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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】トリプタミン組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/20 20060101AFI20250117BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07D209/20 CSP
A61K31/4045
A61P3/04
A61P15/10
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/32
A61P25/34
A61P25/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541809
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2023050702
(87)【国際公開番号】W WO2023135237
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】63/299,599
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/384,704
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522452581
【氏名又は名称】サイビン アイアールエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(74)【代理人】
【識別番号】100155125
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 直俊
(72)【発明者】
【氏名】アヴェリー,ケネス エル.
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ジェームズ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ニヴォロツキン,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】パテア,プラディプ エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュクール,モハメド アイ.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA34
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA03
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZC39
(57)【要約】
トリプタミン化合物の薬学的に許容可能な塩、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患の治療におけるかかる塩形態の使用、塩形態を含有する吸入投与に適合されるものなどの医薬組成物、薬学的に許容可能な塩形態の送達方法(例えば、吸入を介して)、および塩形態(式(I))を用いて中枢神経系(CNS)障害や精神障害などのセロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を治療する方法、が開示される。
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、
【化1】

式中、
およびXが、重水素であり、
およびYが、重水素であり、
、R、R、R、およびRが独立して、水素または重水素であり、ならびに
およびRが独立して、-CH、-CDH、-CDH、-および-CDからなる群から選択される、の化合物の薬学的に許容可能な塩、またはその溶媒和物。
【請求項2】
およびRのうちの少なくとも一つが、重水素である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
、R、R、R、およびRが、水素である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
、R、R、R、およびRのうちの少なくとも一つが、重水素である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
およびRが、-CHである、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
およびRが独立して、-CDH、-CDH、および-CDからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
およびRが、-CDである、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
前記式(I)の化合物が、
【化2】

からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
前記式(I)の化合物が、
【化3】

である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
X線粉末回折(XRPD)によって決定される、結晶性である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
約10mg/mL~約400mg/mLの水溶性を有する、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、約100℃~約210℃の溶融開始温度を有する、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、約110J・g-1~約180 J・g-1の融解エンタルピーを有する、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項14】
動的蒸気吸着(DVS)によって決定される、>95%RHの相対湿度(RH)に曝露されたときに1%w/w未満の重量増加を有する、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項15】
前記式(I)の化合物と有機酸との付加塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項16】
前記式(I)の化合物のフマル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、またはコハク酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項17】
前記式(I)の化合物のフマル酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項18】
前記式(I)の化合物の安息香酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項19】
前記式(I)の化合物のサリチル酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項20】
前記式(I)の化合物のコハク酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項21】
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8a)のフマル酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項22】
CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、7.8°、10.3°、10.9°、13.6°、15.8°、16.1°、17.0°、18.4°、19.7°、19.9°、20.6°、21.3°、21.8°、22.5°、23.8°、24.1°、25.1°、26.2°、33.6°、および34.9°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である、請求項21に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項23】
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)の安息香酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項24】
CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、11.1°、12.7°、13.5°、15.8°、16.1°、17.2°、17.9°、19.8°、20.1°、20.8°、21.2°、22.8°、23.8°、24.6°、26.9°、29.3°、32.3°、35.1°、および36.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である、請求項23に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項25】
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8c)のサリチル酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項26】
CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、10.5°、14.9°、17.1°、18.1°、19.1°、20.1°、20.8°、21.1°、21.3°、24.6°、25.6°、28.5°、28.8°、29.4°、30.3°、31.3°、32.1°、33.5°、および34.4°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である、請求項25に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項27】
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8d)のコハク酸塩である、請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項28】
請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なビヒクルと、を含む医薬組成物。
【請求項29】
重水素を有する前記式(I)の化合物中の任意の位置が、少なくとも50原子%の最小重水素組み込みを重水素化の部位で有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
吸入を介した投与に適合されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
経口投与に適合されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項32】
静脈内投与に適合されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
皮下投与に適合されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項34】
筋肉内投与に適合されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項35】
経鼻投与に適合されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項36】
薬学的に許容可能な液体媒体中で、固体剤形の請求項28に記載の医薬組成物を再構成することによって調製される、液体剤形。
【請求項37】
請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする患者に送達する方法であって、
吸入を介して前記患者にエアロゾルを投与することであって、前記エアロゾルが、担体中に前記式(I)の化合物の前記薬学的に許容可能な塩を含む投与すること、を含む、方法。
【請求項38】
前記薬学的に許容可能な塩が、肺吸収を介して前記患者の中枢神経系に送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記担体が、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記担体が、前記ヘリウムと酸素の混合物である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ヘリウムと酸素の混合物が、約50℃~約60℃に加熱される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ヘリウムが、約50%~90%の体積で、前記ヘリウムと酸素の混合物中に存在し、前記酸素が、約50%~10%の体積で、前記ヘリウムと酸素の混合物中に存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記式(I)の化合物の前記薬学的に許容可能な塩および前記担体を含む前記エアロゾルの投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記前治療吸入療法が、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入を介して前記患者に投与することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
(i)約90℃~約120℃に加熱された前記ヘリウムと酸素の混合物を、吸入を介して前記患者に投与すること、および(ii)約50℃~約60℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物中の前記式(I)の化合物の前記薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルを、吸入を介して前記患者に投与すること、を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(i)および(ii)を、1~5回繰り返すことをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記式(I)の化合物の前記薬学的に許容可能な塩が、前記患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の低減、またはそれらの組み合わせを提供する、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記エアロゾルが、ミストである、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記エアロゾルが、前記式(I)の化合物の前記薬学的に許容可能な塩の噴霧化によって調製される、請求項37に記載の方法。
【請求項50】
前記噴霧化が、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、呼吸作動型ネブライザ、および振動メッシュネブライザからなる群から選択される装置を用いて実施される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記噴霧化が、前記式(I)の化合物の前記薬学的に許容可能な塩の噴霧形態の同伴のための亜酸化窒素を含む駆動ガスを使用して実施される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記亜酸化窒素が、前記駆動ガスの総体積に対して、15~25体積%の濃度で前記駆動ガス中に存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記エアロゾルが、20~60分間投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項54】
中枢神経系(CNS)障害および/または精神障害を有する患者を治療する方法であって、
請求項1に記載の薬学的に許容可能な塩の治療有効量を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項55】
前記CNS障害および/または精神障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行為、自殺念慮もしくは自殺行為を伴う大うつ病性障害、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、非自殺的自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、急性幻覚クライシス、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害、アルツハイマー病、群発性頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛み、アファンタジア、小児期発症の流暢性障害、重度の神経認知障害、軽度の神経認知障害、慢性疲労症候群、ライム病、ギャンブル障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、過食性障害、小児性愛障害、露出障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズムまたはサディズム障害、異性装障害、性的機能障害、ならびに肥満からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記CNS障害および/または精神障害が、アルコール使用障害である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記CNS障害および/または精神疾患が、全般性不安障害(GAD)である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記CNS障害および/または精神疾患が、社会不安障害である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記CNS障害および/または精神疾患が、治療抵抗性うつ病(TRD)である、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩と、(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩と、を含む活性塩混合物、および
薬学的に許容可能なビヒクル、を含む医薬組成物。
【請求項61】
前記活性塩混合物が、(i)前記活性塩混合物の総重量に基づいて、60重量%~98重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩、ならびに(ii)前記活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~40重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記活性塩混合物が、(i)前記活性塩混合物の総重量に基づいて、90重量%~98重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩、ならびに(ii)前記活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~10重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8a)のフマル酸塩、ならびに(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10a)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11a)のうちの一つ以上のフマル酸塩を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)の安息香酸塩、ならびに(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10b)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11b)のうちの一つ以上の安息香酸塩を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8c)のサリチル酸塩、ならびに(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10c)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11c)のうちの一つ以上のサリチル酸塩を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8d)のコハク酸塩、ならびに(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10d)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11d)のうちの一つ以上のコハク酸塩を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2022年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/299,599号、および2022年11月22日に出願された米国仮特許出願第63/384,704号に対する優先権を主張するものであり、各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、トリプタミン化合物の薬学的に許容可能な塩に関し、一部の実施形態では、セロトニン5-HT受容体アゴニストおよび5-HT受容体に関連する疾患の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
セロトニン5-HT受容体(5-HTRs)には、5-HT2A、5-HT2B、および5-HT2Cの三つの密接に関連するサブタイプがあり、それらは、リセルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、および2,5-ジメトキシ-4-ブロモアンフェタミン(DOB)などの古典的セロトニン作動性幻覚剤の主要標的である。それらは、約60%の膜貫通アミノ酸相同性を共有しており、これは、他のサブタイプよりも一つのサブタイプに対する選択性を有する分子を設計する課題を提起する。各サブタイプは、哺乳動物(末梢組織および中枢神経系の両方)において固有のパターンで発現され、刺激されると、固有の生化学的、生理学的、および行動学的効果を生じる。例えば、5-HT2ARsの活性化は、主に幻覚効果を媒介し、抗炎症効果を引き起こすのに対し、5-HT2CRsの活性化は摂食行動を減少させる。しかしながら、5-HT2BRsの慢性的な活性化は、生命を脅かす有害事象(AE)である弁膜心疾患(VHD)と関連している。さらに、5-HT2AR薬物療法の恩恵を受ける可能性のある患者は、幻覚効果を経験することに抵抗があり得るという懸念がある。
【0004】
トリプタミンは、セロトニン作動性幻覚剤のクラスであり、セロトニン5-HTRsにおいて非常に高い能力を有する(場合によっては、サブナノモル親和性)。あるトリプタミンは、5-HT2BRsおよび5-HT2CRsよりも5-HT2ARsに対する選択性-一部の場合では100倍-を有することによって、典型的幻覚剤および他のセロトニン作動性幻覚剤と区別される。
【0005】
トリプタミンおよび他のセロトニン作動性幻覚剤によって引き起こされるAEは、比較的高用量の摂取に関連する。おそらく5-HT2ARsおよび5-HT2CRsへの効力が非常に高いため、トリプタミンおよび他の幻覚剤の活性経口用量は極めて低い。例えば、(2-(4-クロロ-2,5-ジメトキシフェニル)-N-[(2-メトキシフェニル)メチル〕エタン-1-アミン(2C-C-NBOMe)は、25μgという低用量で経口活性であり、非常に強力な幻覚作用のある用量は、500~700μgの範囲である。したがって、これらの用量以上での誤用または乱用は、患者に否定的な経験を引き起こし、俗に「恐ろしい幻覚」として知られる急性幻覚クライシスとして提示し、患者は視覚および聴覚幻覚、興奮、攻撃性、精神病、悔恨、および苦悩の感情を経験する。中毒は、毒性(例えば、横紋筋融解症)および死亡とも関連している。N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)(IUPAC:2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン))などのトリプタミンは、広範な初回通過代謝を経て、経口的に不活性にもなり得る。
【0006】
このため、多くのトリプタミン幻覚剤の治療指数は、比較的狭い範囲にある。このため、潜在的な薬剤候補分子の治療的利益を最大化するには、副作用を低減し、安全性を改善するために、用量滴定と共に、用量および投与経路の微調整を必要とする。
【0007】
さらに、多くの遊離塩基形態の医薬品と同様に、遊離塩基形態のトリプタミンは、概して、医薬品処理および適用に適していない。例えば、DMT遊離塩基は、低融点固体(およそ46℃)であり、長期保存下では酸素、熱、および光に敏感であることが知られている。
【0008】
したがって、5-HT2BRの問題および有害事象の問題を克服するトリプタミンが必要であると同時に、それらの生物学的利用能を改善し、その活性および曝露を強化する必要もある。神経学的に有毒な(例えば、精神異常発現的毒性)血漿濃度をもたらさない、効率的で、より便利で、制御可能なトリプタミン製剤に対するさらなる必要性がある。医薬調製および投与に適した安定かつ生理学的に許容可能な形態のトリプタミンがさらに必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、セロトニン5-HT受容体を調節する化合物の塩形態の特定、およびセロトニン5-HT受容体に関連する疾患を治療するためにそれを使用する方法に、少なくとも部分的に基づく。より具体的には、本開示は、有利な物理的および薬学的特性を有し、例えば、神経精神疾患または障害、炎症性疾患または障害、中枢神経系(CNS)障害、自律神経系(ANS)障害、肺障害、および/または心血管障害などの疾患/状態の治療のために、効率的で、より便利で、制御可能な医薬製剤を調製することを可能にする、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)の新規の塩形態およびその誘導体を提供する。
【0010】
以下に続く詳細な説明の間に明らかとなるこれらおよび他の目的は、以下の一つ以上の望ましい物理的および薬学的特徴を有する式(I)の化合物の新規の塩形態の発明者による発見により達成された:塩形成および結晶化の容易さおよび傾向(例えば、高収率);安定的で、明確な物理的特性(例えば、結晶化度、多形性の欠如、高い融点、および高い融解エンタルピー);高湿度を含む水分に対する安定性(吸湿性);望ましい外観(例えば、自由流動性、凝集/接着の欠如、規則的な形態);許容可能な水溶性;および、生理学的な受容性、特に肺投与に対する受容性(例えば、非刺激性)。
【0011】
したがって、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)の化合物)のこうした好適な塩形態は、肺胞領域の広い表面積、豊富な血管構造、および薄い空気血液関門によって提供される迅速な吸収および迅速な作用の開始と共に、初回通過代謝を回避し、それによって、比較的低用量、全身副作用の低い発生率、およびより有利な薬物動態プロファイルの使用を可能にして、例えば、制御された様式で吸入を介して投与することができる。特に、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素-鎮静と多幸感を提供し、5-HTRの活性化効果を制御および/または低減する解離性麻酔薬)と組み合わせた本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)の好適な塩形態の肺投与は、過剰刺激のリスク、ひいては急性幻覚クライシスなどの精神医学的有害作用の発生を低減することができる。
【0012】
したがって、本開示は、以下を提供する:
(1)式(I)、
【化1】

式中、
およびXが、重水素であり、
およびYが、重水素であり、
、R、R、R、およびRが独立して、水素または重水素であり、ならびに
およびRが独立して、-CH、-CDH、-CDH、-および-CDからなる群から選択される、の化合物の薬学的に許容可能な塩、またはその溶媒和物。
(2)RおよびRのうちの少なくとも一つが、重水素を含む、(1)に記載の薬学的に許容可能な塩。
(3)R、R、R、R、およびRが、水素である、(1)または(2)に記載の薬学的に許容可能な塩。
(4)R、R、R、R、およびRのうちの少なくとも一つが、重水素である、(1)または(2)に記載の薬学的に許容可能な塩。
(5)RおよびRが、-CHである、(1)~(4)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(6)RおよびRが独立して、-CDH、-CD2H、および-CDからなる群から選択される、(1)~(4)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(7)RおよびRが、-CDである、(1)~(4)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(8)式(I)の化合物が、
【化2】

からなる群から選択される、(1)~(7)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(9)式(I)の化合物が、
【化3】

である、(1)に記載の薬学的に許容可能な塩。
(10)X線粉末回折(XRPD)によって決定される、結晶性である、(1)~(9)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(11)約10mg/mL~約400mg/mLの水溶性を有する、(1)~(10)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(12)示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、約100℃~約210℃の溶融開始温度を有する、(1)~(11)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(13)示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、約110J・g-1~約180 J・g-1の融解エンタルピーを有する、(1)~(12)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(14)動的蒸気吸着(DVS)によって決定される、>95%RHの相対湿度(RH)に曝露されたときに、1%w/w未満の重量増加を有する、(1)~(13)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(15)式(I)の化合物と有機酸との付加塩である、(1)~(14)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(16)式(I)の化合物のフマル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、またはコハク酸塩である、(1)~(15)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(17)式(I)の化合物のフマル酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(18)式(I)の化合物の安息香酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(19)式(I)の化合物のサリチル酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(20)式(I)の化合物のコハク酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(21)2-(1H-インド-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8a)のフマル酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(22)CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、7.8°、10.3°、10.9°、13.6°、15.8°、16.1°、17.0°、18.4°、19.7°、19.9°、20.6°、21.3°、21.8°、22.5°、23.8°、24.1°、25.1°、26.2°、33.6°、および34.9°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である、(21)に記載の薬学的に許容可能な塩。
(23)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)の安息香酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(24)CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、11.1°、12.7°、13.5°、15.8°、16.1°、17.2°、17.9°、19.8°、20.1°、20.8°、21.2°、22.8°、23.8°、24.6°、26.9°、29.3°、32.3°、35.1°、および36.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である、(23)に記載の薬学的に許容可能な塩。
(25)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8c)のサリチル酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(26)CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、10.5°、14.9°、17.1°、18.1°、19.1°、20.1°、20.8°、21.1°、21.3°、24.6°、25.6°、28.5°、28.8°、29.4°、30.3°、31.3°、32.1°、33.5°、および34.4°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である、(25)に記載の薬学的に許容可能な塩。
(27)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8d)のコハク酸塩である、(1)~(16)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩。
(28)(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なビヒクルと、を含む、医薬組成物。
(29)重水素を有する式(I)の化合物中の任意の位置が、少なくとも50原子%の最小重水素組み込みを重水素化の部位で有する、(28)に記載の医薬組成物。
(30)吸入を介した投与に適合されている、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(31)経口投与に適合されている、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(32)静脈内投与に適合されている、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(33)皮下投与に適合されている、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(34)筋肉内投与に適合されている、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(35)経鼻投与に適合されている、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(36)薬学的に許容可能な液体媒体中で、固体剤形の(28)または(29)に記載の医薬組成物を再構成することによって調製される、液体剤形。
(37)(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする患者に送達する方法であって、
吸入を介して患者にエアロゾルを投与することであって、エアロゾルが、担体中に式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む投与すること、を含む、方法。
(38)薬学的に許容可能な塩が、肺吸収を介して患者の中枢神経系に送達される、(37)に記載の方法。
(39)担体が、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物である、(37)または(38)に記載の方法。
(40)担体が、ヘリウムと酸素の混合物である、(39)に記載の方法。
(41)ヘリウムと酸素の混合物が、約50℃~約60℃に加熱される、(40)に記載の方法。
(42)ヘリウムが、約50%~90%の体積で、ヘリウムと酸素の混合物中に存在し、酸素が、約50%~10%の体積で、ヘリウムと酸素の混合物中に存在する、(40)または(41)に記載の方法。
(43)式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩および担体を含むエアロゾルの投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む、(37)~(42)のいずれか一つに記載の方法。
(44)前治療吸入療法が、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入を介して患者に投与することを含む、(43)に記載の方法。
(45)(i)約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入を介して患者に投与すること、および(ii)約50℃~約60℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物中の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルを、吸入を介して患者に投与すること、を含む、(44)に記載の方法。
(46)ステップ(i)および(ii)を、1~5回繰り返すことをさらに含む、(45)に記載の方法。
(47)式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩が、患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の低減、またはそれらの組み合わせを提供する、(37)~(46)のいずれか一つに記載の方法。
(48)エアロゾルが、ミストである、(37)~(47)のいずれか一つに記載の方法。
(49)エアロゾルが、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の噴霧化によって調製される、(37)~(48)のいずれか一つに記載の方法。
(50)噴霧化が、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、呼吸作動型ネブライザ、および振動メッシュネブライザからなる群から選択される装置を用いて実施される、(49)に記載の方法。
(51)噴霧化が、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の噴霧形態の同伴のための亜酸化窒素を含む駆動ガスを使用して実施される、(49)または(50)の方法。
(52)亜酸化窒素が、駆動ガスの総体積に対して、15~25体積%の濃度で駆動ガス中に存在する、(51)に記載の方法。
(53)エアロゾルが20~60分間投与される、(37)~(52)のいずれか一つに記載の方法。
(54)中枢神経系(CNS)障害および/または精神障害を有する患者を治療する方法であって、
(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩の治療有効量を患者に投与することを含む、方法。
(55)CNS障害および/または精神疾患が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行為、自殺念慮もしくは自殺行為を伴う大うつ病性障害、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、非自殺的自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、急性幻覚クライシス、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害、アルツハイマー病、群発性頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛み、アファンタジア、小児期発症の流暢性障害、重度の神経認知障害、軽度の神経認知障害、慢性疲労症候群、ライム病、ギャンブル障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、過食性障害、小児性愛障害、露出障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズムまたはサディズム障害、異性装障害、性的機能障害、ならびに肥満からなる群から選択される少なくとも一つである、(54)に記載の方法。
(56)CNS障害および/または精神障害が、アルコール使用障害である、(54)に記載の方法。
(57)CNS障害および/または精神疾患が、全般性不安障害(GAD)である、(54)に記載の方法。
(58)CNS障害および/または精神疾患が、社会不安障害である、(54)に記載の方法。
(59)CNS障害および/または精神疾患が、治療抵抗性うつ病(TRD)である、(54)に記載の方法。
(60)(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩と、(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩と、を含む活性塩混合物、および
薬学的に許容可能なビヒクル、を含む医薬組成物。
(61)活性塩混合物が、(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、60重量%~98重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩、ならびに(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~40重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩を含む、(60)に記載の医薬組成物。
(62)活性塩混合物が、(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、90重量%~98重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩、ならびに(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~10重量%の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩を含む、(60)または(61)に記載の医薬組成物。
(63)活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8a)のフマル酸塩、ならびに(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I‐10a)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11a)のうちの一つ以上のフマル酸塩を含む、(60)~(62)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(64)活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)の安息香酸塩、および(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I‐10b)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11b)のうちの一つ以上の安息香酸塩を含む、(60)~(62)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(65)活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8c)のサリチル酸塩、ならびに(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I‐10c)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11c)のうちの一つ以上のサリチル酸塩を含む、(60)~(62)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(66)活性塩混合物が、(i)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8d)のコハク酸塩、ならびに(ii)2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I‐10d)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11d)のうちの一つ以上のコハク酸塩を含む、(60)~(62)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(67)中枢神経系(CNS)障害および/または精神障害を有する患者を治療する方法であって、
担体中の(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルの治療有効量を、吸入を介して患者に投与することを含む方法。
(68)エアロゾルが、ミストである、(67)に記載の方法。
(69)担体が、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物である、(67)または(68)に記載の方法。
(70)担体が、ヘリウムと酸素の混合物であり、ヘリウムと酸素の混合物が、患者にエアロゾルを投与する前に、約50℃~約60℃に加熱される、(69)に記載の方法。
(71)CNS障害および/または精神障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行為、自殺念慮もしくは自殺行為を伴う大うつ病性障害、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、非自殺的自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、急性幻覚クライシス、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害、アルツハイマー病、群発性頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛み、アファンタジア、小児期発症の流暢性障害、重度の神経認知障害、軽度の神経認知障害、慢性疲労症候群、ライム病、ギャンブル障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、過食性障害、小児性愛障害、露出障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズムまたはサディズム障害、異性装障害、性的機能障害、ならびに肥満からなる群から選択される少なくとも一つである、(67)~(70)のいずれか一つに記載の方法。
(72)CNS障害および/または精神障害が、アルコール使用障害である、(67)~(71)のいずれか一つに記載の方法。
(73)CNS障害および/または精神障害が、全般性不安障害(GAD)である、(67)~(71)のいずれか一つに記載の方法。
(74)CNS障害および/または精神障害が、社会不安障害である、(67)~(71)のいずれか一つに記載の方法。
(75)CNS障害および/または精神障害が、治療抵抗性うつ病(TRD)である、(67)~(71)のいずれか一つに記載の方法。
(76)エアロゾルが、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の噴霧化によって調製される、(67)~(75)のいずれか一つに記載の方法。
(77)噴霧化が、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、呼吸作動型ネブライザ、および振動メッシュネブライザからなる群から選択される装置を用いて実施される、(76)に記載の方法。
(78)噴霧化が、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の噴霧形態の同伴のための亜酸化窒素を含む駆動ガスを使用して実施される、(76)または(77)の方法。
(79)亜酸化窒素が、駆動ガスの総体積に対して、15~25体積%の濃度で駆動ガス中に存在する、(78)に記載の方法。
(80)エアロゾルが20~60分間投与される、(67)~(79)のいずれか一つに記載の方法。
(81)(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする患者に送達する方法であって、
乾燥粉末吸入器を介して吸入により患者に乾燥粉末を投与することであって、乾燥粉末が、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む投与すること、を含む方法。
(82)乾燥粉末が、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩をその表面上に有する粒子状担体を含む、(81)の方法。
(83)式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩が、粒子状担体の表面上に放出可能に吸収され、その結果、患者による吸入時に、式(I)の化合物が患者内の粒子状担体から放出される、(82)の方法。
(84)乾燥粉末が、固体粒子形態の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩から形成される、(81)の方法。
(85)式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩が、肺吸収を介して患者の中枢神経系に送達される、(81)~(84)のいずれか一つに記載の方法。
(86)患者への乾燥粉末の投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む、(81)~(85)のいずれか一つに記載の方法。
(87)前治療吸入療法が、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により患者に投与することを含む、(86)に記載の方法。
(88)前治療吸入療法および乾燥粉末の患者への投与が、1~5回繰り返される、(86)または(87)に記載の方法。
(89)式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩が、患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の低減、またはそれらの組み合わせを提供する、(81)~(88)のいずれか一つに記載の方法。
(90)(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩、および
N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト、を含む併用薬物療法。
(91)NMDA受容体アンタゴニストが、ケタミン、亜酸化窒素、メマンチン、およびデキストロメトルファンからなる群から選択される少なくとも一つである、(90)に記載の併用薬物療法。
(92)NMDA受容体アンタゴニストが、亜酸化窒素である、(90)または(91)に記載の併用薬物療法。
(93)薬学的に許容可能な塩および亜酸化窒素が、単一のエアロゾルとしての投与のために提供される、(92)に記載の併用薬物療法。
(94)薬学的に許容可能な塩および亜酸化窒素が、別個の剤形としての投与のために提供される、(92)に記載の併用薬物療法。
(95)薬学的に許容可能な塩が、エアロゾルとしての投与のために提供され、亜酸化窒素が、治療用ガス混合物としての投与のために提供される、(94)に記載の併用薬物療法。
(96)中枢神経系(CNS)障害および/または精神障害を有する患者を治療する方法であって、
患者に、吸入を介して、治療有効量の(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストを投与することを含む、方法。
(97)CNS障害および/または精神障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行為、自殺念慮もしくは自殺行為を伴う大うつ病性障害、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、非自殺的自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、急性幻覚クライシス、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害、アルツハイマー病、群発性頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛み、アファンタジア、小児期発症の流暢性障害、重度の神経認知障害、軽度の神経認知障害、慢性疲労症候群、ライム病、ギャンブル障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、過食性障害、小児性愛障害、露出障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズムまたはサディズム障害、異性装障害、性的機能障害、ならびに肥満からなる群から選択される少なくとも一つである、(96)に記載の方法。
(98)CNS障害および/または精神障害が、アルコール使用障害である、(96)または(97)に記載の方法。
(99)CNS障害および/または精神障害が、全般性不安障害(GAD)である、(96)または(97)に記載の方法。
(100)CNS障害および/または精神障害が、社会不安障害である、(96)または(97)に記載の方法。
(101)CNS障害および/または精神障害が、治療抵抗性うつ病(TRD)である、(96)または(97)に記載の方法。
(102)NMDA受容体アンタゴニストが、ケタミン、亜酸化窒素、メマンチン、およびデキストロメトルファンからなる群から選択される少なくとも一つである、(96)~(101)のいずれか一つに記載の方法。
(103)NMDA受容体アンタゴニストが、亜酸化窒素である、(96)~(102)のいずれか一つに記載の方法。
(104)薬学的に許容可能な塩および亜酸化窒素が、単一のエアロゾルとして患者に投与される、(103)に記載の方法。
(105)薬学的に許容可能な塩および亜酸化窒素が、別個の剤形として投与される、(103)に記載の方法。
(106)薬学的に許容可能な塩が、エアロゾルとして投与され、亜酸化窒素が、治療用ガス混合物として投与される、(105)に記載の方法。
(107)薬学的に許容可能な塩および亜酸化窒素が、逐次的に投与される、(105)または(106)に記載の方法。
(108)薬学的に許容可能な塩および亜酸化窒素が、実質的に逐次的に投与される、(105)または(106)に記載の方法。
(109)それを必要とする患者への吸入による、亜酸化窒素と(1)~(27)のいずれか一つに記載の薬学的に許容可能な塩との組み合わせの送達のための吸入送達装置であって、
患者への亜酸化窒素と薬学的に許容可能な塩との組合せの投与のための吸入出口ポータル、
亜酸化窒素ガスを、吸入出口ポータルに送達するように構成された容器、および
薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルを生成し、吸入出口ポータルに送達するように構成される装置、を含む吸入送達装置。
(110)吸入出口ポータルが、患者の鼻および口を覆うマウスピースまたはマスクである、(109)に記載の吸入送達装置。
(111)エアロゾルを生成し、吸入出口ポータルに送達するように構成された装置が、ネブライザである、(109)または(110)に記載の吸入送達装置。
(112)ネブライザが、ジェットネブライザであり、亜酸化窒素ガスが、ジェットネブライザの駆動ガスとして作用する、(111)に記載の吸入送達装置。
(113)吸入送達装置の遠隔作動および動作制御を提供するように構成された電子機器をさらに含む、(109)~(112)のいずれか一つに記載の吸入送達装置。
(114)中枢神経系(CNS)障害および/または精神障害を有する患者を治療するための、(1)~(27)のいずれか一つの薬学的に許容可能な塩の使用。
(115)療法で使用するための(1)~(27)のいずれか一つの薬学的に許容可能な塩。
【図面の簡単な説明】
【0013】
前述の段落は、一般的な導入として提供されたものであり、以下の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。記載される実施形態は、更なる利点とともに、添付図面と併せて考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
図1図1は、式(I)の化合物、例えば、化合物I-1、I-2、I-4、およびI-6を作製するための一般的な合成経路を示す。
図2図2は、式(I)の化合物、例えば、化合物I-1、I-4、I-5、およびI-8を作製するための一般的な合成経路を示す。
図3図3は、実施例6(I-1f;グリコール酸塩)、実施例9(I-1i;ヘミフマル酸塩)、および実施例1(I-1a;フマル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
図4図4は、実施例2(I-1b;安息香酸塩)、実施例3(I-1c;サリチル酸塩)、および実施例7(I-1g;ヘミシュウ酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
図5図5は、実施例5(I-1e;シュウ酸塩)、実施例4(I-1d;コハク酸塩)、および実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
図6図6は、実施例1(I-1a;フマル酸塩)と比較した実施例26(I-8a;フマル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
図7図7は、実施例2(I-1b;安息香酸塩)と比較した実施例27(I-8b;安息香酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
図8図8は、実施例3(I-1c;サリチル酸塩)と比較した実施例28(I-8c;サリチル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
図9図9は、実施例1(I-1a;フマル酸塩)のDSC曲線を示す。
図10図10は、実施例2(I-1b;安息香酸塩)のDSC曲線を示す。
