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特表2025-502213単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する方法
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  • 特表-単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する方法 図1a
  • 特表-単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する方法 図1b
  • 特表-単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する方法 図2
  • 特表-単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-24
(54)【発明の名称】単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20250117BHJP
   G06V 10/25 20220101ALI20250117BHJP
   G06V 20/69 20220101ALI20250117BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20250117BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G02B21/36
G06V10/25
G06V20/69
G06T7/70 A
G01N21/64 F
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541818
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2023050920
(87)【国際公開番号】W WO2023139036
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22152746.8
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524108721
【氏名又は名称】アビーライト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブール,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ケルギユ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ラッツァリーノ,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】カオルシ,バレンティーナ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
5L096
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043EA01
2G043FA02
2G043LA03
2G043NA01
2H052AA09
2H052AC15
2H052AC34
2H052AF14
2H052AF25
5L096AA06
5L096BA18
5L096CA18
5L096DA01
5L096FA04
5L096FA05
5L096FA12
5L096FA62
5L096FA69
5L096GA06
(57)【要約】
本発明は、単分子局在顕微鏡法を使って取得した画像を和損する方法に関する。この方法は、単分子局在顕微鏡法を使って複数の蛍光単分子を含むサンプルの画像を取得するステップと、画像中の複数のスポットを検出するステップであって、各スポットは複数の蛍光単分子のうちの1つの蛍光単分子を表すステップと、検出された複数のスポットを含む、画像の1つ以上の関心対象領域を特定するステップと、1つ以上の局所的関心対象領域の各々を定義するメタデータを特定するステップと、1つ以上の画像ファイルを作成するステップであって、1つ以上の画像ファイルは、1つ以上の局所的関心対象領域の各々の画像データ及び1つ以上の関心対象領域の各々を定義する特定されたメタデータを含み、画像データは画像の一部であるステップと、1つ以上の画像データを保存するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単分子局在顕微鏡法を使って取得した画像を保存する方法において、
a)単分子局在顕微鏡法を使って複数の蛍光単分子を含むサンプルの画像を取得するステップと、
