(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】草高短縮トウモロコシ
(51)【国際特許分類】
A01H 6/46 20180101AFI20250117BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20250117BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/82 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20250117BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250117BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20250117BHJP
A01H 5/12 20180101ALI20250117BHJP
A01H 5/04 20180101ALI20250117BHJP
【FI】
A01H6/46
A01H5/00 A ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/82 122Z
C12N15/29
C12N15/09 110
A01H5/10
A01H5/12
A01H5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541808
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022082208
(87)【国際公開番号】W WO2023136966
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521559371
【氏名又は名称】イナリ アグリカルチャー テクノロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン エクス, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】クレイズ, ハンネス バート
(57)【要約】
草高が短縮したトウモロコシ植物を提供するトウモロコシ遺伝子Zm1d31079及びZm1d44812の修飾が開示される。異種増強エレメントを有する修飾されたZm1d31079又はZm1d44812を含むトウモロコシ植物が記載される。また、かかる植物から入手される種子、並びに商品生産を生産するための及びトウモロコシ育種における種子及び植物の使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトウモロコシ植物であって、前記修飾された遺伝子に異種発現増強エレメントが位置し、修飾されていないZm1d31079遺伝子が配列番号1のDNA分子又はそのアレル変異体を含む、トウモロコシ植物。
【請求項2】
前記修飾されたZm1d31079遺伝子及び/又は前記修飾されていないZm1d31079遺伝子が、配列番号2のZm1d31079タンパク質又はそのアレル変異体をコードする、請求項1に記載のトウモロコシ植物。
【請求項3】
前記修飾されたZm1d31079遺伝子が、前記修飾されていないZm1d31079遺伝子の天然染色体位置に位置する、請求項1に記載のトウモロコシ植物。
【請求項4】
前記修飾されたZm1d31079遺伝子が、前記修飾されていないZm1d31079遺伝子の天然染色体位置以外の染色体位置に位置するトランス遺伝子を含む、請求項1に記載のトウモロコシ植物。
【請求項5】
前記異種発現増強エレメントが、(i)異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロン;又は(ii)異種プロモーター、異種5’UTR、及び/又は異種イントロンを含む、請求項1に記載のトウモロコシ植物。
【請求項6】
前記異種転写エンハンサーが、前記修飾されたZm1d31079遺伝子の前記プロモーター、前記5’非翻訳領域(5’UTR)、イントロン、3’非翻訳領域(3’UTR)、又は3’フランキング領域に位置する、請求項5に記載のトウモロコシ植物。
【請求項7】
前記異種転写エンハンサーが、配列番号16、17、19~124、及び/又は125に示されるDNA分子を含む、請求項5に記載のトウモロコシ植物。
【請求項8】
前記転写エンハンサーが、前記Zm1d31079の転写開始部位(TSS)から約10、20、30、40、100、又は150塩基対(bp)~約200、240、300、350、400、500、又は1000bp5’側に位置する、請求項5に記載のトウモロコシ植物。
【請求項9】
前記転写エンハンサーが、配列番号16又は17を含み、前記挿入が、
(i)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約116~約96塩基対又は約106塩基対;
(ii)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約119~約99塩基対又は約109塩基対;
(iii)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約170~約150塩基対又は約160塩基対;
(iv)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約252~約232塩基対又は約242塩基対;
(v)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約261~約241塩基対又は約251塩基対;
(vi)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号4、5、又は6によってコードされるガイドRNAで前記Zm1d31079プロモーターに導入された二本鎖切断;又は
(vii)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号3又は7によってコードされるガイドRNAで前記Zm1d31079プロモーターに導入された二本鎖切断
に位置する、請求項5に記載のトウモロコシ植物。
【請求項10】
前記異種イントロンが、前記修飾されたZm1d31079遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に位置し、任意選択で前記イントロンが、転写開始部位(TSS)から約500、200、100、50、30、又は20塩基対以内に位置する、請求項5に記載のトウモロコシ植物。
【請求項11】
前記異種イントロンが、UBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンを含み、任意選択で前記UBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンが、イネ又はトウモロコシイントロンである、請求項10に記載のトウモロコシ植物。
【請求項12】
前記異種翻訳エンハンサーが、前記修飾されたZm1d31079遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に位置する、請求項5に記載のトウモロコシ植物。
【請求項13】
前記翻訳エンハンサーが、イネアルコールデヒドロゲナーゼ(OsAdh)、グルタチオントランスフェラーゼU50(OsGstU50)、グルタチオンペルオキシダーゼ1(OsGsp1)、20Sプロテアソームα1サブユニット(Os20Sα1)、発病関連タンパク質4b(OsPrp4b)、グリシンリッチ細胞壁構造タンパク質1(Os Grcwp1)、又はUspAドメイン含有タンパク質(Os UspA)5’UTRを含むDNA配列を含むDNA分子によってコードされ、前記OsAdh、Os GstU50、Os20Sα1、OsPrp4b、Os Grcwp1、又はOs UspA 5’UTRの全て又は一部が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子における前記Zm1d31079 5’UTRの全て又は一部に置換されている、請求項12に記載のトウモロコシ植物。
【請求項14】
前記Zm1d31079の発現が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して前記トウモロコシ植物の少なくとも1つの組織において増加し、任意選択で前記Zm1d31079の発現が少なくとも稈組織において増加する、請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物。
【請求項15】
前記トウモロコシ植物の草高が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して短縮し、任意選択で前記草高が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して約5%又は10%~約15%、20%、30%、又は50%短縮する、請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物。
【請求項16】
前記修飾されたZm1d31079に関してヘテロ接合体の交雑系トウモロコシ植物である、請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物。
【請求項17】
前記修飾されたZm1d31079遺伝子を有する植物におけるZm1d31079遺伝子産物の発現が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して、前記トウモロコシ植物の少なくとも1つの組織において約20%~80%増加する、請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物。
【請求項18】
前記修飾されたZm1d31079遺伝子を有する植物におけるZm1d31079遺伝子産物の発現が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して、前記トウモロコシ植物の少なくとも1つのトウモロコシ組織において約1.2倍又は1.5倍~約2倍、3倍、又は5倍に増加する、請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項に記載の修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトウモロコシ植物部位。
【請求項20】
種子、稈、茎、又は葉である、請求項19に記載のトウモロコシ植物部位。
【請求項21】
前記種子が、生物学的薬剤、殺線虫剤、殺虫剤、又は殺真菌剤を含む組成物の少なくとも部分的なコーティングを更に含む、請求項20に記載のトウモロコシ植物部位。
【請求項22】
前記トウモロコシ植物種子が、前記修飾されたZm1d31079に関してヘテロ接合体の交雑系トウモロコシ植物種子である、請求項19に記載のトウモロコシ植物部位。
【請求項23】
トウモロコシ種子を作製する方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物を成長させること、及びそこから種子を収穫することを含む方法。
【請求項24】
交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の前記修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物を、前記修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体の別のトウモロコシ植物と交配させること、及び前記交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法。
【請求項25】
追加された所望の形質を含むトウモロコシ植物を作製する方法であって、前記所望の形質を付与するトランス遺伝子、標的化された遺伝子変化、及び/又は遺伝子座を請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物に導入することを含む方法。
【請求項28】
商品トウモロコシ植物生産物を作製する方法であって、(i)請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物又はそれから入手されるトウモロコシ種子を加工すること;及び(ii)前記加工されたトウモロコシ植物又はトウモロコシ種子から前記商品トウモロコシ植物生産物を回収することを含む方法。
【請求項29】
前記商品トウモロコシ植物生産物が、種子ミール、デンプン、シロップ、サイレージ、油、又はタンパク質である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記商品トウモロコシ植物生産物が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片に位置する前記異種転写エンハンサー、前記異種翻訳増強エレメント、及び/又は前記異種イントロンを含む検出可能な量のDNA分子を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片に位置する異種転写エンハンサー、異種イントロン、及び/又は異種翻訳増強エレメントを含む検出可能な量のDNA分子を含む生物学的試料。
【請求項32】
前記生物学的試料が、請求項1~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物又はその一部位から入手される材料を含み、前記部位が、任意選択で種子である、請求項31に記載の生物学的試料。
【請求項33】
再生不可能である、請求項31に記載の生物学的試料。
【請求項34】
トウモロコシ種子ミールを含む、請求項33に記載の生物学的試料。
【請求項35】
請求項1~3又は5~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物を作成する方法であって、
(a)配列番号1のDNA分子又はそのアレル変異体を含む修飾されていないZm1d31079遺伝子のプロモーター領域、5’UTR、コード領域、3’UTR、又は3’フランキング領域に二本鎖DNA切断を導入する第1の部位特異的ヌクレアーゼ;及び異種発現増強エレメントを含むドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型を含む遺伝子編集分子をトウモロコシ植物ゲノムと接触させること;及び
(b)修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトウモロコシ植物を選択することであって、前記修飾されたZm1d31079遺伝子が、前記遺伝子の前記プロモーター領域、前記5’UTR、前記コード領域、前記3’UTR、又は前記3’フランキング領域に前記異種発現増強エレメントの挿入を含み、前記修飾されたZm1d31079遺伝子の発現が、少なくとも1つの組織において増加し、及び前記修飾されたZm1d31079遺伝子を含む前記トウモロコシ植物の草高が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して減少すること
を含む方法。
【請求項36】
前記異種発現増強エレメントが、異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロンを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記二本鎖切断が、前記修飾されていないZm1d31079遺伝子の前記プロモーター、前記5’非翻訳領域(5’UTR)、イントロン、3’非翻訳領域(3’UTR)、又は3’フランキング領域に導入され、前記ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型が、前記異種転写エンハンサーを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記転写エンハンサーが、配列番号16、17、19~124、及び/又は125に示されるDNA分子を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記二本鎖切断が、前記Zm1d31079の転写開始部位(TSS)から約10、20、30、40、100、又は150塩基対(bp)~約200、240、300、350、400、500、又は1000bp5’側に導入される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記転写エンハンサーが配列番号16又は17を含み、前記二本鎖切断が、
(i)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約116~約96塩基対又は約106塩基対;
(ii)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約119~約99塩基対又は約109塩基対;
(iii)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約170~約150塩基対又は約160塩基対;
(iv)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約252~約142塩基対又は約242塩基対;
(v)前記Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約261~約241塩基対又は約251塩基対;
(vi)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号4、5、又は6によってコードされるガイドRNAで前記Zm1d31079プロモーター;又は
(vii)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号3又は7によってコードされるガイドRNAで前記Zm1d31079プロモーター