図11図11は、実施例4(I-1d;コハク酸塩)のDSC曲線を示す。
図12図12は、実施例5(I-1e;シュウ酸塩)のDSC曲線を示す。
図13図13は、実施例3(I-1c;サリチル酸塩)のDSC曲線を示す。
図14図14は、実施例6(I-1f;グリコール酸塩)のDSC曲線を示す。
図15図15は、実施例9(I-1i;ヘミフマル酸塩)のDSC曲線を示す。
図16図16は、実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)のDSC曲線を示す。
図17図17は、実施例1(I-1a;フマル酸塩)のDVS等温線を示す。
図18図18は、実施例2(I-1b;安息香酸塩)のDVS等温線を示す。
図19図19は、実施例4(I-1d;コハク酸塩)のDVS等温線を示す。
図20図20は、実施例3(I-1c;サリチル酸塩)のDVS等温線を示す。
図21図21は、実施例5(I-1e;シュウ酸塩)のDVS等温線を示す。
図22図22は、実施例6(I-1f;グリコール酸塩)のDVS等温線を示す。
図23図23は、実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)のDVS等温線を示す。
図24図24は、実施例7(I-1g;ヘミシュウ酸塩)のDVS等温線を示す。
図25図25は、実施例1(I-1a;フマル酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図26図26は、実施例2(I-1b;安息香酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図27図27は、実施例3(I-1c;サリチル酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図28図28は、実施例5(I-1e;シュウ酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図29図29は、実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図30図30は、実施例6(I-1f;グリコール酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図31図31は、実施例4(I-1d;コハク酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図32図32は、実施例7(I-1g;ヘミシュウ酸塩)のH NMRスペクトルを示す。
図33A図33A~33Bは、分子構造(図33A)および非対称結晶単位格子(図33B)の観点からI-8b(安息香酸塩)の単結晶を示す。
図33B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明では、本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本開示の実施形態がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、本開示の実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、周知の方法、手順、構成要素、および回路は詳細に記載されていない。
【0015】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0016】
置換基または基の「重水素を含む」または「重水素を含む」と記載される場合、置換基または基自体が重水素であってもよく、または置換基もしくは基が、その化学構造に少なくとも一つの重水素置換を含有してもよいことが理解されるべきである。例えば、置換基「-R」が重水素を含むと定義される場合、-Rは、-D(-重水素)、または-Rについて示される他の要件と一致する-CDなどの基であり得ることが理解されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪」は、水素および4~26個の炭素原子から構成される長鎖(線形)疎水性部分を有する化合物を指し、完全飽和または部分不飽和であり得る。
【0018】
語句「薬学的に許容可能」、「生理学的に許容可能」などは、妥当な利益/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のないヒトの組織と接触しての使用に好適な、健全な医学的判断の範囲内にある化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すように本明細書で使用される。塩に言及する場合、「薬学的に許容可能な塩」、「生理学的に許容可能な塩」などの語句は、哺乳動物(所与の投与レジメンに対して許容可能な哺乳動物安全性を有する対イオンを有する塩)などの患者への投与に許容可能な塩を意味する。当技術分野で周知のように、そのような塩は、薬学的に許容可能な無機または有機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびテトラアルキルアンモニウム塩などから、分子が塩基性官能基を含む場合には、無機酸との付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などから、ならびに有機酸との付加塩、例えば、ギ酸塩、酒石酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、ヘミシュウ酸塩、ヘミフマル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、パモ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、2-アセトキシ安息香酸塩、トシレート塩、エタンジスルホン酸塩、イセチオン酸塩などから誘導することができる。
【0019】
「溶媒和物」とは、有機、無機、または両方の混合物であるか否かにかかわらず、本開示の化合物または塩と、一つ以上の溶媒分子との物理的会合を指す。この物理的会合は、水素結合を含む。特定の実例では、溶媒和物は、例えば、一つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれた場合に、単離することができる。溶媒和物中の溶媒分子は、規則的な配列および/または非規則的な配列で存在し得る。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的な量の溶媒分子のいずれかを含んでもよい。「溶媒和物」は、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。溶媒のいくつかの例には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、および水が含まれるが、これらに限定されない。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物(例えば、一水和物、二水和物など)である。したがって、例示的な溶媒和物には、水和物、メタノラート、エタノラート、イソプロパノラートなどが含まれるが、これらに限定されない。溶媒和の方法は、当該技術分野で一般的に公知である。
【0020】
「立体異性体」および「立体異性体」は、同じ原子連結性を有するが、空間内で異なる原子配置を有する化合物を指す。立体異性体には、シス-トランス異性体、EおよびZ異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマーが含まれる。化合物のラセミ体および光学的に純粋な立体異性体などの全ての形態が本明細書で企図される。少なくとも一つの立体中心を有するが、立体化学を参照することなく描かれる化学式および化合物は、ラセミ化合物と、例えば、R-および/またはS-立体異性体、それらのジアステレオマーが幾何学的に実行可能である限りのジアステレオマーの各置換などの別個の立体異性体との両方を含有することを企図している。
【0021】
「結晶性」の固体は、その基本的な三次元構造が、長距離秩序で結晶格子を形成する、原子または分子の高度に規則的なパターンを含有しており、したがって、そのX線粉末回析(XRPD)パターンにおいて鋭い特徴的な結晶性ピークを呈する、ある種の固体である。一部の例では、結晶性固体は、同じ化学組成を有するが、結晶性の固体状態のパッキング、幾何学的配置、および他の記述的な特性が異なる、「多形体」として知られる異なる結晶性形態で存在し得る。このように、多形体は、例えば、化合物の溶解度、溶解速度、生物学的利用能、化学的および物理的な安定性、流動性、ならびに圧縮性、ならびに化合物に基づく医薬品の安全性や有効性などに影響を及ぼす、様々な固体の物理的特性を有し得る。多形体を調製するプロセスでは、全体的な物理的純度または光学的純度の観点から、さらなる精製も達成され得る。本明細書で使用される場合、「非結晶性」という用語は、その分子の位置において実質的に長距離秩序を有しない固体材料を指し、分子は、明確に定義された配置、例えば、分子充填が効果的に存在せず、長距離秩序も存在しないように、ランダムに配置される。非結晶性固体は概して等方性であり、すなわち、すべての方向に類似の特性を示し、明確な融点を有しない。例えば、非結晶性材料は、そのX線粉体回折(XRPD)パターンにおいて、実質的に鋭い特徴的な結晶ピークを有しない固体材料である(すなわち、XRPDによって決定される結晶性ではない)。代わりに、一つ以上の広範なピーク(例えば、ハロ)が、そのXRPDパターンに現れる。広範なピークは、非結晶性固体の特徴である。したがって、「非結晶性」対象化合物/材料は、結晶化度が10%未満、8%未満、6%未満、4%未満、2%未満、1%未満、または0%、すなわち、例えば、XRPDによって決定される、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、または100%非結晶性である、実質的に結晶化度を有しないものとして特徴付けられる化合物/材料である。例えば、一部の実施形態では、結晶化度%は、公知の標準または内部標準であり得る基準ピークと比較して、XRPDディフラクトグラムの一つ以上のピークの強度を測定することによって決定され得る。例えば、重量パーセントの観点で上述のパーセントを提供する定量的方法を含む、示差走査熱量測定(DSC)分析、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、および他の定量的方法などの他の特徴解析技術が、対象化合物/物質が非結晶性または結晶性であるパーセントを決定するために使用されてもよい。
【0022】
本開示の材料のX線粉末回折(XRPD)パターンについて言及する場合、「…から選択される回析角度(2θ±0.2°)で少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる」という表現は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上(全てを含む)の列挙された特徴的なXRPD回折ピークを有すると特徴付けられるそれらの材料を含むと理解されるべきである。さらに、この表現は、列挙されていない他のXRPD回折ピークの包含に対して開放的であることが意図されている。
【0023】
本明細書の化合物は、異なる塩、溶媒和物、立体異性体、結晶性/非結晶性(多形体を含む)の形態で存在し得、本開示は、その全ての置換、例えば対象化合物の立体異性体の薬学的に許容可能な塩の溶媒和物を含むことを意図することが理解されるであろう。
【0024】
「蒸気」は、その臨界温度よりも低い温度での気相中の固体物質であり、蒸気は、温度を低下させることなく、それへの圧力を増加させることによって、液体に凝縮され得ることを意味する。
【0025】
本明細書で使用される「エアロゾル」は、気相(例えば、空気、酸素、ヘリウム、亜酸化窒素、および他のガス、ならびにそれらの混合物)における微細固体粒子または液滴の懸濁液である。本明細書で使用される「ミスト」は、蒸気とは異なるエアロゾルのサブセットであり、気相(例えば、空気、酸素、ヘリウム、およびそれらの混合物)中に懸濁された液滴(液相)の分散である。エアロゾルまたはミストの液滴は、水性液体、有機溶媒、またはその混合物中に溶解された薬部分を含み得る。エアロゾルまたはミストの気相は、空気、酸素、ヘリウム、またはそれらの混合物を含む他のガスを含むことができる。ミストは、固体粒子を含まない。本開示のエアロゾルおよびミストは、任意の適切な方法および装置によって生成することができ、その実施例は、例えば、吸入器またはネブライザの使用を通して、本明細書に記載される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「持続放出」は、放出期間を、例えば、最大値に増加させるように製剤化された本開示の特定の製剤の放出期間を記述し、これは、摂取された経口製剤の場合、最終的には、消化管が自然にすべての薬剤を食物と共に排出する時までに制限される。本明細書で使用される場合、用語「放出期間」は、本明細書に記述された任意の化合物がビヒクル(例えば、マトリクス)から放出されて、本明細書に記述された化合物の血漿濃度を得る時間枠を記述する。放出期間の開始時刻は、対象への投与の時点から定義され、これは、経口摂取された場合、胃への侵入、および胃酵素および酸による初期溶解とほぼ同等であると考えられる。放出期間の終了時刻は、装填された薬剤全体が放出された時点として定義される。一部の実施形態では、放出期間は、約4時間超、8時間超、12時間超、16時間超、または20時間超、約24時間以上、28時間以上、32時間以上、36時間以上、または48時間以上、または約48時間未満、36時間未満、4時間以下、3時間以下、2時間以下、または1時間以下とすることができる。
【0027】
用語「タンパー耐性」は、例えば、静脈内使用のための抽出または遊離塩基使用のための粉砕を介して、製剤の薬剤部分を乱用するための製剤の使用をより困難し、それにより薬剤の乱用のリスクを低減する薬剤製剤の態様を記述すると、当技術分野で認識されている。
【0028】
本明細書で使用される場合、「安定」、「安定性」などの用語には、化学的安定性および固体状態(物理的)安定性が含まれる。用語「化学的安定性」は、化合物が、通常の保存条件下で、単離された形態で、または、例えば、本明細書に記載の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、もしくはアジュバントと混合して提供される製剤の形態で保存することができ、化学的劣化もしくは分解がほとんどまたは全くないことを意味する。「固体状態の安定性」とは、化合物が、通常の保存条件下で、単離された固体形態、または例えば、本明細書に記載の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、もしくはアジュバントと混合して提供される固体製剤の形態で保存することができ、固体状態の変化(例えば、水和、脱水、溶媒和、脱溶媒和、結晶化、再結晶、または固体相転移)がほとんどまたは全くないことを意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、用語「製剤」と同等である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「吸入セッション」という用語は、所与の用量を吸入するために必要な呼吸の数に関係なく、対象が所与の用量の薬剤を吸入する投与事象を記述する。例えば、10mgの薬剤を一日二回摂取するように処方された対象は、二回の吸入セッションを実施し、各吸入セッションは、10mgの薬剤を提供する。各吸入セッションの時間の長さおよび呼吸回数は、使用される吸入装置、呼吸当たりに吸い込まれる薬剤の量、剤形の薬剤の濃度、対象の呼吸パターンなどの因子に依存するであろう。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「治療すること」または「治療」は、例えば、哺乳動物(特にヒト)などの患者の疾患または医学的状態を治療することまたは治療を意味し、これは、例えば、患者の疾患または医学的状態の排除またはその退縮を引き起こすなどの疾患または医学的状態を改善すること、疾患または医学的状態を、例えば、患者の疾患または医学的状態の発症を遅らせるかまたは停止させることによって抑制すること、または患者の疾患または医学的状態の一つ以上の症状を軽減すること、を含む。治療は、患者が状態によって依然影響を受けている可能性があるという事実にかかわらず、患者に改善が観察されるように、基礎状態、疾患、または障害に関連する生理学的または心理学的症状の一つ以上の根絶または改善などの治療的利益を提供し得る。一部の実施形態では、治療は、予防を指してもよく、すなわち、疾患または医学的状態の発生を防止するか、またはそうでなければ患者の疾患または医学的状態の発症を遅延させる。
【0032】
本明細書において互換的に使用される「患者」または「対象」は、例えば、ヒトを含む任意の哺乳動物であり得る。患者または対象は、治療される状態を有する可能性があり、または治療される状態になりやすい可能性がある。
【0033】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、用語「管理する」、「管理している」および「管理」は、疾患、障害、もしくは状態、またはそれらの一つ以上の症状の進行、広がり、または悪化の防止または遅延を指す。多くの場合、対象が予防的および/または治療薬から得られる有益な効果は、疾患、障害、または状態の治癒をもたらさない。これに関して、用語「管理している」は、疾患、障害、もしくは状態、またはそれらの一つ以上の症状の再発を防止または最小限にしようと、特定の疾患、障害、または状態を患った対象を治療することを包含する。
【0034】
「治療的有効量」は、特定の障害もしくは疾患、もしくはその一つ以上の症状を治療する、および/または疾患もしくは障害の発生を防止するのに十分な化合物またはその塩形態の量を指す。本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、活性薬剤の「予防的有効量」は、疾患、障害、もしくは状態を防止する、またはその再発を防止するのに十分な量である。用語「予防的有効量」は、全体的な予防を改善するか、または別の予防的薬剤の予防的効果を強化する量を包含し得る。
【0035】
用語「投与スケジュール」とは、各薬剤の投与量、投与方法、投与順序、投与日などが示される、薬剤治療における薬剤の種類、量、期間、手順などを時系列に示した計画のことである。投与されるように指定された日付は、薬剤投与開始前に決定される。投与は、一連の投与スケジュールを「コース」として、コースを繰り返すことによって継続される。「連続」投与スケジュールとは、治療コース中に中断することなく毎日投与することを意味する。投与スケジュールが「断続的」投与スケジュールに従う場合、投与日数に続いて、コース中の薬剤の「休止日数」または非投与日数が続く場合がある。「休薬期間」は、薬剤が所定の投与スケジュールで投与されていないことを示す。例えば、数回の治療コースを受けた後、対象は、例えば、積極的な治療を再開する前に、投与スケジュールの一部として、規制された休薬期間を処方され得る。
【0036】
用語「毒性スパイク」は、本明細書では、鎮静作用または幻覚、めまい、および悪心などの精神異常発現作用などの副作用を生じさせるであろう、本明細書に記載される任意の化合物の濃度のスパイクを記述するために使用され、それは、すぐに影響が出るだけでなく、治療コンプライアンスにも影響を与える。特に、副作用は、約300ng/L(例えば、約300、400、500、600またはそれを超えるng/L)を超える血中濃度レベルでより顕著となり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、および別段の指定がない限り、「神経精神医学的疾患または障害」は、既知の神経学的状態に関連する行動または心理上の問題であり、典型的には、共存する症状の集団として定義される。神経精神医学的障害の例としては、以下に限定されないが、統合失調症、統合失調症おける認知障害、注意力欠陥障害、注意欠陥多動性障害、双極性障害および躁病、うつ病、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「炎症状態」または「炎症性疾患」は、広く慢性または急性炎症性疾患を指す。炎症性状態および炎症性疾患としては、これらに限定されるものではないが、リウマチ性疾患(例えば、関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎)、脊椎関節症(例えば、強直性脊椎炎、反応性関節炎、ライター症候群);結晶性関節症(例えば、痛風、疑似痛風、ピロリン酸カルシウム沈着症);、多発性硬化症;ライム病;リウマチ性多発性筋肉痛;結合組織疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群);血管炎(例えば、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群)、外傷または虚血の結果を含む炎症状態、サルコイドーシス;アテローム性血管疾患、アテローム性動脈硬化症、および血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心筋梗塞、脳卒中、末梢血管疾患)、および血管ステント再狭窄を含む血管疾患;ブドウ膜炎、角膜疾患、虹彩炎、虹彩毛様体炎、緑内障および白内障などの眼疾患、が挙げられる。
【0039】
本明細書に列挙されるすべての疾患および障害は、American Psychiatric Associationによって公開されているDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5)、または世界保健機関によって公開されているInternational Classification of Diseases(ICD)に記載されるように定義され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目の一つ以上のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。本明細書の記述、およびそれに続く特許請求の範囲全体を通して使用する、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈が別途明確に示さない限り、単数に加えて複数の言及も含む。数値に関連する用語「約」は、値が5%上下に変動し得ることを意味する。例えば、約100の値は、95~105(または95~105の間の任意の値)を意味する。
【0041】
化合物および塩形態
本明細書で開示されるのは、式(I)、
【化4】

式中、
およびXが独立して、水素または重水素であり、
およびYが独立して、水素または重水素であり、
、R、R、R、およびRが独立して、水素または重水素であり、ならびに
およびRが独立して、-CH、-CDH、-CDH、-および-CDからなる群から選択される、の化合物の薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0042】
およびXは、同じであってもよく、または異なってもよい。一部の実施形態では、XおよびXは、同じである。一部の実施形態では、XおよびXは、水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、重水素である。一部の実施形態では、Xは重水素であり、Xは水素である。
【0043】
およびYは、同じであってもよく、または異なってもよい。一部の実施形態では、YおよびYは、同じである。一部の実施形態では、YおよびYは、水素である。一部の実施形態では、YおよびYは、重水素である。一部の実施形態では、Yは重水素であり、Yは水素である。
【0044】
一部の実施形態では、X、X、Y、およびYは、水素である。一部の実施形態では、X、X、Y、およびYは、重水素である。
【0045】
一部の実施形態では、Rは、重水素である。一部の実施形態では、Rは、水素である。
【0046】
一部の実施形態では、Rは、重水素である。一部の実施形態では、Rは、水素である。
【0047】
一部の実施形態では、Rは、重水素である。一部の実施形態では、Rは、水素である。
【0048】
一部の実施形態では、Rは、重水素である。一部の実施形態では、Rは、水素である。
【0049】
一部の実施形態では、Rは、重水素である。一部の実施形態では、Rは、水素である。
【0050】
、R、R、R、およびRは、同じであってもよく、例えば、R、R、R、R、およびRは各々、水素であってもよく、または代替的に、R、R、R、R、およびRは各々、重水素であってもよい。一部の実施形態では、R、R、R、R、およびRのうちの少なくとも一つは、重水素であるか、またはR、R、R、R、およびRのうちの少なくとも二つは、重水素であるか、またはR、R、R、R、およびRのうちの少なくとも三つは、重水素であるか、またはR、R、R、R、およびRのうちの少なくとも四つは、重水素である。
【0051】
およびRは、同じであってもよく、または異なってもよい。一部の実施形態では、RおよびRは、同じである。一部の実施形態では、RおよびRは、メチル(-CH)である。一部の実施形態では、RおよびRは、部分的に重水素化されたメチル基、すなわち、-CDHまたは-CDHである。一部の実施形態では、RおよびRは、完全に重水素化されたメチル基(-CD)である。
【0052】
一部の実施形態では、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、およびRの少なくとも一つは、重水素を含む。一部の実施形態では、少なくともX、X、R、およびRは、重水素を含む。一部の実施形態では、少なくともX、X、Y、Y、R、およびRは、重水素を含む。一部の実施形態では、X、X、Y、およびYは、重水素であり、RおよびRは、完全に重水素化されたメチル基(-CD)である。
【0053】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、外環部分と同様に部位特異的な重水素化を有する本明細書に記載の化合物は、セロトニン5-HT受容体の優先的なアゴニズムを維持し、改善された曝露(例えば、投与後すぐに観察される高薬物濃度(スパイク)を防止する)を有し、生物学的利用能および脳浸透を改善するために有利な酵素分解プロファイルを有すると考えられる。MAO媒介性脱アミノ化/酸化プロセスの影響を受けやすく、例えば、インドール酢酸(IAA)代謝物となる化合物と比較して、例えば、重水素置換を含有する式(I)の化合物は、有利にも酵素分解を遅らせることが可能であり、それによって、生物学的利用能を改善し、同時に活性化合物の脳レベルを強化し、治療用量を効果的に低減し、投与後に急性的に観察される高薬物濃度(「スパイク」)を防止することを目的としている。結果として、こうした化合物は、心臓弁膜症に関連する5-HT2B受容体の活性化によって引き起こされる毒性を含む、副作用および毒性の低減をもたらし得る。
【0054】
式(I)の化合物は、立体中心を含み得る。このような場合、式(I)は立体化学を考慮することなく描かれるが、化合物は異なる立体異性体として存在し得る。したがって、本開示は、全ての可能性のある立体異性体を含み、ラセミ化合物だけでなく、個々のエナンチオマー(エナンチオマー的に純粋な化合物)、個々のジアステレオマー(ジアステレオマー的に純粋な化合物)、およびそれらの非ラセミ混合物も含む。化合物が単一のエナンチオマーとして所望される場合、それらは、当該技術分野で既知である、立体特異的合成によって、最終生成物もしくは任意の便利な中間体の分解によって、またはキラルクロマトグラフィー方法によって得られ得る。最終製品、中間体、または出発材料の分解は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって行われてもよい。
【0055】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)の化合物は、非立体中心である。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)の化合物は、ラセミ体である。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)の化合物は、エナンチオマー的に純粋であることを含め、エナンチオマー的に富化されている(一つのエナンチオマーがより高い割合で存在する)。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)の化合物は、単一のジアステレオマーとして提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)の化合物は、ジアステレオマーの混合物として提供される。ジアステレオマーの混合物として提供される場合、混合物には、等しい混合物、または特定のジアステレオマーで富化されている混合物(一つのジアステレオマーが別のものより高いパーセンテージで存在する)が含まれ得る。
【0056】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、セロトニン5-HT受容体のアゴニストである。
【0057】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、セロトニン5-HT2A受容体のアゴニストである。
【0058】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、
【化5】

【化6】

からなる群から選択される。
【0059】
上記で特定された化合物の化合物番号、IUPAC名、および置換基のリストを表1に提供する。
【表1】
【0060】
本明細書に開示される薬学的に許容可能な(酸付加)塩の調製に使用するための酸としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、フェニル酢酸、アシル化アミノ酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンジスルホン酸など)、安息香酸(例えば、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、ゲンチジン酸など)、ホウ酸、(+)-樟脳酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、ドデシル硫酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、L-グルタミン酸、α-オキソ-グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、(+)-L-乳酸、(-)-D-乳酸、(±)-DL-乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、(+)-D-リンゴ酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、イセチオン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、シュウ酸、パモ酸、過塩素酸、リン酸、L-ピログルタミン酸、糖酸、コハク酸、硫酸、スルファミン酸、タンニン酸、酒石酸(例えば、DL-酒石酸、(+)-L-酒石酸、(-)-D-酒石酸)、チオシアン酸、プロピオン酸、吉草酸、および脂肪酸(脂肪一酸および脂肪二酸を含む、例えば、アジピン(ヘキサン二)酸、ラウリン(ドデカン)酸、リノール酸、ミリスチン(テトラデカン)酸、カプリン(デカン)酸、ステアリン(オクタデカン)酸、オレイン酸、カプリル(オクタン)酸、パルミチン(ヘキサデセン)酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、カプロン酸など)が含まれるが、これに限定されない。
【0061】
特定の塩は、薬学的な調製および投与に好適な物理的ならびに薬学的特徴/特性を有するため、上記のリストの中でも好ましい。例えば、本明細書に開示される化合物(例えば、式(I)の化合物)の好ましい塩形態は、以下の特徴のうちの一つ以上を有するものである:塩を形成する傾向があり、高収率で調製が容易である;安定であり、結晶化度、多形性の欠如、高い融解/融解エンタルピーなどの明確な物理的特性を有する;吸湿性がわずかにある、または全くない;自由に流動し、表面に凝集/付着せず、規則的な形態を有する;意図される投与経路に対して許容可能な水溶性を有する;および/または、生理学的に許容可能であり、特に肺投与に対して、例えば肺に投与されたときに刺激を引き起こさない。
【0062】
結晶化度
式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、例えば、X線粉末回折(XRPD)によって決定される、結晶性または非結晶性であってもよく、好ましくは結晶性である。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、非結晶性である。非結晶性形態は、典型的には、その結晶性同等物と比較してより高い水溶性および溶解速度を有するため、口腔内分散性剤形、即時放出(IR)剤形など、活性成分を急速に放出するように適合された、即効性剤形に好適であり得る。式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、安定した非結晶性形態であり得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、例えば、XRPDおよび/またはDSCによって決定される非結晶性形態で提供される。したがって、医薬組成物は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の形態から、一つ以上の非結晶性形態で調製されてもよく、および本明細書に記載の治療に使用されてもよい。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の高純度の非結晶性形態が提供される。例えば、医薬組成物は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含んでもよく、医薬組成物中に存在する式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の少なくとも92重量%、少なくとも94重量%、少なくとも96重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、または少なくとも99.5重量%は、例えば、X線粉末回折および/またはDSCによって決定される非結晶性形態である。
【0063】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、結晶性である。結晶性形態は、例えば、安定性の点で有利であり、薬学的調製および投与に望ましい、明確に定義された物理的特性を提供する。式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、安定した結晶性形態であり得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、XRPDおよび/またはDSC分析により決定される、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%、および最大で100%の結晶化度の割合を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の高純度の結晶性形態が提供される。例えば、医薬組成物は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含んでもよく、医薬組成物中に存在する式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、または少なくとも99.5重量%は、例えば、X線粉末回折および/またはDSCによって決定される結晶性形態である。例えば、X線ディフラクトグラムにおける離散的で鋭いブラッグ回折によって決定される、高い結晶化度を有する塩の形態が好ましい。
【0064】
XRPD分析は、例えば、CuKα放射線(波長=1.54060Å)を使用するBruker D5000 X線粉末回折計で実行することができる。機器は、微焦点X線管を備えてもよい。管電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび30mAに設定することができる。発散スリット幅および散乱スリット幅は、2mmに設定することができ、検出器スリット幅は、0.2mmに設定することができる。回折された放射線は、NaIシンチレーション検出器によって検出され得る。2.0~40°(4秒/ステップ、0.01°ステップサイズ)のシータ2シータ連続スキャンを使用することができる。
【0065】
医薬生産プロセスに関して、式(I)の化合物の有利な塩形態は、大量生産に好適な、油を介さずに許容可能な収率で、かつ好ましい体積係数で、結晶化により結晶性固体を容易に生じるものである。
【0066】
式(I)の化合物の塩の形態は、異なる多形体(すなわち、異なる結晶性構造を有する形態)で存在することができるが、本開示の好ましい塩の形態は、XRPDおよび/または示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、単一の結晶性形態または単一の多形体に結晶化され得るものである。また、塩が自由に流動し、表面に凝集/付着せず、規則的な形態を有することも概して望ましい。
【0067】
化学的/固体状態の安定性
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、DSCによって決定される、約100℃から、約110℃から、約120℃から、約130℃から、約140℃から、約150℃から、約160℃から、約170℃から、約180℃から、約190℃から、および最大約250℃まで、最大約225℃まで、最大約210℃まで、最大約200℃までの融解開始温度を有する。
【0068】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、DSCによって決定される、約90J・g-1から、約100J・g-1から、約110J・g-1から、約120J・g-1から、約130J・g-1から、約140J・g-1から、約150J・g-1から、約160J・g-1から、最大約190J・g-1、最大約180J・g-1、最大約170J・g-1の融解エンタルピーを有する。
【0069】
医薬品製造に適した式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、非吸湿性またはわずかに吸湿性、好ましくは非吸湿性であることを特徴とし得る。吸湿性は、本明細書において、動的蒸気吸着(DVS)分析装置を使用し、30%の相対湿度(RH)で曝露を開始し、湿度を最大95%RHまで増加させ、湿度を0%RHまで減少させ、最後に湿度を開始時の30%RHに戻して増加させる湿気吸脱着等温線を実行することによって測定することができ、以下に従って分類される:
非吸湿性:<0.2%;わずかな吸湿性:≧0.2%および<2%;吸湿性:≧2%および<15%;非常に吸湿性:≧15%;潮解性:十分な水が吸収されて液体を形成する;全ての値は、>95%RHおよび25℃での重量増加(水分の獲得によるw/w)として測定される。
【0070】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、DVSによって決定される、>95%RHにおいて、1%w/w未満、0.8%w/w未満、0.6%w/w未満、0.5%w/w未満、0.4%w/w未満、0.3%w/w未満、0.2%w/w未満、0.1%w/w未満、0.08%w/w未満、0.06%w/w未満、0.05%w/w未満、0.02%w/w未満の重量増加を有する。
【0071】
本開示の薬学的に許容可能な塩の乾燥粉末試料は、例えば、25℃/60%RH、25℃/90+%RH、40℃/75%RHなどの周囲条件またはストレス条件下で、顕著な分解(例えば、化学的純度を著しく低下させることなく)または物理的変化(例えば、形態の変化、潮解など)を伴わずに、開いたまたは閉じたフラスコ/バイアル中などの開放または閉環境で維持/保存することができる。例えば、本明細書に開示される塩形態の乾燥粉末試料は、周囲条件またはストレス条件(例えば、温度上昇、例えば、40℃、および/または湿度)下で保存した場合、10%未満、5%未満、および1%未満の純度または形態変化を有し得る。
【0072】
本開示の薬学的に許容可能な塩の溶液相組成物(例えば、液体剤形)は、例えば、25℃/90+%RH、40℃/75%RHなどの周囲条件またはストレス条件下で、顕著な分解を伴わずに、開いたまたは閉じたフラスコ/バイアルなどの開放または閉環境で維持/保存することができる。したがって、一部の実施形態では、本開示は、水溶液、有機溶媒溶液、または水性有機溶媒混合溶液の形態などの溶液として、顕著な分解および溶液の油化などの物理的変化を伴わずに長期間保存することができる、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の安定な溶液相組成物(例えば、液体剤形)(例えば、溶媒和形態、好ましくは完全な溶媒和形態である、式(I)の化合物の塩形態の安定な溶媒和物)を提供する。溶液相組成物を形成するために使用され得る溶媒は、本明細書に記載されるいずれか一つ以上の溶媒、例えば、水、エタノール、フルーツジュースなどであってもよい。一部の実施形態では、溶液相組成物は、水で溶媒和された式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む(および任意で、例えばフルーツジュース中にあるような他の成分を含む)水溶液相組成物である。安定した溶液相組成物の同定は、そのような組成物が調製直後、例えば、調製後5分以内、4分以内、3分以内、2分以内、1分以内、45秒以内、30秒以内、15秒以内、10秒以内に使用する必要がないため少なくとも有利である。代わりに、本明細書に記載の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の安定した溶液相組成物(例えば、液体剤形)は、所望される場合、事前に調製し、任意で保存することができ、実質的に効力に影響を与えることなく、例えば、シジメチルトリプタミン型活性物質の顕著な分解を伴わずに、調製後、数時間、数日、更には数週間で投与することができる。
【0073】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩から形成される水溶液は、式(I)の化合物(遊離塩基)から調製されるが、他の点では実質的に同じである水溶液と比較して、安定性が増大することによって特徴付けられる。例えば、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、式(I)の化合物(遊離塩基)を用いて調製された水溶液と比較して、化学的純度(活性残存%)に関して、40℃で24時間、48時間、72時間、1週間、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上、曝露された水溶液中で、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%以上安定であり得るが、それ以外は実質的に同じである。こうした改善された安定性挙動は、本開示の医薬組成物にも見出すことができる。
【0074】
生理学的受容性
式(I)の化合物の好適な塩の形態は、生理学的に許容可能である。特に、肺投与用に製剤化される場合、肺刺激が吸入後の咳につながる可能性があり、咳は送達用量を減少させることが知られているため、患者のコンプライアンスならびに治療有効性に悪影響を及ぼし得るので、適切な塩形態は過剰な刺激を引き起こさない形態である。このため、式(I)の化合物の好ましい付加塩は、有機酸、好ましくは穏やかな酸性度を有する有機酸、例えば、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、例えば、3.0~6.5の水中pKを有する有機酸で形成されるものである。更に、例えば、投与経路および甘味剤、香味剤などの味覚マスキング剤の任意の使用に応じて、味の悪い塩形態(例えば、苦み、えぐみなど)は依然として許容され得るが、好ましい味覚プロファイル(例えば、甘み、柑橘系の風味など)を付与する酸付加塩を使用することが望ましい場合がある。
【0075】
溶解度
式(I)の化合物およびその塩の水溶性は、過剰の固体を1mLの水で、22℃で24時間平衡化することによって決定することができる。200uLのアリコートが、15,000rpmで15分間遠心分離され得る。上清はHPLCにより分析することができ、溶解度はその遊離塩基相当量(mg FB/mL)として表すことができる。例えば、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を調製することができ、溶解度および溶液のpHを測定することができる。
【0076】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、22℃で約5mg/mL~約400mg/mLの水溶性を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、約1mg/mLから、約2mg/mLから、約3mg/mLから、約5mg/mLから、約10mg/mLから、約20mg/mLから、約30mg/mLから、約40mg/mLから、約50mg/mLから、約60mg/mLから、約70mg/mLから、約80mg/mLから、約90mg/mLから、約100mg/mLから、約110mg/mLから、約120mg/mLから、約130mg/mLから、約140mg/mLから、約150mg/mLから、および最大約400mg/mL、最大約380mg/mL、最大約360mg/mL、最大約340mg/mL、最大約320mg/mL、最大約300mg/mL、最大約280mg/mL、最大約260mg/mL、最大約250mg/mLの水溶性を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩は、約200mg/mL~約400mg/mLの水溶性を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩は、約150mg/mL~約250mg/mLの水溶性を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩は、約1mg/mL、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、または150mg/mLを超える水溶性を有する。
【0077】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、式(I)の化合物のフマル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、ヘミシュウ酸塩、またはヘミフマル酸塩である。上述のものなどの望ましい物理的および薬学的特徴を提供する観点から、好ましい薬学的に許容可能な塩は、本明細書に開示される化合物のフマル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、およびコハク酸塩であり、例えば、フマル酸塩、安息香酸塩、およびサリチル酸塩を含む式(I)の化合物である。
【0078】
上記で特定された化合物の例示的な薬学的に許容可能な塩形態(すなわち、付加塩形態)を表2に提供する。

【表2】

【0079】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1a)のフマル酸塩である(すなわち、以下に示す化合物I-1のフマル酸塩)。一部の実施形態では、塩I-1aは、例えば、図3および6に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、7.8°、10.3°、10.9°、13.6°、15.8°、16.1°、17.0°、18.4°、19.7°、19.9°、20.6°、21.3°、21.7°、22.5°、23.9°、24.1°、25.1°、26.2°、33.6°、および34.9°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。

【化7】
【0080】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1b)の安息香酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-1の安息香酸塩)。一部の実施形態では、塩I-1bは、例えば、図4および7に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、11.1°、12.6°、13.5°、15.8°、16.1°、17.1°、17.9°、19.8°、20.1°、20.8°、21.2°、22.7°、23.8°、24.6°、26.9°、29.2°、32.3°、35.1°、および36.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0081】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1c)のサリチル酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-1のサリチル酸塩)。一部の実施形態では、塩I-1cは、例えば、図4および8に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、10.5°、14.9°、17.1°、18.1°、19.1°、20.1°、20.7°、21.0°、21.3°、24.6°、25.6°、28.5°、28.8°、29.4°、30.3°、31.3°、32.1°、33.5°、および34.4°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0082】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1d)のコハク酸塩(すなわち、上に示される化合物I-1のコハク酸塩)である。一部の実施形態では、塩I-1dは、例えば、図5に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.8°、11.7°、14.3°、14.7°、17.0°、17.4°、19.6°、20.6°、22.3°、22.6°、22.9°、23.1°、23.4°、24.9°、25.2°、26.3°、26.8°、27.3°、27.7°、28.8°、29.1°、30.9°、31.5°、33.8°、34.5°、36.5°、および39.2°から選択される回折角度(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0083】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1e)のシュウ酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-1のシュウ酸塩)。一部の実施形態では、塩I-1eは、例えば、図5に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、11.3°、12.3°、15.6°、17.7°、19.5°、20.0°、20.8°、21.4°、22.3°、22.7°、24.8°、25.7°、26.7°、27.9°、28.7°、29.5°、31.4°、33.0°、35.4°、36.5°、および38.6°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0084】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1f)のグリコール酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-1のグリコール酸塩)。一部の実施形態では、塩I-1fは、例えば、図3に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、8.2°、12.2°、12.9°、15.8°、16.3°、17.8°、19.2°、20.1°、21.7°、23.6°、24.4°、24.6°、24.9°、26.0°、26.6°、27.8°、29.6°、30.2°、32.0°、32.3°、33.0°、33.9°、および34.6°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0085】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1g)のヘミシュウ酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-1のヘミシュウ酸塩)。一部の実施形態では、塩I-1gは、例えば、図4に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、8.7°、11.5°、13.6°、14.2°、15.2°、17.4°、17.6°、18.0°、19.3°、19.6°、20.1°、20.6°、21.9°、22.1°、22.9°、23.2°、23.5°、24.5°、25.0°、25.5°、26.1°、26.4°、27.1°、28.4°、28.7°、29.8°、30.4°、30.7°、31.4°、31.8°、33.4°、および33.9°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0086】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1h)のヘミフマル酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-1のヘミフマル酸塩)。一部の実施形態では、塩I-1hは、例えば、図5に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、8.1°、11.3°、12.2°、13.3°、14.2°、16.2°、17.6°、18.3°、18.6°、19.5°、19.8°、20.0°、20.2°、20.9°、21.4°、21.9°、22.3°、22.7°、22.9°、23.8°、24.5°、25.0°、25.2°、26.1°、26.4°、26.9°、28.4°、28.8°、29.5°、29.8°、30.9°、および32.7°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0087】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8a)のフマル酸塩である(すなわち、以下に示される化合物I-8のフマル酸塩)。一部の実施形態では、塩I-8aは、例えば、図6に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、7.8°、10.3°、10.9°、12.5°、13.6°、14.6°、15.2°、15.5°、15.8°、16.1°、16.6°、17.0°、18.4°、19.0°、19.7°、19.9°、20.6°、21.3°、21.8°、22.5°、23.3°、23.8°、24.1°、25.1°、26.2°、26.8°、27.3°、27.9°、28.3°、28.9°、29.3°、29.6°、29.9°、30.6°、31.0°、31.3°、32.4°、32.9°、33.3°、33.6°、34.3°、34.9°、35.7°、36.1°、37.4°、38.0°、および38.5°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。一部の実施形態では、塩I-8aは、例えば、図6に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、7.8°、10.3°、10.9°、13.6°、15.8°、16.1°、17.0°、18.4°、19.7°、19.9°、20.6°、21.3°、21.8°、22.5°、23.8°、24.1°、25.1°、26.2°、33.6°、および34.9°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。一部の実施形態では、塩I-8aは、例えば、図6に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、10.9°、13.6°、15.8°、16.1°、17.0°、18.4°、19.7°、19.9°、20.6°、23.8°、24.1°、および25.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【化8】
【0088】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)の安息香酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-8の安息香酸塩)。一部の実施形態では、塩I-8bは、例えば、図7に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、11.1°、12.7°、13.5°、15.8°、16.1°、17.2°、17.9°、19.8°、20.1°、20.8°、21.2°、22.8°、23.8°、24.3°、24.6°、25.1°、25.3°、25.5°、26.9°、28.3°、28.9°、29.3°、31.4°、31.6°、32.0°、32.3°、32.8°、35.1°、および36.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。一部の実施形態では、塩I-8bは、例えば、図7に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、11.1°、12.7°、13.5°、15.8°、16.1°、17.2°、17.9°、19.8°、20.1°、20.8°、21.2°、22.8°、23.8°、24.6°、26.9°、29.3°、32.3°、35.1°、および36.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。一部の実施形態では、塩I-8bは、例えば、図7に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、12.7°、13.5°、15.8°、16.1°、17.2°、17.9°、19.8°、20.1°、20.8°、23.8°、24.6°、26.9°、29.3°、および35.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0089】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8c)のサリチル酸塩である(すなわち、上に示される化合物I-8のサリチル酸塩)。一部の実施形態では、塩I-8cは、例えば、図8に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、10.5°、11.4°、12.3°、13.4°、14.2°、14.9°、15.6°、16.1°、17.1°、18.1°、18.7°、19.1°、20.1°、20.8°、21.1°、21.3°、22.2°、22.6°、23.7°、24.6°、25.2°、25.6°、26.1°、26.4°、27.4°、27.5°、27.8°、28.5°、28.8°、29.4°、29.7°、30.3°、31.0°、31.3°、32.1°、32.7°、33.1°、33.5°、34.4°、および35.0°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。一部の実施形態では、塩I-8cは、例えば、図8に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、10.5°、14.9°、17.1°、18.1°、19.1°、20.1°、20.8°、21.1°、21.3°、24.6°、25.6°、28.5°、28.8°、29.4°、30.3°、31.3°、32.1°、33.5°、および34.4°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。一部の実施形態では、塩I-8cは、例えば、図8に示されるように、CuKα放射線源を使用するXRPDによって決定される、9.6°、14.9°、17.1°、18.1°、19.1°、20.1°、20.8°、21.3°、24.6°、25.6°、28.5°、および32.1°から選択される回折角(2θ±0.2°)に少なくとも三つの特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶性固体形態である。
