(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ROCK阻害剤を調製するための合成中間体および改善したプロセス
(51)【国際特許分類】
C07D 217/02 20060101AFI20250117BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20250117BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07D217/02 CSP
A61K31/472
A61P27/06
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541811
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 US2022079176
(87)【国際公開番号】W WO2023136942
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399054697
【氏名又は名称】アルコン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マクルーア, マイケル スコット
(72)【発明者】
【氏名】ミンクラー, ダニエル フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ハクセル, トーマス フランシス ネルソン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC30
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086ZA33
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、高収率で大規模な商業的規模でネタルスジルおよびその中間体を合成する方法である。この合成における重要な中間事項は、ピペリジニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエートの調製であり、これは再結晶化により容易に精製されることが見出された塩である。本開示は、キナーゼ関連疾患および/または障害を処置するのに有用な化合物を調製するためのプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I-a):
【化64】
(式中、各Rは、C
1~C
4アルキル、ハロゲン、C
1~C
4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物を合成する方法であって、
(a)式(II-a)
【化65】
(式中、PGは窒素保護基である)
の化合物を6-アミノイソキノリンと反応させて、式(III-a)
【化66】
(式中、各Rは、C
1~4アルキル、ハロゲン、C
1~4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物を形成すること;ならびに
(b)前記窒素保護基を除去して、前記式(I-a)の化合物を形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
(a)式(IV-a)
【化67】
(式中、各Rは、C
1~4アルキル、ハロゲン、C
1~4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数であり;Tは、キラル補助基である)
の化合物を
【化68】
(式中、PGは窒素保護基である)
と反応させて、式(V-a):
【化69】
(式中、各Rは、C
1~4アルキル、ハロゲン、C
1~4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数であり;Tは、キラル補助基である)
の化合物を形成すること;ならびに
(b)前記キラル補助基を除去して、前記式(II-a)の化合物を形成すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(VIII-a):
【化70】
(式中、各Rは、C
1~C
4アルキル、ハロゲン、C
1~C
4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数であり;R
1は、ハロゲン、OR
a、OC(O)R
b、SR
aまたはSC(O)R
bであり;R
aは、H、アルキルまたはアリールであり、R
bは、アルキルまたはアリールである)
の化合物を、式(IV-a)
【化71】
(式中、各Rは、C
1~C
4アルキル、ハロゲン、C
1~C
4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数であり;Tは、キラル補助基である)
の化合物に変換することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2-アミノエタノール、モルホリン、ピペリジン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ベンジルアミン、ピペラジン、DMAPのリストから選択される、(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロピオン酸のアミン塩。
【請求項5】
nが2であり、各Rがメチルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(I-a)の化合物が、
【化72】
である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記式(VIII-a)の化合物が、
【化73】
である、請求項5から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
nが0である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Tが、
【化74】
(式中、
Zは、SまたはOであり;
Bは、SまたはOであり;
R
cは、水素、シクロアルキル、C
3~C
7分枝状アルキルまたはアリールであり;
R
dは、C
1~C
4アルキル、C
3~C
7分枝状アルキル;アリールアルキルまたはアリールである)
である、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Tが、
【化75】
(式中、
Zは、SまたはOであり;
Bは、SまたはOであり;
R
cは、水素またはアリールであり;
R
dは、C
1~C
4アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)
である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロピオン酸を精製する方法であって、(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロピオン酸を反応させて、アミン塩を形成し、前記塩を再結晶化し、次いで精製した前記塩を(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロピオン酸に逆変換する、方法。
【請求項12】
前記アミン塩を形成するのに使用したアミンがピペリジンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下の式
【化76】
の化合物を合成する方法であって、
(a)
【化77】
を塩素化剤と反応させて、酸塩化物を形成すること;
(b)n-ヘプタンから前記酸塩化物を結晶化して、精製した酸塩化物を形成すること;
(c)塩基の存在下、前記精製した酸塩化物を
【化78】
と反応させて、
【化79】
を形成すること;
(d)塩基の存在下、-50℃~-0℃の間の温度でステップ(c)の生成物を
【化80】
と反応させて、
【化81】
を形成すること;
(e)ステップ(d)の生成物をLiOOHと反応させて
【化82】
を形成すること;
(f)アミン塩を形成し、次いでステップ(e)の生成物を再結晶化して、精製したステップ(e)の生成物を形成すること;
(g)精製したステップ(f)の生成物のカルボン酸基を活性化し、活性化したカルボン酸を6-アミノイソキノリンと反応させて、
【化83】
を形成すること;および
(h)ステップ(g)の生成物を再結晶化すること;
(i)ステップ(h)の生成物をMeSO
3Hの少なくとも2当量と反応させて、
【化84】
を形成することを含む、方法。
【請求項14】
ステップ(e)のアミン塩の精製に使用した溶媒がアセトニトリルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)の前記塩基が、NaH、LiH、KH、nBuLi、secBuLi、LiHMDS、NaHMDS、またはKHMDSであり、ステップ(b)が、-90℃~-50℃の間の温度で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(d)の前記塩基が、NaH、LiHMDSまたはNaHMDSである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記LiOOHが、水酸化リチウムおよび過酸化水素によりin situで形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(g)で、前記カルボン酸基が、約0℃の温度でトリクロロジメチルエチルクロロホルメートおよびコリジンの添加により活性化される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記精製したステップ(f)の生成物、6-アミノイソキノリン、およびコリジンを混合した後、トリクロロジメチルエチルクロロホルメートを添加する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カルボン酸基が、混合酸無水物中間体への変換により活性化される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
【化85】
ピペリジニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート;
【化86】
ジシクロヘキシルアンモニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート;
【化87】
ジベンジルアンモニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート;
【化88】
ジイソプロピルアンモニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート;
【化89】
ベンジルアンモニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート;または
【化90】
ピペラジニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエート
から選択される、化合物。
【請求項22】
【化91】
ピペリジニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエートの固体形態である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記固体形態が結晶形態である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物の固体形態である、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
