同じ(又は重複する)エピトープに結合する。あるいは、一方の抗体の結合を低減又は排除する抗原における本質的にすべてのアミノ酸変異が、もう一方の抗体の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープに結合すると見なされる。一方の抗体の結合を低減又は排除するアミノ酸変異のサブセットのみが、もう一方の抗体の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は「重複するエピトープ」を有すると見なされる。
【0066】
抗体はまた、完全抗体分子の抗原結合断片を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、任意の好適な標準的技術、例えばタンパク質分解消化、又は抗体可変ドメイン及び場合により定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組換え遺伝子操作技術を使用して、完全抗体分子から得てもよい。このようなDNAは公知であり、且つ/又は例えば商業的供給源、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、又は合成することができる。DNAは、化学的に又は分子生物学技術を使用することによって配列決定及び操作して、例えば、1つ以上の可変ドメイン及び/又は定常ドメインを好適な構成に配置するか、又はコドンを導入し、システイン残基を作製し、アミノ酸を改変、付加又は欠失させることなどが可能である。
【0067】
抗原結合断片の非限定的な例としては以下が挙げられる:(i)Fab断片;(ii)F(ab')2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、又は拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位。他の操作された分子、例えばドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール免疫医薬品(SMIP:small modular immunopharmaceutical)及びサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用される「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0068】
抗体の抗原結合断片は、典型的には少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズ又はアミノ酸組成であってもよく、一般に、1つ以上のフレームワーク配列に隣接する又はそれとインフレームの少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合断片において、VHドメイン及びVLドメインは、任意の好適な配置で互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は、二量体であり、VH-VH、VH-VL又はVL-VL二量体を含有してもよい。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VH又はVLドメインを含有してもよい。
【0069】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本開示の抗体の抗原結合断片内に見出され得る可変ドメイン及び定常ドメインの非限定的な例示的構成としては、以下が挙げられる:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び(xiv)VL-CL。上に列挙される例示的構成のいずれかを含む、可変ドメイン及び定常ドメインの任意の構成において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接連結され得るか、又は完全若しくは部分的なヒンジ若しくはリンカー領域によって連結され得る。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子における隣接する可変ドメイン及び/又は定常ドメイン間に可撓性又は半可撓性連結をもたらす少なくとも2個の(例えば、5、10、15、20、40、60個の、又はそれを超える)アミノ酸からなってもよい。さらに、本開示の抗体の抗原結合断片は、(例えば、ジスルフィド結合(複数可)による)互いの及び/又は1つ以上の単量体VH又はVLドメインとの非共有結合における、上に列挙される可変及び定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含み得る。
【0070】
本明細書に開示される抗ネクチン-4抗体は、抗体が由来する対応する生殖系列配列と比較して、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域において、1つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含み得る。このような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公開抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって、容易に確かめることができる。本開示は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体、及びその抗原結合断片を含み、1つ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、又は別の哺乳動物の生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、又は対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に変異している(このような配列変化は、本明細書ではまとめて「生殖系列変異」と呼ばれる)。