【0090】
一部の実施形態では、本開示の薬学的に許容可能な塩は、溶媒和物の形態である。溶媒和物形態の例には、水和物、メタノール酸塩、エタノール酸塩、イソプロパノール酸塩などが含まれるが、これらに限定されず、水和物およびエタノール酸塩が好ましい。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的な量の溶媒分子から形成され得る。一つの非限定的な実施例では、水和物として、本明細書に記載の薬学的に許容可能な塩は、一水和物、二水和物などであってもよい。
【0091】
また、式(I)の化合物を安定化する方法も本明細書に開示される。方法は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を調製することを含む。
【0092】
また、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を調製する方法も本明細書に開示される。付加塩形成のための様々な方法および手順は、当業者に公知であり、それらのいずれかが本開示で利用され得る。一部の実施形態では、方法は、
(a)式(I)の化合物の遊離塩基を溶媒または溶媒混合物中に懸濁すること、
(b)酸を式(I)の化合物と接触させて混合物を提供すること、
(c)任意に混合物を加熱すること、
(d)任意に混合物を冷却すること、および
(e)塩を単離すること、を含む。
【0093】
開示された方法では、一つ以上のプロトン性溶媒、一つ以上の非プロトン性溶媒、またはそれらの混合物を含む様々な溶媒を使用することができる。一部の実施形態では、塩を調製する方法で使用される溶媒は、プロトン性溶媒である。一部の実施形態では、塩を調製する方法で使用される溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、アセトン、ブタノン、ジオキサン(1,4-ジオキサン)、水、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、エーテル溶媒(例えば、t-ブチルメチルエーテル(TBME))、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、溶媒は、エタノールである。
【0094】
薬学的に許容可能な酸付加塩の調製に使用するのに好適な酸には、これまでに記載された酸が含まれ得る。酸は、無機酸または有機酸であってもよく、有機酸が好ましい。一部の実施形態では、酸は、フマル酸、安息香酸、サリチル酸、コハク酸、シュウ酸、およびグリコール酸からなる群から選択される有機酸である。一部の実施形態では、酸は、フマル酸、安息香酸、サリチル酸、およびコハク酸からなる群から選択される有機酸であり、フマル酸、安息香酸、およびサリチル酸が好ましい。
【0095】
一部の実施形態では、化学量論的(または超化学量論的)量の酸を式(I)の化合物と接触させる。一部の実施形態では、準化学量論的(例えば、0.5モル当量)な量の酸を式(I)の化合物と接触させる。例えば、酸が少なくとも二つの酸性プロトン(例えば、二つ以上のカルボン酸基)を含有し、標的塩がヘミ酸塩である場合、酸の準化学量論的な量の使用が望ましい場合がある。
【0096】
一部の実施形態では、混合物は、冷却前に加熱される、例えば、還流される。
【0097】
一部の実施形態では、混合物を冷却し、塩を溶液から沈殿させる。一部の実施形態では、塩は、溶液から結晶性形態で沈殿する。一部の実施形態では、塩は、溶液から非結晶性形態で沈殿する。
【0098】
塩の単離は、濾過、デカンテーションなどの様々な周知の単離技術によって行うことができる。一部の実施形態では、単離ステップは、混合物を濾過することを含む。
【0099】
単離後、追加の結晶化および/または再結晶化ステップも、例えば、純度、結晶化度などを増加させるために、所望により任意に行われてもよい。
【0100】
治療用途および方法
疾患または障害を有する対象を治療する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む方法も開示される。
【0101】
投与される化合物の塩の用量および頻度(単回または複数回用量)は、投与される塩の形態/化合物;治療される疾患/状態;投与経路;被験者の体の大きさ、年齢、性別、健康状態、体重、肥満度指数、および食事;治療される疾患の症状の性質および程度;他の疾患またはその他の健康上の問題の存在;併用療法の種類;ならびに、任意の疾患または治療レジメンによる合併症、を含むが、これに限定されるものではない、様々な要因によって変化し得る。他の治療レジメンまたは薬剤を、本明細書に開示される方法および化合物と併せて使用することができる。
【0102】
ヒトで使用するための治療有効量は、動物モデルから決定されてもよい。例えば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることが判明した濃度を達成するために製剤化され得る。ヒトにおける用量は、治療に対する応答を監視し、用量を上方または下方に調節することによって、調節され得る。
【0103】
用量は、対象の要件および使用される化合物またはその塩形態に応じて変化し得る。本明細書に提示される医薬組成物との関連で、対象に投与される用量は、経時的に対象において有益な治療応答をもたらすのに十分であるべきである。用量のサイズはまた、有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定されるであろう。一般的に、治療は、化合物の最適用量よりも少ない、より少ない用量で開始される。その後、用量は、状況下における最適な効果に到達するまで、小さな増分で増加する。
【0104】
投与量および間隔は、治療される特定の臨床的徴候に有効な投与化合物のレベルを提供するために個別に調整することができる。これにより、個人の疾患状態の重症度に見合う治療レジメンが提供されるであろう。
【0105】
投与経路には、経口経路(例えば、経腸/胃送達、口腔内投与、例えば、頬側、舌側、および舌下経路)、非経口経路(例えば、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑膜内、および皮下投与)、局所経路(例えば、結膜、角膜内、眼内、眼、耳介、経皮、鼻(例えば、鼻腔内)、膣、尿道、呼吸器、および直腸投与)、吸入、または有益な治療応答に影響を与えるのに十分な他のものが含まれ得る。
【0106】
投与は、連続投与スケジュール、または断続的投与スケジュールに従ってもよい。投与スケジュールは、使用される塩形態及び化合物、治療される状態、投与経路などに応じて変化し得る。例えば、投与は、一日1回(QD)、または一日2回(BID)、一日3回(TID)、一日4回(QID)、もしくはそれ以上など、一日を通して分割投与で実施され得る。一部の実施形態では、投与は、毎晩(QHS)実施され得る。一部の実施形態では、化合物/医薬組成物は、必要に応じて(PRN)投与され得る。投与はまた、週ベースで行われてもよく、例えば、週一回、週二回、週三回、週四回、隔週、二週間毎、またはそれ以下などで実施されてもよい。投与スケジュールはまた、治療コース当たり定義された数の治療を指定してもよく、例えば、治療コース当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回投与されてもよい。健全な医学的判断を使用して、他の投与スケジュールを適切であるとみなしてもよい。
【0107】
投与は、例えば、薬剤動態および特定の対象の薬物のクリアランス/蓄積に応じて、連続的(週に7日間の投与)または断続的であり得る。断続的な場合、スケジュールは、例えば、週に4日間の投与および3日間の休薬(休息日)、または健全な医学的判断に基づいて適切とみなされる任意の他の断続的な投与スケジュールであり得る。例えば、断続的投与は、治療過程内の単回用量の投与を伴い得る。連続的または断続的な投与が、特定の治療経過、典型的には、少なくとも28日サイクル(1ヶ月)にわたって継続され、これは、休薬期間の有無にかかわらず繰り返され得る。14日、18日、21日、24日、35日、42日、48日、もしくはそれ以上、またはその間の任意の範囲などの、より長いまたはより短いコースも使用することができる。コースは、対象に応じて、休薬期間なしで、または休薬期間とともに繰り返してもよい。有害事象の有無、治療に対する応答、患者の都合などに応じて、他のスケジュールも可能である。
【0108】
本明細書に提供される教示を活用すると、実質的な毒性または有害な副作用(例えば、式(I)の化合物のいずれかの血漿濃度における鎮静または精神異常発現的毒性スパイクによって引き起こされる)を引き起こさず、特定の患者によって示される臨床症状を治療するのに完全に有効である、効果的な予防的または治療的治療レジメンを計画することができる。この計画は、化合物の効力、相対的生物学的利用能、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、好ましい投与様式、ならびに選択された薬剤の毒性プロファイルなどの要因を考慮することによって、活性化合物および塩形態を慎重に選択することを含むべきである。
【0109】
本明細書に開示される化合物の塩形態の治療有効量は、上述の様々な要因に応じて変化し得るが、典型的には、式(I)の化合物を、一日当たりレシピエントの体重キログラム当たり約0.00001mg~約10mg、またはその間の任意の範囲の量、例えば、約0.00001mg/kg、約0.00005mg/kg、約0.0001mg/kg、約0.0005mg/kg、約0.001mg/kg、約0.005mg/kg、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約2.0mg/kg、約3.0mg/kg、約4.0mg/kg、約5.0mg/kg、約6.0mg/kg、約7.0mg/kg、約8.0mg/kg、約9.0mg/kg、約10.0mg/kgの式(I)の化合物(活性)の量で提供するものである。
【0110】
本開示の化合物の薬学的に許容可能な塩は、幻覚作用のある用量で投与され得る。経口または別手段による、幻覚作用のある用量は、一部の実施形態では、約0.083mg/kg、約0.09mg/kg、約0.1mg/kg、約0.15mg/kg、約0.2mg/kg、約0.25mg/kg、約0.3mg/kg、約0.35mg/kg、約0.4mg/kg、約0.45mg/kg、約0.5mg/kgから、最大約5mg/kg、約4mg/kg、約3mg/kg、約2mg/kg、約1mg/kg、約0.95mg/kg、約0.9mg/kg、約0.85mg/kg、約0.8mg/kg、約0.75mg/kg、約0.7mg/kg、約0.65mg/kg、約0.6mg/kg、約0.55mg/kgの式(I)の化合物の範囲であり得る(活性型に基づく)。上述の通り、より高い用量も一部の実施形態では使用され得る。一部の実施形態では、幻覚作用のある用量は、一回投与され、少なくとも一週間の間隔をあけて反復投与される可能性がある。一部の事例では、5回以下の用量が、いずれか一回の治療経過において投与される。経過は、休薬期間の有無にかかわらず、必要に応じて繰り返すことができる。こうした急性治療レジメンは、幻覚作用のある用量の投与前、投与中、および/または投与後に心理療法を伴い得る。これらの治療は、本明細書に開示される様々な精神的健康障害に適切であり、その例には、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、不安障害、物質使用障害(例えば、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、喫煙、およびコカイン使用障害)が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
精神活性以下の(しかしなおもセロトニン作動性濃度である可能性がある)濃度の投与は、毒性を低下した持続的な治療的利益を達成するために、一部の実施形態では実施されてもよく、したがって、マイクロドージングに好適であり得る。経口またはその他の手段による、幻覚作用のない用量は、一部の実施形態では、約0.00001mg/kg、約0.00005mg/kg、約0.0001mg/kg、約0.0005mg/kg、約0.001mg/kg、約0.005mg/kg、約0.006mg/kg、約0.008mg/kg、約0.009mg/kg、約0.01mg/kgから、約0.083mg/kg、約0.08mg/kg、約0.075mg/kg、約0.07mg/kg、約0.06mg/kg、約0.05mg/kg、約0.04mg/kg、約0.03mg/kg、約0.02mg/kg未満の式(I)の化合物の範囲であり得る(活性型に基づく)。典型的には、幻覚作用のない用量は、治療コース(例えば、1ヶ月)の間、最大毎日投与される。しかしながら、幻覚作用のない用量での投与回数に対する制限はなく、投与は、適切とみなされる場合、より低い頻度、またはより高い頻度であり得る。経過は、休薬期間の有無にかかわらず、必要に応じて繰り返すことができる。
【0112】
幻覚作用のない用量は、例えば、任意に遠隔制御することができるデポ剤形、インプラント、パッチ、およびポンプを含むがこれに限定されない、修飾、制御、徐放、または持続放出剤形を介して、経皮送達、皮下投与、経口などによって実施され得る。ここで、用量は、低用量の経口用量と同様の血液レベルを達成するが、それにもかかわらず、幻覚を生じさせないであろう。
【0113】
幻覚作用のない用量は、例えば、本明細書に開示される様々な疾患または障害の慢性的治療または維持に使用することができ、その例としては限定されないが、うつ病(例えば、MDD)、炎症、疼痛、および神経炎症が挙げられる。
【0114】
本開示の化合物の薬学的に許容可能な塩は、維持レジメンに使用され得る。本明細書で使用される場合、「維持レジメン」は概して、標的用量の達成後、例えば、漸増レジメンの完了後、および/または例えば同じ薬剤もしくは異なる薬剤のいずれかに対する患者の状態の改善などの良好な臨床応答の後の、本開示の化合物の薬学的に許容可能な塩の投与を指す。一部の実施形態では、患者は、治療レジメンのための第一の薬物、および維持レジメンのための第二の薬物を投与され、ここで、第一および第二の薬物は異なる。例えば、患者は、ジメチルトリプトアミン型化合物ではない第一の薬物(例えば、第一の薬物は、例えば、LSD、シロシビン、MDMAなどのセロトニン作動性の幻覚作用のある薬物、または幻覚作用のない薬物である)の治療レジメンを投与され、続いて維持レジメンにおいて、(第二の薬物として)本開示の化合物の塩形態を投与される。別の例では、治療レジメン(第一の薬物)には、維持レジメン(第二の薬物)とは異なる本開示の塩形態を使用する。一部の実施形態では、患者は、治療レジメンおよび維持レジメンの両方に対して、同じ本開示の塩形態を投与される。いずれの場合でも、維持用量は、治療応答を「維持する」および/または再発を防止するために使用され得る。同じ本開示の塩形態が、元の治療レジメンおよび維持レジメンの両方に使用される場合、維持用量は、治療用量以下であってもよい。一部の実施形態では、維持用量は、幻覚作用のある用量である。一部の実施形態では、維持用量は、幻覚作用のない用量である。概して、投与は、維持レジメンに対して毎日または断続的に実施されるが、維持レジメンはまた、例えば、数日、数週間、数ヶ月、または数年にわたって連続的に実施することもできる。さらに、維持用量は、長期間にわたって、さらには慢性的に患者に投与されてもよい。
【0115】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、上述の用量範囲内で、例えば、約0.1mg/kg~約0.8mg/kg、または約0.2mg/kg~約0.5mg/kg、または約0.3mg/kg、単回ボーラスとして対象に静脈内投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、上述の用量範囲内で、例えば、約0.1mg/kg~約0.8mg/kg、または約0.2mg/kg~約0.5mg/kg、または約0.45mg/kg、灌流として対象に静脈内投与される。灌流は、例えば、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間の持続時間にわたって投与されてもよい。式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、約0.1mg/分、0.2mg/分、0.3mg/分、0.4mg/分、0.5mg/分、0.6mg/分、0.7mg/分、0.8mg/分、0.9mg/分、1mg/分、1.5mg/分、2mg/分、2.5mg/分、3mg/分、3.5mg/分、4mg/分、4.5mg/分、5mg/分、または医療専門家によって適切であるとみなされる速度で灌流を介して投与されてもよい。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、上述の用量範囲内、例えば、約0.1mg/kg~約0.8mg/kg、または約0.2mg/kg~約0.5mg/kg、または約0.3mg/kgのボーラスとして対象に静脈内投与され、その後、上述の用量範囲内、例えば、約0.1mg/kg~約0.8mg/kg、または約0.2mg/kg~約0.5mg/kg、または約0.45mg/kgの灌流が続く。
【0116】
本明細書で治療される対象は、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有し得る。
【0117】
一部の実施形態では、疾患または障害は、神経精神医学的疾患もしくは障害、または炎症性疾患もしくは障害である。
【0118】
一部の実施形態では、疾患または障害は、例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、非自殺的自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害(双極性障害I型障害、双極性II型障害、気分循環性障害を含むがこれらに限定されない)、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、急性幻覚クライシス、社会不安障害、薬物使用障害(アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害を含むがこれらに限定されない)、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症の流暢性障害、重度の神経認知障害、軽度の神経認知障害、慢性疲労症候群、ライム病、ギャンブル障害、摂食障害(神経性食欲不振症、神経性過食症、過食性障害などを含むがこれらに限定されない)、およびパラフィリア障害(小児性愛障害、露出障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズムまたはサディズム障害、および異性装障害などを含むがこれらに限定されない)、性的機能不全(例えば、性欲の低下)、ならびに肥満を含むが、これらに限定されない、中枢神経系(CNS)障害および/または心理的障害である。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法を使用して、うつ病性障害を有する対象が治療される。本明細書で使用される場合、「うつ病性障害」または「うつ病」という用語は、ある期間にわたって持続する、ヒトの考え、行動、感情、および幸福感に影響を与え得る、気分の落ち込みを特徴とする障害群を指す。一部の実施形態では、うつ病性障害は、ヒトの身体的および精神的な機能を破壊する。一部の実施形態では、うつ病性障害は、例えば、体重減少、痛みもしくは疼痛、頭痛、けいれん、または消化不良などの身体的症状を引き起こす。一部の実施形態では、うつ病性障害は、例えば、持続的な悲しみ、絶望感といらだち、罪悪感、無気力または無力感、趣味および活動への関心または喜びの喪失、集中困難、記憶困難、または意思決定の困難など、精神的な症状を引き起こす。一部の実施形態では、うつ病性障害は、大うつ病性障害(MDD)、非定型うつ病、双極性障害、緊張性うつ病、身体的な病気を原因とするうつ病性障害、産後うつ病、月経前不快気分障害、季節性情動障害、または治療抵抗性うつ病(TRD)である。
【0120】
一部の実施形態では、疾患または障害は、大うつ病性障害(MDD)である。本明細書で使用される場合、「大うつ病性障害」という用語は、ほとんどの状況で存在する落ち込んだ気分の期間を特徴とする状態を指す。大うつ病性障害は、多くの場合、自尊心の低下、通常は楽しい活動への関心の喪失、低エネルギー状態、および明確な原因のない疼痛を伴う。一部の例では、大うつ病の規定は、少なくとも二週間続くうつ病の症状を特徴とする。一部の例では、個人は、数年おいてうつ病の期間を経験する。一部の例では、個人は、ほぼ常に、うつ病の症状を経験する。大うつ病性障害は、個人の私生活、仕事、または学校生活、ならびに睡眠、摂食習慣、および一般健康状態に悪影響を及ぼす可能性がある。大うつ病性障害の成人の約2~7%が自殺し、自殺する成人の最大で60%が、大うつ病性障害または別の関連する気分障害を有していた。気分変調は、大うつ病性障害と同じ認知的および身体的な問題からなる大うつ病性障害の亜型であり、重症度は低いが、症状は長く続く。大うつ病性障害の症状の例としては限定されないが、悲しみ、恐怖、空虚または絶望の感覚、怒りの爆発、些細なことに対するいらだちまたはフラストレーション、ほとんど、またはすべての通常の活動における関心や喜びの喪失、不眠や過眠を含む睡眠障害、疲労感やエネルギー不足、食欲の低下、体重の減少または増加、不安、動揺または不穏、思考力、会話または体の動きの減退、無気力感または罪悪感、過去の失敗に固執する、または自己非難、思考、集中、決断および記憶の乱れ、死について頻繁に考える、自殺念慮、自殺未遂または自殺、ならびに例えば背部痛や頭痛などの説明がつかない身体的な問題が挙げられる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「非定型うつ病」という用語は、個人が、気分反応性の兆候(すなわち、実際的または潜在的にポジティブな事象に応答して気分が明るくなる)、著しい体重増加、食欲増加、過眠症、腕または脚の重く不活発な感覚、および/または著しい社会的もしくは職業的な弊害をもたらす対人拒絶の感度に関する長期的なパターンを示す、状態を指す。非定型うつ病の例示的な症状としては、限定されないが、毎日の悲しみや憂うつ感、かつては楽しいものであった物事に対する喜びの喪失、体重や食欲における大きな変化(増加または減少)、ほぼ毎日の不眠または過眠、他者が気が付くような身体的に落ち着かない状態または疲れ果てた状態、毎日の疲労感またはエネルギー低下状態、ほぼ毎日の絶望感、無力感または過剰な罪悪感、ほぼ毎日の集中または意思決定の問題、死または自殺の考えが繰り返される、自殺の企図、または自殺未遂が挙げられる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「双極性障害」という用語は、個人が、気分、エネルギー、活動レベル、および日々のタスクを行う能力における異様な変化を経験する状態を指す。双極性障害を有する個人は、異常な激情、睡眠パターンおよび活動レベルの変化、ならびに異常行動の期間を経験する。これらの別個の期間は、「気分エピソード」と呼ばれる。気分エピソードは、そのヒトにとって典型的な気分および行動とは大きく異なっている。躁状態、行き過ぎた振る舞いの症状の例としては限定されないが、異常に陽気で急変する、または神経過敏な振る舞い;活動性、エネルギーまたは興奮性の増加、誇大な幸福および自信の感覚、睡眠の必要性の減少、異常な多弁、競争思考、散漫性、および意思決定の貧弱さ、例えば、継続的な散財、性的リスクを取る、またはバカげた投資を行うことなどが挙げられる。うつ病エピソードまたは気分の落ち込みの症状の例としては限定されないが、憂うつ感、例えば、悲しみ、空虚、絶望、または恐怖の感覚;すべての、もしくはほぼすべての活動に対する関心の著しい喪失または楽しくないという感覚、著しい体重減少もしくは体重増加、または食欲の低下もしくは増加、不眠症もしくは過眠症(過剰な睡眠または過剰な眠気)、不穏な行動もしくは緩慢な行動、疲労感もしくはエネルギー低下、無力感または過剰もしくは不適切な罪悪感、思考能力の低下もしくは集中力の低下、または決断力の欠如、および自殺の企図または試みに関する思考、が挙げられる。双極性障害には、I型双極性障害、II型双極性障害、および気分循環性障害が含まれる。I型双極性障害は、少なくとも7日間続く躁病エピソードによって、または入院を必要とする重度の躁病症状によって定義される。I型双極性障害を有する対象は、典型的には少なくとも2週間続くうつ病エピソードも経験する場合がある。特性が混合したうつ病のエピソード、すなわち、うつ病症状と躁病症状が同時であることも可能である。II型双極性障害は、うつ病エピソードおよび軽躁エピソードのパターンを特徴とするが、I型双極性障害に典型的な重度の躁病エピソードは特徴としない。気分循環性障害(気分循環症とも呼称される)は、少なくとも2年間にわたり継続する、軽躁症状(気分高揚と多幸感)とうつ病症状の持続期間を特徴とする。気分の変動は、数、重症度または持続期間において、軽躁エピソードまたはうつ病エピソードの完全な基準を満たすには充分ではない。
【0123】
本明細書で使用される場合、「緊張性うつ病」という用語は、個人が長時間、無言および不動となる状態を指す。緊張性うつ病の症状の例としては限定されないが、毎日起こり得る悲しみの感覚、ほとんどの活動における関心の喪失、突然の体重の増加または喪失、食欲の変化、寝入ることが困難、起きることが困難、不穏の感覚、いらだち、無力感、罪悪感、疲労感、集中困難、思考困難、意思決定困難、自殺または死の念慮、および/または自殺未遂が挙げられる。
【0124】
本明細書で使用される場合、「身体的な病気を原因とするうつ病性障害」という用語は、個人が、別の病気を原因としてうつ病症状を経験する状態を指す。うつ病性障害を引き起こすことが知られている身体的な病気の例としては限定されないが、HIV/AIDS、糖尿病、関節炎、脳卒中、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症およびアルツハイマー病などの脳の障害、代謝疾患(例えば、ビタミンB12欠損症)、自己免疫疾患(例えば、狼瘡および関節リウマチ)、ウイルスまたは他の感染症(肝炎、単核球症、ヘルペス)、背部痛、およびがん(例えば、膵臓がん)が挙げられる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「産後うつ病」という用語は、出産およびホルモン変化、親であることに対する心理的な調整、ならびに/または疲労の結果としての状態を指す。産後うつ病は多くの場合、女性に関連しているが、男性も同様に産後うつ病に罹患する可能性がある。産後うつ病の症状の例としては限定されないが、悲しみの感覚、絶望感、空虚感、または重圧感;通常よりも頻繁に、または明白な理由なく泣くこと;過度な不安感を憂慮し、または感じる;不機嫌、いらだち、または落ち着きのない感覚;過眠、または乳児が睡眠している時でさえも眠ることができない;集中、詳細な記憶、意思決定が困難;怒りまたは逆上を経験;通常は楽しい活動への関心を失う;頻繁な頭痛、胃の問題、筋肉痛を含む、身体的な痛みおよび疼痛を患う;過食または過度な小食;友人や家族から離れたり、避けたりする;乳児との情緒的愛着を結ぶ、または形成することが困難;乳児をケアする能力について、断続的に疑う;および自身や乳児を害することについて考えること、が挙げられる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「月経前不快気分障害」という用語は、月経サイクルの月経前期の間に繰り返し発生する気分の不安定性、いらだち、抑うつおよび不安感の症状を個人が発現し、それらが月経の発現の頃に、またはその後すぐに寛解する状態を指す。月経前不快気分障害の症状の例としては限定されないが、不安定性(例えば、気分の変動)、いらだちまたは怒り、憂うつ感、不安と緊張、通常の活動に対する関心の低下、集中困難、不振状態およびエネルギー低下、食欲の変化(例えば過食または特定の食物を渇望する)、過眠または不眠、重圧感または制御不能な感覚、身体的症状(例えば、乳房の圧痛または腫脹、関節通や筋肉通、腹部膨満感および体重増加)、自虐的な考え、緊張感またはピリピリした感覚、通常の活動(例えば、仕事、学校、友人、趣味など)に対する関心の低下、自覚的な集中困難、および易疲労感が挙げられる。
【0127】
本明細書で使用される場合、「季節性情動障害」という用語は、個人が、年内の時期に基づいて気分が変化する状態を指す。一部の例では、個人は、秋および/または冬の季節の間に、気分の落ち込み、エネルギー低下、または他のうつ病症状を経験する。一部の例では、個人は、春および/または夏の季節の間に、気分の落ち込み、エネルギー低下、または他のうつ病症状を経験する。季節性情動障害の症状の例としては限定されないが、ほぼ終日、またはほぼ毎日精神的な落ち込みを感じる、かつては楽しかった活動に対する関心の喪失、低エネルギー状態、睡眠困難、食欲または体重が変化する、怠惰な感覚または興奮、集中困難、絶望感、無力感、または罪悪感、および死または自殺について頻繁に考えることが挙げられる。
【0128】
一部の実施形態では、うつ病性障害は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders第5版の基準および分類に基づく医学的診断を含む。一部の実施形態では、うつ病性障害は、独立した医学的評価に基づく医学的診断を含む。
【0129】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、治療に耐性のあるうつ病を有する対象に提供される。一部の実施形態では、対象は、治療抵抗性うつ病(TRD)と診断されている。「治療抵抗性うつ病」という用語は、適切な用量および持続時間の少なくとも一回以上の治療の試みに対して応答しない、または抵抗性である、ある種のうつ病を指す。一部の実施形態では、治療抵抗性うつ病の対象は、1回の治療の試み、2回の治療の試み、3回の治療の試み、4回の治療の試み、5回の治療の試み、またはそれ以上に対して応答しなかった。一部の実施形態では、治療抵抗性うつ病の対象は、大うつ病性障害と診断されており、3回以上の治療の試みに対して応答しなかった。一部の実施形態では、治療抵抗性うつ病の対象は、双極性障害と診断されており、1回の治療の試みに対して応答しなかった。
【0130】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、うつ病性障害の少なくとも一つの兆候または症状を低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、治療前と比較して、うつ病性障害の少なくとも一つの兆候または症状を、約5%~約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%、またはそれ以上低下させる。
【0131】
一部の実施形態では、疾患または障害は、不安障害である。本明細書で使用される場合、「不安障害」という用語は、事象および/または状況の予測から生じる心配、不確実性、および/または恐れの状態を指す。不安障害は、生理学的および精神的な兆候または症状を引き起こす。生理学的症状の非限定的な例としては、筋肉の緊張、心悸亢進、発汗、めまい、息切れ、頻脈、振戦、疲労、憂慮、いらだち、および睡眠障害が挙げられる。精神的な症状の非限定的な例としては、死ぬことへの恐怖、恥ずかしさまたは屈辱への恐怖、事象発生への恐怖などが挙げられる。不安障害はまた、対象の認知、情報処理、ストレスレベル、および免疫応答も損なう。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、慢性的な不安障害を治療する。本明細書で使用される場合、「慢性的な」不安障害は再発する。不安障害の例としては限定されないが、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症関連障害(例えば、飛行機、高所、例えば蜘蛛/犬/蛇などの特定の動物、注射を受けること、血液などに関連する恐怖症、広場恐怖症)、分離不安障害、場面緘黙症、身体的な病気を原因とする不安、外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害(OCD)、物質誘発性不安障害などが挙げられる。
【0132】
一部の実施形態では、その必要のある対象は、疾患の影響を経験した後で、不安障害を発症する。疾患の影響としては、個人の当該疾患を有するという診断、個人の大切なヒトの当該疾患を有するという診断、当該疾患を原因とする社会的分離、当該疾患からの隔離、または当該疾患の結果としての社会的距離が挙げられる。一部の実施形態では、個人は、当該疾患の拡散を防止するために隔離される。一部の実施形態では、疾患は、COVID-19、SARS、またはMERSである。一部の実施形態では、対象は、失職、家の喪失、または職が見つからないことへの恐れの後に不安障害を発症する。
【0133】
一部の実施形態では、疾患または障害は、全般性不安障害(GAD)である。全般性不安障害は、過度の不安および憂慮、疲労、不穏、筋肉の痛みもしくは苦痛の増加、集中力の低下、いらだち、および/または睡眠困難を特徴とする。一部の実施形態では、全般性不安障害の対象は、関連するパニック発作を有しない。一部の実施形態では、本明細書の方法は、うつ病の症状も有する全般性不安障害を有する対象に提供される。一部の実施形態では、治療後、症状は、治療前と比較して、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下する。
【0134】
一部の実施形態では、疾患または障害は、社会不安障害である。本明細書で使用される場合、「社会不安障害」は、個人が他者による潜在的な凝視に晒される、一つ以上の社会的状況に対する著しい恐れまたは不安である。社会不安を誘発する状況の非限定的な例としては、社会的交流(例えば、会話、よく知らない人々と会うなど)、観察されること(例えば、飲食)、および他者の前で行動すること(例えば、スピーチを行う)が挙げられる。一部の実施形態では、社会不安障害は、公の場で話す、または活動することに限定される。一部の実施形態では、本開示の方法に従う治療によって、社会不安障害の症状が低下、または改善する。一部の実施形態では、治療後、症状は、治療前と比較して、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下する。
【0135】
一部の実施形態では、疾患または障害は、強迫性の障害であり、例えば、強迫性障害(OCD)、身体集中反復行動症、ためこみ症、ギャンブル障害、強迫的買いもの、強迫的インターネット使用、強迫的テレビゲーム、強迫的な性行動、過食症、運動中毒、身体醜形障害、ためこみ症、自傷性皮膚症、抜毛癖、擦りむき、物質誘発性強迫性障害および関連障害、または別の身体的な病気に起因する強迫性障害、またはそれらの組み合わせなどである。一部の実施形態では、疾患または障害は、強迫性障害(OCD)である。
【0136】
一部の実施形態では、不安障害の少なくとも一つの兆候または症状は、本明細書に開示される治療の後に改善される。一部の実施形態では、不安障害の兆候または症状は、日誌評価、医師もしくは介護人の評価、または臨床的尺度に従い測定される。一部の実施形態では、治療は、以下のうちの一つ以上において確かな改善をもたらす:State-Trait Anxiety Inventory(STAI)、Beck Anxiety Inventory(BAI)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、Generalized Anxiety Disorder questionnaire-IV(GADQ- IV)、Hamilton Anxiety Rating Scale(HARS)、Leibowitz Social Anxiety Scale(LSAS)、Overall Anxiety Severity and Impairment Scale(OASIS)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、Patient Health Questionnaire 4(PHQ-4)、Social Phobia Inventory(SPIN)、Brief Trauma Questionnaire(BTQ)、Combat Exposure Scale(CES)、Mississippi Scale for Combat-Related PTSD(M-PTSD)、Posttraumatic Maladaptive Beliefs Scale(PMBS)、Perceived Threat Scale(DRRI-2 Section:G)、PTSD Symptom Scale-Interview for DSM-5(PSS-I-5)、Structured Interview for PTSD(SI- PTSD)、Davidson Trauma Scale(DTS)、Impact of Event Scale-Revised(IES-R)、Posttraumatic Diagnostic Scale(PDS-5)、Potential Stressful Events Interview(PSEI)、Stressful Life Events Screening Questionnaire(SLESQ)、Spielberger’s Trait and Anxiety、Generalized Anxiety Dis- order 7-Item Scale、The Psychiatric Institute Trichotillomania Scale(PITS)、ThemgH Hairpulling Scale(MGH-HPS)、The NIMH Trichotillomania Severity Scale(NIMH-TSS)、The NIMH Trichotillomania Impairment Scale(NIMH- TIS)、The Clinical Global Impression(CGI)、the Brief Social Phobia Scale(BSPS)、The Panic Attack Questionnaire(PAQ)、Panic Disorder Severity Scale、Florida Obsessive-Compulsive Inventory(FOCI)、The Leyton Obsessional Inventory Survey Form、The Vancouver Obsessional Compulsive Inventory(VOCI)、The Schedule of Compulsions,Obsessions,and Pathological Impulses(SCOPI)、Padua Inventory-Revised(PI-R)、Quality of Life(QoL)、The Clinical Global Improvement(CGI)スケール、The Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale(Y-BOCS)、The Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale Second Edition(Y-BOCS-II)、The Dimensional Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale(DY-BOCS)、The National Institute of Mental Health- Global Obsessive-Compulsive Scale(NIMH-GOCS)、The Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale Self-Report(Y-BOCS-SR)、The Obsessive-Compulsive Inventory-Re- vised(OCI-R)、およびDimensional Obsessive-Compulsive Scale(DOCS)、またはそれらの組み合わせ。一部の実施形態では、本開示の方法に従い治療することによって、治療前と比較して、本明細書に記載される、または当分野に公知の日誌評価、医師もしくは介護人による評価、または臨床尺度のいずれか一つに従い、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の不安障害の改善がもたらされる。
【0137】
一部の実施形態では、疾患または障害は、注意力欠如障害(ADD)である。ADDは、少なくとも6ヶ月間連続して6つ以上の不注意症状(年長の10代の子供については5つ以上)を有するが、多動性/衝動性の兆候がない16歳未満の子供において最も一般的に診断される。不注意の症状には、注意を払いにくいこと、宿題などの長時間の知的作業を避けること、作業を継続しにくいこと、混乱しているまたは忘れやすい、話しかけられた際に耳を傾けない、細部への注意を払わないことが含まれるが、これらに限定されない。物事を頻繁に失い、不注意な間違いを犯し、指示に従うのに苦労する。一部の実施形態では、疾患または障害は、注意欠陥多動性障害(ADHD)である。ADHDは、不注意および/または多動性-衝動性の継続的なパターンによって特徴付けられる。多動性-衝動性症状には、多くの場合、座っているときにそわそわしたり身をよじったりする、着席が期待される状況で席を離れる、不適切なタイミングで走ったり、ダッシュしたり、よじ登ったりする、趣味に静かに取り組むことがでない、常に動いている、過度に話す、質問が完全に問われる前に答える、自分の順番を待つのが苦手、および会話や活動中に他者を中断したり、邪魔したりすること、が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0138】
一部の実施形態では、疾患または障害は、頭痛障害である。本明細書で使用される場合、「頭痛障害」という用語は、再発性の頭痛を特徴とする障害を指す。頭痛障害には、片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛、および慢性日常頭痛症候群が含まれる。
【0139】
一部の実施形態では、その必要のある対象において群発頭痛を治療する方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、群発頭痛の少なくとも一つの兆候または症状が、治療後に改善する。一部の実施形態では、群発頭痛の徴候または症状は、日誌評価、臨床医による身体的または精神的な評価、または神経学的検査に従って測定される。群発頭痛は、原発性頭痛障害であり、三叉神経性で自律神経性の頭痛に属する。群発頭痛の定義は、頭痛に対して同側性の少なくとも一つの自立神経性症状を伴う片側性頭痛である。発作は、主に三叉神経の第一枝‐第五脳神経における重度の片側性疼痛を特徴としており、それら神経の主な機能は、顔面への感覚および運動の神経支配を提供することである。発作は、著しい片側性の頭部の自律神経症状とも関連しており、対象はしばしば発作中に興奮と不穏を経験する。一部の実施形態では、群発頭痛の対象は、吐き気および/または嘔吐も経験する。一部の実施形態では、群発頭痛の対象は、片側性の疼痛、過剰な流涙、顔面紅潮、眼瞼下垂、縮瞳、眼の赤み、片眼もしくは両眼の下または周囲の腫脹、光に対する過敏、吐き気、興奮および不穏を経験する。
【0140】
一部の実施形態では、その必要のある対象において片頭痛を治療する方法が本明細書に開示される。片頭痛は、頭部の半側または両側に発症する中程度~重度の頭痛であり、拍動を感じ、2~72時間持続する。片頭痛の症状には、頭痛、吐き気、光に対する過敏、音に対する過敏、臭いに対する過敏、めまい(dizziness)、発話困難、めまい(vertigo)、嘔吐、発作、視界のゆがみ、疲労、または食欲低下が含まれる。一部の対象は、頭痛の数時間または数日前に前発症状期、および/または頭痛が消失した後に後発症状期も経験する。前発症状および後発症状には、自発運動の活発化、自発運動の低下、うつ、特定の食品への欲求、反復するあくび、疲労、ならびに首の凝りおよび/または疼痛が含まれる。一部の実施形態では、片頭痛は、前兆を伴わない片頭痛、前兆を伴う片頭痛、慢性的な片頭痛、腹性片頭痛、脳底動脈片頭痛、月経性片頭痛、眼筋麻痺性片頭痛、眼性(ocular)片頭痛、眼性(ophthalmic)片頭痛、または片麻痺性片頭痛である。一部の実施形態では、片頭痛は、前兆を伴わない片頭痛である。前兆を伴わない片頭痛は、頭痛を伴わない片頭痛性の頭痛が含まれる。一部の実施形態では、片頭痛は、前兆を伴う片頭痛である。前兆を伴う片頭痛は、通常は頭痛に先行する、または時に頭痛と同時に発生する一過性の局所神経学的症状を主に特徴とする。あまり一般的ではないが、前兆は頭痛を伴わずに発生する場合もあり、または片頭痛性ではない頭痛を伴い発生する場合がある。一部の実施形態では、片頭痛は、片麻痺性片頭痛である。片麻痺性片頭痛は、前兆を伴い、運動麻痺が付随する片頭痛である。一部の実施形態では、片麻痺性片頭痛は、家族性片麻痺性片頭痛または散発性片麻痺性片頭痛である。一部の実施形態では、片頭痛は、脳底動脈片頭痛である。脳底動脈片頭痛の対象は、片頭痛性の頭痛および前兆を有し、発話困難、目が回る(world spinning)、耳鳴り、または運動麻痺を含まない多くの他の脳底関連症状が付随する。一部の実施形態では、片頭痛は、月経性片頭痛である。月経性片頭痛は、月経の直前および月経中に発生する。一部の実施形態では、対象は、腹性片頭痛を有する。腹性片頭痛は、多くの場合、小児が経験する。腹性片頭痛は頭痛ではなく、胃痛である。一部の実施形態では、腹性片頭痛の対象は、片頭痛を発症する。一部の実施形態では、対象は、「眼性片頭痛(ocular migraine)とも呼ばれる」眼性片頭痛(ophthalmic migraine)を有する。眼性片頭痛を有する対象は、片頭痛性頭痛とともに、または片頭痛性頭痛の後に、短時間、片目に失明を経験する。一部の実施形態では、対象は、眼筋麻痺性片頭痛を有する。眼筋麻痺性片頭痛は、一つ以上の眼脳神経の不全麻痺に関連する片頭痛性頭痛の再発性の発作である。一部の実施形態では、治療を必要とする対象は、慢性片頭痛を経験する。本明細書で定義される場合、慢性片頭痛の対象は、月に15日を超える頭痛がある。一部の実施形態では、治療を必要とする対象は、一時的な片頭痛を経験する。本明細書で定義される場合、一時的な片頭痛の対象は、月に15日未満の頭痛がある。
【0141】
一部の実施形態では、その必要のある対象において、慢性日常性頭痛症候群(CDHS:chronic daily headache syndrome)を治療する方法が本明細書に開示される。CDHSの対象は、月に15日を超えて、四時間を超えて頭痛がある。一部の対象は、六ヶ月以上にわたり、これらの頭痛を経験する。CHDSは、一般的な集団の4%が罹患する。慢性片頭痛、慢性緊張型頭痛、新規発症持続性連日性頭痛、および薬物乱用頭痛が、慢性日常性頭痛の大部分を占める。
【0142】
一部の実施形態では、本開示の方法に従い治療した後、頭痛および/または関連する症状の頻度は、当該治療の前と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下する。
【0143】
一部の実施形態では、本開示の方法に従い治療した後、頭痛発作の長さは、当該治療の前と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下する。
【0144】
一部の実施形態では、頭痛障害の少なくとも一つの兆候または症状は、本明細書に開示される化合物の投与の後に改善される。一部の実施形態では、頭痛障害の兆候または症状は、日誌評価、医師もしくは介護人の評価、または臨床的尺度に従い測定される。一部の実施形態では、本開示の治療は、以下のうちの一つ以上において、確かな改善をもたらす:Visual Analog Scale、Numeric Rating Scale、Short Form Health Survey、Profile of Mood States、Pittsburgh Sleep Quality Index、Major Depression Inventory、Perceived Stress Scale、5-Level EuroQoL-5D、Headache Impact Test、ID-migraine、3-item screener、Minnesota Multiphasic Personality Inventory、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、50 Beck Depression Inventory(BDI;オリジナルBD151および第二版BDI-1152の両方)、9-item Patient Health Questionnaire(PHQ-9)、Migraine Disability Assessment Questionnaire(MI-DAS)、Migraine-Specific Quality of Life Questionnaire version 2.1(MSQ v2.1)、European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)、Short-form 36(SF-36)、またはそれらの組み合わせ。一部の実施形態では、本開示の方法に従い治療することによって、治療前と比較して、本明細書に記載される、または当分野に公知の日誌評価、医師もしくは介護人による評価、または臨床尺度のいずれか一つに従い、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の頭痛障害の改善がもたらされる。一部の実施形態では、頭痛障害の兆候または症状は、日誌評価、医師による身体的または精神的な評価、画像検査、脳波図、血液検査、神経学的検査、またはそれらの組み合わせに従って測定される。一部の実施形態では、血液検査は、血液化学および/またはビタミンを評価する。
【0145】
一部の実施形態では、疾患または障害は、物質使用障害である。本明細書の方法を使用して治療することができる物質嗜癖には、例えば、快楽を得るための麻薬や中毒性薬物などの中毒性の物質/剤に対する嗜癖が含まれる。中毒性の物質/剤の例としては、限定されないが、例えば、エチルアルコールなどのアルコール、ガンマヒドロキシ酪酸塩(GHB)、カフェイン、ニコチン、大麻(マリファナ)および大麻誘導体、アヘン剤および例えばヘロインなどの他のモルヒネ様オピオイドアゴニスト、フェンシクリジンおよびフェンシクリジン様化合物、例えばベンゾジアゼピンなどの催眠鎮静薬、メタカロン、メクロカロン、エタカロンおよびバルビツール酸塩、ならびに例えばコカインなどの精神刺激剤、アンフェタミンおよびアンフェタミン関連薬物、例えば、デキストロアンフェタミンおよびメチルアンフェタミンが挙げられる。中毒性の医薬品の例としては、例えば、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸塩、ならびにアルフェンタニル(alfentanil)、アリルプロジン(allylprodine)、アルファプロジン(alphaprodine)、アニレリジンベンジルモルヒネ(anileridine benzylmorphine)、ベジトラミド(bezitramide)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、クロニタゼン(clonitazene)、コデイン(codeine)、シクラゾシン(cyclazocine)、デソモルヒネ(desomorphine)、デキストロモラミド(dextromoramide)、デゾシン(dezocine)、ジアンプロミド(diampromide)、ジヒドロコデイン(dihydrocodeine)、ジヒドロモルヒネ(dihydromorphine)、ジメノキサドール(dimenoxadol)、ジメフェプタノール(dimepheptanol)、ジメチルチアンブテン(dimethylthiambutene)、ジオキサフェチル酪酸塩(dioxaphetyl butyrate)、ジピパノン(dipipanone)、エプタゾシン(eptazocine)、エトフェプタジン(ethoheptazine)、エチルメチルチアンブテン(ethylmethylthiambutene)、エチルモルヒネ(ethylmorphine)、エトニタゼンフェンタニル(etonitazene fentanyl)、ヘロイン(heroin)、ヒドロコドン(hydrocodone)、ヒドロモルフォン(hydromorphone)、ヒドロキシペチジン(hydroxypethidine)、イソメタドン(isomethadone)、ケトベミドン(ketobemidone)、レバロルファン(levallorphan)、レボルファノール(levorphanol)、レボフェナシルモルファン(levophenacylmorphan)、ロフェニタニル(lofenitanil)、メペリジン(meperidine)、メプタジノール(meptazinol)、メタゾシン(metazocine)、メタドン(methadone)、メトポン(metopon)、モルヒネ(morphine)、ミロフィン(myrophine)、ナルブフィン(nalbuphine)、ナルセイン(narceine)、ニコモルヒネ(nicomorphine)、ノルレボルファノール(norlevorphanol)、ノルメタドン(normethadone)、ナロルフィン(nalorphine)、ノルモルフィン(normorphine)、ノルピパノン(norpipanone)、オピウム(opium)、オキシコドン(oxycodone)、(OXYCONTIN(登録商標))、オキシモルフォン(oxymorphone)、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、フェナドキソン(phenadoxone)、フェノモルファン(phenomorphan)、フェナゾシン(phenazocine)、フェノペリジン(phenoperidine)、ピミノジン(piminodine)、ピリトラミド(piritramide)、プロフェプタジン(propheptazine)、プロメドール(promedol)、プロペリジン(properidine)、プロピラム(propiram)、プロポキシフェンスフェンタニル(propoxyphene sufentanil)、トラマドール(tramadol)およびチリジン(tilidine)を含む鎮痛薬が挙げられる。一部の実施形態では、疾患または障害は、アルコール使用障害(AUD)である。一部の実施形態では、疾患または障害は、ニコチン使用(例えば、喫煙)障害であり、療法は、例えば、禁煙に使用される。
【0146】
一部の実施形態では、本開示は、性的機能不全の管理を提供するものであり、限定するものではないが、性的欲求障害、例えば、性欲の減少;性的覚醒障害、例えば、欲求の欠如、覚醒の欠如、性交中の疼痛、および無オルガスム症などのオルガスム障害を引き起こすもの;ならびに、勃起不全;特に、心理的因子から生じる性的機能不全障害、を含み得る。
【0147】
一部の実施形態では、疾患または障害は、摂食障害である。本明細書で使用される場合、「摂食障害」という用語は、摂食習慣の異常または障害を特徴とする広範な精神的障害のいずれかを指す。摂食障害の非限定的な例としては、異食症、神経性無食欲症、神経性過食症、反すう性障害、回避/制限性食物摂取症、過食性障害、他の特定の飲食もしくは摂食の障害、特定されていない飲食もしくは摂食の障害、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、摂食障害は、異食症、神経性無食欲症、神経性過食症、反すう性障害、回避/制限性食物摂取症、過食性障害、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、慢性的な摂食障害を治療する。本明細書で使用される場合、「慢性的な」摂食障害は再発する。一部の実施形態では、摂食障害の少なくとも一つの兆候または症状は、本明細書に開示される化合物の投与の後に改善される。一部の実施形態では、摂食障害の兆候または症状は、日誌評価、医師もしくは介護人の評価、または臨床的尺度に従い測定される。臨床的尺度、日誌評価、および医師または介護者による評価の非限定的な例としては、Mini International Neuropsychiatric Interview(MINI)、McLean Screening Instrument for Borderline Personality Disorder(MSI-BPD)、Eating Disorder Examination(EDE)、Eating Disorder Questionnaire(EDE-Q)、Eating Disorder Examination Questionnaire Short Form(EDE-QS)、Physical Appearance State and Trait Anxiety Scale-State and Trait version(PASTAS)、Spielberger State-Trait Anxiety Inventory(STAI)、Eating Disorder Readiness Ruler(ED-RR)、Visual Analogue Rating Scales(VAS)、Montgomery-Asberg Depression Rating Scale(MADRS)、Yale-Brown Cornell Eating Disorder Scale(YBC-EDS)、Yale-Brown Cornell Eating Disorder Scale Self Report(YBC-EDS-SRQ)、Body Image State Scale(BISS)、Clinical impairment assessment (CIA)質問書、Eating Disorder Inventory(EDI)(例えば、第3版:EDI-3)、Five Dimension Altered States of Consciousness Questionnaire(5D-ASC)、Columbia-Suicide Severity Rating Scale (C-SSRS)、Life Changes Inventory(LCI)およびそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、本開示の方法に従い治療することによって、治療前と比較して、本明細書に記載される、または当分野に公知の日誌評価、医師もしくは介護人による評価、または臨床尺度のいずれか一つに従い、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の摂食障害の改善がもたらされる。
【0148】
