(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】蒸発ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 37/04 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
F04B37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024541797
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2023050909
(87)【国際公開番号】W WO2023135312
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ベナヤス、 ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】リー、 ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】バンバー、 ロバート
(72)【発明者】
【氏名】バンティング、 パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アンター、 ガッサン
(72)【発明者】
【氏名】ハンクス、 サイモン
(72)【発明者】
【氏名】モシュクノフ、 コンスタンチン
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA22
3H076BB21
3H076BB43
3H076CC55
(57)【要約】
蒸発ポンプシステム(100)を部分真空のチャンバ内で動作させる方法であって、ゲッタ源(102)を加熱してゲッタ蒸気を形成するステップと、ゲッタ蒸気をチャンバ内に配置された第1のターゲット表面(106)に堆積させてゲッタ層(107)を形成するステップと、ゲッタ蒸気を堆積させることができる補充ターゲット表面をチャンバ内に提供するステップとを含む方法。最後のステップにおいて、補充ターゲット表面は、(i)ゲッタ層(107)と、ゲッタ層(107)内に存在する化学吸着及び/又は物理吸着されたあらゆる生成物とを第1のターゲット表面(106)から少なくとも部分的に除去することであって、前記ステップはチャンバ内で行われること、及び/又は(ii)チャンバ内に第2のターゲット表面を配置することによって提供され、ゲッタ源(102)はリチウムを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発ポンプシステムを部分真空のチャンバ内で動作させる方法であって、
ゲッタ蒸気を形成するべくゲッタ源を加熱することと、
ゲッタ層を形成するべく、前記チャンバ内に配置された第1のターゲット表面に前記ゲッタ蒸気を堆積させることと、
前記チャンバ内に補充ターゲット表面を提供することと
を含み、
(i)前記ゲッタ層と前記ゲッタ層内に存在する化学吸着及び/又は物理吸着されたあらゆる生成物とを前記第1のターゲット表面から少なくとも部分的に除去することであって、前記ステップは前記チャンバ内で行われること、及び/又は、
(ii)前記チャンバ内に第2のターゲット表面を配置すること
によって、前記補充ターゲット表面に前記ゲッタ蒸気を堆積させることができ、
前記ゲッタ源はリチウムを含む、方法。
【請求項2】
前記ゲッタ源は、実質的に純粋なリチウム、又は原子分率で90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲッタ源は、原子分率で40%超、好ましくは45%超、より好ましくは50%超、さらにより好ましくは55%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積ステップ中に、前記方法は、前記第1のターゲット表面と熱接触する1つ以上の冷却要素を配置することによって、前記第1のターゲット表面を前記部分真空中で前記ゲッタ層の融点の温度より低い温度まで冷却することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記除去ステップは、前記第1のターゲット表面を前記部分真空中で前記ゲッタ層の融点より高く加熱することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記冷却要素又は各冷却要素を前記第1のターゲット表面との熱接触から後退させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱ステップ中、前記第1のターゲット表面の温度は約470Kである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のターゲット表面を加熱する前記ステップによって形成される融解したゲッタ層は、重力によって前記第1のターゲット表面上を下方に流れ、前記方法は、前記融解したゲッタ層を収集器に収集することをさらに含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバ内に前記第2のターゲット表面を配置することは、前記第1のターゲット表面の代わりに前記第2のターゲット表面を配置することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバから前記第1のターゲット表面を取り出すことと、
前記ゲッタ層と前記ゲッタ層内に存在する化学吸着及び/又は物理吸着されたあらゆる生成物とを前記第1のターゲット表面から少なくとも部分的に除去することによって、前記第1のターゲット表面を補充することと
をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲッタ層及び前記生成物は、前記ゲッタ層107から実質的にすべての化合物が蒸発するまで前記第1のターゲット表面を約975Kの温度に加熱することによって、前記第1のターゲット表面から除去される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ゲッタ層及び前記生成物は、溶解によって前記第1のターゲット表面から除去される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
蒸発ポンプシステムであって、
ゲッタ源を収容するように構成されたハウジングであって、一端に開口部を備えるハウジングと、
前記ゲッタ源を加熱するための第1のヒータと、
前記開口部に対向して配置された第1のターゲット表面と、
(i)前記ゲッタ層と前記ゲッタ層内に存在する化学吸着及び/又は物理吸着されたあらゆる生成物とを前記第1のターゲット表面から少なくとも部分的に除去すること、及び/又は、
(ii)前記ハウジングの開口部に対向するように第2のターゲット表面を配置すること
によって、ゲッタ蒸気を堆積させることができる補充ターゲット表面を提供するように構成されたターゲット表面補充機構と
を備え、
前記蒸発ポンプシステムは、使用時に、前記ゲッタ源がゲッタ蒸気を形成するべく前記ハウジング内で前記第1のヒータによって加熱され、前記ゲッタ蒸気がゲッタ層を形成するべく前記第1及び/又は第2のターゲット表面に堆積されるように構成される、蒸発ポンプシステム。
【請求項14】
前記ゲッタ源はリチウムを含む、請求項13に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項15】
前記ゲッタ源は、実質的に純粋なリチウム、又は原子分率で90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項14に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項16】
前記ゲッタ源は、原子分率で40%超、好ましくは45%超、より好ましくは50%超、さらにより好ましくは55%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項15に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項17】
前記ターゲット表面補充機構は、前記第1のターゲット表面を前記ゲッタ層の融点より高く加熱するように構成された第2のヒータを備える、請求項13から16のいずれか一項に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項18】
前記ターゲット表面が前記ハウジングの前記開口部に対向して配置されているときに、前記ターゲット表面を前記ゲッタ層の融点より高く加熱することによって形成される融解したゲッタ層が収集されるように、前記第1又は第2のターゲット表面に対して配置される収集器をさらに備える、請求項17に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項19】
前記第1及び/又は第2のターゲット表面と熱接触して配置されるように動作可能な1つ以上の冷却要素をさらに備える、請求項13から18のいずれか一項に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項20】
前記ターゲット表面補充機構は、前記第1のターゲット表面の代わりに前記第2のターゲット表面を配置するためのターゲット表面交換機構を備える、請求項13から19のいずれか一項に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項21】
容器用のポンプアセンブリであって、
請求項13から20のいずれか一項に記載の蒸発ポンプシステムと、
前記容器に流体接続され、前記容器内の圧力を部分真空まで下げるように動作可能な1つ以上の真空ポンプと
を備えるポンプアセンブリ。
【請求項22】
前記容器は、トカマク、好ましくは球状トカマク、より好ましくは2.5以下のアスペクト比を有する球状トカマクであり、前記アスペクト比は、前記トカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の長半径と短半径の比として定義される、請求項21に記載のポンプアセンブリ。
【請求項23】
前記蒸発ポンプシステムは、前記トカマクのダイバータ内に、前記トカマクの中央平面の近くに、又は前記トカマク容器内のポート内に配置される、請求項21又は22に記載のポンプアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発ポンプシステム及び蒸発ポンプシステムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、密閉された空間からガスを抽出して部分的な真空を形成又は維持する装置である。ゲッタポンプは真空ポンプの一種である。大まかに言って、ゲッタポンプには、非蒸発ゲッタ(NEG)と蒸発ゲッタ(EG)の2つの主な種類がある。
【0003】
ゲッタポンプでは、ゲッタ材料を使用して、物理吸着、化学吸着、及び/又は吸収によって密閉空間から分子又は原子を抽出する。物理吸着では、ゲッタ表面に衝突した分子又は原子が一時的にゲッタ表面に付着する(又は「粘着する」)。物理吸着は可逆的であり、つまり、分子又は原子はポンピング効果をもたらさずに放出される可能性がある。しかしながら、化学吸着では、分子又は原子はゲッタと化学的に結合するため、分子又は原子を放出して空間に戻すには、かなり高い温度が必要である。このプロセスは加熱なしでは不可逆であり、したがってポンピング効果を生じる。
【0004】
NEGポンプでは、ゲッタは通常、例えばAl、Zr、Ti、V及びFeを含む合金又は焼結粉末混合物である。これらのゲッタ材料は高価であり、製造が技術的に困難である(例えば、反応性粉末の処理は本質的に危険である)。酸素、窒素、二酸化炭素及び水蒸気などの分子は、ゲッタとの化学吸着によって様々な酸化物、窒化物及び炭化物を形成するが、水素及び他の分子(例えば、炭化水素)はゲッタ表面で解離し、固溶体状態でゲッタバルク中に拡散する。時間の経過とともに、ゲッタ表面は化学吸着生成物で飽和し、ポンピング効果及びある程度の吸収が遅くなる。このため、NEGポンプは、ゲッタを約700Kの温度に加熱することによって「再作動」することができる。これにより、これらの温度では分解しない化学吸着生成物が表面からゲッタバルク中に拡散することが促進される。他の化学吸着生成物(例えば、存在するあらゆる化学吸着水素)は分解し、放出されて真空中に戻る。
【0005】
同時に、NEGポンプのゲッタバルクは吸収された生成物(例えば、解離した水素)で飽和し、それ以上の吸収が制限され得る。吸収は可逆的であるため、NEGポンプのゲッタは、これらの吸収された生成物を放出して真空中に戻すように加熱することによって「再生」することができる。
【0006】
EGポンプでは、チタンモリブデン合金からなるフィラメントを、電流を流すことによって1600Kより高い温度まで加熱する。約1600Kで、チタンは昇華し、ゲッタを形成するべく物理蒸着(PVD)によって表面に堆積される。NEGポンプと同様に、酸素、二酸化炭素、窒素はゲッタの表面に化学吸着されるが、水素はバルク中に拡散する。フィラメントは通常、新しい層を堆積させるために連続的に加熱される。代わりに、堆積されたチタン層が飽和した後にのみフィラメントを再加熱してもよい。最終的には、フィラメントは交換を必要とする。Ba、Ca又はTiを含む他の蒸発性ゲッタも知られている。
【0007】
ゲッタ材料のバルクとは、一般に、表面から離れたゲッタ材料の体積を指す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新規かつ有用な蒸発ポンプシステム、例えば、高真空(HV、10-7から10-3mbar)又は超高真空(UHV、10-12から10-7mbar)の蒸発ポンプシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、添付の特許請求の範囲による蒸発ポンプシステム及び蒸発ポンプシステムの動作方法を提供する。
【0010】
本発明による蒸発ポンプシステムは、以下の利点の1つ以上を有することができる。
・水素及び酸素、窒素、二酸化炭素及び水蒸気などの他の気体粒子を効率的に吸収する。
・コンパクトかつ軽量である。
・メンテナンスが少なく、振動がない(可動部品がない)。
・(EGポンプと比較して)動作温度が低い(<1100K)。
・製造が比較的容易かつ安価である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して例示のみを目的として説明する。
【
図5】ターゲット表面挿入除去機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
既存のゲッタポンプには、以下の課題がある。
・従来の非蒸発性ゲッタ材料及び蒸発性ゲッタ材料は、融点の異なる複数の成分から構成されているため、製造が高価かつ困難である。
・既存のゲッタ材料はゲッタバルクへの水素の除去に効果的であるが、酸素などの他のガスは化学吸着によってゲッタ表面に残る化合物を形成する。当然の帰結として、
・NEGポンプでは、ゲッタ表面が比較的急速に飽和し、飽和層を除去するための「再活性化」に時間がかかる。
・EGポンプでは、高い体積効率を得るには、化学吸着速度及び堆積速度の微調整及び/又は最適化が必要であり、これは実際には困難であり得る。
【0013】
本明細書に記載の蒸発器ポンプシステムは、これらの課題のいくつかを少なくとも部分的に解決する。
【0014】
図1は、蒸発器ポンプシステム100の側面概略図を示す。蒸発器ポンプシステム100は、蒸発器104と、プレート又はディスクなどのターゲット表面106と、収集器108とを備える。蒸発器ポンプシステム100は、例えば、HV又はUHV環境のチャンバ内で動作させることができ、特に、任意選択で特定のガス負荷でUHVを達成又は維持するために使用することができる。チャンバは、特定のガス種のポンピングが望まれ、ポンプシステムが配置されるあらゆる密閉空間である。特定の例では、チャンバは、トカマクの磁気閉じ込めチャンバである。
【0015】
蒸発器104は、ゲッタ源102のためのハウジングを提供する。ゲッタ源102は、最初は固体である。ハウジング(例えば、るつぼ)は、一端に開口部110を備える。任意選択で、蒸発器104は、ゲッタ源102と接触しているか又はゲッタ源に近い、ワイヤのフィラメントなどの1つ以上の加熱要素を含む。ワイヤのフィラメントに電流を通して、ゲッタ源102を加熱することができる。代わりに、ゲッタ源102は、例えば高周波加熱によって遠隔加熱される。加熱要素は、ゲッタ源102を融解させ、少なくとも部分的に蒸発させてゲッタ蒸気を形成するのに十分な熱を生成するように構成される。熟練した読者に理解されるように、ゲッタ蒸気を形成するのに適した他の加熱方法も可能である。