に導入される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型が異種翻訳エンハンサーを含み、前記二本鎖切断が、前記修飾されていないZm1d31079遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に導入される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記翻訳エンハンサーが、イネアルコールデヒドロゲナーゼ(OsAdh)、グルタチオントランスフェラーゼU50(OsGstU50)、グルタチオンペルオキシダーゼ1(OsGsp1)、20Sプロテアソームα1サブユニット(Os20Sα1)、発病関連タンパク質4b(OsPrp4b)、グリシンリッチ細胞壁構造タンパク質1(OsGrcwp1)、又はUspAドメイン含有タンパク質(OsUspA)5’UTRのDNA配列を含むDNA分子によってコードされ、前記OsAdh、OsGstU50、Os20Sα1、OsPrp4b、OsGrcwp1、又はOsUspA 5’UTRの全て又は一部が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子の前記Zm1d31079 5’UTRの全て又は一部に置換されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記DNAドナー鋳型又は他のDNA鋳型が異種イントロンを含み、前記二本鎖切断が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に導入され、任意選択で前記二本鎖切断が、TSSから約500、200、100、50、30、又は20塩基対以内に導入される、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記異種イントロンが、UBQ10、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンを含み、任意選択で前記UBQ10、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンが、イネ又はトウモロコシイントロンを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1~2又は4~13のいずれか一項に記載のトウモロコシ植物を作製する方法であって、
(a)修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトランス遺伝子をトウモロコシ植物ゲノムと接触させることであって、前記修飾されたZm1d31079遺伝子が、配列番号2のZm1d31079タンパク質又はそのアレル変異体をコードするコード領域に作動可能に連結された異種プロモーター、異種5’UTR、及び/又は異種イントロンを含むこと;及び
(b)前記修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトランスジェニックトウモロコシ植物を選択することであって、前記修飾されたZm1d31079遺伝子の発現が少なくとも1つの組織において増加し、及び前記トウモロコシ植物の草高が、前記修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して減少すること
を含む方法。
【請求項46】
前記プロモーターが、ユビキチンプロモーター、アクチンプロモーター、又は植物ウイルスプロモーターであり、任意選択で前記植物ウイルスプロモーターがカリモウイルスプロモーターを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記異種イントロンが、UBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンを含み、任意選択で前記UBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンが、イネ又はトウモロコシイントロンを含む、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、2022年1月12日に出願された、全体として参照により本明細書に援用される米国仮特許出願第63/266,684号明細書の利益を主張する。
【0002】
配列表の援用
本願に含まれる105,723バイト(MS-Windows(登録商標)で測定した)の「P13777WO00.XML」という名称の配列表は、125個の生物学的配列を含み、2022年12月1日に作成されたものであり、本明細書と共に電子出願され、全体として参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
植物草高は、様々な要因、例えばジベレリン酸などの植物ホルモンによって調節される茎の伸長度によって決まるところが大きい。植物草高の短縮は、生産力、農学的実践及び全収量の改善と関連付けられる有用な商業的形質である。
幾つもの遺伝子が、ブレビスプラント1(Brevis plant1:BV1)、ブラキティック2(brachytic2:BR2)、コンパクトプラント2(compact plant2:ct2)など、植物草高に関与することが記載されている。これらの遺伝子のほとんどは植物成長の正の調節因子であるため、典型的にはかかる遺伝子の完全な又はほぼ完全な機能喪失型突然変異は、植物草高の深刻な短縮を生じ、あまり有用性がない。
Ellis et al.,1987,EMBO J.(6):11:3203-3208は、一過性発現アッセイにおいてトウモロコシ及びタバコプロトプラストにおける外因性遺伝子の発現を増加させることができた16塩基対の細菌オクトピンシンターゼ遺伝子エンハンサーエレメントを開示している。国際公開第2018/140899号パンフレットは、トウモロコシプロトプラストゲノムにおけるトウモロコシLc遺伝子のプロモーター領域への、その遺伝子の発現を増加させるための、細菌オクトピンシンターゼ遺伝子エンハンサーエレメントと相同性を有する発現増強エレメントの挿入を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/140899号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ellis et al.,1987,EMBO J.(6):11:3203-3208
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトウモロコシ植物であって、修飾された遺伝子に異種発現増強エレメントが位置し、修飾されていないZm1d31079遺伝子が配列番号1のDNA分子又はそのアレル変異体を含むトウモロコシ植物が提供される。修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物であって、修飾された遺伝子に異種発現増強エレメントが位置し、修飾されていないZm1d44812遺伝子が配列番号8のDNA分子又はそのアレル変異体を含み、修飾されたZm1d44812遺伝子が、修飾されていないZm1d44812遺伝子の天然染色体位置に位置するトウモロコシ植物が提供される。修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物部位もまた提供される。一部の実施形態において、トウモロコシ植物部位は、種子、稈、茎、又は葉である。
【0007】
トウモロコシ種子を作製する方法であって、前述のトウモロコシ植物のいずれかを成長させること、及びそこから種子を収穫することを含む方法が提供される。交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体である前述のトウモロコシ植物を、修飾されていないZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体であるトウモロコシ植物と交配すること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法において、任意選択で修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物が花粉提供者である方法が提供される。交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体である前述のトウモロコシ植物を、修飾されていないZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体であるトウモロコシ植物と交配すること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法において、任意選択で修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物が花粉受粉者である方法が提供される。交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体である前述のトウモロコシ植物を、修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体の別のトウモロコシ植物と交配すること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法が提供される。交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体の前述のトウモロコシ植物を、修飾されていないZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物と交配すること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法において、任意選択で修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物が花粉提供者である方法。近交系トウモロコシ種子を作製する方法であって、(i)修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物;又は(ii)修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物を自殖させることを含む方法もまた提供される。交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体の前述のトウモロコシ植物を、修飾されていないZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物と交配すること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法において、任意選択で修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物が花粉受粉者である方法が提供される。交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体の前述のトウモロコシ植物を、修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体の別のトウモロコシ植物と交配すること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法が提供される。近交系トウモロコシ種子を作製する方法であって、(i)修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物;又は(ii)修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物を自殖させることを含む方法もまた提供される。
【0008】
追加された所望の形質を含むトウモロコシ植物を作製する方法であって、所望の形質を付与するトランス遺伝子、標的化された遺伝子変化、及び/又は遺伝子座を前述のトウモロコシ植物のいずれかに導入することを含む方法が提供される。
【0009】
商品トウモロコシ植物生産物を作製する方法であって、(i)前述のトウモロコシ植物のいずれか又はそれから入手されるトウモロコシ種子を加工すること;及び(ii)加工されたトウモロコシ植物又はトウモロコシ種子から商品トウモロコシ植物生産物を回収することを含む方法が提供される。
【0010】
修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片に位置するか、又は修飾されたZm1d44812遺伝子のDNA断片に位置する異種転写エンハンサー、異種イントロン、及び/又は異種翻訳増強エレメントを含む検出可能な量のDNA分子を含む生物学的試料が提供される。
【0011】
前述のトウモロコシ植物を作成する方法であって、(a)(i)配列番号1のDNA分子又はそのアレル変異体を含む修飾されていないZm1d31079遺伝子;又は(ii)配列番号8のDNA分子又はそのアレル変異体を含む修飾されていないZm1d44812遺伝子のプロモーター領域、5’UTR、コード領域、3’UTR、又は3’フランキング領域に二本鎖DNA切断を導入する第1の部位特異的ヌクレアーゼ;及び異種発現増強エレメントを含むドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型を含む遺伝子編集分子をトウモロコシ植物ゲノムと接触させること;及び(b)修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物を選択することを含む方法において、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子が、遺伝子のプロモーター領域、5’UTR、コード領域、3’UTR、又は3’フランキング領域に異種発現増強エレメントの挿入を含み、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子の発現が少なくとも1つの組織において増加し、及び修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物の草高が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して減少する方法が提供される。
【0012】
前述のトウモロコシ植物を作成する方法であって、(a)修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトランス遺伝子をトウモロコシ植物ゲノムと接触させることであって、修飾されたZm1d31079遺伝子が、配列番号2のZm1d31079タンパク質又はそのアレル変異体をコードするコード領域に作動可能に連結された異種プロモーター、異種5’UTR、及び/又は異種イントロンを含むこと、又は;及び(b)修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトランスジェニックトウモロコシ植物を選択することであって、修飾されたZm1d31079遺伝子の発現が少なくとも1つの組織において増加し、及びトウモロコシ植物の草高が、修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して減少することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】修飾されていないトウモロコシZm1d31079遺伝子配列(配列番号1)を図示する。プロモーターにおけるガイドRNA認識部位の位置を太字で示し、5’非翻訳領域(5’UTR)に下線を付し、コード領域を大文字とし、3’UTR及び3’フランキング領域を斜体とする。
【
図2】修飾されていないトウモロコシZm1d44812遺伝子配列(配列番号8)を図示する。プロモーターにおけるガイドRNA認識部位の位置を太字で示し、5’非翻訳領域(5’UTR)に下線を付し、ATG翻訳開始コドンを大文字とする。
【
図3】Zm1d44812遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む2つの「Tゼロ」(T0)ZM187遺伝子編集トウモロコシ植物及び転写エンハンサー挿入を欠いているT0 ZM190対照植物を示す。T0 ZM187遺伝子編集トウモロコシ植物は、Casヌクレアーゼ、配列番号10によってコードされるRNAを含むZm1d44812_Pro-75 gRNA、及び三重ZmOCSエンハンサーエレメントドナーDNA(配列番号18)で作成した。
【
図4】Zm1d31709遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む2つの「Tゼロ」(T0)ZM200遺伝子編集トウモロコシ植物及び転写エンハンサー挿入を欠いているT0 ZM194対照植物を示す。T0 ZM200遺伝子編集トウモロコシ植物は、Casヌクレアーゼ、配列番号6によってコードされるRNAを含むZm1d31709_Pro-242 gRNA、及び三重ZmOCSエンハンサーエレメントドナーDNA(配列番号18)で作成した。
【
図5】Zm1d31709遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む「Tゼロ」(T0)ZM202遺伝子編集トウモロコシ植物、Zm1d44812遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む「Tゼロ」(T0)ZM203遺伝子編集トウモロコシ植物、及びいずれの転写エンハンサー挿入も欠いているT0 ZM194対照植物を示す。T0 ZM202遺伝子編集トウモロコシ植物は、Casヌクレアーゼ、配列番号6によってコードされるRNAを含むZM1d31709_Pro-242 gRNA、及び三重ZmOCSエンハンサーエレメントドナーDNA(配列番号16)で作成した。T0 ZM203遺伝子編集トウモロコシ植物は、Casヌクレアーゼ、配列番号15によってコードされるRNAを含むZm1d44812_Pro-259 gRNA、及び三重ZmOCSエンハンサーエレメントドナーDNA(配列番号18)で作成した。
【
図6】Zm1d31709遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む2つの「Tゼロ」(T0)ZM185遺伝子編集トウモロコシ植物、Zm1d31709遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む2つの「Tゼロ」(T0)ZM186遺伝子編集トウモロコシ植物、及びいかなる転写エンハンサー挿入も欠いているT0 ZM184及びZm182対照植物を示す。T0 ZM185及びZM186遺伝子編集トウモロコシ植物は、Casヌクレアーゼ、配列番号4によってコードされるRNAを含むZM1D31709_Pro-109 gRNA、及び三重ZmOCSエンハンサーエレメントドナーDNA(配列番号18)で作成した。
【
図7】Zm1d31709遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む2つの「Tゼロ」(T0)ZM185遺伝子編集トウモロコシ植物及びいかなる転写エンハンサー挿入も欠いているT0 Zm182対照植物を示す。T0 ZM185遺伝子編集トウモロコシ植物は、Casヌクレアーゼ、配列番号4によってコードされるRNAを含むZM1d31709_Pro-109 gRNA、及び三重ZmOCSエンハンサーエレメントドナーDNA(配列番号18)で作成した。
【
図8】Zm1d44812遺伝子プロモーターに挿入された転写エンハンサーを含む5つの「Tゼロ」(T0)ZM187遺伝子編集トウモロコシ植物及び転写エンハンサー挿入を欠いているT0 ZM190対照植物を示す。T0 ZM187遺伝子編集トウモロコシ植物は、Casヌクレアーゼ、配列番号10によってコードされるRNAを含むZm1d44812_Pro-75 gRNA、及び三重ZmOCSエンハンサーエレメントドナーDNA(配列番号18)で作成した。
【