前記固体形態が結晶形態である、請求項25に記載の化合物。
【請求項26】
本明細書に記載される1つまたは複数のプロセスにより調製された、本明細書に記載される化合物。
【請求項27】
請求項21~26の一項に記載の化合物を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月12日出願のUS63/298,751の優先権を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、キナーゼ関連疾患および/または障害を処置するのに有用な化合物を調製するためのプロセスに関する。これらは、緑内障、角膜疾患、網膜疾患、および高眼圧症のような眼の疾患および障害、呼吸器系の疾患および状態、心血管系の疾患および状態、ならびにがんのような異常成長で特徴付けられる疾患に対する疾患および状態を含む。
【背景技術】
【0003】
背景
Rhopressa(商標)は、様々な属性の中でも、Rhoキナーゼ(ROCK)のアイソフォームを阻害し、眼圧(IOP)を低下させるのに使用される1日1回の点眼剤である。これらの標的および他の標的を阻害することにより、Rhopressa(商標)が、以下の3つの別個の作用機構を介してIOPを低下させると考えられる:(i)ROCK阻害を通して、眼からの排液のおよそ80%を占める線維柱帯を通した液体の流出を増加させること;(ii)眼液が血流に排液する箇所である眼の強膜上静脈における血圧を表す上強膜静脈圧を低下させること;および(iii)NET阻害を通して、眼液の産生を低減し得ること。Rhopressa(商標)は、FDAおよびEMAで承認されており、現在、緑内障および高眼圧症の処置に対して日本で第3相臨床試験の最中である。
Rhopressa(商標)の医薬品有効成分は、(S)-4-(3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンジル2,4-ジメチルベンゾエート(ネタルスジル)である。その調製のための方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,394,826号に見出される。本化合物の臨床的成功のために、改善した収率を伴う大量の材料の生成を可能にする効率的でスケーラブルな再現可能である手法で(S)-4-(3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンジル2,4-ジメチルベンゾエート(ネタルスジル)を合成する改善したプロセスに対する継続した必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8,394,826号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
概して、本開示は、式(I):
【化1】
の化合物を合成する方法であって、
(a)式(II)
【化2】
(式中、PGは窒素保護基である)
の化合物を6-アミノイソキノリンと反応させて式(III)
【化3】
の化合物を形成すること;および
(b)窒素保護基を除去して、式(I)の化合物を形成すること
を含む、方法に及ぶ。
【0006】
本開示は、式(I-a):
【化4】
(式中、各Rは、C1~C4アルキル、ハロゲン、C1~C4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物を合成する方法であって、
(a)式(II-a)
【化5】
の化合物を6-アミノイソキノリンと反応させて、式(III-a)
【化6】
(式中、各Rは、C1~4アルキル、ハロゲン、C1~4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物を形成すること;ならびに
(b)窒素保護基を除去して、式(I-a)の化合物を形成すること
を含む、方法にさらに及ぶ。
【0007】
また本明細書で提供されるのは、式(XI):
【化7】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0~3個の置換基で置換される、シクロヘキシルまたはフェニルである)
の化合物を合成する方法であって、
(a)式(XII)
【化8】
(式中、PGは窒素保護基である)
の化合物を6-アミノイソキノリンと反応させて、式(XIII)
【化9】
の化合物を形成すること;および
(b)窒素保護基を除去して、式(XI)の化合物を形成すること
を含む、方法である。
【0008】
本開示は、式(XI-a):
【化10】
(式中、各Rは、C1~C4アルキル、ハロゲン、C1~C4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物を合成する方法であって、
(a)式(XII-a)
【化11】
の化合物を6-アミノイソキノリンと反応させて、式(XIII-a)
【化12】
(式中、各Rは、C1~4アルキル、ハロゲン、C1~4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物を形成すること;ならびに
(b)窒素保護基を除去して、式(XI-a)の化合物を形成すること
を含む、方法にさらに及ぶ。
【0009】
また開示されるのは、本開示の化合物および薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物、ならびにキナーゼ関連疾患および/または障害の処置のための本開示の化合物または薬学的に許容されるその塩を使用する方法である。
【0010】
本開示のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明を参照することによりさらによく理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本明細書で開示されるのは、キナーゼ阻害剤の合成のためのプロセスである。阻害剤は、式(I)を有し得る。式(I)の化合物は、大規模な量の式(I)の化合物を効果的に生成する手法で合成することができる。式(I)の化合物は、キナーゼ関連疾患および/または障害を処置または予防するのに使用することができる。これらは、緑内障、角膜損傷、網膜炎および高眼圧症のような眼の疾患および障害、呼吸器系の疾患および障害、心血管系の疾患および障害、ならびにがんのような異常成長で特徴付けられる疾患に対する疾患および障害を含む。
【0012】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含め、本文書が支配的である。好ましい方法および材料は以下に記載されるが、本明細書に記載されるものと類似するか、または同等の方法および材料は、本開示の実施または試験で使用することができる。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定することを意図しない。
【0013】
用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有すること」、「有する」、「できる」、「含有する」、およびその変形は、本明細書で使用される場合、追加の作用または構造の可能性を排除しないオープンエンドの移行句、用語または単語であることが意図される。単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、文脈で別段明らかに示していない限り、複数の参照を含む。本開示はまた、明確に説明されるか否かにかかわらず、本明細書で提示される実施形態または要素を「含む」、それら「からなる」、およびそれら「から本質的になる」他の実施形態を想定する。
【0014】
量に関して使用される修飾語「約」は、記述した値を包含し、文脈により示される意味を有する(例えば、特定の量の測定に関連する誤差の度合いを少なくとも含む)。修飾語「約」はまた、2個のエンドポイントの絶対値として定義される範囲を開示するとみなすべきである。例えば、表現「約2~約4」はまた、範囲「2~4」を開示する。用語「約」とは、示す数値の±10%を指すことができる。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示し得、「約1」は0.9~1.1を意味し得る。「約」の他の意味は、四捨五入のような文脈から明らかであり得るので、例えば「約1」は、0.5~1.4を意味し得る。
【0015】
特定の官能基および化学用語の定義は、以下でさらに詳細に記載される。本開示の目的で、化学元素は、Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.の表紙裏にしたがって同定され、特定の官能基は、そこに記載されるように全体で定義される。加えて、有機化学の一般原理ならびに特定の官能部および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999;Smith and March March's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001;Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されており、各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
用語「アルコキシ」とは、本明細書で使用される場合、酸素原子を通して親分子部分に付加された、本明細書に定義されるアルキル基を指す。アルコキシの代表例は、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシおよびtert-ブトキシを含む。
【0017】
用語「アルキル」とは、本明細書で使用される場合、1~10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝状の飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルキル」または「C1~C6アルキル」とは、1~6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。用語「C3~C7分枝状アルキル」とは、3~7個の炭素原子を含有する分枝鎖炭化水素を意味する。用語「C1~C4アルキル」とは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。アルキルの代表例は、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルを含む。アルキル基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0018】
用語「アルキレン」とは、本明細書で使用される場合、1~10個の炭素原子、例えば2~5個の炭素原子の直鎖または分枝鎖炭化水素に由来する二価基を指す。アルキレンの代表例は、限定されないが、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、および-CH2CH2CH2CH2CH2-を含む。アルキレン基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0019】