【0016】
ゲッタ源102の蒸発速度は温度と共に単調に増加するが、臨界温度(Tc1)より高い温度では、ハウジングとゲッタ源が化学的に反応しかつ/又はハウジングが破損する可能性がある。必ずではないが、好ましくは、蒸発器104の温度は、この臨界温度より低いままである。臨界温度は、ゲッタ源102及びハウジングの材料によって異なる。したがって、1つ以上の熱電対を使用して温度コントローラにフィードバックを提供し、蒸発器104及びゲッタ源102の温度及びそれらの加熱速度を調節することができる。
【0017】
ゲッタ源102の温度は、ゲッタ源102の蒸発速度を調節するように設定される。ゲッタ蒸気の量は、環境のガス圧及び/又は温度(例えば、存在するガスのモル数)に基づいて制御される。これにより、ゲッタ源102の消費量が減少し、メンテナンス(例えば、ゲッタ源102の交換又は(リチウム)供給)及びコストが削減される。
【0018】
ゲッタ蒸気は、その後、開口部110を通って蒸発器ハウジングを出て、蒸発器ハウジングの開口部110に対向するように配置されたターゲット表面106上に凝縮する。ターゲット表面106に生じる層又は薄膜は、ゲッタ層107として知られている。ゲッタ層107は、ポンピング中に生じる不純物なしで堆積されたゲッタ蒸気を指す。動作中、ゲッタ層は、ターゲット表面106が配置される部分真空環境から不純物(例えば、原子又は分子)をポンピング又は捕捉する。これらの不純物は、ゲッタ層107によって捕捉されると、ゲッタ層107のゲッタリング効果によって形成されるため、本明細書では「ゲッタ生成物」と呼ぶことがある。これらのゲッタ生成物が生じると、ゲッタ層107は使い果たされる。ゲッタ層107は、固体でも液体でもよい。ゲッタ層107のポンピング効果はゲッタ層107の表面積の増加とともに増加するため、ターゲット表面106に堆積されるゲッタ層107の表面積を最大にすることが(必須ではないが)好ましい。
【0019】
ある程度、蒸発器ハウジングの開口部110は、ゲッタ蒸気をターゲット表面106に向ける。HV又はUHV条件下では、ゲッタ蒸気の平均自由行程は比較的大きい(>50mm)ため、蒸発器104の開口部110を出るゲッタ蒸気は、第一近似では直線をたどる可能性がある(このような2つの行程が
図1に点線で示されている)。したがって、ハウジングは、ゲッタ蒸気が他の表面ではなくターゲット表面に堆積することを確実にするために、ターゲット表面106に対して配向する/角度を付けることができる。
【0020】
ターゲット表面106と蒸発器ハウジングの開口部110との間の横方向の間隔も、ターゲット表面106に堆積するゲッタ層107の総表面積を最適化するように変更することができる。より具体的には、横方向の間隔は、ゲッタ蒸気が開口部110からターゲット表面106に広がる際にたどる「円錐」の直径がターゲット表面106のサイズ(例えば、直径)と実質的に一致するように変更することができる。特定の例では、ターゲット表面106は30cmの直径を有し、開口部110とターゲット表面106との間の間隔は10cmである。一般に、蒸発器の開口部110とターゲット表面106との間の距離は、ターゲット表面106の直径の3分の1であり得る。
【0021】
任意選択で、ターゲット表面106は、ターゲット表面106から遠ざかる方向に延びる突起114(例えば、ピン)の配列を備える。突起114の配列は、好ましくは、ターゲット表面106と一体である。例えば、突起114の配列は、ディスク又はプレート形状のブランクに機械加工されてもよい。しかしながら、熟練した読者が理解するように、突起114の配列は、別々に機械加工されてターゲット表面106に取り付けられてもよい。代わりに、「突起」114の配列は、ターゲット表面106に機械加工された穴の配列であってもよい。突起114の配列は、そのサイズ(例えば、直径)を増加させることなく、ターゲット表面106の表面積を増加させ、容積ポンピング強度を向上させる。ある程度、突起114の配列は、ターゲット表面106へのゲッタ蒸気の凝縮速度も向上させるが、これは主にターゲット表面106の過冷却によって制御される。特定の例では、突起の配列における間隔は約5mmである。
【0022】
図1において、ターゲット表面106は1つ以上の加熱要素112を備える。加熱要素112は、ターゲット表面106に取り付けられるか又はターゲット表面106の一体部分を形成してもよい。1つ以上の加熱要素112は、加熱要素112のそれぞれ又はすべてをターゲット表面106から取り外すことができるように、ターゲット表面106に取り外し可能に取り付けられ得る。一例では、加熱要素112は、堆積されたゲッタ層107の下のターゲット表面106の「背面」側に配置された「ホット」プレートを形成する。代わりに、ターゲット表面106は、高周波加熱(図示せず)によって遠隔加熱される。好ましくは、ターゲット表面106の温度は、真空中に戻るゲッタ層107の過剰な蒸発を回避するために臨界温度(T
c2)より低く保たれる。リチウムを含むゲッタ源での臨界温度(T
c2)の値は、約470Kである。
【0023】
図2は、代替的な蒸発器ポンプシステム200の側面概略図を示す。蒸発器ポンプシステム200は、ターゲット表面106と熱接触して配置されるように動作可能な冷却要素214をさらに備える点で、
図1の蒸発器ポンプシステム100と異なる。ターゲット表面106はまた、突起の配列を含まないように示されているが、このような特徴の存在は可能である。冷却要素は、細長いか又は指状であるとして示されているが、他の形状も可能である。冷却要素は、冷却要素214がターゲット表面106と熱接触するように及び熱接触から外れるように配置することができるように、駆動機構(図示せず)に連結される。この機能を実現するための既知の駆動機構は、熟練した読者に知られている。
【0024】
図2において、冷却要素214は、後退位置(すなわち、ターゲット表面と熱的に接触していない位置)で示されている。しかしながら、冷却要素214は、駆動機構を用いて延伸位置(すなわち、ターゲット表面と熱的に接触する位置)に移動するように動作可能である。延伸位置において、冷却要素は、その温度がターゲット表面の温度より低い場合、熱伝導によってターゲット表面106から熱エネルギーを抽出する。したがって、ターゲット表面106の(例えば、その加熱後の)冷却速度は、
図1の蒸発ポンプシステム100に比べて高い。
【0025】
したがって、
図2のポンプシステムのターゲット表面106は、
図1のポンプシステムより容易に低温(すなわち、450Kより低い温度)に保持することができる。このような(すなわち、450Kより低い)温度では、蒸発したリチウムは、ターゲット表面106と接触したときに(ゲッタ材料として)凝固する。生じるリチウム含有ゲッタ層107は、ポンプとして機能し、ゲッタ層107内にガスを捕捉する。その後、ターゲット表面106からゲッタ層107及びゲッタ生成物を収集するために、ゲッタ層107は、ゲッタ層107及びゲッタ層107に含まれるゲッタ生成物の一部が収集器108に流れ込むように、加熱要素112を用いて融解される(すなわち、その融点より高く加熱される)。この加熱ステップの前又は間に、冷却要素214は、ターゲット表面106から切り離される(すなわち、後退する)。ゲッタ層107及びゲッタ層107に含まれるゲッタ生成物の一部が収集器108に移された後、冷却要素214は、ターゲット表面106に再び取り付ける(すなわち、熱接触するように延伸する)ことができる。
【0026】
金属は、部分真空中では、高温でガス(特に水素)を放出する傾向がある。その放出速度は、温度と共に単調に増加し、真空に曝される高温要素の表面積と線形に比例する。このガスの放出は、システムのポンピング効果に有害である。フィラメントワイヤなどの加熱要素も、ターゲット表面106を加熱するために使用されるときにガスを放出する可能性がある。したがって、システム100、200のポンピング性能は、加熱要素112の温度及び総表面積を最小限に抑えることによって改善することができる。蒸発器104の直接オーム加熱又は高周波加熱は、蒸発器104の間接加熱のために追加の加熱要素を必要としないため、この点に関して有利である。冷却システムを使用して、システム200内の他の高温要素の温度を下げることができる。例えば、冷却要素214は、熱的に接触しているターゲット表面106から熱エネルギーを除去する冷却システム(図示せず)の一部を形成する。この目的のための冷却システム、例えば水冷システムは、熟練した読者には既知である。