図9】エンハンサー挿入アレルを分離する2集団における幼茎頂のZmAct1(アクチン)対照に対する相対的なZm1d31079(配列番号1)の発現を示し、エンハンサーアレルを含まない植物(C)を、指示する位置(TSSを基準として-109又は-242)における三重ZmOCSエンハンサーアレルに関してヘテロ接合体(HeZ)又はホモ接合体(HoZ)であるシブリングと比較している。各データ点が、個々の植物1つにつき2回のテクニカルレプリケートの平均値を表す。
【
図10】Zm1d31079(配列番号1)プロモーターの指示する位置に挿入された三重ZmOCSエンハンサーエレメントに関してホモ接合体の植物に対する分離用対照植物についての時間の経過に伴う植物草高を示す。草高平均値±標準誤差を示し、ここで各群N=5~8である;三重ZmOCSエンハンサーエレメント挿入ホモ接合体は黒色であり(下側の曲線)、及びエンハンサー挿入を欠く分離用対照は灰色である(上側の曲線)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
語句「アレル変異体」は、本明細書で使用されるとき、所与の生物の異なる株、品種、又は分離株の特定の場所における特定の遺伝子に見られる、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列変異体を指す。
【0015】
用語「及び/又は」は、本明細書で使用される場合に、2つの指定される特徴又は成分の各々の他方を伴う又は伴わない具体的な開示と解釈されるべきである。従って、用語「及び/又は」は、本明細書において「A及び/又はB」などの語句で用いられるとき、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B、及び/又はC」などの語句で用いられるとき、以下の実施形態の各々:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)を包含することが意図される。
【0016】
本明細書で使用されるとき、語句「生物学的試料」は、インタクトな植物組織又はインタクトでないトウモロコシ植物組織(例えば、粉砕されたトウモロコシ種子又はトウモロコシ植物組織、細かく刻まれたトウモロコシ植物組織、凍結乾燥された組織)のいずれも指す。これはまた、インタクトな又はインタクトでない種子又はトウモロコシ植物組織を含む抽出物であってもよい。生物学的試料は、全体又は一部がトウモロコシ植物産物又は副産物を含有するように製造されるフラワー、ミール、シロップ、油、デンプン、及びシリアルを含み得る。特定の実施形態において、生物学的試料は、「再生不可能」である(即ち、トウモロコシ植物又はトウモロコシ植物部位に再生することができない)。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「対応する」、「対応している」などは、いずれか所与のポリヌクレオチド(例えば、配列番号1又は配列番号8のアレル変異体)における参照ポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号1又は配列番号8)と比べたヌクレオチド位置、突然変異、及び/又は置換の文脈で使用されるとき、全てが、ペアワイズなアラインメントアルゴリズム(例えば、デフォルトパラメータによるCLUSTAL O 1.2.4)を使用して所与のポリヌクレオチドを参照ポリヌクレオチド配列とアラインメントしたときに参照ヌクレオチド配列中の残基と同一性を有する所与の配列中のポリヌクレオチド残基の位置を指す。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「Cpf1」及び「Cas12a」は、同じRNA依存性DNAエンドヌクレアーゼ(RdDe)を指して同義的に使用される。
【0019】
本明細書で使用されるとき、語句「内因性プロモーター」、「内因性遺伝子」、「内因性植物転写単位」などは、生物中又は生物のゲノム中でその自然の位置にある天然形態のプロモーター、遺伝子、又は植物転写単位を指す。
【0020】
本明細書で使用されるとき、用語「例示的」は、例、実例、又は例証を指し、特に指定されない限り、好ましい実施形態を指示するものではない。
【0021】
用語「非相同」は、本明細書で植物ゲノムに挿入されたDNA分子、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチドに関して使用されるとき、合成であるか、又はその自然の位置から取り出されていて、新しいゲノム位置に挿入されている任意のDNA分子、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチドを指す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「~を含む(include)」、「~を含む(includes)」、及び「~を含んでいる(including)」は、少なくともそれが言及している特徴を有する一方で、特定されていないいかなる追加の特徴も除外しないと解釈されるべきである。
【0023】
本明細書で使用されるとき、語句「作動可能に連結された」は、そのように記載される成分がそれらの意図される形で機能することを許容する関係にあるような並んだ配置を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。別の非限定的な例では、発現増加エレメントがプロモーターの活性(例えば、プロモーターがドライブする転写物又は転写物によってコードされるタンパク質の蓄積によって測定されるとおり)を増加させる場合、「発現増強エレメント」(例えば、転写エンハンサーエレメント)はプロモーターに作動可能に連結されている。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「植物」には、全植物及び植物の任意の子孫、細胞、組織、又は部位が含まれる。用語「植物部位」には、例えば、限定なしに、種子(成熟種子及び未熟種子を含む);植物の挿し木;植物細胞;植物細胞培養物;又は植物器官(例えば、花粉、胚、花、果実、シュート、葉、根、茎、及び外植片)を含めた、植物の1つ又は複数の任意の部位が含まれる。植物組織又は植物器官は、種子、プロトプラスト、カルス、又は構造的若しくは機能的単位に組織化されている任意の他の植物細胞集合であってもよい。植物細胞又は組織培養物は、その細胞又は組織の入手元となった植物の生理学的及び形態学的特性を有する植物を再生する能力、及びその植物と実質的に同じ遺伝子型を有する植物を再生する能力があり得る。植物細胞又は組織培養物における再生可能な細胞は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、根、根端、花、穀粒又は稈であり得る。対照的に、一部の植物細胞は、植物を作製するだけの再生能力がなく、本明細書では「再生不可能な」植物細胞と称される。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「修飾されていないZm1d31079遺伝子」及び「Zm1d31079タンパク質」は、それぞれ(respectfully)、配列番号1の遺伝子及びそのアレル変異体又は配列番号2のタンパク質及びそのアレル変異体のいずれかを指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「修飾されていないZm1d44812遺伝子」及び「Zm1d44812タンパク質」は、それぞれ(respectfully)、配列番号8の遺伝子及びそのアレル変異体又は配列番号9のタンパク質及びそのアレル変異体のいずれかを指す。
【0027】
前述の定義のいずれかが、参照により本明細書に援用される任意の特許若しくは非特許文献、本明細書に引用される任意の特許若しくは非特許文献、又は他の部分に見られる任意の特許若しくは非特許文献に提供される定義と矛盾する限りにおいて、本明細書では前述の定義が使用されるものとすることが理解される。
【0028】
修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物であって、修飾された遺伝子に異種発現増強エレメントが位置し、それがZm1d31079又はZm1d44812遺伝子産物(例えば、Zm1d31079又はZm1d44812タンパク質又はこのタンパク質をコードするRNA転写物)の発現増加をもたらすトウモロコシ植物が開示される。内因性の修飾されていないZm1d31079遺伝子アレル(配列番号1)は、「MaizeGDB」(トウモロコシゲノムデータベースワールドワイドウェブインターネットサイト「maizegdb.org」)に受託番号Zm00001d031079として収載され、Zm1d31079タンパク質(配列番号2)をコードする。内因性の修飾されていないZm1d44812遺伝子(配列番号8)は、「MaizeGDB」(トウモロコシゲノムデータベースワールドワイドウェブインターネットサイトmaizegdb.org)に受託番号Zm00001d044812として収載され、Zm1d44812タンパク質(配列番号9)をコードする。Zm1d44812タンパク質(配列番号9)はまた、ZmPIN1aタンパク質としても特定されている(Li,ZX et al.Plant Biotechnology Journal(2018)16,pp.86-99;doi:10.1111/pbi.12751)。
【0029】
内因性Zm1d31079遺伝子(配列番号1)及び内因性Zm1d44812遺伝子(配列番号8)のアレル変異体には、非コード領域(例えば、配列番号1及び配列番号8に示されるプロモーター、5’UTR、及び3’UTR)及びコード領域(これらの遺伝子の中で配列番号2及び配列番号9のタンパク質をコードする領域)の両方の配列変異体が含まれる。内因性Zm1d31079遺伝子のアレル変異体には、配列番号2と少なくとも95%、96%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を有するZm1d31079タンパク質をコードする変異体が含まれる。内因性Zm1d31079遺伝子のアレル変異体にはまた、配列番号1と少なくとも95%、96%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を有する変異体も含まれる。内因性Zm1d44812遺伝子のアレル変異体には、配列番号9と少なくとも95%、96%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を有するZm1d44812タンパク質をコードする変異体が含まれる。内因性Zm1d44812遺伝子のアレル変異体にはまた、配列番号8と少なくとも95%、96%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を有する変異体も含まれる。
【0030】
草高が短縮し、生産力が向上したトウモロコシ植物を近交系親及び交雑系の両方として入手するためには、特定の実施形態において、様々な修飾されたZm1d31079遺伝子又は様々な修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物のアレル系列を入手することが望ましい。アレル系列では、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照植物と比較して草高が約5%又は10%~約15%、20%、30%、又は50%の範囲で特徴的に短縮した植物を生み出すような、特徴的な発現レベルの様々な修飾されたZm1d31079遺伝子又は様々な修飾されたZm1d44812遺伝子が入手される。特定の文脈において、所与のZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を有するトウモロコシ植物では草高の短縮がより小さくなり(例えば、対照植物と比較して約5%~約15%)、アレル系列からそれを選択することにより、所望の草高短縮を示す植物が入手される。特定の文脈において、所与のZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を有するトウモロコシ植物では草高の短縮がより小さくなり(例えば、対照植物と比較して約15%~約20%、30%、又は50%)、アレル系列からそれを選択することにより、所望の草高短縮を示す植物が入手される。特定の実施形態において、所与の修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を有するトウモロコシ植物は、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して、1つ以上のトウモロコシ組織におけるZm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子の発現の約10%、15%、又は20%~約30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は100%の増加を呈し、アレル系列においてそれが入手される。特定の実施形態において、所与の修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を有するトウモロコシ植物は、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して、トウモロコシ植物中の少なくとも1つのトウモロコシ組織におけるZm1d31079遺伝子産物又はZm1d44812遺伝子の発現の約1.2倍又は1.5倍~約2倍、3倍、又は5倍の増加を呈する。特定の実施形態において、所望の草高短縮及び/又は発現レベルは、詳細な生殖質に関する及び/又は特定の標的地形における使用に関する生産力特性(例えば、近交系及び/又は交雑系種子収量)に基づいて選択することができる。
【0031】
特定の実施形態において、様々な修飾されたZm1d31079遺伝子又は様々な修飾されたZm1d44812遺伝子のアレル系列は、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子における転写エンハンサーの挿入又は形成によって入手することができ、この転写エンハンサーは、遺伝子のプロモーターに作動可能に連結されるが、転写開始部位(TSS)に対して様々な位置に置かれることになる。特定の実施形態において、アレル系列は、Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の転写開始部位(TSS)から5’側に約10、20、30、40、100、又は150塩基対(bp)~約200、240、300、350、400、500、又は1000bpまでの様々な異なる位置に転写エンハンサーを位置させることによって入手し得る。特定の実施形態において、内因性プロモーターへの作動可能な連結は、その天然の染色体位置に位置する内因性Zm1d31079遺伝子又は内因性Zm1d44812遺伝子の内因性プロモーター、5’非翻訳領域(5’UTR)、イントロン、及び/又は3’非翻訳領域のうちの1つ以上におけるエンハンサーの挿入又は形成(例えば、CRISPR、TALEN、又は人工ジンクフィンガー介在性遺伝子編集による)によって実現する。Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子プロモーター、5’UTR、イントロン、又は3’UTRに挿入又は形成することのできる転写エンハンサーエレメントは、配列番号16、配列番号17、配列番号19~配列番号124、及び/又は配列番号125に示される1つ以上のDNA分子を含み得る。特定の実施形態において、遺伝子プロモーター、5’UTR、イントロン、又は3’UTRに、配列番号16、配列番号17、配列番号19~配列番号124、及び/又は配列番号125から独立に選択される2つの特徴的なエンハンサーが挿入又は形成される。特定の実施形態において、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子プロモーター、5’UTR、イントロン、又は3’UTRに、配列番号16、配列番号17、配列番号19~配列番号124、及び/又は配列番号125から独立に選択される特徴的なエンハンサーが挿入又は形成される。特定の実施形態において、修飾されたZm1d31079遺伝子アレル系列のメンバーは、転写エンハンサー(例えば、配列番号16、配列番号17、配列番号19~配列番号124、及び/又は配列番号125に示される1つ以上のDNA分子)の挿入を、(i)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約116~約96塩基対又は約114、112、110、108、106、104、102、100、又は98塩基対のところ;(ii)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約119~約99塩基対又は約117、115、113、111、又は109塩基対のところ;(iii)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約170又は164~約150塩基対又は約168、166、164、162、160、158、156、154、又は152塩基対のところ;(iv)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約252~約242塩基対又は約250、248、246、244、242、240、238塩基対のところ;(v)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約261~約241塩基対又は約259、257、256、253、251、249、247、245、又は243塩基対ところ;(v)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号4、5、又は6によってコードされるガイドRNAでZm1d31079プロモーターに導入された二本鎖切断;又は(vi)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号3又は7によってコードされるガイドRNAでZm1d31079プロモーターに導入された二本鎖切断に含み得る。特定の実施形態において、Zm1d31079プロモーターの前述の位置のいずれかにおける転写エンハンサーの挿入は、配列番号1の対応するDNA又はそのアレル変異体における転写エンハンサー挿入に対して5’側及び/又は3’側のいずれかでのZm1d31079プロモーターにおけるDNAの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10塩基対、又はそれ以上の欠失を伴う。特定の実施形態において、修飾されたZm1d44812遺伝子アレル系列のメンバーは、転写エンハンサー(例えば、配列番号16、配列番号17、配列番号19~配列番号124、及び/又は配列番号125に示される1つ以上のDNA分子)の挿入を、(i)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約85~約65塩基対又は約83、81、79、77、75、73、71、69、又は67塩基対のところ;(ii)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約93~約73塩基対又は約91、89、87、85、83、81、79、77、又は75塩基対のところ;(iii)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約183~約163塩基対又は約181、179、177、175、173、171、169、167、又は165塩基対のところ;(iv)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約188~約168塩基対又は約186、184、182、180、178、176、174、172、又は170塩基対のところ;(v)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約269~約249塩基対又は約267、265、263、261、259、257、255、253、又は251塩基対のところ;(v)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号10、12、又は15によってコードされるガイドRNAでZm1d44812プロモーターに導入された二本鎖切断;又は(vi)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号11、13、又は14によってコードされるガイドRNAでZm1d44812プロモーターに導入された二本鎖切断に含み得る。特定の実施形態において、Zm1d44812プロモーターの前述の位置のいずれかにおける転写エンハンサーの挿入は、配列番号1の対応するDNA又はそのアレル変異体における転写エンハンサー挿入に対して5’側及び/又は3’側のいずれかでのZm1d44812プロモーターにおけるDNAの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10塩基対、又はそれ以上の欠失を伴う。特定の実施形態において、前述の転写エンハンサー挿入のいずれも、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子における異種翻訳増強エレメント及び/又は異種イントロンの挿入と組み合わせることができる。様々な異なる修飾されたZm1d31079遺伝子又は様々な異なる修飾されたZm1d44812遺伝子のアレル系列を入手するために使用することのできる有用な転写エンハンサーエレメントの一覧を表1に提供する。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