一部の実施形態では、疾患または障害は、多発性硬化症(MS)である。MSは、中枢神経系への免疫介在性攻撃を伴う病因不明の慢性的、炎症性疾患である。ミエリンおよびミエリンを形成するオリゴデンドロサイトは、炎症性発作の主要な標的であるようであるが、軸索自体も損傷している。MS疾患の活性は、脳の磁気共鳴画像法(MRI)を含む頭蓋スキャン、障害の蓄積、ならびに再発の速度および重症度によって監視することができる。Poser基準によって決定される臨床的に明確なMSの診断は、時間的に、および位置的に分離されたCNSにおける脱髄を示唆する少なくとも二つの神経学的事象を必要とする。様々なMS疾患の段階および/またはタイプが、Multiple Sclerosis Therapeutics(Duntiz,1999)に記載されている。中でも、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)は、初期診断時に最も一般的な形態である。RRMSを有する多くの対象は、初期再発寛解過程を5~15年間有し、その後、二次進行型MS(SPMS)疾患過程に進む。再発は炎症および脱髄から生じるが、神経伝導の回復および寛解は、炎症の消失、脱髄軸索上のナトリウムチャネルの再分布、および再髄を伴う。一部の実施形態では、多発性硬化症は、再発性多発性硬化症である。一部の実施形態では、再発性多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症である。一部の実施形態では、本明細書の方法は、対象における多発性硬化症の症状を低減する。一部の実施形態では、症状は、MRIで監視される多発性硬化症疾患活性、再発率、身体障害の蓄積、再発の頻度、確認された疾患進行に対する調整の減少、再発が確認されるまでの時間の短縮、臨床的悪化の頻度、脳萎縮、神経機能障害、神経損傷、神経変性、神経アポトーシス、確認された進行のリスク、視覚機能の劣化、疲労、運動障害、認知障害、脳体積の減少、全脳MTRヒストグラムで観察される異常、全般的な健康状態の悪化、機能状態、生活の質、および/または作業中の症状の重症度、である。一部の実施形態では、本明細書の方法は、脳体積の減少を減少または阻害する。一部の実施形態では、脳体積は、脳容積変化率(PBVC)によって測定される。一部の実施形態では、本明細書の方法は、確認された疾患進行までの時間を増加させる。一部の実施形態では、確認された疾患進行までの時間は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、例えば少なくとも20~60%増加する。一部の実施形態では、本明細書の方法は、全脳MTRヒストグラムで観察される異常を減少させる。一部の実施形態では、身体障害の蓄積は、クルツケ拡張障害状態度スケール(EDSS)スコアによって測定される。一部の実施形態では、身体障害の蓄積は、クルツケ拡張障害状態度スケール(EDSS)スコアによって測定された確認された疾患進行までの時間により評価される。
【0149】
一部の実施形態では、疾患または障害は、神経炎症を特徴とする、または神経炎症に関連する疾患または障害である。本明細書に記載の治療は、例えば、アルツハイマー病および他の認知症亜型、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)ならびに神経炎症が疾患の病態生理や進行の特徴である他の疾患など、神経疾患および神経変性疾患に罹患している対象に認知的利益を提供し得る。例えば、新たな幻覚に関する研究/臨床的な証拠は、幻覚剤が、例えば、アルツハイマー病および他の形態の認知症などの神経変性疾患に罹患している対象において、疾患修飾治療として有用であり得ることを示している。Vann Jones,S.A.and O’Kelly,A.“Psychedelics as a Treatment for Alzheimer’s Disease Dementia”Front.Synaptic Neurosci.,21,August 2020;Kozlowska,U.,Nichols,C.,Wiatr,K.,and Figiel,M.(2021),“From psychiatry to neurology:Psychedelics as prospective therapeutics for neurodegenerative disorders”Journal of Neurochemistry,00,1-20;Garcia-Romeu,A.,Darcy,S.,Jackson,H.,White,T.,Rosenberg,P.(2021),“Psychedelics as Novel Therapeutics in Alzheimer’s Disease:Rationale and Potential Mechanisms”In:Current Topics in Behavioral Neurosciences.Springer、Berlin、Heidelbergを参照されたい。例えば、幻覚剤は、神経新生を刺激し、神経可塑的変化を誘発し、神経炎症を減少させると考えられている。したがって、一部の実施形態では、本開示の方法は、例えば、アルツハイマー病、認知症亜型、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、神経炎症が疾患病因に関連する神経障害および神経変性障害の治療に使用される。一部の実施形態では、本開示の方法は、アルツハイマー病の治療に使用される。一部の実施形態では、本開示の方法は、認知症の治療に使用される。一部の実施形態では、本開示の方法は、パーキンソン病の治療に使用される。一部の実施形態では、本開示の方法は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に使用される。上述のように、このような治療は、神経新生を刺激し、神経可塑的変化を誘発し、および/または神経炎症性利益(例えば、治療開始前と比較して低減された神経炎症)を提供し得、結果として、疾患進行を遅らせるか、または予防し、脳萎縮を遅らせるか、または逆転させ、それに関連する症状(例えば、アルツハイマー病および関連する認知症障害の場合の記憶喪失)を低減し得る。限定されるものではないが、経口および/または徐放性投与(例えば、皮下投与)に適合された医薬組成物は、かかる治療方法に適切であり、幻覚作用のない投与が好ましい。一部の実施形態では、本開示の方法に従い治療することによって、神経疾患または神経変性疾患に罹患している対象において、治療前と比較して、本明細書に記載される、または当分野に公知の日誌評価、医師もしくは介護人による評価、または臨床尺度のいずれか一つに従い、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の認知の改善がもたらされる。
【0150】
さらに、例えば、アルツハイマー病などの神経変性障害を含む慢性的および/または生命を脅かす疾患に関連する行動問題の多くは、本明細書に開示される化合物/塩形態を用いた治療から利益を得ることができる。実際に、アルツハイマー病、自己免疫性疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、および乾癬)、がん、冠動脈心疾患、糖尿病、てんかん、HIV/AIDS、甲状腺機能低下症、多発性硬化症、パーキンソン病、および脳卒中などの慢性疾患および/または生命を脅かす病気を有する患者にとって、うつ病、不安、またはストレスは普遍的にあり得る。例えば、うつ病は、疾患の結果としてアルツハイマー病において一般的であり、疾患自体に対するリスク因子である。うつ病、不安、またはストレスの症状は、疾患または病気の診断後に起こり得る。他の医学的疾患または病気と同時に、うつ病、不安またはストレスを有する患者は、それら両方のより重度の症状を有する可能性があり、病気およびうつ病、不安またはストレスは患者の身体的健康が改善しても継続する可能性がある。本明細書に記載される化合物/塩形態は、慢性的または生命を脅かす疾患または病気に関連するうつ病、不安および/またはストレスを治療するために使用することができる。
【0151】
したがって、一部の実施形態では、本明細書の方法は、神経疾患および神経変性疾患を含む、慢性的および/もしくは生命を脅かす疾患または障害に関連する症状、例えば、うつ病、不安、および/またはストレスを治療するために使用される。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、神経疾患および/または神経変性疾患の少なくとも一つの兆候または症状を低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、例えば、本明細書に記載される、または当分野で公知の日誌評価、臨床医もしくは介護者による評価、または臨床的尺度による評価のいずれか一つに従い、治療前に比較して、約5%~約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%以上、神経疾患および/もしくは神経変性疾患の少なくとも一つの兆候または症状(例えば、うつ病、不安および/またはストレス)を低下させる。
【0152】
一部の実施形態では、疾患または障害は、アルツハイマー病である。一部の実施形態では、本明細書の方法は、アルツハイマー病に関連するうつ病、不安、および/またはストレスの治療に使用される。一部の実施形態では、疾患または障害は、パーキンソン病である。一部の実施形態では、本明細書の方法は、パーキンソン病に関連するうつ病、不安、および/またはストレスの治療に使用される。一部の実施形態では、疾患または障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。一部の実施形態では、本明細書の方法は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連するうつ病、不安、および/またはストレスの治療に使用される。一部の実施形態では、疾患または障害は、がんに関連したうつ病および不安症である。上述のように、経口および/または徐放性投与は、特に活性成分(例えば、式(I)の化合物)の血中濃度が幻覚の閾値未満に保たれる場合に、このような用途に適している。
【0153】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、外傷性脳損傷(TBI)を含む脳損傷の治療に使用される。TBIは、外力によって引き起こされる脳への損傷であり、軽度の外傷性脳損傷(mTBI/脳振盪)から重度の外傷性脳損傷まで、重症度に基づいて分類することができる。TBIはまた、閉じた頭部損傷もしくは貫通性頭部損傷のいずれかである、または特定の場所で発生しているか、もしくは広範囲にわたって発生しているかなどの他の特徴として、機構によって分類され得る。TBIは、本明細書で治療され得る、身体的、認知的、社会的、情動的、および行動的症状をもたらし得る。診断マーカーおよび回復マーカーに使用される撮像技術の一部には、コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴撮像(MRI)が含まれる。
【0154】
一部の実施形態では、疾患または障害は、アスペルガー症候群を含む、自閉症スペクトラム障害などの神経学的および発達障害である。例えば、アスペルガー症候群は、不安薬で治療可能な自閉症スペクトラム障害のサブタイプである。自閉症スペクトラム障害の対象は、限定されないが、非社会的な刺激に対する選好、異常な非言語社会的行動、社会的刺激に対する注意力の低下、いらだち、不安(例えば、特に全般性不安および社会不安)、およびうつ病を含む、様々な兆候および症状を呈する場合がある。一部の実施形態では、自閉症スペクトラム障害は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders第5版(DSM-5)の基準および分類に基づく医学的診断を含む。現在のエビデンスは、社会行動の低下、不安、およびうつ病を含む、自閉症スペクトラム障害の行動非典型性を改善することを目的とした幻覚剤の使用を支持している(Markopoulos A,Inserra A,De Gregorio D,Gobbi G.Evaluating the Potential Use of Serotonergic Psychedelics in Autism Spectrum Disorder.Front Pharmacol.2022;12:749068を参照のこと)。自閉症スペクトラム障害の兆候および症状は、本明細書の方法を用いて治療され得る。
【0155】
一部の実施形態では、疾患または障害は、学習障害および認知障害を引き起こす遺伝的状態である。そのような遺伝的状態の例は、遺伝子のFragile X Messenger Ribonucleoprotein 1(FMR1)における変化が原因である脆弱X症候群であり、これは、ほとんどの男性および罹患した女性の約3分の1に軽度から中程度の知的障害を引き起こす可能性がある。FMR1遺伝子が自閉症スペクトラム障害の主要な遺伝的原因であるため、脆弱X症候群および自閉症スペクトラム障害は密接に関連している(Markopoulos A,Inserra A,De Gregorio D,Gobbi G.Evaluating the Potential Use of Serotonergic Psychedelics in Autism Spectrum Disorder.Front Pharmacol.2022;12:749068を参照のこと)。脆弱X症候群の対象は、不安、過活動行動(例えば、硬直および強迫作用)、注意欠陥障害、不機嫌さと攻撃性の異常、乏しい認識記憶、および/または自閉症スペクトラム障害の特徴を呈する場合があり、これらの兆候および症状は、本明細書の方法を用いて治療され得る。脆弱X症候群および自閉症スペクトラム障害の治療を目的とした、幻覚剤を使用する臨床試験が、現在行われている(ClinicalTrials.gov、番号NCT04869930)。
【0156】
一部の実施形態では、疾患または障害は、精神的苦悩、例えば、最前線の医療従事者における精神的苦悩である。
【0157】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物および組成物は、トゥレット症候群、トゥレット障害、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群(GTS)、または単にトゥレットもしくはTSと呼ばれる、トゥレット症候群を含むチック障害の治療に使用される。チック障害はまた、連鎖球菌感染(PANDAS)に関連する小児自己免疫障害、一過性チック障害、慢性チック障害、または別途指定されていないチック障害(NOS)であり得る。チック障害は、タイプ(運動性または音声性)およびチック持続時間(突発、急速、非律動的な動き)に基づいて精神障害の診断および統計マニュアル(DSM)において、または同様に世界保健機関(ICD-10コード)によって定義される。チックは、単純または複雑に分類される、不随意または半随意、突然、短い、断続的、反復的な動き(運動)または音(音声)である。例えば、瞬きまたは顔のゆがみなどの単純なチックは、比較的容易にカムフラージでき、ほとんど気付かない場合がある。身体の歪み、自己損傷的な行動、わいせつなジェスチャ、または社会的に不適切な言葉や語句の叫びなどの複雑なチックは、意図的な行動であるように見え、特に苦痛を与える。一過性のチック障害は、少なくとも四週間であるが12ヶ月未満で発生する複数の運動および/または音声チックを、一般的に特徴とする。慢性的なチック障害は、単一または複数の運動または音声のチックの両方ではない、いずれかによって、一般的に特徴付けられ、それらは一年以上存在する。トゥレット症候群は、(必ずしも同時にではないが)運動と音声のチックの両方が一年以上存在する場合に診断される。したがって、トゥレット症候群(TS)は、変動性運動および音声チックの存在を特徴とする慢性神経精神障害である。典型的な発症年齢は5~7歳である。罹患した子供は、仲間からのからかいの標的となり得、その結果、自尊心の低下、社会的孤立、学校での成績の低下、うつ病、不安をもたらし得る。社会的な恥ずかしさを引き起こすことに加えて、突然の、強いチックは、痛みを伴い、激しい頭頸部のチックは、圧迫性頸椎脊髄症などの二次的な神経障害を引き起こすことが報告されている。トゥレット症候群患者は、強迫性障害(OCD)、うつ病、および注意欠陥多動性障害(ADHD)のリスクも高い。チック障害NOSは、チックが存在するが、いかなる特定のチック障害の基準も満たさない場合に診断される。本開示の方法はまた、薬剤の副作用として誘発されるチック;自閉症に関連するチック;および、トゥレティズム(トゥレット症候群ではないトゥレットのような症状の存在(例えば、散発性、遺伝性、または神経変性障害などの別の疾患または状態の結果として))、の治療に使用することができる。
【0158】
一部の実施形態では、疾患または障害は、自律神経系(ANS)の状態を含み得る。
【0159】
一部の実施形態では、疾患または障害には、肺障害(例えば、喘息および慢性閉塞性肺障害(COPD))が含まれる。
【0160】
一部の実施形態では、疾患または障害には、心臓血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)が含まれる。
【0161】
一部の実施形態では、本開示は、異なる種類の疼痛の管理を提供し、これには例えば、難治性癌疼痛などの癌疼痛;神経因性疼痛;術後疼痛;オピオイド誘発性痛覚過敏およびオピオイド関連耐性;神経痛;術後/手術後の疼痛;複合性局所疼痛症候群(CRPS);ショック;四肢切断;重大な化学熱傷または熱傷;捻挫、靭帯断裂、骨折、創傷、およびその他の組織損傷;歯科手術、処置、および疾患;労働および配達;理学療法中;放射線中毒;後天性免疫不全症候群(AIDS);硬膜外(または硬膜外)線維症;整形外科的疼痛;背痛;背部手術の失敗および椎弓切除の失敗;座骨神経痛;疼痛を伴う鎌状赤血球クリーゼ;関節炎;自己免疫性疾患;難治性膀胱痛、例えば、帯状疱疹の疼痛またはヘルペスの疼痛などの、特定のウイルスに関連する疼痛;急性悪心、例えば、悪心を引き起こし得る疼痛、または重度の悪心をしばしば伴う腹痛;例えば前兆を伴う片頭痛;ならびに、うつ病(例えば、急性うつ病または慢性うつ病)、疼痛を伴ううつ病、アルコール依存、急性興奮、難治性喘息、急性喘息(例えば、無関係な疼痛状態は喘息を誘発する可能性がある)、てんかん、急性脳損傷および脳卒中、アルツハイマー病およびその他の障害を含む他の状態、を含むがこれに限定されない。疼痛は、場合によっては、疼痛を引き起こした傷害または病気が治癒または消失したにもかかわらず、また場合によっては、以前の医薬品および/または治療にもかかわらず、数週間から数年続く持続性または慢性の疼痛であり得る。さらに、本開示は、これらのタイプの疼痛または状態の任意の組み合わせの治療/管理を含む。
【0162】
一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、急性の突出痛または慢性的な疼痛の状態で発生する可能性があるワインドアップに関連する疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、例えば、難治性癌痛などの癌疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、術後の疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、整形外科的疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、背痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、神経因性疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、歯痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される状態は、うつ病である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、オピオイド耐性患者における慢性痛である。
【0163】
一部の実施形態では、疾患または障害は、関節炎である。関節炎のタイプには、変形性関節炎、関節リウマチ、小児関節炎、線維筋痛症、痛風、および狼瘡が含まれる。一部の実施形態では、疾患または障害は、変形性関節炎である。一部の実施形態では、疾患または障害は、関節リウマチである。一部の実施形態では、疾患または障害は、小児関節炎である。一部の実施形態では、疾患または障害は、痛風である。一部の実施形態では、疾患または障害は、狼瘡である。一部の実施形態では、疾患または障害は、線維筋痛症である。線維筋痛症は、疲労、睡眠、記憶、気分の問題を伴う広範な筋骨格痛を特徴とする障害である。線維筋痛症は、痛みのあるシグナル伝達および痛みのないシグナル伝達を伴う脳および脊髄プロセスに影響を与えることによって、痛みのある感覚を増幅すると考えられる。症状は、多くの場合、身体的外傷、手術、感染、または著しい心理的ストレスなどの事象の後に始まる。他の事例では、症状は経時的に徐々に蓄積し、単一のトリガ事象はない。女性は男性よりも線維筋痛症を発症する可能性が高い。線維筋痛症を有する多くの人々はまた、緊張性頭痛、顎関節(TMJ)障害、過敏性腸症候群、不安およびうつ病を有する。
【0164】
一部の実施形態では、疾患または障害は、炎症性腸疾患(IBD)である。IBDはクローン病および潰瘍性大腸炎の二つの状態のための用語であり、胃腸(GI)管の慢性炎症を特徴とし、このような長期間の炎症はGI管への損傷をもたらす。IBDに罹患している対象は、持続的な下痢、腹部痛、直腸出血/血便、体重減少、および疲労を経験し得る。IBDは診断されてもよく、治療は、当業者に公知の内視鏡検査、大腸内視鏡検査、造影X線検査、MRI、コンピュータ断層撮影(CT)、便試料、および血液検査のうちの一つ以上を使用して、監視されてもよい。
【0165】
一部の実施形態では、疾患または障害は、ナルコレプシー、不眠症、悪夢障害、睡眠時無呼吸症、中枢性睡眠時無呼吸症、閉塞性睡眠時無呼吸症、低呼吸症、睡眠関連低換気症、むずむず脚症候群、および時差ぼけなどの睡眠障害である。一部の実施形態では、疾患または障害は、ナルコレプシーである。
【0166】
一部の実施形態では、本開示は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)活性を調節することによって疾患または状態を治療する方法に関し、方法は、有効量の本明細書に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩(例えば、式(I)の化合物)を、それを必要とする対象に投与することを含む。一部の実施形態では、疾患または状態は、以下から選択される:レボドパ誘発性ジスキネジア;認知症(例えば、アルツハイマー型認知症)、耳鳴、治療抵抗性うつ病(TRD)、大うつ病性障害、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、神経因性疼痛、アルツハイマー病に起因するかそれに関連する興奮、偽球効果、自閉症、眼球機能、全般性不安障害、アルツハイマー病、統合失調症、糖尿病性神経障害、急性疼痛、うつ病、双極性うつ病、自殺傾向、神経因性疼痛、または心的外傷後ストレス障害(PTSD)。一部の実施形態では、疾患または状態は、精神障害または精神障害(例えば、統合失調症、気分障害、物質誘発性精神病、大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、双極性うつ病(BDep)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、自殺念慮、不安、強迫性障害(OCD)、および治療抵抗性うつ病(TRD))である。他の実施形態では、疾患または状態は、神経学的障害(例えば、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、または全身性エリテマトーデス(SLE))である。
【0167】
一部の実施形態では、本開示は、治療有効量の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする対象に眼投与することによって、ブドウ膜炎、角膜疾患、虹彩炎、虹彩毛様体炎、緑内障、および白内障などの眼疾患を治療する方法に関する。例えば、本明細書の化合物/塩形態は、溶液、懸濁液、軟膏、エマルション、ゲル形成溶液、溶液用粉末、ゲル、眼内挿入物、およびインプラントの形態で眼科的に投与され得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、点眼薬の形態で投与される。
【0168】
投与する医師は、治療される障害または状態の一つ以上の症状の観察に基づいて、本明細書に記載される化合物塩形態のうちのいずれかの量およびタイミングを調整することによって、予防的または治療的な治療方法を提供することができる。
【0169】
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0170】
投与は、全身的または局所的であり得る。一部の実施形態では、哺乳動物への投与は、本開示の化合物の全身放出(例えば、血流内への)をもたらす。投与方法は、例えば、ネブライザまたは吸入器を介した吸入;経口;胃および直腸の経腸経路;経皮および皮内などの局所投与;および、非経口投与、を含み得るが、これらに限定されない。
【0171】
本開示の化合物は、投与直後に観察される高薬物濃度を防止する一方で、活性化合物の脳レベルも強化する有利な代謝分解プロファイルを有し、その結果、一部の実施形態では、治療用量が低減され得る。したがって、(塩形態の)式(I)の化合物は、セロトニン作動性であるが、持続的な治療効果を達成するための、例えば、心臓弁膜症に関連する5-HT2B受容体の活性化に関連する毒性などの低減された毒性を伴う精神活性以下の濃度で、投与され得る(Rothman,R.B.,and Baumann,M.H.,2009,Serotonergic drugs and valvular heart disease,Expert Opin Drug Saf 8,317-329)。結果として、式(I)の化合物の塩形態は、マイクロドージングに好適であり得る。
【0172】
一部の実施形態では、本開示の薬学的に許容可能な塩形態は、独立した療法として使用され得る。一部の実施形態では、本開示の薬学的に許容可能な塩形態は、補助/併用療法として使用され得る。一部の実施形態では、障害を有する対象は、本開示の化合物の薬学的に許容可能な塩、ならびに少なくとも一つの追加の療法および/または治療剤を投与される。一部の実施形態では、追加の療法および/または治療剤の投与は、本開示の薬学的に許容可能な塩形態の投与の前に行われる。一部の実施形態では、追加の療法および/または治療剤の投与は、本開示の薬学的に許容可能な塩形態の投与の後に行われる。一部の実施形態では、追加の療法および/または治療剤の投与は、本開示の薬学的に許容可能な塩形態の投与と同時に行われる。一部の実施形態では、追加の療法は、抗うつ薬、抗けいれん薬、ジメシル酸リスデキサンフェタミン、抗精神病薬、抗不安薬、抗炎症薬、ベンゾジアゼピン、鎮痛薬、心血管薬、オピオイドアンタゴニスト、またはそれらの組み合わせである。
【0173】
一部の実施形態では、追加の療法は、ベンゾジアゼピンである。一部の実施形態では、ベンゾジアゼピンは、ジアゼパムまたはアルプラゾラムである。
【0174】
一部の実施形態では、追加の療法は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである。一部の実施形態では、NMDA受容体アンタゴニストは、ケタミンである。一部の実施形態では、NMDA受容体アンタゴニストは、亜酸化窒素である。
【0175】
一部の実施形態では、追加の療法は、抗うつ薬である。一部の実施形態では、抗うつ薬は、例えば、神経伝達物質受容体で、他の分子の反応性に影響を及ぼす相互作用を介して、神経伝達物質受容体に間接的に影響を及ぼす。一部の実施形態では、抗うつ薬は、アゴニストである。一部の実施形態では、抗うつ薬は、アンタゴニストである。一部の実施形態では、抗うつ薬は、二つ以上のタイプの神経伝達物質受容体に(直接的または間接的に)作用する。一部の実施形態では、抗うつ薬は、ブプロプリオン(buproprion)、シタロプラム(citalopram)、デュロキセチン(duloxetine)、エスシタロプラム(escitalopram)、フルオキセチン(fluoxetine)、フルボキサミン(fluvoxamine)、ミルナシプラン(milnacipran)、ミルタザピン(mirtazapine)、パロキセチン(paroxetine)、レボキセチン(reboxetine)、セルトラリン(sertraline)、およびベンラファキシン(venlafaxine)から選択される。
【0176】
一部の実施形態では、抗うつ薬は、三環式抗うつ薬(TCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニンおよびノルドレナリンの再取り込み阻害剤(SNRI)、ドーパミン再取り込み阻害剤(DRI)、ノルドレナリン再取り込みモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)であり、阻害剤(NRU)、ドーパミン、セロトニンおよびノルドレナリンの再取り込み阻害剤(DSNRI)、モノアミンオキシダーゼA型の可逆的阻害剤(RIMA)、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、抗うつ薬は、TCAである。一部の実施形態では、TCAは、イミプラミン(imipramine)またはクロミプラミン(clomipramine)である。一部の実施形態では、抗うつ薬は、SRIである。一部の実施形態では、SSRIは、エスシタロプラム(escitalopram)、パロキセチン(paroxetine)、セルトラリン(sertraline)、フルボキサミン(fluvoxamine)、フルオキセチン(fluoxetine)、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、SNRIは、ベンラファキシン(venlafaxine)である。一部の実施形態では、追加の療法は、プレガバリン(pregabalin)である。一部の実施形態では、本開示の薬学的に許容可能な塩形態は、モノアミンオキシダーゼA型(RIMA)の可逆的阻害剤と組み合わせて投与される。かかる組み合わせは、同じ剤形で投与されてもよく、または別個の剤形で同時投与されてもよい。こうした組み合わせは、脱アミノ化/酸化プロセスなどのMAO酵素によって媒介される酵素分解を最小化することによって、式(I)の化合物の生物学的利用能(例えば、経口生物学的利用能)を改善し得る。モノアミンオキシダーゼA型(RIMA)の可逆的阻害剤の例としては、以下に限定されないが、モクロベミド、トラキサトン、ブロファロミン、カロキサゾン、エプロベミド、メチレンブルー、メトラリンドール、ミナプリン、ハルマリン、ハルミン、ロシリジン、アミフラミン、シモキサトン、セルクロレミン、CX157、ベフロキサシントン、エスプリロン、テトリンドール5-(2-アミノプロピル)インドール(5-IT)、α-メチルトリプタミン(AMT)、天然源(例えば、シリアン・ルー、ターメリック、クルクミン)が挙げられる。
【0177】
一部の実施形態では、追加の療法は、抗けいれん薬である。一部の実施形態では、抗けいれん薬は、ガバペンチン(gabapentin)、カルバマゼピン(carbamazepine)、エトスクシミド(ethosuximide)、ラモトリギン(lamotrigin)、フェルバメート(felbamate)、トピラマート(topiramate)、ゾニサミド(zonisamide)、チアガビン(tiagabine)、オクスカルバゼピン(oxcarbazepine)、レベチラセタム(levetiracetam)、ジバルプロエクスナトリウム(divalproex sodium)、フェニトイン(phenytoin)、ホスフェニトイン(fosphenytoin)である。一部の実施形態では、抗けいれん薬は、トピラマートである。
【0178】
一部の実施形態では、追加の療法は、抗精神病薬である。一部の実施形態では、抗精神病薬は、フェノチアジン(phenothiazine)、ブチロフェノン(butryophenone)、チオキサンテン(thioxanthene)、クロザピン(clozapine)、リスペリドン(risperidone)、オランザピン(olanzapine)もしくはセルチンドール(sertindole)、クエチアピン(quetiapine)、アリピプラゾール(aripiprazole)、ゾテピン(zotepine)、ペロスピロン(perospirone)、ニューロキニン-3アンタゴニスト(neurokinin-3 antagonist)、例えば、オサネタント(osanetant)およびタルネタント(talnetant)、リモナバント(rimonabant)、またはそれらの組み合わせである。
【0179】
一部の実施形態では、追加の療法は、抗炎症薬である。一部の実施形態では、抗炎症薬は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)、ステロイド、アセトアミノフェン(COX-3阻害剤)、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素アンタゴニスト、ベータブロッカー、抗ヒスタミン薬、ヒスタミン2受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ-4アンタゴニスト、サイトカインアンタゴニスト、CD44アンタゴニスト、抗腫瘍剤、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA阻害剤(スタチン)、エストロゲン、アンドロゲン、抗血小板剤、抗うつ薬、ヘリコバクター・ピロリ阻害剤、プロトンポンプ阻害剤、チアゾリジンジオン、二重作用化合物、またはその組み合わせである。
【0180】
一部の実施形態では、追加の療法は、抗不安薬である。一部の実施形態では、抗不安薬は、アルプラゾラム(alprazolam)、アルファブロッカー、抗ヒスタミン、バルビツール酸塩、ベータブロッカー、ブロマゼパム(bromazepam)、カルバミン酸塩、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、クロナゼパム(clonazepam)、クロラゼプ酸塩(clorazepate)、ジアゼパム(diazepam)、フルラゼパム(flurazepam)、ロラゼパム(lorazepam)、オピオイド、オキサゼパム(oxazepam)、テマゼパム(temazepam)、またはトリアゾラム(triazolam)から選択される。
【0181】
一部の実施形態では、追加の療法は、オピオイドアンタゴニストである。オピオイドアンタゴニストの非限定的な例としては、ナロキソン(naloxone)、ナルトレキソン(naltrexone)、ナルメフェン(nalmefene)、ナロルフィン(nalorphine)、ナロルフィンジニコチネート(nalrphine dinicotinate)、レバロルファン(levallrphan)、サミドロファン(samidorphan)、ナロデイン(nalodeine)、アルビモパン(alvimopan)、メチルナルトレキソン(methylnaltrexone)、ナロキセゴール(naloxegol)、6-ナロトレキソール(6-naltrexol)、アクセロプラン(axelopran)、ベベノプラン(bevenopran)、メチルサミドロファン(methylsamidorphan)、ナルデメジン(naldemedine)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、デコジン(decozine)、ブトルファノール(butorphanol)、レボルファノール(levorphanol)、ナルブフィン(nalbuphine)、ペンタゾシン(pentazocine)、およびフェナゾシン(phenazocine)が挙げられる。
【0182】
一部の実施形態では、追加の療法は、心血管薬である。心血管薬の非限定的な例としては、ジゴキシンまたは(3β,5β,12β)-3-[(O-2,6-ジデオキシ-β-D-リボ-ヘキソピラノシル-(1→4)-O-2,6-ジデオキシ-β-D-リボ-ヘキソピラノシル-(1→4)-2,6-ジデオキシ-β-D-リボヘキソピラノシル)オキシ]-12,14-ジヒドロキシ-カード-20(22)-エノリド、リシノプリル(lisinopril)、カプトプリル(captopril)、ラミプリル(ramipril)、トランドラプリル(trandolapril)、ベナゼプリル(benazepril)、シラザプリル(cilazapril)、エナラプリル(enalapril)、モエキシプリル(moexipril)、ペリンドプリル(perindopril)、キナプリル(quinapril)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、エナラプリラート(enalaprilate)、キナプリル(quinapril)、ペリンドプリル(perindopril)、アピキサバン(apixaban)、ダビガトラン(dabigatran)、エドキサバン(edoxaban)、ヘパリン(heparin)、リバロキサバン(rivaroxaban)、ワーファリン(warfarin)、アスピリン(aspirin)、クロピドグレル(clopidogrel)、ジピリダモール(dipyridamole)、プラスグレル(prasugrel)、チカグレロル(ticagrelor)、アジルサルタン(azilsartan)、カンデサルタン(candesartan)、エプロサルタン(eprosartan)、イルベサルタン(irbesartan)、ロサルタン(losartan)、オルメサルタン(olmesartan)、テルミサルタン(telmisartan)、バルサルタンスカウビトリル(valsartanscaubitril)、アセブトロール(acebutolol)、アテノロール(atenolol)、ベタキソロール(betaxolol)、ビソプロロール(bisoprolol)、メトプロロール(metoprolol)、ナドロール(nadolol)、プロプラノロール(propranolol)、ソタロール(sotalol)、アムロジピン(amlodipine)、ジルチアゼム(diltiazem)、フェロジピン(felodipine)、ニフェジピン(nifedipine)、ニモジピン(nimodipine)、ニソリジピン(nisolidipine)、ベラパミル(verapamil)、スタチン(statins)、ニコチン酸、利尿薬、血管拡張薬、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0183】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも一つの療法を投与される。療法の非限定的な例としては、経頭蓋磁気刺激、認知行動療法、対人関係療法、弁証法的行動療法、マインドフルネス法、または受容、献身療法、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0184】
医薬組成物
式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩および薬学的に許容可能なビヒクルを含む、医薬組成物も本明細書に開示される。医薬組成物は、一つ、または二つ以上の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含有し得る。
【0185】
「薬学的に許容可能なビヒクル」は、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されたか、またはヒトなどの哺乳動物における使用のために米国薬局方もしくは他の一般的に認められた薬局方に記載されているビヒクルであり得る。本明細書に記載の用語「ビヒクル」は、本開示の化合物またはその塩形態が、それらと共に、哺乳動物への投与のために製剤化される希釈剤、補助剤、賦形剤、担体、または任意の補助的または補助的な成分を指す。かかる薬学的ビヒクルは、石油、動物、植物、またはピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの合成起源のものを含む、水および油などの固体または液体であってもよい。薬学的ビヒクルは、水、生理食塩水、ジュース(例えば、フルーツジュース)、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。薬学的ビヒクルは、例えば、吸入を介した投与のための担体として作用するように、一つ以上のガスを含み得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、味覚マスキング剤、着色剤、および他の薬学的添加剤が、例えば本明細書において以下に明記されるものなどの開示された組成物に含まれ得る。
【0186】
医薬組成物は、塩形態の式(I)の単一の化合物、または遊離塩基もしくは塩形態のいずれかの式(I)の化合物の混合物を含んでもよく、すなわち、医薬組成物は、開示された化合物のアイソトポログ混合物から形成されてもよい。一部の実施形態では、式(I)の対象化合物は、医薬組成物中に存在する式(I)の化合物のアイソトポログの総重量に基づいて、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%の純度で医薬組成物中に存在し得る。例えば、対象化合物としてDMT d-10塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N,-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-dの塩形態)を用いて製剤化された医薬組成物は、対象化合物のアイソトポログ、例えば、DMT d-9、DMT d-8などを、遊離塩基または塩形態、立体異性体、溶媒和物、またはそれらの混合物として、更に含み得る。一部の実施形態では、組成物は、遊離塩基または塩形態のいずれかの化合物の他のアイソトポログを実質的に含まず、例えば、組成物は、化合物の他のアイソトポログの20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1または0.5モルパーセント未満を有する。
【0187】
一部の実施形態では、重水素を有する化合物中の任意の位置は、水素中に天然に存在する割合(約0.016原子%)よりも多い最小重水素結合を有する。一部の実施形態では、重水素を有する化合物中の任意の位置は、重水素化部位で少なくとも10原子%、少なくとも20原子%、少なくとも25原子%、少なくとも30原子%、少なくとも40原子%、少なくとも45原子%、少なくとも50原子%、少なくとも60原子%、少なくとも70原子%、少なくとも80原子%、少なくとも90原子%、少なくとも95原子%、少なくとも99原子%の最小重水素組み込みを有する。
【0188】
一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能なビヒクルと、式(I)の少なくとも二つの化合物の薬学的に許容可能な塩(式(I)の少なくとも二つの化合物の薬学的に許容可能な塩は、「活性塩混合物」と称される)とを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、以下を含む活性塩混合物を含む:(i)DMT d-10の薬学的に許容可能な塩、すなわち、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩、(ii)DMT d-9の薬学的に許容可能な塩、すなわち、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩、および任意で(iii)DMT d-8の薬学的に許容可能な塩、すなわち2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6)、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-2,2-d(I-7)、および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2-d(I-12)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩。
【0189】
一部の実施形態では、活性塩混合物はフマル酸塩混合物であり、列挙される塩形態はフマル酸塩である。一部の実施形態では、活性塩混合物は安息香酸塩混合物であり、列挙される塩形態は安息香酸塩である。一部の実施形態では、活性塩混合物はサリチル酸塩混合物であり、列挙される塩形態はサリチル酸塩である。一部の実施形態では、活性塩混合物はコハク酸塩混合物であり、列挙される塩形態はコハク酸塩である。
【0190】
一部の実施形態では、医薬組成物は、以下を含む活性塩混合物を含む;(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、60重量%~98重量%、65重量%~97重量%、70重量%~96重量%、75重量%~95重量%、80重量%~94重量%、85重量%~93重量%、90重量%~92重量%、またはその間の任意の範囲のDMT d-10の薬学的に許容可能な塩、すなわち、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩、(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~40重量%、3重量%~35重量%、4重量%~30重量%、5重量%~25重量%、6重量%~20重量%、7重量%~15重量%、8重量%~10重量%、またはその間の任意の範囲のDMT d-9の薬学的に許容可能な塩、すなわち、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩の重量和、ならびに(iii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満、または0重量%、またはその間の任意の範囲のDMT d-8の薬学的に許容可能な塩、すなわち、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6)、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-2,2-d(I-7)、および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2-d(I-12)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩の重量和。
【0191】
例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、以下を含む活性塩混合物を含む:(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、90重量%~98重量%、またはそれらの間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の薬学的に許容可能な塩、ならびに(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~10重量%、またはそれらの間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11)の一つ以上の薬学的に許容可能な塩。一部の実施形態では、活性塩混合物(およびそれ故に医薬組成物)は、DMT d-8の薬学的に許容可能な塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6)、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-2,2-d(I-7)、および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2-d(I-12)のうちの一つ以上の薬学的に許容可能な塩)、DMT d-7の薬学的に許容可能な塩、DMT d-6の薬学的に許容可能な塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン(I-4)の薬学的に許容可能な塩)、DMT d-5の薬学的に許容可能な塩、DMT d-4の薬学的に許容可能な塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-5)の塩)、DMT d-3の薬学的に許容可能な塩、DMT d-2の薬学的に許容可能な塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1-d(I-2)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-2,2-d(I-3)のうちの一つ以上の塩)、DMT d-1の薬学的に許容可能な塩、およびDMTの薬学的に許容可能な塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1)の塩)の検出不可能な量を含む、またはさもなくばこれらを実質的に含まない。例えば、一部の実施形態では、(i)または(ii)に列挙されていない式(I)の化合物のアイソトポログの薬学的に許容可能な塩、例えば、DMT d-8の薬学的に許容可能な塩、DMT d-7の薬学的に許容可能な塩、DMT d-6の薬学的に許容可能な塩、DMT d-5の薬学的に許容可能な塩、DMT d-4の薬学的に許容可能な塩、DMT d-3の薬学的に許容可能な塩、DMT d-2の薬学的に許容可能な塩、DMT d-1の薬学的に許容可能な塩、およびDMTの薬学的に許容可能な塩、の重量は、活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、1重量%未満、0.75重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.25重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または0重量%である。
【0192】
一実施例では、医薬組成物は、以下を含む活性塩混合物を含む:(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、90重量%~98重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8a)のフマル酸塩、および(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~10重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10a)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11a)の一つ以上のフマル酸塩。一部の実施形態では、活性塩混合物(およびそれ故に医薬組成物)は、DMT d-8のフマル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6a)、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-2,2-d(I-7a)、および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N、N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2-d(I-12a)のうちの一つ以上のフマル酸塩)、DMT d-7のフマル酸塩、DMT d-6のフマル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン(I-4a)のフマル酸塩)、DMT d-5のフマル酸塩、DMT d-4のフマル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I‐5a)のフマル酸塩)、DMT d-3のフマル酸塩、DMT d-2のフマル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1-d((I-2a)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-2,2-d(I‐3a)のうちの一つ以上のフマル酸塩)、DMT d-1のフマル酸塩、およびDMTのフマル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1a)のフマル酸塩)の検出可能な量を含まない、または実質的にこれらを含まない。例えば、一部の実施形態では、(i)または(ii)に列挙されていない式(I)の化合物のアイソトポログのフマル酸塩、例えば、DMT d-8の安息香酸塩、DMT d-7のフマル酸塩、DMT d-6のフマル酸塩、DMT d-5のフマル酸塩、DMT d-4のフマル酸塩、DMT d-3のフマル酸塩、DMT d-2のフマル酸塩、DMT d-1のフマル酸塩、およびDMTのフマル酸塩、の重量は、活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、1重量%未満、0.75重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.25重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または0重量%である。
【0193】
別の実施例では、医薬組成物は、以下を含む活性塩混合物を含む:(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、90重量%~98重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)の安息香酸塩、および(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~10重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10b)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11b)の一つ以上の安息香酸塩。一部の実施形態では、活性塩混合物(およびそれ故に医薬組成物)は、DMT d-8の安息香酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6b)、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-2,2-d(I-7b)、および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N、N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2-d(I-12b)のうちの一つ以上の安息香酸塩)、DMT d-7の安息香酸塩、DMT d-6の安息香酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン(I-4b)の安息香酸塩)、DMT d-5の安息香酸塩、DMT d-4の安息香酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I‐5b)の安息香酸塩)、DMT d-3の安息香酸塩、DMT d-2の安息香酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1-d((I-2b)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-2,2-d(I‐3b)のうちの一つ以上の安息香酸塩)、DMT d-1の安息香酸塩、およびDMTの安息香酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1b)の安息香酸塩)の検出可能な量を含まない、または実質的にこれらを含まない。例えば、一部の実施形態では、(i)または(ii)に列挙されていない式(I)の化合物のアイソトポログの安息香酸塩、例えば、DMT d-8の安息香酸塩、DMT d-7の安息香酸塩、DMT d-6の安息香酸塩、DMT d-5の安息香酸塩、DMT d-4の安息香酸塩、DMT d-3の安息香酸塩、DMT d-2の安息香酸塩、DMT d-1の安息香酸塩、およびDMTの安息香酸塩、の重量は、活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、1重量%未満、0.75重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.25重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または0重量%である。
【0194】
別の実施例では、医薬組成物は、以下を含む活性塩混合物を含む:(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、90重量%~98重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8c)のサリチル酸塩、および(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~10重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10c)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11c)の一つ以上のサリチル酸塩。一部の実施形態では、活性塩混合物(およびそれ故に医薬組成物)は、DMT d-8のサリチル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6c)、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-2,2-d(I-7c)、および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N、N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2-d(I-12c)のうちの一つ以上のサリチル酸塩)、DMT d-7のサリチル酸塩、DMT d-6のサリチル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン(I-4c)のサリチル酸塩)、DMT d-5のサリチル酸塩、DMT d-4のサリチル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I‐5c)のサリチル酸塩)、DMT d-3のサリチル酸塩、DMT d-2のサリチル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1-d((I-2c)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-2,2-d(I‐3c)のうちの一つ以上のサリチル酸塩)、DMT d-1のサリチル酸塩、およびDMTのサリチル酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1c)のサリチル酸塩)の検出可能な量を含まない、または実質的にこれらを含まない。例えば、一部の実施形態では、(i)または(ii)に列挙されていない式(I)の化合物のアイソトポログのサリチル酸塩、例えば、DMT d-8のサリチル酸塩、DMT d-7のサリチル酸塩、DMT d-6のサリチル酸塩、DMT d-5のサリチル酸塩、DMT d-4のサリチル酸塩、DMT d-3のサリチル酸塩、DMT d-2のサリチル酸塩、DMT d-1のサリチル酸塩、およびDMTのサリチル酸塩、の重量は、活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、1重量%未満、0.75重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.25重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または0重量%である。
【0195】