【0027】
図3は、さらに別の蒸発器ポンプシステム300の側面概略図を示す。蒸発器ポンプシステム300は、(i)加熱要素112の代わりに冷却要素314を備え、(ii)ポンピングされるチャンバ内に収集器108を含まない点で、
図1の蒸発器ポンプシステム100及び
図2の蒸発器ポンプシステム200と異なる。ターゲット表面106はまた、突起の配列を含まないように示されているが、このような特徴の存在は可能である。冷却要素314は、
図2の後退可能な冷却要素214であることができる。
【0028】
蒸発器ポンプシステム300のターゲット表面106には加熱要素がないため、ポンプシステム300の動作中のターゲット表面の平均及び最高動作温度は、ポンプシステム100、200に比べて低い。このため、ターゲット表面から放出されるガスの量は減少する。例えば、ポンプシステム300の動作中、ターゲット表面106の温度は、ゲッタ層の融点より低いままであることができる。特定の例では、ターゲット表面106は、450Kの温度より低いままである。
【0029】
次に、
図1から
図3の蒸発器ポンプシステム100、200、300の動作を、
図4を参照して説明する。ポンプシステム100、200、300は、部分真空の、例えば、10
-3mbar(HV)より低いか又は10
-7mbar(UHV)より低い圧力のチャンバ内で動作させることができる。
【0030】
ステップ402において、ゲッタ源102は、ゲッタ蒸気を形成するべく加熱される。
【0031】
ゲッタ源102は、固体又は液体リチウムを含む。すなわち、リチウム含有合金又は実質的に純粋なリチウムである。リチウム含有合金は、原子分率で40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%超のリチウムを含むことができる。例示的なリチウム含有合金は、原子分率で50%リチウム、50%スズである。
【0032】
リチウム含有ゲッタ層107を備えたポンプシステム100、200、300の主な動作原理は、化学吸着である。水素、酸素、窒素、水、CO、CO2、炭化水素及び他の種などの残留ガス及び蒸気は、リチウム(例えば、液体又は固体リチウム)と化学的に反応し、様々な化合物を形成する。これらの化学化合物はゲッタ生成物である。ゲッタ生成物は、化学結合によってゲッタ層107に捕捉される。
【0033】
熟練した読者が理解するように、スズ以外の又はスズに加えて構成元素を含み、その蒸発後にリチウムと結合しない代替的なリチウム合金も可能である。例えば、リチウム合金は、ナトリウム及び/又はカリウムなどの他のアルカリ金属を含むことができる。リチウムゲッタ源102は、汚染を避けるためにアルゴン雰囲気下で蒸発器104に詰め込むことができる。
【0034】
ゲッタ源が実質的に純粋なリチウムである場合、蒸発器の温度は、蒸発中にリチウム102の融点より高くなる。一方、ゲッタ源がリチウム合金である場合、蒸発器の温度は、少なくとも固相線温度より高く、より好ましくは、そのリチウム合金組成での液相線温度より高くなる。簡潔さのために、本明細書でリチウム合金との関連で使用される「融点」への言及は、それに応じて解釈されるべきである。一部のリチウム合金(例えば、リチウムスズ共晶合金)では、固相線温度と液相線温度が一致する。リチウムを含む合金の液相線温度及び固相線温度を決定するための示差走査熱量測定(DSC)などの熱物理学的手法は、熟練した読者には既知である。
【0035】
したがって、ステップ402は、リチウム含有ゲッタ源102をチャンバの部分真空中でゲッタ層の融点より高い温度まで加熱することを含む。ゲッタ源102に熱を与える加熱要素は、蒸発器104から離れている(例えば、高周波加熱部品)か、又は蒸発器104内に含まれている(例えば、ワイヤのフィラメント)かのいずれかであり得る。
【0036】
蒸発器104のハウジングは、蒸発器ポンプシステム100、200、300の動作条件下でリチウム含有ゲッタ源又はその蒸気と反応せず、100K/分の範囲の加熱速度にさらされても破損しないあらゆる材料を含むことができる。金属ハウジングは、加熱時に破損しにくいため好ましい。例示的な金属ハウジングは、タングステン、タンタル又はモリブデンである。
【0037】
ステップ404において、ゲッタ蒸気は、ゲッタ層107を形成するべく、蒸発ポンプシステムのチャンバ内に配置されたターゲット表面106に堆積される。ゲッタ層107は、ターゲット表面106の温度に応じて、固体、液体、又はそれらの混合物であり得る。
【0038】
例えば、ゲッタ層107は、ターゲット表面106が(i)層107が実質的に純粋なリチウムである場合にリチウムの融点より低いか又は(ii)層107がリチウム合金である場合にリチウム合金の固相線温度より低い場合、固体である。同様に、ゲッタ層107は、ターゲット表面106が(i)層107が実質的に純粋なリチウムである場合にリチウムの融点より高いか、又は(ii)層107がリチウム合金である場合にリチウム合金の液相線温度より高い場合、液体である。ゲッタ層107は、層107がリチウム合金であり、ターゲット表面106がそのリチウム合金の固相線温度と液相線温度との間の温度にある場合、部分的に固体である。上で詳述したように、ゲッタ蒸気は、蒸発器104とターゲット表面106の適切な配置及び分離によってターゲット表面106に向けることができる。
【0039】
ゲッタ層107が堆積されると、ゲッタ層107は、主に化学吸着によって、周囲の部分真空からガスを抽出する。したがって、ゲッタ層107は、ポンピング効果をもたらす。
【0040】
一般に、部分真空は、様々な異なるガス種を含む。例えば、窒素、酸素又は水素を含有するガスである。これらのガスは、熟練した読者には既知である。前述の化学結合のメカニズムにより、不活性ガス(例えば、He、Ar、Ne、Xe)などの一部のガス種は、他のより反応性の高いガスほど効果的にポンピングされるとは予想されない。したがって、蒸発ポンプシステム100、200、300は、それが配置されるチャンバ内の全圧を維持又は低下させることができることが好ましいが、これは必須ではない。システム100、200、300は、チャンバ内の少なくとも1つのガス種の分圧を低下させることができる限り、依然として実用的である。
【0041】
ステップ406において、チャンバ内に補充ターゲット表面を提供し、補充ターゲット表面に更なるゲッタ蒸気を堆積させることができる。補充ターゲット表面は、(i)ゲッタ層とゲッタ層内に存在する化学吸着及び/又は物理吸着されたあらゆる生成物とをターゲット表面から少なくとも部分的に除去すること(ステップ406a)、及び/又は(ii)チャンバ内に異なる(第2の)ターゲット表面を配置すること(ステップ406b)によって提供することができる。ステップ406a及びステップ406bは、同時に又は連続して行うことができる。
【0042】
ステップ406aは、チャンバ内で行われ、有利には可動部品を必要としない。ステップ406bにおいて、異なる(第2の)ターゲット表面は、元の(第1の)ターゲット表面に取って代わることができる。補充ターゲット表面を提供することは、ポンプが依然として効率的でありながら、より長い時間動作することができるので有利である。これは、ポンピング速度が、ゲッタ生成物によるターゲットプレートの飽和によって制限されないためである。
【0043】
任意選択で、ステップ408において、第1及び/又は第2のターゲット表面106は、部分真空中でゲッタ層の融点の温度より低い温度まで冷却される。冷却は、受動的(放射熱損失による冷却)であっても、能動的であってもよい。より具体的には、これは、(i)加熱要素112からの熱エネルギーの供給を低減するか又は完全に停止すること、(ii)第1及び/又は第2のターゲット表面と熱接触する冷却要素214を配置すること、又は(iii)これらの組み合わせによって達成することができる。
【0044】
冷却は、ゲッタ蒸気の凝縮を促進し、ターゲット表面106へのゲッタ蒸気の付着確率を高める。1つ以上の熱電対を使用して、温度コントローラにフィードバックを提供し、ターゲット表面106の温度を調節することができる。
【0045】
液体状態では、リチウムは衝突するガス種とより容易に反応し、これらの種に対してより高い溶解度(溶解度は温度と共に単調に増加する)及びより高い拡散速度(拡散は温度と共に単調に増加する)を有する。これらの溶解度及び拡散の増加は、部分真空から捕捉できる不純物の量の増加をもたらす。
【0046】