配列番号16の転写エンハンサーエレメントは、配列番号17の12ヌクレオチドコアエレメントヌクレオチド配列を3コピー含む。配列番号17の12ヌクレオチドコアエレメントヌクレオチド配列は、トウモロコシゲノム中の幾つかの位置に存在する。例えば、これは、トウモロコシ品種B73の幾つかの染色体位置に見出すことができる。B73v4バージョンのゲノム配列によれば(httpsワールド・ワイド・ウェブ・インターネットサイトmaizegdb.org/genome/assembly/Zm-B73-REFERENCE-GRAMENE-4.0で利用可能、以下「B73v4トウモロコシゲノム」と称する)、配列番号17は、Chr3座標1,063,395..1,063,406(Zm00001d039287のイントロン)、Chr3座標12,253,969..12,253,980(Zm00001d039695のすぐ下流)、Chr3座標12,265,615..12,265,626(Zm00001d039695のイントロン)、Chr3座標12,277,428..12,277,439(Zm00001d039695のイントロン)、Chr3座標147,698,750..147,698,761(アノテートされた遺伝子モデルから2kb以内にない)、Chr6、座標107,132,183..107,132,194(Zm00001d036949から約2kb下流)、Chr10、座標53,761,662..53,761,673(アノテートされた遺伝子モデルから2kb以内にない)に見出すことができる。
【0039】
特定の実施形態において、植物草高の短縮をもたらす発現増加を伴う修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子は、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に異種イントロンを挿入することにより入手される。以前記載されている植物遺伝子発現のイントロン介在性増強(IME)のための材料及び方法(Laxa,M.Front.Plant Sci.,06 January 2017 doi.org/10.3389/fpls.2016.01977;Rose,A.B.Plant J.17 November 2004 doi.org/10.1111/j.1365-313X.2004.02247.x;Parra,G.et al.Nucleic Acids Research,Volume 39,Issue 13,1 July 2011,5328-5337,doi.org/10.1093/nar/gkr043)を、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子の発現増強における使用に応用することができる。植物遺伝子の発現を増加させるために使用することのできる異種イントロンとしては、アクチン、Hsp70、PEPC、UBQ(例えば、UBQ1、UBQ10)、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロン(例えば、イネ又はトウモロコシアクチン、Hsp70、PEPC、UBQ1、UBQ10、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロン)が挙げられる。特定の実施形態において、イントロンは、転写開始部位(TSS)から約500、200、100、50、30、又は20塩基対の範囲内又はそこに挿入される。特定の実施形態において、イントロンは、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子の転写開始部位(TSS)から約500、200、100、50、30、又は20塩基対の範囲内にある、又はそこにある5’UTR及び/又はコード領域に挿入される。特定の実施形態において、イントロンは、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子の転写開始部位(TSS)から約20~約100又は200塩基対の範囲内にある、又はそこにある5’UTR及び/又はコード領域に挿入される。
【0040】
特定の実施形態において、植物草高の短縮をもたらす発現増加を伴う修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子は、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に異種翻訳エンハンサーを挿入することによって入手される。翻訳エンハンサーは、5’UTR及び/又は5’UTR及びコード領域の1つ以上のコドンを含み得る。翻訳エンハンサーとしては、連結された異種レポーター遺伝子の翻訳を増強することのできる様々なイネ遺伝子の5’UTRが挙げられる(例えば、イネAdh遺伝子の5’UTR(Sugio et al.J.Biosci.Bioengin.105(3),300-302(2008)doi.org/10.1263/jbb.105.300;グルタチオントランスフェラーゼU50、グルタチオンペルオキシダーゼ1、20Sプロテアソームα1サブユニット、発病関連タンパク質4b、グリシンリッチ細胞壁構造タンパク質1、又はUspAドメイン含有タンパク質;Yamasaki et al.Plant Biotechnology 35,365-373(2018)DOI:10.5511/plantbiotechnology.18.0903a)。特定の実施形態において、翻訳エンハンサーは、前述のいずれかの5’UTRのDNA配列を含むDNA分子によってコードされ、5’UTRの全て又は一部が、修飾されたZm1d31079又は修飾されたZm1d44812遺伝子におけるZm1d31079 5’UTR又はZm1d44812 5’UTRの全て又は一部に置換される。
【0041】
トランス遺伝子をコードするZm1d31079又はZm1d44812の発現はまた、トランス遺伝子に作動可能に連結されているプロモーターにそれが作動可能に連結されることになるようなトランス遺伝子のインビトロ挿入又はその形成、及び次に、トウモロコシ植物ゲノムへのトランス遺伝子の導入(例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換又は遺伝子銃による)によっても増加させることができる。特定の実施形態において、かかるトランス遺伝子は、前述の転写エンハンサーの挿入及び/又は置換を有する前述の修飾されたZm1d31079又はZm1d44812のいずれかを含む修飾されたプロモーターを含み得る。特定の実施形態において、かかるトランス遺伝子は、Zm1d31079又はZm1d44812プロモーター、5’UTR、及び/又はイントロンについての異種プロモーター、5’UTR、及び/又はイントロンによる全体的又は部分的な置換を含み得る。
【0042】
修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子の発現は、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子を含む対照トウモロコシ植物と比較して増加し得る。かかる発現の増加は、種々の方法により測定することができる。特定の実施形態において、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子の発現増加によって付与される植物草高の短縮形質が、発現増加エレメントを含むトウモロコシ植物において測定され、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子を含む対照トウモロコシ植物と比較される。草高の短縮形質は、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物における草高短縮形質それ自体の任意の測定値(例えば、全草高、節間長等)又はその形質の代理となる値(例えば、kg/ヘクタール単位での種子及び/又は他のバイオマスの収量)を比較することにより評価することができ、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子を含む対照トウモロコシ植物と比較して増加し得る。特定の実施形態において、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物におけるZm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子コード転写物(例えば、mRNA又は非コードRNA)の量を決定することにより、コードされる転写物それ自体の発現の増加が直接測定され、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子を含む対照トウモロコシ植物における転写物コードポリヌクレオチドの量と比較される。Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子コード転写物の量は、PCR(例えば、定量的逆転写酵素PCR;qRT-PCR)、ハイブリダイゼーション、CRISPRに基づく、及び/又はシーケンシングに基づく技法(Khodakov et al.,doi.org/10.1016/j.addr.2016.04.005;Gootenberg,et al.doi:10.1126/science.aaq0179)を含め、種々の技法により決定することができる。特定の実施形態において、Zm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子コードポリヌクレオチドの発現はまた、転写エンハンサーを含むトウモロコシ植物における転写物によってコードされるZm1d31079又はZm1d44812タンパク質の量を測定することによって決定し、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子を含む対照トウモロコシ植物におけるZm1d31079又はZm1d44812タンパク質の量と比較することもできる。Zm1d31079又はZm1d44812タンパク質の量は、タンパク質に関するイムノアッセイ、及び質量スペクトルに基づく技法を含めた種々の技法により決定することができる(Chen et al.doi:10.1186/s12967-015-0537-6;Bruce et al.doi:10.1002/0471250953.bi1321s41)。転写物産生の増加の大きさは、それぞれの細胞又は組織における修飾されていない内因性Zm1d31079又はZm1d44812転写物のコードポリヌクレオチドのベースライン発現レベルに依存し得る。非限定的な例として、修飾されていない内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子のベースライン発現レベルと比べた、内因性Zm1d31079又はZm1d44812プロモーターにおける配列番号16の挿入又は形成によって修飾された内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の発現の増加の大きさは、ベースラインZm1d31079又はZm1d44812発現レベルが低い場合に最も大きくなることになる。特定の実施形態において、異種発現エンハンサー(例えば、配列番号16の転写エンハンサー)の挿入によって修飾された内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の発現は、修飾されていない内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子のベースライン発現レベルと比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍に増加し得る。特定の実施形態において、異種発現エンハンサー(例えば、配列番号16の転写エンハンサー)の挿入又は形成によって修飾された内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の発現は、修飾されていない対照植物における修飾されていない内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子のベースライン発現レベルと比べて少なくとも約1.2倍又は1.5倍~約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍又はそれ以上に増加し得る。
【0043】
特定の実施形態において、ゲノム編集分子を使用して内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子に異種発現増強エレメント(例えば、異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロン)を導入又は形成することが望ましいものとなり得る。本明細書に提供される方法において有用な遺伝子編集分子としては、ゲノムDNA内又はゲノムDNAの範囲内に位置する標的遺伝子内など、二本鎖DNA内の特異的部位又は配列に二本鎖切断(「DSB」)又は一本鎖切断(「SSB」)を導入する能力のある分子並びに付随するガイドRNA又はドナー若しくは他のDNA鋳型ポリヌクレオチドが挙げられる。かかる遺伝子編集分子の例としては、(a)RNA誘導型ヌクレアーゼ、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ又はRNA指向性DNAエンドヌクレアーゼ(RdDe)、クラス1 CRISPR型ヌクレアーゼシステム、II型Casヌクレアーゼ、Cas9、nCas9ニッカーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、nCas12aニッカーゼ、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12i、Cas12j、Cas14、エンジニアリングされたヌクレアーゼ、コドン最適化されたヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又はニッカーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TAL-エフェクターヌクレアーゼ又はTALEN)又はニッカーゼ(TALE-ニッカーゼ)、アルゴノート、及びメガヌクレアーゼ又はエンジニアリングされたメガヌクレアーゼを含むヌクレアーゼ;(b)標的ヌクレオチド配列の部位特異的改変(DSB又はSSBの導入を含む)を生じさせる能力のある1つ以上のヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド;(c)RNA誘導型ヌクレアーゼと共に使用するためのガイドRNA(gRNA)、又はRNA誘導型ヌクレアーゼと共に使用するためのgRNAをコードするDNA;(d)ゲノムDNA中の切断箇所における相同組換え修復(HDR)又はマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)による挿入に好適なドナーDNA鋳型ポリヌクレオチド;及び(e)ゲノムDNA中の切断箇所における(例えば、非相同末端結合(NHEJ)による挿入に好適な他のDNA鋳型(例えば、dsDNA、ssDNA、又はこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0044】