用語「アルケニル」とは、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合および1~10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝状の不飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルケニル」または「C2~C6アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合および1~6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。アルケニル基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0020】
用語「アルコキシアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルキル基を通して親分子部分に付加された、本明細書に定義されるアルコキシ基を指す。
【0021】
用語「アルキニル」とは、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合および1~10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝状の不飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルキニル」または「C2~C6アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合および1~6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。アルキニル基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0022】
用語「アリール」とは、本明細書で使用される場合、フェニル基、または二環式縮合環系を指す。二環式縮合環系は、親分子部分に付加され、本明細書に定義されるシクロアルキル基、フェニル基、本明細書に定義されるヘテロアリール基、または本明細書に定義される複素環に縮合したフェニル基により例示される。アリールの代表例は、限定されないが、インドリル、ナフチル、フェニル、キノリニルおよびテトラヒドロキノリニルを含む。アリール基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0023】
用語「シクロアルキル」とは、本明細書で使用される場合、3~10個の炭素原子を含有し、ヘテロ原子および二重結合を含有しない、炭素環式環系を指す。シクロアルキルの代表例は、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシルを含む。シクロアルキル基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0024】
用語「シクロアルケニル」とは、本明細書で使用される場合、3~10個の炭素原子を含有し、ヘテロ原子を含有せず、少なくとも1つの二重結合を含有する、炭素環式環系を指す。シクロアルケニル基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0025】
用語「フルオロアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルキル基を通して親分子部分に付加された、少なくとも1個のフッ素原子を指す。フルオロアルキルの代表例は、限定されないが、トリフルオロメチルを含む。
【0026】
用語「フルオロアルコキシ」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルコキシ基を通して親分子部分に付加された、少なくとも1個のフッ素原子を指す。
【0027】
用語「アルコキシフルオロアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるフルオロアルキル基を通して親分子部分に付加された、本明細書に定義されるアルコキシ基を指す。
【0028】
用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、本明細書で使用される場合、Cl、Br、I、またはFを意味する。
【0029】
用語「ハロアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルキル基を通して親分子部分に付加された、少なくとも1個のハロゲン原子を指す。
【0030】
用語「ヘテロアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルキル基を意味し、炭素原子の1つまたは複数は、S、O、PおよびNから選択されるヘテロ原子で置き換えられる。ヘテロアルキルの代表例は、限定されないが、アルキルエーテル、第二級および第三級アルキルアミン、アミド、ならびにアルキルスルフィドを含む。ヘテロアルキル基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0031】
用語「ヘテロアリール」とは、本明細書で使用される場合、芳香族単環式環または芳香族二環式環系を指す。芳香族単環式環は、N、OおよびSからなる群から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、SおよびNから独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子)を含有する5または6員環である。5員の芳香族単環式環は2つの二重結合を有し、6員の6員の芳香族単環式環は3つの二重結合を有する。二環式ヘテロアリール基は、親分子部分に付加され、本明細書に定義される単環式シクロアルキル基、本明細書に定義される単環式アリール基、本明細書に定義される単環式ヘテロアリール基、または本明細書に定義される単環式複素環に縮合した単環式ヘテロアリール環により例示される。ヘテロアリールの代表例は、限定されないが、インドリル、ピリジニル(ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イルを含む)、ピリミジニル、チアゾリル、およびキノリニルを含む。ヘテロアリール基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0032】
用語「複素環」または「複素環式」とは、本明細書で使用される場合、単環式複素環、二環式複素環、または三環式複素環を意味する。単環式複素環は、O、NおよびSからなる群から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する3、4、5、6、7または8員環である。3または4員環は、二重結合を含有しないか、または1つの二重結合を含有し、O、N、およびSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含有する。5員環は、二重結合を含有しないか、または1つの二重結合を含有し、O、NおよびSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。6員環は、二重結合を含有しないか、1または2つの二重結合を含有し、O、NおよびSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。7および8員環は、二重結合を含有しないか、1、2または3つの二重結合を含有し、O、NおよびSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。複素環基は、置換されても置換されなくてもよい。
【0033】
用語「ヘテロアリールアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルキル基を通して親分子部分に付加された、本明細書に定義されるヘテロアリール基を指す。
【0034】
用語「ヒドロキシアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルキル基を通して親分子部分に付加されたヒドロキシ基を指す。
【0035】
用語「アリールアルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に定義されるアルキル基を通して親分子部分に付加された、本明細書に定義されるアリール基を指す。
【0036】
一部の例では、ヒドロカルビル置換基(例えば、アルキルまたはシクロアルキル)の炭素原子の数は、接頭辞「Cx~Cy」で示され、xは置換基の炭素原子の最小数であり、yは最大数である。ゆえに、例えば、「C1~C3アルキル」とは、1~3個の炭素原子を含有するアルキル置換基を指す。
【0037】
用語「置換基」とは、基をその基の任意の原子において「置換する」基を指す。任意の原子は置換されることができる。
【0038】
用語「置換される」とは、1つまたは複数の非水素置換基でさらに置換され得る基を指す。置換基は、限定されないが、ハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、およびアシルを含む。
【0039】
本明細書に記載される化合物に関して、その基および置換基は、選択および置換が、例えば転位、環化、除去などによって転換を自然発生的には受けない、安定した化合物をもたらすように、原子および置換基の可能な原子価にしたがって選択することができる。
【0040】
本明細書の数値範囲を記載するために、同じ精度でその間に各々介在する数値が明確に想定される。例えば、6~9の範囲に対して、数値7および8は、6および9に加えて想定され、6.0~7.0の範囲に対して、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0が明確に想定される。
プロセス
式(I)の化合物
【0041】
一態様では、開示されるのは、式(I):
【化13】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0~3個の置換基で置換される、シクロヘキシルまたはフェニルである)
の化合物、または薬学的に許容される塩の合成のためのプロセスである。
【0042】
本プロセスは、6-アミノイソキノリンを、PGが窒素に対する保護基である式(II)の化合物と反応させて、式(III)の化合物を形成することを含む。式(III)の化合物は、窒素保護基の除去により式(I)の化合物に転換することができる。窒素保護基であるPGは、当技術分野で公知の、任意の好適な窒素保護基であり得る。ある特定の実施形態では、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびパラ-メトキシベンジルカルボニル(Moz)からなる群から選択される。
【化14】
【0043】
本プロセスは、式(II)の化合物の合成をさらに含む。Tがキラル補助基である式(IV)の化合物のアミノアルキル化は、式(V)の化合物を提供することができ、これは、キラル補助基の除去で式(II)の化合物に変換することができる。
【化15】
【0044】
式(VII)の化合物は、メチル2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートを式(VI)の化合物と反応させることにより調製することができる。式(VII)の化合物は、式(VIII)の化合物に変換することができ、式中、R
1は、ハロゲン、OR
a、OC(O)R
b、SR
aまたはSC(O)R
bであり;R
aは、H、アルキルまたはアリールであり、R
bは、アルキルまたはアリールである。式(VIII)の化合物から、今度は式(IV)の化合物を得ることができ、式中、Tは、キラル補助基である。
【化16】
式(I-a)の化合物
【0045】