b)前記画像中の複数のスポットを検出するステップであって、各スポットは前記複数の蛍光単分子のうちの1つの蛍光単分子を表すステップと、
c)前記検出された複数のスポットを含む、前記画像の1つ以上の関心対象領域を特定するステップと、
d)前記1つ以上の局所的関心対象領域の各々を定義するメタデータを特定するステップと、
e)1つ以上の画像ファイルを作成するステップであって、前記1つ以上の画像ファイルは、前記1つ以上の局所的関心対象領域の各々の画像データ及び前記1つ以上の関心対象領域の各々を定義する前記特定されたメタデータを含み、前記画像データは前記画像の一部であるステップと、
f)前記1つ以上の画像データを保存するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は複数回繰り返され、前記方法が繰り返されるたびに、前記方法はステップa)~e)を繰り返すことと、
g)別の1つ以上の画像ファイルを作成するステップであって、前記別の1つ以上の画像ファイルの各々は、別の1つ以上の関心対象領域の各々の別の画像データ及び前記別の1つ以上の関心対象領域を定義する別のメタデータを含むステップと、
h)前記1つ以上の画像ファイルの各々の前記画像データ及び前記別の1つ以上の画像ファイルの前記別の画像データを含む最終ファイルを作成するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は少なくとも3回実行され、ステップa)において第一の画像、第二の画像、及び第三の画像が取得され、前記第一の画像、前記第二の画像、及び前記第三の画像について前記ステップb)~h)がそれぞれ実行され、
i)前記第二の画像の背景を、前記第一の画像、前記第二の画像、及び前記第三の画像の各々について特定された前記別の1つ以上の関心対象領域に基づいて特定するステップと、
j)前記第二の画像の前記背景を差し引くステップと、
i)前記背景を含まない、前記第二の画像の画像データを含む背景なしの画像ファイルを作成するステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の局所的領域の各々は、多角形の形状及び/又は楕円形の形状である形状を有し、前記メタデータは、前記画像内の前記1つ以上の局所的領域の前記形状及び位置を定義する、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
単分子局在顕微鏡法を使って取得した画像を保存する装置において、
複数の蛍光単分子を含むサンプルの画像を取得するように構成された画像取得ユニットと、
前記画像中の複数のスポットを検出するように構成された検出ユニットであって、各スポットは前記複数の蛍光単分子のうちの1つの蛍光単分子を表す検出ユニットと、
前記検出された複数のスポットを含む1つ以上の局所的関心対象領域を特定するように構成された特定ユニットと、
前記1つ以上の関心対象領域の各々を定義するメタデータを特定するように構成された計算ユニットと、
1つ以上の画像ファイルを作成し、前記1つ以上の画像ファイルを保存すように構成されたファイルユニットと、
を含み、
前記1つ以上の画像ファイルは、前記1つ以上の局所的関心対象領域の各々の画像データ及び、前記1つ以上の局所的関心対象領域の各々を定義する、前記特定されたメタデータを含み、前記画像データは前記画像の一部である装置。
【請求項6】
前記画像取得ユニットは、前記サンプルの別の画像を取得するように構成され、前記取得された別の画像の各々について、前記ファイルユニットは、
別の1つ以上の画像ファイルを作成するように構成され、前記別の1つ以上の画像ファイルの各々は別の1つ以上の関心対象領域の各々の別の画像データと、前記別の1つ以上の局所的関心対象領域の各々を定義する別のメタデータを含み、
前記1つ以上の画像ファイルの各々の前記画像データ及び前記別の1つ以上の画像ファイルの前記別の画像データを含む最終ファイルを作成する
ように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記画像取得ユニットは第一の画像、第二の画像、及び第三の画像を取得するように構成され、
前記特定ユニットは、前記第二の画像の背景を、前記第一の画像、前記第二の画像、及び前記第三の画像の各々について特定された前記別の1つ以上の関心対象領域に基づいて特定するように構成され、
前記特定ユニットは、前記第二の画像の前記背景を差し引くように構成され、