当業者は、本明細書に開示される重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異又はそれらの組み合わせを含む多数の抗体及び抗原結合断片を容易に生成することができる。ある特定の実施形態では、VHドメイン及び/又はVLドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基のすべては、抗体が由来する元の生殖系列配列に見出される残基に戻るように変異している。他の実施形態では、ある特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内若しくはFR4の最後の8アミノ酸内に見出される変異残基のみ、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内に見出される変異残基のみが、元の生殖系列配列に戻るように変異している。他の実施形態では、フレームワーク及び/又はCDR残基(複数可)のうちの1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元々由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)に変異している。さらに、本開示の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内の2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異しており、一方、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持されるか、又は異なる生殖系列配列の対応する残基に変異している。ひとたび得られたら、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗体及び抗原結合断片は、1つ以上の所望の特性、例えば、結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニスト又はアゴニスト的生物学的特性の改善又は増強(場合により)、免疫原性の低下などについて容易に試験することができる。この一般的な方法で得られる抗体及び抗原結合断片は、本開示内に包含される。
【0071】
本開示はまた、1つ以上の保存的置換を有する、本明細書に開示されるVH、VL、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗ネクチン-4抗体を含む。例えば、本開示は、本明細書に開示されるVH、VL、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかと比較して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するVH、VL、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗ネクチン-4抗体を含む。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示による抗体はヒト化抗体である。本開示によるヒト化抗体の結合親和性を改善するために、ヒトフレームワーク領域におけるいくつかのアミノ酸残基は、例えばげっ歯類などの種におけるCDRの対応するアミノ酸残基によって置き換えられる。
【0073】
本開示の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、又は2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。本開示の抗ネクチン-4抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質と連結し得るか、又はそれと共発現し得る。例えば、抗体又はその断片は、1つ以上の他の分子実体、例えば、別の抗体又は抗体断片に(例えば、化学結合、遺伝子融合、非共有結合又は他の方法によって)機能的に連結して、第2の結合特異性を有する二重特異性又は多重特異性抗体を生成することができる。例えば、本開示は、免疫グロブリンの一方のアームがネクチン-4又はその断片に特異的であり、免疫グロブリンのもう一方のアームが第2の治療標的に特異的であるか又は治療部分にコンジュゲートしている、二重特異性抗体を含む。
【0074】
本開示の一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、治療剤とコンジュゲートしている。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態では、治療剤は、細胞増殖抑制剤若しくは細胞毒性剤、又は対応する放射性同位体を有する同位体キレート剤を表す。細胞増殖抑制剤又は細胞毒性剤の例としては、以下に限定されないが、代謝拮抗物質(例えば、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(5-FUdR)、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン(6-TG)、メルカプトプリン(6-MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2-CDA)、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、カペシチビン、アザチオプリン、シトシンメトトレキサート、トリメトプリム、ピリメタミン、又はペメトレキセド);アルキル化剤(例えば、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、マイトマイシンC、シクロホスファミド、メクロレタミン、ウラムスチン、ジブロモマンニトール、テトラニトレート、プロカルバジン、アルトレタミン、ミトゾロミド、又はテモゾロミド);アルキル化様作用剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、又はトリプラチン);DNA副溝アルキル化剤(例えば、デュオカルマイシン、例えばCC-1065、並びにその任意の類似体若しくは誘導体;ピロロベンゾジアゼピン、又はその任意の類似体若しくは誘導体);アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、又はバルルビシン);抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン、ストレプトゾトシン、グラミシジンD、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC);カリケアマイシン;抗有糸分裂剤(例えば、メイタンシノイド(DM1、DM3、及びDM4など)、アウリスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)及びモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を含む)、ドラスタチン、クリプトフィシン、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、又は新規タキサン)、チューブリシン、及びコルヒチン);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、エトポシド、テニポシド、アムサクリン、又はミトキサントロン);HDAC阻害剤(例えば、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、又はベリノスタット);プロテアソーム阻害剤(例えば、ペプチジルボロン酸);並びに放射性同位体、例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212又は213、P32、及びLu177を含むLuの放射性同位体が挙げられる。同位体キレート剤の例としては、以下に限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン-N,N,N',N",N"-ペンタアセテート(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N",N"'-テトラアセテート(DOTA)、1,4,7,10-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(THP)、トリエチレンテトラアミン-N,N,N',N",N"',N"'-ヘキサアセテート(TTHA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N",N"'-テトラキス(メチレンホスホネート)(DOTP)、及びメルカプトアセチルトリグリシン(MAG3)が挙げられる。
【0076】
本開示の一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、細胞の表面上に発現している。特に、細胞は、T細胞又は幹細胞、例えばiPSCである。誘導多能性幹細胞は、山中因子を体細胞に誘導することによって再プログラムすることができる。胚性幹細胞と同様に、iPSCは、倫理的懸念なく、三胚葉の細胞に分化する能力を有する。この特性により、iPSCは臨床用途に有望な適用を示す。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、キメラ抗原受容体の形態である。
【0078】
用語「キメラ抗原受容体」又は代替的に「CAR」は、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び以下に定義される刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含む、組換えポリペプチド構築物を指す。いくつかの実施形態では、CARポリペプチド構築物中のドメインは、同じポリペプチド鎖中にあり、例えば、キメラ融合タンパク質を構成する。いくつかの実施形態では、CARポリペプチド構築物中のドメインは、互いに隣接しておらず、例えば、異なるポリペプチド鎖中にある。
【0079】
抗体又はその抗原結合断片は、抗体又はその抗原結合断片をコードするベクターにコードされていてもよい。例示的なベクターは、レンチウイルスベクターである。「レンチウイルス」は、分裂細胞及び非分裂細胞に感染することが可能なレトロウイルスの属を指す。レンチウイルスのいくつかの例としては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:HIV1型及びHIV2型を含む);ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。
【0080】
別の態様では、本開示は、抗体又はその抗原結合断片を発現する、又はベクターを含有する、遺伝子操作された細胞を提供する。遺伝子操作された細胞は、免疫細胞又は幹細胞であり得る。また、本開示は、遺伝子操作された細胞から分化した、免疫細胞を提供する。
【0081】