一実施形態では、式(I)の化合物の合成のためのプロセスは、式(I-a):
【化17】
(式中、各Rは、C
1~C
4アルキル、ハロゲン、C
1~C
4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物、または薬学的に許容される塩の合成のためのプロセスである。一部の実施形態では、C
1~C
4アルキルは、C
1~C
4フルオロアルキルであり得る。
【0046】
本プロセスは、6-アミノイソキノリンを、PGが窒素に対する保護基である式(II-a)の化合物と反応させて、式(III-a)の化合物を形成することを含む。式(III-a)の化合物は、窒素保護基の除去により式(I-a)の化合物に転換することができる。窒素保護基であるPGは、当技術分野で公知の、任意の好適な窒素保護基であり得る。ある特定の実施形態では、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびパラ-メトキシベンジルカルボニル(Moz)からなる群から選択される。
【化18】
【0047】
本プロセスは、式(II-a)の化合物の合成をさらに含む。Tがキラル補助基である式(IV-a)の化合物のアミノアルキル化は、式(V-a)の化合物を提供することができ、これは、キラル補助基の除去で式(II-a)の化合物に変換することができる。
【化19】
【0048】
式(VII-a)の化合物は、メチル2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートを式(VI-a)の化合物と反応させることにより調製することができる。式(VII-a)の化合物は、式(VIII-a)の化合物に変換することができ、式中、R
1は、ハロゲン、OR
a、OC(O)R
b、SR
aまたはSC(O)R
bであり;R
aは、H、アルキルまたはアリールであり、R
bは、アルキルまたはアリールである。式(VIII-a)の化合物から、今度は式(IV-a)の化合物を得ることができ、式中、Tは、キラル補助基である。
【化20】
【0049】
ある特定の実施形態では、Tは、式(IX)
【化21】
(式中、Zは、SまたはOであり;Bは、SまたはOであり;R
cは、水素、シクロアルキル、C
3~C
7分枝状アルキルまたはアリールであり;R
dは、C
1~C
4アルキル、C
3~C
7分枝状アルキル;アリールアルキルまたはアリールであり;R
cは、C
1~C
4アルキルまたはアリールである)
の化合物であり得る。
【0050】
具体的には、Tは、式(IX-a)
【化22】
(式中、Zは、SまたはOであり;Bは、SまたはOであり;R
cは、水素またはアリールであり;R
dは、C
1~C
4アルキル、アリールアルキルまたはアリールであり;R
cは、C
1~C
4アルキルまたはアリールである)
の化合物であり得る。
【0051】
より具体的には、Tは、
【化23】
からなる群から選択することができる。
【0052】
具体的な実施形態では、Tは、
【化24】
である。
化合物(1)
【0053】
一実施形態では、式(I)の化合物の合成のために開示されるプロセスは、化合物(1):
【化25】
または薬学的に許容される塩の合成のためのプロセスである。
【0054】
本プロセスは、6-アミノイソキノリンを化合物(2)と反応させて、化合物(3)を形成することを含む。化合物(3)は、Boc保護基の除去により化合物(1)に転換することができる。
【化26】
【0055】
本プロセスは、化合物(2)の合成をさらに含む。化合物(4)のアミノアルキル化は、化合物(5)を提供することができ、これは、キラル補助基の除去で化合物(2)に変換することができる。
【化27】
【0056】
化合物(4)は、メチル2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートを化合物(6)と反応させることにより調製することができる。化合物(7)は、化合物(8)に変換することができる。化合物(8)から、今度は化合物(4)を得ることができる。
【化28】
【0057】
式(I)の化合物(例えば化合物(1))の合成のためのプロセスの具体的な実施形態では、プロセスは、化合物(7)を形成するための、EDCおよびDMAPの存在下でのメチル2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートの2,4-ジメチル安息香酸(6)とのカップリングを含む。化合物(7)のメチルエステルを、好適な溶媒中において、好適な塩基(例えば、金属水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)で選択的に加水分解して、化合物(9)を得ることができる。好適には、加水分解条件は、塩基としての水酸化リチウム、および溶媒としてのTHFと水との混合物を含む。これらの条件は、ベンジルエステルの加水分解の量を限定する助けとなるので有利である。
【化29】
【0058】
化合物(9)は、塩素化剤による処理により酸塩化物(8)に転換することができる。塩素化剤は、塩化オキサリルまたは塩化チオニルであり得る。溶媒は、塩素化溶媒、例えば塩化メチレン、ジクロロエタンもしくはクロロホルムであり得るか、または非塩素化溶媒、例えばTHF、ジエチルエーテル、ジオキサンもしくはアセトニトリルであり得る。塩素化剤および溶媒は、塩化チオニルであり得る。好適には、塩素化剤は、塩化オキサリルであり、溶媒は、塩化メチレンまたはテトラヒドロフラン(tetrahydofuran)/ジメチルホルムアミドの溶媒混合物である。
【化30】
【0059】
塩基を(R)-4-ベンジルオキサゾリジン-2-オンに添加した後、-90℃~-50℃の温度で化合物(8)との反応を行い、化合物(4)を提供することができる。(R)-4-ベンジルオキサゾリジン-2-オンへの添加に使用される塩基は、NaH、LiH、KH、nBuLi、NaHMDS、LDA、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、臭化メチルマグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、sec-BuLi、LiHMDS、t-ブトキシドカリウム、イソプロポキシドナトリウムまたはKHMDSであり得る。溶媒は、THF、トルエン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、メチルt-ブチルエーテルまたはその組合せであり得る。好適には、(R)-4-ベンジルオキサゾリジン-2-オンへの添加に使用される塩基はn-BuLiであり、溶媒はTHFである。
【化31】
【0060】
化合物(4)を塩基で処理した後、-50℃~-20℃の温度でN-Boc-1-アミノメチルベンゾトリアゾールを添加して、ジアステレオ選択的方法で化合物(5)を提供することができる。化合物(4)の処理に使用される塩基は、LiHMDS、LDAまたはNaHMDSであり得る。溶媒は、THF、トルエン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、メチルt-ブチルエーテルまたはその組合せであり得る。好適には、化合物(4)の処理に使用される塩基はLiHMDSであり、溶媒はTHFである。一部の実施形態では、ルイス酸を塩基と共に添加して、化合物(4)の脱プロトン化を促進し、反応中間体を形成してもよい。化合物(5)は、1超:1、2超:1、5超:1、10超:1、20超:1、50超:1、または99超:1のジアステレオマー比で得ることができる。少量のジアステレオマーは、標準的な精製技術、例えば、限定されないが、再結晶化およびシリカゲルクロマトグラフィーにより除去することができる。
【化32】
【0061】
化合物(5)は、適切な求核性塩基を添加してオキサゾリジノンのキラル補助基を除去することにより、カルボン酸(2)に変換することができる。好適には、塩基は、リチウムヒドロペルオキシドであり、水酸化リチウムの過酸化水素との反応によりin situで形成される。リチウムヒドロペルオキシドの使用は、キラル補助基を除去するがベンジルエステルを加水分解しないというその有効性により、有利である。
【化33】
【0062】
化合物(2)である(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロピオン酸は、好適な塩基で塩に変換することにより精製することができる。好ましい塩基は、有機アミン、例えば、限定されないがピペリジンであり、好適な溶媒または溶媒系、例えば、限定されないがアセトニトリルでのその塩の結晶化による。ピペリジン塩は、化合物(2)のPip塩、すなわちピペリジニウム(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパノエートとして公知である。この転換を実行するのに好適な他のアミン塩基は、2-アミノエタノール、モルホリン、ピペリジン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ベンジルアミン、ピペラジン、DMAPである。他の好適な無機塩基は、NaOH、LiOH・H
2O、Ca(OH)
2、Ba(OH)
2・8H
2Oである。他の好適な溶媒および溶媒系は、IPA、1,4-ジオキサン、IPA+ヘプタン、IPAc、ならびにアセトニトリルおよびヘプタン(hepane)を含む。精製の後、化合物(2)のPip塩は、例えば、塩を酢酸エチル、MTBEまたは2-MeTHFに溶解した後、クエン酸で酸性化することにより、化合物(2)の遊離酸形態に変換して、塩を壊した後、ヘプタン/酢酸エチルから遊離酸を結晶化することができる。次いで、化合物(2)は、カルボン酸基を活性化し、6-アミノイソキノリンと反応させることにより、化合物(3)に変換することができる。カルボン酸基は、混合酸無水物(a mixed anhydride)もしくは酸ハロゲン化物への変換、または標準的なアミドカップリング試薬(例えばEDCI、HOBT、DCC、DIC、HBTU、およびHATU)の使用を含む、様々な試薬および条件により活性化することができる。好適なことに、カルボン酸基は、混合酸無水物の形成により活性化される。トリクロロジメチルエチルクロロホルメートのようなアルキルクロロホルメートおよび塩基を添加することにより混合酸無水物を形成して、化合物(3)を形成することができる。好ましい実施形態では、トリクロロジメチルエチルクロロホルメートおよびコリジンを、6-アミノイソキノリンの存在下、0℃で化合物(2)に添加する。反応性混合酸無水物中間体は、6-アミノイソキノリンと反応して化合物(3)を形成することができるような反応条件下で形成することができる。利用される溶媒は、単独のもしくは塩化メチレンと合わせたDMF、またはアセトニトリルであり得、好適には、利用される溶媒は、DMFである。単離の際、化合物(3)は、必要に応じて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび/または再結晶化により精製され得る。
【化34】
【0063】
化合物(3)の化合物(1)への変換は、好適な試薬を添加してBoc保護基を除去することにより達成することができる。好適には、酸が、Boc保護基を除去するために使用される。Boc保護基を除去するのに有用なあらゆる酸を使用することができる。Boc保護基を除去するのに使用される酸はまた、化合物(1)の塩の形成を促進し得る。酸は、保護基の除去に有利であるように選択され得、好適な薬学的に許容される塩も形成することができる。好適には、化合物(3)の化合物(1)への変換に利用される酸は、メタンスルホン酸の少なくとも2当量を含み、化合物(1)のジメタンスルホン酸塩をもたらす。メタンスルホン酸は、所望の生成物が、ほぼ分解されずに、ほとんど副産物なしで、高収率で形成されるので、特に有用である。ジメタンスルホン酸塩は、容易に精製され、取扱いが容易であるなどの有用な特性を提供し、大規模なプロセスにおいて良好な再現性で生成することができる。
【化35】
式(XI)の化合物
【0064】
別の態様では、開示されるのは、式(XI):
【化36】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0~3個の置換基で置換される、シクロヘキシルまたはフェニルである)
の化合物、または薬学的に許容される塩の合成のためのプロセスである。
【0065】
本プロセスは、6-アミノイソキノリンを、PGが窒素に対する保護基である式(XII)の化合物と反応させて、式(XIII)の化合物を形成することを含む。式(XIII)の化合物は、窒素保護基の除去により式(XI)の化合物に転換することができる。窒素保護基であるPGは、当技術分野で公知の、任意の好適な窒素保護基であり得る。ある特定の実施形態では、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、9-フルオレニルメチル-オキシカルボニル(Fmoc)からなる群から選択される。
【化37】
【0066】
本プロセスは、式(XII)の化合物の合成をさらに含む。Tがキラル補助基である式(IV)の化合物のアミノアルキル化は、式(XV)の化合物を提供することができ、これは、キラル補助基の除去で式(XII)の化合物に変換することができる。
【化38】
【0067】
ある特定の実施形態では、式(XI)の化合物は、式(I)の化合物の合成のために上述したプロセスを介して得ることができる。特に、式(XV)の化合物は、式(IV)の化合物の式(V)の化合物への変換において、少量の生成物として形成することができる。上述した反応のステップおよびスキームを利用して、式(XV)の化合物を、今度は式(XI)の化合物に転換することができる。したがって、中間体化合物である式(XII)および(XIII)の化合物は、それゆえそのプロセスで形成することもできる。
【化39】
式(XI-a)の化合物
【0068】
一実施形態では、式(XI)の化合物の合成のためのプロセスは、式(XI-a):
【化40】
(式中、各Rは、C
1~C
4アルキル、ハロゲン、C
1~C
4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物または薬学的に許容される塩の合成のためのプロセスである。一実施形態では、C
1~C
4アルキルは、C
1~C
4フルオロアルキルである。
【0069】
本プロセスは、6-アミノイソキノリンを、PGが窒素に対する保護基である式(XII-a)の化合物と反応させて、式(XIII-a)の化合物を形成することを含む。式(XIII-a)の化合物は、窒素保護基の除去により式(XI-a)の化合物に転換することができる。窒素保護基であるPGは、当技術分野で公知の、任意の好適な窒素保護基であり得る。ある特定の実施形態では、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、9-フルオレニルメチル-オキシカルボニル(Fmoc)からなる群から選択される。
【化41】
【0070】
本プロセスは、式(XII-a)の化合物の合成をさらに含む。Tがキラル補助基である、式(IV-a)の化合物のアミノアルキル化は、式(XV-a)の化合物を提供することができ、これは、キラル補助基の除去で式(XII-a)の化合物に変換することができる。
【化42】
【0071】
ある特定の実施形態では、Tは、式(IX)
【化43】
(式中、Zは、SまたはOであり;Bは、SまたはOであり;R
cは、水素、シクロアルキル、C
3~C
7分枝状アルキルまたはアリールであり;R
dは、C
1~C
4アルキル、C
3~C
7分枝状アルキル;アリールアルキルまたはアリールであり;R
cは、C
1~C
4アルキルまたはアリールである)
の化合物であり得る。
【0072】
ある特定の実施形態では、Tは、式(IX-b)
【化44】
(式中、Zは、SまたはOであり;Bは、SまたはOであり;R
cは、水素またはアリールであり;R
dは、C
1~C
4アルキル、アリールアルキルまたはアリールであり;R
cは、C
1~C
4アルキルまたはアリールである)
の化合物であり得る。
【0073】
ある特定の実施形態では、Tは、
【化45】
からなる群から選択することができる。
【0074】
具体的な実施形態では、Tは、
【化46】
である。
【0075】
ある特定の実施形態では、式(XI-a)の化合物は、式(I-a)の化合物の合成のために上述したプロセスを介して得ることができる。特に、式(XV-a)の化合物は、式(IV-a)の化合物の式(V-a)の化合物への変換において、少量の生成物として形成することができる。上述した反応のステップおよびスキームを利用して、式(XV-a)の化合物を、今度は式(XI-a)の化合物に転換することができる。したがって、中間体化合物である式(XII-a)および(XIII-a)の化合物は、それゆえそのプロセスで形成することもできる。
【化47】
化合物(11)
【0076】
一実施形態では、式(XI)の化合物の合成のために開示されるプロセスは、化合物(11):
【化48】
または薬学的に許容される塩の合成のためのプロセスである。
【0077】
本プロセスは、6-アミノイソキノリンを化合物(12)と反応させて、化合物(13)を形成することを含む。化合物(13)は、Boc保護基の除去により化合物(11)に転換することができる。
【化49】
【0078】
本プロセスは、化合物(12)の合成をさらに含む。キラル補助剤を化合物(8)に添加することで、化合物(14)を得ることができる。化合物(14)のアミノアルキル化は、化合物(15)を提供することができ、これは、キラル補助基の除去で化合物(12)に変換することができる。
【化50】
【0079】
ある特定の実施形態では、化合物(11)は、化合物(1)の合成のために上述したプロセスを介して得ることができる。特に、化合物(16)は、化合物(4)の化合物(5)への変換において、少量の生成物として形成することができる。上述した反応のステップおよびスキームを利用して、化合物(15)を、今度は化合物(11)に転換することができる。したがって、中間体化合物である化合物(12)および(13)は、それゆえそのプロセスで形成することもできる。
【化51】
【0080】
別の態様では、本開示は、アミドまたはエステル結合の形成のための方法であって、
【化52】
および塩基の存在下、アミンまたはアルコールをカルボン酸と反応させることを含む、方法を提供する。アミンおよびエステルは、非反応性であると一般に考えられている場合がある。一実施形態では、アミンは芳香族アミンである。一実施形態では、アルコール(alchohol)は芳香族アルコールである。1,1-ジメチル,2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメートは、ラセミ化し易いカルボン酸、特にアルファ芳香族酸の立体選択的カップリングを可能にし得る。
【0081】
上記の構造およびスキームの説明に使用されている略語は、以下を含む:Bn、ベンジル;Ph、フェニル;Me、メチル;EDC、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩;Boc、tert-ブチルカルボニル;EDCI、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、HOBT、ヒドロキシベンゾトリアゾール、CDI、カルボニルジイミダゾール;DCC、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド;DIC、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(disopropylcarbodiimide)、HBTU、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;HATU、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート;DMAP、ジメチルアミノピリジン;LiHMDS、リチウムヘキサメチルジシラジド;NaHMDS、ナトリウムヘキサメチルジシラジド;KHMDS、カリウムヘキサメチルジシラジド;LDA、リチウムジイソプロピルアミド;DMF、ジメチルホルムアミド;およびTHF、テトラヒドロフラン。
【0082】
化合物および中間体は、有機合成の分野の当業者に周知の方法により単離および精製することができる。化合物を単離および精製するための従来の方法の例は、限定されないが、固体支持体、例えばシリカゲル、アルミナ、またはアルキルシラン基に由来するシリカ上のクロマトグラフィー、必要に応じた活性炭での前処理を伴う高温または低温での再結晶化、薄層クロマトグラフィー、様々な圧力での蒸留、真空下での昇華、および摩砕を含むことができ、例えば"Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry", 5th edition (1989), by Furniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, pub. Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載されている。
【0083】
本開示の化合物は、少なくとも1個の塩基性窒素を有し得、これにより、化合物は、酸で処理して所望の塩を形成することができる。例えば、化合物は、低温から室温より上までで酸と反応させて所望の塩を提供することができ、これは、堆積させ、冷却した後に濾過することによって収集される。反応に好適な酸の例は、限定されないが、酒石酸、乳酸、コハク酸、ならびにマンデル酸、アトロラクチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、炭酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、クエン酸、ヒドロキシ酪酸、カンファースルホン酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、アスパラギン酸、塩酸、クエン酸、またはグルタミン酸などを含む。
【0084】
各個々のステップに対する最適な反応条件および反応時間は、利用される特定の反応物および使用される反応物に存在する置換基によって様々であり得る。具体的な手順は、実施例の節で提供される。反応は、例えば残渣から溶媒を除去することにより従来の手法で後処理し、限定されないが、結晶化、蒸留、抽出、摩砕、およびクロマトグラフィーのような、当技術分野で一般的な公知の方法によってさらに精製することができる。別段記載されない限り、出発材料および試薬は、市販されるか、または慣用的な実験的技術および化学文献で周知の方法を使用して市販の材料から当業者により調製することができるかのいずれかである。反応条件、試薬および合成経路の配列の適切な手技、反応条件に不適合である任意の化学官能基の保護、ならびに方法の反応シーケンスでの好適な点での脱保護を含む、慣用的な実験法は、本開示の範囲に含まれる。好適な保護基、ならびにこのような好適な保護基を使用して異なる置換基を保護および脱保護するための方法は、当業者に周知であり;その例は、PGM Wuts and TW Greene, in Greene's book titled Protective Groups in Organic Synthesis (4th ed.), John Wiley & Sons, NY (2006)で見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。記載される合成スキームおよび具体例は、例証的であり、添付した特許請求の範囲に定義される本開示の範囲を限定するように読み取るべきではないと理解することができる。合成法および具体例の全ての代替、修正および均等物は、特許請求の範囲内に含まれる。