これらの理由から、ポンピング中にターゲット表面106を加熱してゲッタ層107を融解させることが有利であり得る。
【0047】
要約すると、ターゲット表面106の温度は、
・ゲッタ層の相状態(固体又は液体のいずれか)、
・部分真空中のガスのゲッタ層の表面への付着確率、及び/又は
・化学吸着及び吸収された生成物のゲッタバルク内への拡散速度
を制御するために使用することができる。
【0048】
ゲッタ層107及びそのゲッタ生成物をターゲット表面106から少なくとも部分的に除去するステップ406aは、ターゲット表面を部分真空中でゲッタ層の融点より高く加熱することを含むことができる。
図2に示すポンプシステム200において、冷却要素214は、ステップ406aの前又は間に、ターゲット表面との熱接触から後退させることができる。ステップ406a及び関連する後続のステップは、
図1及び
図2のポンプシステム100、200にのみ適用可能である。
【0049】
第1のターゲット表面106の温度はさらに、リチウム含有ゲッタ層の再蒸発を避けるために650Kより低く維持することができる。ゲッタ層の体積分率がゲッタ生成物の体積分率より大きい場合、ゲッタ層107をそのゲッタ生成物とともに効果的に除去することができる。その場合、リチウムゲッタ層107は融解して収集器108に流入することができ、ゲッタ層107内に含まれる固体又は溶質不純物(すなわち、ゲッタ生成物)の一部が、融解したゲッタ層とともに収集器108に移送される。逆に、ターゲット表面106上の層が本質的にほとんどゲッタ生成物で構成される程度までゲッタ層107が使い果たされた場合、これらのゲッタ生成物ははるかに高い温度で融解し、ゲッタ層107の流れが阻害されるため、これらの生成物は650Kに加熱しても除去することはできない。いくつかの例では、ゲッタ生成物は、ターゲット表面106及び/又はゲッタ層上に固体薄膜又は固体クラストを形成する。このクラストは、650Kで融解せず、ゲッタ層107の融解中にターゲット表面に付着したままであり得る。他の方法(例えば、ステップ406b)が、ターゲット表面106からクラストを除去するために使用される。ステップ406aにおいて、ターゲット表面は、ゲッタ層を融解させるために約470Kに加熱することができる。他の例では、ターゲット表面は、ゲッタ層107を融解させるために、約470Kから650K、より好ましくは約520Kから650K、さらに好ましくは約575Kに加熱することができる。
【0050】
ステップ406bは、ターゲット表面除去及び挿入機構(
図5に示す)を用いて、第1のターゲット表面106をチャンバの内部で移動させ、第2のターゲット表面をチャンバ内のその場所に挿入することを含むことができる。一例では、第2のターゲット表面は、蒸発器104の移動を必要とせずにゲッタ蒸気が第2のターゲット表面に向けられるように、チャンバ内の第1のターゲット表面の位置に取って代わる。すなわち、第2のターゲット表面は、その補充表面に更なるゲッタ層を堆積させることができるように、ハウジングの開口部に対向するように配置される。第1のターゲット表面106は、ステップ406bの間、チャンバ内に留まることができる。その後、第1のターゲット表面106は、他のターゲット表面と共にチャンバから取り出すことができる。第2のターゲット表面もまた、ステップ406bの全体にわたってチャンバ内に留まることができる。
【0051】
第1のターゲット表面106がチャンバから取り出された後、任意選択のステップ410bが行われる。ステップ410bにおいて、取り出されたターゲット表面は、ゲッタ層とゲッタ層内に存在する化学吸着及び/又は物理吸着されたあらゆる生成物とを少なくとも部分的に除去するために「清浄化」(すなわち、補充)される。ターゲット表面がチャンバの外部で清浄化されるため、より多くの空間が利用可能であり、ターゲット表面を大気圧(例えば、1気圧のアルゴン雰囲気)にすることができる。したがって、チャンバの外部でのターゲット表面の清浄化は、チャンバの内部でのターゲット表面の清浄化に比べてより簡単であり、より良い結果が得られる。
【0052】
チャンバの外部でターゲット表面106からゲッタ層とそのゲッタ生成物とを除去する例示的な方法は、(i)融解、(ii)蒸発蒸留又は(iii)化学溶解である。
【0053】
融解
既に述べたように、ポンピング中、リチウムを含むゲッタ層107は、ゲッタ生成物を形成するために使い果たされる。ゲッタ層107の体積分率がゲッタ生成物の体積分率より大きい場合、ゲッタ層を融解させることにより、ゲッタ層107を、ゲッタ層107に含まれるゲッタ生成物の一部とともに除去することができる。リチウム含有ゲッタ層107では、ターゲット表面106を454Kより高い温度に加熱することによって、これを実現することができる。
図1及び
図2に示すものと同様の収集器を使用して、融解したゲッタ層107及びゲッタ層107に含まれるゲッタ生成物を収集することができる。
【0054】
収集されたリチウムは、その後、外部のリチウムループによって処理することができる。リチウムループは、清浄な又は純粋なリチウムの流入を提供し、汚染された又は不純なリチウムを取り込む、チャンバの外部の設備である。このようなリチウムループは、
図1及び
図2に示す収集器108に接続することができる。ループ内のリチウムの循環は、ループ内に組み込まれた電磁流体ポンプによって維持される。リチウムループは熟練した読者には既知であり、本明細書では、一般に、リチウムループは、精製モジュール、保管モジュール及びポンピングモジュールを備えると述べるだけで十分である。収集されたリチウムは、必ずではないが、好ましくは、真空を破ることなく液体形態でリチウムループに送ることができる。代わりに、収集されたリチウムは、固体形態で除去及び処分することができる。
【0055】
蒸留
蒸発蒸留では、真空チャンバから取り出されたターゲットプレート106は、約975K又は975Kより高い温度に加熱される。これらの高温では、(i)ゲッタ生成物(すなわち、リチウムに化学的に結合したガス)がリチウムから解離し、ターゲットプレート106からガス又は蒸気として放出され、かつ(ii)リチウムが少なくとも部分的に蒸発する。放出されたガス種は蒸留チャンバから汲み出されるが、蒸発したリチウムは蒸留チャンバの壁で凝縮する。その後、凝縮したリチウムは収集され、ゲッタ源108としてポンプに再び挿入されることができるように、例えば棒状に鋳造される。したがって、蒸発蒸留は、リチウム含有ゲッタ層とそのゲッタ生成物のすべてとをターゲットプレート106から実質的に除去する。このため、ターゲットプレートは、蒸発蒸留を受けた後、「清浄」又は「補充済み」であると考えられる。
【0056】
いくつかの例では、収集器108に収集されたリチウム及びそのゲッタ生成物は、蒸留チャンバに直接的に、又はリチウムループを介して間接的に供給することができる。その後、上述の蒸留プロセスを適用することができる。
【0057】
溶解
化学溶解では、ターゲットプレート106を水性溶媒(例えば、水)に浸すか又は他の方法でその溶媒にさらして、ゲッタ層とその生成物とを溶液に溶解させる。他の溶媒(例えば、好適な酸)を使用することもできる。ターゲット表面106(典型的には鋼)は、水又は他の溶媒の影響を受けない。得られた溶液は、その後、適宜処分される。したがって、化学溶解は、リチウム含有ゲッタ層とそのゲッタ生成物のすべてとをターゲットプレート106から実質的に除去する。このため、ターゲットプレートは、このプロセスを受けた後、「清浄」又は「補充済み」であると考えられる。
【0058】
ゲッタ層107がステップ406a(又は他の方法)で融解した後、ゲッタ層は、その物理吸着及び/又は化学吸着された生成物とともに、重力によってターゲット表面106上を下方に流れて収集器108に流入する。したがって、ポンプシステム100、200内の収集器108は、融解したゲッタ層を収集するためにターゲット表面106の下に配置される。ターゲット表面106は、融解したゲッタを収集器108に向けるのを助ける下縁又は漏斗を含むことができる。いくつかの例では、ターゲット表面106は、ターゲット表面106が下方を向き、融解したゲッタが収集器108に効果的に流入できるように、重力の方向に対して傾斜して配向される。いくつかの例では、突起114の配列は、融解したゲッタの流れを妨げ、液体ゲッタがポンプとして作用する時間を増加させる。いくつかの例では、突起114の配列は、融解したゲッタを収集器108に送り込む流路202を画定することができる。
【0059】