本開示は、本開示の抗体若しくはその抗原結合断片、遺伝子操作された細胞又は免疫細胞を含む、医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、好適な希釈剤、担体、賦形剤、及び改善された移行、送達、忍容性などを提供する他の薬剤とともに製剤化される。組成物は、獣医学的用途又はヒトにおける医薬用途などの特定の用途のために製剤化され得る。使用される組成物の形態、並びに賦形剤、希釈剤及び/又は担体は、抗体の意図される用途、及び治療用途の場合は投与様式に依存する。多くの適切な製剤を、すべての製薬化学者に公知の処方集:Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa.に見出すことができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、小胞を含有する脂質(カチオン性又はアニオン性)(例えばLIPOFECTIN(商標), Life Technologies, Carlsbad, Calif.)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型及び油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powell et al. "Compendium of excipients for parenteral formulations" PDA (1998) J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0082】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢及びサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。好ましい用量は、典型的には、体重又は体表面積に応じて計算される。本開示の抗体が成体患者におけるEPHA10に関連する状態又は疾患を処置するために使用される場合、本開示の抗体を静脈内投与することが有利であり得る。状態の重症度に応じて、処置の頻度及び期間を調整することができる。抗体を投与するための有効な投薬量及びスケジュールは、経験的に決定してもよい;例えば、患者の経過を定期的な評価によってモニタリングし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投薬量の種間の調整は、当技術分野で周知の方法を使用して実施することができる(例えば、Mordenti et al., 1991, Pharmaceut. Res. 8:1351)。
【0083】
例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することが可能な組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスにおけるカプセル化など(例えば、Wu et al., 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照されたい)、様々な送達システムが公知であり、本開示の医薬組成物を投与するために使用することができる。導入の方法としては、以下に限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられる。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通じた吸収によって投与してもよく、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であり得る。
【0084】
本開示の医薬組成物は、標準的な針及び注射器を用いて皮下又は静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本開示の医薬組成物の送達に容易に応用可能である。このようなペン型送達デバイスは、再使用可能又は使い捨て可能であり得る。再使用可能なペン型送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物全体が投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含有する新しいカートリッジに置き換えることができる。次いで、ペン型送達デバイスは再使用することができる。使い捨て可能なペン型送達デバイスには、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨て可能なペン型送達デバイスには、デバイス内のリザーバに保持された医薬組成物が予め充填されている。医薬組成物が取り出されてリザーバが空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0085】
ある特定の状況では、医薬組成物は制御放出システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer、上記; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる; Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), 1974, CRC Pres., Boca Raton, Flaを参照されたい。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、組成物の標的の近くに配置することができ、したがって全身用量の一部のみを必要とし得る(例えば、Goodson, 1984, in Medical Applications of Controlled Release、上記、vol. 2, pp. 115-138を参照されたい)。他の制御放出システムは、Langer, 1990, Science 249:1527-1533による概説で論じられる。
【0086】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴などのための剤型を含み得る。これらの注射用調製物は、公知の方法によって調製し得る。例えば、注射用調製物は、例えば、上記の抗体又はその塩を、注射剤に慣習的に使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中に溶解、懸濁又は乳化することによって調製してもよい。注射剤のための水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の助剤を含有する等張溶液などがあり、これらはアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水添ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが用いられ、これらは安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このようにして調製された注射剤は、好ましくは、適切なアンプルに充填される。