前記ファイルユニットは、前記背景を含まない、前記第二の画像の画像データを含む背景なしの画像ファイルを作成するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記1つ以上の局所的領域の各々は、多角形の形状及び/又は楕円形の形状である形状を有し、前記メタデータは、前記画像内の前記1つ以上の局所的領域の前記形状及び位置を定義する、請求項5~7の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単分子局在顕微鏡法(SMLM)は、蛍光単分子の発光を実現するための遅延させられた分子の確率的発光に基づく。蛍光分子を含むサンプルは、平均して、毎回、観察用顕微鏡の焦点ボリューム内で1つだけの分子が活性化する(すなわち、発光する)ように調整された照度で照明される。特に、各蛍光分子はSMLM蛍光体で標識され、蛍光分子は、照明されるとオン及びオフ発光状態間で可逆的に遷移(すなわち明滅)する。SMLMにより取得された画像は、点像分布関数(PSF)と呼ばれる画像スポットを示し、各スポットは蛍光分子の像を表す。PSFから、あるアルゴリズムを使ってスポットの中心を特定することにより、分子の位置を測定することが可能となる。この位置はある精度で特定でき、これは顕微鏡の回折限界分解能よりはるかに高い可能性がある。この確率的プロセスが数万の画像について繰り返されて、高い空間分解能(最大10nm)での最終的な超解像度画像が得られる。
【0003】
数万の画像は、数十から数百ギガバイトの大きさの最終的な超解像画像を再構成するために必要である。したがって、SMLMデータセットを保存するために大きい記憶領域(大きいストレージサーバ等)が必要であり、例えばクラウドストレージサービスを使用するのが難しくなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの問題は、特許請求されている装置及び方法により解決又は緩和される。
【0005】
数万の取得画像のうちの各々のピクセルの約10%が超解像画像を再構成するために使用される。特に、ほとんどの生体サンプルは蛍光分子の密度が不均質であるため、サンプルの領域によっては蛍光分子がまったくないかもしれない。したがって、本発明では、関心対象領域は蛍光分子を含む領域のみを含む。さらに、蛍光単分子は照明を受けて明滅するため、取得画像の領域は、画像取得時に蛍光分子の幾つかが「オフ」であることからPSFを示さないかもしれない。
【0006】
各画像、したがって各SMLM実験のための大規模なデータセットを生じさせることになる各画像のピクセル全てを保存するのではなく、本発明は、SMLM実験中に取得された各画像の関心対象領域の特定に関し、関心対象領域はPSFを含む。特定された関心対象領域から、関心対象領域に対応するピクセルだけを保存し、したがって蛍光分子を示さない領域を排除することが可能となる。
【0007】
ここで、本発明の実施形態を、下記のような添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1a】ある例による単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する装置の略図である。
図1b】ある例による単分子局在顕微鏡法を用いて取得した画像を保存する装置の略図である。
図2】ある例による装置により取得した画像の例を表す。
図3】ある例による単分子局在顕微鏡を用いて取得した画像を保存する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1a及び図1bは、2つの例による単分子局所顕微鏡法(SMLM)を用いて取得したサンプル102の画像を保存する装置100の概略図である。
【0010】
サンプル102は例えば、蛍光標識された分子を含む細胞(ニューロン等)又は組織サンプルで製作され得る。例えば、蛍光分子は、光スイッチング、光活性化、光変換、自発的明滅、又は時間的明滅蛍光体等のSMLM蛍光体を使って標識済みであってよい。そのようにして、標識されると蛍光分子は照明を受けてオン及びオフ発光状態間で可逆的に遷移する(すなわち、明滅する)。一般に、蛍光分子を含むサンプルは、その蛍光分子の密度が不均質である。したがって、サンプル102のある領域はその蛍光分子の密度が高いかもしれず、他の領域はその蛍光分子の密度が低いかもしれない。追加的又は代替的に、他の領域には蛍光分子がまったくないかもしれない。
【0011】