さらに別の実施例では、医薬組成物は、以下を含む活性塩混合物を含む:(i)活性塩混合物の総重量に基づいて、90重量%~98重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8d)のコハク酸塩、および(ii)活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、2重量%~10重量%、またはその間の任意の範囲の2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2,2-d(I-10d)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2-d(I-11d)の一つ以上のコハク酸塩。一部の実施形態では、活性塩混合物(およびそれ故に医薬組成物)は、DMT d-8のコハク酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6d)、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-2,2-d(I-7d)、および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N、N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,2-d(I-12d)のうちの一つ以上のコハク酸塩)、DMT d-7のコハク酸塩、DMT d-6のコハク酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン(I-4d)のコハク酸塩)、DMT d-5のコハク酸塩、DMT d-4のコハク酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I‐5d)のコハク酸塩)、DMT d-3のコハク酸塩、DMT d-2のコハク酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1-d((I-2d)および/または2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-2,2-d(I‐3d)のうちの一つ以上のコハク酸塩)、DMT d-1のコハク酸塩、およびDMTのコハク酸塩(2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1d)のコハク酸塩)の検出可能な量を含まない、または実質的にこれらを含まない。例えば、一部の実施形態では、(i)または(ii)に列挙されていない式(I)の化合物のアイソトポログのコハク酸塩、例えば、DMT d-8のコハク酸塩、DMT d-7のコハク酸塩、DMT d-6のコハク酸塩、DMT d-5のコハク酸塩、DMT d-4のコハク酸塩、DMT d-3のコハク酸塩、DMT d-2のコハク酸塩、DMT d-1のコハク酸塩、およびDMTのコハク酸塩、の重量は、活性塩混合物の総重量に基づいて、合計で、1重量%未満、0.75重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.25重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または0重量%である。
【0196】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、化学的に純粋であり、例えば、UPLCまたはHPLCにより、90%、92%、94%、96%、97%、98%、または99%を超える化学的純度を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、UPLCまたはHPLCにより測定された場合、1%を超える、0.5%を超える、0.4%を超える、0.3%を超える、または0.2%を超える、単一不純物を有しない。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、UPLCまたはHPLCにより、97面積%を超える、98面積%を超える、または99面積%を超える、化学的純度を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、UPLCまたはHPLCにより測定された場合、1面積%を超える、0.5面積%を超える、0.4面積%を超える、0.3面積%を超える、または0.2面積%を超える、単一不純物を有しない。
【0197】
医薬組成物は、本開示のエナンチオマー的に純粋な化合物、例えば、式(I)の化合物、または化合物のラセミ混合物を用いて製剤化され得る。本明細書に記載されるように、式(I)のラセミ化合物は、異性体の一つのモル比(約48~約52モル%、または約1:1比))に基づいて、R-およびS-立体異性体の約50%を含有し得る。一部の実施形態では、組成物、薬剤、または治療方法は、別々に産生されたR-およびS-立体異性体の化合物をほぼ等しいモル比(例えば、約48~52%)で組み合わせることを伴い得る。一部の実施形態では、薬剤または医薬組成物は、R-およびS-立体異性体の別個の化合物の異なる比率の混合物を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、過剰(50%を超える)のR-エナンチオマーを含む。R/Sの好適なモル比は、約1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれ以上であり得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、R/Sについて提供される比が逆転して、過剰のS-エナンチオマーを含有することができる。他の好適な量のR/Sを選択することもできる。例えば、R-エナンチオマーは、濃縮され得、例えば、少なくとも約55%~100%、または少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、約95%、約98%、または100%の量で存在し得る。他の実施形態では、S-エナンチオマーは、例えば、少なくとも約55%~100%、または少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、約95%、約98%、または100%の量で濃縮され得る。これら全ての例示的な実施形態間の比、ならびにそれらより大きい比および小さい比は、依然として本開示の範囲内に含まれる。組成物は、ラセミ体と式(I)の別個の化合物との混合物を塩形態で含有してもよい。
【0198】
医薬組成物は、一つ以上の結晶性多形体を含む、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の一つ以上の結晶性形態で製剤化され得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、結晶性多形体の混合物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、単結晶の多形体を含む。医薬組成物は、一つ以上の非結晶性多形体を含む、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の一つ以上の非結晶性形態で製剤化されてもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、非結晶性多形体の混合物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、単一の非結晶性多形体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、結晶性および非結晶性多形体の混合物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の高純度の結晶性形態を含む。例えば、医薬組成物は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含んでもよく、医薬組成物中に存在する式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、または少なくとも99.5重量%は、例えば、X線粉末回折および/またはDSCによって決定される結晶性形態である。
【0199】
医薬組成物は、カプセル、錠剤、ピル、ペレット、のどあめ、粉末、顆粒、シロップ、エリキシル剤、溶液、懸濁液、エマルション、座薬、またはそれらの徐放性製剤、または哺乳動物への投与に適した任意の他の形態の形態を取ることができる。対象化合物の投与は、全身的または局所的であり得る。一部の例では、医薬組成物は、ヒトへの経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、経皮投与、または吸入投与、または本明細書に記載の他の投与経路に適合した医薬組成物として、日常的な手順に従い、投与用に製剤化される。好適な薬学的ビヒクルの例およびその製剤方法は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Alfonso R.Gennaro ed.,Mack Publishing Co.Easton,Pa.,19th ed.,1995,Chapters 86,87,88,91,and 92に記述があり、これは参照により本明細書に組み込まれる。ビヒクルの選択は、特定の化合物、塩の形態、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定されるであろう。したがって、対象医薬組成物に関し、多種多様な適切な製剤がある。液体形態の調製物には、溶液およびエマルションが含まれ、例えば、水、水/プロピレングリコール溶液、粘性のある水溶液/懸濁液、または有機溶媒である。
【0200】
哺乳動物に投与される時、本開示の化合物および組成物、ならびに薬学的に許容可能なビヒクルは、滅菌されていてもよい。一部の例では、例えば、対象化合物が、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、経皮投与、または吸入投与を介して投与されるとき、例えば、水、生理食塩水、粘性のある水溶液/懸濁液、および水性デキストロースおよびグリセロール溶液などの水性媒体が、ビヒクルとして用いられる。
【0201】
単位用量調製物中の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の量は、例えば、(活性ベースで)0.001mg~1000mg、0.001mg~500mg、0.001mg~100mg、もしくは0.001mg~75mg、もしくは0.001mg~50mg、もしくは0.001mg~25mg、もしくは0.001mg~10mg、もしくは0.01mg~8mg、もしくは0.1mg~5mg、もしくは1mg~3mg、もしくは0.001mg、0.01mg、0.1mg、1mg、2mg、3mg、5mg、10mg、20mg、約30mg、40mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、またはその間の任意の範囲の式(I)の化合物を提供するように変更または調整され得る、または特定の用途、投与経路、活性成分の効力などに応じて健全な医学的判断を用いて適切とみなされるように変更または調整され得る。組成物は、所望される場合、他の適合性の治療薬も含むことができる。
【0202】
一部の実施形態では、医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づき、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、および最大99.9重量%、最大99.5重量%、最大99重量%、最大98重量%、最大97重量%、最大95重量%、最大90重量%、最大85重量%、最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、最大65重量%、最大60重量%、最大55重量%の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む。
【0203】
本明細書に開示される医薬組成物は、一度に、または時間間隔をおいて複数回投与されてもよい。治療の正確な用量および期間は、治療される患者の年齢、体重、および状態によって異なり得、既知の試験プロトコルを使用して、あるいはインビボもしくはインビトロ試験または診断データからの外挿によって、経験的に決定され得ることが理解される。任意の特定の個人について、特定の投与レジメンは、個々の必要性および製剤の投与を管理または監督する者の専門的な判断に従って、経時的に調整することができる、および一部の場合には調整すべきであることが理解される。
【0204】
患者の状態が改善しない場合、医師の裁量により、化合物は、患者の疾患もしくは症状の症状を改善するか、またはそうでなければ制御もしくは制限するために、慢性的に、すなわち、患者の生涯を通じて長期間にわたって投与され得る。
【0205】
患者の状態が改善する場合、医師の裁量により、化合物は連続的に与えられることもあれば、一定期間一時的に中断される(すなわち「休薬期間」)こともある。
【0206】
患者の状態の改善が生じたら、必要に応じて維持用量が投与され得る。その後、用量もしくは投与頻度、またはその両方は、症状に応じて、改善された障害が維持されるレベルまで減少され得る。しかしながら、患者は、症状の再発があれば、長期にわたって断続的な治療を必要とすることがある。
【0207】
一部の実施形態では、医薬組成物は、60、50、40、30、20、10、または5分以内に治療作用の発現を有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、480、420、360、300、240、180、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5分以下の急性効果の持続時間を有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、120、90、60、50、40、30、20、10、5秒以下の薬物溶解時間を有する。
【0208】
以下に記載されるように、本開示の医薬組成物は、以下に適合するものを含む、固体、半固体、または液体形態での投与のために特別に製剤化され得る:
A.経口投与、例えば、ドレンチ(水溶液または非水溶液または懸濁液)、錠剤、フィルム、またはカプセル、例えば、口腔、舌下、および全身吸収を標的とするもの、ボーラス、粉末、顆粒、シロップ、舌への適用のためのペーストなど;
B.非経口投与、例えば、粘性のある水溶液/懸濁液またはデポ効果を生じるその他を含む、滅菌溶液または懸濁液、または徐放性製剤としての、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射など;
C.局所適用/経皮投与、例えば、クリーム、軟膏、もしくは皮膚に適用される制御放出パッチもしくはスプレーとして、または例えば、水性もしくは非水溶液、懸濁液、リポソーム分散、エマルション、ミクロエマルション、もしくはゾル-ゲルなどの開口部および/もしくは鼻腔内などの粘膜表面への適用、例えば、ペッサリー、クリーム、もしくはフォームとしての膣内もしくは直腸内への;
D.遅延された、延長された、長期化した、持続化した、脈動した、制御された、加速された、高速な、標的化された、プログラムされた放出を含む放出調節剤形、および胃内保持剤形、これらの放出調節剤形は、当業者に公知の従来の方法および技術に従って調製することができる(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,supra;Modified-Release Drug Delivery Technology,Rathbone et al.,Eds.,Drugs and the Pharmaceutical Science,Marcel Dekker,Inc.:New York,N.Y.,2002;Vol.126参照);ならびに、
E.吸入投与、例えばエアロゾル、好ましくはミストとして。
【0209】
本明細書に記載の任意の医薬組成物は、本明細書に記載の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を少なくとも一つ(活性成分として)含み得る。任意の開示された医薬組成物のタンパー耐性剤形/パッケージが企図される。
【0210】
A.経口投与
本明細書に開示される医薬組成物は、腸/胃送達経路ならびに頬側、舌側、および舌下投与などの口腔内経路の両方を含む、経口投与用の固体、半固体、または液体剤形で提供され得る。好適な経口剤形としては、錠剤、カプセル、ピル、トローチ(troche)、トローチ(lozenge)、トローチ(pastille)、カシェ、ペレット、薬用チューインガム、顆粒、原末、発泡性もしくは非発泡性の粉末または顆粒、溶液、エマルション、懸濁液、溶液、ウエハ、スプリンクル、エリキシル剤、およびシロップが含まれるが、これらに限定されない。本開示の経口剤形は、脱アミノ化/酸化プロセスなどのMAO酵素によって媒介される酵素分解を最小化することによって、式(I)の化合物の経口生物学的利用能を改善するために、モノアミンオキシダーゼA型(RIMA)の可逆的阻害剤を含むモノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤で任意に製剤化され得る。活性成分および任意のMAO阻害剤に加えて、医薬組成物は、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、色素移行阻害剤、甘味剤、防腐剤、酸化防止剤、溶解保護剤、安定化剤、可溶化剤、錯化剤、および香味剤を含むがこれらに限定されない、一つ以上の薬学的に許容可能なビヒクルを含有し得る。
【0211】
結合剤または造粒剤は、錠剤に凝集性を付与し、圧縮後に錠剤が無傷のままであることを保証する。好適な結合剤または造粒剤としては、デンプン、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびアルファ化デンプン(例えば、STARCH 1500);ゼラチン;糖類、例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、モラセス、およびラクトース;天然および合成ガム、例えば、アカシア、アルギン酸、アルギネート、アイリッシュモスの抽出物、Panwarガム、ガッティガム、イサゴールハスクの粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム、カラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan)、粉末トラガカント、およびグアーガム;セルロース、例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);微結晶性セルロース、例えば、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corp.,Marcus Hook,Pa.);ならびに、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好適な充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。結合剤または増量剤は、本明細書に開示される医薬組成物中に、例えば約10重量%、約20重量%、約30重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約99重量%から、またはその間の任意の範囲で存在し得る。
【0212】
好適な希釈剤としては、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、および粉糖が含まれるが、これらに限定されない。マンニトール、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトールなどの特定の希釈剤は、十分な量で存在すると、一部の圧縮錠剤に咀嚼により口の中で崩壊できる特性を付与することができる。このような圧縮錠剤は、咀嚼錠として使用することができる。
【0213】
好適な崩壊剤としては、寒天;ベントナイト;セルロース、例えば、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース;木製品;天然スポンジ;カチオン交換樹脂;アルギン酸;ガム、例えば、グアーガムおよびビーガムHV、柑橘類の果肉;架橋セルロース、例えば、クロスカルメロース;架橋ポリマー、例えば、クロスポビドン;架橋デンプン;炭酸カルシウム;微結晶性セルロース、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム;ポラクリリンカリウム;デンプン、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、およびアルファ化デンプン;粘土;アライン;ならびに、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に開示される医薬組成物中の崩壊剤の量は、製剤の種類に応じて異なり、当業者に容易に認識される。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、約0.5~約15重量%、または約1~約5重量%の崩壊剤を含み得る。
【0214】
好適な滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;鉱油;軽鉱油;グリセリン;ソルビトール;マンニトール;グリコール、例えば、グリセロールベヘネートおよびポリエチレングリコール(PEG);ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油を含む、水素添加植物油;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;ラウリン酸エチル;寒天;デンプン;リコポジウム、シリカまたはシリカゲル、例えば、AEROSIL(登録商標)200(W.R.Grace Co.,Baltimore,Md.)およびCAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co.of Boston,Mass.);ならびに、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、約0.1~約5重量%の滑沢剤を含み得る。
【0215】
適切なグリダントには、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co.of Boston,Mass.)、およびアスベストを含まないタルクが含まれる。
【0216】
着色剤には、承認済み、認証済み、水溶性のFD&C染料、およびアルミナ水和物に懸濁された不溶性FD&C染料、ならびにそれらの着色レーキおよび混合物のいずれかが含まれる。着色レーキは、水溶性色素の重金属水和酸化物への吸着による結合体であり、色素の不溶性形態をもたらす。
【0217】
香味剤には、果物などの植物から抽出された天然香料、ならびに例えばペパーミントおよびメチルサリチル酸などの好ましい味覚を生じる化合物の合成ブレンドが含まれる。
【0218】
甘味剤には、スクロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、および人工甘味剤、例えば、サッカリンおよびアスパルテームが含まれる。
【0219】
好適な乳化剤としては、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ベントナイト、および界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(TWEEN(登録商標)80)、およびオレイン酸トリエタノールアミンが含まれる。
【0220】
懸濁剤および分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカント、ビーガム、アカシア、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが含まれる。
【0221】
防腐剤には、グリセリン、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ならびにアルコールが含まれる。
【0222】
湿潤剤としては、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコール、およびポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが含まれる。
【0223】
溶剤としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、およびシロップが含まれる。エマルションに利用される非水性液体の例としては、鉱油および綿実油が含まれる。有機酸には、クエン酸および酒石酸が含まれる。二酸化炭素の供給源には、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが含まれる。
【0224】
多くのビヒクルは、同じ製剤内であっても複数の機能を果たし得ることを理解されたい。
【0225】
本明細書に開示される医薬組成物は、圧縮錠剤、カプセル、カプレット、ジェルカプセル、およびカプセル組成物、錠剤粉砕剤、咀嚼トローチ、速溶性錠剤、多重圧縮錠剤、または腸溶性コーティング錠、カプレット、およびカプセル、糖衣錠、カプレット、およびカプセル、またはフィルムコーティング錠、カプレット、およびカプセルとして製剤化され得る。腸溶性コーティング錠は、胃酸の作用に抵抗するが、腸内で溶解または崩壊する物質でコーティングされた圧縮錠剤であり、したがって活性成分を胃の酸性環境から保護する。腸溶性コーティングには、脂肪酸、脂肪、フェニルサリチレート、ワックス、シェラック、アンモニア化シェラック、および酢酸フタル酸セルロースが含まれるが、これらに限定されない。糖衣錠は、糖衣で囲まれた圧縮錠剤であり、不快な味覚または臭気を覆い、錠剤を酸化から保護するのに有益であり得る。フィルムコーティング錠は、水溶性材料の薄い層またはフィルムで覆われた圧縮錠剤である。フィルムコーティングには、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、および酢酸フタル酸セルロースが含まれるが、これらに限定されない。フィルムコーティングは、糖衣と同じ一般特性を付与する。複数の圧縮錠剤は、複数の圧縮サイクルで製造された圧縮錠剤であり、層状錠剤、圧縮コーティングまたは乾燥コーティング錠剤が含まれる。本開示の経口医薬組成物は、例えば、粉末または顆粒の単回または複数回の圧縮による乾燥造粒によって得られる、経口投与を意図する固形剤形であり得る。一部の実施形態では、経口医薬組成物は、湿式造粒技術を使用して取得され得る。一部の実施形態では、経口医薬組成物は、成形、加熱/アニーリング、または押出技術によって取得され得る。
【0226】
錠剤剤形は、粉末、結晶性、または顆粒形態の活性成分から、単独で、または結合剤、崩壊剤、放出制御ポリマー、滑沢剤、希釈剤、および/または着色剤を含む、本明細書に記載の一つ以上のビヒクルと組み合わせて調製され得る。香味剤および甘味剤は、咀嚼錠剤およびトローチの形成に特に有用である。
【0227】
一部の実施形態では、医薬組成物(例えば、単層錠剤組成物などの経口投与用に製剤化された錠剤組成物)は、本明細書に記載される式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩のいずれか、およびポリマーを含む。
【0228】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、持続放出、例えば、最大持続性放出に適合された調節放出錠剤である。一部の実施形態では、本開示の製剤において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)のいずれかの放出持続期間は、4時間を超える、6時間を超える8時間を超える10時間を超える12時間を超える16時間を超える20時間を超える24時間を超える28時間を超える32時間を超える36時間を超える、48時間を超える。
【0229】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、耐タンパー性に適合される。一部の実施形態では、錠剤組成物は、例えば、HPMCと組み合わせた約2,000~約7,000KDaのMWであるポリエチレンオキシド(PEO)を含む。一部の実施形態では、錠剤組成物は、例えば、PEG8Kなどのポリエチレングリコール(PEG)をさらに含み得る。一部の実施形態では、錠剤組成物は、例えば、ポリアクリル酸などの一つ以上の負電荷基を担持するポリマーをさらに含み得る。一部の実施形態では、PEOを含む錠剤組成物は、例えば、押出し成形条件などの加熱/アニーリングにさらにさらされる。
【0230】
一部の実施形態では、医薬組成物は、(i)水不溶性中性荷電非イオン性マトリクス、(ii)一つ以上の負電荷基を担持するポリマー、および(iii)本明細書に記載される式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩のいずれか、を含む。
【0231】
一部の実施形態では、一つ以上の負荷電基を担持するポリマーは、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリレートカルボキシレート、カチオン交換樹脂、粘土、ゼオライト、ヒアルロン酸、アニオン性ゴム、それらの塩、またはそれらの混合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、アニオン性ゴムは、天然由来の物質および半合成物質からなる群から選択される。一部の実施形態では、天然由来の物質は、アルギン酸、ペクチン、キサンタンゴム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、カラヤゴム、グアーガム、およびトラガカントゴムからなる群から選択される。一部の実施形態では、半合成の物質は、カルボキシメチル-キチンおよびセルロースゴムからなる群から選択される。
【0232】
さらに、理論に拘束されることを意図するものではないが、一部の実施形態では、例えば、本明細書に記載の酸性ポリマーのような酸性の性質の部分など、一つ以上の負荷電基を担持するポリマーの役割によって、驚くべきことに、マトリクス中での、本明細書に記載のいずれかの化合物(例えば、式(I)の化合物)の有意な滞留をもたらす。一部の実施形態では、この負電荷は、例えば、pKaによるプロトンの放出に基づいて、かつ特定のpH条件下で、または静電相互作用/負電荷の生成を介して、その場で生成され得る。さらに、酸性ポリマーは、胃内の関連するプロトン化された酸となる対応する弱酸の塩であり得ることにも留意する。理論に束縛されることは望まないが、これは、電荷を中和し、本明細書に記載される任意の化合物とマトリックスとの相互作用を低減し得る。さらに、放出マトリクスは、適切な固形剤形の調製を支援するために、増量剤、崩壊剤、流れ改善剤、潤滑剤、着色剤、味覚マスク剤などの他の不活性薬学的成分によってさらに補完されてもよい。
【0233】
一部の実施形態では、水不溶性の中性荷電された非イオン性マトリクスは、HPMCなどのセルロース系ポリマー単独から、またはデンプン;ワックス;中性ゴム;ポリメタクリレート;PVA;PVA/PVPブレンド;およびそれらの混合物からなる群から選択される構成要素と混合することにより強化されたセルロース系ポリマーから選択される。一部の実施形態では、セルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0234】
一部の実施形態では、セルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。一部の実施形態では、錠剤組成物は、約10~70重量%、20~60重量%、または30~50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、約10~30重量%、または15~20重量%のデンプン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0235】
剤形は、即時放出(IR)剤形であってもよく、その例としては、即時放出(IR)錠剤または即時放出(IR)カプセルが挙げられるが、これらに限定されない。即時放出に適合した剤形は、活性成分の溶解/吸収を遅延または延長させないために、胃環境内で容易に分散、溶解、または分解する一つ以上の薬学的に許容可能なビヒクルを含み得る。即時放出剤形のための薬学的に許容可能なビヒクルの例には、一つ以上の結合剤/造粒剤、マトリックス材料、充填剤、希釈剤、崩壊剤、分散剤、可溶化剤、滑沢剤、および/または性能調整剤が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、即時放出(IR)剤形は、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、クロスポビドン、およびフマル酸ステアリルナトリウムのうちの一つ以上を含む即時放出(IR)錠剤である。一部の実施形態では、即時放出(IR)剤形は、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムを含む。一部の実施形態では、即時放出(IR)剤形は、マンニトール、クロスポビドン、およびフマル酸ステアリルナトリウムを含む。
【0236】
本明細書に開示される医薬組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、デンプン、またはアルギン酸カルシウムから作製され得る、軟性または硬性カプセルとして製剤化され得る。乾燥充填カプセル(DFC)としても知られる硬性ゼラチンカプセルは、二つの仕切られた部分からなり、一方が他方を覆って滑り込むため、活性成分を完全に封入する。軟質弾性カプセル(SEC)は、グリセリン、ソルビトール、または類似のポリオールの添加によって可塑化されるゼラチンシェルなどの軟質の球状シェルである。軟質ゼラチンシェルは、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有してもよい。好適な防腐剤は、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、ならびにソルビン酸を含む、本明細書に記載のものである。本明細書に開示される液体、半固体、および固体剤形は、カプセル内に封入されてもよい。適切な液体および半固体剤形には、プロピレンカーボネート、植物油、またはトリグリセリドの溶液および懸濁液が含まれる。カプセルはまた、活性成分の溶解を改変または維持するために、当業者によって公知であるようにコーティングされてもよい。
【0237】
本明細書に開示の医薬組成物は、口腔内分散性剤形(ODF)の形態であり得る。かかる剤形は、例えば、口腔の粘膜内層を通して口腔内に投与される場合、例えば、頬側、舌側、および舌下投与の場合、胃腸管を介した経口投与と比較して生物学的利用能が増加し、より迅速に作用発現し、本明細書の化合物/塩の胃前吸収を可能にする。口腔内分散性剤形は、例えば、凍結乾燥(freeze drying)(凍結乾燥(lyophilization))、成型、噴霧乾燥、大量押出成形、または圧縮などの様々な技術によって調製することができる。好ましくは、口腔内分散性剤形は、凍結乾燥によって調製される。一部の実施形態では、口腔内分散性剤形は、口腔内に受容された後、約90秒未満、約60秒未満、約30秒未満、約20秒未満、約10秒未満、約5秒未満、または約2秒未満で崩壊する。一部の実施形態では、口腔内分散性剤形は、口腔内に受容された後、約90秒未満、約60秒未満、または約30秒未満で溶解する。一部の実施形態では、口腔内分散性剤形は、口腔内に受容された後、約90秒未満、約60秒未満、約30秒未満、約20秒未満、約10秒未満、約5秒未満、または約2秒未満で分散する。一部の実施形態では、医薬組成物は、約30秒以下、約20秒以下、約10秒以下、約5秒以下、約2秒以下の米国薬局方(USP)崩壊試験<701>に従う崩壊時間を有する、口腔内崩壊錠(ODT)などの口腔内分散性剤形の形態である。米国薬局方(USP)崩壊試験<701>に従って、例えば、徐放を目的に適合される場合、例えば、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、60分、またはその間の任意の範囲、またはそれ以上のより長い崩壊時間を有する口腔内分散性剤形も考慮される。
【0238】
一部の実施形態では、口腔内分散性剤形は、舌下で崩壊/溶解する舌下剤形であり、それによって、内容物(例えば、本開示の化合物)は、舌の下の粘膜を通して吸収され、そこで静脈循環に入る。一部の実施形態では、舌下剤形は、舌の下で崩壊/溶解され、それによって、唾液と混合されると例えば溶液、シロップまたはペーストなどの液体剤形または半固体剤形へと転換され、続いて嚥下される。一部の実施形態では、口腔内分散性剤形(ODx)は、口腔で崩壊/溶解する口腔剤形であり、それによって、内容物(例えば、本開示の化合物)は、口腔粘膜を通して吸収され、そこで静脈循環に入る。一部の実施形態では、口腔剤形は、口腔で崩壊/溶解され、それによって、唾液と混合されると例えば溶液、シロップまたはペーストなどの液体剤形または半固体剤形へと転換され、続いて嚥下される。
【0239】
一部の実施形態では、医薬組成物は、口腔内分散性錠剤または口腔内崩壊錠(ODT)または高速分散性錠剤(FDT)とも呼ばれる、速溶性錠剤などの口腔内分散性剤形の形態である。速溶性錠剤は、凍結乾燥(凍結乾燥)、成型、噴霧乾燥、大量押出成形、または圧縮などの様々な技術によって調製することができる。速溶性錠剤は、凍結乾燥によって調製されることが好ましい。一部の実施形態では、速溶性錠剤は、口腔内に受容された後、口腔内で約90秒未満、約60秒未満、約30秒未満、約20秒未満、約10秒未満、約5秒未満、または約2秒未満で崩壊する。一部の実施形態では、速溶性錠剤は、口腔内などの水性環境に置かれた場合、約90秒未満、約60秒未満、または約30秒未満で溶解する。
【0240】
一部の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥FDTの形態である。一部の実施形態では、凍結乾燥FDTは、マトリックス形成剤および本明細書に記載されるような他のビヒクル、例えば、一つ以上の凍結保護剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、香味剤などを含有する薬剤の予め凍結された水性製剤からの水を昇華させることによって多孔質マトリックスを作製することによって作製される。一部の実施形態では、FDTは、成功した製剤の開発を確実にするために協働する凍結乾燥マトリックス系の二つの成分フレームワークを含む。一部の実施形態では、第一の成分は、ゼラチン、デキストラン、アルギネート、およびマルトデキストリンなどの水溶性ポリマーである。この成分は、形状を維持し、錠剤(結合剤)に機械的強度を提供する。一部の実施形態では、第二の成分は、スクロース、ラクトース、マンニトール、キシリトール、微結晶性セルロース、二リン酸カルシウムおよび/またはデンプンなどのマトリックス支持/崩壊促進剤であり、これは、水溶性ポリマーによって提供される多孔質フレームワークを接着することによって作用し、FDTの崩壊を加速させる。一部の実施形態では、凍結乾燥FDTには、ゼラチンおよびマンニトールが含まれる。一部の実施形態では、凍結乾燥口腔内分散性剤形(例えば、凍結乾燥FDT)は、ゼラチン、マンニトールと、凍結保護剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、香味剤などのうちの一つ以上とを含み、特にクエン酸について言及される。非限定的な例は、Zydis(登録商標)経口分散錠(Catalentから入手可能)である。一部の実施形態では、製剤(例えば、Zydis(登録商標)経口分散錠)は、一つ以上の水溶性ポリマー、例えば、ゼラチン、一つ以上のマトリックス材料、充填剤、または希釈剤、例えば、マンニトール、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩、ならびに任意で凍結保護剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、および/または香味剤を含む。一部の実施形態では、製剤(例えば、Zydis(登録商標)経口分散錠)は、ゼラチン、マンニトール、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩、ならびにその非限定的な例はクエン酸および/または酒石酸である有機酸、を含む。
【0241】
一部の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥ウエハなどの口腔内分散性剤形の形態である。一部の実施形態では、医薬組成物は、湿気、酸素、および光を排除する特殊な包装によって長期保存のために保護された凍結乾燥ウエハの形態である。一部の実施形態では、凍結乾燥ウエハは、薬物含有マトリクス形成剤および凍結保護剤の凍結前水性製剤、およびリオプロテクタント、防腐剤、および香味剤などの他の賦形剤から水を昇華させることによって、多孔質マトリクスを生成することによって生成される。一部の実施形態では、凍結乾燥ウエハは、薄い水溶性フィルムマトリックスを含む。一部の実施形態では、ウエハは、成功した製剤の開発を確実にするために協働する凍結乾燥マトリックス系の二つの成分フレームワークを含む。一部の実施形態では、第一の成分は、ゼラチン、デキストラン、アルギネート、およびマルトデキストリンなどの水溶性ポリマーである。この成分は、形状を維持し、ウエハ(結合剤)に機械的強度を提供する。一部の実施形態では、第二の成分は、スクロース、ラクトース、マンニトール、キシリトール、微結晶性セルロース、二リン酸カルシウム、および/またはデンプンなどのマトリックス支持/崩壊促進剤であり、これは、水溶性ポリマーによって提供される多孔質フレームワークを接着することによって作用し、ウエハの崩壊を加速させる。一部の実施形態では、凍結乾燥ウエハには、ゼラチンおよびマンニトールが含まれる。一部の実施形態では、凍結乾燥ウエハは、ゼラチン、マンニトールと、凍結保護剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、香味剤などのうちの一つ以上とを含み、特にクエン酸について言及される。
【0242】
一部の実施形態では、ウエハは、単層、二重層、または三重層を含むことができる。一部の実施形態では、単層ウエハは、活性剤と、本明細書に記載のものなどの一つ以上のビヒクルとを含有する。一部の実施形態では、二重層ウエハは、第一の層に可溶化剤などの一つ以上のビヒクル、および第二の層に活性剤を含む。この構成により、活性剤をビヒクルとは別個に保存することができ、ビヒクルおよび活性剤が単層に含まれる場合と比較して、活性剤の安定性を増加させ、任意で組成物の保存寿命を増加させることができる。三重層ウエハについては、各層は、異なっていてもよいし、上層および下層などの二つの層が実質的に同じ組成を有していてもよい。一部の実施形態では、下層および上層は、活性薬剤を含むコア層を取り囲む。一部の実施形態では、下層および上層は、可溶化剤などの一つ以上のビヒクルを含み得る。一部の実施形態では、下層および上層は、同じ組成を有する。あるいは、下層および上層は、異なるビヒクルまたは異なる量の同じビヒクルを含み得る。コア層は、典型的には、活性剤を含み、任意に一つ以上のビヒクルを含む。
【0243】
口腔内分散性剤形(ODF)に使用され得る薬学的に許容可能なビヒクル(例えば、担体または賦形剤)としては、限定されないが、凍結保護剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、香味剤、シクロデキストリン、生体接着剤、透過剤/吸収促進剤、または本明細書に列挙される他の薬学的に許容可能なビヒクルが挙げられる。
【0244】
薬学的に許容可能な凍結保護剤の例には、二糖類、例えば、スクロースおよびトレハロース、アニオン性ポリマー、例えば、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBECD)およびヒアルロン酸、ならびにヒドロキシル化シクロデキストリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0245】
薬学的に許容可能な防腐剤の例には、グリセリン、メチルパラベン、およびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、およびアルコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0246】
組成物の安定性を更に増強するために作用し得る薬学的に許容可能な抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システインまたはその塩(システイン塩酸塩)、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など、が含まれる。
【0247】
薬学的に許容可能な安定化剤の例としては、脂肪酸、脂肪族アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、グリセリン、メチオニン、モノチオグリセリン、アスコルビン酸、クエン酸、ポリソルベート、アルギニン、シクロデキストリン、微結晶性セルロース、変性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース、ナトリウム塩)、ソルビトール、およびセルロースゲルが含まれるが、これらに限定されない。
【0248】
薬学的に許容可能な可溶化剤(または溶解補助剤)の例としては、クエン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フマル酸ステアリルナトリウム、メタクリル酸コポリマーLD、メチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル40、精製セラック、デヒドロ酢酸ナトリウム、フマル酸、DL-リンゴ酸、L-アスコルビルステアリン酸、L-アスパラギン酸、アジピン酸、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アルギン酸プロピレングリコール、カゼイン、カゼインナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、粉末寒天、グアーガム、コハク酸、コポリビドン、酢酸フタル酸セルロース、酒石酸、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ゼイン、脱脂粉乳、トリオレイン酸ソルビタン、乳酸、乳酸アルミニウム、パルミチン酸アスコルビル、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸塩、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、マレイン酸、メタクリル酸コポリマーS、ラウロマクロゴール、硫酸、硫酸アルミニウム、リン酸、リン酸二水素カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、アセチルトリプトファン、メチル硫酸ナトリウム、エチル硫酸ナトリウム、ブチル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、およびオクタデシル硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。これらのうち、ODT製剤などの一部の実施形態では、クエン酸が好ましい。
【0249】
香味剤には、果物などの植物から抽出された天然香料、および好ましい味覚および味マスキング効果を生じる化合物の合成ブレンドが含まれる。香味剤の例としては、アスパルテーム、サッカリン(サッカリンのナトリウム、カリウム、またはカルシウムとして)、シクラメート(ナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩として)、スクラロース、アセスルファムK、ソウマチン、ネオヒスペリジン、ジヒドロカルコン、アンモニア化グリチルリチン、ブドウ糖、マルトデキストリン、フルクトース、レブロース、スクロース、グルコース、ワイルドオレンジピール、クエン酸、酒石酸、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、サリチル酸メチル、スペアミント油、サッサフラス油、クローブ油、シナモン、アネトール、メントール、チモール、オイゲノール、ユーカリプトール、レモン、ライム、およびレモンライムが含まれるが、これらに限定されない。
【0250】
シクロデキストリン、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、硫酸化β-シクロデキストリン、硫酸化α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、または他の可溶化誘導体もまた、本明細書に記載の組成物の送達を増強するために有利に使用することができる。
【0251】
適切な生体接着剤の例としては、限定するものではないが、シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、修飾セルロースゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)などのセルロース誘導体;例えば中程度に架橋されたデンプン、修飾デンプン、およびグリコール酸ナトリウムデンプンなどのデンプン誘導体;例えば、カルボマーおよびその誘導体(ポリカーボフィル、Carbopol(登録商標)など)などのアクリルポリマー;ポリビニルピロリドン(PVP);ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリコ-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);およびクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム)、が挙げられる。そのようなポリマーは、架橋されてもよい。二つ以上の生体接着剤の組み合わせも使用できる。
【0252】
透過剤/吸収促進剤の例としては、ドデシルメチルスルホキシド、オクチルメチルスルホキシド、ノニルメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ウンデシルメチルスルホキシド、2-ヒドロキシデシルメチルスルホキシド、2-ヒドロキシ-ウンデシルメチルスルホキシド、2-ヒドロキシドデシルメチルスルホキシドなどのスルホキシド;メントール;ポロキサマー、CARBOPOL、およびPEMULENの一つ以上を有する水相、パルミチン酸イソプロピルおよびPPG-2ミリスチルエーテルプロピオン酸塩の一つ以上から形成された油層、およびレシチンから形成される界面活性剤-レシチンオルガノゲル(PLO);脂肪酸、エステル、およびオレイル酸およびオレイルアルコールなどのアルコール;レブリン酸などのケト酸;グリコールおよびグリコールエーテル、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル;それらの混合物を含む、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0253】
本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される化合物と、本明細書に記載される一つ以上の放出制御賦形剤または担体と、を含む、調節放出剤形中の医薬組成物である。好適な調節放出剤形ビヒクルとしては、親水性または疎水性マトリックス装置、水溶性分離層コーティング、腸溶性コーティング、浸透圧装置、多粒子装置、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。医薬組成物はまた、非放出制御賦形剤または担体を含んでもよい。
【0254】
更に本明細書には、本明細書に開示される化合物と、腸溶性コーティング剤形で使用するための一つ以上の放出制御賦形剤または担体と、を含む、腸溶性コーティング剤形の医薬組成物が開示される。医薬組成物はまた、非放出制御賦形剤または担体を含んでもよい。
【0255】
本明細書に開示の化合物と、発泡性剤形で使用するための一つ以上の放出制御賦形剤または担体と、を含む、発泡性剤形の医薬組成物が更に開示される。医薬組成物はまた、非放出制御賦形剤または担体を含んでもよい。
【0256】
更に、即時放出成分および少なくとも一つの遅延放出成分を有し、約0.1~最大約24時間(例えば、約0.1、0.5、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、10、22、または24時間)で区切られた少なくとも二つの連続パルスの形態で化合物を不連続に放出することができる、剤形の医薬組成物が開示される。医薬組成物は、本明細書に開示される化合物と、破壊可能な半透膜ならびに膨潤性物質として好適な賦形剤または担体などの一つ以上の放出制御および非放出制御賦形剤または担体と、を含む。
【0257】
対象に経口投与するための剤形の医薬組成物も本明細書に開示され、本明細書に開示される化合物の塩形態、およびアルカリで部分的に中和され、カチオン交換能を有する胃液ポリマー層材料、および胃液耐性外層を含む中間反応層に封入された、一つ以上の薬学的に許容可能なビヒクルを含む。
【0258】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のための即時放出カプセルの形態であり、セルロース、酸化鉄、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、およびデンプングリコール酸ナトリウムを更に含み得る。
【0259】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のための遅延放出カプセルの形態であり、セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ヒプロメロース、酸化鉄、および二酸化チタンを更に含み得る。
【0260】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のための腸溶性コーティング遅延放出錠剤の形態であり、カルナウバロウ、クロスポビドン、ジアセチル化モノグリセリド、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、水酸化ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化チタン、および黄色酸化第二鉄を更に含み得る。
【0261】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のための腸溶性コーティング遅延放出錠剤の形態であり、ステアリン酸カルシウム、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化鉄、マンニトール、メタクリル酸コポリマー、ポリソルベート 80、ポビドン、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、およびクエン酸トリエチルを更に含み得る。
【0262】
さらに、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩、ならびに放出制御ビヒクルおよび/または非放出制御ビヒクルであり得る一つ以上の薬学的に許容可能なビヒクルを含む、発泡性の剤形での医薬組成物が本明細書において開示される。発泡性とは、剤形が、水、ジュース、唾液などを含む液体と混合されたときにガスを放出することを意味する。一部の実施形態では、本開示の発泡性剤形は、本明細書において「発泡性カップル」と呼称される、有機酸と二酸化炭素源を含む。そのような発泡性剤形は、有機酸と二酸化炭素源との間の化学反応を通して発泡(ガス放出)する。発泡は、例えば、水、ジュース、もしくは他の飲料可能な液体中に置かれたときなど、水性環境に曝露されたときに発生し、または例えば口内の唾液などの、口腔内の水性環境から発生する。具体的には、有機酸と二酸化炭素源との間の反応によって、例えば、水、ジュース、または唾液などの水性媒体と接触時に二酸化炭素ガスが生成される。崩壊剤の使用は任意であるが、発泡性剤形はその場でガス放出を促進し、崩壊プロセスを促進するため、崩壊剤を必要とはしない。
【0263】
明確性を目的として、「発泡性カップル」とは、アセンブリに関係なく、少なくとも一つの有機酸と少なくとも一つの二酸化炭素源を指す。例えば、有機酸と二酸化炭素源は、(粉末として)混合されてもよく、互いに重ねて層状にされてもよく、または顆粒の形態で一緒に凝集もしくは他の手段により「接着」されてもよく、または例えば、剤形内の別個の層において、互いに分離されて保持されてもよい。さらに、この文脈において「カップル」という用語は、有機酸と二酸化炭素源のみに限定されることは意図されず、別段の指定がない限り、他の材料の包含に対して開放的である。例えば、有機酸と二酸化炭素源を一緒にする(または接着する)ことによって作製された発泡性の凝集体/顆粒は、結合剤(接着剤)を含む他のビヒクルを含んでもよく、発泡性の凝集体/顆粒は、発泡性カップルと呼称され得る。
【0264】
有機酸は、一酸、二酸、三酸、四酸であってもよく、またはより多くの酸基を含有してもよい。一つの有機酸、または有機酸の混合物が使用されてもよい。酸基(例えば、一つ以上のカルボン酸部分)に加えて、有機酸は、その構造の一部として一つ以上のヒドロキシル官能基も含有してもよい(すなわち、有機酸はヒドロキシ酸であってもよい)。一部の実施形態では、有機酸は、α-ヒドロキシ酸である。一部の実施形態では、有機酸は、β-ヒドロキシ酸である。一部の実施形態では、有機酸は、γ-ヒドロキシ酸である。ヒドロキシ酸の例としては、限定されないが、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、およびリンゴ酸が挙げられる。一部の実施形態では、有機酸は、クエン酸および/または酒石酸である。一部の実施形態では、有機酸は、クエン酸である。一部の実施形態では、有機酸は、酒石酸である。一部の実施形態では、有機酸は、エン二酸であり、その例としては限定されないが、フマル酸およびマレイン酸が挙げられる。一部の実施形態では、有機酸は、フマル酸である。一部の実施形態では、有機酸は、マレイン酸である。開示される有機酸の混合物および/または水和物も、本開示の医薬組成物で使用され得る。一部の実施形態では、有機酸は、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンジスルホン酸など)ではない。一部の実施形態では、有機酸は、安息香酸(例えば、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、ゲンチシン酸など)ではない。
【0265】
二酸化炭素源としては、限定されないが、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、およびセスキ炭酸塩が挙げられる。二酸化炭素源は、単独で、または組み合わせて使用されてもよい。一部の実施形態では、二酸化炭素源は、重炭酸ナトリウムである。一部の実施形態では、二酸化炭素源は、炭酸ナトリウムである。一部の実施形態では、二酸化炭素源は、炭酸カリウムである。一部の実施形態では、二酸化炭素源は、重炭酸カリウムである。しかしながら、酸素、または二酸化炭素以外のガスを放出し、ヒトでの消費に安全である反応物質も、二酸化炭素源に加えて、または二酸化炭素源の代わりに、開示される発泡性剤形での使用に予期される。理論に拘束されることは望まないが、発泡は、剤形を迅速に分解するのに役立ち、例えば経口経路などの一部の投与経路では、気がまぎれる発泡の感覚的経験を提供することによって、ザラザラした知覚を低減するのに役立ち得ると考えられる。
【0266】
一部の実施形態では、発泡性の剤形は、例えば、水またはジュースなどの飲料可能な流体中で再構成され、それによって、経口液体剤形(例えば、溶液)が形成され、その後に摂取される。一部の実施形態では、発泡性の剤形は、口腔内に配置され、そこで水性環境(唾液)と接触し、発泡しながら、剤形の崩壊/溶解が引き起こされる。ここで、発泡性の剤形の内容物は、唾液と混合することで、例えば溶液、シロップまたはペーストなどの液体または半固体の剤形に変換され、その後に嚥下され得る。あるいは、発泡性の剤形は、例えば頬側、舌側、または舌下の剤形などの口腔内の剤形であってもよく、それによって、口腔の水性環境(唾液)中に配置され、発泡しながら剤形の崩壊/溶解が引き起こされ、口腔粘膜を通じて内容物が胃前吸収される。そのような胃前吸収は、消化管を介した経口投与と比較して、生物学的利用能を上昇させ、迅速な作用発現をもたらし得る。一部の実施形態では、発泡性の剤形は、舌下で崩壊/溶解する舌下剤形であり、それによって、内容物(例えば、本開示の化合物)は、舌の下の粘膜を通して吸収され、そこで静脈循環に入る。一部の実施形態では、発泡性の剤形は、口腔で崩壊/溶解する口腔剤形であり、それによって、内容物(例えば、本開示の化合物)は、口腔粘膜を通して吸収され、そこで静脈循環に入る。発泡性の剤形は、飲み込むことが簡単な液体または半固体の剤形に再構成され、または経口的に摂取され得るため、小児/青年期の患者、または例えば一般的な錠剤またはカプセルなどの従来的な剤形を飲み込むことが概して困難な患者の治療に有益であり得る。