【0087】
有利には、上記の経口又は非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に合うように適合された単位用量における剤形へと調製される。このような単位用量における剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0088】
別の態様では、本開示は、対象に由来する試料を抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含む、対象が腫瘍を有するかどうか又は腫瘍を発症するリスクがあるかどうかを検出又は診断する方法、又は腫瘍の予後を評価する方法を提供する。
【0089】
本開示は、試料を抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含む、試料中のネクチン-4を検出する方法を提供する。
【0090】
本開示はまた、試料中のネクチン-4を検出するためのキットであって、抗体又はその抗原結合断片を含む、キットを提供する。
【0091】
別の態様では、本開示は、医薬組成物を対象に投与するステップを含む、腫瘍に罹患している対象における腫瘍を処置する、予防的に処置する及び/又は予防する方法を提供する。あるいは、本開示は、有効量の、本明細書に開示される抗体若しくはその抗原結合断片又は遺伝子操作された細胞を含む、腫瘍に罹患している対象における腫瘍の処置、予防的処置及び/又は予防に使用するための医薬組成物を提供する。
【0092】
がんの一例は固形腫瘍である。がんの別の例は、液性腫瘍、例えばリンパ腫、白血病、及び血液悪性腫瘍である。本開示のがんのさらなる例としては、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、乳がん転移、本明細書に記載される任意のがんの転移、結腸がん、結腸がん転移、肉腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、AIDS関連がん、例えばカポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門がん、虫垂がん、小児星細胞腫、星細胞腫、小児非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、CNS非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、基底細胞がん、皮膚がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、ユーイング肉腫ファミリーのがん、骨肉腫、軟骨腫、軟骨肉腫、原発性及び転移性骨がん、悪性線維性組織球腫、小児脳幹神経膠腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、脳及び脊髄腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、小児中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、小児中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、小児頭蓋咽頭腫、上衣腫、小児上衣腫、乳がん、気管支腫瘍、小児気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、消化器がん、原発不明がん腫、心臓腫瘍、小児心臓腫瘍、原発性リンパ腫、子宮頸がん、胆管細胞がん、脊索腫、小児脊索腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、びまん性正中神経膠腫、非浸潤性乳管がん、胎児性腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、感覚神経芽腫、小児感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、ファロピウス管がん、骨の線維性組織球腫、胆嚢がん、胃のがん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、卵巣がん、精巣がん、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、多形膠芽腫(GBM)、低悪性度神経膠腫(LGG)、脳神経膠腫症、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、組織球症、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、黒色腫、黒色腫転移、島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、腎臓がん、腎細胞腫瘍、ウィルムス腫瘍、小児腎臓腫瘍、口唇及び口腔がん、肝臓がん、肺がん、髄芽腫、非ホジキンリンパ腫、マクログロブリン血症、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、男性乳がん、メルケル細胞がん、原発不明転移性扁平上皮性頸部がん、NUT遺伝子が関与する正中線がん、口がん、多発性内分泌腫瘍症候群、小児多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄増殖性腫瘍、粘液乳頭状上衣腫、鼻腔及び副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽腫、非小細胞肺がん、乏突起膠腫、乏突起星細胞腫、中咽頭がん、卵巣がん、低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、小児乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、褐色細胞腫、咽頭がん、毛様細胞性星細胞腫、下垂体腫瘍、多形黄色星細胞腫(PXA)、胸膜肺芽腫、小児胸膜肺芽腫、原発性腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、妊娠関連がん、横紋筋肉腫、小児横紋筋肉腫、唾液腺がん、セザリー症候群、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、精巣がん、喉のがん、胸腺腫、胸腺がん、甲状腺がん、腎臓、腎盂、及び尿管の移行上皮がん、子宮がん、尿道がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、及び外陰がんが挙げられる。
【0093】
ネクチン-4は、乳管がんの61%、小葉型における6%で発現する。理論によって限定されることを望むものではないが、CEA/CA15.3の関連性による67%と比較して、CEA/CA15.3/ネクチン-4の関連性は、乳がんの74%をモニタリングすることを可能にすると考えられる。ネクチン-4はまた、Pi3k/Akt軸を介して、EMT、転移及びWNT/β-カテニン経路を上方制御する。臨床病理学的データは、腋窩リンパ節への乳腫瘍転移において誘導されたネクチン-4を示す。別の態様では、ネクチン-4は、乳がん幹細胞における潜在的な血管新生バイオマーカーである。ネクチン-4外部ドメインは、インテグリン-β4と物理的に相互作用し、血管新生経路を活性化する。ネクチン-4とインテグリン-β4との相互作用は、Src、PI3K、AKT、iNOS経路を介して血管新生を促進するが、Phospho-Erk又はNF-κβ経路によっては促進しない。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は、本開示の実施において当業者の助けとなるように提供される。
【0095】
実施例
実施例1:組換えPVRL4断片タンパク質及び抗PVRL4 scFvの発現及び精製
抗原。簡単に述べると、PVRL4_342(94~435、342bp、r342p)、PVRL4_639(94~732、639bp、r639p)、PVRL4_864(94~957、864bp、r864p)のネクチン-4-Q95NY8(PVRL4_ヒト)遺伝子断片を、pET-21a(+)プラスミド中で構築し、得られたベクターを大腸菌(E. coli)に形質転換した。単一コロニーからの細菌培養物を、アンピシリン(50μg/ml)を含有する5mlのLB培地中で37℃にて一晩増殖させ、同じLB培地中に100倍希釈し、OD600が0.4~0.8の間に達するまでさらに増殖させた。PVRL4タンパク質発現を誘導するために、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を、培養物中に最終濃度1.0mMまで添加した。細胞ペレットを、6M尿素を含有するHis結合緩衝液中に再懸濁し、超音波処理により溶解した。遠心分離後、得られた細胞溶解物を、Ni2+-セファロース(GE(商標)Healthcare Life Science, Pittsburgh, PA, USA)とともにインキュベートして、製造業者の説明書に従って組換えPVRL4融合タンパク質を精製した。
【0096】
図1に示すように、タンパク質生成物をSDS-PAGEで分析した。
【0097】
動物の免疫化。まず、雌性白色レグホン(ガルス・ドメスティクス(Gallus domesticus))ニワトリを、0.5mlのフロイント完全アジュバント(Sigma(商標), USA)中の50μgの精製his-PVRL4_342又は20μgの精製his-PVRL4_864で筋肉内注射により免疫化した。7又は8日間隔での50μgのhis-PVRL4_342による3回の追加免疫化、続いて1か月後の30μgのhis-PVRL4_342による1回の追加免疫化を実施した。同様に、7日間隔での25μgのhis-PVRL4_863による2回目の免疫化、20μgのhis-PVRL4_863による3回目の免疫化、及び15μgのhis-PVRL4_863による4回目の免疫化を実施した。各免疫化の後、卵黄中のポリクローナルIgY抗体を部分的に精製し、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって力価測定して、液性抗PVRL4免疫応答の存在を決定した。IgY抗体を、10%デキストラン硫酸を使用して卵黄から精製した。精製されたIgY抗体を、0.05%アジ化ナトリウムを含有する5mlのTBSに溶解し、-20℃で保存した。
【0098】
scFv抗体ライブラリーの構築。簡単に述べると、最終免疫化後にニワトリから回収した脾臓を、ホモジナイゼーションのために直ちにTrizol中に入れた。SuperScript RTキット(INVITROGEN(商標), USA)を使用して、20μgの全RNAを第1鎖cDNAに逆転写した。ニワトリ特異的プライマーを使用した増幅後、重鎖可変及び軽鎖可変(VH及びVL)領域のPCR産物を2回目のPCRに供して、短いリンカー(例えば配列番号47)又は長いリンカー(配列番号48又は49)を有する全長scFv断片を形成し、これをpComb3Xベクターにさらにクローニングした。組換えファージDNAはエレクトロポレーションによって大腸菌ER2738株形質転換した。組換えファージの生成を、野生型VCS-M13ヘルパーファージの添加によって開始し、これを、続いて4%ポリエチレングリコール8000及び3%NaCl(w/v)で沈殿させ、最後に1×リン酸緩衝食塩水中に再懸濁した。
【0099】