図1aに示されるように、装置100は、画像取得ユニット104、検出ユニット108、特定ユニット110、計算ユニット114、及びファイルユニット118を含む。検出ユニット108、特定ユニット110、計算ユニット114、及びファイルユニット118の各々は、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組合せを用いて実装され得る。例えば、ハードウェアデバイスは処理回路を使って実装され得て、これは例えばプロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、コントローラ、演算論理回路(ALU)、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、システム-オン-チップ(SoC)、ブログラマブルロジックユニット、マイクロプロセッサ、又は既定の方法で命令に応答し、それを実行できる他のあらゆるデバイスであり、これらに限定されない。ソフトウェアとしては、ハードウェアデバイスを所望の通りに動作させるように個別に又は集合的に命令する、又は構成するためのコンピュータプログラム、プログラムコード、命令、又はそれらの何れかの組合せが含まれ得る。コンピュータプログラム及び/又はプログラムコードとしては、1つ以上のハードウェアデバイス、例えば前述のハードウェアデバイスのうちの1つ以上により実装可能なプログラム若しくはコンピュータ可読命令、ソフトウェアコンポーネント、ソフトウェアモジュール、データファイル、データ構造、及び/又はその他が含まれ得る。ハードウェアデバイスがコンピュータ処理デバイス(例えば、CPU、コントローラ、ALU、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ等)である場合、このコンピュータ処理デバイスは、プログラムコードにしたがって演算、論理、及び入力/出力動作を実行することによってプログラムコードを実行するように構成され得る。各ユニットはまた、1つ以上の記憶装置を含み得る。1つ以上の記憶デバイスは、有形又は非一時的コンピュータ可読記憶媒体、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、永久大量記憶デバイス(ディスクドライブ等)、ソリッドステート(例えば、NANDフラッシュ)デバイス、及び/又は、データを保存し、記録できる他のあらゆる同様のデータ記憶機構であり得る。1つ以上の記憶デバイスは、1つ以上のオペレーティングシステムのため、及び/又は本明細書に記載の例示的実施形態を実行するためのコンピュータプログラム、プログラムコード、命令、又はそれらの何れかの組合せを記憶するように構成され得る。コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、又はそれらの何れかの組合せはまた、別のコンピュータ可読記憶媒体から1つ以上の記憶装置及び/又は1つ以上のコンピュータ処理デバイスにドライブ機構を使ってロードされてもよい。このような別のコンピュータ可読記憶媒体としては、ユニバーサル シリアル バス(USB)フラッシュドライブ、メモリスティック、ブルーレイ/DVD/CD-ROMドライブ、メモリカード、及び/又は他の同様のコンピュータ可読記憶媒体が含まれ得る。
【0012】
代替的に、検出ユニット108、特定ユニット110、計算ユニット114、及びファイルユニット118の2つ以上のユニットは、同じハードウェア及び/又はソフトウェアにより実装され得る。例えば、検出ユニット108、特定ユニット110、計算ユニット114、及びファイルユニット118の全部が、後述の機能を実行するための命令を各ユニットに提供できる単独のコンピュータ記憶媒体により実装され得る。
【0013】
画像取得ユニット104は、サンプル102が照明を受けている間にサンプル102の画像106を取得するように構成される。取得ユニット104は例えば、sCMOSカメラ等のカメラであり得る。サンプル102を照明するために、サンプル102に含まれる分子の標識に使用された蛍光体の励起波長に対応する第一の波長で発光するレーザを含む走査ユニット(図示せず)。例えば、レーザは638nmで発光するダイオード励起固体レーザであり得る。走査ユニットは、例えばMau et al.において開示されているAdaptable Scanning for Tunable Excitation Regions(ASTER)システムであり得る。
【0014】
照明を受けている間に取得される画像106は、サンプル102の分子の標識に使用された蛍光体の発光波長に対応する第二の波長で画像取得ユニット104により取得される。第一の波長及び第二の波長は同じであり得る。図1a及び図1bは、スポット、又は点像分布関数(PSF)を示す画像106の例を示しており、各PSFは蛍光単分子を表す。画像106のPSFの密度は、この例においては、サンプル102が蛍光分子の不均質な密度を示すため、均一ではない。特に、サンプル102、したがって画像106は、高密度領域(すなわち、高いスポット密度を示す領域)、低密度領域(すなわち、低いスポット密度を示す領域)、中密度領域(すなわち、中間のスポット密度を示す領域)、及び蛍光分子を持たない領域(すなわち、暗い領域)を示す。
【0015】