真核生物の遺伝子を編集するためのCRISPR技術について、米国特許出願公開第2016/0138008A1号明細書及び同第2015/0344912A1号明細書、並びに米国特許第8,697,359号明細書、同第8,771,945号明細書、同第8,945,839号明細書、同第8,999,641号明細書、同第8,993,233号明細書、同第8,895,308号明細書、同第8,865,406号明細書、同第8,889,418号明細書、同第8,871,445号明細書、同第8,889,356号明細書、同第8,932,814号明細書、同第8,795,965号明細書、及び同第8,906,616号明細書に開示されている。Cpf1エンドヌクレアーゼ並びに対応するガイドRNA及びPAM部位について、米国特許出願公開第2016/0208243 A1号明細書に開示されている。CRISPRガイドRNA及び植物コドン最適化CRISPR Cas9エンドヌクレアーゼの発現用の植物RNAプロモーターについて、PCT/US2015/018104号明細書(国際公開第2015/131101号パンフレットとして公開されている、及び米国仮特許出願第61/945,700号明細書に対する優先権を主張する)に開示されている。植物におけるゲノム編集にCRISPR技術を使用する方法について、米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書及び同第2015/0059010A1号明細書及びPCT/US2015/038767 A1号明細書(国際公開第2016/007347号パンフレットとして公開されている、米国仮特許出願第62/023,246号明細書に対する優先権を主張する)に開示されている。特定の実施形態において、標的部位の切断後に平滑末端が残るRNA誘導型エンドヌクレアーゼが使用される。平滑末端で切断するRNA誘導型エンドヌクレアーゼとしては、Cas9、Cas12c、Cas12i、及びCas12hが挙げられる(Yan et al.,2019)。特定の実施形態において、標的部位の切断後に標的部位の切断後に付着末端型一本鎖DNAオーバーハング末端が残るRNA誘導型エンドヌクレアーゼが使用される。付着末端で切断するRNA誘導型エンドヌクレアーゼとしては、Cas12a、Cas12b、及びCas12eが挙げられる。内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の両方のプロモーターにおける標的Casヌクレアーゼ切断部位は、それぞれ、
図1及び
図2に図示するとおりの配列番号1及び配列番号8に示す。この段落中で参照する特許文献は全て、全体として参照により本明細書に援用される。
【0045】
CRISPR型ゲノム編集は、本明細書に提供される植物細胞及び方法における使用に幾つかの方法で応用することができる。CRISPRエレメント、例えば、CRISPRエンドヌクレアーゼと、シングルガイドRNAを含むか、又はtracrRNA若しくはscoutRNAとの組み合わせでのガイドRNAを含むCRISPRガイドRNAとを含む遺伝子編集分子、又はそれをコードするポリヌクレオチドは、CRISPRエレメントの残遺物又は選択的遺伝子マーカーが子孫に現れることのないゲノム編集を達成するのに有用である。特定の実施形態において、CRISPRエレメントは、単離された分子として、無細胞合成過程(例えば、インビトロ翻訳)の単離若しくは半精製された産物として、又は細胞ベースの合成過程(例えば、細菌又は他の細胞のライセート中など)における単離若しくは半精製された産物として、真核細胞(例えば、トウモロコシ植物細胞)、システム、方法、及び組成物に直接提供される。特定の実施形態において、本明細書に提供されるシステム、方法、及び組成物で使用されるトウモロコシ植物又はトウモロコシ植物細胞は、CRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1型又は他のCRISPRエンドヌクレアーゼ)を発現するトランス遺伝子を含み得る。特定の実施形態では、ユニークなPAM認識部位を有する1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼを使用することができる。プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に隣接するgDNA標的部位中の配列に特異的に結合することのできるRNA誘導型エンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体を形成するためのガイドRNA(sgRNA又はcrRNA及びtracrRNA)。典型的には、RNA誘導型エンドヌクレアーゼの種類が、好適なPAM部位の位置及びcrRNA又はsgRNAの設計についての情報を与える。GリッチPAM部位、例えば、5’-NGGは、典型的には、Cas9タンパク質と共に使用されるcrRNA又はsgRNAの設計の標的となる。PAM配列の例としては、5’-NGG(化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))、5’-NNAGAA(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CRISPR1)、5’-NGGNG(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CRISPR3)、5’-NNGRRT又は5’-NNGRR(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9、SaCas9)、及び5’-NNNGATT(髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))が挙げられる。TリッチPAM部位(例えば、5’-TTN又は5’-TTTV、式中、「V」は、A、C、又はGである)は、典型的には、Cas12aタンパク質と共に使用されるcrRNA又はsgRNAの設計の標的となる。一部の例では、Cas12aはまた、5’-CTA PAMモチーフも認識することができる。可能性のあるCas12a PAM配列の他の例としては、TTN、CTN、TCN、CCN、TTTN、TCTN、TTCN、CTTN、ATTN、TCCN、TTGN、GTTN、CCCN、CCTN、TTAN、TCGN、CTCN、ACTN、GCTN、TCAN、GCCN、及びCCGN(式中、Nは、任意のヌクレオチドとして定義される)が挙げられる。Cpf1エンドヌクレアーゼ並びに対応するガイドRNA及びPAM部位について、米国特許出願公開第2016/0208243 A1号明細書(これは、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNA並びにガイドRNA及びPAM部位のその開示について参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0046】
特定の実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼ又はジンクフィンガーニッカーゼもまた、本明細書に提供される方法において使用することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、2つのタンパク質ドメイン:複数の個別のジンクフィンガーリピートを含み、その各々が9~18塩基対を認識するDNA結合ドメインと、ヌクレアーゼドメイン(典型的にはFokl)を含むDNA切断ドメインとを含む部位特異的エンドヌクレアーゼである。切断ドメインは、DNAを切断するために二量体化する;従って、非パリンドローム標的ポリヌクレオチドを標的化するには、一対のZFNが必要となる。特定の実施形態において、記載されているジンクフィンガーヌクレアーゼ及びジンクフィンガーニッカーゼ設計方法は(Urnov et al.(2010)Nature Rev.Genet.,11:636-646;Mohanta et al.(2017)Genes vol.8,12:399;Ramirez et al.Nucleic Acids Res.(2012);40(12):5560-5568;Liu et al.(2013)Nature Communications,4:2565)、本明細書に示される方法における使用に応用することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼ又はニッカーゼのジンクフィンガー結合ドメインは特異性を提供し、任意の所望の標的DNA配列を特異的に認識するようにエンジニアリングすることができる。ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)と呼ばれる大規模な真核生物転写因子クラスのDNA結合ドメインに由来する。ZFPのDNA結合ドメインは、典型的には、各々が特定のDNAトリプレットを認識する少なくとも3つのジンク「フィンガー」のタンデムアレイを持つ。ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の設計には、幾つもの戦略を用いることができる。1つの手法は、「モジュール式アセンブリ」と称されるもので、DNAを伴う個別のジンクフィンガーの機能的自律性に頼る。この手法では、配列中の各構成要素トリプレットに関してジンクフィンガーを同定し、それらを多フィンガーペプチドへと連結することにより、所与の配列を標的化する。ジンクフィンガーDNA結合ドメインの設計については、幾つかの代替的な戦略もまた開発されている。それらの方法は、ジンクフィンガーが近隣のフィンガー並びにその標的トリプレットの外側にあるヌクレオチド塩基と接触する能力に適応するように設計される。典型的には、エンジニアリングされたジンクフィンガーDNA結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有する。エンジニアリング方法には、例えば、合理的設計及び各種の選択が含まれる。合理的設計には、例えば、トリプレット(又はクアドルプレット)ヌクレオチド配列及び個別のジンクフィンガーアミノ酸配列のデータベースの使用が含まれ、そこでは、各トリプレット又はクアドルプレットヌクレオチド配列が、特定のトリプレット又はクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と関連付けられている。例えば、米国特許第6,453,242号明細書及び同第6,534,261号明細書(両方とも全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。例示的選択方法(例えば、ファージディスプレイ及び酵母2ハイブリッドシステム)は、本明細書に記載される方法における使用に応用することができる。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の増強について、米国特許第6,794,136号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。加えて、個別のジンクフィンガードメインが、任意の好適なリンカー配列を用いて一体に連結されてもよい。リンカー配列の例は公知であり、例えば、米国特許第6,479,626号明細書;同第6,903,185号明細書;及び同第7,153,949号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)を参照されたい。核酸切断ドメインは非特異的であり、典型的にはFoklなどの制限エンドヌクレアーゼである。このエンドヌクレアーゼは、DNAを切断するのに二量体化しなければならない。従って、ZFNの一部としてのFoklによる切断には、2つの隣接する独立した結合イベントが必要であり、それらが正しい向き及び二量体形成を許容するのに適切な間隔の両方で起こらなければならない。2つのDNA結合イベントが必要なため、長い、潜在的にユニークな認識部位を、より高い特異性で標的化することが可能となる。活性が増強されたFokl変異体が記載されており、本明細書に記載される方法における使用に応用することができる;例えば、Guo et al.(2010)J.Mol.Biol.,400:96-107を参照のこと。
【0047】
転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、ある種のキサントモナス属(Xanthomonas)種により、宿主植物における遺伝子発現を調節し、細菌によるコロニー形成及びその生存を促進するために分泌されるタンパク質である。TALEは転写因子として働き、植物における耐性遺伝子の発現を調節する。TALEの最近の研究によれば、TALEの反復領域をその標的DNA結合部位と連結するコードが明らかになっている。TALEは、ほとんどの場合に33又は34アミノ酸であるセグメントのタンデムリピートからなる高度に保存された反復領域を含む。この単量体の繰り返しは、主にアミノ酸位置12位及び13位が互いに異なる。12位及び13位におけるユニークなアミノ酸対と、TALE結合部位における対応するヌクレオチドとの間には、強い相関関係が見出されている。このようにアミノ酸配列とTALE結合ドメインのDNA認識との間の関係が単純であるため、任意の所望の特異性のDNA結合ドメインを設計することが可能となる。TALEを非特異的DNA切断ドメインに連結して、TAL-エフェクターヌクレアーゼ又はTALENと称されるゲノム編集タンパク質を調製することができる。ZFNの場合のように、好都合にはFoklなどの制限エンドヌクレアーゼを使用することができる。植物におけるTALENの使用方法については記載されており、本明細書に記載される方法における使用に応用することができ、Mahfouz et al.(2011)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,108:2623-2628;Mahfouz(2011)GM Crops,2:99-103;及びMohanta et al.(2017)Genes vol.8,12:399)を参照されたい。TALEニッカーゼについてもまた記載されており、本明細書に記載される方法における使用に応用することができる(Wu et al.;Biochem Biophys Res Commun.(2014);446(1):261-6;Luo et al;Scientific Reports 6,Article number:20657(2016))。
【0048】
異種発現増強エレメント(例えば、異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロン)が、ゲノム中、1つ以上のヌクレアーゼ又はニッカーゼ(例えば、部位特異的なエンドヌクレアーゼ又はニッカーゼ、ZFヌクレアーゼ又はニッカーゼ、及び/又はTALEヌクレアーゼ又はニッカーゼによるCRISPR/ガイドRNA複合体)によって導入された内因性Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の二本鎖切断の部位に挿入される特定の実施形態においては、ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型が異種発現増強エレメント(例えば、異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロン)を含む。ゲノム中、ヌクレアーゼによって導入されたトウモロコシ植物ゲノムの二本鎖切断の部位に異種発現増強エレメントが形成される特定の実施形態においては、ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型が、完全な一組に満たないヌクレオチド又は塩基対の転写エンハンサー(例えば、配列番号16の配列の全36ヌクレオチド又は塩基対より短い)を含んでもよく、組込み部位におけるゲノムDNAが、ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型に欠けている転写エンハンサーのヌクレオチド又は塩基対に寄与し得る。ゲノムDNAに配列番号16が形成される特定の実施形態においては、ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型が配列番号16の最大35連続ヌクレオチド又は塩基対を含んでもよく、及び組込み部位のゲノムDNAが、ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型に欠けている配列番号16配列の1つ又は複数のヌクレオチド又は塩基対に寄与してもよく、及びゲノム中の組込み部位に配列番号16の完全な36塩基対の配列が形成される。本明細書に提供される方法において使用されるドナーDNA鋳型分子は、5’から3’に、第1の相同性アームと、置換DNAと、第2の相同性アームとを含むDNA分子を含み、ここで相同性アームは、gDNA中の標的部位特異的エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接するゲノムDNA(gDNA)配列と部分的に又は完全に相同な配列を持つ。特定の実施形態において、置換DNAは、標的gDNAと比べて1つ以上のDNA塩基対の挿入、欠失、又は置換を含み得る。一実施形態において、ドナーDNA鋳型分子は二本鎖であり、いずれか一方の末端又は両方の末端に何らかの不対のヌクレオチドがある可能性があることを除いては、その長さの全て又はほとんどにわたって完全に塩基対合する。別の実施形態において、ドナーDNA鋳型分子は二本鎖であり、本来二本鎖である二重鎖の範囲内に1つ以上の非末端ミスマッチ又は非末端不対ヌクレオチドを含む。ある実施形態において、少なくとも1つの二本鎖切断(DSB)部位に組み込まれるドナーDNA鋳型分子は、一方の鎖(一本鎖の場合)又は両方の鎖(二本鎖の場合)に2~20ヌクレオチドを含み、例えば、一方又は両方の鎖に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチドを含み、その各々が、標的となる組込み部位の逆鎖上のヌクレオチドと塩基対合し得る(完全に塩基対合した二本鎖のポリヌクレオチド分子の場合)。かかるドナーDNA鋳型は、平滑末端型及び/又は付着末端型の二本鎖DNA切断を持つゲノムDNAに相同組換え修復(HDR)又はマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)によって組み込まれることができる。特定の実施形態において、ドナーDNA鋳型相同性アームは、約20、50、100、200、400、又は600~約800、又は1000塩基対長であり得る。特定の実施形態において、HDRによるドナーDNA鋳型の組込みは、本質的に米国特許出願公開第20200407754号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に示されるとおり、エキソヌクレアーゼ(例えば、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼ)、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP;例えば、バクテリオファージλβ SSAPタンパク質)、及び一本鎖DNA結合タンパク質(SSB;例えば、大腸菌(E.coli)SSB)の使用によって容易になり得る。特定の実施形態において、ドナーDNA鋳型分子は、環状(例えば、プラスミド又はジェミニウイルスベクターを含めたウイルスベクター)又は線状DNA分子でトウモロコシ植物細胞に送達することができる。特定の実施形態において、使用される環状又は線状DNA分子は、5’から3’に、標的配列特異的エンドヌクレアーゼ切断部位配列の第1のコピーと、第1の相同性アームと、置換DNAと、第2の相同性アームと、標的配列特異的エンドヌクレアーゼ切断部位配列の第2のコピーとを含む修飾されたドナーDNA鋳型分子を含み得る。他の実施形態において、NHEJ挿入に好適なDNA鋳型は、gDNA中の標的部位特異的エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接するゲノムDNA(gDNA)配列と部分的に又は完全に相同な相同性アームを欠いていることになる。特定の実施形態において、全ての発現増強エレメントを含むDNA鋳型(例えば、dsDNA、ssDNA、又はこれらの組み合わせ)が、gDNAの二本鎖切断に非相同末端結合(NHEJ)によって挿入されてもよい。特定の実施形態において、完全な一組のヌクレオチドに満たない発現増強エレメント(例えば、配列番号16の配列の36ヌクレオチド又は塩基対未満の転写エンハンサー)を含むDNA鋳型(例えば、dsDNA、ssDNA、又はこれらの組み合わせ)が、gDNAの二本鎖切断に非相同末端結合(NHEJ)によって挿入されてもよく、挿入部位のgDNAは、発現増強エレメント(例えば、配列番号16)のうちDNA鋳型に欠けているヌクレオチド又は塩基対に寄与することができ、gDNAの二本鎖切断部位に発現増強エレメント(例えば、配列番号16)が形成されてもよい。