ポンプシステム100、200内の収集器108は、ゲッタの融点より低い温度にある。一例では、収集器108は加熱されない。他の例では、収集器108は、熟練した読者に既知の装置を用いて冷却又は加熱することができる。したがって、ゲッタ116は収集器108内で凝固する。必要に応じて、凝固したゲッタ116は、収集器108を交換することによって除去することができる。収集器108から収集された材料は、ゲッタ生成物からリチウムを分離するために蒸留することができる。分離されたリチウムは、その後、ゲッタ源として再利用することができる。
【0060】
一例では、ポンプシステム100又は200の動作中に、ゲッタ層107はターゲット表面106上で凝固し、所定のポンピング時間後に1つ以上の加熱要素112によってゲッタ層107の融点より高く加熱される。所定の時間は、ゲッタ層107の表面を飽和させるのに必要な時間に概ねに相当し得る。いくつかの例では、蒸発ポンプシステム100を取り囲む部分真空は監視される。圧力上昇(すなわち、真空容器壁からのガス流出の速度がゲッタ層107のポンピング速度を超えることによる)又は圧力プラトー(すなわち、ゲッタ層の表面が飽和することによる)が検出された後、ゲッタ層107が融解される。他の例では、ターゲット表面106の温度は、ゲッタ層107が凝縮後に液体状態のままであるように、ゲッタの融点より高く(ただし臨界温度Tc2より低く)維持される。
【0061】
他の例では、ポンプシステム100、200、300の動作中に、ゲッタ層107はターゲット表面106上で凝固し、加熱要素112及び/又は冷却要素214、314はゲッタ層が固体のままであることを確実にするために動作する。その後、ターゲット表面がステップ406で補充されるまで、連続する固体ゲッタ層がターゲット表面106に積み重なって堆積される。
【0062】
特にステップ406aに関して、NEGは融解するように設計されていないことが知られている。典型的には、NEGは高多孔性で設計される(例えば、NEGは焼結される)。NEGを融解させると、この多孔性が破壊される。逆に、典型的なEGsは、融解させるのに比較的不便な2400Kを超える融点を有する。したがって、より低い融点の(例えば、600Kより低い融点を有する)ゲッタが望ましい。このようなゲッタは、融解させるのにより便利であり、室温でも拡散速度が測定可能であるため(拡散は相同温度に比例するためである)有利である。
【0063】
実質的に純粋なリチウムは、約454Kの融点を有するので、ステップ406a簡単な加熱装置を用いて又は他の方法で(例えば、従来のホットプレートを用いて)容易に融解させることができる。上述したように、液体ゲッタの利点は、液体ゲッタへのガス種の化学吸着速度が固体ゲッタへより大きいことである。
【0064】
リチウム含有ゲッタ源102をターゲット表面106に堆積させるステップ404の間、ターゲット表面は、その融点より低い温度に、例えば、約300から400Kに保持され得る。
【0065】
これらの方法ステップの数字による順序は、限定するよう意図されていない。例えば、ステップ408は、ステップ406aの前に、ステップ406aの後に、又はステップ406aと同時に行われ得る。ステップ406aは、ステップ406bの前に、ステップ406bの後に、又はステップ406bと同時に行われ得る。熟練した読者は、これらの方法ステップには、実用的な例につながる他の順序の組み合わせがあることを理解するであろう。
【0066】
蒸発ポンプシステム100、200、300の構成要素は製造が容易かつ安価であり、蒸発器104及び収集器108は容易に機械加工可能な容器であり、ターゲット表面106はディスクであってもよい。
図1の突起114の配列は、シリンダの周縁に固定された(例えば、溶接された)ピンから形成することができる。一例では、ディスク及びシリンダはステンレス鋼である。特定の例では、ディスクは直径が約30cmであり、シリンダは5cmの長さを有する。特定の例では、突起114はターゲット表面106から約10mm延び、各突起114は約1mmの半径を有し、突起114は約5mm間隔で規則的に配置される。
【0067】
(同じ投影面積を維持しながら)ゲッタ層107の表面積を増加させる別の方法は、ターゲット表面106を平坦でないように成形することである。例えば、(ディスクから形成することもできる)ターゲット表面106の表面は、鋸歯状の表面プロファイル又は波状のプロファイルを有することができる。ターゲット表面106の表面積を増加させる他の表面プロファイルも可能である。特定の例では、表面プロファイルは規則的なパターンを有する。熟練した読者は、これらの表面プロファイル及び他の表面プロファイルを固体表面上に作り出す方法を知っている。
【0068】
図5は、チャンバ内に設置された蒸発器ポンプシステムと共に使用するためのターゲット表面挿入除去機構500の概略図である。ターゲット表面挿入除去機構は、以前は堆積されたゲッタ層107を受容する位置にあったターゲットプレート106、すなわち「汚れた」プレートの代わりに補充(又は「清浄な」)ターゲットプレート506を提供するためのものである。この機構は、清浄なターゲットプレート506を移動させ、ターゲットプレート106を取り除くための移動装置501を備える。移動装置501は、ターゲットプレート106を清浄なターゲットプレート506と交換するために必要な動力を提供するために、大気圧側から作動させることができる。この機構はさらに、「清浄な」ターゲット表面及び「使用済み」ターゲット表面をそれぞれ保管するための専用の保管モジュール502、503を備える。いくつかの例では、これらの保管モジュール502、503は、ポンピングされるチャンバ内に配置される。このような例では、有利なことに、ポンプシステムが配置されるチャンバを減圧することなく、移動装置501を作動させてプレート106、506を交換することができる。代わりに、保管モジュール502、503は、チャンバの外部に配置することができるが、その構成では、プレートが交換を必要とするたびにシステムを減圧する必要がある。
【0069】
ロック機構504を使用して、蒸発器104からゲッタ蒸気を受け取るための適切な位置にターゲット表面106を保持し、ポンプシステム100、200、300内に存在するあらゆる加熱要素112又は冷却要素214、314と接触させることができる。ロック機構504は、チャンバ内のプレート106を清浄なプレート506と交換できるように「ロック解除」するように動作可能である。
【0070】
一般に、ターゲット表面挿入除去機構は、所定の条件が満たされることを条件として作動される。所定の条件は、特定のゲッタ飽和状態、ターゲットプレート上の層、すなわちゲッタ層とその生成物の厚さ、又は所定の時間が経過した後であり得る。一般に、ターゲット表面106は、所定の条件が満たされると、ゲッタ生成物で「飽和」していると見なされる。ターゲット表面挿入除去機構500の作動は、(i)ロック機構504を解除するステップと、(ii)ゲッタ層107を有するターゲットプレート106を保管モジュール503に移動するステップと、(iii)保管モジュール502からの清浄なターゲットプレート506を、蒸発器104からゲッタ蒸気を受け取る位置に移動するステップと、(iv)ロック機構504を係合させて新しいターゲットプレート506を所定の位置に保持するステップとを含む。これらのステップは、a)保管モジュール502に新しいターゲットプレート506がなくなるか、又はb)保管モジュール503が満杯になるまで繰り返すことができる。これら2つの条件のいずれかが満たされると、補充処置が行われる。
【0071】
補充処置は、ターゲットプレート106を処理/清浄化のために保管モジュール503から取り出すこと、又は「清浄な」ターゲットプレート506を保管モジュール502に詰め込むことのいずれかを含む。補充処置は、詰め込みロック装置を用いて部分真空下で、又はアルゴン又はヘリウムなどの不活性ガスをチャンバに充填することによって大気圧下で行うことができる。不活性ガスの使用は、リチウムの汚染を回避するので好ましい。次いで、アルゴンを充填した(又は他の不活性ガスを充填した)グローブボックスをポンプチャンバのポートに接続するか又は取り付けることができ、その中に「清浄な」ターゲットプレート506を保管モジュール502への挿入のために配置することができる。グローブボックスは、一時的な設置であっても恒久的な設置であってもよい。その後、ポートが開かれ、オペレータ(人間又はロボット装置のいずれか)が、飽和プレート106を保管モジュール503から取り出し、かつ/又は清浄なターゲットプレート106を保管モジュール502に詰め込むことができる。その後、ポートが閉じられる。補充が高圧(例えば、大気圧)で行われる場合、ポンピングは停止され、ポンプシステム100、200、300は、それが取り付けられているチャンバから切り離される。補充が完了した後、(i)以下に説明するように、他の真空ポンプによってチャンバ内に部分真空が回復され、(ii)ポンプシステム100、200、300は、それが取り付けられているチャンバに再び接続され、(iii)ポンプシステム100、200、300の動作を再開することができる。