【0267】
経口投与に適合される場合、発泡性カップルに加えて、生体接着剤とともに発泡性剤形を製剤化することが有益な場合がある。「生体接着剤」は、例えば粘膜などの生物表面への接着または付着を促進する物質である。例えば、生体接着剤は、当該表面(例えば、粘膜)と接触して配置されたときに、それ自体が生体表面に接着することができ、それによって、本開示の組成物が当該表面に接着することが可能となり、当該剤形から当該生体表面への効率的な内容物の移動が促進される。当分野で公知の様々なポリマーを、生体接着剤として使用することができ、例えばポリマー物質、好ましくは5,000g/molを超える平均(重量平均)分子量を有するポリマー物質を使用することができる。そのようなポリマー物質は、例えば水または唾液などの水性媒体と接触して配置されたときに迅速に膨張することが可能であり、および/または室温や大気圧では実質的に水に不溶性であることが好ましい。適切な生体接着剤の例としては、限定するものではないが、シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、修飾セルロースゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)などのセルロース誘導体;例えば中程度に架橋されたデンプン、修飾デンプン、およびグリコール酸ナトリウムデンプンなどのデンプン誘導体;例えば、カルボマーおよびその誘導体(ポリカーボフィル、Carbopol(登録商標)など)などのアクリルポリマー;ポリビニルピロリドン(PVP);ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリコ-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);およびクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム)、が挙げられる。そのようなポリマーは、架橋されてもよい。二つ以上の生体接着剤の組み合わせも使用できる。
【0268】
発泡性カップルは、例えば結合剤、例えば溶媒保護コーティングなどの保護コーティング、腸溶性コーティング、アンチケーキング剤、および/またはpH調整剤などの薬学的に許容可能なビヒクルでコーティングされて、例えば、空気、湿度、および/または医薬組成物中に含有される他の成分による早期反応を防止することができる。発泡性カップルの各成分、例えば有機酸および/または二酸化炭素源は、例えば結合剤、例えば溶媒保護コーティングなどの保護コーティング、腸溶性コーティング、アンチケーキング剤、および/またはpH調整剤などの薬学的に許容可能なビヒクルで個々にコーティングされて、例えば、空気、湿度、および/または医薬組成物中に含有される他の成分による早期反応を防止することもできる。発泡性カップルは、例えば溶媒保護コーティングまたは腸溶性コーティングでコーティングされた一つ以上の薬学的に活性な成分など、従前に凍結乾燥された粒子と混合されてもよい。
【0269】
発泡性の剤形は、限定されないが、スラッギング、直接圧縮、ローラー圧縮、乾式または湿式の造粒、溶融造粒、融解造粒、真空造粒、および流動床噴霧造粒をはじめとする当業者に公知の方法により作製されてもよく、それらのうちのいずれかは任意でその後、圧縮/錠剤成形が行われてもよい。
【0270】
本明細書に開示される医薬組成物は、非発泡性または発泡性の顆粒および粉末として製剤化されてもよい。非発泡性または発泡性の顆粒および粉末は、液体の剤形に再構成されてもよく、または代替的に圧縮されて、それぞれ非発泡性または発泡性のいずれかである錠剤剤形を形成してもよい。非発泡性または発泡性の顆粒または粉末に使用される薬学的に許容可能なビヒクルとしては限定されないが、結合剤、グラニュレーター、増量剤、希釈剤、甘味剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、アンチケーキング剤、pH調整剤、または本明細書に記載される任意の他の薬学的ビヒクルが挙げられる。一部の実施形態では、薬学的に許容可能なビヒクルは、例えばグリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、および/またはマレイン酸などの有機酸を含む。
【0271】
発泡性の顆粒または粉末に使用される薬学的に許容可能なビヒクルとしては、発泡性カップル、すなわち有機酸と二酸化炭素源が挙げられる。発泡性の粉末は、有機酸と二酸化炭素源(発泡性カップル)と任意でいずれか他の所望の薬学的に許容可能なビヒクルとをブレンドまたは混合することによって生成され得る。発泡性顆粒は、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、L-ロイシン、ポリエチレングリコール、アラビアゴムなど、それらの組み合わせを含む食用の、または薬学的に許容可能な結合剤を使用して、発泡性カップル(有機酸および二酸化炭素源)を一緒に物理的に付着させる、または「接着させる」ことにより、生成され得る。これらのタイプの顆粒は、一般的に「湿式造粒」として知られるプロセスによって作製される。例えばエタノールおよび/またはイソプロピルアルコールなどの造粒溶媒は、このタイプの造粒プロセスを補助するためにしばしば使用される。発泡性カップルは、顆粒中で物理的に一緒に結合されているため、気体発生的な反応は通常、非常に激しいものであり、迅速な溶解につながる。発泡性生成物に特異的な別のタイプの「湿式造粒」生成物は、「融合型」顆粒として知られている。これらの顆粒は、有機酸と二酸化炭素源を、高度に制御された様式で、少量の水(または時には、様々な市販グレードのエタノールまたはイソプロピルアルコールなどの含水アルコール造粒溶媒)と反応させることによって形成される。発泡性の反応は二酸化炭素を生成するため、融合型顆粒は非常に多孔性である傾向があり、これによって、それらの密度および溶解時間が減少する。したがって、湿潤造粒または融合型プロセスによって調製された発泡性顆粒は、迅速な溶解/分解の性能が求められる、口腔内分散性剤形または他の剤形の作製に望ましい場合がある。発泡性の顆粒または粉末の例えば圧縮などの錠剤成形により調製された発泡性錠剤剤形も、本開示に含まれる。
【0272】
本明細書に開示される医薬組成物は、エマルション、溶液、懸濁液、エリキシル剤、およびシロップを含む、液体ならびに半固体の剤形として製剤化され得る。
【0273】
一部の実施形態では、経口液体剤形は、使用前に、本明細書に開示される固体剤形(例えば、発泡性の剤形)を、例えば、水、ジュース、または他の飲料可能な流体などの薬学的に許容可能な液体媒体(例えば、水性媒体)へと再構成することによって調製される。一部の実施形態では、経口液体剤形は、結晶性の形態の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む固体剤形を、薬学的に許容可能な水性媒体に再構成することによって調製される。一部の実施形態では、経口液体剤形は、非結晶性の形態の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む固体剤形を、薬学的に許容可能な水性媒体に再構成することによって調製される。
【0274】
エマルションは二相系であり、一つの液体が別の液体全体にわたって小さな小球の形態で分散しており、水中油型または油中水型であり得る。エマルションには、薬学的に許容可能な非水性の液体または溶媒、乳化剤、および防腐剤が含まれ得る。懸濁液には、薬学的に許容可能な懸濁剤および任意で防腐剤が含まれ得る。アルコール水溶液には、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール(「低級」という用語は、1~6個の炭素原子を有するアルキルを意味する)、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタールなどの薬学的に許容可能なアセタール、および一つ以上の水酸基を有する水混和性溶媒、例えば、プロピレングリコールおよびエタノール、が含まれ得る。エリキシル剤は、透明、甘味、および水アルコール溶液である。シロップは、例えば、スクロースなどの糖の濃縮水溶液であり、防腐剤を含有してもよい。液体剤形の場合、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液は、投与のために簡易的に測定できるように、十分な量の薬学的に許容可能な液体担体、例えば、水で希釈することができる。
【0275】
他の有用な液体および半固体の剤形には、本明細書に開示される活性成分、および1,2-ジメトキシメタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテルを含むジアルキル化モノ-またはポリ-アルキレングリコールを含むものが含まれるが、これらに限定されず、350、550、および750は、ポリエチレングリコールのおよその平均分子量を指す。これらの製剤は、一つ以上の抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオジプロピオン酸およびそのエステル、ジチオカルバメートを更に含み得る。一部の実施形態では、薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など、が含まれる。
【0276】
シクロデキストリン、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、硫酸化β-シクロデキストリン、硫酸化α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、または他の可溶化誘導体もまた、本明細書に記載の組成物の送達を増強するために有利に使用することができる。
【0277】
経口投与のために本明細書に開示される医薬組成物は、リポソーム、ミセル、ミクロスフェア、またはナノシステムの形態でも開示され得る。
【0278】
本明細書に開示される医薬組成物は、液体剤形に再構成される非発泡性または発泡性の顆粒および粉末として開示され得る。非発泡性顆粒または粉末に使用される薬学的に許容可能なビヒクルには、希釈剤、甘味剤、および湿潤剤が含まれ得る。発泡性顆粒または粉末に使用される薬学的に許容可能なビヒクルには、有機酸および二酸化炭素源が含まれ得る。
【0279】
着色剤および香味剤は、上記の剤形の全てに使用することができる。
【0280】
本明細書に開示される医薬組成物は、所望の治療作用を損なわない他の活性成分、または所望の作用を補足する物質と共製剤化され得る。一例は、脱アミノ化/酸化プロセスなどのMAO酵素によって媒介される酵素分解を最小化することによって、式(I)の化合物の経口生物学的利用能を改善するために、モノアミンオキシダーゼA型(RIMA)の可逆的阻害剤を含むモノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤で製剤化される経口剤形である。
【0281】
B.非経口投与
本明細書に開示される医薬組成物は、局所投与または全身投与のために、注射、注入、灌流、または移植によって非経口的に投与され得る。本明細書で使用される場合、非経口投与には、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑膜内、および皮下投与が含まれる。
【0282】
本明細書に開示される医薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノシステム、および注射前の液体中の溶液または懸濁液に好適な固体形態を含む、非経口投与に好適な任意の剤形で製剤化され得る。かかる剤形は、薬学の当業者に公知の従来的な方法に従って調製することができる(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、上記を参照)。
【0283】
一部の実施形態では、医薬組成物は、(例えば、静脈内、筋肉内、皮下などの投与のための)注射用(液体)剤形の形態である。一部の実施形態では、(例えば、静脈内、筋肉内、皮下などの投与のための)注射用(液体)剤形は、使用前に、本明細書に開示される固体剤形を、水、生理食塩水、粘性水溶液/懸濁液、水混和性ビヒクル(例えば、N-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒)などの薬学的に許容可能な液体媒体に再構成することによって調製される。一部の実施形態では、注射用(液体)剤形は、結晶性の形態の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む固体剤形を、薬学的に許容可能な液体媒体に再構成することによって調製される。一部の実施形態では、注射用(液体)剤形は、非結晶性の形態の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む固体剤形を、薬学的に許容可能な液体媒体に再構成することによって調製される。
【0284】
非経口投与を意図する医薬組成物は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗菌剤または防腐剤、安定化剤、可溶化剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁剤および分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、封鎖剤またはキレート剤、凍結防止剤、凍結保護剤、増粘剤または粘度構築剤、pH調整剤、および不活性ガスを含むがこれらに限定されない、一つ以上の薬学的に許容可能なビヒクル含まれ得る。
【0285】
好適な水性ビヒクルとしては、水、食塩水、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、等張ブドウ糖注射液、滅菌水注射液、ブドウ糖および乳酸リンゲル液注射液が含まれるが、これらに限定されない。非水性ビヒクルには、植物由来の固定油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、硬化植物油、硬化大豆油、ココナッツ油およびパーム種子油の中鎖トリグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。水混和性ビヒクルには、エタノール、1,3-ブタンジオール、液状ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0286】
好適な抗微生物剤または防腐剤には、フェノール、クレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、ならびにソルビン酸が含まれるが、これらに限定されない。好適な等張剤には、塩化ナトリウム、グリセリン、およびブドウ糖が含まれるが、これらに限定されない。好適な緩衝剤には、リン酸、酢酸、およびクエン酸緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。好適な抗酸化剤は、重亜硫酸塩およびメタ重亜硫酸ナトリウムを含む、本明細書に記載のものである。好適な局所麻酔薬には、塩酸プロカインが含まれるが、これに限定されない。好適な懸濁剤および分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンを含む、本明細書に記載のものである。好適な乳化剤には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80、およびトリエタノールアミンオレイン酸を含む、本明細書に記載されるものが含まれる。好適な封鎖剤またはキレート剤には、EDTAが含まれるが、これに限定されない。好適なpH調整剤には、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、および乳酸が含まれるが、これらに限定されない。好適な錯化剤には、ca-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-3-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、およびスルホブチルエーテル 7-O-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex、Lenexa,Kans.)を含む、シクロデキストリンが含まれるが、これらに限定されない。好適な増粘剤もしくは粘度構築剤には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、上記のいずれかの架橋変形物、ならびに上記の組合せが含まれる。
【0287】
一部の実施形態では、医薬組成物は、注射可能な(液体)剤形である。一部の実施形態では、注射用(液体)剤形は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩、水性ビヒクル(例えば、等張食塩水)、緩衝剤(例えば、クエン酸緩衝液)、任意でpH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム)、および任意で等張剤を含む。一部の実施形態では、注射用(液体)剤形は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩、水性ビヒクル(例えば、等張食塩水)、およびpH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム)を含み、注射用(液体)剤形は、緩衝剤(例えば、クエン酸緩衝液)なしで製剤化される。一部の実施形態では、注射用(液体)剤形は、結晶性の形態の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む固体剤形を、等張食塩水などの水性ビヒクルに再構成することによって調製される。結晶形態の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の再構成は、使用直前に実施され得る。
【0288】
本明細書に開示される医薬組成物は、単回または複数回の用量投与のために製剤化され得る。単回用量製剤は、アンプル、バイアル、またはシリンジに包装される。複数回用量の非経口製剤は、静菌性濃度または静真菌性濃度の抗微生物剤を含有しなければならない。全ての非経口製剤は、当該技術分野で公知であり、実践されているように、滅菌されていなければならない。
【0289】
一部の実施形態では、医薬組成物は、すぐに使用可能な滅菌溶液として開示される。一部の実施形態では、医薬組成物は、使用前にビヒクルで再構成される凍結乾燥粉末および皮下注射用錠剤を含む、滅菌乾燥可溶性産物として開示される。一部の実施形態では、医薬組成物は、すぐに使用可能な滅菌懸濁液として開示される。一部の実施形態では、医薬組成物は、使用前にビヒクルで再構成される滅菌乾燥不溶性産物として開示される。一部の実施形態では、医薬組成物は、すぐに使用可能な滅菌エマルションとして開示される。
【0290】
医薬組成物は、移植デポ剤として投与するために、またはデポ様の効果を生むために、懸濁液、固体、半固体、またはチキソトロピック液体として製剤化され得る。
【0291】
一部の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、体液に不溶性であるが、医薬組成物中の活性成分が十分に拡散することを可能にする外側ポリマー膜によって囲まれた固体内部マトリックス中に分散される。好適な内部マトリックスには、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのヒドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、ならびに架橋部分加水分解ポリビニルアセテートが含まれるが、これらに限定されない。適切な外側ポリマー膜には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルとの酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン、アイオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、およびエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0292】
一部の実施形態では、医薬組成物は、緩徐/持続的な吸収またはデポ様効果を提供するために、注射用の粘性水溶液/懸濁液の形態である。ここで、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、ならびに上記の組み合わせを含むが、それらに限定されない、増粘または粘度構築剤などの粘度を造形する薬学的ビヒクルが使用され得る。一部の実施形態では、薬学的に許容可能なビヒクルは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸およびその塩、またはその組み合わせを含む。一部の実施形態では、薬学的に許容可能なビヒクルは、ヒアルロン酸およびその塩を含む。こうした粘性水溶液/懸濁液剤形は、皮下注射または筋肉内投与に特に好適であり得、活性成分は、注射部位からゆっくりと放出され、持続的な期間にわたって吸収され、デポ様放出効果を生成し得る。さらに、前述のいずれかの架橋されたバージョンを利用してもよい。活性成分の放出速度は、本明細書に記載の増粘剤または粘度構築剤のいずれかの架橋の程度を通して、または前述のいずれかが用いられる架橋剤の使用、量、またはタイプを通して架橋される速度を制御することによって制御することができる。例えば、緩徐/持続的な吸収またはデポ様の効果は、注射部位での架橋ヒアルロン酸の使用または形成によって達成することができる。一部の実施形態では、粘性水溶液/懸濁液剤形の投与は、例えば、皮下注射または筋肉内注射を介して、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、またはその間の任意の範囲、またはそれ以上の放出期間を提供する。
【0293】
一部の実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物の脂肪酸塩などの、水溶性が乏しい式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩(例えば、22℃で5mg/mL未満、4mg/mL未満、3mg/mL未満、2mg/mL未満、1mg/mL未満、0.5mg/mL未満、0.1mg/mL未満の水溶性)で、製剤化される。脂肪酸塩形態の例としては、式(I)の化合物を、アジピン(ヘキサン二)酸、ラウリン(ドデカン)酸、リノール酸、ミリスチン(テトラデカン)酸、カプリン(デカン)酸、ステアリン(オクタデカン)酸、オレイン酸、カプリル(オクタン)酸、パルミチン(ヘキサデカン)酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、またはカプロン酸と接触させることによって形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。こうした医薬組成物は、皮下注射または筋肉内投与に特に好適であり得、活性成分は、ゆっくりと溶解し、注射部位からゆっくりと放出され、持続的な期間にわたって吸収され、デポ様放出効果を生成し得る。これらの「徐放性」塩は、例えば粘性水溶液/懸濁液製剤中で、増粘剤または粘度構築剤で任意に製剤化されてもよい。一部の実施形態では、例えば、皮下注射または筋肉内注射を介した、水溶性が乏しい式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩で製剤化された医薬組成物の投与は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、またはその間の任意の範囲、またはそれ以上の放出期間を提供する。
【0294】
C.局所投与
本明細書に開示される医薬組成物は、皮膚、開口部、または粘膜に局所的に投与され得る。本明細書に記載の局所投与には、結膜、角膜内、眼内、眼、耳、経皮、鼻(鼻腔内)、膣、尿道、呼吸器、および直腸投与が含まれる。
【0295】
本明細書に開示される医薬組成物は、エマルション、溶液、懸濁液、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、散布剤、ドレッシング、エリキシル剤、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、発泡体、フィルム、エアロゾル、洗浄剤、スプレー、座薬、包帯、皮膚パッチを含む、局所的または全身的効果のための局所投与に好適な任意の剤形で製剤化され得る。本明細書に開示される医薬組成物の局所製剤は、滅菌条件下で薬学的に許容可能なビヒクルと、および必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤、吸収促進剤、噴射剤と混合され得る活性成分を含有し得る。リポソーム、ミセル、マイクロスフェア、ナノシステム、およびそれらの混合物も使用され得る。局所(例えば、鼻腔内)投与される剤形は、任意で、脱アミノ化/酸化プロセスなどのMAO酵素によって媒介される酵素分解を最小化することによって、式(I)の化合物の生物学的利用能を改善するために、モノアミンオキシダーゼA型(RIMA)の可逆的阻害剤を含むモノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤で製剤化されてもよい。
【0296】
本明細書に開示される局所製剤での使用に好適な薬学的に許容可能なビヒクルには、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗菌剤または防腐剤、安定化剤、可溶化剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁剤および分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、封鎖剤またはキレート剤、浸透促進剤、凍結防止剤、凍結保護剤、増粘剤または粘度構築剤、および不活性ガスが含まれるが、これらに限定されない。
【0297】
軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルは、活性成分に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはそれらの混合物などのビヒクルを含有してもよい。
【0298】
粉末およびスプレーは、活性成分に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などのビヒクルを含有することができる。例えば、経鼻(内)投与に使用されるものなどの噴霧は、例えば、フルオロハイドロカーボン、クロロフルオロハイドロカーボンなどの通例の噴射剤、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を追加的に含有することができる。
【0299】
経皮送達デバイス(例えば、パッチ)を使用してもよい。そのような剤形は、身体への活性成分の制御された送達を提供するという追加的な利点を有する。すなわち、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、定常状態濃度で経皮パッチを介して投与することができ、それによって、活性成分は経時的に徐々に投与され、活性成分に関連する薬物スパイクおよび有害事象/毒性を回避することができる。
【0300】
経皮パッチ剤形は、治療される疾患/状態に応じて、様々な量の活性剤(式(I)の化合物、塩形態で提供される)と共に製剤化されてもよい。単位用量調製物の活性剤の量は、例えば、5mg、10mg、20mg、約30mg、40mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、もしくは5mg~25mg、もしくは10mg~20mg、もしくは12mg~18mg、もしくは13mg~16mg、もしくは14mg~15mg、または特定の用途に応じて健全な医学的判断を使用して適切とみなされるように変更または調整されてもよい。開示された化合物で製剤化された経皮パッチは、毒性の減少を伴う持続的な治療的利益を達成するために、マイクロドージングに好適であり得る。一部の実施形態では、本開示の化合物は、例えば、8、24、48、72、84、96、または168時間の期間などの長期間にわたって、精神活性以下の(それでも潜在的にセロトニン作動性の)濃度で経皮パッチを介して投与されてもよい。
【0301】
活性成分、および任意の薬学的に許容可能なビヒクルに加えて、経皮パッチは、当業者に公知のように、感圧接着層、裏打ち、および剥離ライナーのうちの一つ以上を含んでもよい。
【0302】
経皮パッチの剤形は、活性成分を適切な媒体に溶解する、または分散することによって作製することができる。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、感圧接着層を形成するポリマーマトリクスに直接溶解/分散され得る。こうした経皮パッチは、薬剤入り粘着(DIA)パッチと呼ばれる。好ましいDIAパッチ形態は、活性成分が感圧接着ポリマーマトリクス全体にわたって均一に分布される形態である。一部の実施形態では、活性成分は、活性成分に加えて感圧接着層とは別の活性成分およびポリマー基質を含む層中に提供されてもよい。いずれの場合でも、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、皮膚全体の流動を増加させるために、例えば担体剤、透過剤/吸収促進剤、保湿剤/結晶化阻害剤などの適切なビヒクルと共に任意に製剤化されてもよい。
【0303】
担体剤の例としては、オレイン酸、ウンデカン酸、吉草酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびエイコサペンタエン酸などのC-C22脂肪酸;オクタノール、ノナノール、オレイルアルコール、デシルアルコール、およびラウリルアルコールなどのC-C22脂肪アルコール;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、およびラウリン酸メチルなどのC-C22脂肪酸の低級アルキルエステル;アジピン酸ジイソプロピルなどのC-C22二酸のジ(低)アルキルエステル;モノラウリン酸グリセリルなどのC-C22脂肪酸のモノグリセリド;テトラヒドロフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール;2-(2-エトキシエトキシ)エタノール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル;ポリエチレンオキシドのアルキルアリールエーテル;ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル;ポリエチレンオキシドジメチルエーテル;グリセロール;酢酸エチル;アセト酢酸エステル;N-アルキルピロリドン;α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、または2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどの誘導体;ならびに、リモネン、リナロール、ミルセン、α-ピネンなどのピネン、カリオフィレン、シトラル、ユーコリプトールなどのテルペン/テルペノイド;それらの混合物を含む、が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0304】
透過剤/吸収促進剤の例としては、ドデシルメチルスルホキシド、オクチルメチルスルホキシド、ノニルメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ウンデシルメチルスルホキシド、2-ヒドロキシデシルメチルスルホキシド、2-ヒドロキシ-ウンデシルメチルスルホキシド、2-ヒドロキシドデシルメチルスルホキシドなどのスルホキシド;メントール;ポロキサマー、CARBOPOL、およびPEMULENの一つ以上を有する水相、パルミチン酸イソプロピルおよびPPG-2ミリスチルエーテルプロピオン酸塩の一つ以上から形成された油層、およびレシチンから形成される界面活性剤-レシチンオルガノゲル(PLO);脂肪酸、エステル、およびオレイル酸およびオレイルアルコールなどのアルコール;レブリン酸などのケト酸;グリコールおよびグリコールエーテル、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル;それらの混合物を含む、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0305】
保水剤/結晶化阻害剤の例としては、ポリビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル、HPMC、ポリメタクリレート、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0306】
感圧接着層は、アクリル(アルキルアクリルを含むポリアクリレート)、ポリビニルアセテート、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、ポリイソブチレン)、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリシロキサン、ポリウレタン、可塑化ポリエーテルブロックアミドコポリマー、可塑化スチレンブタジエンゴムブロックコポリマー、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されないポリマーから形成されてもよい。本開示の経皮パッチに使用される感圧接着層は、アクリルポリマー感圧接着剤、好ましくはアクリルコポリマー感圧接着剤から形成されうる。アクリルコポリマー感圧接着剤は、一つ以上のアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-エチルヘキシルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート;アリールアルキル(メタ)アクリレート;ならびに、官能基を有する(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、および4-ヒドロキシブチルメタクリレート)、カルボン酸含有(メタ)アクリレート(例えば、アクリル酸)、およびアルコキシ(メタ)アクリレート(例えば、メトキシエチルアクリレート)、との共重合によって得られてもよく、任意で、一つ以上の共重合性モノマー(例えば、ビニルピロリドン、酢酸ビニルなど)との共重合化によって得られてもよい。アクリル感圧接着剤の特定の例としては、DURO-TAK 87-900A、DURO-TAK 87-9301、DURO-TAK 87-4098、DURO-TAK 87-2074、DURO-TAK 87-235A、DURO-TAK 87-2510、DURO-TAK 87-2287、DURO-TAK 87-4287、DURO-TAK 87-2516、DURO-TAK 387-2052、およびDURO-TAK 87-2677などのDURO-TAK製品(Henkel)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0307】
本開示の経皮パッチに使用される裏打ちは、フィルム、不織布、和紙、綿織物、編物、織物、および不織布およびフィルムの積層複合体などの可撓性の裏打ちを含んでもよい。こうした裏打ちは、皮膚と密接に接触することができ、皮膚の動きに追従することができる軟質材料と、パッチの長期使用後に皮膚の発疹および他の不快感を抑制することができる材料とで構成されることが好ましい。裏打ち材料の例には、以下に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ナイロン、綿、酢酸レーヨン、レーヨン、レーヨン/ポリエチレンテレフタレート複合体と、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、アクリルポリウレタン、エステルポリウレタン、エーテルポリウレタン、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー、スチレンブタジエンゴム、エチレンビニルアセテートコポリマー、またはセロハンなどが挙げられる。好ましい裏打ちは、活性成分を吸着または放出しない。活性成分の吸着および放出を抑制するために、活性成分の経皮吸収性を改善し、皮膚の発疹およびその他の不快感を抑制するために、裏打ちは、上記の材料から成り、水蒸気透過性を有する一つ以上の層を含むことが好ましい。裏打ちの特定の例としては、3M COTRANエチレンビニルアセテート膜フィルム9702、3M COTRANエチレンビニルアセテート膜フィルム9716、3M COTRANポリエチレン膜フィルム9720、3M COTRANエチレンビニルアセテート膜フィルム9728などの3M COTRAN製品を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0308】
本開示の経皮パッチに使用される剥離ライナーは、剥離コーティングで処理された片側または両側を有するポリエステルフィルム、剥離コーティングで処理されたポリエチレン積層された高品質紙、および剥離コーティングで処理されたガラス紙を含みうるが、これらに限定されない。剥離コーティングは、フッ素ポリマー、シリコーン、フルオロシリコーン、または当業者に公知の任意の他の剥離コーティングであってもよい。剥離ライナーは、パッケージから経皮パッチを簡単に取り出すために、不均一な表面を持ちうる。剥離ライナーの例としては、3M SCOTCHPAK 9744、3M SCOTCHPAK 9755、3M SCOTCHPAK 9709、および3M SCOTCHPAK 1022などの3M社からのSCOTCHPAK製品を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0309】
一つ以上の刺激剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー、ソルビタンモノエステル、モノオレイン酸グリセリル、スパイスなど)で製剤化された乱用抑止層などの他の層も用いられ得る。
【0310】
経皮パッチ剤形を使用する本明細書に開示される方法は、例えば、2~96時間、または4~72時間、または8~24時間、または10~18時間、または12~14時間などの最大168時間の好ましくは長期間にわたる、少量の活性成分の全身送達を提供する。特に、式(I)の化合物は、有害または望ましくない副作用を回避できるように、少量、安定、および一貫した用量で送達することができる。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、精神活性以下の(それでも潜在的にセロトニン作動性の)濃度で、経皮的に投与される。
【0311】
例示的な薬剤入り粘着(DIA)パッチ製剤は、各々、DIAパッチ製剤の総重量に基づいて、5~30重量%の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩、30~70重量%の感圧接着剤(例えば、DURO-TAK 387-2052、DURO-TAK 87-2677、およびDURO-TAK 87-4098)、1~10重量%の透過剤/吸収促進剤(例えば、オレイルオレイン酸、オレイルアルコール、レブリン酸、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、および5~35重量%の結晶化阻害剤(例えば、ポリビニルピロリドン-co-ビニルアセテート、HPMC、ポリメタクリル酸など)、を含み得るが、本明細書の教示に照らして多くの変更も可能であることを理解されたい。
【0312】
自動注射装置は、本明細書に開示される組成物を患者に送達する方法を提供する。本明細書に開示される組成物は、いくつかの既知の装置を介して自動注射装置を使用して患者に投与されてもよく、その非限定的なリストは、経皮、皮下、および筋肉内送達を含む。
【0313】
一部の経皮、皮下、または筋肉内適用では、本明細書に開示される組成物は、皮膚を通して吸収される。受動的経皮パッチ装置は、皮膚の外層上に配置される吸収層または膜を含むことが多い。膜は、典型的には、組成物を患者に送達するために皮膚を通して吸収されることが許容される物質の用量を含有する。典型的には、皮膚の外層を通して容易に吸収される物質のみが、こうした経皮パッチ装置で送達されてもよい。
【0314】
本明細書に開示される他の自動注射装置は、開示された組成物の送達を改善するために、皮膚透過性の増加を提供するように構成されている。皮膚への、皮膚を横切る、または筋肉内への組成物の移動を改善するために浸透性を増加させるために使用される構造の非限定的な例には、一つ以上のマイクロニードルの使用が含まれ、一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物で被覆されうる。あるいは、中空マイクロニードルを使用して、皮膚の外層の下に、開示された組成物を送達するための流体チャネルを提供しうる。本明細書に開示される他のデバイスとしては、イオン導入、ソノフォリシス、逆イオン導入、またはそれらの組み合わせによる経皮送達、および薬剤送達を容易にするための皮膚透過性を増加させるための当技術分野で公知の他の技術が挙げられる。
【0315】
医薬組成物はまた、エレクトロポレーション、イオン泳動、フォノフォレシス、ソノフォレシス、およびマイクロ針または無針注射、例えば、POWDERJECT(商標)(Chiron Corp.,Emeryville,Calif.)、およびBIOJECT(商標)(Bioject Medical Technologies Inc.,Tualatin,Oreg.)によって局所的に投与することもできる。
【0316】
本明細書に開示される医薬組成物は、軟膏、クリーム、およびゲルの形態で開示され得る。好適な軟膏ビヒクルには、例えば、ラード、ベンゾ化ラード、オリーブ油、綿実油、および他の油、白色ワセリンを含む油性または炭化水素ビヒクル;乳化性または吸収性ビヒクル、例えば、親水性ワセリン、ヒドロキシステアリン硫酸、および無水ラノリン;水除去性ビヒクル、例えば、親水性軟膏;様々な分子量のポリエチレングリコールを含む水溶性軟膏ビヒクル;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリン、ステアリン酸を含む、油中水型(W/O)エマルションまたは水中油型(O/W)エマルションのいずれかのエマルションビヒクル(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、上記を参照されたい)、が含まれる。これらのビヒクルは軟化剤であるが、一般的に抗酸化剤および防腐剤の添加を必要とする。
【0317】
好適なクリーム基剤は、水中油型または油中水型であり得る。クリームビヒクルは、水洗浄可能であり、油相、乳化剤、および水相を含有する。油相は、一般に、ワセリンおよびセチルまたはステアリルアルコールなどの脂肪酸アルコールからなる「内部」相とも呼ばれる。水相は通常、必ずしもではないが、油相を超える体積であり、概して湿潤剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性界面活性剤であってもよい。
【0318】
ゲルは半固体の懸濁系である。単相ゲルは、液体担体全体にわたって実質的に均一に分散された有機高分子を含む。好適なゲル化剤には、架橋アクリル酸ポリマー、例えば、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、Carbopol(登録商標);親水性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、およびポリビニルアルコール;セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース;ガム、例えば、トラガカントおよびキサンタンガム;アルギン酸ナトリウム;ならびに、ゼラチン、が含まれる。均一なゲルを調製するために、アルコールまたはグリセリンなどの分散剤を加えるか、またはゲル化剤を粉砕、機械的混合、および/または撹拌によって分散させることができる。
【0319】
本明細書に開示される医薬組成物は、座薬、ペッサリー、ブージー剤、湿布もしくはパップ剤、ペースト、粉末、ドレッシング剤、クリーム、硬膏剤、避妊薬、軟膏、溶液、乳濁液、エマルション、タンポン、ゲル、発泡体、スプレー、または浣腸の形態で直腸、尿道、膣、あるいは膣周囲に投与され得る。これらの剤形は、上記、Remington:The Science and Practice of Pharmacyに記載される従来のプロセスを使用して製造することができる。
【0320】
直腸、尿道、および膣の座薬は、体開口部に挿入するための固体であり、これは、通常の温度では固体であるが、体温で融解または軟化し、開口部内に活性成分を放出する。直腸および膣の座薬に利用される薬学的に許容可能なビヒクルには、本明細書に開示される医薬組成物を製剤化した場合に、体温付近の融点を生じる硬化剤などの基剤が含まれ、本明細書に記載の抗酸化剤には、重亜硫酸塩およびメタ重亜硫酸ナトリウムが含まれる。好適なビヒクルには、ココアバター(テオブロマ油)、グリセリンゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、鯨ろう、パラフィン、白色および黄色ワックス、ならびに脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの適切な混合物、ヒドロゲル、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸;グリセリンゼラチンが含まれるが、これらに限定されない様々なビヒクルの組み合わせが使用され得る。直腸および膣の座薬は、圧縮方法または成形によって調製され得る。直腸および膣の座薬の一般的な重量は、約2~約3gである。
【0321】
本明細書に開示される医薬組成物は、溶液、懸濁液、軟膏、エマルション、ゲル形成溶液、溶液用粉末、ゲル、眼内挿入物、およびインプラントの形態で眼科的に投与され得る。
【0322】
本明細書に開示される医薬組成物は、鼻腔内投与され得る。「鼻」、「鼻腔内」、およびこれに類する用語は、投与経路、または投与経路に適合された剤形を指し、医薬剤形は、鼻(例えば、鼻腔)に、または鼻を通して摂取される。同様に、「経鼻送達装置」または「鼻腔内送達装置」は、活性成分を鼻腔に投与する装置を意味することが意図される。一部の実施形態では、鼻腔内剤形は、水溶液または非水溶液、懸濁液、リポソーム分散液、エマルション、マイクロエマルション、またはゾル-ゲルの形態であってもよい。鼻腔内投与の非限定的な例としては、鼻腔スプレーもしくは点鼻薬(直接注入)の形態の溶液または懸濁液の導入、またはゲル、エマルションもしくは軟膏の鼻腔内適用が挙げられる。錠剤またはカプセルなどの経口剤形と比べて、鼻腔内送達は、迅速な吸収、治療作用のより迅速な開始、および初回通過代謝の回避を提供する。吸収される活性成分の量は、多くの要因に依存する。これらの因子には、薬物濃度、薬物送達ビヒクル、粘膜接触時間、粘膜組織の静脈排出、薬物が吸収部位のpHでイオン化される程度、薬物分子のサイズ、およびその相対脂質溶解度が含まれるが、これらに限定されない。
【0323】
経鼻投与のための本開示の医薬組成物には、本開示の化合物、例えば、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩、および任意で、経鼻投与後の活性成分の経鼻吸収を促進する透過剤/吸収促進剤および経鼻投与後の薬剤の脳浸透を改善する薬剤、希釈剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、減感剤、乳化剤、生体接着剤、可溶化剤、懸濁剤および分散剤、増粘剤または粘度構築剤、等張剤、pH調整剤、緩衝剤、担体、香味剤、甘味剤、およびそれらの混合物を含む薬学的に許容可能なビヒクル、を含む。一部の実施形態では、活性成分は、粒子形態で医薬組成物中に存在する。一部の実施形態では、活性成分の粒子サイズは、約60ミクロン以下であり、これは、粒子と他の成分の任意のブレンドの均一性を確実にする、または液体ビヒクル中で適切な分散を提供するのに役立ち得る。
【0324】
正常な粘膜表面(鼻粘膜など)にわたる活性成分の輸送は、任意で透過剤/吸収促進剤と組み合わせることによって強化され得る。これらの透過剤/吸収促進剤の例としては、カチオン性ポリマー、表面活性剤、キレート剤、粘液溶解剤、シクロデキストリン、高分子ハイドロゲル、それらの組み合わせ、および当業者に公知の任意の他の類似の吸収促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。透過剤/吸収促進剤の代表的な例には、限定されるものではないが、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリンなどのリン脂質、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジン酸などのリゾホスファチジル誘導体、グリセロール、プロピレングリコールなどのポリオール、脂肪酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、またはリゾホスファチジン酸などのリゾホスファチジル誘導体、グリセロールまたはプロピレングリコールなどのポリオール、グリセリド、アミノ酸、およびそれらのエステルなどの脂肪酸エステル、シクロデキストリン、または本明細書に規定される他のものが挙げられる。ゲル化賦形剤または粘度増加賦形剤も使用することができる。
【0325】
正常な粘膜表面にわたる活性成分の輸送はまた、製剤が粘膜表面に接着する時間を増加させることによって強化され得る。生体接着剤、例えば、ハイドロゲルを形成する薬剤は、粘膜接着および制御された薬剤放出特性を示し、本明細書に記載される鼻腔内組成物に含まれ得る。鼻粘膜に結合することができる代表的な生体接着剤としては、限定されないが、ポリカルボフィル、ポリリジン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ペクチン、カルボポール934P、ポリエチレンオキシド600K、プルロニック(登録商標)F127および/またはプルロニックF-68などの一つ以上のポロキソマー、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン(PIP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、キサンタンガム、グアーガム、およびローカストビーンガムが挙げられる。他の経鼻送達組成物はキトサン系であり、粘膜表面上の活性成分の滞留時間を増加させるのに好適であり、その結果、その生物学的利用能が増加する。粘液膜のシステインが豊富なサブドメインと共有結合を形成するチオール化された高分子ビヒクルはまた、活性成分と膜との間の接触時間を延長する粘液付着を提供することができる。
【0326】
鼻腔内組成物はまた、一つ以上の防腐剤を含み得る。代表的な防腐剤としては、塩化ラウラルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾドデシニウム、塩化セチルピリジウム、セトリミド、臭化ドミフェンなどの第四級アンモニウム塩;ベンジルアルコール、クロロブタノール、o-クレゾール、フェニルエチルアルコールなどのアルコール;安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラベンなどの有機酸またはその塩;またはEDTAなどの複雑な形成剤、が挙げられる。
【0327】
鼻腔内剤形はまた、カルボン酸残基、カルボキシメチル基、スルホプロピル基、およびメチルスルホン酸基などの好適な陰イオン基を担持するイオン交換樹脂、例えば、マイクロスフェアを含み得る。イオン交換樹脂、例えば陽イオン交換樹脂も使用することができる。例えば、医薬組成物は、部分的に脱アセチル化されたキチンであるキトサン、またはポリ-N-アセチル-D-グルコサミン、またはその薬学的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、乳酸塩、グルタミン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、もしくはコハク酸塩など、と共に製剤化されてもよい。使用され得る非イオン交換樹脂(例えば、マイクロスフェア)の例としては、デンプン、ゼラチン、コラーゲンおよびアルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0328】
医薬組成物はまた、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、マレイン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸、およびコハク酸を含むが、これらに限定されない、適切なpH調整剤を含み得る。
【0329】
希釈剤などの他の成分は、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、および粉末糖などである。
【0330】
組成物の張性を調整するための等張剤が添加されてもよく、これには塩化ナトリウム、グルコース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0331】
これらに限定されないが、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、およびクエン酸緩衝剤を含む酸性、中性、または塩基性緩衝剤も、pHを制御するために、鼻腔内組成物に添加することができる。
【0332】
粘膜を通した活性成分の輸送を増加させる透過剤/吸収促進剤、および粘膜に沿った活性剤の接触時間を延長する生体接着剤を使用することに加えて、活性成分の投与は、制御放出製剤を使用することによって制御され得る。活性成分を含み、それらを制御された様式で送達することができる、当業者に公知の多数の粒子状薬剤送達ビヒクルがある。例としては、粒子状の高分子薬剤送達ビヒクル、例えば生分解性ポリマー、および非ポリマー成分で形成された粒子が挙げられる。これらの粒子状の薬剤送達ビヒクルは、粉末、微粒子、ナノ粒子、マイクロカプセル、リポソームなどの形態であり得る。典型的には、活性成分が、追加された成分を含まない粒子状形態である場合、その放出速度は、活性成分自体の放出に依存する。典型的には、吸収速度は、粒子が直径20ミクロン未満である微粒子形態で薬剤を提示することによって増強される。対照的に、活性成分が活性剤とポリマーのブレンドとして粒子状形態である場合、活性剤の放出は、ポリマーの除去によって、典型的にはポリマーマトリックスからの溶解、生分解、または拡散によって、少なくとも部分的に制御される。一部の実施形態では、医薬組成物は、緩徐/持続的な放出または吸収を提供する鼻腔内投与のための粘性水溶液/懸濁液の形態である。ここで、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、前述のいずれかの架橋バリアント、ならびに前述の組み合わせを含むが、それらに限定されない、増粘剤または粘度構築剤などの粘度を造形する薬学的ビヒクルが使用され得る。一部の実施形態では、薬学的に許容可能なビヒクルは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸およびその塩、またはその組み合わせを含む。こうした粘性水溶液/懸濁液剤形は、活性成分が投与部位からゆっくりと放出され、持続的な期間にわたって吸収され得るという点で、活性成分が比較的短時間作用性である、および/またはより長時間作用性の製剤が望ましい、鼻腔内剤形に特に好適であり得る。
【0333】
一部の実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物の脂肪酸塩などの、水溶性が乏しい式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩(例えば、22℃で5mg/mL未満、4mg/mL未満、3mg/mL未満、2mg/mL未満、1mg/mL未満、0.5mg/mL未満、0.1mg/mL未満の水溶性)で、製剤化される。脂肪酸塩形態の例としては、式(I)の化合物を、アジピン(ヘキサン二)酸、ラウリン(ドデカン)酸、リノール酸、ミリスチン(テトラデカン)酸、カプリン(デカン)酸、ステアリン(オクタデカン)酸、オレイン酸、カプリル(オクタン)酸、パルミチン(ヘキサデカン)酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、またはカプロン酸と接触させることによって形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。こうした医薬組成物は、活性成分が投与部位からゆっくりと放出され、持続的な期間にわたって吸収され得るという点で、活性成分が比較的短時間作用性である、および/またはより長時間作用性の製剤が望ましい、鼻腔内剤形に特に好適であり得る。
【0334】
本明細書で企図される他の鼻腔内剤形および方法は、van Woensel M,et al.Formulations for Intranasal Delivery of Pharmacological Agents to Combat Brain Disease:A New Opportunity to Tackle GBM? Cancers(Basel).2013 Aug 14;5(3):1020-48にて開示され、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0335】
鼻腔内送達装置は当技術分野で公知である。したがって、鼻粘膜への薬剤の送達に適した任意の装置が使用され得る。液体剤形の投与に有用な装置の非限定的な例としては、ベイパー装置(例えば、蒸気吸入器)、ドロップデバイス(例えば、カテーテル、単回投与ドロッパ、複数回投与式ドロッパ、および単位用量ピペット)、機械式スプレーポンプ装置(例えば、ボトルの圧迫、複数回用量定量噴霧ポンプ、および単回/複数回投与噴霧ポンプ)、双方向スプレーポンプ(例えば、呼吸作動型経鼻送達装置)、ガス駆動噴霧システム/噴霧器(例えば、単回投与もしくは複数回投与HFAまたは窒素噴射剤駆動型定量吸入器、従来および周速度吸入器を含む)、および電動式ネブライザ/噴霧器(例えば、パルス膜ネブライザ、振動機械式ネブライザ、および手持ち式機械式ネブライザ)、が挙げられる。粉末組成物(例えば、凍結乾燥または別様に乾燥されてプールされた組成物)の投与に有用な装置の非限定的な例としては、以下に限定されないが、機械式粉末噴霧器(例えば、手動式カプセルベースの粉末噴霧装置および手動式粉末噴霧装置、手動式ゲル送達装置)、呼吸作動型吸入器(例えば、単回用量または複数回用量の鼻吸入器およびカプセルベースの単回用量または複数回用量の鼻吸入器)、および吸入器(例えば、呼吸作動型経鼻送達装置)、が挙げられる。
【0336】