【0049】
一部の実施形態において、発現増強エレメント(例えば、異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロン)は、プロモーター、5’UTR、又はイントロンにあるなどの、遺伝子中の対応する配列を置換する、又は大部分置換する。よって、挿入というよりむしろ置換によるため、他のエレメントの位置関係は変化しないままである。置換標的部位は、発現増強エレメント又はその一部分との類似性により選ばれてもよい。発現増強エレメント又はその一部分に対応する所望の置換領域を作り出すには、HDRプロセスで置換鋳型が使用される可能性があり、及び/又はDNA塩基編集及び/又はゲノム編集が用いられる可能性がある。塩基編集因子は、例えば、C*G→T・A又はA・T→G*C塩基編集デアミナーゼ酵素によって媒介される部位特異的塩基編集を含む(Gaudelli et al.,Programmable base editing of A・T to G*C in genomic DNA without DNA cleavage.”Nature(2017);Nishida et al.“Targeted nucleotide editing using hybrid prokaryotic and vertebrate adaptive immune systems.”Science 353(6305)(2016);Komor et al.“Programmable editing of a target base in genomic DNA without double-stranded DNA cleavage.”Nature 533(7603)(2016):420-4。触媒的に死んでいるdCas9をシチジンデアミナーゼ又はアデニンデアミナーゼタンパク質と融合すると、DNA切断を誘導することなくDNA塩基を改変することのできる特異的塩基編集因子になる。塩基編集因子はC→T(又は逆鎖上のG→A)を変換し(又はアデニン塩基編集因子であればアデニンをイノシンに変換し得る)、その結果、gRNAによって指定された編集ウィンドウ内にA→G変化が起こる。
【0050】
植物細胞への遺伝子編集分子及び/又は他の分子の送達には、様々な処理を用いることができる。特定の実施形態において、1つ以上の処理を利用して遺伝子編集又は他の分子(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はこれらの組み合わせを含む)が真核細胞又は植物細胞へと、例えば、細胞壁、細胞膜、核膜、及び/又は他の脂質二重層などの障壁を通って送達される。特定の実施形態において、これらの分子を含むポリヌクレオチド含有、ポリペプチド含有、又はRNP(リボ核タンパク質)含有組成物は、例えばその組成物を植物細胞と直接接触させることにより、直接送達される。前述の組成物は、液体、溶液、懸濁液、エマルション、逆エマルション、コロイド、分散液、ゲル、リポソーム、ミセル、注入用材料、エアロゾル、固体、粉末、粒子状物質、ナノ粒子、又はこれらの組み合わせの形態で提供されてもよく、植物、植物部位、植物細胞、又は植物外植片へと(例えば、細胞壁又は細胞膜の摩傷又は穿刺又は他の方法による破壊を通じて、噴霧又は浸漬又は液浸又は他の方法による直接的な接触により、マイクロインジェクションにより)直接適用することができる。例えば、植物細胞又は植物プロトプラストを液体ゲノム編集分子含有組成物に液浸させると、それにより薬剤が植物細胞へと送達される。特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、負圧又は正圧を用いて、例えば、減圧浸潤又は流体力学的圧力若しくは流体圧力の適用を用いて送達される。特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、例えば、マイクロインジェクションによるか、又は、例えば、負圧若しくは正圧、剪断力の適用などの物理的処理、又は界面活性剤、リポソーム、若しくはナノ粒子などの化学的若しくは物理的送達薬剤による処理による細胞壁又は細胞膜の破壊又は変形によって植物細胞又は植物プロトプラストに導入される;例えば、米国特許出願公開第2014/0287509号明細書(全体として本明細書に参照により援用される)に記載されるとおりの、細胞変形収縮によるマイクロ流体フローを利用した細胞への材料の送達を参照のこと。真核細胞、植物細胞又は植物プロトプラストへの薬剤含有組成物の送達に有用な他の技法としては、超音波又は音波処理;振動、摩擦、ずり応力、ボルテックス、キャビテーション;遠心又は機械的力の適用;機械的な細胞壁又は細胞膜の変形又は破損;酵素的な細胞壁又は細胞膜の破損又は透過処理;摩傷又は機械的傷付け処理(例えば、カーボランダム若しくは他の粒子状研磨材による摩傷又はやすり若しくはサンドペーパーによる傷付け処理)又は化学的傷付け処理(例えば、酸又は腐食剤による処理);及び電気穿孔が挙げられる。特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、細菌の媒介(例えば、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、シノリゾビウム属種(Sinorhizobium sp.)、メソリゾビウム属種(Mesorhizobium sp.)、ブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium sp.)、アゾトバクター属種(Azobacter sp.)、フィロバクテリウム属種(Phyllobacterium sp.))による植物細胞又は植物プロトプラストへの、ゲノム編集分子(例えば、RNA依存性DNAエンドヌクレアーゼ、RNA依存性DNA結合タンパク質、RNA依存性ニッカーゼ、ABE、又はCBE、及び/又はガイドRNA)をコードするポリヌクレオチドのトランスフェクションにより提供される;例えば、Broothaerts et al.(2005)Nature,433:629-633を参照のこと)。或いは、これらの技法のいずれか又はこれらの組み合わせが植物外植片、植物部位若しくは組織又はインタクトな植物(又は種子)に利用され、続いてそれから植物細胞が任意選択で入手されるか、又は単離される;特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、植物細胞が単離された後に別個のステップで送達される。
【0051】
少なくとも1つの修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物又はトウモロコシ植物部位から入手される商品植物生産物並びにかかる生産物の作成方法が提供される。特定の実施形態において、商品生産物は、(a)トウモロコシ種子ミール(脱脂又は非脱脂);(b)抽出トウモロコシタンパク質、油、糖、シロップ、及びデンプン;(c)大豆発酵生産物;(d)動物用飼料又はヒト用食品生産物(例えば、トウモロコシ種子ミール(脱脂又は非脱脂)及び他の原材料(例えば、他の穀粒、他の種子ミール、他のタンパク質ミール、他の油、他のデンプン、他の糖、結合剤、保存剤、保湿剤、ビタミン、及び/又はミネラル)を含む飼料及び食品;(e)医薬品;(f)生の又は加工されたバイオマス(例えば、セルロース系及び/又はリグノセルロース系材料;サイレージ);及び(g)様々な工業生産物を含め、加工された生産物であり、トウモロコシ植物又はその種子でできている。
【0052】
また、本明細書には、前述の生物学的試料及び商品生産物の任意のものにおいて、修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片に位置するか、又は修飾されたZm1d44812遺伝子のDNA断片に位置する異種転写エンハンサー、異種イントロン、及び/又は異種翻訳増強エレメントを含む検出可能な量のDNA分子を含む修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むDNA断片を検出する方法も提供される。かかるDNA断片の非限定的且つ例示的な例としては、配列番号16のエンハンサーが挿入されているものが挙げられる。転写調節領域にエンハンサーの挿入及び/又は置換を含むDNA分子の検出は、核酸増幅(例えば、PCR増幅)、ハイブリダイゼーション、シーケンシング、及び/又は質量分析法ベースの技法の任意の組み合わせによって実現することができる。米国特許出願公開第20190136331号明細書及び米国特許第9,738,904号明細書(両方とも全体として参照により本明細書に援用される)に示されるトランスジェニック遺伝子座における外来核酸の検出について示される方法を、本明細書に提供される核酸の検出における使用に応用することができる。特定の実施形態において、かかる検出は、標的DNA分子(例えば、修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片に位置するか、又は修飾されたZm1d44812遺伝子のDNA断片に位置する異種転写エンハンサー、異種イントロン、及び/又は異種翻訳増強エレメント)を特異的に認識するが、修飾されていないZm1d31079遺伝子又はZm1d44812遺伝子のDNAは認識しない方法(例えば、選択的増幅プライマー)及び/又はプローブ(例えば、選択的ハイブリダイゼーション能力又は特異的プライマー伸長産物の生成能力があるもの)を用いた増幅及び/又はハイブリダイゼーションベースの検出方法によって実現される。特定の実施形態において、ハイブリダイゼーションプローブ(例えば、それぞれ、ジャンクションにわたる少なくとも約18~30塩基対を含むポリヌクレオチド)は、検出可能標識(例えば、蛍光、放射性、エピトープ、及び化学発光標識)を含み得る。特定の実施形態において、一塩基変異多型検出アッセイを標的DNA分子(例えば、修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片に位置するか、又は修飾されたZm1d44812遺伝子のDNA断片に位置する異種転写エンハンサー、異種イントロン、及び/又は異種翻訳増強エレメント)の検出に応用することができる。
【0053】
本明細書には、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む近交系及び交雑系トウモロコシ植物及び種子が、かかる交雑系及び近交系種子の作成及び使用方法と共に提供される。近交系種子の作製方法は、近交系トウモロコシ植物を自殖させること、及び近交系トウモロコシ植物以外の任意のトウモロコシ植物による他家受粉を制限することを含む。かかる交雑系種子の作製方法は、優良作物トウモロコシ植物系統を交配することを含んでもよく、ここでは花粉提供者又は受粉者の少なくとも一方が、発現増強エレメント(例えば転写エンハンサー)を含む修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む。特定の実施形態において、交雑系種子を作成する方法は、優良作物トウモロコシ植物系統を交配することを含んでもよく、ここで花粉受粉者は、発現増強エレメント(例えば転写エンハンサー)を含む修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含み、及びここで花粉受粉者は、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体である。特定の実施形態において、交雑系種子を作成する方法は、優良作物トウモロコシ植物系統を交配することを含んでもよく、ここで花粉提供者及び受粉者は両方とも、発現増強エレメント(例えば転写エンハンサー)を含む修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含み、及びここで花粉提供者及び花粉受粉者は両方とも、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体である。交雑系種子作製方法は、(MacRobert,J.F.,P.S.Setimela,J.Gethi,and M.Worku.2014.Maize Hybrid Seed Production Manual.Mexico,D.F.:CIMMYT)に開示されており、本明細書に開示される交雑系の作製に応用することができる。特定の実施形態において、近交系トウモロコシ植物、交雑系トウモロコシ植物、花粉提供者及び/又は花粉受粉者は、各々、ある形質(例えば、除草剤耐性又は甲虫目若しくは鱗翅目の昆虫など、昆虫に対する抵抗性)を付与するトランスジェニック遺伝子座を含み得る。修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物系統に育種によるか、又は直接的な形質転換によって導入することのできるトランス遺伝子としては、(i)虫害抵抗性を付与するトランス遺伝子(例えば、Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry2Ab、Cry2Ae、Cry3A、Cry3Bb、Cry9c、Cry34、Cry35、VIP3A、及びこれらの変異体を含め、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質を産生するトランス遺伝子;昆虫阻害性RNAi応答を誘導するトランス遺伝子);及び(ii)特徴的な除草剤に対する耐性を付与するトランス遺伝子(例えば、グリホサート耐性を付与するCP4-EPSPS又は他のEPSPS遺伝子;グルホシネート系除草剤に対する抵抗性を付与するPAT又はBAR遺伝子;2,4-D及びアリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤に対する抵抗性を付与するaad-1遺伝子;ジカンバ系除草剤に対する抵抗性を付与するDMO遺伝子)が挙げられる。除草剤耐性及び/又は害虫耐性などの形質を付与するトランス遺伝子を持つ選択されたトランスジェニックトウモロコシ植物イベントの例については、米国特許第6342660号明細書、同第7956246号明細書、同第8575434号明細書、同第7314970号明細書、同第8759618号明細書、同第6852915号明細書、同第10316330号明細書、同第8618358号明細書、同第8450561号明細書、同第8686230号明細書、同第9428765号明細書、同第8455720号明細書、同第7897748号明細書、同第8273959号明細書、同第8093453号明細書、同第8502047号明細書、及び同第8466346号明細書(これらは、各々、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される。
【0054】
特定の実施形態において、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む本明細書に提供されるトウモロコシ植物は、遺伝子編集分子又はシステムのうちの1つ以上によって導入される1つ以上の標的化された遺伝子変化を更に含むことができる。かかる標的化された遺伝子変化には、標的化された遺伝子変化を欠く対照トウモロコシ植物と比較した収量の向上、食品及び/又は飼料特性の向上(例えば、油、デンプン、タンパク質、又はアミノ酸の質又は量の向上)、窒素利用効率の向上、バイオ燃料用途特性の向上、除草剤耐性(例えば、内因性ALS、EPSPS、HPPD、又は他の除草剤標的遺伝子を標的化することによる)、開花の遅延、非開花性、生物的ストレス抵抗性(例えば、昆虫、線虫、細菌、又は真菌被害に対する抵抗性)の増加、非生物的ストレス抵抗性(例えば、干ばつ、寒さ、暑さ、金属、又は塩分に対する抵抗性)の増加、倒伏抵抗性の増強、生育速度の増強、バイオマスの増強、分枝形成の増強、開花期の遅延、老化の遅延、花数の増加、高密植栽培構成の向上、光合成の向上、根量の増加、細胞数の増加、実生活力の向上、実生サイズの向上、細胞分裂速度の増加、代謝効率の向上、及び分裂組織サイズの増加などの形質を付与するものが含まれる。導入することのできる標的化された遺伝子変化の種類には、トウモロコシ作物植物ゲノムにおける1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、及び置換が含まれる。内因性トウモロコシ植物遺伝子中の標的化された遺伝子変化の部位には、プロモーター、コード領域、及び非コード領域(例えば、5’UTR、イントロン、スプライス供与・受容部位及び3’UTR)が含まれる。特定の実施形態において、標的化された遺伝子変化は、内因性トウモロコシ植物遺伝子における調節配列又は他のDNA配列の挿入を含む。遺伝子編集分子で内因性植物遺伝子に挿入することにより有用な表現型を付与する標的化された遺伝子変化を生じさせることのできる調節配列の非限定的な例としては、(a)オーキシン応答エレメント(AuxRE)配列;(b)少なくとも1つのD1-4配列(Ulmasov et al.(1997)Plant Cell,9:1963-1971)、(c)少なくとも1つのDR5配列(Ulmasov et al.(1997)Plant Cell,9:1963-1971);(d)少なくとも1つのm5-DR5配列(Ulmasov et al.(1997)Plant Cell,9:1963-1971);(e)少なくとも1つのP3配列;(f)対応する低分子RNAが結合する低分子RNA認識部位配列(例えば、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、米国特許第8,030,473号明細書に記載されるとおりのトランス作用性siRNA、又は米国特許第8,404,928号明細書に記載されるとおりのフェーズドsRNA(phased sRNA)(これらの引用特許は両方とも参照によって本明細書に援用される));(g)マイクロRNA(miRNA)認識部位配列;(h)特異的結合剤が、対応するエンジニアリングされた成熟miRNAであるような、エンジニアリングされたmiRNAに対するマイクロRNA(miRNA)認識配列;(i)トランスポゾン認識配列;(j)エチレン応答エレメント結合因子関連両親媒性抑制(EAR)モチーフによって認識される配列;(k)スプライス部位配列(例えば、供与部位、分枝形成部位、又は受容部位;例えば、インターネットサイトlemur[dot]amu[dot]edu[dot]pl/share/ERISdb/home.htmlに示されるスプライス部位及びスプライシングシグナルを参照のこと);(l)部位特異的リコンビナーゼによって認識されるリコンビナーゼ認識部位配列;(m)RNA又はアミノ酸アプタマー又はRNAリボスイッチをコードする配列、特異的結合剤は、対応するリガンドであり、発現の変化は上方制御又は下方制御である;(n)核内受容体又はそのホルモン結合ドメインによって認識されるホルモン応答エレメント;(o)転写因子結合配列;及び(p)ポリコーム応答エレメント(Xiao et al.(2017)Nature Genetics,49:1546-1552,doi:10.1038/ng.3937を参照のこと)など、米国特許出願公開第20190352655号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に示されるものが挙げられる。有用な形質を付与するため標的化された遺伝子編集に供することのできる標的トウモロコシ遺伝子の非限定的な例としては、品質及び除草剤耐性形質が挙げられる。特定の実施形態において、かかる標的化された遺伝子変化は、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む植物と育種技法によって組み合わせることができる。かかる育種技法には、交配及び/又は反復親との戻し交配による遺伝子移入が含まれる。かかる交配では、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む植物は、花粉提供者又は受粉者のいずれであってもよい。特定の実施形態において、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む植物は、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む植物生殖質中に標的化された遺伝子変化を遺伝子移入するためのかかる戻し交配における反復親として使用することができる。特定の実施形態において、1つ又は複数の標的遺伝子変化を含む植物は、1つ又は複数の標的遺伝子変化を含む植物生殖質中に修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むゲノム領域を遺伝子移入するためのかかる戻し交配における反復親として使用することができる。