化合物
式(I)の化合物
【0085】
別の態様では、本明細書に開示されるのは、式(I):
【化53】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0~3個の置換基で置換される、シクロヘキシルまたはフェニルである)
の化合物、または薬学的に許容される塩である。
【0086】
一実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-a):
【化54】
(式中、各Rは、C
1~C
4アルキル、ハロゲン、C
1~C
4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物、または薬学的に許容される塩である。
【0087】
一実施形態では、式(I)の化合物は、化合物(1):
【化55】
または薬学的に許容される塩である。
【0088】
別の態様では、本明細書に開示されるのは、式(XI):
【化56】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0~3個の置換基で置換される、シクロヘキシルまたはフェニルである)
の化合物、または薬学的に許容される塩である。
【0089】
一実施形態では、式(XI)の化合物は、式(XI-a):
【化57】
(式中、各Rは、C
1~C
4アルキル、ハロゲン、C
1~C
4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され;nは、0~3の整数である)
の化合物、または薬学的に許容される塩である。
【0090】
一実施形態では、式(XI)の化合物は、化合物(11):
【化58】
または薬学的に許容される塩である。
【0091】
化合物名は、CHEMDRAW(登録商標)の一部としての構造命名アルゴリズムを使用することにより割り当てられる。
【0092】
化合物は、不斉中心またはキラル中心が存在する立体異性体として存在し得る。立体異性体は、キラル炭素原子の周りの置換基の立体配置に依存する「R」または「S」である。本明細書で使用される用語「R」および「S」は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E, Fundamental Stereochemistry, in Pure Appl. Chem., 1976, 45: 13-30に定義される立体配置である。本開示は、様々な立体異性体およびその混合物を想定し、これらは、具体的に本開示の範囲内に含まれる。立体異性体は、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに鏡像異性体またはジアステレオマーの混合物を含む。化合物の個々の立体異性体は、不斉中心もしくはキラル中心を含有する市販の出発材料から合成して、またはラセミ混合物を調製した後、当業者に周知の分割方法で調製することができる。これらの分割方法は、(1)Furniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, "Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry", 5th edition (1989), Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載されているような、鏡像異性体の混合物のキラル補助剤への結合、得られたジアステレオマー混合物の再結晶化もしくはクロマトグラフィーによる分離、および光学的に純粋な生成物の補助剤からの必要に応じた遊離、または(2)キラルクロマトグラフィーカラムでの光学的鏡像異性体の混合物の直接的な分離、または(3)分別再結晶法により例示される。
【0093】
化合物が互変異性形態ならびに幾何異性体を有し得、それらも本開示の態様を構成すると理解すべきである。
【0094】
本開示はまた、1つまたは複数の原子が、通常天然で見られる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられるという事実以外は、式(I)に記載されるものと同一である、同位体で標識した化合物を含む。本開示の化合物に含まれるのに好適な同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、および塩素、例えば、それぞれ、限定されないが2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clである。ジュウテリウム、すなわち2Hのようなより重い同位体との置換は、より良好な代謝安定性、例えば、in vivoでの半減期の延長または必要な投与量の低減によりもたらされるある特定の治療的な利点を得ることができるので、一部の状況で好ましい場合がある。化合物は、受容体の分布を決定するための医用イメージングおよび陽電子放射断層撮影(PET)研究用の陽電子放射同位体を組み込むことができる。式(I)の化合物に組み込むことができる好適な陽電子放射同位体は、11C、13N、15O、および18Fである。同位体で標識した式(I)の化合物は、一般に、当業者に公知の従来の技術、または同位体で標識していない試薬の代わりに適切な同位体で標識した試薬を使用する添付の実施例に記載されるものと類似するプロセスにより調製することができる。
【0095】
開示される化合物は、薬学的に許容される塩として存在し得る。用語「薬学的に許容される塩」とは、合理的な利益/リスク比に見合っていて、これらの意図する使用に効果的である、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応を伴わずに障害の処置に好適な水溶性もしくは油溶性または分散性である化合物の塩または両性イオンを指す。塩は、化合物の最終的な単離および精製の間、または化合物のアミノ基を好適な酸と別々に反応させることにより調製することができる。例えば、化合物は、限定されないがメタノールおよび水のような好適な溶媒に溶解し、塩酸のような塩の少なくとも1当量で処理することができる。得られた塩は、沈殿し、濾過により単離し、減圧下で乾燥させることができる。あるいは、溶媒および過剰な酸を減圧下で除去して、塩を提供することができる。代表的な塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、イセチオン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩(naphthylenesulfonate)、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩(thrichloroacetate)、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などを含む。化合物のアミノ基はまた、塩化アルキル、臭化アルキルおよびヨウ化アルキル(アルキルは例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルなど)で四級化され得る。
【0096】
塩基付加塩は、好適な塩基、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムもしくはアルミニウムのような金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩、または有機第一級、第二級もしくは第三級アミンとのカルボキシル基の反応により、開示される化合物の最終的な単離および精製の間に、調製することができる。第四級アミン塩、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミンおよびN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどに由来するものを調製することができる。
【0097】
本開示の化合物およびプロセスは、以下の非限定例を参照して十分に理解され、本開示の範囲の例示に過ぎず、限定することを意図しない。
【実施例】
【0098】
別段記述しない限り、温度は、セ氏(℃)で与えられ;合成の操作は、周囲温度、「rt」、または「RT」(典型的には約18~25℃の範囲)で実行し;溶媒の蒸発は、最大60℃の温度の浴で減圧下(典型的には4.5~30mmHg)、ロータリーエバポレーターを使用して実行し;反応の進行は、典型的には、薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して追跡し;全ての融点は、与えられる場合、補正せず;全ての中間体ならびに最終生成物は、十分な1H-NMR、HPLCおよび/または微量分析データを呈し;以下の従来の略語を使用する:L(リットル)、mL(ミリリットル)、mmol(ミリモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、min(分)、およびh(時間)。
【0099】
プロトン磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルを、Varian INOVA 600MHz(
1H)NMR分光計、Varian INOVA 500MHz(
1H)NMR分光計、Varian Mercury 300MHz(
1H)NMR分光計、またはVarian Mercury 200MHz(
1H)NMR分光計のいずれかで記録した。全てのスペクトルは、示した溶媒中で決定した。化学シフトがテトラメチルシランの低磁場ppmで報告されるが、それらは、
1H NMRに関するそれぞれの溶媒ピークの残留プロトンピークを参照する。プロトン間カップリング定数はヘルツ(Hz)で報告される。
(実施例1)
2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)酢酸(9)の調製
【化59】
【0100】
2-(4-(ブロモメチル)フェニル)酢酸(B):A(4.4kg、29.3mol、1当量)のアセトニトリル(22L)中の溶液に、N-ブロモスクシンイミド(NBS)(5740g、32.2mol、1.1当量)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(9.2g、0.02当量)を添加した。得られた混合物を80℃までゆっくり加熱し、15~30分間撹拌した。出発材料1が消費されたことがTLCで示された後、反応混合物を、-5℃までゆっくり冷却し、-5℃で終夜静置した。得られた固体を濾過で収集した。濾過ケーキを、石油エーテル/EtOAc(1:1)(5L)、石油エーテル(5L×2)、飽和NaHSO3(水溶液)(5L)、水(5L)、および石油エーテル(5L)で洗浄して、表題化合物(2.3kg、収率:34.2%)を得た。HPLC純度:96.8%(254nm);1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 12.3 (s, 1H), 7.4 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.2 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.7 (s, 2H), 3.57 (s, 2H)。