検出ユニット108は、画像取得ユニット104から画像106を受け取り、画像106内の複数のスポットを検出するように構成され、各スポットはサンプル102に含まれる蛍光単分子のうちの1つの蛍光単分子を表す。検出ユニット108は、画像106のピクセルを解析し、ピクセル間のコントラスト、すなわちピクセルの強度の変化を検出するアルゴリズムを使って実装され得る。特に、アルゴリズムは高コントラストの輪郭を検出し、これは各スポットの縁部を表す。検出ユニット108はすると、画像106上のスポットのマッピングを定義でき、これは検出されたコントラストに基づいて各スポットの位置を示す。ある例において、Bourg et al.に記載されている方法が画像106中の複数のスポットを検出するために使用される。特に、各スポットはファーフィールドで発光するダイポーラエミッタとしてモデル化できる。追加的に、各スポットは非伝播性ニアフィールド成分を有し、これは周辺の屈折率nに依存する。屈折率がn>n(mは媒質、gはガラス界面を示す)のインタフェース(ガラススライド等)が存在するとき、透過光はスネル・デカルトの屈折の法則にしたがう。屈折光は、臨界角θ=arcsin(n/n)により限定される円錐内で発せられ、これはUAF(under-critical angle fluorescence)と呼ばれる。しかしながら、蛍光分子とインタフェースとの間の距離dが蛍光波長λemより短い場合は、SAF(supercritical angle fluorescence)発光も観察される。スポット周囲のインタフェースにおける非伝播性ニアフィールド成分は、屈折率n>nのインタフェース内部で臨界角θを超えると伝播する。SAF発光は、カバーガラス付近にある細胞媒質中の蛍光体について検出可能である。UAF光子NUAFの数は、距離dに関してはほとんど一定のままであるが、SAF光子NSAFの数は指数関数的に減少する。したがって、各スポットのNSAFとNUAFを同時に測定し、SAF比、ρSAF=NSAF/NUAFを計算することにより、蛍光体の絶対的な軸方向の位置を特定することができる。
【0016】
特定ユニット110は、画像106中のスポットを含む局所的関心対象領域120a、120bを画定するように構成される。特に、特定ユニット110は検出ユニット108からスポットのマッピングを受け取る。スポットの位置に基づいて、特定ユニット110は、PSFを含む画像106の領域の全てを含み、他方でPSFを含まない領域は排除するように最適化された局所的関心対象領域120a、120bを画定する。例えば、図1aに示されるように、局所的関心対象領域120aは楕円形であり、これらは局所的関心対象領域120aの表面全体がなるべく小さくなるように画定される。代替的に、図1bに示されるように、局所的関心対象領域120bは多角形であってもよい。例えば、多角形は、各多角形ができるだけ多くのPSFと、PSFを含まない領域のできるだけ小さい表面を含むように画定され得る。他の例において、局所的関心対象領域120bは少なくとも1つの楕円形と1つの多角形を含み得る。他の例では、局所的関心対象領域120bは1つのPSFのみを含み得る。関心対象領域は画像106の全てをカバーするわけではないことに留意されたい。特に、関心対象領域120a、120bの全てによりカバーされる表面(すなわち、ピクセルの数)は、画像106全体の表面(すなわち、ピクセルの数)より小さい。
【0017】
計算ユニット114は、関心対象領域120a、120bの各々を定義するメタデータを特定するように構成される。例えば、メタデータは、各局所的関心対象領域120a、120bの形状(例えば、楕円形又は多角形)及び/又は画像106中の局所的関心対象領域120a、120bの位置を定義する座標を定義し得る。例えば、計算ユニット114は局所的関心対象領域120a、120bがその上に画定される画像106の縁部のうちの2つに対応する軸x、yを定義し得る。図1aの例を考えると、計算ユニット114は各楕円形120aの中心、頂点、及びco頂点に対応するx-y平面内の座標を定義し得る。代替的に、図1bの例を考えると、計算ユニット114は各多角形120bの各頂点に対応するx-y平面内の座標を定義し得る。
【0018】
ファイルユニット118は、局所的関心対象領域120a、120bの画像データ及び特定されたメタデータを含む画像ファイル122を作成する。特に、画像データは画像のうち関心対象領域120a、120bを含む部分である。換言すれば、各画像ファイル122は初期画像106の一部分を含み、各部分は関心対象領域10a、120bを含む。例えば、図1aにおいてわかるように、ファイルユニット118は19の画像ファイル122を作成し、各画像ファイル122は特定ユニット110により画定された19の楕円形120aの各々の画像データを含む。代替的に、図1bにおいてわかるように、ファイルユニット118は4つの画像ファイル122を作成し、各画像ファイル122は特定ユニット110により画定された4つの多角形の各々の画像データを含む。すべての画像データの表面の合計は、画像106の表面より小さい。一般に、単分子局在顕微鏡法では、画像106のピクセルの約10%が関心対象領域を表す。