【0055】
特定の実施形態において、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む本明細書に提供される植物は、標的化された遺伝子変化を欠く対照植物と比較した収量の向上、食品及び/又は飼料特性の向上(例えば、油、デンプン、タンパク質、又はアミノ酸の質又は量の向上)、窒素利用効率の向上、バイオ燃料用途特性の向上(例えば、エタノール産生量の向上)、除草剤耐性(例えば、内因性ALS、EPSPS、HPPD、又は他の除草剤標的遺伝子を標的化することによる)、開花の遅延、非開花性、生物的ストレス抵抗性(例えば、昆虫、線虫、細菌、又は真菌被害に対する抵抗性)の増加、非生物的ストレス抵抗性(例えば、干ばつ、寒さ、暑さ、金属、又は塩分に対する抵抗性)の増加、倒伏抵抗性の増強、生育速度の増強、バイオマスの増強、分蘖の増強、分枝形成の増強、開花期の遅延、老化の遅延、花数の増加、高密植栽培構成の向上、光合成の向上、根量の増加、細胞数の増加、実生活力の向上、実生サイズの向上、細胞分裂速度の増加、代謝効率の向上、及び分裂組織サイズの増加などの形質を付与する1つ以上の遺伝子座を更に含むことができる。かかる遺伝子座の供給源には、優良栽培品種、有性生殖適合性の野生種又は他の近縁種(例えば、トウモロコシ属種(Zea sp.))、ランダム突然変異誘発(例えば、EMSなどの化学的突然変異原によるか、又はガンマ線突然変異誘発による)に供された植物生殖質などが含まれる。特定の実施形態において、かかる遺伝子座は、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む植物と育種技法によって組み合わせることができる。かかる育種技法には、交配及び/又は反復親との戻し交配による遺伝子移入が含まれる。かかる交配では、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む植物は、花粉提供者又は受粉者のいずれであってもよい。特定の実施形態において、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む植物は、遺伝子改変された転写調節領域を含む植物生殖質中に遺伝子座を遺伝子移入するためのかかる戻し交配における反復親として使用することができる。特定の実施形態において、1つ又は複数の遺伝子座を含む植物は、1つ又は複数の遺伝子座を含む植物生殖質中に修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むゲノム領域を遺伝子移入するためのかかる戻し交配における反復親として使用することができる。
【0056】
また、本明細書には、商品植物生産物又は植物材料を作製する方法であって、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む前述の植物のいずれかを成長させること、又は修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含む種子から植物を成長させることを含む方法も提供される。特定の実施形態において、かかる植物及び/又は種子は、生物学的薬剤(例えば、バチルス属種(Bacillus sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、ブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium sp.)などを含めた、植物に有益な微生物)、殺線虫剤(例えば、カルバメート系又は有機リン酸系殺虫剤)、殺虫剤(例えば、ネオニコチノイド系、ピレスロイド系、カルバメート系、又は有機リン酸系殺虫剤)及び/又は殺かび剤(例えば、ベンズイミダゾール系、イミダゾール系、又はストロビルリン系殺かび剤)で灌漑され、施肥され、及び/又は処理される。植物は、かかる肥料、生物学的薬剤、殺線虫剤、殺虫剤、及び殺かび剤で、噴霧、燻蒸、及び/又は客土を含めた方法によって処理することができる。種子は、かかる肥料、生物学的薬剤、殺線虫剤、殺虫剤、及び殺かび剤で、畝内散布を含めた方法によるか、又はコーティング(例えば、ドラムコーター、ロータリーコーター、タンブラードラム、流動層、及び/又は噴流層装置を用いる)によって処理することができる。本明細書に提供される種子との使用に応用することができる種子のコーティング用の様々な結合剤、充填剤、フィルムコート、及び活性成分、例えば、肥料、界面活性剤、植物成長調節物質、作物乾燥剤、殺かび剤、殺菌剤、静菌剤、殺虫剤、及び昆虫駆除薬などを含む方法及び組成物について、米国特許第10745578号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0057】
実施形態
本明細書に記載されるDNA分子、植物、植物部位、ゲノム、染色体、方法、生物学的試料、及び他の組成物の様々な実施形態を以下の一組の番号付けされた実施形態に示す。
【0058】
1.修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトウモロコシ植物であって、修飾された遺伝子に異種発現増強エレメントが位置し、修飾されていないZm1d31079遺伝子が配列番号1のDNA分子又はそのアレル変異体を含む、トウモロコシ植物。
【0059】
2.修飾されたZm1d31079遺伝子及び/又は修飾されていないZm1d31079遺伝子が、配列番号2のZm1d31079タンパク質又はそのアレル変異体をコードする、実施形態1に記載のトウモロコシ植物。
【0060】
3.修飾されたZm1d31079遺伝子が、修飾されていないZm1d31079遺伝子の天然染色体位置に位置する、実施形態1又は2に記載のトウモロコシ植物。
【0061】
4.修飾されたZm1d31079遺伝子が、修飾されていないZm1d31079遺伝子の天然染色体位置以外の染色体位置に位置するトランス遺伝子を含む、実施形態1又は2に記載のトウモロコシ植物。
【0062】
5.修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物であって、修飾された遺伝子に異種発現増強エレメントが位置し、修飾されていないZm1d44812遺伝子が配列番号8のDNA分子又はそのアレル変異体を含み、修飾されたZm1d44812遺伝子が、修飾されていないZm1d44812遺伝子の天然染色体位置に位置する、トウモロコシ植物。
【0063】
6.修飾されたZm1d44812遺伝子及び/又は修飾されていないZm1d44812遺伝子が、配列番号9のZm1d44812タンパク質又はそのアレル変異体をコードする、実施形態5に記載のトウモロコシ植物。
【0064】
7.修飾されたZm1d44812遺伝子を有する植物におけるZm1d44812遺伝子産物の発現が、修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して、それぞれ、トウモロコシ植物の少なくとも1つの組織において約5%~10%又は20%増加する、実施形態5又は6に記載のトウモロコシ植物。
【0065】
8.トウモロコシ植物の草高が、修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して短縮し、任意選択で草高が、修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して約5%又は10%~約15%、20%、30%、又は50%短縮する、実施形態5、6、7、又は8に記載のトウモロコシ植物。
【0066】
9.異種発現増強エレメントが、(i)異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロン;又は(ii)異種プロモーター、異種5’UTR、及び/又は異種イントロンを含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物。
【0067】
10.異種転写エンハンサーが、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子のプロモーター、5’非翻訳領域(5’UTR)、イントロン、3’非翻訳領域(3’UTR)、又は3’フランキング領域に位置する、実施形態9に記載のトウモロコシ植物。
【0068】
11.異種転写エンハンサーが、配列番号16、17、配列番号19~124、及び/又は125に示されるDNA分子を含む、実施形態9又は10に記載のトウモロコシ植物。
【0069】
12.転写エンハンサーが、Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の転写開始部位(TSS)から約10、20、30、40、100、又は150塩基対(bp)~約200、240、300、350、400、500、又は1000bp5’側に位置する、実施形態9、10又は11に記載のトウモロコシ植物。
【0070】
13.転写エンハンサーが、配列番号16又は17、19~124、及び/又は125を含み、挿入が、
(i)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約116~約96塩基対又は約106塩基対;
(ii)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約119~約99塩基対又は約109塩基対;
(iii)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約170~約150塩基対又は約160塩基対;
(iv)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約252~約232塩基対又は約242塩基対;
(v)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約261~約241塩基対又は約251塩基対;
(vi)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号4、5、又は6によってコードされるガイドRNAでZm1d31079プロモーターに導入された二本鎖切断;又は
(vii)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号3又は7によってコードされるガイドRNAでZm1d31079プロモーターに導入された二本鎖切断
に位置する、実施形態9に記載のトウモロコシ植物。
【0071】
14.転写エンハンサーが配列番号16、17、19~124、及び/又は125を含み、挿入が、
(i)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約85~約65塩基対又は約75塩基対;
(ii)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約93~約73塩基対又は約83塩基対;
(iii)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約183~約163塩基対又は約173塩基対;
(iv)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約188~約168塩基対又は約178塩基対;
(v)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約269~約249塩基対又は約259塩基対;
(vi)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号10、12、又は15によってコードされるガイドRNAでZm1d44812プロモーターに導入された二本鎖切断;又は
(vii)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号11、13、又は14によってコードされるガイドRNAでZm1d44812プロモーターに導入された二本鎖切断
に位置する、実施形態9に記載のトウモロコシ植物。
【0072】
15.異種イントロンが、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に位置し、任意選択でイントロンが、転写開始部位(TSS)から約500、200、100、50、30、又は20塩基対以内に位置する、実施形態9に記載のトウモロコシ植物。
【0073】
16.異種イントロンが、UBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンを含み、任意選択でUBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンが、イネ又はトウモロコシイントロンである、実施形態15に記載のトウモロコシ植物。
【0074】
17.異種翻訳エンハンサーが、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に位置する、実施形態9に記載のトウモロコシ植物。
【0075】
18.翻訳エンハンサーが、イネアルコールデヒドロゲナーゼ(OsAdh)、グルタチオントランスフェラーゼU50(OsGstU50)、グルタチオンペルオキシダーゼ1(OsGsp1)、20Sプロテアソームα1サブユニット(Os20Sα1)、発病関連タンパク質4b(OsPrp4b)、グリシンリッチ細胞壁構造タンパク質1(Os Grcwp1)、又はUspAドメイン含有タンパク質(Os UspA)5’UTRを含むDNA配列を含むDNA分子によってコードされ、及びOsAdh、Os GstU50、Os20Sα1、OsPrp4b、Os Grcwp1、又はOs UspA 5’UTRの全て又は一部が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子におけるZm1d31079 5’UTR又はZm1d44812 5’UTRの全て又は一部に置換されている、実施形態17に記載のトウモロコシ植物。
【0076】
19.Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の発現が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較してトウモロコシ植物の少なくとも1つの組織において増加し、任意選択でZm1d31079又はZm1d44812遺伝子の発現が少なくとも稈組織において増加する、実施形態1~18のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物。
【0077】
20.トウモロコシ植物の草高が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して短縮し、任意選択で草高が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して約5%又は10%~約15%、20%、30%、又は50%短縮する、実施形態1~19のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物。
【0078】
21.修飾されたZm1d31079又は修飾されたZm1d44812遺伝子に関してヘテロ接合体の交雑系トウモロコシ植物である、実施形態1~20のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物。
【0079】
22.修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を有する植物におけるZm1d31079遺伝子産物又はZm1d44812遺伝子産物の発現が、それぞれ、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して、トウモロコシ植物の少なくとも1つの組織において約20%~80%増加する、実施形態1~21のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物。
【0080】
23.修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を有する植物におけるZm1d31079遺伝子産物又はZm1d44812遺伝子産物の発現が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して、トウモロコシ植物の少なくとも1つのトウモロコシ組織において約1.2倍又は1.5倍~約2倍、3倍、又は5倍に増加する、実施形態1~21のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物。