【0101】
2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)酢酸(C):NaOH(1.61kg、40.2mol、4当量)の水(90L)中の溶液に、B(2.3kg、10.0mol、1当量)を添加し、得られた混合物をRTで終夜撹拌した。TLC分析は、Bの消費を示した。次いで、反応混合物を、濃H2SO4(1.0L)でおよそpH2に注意深く酸性化した。次いで、固体のNaCl(25kg)を混合物に添加した後、EtOAc(33L×3)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で脱水し、有意な量の固体が沈殿するまで濃縮した。得られた懸濁液をおよそ4~6℃で終夜静置して、さらに結晶化させた。次いで、固体生成物を濾過で収集した。濾過ケーキを、石油エーテル(2L×2)で洗浄して、表題化合物(1.2kg、収率:71.9%)を得た。HPLC純度:97.8%(220nm);1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 12.27 (s, 1H), 7.26-7.12 (m, 4H), 5.14 (s, 1H), 4.47 (s, 2H), 3.53 (s, 2H)。
【0102】
メチル2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテート(D):C(2.5kg、15.06mol、1当量)のMeOH(15L)中の溶液に、濃H2SO4(1.5L)を0℃でゆっくり添加した。得られた混合物をRTで終夜撹拌した。Cが消費されたことがTLCで示された後、反応混合物を水(20L)に注ぎ入れ、EtOAc(20L×3)で抽出した。合わせた有機層を、飽和NaHCO3溶液(水溶液)(20L×3)で、次いでブライン(20L)で洗浄した。有機相をNa2SO4で脱水し、濾過し、濃縮して、表題化合物(2.2kg)を粘性油状物として得た。HPLC純度:90%(220nm);1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.35-7.28 (m, 4H), 4.68 (s, 2H), 3.70 (s, 3H), 3.64 (s, 2H)。
【0103】
4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)ベンジル2,4-ジメチルベンゾエート(7):2,4-ジメチル安息香酸(6)(2.01kg、13.4mol、1.1当量)およびEDC(4.2kg、21.9mol、1.8当量)のジクロロメタン中の溶液を、RTで1時間撹拌した。D(2.2kg、12.2mol、1当量)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(298g、2.44mol、0.2当量)を反応混合物に添加し、RTで終夜撹拌した。Dの消費が完了したことをTLCで判断した後、反応混合物を、1NのHCl溶液(16L×3)で3回、次いでブライン(16L)で1回洗浄した。分離した有機層をNa2SO4で脱水し、濾過し、濃縮した。粗生成物をMeOH中で再結晶化して、表題化合物(2.32kg、収率60.9%)を得た。HPLC純度:98.6%(210nm);1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.05 (m, 2H), 5.32 (s, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.64 (s, 2H), 2.60 (s, 3H), 2.36 (s, 3H)。
【0104】
2-(4-(((2,4-ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)酢酸(9):7(1.2kg、3.85mol、1当量)のTHF(2.4L)中の溶液に、LiOH(176g、4.2mol、1.1当量)の水(3.6L)中の溶液を1時間かけて滴下添加した。得られた混合物を1.5時間撹拌した。TLC分析は、7の消費を示した。反応混合物をMTBE(2.5L×4)で洗浄した。水性層を、およそpH3~4に飽和クエン酸水溶液(550mL)で酸性化し、沈殿を形成した。得られた混和物を、ロータリーエバポレーターで濃縮して、有機溶媒を除去した。次いで、固体生成物を濾過で収集した。粗生成物を、水(3.5L)で30分間スラリー化した。濾過した後、収集した固体を次いでヘプタン(5L)でスラリー化して、表題化合物(2.05kg、収率:89.6%)を生成した。HPLC純度:100%(210nm);LCMS(ESI-):m/z=297(M-1)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.05 (m, 2H), 5.32 (s, 2H), 3.69 (s, 2H), 2.59 (s, 3H), 2.36 (s, 3H)。分析データがクエン酸の存在を示す場合、化合物を水/アセトンから再結晶化することができる。
(実施例2)
DBMPAイミドの調製。
【化60】
【0105】
ステップ1:DBMPA塩化物、4-(2-クロロ-2-オキソエチル)ベンジル2,4-ジメチルベンゾエート(8)の調製。出発材料DBMPA酸、(9)(5.0kg、アッセイで補正、1当量)を、5.5体積のジクロロメタンに溶解し、塩化オキサリル(1.15当量)での処理によりDBMPA塩化物(8)に変換する。反応物を20±5℃で16~24時間撹拌する。追加の塩化オキサリルを添加して(最大0.2当量)、反応の完了を確実にすることができる(HPLCまたはTLCによるIPC分析)。ジクロロメタンをヘプタンと交換し、プロセスの総体積をヘプタンで約11体積ほどに調整する。得られたDBMPA塩化物(8)の懸濁液を0±5℃まで冷却する。DBMPA塩化物(8)を結晶性固体として単離し、追加のヘプタン(2×2.5体積)で洗浄し、窒素下で2時間以上乾燥する。材料を2体積のテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、次の反応に直接使用する。
【0106】
ステップ2:DBMPAイミド、(7)の調製。ステップ2のためのその後の等価物は、単離したDBMPA塩化物に基づく。別個の容器で、キラル補助剤、化合物A、0.95当量を、THF(7.5体積)に溶解し、-80±5℃まで冷却する。次いで、ヘプタン(1.05当量)中のn-ブチルリチウムを、内部温度が-65℃を超えないような速度で添加する。混合物を、15分以上、-70±5℃で撹拌する。DBMPA塩化物溶液を、-70±5℃の内部温度を維持しながら、キラル補助剤のアニオン(0.5体積のTHFですすぐ)に添加する。反応混合物を、反応が完了するまで(HPLCによるIPCがTLCであった)、で15分以上60分以下の期間、-70±5℃で撹拌する。次いで、反応混合物を、2体積の10%のアンモニウム塩化物水溶液でクエンチし、30分以上20時間以下、15~30℃まで加温する。底部の水性層を除去し、有機層を減圧下で蒸留することにより、約2のプロセス体積まで濃縮する。残留するTHFを酢酸エチルと交換する。精製水および14%の塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、有機層を蒸留により濃縮し、酢酸エチルで約6体積まで調整する。ヘプタン(10体積)を添加し、生成物を、シードを用いて酢酸エチル/ヘプタンから結晶化する。懸濁液を5±5℃まで冷却し、生成物を濾過により単離し、ヘプタン(2×5体積)で洗浄し、余熱した真空オーブンで、10時間以上、40±5℃で恒量まで乾燥させて、DBMPAイミド(1%以下の嵩重量の変化)を白色からオフホワイト色の固体として提供する。固体を製造過程の試験(HPLCによるIPC)に対してサンプリングし、製造過程の試験の結果に基づいて、ステップ3に使用するか、または以下に記載される酢酸エチル/ヘプタンから再結晶化することができる。第2の結晶化の後、IPCは存在しない。この中間体はまた、保持時間データを支持することに基づいて貯蔵することができる。
【0107】
代替ステップ2の手順は、n-ブチルリチウムの代わりに水素化ナトリウム(NaH)を利用する。本プロセスでは、キラル補助基をTHFに溶解し、THF中のNaH(60%の鉱物油、アッセイで補正した1.1当量)の懸濁液に20±5℃で添加する。脱プロトン化/アニオン形成は、20±5℃で15~30分間、次いで20~25℃で最大35時間進める。得られた混合物を3±5℃まで冷却した後、THFに溶解したDBMPA塩化物の溶液を30~60分かけて添加する。得られた反応混合物を3±5℃で2~4時間撹拌した後、分析し(HPLCによるIPCまたはTLC)、上述したように後処理に進める。
【0108】
再結晶化:以下の体積は、単離したイミドに基づいているが、酢酸エチル/ヘプタンからの最初の単離に関して上述した類似の濃度を反映する。DBMPAイミドを3.6体積の酢酸エチルに溶解する。次いで、溶液を20±5℃に調整する。ヘプタン(7.3体積)を添加し、生成物を、シードを用いて酢酸エチル/ヘプタンから結晶化する。懸濁液を5±5℃まで冷却し、生成物を濾過により単離し、ヘプタン(2×3.6体積)で洗浄し、余熱した真空オーブンで、10時間以上、40±5℃で恒量まで乾燥させて、DBMPAイミドを白色からオフホワイト色の固体として提供する。
(実施例3)
N-Boc DBMPP酸の調製
【化61】
【0109】
ステップ3:N-Boc DBMPPイミド、粗製の調製。反応器にDBMPAイミド(1当量)を、続いて無水2-メチルTHF(2-Me THF、10体積、100ppm以下の水)を充填する。溶液を-25±5℃まで冷却する。-15℃より低いバッチ温度を維持して、THF(1.2当量)中のLiHMDS 1.0M溶液をDBMPAイミド溶液に添加する。-25±5℃で30~90分間反応混合物を撹拌する。別個に、別の反応器にN-Bocアミノメチルベンゾトリアゾール(NBABT、1.2当量)を充填し、無水2-MeTHF(6体積)を添加する。KFによるNBABT溶液の含水量は100ppm未満(IPC)であるべきである。KFが100ppmより高い場合、無水2-Me THFを使用して溶液を蒸留乾燥する。-15℃より低い温度を維持して、反応器にNBABT溶液を移す。-25±5℃で1.5~3時間反応混合物を撹拌する。HPLCにより反応の進行をモニタリングする。
【0110】
反応が完了した後、混合物を、25±5℃で、10%の塩化アンモニウム水溶液(2体積)、続いて10%のクエン酸水溶液(2体積)でクエンチする。10~20℃まで反応混合物の温度を調整し、1~16時間熟成する。層を15分以上分離させ、有機相を用いてラグ層を除去して層を分ける。10%のNaCl水溶液(2体積)で有機層を洗浄し、二相性混合物を15分以上撹拌する。層を15分以上分離させ、有機相を用いてラグ層を除去して層を分ける。有機層を、10%のK2CO3水溶液(3×10体積)、続いて10%のKHCO3水溶液(1×10体積)および10%のNaCl水溶液(1×10体積)で洗浄する。二相性混合物を15分以上撹拌し、層を15分以上分離させ、有機相を用いてラグ層を除去して層を分ける。およそ10体積に有機相を濃縮する。これは、N-Boc DBMPPイミドの粗製の溶液である。
【0111】