【0019】
さらに、ファイルユニット118は画像ファイル122を保存する。例えば、ファイルユニット118は、局所的関心対象領域120a、120bの画像データとそれらの対応するメタデータを含む画像ファイル122をファイルに保存し、これは圧縮されてもよい。したがって、画像ファイルは画像の部分を含む(画像全体を含むのではない)ため、各画像106について、初期画像106より小さい画像ファイルを保存することができる。その結果、画像ファイルを保存するためには、初期画像106を保存するのに必要な記憶領域と比較して、より小さい記憶領域を使用できる。ファイルは、ローカル記憶領域及び/又はクラウドストレージサービスに保存され得る。
【0020】
一般に、SMLMにおいて、高い空間分解能で最終的な超解像画像を取得するために数万の画像が使用される。したがって、上述の装置100により実行されるプロセスは複数回繰り返され得る。例えば、このプロセスは何千回、又は何万回も実行され得る。装置100により実行されるプロセスが繰り返されるたびに、画像取得ユニット104により別の画像が取得され、検出ユニット108によってこの別の画像の中の別のPSFが検出され、計算ユニット114により別の局所的関心対象領域を定義する別のメタデータが特定され、ファイルユニット118により別の局所的関心対象領域の画像データ及びメタデータを含む別の画像ファイルが作成され、保存される。ファイルユニット118は最終ファイルを作成し得て、これは全ての画像ファイル(すなわち、画像ファイル122及び別の画像ファイル)を含む。最終ファイルは、圧縮され、並びに/又はローカル記憶領域内及び/若しくはクラウドストレージサービス内に保存され得る。最終ファイルはデータベース内に保存され得て、メタデータは、データベース内の特定の関心対象領域内120a、120bを検索するために使用され得る。
【0021】
追加的に、前述の装置100により実行されるプロセスは少なくとも3回繰り返され得て、画像取得ユニット104により第一の画像206a、第二の画像206b、及び第三の画像206bが取得され得て、特定ユニット110は第二の画像206bの背景を特定し得る。しかしながら、図2に示されるように、第一の画像206a、第二の画像206b、及び第三の画像206bは同じPSFを表さず、それは、これらが異なる時点で取得されるからである。特に、サンプル102内の蛍光分子は明滅するため、これらは同時に発光するのではなく、異なる時点で取得された画像は異なる発光蛍光分子を示すことになる。したがって、特定ユニット110は、第二の画像206bをそれ以前に取得された画像(すなわち、第一の画像206a)及びその後に取得された画像(すなわち、第三の画像206c)と比較することにより、第二の画像206bの背景を特定し得る。特に、背景は、画像のうちPSFを含まない領域に対応する。しかしながら、分子は同時に発光しないため、暗い領域、すなわち蛍光分子を示さない領域は他の時点ではPSFを含み得る。したがって、背景を差し引くには幾つかの画像を考慮しなければならない。例えば、特定ユニット110は、第一の画像206a、第二の画像206b、及び第三の画像206bの各々における関心対象領域120a、120bを組み合わせて、第二の画像206bの残りの領域に対応する背景を特定し得る。さらに、ファイルユニット118は、背景が差し引かれた、第二の画像206bの画像データを含み、背景を含まない画像ファイルを作成し得る。ファイルユニット118は画像ファイルを保存し得る。前述のように、SMLMでは高い空間分解能で最終的な超解像画像を取得するために数万の画像が使用される。したがって、SMLM実験で取得された画像の背景を取り除くために数万の画像が使用され得る。ある例では、Hoogendoom et al.に記載されているように、SMLM実験で取得される画像の背景の除去に中央値時空間フィルタリングが使用され得る。
【0022】
図3は、単分子局在顕微鏡法を用いて取得された画像106を保存する方法300を示すフロー図である。例えば、方法300は、図1a及び図1bに関して前述した装置100により実行され得る。
【0023】
ブロック302で、複数の蛍光単分子を含むサンプル102の画像106が単分子局在顕微鏡法を使って取得される。ある例において、画像106は、Adaptable Scanning for Tunable Excitation Regions(ASTER)システムの一部であるカメラを用いて取得される。
【0024】
ブロック304で、複数のスポットが画像106中で検出され、各スポットは複数の蛍光単分子のうちの1つの蛍光単分子を表す。ある例において、スポットは画像106におけるコントラストを解析するアルゴリズムを用いて検出される。