【0072】
次に
図6を参照すると、容器又はチャンバ604用のポンプアセンブリ600の概略図が示されている。ポンプアセンブリ600は、容器604内に配置された(上記で詳細に説明した)
図1、
図2又は
図3のいずれかの蒸発ポンプシステム100、200、300と、弁706を介して容器に流体接続された1つ以上の真空ポンプ602とを含む。一例では、1つ以上の真空ポンプ602は、ターボ分子ポンプと前真空ポンプとを備える。1つ以上の真空ポンプ602は、容器内の圧力を部分真空の圧力まで(例えば、HVまで)下げるように動作可能である。真空ポンプ602の種類は、熟練した読者には既知である。任意選択で、ポンプアセンブリ600は
図5のターゲット表面挿入交換機構500(図示せず)を含み、詳細には、限定的ではないが、アセンブリ内のポンプシステムは
図3に示したものである。任意選択で、1つ以上の前真空ポンプ602と直列に流体接続された1つ以上のブースターポンプも使用することができる(図示せず)。
【0073】
いくつかの例では、容器604は、磁気閉じ込めプラズマチャンバ、例えばトカマク、好ましくは球状トカマクであってもよい。必ずではないが、好ましくは、球状トカマクのアスペクト比は2.5以下である。アスペクト比は、トカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の長半径と短半径の比である。蒸発ポンプシステム100、200、300は、ステラレータ又は他のプラズマ閉じ込め容器内に設けることもできる。特定の例では、蒸発ポンプシステム100、200、300は、プラズマ容器(例えば、トカマク真空容器)のダイバータ内に、プラズマチャンバ(例えば、トカマク真空容器)の中央平面の近くに、中央平面に沿って又は中央平面の周りに、又はプラズマ容器(例えば、トカマク真空容器)内のポート内に設置することができる。
【0074】
リチウム含有ゲッタ源102を備える蒸発ポンプシステム100、200、300は、以下の理由により、磁気閉じ込めプラズマチャンバ(例えば、トカマク)での使用に特に適している。
・リチウムは「低Z」元素であるため、蒸発ポンプシステム100、200、300の動作がプラズマの動作(例えば、安定性)に悪影響を与えない。
・蒸発ポンプシステム100、200、300はコンパクトであるため、球形トカマク(スペースが貴重である)に設置することができる。
・蒸発ポンプシステム100、200、300のポンピング効率は、プラズマとの接触又は温度上昇によって不利益に低下しない。
・リチウムは、トカマクの主要な種である水素及びその同位体(すなわち、重水素とトリチウム)と化学的に結合する。これらの捕捉された水素同位体は、他の場所でゲッタ層から安全に抽出することができる。
【0075】
「ゲッタ源」102及び「ゲッタ層」107は、同じ材料であっても異なる材料であってもよいことに留意すべきである。例えば、ゲッタ源102及びゲッタ層107は、両方とも純粋なリチウムであってもよく、両方とも実質的に等価な組成のリチウム含有合金であってもよい。更なる例では、ゲッタ源102は、リチウム含有合金(例えば、40at%の低いリチウム)であってもよく、一方、ゲッタ源102の蒸発及び凝縮の生成物であるゲッタ層は、実質的に純粋なリチウムである。更なる例では、ゲッタ源は、特定の組成のリチウム含有合金であってもよく、ゲッタ層は、異なる組成のリチウム含有合金である。熟練した読者は、リチウム含有合金をゲッタ源として用いた場合、ターゲット表面106に堆積するゲッタ層の組成は、特定の圧力及び温度に対する適切な相図から決定できることを理解するであろう。
【0076】
本明細書全体にわたる融点、液相線温度、固相線温度、及び沸点への言及は、反対の表現がない限り、部分真空の圧力における相転移温度として解釈されるべきである。
【0077】
上記の好ましい実施形態に関して本発明を説明してきたが、これらの実施形態は例示にすぎず、特許請求の範囲はこれらの実施形態に限定されないことを理解すべきである。異なる実施例からの特徴は、他の実施例を形成するように必要に応じて組み合わせることができる。本発明は、優先出願の請求項に対応する、以下の番号付き段落によって定義される態様を含む。
【0078】
段落1:蒸発ポンプシステムを部分真空で動作させる方法であって、ゲッタ蒸気を形成するべくゲッタ源を加熱することと、ターゲット表面の温度を制御することによってゲッタ層を形成するべくゲッタ蒸気をターゲット表面に堆積させることと、ターゲット表面を部分真空でゲッタ層の融点より高く加熱することとを含む方法。
【0079】
段落2:ゲッタ源は、実質的に純粋なリチウム、又はリチウム含有合金を含み、前記合金は、原子分率で90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超のリチウムを含む、段落1に記載の方法。
【0080】
段落3:前記堆積ステップ中、ターゲット表面の温度は454Kより低く、前記加熱ステップ中、ターゲット表面の温度は約470Kから約670Kである、段落1及び2のいずれかに記載の方法。
【0081】
段落4:前記堆積ステップ及び加熱ステップ中、ターゲット表面の温度は約1100Kより低いままである、段落2に記載の方法。
【0082】
段落5:ターゲット表面の温度は、ターゲット表面をその融点より高く加熱する前記ステップまで、部分真空でゲッタ蒸気の融点より低いままである、段落1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
段落6:ターゲット表面を加熱する前記ステップは、ゲッタ層がターゲット表面に堆積されてから、又は部分真空の圧力が増加又は平坦化したことが検出されてから、所定の時間後に行われる、段落1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
段落7:ターゲット表面を加熱する前記ステップによって形成される融解したゲッタ層は、重力によってターゲット表面上を下方に流れ、方法は、融解したゲッタ層を収集器に収集することをさらに含む、先行するいずれかの段落に記載の方法。
【0085】
段落8:前記収集ステップの後、前記収集器内で前記融解したゲッタを凝固させることをさらに含む、段落7に記載の方法。
【0086】
段落9:ゲッタ源は、部分真空でゲッタ源の融点より高く、第1の臨界温度より低い温度に加熱される、先行するいずれかの段落に記載の方法。
【0087】
段落10:ゲッタ源は、窒化ホウ素から成るハウジング内に収容され、第1の臨界温度は1100Kである、段落2に従属する場合の段落9に記載の方法。
【0088】
段落11:部分真空は、10-3mbarより低い圧力、より好ましくは10-7mbarより低い圧力を有する、先行するいずれかの段落に記載の方法。
【0089】
段落12:ゲッタ源を加熱する前記ステップは、ゲッタ源と接触しているか又はゲッタ源に近いワイヤのフィラメントに電流を流すことを含む、先行するいずれかの段落に記載の方法。
【0090】
段落13:蒸発ポンプシステムであって、ゲッタ源を収容するように構成されたハウジングであって、一端に開口部を備えるハウジングと、前記ゲッタ源を加熱するための第1のヒータと、前記開口部に対向して配置されたターゲット表面と、前記ターゲット表面を加熱するための第2のヒータとを備え、前記蒸発ポンプシステムは、使用時に、ゲッタ源はハウジング内で前記第1のヒータによって加熱されてゲッタ蒸気を形成し、ゲッタ蒸気はターゲット表面に堆積されてゲッタ層を形成し、前記ターゲット表面は前記第2のヒータによってゲッタ層の融点より高い温度まで加熱されるように構成される、蒸発ポンプシステム。
【0091】
段落14:ターゲット表面をゲッタ層の融点より高い温度まで加熱することによって形成される融解したゲッタ層を収集するためにターゲット表面に対して配置される収集器をさらに備える、段落13に記載の蒸発ポンプシステム。