鼻腔内送達のための計量された噴霧の使用は、噴霧として投与され得る適切な媒体中の溶液または分散液中に活性成分を含めることによっても達成され得る。このタイプの代表的な装置は、以下の特許、特許出願、および刊行物に開示されている:WO2003026559、WO2002011800、WO200051672、WO2002068029、WO2002068030、WO2002068031、WO2002068032、WO2003000310、WO2003020350、WO2003082393、WO2003084591、WO2003090812、WO200041755、および医薬文献(例えば、Bell,A.Intranasal Delivery Devices,in Drug Delivery Devices Fundamentals and Applications,Tyle P.(ed),Dekker,New York,1988を参照)Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,1975、これら全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0337】
一部の実施形態では、医薬組成物は、加圧容器、ポンプ、スプレー、電気流体力学を使用して細かいミストを生成する噴霧器などの噴霧器、またはネブライザを単独で、またはジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、ペルフルブロンなどの過フッ素化された炭化水素、および他の好適なガスなどの好適な噴射剤と組み合わせて、使用して、送達するためのエアロゾルまたは溶液の形態であり得る。医薬組成物は、単独で、またはラクトースもしくはリン脂質などの不活性担体と組み合わせた、吸入用の乾燥粉末;および点鼻剤として開示され得る。鼻腔内使用の場合、粉末は、キトサンまたはシクロデキストリンを含む生体接着剤を含み得る。
【0338】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、もしくはネブライザで使用する溶液または懸濁液は、エタノール、水性エタノール、または本明細書に開示される活性成分の分散、可溶化、または徐放化のための好適な代替剤、溶媒としての噴射剤;および/またはソルビタントリオレート、オレイン酸、もしくはオリゴ乳酸などの界面活性剤、を含有するように製剤化され得る。
【0339】
本明細書に開示される医薬組成物は、送達に好適なサイズ、例えば、約50マイクロメートル以下、または約10マイクロメートル以下などに微粒子化され得る。このようなサイズの粒子は、スパイラルジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化、または噴霧乾燥などの当業者に公知の粉砕方法を使用して調製され得る。
【0340】
吸入剤または注入剤で使用するカプセル、ブリスター、カートリッジは、本明細書に開示される医薬組成物の粉末混合物;ラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤;およびl-ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムなどの性能調整剤、を含むように製剤化され得る。ラクトースは、無水であってもよく、または一水和物の形態であってもよい。他の適切な賦形剤または担体には、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが含まれる。吸入/鼻腔内投与のために本明細書に開示される医薬組成物は、メントールおよびレボメントールなどの好適な香味剤、またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味剤を更に含み得る。
【0341】
前述に加えて、本開示の化合物はまた、当技術分野で公知のように、灌注および灌水の形態で鼻腔内に投与することができる。鼻灌注は、薬剤を含む溶液で鼻腔を定期的に浸漬すること含む。鼻灌水器は、通常、鼻灌水器を薬剤を含む溶液で充填し、鼻灌水器からのノズルを一方の鼻孔に挿入し、口を開いて呼吸しながら、溶液を一方の鼻孔に流し、隔壁を回って、他方の鼻孔から排出することによって使用される。
【0342】
局所投与のために本明細書に開示される医薬組成物は、即時放出、または遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出を含む修飾放出となるように製剤化され得る。
【0343】
D.放出調節剤形
本明細書に開示される医薬組成物は、放出調節剤形として製剤化され得る。本明細書で使用される場合、用語「放出調節」は、同じ経路で投与した場合の活性成分の放出速度または放出場所が即時剤形とは異なる剤形を指す。放出調節剤形の医薬組成物は、マトリックス制御放出装置、浸透圧制御放出装置、多粒子制御放出装置、イオン交換樹脂、腸溶性コーティング、多層コーティング、ミクロスフェア、リポソーム、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、当業者に公知の様々な調節放出装置および方法を使用して調製することができる。活性成分の放出速度は、活性成分の粒径および多形性を変化させることによっても修飾され得る。
【0344】
1.マトリックス放出制御装置
放出調節剤形中の本明細書に開示される医薬組成物は、当業者に公知のマトリックス放出制御装置を使用して作製され得る(Takada et al in“Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,”Vol.2,Mathiowitz ed.,Wiley,1999参照)。
【0345】
一部の実施形態では、放出調節剤形の本明細書に開示される医薬組成物は、合成ポリマー、天然ポリマーおよび誘導体、例えば、多糖類およびタンパク質を含む、水膨潤性、浸食性、または可溶性ポリマーである、溶出性マトリックス装置を使用して製剤化される。
【0346】
溶出性マトリックスの形成に有用な材料には、キチン、キトサン、デキストラン、およびプルラン;寒天ガム、アラビアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラギーナン、ガッティガム、グアーガム、キサンタンガム、およびスクレログルカン;デンプン、例えばデキストリンおよびマルトデキストリン;親水性コロイド、例えば、ペクチン;リン脂質、例えば、レシチン;アルギネート;プロピレングリコールアルギネート;ゼラチン;コラーゲン;およびセルロース系、例えば、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC);ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル;グリセロール脂肪酸エステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America,Inc.,Piscataway,N.J.);ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート);ポリラクチド;L-グルタミン酸およびエチル-L-グルタミン酸のコポリマー;分解性乳酸-グリコール酸コポリマー;ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸;および他のアクリル酸誘導体、例えば、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、および(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロリドのホモポリマーならびにコポリマー、が含まれるが、これらに限定されない。
【0347】
更なる実施形態において、医薬組成物は、非溶出性マトリックス装置で製剤化される。活性成分は、不活性マトリックス中に溶解または分散され、投与されたら、主に不活性マトリックスを通した拡散によって放出される。非溶出性マトリックス装置としての使用に好適な材料には、不溶性プラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、酢酸ビニルとの塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン、アイオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロルヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー、ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー;ならびに親水性ポリマー、例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、クロスポビドン、架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニル、脂肪族化合物、例えば、カルナバワックス、微結晶性ワックス、トリグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。
【0348】
マトリックス制御放出システムでは、所望の放出動態は、例えば、用いられるポリマーの種類、ポリマー粘度、ポリマーおよび/または活性成分の粒子サイズ、活性成分対ポリマーの比、ならびに組成物中の他の賦形剤または担体を介して制御され得る。
【0349】
放出調節剤形での本明細書に開示される医薬組成物は、直接圧縮、乾式または湿式造粒とその後の圧縮、融解造粒とその後の圧縮を含む、当業者に公知の方法によって調製され得る。
【0350】
2.浸透圧制御放出装置
放出調節剤形中の本明細書に開示される医薬組成物は、1チャンバーシステム、2チャンバーシステム、非対称膜技術(AMT)、および押出コアシステム(ECS)を含む浸透圧制御放出装置を使用して製造され得る。一般に、そのような装置は、少なくとも二つの構成要素:(a)活性成分を含むコア、および(b)コアを封入する少なくとも一つの送達ポートを有する半透膜、を有する。半透膜は、送達ポートを通じた押出しによる薬剤放出を引き起こすように、使用時の水性環境からコアへの水の流入を制御する。
【0351】
活性成分に加えて、浸透圧装置のコアは、任意で使用環境から装置のコアへの水輸送のための駆動力を生成する浸透圧剤を含む。浸透圧剤の一種は、「オスモポリマー」および「ヒドロゲル」とも呼ばれる水膨潤性親水性ポリマーであり、それには、親水性ビニルおよびアクリルポリマー、多糖類、例えば、アルギン酸カルシウム、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタクリル)酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVPコポリマー、疎水性モノマーとのPVA/PVPコポリマー、例えば、メタクリル酸メチルおよび酢酸ビニル、大きなPEOブロックを含む親水性ポリウレタン、クロスカルメロースナトリウム、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびカルボキシエチル、セルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ゼラチン、キサンタンガム、ならびにデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0352】
浸透圧剤の他の種類はオスモゲンであり、これは、水を吸収して周囲のコーティングのバリアを横切る浸透圧勾配に影響を与えることができる。好適なオスモゲンには、無機塩、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、および硫酸ナトリウム;糖、例えば、ブドウ糖、フルクトース、グルコース、イノシトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラフィノース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびキシリトール、有機酸、例えば、アスコルビン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、p-トルエンスルホン酸、コハク酸、および酒石酸;尿素;ならびに、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0353】
異なる溶解速度の浸透圧剤を使用して、活性成分が剤形から最初に送達される速度に影響を与えることができる。例えば、Mannogeme EZ(SPI Pharma、Lewes,Del.)などの非結晶性糖を使用して、最初の数時間でより迅速な送達を提供して、望ましい治療効果を即座に生成し、残りの量を徐々に継続的に放出して、長期間にわたって望ましいレベルの治療または予防効果を維持することができる。この場合、活性成分は、代謝および排泄される活性成分の量を置き換えるような速度で放出される。
【0354】
コアはまた、剤形の性能を増強するため、または安定性もしくは処理を促進するために、本明細書に記載される様々な他の賦形剤および担体を含んでもよい。
【0355】
半透膜の形成に有用な材料には、生理学的に関連のあるpHで、水透過性および水不溶性である、または架橋などの化学変化によって水不溶化されやすい、様々なグレードのアクリル、ビニル、エーテル、ポリアミド、ポリエステル、およびセルロース誘導体が含まれる。コーティングを形成するのに有用な適切なポリマーの例には、可塑化、非可塑化、および強化酢酸セルロース(CA)、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、CAプロピオン酸、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAエチルカルバミン酸、CAP、CAメチルカルバミン酸、CAコハク酸、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、CAジメチルアミノ酢酸、CA炭酸エチル、CAクロロ酢酸、CAシュウ酸エチル、CAメチルスルホン酸、CAブチルスルホン酸、CA p-トルエンスルホン酸、酢酸寒天、三酢酸アミロース、ベータグルカン酢酸、ベータグルカン三酢酸、アセトアルデヒドジメチルア酢酸、ローカストビーンガムの三酢酸、水酸化エチレン酢酸ビニル、EC、PEG、PPG、PEG/PPG コポリマー、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリ(アクリル)酸およびエステル、ポリ(メタクリル)酸およびエステル、ならびにそれらのコポリマー、デンプン、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハライド、ポリビニルエステルおよびエーテル、天然ワックス、ならびに合成ワックスが含まれる。
【0356】
半透膜はまた、米国特許第5,798,119号に開示されているように、細孔が実質的にガスで充填され、水性媒体によって湿らされないが、水蒸気は透過性である疎水性微多孔膜であり得る。こうした疎水性であるが水蒸気透過性の膜は、典型的には、疎水性ポリマー、例えば、ポリアルケン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルエステルおよびエーテル、天然ワックス、ならびに合成ワックスからなる。
【0357】
半透膜上の送達ポートは、機械的またはレーザードリルによってコーティング後に形成され得る。送達ポートは、水溶性材料のプラグの侵食によって、またはコアのくぼみ上の膜の薄い部分の破裂によって、原位置で形成され得る。更に、送達ポートは、米国特許第5,612,059号および同第5,698,220号に開示されているタイプの非対称膜コーティングの事例のように、コーティング処理中に形成され得る。
【0358】
放出される活性成分の総量および放出速度は、半透膜の厚さおよび多孔性、コアの組成、ならびに送達ポートの数、サイズ、および位置を介して実質的に調節され得る。
【0359】
浸透圧放出制御剤形の医薬組成物は、製剤の性能または製剤の処理を促進するために、本明細書に記載される追加の従来的なビヒクルを更に含み得る。
【0360】
浸透圧制御放出剤形は、当業者に公知の従来的な方法および技術に従って調製することができる(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、上記、Santus and Baker,J.Controlled Release 1995、35、1-21、Verma et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy 2000、26、695-708、Verma et al.,J.Controlled Release 2002、79、7-27参照)。
【0361】
一部の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、活性成分および他の薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含むコアをコーティングする非対称浸透膜を含む、AMT制御放出剤形として製剤化される。AMT制御放出剤形は、直接圧縮、乾式造粒、湿式造粒、および浸漬コーティング法を含む、当業者に公知の従来の方法および技術に従って調製することができる。
【0362】
一部の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、活性成分、ヒドロキシルエチルセルロース、および他の薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含むコアをコーティングする浸透膜を含む、ESC制御放出剤形として製剤化される。
【0363】
3.多粒子制御放出装置
放出調節剤形の本明細書に開示される医薬組成物は、約10μm~約3mm、約50m~約2.5mm、または約100m~約1mmの直径の範囲の多数の粒子、顆粒、またはペレットを含む多粒子制御放出装置として製造され得る。このような多粒子は、湿式および乾式造粒、押出/球形化、ローラー圧縮、融解凝固を含む当業者に公知のプロセスによって、およびシードコアをスプレーコーティングすることによって製造され得る。例えば、Multiparticulate Oral Drug Delivery;Marcel Dekker:1994、およびPharmaceutical Pelletization Technology;Marcel Dekker:1989を参照されたい。
【0364】
本明細書に記載される他のビヒクルは、多粒子の処理および形成を支援するために医薬組成物とブレンドされてもよい。得られた粒子は、それ自体が多粒子装置を構成し得、または腸溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー、および水溶性ポリマーなどの様々なフィルム形成材料によって被覆され得る。多粒子は、カプセルまたは錠剤として更に処理することができる。
【0365】
4.標的送達
本明細書に開示される医薬組成物はまた、リポソーム、再封入赤血球、および抗体系送達システムを含む、治療される対象の体の特定の組織、受容体、または他の領域を標的とするように製剤化することもできる。
【0366】
E.吸入投与
本明細書に開示される医薬組成物は、吸入投与、例えば、肺吸収のために製剤化され得る。適切な調製物は、溶液とエマルションなどの上述の液体形態調製物を含んでもよく、溶媒または担体は、例えば、水、水/プロピレングリコール溶液などの水/水混和性ビヒクル、または、任意で緩衝材を含む有機溶媒であり、空気、酸素、ヘリウムと酸素の混合物、もしくは他のガスおよびガス混合物などの担体ガスと共に、エアロゾル、好ましくはミストとして送達することができる。医薬組成物は、単独の、またはラクトースもしくはリン脂質などの不活性担体と組み合わせた、吸入用の乾燥粉末として製剤化され得る。
【0367】
医薬組成物は、加圧容器、ポンプ、スプレー、電気流体力学を使用して細かいミストを生成する噴霧器などの噴霧器、またはネブライザを単独で、またはジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、ペルフルブロンなどの過フッ素化された炭化水素、および他の好適なガスなどの好適な噴射剤と組み合わせて、使用して、送達するためのエアロゾルまたは溶液の形態であり得る。
【0368】
吸入使用に適した水溶液は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を水に溶解することによって調製することができる。好適な安定化剤および増粘剤も添加され得る。吸入使用に適したエマルションは、化合物の薬学的に許容可能な塩を水性媒体中に可溶化させ、任意で天然ガムまたは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびその他の懸濁剤などの粘性材料を用いて、疎水性媒体中に可溶化形態を分散させることによって作製することができる。
【0369】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、もしくはネブライザで使用する溶液または懸濁液は、界面活性剤もしくは他の好適な共溶媒、または本明細書に開示される活性成分の分散、可溶化、もしくは徐放化のための好適な代替剤、および任意で噴射剤を含有するように製剤化され得る。こうした界面活性剤または共溶媒には、限定されるものではないが、ポリソルベート20、60、および80;プルロニックF-68、F-84、およびP-103;シクロデキストリン;ポリオキシル35ヒマシ油;ソルビタントリオレート、オレイン酸、またはオリゴ乳酸、が含まれ得る。界面活性剤および共溶媒は、典型的には、医薬組成物の約0.01重量%~約2重量%の濃度で用いられる。単純水溶液の粘性よりも大きな粘性は、一部の場合では、製剤を分注する際の変動を低減して、製剤のエマルションの成分の物理的分離を低減し、および/または、さもなくば、製剤を改善するのに望ましい場合がある。このような粘性構築剤は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、ならびに上記物質の組合せを含む。このような薬剤は、望ましい場合には、典型的には、医薬組成物の約0.01重量%~約2重量%、0.1重量%~約1重量%、0.5重量%~約0.8重量%のレベルで用いられる。
【0370】
塩形態では、式(I)の化合物はまた、有機溶媒または有機溶媒の水性混合物中に溶解され得る。有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロメタン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N、N-ジメチルアセトアミド、N、N-ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、メチブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチル-2-ピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエチレン、またはキシレンなど、およびそれらの組合せであり得る。有機溶媒は、エステル溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、アミド溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒などの官能基カテゴリーに属し得、それぞれを使用することができる。
【0371】
医薬組成物および吸入投与のための方法に関するさらなる説明が以下に提供される。
【0372】
吸入方法および投与
本明細書では、吸入を介して、エアロゾル、好ましくはミスト中に溶解された式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする患者に送達する方法が開示される。式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載されるように、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害、例えば、特に、中枢神経系(CNS)障害および/または心理的障害などの疾患または障害の治療に有用であり得る。好ましくは、エアロゾルは、外部から熱を加えることなく生成される(これは、振動メッシュまたは他のネブライザなどにより、エアロゾル自体の形成によって引き起こされるわずかな温度上昇を除外しないが、このようなわずかな温度上昇は、多くの場合、組成物の冷却をもたらす、薬剤の気化によって相殺され得る)。式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、本明細書に明示したいずれかであり得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、エアロゾル、好ましくはミストとして、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物などの担体、または治療用ガス混合物を含む他のガス混合物とともに送達され得る。担体は、一部の場合、約50℃~約60℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物であり得る。
【0373】
さらに、吸入を介した投与によって、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、患者の中枢神経系に全身的に送達され得る。担体ガス、例えば、空気、酸素、ヘリウムと酸素の混合物、または他のガスとガス混合物は、約50℃~約60℃、または約55℃~約56℃に加熱することができる。ヘリウムと酸素の混合物が担体として使用される場合、ヘリウムは、体積の約50%、60%、70%、80%もしくは90%で、酸素とヘリウムの混合物中に存在することができ、酸素は、体積の約50%、40%、30%、もしくは10%で、またはその間の任意の範囲で混合物中に存在することができる。
【0374】
方法は、(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルの投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む。前治療は、約90℃まで、約92℃まで、約94℃まで、約96℃まで、約98℃まで、約100℃まで、約105℃まで、約110℃まで、約115℃まで、約120℃まで、またはその間の任意の範囲に加熱されたヘリウムおよび酸素の混合物の吸入を介して患者に投与することを含み得る。
【0375】
方法は、(i)患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与すること、その後に(ii)約50℃~約60℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物と、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルとを、患者に吸入により投与すること、(i)と(ii)のステップを繰り返すことを含む。ステップ(i)および(ii)は、1、2、3、4、5、またはそれ以上の回数で繰り返してもよい。
【0376】
一部の実施形態では、本開示は、吸入を介して、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を、エアロゾル、好ましくはミストの形態で投与することを含む、中枢神経系(CNS)障害および/または心理的障害を治療する方法を提供する。式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、担体ガス、例えば、空気、酸素、ヘリウムおよび酸素の混合物、または他のガスおよびガス混合物と共にエアロゾルとして送達され得る。ヘリウムおよび酸素の混合物は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルを患者に投与する前に、約50℃~約60℃に加熱することができる。
【0377】
中枢神経系および/または心理的障害は、例えば、薬物使用障害(例えば、アルコール使用障害)、全般性不安障害(GAD)、うつ病を伴うGAD、社会不安障害、および治療抵抗性うつ病(TRD)に特に言及されている、本明細書に開示されるもののいずれかであり得る。
【0378】
一部の実施形態では式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、吸入を介して患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の減少、またはそれらの組み合わせをもたらす。
【0379】
式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、一部の実施形態では、一回の吸入セッション当たり、エアロゾル吸入を介して、約1μg~約200mg以上(または約1μg~約200mgの任意の範囲)の用量、例えば、約1μg、2μg、5μg、6μg、10μg、13μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、210μg、220μg、230μg、240μg、250μg、260μg、270μg、280μg、290μg、300μg、400μg、500μg、1.0mg、2.0mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、10.0mg、20.0mg、30.0mg、40.0mg、50.0mg、60.0mg、70.0mg、80.0mg、90.0mg、100.0mg、150.0mg、200.0mg、またはそれ以上の用量を投与することができる。一部の実施形態では、対象は、一日に1、2、3、4、5回、またはそれ以上の吸入セッションを有し得る。一部の実施形態では、対象は、隔日、週一回、週二回、または週三回に、1、2、3、4、5回、またはそれ以上の吸入セッションを有することができる。一部の実施形態では、対象は、隔月、月二回、月三回、または月四回に、1、2、3、4、5回、またはそれ以上の吸入セッションを有することができる。一部の実施形態では、対象は、28日間以内などの、治療コース当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、またはそれ以上の吸入セッションを有し得る。
【0380】
エアロゾル
一部の実施形態では、エアロゾル吸入によって開示された塩形態を送達する方法が提供される。エアロゾル、好ましくは、ミストは、空気、酸素、酸素とヘリウムの混合物、または他のガスおよびガス混合物を、担体ガスとして使用して送達され得る。担体ガスは、室温で、または加熱されて送達されてもよい。一部の実施形態では、エアロゾル、好ましくは式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含むミストは、加熱ヘリウム-酸素(HELIOX)混合物を使用して吸入を介して送達される。ヘリウムの粘度が非常に低いため、ヘリウムと酸素の混合物は、肺領域の深部に到達し、吸入を介した用量の送達における主要な障害の一つである気道内の薬剤の沈着を低減するための非常に望ましい特徴である、層流によって特徴付けられるガス流を生成する。患者は、患者の肺の肺胞領域にミストとして本明細書に開示される溶解塩形態を吸入することができる。式(I)の化合物は、次に、肺の肺胞領域の流体内層に送達され得、患者の血液循環に全身吸収され得る。有利なことに、これらの製剤は、肺の肺胞領域に吸入されると、血流に効果的に送達され得る。
【0381】
加熱または非加熱の担体ガス(例えば、空気、酸素、またはヘリウム-酸素の混合物)の送達に好適な装置には、例えば、連続モードネブライザのFlo-Mist(Phillips)およびHope(B&B Medical Technologies)、ならびに、例えば、Medipure(商標)ヘリオックス-LCQ System(PraxAir)の調整器、および、例えば、Precision Control Flow(PraxAir)の制御ボックスなどの付属品が含まれる。一部の実施形態では、完全送達装置は、例えば、ロシア特許第RU199823U1号に記載される装置であり得る。
【0382】
本明細書で使用する用語「ヘリオックス」は、ヘリウムガス(He)と酸素ガス(O2)の呼吸ガスの混合物を指す。一部の実施形態では、ヘリオックス混合物は、体積の約50%、60%、70%、80%、または90%で、ヘリウムと酸素の混合物にヘリウムを含有し、体積の約50%、40%、30%、もしくは10%、またはその間の任意の範囲で、ヘリウムと酸素の混合物に酸素を含有し得る。したがって、ヘリオックス混合物は、ヘリウムと酸素を、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10の体積比率またはその間の任意の範囲で含有し得る。一部の実施形態では、ヘリオックスは、層流傾向の増加および乱流での抵抗の減少により、気道との抵抗をより少なく生成し得る。
【0383】
ヘリオックス混合物における熱の使用は、薬剤吸収のための重要な物理的障壁の浸透性を増加させることによって、薬剤送達をさらに改善することができる。粘膜表面の加熱により、末梢血循環を改善し、間質接合部、ならびに他の機序を弛緩させることによって、浸透性が増加され得る。ヘリウムは、酸素と窒素のほぼ10倍高い熱伝導率を有し、熱伝達をより効率的に促進することができる。乾燥ヘリオックス混合物は、最大110℃まで加温される場合、前治療ステップとして安全に使用することができ、これにより、乾燥ヘリオックス混合物は、肺および気道の粘膜表面をより効率的に加熱することができる。
【0384】
様々なタイプのパーソナル吸入器が当該技術分野で公知である。一般的に、パーソナル吸入器は、固形の薬剤または化合物を加熱することを特徴とする。吸入器は、固体の薬剤または化合物をくすぶり点まで直接加熱することによって、機能することができる。固体または固体濃縮物を気化させることは、対流または伝導によって行うことができる。固体濃縮物の対流加熱は、その後気化する、水または別の液体と接触する発熱体を伴う。高温蒸気が固体または固体濃縮物を直接加熱して燻り、蒸気を放出し、ユーザによって吸入される。伝導性加熱は、固体または固体濃縮物と発熱体との間の直接接触を伴い、これは、固体をくすぶり点に至らしめて、蒸気を放出してユーザによって吸入される。吸入器は、肺損傷の点で喫煙を上回る利点を提示するが、気化される薬剤/活性剤は、気化熱によって著しく劣化され得る。
【0385】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、任意で加熱されたヘリウム-酸素混合物と組み合わされる塩形態を含有する水性液滴エアロゾル、好ましくはミストを発生させるネブライザを介して送達される。一部の実施形態では、開示された化合物の塩形態は、塩形態を含有する水性液滴エアロゾル、好ましくはミストを生成するネブライザを介して送達され、これは亜酸化窒素を含む駆動ガスと組み合わされる。亜酸化窒素を含む駆動ガスは、亜酸化窒素ガスそのもの、またはNO-O混合物もしくはNO空気混合物などの治療用ガス混合物であり得る。治療用ガス混合物は、N、Ar、CO、Ne、CH、He、Kr、H、Xe、HO(例えば、蒸気)などの一つ以上などの他のガスをさらに含み得る。一部の実施形態では、駆動ガスは、NOを含む治療用ガス混合物であり、これは、治療用ガス混合物の総体積に対して、5体積%から、10体積%、15体積%から、20体積%から、25体積%から、30体積%から、35体積%から、40体積%から、45体積%から、および最大75体積%、最大70体積%まで、最大65体積%、最大60体積%、最大55体積%、最大50体積%の範囲、またはその間の任意の範囲の濃度で存在する。駆動ガス中の(または、としての)亜酸化窒素(NMDA受容体アンタゴニストである)の存在は、開示された化合物の効果を増強し、同様のレベルの効果を得るためにそのより少ない用量を使用する能力を提供することができる。
【0386】
例えば、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の調製物を、液体媒体に入れ、ネブライザなどの装置によってエアロゾルに入れることができる。一部の実施形態では、ネブライザは、例えば、空気圧縮機ネブライザ、超音波ネブライザ、振動メッシュもしくはホーンネブライザ、またはマイクロプロセッサ制御の呼吸作動型ネブライザであり得る。一部の実施形態では、ネブライザ装置は、例えば、ロシア特許第RU199823U1号に記載される装置であり得る。
【0387】
ネブライザは、溶液または懸濁液中の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩などの薬剤を、肺への送達のために、ミストなどの微細なエアロゾルに変換する装置である。ネブライザはまた、噴霧器と称され得る。噴霧することは、溶解した薬剤を、ミストなどのエアロゾル形態にすることである。噴霧化によって薬剤を送達するために、薬剤は、液体媒体、例えば、水、エタノール、またはプロピレングリコール中に分散され得る。さらに、開示された化合物の塩形態は、例えば、リポソーム、ポリマー、エマルション、ミセル、ナノ粒子、またはポリエチレンイミン(PEI)などのビヒクルで運搬され得る。ネブライザ用の液体薬剤形成は、例えば、水溶液または粘性溶液であり得る。溶解された薬剤は、分散のための力(例えば、ガスの噴射、超音波、またはメッシュの振動)を加えた後、液滴内に含有され、その後、これが吸入される。ミストは、空気中または別のガス混合物(例えば、ヘリウムと酸素の混合物)中に薬剤を含有する液滴を含み得る。
【0388】
ジェットネブライザ(空気式ネブライザまたはコンプレッサネブライザとも称される)は、圧縮ガスを使用してミストを生成する。一部の実施形態では、ジェットネブライザは、マイクロプロセッサ制御の呼吸作動型ネブライザであり、呼吸作動型ネブライザとも称される。呼吸作動型ネブライザは、連続的にミストを生じるのではなく、患者が吸入しているときにのみ、ミストを生成する。ミストは、例えば、ネブライザボウルまたはカップ内のベンチュリ管を、空気流を通過させることによって、生成され得る。ベンチュリ管は、円錐形状の管に流体を圧縮することによって、流体の流れを速めるためのシステムである。この制限では、流体は、その速度を増加させ、それによって、その圧力を減少させ、部分真空を生成しなければならない。流体が狭窄点から出ると、その圧力は、周囲またはパイプレベルの圧力へ再度増加する。これは、ネブライザボウル内の薬剤の溶液から供給管を通して液滴を引っ張る低圧領域を形成することができ、次いで、マウスピースに流れる霧状液滴の流れを生成する。空気の流れが大きくなると、粒子サイズは減少し、拍出量は増加する。放出ガスを飽和させる液滴および溶媒のために、ジェットネブライザは、ネブライザ内の薬剤溶液を冷却し、残留容量中の溶質濃度を増加させることができる。ネブライザボウルまたはカップ内のバッフルは、より大きな粒子によって影響を受け得、それらを保持し、ネブライザボウルまたはカップ内の溶液に戻し、再噴霧化させる。対象が吸入する際のネブライザボウルを通る空気の同伴により、吸気中のミスト出量が増加する可能性がある。ミストの生成は、粒子サイズの分布が小さいほど起こりうるが、使用する粒子サイズが小さいほど、噴霧時間は長くなり得る。
【0389】
液滴サイズに一般的に使用される測定単位は、質量による平均液滴直径として定義される、質量中央直径(MMD)である。この単位はまた、質量平均空気力学的直径、またはMMADと称され得る。ジェットネブライザのMMD液滴サイズは、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0マイクロメートル以上(または約1.0~10.0マイクロメートルの間の任意の範囲)であり得、これは、超音波ネブライザよりも小さくなり得る。
【0390】
超音波ネブライザは、交互電流を高周波(約1~約3MHz)の音響エネルギーに変換する、圧電結晶の振動を使用して、ミストを生成する。溶液は、表面で液滴に分解され、結果として生じるミストは、患者の吸入により装置から引き出されるか、または小さな圧縮機によって生成された装置を通るガス流によって押し出される。超音波ネブライザは、大容量の超音波ネブライザおよび小容量の超音波ネブライザを含み得る。液滴サイズは、ジェットネブライザよりも、超音波ネブライザで大きい傾向がある。超音波ネブライザのMMD液滴サイズは、約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0マイクロメートルまたはそれ以上(または約2.0~10.0マイクロメートルの間の任意の範囲)となり得る。超音波ネブライザは、約100、150、200、250、300マイクロメートル/Lまたはそれ以上の液滴を有する、高密度ミストを生成することができる。
【0391】
メッシュネブライザ装置は、圧電結晶の振動を使用して、ミストを間接的に生成する。メッシュネブライザは、例えば、能動メッシュネブライザおよび受動メッシュネブライザを含む。能動メッシュネブライザは、電流の印加で収縮および拡張するピエゾ素子を使用し、薬剤溶液と接触して精密にドリルされたメッシュを振動させて、ミストを生成する。圧電結晶の振動は、数千の穴があいた薄い金属板を振動させるために使用することができる。プレートの一側面は、噴霧化される液体と接触しており、振動により、この液体が強制的に穴を通って、小さな液滴のミストを生成する。受動メッシュネブライザは、テーパ状の穴のある穿孔板に受動振動を誘導する変換器ホーンを使用して、ミストを生成する。能動メッシュネブライザの実施例としては、Aeroneb(登録商標)(Aerogen、Galway、Ireland)およびeFlow(登録商標)(PARI、Starnberg、Germany)が挙げられる一方、Microair NE-U22(登録商標)(Omron、Bannockburn、IL)は、受動メッシュネブライザである。メッシュネブライザは、精密でカスタマイズ可能である。装置は、メッシュの細孔サイズを変更することによって、異なる粘度の薬剤溶液で使用するように調整され得、拍出量の速度が変化した。この噴霧化方法を使用することで、いくつかの利点が提供され得る。液滴サイズが、メッシュ内の穴のサイズ(用途に合わせてカスタマイズされうる)によって決定され得るため、液滴のサイズは、極めて正確であり得る。ネブライザメッシュは、呼吸可能な範囲のガス中の液体粒子を生成するために、電着、電気めっき、およびレーザー切断などの方法を使用して、製造され得る。メッシュは、金属合金から作製することができる。メッシュ製造に使用される金属には、プラチナ、パラジウム、ニッケル、およびステンレス鋼が含まれ得る。液滴のサイズは、メッシュ穴の約二倍のサイズである。したがって、メッシュ穴は、約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0μmまたはそれ以上(または約0.1~5.0μmの間の任意の値)であり得る。メッシュネブライザにおけるメッシュ生成は、メッシュの形状、メッシュが作られる材料、およびメッシュが生成される方法に基づいても変化し得る。言い換えれば、異なるメッシュは、ガス中に懸濁された異なるサイズの液体粒子を生成することができる。一般的に、メッシュネブライザのMMD液滴サイズは、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5.、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0マイクロメートルまたはそれ以上(または約1.0~7.0マイクロメートルの間の任意の値)であり得る。
【0392】
さらに、液滴サイズは、プログラム可能であり得る。特に、ネブライザに幾何学的変更を行い、特定の所望の液滴サイズを提供することができる。さらに、液滴サイズは、液滴速度とは独立に制御され得る。噴霧された液体の容量、および液滴速度は、メッシュ振動の周波数および振幅を調整することによっても、正確に制御することができる。さらに、メッシュ内の穴の数およびメッシュ上のそれらのレイアウトを、カスタマイズすることができる。メッシュネブライザは、電気または電池のいずれかによって、電力供給され得る。
【0393】
分あたりの立位クラウドmLでのミスト出量の速度(本明細書に記載される任意の噴霧化方法に対して)は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9mL/分またはそれ以上(または約0.1~0.9mL/分の間の任意の範囲)の範囲であり得、任意の種類のネブライザ貯蔵部の残留容量は、約0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mLまたはそれ以上(または約0.01~2.0mLの間の任意の範囲)の範囲であり得る。正確な液滴サイズ制御は、液滴サイズが、動的薬物放出(KDR)に直接相関し得るため、有利であり得る。KDRの正確な制御は、液滴サイズの正確な制御によって達成可能である。本明細書の化合物の薬学的に許容可能な塩は、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0μmまたはそれ以上(または約0.5~10.0μmの間の任意の範囲)のMMD液滴サイズを有する任意の方法を使用して、ミストを介して送達され得る。
【0394】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、連続気道陽圧(CPAP)または他の圧力補助呼吸装置を介して送達され得る。圧力の支援による呼吸装置は、マスクまたは鼻キャップを着用している患者の顔および鼻に対して、固定された指定圧力で、圧縮空気または他のガスの連続的なカラムを押し出す。患者の声門が開いて息を吸うと、圧力は気道全体に伝達され、それを開ける一助となる。患者が息を吐き出すと、収縮する肺と胸壁からの圧力により、二つの圧力が等しくなるまで、連続的な圧力に対して空気が押し出される。呼気終了時の気道内の気圧は、機械の外気圧と等しく、これにより、気道を「支持して」開ける一助となり、より良好な酸素供給と気道確保を可能にする。圧力の支援による呼吸装置は、呼吸回路内のガス流にミスト粒子を導入するための手段、および/または患者が息を吐く場合にミスト粒子の呼吸回路への導入を中止するための手段と結合され得る。例えば、米国特許第7,267,121号を参照のこと。
【0395】
一部の実施形態では、ミストは、定量吸入器(MDI)(加圧定量吸入器またはpMDIとも呼ぶ)などの装置によって送達され得、これは、任意で加熱されたヘリウム-酸素の混合物と組み合わされる、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含有する有機溶媒-液滴ミストを生成する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、定量用量の吸入器であるMDIを介して、送達され得る。MDI装置は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含有するキャニスタおよび噴射剤、薬剤をキャニスタから分注する計量弁、キャニスタを受容し経口吸入のための開口部を形成するアクチュエータ本体、ならびに薬剤をキャニスタから受容し、それをアクチュエータ本体内の開口部外へと導くアクチュエータステムを含み得る。計量弁およびアクチュエータの非限定的な例は、RecipharmによるBespakのBK357弁およびアクチュエータ(開口 d=0.22mm)である。薬剤キャニスタを、アクチュエータ本体およびアクチュエータステムに対して移動させることにより、計量弁は、所定量の薬剤を放出する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、MDIの加圧容器に貯蔵された液体噴射剤混合物(少量の揮発性有機溶媒を含む場合もある)に溶解され得る。「定量用量」は、単回用量吸入器に予め包装された用量、または多用量吸入器が、吸入準備として、貯蔵部から自動的に測定される用量である。MDI装置は、スペーサーで補助され得る。MDIスペーサーは、MDIとMDIのユーザの口との間に介在するスペーサーである。MDIスペーサーにより、噴霧化された用量の液滴は、少量を沈殿させ、空気または他のガスと混合可能であり、したがって、吸入時に、ユーザの肺内への定量用量のより効果的な送達が可能になる。MDIスペーサーは、用量が非常に高速で移動し得るため、MDIからの霧状スプレーの液滴が、定量用量の薬剤が送達されるように設計されているユーザの肺に吸入されるのではなく、ユーザの喉の奥に当たり付着するMDIから、ユーザが定量用量を直接吸入するのを防止するのに役立つ。MDI装置は、薬剤の製造で制御可能である、定期的な投与の利点を提供する。
【0396】
式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩はまた、乾燥粉末吸入器(DPI)によって送達され得る。このようなDPI装置では、薬剤自体が粉末を形成するか、または粉末は、薬学的に許容可能なビヒクルから形成され得、薬剤は、吸入時に肺の中の水分が薬剤を表面から放出して全身吸収に供されるように、担体粉末の表面に放出可能に結合される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、乾燥粉末吸入器(DPI)の使用により伝達される。使用される塩形態に応じて、薬剤は、必要な粉末自体(本開示の薬学的に許容可能な塩は、固体粒子形態である)に形成され得るか、または担体粉末の表面に取り外し可能に結合され得る。こうした担体粉末は、当技術分野で公知である(例えば、H.Hamishehkar,et al.,“The Role of Carrier in Dry Powder Inhaler”,Recent Advances in Novel Drug Carrier Systems,2012,pp.39-66を参照)。式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩自体が乾燥粉末を形成する場合、適切な生理学的に許容可能な塩形態の選択は、例えば、患者の肺管の刺激を防止するために、重要性が高まっている。
【0397】
DPIは、一般的に、1~5μmの空気力学的粒子直径を有する粗い担体粒子と微粒子化された薬剤粒子との粉末混合物として製剤化される(例えば、Iida,Kotaro,et al.“Preparation of dry powder inhalation by surface treatment of lactose carrier particles”Chemical and pharmaceutical bulletin 51.1(2003):1-5参照)。担体粒子は、薬剤粒子の流動性を改善するためにしばしば使用され、したがって、投薬精度を改善し、薬剤製剤のみで観察される用量変動を最小化する一方で、製造作業中の取り扱いをより容易にする。担体粒子は、製剤原料と適合性がある、物理化学的安定性、生体適合性、および生分解性などのいくつかの特徴を有し、不活性、利用可能、および経済的でなければならない。担体粒子(含有量およびサイズの両方)の選択は、十分当業者の所掌範囲にある。最も一般的な担体粒子は、ラクトースまたは他の糖から作られ、α-ラクトース一水和物が、このような粒子担体の吸入場で使用される最も一般的なラクトース級である。
【0398】
上記の送達装置のいずれかは、薬剤送達の遠隔作動を可能にする高性能技術を用いて、任意に製造することができる。遠隔作動は、コンピュータまたはモバイルアプリを介して、実施され得る。セキュリティを確保するため、遠隔作動装置は、パスワードでコード化され得る。この技術により、医療従事者は、患者と遠隔医療セッションを行うことが可能になり、その間、医療従事者は、患者を遠隔訪問で監督しながら、所望の送達装置を介して、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を遠隔作動し、投与することができる。
【0399】
ヘリウム酸素混合物を用いた送達
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩またはその誘導体の低用量の全身送達を提供する。特に、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩またはその誘導体は、患者のCNSに送達され得る。用量は、個々の患者の代謝および治療ニーズに対して、最適化され得る。用量が多いことによる有害または望ましくない副作用は、少用量で使用することによって、回避され得る。様々な中枢神経系(CNS)疾患および他の病態を治療する方法を、本明細書に記述する。方法は、薬剤と、例えば、空気、酸素、ヘリウム、またはヘリウムと酸素の混合物(すなわち、ヘリオックス混合物)、他のガス、または他のガス混合物などの担体ガスとを含むエアロゾルの吸入を介して、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩またはその誘導体を、それを必要とする患者に送達することを含み得る。一部の実施形態では、担体ガスは加熱され得る。方法は、減圧器を備えた酸素-ヘリウム混合物を含むバルーンと、ガスまたは空気接続管によって互いに接続されるマスクと、を備える装置を使用することをさらに含んでもよく、ガス混合物を120℃まで加熱可能な追加の発熱体、それを通して5ミクロン未満のサイズの液滴の通過を確実にする振動多孔性プレートまたはメッシュを有するネブライザ、および消毒装置、を含む。
【0400】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩またはその誘導体は、下気道に、例えば、肺胞、肺胞管および/または細気管支などの肺区画に送達される。そこから、薬剤は血流に入り、中枢神経系に移動することが可能である。本開示の一部の実施形態では、ミストの吸入を介して式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩をそれを必要とする患者に送達することは、肝臓を通過することなく、式(I)の化合物を患者のCNSに送達することができる。吸入を介した投与により、ガス状薬剤または液体もしくはミスト中に分散したものは、初回通過代謝をバイパスして、血流に式(I)の化合物を急速に送達し得る。初回通過代謝は、「初回通過効果」または「前全身代謝」としても知られ、肝臓に進入し、広範な生体内変換を受ける薬剤を記述する。
【0401】
本開示の一部の実施形態では、約50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃またはそれ以上(50℃~60℃の間の任意の範囲)に加熱されたヘリウムと酸素の混合物、噴霧化された幻覚発動薬およびその誘導体を、吸入により投与することによって、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする患者に投与することができる、治療ステップを提供する。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩のミストまたは蒸気は、約0.1ミクロン~約10ミクロン(例えば、約10、5、4、3、2、1、0.1ミクロン以下)の粒子サイズを有し得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、ミストである吸入剤を生成することができる霧化器を介して霧化される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の霧化した薬学的に許容可能な塩は、患者の吸入によって患者送達ラインで駆動される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の霧化した薬学的に許容可能な塩は、担体ガスを用いた患者の吸入によって患者送達ラインで駆動される。担体ガスは、特に、空気、酸素、酸素とヘリウムの混合物、加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物であり得る。
【0402】
一部の実施形態では、治療ステップの前に、前治療ステップを行うことができる。一部の実施形態では、前治療ステップは、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩のミストの投与前に、前治療吸入療法をまず施すことを含み得る。一部の実施形態では、前治療吸入ステップは、(i)吸入により、約90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120、またはそれ以上(または約90℃~120℃の間の任意の範囲)に加熱された空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物を投与するが、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は投与しないことと、その後(ii)吸入の治療ステップとして、空気、酸素、酸素とヘリウムの混合物、加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物を投与することと、を含み得る。加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物は、噴霧化された式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩またはその誘導体と組み合わせて、約50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、またはそれ以上(または約50℃~60℃の任意の範囲)に加熱され得る。
【0403】
本開示の一部の実施形態では、前治療ステップ(i)と治療ステップ(ii)を、0、1、2、3、4、5回またはそれ以上繰り返すことができる。本開示の一部の実施形態では、ステップ(i)および(ii)は、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返され、その後、治療ステップが続いてもよく、治療ステップは、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返され得る。本開示の一部の実施形態では、治療ステップは、前治療ステップなしで、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返され得る。
【0404】
任意の前治療を用いた治療は、一週間に一回、一週間に二回、一日一回、一日二回、一日三回以上、および本明細書に記載される他の治療レジメンで投与することができる。各治療(例えば、吸入セッション)は、約1分、5分、10分、20分、30分、45分、60分またはそれ以上であり得る。
【0405】
薬剤送達の手順には、粘膜床を効果的に予熱し、その後、より低い温度で、加熱されたヘリオックスによって再び駆動されるが、湿潤対乾燥吸入ガス流に対するより低い熱耐性によって決定される、噴霧された式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を吸入することにより、吸入されたプライミング非薬剤の高温ヘリオックス混合物が含まれ得る。結果として、この手順は、標的PKおよび薬剤曝露が、薬剤の濃度、温度、ヘリウム酸素混合物の流量、混合物の組成、サイクルの数および持続時間、時刻および上記の組み合わせによって制御される、複数回の反復サイクルで実施され得る。
【0406】
本明細書に記載される送達方法は、吸入を介して、加熱されたヘリウムおよび酸素の加熱された混合物と、ならびに霧化した式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩とを投与することを含み、中枢神経系(CNS)障害または心理障害などの特定の疾患および障害を治療するために使用され得る。治療は、障害の一つ以上の症状を軽減可能である。
【0407】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、CNS疾患または他の障害の治療のために投与され得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、大うつ病、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、または気分変調症を含むが、これらに限定されない、うつ病を治療するために投与され得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、不安障害、強迫性障害、嗜み(麻薬依存症、タバコ依存症、オピオイド依存症)、アルコール依存症、うつ病、および不安(慢性的または生命を脅かす疾患もしくは末期疾患の診断に関連する)、強迫行動、または関連する症状を含む心理的障害を治療するために投与され得る。
【0408】