ステップ4:N-Boc DBMPP酸の調製。反応器にステップ3からの粗製の溶液を充填し、水(5体積)を添加する。0±5℃まで混合物を冷却する。一度冷却し、過酸化水素(4当量)を一度に充填する。反応器に水酸化リチウム一水和物溶液(1.3体積の水中の1.2当量)を一度に充填し、反応物を6時間以上0±5℃で撹拌する。反応の進行をモニタリングする(HPLCによるIPC、TLCであった)。
【0112】
反応物をクエン酸で緩衝化した10%の亜硫酸ナトリウム溶液(20体積)でクエンチし、pH6~7を標的化する。25±10℃まで温度を調整し、16時間以上撹拌する。撹拌を停止し、層を15分以上分離させ、有機相を用いてラグ層を除去して層を分ける。有機相を10%の塩化アンモニウム水溶液(3×13体積)で洗浄する。40℃以下の容器ジャケット温度で真空下、およそ5体積まで有機相を濃縮する。アセトニトリル(2×8体積)を充填し、およそ5体積まで濃縮する。追加のアセトニトリルを充填して、全体でおよそ10体積にする。混合物を20±5℃まで冷却し、30分以上熟成する。清澄フィルターに溶液を通し、透明容器に収集する。
【0113】
ピペリジン(0.41当量)を溶液に10分以上の期間をかけて20±5℃で充填する。アセトニトリル(0.5×体積)中の0.20wt%のキラル的に純粋なシードを、溶液に加え、20±5℃で溶液を撹拌し、2~4時間熟成する。残りのピペリジン(0.59当量)を20±5℃で4~6時間充填し、混合物を20±5℃で12~16時間熟成する。内容物を濾過し、ケーキをアセトニトリル(2体積)で洗浄し、10分以上混合し、濾過する。ケーキを50℃以下の温度で6時間乾燥させて、ピペリジン塩を得る(IPC - キラルおよびアキラル;再結晶化はIPCに基づいて必要に応じて実行する)。再結晶化の場合、追加のIPC試験は実施しない。
【0114】
ステップ4:塩の分解および遊離酸の結晶化。本ステップでの算出に関し、本明細書の算出比率は、化合物2のPip*塩に基づいている。ピペリジン塩を酢酸エチル(7体積)でスラリー化し、容器に充填する。混合物を10%のクエン酸水溶液(2×10体積)で洗浄する。層を15分以上分離させ、層を分けて下層の水性層を廃棄する。有機相を水(2×10体積)で洗浄する。層を15分以上分離させ、層を分けて下層の水性層を廃棄する。0±5℃まで有機相を冷却し、15分かけてヘプタン(7体積)を添加する。9:1v/vのヘプタン:酢酸エチル(0.5×体積)にスラリー化した1wt%のN-Boc DBMPP酸のシードを、溶液に加える。次いで、追加のヘプタン(14体積)を6~8時間かけて添加する。ヘプタンの添加が完了した後、溶液を1時間以下熟成する。生成物を濾過し、ケーキを9:1v/vのヘプタン:酢酸エチル(4体積)で洗浄する。50±5℃、真空下で、乾燥するまで生成物を乾燥させる(IPCキラルおよびアキラル;再結晶化はIPCに基づいて必要に応じて実行する)。再結晶化の場合、追加のIPC試験は実施しない。収率:累積値60~80%(ステップ4 65~80%)
(実施例4)
ネタルスジル合成 - N-Bocネタルスジル(化合物7)の調製。
【化62】
【0115】
ステップ5:N-Bocネタルスジル化合物(7)の調製。N-Boc DBMPP酸(およそ2.0kg、1当量)および6-AIQ(1.3当量)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、13体積)に溶解する。2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン、1.3当量)を添加し、反応混合物を0±5℃まで冷却する。3体積のDMF中の2,2,2-トリクロロ-1,1-ジメチルエチルクロロホルメート(1.3当量)の溶液を、可能な限り迅速に反応混合物に添加した後、1体積のDMFですすぐ。反応物を0±5℃で6~8時間撹拌する。
【0116】
次いで、反応物を20体積の10%のKHCO3水溶液でクエンチする。酢酸エチル(30体積)を反応器に充填し、温度を10分以上20±5℃まで調整する。
【0117】
水性層を除去し、有機層を10体積の10%のクエン酸水溶液で洗浄する。水性層を再び除去し、有機層を10体積の10%のKHCO3水溶液で洗浄する。二相性混合物の温度を、10分以上、40±5℃に調整する。水性層を除去し、残留する有機層を、10時間以上20時間以下の期間、40±5℃で撹拌する。次いで、反応混合物を20±5℃まで冷却し、残留するいかなる水性層も除去する。次いで、混合物を、真空蒸留を通じて約4体積まで濃縮し、ロータリーエバポレーションにより油状物までさらに減少させる。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーでの精製のために2体積のジクロロメタンに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーは、例えば、シリカゲルと出発材料との比(シリカゲル:出発材料)が12.5以上:1でHP Sphereシリカをパッキングした40kgのカラムを使用した、Biotage 400Lシステムである。
【0118】
不純物を40:60の酢酸エチル:ヘプタンで溶出し、次いで生成物を70:30の酢酸エチル:ヘプタンで溶出する。TLC)であったHPLCで決定した化合物7を含有する主要画分を合わせ、減圧下、約10体積まで濃縮し、次いで溶媒を約33体積までアセトニトリルで交換する。内部温度を70±5℃に調整し、固体を溶解する。次いで、溶液を55±2℃まで冷却し、N-Bocネタルスジル(1~5wt%)の試料をシードし、20±2℃までさらに冷却する。20±2℃に達してから1時間以下の後に、生成物の濾過を開始する。ケーキをアセトニトリル(2×2体積)で洗浄し、次いで50±5℃で恒量まで真空で乾燥させて、化合物7を白色から淡黄色の固体として提供する。生成物を製造過程でのアキラルおよびキラルの純度のためにサンプリングする。(IPCキラルおよびアキラル;必要に応じてIPCに基づく再結晶化)。
【0119】
キラル純度の基準を満たさない場合、(単離した化合物7について)生成物を30体積のアセトニトリルから再結晶化する。
【0120】
アキラルクロマトグラフィー純度の基準を満たさない場合(キラル純度と無関係)、生成物を以下に記載するようにジクロロメタン/ヘプタンから再結晶化する。
【0121】
生成物を、20±5℃で10体積のジクロロメタンに溶解する。ヘプタン(4体積)を、20±5℃の温度を維持しながら、15分以上の期間をかけて添加する。溶液に1~5wt%の化合物7をシードし、1時間以下、20±5℃で撹拌する。次いで、ヘプタン(11体積)を70~120分かけて添加する。シードを添加した後、得られた混合物を、4時間以下、20±5℃で撹拌する。次いで、結晶化した生成物を濾過で単離する。ケーキをヘプタン(2×2体積)で洗浄し、次いで50±5℃で恒量まで真空で乾燥させて、N-Bocネタルスジルを白色から淡黄色の固体として提供する。この中間体を、ステップ6に直接用いるか、または保持時間データを支持することに基づいて貯蔵することができる。収率:40~80% 250Lスケールでの平均収率:68%。
(実施例5)
ネタルスジル合成 - ジメシル酸塩としてのネタルスジルの調製。
【化63】
【0122】
ステップ6:ネタルスジルの調製 - 反応および最初の単離。化合物7(およそ1.4kg、1当量、アッセイで補正)を、15体積のジクロロメタンに溶解し、清澄フィルターに通す。フィルターを2×2体積のジクロロメタンで洗浄し、合わせた濾液を20±5℃の温度に調整する。メタンスルホン酸(2.5当量)を2.5体積のジクロロメタンに溶解し、反応温度を20±5℃で維持するような速度で、フィルターを通して反応器に添加する。2.5体積のラインリンスを同様に添加する。次いで、反応混合物を48時間以上、20±5℃で撹拌する。温度を40±5℃に調整し、混合物を反応が完了するまで2~4時間この温度で撹拌する(IPC、HPLCはTLCであった)。反応混合物を、真空蒸留を介して約5体積まで濃縮する。残留するジクロロメタンを、連続した蒸留を介してイソプロパノールと交換し25体積とする。反応混合物を70±5℃まで加温する。溶液を約-0.3℃/分の速度で50±2℃まで冷却する。ジメシル酸ネタルスジルのシード(0.5~5.5wt%)を、30体積のイソプロパノールに懸濁する。次いで、懸濁したシードを反応器に添加し、混合物を1時間以上、50±2℃で撹拌する。混合物を、約-0.3℃/分の速度で20±5℃まで冷却し、次いで1時間以上、この温度で撹拌する。得られたスラリーを50±5℃まで加温し、この温度で90分以上撹拌する。混合物を、約-0.3℃/分の速度で20±5℃まで再冷却し、1~24時間撹拌する。生成物を濾過で収集し、結晶性固体をイソプロパノール(3体積)で洗浄する。
【0123】
濾過ケーキを通る窒素流により、フィルター上で固体を3~16時間乾燥させる。固体を、30±5℃設定の余熱したオーブンに16~24時間移す。オーブン温度を69±10℃までゆっくり上昇させ、24~48時間この温度で乾燥し続ける。ナイフミルを使用して固体を解砕し、純度(HPLCによるIPCアキラル)のためにサンプリングし、その後60~132時間(または、HPLC純度についての製造過程の試験が失敗した場合、48時間以上)69±10℃のオーブンに戻す。次いで、材料を残留イソプロパノールおよび含水量について試験する(GCおよびKFによるIPC)。
【0124】
本プロセスでは、撹拌フィルタードライヤーを、ナイフミルおよびトレードライヤーの代わりに使用することができる。撹拌フィルタードライヤーは、典型的に、全体で最大72時間の時間を必要とする。
【0125】
材料を、必要に応じて、純度またはイソプロパノールの含量についての製造過程の試験に基づいて、イソプロパノールで再スラリー化することができる。
【0126】
再スラリー化:ネタルスジルを、25体積の濾過したイソプロパノールに懸濁し、温度を50±5℃に調整する。混合物を、この温度で約2時間撹拌し、次いで約-0.15℃/分の速度で20±5℃まで冷却する。冷却した懸濁液を20±5℃で8~24時間撹拌する。生成物を濾過により収集し、濾過したイソプロパノール(3体積)で洗浄する。
【0127】
濾過ケーキを通る乾燥窒素流により、フィルター上で固体を3~16時間乾燥させる。固体を、30±5℃設定の余熱したオーブンに16~24時間移す。オーブン温度を69±10℃までゆっくり上昇させ、24~48時間この温度で乾燥し続ける。ナイフミルを使用して固体を解砕し、純度(HPLCによる)のためにサンプリングし、その後72±12時間、69±10℃のオーブンに戻す。次いで、淡黄色から白色の粉末を、残留イソプロパノールレベルが製造過程の試験により6000ppm以下になるまで乾燥させる。撹拌フィルタードライヤーを、ナイフミル、およびこの生成物のトレードライヤー処理の代わりに使用することができる。
【0128】
最終原薬は吸湿性があり、25℃以下の温度で、相対湿度40%以下で包装する。収率:80~99%。250Lスケールでの平均収率:93%。
【0129】
結論として、緑内障薬ネタルスジルの商業的規模での供給の継続的な必要性を満たすために、改善した化学的収率、および重要なことに規模拡大を提供するプロセスが開発された。
【0130】
以上の詳細な説明および付随する実施例は、単に例証的なものであり、本開示の範囲に対する限定であると解釈されるべきではないことが理解される。
【0131】
開示される実施態様に対する様々な変更および改変は、当業者に明らかであろう。化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤、または本開示の使用方法に関するものを含むが、これらに限定されない、このような変更および改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得る。
【国際調査報告】