【0025】
ブロック306で、検出された複数のスポットを含む1つ以上の関心対象領域120a、120bが特定される。例えば、関心対象領域120a、120bは、多角形及び/又は楕円形である形状を有し得る。ある例において、関心対象領域120a、120bは1つのスポットのみを含み得る。
【0026】
ブロック308で、1つ以上の局所的関心対象領域の各々を定義するメタデータが特定される。例えば、メタデータは、楕円形の形状を有する局所的関心対象領域120aに関する楕円形の中心及び頂点及びco頂点の座標を含み得て、メタデータは、多角形の形状を有する局所的関心対象領域120bに関する多角形の頂点の座標を含む。
【0027】
ブロック310で、1つ以上の画像ファイル122が作成され、1つ以上の画像ファイル122の各々は、1つ以上の局所的関心対象領域120a、120の各々の画像データと、1つ以上の局所的関心対象領域120a、120の各々を定義する、特定されたメタデータを含む。画像データは画像106の一部である。
【0028】
ブロック312で、1つ以上の画像ファイルが保存される。例えば、画像ファイル122はクラウドストレージサービスに保存され得る。
【0029】
SMLM実験において最終的な超解像画像を再構成するために数万の画像が必要であるため、方法300は複数回繰り返され得る。方法が繰り返されるたびに、サンプル102の別の画像106が取得され、別の画像106中の別の複数のスポットが検出され、別の検出された複数のスポットを含む1つ以上の局所的関心対象領域120a、120bが検出され、別の1つ以上の局所的関心対象領域120aの各々を定義する別のメタデータが特定され、120b及びその他の1つ以上の画像ファイル122が作成される。別の1つ以上の画像ファイルの各々は別の1つ以上の局所的関心対象領域の各々別の画像データ及び別の1つ以上の局所的関心対象領域の各々を定義する別のメタデータを含む。1つ以上の画像ファイルの各々の画像データ及び別の1つ以上の画像ファイルの別の画像データを含む最終ファイルが、例えばクラウドストレージサービスに保存される。
【0030】
ある例において、方法300は3回実行され得る。この例では、第一の画像206a、第二の画像206b、及び第三の画像206cがブロック302で取得され得て、前述のステップが第一の画像206a、第二の画像206b、及び第三の画像206cについて繰り返される。第一の画像206a、第二の画像206b、及び第三の画像206cの各々は背景を示し、これは画像のうち局所的関心対象領域を含まない領域を表す。第二の画像の背景は、第一の画像206a、第二の画像206b、及び第三の画像206cの各々について特定された関心対象領域120a、120bに基づいて特定され得る。第二の画像206bの背景は差し引かれ得て、背景を含まない、第二の画像206bの画像データを含む背景なしの画像が作成される。
【0031】
本発明は好ましい実施形態を利用して詳しく図解、説明されているが、本発明は開示された例に限定されない。当業者であれば、特許請求された本発明の保護範囲から逸脱せずに他の変形型も推測できる。例えば、局所的関心対象領域の例は、楕円形及び多角形で例示されているが、他の形状も使用され得る。他の例において、局所的関心対象領域の形状は円形であり、メタデータは円の半径を定義し得る。さらに、Bourg et al.に記載されている方法を使ってPSFを検出したが、スポットの検出と関心対象領域の確定には様々な方法が使用され得る。例えば、関心対象領域はユーザにより手作業で選択され得る。さらに、これらの例はASTERシステムの取得システムに関して説明されているが、サンプルのスキャンと画像の取得には他のシステムも使用され得る。
【0032】
参考文献
1. Mau et.al,Fast widefield scan provides tunable and uniform illumination optimizing super-resolution microscopy on large fields,Nature Communications,vol.12,3077,2021.
2. Bourg et.al,Direct optical nanoscopy with axially localized detection,Nature Photonics,vol,9,587,2015.
3. Hoogendoorn et.al,The fidelity of stochastic single-molecule super-resolution reconstructions critically depends upon robust background estimation,Scientific Reports,4,3854,2014.
図1a
図1b
図2
図3
【国際調査報告】