【0081】
24.実施形態1~23のいずれか一つに記載の修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物部位。
【0082】
25.種子、稈、茎、又は葉である、実施形態24に記載のトウモロコシ植物部位。
【0083】
26.種子が、生物学的薬剤、殺線虫剤、殺虫剤、又は殺真菌剤を含む組成物の少なくとも部分的なコーティングを更に含む、実施形態25に記載のトウモロコシ植物部位。
【0084】
27.トウモロコシ植物種子が、修飾されたZm1d31079又は修飾されたZm1d44812遺伝子に関してヘテロ接合体の交雑系トウモロコシ植物種子である、実施形態25又は26に記載のトウモロコシ植物部位。
【0085】
28.トウモロコシ種子を作製する方法であって、実施形態1~23のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物を成長させること、及びそこから種子を収穫することを含む方法。
【0086】
29.交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、実施形態1~4、9~13、又は15~23のいずれか一つに記載の修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物を、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体の別のトウモロコシ植物と交配させること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法。
【0087】
30.交雑系トウモロコシ種子を作製する方法であって、実施形態5~12又は14~23のいずれか一つに記載の修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物を、修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体の別のトウモロコシ植物と交配すること、及び交配の花粉受粉者から種子を収穫することを含む方法。
【0088】
31.近交系トウモロコシ種子を作製する方法であって、(i)実施形態1~4、9~13、又は15~23のいずれか一つに記載の修飾されたZm1d31079遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物;又は(ii)実施形態5~12又は14~23のいずれか一つに記載の修飾されたZm1d44812遺伝子に関してホモ接合体のトウモロコシ植物を自殖させることを含む方法。
【0089】
32.追加された所望の形質を含むトウモロコシ植物を作製する方法であって、所望の形質を付与するトランス遺伝子、標的化された遺伝子変化、及び/又は遺伝子座を実施形態1~23のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物に導入することを含む方法。
【0090】
33.商品トウモロコシ植物生産物を作製する方法であって、(i)実施形態1~23のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物又はそれから入手されるトウモロコシ種子を加工すること;及び(ii)加工されたトウモロコシ植物又はトウモロコシ種子から商品トウモロコシ植物生産物を回収することを含む方法。
【0091】
34.商品トウモロコシ植物生産物が、種子ミール、デンプン、シロップ、サイレージ、油、又はタンパク質である、実施形態33に記載の方法。
【0092】
35.商品トウモロコシ植物生産物が、修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片又は修飾されたZm1d44812遺伝子のDNA断片に位置する異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロンを含む検出可能な量のDNA分子を含む、実施形態33に記載の方法。
【0093】
36.修飾されたZm1d31079遺伝子のDNA断片又は修飾されたZm1d44812遺伝子のDNA断片に位置する異種転写エンハンサー、異種イントロン、及び/又は異種翻訳増強エレメントを含む検出可能な量のDNA分子を含む生物学的試料。
【0094】
37.生物学的試料が、実施形態1~23のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物又はその一部位から入手される材料を含み、部位が、任意選択で種子である、実施形態36に記載の生物学的試料。
【0095】
38.再生不可能である、実施形態37に記載の生物学的試料。
【0096】
39.トウモロコシ種子ミールを含む、実施形態37に記載の生物学的試料。
【0097】
40.実施形態1~3又は5~23のいずれか一つに記載のトウモロコシ植物を作成する方法であって、
(a)(i)配列番号1のDNA分子又はそのアレル変異体を含む修飾されていないZm1d31079遺伝子又は(ii)配列番号8のDNA分子又はそのアレル変異体を含む修飾されていないZm1d44812遺伝子の、プロモーター領域、5’UTR、コード領域、3’UTR、又は3’フランキング領域に二本鎖DNA切断を導入する第1の部位特異的ヌクレアーゼ;及び異種発現増強エレメントを含むドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型を含む遺伝子編集分子をトウモロコシ植物ゲノムと接触させること;及び
(b)修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物を選択することであって、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子が、遺伝子のプロモーター領域、5’UTR、コード領域、3’UTR、又は3’フランキング領域に異種発現増強エレメントの挿入を含み、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子の発現が、少なくとも1つの組織において増加し、及び修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を含むトウモロコシ植物の草高が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して減少すること
を含む方法。
【0098】
41.異種発現増強エレメントが、異種転写エンハンサー、異種翻訳増強エレメント、及び/又は異種イントロンを含む、実施形態40に記載の方法。
【0099】
42.二本鎖切断が、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子のプロモーター、5’非翻訳領域(5’UTR)、イントロン、3’非翻訳領域(3’UTR)、又は3’フランキング領域に導入され、ドナーDNA鋳型又は他のDNA鋳型が、異種転写エンハンサーを含む、実施形態40又は41に記載の方法。
【0100】
43.転写エンハンサーが、配列番号16、17、19~124、及び/又は配列番号125に示されるDNA分子を含む、実施形態42に記載の方法。
【0101】
44.二本鎖切断が、Zm1d31079又はZm1d44812遺伝子の転写開始部位(TSS)から約10、20、30、40、100、又は150塩基対(bp)~約200、240、300、350、400、500、又は1000bp5’側に導入される、実施形態40に記載の方法。
【0102】
45.転写エンハンサーが配列番号16、17、19~124、及び/又は125を含み、二本鎖切断が、
(i)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約116~約96塩基対又は約106塩基対;
(ii)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約119~約99塩基対又は約109塩基対;
(iii)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約170~約150塩基対又は約160塩基対;
(iv)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約252~約142塩基対又は約242塩基対;
(v)Zm1d31079遺伝子のTSSに対して5’側に約261~約241塩基対又は約251塩基対;
(vi)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号4、5、又は6によってコードされるガイドRNAでZm1d31079プロモーター;又は
(vii)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号3又は7によってコードされるガイドRNAでZm1d31079プロモーター
に導入される、実施形態44に記載の方法。
【0103】
46.転写エンハンサーが配列番号16、17、19~124、及び/又は125を含み、二本鎖切断が、
(i)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約85~約65塩基対又は約75塩基対;
(ii)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約93~約73塩基対又は約83塩基対;
(iii)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約183~約163塩基対又は約173塩基対;
(iv)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約188~約168塩基対又は約178塩基対;
(v)Zm1d44812遺伝子のTSSに対して5’側に約269~約249塩基対又は約259塩基対;
(v)Cas9ヌクレアーゼ及び配列番号10、12、又は15によってコードされるガイドRNAでZm1d44812プロモーター;又は
(vi)Cas12ヌクレアーゼ及び配列番号11、13、又は14によってコードされるガイドRNAでZm1d44812プロモーター
に導入される、実施形態44に記載の方法。
【0104】
47.ドナー又は他のDNA鋳型が異種翻訳エンハンサーを含み、二本鎖切断が、修飾されていないZm1d31079遺伝子又は修飾されていないZm1d44812遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に導入される、実施形態41に記載の方法。
【0105】
48.翻訳エンハンサーが、イネアルコールデヒドロゲナーゼ(OsAdh)、グルタチオントランスフェラーゼU50(OsGstU50)、グルタチオンペルオキシダーゼ1(OsGsp1)、20Sプロテアソームα1サブユニット(Os20Sα1)、発病関連タンパク質4b(OsPrp4b)、グリシンリッチ細胞壁構造タンパク質1(OsGrcwp1)、又はUspAドメイン含有タンパク質(OsUspA)5’UTRのDNA配列を含むDNA分子によってコードされ、OsAdh、OsGstU50、Os20Sα1、OsPrp4b、OsGrcwp1、又はOsUspA 5’UTRの全て又は一部が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子のZm1d31079 5’UTR又はZm1d44812 5’UTRの全て又は一部に置換されている、実施形態47に記載の方法。
【0106】
49.DNAドナー又は他のDNA鋳型が異種翻訳エンハンサーを含み、二本鎖切断が、修飾されたZm1d31079遺伝子又は修飾されたZm1d44812遺伝子の5’UTR及び/又はコード領域内に導入される、実施形態41に記載の方法。
【0107】
50.異種イントロンが、UBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンを含み、任意選択でUBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンが、イネ又はトウモロコシイントロンを含む、実施形態49に記載の方法。
【0108】
51.実施形態1~2又は4~23のいずれかに記載のトウモロコシ植物を作製する方法であって、
(a)修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトランス遺伝子をトウモロコシ植物ゲノムと接触させることであって、修飾されたZm1d31079遺伝子が、配列番号2のZm1d31079タンパク質又はそのアレル変異体をコードするコード領域に作動可能に連結された異種プロモーター、異種5’UTR、及び/又は異種イントロンを含むこと;及び
(b)修飾されたZm1d31079遺伝子を含むトランスジェニックトウモロコシ植物を選択することであって、修飾されたZm1d31079遺伝子の発現が少なくとも1つの組織において増加し、トウモロコシ植物の草高が、修飾されたZm1d31079遺伝子を欠く対照トウモロコシ植物と比較して減少すること
を含む方法。
【0109】
52.プロモーターが、ユビキチンプロモーター、アクチンプロモーター、又は植物ウイルスプロモーターであり、任意選択で植物ウイルスプロモーターがカリモウイルスプロモーターを含む、実施形態51に記載の方法。
【0110】
53.異種イントロンが、UBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンを含み、任意選択でUBQ、EF-1α、EF-1β、ヒストンH3、ATPK1、RHD3、又はMHXイントロンが、イネ又はトウモロコシイントロンを含む、実施形態51に記載の方法。
【実施例】
【0111】
実施例1.Zm1d31079(配列番号1)及びZm1d44812(配列番号8)プロモーターにおける転写エンハンサーの挿入
トウモロコシ遺伝子Zm1d31079(配列番号1)及びZm1d44812(配列番号8)を、これらの遺伝子の発現を増加させてトウモロコシ植物草高を低下させるための転写エンハンサー(配列番号16)の挿入の標的とした。アレル系列を作り出し、TSSまでの距離が増加すれば、植物草高に関して表現型がより穏やかになり得るかどうかを評価するため、遺伝子の転写開始部位(TSS)から様々な距離にあるガイドRNAを設計した。これらの2つの遺伝子用に設計したガイドRNAの概要を表2及び表3に提供する。
【0112】
【0113】
【0114】
CasBヌクレアーゼポリペプチドを構成的に過剰発現するトランスジェニックB104「編集因子」トウモロコシ系統の未熟胚を受粉13日後に収穫し、除草剤及び目視選択可能なマーカー(p35S::pat::tNOS及びpZmUbi::mScarlet::tZmUbi)、指示されるスペーサーのうちの1つを含むCasBヌクレアーゼ用のシングルガイドRNA(Zm1d31079_Pro-109、Zm1d44812_Pro-75、Zm1d31079_Pro-242、又はZm1d44812_Pro-259)、及び3×エンハンサーのDNA(/5Phos/G*T*AAGCGCTTACGTAAGCGCTTACGTAAGCGCTT*A*C;配列番号18;*はホスホロチオエート結合である)を含むNHEJ挿入用のプラスミドで遺伝子銃によって形質転換した。ガイドRNA及びDNAは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA、米国)からのものであった。カルスを誘導し、形質転換細胞を選択し、形質転換したT0世代植物を従来方法により再生した。表4にある以下の植物をT0で再生し、更なる特徴付けのために選択した。
【0115】
【0116】
標的化した部位を包含するDNA断片をPCR増幅し、編集されたT0植物への挿入の存在に関して観察した。編集された植物は、T0段階で草高が減少していることが観察された。
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、及び
図8は、Zm1d31079又はZm1d44812プロモーターにエンハンサー挿入を含むT0植物と、そうしたプロモーターにおける挿入を欠く対照植物との間の違いを示す。対照植物は、同様の発育段階にあるが、植物草高と無関係な遺伝子に編集を担持している編集されたT0植物であった。
【0117】
実施例2.Zm1d31079(配列番号1)及びZm1d44812(配列番号8)プロモーターに転写エンハンサーの挿入を含む植物の更なる分析
実施例1に記載されるものなどのT0植物をB104野生型と戻し交配する。得られたT1植物を、標的部位におけるエンハンサーの存在/非存在に関して分析し、T1植物を成長させて、エンハンサー挿入を欠くシブリングを対照として使用した、植物草高及び一般的な植物発育に着目した表現型分析に供する。選択されたT1植物を異なる遺伝子型(例えばPHRO3)と交配して交雑系F1種子を作製し、得られたF1植物を、定量的草高成分測定を含む表現型分析に供する。加えて、関連性がある場合には分子解析を実施して、標的Zm1d31079及びZm1d44812遺伝子の発現レベルの変化を測定する。
【0118】
実施例3.Zm1d31079プロモーターに三重ZmOCS転写エンハンサーの挿入を含む植物の分析
Zm1d31079(配列番号1)遺伝子のプロモーターに三重ZmOCSエンハンサーエレメント(配列番号16)挿入を含む2系統:Zm1d31079遺伝子の転写開始部位(TSS)から109塩基上流に三重ZmOCSエンハンサーが挿入された1つ、及びZm1d31079遺伝子のTSSから242塩基上流に三重ZmOCSエンハンサーが挿入された1つを作成した。幼茎頂の発現から、両方の系統で、エンハンサーの挿入がZm1d31079の一層の高発現につながり、エンハンサーに関してホモ接合体の個体では、ヘテロ接合体の個体と比較して効果がより強力であったことが示された(
図9)。各々について、三重ZmOCSエンハンサー挿入に関してホモ接合体又はヘテロ接合体のT2個体を温室で成長させて、エンハンサー挿入を含まない分離用シブリングと比較した。日陰効果を回避するため、遺伝子型の間を置いた。発育中を通じて植物草高(地際から最も若い葉の襟部まで)を定期的に測定し(
図10)、成熟した時点で植物草高(地際面から止め葉の襟部まで)及び着雌穂高(地際から雌穂の基部まで)を測定したところ、いずれの場合にも三重ZmOCSエンハンサーの存在が植物草高及び着雌穂高の両方の統計的に有意な低下につながったことが示された(表5)。三重ZmOCSエンハンサー挿入ヘテロ接合体の表現型タイピングを行った両系統とも、植物草高に対する効果は三重ZmOCSエンハンサー挿入ホモ接合体と比較して弱かった(表5;
図10)。
【0119】
【0120】
本開示の幅及び範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されてはならず、以下の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ定義されるべきものとする。
【配列表】
【国際調査報告】