【0092】
段落15:前記ゲッタ源は、実質的に純粋なリチウム、又はリチウム含有合金であり、前記合金は、原子で90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超のリチウムを含む、段落13から14のいずれか1つに記載の蒸発ポンプシステム。
【0093】
段落16:前記ターゲット表面は突起の配列を備え、前記配列の各突起はターゲット表面から遠ざかる方向に又はターゲット表面内に延びる、段落13から15のいずれか1つに記載の蒸発ポンプシステム。
【0094】
段落17:前記配列は、立方体、六角形又は斜方晶である、段落16に記載の蒸発ポンプシステム。
【0095】
段落18:前記配列は不規則であり、ターゲット表面をゲッタ層の融点より高く加熱することによって形成される融解したゲッタ層の流れを収集器に向けるように構成された複数の流路を画定する、段落16に記載の蒸発ポンプシステム。
【0096】
段落19:前記第2のヒータは、ターゲット表面に取り付けられるか又はターゲット表面の一体部分を形成する1つ以上の加熱要素を備える、段落13から18のいずれか1つに記載の蒸発ポンプシステム。
【0097】
段落20:前記第1のヒータは、ゲッタ源又はそのハウジングと接触するか又はその近くにある1つ以上の加熱要素を備える、段落13から18のいずれか1つに記載の蒸発ポンプシステム。
【0098】
段落21:ターゲット表面はプレート又はディスクである、段落13から20のいずれか1つに記載の蒸発ポンプシステム。
【0099】
段落22:ターゲットプレートは約30cmの直径を有し、突起の配列における隔は約5mmであり、配列の各突起は約1mmの半径を有し、配列の各突起はターゲット表面から10mm延びる。段落20に記載の蒸発ポンプシステム。
【0100】
段落23:容器用のポンプアセンブリであって、段落13から22のいずれか1つに記載の蒸発ポンプシステムと、容器に流体接続され、容器内の圧力を部分真空まで下げるように動作可能な1つ以上のポンプとを備えるポンプアセンブリ。
【0101】
段落24:容器はaである、段落23に記載のポンプアセンブリ。
【0102】
段落25:蒸発ポンプシステムは、トカマクのダイバータ内に、トカマクの中央平面の近くに、又はトカマク容器内のポート内に配置される、段落23から24のいずれか1つに記載のポンプアセンブリ。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
段落24:容器はトカマクである、段落23に記載のポンプアセンブリ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発ポンプシステムを部分真空のチャンバ内で動作させる方法であって、
ゲッタ蒸気を形成するべく
リチウムを含むゲッタ源を加熱することと、
ゲッタ層を形成するべく、前記チャンバ内に配置された第1のターゲット表面に前記ゲッタ蒸気を堆積させることと、
前記チャンバ内に補充ターゲット表面を提供することと
を含み、
前記チャンバ内に第2のターゲット表面を配置することによって、前記補充ターゲット表面に前記ゲッタ蒸気を堆積させることができ
る、方法。
【請求項2】
前記ゲッタ源は、実質的に純粋なリチウム、又は原子分率で90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲッタ源は、原子分率で40%超、好ましくは45%超、より好ましくは50%超、さらにより好ましくは55%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積ステップ中に、前記方法は、前記第1のターゲット表面と熱接触する1つ以上の
後退可能な冷却要素を配置することによって、前記第1のターゲット表面を前記部分真空中で前記ゲッタ層の融点の温度より低い温度まで冷却することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸発ポンプシステムは1つ以上の後退可能な冷却要素を備え、前記方法は、前記
後退可能な冷却要素又は各
後退可能な冷却要素を前記第1のターゲット表面との熱接触から後退させることをさらに含む、請求項
1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバ内に前記第2のターゲット表面を配置することは、前記第1のターゲット表面の代わりに前記第2のターゲット表面を配置することを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記チャンバから前記第1のターゲット表面を取り出すことと、
前記ゲッタ層と前記ゲッタ層内に存在する化学吸着及び/又は物理吸着されたあらゆる生成物とを前記第1のターゲット表面から少なくとも部分的に除去することによって、前記第1のターゲット表面を補充することと
をさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲッタ層及び前記生成物は、前記ゲッタ
層から実質的にすべての化合物が蒸発するまで前記第1のターゲット表面を約975Kの温度に加熱することによって、前記第1のターゲット表面から除去される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲッタ層及び前記生成物は、溶解によって前記第1のターゲット表面から除去される、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
蒸発ポンプシステムであって、
ゲッタ源を収容するように構成されたハウジングであって、一端に開口部を備えるハウジングと、
前記ゲッタ源を加熱するための第1のヒータと、
前記開口部に対向して配置された第1のターゲット表面と、
前記ハウジングの開口部に対向するように第2のターゲット表面を配置することによって、ゲッタ蒸気を堆積させることができる補充ターゲット表面を提供するように構成されたターゲット表面補充機構と
を備え、
前記蒸発ポンプシステムは、使用時に、前記ゲッタ源がゲッタ蒸気を形成するべく前記ハウジング内で前記第1のヒータによって加熱され、前記ゲッタ蒸気がゲッタ層を形成するべく前記第1及び/又は第2のターゲット表面に堆積されるように構成され
、
前記ゲッタ源はリチウムを含む、蒸発ポンプシステム。
【請求項11】
前記ゲッタ源は、実質的に純粋なリチウム、又は原子分率で90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項
10に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項12】
前記ゲッタ源は、原子分率で40%超、好ましくは45%超、より好ましくは50%超、さらにより好ましくは55%超のリチウムを含むリチウム含有合金である、請求項
10に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2のターゲット表面と熱接触して配置されるように動作可能な1つ以上の
後退可能な冷却要素をさらに備える、請求項
10から
12のいずれか一項に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項14】
前記ターゲット表面補充機構は、前記第1のターゲット表面の代わりに前記第2のターゲット表面を配置するためのターゲット表面交換機構を備える、請求項
10から
12のいずれか一項に記載の蒸発ポンプシステム。
【請求項15】
容器用のポンプアセンブリであって、
請求項
10から
12のいずれか一項に記載の蒸発ポンプシステムと、
前記容器に流体接続され、前記容器内の圧力を部分真空まで下げるように動作可能な1つ以上の真空ポンプと
を備えるポンプアセンブリ。
【請求項16】
前記容器は、トカマク、好ましくは球状トカマク、より好ましくは2.5以下のアスペクト比を有する球状トカマクであり、前記アスペクト比は、前記トカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の長半径と短半径の比として定義される、請求項
15に記載のポンプアセンブリ。
【請求項17】
前記蒸発ポンプシステムは、前記トカマクのダイバータ内に、前記トカマクの中央平面の近くに、又は前記トカマク容器内のポート内に配置される、請求項
16に記載のポンプアセンブリ。
【国際調査報告】