一部の実施形態では、疾患または障害は、例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、非自殺的自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害(双極性障害I型障害、双極性II型障害、気分循環性障害を含むがこれらに限定されない)、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、急性幻覚クライシス、社会不安障害、薬物使用障害(アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害を含むがこれらに限定されない)、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症の流暢性障害、重度の神経認知障害、軽度の神経認知障害、慢性疲労症候群、ライム病、ギャンブル障害、摂食障害(神経性食欲不振症、神経性過食症、過食性障害などを含むがこれらに限定されない)、およびパラフィリア障害(小児性愛障害、露出障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズムまたはサディズム障害、および異性装障害などを含むがこれらに限定されない)、性的機能不全(例えば、性欲の低下)、ならびに肥満を含む、中枢神経系(CNS)障害および/または心理的障害、を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、自律神経系(ANS)の状態を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、肺障害(例えば、喘息および慢性閉塞性肺障害(COPD))を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)を含み得る。治療され得る他の疾患および障害は、本明細書に記載される。
【0409】
本明細書に記載のネブライザまたは他の装置を介してなど、吸入により式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を投与し、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩をCNSに送達する方法(全身薬剤送達)(例えば、加熱されたヘリウム-酸素混合物を使用することを含む)は、それによって、経口送達と比較して、複数のPKパラメータの有利な改善をもたらすことができる。特に、一旦投与されると、式(I)の化合物は、血液脳関門を通過し、脳に送達され得る。経口送達と比較して、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置などにより、任意で加熱されたヘリオックス混合物などを用いて、吸入により、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を患者に投与する方法は、経口送達と比較して、生物学的利用能を少なくとも25%増加させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置などを用いて、吸入により、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を患者に投与する方法は、生物学的利用能を、約10%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上増加させることができる。本明細書に記載のネブライザを介して式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を患者に投与する方法は、経口送達と比較して、Tmaxを少なくとも50%低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のネブライザを介して患者に式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩投与する方法は、Tmaxを30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置を介して式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を患者に投与する方法は、経口送達と比較して、Cmaxを少なくとも25%増加することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置などを介して、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を患者に投与する方法は、Cmaxを、約10%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上増加させることができる。さらに、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置を使用して、吸入を介して、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を患者に投与する方法は、用量漸増およびより制御された曝露を可能にする臨床プロトコルを可能にすることができる。制御された曝露は、患者の経験を調整し、全体的に改善された治療転帰を提供することを可能にする。上述の吸入送達のための高性能技術によって可能となった装置により、用量漸増および制御された送達は、医療従事者によって遠隔で行われ、患者は、自宅で快適に過ごせるようになり、患者の経験および転帰を改善することができる。
【0410】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を投与するためのシステムが提供され、システムは、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の溶液を含む容器と、容器と物理的に結合または共包装され、約0.1ミクロン~約10ミクロン(例えば、約10、5、4、3、2、1、0.1またはそれ以下のミクロン)の粒子サイズを有する溶液のエアロゾル、好ましくはミストを生成するように適合されたネブライザと、を含む。
【0411】
5-HT 2A受容体アゴニストとNMDA受容体アンタゴニストの組み合わせ
本開示は、また、式(I)の化合物の塩形態(5-HT2A受容体アゴニストとして)およびN-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニストの両方の投与に基づく併用薬物療法を対象とする。例えば、急性幻覚クライシス(恐ろしい幻覚)および幻覚剤による解離効果(体外離脱経験)などの精神有害作用を低減または除去しながら、治療有効性を提供することによって、5-HT2Aおよび/またはNMDA受容体に関連する疾患または障害(例えば、神経精神疾患または障害、中枢神経系(CNS)障害および/または心理的障害)を治療する場合、併用薬物療法は、増強された活性および改善された患者体験を示すことが見出された。
【0412】
本明細書に開示される併用薬剤送達方法における使用に適したNMDA受容体アンタゴニストの非限定的な例としては、ケタミン、亜酸化窒素、メマンチン、アマンタジン、デキストロメトルファン(DXM)、フェンシクリジン(PCP)、メトキセタミン(MXE)、ジゾシルピン(MK-801)、エスメタドン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特に、笑気ガスとして一般的に知られる亜酸化窒素(NO)は、即効性を有し、適切な医学的監視下で投与された場合に副作用をほとんどもたらさない、急速で効果的な鎮痛ガスである。亜酸化窒素はまた、吸入中に多幸感を引き起こすことが知られている解離性吸入剤である。亜酸化窒素の顕著な効果は、多幸感の増加、疼痛閾値の上昇、および不随意の笑いである。さらに、ケタミンとは異なり、亜酸化窒素は、依存的ではない。これらの理由から、NMDA受容体アンタゴニストとしての亜酸化窒素の使用が好ましい。
【0413】
一部の実施形態では、併用療法は、式(I)の化合物の塩形態を(5-HT2A受容体アゴニストとして)提供すること、およびNMDA受容体アンタゴニストを、患者への投与のための単一剤形として提供することを伴う(例えば、各々が組み合わされて、患者によって吸入される単一のエアロゾルを提供される)。例えば、NMDA受容体アンタゴニストが亜酸化窒素である場合、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、エアロゾルの液相に存在してもよく、一方で、亜酸化窒素は、エアロゾルの気相に存在してもよい。亜酸化窒素(または亜酸化窒素を含む治療用ガス混合物)は、エアロゾルの発生に使用されてもよく、または発生したエアロゾルを患者に送達するために使用される担体ガスとして使用されてもよい。発生したエアロゾルが担体ガスと組み合わされると、担体ガスはエアロゾルの気相の一部となり、すなわち、エアロゾルの液相は担体ガスにより同伴/希釈される。一部の実施形態では、併用療法は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩およびNMDA受容体アンタゴニストを別個の剤形として提供することを含む。例えば、式(I)の化合物の塩形態は、エアロゾル、好ましくはミストとして提供されてもよく、一方でNMDA受容体アンタゴニストは、治療用ガス混合物として別々に提供される。あるいは、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、注射剤(例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内など)、ボーラス、注入、灌流などとして提供されてもよく、一方でNMDA受容体アンタゴニストは、吸入送達のための治療用ガス混合物として提供される。
【0414】
式(I)の化合物の塩形態とNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)の共作用は、複数の利益を提供し得る。例えば、NMDA受容体アンタゴニストは、5-HTRの活性化効果を制御および/または低減し、それによって、過剰刺激のリスクおよび急性幻覚クライシスなどの精神有害作用の発生を低減し得る。さらに、NMDA受容体アンタゴニストの投与は、HT2A受容体アゴニスト(例えば、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩)の低減された治療用量の使用を可能にし、それによって、負の患者体験の可能性を低減し得る。同様に、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の投与は、治療効果に必要なNMDA受容体アンタゴニストの量を低減する場合があり、これは、亜酸化窒素の場合、誘発された不随意の笑いおよびそれに関連する一般的な不安の感覚などの特定の副作用を軽減し得る。したがって、より少ない幻覚剤が投与されるか、またはNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素、ケタミンなど)が、幻覚剤をより効率的に機能することを可能にするかのいずれかの理由で、同時投与は、幻覚剤投与からの負の体験の可能性を低減するであろうと考えられる。同様に、かかる同時投与は、治療効果に必要なNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素、ケタミンなど)の時間または量を減少させるであろう。
【0415】
NMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)および5-HT2A受容体アゴニストは、異なる薬理学的経路を介して機能する。しかしながら、両方の経路は、最終的にmTOR(ラパマイシンの哺乳類標的、またはラパマイシンの機構的標的)でのカスケードに収束するように見える。したがって、NMDA受容体アンタゴニストとトリプタミン幻覚剤との間に共通の作用機序が存在するようである。具体的には、mTORのシグナル伝達経路は、5-HT2A受容体活性化およびNMDA拮抗作用によって調節され得る。理論に束縛されるものではないが、mTOR経路のこのような調節は、両方の薬剤の併用投与の即時かつ長期的な治療的および相乗的利益を裏付け得る。したがって、一部の実施形態では、幻覚作用のない用量での両方の薬剤の投与は、幻覚作用を伴わない、治療有効性を可能にする。
【0416】
さらに、前頭前野皮質(PFC)におけるニューロンの萎縮は、うつ病および関連する障害、神経学的および神経変性障害、抑制された神経新生または不適応性神経可塑性に関連するものなどの神経可塑的変化に関連する本明細書に開示される他の疾患または障害の病態生理学において重要な役割を果たしていることが見出された。PFCにおける構造的および機能的可塑性の両方を促進する能力は、解離性麻酔薬ケタミンの即効性抗うつ特性だけでなく、単回投与後の長期にわたる効果の基礎となっていると仮定されている。理論に束縛されるものではないが、本明細書に開示される併用薬物療法は、樹状突起棘の密度の増加を含む神経突起形成および棘形成を相乗的に増加させることによって機能し、それによって長期的な治療利益を提供するか、またはこれに寄与し得ると考えられる。
【0417】
実際に、本明細書に開示される併用薬物療法は、NMDA受容体拮抗作用(例えば、亜酸化窒素投与によりもたらされるような)および5-HT2A受容体アゴニスト投与の両方が神経可塑性を活性化し、それによって、いずれかの薬剤、NMDA受容体アンタゴニスト、または5-HT2A受容体アゴニスト単独の投与と比較して、有意な治療増強効果を達成するため、相乗的であるように設計される。
【0418】
任意の特定の患者に対する式(I)の化合物(塩形態で提供される)とNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)との組み合わせの特定の比率は、使用される特定の化合物の活性、患者の年齢、性別、全身健康状態、投与時間、排出速度、ならびに治療される特定の疾患または状態の重症度などの様々な因子に依存することが理解されるべきである。一部の実施形態では、患者に投与される式(I)の化合物とNMDA受容体アンタゴニストとの重量比は、約1:100~約100:1の範囲であり得、またはその間の任意の範囲、例えば、約1:75から、約1:50から、約1:40から、約1:30から、約1:20から、約1:10から、約1:8から、約1:6から、約1:5から、約1:4から、約1:3から、約1:2から、約2:3から、約1:1から、および最大約100:1まで、最大約75:1まで、最大約50:1まで、最大約40:1まで、最大約30:1まで、最大約20:1まで、最大約10:1まで、最大約8:1まで、最大約6:1まで、最大約5:1まで、最大約4:1まで、最大約3:1まで、最大約2:1まで、であり得る。特定の状況では、この範囲外の比率も用いられ得る。
【0419】
併用薬物療法は、式(I)の化合物の塩形態およびNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)の逐次的な投与を包含することが意図され、すなわち、各治療剤は、異なる時点で、ならびにこれらの治療剤、または治療剤のうちの少なくとも二つの投与は、実質的に同時(例えば、同時投与)で投与される。実質的な同時投与は、例えば、各治療剤の固定比を有する単一剤形、または治療剤の各々について単一剤形を複数、対象に投与することによって達成され得る。式(I)の化合物の塩形態およびNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)の投与は、単一剤形または別個の剤形であるかにかかわらず、本明細書に記載される任意の投与経路によって実施され得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩形態およびNMDA受容体アンタゴニストの両方は、吸入を介して、好ましくはエアロゾル(例えば、ミスト)形態で投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩形態は、静脈内(IV)投与され、NMDA受容体アンタゴニストは、吸入を介して投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩形態は、皮下投与され、NMDA受容体アンタゴニストは、吸入を介して投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩形態は、筋肉内投与され、NMDA受容体アンタゴニストは、吸入を介して投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩形態は、鼻腔内投与され、NMDA受容体アンタゴニストは、吸入を介して投与される。一部の実施形態では式(I)の化合物の塩形態は、経口投与され、NMDA受容体アンタゴニストは、吸入を介して投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の塩形態およびNMDA受容体アンタゴニストの両方は、経皮または皮下に投与される。単一または別個の剤形のための薬学的に許容可能なビヒクル/担体などの吸入のための組成物が、本明細書に記載される。
【0420】
式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩およびNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)は、逐次的に投与される(すなわち、別々に)、治療剤の投与間の時間間隔は、約5秒~約1週間以上の範囲、その間の任意の時間、例えば、約5秒、約10秒、約20秒、約30秒、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間、約18時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間であってもよい。逐次的投与については、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む組成物およびNMDA受容体アンタゴニストを含む組成物は、好ましくは、5秒~1分未満、2分未満、2分未満、3分未満、4分未満、5分未満、10分未満、15分未満、30分未満、45分未満、1時間未満、2時間未満、または4時間未満の間隔で投与される。実質的に逐次的に投与される場合、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩およびNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)は、互いに5秒以内、4秒以内、3秒以内、2秒以内、1秒以内に投与され、これは同時投与(例えば、同じエアロゾル中などの同じ剤形で投与される場合)も含む。
【0421】
一部の実施形態では、併用薬物療法で使用されるNMDA受容体アンタゴニストは、亜酸化窒素である。亜酸化窒素は、単独で、または例えば、NOおよびO;NOおよび空気;NOおよび医療用空気(医療用空気は窒素78%、酸素21%、他のガス1%);NOおよびN/O混合物;NOおよびO濃縮医療空気;NOおよびHe/O混合物などの、治療用ガス混合物として投与されてもよい。したがって、亜酸化窒素および酸素に加えて、治療用ガス混合物は、N、Ar、CO、Ne、CH、He、Kr、H、Xe、HO(例えば、蒸気)などの一つ以上などの他のガスをさらに含み得る。例えば、亜酸化窒素は、NO、O、および任意で別個の圧縮ガスシリンダーからの他のガスを、吸入を介して患者に送達される治療用ガス混合物に組み合わせるブレンドシステムを使用して投与されてもよい。あるいは、亜酸化窒素を含有する治療用ガス混合物は、例えば、加圧タンクに、または使用しやすいおよび/もしくは携帯可能な小さな加圧キャニスタに包装されてもよい。ブレンドシステムおよび/または加圧タンク/キャニスタは、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩のエアロゾルを発生させることができる装置などの吸入装置に流体接続するように適合され得る。亜酸化窒素自体、または亜酸化窒素を含む治療用ガス混合物は、エアロゾルの発生のために(すなわち、エアロゾルの気相成分として)、または発生したエアロゾルの患者の肺への移動を容易にするための担体ガスとして使用されてもよい。一部の実施形態では、NOは、治療用ガス混合物の総体積に対して、5体積%、10体積%、15体積%、20体積%、25体積%、30体積%、35体積%、40体積%、45体積%から、最大75体積%、70体積%、65体積%、60体積%、55体積%、50体積%までの範囲の濃度で治療用ガス混合物中に存在する。亜酸化窒素を含有する治療用ガス混合物は、連続的に、例えば、任意の所望の持続時間、例えば、5分、10分、15分、20分、30分、40分、45分、50分、60分、90分、120分、150分、180分、またはその間の任意の範囲などの所望の任意の期間にわたって投与され得る。
【0422】
以前は、MDDおよびTRDを治療するために、亜酸化窒素および酸素の混合物が提案されてきており(例えば、Nagele,P.et al.Biol.Psych.2015 and Nagele,P.et al.Science Transl.Med.,2021参照)、これは、1時間の治療レジメンで、亜酸化窒素/酸素の50/50混合物および25/75混合物での有効性を示す。しかしながら、本発明者らは、より低いレベルの亜酸化窒素により、同じ期間以下にわたって、著しく低減した副作用プロファイルで、類似の有効性を提供することができることを見出した。したがって、一部の実施形態では、NOは、治療用ガス混合物中に、式(I)の化合物の塩形態と実質的に同時に、または場合によっては、それと逐次的(とは別個)に、治療用ガス混合物の総体積に対して、15体積%、16体積%、17体積%、18体積%、19体積%から、最大25体積%、24体積%、23体積%、22体積%、21体積%、20体積%までの範囲の濃度で、逐次的に(別個に)投与される。
【0423】
即効型併用薬物療法は、短い排出半減期(t1/2)を有する5-HT2A受容体アゴニスト(例えば、式(I)の化合物の塩形態)の選択および亜酸化窒素などの即効型NMDA受容体アンタゴニストの選択によっても選択され得る。一部の実施形態では、2時間未満、例えば、約15分~約120分未満、約110分未満、約100分未満、約90分未満、約80分未満、約70分未満、約60分未満、約50分未満、約40分未満、約30分未満、約20分未満の消失半減期(t1/2)を有する式(I)の化合物の塩形態が選択される。即効型NMDA受容体アンタゴニストについては、特に亜酸化窒素は、効果は迅速な発現をもたらすが、効果は身体から迅速に除去され、効果は、例えば、ガスの流れが停止したときに、ほぼ直ちに終了する。したがって、速効型併用薬物療法が所望される場合、亜酸化窒素は、速効型および短寿命の5-HT2A受容体アゴニストを用いた投与によく適している。前述の即効性の治療上の組み合わせは、急性精神医学的状態を治療するため、例えば、誰かが自殺しているときに救助薬として、急性治療用途に有利であり得る。治療的組み合わせは、効果の迅速な発現、短期間の作用、および最小限の精神医学的有害作用を必要とする急性状態を治療するために特に有用であり得る。急性精神医学的状態の非限定的な例としては、自殺念慮および自殺の試み、社会不安障害、薬物離脱、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ならびにパニック発作が挙げられるが、これらに限定されない。
【0424】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩およびNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、亜酸化窒素)は、各々、エアロゾル吸入によって、単一剤形として、または別個の剤形として送達される。エアロゾル、好ましくはミストは、噴射剤の使用の有無にかかわらず、本明細書に開示される装置などの任意の能力のある装置(例えば、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、またはネブライザ)によって発生されてもよい。亜酸化窒素が式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩と同時に投与されるとき、亜酸化窒素は、エアロゾル発生のための担体ガスまたは噴射剤として、および治療剤(NMDA受容体アンタゴニスト)として二重に作用し得る。
【0425】
一部の実施形態では、送達装置は、亜酸化窒素と式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩との組合せを、それを必要とする患者による吸入により、送達するための吸入送達装置であり、患者に、組合せを投与するための吸入出口ポータル、亜酸化窒素ガスを、吸入出口ポータルに送達するように構成された容器、および、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を含むエアロゾルを発生し、吸入出口ポータルに送達するように構成された装置、を備える。一部の実施形態では、吸入出口ポータルは、患者の鼻および口を覆うマウスピースまたはマスクから選択される。一部の実施形態では、エアロゾルを生成し、吸入出口ポータルに送達するように構成された装置は、ネブライザである。一部の実施形態では、ネブライザはジェットネブライザであり、亜酸化窒素ガスは単独で、または他のガス(亜酸化窒素を含有する治療用ガス混合物)と組み合わせて、ジェットネブライザの駆動ガスとして作用する。したがって、ネブライザ(例えば、ジェットネブライザ)を使用して送達される亜酸化窒素は、治療剤および駆動ガスとして二重に作用して、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の噴霧形態を同伴し得る。一部の実施形態では、装置は、上述の吸入送達装置の遠隔作動および動作制御を提供するように構成された電子機器などの高性能の技術をさらに含む。
【0426】
一部の実施形態では、装置は、好ましくはエアロゾルの形態で、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を投与し、制御された量の亜酸化窒素を同時に投与するように構成された二重送達装置である。上述のエアロゾル送達装置のいずれかは、このような装置に使用することができ、エアロゾル送達装置と同じ投与出口を通して、定量され制御された用量/流量の亜酸化窒素を提供するように構成された亜酸化窒素源が添加される。一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の噴霧のための駆動ガスは、亜酸化窒素自体である。
【0427】
本明細書の任意の場所で参照される全ての特許、特許出願、および他の科学的または技術的文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に説明的に記載する実施形態は、本明細書に具体的または非具体的に開示される任意の要素または複数の要素、限定、または複数の限定が存在せずに、適切に実施され得る。したがって、例えば、本明細書のそれぞれの例において、用語「含む」、「本質的にからなる」、および「からなる」のいずれかは、それらの通常の意味を保持しながら、他の二つの用語のいずれかで置き換えられ得る。用いられた用語および表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示されそして記載される特徴またはその一部の任意の均等物を排除する意図はないが、様々な改変が、特許請求の範囲において可能であると認識される。したがって、本方法および組成物は、実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されるが、本明細書で開示の概念の改変および変形は、当業者に依存され得、またこのような改変および変形は、記載および添付の特許請求の範囲によって定義される組成物および方法の範囲内であるとみなされる。
【0428】
本明細書に記載される任意の単一の用語、単一の要素、単一の語句、用語の群、語句の群、または要素の群はそれぞれ、特許請求の範囲から具体的に除外され得る。
【0429】
例えば、温度範囲、時間範囲、組成物、または濃度範囲などの範囲が本明細書で与えられる場合、全ての中間範囲および部分範囲、ならびに与えられた範囲に含まれる全ての個々の値は、本開示に含まれることが意図される。本明細書の記述に含まれる、ある範囲または部分範囲における任意の部分範囲または個々の値が、本明細書の態様から除外され得ることは理解されよう。当然のことながら、本明細書の記載に含まれる任意の要素またはステップが、請求項に記載される組成物または方法から除外され得ることは理解されよう。
【0430】
さらに、組成物および方法の特徴または態様が、マーカッシュグループまたは他の代替のグループ分けの観点から記述される場合、当業者は、組成物および方法もまた、それによって、マーカッシュグループまたは他のグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点から記述されることを認識するであろう。
【0431】
以下は、例示目的のみで提供され、上記の広義の用語で説明される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0432】
I.合成手順
実施例1~9
実施例1~9を、エタノールから、2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(I-1)の遊離塩基の、対応する有機酸(フマル酸、安息香酸、サリチル酸、コハク酸、シュウ酸、またはグリコール酸)の化学量論的(1.0モル当量)量との、またはヘミ塩の場合、準化学量論的(0.5モル当量)量との、結晶化によって調製した。塩形態識別子および塩タイプを表3に提供する。
【表3】
【0433】
実施例10~13
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1-d(I-2)の合成を、図1に従って行った。インドール(A)を、ホルムアルデヒド/ジメチルアミンを使用してイミノホルミル化して中間体(B)を生成し、次いでこれを、HCl中のシアン化カリウムを使用して3-酢酸中間体(C)に変換した。塩化チオニルおよびジメチルアミン(R=R=CH)を用いたその後の処理により、アミド(D、R=R=CH)を生成し、これをLiAlDによって還元して、化合物I-2を得た。生成物の構造は、H NMRによって確認された。
【0434】
実施例10~13は、エタノールからI-2の遊離塩基の対応する有機酸(フマル酸、安息香酸、サリチル酸、またはコハク酸)の化学量論的(1.0モル当量)量との結晶化によって調製される。塩形態識別子および塩タイプを表4に提供する。
【表4】
【0435】
実施例14~17
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン(I-4)の合成を、図2に従って行う。インドール(A)を塩化オキサリルでアシル化し、次いでジメチル-d6-アミンと反応させてアミドを生成する(F、R=R=CD)。LiAlHを用いたその後の還元は、化合物I-4をもたらす。生成物の構造は、H NMRによって確認された。
【0436】
実施例14~17は、エタノールからI-4の遊離塩基の対応する有機酸(フマル酸、安息香酸、サリチル酸、またはコハク酸)の化学量論的(1.0モル当量)量との結晶化によって調製される。塩形態識別子および塩タイプを表5に提供する。
【表5】
【0437】
実施例18~21
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-5)の合成を、図2に従って行った。インドール(A)を塩化オキサリルでアシル化し、次いでジメチルアミンと反応させてアミド(F、R=R=CH)を生成した。LiAlDを用いたその後の還元は、化合物I-5をもたらす。生成物の構造は、H NMRによって確認された。
【0438】
実施例18~21は、エタノールからI-5の遊離塩基の対応する有機酸(フマル酸、安息香酸、サリチル酸、またはコハク酸)の化学量論的(1.0モル当量)量との結晶化によって調製される。塩形態識別子および塩タイプを表6に提供する。
【表6】
【0439】
実施例22~25
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1-d(I-6)の合成を、図1に従って行った。インドール(A)を、ホルムアルデヒド/ジメチルアミンを使用してイミノホルミル化して中間体(B)を生成し、次いでこれを、HCl中のシアン化カリウムを使用して3-酢酸中間体(C)に変換した。塩化チオニルおよびジメチル-d6-アミン(R=R=CD)によるその後の処理により、アミド(D、R=R=CD)を生成し、これをLiAlDによって還元して、化合物I-6を得た。生成物の構造は、H NMRによって確認された。
【0440】
実施例22~25は、エタノールからI-6の遊離塩基の対応する有機酸(フマル酸、安息香酸、サリチル酸、またはコハク酸)の化学量論的(1.0モル当量)量との結晶化によって調製される。塩形態識別子および塩タイプを表7に提供する。
【表7】
【0441】
実施例26~29
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8)の合成を、図2に従って行った。インドール(A)を塩化オキサリルでアシル化し、次いでジメチル-d6-アミンと反応させてアミドF(R=R=CD)を生成した。アミドF(R=R=CD)(7.04g、31.67mmol)を窒素雰囲気下でフラスコに充填した。次いで、2-MeTHF(140ml、20体積)を充填し、室温で15分間撹拌したが、この時点では全ての固体が完全に溶解したわけではない。重水素化リチウムアルミニウム(LiAlD)(4.04g、96.23mmol、3.0当量)を45分間にわたって数回に分けて充填し、反応混合物の温度を<40℃に維持した。完全添加後、反応混合物を65℃まで16時間加熱した。バッチを室温まで冷却し、HPLC分析によって完了を確認した。水/THF混合物(35ml、5体積、1:9)を90分間にわたって滴下して加え、温度を<30℃に維持した。次いで、15%NaOH(水溶液)(3.5ml、0.5体積)を滴下して加え、続いてさらに水(10.5ml、1.5体積)を加えた。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで濾過し、固体を2-MeTHF(3×70ml、3×10体積)で洗浄し、脱液する前にそれらを毎回スラリー化した。液を濃縮乾固し、化合物I-8を粘性のオレンジ-赤色のオイルとして残した。生成物の構造は、H NMRによって確認された。次いで、化合物I-8をエタノール(49ml、7体積)中に取り込み、このI-8エタノール溶液を以下に提供される塩形成実験に使用した。塩形態識別子および塩タイプを表8に提供する。
【表8】
【0442】
実施例26.フラスコを15mlのI-8エタノール溶液で充填し、これを加熱還流し、フマル酸(1.07g、1.05当量)の単回装填を加えた。完全な溶解後、これを室温まで冷却し、次いでさらに0℃まで冷却し、濾過し、追加のエタノール(3×5ml、3×2体積)を使用してフラスコをすすぎ、ケーキを洗浄した。I-8aを、収量1.480gで、結晶性固体として単離した(4.71mmol、LCにより44.6%、97.0%、H NMRは、1:1フマル酸塩との同一性を確認した)。
【0443】
実施例27.フラスコを18mlのI-8エタノール溶液で充填し、これを加熱還流し、次いで安息香酸(4.04g、3.15当量)の単回装填を加えた。全ての固体が溶解したことを確認した後、溶液を氷浴中で冷却し、この温度で更に60分間撹拌し、次いで濾過し、氷冷エタノール(2×2体積)を使用してフラスコをすすぎ、ケーキを洗浄する。2.272g(7.09mmol)のI-8bを得た。この化合物のHPLC分析で観察された残留不純物により、これをエタノール(5ml、2体積)中で16時間スラリー化した。次いで、これを0℃に冷却し、濾過し、さらなるエタノール(5ml、2体積)を使用してフラスコをすすぎ、固体を洗浄した。しかしながら、固体は非結晶性であり、結晶性形態を有しなかった。したがって、それらを還流でエタノール(15ml、7.5体積)中に溶解し、0℃に冷却し、エタノール(5ml、2体積)を使用して濾過して、洗浄した。そして、単離されたI-8bを、白色結晶性固体として1.534gの収量で得た(4.79mmol、LCによって45.4%、91.1%、H NMRは、1:1安息香酸塩との同一性を確認した)。
【0444】
実施例28.フラスコに18mlのI-8エタノール溶液を充填し、これを加熱還流し、さらなるエタノール(11.7ml、合計12体積)およびサリチル酸(1.52g、1.05当量)の単回装填を加えた。完全に溶解したら、溶液を0℃に冷却した。得られた固体を濾過し、氷冷エタノール(2×2体積)で洗浄し、2.860g(8.50mmol)の収量を有するI-8cを得た。この化合物のHPLC分析で観察された残留不純物により、エタノール(5ml、2体積)中で16時間スラリー化した。次いで、これを0℃に冷却し、濾過し、さらなるエタノール(5ml、2体積)を使用してフラスコをすすぎ、固体を洗浄した。しかしながら、固体は非結晶性であり、結晶性形態を有しなかった。したがって、それらを還流でエタノール(60ml、30体積)中に溶解し、0℃に冷却し、濾過し、エタノール(5ml、2体積)を使用してそれらを洗浄した。したがって、単離されたI-8cを、白色結晶性固体として2.311gの収量で得た(6.87mmol、LCによって65.1%、91.5%、H NMRは、1:1サリチル酸塩との同一性を確認した)。
【0445】
実施例29は、エタノールからI-8の遊離塩基のコハク酸の化学量論的(1.0モル当量)量との結晶化によって同様に調製される。
【0446】
II.分析
試料を、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、動的蒸気吸着(DVS)、およびH核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、以下に列挙される実験詳細を使用して詳細に分析した。
【0447】
示差走査熱量測定(DSC)
すべてのDSC曲線を、Mettler Toledo 823熱量計を使用して取得し、Mettler Toledo Stareソフトウェアバージョン9.01を操作するTA8000ワークステーションとインターフェース接続した。典型的な分析条件は以下の通りであった。
入口温度;20℃
加熱速度;10℃・分-1
終了温度;320℃
パージガス;窒素70mL・分-1
サンプルパン;蓋が穿孔されたアルミニウムパン40μL
【0448】
4~7mgの試料をアルミニウム試料パンに充填した。測定を行う前に、温度および熱流に関してインジウム、水、およびシクロヘキサンの追跡可能な標準を使用して機器が較正された。
【0449】
X線粉末回折(XRPD)
X線粉末ディフラトグラムを、Bragg-Brentano構成のBruker D5000回折計を使用して取得した。原薬の各バッチに対して拡張取得パラメータを、以下に詳述するように用いた:
出典;CuKα
波長;1.5406Å
ステップ範囲;2~40°(2θ)
ステップサイズ;0.01°(2θ)
ステップ当たりの時間;4.0秒
発散スリット幅;2mm
散乱防止スリット幅;2mm
検出器スリット幅;0.2mm
試料回転;固定
管加速電位;40kV
管加速電流;30mA
温度;周囲温度(通常18~22℃)
【0450】
分析のために、約2~5mgの各試料をシリコンベース上に載置し、ガラススライドを使用して平坦な表面を作製した。全てのデータをフーリエアルゴリズムを使用して平滑化し、バックグラウンドを各ディフラクトグラムから減算した。
【0451】
機器性能確認は、NISTトレーサブルなコランダム標準を使用し、またアーカンソー石英標準を使用して、測定前に完了した。アーカンソー石英は、機器製造業者によって提供される認識された標準であるが、バッチ番号を有していない。パフォーマンスを監視するための標準でデータベースが作成されているため、その使用は継続される。しかしながら、回折角の精度、分解能、および感度などのパラメータはすべて、トレーサブルなコルデム標準を使用して評価された。
【0452】
動的蒸気吸着(DVS)
動的蒸気吸着脱離実験は、表面測定システムによって供給されるDVS解像度機器を使用して実施された。データは、以下の取得パラメータを使用して取得された:
溶媒;水
開始相対湿度;30%RH
相対湿度サイクル(%RH);30、40、50、60、70、80、90、95、90、80、70、60、50、40、30、20、10、0、10、20、30
平衡条件(dm/dt);0.002%/分
平衡条件ウィンドウ;10分
最小ステージ期間;5分
最大ステージ期間;360分
温度;25℃
担体ガス;窒素
担体ガス流量;200mL・分-1(合計)
【0453】
典型的には、20~50mgの試験物質をガーゼバスケットに載置し、試料ポートに移した。210Po静電気除去装置を使用して、試料の取り扱いおよび試料の載置を通して、過剰な静電気を除去した。機器性能確認は、塩化ナトリウムおよび塩化リチウムのトレーサブルな試料を使用して完了した。選択された試料について、同じ試料を使用してサイクルを繰り返し、高相対湿度への曝露時に誘発される物理的形態の任意の変化を評価した。
【0454】
H核磁気共鳴(NMR)分光法
対イオン化学量論の評価を、1H核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して行った。
【0455】
試料を、分析のために必要とされるまで、実験室の周囲温度(18~22℃)で保存した。NMR分析については、物質を0.6mLの重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)中に溶解し、その後、高精度の5mmOD NMRチューブに移した。いずれの場合も、原薬試料は、加熱を必要とせずに容易に溶解される。磁石の最適化および安定化後、重水素化溶媒中に材料を溶解してから60分以内に分析を開始した。
【0456】
すべてのNMR実験は、11.7 Tesla磁石を備えたBruker Avance III HD分光計を使用して実施された。スペクトルは、5mmのBBO H多核z勾配ブロードバンド法線幾何プローブを使用して取得された。試料温度を分析全体を通して制御し、適切な時間を熱平衡の確立に許容した。
【0457】
H NMRスペクトルを、直接パルス取得配列で取得し、分析した材料の各々に対して以下のパラメータを使用した。
【0458】
観察周波数(H) 500.13MHz
複雑なデータ点 65536(ゼロ充填なし)
取得時間 4.7秒
スペクトル幅 7.0kHz
弛緩遅延 1.0秒
パルス幅 π/6(3.46μs)
ダミートランジェント数 2
トランジェント数 16
温度 298K
【0459】
化学シフトは、DMSO-d6の残留プロトン信号を使用して、間接的にテトラメチルシラン(TMS)に関して参照された。内部参照は、誘導された分解の可能性を回避するために用いられなかった。フーリエ変換の前に、0.3Hzの指数乗算畳み込みを遊離誘導減衰に適用した。
【0460】
III.結果
試料を、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、および動的蒸気吸着(DVS)によって分析した。さらに、結晶化の傾向に加えて、各試料の外観および視覚的特性を評価した。各分析評価から得られた主要標的特性の一部を表9に列挙する。
【0461】
実施例1~9の個々の塩形態の分析から得られたデータの概要を表10に示し、以下の命名法を使用して有利かつ有害な特性を要約する:「+/+/+」は、最も好ましい;「+/+」は、より好ましい;「+」は、好ましい;「-」は、好ましくない;「-/-」は、より好ましくない;「-/-/-」は、最も好ましくない。
【表9】

【表10】
【0462】
X線粉末回折(XRPD)
実施例6(I-1f;グリコール酸塩)、実施例9(I-1i;ヘミフマル酸塩)、および実施例1(I-1a;フマル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを図3に示す。実施例2(I-1b;安息香酸塩)、実施例3(I-1c;サリチル酸塩)、および実施例7(I-1g;ヘミシュウ酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを図4に示す。実施例5(I-1e;シュウ酸塩)、実施例4(I-1d;コハク酸塩)、および実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを図5に示す。実施例1~8の特徴的X線回折ピーク(2θ±0.2°)を表11に表する。いずれの場合も、ディフラクトグラムは、結晶性材料と一致する離散的で鋭いブラッグ回折を含む。回折パターンは、異なる結晶格子パラメータを反映して、各塩形態について異なる。しかしながら、ヘミフマル酸塩の二つの試料(実施例8および9)は、わずかに異なる回折パターンを示し、この塩形態の多形傾向を示すことに留意されたい。後者の塩にはいくつかの共通の回折があり、一方または両方の試料が物理的混合物を含むことを裏付ける。ヘミフマル酸塩を除き、主観的には、提供される試料は一つの物理的形態を含む。ブラッグ回折のいくらかのわずかな拡大が、ヘミシュウ酸塩(実施例7;I-1g)について見られる;効果は非常に小さいが、何らかの障害または結晶化度の低下を示す。
【0463】
X線粉末回折研究は、本研究の一部として含まれるすべての塩形態が結晶性であり、塩形態評価に適していることを示した。ヘミフマル酸塩(実施例8および9)は、望ましくない何らかの多型傾向を示したことに留意されたい。あまり重要ではないが、ヘミシュウ酸塩(実施例7;I-1g)は、結晶化度のわずかな障害または少量の非結晶性材料の存在を示唆する回折のわずかな拡大を示したことも留意されたい。ヘミフマル酸塩およびヘミシュウ酸塩に関連する両方の観察は、完全には禁止するものではないが、他の塩形態と比較した場合、医薬品開発の目的であまり好ましくない。
【表11】
【0464】
実施例1(I-1a;フマル酸塩)と比較した、実施例26(I-8a;フマル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを図6に示す。実施例2(I-1b;安息香酸塩)と比較した、実施例27(I-8b;安息香酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを図7に示す。実施例3(I-1c;サリチル酸塩)と比較した、実施例28(I-8c;サリチル酸塩)のX線粉末ディフラクトグラムを図8に示す。実施例26~28の特徴的X線回折ピーク(2θ±0.2°)を表12の表にする。見て分かるように、重水素化(DMT d-10)塩のX線粉末ディフラクトグラムは、それらのそれぞれのプロトン化類似体と同一であるか、またはほぼ同一である。したがって、重水素化塩の物理的形態は、プロトン化塩と同一であるか、またはほぼ同一であると結論付けられた。したがって、表9および10で特定される特性などの有利な特性(例えば、結晶化傾向、物理的特性、吸湿性、外観、生理学的受容性、および全体的な塩適合性)は、重水素化塩形態にまで伸長すると結論付けることができる。
【表12】
【0465】
示差走査熱量測定(DSC)
実施例1(I-1a;フマル酸塩)のDSC曲線を図9に示す。塩が高い融解開始温度(192.7℃)および高い融解エンタルピー(136.3 J・g-1)を有することが明らかであり、これらは医薬品開発に好ましい。同様に、融解吸熱の前には事象は観察されず、試料中に複数の物理的形態が存在しないこと、また融解前に物理的形態の変換もなかったことを示す。溶解後の事象は分解を原因とする。
【0466】
実施例2(I-1b;安息香酸塩)のDSC曲線を図10に示す。フマル酸塩と同様に、塩が高い融解開始温度(166.6℃)および高い融解エンタルピー(166.1 J・g-1)を有することは明らかである。同様に、融解吸熱の前には事象は観察されず、試料中に複数の物理的形態が存在しないこと、また融解前に物理的形態の変換もなかったことを示す。溶解後の事象は分解を原因とする。
【0467】
実施例4(I-1d;コハク酸塩)のDSC曲線を図11に示す。フマル酸塩および安息香酸塩と同様に、塩が高い融解開始温度(141.9℃)および高い融解エンタルピー(159.1 J・g-1)を有することは明らかである。同様に、融解吸熱の前には事象は観察されず、試料中に複数の物理的形態が存在しないこと、また融解前に物理的形態の変換もなかったことを示す。溶解後の事象は分解を原因とする。
【0468】
実施例5(I-1e;シュウ酸塩)のDSC曲線を図12に示す。前述の塩と同様に、塩が高い融解開始温度(148.4℃)および高い融解エンタルピー(125.8 J・g-1)を有することは明らかである。同様に、融解吸熱の前には顕著な事象は観察されず、試料中に複数の物理的形態が存在しないこと、また融解前の物理的形態の変換もなかったことを示し;20℃~80℃の広い低強度吸熱は、水/溶媒の損失に起因する。溶解後の事象は分解を原因とする。
【0469】
実施例3(I-1c;サリチル酸塩)のDSC曲線を図13に示す。前述の塩と同様に、塩が高い融解開始温度(191.9℃)および高い融解エンタルピー(155.6 J・g-1)を有することは明らかである。同様に、融解吸熱の前には事象は観察されず、試料中に複数の物理的形態が存在しないこと、また融解前に物理的形態の変換もなかったことを示す。溶解後の事象は分解を原因とする。
【0470】
実施例6(I-1f;グリコール酸塩)のDSC曲線を図14に示す。融解開始温度(105.6℃)および融解エンタルピー(117.5J・g-1)は、前述の塩よりもいくらか低いが、医薬品開発目的では依然として許容可能である。他の塩の優れた物理的特徴は、この点でグリコール酸塩をわずかに好ましくないものにする。融解吸熱の前には事象は観察されず、試料中に複数の物理的形態が存在しないこと、また融解前の物理的形態の変換もなかったことを示す。溶解後の事象は分解を原因とする。
【0471】
実施例9(I-1i;ヘミフマル酸塩)および実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)のDSC曲線を、それぞれ図15および16に示す。融解開始温度はかなり高かった(典型的には>138℃)が、融解エンタルピーは他の塩よりもわずかに低かった(約90J・g-1)。実施例9では、吸熱は、物理的または化学的不純物の存在と一致してわずかに広がり、他のバッチについては、主溶融の直前に小さな吸熱事象が観察される。両方のDSC曲線は、複数の物理的形態の傾向を裏付けし、以前に提示したX線粉末回折データと一致する。複数の形態の存在、または複数の形態を呈する傾向は、完全に禁止するものではないが、代替物が存在する場合、こうした塩形態は、他のものほど有利ではない。溶解後の事象は分解を原因とする。
【0472】
要するに、ヘミフマル酸塩を除き、試験されたすべての塩形態は、満足のいく融解開始温度および融解エンタルピーを示し、禁止となるような多形体傾向はなかった。ヘミフマル酸塩は、異なる物理的形態の存在を明確に示す。いずれの塩形態も医薬品開発目的に対処できない特性を示していないが、DSCデータのみを考慮すると明確に好ましい候補があり、それらは、フマル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、およびコハク酸塩である。
【0473】
動的蒸気吸着(DVS)
実施例1(I-1a;フマル酸塩)のDVS等温線プロットを図17に示す。顕著な吸湿性はなく、>95%RH(<0.2%w/w)の高い相対湿度(RH)に曝露された場合でも、水分の取得は非常に低かった。質量の変化は、典型的な周囲相対湿度の範囲にわたって低く、サイクル全体を通して物理的形態変換の証拠はない。この等温線プロットは、医薬品開発目的にとって有利な動きを表す。
【0474】
実施例2(I-1b;安息香酸塩)のDVS等温線プロットを図18に示す。フマル酸塩に関しては、有意な吸湿性はなく、>95%RH(<0.05%w/w)の高い相対湿度への曝露があっても、水の取得は非常に低かった。質量の変化は、典型的な周囲相対湿度の範囲にわたって低く、サイクル全体を通して物理的形態変換の証拠はない。この等温線プロットは、医薬品開発目的にとって有利な動きを表す。
【0475】
実施例4(I-1d;コハク酸塩)のDVS等温線プロットを図19に示す。フマル酸塩および安息香酸塩と同様に、有意な吸湿性はなく、>95%RH(<0.5%w/w)の高い相対湿度への曝露があっても、水の取得は非常に低かった。95%RHへの曝露時に水の取り込みがいくらか増加したが、レベルはかなり許容可能であり、30%RHと80%RHとの間のプロファイルはかなり平坦であり、その結果、典型的な周囲相対湿度に渡って、質量の有意な変化は発生しないであろう。サイクル全体を通して物理的形態変換の証拠はない。この等温線プロットは、医薬品開発目的にとって許容可能な動きを表す。
【0476】
実施例3(I-1c;サリチル酸塩)のDVS等温線プロットを図20に示す。顕著な吸湿性はなく、>95%RH(<0.06%w/w)の高い相対湿度(RH)に曝露された場合でも、水分の取得は非常に低くかった。質量の変化は、典型的な周囲相対湿度の範囲にわたって低く、サイクル全体を通して物理的形態変換の証拠はない。この等温線プロットは、医薬品開発目的にとって有利な動きを表す。
【0477】
実施例5(I-1e;シュウ酸塩)のDVS等温線プロットを図21に示す。この場合、95%RHへの曝露時に約3%w/wの水取り込みがあり、0%RHと95%RHとの間のいずれの点においても認識可能なプラトーはない。このプロファイルは好ましくなく、分析の観点からいくつかの課題を引き起こす可能性が高い。一般的に、こうした動きはまた、結晶化の課題を伴う。
【0478】
実施例6(I-1f;グリコール酸塩)および実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)のDVS等温線プロットを、それぞれ図22および23に示す。これらの塩は、高い相対湿度で効果的に溶解し、これは医薬品開発には好ましくない。
【0479】
実施例7(I-1g;ヘミシュウ酸塩)のDVS等温線プロットを図24に示す。典型的な周囲相対湿度における平衡含水量は、>3%であり、相対湿度に応じてかなり変化する。実際に、80%を超える相対湿度での水の取り込みは過剰であり、二つのサイクルの再現性に基づいて、高相対湿度への曝露時に相変化が誘発された。この塩形態は、代替的な物理的形態を調査するための追加の作業がない場合、医薬品開発には適していない場合がある。
【0480】
要するに、本明細書で評価される塩形態の蒸気吸着挙動は、非常に多様で、分化していた。フマル酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、およびサリチル酸塩のプロファイルはすべて非常に好ましく、典型的な周囲相対湿度にわたって、脱液性がなく、水の取り込みが低い。
【0481】
H核磁気共鳴(NMR)分光法
実施例1(I-1a;フマル酸塩)、実施例2(I-1b;安息香酸塩)、実施例3(I-1c;サリチル酸塩)、実施例5(I-1e;シュウ酸塩)、実施例8(I-1h;ヘミフマル酸塩)、実施例6(I-1f;グリコール酸塩)、実施例4(I-1d;コハク酸塩)、および実施例7(I-1g;ヘミシュウ酸塩)のH核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、それぞれ図25~32に示す。いずれの場合も、スペクトルは、化学シフト、多重度および積分値に関して提案された分子構造と一致する。対イオン共鳴のシグナル積分値をDMTシグナルのシグナル積分値と比較して、記載された化学量論を確認する(すなわち、ヘミ塩については2:1のDMT:対イオン、その他については1:1のDMT:対イオン)。
【0482】
単結晶X線回折
2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)の安息香酸塩を、約1週間にわたって、制御蒸発を通してエタノール/水の混合物からゆっくりと結晶化した。2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d(I-8b)(C191210)の単結晶を選択し、Fomblin油を用いてMitegenヘッド上に載置した。これは、ハイブリッド画素アレイ検出器を備えた二重源を備えたRigaku Oxford回折Synergy-S回折計上に配置された。結晶は、データ収集中に100(2)Kに維持された。Olex2(Dolomanov,O.V.,Bourhis,L.J.,Gildea,R.J,Howard,J.A.K.&Puschmann,H.(2009),J.Appl.Cryst.42,339-341)を使用して、構造をIntrinsic Phasingを使用するSHELXT(Sheldrick,G.M.(2015),Acta Cryst.A71,3-8)構造解法プログラムで解析し、最小二乗最小化を使用するSHELXL(Sheldrick,G.M.(2015),Acta Cryst.C71,3-8)精密化パッケージで精密化した。
【0483】
I-8bの固体構造を生成し;分子構造を図33Aに示す。非対称単位は、DMT d-10および安息香酸塩対イオンを含み;図33Bに示すように、反転中心によって接続された単位格子内に二つの化合物がある。NH部分は、N2およびN12の差分マップで検出された。N2を計算された位置で精製した。これらのNH部分は、以下の表13に列挙される安息香酸塩対イオンとの短い接触部分を形成する。
【表13】
【0484】
I-8bの結晶構造データの概要を表14に列挙する。提案された結晶構造は、非常に高い確実性を有し、決定された対イオン化学量論に従った予想と一致する。
【表14】
【0485】
保管安定性評価
実施例26(I-8a;2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d)エタン-1-アミン-1,1,2,2-dのフマル酸塩)の貯蔵安定性を、外観、HPLCによる化学的純度、および定量的NMR(qNMR)に従って、‐20℃、25℃ 60%RH、および40℃ 75%RHの三つの異なる貯蔵条件下で評価した。試料を、以下の一次容器および二次容器に入れた:一次容器-10mL透明ガラスバイアル、リブ付き蓋上に反射インサートを備える黒色蓋;二次容器-白色インサートを含む黒色蓋を備える琥珀色の100mLガラスバイアル。
【表15】
【0486】
表15は、生成された安定性データを示す。試験条件下では、2週時点または4週時点のいずれの試験パラメータにおいても有意な変化はなかった。アレニウス方によると、化学反応速度は、10℃の温度上昇ごとに約二倍になる。したがって、40℃での少なくとも1ヶ月のI-8aの安定性は、材料が-20℃で貯蔵されたときに少なくとも1年の好適な貯蔵寿命を有することを示す。
【0487】
前述は、方法および組成物の原理を単に説明するに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的に説明または示されていないが、本開示の原理を具現化し、その趣旨および範囲内に含まれる様々な配置を考案することができることを理解されたい。更に、本明細書に列挙される全ての実施例および条件付き文言は、本開示の原理および当技術の推進のために発明者によって貢献がなされた概念を理解する際に、読者を助けることを主に意図しており、かかる具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。更に、本開示の原理、態様、および実施形態ならびにその具体的な実施例を列挙する本明細書の全ての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することが意図される。更に、かかる等価物は、現在公知の等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造に関係なく、同じ機能を実行する任意の開発される要素を含むことが意図される。したがって、本開示の範囲は、本明細書に示され、そして説明される例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本開示の範囲および趣旨は、以下によって具体化される。
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【国際調査報告】