細胞ベースのファージディスプレイパンニング。50μlのファージライブラリー(1012~1013)及び150μlのPBS中1%BSAを、4℃に1時間置いた。陰性選択のために、100μlの106個のBML01細胞及び80μlのファージを、室温に30分間2回置いた。陽性選択のために、全上清に106個のBML01-ネクチン4細胞を添加し、4℃に1時間置いた。混合物をPBSで5~8回洗浄した。細胞を100μlの0.2Mグリシン-HCl(pH2.2)とともに室温で10分間インキュベートすることによって、ファージを溶離した。上清を収集し、15μlの1M Tris-HCl、pH9.1で中和した。
【0100】
ファージ力価を決定し、大腸菌ER2738を用いて増幅した。ファージ力価及び増幅の結果を表2に示す。
【0101】
【0102】
ニワトリ免疫グロブリンの重鎖可変領域遺伝子及び軽鎖可変領域遺伝子を用いたScFv配列アライメントを
図2A及び2Bに示す。
【0103】
細胞ベースのELISA。BML01細胞又はネクチン4過剰発現BML01細胞を、10%FBS RPMI培地中に1×10
6個の細胞/mlで懸濁した。100μlの細胞を、96ウェル丸底プレートに播種し、各ウェルに50μlの候補ファージ培養物を添加した。混合物を150rpmで振盪しながら室温で2時間インキュベートし、次いで、PBSで3回洗浄した。混合物に100μlの抗M13-HRP(PBS中1%BSAで1:5000希釈)を添加し、150rpmで振盪しながら室温で2時間インキュベートし、次いで、PBSで6回洗浄した。混合物に100μlのTMBを添加し、次いで、50μlの2N H
2SO
4を添加することにより反応を停止した。結果を
図3A及び3Bに示す。
【0104】
抗HA抗体を利用して、候補ファージクローンの結合活性を検出した。100μlのフロー緩衝液中の1×10
5個の細胞に、20μlの候補ファージクローンを添加し、室温で30分間インキュベートし、2回洗浄した。次いで、抗HA抗体を添加し、室温で30分間インキュベートし、2回洗浄した。混合物をフローサイトメトリー分析に供し、
図4に示した。
【0105】
scFvのタンパク質発現を
図5に示す。PVRL4 864に対する抗PVRL4 scFvの結合能を、ウエスタンブロッティングによりアッセイし、
図6に示した。
【0106】
PVRL4 864及びBSAに対する連続濃度の抗PVRL4 scFvの結合能をELISAでアッセイした。力価測定に基づく1のOD450nm値における抗PVRL4 scFVの濃度を表3に示す。これは、S21がPVRL4 864に対して最も強い親和性を有することを示す。
【0107】
【0108】
競合ELISA又はELISAによるr864pに対するL1/S6/S21/L4の結合アッセイの結果を
図7に示す。一次抗体は精製されたscFvであり;二次抗体はヤギ抗ニワトリ軽鎖(1:3000)であり;三次抗体はHRCコンジュゲート化ロバ抗ヤギIgG抗体(1:5000)である。抗PVRL4 scFvのK
d値を表4に示す。
【0109】
【0110】
本発明者らは、組換えPVRL4断片タンパク質及び抗PVRL4_864 scFvの生成に成功した。
【0111】
実施例2:抗PVRL4 scFvの特徴付け
ウエスタンブロット分析におけるMCF-7細胞に対するモノクローナル抗PVRL4 scFvの結合能を
図8に示す。MDA-MB-231細胞は陰性対照として機能した。一次抗体は精製されたscFv S2、S21及びL4(10μg/ml)であり;二次抗体はヤギ抗ニワトリ軽鎖(1:3000)であり;三次抗体はHRPコンジュゲート化ロバ抗ヤギ抗体(1:5000)である。
【0112】
免疫蛍光法による乳がん細胞株に対する抗PVRL4 scFvの結合アッセイの結果を
図9A及び9Bに示す。共焦点顕微鏡法での乳がん細胞株MCF7に対するS21の免疫蛍光染色の結果を
図10に示す。一次抗体は精製されたscFv S21(300μg/ml)であり;二次抗体はヤギ抗ニワトリ軽鎖(1:400)であり;三次抗体はTRICコンジュゲート化ウサギ抗ヤギIgG抗体(1:400)であり;ブランクは一次抗体なしの二次及び三次抗体である。
【0113】
染色アッセイにおけるモノクローナル抗PVRL4 scFvの特徴付けの結果を
図11に示す。S21を、MCF-7細胞に対する免疫蛍光染色(300μg/ml)に使用し、TRITCコンジュゲート化抗体で可視化した(400×拡大;代表的なデータ)。
【0114】
細胞ELISAによる乳がん細胞株MCF7に対する抗PVRL4 scFvの結合アッセイの結果を
図12に示す。一次抗体は段階希釈した精製されたscFv S21及びL4であり;二次抗体はヤギ抗ニワトリ軽鎖(1:2000)であり;三次抗体はHRCコンジュゲート化ロバ抗ヤギIgG抗体(1:4000)であり;ブランクは一次抗体なしの二次及び三次抗体であり;陰性対照(NC)は抗RT scFv S3(RTS3)である。
【0115】
抗PVRL4 scFv S21による処理後のMCF7の細胞増殖の結果を
図13に示す。
【0116】
本発明者らは、S21が、MCF7細胞株上のPVRL4を認識し、その増殖を阻害し得ることを見出した。
【0117】
実施例3:抗PVRL4 scFvを用いたPVRL4のエピトープマッピング
抗PVRL4 scFv S21のエピトープマッピングの結果を
図14に示す。一次抗体は精製されたscFv S21(20μg/ml)又は陽性対照としての抗r864 4回目免疫化IgY(1:5000)であり;二次抗体はヤギ抗ニワトリ軽鎖(1:3000)又はHRPコンジュゲート化ロバ抗ニワトリIgY(1:5000)であり;三次抗体はHRCコンジュゲート化ロバ抗ヤギIgG抗体(1:5000)である。S21の結合領域は配列番号50である。
【0118】
本開示は、上述の具体的な実施形態に関連して説明されてきたが、その多くの代替並びにその改変及びバリエーションは当業者には明らかである。このような代替、改変及びバリエーションはすべて、本開示の範囲内にあるものと見なされる。
【配列表】
【国際調査報告】